JP2006022030A - メチルアセトフェノンの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】エチルトルエンを液相酸化反応してメチルアセトフェノンを製造する際、酸化反応液から、蒸留の際にメチルアセトフェノンの副反応を引き起こす安息香酸類を効率良く分離して、メチルアセトフェノンを効率良く製造するための方法を提供する。
【解決手段】エチルトルエンを分子状酸素含有ガスにより液相酸化することにより得られた反応液に、アルカリ水溶液を添加し、反応で生成した安息香酸類を水層に分離した後、メチルアセトフェノンを蒸留精製する。
【選択図】なし
【解決手段】エチルトルエンを分子状酸素含有ガスにより液相酸化することにより得られた反応液に、アルカリ水溶液を添加し、反応で生成した安息香酸類を水層に分離した後、メチルアセトフェノンを蒸留精製する。
【選択図】なし
Description
本発明は、エチルトルエンを分子状酸素含有ガスにより液相酸化した反応液をアルカリ水溶液を添加し、反応で生成した安息香酸類を水層に分離した後、蒸留精製してメチルアセトフェノンを製造する方法に関する。
メチルアセトフェノンは、エチルトルエンを分子状酸素含有ガスにより液相酸化することで製造される。例えば、塩化コバルト触媒下、ジグライム/メチルエチルケトン溶媒中でp−エチルトルエンを酸化しp−メチルアセトフェノンを製造する方法(例えば、非特許文献1参照)、酢酸コバルト、臭化アンモニウム触媒下、酢酸溶媒中でm−ジエチルベンゼンを酸化し、m−エチルアセトフェノンを製造する方法(例えば、特許文献1参照)、p−エチルトルエンをコバルト化合物、N−ヒドロキシフタルイミド触媒下で酸化し、p−メチルアセトフェノンを製造する方法(例えば、特許文献2参照)などがある。
上述のアルキル基置換エチルベンゼンの液相酸化反応では、目的物質であるアルキル基置換芳香族ケトンの他に、副生物として酸化中間体のアルキル基置換芳香族メチルカルビノールや安息香酸類が生成する。蒸留精製する際には、安息香酸類が存在すると酸触媒としてアルドール反応などの副反応を引き起こし、目的とするアルキル基置換芳香族ケトンが反応し、収率が低下するために前処理が必要である。
例えば、エチルベンゼンを空気酸化しアセトフェノンを製造する際に、エーテル抽出し、硫酸ナトリウムを加えて脱水し、硫酸ナトリウムをろ過して分離した後、濃縮、蒸留をしてアセトフェノンを得る方法が知られている(例えば、非特許文献2参照)。
特開平1−294647号公報
特開平9−327626号公報
「ジャーナル オブ モレキュラー キャタリシス」(Journal of Molecular Catalysis),1990年,第61巻,p.51−54
「オーガニック プレパレーションズ アンド プロシージャーズ」(Organic Preparations and Procedures),1970年,第2(3)巻,p.207−210
本発明の目的は、エチルトルエンを触媒の存在下で分子状酸素含有ガスにより液相酸化してメチルアセトフェノンを製造する際、酸化反応液にアルカリ水溶液を添加し、反応で生成した安息香酸類を水層に分離した後、蒸留精製して、効率的にメチルアセトフェノンを製造する方法を提供することにある。
エチルトルエンを分子状酸素含有ガスにより液相酸化することにより得られた反応液に、アルカリ水溶液を添加し、反応で生成した安息香酸類を水層に分離した後、蒸留精製することを特徴とするメチルアセトフェノンの製造方法が提供される。
本発明によれば、メチルアセトフェノンを液相酸化反応液から蒸留精製する前に、アルカリ水溶液を添加し、不純物を効率よく分離し、メチルアセトフェノンを効率的に製造することができる。
本発明を実施するための好ましい形態について以下に説明する。
本発明において酸化反応液としては、エチルトルエンを出発原料として分子状酸素含有ガスにより液相酸化させた反応液を用いる。
原料のエチルトルエンは蒸留などによって他の異性体を分離した高純度品を用いても、異性体を含有した状態で用いても良い。後者の場合、反応させた後のメチルアセトフェノンの異性体間に沸点差があれば、精製時に精留して高純度化が可能である。
本発明において、エチルトルエンを液相酸化するときに使用する触媒としては、特に制限はないが、コバルト化合物および臭素化合物の存在下で行うと反応が低温で進行するので好ましい。
コバルト化合物としては、酢酸コバルト、塩化コバルト、臭化コバルト、ヨウ化コバルト、硫酸コバルト、硝酸コバルト等が挙げられ、特に酢酸コバルトが好ましい。コバルト化合物の使用量は、エチルトルエンに対して好ましくは0.02倍モル以上であり、さらに好ましくは0.02〜0.5倍モルである。
また、臭素化合物としては、臭化水素、臭素、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化コバルト、臭化アンモニウム等が挙げられ、特に臭化アンモニウムが好ましい。臭素化合物の使用量は、エチルトルエンに対して好ましくは0.02倍モル以上であり、さらに好ましくは0.02〜0.5倍モルである。
本発明において、エチルトルエンを液相酸化するときには溶媒を用いても用いなくてもよく、溶媒を用いるときに溶媒の種類にも特に制限はないが、酢酸が好ましい。溶媒の使用量は原料のエチルトルエンに対し1.0倍モル以上が好ましく、さらに好ましくは1.5〜5.0倍モルである。
本発明において、エチルトルエンを液相酸化するときに使用する酸素は純粋な酸素である必要はなく、不活性ガス等で希釈された酸素、例えば空気を用いても支障ない。必要な酸素量は反応させるメチルアセトフェノン1モル当たり1モルが理論量である。
酸化反応は減圧、加圧および常圧のいずれの状態でも実施することが可能である。反応効率(単位体積あたりの反応効率)の観点から余りに低い圧力で実施することは好ましくない。また、反応装置等の設備的な経済性の観点から余りに高い圧力で実施する事も好ましくない。通常好ましい実施圧力範囲は0.1〜10MPaであり、更に好ましくは0.1〜5MPaである。しかしながら本発明はこれらの圧力範囲のみに限定されるものではない。
酸化反応温度は、特に限定されないが、好ましくは50〜300℃、更に好ましくは50〜200℃の範囲である。反応温度50℃以下では、反応速度が極端に低く、また、反応温度が300℃以上では、好ましからざる副反応等の進行するため好ましくない。
前記の方法により、液相酸化した反応液中には、目的物質のメチルアセトフェノンの他に、副生物として酸化中間体であるトルイルメチルカルビノールや安息香酸類が存在する。特に、安息香酸類は目的物質のメチルアセトフェノンを蒸留精製する際、酸触媒としてアルドール反応などの副反応を引き起こし、メチルアセトフェノンが反応して収率が低下する。
そこで、蒸留前の反応液にアルカリ水溶液を添加し、安息香酸類を水層に分離した後、蒸留精製することにより、蒸留精製の際の副反応が抑制され、メチルアセトフェノンを高収率で得ることができる。
前記の方法によりエチルトルエンを液相酸化する際に、酢酸などの酸を溶媒として使用している場合は、酸化反応液を濃縮し溶媒を留去させた後、アルカリ水溶液を添加して、安息香酸類を水層に分離した後、蒸留精製する。
使用するアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムが好ましく、より好ましくは、水酸化ナトリウムである。
アルカリは水溶液として添加する。アルカリ水溶液の濃度は使用するアルカリが溶解する濃度であれば良いが、好ましくは10〜30wt%である。
添加するアルカリ量としては、反応液中の安息香酸類の1.0〜10.0倍モルが好ましく、より好ましくは2.0〜5.0倍モルである。アルカリ量が多すぎるとアルカリによりメチルアセトフェノンが反応するため、好ましくない。
アルカリ水溶液の添加方法は、酸化反応液と十分に接触する方法であれば良いが、酸化反応液を撹拌しながら、アルカリ水溶液を滴下する方法が好ましい。
また、アルカリ水溶液による処理温度としては、特に制限はないが、10〜90℃であることが好ましく、より好ましくは20〜50℃である。酸化反応後、反応液の温度が前記の処理温度より高い場合は、冷却してから添加することが好ましい。温度が高すぎると、反応液とアルカリ水溶液の溶解度が高くなり、またアルカリによりメチルアセトフェノンの副反応が促進されるため、好ましくない。
アルカリ水溶液による処理時間は、安息香酸類が水層に抽出できれば特に制限はないが、0.25〜1時間処理するのが好ましい。処理時間が長すぎるとメチルアセトフェノンが反応するため、前記と同様に好ましくない。
アルカリ水溶液の処理槽は特に制限はされないが、耐アルカリ性の材質の反応槽内で撹拌することにより処理することができる。
アルカリ水溶液による処理後は、静置分離して水層を反応槽下部から抜き出すことで分離することができる。
アルカリ水溶液による処理および水層の分離後は、蒸留精製することにより、メチルアセトフェノンを得ることができる。
以下、本発明の最良の実施形態の例にとって説明する。しかしながら、本発明は、これらの実施例によって何ら制限を受けるものではない。
触媒として、和光純薬製酢酸コバルト四水和物、和光純薬製臭化アンモニウム、溶媒として片山化学製1級酢酸を使用した。エチルトルエンとして、和光純薬製p−エチルトルエンを使用した。アルカリとして、関東化学製1級水酸化ナトリウム(粒状)を使用した。
実施例1
攪拌機を備えた1lのチタン製オートクレーブ反応器に酢酸375gを仕込み、そこに酢酸コバルト12.49g(0.050mol)、臭化アンモニウム5.14g(0.053mol)を投入し溶解した。されにp−エチルトルエン250g(2.08mol)を加えた。続いて撹拌羽根を用いて撹拌しながら、反応器内部1.4MPaで反応器下部より空気を0.70ml/hで導入した。続いて反応液を100℃の油浴を用いて昇温し、反応を開始した。6時間反応させ、冷却してから反応液を取り出した。
攪拌機を備えた1lのチタン製オートクレーブ反応器に酢酸375gを仕込み、そこに酢酸コバルト12.49g(0.050mol)、臭化アンモニウム5.14g(0.053mol)を投入し溶解した。されにp−エチルトルエン250g(2.08mol)を加えた。続いて撹拌羽根を用いて撹拌しながら、反応器内部1.4MPaで反応器下部より空気を0.70ml/hで導入した。続いて反応液を100℃の油浴を用いて昇温し、反応を開始した。6時間反応させ、冷却してから反応液を取り出した。
得られた反応液を1lのガラス製ジャケット式反応槽に仕込み、撹拌しながら80℃、40Torrで溶媒である酢酸を留去させた。残った濃縮液中の安息香酸類は0.127molであった。得られた濃縮液に20%−水酸化ナトリウム水溶液を140.0g添加し、40℃で0.5時間撹拌した後、0.5時間静置分離して、水層を反応槽下部から抜き出した。p−メチルアセトフェノンの含まれた上層を減圧蒸留して、p−メチルアセトフェノン153.9gを得た。
実施例2
実施例1において、得られた濃縮液に20%−水酸化ナトリウム水溶液を124.0g添加し、40℃で0.5時間撹拌した後、0.5時間静置分離して、水層を反応槽下部から抜き出した。p−メチルアセトフェノンの含まれた上層を減圧蒸留して、p−メチルアセトフェノン173.0gを得た。
実施例1において、得られた濃縮液に20%−水酸化ナトリウム水溶液を124.0g添加し、40℃で0.5時間撹拌した後、0.5時間静置分離して、水層を反応槽下部から抜き出した。p−メチルアセトフェノンの含まれた上層を減圧蒸留して、p−メチルアセトフェノン173.0gを得た。
比較例1
実施例1において、濃縮して酢酸を留去させた後、残った濃縮液を減圧蒸留してp−メチルアセトフェノン121.6gを得た。
実施例1において、濃縮して酢酸を留去させた後、残った濃縮液を減圧蒸留してp−メチルアセトフェノン121.6gを得た。
本発明は、エチルトルエンの液相酸化反応液に限らず、一般的な炭化水素などの精製にも応用することができるが、その応用範囲がこれらに限られるものではない。
Claims (4)
- エチルトルエンを分子状酸素含有ガスにより液相酸化することにより得られた反応液に、アルカリ水溶液を添加し、反応で生成した安息香酸類を水層に分離した後、蒸留精製することを特徴とするメチルアセトフェノンの製造方法。
- エチルトルエンを溶媒中で液相酸化することにより得られた反応液を、濃縮して溶媒を留去した後、アルカリ水溶液を添加して、安息香酸類を水層に分離した後、蒸留精製することを特徴とする請求項1記載のメチルアセトフェノンの製造方法。
- 添加するアルカリ水溶液が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムから選ばれる少なくとも1種のアルカリ水溶液であることを特徴とする請求項1または2記載のメチルアセトフェノンの製造方法。
- 添加するアルカリ水溶液が酸化反応液中の安息香酸類に対して、アルカリ量として1.0〜10.0倍モルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のメチルアセトフェノンの製造方法。
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