JP4759177B2 - メバロラクトンの製造方法 - Google Patents
メバロラクトンの製造方法Info
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、メバロラクトンの製造方法に関する。本発明で得られるメバロラクトンは天然イソプレノイドの前駆体として知られており、医薬、農薬の合成原料として、またエレクトロニクス関連分野におけるレジスト素材の合成原料として有用である(特開平10−78658号公報参照)。
【0002】
【従来の技術】
メバロラクトンを3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールを原料として製造する方法としては、(1)炭酸銀を用いて酸化する方法(テトラヘドロン レターズ(Tetrahedron Lett.)、第31巻、171頁(1975年)参照)、(2)臭化ナトリウムの存在下に、過酢酸を用いて酸化する方法(ブリティン オブ ケミカル ソサエティー ジャパン(Bull.Chem.Soc.Jpn.)、第65巻、703頁(1992年)参照)、(3)亜臭素酸ナトリウムを用いて酸化する方法(シンセティック コミュニケーションズ(Synth.Commun.)、第28巻、123−130頁(1998年)参照)、(4)臭化ナトリウムなどの臭化物の存在下に、水およびアセトニトリルの混合溶媒中で次亜塩素酸ナトリウムを用いて酸化する方法(特開2000−38383号公報参照)が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記の方法(1)は、高価な炭酸銀を多量に使用するため高コストになる。上記の方法(2)は、使用する過酢酸が不安定であり、かつ爆発などの危険性を有しているため、取り扱い難いという問題点を有する。上記の方法(3)は、使用する亜臭素酸ナトリウムが工業的に製造されておらず、大スケールでの製造には適用し難い。また、上記の方法(4)は、反応条件は温和であるものの、反応時間が比較的長いうえ、多量の溶媒を使用するため生産性が低いという問題点を有している。
【0004】
しかして、本発明の目的は、安価に入手可能な原料を用いて、効率よく、工業的に有利にメバロラクトンを製造し得る方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の従来法がいずれも酸化反応条件下での製造方法であることに着目し、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールを原料としてメバロラクトンを効率よく、工業的に有利に製造し得る方法について鋭意検討を重ねた。
【0006】
アルコール類を、タングステン酸類および第4級アンモニウム硫酸水素塩の存在下に過酸化水素で酸化して、2級アルコールからケトンを、そして1級アルコールからアルデヒドまたはカルボン酸を得る方法は既に知られている。例えば、特開平11−158107号公報には、分子内に2級アルコールと1級アルコールが共存する場合は、2級アルコールが選択的に酸化されたヒドロキシケトン類が得られることが開示されており、そのようなアルコールの具体例として2−メチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,4−ヘキサンジオール、2−メチル−1,5−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−エチル−1,4−ヘキサンジオール、2−エチル−1,5−ヘキサンジオールが示されており、その実施例8には、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールから2−エチル−1−ヒドロキシ−3−ヘキサノンが得られた例が記載されている。また、ブリティン オブ ケミカル ソサエティー ジャパン(Bull.Chem.Soc.Jpn.)、第72巻、2287−2306頁(1999年)の表5には、9,11−ノナデカンジオールから11−ヒドロキシノナデカン−9−オンが得られた例が示されている。しかしながら、上記のアルコール以外のジオール、トリオールのような1級アルコールを分子内に複数持つ多価アルコール化合物からの生成物については何ら記載されていない。
【0007】
上記した反応において、原料としてジオール、トリオールのような1級アルコールを分子内に複数持つ多価アルコール化合物を用いた場合には、ジアルデヒド化合物、ジカルボン酸化合物などの多価アルデヒド化合物または多価カルボン酸化合物が得られることが予想される。しかしながら、本発明者らが3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールを、水溶媒中で、タングステン酸類と第4級アンモニウム塩の存在下に、過酸化水素と反応させたところ、驚くべきことに、メバロラクトンが良好な収率で得られることを見出し、先に特許出願を行った(特願2000−303081参照)。
【0008】
さらに、本発明者らは、上記の反応が水溶媒中で実施できることに着目して検討を重ねた結果、第4級アンモニウム塩を添加することなく、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールを、水溶媒中で、タングステン酸類の存在下に過酸化水素と反応させた場合でも、良好な収率でメバロラクトンが得られること、および該反応において、反応熱を溶媒である水の蒸発潜熱により除去することにより、効率よく除熱することができ、反応時間の短縮が可能であることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールを、水溶媒中で、タングステン酸類の存在下に過酸化水素と反応させることを特徴とするメバロラクトンの製造方法である。
【0010】
好ましい実施態様において、過酸化水素の使用量が3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール1モルに対して1.5〜2.5モルの範囲である。
【0011】
また、好ましい実施態様において、反応熱を溶媒である水の蒸発潜熱により除去する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明で使用されるタングステン酸類としては、例えばタングステン酸、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウム、タングステン酸リチウム、タングステン酸アンモニウム、リンタングステン酸、ケイタングステン酸などが挙げられる。これらの中でも、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウムを使用するのが好ましい。これらのタングステン酸類は、無水物の形態であっても水和物の形態であっても差し支えない。タングステン酸類の使用量は、反応の収率および生産性を考慮すると、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールに対して0.001〜100モル%の範囲であるのが好ましく、0.01〜10モル%の範囲であるのがより好ましく、0.01〜5モル%の範囲であるのが特に好ましい。
【0013】
過酸化水素は、一般に市販されている10〜60%の範囲の濃度の過酸化水素水溶液をそのまま使用することができる。過酸化水素の使用量は、反応の収率および生産性を考慮すると、含有される過酸化水素に換算して、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール1モルに対して1.5〜2.5モルの範囲であるのが好ましく、1.7〜2.3モルの範囲であるのがより好ましく、1.8〜2.2モルの範囲であるのが特に好ましい。過酸化水素の使用量が3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール1モルに対して1.5モルより少ない場合には、その使用量が減少するのに伴いメバロラクトンの収率が低くなり、また2.5モルよりも多い場合には、生成したメバロラクトンのラクトン環の酸化分解などの副反応が進行し、メバロラクトンの収率が低下する傾向がある。
【0014】
反応は、水を溶媒として行う。水の使用量は特に制限されないが、通常3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールに対して0.1〜50倍重量の範囲であるのが好ましく、経済性および容積効率の観点からは0.5〜10倍重量の範囲であるのがより好ましい。
【0015】
反応温度は−10℃〜110℃の範囲であるのが好ましく、過酸化水素の反応系内での反応性、安定性を考慮すると、30℃〜100℃の範囲であるのがより好ましい。反応は、生成物の安定性を考慮して、上記の温度範囲を成し得る圧力下、すなわち200〜760Torrの範囲で実施するのが好ましい。
【0016】
本発明は、大気下で実施することもできるが、安全性の観点からは、窒素、アルゴンなどの反応に不活性なガスの雰囲気下で実施するのが好ましい。
【0017】
反応は、反応熱を溶媒である水の蒸発潜熱により除去しながら行うことが、反応時間を短縮する観点から好ましく、例えば、水を反応系外に留去しながら反応を行う方法、水を還流させながら反応を行う方法などが適用できる。
【0018】
原料の仕込み方法に特に制限はなく、例えば、窒素、アルゴンなどの反応に不活性なガスの雰囲気下に、所定量の3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールおよびタングステン酸類を水に溶解して所定温度、所定圧力とし、得られた混合溶液に過酸化水素水溶液を少量ずつ添加し、水を反応系外に留去しながら、または水を還流させながら反応を行う。
【0019】
上記の方法により得られたメバロラクトンは、有機合成反応において行われる通常の単離・精製操作により単離・精製することができる。例えば、反応混合液に亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムなどを加えて過酸化物を分解した後、酢酸エチルなどの有機溶媒で抽出し、この抽出液を合わせて濃縮し、得られる粗生成物を蒸留またはカラムクロマトグラフィーなどによって精製する。
【0020】
なお、本発明で用いる3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールは安価に市販されており、容易に入手することができる。
【0021】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものはでない。
【0022】
実施例1
メカニカルスターラ、温度計および滴下ロートを装着した容量200mlの3ツ口フラスコに、タングステン酸ナトリウム二水和物0.825g(2.5mmol)、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール33.5g(0.25mol)および水25gを入れた後、系内を窒素置換して混合液を調製した。続いて、この混合液を攪拌しながら90℃に昇温し、35%過酸化水素水溶液59.54g(0.613mol)を2時間かけて滴下した後、同温度でさらに10時間攪拌した。得られた反応混合液を冷却した後、亜硫酸ナトリウム1.0gを添加し、次いで、酢酸エチル100mlで6回抽出した。抽出液を合わせて濃縮し、得られた粗メバロラクトン37.6gをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=7/3(容量比))を用いて精製することにより、メバロラクトン29.0g(0.22mol、収率89%)を得た。
【0023】
実施例2
実施例1において、タングステン酸ナトリウム二水和物0.825g(2.5mmol)に代えて、タングステン酸カリウム0.815g(2.5mmol)を使用した以外は同様の操作を行い、メバロラクトン27.0g(0.21mol、収率83%)を得た。
【0024】
実施例3
メカニカルスターラ、温度計および滴下ロートを装着した容量1Lの5ツ口フラスコに、タングステン酸ナトリウム二水和物3.30g(0.01mol)、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール134.2g(1.0mol)および水100gを入れた後、系内を窒素置換して混合液を調製した。続いて、この混合液を攪拌しながら90℃に昇温し、35%過酸化水素水溶液238.1g(2.5mol)を4時間かけて滴下した後、同温度でさらに8時間攪拌した。得られた反応混合液を冷却した後、亜硫酸ナトリウム37.2gを添加し、次いで、酢酸エチル400mlで6回抽出した。抽出液を合わせて濃縮し、得られた粗メバロラクトン142.2gをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=7/3(容量比))を用いて精製することにより、メバロラクトン110.6g(0.85mol、収率85%)を得た。
【0025】
実施例4
メカニカルスターラ、温度計、滴下ロートおよび還流装置を装着した容量1Lの5ツ口フラスコに、タングステン酸ナトリウム二水和物3.30g(10mmol)、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール134.2g(1.0mol)および水100gを入れた後、系内を窒素置換して混合液を調製した。続いて、この混合液を攪拌しながら90℃に昇温した後、35%過酸化水素水溶液238.1g(2.45mol)を2時間かけて滴下し、滴下終了後、100℃でさらに2時間攪拌した。該過酸化水素水溶液の滴下中および反応中に水150mlを留出させるとともに、留出した水を反応器内に戻した。得られた反応混合液を冷却した後、亜硫酸ナトリウム19.15gを添加し、次いで、酢酸エチル100mlで6回抽出した。抽出液を合わせて濃縮し、得られた粗メバロラクトン150.4gをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=7/3(容量比))を用いて精製することにより、メバロラクトン117.2g(0.90mol、収率90%)を得た。
【0026】
【発明の効果】
本発明によれば、メバロラクトンを、安価に入手できる原料を用いて、効率的に、工業的に有利に製造することができる。
Claims (3)
- 3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールを、水溶媒中で、タングステン酸類の存在下に過酸化水素と反応させることを特徴とするメバロラクトンの製造方法。
- 過酸化水素の使用量が3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール1モルに対して1.5〜2.5モルの範囲である請求項1に記載の製造方法。
- 反応熱を溶媒である水の蒸発潜熱により除去することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の製造方法。
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JP2001227507A JP4759177B2 (ja) | 2001-07-27 | 2001-07-27 | メバロラクトンの製造方法 |
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JP2000038383A (ja) * | 1998-07-23 | 2000-02-08 | Sumitomo Chem Co Ltd | メバロラクトンの製造法 |
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