JPWO2022185903A5 - - Google Patents

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本発明は、二酸化炭素吸着電池、及び充放電装置に関する。
二酸化炭素は、大気中の約0.04%を占める、地球上に広く存在する物質であるだけではなく、産業上広く用いられている。二酸化炭素の利用方法としては、例えば、炭酸飲料、入浴剤、及び消火剤等の発泡用ガス、冷却等に用いられるドライアイス、及び自転車タイヤへの緊急補充用エアー等が挙げられる。また、二酸化炭素は、超臨界状態にすることで、カフェイン等を抽出するための抽出溶媒としても用いることができる。また、工業分野における加工に使用されるレーザや医療用レーザメス等に用いられる炭酸ガスレーザにも、二酸化炭素が用いられている。さらに、コンプレッサの冷媒として、フロン系冷媒の代わりに、二酸化炭素が用いられることもある。また、二酸化炭素は、農業分野においても、例えば、イチゴの促成栽培及び観賞用水槽の水草等の植物の成長を加速させるための二酸化炭素施肥等に用いられる。また、生鮮農産物のCA(Controlled Atomosphere)貯蔵にも、二酸化炭素が用いられている。
二酸化炭素は、上述したように、様々な分野で用いられていることから、空気等の二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素を分離すること等によって、二酸化炭素を得る方法が求められている。また、二酸化炭素は、地球温暖化の原因物質とも言われている。このことからも、二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素を分離して、二酸化炭素を利用することが求められている。二酸化炭素を利用するために、例えば、二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素を分離する方法、二酸化炭素を吸着及び分離する装置、及び二酸化炭素を利用する装置等の開発が求められている。
空気等の、酸素と二酸化炭素とを含む混合ガスから、二酸化炭素を分離する方法としては、様々な方法が提案されている。この分離方法としては、例えば、二酸化炭素の吸着剤を用いて、空気中の二酸化炭素を吸着させ、その後、吸着剤に吸着された二酸化炭素を脱離することによって、空気中から二酸化炭素を分離する方法等が挙げられる。二酸化炭素を吸着する吸着剤としては、例えば、活性炭、アミン系溶媒、及び炭酸カリウム水溶液等が挙げられる。また、吸着剤を用いた、二酸化炭素の分離方法としては、より具体的には、加圧して、高圧下で二酸化炭素を吸着剤に吸着させ、その後、減圧させて、吸着剤から二酸化炭素を脱離される圧力変動吸着(PSA:Pressure Swing Adsorption)法等が挙げられる。このPSA法により二酸化炭素を分離する際に用いられる吸着剤としては、特許文献1に記載の吸着剤等が挙げられる。
特許文献1には、ナトリウム含有アルミノケイ酸塩のナトリウムイオンの2~80当量%がバリウムイオンでイオン交換された組成物からなる二酸化炭素の吸着剤が記載されている。特許文献1によれば、二酸化炭素の選択比率が高く、かつ、水分の多い条件でも吸収容量が大きい吸着剤を提供することができる旨が開示されている。また、特許文献1には、この吸着剤が、PSA法により二酸化炭素を分離濃縮するために好適に使用できることが開示されている。
二酸化炭素を吸着及び分離する装置としては、例えば、特許文献2に記載の酸性ガス吸着脱離デバイス及び特許文献3に記載の二酸化炭素分離装置等が挙げられる。
特許文献2には、酸化及び還元を行うことで、二酸化炭素等の酸性ガスの吸着及び脱離を行うことができる化合物並びに基材を含む酸性ガス吸着脱離層と、前記酸性ガス吸着脱離層を挟持する一対の電極とを有する酸性ガス吸着脱離デバイスが記載されている。
特許文献3には、電解質層と、前記電解質層を挟んで、前記電解質層上に設けられた、一対の電極とを、前記一対の電極間に電圧を印加する電圧印加部とを備え、前記一対の電極が、それぞれ、気体を透過可能な電極であり、前記電解質層が、二酸化炭素を溶解可能な電解液と、N-オキシラジカル基を分子内に有するレドックス化合物とを含む二酸化炭素分離装置が記載されている。
また、二酸化炭素を利用する装置としては、例えば、非特許文献1及び非特許文献2に記載の電池等が挙げられる。
非特許文献1には、二酸化炭素の利用方法として、二酸化炭素を吸収しながら充電する電池が提案されている。
非特許文献2には、レドックス系を取り入れた二酸化炭素充電電池が提案されている。具体的には、ポリ-1,4-アントラキノン及びポリビニルフェロセンのそれぞれを、負極及び正極で用いる二酸化炭素充電電池が提案されている。
特開平7-39752号公報 特開2015-36128号公報 特開2018-1131号公報
Aliza Khurram et al.,"Tailoring the Discharge Reaction in Li-CO2 Batteries through Incorporation of CO2 Capture Chemistry",Joule 2,2649-2666,December 19,2018 Sahag Voskian et al.,"Faradaic electro-swing reactive adsorption for CO2 Capture",Energy & Environmental Science,2019,12,3530-3547
本発明は、二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素を簡易に吸着しつつ、充電可能な二酸化炭素吸着電池を提供することを目的とする。また、本発明は、前記二酸化炭素吸着電池を備える充放電装置を提供することを目的とする。
本発明の一局面は、負極と、正極と、前記負極と前記正極との間に配置されたセパレータと、前記負極と前記セパレータとの間及び前記正極と前記セパレータとの間のそれぞれに配置された電解質層とを備え、前記負極が、気体を透過可能な電極であり、前記電解質層が、二酸化炭素を溶解可能な電解液と、N-オキシラジカル基を分子内に有するレドックス化合物とを含み、前記セパレータが、前記レドックス化合物の透過を抑制し、前記電解液を透過可能である二酸化炭素吸着電池である。
図1は、本発明の実施形態に係る二酸化炭素吸着電池における充電時の構成の一例を示す概略断面図である。 図2は、本発明の実施形態に係る二酸化炭素吸着電池における放電時の構成の一例を示す概略断面図である。 図3は、本発明の実施形態に係る二酸化炭素吸着電池における充電時の構成の他の一例を示す概略断面図である。 図4は、本発明の実施形態に係る二酸化炭素吸着電池における充電時の構成の他の一例を示す概略断面図である。 図5は、本発明の実施形態に係る二酸化炭素吸着電池における放電時の構成の他の一例を示す概略断面図である。 図6は、本発明の実施形態に係る充放電装置の一例の構成を示す概略図である。
PSA法により二酸化炭素を分離する方法、例えば、特許文献1に記載の吸着剤等を用いた方法では、上述したように、加圧及び減圧が必要である。また、吸着剤を用いた二酸化炭素の分離方法であれば、PSA法以外の方法であっても、吸着剤に二酸化炭素を吸着させる操作だけではなく、吸着剤に吸着された二酸化炭素を脱離する操作に、例えば、加熱処理等が必要である。このことから、吸着剤を用いた二酸化炭素の分離方法は、比較的多くのエネルギーを必要としたり、比較的大型の装置を必要とすることがあった。
二酸化炭素の分離方法としては、二酸化炭素の分離に多くのエネルギーを用いずに、また、比較的大きな装置を用いない、簡便な方法で、二酸化炭素を分離できることが求められている。
特許文献2によれば、固体状態で酸性ガスの吸着脱離を行うことができることが開示されている。具体的には、特許文献2に記載の方法は、まず、電極間に電圧を印加させて、酸性ガス吸着脱離層に、酸性ガスを吸着させる。その後、電極間に印加する電圧を、電極間に配置された酸性ガス吸着脱離層に流れる電流が吸着時とは反対方向になるように反転させて、前記酸性ガス吸着脱離層から酸性ガスを脱離させる。このように、特許文献2に記載の方法では、酸性ガス吸着脱離層に酸性ガスを吸着させる際と、吸着された酸性ガスを酸性ガス吸着脱離層から脱離させる際とでは、電極間に印加する電圧を反転させる。酸性ガスとして、二酸化炭素に着目して、この特許文献2に記載の装置等で、二酸化炭素を分離させようとしても、上述したように、電極間に印加する電圧を反転させる必要があった。このことから、特許文献2に記載の方法では、前記特許文献1に記載の吸着剤を用いた場合と同様、比較的多くのエネルギーを必要としたり、比較的大型の装置を必要とする場合があった。
特許文献3によれば、二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素を簡易に分離することができる二酸化炭素分離装置を提供することができることが開示されている。特許文献3には、この二酸化炭素分離装置は、一対の電極間に印加する電圧を、二酸化炭素を吸着させる際と放出させる際とで反転させることなく、二酸化炭素を分離することができる旨が開示されている。具体的には、前記二酸化炭素分離装置に備えられる一対の電極間に電圧を印加することで、一方の電極を透過してきた二酸化炭素がN-オキシラジカル基を分子内に有する化合物に結合し、この二酸化炭素が結合した化合物が他方の電極側まで流動して、そこで前記化合物から二酸化炭素が放出される旨が開示されている。
本発明者の検討によれば、特許文献3に記載の二酸化炭素分離装置では、蓄電することはできなかった。具体的には、特許文献3に記載の二酸化炭素分離装置は、上記のように、前記一対の電極間に電圧を印加することで、二酸化炭素に関する流動が連続して行われ、よって、二酸化炭素の分離を行っている際には、電流が一方向に常に流れることから、蓄電することができないと考えられる。
非特許文献1には、充電時に二酸化炭素を吸着する蓄電池が示されているが、本発明者の検討によれば、非特許文献1に記載の蓄電池では、電池のサイクル寿命が短い等の耐久性に乏しく、実用化は難しいことを見出した。
非特許文献2には、非特許文献1に記載の技術と同様、充電時に二酸化炭素を吸着する蓄電池が示されている。しかしながら、二酸化炭素の吸着には、ポリ-1,4-アントラキノン等のキノン化合物の一次電子受容体が用いられており、このようなキノン化合物は耐熱性が低いことが知られている。また、前記キノン化合物が用いられている負極の対極である正極には、鉄を中心金属とするフェロセン型の化合物が用いられており、このような化合物として、ポリビニルフェロセン等の、特殊で高価な化合物が用いられており、経済的にも好ましくない。
これらのことから、二酸化炭素を有効利用するためにも、これらの材料以外の材料を用いることによって、充電時に二酸化炭素を吸着することができる二次電池の開発が求められている。
本発明者は、種々検討した結果、以下の本発明により、二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素を簡易に吸着しつつ、充電可能な二酸化炭素吸着電池を提供するといった上記目的が達成されることを見出した。
以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
[二酸化炭素吸着電池]
本発明の実施形態に係る二酸化炭素吸着電池10は、図1及び図2に示すように、負極11と、正極12と、前記負極11と前記正極12との間に配置されたセパレータ16と、前記負極11と前記セパレータ16との間及び前記正極12と前記セパレータ16との間のそれぞれに配置された電解質層13とを備える。すなわち、前記二酸化炭素吸着電池10は、セパレータ16と、前記セパレータ16の両面に設けられた電解質層13と、前記電解質層13を挟んで、前記電解質層13上に設けられた、負極11及び正極12とからなる一対の電極11、12とを備える。前記負極11は、気体を透過可能な電極である。前記電解質層13は、二酸化炭素を溶解可能な電解液と、N-オキシラジカル基を分子内に有する化合物とを含む。また、前記セパレータ16は、前記レドックス化合物の透過を抑制し、前記電解液を透過可能である。すなわち、前記セパレータ16は、前記レドックス化合物を前記電解液より透過しにくい。また、前記セパレータ16は、前記電解液を透過可能であるものの、前記レドックス化合物を透過させないものが好ましい。前記二酸化炭素吸着電池10には、気体が前記負極11に接触しながら流通する流路15を備えていてもよい。前記流路15は、気体を流通させることができる流路であれば、特に限定されない。
なお、図1及び図2は、本発明の実施形態に係る二酸化炭素吸着電池の構成の一例(前記二酸化炭素吸着電池10)を示す概略断面図であり、図1は、前記二酸化炭素吸着電池10の充電時を示し、図2は、前記二酸化炭素吸着電池10の放電時を示す。
前記二酸化炭素吸着電池10は、充電時には、前記負極11の電位が前記正極12の電位より低くなるように、前記負極11と前記正極12との間(前記負極11及び前記正極12からなる一対の電極間)に電圧を印加する。前記二酸化炭素吸着電池10の充電は、前記のように電圧を印加することができれば、特に限定されない。前記二酸化炭素吸着電池10の充電としては、例えば、図1に示すように、前記負極11の電位が前記正極12の電位より低くなるように、前記負極11及び前記正極12からなる一対の電極間に電圧を印加する電圧印加部14を設けることによる充電等が挙げられる。前記二酸化炭素吸着電池10は、図2に示すように、前記負極11及び前記正極12からなる一対の電極間に抵抗17等を設けて、放電する。なお、前記負極11は、充電時には、二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素を取り込む側のカソード電極となり、放電時には、充電時に取り込まれた二酸化炭素を放出する側のアノード電極となる。また、前記正極12は、充電時には、アノード電極になり、放電時にはカソード電極となる
本実施形態に係る二酸化炭素吸着電池10は、二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素を簡易に分離・吸着することができる。具体的には、前記二酸化炭素吸着電池10は、図1に示すように、前記電圧印加部14によって、前記負極11の電位が、前記正極12の電位より低くなるように、これらの電極11,12間に印加すると、以下のように、二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素が分離される。また、前記二酸化炭素吸着電池10は、このように電圧を印加することで、充電される。よって、前記二酸化炭素吸着電池10は、前記流路15に、二酸化炭素を含む気体、例えば、空気等を流通させて、二酸化炭素を前記負極11に接触させると、二酸化炭素が前記電解質層13中に吸着(固定化)され、同時に電池として充電される。また、前記二酸化炭素吸着電池10は、図2に示すような放電時には、二酸化炭素が前記電解質層13から放出される。
前記二酸化炭素吸着電池10では、充電時には、前記流路15から供給された空気等の気体より二酸化炭素濃度が低下した気体が排出され、放電時には、前記流路15から供給された気体より二酸化炭素濃度が高まった気体が排出される。放電時に前記二酸化炭素吸着電池から放出される気体は、具体的には、充電時に前記二酸化炭素吸着電池に吸着されていた気体が主となるため、二酸化炭素濃度の非常に高い気体である。これらのことから、前記二酸化炭素吸着電池10は、二酸化炭素を濃縮できる。
よって、前記二酸化炭素吸着電池10は、充電時に二酸化炭素を吸着し、放電時に二酸化炭素を放出することができる。すなわち、前記二酸化炭素吸着電池10は、充電時には、前記電解質層13に対する二酸化炭素の親和性が高まり、放電時は、前記電解質層13に対する二酸化炭素の親和性が低下する。このような、一対の電極11、12間への電圧の印加等によって、前記電解質層13に対する二酸化炭素の親和性を変化させることができ、二酸化炭素を吸着させたり、放出させたりすることができる。そして、この吸着及び放出によって、二酸化炭素を濃縮することができる。これらの二酸化炭素の吸着及び放出は、電圧の印加によって行うので、室温及び大気圧等でも行うことができる。
前記二酸化炭素吸着電池10における上記の作用機序は、以下のことによると考えられる。
前記負極11は、前記負極11周辺に存在する気体を透過させることができる。前記負極11を気体が透過すると、前記負極11を透過した気体は前記電解質層13に接触することになる。このことにより、前記負極11周辺に存在する気体に含まれる二酸化炭素は、前記電解質層13に含まれる電解液に溶解される。
前記二酸化炭素吸着電池10は、充電時には、前記負極11の電位が前記正極12の電位より低くなるように、すなわち、前記正極12の電位が前記負極11の電位より高くなるように、前記負極11及び前記正極12からなる一対の電極11、12間に電圧を印加する。
前記電解質層13に含まれる前記レドックス化合物は、前記負極11に近い側では、前記負極11の電位が前記正極12の電位より高いことから、下記式(2)に示すように、N-オキシラジカル基が還元され、N-オキシアニオン基になる。そして、下記式(3)に示すように、前記電解液に溶解された二酸化炭素が、このN-オキシアニオン基に結合されるため、前記電解液への二酸化炭素の溶解が促進される。このため、前記二酸化炭素吸着電池10は、充電時には、前記負極11側から二酸化炭素が取り込まれ、前記電解質層13に二酸化炭素が吸着されることになる。
一方で、前記電解質層13に含まれる前記レドックス化合物は、前記正極12に近い側では、前記正極12の電位が前記負極11の電位より低いことから、下記式(4)に示すように、N-オキシラジカル基が酸化され、N-オキシカチオン基になる。
前記セパレータ16は、前記電解液を透過可能であるものの、前記レドックス化合物の透過を抑制する。すなわち、前記レドックス化合物は前記電解液より前記セパレータ16を透過しにくい。このため、N-オキシラジカル基が還元され、N-オキシアニオン基になったレドックス化合物も、二酸化炭素が結合されたレドックス化合物も、前記セパレータを透過して、前記正極側に移行しにくい。よって、充電を停止させた後も、放電させなければ、これらのレドックス化合物は、前記電解質層13の前記セパレータ16より前記負極11側に保持される。N-オキシラジカル基が酸化され、N-オキシカチオン基になったレドックス化合物も、前記セパレータ16を透過して、前記負極11側に移行しにくい。よって、充電を停止させた後も、放電させなければ、このN-オキシカチオン基を分子内に有するレドックス化合物は、前記電解質層13の前記セパレータ16より前記正極12側に保持される。これらのことから、前記二酸化炭素吸着電池10は、充電状態を維持することができる。
次に、充電された前記二酸化炭素吸着電池10を放電すると、下記式(5)に示すように、前記電解質層13の前記セパレータ16より前記正極12側では、N-オキシカチオン基がN-オキシラジカル基に戻る。前記電解質層13の前記セパレータ16より前記負極11側では、前記レドックス化合物から、下記式(6)に示すように、二酸化炭素が脱離し、下記式(7)に示すように、N-オキシアニオン基がN-オキシラジカル基に戻る。よって、前記二酸化炭素吸着電池10は、放電時には、前記負極11側から二酸化炭素を放出することができる。放電時に前記二酸化炭素吸着電池10から放出される気体は、充電時に前記二酸化炭素吸着電池10に吸着されていた気体が主となるため、二酸化炭素濃度の非常に高い気体である。このことから、前記二酸化炭素吸着電池10は、二酸化炭素を濃縮できることになる。
以上のように、前記二酸化炭素吸着電池10は、充電時に二酸化炭素を吸着し、放電時に二酸化炭素を放出することができ、二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素を簡易に吸着しつつ、充電をすることができると考えられる。また、前記二酸化炭素吸着電池10は、前記のような二酸化炭素の吸着及び放出によって、二酸化炭素を濃縮することができると考えられる。また、前記二酸化炭素吸着電池10は、前記キノン化合物ではなく、前記キノン化合物より耐久性の高いN-オキシラジカル基を分子内に有するレドックス化合物を用いることから、耐久性にも優れている。
負極
前記負極11は、気体を透過可能な電極であれば、特に限定されない。すなわち、前記負極11は、二酸化炭素等の気体を透過することができ、前記一対の電極11,12で挟みこまれた前記電解質層13に電流を流すことができる導電部材であればよい。また、前記負極11としては、電子の移動を阻害しない程度の導電性を有し、電荷を蓄積でき、通気性に優れ、気体の接触面積が広い多孔質体であることが好ましい。前記負極11としては、具体的には、多孔性の導電材料で構成される電極等が挙げられ、より具体的には、炭素を主成分として含む多孔質体、炭素からなる多孔質体、及び多孔性金属層等が挙げられる。前記多孔性の導電材料としては、例えば、多孔性金属、炭素を主成分として含む多孔質体、及び炭素からなる多孔質体等が挙げられる。前記多孔性の導電材料としては、これらを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合させて用いてもよい。すなわち、前記負極11としては、これらの多孔性の導電材料のうち、単独の導電材料から構成される電極であってもよいし、2種以上の導電材料を組み合わせて構成される電極であってもよい。
前記多孔質体に含まれる炭素としては、具体的には、グラファイト、カーボンナノチューブ、活性炭繊維等の活性炭、及び炭素繊維等の炭素質材料が挙げられる。また、この炭素としては、グラファイト、カーボンナノチューブ、活性炭、及び炭素繊維であることが好ましく、耐腐食性及び比表面積の点から、活性炭繊維等の活性炭であることがより好ましい。また、この炭素としては、各種炭素質材料を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。この炭素が含まれる多孔質体としては、前記炭素質材料を、布状やフェルト状にしたものが好ましい。よって、前記多孔質体である電極としては、具体的には、カーボンシート、カーボンクロス、及びカーボンペーパー等が挙げられる。また、前記多孔質体である電極としては、活性炭や炭素繊維を用いたカーボン系電極、及び針状の導電材料を用いた空隙率の高い電極等も挙げられる。また、前記電極としては、上記各電極の中でも、グラファイト、カーボンナノチューブ、活性炭、及び炭素繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む導電部材からなる電極であることが好ましい。このような電極であれば、気体を好適に透過でき、前記電圧印加部14による、前記一対の電極11、12間に電圧を好適に印加できると考えられる。このため、この負極11を用いることによって、充電時に二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素をより好適に吸着することができ、放電時に二酸化炭素をより好適に放出することができる二酸化炭素吸着電池が得られる。
前記多孔性金属層は、多数の孔が形成されている金属層である。また、前記多孔性金属層は、前記孔が、通気性に優れる点で、金属層全体にわたって形成されていることが好ましい。また、前記多孔性金属層を得る方法としては、前記孔が形成されていない金属層(前記孔を形成する前の金属層)に、多数の孔が形成される処理を施す方法(多孔化する方法)であれば、特に限定されない。この方法としては、例えば、切削、研磨及びサンドブラスト等の物理的な方法、及び、酸や塩基等のエッチング液を用いた、電解エッチングや無電解エッチング等の化学的な方法等が挙げられる。また、多孔化する方法としては、前記各方法を単独で行ってもよいし、2種以上を組み合わせて行ってもよい。また、多孔化する方法としては、表面積を大きくするという観点から、形成する孔(細孔)をより緻密にする(より緻密な孔を形成させる)ため、化学的な方法であることが好ましい。また、前記金属層の材質としては、特に限定されず、例えば、アルミニウム、銅、銀、金、鉄、チタン、モリブデン、タングステン、ニッケル、及びこれらの合金等が挙げられる。前記金属層の材質としては、この中でも、価格及び加工性の観点から、アルミニウムであることが好ましい。また、前記孔を形成する前の金属層としては、いわゆるアルミニウム箔であることが好ましい。
前記負極11のBET比表面積は、特には限定されないが、例えば、1m/g以上であることが好ましく、100m/g以上であることがより好ましく、500m/g以上であることがより好ましい。前記負極11のBET比表面積は、気体の透過性(通気性)の観点から大きいほうが好ましいが、前記負極11の強度等の関係から、3000m/g以下であることが好ましい。よって、前記負極11のBET比表面積は、1~3000m/gであることが好ましく、100~2500m/gであることがより好ましく、500~2000m/gであることがより好ましい。前記負極11のBET比表面積が小さすぎると、気体の透過性(通気性)が低下し、二酸化炭素の透過が阻害される傾向がある。また、前記負極11のBET比表面積が大きすぎると、電極の強度等が不充分になる傾向がある。これらのことから、前記電極11のBET比表面積が、上記範囲内であれば、長期間にわたって、二酸化炭素の吸着及び放出を実現することができ、二酸化炭素電池として長期間にわたって使用できる。なお、BET比表面積は、BET法によって測定される比表面積であり、公知の方法で測定可能である。BET比表面積の測定方法としては、例えば、窒素吸着等温線測定を行い、得られた吸着等温線から算出する方法等が挙げられる。
前記負極11としては、集電体をさらに備えていてもよい。すなわち、前記負極11は、前記多孔質体からなるものであってもよいし、前記多孔質体及び前記集電体を備えたものであってもよい。前記集電体としては、前記気体の透過を阻害しない集電体であれば、特に限定されない。前記集電体としては、例えば、導電性を有する素材で構成され、かつ、気体の透過を妨げない範囲で開口したものを用いることができる。前記集電体としては、より具体的には、メッシュメタル、パンチングメタル、及びエキスパンドメタル等の金属からなるものであってもよいし、天然繊維又は合成繊維からなる織物布又は不織布にめっきして導電性を持たせたものであってもよい。前記集電体として使用できる金属としては、例えば、ステンレス鋼、鉄、ニッケル、及び銅等を使用することができる。
前記多孔質体及び前記集電体を備えた負極11は、前記多孔体と前記集電体とが一体化されていることが好ましく、一体化させる方法としては、特に限定されない。一体化された前記多孔体と前記集電体とは、一体化させる方法として、例えば、超音波溶接及びプラズマ溶接等の方法を用い、前記多孔体と前記集電体とを部分的に一体化させ、導電性を確保したものであってもよい。また、一体化された前記多孔体と前記集電体とは、前記多孔体と前記集電体とを、導電性接着剤等の導電材を介在させて、導電性を持たせたものであってもよい。前記導電材としては、特に限定されず、例えば、銀、金及びニッケル等の金属微粒子を分散させたもの、炭素材系導電材、及び導電性高分子等を使用することができる。
正極
前記正極12は、前記一対の電極11、12で挟みこまれた前記電解質層13に電流を流すことができる導電部材であれば、特に限定されない。前記正極12としては、例えば、気体の透過を遮断する気体透過遮断部を備える電極であることが好ましい。また、前記正極12としては、例えば、外気と接触しないように構成されていることが好ましい。前記正極が、前記のように、気体の透過を遮断する気体透過遮断部を備える場合、及び外気と接触しないように構成されている場合は、二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素を簡易に吸着しつつ、充電可能であり、その充電状態をより維持することができる。このことは、以下のことによると考えられる。
前記二酸化炭素吸着電池10では、上述したように、前記セパレータ16によって、前記レドックス化合物の移動が抑制されるが、前記レドックス化合物が前記セパレータ16を透過することもありえる。例えば、前記二酸化炭素吸着電池10において、前記電解質層13の前記セパレータ16より前記負極11側から前記正極12側に、上述したような二酸化炭素が結合されたレドックス化合物が移動することもありえる。充電時又は充電状態を保持している状態のときに、このように、二酸化炭素が結合されたレドックス化合物が移動すると、前記正極12の近くで、前記レドックス化合物が酸化され、前記レドックス化合物から、二酸化炭素が脱離し、N-オキシアニオン基がN-オキシラジカル基に戻る。その際、二酸化炭素が前記正極12側から放出されると、このような二酸化炭素が結合されたレドックス化合物の移動が促進されうる。よって、前記正極12が、気体の透過を遮断する気体透過遮断部を備える場合、及び外気と接触しないように構成されている場合、このような移動の促進が起こることを防止でき、充電状態をより維持できると考えられる。
前記正極12が、気体の透過を遮断する気体透過遮断部を備える電極である場合、図1及び図2に示すように、正極本体21、及び前記気体透過遮蔽部22を備える電極であってもよいし、前記気体透過遮蔽部が導電性を有し、この気体透過遮蔽部からなる電極であってもよい。
前記正極12が、正極本体21及び気体透過遮蔽部22を備える電極である場合、前記気体透過遮蔽部22は、前記正極本体21の前記電解質層13側とは反対側に備えられる。また、前記気体透過遮蔽部22は、前記正極本体21の前記電解質層13側とは反対側に備えられていれば、前記正極本体21の前記電解質層13側にも備えられていてもよい。
前記正極本体21は、前記一対の電極11、12で挟みこまれた前記電解質層13に電流を流すことができる導電部材であればよい。また、前記正極本体21としては、電子の移動を阻害しない程度の導電性を有し、電荷を蓄積できる導電部材であることが好ましい。また、前記正極本体21としては、前記気体透過遮蔽部22を備えることから、ガス接触面積を広くする点から、気体を透過可能であることが好ましい。これらのことから、前記正極本体21としては、前記負極11で用いられる電極として例示された導電部材と同様のものであってもよい。前記正極本体21としては、具体的には、炭素材料、金属繊維、金属箔、導電性高分子等の導電材料で構成される電極等が挙げられ、より具体的には、炭素繊維、活性炭、及び黒鉛等で構成される電極等が挙げられる。
前記気体透過遮蔽部22は、気体の透過を遮断することができれば、特に限定されない。前記気体透過遮蔽部22は、例えば、アルミニウム箔、銅箔、及びニッケル箔等の金属箔、及び、導電性高分子、黒鉛、及び銀等の導電材ペーストを塗工したプラスチック箔等が挙げられる。前記プラスチック箔としては、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリプロピレン(PP)、及びポリエチレン(PE)等を含むプラスチック箔等が挙げられる。
前記気体透過遮蔽部からなる電極は、前記正極本体と前記気体透過遮蔽部とを兼ねる構成の電極である。前記気体透過遮蔽部からなる電極としては、二酸化炭素等の気体を透過せず、かつ、前記一対の電極11、12で挟みこまれた前記電解質層13に電流を流すことができる導電部材からなる電極等が挙げられる。
前記正極12が外気と接触しないように構成されている場合としては、その構成としては、前記正極12が外気と接触しなければ、特に限定されない。前記正極12が外気と接触しないように構成されている場合の一例としては、例えば、図3に示すように、前記流路15から供給された空気に接する前記負極11以外、筐体25に囲まれた二酸化炭素吸着電池20等が挙げられる。すなわち、前記二酸化炭素吸着電池20は、前記正極12が外気と接触しないように、前記筐体25で囲んでいること以外、前記二酸化炭素吸着電池10と同様である。このような二酸化炭素吸着電池20は、前記筐体25が気体を透過するものでなれば、前記正極12が外気と接触しない。前記筐体25としては、気体を透過しなければ、特に限定されず、電池の筐体として用いることができるものであればよい。なお、図3は、本発明の実施形態に係る二酸化炭素吸着電池の構成の他の一例(前記二酸化炭素吸着電池20)を示す概略断面図であり、前記二酸化炭素吸着電池20の充電時を示す。
前記正極12が外気と接触しないように構成されている場合の他の一例としては、例えば、図4及び図5に示すような、2つの負極11、31を備える二酸化炭素吸着電池30等が挙げられる。前記二酸化炭素吸着電池30は、前記負極11に加え、この負極11とは別の負極31をさらに備え、前記正極12と前記負極31との間にも、前記電解質層13及び前記セパレータ16を備えること以外、前記二酸化炭素吸着電池10と同様である。すなわち、前記二酸化炭素吸着電池30は、前記一対の電極11、12を構成する負極11に加え、この負極11とは別の負極31をさらに備え、前記一対の電極11、12を構成する正極12と前記負極31との間にも、前記電解質層13及び前記セパレータ16を備えること以外、前記二酸化炭素吸着電池10と同様である。前記二酸化炭素吸着電池30は、上記のこと以外は、前記二酸化炭素吸着電池10と同様であり、例えば、前記負極31としては、気体を透過可能な電極であれば、特に限定されず、例えば、前記負極11で使われる電極等が挙げられる。このような構成の二酸化炭素吸着電池30であれば、前記正極12が外気と接触しないように構成することができる。そして、図4に示すように、前記負極11と前記正極12との間だけではなく、前記正極12と前記負極31との間にも、前記電圧印加部14によって電圧を印加することによって、前記負極11と前記正極12との間だけではなく、前記正極12と前記負極31との間でも充電することができる。また、前記二酸化炭素吸着電池30は、図5に示すように、前記負極11と前記正極12との間で充電を行いながら、前記正極12と前記負極31との間で放電することもできる。また、前記二酸化炭素吸着電池30は、図示していないが、前記正極12と前記負極31との間で充電を行いながら、前記負極11と前記正極12との間で放電することもできる。なお、図4及び図5は、本発明の実施形態に係る二酸化炭素吸着電池の構成の他の一例(前記二酸化炭素吸着電池30)を示す概略断面図である。図4は、いずれの電極間も充電時である場合を示し、図5は、一方の電極間を充電時であり、他方の電極間を放電時である場合を示す。
前記負極11及び前記正極12は、上述したように、前記一対の電極11,12で挟みこまれた前記電解質層13に電流を流すことができる導電部材であり、その表面抵抗値は、小さいほど好ましく、例えば、1kΩ/sq以下であることが好ましく、200Ω/sq以下であることがより好ましい。また、前記各電極の表面抵抗値は、小さいほど好ましいが、実際には、1Ω/sqであることが限界である。よって、前記各電極の表面抵抗値は、1Ω/sq~1kΩ/sqであることが好ましく、10~200Ω/sqであることがより好ましい。このような表面抵抗値の電極であれば、前記電解質層13に電流を好適に流すことができ、前記二酸化炭素吸着電池10は、充電時に二酸化炭素を好適に吸着することができ、放電時に二酸化炭素を好適に放出することができる。なお、前記負極31の表面抵抗値は、前記負極11及び前記正極12の表面抵抗値と同様である。
前記負極11及び前記正極12の厚みは、特には限定されないが、電荷を好適に蓄積でき、電解液の漏液を好適に防ぐことができる厚みであることが好ましい。前記負極11及び前記正極12の厚みは、例えば、20μm以上10mm以下であることが好ましく、50μm以上5mmであることがより好ましい。前記負極11及び前記正極12が薄すぎると、電極の強度等が不充分になったり、電荷を蓄積しにくくなる傾向がある。また、前記負極11及び前記正極12が厚すぎると、前記二酸化炭素吸着電池10が大きくなりすぎる傾向がある。また、前記負極11が厚すぎると、気体の透過性(通気性)が低下し、二酸化炭素の透過が阻害される傾向もある。なお、前記負極31の厚みは、前記負極11の厚みと同様である。
(電解質層)
前記電解質層13は、二酸化炭素を溶解可能な電解液と、N-オキシラジカル基を分子内に有するレドックス化合物とを含んでいれば、特に限定されない。また、前記電解質層13は、上述したように、二酸化炭素の吸着及び放出による二酸化炭素の分離に寄与する二酸化炭素分離体である。
前記電解質層13の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.1μm~2mmであることが好ましく、1μm~1mmであることがより好ましい。また、前記電解質層13の前記負極11側の厚み及び前記正極側の厚みも、特には限定されないが、例えば、それぞれ、0.1μm~2mmであることが好ましく、1μm~1mmであることがより好ましい。前記電解質層13が薄すぎると、二酸化炭素の固定量及び蓄電量が単に低下するだけではなく、前記電解質層13に微小な穴、すなわち、ピンホールができてしまう傾向がある。ピンホールができてしまうと、二酸化炭素の好適な吸着ができなくなったり、二酸化炭素の吸着に寄与しない電流が流れる等の問題を併発してしまうことがある。また、前記電解質層13が厚すぎると、前記電解質層13に吸着した二酸化炭素の、前記電解質層13内での拡散が遅くなり、二酸化炭素の固定量と蓄電量とに乖離が生じることから、充電の際、二酸化炭素が充分に吸着されたことを把握しにくくなる傾向がある。このことは、以下のことによると考えられる。前記二酸化炭素吸着電池10において、二酸化炭素の吸着に対する、前記電解質層13における二酸化炭素の拡散や二酸化炭素が結合されたレドックス化合物の拡散の寄与が、充電に対する前記拡散の寄与より大きい。また、前記電解質層13が厚いと、薄い場合より、前記拡散の影響が大きくなる。これらのことから、二酸化炭素の吸着に係る速度における前記電解質層13が厚いときと薄いときとの差が、充電に係る速度における前記電解質層13のそれより大きい。このため、前記電解質層13が薄いときは、蓄電量から二酸化炭素が充分に吸着されたことを把握しやすいのに対して、前記電解質層13が厚いときは、上述したように、二酸化炭素の固定量と蓄電量とに乖離が生じることから、蓄電量から、二酸化炭素が充分に吸着されたことを把握しにくい。よって、前記電解質層13が厚いほど、充電の際、二酸化炭素が充分に吸着されたことを把握しにくくなると考えられる。また、同様の理由により、前記電解質層13が厚すぎると、放電の際、二酸化炭素が充分に放出されたことを把握しにくくなる傾向がある。
前記電解液は、二酸化炭素を溶解可能な電解液であれば、特に限定されず、電解質と溶媒とを含む電解液であってもよいし、イオン液体を含む電解液であってもよい。なお、二酸化炭素を溶解可能な電解液とは、二酸化炭素が溶解されないもの以外であればよく、すなわち、二酸化炭素がわずかにでも溶解する電解液であればよく、高い溶解度が求められるものではない。このことは、以下のことによると考えられる。本実施形態に係る二酸化炭素吸着電池は、上述したように、前記レドックス化合物への二酸化炭素の結合及び脱離によって、充電時には、前記負極11側の前記電解質層13に二酸化炭素が取り込まれ、放電時に、前記負極11側の前記電解質層13から二酸化炭素が放出されるというメカニズムで、二酸化炭素の吸着及び放出が進行すると考えられる。このため、前記電解質層13に含まれる電解液にわずかにでも二酸化炭素が溶解すれば、二酸化炭素の吸着及び放出が進行すると考えられる。
前記電解液は、上述したように、二酸化炭素を溶解可能な電解液であれば、特に限定されないが、不揮発性であることが好ましい。前記電解液は、上述したように、電解質と溶媒とを含む電解液であってもよいし、イオン液体を含む電解液であってもよいが、不揮発性であって、かつ、電解液として用いることができるものが好ましい。前記電解液は、具体的には、イオン液体であることが好ましい。
前記溶媒は、電気化学的に安定な、電位窓の広い化合物であることが好ましく、水性溶媒であっても、有機溶媒であってもよい。前記溶媒としては、例えば、水、カーボネート化合物、エステル化合物、エーテル化合物、複素環化合物、ニトリル化合物、及び非プロトン性極性化合物等が挙げられる。前記カーボネート化合物としては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレンカーボネート、及びプロピレンカーボネート等が挙げられる。前記エステル化合物としては、例えば、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、及びγ-ブチロラクトン等が挙げられる。前記エーテル化合物としては、ジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、1,3-ジオキソシラン、テトラヒドロフラン、及び2-メチル-テトラヒドロフラン等が挙げられる。前記複素環化合物としては、例えば、3-メチル-2-オキサゾジリノン、及び2-メチルピロリドン等が挙げられる。前記ニトリル化合物としては、例えば、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、3-メトキシプロピオニトリル、及び吉草酸ニトリル等が挙げられる。前記非プロトン性極性化合物としては、例えば、スルフォラン、ジメチルスルフォキシド、及びジメチルホルムアミド等が挙げられる。前記溶媒としては、前記例示した各溶媒を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記溶媒としては、上記例示した各溶媒の中でも、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネート等のカーボネ-ト化合物、γ-ブチロラクトン等のエステル化合物、3-メチル-2-オキサゾジリノン及び2-メチルピロリドン等の複素環化合物、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、3-メトキシプロピオニトリル及び吉草酸ニトリル等のニトリル化合物が好ましい。また、前記溶媒として、2種以上を組み合わせて用いる場合、二酸化炭素の溶解の観点から、水を用いることが好ましい。
前記電解質としては、特に限定されず、例えば、四級アンモニウム塩、無機塩、及び水酸化物等が挙げられる。前記四級アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラ-n-エチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラ-n-プロピルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラ-n-ブチルアンモニウムテトラフルオロボレート、n-ヘキサデシルトリメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラ-n-ヘキサデシルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラ-n-オクチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラ-n-エチルアンモニウムパークロレート、テトラ-n-ブチルアンモニウムパークロレート、及びテトラオクタデシルアンモニウムパークロレート等が挙げられる。前記無機塩としては、例えば、リチウムパークロレート、ナトリウムパークロレート、カリウムパークロレート、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、硝酸ナトリウム、及び硝酸カリウム等が挙げられる。前記水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウム等が挙げられる。前記電解質としては、上記例示した電解質の中でも、テトラメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラ-n-エチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラ-n-プロピルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラ-n-ブチルアンモニウムテトラフルオロボレート、n-ヘキサデシルトリメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラ-n-ヘキサデシルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラ-n-オクチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラ-n-エチルアンモニウムパークロレート、テトラ-n-ブチルアンモニウムパークロレート、テトラオクタデシルアンモニウムパークロレート、リチウムパークロレート、ナトリウムパークロレート、酢酸ナトリウム、及び酢酸カリウムが好ましい。また、前記電解質としては、この中でも、テトラ-n-エチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラ-n-プロピルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラ-n-ブチルアンモニウムテトラフルオロボレート、リチウムパークロレート、及びナトリウムパークロレートがより好ましく、テトラ-n-ブチルアンモニウムテトラフルオロボレート、及びリチウムパークロレートがさらに好ましい。また、前記電解質は、その支持塩として、炭酸イオンや炭酸水素イオンを安定化させ、pH緩衝能を有していてもよい。この場合の電解質としては、具体的には、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸、及び酢酸ナトリウム等が挙げられる。前記電解質は、上記例示した電解質を単独で用いてもよい、2種以上を組合せて用いてもよい。
前記電解液は、上述したように、イオン液体(イオン性液体)を含む電解液であってもよい。前記電解液として、イオン液体を用いると、上記のように電解質と溶媒とを含ませなくても、イオン液体が、この両者の機能を併せ持ちうる。また、前記電解液としては、イオン液体を含んでいればよく、イオン液体に電解質を含む液体であってもよいし、イオン液体に溶媒を含む液体であってもよいし、イオン液体に電解質及び溶媒を含む液体であってもよいし、イオン液体からなるものであってもよい。また、前記電解液として、イオン液体を用いることは、イオン液体が揮発しにくく、難燃性が高い点ことから好ましい。
前記イオン液体としては、公知のイオン液体であれば特に限定されないが、例えば、イミダゾリウム系イオン液体、ピリジン系イオン液体、脂環式アミン系イオン液体、及びアゾニウムアミン系イオン液体等が挙げられる。前記イオン液体としては、例えば、1-メチル-3-オクチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム クロライド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-デシル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1、3-ジメトキシイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1、3-ジエトキシイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-メチル-3-オクチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1-デシル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1、3-ジメトキシイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、及び1、3-ジエトキシイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。また、前記イオン液体としては、前記例示のイオン液体の中でも、1-メチル-3-オクチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフロロメチルスルホニルイミド)、1、3-ジメトキシイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-メチル-3-オクチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、及び1-エチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェートが好ましい。また、前記イオン液体としては、1-メチル-3-オクチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1、3-ジメトキシイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフロロメチルスルホニルイミド)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、及び1-メチル-3-オクチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェートがより好ましく、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフロロメチルスルホニルイミド)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、及び1-メチル-3-オクチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートがさらに好ましい。
前記電解質層13は、前記電解液がゲル化していてもよい。具体的には、前記電解液にゲル化させるためのゲル化剤を添加してもよいし、ゲル化電解質又は高分子電解質を用いてもよい。前記ゲル化剤としては、例えば、ポリマー、ポリマー架橋反応等の手法を利用するゲル化剤、重合性多官能モノマー、及びオイルゲル化剤等が挙げられる。前記ゲル化電解質及び前記高分子電解質としては、ゲル化電解質や高分子電解質として用いることができるものであれば特に限定されず、例えば、ポリフッ化ビニリデン等のフッ化ビニリデン系重合体、ポリアクリル酸等のアクリル酸系重合体、ポリアクリロニトリル等のアクリロニトリル系重合体、ポリエチレンオキシド等のポリエーテル系重合体、及び構造中にアミド構造を有する化合物等が挙げられる。
前記レドックス化合物は、N-オキシラジカル基を分子内に有するレドックス化合物であれば、特に限定されない。前記レドックス化合物としては、不揮発性であり、かつ、電解還元及び電解酸化により、二酸化炭素を吸着及び脱離するレドックス化合物であることが好ましい。すなわち、前記レドックス化合物は、前記式(2)及び前記式(3)に示すように、電解還元されることにより二酸化炭素が吸着され、前記式(5)及び前記式(6)に示すように、電解酸化されることにより吸着された二酸化炭素が脱離される。このレドックス化合物は、前記電圧印加部14によって、前記一対の電極11、12間に電圧を印加すること等によって、N-オキシラジカル基が還元され、N-オキシアニオン基になり、二酸化炭素が結合される。また、前記二酸化炭素吸着電池10が放電されると、二酸化炭素が脱離してN-オキシアニオン基になり、このN-オキシアニオン基が酸化されて、N-オキシラジカルに戻る。前記レドックス化合物は、このように、酸化還元によって、N-オキシラジカル基が変化する化合物である。
前記レドックス化合物としては、具体的には、下記式(1)で表される化合物、又は、下記式(1)で表される化合物から水素原子が1つ脱離された基を有する化合物等が挙げられる。下記式(1)で表される化合物から水素原子が1つ脱離された基を有する化合物とは、このような基を有する化合物であればよく、他の低分子化合物と結合された化合物であってもよいし、高分子化合物であってもよい。
式(1)中、Zは、-CRCR-、-CR10CR1112CR1314-、-(CR1516)O-、-(CR1718)NR27-、-(CR1920)O(CR2122)-、又は、-(CR2324)NR28(CR2526)-を示し、R~R28は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を示す。
前記R~Rは、少なくとも1つが置換基であることが好ましく、2つ以上が置換基であることがより好ましく、4つ全てが置換基であることがさらに好ましい。すなわち、前記式(1)で表される化合物は、前記N-オキシラジカル基に4級炭素が2つ結合された化合物であることが好ましい。また、前記レドックス化合物は、前記N-オキシラジカル基に4級炭素が2つ結合された化合物、又は、この化合物から水素原子が1つ脱離された基を有する化合物であることが好ましい。このような化合物は、前記N-オキシラジカル基による酸化還元が起こりやすく、前記レドックス化合物による二酸化炭素の吸着及び放出をより好適に行うことができると考えられる。このため、このような化合物を電解質層に含ませることによって、充電時に二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素をより好適に吸着することができ、放電時に二酸化炭素をより好適に放出することができる二酸化炭素吸着電池が得られる。
前記式(1)で表される化合物におけるZとしては、-CRCR-、-CR10CR1112CR1314-、-(CR1920)O(CR2122)-、及び-(CR2324)NR28(CR2526)-であることが好ましい。
前記R~R28における置換基としては、例えば、炭素数1~30のヒドロカルビル基、炭素数1~10のヒドロカルビルオキシ基、ヒドロキシ基(水酸基)、置換されていてもよいアミノ基(未置換若しくは置換のアミノ基)、カルボキシル基、チオール基、及び置換されていてもよいシリル基(未置換若しくは置換のシリル基)等が挙げられる。また、前記R~R26における置換基としては、この中でも、炭素数1~30のヒドロカルビル基、ヒドロキシ基、及び未置換若しくは置換のアミノ基が好ましい。また、前記R27、R28における置換基としては、炭素数1~30のヒドロカルビル基が好ましい。
なお、ここで置換されていてもよいとは、その直後に記載された化合物又は基を構成する水素原子が無置換の場合及び水素原子の一部又は全部が置換基によって置換されている場合の双方を含む。
前記ヒドロカルビル基としては、特に限定されず、直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、環状であってもよい。前記ヒドロカルビル基としては、例えば、メチル基、エチル基、1-プロピル基、2-プロピル基、1-ブチル基、2-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2-エチルヘキシル基、3,7-ジメチルオクチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、ノルボルニル基、アンモニウムエチル基、ベンジル基、α,α―ジメチルベンジル基、1-フェネチル基、2-フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、エイコサペンタエニル基、ドコサヘキサエニル基、2,2-ジフェニルビニル基、1,2,2-トリフェニルビニル基、2-フェニル-2-プロペニル基、フェニル基、2-トリル基、4-トリル基、4-トリフルオロメチルフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-シアノフェニル基、2-ビフェニリル基、3-ビフェニリル基、4-ビフェニリル基、ターフェニリル基、3,5-ジフェニルフェニル基、3,4-ジフェニルフェニル基、ペンタフェニルフェニル基、4-(2,2-ジフェニルビニル)フェニル基、4-(1,2,2-トリフェニルビニル)フェニル基、フルオレニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、9-アントリル基、2-アントリル基、9-フェナントリル基、1-ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、及びコロニル基等が挙げられる。前記ヒドロカルビル基としては、この中でも、メチル基、エチル基、1-プロピル基、2-プロピル基、1-ブチル基、2-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2-エチルヘキシル基、3,7-ジメチルオクチル基、ベンジル基、α,α―ジメチルベンジル基、1-フェネチル基、2-フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、エイコサペンタエニル基、ドコサヘキサエニル基、2,2-ジフェニルビニル基、1,2,2-トリフェニルビニル基、2-フェニル-2-プロペニル基、フェニル基、2-トリル基、4-トリル基、4-トリフルオロメチルフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-シアノフェニル基、2-ビフェニリル基、3-ビフェニリル基、4-ビフェニリル基、ターフェニリル基、3,5-ジフェニルフェニル基、3,4-ジフェニルフェニル基、ペンタフェニルフェニル基、4-(2,2-ジフェニルビニル)フェニル基、4-(1,2,2-トリフェニルビニル)フェニル基、フルオレニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、9-アントリル基、2-アントリル基、及び9-フェナントリル基が好ましい。さらに、前記ヒドロカルビル基としては、この中でも、メチル基、エチル基、1-プロピル基、2-プロピル基、1-ブチル基、2-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、3,7-ジメチルオクチル基、ベンジル基、フェニル基であることがより好ましく、メチル基、エチル基、1-プロピル基、2-プロピル基、1-ブチル基、2-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、及びヘキシル基がさらに好ましい。
前記ヒドロカルビルオキシ基としては、特に限定されず、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよいし、環状であってもよい。前記ヒドロカルビルオキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、1-プロピルオキシ基、2-プロピルオキシ基、1-ブトキシ基、2-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、3,7-ジメチルオクチルオキシ基、シクロプロパノキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、1-アダマンチルオキシ基、2-アダマンチルオキシ基、ノルボルニルオキシ基、アンモニウムエチトキシ基、トリフルオロメトキシ基、ベンジロキシ基、α,α-ジメチルベンジロキシ基、2-フェネチルオキシ基、1-フェネチルオキシ基、フェノキシ基、アルコキシフェノキシ基、アルキルフェノキシ基、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基、及びペンタフルオロフェニルオキシ基等が挙げられる。前記ヒドロカルビルオキシ基としては、この中でも、メトキシ基、エトキシ基、1-プロピルオキシ基、2-プロピルオキシ基、1-ブトキシ基、2-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、及び3,7-ジメチルオクチルオキシ基が好ましい。さらに、前記ヒドロカルビルオキシ基としては、この中でも、メトキシ基、エトキシ基、1-プロピルオキシ基、2-プロピルオキシ基、1-ブトキシ基、2-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、及びヘキシルオキシ基がより好ましい。
前記アミノ基は、特に限定されず、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよいし、環状であってもよい。前記アミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、1-プロピルアミノ基、2-プロピルアミノ基、1-ブチルアミノ基、2-ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、tert-ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、オクチルアミノ基、デシルアミノ基、ドデシルアミノ基、2-エチルヘキシルアミノ基、3,7-ジメチルオクチルアミノ基、シクロプロピルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、1-アダマンチルアミノ基、2-アダマンチルアミノ基、ノルボルニルアミノ基、アンモニウムエチルアミノ基、トリフルオロメチルアミノ基、ベンジルアミノ基、α,α-ジメチルベンジルアミノ基、2-フェネチルアミノ基、1-フェネチルアミノ基、フェニルアミノ基、アルコキシフェニルアミノ基、アルキルフェニルアミノ基、1-ナフチルアミノ基、2―ナフチルアミノ基、及びペンタフルオロフェニルアミノ基等が挙げられる。前記アミノ基としては、この中でも、メチルアミノ基、エチルアミノ基、1-プロピルアミノ基、2-プロピルアミノ基、1-ブチルアミノ基、2-ブチルアミノ基、tert-ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、オクチルアミノ基、デシルアミノ基、ドデシルアミノ基、2-エチルヘキシルアミノ基、及び3,7-ジメチルオクチルアミノ基が好ましい。さらに、前記アミノ基としては、この中でも、メチルアミノ基、エチルアミノ基、1-プロピルアミノ基、2-プロピルアミノ基、1-ブチルアミノ基、2-ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、tert-ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、及びヘキシルアミノ基がより好ましい。
前記シリル基としては、特に限定されない。前記シリル基としては、例えば、ジメチルシリル基、ジエチルシリル基、ジフェニルシリル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、t-ブチルジフェニルシリル基、及びトリストリメチルシリル基等が挙げられる。
前記式(1)で表される化合物は、上述したように、前記N-オキシラジカル基に4級炭素が2つ結合された化合物であることが好ましい。このように、前記N-オキシラジカル基に隣接する部位に、立体障害の大きい基が結合されていることによって、ラジカルの安定性が高まり、ラジカルカップリングが抑制できると考えられる。このため、このような化合物を電解質層に含ませることによって、充電時に二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素をより好適に吸着することができ、放電時に二酸化炭素を放出することができる二酸化炭素吸着電池が得られると考えられる。
前記式(1)で表される化合物としては、例えば、1,4-ジ(1-オキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジン-4-イロキシ)キシレン、4-アセトアミド-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、N,N-ジ-tert-ブチルニトロキシドラジカル、N,N-ジフェニルニトロキシドラジカル、N,N-ジナフチルニトロキシドラジカル、N,N-ジ-2-メチルフェニルニトロキシドラジカル、N,N-ジ-3-メチルフェニルニトロキシドラジカル、N,N-ジ-4-メチルフェニルニトロキシドラジカル、N,N-ジ-2-エチルフェニルニトロキシドラジカル、N,N-ジ-2-プロピルフェニルニトロキシドラジカル、N,N-ジ-2-ブチルフェニルニトロキシドラジカル、N,N-ジ-2-ペンチルフェニルニトロキシドラジカル、N,N-ジ-2-ヘキシルフェニルニトロキシドラジカル、N,N-ジ-2-イソプロピルフェニルニトロキシドラジカル、N,N-ジ-2-イソブチルフェニルニトロキシドラジカル、N,N-ジ-2-sec-ブチルフェニルニトロキシドラジカル、N,N-ジ-2-tert-ブチルフェニルニトロキシドラジカル、N,N-ジ-4-tert-ブチルフェニルニトロキシドラジカル、N,N-ジ-(3,5-ジ-tert-ブチル)フェニルニトロキシドラジカル、N,N-ジ-4-ピリジルニトロキシドラジカル、N,N-ジ-4-ピリダジルニトロキシドラジカル、ポリ(エチレングリコール)-ビス-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルオキシラジカル、N-フェニル-N-オキシ-tert-ブチルアミン、N-ナフチル-N-オキシ-tert-ブチルアミン、N-tert-ブチル-N-オキシ-2-キノリン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルオキシラジカル(TEMPO)、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルオキシラジカル、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルオキシラジカル、4-カルボキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルオキシラジカル、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルオキシラジカル、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルオキシラジカル、4-アセトアミド-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルオキシラジカル、4-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルオキシラジカル、2,2,5,5-テトラメチルピロリジン-オキシラジカル、3-カルバモイル-2,2,5,5-テトラメチルピロリジン-オキシラジカル、3-カルボキシ-2,2,5,5-テトラメチルピロリジン-オキシラジカル、2,2,6,6-テトラメチルモルホリン-N-オキシラジカル、及び2,2,6,6-テトラメチルモルホリンピペラジン-N-オキシラジカル等が挙げられる。
さらに、前記レドックス化合物としては、上述したように、高分子化合物であってもよく、例えば、前記式(1)で表される化合物を重合して得られる化合物等が挙げられる。前記高分子化合物としては、例えば、4-アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルオキシラジカル、4-メタクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルオキシラジカル、3-アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピロリジニルオキシラジカル、3-メタクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピロリジニルオキシラジカル、4-ビニロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジルニルオキシラジカル、及び4-ビニロイルオキシ-2,2,5,5-テトラメチルピロリジニルオキシラジカル等をモノマーとして重合して得られた化合物等が挙げられる。また、前記高分子化合物としては、前記モノマーを単独で重合して得られる化合物であってもよいし、2種以上の前記モノマーを組み合わせて重合して得られる化合物であってもよい。また、前記高分子化合物としては、前記式(1)で表される化合物を重合させて得られる化合物であってもよいし、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、及び酢酸ビニル等の共重合モノマーと共重合させた共重合体であってもよい。また、この共重合体モノマーも、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記レドックス化合物は、上記例示の化合物の中でも、1,4-ジ(1-オキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジン-4-イロキシ)キシレン、4-アセトアミド-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、及びポリ(4-メタクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルオキシラジカル)が好ましい。前記レドックス化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記式(1)で表される化合物は、所定の合成方法で合成して得られた化合物であってもよいし、市販品であってもよい。前記合成方法としては、前記式(1)で表される化合物が得られる合成方法であれば、特に限定されないが、例えば、二置換アミン化合物のアミノ基を酸化させるニトロキシド化させる方法等が挙げられる。
なお、不揮発性とは、常温常圧下で、その物質が蒸発しない、又は、すぐに蒸発しないことを意味する。例えば、本明細書において、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル(TEMPO)は、不揮発性ではなく、揮発性である。このことから、不揮発性の目安としては、例えば、常圧における沸点が、TEMPOの沸点である193℃より高いことが挙げられ、200℃以上であることが好ましく、220℃以上であることがより好ましい。また、不揮発性の目安としては、例えば、20℃における蒸気圧が、TEMPOの蒸気圧(20℃)である0.4hPaより低い(すなわち、0.4hPa未満である)ことが挙げられ、0.2hPaより低い(すなわち、0.2hPa未満である)ことが好ましい。
前記電解質層13には、前記電解液及び前記レドックス化合物以外の成分を含有していてもよい。前記電解質層13に含有される他の成分としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、及びポリビニルアルコールアセタール等が挙げられる。
前記電解質層13は、基材を含んでいてもよい。前記電解質層13としては、例えば、前記レドックス化合物を含む前記電解液を前記基材に含浸させたもの等が挙げられる。また、前記基材としては、例えば、ガラス繊維ろ紙等が挙げられる。
前記電解質層13の製造方法としては、前記電解質層13が製造できれば、特に限定されない。前記電解質層13が、前記基材を含む場合、例えば、前記電解液に前記レドックス化合物を分散又は溶解させ、このレドックス化合物を含む電解液を前記基材に含浸させる方法等が挙げられる。前記含浸は、前記電解液や前記基材に超音波振動を印加しながら、行うことが好ましい。そうすることによって、電解質層13に、微小な穴、すなわち、ピンホールが形成されることを抑制することができる。
(セパレータ)
前記セパレータ16は、前記レドックス化合物の透過を抑制し、前記電解液を透過可能なセパレータであれば、特に限定されない。すなわち、前記セパレータ16は、前記レドックス化合物を前記電解液より透過しにくい。また、前記セパレータ16としては、前記電解液を透過可能であるものの、前記レドックス化合物を透過させないものが好ましい。前記セパレータ16は、電解液を透過可能であるが、前記レドックス化合物の透過を抑制するように、前記負極11側の前記電解質層13と前記正極12側の前記電解質層13とを隔てるように設けられる。このように、前記負極11と前記正極12とは、前記セパレータ16によって分離される。前記セパレータ16としては、例えば、リチウム二次電池で一般的に使用されるセパレータ等が挙げられ、特に、電解質のイオン移動に対して低抵抗でありながら、電解液含湿能に優れるセパレータが好ましい。前記セパレータの材質としては、例えば、ガラスファイバ、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられる。前記セパレータの材質としては、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記セパレータは、前記セパレータの材質で構成され、その形態としては、不織布であってもよいし、織布であってもよい。前記セパレータの気孔径は、特に限定されず、例えば、0.01~10μmであることが好ましい。また、前記セパレータの厚みは、特に限定されず、例えば、5~300μmであることが好ましい。
前記二酸化炭素吸着電池10は、上述したように、充電時には、前記負極11の電位が前記正極12の電位より低くなるように、前記負極11及び前記正極12からなる一対の電極11、12間に電圧を印加する。このために、前記二酸化炭素吸着電池10は、前記電圧印加部14を設けてもよい。前記二酸化炭素吸着電池10は、上述したように、放電時には、前記負極11及び前記正極12からなる一対の電極11、12間に抵抗17等を設けて、放電する。前記抵抗17は、前記二酸化炭素吸着電池10を放電させることができれば、特に限定されることはない。
前記電圧印加部14は、前記一対の電極11,12間に電圧を印加することができれば、特に限定されない。すなわち、前記電圧印加部14は、上述したように、前記負極11の電位が前記正極12の電位より低くなるように、前記一対の電極11,12間に電圧を印加する。そうすることによって、充電時には、前記電圧印加部14で電圧を印加するだけで、前記負極11側で、二酸化炭素を取り込みつつ、充電することができる。また、前記電圧印加部14は、前記一対の電極11,12間に印加する電圧を反転させることのできない印加部であってもよく、例えば、二次電池、外部電源、及びキャパシタ等が挙げられる。
前記二酸化炭素吸着電池10は、前記構造のものを製造することができれば、その製造方法は、特に限定されない。前記二酸化炭素吸着電池10の製造方法としては、具体的には、前記負極11、前記正極12、前記電解質層13、及び前記セパレータ16を用いて、さらに、必要に応じて、前記流路15、前記電圧印加部14、及び前記抵抗17等を用いて、図1及び図2に示す構造等になるように、一般的な組み立て方法で組み立てる方法等が挙げられる。
前記二酸化炭素吸着電池10は、前記負極11及び前記正極12に電圧を印加することで充電される。また、前記二酸化炭素吸着電池10は、充電時に、上述したように、前記電解質層13に含まれるレドックス化合物に二酸化炭素が結合されることにより、二酸化炭素を吸着する。前記二酸化炭素吸着電池10は、充電後、放電する際に、前記電解質層13に含まれるレドックス化合物から二酸化炭素が脱離されることにより、二酸化炭素を放出する。このことから、前記二酸化炭素吸着電池10は、充電時に二酸化炭素を吸着し、放電時に二酸化炭素を放出するように用いることが好ましい。また、放電時に前記二酸化炭素吸着電池10から放出される気体は、充電時に前記二酸化炭素吸着電池10に吸着されていた気体が主となるため、二酸化炭素濃度の非常に高い気体である。このことから、前記二酸化炭素吸着電池10は、二酸化炭素を濃縮できる。すなわち、前記二酸化炭素吸着電池10は、二酸化炭素を濃縮する装置としても使用することができる。また、前記二酸化炭素吸着電池10は、充電時に二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素を吸着し、放電時に二酸化炭素を放出するので、二酸化炭素濃度の非常に高い気体が放出されることになる。このことから、前記二酸化炭素吸着電池10は、二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素を分離する装置としても使用することができる。
[充放電装置]
本発明の他の実施形態に係る充放電装置は、前記二酸化炭素吸着電池を2つ以上備える充放電装置である。前記充放電装置としては、前記二酸化炭素吸着電池を2つ以上備えていれば、特に限定されず、例えば、図6に示すような充放電装置40等が挙げられる。
前記充放電装置40は、2つの前記二酸化炭素吸着電池(第1の二酸化炭素吸着電池10aと第2の二酸化炭素吸着電池10bと)を備える。前記第1の二酸化炭素吸着電池10aでは、その正極側10a2と負極側10a1とを前記電圧印加部14を介して接続することによって、充電することができる。すなわち、前記充放電装置40は、前記第1の二酸化炭素吸着電池10aの正極側10a2と前記電圧印加部14とを配線61で接続し、前記電圧印加部14と前記第1の二酸化炭素吸着電池10aの負極側10a1とを配線62で接続することによって、前記第1の二酸化炭素吸着電池10aを充電することができる。前記第1の二酸化炭素吸着電池10aを充電した後に、前記第1の二酸化炭素吸着電池10aの負極側10a1と前記第2の二酸化炭素吸着電池10bの負極側10b1とを配線66で接続し、前記第2の二酸化炭素吸着電池10bの正極側10b2と前記第1の二酸化炭素吸着電池10aの正極側10a2とを配線65で接続することによって、前記第1の二酸化炭素吸着電池10aを放電させるとともに、前記第2の二酸化炭素吸着電池10bを充電させることができる。前記第2の二酸化炭素吸着電池10bを充電した後(前記第1の二酸化炭素吸着電池10aを放電した後)に、前記第2の二酸化炭素吸着電池10bの負極側10b1と前記第1の二酸化炭素吸着電池10aの負極側10a1とを配線64で接続し、前記第1の二酸化炭素吸着電池10aの正極側10a2と前記第2の二酸化炭素吸着電池10bの正極側10b2とを配線63で接続することによって、前記第2の二酸化炭素吸着電池10bを放電させるとともに、前記第1の二酸化炭素吸着電池10aを充電させることができる。このように、前記第1の二酸化炭素吸着電池10aを一旦充電することによって、前記第2の二酸化炭素吸着電池10b及び前記第1の二酸化炭素吸着電池10aに対して、交互に充電及び放電を繰り返すことができる充放電装置として作用させることができる。よって、前記充放電装置は、2つ以上の前記二酸化炭素吸着電池を備えることによって、それぞれの前記二酸化炭素吸着電池に対して、交互に充電及び放電を繰り返すことができる。このことから、この充放電装置は、エネルギー効率の高い充放電装置となる。また、前記充放電装置は、二酸化炭素を分離することができる。なお、前記第1の二酸化炭素吸着電池10a及び前記第2の二酸化炭素吸着電池10bにおいて、充電する際には、流路15aで、二酸化炭素を含む気体(窒素及び二酸化炭素を含む空気等)を供給し、流路15bで、窒素(窒素及び吸着されなかった二酸化炭素)を排出する。また、前記第1の二酸化炭素吸着電池10a及び前記第2の二酸化炭素吸着電池10bにおいて、放電する際には、流路15cで、二酸化炭素を排出する。なお、図6は、本発明の実施形態に係る充放電装置40の一例の構成を示す概略図である。
本明細書は、上述したように、様々な態様の技術を開示しているが、そのうち主な技術を以下に纏める。
本発明の一局面は、負極と、正極と、前記負極と前記正極との間に配置されたセパレータと、前記負極と前記セパレータとの間及び前記正極と前記セパレータとの間のそれぞれに配置された電解質層とを備え、前記負極が、気体を透過可能な電極であり、前記電解質層が、二酸化炭素を溶解可能な電解液と、N-オキシラジカル基を分子内に有するレドックス化合物とを含み、前記セパレータが、前記レドックス化合物の透過を抑制し、前記電解液を透過可能である二酸化炭素吸着電池である。
このような構成によれば、二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素を簡易に吸着しつつ、充電可能な二酸化炭素吸着電池を提供することができる。
このことは、以下のことによると考えられる。
前記負極は、前記負極周辺に存在する気体を透過させることができる。前記負極を気体が透過すると、前記負極を透過した気体は前記電解質層に接触することになる。このことにより、前記負極周辺に存在する気体に含まれる二酸化炭素は、前記電解質層に含まれる電解液に溶解される。
前記二酸化炭素吸着電池は、充電時には、前記負極の電位が前記正極の電位より低くなるように、すなわち、前記正極の電位が前記負極の電位より高くなるように、前記負極と前記正極との間に電圧を印加する。
前記電解質層に含まれる前記レドックス化合物は、前記負極に近い側では、前記負極の電位が前記正極の電位より高いことから、N-オキシラジカル基が還元され、N-オキシアニオン基になる。そして、前記電解液に溶解された二酸化炭素が、このN-オキシアニオン基に結合されるため、前記電解液への二酸化炭素の溶解が促進される。このため、前記二酸化炭素吸着電池は、充電時には、前記負極側から二酸化炭素が取り込まれ、前記電解質層に二酸化炭素が吸着されることになる。
一方で、前記電解質層に含まれる前記レドックス化合物は、前記正極に近い側では、前記正極の電位が前記負極の電位より低いことから、N-オキシラジカル基が酸化され、N-オキシカチオン基になる。
前記セパレータは、前記電解液を透過可能であるものの、前記レドックス化合物の透過を抑制する。すなわち、前記レドックス化合物は前記電解液より前記セパレータを透過しにくい。このため、N-オキシラジカル基が還元され、N-オキシアニオン基になったレドックス化合物も、二酸化炭素が結合されたレドックス化合物も、前記セパレータを透過して、前記正極側に移行しにくい。よって、充電を停止させた後も、放電させなければ、これらのレドックス化合物は、前記電解質層の前記セパレータより前記負極側に保持される。N-オキシラジカル基が酸化され、N-オキシカチオン基になったレドックス化合物も、前記セパレータを透過して、前記負極側に移行しにくい。よって、充電を停止させた後も、放電させなければ、このN-オキシカチオン基を分子内に有するレドックス化合物は、前記電解質層の前記セパレータより前記正極側に保持される。これらのことから、前記二酸化炭素吸着電池は、充電状態を維持することができる。
以上のように、前記二酸化炭素吸着電池は、二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素を簡易に吸着しつつ、充電をすることができると考えられる。また、前記二酸化炭素吸着電池は、前記キノン化合物ではなく、前記キノン化合物より耐久性の高いN-オキシラジカル基を分子内に有するレドックス化合物を用いることから、耐久性にも優れている。
前記のように、充電された前記二酸化炭素吸着電池を放電すると、前記電解質層の前記セパレータより前記正極側では、N-オキシカチオン基がN-オキシラジカル基に戻る。前記電解質層の前記セパレータより前記負極側では、前記レドックス化合物から、二酸化炭素が脱離し、N-オキシアニオン基がN-オキシラジカル基に戻る。よって、前記二酸化炭素吸着電池は、放電時には、前記負極側から二酸化炭素を放出することができる。放電時に前記二酸化炭素吸着電池から放出される気体は、充電時に前記二酸化炭素吸着電池に吸着されていた気体が主となるため、二酸化炭素濃度の非常に高い気体である。このことから、前記二酸化炭素吸着電池は、二酸化炭素を濃縮できることになる。
よって、前記二酸化炭素吸着電池は、充電時に二酸化炭素を吸着し、放電時に二酸化炭素を放出することができ、この吸着及び放出によって、二酸化炭素を濃縮することができる。また、この吸着及び放出は、前記負極と前記正極との間への電圧の印加によって行われるので、高温にする必要や高圧にする必要がなく、常温及び大気圧で行うことができる。
また、前記二酸化炭素吸着電池において、前記正極が、気体の透過を遮断する気体透過遮断部を備えることが好ましい。
このような構成によれば、二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素を簡易に吸着しつつ、充電可能であり、その充電状態をより維持することができる。
また、前記二酸化炭素吸着電池において、前記正極が、外気と接触しないように構成されていることが好ましい。
このような構成によれば、二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素を簡易に吸着しつつ、充電可能であり、その充電状態をより維持することができる。
前記正極が、気体の透過を遮断する気体透過遮断部を備える場合、及び外気と接触しないように構成されている場合において、上記のように、二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素を簡易に吸着しつつ、充電可能であり、その充電状態をより維持することができることは、以下のことによると考えられる。
前記二酸化炭素吸着電池では、上述したように、前記セパレータによって、前記レドックス化合物の移動が抑制されるが、前記レドックス化合物が前記セパレータを透過することもありえる。例えば、前記二酸化炭素吸着電池において、前記電解質層の前記セパレータより前記負極側から前記正極側に、上述したような二酸化炭素が結合されたレドックス化合物が移動することもありえる。充電時又は充電状態を保持している状態のときに、このように、二酸化炭素が結合されたレドックス化合物が移動すると、前記正極の近くで、前記レドックス化合物が酸化され、前記レドックス化合物から、二酸化炭素が脱離し、N-オキシアニオン基がN-オキシラジカル基に戻る。その際、二酸化炭素が正極側から放出されると、このような二酸化炭素が結合されたレドックス化合物の移動が促進されうる。よって、前記正極が、気体の透過を遮断する気体透過遮断部を備える場合、及び外気と接触しないように構成されている場合、このような移動の促進が起こることを防止でき、充電状態をより維持できると考えられる。
また、前記二酸化炭素吸着電池は、上述したように、充電時に二酸化炭素を吸着し、放電時に二酸化炭素を放出する。このことから、前記二酸化炭素吸着電池は、充電時に二酸化炭素を吸着し、放電時に二酸化炭素を放出するように用いることが好ましい。
また、前記二酸化炭素吸着電池において、前記レドックス化合物は、前記N-オキシラジカル基に4級炭素が2つ結合された化合物であることが好ましい。
このような構成によれば、二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素をより吸着することができ、充電状態をより維持することができる。このことは、前記レドックス化合物への二酸化炭素の結合及び脱離をより好適に行うことができることによると考えられる。
また、前記二酸化炭素吸着電池において、前記レドックス化合物は、下記式(1)で表される化合物、又は、下記式(1)で表される化合物から水素原子が1つ脱離された基を有する化合物であることが好ましい。
式(1)中、Zは、-CRCR-、-CR10CR1112CR1314-、-(CR1516)O-、-(CR1718)NR27-、-(CR1920)O(CR2122)-、又は、-(CR2324)NR28(CR2526)-を示し、R~R28は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を示す。
このような構成によれば、二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素をより吸着することができ、充電状態をより維持することができる。このことは、前記レドックス化合物への二酸化炭素の結合及び脱離をより好適に行うことができることによると考えられる。
また、前記二酸化炭素吸着電池において、前記負極が、グラファイト、カーボンナノチューブ、活性炭、及び炭素繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む導電材料からなることが好ましい。
このような構成によれば、二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素をより吸着することができ、充電状態をより維持することができる。このことは、前記負極を二酸化炭素がより好適に透過でき、また、充電時には、前記負極と前記正極との間に電圧をより好適に印加することができることによると考えられる。
また、本発明の他の一局面は、前記二酸化炭素吸着電池を2つ以上備える充放電装置である。
このような構成によれば、上述したように、前記二酸化炭素吸着電池を備える充放電装置を提供することができる。また、前記充放電装置は、2つ以上の前記二酸化炭素吸着電池を備えることによって、それぞれの前記二酸化炭素吸着電池に対して、交互に充電及び放電を繰り返すことができる。具体的には、まず、一方の前記二酸化炭素吸着電池(第1電池)を充電する。その後、前記第1電池に接続された、他方の前記二酸化炭素吸着電池(第2電池)を、前記第1電池を放電することにより、充電させることができる。その後、前記第2電池を放電することにより、前記第1電池を充電させることができる。このように、前記第1電池を一旦充電することによって、前記第2電池及び前記第1電池に対して、交互に充電及び放電を繰り返すことができる充放電装置として作用させることができる。このことから、この充放電装置は、エネルギー効率の高い充放電装置となる。また、前記充放電装置は、二酸化炭素を分離することができる。
本発明によれば、二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素を簡易に吸着しつつ、充電可能な二酸化炭素吸着電池を提供することができる。また、本発明によれば、前記二酸化炭素吸着電池を備える充放電装置を提供することができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
<二酸化炭素吸着電池の作製>
以下の手順で、図1及び図2に示す構造を有する二酸化炭素吸着電池を作製した。
(電解質層)
ジメチルホルムアミド(富士フイルム和光純薬株式会社製)100.0gに、Poly(vinylidenefluoride-co-hexafluoropropylene)(シグマアルドリッチ社製)を6.5g添加して、80℃で3時間撹拌して溶解させた。次に、得られた溶液に、前記レドックス化合物である、4-メタクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルオキシラジカル(東京化成工業株式会社製)をモノマーとして、常法のアニオン重合法によって重合して得られた化合物[ポリ(4-メタクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルオキシラジカル)](不揮発性)24.0g添加し、80℃で3時間撹拌して溶解させた。次に、得られた溶液に、二酸化炭素を溶解可能な電解液である、イオン液体[1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(不揮発性)(シグマアルドリッチ社製のemimFSI)]12.9gを添加し、40℃に加熱し、3時間攪拌混合した。このようにして得られた液体を用いてアプリケーターにて厚み500μmの液膜をガラス板上に作製して、60℃で8時間減圧乾燥した。前記乾燥により得られた乾燥膜をガラス板から剥がした。そうすることによって、厚み100μmの乾燥膜を得た。この得られた乾燥膜を、縦20mm×横24mmのサイズに切り出したものを、電解質層として使用した。得られた電解質層を目視で確認したところ、微小な穴(ピンホール)が確認できなかった。
(電極:負極及び正極
カーボンペーパー(SGLカーボンジャパン株式会社製のGDL35BC)を、縦30mm×横30mm×厚み1mmのサイズに複数枚切り出した。
負極としては、この切り出したカーボンペーパーの一方の面に、導電性銅箔テープ(タブとして使用)を貼り付けたものを使用した。
正極としては、この切り出したカーボンペーパー(正極本体)の一方の面に、縦30mm×横30mm×厚み8mmの銅箔(気体透過遮蔽部)を導電性接着剤(藤倉化成株式会社製のドータイトD-550)で接着させたもの(正極本体と気体透過遮蔽部とを備えた正極)を用いた。
(セパレータ)
セパレータとしては、ポリプロピレン系セパレータ(ポリポア株式会社製のセルガード#2400)を縦30mm×横30mmのサイズに切り出したものを使用した。
(流路)
ポリテトラフルオロエチレン製の樹脂板を、縦50mm×横50mm×厚み5mmのサイズに切り出し、適所に穴を2箇所あけた。この切り出した樹脂板に、前記穴と連結する、深さ1mm×縦20mm×横20mmの溝を掘った。これを流路として用いた。
(二酸化炭素吸着電池)
前記セパレータに対して、その両面に前記電解質層を積層し、さらに、その積層したものに対して、一方に前記負極を、他方に前記正極を積層し、さらに、その積層したものの両面に、前記流路を組み立てることによって、正極側にも流路が形成されたこと以外は、図1及び図2に示すような構造となるように、二酸化炭素吸着電池を製造した。なお、ここで製造した二酸化炭素吸着電池では、正極側からの気体の漏れがないことを確認するために、正極側にも流路を形成した。そして、前記二酸化炭素吸着電池は、充電時には、図1に示すように、前記負極の導電性銅箔テープと前記正極の銅箔とに、電圧印加部としての電源を接続した。また、前記二酸化炭素吸着電池は、放電時には、図2に示すように、前記負極の導電性銅箔テープと前記正極の銅箔とに抵抗を接続した。
[評価]
前記二酸化炭素吸着電池を、以下の評価方法で評価した。
まず、前記二酸化炭素吸着電池を、室温(28℃)の環境下に設置し、前記負極放電時におけるアノード側電極)側の流路の穴に、二酸化炭素が充填したガスバックを装着した。前記正極放電時におけるカソード側電極)側の流路の穴に、窒素を充填したガスバックを装着した。前記負極放電時におけるアノード側電極)側の流路の穴及び前記正極放電時におけるカソード側電極)側の流路の穴のそれぞれに、ポータブル炭酸ガス濃度計(東亜ディーケーケー株式会社製のCGP-31)を装着した。この装着時に測定された二酸化濃度は、0.4%(4000ppm)であった。そして、前記電源を調整することにより、前記電極間(前記負極と前記正極との間)に、0.25mAの定電流で電圧が4Vになるまで充電した後、3Vまで放電することにより、前記二酸化炭素吸着電池の放電特性を測定した。具体的には、以下のようにして、前記二酸化炭素吸着電池の放電特性の測定(放電レート特性評価)を行った。
放電レート特性評価
充放電試験装置(東洋システム株式会社製のTOSCAT)を用いて、前記二酸化炭素吸着電池に対して、2.5mAの定電流充電を電圧が4Vになるまで行った後、つづけて0.25mAとなるまで4Vで定電圧充電を行った。その後、放電電流1C(2.5mA)で定電流放電を行い、そのときの放電容量(mAh/g)を測定した。なお、放電容量は、ラジカル材料の効率を比較しやすくするためラジカル材料の重量当たりの容量として求めた。
この放電レート特性評価を測定した時、前記充電終了後に、前記負極放電時におけるアノード側電極)側の流路の穴に装着したポータブル炭酸ガス濃度計(東亜ディーケーケー株式会社製のCGP-31)で残留二酸化炭素濃度(充電後のCO濃度)を計測した。また、前記放電の後に、前記負極放電時におけるアノード側電極)側の流路の穴に装着したポータブル炭酸ガス濃度計で二酸化炭素濃度(放電後のCO濃度)を計測した。なお、正極側に形成された流路から気体が漏れていないことを確認した。
これらの結果を表1に示す。
[実施例2]
二酸化炭素を溶解可能な電解液(イオン液体)として、ポリ(4-メタクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルオキシラジカル)の代わりに、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム ビス(トリフロロメチルスルホニルイミド)42.9gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、二酸化炭素吸着電池を製造した。そして、得られた二酸化炭素吸着電池を用いて、実施例1と同様の評価を行った。なお、正極側に形成された流路から気体が漏れていないことを確認した。
これらの結果は、表1に示す。
[実施例3]
前記正極として、正極本体と気体透過遮蔽部とを備えた正極の代わりに、負極と同じ電極(前記切り出したカーボンペーパーの一方の面に、導電性銅箔テープ(タブとして使用)を貼り付けたもの)を用いたこと以外、すなわち、正極が気体透過遮蔽部を備えないこと以外は、実施例1と同様にして、二酸化炭素吸着電池を製造した。そして、得られた二酸化炭素吸着電池を用いて、実施例1と同様の評価を行った。なお、正極側に形成された流路から気体が漏れていないことを確認した。
これらの結果は、表1に示す。
[実施例4]
前記負極として、前記切り出したカーボンペーパーの一方の面に、導電性銅箔テープ(タブとして使用)を貼り付けたものの代わりに、以下の負極を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、二酸化炭素吸着電池を製造した。そして、得られた二酸化炭素吸着電池を用いて、実施例1と同様の評価を行った。なお、正極側に形成された流路から気体が漏れていないことを確認した。
これらの結果は、表1に示す。
活性炭(株式会社クラレ製のYP-50)と、スチレン-ブタジエンラバー(SBR)(JSR株式会社製のTRD2001)と、カルボキシメチルセルロース(CMC)(第一工業製薬株式会社製のセロゲンBSH)と、カーボンブラック(TIMCAL Graphite&Carbon社製のSuper-P)とを、活性炭:SBR:CMC:カーボンブラック=90:3:2:5(質量比)になるように水と混合し、スラリーを得た。カーボンペーパーの代わりに、ステンレス鋼製のメッシュ(株式会社くればぁ製のステンレスメッシュ、ステンレス304、メッシュ数635)を用い、得られたスラリーを、このステンレス鋼製のメッシュに、バーコーターで塗工後、ガラスチューブオーブンを用いて、減圧雰囲気下150℃で7時間乾燥して、活性炭塗工電極(活性炭部厚み150μm)を得た。この電極を負極として使用した。
[比較例1]
レドックス化合物である、4-メタクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルオキシラジカル(東京化成工業株式会社製)をモノマーとして、常法のアニオン重合法によって重合して得られた化合物[ポリ(4-メタクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルオキシラジカル)](不揮発性)28.4gを、トルエン30.0gに溶解させた。このようにして得られた溶液を、ガラス繊維ろ紙(ADVANTEC社製のGC50)の全面に滴下した。その後、前記溶液が滴下されたガラス繊維ろ紙を、窒素雰囲気下で乾燥した。そうすることで、トルエンが除去され、固体状の電解質層が得られた。この固体状の電解質層を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、デバイスを製造した。そして、得られたデバイスを用いて、実施例1と同様の評価を行った。なお、正極側に形成された流路から気体が漏れていないことを確認した。また、このデバイスは、二酸化炭素を吸着せず、蓄電もしないので、単にデバイスと称する。
これらの結果は、表1に示す。
[比較例2]
レドックス化合物を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、二酸化炭素吸着電池を製造した。そして、得られた二酸化炭素吸着電池を用いて、実施例1と同様の評価を行った。なお、正極側に形成された流路から気体が漏れていないことを確認した。また、このデバイスは、二酸化炭素を吸着せず、蓄電もしないので、単にデバイスと称する。
これらの結果は、表1に示す。
なお、表1において、放電容量の欄における「-」は、蓄電できなかった(充電状態が維持できなかった)ことを示す。
[比較例3]
前記正極として、正極本体と気体透過遮蔽部とを備えた正極の代わりに、負極と同じ電極(前記切り出したカーボンペーパーの一方の面に、導電性銅箔テープ(タブとして使用)を貼り付けたもの)を用い、セパレータを備えないこと以外は、実施例1と同様にして、デバイスを製造した。なお、このデバイスは、二酸化炭素を吸着せず、蓄電もしないので、二酸化炭素分離装置と称する。
まず、前記二酸化炭素分離装置を、室温(28℃)の環境下に設置し、放電時におけるアノード側電極側の流路の穴に、二酸化炭素が充填したガスバックを、放電時におけるカソード側流路の穴に、窒素を充填したガスパックを装着した。続いて、放電時におけるアノード側電極側の流路の穴及び放電時におけるカソード側電極側の流路の穴のそれぞれに、前記ポータブル炭酸ガス濃度計を装着した。この装着時に測定された二酸化濃度は、0.4%(4000ppm)であった。そして、前記電源を調整することにより、前記電極間に、0.25mAの定電流で電圧が4Vになるまで印加した。
前記二酸化炭素分離装置は、電圧を印加することにより、放電時におけるアノード側の炭酸ガス濃度計で計測する二酸化炭素濃度は低下し、放電時におけるカソード側の炭酸ガス濃度計で計測する濃度は上昇をはじめた。その後、2時間、電圧を印加した後、電圧の印加を停止させ、電流を停止させると、速やかに、両極間の電圧は下がり、前記デバイスに充電されていないことが確認された。また、放電時におけるアノード側の炭酸ガス濃度計で計測した二酸化炭素濃度は270ppmであり、放電時におけるカソード側の炭酸ガス濃度計で計測した濃度は3520ppmであった。このデバイスでは、電圧を印加することにより、充電時におけるカソード側から充電時におけるアノード側に二酸化炭素を透過させることができるが、充電することができなかった。
表1からわかるように、前記負極、前記正極、前記セパレータ、及び前記電解質層を備える電池において、前記電解質層が、二酸化炭素を溶解可能な電解液と、N-オキシラジカル基を分子内に有するレドックス化合物とを含む二酸化炭素吸着電池(実施例1~4)は、充電可能であった。また、実施例1~4に係る二酸化炭素吸着電池は、充電時には、負極側の二酸化炭素濃度が低下することから、二酸化炭素が吸着されることが確認できた。また、実施例1~4に係る二酸化炭素吸着電池は、充電した後、放電すると、負極側の二酸化炭素濃度が充電前の濃度にほぼ戻ることから、吸着された二酸化炭素が放出されることが確認できた。
これに対して、二酸化炭素を溶解可能な電解液を含まず、N-オキシラジカル基を分子内に有するレドックス化合物からなる固体状の電解質層を用いた場合(比較例1)は、充電できず、蓄電できなかった。また、比較例1に係るデバイスは、充電させようと電極間に電圧を印加しても、負極側の二酸化炭素濃度が低下せず、二酸化炭素が吸着されていないことが確認できた。また、二酸化炭素を溶解可能な電解液を含むが、N-オキシラジカル基を分子内に有するレドックス化合物を含まない電解質層を用いた場合(比較例2)は、比較例1に係るデバイスと同様、充電できず、蓄電できなかった。また、比較例2に係るデバイスは、充電させようと電極間に電圧を印加しても、負極側の二酸化炭素濃度が低下せず、二酸化炭素が吸着されていないことが確認できた。これらのデバイスが、充電できず、充電させようと電極間に電圧を印加したときでも二酸化炭素が吸着されなかったのは、充電させようと電極間に電圧を印加しても、前記レドックス化合物への二酸化炭素の結合ができないことによると考えられる。
また、セパレータを備えていない場合(比較例3)も、充電できず、蓄電できなかった。比較例3に係るデバイスは、充電させようと電極間に電圧を印加すると、負極側の二酸化炭素濃度が低下し、二酸化炭素が吸着されていることが確認できた。このことは、前記レドックス化合物に二酸化炭素が結合されることによると考えられる。その一方で、充電させようと電極間に電圧を印加している間に、充電時におけるアノード側の二酸化炭素濃度が上昇し、このことから、電極から二酸化炭素が放出されていることが確認できた。このことは、二酸化炭素が結合されたレドックス化合物が、セパレータがないことで、充電時におけるアノード側の電極まで到達し、そこで、前記レドックス化合物から二酸化炭素が脱離することによると考えられる。このことから、比較例3に係るデバイスは、充電できず、蓄電できないと考えられる。
この出願は、2021年3月4日に出願された日本国特許出願特願2021-034204を基礎とするものであり、その内容は、本願に含まれるものである。
本発明を表現するために、上述において実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
本発明によれば、二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素を簡易に吸着しつつ、充電可能な二酸化炭素吸着電池が提供される。また、本発明によれば、前記二酸化炭素吸着電池を備える充放電装置が提供される。

Claims (8)

  1. 負極と、
    正極と、
    前記負極と前記正極との間に配置されたセパレータと、
    前記負極と前記セパレータとの間及び前記正極と前記セパレータとの間のそれぞれに配置された電解質層とを備え、
    前記負極が、気体を透過可能な電極であり、
    前記電解質層が、二酸化炭素を溶解可能な電解液と、N-オキシラジカル基を分子内に有するレドックス化合物とを含み、
    前記セパレータが、前記レドックス化合物の透過を抑制し、前記電解液を透過可能であることを特徴とする二酸化炭素吸着電池。
  2. 前記正極が、気体の透過を遮断する気体透過遮断部を備える請求項1に記載の二酸化炭素吸着電池。
  3. 前記正極が、外気と接触しないように構成されている請求項1に記載の二酸化炭素吸着電池。
  4. 充電時に二酸化炭素を吸着し、放電時に二酸化炭素を放出する請求項1~3のいずれか1項に記載の二酸化炭素吸着電池。
  5. 前記レドックス化合物は、前記N-オキシラジカル基に4級炭素が2つ結合された化合物である請求項1~4のいずれか1項に記載の二酸化炭素吸着電池。
  6. 前記レドックス化合物は、下記式(1)で表される化合物、又は、下記式(1)で表される化合物から水素原子が1つ脱離された基を有する化合物である請求項1~5のいずれか1項に記載の二酸化炭素吸着電池。

    [式(1)中、Zは、-CRCR-、-CR10CR1112CR1314-、-(CR1516)O-、-(CR1718)NR27-、-(CR1920)O(CR2122)-、又は、-(CR2324)NR28(CR2526)-を示し、R~R28は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を示す。]
  7. 前記負極が、グラファイト、カーボンナノチューブ、活性炭、及び炭素繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む導電材料からなる請求項1~6のいずれか1項に記載の二酸化炭素吸着電池。
  8. 請求項1~7のいずれか1項に記載の二酸化炭素吸着電池を2つ以上備える充放電装置。
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