以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
本発明の実施形態に係る二酸化炭素分離装置10は、図1に示すように、電解質層13と、前記電解質層13を挟んで、前記電解質層13上に設けられた、一対の電極11,12と、前記一対の電極11,12間に電圧を印加する電圧印加部14とを備える。前記一対の電極11,12は、それぞれ、気体を透過可能な電極である。また、前記電解質層13は、二酸化炭素を溶解可能な電解液と、N−オキシラジカル基を分子内に有するレドックス化合物とを含む。なお、図1は、本発明の実施形態に係る二酸化炭素分離装置10の構成を示す概略断面図である。
本実施形態に係る二酸化炭素分離装置10は、前記電圧印加部14によって、前記一対の電極11,12間のどちらの電極の電位を高くするように印加してもよく、どちらの場合であっても、二酸化炭素を分離することができる。ここでは、前記電圧印加部14によって、前記一対の電極の一方の電極11の電位が、他方の電極12の電位より低くなるように、一対の電極11,12間に印加する場合について説明する。この場合、前記一方の電極11は、二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素(CO2)を取り込む側の電極(第1電極:カソード電極)11となり、前記他方の電極12は、前記電解質層13から二酸化炭素を放出する側の電極(第2電極:アノード電極)12となる。
また、前記二酸化炭素分離装置10には、気体が前記第1電極11に接触しながら流通する第1流路15と、気体が前記第2電極12に接触しながら流通する第2流路16とを備えていてもよい。
本実施形態に係る二酸化炭素分離装置10は、二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素を簡易に分離することができる。具体的には、前記二酸化炭素分離装置10は、前記電圧印加部14によって、前記第1電極11の電位が、前記第2電極12の電位より低くなるように、これらの電極11,12間に印加すると、以下のように、二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素が分離される。前記二酸化炭素分離装置10は、前記第1流路15に、二酸化炭素を含む気体、例えば、空気等を流通させて、二酸化炭素を前記第1電極11に接触させると、二酸化炭素が前記電解質層13を優先的に透過され、前記第2電極12側から放出される。このように二酸化炭素が前記電解質層13を優先的に透過されるので、前記第2流路16では、二酸化炭素濃度が高い気体が流通される。このように、前記二酸化炭素分離装置10は、前記第1電極11と前記第2電極12との間に電圧を印加するだけで、二酸化炭素を優先的に透過させることができる。よって、前記二酸化炭素分離装置10を用いると、二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素が分離される。なお、前記第1流路15からは、供給された気体より二酸化炭素濃度が低下した気体が排出される。前記第1流路15に空気を供給した場合、窒素濃度が高まった気体が排出される。
上記のことは、以下のことによると考えられる。
前記第1電極11に接触し、透過された二酸化炭素は、前記電解質層13に接触して、前記電解質層13に含まれる電解液に溶解される。このとき、前記電圧印加部14で印加された電圧によって、前記電解質層13に含まれるレドックス化合物は、前記第1電極11に近い側では、N−オキシラジカル基が還元され、N−オキシアニオン基になっている。このN−オキシアニオン基は、電解液に溶解された二酸化炭素と結合されやすいため、電解液への二酸化炭素の溶解が促進される。よって、前記第1電極11側への二酸化炭素の取り込みが促進される。一方、前記電圧印加部14で印加された電圧によって、前記電解質層13に含まれるレドックス化合物は、前記第2電極12に近い側では、N−オキシラジカル基がN−オキシアニオン基になっていたとしても、N−オキシアニオン基が酸化され、N−オキシラジカル基になる。N−オキシアニオン基に二酸化炭素が結合されていても、N−オキシアニオン基がN−オキシラジカル基になる際、前記レドックス化合物から二酸化炭素が脱離される。よって、前記第1電極11に近い側で、前記レドックス化合物に二酸化炭素が結合され、その後、前記第2電極12に近い側まで、二酸化炭素が結合されたレドックス化合物が前記電解質層13内を流動されると、前記第2電極12に近い側で、前記レドックス化合物から二酸化炭素が脱離される。このような、前記レドックス化合物への二酸化炭素の結合及び脱離によって、前記二酸化炭素分離装置10は、前記第1電極11側で、二酸化炭素を取り込み、前記第2電極側で、二酸化炭素を放出することができると考えられる。
なお、前記一方の電極11の電位が、前記他方の電極12の電位より高くなるように、電圧を印加すると、前記一方の電極11が、前記電解質層13から二酸化炭素を放出する側の電極(第2電極)となり、前記他方の電極12は、二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素(CO2)を取り込む側の電極(第1電極)11となる。よって、前記他方の電極12側で、二酸化炭素を取り込み、前記一方の電極11側で、二酸化炭素を放出することができる。
以上のことから、前記二酸化炭素分離装置10は、一対の電極11,12間に電圧を印加するだけで、電極間に印加する電圧を反転させることなく(各電極の電位の高低を切り替えることなく)、二酸化炭素を分離することができる。よって、前記二酸化炭素分離装置10は、二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素を簡易に分離することができる。
前記各電極11,12は、気体を透過可能な電極であれば、特に限定されない。すなわち、前記各電極11,12は、二酸化炭素等の気体を透過することができ、前記一対の電極11,12で挟みこまれた前記電解質層13に電流を流すことができる導電部材であればよい。また、前記各電極11,12としては、電子の移動を阻害しない程度の導電性を有し、通気性に優れる多孔質体であることが好ましく、具体的には、多孔性の導電材で構成される電極等が挙げられる。より具体的には、前記各電極11,12としては、炭素を主成分として含む多孔質体、炭素からなる多孔質体、及び多孔性金属層等が挙げられる。
また、前記多孔質体に含まれる炭素としては、具体的には、グラファイト、カーボンナノチューブ、活性炭、活性炭繊維、及び炭素繊維等の炭素質材料が挙げられる。また、この炭素しては、耐腐食性及び比表面積の点から、活性炭や活性炭繊維であることが好ましい。また、この炭素としては、各種炭素質材料を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。この炭素が含まれる多孔質体としては、前記炭素質材料を、布状やフェルト状にしたものが好ましい。よって、前記多孔質体である電極としては、具体的には、カーボンシート、カーボンクロス、及びカーボンペーパ等が挙げられる。また、前記多孔質体である電極としては、活性炭や炭素繊維を用いたカーボン系電極、及び針状の導電材料を用いた空隙率の高い電極等も挙げられる。また、前記電極としては、上記各電極の中でも、グラファイト、カーボンナノチューブ、及び炭素繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む電極であることが好ましい。このような電極であれば、気体を好適に透過でき、前記電圧印加部による、前記電極間に電圧を好適に印加できると考えられる。このため、この電極を用いることによって、二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素をより好適に分離することができる二酸化炭素分離装置が得られる。
前記多孔性金属層は、多数の孔が形成されている金属層である。また、前記金属層は、前記孔が、通気性に優れる点で、金属層全体にわたって形成されていることが好ましい。また、前記多孔性金属層を得る方法としては、多数の孔が形成されていない金属層に、多数の孔が形成される処理を施す方法(多孔化する方法)であれば、特に限定されない。この方法としては、例えば、切削、研磨及びサンドブラスト等の物理的な方法、及び、酸や塩基等のエッチング液を用いた、電解エッチングや無電解エッチング等の化学的な方法等が挙げられる。また、多孔化する方法としては、前記各方法を単独で行ってもよいし、2種以上を組み合わせて行ってもよい。また、多孔化する方法としては、表面積を大きくするという観点から、形成する孔(細孔)をより緻密に形成させるため、化学的な方法であることが好ましい。また、前記金属層の材質としては、特に限定されず、例えば、アルミニウム、銅、鉄、チタン、タングステン、ニッケル、及びこれらの合金等が挙げられる。前記金属層の材質としては、この中でも、価格及び加工性の観点から、アルミニウムであることが好ましい。また、金属層としては、いわゆるアルミニウム箔であることが好ましい。
また、前記各電極11,12のBET比表面積は、特には限定されないが、例えば、1m2/g以上であることが好ましく、100m2/g以上であることがより好ましく、500m2/g以上であることがより好ましい。前記各電極11,12のBET比表面積は、気体の透過性(通気性)の観点から大きいほうが好ましいが、各電極11,12の強度等の関係から、3000m2/g以下であることが好ましい。よって、前記各電極11,12のBET比表面積は、1〜3000m2/gであることが好ましく、100〜2500m2/gであることがより好ましく、500〜2000m2/gであることがより好ましい。前記各電極のBET比表面積が小さすぎると、気体の透過性(通気性)が低下し、二酸化炭素の透過が阻害される傾向がある。また、前記各電極のBET比表面積が大きすぎると、電極の強度等が不充分になる傾向がある。これらのことから、前記各電極のBET比表面積が、上記範囲内であれば、長期間にわたって、二酸化炭素の分離を実現することができる。なお、BET比表面積は、BET法によって測定される比表面積であり、公知の方法で測定可能である。BET比表面積の測定方法としては、例えば、窒素吸着等温線測定を行い、得られた吸着等温線から算出する方法等が挙げられる。
また、前記各電極11,12は、上述したように、前記一対の電極11,12で挟みこまれた前記電解質層13に電流を流すことができる導電部材であり、その表面抵抗値は、小さいほど好ましく、例えば、1kΩ/sq以下であることが好ましく、200Ω/sq以下であることがより好ましい。また、前記各電極の表面抵抗値は、小さいほど好ましいが、実際には、1Ω/sqであることが限界である。よって、前記各電極の表面抵抗値は、1Ω/sq〜1kΩ/sqであることが好ましく、10〜200Ω/sqであることがより好ましい。このような表面抵抗値の電極であれば、前記電解質層13に電流を好適に流すことができ、二酸化炭素を好適に分離することができる。
また、前記各電極11,12の厚みは、特には限定されないが、二酸化炭素を吸着でき、電解液の漏液を好適に防ぐことができる厚みであることが好ましい。前記各電極11,12の厚みは、例えば、20μm以上10mm以下であることが好ましく、50μm以上5mmであることがより好ましい。前記各電極が薄すぎると、電極の強度等が不充分になる傾向がある。また、前記各電極が厚すぎると、気体の透過性(通気性)が低下し、二酸化炭素の透過が阻害される傾向がある。これらのことから、前記各電極の厚みが、上記範囲内であれば、長期間にわたって、二酸化炭素の分離を実現することができる。
前記電解質層13は、二酸化炭素を溶解可能な電解液と、N−オキシラジカル基を分子内に有するレドックス化合物とを含んでいれば、特に限定されない。また、前記電解質層13は、上述したように、二酸化炭素の分離に寄与する二酸化炭素分離体である。また、前記電解質層13の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.1μm〜2mmであることが好ましく、1μm〜1mmであることがより好ましい。前記電解質層13が薄すぎると、前記電解質層に微小な穴、すなわち、ピンホールができてしまう傾向がある。ピンホールができてしまうと、二酸化炭素の好適な分離ができなくなる。また、前記電解質層13が厚すぎると、二酸化炭素の透過速度、すなわち、二酸化炭素の吸収速度及び放出速度が遅くなりすぎる傾向がある。
前記電解液は、二酸化炭素を溶解可能な電解液であれば、特に限定されず、電解質と溶媒とを含む電解液であってもよいし、イオン液体を含む電解液であってもよい。なお、二酸化炭素を溶解可能な電解液とは、二酸化炭素が溶解されないもの以外であればよく、すなわち、二酸化炭素がわずかにでも溶解する電解液であればよく、高い溶解度が求められるものではない。このことは、以下のことによると考えられる。本実施形態に係る二酸化炭素分離装置は、上述したように、前記レドックス化合物への二酸化炭素の結合及び脱離によって、一方の電極側の電解質層で、二酸化炭素が取り込まれ、他方の電極側の電解質層で、二酸化炭素が放出されるというメカニズムで、二酸化炭素の分離が進行すると考えられる。このため、電解質層に含まれる電解液にわずかにでも二酸化炭素が溶解すれば、二酸化炭素の分離が進行すると考えられる。
前記溶媒は、電気化学的に安定な、電位窓の広い化合物であることが好ましく、水性溶媒であっても、有機溶媒であってもよい。前記溶媒としては、例えば、水、カーボネート化合物、エステル化合物、エーテル化合物、複素環化合物、ニトリル化合物、及び非プロトン性極性化合物等が挙げられる。前記カーボネート化合物としては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレンカーボネート、及びプロピレンカーボネート等が挙げられる。前記エステル化合物としては、例えば、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。前記エーテル化合物としては、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジオキソシラン、テトラヒドロフラン、及び2−メチル−テトラヒドロフラン等が挙げられる。前記複素環化合物としては、例えば、3−メチル−2−オキサゾジリノン、及び2−メチルピロリドン等が挙げられる。前記ニトリル化合物としては、例えば、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、3−メトキシプロピオニトリル及び吉草酸ニトリル等が挙げられる。前記非プロトン性極性化合物としては、例えば、スルフォラン、ジメチルスルフォキシド、及びジメチルホルムアミド等が挙げられる。前記溶媒としては、前記例示した各溶媒を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記溶媒としては、上記例示した各溶媒の中でも、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネート等のカーボネ−ト化合物、γ−ブチロラクトン等のエステル化合物、3−メチル−2−オキサゾジリノン及び2−メチルピロリドン等の複素環化合物、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、3−メトキシプロピオニトリル及び吉草酸ニトリル等のニトリル化合物が好ましい。また、前記溶媒として、2種以上を組み合わせて用いる場合、二酸化炭素の溶解の観点から、水を用いることが好ましい。
前記電解質としては、特に限定されず、例えば、四級アンモニウム塩、無機塩、及び水酸化物等が挙げられる。前記四級アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラ−n−エチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラ−n−プロピルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラ−n−ブチルアンモニウムテトラフルオロボレート、n−ヘキサデシルトリメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラ−n−ヘキサデシルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラ−n−オクチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラ−n−エチルアンモニウムパークロレート、テトラ−n−ブチルアンモニウムパークロレート、及びテトラオクタデシルアンモニウムパークロレート等が挙げられる。前記無機塩としては、リチウムパークロレート、ナトリウムパークロレート、カリウムパークロレート、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、硝酸ナトリウム、及び硝酸カリウム等が挙げられる。前記水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウム等が挙げられる。前記電解質としては、上記例示した電解質の中でも、テトラメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラ−n−エチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラ−n−プロピルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラ−n−ブチルアンモニウムテトラフルオロボレート、n−ヘキサデシルトリメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラ−n−ヘキサデシルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラ−n−オクチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラ−n−エチルアンモニウムパークロレート、テトラ−n−ブチルアンモニウムパークロレート、テトラオクタデシルアンモニウムパークロレート、リチウムパークロレート、ナトリウムパークロレート、酢酸ナトリウム、及び酢酸カリウムが好ましい。また、前記電解質としては、この中でも、テトラ−n−エチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラ−n−プロピルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラ−n−ブチルアンモニウムテトラフルオロボレート、リチウムパークロレート、及びナトリウムパークロレートがより好ましく、テトラ−n−ブチルアンモニウムテトラフルオロボレート、及びリチウムパークロレートがさらに好ましい。また、前記電解質は、その支持塩として、炭酸イオンや炭酸水素イオンを安定化させ、pH緩衝能を有していてもよい。この場合の電解質としては、具体的には、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸、及び酢酸ナトリウム等が挙げられる。前記電解質は、上記例示した電解質を単独で用いてもよい、2種以上を組合せてもちいてもよい。
前記電解液は、上述したように、イオン液体(イオン性液体)を含む電解液であってもよい。前記電解液として、イオン液体を用いると、上記のように電解質と溶媒とを含ませなくても、イオン液体が、この両者の機能を併せ持ちうる。また、前記電解液としては、イオン液体を含んでいればよく、イオン液体に電解質を含む液体であってもよいし、イオン液体に溶媒を含む液体であってもよいし、イオン液体に電解質及び溶媒を含む液体であってもよいし、イオン液体からなるものであってもよい。また、前記電解液として、イオン液体を用いることは、イオン液体が揮発しにくく、難燃性が高い点ことから好ましい。また、前記イオン液体としては、公知のイオン液体であれば特に限定されないが、例えば、イミダゾリウム系イオン液体、ピリジン系イオン液体、脂環式アミン系イオン液体、及びアゾニウムアミン系イオン液体等が挙げられる。前記イオン液体としては、例えば、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム クロライド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1、3−ジメトキシイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1、3−ジエトキシイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1、3−ジメトキシイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、及び1、3−ジエトキシイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。また、前記イオン液体としては、前記例示のイオン液体の中でも、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフロロメチルスルホニルイミド)、1、3−ジメトキシイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、及び1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェートが好ましい。また、前記イオン液体としては、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1、3−ジメトキシイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフロロメチルスルホニルイミド)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、及び1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェートがより好ましく、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフロロメチルスルホニルイミド)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、及び1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートがさらに好ましい。
また、前記電解質層は、前記電解液がゲル化していてもよい。具体的には、前記電解液にゲル化させるためのゲル化剤を添加してもよいし、ゲル化電解質又は高分子電解質を用いてもよい。前記ゲル化剤としては、例えば、ポリマー、ポリマー架橋反応等の手法を利用するゲル化剤、重合性多官能モノマー、及びオイルゲル化剤等が挙げられる。前記ゲル化電解質及び前記高分子電解質としては、ゲル化電解質や高分子電解質として用いることができるものであれば特に限定されず、例えば、ポリフッ化ビニリデン等のフッ化ビニリデン系重合体、ポリアクリル酸等のアクリル酸系重合体、ポリアクリロニトリル等のアクリロニトリル系重合体、ポリエチレンオキシド等のポリエーテル系重合体、及び構造中にアミド構造を有する化合物等が挙げられる。
前記レドックス化合物は、N−オキシラジカル基を分子内に有するレドックス化合物であれば、特に限定されない。このレドックス化合物は、前記電圧印加部によって、前記電極間に電圧を印加すること等によって、N−オキシラジカル基が還元される状態にすると、N−オキシラジカル基は、N−オキシアニオン基になる。また、前記電極間に電圧を印加すること等によって、N−オキシアニオン基が酸化される状況にすると、N−オキシアニオン基は、N−オキシラジカルに戻る。前記レドックス化合物は、このように、酸化還元によって、N−オキシラジカル基が変化する化合物である。
また、前記レドックス化合物としては、具体的には、下記式(1)で表される化合物、又は、下記式(1)で表される化合物から水素原子が1つ脱離された基を有する化合物等が挙げられる。下記式(1)で表される化合物から水素原子が1つ脱離された基を有する化合物とは、このような基を有する化合物であればよく、他の低分子化合物と結合された化合物であってもよいし、高分子化合物であってもよい。
式(1)中、Zは、−CR5R6CR7R8−、−CR9R10CR11R12CR13R14−、−(CR15R16)O−、−(CR17R18)NR27−、−(CR19R20)O(CR21R22)−、又は、−(CR23R24)NR28(CR25R26)−を示し、R1〜R28は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を示す。
前記R1〜R4は、少なくとも1つが置換基であることが好ましく、2つ以上が置換基であることがより好ましく、4つ全てが置換基であることがさらに好ましい。すなわち、前記式(1)で表される化合物は、前記N−オキシラジカル基に4級炭素が2つ結合された化合物であることが好ましい。また、前記レドックス化合物は、前記N−オキシラジカル基に4級炭素が2つ結合された化合物、又は、この化合物から水素原子が1つ脱離された基を有する化合物であることが好ましい。このような化合物は、前記N−オキシラジカル基による酸化還元が起こりやすく、前記レドックス化合物による二酸化炭素の取り込み及び放出をより好適に行うことができると考えられる。このため、このような化合物を電解質層に含ませることによって、二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素をより好適に分離することができる二酸化炭素分離装置が得られる。
また、前記式(1)で表される化合物におけるZとしては、−CR5R6CR7R8−、−CR9R10CR11R12CR13R14−、−(CR19R20)O(CR21R22)−、及び−(CR23R24)NR28(CR25R26)−であることが好ましい。
また、前記R1〜R28における置換基としては、例えば、炭素数1〜30のヒドロカルビル基、炭素数1〜10のヒドロカルビルオキシ基、ヒドロキシ基(水酸基)、置換されていてもよいアミノ基(未置換若しくは置換のアミノ基)、カルボキシル基、チオール基、置換されていてもよいシリル基(未置換若しくは置換のシリル基)等が挙げられる。また、前記R1〜R26における置換基としては、この中でも、炭素数1〜30のヒドロカルビル基、ヒドロキシ基、及び未置換若しくは置換のアミノ基が好ましい。また、前記R27、R28における置換基としては、炭素数1〜30のヒドロカルビル基が好ましい。
なお、ここで置換されていてもよいとは、その直後に記載された化合物又は基を構成する水素原子が無置換の場合及び水素原子の一部又は全部が置換基によって置換されている場合の双方を含む。
また、前記ヒドロカルビル基としては、特に限定されず、直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、環状であってもよい。前記ヒドロカルビル基としては、例えば、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、ノルボルニル基、アンモニウムエチル基、ベンジル基、α,α―ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、エイコサペンタエニル基、ドコサヘキサエニル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2,2−トリフェニルビニル基、2−フェニル−2−プロペニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−シアノフェニル基、2−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、4−ビフェニリル基、ターフェニリル基、3,5−ジフェニルフェニル基、3,4−ジフェニルフェニル基、ペンタフェニルフェニル基、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、2−アントリル基、9−フェナントリル基、1−ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、及びコロニル基等が挙げられる。この中でも、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ベンジル基、α,α―ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、エイコサペンタエニル基、ドコサヘキサエニル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2,2−トリフェニルビニル基、2−フェニル−2−プロペニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−シアノフェニル基、2−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、4−ビフェニリル基、ターフェニリル基、3,5−ジフェニルフェニル基、3,4−ジフェニルフェニル基、ペンタフェニルフェニル基、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、2−アントリル基、及び9−フェナントリル基が好ましい。さらに、この中でも、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ベンジル基、フェニル基であり、更に好ましくは、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、及びヘキシル基がより好ましい。
また、前記ヒドロカルビルオキシ基としては、特に限定されず、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよいし、環状であってもよい。前記ヒドロカルビルオキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、1−プロピルオキシ基、2−プロピルオキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、シクロプロパノキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、1−アダマンチルオキシ基、2−アダマンチルオキシ基、ノルボルニルオキシ基、アンモニウムエチトキシ基、トリフルオロメトキシ基、ベンジロキシ基、α,α−ジメチルベンジロキシ基、2−フェネチルオキシ基、1−フェネチルオキシ基、フェノキシ基、アルコキシフェノキシ基、アルキルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、及びペンタフルオロフェニルオキシ基等が挙げられる。この中でも、メトキシ基、エトキシ基、1−プロピルオキシ基、2−プロピルオキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、及び3,7−ジメチルオクチルオキシ基が好ましい。さらに、この中でも、メトキシ基、エトキシ基、1−プロピルオキシ基、2−プロピルオキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、及びヘキシルオキシ基がより好ましい。
また、前記アミノ基は、特に限定されず、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよいし、環状であってもよい。前記アミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、1−プロピルアミノ基、2−プロピルアミノ基、1−ブチルアミノ基、2−ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、オクチルアミノ基、デシルアミノ基、ドデシルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、3,7−ジメチルオクチルアミノ基、シクロプロピルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、1−アダマンチルアミノ基、2−アダマンチルアミノ基、ノルボルニルアミノ基、アンモニウムエチルアミノ基、トリフルオロメチルアミノ基、ベンジルアミノ基、α,α−ジメチルベンジルアミノ基、2−フェネチルアミノ基、1−フェネチルアミノ基、フェニルアミノ基、アルコキシフェニルアミノ基、アルキルフェニルアミノ基、1−ナフチルアミノ基、2―ナフチルアミノ基、及びペンタフルオロフェニルアミノ基等が挙げられる。この中でも、メチルアミノ基、エチルアミノ基、1−プロピルアミノ基、2−プロピルアミノ基、1−ブチルアミノ基、2−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、オクチルアミノ基、デシルアミノ基、ドデシルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、及び3,7−ジメチルオクチルアミノ基が好ましい。さらに、この中でも、メチルアミノ基、エチルアミノ基、1−プロピルアミノ基、2−プロピルアミノ基、1−ブチルアミノ基、2−ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、及びヘキシルアミノ基がより好ましい。
また、前記シリル基としては、特に限定されない。前記シリル基としては、例えば、ジメチルシリル基、ジエチルシリル基、ジフェニルシリル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、及びトリストリメチルシリル基等が挙げられる。
また、前記式(1)で表される化合物は、上述したように、前記N−オキシラジカル基に4級炭素が2つ結合された化合物であることが好ましい。このように、前記N−オキシラジカル基に隣接する部位に、立体障害の大きい基が結合されていることによって、ラジカルの安定性が高まり、ラジカルカップリングが抑制できると考えられる。このため、このような化合物を電解質層に含ませることによって、二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素をより好適に分離することができる二酸化炭素分離装置が得られると考えられる。
また、前記式(1)で表される化合物としては、例えば、N,N−ジ−tert−ブチルニトロキシドラジカル、N,N−ジフェニルニトロキシドラジカル、N,N−ジナフチルニトロキシドラジカル、N,N−ジ−2−メチルフェニルニトロキシドラジカル、N,N−ジ−3−メチルフェニルニトロキシドラジカル、N,N−ジ−4−メチルフェニルニトロキシドラジカル、N,N−ジ−2−エチルフェニルニトロキシドラジカル、N,N−ジ−2−プロピルフェニルニトロキシドラジカル、N,N−ジ−2−ブチルフェニルニトロキシドラジカル、N,N−ジ−2−ペンチルフェニルニトロキシドラジカル、N,N−ジ−2−ヘキシルフェニルニトロキシドラジカル、N,N−ジ−2−イソプロピルフェニルニトロキシドラジカル、N,N−ジ−2−イソブチルフェニルニトロキシドラジカル、N,N−ジ−2−sec−ブチルフェニルニトロキシドラジカル、N,N−ジ−2−tert−ブチルフェニルニトロキシドラジカル、N,N−ジ−4−tert−ブチルフェニルニトロキシドラジカル、N,N−ジ−(3,5−ジ−tert−ブチル)フェニルニトロキシドラジカル、N,N−ジ−4−ピリジルニトロキシドラジカル、N,N−ジ−4−ピリダジルニトロキシドラジカル、ポリ(エチレングリコール)−ビス−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシラジカル、N−フェニル−N−オキシ−tert−ブチルアミン、N−ナフチル−N−オキシ−tert−ブチルアミン、N−tert−ブチル−N−オキシ−2−キノリン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシラジカル(TEMPO)、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシラジカル、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシラジカル、4−カルボキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシラジカル、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシラジカル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシラジカル、4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシラジカル、4−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシラジカル、2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−オキシラジカル、3−カルバモイル−2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−オキシラジカル、3−カルボキシ−2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−オキシラジカル、2,2,6,6−テトラメチルモルホリン−N−オキシラジカル、及び2,2,6,6−テトラメチルモルホリンピペラジン−N−オキシラジカル等が挙げられる。
さらに、前記レドックス化合物としては、上述したように、高分子化合物であってもよく、例えば、前記式(1)で表される化合物を重合して得られる化合物等が挙げられる。前記高分子化合物としては、例えば、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシラジカル、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシラジカル、3−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピロリジニルオキシラジカル、3−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピロリジニルオキシラジカル、4−ビニロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジルニルオキシラジカル、及び4−ビニロイルオキシ−2,2,5,5−テトラメチルピロリジニルオキシラジカル等をモノマーとして重合して得られた化合物等が挙げられる。また、前記高分子化合物としては、前記モノマーを単独で重合して得られる化合物であってもよいし、2種以上の前記モノマーを組み合わせて重合して得られる化合物であってもよい。また、前記高分子化合物としては、前記式(1)で表される化合物を重合させて得られる化合物であってもよいし、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、及び酢酸ビニル等の共重合モノマーと共重合させた共重合体であってもよい。また、この共重合体モノマーも、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、前記式(1)で表される化合物は、所定の合成方法で合成して得られた化合物であってもよいし、市販品であってもよい。合成方法としては、前記式(1)で表される化合物が得られる合成方法であれば、特に限定されないが、例えば、二置換アミン化合物のアミノ基を酸化させるニトロキシド化させる方法等が挙げられる。
また、前記電解質層13には、前記電解液及び前記レドックス化合物以外の成分を含有していてもよい。前記電解質層13に含有される他の成分としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、及びポリビニルアルコールアセタール等が挙げられる。
また、前記電解質層13は、基材を含んでいてもよい。前記電解質層13としては、例えば、前記レドックス化合物を含む前記電解液を前記基材に含浸させたもの等が挙げられる。また、前記基材としては、例えば、ガラス繊維ろ紙等が挙げられる。
前記解質層13の製造方法としては、前記電解質層13が製造できれば、特に限定されない。前記電解質層13が、前記基材を含む場合、例えば、前記電解液に前記レドックス化合物を分散又は溶解させ、このレドックス化合物を含む電解液を前記基材に含浸させる方法等が挙げられる。前記含浸は、前記電解液や前記基材に超音波振動を印加しながら、行うことが好ましい。そうすることによって、電解質層に、微小な穴、すなわち、ピンホールが形成されることを抑制することができる。
また、前記電圧印加部14は、前記一対の電極11,12間に電圧を印加することができれば、特に限定されない。すなわち、前記電圧印加部14は、上述したように、前記一対の電極11,12間のどちらの電極の電位を高くするように、前記一対の電極11,12間に電圧を印加する。また、前記電圧印加部14は、二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素を取り込む側の第1電極の電位が、前記電解質層から二酸化炭素を放出する側の第2電極より常に低くなるように印加することが好ましい。そうすることによって、前記第1電極の電位が、前記第2電極の電位より常に低くなるように、前記電圧印加部で印加するだけで、前記第1電極側で、二酸化炭素を取り込み、前記第2電極側で、二酸化炭素を放出することができる。よって、二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素をより簡易に分離することができる。すなわち、本実施形態に係る二酸化炭素分離装置は、前記電圧印加部で、一対の電極11,12間に電圧を印加するだけで、電極間に印加する電圧を反転させることなく(各電極の電位の高低を切り替えることなく)、二酸化炭素を分離することができる。また、前記電圧印加部14は、電極間に印加する電圧を反転させることのできない印加部であってもよく、例えば、二次電池、外部電源、及びキャパシタ等が挙げられる。
また、前記第1流路15及び前記第2流路16は、気体を流通させることができる流路であれば、特に限定されない。
また、前記二酸化炭素分離装置10は、前記構造のものを製造することができれば、その製造方法は、特に限定されない。具体的には、前記電極11,12、前記電解質層13、前記電圧印加部14、前記第1流路15、及び前記第2流路16を用いて、図1に示す構造になるように、一般的な組み立て方法で組み立てる方法等が挙げられる。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
<二酸化炭素分離装置の作製>
以下の手順で、図1に示す構造を有する二酸化炭素分離装置を作製した。
(電解質層(二酸化炭素分離体))
二酸化炭素を溶解可能な電解液(イオン液体)である1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(シグマアルドリッチ社製)14.6g(0.1モル)に、前記レドックス化合物である4−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシラジカルを28.4g(0.1モル)、ポリエチレングリコール(分子量10000)5gを、それぞれ添加し、40℃に加熱し、攪拌混合した。このようにして得られた液体を、ガラス繊維ろ紙(ADVANTEC社製のGC50)に含浸させた。そして、前記ガラス繊維ろ紙を浸漬させた前記液体に、超音波振動を与えた。そうすることによって、電解質層(二酸化炭素分離体)が得られた。得られた電解質層を目視で確認したところ、微小な穴(ピンホール)が確認できなかった。
(電極)
カーボンペーパ(SGLカーボンジャパン株式会社製のGDL35BC)を、縦20mm×横20mm×厚み1mmのサイズに切り出した。この切り出したカーボンペーパの一方の面に、導電性銅箔テープを貼り付けた。これを2枚用意し、各電極(カソード電極及びアノード電極)として用いた。
(流路)
ポリテトラフルオロエチレン製の樹脂板を、縦50mm×横50mm×厚み5mmのサイズに切り出し、適所に穴を2箇所あけた。この切り出した樹脂板に、前記穴と連結する、深さ1mm×縦20mm×横20mmの溝を掘った。これを2枚用意し、各流路(第1流路及び第2流路)として用いた。
(二酸化炭素分離装置)
図1に示す構造となるように、前記電解質層、前記電極、及び流路を組み立て、電極の導電性銅箔テープに電圧印加部としての電源を接続した。そうすることによって、図1に示す構造の二酸化炭素分離装置を製造した。
[評価]
前記二酸化炭素分離装置を、以下の評価方法で評価した。
まず、前記二酸化炭素分離装置を、室温(28℃)の環境下に設置し、カソード側電極側の流路の穴に、二酸化炭素が充填したガスバックを装着した。アノード側電極側の流路の穴に、ポータブル炭酸ガス濃度計(東亜ディーケーケー株式会社製のCGP−31)を装着した。この装着時に測定された二酸化濃度は、0.4%であった。そして、前記電源を調整することにより、前記電極間に、下記表1に示す電圧(0.5V、1.5V、3V)を印加した。電圧を印加した後、10分後の二酸化炭素濃度を測定した。
その結果、印加した電圧が0.5Vのとき、二酸化炭素濃度が15.3%であった。また、印加した電圧が1.5Vのとき、二酸化炭素濃度が45%であった。また、印加した電圧が3Vのとき、二酸化炭素濃度が90.1%であった。これらの結果を表1に示す。
[実施例2]
二酸化炭素を溶解可能な電解液(イオン液体)として、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロライドの代わりに、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフロロメチルスルホニルイミド)42.9gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、二酸化炭素分離装置を製造した。そして、得られた二酸化炭素分離装置を用いて、実施例1と同様の評価を行った。
この結果は、表1に示す。
[実施例3]
レドックス化合物として、4−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシラジカルの代わりに、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシラジカルをモノマーとして重合して得られた化合物[ポリ(4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシラジカル)]24.0gを用い、ポリエチレングリコールを添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、二酸化炭素分離装置を製造した。そして、得られた二酸化炭素分離装置を用いて、実施例1と同様の評価を行った。
この結果は、表1に示す。
[比較例1]
レドックス化合物である4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシラジカルをモノマーとして重合して得られた化合物[ポリ(4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシラジカル)]を28.4gを、トルエン30.0gに溶解させた。この溶液を、ガラス繊維ろ紙(ADVANTEC社製のGC50)の全面に滴下した。その後、前記溶液が滴下されたガラス繊維ろ紙を、窒素雰囲気下で乾燥した。そうすることで、トルエンが除去され、固体状の電解質層が得られた。この電解質層を用いたこと以外、実施例1と同様にして、二酸化炭素分離装置を製造した。そして、得られた二酸化炭素分離装置を用いて、実施例1と同様の評価を行った。
この結果は、表1に示す。
[比較例2]
レドックス化合物を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、二酸化炭素分離装置を製造した。そして、得られた二酸化炭素分離装置を用いて、実施例1と同様の評価を行った。
この結果は、表1に示す。
表1からわかるように、二酸化炭素を溶解可能な電解液と、N−オキシラジカル基を分子内に有するレドックス化合物とを含む電解質層を、一対の電極で挟んだ二酸化炭素分離装置(実施例1〜3)は、電源で一対の電極間に電圧を印加するだけで、二酸化炭素を含む気体からの二酸化炭素の分離が確認できた。
これに対して、二酸化炭素を溶解可能な電解液を含まず、N−オキシラジカル基を分子内に有するレドックス化合物からなる固体状の電解質層を用いた場合(比較例1)は、二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素を分離できなかった。これは、二酸化炭素を電解質層に取り込むことができないことや、そのことにより、レドックス化合物による二酸化炭素の吸着及び脱着が二酸化炭素の分離に寄与できなかったこと等によると考えられる。また、二酸化炭素を溶解可能な電解液を含むが、N−オキシラジカル基を分子内に有するレドックス化合物を含まない電解質層を用いた場合(比較例2)は、二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素をわずかに分離できたものの、実施例1〜3に比べると、その分離性が著しく低下した。これは、レドックス化合物が含有されていないので、レドックス化合物による二酸化炭素の分離機能が発揮できないことによると考えられる。