JPWO2021090483A1 - 衝撃吸収柵 - Google Patents

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Abstract

【課題】受撃時における最大衝撃力を低減して衝撃吸収柵の安全性能を高められる衝撃吸収柵を提供すること。【解決手段】複数の支柱10と、隣り合う支柱10の上部間に張設した上辺ロープ21と、上辺ロープ21の一部に設けた緩衝装置30と、防護ネット20とを有する衝撃吸収柵であって、支柱10のスパン単位で独立し、隣り合う支柱10の上部間に横架した複数の荷重伝達ロープ23と、端末支柱10bの上部と側方アンカー40との間に連結した側方控えロープ24とを具備し、荷重伝達ロープ23を上辺ロープ21より大きい弛みを持たせて隣り合う支柱10の上部間に横架した。【選択図】図1

Description

本発明は落石、崩落土砂、雪崩等の落下物を捕捉する衝撃吸収柵に関し、特に簡易な構造により最大衝撃力を低減するようにした衝撃吸収柵に関する。
支柱と防護ネットを具備した衝撃吸収柵は周知であり、衝撃吸収性能の大きさに応じて種々提案されている。
図6(A)を参照して従来の衝撃吸収柵の一例について説明する。
特許文献1,2には、隣り合う支柱50の上部間および下部間に横架した複数の横ロープ51と、各横ロープ51の両端部近くに設けた複数の緩衝装置52と、複数の横ロープ51に張り巡らせた防護ネット53とを具備した衝撃吸収柵が開示されている。
特許文献3には受撃時に支柱50の根元に過大な応力が作用して破損するのを防止するため、各支柱50を全方向(360°)へ向けて傾倒可能に立設した衝撃吸収柵が開示されている。
特開平6−57712号公報 特開2000−273828号公報 特開2009−185514号公報
落下物Wが衝突した時の衝撃吸収柵のモデル図である図6(B)を参照しながら従来の衝撃吸収柵の問題点について説明する。
<1>スパン単位で衝撃エネルギーを吸収する従来の衝撃吸収柵は、受撃スパンに位置する支柱50、横ロープ51、緩衝装置52、防護ネット53に対して短時間のうちに巨大な負荷が集中する。
そのため、衝撃吸収柵の設計にあたっては落下物Wの最大衝撃力を大きく見込んで設計しなければならない。
<2>想定される最大衝撃力に対抗し得るように、衝撃吸収柵を構成する支柱50や防護ネット53等の構成資材を高強度に設計しなければならず、衝撃吸収柵の資材コストが嵩む。
<3>受撃スパンに位置する防護ネット53が谷側へ向けて変形する際に、受撃スパンに位置する支柱50,50が引き摺られて谷側および互いに接近し合う方向へ向けて無制限に傾倒する。支柱50,50が大きく傾倒すると、受撃スパンに隣り合う非受撃スパンの柵高が減少して、非受撃スパンにおける後続の落下物Wに対する捕捉性能が低下する。
本発明は以上の問題点を解決するために成されたもので、その目的とするところは、受撃時における最大衝撃力を低減して衝撃吸収柵の安全性能を高められる衝撃吸収柵を提供することにある。
本発明は、中間支柱と端末支柱からなる複数の支柱と、支柱のスパン単位で独立し、隣り合う支柱の上部間に張設した上辺ロープと、上辺ロープの一部に設けられ、上辺ロープに一定以上の張力が作用すると張力を減衰する緩衝装置と、前記上辺ロープに上辺が支持された防護ネットとを有する衝撃吸収柵であって、支柱のスパン単位で独立し、隣り合う支柱の上部間に横架した複数の荷重伝達ロープと、端末支柱の上部と側方アンカーとの間に連結した側方控えロープとを具備し、前記荷重伝達ロープを上辺ロープより大きい弛みを持たせて隣り合う支柱の上部間に横架したことを特徴とする。
本発明の他の形態において、受撃スパンに位置する支柱の傾倒力を、隣り合う非受撃スパンの荷重伝達ロープと側方控えロープを経由して側方アンカーで支持する受撃時において、非受撃スパンの荷重伝達ロープの弛みを消失するまでの荷重伝達時間を経て受撃スパンに位置する支柱の傾倒を支持し上辺ロープのみに荷重を伝達し得るように構成する。
本発明の他の形態において、前記側方控えロープの一部に緩衝装置を介装してもよい。
この場合、前記側方控えロープの緩衝装置の作動開始力が上辺ロープの緩衝装置の作動開始力と比べて大きい関係にする。
本発明の他の形態において、衝撃吸収柵は防護ネットの下辺を支柱の下部に支持した待受式、防護ネットの下辺を斜面山側に固定して支持した待受式、または防護ネットの下辺を斜面谷側に配置したポケット式の何れか一種に適用可能である。
本発明はつぎの効果を奏する。
<1>隣り合う支柱の上部間に横架した荷重伝達ロープに予め弛みを持たせておくことで、荷重伝達ロープを通じた荷重伝達時間を長くできる。
したがって、受撃スパンにおける衝撃吸収時間が長くなり、受撃時における最大衝撃力を低減できて衝撃吸収柵の安全性能を高めることができる。
<2>最大衝撃力が低減することで、衝撃吸収柵を構成する各資材の荷重負担を軽減できて、衝撃吸収柵の資材コストを大幅に削減できる。
<3>荷重伝達ロープが非受撃スパンに位置する支柱の自由傾倒を一定範囲に制限するので、非受撃スパンにおける防護ネットの柵高変化を最小に抑制できる。
したがって、非受撃スパンに位置する防護ネットによる後続の落下物の捕捉を保証することができる。
<4>側方控えロープの緩衝装置の作動開始力が上辺ロープの緩衝装置の作動開始力と比べて大きい関係にすることで、受撃時において上下辺ロープに設けた緩衝装置を先行して作動させつつ、受撃時の衝撃力を側方アンカーへ確実に伝えて支持することができる。
<5>防護ネットの下辺の設置位置が異なる各種形式の衝撃吸収柵に適用できて汎用性に富む。
一部を省略した本発明に係る衝撃吸収柵の正面図 上下辺ロープと支柱の取付構造の説明図で、(A)は一部を省略した上下辺ロープと支柱の取付部の斜視図、(B)は緩衝装置の分解組立図 一部を省略した受撃前における衝撃吸収柵の正面図 一部を省略した受撃時における衝撃吸収柵の正面図 他の衝撃吸収柵に適用したその他の実施例の説明図で、(A)は防護ネットの下辺を斜面山側に固定して支持した待受式の衝撃吸収柵に適用した衝撃吸収柵のモデル図、(B)は防護ネットの下辺を斜面谷側に配置したポケット式の衝撃吸収柵に適用した衝撃吸収柵のモデル図 本発明が前提とする衝撃吸収柵の正面図
以下に図面を参照しながら本発明について説明する。
<1>衝撃吸収柵の概要
図1を参照して説明すると、本発明の衝撃吸収柵は、所定の間隔を隔てて立設した複数の支柱10と、複数の支柱10間に張り巡らした防護ネット20と、支柱10のスパン単位で独立し、隣り合う支柱10の上部間および下部間に張設した緩衝装置30付きの上下辺ロープ21,22と、支柱10のスパン単位で独立し、隣り合う支柱10の上部間に横架した複数の荷重伝達ロープ23と、端末支柱10bの上部と側方アンカー40との間に連結した側方控えロープ24とを具備する。
以降に本発明に係る衝撃吸収柵の各構成資材について詳述する。
<2>支柱(中間支柱・端末支柱)
支柱10は中間支柱10aと端末支柱10bからなり、公知の形鋼や鋼管等の鋼材、コンクリート柱、鋼管とコンクリートを複合した充填鋼管等の何れか一種を適用できる。
支柱10の立設形態は傾倒可能に立設してもよいし、支柱10の下部をコンクリート基礎や現地地盤等に埋設して傾倒不能に立設してもよい。
傾倒式の支柱10は全方向に向けた傾倒を許容する立設構造(例えば特開2009−185514号等)の他に、斜面の傾斜方向に沿った傾倒を許容するヒンジ構造でもよい。
また図示を省略するが、支柱10が全方向へ向けた傾倒式である場合には、支柱10の自由な傾倒を阻害しないように、支柱10の頭部と山側アンカーとの間に連結する山側控えロープは一本の支柱10に対して一本とする。
この場合、山側控えロープの一部に公知の緩衝装置を介装してもよい。
<3>防護ネット
防護ネット20は、隣り合う支柱10の上下部間に支柱10のスパン単位または複数スパンに亘って横架可能な公知のネット材である。
防護ネット20には金属製または繊維製ロープネットや金網またはこれらの重合体を適用できる。
防護ネット20の上下辺は連結コイル等を介して各上下辺ロープ21,22に取り付けてある。
<4>上下辺ロープ
上辺ロープ21と下辺ロープ22は防護ネット20の上下辺を支持するためロープ材であり、隣り合う支柱10の上部間および下部間に弛みの少ない状態で張設する。
<4.1>ロープ長
図1,2を参照して説明すると、各上下辺ロープ21,22は支柱10のスパン長より長い全長を有している。
各上下辺ロープ21,22の両端部は支柱10の上下部の貫通孔11にそれぞれ貫通し、支柱10の外周面に当接して配置した緩衝装置30が各上下辺ロープ21,22の端部近くを摺動可能に把持している。
上下辺ロープ21,22の端部は緩衝装置30から外方に余長部として延出している。
<4.2>緩衝装置
緩衝装置30は各上下辺ロープ21,22に一定以上の張力が作用したときにロープの張力を減衰するための装置である。
図2(B)に例示した摩擦摺動式の緩衝装置30について説明すると、緩衝装置30は各上下辺ロープ21,22を把持可能な半溝を有する一対の挟持板31と、一対の挟持板31を貫挿可能なU字形の締結ボルト32と、ナット33とを具備していて、一対の挟持板31の間に挟持した上下辺ロープ21,22の張力が把持力を超えると上下辺ロープ21,22が摺動する。
緩衝装置30は摩擦摺動式に限定されず、上下辺ロープ21,22に一定以上の張力が作用したときに張力を減衰できる構造であれば公知の緩衝装置を適用できる。
<5>荷重伝達ロープ
荷重伝達ロープ23は隣り合う支柱10の相互間で荷重を伝達するためのロープ材であり、その両端部を隣り合う支柱10の上部に摺動不能に固定する。
<5.1>荷重伝達ロープの弛み
上辺ロープ21は隣り合う支柱10の上部間に張設するのに対し、荷重伝達ロープ23は隣り合う支柱10の上部間に所定の弛みを持たせて横架する。
上辺ロープ21をまったく弛みのない状態で張設することは困難であり、上辺ロープ21には多少の弛みが生じる。
荷重伝達ロープ23の弛みとは上辺ロープ21と比べた弛み量であり、荷重伝達ロープ23は上辺ロープ21と比べて大きな弛みを持たせる。
<5.2>荷重伝達ロープに弛みを持たせた理由
荷重伝達ロープ23に所定の弛みを持たせたのは、受撃スパンに位置する緩衝装置30を優先して作動させるためと、衝撃吸収柵の最大衝撃力を低減するためである。
換言すれば、受撃時に非受撃スパンの支柱10へ連鎖的に荷重を伝達する際の荷重伝達時間を長く延ばすことで、受撃スパンに設けた緩衝装置30の作動時間を長くするためである。
その一方で、荷重伝達ロープ23の弛み量に比例して受撃スパンに位置する支柱10の傾倒が大きくなるので、支柱10のスパン長等を考慮して荷重伝達ロープ23の弛み量を適宜選択する。
<6>側方控えロープ
衝撃吸収柵の延長線上の端末支柱10bの側方に側方アンカー40を設け、側方アンカー40と端末支柱10bの上部間に側方控えロープ24を連結する。
端末支柱10bを側方控えロープ24で支持することで、複数の荷重伝達ロープ23と側方控えロープ24との間での荷重伝達が可能となり、受撃スパンに作用した衝撃力を最終的に側方アンカー40へ伝達できる構造になっている。
<6.1>側方控えロープの緩衝装置
側方控えロープ24の一部には緩衝装置35が介装してあって、張力が一定値を超えると緩衝装置35が作動して側方控えロープ24の張力を減衰し得るようになっている。
緩衝装置35は既述した摩擦摺動式の緩衝装置30でもよいし、塑性変形式の緩衝装置でもよい。
また側方控えロープ24の緩衝装置35は必須ではなく、衝撃吸収柵が小規模用の場合は緩衝装置35を省略する場合もある。
<6.2>上下辺ロープと側方控えロープに設けた緩衝装置の関係
側方控えロープ24に緩衝装置35を設ける場合、上下辺ロープ21,22に設ける緩衝装置30と側方控えロープ24に設ける緩衝装置35の作動開始力は同一ではない。
側方控えロープ24に設ける緩衝装置35の作動開始力は上下辺ロープ21,22に設ける緩衝装置30の作動開始力と比べて大きくなるように設定しておく。
例えば両緩衝装置30,35が摩擦摺動式であれば、上下辺ロープ21,22の把持力に対して側方控えロープ24の把持力を大きくする。
<6.3>緩衝装置の作動開始力に差を設けた理由
両緩衝装置30,35の作動開始力に差を設けたのは、受撃時において上下辺ロープ21,22に設けた緩衝装置30を先行して作動させるためと、受撃時の衝撃力を側方アンカー40へ伝えるためである。
[衝撃吸収柵の捕捉作用]
受撃前の衝撃吸収柵を示した図3と、受撃時の衝撃吸収柵を示した図4を参照しながら衝撃吸収柵の捕捉作用について説明する。
以降の説明にあたり、理解をし易くするため、複数の支柱10を同図の左方から右方へ向けて支柱10〜10と表記し、上辺ロープ21を同図の左方から右方へ向けて上辺ロープ21〜21と表記し、荷重伝達ロープ23も同図の左方から右方へ向けて荷重伝達ロープ23〜23と表記して説明する。
1.受撃前の衝撃吸収柵(図3)
受撃前においては、各支柱10〜10の上部間に張設した各上辺ロープ21〜21が、隣り合う各支柱10〜10の上部間隔を保持する。弛みを有する各荷重伝達ロープ23〜23は各支柱10〜10の上部間隔を保持することに機能していない。
2.受撃時の衝撃吸収柵(図4)
<1>防護ネットの撓み変形
防護ネット20の一部(例えば支柱10,10の間)に落石等の落下物Wが衝突すると、防護ネット20が谷側へ撓み変形し、防護ネット20の緩衝作用により落下物Wの衝撃エネルギーの一部を吸収する。
<2>支柱の傾倒力の伝達
本発明の衝撃吸収柵は、非受撃スパンの荷重伝達ロープ23,23の弛みを利用して衝撃荷重を受撃スパンSの緩衝装置30へ伝達するものである。
以下に受撃スパンSに作用した衝撃力の伝達ルートについて説明する。
防護ネット20が谷側へ変形すると、受撃スパンSに位置する一対の支柱10,10が互いに接近する方向へ向けた傾倒力および谷側へ向けた傾倒力(両傾倒力を総称して「傾倒力」という)が作用する。
本例では理解をし易くするため、支柱10,10の接近方向へ向けた傾倒力が及ぼす衝撃吸収柵の左半の挙動について説明し、衝撃吸収柵の右半の挙動については左半と同様であるのでその説明を省略する。
<2.1>荷重伝達ロープと側方控えロープを通じた荷重伝達
受撃スパンSに位置する支柱10,10の傾倒力は、弛緩状態から緊張状態に切り替わった非受撃スパンS,Sに位置する荷重伝達ロープ23,23を経由して端末支柱である支柱10へ伝わり、さらに側方控えロープ24を経由して最終的に側方アンカー40に支持される。
<2.2>非受撃スパンの上辺ロープの限定的摺動と支柱の限定的傾倒
受撃スパンSに位置する支柱10,10の傾倒力を側方アンカー40へ伝達する際、非受撃スパンS,Sに設けた緩衝装置30が作動することに伴い非受撃スパンS,Sの上辺ロープ21、21が限定的に摺動して張力の一部を吸収する。
非受撃スパンS,Sの緩衝装置30が作動することで、非受撃スパンS,Sの各支柱10、10が受撃スパンSへ向けて限定的に傾倒する。
非受撃スパンS,Sに位置する上辺ロープ21、21の摺動と各支柱10、10の傾倒に伴い、非受撃スパンS,Sの荷重伝達ロープ23、23の弛みが漸減する。
各荷重伝達ロープ23、23の弛みが完全に消失して緊張状態になると、非受撃スパンS,Sに設けた緩衝装置30の作動と、非受撃スパンS,Sの各支柱10、10の傾倒が中断する。
緊張状態に切り替わった各荷重伝達ロープ23、23は、非受撃スパンS,Sに位置する各支柱10、10の頭部間隔を一定に保持する。
このように受撃時において、非受撃スパンS,Sの荷重伝達ロープ23、23は側方アンカー40から反力を得て、非受撃スパンS,Sに位置する上辺ロープ21、21の摺動と非受撃スパンS,Sに位置する支柱10、10の傾倒を一定範囲に制限する。
<2.3>受撃スパンにおける衝撃吸収作用
非受撃スパンS,Sに位置する荷重伝達ロープ23,23の弛みがなくなる一方で、受撃スパンSに位置する荷重伝達ロープ23は弛んだままである。
そのため、受撃スパンSに位置する上下辺ロープ21、22が谷側へ変形してその張力が増大する。
受撃スパンSに位置する上下辺ロープ21、22の張力が所定値を超えると受撃スパンSに設けた緩衝装置30が作動する。
このように受撃時においては、受撃スパンSに位置する上下辺ロープ21、22の張力の増加に応じて受撃スパンSに設けた緩衝装置30のみが作動して落下物Wの衝撃エネルギーを効率よく吸収する。
3.衝撃吸収柵の緩衝性能
<1>緩衝装置の作動時期
受撃時において、受撃スパンSおよび非受撃スパンS,Sに設けた複数の緩衝装置30および側方控えロープ24に設けた緩衝装置35は一斉に作動しない。
受撃時における各緩衝装置30,35の作動時期をまとめるとつぎのようになる。
受撃直後は受撃スパンSに設けた緩衝装置30が作動せずに、非受撃スパンS,Sに設けた緩衝装置30が限定的に作動する。
その後は、非受撃スパンS,Sの荷重伝達ロープ23,23が弛みのある状態から緊張状態に切り替わることで、非受撃スパンS,Sの緩衝装置30が作動を停止し、代わりに受撃スパンSに設けた緩衝装置30が作動する。
側方控えロープ24に設けた緩衝装置35は、上辺ロープ21に設けた緩衝装置30と比べて予め作動開始力が大きく設定してあるので、受撃スパンSまたは非受撃スパンS,Sに設けた緩衝装置30の作動前に側方控えロープ24に設けた緩衝装置35が作動することはない。
側方控えロープ24に設けた緩衝装置35は、側方控えロープ24の張力が緩衝装置35の作動開始力を越えたときに作動する。
<2>荷重伝達時間と伝達速度について
荷重伝達ロープ23,23に弛みがあるので、受撃スパンSの支柱10,10の傾倒力が、非受撃スパンS,Sの荷重伝達ロープ23,23および側方控えロープ24を経て側方アンカー40で支持されるまでには一定の荷重伝達時間がかかる。
非受撃スパンS,Sの荷重伝達ロープ23,23が弛みを有することで荷重伝達ロープ23,23を通じた荷重の伝達速度が低下する。
<3>受撃スパンの緩衝装置の作動時間について
このように、受撃スパンSの上辺ロープ21へ荷重が伝わるまでに所定の時間(荷重伝達時間)がかかることと、荷重の伝達速度が低下することにより、受撃スパンSの上辺ロープ21に設けた緩衝装置30による作動時間(衝撃吸収時間)が長くなる。
そのため、受撃スパンSにおける上辺ロープ21と防護ネット20の変形時間を長くできる。
<4>最大衝撃力について
以上説明したように、受撃スパンSにおける衝撃吸収時間(変形時間)が長くなることで、受撃スパンSが負荷する衝撃力のピークである最大衝撃力が小さくなる。
最大衝撃力を低減できることで、衝撃吸収柵を構成する支柱10、上下辺ロープ21,22等の各資材の荷重負担が軽減されて、衝撃吸収柵の資材コストを大幅に削減できる。
さらに、最大衝撃力を低減できることに伴い、設計条件(想定)を多少越えた落石エネルギーに対しても対処できるので、従来の衝撃吸収柵と比べて安全性が高くなって減災効果が著しく向上する。
4.衝撃吸収柵の柵高変化について
<1>受撃スパンの柵高変化
受撃スパンSにおいては、支柱10,10が内側に傾倒するので、支柱10,10の傾倒に応じて受撃スパンSにおける防護ネット20の柵高が低く変化するが、側方アンカー40に反力を得て支柱10,10の自由傾倒が一定範囲に制限されるので、受撃スパンSに位置する防護ネット20の柵高が極端に低く変化することはない。
<2>非受撃スパンの柵高変化
衝撃吸収柵が各支柱10〜10の自由傾倒を許容する構造であると、受撃スパンの防護ネットの柵高が大幅に減少するだけでなく、支柱の自由傾倒に引き摺られて非受撃スパンの防護ネットの柵高が大幅に減少する。
これに対して本発明では、衝撃吸収柵における各支柱10〜10の自由傾倒が一定範囲に制限されて、各支柱10〜10が無制限に傾倒しない。
そのため、受撃スパンSに位置する支柱10,10の傾倒が最も大きく、端末支柱である支柱10へ向けてその傾倒角度は徐々に小さくなる。
このように、非受撃スパンS,Sに位置する支柱10,10の自由傾倒を小さく抑えられるので、非受撃スパンS,Sにおける防護ネット20の設計条件で必要な柵高を確保できる。
したがって、非受撃スパンS,Sに位置する防護ネット20による、後続の落下物W´に対する捕捉性能を保証できる。
5.衝撃吸収柵の修繕作業
本発明の衝撃吸収柵は、受撃時における複数の緩衝装置30,35の作動を制御できるだけでなく、最終的に受撃スパンSに位置する防護ネット20、受撃スパンSに位置する上下辺ロープ材21,22および受撃スパンSに位置する緩衝装置30が協働して衝撃エネルギーを吸収する構造である。
したがって、落石後に衝撃吸収柵を修繕する場合には、受撃スパンSに位置する防護ネット20を張り替え、受撃スパンSの上下辺ロープ材21,22と緩衝装置30を元の状態に復元するだけの簡単な作業で以て短時間のうちに衝撃吸収柵を修繕できる。
[他の実施例]
本発明は、防護ネット20の上下辺を支柱10の上下部に支持させた待受式の衝撃吸収柵に限定されるものではなく、公知の各種の衝撃吸収柵に適用が可能である。
図5(A)は防護ネット20の上辺を支柱10の上部で支持し、防護ネット20の下辺を斜面山側の山側アンカー41に固定して支持した待受式の衝撃吸収柵を示している。
図5(B)は防護ネット20の上辺を支柱10の上部で支持し、防護ネット20の下辺を斜面谷側に配置したポケット式の衝撃吸収柵を示している。
本例の衝撃吸収柵は防護ネット30の下辺の配置位置が異なるだけで、その他の構成や緩衝作用については先の実施例と同じであるのでその説明を省略する。
本例にあっては、各種の衝撃吸収柵に適用できて汎用性に富む。
10・・・・支柱
10a・・・中間支柱
10b・・・端末支柱
20・・・・防護ネット
21・・・・上辺ロープ
22・・・・下辺ロープ
23・・・・荷重伝達ロープ
24・・・・側方控えロープ
30・・・・上下辺ロープ用の緩衝装置
35・・・・側方控えロープ用の緩衝装置
W,W´・・落下物

本発明は、中間支柱と端末支柱からなる複数の支柱と、支柱のスパン単位で独立し、隣り合う支柱の上部間に張設した上辺ロープと、上辺ロープの一部に設けられ、上辺ロープに一定以上の張力が作用すると張力を減衰する緩衝装置と、前記上辺ロープに上辺が支持された防護ネットとを有する衝撃吸収柵であって、支柱のスパン単位で独立し、隣り合う支柱の上部間に横架した複数の荷重伝達ロープと、端末支柱の上部と側方アンカーとの間に連結した側方控えロープとを具備し、前記荷重伝達ロープを上辺ロープより大きい弛みを持たせて隣り合う支柱の上部間に横架し、受撃スパンに位置する支柱の傾倒力を、隣り合う非受撃スパンの荷重伝達ロープと側方控えロープを経由して側方アンカーで支持する受撃時において、非受撃スパンの荷重伝達ロープの弛みを消失するまでの荷重伝達時間を経て受撃スパンに位置する支柱の傾倒を支持し上辺ロープのみに荷重を伝達し得るように構成する。
本発明の他の形態において、前記側方控えロープの一部に緩衝装置を介装してもよい。
この場合、前記側方控えロープの緩衝装置の作動開始力が上辺ロープの緩衝装置の作動開始力と比べて大きい関係にする。
本発明の他の形態において、衝撃吸収柵は防護ネットの下辺を支柱の下部に支持した待受式、防護ネットの下辺を斜面山側に固定して支持した待受式、または防護ネットの下辺を斜面谷側に配置したポケット式の何れか一種に適用可能である。

Claims (7)

  1. 中間支柱と端末支柱からなる複数の支柱と、支柱のスパン単位で独立し、隣り合う支柱の上部間に張設した上辺ロープと、上辺ロープの一部に設けられ、上辺ロープに一定以上の張力が作用すると張力を減衰する緩衝装置と、前記上辺ロープに上辺が支持された防護ネットとを有する衝撃吸収柵であって、
    支柱のスパン単位で独立し、隣り合う支柱の上部間に横架した複数の荷重伝達ロープと、
    端末支柱の上部と側方アンカーとの間に連結した側方控えロープとを具備し、
    前記荷重伝達ロープを上辺ロープより大きい弛みを持たせて隣り合う支柱の上部間に横架したことを特徴とする、
    衝撃吸収柵。
  2. 受撃スパンに位置する支柱の傾倒力を、隣り合う非受撃スパンの荷重伝達ロープと側方控えロープを経由して側方アンカーで支持する受撃時において、非受撃スパンの荷重伝達ロープの弛みを消失するまでの荷重伝達時間を経て受撃スパンに位置する支柱の傾倒を支持し得るように構成したことを特徴とする、請求項1に記載の衝撃吸収柵。
  3. 前記側方控えロープの一部に緩衝装置を介装したことを特徴とする、請求項1または2に記載の衝撃吸収柵。
  4. 前記側方控えロープの緩衝装置の作動開始力が上辺ロープの緩衝装置の作動開始力と比べて大きい関係にあることを特徴とする、請求項3に記載の衝撃吸収柵。
  5. 衝撃吸収柵が防護ネットの下辺を支柱の下部に支持した待受式であることを特徴とする、請求項1乃至4の何れか一項に記載の衝撃吸収柵。
  6. 衝撃吸収柵が防護ネットの下辺を斜面山側に固定して支持した構造であることを特徴とする、請求項1乃至4の何れか一項に記載の衝撃吸収柵。
  7. 衝撃吸収柵が防護ネットの下辺を斜面谷側に配置したポケット式であることを特徴とする、請求項1乃至4の何れか一項に記載の衝撃吸収柵。

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