以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、図中の同一又は相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
実施の形態1.
(回路構成)
図1は、実施の形態1に係る電力変換装置の構成を説明する回路図である。
図1を参照して、実施の形態1に係る電力変換装置1Aは、特許文献1に記載された、クランプ回路を有する3レベル電力変換装と同様の主回路構成を有する。電力変換装置1Aの入力側(DC側)及び出力側(AC側)には、直流電源2及び交流電源17がそれぞれ接続される。
直流電源2は、例えば、直流安定化電源、燃料電池、太陽電池や風力発電機、蓄電池等によって構成される。又、直流電源2は、これらの電源からの出力をDC/DC変換するコンバータを含んで構成されてもよい。交流電源17は、例えば、電力系統、又は交流負荷によって構成される。
尚、直流電源2が、再充電可能な二次電池によって構成される場合には、電力変換装置1Aは、上述した、入力側(DC側)から出力側(AC側)へのDC/AC変換による電力伝送のみならず、AC側からDC側へのAC/DC変換を実行することも可能である。又、図1では、交流電源17を単相2線式の構成で記載しているが、単相3線式で交流電源17を構成することも可能である。
電力変換装置1Aは、平滑用コンデンサ3と、半導体素子5〜10と、出力フィルタリアクトル13,14と、出力フィルタコンデンサ15と、電圧検出器19,23と、電流検出器21と、制御回路35を備える。電圧検出器19は、平滑用コンデンサ3の電圧を検出する。電圧検出器23は、出力フィルタコンデンサ15の電圧を検出する。電流検出器21は、出力フィルタリアクトル13の電流を検出する。
半導体素子5〜10の各々は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)又はMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)等のオンオフ制御可能なスイッチング素子で構成されて、正極、負極、及び、制御電極を有する。例えば、半導体素子5〜10がIGBTである場合には、正極はコレクタ、負極はエミッタ、制御電極はゲートに相当する。又、半導体素子5〜10がMOSFETである場合には、正極はドレイン、負極はソース、制御電極はゲートに相当する。半導体素子5〜10には、負極から正極への方向の電流経路を形成するための逆並列ダイオードが、内蔵又は外部接続されている。
ノードNaは、直流電源2の正側及び平滑用コンデンサ3の一方端と接続される。ノードNaは、半導体素子5及び半導体素子7の正極とさらに接続される。ノードNcは、直流電源2の負側及び平滑用コンデンサ3他方端と接続される。ノードNcは、半導体素子6及び半導体素子8の正極と更に接続される。
半導体素子5及び半導体素子6は、ノードNdを介して直列接続される。従って、半導体素子5の負極及び半導体素子6の正極は、ノードNdと接続される。直列接続された半導体素子5及び半導体素子6は「第1レグ」を構成する。ノードNdは、第1レグの中点に相当する。
同様に、半導体素子7及び半導体素子8は、ノードNeを介して、従って、半導体素子7の負極及び半導体素子8の正極は、ノードNeと接続される。直列接続された半導体素子7及び半導体素子8は「第2レグ」を構成する。ノードNeは、第2レグの中点に相当する。並列接続された第1レグ及び第2レグ、即ち、半導体素子5〜8によって、いわゆるフルブリッジ型のブリッジ回路が構成される。電力変換装置1Aにおいて、第1レグ、第2レグ、直流電源2、及び、平滑用コンデンサ3は、互いに並列接続される。
ノードNdは、半導体素子9の負極、及び、出力フィルタリアクトル13の一方端と更に接続される。ノードNeは、半導体素子10の負極、及び、出力フィルタリアクトル14の一方端と更に接続される。従って、半導体素子9及び半導体素子10の正極同士が接続される。
半導体素子10のオン時には、ノードNdからノードNeの間に、ノードNdからノードNeへの方向の電流経路が形成される。一方で、半導体素子9のオン時には、ノードNeからノードNdへの方向の電流経路が形成される。このように、逆極性で直列接続された半導体素子9及び半導体素子10によって、いわゆる双方向スイッチが構成される。
出力フィルタコンデンサ15は、ノードNf及びノードNgの間に接続される。ノードNfは、更に、出力フィルタリアクトル13の他方端、及び、交流電源17の一方端と接続される。同様に、ノードNgは、更に、出力フィルタリアクトル14の他方端、及び、交流電源17の他方端と接続される。
制御回路35には、電圧検出器19、電流検出器21、及び、電圧検出器23による検出値が入力される。制御回路35は、半導体素子5を駆動するための駆動信号27と、半導体素子6を駆動するための駆動信号28と、半導体素子7を駆動するための駆動信号29と、半導体素子8を駆動するための駆動信号30と、半導体素子9を駆動するための駆動信号31と、半導体素子10を駆動するための駆動信号32を出力する。駆動信号27〜32は、半導体素子5〜10の制御電極へそれぞれ伝達される。この結果、半導体素子5〜9は、制御回路35からの駆動信号27〜32にそれぞれ応答してオンオフ制御される。
尚、図1では、半導体素子6〜10は、MOSFETで表記されているが、IGBT等の他のスイッチング素子で構成することも可能である。図1の例では、半導体素子6〜10は、MOSFETであるので、外部素子を接続することなく、ボディダイオードによって逆並列ダイオードを構成することが可能である。又、平滑用コンデンサ3についても、図1では、電解コンデンサを想定しているが、フィルムコンデンサ等で構成することも可能である。或いは、平滑用コンデンサ3に代えて、蓄電池を用いることも可能である。
次に、図1に示された電力変換装置1Aの動作について順次説明する。
図2は、図1に示された電力変換装置1Aの半導体素子のオンオフ制御を説明する波形図である。
図2を参照して、交流出力指令値201を基準として、半導体素子5及び半導体素子8の駆動信号202と、半導体素子6及び半導体素子7の駆動信号203と、半導体素子9の駆動信号204と、半導体素子10の駆動信号205とが生成される。各駆動信号の「1」期間は、対応する半導体素子のオン期間を示し、各駆動信号の「0」期間は、対応する半導体素子のオフ期間を示している。
交流出力指令値201が正の期間では、駆動信号202及び駆動信号205は、交互かつ相補に「1」及び「0」に設定される。一方で、駆動信号203は「0」に固定され、駆動信号204は「1」に固定される。従って、半導体素子6及び半導体素子7は常時オフされ、半導体素子9は常時オンされる。一方で、半導体素子5、8及び10は、スイッチング制御される。具体的には、半導体素子5及び半導体素子8は共通にオンオフされ、半導体素子10は、半導体素子5及び半導体素子8と相補的にオンオフされる。
一方で、交流出力指令値201が負の期間では、駆動信号203及び駆動信号204は、交互かつ相補に「1」及び「0」に設定される。これに対して、駆動信号202は「0」に固定され、駆動信号205は「1」に固定される。従って、半導体素子5及び半導体素子8は常時オフされ、半導体素子10は常時オンされる。一方で、半導体素子6、7及び9は、スイッチング制御される。具体的には、半導体素子6及び半導体素子7は共通にオンオフされ、半導体素子9は、半導体素子6及び半導体素子7と相補的にオンオフされる。
半導体素子5の駆動信号27及び半導体素子8の駆動信号30は、駆動信号202に従って生成される。半導体素子6の駆動信号28及び半導体素子7の駆動信号29は、駆動信号203に従って生成される。半導体素子9の駆動信号31は、駆動信号204に従って生成され、半導体素子10の駆動信号32は、駆動信号205に従って生成される。
駆動信号27〜32には、半導体素子5〜10のオンオフを切り替える際に、いわゆるデッドタイムが設けられる。デッドタイムは、複数の半導体素子をスイッチングする際に、駆動信号27〜32によるオンオフタイミングに対して、半導体素子5〜10の実際のオンオフタイミングが一定の時間差を有することに起因して、意図しない直流電源2の短絡経路が形成されることを防止するために設けられる。
一例として、交流出力指令値201が正の期間において、半導体素子5及び半導体素子8がオンからオフに切り替わるとともに、これと相補的に、半導体素子10がオフからオンに切り替わるタイミングを考える。交流出力指令値201が正の期間では、半導体素子9が常時オンのため、半導体素子5及び半導体素子8のオフタイミングが遅れると、一時的に、半導体素子5、半導体素子8、半導体素子9、及び、半導体素子10のすべてがオン状態となる虞がある。これにより、直流電源2を短絡させる経路が発生してしまうので、過電流で電力変換装置1Aに故障が発生することが懸念される。
このため、上記のケースでは、駆動信号202及び205が変化するタイミングで、半導体素子5、8,及び10の全てをオフするために、駆動信号27,28,及び、31の全てが「0」となる期間(デッドタイム)を設けることで、上述の短絡の発生が防止される。
一般的には、数(kW)程度の電力変換装置では、半導体素子のスイッチング周波数が数十(kHz)程度であるため、この際には、デッドタイムは、通常、数(μs)程度設けられる。或いは、SiC(炭化シリコン)又はGaN(窒化ガリウム)等のいわゆるワイドバンドギャップ半導体を使用した半導体素子では、ターンオフ及びターンオン時間が短いため、デッドタイムを数十〜数百(ns)程度とするケースも存在する。
(電力変換装置の電流経路)
電力変換装置1Aの動作パターンは、交流電圧及び交流電流の正/負の組み合わせによる4パターンが存在する。尚、以下では、出力フィルタリアクトル13の電流が、図中の左から右方向に流れる場合を、電力変換装置1Aでの交流電流が「正」である場合と定義する。又、交流電圧については、出力フィルタコンデンサ15の電圧は、出力フィルタリアクトル13側がプラスであり、出力フィルタリアクトル14側がマイナスである場合を、交流電圧が「正」である場合と定義する。
まず、図3〜図5を用いて、交流電圧が正、かつ、交流電流が正である、第1の動作パターンでの電力変換装置1Aでの電流経路を説明する。上述のように、交流電圧が正の期間では、半導体素子9がオン固定されるとともに、半導体素子6及び半導体素子7はオフ固定される。一方で、半導体素子5及び半導体素子8、並びに、半導体素子10がスイッチング制御される。
図3には、第1の動作パターン中の半導体素子5及び半導体素子8のオン期間(電力伝送期間)での電流経路が示される。
図3を参照して、半導体素子5及び半導体素子8のオン期間では、直流電源2の正側−半導体素子5−出力フィルタリアクトル13−交流電源17−出力フィルタリアクトル14−半導体素子8−直流電源2の負側の経路に、電流I1が流れる。
尚、以下では、各電流経路として、直流電源2及び交流電源17を含むものを代表的に表記しているが、実際には、平滑用コンデンサ3及び出力フィルタコンデンサ15を含む電流経路も並列に形成されている。
図4には、半導体素子5及び半導体素子8がオンからオフに切り替わったデッドタイム期間での電流経路が示される。
図4を参照して、デッドタイム期間では、出力フィルタリアクトル13―交流電源17−出力フィルタリアクトル14−半導体素子10(逆並列ダイオード)−半導体素子9を含む経路に、電流I2が流れる。
図5には、デッドタイム期間(図4)後に半導体素子10がオフからオンに切り替わったときの電流経路(還流期間)での電流経路が示される。
図5を参照して、還流期間では、出力フィルタリアクトル13―交流電源17−出力フィルタリアクトル14−半導体素子10−半導体素子9を含む経路に、図4と同様の電流I2が流れる。還流期間及びデッドタイム期間では、電流経路(電流I2)は同一であるが、半導体素子5〜10がMOSFETの場合には同期整流が可能である。具体的には、半導体素子10がオフからオンに切り替わることで、電流I2の経路が、ボディダイオード(逆並列ダイオード)からMOSFET(正極から負極へのチャネル経路)へ変わる。これにより、ボディダイオードを通過する際の電圧降下よりも、オン状態のMOSFETでの電圧降下の方が小さい場合は、電力損失が低下することで効率が改善できる。
図5の状態(還流期間)から半導体素子10がオンからオフに切り替わると、再び、図4に示したデッドタイム期間での電流経路が形成される。更にその後、半導体素子5及び半導体素子8がオフからオンに切り替わると、再度、図3(伝送期間)に示された電流経路に電流I1が流れることになる。
次に、図6〜図8を用いて、交流電圧が負、かつ、交流電流が負である、第2の動作パターンでの電力変換装置1Aでの電流経路を説明する。交流電圧が負の場合には、出力フィルタコンデンサ15の電圧は、出力フィルタリアクトル13側がマイナスであり、出力フィルタリアクトル14側がプラスである。又、交流電流が負である場合には、出力フィルタリアクトル13の電流は、図中の右から左へ向かう方向に流れる。上述のように、交流電圧が負の期間では、半導体素子10がオン固定されるとともに、半導体素子5及び半導体素子8はオフ固定される。一方で、半導体素子6及び半導体素子7、並びに、半導体素子9がスイッチング制御される。
図6には、第2の動作パターン中の半導体素子6及び半導体素子7のオン期間(電力伝送期間)での電流経路が示される。
図6を参照して、半導体素子6及び半導体素子7のオン期間では、直流電源2の正側−半導体素子7−出力フィルタリアクトル14−交流電源17―出力フィルタリアクトル13−半導体素子6−直流電源2の負側の経路に、電流I3が流れる。
図7には、半導体素子6及び半導体素子7がオンからオフに切り替わったデッドタイム期間での電流経路が示される。
図7を参照して、デッドタイム期間では、出力フィルタリアクトル14―交流電源17−出力フィルタリアクトル13−半導体素子9(逆並列ダイオード)−半導体素子10の経路に、電流I4が流れる。電流I4は、図3での電流I2と同じ経路を、電流I2とは逆方向に流れる。
図8には、デッドタイム期間(図7)後に半導体素子9がオフからオンに切り替わったときの電流経路(還流期間)での電流経路が示される。
図8を参照して、還流期間では、出力フィルタリアクトル14―交流電源17−出力フィルタリアクトル13−半導体素子9−半導体素子10の経路に、図7と同様の電流I4が流れる。還流期間では、半導体素子9をオフからオンに切り替えることで、図5で説明したように、同期整流による効率改善を図ることができる。
次に、図9〜図11を用いて、交流電圧が正、かつ、交流電流が負である、第3の動作パターンでの電力変換装置1Aでの電流経路を説明する。第3の動作パターンでは、交流電圧が正であるので、第1の動作パターンと同様に、半導体素子9がオン固定されるとともに、半導体素子6及び半導体素子7はオフ固定される。一方で、半導体素子5及び半導体素子8、並びに、半導体素子10がスイッチング制御される。又、出力フィルタリアクトル13の電流は、図中の右から右方向へ流れている。
図9には、第3の動作パターン中の半導体素子5及び半導体素子8のオン期間(電力伝送期間)での電流経路が示される。
図9を参照して、半導体素子5及び半導体素子8のオン期間では、直流電源2の負側−半導体素子8−出力フィルタリアクトル14−交流電源17−出力フィルタリアクトル13−半導体素子5−直流電源2の正側の経路に、電流I5が流れる。電流I5は、図3の電流I1と同じ経路を、電流I1と逆方向に流れる。
図10には、半導体素子5及び半導体素子8がオンからオフに切り替わったデッドタイム期間での電流経路が示される。
図10を参照して、デッドタイム期間では、直流電源2の負側−半導体素子8(逆並列ダイオード)−出力フィルタリアクトル14−交流電源17−出力フィルタリアクトル13−半導体素子5(逆並列ダイオード)−直流電源2の正側の経路、即ち、図9と同じ経路の電流I5が流れる。
図11には、デッドタイム期間(図10)後に半導体素子10がオフからオンに切り替わったときの電流経路(還流期間)での電流経路が示される。
図11を参照して、還流期間では、出力フィルタリアクトル13―半導体素子9−半導体素子10−出力フィルタリアクトル14―交流電源17を含む経路に、電流I4が流れる。電流I4は、図4と同様の電流I2と同じ経路を、電流I2とは逆方向に流れる。
図11の状態(還流期間)から半導体素子10がオンからオフに切り替わると、再び、図10に示したデッドタイム期間での電流経路が形成される。更にその後、半導体素子5及び半導体素子8がオフからオンに切り替わると、再度、図9(伝送期間)に示された電流経路に電流I5が流れることになる。
次に、図12〜図14を用いて、交流電圧が負、かつ、交流電流が正である、第4の動作パターンでの電力変換装置1Aでの電流経路を説明する。第4の動作パターンでは、交流電圧が負であるので、半導体素子10がオン固定されるとともに、半導体素子5及び半導体素子8はオフ固定される。一方で、半導体素子6及び半導体素子7、並びに、半導体素子9がスイッチング制御される。
図12には、第4の動作パターン中の半導体素子6及び半導体素子7のオン期間(電力伝送期間)での電流経路が示される。
図12を参照して、半導体素子6及び半導体素子7のオン期間では、直流電源2の負側−半導体素子6−出力フィルタリアクトル13−交流電源17―出力フィルタリアクトル14−半導体素子7−直流電源2の正側の経路に、電流I6が流れる。電流I6は、図6の電流I3と同じ経路を、電流I3と逆方向に流れる。
図13には、半導体素子6及び半導体素子7がオンからオフに切り替わったデッドタイム期間での電流経路が示される。
図13を参照して、デッドタイム期間では、直流電源2の負側−半導体素子6(逆並列ダイオード)−出力フィルタリアクトル13−交流電源17―出力フィルタリアクトル14−半導体素子7(逆並列ダイオード)−直流電源2の正側の経路に、図12と同じ経路の電流I6が流れる。
図14には、デッドタイム期間(図13)後に半導体素子9がオフからオンに切り替わったときの電流経路(還流期間)での電流経路が示される。
図14を参照して、還流期間では、出力フィルタリアクトル14−半導体素子10−半導体素子9−出力フィルタリアクトル13交流電源17を含む経路に、図5と同様の電流I2が流れる。
図14の状態(還流期間)から半導体素子9がオンからオフに切り替わると、再び、図13に示したデッドタイム期間での電流経路が形成される。更にその後、半導体素子6及び半導体素子7がオフからオンに切り替わると、再度、図12(伝送期間)に示された電流経路に電流I6が流れることになる。
(電力変換装置におけるサージ電圧)
次に、図3〜図14で説明した電流経路に基づき、図1に示された電力変換装置1Aで発生するサージ電圧について考察を進める。公知のように、サージ電圧は、半導体素子のスイッチング動作時における電流変化(di/dt)によって、寄生インダクタンスに生じる逆起電圧が原因である。
図15は、図1に示された電力変換装置1A内に存在する配線インダクタンスを説明する回路図である。
図15を参照して、電力変換装置1Aの実装時には、配線の寄生インダクタンス成分による配線インダクタンス40〜60が発生する。
配線インダクタンス40は、直流電源2の正側及びノードNaの間を接続する配線の寄生インダクタンスに相当する。同様に、配線インダクタンス41は、直流電源2の負側及びノードNcの間を接続する配線の寄生インダクタンスに相当する。配線インダクタンス42は、ノードNa及び平滑用コンデンサ3の間に存在し、配線インダクタンス43は、平滑用コンデンサ3及びノードNcの間に存在する。
図17では、図1でのノードNaとは別個に、半導体素子5及び半導体素子7の正極と接続されるノードNhが定義される。ノードNa及びNhは、図1における電気的な接続先(具体的には、直流電源2、平滑用コンデンサ3、半導体素子5、及び、半導体素子7)は共通しているが、配線の寄生インダクタンスの影響を考慮するために、別個に定義されるものである。同様の理由から、図1でのノードNcとは別個に、半導体素子6及び半導体素子8の負極と接続されるノードNiが定義される。
この結果、ノードNa及びノードNhの間の配線インダクタンス44、及び、ノードNb及びノードNiの間の配線インダクタンス45が定義される。又、ノードNh及び半導体素子5の正極の間の配線インダクタンス46、ノードNh及び半導体素子7の正極の間の配線インダクタンス50、及び、ノードNi及び半導体素子6の負極の間の配線インダクタンス49、及び、ノードNi及び半導体素子8の負極の間の配線インダクタンス53が定義される。
更に、半導体素子5の負極及びノードNdの間にも配線インダクタンス47が存在し、ノードNd及び半導体素子6の正極の間にも配線インダクタンス48が存在する。同様に、半導体素子7の負極及びノードNeの間にも配線インダクタンス51が存在し、ノードNe及び半導体素子8の正極の間にも配線インダクタンス52が存在する。
更に、図17では、図1でのノードNfとは別個に、半導体素子9の負極と接続されるノードNjが定義される。上記と同様に、ノードNf及びNjは、図1における電気的な接続先(具体的には、交流電源17、出力フィルタコンデンサ15、半導体素子9、及び、ノードNd)は共通しているが、配線の寄生インダクタンスの影響を考慮するために、別個に定義されるものである。同様の理由から、図1でのノードNgとは別個に、半導体素子10と接続されるノードNkが定義される。
この結果、ノードNd及びノードNjの間の配線インダクタンス54、及び、ノードNe及びノードNkの間の配線インダクタンス55が定義される。又、ノードNj及び半導体素子9の負極の間の配線インダクタンス56、半導体素子9の正極及び半導体素子10の正極同士の間の配線インダクタンス57、及び、ノードNk及び半導体素子10の負極の間の配線インダクタンス58が定義される。
更に、配線インダクタンス59は、ノードNf及び出力フィルタコンデンサ15の間を接続する配線の寄生インダクタンスに相当する。同様に、配線インダクタンス60は、ノードNg及び出力フィルタコンデンサ15の間を接続する配線の寄生インダクタンスに相当する。
尚、図15において、ノードNj及びノードNfの間、及び、ノードNk及びNgの間にも配線インダクタンスは存在する。しかしながら、これらの配線インダクタンスは、ノードNj及びノードNfの間に接続される出力フィルタリアクトル13、並びに、ノードNk及びNgの間に接続される出力フィルタリアクトル14のインダクタンスと比較すると十分小さい。このため、ノードNj及びノードNfの間、及び、ノードNk及びNgの間での配線インダクタンスは考慮から外している。
図16は、スイッチング動作時にインダクタンスに発生する電圧を説明する概念図である。
図16では、直流電源1701、スイッチ1702、配線インダクタンス1703、及び、負荷1704で構成された閉回路において、スイッチ1702をターンオン又はターンオフしたときの回路挙動を説明する。
図16(a)を参照して、スイッチ1702がオンされて一定電流が流れている状態から、スイッチ1702をターンオフして電流を遮断する場合の動作を考える。この場合には、配線インダクタンス1703は、電流が流れていた状態から流れない状態に変化する。インダクタンスには電流の変化を妨げる方向にエネルギーを持つ特徴があるので、この場合には、配線インダクタンス1703は、遮断された電流を流し続ける方向の起電力を発生させるエネルギーを有することになる。これにより、配線インダクタンス1703には、スイッチ1702側がマイナス、かつ、負荷1704側がプラスとなる電位差が生じる。
図16(a)のターンオフ時には、スイッチ1702の両端に発生する電圧は、直流電源1701の電圧と、配線インダクタンス1703に発生した上記電位差の和となる。配線インダクタンス1703の電位差と、直流電源1701の電圧とは同方向であるので、ターンオフ直後のスイッチ1702には、直流電源1701の電圧よりも高い電圧が印加される。
一方で、図16(b)に示されるように、スイッチ1702がオフされて電流が流れていない状態から、スイッチ1702をターンオンして電流を流し始める場合の動作を考える。この場合には、配線インダクタンス1703は、電流が流れていない状態から流れる状態に変化するので、流れ始める電流を妨げる方向のエネルギーを持つことになる。この結果、スイッチ1702のターンオフ時において、配線インダクタンス1703には、スイッチ1702側がプラス、かつ、負荷1704側がマイナスとなる電位差が発生する。
このとき、負荷1704には、直流電源1701の電圧と、配線インダクタンス1703に発生した電位差の和が印加されるが、上述のように、配線インダクタンス1703には、直流電源1701と逆方向の電位差が発生する。従って、負荷1704には、直流電源1701の電圧よりも、低い電圧が印加される。
その後、電流の変化がなくなって一定の電流が負荷に供給されるようになると、配線インダクタンス1703で発生していたエネルギーは、配線の抵抗成分で生じるジュール熱による消費、並びに、電源及びコンデンサ等の容量成分によるエネルギーの蓄電によって吸収される。この結果、配線インダクタンス1703で生じていた電位差は消滅し、負荷1704には、直流電源1701の電圧が印加されることになる。
電力変換装置1Aでは、半導体素子5〜10の各々が図6中のスイッチ1702に対応する。図2及び図3〜図14で説明したような、半導体素子5〜10のスイッチング動作時には、図16(a)又は図16(b)で説明した回路挙動が発生する。この際に、図15中に示した各配線インダクタンスは、半導体素子5〜10のオン又はオフに伴う電流変化を妨げるように電位差を発生させるエネルギーを持ち得ることが理解される。
(電力変換装置の第1の動作パターンでのサージ電圧の考察)
次に、電力変換装置1Aにおいて、上述の第1から第4の動作パターンで発生するサージ電圧について考察を進める。
まず、電力変換装置1Aが、第1の動作パターン(交流電圧が正、かつ、交流電流が正)であるときに発生するサージ電圧を考察する。ここでは、図3に示した電力伝送期間から図4に示したデッドタイム期間への移行時、及び、反対に、デッドタイム期間(図4)から電力伝送期間(図3)への移行時を考えることが必要である。
図17は、第1の動作パターンの電力伝送期間(図3)及びデッドタイム期間(図4)の電流経路を比較するための回路図である。図17では、電力伝送期間(図3)での電流経路(I1)が実線で示され、デッドタイム期間(図4)での電流経路(I2)は点線で示される。尚、図17では、図3及び図4での半導体素子5〜10のいずれがオンしているかを示す表記は省略されている。
図17を参照して、実線と点線が重なって表記される、ノードNj―出力フィルタリアクトル13−ノードNf―交流電源17−ノードNg−出力フィルタリアクトル14−ノードNkの経路では、電力伝送期間及びデッドタイム期間の間の移行時、電流の変化は生じない。
これに対して、ノードNk−配線インダクタンス55−配線インダクタンス52−半導体素子8−配線インダクタンス53−ノードNi―配線インダクタンス45−ノードNc−配線インダクタンス41−直流電源2−配線インダクタンス40−ノードNa―配線インダクタンス44−ノードNh−配線インダクタンス46−半導体素子5−配線インダクタンス47−ノードNd−配線インダクタンス54−ノードNjの経路では、電力伝送期間からデッドタイム期間への移行時に、これまで電流が流れていたが電流が流れなくなる電流変化が生じる。
一方で、ノードNj−配線インダクタンス56−半導体素子9−配線インダクタンス57−半導体素子10−配線インダクタンス58−ノードNkの経路では、電力伝送期間からデッドタイム期間への移行時に、これまで電流が流れていなかったが電流が流れるようになる電流変化が生じる。
図18は、第1の動作パターンでの電力伝送期間からデッドタイム期間への移行時に配線インダクタンスに発生する電位差を説明するための回路図である。
図18を参照して、図17で説明した電流変化が生じる経路に含まれる配線インダクタンスには、下記のように、電流変化を妨げる方向の電位差が発生する。
具体的には、配線インダクタンス40は、直流電源2をマイナス側、ノードNaをプラス側とした電位差を発生する。配線インダクタンス44は、ノードNaをマイナス側、ノードNhをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス46は、ノードNhをマイナス側、半導体素子5をプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス47は、半導体素子5をマイナス側、ノードNdをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス54は、ノードNdをマイナス側、ノードNjをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス56は、ノードNjをマイナス側、半導体素子9をプラス側とする電位差を発生する。
同様に、配線インダクタンス57は、半導体素子9をマイナス側、半導体素子10をプラス側とする電位差を発生し、配線インダクタンス58は、半導体素子10をマイナス側、ノードNkをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス55は、ノードNkをマイナス側、ノードNeをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス52は、ノードNeをマイナス側、半導体素子8をプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス53は、半導体素子10をマイナス側、ノードNiをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス45は、ノードNiをマイナス側、ノードNcをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス41は、ノードNcをマイナス側、直流電源2をプラス側とする電位差を発生する。
図18では、直流電源2を電流経路として考えているが、平滑用コンデンサ3の方が直流電源2よりも電流経路の配線インダクタンスが小さく瞬間的なエネルギーを賄うことが可能である場合には、直流電源2ではなく、平滑用コンデンサ3を通過するように電流経路が形成される。
又、後程説明するように、スナバコンデンサを接続することで、平滑用コンデンサ3及び直流電源2を通過する経路よりも配線インダクタンスが小さい経路を形成している場合には、スナバコンデンサを通過する当該経路が電流経路となることで、配線インダクタンスを減少されることができる。
ここで、電力伝送期間からデッドタイム期間への移行時に、ターンオフされる半導体素子5及び半導体素子8に対して印加される電圧を考える。デッドタイム期間では、半導体素子9及び半導体素子10には、電流I2による電圧降下分のみが印加される。一方で、半導体素子5及び半導体素子8の両者に対しては、直流電源2の電圧と、配線インダクタンス40の電圧と、配線インダクタンス44の電圧と、配線インダクタンス46の電圧と、配線インダクタンス47の電圧と、配線インダクタンス54の電圧と、配線インダクタンス56の電圧と、配線インダクタンス57の電圧と、配線インダクタンス58の電圧と、配線インダクタンス55の電圧と、配線インダクタンス52の電圧と、配線インダクタンス53の電圧と、配線インダクタンス45の電圧と、配線インダクタンス41の電圧との加算電圧が印加される。
上記加算電圧が、半導体素子5及び半導体素子8にそれどれどの程度の比率で印加されるかは、半導体素子の漏れ電流によるインピーダンス差及びスイッチングタイミングのずれに依存する。従って、半導体素子5及び半導体素子8のそれぞれに実際に印加される電圧はばらつきことがある。但し、上記から理解されるように、半導体素子5及び半導体素子8への印加電圧の和は、直流電源2の電圧よりも、複数の配線インダクタンスで発生した電圧分だけ増加している。これはオフサージ電圧と呼ばれる。
以上より、クランプ回路を持つ3レベルインバータである電力変換装置1Aにおいて、第1の動作パターン(交流電圧が正、かつ、交流電流が正)において、電力伝送期間からデッドタイム期間への移行時には、直流電源2から、半導体素子5−半導体素子9―半導体素子10−半導体素子8―直流電源2を結ぶ経路上の配線インダクタンスが、サージ電圧の発生に寄与することが理解される。
次に、電力変換装置1Aが、第1の動作パターンでのデッドタイム期間(図4)から電力伝送期間(図3)へ移行する場合を考える。
デッドタイム期間(図4)から電力伝送期間(図3)への移行時には、図17において、点線で示された電流経路(I2)から、実線で示された電流経路(I1)への変化が生じる。この際に、実際には、半導体素子10のダイオードが導通状態から非導通状態へと移行する際に、リカバリ電流又は変異電流が発生する。
図19は、第1の動作パターンでのデッドタイム期間から電力伝送期間への移行時に発生するリカバリ電流又は変異電流の経路を説明する回路図である。
図19を参照して、デッドタイム期間から電力伝送期間への移行時には、実線で示された、電力伝送期間(図3)での電流経路(I1)と、点線で示されたデッドタイム期間(図4)での電流経路(I2)とは異なる、リカバリ電流又は変異電流としての電流I7が生じる。電流I7は、一点鎖線で表記された、直流電源2−半導体素子5−半導体素子9−半導体素子10−半導体素子8−直流電源2の経路を流れる。
この電流I7(リカバリ電流又は変異電流)は、半導体素子10のダイオード内部の電荷が抜けきる、又は、浮遊容量の充電が完了すると消滅する。この際に、電流I7の経路に含まれる配線インダクタンスは、電流I7が消滅する電流変化を妨げる方向に、電位差を発生させる。
図20には、図19に示された電流I7が消滅する際に配線インダクタンスに発生する電位差を説明するための回路図が示される。
図20を参照して、図19に示された電流I7が消滅する際に、配線インダクタンス40は、直流電源2をマイナス側、ノードNaをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス44は、ノードNaをマイナス側、ノードNhをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス46は、ノードNgをマイナス側、半導体素子5をプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス47は、半導体素子5をマイナス側、ノードNdをプラス側とする電位差を発生する。
同様に、配線インダクタンス54は、ノードNdをマイナス側、ノードNjをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス56は、ノードNjをマイナス側、半導体素子9をプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス57は、半導体素子9をマイナス側、半導体素子10をプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス58は、半導体素子10をマイナス側、ノードNkをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス55は、ノードNkをマイナス側、ノードNeをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス52は、ノードNeをマイナス側、半導体素子8をプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス53は、半導体素子8をマイナス側、ノードNiをプラス側とした電位差を発生する。配線インダクタンス45はノードNiをマイナス側、ノードNcをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス41は、ノードNcをマイナス側、直流電源2をプラス側とした電位差を発生する。
このように、デッドタイム期間から電力伝送期間への移行時において、各配線インダクタンスに発生する電圧は、電力伝送期間からデッドタイム期間への移行時と同じ方向である。但し、電力伝送期間では、半導体素子5、半導体素子9、及び、半導体素子8はオン状態である。このため、電流I7が消滅する際に、これらの半導体素子5、半導体素子9、及び、半導体素子8には、電流による電圧降下分しか印加されない。従って、デッドタイム期間から電力伝送期間への移行時に、リカバリ電流又は変異電流が消滅する際には、直流電源2の電圧と配線インダクタンスで発生した電圧との和、即ち、半導体素子10には、直流電源2の電圧よりも高い電圧が、半導体素子10に印加される。この際の半導体素子10への印加電圧は、リカバリサージ電圧と呼ばれる。
以上から、電力変換装置1Aが、第1の動作パターン(交流電圧が正、かつ、交流電流が正)であるときに、デッドタイム期間及び電力伝送期間の間での移行時に問題となる配線インダクタンス、即ち、サージ電圧の発生に寄与する配線インダクタンスは、直流電源2から半導体素子5−半導体素子9―半導体素子10−半導体素子8―直流電源2を結ぶ経路に含まれる配線インダクタンスであることが理解される。
(電力変換装置の第2の動作パターンでのサージ電圧の考察)
次に、電力変換装置1Aが、第2の動作パターン(交流電圧が負、かつ、交流電流が負)であるときに発生するサージ電圧を考察する。ここでは、図6に示した電力伝送期間から図7に示したデッドタイム期間への移行時、及び、反対に、デッドタイム期間(図7)から電力伝送期間(図3)への移行時を考えることが必要である。
図21は、第2の動作パターンの電力伝送期間(図6)及びデッドタイム期間(図7)の電流経路を比較するための回路図である。図21では、電力伝送期間(図6)での電流経路(I3)が実線で示され、デッドタイム期間(図7)での電流経路(I4)は点線で示される。図21では、図6及び図7での半導体素子5〜10のいずれがオンしているかを示す表記は省略されている。
図21を参照して、実線と点線が重なって表記される、ノードNk―出力フィルタリアクトル14−ノードNg―交流電源17−ノードNf−出力フィルタリアクトル13−ノードNjの経路では、電力伝送期間及びデッドタイム期間の間の移行時、電流の変化は生じない。
これに対して、ノードNj−配線インダクタンス54−配線インダクタンス48−半導体素子6−配線インダクタンス49−ノードNi―配線インダクタンス45−ノードNc−配線インダクタンス41−直流電源2−配線インダクタンス40−ノードNa―配線インダクタンス44−ノードNh−配線インダクタンス50−半導体素子7−配線インダクタンス51−ノードNe−配線インダクタンス55−ノードNkの経路では、電力伝送期間からデッドタイム期間への移行時に、これまで電流が流れていたが電流が流れなくなる電流変化が生じる。
一方で、ノードNj−配線インダクタンス56−半導体素子9−配線インダクタンス57−半導体素子10−配線インダクタンス58−ノードNkの経路では、電力伝送期間からデッドタイム期間への移行時に、これまで電流が流れていなかったが電流が流れるようになる電流変化が生じる。
図22は、第2の動作パターンでの電力伝送期間からデッドタイム期間への移行時に配線インダクタンスに発生する電位差を説明するための回路図である。
図22を参照して、図21で説明した電流変化が生じる経路に含まれる配線インダクタンスには、下記のように、電流変化を妨げる方向の電位差が発生する。
具体的には、配線インダクタンス40は、直流電源2をマイナス側、ノードNaをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス44は、ノードNaをマイナス側、ノードNhをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス50は、ノードNhをマイナス側、半導体素子7をプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス51は、半導体素子7をマイナス側、ノードNeをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス55は、ノードNeをマイナス側、ノードNkをプラス側とする電位差を発生する。
同様に、配線インダクタンス58は、ノードNkをマイナス側、半導体素子10をプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス57は、半導体素子10をマイナス側、半導体素子9をプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス56は、半導体素子9をマイナス側、ノードNjをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス54は、ノードNjをマイナス側、ノードNdをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス48は、ノードNdをマイナス側、半導体素子6をプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス49は、半導体素子6をマイナス側、ノードNiをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス45は、ノードNiをマイナス側、ノードNcをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス41は、ノードNcをマイナス側、直流電源2をプラス側とした電位差を発生する。
ここで、電力伝送期間からデッドタイム期間への移行時に、ターンオフされる半導体素子7及び半導体素子6に対して印加される電圧を考える。デッドタイム期間では、半導体素子9及び半導体素子10には、電流I4による電圧降下分のみが印加される。
一方で、半導体素子6及び半導体素子7の両者に対しては、直流電源2の電圧と、配線インダクタンス40の電圧と、配線インダクタンス44の電圧と、配線インダクタンス50の電圧と、配線インダクタンス51の電圧と、配線インダクタンス55の電圧と、配線インダクタンス58の電圧と、配線インダクタンス57の電圧と、配線インダクタンス56の電圧と、配線インダクタンス54の電圧と、配線インダクタンス48の電圧と、配線インダクタンス49の電圧と、配線インダクタンス45の電圧と、配線インダクタンス41の電圧との加算電圧が印加される。
上記加算電圧が、半導体素子6及び半導体素子7にそれどれどの程度の比率で印加されるかは、半導体素子の漏れ電流によるインピーダンス差及びスイッチングタイミングのずれに依存する。従って、半導体素子6及び半導体素子7のそれぞれに実際に印加される電圧はばらつきことがある。このように、半導体素子6及び半導体素子7に対して、直流電源2の電圧よりも高い、オフサージ電圧が印加される。
以上より、クランプ回路を持つ3レベルインバータである電力変換装置1Aにおいて、第2の動作パターン(交流電圧が負、かつ、交流電流が負)において、電力伝送期間からデッドタイム期間への移行時には、直流電源2から半導体素子7−半導体素子10―半導体素子9−半導体素子6―直流電源2を結ぶ経路上の配線インダクタンスが、サージ電圧の発生に寄与することが理解される。
次に、電力変換装置1Aが、第2の動作パターンでのデッドタイム期間(図7)から電力伝送期間(図6)へ移行する場合を考える。
デッドタイム期間(図7)から電力伝送期間(図6)への移行時には、図21において、点線で示された電流経路(I4)から、実線で示された電流経路(I3)への変化が生じる。この際に、実際には、半導体素子9のダイオードが導通状態から非導通状態へと移行する際に、リカバリ電流又は変異電流が発生する。
図23は、第2の動作パターンでのデッドタイム期間から電力伝送期間への移行時に発生するリカバリ電流又は変異電流の経路を説明する回路図である。
図23を参照して、デッドタイム期間から電力伝送期間への移行時には、実線で示された電力伝送期間(図6)での電流経路(I3)と、点線で示されたデッドタイム期間(図7)での電流経路(I4)とは異なる、リカバリ電流又は変異電流としての電流I8が生じる。電流I8は、一点鎖線で表記された、直流電源2−半導体素子7−半導体素子10−半導体素子9−半導体素子6−直流電源2の経路を流れる。
この電流I8(リカバリ電流又は変異電流)についても、半導体素子9のダイオード内部の電荷が抜けきる、又は、浮遊容量の充電が完了すると消滅する。この際に、電流I8の経路に含まれる配線インダクタンスは、電流I8が消滅する電流変化を妨げる方向に、電位差を発生させる。
図24には、図23に示された電流I8が消滅する際に配線インダクタンスに発生する電位差を説明するための回路図が示される。
図24を参照して、電流I8(図23)が消滅する際に、配線インダクタンス40は、直流電源2をマイナス側、ノードNaをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス44は、ノードNaをマイナス側、ノードNhをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス50は、ノードNhをマイナス側、半導体素子7をプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス51は、半導体素子7をマイナス側、ノードNeをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス55は、ノードNeをマイナス側、ノードNkをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス58は、ノードNkをマイナス側、半導体素子10をプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス57は、半導体素子10をマイナス側、半導体素子9をプラス側とする電位差を発生する。
同様に、配線インダクタンス56は、半導体素子9をマイナス側、ノードNjをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス54は、ノードNjをマイナス側、ノードNdをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス48は、ノードNdをマイナス側、半導体素子6をプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス49は、半導体素子6をマイナス側、ノードNiをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス45は、ノードNiをマイナス側、ノードNcをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス41は、ノードNcをマイナス側、直流電源2をプラス側とした電位差を発生する。
このように、第2の動作パターンにおいても、デッドタイム期間から電力伝送期間への移行時において、各配線インダクタンスに発生する電圧は、電力伝送期間からデッドタイム期間への移行時と同じ方向である。但し、電力伝送期間では、半導体素子7、半導体素子6、及び、半導体素子10はオン状態であるので、電流I8が消滅する際には、これらの半導体素子7、半導体素子6、及び、半導体素子10には、電流による電圧降下分しか印加されない。従って、デッドタイム期間から電力伝送期間への移行時に、リカバリ電流又は変異電流が消滅する際には、半導体素子9には、直流電源2の電圧よりも高い、リカバリサージ電圧が印加される。
以上から、電力変換装置1Aが、第2の動作パターン(交流電圧が負、かつ、交流電流が負)であるときに、デッドタイム期間及び電力伝送期間の間での移行時に問題となる配線インダクタンス、即ち、サージ電圧の発生に寄与する配線インダクタンスは、直流電源2から半導体素子7−半導体素子10―半導体素子9−半導体素子6―直流電源2を結ぶ経路に含まれる配線インダクタンスであることが理解される。
(電力変換装置の第3の動作パターンでのサージ電圧の考察)
次に、電力変換装置1Aが、第3の動作パターン(交流電圧が正、かつ、交流電流が負)であるときに発生するサージ電圧を考察する。ここでは、図11に示した還流期間から図10に示したデッドタイム期間への移行時、及び、反対に、デッドタイム期間(図10)から還流期間(図11)への移行時を考えることが必要である。
図25は、第3の動作パターンの還流期間(図11)及びデッドタイム期間(図10)の電流経路を比較するための回路図である。図25では、デッドタイム期間(図10)での電流経路(I5)が実線で示され、還流期間(図11)での電流経路(I4)は点線で示される。図25でも、図10及び図11での半導体素子5〜10のいずれがオンしているかを示す表記は省略されている。
図25を参照して、実線と点線が重なって表記される、ノードNk―出力フィルタリアクトル14−ノードNg―交流電源17−ノードNf−出力フィルタリアクトル13−ノードNjの経路では、還流期間及びデッドタイム期間の間の移行時、電流の変化は生じない。
これに対して、ノードNj−配線インダクタンス54−配線インダクタンス47−半導体素子5−配線インダクタンス46−ノードNh―配線インダクタンス44−ノードNa−配線インダクタンス40−直流電源2−配線インダクタンス41−ノードNc―配線インダクタンス45−ノードNi−配線インダクタンス53−半導体素子8−配線インダクタンス52−ノードNe−配線インダクタンス55−ノードNkの経路では、還流期間からデッドタイム期間への移行時に、これまで電流が流れていなかったが電流が流れるようになる電流変化が生じる。
一方で、ノードNk−配線インダクタンス58−半導体素子10−配線インダクタンス57−半導体素子9−配線インダクタンス56−ノードNjの経路では、これまで電流が流れていたが電流が流れなくなる電流変化が生じる。
図26は、第3の動作パターンでの還流期間からデッドタイム期間への移行時に配線インダクタンスに発生する電位差を説明するための回路図である。
図26を参照して、図25で説明した電流変化が生じる経路に含まれる配線インダクタンスには、下記のように、電流変化を妨げる方向の電位差が発生する。
具体的には、配線インダクタンス40は、直流電源2をマイナス側、ノードNaをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス44は、ノードNaをマイナス側、ノードNhをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス46は、ノードNhをマイナス側、半導体素子5をプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス47は、半導体素子5をマイナス側、ノードNdをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス54は、ノードNdをマイナス側、ノードNjをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス56は、ノードNjをマイナス側、半導体素子9をプラス側とする電位差を発生する。
同様に、配線インダクタンス57は、半導体素子9をマイナス側、半導体素子10をプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス58は、半導体素子10をマイナス側、ノードNkをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス55は、ノードNkをマイナス側、ノードNeをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス52は、ノードNeをマイナス側、半導体素子8をプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス53は、半導体素子8をマイナス側、ノードNiをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス45は、ノードNiをマイナス側、ノードNcをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス41は、ノードNcをマイナス側、直流電源2をプラス側とした電位差を発生する。
ここで、還流期間からデッドタイム期間への移行時に、ターンオフされる半導体素子10に印加される電圧を考える。デッドタイム期間では、半導体素子5、半導体素子8、及び、半導体素子9は導通状態であるため、これらの半導体素子5、半導体素子8、及び、半導体素子9には、電流I5による電圧降下分のみが印加される。
一方で、半導体素子10に対しては、直流電源2の電圧と、配線インダクタンス40電圧と、配線インダクタンス44の電圧と、配線インダクタンス46の電圧と、配線インダクタンス47の電圧と、配線インダクタンス54の電圧と、配線インダクタンス56の電圧と、配線インダクタンス57の電圧と、配線インダクタンス58の電圧と、配線インダクタンス55の電圧と、配線インダクタンス52の電圧と、配線インダクタンス53の電圧と、配線インダクタンス45の電圧と、配線インダクタンス41の電圧との和が印加される。これにより、半導体素子10には、直流電源2の電圧よりも高い、オフサージ電圧が印加される。
以上より、クランプ回路を持つ3レベルインバータである電力変換装置1Aでは、第3の動作パターン(交流電圧が正、かつ、交流電流が負)において、還流期間からデッドタイム期間への移行時には、直流電源2から半導体素子5−半導体素子9―半導体素子10−半導体素子8―直流電源2を結ぶ経路上の配線インダクタンスが、サージ電圧の発生に寄与することが理解される。
次に、電力変換装置1Aが、第3の動作パターンでのデッドタイム期間(図10)から還流期間(図11)へ移行する場合を考える。
デッドタイム期間(図10)から還流期間(図11)への移行時には、図24において、実線で示された電流経路(I5)から、点線で示された電流経路(I4)への変化が生じる。この際に、実際には、半導体素子8のダイオードが導通状態から非導通状態へと移行する際に、リカバリ電流又は変異電流が発生する。
図27は、第3の動作パターンでのデッドタイム期間から還流期間への移行時に発生するリカバリ電流又は変異電流の経路を説明する回路図である。
図27を参照して、デッドタイム期間から還流期間への移行時には、実線で示されたデッドタイム期間(図10)での電流経路(I5)と、点線で示された還流期間(図4)での電流経路(I4)とは異なる、リカバリ電流又は変異電流としての電流I7が生じる。電流I7は、図19と同様に、一点鎖線で表記された、直流電源2−半導体素子5−半導体素子9−半導体素子10−半導体素子8−直流電源2の経路を流れる。
電流I7は、半導体素子8のダイオード内部の電荷が抜けきる、又は、浮遊容量の充電が完了すると消滅する。この際に、電流I7の経路に含まれる配線インダクタンスは、電流I7が消滅する電流変化を妨げる方向に、電位差を発生させる。
図28には、図27に示された電流I7が消滅する際に配線インダクタンスに発生する電位差を説明するための回路図が示される。
図28を参照して、電流I7(図27)が消滅する際に、配線インダクタンス40は、直流電源2をマイナス側、ノードNaをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス44は、ノードNaをマイナス側、ノードNhをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス46は、ノードNhをマイナス側、半導体素子5をプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス47は、半導体素子5をマイナス側、ノードNdをプラス側とした電位差を発生する。配線インダクタンス54は、ノードNdをマイナス側、ノードNjをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス56は、ノードNjをマイナス側、半導体素子9をプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス57は、半導体素子9をマイナス側、半導体素子10をプラス側とする電位差を発生する。
更に、配線インダクタンス58は、半導体素子10をマイナス側、ノードNkをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス55は、ノードNkをマイナス側、ノードNeをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス52は、ノードNeをマイナス側、半導体素子8をプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス53は、半導体素子8をマイナス側、ノードNiをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス45は、ノードNiをマイナス側、ノードNcをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス41は、ノードNcをマイナス側、直流電源2をプラス側とした電位差を発生する。
このように、第3の動作パターンにおいて、デッドタイム期間から還流期間への移行時において、各配線インダクタンスに発生する電圧は、還流期間からデッドタイム期間への移行時と同じ方向である。但し、還流期間では、半導体素子9及び半導体素子10はオン状態であるので、電流I7が消滅する際には、これらの半導体素子9及び半導体素子10には、電流による電圧降下分しか印加されない。従って、デッドタイム期間から還流期間への移行時に、リカバリ電流又は変異電流が消滅する際には、半導体素子5及び半導体素子8に対して、直流電源2の電圧よりも高い、リカバリサージ電圧が印加される。
以上から、電力変換装置1Aが、第3の動作パターン(交流電圧が正、かつ、交流電流が負)であるときに、デッドタイム期間及び還流期間の間での移行時に問題となる配線インダクタンス、即ち、サージ電圧の発生に寄与する配線インダクタンスは、直流電源2から半導体素子5−半導体素子9―半導体素子10−半導体素子8―直流電源2を結ぶ経路に含まれる配線インダクタンスであることが理解される。
(電力変換装置の第4の動作パターンでのサージ電圧の考察)
次に、電力変換装置1Aが、第4の動作パターン(交流電圧が負、かつ、交流電流が正)であるときに発生するサージ電圧を考察する。ここでは、図14に示した還流期間から図13に示したデッドタイム期間への移行時、及び、反対に、デッドタイム期間(図13)から還流期間(図14)への移行時を考えることが必要である。
図29は、第4の動作パターンの還流期間(図14)及びデッドタイム期間(図13)の電流経路を比較するための回路図である。図29では、デッドタイム期間(図13)での電流経路(I6)が実線で示され、還流期間(図14)での電流経路(I2)は点線で示される。図29でも、図13及び図14での半導体素子5〜10のいずれがオンしているかを示す表記は省略されている。
図29を参照して、実線と点線が重なって表記される、ノードNj―出力フィルタリアクトル13−ノードNf―交流電源17−ノードNg−出力フィルタリアクトル14−ノードNkの経路では、還流期間及びデッドタイム期間の間の移行時、電流の変化は生じない。
これに対して、ノードNk−配線インダクタンス55−配線インダクタンス51−半導体素子7−配線インダクタンス50−ノードNh―配線インダクタンス44−ノードNa−配線インダクタンス40−直流電源2−配線インダクタンス41−ノードNc―配線インダクタンス45−ノードNi−配線インダクタンス49−半導体素子6−配線インダクタンス48−ノードNd−配線インダクタンス54−ノードNjの経路では、還流期間からデッドタイム期間への移行時に、これまで電流が流れていなかったが電流が流れるようになる電流変化が生じる。
一方で、ノードNk−配線インダクタンス58−半導体素子10−配線インダクタンス57−半導体素子9−配線インダクタンス56−ノードNjの経路では、これまで電流が流れていたが電流が流れなくなる電流変化が生じる。
図30は、第4の動作パターンでの還流期間からデッドタイム期間への移行時に配線インダクタンスに発生する電位差を説明するための回路図である。
図30を参照して、図29で説明した電流変化が生じる経路に含まれる配線インダクタンスには、下記のように、電流変化を妨げる方向の電位差が発生する。
具体的には、配線インダクタンス40は、直流電源2をマイナス側、ノードNaをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス44は、ノードNaをマイナス側、ノードNhをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス50は、ノードNhをマイナス側、半導体素子7をプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス51は、半導体素子7をマイナス側、ノードNeをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス55は、ノードNeをマイナス側、ノードNkをプラス側とする電位差を発生する。
同様に、配線インダクタンス58は、ノードNkをマイナス側、半導体素子10をプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス57は、半導体素子10をマイナス側、半導体素子9をプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス56は、半導体素子9をマイナス側、ノードNjをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス54は、ノードNjをマイナス側、ノードNdをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス48は、ノードNdをマイナス側、半導体素子6をプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス49は、半導体素子6をマイナス側、ノードNiをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス45は、ノードNiをマイナス側、ノードNcをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス41は、ノードNcをマイナス側、直流電源2をプラス側とした電位差を発生する。
ここで、還流期間からデッドタイム期間への移行時に、半導体素子9に印加される電圧を考える。デッドタイム期間では、半導体素子6、半導体素子7、及び、半導体素子10には、電流I6による電圧降下分のみが印加される。
一方で、半導体素子9に対しては、直流電源2の電圧と、配線インダクタンス40の電圧と、配線インダクタンス44の電圧と、配線インダクタンス50の電圧と、配線インダクタンス51の電圧と、配線インダクタンス55の電圧と、配線インダクタンス58の電圧と、配線インダクタンス57の電圧と、配線インダクタンス56の電圧と、配線インダクタンス54の電圧と、配線インダクタンス48の電圧と、配線インダクタンス49の電圧と、配線インダクタンス45の電圧と、配線インダクタンス41の電圧との和が印加される。これにより、半導体素子9には、直流電源2の電圧よりも高い、オフサージ電圧が印加される。
以上より、クランプ回路を持つ3レベルインバータである電力変換装置1Aにおいて、第4の動作パターン(交流電圧が負、かつ、交流電流が正)において、還流期間からデッドタイム期間への移行時には、直流電源2から半導体素子7−半導体素子10―半導体素子9−半導体素子6―直流電源2を結ぶ経路上の配線インダクタンスが、サージ電圧の発生に寄与することが理解される。
次に、電力変換装置1Aが、第4の動作パターンでのデッドタイム期間(図13)から還流期間(図14)へ移行する場合を考える。
デッドタイム期間(図13)から還流期間(図14)への移行時には、図29において、実線で示された電流経路(I6)から、点線で示された電流経路(I2)への変化が生じる。この際に、実際には、半導体素子7及び半導体素子6のダイオードが導通状態から非導通状態へと移行する際に、リカバリ電流又は変異電流が発生する。
図31は、第4の動作パターンでのデッドタイム期間から還流期間への移行時に発生するリカバリ電流又は変異電流の経路を説明する回路図である。
図31を参照して、デッドタイム期間から還流期間への移行時には、実線で示されたデッドタイム期間(図13)での電流経路(I6)と、点線で示された還流期間(図14)での電流経路(I2)とは異なる、リカバリ電流又は変異電流としての電流I8が生じる。電流I8は、図23と同様に、一点鎖線で表記された、直流電源2−半導体素子7−半導体素子10−半導体素子9−半導体素子6−直流電源2の経路を流れる。
電流I8は、半導体素子7及び半導体素子6のダイオード内部の電荷が抜けきる、又は、浮遊容量の充電が完了すると消滅する。この際に、電流I8の経路に含まれる配線インダクタンスは、電流I7が消滅する電流変化を妨げる方向に、電位差を発生させる。
図32には、図31に示された電流I7が消滅する際に配線インダクタンスに発生する電位差を説明するための回路図が示される。
図32を参照して、電流I8(図31)が消滅する際に、配線インダクタンス40は直流電源2をマイナス側、ノードNaをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス44は、ノードNaをマイナス側、ノードNhをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス50は、ノードNhをマイナス側、半導体素子7をプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス51は、半導体素子7をマイナス側、ノードNeをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス55は、ノードNeをマイナス側、ノードNkをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス58は、ノードNkをマイナス側、半導体素子10をプラス側とする電位差を発生する。
更に、配線インダクタンス57は、半導体素子10をマイナス側、半導体素子9をプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス56は、半導体素子9をマイナス側、ノードNjをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス54は、ノードNjをマイナス側、ノードNdをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス48は、ノードNdをマイナス側、半導体素子6をプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス49は、半導体素子6をマイナス側、ノードNiをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス45は、ノードNiをマイナス側、ノードNcをプラス側とする電位差を発生する。配線インダクタンス41は、ノードNcをマイナス側、直流電源2をプラス側とした電位差を発生する。
このように、第4の動作パターンにおいて、デッドタイム期間から還流期間への移行時において、各配線インダクタンスに発生する電圧は、還流期間からデッドタイム期間への移行時と同じ方向である。但し、還流期間では半導体素子9及び半導体素子10はオン状態であるので、電流I7が消滅する際に、これらの半導体素子9及び半導体素子10には、電流による電圧降下分しか印加されない。従って、デッドタイム期間から還流期間への移行時に、リカバリ電流又は変異電流が消滅する際には、半導体素子6及び半導体素子7に対して、直流電源2の電圧と、各配線インダクタンスで発生した電圧との和に従って、リカバリサージ電圧が印加される。
以上から、電力変換装置1Aが、第4の動作パターン(交流電圧が負、かつ、交流電流が正)であるときに、デッドタイム期間及び還流期間の間での移行時に問題となる配線インダクタンス、即ち、サージ電圧の発生に寄与する配線インダクタンスは、直流電源2から半導体素子7−半導体素子10―半導体素子9−半導体素子6―直流電源2を結ぶ経路に含まれる配線インダクタンスであることが理解される。
(電力変換装置の各動作パターンでのサージ電圧のまとめ)
図18〜図32で説明した、各動作パターンにおける、サージ電圧が発生する半導体素子、並びに、サージ電圧の原因となる電流経路を整理すると、図33が得られる。
図33は、実施の形態1に係る電力変換装置1Aの各動作パターンにおける、サージ電圧が発生する半導体素子、並びに、サージ電圧の原因となる電流経路の一覧を示す図表である。
図33を参照して、交流電圧及び交流電流が正である第1の動作パターンでは、図17〜図20で説明したように、半導体素子5及び半導体素子8にオフサージ電圧が発生する一方で、半導体素子10にリカバリサージ電圧が発生する。図18及び図20で説明したように、オフサージ電圧及びリカバリサージ電圧のいずれについても、サージ電圧の原因となる電流経路は、直流電源2から、半導体素子5−半導体素子9―半導体素子10−半導体素子8―直流電源2を結ぶ経路であり、当該経路上の配線インダクタンスが、サージ電圧を発生させる。
交流電圧及び交流電流が負である第2の動作パターンでは、図21〜図24で説明したように、半導体素子6及び半導体素子7にオフサージ電圧が発生する一方で、半導体素子9にリカバリサージ電圧が発生する。図22及び図24で説明したように、オフサージ電圧及びリカバリサージ電圧のいずれについても、サージ電圧の原因となる電流経路は、直流電源2から半導体素子7−半導体素子10―半導体素子9−半導体素子6―直流電源2を結ぶ経路であり、当該経路上の配線インダクタンスが、サージ電圧を発生させる。
交流電圧が正、かつ、交流電流が負である第3の動作パターンでは、図25〜図28で説明したように、半導体素子10にオフサージ電圧が発生する一方で、半導体素子5及び半導体素子8にリカバリサージ電圧が発生する。図26及び図28で説明したように、オフサージ電圧及びリカバリサージ電圧のいずれについても、サージ電圧を発生させる電流経路は、直流電源2から半導体素子5−半導体素子9―半導体素子10−半導体素子8―直流電源2を結ぶ経路であり、当該経路上の配線インダクタンスが、サージ電圧を発生させる。
交流電圧が負、かつ、交流電流が正である第4の動作パターンでは、図29〜図32で説明したように、半導体素子9にオフサージ電圧が発生する一方で、半導体素子6及び半導体素子7にリカバリサージ電圧が発生する。図30及び図32で説明したように、オフサージ電圧及びリカバリサージ電圧のいずれについても、サージ電圧の原因となる電流経路は、直流電源2から半導体素子7−半導体素子10―半導体素子9−半導体素子6―直流電源2を結ぶ経路であり、当該経路上の配線インダクタンスが、サージ電圧を発生させる。
図33から、クランプ回路を持つ3レベルインバータである電力変換装置1Aでは、第1の動作パターン及び第3の動作パターンの間で、サージ電圧が発生する半導体素子、及び、サージ電圧の原因となる電流経路が共通する。同様に、第2の動作パターン及び第2の動作パターンの間で、サージ電圧が発生する半導体素子、及び、サージ電圧の原因となる電流経路が共通する。従って、電力変換装置1Aでは、サージ電圧の原因となる電流経路、即ち、サージ電圧を発生させる配線インダクタンスが含まれる経路は、2種類存在する。
(2レベルインバータでのサージ電圧低減)
次に、比較例として、2レベルインバータでのサージ電圧の低減について説明する。
図34は、比較例として示される2レベルインバータの構成を説明する回路図である。
図34を参照して、比較例として示される2レベルインバータ1Xは、フルブリッジ型インバータで構成されており、図1に示された電力変換装置1Aから、半導体素子9及び半導体素子10を除いた回路構成を有する。
即ち、2レベルインバータ1Xでは、ノードNdが、半導体素子を介さずに出力フィルタリアクトル13と接続されるとともに、ノードNeが、半導体素子を介さずに出力フィルタリアクトル14と接続される点が、図1の電力変換装置1Aと異なる。一方で、2レベルインバータ1Xでは、半導体素子5〜半導体素子8によるブリッジ回路は、電力変換装置1Aと同様に構成される。同様に、ノードNf及びNgに対する、出力フィルタ回路及び交流電源17の接続関係も、2レベルインバータ1X及び電力変換装置1Aで共通である。言い換えると、電力変換装置1Aは、ブリッジ回路(2レベルインバータ1X)の第1レグの中点、及び、第2レグの中点の間に、クランプ回路として作用する双方向スイッチを構成する、少なくとも1つの半導体素子が接続された構成を有している。
図35は、図34に示された2レベルインバータ1Xの半導体素子のオンオフ制御を説明する波形図である。
図35を参照して、図2の交流出力指令値201と同様の交流出力指令値1001を基準として、半導体素子5及び半導体素子8の駆動信号1002と、半導体素子6及び半導体素子7の駆動信号1003とが生成される。
交流出力指令値1001が正の期間及び負の期間を通じて、駆動信号1002及び1003は、相補に「1」及び「0」に設定される。半導体素子5及び半導体素子8の駆動信号27及び30は、駆動信号1002に従って生成され、半導体素子6及び半導体素子7の駆動信号28及び29は、駆動信号1003に従って生成される。この際に、駆動信号27〜30には、上述のデッドタイムが適宜設けられる。この結果、半導体素子5〜8は、交流出力指令値1001の正/負に関係なくスイッチング制御される。
図36は、図34に示された2レベルインバータ1X内に存在する配線インダクタンスを説明する回路図である。
図36を図15と比較して、2レベルインバータ1Xにおいても、半導体素子5〜8によって構成されるブリッジ回路に、図15と同様の配線インダクタンス40〜53が存在する。一方で、図1での半導体素子9及び半導体素子10が配置されないため、図15での配線インダクタンス54〜58は考慮する必要がない。又、出力フィルタリアクトル13,14と、出力フィルタコンデンサ15の間には、図15と同様の配線インダクタンス59及び60が存在する。
2レベルインバータ1Xにおいても、半導体素子5〜8のスイッチング動作に伴いサージ電圧が発生する。但し、図35で説明したスイッチング動作の相違により、実施の形態1に係る電力変換装置1Aと、比較例の2レベルインバータ1Xとの間では、形成される電流経路が異なる。この結果、電力変換装置1Aと、2レベルインバータ1Xとの間では、サージ電圧の発生パターンが異なる。
詳細な説明は省略するが、2レベルインバータ1X(図34)においても、電力変換装置1Aと同様の第1〜第4の動作パターンを定義し、各パターンにおいて、図18〜図32と同様の解析を行うことにより、図33と同様の図37を得ることができる。
図37は、2レベルインバータ1Xの各動作パターンにおける、サージ電圧が発生する半導体素子、並びに、サージ電圧の原因となる電流経路の一覧を示す図表である。
図37を参照して、2レベルインバータ1Xでは、第1〜第4の動作パターンを通じて、半導体素子5〜8の各々に、オフサージ電圧又はリカバリサージ電圧が発生している。具体的には、交流電流の正負に応じて、交流電流が正である第1及び第4の動作パターンでは、半導体素子5及び半導体素子8にオフサージ電圧が発生する一方で、半導体素子6及び半導体素子7にリカバリサージ電圧が発生する。これに対して、交流電流が負である第2及び第3の動作パターンでは、半導体素子6及び半導体素子7にオフサージ電圧が発生する一方で、半導体素子5及び半導体素子8にリカバリサージ電圧が発生する。
サージ電圧の原因となる電流経路は、第1〜第4の動作パターンで共通である。具体的には、直流電源2―半導体素子5−半導体素子6―直流電源2の経路と、直流電源2−半導体素子7−半導体素子8―直流電源2の経路との2つの経路上の配線インダクタンスが、各動作パターンにおいて共通に、サージ電圧を発生させる。
図38は、比較例に係る2レベルインバータでのスナバコンデンサの配置例を説明する回路図である。
図38を参照して、2レベルインバータ1X(図34)に対して、サージ電圧を低減するためのスナバコンデンサ62及び65が設けられる。スナバコンデンサ62は、配線インダクタンス61及び63を伴って、半導体素子5及び半導体素子6の直列接続体である第1レグに対して並列接続される。同様に、スナバコンデンサ65は、配線インダクタンス64及び66を伴って、半導体素子7及び半導体素子8の直列接続体である第2レグに対して並列接続される。
この結果、2レベルインバータ1X全体では、直流電源2、平滑用コンデンサ3、第1レグ、第2レグ、スナバコンデンサ62、及び、スナバコンデンサ65が、並列接続される。図38の例では、スナバコンデンサ62及び65は、第1レグ及び第2レグにそれぞれ近接させて配置される一般的な配置態様となっている。
図37に示したように、2レベルインバータ1Xでは、直流電源2―半導体素子5−半導体素子6―直流電源2の電流経路と、直流電源2―半導体素子7−半導体素子8―直流電源2の電流経路とがサージ電圧を発生させる。
スナバコンデンサ62は、前者の電流経路での半導体素子5及び半導体素子6(第1レグ)に対して、半導体素子5の正極と接続されたノードNoと、半導体素子6の負極と接続されたノードNpとの間に接続される。これにより、半導体素子5の正極及び半導体素子6の負極の間に、スナバコンデンサ62を経由して形成される経路を短くすることができる。従って、半導体素子5の正極及び半導体素子6の負極の間に形成される、スナバコンデンサ62を含む経路の配線インダクタンスを小さくすることができる。この結果、半導体素子5又は半導体素子6のスイッチング動作に伴う電流変化時に、スナバコンデンサ62を通過する高周波電流によって上記経路の配線インダクタンスに生じる電圧が低減されるので、半導体素子5及び半導体素子6に発生するサージ電圧を低減することができる。
同様に、スナバコンデンサ62は、後者の電流経路での半導体素子7及び半導体素子8(第2レグ)に対して、半導体素子7の正極と接続されたノードNqと、半導体素子8の負極と接続されたノードNrとの間に接続される。これにより、半導体素子7の正極及び半導体素子8の負極の間に、スナバコンデンサ65を経由して形成される経路を短くすることができる。従って、半導体素子7の正極及び半導体素子8の負極の間に形成される、スナバコンデンサ65を含む経路の配線インダクタンスを小さくすることができる。この結果、半導体素子7又は半導体素子8のスイッチング動作に伴う電流変化時に、スナバコンデンサ65を通過する高周波電流によって上記経路の配線インダクタンスに生じる電圧が低減されるので、半導体素子75及び半導体素子8に発生するサージ電圧を低減することができる。
このように、比較例の2レベルインバータ1Xでは、図38に示すように、第1レグ及び第2レグにそれぞれに対してスナバコンデンサ62及び65を近接配置することによって、半導体素子5〜8で発生するサージ電圧を低減することができる。
(クランプ回路を有する3レベルインバータでのサージ電圧低減)
次に、実施の形態1に係る電力変換装置1Aでのサージ電圧低減のためのスナバコンデンサの配置について説明する。
図1及び図34から理解されるように、実施の形態1に係る電力変換装置1A及び比較例の2レベルインバータの間で、半導体素子5〜8によるブリッジ回路の構成は同一である。しかしながら、電力変換装置1Aでは、半導体素子5〜8によるブリッジ回路に対して、図37と同様にスナバコンデンサを配置すると、サージ電圧の低減効果が十分ではなくなる。
図33で説明したように、電力変換装置1Aでは、サージ電圧を発生させる電流経路は、交流電圧が正のときと負のときとで異なっており、直流電源2−半導体素子5−半導体素子9―半導体素子10−半導体素子8―直流電源2を結ぶ電流経路(以下、第1の電流経路)と、直流電源2−半導体素子7−半導体素子10―半導体素子9−半導体素子6―直流電源2を結ぶ電流経路(以下、第2の電流経路)との2つが存在する。
従って、図38の配置例に従って、スナバコンデンサ62が配置されると、第1の電流経路に含まれる半導体素子5及び半導体素子8に対して、半導体素子5の正極及び半導体素子8の負極の間に、スナバコンデンサ62を含んで形成される経路には、配線インダクタンス61及び63に加えて、配線インダクタンス49及び53がさらに含まれる。この結果、半導体素子5又は半導体素子8のスイッチング動作に伴う第1の電流経路での電流変化時に、スナバコンデンサ62を通過する高周波電流によって上記経路の配線インダクタンスに生じる電圧が大きくなることで、サージ電圧の低減効果が不十分となることが懸念される。
同様に、図38の配置例に従って、スナバコンデンサ65が配置されると、第2の電流経路に含まれる半導体素子6及び半導体素子7に対して、半導体素子7の正極及び半導体素子6の負極の間に、スナバコンデンサ65を含んで形成される経路には、配線インダクタンス64及び66に加えて、配線インダクタンス49及び53がさらに含まれる。この結果、同様の理由で、半導体素子6及び半導体素子7に対しても、サージ電圧の低減効果が不十分となることが懸念される。
図39は、実施の形態1に係る電力変換装置に対するスナバコンデンサの配置例を説明する回路図である。
図39を参照して、クランプ回路を有する3レベルインバータである電力変換装置1Aに対して、スナバコンデンサ68及び71が設けられる。スナバコンデンサ68、及び、スナバコンデンサ71は、直流電源2、平滑用コンデンサ3、第1レグ、及び、第2レグと並列接続される。従って、電力変換装置1Aにおける、スナバコンデンサ68,71と、直流電源2、平滑用コンデンサ3、第1レグ、及び、第2レグによる主回路との電気的な接続関係は、図38におけるスナバコンデンサ62,65と、主回路との電気的な接続関係と同じである。
一方で、図39では、半導体素子5〜8に対するスナバコンデンサ68,71の配置(各半導体素子との間の接続距離)が、図38の配置例とは異なる。
具体的には、スナバコンデンサ68は、半導体素子5の正極と接続されたノードNoと、半導体素子8の負極と接続されたノードNrとの間に接続される。スナバコンデンサ71は、半導体素子7の正極と接続されたノードNqと、半導体素子6の負極と接続されたノードNpとの間に接続される。
これにより、スナバコンデンサ68と半導体素子5の正極とを接続する導体の長さ(以下、「接続距離」とも称する)を、スナバコンデンサ68と半導体素子7の正極との接続距離よりも短くすることができる。又、スナバコンデンサ68と半導体素子8の負極との接続距離を、スナバコンデンサ68と半導体素子6の負極との配線距離よりも短くすることができる。
同様に、スナバコンデンサ71と半導体素子7の正極との接続距離を、スナバコンデンサ71と半導体素子5の正極との接続距離よりも短くすることができる。又、スナバコンデンサ71と半導体素子6の負極との接続距離を、スナバコンデンサ71と半導体素子8の負極との接続距離よりも短くすることができる。
尚、厳密に言えば、スナバコンデンサ68,71の接続先となるノードNo,Np,Nq,Nrについて、半導体素子5〜8の正極又は負極と完全に一致させることは難しい。このため、例えば、ノードNo及び半導体素子5の正極の間にも、厳密には、配線インダクタンスは存在するが、図中では表記を省略している。同様に、ノードNq及び半導体素子7の正極の間、ノードNp及び半導体素子6の負極の間、並びに、ノードNr及び半導体素子8の負極の間の各々についても、配線インダクタンスの表記は省略されている。尚、上記の表記を省略した各配線インダクタンスは、図38(比較例)及び図39(実施の形態1)の各々で同様に発生するものである。
図39の構成例では、スナバ回路SNC1は、スナバコンデンサ68を含み、スナバ回路SNC2は、スナバコンデンサ71を含む。スナバ回路SNC1は「第1のスナバ回路」の一実施例に対応し、スナバ回路SNC2は「第2のスナバ回路」の一実施例に対応する。更に、半導体素子5は「第1の半導体素子」に対応し、半導体素子6は「第2の半導体素子」に対応し、半導体素子7は「第3の半導体素子」に対応し、半導体素子8は「第4の半導体素子」に対応する。又、半導体素子9は「第5の半導体素子」に対応し、半導体素子10は「第6の半導体素子」に対応する。半導体素子9及び10により「第1の双方向スイッチ」が構成される。
この結果、第1の電流経路において、半導体素子5の正極及び半導体素子8の負極の間に、スナバコンデンサ68を経由して形成される経路を短くすることで、当該経路の配線インダクタンスを小さくすることができる。この結果、スイッチング動作に伴う第1の電流経路での電流変化時に、スナバコンデンサ68を通過する高周波電流によって上記経路の配線インダクタンスに生じる電圧が低減されるので、半導体素子5及び半導体素子8の各々に発生するサージ電圧を低減することができる。
同様に、第1の電流経路においても、半導体素子7の正極及び半導体素子6の負極の間に、スナバコンデンサ71を経由して形成される経路を短くすることで、当該経路の配線インダクタンスを小さくすることができる。この結果、スイッチング動作に伴う第2の電流経路での電流変化時に、スナバコンデンサ71を通過する高周波電流によって上記経路の配線インダクタンスに生じる電圧が低減されるので、半導体素子6及び半導体素子7の各々に発生するサージ電圧を低減することができる。
これにより、実施の形態1に係る電力変換装置1Aでは、図39に従ってスナバコンデンサ68,71(スナバ回路SNC1,SNC2)を配置することにより、サージ電圧の原因となる配線インダクタンスを集中的に低減することが可能である。この結果、クランプ回路を有する3レベルインバータにおいて、半導体素子のスイッチング動作に伴うサージ電圧を低減することができる。
尚、図39では、スナバコンデンサ68,71のみでスナバ回路SNC1,SNC2を構成する例を説明したが、スナバ回路の構成は、図40又は図41に示されるように変形することも可能である。
図40に示された構成では、スナバ回路SNC1は、図39と比較して、スナバコンデンサ68と直列に接続された抵抗素子68Rを更に含む。同様に、スナバ回路SNC2は、スナバコンデンサ71と直列に接続された抵抗素子71Rを更に含む。図40のその他の部分の構成は、図39と同様であるので詳細な説明は繰り返さない。このように、各スナバ回路SNC1,SNC2は、スナバコンデンサ及び抵抗素子を直列接続した、いわゆる、RCスナバ回路の構成とすることも可能である。
図41に示された構成では、スナバ回路SNC1は、図40と比較して、抵抗素子68Rと並列接続されたダイオード68Dを更に含む。同様に、スナバ回路SNC2は、抵抗素子71Rと並列接続されたダイオード71Dを更に含む。図41のその他の部分の構成は、図40と同様であるので詳細な説明は繰り返さない。
このように、各スナバ回路SNC1,SNC2は、直列接続されたスナバコンデンサ及び抵抗素子と、抵抗素子に並列接続されたダイオードとを含む、いわゆる、RCDスナバ回路として構成することも可能である。
又、電力変換装置1Aにおいて、半導体素子9及び半導体素子10の接続を変更することも可能である。
図42は、実施の形態1に係る電力変換装置の変形例を説明する回路図である。
図42を参照して、実施の形態1の変形例に係る電力変換装置1Bは、図1に示した電力変換装置1Aと比較して、半導体素子5〜8によるブリッジ回路のノードNd及びノードNeに対する、半導体素子9及び半導体素子10の接続が異なる。図1(電力変換装置1A)では、ノードNd及びノードNdの間に、逆並列ダイオードを有する半導体素子9及び半導体素子10が、逆極性で直列接続されることによって「第1の双方向スイッチ」が構成される。
これに対して、電力変換装置1Bでは、逆方向に耐圧を持つ半導体素子9及び半導体素子10が、ノードNd及びノードNdの間に並列接続されることによって「第1の双方向スイッチ」が構成される。
図41においても、ノードNdからノードNeの間には、半導体素子10のオンに応じてノードNdからノードNeへの方向の電流経路が形成されるとともに。半導体素子9のオンに応じてノードNeからノードNdへの方向の電流経路が形成される。即ち、電力変換装置1Bにおいても、半導体素子9及び半導体素子10によって、電力変換装置1Aと同様の「双方向スイッチ」を構成することができる。
この結果、電力変換装置1Bは、図2の駆動信号に従って、電力変換装置1Aに同様することができるとともに、スナバ回路についても、図39〜図41と同様に配置することで、サージ電圧を低減することができる。
尚、図1の電力変換装置1Aにおいて、半導体素子9及び半導体素子10については、負極同士を接続する一方で、半導体素子9の正極をノードNdと接続し、半導体素子10の正極をノードNdと接続する構成に変形することも可能である。このようにしても、半導体素子9及び半導体素子10によって「第1の双方向スイッチ」を構成することができる。
この場合には、半導体素子9のオン時に、ノードNdからノードNeへの方向の電流経路が形成される一方で、半導体素子10のオン時には、ノードNeからノードNdへの方向の電流経路が形成される。従って、実施の形態1で説明した電力変換装置1Aの回路動作を実現するためには、図2の駆動信号204及び205を入れ替えることが必要となる。
実施の形態2.
実施の形態2では、実施の形態1で説明した電力変換装置1A,1Bの実装時における半導体素子及びスナバコンデンサの配置例について説明する。
図43は、実施の形態2に係る電力変換装置の半導体素子及びスナバコンデンサの第1の配置図である。
図43を参照して、電力変換装置1A又は1Bの要素である、半導体素子5〜10の各々は、ディスクリート素子、特に、四角形の表面実装型のディスクリートパッケージを有する素子で構成される。例えば、当該四角形の四辺のいずれか1辺に正極が配置される一方で、他の3辺の各々には負極が配置される。負極が配置される3辺は、互いに電気的に接続されている。尚、制御電極は、四角形のいずれの辺から出ていても問題ないが、ここでは負極が配置された3辺のうちの1辺に制御電極が配置されるものとする。
以下、図中では、四角形の4辺について、負極が配置された辺を太線で表記し、正極が配置された辺を細線で表記する。更に、制御電極が配置された辺については、四角のマークを付して表記する。尚、以下では、負極が配置される3辺を区別するため際には、正極の向かい合わせの辺を「底辺の負極」と称し、当該底辺から見て右側の辺を「右辺の負極」と称し、当該底辺から見て左側の辺を「左辺の負極」と称することとする。図43の例では、各半導体素子において、制御電極は、右辺の負極に配置されている。
尚、ここでは負極及び正極が各辺の全域を占めているように図示しているが、負極及び正極は、各辺の一部に形成されてもよい。又、一般的な表面実装型のディスクリート素子で見られるように、各辺の端部は、絶縁体で構成されるケースも存在する。
図43の第1の配置例では、半導体素子5の正極は、スナバコンデンサ68の一方端と接続されており、半導体素子5の底辺の負極は、半導体素子9の右辺の負極と接続される。半導体素子9の左辺の負極は、半導体素子6の正極と接続されており、半導体素子6の底辺の負極は、スナバコンデンサ71の一方端と接続される。
更に、半導体素子7の正極と、スナバコンデンサ71の他方端とが接続される。半導体素子7の底辺の負極は、半導体素子10の右辺の負極と接続される。半導体素子9及び半導体素子10の正極同士が接続され、半導体素子10の左辺の負極及び半導体素子8の正極が接続される。半導体素子8の底辺の負極と、スナバコンデンサ68の他方端とが接続される。
第1の配置例では、半導体素子5、半導体素子9、及び、半導体素子6が一列に並んで1つの列を構成し、かつ、半導体素子8、半導体素子10、及び、半導体素子7が一列に並んで、もう1つの列を構成する。これらの列は、並列に配列される。
上述のように、電力変換装置1A,1Bにおいて、サージ電圧に影響する配線インピーダンスとして、図43中に点線で示す経路P1と、一点鎖線で示す経路P2とが形成される。経路P1は、スナバコンデンサ68−半導体素子5−半導体素子9−半導体素子10−半導体素子8−スナバコンデンサ68を通過する。経路P2は、スナバコンデンサ71−半導体素子7−半導体素子10―半導体素子9−半導体素子6−スナバコンデンサ71を通過する。
経路P1及び経路P2に共通する半導体素子9及び半導体素子10は、それぞれの列で真ん中に配置される。更に、2つの列の間で、半導体素子5及び半導体素子8を近接させるとともに、半導体素子6及び半導体素子7を近接させるように、それぞれの列内での半導体素子の配列順が決められている。
この結果、半導体素子5の正極に対して、半導体素子8の負極との接続距離が、半導体素子8の負極との接続距離よりも短くなり、かつ、半導体素子7の正極に対して、半導体素子6の負極との接続距離が、半導体素子8の負極との接続距離よりも短くなるように、半導体素子5〜10は配列することができる。
図43の第1の配置例では、スナバコンデンサ68及び71は、6つの半導体素子5〜10が配列される範囲の外側に配置される。図1に示されるように、半導体素子5及び半導体素子7の正極は、スナバコンデンサ68及び71と接続されるとともに、平滑用コンデンサ3とも接続される必要がある。
従って、第1の配置例によれば、1辺のみ配置される半導体素子5及び半導体素子7の正極を、半導体素子5〜10の配列群の外側を向くように配列することで、電力変換装置1Aを構成するための他素子(平滑用コンデンサ3等)と容易に接続することが可能である。又、半導体素子9及び半導体素子10の負極についても、外側を向くように配列されているので、図1に示した出力フィルタリアクトル13,14との接続が容易であることが理解される。
図44には、実施の形態2に係る電力変換装置の半導体素子及びスナバコンデンサの第2の配置例が示される。
図44を参照して、第2の配置例では、第1の配置例(図43)と比較して、半導体素子5及び半導体素子7の正極及び負極の位置が異なる。具体的には、半導体素子5及び半導体素子7は、図43の配置から、それぞれ時計と反対回り方向に90度回転させて配置されている。これにより、半導体素子5の正極は、半導体素子8の負極(左辺の負極)と対向し、半導体素子7の正極は、半導体素子6の負極(左辺の負極)と対向する。
この結果、スナバコンデンサ68と、半導体素子5の正極及び半導体素子8の負極のそれぞれとの接続距離を、図43の配置例よりも短くすることができる。同様に、スナバコンデンサ71と、半導体素子7の正極及び半導体素子6の負極のそれぞれとの接続距離について、図43の配置例よりも短くすることができる。
これにより、図39に示した配線インダクタンス67,69及び配線インダクタンス70,72が低減される。又、経路P1及び経路P2についても、図43と比較して経路長を短くすることが可能である。この結果、サージ電圧を更に低減することが可能となる。
一方で、第2の配置例では、半導体素子5及び半導体素子7の正極が、図43とは異なり、半導体素子5〜10の配列群の外側を向いていない。従って、半導体素子5及び半導体素子7の正極から、平滑用コンデンサ3等の他素子との接続用配線を引き出す際には、絶縁距離の確保を考慮することが必要となる。
図45は、実施の形態2に係る電力変換装置の半導体素子及びスナバコンデンサの第3の配置図である。図45では、実施の形態1の末尾で説明した、半導体素子9及び半導体素子10の負極同士を接続し、半導体素子9の正極をノードNdと接続し、半導体素子10の正極をノードNeと接続する構成とした場合の配置例が示される。
図45を参照して、第3の配置例では、それぞれの列で中央に位置する半導体素子9及び半導体素子10は、底辺の負極同士が対向するように配置される。図45では、半導体素子5の底辺の負極と、半導体素子9の正極とが接続され、半導体素子9の正極と、半導体素子6の正極とが接続される。更に、半導体素子7の底辺の負極と、半導体素子10の正極とが接続され、半導体素子10の底辺の負極と、半導体素子9の底辺の負極とが接続される。又、半導体素子10の正極と、半導体素子8の正極とが接続される。
第3の配置例に従って半導体素子5〜10を配置しても、実施の形態1に係る電力変換装置を実装することが可能である。尚、図45の第3の配置例における半導体素子9及び半導体素子10の配置は、第2の配置例(図44)に適用することも可能である。この場合、半導体素子9の正極が、半導体素子5の左辺の負極、及び、半導体素子6の正極に接続され、半導体素子10の正極が、半導体素子7の左辺の負極、及び、半導体素子8の正極に接続される。又、半導体素子9及び半導体素子10については、図42で説明したように、逆方向に耐圧を持つ半導体素子として、それぞれ逆方向に並列接続して構成することも可能である。
尚、図43〜図45の配置例では、半導体素子5、半導体素子9、及び、半導体素子6が一列に並べられるとともに、半導体素子8、半導体素子10、及び、半導体素子7が一列に並べられると説明したが、各列において、複数の半導体素子は、正確に真っ直ぐ一列に並んでいることを要するものではない。同様に、それぞれの列が、正確に並列に配置されることも必須ではない。上述した、半導体素子5の正極に対して、半導体素子8の負極との接続距離が、半導体素子8の負極との接続距離よりも短くなり、かつ、半導体素子7の正極に対して、半導体素子6の負極との接続距離が、半導体素子8の負極との接続距離よりも短くなるという条件が成立する範囲内で、配列のずれは許容される。
尚、実施の形態2において、実施の形態1に係る電力変換装置1A(1B)を構成する半導体素子5〜10が実装される基板の種類は特定のものである必要はない。当該基板には、例えば、多層のプリント基板、単層のプリント基板、又は、片面が金属により構成された金属基板等を適用することが可能である。一般的に、多層のプリント基板を適用すると、各層にパターン配線が可能であるため、配線の自由度が高くなる。この結果、配線インダクタンスの少ない配線パターンを実現することが容易である。又、金属基板を適用すると、半導体素子の放熱面で有利であり、素子温度の低減が容易である。
図43〜図45では、半導体素子5〜10に、四角形の表面実装タイプのディスクリート素子を適用したときの配置例を説明した。次に、異なる態様のディスクリート素子が適用されたときの配置例を説明する。
図46は、実施の形態2に係る電力変換装置の半導体素子及びスナバコンデンサの第4の配置図である。
図46では、半導体素子5〜10は、正極を背面に有し、負極及び制御電極を引き出し線(リード)により外部接続するディスクリートパッケージを有する素子で構成される。例えば、図46では、半導体素子5〜10は、TO−263パッケージのディスクリート素子により構成される。
図46においても、上記パッケージ構成において、負極の引き出し線を太線で表記するとともに、制御電極の引き出し線については、四角のマークを付して表記している。
図46に示された第4の配置例では、半導体素子5、半導体素子9、及び、半導体素子6が一列に並べられて1つの列を構成するとともに、半導体素子8、半導体素子10、及び、半導体素子7が一列に並べられて、もう1つの列が構成される。これらの列を並列に配設するとともに、半導体素子9の正極(リード)及び半導体素子10の正極(リード)が接続される。
更に、半導体素子5の正極(背面)と、半導体素子8の負極(リード)との間にスナバコンデンサ68が接続される。同様に、半導体素子7の正極(背面)と、半導体素子6の負極(リード)との間に、スナバコンデンサ71が接続される。これにより、図43と同様に、サージ電圧に影響する配線インピーダンスを含む、点線で示す経路P1と、一点鎖線で示す経路P2とが形成される。
図46の配置例においても、図43と同様に、半導体素子5の正極に対して、半導体素子8の負極との接続距離が、半導体素子8の負極との接続距離よりも短くなり、かつ、半導体素子7の正極に対して、半導体素子6の負極との接続距離が、半導体素子8の負極との接続距離よりも短くなるという条件が成立するように、半導体素子5〜10が配設されていることが理解される。
特に、図46の例では、半導体素子5〜10の各々について、制御電極が、半導体素子5〜10が配列される領域の外側に位置する方向で揃って配置されている。このため、各制御電極へ駆動信号27〜32(図1)を伝送する信号線の配設が容易となる。
或いは、制御電極への信号線の接続がコネクタ等によって実現されるため、プリント基板上に信号線を配設する必要がない場合には、制御電極を外側に位置させるメリットが低下する。このような場合には、半導体素子9及び半導体素子10の正極同士の間の接続を容易にするために、図46の配置例において、正極(リード)同士、又は、負極(背面)同士が対向するように、半導体素子9及び半導体素子10を90度ずつ回転させることも可能である。
図47は、実施の形態2に係る電力変換装置の半導体素子及びスナバコンデンサの第5の配置図である。
図47では、半導体素子5〜10は、正極、負極、及び、制御電極がそれぞれ個別にリードによって外部接続されるディスクリートパッケージを有する素子で構成される。例えば、図47では、半導体素子5〜10は、TO−247パッケージのディスクリート素子により構成される。
図47においても、負極のリードを太線で表記するとともに、制御電極のリードについては、四角のマークを付して表記している。残りのリードは、正極である。
図47に示された第5の配置例では、半導体素子5、半導体素子9、及び、半導体素子6が一列に並べられて1つの列を構成するともに、半導体素子8、半導体素子10、及び、半導体素子7が一列に並べられて、もう1つの列を構成する。当該2つの列は並列に配設される。更に、半導体素子5の正極リードと、半導体素子8の負極リードとの間にスナバコンデンサ68が接続され、半導体素子7の正極リードと、半導体素子6の負極リードとの間に、スナバコンデンサ71が接続される。図47においても、サージ電圧に影響する配線インピーダンスを含む、点線で示す経路P1と、一点鎖線で示す経路P2とが形成される。
図47の配置例においても、図43等と同様に、半導体素子5の正極に対して、半導体素子8の負極との接続距離が、半導体素子8の負極との接続距離よりも短くなり、かつ、半導体素子7の正極に対して、半導体素子6の負極との接続距離が、半導体素子8の負極との接続距離よりも短くなるという条件が成立するように、半導体素子5〜10が配設されていることが理解される。これにより、上記経路P1及び経路P2の配線長を短くすることで、配線インダクタンスによって発生するサージ電圧を低減することができる。
図47の配置例においても、制御電極のリードが揃って外側に位置するように、半導体素子5〜10を揃えて配列することにより、各制御電極へ駆動信号27〜32(図1)を伝送する信号線の配設が容易となる。
又、図46で説明したのと同様に、図46においても、正極(リード)同士、又は、負極(リード)同士が対向するように、半導体素子9及び半導体素子10を90度ずつ回転させることも可能である。尚、TO−257パッケージには、制御電極が並列に2個設けられることで、4つのリードを有する構成とされるタイプもあるが、この場合にも、正極及び負極について上記と同様にすることで、同様のサージ電圧低減効果を得ることができる。
実施の形態3.
実施の形態1で説明したスナバ回路の配置は、いわゆる、中性点クランプ型3レベルインバータに対しても適用可能である。
図48は、実施の形態3に係る電力変換装置1Cの構成を説明する回路図である。電力変換装置1Cは、中性点クランプ型3レベルインバータの回路構成を有する。
図48を参照して、実施の形態3に係る電力変換装置1Cは、平滑用コンデンサ3(図1)に代えて、直列接続された平滑用コンデンサ3A及び3Bを備えるとともに、半導体素子9及び半導体素子10に代えて、半導体素子81〜84を備える点で異なる。半導体素子81〜84は、半導体素子5〜10と同様に、IGBT又はMOSFET等のオンオフ制御可能なスイッチング素子で構成されて、正極、負極、及び、制御電極を有する。半導体素子81〜84についても、負極から正極への方向の電流経路を形成するための逆並列ダイオードが、内蔵又は外部接続されている。
電力変換装置1Cにおいて、半導体素子5〜8によって構成されるブリッジ回路は、電力変換装置1Aと同様であるが、ブリッジ回路のノードNd(第1レグの中間点)及びノードNe(第2レグの中間点)は、半導体素子を介さずに、出力フィルタリアクトル13及び出力フィルタリアクトルと接続される。
ブリッジ回路の入力側において、直流電源2と接続されるノードNa及びノードNcの間に、平滑用コンデンサ3A及び3Bが直列接続される。平滑用コンデンサ3Aの一方端はノードNaと接続され、平滑用コンデンサ3Aの他方端は、平滑用コンデンサ3Bの一方端と、ノードNm及びNnで接続される。平滑用コンデンサ3Bの他方端は、ノードNcと接続される。ノードNm及びノードNmは同電位であり、電気的には同一ノードであるが、後述するように、接続先が異なるため、説明の都合上別個に記載している。平滑用コンデンサ3A及び3Bには、電圧検出器19A及び19Bが設けられる。
ノードNmと、ブリッジ回路のノードNdとの間には、半導体素子81と半導体素子82による双方向スイッチが接続される。同様に、ノードNnと、ブリッジ回路のノードNeとの間には、半導体素子83及び半導体素子84による双方向スイッチが接続される。
図48では、半導体素子81及び半導体素子82は、正極同士が接続される態様で直列接続されることによって、双方向スイッチを構成する。同様に、半導体素子83及び半導体素子84は、正極同士が接続される態様で直列接続されることによって、双方向スイッチを構成する。
電圧検出器19Aによる平滑用コンデンサ3Aの電圧検出値、及び、電圧検出器19Bによる平滑用コンデンサ3Bの電圧検出値は、制御回路35に入力される。制御回路35は、駆動信号27〜30に加えて、半導体素子81〜84をそれぞれ駆動するための駆動信号85〜88を更に出力する。駆動信号85〜88は、半導体素子81〜84の制御電極へそれぞれ伝達される。この結果、半導体素子81〜84は、制御回路35からの駆動信号85〜88にそれぞれ応答してオンオフ制御される。
図49は、図48に示された電力変換装置1Cの半導体素子のオンオフ制御を説明する波形図である。
図49を参照して、図1と同様の交流出力指令値201を基準として、図1と同様に、半導体素子5及び半導体素子8の駆動信号202と、半導体素子6及び半導体素子7の駆動信号203とが生成される。更に、半導体素子82及び半導体素子83の駆動信号214と、半導体素子81及び半導体素子84の駆動信号215とが生成される。
図49の駆動信号214は、図2の駆動信号204と同一であり、図49の駆動信号215は、図2の駆動信号205と同一である。半導体素子82及び83の駆動信号86及び駆動信号87は、駆動信号214に従って、デッドタイムを付与して生成される。同様に、半導体素子81及び84の駆動信号86及び駆動信号87は、駆動信号215に従って、デッドタイムを付与して生成される。
従って、電力変換装置1Cにおいて、半導体素子5〜8は、電力変換装置1A(実施の形態1)と同様にオンオフ制御される。更に、半導体素子82及び半導体素子83は、電力変換装置1A(実施の形態1)の半導体素子9と同様にオンオフ制御され、半導体素子81及び半導体素子84は、電力変換装置1A(実施の形態1)の半導体素子10と同様にオンオフ制御される。
従って、交流出力指令値201が正の期間では、半導体素子6及び半導体素子7は常時オフされ、半導体素子82及び83は常時オンされる、一方で、半導体素子5及び半導体素子8、並びに、半導体素子81及び84は、スイッチング制御される。具体的には、半導体素子5及び半導体素子8は共通にオンオフされ、半導体素子81及び半導体素子84は、半導体素子5及び半導体素子8と相補的にオンオフされる。
一方で、交流出力指令値201が負の期間では、半導体素子5及び半導体素子8は常時オフされ、半導体素子81及び半導体素子84は常時オンされる。一方で、半導体素子6及び半導体素子7、並びに、半導体素子82及び半導体素子83は、スイッチング制御される。具体的には、半導体素子6及び半導体素子7は共通にオンオフされ、半導体素子82及び半導体素子83は、半導体素子6及び半導体素子7と相補的にオンオフされる。
電力変換装置1Cでは、ノードNd及びNeの間に、電力変換装置1Aでは2個の半導体素子の直列接続体による1個の双方向スイッチが接続されていたのに対して、4個の半導体素子による2個の双方向スイッチが直列接続された構成となっている。但し、電力変換装置1Cでは、ノードNm,Nn、即ち、2個の双方向スイッチの中間点の電位が一意に決まることが差になる。
実施の形態3に係る電力変換装置1Cについても、電力変換装置1Aと同様に、交流電圧及び交流電流の正/負の組み合わせによる4つの動作パターンが存在する。図50〜図52を用いて、交流電圧が正、かつ、交流電流が正である、第1の動作パターンでの電力変換装置1Cでの電流経路を説明する。
上述のように、交流電圧が正の期間では、半導体素子82及び83がオン固定されるとともに、半導体素子6及び半導体素子7はオフ固定される。一方で、半導体素子5及び半導体素子8、並びに、半導体素子81及び84がスイッチング制御される。
図50には、第1の動作パターン中の半導体素子5及び半導体素子8のオン期間(電力伝送期間)での電流経路が示される。
図50を参照して、半導体素子5及び半導体素子8のオン期間では、半導体素子82及び半導体素子83もオンされて、直流電源2の正側−半導体素子5−出力フィルタリアクトル13−交流電源17−出力フィルタリアクトル14−半導体素子8−直流電源2の負側の経路に、電流Iaが流れる。
図5でも説明したように、この際の電流は、図50に示したように直流電源2を経路とするのみではなく、平滑用コンデンサ3A及び平滑用コンデンサ3Bを通る電流も存在する。同様に、ブリッジ回路の二次側において、図50に示したように交流電源17を経路とするのみではなく、出力フィルタコンデンサ15を通る電流も存在する。
図51には、半導体素子5及び半導体素子8がオンからオフに切り替わったデッドタイム期間での電流経路が示される。
図51を参照して、デッドタイム期間では、ノードNd−出力フィルタリアクトル13―交流電源17−出力フィルタリアクトル14−半導体素子84(逆並列ダイオード)―半導体素子83−ノードNn,Nm−半導体素子81(逆並列ダイオード)−半導体素子82−ノードNdの経路に、電流Ibが流れる。
図52には、デッドタイム期間(図51)後に半導体素子81及び84がオフからオンに切り替わったときの電流経路(還流期間)での電流経路が示される。
図52を参照して、還流期間では、ノードNd−出力フィルタリアクトル13―交流電源17−出力フィルタリアクトル14−半導体素子84―半導体素子83−ノードNn,Nm−半導体素子81−半導体素子82−ノードNdの経路に、図51と同様の電流Ibが流れる。還流期間及びデッドタイム期間では、電流経路は同一であるが、半導体素子81及び半導体素子84がオンすることで同期整流が行われて、電力損失が低減される。
図52の状態(還流期間)から半導体素子81及び半導体素子84がオンからオフに切り替わると、再び、図51に示したデッドタイム期間での電流経路が形成される。更にその後、半導体素子5及び半導体素子8がオフからオンに切り替わると、再度、図50(伝送期間)に示された電流経路に電流Iaが流れることになる。
図3〜図5と、図50〜52との比較から理解されるように、電力変換装置1Cで形成される電流経路は、電力変換装置1Aでの電流経路と比較すると、半導体素子9及び10が、半導体素子81〜84に変わった以外は同じである。
詳細な説明は省略するが、その他の第2の動作パターン、第3の動作パターン、及び、第4の動作パターンにおいても、電力変換装置1Cの電流経路と、電力変換装置1Aでの電流経路の違いは、第1の動作パターンと同じである。
従って、実施の形態3に係る電力変換装置1Cにおいて、図33と同様に、各動作パターンにおける、サージ電圧が発生する半導体素子、並びに、サージ電圧の原因となる電流経路を整理すると、図53が得られる。
図53は、実施の形態3に係る電力変換装置1Cの各動作パターンにおける、サージ電圧が発生する半導体素子、並びに、サージ電圧の原因となる電流経路の一覧を示す図表である。
図53を参照して、第1〜第4の動作パターンの各々において、半導体素子5〜8では、図33(電力変換装置1A)と同様のサージ電圧が発生する。更に、実施の形態3に係る電力変換装置1Cでは、図33での半導体素子9と同様のサージ電圧が、半導体素子9と同様の駆動信号(図49)に従ってオンオフ制御される、半導体素子82及び半導体素子83に発生する。例えば、動作パターン2において、図33の半導体素子9と同様に、リカバリサージ電圧が、半導体素子82及び83に発生する。更に、動作パターン4では、半導体素子82及び83にオフサージ電圧が発生する。
同様に、電力変換装置1Cでは、図33での半導体素子10と同様のサージ電圧が、半導体素子10と同様の駆動信号(図49)に従ってオンオフ制御される、半導体素子81及び半導体素子84に発生する。例えば、動作パターン1において、図33の半導体素子10と同様に、リカバリサージ電圧が、半導体素子81及び84に発生する。更に、動作パターン3では、半導体素子81及び84にオフサージ電圧が発生する。
更に、上述した電流経路の相違点を考慮すると、電力変換装置1Cでは、第1及び第3の動作パターンにおいて、サージ電圧の原因となる電流経路は、図33に示された経路中の「−半導体素子9―半導体素子10−」を、「−半導体素子82−半導体素子81―半導体素子83−半導体素子84」に置換したものとなることが理解される。同様に、第1及び第3の動作パターンにおいて、サージ電圧の原因となる電流経路は、図33に示された経路中の「−半導体素子10―半導体素子9−」を、「−半導体素子84−半導体素子83―半導体素子81−半導体素子82」に置換したものとなる。
図53から、電力変換装置1Cにおいても、サージ電圧の原因となる電流経路は、ブリッジ回路を構成する半導体素子5〜8に関しては、電力変換装置1Aと同様である。従って、半導体素子5〜8に接続されるスナバ回路については、実施の形態1と同様に配置することで、サージ電圧を低減することができる。
図54は、実施の形態3に係る電力変換装置に対するスナバコンデンサ(スナバ回路)の配置例を説明する回路図である。
図54を参照して、図53に示したサージ電圧の原因となる電流経路から、電力変換装置1Cにおいても、半導体素子5の正極及び半導体素子8の負極の間の接続距離、並びに、半導体素子7の正極及び半導体素子6の負極の間の接続距離が短くなるように、スナバコンデンサ68,71が配置される。
具体的には、実施の形態1と同様に、スナバコンデンサ68と半導体素子5の正極との接続距離が、スナバコンデンサ68と半導体素子7の正極との接続距離よりも短くなるとともに、スナバコンデンサ68と半導体素子8の負極との接続距離が、スナバコンデンサ68と半導体素子6の負極との配線距離よりも短くなるように、スナバコンデンサ68は配置される。
同様に、スナバコンデンサ71と半導体素子7の正極との接続距離が、スナバコンデンサ71と半導体素子5の正極との接続距離よりも短くなるとともに、スナバコンデンサ71と半導体素子6の負極との接続距離が、スナバコンデンサ71と半導体素子8の負極との接続距離よりも短くなるように、スナバコンデンサ71は配置される。
図54の構成例においても、半導体素子5は「第1の半導体素子」に対応し、半導体素子6は「第2の半導体素子」に対応し、半導体素子7は「第3の半導体素子」に対応し、半導体素子8は「第4の半導体素子」に対応する。又、スナバ回路SNC1は「第1のスナバ回路」の一実施例に対応し、スナバ回路SNC2は「第2のスナバ回路」の一実施例に対応する。更に、平滑用コンデンサ3A及び3Bは「第1のコンデンサ」及び「第2のコンデンサ」に対応し、ノードNm,Nnは、「第1及び第2のコンデンサの接続点」に対応する。又、半導体素子81は「第7の半導体素子」に対応し、半導体素子82は「第8の半導体素子」に対応する。半導体素子81及び82により「第2の双方向スイッチ」が構成される。同様に、半導体素子83は「第9の半導体素子」に対応し、半導体素子84は「第10の半導体素子」に対応し、半導体素子83及び84により「第3の双方向スイッチ」が構成される。
このようにすると、実施の形態3に係る電力変換装置においても、サージ電圧の原因となる配線インダクタンスを集中的に低減することにより、半導体素子のスイッチング動作に伴うサージ電圧を低減することができる。
実施の形態1に係る電力変換装置1A及び実施の形態3に係る電力変換装置1Cは、比較例に係る2レベルインバータに相当するブリッジ回路(半導体素子5〜8)の第1レグの中点及び第2レグの中点の間に、クランプ回路として機能する双方向スイッチを構成する半導体素子を備える点で共通している。双方スイッチの動作により、電力変換装置1A及び電力変換装置1Cでは、比較例の2レベルインバータとは異なり、ブリッジ回路を構成する半導体素子5〜8に電流が流れない期間が発生する。
この結果、電力変換装置1A,1Cでは、半導体素子5〜8を含まない電流経路からの、スイッチング動作に伴う転流によってサージ電圧が発生する際には、サージ電圧の原因となる配線インダクタンスが、半導体素子5〜8によるブリッジ回路のみで構成される2レベル型インバータとは異なってくる。
従って、電力変換装置1A,1Cにおいては、スナバ回路SNC1、SNC2の半導体素子5〜8に対する電気的な接続関係は同一であるものの、その配置位置(接続距離の長短)は、図38で説明した比較例(2レベルインバータに対するスナバ回路配置)とは異なってくる。即ち、図39及び図54で説明した内容とすることで、サージ電圧を低減することが可能となる。
尚、図48の主回路構成において、半導体素子81及び半導体素子82は、負極同士が接続される態様で直列接続されることによって、双方向スイッチを構成することが可能である。同様に、半導体素子83及び半導体素子84についても、負極同士が接続される態様で直列接続されることによって、双方向スイッチを構成することが可能である。
又、実施の形態3に係る電力変換装置1Cにおいても、実施の形態1で説明したのと同様に、半導体素子81及び半導体素子82について、逆方向に耐圧を持つ素子でそれぞれを構成し、かつ、両者を逆並列に接続することで、双方向スイッチを構成することが可能である。又、半導体素子83及び半導体素子84についても、上記と同様に、双方向スイッチを構成することが可能である。
更に、実施の形態3に係る電力変換装置1Cにおいても、図54に示したスナバ回路は、図40に示した、RCスナバ回路、又は、図41に示したRCDスナバ回路によって構成とすることが可能である。
実施の形態4.
実施の形態4では、実施の形態3で説明した電力変換装置1Cの実装時における半導体素子及びスナバコンデンサの配置例について説明する。
図55は、実施の形態4に係る電力変換装置の半導体素子及びスナバコンデンサの第1の配置図である。
図55を参照して、電力変換装置1Cの要素である、半導体素子5〜8及び半導体素子81〜84の各々は、図43〜図45と同様に、四角形の表面実装型のディスクリートパッケージを有するディスクリート素子で構成される。実施の形態4においても、正極、負極、及び、制御電極が配置される辺の表記は、実施の形態2(図43〜図45)と同様である。
半導体素子5の正極は、スナバコンデンサ68の一方端と接続されており、半導体素子5の底辺の負極と、半導体素子82の右辺の負極が接続される。半導体素子82の左辺の負極は、半導体素子6の正極と接続され、半導体素子6の底辺の負極と、スナバコンデンサの一方端が接続される。半導体素子7の正極と、スナバコンデンサ71の他方端とが接続され、半導体素子7の底辺の負極と、半導体素子84の右辺の負極とが接続される。
更に、半導体素子84の正極と、半導体素子83の正極とが接続され、半導体素子83の左辺の負極と、半導体素子81の左辺の負極とが接続される。半導体素子81の正極は、半導体素子82の正極と接続され、半導体素子84の左辺の負極と、半導体素子8の正極とが接続される。半導体素子8の底辺の負極は、スナバコンデンサ68の他方端と接続される。
第1の配置例では、半導体素子5、半導体素子82、及び、半導体素子6が一列に並んで配置されて1つの列を構成し、かつ、半導体素子8、半導体素子84、及び、半導体素子7が一列に並んで1つの列を構成する。これらの列は、並列に配列され、半導体素子83及び半導体素子81は、これらの列の間に配置される。
上述のように、電力変換装置1Cにおいて、サージ電圧に影響する配線インピーダンスとして、図55中に点線で示す経路P3と、一点鎖線で示す経路P4とが形成される。経路P3は、スナバコンデンサ68−半導体素子5−半導体素子82−半導体素子81−半導体素子83−半導体素子84−半導体素子8−スナバコンデンサ68を通過する。経路P4は、スナバコンデンサ71−半導体素子7−半導体素子84−半導体素子83−半導体素子81―半導体素子82−半導体素子6−スナバコンデンサ71を通過する。
経路P3及び経路P4に共通する半導体素子81〜84を中央部に配置するように、半導体素子82及び半導体素子84は、それぞれの列で真ん中に配置される。更に、2つの列の間で、半導体素子5及び半導体素子8を近接させるとともに、半導体素子6及び半導体素子7を近接させるように、それぞれの列内での半導体素子の配列順が決められている。
具体的には、実施の形態2と同様に、半導体素子5の正極に対して、半導体素子8の負極との接続距離が、半導体素子8の負極との接続距離よりも短くなり、かつ、半導体素子7の正極に対して、半導体素子6の負極との接続距離が、半導体素子8の負極との接続距離よりも短くなるように、半導体素子5〜8及び半導体素子81〜84は配列される。
図55では、図43と同様に、スナバコンデンサ68及び71は、6つの半導体素子5〜8及び半導体素子81〜84が配列される範囲の外側に配置される。これにより、スナバコンデンサ68及び71に加えて、平滑用コンデンサ3とも接続される、半導体素子5及び半導体素子7の正極は、半導体素子5〜8及び半導体素子81〜84の配列群の外側を向くように配列することができる。この結果、半導体素子5及び半導体素子7の正極と、平滑用コンデンサ3との接続が容易になる。
図56には、実施の形態4に係る電力変換装置の半導体素子及びスナバコンデンサの第2の配置例が示される。
図56を参照して、第2の配置例では、第1の配置例(図55)と比較して、半導体素子5及び半導体素子7の正極及び負極の位置が異なる。具体的には、半導体素子5及び半導体素子7は、図55の配置から、それぞれ時計と反対回り方向に90度回転させて配置されている。これにより、半導体素子5の正極は、半導体素子8の負極(左辺の負極)と対向し、半導体素子7の正極は、半導体素子6の負極(左辺の負極)と対向する。
これにより、スナバコンデンサ68と、半導体素子5の正極及び半導体素子8の負極のそれぞれとの接続距離を、図55の配置例よりも短くすることができる。同様に、スナバコンデンサ71と、半導体素子7の正極及び半導体素子6の負極のそれぞれとの接続距離についても、図55の配置例よりも短くすることができる。
これにより、スナバコンデンサ68及びスナバコンデンサ71の接続に伴う配線インダクタンスが低減される。又、経路P3及び経路P3についても、図55と比較して経路長を短くすることが可能である。この結果、サージ電圧を更に低減することが可能となる。
一方で、第2の配置例では、半導体素子5及び半導体素子7の正極が、図55とは異なり、半導体素子5〜8及び半導体素子81〜84の配列群の外側を向いていない。従って、図43で説明したのと同様に、半導体素子5及び半導体素子7の正極から、平滑用コンデンサ3等の他素子との接続用配線を引き出す際には、絶縁距離の確保を考慮することが必要となる。
実施の形態3の最後で説明したように、半導体素子81及び半導体素子82、並びに、半導体素子83及び半導体素子84の各々について、負極同士を接続することも可能である。この場合には、図55及び図56において、半導体素子81〜84を適宜回転させて配置することにより、電力変換装置1Cを構成するための電気的な接続関係を容易に確保することができる。同様に、半導体素子81及び半導体素子82、並びに、半導体素子83及び半導体素子84の各々については、逆方向に耐圧を持つ2個の半導体素子とし、それぞれ逆方向に並列に接続して構成することも可能である。
図55及び図56の配置例では、半導体素子5、半導体素子82、及び、半導体素子6が一列に並べられるとともに、半導体素子8、半導体素子84、及び、半導体素子7が一列に並べられると説明したが、各列において、複数の半導体素子は、正確に真っ直ぐ一列に並んでいることを要するものではない。同様に、それぞれの列が、正確に並列に配置されることも必須ではない。実施の形態4において、実施の形態2と同様に、半導体素子5の正極に対して、半導体素子8の負極との接続距離が、半導体素子8の負極との接続距離よりも短くなり、かつ、半導体素子7の正極に対して、半導体素子6の負極との接続距離が、半導体素子8の負極との接続距離よりも短くなるという条件が成立する範囲内で、配列のずれは許容される。
尚、実施の形態4においても、実施の形態3に係る電力変換装置1Cを構成する半導体素子5〜8及び半導体素子81〜84が実装される基板の種類は、実施の形態2での説明と同様に任意である。即ち、当該基板には、多層のプリント基板、単層のプリント基板、又は、片面が金属により構成された金属基板等を適用することが可能である。
図57は、実施の形態4に係る電力変換装置の半導体素子及びスナバコンデンサの第3の配置図である。
図57を参照して、電力変換装置1Cの要素である、半導体素子5〜8及び半導体素子81〜84の各々は、図46と同様に、TO−263パッケージに代表されるディスクリートパッケージを有する素子で構成される。即ち、図57中の各半導体素子では、正極はパッケージ背面に形成され、負極及び制御電極は、引き出し線(リード)により外部接続される。実施の形態4においても、負極及び制御電極の引き出し線の表記は、実施の形態2(図46)と同様である。
図57に示された第3の配置例では、半導体素子5、半導体素子82、及び、半導体素子6が一列に並べられて1つの列を構成するとともに、半導体素子8、半導体素子84、及び、半導体素子7が一列に並べられて、もう1つの列が構成される。これらの列を並列に配設するとともに、半導体素子5の正極と、半導体素子8の負極との間には、スナバコンデンサ68が接続される。更に、半導体素子7の正極と、半導体素子6の負極との間に、スナバコンデンサ71が接続される。これにより、図55及び図56と同様に、サージ電圧に影響する配線インピーダンスを含む、点線で示す経路P3と、一点鎖線で示す経路P4とが形成される。
図57の配置例においても、図55及び図56と同様に、半導体素子5の正極に対して、半導体素子8の負極との接続距離が、半導体素子8の負極との接続距離よりも短くなり、かつ、半導体素子7の正極に対して、半導体素子6の負極との接続距離が、半導体素子8の負極との接続距離よりも短くなるという条件が成立するように、半導体素子5〜8及び半導体素子81〜84は配列される。
特に、図57の配置例では、半導体素子5〜8及び半導体素子81〜84の各々について、制御電極が、半導体素子5〜8及び半導体素子81〜84が配列される領域の外側に位置する方向で揃って配置されている。このため、各制御電極へ駆動信号27〜30及び駆動信号85〜88(図48)を伝送する信号線の配設が容易となる。
或いは、制御電極への信号線の接続がコネクタ等によって実現されるため、プリント基板上に信号線を配設する必要がない場合には、制御電極を外側に位置させるメリットが低下する。この場合には、半導体素子81〜84の方向は、特に限定されない。
図58は、実施の形態4に係る電力変換装置の半導体素子及びスナバコンデンサの第4の配置図である。
図58を参照して、電力変換装置1Cの要素である、半導体素子5〜8及び半導体素子81〜84の各々は、図47と同様に、TO−247パッケージに代表されるディスクリートパッケージを有する素子で構成される。即ち、図58中の各半導体素子では、正極、負極、及び、制御電極がそれぞれ個別にリードによって外部接続される。実施の形態4においても、正極、負極及び制御電極の引き出し線の表記は、実施の形態2(図47)と同様である。
図58に示された第4の配置例では、半導体素子5、半導体素子82、及び、半導体素子6が一列に並べられて1つの列を構成するともに、半導体素子8、半導体素子84、及び、半導体素子7が一列に並べられてもう1つの列を構成する。当該2つの列は並列に配設されて、半導体素子81及び83は、2つの列の間に配置される。
更に、半導体素子5の正極リードと、半導体素子8の負極リードとの間にスナバコンデンサ68が接続され、半導体素子7の正極リードと、半導体素子6の負極リードとの間に、スナバコンデンサ71が接続される。図58においても、サージ電圧に影響する配線インピーダンスを含む、点線で示す経路P3と、一点鎖線で示す経路P4とが形成される。
図58の配置例においても、図55等と同様に、半導体素子5の正極に対して、半導体素子8の負極との接続距離が、半導体素子8の負極との接続距離よりも短くなり、かつ、半導体素子7の正極に対して、半導体素子6の負極との接続距離が、半導体素子8の負極との接続距離よりも短くなるという条件が成立するように、半導体素子5〜8及び半導体素子81〜84が配設されていることが理解される。これにより、上記経路P3及び経路P4の配線長を短くすることで、配線インダクタンスによって発生するサージ電圧を低減することができる。
図58においても、図57と同様に、半導体素子5〜8及び半導体素子81〜84の各々について、制御電極が、半導体素子5〜8及び半導体素子81〜84が配列される領域の外側に位置する方向で揃って配置されている。このため、各制御電極へ駆動信号27〜30及び駆動信号85〜88(図48)を伝送する信号線の配設が容易となる。
又、制御電極への信号線の接続がコネクタ等によって実現されるため、プリント基板上に信号線を配設する必要がない場合には、制御電極を外側に位置させるメリットが低下する。この場合には、半導体素子81〜84の方向は、特に限定されない。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。