JPWO2020116584A1 - ガラス部材加工用デバイス - Google Patents
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Abstract
ガラス容器の製造方法において、製造されるガラス容器から成形に使用したオイルを除去する追加の工程を簡素化する。
ガラス容器(10’)の製造方法において、加工可能な温度に少なくとも一部分が加熱されたガラス部材(10)を加工するデバイス(14)は、ガラス部材の加熱部分に接触する部分の少なくとも一部分が含浸グラファイト材料で構成されている。
ガラス容器(10’)の製造方法において、加工可能な温度に少なくとも一部分が加熱されたガラス部材(10)を加工するデバイス(14)は、ガラス部材の加熱部分に接触する部分の少なくとも一部分が含浸グラファイト材料で構成されている。
Description
本発明は、ガラス部材を加工するために用いるデバイス、例えばガラス容器を製造するために加熱したガラス部材を加工する、特にガラス部材を成形するために用いるデバイスに関する。そのようなデバイスは、例えば、口部および底部を有するガラス容器、特に医療用ガラス容器、例えばバイアル、アンプル、シリンジ、カートリッジ等の製造に用いることができる。本発明は、そのようなデバイスを使用する、ガラス部材の加工方法にも関する。更に、本発明は、そのようなデバイスおよび加工方法を使用するガラス容器の製造方法に関し、また、製造されるガラス容器にも関する。
医療用薬剤を入れるガラス容器の製造方法として、下記特許文献1に記載されている方法が知られている。この方法では、加熱したガラス管の一端の内側にマンドレルを配置し、その外側に対のローラーを配置して、ガラス管の端部がマンドレルと対のローラーによって挟まれるようにする。これらを軸回転することによって、ガラス管の端部は、マンドレルとローラーによって、肩部分およびその先端に位置するフランジ部分を有する口部となるように成形される。その後、ガラス管の該先端から所定長さだけ(上方に)離れて位置するガラス管の一部を加熱して、そのように成形した口部および所定長さを有するガラス管部を、残りのガラス管部から焼き切り離す。加熱状態にあるガラス管部の切り離した部分に、底部プレートと対のローラーを押し当てて、切り離した部分の形状を整えて面状に成形して、ガラス管部の他方の端部が底部を有するようにする。その結果、成形された口部および底部を有するガラス容器が得られる。
上述の従来のガラス容器の製造において、ローラー、マンドレルおよび底部プレートのようなデバイスの、成形可能に加熱されたガラス管と接触する部分は、通常金属またはセラミックスで構成されている。そのようなデバイスの金属部分は、ガラス部材の加工に適しているものの、金属部分のガラス管に対する滑性を良くするために、金属部分にオイルを塗る必要がある。従って、得られるガラス容器にはオイルが付着しているので、ガラス容器からオイルを除去する追加の工程が必要となる。また、長期間の使用により金属部分が摩耗し、あるいはそれに加えて金属部分にガラス微小物が付着し、その結果、加熱ガラス管に接触する、金属部分の接触面に凹凸が生じることがある。そのような凹凸を有する金属部分を有するデバイスを用いてガラス部材を成形すると、凹凸によってガラス容器の表面が粗面化され、その結果、良好な光反射性を有する平滑表面を得られない可能性がある。
セラミックス部分を有するデバイスを用いる場合、ガラス管とセラミックス部分との接触によって削られたセラミックスの微小物がガラス容器の表面に付着する可能性がある。その結果、そのような付着物を除去する追加の工程が必要となる。
従って、ガラス容器の製造方法において上述のような追加の工程を簡素化する、最も好ましくは省略することができる、ガラス容器を製造する方法を提供することが望まれている。また、製造されるガラス容器の表面は、より良好な平滑性と光反射性を有することが望まれている。
上述のデバイスに用いる材料について種々の検討を重ねた結果、発明者らは、ガラス管または所定長さのガラス管の一部分のような加熱されたガラス部材を加工するために、ガラス部材の加熱部分と接触する、ローラー、マンドレルおよび底部プレートのようなデバイスの少なくとも一部分が、好ましくは該加熱部分と接触する、そのようなデバイスの実質的に全ての部分が、含浸グラファイト材料で構成されている場合、上述の追加の工程を簡素化、好ましい態様では省略できることを見出し、本発明を完成させるに到った。
第1の要旨において、本発明は、加工可能な温度、通常、軟化点以上の温度に少なくとも一部分が加熱されたガラス部材を加工するデバイスを提供し、このデバイスは、ガラス部材の加熱部分に接触する部分の少なくとも一部分が含浸グラファイト材料で構成されていることを特徴とする。そのようなデバイスを用いてガラス部材を加工する場合、追加の工程を簡素化できるだけではなく、好ましい態様では、得られるガラス部材の加工した表面の平滑性と光反射性が良好であり、好ましくは従来の加工方法により達成される光反射性よりも向上することも見出された。
本発明において、「ガラス部材」とは、ガラス材料でできた、加工すべき対象物であって、ガラス材料で構成されていれば、特に限定されるものではない。ガラス部材は、通常、ガラス管または所定長さを有する、ガラス管の一部分である。ガラス部材は、通常管状(または環状もしくは中空状)であるが、その必要は必ずしも無い。場合により、塊状、棒状、プレート状またはいずれかの他の必要とされる形状であってもよい。特に好ましい態様では、ガラス部材は軸対称、例えば円管状、円柱状等の形態であり、軸方向に沿って径が変化しても、あるいは一定であってもよい。軸対称の場合、ガラス部材および/またはデバイスを軸回転させることができる。
ガラス部材を構成する「ガラス材料」は、特に限定されるものではなく、一般的にガラスと呼ばれている材料であってよい。1つの好ましい態様では、ガラス材料はホウケイ酸ガラスであり、これは、医療用ガラス容器を製造する場合に特に好ましい。必要に応じて、ガラス材料は、他の種類のガラス、例えばソーダ石灰ガラス、石英ガラス等であってもよい。
本発明において、「加工」とは、ガラス部材の所定部分(例えば、主表面、内側表面、外側表面、底部、口部、側面部等)をマクロ的に必要とされる形態にすること(例えば、平坦にすること、窪んだ形態にすること、突出した形態にすること、くびれた形態にすること等)、ミクロ的に必要とされる形態にすること(例えば、ガラス部材の表面形状を整えること、およびミクロ的に凹凸が少ないようにすること、平滑にすること等)の少なくとも一方、好ましくは両方を意味する。従って、「加工」とは、ガラス部材を成形すること、特に所定の形態に成形することを意味する。一般的には、加工に際して、ガラス部材およびデバイスの少なくとも一方を他方に対して相対的に軸回転させて、ガラス部材の形を整えて所定の形状となるように成形する。
加工に際しては、ガラス部材の所定部分を加工可能な温度に予め加熱しておく。一般的には、所定部分がガラス材料の軟化点(softening point)以上の温度に、好ましくは作業温度範囲(working range)の温度に、例えば作業点(working point)に加熱する。必要なら、加工中にも加熱を実施してよい。このような温度は、ガラス材料の種類に応じて固有な温度であり、当業者であれば、ガラス部材を加熱すべき温度を適宜選択できる。
1つの態様において、「加工」によって口部、底部および側面部を有するガラス状容器を得る場合、円管状のガラス部材を用い、本発明のデバイス(例えばローラー、および必要な場合、マンドレル)を用いてガラス部材の一端が所望の形態の口部を有するように、および/または本発明のデバイス(例えば底部プレート、および必要な場合、ローラー)を用いてガラス部材の他端が所望の形態の底部を有するようにガラス部材を加工する。例えば、底部が平坦な底面としての外側表面を有するように、口部が肩部分、および/またはその先端(即ち、開口端部)に位置するフランジ部分を有するように成形する。
本発明のデバイスにおいて、ガラス部材の加工に際して、ガラス部材と接触する部分の少なくとも一部分が、好ましくは実質的に全部が、含浸グラファイト材料により構成されている。本発明のデバイスは、このような含浸グラファイト材料をいずれの形態で有してもよい。1つの態様では、本発明のデバイスは、このような含浸グラファイト材料を薄層の形態で有してよく、その場合、デバイスを構成する基材(例えば黒鉛製基材)を用いて、それがガラス部材と接触する部分に含浸グラファイト材料の薄層を貼り付けることによりデバイスを形成できる。別の態様では、実質的に含浸グラファイト材料のみでデバイスを構成してよい。例えば、含浸グラファイト材料の塊を切削加工して、図面を参照して後で説明する、所定の形状を有するデバイス(例えばローラー、マンドレル、底部プレート等)を構成できる。
本発明のデバイスにおいて、「含浸グラファイト材料」とは、グラファイト材料により構成された基材の気孔内に別の炭素材料が存在する状態、従って、別の炭素材料が含浸されている状態にある材料を意味する。「含浸グラファイト材料」は、概念的には、マクロ的には基材を構成するグラファイト材料が別の炭素材料によって被覆されている形態、また、ミクロ的には基材を構成するグラファイト粒子および/もしくはその集合体が別の炭素材料によって被覆されている形態、ならびに/または基材の表面から内側の部分の空隙内に別の炭素材料が存在する、好ましくは空隙、より詳しくは表面から所定深さまでの空隙を充填している形態であると説明することができる。「別の炭素材料」として、ガラス状炭素(Glassy Carbon、グラッシーカーボン)、熱分解炭素等の炭素材料を例示でき、ガラス状炭素が特に好ましい。
このような含浸グラファイト材料を用いると、基材としてのグラファイト材料の性質にガラス状炭素または熱分解炭素の強度が適度に組み合わされ、ガラス部材の加工に適切なデバイスを提供できる。含浸されている別の炭素材料が基材を構成するグラファイト材料の一体性を保持してグラファイト材料の基材からのグラファイト粒子の脱離を抑制できる。その結果、加工時にグラファイト粒子の発生を抑制できる一方、グラファイト材料の基材が持つ適度な柔らかさが、より少ないオイル量で、好ましくはオイル無しで、デバイスのガラス部材に対する適度な滑りをもたらすと考えられる。
他の炭素材料としてガラス状炭素を用いる特に好ましい態様において、デバイスとガラス部材の双方を接触状態で相互に相対的に摺動させて、好ましくは軸回転させながら摺動させて、ガラス部材を加工してガラス容器を製造するに際して、グラファイト材料の基材と含浸されている別の炭素材料との組み合わせによって、得られるガラス容器が所望の形態を有し、また、良好な表面の光反射性を有することに加えて、成形されたガラス容器の表面の透明感が向上する。しかも、このようにガラス容器を製造するに際して、オイルの使用を抑制、好ましくは省略できる。
ガラス状炭素が含浸しているグラファイト材料としては、ガラス状炭素を基材の表面に加えて内部にまで含侵させた材料(ガラス状炭素含浸グラファイト材料)を好ましく用いることができる。含浸深さは、例えば、1mm以上であることが好ましく、より好ましくは10mm以下である。このようなグラファイト材料としては、例えばVGI(イビデン株式会社の黒鉛製品)を使用できる。また、熱分解炭素による表面処理層を有するグラファイト材料としては、炭素の化学蒸着による皮膜を有するグラファイト材料を用いることができる。好ましくは、グラファイト材料は等方性黒鉛である。このようなグラファイト材料としては、例えば、パイロカーブ(PYROCARB、イビデン株式会社の黒鉛製品)を使用できる。
第2の要旨において、本発明は、ガラス部材の加工方法を提供し、加工に際して、上述および/または後述の本発明のデバイスを用いることを特徴とする。より具体的には、加工可能な温度に加熱した、ガラス部材の所定部分に、上述の本発明のデバイスを、詳しくは該デバイスの含浸グラファイト材料で構成された部分を接触させて加工することを特徴とする。例えば、双方が接触した状態で、一方が他方に対して相対的に移動するように運動させる。特に好ましい態様では、管状のガラス部材を加工する方法において本発明のデバイスを使用し、上述のように接触した状態で、ガラス部材およびデバイスの少なくとも一方、好ましくは双方を軸回転させ、一方が他方に対して相対的に反対方向に回転するようにこれらを運動させる。容易に理解できるように、接触した状態でこれらを軸回転させる場合、ガラス部材は軸対称形態、例えば円管状または円柱状であり、これに接触する、デバイスの接触部分は軸対称形態、例えば円環状、円筒状、円盤状または円柱状、あるいはこれらの組み合わせの形態であるのが好ましい。
第3の要旨において、ガラス容器の製造方法を提供し、ガラス部材として所定の長さを有するガラス管を用いて上述および/または後述の本発明のデバイスおよび加工方法を適用することを特徴とする。1つの態様において、(1)ガラス部材としてのガラス管の一部分(例えば一方の端部分)を加工可能な温度に加熱する工程と、(2)加熱された該一部分に本発明のデバイスの含浸グラファイト材料の部分を押し当てた状態で、ガラス部材およびデバイスの少なくとも一方を軸回転させてこれらが相対的に反対方向に回転するようにする工程、とを含む。
第4の要旨において、本発明は、上述および/または後述の本発明のガラス容器の製造方法により製造されるガラス容器をも提供する。
本発明において、ガラス容器は、口部および底部を有するガラス製の容器であり、例えばホウケイ酸ガラスから製造される。ガラス容器は、好ましくは医療用の容器であり、例えば液体または固体、例えば粉末状の医療用組成物、例えば薬剤を入れるための容器である。具体的には、ガラス容器には、例えばバイアル、アンプル、シリンジ、カートリッジ等が含まれる。
更に、第5の要旨において、本発明は、上述および/または後述の本発明のデバイスを有して成る、ガラス部材の加工装置を提供し、この装置は、上述および/または後述の本発明のデバイスに加えて、それを用いてガラス部材を加工するために必要な他の種々の要素、部材、他のデバイスを有して成る。例えば、本発明の加工装置は、加熱ガラス部材からガラス容器を成形する装置であって、ガラス容器の口部を形成するマンドレルおよびローラー、ならびにガラス容器の底部を形成する底部プレートおよび必要に応じてローラーを有して成り、これらの少なくとも1つが本発明のデバイスであることを特徴とする。
加えて、第6の要旨において、本発明は、上述および/または後述の本発明の加工装置を有して成る、ガラス部材の加工システムを提供し、このシステムは、上述および/または後述の本発明の加工装置に加えて、それを用いてガラス部材を加工するために必要な他の種々の装置、例えば、ガラス部材を搬送する装置、ガラス部材を所定のように加熱する装置、ならびにこれらの装置の作動を制御する装置を有して成る。
ガラス部材の加工に際して、特にガラス容器の製造に際して、本発明のデバイスを用いる場合、デバイスの含浸グラファイト材料で構成された部分とガラス部材の加熱部部分との間の滑性が向上する。その結果、ガラス部材を加工する際、特にその形状を整える際に用いるオイルの量を従来の方法で用いる場合より少なくすることができる。好ましい態様では、使用するオイル量を相当少なくすることができ、特に好ましい態様では、オイルを使用する必要がない。その結果、従来の方法で実施していた、オイル除去工程におけるオイル除去の負荷を減らすことができ、その結果、この工程を簡素化できる。また、特に好ましい態様では、オイル除去工程を省略できる。
また、本発明のデバイスに含浸グラファイトを用いてガラス部材を加工するに際して、ガラス部材と接触する、デバイスの部分に凹凸が形成されるのが抑制され、その結果、ガラス部材の加工表面に横シワ、縦シワおよびクラック等が生じるのが激減し、ガラス部材の加工表面の平滑性が良好となり、得られるガラス容器の反射性が向上する。特に好ましい態様では、得られるガラス容器において、本発明のデバイスを用いて成形した部分の表面の算術平均粗さ(Ra)が例えば0.035mm〜0.045mmと非常に小さく、従来の金属製デバイスを用いて加工する場合と比較して、平滑性が大幅に向上している。
次に、図面を参照して第1の要旨の本発明のガラス部材を加工する、特に成形するデバイスを中心に説明する。基本的には、他の要旨の本発明は、そのようなデバイスを有すること、または使用することを特徴とするため、本発明のデバイスを説明することにより、他の要旨の本発明についても、当業者であれば、容易に理解できる。
図1に本発明のデバイスを用いてガラス部材を加工する方法、即ち、ガラス部材を成形してガラス容器を製造する方法を工程別に模式的に示している。図示した態様では、ガラス部材10の開口している一方の端部12に本発明のデバイス14を接触させて肩部分16およびその端部にフランジ部分18を有する口部12’を形成してガラス容器10’を製造する様子を段階的に示す。尚、ガラス部材10は、右側半分を模式的に断面図にて示す。
図1において、工程(a)では、加熱したガラス部材10を予備成形する。加工可能温度に予め加熱したガラス部材10の一方の端部12に、ローラー形態の本発明のデバイス14−1(補助成形ローラー(1)とも呼ぶ)を接触させた状態で、これらの少なくとも一方を軸回転させて、矢印で示すように相互に反対方向に軸回転するように構成されている。尚、ローラーデバイス14−1を1つのみ図示しているが、このデバイスはガラス部材10の両側に対で位置する(即ち、ガラス部材の軸の回りで180°で相互に離間する)のが好ましい。別の態様では、ガラス部材の軸の回りで等角度で離れた3つ以上のローラーデバイス(例えばガラス部材の軸の回りで120°ずつ離れた3つのローラーデバイス)を使用してもよい。図1(a)に示すように、ガラス部材10を加工して(即ち、変形させて)、端部12に肩部分16を形成し、また、予備的な状態のフランジ部分18’を形成する。
容易に理解できるように、本発明のデバイス14−1は、全体として円錐台状部分とその底面に接続された2枚のディスク状部分(これらのディスクの間の接続部分も含む)が一体となった形態であり、ガラス部材10の加熱された端部分12に接触する、デバイスの接触部分が含浸グラファイト材料、例えばガラス状炭素含浸グラファイト材料により構成されている。即ち、ローラー14−1の少なくとも外周面(即ち、円錐台の側面部、ならびに2枚のディスクおよびその間の接続部の側面部)が含浸グラファイト材料により構成されている。ローラーデバイス14−1がガラス部材10と接触する面が円錐台の側面部である態様を図示したが、接触面は、側面の母線に対応する線が曲線となる曲面で構成されていてもよい。
図1において、工程(b)では、工程(a)の後に、バーナー20によって、温度が低下したフランジ部分18’付近を加工可能な温度に加熱する。図1において、工程(c)では、加熱されたフランジ部分18’の外側で対のローラーである、別の形態の本発明のデバイス14−2(補助形成ローラー(2)とも呼ぶ)をフランジ部分18’付近に接触させた状態で、図1(a)と同様にこれらを軸回転させて更に予備成形する。本発明のデバイス14−2は、それぞれが径の異なるディスク状部分を3枚重ねて一体にした形態であり、デバイス14−1と同様に、加熱されたフランジ部分18’に接触する、デバイスの接触部分が含浸グラファイト材料、例えばガラス状炭素含浸グラファイト材料により構成されている。即ち、ローラー14−2の上方の2枚のディスク状部分の少なくとも外周面(即ち、ディスクの側面部)、および下方のディスク状部分の少なくともフランジ部分18’の先端(即ち、ガラス部材の開口面19)に接触する、ディスク状部分の上面の外周部が含浸グラファイト材料により構成されている。
図1において、工程(d)では、工程(c)の後に、バーナー22によりフランジ部分18’を加工可能な温度に再び加熱する。図1において、工程(e)では、加熱されたフランジ部分18’部分を仕上成形する。フランジ部分18’に、図1(c)に示す形態と同じローラーである本発明のデバイス14−3(仕上成形ローラーとも呼ぶ)をフランジ部分18’に接触させた状態で、図1(c)と同様にこれらを軸回転させる。本発明のデバイス14−3も、径の異なるディスク状部分を3枚重ねた形態であり、デバイス14−2と同様に、加熱されたフランジ部分18’に接触する、この装置の部分が含浸グラファイト材料、例えばガラス状炭素含浸グラファイト材料により構成されている。
即ち、ローラー14−3の上方の2枚のディスク状部分の少なくとも外周面(即ち、ディスクの側面部)、および下方のディスク状部分の少なくともフランジ部分18’の先端(即ち、ガラス部材の開口面19)に接触する、ディスク状部分の上面の外周部が含浸グラファイト材料により構成されている。図1(e)に示すように加工すると、図1(d)に図示するフランジ部分18’の縁が面取りされたような丸みを帯びた状態から、デバイス14−3の側面形状に対応して、角を有するフランジ部分18の形態へと変形するように加工される。
即ち、ローラー14−3の上方の2枚のディスク状部分の少なくとも外周面(即ち、ディスクの側面部)、および下方のディスク状部分の少なくともフランジ部分18’の先端(即ち、ガラス部材の開口面19)に接触する、ディスク状部分の上面の外周部が含浸グラファイト材料により構成されている。図1(e)に示すように加工すると、図1(d)に図示するフランジ部分18’の縁が面取りされたような丸みを帯びた状態から、デバイス14−3の側面形状に対応して、角を有するフランジ部分18の形態へと変形するように加工される。
図1に示していないが、例えば、図1(a)、(c)および/または(e)のようにガラス部材10を加工する際に、図2に模式的に示す(図1(c)の様子を模式的に示す)ように、ガラス部材10の下端の開口部19からその内部に(矢印で示すように)上向きに、本発明のデバイスとしてのマンドレル24を挿入し、その後、ガラス部材10のフランジ部分18’の内側と本発明のデバイスであるマンドレル24とが接触した状態で、矢印で示すようにこれらを軸回転させてガラス部材、特にフランジ部分の内側を加工してもよい。この場合、フランジ部分の内側に接触する、マンドレルの外周部分(即ち、側面部)の少なくとも一部分、好ましくは全部が含浸グラファイト材料、例えばガラス状炭素含浸グラファイト材料で構成されている。
例えば、図1に示した態様において、ローラー14−1を用いる場合に、ガラス部材10の内部にマンドレルとして補助成形軸(1)24を挿入して加工してよく、これに加えてまたは代えてローラー14−2を用いる場合に、ガラス部材10の内部にマンドレルとして補助成形軸(2)を挿入して加工してよく、これに加えてまたは代えてローラー14−3を用いる場合に、ガラス部材10の内部にマンドレルとして仕上成形軸を挿入して加工してよい。
尚、図1に示す態様において、3種のローラー(14−1、14−2および14−3)のいずれもが本発明のデバイスである場合を例として説明したが、本発明において、ガラス部材の加熱部分に接触して加工するデバイスの少なくとも1つ(例えばローラー14−3)が本発明のデバイスであればよい。また、図1の本発明のデバイスに加えて、またはそれに代えて、上述のように図2に示すようなマンドレルを用いる場合に、これらの少なくとも1つが本発明のデバイスであってよい。
一般的に、ローラー、マンドレルまたは底部プレートのようなデバイスを用いてガラス部材を加工してバイアルのようなガラス容器の製造に際して、加工デバイスをガラス部材の表面に押し付けて接触させた状態で相互に反対方向に摺動させる場合、デバイスの接触面はガラス部材の表面との摩擦によって摩耗することになる。継続して多数のガラス容器を製造すると、ガラス部材に接触するデバイスの面、例えばプレートの面は粗面化される。そのようなデバイスを用いて加工を続けると、ガラス容器の表面は粗面化されて光反射性が低下するので、新しい装置に交換する必要がある。
そのような摩耗を抑制してデバイスとガラス部材との滑性を向上させるためにオイルが使用されている。しかしながら、本発明の含浸グラファイト材料を用いたデバイスを用いると、使用するオイル量を減らしても、特に好ましい態様では、オイルを使用しなくても、デバイスの使用開始後から交換が必要となるまでの間に製造できるガラス容器の数が、他の種類の材料(例えば通常の金属製またはグラファイト製)のデバイスを用いる場合と比較して、同等、好ましい態様では、多くなる。換言すれば、デバイスの交換インターバルが同等であるか、あるいはデバイスの交換インターバルがより長くなる。オイルの使用量が減ると、それを除去する追加の工程が簡素化され、また、使用量がゼロになると、追加の工程が不要となる。
特定の理論により拘束されるものではないが、含浸グラファイト材料、特にガラス状炭素含浸グラファイトを用いてガラス部材を加工する場合、オイルの使用量を削減できる理由は以下の通りであると推測できる:
本来的にガラス部材とデバイスの含浸グラファイト材料との間の滑性が良好である上に、好ましい態様では、含浸グラファイト材料は、過度に摩耗することなく適度に摩耗する。その結果、摩耗により生じるグラファイトの微細粒子がデバイスとガラス部材との間に存在して潤滑剤として作用することができる。そのグラファイトの微細粒子は、ガラス容器に付着したとしても、その量が微量であるため、ガラス容器の後処理(例えばアニーリング)における温度にて燃焼して無くなるので、製造されるガラス容器に実質的に悪影響を与えない。
本来的にガラス部材とデバイスの含浸グラファイト材料との間の滑性が良好である上に、好ましい態様では、含浸グラファイト材料は、過度に摩耗することなく適度に摩耗する。その結果、摩耗により生じるグラファイトの微細粒子がデバイスとガラス部材との間に存在して潤滑剤として作用することができる。そのグラファイトの微細粒子は、ガラス容器に付着したとしても、その量が微量であるため、ガラス容器の後処理(例えばアニーリング)における温度にて燃焼して無くなるので、製造されるガラス容器に実質的に悪影響を与えない。
図1に示す装置および工程を用いてガラス管から形成したガラス部材を成形してガラス容器としてのバイアルを製造した。尚、本実施例では、図1の工程(a)および(c)におけるローラー14−1および14−2はそれぞれ金属製ローラーとし、図1の工程(e)におけるローラー14−3として本発明のデバイスを用いた。また、ローラーを用いるいずれの工程においても、ガラス部材の内側に成形軸を挿入してマンドレルとして用いた。その詳細は次の通りである:
・ローラー14−1:補助成形(プレフォーミング)ローラー(1)
基材:ステンレス(S45C)、潤滑オイル使用
・補助成形(プレフォーミング)軸(1)
基材:ステンレス(S45C)、潤滑オイル使用
基材:ステンレス(S45C)、潤滑オイル使用
・補助成形(プレフォーミング)軸(1)
基材:ステンレス(S45C)、潤滑オイル使用
・ローラー14−2:補助成形(プレフォーミング)ローラー(2)
基材:ステンレス(S45C)、表面処理:なし、潤滑オイル使用
・補助成形(プレフォーミング)軸(2)
基材:ステンレス(S45C)、表面処理:なし、潤滑オイル使用
基材:ステンレス(S45C)、表面処理:なし、潤滑オイル使用
・補助成形(プレフォーミング)軸(2)
基材:ステンレス(S45C)、表面処理:なし、潤滑オイル使用
・ローラー14−3:仕上成形(ファイナルフォーミング)ローラー(本発明のデバイス)
基材:ET−10(グラファイト、イビデン株式会社)、
表面処理:ガラス状炭素含浸グラファイト(VGI(登録商標、イビデン株式会社)、
潤滑オイル不使用
・仕上成形(ファイナルフォーミング)軸
基材:ステンレス(S45C)、潤滑オイル使用
基材:ET−10(グラファイト、イビデン株式会社)、
表面処理:ガラス状炭素含浸グラファイト(VGI(登録商標、イビデン株式会社)、
潤滑オイル不使用
・仕上成形(ファイナルフォーミング)軸
基材:ステンレス(S45C)、潤滑オイル使用
ガラス管(ホウケイ酸ガラス製):直径24.5mm、肉厚:1.2mm
製造したバイアル:直径24.5mm×高さ50mm、容量10mL
製造したバイアル:直径24.5mm×高さ50mm、容量10mL
図1(a)に示すように、加工可能な温度(約800℃)に加熱されたガラス部材10の一端12に、補助成形ローラー(1)14−1を接触させ、ガラス部材に補助成形軸(1)24を挿入して、肩部16を補助成形した。この工程においてガラス部材は軸回転させた。また、ローラー14−1および軸24の双方の表面にオイルを付着させていた。
次に、図1(b)のように肩部周辺を加熱して再度加工可能な温度(約800℃)とした後、図1(c)のように補助成形ローラー(2)14−2をフランジ部分18’に接触させ、ガラス部材10に補助成形軸(2)を挿入して、口部12’を補助成形(または予備成形)した。この工程においてガラス部材は軸回転させた。また、ローラー、補助成形軸(2)の何れの表面にもオイルを付着させていた。
次に、図1(d)に示すように補助成形した肩部周辺を加熱して再度加工可能な温度(約800℃)とした後、図1(e)に示すように、ガラス部材に本発明の仕上成形ローラー14−3を接触させ、ガラス部材に仕上成形軸を挿入して、肩部及びフランジ部分18を仕上成形した。この工程においてガラス部材は軸回転させた。また、仕上成形軸の表面にオイルを付着させたが、ローラー表面にはオイルを付着させなかった。
仕上ローラー(デバイス14−3に該当)をステンレス製(S45C基材)とし、表面にオイルを付着させた以外は、実施例を繰り返した。
実施例で得たバイアルおよび比較例で得たバイアルについて、以下の要領で画像撮影と面粗さ測定を行った:
(画像撮影)
太さ0.25pt線を等間隔で描いたプレートを準備し、製造したバイアルの背後にプレートを配置して、バイアルのフランジ部分18の側面を介して見える線の様子を光学カメラで撮影した。撮影した画像に写った線のゆがみ・鮮明度を評価した。尚、評価は、実施例および比較例で製造したバイアル、それぞれ1個について実施した。
太さ0.25pt線を等間隔で描いたプレートを準備し、製造したバイアルの背後にプレートを配置して、バイアルのフランジ部分18の側面を介して見える線の様子を光学カメラで撮影した。撮影した画像に写った線のゆがみ・鮮明度を評価した。尚、評価は、実施例および比較例で製造したバイアル、それぞれ1個について実施した。
その結果、実施例にて得られたバイアルのフランジ部を介してその背後に位置するプレートの線は、比較例にて得られたバイアルと比較して、明らかに鮮明であり、線自体のゆがみの程度も小さかった。
(面粗さ)
表面粗さ測定機(SURFTEST SJ-500、株式会社ミツトヨ製)を用いて製造したバイアルのフランジ部の外側の側面における面粗さ(算術平均粗さ:Ra)を測定した。尚、測定は、実施例および比較例で製造したバイアル、それぞれ1個について3回実施した。結果を以下の表1に示す:
表面粗さ測定機(SURFTEST SJ-500、株式会社ミツトヨ製)を用いて製造したバイアルのフランジ部の外側の側面における面粗さ(算術平均粗さ:Ra)を測定した。尚、測定は、実施例および比較例で製造したバイアル、それぞれ1個について3回実施した。結果を以下の表1に示す:
更に、フランジ部付近の様子を目視にて観察した。比較例で製造したバイアルと比較して、実施例で製造したバイアルの開口端面やフランジ部分にシワ・横筋がなく、開口端面に光沢のあるバイアルが得られた。このことは、そのような部分の平滑性が向上していることを意味する。
上述の本発明のデバイス、加工方法等によれば、簡素化された方法によりガラス容器、例えばバイアルを製造することができ、また、製造されるガラス容器、例えばバイアルは、より良好な平滑性を有する。従って、ガラス容器、例えばバイアルを成形するに際して本発明のデバイスを用いると、それを用いて成形した部分の平滑性が向上することによって、ガラス容器、例えばバイアルを光学的に自動検査する場合、開口面やフランジ部における光透過率が向上する。その結果、自動検査工程においてガラス容器、例えばバイアルの不十分な平滑性のためオフスペックと判断される割合、即ち、誤検知率が低下する。従って、ガラス容器、例えばバイアルの検査における検知精度が向上することになる。
10…ガラス部材、10’…ガラス容器、12…一方の端部、12’…口部、
14…本発明のデバイス(ローラー)、16…肩部分、18,18’…フランジ部分、
19…開口部、20,22…バーナー、24…マンドレル。
14…本発明のデバイス(ローラー)、16…肩部分、18,18’…フランジ部分、
19…開口部、20,22…バーナー、24…マンドレル。
Claims (8)
- 加工可能な温度に少なくとも一部分が加熱されたガラス部材を加工するデバイスであって、ガラス部材の加熱部分に接触する部分の少なくとも一部分が含浸グラファイト材料で構成されていることを特徴とするデバイス。
- 含浸グラファイト材料は、ガラス状炭素含浸グラファイト材料である、請求項1に記載のデバイス。
- ガラス部材を成形してガラス容器を製造するために使用するローラー、マンドレルまたは底部プレートである請求項1または請求項2に記載のデバイス。
- 加工可能な温度に加熱した、ガラス部材の所定部分に、請求項1〜3のいずれかに記載のデバイスを用いて、該デバイスの含浸グラファイト材料で構成された部分を接触させて加工することを特徴とするガラス部材の加工方法。
- ガラス部材としてガラス管を用いて請求項1〜3のいずれかに記載のデバイスを使用してガラス容器を製造する方法であって、
(1)ガラス管の一部分を加工可能な温度に加熱する工程と
(2)加熱された該一部分に請求項1〜3のいずれかに記載のデバイスの含浸グラファイト材料の部分を押し当てた状態で、ガラス管およびデバイスの少なくとも一方を軸回転させてこれらが相対的に反対方向に回転するようにする工程と
を含むことを特徴とするガラス容器の製造方法。 - 請求項5に記載の方法により製造されるガラス容器。
- 請求の範囲1〜3のいずれかに記載のデバイスを有して成ることを特徴とするガラス部材の加工装置。
- 請求項7に記載の加工装置を有して成ることを特徴とするガラス部材の加工システム。
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