JPWO2020031274A1 - リン化インジウム単結晶体およびリン化インジウム単結晶基板 - Google Patents

リン化インジウム単結晶体およびリン化インジウム単結晶基板 Download PDF

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Abstract

リン化インジウム単結晶体は、円柱状の直胴部を含み、直胴部の外周面から中心軸に向かって10mmの内周面から外側でかつ外周面から5mm内側までの外周部における接線方向の残留歪みが圧縮歪みである。リン化インジウム単結晶基板は、外周から中心に向かって10mmの内周から外側でかつ外周から5mm内側までの外周部における接線方向の残留歪みが圧縮歪みである。

Description

本開示は、リン化インジウム単結晶体およびリン化インジウム単結晶基板に関する。
InP(リン化インジウム)単結晶は、発光デバイスおよび電子デバイスの基板として、広く用いられている。
特開2011−251892号公報(特許文献1)は、垂直ブリッヂマン法、垂直温度傾斜凝固法などのVB(垂直ボート)法によるInP単結晶を成長させる工程においてInP単結晶が成長するるつぼを6mm/時以上の速度で引き下げることにより、転位密度が低減されるとともに双晶欠陥の発生が抑制されたInP単結晶が得られることを開示する。
特開2011−251892号公報
本開示のある態様にかかるリン化インジウム単結晶体は、円柱状の直胴部を含み、直胴部の外周面から中心軸に向かって10mmの内周面から外側でかつ外周面から5mm内側までの外周部における接線方向の残留歪みが圧縮歪みである。
本開示の別の態様にかかるリン化インジウム単結晶基板は、外周から中心に向かって10mmの内周から外側でかつ外周から5mm内側までの外周部における接線方向の残留歪みが圧縮歪みである。
図1は、本開示のある態様にかかるリン化インジウム単結晶体を示す概略平面図である。 図2は、典型的なリン化インジウム単結晶体の製造装置および製造方法を示す概略断面図である。 図3は、本開示のある態様にかかるリン化インジウム単結晶体の製造装置および製造方法を示す概略断面図である。 図4Aは、リン化インジウム単結晶体を典型的な方法で冷却したときの単結晶体内の温度差と応力との関係のある例を示すグラフである。 図4Bは、リン化インジウム単結晶体を、単結晶体の長手方向の温度差を低減した典型的な方法で冷却したときの単結晶体内の温度差と応力との関係の別の例を示すグラフである。 図4Cは、リン化インジウム単結晶体を、単結晶体の長手方向の温度差を低減した典型的な方法で冷却したときの単結晶体内の温度差と歪みとの関係のある例を示すグラフである。 図5は、リン化インジウム単結晶体を本開示に関わるある態様の方法で冷却したときの単結晶体内の温度差と歪みとの関係のある例を示すグラフである。 図6は、本開示の別の態様にかかるリン化インジウム単結晶基板を示す概略平面図である。
[本開示が解決しようとする課題]
特開2011−251892号公報(特許文献1)に開示されたInP単結晶の製造方法により得られたInP単結晶は、その上に半導体層を成長させる際の成長温度までの昇温速度が速い場合に、InP単結晶またはInP単結晶ウエハにスリップが発生するという問題点があった。ここで、スリップとは、転位が容易すべり系を限定的に運動する際にみられるもので、表面が鏡面研磨された単結晶ウエハで発生した場合は、InP単結晶ウエハ表面の段差として、微分干渉顕微鏡で観察され、著しい場合は目視でも観察される。スリップ部は、転位が高密度に存在することから、後工程でデバイス等の不良につながる。このため、スリップの発生を防止する必要がある。かかるスリップは、InP単結晶成長中の熱応力あるいはInP単結晶ウエハを使用する際の応力によって発生するものと考えられる。
そこで、上記問題点を解決して、その上に半導体層を成長させる際にスリップの発生が抑制されるリン化インジウム単結晶体およびリン化インジウム単結晶基板を提供することを目的とする。
[本開示の効果]
本開示によれば、その上に半導体層を成長させる際にスリップの発生が抑制されるリン化インジウム単結晶体およびリン化インジウム単結晶基板を提供できる。
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
[1]本開示のある態様にかかるリン化インジウム単結晶体は、円柱状の直胴部を含み、直胴部の外周面から中心軸に向かって10mmの内周面から外側でかつ外周面から5mm内側までの外周部における接線方向の残留歪みが圧縮歪みである。本態様のリン化インジウム単結晶体は、その上に半導体層を成長させる際にスリップの発生が抑制される。
[2]上記リン化インジウム単結晶体において、半径方向の歪み成分Srと接線方向の歪み成分Stとの差の絶対値|Sr−St|で表される残留歪みの大きさの上記外周部における平均値を2.5×10-6以上1.5×10-5以下とすることができる。かかるリン化インジウム単結晶体は、その上に半導体層を成長させる際にスリップの発生がさらに抑制される。
[3]上記リン化インジウム単結晶体において、上記直胴部の直径を50mm以上204mm以下とすることができる。かかるリン化インジウム単結晶体であっても、その上に半導体層を成長させる際にスリップの発生が抑制される。
[4]本開示の別の態様にかかるリン化インジウム単結晶基板は、外周から中心に向かって10mmの内周から外側でかつ外周から5mm内側までの外周部における接線方向の残留歪みが圧縮歪みである。本態様のリン化インジウム単結晶基板は、その上に半導体層を成長させる際にスリップの発生が抑制される。
[5]上記リン化インジウム単結晶基板において、半径方向の歪み成分Srと接線方向の歪み成分Stとの差の絶対値|Sr−St|で表される残留歪みの大きさの上記外周部における平均値を2.5×10-6以上1.5×10-5以下とすることができる。かかるリン化インジウム単結晶基板は、その上に半導体層を成長させる際にスリップの発生がさらに抑制される。
[6]上記リン化インジウム単結晶基板において、直径を50mm以上204mm以下とすることができる。かかるリン化インジウム単結晶基板であっても、その上に半導体層を成長させる際にスリップの発生が抑制される。
[本開示の実施形態の詳細]
<実施形態1:リン化インジウム単結晶体>
(リン化インジウム単結晶体)
図1を参照して、本実施形態のInP単結晶体10(リン化インジウム単結晶体)は、円柱状の直胴部を含み、直胴部の外周面10eから中心軸10oに向かって10mmの内周面10iから外側でかつ外周面10eから5mm内側までの外周部10dにおける接線方向TDの残留歪みが圧縮歪みである。ここで、InP単結晶体10の外周部10dにおける残留歪みとは、InP単結晶体10の外周部10dにおいて任意に特定される点における残留歪みをいう。残留歪みの方向は、半径方向RDと接線方向TDとに分けられる。半径方向RDとは、中心軸10oと任意に特定される点Pとを結ぶ半径の方向である。接線方向TDとは、その点Pにおける半径方向に垂直な方向であり、周方向とも呼ばれる。残留歪みの種類には、圧縮歪みと引張歪みとがある。
InP単結晶体上に半導体層を成長させる際、昇温速度が速いとInP単結晶体の外周部の接線方向に引張の変形が生じる。このため、InP単結晶体の外周部において接線方向に引張方向の残留歪みがあると、半導体層の成長の際の熱による変形が加算されるため、InP単結晶体にスリップが発生しやすくなる。本実施形態のInP単結晶体10は、外周部10dにおける接線方向TDの残留歪みが圧縮歪みであることから、その上に半導体層を成長させる際に、InP単結晶体10にかかる熱による引張応力を緩和する方向の歪みである圧縮歪みが存在するため、InP単結晶体10のスリップの発生が抑制される。
InP単結晶体10の残留歪みは、半径方向の歪み成分Srと接線方向の歪み成分Stとの差の絶対値|Sr−St|で表されるものであり、その大きさ(絶対値)およびその大きさの面内分布を、鏡面加工された中心軸に垂直な面において、光弾性法により評価する。光弾性単独では、残留歪みの半径方向の歪み成分Srおよび接線方向の歪み成分Stのそれぞれの種類(圧縮または引張)の特定はできない。残留歪みの半径方向の歪み成分Srおよび接線方向の歪み成分Stの種類(圧縮または引張)は、InP単結晶の鏡面加工された中心軸に垂直な面において、たとえばラマン散乱スペクトルによるラマンシフトにより評価できる。
InP単結晶体10の外周部10dにおける残留歪みの大きさの平均値は、2.5×10-6以上1.5×10-5以下が好ましい。InP単結晶体10の外周部10dにおける残留歪みの大きさとは、InP単結晶体10の外周部10dにおいて任意に特定される点における残留歪みの絶対値をいう。かかる残留歪みの大きさの平均値とは、InP単結晶体10の外周部10dにおいて任意に特定される複数の点における残留歪みの大きさの平均値をいう。かかる残留歪みの大きさの平均値は、上記の光弾性法により評価される上記面内分布から算出する。半導体層の成長の際のInP単結晶体10のスリップを抑制する観点から、上記残留歪みの大きさの平均値は、2.5×10-6以上が好ましく、4.0×10-6以上がより好ましい。また、InP単結晶体上に半導体層を成長させた後の冷却工程では、昇温工程とは逆に外周部の接線方向に圧縮の変形が生じる。InP単結晶体の外周部の接線方向の圧縮残留歪みが大きすぎる場合は、冷却工程の際にスリップが発生するリスクを抑制する観点から、上記残留歪みは1.5×10-5以下が好ましい。
InP単結晶体10の直胴部の直径は、50mm以上204mm以下が好ましい。すなわち、InP単結晶体10のスリップ抑制効果が高い観点から、上記直径は、50mm以上が好ましく、100mm以上がより好ましい。また、InP単結晶体10のスリップを抑制効果を維持しやすい観点から、上記直径は、204mm以下が好ましく、153mm以下がより好ましい。熱応力による変形は、同一温度勾配の条件下では直径が大きいほど大きいため、InP単結晶体を融液から成長させる条件下では、適切な直径を選択することで、スリップ抑制効果を維持するのに好ましい外周部の接線方向の残留歪みを付与することができる。
(リン化インジウム単結晶体の製造装置)
図2に典型的なInP(リン化インジウム)結晶体の製造装置および製造方法を示し、図3に本実施形態のInP(リン化インジウム)結晶体の製造装置および製造方法を示す。
図2を参照して、典型的なInP単結晶体の製造装置20は、高品質のInP単結晶体を効率よく製造する観点から、好ましくは坩堝22を収容する容器21を有する。上記InP単結晶体の製造装置20は、具体的には、好ましくは、容器21と、容器21の内部に配置される坩堝22と、容器21を保持する保持台25と、容器21の外部の周囲に配置されるヒータ26と、を含む。
容器21は、後述の坩堝22に対応する形状を有し、坩堝22の種結晶保持部および結晶成長部にそれぞれ対応する種結晶対応部および結晶成長対応部を含む。種結晶対応部は、結晶成長対応部に接続される側に開口し、その反対側に底壁が形成された中空円筒状の部分である。結晶成長対応部は、軸方向小径側において種結晶対応部に接続される円錐状の円錐部と、円錐部の軸方向大径側に接続される中空円筒状の直胴部と、を含む。容器21を構成する材料は、原料溶融時の温度に耐え得る機械的強度が高い材料であれば特に制限はないが、低コストで高純度の材料が得られる観点から、石英などが好ましい。
坩堝22は、種結晶保持部と、種結晶保持部上に接続される結晶成長部と、を含む。種結晶保持部は、結晶成長部に接続される側に開口し、その反対側に底壁が形成された中空円筒状の部分であり、当該部分においてInP種結晶11を保持できる。結晶成長部は、軸方向小径側において種結晶保持部に接続される円錐状の円錐部と、円錐部の軸方向大径側に接続される中空円筒状の直胴部と、を含む。結晶成長部は、その内部においてInP原料13およびその上に配置される封止材23を保持するとともに、溶融状態になるように加熱されたInP原料13を凝固させることによりInP単結晶体10を成長させる機能を有する。坩堝22を構成する材料は、原料溶融時の温度に耐え得る機械的強度が高い材料であれば特に制限はないが、高純度で原料および封止材との反応性が低い観点から、PBN(熱分解窒化ホウ素)などが好ましい。
封止材23を構成する材料は、原料溶融時の温度に耐え得るとともに、Pの分解による組成ずれを抑制する機能を有するものであれば特に制限はなく、B23などのホウ素酸化物が好ましい。
保持台25は、容器21を保持するとともに、必要に応じて容器21をヒータ26に対して相対的に移動させてInP原料13の融解およびその凝固によるInP単結晶体10の成長を適切に制御できるものであれば特に制限はないが、InP単結晶体中の温度勾配を抑制する観点から、中央部が空洞となっていることが好ましい。また、ヒータ26は、InP原料13の融解およびその凝固によるInP単結晶体10の成長を適切に制御できるものであれば特に制限はない。
図3を参照して、本実施形態のInP(リン化インジウム)単結晶体の製造装置は、容器21、容器21の内部に配置される坩堝22、容器21を保持する保持台25、および容器21の外部の周囲に配置されるヒータ26に加えて、容器21の結晶成長対応部の少なくとも円錐部と保持台25との間に配置される保温材24をさらに含む。かかる保温材24の配置により、結晶成長後の冷却工程で発生するInP単結晶体中の温度勾配を抑制することにより、円柱状の直胴部を含み、直胴部の外周面から中心軸に向かって10mmの内周面から外側でかつ外周面から5mm内側までの外周部における接線方向の残留歪みが圧縮歪みであるInP単結晶体10が得られやすい。ここで、保温材24は、InP単結晶体の温度勾配を抑制する観点から、保持台25と接触する容器21の円錐部のうち外周側に配置されることが好ましい。保温材24を構成する材料は、結晶成長中の高温に耐えられかつ接触する部材と反応しない材料であれば特に制限はないが、高耐熱性かつ低コストである観点から高純度アルミナ繊維系の断熱シートが好ましい。
(リン化インジウム単結晶体の製造方法)
図2および図3を参照して、典型的なInP単結晶体および本実施形態のInP単結晶体10の製造方法は、結晶品質が高く、製品であるInP単結晶基板となる直胴部が長いInP単結晶体10を得る観点から、上記の製造装置20を用いて、VB(垂直ボート)法などのボート法によることが好ましい。具体的には、本実施形態のInP単結晶体10の製造方法は、好ましくは、InP種結晶装入工程、InP原料装入工程、封止材配置工程、結晶成長工程、および冷却工程を含む。
まず、InP種結晶装入工程において、坩堝22の種結晶保持部の内部にInP種結晶11を装入する。次いで、InP原料装入工程において、坩堝22の結晶成長部(円錐部および直胴部)の内部にInP原料13を装入する。ここで、InP原料13は、高純度のInPであれば特に制限はなく、InP多結晶体などが好適に用いられる。次いで、封止材配置工程において、坩堝22内のInP原料13上に封止材23を配置する。次いで、容器本体21oの内部に、InP種結晶11、InP原料13、および封止材23がこの順に下から上に内部に配置された坩堝22を配置し、容器蓋21pで密封することにより密封した容器21とする。
次に、結晶成長工程において、上記坩堝22を封入した上記容器21を製造装置20内に配置する。ここで、容器21は、保持台25により保持され、容器21を取り囲むようにヒータ26が配置されている。さらに、図3においては、容器21の結晶成長対応部の円錐部と保持台25との間に保温材24が配置されている。ここで、次いで、ヒータ26で加熱することにより、InP原料13および封止材23を融解する。次いで、VB法において加熱されたヒータ26に対して相対的に容器21を軸方向下側に向けて移動させることにより、坩堝22の軸方向においてInP原料13側の温度が相対的に高くInP種結晶11側の温度が相対的に低い温度勾配を形成する。これにより、融解したInP原料13がInP種結晶11側から順次凝固することにより、InP単結晶体10が成長する。
成長終了時点でInP単結晶体10は、InP種結晶11側が低温で、最終凝固部側が高温になっている。結晶長手方向に温度差があると、結晶の半径方向にも温度差が発生し、温度差に比例した熱応力が発生する。図4Aを参照して、成長終了時すなわち冷却開始時の点P1で、InP単結晶体10には温度差が生じておりそれに対応した熱応力が発生している。そのまま冷却を行うと、一般には温度差が拡大し、臨界熱応力の点P2に到達すると塑性変形による応力緩和が発生し、さらに温度低下でInP単結晶体10の塑性変形が起こらなくなる点P3に到達し、その後の冷却で室温時の点P4に至り、残留応力およびそれに対応した残留歪みが発生する。
ここで、冷却工程において、ヒータ26の温度を均一に調整して、InP単結晶体10のInP種結晶11側と最終凝固部側の温度差を小さくしてから、InP単結晶体全体を一定の速度で冷却すると、冷却開始の初期状態では、温度差に起因する熱応力の減少が期待できる。図4Bを参照して、冷却開始時の点P1の温度差を小さくすることで、臨界熱応力の点P2に至る温度をさげることができ、点P2から塑性変形が起こらなくなる点P3の間の塑性変形量を低減でき、その後の冷却した後の室温時の点P4における残留応力およびそれに対応する残留歪みを軽減できる。ここで、均熱化温度(InP単結晶体の均熱化のために制御するヒータの温度をいう。以下同じ。)は、InP単結晶体10のInP種結晶11側と最終凝固部側の温度差が小さければ特に制限はないが、均熱化温度に到達させるまでの時間を短縮する観点から、800℃以上1200℃以下が好ましく、850℃以上1150℃以下がより好ましい。
図2を参照して、InP単結晶体10の冷却開始時に上記の均熱化処理をおこなったとしても、1000℃近傍の温度帯では、InP単結晶体10の外周部からの輻射による伝熱が支配的であることから、温度を下げていくにつれて、InP単結晶体10の外周部10d側と内周部10c側との間での温度差が大きくなってしまう。すなわち、InP単結晶体10の内周部10c(図1に示すInP単結晶体10の直胴部の中心軸10oから内周面10i(外周面10eから中心軸10oに向かって10mm)までの部分。以下同じ。)の温度が高く、外周部10d(図1に示すInP単結晶体10の直胴部の外周面10eから中心軸10oに向かって10mmの内周面10iから外側でかつ外周面10eから5mm内側までの部分。以下同じ。)の温度が低いという温度勾配が生じる。図1および図4Bを参照して、図1に示す内周部10cと外周部10dの温度差が十分小さければ、外周部10dの変形は図4Bの点P1から点P2の間の弾性変形領域内にとどまり、残留応力や残留歪みが生じない。一方、図1に示す内周部10cと外周部10dの温度差が大きくなり、図4Bの点P2から点P3のように外周部10dの応力によって塑性変形してしまうと、冷却後の室温時の点4においても、応力や歪みが残留してしまう。図4Cは、図4Bの縦軸を応力から歪みに置き換えたグラフである。弾性変形領域では、図4Cにおける冷却開始時の点P1から臨界熱応力の点P2を推移するが、塑性歪みが発生すると、図4Cの点P1と点P2の延長線から予想されるよりも、歪が大きい方向にずれる(図4Cの塑性変形が起こらなくなる点P3を参照)。温度が下がり、InP単結晶体10の強度が上昇して再び弾性変形するようになると、温度差と歪みは点P3から室温時の点P4まで直線的に推移する。図1の外周部10dから先に冷却される場合には、周方向の接線方向の残留歪みとしては引張となる。
図3を参照して、InP単結晶体10の本実施形態の冷却工程において、InP単結晶体の最終凝固部の凝固後に、直胴部の長さ方向の温度を均熱化することによりInP単結晶体全体の温度勾配が小さいこと、好ましくは保持台25の円錐部の外周側に保温材を設置することによりInP単結晶体10の外周部10dの冷却を緩和したこと、および、好ましくは保持台25の中央部を空洞化することによりInP単結晶体10の内周部10cの下部方向への抜熱を促進することで、冷却工程の際のInP単結晶体10中(特に外周部10dと内周部10cと)の温度差を低減してほぼ均一にでき、さらには外周部10dの温度が低く内周部10cの温度が高いという温度勾配を作ることができる。このようにして、図1および図5を参照して、InP単結晶体10の外周部10dと内周部10cとの熱膨張差から、外周部10dの接線方向TDに圧縮歪みが生じるようにすることにより、図5に示す室温(たとえば25℃)時の点P4に戻ると、外周部10dには残留歪みとして接線方向TDに圧縮歪みが生じる。外周部10dにおける接線方向TDの残留歪みが圧縮歪みであるInP単結晶体10を効率的に製造する観点から、冷却工程においてInP単結晶体10を均熱化する際のInP単結晶体10中(InP単結晶体10の直胴部の長さ方向および長さ方向に垂直な面内)の温度差は、5℃以下が好ましく、2℃以下がより好ましい。
<実施形態2:リン化インジウム単結晶基板>
(リン化インジウム単結晶基板)
図6を参照して、本実施形態のInP単結晶基板1(リン化インジウム単結晶基板)は、外周1eから中心1oに向かって10mmの内周1iから外側でかつ外周1eから5mm内側までの外周部1dにおける接線方向TDの残留歪みが圧縮歪みである。ここで、InP単結晶基板1の外周部1dにおける残留歪みとは、InP単結晶基板1の外周部1dにおいて任意に特定される点における残留歪みをいう。残留歪みの方向は、半径方向RDと接線方向TDとに分けられる。半径方向RDとは、中心軸10oと任意に特定される点Pとを結ぶ半径の方向である。接線方向TDとは、その点Pにおける半径方向に垂直な方向であり、周方向とも呼ばれる。残留歪みの種類には、圧縮歪みと引張歪みとがある。
InP単結晶基板上に半導体層を成長させる際、昇温速度が速いとInP単結晶基板の接線方向に引張応力がかかる。このため、InP単結晶基板1の外周部において接線方向に引張方向の残留歪みがあると、半導体層の成長の際の熱による引張応力が加算されるため、InP単結晶基板にスリップが発生しやすくなる。本実施形態のInP単結晶基板1は、外周部1dにおける接線方向TDの残留歪みが圧縮歪みであることから、その上に半導体層を成長させる際に、InP単結晶基板1にかかる熱による引張応力を緩和する方向の歪みである圧縮歪みが存在するため、InP単結晶基板1のスリップの発生が抑制される。
InP単結晶基板1の残留歪みは、半径方向の歪み成分Srと接線方向の歪み成分Stとの差の絶対値|Sr−St|で表されるものであり、その大きさ(絶対値)およびその大きさの面内分布を、鏡面加工された中心軸に垂直な面において、光弾性法により評価する。光弾性単独では、残留歪みの半径方向の歪み成分Srおよび接線方向の歪み成分Stのそれぞれの種類(圧縮または引張)の特定はできない。残留歪みの半径方向の歪み成分Srおよび接線方向の歪み成分Stの種類(圧縮または引張)は、InP単結晶の鏡面加工された中心軸に垂直な面において、たとえばラマン散乱スペクトルによるラマンシフトにより評価できる。
InP単結晶基板1の外周部1dにおける残留歪みの大きさの平均値は、2.5×10-6以上1.5×10-5以下が好ましい。InP単結晶基板1の外周部1dにおける残留歪みの大きさとは、InP単結晶基板1の外周部1dにおいて任意に特定される点における残留歪みの絶対値をいう。かかる残留歪みの大きさの平均値とは、InP単結晶基板1の外周部1dにおいて任意に特定される複数の点における残留歪みの大きさ(半径方向の歪み成分Srと接線方向の歪み成分Stとの差の絶対値)の平均値をいう。かかる残留歪みの大きさの平均は、上記の光弾性法により評価される上記面内分布から算出する。半導体層の成長の際のInP単結晶基板1のスリップを抑制する観点から、上記残留歪みの大きさの平均値は、2.5×10-6以上が好ましく、4.0×10-6以上がより好ましい。また、InP単結晶基板1上に半導体層を成長させた後の冷却工程では、昇温工程とは逆に外周部の接線方向に圧縮変形が生じる。InP単結晶体の外周部における残留歪みが大きすぎる場合は、冷却工程の際にスリップが発生するリスクを抑制する観点から、上記残留歪みは1.5×10-5以下が好ましい。
InP単結晶基板1の直径は、50mm以上204mm以下が好ましい。すなわち、InP単結晶基板1のスリップ抑制効果が高い観点から、上記直径は、50mm以上が好ましく、100mm以上がより好ましい。また、InP単結晶基板1のスリップ抑制効果を維持しやすい観点から、上記直径は、204mm以下が好ましく、153mm以下がより好ましい。熱応力は、同一温度勾配の条件下では直径に比例するため、InP単結晶基板を融液から成長させる条件下では、適切な直径を選択することで、スリップ抑制効果を維持するのに好ましい外周部の接線方向の残留歪みを付与することができる。
(InP単結晶基板の製造方法)
InP単結晶基板1の製造方法は、特に制限はなく、たとえば、実施形態1のInP単結晶体10をその中心軸10oに垂直な面で切り出し、主面を鏡面加工する方法が好適に挙げられる。
(比較例1)
1.InP単結晶体の作製
図2に示す製造装置を用いて、VB法により直胴部の直径が104mmで長さが200mmのFe(鉄)をドープした半絶縁性のInP単結晶体を作製する。InP原料としてInP多結晶を用いる。封止材としてB23を用いる。結晶成長界面の結晶成長方向の温度勾配が2℃/cmとなるように製造装置内の温度分布を調整して、InP単結晶体を成長させる。次に、成長させたInP単結晶体を25℃/分で室温(25℃)まで冷却する。このときのInP単結晶体中の温度差は、InP単結晶体の直胴部全体で、20±0.2℃である。冷却後のInP単結晶体から、その外周面を研削することにより、直胴部の直径が101.6mmのInP単結晶体を作製する。
2.InP単結晶基板の作製
上記で得られたInP単結晶体から、その直胴部の中心軸に垂直な面でスライスして表裏の両主面を機械的研磨および化学機械的研磨(CMP)により鏡面仕上げをして、直径が101.6mmで厚さが700μmのInP単結晶基板を2枚(種結晶側および最終凝固部側からそれぞれ1枚)作製する。研磨後の表裏の両主面には加工変質層は存在しない。なお、研磨後に鏡面を維持できる各種洗浄を施してもよい。このようにして得られたInP単結晶基板について、外周部における接線方向の残留歪みの種類(圧縮または引張)をラマン分光光度計(HORIBA社製HR evolution)を用いてラマンスペクトルを測定しラマンシフトから評価する。なお、接線方向の残留歪の向きの判定は、大きさを特定するのではないので、向きを判別できるならばラマンシフト以外の測定方法を用いてもよい。半径方向の歪み成分Srと接線方向の歪み成分Stとの差の絶対値|Sr−St|で表される残留歪みの大きさの外周部における平均値の評価を、たとえば、Appl.Phys.Lett.47(1985)pp.365−367に記載されている光弾性法に基づいて行うことができる。具体的には、基板主面上での光照射径はφ100μmである。上記残留歪みの大きさの外周部における平均値は、基板主面の中心が測定箇所に含まれるように主面の全面を0.5mmピッチの正方格子点でスキャンした測定を行い、外周から中心に向かって10mmの内周から外側でかつ外周から5mm内側までの外周部に含まれる全測定値から平均値を算出する。結晶性は、外周面から5mm内側全体における平均EPD(エッチングピット密度)で評価する。具体的には、エッチング液としてヒューバーエッチャントを用いる。EPDは、InP基板の主面を顕微鏡により100倍に拡大し、その1mm角(1mm×1mmの正方形を意味する、以下同じ)視野内のエッチピット数をカウントすることにより求めることができる。EPDの平均値は、主面の中心から<110>方向の等価な4方向に対し、各方向に沿って5mm間隔でエッチピット数をカウントし、これらの数の平均値として求めることができる。さらに主面の中心から<100>方向の等価な4方向に対しても、各方向に沿って5mm間隔でエッチピット数をカウントすることにより、これらの数の平均値として求めることができる。
3.スリップ発生の有無の評価
上記のInP単結晶基板上に半導体層を成長させる場合と同様の熱履歴を加えることにより、スリップの発生の有無を評価する。具体的には、上記のInP単結晶基板を、OMVPE(有機金属気相成長)炉内におけるPH3(ホスフィン)雰囲気下で、600℃まで40℃/分の速度で昇温し、10分間保持し、100℃/分の設定で冷却した後、InP単結晶基板におけるスリップ発生の有無を微分干渉顕微鏡により観察する。結果を表1にまとめる。
(実施例1)
1.InP単結晶体の作製
図3に示す製造装置を用いて、比較例1と同様にVB法により直胴部の直径が104mmで長さが200mmの半絶縁性のInP単結晶体を作製する。InP原料としてInP多結晶を用いる。封止材としてB23を用いる。保温材として厚さ5mmの高純度高アルミナ繊維断熱材(デンカ社製デンカアルセン)を用いる。結晶成長界面の結晶成長方向の温度勾配が2℃/cmとなるように製造装置内の温度分布を調整して、InP単結晶体を成長させる。次に、成長させたInP単結晶体を25℃/分で冷却する。このときの比較例1と同様の方法で測定されるInP単結晶体中の温度差が10±0.1℃になるようにヒータの温度分布を調節する。冷却後のInP単結晶体から、比較例1と同様にして、直胴部の直径が101.6mmのInP単結晶体を作製する。
2.InP単結晶基板の作製
上記で得られたInP単結晶体から、比較例1と同様にして、直径が101.6mmで厚さが700μmのInP単結晶基板を2枚作製する。得られたInP単結晶基板について、比較例1と同様にして、外周部における接線方向の残留歪みの種類(圧縮または引張」)および残留歪みの大きさの外周部における平均値を評価する。結果を表1にまとめる。
3.スリップ発生の有無の評価
上記のInP単結晶基板について、比較例1と同様にして、InP単結晶基板におけるスリップ発生の有無を評価する。結果を表1にまとめる。
(実施例2)
1.InP単結晶体の作製
図3に示す製造装置を用いて、比較例1と同様にVB法により直胴部の直径が104mmで長さが200mmの半絶縁性のInP単結晶体を作製する。InP原料としてInP多結晶を用いる。封止材としてB23を用いる。保温材として厚さ5mmの高純度高アルミナ繊維断熱材(デンカ社製デンカアルセン)を用いる。結晶成長界面の結晶成長方向の温度勾配が2℃/cmとなるように製造装置内の温度分布を調整して、InP単結晶体を成長させる。次に、成長させたInP単結晶体を25℃/分で冷却する。このときの比較例1と同様の方法で測定されるInP単結晶体中の温度差が5±0.1℃になるようにヒータの温度分布を調節する。冷却後のInP単結晶体から、比較例1と同様にして、直胴部の直径が101.6mmのInP単結晶体を作製する。
2.InP単結晶基板の作製
上記で得られたInP単結晶体から、比較例1と同様にして、直径が101.6mmで厚さが700μmのInP単結晶基板を2枚作製する。得られたInP単結晶基板について、比較例1と同様にして、外周部における接線方向の残留歪みの種類(圧縮または引張」)および残留歪みの大きさの外周部における平均値を評価する。結果を表1にまとめる。
3.スリップ発生の有無の評価
上記のInP単結晶基板について、比較例1と同様にして、InP単結晶基板におけるスリップ発生の有無を評価する。結果を表1にまとめる。
(実施例3)
1.InP単結晶体の作製
図3に示す製造装置を用いて、比較例1と同様にVB法により直胴部の直径が104mmで長さが200mmの半絶縁性のInP単結晶体を作製する。InP原料としてInP多結晶を用いる。封止材としてB23を用いる。保温材として厚さ5mmの高純度高アルミナ繊維断熱材(デンカ社製デンカアルセン)を用いる。結晶成長界面の結晶成長方向の温度勾配が2℃/cmとなるように製造装置内の温度分布を調整して、InP単結晶体を成長させる。次に、成長させたInP単結晶体を25℃/分で冷却する。このときの比較例1と同様の方法で測定されるInP単結晶体中の温度差が2±0.1℃になるようにヒータの温度分布を調節する。冷却後のInP単結晶体から、比較例1と同様にして、直胴部の直径が101.6mmのInP単結晶体を作製する。
2.InP単結晶基板の作製
上記で得られたInP単結晶体から、比較例1と同様にして、直径が101.6mmで厚さが700μmのInP単結晶基板を2枚作製する。得られたInP単結晶基板について、比較例1と同様にして、外周部における接線方向の残留歪みの種類(圧縮または引張)および残留歪みの大きさの外周部における平均値を評価する。結果を表1にまとめる。
3.スリップ発生の有無の評価
上記のInP単結晶基板について、比較例1と同様にして、InP単結晶基板におけるスリップ発生の有無を評価する。結果を表1にまとめる。
Figure 2020031274
(比較例2)
1.InP単結晶体の作製
図2に示す製造装置を用いて、VB法により直胴部の直径が156mmで長さが100mmのFe(鉄)をドープした半絶縁性のInP単結晶体を作製する。InP原料としてInP多結晶を用いる。封止材としてB23を用いる。結晶成長界面の結晶成長方向の温度勾配が2℃/cmとなるように製造装置内の温度分布を調整して、InP単結晶体を成長させる。次に、成長させたInP単結晶体を25℃/分で室温(25℃)まで冷却する。このときのInP単結晶体中の温度差は、InP単結晶体の直胴部全体で、20±0.2℃である。冷却後のInP単結晶体から、その外周面を研削することにより、直胴部の直径が152.4mmのInP単結晶体を作製する。
2.InP単結晶基板の作製
上記で得られたInP単結晶体から、その直胴部の中心軸に垂直な面でスライスして表裏の両主面を機械的研磨および化学機械的研磨(CMP)により鏡面仕上げして、直径が152.4mmで厚さが700μmのInP単結晶基板を2枚(種結晶側および最終凝固部側からそれぞれ1枚)作製する。研磨後の表裏の両主面には加工変質層は存在しない。なお、研磨後に鏡面を維持できる各種洗浄を施してもよい。このようにして得られたInP単結晶基板について、外周部における接線方向の残留歪みの種類(圧縮または引張)をラマン分光光度計(HORIBA社製HR evolution)を用いてラマンスペクトルを測定しラマンシフトから評価する。なお、接線方向の残留歪の向きの判定は、大きさを特定するのではないので、向きを判別できるならばラマンシフト以外の測定方法を用いてもよい。半径方向の歪み成分Srと接線方向の歪み成分Stとの差の絶対値|Sr−St|で表される残留歪みの大きさの外周部における平均値の評価を、たとえば、Appl.Phys.Lett.47(1985)pp.365−367に記載されている光弾性法に基づいて行うことができる。具体的には、基板主面上での光照射径はφ100μmである。上記残留歪みの大きさの外周部における平均値は、基板主面の中心が測定箇所に含まれるように主面の全面を0.5mmピッチの正方格子点でスキャンした測定を行い、外周から中心に向かって10mmの内周から外側でかつ外周から5mm内側までの外周部に含まれる全測定値から平均値を算出する。結晶性は、外周面から5mm内側全体における平均EPD(エッチングピット密度)で評価する。具体的には、エッチング液としてヒューバーエッチャントを用いる。EPDは、InP基板の主面を顕微鏡により100倍に拡大し、その1mm角視野内のエッチピット数をカウントすることにより求めることができる。EPDの平均値は、主面の中心から<110>方向の等価な4方向に対し、各方向に沿って5mm間隔でエッチピット数をカウントし、これらの数の平均値として求めることができる。さらに主面の中心から<100>方向の等価な4方向に対しても、各方向に沿って5mm間隔でエッチピット数をカウントすることにより、これらの数の平均値として求めることができる。
3.スリップ発生の有無の評価
上記のInP単結晶基板上に半導体層を成長させる場合と同様の熱履歴を加えることにより、スリップの発生の有無を評価する。具体的には、上記のInP単結晶基板を、OMVPE(有機金属気相成長)炉内におけるPH3(ホスフィン)雰囲気下で、600℃まで40℃/分の速度で昇温し、10分間保持し、100℃/分の設定で冷却した後、InP単結晶基板におけるスリップ発生の有無を微分干渉顕微鏡により観察する。結果を表2にまとめる。
(比較例3)
1.InP単結晶体の作製
図3に示す製造装置を用いて、比較例2と同様にVB法により直胴部の直径が156mmで長さが100mmの半絶縁性のInP単結晶体を作製する。InP原料としてInP多結晶を用いる。封止材としてB23を用いる。保温材として厚さ5mmの高純度高アルミナ繊維断熱材(デンカ社製デンカアルセン)を用いる。結晶成長界面の結晶成長方向の温度勾配が2℃/cmとなるように製造装置内の温度分布を調整して、InP単結晶体を成長させる。次に、成長させたInP単結晶体を25℃/分で冷却する。このときの比較例2と同様の方法で測定されるInP単結晶体中の温度差が10±0.1℃になるようにヒータの温度分布を調節する。冷却後のInP単結晶体から、比較例2と同様にして、直胴部の直径が152.4mmのInP単結晶体を作製する。
2.InP単結晶基板の作製
上記で得られたInP単結晶体から、比較例2と同様にして、直径が152.4mmで厚さが700μmのInP単結晶基板を2枚作製する。得られたInP単結晶基板について、比較例2と同様にして、外周部における接線方向の残留歪みの種類(圧縮または引張」)および残留歪みの大きさの外周部における平均値を評価する。結果を表2にまとめる。
3.スリップ発生の有無の評価
上記のInP単結晶基板について、比較例2と同様にして、InP単結晶基板におけるスリップ発生の有無を評価する。結果を表2にまとめる。
(実施例4)
1.InP単結晶体の作製
図3に示す製造装置を用いて、比較例2と同様にVB法により直胴部の直径が156mmで長さが100mmの半絶縁性のInP単結晶体を作製する。InP原料としてInP多結晶を用いる。封止材としてB23を用いる。保温材として厚さ5mmの高純度高アルミナ繊維断熱材(デンカ社製デンカアルセン)を用いる。結晶成長界面の結晶成長方向の温度勾配が2℃/cmとなるように製造装置内の温度分布を調整して、InP単結晶体を成長させる。次に、成長させたInP単結晶体を25℃/分で冷却する。このときの比較例2と同様の方法で測定されるInP単結晶体中の温度差が5±0.1℃になるようにヒータの温度分布を調節する。冷却後のInP単結晶体から、比較例2と同様にして、直胴部の直径が152.4mmのInP単結晶体を作製する。
2.InP単結晶基板の作製
上記で得られたInP単結晶体から、比較例2と同様にして、直径が152.4mmで厚さが700μmのInP単結晶基板を2枚作製する。得られたInP単結晶基板について、比較例2と同様にして、外周部における接線方向の残留歪みの種類(圧縮または引張」)および残留歪みの大きさの外周部における平均値を評価する。結果を表2にまとめる。
3.スリップ発生の有無の評価
上記のInP単結晶基板について、比較例2と同様にして、InP単結晶基板におけるスリップ発生の有無を評価する。結果を表2にまとめる。
(実施例5)
1.InP単結晶体の作製
図3に示す製造装置を用いて、比較例2と同様にVB法により直胴部の直径が156mmで長さが100mmの半絶縁性のInP単結晶体を作製する。InP原料としてInP多結晶を用いる。封止材としてB23を用いる。保温材として厚さ5mmの高純度高アルミナ繊維断熱材(デンカ社製デンカアルセン)を用いる。結晶成長界面の結晶成長方向の温度勾配が2℃/cmとなるように製造装置内の温度分布を調整して、InP単結晶体を成長させる。次に、成長させたInP単結晶体を25℃/分で冷却する。このときの比較例2と同様の方法で測定されるInP単結晶体中の温度差が2±0.1℃になるようにヒータの温度分布を調節する。冷却後のInP単結晶体から、比較例2と同様にして、直胴部の直径が152.4mmのInP単結晶体を作製する。
2.InP単結晶基板の作製
上記で得られたInP単結晶体から、比較例2と同様にして、直径が152.4mmで厚さが700μmのInP単結晶基板を2枚作製する。得られたInP単結晶基板について、比較例2と同様にして、外周部における接線方向の残留歪みの種類(圧縮または引張)および残留歪みの大きさの外周部における平均値を評価する。結果を表2にまとめる。
3.スリップ発生の有無の評価
上記のInP単結晶基板について、比較例2と同様にして、InP単結晶基板におけるスリップ発生の有無を評価する。結果を表2にまとめる。
Figure 2020031274
表1および表2を参照して、InP単結晶体中の冷却工程における温度差を小さくすることにより、外周部の接線方向の残留歪みが圧縮歪みであるInP単結晶体およびInP単結晶基板が得られ、かかるInP単結晶基板上に半導体層を成長させたときにInP単結晶基板にスリップが発生しない。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 InP単結晶基板、1c,10c 内周部、1d,10d 外周部、1e 外周、1i 内周、1o 中心、10 InP単結晶体、10e 外周面、10i 内周面、10o 中心軸、11 InP種結晶、13 InP原料、20 製造装置、21 容器、21o 容器本体、21p 容器蓋、22 坩堝、23 封止材、24 保温材、25 保持台、26 ヒータ。

Claims (6)

  1. 円柱状の直胴部を含み、
    前記直胴部の外周面から中心軸に向かって10mmの内周面から外側でかつ前記外周面から5mm内側までの外周部における接線方向の残留歪みが圧縮歪みであるリン化インジウム単結晶体。
  2. 半径方向の歪み成分Srと接線方向の歪み成分Stとの差の絶対値|Sr−St|で表される残留歪みの大きさの前記外周部における平均値が2.5×10-6以上1.5×10-5以下である請求項1に記載のリン化インジウム単結晶体。
  3. 前記直胴部の直径が50mm以上204mm以下である請求項1または請求項2に記載のリン化インジウム単結晶体。
  4. 外周から中心に向かって10mmの内周から外側でかつ前記外周から5mm内側までの外周部における接線方向の残留歪みが圧縮歪みであるリン化インジウム単結晶基板。
  5. 半径方向の歪み成分Srと接線方向の歪み成分Stとの差の絶対値|Sr−St|で表される残留歪みの大きさの前記外周部における平均値が2.5×10-6以上1.5×10-5以下である請求項4に記載のリン化インジウム単結晶基板。
  6. 直径が50mm以上204mm以下である請求項4または請求項5に記載のリン化インジウム単結晶基板。
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