JP2013193917A - 半絶縁性砒化ガリウムウェハの製造方法及び半絶縁性砒化ガリウムウェハ - Google Patents
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Abstract
【課題】半絶縁性砒化ガリウムウェハを用いたデバイス製造プロセス中の熱処理に対して、エピタキシャルウェハのスリップ不良の発生が低減された大口径な半絶縁性砒化ガリウムウェハの製造方法及び半絶縁性砒化ガリウムウェハを提供する。
【解決手段】半絶縁性砒化ガリウム単結晶をスライスして得られたスライス基板に、750℃以上850℃以下での温度保持から−20℃/min以上−35℃/min以下の降温という熱処理を加えてから、スライス基板の研磨を行う半絶縁性砒化ガリウムウェハの製造方法である。この製造方法により得られた半絶縁性砒化ガリウムウェハであって、半絶縁性砒化ガリウムウェハにおける半径方向歪みをSr、円柱接線方向歪みをStとしたとき、半絶縁性砒化ガリウムウェハの外周縁部における面内残留応力|Sr−St|が1.2×10-5未満であるものである。半絶縁性砒化ガリウムウェハの外径がφ100mm以上であると効果が高い。
【選択図】図1
【解決手段】半絶縁性砒化ガリウム単結晶をスライスして得られたスライス基板に、750℃以上850℃以下での温度保持から−20℃/min以上−35℃/min以下の降温という熱処理を加えてから、スライス基板の研磨を行う半絶縁性砒化ガリウムウェハの製造方法である。この製造方法により得られた半絶縁性砒化ガリウムウェハであって、半絶縁性砒化ガリウムウェハにおける半径方向歪みをSr、円柱接線方向歪みをStとしたとき、半絶縁性砒化ガリウムウェハの外周縁部における面内残留応力|Sr−St|が1.2×10-5未満であるものである。半絶縁性砒化ガリウムウェハの外径がφ100mm以上であると効果が高い。
【選択図】図1
Description
本発明は、デバイス製造工程途中に存在する熱処理工程、即ちデバイス製造時のアニール処理後にスリップが発生しない半絶縁性砒化ガリウムウェハの製造方法及び半絶縁性砒化ガリウムウェハに関するものである。
半導体結晶の製造方法の1つである液体封止チョクラルスキ(Liquid Encapsulated Czochralski;LEC)法で半絶縁性砒化ガリウム単結晶を製造するための製造装置、及び半絶縁性砒化ガリウム単結晶の製造方法について説明する。
先ず、図1を参照して製造装置10の構成を説明する。
高圧容器11からなる成長炉は、炉内を不活性の雰囲気ガス12で満たし、成長炉の上部に単結晶を引上げるための引上げ軸(上軸)13が設けられ、引上げ軸13の先端には、種結晶(シード結晶)14が取り付けられる。
引上げ軸13は、成長炉の上方から炉内に挿入され、炉内に設置されているルツボ15に対峙される。
ルツボ15は、サセプタ16を介して回転及び昇降自在なペデスタル(下軸)17に支持される。ルツボ15には、単結晶18の原料19、例えば、III族原料及びV族原料に加え、液体封止材20として、例えば、三酸化硼素(B2O3)が収容される。
ペデスタル17は、成長炉の下方より引上げ軸13と同心に炉内に挿入され、サセプタ16は、ペデスタル17の上端に固定される。ペデスタル17と引上げ軸13はそれぞれ回転装置(図示せず)により回転され、昇降装置(図示せず)により昇降される。
また、成長炉には、原料19及び液体封止材20を溶融する加熱手段としての上部ヒータ21及び下部ヒータ22と、上部ヒータ21及び下部ヒータ22の温度を制御する温度コントローラ(図示せず)と、ルツボ15内の原料19及び液体封止材20の温度を検出するための温度検出手段としての熱電対23とが設けられる。
上部ヒータ21及び下部ヒータ22は、サセプタ16を円周方向に沿って包囲するように炉内にサセプタ16と同心に設置され、熱電対23は、ペデスタル17の軸内上部に設置される。
次に、この製造装置10を用いた半絶縁性砒化ガリウム単結晶の製造方法を説明する。
半絶縁性砒化ガリウム単結晶を製造する際は、先ず、炉内を所定圧の不活性ガス雰囲気に保持する。ルツボ15に原料としてIII族原料及びV族原料を収容した場合、不活性ガスの圧力は原料19からのV族原料の解離を防止する圧力に設定する。
その後、温度コントローラにより上部ヒータ21及び下部ヒータ22を加熱する。ルツボ15の温度が上部ヒータ21及び下部ヒータ22の加熱により液体封止材20の溶融温度に到達すると液体封止材20が溶融する。上部ヒータ21及び下部ヒータ22の温度が原料19の溶融温度に到達すると原料19が溶融する。
このとき、液体封止材20の比重よりも、一般に、原料19の融液の比重が大きいので、液体封止材20により原料19の融液の表面が覆われる。これにより、原料19の融液からのV族元素の解離が防止される。
結晶成長の際は、引上げ軸13の先端に固定された種結晶14を原料19の融液に接触させ、この状態で温度コントローラのフィードバック制御によって上部ヒータ21及び下部ヒータ22の温度を徐々に低下させながらゆっくりと引上げていく。
こうすることで、結晶が成長し、単結晶18が液体封止材20を貫いて引上げられていく。
また、結晶の成長の進行に伴ってルツボ15内の融液が減少すると、必然的に液面位置が下がり、上部ヒータ21及び下部ヒータ22と結晶成長界面の位置関係が変化し、融液を効率良く加熱することが難しくなってしまう。
このため、結晶の成長量から液面の低下量を算出してこれを補正するように昇降装置を制御し、ペデスタル17を徐々に上昇させて、ルツボ15の位置を調整し、融液の液面を上部ヒータ21及び下部ヒータ22の発熱帯に対して常に一定の位置に調節する制御を実行する。
LEC法での結晶製造中の固液界面(固相と液相の界面)24の形状については、融液側に凸となる形状で行うように工夫されている。多結晶化の原因となる転位は固液界面24に垂直に伝播するため、固液界面24の形状が融液側に凹面形状になると転位が集合して多結晶化してしまうからである。
そのため、上部ヒータ21は主に結晶の外径を制御する役割を有し、下部ヒータ22は主に固液界面24の形状を制御する役割を有する。
砒化ガリウム(GaAs)は、電子移動度が高いこと、発光特性があること等の優れた特性を有するため、電子デバイスや受発光デバイス等に広く使用されている。これらのデバイスは、半絶縁性砒化ガリウム単結晶をスライスしてスライス基板とし、そのスライス基板を研磨等して得られる半絶縁性砒化ガリウムウェハを用いて製造される。
具体的には、半絶縁性砒化ガリウムウェハ上に砒化アルミニウムガリウム(AlGaAs)や砒化インジウムガリウム(InGaAs)等の化合物半導体薄膜を有機金属気相成長(Metal Organic Vapor Phase Epitaxy;MOVPE)法や分子線エピタキシャル成長(Molecular Beam Epitaxy;MBE)法等によりエピタキシャル成長させるか、又は半絶縁性砒化ガリウムウェハ上にイオン打ち込みによる電気的活性層の形成を行った後、リソグラフィ及びエッチング等の技術を駆使して製造される。
ここで、エピタキシャル成長させる砒化アルミニウムガリウムや砒化インジウムガリウム等の化合物半導体薄膜は、その下地基板となる半絶縁性砒化ガリウムウェハと組成が異なるため、格子定数や熱膨張係数が異なる。そのため、半絶縁性砒化ガリウムウェハ上に化合物半導体薄膜をエピタキシャル成長させてなるエピタキシャルウェハは高い歪みを有し、エピタキシャルウェハ全体が凸形状に反ることがある。
また、前述したような製造プロセス中において、半絶縁性砒化ガリウムウェハは、何度か高温に晒される。例えば、有機金属気相成長法によるエピタキシャル成長では、半絶縁性砒化ガリウムウェハを約800℃まで昇温してその上に化合物半導体薄膜をエピタキシャル成長させた後、降温する熱処理が加えられるため、半絶縁性砒化ガリウムウェハ自体が高温に晒されることになる。
格子定数が異なる化合物半導体薄膜をエピタキシャル成長させたエピタキシャルウェハは少なからず反りを有しており、エピタキシャル成長後に降温する際、又はエピタキシャル成長後のアニール処理中における昇降温時に、反り、つまり格子歪みを解放するべく、図2に示すように、エピタキシャルウェハ25の外周縁部から結晶方向に向かう直線状のすじ、つまりスリップ26が発生する。
エピタキシャルウェハに急激な温度変化を与えると、ウェハ内部の歪みを解放するために結晶が一部移動し、それが結晶面の高さにずれを生じさせて、ウェハ表面に段差が生じる。これがスリップであり、結晶の開放端であるエピタキシャルウェハの外周縁部から発生し、その段差は内部方向に伝搬され、外周縁部から内部に向かう直線状のすじとなって現れる。
エピタキシャルウェハの中央付近にはデバイス形成領域が位置しているため、スリップがデバイス形成領域に伝搬されると、デバイスに断線等の不良が生じるといった問題があった。
なお、本明細書では、エピタキシャル成長中やアニール処理中における昇降温等のデバイスを製造する過程で行われる熱処理工程を総称してデバイス製造時のアニール処理という。
スリップの発生を抑制するには、エピタキシャル成長後の降温速度やアニール処理時の昇降温速度を小さくすること等が効果的であるが、デバイスの特性を制御したり、安定させたりする上では昇降温速度が大きい方が有利である場合が多いため、昇降温速度を小さくすることは難しい。
そのため、従来技術においては、予め下地基板となる半絶縁性砒化ガリウムウェハを、化合物半導体薄膜をエピタキシャル成長させる表面を上側に向けたときに中央部が低く、且つ、周辺部が高く同心円状に反っている凹状とすることで、エピタキシャル成長後の反りを修正し、スリップの発生を抑止していた(例えば、特許文献1参照)。
しかし、直径150mmを超えるような半絶縁性砒化ガリウムウェハの大口径化に伴い、半絶縁性砒化ガリウムウェハを凹形状としても、アニール処理やエピタキシャル成長により、エピタキシャルウェハの外周縁部から内部に向かうスリップが発生しやすくなっている。
これは半絶縁性砒化ガリウムウェハの大口径化により、面内温度均一性を保つことが難しくなってきており、エピタキシャルウェハの反り形状による歪みを修正してもなお、内部と外周縁部との面内温度不均一により発生する熱応力で歪みが解放され、結果としてエピタキシャルウェハの外周縁部から内部に向かうスリップが発生する。これは液体封止チョクラルスキ法や垂直ブリッジマン(Vertical Bridgman;VB)法といった半絶縁性砒化ガリウム単結晶の製造方法によらず発生が確認されており、直径150mmを超える半絶縁性砒化ガリウムウェハ全体に当てはまる問題といえる。
そこで、本発明の目的は、半絶縁性砒化ガリウムウェハを用いたデバイス製造時のアニール処理に対して、エピタキシャルウェハのスリップ不良の発生が低減された大口径な半絶縁性砒化ガリウムウェハの製造方法及び半絶縁性砒化ガリウムウェハを提供することにある。
この目的を達成するために創案された本発明は、半絶縁性砒化ガリウム単結晶をスライスして得られたスライス基板に、750℃以上850℃以下での温度保持から−20℃/min以上−35℃/min以下の降温という熱処理を加えてから、前記スライス基板の研磨を行う半絶縁性砒化ガリウムウェハの製造方法である。
また、本発明は、前記製造方法により得られた半絶縁性砒化ガリウムウェハであって、前記半絶縁性砒化ガリウムウェハにおける半径方向歪みをSr、円柱接線方向歪みをStとしたとき、前記半絶縁性砒化ガリウムウェハの外周縁部における面内残留応力|Sr−St|が1.2×10-5未満である半絶縁性砒化ガリウムウェハである。
前記半絶縁性砒化ガリウムウェハの外径がφ100mm以上であると良い。
本発明によれば、半絶縁性砒化ガリウムウェハを用いたデバイス製造時のアニール処理に対して、エピタキシャルウェハのスリップ不良の発生が低減された大口径な半絶縁性砒化ガリウムウェハの製造方法及び半絶縁性砒化ガリウムウェハを提供することができる。
一般に半絶縁性砒化ガリウムウェハの製造方法としては、例えば液体封止チョクラルスキ法により半絶縁性砒化ガリウム単結晶を成長させる成長工程と、この半絶縁性砒化ガリウム単結晶をスライスしてスライス基板を得るスライス工程と、このスライス基板を研磨する研磨工程と、を有する製造方法が用いられている。
しかし、液体封止チョクラルスキ法による半絶縁性砒化ガリウム単結晶の成長工程では、結晶成長時に受ける熱応力が影響し、図3に示すように、半径方向歪みをSr、円柱接線方向歪みをStとしたとき、半絶縁性砒化ガリウム単結晶30の外周縁部(特に外周部)に、面内残留応力|Sr−St|が1.2×10-5以上の高残留歪領域31が形成されてしまう。
このように高残留歪領域31が形成された半絶縁性砒化ガリウム単結晶30をスライス工程に供してスライス基板を製造し、そのスライス基板を後の研磨工程にて研磨して半絶縁性砒化ガリウムウェハを製造すると、出来上がる半絶縁性砒化ガリウムウェハの外周縁部にも面内残留応力|Sr−St|が1.2×10-5以上の高残留歪領域が残ることになる。
なお、本発明において、「外周縁部」というのは、円筒研削前の半絶縁性砒化ガリウム単結晶、及び該半絶縁性砒化ガリウム単結晶に円筒研削、スライス加工した半絶縁性砒化ガリウムウェハいずれの場合も、外周から5mmの範囲を外周縁部と定義する。
特に、外周縁部に高残留歪領域が残った半絶縁性砒化ガリウムウェハは、その上に化合物半導体薄膜を成長させると、デバイス製造時のアニール処理の熱により、高残留歪みを解放しようと、半絶縁性砒化ガリウムウェハの外周縁部から内部に向かうスリップが発生してしまう。
そのため、本実施の形態に係る半絶縁性砒化ガリウムウェハの製造方法では、半絶縁性砒化ガリウム単結晶をスライスして得られたスライス基板に、750℃以上850℃以下での温度保持から−20℃/min以上−35℃/min以下の降温(例えば、加熱装置のスイッチを切って放置することで降温する)という熱処理を加えてから、スライス基板の研磨を行うようにした。
一般的には、先ず、成長させた半絶縁性砒化ガリウム単結晶の外面を研削して円筒状のインゴットに加工し、これをワイヤソー等でスライスして所定の厚さに切り分けたスライス基板を製造する。
そして、スライス基板の外周縁部を、砥石等を用いたウェハ端面研削機(面取機)により、特にウェハサイズがφ125mm以下の場合にはオリエンテーションフラット(Orientation Flat;OF)とインデックスフラット(Index Flat;IF)を含む外周縁部に、φ150mm以上の場合にはノッチを含む外周縁部に加工する。
その後、外周縁部を加工したスライス基板にラップ又は平面研削を施して平坦性を高め、加工変質層の除去及び清浄化のためにエッチングを行い、スライス基板の両面を高平坦性を有する鏡面にするために両面研磨を行う。この両面研磨では、通常、不織布タイプの研磨布を用いて研磨を行う。
更に、両面研磨したスライス基板の表面を鏡面仕上げ面にするために発泡ポリウレタンタイプの柔らかい研磨布を用いた片面研磨を行い、洗浄、乾燥を経て半絶縁性砒化ガリウムウェハが得られる。
一方、本実施の形態では、ワイヤソー等によりスライスした直後の外周縁部が未加工であるスライス基板に対し、前述した熱処理を加えることで、スライス基板に急な温度差を与え、スライス基板に残った高残留歪領域の面内残留応力を強制的に解放して除去し、その表面に意図的に段差のようなスリップを発生させる。そして、この意図的にスリップを発生させたスライス基板の外周縁部を加工したり、その表面を研磨したりして半絶縁性砒化ガリウムウェハを得る。
このようにスライス基板の表面に意図的にスリップを発生させて高残留歪部を除去した後、発生させたスリップを研磨することで、最終的に得られる半絶縁性砒化ガリウムウェハの表面を平坦にすることができ、その外周縁部における面内残留応力|Sr−St|を1.2×10-5未満にすることができる。
更に、研磨後の半絶縁性砒化ガリウムウェハのエッチピット密度(Etch Pit Density;EPD)が100000個/cm2以下であると良い。EPDが100000個/cm2を超えた半絶縁性砒化ガリウムウェハはデバイス用途の基板としては適さないからである。
この外周縁部における面内残留応力|Sr−St|を1.2×10-5未満にした半絶縁性砒化ガリウムウェハでは、デバイス製造時のアニール処理に対して、スリップ不良の発生が低減され、デバイスの製造歩留まりを高歩留まりに維持することが可能になる。
また、面内残留応力は、光弾性現象を利用して光学的に測定することができる。光弾性現象とは、等方等質な弾性体に外力を加えることによって応力を生じ、結果として一時的に異方性となり、光学的に複屈折(光の偏光の向きによって屈折率が異なる)状態を生じる現象をいう。
この光弾性現象を利用した測定方法では、応力が内在している結晶に赤外光を照射し、透過光の偏光面の回転角度を検知することで応力の測定を行う。ここで、結晶に入射した赤外光は、結晶中の残留応力により複屈折を生じ、偏光面によって屈折率が異なるため、その速度も変わり、位相差を生じる。その結果として、主振動方位角と位相差とから求められる透過光の偏光面が回転することになるが、その偏光面の回転角度の大きさは、先に述べた原理により面内残留応力に依存する。従って、偏光面の回転角度を検知することで面内残留応力を測定することができる。
続いて、面内残留応力|Sr−St|の定義を説明する。
面内残留応力は、円柱座標での半径方向歪みSrと、円柱接線方向歪みStとの差の絶対値である|Sr−St|として算出することができる。即ち、面内残留応力|Sr−St|は、以下の式(1)で定義される。
ここで、λは光源光の波長、dは半絶縁性砒化ガリウムウェハの厚さ、n0は屈折率、δはサンプルの複屈折により生じる位相差、φは主振動方位角、p11、p12、p44は光弾性定数を表す。
式(1)から明らかなように、位相差δと主振動方位角φとを測定すれば、面内残留応力である|Sr−St|を算出することができる。
半絶縁性砒化ガリウムウェハの外周縁部に面内残留応力|Sr−St|が1.2×10-5以上の高残留歪部があると、デバイス製造時のアニール処理の熱によりエピタキシャルウェハにスリップが発生しやすいということを前述したが、半絶縁性砒化ガリウムウェハの外周縁部の面内残留応力|Sr−St|が1.8×10-5以上であると、更にスリップ発生率が高くなる。
しかし、本実施の形態のように、半絶縁性砒化ガリウムウェハの外周縁部における面内残留応力|Sr−St|が1.2×10-5未満である半絶縁性砒化ガリウムウェハにおいては、面内の他の領域(半絶縁性砒化ガリウムウェハの外周縁部以外の領域)で面内残留応力|Sr−St|が1.8×10-5以上である場合でもスリップの発生が抑制されることを見出した。
つまり、本発明ではスリップの発生源とならない内部の特性はある程度不問とし、スリップの発生源となり得る半絶縁性砒化ガリウムウェハの外周縁部の特性を規定することで、エピタキシャル層を積んだエピタキシャルウェハのスリップの発生を抑制しようというものである。
以上のような条件を満たすことで、半絶縁性砒化ガリウムウェハを用いたデバイス製造プロセス中の熱処理に対して、スリップの発生が低減された大口径な半絶縁性砒化ガリウムウェハとなる。
なお、ウェハ外径がφ100mm未満の半絶縁性砒化ガリウムウェハでは、スリップ自体が発生しにくく、問題となりにくいため、ウェハ外径がφ100mm以上である半絶縁性砒化ガリウムウェハを主な適用対象としている。
本実施の形態に係る半絶縁性砒化ガリウムウェハの製造方法によれば、外周縁部における面内残留応力|Sr−St|を1.2×10-5未満の半絶縁性砒化ガリウムウェハを得られる。そして、この半絶縁性砒化ガリウムウェハによれば、デバイス製造時のアニール処理に対して、スリップ不良の発生が低減される。
次に、本発明の実施例を説明する。
図1に示した製造装置10を用い、PBN製のルツボ15に砒化ガリウム多結晶と液体封止材20としての三酸化硼素を入れ、高圧容器11に収納し、高圧容器11内を不活性の雰囲気ガス12で満たした。その後、上部ヒータ21及び下部ヒータ22により加熱することで、砒化ガリウム多結晶及び三酸化硼素を融解させ、温度を調整し、種付けを行い、砒化ガリウム単結晶を成長させた。
この砒化ガリウム単結晶をワイヤソーでスライスした直後の外周縁部が未加工であるφ155mmのスライス基板に対し、以下の各実施例及び比較例に示す熱処理を加えた後、その外周縁部を加工し、表面を研磨して得られたφ150mmの半絶縁性砒化ガリウムウェハの外周縁部の面内残留応力|Sr−St|を測定した。
更に、その半絶縁性砒化ガリウムウェハ上に、有機金属気相成長装置にて、砒化アルミニウムガリウム層の他、数種類のエピタキシャル層を合計1μmの厚さでエピタキシャル成長させてエピタキシャルウェハをサンプルとしてそれぞれ20枚ずつ製造した。これらエピタキシャルウェハをアニール炉内に配置し、水素ガス雰囲気で室温から850℃まで昇温速度600℃/hで昇温し、続いて850℃から室温まで降温速度600℃/hで降温するアニール処理を施した後、各エピタキシャルウェハを目視にてスリップの発生有無を観察した。
(実施例1)
実施例1では、800℃での温度保持から−30℃/minの降温(急冷)という熱処理を加えた。
実施例1では、800℃での温度保持から−30℃/minの降温(急冷)という熱処理を加えた。
その結果、表1に示すように、得られた全20枚の半絶縁性砒化ガリウムウェハの外周縁部の面内残留応力|Sr−St|は1.2×10-5未満であり、これを用いて製造した各エピタキシャルウェハにスリップの発生は認められなかった。
(実施例2)
実施例2では、750℃での温度保持から−30℃/minの降温(急冷)という熱処理を加えた。
実施例2では、750℃での温度保持から−30℃/minの降温(急冷)という熱処理を加えた。
その結果、表2に示すように、得られた全20枚の半絶縁性砒化ガリウムウェハの外周縁部の面内残留応力|Sr−St|は1.2×10-5未満であり、これを用いて製造した各エピタキシャルウェハにスリップの発生は認められなかった。
(実施例3)
実施例3では、850℃での温度保持から−30℃/minの降温(急冷)という熱処理を加えた。
実施例3では、850℃での温度保持から−30℃/minの降温(急冷)という熱処理を加えた。
その結果、表3に示すように、得られた全20枚の半絶縁性砒化ガリウムウェハの外周縁部の面内残留応力|Sr−St|は1.2×10-5未満であり、これを用いて製造した各エピタキシャルウェハにスリップの発生は認められなかった。
(実施例4)
実施例4では、800℃での温度保持から−25℃/minの降温(急冷)という熱処理を加えた。
実施例4では、800℃での温度保持から−25℃/minの降温(急冷)という熱処理を加えた。
その結果、表4に示すように、得られた全20枚の半絶縁性砒化ガリウムウェハの外周縁部の面内残留応力|Sr−St|は1.2×10-5未満であり、これを用いて製造した各エピタキシャルウェハにスリップの発生は認められなかった。
(実施例5)
実施例5では、800℃での温度保持から−35℃/minの降温(急冷)という熱処理を加えた。
実施例5では、800℃での温度保持から−35℃/minの降温(急冷)という熱処理を加えた。
その結果、表5に示すように、得られた全20枚の半絶縁性砒化ガリウムウェハの外周縁部の面内残留応力|Sr−St|は1.1×10-5未満であり、これを用いて製造した各エピタキシャルウェハにスリップの発生は認められなかった。
(実施例6)
実施例6では、800℃での温度保持から−20℃/minの降温(急冷)という熱処理を加えた。
実施例6では、800℃での温度保持から−20℃/minの降温(急冷)という熱処理を加えた。
その結果、表6に示すように、得られた全20枚の半絶縁性砒化ガリウムウェハの外周縁部の面内残留応力|Sr−St|は1.2×10-5未満であり、これを用いて製造した各エピタキシャルウェハにスリップの発生は認められなかった。
(比較例1)
比較例1では、700℃での温度保持から−30℃/minの降温(急冷)という熱処理を加えた。
比較例1では、700℃での温度保持から−30℃/minの降温(急冷)という熱処理を加えた。
その結果、表7に示すように、得られた全20枚の半絶縁性砒化ガリウムウェハの外周縁部の面内残留応力|Sr−St|は1.1×10-5以上1.4×10-5未満の範囲であり、これを用いて製造した3枚のエピタキシャルウェハ(太枠で囲ったサンプル番号2、8、16)にスリップの発生が認められた。スリップの発生した3枚のエピタキシャルウェハの外周縁部の面内残留応力|Sr−St|は全て1.2×10-5以上であった。
(比較例2)
比較例2では、900℃での温度保持から−30℃/minの降温(急冷)という熱処理を加えた。
比較例2では、900℃での温度保持から−30℃/minの降温(急冷)という熱処理を加えた。
その結果、表8に示すように、得られた全20枚の半絶縁性砒化ガリウムウェハの外周縁部の面内残留応力|Sr−St|は1.2×10-5未満であったが、これを用いて製造した全てのエピタキシャルウェハで転位密度が著しく増大しており(エッチピット密度(Etch Pit Density;EPD)が100000個/cm2を超えており)、デバイス製造のための下地基板として使用できない状態であった。
なお、転位密度としてエッチピット密度を用いたのは、エッチピット密度が比較的簡単に測定可能な値だからである。
(比較例3)
比較例3では、800℃での温度保持から−15℃/minの降温(急冷)という熱処理を加えた。
比較例3では、800℃での温度保持から−15℃/minの降温(急冷)という熱処理を加えた。
その結果、表9に示すように、得られた全20枚の半絶縁性砒化ガリウムウェハの外周縁部の面内残留応力|Sr−St|は1.1×10-5以上1.5×10-5未満の範囲であり、これを用いて製造した4枚のエピタキシャルウェハ(太枠で囲ったサンプル番号4、7、10、18)にスリップの発生が認められた。スリップの発生した4枚のエピタキシャルウェハの外周縁部の面内残留応力|Sr−St|は全て1.2×10-5以上であった。
(比較例4)
比較例4では、800℃での温度保持から−40℃/minの降温(急冷)という熱処理を加えた。
比較例4では、800℃での温度保持から−40℃/minの降温(急冷)という熱処理を加えた。
その結果、表10に示すように、得られた全20枚の半絶縁性砒化ガリウムウェハの外周縁部の面内残留応力|Sr−St|は1.1×10-5未満であったが、これを用いて製造した全てのエピタキシャルウェハで転位密度が著しく増大しており(エッチピット密度が100000個/cm2を超えており)、デバイス製造のための下地基板として使用できない状態であった。
以上の結果から、半絶縁性砒化ガリウムウェハを用いたデバイス製造時のアニール処理に対して、スリップ不良の発生が低減された大口径な半絶縁性砒化ガリウムウェハを得るためには、半絶縁性砒化ガリウム単結晶をスライスして得られたスライス基板に、750℃以上850℃以下での温度保持から−20℃/min以上−35℃/min以下の降温という熱処理を加えてから、スライス基板の研磨を行うことが適切であることが確認された。
10 製造装置
11 高圧容器
12 雰囲気ガス
13 引上げ軸
14 種結晶
15 ルツボ
16 サセプタ
17 ペデスタル
18 単結晶
19 原料
20 液体封止材
21 上部ヒータ
22 下部ヒータ
23 熱電対
24 固液界面
25 エピタキシャルウェハ
26 スリップ
30 半絶縁性砒化ガリウム単結晶
31 高残留歪部
11 高圧容器
12 雰囲気ガス
13 引上げ軸
14 種結晶
15 ルツボ
16 サセプタ
17 ペデスタル
18 単結晶
19 原料
20 液体封止材
21 上部ヒータ
22 下部ヒータ
23 熱電対
24 固液界面
25 エピタキシャルウェハ
26 スリップ
30 半絶縁性砒化ガリウム単結晶
31 高残留歪部
Claims (3)
- 半絶縁性砒化ガリウム単結晶をスライスして得られたスライス基板に、750℃以上850℃以下での温度保持から−20℃/min以上−35℃/min以下の降温という熱処理を加えてから、前記スライス基板の研磨を行うことを特徴とする半絶縁性砒化ガリウムウェハの製造方法。
- 請求項1に記載の製造方法により得られた半絶縁性砒化ガリウムウェハであって、前記半絶縁性砒化ガリウムウェハにおける半径方向歪みをSr、円柱接線方向歪みをStとしたとき、前記半絶縁性砒化ガリウムウェハの外周縁部における面内残留応力|Sr−St|が1.2×10-5未満であることを特徴とする半絶縁性砒化ガリウムウェハ。
- 前記半絶縁性砒化ガリウムウェハの外径がφ100mm以上であることを特徴とする請求項2に記載の半絶縁性砒化ガリウムウェハ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012062363A JP2013193917A (ja) | 2012-03-19 | 2012-03-19 | 半絶縁性砒化ガリウムウェハの製造方法及び半絶縁性砒化ガリウムウェハ |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2012062363A JP2013193917A (ja) | 2012-03-19 | 2012-03-19 | 半絶縁性砒化ガリウムウェハの製造方法及び半絶縁性砒化ガリウムウェハ |
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Cited By (1)
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---|---|---|---|---|
CN111902573A (zh) * | 2018-08-07 | 2020-11-06 | 住友电气工业株式会社 | 砷化镓单晶和砷化镓单晶基板 |
-
2012
- 2012-03-19 JP JP2012062363A patent/JP2013193917A/ja active Pending
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CN111902573A (zh) * | 2018-08-07 | 2020-11-06 | 住友电气工业株式会社 | 砷化镓单晶和砷化镓单晶基板 |
CN111902573B (zh) * | 2018-08-07 | 2024-03-08 | 住友电气工业株式会社 | 砷化镓单晶和砷化镓单晶基板 |
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