JP2010248013A - シリコン単結晶の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】種結晶や育成中のシリコン単結晶に転位が導入された場合であっても、新しい種結晶を使用せずに、無ネッキング法によりシリコン単結晶を育成する方法等を提供する。
【解決手段】特定の濃度のドーパントを含有する種結晶7を使用し、シリコン単結晶6の製造中に、種結晶7もしくは育成中のシリコン単結晶6に転位が導入された場合には、種結晶7を新たな種結晶7に交換することなく、種結晶7を融液5に前回着液させたときよりも深く融液5に浸漬させ、又は、種結晶7が別のシリコン単結晶6の製造で使用されたことのある再生品であり、かつ種結晶7が転位を含む場合には、種結晶7の端部のうち転位を含む端部を融液5に着液させてから、種結晶7のうち転位を含む部分を融液5に浸漬させ、種結晶7のうち融液5に浸漬させた浸漬部分を溶融させた後、種結晶7からネッキング部を設けずにシリコン単結晶6を育成する。
【選択図】図1
【解決手段】特定の濃度のドーパントを含有する種結晶7を使用し、シリコン単結晶6の製造中に、種結晶7もしくは育成中のシリコン単結晶6に転位が導入された場合には、種結晶7を新たな種結晶7に交換することなく、種結晶7を融液5に前回着液させたときよりも深く融液5に浸漬させ、又は、種結晶7が別のシリコン単結晶6の製造で使用されたことのある再生品であり、かつ種結晶7が転位を含む場合には、種結晶7の端部のうち転位を含む端部を融液5に着液させてから、種結晶7のうち転位を含む部分を融液5に浸漬させ、種結晶7のうち融液5に浸漬させた浸漬部分を溶融させた後、種結晶7からネッキング部を設けずにシリコン単結晶6を育成する。
【選択図】図1
Description
本発明は、シリコン単結晶の製造方法に関し、さらに詳しくは、種結晶を融液に着液させ、当該種結晶を引き上げてシリコン単結晶を育成させるシリコン単結晶の製造方法に関する。
半導体素子を作製するためにシリコン単結晶が使用されている。シリコン単結晶を製造する方法として、チョクラルスキー法が広く使用されている。チョクラルスキー法は、坩堝に投入した多結晶シリコンを加熱して融液とし、この融液に種結晶を浸漬させた後、坩堝及び種結晶を回転させつつ当該種結晶をゆっくり引き上げて円柱状のシリコン単結晶を育成させる製造方法である。
種結晶としては、シリコン単結晶から切り出したものが使用される。通常、種結晶は無転位のものが使用されるが、上記のように種結晶を高温の融液に浸漬させると、熱ショック転位と呼ばれる高密度の転位が導入される。種結晶に転位が導入されたままシリコン単結晶の育成を行なうと、その転位がシリコン単結晶に引き継がれて、シリコン単結晶が多結晶化する原因となる。そこで、シリコン単結晶を育成するに際し、種結晶を引き上げる際に種結晶よりも径の細い縮径部分を長さ150mm〜400mmに亘って継続的に設ける(ネッキング部)ことにより、種結晶に導入された転位を表面に逃がし、育成しようとするシリコン単結晶に転位が引き継がれないようにするのが一般的である。このような製造方法は、DashNecking法として広く知られている。
ところで近年、大直径のシリコン単結晶が強く求められている。このようなシリコン単結晶から切り出されたシリコンウェーハは、大きな面積を有し、一枚のシリコンウェーハに作り込むことのできる半導体素子の個数を多くすることが可能であり、半導体素子の生産性を飛躍的に向上させることができる。そのため、直径が200mmや300mmの大径のシリコン単結晶が生産されており、近年、直径が450mmのシリコン単結晶も生産されようとしている。
このように大きな直径を有するシリコン単結晶は、その重量も大きい。したがって、DashNecking法により、強度の小さなネッキング部を設けると、ネッキング部が大直径のシリコン単結晶の重量に耐えられない場合もある。この場合、育成中のシリコン単結晶が融液に落下することにより、生産効率が低下することにもつながる。このように、ネッキング部を設けることが大径のシリコン単結晶を育成することを難しくしているともいえる。
ネッキング部を設けることに伴う上記問題に対応するため、特許文献1には、先端部の形状が尖った形状又は尖った先端を切り取った形状の種結晶を使用し、種結晶を融液に接触させた後、所望の太さになるまで溶融させた後に、種結晶をゆっくりと上昇させることにより、ネッキングを行なうことなくシリコン単結晶を育成する技術が開示されている。
また、特許文献2には、所定の濃度のドーパントを含有する種結晶を使用して、ネッキングを行なうことなくシリコン単結晶を育成する技術が開示されている。
特許文献1に記載されたように、種結晶の先端部の形状を特定のものとするのみでは種結晶又は育成中のシリコン単結晶に転位が導入されることを完全に防止することはできない。したがって、これらに転位が導入された場合には、種結晶を新たな無転位の種結晶に交換してから、再度、シリコン単結晶の育成を行なう必要がある。そのため、種結晶を交換する手間がかかるばかりでなく、1本のシリコン単結晶を育成するために無転位の種結晶が何本も必要になる場合もあり、シリコン単結晶の製造コストが高くなるという問題を有していた。
また、特許文献2に記載された方法によれば、確かに、種結晶が融液に着液した際に、種結晶へ熱ショック転位が導入されることを防止できるので、ネッキング部を設けなくてもシリコン単結晶を育成することが可能である。しかし、育成中のシリコン単結晶に何らかの原因で転位が導入された場合には、種結晶を新たな無転位の種結晶に交換してから、再度、シリコン単結晶の育成を行なう必要がある。また、この方法は、ネッキング部を設けずにシリコン単結晶を育成するものなので、使用される種結晶は、必ず無転位のものでなければならない。したがって、シリコン単結晶の育成が終了した後にシリコン単結晶から切り離された種結晶を再利用して、新たにシリコン単結晶の育成を行なうことができない。なぜなら、製造後のシリコン単結晶から切り離された種結晶は、切断時の衝撃によって転位が導入されるからである。このため、シリコン単結晶の育成を行なうごとに、新たな種結晶を用意する必要があった。
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、種結晶や育成中のシリコン単結晶に転位が導入された場合であっても、新しい種結晶を使用せずに、無ネッキング法によりシリコン単結晶を育成する方法を提供することを第一の目的とする。また、本発明は、シリコン単結晶の育成が終了した後にシリコン単結晶から切り離された種結晶を再利用して、無ネッキング法によりシリコン単結晶を育成する方法を提供することを第二の目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行なった結果、種結晶に転位が導入されたとしても、特定の濃度以上のドーパントを含有した種結晶を使用し、種結晶のうち転位を含む部分を融液に浸漬させて溶融させれば、ネッキング部を設けなくても無転位のシリコン単結晶を育成させることが可能なことを見出し、本発明を完成するに至った。
(1)本発明は、種結晶を融液に着液させ、前記種結晶を引き上げてシリコン単結晶を育成させるシリコン単結晶の製造方法であり、前記種結晶及び前記融液は、同じ種類のドーパントを含有し、前記種結晶に含有されるドーパントの濃度は、ドーパントがホウ素の場合には1.0×1018atoms/cm3以上、ドーパントが砒素の場合には2.0×1019atoms/cm3以上、ドーパントがリンの場合には5.0×1019atoms/cm3以上、ドーパントがリン及びゲルマニウムの場合にはリンが5.0×1019atoms/cm3以上かつゲルマニウムが4.0×1019atoms/cm3以上、ドーパントがアンチモンの場合には前記種結晶の抵抗率が20mΩcm以下となる濃度、であり、シリコン単結晶の育成中に、前記種結晶もしくは育成中のシリコン単結晶に転位が導入された場合には、前記種結晶を新たな種結晶に交換することなく、前記種結晶を前記融液に前回着液させたときよりも深く前記融液に浸漬させ、又は、前記種結晶が別のシリコン単結晶の製造で使用されたことのある再生品であり、かつ前記種結晶が転位を含む場合には、前記種結晶の端部のうち転位を含む端部を前記融液に着液させてから、前記種結晶のうち転位を含む部分を前記融液に浸漬させ、前記種結晶のうち前記融液に浸漬させた浸漬部分を溶融させた後、前記種結晶からネッキング部を設けずにシリコン単結晶を育成することを特徴とする。
(2)前記浸漬部分の長さが下記数式(1)で示されるL以上であることが好ましい。
L=D×tanθ ・・・(1)
[数式(1)中、Dは、前記種結晶のうち前記融液に浸漬する側の先端部分の直径であり、θは、前記種結晶の結晶方位が<100>のとき54.74°、<111>のとき70.53°である。]
L=D×tanθ ・・・(1)
[数式(1)中、Dは、前記種結晶のうち前記融液に浸漬する側の先端部分の直径であり、θは、前記種結晶の結晶方位が<100>のとき54.74°、<111>のとき70.53°である。]
(3)前記種結晶に含有されるドーパントの濃度は、ドーパントがホウ素の場合には2.0×1019atoms/cm3以下、ドーパントが砒素の場合には4.0×1019atoms/cm3以下、ドーパントがリンの場合には7.0×1019atoms/cm3以下、ドーパントがリン及びゲルマニウムの場合にはリンが7.0×1019atoms/cm3以下かつゲルマニウムが8.0×1019atoms/cm3以下、ドーパントがアンチモンの場合には前記種結晶の抵抗率が8mΩcm以上となる濃度、であることが好ましい。
(4)種結晶が融液に着液する際の種結晶と融液との温度差が、種結晶に生じる熱応力が臨界分解剪断応力を超えることにより、種結晶に転位が導入されることのない上限の温度差である許容温度差になるように許容温度差と種結晶の直径と種結晶に含まれるドーパントの濃度との関係を予め設定し、前記関係に基づいて、前記融液に浸漬される前記種結晶の直径、及び前記種結晶に含まれるドーパントの濃度に対応する許容温度差を求め、前記種結晶を前記融液に浸漬させる際に、前記種結晶と前記融液との温度差が、求めた許容温度差以下になるように前記種結晶及び前記融液の温度を調節することが好ましい。
本発明によれば、第一には、種結晶や育成中のシリコン単結晶に転位が導入された場合であっても、新しい種結晶を使用せずに、無ネッキング法によりシリコン単結晶を育成する方法が提供される。また、第二には、シリコン単結晶の育成が終了した後にシリコン単結晶から切り離された種結晶を再利用して、無ネッキング法によりシリコン単結晶を育成する方法が提供される。
以下、本発明のシリコン単結晶の製造方法の第一実施態様について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明のシリコン単結晶の製造方法の第一実施態様で使用されるシリコン単結晶の引き上げ装置を示す断面図である。
まず、図1を参照しながら、本発明の第一実施態様で使用されるシリコン単結晶引き上げ装置1について説明する。
[引き上げ炉]
図1に示すように、本実施態様で使用されるシリコン単結晶引き上げ装置1は、チョクラルスキー法による結晶育成に用いることのできる引き上げ炉(チャンバ)2を備える。引き上げ炉2の内部には、多結晶シリコン(Si)からなる原料を溶融した融液5を収容する坩堝3が設けられる。坩堝3は、黒鉛坩堝32とその内側の石英坩堝31とから構成される。坩堝3の周囲には、坩堝3の中にある原料を加熱して溶融するヒータ9が設けられる。このヒータ9と引き上げ炉2の内壁との間には保温筒13が設けられる。
図1に示すように、本実施態様で使用されるシリコン単結晶引き上げ装置1は、チョクラルスキー法による結晶育成に用いることのできる引き上げ炉(チャンバ)2を備える。引き上げ炉2の内部には、多結晶シリコン(Si)からなる原料を溶融した融液5を収容する坩堝3が設けられる。坩堝3は、黒鉛坩堝32とその内側の石英坩堝31とから構成される。坩堝3の周囲には、坩堝3の中にある原料を加熱して溶融するヒータ9が設けられる。このヒータ9と引き上げ炉2の内壁との間には保温筒13が設けられる。
また、坩堝3の上方には、引き上げ機構4が設けられる。引き上げ機構4は、引き上げ用ケーブル4aと、引き上げ用ケーブル4aの先端に取り付けられた種結晶ホルダ4bとからなる。この種結晶ホルダ4bによって種結晶が把持される。
ここで、坩堝3の中に原料を投入した後、ヒータ9を用いて坩堝3を加熱し、坩堝3の内部の原料を溶融して融液5にする。融液5の溶融状態が安定となった後、引き上げ用ケーブル4aを降下して、種結晶ホルダ4bに把持させた種結晶7を融液5に浸漬する。その後、引き上げ用ケーブル4aを上昇させ、融液5からシリコン単結晶(シリコンインゴット)6を引き上げて育成させる。シリコン単結晶6を育成させる際、坩堝3を回転軸16によって回転させる。それとともに、引き上げ機構4の引き上げ用ケーブル4aを、回転軸16の回転方向と同じ方向又は逆の方向に回転させる。ここで、回転軸16は、鉛直方向にも昇降させることができ、坩堝3を鉛直方向の任意の位置に上下動させることもできる。
坩堝3の上方でシリコン単結晶6の周囲には、熱遮蔽部材8が設けられる。熱遮蔽部材8は、坩堝3、融液5、ヒータ9等の高温部で発生する輻射熱から種結晶及び育成するシリコン単結晶6を遮断する作用を有する。熱遮蔽部材8の下端は、略円形であり、シリコン単結晶6の周囲を囲んで設けられる。
[シリコン単結晶の製造方法]
次に、本実施態様のシリコン単結晶の製造方法を説明する。本実施態様のシリコン単結晶の製造方法において、種結晶7及び融液5は、同じ種類のドーパントを含有する。また、本実施態様のシリコン単結晶の製造方法は、融液5に種結晶7を着液させる着液工程と、当該着液工程を経て引き上げられたシリコン単結晶6を育成させる育成工程とを備え、着液工程又は育成工程で種結晶7及び/又はシリコン単結晶6に転位が導入された場合のために、さらに再着液工程を備える。
次に、本実施態様のシリコン単結晶の製造方法を説明する。本実施態様のシリコン単結晶の製造方法において、種結晶7及び融液5は、同じ種類のドーパントを含有する。また、本実施態様のシリコン単結晶の製造方法は、融液5に種結晶7を着液させる着液工程と、当該着液工程を経て引き上げられたシリコン単結晶6を育成させる育成工程とを備え、着液工程又は育成工程で種結晶7及び/又はシリコン単結晶6に転位が導入された場合のために、さらに再着液工程を備える。
[着液工程]
まず、着液工程について説明する。この工程は、種結晶7を融液5に着液させる工程である。
まず、着液工程について説明する。この工程は、種結晶7を融液5に着液させる工程である。
種結晶7は、融液5と同じ種類のドーパントを含む。なお、種結晶7に含まれるドーパントの濃度は、融液5に添加されるドーパントの濃度と必ずしも一致する必要はない。種結晶7に含まれるドーパントの濃度は、ドーパントがホウ素の場合には、1.0×1018atoms/cm3以上であり、3.0×1018atoms/cm3以上であることが好ましい。同じく、ドーパントが砒素の場合には、2.0×1019atoms/cm3以上であり、2.5×1019atoms/cm3以上であることが好ましい。また同じく、ドーパントがリンの場合には、5.0×1019atoms/cm3以上であり、5.5×1019atoms/cm3以上であることが好ましい。また同じく、ドーパントがリン及びゲルマニウムの場合には、リンが5.0×1019atoms/cm3以上かつゲルマニウムが4.0×1019atoms/cm3以上であり、リンが5.5×1019atoms/cm3以上かつゲルマニウムが5.0×1019atoms/cm3以上であることが好ましい。さらに同じく、ドーパントがアンチモンの場合には、種結晶7の抵抗率が20mΩcm以下となる濃度であり、18mΩcm以下となる濃度がより好ましい。
種結晶7に含まれるドーパントの濃度が上記の条件を満たすことにより、種結晶7を着液させたり、種結晶7を融液5に浸漬させたりした際に、種結晶7に熱ショック転位が導入されることを抑制できる。
また、種化粧7に含まれるドーパントの濃度が大きい場合には、育成されるシリコン単結晶6と種結晶7との間で格子間不整合によるミスフィット転位を生じる場合がある。このような観点から、種結晶7に含まれるドーパントの濃度は、ドーパントがホウ素の場合には、2.0×1019atoms/cm3以下であることが好ましく、1×1019atoms/cm3以下であることがより好ましい。同じく、ドーパントが砒素の場合には、4.0×1019atoms/cm3以下であることが好ましい。また同じく、ドーパントがリンの場合には、7.0×1019atoms/cm3以下であることが好ましい。また同じく、ドーパントがリン及びゲルマニウムの場合には、リン7.0×1019atoms/cm3以下かつゲルマニウム8.0×1019atoms/cm3以下であることが好ましい。さらに同じく、ドーパントがアンチモンの場合には、種結晶7の抵抗率が8mΩcm以上となる濃度が好ましい。
種結晶7に含まれるドーパントの濃度が上記の条件を満たすことにより、育成中のシリコン単結晶6にミスフィット転位が導入されることを抑制できる。
なお、本実施形態のシリコン単結晶の育成方法では、種結晶7を融液5に着液させてから引き上げを行なうに際して、種結晶7とシリコン単結晶6との間にネッキング部を設ける必要がない。ここで、「ネッキング部」とは、種結晶7とシリコン単結晶6との間に、長さ150mm〜400mmに亘って継続的に設けられた縮径部分を意味する。従来、このようなネッキング部を設ける必要があった理由は、既に述べたように、種結晶を融液に着液した際に、種結晶に導入される熱ショック転位がシリコン単結晶に引き継がれないようにするためである。本実施形態では、上記のように、種結晶7に所定濃度のドーパントを添加することにより、種結晶7が融液5に着液した際に、種結晶7に熱ショック転位が導入されることを抑制する。したがって、種結晶7とシリコン単結晶6との間にネッキング部を設ける必要がない。このため、重量の大きな大直径のシリコン単結晶を安全に引き上げることができる。
[育成工程]
次に、育成工程について説明する。この工程は、従来のシリコン単結晶の育成と同様に、種結晶7を引き上げて、シリコン単結晶6を育成させる工程である。シリコン単結晶6は、目的とする直径となるまで徐々に拡径する肩部分、ほぼ同一の直径を有する直胴部分、及び徐々に縮径するテール部分の順に育成される。
次に、育成工程について説明する。この工程は、従来のシリコン単結晶の育成と同様に、種結晶7を引き上げて、シリコン単結晶6を育成させる工程である。シリコン単結晶6は、目的とする直径となるまで徐々に拡径する肩部分、ほぼ同一の直径を有する直胴部分、及び徐々に縮径するテール部分の順に育成される。
[再着液工程]
次に、再着液工程について説明する。この工程は、上記着液工程又は育成工程で、種結晶7及び/又は育成中のシリコン単結晶6に転位が導入された場合に、再度、無転位状態でシリコン単結晶6を引き上げる前に行なわれる工程である。
次に、再着液工程について説明する。この工程は、上記着液工程又は育成工程で、種結晶7及び/又は育成中のシリコン単結晶6に転位が導入された場合に、再度、無転位状態でシリコン単結晶6を引き上げる前に行なわれる工程である。
再着液工程は、種結晶7又は育成中のシリコン単結晶6に転位が導入された場合に、種結晶7を新たな種結晶に交換することなく、種結晶7を融液5に前回着液させたときよりも深く融液5に浸漬させ、当該浸漬部分を溶融させる工程である。この工程の後、種結晶7からネッキング部を設けずに上記育成工程を行い、シリコン単結晶6を製造する。
この工程では、種結晶7を融液5に前回着液させたときよりも深く浸漬させる。これについて、図2を参照しながら説明する。図2(a)から図2(c)は、本実施形態の着液工程から再着液工程に至る様子を逐次説明する図である。
まず、着液工程において、上記のように、種結晶7を融液5に着液する(図2(a))。このとき、種結晶7を融液5に浸漬してもよい。その際、種結晶7において、種結晶7と融液5との境界となった箇所を境界部分7aと呼ぶ。例えば、種結晶7を融液5に着液させたのみで融液5に浸漬させない場合は、種結晶7のうち、融液5と接触した部分が境界部分7aとなる。また、種結晶7を融液5に浸漬させた場合は、種結晶7のうち融液5の液面に存在する部分が境界部分7aとなる。その後、図2(b)に示すように、育成工程において、シリコン単結晶6の肩部分の引き上げが行なわれる。シリコン単結晶6の肩部分は、既に述べたように、シリコン単結晶6が目的とする直径となるまで徐々に拡径する部分のことである。このとき、種結晶7とシリコン単結晶6との間には、上記境界部分7aが存在する。
育成工程を実施している際、シリコン単結晶6又は種結晶7に転位(図示せず)が導入される場合がある。この場合、シリコン単結晶6の引き上げを中止し、育成中のシリコン単結晶6を降下させることによりシリコン単結晶6を融液5に埋没させる。これにより、シリコン単結晶6は、融液5に再溶融される。その後、シリコン単結晶6が完全に融液5に没した状態から、さらに、図2(c)に示すように、種結晶7を融液5に浸漬させる。このとき、上記境界部分7aが融液5に埋没するように種結晶7を融液5に浸漬させる。このため、種結晶7は、融液5に前回着液させたときよりも深く浸漬されることになる。種結晶7のうち、前回融液5に着液させたときよりも深く融液5に浸漬された部分を浸漬部分d(図2(c)において破線で示す)とする。
浸漬部分dは、融液5の熱により溶融し、種結晶7と融液5との境界には、新たな境界部分である境界部分7bが生じる。その後、育成工程に移行するが、育成工程の途中で再度シリコン単結晶6又は種結晶7に転位が導入され、再着液工程を再度実施する必要がある場合には、この境界部分7bを新たな境界部分7aとして再着液工程を実施すればよい。
なお、上記説明では、育成工程を実施している際にシリコン単結晶6又は種結晶7に転位が導入された場合を説明したが、着液工程を実施している際に種結晶7に転位が導入された場合も、同様に再着液工程を実施することができる。この場合、シリコン単結晶6の引き上げは未だ行なわれていないので、図2(c)に示すように、境界部分7aが融液5に埋没するように種結晶7を融液5に浸漬させるのみでよい。
上記のように、種結晶7のうち浸漬部分dは、融液5の熱により溶融する。これにより、浸漬部分dに転位が存在していたとしても、その転位を消滅させることができる。したがって、種結晶7のうち浸漬部分d以外の部分を再度引き上げることにより、ネッキング部を設けなくても、新たに無転位のシリコン単結晶6を育成させることができる。すなわち、シリコン単結晶6の引き上げの「やり直し」が可能になる。
ところで、このような「やり直し」は、上記[着液工程]の項で述べたように、本実施態様で使用される種結晶7が特定濃度のドーパントを含有することによって初めて可能になるものである。特定濃度のドーパントを含有しない種結晶の場合、種結晶が融液に接触すると同時に、種結晶に熱ショック転位が導入される。この熱ショック転位は、種結晶のうち、融液に接触している箇所のみに導入されるのではなく、スリップバックによって、融液に接触している箇所よりも上方の部分にも導入される。スリップバックによって導入された転位は、種結晶をさらに深く融液に浸漬させることにより消滅させることができるが、種結晶をさらに深く融液に浸漬させると、新たな熱ショック転位が次々に種結晶に導入される。したがって、特定濃度のドーパントを含有しない種結晶を使用する場合、ネッキング部を設けてからシリコン単結晶の育成を行なわなければ、無転位のシリコン単結晶を製造することができない。この場合、重量の大きな大直径のシリコン単結晶を製造する際、ネッキング部分の強度が問題となる。
これに対して、本実施態様の製造方法では、ネッキング部を設けなくても、シリコン単結晶6の引き上げの「やり直し」が可能である。本実施態様で使用される種結晶7は、特定濃度のドーパントを含有するので、熱ショックに対する耐性が大きい。したがって、スリップバックによって導入された転位を、種結晶7を深く浸漬させることによって消滅させたとしても、種結晶7には新たな熱ショック転位が導入されない。このため、ネッキング部を設けなくても、種結晶7から無転位のシリコン単結晶6を育成させることができる。
浸漬部分dの長さは、下記数式(1)で示されるL以上であることが好ましい。
L=D×tanθ ・・・(1)
ここで、上記数式において、Dは、種結晶7のうち融液5に浸漬する側の先端部分の直径であり、θは、種結晶7の結晶方位が<100>のとき54.74°、<111>のとき70.53°である。
L=D×tanθ ・・・(1)
ここで、上記数式において、Dは、種結晶7のうち融液5に浸漬する側の先端部分の直径であり、θは、種結晶7の結晶方位が<100>のとき54.74°、<111>のとき70.53°である。
育成中のシリコン単結晶6に転位が導入されると、スリップバックにより、種結晶7にも転位が導入される場合がある。また、図3に示すように、種結晶7の融液5側の先端に転位tが導入された場合、スリップバックにより、種結晶7の他端の方向(種結晶ホルダ4bの方向)へ転位tが導入されることになる。図3は、種結晶に転位が導入される様子を示す側面図である。
ここで、結晶面に対してスリップバックが発生する角度θは、種結晶7の結晶方位によって決定され、種結晶7の結晶方位が同一であれば常に同一の角度となる。したがって、種結晶7の一端に転位が導入された場合、スリップバックによって転位が進む最大の長さは、計算で求めることが可能である。つまり、種結晶7の一端に転位が導入された場合、スリップバックによって種結晶7の他端の方向に転位が導入される最大の長さは、図3におけるLで示され、その大きさは、上記数式(1)で示されるLと同じである。したがって、浸漬部分の長さを上記数式(1)で示されるL以上とすることにより、種結晶7のうち、転位を含む部分を完全に融液5に溶融させることができる。このため、種結晶7に導入された転位は消滅し、ネッキング部を設けなくても、無転位のシリコン単結晶6を新たに引き上げることが可能になる。この場合、種結晶7を新たな種結晶に交換する必要はない。
次に、種結晶7を融液5に浸漬させる際における、種結晶7と融液5との温度差について説明する。既に述べたように、本実施態様で使用される種結晶7には、所定濃度のドーパントが含まれ、これにより種結晶7の熱ショックに対する耐性が向上し、種結晶7を融液5に浸漬させたときに新たな熱ショック転位が次々に導入されることが抑制される。しかし、種結晶7を融液5に浸漬させる際、両者の間の温度差が大きければ、種結晶7の熱ショックに対する耐性の限界を超えることとなり、種結晶7を融液5に浸漬させたときに新たな熱ショック転位が導入される。
そのため、種結晶7に生じる熱応力が臨界分解剪断応力を超えることにより種結晶7に転位が導入されることのない上限の温度差である許容温度差になるように、許容温度差と種結晶7の直径と種結晶7に含まれるドーパントの濃度との関係を予め求めておくことが好ましい。その上で、当該関係に基づいて、融液5に浸漬される種結晶7の直径、及び種結晶7に含まれるドーパントの濃度に対応する許容温度差を求め、種結晶7を融液5に浸漬させる際に、種結晶7と融液5との温度差が許容温度差以下になるように両者の温度を調節することが好ましい。
許容温度差とは、種結晶7に転位が導入されない上限の温度差を意味する。種結晶7を融液5に接触させると、種結晶7が融液5に接触した部分が加熱され、種結晶7の内部に熱応力が発生する。そして、種結晶7の内部に生じた熱応力が種結晶7の臨界分解剪断応力を超えると、種結晶7に転位が導入される。臨界分解剪断応力(CRSS,単位;MPa)とは、種結晶7の機械的強度の指標の一つであり、この応力を超えると種結晶に転位が導入される臨界的な応力である。
ここで、種結晶7にドーパントが添加されると、種結晶7は硬くなり、臨界分解剪断応力は大きくなる。したがって、種結晶7に含まれるドーパントの濃度が高くなると、種結晶7はより大きな熱応力に耐えることができる。このため、種結晶7に含まれるドーパントの濃度が高くなると、許容温度差が大きくなる。
一方、種結晶7の直径が大きくなると、融液5に着液した際に種結晶7に印加される熱応力が大きくなる。このため、種結晶7の直径が大きくなると許容温度差が小さくなる。
図4は、種結晶7の直径D(mm)を横軸にとり、融液5に着液する際の種結晶7の先端の温度と融液5の温度との許容温度差ΔT(K)を縦軸にとり、直径Dと許容温度差ΔTとの間の対応関係を特性L1、L2、L3にて示すグラフである。特性L1、L2、L3は、種結晶7の臨界分解剪断応力(CRSS)の大きさの違いを示す。図4中、特性L1は、臨界分解剪断応力(CRSS)が最も小さく(5MPa)、特性L2は、特性L1よりも臨界分解剪断応力(CRSS)が大きく(10MPa)、特性L3は、臨界分解剪断応力(CRSS)が最も大きい(15MPa)。
特性L1、L2、L3に示すように、種結晶7の直径Dと許容温度差ΔTとの間にはほぼ反比例の関係が成立する。つまり、種結晶7の直径Dが大きくなるに伴い、着液時に種結晶7に印加される熱応力が大きくなり、それに応じて許容温度差ΔTを小さくする必要がある。
臨界分解剪断応力(CRSS)は、種結晶7に添加されるドーパントの種類、濃度Cによって変化する。
種結晶7に添加されるドーパントの濃度Cが高くなるにつれて臨界分解剪断応力(CRSS)が大きくなる。このため、種結晶7に添加されるドーパントの濃度CがC1、C2、C3と高くなるにつれて特性がL1、L2、L3と変化する。なお、図4では、ドーパントの濃度Cが3段階の場合を代表して示しているが、ドーパントの濃度Cが、より段階的に、また連続的に変化する場合は、特性は多段階に、あるいは連続的に変化する。
次に、図4に示す関係を用いて、種結晶7と融液5との温度を調整する手順を説明する。
まず、種結晶7に添加されているドーパントの濃度Cに対応する特性が図4に示す特性L1、L2、L3の中から選択される。例えば、ドーパントの濃度CがC3の場合には特性L3が選択される。次に、種結晶7の直径Dに対応する許容温度差ΔTが、選択された特性L3から求められる。例えば、種結晶7の直径DがD3’であれば特性L3上の対応する点から許容温度差ΔT1が求められる。
このような手順により、許容温度差ΔTが求められるので、種結晶7を融液5に着液させる際は、両者の温度差がその許容温度差ΔT以内となるようにすればよい。両者の温度差を許容温度差以内となるようにするには、例えば、融液5の上方に種結晶7を留置し、融液5からの輻射熱により種結晶7を加熱する方法が挙げられる。種結晶7の温度は、例えば、放射温度計等により種結晶7からの放射温度を測定することにより把握される。
上記のように、図4に示すような関係から、融液5と種結晶7との間の許容温度差が求められるが、両者の温度差は、100℃以下であることが好ましく、50℃以下であることがより好ましい。
本実施態様のシリコン単結晶の製造方法によれば、以下のような効果が奏される。
本実施態様のシリコン単結晶の製造方法によれば、種結晶7及び融液5は、同じ種類のドーパントを含有し、種結晶7に含有されるドーパントの濃度は、ドーパントがホウ素の場合には1.0×1018atoms/cm3以上、ドーパントが砒素の場合には2.0×1019atoms/cm3以上、ドーパントがリンの場合には5.0×1019atoms/cm3以上、ドーパントがリン及びゲルマニウムの場合にはリンが5.0×1019atoms/cm3以上かつゲルマニウムが4.0×1019atoms/cm3以上、ドーパントがアンチモンの場合には種結晶7の抵抗率が20mΩcm以下となる濃度、であり、シリコン単結晶6の育成中に、種結晶7もしくは育成中のシリコン単結晶6に転位が導入された場合には、種結晶7を新たな種結晶に交換することなく、種結晶7を融液5に前回着液させたときよりも深く融液5に浸漬させ、当該浸漬部分を溶融させた後、種結晶7からネッキング部を設けずにシリコン単結晶を育成することを特徴とする。
そのため、種結晶7又は育成中のシリコン単結晶6に転位が導入されても、種結晶7を新しい種結晶に交換することなく、再度シリコン単結晶6の引き上げをやり直すことができる。これにより、製造コストが上昇することを防止することができ、また、作業の手間を省くことが可能になる。さらに、種結晶7が上記の濃度のドーパントを含有するので、種結晶7を再度融液5に着液させた際に、種結晶7に熱ショック転位が導入されることを抑制できる。これにより、ネッキング部を設けなくても無転位のシリコン単結晶6を育成することが可能となり、大きな重量を有する大直径のシリコン単結晶6を製造する際におけるネッキング部分の強度の問題を解消することができる。
そのため、種結晶7又は育成中のシリコン単結晶6に転位が導入されても、種結晶7を新しい種結晶に交換することなく、再度シリコン単結晶6の引き上げをやり直すことができる。これにより、製造コストが上昇することを防止することができ、また、作業の手間を省くことが可能になる。さらに、種結晶7が上記の濃度のドーパントを含有するので、種結晶7を再度融液5に着液させた際に、種結晶7に熱ショック転位が導入されることを抑制できる。これにより、ネッキング部を設けなくても無転位のシリコン単結晶6を育成することが可能となり、大きな重量を有する大直径のシリコン単結晶6を製造する際におけるネッキング部分の強度の問題を解消することができる。
また、本実施態様のシリコン単結晶の製造方法によれば、上記浸漬部分の長さが下記数式(1)で示されるL以上である。
L=D×tanθ ・・・(1)
[数式(1)中、Dは、種結晶7のうち融液5に浸漬する側の先端部分の直径であり、θは、種結晶7の結晶方位が<100>のとき54.74°、<111>のとき70.53°である。]
そのため、種結晶7のうち、スリップバックによって種結晶7に導入された転位を含む部分を融液5に浸漬させて確実に溶融させることができる。したがって、溶融せずに残った種結晶7は、無転位の種結晶となるので、ネッキング部を設けなくても無転位のシリコン単結晶6を育成させることができる。
L=D×tanθ ・・・(1)
[数式(1)中、Dは、種結晶7のうち融液5に浸漬する側の先端部分の直径であり、θは、種結晶7の結晶方位が<100>のとき54.74°、<111>のとき70.53°である。]
そのため、種結晶7のうち、スリップバックによって種結晶7に導入された転位を含む部分を融液5に浸漬させて確実に溶融させることができる。したがって、溶融せずに残った種結晶7は、無転位の種結晶となるので、ネッキング部を設けなくても無転位のシリコン単結晶6を育成させることができる。
また、本実施態様のシリコン単結晶の製造方法によれば、種結晶7に含有されるドーパントの濃度は、ドーパントがホウ素の場合には2.0×1019atoms/cm3以下、ドーパントが砒素の場合には4.0×1019atoms/cm3以下、ドーパントがリンの場合には7.0×1019atoms/cm3以下、ドーパントがリン及びゲルマニウムの場合にはリンが7.0×1019atoms/cm3以下かつゲルマニウムが8.0×1019atoms/cm3以下、ドーパントがアンチモンの場合には前記種結晶の抵抗率が8mΩcm以上となる濃度とされる。そのため、育成されるシリコン単結晶6にミスフィット転位が導入されることを抑制できる。
また、本実施態様のシリコン単結晶の製造方法によれば、種結晶7が融液5に着液する際の種結晶と融液との温度差が、種結晶に生じる熱応力が臨界分解剪断応力を超えることにより種結晶に転位が導入されることのない上限の温度差である許容温度差になるように、許容温度差と種結晶の直径と種結晶に含まれるドーパントの濃度との関係を予め設定し、当該関係に基づいて、融液5に浸漬される種結晶7の直径、及び種結晶7に含まれるドーパントの濃度に対応する許容温度差を求め、種結晶7を融液5に浸漬させる際に、種結晶7と融液5との温度差が、求めた許容温度差以下になるように種結晶7及び融液5の温度を調節する。これにより、種結晶7が融液5に接触した際に、種結晶7に熱ショック転位が導入されることを抑制できる。
次に、本発明のシリコン単結晶の製造方法の第二実施態様について、図5を参照しながら説明する。図5(a)から図5(d)は、製造後のシリコン単結晶から種結晶を分離し、その種結晶を別のシリコン単結晶の製造時に再生使用する様子を示す図である。なお、第二実施態様の説明において、上記第一実施態様と重複する内容については説明を省略し、第一実施態様と異なる部分を中心に説明する。
第二実施態様で使用される種結晶7は、別のシリコン単結晶の製造で使用されたことのある再生品である。そして、種結晶7が転位tを含む場合には、種結晶7の端部のうち転位を含む端部7cを融液5に着液させてから、種結晶7のうち転位tを含む部分を融液5に浸漬させ、当該浸漬部分dを溶融させた後、種結晶7からネッキング部を設けずにシリコン単結晶を育成する。
図1に示すように、シリコン単結晶6は、種結晶7に連結した状態で育成される。このため、シリコン単結晶6の育成が終了した後で、図5(a)に示すように、種結晶7は、切断部位cで切断工具(図示せず)によりシリコン単結晶6から切断されて分離される。このとき、種結晶7には、図5(b)に示すように、切断の衝撃によって転位tが導入される。したがって、通常、この種結晶7を別のシリコン単結晶の製造における種結晶として再生使用するためには、種結晶7に導入された転位が育成されるシリコン単結晶6に伝播しないように、通常、ネッキング部を設ける必要がある。しかし、既に述べたように、ネッキング部を設けるとその部分の機械的強度が低下してしまい、大きな重量を有する大直径のシリコン単結晶を育成する際に問題となる。
このため、本実施態様のシリコン単結晶の製造方法では、種結晶7のうち、シリコン単結晶6から切断されたときに種結晶7に導入された転位が含まれる部分を、融液5に浸漬させ、当該浸漬部分を溶融させた後、種結晶7からネッキング部を設けずにシリコン単結晶6を育成する。
本実施態様で使用される種結晶7は、別のシリコン単結晶の製造で既に種結晶として使用されたことがあるので、種結晶7として再生使用するために、種結晶7の形状の加工や洗浄等の処理が必要となる。以下に、種結晶7として再利用するために、必要となる処理の一例を説明する。
まず、育成の終わったシリコン単結晶6から切断、分離された種結晶7は、種結晶として再生使用する際に不要となる部分が除去される。その後、超音波洗浄によるパーティクルの除去、混酸(フッ酸、硝酸)エッチングによる加工歪みの除去、超音波洗浄によるパーティクルの除去、及び赤外線による乾燥が順に施される。なお、これらの処理のフローは、一例であり、これに限定されるものではない。
上記処理が施された種結晶7は、図5(c)に示すように、種結晶ホルダ4bに把持されて、再びシリコン単結晶6の引き上げに使用される。種結晶ホルダ4bに把持された種結晶7は、融液5の表面5aに着液し、図5(d)に示すように、そのまま融液5に浸漬される。このとき、種結晶7が転位tを含む場合には、種結晶7の端部のうち転位tを含む端部7cを融液5に着液させてから、種結晶7のうち転位を含む部分を融液5に浸漬させる。
種結晶7を融液5に浸漬させる浸漬部分dの長さは、第一実施態様で説明した通りである。浸漬部分dには転位tが含まれるので、浸漬部分dを融液5に溶融させることにより、種結晶7から転位tが消滅する。その後、種結晶7を引き上げてシリコン単結晶6の育成を開始する。
なお、種結晶7を着液させた際や、シリコン単結晶6の育成中に、種結晶7又はシリコン単結晶6が有転位化した場合には、第一実施態様で説明したように、シリコン単結晶6の引き上げをやり直せばよい。
本実施態様のシリコン単結晶の製造方法によれば、以下のような効果が奏される。
本実施態様のシリコン単結晶の製造方法は、種結晶7が別のシリコン単結晶の製造で使用されたことのある再生品であり、かつ種結晶7が転位を含む場合には、種結晶7の端部のうち転位を含む端部を融液5に着液させてから、種結晶7のうち転位を含む部分を融液5に浸漬させ、当該浸漬部分を溶融させた後、種結晶7からネッキング部を設けずにシリコン単結晶6を育成することを特徴とする。そのため、シリコン単結晶6の育成が終了した後にシリコン単結晶6から切り離された種結晶7を再生使用して、無ネッキング法によりシリコン単結晶6を育成することができる。これにより、シリコン単結晶6の製造コストを低減させることができる。
以上、本発明のシリコン単結晶の製造方法について、二つの実施態様を示して具体的に説明したが、本発明は、上記実施態様に限定されるものではなく、本発明の構成の範囲内において適宜変更を加えて実施することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
P型結晶としてホウ素(B)をドーパントとし、チョクラルスキー法により、表1の条件で実施例1〜2及び比較例1〜2のシリコン単結晶を作製した。また、N型結晶として砒素(As)、リン(P)、リン(P)+ゲルマニウム(Ge)、アンチモン(Sb)をドーパントとし、チョクラルスキー法により、表2の条件で実施例3〜10及び比較例3〜6のシリコン単結晶を作製した。
実施例1〜10及び比較例1〜6のいずれについても、種結晶を融液に着液させたときの両者の温度差は、およそ80℃である。なお、種結晶に含まれるドーパント及び融液に含まれるドーパントは、いずれも同一である。また、表2におけるアンチモン(Sb)の濃度については、シリコン単結晶中のアンチモンの濃度の測定が困難であることから、アンチモンをドーパントとして含むシリコン単結晶の抵抗率(mΩcm)で表した。すなわち、シリコン単結晶の抵抗率は、それに含まれるドーパントの濃度に対応するため、シリコン単結晶の抵抗率の値をドーパントの濃度に代えて使用した。さらに、表2の融液中のドーパント濃度における「〜mΩcm相当」とは、その融液からシリコン単結晶を育成したとき、当該シリコン単結晶の肩部から直胴部に変わる位置の抵抗率の値(Topρ)を意味する。
実施例1〜10及び比較例1〜6のいずれについても、種結晶を融液に着液させたときの両者の温度差は、およそ80℃である。なお、種結晶に含まれるドーパント及び融液に含まれるドーパントは、いずれも同一である。また、表2におけるアンチモン(Sb)の濃度については、シリコン単結晶中のアンチモンの濃度の測定が困難であることから、アンチモンをドーパントとして含むシリコン単結晶の抵抗率(mΩcm)で表した。すなわち、シリコン単結晶の抵抗率は、それに含まれるドーパントの濃度に対応するため、シリコン単結晶の抵抗率の値をドーパントの濃度に代えて使用した。さらに、表2の融液中のドーパント濃度における「〜mΩcm相当」とは、その融液からシリコン単結晶を育成したとき、当該シリコン単結晶の肩部から直胴部に変わる位置の抵抗率の値(Topρ)を意味する。
実施例1〜2及び実施例3〜10の条件でシリコン単結晶の育成を行なったところ、種結晶を融液に着液した際の有転位化が防止された。なお、育成中のシリコン単結晶が有転位化した場合には、そのシリコン単結晶を融液中に溶融させ、さらに、種結晶を最初に融液に着液させた位置よりも10mm深く融液に浸漬させ、当該浸漬部分を融液中に溶融させた。このとき、種結晶には熱ショック転位は導入されず、その後、ネッキング部分を設けずにシリコン単結晶の引き上げを行なった結果、無転位のシリコン単結晶を育成させることができた。
これに対して、比較例1〜2及び比較例3〜6の条件でシリコン単結晶の育成を行なったところ、種結晶を融液に着液させた時点で、種結晶に熱ショック転位が導入された。その後、種結晶の熱ショック転位が導入された部分を溶融させるために、種結晶をさらに10mm、融液に浸漬させたが、浸漬とともに熱ショック転位が種結晶に次々と導入され、種結晶中の熱ショック転位を消失させることができなかった。そのため、シリコン単結晶の育成を打ち切った。
次に、P型結晶としてホウ素(B)を、N型結晶として砒素(As)、リン(P)、リン(P)及びゲルマニウム(Ge)、又はアンチモン(Sb)をドーパントとしてそれぞれ使用して、チョクラルスキー法により、表3の条件で実施例11〜15及び比較例7〜11のシリコン単結晶を作製した。実施例11〜15及び比較例7〜11において使用した種結晶は、別のシリコン単結晶の製造で使用した種結晶の再生品である。種結晶を再生使用するにあたり、種結晶の不要部分を除去した後、超音波洗浄、混酸(フッ酸、硝酸)エッチング、超音波洗浄、及び赤外線乾燥を順に施した。種結晶を融液に着液させる際の両者の温度差は、80℃とした。なお、種結晶に含まれるドーパント及び融液に含まれるドーパントは、いずれも同一である。また、表3におけるアンチモン(Sb)の濃度については、表2と同様に、アンチモンをドーパントとして含むシリコン単結晶の抵抗率(mΩcm)で示した。さらに、表3の融液中のドーパント濃度における「〜mΩcm相当」についても、表2と同様に、その融液からシリコン単結晶を育成したとき、当該シリコン単結晶の肩部から直胴部に変わる位置の抵抗率の値(Topρ)を意味する。
実施例11〜15及び比較例7〜11のいずれについても、種結晶を融液に着液させた後、さらに種結晶を融液に10mm浸漬させて、当該浸漬部分を溶融させた。その結果、実施例11〜15の条件では、種結晶を融液に浸漬させた際、種結晶に熱ショック転位は導入されず、種結晶の浸漬部分を溶融させた後に、ネッキング部分を設けずにシリコン単結晶の引き上げを行なった結果、無転位のシリコン単結晶を育成させることができた。
これに対して、比較例7〜11の条件では、種結晶を融液に浸漬させた際、種結晶に熱ショック転位が導入され、当該熱ショック転位が導入された箇所を溶融させるために、種結晶をさらに深く融液に浸漬させたところ、種結晶に次々と熱ショック転位が導入された。そのため、種結晶中の熱ショック転位を消失させることができず、シリコン単結晶の育成を打ち切った。
以上の結果から、本願発明所定の方法でシリコン単結晶の引き上げを行なうことにより、種結晶や育成中のシリコン単結晶に転位が導入された場合であっても、新しい種結晶を使用せずに、無ネッキング法によりシリコン単結晶を育成できることが理解される。また、シリコン単結晶の育成が終了した後にシリコン単結晶から切り離された種結晶を再利用して、無ネッキング法によりシリコン単結晶を育成できることが理解される。
1 単結晶引き上げ装置
2 引き上げ炉
3 坩堝
4 引き上げ機構
4b シードホルダ
5 融液
6 シリコン単結晶
7 種結晶
8 熱遮蔽部材
9 ヒータ
d 浸漬部分
2 引き上げ炉
3 坩堝
4 引き上げ機構
4b シードホルダ
5 融液
6 シリコン単結晶
7 種結晶
8 熱遮蔽部材
9 ヒータ
d 浸漬部分
Claims (4)
- 種結晶を融液に着液させ、前記種結晶を引き上げてシリコン単結晶を育成させるシリコン単結晶の製造方法であって、
前記種結晶及び前記融液は、同じ種類のドーパントを含有し、
前記種結晶に含有されるドーパントの濃度は、
ドーパントがホウ素の場合には1.0×1018atoms/cm3以上、
ドーパントが砒素の場合には2.0×1019atoms/cm3以上、
ドーパントがリンの場合には5.0×1019atoms/cm3以上、
ドーパントがリン及びゲルマニウムの場合にはリンが5.0×1019atoms/cm3以上かつゲルマニウムが4.0×1019atoms/cm3以上、
ドーパントがアンチモンの場合には前記種結晶の抵抗率が20mΩcm以下となる濃度、であり、
シリコン単結晶の育成中に、前記種結晶もしくは育成中のシリコン単結晶に転位が導入された場合には、前記種結晶を新たな種結晶に交換することなく、前記種結晶を前記融液に前回着液させたときよりも深く前記融液に浸漬させ、又は、前記種結晶が別のシリコン単結晶の製造で使用されたことのある再生品であり、かつ前記種結晶が転位を含む場合には、前記種結晶の端部のうち転位を含む端部を前記融液に着液させてから、前記種結晶のうち転位を含む部分を前記融液に浸漬させ、
前記種結晶のうち前記融液に浸漬させた浸漬部分を溶融させた後、前記種結晶からネッキング部を設けずにシリコン単結晶を育成することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。 - 前記浸漬部分の長さが下記数式(1)で示されるL以上であることを特徴とする請求項1記載のシリコン単結晶の製造方法。
L=D×tanθ ・・・(1)
[数式(1)中、Dは、前記種結晶のうち前記融液に浸漬する側の先端部分の直径であり、θは、前記種結晶の結晶方位が<100>のとき54.74°、<111>のとき70.53°である。] - 前記種結晶に含有されるドーパントの濃度は、
ドーパントがホウ素の場合には2.0×1019atoms/cm3以下、
ドーパントが砒素の場合には4.0×1019atoms/cm3以下、
ドーパントがリンの場合には7.0×1019atoms/cm3以下、
ドーパントがリン及びゲルマニウムの場合にはリンが7.0×1019atoms/cm3以下かつゲルマニウムが8.0×1019atoms/cm3以下、
ドーパントがアンチモンの場合には前記種結晶の抵抗率が8mΩcm以上となる濃度、
であることを特徴とする請求項1又は2記載のシリコン単結晶の製造方法。 - 種結晶が融液に着液する際の種結晶と融液との温度差が、種結晶に生じる熱応力が臨界分解剪断応力を超えることにより種結晶に転位が導入されることのない上限の温度差である許容温度差になるように、許容温度差と種結晶の直径と種結晶に含まれるドーパントの濃度との関係を予め設定し、
前記関係に基づいて、前記融液に浸漬される前記種結晶の直径、及び前記種結晶に含まれるドーパントの濃度に対応する許容温度差を求め、
前記種結晶を前記融液に浸漬させる際に、前記種結晶と前記融液との温度差が、求めた許容温度差以下になるように前記種結晶及び前記融液の温度を調節することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のシリコン単結晶の製造方法。
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