JP2004269312A - 単結晶の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ルツボ内の原料融液から種結晶を融着後引き上げて単結晶を育成するチョクラルスキー法による単結晶の製造方法であって、単結晶育成中に有転位が発生した場合、該有転位化した単結晶を原料融液から切り離して炉内から取り出し、残りの原料融液から単結晶を育成する。あるいは、該有転位化した単結晶を再度原料融液に溶融した後、該原料融液から単結晶の育成を行い、同じ原料融液から単結晶の育成を5回以内、好ましくは2回又は3回繰り返しても有転位が発生した場合には、該有転位化した単結晶を原料融液から切り離して炉内から取り出し、残りの原料融液から単結晶を育成する。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、単結晶の製造方法、特に、チョクラルスキー法により、ドーパントとしてボロン及び窒素を添加したシリコン単結晶の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、シリコン単結晶等の単結晶を製造する方法として、チョクラルスキー法(CZ法)や浮遊帯法(FZ法)が知られている。
CZ法によりシリコン単結晶を製造するには、図1に示されるようなチャンバー(炉)1,2を備えた単結晶製造装置20を用い、ルツボ5に原料として多結晶シリコンを収容し、これを加熱溶融した原料融液4に種結晶14を融着させた後、回転しながら徐々に引き上げることで単結晶3が育成される。なお、近年では、単結晶の大型化が進み、融液4に磁場を印加しながら単結晶3を育成する、いわゆるMCZ法が用いられることが多くなっている。
【0003】
育成されたシリコン単結晶は、その後、スライス、面取り、研磨等の加工を経て鏡面ウエーハとされるが、さらに、その上にエピタキシャル層を成長させる場合がある。このようなエピタキシャルウエーハでは、基板となるシリコンウエーハ上に重金属不純物が存在すると、半導体デバイスの特性不良を起こしてしまうため、重金属不純物は極力減少させる必要がある。
【0004】
そのため、重金属不純物を低減させる技術の一つとしてゲッタリング技術の重要性がますます高くなってきており、エピタキシャルウエーハの基板として、ゲッタリング効果の高い、低抵抗率(例えば0.1Ω・cm以下)のP型シリコンウエーハを用いることも多くなっている。このような低抵抗率単結晶の基板を用いたエピタキシャルウエーハは、ラッチアップの問題やゲッタリングの問題に関して有利であり、高品質のウエーハとして注目されている。
【0005】
また、BMDの増加やグローンイン(Grown−in)欠陥サイズの制御等を目的として窒素ドープされることも多くなってきている。
そこで、近年では、MCZ法(あるいはCZ法)により、直径が200mm以上、特に300mmにもなる大口径であって、ゲッタリングの問題等から窒素ドープした低抵抗のP型(ボロンドープ)シリコン単結晶を育成することが多くなってきている。
【0006】
ところで、CZ法により単結晶を育成すると、育成中に転位が発生(有転位化)し、多結晶化してしまうことがしばしばある。有転位化が発生すると、その後に育成する部分はもちろん、それより前に育成した部分にまでスリップ転位が伝播し、単結晶、すなわち製品としての価値が失われてしまう。このため、従来、有転位化が発生した場合には、育成した単結晶を溶融し直し(再溶融)、再び単結晶の育成(再育成)を行っている。しかし、このような再溶融・再育成を繰り返して行うと、生産性の低下を招くことになってしまうため、有転位化を防ぐことが好ましい。
【0007】
有転位化の発生を防ぐため、前処理工程として5〜50mm程度の短い結晶を育成してこれを除去した後、本工程として製品となる単結晶を育成する方法が提案されている(特許文献1参照)。この方法によれば、融液表面付近に浮遊する酸化物や石英等の異物を前処理工程で育成した結晶中に取り込むことができ、本工程での単結晶の有転位化を防ぐことができるとされている。
【0008】
【特許文献1】
特開平7−330482号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のように予め短い結晶を育成して表面付近の異物を除去する方法は、原料の溶融終了後まで、あるいは前処理工程での育成中に発生し、かつ融液表面に浮遊している異物に対してのみ除去効果を発揮するに過ぎない。そのため、例えば融液中に残留する異物や、本工程で生じた異物に起因して本工程で育成した単結晶にも有転位化が発生し、再溶融・再育成を繰り返すことになってしまう。
【0010】
さらに、本発明者等の調査によると、特に、ボロンドープによる低抵抗率(例えば0.1Ω・cm以下)の単結晶を育成すると、通常抵抗率結晶の場合に比較して有転位化の頻度が高く、有転位化した単結晶を溶かして育成をやり直す回数も多くなり、生産性の大きな低下を招くことがわかった。このように有転位化が頻繁に発生するとなると、前記したような前処理として短い結晶を育成して表面付近の異物のみを取り除く方法では生産性の向上を図ることができない。
【0011】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたもので、単結晶を育成する際、有転位化が生じても、その後効率的に育成を行うことにより、結果として単結晶を高生産性及び低コストで製造することができる単結晶の製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明によれば、ルツボ内の原料融液から種結晶を融着後引き上げて単結晶を育成するチョクラルスキー法による単結晶の製造方法であって、単結晶育成中に有転位が発生した場合、該有転位化した単結晶を原料融液から切り離して炉内から取り出し、残りの原料融液から単結晶を育成することを特徴とする単結晶の製造方法が提供される(請求項1)。
【0013】
CZ法により単結晶を育成する際、後述するように、例えば融液中に窒化ボロン(BN)等の消滅し難い異物が生成し、これが有転位化の原因となっている場合には、再溶融・再育成を繰り返しても再び有転位化が発生する可能性が極めて高くなる。そこで、単結晶の育成中に有転位が発生した場合、有転位化した単結晶を再溶融せずに原料融液から切り離して炉内から取り出せば、有転位化の原因となった異物を単結晶とともに確実に取り除くことができる。一方、残りの原料融液には有転位化の原因となった異物が除去されているので、これから新たに単結晶を育成すれば、有転位化が発生する確率は低く抑えられ、すなわち無転位の単結晶を高い確率で製造することができ、トータルでの生産性の向上及び低コスト化を達成することができる。
【0014】
また、本発明によれば、ルツボ内の原料融液から種結晶を融着後引き上げて単結晶を育成するチョクラルスキー法による単結晶の製造方法であって、単結晶育成中に有転位が発生した場合、該有転位化した単結晶を再度原料融液に溶融した後、該原料融液から単結晶の育成を行い、同じ原料融液から単結晶の育成を5回以内で繰り返しても有転位が発生した場合には、該有転位化した単結晶を原料融液から切り離して炉内から取り出し、残りの原料融液から単結晶を育成することを特徴とする単結晶の製造方法が提供される(請求項2)。
【0015】
単結晶の育成中における有転位化の発生は、必ずしもBN等の不溶性の異物に起因するとは限らず、再溶融して結晶を育成し直すことで無転位の単結晶を育成することができることもある。そこで、同じ原料からの単結晶の育成を5回以内で繰り返しても有転位が発生した場合には、有転位化した単結晶を炉内から取り出す一方、残りの原料融液から単結晶を育成すれば、無転位の単結晶を高い確率で製造することができ、トータルでの高生産性及び低コスト化を達成することができる。
【0016】
この場合、同じ原料融液から単結晶の育成を繰り返す回数を2回又は3回とすることが好ましい(請求項3)。
同じ原料融液からの単結晶の育成を2回又は3回繰り返しても続けて有転位化が発生した場合には、BN等の不溶性の異物が存在している可能性がかなり高い。従って、その場合には、有転位化した単結晶を原料融液から切り離して炉内から取り出し、残りの原料融液から単結晶を育成すれば、無転位の単結晶を一層高い確率で製造することができ、生産性をより向上させることが可能である。
【0017】
また、前記有転位化した単結晶を原料融液から切り離して炉内から取り出した後、残りの原料融液に原料を追加し、その後、該原料融液から単結晶を育成することもできる(請求項4)。
有転位化した単結晶を炉内から取り出した後、融液の残量は新たな単結晶を育成するには不十分な場合があるので、原料を追加することで十分な大きさの単結晶を育成することができる。
【0018】
また、前記有転位化した単結晶を原料融液から切り離すときに、原料融液の表面に異物が浮遊していれば、該異物を前記有転位化した単結晶に付着させて該単結晶を原料融液から切り離しても良い(請求項5)。
有転位化後、単結晶を原料融液から切り離す際に、融液の表面に浮遊している異物があれば、これを付着させてから切り離すようにすれば、残留融液から新たに育成する単結晶の有転位化をより確実に防ぐことができる。
【0019】
また、前記単結晶として、ボロンドープにより抵抗率が0.001以上、0.1Ωcm以下となる単結晶を育成することが好ましい(請求項6)。
原料融液に添加するボロンドープ剤の量により育成する単結晶中のボロン濃度、すなわち抵抗率を調整することができ、上記のようなボロン濃度となるように単結晶を育成すれば、ゲッタリング能力に優れた低抵抗率単結晶を製造することができる。また、このような低抵抗の単結晶育成時にBNは発生しやすいので、特に本発明が有効である。
【0020】
前記単結晶として、窒素濃度が1×1010/cm3以上、5×1015/cm3以下となる単結晶を育成することが好ましい(請求項7)。
原料融液に添加する窒素ドープ剤の量により育成する単結晶中の窒素濃度を調整することができるが、上記範囲の窒素濃度となるように窒素ドープ剤を添加して単結晶を育成すれば、単結晶化に悪影響が無く、BMDやグローンイン欠陥の制御効果を十分発揮し、ゲッタリング能力に一層優れた単結晶を確実に製造することができる。また、このような単結晶育成時にBNは発生しやすいので、特に本発明が有効である。
【0021】
前記単結晶として、シリコン単結晶を育成することが好ましい(請求項8)。
シリコン単結晶は需要が高く、本発明を適用して製造すれば、例えば高品質の窒素ドープP型シリコン単結晶を高生産性及び低コストで製造することができる。
【0022】
前記単結晶の育成に際し、前記原料融液に少なくとも300ガウス以上の磁場を印加して単結晶の育成を行うことが好ましい(請求項9)。
近年、MCZ法により単結晶を製造する場合が多いが、300ガウス以上の磁場強度で磁場を印加すると、融液の対流の抑制効果が大きくなり、温度勾配がつき易くなる。そのため、ルツボ温度が高くなって、窒化ボロンが生成し易くなるが、本発明ではBN等に起因して有転位化した単結晶を取り除いた後、残りの原料融液から新たに単結晶を育成するので、MCZ法により、大口径で、高品質の単結晶を、トータルとして高い生産性で製造することができる。
【0023】
前記単結晶として、直径が200mm以上の単結晶を育成することが好ましい(請求項10)。
直径が200mm以上となる大口径単結晶を育成する場合には、ルツボから結晶までの距離が遠くなるためルツボ温度が高くなりやすく、窒化ボロンが生成され易い。そこで、本発明を適用し、再溶融・再育成を制限した上で残りの原料融液から単結晶を育成することで、大口径の単結晶を高い生産性で製造することができる。
【0024】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明者等は、様々な分析法(IR、X線回折、ラマン分光、蛍光X線等)を用いて種々の有転位化状況の検証を行い、ボロンドープ低抵抗シリコン単結晶が有転位化する原因の一つが、窒素とボロンとが反応して形成される窒化ボロン(BN)であると特定することができた。窒化ボロンは約1500℃程度の温度で発生するが、一度発生すると3000℃の加圧状態でないと溶けない物質であり、有転位化の原因となる物質である。このような窒化ボロンが育成中の単結晶に付着すると、成長単結晶に転位が発生すると考えられる。
【0025】
特に、ボロンドープ低抵抗率単結晶の育成においては、融液中のボロン濃度が通常抵抗の単結晶を育成する場合に比べ非常に高いため、さらに窒素をドープする場合に限らず、石英ルツボに含まれていたり、大気中の窒素が起因して発生する窒化物や機械的なリークなどを通じてわずかに育成装置内に混入する窒素と反応して窒化ボロンを形成しやすいと考えられる。
また、本発明者らは、融液中に窒化ボロンが生じて有転位化が発生した場合、従来のように有転位化した結晶を再度溶融しても窒化ボロンが溶解する可能性は極めて低く、融液中を浮遊し、再度結晶を育成する際に育成中の結晶に再び付着する可能性が高いと考えた。
【0026】
そこで本発明者らは、実験を重ねた結果、育成中に有転位化が発生してしまった場合には、この結晶を再溶融せず、窒化ボロンが付着したと思われる部分を含めて炉内から取り出し、新たに結晶を育成し直すことで、生産性を向上させることができることを見出した。
【0027】
一方、単結晶の育成中における有転位化の発生は、必ずしもBN等の不溶性の異物に起因するとは限らず、再溶融して結晶を育成し直すことで無転位の単結晶を育成することができることもある。そこで、本発明者らは、さらに実験及び検討を重ねたところ、有転位化が発生した場合に無転位の単結晶を育成できるまで再溶融・再育成を繰り返して行うこととすると、5回目の育成でも有転位化が生じた場合には、融液中に有転位化の原因物質が存在していると判断し、もはや再溶融は行わず、残りの融液から新たな単結晶の育成を行うようにした方がトータルの生産性を向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら、好適な態様として、CZ法により、ドーパントとしてボロンと窒素を添加して、ゲッタリング能力に優れた低抵抗のP型シリコン単結晶を製造する場合について説明する。
図1は、CZ法によりシリコン単結晶を製造する際に使用される単結晶製造装置(引き上げ装置)の一例の概略を示したものである。この単結晶製造装置20は、原料融液4を収容するルツボ5や加熱ヒーター7を備えたメインチャンバー(加熱炉)1と、原料融液4から引き上げた単結晶棒3を収容し、それを取り出すための引き上げチャンバー(引き上げ炉)2とを有している。
【0029】
ルツボ5は、内側の石英ルツボ5aと外側の黒鉛ルツボ5bとからなり、ペデスタル15上に載置されて、下方に設けられたルツボ制御手段(不図示)により回転軸16を介して回転させながら昇降を行うことができるようになっている。ルツボ5の周囲には加熱ヒーター7が配設され、さらにヒーター7の外側には断熱部材8が設けられている。
【0030】
メインチャンバー1と引き上げチャンバー2との間から融液面の近くに至るガス整流筒11が設けられており、さらに整流筒11の先端部に遮熱部材12が設けられている。また、メインチャンバー1の上方には、育成中の単結晶棒3の直径や様子を測定及び観察するための光学系装置(不図示)が設けられている。
【0031】
引き上げチャンバー2は、育成を終了した単結晶3を取り出すことができるように開放可能に構成されており、上方には、ワイヤー(またはシャフト)13を介して単結晶3を回転させながら引き上げる結晶引き上げ手段(不図示)が設置されている。
【0032】
このような装置20を用い、窒素ドープしたP型シリコン単結晶を製造するには、例えば、ルツボに多結晶シリコン原料と共に金属ボロンエレメント等のボロンドープ剤と窒化シリコン等の窒素ドープ剤を収容する。
添加するボロンドープ剤の量は、育成される単結晶中のボロン濃度、すなわち抵抗率に反映されるため、目的とするシリコン単結晶の抵抗率に応じて決めれば良い。なお、一般的に、抵抗率が0.1Ωcm以下となる低抵抗率の単結晶を育成する場合、融液中のボロン濃度を高くする必要があり、窒化ボロンが生成し易くなる。
【0033】
ただし、抵抗率が0.001Ωcmより小さい単結晶を育成するとなると、融液中のボロン濃度が極めて高くなり、ボロンのシリコンへの固溶限界を超え、単結晶化し難くなる。従って、ボロンドープ剤を、育成される単結晶の抵抗率が0.001Ωcm以上、0.1Ωcm以下となるボロン濃度となるように添加することが好ましい。
【0034】
一方、窒素ドープ剤の量も、育成される単結晶中の窒素濃度に反映されるので、目的とするシリコン単結晶の窒素濃度に応じてドープ剤の量を決めれば良い。ただし、単結晶中の窒素濃度が小さすぎると、BMDやグローンイン欠陥への効果が十分得られないので、十分に不均一核形成を引き起こす1×1010/cm3以上とするのが好ましい。
ただし、融液中の窒素濃度がシリコンへの固溶限界を超えてしまうと単結晶化し難くなるので、育成される単結晶中の窒素濃度が5×1015/cm3以下となるように窒素ドープ剤を添加することが好ましい。
【0035】
ルツボ5内に原料及びドープ剤を収容してヒータ7により加熱溶融した後、上方より静かにワイヤー13を下降し、ワイヤー13下端のホルダー6に吊された、円柱または角柱状の種結晶14を融液面に着液(融着)させる。次いで、種結晶14を回転させながら上方に静かに引上げて徐々に直径を細くするネッキングを行った後、引上げ速度と温度等を調整して絞り部分を拡径し、単結晶棒3のコーン部の育成に移行する。コーン部を所定の直径まで拡径した後、再度引上げ速度と融液温度を調整して所望直径の直胴部の育成に移る。
【0036】
なお、単結晶3の成長に伴い原料融液4が減って融液面が下がるので、ルツボ5を上昇させることで融液面のレベルを一定に保ち、育成中の単結晶棒3が所定の直径となるように調整される。
また、操業中は、チャンバー1,2内は、ガス導入口10からアルゴンガスが導入され、ガス流出口9から排出することでアルゴンガス雰囲気で行われる。
【0037】
上記のように単結晶の育成を行うと、育成中の単結晶が有転位化する場合がある。このような有転位化が発生した場合、従来においては、育成した単結晶を溶融し直し、同じ原料融液から単結晶を育成し直す、という作業を繰り返し行っていた。しかし、特にCZ法により低抵抗のP型単結晶を育成する場合、融液中に窒化ボロンが発生し易く、これが結晶に付着して有転位化を引き起こすものと考えられ、一旦発生したBNは消滅し難いため、再溶融・再育成を繰り返しても再び有転位化が発生する可能性が高い。
【0038】
そこで、本発明の第一の態様として、単結晶育成中に有転位が発生した場合には、この有転位化した結晶を再溶融するのではなく、原料融液4から切り離して引き上げ炉2から取り出すこととする。なお、結晶に有転位化が発生した場合には結晶の晶癖線が乱れるので、メインチャンバー1の上方に設けた窓から目視によるか、CCDカメラ等の光学系装置(不図示)を通じて確認することができる。
【0039】
転位発生後、有転位化した結晶を融液4から切り離して炉2内から取り出せば、有転位化の原因となった異物を結晶とともに取り除くことができる。ただし、融液4から切り離す際、原料融液4の表面に他にも異物がまだ浮遊している可能性がある。そこで、有転位化後、融液の表面に浮遊している異物があれば、単結晶を原料融液から切り離す際に異物を付着させるようにする。例えば、もう少し育成を続けて異物を付着させてから切り離すようにするか、一旦切り離した結晶を1度または数度融着面に接触させた後に取り出すようにすれば、融液中の異物をより確実に防ぐことができる。
【0040】
残りの原料融液には有転位化の原因となったBN等の異物が除去されているので、残留融液から新たに単結晶を育成すれば、無転位の単結晶を高い確率で製造することができる。ただし、有転位化が生じて炉2から先に取り出した結晶が大きく、残留融液から新たな単結晶を育成するには残量が不十分である場合には、有転位化した単結晶を原料融液から切り離して炉2内から取り出した後、残りの原料融液に原料を追加し、その後、該原料融液から単結晶を育成するようにしても良い。このように必要に応じて原料の追加を行えば、十分な大きさの単結晶を育成することができる。
なお、原料追加後の育成でも有転位化が生じた場合には、前記と同様、有転位化した単結晶を融液から切り離して炉2から取り出し、残りの融液から新たに単結晶を育成してもよい。
【0041】
一方、有転位化の原因は、必ずしもBNが結晶に付着した場合に限られない。特に、ボロンを添加しない場合、ボロンの添加量が少ない場合、あるいはボロンを添加しても窒素を添加しない場合などはBNが生成する可能性は高くないので、最初の育成で他の原因により有転位化が発生しても、再溶融して結晶を育成し直せば無転位の単結晶を育成することができることもある。
【0042】
そこで、本発明の第二の態様では、単結晶育成中に有転位が発生した場合、単結晶を直ちに取り出すのではなく、有転位化した単結晶を再度原料融液に溶融した後、原料融液から単結晶の育成を行い、同じ原料融液から単結晶の育成を5回以内で繰り返しても有転位が発生した場合には、融液中に有転位化の原因物質が存在していると判断して有転位化した単結晶を原料融液から切り離して炉2内から取り出すこととする。
そして、残りの原料融液については、第一の態様と同様、残留融液から単結晶を育成することで無転位の単結晶を高い確率で製造することができる。なお、この場合も、残留融液が少ないときには、必要に応じて原料を追加した後、新たな単結晶の育成を行っても良い。
【0043】
上記のような再溶融・再育成により同じ原料融液から単結晶の育成を繰り返す回数は5回以内で適宜決めれば良いが、最初に育成した単結晶が有転位化し、その後溶融して再度育成した単結晶も有転位化した場合、あるいは、さらに溶融した後3回目の育成でも有転位化が発生した場合には、BN等の消滅し難い異物が融液中に存在している可能性が高い。従って、同じ原料融液から単結晶の育成を繰り返す回数を2回又は3回とし、それでも転位が発生した場合には、有転位化した単結晶を原料融液から切り離して炉内から取り出し、残りの原料融液から単結晶を育成するのが好ましい。これにより、無転位の単結晶を高い確率で製造することができ、生産性を一層向上させることができる。
【0044】
なお、育成する単結晶の大きさは特に限定されないが、直径が200mm以上、特に300mmにもなる大口径のシリコン単結晶を育成する場合には、メインチャンバー1の外側に磁場印加装置を備えた装置を用い、MCZ法により育成が行われることが多い。このとき300ガウス以上の中心磁場強度で磁場を印加すると、融液の対流の抑制効果が大きくなり、ルツボ温度が高くなって窒化ボロンが形成し易い。
【0045】
そこで、このようなMCZ法により育成を行う場合、本発明に従い、育成中の単結晶に転位が生じた場合には、この有転位化した結晶を再溶融しないか、あるいは再溶融するにせよ同じ融液からの育成を5回以内、好ましくは2回又は3回に制限し、有転位化した結晶を炉2から取り出して残りの原料融液から新たな単結晶の育成を行うことで、MCZ法により、大口径で、ゲッタリング能力の高い低抵抗のP型単結晶を高い確率で育成することができ、トータルでの生産性を向上させることができる。また、従来の製造装置を用いて容易に実施することができるため、新たに製造装置の増設等を必要としない点でも有利である。
【0046】
そして、上記のように残留融液から製造されたシリコン単結晶は、高いゲッタリング能力を有しており、この単結晶から、スライス、面取り、ラッピング、エッチング、研磨等の工程を経て得た低抵抗率ウエーハは、ゲッタリング能力に特に優れ、エピタキシャルウエーハ用の基板として有利に使用することができる。
【0047】
【実施例】
以下、本発明に係る実験、並びに実施例及び比較例について説明する。
<実験>
図1に概略を示した単結晶製造装置20(ルツボ径:800mm)を用い、チョクラルスキー法(CZ法)により直径12インチ(300mm)の窒素をドープしたP型(ボロンドープ)シリコン単結晶を育成した。
溶融工程では、ルツボ内に多結晶シリコン原料を320kgチャージし、同時に抵抗制御用の金属ボロンエレメントを添加した。添加量は、育成される単結晶の抵抗率が、0.005〜0.01Ωcmの範囲内となるように調節した。
【0048】
結晶育成工程では、中心磁場強度3500Gの水平磁場を印加し、融液から直胴長さが約120cmの結晶を育成した。
なお、結晶が途中で有転位化してしまった場合には、その結晶を再び溶融して再度育成することとし、製品として使い得る単結晶が得られるまで再溶融・再育成を繰り返すこととした。このような条件の下、有転位化した回数と、最終的に得られた収量を表1に示した。
【0049】
【表1】
【0050】
表1に示すように、多くの場合、有転位化回数は1回以下で単結晶を育成することができたが、十数本に1本程度の割合で、同じ融液からの育成で有転位化が5回以上発生した。なお、この様に有転位化が5回以上発生することは通常の抵抗率範囲の育成では稀であり、低抵抗率の単結晶の育成に特有の現象である。
そして、図2に示したように、有転位化が多発(5回以上発生)した場合、すなわち同じ原料融液からの育成を6回以上繰り返して単結晶を製造した場合の生産性は、有転位化の発生が4回以内、すなわち5回以内の育成で無転位の単結晶を製造することができた場合の生産性に比較して約3割程度と極端に低かった。
【0051】
<実施例1>
上述の実験と同じ条件で直径300mmの単結晶を育成した。有転位化が生じた場合には再溶融・再育成を繰り返すこととしたが、同じ原料融液からの単結晶の育成で有転位化の発生が続き、5回目の育成でも有転位化が発生した場合には、その結晶を融液から切り離し、再溶融せずに有転位化発生部分を含めて全て炉内から取り出した。その後、ルツボ内に残っている融液から新たに結晶を育成した。
その結果、残った融液から新たに育成した結晶の有転位化発生回数は、0.5回/本であり、通常時並の回数に近づいた。
【0052】
<実施例2>
上述の実験と同じ条件で直径300mmの単結晶を育成し、同じ原料融液から有転位化が2回発生した場合、すなわち、1回目の育成で有転位化が発生し、再溶融して育成し直した場合にも有転位化が発生した場合には、有転位化多発の危険ありと判断し、その結晶を融液から切り離し、再溶融せずに有転位化発生部分を含めて全て炉内から取り出した。その後、ルツボ内に残留する融液から新たに結晶を育成した。
その結果、残った融液から新たに育成した結晶の有転位化発生回数は、0.3回/本であり、通常時の回数と同等であった。
【0053】
<比較例>
上述の実験と同じ条件で直径300mmの単結晶を育成した。結晶が途中で有転位化してしまった場合には、その結晶を再び溶融して、製品として使い得る単結晶が得られるまでこれを繰り返した。その結果有転位化多発(5回以上)の結晶の生産性は、これを除いた育成の場合の生産性に比較して約3割程度であり、前記実験と同様極端に低かった。
【0054】
<生産性の比較>
トータルの生産性に関しては、図3に示したように、再溶融・再育成を制限無く繰り返した比較例に比べ、実施例1では1.2倍近くとなって良好であった。さらに、実施例2では比較例の1.9倍を超えて非常に良好であった。
【0055】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は単なる例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
例えば、上記実施形態ではドーパントとして窒素とボロンを添加したシリコン単結晶を製造する場合について説明したが、これらのドーパントを添加しないシリコン単結晶を育成する場合、あるいは、他の単結晶をCZ法により製造する場合にも適用することができる。
【0056】
【発明の効果】
以上のように、本発明では、育成中の単結晶に転位が生じた場合に、この有転位化した結晶を再溶融しないか、あるいは再溶融するにせよ、同じ融液からの育成を5回以内に制限し、有転位化した結晶を炉から取り出して残りの原料融液から無転位の単結晶を高い確率で育成することができ、特に有転位化が生じ易い低抵抗のシリコン単結晶を育成する場合でも、トータルでの生産性を向上させることができ、結果的にコストの低減を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】単結晶製造装置の一例の概略図である。
【図2】有転位化が多発(5回以上)した場合と、4回以内の場合との生産性を比較したグラフである。
【図3】実施例及び比較例におけるトータルでの生産性を比較したグラフである。
【符号の説明】
1…メインチャンバー(加熱炉)、 2…引き上げチャンバー(引き上げ炉)、
3…単結晶棒、 4…原料融液、 5…ルツボ、 5a…石英ルツボ、
5b…黒鉛ルツボ、 6…種結晶ホルダー、 7…加熱ヒーター、
8…断熱部材、 9…ガス流出口、 10…ガス導入口、 11…整流筒、
12…遮熱部材、 13…ワイヤー、 14…種結晶、 15…ペデスタル、
16…ルツボ回転軸、 20…単結晶製造装置。
Claims (10)
- ルツボ内の原料融液から種結晶を融着後引き上げて単結晶を育成するチョクラルスキー法による単結晶の製造方法であって、単結晶育成中に有転位が発生した場合、該有転位化した単結晶を原料融液から切り離して炉内から取り出し、残りの原料融液から単結晶を育成することを特徴とする単結晶の製造方法。
- ルツボ内の原料融液から種結晶を融着後引き上げて単結晶を育成するチョクラルスキー法による単結晶の製造方法であって、単結晶育成中に有転位が発生した場合、該有転位化した単結晶を再度原料融液に溶融した後、該原料融液から単結晶の育成を行い、同じ原料融液から単結晶の育成を5回以内で繰り返しても有転位が発生した場合には、該有転位化した単結晶を原料融液から切り離して炉内から取り出し、残りの原料融液から単結晶を育成することを特徴とする単結晶の製造方法。
- 前記同じ原料融液から単結晶の育成を繰り返す回数を2回又は3回とすることを特徴とする請求項2に記載の単結晶の製造方法。
- 前記有転位化した単結晶を原料融液から切り離して炉内から取り出した後、残りの原料融液に原料を追加し、その後、該原料融液から単結晶を育成することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の単結晶の製造方法。
- 前記有転位化した単結晶を原料融液から切り離すときに、原料融液の表面に異物が浮遊していれば、該異物を前記有転位化した単結晶に付着させて該単結晶を原料融液から切り離すことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の単結晶の製造方法。
- 前記単結晶として、ボロンドープにより抵抗率が0.001以上、0.1Ωcm以下となる単結晶を育成することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の単結晶の製造方法。
- 前記単結晶として、窒素濃度が1×1010/cm3以上、5×1015/cm3以下となる単結晶を育成することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の単結晶の製造方法。
- 前記単結晶として、シリコン単結晶を育成することを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の単結晶の製造方法。
- 前記単結晶の育成に際し、前記原料融液に少なくとも300ガウス以上の磁場を印加して単結晶の育成を行うことを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の単結晶の製造方法。
- 前記単結晶として、直径が200mm以上の単結晶を育成することを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の単結晶の製造方法。
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2003
- 2003-03-07 JP JP2003062420A patent/JP2004269312A/ja active Pending
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