JPWO2019239880A1 - アミドの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本願は、2018年6月15日に日本に出願された特願2018−114782に基づく優先権を主張し、その内容をここに援用する。
高活性な活性化剤を使って前記カルボキシル基を活性化させる方法として、酸塩化物法や酸無水物法がある。これら酸塩化物法や、酸無水物法は、活性化度の弱い縮合剤を使った活性法と比較して、活性化剤の構造が簡単であるため、単価が安く、更には活性化剤由来の副生成物の生成が少ない等の利点がある。
非特許文献1〜2で開示される対称酸無水物法は、
カルボン酸同士の縮合反応による対称酸無水物の生成の第1のステップと、
前記対称酸無水物とアミンとのカップリング反応を行う第2のステップと、
を備える方法ということができる。
非特許文献3には、カルボン酸とクロロギ酸イソプロピルを第1のマイクロミキサーで混合し、混合酸無水物を短時間で合成し、続いて、合成した混合酸無水物がラセミ化しないよう、すぐさま混合酸無水物を含む溶液とアミンおよび触媒(塩基)を第二のマイクロミキサーで混合しアミド化を行うことが記載されている。
非特許文献3で開示される混合酸無水物法は、
カルボン酸とクロロギ酸エステルとを反応させて混合酸無水物を得る第1のステップと、
前記混合酸無水物に塩基を添加してアシルピリジニウム種を得る第2のステップと、
前記アシルピリジニウム種とアミンとのカップリング反応を行い、アミドを得る第3のステップと、
を備える方法ということができる。
(1)側鎖の2箇所のアミノ基又はイミノ基が保護基で保護されたアルギニン、アルギニン誘導体又はアルギニン類縁体と、ハロゲン化ギ酸エステルとを反応させた後に、アミンと反応させることを含む、アミドの製造方法。
(2)側鎖の2箇所のアミノ基又はイミノ基が保護基で保護されたアルギニン、アルギニン誘導体又はアルギニン類縁体と、ハロゲン化ギ酸エステルとを反応させた後に、塩基と反応させ、アミンと反応させることを含む、前記(1)に記載のアミドの製造方法。
(3)側鎖の2箇所のアミノ基又はイミノ基が保護基で保護されたアルギニン、アルギニン誘導体又はアルギニン類縁体及びハロゲン化ギ酸エステルを混合して得られた混合物を反応させた生成物と、アミンとを混合させることを含む、アミドの製造方法。
(4)側鎖の2箇所のアミノ基又はイミノ基が保護基で保護されたアルギニン、アルギニン誘導体又はアルギニン類縁体及びハロゲン化ギ酸エステルを混合して得られた混合物を反応させた生成物と、塩基と、アミンとを混合させることを含む、前記(3)に記載のアミドの製造方法。
(5)前記塩基が、ピリジン、ピリジン誘導体、イミダゾール、イミダゾール誘導体及び1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンからなる群から選択されるいずれか一種以上である、前記(2)又は(4)に記載のアミドの製造方法。
(6)前記塩基が、4−モルホリノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ピロリジノピリジン、ピリジン、4−メトキシピリジン、イミダゾール、N−メチルイミダゾール及び1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンからなる群より選択されるいずれか一種以上である前記(2)又は(4)に記載のアミドの製造方法。
(7)2箇所の前記保護基が、カルバメート系保護基又はスルホンアミド系保護基である、前記(1)〜(6)のいずれか一つに記載のアミドの製造方法。
(8)前記ハロゲン化ギ酸エステルが、クロロギ酸イソプロピル、クロロギ酸イソブチル、ブロモギ酸イソプロピル及びブロモギ酸イソブチルからなる群から選択されるいずれか一種以上である、前記(1)〜(7)のいずれか一つに記載のアミドの製造方法。
(9)前記アミンが、アミノ酸又はアミノ酸誘導体である、前記(1)〜(8)のいずれか一つに記載のアミドの製造方法。
(10)前記アミンの求核性が、タンパク質を構成し遺伝情報としてコードされる20種のアミノ酸からバリン及びイソロイシンを除いた18種のアミノ酸の求核性よりも低い、前記(1)〜(9)のいずれか一つに記載のアミドの製造方法。
(11)前記アミンが、バリン、イソロイシン若しくはN−アルキル化されたアミノ酸、又はそれらの誘導体である、前記(9)又は(10)に記載のアミドの製造方法。
(12)前記アミンと反応させることを、流通系反応装置で行う、前記(1)〜(11)のいずれか一つに記載のアミドの製造方法。
(13)さらに、側鎖の2箇所のアミノ基又はイミノ基が保護基で保護されたアルギニン、アルギニン誘導体又はアルギニン類縁体と、ハロゲン化ギ酸エステルとを反応させることを、流通系反応装置で行う、前記(12)に記載のアミドの製造方法。
〔第1実施形態〕
実施形態のアミドの製造方法は、側鎖の2箇所のアミノ基又はイミノ基が保護基で保護されたアルギニン、アルギニン誘導体又はアルギニン類縁体(本明細書において、以下、「アルギニン類」ということがある。)と、ハロゲン化ギ酸エステルとを反応させた後に、塩基と反応させ、アミンと反応させることを含むものである。
実施形態のアミドの製造方法は、アルギニン類及びハロゲン化ギ酸エステルを混合して得られた混合物を反応させた生成物と、塩基と、アミンとを混合させることを含む方法であってもよい。ここで、アルギニン類及びハロゲン化ギ酸エステルを混合して得られた混合物を反応させた生成物は、混合酸無水物を含むことができる。
なお、当該塩基は、カチオン性活性種を生成させるものであってよく、塩基(ただし、当該アミンを除く)であってよい。
なお、ここでいう混合とは、反応系に原料等の物質を添加する動作を指すものであり、反応系内でこれらが混合されたときには、原料等が添加前とは別の物質に変化していてもよい。
実施形態のアミドの製造方法では、側鎖の2箇所のアミノ基又はイミノ基が保護基で保護されたアルギニン類をアミド結合形成におけるカルボン酸として用いる。当該製造方法は、以下の工程1〜3を含んでいてもよい。
工程1:側鎖の2箇所のアミノ基又はイミノ基が保護基で保護されたアルギニン類と、ハロゲン化ギ酸エステルとを反応させて、混合酸無水物を得る工程。
工程2:前記工程1で得られた前記混合酸無水物と、塩基と、を反応させてカチオン性活性種を得る工程。
工程3:前記工程2で得られた前記カチオン性活性種と、アミンと、を反応させてアミドを製造する工程。
以下、上記の各工程について説明する。なお、本発明に係るアミドの製造方法の反応は、下記の各工程に例示される反応に限定されるものではない。
工程1は、側鎖の2箇所のアミノ基又はイミノ基が保護基で保護されたアルギニン類と、ハロゲン化ギ酸エステルとを反応させて、混合酸無水物を得る工程である。
アルギニンと実質的に同等の性質を有する場合の一例として、アルギニンを基質とする酵素に取り込まれ得る、又はアルギニンと結合する分子と結合し得る場合が挙げられる。
アルギニン誘導体の一例として、官能基が保護基で保護された、保護アミノ酸が挙げられる。保護基は、反応性の官能基を不活性化する作用を有する。保護基を脱保護して、保護された官能基を保護される前の状態に戻すことも可能である。ここで官能基が保護されたとは、前記官能基を構成する原子が、保護基で置換されていることをいう。保護基で保護される部位としては、上記で例示した側鎖の他に、アミノ基及び/又はカルボキシル基が挙げられる。当該工程1においては、カルボキシル基以外の反応性の官能基の反応を防止するよう、アミノ基及び側鎖の官能基が保護されていることが好ましい。
カルバメート系の保護基としては、2−ベンジルオキシカルボニル基(−Z又は−Cbzと略されることがある。)、tert−ブトキシカルボニル基(−Bocと略されることがある。)、アリルオキシカルボニル基(−Allocと略されることがある。)、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基(−Trocと略されることがある。)、2−(トリメチルシリル)エトキシカルボニル基(−Teocと略されることがある。)、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基(−Fmocと略されることがある。)、p−ニトロベンジルオキシカルボニル基(−Z(NO2)と略されることがある。)、p−ビフェニルイソプロピルオキシカルボニル基(−Bpocと略されることがある。)等が挙げられる。
スルホンアミド系の保護基としては、p−トルエンスルホニル基(−Ts又は−Tosと略されることがある。)や、2−ニトロベンゼンスルホニル基(−Nsと略されることがある。)、2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル(−Pbfと略されることがある。)、2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−スルホニル(−Pmcと略されることがある。)、1,2−ジメチルインドール−3−スルホニル(−MISと略されることがある。)等が挙げられる。
前記脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜20であってもよく、1〜15であってもよい。
前記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよい。環状である場合、前記アルキル基は、単環状又は多環状のいずれでもよい。前記アルキル基は、炭素数が1〜20であってもよく、1〜10であってもよく、1〜5であってもよい。
工程2は、前記工程1で得られた前記混合酸無水物と、塩基と、を反応させてカチオン性活性種を得る工程である。
実施形態に係るアミドの製造方法の工程2は、下記一般式(2)で表される混合酸無水物と、Bで表される塩基と、を反応させて下記一般式(4)で表されるカチオン性活性種を得るものである。なお、当該反応においては、カチオン性活性種のカウンターアニオンとして、下記一般式(5)で表される化合物が生成される。
工程3は、前記工程2で得られた前記カチオン性活性種と、アミンと、を反応させてアミドを製造する工程である。
実施形態に係るアミドの製造方法の工程3は、下記一般式(4)で表されるカチオン性活性種と、下記一般式(6)で表されるアミンと、を反応させて下記一般式(7)で表されるアミドを得るものである。
なお、上記工程2及び工程3において、式(5)に代えてアルコキシド(O−―R1)及びCO2が生成してもよい。
前記アミノ酸は、前記アミノ酸はα−アミノ酸が好ましい。また、通常、生体内でのペプチド又はタンパク質を構成するアミノ酸がL型であることから、前記アミノ酸はL型であることが好ましい。前記α−アミノ酸は、下記一般式(6−1)で表される化合物であってよい。
例えば、前記式(1−1)中のR0は、前記アミノ酸がアラニンの場合には「−CH3」であり、グリシンの場合には「−H」であり、バリンの場合には「−CH(CH3)2」であり、イソロイシンの場合には「−CH(CH3)CH2CH3」である。他のアミノ酸についても同様である。
前記式(6)がアミノ酸である場合、−R3と−R4は、例えば、−Hと−CH(R0)COOHであってよい。
アミノ酸と実質的に同等の性質を有する場合の一例として、アミノ酸を基質とする酵素に取り込まれ得る、又はアミノ酸と結合する分子と結合し得る場合が挙げられる。
したがって、実施形態のアミドの製造方法は、求核性の低いアミンとの反応に好適である。求核性の低いアミンとは、具体的には、タンパク質を構成し遺伝情報としてコードされる20種のアミノ酸からバリン及びイソロイシンを除いた18種のアミノ酸の求核性よりも低いアミンであってもよく、より具体的には、バリン、イソロイシン若しくはN−アルキル化されたアミノ酸、又はそれらの誘導体を例示できる。N−アルキル化されたアミノ酸とは、α炭素に結合したアミノ基の1又は2つの水素原子がアルキル基に置換されているものであってよく、1つの水素原子がメチル基に置換されたN−メチルアミノ酸が好ましい。これらの求核性の低いアミンは、従来、酸無水物法で合成に用いることが困難であった。しかし、実施形態のアミドの製造方法によれば、従来、酸無水物法で合成に用いることの困難であった求核性の低いアミンであっても使用することができ、係る点においても実施形態のアミドの製造方法は画期的である。
カルボン酸とアミンとの、反応系内のモル当量比(カルボン酸:アミン)は、10:1〜1/10:1であってよく、5:1〜1/5:1であってよく、3:1〜1/3:1であってよい。実施形態のアミドの製造方法によれば、カルボン酸に対して、等当量に近い比較的少量のアミンを反応させた場合であっても、高効率でアミドを製造可能である。
実施形態のアミドの製造方法は、側鎖の2箇所のアミノ基又はイミノ基が保護基で保護されたアルギニン類と、ハロゲン化ギ酸エステルとを反応させた後に、アミンと反応させることを含むものである。実施形態のアミドの製造方法は、アルギニン類及びハロゲン化ギ酸エステルを混合して得られた混合物を反応させた生成物と、アミンとを混合させることを含む方法であってもよい。
当該製造方法は、以下の工程1及び工程3’を含んでいてもよい。
工程1:側鎖の2箇所のアミノ基又はイミノ基が保護基で保護されたアルギニン類と、ハロゲン化ギ酸エステルとを反応させて、混合酸無水物を得る工程。
工程3’:前記工程1で得られた前記混合酸無水物と、アミンと、を反応させてアミドを製造する工程。
以下、上記の各工程について説明する。
第1実施形態と共通する点については以下では説明を省略する。
第2実施形態における工程1は、前記第1実施形態における工程1と共通であるため、説明を省略する。
工程3’は、前記工程1で得られた前記混合酸無水物と、アミンと、を反応させてアミドを製造する工程である。
実施形態に係るアミドの製造方法の工程3’は、下記一般式(2)で表される混合酸無水物と、下記一般式(6)で表されるアミンと、を反応させて下記一般式(7)で表されるアミドを得るものである。
実施形態のアミドの製造方法は、前記アミンが、アミノ酸又はアミノ酸誘導体である場合、ペプチド又はタンパク質を合成できる。ペプチド又はタンパク質の製造方法は、アミドの製造方法に包含される。
上記工程3で得られたアミドを、工程1におけるカルボン酸として用い、工程1〜3の後に、さらに工程1〜3を繰り返すことで、ポリペプチド鎖を伸長させることができる。
即ち、前記カルボン酸としてはポリペプチドも含まれ、実施形態に係るアルギニン類(カルボン酸)として、ポリペプチドの構成単位としてC末端に位置するアルギニン類(カルボン酸)も含まれる。このように、実施形態のアミドの製造方法は、ペプチド又はタンパク質の製造方法として好適である。
実施形態のアミドの製造方法は、流通系反応装置を使用して実施することができる。流通系反応装置は、実施形態のアミドの製造方法における反応に用いられる原料又は中間体を含む流体を輸送する流路と、該流体を混合するための混合機と、を備えるものを例示できる。
前記第1実施形態を例とすると、流通系反応装置の使用について、例えば、少なくとも前記工程3における、アミンとの反応を流通系反応装置で行うのであってもよく、前記工程2及び工程3における、塩基と反応させ、アミンと反応させる反応を流通系反応装置で行うのであってもよく、前記工程1〜3における、側鎖の2箇所のアミノ基又はイミノ基が保護基で保護されたアルギニン類と、ハロゲン化ギ酸エステルとを反応させた後に、塩基と反応させ、アミンと反応させる反応を流通系反応装置で行うのであってもよい。
前記第2実施形態を例とすると、少なくとも前記工程3’における、アミンとの反応を流通系反応装置で行うのであってもよく、前記工程1及び3’における、側鎖の2箇所のアミノ基又はイミノ基が保護基で保護されたアルギニン類と、ハロゲン化ギ酸エステルとを反応させた後に、アミンと反応させる反応を流通系反応装置で行うのであってもよい。
なお、実施形態のアミドの製造方法は、流通系反応装置を使用して実施するものに限定されない。例えば、容積が小さく高速な攪拌速度が得られるバッチ容器を用いてもよい。バッチ容器の混合部の体積は、1〜100mLであってもよく、5〜50mLであってもよい。
図1は、流通系反応装置1の概略的な構成を示す模式図である。流通系反応装置1は、第1の液を収容するタンク11と、第2の液を収容するタンク12と、第3の液を収容するタンク13とを備える。
一例として、第1の液はアルギニン類を含み、第2の液はハロゲン化ギ酸エステルを含み、第3の液は塩基及びアミンを含むことができる。一例として、第1の液はアルギニン類及びハロゲン化ギ酸エステルを活性化する試薬を含み、第2の液はハロゲン化ギ酸エステルを含み、第3の液は塩基及びアミンを含むことができる。より具体的な一例としては、図1に示すように、第1の液は、側鎖の2箇所のアミノ基又はイミノ基が保護基で保護されたアルギニン(カルボン酸)、N−メチルモルホリン及びDIEAを含み、第2の液はクロロギ酸イソプロピルを含み、第3の液は4−モルホリノピリジン及びアミンを含む。
なお、第2実施形態のアミドの製造方法の場合の例としては、第3の液はアミンを含むことができる。
前記第1実施形態を例とすると、流通系反応装置の使用について、例えば、少なくとも第1の液と第2の液との混合物と、第3の液との混合を流通系反応装置で行うのであってもよく、更には、第1の液と第2の液との混合を流通系反応装置で行うのであってもよい。
上記の流路の内径とは、流路の長さ方向と直角に交わる方向での流路断面における、流路内部分(流体が通る部分)の直径とすることができる。流路内部分の形状が真円形でない場合には、上記の流路の内径とは、上記流路内部分の形状を面積基準で真円換算したときの直径とすることができる。
タンク11,12,13,14、混合機31,32及び流路f1,f2,f3,f4,f5は、一例として、プラスチックやエラストマー等の樹脂や、ガラス材、金属、セラミックなどで形成されている。
実施形態に係る流通系反応装置1によれば、流路を通じて液を連続的に流通させることで化合物の衝突の機会が向上し、より高効率に反応を進めることができ、副反応の抑制も容易となる。例えば、工程1で生じた混合酸無水物を、すぐさま4−モルホリノピリジン(塩基)と反応させることが可能となるので、混合酸無水物が活性化状態でいる時間を短くでき、異性化等の副反応が生じる確率を低減できる。
しかし、上記実施形態の第3の液として示したように、4−モルホリノピリジン(塩基)とアミンとは、あらかじめ同じ液中に存在させることが好ましい。即ち、工程2及び工程3は同時に行ってもよく、これにより、工程2で生じた反応性の高いカチオン性活性種を、すぐさま目的のアミンと反応させることが容易となり、カチオン性活性種が活性化状態でいる時間を短くでき、望まない副反応物の生成を効果的に抑制できる。
カルボン酸として用いたアミノ酸には、アミノ基がFmoc基によって保護され、側鎖の2ヶ所がCbz基で保護されたアルギニンであるFmoc−Arg(Cbz)2−OH(市販品)を用いた。アミンとして用いたアミノ酸には、カルボキシル基がメチル基で保護され、かつアミノ基がメチル化されたフェニルアラニンであるH−MePhe−OMe(市販品)を用いた。
カルボン酸として用いたアミノ酸と、アミンとして用いたアミノ酸とのカップリング反応を行った。カップリング反応は、PTFE製チューブ(内径0.8mm, 外径1.59mm)とT字型ミキサーで構成された流通系反応装置を用いた。反応前の溶液は3つに分けて調整した。第1の溶液は、カルボン酸として用いたFmoc−Arg(Cbz)2−OHと、N−メチルモルホリン(NMM)と、DIEAとを1,4−dioxaneに溶解して得た。第2の溶液は、クロロギ酸イソプロピルを1,4−dioxaneに溶解して得た。第3の溶液は、アミンとして用いたH−MePhe−Omeと、4−モルホリノピリジンとを1,4−dioxaneに溶解して得た。フロー反応系中でのそれぞれのモル当量比はH−MePhe−OMeが1.0に対して、4−モルホリノピリジンが0.010、その他Fmoc−Arg(Cbz)2−OH、N−メチルモルホリン、DIEA、及びクロロギ酸イソプロピルは1.0とした。
目的物は、カラムクロマトグラフィーを用いて単離し、400MHzのH1−NMRにて同定した。
サンプルの調整は以下のように行った。得られたジペプチドの保護基を外した後、ペプチド/アミノ酸誘導体を重水素塩酸中で加水分解し、メチルアルコール中の重水素化物で試料をエステル化し、試薬を蒸発させた後、残留物をトリフルオロ酢酸無水物またはペンタフルオロプロピオン酸無水物を用いてアシル化した。
得られたジペプチドのNMRデータを以下に示す。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, major rotamer): δ 9.45 (brs, 1H), 9.24 (brs, 1H), 7.36-7.07 (m, 15H), 5.21-5.11 (m, 6H), 4.45-4.41 (m, 1H), 3.98-3.96 (m, 2H), 3.63 (s, 3H), 3.37-3.32 (m, 1H), 2.99-2.93 (m, 1H), 2.79 (s, 3H), 1.69-1.60 (m, 2H), 1.45-1.39 (m, 10H), 1.12-1.07 (m, 1H).
カルボン酸として用いたアミノ酸には、アミノ基がBoc基によって保護され、アルギニン側鎖がNO2基で保護されたアルギニンであるBoc−Arg(NO2)−OHを用いた。アミンとして用いたアミノ酸には、カルボキシル基がメチル基で保護され、かつアミノ基がメチル化されたフェニルアラニンであるH−MePhe−OMeを用いた。
カルボン酸として用いたアミノ酸と、アミンとして用いたアミノ酸とのカップリング反応を行った。カップリング反応は、PTFE製チューブ(内径0.8mm,外径1.59mm)とT字型ミキサーで構成された流通系反応装置を用いた。反応前の溶液は3つに分けて調整した。第1の溶液は、カルボン酸として用いたBoc−Arg(NO2)−OHと、DIEAとをDMFに溶解して得た。第2の溶液は、トリホスゲンをMeCNに溶解して得た。第3の溶液は、H−MePhe−OMeをMeCNに溶解して得た。流通系反応装置中でのそれぞれのモル濃度の比はH−MePhe−OMeが1.0に対して、トリホスゲンが0.40、DIEAが3.0、カルボン酸は2.5とした。
流通系反応装置中でカップリングを行うために、初めに、第1の溶液と第2の溶液をT字型ミキサーにて混合し、流通系反応装置中で1秒間反応させることで酸無水物を得た。
その後すぐさま酸無水物を含む反応溶液と第3の溶液とを新たなT字型ミキサーを用いて混合し、流通系反応装置中で10秒、試験管に分取後約90分間反応させた。これらの反応は全て20℃で実施し、それぞれの反応前の溶液がミキサーへ到達する前に熱交換を行うための時間として20秒を設定した。各種溶液はシリンジポンプを用いて流出し、各ポンプの流量はそれぞれ、第1の溶液が2.0mL/min、第2の溶液が1.2mL/min、第3の溶液が2.0mL/minとした。
目的物の単離は、反応溶液を酸および塩基で処理を行った後、Biotage製のオートカラムを用いて単離し、400MHzのH1−NMRにて同定した。
2つのメジャーな化合物が単離でき、1つは目的物であるジペプチド(Boc−Arg(NO2)−MePhe−OMe)であった。カップリング収率は39%であり、そのうちArg部位が異性化した割合をキラルカラム(HPLC)で分離したところ、14.1%が異性化していた。2つ目のメジャーな化合物は、δ−ラクタムであり酸無水物の状態から、一次反応によって得られる副生成物であった。トリホスゲンがすべて消費されたと仮定し、酸無水物の生成量を基準とし、δ−ラクタムが生成した割合を求めると46%であった。
結果、カップリングを行うためにカルボン酸を活性化し酸無水物を得たが、カップリングと副反応が競争的に進行した。それにより、約50%の酸無水物が副反応に消費され、結果として、カップリング効率は50%以下となることが確認された。
なお、実施例1では混合酸無水物法によりアミドを合成し、比較例1では対称酸無水物法によりアミドを合成したという違いがあるが、混合酸無水物法で生成するアシルピリジニウム種は対称酸無水物法で生成する対称酸無水物よりも活性が高いため、実施例1と同じく混合酸無水物法を採用した場合であっても、カルボン酸としてBoc−Arg(NO2)−OHを用いた場合には、当然に、多くの副生成物が生じるものと考えられる。
カルボン酸として用いたアミノ酸には、アミノ基がBoc基によって保護され、アルギニン側鎖の2箇所がCbz基で保護されたアルギニンであるBoc−Arg(Cbz)2−OHを用いた。アミンとして用いるアミノ酸には、カルボキシル基がメチル基で保護され、かつアミノ基がメチル化されたフェニルアラニンであるH−MePhe−OMeを用いた。
カルボン酸として用いたアミノ酸と、アミンとして用いたアミノ酸とのカップリング反応を行った。カップリング反応は、PTFE製チューブ(内径0.8mm, 外径1.59mm)とT字型ミキサーで構成された流通系反応装置を用いた。反応前の溶液は3つに分けて調整した。第1の溶液は、カルボン酸として用いたBoc−Arg(Cbz)2−OHと、DIEAとをDMFに溶解して得た。第2の溶液には、トリホスゲンをMeCNに溶解して得た。第3の溶液は、アミンとして用いたH−MePhe−OMeをMeCNに溶解して得た。流通系反応装置中でのそれぞれのモル当量比は、H−MePhe−OMeが1.0に対してトリホスゲンが0.40、DIEAが3.0、カルボン酸として用いたBoc−Arg(Cbz)2−OHは2.5とした。
反応溶液をTLCで展開し分析した結果、原料とは異なるスポットが現れ、生成物を1点確認した。しかしながら反応溶液に対して水を添加すると生成物は分解し原料のスポットが濃くなることを確認した。
結果、生成物は対称酸無水物である可能性が高く、Argの側鎖の2ヶ所に保護基を導入しそれらが対称酸無水物を生成したことから、アミンとのカップリング反応およびδ−ラクタム生成反応における反応点周りが嵩高くなったことにより、通常は不安定な中間体である対称酸無水物の状態で反応が停止したと考えられる。
したがって、比較例2の方法では、アルギニン側鎖への2箇所の保護基の導入によって、副生成物であるδ-ラクタムの生成反応を抑制できたが、カップリング反応は進まず、アミドは製造されなかった。
Claims (13)
- 側鎖の2箇所のアミノ基又はイミノ基が保護基で保護されたアルギニン、アルギニン誘導体又はアルギニン類縁体と、ハロゲン化ギ酸エステルとを反応させた後に、アミンと反応させることを含む、アミドの製造方法。
- 側鎖の2箇所のアミノ基又はイミノ基が保護基で保護されたアルギニン、アルギニン誘導体又はアルギニン類縁体と、ハロゲン化ギ酸エステルとを反応させた後に、塩基と反応させ、アミンと反応させることを含む、請求項1に記載のアミドの製造方法。
- 側鎖の2箇所のアミノ基又はイミノ基が保護基で保護されたアルギニン、アルギニン誘導体又はアルギニン類縁体及びハロゲン化ギ酸エステルを混合して得られた混合物を反応させた生成物と、アミンとを混合させることを含む、アミドの製造方法。
- 側鎖の2箇所のアミノ基又はイミノ基が保護基で保護されたアルギニン、アルギニン誘導体又はアルギニン類縁体及びハロゲン化ギ酸エステルを混合して得られた混合物を反応させた生成物と、塩基と、アミンとを混合させることを含む、請求項3に記載のアミドの製造方法。
- 前記塩基が、ピリジン、ピリジン誘導体、イミダゾール、イミダゾール誘導体及び1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンからなる群から選択されるいずれか一種以上である、請求項2又は4に記載のアミドの製造方法。
- 前記塩基が、4−モルホリノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ピロリジノピリジン、ピリジン、4−メトキシピリジン、イミダゾール、N−メチルイミダゾール及び1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンからなる群より選択されるいずれか一種以上である請求項2又は4に記載のアミドの製造方法。
- 2箇所の前記保護基が、カルバメート系保護基又はスルホンアミド系保護基である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のアミドの製造方法。
- 前記ハロゲン化ギ酸エステルが、クロロギ酸イソプロピル、クロロギ酸イソブチル、ブロモギ酸イソプロピル及びブロモギ酸イソブチルからなる群から選択されるいずれか一種以上である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のアミドの製造方法。
- 前記アミンが、アミノ酸又はアミノ酸誘導体である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のアミドの製造方法。
- 前記アミンの求核性が、タンパク質を構成し遺伝情報としてコードされる20種のアミノ酸からバリン及びイソロイシンを除いた18種のアミノ酸の求核性よりも低い、請求項1〜9のいずれか一項に記載のアミドの製造方法。
- 前記アミンが、バリン、イソロイシン若しくはN−アルキル化されたアミノ酸、又はそれらの誘導体である、請求項9又は10に記載のアミドの製造方法。
- 前記アミンと反応させることを、流通系反応装置で行う、請求項1〜11のいずれか一項に記載のアミドの製造方法。
- さらに、側鎖の2箇所のアミノ基又はイミノ基が保護基で保護されたアルギニン、アルギニン誘導体又はアルギニン類縁体と、ハロゲン化ギ酸エステルとを反応させることを、流通系反応装置で行う、請求項12に記載のアミドの製造方法。
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