JPWO2019239880A1 - アミドの製造方法 - Google Patents

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Abstract

側鎖の2箇所のアミノ基又はイミノ基が保護基で保護されたアルギニン、アルギニン誘導体又はアルギニン類縁体と、ハロゲン化ギ酸エステルとを反応させた後に、アミンと反応させることを含む、アミドの製造方法。

Description

本発明は、アミドの製造方法に関する。
本願は、2018年6月15日に日本に出願された特願2018−114782に基づく優先権を主張し、その内容をここに援用する。
ペプチド合成では、アミノ酸のカルボキシル基を活性化させて、アミノ酸のアミノ基と反応させ、カップリング反応を起こしてアミド結合を形成させ、これを繰り返すことでアミノ酸を逐次伸張させることが行われている。カルボキシル基を活性化させる方法としてはいくつかの方法が知られている。活性化度の弱い縮合剤を使って、異性化や副生成物の生成を抑制しつつペプチドを合成する手法や、活性化剤を使い短時間でペプチドを合成する方法がある。
高活性な活性化剤を使って前記カルボキシル基を活性化させる方法として、酸塩化物法や酸無水物法がある。これら酸塩化物法や、酸無水物法は、活性化度の弱い縮合剤を使った活性法と比較して、活性化剤の構造が簡単であるため、単価が安く、更には活性化剤由来の副生成物の生成が少ない等の利点がある。
酸無水物法は、対称酸無水物法と混合酸無水物法に分けられる。
例えば非特許文献1〜2では、カルボン酸の活性種として対称酸無水物を用いたアミドの合成法が開示されている。
非特許文献1〜2で開示される対称酸無水物法は、
カルボン酸同士の縮合反応による対称酸無水物の生成の第1のステップと、
前記対称酸無水物とアミンとのカップリング反応を行う第2のステップと、
を備える方法ということができる。
また、例えば非特許文献3では、カルボン酸の活性種として混合酸無水物を用いたアミドの合成法が開示されている。
非特許文献3には、カルボン酸とクロロギ酸イソプロピルを第1のマイクロミキサーで混合し、混合酸無水物を短時間で合成し、続いて、合成した混合酸無水物がラセミ化しないよう、すぐさま混合酸無水物を含む溶液とアミンおよび触媒(塩基)を第二のマイクロミキサーで混合しアミド化を行うことが記載されている。
非特許文献3で開示される混合酸無水物法は、
カルボン酸とクロロギ酸エステルとを反応させて混合酸無水物を得る第1のステップと、
前記混合酸無水物に塩基を添加してアシルピリジニウム種を得る第2のステップと、
前記アシルピリジニウム種とアミンとのカップリング反応を行い、アミドを得る第3のステップと、
を備える方法ということができる。
"Efficient Amide Bond Formation through a Rapid and StrongActivation of Carboxylic Acids in a Microflow Reactor", Fuse, S. Mifune, Y. Takahashi, T., Angew Chem. Int. Ed. 53, 851-855 (2014). "Total synthesis of feglymycin based on a linear/convergent hybrid approach using micro-flow amide bond formation", Fuse, S. Mifune, Y. Nakamura, H. Tanaka, H. Nat.Commun. 7, 13491 (2016). 小竹佑磨、中村浩之、布施新一郎、「マイクロフロー法を駆使するN−メチル化ペプチドの効率的合成」、2017年3月16日、日本化学会第97春季年会、3F4−14
対称酸無水物法では、アミンとしてアルギニン又はアルギニン誘導体を用いた場合、反応がほとんど進行しないという問題があった。更には、反応が進行した場合でも、当該アミノ酸の異性化やδ−ラクタムの生成など、高確率で副反応が生じてしまうという問題があった。
混合酸無水物法では、アミンとしてアルギニン又はアルギニン誘導体を用いた場合であっても反応が進行し得る。しかし、当該アミノ酸の異性化やδ−ラクタムの生成など、高確率で副反応が生じてしまうという問題は依然として解消されない。
本発明は、上記のような問題点を解消するためになされたものであり、カルボキシル基を活性化させて、アミノ基と反応させ、カップリング反応を起こしてアミド結合を形成させる反応において、反応効率が良好であり、副反応が生じ難い、アミドの製造方法の提供を目的とする。
すなわち、本発明は以下の態様を有する。
(1)側鎖の2箇所のアミノ基又はイミノ基が保護基で保護されたアルギニン、アルギニン誘導体又はアルギニン類縁体と、ハロゲン化ギ酸エステルとを反応させた後に、アミンと反応させることを含む、アミドの製造方法。
(2)側鎖の2箇所のアミノ基又はイミノ基が保護基で保護されたアルギニン、アルギニン誘導体又はアルギニン類縁体と、ハロゲン化ギ酸エステルとを反応させた後に、塩基と反応させ、アミンと反応させることを含む、前記(1)に記載のアミドの製造方法。
(3)側鎖の2箇所のアミノ基又はイミノ基が保護基で保護されたアルギニン、アルギニン誘導体又はアルギニン類縁体及びハロゲン化ギ酸エステルを混合して得られた混合物を反応させた生成物と、アミンとを混合させることを含む、アミドの製造方法。
(4)側鎖の2箇所のアミノ基又はイミノ基が保護基で保護されたアルギニン、アルギニン誘導体又はアルギニン類縁体及びハロゲン化ギ酸エステルを混合して得られた混合物を反応させた生成物と、塩基と、アミンとを混合させることを含む、前記(3)に記載のアミドの製造方法。
(5)前記塩基が、ピリジン、ピリジン誘導体、イミダゾール、イミダゾール誘導体及び1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンからなる群から選択されるいずれか一種以上である、前記(2)又は(4)に記載のアミドの製造方法。
(6)前記塩基が、4−モルホリノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ピロリジノピリジン、ピリジン、4−メトキシピリジン、イミダゾール、N−メチルイミダゾール及び1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンからなる群より選択されるいずれか一種以上である前記(2)又は(4)に記載のアミドの製造方法。
(7)2箇所の前記保護基が、カルバメート系保護基又はスルホンアミド系保護基である、前記(1)〜(6)のいずれか一つに記載のアミドの製造方法。
(8)前記ハロゲン化ギ酸エステルが、クロロギ酸イソプロピル、クロロギ酸イソブチル、ブロモギ酸イソプロピル及びブロモギ酸イソブチルからなる群から選択されるいずれか一種以上である、前記(1)〜(7)のいずれか一つに記載のアミドの製造方法。
(9)前記アミンが、アミノ酸又はアミノ酸誘導体である、前記(1)〜(8)のいずれか一つに記載のアミドの製造方法。
(10)前記アミンの求核性が、タンパク質を構成し遺伝情報としてコードされる20種のアミノ酸からバリン及びイソロイシンを除いた18種のアミノ酸の求核性よりも低い、前記(1)〜(9)のいずれか一つに記載のアミドの製造方法。
(11)前記アミンが、バリン、イソロイシン若しくはN−アルキル化されたアミノ酸、又はそれらの誘導体である、前記(9)又は(10)に記載のアミドの製造方法。
(12)前記アミンと反応させることを、流通系反応装置で行う、前記(1)〜(11)のいずれか一つに記載のアミドの製造方法。
(13)さらに、側鎖の2箇所のアミノ基又はイミノ基が保護基で保護されたアルギニン、アルギニン誘導体又はアルギニン類縁体と、ハロゲン化ギ酸エステルとを反応させることを、流通系反応装置で行う、前記(12)に記載のアミドの製造方法。
本発明によれば、反応効率が良好であり、副反応が生じ難い、アミドの製造方法を提供できる。
流通系反応装置1の概略的な構成を示す模式図である。
以下、本発明のアミドの製造方法の実施形態を説明する。
≪アミドの製造方法≫
〔第1実施形態〕
実施形態のアミドの製造方法は、側鎖の2箇所のアミノ基又はイミノ基が保護基で保護されたアルギニン、アルギニン誘導体又はアルギニン類縁体(本明細書において、以下、「アルギニン類」ということがある。)と、ハロゲン化ギ酸エステルとを反応させた後に、塩基と反応させ、アミンと反応させることを含むものである。
実施形態のアミドの製造方法は、アルギニン類及びハロゲン化ギ酸エステルを混合して得られた混合物を反応させた生成物と、塩基と、アミンとを混合させることを含む方法であってもよい。ここで、アルギニン類及びハロゲン化ギ酸エステルを混合して得られた混合物を反応させた生成物は、混合酸無水物を含むことができる。
なお、当該塩基は、カチオン性活性種を生成させるものであってよく、塩基(ただし、当該アミンを除く)であってよい。
なお、ここでいう混合とは、反応系に原料等の物質を添加する動作を指すものであり、反応系内でこれらが混合されたときには、原料等が添加前とは別の物質に変化していてもよい。
実施形態のアミドの製造方法では、側鎖の2箇所のアミノ基又はイミノ基が保護基で保護されたアルギニン類をアミド結合形成におけるカルボン酸として用いる。当該製造方法は、以下の工程1〜3を含んでいてもよい。
工程1:側鎖の2箇所のアミノ基又はイミノ基が保護基で保護されたアルギニン類と、ハロゲン化ギ酸エステルとを反応させて、混合酸無水物を得る工程。
工程2:前記工程1で得られた前記混合酸無水物と、塩基と、を反応させてカチオン性活性種を得る工程。
工程3:前記工程2で得られた前記カチオン性活性種と、アミンと、を反応させてアミドを製造する工程。
以下、上記の各工程について説明する。なお、本発明に係るアミドの製造方法の反応は、下記の各工程に例示される反応に限定されるものではない。
<工程1>
工程1は、側鎖の2箇所のアミノ基又はイミノ基が保護基で保護されたアルギニン類と、ハロゲン化ギ酸エステルとを反応させて、混合酸無水物を得る工程である。
前記アルギニン類は、α−アミノ酸の骨格を有することが好ましい。また、通常、生体内でのペプチド又はタンパク質を構成するアミノ酸がL型であることから、前記アルギニン類は、L型であることが好ましい。前記アルギニン類は、下記一般式(1)で表される化合物であってよい。
Figure 2019239880
(式中、R0aはアルギニン類の側鎖を表わす。)
アルギニン類は、脱プロトン化されてカルボキシラートイオンとなってもよく、下記一般式(1i)で表すことができる。
Figure 2019239880
(式中、R0aはアルギニン類の側鎖を表わす。)
前記アルギニン類の脱プロトン化は、例えば、反応系内のN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)等の求核性の低い塩基の存在下に、前記アルギニン類を置くことで達成できる。塩基の存在下とは、例えば、塩基を添加した溶媒中のことを意味する。当該塩基の種類は、反応系内で前記アルギニン類の脱プロトン化を可能とするものであれば、特に限定されない。
前記式(1−1)中のR0aは、前記アルギニン類がアルギニンの場合には下記式(R0a―a)で表される基である。
Figure 2019239880
実施形態に係るアルギニン類は、側鎖の2箇所のアミノ基又はイミノ基が保護基で保護されたものに限定される。ここで官能基が保護されたとは、前記官能基を構成する原子が、保護基で置換されていることをいう。2箇所のアミノ基又はイミノ基が保護基で保護されたアルギニン類の側鎖として、下記一般式(R0a―b)で表される基が挙げられる。
Figure 2019239880
(式中、Z、Z及びZは、それぞれ独立に水素原子又は保護基を表し、Z、Z及びZのうちの2つ以上が保護基であることとする。)
上記アミノ基又はイミノ基の2箇所が保護されることで、異性化及びδ−ラクタムの生成を含む副反応が、酸無水物を経由する活性化条件において劇的に抑制される。
一般式(R0a―b)で表される基における保護基は、反応性の官能基を不活性化する作用を有するものであれば、特に制限されない。一般式(R0a―b)で表される基における保護基としては、後述の保護基として例示するものが挙げられ、後述のアミノ基の保護基として例示するものであってよく、カルバメート系保護基又はスルホンアミド系保護基であることが好ましい。2つ以上あるZ、Z及びZの保護基は、全てが同一であってもよく、一部が互いに異なっていてもよい。副反応の抑制の観点から、Z、Z及びZの保護基のうち、少なくともZ及びZの2箇所が、保護基で保護されていることがより好ましい。
前記アルギニン類における、アルギニン誘導体又はアルギニン類縁体とは、アルギニンと実質的に同等の性質を有する化合物であってよく、天然に存在する天然型のものであってもよく、天然型とは異なる修飾、付加、官能基の置換等の改変等を有するものであってもよい。アルギニン誘導体又はアルギニン類縁体は、置換基を有してもよい前記一般式(R0a―b)で表される基を側鎖として有することが好ましい。置換基を有してもよいとは、前記一般式(R0a―b)で表される基の1個以上の水素原子が他の基に置換されたものを例示できる。
アルギニンと実質的に同等の性質を有する場合の一例として、アルギニンを基質とする酵素に取り込まれ得る、又はアルギニンと結合する分子と結合し得る場合が挙げられる。
アルギニン誘導体の一例として、官能基が保護基で保護された、保護アミノ酸が挙げられる。保護基は、反応性の官能基を不活性化する作用を有する。保護基を脱保護して、保護された官能基を保護される前の状態に戻すことも可能である。ここで官能基が保護されたとは、前記官能基を構成する原子が、保護基で置換されていることをいう。保護基で保護される部位としては、上記で例示した側鎖の他に、アミノ基及び/又はカルボキシル基が挙げられる。当該工程1においては、カルボキシル基以外の反応性の官能基の反応を防止するよう、アミノ基及び側鎖の官能基が保護されていることが好ましい。
保護基の種類としては、特に制限されず、保護される官能基の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、アミノ基の保護基としては、カルバメート系やスルホンアミド系、アシル系、アルキル系等の保護基が挙げられ、これらに制限されない。
カルバメート系の保護基としては、2−ベンジルオキシカルボニル基(−Z又は−Cbzと略されることがある。)、tert−ブトキシカルボニル基(−Bocと略されることがある。)、アリルオキシカルボニル基(−Allocと略されることがある。)、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基(−Trocと略されることがある。)、2−(トリメチルシリル)エトキシカルボニル基(−Teocと略されることがある。)、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基(−Fmocと略されることがある。)、p−ニトロベンジルオキシカルボニル基(−Z(NO)と略されることがある。)、p−ビフェニルイソプロピルオキシカルボニル基(−Bpocと略されることがある。)等が挙げられる。
スルホンアミド系の保護基としては、p−トルエンスルホニル基(−Ts又は−Tosと略されることがある。)や、2−ニトロベンゼンスルホニル基(−Nsと略されることがある。)、2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル(−Pbfと略されることがある。)、2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−スルホニル(−Pmcと略されることがある。)、1,2−ジメチルインドール−3−スルホニル(−MISと略されることがある。)等が挙げられる。
実施形態に係るアミドの製造方法の工程1は、下記一般式(1)で表されるアルギニン類と、下記一般式(1)’で表されるハロゲン化ギ酸エステルとを反応させて、下記一般式(2)で表される混合酸無水物を得るものである。
Figure 2019239880
(式中、R0aはアルギニン類の側鎖を表し、Rは水素原子又は炭化水素基を表し、Yはハロゲン原子を表す。)
の炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基であってもよく芳香族炭化水素基(アリール基)であってもよい。前記脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基(アルキル基)であってもよく、不飽和脂肪族炭化水素基であってもよく、アルキル基が好ましい。
前記脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜20であってもよく、1〜15であってもよい。
前記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよい。環状である場合、前記アルキル基は、単環状又は多環状のいずれでもよい。前記アルキル基は、炭素数が1〜20であってもよく、1〜10であってもよく、1〜5であってもよい。
直鎖状又は分岐鎖状の前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、n−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、2,2−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2,2,3−トリメチルブチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が例示できる。
Yの前記ハロゲン原子は、F,Cl,Br,I等の周期表において第17族に属する元素であり、Cl又はBrが好ましい。
副反応をより効果的に抑制するという観点からは、前記一般式(1)’で表されるハロゲン化ギ酸エステルは、Yの前記ハロゲン原子がCl又はBrであり、Rの炭化水素基が分岐鎖状の炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、クロロギ酸イソプロピル、クロロギ酸イソブチル、ブロモギ酸イソプロピル及びブロモギ酸イソブチルからなる群から選択されるいずれか一種以上であることがより好ましい。
なお工程1の反応は、ハロゲン化ギ酸エステルと、ハロゲン化ギ酸エステルを活性化するN−メチルモルホリン等の試薬(塩基)とをともに用い、これらを反応させてハロゲン化ギ酸エステルを活性化させ、反応をより進めやすくすることもできる。ここでは、活性化されたハロゲン化ギ酸エステルも、ハロゲン化ギ酸エステルの概念に包含されるものとする。ハロゲン化ギ酸エステルを活性化する試薬としては、第三級アミン、4−メチルモルホリン、ピリジン、ピリジン誘導体、イミダゾール、イミダゾール誘導体及び1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン等を例示できる。ピリジン誘導体及びイミダゾール誘導体としては、後述の工程2で例示するものが挙げられる。第三級アミンについてはアミンのN原子に結合する基の少なくとも一つがメチル基であることが好ましい。アミンのN原子に結合する基の二つがメチル基であるものはより好ましい。第三級アミンのN原子に結合する基の少なくとも一つをメチル基とすることで、N原子周囲の立体障害が小さくなり、前記ハロゲン化ギ酸エステルとの反応効率を向上させることができる。
<工程2>
工程2は、前記工程1で得られた前記混合酸無水物と、塩基と、を反応させてカチオン性活性種を得る工程である。
実施形態に係るアミドの製造方法の工程2は、下記一般式(2)で表される混合酸無水物と、Bで表される塩基と、を反応させて下記一般式(4)で表されるカチオン性活性種を得るものである。なお、当該反応においては、カチオン性活性種のカウンターアニオンとして、下記一般式(5)で表される化合物が生成される。
Figure 2019239880
(式(4)及び式(5)中、R0a及びRは、上記式(2)におけるR0a及びRと同一の意味を表す。)
工程2における当該塩基は、前記酸無水物と反応してカチオン性活性種を生成させるものであり、求核性の高いものが好ましく、ピリジン、ピリジン誘導体、イミダゾール、イミダゾール誘導体及び1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンからなる群より選択されるいずれか一種以上であることがより好ましい。
ピリジン誘導体は、ピリジンの一個以上の水素原子が、他の基で置換されたものであってよく、塩基の性質を有しているものであれば特に限定されないが、ピリジン及びピリジン誘導体は、下記一般式(3−1)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2019239880
(式中、Xは水素原子、又は下記式(a)〜(c)で示される群から選択されるいずれかの基を表す。)
Figure 2019239880
(式中、R31、R32、R33及びR34は、それぞれ独立にアルキル基を表す。R33及びR34は相互に結合して環を形成していてもよく、前記アルキル基中の、R33又はR34に直接結合していない1個のメチレン基は、酸素原子で置換されていてもよい。)
31、R32、R33及びR34における前記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよい。環状である場合、前記アルキル基は、単環状又は多環状のいずれでもよい。前記アルキル基は、炭素数が1〜20であってもよく、1〜15であってもよく、1〜10であってもよい。
直鎖状又は分岐鎖状の前記アルキル基としては、上記Rで例示したものが挙げられる。
一般式(3−1)で表される化合物は、下記一般式(3−1−1)で表される化合物であることが好ましい。Xが水素原子以外の前記式(a)〜(c)で示される群から選択されるいずれかの基である場合、係る位置に結合していることでXは電子供与性基として効果的に作用し、ピリジン環のN原子の求核性がより良好なものとなる傾向がある。
Figure 2019239880
(式(3−1−1)中、Xは、上記式(3−1)におけるXと同一の意味を表す。)
一般式(3−1)で表される化合物は、Xが前記式(c)で示される基であり、R33及びR34は相互に結合して環を形成しており、前記アルキル基中の、R33又はR34に直接結合していない1個のメチレン基が酸素原子で置換されている場合として、下記式(3−1−2)で表される4−モルホリノピリジンを含む。
Figure 2019239880
前記ピリジン及びピリジン誘導体としては、ピリジン、上記の4−モルホリノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ピロリジノピリジン及び4−メトキシピリジンを好ましいものとして例示できる。なかでも、4−モルホリノピリジン及びN,N−ジメチル−4−アミノピリジンは、これらを用いることで、単位時間当たりでのアミドの合成収率が高く、かつ、且つ副反応物の生成を著しく低減させることが可能であるという点で、特に好ましい。
上記で例示したピリジン及びピリジン誘導体を用いた場合のカチオン性活性種とは、アシルピリジニウムカチオン(アシルピリジニウム種)である。アシルピリジニウム種は、求電子性が高いという特徴を持つ。そのため、後述する求核性の低いアミンとの反応であっても、非常に早い速度で反応を進めることができ、且つ副反応物の生成を著しく低減させることが可能である。
イミダゾール誘導体は、イミダゾールの一個以上の水素原子が、他の基で置換されたものであってよく、塩基の性質を有しているものであれば特に限定されないが、イミダゾール及びイミダゾール誘導体は、下記一般式(3−2)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2019239880
(式中、R35及びR36は、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基である。)
35及びR36におけるアルキル基としては、R31、R32、R33及びR34における前記アルキル基で例示したものが挙げられる。
前記イミダゾール及びイミダゾール誘導体としては、イミダゾール及びN−メチルイミダゾールを好ましいものとして例示できる。
また、ピリジン、ピリジン誘導体、イミダゾール、イミダゾール誘導体の他に、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)を好ましいものとして例示できる。
<工程3>
工程3は、前記工程2で得られた前記カチオン性活性種と、アミンと、を反応させてアミドを製造する工程である。
実施形態に係るアミドの製造方法の工程3は、下記一般式(4)で表されるカチオン性活性種と、下記一般式(6)で表されるアミンと、を反応させて下記一般式(7)で表されるアミドを得るものである。
Figure 2019239880
(式(4)及び式(7)中のR0aは、上記式(2)におけるR0aと同一の意味を表す。式(6)及び式(7)中のR及びRは、それぞれ独立に水素原子または一価の有機基である。式(5)中のRは、上記式(2)におけるRと同一の意味を表す。)
なお、上記工程2及び工程3において、式(5)に代えてアルコキシド(O―R)及びCOが生成してもよい。
前記アミンは、アミノ酸又はアミノ酸誘導体であることが好ましい。
前記アミノ酸は、前記アミノ酸はα−アミノ酸が好ましい。また、通常、生体内でのペプチド又はタンパク質を構成するアミノ酸がL型であることから、前記アミノ酸はL型であることが好ましい。前記α−アミノ酸は、下記一般式(6−1)で表される化合物であってよい。
Figure 2019239880
(式中、Rはアミノ酸の側鎖を表わす。)
前記アミノ酸は、生体内でペプチド又はタンパク質を構成し遺伝情報としてコードされている20種類のアミノ酸であってよい。これらのアミノ酸としては、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンが挙げられる。また、前記アミノ酸は、シスチン等の遺伝情報としてコードされていない種類のアミノ酸であってもよい。
例えば、前記式(1−1)中のRは、前記アミノ酸がアラニンの場合には「−CH」であり、グリシンの場合には「−H」であり、バリンの場合には「−CH(CH」であり、イソロイシンの場合には「−CH(CH)CHCH」である。他のアミノ酸についても同様である。
前記式(6)がアミノ酸である場合、−Rと−Rは、例えば、−Hと−CH(R)COOHであってよい。
前記アミノ酸はα−アミノ酸でなくともよい。例えば、β−アラニン等のβ−アミノ酸であってもよい。
前記アミンは、アミノ酸誘導体であってもよい。アミノ酸誘導体とはアミノ酸と実質的に同等の性質を有する化合物であってよく、天然に存在する天然型のものであってもよく、天然型とは異なる修飾、付加、官能基の置換等の改変等を有するものであってもよい。
アミノ酸と実質的に同等の性質を有する場合の一例として、アミノ酸を基質とする酵素に取り込まれ得る、又はアミノ酸と結合する分子と結合し得る場合が挙げられる。
前記アミンがアルギニン又はアルギニン誘導体である場合には、上記でアミド結合形成におけるカルボン酸として示した、側鎖の2箇所のアミノ基又はイミノ基が保護基で保護されたアルギニン類であることが好ましい。
アミノ酸誘導体としては、アミノ酸において、1個以上の水素原子又は基が、それ以外の基(置換基)で置換されたものが挙げられる。アミノ酸誘導体の一例として、官能基が保護基で保護された、保護アミノ酸が挙げられる。保護基で保護される部位としては、アミノ基、カルボキシル基、及び側鎖からなる群から選択されるいずれか一種以上の部位が挙げられる。側鎖に含まれる官能基は1箇所又は2箇所以上が保護基で保護されていてもよい。当該工程3においては、アミノ基以外の反応性の官能基の反応を防止するよう、カルボキシル基及び/又は側鎖の官能基が保護されていることが好ましい。
保護基の種類としては、特に制限されず、保護される官能基の種類に応じて適宜選択することができる。カルボキシル基の保護は、中和して塩の形にするだけでよい場合もあるが、通常はエステルの形にして保護する。エステルとしては、メチル、エチル等のアルキルエステルのほか、ベンジルエステル(Bn又はBZlと略されることがある。)等が挙げられ、これらに制限されない。
実施形態のアミドの製造方法は、工程3で前記カチオン性活性種とアミンとを反応させる。ここで実施形態のアミドの製造方法は、前記カチオン性活性種の求電子性が高いため、反応速度がアミンの求核性に左右されないという利点を有する。
したがって、実施形態のアミドの製造方法は、求核性の低いアミンとの反応に好適である。求核性の低いアミンとは、具体的には、タンパク質を構成し遺伝情報としてコードされる20種のアミノ酸からバリン及びイソロイシンを除いた18種のアミノ酸の求核性よりも低いアミンであってもよく、より具体的には、バリン、イソロイシン若しくはN−アルキル化されたアミノ酸、又はそれらの誘導体を例示できる。N−アルキル化されたアミノ酸とは、α炭素に結合したアミノ基の1又は2つの水素原子がアルキル基に置換されているものであってよく、1つの水素原子がメチル基に置換されたN−メチルアミノ酸が好ましい。これらの求核性の低いアミンは、従来、酸無水物法で合成に用いることが困難であった。しかし、実施形態のアミドの製造方法によれば、従来、酸無水物法で合成に用いることの困難であった求核性の低いアミンであっても使用することができ、係る点においても実施形態のアミドの製造方法は画期的である。
ここでのアミンの求核性は、例えば、実施例1に示す条件下で混合酸無水物法を行い、実施例1で生成した混合酸無水物と、求核性を求めたいアミンとを反応させて、その反応効率の程度から求めることができる。
本実施形態において、工程1〜3の反応時の各化合物の使用量は、これらの化合物の種類を考慮し、目的とする反応に応じて適宜調節すればよい。
カルボン酸とアミンとの、反応系内のモル当量比(カルボン酸:アミン)は、10:1〜1/10:1であってよく、5:1〜1/5:1であってよく、3:1〜1/3:1であってよい。実施形態のアミドの製造方法によれば、カルボン酸に対して、等当量に近い比較的少量のアミンを反応させた場合であっても、高効率でアミドを製造可能である。
本実施形態において、各工程の反応時間は、反応温度等、その他の条件に応じて適宜調節すればよい。一例として、工程1の反応時間は0.5秒〜30分であってもよく、1秒〜5分であってもよく、3秒〜1分であってもよい。工程2及び工程3を同時に行う場合、工程2及び工程3の反応時間は、1秒〜60分であってもよく、5秒〜30分であってもよく、1分〜10分であってもよい。
本実施形態において、工程1〜3の反応時の温度(反応温度)は、工程1〜3で使用する化合物の種類に応じて適宜調節すればよい。一例として、反応温度は0〜100℃の範囲であることが好ましく、20〜50℃の範囲であることがより好ましい。
本実施形態において、工程1〜工程3の反応は、溶媒の共存下で行ってもよい。前記溶媒は特に限定されないが、化合物の反応を妨げないものが好ましく、反応で用いる原料の溶解性が高いものが好ましい。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン等が挙げられる。
本実施形態において、工程1〜工程3の反応は、アミドの生成を達成可能な範囲において、上記に例示した化合物に該当しないその他の化合物を、反応系内にさらに含んでもよい。
本実施形態において、工程1〜工程3の反応は、それぞれを別々に行ってもよく、同時に行ってもよい。副反応物の生成をより効果的に抑制するという観点から、工程2及び工程3を同時に行うことが好ましい。
以上で説明した実施形態のアミドの製造方法において、生成物の存在及び構造は、NMR、IR、マス等の解析により得られたスペクトルの測定や、元素分析等によって確認可能である。また、必要に応じて、生成物を精製してもよく、精製方法としては、蒸留、抽出、再結晶、カラムクロマトグラフィー等によって生成可能である。
実施形態のアミドの製造方法によれば、非常に高効率にアミドを製造可能である。工程1で得られる酸無水物であっても活性種として求核種(アミン)を受け入れる状態ではある。本方法では、さらに工程2でカチオン性活性種を形成させ、これに対して初めてアミンを反応させる。ここで生成されるカチオン性活性種は、酸無水物と比較して著しく活性が高いため、非常に速い速度で反応を進行させることができる。従来法では、カチオン性活性種の活性が高いために、側鎖を保護基1つのみで保護した場合には、おそらく側鎖を保護する作用が不十分であり、副反応の生成を抑制できなかったものと考えられる。対して、実施形態のアミドの製造方法によれば、カルボン酸として用いるアルギニンの側鎖の2箇所のアミノ基又はイミノ基が保護基で保護されたことで、従来法と比較して副生成物の生成をも劇的に抑制可能である。さらには、従来法では反応の困難であった反応性の低いアミンとであっても、容易に反応を進行させることが可能である。
〔第2実施形態〕
実施形態のアミドの製造方法は、側鎖の2箇所のアミノ基又はイミノ基が保護基で保護されたアルギニン類と、ハロゲン化ギ酸エステルとを反応させた後に、アミンと反応させることを含むものである。実施形態のアミドの製造方法は、アルギニン類及びハロゲン化ギ酸エステルを混合して得られた混合物を反応させた生成物と、アミンとを混合させることを含む方法であってもよい。
当該製造方法は、以下の工程1及び工程3’を含んでいてもよい。
工程1:側鎖の2箇所のアミノ基又はイミノ基が保護基で保護されたアルギニン類と、ハロゲン化ギ酸エステルとを反応させて、混合酸無水物を得る工程。
工程3’:前記工程1で得られた前記混合酸無水物と、アミンと、を反応させてアミドを製造する工程。
以下、上記の各工程について説明する。
第1実施形態と共通する点については以下では説明を省略する。
<工程1>
第2実施形態における工程1は、前記第1実施形態における工程1と共通であるため、説明を省略する。
<工程3’>
工程3’は、前記工程1で得られた前記混合酸無水物と、アミンと、を反応させてアミドを製造する工程である。
実施形態に係るアミドの製造方法の工程3’は、下記一般式(2)で表される混合酸無水物と、下記一般式(6)で表されるアミンと、を反応させて下記一般式(7)で表されるアミドを得るものである。
Figure 2019239880
(式中、R0aはアルギニン類の側鎖を表し、Rは炭化水素基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または一価の有機基を表す。)
第1実施形態のアミドの製造方法では、カチオン性活性種とアミンとを反応させてアミドを製造する。対して第2実施形態のアミドの製造方法では、混合酸無水物とアミンとを反応させてアミドを製造する。
第2実施形態のアミドの製造方法における反応条件等については、前記第1実施形態で説明した工程1〜工程3の反応を、工程1及び工程3’と読みかえることができる。
本実施形態において、工程1及び工程3’の反応は、それぞれを別々に行ってもよく、同時に行ってもよい。副反応物の生成をより効果的に抑制するという観点からは、工程1及び工程3’を同時に行うことが好ましい。
上記アミノ基又はイミノ基の2箇所が保護されることで、異性化及びδ−ラクタムの生成を含む副反応が、酸無水物を経由する活性化条件において劇的に抑制される。
本実施形態のアミドの製造方法によれば、副生成物の生成を劇的に抑制可能であり、高効率にアミドを製造可能である。前記第1実施形態のアミドの製造方法のほうが第2実施形態のアミドの製造方法よりも反応速度は速いと考えられるが、第2実施形態のアミドの製造方法では、副反応が効果的に抑制されているため、従来法(対称酸無水物法)と比較して格段に高効率にアミドを製造可能である。
≪ペプチドの製造方法≫
実施形態のアミドの製造方法は、前記アミンが、アミノ酸又はアミノ酸誘導体である場合、ペプチド又はタンパク質を合成できる。ペプチド又はタンパク質の製造方法は、アミドの製造方法に包含される。
上記工程3で得られたアミドを、工程1におけるカルボン酸として用い、工程1〜3の後に、さらに工程1〜3を繰り返すことで、ポリペプチド鎖を伸長させることができる。
即ち、前記カルボン酸としてはポリペプチドも含まれ、実施形態に係るアルギニン類(カルボン酸)として、ポリペプチドの構成単位としてC末端に位置するアルギニン類(カルボン酸)も含まれる。このように、実施形態のアミドの製造方法は、ペプチド又はタンパク質の製造方法として好適である。
≪流通系反応装置≫
実施形態のアミドの製造方法は、流通系反応装置を使用して実施することができる。流通系反応装置は、実施形態のアミドの製造方法における反応に用いられる原料又は中間体を含む流体を輸送する流路と、該流体を混合するための混合機と、を備えるものを例示できる。
前記第1実施形態を例とすると、流通系反応装置の使用について、例えば、少なくとも前記工程3における、アミンとの反応を流通系反応装置で行うのであってもよく、前記工程2及び工程3における、塩基と反応させ、アミンと反応させる反応を流通系反応装置で行うのであってもよく、前記工程1〜3における、側鎖の2箇所のアミノ基又はイミノ基が保護基で保護されたアルギニン類と、ハロゲン化ギ酸エステルとを反応させた後に、塩基と反応させ、アミンと反応させる反応を流通系反応装置で行うのであってもよい。
前記第2実施形態を例とすると、少なくとも前記工程3’における、アミンとの反応を流通系反応装置で行うのであってもよく、前記工程1及び3’における、側鎖の2箇所のアミノ基又はイミノ基が保護基で保護されたアルギニン類と、ハロゲン化ギ酸エステルとを反応させた後に、アミンと反応させる反応を流通系反応装置で行うのであってもよい。
なお、実施形態のアミドの製造方法は、流通系反応装置を使用して実施するものに限定されない。例えば、容積が小さく高速な攪拌速度が得られるバッチ容器を用いてもよい。バッチ容器の混合部の体積は、1〜100mLであってもよく、5〜50mLであってもよい。
以下、実施形態に係る流通系反応装置の形態と、それを用いた第1実施形態のアミドの製造方法を、図1を参照して説明する。
図1は、流通系反応装置1の概略的な構成を示す模式図である。流通系反応装置1は、第1の液を収容するタンク11と、第2の液を収容するタンク12と、第3の液を収容するタンク13とを備える。
一例として、第1の液はアルギニン類を含み、第2の液はハロゲン化ギ酸エステルを含み、第3の液は塩基及びアミンを含むことができる。一例として、第1の液はアルギニン類及びハロゲン化ギ酸エステルを活性化する試薬を含み、第2の液はハロゲン化ギ酸エステルを含み、第3の液は塩基及びアミンを含むことができる。より具体的な一例としては、図1に示すように、第1の液は、側鎖の2箇所のアミノ基又はイミノ基が保護基で保護されたアルギニン(カルボン酸)、N−メチルモルホリン及びDIEAを含み、第2の液はクロロギ酸イソプロピルを含み、第3の液は4−モルホリノピリジン及びアミンを含む。
なお、第2実施形態のアミドの製造方法の場合の例としては、第3の液はアミンを含むことができる。
前記第1実施形態を例とすると、流通系反応装置の使用について、例えば、少なくとも第1の液と第2の液との混合物と、第3の液との混合を流通系反応装置で行うのであってもよく、更には、第1の液と第2の液との混合を流通系反応装置で行うのであってもよい。
流通系反応装置1は流体を輸送するための流路f1,f2,f3,f4,f5を備える。流路の内径は、一例として0.1〜10mmであってもよく、0.3〜8mmであってもよい。流通系反応装置1は流体を混合するための混合機31,32を備える。混合機内部の流路の内径は、一例として0.1〜10mmであってもよく、0.3〜8mmであってもよい。混合機としては、駆動部を有さないスタティックミキサーが挙げられる。駆動部とは、動力が与えられて動く部分のことを指す。
上記の流路の内径とは、流路の長さ方向と直角に交わる方向での流路断面における、流路内部分(流体が通る部分)の直径とすることができる。流路内部分の形状が真円形でない場合には、上記の流路の内径とは、上記流路内部分の形状を面積基準で真円換算したときの直径とすることができる。
タンク11,12,13,14、混合機31,32及び流路f1,f2,f3,f4,f5は、一例として、プラスチックやエラストマー等の樹脂や、ガラス材、金属、セラミックなどで形成されている。
タンク11はポンプ21に接続し、ポンプ21の作動により、タンク11に収容された第1の液は、流路f1内を移動して混合機31に流入する。タンク12はポンプ22に接続し、ポンプ22の作動により、タンク12に収容された第2の液は、流路f2内を移動して混合機31に流入する。そして、第1の液及び第2の液は、混合機31により混合されて第1の混合液となり、流路f4へと送られる。この混合後の過程で、第1の液に含まれるカルボン酸と第2の液に含まれるクロロギ酸イソプロピルとで脱水縮合が生じ、混合酸無水物が得られる(アミドの製造方法の工程1)。得られた酸無水物を含む第1の混合液は、混合機32へと流入する。
一方、タンク13はポンプ23に接続し、ポンプ23の作動により、タンク13に収容された液は、流路f3内を移動して混合機32へと流入し、第1の混合液と混合されて第2の混合液となり、流路f5へと送られる。この混合後の過程で、工程1で得られた混合酸無水物と、第3の液に含まれる4−モルホリノピリジンとが反応してカチオン性活性種となり(アミドの製造方法の工程2)、続いて得られたカチオン性活性種と第3の液に含まれるアミンとが反応してアミドが得られる(アミドの製造方法の工程3)。製造されたアミドを含む第2の混合液は、タンク14に貯留される。
実施形態に係る流通系反応装置1によれば、反応溶液の体積あたりの熱交換を行う面積を大きくすることができる。加えて、流量や流路の長さによって反応時間を制御することができる。このため、反応溶液の厳密な制御を可能とし、結果、望まない副反応の進行を最小化でき、目的物の収率を向上させることができる。
前記工程2で得られるカチオン性活性種は、活性度が高いため反応性の低いアミンであっても反応させることができるという利点がある一方、反応のコントロールが重要となる。また、工程1で得られる混合酸無水物であっても十分に活性度が高いため、反応のコントロールが重要となる。
実施形態に係る流通系反応装置1によれば、流路を通じて液を連続的に流通させることで化合物の衝突の機会が向上し、より高効率に反応を進めることができ、副反応の抑制も容易となる。例えば、工程1で生じた混合酸無水物を、すぐさま4−モルホリノピリジン(塩基)と反応させることが可能となるので、混合酸無水物が活性化状態でいる時間を短くでき、異性化等の副反応が生じる確率を低減できる。
なお、本実施形態に係る流通系反応装置では、混合機により液が混合される形態を例示したが、液の混合は流路同士が連通することのみで達成され得るため、実施形態の流通系反応装置は、必ずしも混合機を備えていなくともよい。
ここで示したように、実施形態のアミドの製造方法は、液相法により実施できる。例えば、現在主流となっているペプチド(アミド)の製造方法は固相法であり、固相上でペプチドを合成していく。一方、液相法は、ラージスケールの合成に適しており、分子の自由度が高まるために反応性も良好である。液相法は、反応性の低いアミンとの反応にも効果を発揮する。
なお、本実施形態に係る流通系反応装置では、反応させる5種類の化合物を3つのタンクに分けて収容したが、例えば、それぞれを計5つの別々のタンクに収容しておき、順次混合させてもよい。
しかし、上記実施形態の第3の液として示したように、4−モルホリノピリジン(塩基)とアミンとは、あらかじめ同じ液中に存在させることが好ましい。即ち、工程2及び工程3は同時に行ってもよく、これにより、工程2で生じた反応性の高いカチオン性活性種を、すぐさま目的のアミンと反応させることが容易となり、カチオン性活性種が活性化状態でいる時間を短くでき、望まない副反応物の生成を効果的に抑制できる。
なお、流通系反応装置を用いて第2実施形態のアミドの製造方法を同様に実施することもできる。その場合には、ハロゲン化ギ酸エステルとアミンとは、あらかじめ同じ液中に存在させることが好ましい。即ち、工程1及び工程3’は同時に行ってもよく、これにより、工程1で生じた混合酸無水物を、すぐさま目的のアミンと反応させることが容易となり、混合酸無水物が活性化状態でいる時間を短くでき、望まない副反応物の生成を効果的に抑制できる。
以上、この発明の実施形態について化学式及び図面を参照して詳述してきたが、実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は各実施形態によって限定されることはなく、請求項(クレーム)の範囲によってのみ限定される。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1> 混合酸無水物法・Fmoc−Arg(Cbz)−OHの使用〔原料〕
カルボン酸として用いたアミノ酸には、アミノ基がFmoc基によって保護され、側鎖の2ヶ所がCbz基で保護されたアルギニンであるFmoc−Arg(Cbz)−OH(市販品)を用いた。アミンとして用いたアミノ酸には、カルボキシル基がメチル基で保護され、かつアミノ基がメチル化されたフェニルアラニンであるH−MePhe−OMe(市販品)を用いた。
〔酸アミドのフロー合成〕
カルボン酸として用いたアミノ酸と、アミンとして用いたアミノ酸とのカップリング反応を行った。カップリング反応は、PTFE製チューブ(内径0.8mm, 外径1.59mm)とT字型ミキサーで構成された流通系反応装置を用いた。反応前の溶液は3つに分けて調整した。第1の溶液は、カルボン酸として用いたFmoc−Arg(Cbz)−OHと、N−メチルモルホリン(NMM)と、DIEAとを1,4−dioxaneに溶解して得た。第2の溶液は、クロロギ酸イソプロピルを1,4−dioxaneに溶解して得た。第3の溶液は、アミンとして用いたH−MePhe−Omeと、4−モルホリノピリジンとを1,4−dioxaneに溶解して得た。フロー反応系中でのそれぞれのモル当量比はH−MePhe−OMeが1.0に対して、4−モルホリノピリジンが0.010、その他Fmoc−Arg(Cbz)−OH、N−メチルモルホリン、DIEA、及びクロロギ酸イソプロピルは1.0とした。
フロー系中でカップリングを行うために、初めに、第1の溶液と第2の溶液をT字型ミキサーにて混合し、フロー系中で5秒間反応させることで混合酸無水物を得た。その後すぐさま混合酸無水物を含む反応溶液と第3の溶液とを新たなT字型ミキサーを用いて混合し、フロー系中で30秒、試験管に分取後約5分間反応させた。これらの反応は全て40℃で実施し、それぞれの反応前の溶液がミキサーへ到達する前に熱交換を行うための時間として20秒を設定した。各種溶液はシリンジポンプを用いて流出し、各ポンプの流量はそれぞれ、第1の溶液が1.2mL/min、第2の溶液が2.0mL/min、第3の溶液が2.0mL/minとした。
実施例1における、アミドの製造方法の工程1の反応を以下に示す。
Figure 2019239880
〔式中、Rはアルギニン側鎖(本実施例においては前記一般式(R0a―b)で表される基のうちZ及びZに対応する2箇所が保護基Cbzで保護されている)を表す。
実施例1における、アミドの製造方法の工程2の反応を以下に示す。
Figure 2019239880
〔式中、Rはアルギニン側鎖(本実施例においては前記一般式(R0a―b)で表される基のうちZ及びZに対応する2箇所が保護基Cbzで保護されている)を表す。
実施例1における、アミドの製造方法の工程3の反応を以下に示す。
Figure 2019239880
〔式中、Rはアルギニン側鎖(本実施例においては前記一般式(R0a―b)で表される基のうちZ及びZに対応する2箇所が保護基Cbzで保護されている)を表し、Rはフェニルアラニン側鎖を表す。〕
〔分析法〕
目的物は、カラムクロマトグラフィーを用いて単離し、400MHzのH−NMRにて同定した。
異性化率の分析はGC−MSを用いて行った。
サンプルの調整は以下のように行った。得られたジペプチドの保護基を外した後、ペプチド/アミノ酸誘導体を重水素塩酸中で加水分解し、メチルアルコール中の重水素化物で試料をエステル化し、試薬を蒸発させた後、残留物をトリフルオロ酢酸無水物またはペンタフルオロプロピオン酸無水物を用いてアシル化した。
目的物の収率は、単離精製した目的物の重量から算出した。即ち、アミンのモル当量比を1.0とし、単離されたジペプチドの重量から、アミンがカップリングした割合を算出した。
〔結果〕
得られたジペプチドのNMRデータを以下に示す。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, major rotamer): δ 9.45 (brs, 1H), 9.24 (brs, 1H), 7.36-7.07 (m, 15H), 5.21-5.11 (m, 6H), 4.45-4.41 (m, 1H), 3.98-3.96 (m, 2H), 3.63 (s, 3H), 3.37-3.32 (m, 1H), 2.99-2.93 (m, 1H), 2.79 (s, 3H), 1.69-1.60 (m, 2H), 1.45-1.39 (m, 10H), 1.12-1.07 (m, 1H).
反応後の生成物を分析した結果、目的物であるジペプチドは、カップリング収率が85%であり、そのうちArg部位が異性化した割合は0.5%であった。
実施例1の方法によれば、アミンに対するカルボン酸のモル当量比が1:1であるにもかかわらず、5分という短い時間で、80%以上と高いカップリング収率が得られた。また目的物に含まれるエピマーの生成率は1%以下であった。
<比較例1> 対称酸無水物法・Boc−Arg(NO)−OHの使用〔原料〕
カルボン酸として用いたアミノ酸には、アミノ基がBoc基によって保護され、アルギニン側鎖がNO基で保護されたアルギニンであるBoc−Arg(NO)−OHを用いた。アミンとして用いたアミノ酸には、カルボキシル基がメチル基で保護され、かつアミノ基がメチル化されたフェニルアラニンであるH−MePhe−OMeを用いた。
〔酸アミドのフロー合成〕
カルボン酸として用いたアミノ酸と、アミンとして用いたアミノ酸とのカップリング反応を行った。カップリング反応は、PTFE製チューブ(内径0.8mm,外径1.59mm)とT字型ミキサーで構成された流通系反応装置を用いた。反応前の溶液は3つに分けて調整した。第1の溶液は、カルボン酸として用いたBoc−Arg(NO)−OHと、DIEAとをDMFに溶解して得た。第2の溶液は、トリホスゲンをMeCNに溶解して得た。第3の溶液は、H−MePhe−OMeをMeCNに溶解して得た。流通系反応装置中でのそれぞれのモル濃度の比はH−MePhe−OMeが1.0に対して、トリホスゲンが0.40、DIEAが3.0、カルボン酸は2.5とした。
流通系反応装置中でカップリングを行うために、初めに、第1の溶液と第2の溶液をT字型ミキサーにて混合し、流通系反応装置中で1秒間反応させることで酸無水物を得た。
その後すぐさま酸無水物を含む反応溶液と第3の溶液とを新たなT字型ミキサーを用いて混合し、流通系反応装置中で10秒、試験管に分取後約90分間反応させた。これらの反応は全て20℃で実施し、それぞれの反応前の溶液がミキサーへ到達する前に熱交換を行うための時間として20秒を設定した。各種溶液はシリンジポンプを用いて流出し、各ポンプの流量はそれぞれ、第1の溶液が2.0mL/min、第2の溶液が1.2mL/min、第3の溶液が2.0mL/minとした。
〔分析法・結果〕
目的物の単離は、反応溶液を酸および塩基で処理を行った後、Biotage製のオートカラムを用いて単離し、400MHzのH−NMRにて同定した。
2つのメジャーな化合物が単離でき、1つは目的物であるジペプチド(Boc−Arg(NO)−MePhe−OMe)であった。カップリング収率は39%であり、そのうちArg部位が異性化した割合をキラルカラム(HPLC)で分離したところ、14.1%が異性化していた。2つ目のメジャーな化合物は、δ−ラクタムであり酸無水物の状態から、一次反応によって得られる副生成物であった。トリホスゲンがすべて消費されたと仮定し、酸無水物の生成量を基準とし、δ−ラクタムが生成した割合を求めると46%であった。
結果、カップリングを行うためにカルボン酸を活性化し酸無水物を得たが、カップリングと副反応が競争的に進行した。それにより、約50%の酸無水物が副反応に消費され、結果として、カップリング効率は50%以下となることが確認された。
なお、実施例1では混合酸無水物法によりアミドを合成し、比較例1では対称酸無水物法によりアミドを合成したという違いがあるが、混合酸無水物法で生成するアシルピリジニウム種は対称酸無水物法で生成する対称酸無水物よりも活性が高いため、実施例1と同じく混合酸無水物法を採用した場合であっても、カルボン酸としてBoc−Arg(NO)−OHを用いた場合には、当然に、多くの副生成物が生じるものと考えられる。
<比較例2> 対称酸無水物法・Boc−Arg(Cbz)−OHの使用〔原料〕
カルボン酸として用いたアミノ酸には、アミノ基がBoc基によって保護され、アルギニン側鎖の2箇所がCbz基で保護されたアルギニンであるBoc−Arg(Cbz)−OHを用いた。アミンとして用いるアミノ酸には、カルボキシル基がメチル基で保護され、かつアミノ基がメチル化されたフェニルアラニンであるH−MePhe−OMeを用いた。
〔酸アミドのフロー合成〕
カルボン酸として用いたアミノ酸と、アミンとして用いたアミノ酸とのカップリング反応を行った。カップリング反応は、PTFE製チューブ(内径0.8mm, 外径1.59mm)とT字型ミキサーで構成された流通系反応装置を用いた。反応前の溶液は3つに分けて調整した。第1の溶液は、カルボン酸として用いたBoc−Arg(Cbz)−OHと、DIEAとをDMFに溶解して得た。第2の溶液には、トリホスゲンをMeCNに溶解して得た。第3の溶液は、アミンとして用いたH−MePhe−OMeをMeCNに溶解して得た。流通系反応装置中でのそれぞれのモル当量比は、H−MePhe−OMeが1.0に対してトリホスゲンが0.40、DIEAが3.0、カルボン酸として用いたBoc−Arg(Cbz)−OHは2.5とした。
フロー系中でカップリングを行うために、初めに、第1の溶液と第2の溶液をT字型ミキサーにて混合し、流通系反応装置中で1秒間反応させることで酸無水物を得た。その後すぐさま酸無水物を含む反応溶液と第3の溶液とを新たなT字型ミキサーを用いて混合し、流通系反応装置中で10秒を0℃で実施し、試験管に分取後約40分間は室温(約24℃)にて反応させた。これらの反応は全てそれぞれの反応前の溶液がミキサーへ到達する前に熱交換を行うための時間として20秒を設定した。各種溶液はシリンジポンプを用いて流出し、各ポンプの流量はそれぞれ、第1の溶液2.0mL/min、第2の溶液1.2mL/min、第3の溶液2.0mL/minとした。
〔分析法・結果〕
反応溶液をTLCで展開し分析した結果、原料とは異なるスポットが現れ、生成物を1点確認した。しかしながら反応溶液に対して水を添加すると生成物は分解し原料のスポットが濃くなることを確認した。
結果、生成物は対称酸無水物である可能性が高く、Argの側鎖の2ヶ所に保護基を導入しそれらが対称酸無水物を生成したことから、アミンとのカップリング反応およびδ−ラクタム生成反応における反応点周りが嵩高くなったことにより、通常は不安定な中間体である対称酸無水物の状態で反応が停止したと考えられる。
したがって、比較例2の方法では、アルギニン側鎖への2箇所の保護基の導入によって、副生成物であるδ-ラクタムの生成反応を抑制できたが、カップリング反応は進まず、アミドは製造されなかった。
1…流通系反応装置、11,12,13,14…タンク、21,22,23…ポンプ、31,32…混合機、f1,f2,f3,f4,f5…流路

Claims (13)

  1. 側鎖の2箇所のアミノ基又はイミノ基が保護基で保護されたアルギニン、アルギニン誘導体又はアルギニン類縁体と、ハロゲン化ギ酸エステルとを反応させた後に、アミンと反応させることを含む、アミドの製造方法。
  2. 側鎖の2箇所のアミノ基又はイミノ基が保護基で保護されたアルギニン、アルギニン誘導体又はアルギニン類縁体と、ハロゲン化ギ酸エステルとを反応させた後に、塩基と反応させ、アミンと反応させることを含む、請求項1に記載のアミドの製造方法。
  3. 側鎖の2箇所のアミノ基又はイミノ基が保護基で保護されたアルギニン、アルギニン誘導体又はアルギニン類縁体及びハロゲン化ギ酸エステルを混合して得られた混合物を反応させた生成物と、アミンとを混合させることを含む、アミドの製造方法。
  4. 側鎖の2箇所のアミノ基又はイミノ基が保護基で保護されたアルギニン、アルギニン誘導体又はアルギニン類縁体及びハロゲン化ギ酸エステルを混合して得られた混合物を反応させた生成物と、塩基と、アミンとを混合させることを含む、請求項3に記載のアミドの製造方法。
  5. 前記塩基が、ピリジン、ピリジン誘導体、イミダゾール、イミダゾール誘導体及び1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンからなる群から選択されるいずれか一種以上である、請求項2又は4に記載のアミドの製造方法。
  6. 前記塩基が、4−モルホリノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ピロリジノピリジン、ピリジン、4−メトキシピリジン、イミダゾール、N−メチルイミダゾール及び1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンからなる群より選択されるいずれか一種以上である請求項2又は4に記載のアミドの製造方法。
  7. 2箇所の前記保護基が、カルバメート系保護基又はスルホンアミド系保護基である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のアミドの製造方法。
  8. 前記ハロゲン化ギ酸エステルが、クロロギ酸イソプロピル、クロロギ酸イソブチル、ブロモギ酸イソプロピル及びブロモギ酸イソブチルからなる群から選択されるいずれか一種以上である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のアミドの製造方法。
  9. 前記アミンが、アミノ酸又はアミノ酸誘導体である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のアミドの製造方法。
  10. 前記アミンの求核性が、タンパク質を構成し遺伝情報としてコードされる20種のアミノ酸からバリン及びイソロイシンを除いた18種のアミノ酸の求核性よりも低い、請求項1〜9のいずれか一項に記載のアミドの製造方法。
  11. 前記アミンが、バリン、イソロイシン若しくはN−アルキル化されたアミノ酸、又はそれらの誘導体である、請求項9又は10に記載のアミドの製造方法。
  12. 前記アミンと反応させることを、流通系反応装置で行う、請求項1〜11のいずれか一項に記載のアミドの製造方法。
  13. さらに、側鎖の2箇所のアミノ基又はイミノ基が保護基で保護されたアルギニン、アルギニン誘導体又はアルギニン類縁体と、ハロゲン化ギ酸エステルとを反応させることを、流通系反応装置で行う、請求項12に記載のアミドの製造方法。
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