JPWO2019168100A1 - 電機子の製造方法及び電機子 - Google Patents

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Abstract

電機子(1)の製造方法は、加熱により膨張する熱膨張性樹脂(Q)を用い、スロット収容部(31)とスロット(11)の内面との間に膨張前の熱膨張性樹脂(Q)が配置されるように、コイル(30)をコア(10)に対して配置するコイル配置工程と、コイル配置工程の前又は後に、加熱により溶融する熱溶融性樹脂(P)を用い、コイルエンド部(32)に接するように溶融前の熱溶融性樹脂(P)を配置する樹脂配置工程と、コイル配置工程及び樹脂配置工程の後に、熱膨張性樹脂(Q)及び熱溶融性樹脂(P)を加熱し、熱膨張性樹脂(Q)を膨張させた後に硬化させると共に熱溶融性樹脂(P)を溶融させた後に硬化させる加熱工程と、を備える。

Description

本発明は、スロットを有するコアと、スロットの内部に配置されるスロット収容部及びスロットの外部に配置されるコイルエンド部を有するコイルと、を備えた電機子の製造方法、及び、そのような電機子に関する。
特開2016−17079号公報(特許文献1)には、回転電機の製造方法に関して、熱硬化性樹脂組成物シートを用いてコイルを固定する技術が開示されている。具体的には、特許文献1には、熱硬化性樹脂組成物シートをコイルエンドに載置した状態で固定子の全体を加熱して、同シートを流動化させた後に硬化させることで、コイルを固定する技術が記載されている(段落0011,0012、図2等)。
特開2016−17079号公報
しかしながら、コイルエンドに載置された熱硬化性樹脂組成物シートが流動化した状態での、熱硬化性樹脂組成物のスロット内に対する浸透状態を制御するのは容易ではない。そのため、特許文献1に記載の技術では、コイルエンドを構成する導体同士(すなわち、コイルエンド部同士)を固定することはできても、スロット収容部をコアに対して固定するのは困難である。
そこで、比較的簡素な工程でスロット収容部のコアに対する固定とコイルエンドを構成するコイルエンド部同士の固定との双方を行うことが可能な技術の実現が望まれる。
上記に鑑みた、スロットを有するコアと、前記スロットの内部に配置されるスロット収容部及び前記スロットの外部に配置されるコイルエンド部を有するコイルと、を備えた電機子の製造方法の特徴構成は、加熱により膨張する熱膨張性樹脂を用い、前記スロット収容部と前記スロットの内面との間に膨張前の前記熱膨張性樹脂が配置されるように、前記コイルを前記コアに対して配置するコイル配置工程と、前記コイル配置工程の前又は後に、加熱により溶融する熱溶融性樹脂を用い、前記コイルエンド部に接するように溶融前の前記熱溶融性樹脂を配置する樹脂配置工程と、前記コイル配置工程及び前記樹脂配置工程の後に、前記熱膨張性樹脂及び前記熱溶融性樹脂を加熱し、前記熱膨張性樹脂を膨張させた後に硬化させると共に前記熱溶融性樹脂を溶融させた後に硬化させる加熱工程と、を備える点にある。
上記の特徴構成によれば、加熱工程を行って、スロット収容部とスロットの内面との間に配置されている膨張前の熱膨張性樹脂を膨張させた後に硬化させることで、スロット収容部を、膨張後(膨張後に硬化した状態)の熱膨張性樹脂によりスロットの内面に対して固定することができる。また、加熱工程を行って、コイルエンド部に接するように配置されている溶融前の熱溶融性樹脂を溶融させた後に硬化させることで、溶融状態の熱溶融性樹脂を、コイルエンドを構成するコイルエンド部同士の隙間に流入させて、コイルエンド部同士を溶融後(溶融後に硬化した状態)の熱溶融性樹脂により固定することができる。すなわち、加熱工程を行うことで、スロット収容部のコアに対する固定とコイルエンドを構成するコイルエンド部同士の固定との双方を行うことができる。
このように、上記の特徴構成によれば、比較的簡素な工程でスロット収容部のコアに対する固定とコイルエンドを構成するコイルエンド部同士の固定との双方を行うことが可能となる。
上記に鑑みた、スロットを有するコアと、前記スロットの内部に配置されるスロット収容部及び前記スロットの外部に配置されるコイルエンド部を有するコイルと、を備えた電機子の特徴構成は、前記スロット収容部と前記スロットの内面との間に、加熱により膨張する熱膨張性樹脂が、膨張後に硬化した状態で配置され、前記コイルエンド部同士の隙間に、加熱により溶融する熱溶融性樹脂が、溶融後に硬化した状態で配置されている点にある。
上記の特徴構成によれば、スロット収容部がコアに対して固定されているだけでなく、コイルエンドを構成するコイルエンド部同士も固定されているため、コイルエンドの振動を小さく抑えることが可能な電機子を実現することができる。
また、上記の特徴構成では、スロット収容部をコアに対して固定するための熱膨張性樹脂と、コイルエンド部同士を固定するための熱溶融性樹脂との双方を、硬化するまでの反応が加熱により進行する樹脂とすることができる。そのため、電機子の製造過程において、スロット収容部のコアに対する固定とコイルエンド部同士の固定との双方を、同じ種類の工程である加熱工程で行うことができる。すなわち、この電機子は、比較的簡素な工程で、スロット収容部のコアに対する固定とコイルエンドを構成するコイルエンド部同士の固定との双方を行うことが可能となっている。
電機子の製造方法及び電機子の更なる特徴と利点は、図面を参照して説明する実施形態についての以下の記載から明確となる。
電機子の一部の斜視図 電機子の一部の軸方向に直交する断面図 電機子の一部の軸方向視図 電機子の一部の斜視図 第1の実施形態に係る電機子の製造方法を示すフローチャート コイル配置工程を示すフローチャート 部分膨張工程の実行中におけるコアの一部の斜視図 部分膨張工程の実行中におけるコアの一部の軸方向に沿った断面図 部分膨張工程の実行後における絶縁シートの斜視図 コイル配置工程の実行後におけるコアの一部の軸方向に沿った断面図 コイル配置工程の実行後におけるコアの一部の軸方向に直交する断面図 第1樹脂配置工程の実行後における電機子の一部の軸方向視図 第1樹脂配置工程の実行後における電機子の一部の軸方向に沿った断面図 第1加熱工程の実行後におけるコアの一部の軸方向に直交する断面図 第1加熱工程の実行後におけるコアの一部の軸方向に沿った断面図 第1加熱工程の実行後における電機子の一部の軸方向視図 第1加熱工程の実行後における電機子の一部の軸方向に沿った断面図 第2樹脂配置工程の実行後における電機子の一部の軸方向に沿った断面図 第2加熱工程の実行後における電機子の一部の軸方向に沿った断面図 第2の実施形態に係る電機子の製造方法を示すフローチャート 第1樹脂配置工程及び第2樹脂配置工程の実行後における電機子の一部の軸方向に沿った断面図 加熱工程の実行後における電機子の一部の軸方向に沿った断面図 その他の実施形態に係る第1樹脂配置工程及び第2樹脂配置工程の実行後における電機子の軸方向に沿った断面図 その他の実施形態に係る加熱工程の実行後における電機子の軸方向に沿った断面図 その他の実施形態に係る樹脂配置工程の実行後における電機子の一部の径方向視図 その他の実施形態に係る加熱工程の実行後における電機子の一部の径方向視図
〔第1の実施形態〕
電機子の製造方法及び電機子の第1の実施形態について、図面(図1〜図19)を参照して説明する。本実施形態では、第1加熱工程S31が「加熱工程」に相当し、絶縁シート40が「シート部材」に相当する。なお、以下の説明において、絶縁シート40についての各方向は、絶縁シート40がコア10に対して配置された状態(コア10に装着された状態)での方向であり、コイル30についての各方向は、コイル30がコア10に対して配置された状態(コア10に巻装された状態)での方向である。
本明細書では、部材の形状に関して「ある方向に延びる」とは、当該方向を基準方向として、部材の延在方向が当該基準方向に平行な形状に限らず、部材の延在方向が当該基準方向に交差する方向であっても、その交差角度が所定範囲内(例えば、30度未満或いは45度未満)である形状も含む概念として用いている。また、本明細書では、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。また、本明細書では、寸法、配置方向、及び配置位置等に関する用語(例えば、「平行」等)は、誤差(製造上許容され得る程度の誤差)による差異を有する状態も含む概念として用いている。
図1及び図2に示すように、電機子1は、スロット11を有するコア10と、コア10に巻装されるコイル30と、コア10とコイル30とを電気的に絶縁する絶縁シート40と、を備えている。図1では、簡略化のため、コイル30について、スロット11の外側に突出する部分で切断した状態を示している。電機子1は、永久磁石や電磁石等を備えた界磁2(図2参照)を、電機子1に対して相対移動させるための移動磁界を発生するように構成される。具体的には、コイル30に交流電力を供給することで、スロット11の配列方向(言い換えれば、隣接する2つのスロット11の間に形成されるティース16の配列方向)に移動する移動磁界が電機子1により形成され、界磁2は、当該移動磁界の移動方向に電機子1に対して相対移動する。
図1及び図2に示すように、本実施形態では、電機子1は、回転電機用の電機子であり、コイル30に交流電力が供給された状態で、周方向Cに移動する移動磁界(すなわち、回転磁界)を形成する。具体的には、電機子1は、回転界磁型の回転電機用の電機子である。そのため、電機子1は、ケース等の非回転部材に固定されるステータであり、界磁2は、電機子1が形成する回転磁界によって回転するロータである。なお、電機子1を、固定界磁型(回転電機子型)の回転電機用の電機子とすることもできる。また、電機子1を、リニアモータ等に用いられる電機子、すなわち、直線状に移動する移動磁界を形成する電機子とすることもできる。
図1及び図2に示すように、本実施形態では、電機子1が用いられる回転電機は、ラジアルギャップ型の回転電機である。そのため、コア10は、軸方向Lの両端部に開口部(軸方向開口部12)を有するスロット11が周方向Cに複数配置された円筒状(全体として円筒状)に形成されている。本実施形態では、軸方向開口部12が「スロットの開口部」に相当する。また、本実施形態では、周方向Cが「並び方向」(コアにおける複数のスロットの並び方向)に相当する。スロット11は、軸方向Lに延びるように形成され、コア10を軸方向Lに貫通している。本実施形態では、スロット11は、軸方向Lに平行に延びるように形成されている。なお、電機子1を、アキシャルギャップ型の回転電機に用いられる電機子とすることもできる。この場合、スロット11は、径方向Rの両端部に開口部(径方向開口部)を有し、径方向開口部が「スロットの開口部」に相当する。
図1及び図2に示すように、スロット11は、径方向Rにおける界磁2が配置される側(以下、「界磁側」という。)の端部に開口部(径方向開口部14)を有している。本実施形態では、電機子1が用いられる回転電機は、インナロータ型の回転電機であり、径方向内側R1(径方向Rの内側)が界磁側であり、径方向外側R2(径方向Rの外側)が反界磁側(径方向Rにおける界磁側とは反対側)である。スロット11は、径方向Rに延びるように形成されている。本実施形態では、スロット11(具体的には、スロット11における周方向Cの中心部)は、径方向Rに平行に延びるように形成されている。なお、電機子1を、アウタロータ型の回転電機に用いられる電機子とすることもできる。この場合、径方向外側R2が界磁側となり、径方向内側R1が反界磁側となる。
コア10は、円筒状(軸方向L視で円環状)に形成されたヨーク部17と、ヨーク部17から界磁側(本実施形態では、径方向内側R1)に延びる複数のティース16と、を備えている。周方向Cに隣接する2つのティース16の間に、反界磁側(本実施形態では、径方向外側R2)の端部に底部15を有するスロット11が形成される。複数のティース16のそれぞれの界磁側の端面によって、コア10の内周面10a及び外周面10bの一方(本実施形態では、内周面10a)が形成される。なお、軸方向L、径方向R、及び周方向Cの各方向は、コア10の軸心(コア10の内周面10a又は外周面10bの軸心)を基準として定義される。すなわち、コア10の内周面10a又はコア10の外周面10bは、軸方向L、径方向R、及び周方向Cの各方向の基準となる面(コア基準面)である。コア10は、磁性材料を用いて形成される。例えば、複数枚の磁性体板(例えば、ケイ素鋼板等の電磁鋼板)を積層してコア10が形成され、或いは、磁性材料の粉体を加圧成形してなる圧粉材を主な構成要素としてコア10が形成される。
図1〜図4に示すように、コイル30は、スロット11の内部に配置されるスロット収容部31と、スロット11の外部に配置されるコイルエンド部32(渡り部)とを有している。スロット収容部31は、スロット11の内部に収容され、コイルエンド部32は、軸方向開口部12から軸方向Lの外側に突出している。コイルエンド部32は、互いに異なるスロット11に収容された一対のスロット収容部31を接続している。そして、複数本のコイルエンド部32の集合によって、コイル30におけるコア10から突出する部分(ここでは、軸方向Lの外側に突出する部分)であるコイルエンド33が形成されている。すなわち、コイルエンド33を構成する導体(線状導体3)のそれぞれがコイルエンド部32に相当する。本実施形態では、コイルエンド部32のそれぞれは、周方向Cに隣接する他のコイルエンド部32と周方向Cの配置領域が一部重複するように配置されている。すなわち、コイルエンド部32のそれぞれは、周方向Cに隣接する他のコイルエンド部32に対して、径方向Rに沿った径方向視で重複するように配置されている。本実施形態では、コイルエンド部32は、周方向Cにスロット11の配設ピッチの6倍分(6スロットピッチ分)離間して配置された一対のスロット収容部31を接続するように配置されている。そして、複数本のコイルエンド部32が、周方向Cにスロット11の配設ピッチ分ずつずらしながら配置されている。後述するように、コイルエンド33を構成するコイルエンド部32同士は、溶融後(溶融後に硬化した状態)の熱溶融性樹脂Pにより固定されているが(図16、図19参照)、図3及び図4では、熱溶融性樹脂Pの図示を省略している。すなわち、コイルエンド部32同士の隙間には、加熱により溶融する熱溶融性樹脂Pが、溶融後に硬化した状態で配置されている。コイルエンド33は、コア10に対して軸方向Lの両側に形成されている。
コイル30は、線状の導体である線状導体3により構成される。線状導体3は、銅やアルミニウム等の導電性を有する材料により形成され、線状導体3の表面は、他の導体との接続部等の一部を除いて、樹脂等の電気的絶縁性を有する材料からなる絶縁皮膜により被覆されている。線状導体3として、例えば、複数の細線を束ねた縒り線からなる導体や、延在方向に直交する断面形状が矩形状(正方形状を含む。)の導体を用いることができる。本実施形態では、線状導体3として、延在方向に直交する断面形状が長方形状の導体(平角線)を用いている。すなわち、本実施形態では、コイル30は、延在方向に直交する断面形状が矩形状(ここでは、長方形状)の線状導体3を用いて構成されている。なお、線状導体3として、延在方向に直交する断面形状が矩形以外の形状(例えば、円形状)の導体を用いることもできる。
スロット収容部31は、軸方向Lに延びるようにスロット11内に配置される。本実施形態では、スロット収容部31は、軸方向Lに平行に延びるようにスロット11内に配置されている。1つのスロット11の内部には、複数本のスロット収容部31が配置される。本実施形態では、1つのスロット11の内部には、6本のスロット収容部31が一列に並んで径方向Rに沿って配置されている。すなわち、1本のスロット収容部31の径方向Rの配置領域を1層とすると、1つのスロット11の内部には、スロット収容部31が複数の層(本実施形態では6層)に分かれて配置されている。このように、本実施形態では、複数本のスロット収容部31は、スロット11の内部に、一列又は複数列(ここでは、一列)に並んで整列配置されている。そして、コイルエンド部32は、互いに異なるスロット11において互いに隣接する層に収容された一対のスロット収容部31を接続している。図3及び図4に示すように、コイルエンド部32には、線状導体3を径方向Rに1層分オフセットさせるオフセット部32aが形成されている。オフセット部32aは、コイルエンド部32におけるコア10から軸方向Lに最も離れた部位(頂部)に形成されている。
絶縁シート40は、電気的絶縁性を有する材料を用いて形成されるシート状部材(絶縁紙)である。図1及び図2に示すように、絶縁シート40は、スロット11の内面20に沿って配置されたスロット内配置部50と、スロット11の開口部(本実施形態では、軸方向開口部12)からスロット11の外部に突出した突出部60とを有している。本実施形態では、突出部60は、軸方向開口部12から軸方向Lの外側(軸方向Lにおいてコア10の軸方向Lの中央部から離れる側)に突出するように形成されている。ここで、「スロット11の内面20に沿って配置」とは、スロット11の内面20の形状に合う形状でスロット11の内部に配置されることを意味し、スロット11の内面20に接触するように配置される場合と、スロット11の内面20から離れて配置される場合との双方を含む概念である。本実施形態では、スロット内配置部50は、スロット11の内面20に接触するように、スロット11の内面20に沿って配置されている。スロット内配置部50がコイル30(スロット収容部31)とスロット11の内面20との間に介在し、突出部60がコイル30(コイルエンド部32)とコア10の開口端面10cとの間に介在することで、コア10とコイル30とが絶縁シート40により電気的に絶縁される。コア10の開口端面10cは、コア10におけるスロット11の開口部(本実施形態では、軸方向開口部12)の開口縁13の周囲の端面であり、本実施形態では、コア10における軸方向Lの端面である。
図14に示すように、スロット11の内面20には、スロット11の幅方向Wに対向する2つの内面である第1内面21及び第2内面22と、スロット11の底部15を規定する内面である第3内面23とが含まれる。本実施形態では、スロット11の幅方向Wは、周方向Cと一致(或いは実質的に一致)する。具体的には、軸方向Lに直交する断面において、スロット11の幅方向Wは、当該スロット11が配置される周方向Cの位置において径方向Rに直交する方向と一致する。そして、第1内面21及び第2内面22のそれぞれは、軸方向L及び径方向Rに延びるように形成され、第3内面23は、軸方向L及び幅方向W(周方向C)に延びるように形成されている。ここでは、幅方向W(周方向C)に対向する2つの内面のうちの、周方向Cの一方側である周方向第1側C1に配置される内面を第1内面21とし、当該2つの内面のうちの、周方向Cの他方側(すなわち、周方向第1側C1とは反対側)である周方向第2側C2に配置される内面を第2内面22としている。第3内面23は、第1内面21及び第2内面22のそれぞれの反界磁側(本実施形態では、径方向外側R2)の端部を連結している。
このように、スロット11の内面20には、第1内面21、第2内面22、及び第3内面23が含まれる。これに応じて、本実施形態では、絶縁シート40のスロット内配置部50には、第1内面21に沿って配置される第1スロット内配置部51と、第2内面22に沿って配置される第2スロット内配置部52と、第3内面23に沿って配置される第3スロット内配置部53とが含まれる。第1スロット内配置部51及び第2スロット内配置部52のそれぞれは、軸方向L及び径方向Rに延びるように形成され、第3スロット内配置部53は、軸方向L及び幅方向W(周方向C)に延びるように形成されている。そして、第3スロット内配置部53は、第1スロット内配置部51及び第2スロット内配置部52のそれぞれの反界磁側(本実施形態では、径方向外側R2)の端部を連結している。本実施形態では、第1内面21、第2内面22、及び第3内面23のそれぞれは、平面状に形成されており、これに応じて、第1スロット内配置部51、第2スロット内配置部52、及び第3スロット内配置部53のそれぞれは、平板状(具体的には、矩形平板状)に形成されている。
本実施形態では、絶縁シート40の突出部60には、第1スロット内配置部51から軸方向Lの外側に延びる第1突出部61と、第2スロット内配置部52から軸方向Lの外側に延びる第2突出部62と、第3スロット内配置部53から軸方向Lの外側に延びる第3突出部63とが含まれる。図7及び図9に示すように、突出部60は軸方向Lの両側に形成されている。すなわち、第1突出部61、第2突出部62、及び第3突出部63のそれぞれは、軸方向Lの両側に形成されている。本実施形態では、絶縁シート40は、1枚のシート状部材を折り曲げて形成されている。そのため、絶縁シート40における各部(第1スロット内配置部51、第2スロット内配置部52、第3スロット内配置部53、第1突出部61、第2突出部62、及び第3突出部63)は、互いに連続するように形成されている。
図1に示すように、本実施形態では、突出部60は、軸方向開口部12からスロット11の外部に向かう方向(本実施形態では、軸方向Lの外側に向かう方向)に沿って折り返し部を有さずに延在するように形成されている。すなわち、突出部60は、軸方向開口部12からスロット11の外部に向かって一様に延在するように形成されている。ここで、「折り返し部」とは、突出部60におけるスロット内配置部50との接続部から先端部(スロット内配置部50との接続部とは反対側の端部)に向かう延在方向を反転させる屈曲部(例えば、絶縁シート40のスロット11からの抜け落ちを抑制するためのカフス部を形成するための屈曲部)である。図1に示すように、突出部60は、軸方向開口部12から軸方向Lの外側に向かって軸方向Lに延びるように(本実施形態では、軸方向Lに平行に延びるように)形成されている。
絶縁シート40は、加熱により膨張する膨張性絶縁シートであり、膨張後の状態(膨張後に硬化した状態)でコア10に対して配置されている。絶縁シート40は、加熱により膨張させた後に常温に戻した状態で、膨張後の状態が維持される膨張性絶縁シートである。本実施形態では、絶縁シート40は、加熱により発泡して膨張する発泡性絶縁シートであり、加熱により発泡する発泡成分の発泡後の状態でコア10に対して配置されている。本実施形態では、絶縁シート40は、発泡成分に加えて熱硬化成分を含んでおり、発泡成分が発泡した後に熱硬化成分が硬化した状態で、絶縁シート40がコア10に対して配置されている。
絶縁シート40は、加熱により膨張する層(膨張層)を少なくとも有する。本実施形態では、図14に示すように、絶縁シート40は、3層構造を有している。具体的には、絶縁シート40は、第1膨張層41、第2膨張層42、及び中間層43を有している。第1膨張層41及び第2膨張層42は、中間層43を挟んで両側に分かれて配置される膨張層である。具体的には、第1膨張層41は、中間層43に対してスロット収容部31側に配置され、第2膨張層42は、中間層43に対してスロット11の内面20側に配置されている。本実施形態では、第1膨張層41及び第2膨張層42の双方の膨張後の状態で、絶縁シート40がコア10に対して配置されている。本実施形態では、第1膨張層41及び第2膨張層42は、発泡成分及び熱硬化成分を含む層である。第1膨張層41や第2膨張層42を、例えば、エポキシ樹脂(熱硬化性樹脂)を含む基材の中に加熱膨張するカプセルが配合された層(発泡樹脂層)とすることができる。このカプセルは、例えば、加熱によって気化する液体等が封入された熱可塑性樹脂のカプセルとされる。また、中間層43は、例えば、ポリイミド(PI)やポリフェニレンサルファイド(PPS)の層とすることができる。なお、絶縁シート40がこのような中間層43を有さず、絶縁シート40が単数又は複数の膨張層のみを有する構成とすることもできる。
図14及び図15に示すように、絶縁シート40の膨張後(本実施形態では、発泡による膨張後)の状態で、スロット収容部31とスロット11の内面20との間にスロット内配置部50が配置されている。すなわち、スロット収容部31は、スロット内配置部50の膨張による押し付け力によって、スロット11の内面20に対して固定されている。このように、スロット収容部31は、ワニスを用いずにスロット11の内面20に対して固定されている。なお、本実施形態では、スロット内配置部50が全体的に膨張した状態となっている。すなわち、本実施形態では、スロット内配置部50の全体が膨張層を有している。このように、本実施形態では、スロット収容部31をスロット11の内面20に対して固定するための熱膨張性樹脂Qとして、シート状(ここでは、常温で固形のシート状)に成形された絶縁シート40を用いている。そして、本実施形態では、熱膨張性樹脂Qは、熱硬化性樹脂を含んでいる。すなわち、熱膨張性樹脂Qは、少なくとも熱硬化性樹脂を含む樹脂(或いは樹脂組成物)であり、本実施形態では、熱膨張性樹脂Qは、熱硬化性樹脂、発泡剤、及び硬化剤を含む樹脂組成物である。熱膨張性樹脂Qとして用いられるシート状に成形されたシート部材(絶縁シート40)は、熱膨張性樹脂Qを用いて形成される層(膨張層)を少なくとも有する。上述したように、本実施形態では、このシート部材(絶縁シート40)は、熱膨張性樹脂Qを用いて形成される2つの膨張層(第1膨張層41及び第2膨張層42)と、熱膨張性樹脂Qを用いずに形成される1つの非膨張層(中間層43)とを有している。このように、スロット収容部31とスロット11の内面との間には、加熱により膨張する熱膨張性樹脂Qが、膨張後に硬化した状態で配置されている。
次に、本実施形態に係る電機子1の製造方法について説明する。図5に示すように、電機子1の製造方法には、コイル配置工程S1と、樹脂配置工程S2(第1樹脂配置工程S21及び第2樹脂配置工程S22)と、第1加熱工程S31とが含まれる。本実施形態では、電機子1の製造方法には、更に、第2加熱工程S32が含まれる。詳細は省略するが、電機子1の製造方法には、当然ながら、コア10、コイル30、熱膨張性樹脂Q(本実施形態では、絶縁シート40)、及び熱溶融性樹脂P等の各部品を準備する準備工程も含まれる。本実施形態では、熱膨張性樹脂Q及び熱溶融性樹脂Pの双方が、熱硬化性樹脂を含んでいる。例えば、熱膨張性樹脂Q及び熱溶融性樹脂Pの双方が、同じ種類の熱硬化性樹脂を含む構成とすることができる。
コイル配置工程S1は、加熱により膨張する熱膨張性樹脂Qを用い、スロット収容部31とスロット11の内面20との間に膨張前の熱膨張性樹脂Qが配置されるように、コイル30をコア10に対して配置する工程である。本実施形態では、コイル配置工程S1では、軸方向Lの両側のそれぞれにおいてコイルエンド部32が軸方向開口部12から軸方向Lの外側に突出するように、コイル30をコア10に対して配置する。本実施形態では、熱膨張性樹脂Qとして絶縁シート40を用いてコイル配置工程S1を実行する。そして、本実施形態では、図6に示すように、コイル配置工程S1は、シート部材配置工程S11と、部分膨張工程S12と、スロット収容部配置工程S13と、を備えている。以下、図7〜図11を参照して、本実施形態のコイル配置工程S1について説明する。
シート部材配置工程S11は、スロット11の内面20に沿って配置されるスロット内配置部50と、スロット11の開口部(本実施形態では、軸方向開口部12)からスロット11の外部に突出する突出部60とを有するように、膨張前の絶縁シート40をコア10に対して配置する工程である。本実施形態では、1枚の絶縁シート40を軸方向Lに平行な2つの折り曲げ線で折り曲げることにより、絶縁シート40を図7に示す形状に成形する。そして、成形後の絶縁シート40を軸方向開口部12又は径方向開口部14からスロット11に挿入して、図7に示すように絶縁シート40をコア10に対して配置する。すなわち、シート部材配置工程S11では、軸方向Lの両側のそれぞれに突出部60が形成されるように、絶縁シート40を配置する。また、本実施形態では、シート部材配置工程S11では、突出部60は、軸方向開口部12からスロット11の外部に向かう方向に沿って折り返し部を有さずに延在するように配置される。
部分膨張工程S12は、シート部材配置工程S11の後、絶縁シート40におけるスロット11の開口部(本実施形態では、軸方向開口部12)の開口縁13に沿う対象部分44を加熱して膨張させる工程である。図7及び図8に示すように、本実施形態では、突出部60におけるコア10の開口端面10cの近傍の部分(すなわち、突出部60におけるスロット内配置部50との接続部分)を対象部分44として、部分膨張工程S12を実行する。本実施形態では、第1突出部61、第2突出部62、及び第3突出部63のそれぞれに対象部分44を設定して、部分膨張工程S12を実行する。
本実施形態では、軸方向Lの両側の突出部60のそれぞれに対象部分44を設定して、部分膨張工程S12を実行する。図7及び図8では、軸方向Lの一方側(軸方向第1側L1)の対象部分44を加熱して膨張させる工程の実行中におけるコア10の一部を示している。部分膨張工程S12では、軸方向Lの一方側(軸方向第1側L1)の対象部分44を加熱して膨張させる第1部分膨張工程と、軸方向Lの他方側(軸方向第2側L2)の対象部分44を加熱して膨張させる第2部分膨張工程とを、同時に又は時間をずらして実行する。部分膨張工程S12において第1部分膨張工程と第2部分膨張工程とを時間をずらして実行する場合、例えば、第1部分膨張工程を実行した後にコア10を軸方向Lに反転させて(軸方向Lの向きを入れ替えて)、第2部分膨張工程を実行する構成とすることができる。なお、軸方向Lの一方側の突出部60のみに対象部分44を設定して部分膨張工程S12を実行する構成とすることもできる。
本実施形態では、図7及び図8に示すように、部分膨張工程S12では、レーザ80から出射されるレーザ光81を対象部分44に照射することで、対象部分44のみ(実質的に対象部分44のみ)を加熱して膨張させる。本実施形態では、軸方向開口部12の開口縁13に沿ってレーザ光81の照射位置を移動させることで、第1突出部61における対象部分44、第2突出部62における対象部分44、及び、第3突出部63における対象部分44のそれぞれを加熱して膨張させる。図7及び図8では、第2突出部62における対象部分44を膨張させる工程は終了し、第1突出部61における対象部分44を膨張させる工程を実行している状態を示している。
このように部分膨張工程S12を実行して対象部分44を膨張させることで、図7及び図8に示すように、コア10の開口端面10cに接触する段差部46を、絶縁シート40に形成することができる。すなわち、部分膨張工程S12の実行により、対象部分44は少なくともスロット11から離れる側(軸方向L視でスロット11から離れる側)に膨張し、当該膨張した部分により段差部46が形成される。本実施形態では、コア10の開口端面10cはコア10の軸方向Lの端面であり、段差部46は、開口端面10cに対して軸方向Lの外側から接触するように形成される。
図8に示すように、本実施形態では、スロット11の開口部(本実施形態では、軸方向開口部12)の開口縁13に沿う形状に形成された支持面70を有する支持具7を用い、支持面70が開口縁13に対向する位置に支持具7を挿入し、支持面70と開口縁13とにより絶縁シート40を挟持した状態で、部分膨張工程S12を行う。本実施形態では、支持具7は、スロット11に対して軸方向Lの外側から挿入される。このように部分膨張工程S12を行う際に支持面70と開口縁13とにより絶縁シート40を挟持することで、絶縁シート40における開口縁13との接触部分の膨張を抑制しつつ対象部分44を膨張させることができる。なお、対象部分44及びその近傍においては、絶縁シート40と支持面70との接触により絶縁シート40から支持具7に熱が伝わるため、対象部分44は、実質的にスロット11から離れる側にのみ膨張する。このように対象部分44が膨張されるため、コア10の開口端面10cに接触するような段差部46を絶縁シート40に形成しやすくなっている。なお、本実施形態では、支持面70と開口縁13とにより絶縁シート40が挟持された状態で部分膨張工程S12を行うため、レーザ光81は、対象部分44に対して、支持具7が配置される側とは反対側から照射される。すなわち、レーザ光は、対象部分44における、スロット11の内面20に対向する面から軸方向開口部12の外側に延出した面に照射される。
本実施形態では、図8に示すように、支持具7は、先端部7a側に向かうに従ってスロット11の幅方向Wの厚さが小さくなるくさび状に形成され、部分膨張工程S12を行う際に、支持具7に対して幅方向Wの両側で絶縁シート40を挟持するように構成されている。すなわち、支持具7が有する支持面70には、幅方向Wの一方側(ここでは、周方向第1側C1)で絶縁シート40を挟持するための第1支持面71と、幅方向Wの他方側(ここでは、周方向第2側C2)で絶縁シート40を挟持するための第2支持面72とが含まれる。これにより、部分膨張工程S12を行う際に、支持具7の位置を維持した状態で、絶縁シート40における幅方向Wの両側の対象部分44を膨張させて、幅方向Wの両側に段差部46を形成することが可能となっている。
図示は省略するが、本実施形態では、支持具7は、部分膨張工程S12を行う際に、支持具7に対して幅方向Wの両側で絶縁シート40を挟持すると共に、支持具7に対して径方向外側R2で絶縁シート40を挟持するように構成されている。すなわち、図示は省略するが、支持具7が有する支持面70には、第1支持面71及び第2支持面72に加えて、径方向外側R2で絶縁シート40を挟持するための第3支持面が含まれる。これにより、部分膨張工程S12を行う際に、支持具7の位置を維持した状態で、絶縁シート40における幅方向Wの両側及び径方向外側R2の対象部分44を膨張させて、幅方向Wの両側及び径方向外側R2に段差部46を形成することが可能となっている。
スロット収容部配置工程S13は、部分膨張工程S12の後、スロット収容部31とスロット11の内面20との間に絶縁シート40のスロット内配置部50が配置されるように(言い換えれば、介在するように)、スロット収容部31をスロット11の内部に配置する工程である。図11に示すように、本実施形態では、スロット収容部配置工程S13では、スロット収容部31と第1内面21との間に第1スロット内配置部51が配置され、スロット収容部31と第2内面22との間に第2スロット内配置部52が配置され、スロット収容部31(具体的には、最も反界磁側(ここでは、径方向外側R2)に配置されるスロット収容部31)と第3内面23との間に第3スロット内配置部53が配置されるように、スロット収容部31をスロット11の内部に配置する。すなわち、スロット収容部配置工程S13では、スロット収容部31(ここでは、6本のスロット収容部31)が、第1スロット内配置部51、第2スロット内配置部52、及び第3スロット内配置部53に囲まれるように(すなわち、スロット内配置部50によって周方向Cの両側及び径方向外側R2の三方から囲まれるように)、スロット収容部31をスロット11の内部に配置する。
なお、コイル30が、コア10に対して配置される前(コア10に巻装される前)に、コア10に巻装された状態と同じ形状(同芯巻状や波巻状等)に成形される構成とすることも、コイル30が、コア10に配置された状態の複数のセグメント導体を接合して形成される構成とすることもできる。前者の構成では、スロット収容部31は、スロット11に対して径方向内側R1から挿入される。後者の構成では、スロット収容部31がスロット11に対して径方向内側R1から挿入される構成とすることも可能であるが、スロット収容部31がスロット11に対して軸方向Lの外側から挿入される構成とすることができる。
上述したように、部分膨張工程S12では、コア10の開口端面10cに接触する段差部46が絶縁シート40に形成される。よって、スロット収容部配置工程S13を実行する際に、段差部46と開口端面10cとの間に作用する摩擦力又は接着力によって、絶縁シート40のコア10に対する移動を規制することが可能となっている。本実施形態では、絶縁シート40における軸方向Lの両側に段差部46が形成されるため(図9参照)、スロット収容部配置工程S13を実行する際に、少なくとも、絶縁シート40のコア10に対する軸方向第1側L1への移動と、絶縁シート40のコア10に対する軸方向第2側L2への移動とを規制することができる。段差部46と開口端面10cとの間の接着力の大きさによっては、絶縁シート40のコア10に対する軸方向Lに直交する方向への移動を規制することもできる。
本実施形態に係る電機子の製造方法では、上述したようなコイル配置工程S1を実行することでコイル30をコア10に対して配置し、その後、第1樹脂配置工程S21、第1加熱工程S31、第2樹脂配置工程S22、及び第2加熱工程S32の各工程を順に実行する(図5参照)。以下、これらの第1樹脂配置工程S21、第1加熱工程S31、第2樹脂配置工程S22、及び第2加熱工程S32について、図12〜図19を参照して説明する。
樹脂配置工程S2は、コイル配置工程S1の前又は後に、加熱により溶融する熱溶融性樹脂Pを用い、コイルエンド部32に接するように溶融前の熱溶融性樹脂Pを配置する工程である。軸方向第1側L1のコイルエンド部32を対象とする樹脂配置工程S2である第1樹脂配置工程S21では、軸方向第1側L1のコイルエンド部32に接するように溶融前の熱溶融性樹脂Pを配置し、軸方向第2側L2のコイルエンド部32を対象とする樹脂配置工程S2である第2樹脂配置工程S22では、軸方向第2側L2のコイルエンド部32に接するように溶融前の熱溶融性樹脂Pを配置する。本実施形態では、樹脂配置工程S2(第1樹脂配置工程S21及び第2樹脂配置工程S22の双方)を、コイル配置工程S1の後に実行する。
本実施形態では、熱溶融性樹脂Pとして、熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂)をシート状に成形したシート部材(ここでは、常温で固形のシート部材)を用いている。このように、本実施形態では、熱溶融性樹脂Pは、熱硬化性樹脂を含んでいる。すなわち、熱溶融性樹脂Pは、少なくとも熱硬化性樹脂を含む樹脂(或いは樹脂組成物)であり、本実施形態では、熱溶融性樹脂Pは、熱硬化性樹脂及び硬化剤を含む樹脂組成物である。第1樹脂配置工程S21で配置する熱溶融性樹脂Pを第1熱溶融性樹脂P1とし、第2樹脂配置工程S22で配置する熱溶融性樹脂Pを第2熱溶融性樹脂P2とすると、本実施形態では、第1熱溶融性樹脂P1及び第2熱溶融性樹脂P2として、同じ種類の熱溶融性樹脂Pを用いている。
本実施形態では、樹脂配置工程S2では、コア10側とは反対側からコイルエンド部32に接するように熱溶融性樹脂Pを配置する。具体的には、図12及び図13に示すように、第1樹脂配置工程S21では、コア10側とは反対側である軸方向第1側L1からコイルエンド部32(軸方向第1側L1のコイルエンド部32)に接するように、第1熱溶融性樹脂P1を配置する。第1熱溶融性樹脂P1は、当該第1熱溶融性樹脂P1が有する接着性によって、コイルエンド部32に対して貼り付けられた状態とされる。上述したように、本実施形態では、コイルエンド部32の頂部にはオフセット部32aが形成されている(図4参照)。そのため、第1熱溶融性樹脂P1は、複数本のコイルエンド部32のそれぞれのオフセット部32aに対して軸方向第1側L1から接するように配置される。
図12に示すように、第1熱溶融性樹脂P1は、例えば、複数本のコイルエンド部32の集合によって形成されるコイルエンド33を、径方向Rの全域に亘って軸方向第1側L1から覆うように配置される。なお、第1熱溶融性樹脂P1が、コイルエンド33における径方向Rの一部分(例えば、径方向Rの中間部分)を軸方向第1側L1から覆うように配置される構成とすることもできる。また、第1熱溶融性樹脂P1は、例えば、コイルエンド33を周方向Cの全域に亘って軸方向第1側L1から覆うように配置される。なお、軸方向第1側L1のコイルエンド33にコネクタや端子等が配置される場合に、これらが配置される周方向Cの領域を避けて第1熱溶融性樹脂P1が配置される構成とすることもできる。
第1加熱工程S31は、コイル配置工程S1及び樹脂配置工程S2(本実施形態では、第1樹脂配置工程S21)の後に、熱膨張性樹脂Q(本実施形態では、絶縁シート40)及び熱溶融性樹脂P(ここでは、第1熱溶融性樹脂P1)を加熱し、熱膨張性樹脂Qを膨張させた後に硬化させると共に熱溶融性樹脂Pを溶融させた後に硬化させる工程である。本実施形態では、第1加熱工程S31では、熱膨張性樹脂Qと熱溶融性樹脂Pとを共に加熱する(言い換えれば、熱膨張性樹脂Q及び熱溶融性樹脂Pの双方を加熱する)。ここで、熱膨張性樹脂Qと熱溶融性樹脂Pとを共に加熱するとは、熱膨張性樹脂Qと熱溶融性樹脂Pとを同時に加熱することである。すなわち、熱膨張性樹脂Qと熱溶融性樹脂Pとを共に加熱するとは、熱膨張性樹脂Q及び熱溶融性樹脂Pの双方が昇温するように加熱することである。なお、第1加熱工程S31において熱膨張性樹脂Qと熱溶融性樹脂Pとを共に加熱する際に、1回ではなく複数回の昇温工程を行ってもよく、この場合に、治具の取り替え等の他の工程を挟んで複数回の昇温工程を行ってもよい。また、第1加熱工程S31において熱膨張性樹脂Qと熱溶融性樹脂Pとを共に加熱する際に、熱膨張性樹脂Qの膨張と熱溶融性樹脂Pの溶融との双方を必ずしも1回の昇温工程において生じさせる必要はなく、例えば、1回目の昇温工程において熱膨張性樹脂Qの膨張と熱溶融性樹脂Pの溶融との一方を生じさせ、2回目の昇温工程において熱膨張性樹脂Qの膨張と熱溶融性樹脂Pの溶融との他方を生じさせてもよい。また、熱膨張性樹脂Qの膨張と熱溶融性樹脂Pの溶融との双方を1回の昇温工程において生じさせる場合であっても、熱膨張性樹脂Qの膨張反応と熱溶融性樹脂Pの溶融反応とを必ずしも並行して進行させる必要はなく、熱膨張性樹脂Qの膨張反応と熱溶融性樹脂Pの溶融反応との一方の後に他方が進行するように、熱膨張性樹脂Qと熱溶融性樹脂Pとを共に加熱してもよい。
本実施形態では、熱膨張性樹脂Qが膨張する温度範囲は、熱溶融性樹脂P(第1熱溶融性樹脂P1)が溶融する温度範囲と重なっている。また、本実施形態では、熱膨張性樹脂Qが硬化する温度範囲は、熱溶融性樹脂P(第1熱溶融性樹脂P1)が硬化する温度範囲と重なっている。そして、本実施形態では、第1加熱工程S31では、熱膨張性樹脂Qが膨張する温度範囲内で且つ熱溶融性樹脂Pが溶融する温度範囲内の温度(第1温度)で熱膨張性樹脂Q及び熱溶融性樹脂Pの双方を加熱する膨張/溶融工程S31aを実行した後、熱膨張性樹脂Qが硬化する温度範囲内で且つ熱溶融性樹脂Pが硬化する温度範囲内の温度(第2温度)で熱膨張性樹脂Q及び熱溶融性樹脂Pの双方を加熱して硬化させる第1硬化工程S31bを実行する。この際、膨張/溶融工程S31aの実行中には、熱溶融性樹脂Pの溶融反応と熱膨張性樹脂Qの膨張反応とが並行して進行し、第1硬化工程S31bの実行中には、熱溶融性樹脂Pの硬化反応と熱膨張性樹脂Qの硬化反応とが並行して進行する。第2温度は、例えば、第1温度と同じ温度に設定され、或いは、第1温度よりも高い温度に設定される。
第1加熱工程S31では、例えば、コイル30に電流を流すことにより熱膨張性樹脂Q及び熱溶融性樹脂Pの双方を加熱し、或いは、電気炉等の炉の内部にコア10を配置して熱膨張性樹脂Q及び熱溶融性樹脂Pの双方を加熱する。詳細は省略するが、熱膨張性樹脂Qや熱溶融性樹脂Pに含まれる熱硬化性樹脂は、膨張/溶融工程S31aの実行により溶融した後、時間の経過と共にゲル化し、その後、第1硬化工程S31bの実行により硬化反応が進行して硬化される。このように熱硬化性樹脂が溶融してから硬化するまでの過程の中で、熱硬化性樹脂を確実に硬化させるために硬化工程は比較的長い時間を要する工程であるが、本実施形態では、熱膨張性樹脂Qの硬化工程と熱溶融性樹脂Pの硬化工程とが共通の工程(第1硬化工程S31b)とされるため、第1加熱工程S31に要する時間の短縮を図ることが可能となっている。本実施形態では、熱膨張性樹脂Qは、加熱により軟化した後に膨張する樹脂とされている。そして、本実施形態では、熱溶融性樹脂Pの溶融開始温度は、熱膨張性樹脂Qの軟化開始温度よりも高くなっている。これにより、熱溶融性樹脂Pの溶融が、熱膨張性樹脂Qの軟化よりも早く開始されることを回避して、上記のように、膨張/溶融工程S31aの実行中に、熱溶融性樹脂Pの溶融反応と熱膨張性樹脂Qの膨張反応とを並行して進行させることが可能となっている。
第1加熱工程S31を実行することで、図14及び図15に示すように、膨張後(膨張後に硬化した状態)の熱膨張性樹脂Q(絶縁シート40のスロット内配置部50)によってスロット収容部31がスロット11の内面20に対して固定される。なお、絶縁シート40の対象部分44は、部分膨張工程S12の実行により膨張後の形状で硬化されており、第1加熱工程S31の実行によっては基本的に変形しない。そのため、第1加熱工程S31を実行して図10に示す状態から図15に示す状態に遷移する過程において、段差部46が形成された対象部分44に対して隣接する部分(本実施形態では、軸方向Lの両側に隣接する部分)が膨張することで、スロット11の開口部(本実施形態では、軸方向開口部12)の開口縁13から離れる側に窪む凹部45が、軸方向開口部12の開口縁13に沿って絶縁シート40に形成される。すなわち、本実施形態の電機子1では、熱膨張性樹脂Qは、スロット内配置部50と突出部60とを有すると共に、開口部(軸方向開口部12)の開口縁13に沿って、開口縁13から離れる側に窪む凹部45を有している。
また、第1加熱工程S31を実行することで、図16及び図17に示すように、溶融状態の第1熱溶融性樹脂P1がコイルエンド33(軸方向第1側L1のコイルエンド33)を構成するコイルエンド部32同士の隙間に流入し、コイルエンド部32同士が溶融後(溶融後に硬化した状態)の第1熱溶融性樹脂P1により固定される。なお、図16では、オフセット部32aにおける軸方向第1側L1の面に残存し得る溶融後の第1熱溶融性樹脂P1の図示を省略しているが、図17に示すように、溶融後の第1熱溶融性樹脂P1は、オフセット部32aにおける軸方向第1側L1の面に残存し得る。このように、本実施形態に係る電機子1の製造方法では、第1加熱工程S31を行うことで、スロット収容部31のコア10に対する固定と、コイルエンド33(軸方向第1側L1のコイルエンド33)を構成するコイルエンド部32同士の固定との双方を行うことができる。すなわち、液状のワニスを含浸させる工程を行うことなく、スロット収容部31のコア10に対する固定と、コイルエンド33を構成するコイルエンド部32同士の固定との双方を行うことが可能となっている。
図17に示すように、第1加熱工程S31は、第1樹脂配置工程S21の実行後、第1熱溶融性樹脂P1がコア10に対して上側に配置された状態で実行される。本実施形態では、軸方向Lが鉛直方向Zと平行になるように(言い換えれば、径方向Rが水平方向Hと平行になるように)コア10を配置した状態で、第1加熱工程S31を実行する。これにより、第1加熱工程S31を実行することで、溶融状態の第1熱溶融性樹脂P1を、重力を利用してコイルエンド33(軸方向第1側L1のコイルエンド33)を構成するコイルエンド部32同士の隙間に流入させて、コイルエンド部32同士を溶融後の第1熱溶融性樹脂P1により固定することが可能となっている。なお、本実施形態では、第1樹脂配置工程S21(図13参照)を、第1加熱工程S31(図17参照)と同じ姿勢(向き)でコア10が配置された状態で行う。
図18に示すように、第1加熱工程S31の実行後、第2樹脂配置工程S22を実行する。第2樹脂配置工程S22では、コア10側とは反対側である軸方向第2側L2からコイルエンド部32(軸方向第2側L2のコイルエンド部32)に接するように、第2熱溶融性樹脂P2を配置する。第2樹脂配置工程S22は、第1熱溶融性樹脂P1が第2熱溶融性樹脂P2に置き換わり、軸方向Lの向きが入れ替わる点を除いて、第1樹脂配置工程S21と同様であるため、第2樹脂配置工程S22の具体的手順の説明は省略する。
図19に示すように、第2樹脂配置工程S22の実行後、第2加熱工程S32を実行する。第2加熱工程S32は、第2熱溶融性樹脂P2がコア10に対して上側に配置された状態で、第2熱溶融性樹脂P2を加熱して第2熱溶融性樹脂P2を溶融させた後に硬化させる工程である。第2加熱工程S32では、第2熱溶融性樹脂P2が溶融する温度範囲内の温度で第2熱溶融性樹脂P2を加熱する溶融工程S32aを実行した後、第2熱溶融性樹脂P2が硬化する温度範囲内の温度で第2熱溶融性樹脂P2を加熱して硬化させる第2硬化工程S32bを実行する。ここでの加熱温度は、第1加熱工程S31での加熱温度と同じ温度とすることができる。
図19に示すように、本実施形態では、軸方向Lが鉛直方向Zと平行になるようにコア10を配置した状態で、第2加熱工程S32を実行する。これにより、第2加熱工程S32を実行することで、溶融状態の第2熱溶融性樹脂P2を、重力を利用してコイルエンド33(軸方向第2側L2のコイルエンド33)を構成するコイルエンド部32同士の隙間に流入させて、コイルエンド部32同士を溶融後の第2熱溶融性樹脂P2により固定することが可能となっている。なお、本実施形態では、第2樹脂配置工程S22(図18参照)を、第2加熱工程S32(図19参照)と同じ姿勢(向き)でコア10が配置された状態で行う。そのため、第1加熱工程S31と第2樹脂配置工程S22との間に、コア10を軸方向Lに反転させる工程が行われる。
以上のように、本実施形態に係る電機子1の製造方法では、軸方向Lの両側のコイルエンド33について、溶融状態の熱溶融性樹脂Pを、重力を利用してコイルエンド33を構成するコイルエンド部32同士の隙間に流入させることが可能となっている。なお、本実施形態では、熱溶融性樹脂P(第1熱溶融性樹脂P1及び第2熱溶融性樹脂P2)の溶融状態での粘性を、図17及び図19に示すように、コイルエンド33における軸方向Lの外側(コア10側とは反対側)の部分においてのみ、コイルエンド部32同士が溶融後の熱溶融性樹脂P(第1熱溶融性樹脂P1及び第2熱溶融性樹脂P2)により固定されるように設定している。これにより、コイルエンド33における軸方向Lの内側(コア10側)の部分において、冷却性を適切に確保するための隙間(コイルエンド部32同士の隙間)を設けることが可能となっている。
ところで、図25及び図26に一例を示すように、コイル30が、複数の線状導体3(例えば、セグメント導体)をスロット11の外部において接合して構成される場合がある。図25及び図26に示すように、複数の線状導体3をスロット11に対して軸方向Lの外側において接合する場合には、少なくとも軸方向Lの一方側のコイルエンド33に、線状導体3同士の接合部4が配置される。なお、接合部4では、線状導体3における絶縁皮膜が剥離された皮膜剥離部3aが、接合対象の線状導体3の皮膜剥離部3aに溶接等で接合される。この場合、図25に示すように、樹脂配置工程S2では、コイルエンド部32における線状導体3同士の接合部4に接するように、溶融前の熱溶融性樹脂Pを配置すると好適である。このように熱溶融性樹脂Pを配置することで、第1加熱工程S31を行って溶融前の熱溶融性樹脂Pを溶融させた後に硬化させることで、コイルエンド部32同士を溶融後の熱溶融性樹脂Pにより固定することに加えて、溶融後の熱溶融性樹脂Pで接合部4を覆って、接合部4の電気的絶縁性を確保することも可能となる(図26参照)。すなわち、コイルエンド部32における線状導体3同士の接合部4が熱溶融性樹脂Pで覆われた電機子1を製造することができる。
〔第2の実施形態〕
電機子の製造方法及び電機子の第2の実施形態について、図面(図20〜図22)を参照して説明する。以下では、本実施形態の電機子の製造方法について、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。特に明記しない点については、第1の実施形態と同様であり、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。本実施形態では、加熱工程S3が「加熱工程」に相当し、第1部分91aが「本体部」に相当する。
図22に示すように、本実施形態で製造される電機子1は、熱溶融性樹脂Pよりも融点が高く且つ電気的絶縁性を有する絶縁部材91を備えている。絶縁部材91は、例えば、熱溶融性樹脂Pよりも高い電気的絶縁性を有する。電機子1は、軸方向Lの両側のコイルエンド33に絶縁部材91を備えている。そして、軸方向第1側L1のコイルエンド33に配置される絶縁部材91は、第1熱溶融性樹脂P1よりも融点が高く且つ電気的絶縁性(例えば、第1熱溶融性樹脂P1よりも高い電気的絶縁性)を有し、軸方向第2側L2のコイルエンド33に配置される絶縁部材91は、第2熱溶融性樹脂P2よりも融点が高く且つ電気的絶縁性(例えば、第2熱溶融性樹脂P2よりも高い電気的絶縁性)を有する。絶縁部材91は、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリプロピレン(PP)、又はポリイミド(PI)等により形成される。
絶縁部材91は、コア10側とは反対側である反コア側からコイルエンド部32を覆う第1部分91aを有している。なお、軸方向第1側L1のコイルエンド33に配置される絶縁部材91については「反コア側」は軸方向第1側L1であり、軸方向第2側L2のコイルエンド33に配置される絶縁部材91については「反コア側」は軸方向第2側L2である。本実施形態では、第1部分91aは、複数本のコイルエンド部32の集合によって形成されるコイルエンド33を、径方向Rの全域に亘って反コア側から覆うように形成されている。また、本実施形態では、第1部分91aは、コイルエンド33を周方向Cの全域に亘って反コア側から覆うように形成されている。なお、コイルエンド33にコネクタや端子等が配置される場合に、これらが配置される周方向Cの領域を避けて第1部分91aが配置される構成とすることもできる。
図22に示すように、本実施形態では、絶縁部材91は、第1部分91aに加えて、第2部分91b及び第3部分91cを備えている。第2部分91bは、コイルエンド33(ここでは、コイルエンド33における反コア側の一部)を径方向内側R1から覆うように形成され、第3部分91cは、コイルエンド33(ここでは、コイルエンド33における反コア側の一部)を径方向外側R2から覆うように形成されている。なお、絶縁部材91は、第1部分91a、第2部分91b、及び第3部分91cの内の少なくとも第1部分91aを備える。絶縁部材91が、第2部分91b及び第3部分91cの一方又は双方を備えない構成とすることもできる。
本実施形態では、図21に示すように、樹脂配置工程S2では、熱溶融性樹脂Pにおけるコイルエンド部32に接する側とは反対側の面に第1部分91aが固定された熱溶融性樹脂Pと絶縁部材91との一体物90を、熱溶融性樹脂Pが反コア側からコイルエンド部32に接するように配置する。これにより、図22に示すように、熱膨張性樹脂Qが膨張する温度範囲内で且つ熱溶融性樹脂P(第1熱溶融性樹脂P1及び第2熱溶融性樹脂P2)が溶融する温度範囲内の温度で、熱膨張性樹脂Q及び熱溶融性樹脂Pの双方を加熱することで、絶縁部材91の第1部分91aは、溶融後の熱溶融性樹脂Pによってコイルエンド部32に対して固定される。
図20に示すように、本実施形態に係る電機子の製造方法には、コイル配置工程S1と、樹脂配置工程S2(第1樹脂配置工程S21及び第2樹脂配置工程S22)と、加熱工程S3とが含まれる。加熱工程S3は、上記第1実施形態での第1加熱工程S31と同様に、熱膨張性樹脂Q及び熱溶融性樹脂P(ここでは、第1熱溶融性樹脂P1及び第2熱溶融性樹脂P2)を加熱し、熱膨張性樹脂Qを膨張させた後に硬化させると共に熱溶融性樹脂Pを溶融させた後に硬化させる工程である。本実施形態では、加熱工程S3では、熱膨張性樹脂Qが膨張する温度範囲内で且つ熱溶融性樹脂Pが溶融する温度範囲内の温度で、熱膨張性樹脂Q及び熱溶融性樹脂Pの双方を加熱する膨張/溶融工程S3aを実行した後、熱膨張性樹脂Qが硬化する温度範囲内で且つ熱溶融性樹脂Pが硬化する温度範囲内の温度で、熱膨張性樹脂Q及び熱溶融性樹脂Pの双方を加熱して硬化させる硬化工程S3bを実行する。すなわち、本実施形態では、加熱工程S3では、熱膨張性樹脂Qと熱溶融性樹脂Pとを共に加熱する。そして、本実施形態では、膨張/溶融工程S3aの実行中には、熱溶融性樹脂Pの溶融反応と熱膨張性樹脂Qの膨張反応とが並行して進行し、硬化工程S3bの実行中には、熱溶融性樹脂Pの硬化反応と熱膨張性樹脂Qの硬化反応とが並行して進行する。加熱工程S3は、第1樹脂配置工程S21と第2樹脂配置工程S22とを実行した後に実行される。よって、加熱工程S3を実行することで、コイルエンド33を構成するコイルエンド部32同士の固定及び絶縁部材91のコイルエンド部32に対する固定が、軸方向Lの両側で行われる。なお、図20では、第1樹脂配置工程S21の後に第2樹脂配置工程S22を実行する場合を例として示しているが、第1樹脂配置工程S21と第2樹脂配置工程S22とを同時に実行し、或いは、第2樹脂配置工程S22の後に第1樹脂配置工程S21を実行することも可能である。
そして、加熱工程S3は、第1樹脂配置工程S21で配置した絶縁部材91と第2樹脂配置工程S22で配置した絶縁部材91とのうちの少なくともコア10に対して下側に配置される方の絶縁部材91(以下、「下側絶縁部材」という。)を、コイルエンド部32に対して押し付けた状態で実行される。図21に示すように、本実施形態では、軸方向Lが鉛直方向Zと平行になるようにコア10を配置した状態で、加熱工程S3を実行する。そして、本実施形態では、下側絶縁部材のみ(ここでは、軸方向第2側L2のコイルエンド33に配置される絶縁部材91のみ)を、コイルエンド部32に対して押し付けた状態で、加熱工程S3を実行する。これにより、加熱工程S3の実行中に、下側絶縁部材とコイルエンド部32との間に存在する溶融状態の熱溶融性樹脂P(ここでは、第2熱溶融性樹脂P2)を、下側絶縁部材によって重力に抗してコイルエンド部32側に押し付けることができる。よって、溶融状態の熱溶融性樹脂Pをコイルエンド33を構成するコイルエンド部32同士の隙間に流入させるために重力を積極的に利用できない方のコイルエンド33(ここでは、軸方向第2側L2のコイルエンド33)についても、溶融状態の熱溶融性樹脂Pを、コイルエンド33を構成するコイルエンド部32同士の隙間に適切に流入させることが可能となっている。なお、加熱工程S3を、第1樹脂配置工程S21で配置した絶縁部材91と第2樹脂配置工程S22で配置した絶縁部材91とのうちの双方を、コイルエンド部32に対して押し付けた状態で実行することも可能である。
〔その他の実施形態〕
次に、電機子の製造方法及び電機子のその他の実施形態について説明する。
(1)上記の各実施形態では、樹脂配置工程S2で、コア10側とは反対側からコイルエンド部32に接するように熱溶融性樹脂Pを配置する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、樹脂配置工程S2で、径方向内側R1及び径方向外側R2の少なくとも一方からコイルエンド部32に接するように熱溶融性樹脂Pを配置する構成とすることもできる。このような構成の例を図23及び図24に示す。
図23は、樹脂配置工程S2で、径方向内側R1及び径方向外側R2の双方からコイルエンド部32に接するように熱溶融性樹脂P(第1熱溶融性樹脂P1及び第2熱溶融性樹脂P2)を配置する場合を例示している。すなわち、軸方向第1側L1のコイルエンド33には、コイルエンド部32に対して径方向内側R1から接する第1熱溶融性樹脂P1と、コイルエンド部32に対して径方向外側R2から接する第1熱溶融性樹脂P1とが配置され、軸方向第2側L2のコイルエンド33には、コイルエンド部32に対して径方向内側R1から接する第2熱溶融性樹脂P2と、コイルエンド部32に対して径方向外側R2から接する第2熱溶融性樹脂P2とが配置される。第1熱溶融性樹脂P1や第2熱溶融性樹脂P2は、例えば、周方向Cの全域に亘ってコイルエンド部32(コイルエンド33)に接するように配置される。
そして、軸心Aが鉛直方向Zに対して交差するように配置されたコア10を軸心A周りに回転させながら、加熱工程S3を実行する。図23に示す例では、軸心Aが鉛直方向Zに対して直角で交差するように(すなわち、軸心Aが水平方向Hと平行になるように)配置されたコア10を軸心A周りに回転させながら、加熱工程S3を実行する。コア10は、例えば、コア10を径方向内側R1から支持する支持機構に支持された状態で、当該支持機構によって軸心A回りに回転される。このようにコア10を軸心A周りに回転させながら加熱工程S3を実行することで、重力がコイルエンド部32に向かう側に作用する期間を、周方向Cの各位置に配置された熱溶融性樹脂Pに対して設けることが可能となり、周方向Cの各位置において、溶融状態の熱溶融性樹脂Pを、コイルエンド33を構成するコイルエンド部32同士の隙間に適切に流入させることが可能となる(図24参照)。
(2)上記第2の実施形態では、第1樹脂配置工程S21及び第2樹脂配置工程S22の実行後に、加熱工程S3を実行する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、上記第2の実施形態のように、絶縁部材91を備えた電機子1を製造する場合であっても、上記第1の実施形態のように、第1樹脂配置工程S21、第1加熱工程S31、第2樹脂配置工程S22、及び第2加熱工程S32を順に実行する構成とすることもできる。この場合、第1加熱工程S31や第2加熱工程S32において絶縁部材91をコイルエンド部32に対して押し付ける必要はないが、第1加熱工程S31や第2加熱工程S32において絶縁部材91をコイルエンド部32に対して押し付けてもよい。
(3)上記第2の実施形態では、樹脂配置工程S2では、熱溶融性樹脂Pと絶縁部材91との一体物90を、熱溶融性樹脂Pが反コア側からコイルエンド部32に接するように配置する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、絶縁部材91が熱溶融性樹脂Pとは別部材である構成とし、樹脂配置工程S2において、熱溶融性樹脂Pを、反コア側からコイルエンド部32に接するように配置すると共に、絶縁部材91を、第1部分91aが反コア側から熱溶融性樹脂Pに接するように配置する構成とすることもできる。
(4)上記の各実施形態では、樹脂配置工程S2(第1樹脂配置工程S21及び第2樹脂配置工程S22の双方)をコイル配置工程S1の後に実行する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、樹脂配置工程S2をコイル配置工程S1の前に実行する構成(すなわち、第1樹脂配置工程S21及び第2樹脂配置工程S22の少なくとも第1樹脂配置工程S21を、コイル配置工程S1の前に実行する構成)とすることもできる。例えば、コイル30が、コア10に対して配置される前にコア10に配置された状態と同じ形状に成形される場合に、このような構成とすることができる。
(5)上記の各実施形態では、コイル配置工程S1が部分膨張工程S12を備える構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、コイル配置工程S1が、部分膨張工程S12を備えない構成とすることもできる。例えば、シート部材配置工程S11において、突出部60にカフス部が形成されるように絶縁シート40をコア10に対して配置する場合には、カフス部によって絶縁シート40のスロット11からの抜け落ちを抑制することができるため、コイル配置工程S1が部分膨張工程S12を備えない構成とすることができる。また、このようにコイル配置工程S1が部分膨張工程S12を備えない構成において、シート部材配置工程S11を、膨張前の絶縁シート40をコア10に対して配置する工程ではなく、膨張前の絶縁シート40を、スロット11の内部に配置される前のスロット収容部31の周囲に配置する工程とし、スロット収容部配置工程S13において、スロット収容部31を、その周囲に配置された絶縁シート40と共にスロット11の内部に配置する構成とすることもできる。
(6)上記の各実施形態では、熱膨張性樹脂Qとして、シート状に成形されたシート部材(絶縁シート40)を用いる構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、熱膨張性樹脂Qとして塗布するタイプのものを用いることもできる。この場合、コイル配置工程S1を、例えば、スロット11の内面20に膨張前の熱膨張性樹脂Qを塗布した後、スロット収容部31をスロット11の内部に配置する工程とすることができる。また、コイル配置工程S1を、例えば、スロット収容部31の外面に膨張前の熱膨張性樹脂Qを塗布した後、スロット収容部31をスロット11の内部に配置する工程とすることができる。いずれの場合でも、コイル配置工程S1を実行することで、スロット収容部31とスロット11の内面20との間に膨張前の熱膨張性樹脂Qが配置されるように、コイル30がコア10に対して配置される。
(7)上記の各実施形態では、加熱工程(第1の実施形態での第1加熱工程S31、第2の実施形態での加熱工程S3)が、熱膨張性樹脂Qが膨張する温度範囲内で且つ熱溶融性樹脂Pが溶融する温度範囲内の温度で、熱膨張性樹脂Q及び熱溶融性樹脂Pの双方を加熱する工程(第1の実施形態での膨張/溶融工程S31a、第2の実施形態での膨張/溶融工程S3a)を含む構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、熱膨張性樹脂Qが膨張する温度範囲が、熱溶融性樹脂Pが溶融する温度範囲と重ならない場合等において、加熱工程が、熱膨張性樹脂Qが膨張する温度範囲内の温度で熱膨張性樹脂Qを加熱する膨張工程と、熱溶融性樹脂Pが溶融する温度範囲内の温度で熱溶融性樹脂Pを加熱する溶融工程とを備え、加熱工程において、膨張工程及び溶融工程の一方の実行後に他方を実行する構成とすることもできる。この場合、例えば、加熱により昇温している過程において、膨張工程及び溶融工程が連続的に実行される構成とすることもできる。
(8)上記の各実施形態では、加熱工程(第1の実施形態での第1加熱工程S31、第2の実施形態での加熱工程S3)が、熱膨張性樹脂Qが硬化する温度範囲内で且つ熱溶融性樹脂Pが硬化する温度範囲内の温度で、熱膨張性樹脂Q及び熱溶融性樹脂Pの双方を加熱して硬化させる工程(第1の実施形態での第1硬化工程S31b、第2実施形態での硬化工程S3b)を含む構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、熱膨張性樹脂Qが硬化する温度範囲が、熱溶融性樹脂Pが硬化する温度範囲と重ならない場合等において、加熱工程が、熱膨張性樹脂Qが硬化する温度範囲内の温度で熱膨張性樹脂Qを加熱して硬化させる硬化工程と、熱溶融性樹脂Pが硬化する温度範囲内の温度で熱溶融性樹脂Pを加熱して硬化させる硬化工程とを備え、加熱工程において、これら2つの硬化工程の一方の実行後に他方を実行する構成とすることもできる。
(9)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用すること(その他の実施形態として説明した実施形態同士の組み合わせを含む)も可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した電機子の製造方法及び電機子の概要について説明する。
スロット(11)を有するコア(10)と、前記スロット(11)の内部に配置されるスロット収容部(31)及び前記スロット(11)の外部に配置されるコイルエンド部(32)を有するコイル(30)と、を備えた電機子(1)の製造方法であって、加熱により膨張する熱膨張性樹脂(Q)を用い、前記スロット収容部(31)と前記スロット(11)の内面(20)との間に膨張前の前記熱膨張性樹脂(Q)が配置されるように、前記コイル(30)を前記コア(10)に対して配置するコイル配置工程(S1)と、前記コイル配置工程(S1)の前又は後に、加熱により溶融する熱溶融性樹脂(P)を用い、前記コイルエンド部(32)に接するように溶融前の前記熱溶融性樹脂(P)を配置する樹脂配置工程(S2)と、前記コイル配置工程(S1)及び前記樹脂配置工程(S2)の後に、前記熱膨張性樹脂(Q)及び前記熱溶融性樹脂(P)を加熱し、前記熱膨張性樹脂(Q)を膨張させた後に硬化させると共に前記熱溶融性樹脂(P)を溶融させた後に硬化させる加熱工程(S3,S31)と、を備える。
この構成によれば、加熱工程(S3,S31)を行って、スロット収容部(31)とスロット(11)の内面(20)との間に配置されている膨張前の熱膨張性樹脂(Q)を膨張させた後に硬化させることで、スロット収容部(31)を、膨張後(膨張後に硬化した状態)の熱膨張性樹脂(Q)によりスロット(11)の内面(20)に対して固定することができる。また、加熱工程(S3,S31)を行って、コイルエンド部(32)に接するように配置されている溶融前の熱溶融性樹脂(P)を溶融させた後に硬化させることで、溶融状態の熱溶融性樹脂(P)を、コイルエンド(33)を構成するコイルエンド部(32)同士の隙間に流入させて、コイルエンド部(32)同士を溶融後(溶融後に硬化した状態)の熱溶融性樹脂(P)により固定することができる。すなわち、加熱工程(S3,S31)を行うことで、スロット収容部(31)のコア(10)に対する固定とコイルエンド(33)を構成するコイルエンド部(32)同士の固定との双方を行うことができる。
このように、上記の構成によれば、比較的簡素な工程でスロット収容部(31)のコア(10)に対する固定とコイルエンド(33)を構成するコイルエンド部(32)同士の固定との双方を行うことが可能となる。
ここで、前記加熱工程(S3,S31)では、前記熱膨張性樹脂(Q)と前記熱溶融性樹脂(P)とを共に加熱すると好適である。
この構成によれば、加熱工程(S3,S31)において熱膨張性樹脂(Q)と熱溶融性樹脂(P)とを個別に加熱する場合に比べて、加熱工程(S3,S31)に要する時間の短縮を図ることができる。また、熱膨張性樹脂(Q)を加熱する装置と熱溶融性樹脂(P)を加熱する装置とを共通化することで、設備コストの低減を図ることもできる。
また、前記熱膨張性樹脂(Q)は、加熱により軟化した後に膨張する樹脂であり、前記熱溶融性樹脂(P)の溶融開始温度が、前記熱膨張性樹脂(Q)の軟化開始温度よりも高いと好適である。
この構成によれば、加熱工程(S3,S31)の実行時に、熱溶融性樹脂(P)の溶融反応と熱膨張性樹脂(Q)の膨張反応とを並行して進行させることができるため、溶融反応後に起こる熱溶融性樹脂(P)の硬化反応と、膨張反応後に起こる熱膨張性樹脂(Q)の硬化反応とを並行して進行させることも可能となる。これにより、比較的長い時間を要する熱膨張性樹脂(Q)の硬化工程と、比較的長い時間を要する熱溶融性樹脂(P)の硬化工程とを、共通の工程(S3b,S31b)として、加熱工程(S3,S31)に要する時間の短縮を図ることができる。
また、前記熱膨張性樹脂(Q)及び前記熱溶融性樹脂(P)の双方が、熱硬化性樹脂を含み、前記加熱工程(S3,S31)は、前記熱膨張性樹脂(Q)が硬化する温度範囲内で且つ前記熱溶融性樹脂(P)が硬化する温度範囲内の温度で、前記熱膨張性樹脂(Q)及び前記熱溶融性樹脂(P)の双方を加熱して硬化させる工程(S3b,S31b)を含むと好適である。
この構成によれば、熱膨張性樹脂(Q)を膨張させて硬化させる過程の中で比較的長い時間を要する硬化工程と、熱溶融性樹脂(P)を溶融させて硬化させる過程の中で比較的長い時間を要する硬化工程とを、共通の工程(S3b,S31b)とすることができる。よって、これら2つの硬化工程が互いに別のタイミングで行われる場合に比べて、加熱工程(S3,S31)に要する時間の短縮を図ることができる。
また、前記加熱工程(S3,S31)は、前記熱膨張性樹脂(Q)が膨張する温度範囲内で且つ前記熱溶融性樹脂(P)が溶融する温度範囲内の温度で、前記熱膨張性樹脂(Q)及び前記熱溶融性樹脂(P)の双方を加熱する工程(S3a,S31a)を含むと好適である。
この構成によれば、熱膨張性樹脂(Q)を膨張させる膨張工程と、熱溶融性樹脂(P)を溶融させる溶融工程とを、共通の工程(S3a,S31a)とすることができる。よって、これらの膨張工程及び溶融工程が互いに別のタイミングで行われる場合に比べて、加熱工程(S3,S31)に要する時間の短縮を図ることができる。
また、前記電機子(1)は、前記熱溶融性樹脂(P)よりも融点が高く且つ電気的絶縁性を有する部材であって、前記コア(10)側とは反対側である反コア側から前記コイルエンド部(32)を覆う本体部(91a)を有する絶縁部材(91)を備え、前記樹脂配置工程(S2)では、前記熱溶融性樹脂(P)における前記コイルエンド部(32)に接する側とは反対側の面に前記本体部(91a)が固定された前記熱溶融性樹脂(P)と前記絶縁部材(91)との一体物(90)を、前記熱溶融性樹脂(P)が前記反コア側から前記コイルエンド部(32)に接するように配置し、又は、前記熱溶融性樹脂(P)を、前記反コア側から前記コイルエンド部(32)に接するように配置すると共に、前記絶縁部材(91)を、前記本体部(91a)が前記反コア側から前記熱溶融性樹脂(P)に接するように配置すると好適である。
この構成によれば、加熱工程(S3,S31)を実行することで、絶縁部材(91)の本体部(91a)を、溶融後の熱溶融性樹脂(P)によってコイルエンド部(32)に対して固定することができる。よって、絶縁部材(91)を備えた電機子(1)を製造する場合に、絶縁部材(91)を電機子(1)に対して固定するための工程を加熱工程(S3,S31)と共通化して、製造工程の短縮を図ることができる。なお、絶縁部材(91)を備えた電機子(1)は、絶縁部材(91)を備えない電機子(1)に比べて、コイルエンド部(32)と他部材(ケースの内面等)との間に必要となる絶縁距離を短く抑えることができるという利点がある。
また、前記コア(10)は、軸方向(L)の両端部に開口部(12)を有する前記スロット(11)が周方向(C)に複数配置された円筒状に形成され、前記コイル配置工程(S1)では、前記軸方向(L)の両側のそれぞれにおいて前記コイルエンド部(32)が前記開口部(12)から前記軸方向(L)の外側に突出するように、前記コイル(30)を前記コア(10)に対して配置し、前記軸方向(L)の一方側の前記コイルエンド部(32)を対象とする前記樹脂配置工程(S2)である第1樹脂配置工程(S21)と、前記軸方向(L)の他方側の前記コイルエンド部(32)を対象とする前記樹脂配置工程(S2)である第2樹脂配置工程(S22)とを実行した後、前記第1樹脂配置工程(S21)で配置した前記絶縁部材(91)と前記第2樹脂配置工程(S22)で配置した前記絶縁部材(91)とのうちの少なくとも前記コア(10)に対して下側に配置される方の前記絶縁部材(91)を、前記コイルエンド部(32)に対して押し付けた状態で、前記加熱工程(S3)を実行すると好適である。
この構成によれば、加熱工程(S3)が、第1樹脂配置工程(S21)と第2樹脂配置工程(S22)とを実行した後に実行されるため、加熱工程(S3)を実行することで、コイルエンド(33)を構成するコイルエンド部(32)同士の固定を軸方向(L)の両側で行うことができる。よって、加熱工程(S3)の実行によりコイルエンド部(32)同士の固定が軸方向(L)の一方側でのみ行われる場合に比べて、製造工程の短縮を図ることができる。
なお、上記の構成によれば、加熱工程(S3)を実行する際には、第1樹脂配置工程(S21)で配置した絶縁部材(91)と第2樹脂配置工程(S22)で配置した絶縁部材(91)とのうちの少なくともコア(10)に対して下側に配置される方の絶縁部材(91)(以下、「下側絶縁部材」という。)が、コイルエンド部(32)に対して押し付けられた状態とされる。そのため、加熱工程(S3)の実行中に、下側絶縁部材とコイルエンド部(32)との間に存在する溶融状態の熱溶融性樹脂(P)を、下側絶縁部材によって重力に抗してコイルエンド部(32)側に押し付けることができる。よって、溶融状態の熱溶融性樹脂(P)をコイルエンド(33)を構成するコイルエンド部(32)同士の隙間に流入させるために重力を積極的に利用できない方のコイルエンド(33)についても、溶融状態の熱溶融性樹脂(P)を、コイルエンド(33)を構成するコイルエンド部(32)同士の隙間に適切に流入させることができる。従って、コイルエンド(33)の鉛直方向(Z)の向きにかかわらず、コイルエンド(33)を構成するコイルエンド部(32)同士を溶融後の熱溶融性樹脂(P)により適切に固定することができる。
また、前記コア(10)は、軸方向(L)の両端部に開口部(12)を有する前記スロット(11)が周方向(C)に複数配置された円筒状に形成され、前記コイル配置工程(S1)では、前記軸方向(L)の両側のそれぞれにおいて前記コイルエンド部(32)が前記開口部(12)から前記軸方向(L)の外側に突出するように、前記コイル(30)を前記コア(10)に対して配置し、前記樹脂配置工程(S2)では、前記コア(10)側とは反対側から前記コイルエンド部(32)に接するように前記熱溶融性樹脂(P)を配置し、前記軸方向(L)の一方側の前記コイルエンド部(32)を対象とする前記樹脂配置工程(S2)である第1樹脂配置工程(S21)の実行後、前記第1樹脂配置工程(S21)で配置した前記熱溶融性樹脂(P)である第1熱溶融性樹脂(P1)が前記コア(10)に対して上側に配置された状態で前記加熱工程(S31)を実行し、前記加熱工程(S31)の実行後、前記軸方向(L)の他方側の前記コイルエンド部(32)を対象とする前記樹脂配置工程(S2)である第2樹脂配置工程(S22)を実行し、前記第2樹脂配置工程(S22)の実行後、前記第2樹脂配置工程(S22)で配置した前記熱溶融性樹脂(P)である第2熱溶融性樹脂(P2)が前記コア(10)に対して上側に配置された状態で、前記第2熱溶融性樹脂(P2)を加熱して前記第2熱溶融性樹脂(P2)を溶融させると好適である。
この構成によれば、加熱工程(S31)を実行することで、軸方向(L)の一方側のコイルエンド(33)について、溶融状態の第1熱溶融性樹脂(P1)を、重力を利用してコイルエンド(33)を構成するコイルエンド部(32)同士の隙間に流入させて、コイルエンド部(32)同士を溶融後の第1熱溶融性樹脂(P1)により固定することができる。また、第2熱溶融性樹脂(P2)を加熱して第2熱溶融性樹脂(P2)を溶融させる工程(S32)を実行することで、軸方向(L)の他方側のコイルエンド(33)について、溶融状態の第2熱溶融性樹脂(P2)を、重力を利用してコイルエンド(33)を構成するコイルエンド部(32)同士の隙間に流入させて、コイルエンド部(32)同士を溶融後の第2熱溶融性樹脂(P2)により固定することができる。
このように、上記の構成によれば、軸方向(L)の両側のコイルエンド(33)について、溶融状態の熱溶融性樹脂(P)を、重力を利用してコイルエンド(33)を構成するコイルエンド部(32)同士の隙間に流入させることができる。そのため、軸方向(L)の両側において、コイルエンド(33)を構成するコイルエンド部(32)同士を溶融後の熱溶融性樹脂(P)により適切に固定することができる。
また、前記コア(10)は、軸方向(L)の両端部に開口部(12)を有する前記スロット(11)が周方向(C)に複数配置された円筒状に形成され、前記コイル配置工程(S1)では、前記軸方向(L)の両側のそれぞれにおいて前記コイルエンド部(32)が前記開口部(12)から前記軸方向(L)の外側に突出するように、前記コイル(30)を前記コア(10)に対して配置し、前記樹脂配置工程(S2)では、径方向内側(R1)及び径方向外側(R2)の少なくとも一方から前記コイルエンド部(32)に接するように前記熱溶融性樹脂(P)を配置し、軸心(A)が鉛直方向(Z)に対して交差するように配置された前記コア(10)を前記軸心(A)周りに回転させながら、前記加熱工程(S3)を実行すると好適である。
この構成によれば、加熱工程(S3)の実行中にコア(10)が軸心(A)周りに回転されるため、重力がコイルエンド部(32)に向かう側に作用する期間を、周方向(C)の各位置に配置された熱溶融性樹脂(P)に対して設けることが可能となる。よって、周方向(C)の各位置において、溶融状態の熱溶融性樹脂(P)を、コイルエンド(33)を構成するコイルエンド部(32)同士の隙間に適切に流入させることが可能となり、周方向(C)の全域に亘ってコイルエンド(33)を構成するコイルエンド部(32)同士を溶融後の熱溶融性樹脂(P)により適切に固定することが可能となる。
また、前記熱膨張性樹脂(Q)として、シート状に成形されたシート部材(40)を用い、前記コイル配置工程(S1)は、前記スロット(11)の内面(20)に沿って配置されるスロット内配置部(50)と、前記スロット(11)の開口部(12)から前記スロット(11)の外部に突出する突出部(60)とを有するように、膨張前の前記シート部材(40)を前記コア(10)に対して配置するシート部材配置工程(S11)と、前記シート部材配置工程(S11)の後、前記シート部材(40)における前記開口部(12)の開口縁(13)に沿う対象部分(44)を加熱して膨張させる部分膨張工程(S12)と、前記部分膨張工程(S12)の後、前記スロット収容部(31)と前記スロット(11)の内面(20)との間に前記スロット内配置部(50)が配置されるように、前記スロット収容部(31)を前記スロット(11)の内部に配置するスロット収容部配置工程(S13)と、を備えると好適である。
この構成によれば、シート部材配置工程(S11)とスロット収容部配置工程(S13)との間に部分膨張工程(S12)が実行され、部分膨張工程(S12)では、シート部材(40)におけるスロット(11)の開口部(12)の開口縁(13)に沿う対象部分(44)が膨張される。よって、部分膨張工程(S12)を実行することで、コア(10)における開口縁(13)の周囲の端面である開口端面(10c)に接触する段差部(46)を、シート部材(40)に形成することができ、部分膨張工程(S12)の後にスロット収容部配置工程(S13)を実行する際に、段差部(46)と開口端面(10c)との間に作用する摩擦力又は接着力によって、シート部材(40)のコア(10)に対する移動を規制することができる。
このように、上記の構成によれば、シート部材(40)のコア(10)に対する移動が規制された状態で、スロット収容部配置工程(S13)を実行することができる。よって、スロット収容部配置工程(S13)を実行する際に、スロット収容部(31)とスロット(11)の内面(20)との間にシート部材(40)のスロット内配置部(50)が配置されるようにコイル(30)をコア(10)に対して配置することが容易となる。
また、前記コイル(30)は、複数の線状導体(3)を前記スロット(11)の外部において接合して構成され、前記樹脂配置工程(S2)では、前記コイルエンド部(32)における前記線状導体(3)同士の接合部(4)に接するように、溶融前の前記熱溶融性樹脂(P)を配置すると好適である。
この構成によれば、加熱工程(S3,S31)を行って溶融前の熱溶融性樹脂(P)を溶融させた後に硬化させることで、コイルエンド部(32)同士を溶融後の熱溶融性樹脂(P)により固定することに加えて、溶融後の熱溶融性樹脂(P)で接合部(4)を覆って、接合部(4)の電気的絶縁性を確保することも可能となる。よって、接合部(4)の電気的絶縁性を確保するための工程を加熱工程(S3,S31)と共通化して、製造工程の短縮を図ることができる。
また、前記コイル(30)は、延在方向に直交する断面形状が矩形状の線状導体(3)を用いて構成され、複数本の前記スロット収容部(31)は、前記スロット(11)の内部に、一列又は複数列に並んで整列配置され、前記コイルエンド部(32)のそれぞれは、前記コア(10)における複数の前記スロット(11)の並び方向(C)に隣接する他の前記コイルエンド部(32)と前記並び方向(C)の配置領域が一部重複するように配置されていると好適である。
このようにコイルエンド部(32)が配置される場合には、コイルエンド(33)に形成されるコイルエンド部(32)同士の隙間が狭くなりやすく、コイルエンド(33)の外側からスロット(11)の内部まで溶融状態の樹脂を流動させることが困難となる場合がある。この点に関して、本開示に係る技術では、コイルエンド(33)の外側からスロット(11)の内部まで溶融状態の樹脂を流動させる必要はなく、スロット収容部(31)とスロット(11)の内面(20)との間に配置された熱膨張性樹脂(Q)によって、スロット収容部(31)をコア(10)に対して固定することができる。この際、上記の構成では、断面形状が矩形状の複数本のスロット収容部(31)が、スロット(11)の内部に整列配置されるため、スロット収容部(31)が細線(細い丸線)により構成される場合に比べてスロット(11)の内部の隙間を少なく抑えやすく、複数本のスロット収容部(31)を熱膨張性樹脂(Q)によって適切に固定することができる。よって、本開示に係る技術は、コイル(30)が、延在方向に直交する断面形状が矩形状の線状導体(3)を用いて構成されると共に、スロット収容部(31)及びコイルエンド部(32)が上記のように配置される場合に特に適している。
スロット(11)を有するコア(10)と、前記スロット(11)の内部に配置されるスロット収容部(31)及び前記スロット(11)の外部に配置されるコイルエンド部(32)を有するコイル(30)と、を備えた電機子(1)であって、前記スロット収容部(31)と前記スロット(11)の内面との間に、加熱により膨張する熱膨張性樹脂(Q)が、膨張後に硬化した状態で配置され、前記コイルエンド部(32)同士の隙間に、加熱により溶融する熱溶融性樹脂(P)が、溶融後に硬化した状態で配置されている。
この構成によれば、スロット収容部(31)がコア(10)に対して固定されているだけでなく、コイルエンド(33)を構成するコイルエンド部(32)同士も固定されているため、コイルエンド(33)の振動を小さく抑えることが可能な電機子(1)を実現することができる。
また、上記の構成では、スロット収容部(31)をコア(10)に対して固定するための熱膨張性樹脂(Q)と、コイルエンド部(32)同士を固定するための熱溶融性樹脂(P)との双方を、硬化するまでの反応が加熱により進行する樹脂とすることができる。そのため、電機子(1)の製造過程において、スロット収容部(31)のコア(10)に対する固定とコイルエンド部(32)同士の固定との双方を、同じ種類の工程である加熱工程(S3,S31)で行うことができる。すなわち、この電機子(1)は、比較的簡素な工程で、スロット収容部(31)のコア(10)に対する固定とコイルエンド(33)を構成するコイルエンド部(32)同士の固定との双方を行うことが可能となっている。
ここで、前記熱溶融性樹脂(P)よりも融点が高く且つ電気的絶縁性を有する絶縁部材(91)を備え、前記絶縁部材(91)は、前記コア(10)側とは反対側である反コア側から前記コイルエンド部(32)を覆う本体部(91a)を有し、前記本体部(91a)は、前記熱溶融性樹脂(P)によって前記コイルエンド部(32)に対して固定されていると好適である。
この構成によれば、電機子(1)が絶縁部材(91)を備えない場合に比べて、コイルエンド部(32)と他部材(ケースの内面等)との間に必要となる絶縁距離を短く抑えることができる。
また、上記の構成では、コイルエンド部(32)同士を固定するための熱溶融性樹脂(P)によって、絶縁部材(91)がコイルエンド部(32)に対して固定されている。よって、電機子(1)の製造過程において、絶縁部材(91)を電機子(1)に対して固定するための工程を加熱工程(S3,S31)と共通化して、製造工程の短縮を図ることができる。
また、前記熱膨張性樹脂(Q)は、前記スロット(11)の内面に沿って配置されたスロット内配置部(50)と、前記スロット(11)の開口部(12)から前記スロット(11)の外部に突出した突出部(60)とを有すると共に、前記開口部(12)の開口縁(13)に沿って、前記開口縁(13)から離れる側に窪む凹部(45)を有していると好適である。
この構成によれば、熱膨張性樹脂(Q)が振動等によってコア(10)に対して移動することを、開口縁(13)に対する凹部(45)の引っ掛かりにより規制することができる。従って、突出部(60)に折り返し部が形成されない場合でも、熱膨張性樹脂(Q)のコア(10)に対する移動を規制することが可能となる。
また、前記コイル(30)は、複数の線状導体(3)を前記スロット(11)の外部において接合して構成され、前記コイルエンド部(32)における前記線状導体(3)同士の接合部(4)が、前記熱溶融性樹脂(P)で覆われていると好適である。
この構成によれば、コイルエンド部(32)同士を固定するための熱溶融性樹脂(P)を利用して、接合部(4)の電気的絶縁性を確保することができるため、製造コストの低減を図ることができる。
また、前記コイル(30)は、延在方向に直交する断面形状が矩形状の線状導体(3)を用いて構成され、複数本の前記スロット収容部(31)は、前記スロット(11)の内部に、一列又は複数列に並んで整列配置され、前記コイルエンド部(32)のそれぞれは、前記コア(10)における複数の前記スロット(11)の並び方向(C)に隣接する他の前記コイルエンド部(32)と前記並び方向(C)の配置領域が一部重複するように配置されていると好適である。
この構成によれば、断面形状が矩形状の複数本のスロット収容部(31)が、スロット(11)の内部に整列配置されるため、スロット収容部(31)が細線(細い丸線)により構成される場合に比べてスロット(11)の内部の隙間を少なく抑えやすく、複数本のスロット収容部(31)を熱膨張性樹脂(Q)によって適切に固定することができる。
なお、上記の構成のようにコイルエンド部(32)が配置される場合には、コイルエンド(33)に形成されるコイルエンド部(32)同士の隙間が狭くなりやすく、コイルエンド(33)の外側からスロット(11)の内部まで溶融状態の樹脂を流動させることが困難となる場合がある。この点に関して、本開示に係る技術では、スロット収容部(31)をコア(10)に対して固定するための樹脂として、熱溶融性樹脂(P)ではなく熱膨張性樹脂(Q)を用いる。そのため、コイルエンド(33)の外側からスロット(11)の内部まで溶融状態の樹脂を流動させる必要はなく、スロット収容部(31)とスロット(11)の内面(20)との間に配置される熱膨張性樹脂(Q)によって、スロット収容部(31)をコア(10)に対して固定することができる。よって、本開示に係る技術は、コイル(30)が、延在方向に直交する断面形状が矩形状の線状導体(3)を用いて構成されると共に、スロット収容部(31)及びコイルエンド部(32)が上記のように配置される場合に特に適している。
本開示に係る電機子の製造方法及び電機子は、上述した各効果のうち、少なくとも1つを奏することができれば良い。
1:電機子
3:線状導体
4:接合部
10:コア
11:スロット
12:軸方向開口部(開口部)
13:開口縁
20:内面
30:コイル
31:スロット収容部
32:コイルエンド部
40:絶縁シート(シート部材)
44:対象部分
45:凹部
50:スロット内配置部
60:突出部
90:一体物
91:絶縁部材
91a:第1部分(本体部)
S1:コイル配置工程
S11:シート部材配置工程
S12:部分膨張工程
S13:スロット収容部配置工程
S2:樹脂配置工程
S21:第1樹脂配置工程
S22:第2樹脂配置工程
S3:加熱工程
S31:第1加熱工程(加熱工程)
A:軸心
C:周方向(並び方向)
L:軸方向
P:熱溶融性樹脂
P1:第1熱溶融性樹脂
P2:第2熱溶融性樹脂
Q:熱膨張性樹脂
R1:径方向内側
R2:径方向外側
Z:鉛直方向

Claims (17)

  1. スロットを有するコアと、前記スロットの内部に配置されるスロット収容部及び前記スロットの外部に配置されるコイルエンド部を有するコイルと、を備えた電機子の製造方法であって、
    加熱により膨張する熱膨張性樹脂を用い、前記スロット収容部と前記スロットの内面との間に膨張前の前記熱膨張性樹脂が配置されるように、前記コイルを前記コアに対して配置するコイル配置工程と、
    前記コイル配置工程の前又は後に、加熱により溶融する熱溶融性樹脂を用い、前記コイルエンド部に接するように溶融前の前記熱溶融性樹脂を配置する樹脂配置工程と、
    前記コイル配置工程及び前記樹脂配置工程の後に、前記熱膨張性樹脂及び前記熱溶融性樹脂を加熱し、前記熱膨張性樹脂を膨張させた後に硬化させると共に前記熱溶融性樹脂を溶融させた後に硬化させる加熱工程と、を備える、電機子の製造方法。
  2. 前記加熱工程では、前記熱膨張性樹脂と前記熱溶融性樹脂とを共に加熱する、請求項1に記載の電機子の製造方法。
  3. 前記熱膨張性樹脂は、加熱により軟化した後に膨張する樹脂であり、
    前記熱溶融性樹脂の溶融開始温度が、前記熱膨張性樹脂の軟化開始温度よりも高い、請求項1又は2に記載の電機子の製造方法。
  4. 前記熱膨張性樹脂及び前記熱溶融性樹脂の双方が、熱硬化性樹脂を含み、
    前記加熱工程は、前記熱膨張性樹脂が硬化する温度範囲内で且つ前記熱溶融性樹脂が硬化する温度範囲内の温度で、前記熱膨張性樹脂及び前記熱溶融性樹脂の双方を加熱して硬化させる工程を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の電機子の製造方法。
  5. 前記加熱工程は、前記熱膨張性樹脂が膨張する温度範囲内で且つ前記熱溶融性樹脂が溶融する温度範囲内の温度で、前記熱膨張性樹脂及び前記熱溶融性樹脂の双方を加熱する工程を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の電機子の製造方法。
  6. 前記電機子は、前記熱溶融性樹脂よりも融点が高く且つ電気的絶縁性を有する部材であって、前記コア側とは反対側である反コア側から前記コイルエンド部を覆う本体部を有する絶縁部材を備え、
    前記樹脂配置工程では、
    前記熱溶融性樹脂における前記コイルエンド部に接する側とは反対側の面に前記本体部が固定された前記熱溶融性樹脂と前記絶縁部材との一体物を、前記熱溶融性樹脂が前記反コア側から前記コイルエンド部に接するように配置し、又は、
    前記熱溶融性樹脂を、前記反コア側から前記コイルエンド部に接するように配置すると共に、前記絶縁部材を、前記本体部が前記反コア側から前記熱溶融性樹脂に接するように配置する、請求項1から5のいずれか一項に記載の電機子の製造方法。
  7. 前記コアは、軸方向の両端部に開口部を有する前記スロットが周方向に複数配置された円筒状に形成され、
    前記コイル配置工程では、前記軸方向の両側のそれぞれにおいて前記コイルエンド部が前記開口部から前記軸方向の外側に突出するように、前記コイルを前記コアに対して配置し、
    前記軸方向の一方側の前記コイルエンド部を対象とする前記樹脂配置工程である第1樹脂配置工程と、前記軸方向の他方側の前記コイルエンド部を対象とする前記樹脂配置工程である第2樹脂配置工程とを実行した後、前記第1樹脂配置工程で配置した前記絶縁部材と前記第2樹脂配置工程で配置した前記絶縁部材とのうちの少なくとも前記コアに対して下側に配置される方の前記絶縁部材を、前記コイルエンド部に対して押し付けた状態で、前記加熱工程を実行する、請求項6に記載の電機子の製造方法。
  8. 前記コアは、軸方向の両端部に開口部を有する前記スロットが周方向に複数配置された円筒状に形成され、
    前記コイル配置工程では、前記軸方向の両側のそれぞれにおいて前記コイルエンド部が前記開口部から前記軸方向の外側に突出するように、前記コイルを前記コアに対して配置し、
    前記樹脂配置工程では、前記コア側とは反対側から前記コイルエンド部に接するように前記熱溶融性樹脂を配置し、
    前記軸方向の一方側の前記コイルエンド部を対象とする前記樹脂配置工程である第1樹脂配置工程の実行後、前記第1樹脂配置工程で配置した前記熱溶融性樹脂である第1熱溶融性樹脂が前記コアに対して上側に配置された状態で前記加熱工程を実行し、
    前記加熱工程の実行後、前記軸方向の他方側の前記コイルエンド部を対象とする前記樹脂配置工程である第2樹脂配置工程を実行し、
    前記第2樹脂配置工程の実行後、前記第2樹脂配置工程で配置した前記熱溶融性樹脂である第2熱溶融性樹脂が前記コアに対して上側に配置された状態で、前記第2熱溶融性樹脂を加熱して前記第2熱溶融性樹脂を溶融させる、請求項1から6のいずれか一項に記載の電機子の製造方法。
  9. 前記コアは、軸方向の両端部に開口部を有する前記スロットが周方向に複数配置された円筒状に形成され、
    前記コイル配置工程では、前記軸方向の両側のそれぞれにおいて前記コイルエンド部が前記開口部から前記軸方向の外側に突出するように、前記コイルを前記コアに対して配置し、
    前記樹脂配置工程では、径方向内側及び径方向外側の少なくとも一方から前記コイルエンド部に接するように前記熱溶融性樹脂を配置し、
    軸心が鉛直方向に対して交差するように配置された前記コアを前記軸心周りに回転させながら、前記加熱工程を実行する、請求項1から5のいずれか一項に記載の電機子の製造方法。
  10. 前記熱膨張性樹脂として、シート状に成形されたシート部材を用い、
    前記コイル配置工程は、
    前記スロットの内面に沿って配置されるスロット内配置部と、前記スロットの開口部から前記スロットの外部に突出する突出部とを有するように、膨張前の前記シート部材を前記コアに対して配置するシート部材配置工程と、
    前記シート部材配置工程の後、前記シート部材における前記開口部の開口縁に沿う対象部分を加熱して膨張させる部分膨張工程と、
    前記部分膨張工程の後、前記スロット収容部と前記スロットの内面との間に前記スロット内配置部が配置されるように、前記スロット収容部を前記スロットの内部に配置するスロット収容部配置工程と、を備える、請求項1から9のいずれか一項に記載の電機子の製造方法。
  11. 前記コイルは、複数の線状導体を前記スロットの外部において接合して構成され、
    前記樹脂配置工程では、前記コイルエンド部における前記線状導体同士の接合部に接するように、溶融前の前記熱溶融性樹脂を配置する、請求項1から10のいずれか一項に記載の電機子の製造方法。
  12. 前記コイルは、延在方向に直交する断面形状が矩形状の線状導体を用いて構成され、
    複数本の前記スロット収容部は、前記スロットの内部に、一列又は複数列に並んで整列配置され、
    前記コイルエンド部のそれぞれは、前記コアにおける複数の前記スロットの並び方向に隣接する他の前記コイルエンド部と前記並び方向の配置領域が一部重複するように配置されている、請求項1から11のいずれか一項に記載の電機子の製造方法。
  13. スロットを有するコアと、前記スロットの内部に配置されるスロット収容部及び前記スロットの外部に配置されるコイルエンド部を有するコイルと、を備えた電機子であって、
    前記スロット収容部と前記スロットの内面との間に、加熱により膨張する熱膨張性樹脂が、膨張後に硬化した状態で配置され、
    前記コイルエンド部同士の隙間に、加熱により溶融する熱溶融性樹脂が、溶融後に硬化した状態で配置されている、電機子。
  14. 前記熱溶融性樹脂よりも融点が高く且つ電気的絶縁性を有する絶縁部材を備え、
    前記絶縁部材は、前記コア側とは反対側である反コア側から前記コイルエンド部を覆う本体部を有し、
    前記本体部は、前記熱溶融性樹脂によって前記コイルエンド部に対して固定されている、請求項13に記載の電機子。
  15. 前記熱膨張性樹脂は、前記スロットの内面に沿って配置されたスロット内配置部と、前記スロットの開口部から前記スロットの外部に突出した突出部とを有すると共に、前記開口部の開口縁に沿って、前記開口縁から離れる側に窪む凹部を有している、請求項13又は14に記載の電機子。
  16. 前記コイルは、複数の線状導体を前記スロットの外部において接合して構成され、
    前記コイルエンド部における前記線状導体同士の接合部が、前記熱溶融性樹脂で覆われている、請求項13から15のいずれか一項に記載の電機子。
  17. 前記コイルは、延在方向に直交する断面形状が矩形状の線状導体を用いて構成され、
    複数本の前記スロット収容部は、前記スロットの内部に、一列又は複数列に並んで整列配置され、
    前記コイルエンド部のそれぞれは、前記コアにおける複数の前記スロットの並び方向に隣接する他の前記コイルエンド部と前記並び方向の配置領域が一部重複するように配置されている、請求項13から16のいずれか一項に記載の電機子。
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