JPWO2018139659A1 - ストラドルドビークル - Google Patents

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Abstract

ストラドルドビークルにおいて、軽量化及び耐久性の両立を図りつつ、繊維強化樹脂製の部品を採用可能な構成を得る。車両1は、樹脂と該樹脂を強化する炭素繊維とを含む炭素繊維層22a,22dを有し且つ少なくとも一部が車両1の左右方向の外表面を構成する、サイドカバー22を備える。サイドカバー22は、車両1の内外方向において、炭素繊維層22a,22dの最外層と車両1の外表面との間に、前記樹脂と一体形成され、且つ、前記外表面が擦れた際に磨耗する外側樹脂層22b,22eを有する。外側樹脂層22b,22eは、車両1を左右方向から見て、車両1の左右方向の厚みが相対的に大きい部分と小さい部分とを含む。

Description

本発明は、ストラドルドビークルに関する。
ストラドルドビークルの軽量化が要求されている。ストラドルドビークルの軽量化を図るために、例えば、繊維強化樹脂によって構成された部品を備えたストラドルドビークルが提案されている。繊維強化樹脂によって構成された部品を備えたストラドルドビークルとして、例えば特許文献1に開示されている自動二輪車が知られている。
前記特許文献1に開示されている自動二輪車は、アウターカウルの接合端部に、該アウターカウルの車両内方に配置されるインナーカウルの接合端部が接合されたカウル構造を有する。このカウル構造では、アウターカウルがシート状のカーボン繊維によって強化された樹脂からなり、インナーカウルが合成樹脂のインジェクション成形により形成されている。
前記特許文献1に開示されている構成では、アウターカウルの強度増大を図りつつ全体の軽量化を図ることができる。
特開2005−271849号公報
本発明者は、ストラドルドビークルの部品を繊維強化樹脂によって構成することについて、軽量化だけではなく耐久性の観点からも検討した。その結果、軽量化及び耐久性の両方を考慮した場合、ストラドルドビークルにおける繊維強化樹脂製の部品の採用が難しいことが分かった。
本発明は、ストラドルドビークルにおいて、軽量化及び耐久性の両立を図りつつ、繊維強化樹脂製の部品を採用可能な構成を得ることを目的とする。
本発明者は、鋭意検討の結果、軽量化及び耐久性を考慮した場合、ストラドルドビークルにおける繊維強化樹脂製の部品の採用が難しいことが分かった。
その理由は、以下のとおりである。
まず、本発明者は、ストラドルドビークルに多くの繊維強化樹脂製の部品を採用することにより、車両を軽量化できると考えた。そのため、本発明者は、ストラドルドビークルの様々な部品を、繊維強化樹脂製の部品に置き換えることを検討した。その検討の過程において、本発明者は、繊維強化樹脂製の部品の耐久性について検討した。検討の結果、繊維強化樹脂製の部品が磨耗した場合、内部の繊維が露出することが分かった。
これに対し、本発明者は、繊維強化樹脂製の部品の耐久性を確保できるように、該部品の表面に塗装を厚く塗布することを考えた。このように繊維強化樹脂製の部品の表面に塗装を厚く塗布することにより、繊維強化樹脂製の部品が磨耗して繊維が露出することを抑制できた。しかしながら、このように繊維強化樹脂製の部品の表面に塗装を厚く塗布した場合には、繊維強化樹脂製の部品であるにもかかわらず、十分な軽量化の効果が得られないことが分かった。すなわち、繊維強化樹脂製の部品では、軽量化及び耐久性の両立を図ることは難しいことが分かった。
本発明者は、繊維強化樹脂製の部品の耐久性について、繰り返し検討を行った。その結果、以下のことが分かった。
ストラドルドビークルは、乗員が跨って乗る乗り物である。そのため、ストラドルドビークルに用いられる部品のうち、磨耗が促進される部分は、車両の右側面または左側面で、且つ、シートに着座した乗員の下半身が接触する部分であることが分かった。また、乗員に限らず、荷ひも、ヘルメット及びバッグなどの付属品が車両に接触する部分でも、前記部品の磨耗が促進されることも分かった。
さらに、前記磨耗が促進される部分は、ストラドルドビークルの車種毎に決まることも分かった。
このように磨耗が促進される部分が予め分かっていれば、前記部品を繊維強化樹脂によって構成した場合に、表面に塗装を施すのではなく、繊維強化樹脂製の部品において樹脂を部分的に厚くすることにより、前記部品の重量の増加を抑えつつ耐久性を向上できることが分かった。
以上の検討結果に基づいて、本発明者は、ストラドルドビークルにおいて、繊維強化樹脂製の部品における繊維強化樹脂層の最外層よりも車両外方に磨耗許容層を設けるとともに、該磨耗許容層を、車両の左方向または右方向から見て、位置によって厚みが異なるように形成する構成を見出した。
具体的には、本発明者は、以下のような構成に想到した。
本発明の一実施形態に係るストラドルドビークルは、前輪と、後輪と、車両の左右方向の中央に位置し、乗員が着座するシートと、前記乗員が前記シートに着座した状態で左足を載せる左ステップと、前記乗員が前記シートに着座した状態で右足を載せる右ステップと、樹脂と該樹脂を強化する強化繊維とを含む繊維強化樹脂層を有し且つ少なくとも一部が前記車両の左側外表面を構成する繊維強化樹脂製部品を、少なくとも一つ有するストラドルドビークル左側外表面部と、樹脂と該樹脂を強化する強化繊維とを含む繊維強化樹脂層を有し且つ少なくとも一部が前記車両の右側外表面を構成する繊維強化樹脂製部品を、少なくとも一つ有するストラドルドビークル右側外表面部と、を備える。前記ストラドルドビークル左側外表面部は、前記繊維強化樹脂層の最左外層と車両左側外表面との間に、前記樹脂と一体形成され、且つ、前記車両左側外表面が擦れた際に磨耗し、前記車両を左方向から見て、前記車両の左右方向の厚みが相対的に大きい部分と小さい部分とを含むストラドルドビークル左側磨耗許容層を有し、かつ、前記ストラドルドビークル右側外表面部は、前記繊維強化樹脂層の最右外層と車両右側外表面との間に、前記樹脂と一体形成され、且つ、前記車両右側外表面が擦れた際に磨耗し、前記車両を右方向から見て、前記車両の左右方向の厚みが相対的に大きい部分と小さい部分とを含むストラドルドビークル右側磨耗許容層を有する。
これにより、車両の左側外表面が、シートに着座した乗員の下半身と接触して擦れた場合、繊維強化樹脂層の最左外層と車両左側外表面との間に樹脂と一体形成されたストラドルドビークル左側磨耗許容層が磨耗する。また、車両の右側外表面が、シートに着座した乗員の下半身と接触して擦れた場合、繊維強化樹脂層の最右外層と車両右側外表面との間に樹脂と一体形成されたストラドルドビークル右側磨耗許容層が磨耗する。よって、繊維強化樹脂層が磨耗して強化繊維が露出することを防止できる。
しかも、上述の構成では、前記ストラドルドビークル左側磨耗許容層は、繊維強化樹脂製部品を少なくとも一つ有するストラドルドビークル左側外表面部の全てに形成されているのではなく、車両を左方向から見て、前記車両の左右方向の厚みが相対的に大きい部分と小さい部分とを含むように形成されている。これにより、前記ストラドルドビークル左側外表面部の全てに前記ストラドルドビークル左側磨耗許容層を設ける場合に比べて、車両の重量の増加を抑制することができる。また、前記ストラドルドビークル右側磨耗許容層は、繊維強化樹脂製部品を少なくとも一つ有するストラドルドビークル右側外表面部の全てに形成されているのではなく、車両を右方向から見て、前記車両の左右方向の厚みが相対的に大きい部分と小さい部分とを含むように形成されている。これにより、前記ストラドルドビークル右側外表面部の全てに前記ストラドルドビークル右側磨耗許容層を設ける場合に比べて、車両の重量の増加を抑制することができる。
したがって、上述の構成により、車両の重量の増加を抑制しつつ、繊維強化樹脂製の部品の耐久性を向上させることができる。
他の観点によれば、本発明のストラドルドビークルは、以下の構成を含むことが好ましい。前記車両を左方向から見て、前記ストラドルドビークル左側磨耗許容層のうち、前記シートに乗員が着座した状態で該乗員の下半身が接触する少なくとも一部が、前記相対的に厚みが大きい部分であり、且つ、前記車両を右方向から見て、前記ストラドルドビークル右側磨耗許容層のうち、前記シートに乗員が着座した状態で該乗員の下半身が接触する少なくとも一部が、前記相対的に厚みが大きい部分である。これにより、乗員がストラドルドビークルのシートに着座した状態で、乗員の下半身が接触する部分が磨耗して強化繊維が露出することをより確実に防止できる。
他の観点によれば、本発明のストラドルドビークルは、以下の構成を含むことが好ましい。前記ストラドルドビークル左側磨耗許容層及び前記ストラドルドビークル右側磨耗許容層の少なくとも一方は、前記車両の前後方向において、厚みが相対的に大きい部分と小さい部分とを有する。また、他の観点によれば、本発明のストラドルドビークルは、以下の構成を含むことが好ましい。前記ストラドルドビークル左側磨耗許容層及び前記ストラドルドビークル右側磨耗許容層の少なくとも一方は、前記車両の上下方向において、厚みが相対的に大きい部分と小さい部分とを有する。
上述の各構成により、車両の重量の増加をより抑制することができる。したがって、上述の構成により、車両の重量の増加をより抑制しつつ、繊維強化樹脂製の部品の耐久性を向上させることができる。
他の観点によれば、本発明のストラドルドビークルは、以下の構成を含むことが好ましい。前記ストラドルドビークル左側磨耗許容層と前記車両左側外表面との間、及び、前記ストラドルドビークル右側磨耗許容層と前記車両右側外表面との間の少なくとも一方に、表面保護層が設けられている。これにより、ストラドルドビークル左側磨耗許容層及びストラドルドビークル右側磨耗許容層の少なくとも一方を表面保護層によって保護することができる。よって、ストラドルドビークル左側磨耗許容層及びストラドルドビークル右側磨耗許容層の少なくとも一方の表面が劣化したり損傷を受けたりすることを防止できる。
他の観点によれば、本発明のストラドルドビークルは、以下の構成を含むことが好ましい。前記ストラドルドビークル左側磨耗許容層及び前記ストラドルドビークル右側磨耗許容層の少なくとも一方は、前記樹脂と一体化されたインサート部材をさらに含む。これにより、繊維強化樹脂製の部品において、ストラドルドビークル左側磨耗許容層及びストラドルドビークル右側磨耗許容層の少なくとも一方にインサート部材の特性を付与することができる。したがって、ストラドルドビークル左側磨耗許容層及びストラドルドビークル右側磨耗許容層の少なくとも一方において、多機能化及び機能向上の少なくとも一方を実現することができる。
本明細書で使用される専門用語は、特定の実施例のみを定義する目的で使用されるのであって、前記専門用語によって発明を制限する意図はない。
本明細書で使用される「及び/または」は、一つまたは複数の関連して列挙された構成物のすべての組み合わせを含む。
本明細書において、「含む、備える(including)」「含む、備える(comprising)」または「有する(having)」及びそれらの変形の使用は、記載された特徴、工程、要素、成分、及び/または、それらの等価物の存在を特定するが、ステップ、動作、要素、コンポーネント、及び/または、それらのグループのうちの1つまたは複数を含むことができる。
本明細書において、「取り付けられた」、「接続された」、「結合された」、及び/または、それらの等価物は、広義の意味で使用され、“直接的及び間接的な”取り付け、接続及び結合の両方を包含する。さらに、「接続された」及び「結合された」は、物理的または機械的な接続または結合に限定されず、直接的または間接的な接続または結合を含むことができる。
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
一般的に使用される辞書に定義された用語は、関連する技術及び本開示の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想的または過度に形式的な意味で解釈されることはない。
本発明の説明においては、いくつもの技術および工程が開示されていると理解される。これらの各々は、個別の利益を有し、他に開示された技術の1つ以上、または、場合によっては全てと共に使用することもできる。
したがって、明確にするために、本発明の説明では、不要に個々のステップの可能な組み合わせをすべて繰り返すことを控える。しかしながら、本明細書及び特許請求の範囲は、そのような組み合わせがすべて本発明の範囲内であることを理解して読まれるべきである。
本明細書では、本発明に係るストラドルドビークルの実施形態について説明する。
以下の説明では、本発明の完全な理解を提供するために多数の具体的な例を述べる。しかしながら、当業者は、これらの具体的な例がなくても本発明を実施できることが明らかである。
よって、以下の開示は、本発明の例示として考慮されるべきであり、本発明を以下の図面または説明によって示される特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
<繊維強化樹脂層の最外層の定義>
繊維強化樹脂層の最外層とは、車両の内外方向において繊維強化樹脂層の最も外側に位置する部分を意味する。繊維強化樹脂層は、樹脂内に強化繊維を含む層である。そのため、前記最外層は、樹脂内に強化繊維を含む層のうち、車両の内外方向において繊維強化樹脂層の最も外側の部分を含む領域である。最左外層は、樹脂内に強化繊維を含む層のうち、車両の最も左側に位置する部分を含む領域である。最右外層は、樹脂内に強化繊維を含む層のうち、車両の最も右側に位置する部分を含む領域である。
<磨耗許容層の定義>
磨耗許容層は、樹脂と強化繊維とを含む繊維強化樹脂層において、外表面により近い部分に位置し、前記繊維強化樹脂層の樹脂のみからなる層である。すなわち、磨耗許容層は、前記繊維強化樹脂層の樹脂と一体形成されている。なお、一体形成とは、磨耗許容層が、繊維強化樹脂層の樹脂、または、該樹脂と一体化された樹脂によって構成されていることを意味する。
<乗員の下半身の定義>
乗員の下半身とは、乗員の腰から下の部分を意味する。
<表面保護層の定義>
表面保護層は、例えば、シール、塗装、めっき、表面に配置された金属部品、防水層など、繊維強化樹脂製の部品の外表面に設けられた部材または層を意味する。前記表面保護層は、前記部品の表面が損傷を受けることを防止する部材または層に限らず、前記部品の表面の意匠性を向上する部材または層も含む。
本発明の適用対象は、自動二輪車に限らない。本発明は、自動二輪車以外のリーン車両に適用してもよい。リーン車両とは、右旋回時に車両の右方に傾斜し、左旋回時に車両の左方に傾斜する車体フレームを有する車両である。また、本発明は、自動二輪車以外のストラドルドビークルに適用してもよい。なお、ストラドルドビークルとは、乗員が鞍にまたがるような状態で乗車する車両全般を指している。ストラドルドビークルは、スクータータイプの車両を含む。
本発明の一実施形態によれば、ストラドルドビークルにおいて、軽量化及び耐久性の両立を図りつつ、繊維強化樹脂製の部品を採用可能な構成が得られる。
図1は、本発明の実施形態に係る車両の全体構成の概略を示す左側面図である。 図2は、車両に乗員が跨った状態の左側面図及び右側面図、乗員の下半身が車両に接触する部分におけるA−A線、B−B線、C−C線、D−D線、A’−A’線、B’−B’線、C’−C’線、D’−D’線の各断面を示す図である。 図3は、車両に乗員が跨った状態の左側面図、及び、乗員の下半身が車両に接触する部分におけるA−A線、B−B線の各断面を示す図である。 図4は、車両に乗員が跨った状態の右側面図、及び、乗員の下半身が車両に接触する部分におけるA’−A’線、B’−B’線の各断面を示す図である。 図5は、車両に乗員が跨った状態の左側面図、及び、乗員の下半身が車両に接触する部分におけるC−C線、D−D線の各断面を示す図である。 図6は、車両に乗員が跨った状態の右側面図、及び、乗員の下半身が車両に接触する部分におけるC’−C’線、D’−D’線の各断面を示す図である。 図7は、車両に乗員が跨った状態の上面図、及び、C−C線、D−D線、C’−C’線、D’−D’線における車両の外表面側の各断面を示す図である。 図8は、その他の実施形態に係る車両に乗員が跨った状態の左側面図、及び、乗員の下半身が車両に接触する部分におけるA−A線、B−B線、C−C線、D−D線の各断面を示す図である。 図9は、その他の実施形態に係る車両に乗員が跨った状態の右側面図、及び、乗員の下半身が車両に接触する部分におけるA’−A’線、B’−B’線、C’−C’線、D’−D’線の各断面を示す図である。 図10は、その他の実施形態に係る車両に乗員が跨った状態の左側面図、及び、乗員の下半身が車両に接触する部分におけるA−A線、B−B線、C−C線、D−D線の各断面を示す図である。 図11は、その他の実施形態に係る車両に乗員が跨った状態の右側面図、及び、乗員の下半身が車両に接触する部分におけるA’−A’線、B’−B’線、C’−C’線、D’−D’線の各断面を示す図である。
以下で、実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図において、同一部分には同一の符号を付して、その同一部分の説明は繰り返さない。なお、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
以下、図中の矢印Fは、車両の前方向を示す。図中の矢印Uは、車両の上方向を示す。図中の矢印Lは、車両の左方向を示す。図中の矢印Rは、車両の右方向を示す。また、以下の説明において前後左右の方向は、それぞれ、車両を運転する乗員から見た場合の前後左右の方向を意味する。
<全体構成>
図1は、実施形態に係る車両1(ストラドルドビークル)の全体構成の概略を示す左側面図である。図2は、車両1に乗員Pが跨った状態の左側面図及び右側面図、乗員Pの下半身が車両1に接触する部分におけるA−A線、B−B線、C−C線、D−D線、A’−A’線、B’−B’線、C’−C’線、D’−D’線の各断面を示す。図3は、車両1に乗員Pが跨った状態の左側面図、及び、乗員Pの下半身が車両1に接触する部分におけるA−A線、B−B線の各断面を示す。図4は、車両1に乗員Pが跨った状態の右側面図、及び、乗員Pの下半身が車両1に接触する部分におけるA’−A’線、B’−B’線の各断面を示す。図5は、車両1に乗員Pが跨った状態の左側面図、及び、乗員Pの下半身が車両1に接触する部分におけるC−C線、D−D線の各断面を示す。図6は、車両1に乗員Pが跨った状態の右側面図、及び、乗員Pの下半身が車両1に接触する部分におけるC’−C’線、D’−D’線の各断面を示す。図7は、車両1に乗員Pが跨った状態の上面図、及び、C−C線、D−D線、C’−C’線、D’−D’線における車両1の外表面側の各断面を示す。
車両1は、例えば、自動二輪車であり、車体2と、前輪3と、後輪4とを備える。車両1は、傾斜姿勢で旋回する。すなわち、車両1は、左方向に旋回する際に左方向に傾斜し、右方向に旋回する際に右方向に傾斜する。
車体2は、車体カバー5、ハンドル6、シート7、燃料タンク8及びパワーユニット9等の各構成部品を支持する。本実施形態では、車体2は、フレーム10を含み、車両1の各構成部品を支持する。車体2は、図2に示すように、車両1の左側外表面(以下、車両左側外表面)を構成するストラドルドビークル左側外表面部2aと、車両1の右側外表面(以下、車両右側外表面)を構成するストラドルドビークル右側外表面部2bとを有する。
フレーム10は、図1に示すように、ヘッドパイプ11と、メインフレーム12と、シートレール13とを有する。フレーム10は、炭素繊維によって樹脂(例えば、エポキシ樹脂、ビニルエステル、フェノール樹脂、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイドなど)が強化された炭素繊維強化樹脂によって構成されている。
なお、本実施形態では、フレーム10のうち、少なくともメインフレーム12が前記炭素繊維強化樹脂によって構成されている。すなわち、本実施形態では、メインフレーム12は、樹脂と該樹脂を強化する炭素繊維(強化繊維)とを含む炭素繊維強化樹脂層(繊維強化樹脂層)を有する繊維強化樹脂製の部品である。
ヘッドパイプ11は、車両1の前側に位置し、ハンドル6に接続された図示しないステアリングシャフトを回転可能に支持する。
メインフレーム12は、前部がヘッドパイプ11に接続されているとともに、車両後方に延びる形状を有する。メインフレーム12の後部は、車両後方且つ下方に向かって延びている。メインフレーム12には、パワーユニット9等が支持されている。
メインフレーム12の上側には、燃料タンク8が固定されている。車両1の左右方向において、メインフレーム12の表面上の少なくとも一部には、車体カバー5の一部が固定されている。すなわち、メインフレーム12のうち、燃料タンク8の下方に位置する部分は、車体カバー5の一部によって覆われている。なお、メインフレーム12の下端部且つ後端部は、車体カバー5等に覆われることなく露出している。すなわち、メインフレーム12は、少なくとも一部が車両1の左右方向の外表面を構成する。よって、ストラドルドビークル左側外表面部2a及びストラドルドビークル右側外表面部2bは、それぞれ、炭素繊維強化樹脂層を有し、少なくとも一部が車両左側外表面及び車両右側外表面を構成するメインフレーム12を含む。
図2及び図7に示すように、メインフレーム12の下端部且つ後端部には、左ステップ15及び右ステップ25が固定されている。左ステップ15及び右ステップ25は、乗員が車両1に跨った状態で、該乗員の足底を支える。左ステップ15には、図7に示すように、乗員Pがシート7に着座した状態で右足が載せられる。右ステップ25には、乗員Pがシート7に着座した状態で右足が載せられる。
図1に示すように、メインフレーム12には、左ステップ15よりも上方の位置に、左ヒールガード14が固定されている。また、メインフレーム12には、図2に示すように、右ステップ25よりも上方の位置に、右ヒールガード24が固定されている。左ヒールガード14は、図5に示すように、車両1に跨った乗員が、左ステップ15上に足を置いた際に、乗員の左足が接触する。すなわち、左ヒールガード14は、乗員Pがシート7に着座した状態で左足が接触する。右ヒールガード24は、図6に示すように、車両1に跨った乗員が、右ステップ25上に足を置いた際に、乗員の右足が接触する。すなわち、右ヒールガード24は、乗員Pがシート7に着座した状態で右足が接触する。
図1に示すように、シートレール13は、メインフレーム12の後端部に接続されている。すなわち、シートレール13は、メインフレーム12の後端部から車両1の後方に向かって延びている。シートレール13の上方には、車両1の左右方向の中央に位置し、乗員Pが着座するシート7が配置されている。シートレール13の表面上の少なくとも一部には、車体カバー5の一部が固定されている。すなわち、シートレール13は、少なくとも一部が車体カバー5によって覆われている。
車体カバー5は、フロントカバー21と、サイドカバー22と、リアカバー23とを備える。フロントカバー21及びサイドカバー22は、メインフレーム12に固定されている。フロントカバー21は、車両1の前側で且つハンドル6及び燃料タンク8よりも下方に配置されている。サイドカバー22は、フロントカバー21よりも上方且つ後方に配置されている。サイドカバー22は、燃料タンク8よりも下方且つ後方に配置されている。メインフレーム12は、フロントカバー21及びサイドカバー22によって、少なくとも一部が覆われている。
リアカバー23は、シートレール13に固定されている。リアカバー23は、前側部分がシート7よりも下方で且つ後方に配置されている。リアカバー23は、車両1の後方に向かうほど上方に位置するように斜め上方に延びている。リアカバー23は、シートレール13を車両1の左右及び上方から覆っている。
本実施形態では、サイドカバー22、リアカバー23、左ヒールガード14及び右ヒールガード24は、炭素繊維によって樹脂(例えば、エポキシ樹脂、ビニルエステル、フェノール樹脂、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイドなど)が強化された炭素繊維強化樹脂によって構成されている。
また、本実施形態では、燃料タンク8は、金属製のタンク本体8aの表面上に、上述の炭素繊維強化樹脂製の燃料タンク被覆部8bが設けられている。燃料タンク被覆部8bは、タンク本体8aの外表面を覆うように設けられている。
サイドカバー22、リアカバー23、左ヒールガード14、右ヒールガード24及び燃料タンク被覆部8bをそれぞれ構成する前記炭素繊維強化樹脂は、炭素繊維が樹脂によって固められている。そのため、前記炭素繊維強化樹脂では、樹脂の内部に炭素繊維が位置付けられている。すなわち、前記炭素繊維強化樹脂は、炭素繊維が樹脂によって固められた炭素繊維層(繊維強化樹脂層)よりも外表面側及び内表面側にそれぞれ樹脂層を有する。
すなわち、本実施形態では、サイドカバー22、リアカバー23、左ヒールガード14、右ヒールガード24及び燃料タンク被覆部8bは、樹脂と該樹脂を強化する炭素繊維(強化繊維)とを含む炭素繊維層(繊維強化樹脂層)を有し、少なくとも一部が車両1の左側外表面及び右側外表面を構成する炭素繊維強化樹脂製の部品(繊維強化樹脂製の部品)である。ストラドルドビークル左側外表面部2aは、サイドカバー22、リアカバー23、左ヒールガード14、右ヒールガード24及び燃料タンク被覆部8bのそれぞれ少なくとも一部を含む。ストラドルドビークル右側外表面部2bは、サイドカバー22、リアカバー23、左ヒールガード14、右ヒールガード24及び燃料タンク被覆部8bのそれぞれ少なくとも一部を含む。
サイドカバー22は、図2及び図3に断面B−Bで示すように、炭素繊維層22aと、炭素繊維層22aの外表面側に設けられた外側樹脂層22bと、炭素繊維層22aの内表面側に設けられた内側樹脂層22cとを有する。炭素繊維層22a、外側樹脂層22b及び内側樹脂層22cは、サイドカバー22における車両1の左側に位置する。
サイドカバー22は、図2及び図4に断面B’−B’で示すように、炭素繊維層22dと、炭素繊維層22dの外表面側に設けられた外側樹脂層22eと、炭素繊維層22dの内表面側に設けられた内側樹脂層22fとを有する。炭素繊維層22d、外側樹脂層22e及び内側樹脂層22fは、サイドカバー22における車両1の右側に位置する。
リアカバー23は、前記断面B−Bで示すように、炭素繊維層23aと、炭素繊維層23aの外表面側に設けられた外側樹脂層23bと、炭素繊維層23aの内表面側に設けられた内側樹脂層23cとを有する。炭素繊維層23a、外側樹脂層23b及び内側樹脂層23cは、リアカバー23における車両1の左側に位置する。
リアカバー23は、前記断面B’−B’で示すように、炭素繊維層23dと、炭素繊維層23dの外表面側に設けられた外側樹脂層23eと、炭素繊維層23dの内表面側に設けられた内側樹脂層23fとを有する。炭素繊維層23d、外側樹脂層23e及び内側樹脂層23fは、リアカバー23における車両1の右側に位置する。
左ヒールガード14は、図2及び図5に断面D−Dで示すように、炭素繊維層14aと、炭素繊維層14aの外表面側に設けられた外側樹脂層14bと、炭素繊維層14aの内表面側に設けられた内側樹脂層14cとを有する。
右ヒールガード24は、図2及び図6に断面D’−D’で示すように、炭素繊維層24aと、炭素繊維層24aの外表面側に設けられた外側樹脂層24bと、炭素繊維層24aの内表面側に設けられた内側樹脂層24cとを有する。
メインフレーム12は、前記断面D−Dで示すように、炭素繊維層12aと、炭素繊維層12aの外表面側に設けられた外側樹脂層12bと、炭素繊維層12aの内表面側に設けられた内側樹脂層12cとを有する。炭素繊維層12a、外側樹脂層12b及び内側樹脂層12cは、メインフレーム12における車両1の左側に位置する。
メインフレーム12は、前記断面D’−D’で示すように、炭素繊維層12dと、炭素繊維層12dの外表面側に設けられた外側樹脂層12eと、炭素繊維層12dの内表面側に設けられた内側樹脂層12fとを有する。炭素繊維層12d、外側樹脂層12e及び内側樹脂層12fは、メインフレーム12における車両1の右側に位置する。
本実施形態では、メインフレーム12において、炭素繊維層12a,12dは、一体に形成されている。メインフレーム12において、外側樹脂層12b,12eは、一体に形成されている。メインフレーム12において、内側樹脂層12c,12fは、一体に形成されている。
燃料タンク被覆部8bは、図2及び図3に断面A−Aで示すとともに図2及び図5に断面C−Cで示すように、炭素繊維層8cと、炭素繊維層8cの外表面側に設けられた外側樹脂層8dと、炭素繊維層8cの内表面側に設けられた内側樹脂層8eとを有する。炭素繊維層8c、外側樹脂層8d及び内側樹脂層8eは、燃料タンク8における車両1の左側に位置する。
燃料タンク被覆部8bは、図2及び図4に断面A’−A’で示すとともに図2及び図6に断面C’−C’で示すように、炭素繊維層8fと、炭素繊維層8fの外表面側に設けられた外側樹脂層8gと、炭素繊維層8fの内表面側に設けられた内側樹脂層8hとを有する。炭素繊維層8f、外側樹脂層8g及び内側樹脂層8hは、燃料タンク8における車両1の右側に位置する。
本実施形態では、燃料タンク被覆部8bにおいて、炭素繊維層8c,8fは、一体に形成されている。燃料タンク被覆部8bにおいて、外側樹脂層8d,8gは、一体に形成されている。燃料タンク被覆部8bにおいて、内側樹脂層8e,8hは、一体に形成されている。
なお、サイドカバー22、リアカバー23、左ヒールガード14、右ヒールガード24、メインフレーム12及び燃料タンク被覆部8bにおける炭素繊維層22a,22d,23a,23d,14a,24a,12a,12d,8c,8fは、樹脂と前記樹脂を強化する炭素繊維(強化繊維)とを含む繊維強化樹脂層である。
また、サイドカバー22、リアカバー23、左ヒールガード14、メインフレーム12及び燃料タンク被覆部8bにおける外側樹脂層22b,23b,14b,12b,8dは、車両1の内外方向において、炭素繊維層22a,23a,14a,12a,8c(繊維強化樹脂層)の最も左側に位置する層(以下、最左外層)と車両左側外表面との間に、樹脂と一体形成され、且つ、前記車両左側外表面が擦れた際に磨耗するストラドルドビークル左側磨耗許容層である。
さらに、サイドカバー22、リアカバー23、右ヒールガード24、メインフレーム12及び燃料タンク被覆部8bにおける外側樹脂層22e,23e,24b,12e,8gは、車両1の内外方向において、炭素繊維層22d,23d,24a,12d,8f(繊維強化樹脂層)の最も右側に位置する層(以下、最右外層)と車両右側外表面との間に、樹脂と一体形成され、且つ、前記車両右側外表面が擦れた際に磨耗するストラドルドビークル右側磨耗許容層である。
図2から図6に示すように、車両1に乗員Pが跨った状態では、乗員Pの下半身は、上述のサイドカバー22、左ヒールガード14、右ヒールガード24及び燃料タンク被覆部8bの一部に接触する。このように車両1に跨った乗員Pの下半身が接触することによって、サイドカバー22、左ヒールガード14、右ヒールガード24及び燃料タンク被覆部8bの一部は、ストラドルドビークル左側磨耗許容層である外側樹脂層22b,14b,8d及びストラドルドビークル右側摩耗許容層である外側樹脂層22e,24b,8gの樹脂が徐々に磨耗する。
換言すれば、本実施形態に係る車両1では、乗員が車両1に跨った際に車両1において乗員Pの下半身が触れる部分(図2から図6における斜線部分)に、炭素繊維強化樹脂によって構成された部品が配置されている。このように、乗員の身体が触れる部分に炭素繊維強化樹脂製の部品が配置されている場合、上述のように乗員の身体との接触によって前記部品の樹脂の磨耗が促進される。
これに対し、前記部品の表面に塗装を施すことが考えられるが、塗装の耐久性を確保するために該塗装を厚く塗ると、炭素繊維強化樹脂製の部品を用いたにもかかわらず、十分な軽量化の効果が得られない。
そこで、本実施形態では、車両1の炭素繊維強化樹脂製の部品において、乗員Pが車両1に跨った際に乗員Pの下半身が接触する部分では、外表面に位置する外側樹脂層の厚みを大きくする。このように、炭素繊維強化樹脂製の部品において、外表面に位置する外側樹脂層の厚みを車両1の位置によって変えることにより、車両1の重量の増加を抑制しつつ、炭素繊維強化樹脂製の部品の耐久性を向上させることができる。
具体的には、図2から図6に示すように、車両1におけるサイドカバー22、左ヒールガード14、右ヒールガード24及び燃料タンク被覆部8bのうち、乗員が車両1に跨った状態で、該乗員の下半身が接触する部分(図2から図6における斜線部分)では、他の部分に比べて、外表面に位置する外側樹脂層22b,22e,14b,24b,8d,8gの厚みを大きくする。これにより、車両1を側方から見て、炭素繊維強化樹脂製の部品には、外表面に位置する外側樹脂層において車両左右方向の厚みが大きい部分と小さい部分とが存在する。
図2から図7に示すように、例えば、サイドカバー22の外側樹脂層22b,22eのうち、乗員が車両1に跨った状態で該乗員の下半身が接触する部分、すなわち、車両1の左右方向においてサイドカバー22の端部における外側樹脂層22b,22eの樹脂の厚みは、外側樹脂層22b,22eの他の部分の厚みよりも大きい。すなわち、外側樹脂層22b,22eは、車両1の左右方向においてサイドカバー22の左右の端部に位置し、且つ、他の部分に比べて樹脂の厚みが大きい肉厚部22g,22hを有する。肉厚部22g,22hは、外側樹脂層22b,22eにおいて、乗員Pが車両1に跨った状態で該乗員の下半身が接触する部分に設けられている。
外側樹脂層22b,22eの肉厚部22g,22hにおける樹脂の厚みは、内側樹脂層22cの厚みよりも大きい。外側樹脂層22b,22eの肉厚部22g,22hにおける樹脂の厚みは、乗員が車両1に跨った状態で該乗員の下半身が接触しないリアカバー23及びメインフレーム12の外側樹脂層23b,23e,12b,12eにおける樹脂の厚みよりも大きい。
同様に、図2、図5及び図7に示すように、左ヒールガード14の外側樹脂層14bのうち、乗員が車両1に跨った状態で該乗員の下半身が接触する部分、すなわち、車両1の左右方向において左ヒールガード14の端部における外側樹脂層14bの樹脂の厚みは、外側樹脂層14bの他の部分の厚みよりも大きい。すなわち、外側樹脂層14bは、車両1の左右方向において左ヒールガード14の端部に位置し、且つ、他の部分に比べて樹脂の厚みが大きい肉厚部14dを有する。肉厚部14dは、外側樹脂層14bにおいて、乗員が車両1に跨った状態で該乗員の下半身が接触する部分に設けられている。
外側樹脂層14bの肉厚部14dにおける樹脂の車両左右方向の厚みは、乗員が車両1に跨った状態で該乗員の下半身が接触しないリアカバー23及びメインフレーム12の外側樹脂層23b,12bにおける樹脂の厚みよりも大きい。
また、図2、図6及び図7に示すように、右ヒールガード24の外側樹脂層24bのうち、乗員が車両1に跨った状態で該乗員の下半身が接触する部分、すなわち、車両1の左右方向において右ヒールガード24の端部における外側樹脂層24bの樹脂の厚みは、外側樹脂層24bの他の部分の厚みよりも大きい。すなわち、外側樹脂層24bは、車両1の左右方向において右ヒールガード24の端部に位置し、且つ、他の部分に比べて樹脂の厚みが大きい肉厚部24dを有する。肉厚部24dは、外側樹脂層24bにおいて、乗員が車両1に跨った状態で該乗員の下半身が接触する部分に設けられている。
外側樹脂層24bの肉厚部24dにおける樹脂の車両左右方向の厚みは、乗員が車両1に跨った状態で該乗員の下半身が接触しないリアカバー23及びメインフレーム12の外側樹脂層23e,12eにおける樹脂の厚みよりも大きい。
図2から図7に示すように、燃料タンク被覆部8bの外側樹脂層8d,8gのうち、乗員が車両1に跨った状態で該乗員の下半身が接触する部分、すなわち、車両1の左右方向において燃料タンク被覆部8bの端部における外側樹脂層8d,8gの樹脂の厚みは、外側樹脂層8d,8gの他の部分の厚みよりも大きい。すなわち、外側樹脂層8d,8gは、車両1の左右方向において燃料タンク被覆部8bの端部に位置し、且つ、他の部分に比べて樹脂の厚みが大きい肉厚部8i,8jを有する。肉厚部8i,8jは、外側樹脂層8d,8gにおいて、乗員が車両1に跨った状態で該乗員の下半身が接触する部分に設けられている。
本実施形態の場合、乗員が車両1に跨った状態では、乗員の下半身は、車両1の前後方向において燃料タンク被覆部8bの後部で、且つ、車両1の上下方向において燃料タンク被覆部8bの下部に接触する。そのため、燃料タンク被覆部8bの肉厚部8i,8jは、車両1の前後方向において燃料タンク被覆部8bの後部で、且つ、車両1の上下方向において燃料タンク被覆部8bの下部に設けられている。
なお、図2から図4及び図7に示すように、本実施形態では、燃料タンク8は、乗員Pが車両1に跨った状態で該乗員の下半身が位置付けられる部分に、車両1の後方に向かうほど車両1の左右方向の寸法が小さくなるように該左右方向に凹んだ形状を有する。燃料タンク被覆部8bの肉厚部8i,8jは、車両1の後方に向かうほど車両1の左右方向の外形寸法が小さくなるとともに、車両1の後方に向かうほど厚みが大きくなるように形成されている(図2及び図3の断面A−A及び図2及び図4の断面A’−A’参照)。
以上より、本実施形態では、車両1に設けられた炭素繊維強化樹脂製の部品において、乗員Pが車両1に跨った状態で該乗員の下半身が接触する部分の外表面に位置する樹脂の厚みは、該乗員の下半身が接触しない部分の厚みに比べて大きい。これにより、乗員が車両1に跨った状態で該乗員の下半身が接触することにより前記炭素繊維強化樹脂製の部品の樹脂が磨耗して炭素繊維が露出することを防止できる。
本実施形態では、炭素繊維強化樹脂製の部品における外側樹脂層は、車両1の前後方向において、車両1の左右方向の厚みが相対的に大きい部分と小さい部分とを有する(図2から図4及び図7参照)。このように、炭素繊維強化樹脂製の部品において、外表面に位置する外側樹脂層の厚みを車両1の位置によって変えることにより、車両1の重量の増加を抑制しつつ、炭素繊維強化樹脂製の部品の耐久性を向上させることができる。
また、本実施形態では、炭素繊維強化樹脂製の部品における外側樹脂層は、車両1の上下方向において、車両1の左右方向の厚みが相対的に大きい部分と小さい部分とを有する(図2、図5及び図6参照)。このように、炭素繊維強化樹脂製の部品において、外表面に位置する外側樹脂層の厚みを車両1の位置によって変えることにより、車両1の重量の増加を抑制しつつ、炭素繊維強化樹脂製の部品の耐久性を向上させることができる。
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
前記実施形態では、車両1に設けられた炭素繊維強化樹脂製の部品において、乗員Pが車両1に跨った状態で乗員Pの下半身が接触する部分の外表面に位置する樹脂の厚みは、乗員Pの下半身が接触しない部分の厚みに比べて大きい。しかしながら、前記炭素繊維強化樹脂製の部品において、荷ひも、ヘルメット及びバッグなどの付属品が車両に接触する部分の外表面に位置する樹脂(外側樹脂層)の厚みを、前記付属品が接触しない部分の厚みに比べて大きくしてもよい。例えば、リアカバー23において、前記付属品等が接触する部分の外表面に位置する外側樹脂層の厚みを、前記付属品が接触しない部分の厚みに比べて大きくしてもよい。
前記実施形態では、炭素繊維強化樹脂によって構成されたメインフレーム12、サイドカバー22、リアカバー23、左ヒールガード14、右ヒールガード24及び燃料タンク被覆部8bは、外側樹脂層12b,12e,22b,22e,23b,23e,14b,24b,8d,8gが車両1の外表面を構成している。しかしながら、図8に示すように、外側樹脂層22b,14b,8dの外表面上に、炭素繊維強化樹脂とは別部材の表面保護層22i,14e,8kが設けられていてもよい。表面保護層は、例えば、シール、塗装、めっき、金属、防水層等によって構成される。これにより、ストラドルドビークル左側磨耗許容層である外側樹脂層を表面保護層によって保護することができる。すなわち、表面保護層によって、外側樹脂層の表面が劣化したり損傷を受けたりすることを防止できる。
なお、図8では、サイドカバー22、左ヒールガード14及び燃料タンク被覆部8bの車両左側外表面上、すなわち外側樹脂層22b,14b,8dの外表面上に、表面保護層22i,14e,8kが設けられている。しかしながら、図9に示すように、サイドカバー22、右ヒールガード24及び燃料タンク被覆部8bの車両右側外表面上に、表面保護層22j,24e,8mが設けられていてもよい。これにより、ストラドルドビークル右側磨耗許容層である外側樹脂層を表面保護層によって保護することができる。すなわち、表面保護層によって、外側樹脂層の表面が劣化したり損傷を受けたりすることを防止できる。また、他の構成部品の外表面上に表面保護層が設けられていてもよい。
前記実施形態では、メインフレーム12、サイドカバー22、リアカバー23、左ヒールガード14、右ヒールガード24及び燃料タンク被覆部8bは、外側樹脂層12b,12e,22b,22e,23b,23e,14b,24b,8d,8gが、炭素繊維強化樹脂の樹脂によって構成されている。しかしながら、図10に示すように、外側樹脂層22b,14b,8dに、炭素繊維強化樹脂の樹脂と一体化されたインサート部材22k,14f,8nが含まれていてもよい。インサート部材は、フィルム、ブロック、金属板、耐磨耗繊維(アラミド、ポリエチレン繊維、ポリアリレートなど)が含まれる。また、インサート部材は、炭素繊維強化樹脂の樹脂と化学結合した部材、及び、炭素繊維強化樹脂と構造的に結合するように界面を有する部材等も含む。このように外側樹脂層がインサート部を含むことにより、繊維強化樹脂製の部品において、外側樹脂層にインサート部材の特性を付与することができる。したがって、外側樹脂層の多機能化及び機能向上の少なくも一方を実現することができる。
なお、図10では、サイドカバー22、左ヒールガード14及び燃料タンク被覆部8bの外側樹脂層22b,14b,8dにインサート部材22k,14f,8nが含まれている。しかしながら、図11に示すように、サイドカバー22、右ヒールガード24及び燃料タンク被覆部8bの外側樹脂層22e,24b,8gに、インサート部材22m,24f,8pが設けられていてもよい。また、外側樹脂層を有する他の構成部品の該外側樹脂層内にインサート部材が含まれていてもよい。これにより、繊維強化樹脂製の部品において、外側樹脂層にインサート部材の特性を付与することができる。したがって、外側樹脂層の多機能化及び機能向上の少なくも一方を実現することができる。
また、炭素繊維強化樹脂製の部品の外側樹脂層に、上述の表面保護層及びインサート部材の両方を設けてもよい。
前記実施形態では、ストラドルドビークル左側磨耗許容層及びストラドルドビークル右側磨耗許容層としての外側樹脂層は、それぞれ、車両を左右方向から見て、前記車両の左右方向の厚みが相対的に大きい部分と小さい部分とを含む。しかしながら、ストラドルドビークル左側磨耗許容層としての外側樹脂層及びストラドルドビークル右側磨耗許容層としての外側樹脂層のうち少なくとも一方が、車両の左右方向の厚みが相対的に大きい部分と小さい部分とを有していてもよい。
前記実施形態では、ストラドルドビークル左側磨耗許容層及びストラドルドビークル右側磨耗許容層としての外側樹脂層は、車両の前後方向及び上下方向において、車両の左右方向の厚みが相対的に大きい部分と小さい部分とを有する。しかしながら、外側樹脂層は、車両1の前後方向または上下方向の一方のみに、厚みが相対的に大きい部分と小さい部分とがあってもよい。ストラドルドビークル左側磨耗許容層としての外側樹脂層及びストラドルドビークル右側磨耗許容層としての外側樹脂層のうち少なくとも一方が、車両の前後方向において、前記車両の左右方向の厚みが相対的に大きい部分と小さい部分とを有していてもよい。ストラドルドビークル左側磨耗許容層としての外側樹脂層及びストラドルドビークル右側磨耗許容層としての外側樹脂層のうち少なくとも一方が、車両の上下方向において、前記車両の左右方向の厚みが相対的に大きい部分と小さい部分とを有していてもよい。車両の前後方向または上下方向において、外側樹脂層の厚みは同じであってもよい。車両に乗員が跨った状態で乗員の下半身及び荷ひも等が接触する部分における外側樹脂層の厚みが、乗員の下半身及び荷ひも等が接触しない部分における外側樹脂層の厚みよりも大きければよい。
前記実施形態では、メインフレーム12、サイドカバー22、リアカバー23、左ヒールガード14、右ヒールガード24及び燃料タンク被覆部8bは、炭素繊維によって樹脂が強化された炭素繊維強化樹脂によって構成されている。しかしながら、メインフレーム12、サイドカバー22、リアカバー23、左ヒールガード14、右ヒールガード24及び燃料タンク被覆部8bを、炭素繊維以外の繊維(例えば、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ガラス繊維など)によって樹脂が強化された繊維強化樹脂によって構成してもよい。また、前記実施形態では、メインフレーム12、サイドカバー22、リアカバー23、左ヒールガード14、右ヒールガード24及び燃料タンク被覆部8bは、エポキシ樹脂、ビニルエステル、フェノール樹脂、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイドなどの樹脂によって構成されている。樹脂は、繊維によって強化可能な樹脂であれば、他の種類の樹脂であってもよい。
前記実施形態では、メインフレーム12、サイドカバー22、リアカバー23、左ヒールガード14、右ヒールガード24及び燃料タンク被覆部8bは、炭素繊維強化樹脂によって構成されている。しかしながら、メインフレーム12、サイドカバー22、リアカバー23、左ヒールガード14、右ヒールガード24及び燃料タンク被覆部8bは、どのような材料によって構成されていてもよい。すなわち、車両1の少なくとも一部の部品が繊維強化樹脂製であり、且つ、その繊維強化樹脂製の部品における磨耗許容層が、車両を左右方向から見て、厚みが相対的に大きい部分と小さい部分とを含んでいれば、本実施形態の構成には限定されない。
前記実施形態では、フレーム10のうち、メインフレーム12が炭素繊維強化樹脂によって構成されている。しかしながら、メインフレーム12だけでなく、シートレール13も炭素繊維強化樹脂によって構成されていてもよい。
前記実施形態では、車体カバー5のうち、サイドカバー22及びリアカバー23が炭素繊維強化樹脂によって構成されている。しかしながら、フロントカバー21も炭素繊維強化樹脂によって構成されていてもよい。
前記実施形態では、左ヒールガード14及び右ヒールガード24が炭素繊維強化樹脂によって構成されている。しかしながら、左ヒールガード及び右ヒールガードの一方のみが炭素繊維強化樹脂によって構成されていてもよい。また、車両1における左ヒールガード及び右ヒールガード以外の部品も炭素繊維強化樹脂によって構成されていてもよい。
前記実施形態において、炭素繊維強化樹脂に用いられる炭素繊維は、繊維同士が編まれていてもよいし、編まれていない状態であってもよい。また、前記炭素繊維は、所定長さ(例えば1mm)以上、連続した繊維であってもよいし、不連続繊維であってもよい。前記炭素繊維として、連続した繊維及び不連続繊維を用いてもよい。
前記実施形態では、車体2は、メインフレーム12及びシートレール13を有するフレーム構造である。しかしながら、車体2のフレームは、応力外皮構造を有していてもよい。
前記実施形態では、フレーム10は、ヘッドパイプ11、メインフレーム12及びシートレール13を有する。しかしながら、フレーム10は、ヘッドパイプ11、メインフレーム12及びシートレール13以外のフレームを有していてもよい。
1 車両(ストラドルドビークル)
2 車体
2a ストラドルドビークル左側外表面部
2b ストラドルドビークル右側外表面部
3 前輪
4 後輪
5 車体カバー
7 シート
8 燃料タンク
8a タンク本体
8b 燃料タンク被覆部
8c、8f、12a、12d、14a、22a、22d、23a、23d、24a 炭素繊維層(繊維強化樹脂層)
8d、12b、14b、22b、23b 外側樹脂層(ストラドルドビークル左側磨耗許容層)
8g、12e、22e、23e、24b 外側樹脂層(ストラドルドビークル右側磨耗許容層)
8e、8h、12c、12f、14c、22c、22f、23c、23f、24c 内側樹脂層
8i,8j、14d、22g、22h 肉厚部
8k、8m、14e、22i、22j、24e 表面保護層
8n、8p、14f、22k、22m、24f インサート部材
10 フレーム
12 メインフレーム(繊維強化樹脂製の部品)
14 左ヒールガード(繊維強化樹脂製の部品)
15 左ステップ
22 サイドカバー(繊維強化樹脂製の部品)
23 リアカバー(繊維強化樹脂製の部品)
24 右ヒールガード(繊維強化樹脂製の部品)
25 右ステップ
P 乗員

Claims (6)

  1. 前輪と、
    後輪と、
    車両の左右方向の中央に位置し、乗員が着座するシートと、
    前記乗員が前記シートに着座した状態で左足を載せる左ステップ部と、
    前記乗員が前記シートに着座した状態で右足を載せる右ステップ部と、
    樹脂と該樹脂を強化する強化繊維とを含む繊維強化樹脂層を有し且つ少なくとも一部が前記車両の左側外表面を構成する繊維強化樹脂製部品を、少なくとも一つ有するストラドルドビークル左側外表面部と、
    樹脂と該樹脂を強化する強化繊維とを含む繊維強化樹脂層を有し且つ少なくとも一部が前記車両の右側外表面を構成する繊維強化樹脂製部品を、少なくとも一つ有するストラドルドビークル右側外表面部と、
    を備えたストラドルドビークルであって、
    前記ストラドルドビークル左側外表面部は、前記繊維強化樹脂層の最左外層と車両左側外表面との間に、前記樹脂と一体形成され、且つ、前記車両左側外表面が擦れた際に磨耗し、前記車両を左方向から見て、前記車両の左右方向の厚みが相対的に大きい部分と小さい部分とを含むストラドルドビークル左側磨耗許容層を有し、かつ、
    前記ストラドルドビークル右側外表面部は、前記繊維強化樹脂層の最右外層と車両右側外表面との間に、前記樹脂と一体形成され、且つ、前記車両右側外表面が擦れた際に磨耗し、前記車両を右方向から見て、前記車両の左右方向の厚みが相対的に大きい部分と小さい部分とを含むストラドルドビークル右側磨耗許容層を有する、ストラドルドビークル。
  2. 請求項1に記載のストラドルドビークルにおいて、
    前記車両を左方向から見て、前記ストラドルドビークル左側磨耗許容層のうち、前記シートに乗員が着座した状態で該乗員の下半身が接触する少なくとも一部が、前記相対的に厚みが大きい部分であり、且つ、
    前記車両を右方向から見て、前記ストラドルドビークル右側磨耗許容層のうち、前記シートに乗員が着座した状態で該乗員の下半身が接触する少なくとも一部が、前記相対的に厚みが大きい部分である、ストラドルドビークル。
  3. 請求項1または2に記載のストラドルドビークルにおいて、
    前記ストラドルドビークル左側磨耗許容層及び前記ストラドルドビークル右側磨耗許容層の少なくとも一方は、前記車両の前後方向において、厚みが相対的に大きい部分と小さい部分とを有する、ストラドルドビークル。
  4. 請求項1から3のいずれか一つに記載のストラドルドビークルにおいて、
    前記ストラドルドビークル左側磨耗許容層及び前記ストラドルドビークル右側磨耗許容層の少なくとも一方は、前記車両の上下方向において、厚みが相対的に大きい部分と小さい部分とを有する、ストラドルドビークル。
  5. 請求項1から4のいずれか一つに記載のストラドルドビークルにおいて、
    前記ストラドルドビークル左側磨耗許容層と前記車両左側外表面との間、及び、前記ストラドルドビークル右側磨耗許容層と前記車両右側外表面との間の少なくとも一方に、表面保護層が設けられている、ストラドルドビークル。
  6. 請求項1から5のいずれか一つに記載のストラドルドビークルにおいて、
    前記ストラドルドビークル左側磨耗許容層及び前記ストラドルドビークル右側磨耗許容層の少なくとも一方は、前記樹脂と一体化されたインサート部材をさらに含む、ストラドルドビークル。
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