JPWO2018092657A1 - 光学フィルム、偏光板保護フィルム、およびこれらを含む偏光板、ならびにこれらを含む表示装置 - Google Patents

光学フィルム、偏光板保護フィルム、およびこれらを含む偏光板、ならびにこれらを含む表示装置 Download PDF

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Abstract

本発明は、光学用途の環状ポリオレフィンフィルムについて、良好なクラック耐性、高温高湿環境下における耐久性、および接着性を両立させうる手段を提供する。本発明は、環状ポリオレフィンフィルムと、前記環状ポリオレフィンフィルム上に配置された応力緩和層と、を有し、前記応力緩和層は、Si原子、O原子およびC原子を含有し、かつ、前記応力緩和層のX線光電子分光法により測定されるC1sスペクトル領域のデプスプロファイルから求められる、各測定位置におけるC−C、C−SiO、C−O、C=OおよびC(=O)−Oの各結合に由来するピーク強度の総和に対するC−C結合の割合X(%)の、厚さ方向の平均値XAVEが1%以上40%以下である、光学フィルムに関する。

Description

本発明は、光学フィルム、偏光板保護フィルム、およびこれらを含む偏光板、ならびにこれらを含む表示装置に関する。
近年、表示デバイスである液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス表示装置用の偏光板保護フィルムや位相差フィルム等の光学フィルムなど、高透明性、高機能性及び軽量化を実現した可撓性を有する樹脂フィルムへの要望は大きい。樹脂フィルムのなかでも、環状ポリオレフィンフィルムは、透明性、耐熱性、電気特性等に優れることから、光学フィルムとしての応用が検討されている。
しかしながら、環状ポリオレフィンフィルムは、打ち抜き加工や裁断加工時に、端部に微小なクラックが発生し易いことが知られている。この端部の微小なクラックや、これに起因して生じるひび割れ等の欠陥は、例えば環状ポリオレフィンフィルムを表示装置に使用した際に表示故障の原因となりうるものである。これより、光学用途の環状ポリオレフィンフィルムとしては、フィルム強度を改善する技術が検討されている。
特開2004−67984号公報には、ノルボルネン系樹脂と、特定構造を有するシクロオレフィン系樹脂とを含有する樹脂組成物から得られる光学フィルムが開示されている。そして、同文献には、光学フィルムが当該構成を有することで、透明性、透湿性および強度が改善されうることが開示されている。
また、特開2008−274136号公報には、衝撃強度が1000J/m〜30000J/mである、シクロオレフィン系樹脂フィルムが開示されており、当該フィルムを光学フィルムとして用いることで、打ち抜き加工時のクラックの発生が抑制されうることが開示されている。
しかしながら、特開2004−67984号公報の技術は、フィルムの打ち抜き加工や裁断加工時におけるクラック発生、および高温高湿環境下における経時でのクラック拡大を十分に抑制することができないことから、表示故障が十分に抑制されないという問題がある。また、特開2008−274136号公報の技術は、高温高湿環境下における経時でのクラックの発生または拡大を十分に抑制することができないことから、表示故障が十分に抑制されないという問題がある。さらに、これらの技術は共に、環状ポリオレフィンフィルムと偏光子等の他の部材とを貼合した場合、屈曲時に環状ポリオレフィンフィルムと他の部材との間で層間剥離が発生するとの問題がある。
そこで本発明は、光学用途の環状ポリオレフィンフィルムについて、良好なクラック耐性、高温高湿環境下における耐久性、および接着性を両立させうる手段を提供することを目的とする。
本発明の上記課題は、以下の手段により解決される。
環状ポリオレフィンフィルムと、
環状ポリオレフィンフィルム上に配置された応力緩和層と、を有し、
前記応力緩和層は、ケイ素原子(Si)、酸素原子(O)および炭素原子(C)を含有し、かつ、
前記応力緩和層のX線光電子分光法により測定されるC1sスペクトル領域のデプスプロファイルから求められる、各測定位置におけるC−C、C−SiO、C−O、C=OおよびC(=O)−Oの各結合に由来するピーク強度の総和に対するC−C結合に由来するピーク強度の割合X(%)の、厚さ方向の平均値XAVEが1%以上40%以下である、
光学フィルム。
本発明に係る光学フィルムの一例を示す断面模式図である。 本発明に係る応力緩和層の形成に用いられる製造装置の一例を示す模式図である。
本発明の一形態は、環状ポリオレフィンフィルムと、環状ポリオレフィンフィルム上に配置された応力緩和層と、を有し、前記応力緩和層は、ケイ素原子(Si)、酸素原子(O)および炭素原子(C)を含有し、かつ、前記応力緩和層のX線光電子分光法により測定されるC1sスペクトル領域のデプスプロファイルから求められる、各測定位置におけるC−C、C−SiO、C−O、C=OおよびC(=O)−Oの各結合に由来するピーク強度の総和に対するC−C結合に由来するピーク強度の割合X(%)の、厚さ方向の平均値XAVEが1%以上40%以下である、光学フィルムである。本発明の一形態によれば、光学用途の環状ポリオレフィンフィルムについて、良好なクラック耐性、高温高湿環境下における耐久性、および接着性を両立させうる手段が提供される。
本発明者らは、上記構成によって課題が解決されるメカニズムを以下のように推定している。本発明の一形態に係る光学フィルムは、環状ポリオレフィンフィルム上に、ケイ素原子(Si)、酸素原子(O)および炭素原子(C)を含有する応力緩和層を有する。そして、応力緩和層は、その組成中に、炭素が関係する結合として、C−C結合と、C−SiO、C−O、C=OおよびC(=O)−Oからなる群から選択される結合の少なくとも一つを有し、これらの中で、柔軟な結合であるC−C結合を所定の割合で含む。このとき、応力緩和層は打ち抜き加工や裁断加工の際に外部から印加される応力や、光学フィルムが高温高湿環境下に置かれた際に、自己の変形に際して発生する応力を緩和する。さらに、光学フィルムと他の部材とが貼合された状態で高温高湿環境下に置かれた際には、上記経時による他の部材の変形に際して外部から印加される応力や、自己の変形に際して発生する応力を緩和する。これらの結果、クラックの発生またはクラックの拡大が抑制され、クラック耐性、高温高湿環境下における耐久性が向上する。また、このとき、光学フィルムと他の部材とが貼合された状態で屈曲等の変形がなされた際に、光学フィルムと他の部材との貼合界面に集中する応力が緩和され、光学フィルムの界面近くの領域での破壊が抑制される。さらには、他の部材の種類によっては、光学フィルムと他の部材との間の極性による相互作用が高まる。これらの結果、接着性が向上する。なお、上記メカニズムは推測に基づくものであり、その正誤が本発明の技術的範囲に影響を及ぼすものではない。
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等は、室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%RHの条件で測定する。
また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
図1は、本発明に係る光学フィルムの一例を示す断面模式図である。ここで1は光学フィルムを、2は環状ポリオレフィンフィルムを、3は応力緩和層をそれぞれ示す。なお、本発明に係る光学フィルムはこの構造に限定されるものではない。
以下、光学フィルムの各構成要素について、詳細に説明する。
<応力緩和層>
本発明の一形態に係る光学フィルムは、応力緩和層を有する。応力緩和層とは、ケイ素原子(Si)、酸素原子(O)および炭素原子(C)を含有する層であって、X線光電子分光法により測定されるC1sスペクトル領域のデプスプロファイルから求められる、各測定位置におけるC−C、C−SiO、C−O、C=OおよびC(=O)−Oの各結合に由来するピーク強度の総和に対するC−C結合に由来するピーク強度の割合(本明細書では、C−C結合割合とも称する)X(%)の、厚さ方向の平均値XAVEが1%以上40%以下である層である。
光学フィルムが、環状ポリオレフィンフィルムと、環状ポリオレフィンフィルム上に配置された上記の応力緩和層と、を有することで、従来、環状ポリオレフィンフィルム単体では達成が困難であった、良好なクラック耐性、高温高湿環境下における耐久性、および接着性の両立を達成することができる。
(応力緩和層の組成)
ケイ素原子(Si)、酸素原子(O)および炭素原子(C)のいずれかを有さない層は、本発明の効果を奏することはできない。炭素原子を有さない層は、クラック耐性、および高温高湿環境下における耐久性が不十分となる。この理由は、柔軟な結合であるC−C結合を含むことができず、応力緩和効果を発現することができなくなると考えられるからである。また、ケイ素原子または酸素原子を有さない層は、高温高湿環境下における耐久性、および接着性が不十分となる。この理由は、高温高湿環境下で水蒸気や酸素等のガスが層内に入り易くなり、水や酸素等によって層形成材料の酸化が進行し、応力緩和効果および良好な接着性を有する層の組成が維持されなくなると考えられるからである。また、接着性が不十分となる理由は、これらの原子を含まない場合、光学フィルムと他の部材との間の極性による相互作用が弱まる場合もありうると考えられるからである。
なお、応力緩和層がケイ素原子(Si)、酸素原子(O)および炭素原子(C)を有することは、後述するX線光電子分光法による元素分布プロファイルの測定におけるワイドスキャンスペクトル分析の結果より確認することができる。
AVEが1%未満であると、クラック耐性が不十分となる。この理由は、柔軟な結合であるC−C結合を十分な量として含むことができず、応力緩和効果を発現することができなくなると考えられるからである。応力緩和効果をより向上させ、クラック耐性をより向上させるとの観点から、XAVEは、2%以上であることが好ましい。また、XAVEが40%超であると、接着性が不十分となる。この理由は、ケイ素原子または酸素原子の含有量が過剰となり、高温高湿環境下で水蒸気や酸素等のガスが層内に入り易くなり、水や酸素等によって層形成材料の酸化が進行することで、良好な接着性を有する層の組成が維持されなくなると考えられるからである。または、この理由は、C−C結合の含有量が過剰となることで層形成材料が酸化容易な組成となり、水や酸素等によって層形成材料の酸化が進行し、良好な接着性を有する層の組成が維持されなくなると考えられるからである。または、この理由は、光学フィルムと他の部材との間の極性による相互作用が弱まる場合もありうると考えられるからである。層の酸化耐性をより高め、または光学フィルムと他の部材との間の極性による相互作用をより強め、接着性をより向上させるとの観点から、XAVEは、20%以下であることが好ましい。これより、本発明に係る好ましいXAVEの範囲の一例は、2%以上20%以下が挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、X(%)およびXAVE(%)は、後述するX線光電子分光法による元素分布プロファイルの測定におけるC1sの高分解能スペクトル(ナロースキャン分析)の結果より算出することができる。
本発明の一形態に係る応力緩和層において、各層厚方向の深さの測定位置の、X線光電子分光法によって求めたケイ素原子、酸素原子及び炭素原子に由来するピーク強度の比率より換算される組成比の合計量を100at%としたときの炭素原子の割合(本明細書では、炭素組成割合とも称する)[C](at%)の平均値である[CAVE](at%)は、クラック耐性をより向上させるとの観点から、2at%以上であることが好ましい。この理由は、柔軟な結合であるC−C結合を十分な量として含むことで、応力緩和効果がより向上すると考えられるからである。同様の観点から、[CAVE](at%)は、4at%以上であることがより好ましく、5at%以上であることがさらに好ましい。また、[CAVE](at%)は、接着性をより向上させるとの観点から、30at%以下であることが好ましい。この理由は、ケイ素原子または酸素原子の含有量が十分となり、高温高湿環境下で水蒸気や酸素等のガスが層内に入り難くなり、水や酸素等によって層形成材料の酸化が抑制されることで、良好な接着性を有する層の組成がより強固に維持されると考えられるからである。または、この理由は、C−C結合の含有量が十分となることで層形成材料は酸化が生じ難い組成となり、水や酸素等によって層形成材料の酸化が抑制されることで、良好な接着性を有する層の組成がより強固に維持されると考えられるからである。または、この理由は、光学フィルムと他の部材との間の極性による相互作用がより強まる場合もありうると考えられるからである。同様の観点から、[CAVE](at%)は、24at%以下であることがより好ましい。
なお、[C](at%)および[CAVE](at%)は、後述するX線光電子分光法による元素分布プロファイルの測定におけるワイドスキャンスペクトル分析の結果より算出することができる。
[X線光電子分光法]
炭素分布曲線(応力緩和層の層厚方向における応力緩和層の最表面からの距離(L)と、炭素原子(C)、ケイ素原子(Si)及び酸素原子(O)の総原子数(100at%)に対する炭素原子数の比率(炭素原子比率)との関係を示す曲線)、ケイ素分布曲線(距離Lと、炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子の総原子数(100at%)に対するケイ素原子数の比率(ケイ素原子比率)との関係を示す曲線)及び酸素分布曲線(距離Lと、炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子の総原子数(100at%)に対する酸素原子数の比率(酸素原子比率)との関係を示す曲線)を、X線光電子分光法(X−ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)の測定とアルゴン等の希ガスイオンスパッタとを併用することにより、試料内部を露出させつつ順次表面組成分析を行う、いわゆるXPSデプスプロファイル測定により作成することができる。
≪元素分布プロファイルの測定≫
XPSデプスプロファイルの測定は、例えば、下記条件にて測定を行い、層厚方向の薄膜層の表面からの距離に対する、炭素分布曲線、ケイ素分布曲線及び酸素分布曲線を得ることができる。
エッチングイオン種:アルゴン(Ar)、
エッチングレート(SiO熱酸化膜換算値):0.05nm/sec、
エッチング間隔(SiO換算値):2nm、
X線光電子分光装置:Thermo Fisher Scientific社製、機種名「VG Theta Probe」、
照射X線:単結晶分光AlKα、
X線のスポット及びそのサイズ:800μm×400μmの楕円形。
このようなXPSデプスプロファイル測定により得られる分布曲線は、例えば、縦軸を各元素の原子比率(at%)とし、横軸をエッチング時間(スパッタ時間)として作成することができる。
なお、各領域における原子比率(at%)は、XPSデプスプロファイル測定で深さ方向にエッチングして、例えば、2nm間隔で測定した値を平均化した値とする。
以上のように、応力緩和層全領域を測定するワイドスキャンスペクトル分析を行うことによって、炭素分布曲線、ケイ素分布曲線及び酸素分布曲線を得ることができる。
本測定の結果から、応力緩和層の層厚方向の深さの各測定位置について、X線光電子分光法によって求めたケイ素原子、酸素原子及び炭素原子に由来するピーク強度の比率より換算される組成比の合計量を100at%としたときの炭素原子の割合[C](at%)を算出する。そして、応力緩和層の層厚方向の深さの各測定位置における各[C](at%)の値から、[C](at%)の膜厚方向での平均値[CAVE](at%)をさらに算出する。
≪炭素原子の結合状態の分析≫
炭素原子に関しては、C1sの高分解能スペクトル(ナロースキャン分析)により、炭素の結合状態を分析する。具体的には、応力緩和層の膜厚方向の深さの各測定位置について、炭素結合(C)に関して、C1sの波形解析に基づいて、(1)C−C、(2)C−SiO、(3)C−O、(4)C=O、(5)C(=O)−O、のように5つの結合に分けて、それぞれのスペクトルのピークの強度比を算出する。そして、応力緩和層の膜厚方向の深さの各測定位置について、上記(1)〜(5)のピーク強度比の総和を100%としたとき、(1)のC−C結合に由来するピーク強度の割合X(%)を算出する。そして、応力緩和層の層厚方向の深さの各測定位置における各X(%)の値から、X(%)の膜厚方向での平均値であるXAVE(%)をさらに算出する。なお、ピーク強度の解析は、例えば、データ解析ソフトウェアPeakFit(SYSTAT Software Inc.製)を用いて行うことができる。
X線光電子分光法による元素分布プロファイルの測定結果を用いた[CAVE](at%)およびXAVEの具体的な算出方法は実施例に記載している。また、[CAVE](at%)およびXAVEの制御方法は、後述する応力緩和層の製造方法に記載している。
また、本明細書において、「基材との界面」とは、「応力緩和層を形成する組成の一部である酸素原子(O)の組成比が、30at%以下となるときの応力緩和層の層厚方向の最表面側からの深さの位置」のことをいう。なお、酸素原子(O)の組成比は、上記したX線光電子分光法によって算出することができる。
(応力緩和層の膜厚)
本発明の一形態に係る応力緩和層の層厚(応力緩和層を環状ポリオレフィンフィルムの一方の面側に2層以上の積層構造として有する場合は、その合計層膜厚)は、本発明の効果をより良好に発現するとの観点から、1nm以上であることが好ましく、5nm以上であることがより好ましい。また、本発明の一形態に係る応力緩和層の層厚は、薄膜化の観点から、300nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることがさらに好ましい。
[応力緩和層の層厚の測定方法]
応力緩和層の層厚は、応力緩和層の積層方向において、最表面から基材との界面までの深さを、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)による断面観察により測定することによって求めることができる。透過型電子顕微鏡による断面観察では、層厚を任意に10箇所測定し、平均した値を応力緩和層の層厚とする。
≪層厚方向の断面のTEM画像≫
断面のTEM観察として、観察試料を以下の集束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)加工装置により薄片作製後、TEM観察を行う。ここで、試料に電子線を照射し続けると電子線ダメージを受ける部分とそうでない部分にコントラスト差が現れるため、そのコントラスト差によって応力緩和層の層厚を測定することができる。
≪FIB加工≫
装置:セイコーインスツル株式会社(SII)製SMI2050、
加工イオン:Ga(30kV)、
試料厚さ:100〜200nm、
≪TEM観察≫
装置:日本電子株式会社製JEM2000FX(加速電圧:200kV)。
[応力緩和層の製造方法]
本発明の一形態に係る応力緩和層は、プラズマ化学気相成長法(プラズマCVD、PECVD(plasma−enhanced chemical vapor deposition)、以下、単に「プラズマCVD法」とも称する。)により形成することが好ましい。
プラズマCVD法としては、特に限定されないが、国際公開第2006/033233号に記載の大気圧又は大気圧近傍でのプラズマCVD法、対向ローラー電極を持つプラズマCVD装置を用いたプラズマCVD法、真空プラズマCVD法等が挙げられる。本明細書では、真空プラズマCVD法とは、50Pa以下の真空度におけて成膜を行うプラズマCVD法をいう。プラズマCVD法は、ペニング放電プラズマ方式のプラズマCVD法であってもよい。
中でも、有機ケイ素化合物を含む原料ガスと酸素ガスとを用いて、磁場を印加したローラー間に放電空間を有する(ロールtoロール方式の)放電プラズマ化学気相成長法により形成することが好ましい。上述したように、放電プラズマ化学気相成長法を用いることにより、各領域における炭素原子比率が一定範囲内に制御された応力緩和層を容易に作製可能であり、層内の応力バランスが適切な応力緩和層を作製することができる。さらに、放電プラズマ化学気相成長法を用いることにより、応力緩和層が緻密化し、接着性を向上させることができると考えられる。この理由は、高温高湿環境下で水蒸気や酸素等のガスが層内に入り難くなり、水や酸素等によって層形成材料の酸化が抑制されることで、良好な接着性を有する層の組成がより強固に維持されるからと考えられるからである。
以下、有機ケイ素化合物を含む原料ガスと酸素ガスとを用いて、磁場を印加したローラー間に放電空間を有する放電プラズマ化学気相成長法により、本発明の一形態に係る応力緩和層を形成する方法について説明する。
プラズマCVD法においてプラズマを発生させる際には、複数の成膜ローラーの間の空間にプラズマ放電を発生させることが好ましく、一対の成膜ローラーを用い、その一対の成膜ローラーのそれぞれに環状ポリオレフィンフィルムを含む基材(以下、単に基材とも称する。ここでいう基材には、基材が処理された形態も含む。)を配置して、一対の成膜ローラー間に放電してプラズマを発生させることがより好ましい。
ここで、基材は、環状ポリオレフィンフィルム単体、環状ポリオレフィンフィルムと後述するアンカーコート層とを含む積層体であることが好ましく、環状ポリオレフィンフィルム単体であることがより好ましい。
このようにして、一対の成膜ローラーを用い、その一対の成膜ローラー上に基材を配置して、かかる一対の成膜ローラー間に放電することにより、成膜時に一方の成膜ローラー上に存在する基材の表面部分を成膜しつつ、もう一方の成膜ローラー上に存在する基材の表面部分も同時に成膜することが可能となって効率よく薄膜を製造できる。加えて、ローラーを使用しない通常のプラズマCVD法と比較して成膜レートを倍にできる。
また、このようにして一対の成膜ローラー間に放電する際には、一対の成膜ローラーの極性を交互に反転させることが好ましい。さらに、このようなプラズマCVD法に用いる成膜ガスとしては、有機ケイ素化合物と酸素とを含むものが好ましい。
以下、図2を参照しながら、本発明の一形態に係る応力緩和層の形成方法について、より詳細に説明する。なお、図2は、本発明の一形態に係る応力緩和層を製造するために好適に利用することが可能な製造装置の一例を示す模式図である。また、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図2に示す製造装置10は、送出しローラー12と、搬送ローラー13〜18と、成膜ローラー19及び20と、ガス供給管21と、プラズマ発生用電源22と、成膜ローラー19及び20の内部にそれぞれ設置された磁場発生装置23及び24と、巻取りローラー25を備えている。また、このような製造装置10においては、少なくとも成膜ローラー19及び20と、ガス供給管21と、プラズマ発生用電源22と、磁場発生装置23及び24とが成膜(真空)チャンバー28内に配置されている。さらに、このような製造装置10において、成膜チャンバー28は図示を省略した真空ポンプに接続されており、かかる真空ポンプにより成膜チャンバー28内の圧力を適宜調整することが可能となっている。
送出しローラー12及び搬送ローラー13は、搬送系チャンバー27内に配置され、巻取りローラー25及び搬送ローラー18は、搬送系チャンバー29内に配置されている。搬送系チャンバー27及び29と成膜チャンバー28とは、それぞれ連結部30及び31を介して接続されている。例えば、連結部30及び31に真空ゲートバルブを設けて成膜チャンバー28と搬送系チャンバー27及び29とを物理的に隔離してもよい。真空ゲートバルブを用いることによって、例えば、成膜チャンバー28内のみを真空系とし、搬送系チャンバー27及び29内は大気下とすることができる。また、成膜チャンバー28と搬送系チャンバー27及び29とを物理的に隔離することにより、成膜チャンバー28内で発生したパーティクルによって搬送系チャンバー27及び29が汚染されることを抑制することができる。
このような製造装置においては、一対の成膜ローラー(成膜ローラー19及び20)を一対の対向電極として機能させることが可能となるように、各成膜ローラー19及び20がそれぞれプラズマ発生用電源22に接続されている。そのため、このような製造装置10においては、プラズマ発生用電源22により電力を供給することにより、成膜ローラー19と成膜ローラー20との間の空間に放電することが可能であり、これにより成膜ローラー19と成膜ローラー20との間の空間にプラズマを発生させることができる。なお、このように、成膜ローラー19と成膜ローラー20とを電極としても利用する場合には、電極としても利用可能なようにその材質や設計を適宜変更すればよい。
また、このような製造装置10においては、一対の成膜ローラー(成膜ローラー19及び20)は、その中心軸が同一平面上において略平行となるようにして配置することが好ましい。このようにして、一対の成膜ローラー(成膜ローラー19及び20)を配置することにより、ローラーを使用しない通常のプラズマCVD法と比較して成膜レートを倍にできる。
このような製造装置10によれば、CVD法により基材2の表面上に応力緩和層3を形成することが可能であり、成膜ローラー19上において基材2の表面上に応力緩和層形成材料(以下、応力緩和層成分とも称する)を堆積させつつ、更に成膜ローラー20上においても基材2の表面上に応力緩和層成分を堆積させることもできるため、基材2の表面上に応力緩和層を効率よく形成することができる。
成膜ローラー19及び20の内部には、成膜ローラー19及び20が回転しても回転しないようにして固定された磁場発生装置23及び24がそれぞれ設けられている。
成膜ローラー19及び20にそれぞれ設けられた磁場発生装置23及び24は、一方の成膜ローラー19に設けられた磁場発生装置23と他方の成膜ローラー20に設けられた磁場発生装置24との間で磁力線がまたがらず、それぞれの磁場発生装置23及び24がほぼ閉じた磁気回路を形成するように磁極を配置することが好ましい。このような磁場発生装置23及び24を設けることにより、各成膜ローラー19及び20の対向側表面付近に磁力線が膨らんだ磁場の形成を促進することができ、その膨出部にプラズマが収束されやすくなるため、成膜効率を向上させることができる点で優れている。
また、成膜ローラー19及び20にそれぞれ設けられた磁場発生装置23及び24は、それぞれローラー軸方向に長いレーストラック状の磁極を備え、一方の磁場発生装置23と他方の磁場発生装置24とは向かい合う磁極が同一極性となるように磁極を配置することが好ましい。このような磁場発生装置23及び24を設けることにより、それぞれの磁場発生装置23及び24について、磁力線が対向するローラー側の磁場発生装置にまたがることなく、ローラー軸の長さ方向に沿って対向空間(放電領域)に面したローラー表面付近にレーストラック状の磁場を容易に形成することができ、その磁場にプラズマを収束させることができため、ローラー幅方向に沿って巻き掛けられた幅広の基材2を用いて効率的に蒸着膜である応力緩和層3を形成することができる点で優れている。
各成膜ローラー19及び20における基材2への張力は、全て同じであってもよいが、成膜ローラー19又は成膜ローラー20における張力のみ高くして成膜してもよい。成膜ローラー19及び20における基材2への張力を高くすることによって、基材2と成膜ローラー19及び20との密着性が向上し、熱交換が効率的に行われ、膜均一性が向上し、また、熱シワも抑制されるという利点がある。
成膜ローラー19及び20としては、適宜公知のローラーを用いることができる。このような成膜ローラー19及び20としては、より効率よく薄膜を形成させるという観点から、直径が同一のものを使うことが好ましい。また、このような成膜ローラー19及び20の直径としては、放電条件、チャンバーのスペース等の観点から、直径が300〜1000mmφの範囲内、特に300〜700mmφの範囲内が好ましい。成膜ローラーの直径が300mmφ以上であれば、プラズマ放電空間が小さくなることがないため生産性の劣化もなく、短時間でプラズマ放電の全熱量が基材2にかかることを回避できることから、基材2へのダメージを軽減でき好ましい。一方、成膜ローラーの直径が1000mmφ以下であれば、プラズマ放電空間の均一性等も含めて装置設計上、実用性を保持することができるため好ましい。各成膜ローラー19及び20は、ニップロールを備えていてもよく、ニップロールを備えることで、基材2の成膜ローラー19及び20への密着性が向上する。これにより、基材2と成膜ローラー19及び20との間で熱交換が効率的に行われ、膜均一性が向上し、また、熱シワも抑制されるという利点がある。
このような製造装置10においては、基材2の表面がそれぞれ対向するように、一対の成膜ローラー(成膜ローラー19及び20)上に、基材2が配置されている。このようにして基材2を配置することにより、成膜ローラー19と成膜ローラー20との間の対向空間に放電を行ってプラズマを発生させる際に、一対の成膜ローラー(成膜ローラー19及び20)間に存在する基材2のそれぞれの表面を同時に成膜することが可能となる。すなわち、このような製造装置10によれば、プラズマCVD法により、成膜ローラー19上にて基材2の表面上に応力緩和層成分を堆積させ、更に成膜ローラー20上にて応力緩和層成分を堆積させることができるため、基材2の表面上に応力緩和層を効率よく形成することが可能となる。
製造装置10に用いる送出しローラー12及び搬送ローラー13〜18としては、適宜公知のローラーを用いることができる。また、巻取りローラー25としても、基材2上に応力緩和層3を形成した光学フィルム1を巻き取ることが可能なものであればよく、特に制限されず、適宜公知のローラーを用いることができる。また、送出しローラー12や巻取りローラー25は、ターレット式であってもよい。ターレットは、2軸以上の多軸であってもよく、そのうち一部の軸のみを大気開放できる構造であってもよい。
また、ガス供給管21及び真空ポンプとしては、原料ガス等を所定の速度で供給又は排出することが可能なものを適宜用いることができる。
また、ガス供給手段であるガス供給管21は、成膜ローラー19と成膜ローラー20との間の対向空間(放電領域、成膜ゾーン)の一方に設けることが好ましく、真空排気手段である真空ポンプ(図示せず。)は、対向空間の他方に設けることが好ましい。このようにガス供給手段であるガス供給管21と、真空排気手段である真空ポンプを配置することにより、成膜ローラー19と成膜ローラー20との間の対向空間に効率よく成膜ガスを供給することができ、成膜効率を向上させることができる点で優れている。
なお、図2においては、ガス供給管21は、成膜ローラー19と成膜ローラー20との間の中心線上に設けられているが、これに限定されず、例えば、成膜ローラー19と成膜ローラー20との間の中心線から、どちらか一方側にずれていてもよい(左右方向に中心線からずらしてもよい。)。ガス供給管21を成膜ローラー19と成膜ローラー20との間の中心線からずらすことによって、片方の成膜ローラーに近く、もう片方の成膜ローラーからは遠くなるため、原料ガスの供給が成膜ローラー19上で形成される膜組成と成膜ローラー20上で形成させる膜組成とが異なるようになり、膜質を変えたいときなどに適宜ガス供給管21の位置をずらせばよい。また、ガス供給管21は、適宜中心線上で成膜ローラーから離したり近づけたりしてもよい(上下方向に中心線上で配置位置を動かしてもよい。)。ガス供給管21を成膜ローラーの中心軸上で遠ざけ、放電空間からガス供給管21を離すことによって、ガス供給管21にパーティクルが付着することを抑制できるなどの利点があり、ガス供給管21を成膜ローラーの中心軸上で放電空間に近づけることによって成膜レートを向上させることができるなどの利点がある。
図2において、ガス供給管21は一つであるが、ガス供給管21は複数あってもよく、各ノズルから異なる供給ガスを放出する形態であってもよい。
さらに、プラズマ発生用電源22としては、適宜公知のプラズマ発生装置の電源を用いることができる。このようなプラズマ発生用電源22は、これに接続された成膜ローラー19と成膜ローラー20とに電力を供給して、これらを放電のための対向電極として利用することを可能とする。このようなプラズマ発生用電源22としては、より効率よくプラズマCVDを実施することが可能となることから、一対の成膜ローラーの極性を交互に反転させることが可能なもの(交流電源など)を利用することが好ましい。
また、このようなプラズマ発生用電源22としては、より効率よくプラズマCVDを実施することが可能となることから、印加電力を100W〜20kWの範囲内とすることが好ましく、100W〜10kWの範囲内とすることがより好ましい。また、プラズマ発生用電源22としては、より効率よくプラズマCVDを実施することが可能となることから、交流の周波数を50Hz〜13.56MHzの範囲内とすることが好ましく、50Hz〜500kHzの範囲内とすることがより好ましい。
また、プラズマプロセス安定化の点から、高周波電流波及び電圧波がどちらも正弦波となるような高周波電源を用いてもよい。
図2においては、一つのプラズマ発生用電源22で成膜ローラー19及び20の双方に給電している(両成膜ローラー給電)が、このような形態に限定されるものではなく、一方の成膜ローラーに給電し(片側成膜ローラー給電)、他方の成膜ローラーをアースする形態であってもよい。
また、成膜ローラーへの給電方法としては、ローラー端の一方のみから給電するローラー片端給電でもよいし、ローラーの両端から給電するローラー両端給電であってもよい。高周波帯を供給する場合には、均一な供給が可能となることから、ローラー両端給電であってもよい。
また、給電方法としては、異なる周波数を印加する2周波給電を行ってもよく、一方の成膜ローラーに異なる2周波を印加する形態であっても、一方の成膜ローラーと他方の成膜ローラーとで異なる周波数を印加する形態であってもよい。このような2周波給電により、プラズマ密度が上がり、成膜速度を向上させることができる。
また、図2には図示していないが、放電空間のプラズマ発光強度を外部からモニタリングし、所望の発光強度でない場合には、磁場間距離(対向ローラー間距離)、磁場強度、電源の印加電力、電源周波数、供給ガス量などを調整して所望のプラズマ発光強度とするフィードバック回路を有していてもよい。このようなフィードバック回路を有することによって、成膜/生産を安定にすることができる。
また、磁場発生装置23及び24としては、適宜公知の磁場発生装置を用いることができる。さらに、基材2としては、環状ポリオレフィンフィルム上に応力緩和層3をあらかじめ形成させたものを用いることができる。このように、基材2として応力緩和層3をあらかじめ形成させたものを用いることにより、応力緩和層3の層厚を厚くすることも可能である。
図2に示す製造装置10を用いて、成膜ガス(原料ガス等)を成膜チャンバー28内に供給しつつ、一対の成膜ローラー(成膜ローラー19及び20)間に放電を発生させることにより、成膜ガス(原料ガス等)がプラズマによって分解され、成膜ローラー19上の基材2の表面上及び成膜ローラー20上の基材2の表面上に、成膜層がプラズマCVD法により形成される。この際、成膜ローラー19及び20のローラー軸の長さ方向に沿って対向空間(放電領域)に面したローラー表面付近にレーストラック状の磁場が形成されて、磁場にプラズマを収束させる。このプロセスを成膜条件の一つ又は複数を変化させて2回目の成膜層の形成、第3回目の成膜層の形成と、異なる条件による成膜を繰り返すことによって、層厚方向に各構成原子の組成が連続的に変化した応力緩和層を形成してもよい。
次に、応力緩和層を形成させるための、成膜ガスについて説明する。
成膜ガスとしては、原料ガスの他に反応ガスを用いてもよい。このような反応ガスとしては、原料ガスと反応して酸化物等の無機化合物となるガスを適宜選択して使用することができる。応力緩和層3は、酸素を含むことから、反応ガスとしては、例えば、酸素、オゾンを用いることができ、簡便性の観点から酸素を用いることが好ましい。また、その他、窒化物を形成するための反応ガスを用いてもよく、例えば、窒素、アンモニアを用いることができる。これらの反応ガスは、単独でも、又は2種以上を組み合わせても使用することができ、例えば、酸窒化物を形成する場合には、酸化物を形成するための反応ガスと窒化物を形成するための反応ガスとを組み合わせて使用することができる。
成膜ガスとしては、原料ガスを成膜チャンバー28内に供給するために、必要に応じて、キャリアガスを用いてもよい。さらに、成膜ガスとしては、プラズマ放電を発生させるために、必要に応じて、放電ガスを用いてもよい。このようなキャリアガス及び放電ガスとしては、適宜公知のものを使用することができ、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等の希ガス、水素及び窒素を用いることができる。
以上説明した図2に示す製造装置10を用いて、ケイ素原子(Si)、酸素原子(O)および炭素原子(C)を含有し、かつ、X線光電子分光法により測定されるC1sスペクトル領域のデプスプロファイルから求められる、各測定位置におけるC−C、C−SiO、C−O、C=OおよびC(=O)−Oの各結合に由来するピーク強度の総和に対するC−C結合に由来するピーク強度の割合X(%)の、厚さ方向の平均値XAVEが1%以上40%以下である応力緩和層を形成することができる。
応力緩和層の組成、すなわち、含有する原子の種類、[C](at%)および[CAVE](at%)の値、ならびにX(%)およびXAVE(%)の値を制御する方法は特に限定されるものではないが、プラズマ発生用電源の電力、搬送速度、用いられる原料ガスの種類、用いられる原料ガスの供給量、用いられる酸素ガスの供給量、用いられる原料ガスと酸素ガスとの比率、真空チャンバー内の真空度、搬送速度等を適宜組み合わせて制御する方法を用いることが好ましい。
真空チャンバー内の圧力(真空度)は、原料ガスの種類等に応じて適宜調整することができる。ここで、真空度は、0.5Pa以上50Pa以下とすることが好ましい。
ここで、プラズマ発生用電源22の電力は上記したような交流電源を用いる場合は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができる。また、このようなプラズマCVD法において、成膜ローラー19と成膜ローラー20との間に放電するために、プラズマ発生用電源22に接続された電極ドラム(本実施形態においては、成膜ローラー19及び20に設置されている。)に印加する電力は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができるものであり一概にいえるものでないが、有効成膜幅1mに対して、例えば、1kW以上10kW以下とすることが好ましい。
基材2の搬送速度(ライン速度)は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができる。ここで、搬送速度は、0.25m/min以上とすることが好ましく、0.5m/min以上とすることがより好ましい。また、搬送速度は、100m/min以下とすることが好ましく、60m/min以下とすることがより好ましい。
応力緩和層の組成、すなわち、含有する原子の種類、[C](at%)および[CAVE](at%)の値、ならびにX(%)およびXAVE(%)の値は、例えば、以下の方法(1)〜(4)を採用することで本発明の範囲内に制御することが特に好ましい。
(1)プラズマCVD用原料ガスによる制御
分子内に炭素、水素、酸素及びケイ素の比率の異なるプラズマCVD用原料を適切に使用することによって、制御することができる。
具体的には、プラズマCVD用原料としては、分子内にSi−C結合の比率が低い有機ケイ素化合物が好ましく用いられる。これらの有機ケイ素化合物における1分子中のSi−Cの結合は、1分子中のSi原子1個に対して2個以下が好ましく、より好ましくは、1個又は0個である。
具体的には、ヘキサメチルジシロキサン、テトラメチルジシロキサン等のジシロキサン類よりも、オクタメチルシクロテトラシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン等の環状シロキサンや、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン等のSiを1分子中に1個含有するアルコキシシランが好ましく用いられる。これらの化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
ここで、原料ガスの供給量が大きくなると、XAVE(%)は大きくなる。
(2)反応ガスである酸素ガスの供給量による制御
CVD製膜時に供給する反応ガスである酸素ガスの供給量を増減させることによって、制御することができる。
具体的には、上記の好ましい原料を酸化してケイ素原子、酸素原子及び炭素原子を含有する応力緩和層を形成する際に、完全に酸化させない程度に酸素ガスの供給量を抑制し、逆に応力緩和層中に過剰な炭素が残存しない程度に原料ガスに対して、酸素ガスを一定量供給することによって制御することが好ましい。
ここで、酸素ガスの供給量が大きくなると[CAVE](at%)は小さくなる。
(3)不活性ガスの添加量の制御
成膜中に、必要に応じて窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを供給し、この不活性ガスの供給量を調整することによって、応力緩和層を形成する際のプラズマを安定化させて、酸化反応を調整することで、制御することができる。ただし、本発明は、不活性ガスを使用するものに限られない。
(4)プラズマ放電における電極間の距離の制御
プラズマ放電を生成するための電極間の距離を連続的に変化させることによっても、制御することができる。前述の一対のロール電極が対面する装置を用いる場合には、電極に接する基材表面で生成するプラズマ空間が連続的に変化することになるため、電極間の距離が連続的に変化することによる成膜条件の変化によって、応力緩和層内の組成を連続的に変化させることができる。
上記したように、本実施形態のより好ましい態様としては、本発明に係る応力緩和層を、図2に示す対向ローラー電極を有するプラズマCVD装置(ロールtoロール方式)を用いたプラズマCVD法によって、成膜することを特徴とするものである。これは、対向ローラー電極を有するプラズマCVD装置(ロールtoロール方式)を用いて量産する場合に、環状ポリオレフィンフィルムのクラック耐性、高温高湿環境下における耐久性、および接着性を改善しうる応力緩和層を効率よく製造することができるためである。
<環状ポリオレフィンフィルム>
本発明の一形態に係る光学フィルムは、環状ポリオレフィンフィルムを有する。本願明細書では、環状ポリオレフィンフィルムとは、環状ポリオレフィンを、樹脂フィルムの総質量に対して50質量%以上含むフィルムを表すものとする。なお、ここでいう「樹脂フィルム」とは、環状ポリオレフィンを含む樹脂組成物より形成されうる樹脂フィルムそのものを指し、応力緩和層や、任意に含まれうる他の層を含むものではない。環状ポリオレフィンの含有量が50質量%未満であると、環状ポリオレフィンに由来する優れた透明性、耐熱性、電気特性等の特性を得ることができないからである。同様の観点から、環状ポリオレフィンの含有量は、80質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上含むことがより好ましい(上限100質量%)。
(環状ポリオレフィン)
本発明に用いられる環状ポリオレフィンは脂環式構造を含有する重合体樹脂からなるものである。環状ポリオレフィンは、環状オレフィンを重合又は共重合したものであってもよく、環状オレフィンと環状オレフィン以外の単量体とを付加共重合したものであってもよく、またこれらを水素添加反応させて、分子中の不飽和結合を飽和結合に変えたものであってもよい。
環状ポリオレフィンは、特に制限されず、公知のものを用いることができる。環状ポリオレフィンの例としては、特開2004−67984号公報の段落「0015」〜「0062」、特開2005−254812号公報の段落「0005」〜「0007」、特開2008−274136号公報の段落「0016」〜「0052」、特開2014−106338号公報の段落「0017」〜「0036」、特開2015−209487号公報の段落「0063」〜「0066」、国際公開第2007/043885号公報の段落「0404」〜「0421」に記載されたもの等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、環状オレフィンを形成する環状オレフィンの例としては、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、エチルテトラシクロドデセン、エチリデンテトラシクロドデセン、テトラシクロ〔7.4.0.110,13.02,7〕トリデカ−2,4,6,11−テトラエンなどの多環構造の不飽和炭化水素及びその誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)−1−シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン、シクロヘプテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンなどの単環構造の不飽和炭化水素及びその誘導体等、ならびにこれらを水素添加反応させたもの等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の一形態に係る環状ポリオレフィンは、極性基を有する環状ポリオレフィンであることが好ましい。
極性基としては、例えば、ヒドロキシ基、炭素原子数1〜10のアルコキシル基、炭素原子数1〜10のアシルオキシ基、炭素原子数2〜10のアルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、アミド基、イミド環含有基、トリオルガノシロキシ基、トリオルガノシリル基、アミノ基、アシル基、炭素原子数1〜10のアルコキシシリル基、スルホニル含有基及びカルボキシ基等が挙げられる。これらの極性基について、更に具体的に説明すると、上記アルコキシル基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基等が挙げられ;アシルオキシ基としては、例えばアセトキシ基、プロピオニルオキシ基等のアルキルカルボニルオキシ基、及びベンゾイルオキシ基等のアリールカルボニルオキシ基が挙げられ;アルコキシカルボニル基としては、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられ;アリールオキシカルボニル基としては、例えばフェノキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基、フルオレニルオキシカルボニル基、ビフェニリルオキシカルボニル基等が挙げられ;トリオルガノシロキシ基としては、例えばトリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基等が挙げられ;トリオルガノシリル基としては、例えばトリメチルシリル基、トリエチルシリル基等が挙げられ;アミノ基としては、例えば第1級アミノ基が挙げられ;アルコキシシリル基としては、例えばトリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等が挙げられる。これらの中でも、アルコキシカルボニル基が好ましく、メトキシカルボニル基がより好ましい。
本発明に係る環状ポリオレフィンとしては、例えば、下記式で表される(共)重合体が挙げられる。
(式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基又は極性基を表し、置換若しくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基は、酸素原子、窒素原子、イオウ原子又はケイ素原子を有する連結基を介して結合していても良い。RとR又はRとRの二つが結合して2価の炭化水素基を形成していても良く、炭素環又は複素環を形成していても良い。複数のR〜Rの各々は同一であっても異なっていても良い。ただし、R〜Rの少なくとも一つは極性基である。p及びmは、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。)
極性基としては、上記で挙げたものと同様である。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子が挙げられる。
炭素原子数1〜30の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基;フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等の芳香族基等が挙げられる。これらの炭化水素基は置換されていても良く、置換基としては例えばフッ素原子、塩素原子及び臭素原子等のハロゲン原子、フェニルスルホニル基等が挙げられる。
また、置換又は非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基は、直接環構造に結合していても良いし、連結基(linkage)を介して結合していても良い。連結基としては、例えば式:−(CH−(mは1〜10の整数)で表されるアルキレン基等の炭素原子数1〜10の2価の炭化水素基、又は、酸素原子、窒素原子、イオウ原子若しくはケイ素原子を含む連結基が挙げられる。酸素原子、窒素原子、イオウ原子又はケイ素原子を含む連結基の具体例としては、カルボニル基[−CO−]、カルボニルオキシ基[−COO−]、オキシカルボニル基[−OCO−]、スルホニル基[−SO−]、エーテル結合[−O−]、チオエーテル結合[−S−]、イミノ基[−NH−]、アミド結合[−NHCO−、−CONH−]、シロキサン結合[−OSi(R)−(式中、Rはメチル基、エチル基等のアルキル基)]、及びこれらの基が2種以上連結されてなる基等が挙げられる。
とR又はRとRの二つが結合して2価の炭化水素基を形成しても良く、炭素環又は複素環を形成しても良いが形成していない方が好ましい。炭素環又は複素環は、単環構造であっても多環構造であっても良く、当該炭素環又は当該複素環は芳香環であっても非芳香環であっても良いが、非芳香族環の方が好ましい。
〜Rの少なくとも一つは極性基であり、R〜Rの極性基以外の基は、水素原子であることが好ましい。
また、mが0〜3の整数、pが0〜3の整数であることが好ましく、m+p=0〜4であることがより好ましく、m+p=0〜2であることが更に好ましく、m=1、p=0である特に好ましい。
m=1、p=0である特定単量体は、得られる環状ポリオレフィンのガラス転移温度が高くかつ機械的強度も優れたものとなる点で好ましい。
上記式で表される(共)重合体の生成に用いられる共重合性単量体の具体例としては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、ジシクロペンタジエン等のシクロオレフィンを挙げることができる。
シクロオレフィンの炭素原子数としては、4〜20の範囲内が好ましく、更に好ましくは5〜12の範囲内である。
本発明において、環状ポリオレフィンは1種単独で、又は2種以上を併用することができる。
環状ポリオレフィンの好ましい分子量は、固有粘度〔η〕inhで0.2〜5dl/gであることが好ましく、0.3〜3dl/gであることがより好ましく、0.4〜1.5dl/gであることがさらに好ましい。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、8000〜100000であることが好ましく、10000〜80000であることがより好ましく、12000〜50000であることがさらに好ましい。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、20000〜300000であることが好ましく、30000〜250000であることがより好ましく、40000〜200000であることがさらに好ましい。
固有粘度〔η〕inh、数平均分子量及び重量平均分子量が上記範囲にあることによって、環状ポリオレフィンの耐熱性、耐水性、耐薬品性、機械的特性、及び本発明の偏光板保護フィルムとしての成形加工性が良好となる。
本発明の一形態に用いられうる環状ポリオレフィンのガラス転移温度(Tg)としては、通常、110℃以上であることが好ましく、110〜350℃であることがより好ましく、120〜250℃であることがさらに好ましく、120〜220℃であることが特に好ましい。Tgを110℃以上とすると、高温条件下での使用、又はコーティング、印刷等の二次加工により変形がより起こり難くなる。一方、Tgを350℃以下とすると、成形加工が困難になる場合をより確実に回避し、成形加工時の熱によって樹脂が劣化する可能性がより抑制される。
また、環状ポリオレフィンとしては、市販品を好ましく用いることができる。市販品の例としては、JSR株式会社からアートン(Arton:登録商標)G(例えば、Arton:登録商標 G7810等)、アートン(登録商標)F、アートン(登録商標)R、及びアートン(登録商標)RXという商品名で市販されており、これらを使用できる。
(添加剤)
環状ポリオレフィンは、本発明の効果を損なわない範囲内で各種添加剤が含有されていても良い。添加剤としては、特に制限されずに公知のものを使用することができる。好ましい添加剤としては、例えば、無機微粒子、可塑剤、紫外線吸収剤等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
(環状ポリオレフィンフィルムの特性)
[光線透過率]
本発明の一形態に係る環状ポリオレフィンフィルムを、液晶表示装置や有機EL素子等の表示装置に用いる場合は、環状ポリオレフィンフィルムは透明であることが好ましい。すなわち、光線透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい(上限100%)。光線透過率は、JIS K 7105:1981に記載された方法、すなわち、積分球式光線透過率測定装置を用いて全光線透過率及び散乱光量を測定し、全光線透過率から拡散透過率を引いて算出することができる。ただし、本発明の上記光線透過率の範囲を満たすものに限定されるものではない。
[90℃での弾性率]
本発明の一形態に係る環状ポリオレフィンフィルムの90℃での弾性率は、1.7GPa以上であることが好ましい。この範囲であると、クラック耐性、高温高湿環境下における耐久性、および接着性がより良好となる。かかる理由は、光学フィルムの加工時に印加される応力や光学フィルムを高温高湿環境下で経時させた際に発生する応力に対して、環状ポリオレフィンフィルムの耐久性がより向上し、クラックの発生や拡大が抑制されるからであると考えられる。そして、光学フィルムと他の部材とが貼合された状態においては、両者の界面に集中する応力に対する環状ポリオレフィンフィルムの耐久性がより向上し、環状ポリオレフィンフィルム中の両者の界面近傍の領域における破壊が抑制されると考えられるからである。同様の観点から、90℃での弾性率が1.9GPa以上であることが好ましい。また、本発明の一形態に係る環状ポリオレフィンフィルムの90℃での弾性率は、2.7GPa以下であることが好ましい。この範囲であると、クラック耐性、高温高湿環境下における耐久性、および接着性がより良好となる。かかる理由は、環状ポリオレフィンフィルムが適度に柔軟となることで環状ポリオレフィンフィルムの脆さが改善し、クラックの発生や拡大が抑制されるからであると考えられる。そして光学フィルムと他の部材とが貼合された状態において高温高湿環境下に置かれた際には、環状ポリオレフィンフィルムが他の部材の伸縮により追従できるようになり、クラックの発生および拡大、ならびに両者の界面における応力の集中が抑制されると考えられるからである。同様の観点から、90℃での弾性率が2.5GPa以下であることがより好ましい。
90℃での弾性率は、以下の測定方法に基づき得られた値である。すなわち、90℃での弾性率(Pa)は、JIS K 7127:1999に記載の方法に準じつつ、引っ張り試験器 株式会社オリエンテック製テンシロンRTA−100と、90℃に加熱した炉とを用い、90℃に加熱した炉内で引っ張り試験を行うことで得ることができる。
なお、環状ポリオレフィンフィルムの90℃での弾性率の制御方法は、後述する環状ポリオレフィンフィルムの製造方法に記載している。
(膜厚)
本発明の一形態に係る環状ポリオレフィンフィルムの膜厚は、特に制限されないが、例えば、5μm以上125μm以下であることが好ましい。膜厚がこの範囲であると、環状ポリオレフィンフィルムが有する光学フィルム用途の優れた特性をより良好に発現し、かつクラックの発生および高温高湿環境下でのクラックの拡大がより低減される。
<環状ポリオレフィンフィルムの製造方法>
本発明の一形態に用いられうる環状ポリオレフィンフィルムの製造方法の例を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。環状ポリオレフィンフィルムの製造方法としては、例えば、インフレーション法、T−ダイ法、カレンダー法、切削法、流延法、エマルジョン法、ホットプレス法等の製造法が使用できるが、着色抑制、異物欠点の抑制、ダイライン等の光学欠点の抑制等の観点から流延法による溶液製膜が好ましい。
環状ポリオレフィンフィルムの製造方法としては、移動する支持体上に、環状ポリオレフィン、任意に含まれうる添加剤及び溶媒等を含むドープを流延させて流延膜を形成する流延工程を有することが好ましい。さらに、当該流延工程には、流延膜に乾燥風を吹き付ける乾燥工程が含まれることが好ましい。
溶液流延法で製造する場合においてドープの調製に有用な有機溶媒としては、上記環状ポリオレフィン成分及び任意に含まれうる添加剤を同時に溶解するものであれば制限なく用いることができる。
例えば、塩素系有機溶媒としては、ジクロロメタン等を、非塩素系有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることができ、ジクロロメタン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンを好ましく使用することができる。
ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40質量%の範囲内の炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有させることが好ましい。ドープ中のアルコールの比率が高くなるとウェブがゲル化し、金属支持体からの剥離が容易になり、また、アルコールの割合が少ない場合は非塩素系有機溶媒系で環状ポリオレフィン等の溶解を促進する役割もある。
炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等を挙げることができる。これらの中でも、ドープの安定性に優れ、沸点も比較的低く、乾燥性が良好であり、毒性がないことから等からエタノールが好ましい。
ドープ中に含まれる溶媒の含有割合は、ドープの総質量に対して1質量%以上であることが好ましい。ドープ中に含まれる溶媒の含有割合を1質量%以上とすることで、フィルムの脆性の低下、製造中のフィルムが裂ける等の欠陥発生による生産性の低下がより抑制される。同様の観点から、ドープ中に含まれる溶媒の含有割合は、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。また、ドープ中に含まれる溶媒の含有割合は、95質量%以下であることが好ましい。ドープ中に含まれる溶媒の含有割合を95質量%以下とすることで、フィルムの透明性の低下がより抑制される。同様の観点から、ドープ中に含まれる溶媒の含有割合は、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることがさらに好ましく、80質量%以下であることが特に好ましい。溶媒成分の含有割合は、フィルムの生産条件、作製するフィルムの膜厚等から適宜調整可能である。
また、ドープには、適宜、上記した添加剤を配合しても良い。
樹脂及び添加剤等は、上記した溶媒に溶解されてドープが調製される。ドープは、濾材で濾過され、その後、脱泡される。濾材としては、捕集粒子径が0.5〜5μmで、濾水時間が10〜25秒/100mLのものを用いることが好ましい。
流延膜とは、流延ダイから支持体上にドープを流延することにより形成された膜をいい、後述する延伸工程や第二乾燥工程等によりフィルムを形成するまでのドープを指す。
(流延工程)
流延工程について説明する。まず、ドープは、流延ダイより支持体上に流延される。具体的には、ドープは、例えば加圧型定量ギヤポンプ等の送液ポンプによりタンクから流延ダイに送られ、流延ダイの流延口から流延される。
流延ダイとしては、吐出口の形状が調整可能なものが好ましい。また、流延膜の膜厚を均一にしやすい加圧ダイが好ましい。加圧ダイの種類としては、コートハンガーダイやTダイ等があり、いずれも好ましく用いられる。製膜速度を上げるために、加圧ダイを2基以上並べて配設し、ドープを分割して吐出しても良い。流延ダイからドープを吐出する吐出速度は、支持体の移動速度との兼ね合いや生産性等を考慮して、例えば、30〜150m/分程度であることが好ましい。
支持体は、無端ベルトにより無端状に形成されていることが好ましい。電源により駆動制御された回転ローラーにより無端ベルトが回転し、支持体上の流延膜を移動させる。支持体の移動速度(無端ベルトの回転速度)としては、60〜150m/分であることが好ましい。支持体の移動速度をこの範囲内とすることにより、環状ポリオレフィンフィルムをより高速で生産することができる。
支持体としては、表面を鏡面仕上げしたものを好ましく使用することができる。支持体としては、ステンレススティールベルト(以下、ステンレスベルトとも称する)又は鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムを好ましく使用することができる。キャストの幅は1〜4mとすることができる。流延工程の支持体の表面温度としては、−50〜40℃の温度が好ましく、より好ましくは0〜40℃であり、更に好ましくは5〜30℃である。支持体の温度を制御する方法は特に限定されず、温風又は冷風を吹きかける方法や、温水を支持体の裏側に接触させる方法がある。
[蒸発抑制工程]
流延工程には、乾燥工程の前に、支持体上に流延された流延膜に前記溶媒中の主溶媒を含む主溶媒ガスを吹き付ける蒸発抑制工程が含まれていてもよい。主溶媒とは、1種類の溶媒を使用する際にはその溶媒をいい、複数の溶媒からなる混合溶媒を使用する際には、体積比で最も大きい溶媒をいう。
[乾燥工程]
流延工程に含まれる乾燥工程について説明する。乾燥工程は、蒸発抑制工程を経た流延膜に乾燥風を吹き付けることにより、支持体から軟膜として流延膜を剥離可能な程度にまで乾燥させる工程である。この乾燥工程において、フィルムの乾燥速度を調整することにより、製造される環状ポリオレフィンフィルムの90℃での弾性率を調整することが可能である。
環状ポリオレフィンフィルムの90℃での弾性率は、使用する材料や、溶液流延法又は溶融流延法等によるフィルム製造時における流延したフィルムの乾燥速度を変更することにより、調整することができる。これらの中でも、制御可能範囲がより広範であるとの観点から、乾燥速度による制御であることが好ましく、溶液流涎法における乾燥速度による制御であることがより好ましい。溶液流涎法における乾燥速度による制御においては、製膜時において溶剤が乾燥することにより収縮が発生し環状ポリオレフィンをはじめとする樹脂が配向するが、このとき、乾燥速度を速くすると乾燥収縮による配向が強くなり、弾性率を上昇させることができる。一方、乾燥速度を遅くすると、乾燥収縮による配向が弱くなり弾性率を低減させることができる。乾燥速度は、乾燥時の環境温度や、熱風の温度、風量等により制御することができる。
光学フィルムが良好な平面性を示すためには、支持体から流延膜を剥離する際の残留溶媒率が20質量%以上90質量%以下となっていることが好ましい。乾燥工程では、このような範囲に収まるよう乾燥条件を調整する。
乾燥方法としては特に限定されず、例えば、乾燥手段としてノズルやパンチ板等を使用することができる。
乾燥風は、支持体上の流延膜を乾燥することができれば、その条件は特に制限されない。乾燥風の温度は、乾燥効率および発泡の抑制の観点から、30〜160℃であることが好ましい。また、乾燥風の相対湿度は、乾燥効率の観点から、30%RH以下であることが好ましく、20%RH以下であることがより好ましく、10%RH以下であることがさらに好ましい(下限0%RH)。乾燥風としては、例えば、50℃10%RHの風を用いることが好ましい。乾燥風の静圧は、100Pa以上であることが好ましい。乾燥風の静圧が100Pa以上であると、環状ポリオレフィンフィルムの90℃での弾性率を増加させて本発明に規定される範囲内へと制御することがより容易となる。同様の観点から、乾燥風の静圧は、1000Pa以上であることが好ましく、1300Pa以上であることが好ましい。また、乾燥風の静圧は、2500Pa以下であることが好ましい。乾燥風の静圧が2500Pa以下であると、環状ポリオレフィンフィルムの90℃での弾性率を減少させて本発明に規定される範囲内へと制御することがより容易となる。同様の観点から、乾燥風の静圧は、2000Pa以下であることが好ましく、1900Pa以下であることが好ましい。好ましい乾燥条件の一例としては、50℃10%RHの乾燥風を静圧で1000〜2500Paの条件で吹き付けることが挙げられるが、本発明はこの条件に限定されるものではない。
乾燥手段は、支持体の移動方向に沿って給気手段の下流側に設けられていれば良い。また、乾燥手段は複数個所に設けられていても良い。
(その他の工程)
[ドープの調製工程]
ドープの調製工程について説明する。ドープの調製工程は、流延工程において流延ダイから支持体上に流延されるドープを調製する工程である。ドープの調製方法としては特に限定されず、例えば、溶解釜を使用して、上記した溶媒に環状ポリオレフィン等の樹脂を投入して調製することができる。ドープ中の樹脂の含有量は、固形分濃度として5質量%以上であることが好ましい。樹脂の含有量が固形分濃度として5質量%以上の場合、支持体上でのより充分な乾燥が可能となり、剥離時に流延膜の一部が支持体上に残ることにより支持体の汚染の発生頻度がより低減する。同様の観点から、ドープ中の樹脂の含有量としては、固形分濃度として10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましい。また、ドープ中の樹脂の含有量は、固形分濃度として99質量%以下であることが好ましい。ドープ中の樹脂の含有量が99質量%以下の場合、ドープの粘度が適度に低くなることから、ドープの調製工程におけるフィルター詰まりの発生や、支持体上への流延時に圧力が高くなり過ぎることで流延ダイからの押し出しが困難となることが生じる頻度がより低減する。同様の観点から、ドープ中の樹脂の含有量としては、固形分濃度として50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
樹脂を溶媒に溶解させる方法としては、常圧で溶解する方法、溶媒の沸点以下で溶解する方法、加圧しながら溶媒の沸点以上で溶解する方法、特開平9−95544号公報、特開平9−95557号公報または特開平9−95538号公報に記載されるように、冷却溶解法を採用する方法、特開平11−21379号公報に記載されるように高圧で溶解する方法等を採用することができる。これらの中では、加圧しながら溶媒の沸点以上で溶解する方法が好ましい。
得られたドープは、濾材で濾過され、脱泡された後、送液ポンプで流延ダイに送られる。濾過は、捕集粒子径が0.5μm以上5μm以下で、かつ濾水時間が10秒/100mL以上25秒/100mL以下である濾材を用いることが好ましい。濾過により、樹脂粒子の分散時に残存する凝集物等のみを除去することができる。
上記のとおり調製されたドープは、流延ダイより支持体上に流延される。
[剥離工程]
剥離工程について説明する。剥離工程は、乾燥工程を経て軟膜を形成した流延膜を剥離ロールにより支持体から剥離する工程である。剥離された軟膜は、その後、任意に設けられうる第二乾燥工程、延伸工程、熱処理工程、及び巻取工程等を経て環状ポリオレフィンフィルムが製造される。
支持体上の剥離位置の温度は、10℃以上40℃以下であることが好ましく、より好ましくは11℃以上30℃以下である。支持体と流延膜とを剥離する際の剥離張力は、一般的には245N/m以下であることが好ましいが、剥離の際の皺がより入り難くなるとの観点から、190N/m以下であることがより好ましく、166.6N/m以下であることがさらに好ましく、137.2N/m以下あることが特に好ましい。また、より良好な剥離性を得るとの観点から、剥離張力は50N/m以上であることが好ましい。
[第二乾燥工程、延伸工程、熱処理工程、巻取工程]
第二乾燥工程、延伸工程、熱処理工程、巻取工程について説明する。第二乾燥工程、延伸工程、および熱処理工程は、それぞれ、剥離された流延膜を内部に複数配置されたローラーで交互に搬送する乾燥装置、及び流延膜の両端を保持して搬送するテンター延伸装置の少なくとも一方を用いて、それぞれ、乾燥、延伸、及び熱処理を施し環状ポリオレフィンフィルムを作製する工程である。また、巻取工程は、得られた流延膜を巻き取る工程である。装置の構成によってはこれらのうち複数の工程が同時に行われることがある。なお、上記した流延工程においても乾燥工程を有していることから、当該乾燥工程と区別する目的で、剥離した軟膜に対して行う乾燥工程を第二乾燥工程と呼んでいる。
第二乾燥工程における乾燥方法としては、流延膜の両面に熱風を吹き付ける方法が一般的であるが、熱風の代わりにマイクロウェーブを当てて加熱する方法を採用することも可能である。流延膜は急激な乾燥により、表面ムラが発生しやすいため、残留溶媒率が15質量%以下となった時点から乾燥することが好ましく、8質量%以下となった時点から乾燥することがより好ましい。乾燥温度としては、40〜250℃であることが好ましい。
テンター延伸装置のテンターは、特に制限されず、ピンテンター、クリップテンター等、公知のテンターを用いることができる。
なお、延伸方向は特に制限されず、フィルムの搬送方向であっても、フィルムの搬送方向と直行する方向であってもよく、フィルムの長手方向であっても、フィルムの幅手方向であってもよい。また、延伸操作は多段階に分割して実施しても良く、長手方向と幅手方向とに二軸延伸を実施してもよい。なお、二軸延伸を行う場合には同時に延伸しても良く、段階的に延伸しても良い。なお、本願明細書において、同時二軸延伸には、一方向に延伸し、もう一方を、張力を緩和して収縮させる場合も含まれる。
テンター延伸装置を用いて幅方向に一軸延伸する場合は、特に制限されないが、延伸倍率は、1.01倍(延伸率:1%)以上1.50倍(延伸率:50%)以下であることが好ましく、1.01倍(延伸率:1%)以上1.10倍(延伸率:10%)以下であることがより好ましく、1.01倍(延伸率:1%)以上1.05倍(延伸率:5%)以下であることがさらに好ましい。
テンターによる延伸を行う場合の流延膜の残留溶媒率は、テンター開始時(延伸開始時)に3質量%以上15質量%以下であることが好ましく、3質量%以上8質量%以下であることがより好ましく、かつ流延膜の残留溶媒率が5質量%以下になるまでテンターをかけながら乾燥を行うことが好ましい。テンターによる延伸を行う場合の乾燥温度としては、30℃以上であることが好ましく、また、環状ポリオレフィンのガラス転移温度(複数の環状ポリオレフィンを含む場合は、これらの環状ポリオレフィンのガラス転移温度の中で最も高い温度)αよりも30℃高い温度(α+30℃)以下であることがより好ましい。このような範囲の温度としては、環状ポリオレフィンの種類に応じて変化するものではあるが、好ましい延伸温度としては、30℃以上190℃以下、30℃以上160℃以下、50℃以上150℃以下、70℃以上140℃以下等が挙げられる。
巻取工程について説明する。巻取工程は、環状ポリオレフィンフィルムとして巻取り機により巻き取る工程である。巻き取られる際の環状ポリオレフィンフィルムは、流延膜中の残留溶媒率が1質量%以下であることが好ましい。
巻き取り方法としては特に限定されず、公知の巻取方法を採用することができ、例えば定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等を採用することができる。
巻取長さとしては、特に制限されないが、100m以上8000m以下であることが好ましく、通常はロール状に巻き取る。また、巻き取られた環状ポリオレフィンフィルムの幅は、1.3m以上3.0m以下であることが好ましい。
[表面処理工程]
環状オレフィンフィルムの任意の面、特に応力緩和層を設ける側の面には、接着性向上のための公知の種々の処理、コロナ放電処理、火炎処理、酸化処理、プラズマ処理等を、必要に応じて組み合わせて行うことができる。
<他の機能層>
本発明の一形態に係る光学フィルムは、公知の機能層を有していてもよい。機能層については、ハードコート層、アンカーコート層および平滑層、ならびに特開2006−289627号公報の段落「0036」〜「0038」に記載されている層等を好ましく採用することができる。
(ハードコート層)
本発明の一形態に係る光学フィルムは、ハードコート層として有していてもよい。ハードコート層の構成材料、形成方法等は、公知の材料、方法等が適宜採用されうる。アンカーコート層の形成場所は、特に制限されないが、環状ポリオレフィンフィルムの、応力緩和層が存在する側の面とは反対側の面の最表層であることが好ましい。
(アンカーコート層)
本発明の一形態に係る光学フィルムは、接着性(密着性)の向上を目的として、アンカーコート層を易接着層として有していてもよい。アンカーコート層の構成材料、形成方法等は、特開2013−52561号公報の段落「0229」〜「0232」に開示される材料、方法等が適宜採用されうる。アンカーコート層の形成場所は、特に制限されないが、環状ポリオレフィンフィルムの表面であることが好ましく、環状ポリオレフィンフィルムとアンカーコート層と応力緩和層とがこの順に直接接する構成を有することがより好ましい。
(平滑層)
本発明の一形態に係る光学フィルムは、平滑層を有していてもよい。平滑層は、突起等が存在する基材の粗面を平坦化するために、又は、樹脂基材に存在する突起により、応力緩和層に生じた凹凸やピンホールを埋めて平坦化するために設けられる層である。平滑層の構成材料、形成方法、表面粗さ、層厚等は、特開2013−52561号公報の段落「0233」〜「0248」に開示される材料、方法等が適宜採用される。平滑層の形成場所は、特に制限されないが、環状ポリオレフィンフィルムの表面であることが好ましく、環状ポリオレフィンフィルムと平滑層と応力緩和層とがこの順に直接接する構成を有することがより好ましい。なお、前述するアンカーコート層が平滑層としての機能を兼ねていてもよい。
<偏光板保護フィルムおよび偏光板>
本発明の一形態に係る光学フィルムは、偏光板加工時のフィルムの打ち抜き加工や裁断加工時において良好なクラック耐性を示し、および偏光板や表示装置の耐久性試験等で使用される高温高湿環境下における経時でのクラック拡大を十分に抑制しうる高い耐久性を有する。また、本発明の一形態に係る光学フィルムは、特にポリビニルアルコール系偏光子等の親水性部材と貼合した際に、特に良好な接着性を有するものである。
これより、本発明の一形態に係る光学フィルムは、偏光板保護フィルムである。また、本発明の一形態に係る偏光板は、本発明の一形態に係る光学フィルムまたは本発明の一形態に係る偏光板保護フィルムを含むものであり、本発明の一形態に係る偏光板保護フィルムを含むことがより好ましい。
本発明の一形態に係る偏光板は、偏光子の少なくとも一方の面に、本発明の一形態に係る光学フィルムを偏光板保護フィルムとして有する構成であることが好ましく、偏光子の一方の面に、本発明の一形態に係る光学フィルムを偏光板保護フィルムとして有し、偏光子の他方の面に本発明の一形態に係る光学フィルムまたはセルローストリアセテートフィルムを偏光板保護フィルムとして有する構成であることがより好ましく、偏光子の両方の面に、本発明の一形態に係る光学フィルムを偏光板保護フィルムとして有する構成であることがさらに好ましい。
(偏光板の製造方法)
本発明の一形態に係る偏光板は、一般的な方法で製造することができる。本発明の一形態に係る光学フィルムの応力緩和層をコロナ放電処理、プラズマ処理等によって表面処理し、公知の接着剤を用いて、偏光子と貼合することが好ましい。
偏光板の形成方法の好ましい一例としては、以下の方法が挙げられる。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明の一形態に係る光学フィルムを偏光板保護フィルムとして用いる場合、光学フィルムの応力緩和層に、コロナ放電処理等の易接着処理を行う。そして、偏光子の面と、一形態に係る光学フィルムの応力緩和層と、を、公知の接着剤を用いて貼合する。また、同様にして、コロナ放電処理等の易接着処理を行った本願発明の一形態に係る光学フィルムや、他の公知のフィルムを、偏光子のもう一方の面に公知の接着剤を用いて貼合する。この際、偏光子の一方の面に本発明の一形態に係る光学フィルムを、他方の面に他の公知のフィルムをそれぞれ貼合する場合、どちらのフィルムを先に貼合してもよい。ここで、本発明の一形態に係る光学フィルムを貼合した面とは反対側の面に、セルロースアシレートフィルムを用いる場合は、当該セルロースアシレートフィルムをアルカリケン化処理し、偏光子の少なくとも一方の面に、完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(水糊)を用いて貼り合わせることが好ましい。
偏光子は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色したもの、あるいは染色した後、一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。偏光子の膜厚は5〜30μmの範囲内が好ましく、特に10〜20μmの範囲内であることが好ましい。また、特開2003−248123号公報、特開2003−342322号公報等に記載のエチレン単位の含有量が1〜4モル%の範囲内、重合度が2000〜4000の範囲内、鹸化度が99.0〜99.99モル%の範囲内のエチレン変性ポリビニルアルコールも好ましく用いられる。中でも、熱水切断温度が66〜73℃の範囲内であるエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムが好ましく用いられる。このエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムを用いた偏光子は、偏光性能および耐久性能に優れていることに加え、色斑が少なく、表示装置に特に好ましく用いられる。以上のようにして得られた偏光子は、通常、その両面または片面に保護フィルムが貼合される。
コロナ放電処理とは、大気圧下、電極間に1kV以上の高電圧を印加し、放電することで行う処理のことである。コロナ処理によって、フィルムの表面に酸素含有極性基(ヒドロキシ基、カルボニル基、カルボン酸基等)が発生し、表面が親水化される。コロナ放電処理は、春日電機株式会社製や株式会社トーヨー電機製の市販されている装置を用いて行うことができる。
本発明の一形態に係る光学フィルムの応力緩和層と偏光子とは、活性エネルギー線硬化性接着剤によって貼合されていることが好ましい。活性エネルギー線硬化型接着剤の中でも、紫外線硬化型接着剤を用いることが好ましい。紫外線硬化型接着剤を構成する紫外線硬化型接着剤組成物としては、光ラジカル重合を利用した光ラジカル重合型組成物、光カチオン重合を利用した光カチオン重合型組成物、並びに光ラジカル重合及び光カチオン重合を併用したハイブリッド型組成物が知られている。光ラジカル重合型組成物としては、特開2008−009329号公報に記載のヒドロキシ基やカルボキシ基等の極性基を含有するラジカル重合性化合物及び極性基を含有しないラジカル重合性化合物を特定割合で含む組成物)等が知られている。また、光カチオン重合型組成物としては、特開2011−028234号公報に開示されているような、(α)カチオン重合性化合物、(β)光カチオン重合開始剤、(γ)380nmより長い波長の光に極大吸収を示す光増感剤、及び(δ)ナフタレン系光増感助剤の各成分を含有する紫外線硬化型接着剤組成物が挙げられる。ただし、これ以外の紫外線硬化型接着剤が用いられてもよい。
<表示装置>
本発明の一形態に係る光学フィルム、および本発明の一形態に係る偏光板保護フィルムは、環状ポリオレフィンフィルムが有する光学フィルム用途の優れた特性に加え、良好なクラック耐性、高温高湿環境下における耐久性、および接着性を両立するものである。また、本発明の一形態に係る光学フィルム、本願発明の一形態に係る偏光板は、表示装置の耐久性試験等で使用される高温高湿環境下における経時でのクラック拡大を十分に抑制しうる高い耐久性を有する。
このため、本発明の一形態に係る表示装置は、本発明の一形態に係る光学フィルム、または本発明の一形態に係る偏光板を有するものである。
表示装置としては、特に制限されないが、有機EL素子または液晶表示装置であることが好ましく、液晶表示装置であることがより好ましい。
本発明の一形態に係る液晶表示装置は、透明基板と他方の透明基板との間に液晶が挟持されている液晶セルを有し、これらの透明基板の少なくとも一方の外側に、直接、または他の部材を介して、本発明の一形態に係る光学フィルム、または本発明の一形態に係る偏光板を有するものである。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
<光学フィルムの作製>
(環状ポリオレフィンフィルムの作製)
[環状ポリオレフィンフィルム1]
下記組成の主ドープを調製した。まず、加圧溶解タンクにジクロロメタンとエタノールを添加した。ジクロロメタンとエタノールの混合溶液の入った加圧溶解タンクに環状ポリオレフィン樹脂1を撹拌しながら投入した。これを加熱し、撹拌しながら、完全に溶解した。これを安積濾紙株式会社製の安積濾紙No.244を使用してろ過し、主ドープを調製した。環状ポリオレフィン樹脂としては、JSR株式会社製、ARTON(登録商標)
G7810を用いた。当該環状ポリオレフィン樹脂1は、ガラス転移温度が178℃のアルコキシカルボニル基を有する樹脂である。
[主ドープの組成]
・環状ポリオレフィン樹脂(アートン(ARTON)(登録商標) G7810、JSR株式会社製、Mw=140000) 100質量部、
・ジクロロメタン(SP値:20) 200質量部、
・エタノール(SP値:26) 10質量部。
次いで、無端ベルト流延装置を用い、ドープを温度31℃、1800mm幅でステンレスベルト支持体上に均一に流延した。ステンレスベルトの温度は28℃に制御した。ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)したフィルム中の残留溶媒量が40質量%になるまで溶媒を蒸発させた。このときの乾燥条件としては、50℃10%RHの乾燥風を静圧で1000Paの条件で吹き付けた。続いて、剥離張力110N/mでステンレスベルト支持体上からフィルムを剥離した。剥離したフィルムを、140℃の熱をかけながらテンターを用いて幅方向に5%延伸した。なお、延伸開始時の残留溶媒は15質量%であった。
そして、乾燥ゾーンを多数のローラーで搬送させながら乾燥を終了させ、テンタークリップで挟んだ端部をトリミングし、その後巻き取った。乾燥温度は130℃で搬送張力は100N/mとした。
以上のようにして、厚さ25μmの環状ポリオレフィンフィルム1を作製した。
[環状ポリオレフィンフィルム2]
上記環状ポリオレフィンフィルム1の作製において、流延したフィルムのステンレスベルト支持体上での乾燥条件を、50℃10%RHの乾燥風を静圧で2500Paの条件で吹き付けるよう変更した以外は同様にして、厚さ25μmの環状ポリオレフィンフィルム2を作製した。
[環状ポリオレフィンフィルム3]
上記環状ポリオレフィンフィルム1の作製において、流延したフィルムのステンレスベルト支持体上での乾燥条件を、50℃10%RHの乾燥風を静圧で1300Paの条件で吹き付けるよう変更した以外は同様にして、厚さ25μmの環状ポリオレフィンフィルム3を作製した。
[環状ポリオレフィンフィルム4]
上記環状ポリオレフィンフィルム1の作製において、流延したフィルムのステンレスベルト支持体上での乾燥条件を、50℃10%RHの乾燥風を静圧で1700Paの条件で吹き付けるよう変更した以外は同様にして、厚さ25μmの環状ポリオレフィンフィルム4を作製した。
[環状ポリオレフィンフィルム5]
上記環状ポリオレフィンフィルム1の作製において、流延したフィルムのステンレスベルト支持体上での乾燥条件を、50℃10%RHの乾燥風を静圧で1900Paの条件で吹き付けるよう変更した以外は同様にして、厚さ25μmの環状ポリオレフィンフィルム5を作製した。
(応力緩和層の形成:ローラーCVD法)
樹脂基材として、上記作製した環状ポリオレフィンフィルムの一つを選択した。図2に記載の磁場を印加したローラー間放電プラズマCVD装置(本明細書中、この方法をローラーCVD法と称す。)を用い、環状ポリオレフィンフィルムの一方の面が成膜ローラーと接触するようにして、環状ポリオレフィンフィルムを装置に装着した。次いで、成膜条件(プラズマCVD条件)として、プラズマ発生用電源の周波数を70kHzとし、搬送速度、原料ガスであるテトラメチルシクロテトラシロキサン(TMCTS)の供給量、酸素ガス(O)の供給量、真空チャンバー内の真空度、及び有効成膜幅1mに対するプラズマ発生用電源からの印加電力(印加電力)を下記表1の条件とすることにより成膜を行った。このようにして、環状ポリオレフィンフィルムの成膜ローラーと接触させた面とは反対側の面に、最終的な層厚が後述する膜厚の測定方法によって140nmとなるよう、応力緩和層を形成した。
このようにして、実施例1〜15および比較例1〜4に係る光学フィルムを作製した。各光学フィルムの形成の際に用いた環状ポリオレフィンフィルムと応力緩和層との組み合わせを下記表1にまとめる。なお、表1において、原料ガスの供給量および酸素ガスの供給量の単位は、sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)とした。
<環状ポリオレフィンフィルムおよび応力緩和層の評価>
(環状ポリオレフィンフィルムの90℃での弾性率)
各環状ポリオレフィンフィルムの90℃での弾性率は、JIS K 7127:1999に記載の方法に準じつつ、引っ張り試験器 株式会社オリエンテック製テンシロンRTA−100と、90℃に加熱した炉とを用い、90℃に加熱した炉内で引っ張り試験を行うことで測定した。
(応力緩和層の組成分析)
[元素分布プロファイルの測定]
上記形成した各応力緩和層について、下記条件にてXPSデプスプロファイル測定を行い、層厚方向の薄膜層の表面からの距離に対する、炭素分布曲線、ケイ素分布曲線及び酸素分布曲線を得た。
≪XPSデプスプロファイル測定≫
・エッチングイオン種:アルゴン(Ar)、
・エッチングレート(SiO熱酸化膜換算値):0.05nm/sec、
・エッチング間隔(SiO換算値):2nm、
・X線光電子分光装置:Thermo Fisher Scientific社製、機種名「VG Theta Probe」、
・照射X線:単結晶分光AlKα、
・X線のスポット及びそのサイズ:800μm×400μmの楕円形。
以上のようにして、応力緩和層の全層領域を測定するワイドスキャンスペクトル分析を行うことによって、炭素分布曲線、ケイ素分布曲線及び酸素分布曲線を得た。ここで、応力緩和層を形成する全組成の一部である酸素原子(O)の組成比が、30at%以下となるときの応力緩和層の層厚方向の最表面側からの深さを算出し、基材との界面の位置とした。そして、以下のとおり、応力緩和層のケイ素原子、酸素原子および炭素原子の分析を行った。
[応力緩和層のケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の分析]
X線光電子分光法によるケイ素原子、酸素原子及び炭素原子に由来するピーク強度が確認されたことから、各応力緩和層は、ケイ素原子(Si)、酸素原子(O)および炭素原子(C)を含有することが確認された。
また、各応力緩和層の層厚方向の深さの各測定位置について、X線光電子分光法によって求めたケイ素原子、酸素原子及び炭素原子に由来するピーク強度の比率より換算される組成比の合計量を100at%としたときの炭素原子の割合[C](at%)を算出した。そして、応力緩和層の層厚方向の深さの各測定位置における各[C](at%)の値から、[C](at%)の膜厚方向での平均値[CAVE](at%)をさらに算出した。
そして、炭素原子に関しては、C1sの高分解能スペクトル(ナロースキャン分析)により、炭素の結合状態を分析した。具体的には、応力緩和層の層厚方向の深さの各測定位置について、(1)C−C、(2)C−SiO、(3)C−O、(4)C=O、および(5)C(=O)−Oのように5つの結合に分けて、それぞれスペクトルのピーク強度比を算出した。そして、応力緩和層の膜厚方向の各測定位置について、上記(1)〜(5)のピーク強度比の総和を100%としたとき、(1)のC−C結合に由来するピーク強度の割合X(%)を算出した。そして、応力緩和層の層厚方向の深さの各測定位置における各X(%)の値から、X(%)の膜厚方向での平均値であるXAVE(%)をさらに算出した。本測定においては、ピーク強度の解析は、データ解析ソフトウェアPeakFit(SYSTAT Software Inc.製)を用いて行った。
各環状ポリオレフィンフィルムの90℃での弾性率(GPa)、ならびに各応力緩和層の[CAVE](at%)およびXAVE(%)を下記表2に示す。
(応力緩和層の膜厚)
各応力緩和層の層厚は、応力緩和層の積層方向において、最表面から基材との界面までの深さを、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)による断面観察により測定した。本測定では、層厚を任意に10箇所測定し、平均した値を層厚とした。
[層厚方向の断面のTEM画像]
断面のTEM観察として、観察試料を以下の集束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)加工装置により薄片作製後、TEM観察を行った。ここで、試料に電子線を照射し続けると電子線ダメージを受ける部分とそうでない部分にコントラスト差が現れるため、コントラスト差によって応力緩和層の層厚を測定した。
≪FIB加工≫
・装置:セイコーインスツル株式会社(SII)製SMI2050、
・加工イオン:Ga(30kV)、
・試料厚さ:100〜200nm。
≪TEM観察≫
・装置:日本電子株式会社製JEM2000FX(加速電圧:200kV)。
<光学フィルムの評価>
(クラック耐性)
上記得られた各光学フィルムを、それぞれ応力緩和層が上側に向くようして5枚重ね合わせて(同様な構成のもの)10cm角のトムソン刃で100枚打ち抜き、クラック、割れ、欠けなど打ち抜き不良が検出した隅の数(n)を観察した隅の数(m)で割り、打ち抜き不良発生率として、下記のように百分率で算出し、下記評価基準に従って評価した。クラック耐性は、打ち抜き不良発生率(%)の数値が小さいほど優れた結果を表し、ランク3以上が望ましいクラック耐性であるとする。これらの結果を下記表2に示す;
≪評価基準≫
5:打ち抜き不良発生率(%)は、0%以上5%未満である、
4:打ち抜き不良発生率(%)は、5%以上15%未満である、
3:打ち抜き不良発生率(%)は、15%以上25%未満である、
2:打ち抜き不良発生率(%)は、25%以上35%未満である、
1:打ち抜き不良発生率(%)は、35%以上である。
(接着性)
[偏光板の形成]
≪偏光子の作製≫
厚さ70μmのポリビニルアルコールフィルムを、35℃の水で膨潤させた。得られたフィルムを、ヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g及び水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、さらにヨウ化カリウム3g、ホウ酸7.5gおよび水100gからなる45℃の水溶液に浸漬した。得られたフィルムを、延伸温度55℃、延伸倍率5倍の条件で一軸延伸した。この一軸延伸フィルムを、水洗した後、乾燥させて、厚さ15μmの偏光子を得た。
≪紫外線硬化型接着剤液の調製≫
下記の各成分を混合した後、脱泡して、紫外線硬化型接着剤液を調製した。なお、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェートは、50%プロピレンカーボネート溶液として配合し、下記にはトリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェートの固形分量を表示した。
・3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート 45質量部、
・エポリード(登録商標)GT−301(株式会社ダイセル製の脂環式エポキシ樹脂) 40質量部、
・1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル 15質量部、
・トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート 2.3質量部、
・9,10−ジブトキシアントラセン 0.1質量部、
・1,4−ジエトキシナフタレン 2.0質量部。
≪偏光板の作製≫
下記の方法に従って、上記得られた各光学フィルムを偏光板保護フィルムとして用いて、各偏光板を作製した。各偏光板は、以下の方法で作成した。
まず、第一の偏光板保護フィルムとして、上記作製した光学フィルムを用意し、その応力緩和層の表面にコロナ放電処理を施した。なお、コロナ放電処理の条件は、コロナ出力強度2.0kW、ライン速度18m/分とした。次いで、第一の偏光板保護フィルムのコロナ放電処理を施した応力緩和層の表面に、上記調製した紫外線硬化型接着剤液を、硬化後の膜厚が約3μmとなるようにバーコーターで塗工して紫外線硬化型接着剤層を形成した。得られた紫外線硬化型接着剤層に、上記作製した偏光子(厚さ15μm)を貼合した。
次いで、第二の偏光板保護フィルムとして、前記光学フィルムと同じ種類のフィルムをさらに用意し、その応力緩和層の表面にコロナ放電処理を施した。コロナ放電処理の条件は、コロナ出力強度2.0kW、速度18m/分とした。
続いて、第二の偏光板保護フィルムのコロナ放電処理を施した応力緩和層の表面に、上記調製した紫外線硬化型接着剤液を、硬化後の膜厚が約3μmとなるようにバーコーターで塗工して紫外線硬化型接着剤層を形成した。
そして、この紫外線硬化型接着剤層に、第一の偏光板保護フィルムの片面に貼合された偏光子を貼合して、第一の偏光板保護フィルム/紫外線硬化型接着剤層/偏光子/紫外線硬化型接着剤層/第二の偏光板保護フィルムが積層された積層体を得た。その際に、第一の偏光板保護フィルムの製造時の長手方向と、偏光子の吸収軸(長手方向)とが互いに平行となるよう貼合した。
その後、この積層体の両面側から、ベルトコンベヤー付き紫外線照射装置(ランプは、フュージョンUVシステムズ社製のDバルブを使用)を用いて、積算光量が750mJ/cmとなるように紫外線を照射し、それぞれの紫外線硬化型接着剤層を硬化させ、偏光板を作製した。
[接着性試験]
上記作製した各偏光板について屈曲試験を行った。各偏光板の屈曲試験は、以下の方法で行った。
まず、縦10cm横10cmのサイズに打ち抜いた偏光板を、一方の面側が凸となるよう100°に湾曲させるような動作を100回繰り返した。そして、屈曲試験後の偏光板について、偏光板保護フィルムと偏光子との接着性を下記評価基準に従って評価した。接着性は、偏光板保護フィルムと偏光子との剥離の程度が小さいほど優れた結果を表し、ランク3以上が望ましい接着性であるとする。これらの結果を下記表2に示す;
≪評価基準≫
5:偏光板保護フィルムと偏光子とが全く剥離していない、
4:偏光板保護フィルムの偏光子からの浮きが、周縁部でごくわずかに生じている、
3:偏光板保護フィルムと偏光子とが、周縁部から5mm未満の範囲で剥離している、
2:偏光板保護フィルムと偏光子とが、周縁部から5mm以上10mm未満の範囲で剥離している、
1:偏光板保護フィルムと偏光子とが、周縁部から10mm以上の範囲で剥離している。
(高温高湿環境下における耐久性)
市販のVA型液晶表示装置(42インチ型、直下型バックライト)を用い、液晶セルのバックライト側偏光板及び視認側偏光板を剥がし、これに代えて、上記接着性評価に用いたものと同様にして作製した各偏光板を、それぞれ液晶セルの両面に貼合し、その際その偏光板の貼合の向きは、予め貼合されていた偏光板と同一方向に吸収軸が向くように行い、液晶表示装置を作製した。ここで、液晶セルに貼合した偏光板は、両面で同じのものとした。
高温高湿環境下における耐久性は、このようにして作製した液晶表示装置を40℃、90%相対湿度環境下で、直下型バックライトを点灯して500時間の耐久性試験をした後、更に室温でバックライトを点灯して24時間後、画面を黒表示する際の光漏れ程度を観察し、下記評価基準に従って評価した。高温高湿環境下における耐久性は、光漏れの程度が小さいほど優れた結果を表し、ランク3以上が望ましい耐久性であるとする。これらの結果を下記表2に示す;
≪評価基準≫
4:光漏れがほとんど視認できないレベルである、
3:光漏れが若干視認できるが、許容できるレベルである、
2:光漏れが視認でき、許容できないレベルである、
1:光漏れが明確に視認でき、許容できないレベルである。
本発明に係る光学フィルムは、環状ポリオレフィンフィルムと、その上に配置された、ケイ素原子(Si)、酸素原子(O)および炭素原子(C)を含有し、かつC−C結合割合の平均値XAVEが1%以上40以下%である、応力緩和層とを有する。表2の結果より、本発明の各実施例に係る光学フィルムは、C−C結合割合の平均値XAVEが本発明の範囲外である各比較例に係る光学フィルムと比較して、クラック耐性、高温高湿下における耐久性および接着性に優れることが確認された。
また、実施例である光学フィルム3、7、12および16からなる群、実施例である光学フィルム4、8、13および17からなる群、実施例である光学フィルム9および14からなる群、ならびに実施例である光学フィルム5、10、15および18からなる群の、それぞれ同一群内の評価結果の比較から、本発明に係る光学フィルムは、環状ポリオレフィンフィルムの90℃での弾性率が1.9GPa以上2.5GPa以下の際に、クラック耐性、高温高湿環境下における耐久性および接着性にさらに優れることが確認された。
本出願は、2016年11月18日に出願された日本国特許出願番号2016−225322号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として組み入れられている。
1 光学フィルム、
2 基材、
3 応力緩和層、
10 製造装置、
12 送出しローラー、
13〜18 搬送ローラー、
19、20 成膜ローラー、
21 ガス供給管、
22 プラズマ発生用電源、
23、24 磁場発生装置、
25 巻取りローラー、
27、29 搬送系チャンバー、
28 成膜チャンバー、
30、31 連結部。

Claims (6)

  1. 環状ポリオレフィンフィルムと、
    前記環状ポリオレフィンフィルム上に配置された応力緩和層と、を有し、
    前記応力緩和層は、ケイ素原子(Si)、酸素原子(O)および炭素原子(C)を含有し、かつ、
    前記応力緩和層のX線光電子分光法により測定されるC1sスペクトル領域のデプスプロファイルから求められる、各測定位置におけるC−C、C−SiO、C−O、C=OおよびC(=O)−Oの各結合に由来するピーク強度の総和に対するC−C結合に由来するピーク強度の割合X(%)の、厚さ方向の平均値XAVEが1%以上40%以下である、光学フィルム。
  2. 前記環状ポリオレフィンフィルムは、90℃での弾性率が1.9GPa以上2.5GPa以下である、請求項1に記載の光学フィルム。
  3. 前記XAVEが2%以上20%以下である、請求項1または2に記載の光学フィルム。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルムからなる偏光板保護フィルム。
  5. 偏光子と、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルム、または請求項4に記載の偏光板保護フィルムと、
    を有する偏光板。
  6. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルム、または請求項5に記載の偏光板を有する、表示装置。
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