JP6844651B2 - 複層フィルム及びその製造方法、並びに偏光板 - Google Patents

複層フィルム及びその製造方法、並びに偏光板 Download PDF

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本発明は、複層フィルム及びその製造方法、並びにその複層フィルムを備える偏光板に関する。
液晶表示装置には、液晶セルの複屈折によるレターデーションを補償するために、位相差フィルムが設けられることがある。従来から様々な構成の位相差フィルムが提案されてきたが、生産性とコストの観点から、透明樹脂を延伸によって配向させ、当該透明樹脂に複屈折を発現させた延伸フィルムが、位相差フィルムとして広く用いられている(特許文献1参照)。
また、特許文献2のような技術も知られている。
特開2012−177890号公報 特開2012−63773号公報
前記のような延伸フィルムの材料となる樹脂としては、例えば、コストと生産性に優れたトリアセチルセルロール樹脂、耐熱性に優れたポリカーボネート樹脂などが挙げられる。また、延伸フィルムの材料として用いうる樹脂としては、耐熱性に優れ、吸湿性が低く、光弾性定数が小さい点で、特に、脂環式構造を有する重合体を含む樹脂が、近年注目を浴びている。
このような延伸フィルムは、偏光子に接着されることがある。ところが、延伸フィルムの材料となる樹脂の種類によっては、延伸フィルムと偏光子との接着性が低くなることがあった。ここで接着性とは、剥がれ難さのことを言い、具体的には剥離強度によって評価できる。特に、ポリビニルアルコール製の偏光子に対しては、接着性に劣る延伸フィルムが多く、延伸フィルムと偏光子との剥離が生じ易かった。
延伸フィルムと偏光子との剥離を防止する技術として、従来、延伸フィルムの表面にコロナ処理等の表面処理を施すこと、及び、接着剤の組成を改良することなどの対策が試みられてきた。しかし、このような従来の方法では、未だ満足のいく結果が得られていない。
このような事情に鑑みて、本発明者は、延伸フィルムと偏光子との接着性を高めるべく検討を行い、次のような知見を得た。樹脂を延伸して製造される延伸フィルムにおいては、延伸によって樹脂に含まれる重合体分子が配向する。重合体分子が配向すると、重合体分子同士の絡み合いの程度が低下する。そうすると、延伸フィルムに応力が加えられた場合、延伸フィルム内の表面近傍部分で凝集破壊が生じることがある。この凝集破壊が生じることにより、延伸フィルムと偏光子とが剥離し易くなっていると考えられる。このような凝集破壊による接着性の低下は、嵩高い脂環式構造を有し、密度が低く、且つ非晶質の重合体である脂環式ポリオレフィン等の脂環式構造を含む重合体を含む樹脂において顕著であった。
前記の知見によれば、重合体分子の配向を抑制すれば、延伸フィルムと偏光子との接着性を高めうると考えられる。しかし、重合体分子の配向を抑制すると、延伸フィルムにおいて所望の複屈折を発現させられない可能性がある。延伸フィルムを位相差フィルムとして機能させるためには、重合体分子が配向することによって延伸フィルムに複屈折が発現することが求められる。したがって、延伸フィルムにおいて、所望のレターデーションを発現させることと、凝集破壊を防止して高い接着性を得ることとを両立させることは、困難であった。
特許文献1には、延伸配向したフィルムの表面に、所定の溶媒を塗布することにより、当該フィルムの表面の配向を緩和させて、偏光子との接着性を向上させる技術が提案されている。しかし、特許文献1に示す手法では、溶媒を塗布することによってフィルムの表面にクラックが生じ、そのクラックが光学欠陥の原因になり易かった。さらに、特許文献1に示す手法では、塗布後の溶媒が揮発するため、当該フィルムの表面には層が残らず、フィルム表面のどこに溶媒が塗布されたかを判別することが困難であった。そのため、当該フィルムの全面に渡って均一に溶剤が塗布されたか否かを判断するのが困難であったので、フィルム製造上の困難性があり、全面に渡って接着性に優れたフィルムを効率的に製造することは難しかった。
また、特許文献2には、アクリルフィルムの表面に重量平均分子量が3万〜10万のポリウレタンを含むウレタン組成物層を設けることによって、偏光子とアクリルフィルムとの接着性を向上させる技術が提案されている。しかし、特許文献2に示す手法では、接着性の向上の程度が十分に高くなかった。そのため、アクリルフィルムと偏光子との接着性においては一定の改善効果がみられるものの、凝集力の低い樹脂を用いた延伸フィルムと偏光子との接着性を十分に高めることは難しかった。
本発明は上記の課題に鑑みて創案されたもので、延伸フィルム層を備え、接着性に優れる複層フィルム;及び当該複層フィルムを備えた偏光板を提供することを目的とする。
本発明者は前記課題を解決するべく鋭意検討した。その結果、特定の重量平均分子量を有する熱可塑性重合体を含む延伸フィルム層の表面に、特定の伸度を有するポリウレタンを含む塗布液から製造した所定の厚みの樹脂層を設けることにより、偏光子との接着性に優れた複層フィルムが得られることを見い出した。そして、このような知見に基づき、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は下記の通りである。
〔1〕 重量平均分子量が30,000以上の重合体を含む熱可塑性樹脂からなる延伸フィルム層Aと、
前記延伸フィルム層Aの少なくとも一方の面に設けられた、ポリウレタンを含む塗布液の層を硬化させた樹脂層Bとを備え、
前記塗布液の固形分100重量部に対する前記ポリウレタンの量が、60重量部以上であり、
前記ポリウレタンの乾燥状態での単体皮膜伸度が、300%〜1000%であり、
前記樹脂層Bの厚みが、0.05μm〜2μmである、複層フィルム。
〔2〕 前記ポリウレタンが、カーボネート骨格を有する、〔1〕記載の複層フィルム。
〔3〕 前記ポリウレタンが、ポリエステル−エーテル系ポリウレタンである、〔1〕記載の複層フィルム。
〔4〕 前記重合体が、脂環式構造を有する、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の複層フィルム。
〔5〕 〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の複層フィルムを備える、偏光板。
〔6〕 ポリウレタンを含む塗布液の層を、熱可塑性樹脂からなる延伸前フィルム層aの少なくとも一方の面に形成する工程と、
前記塗布液の層を硬化させて樹脂層Bを得る工程と、
前記延伸前フィルム層aを延伸して延伸フィルム層Aを得る工程とを含み、
前記熱可塑性樹脂が、重量平均分子量が30,000以上の重合体を含み、
前記塗布液の固形分100重量部に対する前記ポリウレタンの量が、60重量部以上であり、
前記ポリウレタンの乾燥状態での単体皮膜伸度が、300%〜1000%であり、
前記樹脂層Bの厚みが、0.05μm〜2μmである、複層フィルムの製造方法。
〔7〕 ポリウレタンを含む塗布液の層を、熱可塑性樹脂からなる延伸フィルム層Aの少なくとも一方の面に形成する工程と、
前記塗布液の層を硬化させて樹脂層Bを得る工程とを含み、
前記熱可塑性樹脂が、重量平均分子量が30,000以上の重合体を含み、
前記塗布液の固形分100重量部に対する前記ポリウレタンの量が、60重量部以上であり、
前記ポリウレタンの乾燥状態での単体皮膜伸度が、300%〜1000%であり、
前記樹脂層Bの厚みが、0.05μm〜2μmである、複層フィルムの製造方法。
本発明によれば、延伸フィルム層を備え、接着性に優れる複層フィルム;及び当該複層フィルムを備えた偏光板を提供できる。
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、フィルムの面内レターデーションReは、別に断らない限り、Re=(nx−ny)×dで表される値である。また、フィルムの厚み方向のレターデーションRthは、Rth={(nx+ny)/2−nz}×dで表される値である。ここで、nxは、フィルムの厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、フィルムの前記面内方向であってnxの方向に垂直な方向の屈折率を表す。nzは、フィルムの厚み方向の屈折率を表す。dは、フィルムの膜厚を表す。別に断らない限り、前記のレターデーションの測定波長は550nmである。前記のレターデーションは、市販の位相差測定装置(例えば、王子計測機器社製、「KOBRA−21ADH」)あるいはセナルモン法を用いて測定できる。
また、「偏光板」及び「位相差板」とは、剛直な部材だけでなく、例えば樹脂製のフィルムのように可撓性を有する部材も含む。
また、以下の説明において、構成要素の方向が「平行」、「垂直」又は「直交」とは、別に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±5°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
[1.複層フィルムの概要]
本発明の複層フィルムは、熱可塑性樹脂からなる延伸フィルム層Aと、延伸フィルム層Aの少なくとも一方の面に設けられた樹脂層Bとを備える。
[2.延伸フィルム層A]
延伸フィルム層Aは、所定の重量平均分子量(Mw)を有する重合体を含む熱可塑性樹脂からなる、延伸処理を施された層である。以下、前記の重合体を、「特定重合体」と呼ぶことがある。
特定重合体の重量平均分子量(Mw)は、通常30,000以上、好ましくは35,000以上、より好ましくは40,000以上であり、好ましくは80,000以下、より好ましくは60,000以下、特に好ましくは50,000以下である。特定重合体の重量平均分子量(Mw)を前記範囲の下限値以上にすることにより、樹脂層Bによって延伸フィルム層Aの凝集破壊を効果的に防止できるので、延伸フィルム層Aと偏光子との接着性を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、延伸フィルム層Aの機械的強度及び成型加工性を高めることができる。したがって、特定重合体の重量平均分子量(Mw)を前記範囲に収めることにより、複層フィルムの凝集力、機械的強度および成型加工性が高度にバランスされる。
ここで、前記の重量平均分子量(Mw)は、溶媒としてシクロヘキサンを用いて(但し、試料がシクロヘキサンに溶解しない場合にはトルエンを用いてもよい)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量である。
特定重合体としては、通常、熱可塑性を有する重合体を用いる。特定重合体の例を挙げると、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリフェニレンサルファイド等のポリアリーレンサルファイド;ポリビニルアルコール;ポリカーボネート;ポリアリレート;セルロースエステル重合体;ポリエーテルスルホン;ポリスルホン;ポリアリルサルホン;ポリ塩化ビニル;脂環式構造を有する重合体;棒状液晶ポリマー;スチレン又はスチレン誘導体の単独重合体、又は、スチレン又はスチレン誘導体と任意のモノマーとの共重合体を含むポリスチレン系重合体;ポリアクリロニトリル;ポリメチルメタクリレート;あるいは、これらの多元共重合ポリマー、などが挙げられる。また、ポリスチレン系重合体の単量体としうる任意のモノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、無水マレイン酸、メチルメタクリレート及びブタジエンが、好ましいものとして挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、レターデーションの発現性、低温での延伸性、および、他の層との接着性の観点から、脂環式構造を有する重合体が好ましい。
脂環式構造を有する重合体は、その重合体の構造単位が脂環式構造を有する重合体である。脂環式構造を有する重合体は、主鎖に脂環式構造を有していてもよく、側鎖に脂環式構造を有していてもよい。中でも、機械的強度及び耐熱性の観点から、主鎖に脂環式構造を有する重合体が好ましい。
脂環式構造としては、例えば、飽和脂環式炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和脂環式炭化水素(シクロアルケン、シクロアルキン)構造などが挙げられる。中でも、例えば機械強度、耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が特に好ましい。
脂環式構造を構成する炭素原子数は、一つの脂環式構造あたり、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下の範囲である。脂環式構造を構成する炭素原子数をこの範囲にすることにより、当該脂環式構造を有する重合体を含む熱可塑性樹脂の機械強度、耐熱性、及び成形性が高度にバランスされる。
脂環式構造を有する重合体において、脂環式構造を有する構造単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択しうる。脂環式構造を有する重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合は、好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式構造を有する重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合がこの範囲にあると、当該脂環式構造を有する重合体を含む熱可塑性樹脂の透明性及び耐熱性が良好となる。
脂環式構造を有する重合体の中でも、シクロオレフィン重合体が好ましい。シクロオレフィン重合体は、シクロオレフィン単量体を重合して得られる構造を有する重合体である。また、シクロオレフィン単量体は、炭素原子で形成される環構造を有し、かつ該環構造中に重合性の炭素−炭素二重結合を有する化合物である。重合性の炭素−炭素二重結合としては、例えば、開環重合等の重合可能な炭素−炭素二重結合が挙げられる。また、シクロオレフィン単量体の環構造としては、例えば、単環、多環、縮合多環、橋かけ環及びこれらを組み合わせた多環等が挙げられる。中でも、特定重合体の誘電特性及び耐熱性等の特性を高度にバランスさせる観点から、多環のシクロオレフィン単量体が好ましい。
シクロオレフィン重合体の中でも好ましいものとしては、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、及び、これらの水素添加物等が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体は、成形性が良好なため、特に好適である。
ノルボルネン系重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体及びその水素添加物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体及びその水素添加物が挙げられる。また、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の開環単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の開環共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる他の単量体との開環共重合体が挙げられる。さらに、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の付加単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の付加共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる他の単量体との付加共重合体が挙げられる。これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の水素添加物は、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、特に好適である。
ノルボルネン構造を有する単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、およびこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)などを挙げることができる。ここで、置換基としては、例えばアルキル基、アルキレン基、極性基などを挙げることができる。また、これらの置換基は、同一または相異なって、複数個が環に結合していてもよい。ノルボルネン構造を有する単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
極性基の種類としては、例えば、ヘテロ原子、またはヘテロ原子を有する原子団などが挙げられる。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ハロゲン原子などが挙げられる。極性基の具体例としては、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、ニトリル基、スルホン酸基などが挙げられる。
ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な他の単量体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等のモノ環状オレフィン類及びその誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン等の環状共役ジエン及びその誘導体;などが挙げられる。ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な他の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体は、例えば、単量体を開環重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより製造しうる。
ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン等の炭素原子数2〜20のα−オレフィン及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロオレフィン及びこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン等の非共役ジエン;などが挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。また、ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体は、例えば、単量体を付加重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより製造しうる。
上述した開環重合体及び付加重合体の水素添加物は、例えば、開環重合体及び付加重合体の溶液において、ニッケル、パラジウム等の遷移金属を含む水素添加触媒の存在下で、炭素−炭素不飽和結合を、好ましくは90%以上水素添加することによって製造しうる。
ノルボルネン系重合体の中でも、構造単位として、X:ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4−ジイル−エチレン構造と、Y:トリシクロ[4.3.0.12,5]デカン−7,9−ジイル−エチレン構造とを有し、これらの構造単位の量が、ノルボルネン系重合体の構造単位全体に対して90重量%以上であり、かつ、Xの割合とYの割合との比が、X:Yの重量比で100:0〜40:60であるものが好ましい。このような重合体を用いることにより、当該ノルボルネン系重合体を含む延伸フィルム層Aを、長期的に寸法変化がなく、光学特性の安定性に優れるものにすることができる。
単環の環状オレフィン系重合体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の単環を有する環状オレフィン系モノマーの付加重合体を挙げることができる。
環状共役ジエン系重合体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン系モノマーの付加重合体を環化反応して得られる重合体;シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン等の環状共役ジエン系モノマーの1,2−または1,4−付加重合体;およびこれらの水素添加物;などを挙げることができる。
特定重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上、特に好ましくは1.8以上であり、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下、特に好ましくは2.7以下である。分子量分布を前記範囲の下限値以上にすることにより、特定重合体の生産性を高め、製造コストを抑制できる。また、上限値以下にすることにより、低分子成分の量が小さくなるので、高温曝露時の緩和を抑制して、複層フィルムの安定性を高めることができる。
特定重合体の飽和吸水率は、好ましくは0.03重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下、特に好ましくは0.01重量%以下である。飽和吸水率が前記範囲であると、延伸フィルム層Aの面内レターデーションRe及び厚み方向のレターデーションRthの経時変化を小さくすることができる。また、複層フィルムを備える偏光板及び液晶表示装置の劣化を抑制でき、長期的にディスプレイの表示を安定で良好に保つことができる。
飽和吸水率は、試験片を一定温度の水中に一定時間浸漬して増加した質量を、浸漬前の試験片の質量に対する百分率で表した値である。通常は、23℃の水中に24時間、浸漬して測定される。特定重合体における飽和吸水率は、例えば、特定重合体中の極性基の量を減少させることにより、前記の範囲に調節することができる。飽和吸水率をより低くする観点から、特定重合体は、極性基を有さないことが好ましい。
熱可塑性樹脂における特定重合体の量は、好ましくは50重量%〜100重量%、より好ましくは70重量%〜100重量%である。特定重合体の量を前記の範囲に収めることにより、所望のレターデーションを有する延伸フィルム層Aを容易に実現できる。
熱可塑性樹脂は、本発明の効果を著しく損なわない限り、特定重合体以外に任意の成分を含みうる。任意の成分の例を挙げると、顔料、染料等の着色剤;可塑剤;蛍光増白剤;分散剤;熱安定剤;光安定剤;紫外線吸収剤;耐電防止剤;酸化防止剤;微粒子;界面活性剤等の添加剤を挙げることができる。これらの成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、特に好ましくは120℃以上であり、好ましくは190℃以下、より好ましくは180℃以下、特に好ましくは170℃以下である。熱可塑性樹脂のガラス転移温度を前記範囲の下限値以上にすることにより、高温環境下における複層フィルムの耐久性を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、延伸処理を容易に行える。
熱可塑性樹脂の光弾性係数の絶対値は、好ましくは10×10−12Pa−1以下、より好ましくは7×10−12Pa−1以下、特に好ましくは4×10−12Pa−1以下である。これにより、複層フィルムの面内レターデーションのバラツキを小さくすることができる。ここで、光弾性係数Cは、複屈折をΔn、応力をσとしたとき、C=Δn/σで表される値である。
延伸フィルム層Aの1mm厚換算での全光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。全光線透過率は、JIS K0115に準拠して、分光光度計(日本分光社製、紫外可視近赤外分光光度計「V−570」)を用いて測定しうる。
また、延伸フィルム層Aの1mm厚換算でのヘイズは、好ましくは0.3%以下、より好ましくは0.2%以下である。ヘイズを前記範囲内に収めることにより、複層フィルムを偏光子と貼り合わせた場合に、偏光解消を防止することができる。ヘイズは、JIS K7361−1997に準拠して、日本電色工業社製「濁度計 NDH−300A」を用いて測定しうる。
延伸フィルム層Aの揮発性成分の量は、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.05重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下である。揮発性成分の量を前記範囲にすることにより、寸法安定性が向上し、延伸フィルム層Aの面内レターデーションRe及び厚み方向のレターデーションRthの経時変化を小さくすることができる。さらには、複層フィルムを備える偏光板及び液晶表示装置の劣化を抑制でき、長期的にディスプレイの表示を安定で良好に保つことができる。
ここで、揮発性成分は、分子量200以下の物質である。揮発性成分としては、例えば、残留単量体及び溶媒などが挙げられる。揮発性成分の量は、分子量200以下の物質の合計として、ガスクロマトグラフィーにより分析することにより定量しうる。
延伸フィルム層Aの厚みは、好ましくは5μm以上、より好ましくは8μm以上、特に好ましくは10μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは70μm以下、特に好ましくは60μm以下である。延伸フィルム層Aの厚みを前記範囲の下限値以上にすることにより、複層フィルムの機械的強度を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、複層フィルムの厚みを薄くできる。
[3.樹脂層B]
樹脂層Bは、ポリウレタンを含む塗布液の層を硬化させて得られる層である。この樹脂層Bは、通常、塗布液に含まれていたポリウレタン自体、又は、当該ポリウレタンを架橋させたポリマーを含む樹脂からなる。樹脂層Bは、通常、延伸フィルム層Aに直接に接しており、延伸フィルム層Aと樹脂層Bとの間には他の層は挟まれない。しかし、本発明の効果を著しく損なわない限り、延伸フィルム層Aと樹脂層Bとの間に任意の層が設けられていてもよい。
樹脂層Bは、支持面を備える支持体の前記支持面に塗布液の層を形成し、この塗布液の層を硬化させる工程を含む製造方法により、製造しうる。通常、前記の支持体としては、延伸フィルム層A、又は、延伸フィルム層Aを製造するために用いる延伸前フィルム層aを用いる。
塗布液が含むポリウレタンとしては、1分子中に平均2個以上の水酸基を有するポリオール成分と、1分子中に平均2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート成分とを反応させて得られるポリウレタンを用いうる。
前記ポリオール成分としては、例えば、(1)脂肪族ポリエステルポリオール、(2)ポリエーテルポリオール、(3)ポリカーボネートポリオール、(4)ポリエステルエーテルポリオール、及び(5)ポリエチレンテレフタレートポリオール、が挙げられる。
(1)脂肪族ポリエステルポリオールとしては、例えば、脂肪族ポリオールと、脂肪族の多塩基酸との反応により得られる反応物が挙げられる。
脂肪族ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。脂肪族ポリオールは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
脂肪族の多塩基酸としては、多価カルボン酸及びその無水物が挙げられる。多価カルボン酸としては、例えば、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のジカルボン酸;トリメリット酸等のトリカルボン酸;などが挙げられる。多塩基酸は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
(2)ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリ(オキシプロピレンエーテル)ポリオール、ポリ(オキシエチレン−プロピレンエーテル)ポリオールが挙げられる。
(3)ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、式HO−R−(O−C(O)−O−R)−OH(ただし、式中、Rは炭素原子数1〜12の飽和脂肪酸ポリオール残基を示す。また、Xは分子の構造単位の数を示し、通常5〜50の整数である。)で表される化合物が挙げられる。このようなポリカーボネートポリオールは、飽和脂肪族ポリオールと置換カーボネートとを、水酸基が過剰の条件で反応させるエステル交換法;飽和脂肪族ポリオールとホスゲンとを反応させるか、または必要に応じて、その後さらに飽和脂肪族ポリオールを反応させる方法;などにより得ることができる。この際、置換カーボネートしては、例えば、炭酸ジエチル、ジフェニルカーボネートを用いうる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
(4)ポリエステルエーテルポリオールとしては、例えば、エーテル基を含むポリオール化合物と多価カルボン酸又はその無水物とを反応させた反応物が挙げられる。エーテル基を含むポリオール化合物としては、例えば、前記の(2)ポリエーテルポリオール、及び、ジエチレングリコール等が挙げられる。エーテル基を含むポリオール化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、多価カルボン酸又はその無水物としては、例えば、(1)脂肪族ポリエステルポリオールの説明で挙げた例示物が挙げられる。多価カルボン酸又はその無水物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。ポリエステルエーテルポリオールの具体例としては、ポリテトラメチレングリコール−アジピン酸縮合物などが挙げられる。
ポリオール成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ポリイソシアネート成分としては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を含有する脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環族ポリイソシアネート化合物、及び、芳香族ポリイソシアネート化合物を用いうる。
脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、炭素原子数1〜12の脂肪族ジイソシアネートが好ましく、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート(HDI)などが挙げられる。
脂環式ポリイソシアネート化合物としては、炭素原子数4〜18の脂環式ジイソシアネートが好ましく、例えば、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)などが挙げられる。
芳香族ポリイソシアネート化合物としては、芳香族ジイソシアネートが好ましく、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
ポリイソシアネート化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
塗布液が含むポリウレタンは、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との反応後に反応せず残った水酸基を含むものであってもよい。当該水酸基は、架橋剤における官能基との架橋反応が可能な極性基として利用することができる。
塗布液が含むポリウレタンとしては、水溶性又は水分散性を有するものが好ましい。このようなポリウレタンは、塗布液の溶媒として水を用いることができる。これにより、樹脂層Bを形成する際の支持体として延伸フィルム層A又は延伸前フィルム層aを用いた場合に、塗布液の溶媒による延伸フィルム層A又は延伸前フィルム層aの変形及び破損を抑制できる。
塗布液が含むポリウレタンは、架橋剤により架橋されうるものが好ましい。これにより、樹脂層Bにおいてポリウレタンを架橋させることができるので、樹脂層Bの機械的強度を高めることができる。さらに、樹脂層Bにおいてポリウレタンが架橋していることにより、樹脂層Bの接着性を高めることができる。
上述した物の中でも、ポリウレタンとしては、ポリカーボネート系ポリウレタン及びポリエステル−エーテル系ポリウレタンが好ましい。
ポリカーボネート系ポリウレタンとは、当該ポリウレタンの分子構造にカーボネート骨格を有するポリウレタンであり、例えば、ポリカーボネートポリオールとポリイソシアネート成分とから製造されるポリウレタン等が挙げられる。ポリカーボネート系ポリウレタンを用いることにより、伸度、耐湿性及び機械強度のバランスに優れる樹脂層Bを得ることができる。
また、ポリエステル−エーテル系ポリウレタンとは、当該ポリウレタンの分子構造にエステル結合及びエーテル結合を有するポリウレタンであり、例えば、ポリエステルエーテルポリオールとポリイソシアネート成分とから製造されるポリウレタン等が挙げられる。ポリエステル−エーテル系ポリウレタンを用いることにより、伸度と機械強度のバランスに優れる樹脂層Bを得ることができる。
ポリウレタンは、架橋剤との反応を可能にするため、極性基を含むことが好ましい。極性基としては、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、ニトリル基、スルホ基などが挙げられる。中でも、メチロール基、水酸基、カルボキシル基及びアミノ基が好ましく、水酸基及びカルボキシル基がより好ましく、カルボキシル基が特に好ましい。ポリウレタン中の極性基の量は、好ましくは0.0001当量/1kg以上、より好ましくは0.001当量/1kg以上であり、好ましくは1当量/1kg以下である。
塗布液が含むポリウレタンとしては、水系ウレタン樹脂として市販されている水系エマルションを用いうる。水系ウレタン樹脂とは、ポリウレタンと水とを含む組成物であり、通常、ポリウレタン及び必要に応じて含まれる任意の成分が水の中に分散しているものである。水系ウレタン樹脂としては、例えば、ADEKA社製の「アデカボンタイター」シリーズ、三井化学社製の「オレスター」シリーズ、DIC社製の「ボンディック」シリーズ、「ハイドラン(WLS201,WLS202など)」シリーズ、バイエル社製の「インプラニール」シリーズ、花王社製の「ポイズ」シリーズ、三洋化成工業社製の「サンプレン」シリーズ、第一工業製薬社製の「スーパーフレックス」シリーズ、楠本化成社製の「NEOREZ(ネオレッズ)」シリーズ、ルーブリゾール社製の「Sancure」シリーズなどを用いうる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
塗布液が含むポリウレタンの乾燥状態での単体皮膜伸度は、通常300%以上、好ましくは350%以上であり、通常1000%以下、好ましくは800%以下である。塗布液が含むポリウレタンとして前記のような単体皮膜伸度を有するものを用いることにより、本発明の複層フィルムの接着性を高めることができ、特にポリビニルアルコール製の偏光子と貼り合せた際の接着性を顕著に増加させる効果が得られる。
前記のポリウレタンの乾燥状態での単体皮膜伸度は、下記の測定方法により測定しうる。
フッ素加工された鉄板上に、サンプルとなるポリウレタンの水分散体を載せる。90℃で10分の加熱処理を行って水分を蒸発させて、ポリウレタンの単体皮膜(厚み100μm)を作製する。得られたポリウレタンの単体皮膜について、JIS−K7127に従い、チャック間距離100mm、試験速度100mm/minの条件で延伸して、前記単体皮膜が破断したときの伸度(破断伸度)の測定を行う。
同様の測定を5回行い、5回の測定で求められた破断伸度の平均値を、サンプルであるポリウレタンの単体皮膜伸度として得る。
単体皮膜伸度を前記の範囲に収めるために、塗布液が含むポリウレタンとして、好ましくは25℃未満、より好ましくは0℃未満のガラス転移温度を有するポリウレタンを選択することが好ましい。このような低いガラス転移温度を有するポリウレタンとしては、ポリオール成分に柔軟性を有する脂肪族系のポリオールから合成されたポリウレタンが好ましい。ここで、脂肪族系のポリオールとは、当該ポリオールの分子構造中に脂肪族炭化水素鎖を有するポリオールを表す。
さらに、単体皮膜伸度を前記範囲のように大きくするためには、塗布液が含むポリウレタンの重量平均分子量(Mw)を、好ましくは10万以上、より好ましくは30万以上、特に好ましくは50万以上とすることが望ましい。
塗布液において、ポリオールの量は、通常、ポリオールが塗布液の固形分の主成分となるように設定する。具体的には、塗布液の固形分100重量部に対して、塗布液に含まれるポリウレタンの量は、通常60重量部以上、好ましくは65重量部以上、より好ましくは70重量部以上であり、好ましくは95重量部以下、より好ましくは90重量部以下である。ここで塗布液の固形分とは、塗布液の乾燥を経て残留する成分のことをいう。塗布液におけるポリオールの量を前記の範囲に収めることにより、樹脂層Bにおいてポリウレタン又は当該ポリウレタンを架橋させたポリマーを主成分にできる。これにより、樹脂層Bにおいてポリウレタン又は当該ポリウレタンを架橋させたポリマーの優れた接着性を有効に活用できるので、樹脂層Bの接着性を高めることができる。
塗布液は、通常、ポリウレタンに加えて溶媒を含む。通常、溶媒としては、水又は水溶性の溶媒を用いる。水溶性の溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどが挙げられる。溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、溶媒としては、水を用いることが好ましい。溶媒として水を用いた場合、塗布液は、ポリウレタンを含む水系樹脂となる。ここで、水系樹脂とは、固形分を、水等の水系の溶媒に溶解又は分散した状態で含む組成物のことをいう。
溶媒の量は、塗布液の粘度を塗布に適した範囲にできるように設定しうる。通常は、溶媒の量は、塗布液の固形分濃度を所望の範囲に収められるように設定する。前記の所望の範囲は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上であり、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。これにより、塗布液の取り扱い性及び塗布性を良好にできる。
塗布液は、必要に応じて、ポリウレタン及び溶媒以外に任意の成分を含みうる。任意の成分としては、架橋剤が好ましい。架橋剤は、ポリウレタンを架橋させうるので、樹脂層Bの機械的強度及び接着性を向上させることができる。
架橋剤としては、ポリウレタンが有する極性基等の官能基と反応して結合を形成できる官能基を1分子内に2個以上有する化合物を用いうる。かかる架橋剤としては、例えば、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、イソシアネート化合物等が挙げられる。また、架橋剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
エポキシ化合物としては、1分子内に2個以上のエポキシ基を有する多官能のエポキシ化合物を用いうる。中でも、エポキシ化合物としては、水に溶解性があるか、または水に分散してエマルション化しうるものが好ましい。エポキシ基が水に溶解性を有するか又はエマルション化しうるものであれば、塗布液の塗布性を良好にして、樹脂層Bの製造を容易に行うことが可能となる。
エポキシ化合物の例を挙げると、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサングリコール、ネオペンチルグリコール等のグリコール類1モルと、エピクロルヒドリン2モルとのエーテル化によって得られるジエポキシ化合物;グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール類1モルと、エピクロルヒドリン2モル以上とのエーテル化によって得られるポリエポキシ化合物;フタル酸、テレフタル酸、シュウ酸、アジピン酸等のジカルボン酸1モルと、エピクロルヒドリン2モルとのエステル化によって得られるジエポキシ化合物;などが挙げられる。
より具体的にエポキシ化合物の例を挙げると、1,4−ビス(2’,3’−エポキシプロピルオキシ)ブタン、1,3,5−トリグリシジルイソシアヌレート、1,3−ジクリシジル−5−(γ−アセトキシ−β−オキシプロピル)イソシヌレート、ソルビトールポリグリシジルエーテル類、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル類、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル類、ジグリセロ−ルポリグルシジルエーテル、1,3,5−トリグリシジル(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、グリセロールポリグリセロールエーテル類およびトリメチロ−ルプロパンポリグリシジルエーテル類等が挙げられる。
また、エポキシ化合物の例を市販品で挙げると、ナガセケムテックス社製の「デナコール(デナコールEX−521,EX−614Bなど)」シリーズ等を挙げることができる。
エポキシ化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
エポキシ化合物の量は、ポリウレタン100重量部に対して、好ましくは2重量部以上、より好ましくは4重量部以上、特に好ましくは5重量部以上であり、好ましくは35重量部以下、より好ましくは30重量部以下、特に好ましくは25重量部以下である。エポキシ化合物の量を前記範囲の下限値以上とすることにより、エポキシ化合物とポリウレタンとの反応が十分に進行するので、樹脂層Bの機械的強度を適切に向上させることができ、また、上限値以下とすることにより、未反応のエポキシ化合物の残留を少なくできるので、樹脂層Bの機械的強度を適切に向上できる。
エポキシ化合物の量は、ポリウレタンの官能基と当量になるエポキシ化合物の量に対し、重量基準で、好ましくは0.2倍以上、より好ましくは0.4倍以上、特に好ましくは0.6倍以上であり、好ましくは5倍以下、より好ましくは4.5倍以下、特に好ましくは4倍以下である。ここで、ポリウレタンの官能基と当量になるエポキシ化合物の量とは、ポリウレタンの官能基の全量と過不足無く反応できるエポキシ化合物の理論量をいう。ポリウレタンの官能基は、通常、エポキシ化合物のエポキシ基と反応しうる。よって、エポキシ化合物の量を前記範囲に収めることにより、ポリウレタンの官能基とエポキシ化合物との反応を適切な程度に進行させて、樹脂層Bの機械的強度を効果的に向上させることができる。
カルボジイミド化合物としては、1分子内にカルボジイミド基を2以上有する化合物を用いうる。カルボジイミド化合物は、合成原料としての有機イソシアネート、有機ジイソシアネート、有機トリイソシアネート等の有機イソシアネートから製造されうる。これらの有機イソシアネートの例としては、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、及び、それらの混合物が挙げられる。したがって、有機イソシアネートが有する有機基としては、芳香族の有機基及び脂肪族の有機基のいずれを用いてもよく、また、芳香族の有機基及び脂肪族の有機基を組み合わせて用いてもよい。中でも、反応性の観点から、脂肪族の有機基を有する有機イソシアネートが特に好ましい。カルボジイミド化合物は、通常、有機ジイソシアネートの縮合反応により合成される。
有機イソシアネートの具体例としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート等の有機ジイソシアネート;イソホロンイソシアネート、フェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等の有機モノイソシアネートが挙げられる。
カルボジイミド化合物の例を市販品で挙げると、日清紡ケミカル社製の「カルボジライト(カルボジライトV−02、V−02−L2、SV−02、V−04、E−02など)」シリーズが挙げられる。
カルボジイミド化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
カルボジイミド化合物の量は、ポリウレタン100重量部に対して、好ましくは1重量部以上、より好ましくは5重量部以上であり、好ましくは200重量部以下、より好ましくは100重量部以下である。カルボジイミド化合物の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、カルボジイミド化合物とポリウレタンとの反応が十分に進行するので、樹脂層Bの機械的強度を適切に向上させることができる。また、上限値以下にすることにより、未反応のカルボジイミド化合物の残留を少なくでき、樹脂層Bの機械的強度を適切に向上できる。
オキサゾリン化合物としては、下記式(I)に示すオキサゾリン基を有する重合体を用いうる。下記式(I)において、R、R、R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、フェニル基及び置換フェニル基からなる群より選ばれるものを表す。
Figure 0006844651
オキサゾリン化合物は、例えば、付加重合性オキサゾリンと、必要に応じて任意の不飽和単量体とを含む単量体成分を、公知の重合法により水性媒体中で溶液重合することにより製造しうる。付加重合性オキサゾリンとしては、例えば、下記式(II)で示される化合物が挙げられる。下記式(II)において、R、R、R及びRは、式(I)における程度と同様である。また、式(II)においてRは、付加重合性の不飽和結合を有する、非環状の有機基を表す。
Figure 0006844651
付加重合性オキサゾリンの具体例としては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等が挙げられる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが、工業的にも入手し易く好適である。
付加重合性オキサゾリンの使用量は、オキサゾリン化合物の製造に用いる全単量体成分100重量部に対して、好ましくは5重量部以上である。これにより、ポリウレタンを含む塗布液の層を硬化させた場合に硬化を十分に進めることができ、耐久性及び耐水性に優れた樹脂層Bを得ることができる。
オキサゾリン化合物の製造に用いうる任意の不飽和単量体としては、付加重合性オキサゾリンと共重合可能であり、かつ、オキサゾリン基と反応しない任意の単量体を用いうる。このような任意の不飽和単量体としては、例えば、上述した単量体から任意に選択して使用しうる。
オキサゾリン化合物の例を市販品で挙げると、水溶性タイプでは、日本触媒社製のエポクロスWS−500及びWS−700が挙げられる。また、例えばエマルションタイプでは、日本触媒社製のエポクロスK−2010、K−2020及びK−2030が挙げられる。これらの中でも、特に、ポリウレタンとの反応性の高い水溶性タイプが好ましい。
また、オキサゾリン化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
オキサゾリン化合物の量は、ポリウレタンが有する極性基等の官能基とオキサゾリン化合物が有するオキサゾリン基とのモル比(官能基のモル数/オキサゾリン基のモル数)が、所定の範囲に収まるように設定しうる。具体的には、前記のモル比が、100/100〜100/20となるように設定することが好ましい。前記のモル比を前記範囲の下限値以上にすることにより、余剰のオキサゾリン基の発生を防止して、親水基が過剰となることを防止できる。また、上限値以下にすることにより、ポリウレタンに未反応の官能基が残ることを防止できる。
ポリウレタンがカルボキシル基を有し、且つ、そのカルボキシル基がアミンで中和されている場合には、ポリウレタンとオキサゾリン化合物との反応において、オキサゾリン基とカルボン酸塩とが反応しにくい。そこで、中和に用いるアミンの種類を変えることにより、アミンの揮発性を調整することで、反応性をコントロールすることができる。
イソシアネート化合物としては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を含有する化合物を用いうる。これらのイソシアネート化合物は、脂肪族化合物でもよく、脂環族化合物でもよく、芳香族化合物でもよい。イソシアネート化合物の具体例としては、ポリウレタンの原料として説明したポリイソシアネート成分と同様の例が挙げられる。また、イソシアネート化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
塗布液は、任意の成分として、硬化促進剤を含みうる。硬化促進剤としては、架橋剤として例えばエポキシ化合物を用いる場合、第3級アミン系化合物(4−位に3級アミンを有する2,2,6,6−テトラメチルピペリジル基を有する化合物を除く)、三弗化ホウ素錯化合物等が好適である。また、硬化促進剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
硬化促進剤の量は、ポリウレタン100重量部に対して、好ましくは0.001重量部以上、より好ましくは0.01重量部以上、特に好ましくは0.03重量部以上であり、好ましくは30重量部以下、より好ましくは20重量部以下、特に好ましくは10重量部以下である。
塗布液は、任意の成分として、硬化助剤を含みうる。硬化助剤としては、例えば、キノンジオキシム、ベンゾキノンジオキシム、p−ニトロソフェノール等のオキシム・ニトロソ系硬化助剤;N,N−m−フェニレンビスマレイミド等のマレイミド系硬化助剤;ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等のアリル系硬化助剤;エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のメタクリレート系硬化助剤;ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン等のビニル系硬化助剤;等が挙げられる。また、硬化助剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
硬化助剤の量は、架橋剤100重量部に対して、好ましくは1重量部以上、より好ましくは10重量部以上であり、好ましくは100重量部以下、より好ましくは50重量部以下である。
塗布液が含みうる任意の成分としては、例えば、耐熱安定剤、耐候安定剤、レベリング剤、界面活性剤、酸化防止剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックスなどが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
塗布液において、当該塗布液に含まれる固形分(例えば、ポリウレタン、架橋剤等)は、通常、粒子となって分散している。この粒子の粒径は、複層フィルムの光学特性の観点から、0.01μm〜0.4μmであることが好ましい。
前記の粒径は、動的光散乱法により測定しうる。例えば、大塚電子社製の光散乱光度計DLS−8000シリーズにより測定しうる。
塗布液の粘度は、好ましくは15mPa・s以下、より好ましくは10mPa・s以下である。塗布液の粘度が前記範囲内にあると、塗布液の均一な塗布が容易である。前記の粘度は、音叉型振動式粘度計により25℃の条件下で測定した値である。塗布液の粘度は、例えば、塗布液に含まれる溶媒の割合、塗布液に含まれる粒子の径により調整しうる。
樹脂層Bは、前記の塗布液の層を硬化させた層である。このような樹脂層Bは、支持面を有する支持体の前記支持面に塗布液の層を形成する工程と、前記塗布液の層を硬化させて樹脂層Bを得る工程とを含む製造方法により、製造しうる。
支持面に塗布液の層を形成する工程では、通常、塗布液を支持面に塗布することで、塗布液の層を形成する。塗布法としては、例えば、ワイヤーバーコート法、ディップ法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、グラビアコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、スライドコート法、エクストルージョンコート法などが挙げられる。
塗布液の層を支持面に形成した後で、当該層を硬化させることにより、樹脂層Bが得られる。通常、塗布液は溶媒を含むため、塗布液の層を硬化させる際には溶媒を乾燥させて除去する。乾燥方法は任意であり、例えば、減圧乾燥、加熱乾燥など任意の方法を行いうる。中でも、塗布液中において架橋反応等の反応を速やかに進行させる観点から、加熱乾燥によって塗布液の層を硬化させることが好ましい。加熱乾燥を行なう場合、通常は、ポリウレタンの架橋反応が進行する。加熱により塗布液の層を硬化させる場合、加熱温度は、溶媒を乾燥させて塗布液の層を硬化させることができる範囲で適切に設定しうる。
樹脂層Bの厚みは、通常0.05μm以上、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.3μm以上であり、通常2μm以下、好ましくは1.5μm以下、より好ましくは1μm以下である。樹脂層Bの厚みを前記範囲の下限値以上にすることにより、接着性を効果的に高めることができる。また、上限値以下にすることにより、樹脂層Bの剛性を高くできるので、樹脂層Bの変形を抑制できる。そのため、本発明の複層フィルムの搬送及び巻き取りを容易に行うことができる。よって、樹脂層Bの厚みを前記範囲内にすることで、延伸フィルム層Aと樹脂層Bとの十分な接着性を得ることができ、且つ、複層フィルムの厚みを薄くできる。
樹脂層Bは、延伸フィルム層Aに近い屈折率を有することが好ましい。具体的には、延伸フィルム層Aと樹脂層Bとの界面での屈折率差は、0.06以下であることが好ましい。延伸フィルム層Aと樹脂層Bとの界面での屈折率差を前記の範囲に収めることにより、本発明の複層フィルムの光の透過率を高めたり、複層フィルムのヘイズを小さくしたりできるので、複層フィルムを光が透過する際の光の損失を抑えることができる。
[4.任意の層]
本発明の複層フィルムは、本発明の効果を著しく損なわない限り、延伸フィルム層Aにおける樹脂層Bとは反対側の面に、任意の層を備えうる。任意の層の例としては、反射防止層、ハードコート層、帯電防止層、防眩層、防汚層、セパレーターフィルム等が挙げられる。
[5.複層フィルムの物性及び寸法]
本発明の複層フィルムは、偏光子等の他のフィルムに対する接着性が高い。具体的には、樹脂層Bの表面における接着性が高くなっている。このような高い接着性は、柔軟で比較的良く伸びる樹脂層Bの変形によって散逸されるエネルギー分が、剥離強度の上昇として観察されているものと推察される。また、良く伸びる樹脂層Bの変形によってエネルギーが散逸するので、延伸フィルム層Aにおいて応力の集中が生じ難く、そのため延伸フィルム層Aの凝集破壊の発生が抑制されることも、接着性の向上に寄与しているものと推察される。ただし、本発明はこれらの推測によって制限されるものではない。
複層フィルムは、光学部材としての機能を安定して発揮させる観点から、全光線透過率が、85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。光線透過率は、JIS K0115に準拠して、分光光度計(日本分光社製、紫外可視近赤外分光光度計「V−570」)を用いて測定しうる。
複層フィルムのヘイズは、好ましくは1%以下、より好ましくは0.8%以下、特に好ましくは0.5%以下である。ヘイズを低い値とすることにより、複層フィルムを組み込んだ表示装置の表示画像の鮮明性を高めることができる。ここで、ヘイズは、JIS K7361−1997に準拠して、日本電色工業社製「濁度計 NDH−300A」を用いて、5箇所測定し、それから求めた平均値である。
複層フィルムの面内レターデーションRe及び厚み方向のレターデーションRthは、複層フィルムの用途に応じて任意に設定しうる。具体的な面内レターデーションReの範囲は、好ましくは50nm以上、好ましくは200nm以下である。また、具体的な厚み方向のレターデーションRthは、好ましくは50nm以上であり、好ましくは300nm以下である。
複層フィルムの面内レターデーションReのバラツキは、好ましくは10nm以内、より好ましくは5nm以内、特に好ましくは2nm以内である。面内レターデーションReのバラツキを前記範囲にすることにより、本発明の複層フィルムを液晶表示装置用の位相差フィルムとして用いた場合に、表示品質を良好にできる。ここで、面内レターデーションReのバラツキは、光入射角0°(即ち、光線の方向と複層フィルムの主面とが垂直となる状態)での面内レターデーションReを、複層フィルムの幅方向の複数の地点において測定したときの最大値と最小値との差である。
複層フィルムの残留揮発性成分の量は、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.05重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下である。残留揮発性成分の量を前記範囲に収めることにより、経時的な複層フィルムの光学特性の変化を安定して防止できる。また、寸法安定性を向上させることができる。さらに、偏光板及び液晶表示装置の劣化を抑制でき、長期的に表示装置の表示を安定で良好に保つことができる。
ここで、揮発性成分は、複層フィルム中に微量含まれる分子量200以下の物質であり、例えば、残留単量体及び溶媒などが挙げられる。揮発性成分の量は、複層フィルム中に含まれる分子量200以下の物質の合計として、測定対象となるフィルムをガスクロマトグラフィーにより分析することにより定量することができる。
複層フィルムの総厚みは、好ましくは8μm以上、より好ましくは9μm以上、特に好ましくは10μm以上であり、好ましくは250μm以下、より好ましくは200μm以下、特に好ましくは150μm以下である。複層フィルムの総厚みを前記範囲の下限値以上にすることにより、複層フィルムの機械的強度を高くできる。また、上限値以下にすることにより、複層フィルム全体の厚みを薄くできる。
複層フィルムの厚みムラは、巻取りの可否に影響を与える可能性があるため、好ましくは3μm以下、より好ましくは2μm以下である。ここで厚みムラとは、厚みの最大値と最小値との差のことをいう。
複層フィルムは、長尺のフィルムであることが好ましい。長尺のフィルムとは、当該フィルムの幅に対し5倍以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍もしくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻回されて保管または運搬される程度の長さを有するものを言う。
複層フィルムの幅は、好ましくは700mm以上、より好ましくは1000mm以上、特に好ましくは1200mm以上であり、好ましくは2500mm以下、より好ましくは2200mm以下、特に好ましくは2000mm以下である。
[6.複層フィルムの製造方法]
本発明の複層フィルムは、例えば、延伸フィルム層Aの面、又は、延伸前フィルム層aの面を支持面として用いて、樹脂層Bの項で説明したように塗布液から樹脂層Bを製造する工程を含む方法により、製造しうる。中でも、本発明の複層フィルムは、下記の第一の製造方法又は第二の製造方法によって製造することが好ましい。
複層フィルムの第一の製造方法:
ポリウレタンを含む塗布液の層を熱可塑性樹脂からなる延伸前フィルム層aの少なくとも一方の面に形成する工程と、前記塗布液の層を硬化させて樹脂層Bを得る工程と、前記延伸前フィルム層aを延伸して延伸フィルム層Aを得る工程とを含む、製造方法。
複層フィルムの第二の製造方法:
ポリウレタンを含む塗布液の層を熱可塑性樹脂からなる延伸フィルム層Aの少なくとも一方の面に形成する工程と、前記塗布液の層を硬化させて樹脂層Bを得る工程とを含む、製造方法。
〔6.1.第一の製造方法〕
本発明の複層フィルムの第一の製造方法では、延伸前フィルム層aを用意する工程を行う。この延伸前フィルム層aは、延伸されることによって延伸前フィルム層Aとなるフィルム層であり、通常、延伸フィルム層Aと同様の熱可塑性樹脂からなる。
熱可塑性樹脂により延伸前フィルム層aを製造する方法に制限は無い。延伸前フィルム層aは、例えば、溶融成形法及び溶液流延法などにより、熱可塑性樹脂をフィルム状に成形することにより製造しうる。溶融成形法としては、例えば、溶融押し出しにより成形する押出成形法、並びに、プレス成形法、インフレーション成形法、射出成形法、ブロー成形法、及び延伸成形法などが挙げられる。これらの方法の中でも、機械強度及び表面精度に優れた延伸前フィルム層aを得る観点から、押出成形法、インフレーション成形法及びプレス成形法が好ましい。その中でも特に、残留溶媒の量を減らせること、並びに、効率よく簡単な製造が可能なことから、押出成形法が特に好ましい。
また、塗布液の層を形成される延伸前フィルム層aの面には、延伸フィルム層Aと樹脂層Bとの接着性を向上させるために、表面改質処理を施してもよい。表面改質処理では、通常、処理された面の親水性を向上させて、その面の平均水接触角、及び、水接触角の標準偏差を所望の範囲にする。所望の平均水接触角の範囲は、好ましくは20°〜70°、より好ましくは20°〜50°である。また、所望の水接触角の標準偏差の範囲は、好ましくは0.01°〜5°である。
前記の水接触角は、接触角計を用いてθ/2法により求めうる。また、平均水接触角は、例えば、評価対象となる面において、100cmの範囲内で無作為に選んだ20点の水接触角を測定し、この測定値の加算平均により算出しうる。さらに、水接触角の標準偏差は、これらの測定値から算出しうる。
前記のような表面改質処理としては、例えば、エネルギー線照射処理及び薬品処理等が挙げられる。エネルギー線照射処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、電子線照射処理、紫外線照射処理等が挙げられ、処理効率の点等から、コロナ放電処理及びプラズマ処理が好ましく、コロナ放電処理が特に好ましい。また、薬品処理としては、例えば、ケン化処理、並びに、重クロム酸カリウム溶液及び濃硫酸等の酸化剤水溶液中にフィルムを浸漬し、その後、水で洗浄する処理、などが挙げられる。
コロナ放電処理は、電極の構造として、ワイヤー電極、平面電極又はロール電極を用いた処理が好適である。電極の材質としては、例えば、鉄、銅、アルミ、ステンレスなどの金属が挙げられる。電極形状としては、例えば、薄板状、ナイフエッジ状、ブラシ状などが挙げられる。
コロナ放電処理では、放電を均一にするために、処理対象のフィルムと電極との間に誘電体を挟んで処理を実施することが好ましい。誘電体としては、比誘電率が10以上のものが好ましい。さらに、誘電体の設置構造は、両極の電極をそれぞれ誘電体で挟んだ構造が好ましい。誘電体の材質としては、例えば、セラミック;シリコンゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック;ガラス;石英;二酸化珪素;酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、二酸化チタンなどの金属酸化物;チタン酸バリウム等の化合物;などが挙げられる。特に、比誘電率10以上(25℃環境下)の固体誘電体を介在させておくことが、低電圧で高速にコロナ放電処理を行えるという点で有利である。前記比誘電率10以上の固体誘電体としては、例えば、二酸化ジルコニウム、二酸化チタンなどの金属酸化物;チタン酸バリウムなどの酸化物;シリコンゴムなどが挙げられる。誘電体の厚みは0.3mm〜1.5mmの範囲が好ましい。誘電体の厚みを前記範囲の下限値以上にすることにより、絶縁破壊の発生を抑制できる。また、上限値以下にすることにより、印加電圧を高くする必要が無くなるので、処理効率を良くできる。
コロナ放電処理では、処理対象のフィルムと電極との間隔は、0.5mm〜10mmであることが好ましい。間隔を前記範囲の下限値以上にすることにより、厚みの薄いフィルムであっても電極間を通すことができる。このため、例えば継ぎ目等の厚みが厚い部分を有するフィルムであっても、安定して電極間を通過させることができるので、フィルムの傷つきを抑制できる。また、上限値以下にすることにより、印加電圧を低くできるので、電源を小型化でき、放電がストリーマ状になることを抑制できる。
コロナ放電処理の出力は、処理対象面のダメージをできるだけ少なく処理する条件が好ましく、具体的には、好ましくは0.02kW以上、より好ましくは0.04kW以上であり、好ましくは5kW以下、より好ましくは2kW以下である。また、この範囲内で、可能な限り低出力で数回コロナ放電処理を施すことが、好ましいコロナ放電処理方法である。
コロナ放電処理の密度は、コロナ放電処理を施された面の平均水接触角、及び、水接触角の標準偏差を所望の範囲にできるように、設定することが好ましい。コロナ放電処理の具体的な密度は、好ましくは1W・min/m以上、より好ましくは5W・min/m以上、特に好ましくは10W・min/m以上であり、好ましくは1000W・min/m以下、より好ましくは500W・min/m以下、特に好ましくは300W・min/m以下である。コロナ放電処理の密度を前記範囲の下限値以上にすることにより、塗布液の塗布性を向上させることができる。また、上限値以下にすることにより、コロナ放電処理を施された面の破壊による接着性の低下を抑制できる。
コロナ放電処理の周波数は、好ましくは5kHz以上、より好ましくは10kHz以上であり、好ましくは100kHz以下、より好ましくは50kHz以下である。周波数を前記範囲の下限値以上にすることにより、コロナ放電処理の均一性を高めることができるので、コロナ放電処理のムラを防止できる。また、上限値以下にすることにより、低出力のコロナ放電処理を実施する場合であっても安定した処理を行うことが可能となり、処理ムラの発生を抑制できる。
コロナ放電処理は、電極周辺をケーシングで囲い、ケーシングの内部に不活性ガスを入れ、電極部にガスをかけるようにすると、放電をより細かい状態で発生させることができる。不活性ガスとしては、例えば、ヘリウム、アルゴン、窒素等が挙げられる。不活性ガスは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
プラズマ放電処理としては、例えば、グロー放電処理、フレームプラズマ処理などが挙げられる。グロー放電としては、真空下で行う真空グロー放電処理、大気圧下で行う大気圧グロー放電処理のいずれも用いうる。中でも、生産性の観点から、大気圧下で行う大気圧グロー放電処理が好ましい。ここで、大気圧とは、700Torr〜780Torrの範囲である。
グロー放電処理は、相対する電極の間に処理対象のフィルムを置き、装置中にプラズマ励起性気体を導入し、電極間に高周波電圧を印加することにより、該気体をプラズマ励起させ、電極間においてグロー放電を行う処理である。これにより、処理された面の親水性がより高められる。
プラズマ励起性気体とは、前記のような条件においてプラズマ励起されうる気体をいう。プラズマ励起性気体としては、例えば、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン等の希ガス;窒素;二酸化炭素;テトラフルオロメタンのようなフロン類及びそれらの混合物;アルゴン、ネオンなどの不活性ガスに、カルボキシル基、水酸基、カルボニル基などの極性官能基を付与し得る反応性ガスを加えたもの;などが挙げられる。また、プラズマ励起性気体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
プラズマ放電処理における高周波電圧の周波数は、1kHz〜100kHzの範囲が好ましい。電圧の大きさは、電極に印加した時の電界強度が1kV/cm〜100kV/cmとなる範囲が好ましい。
紫外線照射処理では、処理対象のフィルムの面に紫外線を照射する。照射する紫外線の波長は、通常100nm〜400nmである。また、紫外線の光源であるランプの出力値は、好ましくは120W以上、より好ましくは160W以上であり、好ましくは240W以下、より好ましくは200W以下である。紫外線の照射量は、紫外線を照射されるフィルムに対しての紫外線の積算光量の総量で表記すると、好ましくは100mJ/cm以上、更に好ましくは200mJ/cm以上、特に好ましくは300mJ/cm以上であり、好ましくは2,000mJ/cm以下、更に好ましくは1,500mJ/cm以下、特に好ましくは1,000mJ/cm以下である。積算光量の総量は、紫外線照射ランプの照度とライン速度(フィルムの移動速度)によって決まる値であり、例えば、紫外線積算照度計(アイグラフィック社製:EYEUV METER UVPF−A1)で測定しうる。
ケン化処理としては、アルカリケン化処理が好適である。処理方法としては、例えば、浸漬法、アルカリ液塗布法等が挙げられ、生産性の観点から浸漬法が好ましい。
ケン化処理における浸漬法は、アルカリ液の中に処理対象のフィルムを適切な条件で浸漬し、そのフィルムの全表面のアルカリと反応性を有する全ての面をケン化処理する手法である。浸漬法は、特別な設備を要しないため、コストの観点で好ましい。アルカリ液は、水酸化ナトリウム水溶液であることが好ましい。アルカリ液の濃度は、好ましくは0.5mol/リットル以上、より好ましくは1mol/リットル以上であり、好ましくは3mol/リットル以下、より好ましくは2mol/リットル以下である。アルカリ液の液温は、好ましくは25℃以上、より好ましくは30℃以上であり、好ましくは70℃以下、より好ましくは60℃以下である。処理された面の平均水接触角及び水接触角の標準偏差を所望の範囲に設定するために、例えば、浸漬時間等の処理条件を調整してもよい。
ケン化処理では、アルカリ液に浸漬した後、処理されたフィルムにアルカリ成分が残留しないように、フィルムを水で十分に水洗したり、フィルムを希薄な酸に浸漬してアルカリ成分を中和したりすることが好ましい。
本発明の複層フィルムの第一の製造方法では、延伸前フィルム層aを用意した後で、その延伸前フィルム層aの少なくとも一方の面に、ポリウレタンを含む塗布液の層を形成する工程を行う。通常は、延伸前フィルム層aの面に塗布液を塗布して、塗布液の層を形成する。塗布法としては、例えば、樹脂層Bの説明の項で例示した塗布法を用いうる。
第一の製造方法では、延伸前フィルム層aの面に塗布液の層を形成した後、この塗布液の層を硬化させて、樹脂層Bを得る工程を行う。通常は、塗布液に含まれる溶媒を乾燥させることにより、塗布液の層を硬化させる。この際、塗布液の層において架橋反応等の反応を速やかに進行させる観点から、加熱処理を行うことが好ましい。加熱温度及び加熱時間は、加工反応等の所望の反応が進行しうる範囲を適切に設定しうる。
また、第一の製造方法では、延伸前フィルム層aの面に塗布液の層を形成した後において、延伸前フィルム層aを延伸して延伸フィルム層Aを得る工程を行う。延伸方法としては、例えば、ロール間の周速の差を利用して長手方向に一軸延伸する方法(縦一軸延伸);テンターを用いて幅方向に一軸延伸する方法(横一軸延伸);縦一軸延伸と横一軸延伸とを順に行う方法(逐次二軸延伸);縦延伸と横延伸を同時に行う方法(同時二軸延伸);延伸前フィルムの長手方向に対して斜め方向に延伸する方法(斜め延伸);等が挙げられる。ここで「斜め方向」とは、平行でもなく、垂直でもない方向を意味する。
延伸時のフィルム温度は、延伸フィルム層Aを形成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgを基準として、好ましくはTg以上、より好ましくはTg+5℃以上、特に好ましくはTg+8℃以上であり、好ましくはTg+35℃以下、より好ましくはTg+30℃以下、特に好ましくはTg+25℃以下である。延伸時のフィルム温度を前記範囲の下限値以上にすることにより、延伸フィルム層Aにおいて過大なレターデーションが発現することを防止でき、かつ延伸フィルム層Aと樹脂層Bとの界面での接着性を良化させることができる。また、上限値以下にすることによって、延伸フィルム層Aの膜厚精度が良化して、延伸フィルム層Aの全面に均一なレターデーションを安定して発現させることができる。
延伸時の延伸倍率は、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは1.7倍以上、特に好ましくは2.0倍以上であり、好ましくは10.0倍以下、より好ましくは7.0倍以下、特に好ましくは5.0倍以下である。ここで、延伸を2回以上の工程で行う場合には、各工程における延伸倍率の積が、前記の範囲に収まることが好ましい。延伸倍率を前記範囲の下限値以上にすることにより、延伸フィルム層Aの膜厚精度を高めることができる。そのため、延伸フィルム層Aの全面に均一なレターデーションを発現させられる。また、複層フィルムの巻取りを容易にできる。さらに、樹脂層Bの厚みムラを小さくできるので、複層フィルムの接着性の面内でのバラつきを小さくできる。また、延伸倍率が前記範囲の上限値以下においては、延伸フィルム層Aの凝集力が大きくなる傾向がある。しかし、本発明の複層フィルムでは、このように大きい凝集力を有する延伸フィルム層Aに樹脂層Bを組み合わせることで、延伸フィルム層Aの凝集破壊を防止できるので、接着性の向上という本発明の利点の一つを有効に活用できる。さらに、延伸倍率を前記範囲の上限値以下にすることで、延伸フィルム層Aと樹脂層Bとの界面での応力による、延伸フィルム層Aと樹脂層Bとの接着性の低下を抑制できる。
第一の製造方法では、塗布液の層を硬化させて樹脂層Bを得る工程と、延伸前フィルム層aを延伸して延伸前フィルム層Aを得る工程とは、いずれの工程を先に行ってもよく、両工程を同時に行ってもよい。延伸フィルム層Aと樹脂層Bとの接着性を高める観点では、塗布液の層を硬化させて樹脂層Bを得る工程と、延伸前フィルム層aを延伸して延伸前フィルム層Aを得る工程とは、同時に行うことが好ましい。このように両工程を同時に行う場合、通常は、延伸前フィルム層aを延伸する際に加えられる熱によって塗布液の層が加熱されて、塗布液の層の硬化が進行する。
上述した工程を行うことにより、延伸フィルム層Aと、当該延伸フィルム層Aの少なくとも一方の面に設けられた樹脂層Bとを備える複層フィルムが得られる。
このとき、複層フィルムの製造効率を高める観点では、複層フィルムは長尺のフィルムとして製造することが好ましい。複層フィルムを長尺のフィルムとして製造する場合、長尺の延伸前フィルム層aを用意し、この延伸前フィルム層aを長手方向に搬送しながら、当該延伸前フィルム層aの面にポリウレタンを含む塗布液を塗布し硬化させることにより、連続的に樹脂層Bを形成することが好ましい。例えば、連続的に搬送される長尺の延伸前フィルム層aが延伸装置に供給される直前に、延伸前フィルム層aの面に塗布液を塗布し、延伸装置の予熱ゾーン及び延伸ゾーンにおいて塗布液の層の硬化及び延伸前フィルム層aの延伸を同時に行うことが好ましい。
〔6.2.第二の製造方法〕
本発明の複層フィルムの第二の製造方法では、延伸フィルム層Aを用意する工程を行う。延伸フィルム層Aは、第一の製造方法の項で説明したように、延伸前フィルム層aを用意する工程と、用意した延伸前フィルム層aを延伸して延伸フィルム層Aを得る工程とを含む製造方法により、製造しうる。また、塗布液の層を形成される延伸フィルム層Aの面には、延伸フィルム層Aと樹脂層Bとの接着性を向上させるために、表面改質処理を施してもよい。
こうして用意した延伸フィルム層Aの少なくとも一方の面に、ポリウレタンを含む塗布液の層を形成する工程を行う。通常は、延伸フィルム層Aの面に塗布液を塗布して、塗布液の層を形成する。塗布法としては、例えば、樹脂層Bの説明の項で例示した塗布法を用いうる。
その後、延伸フィルム層Aの面に形成された塗布液の層を硬化させることにより、樹脂層Bを得る。この際、通常は、塗布液に含まれる溶媒を乾燥させることにより、塗布液の層を硬化させる。この硬化の際、加熱処理を行うことが好ましい。ただし、第二の製造方法においては、塗布液の層は既に延伸により発現したレターデーションを有する延伸フィルム層Aの面に形成されている。そのため、樹脂層Bを硬化させる際の温度は、延伸フィルム層Aが有するレターデーションを変化させない範囲に設定することが好ましい。具体的には、延伸フィルム層Aに含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgを基準として、塗布液の層を硬化させるときの温度は、好ましくは(Tg−50℃)以上、より好ましくは(Tg−40℃)以上であり、好ましくは(Tg+20℃)以下、より好ましくは(Tg+10℃)以下である。このような温度にすることにより、延伸フィルム層Aにおいて配向緩和を抑制できるので、レターデーションの変化を抑制できる。
上述した工程を行うことにより、延伸フィルム層Aと、当該延伸フィルム層Aの少なくとも一方の面に設けられた樹脂層Bとを備える複層フィルムが得られる。第一の製造方法と同様に、第二の製造方法においても、複層フィルムの製造効率を高める観点では、複層フィルムは長尺のフィルムとして製造することが好ましい。
〔6.3.任意の工程〕
本発明の複層フィルムの製造方法では、上述した工程に加えて、更に任意の工程を行ってもよい。
例えば、延伸前フィルム層aを延伸する前に、延伸前フィルム層aに予め延伸処理を施す工程を行ってもよい。具体例を挙げると、延伸前フィルム層aを延伸した後で、この延伸前フィルム層aの面に塗布液の層を形成し、その後、塗布液の層の硬化及び延伸前フィルム層aの延伸を行ってもよい。
また、例えば、延伸前フィルム層aに対し、延伸前に、予熱処理を施す工程を行ってもよい。予熱処理の際に使用する加熱装置としては、例えば、オーブン型加熱装置、ラジエーション加熱装置、温浴槽などが挙げられる。中でも、オーブン型加熱装置が好ましい。予熱処理の際の加熱温度は、好ましくは「延伸温度−40℃」以上、より好ましくは「延伸温度−30℃」以上であり、好ましくは「延伸温度+20℃」以下、より好ましくは「延伸温度+15℃」以下である。ここで、延伸温度とは、加熱装置の設定温度を意味する。
さらに、例えば、延伸前フィルム層aを延伸して得られた延伸フィルム層Aに対して固定化処理を施す工程を行ってもよい。固定化処理における温度は、好ましくは室温以上、より好ましくは「延伸温度−40℃」以上であり、好ましくは「延伸温度+30℃」以下、より好ましくは「延伸温度+20℃」以下である。
また、例えば、樹脂層Bの表面に、親水化表面処理を施す工程を行ってもよい。樹脂層Bの表面は、通常、複層フィルムを他の部材と貼り合わせる際の貼り合せ面となる。そのため、樹脂層Bの表面の親水性を向上させることにより、複層フィルムと他の部材との接着性を顕著に向上させることができる。
親水化表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、ケン化処理、紫外線照射処理などが挙げられる。これらの処理により、樹脂層Bの表面に、例えばヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基、スルホン酸基などの官能基を導入して、前記表面の親水性を高めることができる。中でも、処理効率の点などからコロナ放電処理及びプラズマ処理が好ましく、コロナ放電処理がより好ましい。また、プラズマ処理としては、大気圧プラズマ処理が好ましい。
親水化表面処理により、樹脂層Bの表面の平均水接触角を、好ましくは70°以下、より好ましくは60°以下、特に好ましくは50°以下、また、好ましくは20°以上にすることが望ましい。また、樹脂層Bの表面の水接触角の標準偏差は、好ましくは0.01°〜5°にすることが望ましい。樹脂層Bの表面の親水性をこのように高めることにより、偏光子等の部材に対する複層フィルムの接着性を更に高めることができる。
[7.偏光板]
本発明の偏光板は、偏光子と、この偏光子に接着された本発明の複層フィルムとを備える。本発明の複層フィルムは、通常、樹脂層B側で偏光子に貼り合わせられている。したがって、本発明の偏光板は、通常、偏光子、樹脂層B及び延伸フィルム層Aをこの順に備える。
偏光子は、直角に交わる二つの直線偏光の一方を透過し、他方を吸収又は反射しうるフィルムを用いうる。偏光子の具体例を挙げると、ポリビニルアルコール、部分ホルマール化ポリビニルアルコール等のビニルアルコール系重合体のフィルムに、ヨウ素、二色性染料等の二色性物質による染色処理、延伸処理、架橋処理等の適切な処理を適切な順序及び方式で施したものが挙げられる。特に、ポリビニルアルコールを含む偏光子は、本発明の複層フィルムとの接着性に優れる。また、偏光子の厚さは、通常、5μm〜80μmである。
複層フィルムは、偏光子の片面に貼り合せられていてもよく、両面に貼り合せられていてもよい。また、偏光板における複層フィルムの数は、1枚でもよく、2枚以上でもよい。さらに、偏光子と複層フィルムとの貼り合わせに際しては、必要に応じて接着剤を用いてもよい。本発明の複層フィルムは高い接着性を有するので、本発明の偏光板において複層フィルムは偏光子から剥がれ難くなっている。また、偏光子と複層フィルムとの間には、必要に応じて、任意の部材を介在させてもよい。
偏光子の片側又は両側には、偏光子の保護を目的として、適切な接着層を介して保護フィルム層が接着されていてもよい。保護フィルム層としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性等に優れる樹脂フィルムが好ましい。この樹脂フィルムを形成する樹脂としては、例えば、トリアセチルセルロース等のアセテート重合体、脂環構造を有する重合体、ポリオレフィン重合体、ポリカーボネート重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル重合体、ポリ塩化ビニル重合体、ポリスチレン重合体、ポリアクリロニトリル重合体、ポリスルホン重合体、ポリエーテルスルホン重合体、ポリアミド重合体、ポリイミド重合体、アクリル重合体等を含む樹脂が挙げられる。
さらに、本発明の複層フィルムの偏光子を備えない面に、別の位相差フィルム層を設けてもよい。位相差フィルム層は1層のみを備える単層構造のフィルム層であってもよく、複数の層を備える複層構造のフィルム層であってもよい。本発明の複層フィルム及び位相差フィルム層それぞれの光学軸を所望の関係にすることで、本発明の偏光板を備える液晶表示装置の視認性を向上させることができる。
[8.液晶表示装置]
本発明の複層フィルムは、液晶表示装置に設けてもよい。本発明の複層フィルムは、複屈折の高度な補償が可能である。そのため、本発明の複層フィルムを液晶表示装置に設けることにより、当該液晶表示装置の様々な特性を向上させることができる。
液晶表示装置は、通常、光源側偏光板、液晶セル及び視認側偏光板をこの順に備える液晶パネルと、液晶パネルに光を照射する光源とを備える。本発明の複層フィルムを、例えば液晶セルと光源側偏光板との間、液晶セルと視認側偏光板との間などに配置することで、液晶表示装置の視認性を大幅に向上できる。
液晶セルの駆動方式としては、例えば、インプレーンスイッチング(IPS)モード、バーチカルアラインメント(VA)モード、マルチドメインバーチカルアラインメント(MVA)モード、コンティニュアスピンホイールアラインメント(CPA)モード、ハイブリッドアラインメントネマチック(HAN)モード、ツイステッドネマチック(TN)モード、スーパーツイステッドネマチック(STN)モード、オプチカルコンペンセイテッドベンド(OCB)モードなどが挙げることができる。
[9.その他の用途]
本発明の複層フィルムは、容易に製造が可能であり、通常、複屈折の高度な補償が可能である。そのため、それ単独あるいは他の部材と組み合わせて用いうる。例えば、本発明の複層フィルムを単独で位相差板又は視野角補償フィルムとして用いてもよい。また、例えば、本発明の複層フィルムを円偏光フィルムと組み合わせて輝度向上フィルムとして用いてもよい。また、これらは、例えば、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、プラズマ表示装置、FED(電界放出)表示装置、SED(表面電界)表示装置などに適用してもよい。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
[評価方法]
〔単体皮膜伸度の測定方法〕
フッ素加工された鉄板上に、サンプルとなるポリウレタンの水分散体を載せた。90℃で10分の加熱処理を行って水分を蒸発させて、ポリウレタンの単体皮膜(厚み100μm)を作製した。
得られたポリウレタンの単体皮膜について、JIS−K7127に従い、チャック間距離100mm、試験速度100mm/minの条件で延伸して、前記単体皮膜が破断したときの伸度(破断伸度)の測定を行った。
同様の測定を5回行い、5回の測定で求められた破断伸度の平均値を、サンプルであるポリウレタンの単体皮膜伸度として得た。
〔重合体の重量平均分子量の測定方法〕
重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。また、測定値は、予め作成した標準ポリスチレンの検量線から求めた換算値である。
〔厚みの測定方法〕
延伸フィルム層Aの厚み、樹脂層Bの厚み、及び、複層フィルムの総厚みは、次のようにして測定した。
サンプルとなる複層フィルムの各層の屈折率を、エリプソメトリー(ウーラム社製「M−2000」)を用いて測定した。その後、測定した屈折率を用いて、複層フィルムの厚みを、光干渉式膜厚計(大塚電子社製「MCPD−9800」)によって幅方向に100mm間隔で測定し、その平均値を測定値として用いた。
〔剥離強度の測定方法〕
偏光子の代わりに、ノルボルネン系重合体を含む樹脂からなる未延伸フィルム(日本ゼオン社製「ZF16−100」、ガラス転移温度160℃、厚み100μm)を用意した。この未延伸フィルムの片面に、コロナ処理を施した。
また、複層フィルムの樹脂層B側の表面に、コロナ処理を施した。
複層フィルムのコロナ処理を施した面、及び、未延伸フィルムのコロナ処理を施した面のそれぞれに接着剤を付着させ、接着剤を付着させた面同士を貼り合わせた。この際、接着剤としては、UV硬化タイプの接着剤を用いた。これにより、複層フィルム及び未延伸フィルムを備えるサンプルフィルムを得た。
その後、前記サンプルフィルムを25mmの幅に裁断して、フィルム片を得た。このフィルム片の複層フィルム側の面を、スライドガラスの表面に、両面粘着テープ(日東電工社製、品番「CS9621」)で貼り合わせた。
フォースゲージの先端に未延伸フィルムを挟み、スライドガラスの表面の法線方向に引っ張ることにより、90度剥離試験を実施し、未延伸フィルムが剥れる際の力を測定した。この際、未延伸フィルムが剥れる際に測定された力は、複層フィルムと未延伸フィルムとを剥離させるために要する力である。そこで、前記の方法により、複層フィルムと未延伸フィルムとを剥離させるために要する力をサンプルフィルムの幅方向の5か所において測定し、その平均値を剥離強度として求めた。
測定された剥離強度は、以下の基準で評価した。
良:剥離強度が0.5N/25mm以上であるか、又は、剥離前に材破壊が発生した。
不良:剥離強度が0.5N/25mm未満である。
(面内レターデーション(Re)、及び厚み方向レターデーション(Rth)の測定方法)
王子計測社製「KOBRA−21ADH」を用い、複層フィルムの幅方向に100mm間隔で、当該複層フィルムの面内レターデーション及び厚み方向のレターデーションを測定した。厚み方向のレターデーションの計算には、面内レタデーションの測定値と、複層フィルムの表面の法線方向から40°傾けた方向からのレタデーションの測定値とを用いた。面内レターデーション及び厚み方向のレターデーションのそれぞれで、全ての測定値の平均値を、当該複層フィルムの面内レターデーション及び厚み方向のレターデーションとして得た。
[実施例1]
〔1−1.延伸前フィルムa1の製造〕
シクロオレフィン重合体を含む熱可塑性樹脂(日本ゼオン製「ZEONOR1420R」、ガラス転移温度137℃、重量平均分子量31000)のペレットを100℃で5時間乾燥した。その後、乾燥した樹脂のペレットを、単軸の押出し機に供給し、樹脂温度260℃でポリマーパイプ及びポリマーフィルターを経てTダイからキャスティングドラム上にシート状に押出し、冷却した。これにより、厚み80μm、幅675mmの延伸前フィルムa1を得た。
〔1−2.水系樹脂組成物b1の調製〕
官能基としての極性基を有する重合体であるポリウレタンの水分散体(第一工業製薬社製「スーパーフレックス」、ポリウレタンのガラス転移温度−31℃、カーボネート系ポリウレタン、乾燥状態での単体皮膜伸度600%)を、含まれるポリウレタンの量が100部となる量取った。このポリウレタンの水分散体に、エポキシ化合物(ナガセケムテックス社製「デナコールEX−521」)20部と、アジピン酸ジヒドラジド5部と、水とを配合して、固形分20%の液状の水系樹脂組成物b1を塗布液として得た。
〔1−3.複層フィルムの製造〕
コロナ処理装置(春日電機社製)を用いて、出力500W、電極長1.35m、搬送速度5m/minの条件で、延伸前フィルムa1の表面に放電処理を施した。その後、延伸前フィルムa1の放電処理を施した表面に、液状の水系樹脂組成物b1を、塗布幅500mmのロールコーターを用いて塗布した。
水系樹脂組成物b1を塗布された延伸前フィルムa1を、そのまま連続してテンター式横延伸機に供給し、延伸温度145℃、延伸倍率4倍で、横一軸延伸処理を行った。これにより、塗布された水系樹脂組成物b1を乾燥する工程と、延伸前フィルムa1を延伸する工程とが同時に実施されて、延伸フィルム層A及び樹脂層Bを備える複層フィルムが得られた。その後、複層フィルムの幅方向の左右両端の部分を裁断して除去した。こうして得られた複層フィルムは、面内レターデーション=120nm、厚み方向のレターデーション=80nm、幅1330mmであった。
得られた複層フィルムについて、上述した方法で評価を行った。剥離強度は、樹脂層Bを有さない比較例1のフィルムに比較して3倍以上の高い値を示した。
[実施例2及び3]
前記工程〔1−2〕で水系樹脂組成物b1の固形分濃度を調整することによって樹脂層Bの厚みを表1のように変更した。以上の事項以外は実施例1と同様にして複層フィルムを製造した。
得られた複層フィルムについて、上述した方法で評価を行った。実施例2及び3のいずれも、剥離強度は0.5N/25mm以上の値を示し、良好であった。
[実施例4]
前記工程〔1−1〕で製造した延伸前フィルムa1の厚みを表1のように変更した。さらに、前記工程〔1−3〕でテンター式横延伸機での延伸倍率を表1のように変更した。以上の事項以外は実施例1と同様にして複層フィルムを製造した。
得られた複層フィルムについて、上述した方法で評価を行った。
[実施例5]
〔5−1.延伸前フィルムaの製造〕
フィルム厚みを変更したこと以外は実施例1の前記工程〔1−1〕と同様にして、第一延伸前フィルムaiを得た。この第一延伸前フィルムaiは、厚みが100μmであること以外は実施例1の工程〔1−1〕で得た延伸前フィルムa1と同様の構造を有していた。
その後、第一延伸前フィルムaiをフロート式の縦延伸機に供給し、延伸温度138℃、延伸倍率2倍で、縦一軸延伸処理を行って、第二延伸前フィルムaiiを得た。
〔5−2.複層フィルムの製造〕
コロナ処理装置(春日電機社製)を用いて、出力500W、電極長1.35m、搬送速度5m/minの条件で、第二延伸前フィルムaiiの表面に放電処理を施した。その後、第二延伸前フィルムaiiの放電処理を施した表面に、液状の水系樹脂組成物b1を、塗布幅500mmのロールコーターを用いて、後述する横一軸延伸処理の後に得られる樹脂層Bの膜厚が0.5μmとなるように塗布した。
水系樹脂組成物b1を塗布された第二延伸前フィルムaiiを、そのまま連続してテンター式横延伸機に供給し、延伸温度140℃、延伸倍率3.5倍で、横一軸延伸処理を行った。これにより、塗布された水系樹脂組成物b1を乾燥する工程と、第二延伸前フィルムaiiを延伸する工程とが同時に実施されて、延伸フィルム層A及び樹脂層Bを備える複層フィルムが得られた。その後、複層フィルムの幅方向の左右両端の部分を裁断して除去して、複層フィルムを得た。
得られた複層フィルムについて、上述した方法で評価を行った。
[実施例6]
前記工程〔1−2〕でポリウレタンの水分散体の種類を第一工業製薬社製「スーパーフレックス」(ポリウレタンのガラス転移温度−17℃、カーボネート系ポリウレタン、乾燥状態での単体皮膜伸度400%)に変更した。以上の事項以外は実施例1と同様にして複層フィルムを製造した。
得られた複層フィルムについて、上述した方法で評価を行った。剥離強度は0.5N/25mm以上の値を示し、良好であった。
[実施例7]
前記工程〔1−2〕でポリウレタンの水分散体の種類を第一工業製薬社製「スーパーフレックス」(ポリウレタンのガラス転移温度32℃、ポリエステルーエーテル系ポリウレタン、乾燥状態での単体皮膜伸度500%)に変更した。以上の事項以外は実施例1と同様にして複層フィルムを製造した。
得られた複層フィルムについて、上述した方法で評価を行った。剥離強度は0.5N/25mm以上の値を示し、良好であった。
[比較例1]
前記工程〔1−3〕で延伸前フィルムa1に水系樹脂組成物b1を塗布しなかった。以上の事項以外は実施例1と同様にして、延伸フィルムを製造した。
得られた延伸フィルムについて、上述した方法で評価を行った。剥離強度は著しく低く、0.5N/25mmを下回った。
[比較例2]
前記工程〔1−1〕で熱可塑性樹脂の種類をシクロオレフィン重合体を含む樹脂(日本ゼオン社製「ゼオノア1430」、ガラス転移点136℃、重量平均分子量26000)に変更した。以上の事項以外は実施例1と同様にして複層フィルムを製造した。
得られた複層フィルムについて、上述した方法で評価を行った。剥離強度は著しく低く、0.5N/25mmを下回った。
[比較例3]
前記工程〔1−2〕でポリウレタンの水分散体の種類を第一工業製薬社製「スーパーフレックス」(ポリウレタンのガラス転移温度−10℃、カーボネート系ポリウレタン、乾燥状態での単体皮膜伸度200%)に変更した。以上の事項以外は実施例1と同様にして複層フィルムを製造した。
得られた複層フィルムについて、上述した方法で評価を行った。剥離強度は低く、0.5N/25mmを下回った。
[比較例4]
前記工程〔1−2〕で水系樹脂組成物b1の固形分濃度を調整することによって樹脂層Bの厚みを表1のように変更した。以上の事項以外は実施例1と同様にして複層フィルムを製造した。
得られた複層フィルムについて、上述した方法で評価を行った。剥離強度は低く、0.5N/25mmを下回った。
[比較例5]
前記工程〔1−2〕で水系樹脂組成物b1の固形分濃度を調整することによって樹脂層Bの厚みを表1のように変更した。以上の事項以外は実施例1と同様にして複層フィルムを製造した。製造された複層フィルムは、搬送及び巻き取り時に、搬送ロールへの貼り付き及びシワの発生が多発して、フィルム面状が著しく悪化した。そのため、剥離強度の測定用のサンプルを採取できなかった。
[比較例6]
前記工程〔1−2〕でポリウレタンの水分散体の種類を第一工業製薬社製「スーパーフレックス」(ポリウレタンのガラス転移温度−42℃、エステル−エーテル系ポリウレタン、乾燥状態での単体皮膜伸度1200%)に変更した。以上の事項以外は実施例1と同様にして複層フィルムを製造した。
得られた複層フィルムについて、上述した方法で評価を行った。剥離強度は低く、0.5N/25mmを下回った。
[結果]
実施例及び比較例の結果を、下記の表1に示す。下記の表1において、略称の意味は以下の通りである。
A層:延伸フィルム層A
B層:樹脂層B
Mw:延伸フィルム層を形成する熱可塑性樹脂中の重合体の重量平均分子量
伸度:ポリウレタンの単体皮膜伸度
延伸前厚み:延伸前フィルムの厚み
延伸率:テンター式横延伸機による延伸率
Re:面内レターデーション
Rth:厚み方向のレターデーション
Figure 0006844651
[参考例1:剥離強度の測定方法についての補足実験]
上述した実施例及び比較例では、剥離強度の測定方法の際に、偏光子の代わりに、ノルボルネン系重合体を含む樹脂からなる未延伸フィルムを用いている。このように偏光子の代わりに未延伸フィルムを用いて剥離強度の測定を行うことの妥当性を検証するため、実施例1で得られた複層フィルムについて、発明者は以下の実験を行った。以下の実験では、未延伸フィルムの代わりに特開2005−70140号公報の実施例1に従って偏光フィルムを偏光子として用意し、この偏光フィルムの片方の表面に複層フィルムを貼り合わせた。更に、偏光フィルムのもう片方の表面にトリアセチルセルロースフィルムを貼り合わせ、90度剥離試験を実施した。
すなわち、まず、特開2005−70140号公報の実施例1に記載の偏光フィルム及び接着剤を用意した。用意した偏光フィルムの片方の表面に、複層フィルムのコロナ処理を施した面を、前記の接着剤を介して貼り合わせた。
また、偏光フィルムのもう片方の表面には、前記の接着剤を介して、トリアセチルセルロースフィルムを貼り合わせた。
その後、80℃で7分間乾燥して接着剤を硬化させて、サンプルフィルムを得た。
こうして得たサンプルフィルムを用いて、前記〔剥離強度の測定方法〕と同様に90度剥離試験を行った。
前記の実験の結果、偏光子の代わりに未延伸フィルムを用いた場合と同様の結果が得られた。
したがって、偏光子の代わりに未延伸フィルムを用いた前記の実施例及び比較例の結果は妥当なものである。

Claims (6)

  1. 重量平均分子量が30,000以上の脂環式構造を有する重合体を含み、ガラス転移温度が100℃以上である熱可塑性樹脂からなる延伸フィルム層Aと、
    前記延伸フィルム層Aの少なくとも一方の面に設けられた、ポリウレタン及び架橋剤を含む塗布液の層を硬化させた樹脂層Bとを備え、
    前記塗布液の固形分100重量部に対する前記ポリウレタンの量が、60重量部以上であり、
    前記ポリウレタンの乾燥状態での単体皮膜伸度が、300%〜1000%であり、
    前記樹脂層Bの厚みが、0.05μm〜2μmである、複層フィルム。
  2. 前記ポリウレタンが、カーボネート骨格を有する、請求項1記載の複層フィルム。
  3. 前記ポリウレタンが、ポリエステル−エーテル系ポリウレタンである、請求項1記載の複層フィルム。
  4. 請求項1〜のいずれか一項に記載の複層フィルムを備える、偏光板。
  5. ポリウレタン及び架橋剤を含む塗布液の層を、熱可塑性樹脂からなる延伸前フィルム層aの少なくとも一方の面に形成する工程と、
    前記塗布液の層を硬化させて樹脂層Bを得る工程と、
    前記延伸前フィルム層aを延伸して延伸フィルム層Aを得る工程とを含み、
    前記熱可塑性樹脂が、重量平均分子量が30,000以上の脂環式構造を有する重合体を含み、
    前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度が、100℃以上であり、
    前記塗布液の固形分100重量部に対する前記ポリウレタンの量が、60重量部以上であり、
    前記ポリウレタンの乾燥状態での単体皮膜伸度が、300%〜1000%であり、
    前記樹脂層Bの厚みが、0.05μm〜2μmである、複層フィルムの製造方法。
  6. ポリウレタン及び架橋剤を含む塗布液の層を、熱可塑性樹脂からなる延伸フィルム層Aの少なくとも一方の面に形成する工程と、
    前記塗布液の層を硬化させて樹脂層Bを得る工程とを含み、
    前記熱可塑性樹脂が、重量平均分子量が30,000以上の脂環式構造を有する重合体を含み、
    前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度が、100℃以上であり、
    前記塗布液の固形分100重量部に対する前記ポリウレタンの量が、60重量部以上であり、
    前記ポリウレタンの乾燥状態での単体皮膜伸度が、300%〜1000%であり、
    前記樹脂層Bの厚みが、0.05μm〜2μmである、複層フィルムの製造方法。
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