以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
[ポリイミド]
本発明のポリイミドは、下記一般式(1):
[式(1)中、R1、R2、R3はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基及びフッ素原子よりなる群から選択される1種を示し、nは0〜12の整数を示し、R4は下記一般式(X):
で表されるアリーレン基を示す。]
で表される繰り返し単位(A1)と、
下記一般式(2):
[式(2)中、Aは置換基を有していてもよくかつ芳香環を形成する炭素原子の数が6〜30である2価の芳香族基よりなる群から選択される1種を示し、R4は上記一般式(X)で表されるアリーレン基を示し、複数のR5はそれぞれ独立に水素原子及び炭素数1〜10のアルキル基よりなる群から選択される1種を示す。]
で表される繰り返し単位(B1)と、
下記一般式(3):
[式(3)中、R4は上記一般式(X)で表されるアリーレン基を示し、複数のR6はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、水酸基及びニトロ基よりなる群から選択される1種を示すか、又は、同一の炭素原子に結合している2つのR6が一緒になってメチリデン基を形成していてもよく、R7及びR8はそれぞれ独立に水素原子及び炭素数1〜10のアルキル基よりなる群から選択される1種を示す。]
で表される繰り返し単位(C1)と、
からなる群の中から選択される少なくとも1種の繰り返し単位を含有するものである。以下、先ず、各繰り返し単位について説明する。
〈繰り返し単位(A1)〉
本発明のポリイミドが含有し得る繰り返し単位(A1)は、上記一般式(1)で表される繰り返し単位(なお、かかる一般式(1)中、R1、R2、R3はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基及びフッ素原子よりなる群から選択される1種を示し、nは0〜12の整数を示し、R4は上記一般式(X)で表されるアリーレン基を示す)である。
このような一般式(1)中のR1、R2、R3として選択され得るアルキル基は、炭素数が1〜10のアルキル基である。このような炭素数が10を超えるとガラス転移温度が低下し十分に高度な耐熱性が達成できなくなる。また、このようなR1、R2、R3として選択され得るアルキル基の炭素数としては、精製がより容易となるという観点から、1〜6であることが好ましく、1〜5であることがより好ましく、1〜4であることが更に好ましく、1〜3であることが特に好ましい。また、このようなR1、R2、R3として選択され得るアルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。更に、このようなアルキル基としては精製の容易さの観点から、メチル基、エチル基がより好ましい。
前記一般式(1)中のR1、R2、R3としては、ポリイミドを製造した際に、より高度な耐熱性が得られるという観点から、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であることがより好ましく、中でも、原料の入手が容易であることや精製がより容易であるという観点から、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基又はイソプロピル基であることがより好ましく、水素原子又はメチル基であることが特に好ましい。また、このような式中の複数のR1、R2、R3は精製の容易さ等の観点から、同一のものであることが特に好ましい。
また、前記一般式(1)中のR4として選択され得るアリーレン基は、上記一般式(X)で表されるアリーレン基である。このようなアリーレン基を利用することで、従来のポリイミドと比較してガラス転移温度を基準とした耐熱性を更に高い水準のものとすることが可能となる。また、このような一般式(X)で表されるアリーレン基としては、合成の簡便さの観点から、下記一般式(X−1):
で表される基であることが特に好ましい。
また、前記一般式(1)中のnは0〜12の整数を示す。このようなnの値が前記上限を超えると、精製が困難になる。また、このような一般式(1)中のnの数値範囲の上限値は、より精製が容易となるといった観点から、5であることがより好ましく、3であることが特に好ましい。また、このような一般式(1)中のnの数値範囲の下限値は、原料化合物の安定性の観点から、1であることがより好ましく、2であることが特に好ましい。このように、一般式(1)中のnとしては、2〜3の整数であることが特に好ましい。
このような一般式(1)で表される繰り返し単位(A1)は、下記一般式(101):
[式(101)中、R1、R2、R3、nは前記一般式(1)中のR1、R2、R3、nと同義であり(その好適なものも前記一般式(1)中のR1、R2、R3、nと同義である。)。]
で表される原料化合物(A)と、下記一般式(102):
で表される芳香族ジアミンとに由来して形成させることができる。例えば、このような一般式(1)で表される繰り返し単位(A1)は、前記原料化合物(A)と前記芳香族ジアミンとを反応させて、後述する繰り返し単位(A2)を含むポリアミド酸を形成し、これをイミド化することで、ポリイミド中に含有させることができる。具体的な反応条件やイミド化の方法として好適に採用し得る条件等については後述する。
なお、このような一般式(101)で表されるテトラカルボン酸二無水物を製造するための方法としては、特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、国際公開第2011/099517号に記載の方法や国際公開第2011/099518号に記載の方法等を採用してもよい。
また、このような一般式(102)で表される芳香族ジアミンを製造するための方法としては特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。また、このような芳香族ジアミンとしては市販のものを適宜用いてもよい。また、このような一般式(102)で表される芳香族ジアミンは1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて利用してもよい。
〈繰り返し単位(B1)〉
本発明のポリイミドが含有し得る繰り返し単位(B1)は、上記一般式(2)で表される繰り返し単位(なお、上記一般式(2)中、Aは置換基を有していてもよくかつ芳香環を形成する炭素原子の数が6〜30である2価の芳香族基よりなる群から選択される1種を示し、R4は上記一般式(X)で表されるアリーレン基を示し、複数のR5はそれぞれ独立に水素原子及び炭素数1〜10のアルキル基よりなる群から選択される1種を示す)である。
このような一般式(2)中のAは、前述のように、置換基を有していてもよい2価の芳香族基であり、該芳香族基中に含まれる芳香環を形成する炭素の数(なお、ここにいう「芳香環を形成する炭素の数」とは、その芳香族基が炭素を含む置換基(炭化水素基など)を有している場合、その置換基中の炭素の数は含まず、芳香族基中の芳香環が有する炭素の数のみをいう。例えば、2−エチル−1,4−フェニレン基の場合、芳香環を形成する炭素の数は6となる。)が6〜30のものである。このように、一般式(1)中のAは、置換基を有していてもよく、かつ、炭素数が6〜30の芳香環を有する2価の基(2価の芳香族基)である。このような芳香環を形成する炭素の数が前記上限を超えると、その繰り返し単位を含有するポリイミドの着色を十分に抑制することが困難となる傾向にある。また、透明性及び精製の容易さの観点からは、前記2価の芳香族基の芳香環を形成する炭素の数は、6〜18であることがより好ましく、6〜12であることが更に好ましい。
また、このような2価の芳香族基としては、上記炭素の数の条件を満たすものであればよく、特に制限されないが、例えば、ベンゼン、ナフタレン、ターフェニル、アントラセン、フェナントレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ビフェニル、ターフェニル、クオターフェニル、キンクフェニル等の芳香族系の化合物から2つの水素原子が脱離した残基(なお、このような残基としては、脱離する水素原子の位置は特に制限されないが、例えば、1,4−フェニレン基、2,6−ナフチレン基、2,7−ナフチレン基、4,4’−ビフェニレン基、9,10−アントラセニレン基等が挙げられる。);及び該残基中の少なくとも1つの水素原子が置換基と置換した基(例えば、2,5−ジメチル−1,4−フェニレン基、2,3,5,6−テトラメチル−1,4−フェニレン基)等を適宜利用することができる。なお、このような残基において、前述のように、脱離する水素原子の位置は特に制限されず、例えば、前記残基がフェニレン基である場合においてはオルト位、メタ位、パラ位のいずれの位置であってもよい。
このような2価の芳香族基としては、ポリイミドを製造した際にポリイミドの溶媒への溶解性がより優れたものとなり、より高度な加工性が得られるといった観点から、置換基を有していてもよいフェニレン基、置換基を有していてもよいビフェニレン基、置換基を有していてもよいナフチレン基、置換基を有していてもよいアントラセニレン基、置換基を有していてもよいターフェニレン基が好ましい。すなわち、このような2価の芳香族基としては、それぞれ置換基を有していてもよい、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、ターフェニレン基が好ましい。また、このような2価の芳香族基の中でも、上記観点でより高い効果が得られることから、それぞれ置換基を有していてもよい、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基がより好ましく、それぞれ置換基を有していてもよい、フェニレン基、ビフェニレン基が更に好ましく、置換基を有していてもよいフェニレン基が最も好ましい。
また、一般式(2)中のAにおいて、前記2価の芳香族基が有していてもよい置換基としては、特に制限されず、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。このような2価の芳香族基が有してよい置換基の中でも、ポリイミドを製造した際にポリイミドの溶媒への溶解性がより優れたものとなり、より高度な加工性が得られるといった観点から、炭素数が1〜10のアルキル基、炭素数が1〜10のアルコキシ基がより好ましい。このような置換基として好適なアルキル基及びアルコキシ基の炭素数が10を超えると、ポリイミドのモノマーとして用いた場合に、得られるポリイミドの耐熱性が低下する傾向にある。また、このような置換基として好適なアルキル基及びアルコキシ基の炭素数は、ポリイミドを製造した際に、より高度な耐熱性が得られるという観点から、1〜6であることが好ましく、1〜5であることがより好ましく、1〜4であることが更に好ましく、1〜3であることが特に好ましい。また、このような置換基として選択され得るアルキル基及びアルコキシ基はそれぞれ直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
また、このような2価の芳香族基の中でも、ポリイミドを製造した際にポリイミドの溶媒への溶解性がより優れたものとなり、より高度な加工性が得られるといった観点からは、それぞれ置換基を有していてもよい、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、ターフェニレン基であることが好ましく、それぞれ置換基を有していてもよい、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基であることがより好ましく、それぞれ置換基を有していてもよい、フェニレン基、ビフェニレン基であることが更に好ましく、最も好ましいのは、置換基を有していてもよいフェニレン基である。
さらに、このような2価の芳香族基の中でも、より高度な耐熱性が得られるといった観点からは、それぞれ置換基を有していてもよい、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、ターフェニレン基であることが好ましく、それぞれ置換基を有していてもよい、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、ターフェニレン基であることがより好ましく、それぞれ置換基を有していてもよい、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基であることが更に好ましく、最も好ましいのは、置換基を有していてもよいフェニレン基である。
また、一般式(2)中のAにおいて、前記2価の芳香族基が有してよい置換基としては、特に制限されず、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。このような2価の芳香族基が有してよい置換基の中でも、ポリイミドの溶媒への溶解性がより優れたものとなり、より高度な加工性が得られるといった観点から、炭素数が1〜10のアルキル基、炭素数が1〜10のアルコキシ基がより好ましい。このような置換基として好適なアルキル基及びアルコキシ基の炭素数が10を超えると、ポリイミドの耐熱性が低下する傾向にある。また、このような置換基として好適なアルキル基及びアルコキシ基の炭素数は、より高度な耐熱性が得られるという観点から、1〜6であることが好ましく、1〜5であることがより好ましく、1〜4であることが更に好ましく、1〜3であることが特に好ましい。また、このような置換基として選択され得るアルキル基及びアルコキシ基はそれぞれ、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
また、前記一般式(2)中のR5として選択され得るアルキル基は、炭素数が1〜10のアルキル基である。このような炭素数が10を超えると十分に高度な耐熱性が達成できなくなる。また、このようなR5として選択され得るアルキル基の炭素数としては、精製がより容易となるという観点から、1〜6であることが好ましく、1〜5であることがより好ましく、1〜4であることが更に好ましく、1〜3であることが特に好ましい。また、このようなR5として選択され得るアルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。更に、このようなアルキル基としては精製の容易さの観点から、メチル基、エチル基がより好ましい。
前記一般式(2)中のR5としては、ポリイミドを製造した際に、より高度な耐熱性が得られること、原料の入手が容易であること、精製がより容易であること、等といった観点から、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基又はイソプロピル基であることがより好ましく、水素原子又はメチル基であることが特に好ましい。また、このような式中の複数のR5は、それぞれ、同一のものであってもあるいは異なるものであってもよいが、精製の容易さ等の観点からは、同一のものであることが好ましい。
また、このような一般式(2)で表される繰り返し単位において、式(2)中のR4は、上記一般式(1)中のR4と同様のものであり、その好適なものも上記一般式(1)中のR4と同様である。
このような一般式(2)で表される繰り返し単位(B1)は、下記一般式(201):
[式(201)中、Aは前記一般式(2)中のAと同義であり(その好適なものも前記一般式(2)中のAと同義である。)、複数のR5はそれぞれ前記一般式(2)中のR5と同義である(その好適なものも前記一般式(2)中のR5と同義である。)。]
で表される原料化合物(B)と、上記一般式(102)で表される芳香族ジアミンとに由来して形成させることができる。例えば、このような一般式(2)で表される繰り返し単位(B1)は、前記原料化合物(B)と前記芳香族ジアミン(上述の上記一般式(102)で表される芳香族ジアミン)とを反応させて、後述する繰り返し単位(B2)を含むポリアミド酸を形成し、これをイミド化することでポリイミド中に含有させることができる。なお、具体的な反応条件やイミド化の方法として好適に採用し得る条件等については後述する。
また、このような原料化合物(B)を製造するための方法としては、特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、国際公開第2015/163314号に記載の方法等を採用してもよい。
〈繰り返し単位(C1)〉
本発明のポリイミドが含有し得る繰り返し単位(C1)は、上記一般式(3)で表される繰り返し単位(なお、上記一般式(3)中、R4は上記一般式(X)で表されるアリーレン基を示し、複数のR6はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、水酸基及びニトロ基よりなる群から選択される1種を示すか、又は、同一の炭素原子に結合している2つのR6が一緒になってメチリデン基を形成していてもよく、R7及びR8はそれぞれ独立に水素原子及び炭素数1〜10のアルキル基よりなる群から選択される1種を示す。)である。
前記一般式(3)中のR6として選択され得るアルキル基は、炭素数が1〜10のアルキル基である。このような炭素数が10を超えると十分に高度な耐熱性が達成できなくなる。また、このようなR6として選択され得るアルキル基の炭素数としては、精製がより容易となるという観点から、1〜6であることが好ましく、1〜5であることがより好ましく、1〜4であることが更に好ましく、1〜3であることが特に好ましい。また、このようなR6として選択され得るアルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。更に、このようなアルキル基としては精製の容易さの観点から、メチル基、エチル基がより好ましい。
また、このような一般式(3)中の複数のR6のうち、同一の炭素原子に結合している2つのR6は、それらが一緒になってメチリデン基(=CH2)を形成していてもよい。すなわち、上記一般式(3)中の同一の炭素原子に結合している2つのR6が一緒になって、該炭素原子(ノルボルナン環構造を形成する炭素原子のうち、R6が2つ結合している炭素原子)に二重結合によりメチリデン基(メチレン基)として結合していてもよい。
前記一般式(3)中の複数のR6としては、ポリイミドを製造した際に、より高度な耐熱性が得られること、原料の入手(調製)がより容易であること、精製がより容易であること、等といった観点から、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基又はイソプロピル基であることがより好ましく、水素原子又はメチル基であることが特に好ましい。また、このような式中の複数のR6は、それぞれ、同一のものであってもあるいは異なるものであってもよいが、精製の容易さ等の観点からは、同一のものであることが好ましい。
また、前記一般式(3)中のR7及びR8はそれぞれ独立に水素原子及び炭素数1〜10のアルキル基よりなる群から選択される1種である。このようなR7及びR8として選択され得るアルキル基の炭素数が10を超えると、ポリイミドの耐熱性が低下する。また、このようなR7及びR8として選択され得るアルキル基としては、より高度な耐熱性が得られるという観点から、1〜6であることが好ましく、1〜5であることがより好ましく、1〜4であることが更に好ましく、1〜3であることが特に好ましい。また、このようなR7及びR8として選択され得るアルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
また、前記一般式(3)中のR7及びR8は、ポリイミドを製造した際により高度な耐熱性が得られること、原料の入手が容易であること、精製がより容易であること、等といった観点から、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基であることがより好ましく、水素原子、メチル基であることが特に好ましい。また、このような式(3)中のR7及びR8は、それぞれ、同一のものであってもあるいは異なるものであってもよいが、精製の容易さ等の観点からは、同一のものであることが好ましい。
また、前記一般式(3)中の複数のR6、R7及びR8は、いずれも水素原子であることが特に好ましい。このように、前記一般式(3)で表される繰り返し単位において、R6、R7及びR8で表される置換基がいずれも水素原子である場合には、当該化合物の収率が向上し、より高度な耐熱性が得られる傾向にある。
また、このような一般式(3)で表される繰り返し単位において、式(3)中のR4は、上記一般式(1)中のR4と同様のものであり、その好適なものも上記一般式(1)中のR4と同様である。
このような一般式(3)で表される繰り返し単位(C1)は、下記一般式(301):
[式(301)中、複数のR6はそれぞれ前記一般式(3)中のR6と同義であり(その好適なものも前記一般式(3)中のR6と同義である。)、R7、R8はそれぞれ前記一般式(3)中のR7、R8と同義である(その好適なものも前記一般式(3)中のR7、R8と同義である。)。]
で表される原料化合物(C)と、上記一般式(102)で表される芳香族ジアミンとに由来して形成させることができる。例えば、このような一般式(3)で表される繰り返し単位(C1)は、前記原料化合物(C)と前記芳香族ジアミン(上述の上記一般式(102)で表される芳香族ジアミン)とを反応させて、後述する繰り返し単位(C2)を含むポリアミド酸を形成し、これをイミド化することでポリイミド中に含有させることができる。なお、具体的な反応条件やイミド化の方法として好適に採用し得る条件等については後述する。
また、このような原料化合物(C)を製造するための方法は特に制限されないが、例えば、パラジウム触媒及び酸化剤の存在下において、下記一般式(302):
[式(302)中、複数のR6はそれぞれ前記一般式(3)中のR6と同義であり(その好適なものも前記一般式(3)中のR6と同義である。)、R7、R8はそれぞれ前記一般式(3)中のR7、R8と同義である(その好適なものも前記一般式(3)中のR7、R8と同義である。)。]
で表されるノルボルネン系化合物をアルコール及び一酸化炭素と反応させて、下記一般式(303):
[式(303)中、複数のR6はそれぞれ前記一般式(3)中のR6と同義であり(その好適なものも前記一般式(3)中のR6と同義である。)、R7、R8はそれぞれ前記一般式(3)中のR7、R8と同義であり(その好適なものも前記一般式(3)中のR7、R8と同義である。)、複数のRはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数7〜20のアラルキル基よりなる群から選択される1種を示す。]
で表されるカルボニル化合物を得る工程(i)と、前記一般式(303)で表されるカルボニル化合物を酸触媒を用いて、炭素数1〜5のカルボン酸中において加熱することにより原料化合物(C)を得る工程(ii)とを含む方法(I)を好適に採用することができる。以下、このような方法(I)を説明する。
先ず、上述の方法(I)の工程(i)について説明する。このような工程(i)に用いられる一般式(302)で表されるノルボルネン系化合物において、式(302)中のR6、R7及びR8は、上記一般式(3)中のR6、R7及びR8とそれぞれ同様のものであり、その好適なものも上記一般式(3)中のR6、R7及びR8とそれぞれ同様である。このような一般式(302)で表される化合物としては、例えば、5,5’−ビビシクロ[2.2.1]ヘプト―2−エン(別名:5,5’−ビ−2−ノルボルネンともいう。(CAS番号:36806−67−4)、3−メチル−3’−メチレン−2,2’−ビス(ビシクロ[2.2.1]ヘプテン−5,5’−ジエン)(CAS番号:5212−61−3)、5,5’−ビスビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,2’−ジオール(CAS番号:15971−85−4)等が挙げられる。このような一般式(302)で表される化合物を製造するための方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。
また、前記工程(i)に用いられるアルコールとしては、特に制限されるものではないが、精製の容易さの観点から、下記一般式(304):
RaOH (304)
[式(304)中、Raは、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数7〜20のアラルキル基よりなる群から選択される1種を示す(言い換えると、前記一般式(303)中のRとして選択され得る原子及び基のうちの水素原子以外のものである。)。]
で表されるアルコールであることが好ましい。
また、このような一般式(304)中のRaとして選択され得るアルキル基は炭素数が1〜10のアルキル基である。このようなアルキル基の炭素数が10を超えると、精製が困難となる。また、このような複数のRaとして選択され得るアルキル基の炭素数としては、精製がより容易となるという観点から、1〜5であることがより好ましく、1〜3であることが更に好ましい。また、このような複数のRaとして選択され得るアルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
また、前記一般式(304)中のRaとして選択され得るシクロアルキル基は、炭素数が3〜10のシクロアルキル基である。このようなシクロアルキル基の炭素数が10を超えると精製が困難となる。また、このような複数のRaとして選択され得るシクロアルキル基の炭素数としては、精製がより容易となるという観点から、3〜8であることがより好ましく、5〜6であることが更に好ましい。
さらに、前記一般式(304)中のRaとして選択され得るアルケニル基は、炭素数が2〜10のアルケニル基である。このようなアルケニル基の炭素数が10を超えると、精製が困難となる。また、このような複数のRaとして選択され得るアルケニル基の炭素数としては、精製がより容易となるという観点から、2〜5であることがより好ましく、2〜3であることが更に好ましい。
また、前記一般式(304)中のRaとして選択され得るアリール基は、炭素数が6〜20のアリール基である。このようなアリール基の炭素数が20を超えると精製が困難となる。また、このような複数のRaとして選択され得るアリール基の炭素数としては、精製がより容易となるという観点から、6〜10であることがより好ましく、6〜8であることが更に好ましい。
また、前記一般式(304)中のRaとして選択され得るアラルキル基は、炭素数が7〜20のアラルキル基である。このようなアラルキル基の炭素数が20を超えると精製が困難となる。また、このような複数のRaとして選択され得るアラルキル基の炭素数としては、精製がより容易となるという観点から、7〜10であることがより好ましく、7〜9であることが更に好ましい。
さらに、前記一般式(304)中の複数のRaとしては、精製がより容易となるという観点から、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル、t−ブチル、シクロヘキシル基、アリル基、フェニル基又はベンジル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基であることがより好ましく、メチル基、エチル基であることが更に好ましく、メチル基であることが特に好ましい。なお、前記一般式(304)中の複数のRaは、それぞれ、同一のものであっても異なっていてもよいが、合成上の観点からは、同一のものであることがより好ましい。
このように、工程(i)に用いられる一般式(304)で表されるアルコールとしては、炭素数が1〜10のアルキルアルコール、炭素数が3〜10のシクロアルキルアルコール、炭素数が2〜10のアルケニルアルコール、炭素数が6〜20のアリールアルコール、炭素数が7〜20のアラルキルアルコールを用いることが好ましい。
このようなアルコールとしては、具体的には、メタノール、エタノール、ブタノール、アリルアルコール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等が挙げられ、中でも、得られる化合物の精製がより容易となるという観点から、メタノール、エタノールがより好ましく、メタノールが特に好ましい。また、このようなアルコールは1種を単独であるいは2種以上を混合して用いてもよい。
また、工程(i)においては、パラジウム触媒及び酸化剤の存在下において、前記アルコール(好ましくはRaOH)及び一酸化炭素(CO)と、前記一般式(302)で表されるノルボルネン系化合物とを反応せしめることで、前記一般式(302)で表されるノルボルネン系化合物中のオレフィン部位の炭素に、それぞれ下記一般式(305):
−COORa (305)
[式(305)中、Raは前記一般式(304)中のRaと同義である(その好適なものも同様である。)。]
で表されるエステル基(かかるエステル基は導入される位置ごとにR4が同一であっても異なっていてもよい。)を導入することが可能となり、これにより、前記一般式(303)で表されるカルボニル化合物を得ることができる。このように、工程(i)においては、パラジウム触媒及び酸化剤の存在下、アルコール(好ましくはRaOH)及び一酸化炭素(CO)を用いて、前記カルボニル化合物中のオレフィン部位の炭素に、エステル基を導入する反応(以下、かかる反応を場合により単に「エステル化反応」と称する。)を利用して、前記一般式(303)で表されるカルボニル化合物を得る。
このようなエステル化反応に用いるパラジウム触媒としては特に制限されず、パラジウムを含有する公知の触媒を適宜用いることができ、例えば、パラジウムの無機酸塩、パラジウムの有機酸塩、担体にパラジウムを担持した触媒等が挙げられる。また、このようなパラジウム触媒としては、例えば、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウム、酢酸パラジウム、プロピオン酸パラジウム、パラジウム炭素、パラジウムアルミナ及びパラジウム黒、亜硝酸リガンドを有する酢酸パラジウム(式:Pd3(CH3COO)5(NO2)等が好適なものとして挙げられる。
また、このような工程(i)に用いられるパラジウム触媒(前記エステル化反応に用いられるパラジウム触媒)としては、副生成物の生成をより十分に抑制することができ、より高い選択率で、前記一般式(303)で表されるカルボニル化合物を製造することが可能となるといった観点から、亜硝酸リガンドを有する酢酸パラジウム(式:Pd3(CH3COO)5(NO2)で表される触媒)を含有するパラジウム触媒(以下、場合により、単に「Pd3(OAc)5(NO2)」と称する。)を用いることが好ましい。
また、このような亜硝酸リガンドを有する酢酸パラジウム(Pd3(OAc)5(NO2))を含有するパラジウム触媒においては、亜硝酸リガンドを有する酢酸パラジウム(Pd3(OAc)5(NO2))の含有量が金属換算で(パラジウム触媒中の全パラジウム量に対して)10モル%以上であることが好ましい。このような亜硝酸リガンドを有する酢酸パラジウムの含有比率が前記下限未満では、副生成物の生成を十分に抑制することが困難となり、十分に高い選択率で前記一般式(303)で表されるカルボニル化合物を製造することが困難となる傾向にある。また、前記パラジウム触媒としては、より高度な水準で副生成物の生成を抑制することができ、より高い選択率でエステル化合物を製造することが可能となるといった観点から、亜硝酸リガンドを有する酢酸パラジウム(Pd3(OAc)5(NO2))の含有比率が、金属換算で(パラジウム触媒中の全パラジウム量に対して)、30モル%以上であることがより好ましく、40モル%以上であることが更に好ましく、50モル%以上であることが特に好ましく、70モル%〜100モル%であることが最も好ましい。
また、前記エステル化反応に用いられるパラジウム触媒として、亜硝酸リガンドを有する酢酸パラジウム(Pd3(OAc)5(NO2))を含有するものを用いる場合において、Pd3(OAc)5(NO2)以外に含有し得る他の触媒(他のパラジウム触媒成分)としては、特に制限されず、オレフィン部位に一酸化炭素及びアルコールを反応させる際(エステル化の際)に利用することが可能な公知のパラジウム系の触媒成分(例えば、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウム、酢酸パラジウム、プロピオン酸パラジウム、パラジウム炭素、パラジウムアルミナ及びパラジウム黒等)を適宜利用することができる。
さらに、このようなパラジウム触媒中に含有され得る亜硝酸リガンドを有する酢酸パラジウム以外の成分(パラジウム系の触媒成分)としては、重合物等の副生成物の生成の抑制、選択性向上の観点からは、酢酸パラジウムを用いることが好ましい。また、前記パラジウム触媒としては、重合物等の副生成物の生成の抑制、選択性向上の観点からは、亜硝酸リガンドを有する酢酸パラジウム(Pd3(OAc)5(NO2))と酢酸パラジウムとの混合触媒、亜硝酸リガンドを有する酢酸パラジウム(Pd3(OAc)5(NO2))のみからなる触媒を、より好適に利用することができる。
なお、このような亜硝酸リガンドを有する酢酸パラジウム(Pd3(OAc)5(NO2))を製造するための方法としては特に制限されず、公知の方法を適宜利用することができ、例えば、2005年6月7日に発行されたDalton Trans(vol.11)の第1989頁から第1992頁に記載された方法(著者:Vladimir I, Bakhmutov,et al.)等を適宜利用してもよい。
また、工程(i)に用いられる酸化剤(前記エステル化反応に用いられる酸化剤)としては、エステル化反応において前記パラジウム触媒中のPd2+がPd0に還元された場合に、そのPd0をPd2+に酸化することが可能なものであればよい。このような酸化剤としては、特に制限されず、例えば、銅化合物、鉄化合物等が挙げられる。また、このような酸化剤としては、具体的には、塩化第二銅、硝酸第二銅、硫酸第二銅、酢酸第二銅、塩化第二鉄、硝酸第二鉄、硫酸第二鉄、酢酸第二鉄等が挙げられる。
さらに、このような工程(i)において(前記エステル化反応において)、前記アルコールの使用量は、前記一般式(303)で表される化合物を得ることが可能な量であればよく、特に制限されず、例えば、前記一般式(303)で表される化合物を得るために理論上必要となる量(理論量)以上に前記アルコールを加えて、余剰のアルコールをそのまま溶媒として使用してもよい。
また、工程(i)において(前記エステル化反応において)、前記一酸化炭素は必要量を反応系に供給できればよい。そのため、前記一酸化炭素としては、一酸化炭素の高純度ガスを用いる必要は無く、前記エステル化反応に不活性なガス(例えば窒素)と一酸化炭素とを混合した混合ガスを用いてもよい。また、このような一酸化炭素の圧力は特に制限されないが、常圧(約0.1MPa[1atm])以上10MPa以下であることが好ましい。さらに、前記一酸化炭素を反応系に供給する方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用でき、例えば、前記アルコールと前記一般式(302)で表される化合物と前記パラジウム触媒とを含む混合液中に一酸化炭素をバブリングにより供給する方法や、反応容器を用いる場合においてはその容器中の雰囲気ガスに一酸化炭素を導入することで一酸化炭素を反応系に供給する方法等を適宜採用できる。
また、前記アルコールと前記一般式(302)で表される化合物と前記パラジウム触媒とを含む混合液中に一酸化炭素を供給する場合には、一酸化炭素を一般式(302)で表される化合物に対して0.002〜0.2モル当量/分(より好ましくは0.005〜0.1モル当量/分、更に好ましくは0.005〜0.05モル当量/分)の割合(供給速度)で供給することが好ましい。このような一酸化炭素の供給割合が前記下限未満では反応速度が遅くなり、重合物等の副生物が生成され易くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、反応速度が向上し一気に反応が進み反応を制御することが困難となる傾向にある。なお、原料である一般式(302)で表される化合物1モルに対して、理論上、4モル当量の一酸化炭素が反応することから、例えば、前記割合(供給速度)が0.1モル当量/分であれば、一般式(302)で表される化合物1モルに対して、理論量の4モル当量を導入するためには、40分(4[モル当量]/0.1[モル当量/分]=40分)要することとなる。また、このような供給速度で一酸化炭素を供給するための方法としては、前記アルコールと前記一般式(302)で表される化合物と前記パラジウム触媒とを含む混合液中にバブリングにより一酸化炭素を供給する方法を採用することが好ましい。
また、前記一酸化炭素をバブリングにより供給する場合、前記バブリングの具体的な方法は特に制限されず、公知のバブリングの方法を適宜採用でき、例えば、いわゆるバブリングノズルや、多数の孔が設けられた管等を適宜用いて、混合液中に一酸化炭素をバブリングして供給すればよい。
さらに、前記一酸化炭素の供給速度の制御方法は、特に制限されず、公知の制御方法を適宜採用すればよく、例えば、バブリングにより一酸化炭素を供給する場合には、前記バブリングノズルや、多数の孔が設けられた管等に特定の割合でガスを供給できるような公知の装置を用いて、一酸化炭素の供給速度を前記割合に制御する方法を採用してもよい。また、バブリングにより一酸化炭素を供給する場合において、反応容器を用いた場合には、バブリングノズルや管等を同容器の底部付近に調整することが好ましい。これは、底部に存在する一般式(302)で表される化合物とバブリングノズル等から供給される一酸化炭素との接触を促進させるためである。
また、前記エステル化反応において、前記パラジウム触媒の使用量としては、前記パラジウム触媒中のパラジウムのモル量が前記一般式(302)で表されるノルボルネン系化合物に対して0.001〜0.1倍モル(より好ましくは0.001〜0.01倍モル)となる量とすることが好ましい。このようなパラジウム触媒の使用量が前記下限未満では反応速度の低下により収率が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると生成物中からパラジウムを除くことが困難となり、生成物の純度が低下する傾向にある。
また、前記酸化剤の使用量は、一般式(302)で表されるノルボルネン系化合物に対して2〜16倍モル(より好ましくは2〜8倍モル、更に好ましくは2〜6倍モル)とすることが好ましい。このような酸化剤の使用量が前記下限未満ではパラジウムの酸化反応を十分に促進できず、その結果副生成物が多く生成する傾向にあり、他方、前記上限を超えると精製が困難となり、生成物の純度が低下する傾向にある。
また、前記一般式(302)で表されるノルボルネン系化合物と、アルコール及び一酸化炭素との反応(エステル化反応)には溶媒を用いてもよい。このような溶媒としては特に制限されず、エステル化反応に利用可能な公知の溶媒を適宜利用でき、例えば、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒が挙げられる。
さらに、前記エステル化反応においては、前記酸化剤等から酸が副生されることから、かかる酸を除去するために塩基を添加してもよい。このような塩基としては、酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、酪酸ナトリウム等の脂肪酸塩が好ましい。また、このような塩基の使用量は酸の発生量等に応じて適宜調整すればよい。
また、前記エステル化反応の際の反応温度条件としては特に制限されないが、0℃〜200℃{より好ましくは0℃〜100℃、更に好ましくは10〜60℃程度、特に好ましくは20〜50℃程度の温度}であることが好ましい。このような反応温度が前記上限を超えると、収量が低下する傾向にあり、他方、前記下限未満では、反応速度が低下する傾向にある。また、前記エステル化反応の反応時間は特に制限されないが、30分〜24時間程度とすることが好ましい。
また、前記エステル化反応における雰囲気ガスとしては、特に制限されず、エステル化の反応に利用可能なガスを適宜利用することができ、例えば、エステル化反応に不活性なガス(窒素、アルゴン等)、一酸化炭素、一酸化炭素と他のガス(窒素、空気、酸素、水素、二酸化炭素、アルゴン等)との混合ガスとしてもよく、触媒や酸化剤に対して影響を与えないという観点から、一酸化炭素、エステル化反応に不活性なガス、一酸化炭素とエステル化反応に不活性なガスとの混合ガスが好ましい。なお、前記混合液中に一酸化炭素を供給する方法として、バブリングにより一酸化炭素を導入する方法を採用する場合には、例えば、反応前に雰囲気ガスをエステル化反応に不活性なガスからなるものとしておき、上述のバブリングにより反応を開始して、結果的に雰囲気ガスが一酸化炭素とエステル化反応に不活性なガスとの混合ガスとなるようにして反応を進めてもよい。
さらに、前記エステル化反応における圧力条件(雰囲気ガスの圧力条件:反応容器内で反応を進行せしめる場合には容器内のガスの圧力の条件)は特に制限されないが、0.05MPa〜15MPaであることが好ましく、常圧(0.1MPa[1atm])〜15MPaであることがより好ましく、0.1MPa〜10MPaであることが更に好ましく、0.11MPa〜5MPaであることが特に好ましい。このような圧力条件が前記下限未満では反応速度が低下し目的物の収率が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると反応速度が向上し一気に反応が進み反応を制御することが困難となったり、反応を実施できる設備が限定される傾向にある。
このようにしてエステル化反応を進行せしめることで、式(303)中のRがいずれも水素原子以外の基である前記一般式(303)で表されるカルボニル化合物(テトラエステル化合物)を得ることができる。また、式(303)中のRがいずれも水素原子である前記一般式(303)で表されるカルボニル化合物を製造する場合には、前記エステル化反応により上記式:−COORaで表される基を導入した後に、かかる基をRaが水素原子である式:−COOHで表される基に変換するために、加水分解処理やカルボン酸とのエステル交換反応を施してもよい。このような反応の方法は特に制限されず、式:−COORaで表される基(エステル基)を式:−COOH(カルボキシ基)とすることが可能な公知の方法を適宜採用することができる。
このようにして、前記一般式(303)で表されるカルボニル化合物を得ることができる。なお、前記一般式(303)中の複数のR6は、それぞれ前記一般式(3)中のR6と同義であり、その好適なものも前記一般式(3)中のR6と同義である。また、前記一般式(303)中のR7、R8はそれぞれ前記一般式(3)中のR7、R8と同義であり、その好適なものも前記一般式(3)中のR7、R8と同義である。
さらに、前記一般式(303)中の複数のRはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数7〜20のアラルキル基よりなる群から選択される1種である。このようなRとして選択され得る炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数7〜20のアラルキル基は、前記一般式(304)中のRaとして選択され得る炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数7〜20のアラルキル基として説明したものと、それぞれ同様のものである(その好適なものも同様である。)。
なお、前記一般式(303)中の複数のRとしては、精製がより容易となるという観点から、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル、t−ブチル、シクロヘキシル基、アリル基、フェニル基又はベンジル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基であることがより好ましく、メチル基、エチル基であることが更に好ましく、メチル基であることが特に好ましい。なお、前記一般式(2)中の複数のR4は、それぞれ、同一のものであっても異なっていてもよいが、合成上の観点からは、同一のものであることがより好ましい。
次に、方法(I)の工程(ii)について説明する。このような工程(ii)は、前記一般式(303)で表されるカルボニル化合物を酸触媒を用いて、炭素数1〜5のカルボン酸中において加熱することにより原料化合物(C)を得る工程である。
このような工程(ii)に用いられる酸触媒としては、均一系酸触媒であっても不均一系酸触媒(固体触媒)であってもよく、特に制限されるものではないが、精製の容易さの観点からは、均一系酸触媒であることが好ましい。また、このような均一系酸触媒としては特に制限されず、カルボン酸を無水物とする反応やエステル化合物を酸無水物とする反応に用いることが可能な公知の均一系酸触媒を適宜利用することができる。このような均一系酸触媒としては、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸、テトラフルオロエタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、ヘプタフルオロイソプロパンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ヘプタフルオロデカンスルホン酸、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、N,N−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、クロロジフルオロ酢酸を挙げることができる。
また、このような均一系酸触媒としては、反応収率向上の観点から、トリフルオロメタンスルホン酸、テトラフルオロエタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、クロロジフルオロ酢酸がより好ましく、トリフルオロメタンスルホン酸、テトラフルオロエタンスルホン酸が更に好ましい。なお、このような均一系酸触媒としては、1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて利用してもよい。
また、このような工程(ii)において、前記酸触媒(より好ましくは均一系酸触媒)の使用量としては、特に制限されないが、前記一般式(303)で表されるカルボニル化合物(テトラカルボン酸二無水物の原料化合物)の使用量(モル量)に対して、酸触媒の酸のモル量が0.001〜2.00モル当量(より好ましくは0.01〜1.00モル当量)となるような量とすることが好ましい。このような酸触媒の使用量が前記下限未満では、反応速度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えた場合には、精製がやや困難となり生成物の純度が低下する傾向にある。なお、ここにいう酸触媒の酸のモル量は、前記酸触媒中の官能基(例えばスルホン酸基(スルホ基)やカルボン酸基(カルボキシ基)等)換算によるモル量である。
さらに、このような工程(ii)にいて、前記酸触媒(より好ましくは均一系酸触媒)の使用量は、前記一般式(303)で表されるカルボニル化合物100質量部に対して0.1〜100質量部であることが好ましく、1〜20質量部であることがより好ましい。このような酸触媒の使用量が前記下限未満では反応速度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると副反応物が生成しやすくなる傾向にある。
また、このような工程(ii)においては、炭素数1〜5のカルボン酸(以下、場合により単に「低級カルボン酸」と称する。)を用いる。このような低級カルボン酸の炭素数が前記上限を超えると、製造及び精製が困難となる。また、このような低級カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸等が挙げられ、中でも、製造及び精製の容易さの観点から、ギ酸、酢酸、プロピオン酸が好ましく、ギ酸、酢酸がより好ましい。このような低級カルボン酸は1種を単独で或は2種以上を組み合わせて利用してもよい。
また、このような低級カルボン酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸)の使用量としては特に制限されないが、前記一般式(303)で表されるカルボニル化合物に対して4〜100倍モルとすることが好ましい。このような低級カルボン酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸等)の使用量が前記下限未満では収量が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると反応速度が低下する傾向にある。
また、前記工程(ii)においては、前記カルボニル化合物を前記低級カルボン酸中において加熱するため、前記カルボニル化合物を前記低級カルボン酸中に含有せしめることが好ましい。このような低級カルボン酸中における前記一般式(303)で表されるカルボニル化合物の含有量としては、1〜40質量%であることが好ましく、2〜30質量%であることがより好ましい。このようなカルボニル化合物の含有量が前記下限未満では収量が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると反応速度が低下する傾向にある。
以上、前記工程(ii)に用いられる一般式(303)で表されるカルボニル化合物、酸触媒及び炭素数1〜5のカルボン酸について説明したが、次いで、これらを用いた加熱工程(前記カルボニル化合物を、酸触媒を用いて、炭素数1〜5のカルボン酸中において加熱する工程)について説明する。
なお、前記工程(ii)において、前記カルボニル化合物が、一般式(303)で表されかつ該式中のRがいずれも水素原子である化合物(テトラカルボン酸)である場合には、前記加熱工程によって、前記カルボニル化合物(テトラカルボン酸)から、テトラカルボン酸二無水物と水とが生成される反応(正反応)が進行する。そして、このような正反応と、テトラカルボン酸二無水物と水とから前記カルボニル化合物(テトラカルボン酸)が生成される逆反応とは、平衡反応である。また、本発明において、前記カルボニル化合物が、一般式(303)で表されかつ該式中のRが水素原子以外の基である化合物である場合には、前記加熱工程によって、前記カルボニル化合物と前記低級カルボン酸とから、テトラカルボン酸二無水物と低級カルボン酸のエステル化合物と水とが生成される反応(正反応)が進行する。そして、このような正反応と、カルボン酸無水物と低級カルボン酸のエステル化合物と水とから、前記カルボニル化合物と低級カルボン酸とが生成されてしまう逆反応とは、平衡反応である。そのため、このような加熱工程においては、系中の成分の濃度等を適宜変更することで効率よく反応(正反応)を進行させることも可能である。
また、このような加熱工程において採用し得る条件(加熱温度や雰囲気の条件等を含む。)は特に制限されず、前記酸触媒を用いて前記低級カルボン酸中において前記カルボニル化合物を加熱し、これにより前記カルボニル化合物中のエステル基及び/又はカルボキシ基(カルボン酸基)を、酸無水物基とすることが可能な方法(条件)であれば、その条件を適宜採用することができ、例えば、酸無水物基を形成することが可能な公知の反応において採用されるような条件を適宜利用することができる。
また、このような加熱工程に際しては、先ず、前記低級カルボン酸中における加熱が可能となるように、前記低級カルボン酸、前記カルボニル化合物及び前記酸触媒の混合物を調製することが好ましい。このような混合物の調製方法は特に制限されず、加熱工程に利用する装置などに応じて適宜調製すればよく、例えば、同一の容器内にこれらを添加(導入)することで調製してもよい。
また、このような加熱工程においては、前記低級カルボン酸に更に他の溶剤を添加して利用してもよい。このような溶剤(他の溶媒)としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族系溶媒;エーテル、THF、ジオキサン等のエーテル系溶媒;酢酸エチル等のエステル系溶媒;ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ペンタン等の炭化水素系溶媒;アセトニトリルやベンゾニトリル等のニトリル系溶媒;塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒;アセトンやMEKなどのケトン系溶媒;DMF、NMP、DMI、DMAc等のアミド系溶媒が挙げられる。
また、前記一般式(303)で表されるカルボニル化合物を前記低級カルボン酸中において加熱する際の温度条件としては特に制限されないが、加熱温度の上限を180℃(より好ましくは150℃、更に好ましくは140℃、特に好ましくは130℃)とすることが好ましく、他方、前記加熱温度の下限を80℃(より好ましくは100℃、更に好ましくは110℃)とすることが好ましい。このような加熱の際の温度範囲(温度条件)としては、80〜180℃とすることが好ましく、80〜150℃とすることがより好ましく、100〜140℃とすることが更に好ましく、110〜130℃とすることが特に好ましい。このような温度条件が前記下限未満では反応が十分に進行せず、目的とするテトラカルボン酸二無水物を十分に効率よく製造することができなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると触媒活性が低下する傾向にある。また、このような加熱温度は、上記温度条件の範囲内において、前記均一系酸触媒の沸点よりも低い温度に設定することが好ましい。このように加熱温度を設定することにより、より効率よく生成物を得ることができる。
また、前記加熱工程においては、より効率よくカルボン酸無水物を生成するといった観点から、前記混合物(前記低級カルボン酸、前記カルボニル化合物及び前記酸触媒の混合物)を加熱により還流する工程を含んでいてもよい。このように、前記加熱工程に還流工程を含むことにより、より効率よくカルボン酸無水物を製造することが可能となる。すなわち、前記加熱工程において、加熱の初期段階においては、反応が十分に進行していないため、水等の副生成物がほとんど生成されていないこととなる。したがって、反応がある程度進むまでの間(加熱の初期段階)は、留出成分(蒸気)を除去しなくても、副生成物(水等)の影響をそれほど受けることなく、カルボン酸二無水物を製造する正反応を効率よく進行させることが可能である。そのため、特に、加熱の初期段階においては、還流することで低級カルボン酸をより効率よく利用して正反応を効率よく進行させることが可能となり、これによりカルボン酸無水物をより効率よく生成することが可能となる。
ここで、前記正反応の進行の程度は、蒸気中に含まれている副生成物(例えば水や低級カルボン酸のエステル化合物)の量等を確認することにより判断することができる。そのため、還流工程を施す場合には、蒸気中の副生成物(例えば低級カルボン酸のエステル化合物)の量等を確認しながら、効率よく反応が進行するように還流時間を適宜設定し、その後、加熱しながら留出成分の除去工程を施してもよい。このようにして留出成分の除去工程を施すことにより、反応系から副生成物(例えば低級カルボン酸のエステル化合物及び水)を除去することができ、前記正反応をより効率よく進行させることが可能となる。また、前記留出成分の除去工程時には、留出成分(蒸気)を適宜留去した場合に低級カルボン酸が減少する場合(例えば、副生成物として、低級カルボン酸のエステル化合物と水とが生成されて、カルボン酸が消費され、その蒸気を留去することで、結果的にカルボン酸が減少するような場合等)には、その減少した分の低級カルボン酸を適宜追加(場合により連続的に追加)して加熱を行うことが好ましい。このようにして、低級カルボン酸を追加(場合により連続的に追加)することで、例えば、前記カルボニル化合物が、一般式(303)で表されかつ該式中のR4が水素原子以外の基である化合物である場合等には、正反応を更に効率よく進行せしめることが可能となる。
また、このような加熱工程が前記混合物を還流する工程を含む場合、その還流の条件は特に制限されず、公知の条件を適宜採用でき、用いるカルボニル化合物の種類等に応じて好適な条件に適宜変更することができる。
また、前記一般式(303)で表されるカルボニル化合物を前記低級カルボン酸中において加熱する際の圧力条件(反応時の圧力条件)としては特に制限されず、常圧下であっても、加圧条件下であっても或は減圧条件下であってもよく、いずれの条件下であっても反応を進行させることが可能である。そのため、加熱工程の際には、例えば、特に圧力を制御せずに、例えば、前述の還流工程を採用する場合には溶媒となる低級カルボン酸の蒸気等による加圧条件下で反応を行ってもよい。また、このような圧力条件としては、0.001〜10MPaとすることが好ましく、0.1〜1.0MPaとすることが更に好ましい。このような圧力条件が前記下限未満では低級カルボン酸が気化してしまう傾向にあり、他方、前記上限を超えると、加熱による反応で生成される低級カルボン酸のエステル化合物が揮発せず、前記正反応が進行しにくくなる傾向にある。
また、前記一般式(303)で表されるカルボニル化合物を前記低級カルボン酸中において加熱する際の雰囲気ガスとしては特に制限されず、例えば、空気であっても不活性ガス(窒素、アルゴン等)であってもよい。なお、反応で生成する副生成物(低級カルボン酸のエステル化合物や水)を効率良く揮発させ、反応をより効率よく進行させるために(エステル交換の平衡反応を生成系により傾向させるために)、上記のガス(望ましくは窒素、アルゴン等の不活性ガス)をバブリングしてもよく、反応機(反応容器)の気相部に通気させながら撹拌してもよい。
また、前記一般式(303)で表されるカルボニル化合物を前記低級カルボン酸中において加熱する際の加熱時間としては、特に制限されないが、0.5〜100時間とすることが好ましく、1〜50時間とすることがより好ましい。このような加熱時間が前記下限未満では反応が十分に進行せず、十分な量のカルボン酸無水物を製造することができなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、反応がそれ以上進行せず、生産効率が低下して経済性等が低下する傾向にある。
また、前記一般式(303)で表されるカルボニル化合物を前記低級カルボン酸中において加熱する際には、均一に反応を進行せしめるという観点から、前記カルボニル化合物が導入された前記低級カルボン酸(より好ましくは前記低級カルボン酸、前記カルボニル化合物及び前記酸触媒の混合物)を撹拌しながら反応を進行せしめてもよい。
さらに、このような一般式(303)で表されるカルボニル化合物を前記低級カルボン酸中において加熱する工程(加熱工程)においては、前記低級カルボン酸とともに無水酢酸を利用することが好ましい。すなわち、本発明においては、前記加熱の際に無水酢酸を利用することが好ましい。このように無水酢酸を利用することにより、反応時に生成された水と無水酢酸とを反応させて酢酸を形成させることが可能となり、反応時に生成される水の除去を効率よく行うことが可能となり、前記正反応をより効率よく進行させることが可能となる。また、このような無水酢酸を利用する場合、該無水酢酸の使用量は特に制限されないが、前記一般式(303)で表されるカルボニル化合物に対して4〜100倍モルとすることが好ましい。このような無水酢酸の使用量が前記下限未満では、反応速度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると収量が低下する傾向にある。
また、このように無水酢酸を利用する場合においても、加熱の際の温度条件、圧力条件、雰囲気ガスの条件、加熱時間の条件等は、上述の加熱工程において説明した条件を採用することが好ましい。また、このように、無水酢酸を利用する場合、反応時に生成された水と無水酢酸とを反応させて酢酸を形成させることが可能となり、蒸気の留去等を行わなくても、反応時に生成される水の除去を効率よく行うことが可能となるばかりか、無水酢酸と水とから酢酸が形成されて、テトラカルボン酸二無水物が生成される反応(正反応)が、より効率よく進行することとなる。そのため、このように無水酢酸を利用する場合においては、前記加熱工程において、前記還流する工程を採用して、効率よく反応を進行せしめることが可能である。このような観点から、無水酢酸を利用する場合においては前記加熱工程が前記混合物を還流する工程であることが好ましい。このようにして、無水酢酸を利用して還流を施した場合には、その使用量などに応じて蒸気の留去や低級カルボン酸の追加といった工程を施すことなく、還流工程を施すだけで反応を十分に進行せしめることも可能となり、より効率よくテトラカルボン酸二無水物を製造することも可能となる。
前記工程(ii)においては、前述のような加熱工程を施すことで、前記一般式(303)で表されるカルボニル化合物から、上記一般式(301)で表されるテトラカルボン酸二無水物を効率よく得ることができる。
〈ポリイミド〉
本発明のポリイミドは、上述のように、前記繰り返し単位(A1)と、前記繰り返し単位(B1)と、前記繰り返し単位(C1)とからなる群の中から選択される少なくとも1種の繰り返し単位を含有するものである。
本発明のポリイミドにおいては、前記繰り返し単位(A1)、前記繰り返し単位(B1)及び前記繰り返し単位(C1)の総量(合計量)が全繰り返し単位に対して30〜100モル%(更に好ましくは40〜100モル%、より好ましくは50〜100モル%、更に好ましくは70〜100モル%、特に好ましくは80〜100モル%、最も好ましくは90〜100モル%)であることが好ましい。このような前記繰り返し単位(A1)、前記繰り返し単位(B1)及び前記繰り返し単位(C1)の総量(合計量)が前記下限未満ではガラス転移温度(Tg)を基準とした耐熱性をより高度な水準のものとすることが困難となる傾向にある。
また、このようなポリイミドにおいては、本発明の効果を損なわない範囲において他の繰り返し単位を含んでいてもよい。このような他の繰り返し単位としては、特に制限されず、ポリイミドの繰り返し単位として利用できる公知の繰り返し単位等が挙げられる。
また、このような他の繰り返し単位としては、R4が上記一般式(X)で表されるアリーレン基以外の炭素数が6〜40のアリーレン基である上記一般式(1)で表される繰り返し単位(A’)、R4が上記一般式(X)で表されるアリーレン基以外の炭素数が6〜40のアリーレン基である一般式(2)で表される繰り返し単位(B’)、及び、R4が上記一般式(X)で表されるアリーレン基以外の炭素数が6〜40のアリーレン基である一般式(3)で表される繰り返し単位(C’)からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
このような繰り返し単位(A’)、繰り返し単位(B’)及び繰り返し単位(C’)においては、一般式(1)〜(3)中のR4で表される基は、上記一般式(X)で表されるアリーレン基以外の炭素数が6〜40のアリーレン基である。このような繰り返し単位(A’)、繰り返し単位(B’)及び繰り返し単位(C’)におけるアリーレン基の炭素数としては6〜30であることが好ましく、12〜20であることがより好ましい。このような炭素数が前記下限未満では、かかる他の繰り返し単位を含有させた場合にポリイミドの耐熱性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、かかる他の繰り返し単位を含有させた場合に得られるポリイミドの溶媒に対する溶解性が低下して、フィルム等への成形性が低下する傾向にある。
また、前記繰り返し単位(A’)、前記繰り返し単位(B’)及び前記繰り返し単位(C’)における一般式(1)〜(3)中のR4としては、耐熱性と溶解性のバランスの観点から、下記一般式(7)〜(10):
[式(9)中、R10は、水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基及びトリフルオロメチル基よりなる群から選択される1種を示し、式(10)中、Qは、式:−C6H4−、−CONH−C6H4−NHCO−、−NHCO−C6H4−CONH−、−O−C6H4−CO−C6H4−O−、−OCO−C6H4−COO−、−OCO−C6H4−C6H4−COO−、−OCO−、−NC6H5−、−CO−C4H8N2−CO−、−C13H10−、−(CH2)5−、−O−、−S−、−CO−、−CONH−、−SO2−、−C(CF3)2−、−C(CH3)2−、−CH2−、−(CH2)2−、−(CH2)3−、−(CH2)4、−(CH2)5−、−O−C6H4−C(CH3)2−C6H4−O−、−O−C6H4−C(CF3)2−C6H4−O−、−O−C6H4−SO2-C6H4−O−、−C(CH3)2−C6H4−C(CH3)2−、−O−C6H4−C6H4−O−及び−O−C6H4−O−で表される基よりなる群から選択される1種を示す。]
で表される基のうちの少なくとも1種であることが好ましい。
このような一般式(9)中のR10としては、得られるポリイミドの耐熱性の観点から、水素原子、フッ素原子、メチル基又はエチル基がより好ましく、水素原子が特に好ましい。また、上記一般式(10)中のQとしては、耐熱性と溶解性のバランスという観点から、式:−CONH−、−O−C6H4−O−、−O−C6H4−C6H4−O−、−O−又は−O−C6H4−SO2-C6H4−O−で表される基がより好ましく、−O−又は−O−C6H4−SO2-C6H4−O−で表される基が特に好ましい。
また、このような繰り返し単位(A’)は、上記原料化合物(A)と、下記一般式(103):
[式(103)中、R4は上記一般式(X)で表されるアリーレン基以外の炭素数が6〜40のアリーレン基を示す。]
で表される芳香族ジアミンとに由来して形成させることができる。すなわち、このような繰り返し単位(A’)は、前記原料化合物(A)と、R4が上記一般式(X)で表されるアリーレン基以外の炭素数が6〜40のアリーレン基である上記一般式(103)芳香族ジアミンとを反応させることで、ポリイミド中に含有させることができる。同様に、繰り返し単位(B’)は、前記原料化合物(B)と、R4が上記一般式(X)で表されるアリーレン基以外の炭素数が6〜40のアリーレン基である上記一般式(103)芳香族ジアミンとを反応させることでポリイミド中に含有させることができる。更に、繰り返し単位(C’)は、前記原料化合物(C)と、R4が上記一般式(X)で表されるアリーレン基以外の炭素数が6〜40のアリーレン基である上記一般式(103)芳香族ジアミンとを反応させることでポリイミド中に含有させることができる。
また、このようなポリイミドとしては、ガラス転移温度(Tg)が340℃以上のものが好ましく、350〜550℃のものがより好ましく、400〜550℃のものが更に好ましい。このようなガラス転移温度(Tg)が前記下限未満では、本願で要求するような高度な水準の耐熱性を達成することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えるとそのような特性を有するポリイミドを製造することが困難となる傾向にある。なお、このようなガラス転移温度(Tg)は、熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8310」)を使用して引張モードにより測定することができる。すなわち、縦20mm、横5mmの大きさのポリイミドフィルム(かかるフィルムの厚みは測定値に影響するものではないため特に制限されるものではないが、5〜80μmとすることが好ましい)を形成して測定試料とし、窒素雰囲気下、引張りモード(49mN)、昇温速度5℃/分の条件を採用して測定を行い、ガラス転移に起因するTMA曲線の変曲点に対し、その前後の曲線を外挿することにより、求めることができる。
また、本発明のポリイミドとしては、5%重量減少温度が400℃以上のものが好ましく、450〜550℃のものがより好ましい。このような5%重量減少温度が前記下限未満では十分な耐熱性が達成困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、そのような特性を有するポリイミドを製造することが困難となる傾向にある。なお、このような5%重量減少温度は、窒素ガス雰囲気下、窒素ガスを流しながら室温(例えば、25℃)から40℃に昇温した後、40℃を測定開始温度として徐々に加熱していき、用いた試料の重量が5%減少する温度を測定することにより求めることができる。
さらに、このようなポリイミドとしては、軟化温度が300℃以上のものが好ましく、350〜550℃のものがより好ましい。このような軟化温度が前記下限未満では十分な耐熱性が達成困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えるとそのような特性を有するポリイミドを製造することが困難となる傾向にある。なお、このような軟化温度は、熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8310」)を使用してペネトレーションモードにより測定することができる。また、測定に際しては、試料のサイズ(縦、横、厚み等)は測定値に影響するものではないため、用いる熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8310」)の治具に装着可能なサイズに試料のサイズを適宜調整すればよい。
また、このようなポリイミドとしては、熱分解温度(Td)が450℃以上のものが好ましく、480〜600℃のものがより好ましい。このような熱分解温度(Td)が前記下限未満では十分な耐熱性が達成困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、そのような特性を有するポリイミドを製造することが困難となる傾向にある。なお、このような熱分解温度(Td)は、TG/DTA220熱重量分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)を使用して、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/min.の条件で熱分解前後の分解曲線にひいた接線の交点となる温度を測定することにより求めることができる。
また、このようなポリイミドは、線膨張係数(CTE)が0〜100ppm/Kであることが好ましく、10〜70ppm/Kであることがより好ましい。このような線膨張係数が前記上限を超えると、線膨張係数の範囲が5〜20ppm/Kである金属や無機物と組合せて複合化した場合に熱履歴で剥がれが生じやすくなる傾向にある。また、前記線膨張係数が、前記下限未満では溶解性の低下やフィルム特性が低下する傾向にある。
このようなポリイミドの線膨張係数の測定方法としては、以下に記載の方法を採用する。すなわち、先ず、縦20mm、横5mmの大きさのポリイミドフィルム(かかるフィルムの厚みは測定値に影響するものではないため特に制限されるものではないが、5〜80μmとすることが好ましい)を形成して測定試料とし、測定装置として熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8310」)を利用して、窒素雰囲気下、引張りモード(49mN)、昇温速度5℃/分の条件を採用して、室温から200℃まで昇温(1回目の昇温)し、30℃以下まで放冷した後に、その温度から400℃まで昇温(2回目の昇温)し、その昇温時の前記試料の縦方向の長さの変化を測定する。次いで、このような2回目の昇温時の測定(放冷時の温度から400℃まで昇温する際の測定)で得られたTMA曲線を用いて、100℃〜200℃の温度範囲における1℃あたりの長さの変化の平均値を求め、得られる値をポリイミドの線膨張係数として測定する。このように、本発明のポリイミドの線膨張係数としては、前記TMA曲線に基づいて100℃〜200℃の温度範囲における1℃あたりの長さの変化の平均値を求めることにより得られる値を採用する。
さらに、このようなポリイミドの数平均分子量(Mn)としては、ポリスチレン換算で1000〜1000000であることが好ましく、10000〜500000であることがより好ましい。このような数平均分子量が前記下限未満では十分な耐熱性が達成困難となるばかりか、製造時に有機溶媒から十分に析出せず、効率よくポリイミドを得ることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、粘性が増大し、溶解させるのに長時間を要したり、溶剤を大量に必要とするため、加工が困難となる傾向にある。
また、このようなポリイミドの重量平均分子量(Mw)としては、ポリスチレン換算で1000〜5000000であることが好ましい。また、このような重量平均分子量(Mw)の数値範囲の下限値としては、5000であることがより好ましく、10000であることが更に好ましく、20000であることが特に好ましい。また、重量平均分子量(Mw)の数値範囲の上限値としては、5000000であることがより好ましく、500000であることが更に好ましく、100000であることが特に好ましい。このような重量平均分子量が前記下限未満では十分な耐熱性が達成困難となるばかりか、製造時に有機溶媒から十分に析出せず、効率よくポリイミドを得ることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると粘性が増大し、溶解させるのに長時間を要したり、溶剤を大量に必要とするため、加工が困難となる傾向にある。
さらに、このようなポリイミドの分子量分布(Mw/Mn)は1.1〜5.0であることが好ましく、1.5〜3.0であることがより好ましい。このような分子量分布が前記下限未満では製造することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると均一なフィルムを得にくい傾向にある。なお、このようなポリイミドの分子量(Mw又はMn)や分子量の分布(Mw/Mn)は、測定装置としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定装置(デガッサ:JASCO社製DG−2080−54、送液ポンプ:JASCO社製PU−2080、インターフェイス:JASCO社製LC−NetII/ADC、カラム:Shodex社製GPCカラムKF−806M(×2本)、カラムオーブン:JASCO社製860−CO、RI検出器:JASCO社製RI−2031、カラム温度40℃、クロロホルム溶媒(流速1mL/min.)を用いて測定したデータをポリスチレンで換算して求めることができる。
なお、このようなポリイミドにおいては、分子量の測定が困難な場合には、そのポリイミドの製造に用いるポリアミド酸の粘度に基づいて、分子量等を類推して、用途等に応じたポリイミドを選別して使用してもよい。
また、このようなポリイミドとしては、フィルムを形成した場合に透明性が十分に高いものであることが好ましく、全光線透過率が80%以上(更に好ましくは85%以上、特に好ましくは87%以上)であるものがより好ましい。このような全光線透過率は、ポリイミドの種類等を適宜選択することにより容易に達成することができる。
また、このようなポリイミドとしては、より高度な無色透明性を得るといった観点から、ヘイズ(濁度)が5〜0(更に好ましくは4〜0、特に好ましくは3〜0)であるものがより好ましい。このようなヘイズの値が前記上限を超えると、より高度な水準の無色透明性を達成することが困難となる傾向にある。
さらに、このようなポリイミドとしては、より高度な無色透明性を得るといった観点から、黄色度(YI)が5〜0(更に好ましくは4〜0、特に好ましくは3〜0)であるものがより好ましい。このような黄色度が前記上限を超えると、より高度な水準の無色透明性を達成することが困難となる傾向にある。
このような全光線透過率、ヘイズ(濁度)及び黄色度(YI)は、測定装置として、日本電色工業株式会社製の商品名「ヘーズメーターNDH−5000」又は日本電色工業株式会社製の商品名「分光色彩計SD6000」を用いて(日本電色工業株式会社製の商品名「ヘーズメーターNDH−5000」で全光線透過率とヘイズとを測定し、日本電色工業株式会社製の商品名「分光色彩計SD6000」で黄色度を測定する。)、厚みが5〜100μmのポリイミドからなるフィルムを測定用の試料として用いて測定した値を採用することができる。また、測定試料の縦、横の大きさは、前記測定装置の測定部位に配置できるサイズであればよく、縦、横の大きさは適宜変更してもよい。なお、このような全光線透過率は、JIS K7361−1(1997年発行)に準拠した測定を行うことにより求め、ヘイズ(濁度)は、JIS K7136(2000年発行)に準拠した測定を行うことにより求め、黄色度(YI)はASTM E313−05(2005年発行)に準拠した測定を行うことにより求める。
このようなポリイミドは、波長590nmで測定される厚み方向のリタデーション(Rth)の絶対値が、厚み10μmに換算して、150nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることが更に好ましく、25nm以下であることが特に好ましい。すなわち、前記リタデーション(Rth)の値は−150nm〜150nm(より好ましくは−100nm〜100nm、更に好ましくは−50〜50nm、特に好ましくは−25〜25nm)であることが好ましい。このような厚み方向のリタデーション(Rth)の絶対値が前記上限を超えると、ディスプレイ機器に使用した際に、コントラストが低下するとともに視野角が低下してしまう傾向にある。なお、前記リタデーション(Rth)の絶対値が前記範囲内となると、ディスプレイ機器に使用した際に、コントラストの低下を抑制する効果及び視野角を改善する効果がより高度なものとなる傾向にある。このように、ディスプレイ機器に使用した場合に、コントラストの低下をより高度に抑制でき、且つ、視野角をより改善することが可能となるといった観点で、厚み方向のリタデーション(Rth)の絶対値はより低い値となることが好ましい。
このような「厚み方向のリタデーション(Rth)の絶対値」は、測定装置としてAXOMETRICS社製の商品名「AxoScan」を用い、後述のようにして測定したポリイミドフィルムの屈折率(589nm)の値を前記測定装置にインプットした後、温度:25℃、湿度:40%の条件下、波長590nmの光を用いて、ポリイミドフィルムの厚み方向のリタデーションを測定し、求められた厚み方向のリタデーションの測定値(測定装置の自動測定(自動計算)による測定値)に基づいて、フィルムの厚み10μmあたりのリタデーション値に換算した値(換算値)を求め、その換算値から絶対値を算出することにより求めることができる。このように、「厚み方向のリタデーション(Rth)の絶対値」は、前記換算値の絶対値(|換算値|)を算出することで求めることができる。なお、測定試料のポリイミドフィルムのサイズは、測定器のステージの測光部(直径:約1cm)よりも大きければ良いため、特に制限されないが、縦:76mm、横52mm、厚み5〜20μmの大きさとすることが好ましい。
また、厚み方向のリタデーション(Rth)の測定に利用する「前記ポリイミドフィルムの屈折率(589nm)」の値は、リタデーションの測定対象となるフィルムを形成するポリイミドと同じ種類のポリイミドからなる未延伸のフィルムを形成した後、かかる未延伸のフィルムを測定試料として用いて(なお、測定対象となるフィルムが未延伸のフィルムである場合には、そのフィルムをそのまま測定試料として用いることができる。)、測定装置として屈折率測定装置(株式会社アタゴ製の商品名「NAR−1T SOLID」)を用い、589nmの光源を用いて、23℃の温度条件で、測定試料の面内方向(厚み方向とは垂直な方向)の589nmの光に対する屈折率を測定して求めることができる。なお、測定試料が未延伸のため、フィルムの面内方向の屈折率は、面内のいずれの方向においても一定となり、かかる屈折率の測定により、そのポリイミドの固有の屈折率を測定することができる(なお、測定試料が未延伸のため、面内の遅延軸方向の屈折率をNxとし、遅延軸方向と垂直な面内方向の屈折率をNyとした場合、Nx=Nyとなる)。このように、未延伸のフィルムを利用してポリイミドの固有の屈折率(589nm)を測定して、得られた測定値を上述の厚み方向のリタデーション(Rth)の測定に利用する。ここにおいて、測定試料のポリイミドフィルムのサイズは、前記屈折率測定装置に利用できる大きさであればよく、特に制限されず、1cm角(縦横1cm)で厚み5〜20μmの大きさとしてもよい。
このようなポリイミドの形状は特に制限されず、例えば、フィルム形状や粉状としたり、更には、押出成形によりペレット形状等としてもよい。このように、本発明のポリイミドは、フィルム形状にしたり、押出成形によりペレット形状としたり、公知の方法で各種の形状に適宜成形することもできる。
また、このようなポリイミドは、フレキシブル配線基板用フィルム、耐熱絶縁テープ、電線エナメル、半導体の保護コーティング剤、液晶配向膜、有機EL用透明導電性フィルム、フレキシブル基板フィルム、フレキシブル透明導電性フィルム、有機薄膜型太陽電池用透明導電性フィルム、色素増感型太陽電池用透明導電性フィルム、フレキシブルガスバリアフィルム、タッチパネル用フィルム、フラットパネルディテクタ用TFT基板フィルム、複写機用シームレスポリイミドベルト(いわゆる転写ベルト)、透明電極基板(有機EL用透明電極基板、太陽電池用透明電極基板、電子ペーパーの透明電極基板等)、層間絶縁膜、センサー基板、イメージセンサーの基板、発光ダイオード(LED)の反射板(LED照明の反射板:LED反射板)、LED照明用のカバー、LED反射板照明用カバー、カバーレイフィルム、高延性複合体基板、半導体向けレジスト、リチウムイオンバッテリー、有機メモリ用基板、有機トランジスタ用基板、有機半導体用基板、カラーフィルタ基材等を製造するための材料として特に有用である。また、このようなポリイミドは、上述のような用途以外にも、その形状を粉状体としたり、各種成形体とすること等により、例えば、自動車用部品、航空宇宙用部品、軸受部品、シール材、ベアリング部品、ギアホイールおよびバルブ部品などに、適宜利用することも可能である。
なお、このような本発明のポリイミドを製造するために好適に採用することが可能な方法は後述する。以上、本発明のポリイミドについて説明したが、次に、本発明のポリアミド酸について説明する。
[ポリアミド酸]
本発明のポリアミド酸は、下記一般式(4):
[式(4)中、R1、R2、R3はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基及びフッ素原子よりなる群から選択される1種を示し、nは0〜12の整数を示し、R4は上記一般式(X)で表されるアリーレン基を示す。]
で表される繰り返し単位(A2)と、
下記一般式(5):
[式(5)中、Aは置換基を有していてもよくかつ芳香環を形成する炭素原子の数が6〜30である2価の芳香族基よりなる群から選択される1種を示し、R4は上記一般式(X)で表されるアリーレン基を示し、複数のR5はそれぞれ独立に水素原子及び炭素数1〜10のアルキル基よりなる群から選択される1種を示す。]
で表される繰り返し単位(B2)と、
下記一般式(6):
[式(6)中、R4は上記一般式(X)で表されるアリーレン基を示し、複数のR6はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、水酸基及びニトロ基よりなる群から選択される1種を示すか、又は、同一の炭素原子に結合している2つのR6が一緒になってメチリデン基を形成していてもよく、R7及びR8はそれぞれ独立に水素原子及び炭素数1〜10のアルキル基よりなる群から選択される1種を示す。]
で表される繰り返し単位(C2)と、
からなる群の中から選択される少なくとも1種の繰り返し単位を含有するものである。
〈繰り返し単位(A2)〉
本発明のポリアミド酸が含有し得る繰り返し単位(A2)は、上記一般式(4)で表される繰り返し単位である。このような一般式(4)中のR1、R2、R3、R4及びnは、前記繰り返し単位(A1)における一般式(1)中のR1、R2、R3、R4及びnと同様のものであり、その好適なものも前記繰り返し単位(A1)における上記一般式(1)中のR1、R2、R3、R4及びnと同様である。
〈繰り返し単位(B2)〉
本発明のポリアミド酸が含有し得る繰り返し単位(B2)は、上記一般式(5)で表される繰り返し単位である。このような一般式(5)中のR4、R5及びAは、前記繰り返し単位(B1)における上記一般式(2)中のR4、R5及びAと同様のものであり、その好適なものも前記繰り返し単位(B1)における上記一般式(2)中のR4、R5及びAと同様である。
〈繰り返し単位(C2)〉
本発明のポリアミド酸が含有し得る繰り返し単位(C2)は、上記一般式(6)で表される繰り返し単位である。このような一般式(6)中のR4、R6、R7及びR8は、前記繰り返し単位(C1)における上記一般式(3)中のR4、R6、R7及びR8と同様のものであり、その好適なものも前記繰り返し単位(C1)における上記一般式(3)中のR4、R6、R7及びR8と同様である。
〈ポリアミド酸〉
本発明のポリアミド酸は、前記繰り返し単位(A2)と、前記繰り返し単位(B2)と、前記繰り返し単位(C2)とからなる群の中から選択される少なくとも1種の繰り返し単位を含有する。
このようなポリアミド酸としては、前記繰り返し単位(A2)と前記繰り返し単位(B2)と前記繰り返し単位(C2)の総量(合計量)が全繰り返し単位に対して30〜100モル%(更に好ましくは40〜100モル%、より好ましくは50〜100モル%、更に好ましくは70〜100モル%、特に好ましくは80〜100モル%、最も好ましくは90〜100モル%)であることが好ましい。このような合計量が前記下限未満では、かかるポリアミド酸を利用してポリイミドを形成した場合に、ポリイミドのTgを基準とした耐熱性が低下する傾向にある。
なお、このようなポリアミド酸においては、本発明の効果を損なわない範囲において他の繰り返し単位を含んでいてもよい。このような他の繰り返し単位としては、特に制限されず、ポリアミド酸の繰り返し単位として利用できる公知の繰り返し単位等が挙げられる。なお、このような他の繰り返し単位としては、R4が上記一般式(X)で表されるアリーレン基以外の炭素数が6〜40のアリーレン基である一般式(4)で表される繰り返し単位(A’’)、R4が上記一般式(X)で表されるアリーレン基以外の炭素数が6〜40のアリーレン基である一般式(5)で表される繰り返し単位(B’’)、及び、R4が上記一般式(X)で表されるアリーレン基以外の炭素数が6〜40のアリーレン基である一般式(6)で表される繰り返し単位(C’’)からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。なお、このような繰り返し単位(A’’)、(B’’)及び(C’’)におけるR4(上記一般式(X)で表されるアリーレン基以外の炭素数が6〜40のアリーレン基)としては、前記ポリイミドにおいて説明した前記繰り返し単位(A’)、(B’)及び(C’)中のR4と同様のものである(その好適なものも同様のものである)。なお、このような繰り返し単位(A’’)、(B’’)及び(C’’)は上記一般式(103)で表される芳香族ジアミンを利用することでポリイミド中に導入することが可能である。
また、このようなポリアミド酸としては、固有粘度[η]が0.05〜3.0dL/gであることが好ましく、0.1〜2.0dL/gであることがより好ましい。このような固有粘度[η]が0.05dL/gより小さいと、これを用いてフィルム状のポリイミドを製造した際に、得られるフィルムが脆くなる傾向にあり、他方、3.0dL/gを超えると、粘度が高すぎて加工性が低下し、例えばフィルムを製造した場合に均一なフィルムを得ることが困難となる。また、このような固有粘度[η]は、以下のようにして測定することができる。すなわち、先ず、溶媒としてN,N−ジメチルアセトアミドを用い、そのN,N−ジメチルアセトアミド中に前記ポリアミド酸を濃度が0.5g/dLとなるようにして溶解させて、測定試料(溶液)を得る。次に、前記測定試料を用いて、30℃の温度条件下において動粘度計を用いて、前記測定試料の粘度を測定し、求められた値を固有粘度[η]として採用する。なお、このような動粘度計としては、離合社製の自動粘度測定装置(商品名「VMC−252」)を用いる。
また、このようなポリアミド酸は、本発明のポリイミドを製造する際に好適に利用することが可能なものである(本発明のポリイミドを製造する際の反応中間体(前駆体)として得ることが可能なものである。)。以下、このようなポリアミド酸を製造するための方法として好適に採用することが可能な方法について説明する。
〈ポリアミド酸を製造するための方法として好適に採用することが可能な方法〉
本発明のポリアミド酸を製造するための方法として好適に採用することが可能な方法としては、例えば、上記一般式(101)で表される原料化合物(A)と、上記一般式(201)で表される原料化合物(B)と、上記一般式(301)で表される原料化合物(C)とからなる群の中から選択される少なくとも1種の化合物と、
上記一般式(102)で表される芳香族ジアミンと、
を有機溶媒の存在下において反応させて、上記本発明のポリアミド酸を得る方法を挙げることができる。
このような方法に用いる前記原料化合物(A)〜(C)は上記本発明のポリイミドにおいて説明したものと同様のものである(その好適なものも同様のものである)。
このような方法に用いる有機溶媒としては、前記原料化合物(A)〜(C)と前記芳香族ジアミンとの両者を溶解することが可能な有機溶媒であることが好ましい。このような有機溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、プロピレンカーボネート、テトラメチル尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、ピリジンなどの非プロトン系極性溶媒;m−クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノールなどのフェノール系溶媒;テトラハイドロフラン、ジオキサン、セロソルブ、グライムなどのエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;などが挙げられる。このような有機溶媒は、1種を単独であるいは2種以上を混合して使用してもよい。
また、前記原料化合物(A)〜(C)からなる群の中から選択される少なくとも1種の化合物(テトラカルボン酸二無水物)の使用量(前記原料化合物(A)〜(C)の総量)と、上記一般式(102)で表される芳香族ジアミンの使用量との割合は、特に制限されないが、上記一般式(102)で表される芳香族ジアミンが有するアミノ基1当量に対して、反応に用いられるテトラカルボン酸二無水物中の全ての酸無水物基の量が0.2〜2当量となるような量とすることが好ましく、0.3〜1.2当量とすることがより好ましい。このようなテトラカルボン酸二無水物(原料化合物(A)〜(C))と、上記一般式(102)で表される芳香族ジアミンの好適な使用割合が前記下限未満では重合反応が効率よく進行せず高分子量のポリアミド酸が得られない傾向にあり、他方、前記上限を超えると前記と同様に高分子量のポリアミド酸が得られない傾向にある。
さらに、前記有機溶媒の使用量としては、反応に用いられるテトラカルボン酸二無水物の量(反応に用いられる原料化合物(A)〜(C)の総量)と、上記一般式(102)で表される芳香族ジアミンの量との合計量(反応物[基質]の総量)が、反応溶液の全量に対して1〜80質量%(より好ましくは5〜50質量%)になるような量であることが好ましい。このような有機溶媒の使用量が前記下限未満では効率よくポリアミド酸を得ることができなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると高粘度化により攪拌が困難となり、高分子量体が得られない傾向にある。
また、前記テトラカルボン酸二無水物(前記原料化合物(A)〜(C)からなる群の中から選択される少なくとも2種の化合物)と、上記一般式(102)で表される芳香族ジアミンとを反応させる際に、反応速度の向上と高重合度のポリアミド酸を得るという観点から、前記有機溶媒中に塩基性化合物を更に添加してもよい。このような塩基性化合物としては特に制限されないが、例えば、トリエチルアミン、テトラブチルアミン、テトラヘキシルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−ウンデセン−7、ピリジン、イソキノリン、α−ピコリン等が挙げられる。また、このような塩基性化合物の使用量は、上記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物1当量に対して、0.001〜10当量とすることが好ましく、0.01〜0.1当量とすることがより好ましい。このような塩基性化合物の使用量が前記下限未満では添加効果が発現しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると着色等の原因になる傾向にある。
また、前記テトラカルボン酸二無水物(前記原料化合物(A)〜(C)からなる群の中から選択される少なくとも2種の化合物)と、上記一般式(102)で表される芳香族ジアミンとを反応させる際の反応温度は、これらの化合物を反応させることが可能な温度に適宜調整すればよく、特に制限されないが、15〜100℃とすることが好ましい。また、上記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物と上記一般式(6)で表される芳香族ジアミンとを反応させる方法としては、テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンの重合反応を行うことが可能な方法を適宜利用でき、特に制限されず、例えば、大気圧中、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性雰囲気下において、芳香族ジアミン類を溶媒に溶解させた後、前記反応温度において上記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物を添加し、その後、10〜48時間反応させる方法を採用してもよい。このような反応温度や反応時間が前記下限未満では十分に反応させることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると重合物を劣化させる物質(酸素等)の混入確率が高まり分子量が低下する傾向にある。
このようにして、有機溶媒の存在下、前記原料化合物(A)と前記原料化合物(B)と前記原料化合物(C)とからなる群の中から選択される少なくとも1種の化合物と、上記一般式(102)で表される芳香族ジアミンとを反応させることにより、上記本発明のポリアミド酸(前記繰り返し単位(A2)と、前記繰り返し単位(B2)と、前記繰り返し単位(C2)とからなる群の中から選択される少なくとも1種の繰り返し単位を含有するポリアミド酸)を得ることができる。
なお、本発明によって得られるポリアミド酸に、前記繰り返し単位(A2)、前記繰り返し単位(B2)及び前記繰り返し単位(C2)以外の他の繰り返し単位を含有するものとする場合、その方法は特に制限されないが、例えば、かかるポリアミド酸の製造の際に、上記一般式(102)で表される芳香族ジアミンとともに上記一般式(103)で表される芳香族ジアミンを用いて、前記原料化合物(A)〜(C)と、これらの芳香族ジアミンとを反応させる方法を採用してもよく、あるいは、前記原料化合物(A)〜(C)とともに前記原料化合物(A)〜(C)以外の他のテトラカルボン酸二無水物を用いて、これらを前記芳香族ジアミンと反応させる方法を採用してもよい。
このような他のテトラカルボン酸二無水物としては特に制限されないが、例えば、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボルナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物などの脂肪族または脂環式テトラカルボン酸二無水物;ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物等をが挙げることができる。
以上、本発明のポリアミド酸を製造するための方法として好適に採用することが可能な方法について説明したが、次に、上記本発明のポリイミドを製造するための方法として好適に採用することが可能な方法について説明する。
〈ポリイミドを製造するための方法として好適に採用することが可能な方法〉
このようなポリイミドを製造するための方法として好適に採用することが可能な方法としては、特に制限されないが、例えば、上記一般式(101)で表される原料化合物(A)と、上記一般式(201)で表される原料化合物(B)と、上記一般式(301)で表される原料化合物(C)とからなる群の中から選択される少なくとも1種の化合物(以下、場合により単に「テトラカルボン酸二無水物」と称する。)と、
上記一般式(102)で表される芳香族ジアミンと、
を有機溶媒の存在下において反応させることによりポリイミドを得る方法を採用することができ、中でも、
上記一般式(101)で表される原料化合物(A)と、上記一般式(201)で表される原料化合物(B)と、上記一般式(301)で表される原料化合物(C)とからなる群の中から選択される少なくとも1種の化合物(以下、場合により単に「テトラカルボン酸二無水物」と称する。)と、
上記一般式(102)で表される芳香族ジアミンと、
を有機溶媒の存在下において反応させて上記本発明のポリアミド酸を得る工程(I)と、
前記ポリアミド酸をイミド化して、上記本発明のポリイミドを得る工程(II)と、
を含む製造方法を採用することがより好ましい。以下、このような工程(I)及び(II)を含む方法について説明する。
このような工程(I)としては、前述の「ポリアミド酸を製造するための方法として好適に採用することが可能な方法」において説明した方法と同様の方法を採用することが好ましい。
また、工程(II)は、前記ポリアミド酸をイミド化して、上記本発明のポリイミドを得る工程である。このようなポリアミド酸のイミド化の方法は、ポリアミド酸をイミド化し得る方法であればよく、特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、前記ポリアミド酸をいわゆる縮合剤等のイミド化剤を用いてイミド化する方法、前記ポリアミド酸を60〜450℃(より好ましくは80〜400℃)の温度条件で加熱する処理を施すことによりイミド化する方法等を採用することが好ましい。
このようなイミド化に際して、前記ポリアミド酸をいわゆる縮合剤等のイミド化剤を用いてイミド化する方法を採用する場合、縮合剤の存在下、溶媒中で上記本発明のポリアミド酸をイミド化することが好ましい。このような溶媒としては上記本発明のポリイミド酸の製造方法に用いる有機溶媒と同様のものを好適に用いることができる。このように、いわゆる縮合剤等のイミド化剤を用いてイミド化する方法を採用する場合、前記有機溶媒中において、縮合剤等のイミド化剤を用いて前記ポリアミド酸を化学イミド化することにより、前記ポリイミドを得る工程を採用することが好ましい。
また、このような縮合剤等のイミド化剤を用いる化学イミド化を採用してイミド化する場合、工程(II)に記載のイミド化工程を、前記縮合剤としての脱水縮合剤(カルボン酸無水物、カルボジイミド、酸アジド、活性エステル化剤等)と、反応促進剤(三級アミン等)とを用いてポリアミド酸を脱水閉環してイミド化する工程とすることがより好ましい。このような工程とすることで、イミド化の際に必ずしも高温で加熱する必要がなくなり、低温の条件下(より好ましくは100℃以下程度の温度条件下)でイミド化してポリイミドを得ることも可能となる。
このような化学イミド化を採用してイミド化する場合、工程(I)により有機溶媒中において、上記テトラカルボン酸二無水物と、上記芳香族ジアミンとを反応させて得られた反応液(上記本発明のポリアミド酸を含有する反応液)を得た後、その反応液をそのまま用いて、縮合剤を用いる化学イミド化を施してもよい。なお、工程(I)を実施した後に、前記ポリアミド酸を単離して、別途、有機溶媒中に前記ポリアミド酸を添加してから化学イミド化を施してもよい。
また、このような工程(II)において化学イミド化を採用する場合に用いる縮合剤は、前記ポリアミド酸を縮合させてポリイミドとする際に利用することが可能なものであればよく、後述の反応促進剤と組みあわせて、いわゆる「イミド化剤」として用いられる公知の化合物を適宜利用することができる。このような縮合剤としては、特に制限されないが、例えば、無水酢酸や無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などのカルボン酸無水物、N,N‘−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)などのカルボジイミド、ジフェニルリン酸アジド(DPPA)などの酸アジド、カストロ試薬などの活性エステル化剤、2−クロロ−4,6−ジメトキシトリアジン(CDMT)などの脱水縮合剤を挙げることができる。このような縮合剤の中でも、反応性、入手性、実用性の観点から、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸が好ましく、無水酢酸、無水プロピオン酸がより好ましく、無水酢酸が更に好ましい。このような縮合剤は1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、前記反応促進剤としては、前記ポリアミド酸を縮合させてポリイミドとする際に利用することが可能なものであればよく、公知の化合物を適宜利用することができる。このような反応促進剤は、反応中に副生する酸を補足する酸補足剤としても機能し得る。そのため、このような反応促進剤を用いることで、反応の加速と副生する酸による逆反応が抑制され効率よく反応を進行せしめることが可能となる。このような反応促進剤としては、特に制限されないが、酸補足剤としての機能も兼ねるものがより好ましく、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルピペリジン、ピリジン、コリジン、ルチジン、2−ヒドロキシピリジン、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO),ジアザビシクロノネン(DBN)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)などの三級アミン等を挙げることができる。このような反応促進剤の中でも、反応性、入手性、実用性の観点から、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルピペリジン、ピリジンが好ましく、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルピペリジンがより好ましく、トリエチルアミン、N−メチルピペリジンが更に好ましい。このような反応促進剤は1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、例えば触媒量の反応促進剤(DMAPなど)と共沸脱水剤(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)を添加して、ポリアミド酸がイミドになる際に生じる水を共沸脱水により除去し、化学イミド化しても良い。このように、化学イミド化に際しては、前記反応促進剤とともに、共沸脱水剤を適宜利用してもよい。このような共沸脱水剤としては特に制限されず、反応に用いる材料の種類等に応じて、公知の共沸脱水剤の中から適宜選択して利用すればよい。
また、このような縮合剤及び反応促進剤を利用して化学イミド化する際には、より効率よくポリイミドを製造するといった観点から、工程(I)を実施した後に得られるポリアミド酸を単離することなく、有機溶媒中において上記テトラカルボン酸二無水物と上記芳香族ジアミンとを反応させて得られた反応液(上記本発明のポリアミド酸を含有する反応液)をそのまま用い、前記反応液に縮合剤(イミド化剤)及び反応促進剤を添加してイミド化する方法を採用することがより好ましい。
また、このような化学イミド化の際の温度条件は、−40℃〜200℃であることが好ましく、−20℃〜150℃であることがより好ましく、0〜150℃であることが更に好ましく、50〜100℃であることが特に好ましい。このような温度が前記上限を超えると望ましくない副反応が進行しポリイミドが得られない傾向にあり、他方、前記下限未満では化学イミド化の反応速度が低下したり、反応自体が進行しなくなりポリイミドが得られない傾向にある。このように、化学イミド化を採用した場合においては、−40℃〜200℃といった比較的低温の温度域でイミド化することも可能であり、これにより環境負荷をより少ないものとすることが可能となる。
また、このような化学イミド化の反応時間は0.1〜48時間とすることが好ましい。このような反応温度や時間が前記下限未満では十分にイミド化することが困難となり、有機溶媒中にポリイミドを析出させることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると重合物を劣化させる物質(酸素等)の混入確率が高まり、却って分子量が低下する傾向にある。
また、このような縮合剤の使用量としては、特に制限されないが、ポリアミド酸中の繰り返し単位1モルに対して0.05〜4.0モルとすることが好ましく、1〜2モルとすることが更に好ましい。このような縮合剤(イミド化剤)の使用量が前記下限未満では化学イミド化の反応速度が低下したり、反応自体が十分に進行しなくなりポリイミドが十分に得られなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると望ましくない副反応が進行するなどして、効率よくポリイミドが得られなくなる傾向にある。
また、化学イミド化の際の前記反応促進剤の使用量としては、特に制限されないが、ポリアミド酸中の繰り返し単位1モルに対して0.05〜4.0モルとすることが好ましく、1〜2モルとすることが更に好ましい。このような反応促進剤の使用量が前記下限未満では化学イミド化の反応速度が低下したり、反応自体が十分に進行しなくなりポリイミドが十分に得られなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると望ましくない副反応が進行するなどして、効率よくポリイミドが得られなくなる傾向にある。
また、このような化学イミド化を行う際の雰囲気条件としては、空気中の酸素による着色や、空気中の水蒸気による分子量低下を防止するとの観点から、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気や真空下とすることが好ましい。また、このような化学イミド化を行う際の圧力条件としては特に制限されるものではないが、0.01hPa〜1MPaであることが好ましく、0.1hPa〜0.3MPaであることがより好ましい。このような圧力が前記下限未満では、溶剤、縮合剤、反応促進剤が気体化して化学量論性が崩れ、反応に悪影響を与えて、十分に反応を進行させることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、望ましくない副反応が進行したり、ポリアミド酸の溶解性が低下して析出してしまう傾向にある。
また、工程(II)におけるイミド化に際しては、前述のように、前記ポリアミド酸を60〜450℃(より好ましくは80〜400℃)の温度条件で加熱する処理(加熱処理)を施すことによりイミド化する方法を採用することもできる。このような加熱処理を施してイミド化する方法を採用する場合において、前記加熱温度が前記下限未満では反応の進行が遅れる傾向にあり、他方、前記上限を超えると着色したり、熱分解による分子量低下などが起きたりする傾向にある。また、前記加熱処理を施すことによりイミド化する方法を採用する場合の反応時間(加熱時間)は0.5〜5時間とすることが好ましい。このような反応時間が前記下限未満では十分にイミド化することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると着色したり、熱分解による分子量低下などが起きる傾向にある。
また、前記加熱処理を施してイミド化する場合においては、高分子量化やイミド化を促進させるために、いわゆる反応促進剤を利用してもよい。このような反応促進剤としては、公知の反応促進剤(トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルピペリジン、ピリジン、コリジン、ルチジン、2−ヒドロキシピリジン、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO),ジアザビシクロノネン(DBN)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)などの三級アミン等)を適宜利用してもよい。また、このような反応促進剤の中でも、反応性、入手性、実用性の観点から、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルピペリジン、ピリジンが好ましく、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルピペリジンがより好ましく、トリエチルアミン、N−メチルピペリジンが更に好ましい。このような反応促進剤は1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記加熱処理を施してイミド化する場合において、前記反応促進剤の使用量としては、特に制限されるものではないが、例えば、ポリアミド酸中の繰り返し単位1モルに対して0.01〜4.0モルとすることが好ましく、0.05〜2.0モルであることがより好ましく、0.05〜1.0モルとすることが更に好ましい。
また、このような工程(I)及び工程(II)を含む方法を利用する場合であって、イミド化に際して前記加熱処理を施すことによりイミド化する方法を採用する場合には、前記工程(I)を実施した後に、上記本発明のポリアミド酸を単離することなく、有機溶媒中において前記テトラカルボン酸二無水物と前記芳香族ジアミンとを反応させて得られた反応液(前記ポリアミド酸を含有する反応液)をそのまま用い、前記反応液に対して溶媒を蒸発除去する処理(溶媒除去処理)を施して溶媒を除去した後、前記加熱処理を施すことによりイミド化する方法を採用してもよい。このような溶媒を蒸発除去する処理により、前記ポリアミド酸をフィルム状などの形態にして単離した後、加熱処理を施して、所望の形態のポリイミドを得ること等が可能となる。
このような溶媒を蒸発除去する処理(溶媒除去処理)における温度条件としては0〜180℃であることが好ましく、30〜150℃であることがより好ましい。このような溶媒除去処理における温度条件が前記下限未満では溶媒を十分に蒸発させて除去することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると溶媒が沸騰し気泡やボイドを含むフィルムになる傾向にある。この場合において、例えば、フィルム状のポリイミドを製造する場合においては、得られた反応液をそのまま基材(例えばガラス板)上に塗布し、前記溶媒を蒸発除去する処理及び加熱処理を施せばよく、簡便な方法でフィルム状のポリイミドを製造することが可能となる。なお、このような反応液の塗布方法としては特に制限されず、公知の方法(キャスト法など)を適宜採用することができる。また、前記反応液から上記本発明のポリアミド酸を単離して利用する場合、その単離方法としては特に制限されず、ポリアミド酸を単離することが可能な公知の方法を適宜採用することができ、例えば、再沈殿物として単離する方法などを採用してもよい。
また、前記加熱処理を施してイミド化する方法を採用して工程(II)を施す場合には、工程(I)と工程(II)とを一連の工程として同時に施してもよい。このように、工程(I)と工程(II)とを一連の工程として同時に施す方法としては、例えば、上記一般式(101)で表される原料化合物(A)と、上記一般式(201)で表される原料化合物(B)と、上記一般式(301)で表される原料化合物(C)とからなる群の中から選択される少なくとも1種の化合物(テトラカルボン酸二無水物)と、上記一般式(102)で表される芳香族ジアミンとを反応させる段階から加熱する処理を施すことにより、ポリアミド酸(中間体)の形成とそれに続くポリイミドの形成(イミド化)とをほぼ同時に進行せしめて、工程(I)と工程(II)とを同時に施す方法を採用することができる。
また、このように前記テトラカルボン酸二無水物と前記芳香族ジアミンとを反応させる段階から加熱する処理を施すことにより、工程(I)と工程(II)とを同時に施す場合においては、有機溶媒の存在下、上記テトラカルボン酸二無水物と、上記芳香族ジアミンとを反応させる段階から、反応促進剤を用い、前記有機溶媒と前記反応促進剤の存在下、上記一般式(101)で表される原料化合物(A)と、上記一般式(201)で表される原料化合物(B)と、上記一般式(301)で表される原料化合物(C)とからなる群の中から選択される少なくとも1種の化合物(テトラカルボン酸二無水物)と、上記一般式(102)で表される芳香族ジアミンとを加熱して反応させることによりポリイミドを形成することが好ましい。このようにして工程(I)と工程(II)とを同時に施す場合、加熱によって、工程(I)におけるポリアミド酸の生成と工程(II)におけるポリアミド酸のイミド化とが連続的に引き起こされて、溶媒中においてポリイミドが調製されることとなるが、その際に、前記反応促進剤を利用することで、ポリアミド酸の生成とイミド化の反応速度が非常に早くなり、分子量を伸ばすことが可能となる。また、前記反応促進剤を用いて加熱することにより工程(I)と工程(II)とを同時に施す場合には、加熱により、テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとの反応が進行するとともに、反応により生成される水を蒸発させて除去することも可能となるため、いわゆる縮合剤(脱水縮合剤)を利用することなく、反応を効率よく進行させることも可能となる。
また、前記有機溶媒と前記反応促進剤の存在下、上記一般式(5)で表されるテトラカルボン酸二無水物と前記芳香族ジアミンとを加熱して反応させることによりポリイミドを形成する場合(反応促進剤を用いて加熱することにより工程(I)と工程(II)とを同時に施す場合)、その加熱時の温度条件としては、100〜250℃であることが好ましく、120〜250℃であることがより好ましく、150〜220℃であることが更に好ましい。このような温度条件が前記下限未満では、反応温度が水の沸点以下であるため、水の留去が生じず、水により反応の進行が阻害されて、ポリイミドの分子量を大きなものとすることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、溶媒の熱分解などの副反応が生じ、加熱後に得られるポリイミドと有機溶媒との混合液(ワニス)中の不純物の量が多くなってしまい、これを用いてフィルムを形成した場合に、得られるポリイミドフィルムの物性が低下する傾向にある。
また、反応促進剤を用いて加熱することにより工程(I)と工程(II)とを同時に施す場合、その工程に利用する反応促進剤としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルピペリジン、ピリジン、コリジン、ルチジン、2−ヒドロキシピリジン、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO),ジアザビシクロノネン(DBN)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)などの三級アミンが好ましく、中でも、反応性、入手性、実用性の観点から、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルピペリジン、ピリジンが好ましく、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルピペリジンがより好ましく、トリエチルアミン、N−メチルピペリジンが更に好ましい。このような反応促進剤は1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、反応促進剤を用いて加熱することにより工程(I)と工程(II)とを同時に施す場合、その反応促進剤の使用量は、上記一般式(5)で表されるテトラカルボン酸二無水物と前記芳香族ジアミンの総量(合計量)100質量部に対して0.01〜10質量部とすることが好ましく、0.05〜2質量部とすることがより好ましい。
以上、上記本発明のポリイミドを製造するための方法として好適に採用することが可能な方法について説明したが、次に、本発明のポリアミド酸溶液について説明する。
[ポリアミド酸溶液]
本発明のポリアミド酸溶液は、上記本発明のポリアミド酸と有機溶媒とを含むものである。このようなポリアミド酸溶液(樹脂溶液:ワニス)に用いる有機溶媒としては、上述のポリアミド酸を製造するための方法として好適に採用することが可能な方法に用いる有機溶媒と同様のものを好適に利用することができる。そのため、本発明のポリアミド酸溶液は、上述のポリアミド酸を製造するための方法として好適に採用することが可能な方法を実施して、反応後に得られた反応液をそのままポリアミド酸溶液とすることで調製してもよい。
このようなポリアミド酸溶液における前記ポリアミド酸の含有量は特に制限されないが、1〜80質量%であることが好ましく、5〜50質量%であることがより好ましい。このような含有量が前記下限未満ではポリイミドフィルムの製造が困難になる傾向にあり、、他方、前記上限を超えると、同様にポリイミドフィルムの製造が困難になる傾向にある。なお、このようなポリアミド酸溶液は、上記本発明のポリイミドの製造に好適に利用することができ、各種形状のポリイミドを製造するために好適に利用できる。例えば、このようなポリアミド酸溶液を各種基板の上に塗布し、これをイミド化して硬化することで、容易にフィルム形状のポリイミドを製造することもできる。
以上、本発明のポリアミド酸溶液について説明したが、次に、本発明のポリイミド溶液について説明する。
[ポリイミド溶液]
本発明のポリイミド溶液は、上記本発明のポリイミドと有機溶媒とを含むものである。このようなポリイミド溶液に用いる有機溶媒としては、上述のポリアミド酸を製造するための方法として好適に採用することが可能な方法において説明した有機溶媒と同様のものを好適に利用することができる。また、本発明のポリイミド溶液は、上述のポリイミドを製造するための方法として好適に採用することが可能な方法を実施して、得られるポリイミドが、製造時に用いた有機溶媒に溶解するものである場合には、反応後に得られた反応液をそのままポリイミド溶液として調製してもよい。
また、本発明のポリイミド溶液は、有機溶媒中において、上記一般式(101)で表される原料化合物(A)と、上記一般式(201)で表される原料化合物(B)と、上記一般式(301)で表される原料化合物(C)とからなる群の中から選択される少なくとも1種の化合物(テトラカルボン酸二無水物)と、上記一般式(102)で表される芳香族ジアミンとを反応させて得られた反応液(上記本発明のポリアミド酸を含有する反応液)をそのまま用いて(上述のポリイミドを製造するための方法として好適に採用することが可能な方法において説明した工程(I)を実施した後にポリアミド酸を単離することなく、得られた反応液をそのまま用いて)、前記反応液にイミド化剤を添加してイミド化し、有機溶媒中でポリイミドを調製することにより、前記ポリアミド酸と前記有機溶媒とを含有する溶液を得ることにより製造してもよい。
このように、本発明のポリイミド溶液に用いる有機溶媒としては、上述のポリアミド酸を製造するための方法として好適に採用することが可能な方法において説明した有機溶媒と同様のものを好適に利用することができる。なお、本発明のポリイミド溶液に用いる有機溶媒としては、例えば、前記ポリイミド溶液を塗工液として利用した場合の溶媒の蒸散性や除去性の観点から、沸点が200℃以下のハロゲン系溶剤(例えば、ジクロロメタン(沸点40℃)、トリクロロメタン(沸点62℃)、四塩化炭素(沸点77℃)、ジクロロエタン(沸点84℃)、トリクロロエチレン(沸点87℃)、テトラクロロエチレン(沸点121℃)、テトラクロロエタン(沸点147℃)、クロロベンゼン(沸点131℃)、o−ジクロロベンゼン(沸点180℃)等)等を利用してもよい。
また、このようなポリイミド溶液に用いる有機溶媒としては、溶解性、成膜性、生産性、工業的入手性、既設設備の有無、価格といった観点から、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、プロピレンカーボネート、テトラメチル尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが好ましく、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素がより好ましく、N,N−ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトンが特に好ましい。なお、このような有機溶媒は1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて利用してもよい。
また、このようなポリイミド溶液は、各種の加工品を製造するための塗工液等として好適に利用することも可能である。例えば、フィルムを形成する場合、上記本発明のポリイミド溶液を塗工液として利用して、これを基材上に塗工して塗膜を得た後、溶媒を除去することで、ポリイミドフィルムを形成してもよい。このような塗工方法は特に制限されず、公知の方法(スピンコート法、バーコート法、ディップコート法など)を適宜利用することができる。
このようなポリイミド溶液においては、前記ポリイミドの含有量(溶解量)は特に制限されないが、1〜75質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましい。このような含有量が前記下限未満では、製膜等に利用した場合に成膜後の膜厚が薄くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると一部が溶媒に不溶となる傾向にある。さらに、このようなポリイミド溶液には、使用目的等に応じて、酸化防止剤(フェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系など)、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、核剤、樹脂添加剤(フィラー、タルク、ガラス繊維など)、難燃剤、加工性改良剤・滑材等の添加剤を更に添加してもよい。なお、これらの添加剤としては、特に制限されず、公知のものを適宜利用することができ、市販のものを利用してもよい。
以上、本発明のポリイミド溶液について説明したが、次に、本発明のフィルムについて説明する。
[ポリイミドフィルム]
本発明のポリイミドフィルムは、上記本発明のポリイミドからなるものである。このように、本発明のポリイミドフィルムは、上記本発明のポリイミドとして説明したポリイミドからなるフィルムであればよい。
また、本発明のポリイミドフィルムの厚みは特に制限されないが、1〜500μmであることが好ましく、10〜200μmであることがより好ましい。このような厚みが前記下限未満では強度が低下し取扱いが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、複数回の塗工が必要となる場合が生じたり、加工が複雑化する場合が生じる傾向にある。
このようなポリイミドフィルムの形態は、フィルム状であればよく、特に制限されず、各種形状(円盤状、円筒状(フィルムを筒状に加工したもの)等)に適宜設計することができ、前記ポリイミド溶液を用いて製造した場合には、より容易に、その設計を変更することも可能である。
このような本発明のフィルム(ポリイミドフィルム)を調製するための方法は特に制限されないが、例えば、上記本発明のポリアミド酸溶液を基材上に塗布して溶媒を除去した後、イミド化することによりポリイミドフィルムを調製する方法を採用してもよく、あるいは、上記本発明のポリイミド溶液を基材上に塗布して溶媒を除去することでポリイミドフィルムを調製する方法を採用してもよい。
このような本発明のポリイミドフィルムは、上記本発明のポリイミドからなるため、透明性、耐熱性が十分に優れたものとすることが可能であるばかりか、十分に高い硬度を有するものとすることも可能である。そのため、このような本発明のポリイミドフィルムは、例えば、フレキシブル配線基板用フィルム、液晶配向膜に用いるフィルム、有機EL用透明導電性フィルム、有機EL照明用フィルム、フレキシブル基板フィルム、フレキシブル有機EL用基板フィルム、フレキシブル透明導電性フィルム、透明導電性フィルム、有機薄膜型太陽電池用透明導電性フィルム、色素増感型太陽電池用透明導電性フィルム、フレキシブルガスバリアフィルム、タッチパネル用フィルム、フレキシブルディスプレイ用フロントフィルム、フレキシブルディスプレイ用バックフィルム、フラットパネルディテクタ用TFT基板フィルム、ポリイミドベルト、コーティング剤、バリア膜、封止材、層間絶縁材料、パッシベーション膜、TAB(Tape Automated Bonding)テープ、光導波路、カラーフィルター基材、半導体コーティング剤、耐熱絶縁テープ、電線エナメル等の用途に適宜利用できる。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[特性の評価方法について]
先ず、各実施例等において得られた化合物等の特性の評価方法について説明する。
<分子構造の同定>
各実施例等で得られたポリイミドの分子構造の同定は、赤外吸収スペクトル測定(IR測定)により行った。なお、測定には測定装置として日本分光株式会社製の商品名「FT/IR−4100」を利用した。
<全光線透過率>
全光線透過率(単位:%)は、各実施例等で得られたポリイミド(フィルム形状のポリイミド)をそのまま測定用の試料として用い、測定装置として日本電色工業株式会社製の商品名「ヘーズメーターNDH−5000」を用いて、JIS K7361−1(1997年発行)に準拠した測定を行うことにより求めた。
<ガラス転移温度(Tg)の測定>
各実施例等で得られたポリイミドのガラス転移温度(Tg)の値(単位:℃)は、測定装置として熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8311」)を用い、更に、測定試料として各実施例等で得られたポリイミドフィルムから切り出した縦20mm、横5mmの大きさの試料(かかる試料の厚みは測定値に影響するものではないため、実施例で得られたフィルムの厚みのままとした)を用いて、窒素雰囲気下、引張りモード(49mN)、昇温速度5℃/分の条件で測定を行ってTMA曲線を求め、ガラス転移に起因するTMA曲線の変曲点に対し、その前後の曲線を外挿することにより求めた。
<線膨張係数(CTE)の測定>
各実施例等で得られたポリイミドの線膨張係数(CTE)の値は、以下のようにして求めた。すなわち、先ず、測定装置として熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8311」)を用い、測定試料として各実施例等で得られたポリイミドフィルムから切り出した縦20mm、横5mmの大きさの試料(かかる試料の厚みは測定値に影響するものではないため、実施例で得られたフィルムの厚みのままとした)を用いて、窒素雰囲気下、引張りモード(49mN)、昇温速度5℃/分の条件を採用して室温から200℃まで昇温(1回目の昇温)し、30℃以下まで放冷した後に、その温度から400℃まで昇温(2回目の昇温)し、その昇温時の前記試料の縦方向の長さの変化を測定する。次いで、このような2回目の昇温時の測定(放冷時の温度から400℃まで昇温する際の測定)で得られたTMA曲線を用いて、100℃〜200℃の温度範囲における1℃あたりの長さの変化の平均値を求め、得られる値をポリイミドの線膨張係数として測定した。
(合成例1:テトラカルボン酸二無水物Aの合成)
テトラカルボン酸二無水物Aとして、下記一般式(I):
で表されるノルボルナン−2−スピロ−α−シクロペンタノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物(CpODA)を合成した。なお、このようなテトラカルボン酸二無水物A(上記一般式(I)で表される化合物)は、国際公開第2011/099518号の合成例1、実施例1及び実施例2に記載された方法に準拠して合成した。
(合成例2:テトラカルボン酸二無水物Bの合成)
テトラカルボン酸二無水物Bとして、下記一般式(II):
で表される化合物(BzDA)を合成した。なお、このようなテトラカルボン酸二無水物Bは、国際公開第2015/163314号の実施例1に記載された方法に準拠して合成した。
(合成例3:テトラカルボン酸二無水物Cの合成)
テトラカルボン酸二無水物Cとして、下記一般式(III):
で表される化合物(BNBDA)を合成した。なお、このようなテトラカルボン酸二無水物Cは、以下のようにして製造した。
すなわち、先ず、3Lナスフラスコ中に、5,5’−ビビシクロ[2.2.1]ヘプト―2−エン(BNB、557g、2.99mol)と、トルエン(1.8kg)とを加えて十分に混合することにより、均一な溶液(BNB−トルエン溶液)を得た。次に、50Lのグラスライニング製の反応釜(GL製反応釜)の内部の雰囲気ガスを窒素で置換した後、該反応釜中に、メタノール(13.1kg)、CuCl2(II)(1.65kg、12.3mol)、及びPd3(OAc)5(NO2)(3.4g、0.0149mol))を添加して混合液を得た。
次に、前記反応釜の内部を−0.08MPaGとなるまで減圧した後、該反応釜中に一酸化炭素を導入して、反応釜の内部の圧力が0.03MPaGとなるように調整した。次いで、反応釜の内部の温度を25℃にして前記混合液を4時間撹拌した後、撹拌を続けながら反応釜の内部の温度を徐々に40℃まで昇温し、40℃の温度条件で更に4時間撹拌を継続した後、前記混合液の撹拌を止めて一晩(13.5時間)静置することにより、褐色の懸濁液として反応液を得た。
次に、前記反応釜の内部から一酸化炭素を含む雰囲気ガスを除去することにより脱圧し、反応釜の内部の雰囲気ガスを窒素で置換した。次いで、反応釜の内部に窒素を流しながら温度を50度に昇温し、反応釜から排出されるガス(出口ガス)中の一酸化炭素の濃度が0ppmとなっていることを確認した。その後、反応釜の内部の温度を更に65度まで昇温することで、反応釜中の前記反応液からメタノールを留去し、固形分を得た。次に、固形分が析出した前記反応釜の内部にトルエン(20kg)を加え、前記固形分とトルエンとの混合物を得た後、該混合物からメタノールを完全に除去するために、反応釜の内部の圧力が−0.07MPaGとなるまで減圧して73℃まで昇温し、前記混合物中の溶媒を一部留去した。次いで、前記混合物中にトルエン(5.0kg)を更に加えた後、撹拌しながら80℃に昇温してろ過を行い、析出物(固形分)とろ液とを分離して回収した。次に、得られた析出物をトルエン(5.0kg)で洗い、洗液を前記ろ液に加えた。次いで、前記ろ液を加熱して80℃の温度で保持しながら、5%塩酸(1.0kg)で2回、飽和重層水(10kg)で1回、イオン交換水(10kg)で1回洗浄した。このようにして洗浄した後、得られた有機層に対してフィルターろ過を施して、洗液中に析出した固形分を除去(分離)し、有機層を得た。次いで、前記洗液中から除去した前記固形分をトルエン(5.0kg)で洗った後、その洗液を前記有機層に加えた。該有機層を50Lの前記反応釜中に再度仕込み、撹拌しながら110℃まで昇温して、トルエンを留出した後(留出したトルエンの量は23Kgであった)、加熱を止めて反応釜を除冷することにより再結晶を行い、固形分(結晶)を析出させた。このようにして得られた固形分(結晶)をろ取し、トルエン(0.6kg)で4回洗い、60℃で真空乾燥を行った。このような操作により、生成物(白色結晶:5,5’−ビ−2−ノルボルネン−5,5’,6,6’−テトラカルボン酸テトラメチルエステル:BNBTE)873gを得た。
次に、50LのGL製反応釜を窒素置換し、上記生成物(BNBTE、850g、2.01mol)、酢酸(12.2kg)、トリフルオロメタンスルホン酸(7.6g、0.050mol)を加えて混合液を得た。次に、前記混合液を113℃になるまで昇温して該温度(113℃)に維持し、反応釜中の液量が一定となるように、ポンプで酢酸を滴下しながら、蒸気(酢酸等)を留出させる工程を実施した。なお、本工程においては、蒸気の留去を開始した後、15分経過した後から、フラスコ内の液中(反応溶液中)に白色の沈殿物が生成されていることが確認された。また、本工程においては、1時間ごとに、系外に留去した留出液を質量測定とガスクロマトグラフとにより分析して反応の進行の程度を確認した。なお、このような分析により、留出液中には酢酸、酢酸メチル、水が存在することが確認された。そして、本工程において蒸気の留去を開始した後、6時間経過した後に酢酸メチルの留出が止まったことから、加熱を止めて、室温(25℃)まで除冷し、再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、酢酸(0.6kg)で1回、酢酸エチル(0.5kg)で5回洗った後に、結晶を真空乾燥した。このようにして、586gの5,5’−ビ−2−ノルボルネン−5,5’,6,6’−テトラカルボン酸−5,5’,6,6’−二無水物(上記一般式(III)で表される化合物:BNBDA)を得た。
(実施例1)
先ず、窒素雰囲気下において、50mLのスクリュー管内に、芳香族ジアミンである下記一般式(110):
で表される9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(東京化成工業株式会社製:FDA)を3.48g(10.0mmol)、及び、テトラカルボン酸二無水物である上記一般式(I)で表される化合物(テトラカルボン酸二無水物A:CpODA)を3.84g(10.0mmol)導入することにより、前記スクリュー管内に芳香族ジアミン(FDA)と前記テトラカルボン酸二無水物A(CpODA)とを導入した。
次に、前記スクリュー管内に、有機溶媒であるジメチルアセトアミド(N,N−ジメチルアセトアミド)を16.4g、有機溶媒であるγ−ブチロラクトンを12.9g、及び、反応促進剤であるトリエチルアミンを0.051g(0.50mmol)導入することにより、前記芳香族ジアミン(FDA)と、前記テトラカルボン酸二無水物A(CpODA)と、有機溶媒(N,N−ジメチルアセトアミド及びγ−ブチロラクトン)と、反応促進剤(トリエチルアミン)とを混合して混合液を得た。
次いで、このようにして得られた混合液を、窒素雰囲気下、180℃の温度条件で3時間加熱しながら撹拌することにより、粘性のある均一な淡黄色の反応液(ポリイミド溶液)を得た。このようにして、芳香族ジアミン(FDA)と前記テトラカルボン酸二無水物(CpODA)とに由来するポリイミドを加熱工程により調製し、反応液(ポリイミドの溶液)を得た。なお、このような加熱により、先ず、芳香族ジアミン(FDA)と前記テトラカルボン酸二無水物(CpODA)との反応が進行してポリアミド酸が形成され、続いて、そのイミド化が進行してポリイミドが形成されたことは明らかである。
次に、前記反応液をガラス板(縦:75mm、横50mm、厚み1.3mm)上にスピンコートすることにより、ガラス板上に塗膜を形成した。その後、前記塗膜の形成されたガラス板をオーブン中に投入し、窒素雰囲気下において、先ず、温度条件(第一温度の条件)を60℃として4時間静置し、次いで、温度条件(第二温度(焼成温度)の条件)を300℃に変更して1時間静置して塗膜を硬化せしめて、ガラス板上にポリイミドからなる薄膜(ポリイミドフィルム)がコートされたポリイミドコートガラスを得た。次に、このようにして得られたポリイミドコートガラスを、90℃の水中に0.5時間浸漬して、前記ガラス基板からポリイミドフィルムを剥離することによりポリイミドフィルムを回収し、ポリイミドからなる無色透明フィルム(ポリイミドフィルム)を得た。このようにして得られたポリイミドフィルムの膜厚は32μmであった。
なお、このようにして得られたフィルムを形成する化合物の分子構造を同定するため、IR測定機(日本分光株式会社製、商品名:FT/IR−4100)を用いて、IRスペクトルを測定したところ、イミドカルボニル及びCpODAのC=O伸縮振動が1702cm−1、1774cm−1に観察されたことから、得られたフィルムを構成する化合物はポリイミドであることが確認された。得られたポリイミドフィルムの特性の評価結果を表1に示す。
(実施例2)
芳香族ジアミンとして上記一般式(110)で表される化合物(FDA)を単独で3.48g(10.0mmol)用いる代わりに上記一般式(110)で表される化合物(FDA)1.74g(5.00mmol)と4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルビフェニル(m−Tol)1.06g(5.00mmol)の混合物を用い、ジメチルアセトアミド(N,N−ジメチルアセトアミド)の使用量を16.4gから15.4gに変更し、γ−ブチロラクトンの使用量を12.9gから11.1gに変更し、かつ、塗膜を硬化せしめる際の第二温度(焼成温度)の条件を300℃から250℃に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリイミドからなる無色透明フィルム(ポリイミドフィルム)を得た。このようにして得られたポリイミドフィルムの膜厚は70μmであった。
なお、このようにして得られたフィルムを形成する化合物の分子構造を同定するため、IR測定機(日本分光株式会社製、商品名:FT/IR−4100)を用いて、IRスペクトルを測定したところ、イミドカルボニル及びCpODAのC=O伸縮振動が1700cm−1、1774cm−1に観察されたことから、得られたフィルムを構成する化合物はポリイミドであることが確認された。また、得られたポリイミドフィルムの特性の評価結果を表1に示す。
(実施例3)
芳香族ジアミンとして上記一般式(110)で表される化合物(FDA)を単独で3.48g(10.0mmol)用いる代わりに上記一般式(110)で表される化合物(FDA)1.74g(5.00mmol)と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DDE)1.00g(5.00mmol)の混合物を用い、テトラカルボン酸二無水物である上記一般式(I)で表される化合物(テトラカルボン酸二無水物A:CpODA)を3.84g(10.0mmol)用いる代わりに、テトラカルボン酸二無水物である上記一般式(II)で表される化合物(テトラカルボン酸二無水物B:BzDA)を4.06g(10.0mmol)用い、ジメチルアセトアミド(N,N−ジメチルアセトアミド)の使用量を16.4gから8.0gに変更し、γ−ブチロラクトンの使用量を12.9gから7.9gに変更し、トリエチルアミンの使用量を0.051g(0.50mmol)から0.056g(0.55mmol)に変更し、かつ、塗膜を硬化せしめる際の第二温度(焼成温度)の条件を300℃から250℃に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリイミドからなる無色透明フィルム(ポリイミドフィルム)を得た。このようにして得られたポリイミドフィルムの膜厚は30μmであった。
なお、このようにして得られたフィルムを形成する化合物の分子構造を同定するため、IR測定機(日本分光株式会社製、商品名:FT/IR−4100)を用いて、IRスペクトルを測定したところ、1701、1772cm−1にイミドカルボニルのC=O伸縮振動が観察されたことから、得られたフィルムを構成する化合物はポリイミドであることが確認された。また、得られたポリイミドフィルムの特性の評価結果を表1に示す。
(実施例4)
芳香族ジアミンとして上記一般式(110)で表される化合物(FDA)を単独で3.48g(10.0mmol)用いる代わりに上記一般式(110)で表される化合物(FDA)1.74g(5.00mmol)と4,4’−ジアミノベンズアニリド(DABAN)1.14g(5.00mmol)の混合物を用い、テトラカルボン酸二無水物である上記一般式(I)で表される化合物(テトラカルボン酸二無水物A:CpODA)を3.84g(10.0mmol)用いる代わりに、テトラカルボン酸二無水物である上記一般式(II)で表される化合物(テトラカルボン酸二無水物B:BzDA)を4.06g(10.0mmol)用い、ジメチルアセトアミド(N,N−ジメチルアセトアミド)の使用量を16.4gから8.1gに変更し、γ−ブチロラクトンの使用量を12.9gから8.2gに変更し、トリエチルアミンの使用量を0.051g(0.50mmol)から0.055g(0.54mmol)に変更し、かつ、塗膜を硬化せしめる際の第二温度(焼成温度)の条件を300℃から250℃に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリイミドからなる無色透明フィルム(ポリイミドフィルム)を得た。このようにして得られたポリイミドフィルムの膜厚は32μmであった。
なお、このようにして得られたフィルムを形成する化合物の分子構造を同定するため、IR測定機(日本分光株式会社製、商品名:FT/IR−4100)を用いて、IRスペクトルを測定したところ、1699、1772cm−1にイミドカルボニルのC=O伸縮振動が観察されたことから、得られたフィルムを構成する化合物はポリイミドであることが確認された。また、得られたポリイミドフィルムの特性の評価結果を表1に示す。
(実施例5)
上記一般式(110)で表される化合物(FDA)の使用量を3.48g(10.0mmol)から2.09g(6.00mmol)に変更し、テトラカルボン酸二無水物である上記一般式(I)で表される化合物(テトラカルボン酸二無水物A:CpODA)を3.84g(10.0mmol)用いる代わりに、テトラカルボン酸二無水物である上記一般式(III)で表される化合物(テトラカルボン酸二無水物C:BNBDA)0.66g(2.00mmol)と1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(HPMDA:東京化成株式会社製)0.90g(4.00mmol)との混合物を用い、ジメチルアセトアミド(N,N−ジメチルアセトアミド)の使用量を16.4gから4.4gに変更し、γ−ブチロラクトンの使用量を12.9gから4.3gに変更し、かつ、塗膜を硬化せしめる際の第二温度(焼成温度)の条件を300℃から250℃に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリイミドからなる無色透明フィルム(ポリイミドフィルム)を得た。このようにして得られたポリイミドフィルムの膜厚は32μmであった。
なお、このようにして得られたフィルムを形成する化合物の分子構造を同定するため、IR測定機(日本分光株式会社製、商品名:FT/IR−4100)を用いて、IRスペクトルを測定したところ、1702、1774cm−1にイミドカルボニルのC=O伸縮振動が観察されたことから、得られたフィルムを構成する化合物はポリイミドであることが確認された。また、得られたポリイミドフィルムの特性の評価結果を表1に示す。
(比較例1)
テトラカルボン酸二無水物として上記一般式(I)で表される化合物(テトラカルボン酸二無水物A:CpODA)の代わりに1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(HPMDA:東京化成株式会社製)を2.24g(10.0mmol)用い、ジメチルアセトアミド(N,N−ジメチルアセトアミド)の使用量を16.4gから11.7gに変更し、γ−ブチロラクトンの使用量を12.9gから11.1gに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリイミドフィルムの調製を試みたが、得られたフィルムは脆く、フィルム形状を十分に維持できず、各種分析に使用できなかった(フィルムが脆く特性を評価できなかった)。
(比較例2)
芳香族ジアミンとして上記一般式(110)で表される化合物(FDA)を単独で3.48g(10.0mmol)用いる代わりにビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS:東京化成株式会社製)を4.32g(10.0mmol)用い、ジメチルアセトアミド(N,N−ジメチルアセトアミド)の使用量を16.4gから18.5gに変更し、γ−ブチロラクトンの使用量を12.9gから11.1gに変更し、かつ、塗膜を硬化せしめる際の第二温度(焼成温度)の条件を300℃から250℃に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリイミドからなる無色透明フィルム(ポリイミドフィルム)を得た。このようにして得られたポリイミドフィルムの膜厚は31μmであった。
なお、このようにして得られたフィルムを形成する化合物の分子構造を同定するため、IR測定機(日本分光株式会社製、商品名:FT/IR−4100)を用いて、IRスペクトルを測定したところ、イミドカルボニル及びCpODAのC=O伸縮振動が1702cm−1、1774cm−1に観察されたことから、得られたフィルムを構成する化合物はポリイミドであることが確認された。また、得られたポリイミドフィルムの特性の評価結果を表1に示す。
(比較例3)
テトラカルボン酸二無水物である上記一般式(I)で表される化合物(テトラカルボン酸二無水物A:CpODA)を3.84g(10.0mmol)用いる代わりに、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物(H−BPDA:LEAPChem製)を2.24g(10.0mmol)用い、ジメチルアセトアミド(N,N−ジメチルアセトアミド)の使用量を16.4gから12.7gに変更し、γ−ブチロラクトンの使用量を12.9gから6.7gに変更し、かつ、塗膜を硬化せしめる際の第二温度(焼成温度)の条件を300℃から250℃に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリイミドからなる無色透明フィルム(ポリイミドフィルム)を得た。このようにして得られたポリイミドフィルムの膜厚は33μmであった。
なお、このようにして得られたフィルムを形成する化合物の分子構造を同定するため、IR測定機(日本分光株式会社製、商品名:FT/IR−4100)を用いて、IRスペクトルを測定したところ、1703、1778cm−1にイミドカルボニルのC=O伸縮振動が観察されたことから、得られたフィルムを構成する化合物はポリイミドであることが確認された。また、得られたポリイミドフィルムの特性の評価結果を表1に示す。
(比較例4)
テトラカルボン酸二無水物として上記一般式(I)で表される化合物(テトラカルボン酸二無水物A:CpODA)の代わりに1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA:東京化成株式会社製)を1.96g(10.0mmol)用い、ジメチルアセトアミド(N,N−ジメチルアセトアミド)の使用量を16.4gから6.4gに変更し、γ−ブチロラクトンの使用量を12.9gから6.4gに変更し、トリエチルアミンの使用量を0.051g(0.50mmol)から0.055g(0.54mmol)に変更した以外は実施例1で採用している方法と同様の方法を採用してポリイミドフィルムの製造を試みたものの、混合液を得た後、これを利用して反応液(ポリイミド溶液:塗膜を形成する際に利用する反応液)を調製する工程において、前記混合液を窒素雰囲気下、180℃の温度条件で3時間加熱させたところ、白色の沈殿物が生じ、均一な反応液(ワニス)を調製することができなかった。このように、CpODAの代わりにCBDAを用いた場合には、CBDA由来のポリイミドの反応溶媒に対する溶解性が低いため、そもそも製膜するためのワニスを得ることができず、塗膜を形成することができなかった。
(比較例5)
芳香族ジアミンとして上記一般式(110)で表される化合物(FDA)を単独で3.48g(10.0mmol)用いる代わりに2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(TFMB:セイカ株式会社製)を3.20g(10.0mmol)用い、テトラカルボン酸二無水物である上記一般式(I)で表される化合物(テトラカルボン酸二無水物A:CpODA)を3.84g(10.0mmol)用いる代わりに、テトラカルボン酸二無水物である上記一般式(II)で表される化合物(テトラカルボン酸二無水物B:BzDA)4.06g(10.0mmol)を用い、ジメチルアセトアミド(N,N−ジメチルアセトアミド)の使用量を16.4gから8.5gに変更し、γ−ブチロラクトンの使用量を12.9gから8.5gに変更し、かつ、塗膜を硬化せしめる際の第二温度(焼成温度)の条件を300℃から250℃に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリイミドからなる無色透明フィルム(ポリイミドフィルム)を得た。このようにして得られたポリイミドフィルムの膜厚は23μmであった。
なお、このようにして得られたフィルムを形成する化合物の分子構造を同定するため、IR測定機(日本分光株式会社製、商品名:FT/IR−4100)を用いて、IRスペクトルを測定したところ、1710、1778cm−1にイミドカルボニルのC=O伸縮振動が観察されたことから、得られたフィルムを構成する化合物はポリイミドであることが確認された。また、得られたポリイミドフィルムの特性の評価結果を表1に示す。
(比較例6)
窒素雰囲気下にて、スクリュー菅にテトラカルボン酸二無水物である上記一般式(III)で表される化合物(テトラカルボン酸二無水物C:BNBDA)5.95g(18.0mmol)と4,4‘−ジアミノジフェニルエーテル(DDE、東京化学工業製)3.61g(18.0mmol)、N,N’−ジメチルアセトアミドを38.2g加え、室温で10h撹拌した。粘ちょうな均一の溶液(ワニス)が得られた。次に、前記反応液をガラス板(縦:100mm、横100mm、厚み1.0mm)上にスピンコートすることにより、ガラス板上に塗膜を形成した。その後、前記塗膜の形成されたガラス板をオーブン中に投入し、窒素雰囲気下において、先ず、温度条件(第一温度の条件)を60℃として4時間静置し、次いで、温度条件(第二温度(焼成温度)の条件)を350℃に変更して1時間静置して塗膜を硬化せしめて、ガラス板上にポリイミドからなる薄膜(ポリイミドフィルム)がコートされたポリイミドコートガラスを得た。次に、このようにして得られたポリイミドコートガラスを、90℃の水中に0.5時間浸漬して、前記ガラス基板からポリイミドフィルムを剥離することによりポリイミドフィルムを回収し、ポリイミドからなる無色透明フィルム(ポリイミドフィルム)を得た。このようにして得られたポリイミドフィルムの膜厚は9μmであった。
なお、このようにして得られたフィルムを形成する化合物の分子構造を同定するため、IR測定機(日本分光株式会社製、商品名:FT/IR−4100)を用いて、IRスペクトルを測定したところ、1701、1774cm−1にイミドカルボニルのC=O伸縮振動が観察されたことから、得られたフィルムを構成する化合物はポリイミドであることが確認された。また、得られたポリイミドフィルムの特性の評価結果を表1に示す。
表1に示す結果からも明らかなように、テトラカルボン酸二無水物A(CpODA)と、上記一般式(110)で表される化合物(9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン:FDA)を含む芳香族ジアミンとを反応させることにより得られた実施例1〜2に記載のポリイミド(なお、実施例1〜2において、上記繰り返し単位(A1)を有する本発明のポリイミドが形成されていることは、利用した化合物の種類等から明白である。)においてはいずれもガラス転移温度(Tg)が465℃以上であることが確認された。
これに対して、上記テトラカルボン酸二無水物A〜C以外のテトラカルボン酸二無水物である1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(HPMDA)を用いた場合(比較例1)には、フィルムの調製を試みても調製物は脆いものとなり、フィルム形状を十分に維持できなかったため、ガラス転移温度(Tg)の測定はできなかった。
また、上記テトラカルボン酸二無水物A〜C以外のテトラカルボン酸二無水物である1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)を用いた場合(比較例4)においては、そもそも製膜に利用する反応液(ワニス)を調製できず、フィルムを得ることができなかった。さらに、上記テトラカルボン酸二無水物A〜C以外のテトラカルボン酸であるジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物(H−BPDA)を用いた場合(比較例3)にはポリイミドのガラス転移温度(Tg)が349℃となっていた。
また、芳香族ジアミンとして上記一般式(110)で表される化合物(9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン:FDA)以外のものを用い、テトラカルボン酸二無水物A(CpODA)とビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)とを反応させることによりポリイミドを形成した場合(比較例2)にはポリイミドのガラス転移温度(Tg)が339℃と十分に高い値となっていたが、上記繰り返し単位(A1)を有する本発明のポリイミド(実施例1〜2)においてはいずれもガラス転移温度(Tg)が465℃以上となっていることから、本発明のポリイミドによれば、更に高い水準の耐熱性が得られることが分かった。
このような結果から、上記繰り返し単位(A1)を含有する本発明のポリイミド(実施例1〜2)によれば、ガラス転移温度を基準とした耐熱性を更に高い水準のものとすることが可能となることが分かった。
また、表1に示す結果からも明らかなように、テトラカルボン酸二無水物B(BzDA)と、上記一般式(110)で表される化合物(FDA)を含む芳香族ジアミンとを反応させることにより得られた実施例3〜4に記載のポリイミド(なお、実施例3〜4において、上記繰り返し単位(B1)を有する本発明のポリイミドが形成されていることは、利用した化合物の種類等から明白である。)はいずれも、ガラス転移温度(Tg)が386℃以上であることが確認された。これに対して、テトラカルボン酸二無水物B(BzDA)を用いつつ、上記一般式(110)で表される化合物(FDA)以外の芳香族ジアミンである2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(TFMB)を用いた場合(比較例5)には、ポリイミドのガラス転移温度(Tg)が347℃(比較例5)となっていた。さらに、上記テトラカルボン酸二無水物A〜C以外のテトラカルボン酸二無水物を利用した場合(比較例1、3、4)には、ガラス転移温度(Tg)が349℃以下となっていた(一部は測定不能となっていた)。このような実施例3〜4と比較例1、3〜5との対比結果から、上記繰り返し単位(B1)を含有する本発明のポリイミド(実施例3〜4)によれば、ガラス転移温度を基準とした耐熱性を更に高い水準のものとすることが可能となることが分かった。
また、表1に示す結果からも明らかなように、テトラカルボン酸二無水物C(BNBDA)を含むテトラカルボン酸無水物と、上記一般式(110)で表される化合物(FDA)を反応させることにより得られた実施例5に記載のポリイミド(なお、実施例5において、上記繰り返し単位(C1)を有する本発明のポリイミドが形成されていることは、利用した化合物の種類等から明白である。)はガラス転移温度(Tg)が451℃であることが確認された。これに対して、テトラカルボン酸二無水物C(BNBDA)と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DDE)とを反応させることによりポリイミドを形成した場合(比較例6)には、ポリイミドのガラス転移温度(Tg)が348℃(比較例6)となっていた。さらに、上記テトラカルボン酸二無水物A〜C以外のテトラカルボン酸二無水物を利用した場合(比較例1、3、4)には、ガラス転移温度(Tg)が349℃以下となっていた(一部は測定不能となっていた)。このような実施例5と、比較例1、3〜4及び6との対比結果から、上記繰り返し単位(C1)を含有する本発明のポリイミド(実施例5)によれば、ガラス転移温度を基準とした耐熱性を更に高い水準のものとすることが可能となることが分かった。
このように、上記繰り返し単位(A1)〜(C1)のうちのいずれか1種の繰り返し単位を含有する本発明のポリイミド(実施例1〜5)はいずれもガラス転移温度(Tg)が386℃以上となっているのに対して、比較例1〜6で得られたポリイミドはいずれもガラス転移温度(Tg)が349℃以下となっており(一部は測定不能となっており)、本発明のポリイミド(実施例1〜5)によってガラス転移温度を基準とした耐熱性を更に高い水準のものとすることが可能となることが確認された。
また、表1の記載からも明らかなように、本発明のポリイミド(実施例1〜5)はいずれも、全光線透過率が89%以上であり、透明性が十分に高いことが確認されるとともに、線膨張係数(CTE)が61ppm/K以下(なお、実施例1〜2及び実施例5においては、48ppm/K以下)と十分に低い値となっていることが確認された。
以上のような結果から、本発明のポリイミド(実施例1〜5)は、十分に高い透明性を有しつつ、ガラス転移温度を基準とした耐熱性を更に高い水準のものとすることができ、また、線膨張係数(CTE)も十分に低い値とすることが可能であることから、例えば、ガラスの代替用途(各種基板等)に好適に利用することが可能な材料であることが分かった。