JP2018172669A - ポリアミドイミド、樹脂溶液、及び、フィルム - Google Patents

ポリアミドイミド、樹脂溶液、及び、フィルム Download PDF

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大輔 渡部
亜紗子 京武
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亜紗子 京武
貴大 長谷川
Takahiro Hasegawa
貴大 長谷川
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Abstract

【課題】十分に高度な透明性を有しつつ硬度をより高い水準のものとすることを可能とするポリアミドイミドを提供すること。
【解決手段】繰り返し単位(1)と、繰り返し単位(3)(ただし図中Rは2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン由来の骨格)とを含有するポリアミドイミド。


【選択図】なし

Description

本発明は、ポリアミドイミド、樹脂溶液、並びに、フィルムに関する。
近年、軽くて柔軟な素材としてポリイミド等の樹脂素材が着目されている。このようなポリイミドとしては、例えば、国際公開第2011/099518号(特許文献1)において、特定の一般式で記載される繰り返し単位を有するポリイミドが開示されている。なお、このような特許文献1に記載のようなポリイミドは光透過性等の点で優れた特性を有するものであった。
国際公開第2011/099518号
しかしながら、上記特許文献1に記載のようなポリイミドにおいても硬度をより向上させるといった点では必ずしも十分なものではなかった。
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、十分に高度な透明性を有しつつ硬度をより高い水準のものとすることを可能とするポリアミドイミド、そのポリアミドイミドを含有する樹脂溶液、及び、そのポリアミドイミドを用いたフィルムを提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、下記繰り返し単位(A)と、下記繰り返し単位(B)とを含有するポリアミドイミドにより、十分に高度な透明性を有しつつ硬度をより高い水準のものとすることが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のポリアミドイミドは、下記一般式(1):
[式(1)中、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基及びフッ素原子よりなる群から選択される1種を示し、Rは下記一般式(2):
で表されるアリーレン基を示し、nは0〜12の整数を示す。]
で表される繰り返し単位の中から選択される少なくとも1種の繰り返し単位(A)と、
下記一般式(3):
[Rは上記一般式(2)で表されるアリーレン基を示す。]
で表される繰り返し単位の中から選択される少なくとも1種の繰り返し単位(B)と、
を含有することを特徴とするものである。
上記本発明のポリアミドイミドにおいては、下記一般式(4)〜(5):
[式(4)及び(5)中、Rは上記一般式(2)で表されるアリーレン基を示す。]
で表される繰り返し単位の中から選択される少なくとも1種の繰り返し単位(C)を更に含有することが好ましい。
また、上記本発明のポリアミドイミドにおいては、下記一般式(6)〜(8):
[式(6)中、Xは炭素数が4〜16の4価の飽和脂環式炭化水素基を示し、式(8)中、Aは置換基を有していてもよくかつ芳香環を形成する炭素原子の数が6〜30である2価の芳香族基よりなる群から選択される1種を示し、Rはそれぞれ独立に、水素原子及び炭素数1〜10のアルキル基よりなる群から選択される1種を示し、式(6)〜(8)中、Rは上記一般式(2)で表されるアリーレン基を示す。]
で表される繰り返し単位の中から選択される少なくとも1種の繰り返し単位(D)を更に含有することが好ましい。
本発明の樹脂溶液は、上記本発明のポリアミドイミドと有機溶媒とを含むことを特徴とするものである。また、本発明のフィルムは、上記本発明のポリアミドイミドからなることを特徴とするものである。
本発明によれば、十分に高度な透明性を有しつつ硬度をより高い水準のものとすることを可能とするポリアミドイミド、そのポリアミドイミドを含有する樹脂溶液、及び、そのポリアミドイミドを用いたフィルムを提供することが可能となる。
実施例1で得られたフィルムのIRスペクトルのグラフである。 比較例1で得られたフィルムのIRスペクトルのグラフである。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
[ポリアミドイミド]
本発明のポリアミドイミドは、上記一般式(1)で表される繰り返し単位の中から選択される少なくとも1種の繰り返し単位(A)と、上記一般式(3)で表される繰り返し単位の中から選択される少なくとも1種の繰り返し単位(B)とを含有することを特徴とするものである。
〈繰り返し単位(A)〉
本発明のポリアミドイミドが含有する繰り返し単位(A)は、上記一般式(1)で表される繰り返し単位の中から選択される少なくとも1種の繰り返し単位である。なお、かかる一般式(1)において、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基及びフッ素原子よりなる群から選択される1種であり、nは0〜12の整数であり、Rは上記一般式(2)で表されるアリーレン基である。
このような一般式(1)中のR、R、Rとして選択され得るアルキル基は、炭素数が1〜10のアルキル基である。このような炭素数が10を超えるとガラス転移温度が低下し十分に高度な耐熱性が達成できなくなる。また、このようなR、R、Rとして選択され得るアルキル基の炭素数としては、精製がより容易となるという観点から、1〜6であることが好ましく、1〜5であることがより好ましく、1〜4であることが更に好ましく、1〜3であることが特に好ましい。また、このようなR、R、Rとして選択され得るアルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。更に、このようなアルキル基としては精製の容易さの観点から、メチル基、エチル基がより好ましい。
前記一般式(1)中のR、R、Rとしては、ポリアミドイミドを製造した際に、より高度な耐熱性が得られるという観点から、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であることがより好ましく、中でも、原料の入手が容易であることや精製がより容易であるという観点から、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基又はイソプロピル基であることがより好ましく、水素原子又はメチル基であることが特に好ましい。また、このような式中の複数のR、R、Rは精製の容易さ等の観点から、同一のものであることが特に好ましい。
また、前記一般式(1)中のnは0〜12の整数を示す。このようなnの値が前記上限を超えると、精製が困難になる。また、このような一般式(1)中のnの数値範囲の上限値は、より精製が容易となるといった観点から、5であることがより好ましく、3であることが特に好ましい。また、このような一般式(1)中のnの数値範囲の下限値は、原料化合物の安定性の観点から、1であることがより好ましく、2であることが特に好ましい。このように、一般式(1)中のnとしては、2〜3の整数であることが特に好ましい。
また、前記一般式(1)中のRは上記一般式(2)で表されるアリーレン基である。このようなアリーレン基は、例えば、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)を用いて導入することができる。この場合、RはTFMBから2つのアミノ基(−NH)を除いた残基となる。
このような繰り返し単位(A)は、下記一般式(11):
で表される化合物(なお、式(11)中、R、R、R、nは前記一般式(1)中のR、R、R、nと同義である(その好適なものも前記一般式(1)中のR、R、R、nと同義である)。)の中から選択される少なくとも1種と、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB:2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル[芳香族ジアミン])とに基づいて形成することができる。
また、このような一般式(11)で表される化合物を製造するための方法としては特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、国際公開第2011/099517号に記載の方法や国際公開第2011/099518号に記載の方法等を採用してもよい。また、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)を製造するための方法としては特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。また、このようなTFMBとしては市販のものを適宜用いてもよい。
〈繰り返し単位(B)〉
本発明のポリアミドイミドが含有する繰り返し単位(B)は、上記一般式(3)で表される繰り返し単位の中から選択される少なくとも1種の繰り返し単位である。なお、かかる一般式(3)において、Rは上記一般式(2)で表されるアリーレン基である。このような式(2)中のRは、前記一般式(1)中のRと同義である。
このような繰り返し単位(B)は、テレフタロイロクロリド(TPC:1,4−ベンゼンジカルボン酸ジクロリド)と、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)とに基づいて形成することができる。なお、このようなテレフタロイロクロリド(TPC)を製造するための方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用できる。また、このようなTPCとしては市販のものを適宜用いてもよい。
〈ポリアミドイミド〉
本発明のポリアミドイミドは、上述のような繰り返し単位(A)と、繰り返し単位(B)とを含有するものである。このようなポリアミドイミドにおいては、上述のような繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)の含有比率はモル比([繰り返し単位(A)]:[繰り返し単位(B)]で、10:90〜70:30であることが好ましく、20:80〜80:20であることがより好ましい。このようなモル比において前記繰り返し単位(A)の比率が前記下限未満では靱性、耐熱性、折り曲げ性といった特性が低下する傾向にあり、他方、前記繰り返し単位(A)の比率が前記上限を超えると硬度が低下する傾向にある。
また、このようなポリアミドイミドにおいては、繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)の総量が、全繰り返し単位中、モル比で65〜90モル%含有していることが好ましく、75〜90モル%であることが好ましい。このような繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)の総量が前記下限未満では透明性、耐熱性、硬度の物性バランスを十分な水準に保てなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると溶剤可溶性を損なう傾向にある。
また、本発明のポリアミドイミドは、硬度がより向上するといった観点から、上記一般式(4)〜(5)で表される繰り返し単位の中から選択される少なくとも1種の繰り返し単位(C);及び、上記一般式(6)〜(8)で表される繰り返し単位の中から選択される少なくとも1種の繰り返し単位(D);のうちの少なくとも少なくとも1種を更に含有するものが好ましく、繰り返し単位(C)及び繰り返し単位(D)の双方を含有することがより好ましい。以下、このような繰り返し単位(C)及び(D)について説明する。
〈繰り返し単位(C)〉
本発明のポリアミドイミドにおいては、前述のように、上記繰り返し単位(C)を更に含有することが好ましい。このような繰り返し単位(C)は、上記一般式(4)〜(5)で表される繰り返し単位の中から選択される少なくとも1種の繰り返し単位である。なお、かかる一般式(4)〜(5)において、Rは上記一般式(2)で表されるアリーレン基である。このような式(4)〜(5)中のRは、前記一般式(1)中のRと同義である。
このような繰り返し単位(C)に関して、上記一般式(4)で表される繰り返し単位は、ピロメリット酸無水物(PMDA)と、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)とに基づいて形成することができる。また、上記一般式(5)で表される繰り返し単位は、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)と、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)とに基づいて形成することができる。なお、このようなテレフタロイロクロリド(PMDA)や3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)を製造するための方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用できる。また、このようなPMDA、s−BPDAとしては、市販のものを適宜用いてもよい。
〈繰り返し単位(D)〉
本発明のポリアミドイミドにおいては、前述のように、上記繰り返し単位(D)を更に含有することが好ましい。このような繰り返し単位(D)は、上記一般式(6)〜(8)で表される繰り返し単位の中から選択される少なくとも1種の繰り返し単位(D)を更に含有することが好ましい。なお、上記一般式(6)中、Xは炭素数が4〜16の4価の飽和脂環式炭化水素基であり、上記一般式(8)中、Aは置換基を有していてもよくかつ芳香環を形成する炭素原子の数が6〜30である2価の芳香族基よりなる群から選択される1種であり、Rはそれぞれ独立に水素原子及び炭素数1〜10のアルキル基よりなる群から選択される1種である。また、上記一般式(6)〜(8)中、Rは上記一般式(2)で表されるアリーレン基である。このような式(6)〜(8)中のRは、前記一般式(1)中のRと同義である。
このような一般式(6)中のXは、炭素数が4〜16の4価の飽和脂環式炭化水素基である。このようなXとして選択され得る飽和脂環式炭化水素基の炭素数としては、得られるポリアミドイミドの溶媒に対する良溶解性という観点から、4〜8であることが好ましく、4〜6であることがより好ましい。
このようなXとして選択され得る、炭素数が4〜16の飽和脂環式炭化水素基としては、単環のシクロアルカンが好ましく、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサンの中から選択される1種がより好ましく、下記一般式(12)〜(14):
で表される基の中から選択される1種が更に好ましい。また、このようなXとして選択され得る、炭素数が4〜16の飽和脂環式炭化水素基としては、ノルボルナン環の構造を有するものも好適に利用できる。
上記一般式(8)中のAは、置換基を有していてもよい2価の芳香族基であり、該芳香族基中に含まれる芳香環を形成する炭素の数(なお、ここにいう「芳香環を形成する炭素の数」とは、その芳香族基が炭素を含む置換基(炭化水素基など)を有している場合、その置換基中の炭素の数は含まず、芳香族基中の芳香環が有する炭素の数のみをいう。例えば、2−エチル−1,4−フェニレン基の場合、芳香環を形成する炭素の数は6となる。)が6〜30のものである。このように、一般式(8)中のAは、置換基を有していてもよく、かつ、炭素数が6〜30の芳香環を有する2価の基(2価の芳香族基)である。このような芳香環を形成する炭素の数が前記上限を超えると一般式(8)の酸二無水物を原料として得られるポリアミドイミドが着色する傾向となる。また、透明性及び精製の容易さの観点からは、前記2価の芳香族基の芳香環を形成する炭素の数は、6〜18であることがより好ましく、6〜12であることが更に好ましい。
また、このような2価の芳香族基としては、上記炭素の数の条件を満たすものであればよく、特に制限されないが、例えば、ベンゼン、ナフタレン、ターフェニル、アントラセン、フェナントレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ビフェニル、ターフェニル、クオターフェニル、キンクフェニル等の芳香族系の化合物から2つの水素原子が脱離した残基(なお、このような残基としては、脱離する水素原子の位置は特に制限されないが、例えば、1,4−フェニレン基、2,6−ナフチレン基、2,7−ナフチレン基、4,4’−ビフェニレン基、9,10−アントラセニレン基等が挙げられる。);及び該残基中の少なくとも1つの水素原子が置換基と置換した基(例えば、2,5−ジメチル−1,4−フェニレン基、2,3,5,6−テトラメチル−1,4−フェニレン基)等を適宜利用することができる。なお、このような残基において、前述のように、脱離する水素原子の位置は特に制限されず、例えば、前記残基がフェニレン基である場合においてはオルト位、メタ位、パラ位のいずれの位置であってもよい。
このような2価の芳香族基としては、耐熱性がより優れたものとなるといった観点からは、置換基を有していてもよいフェニレン基、置換基を有していてもよいビフェニレン基、置換基を有していてもよいナフチレン基、置換基を有していてもよいアントラセニレン基、置換基を有していてもよいターフェニレン基が好ましく、それぞれ置換基を有していてもよい、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、ターフェニレン基がより好ましく、それぞれ置換基を有していてもよい、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基が更に好ましい。
また、一般式(8)中のAにおいて、前記2価の芳香族基が有していてもよい置換基としては、特に制限されず、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。このような2価の芳香族基が有してよい置換基の中でも、ポリアミドイミドの溶媒への溶解性がより優れたものとなり、より高度な加工性が得られるといった観点からは、炭素数が1〜10のアルキル基、炭素数が1〜10のアルコキシ基がより好ましい。このような置換基として好適なアルキル基及びアルコキシ基の炭素数が10を超えると、ポリアミドイミドの耐熱性が低下する傾向にある。また、このような置換基として好適なアルキル基及びアルコキシ基の炭素数は、ポリアミドイミドを製造した際に、より高度な耐熱性が得られるという観点から、1〜6であることが好ましく、1〜5であることがより好ましく、1〜4であることが更に好ましく、1〜3であることが特に好ましい。また、このような置換基として選択され得るアルキル基及びアルコキシ基はそれぞれ直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
また、前記一般式(8)中のRとして選択され得るアルキル基は、炭素数が1〜10のアルキル基である。このような炭素数が10を超えると、ポリアミドイミドのモノマーとして用いた場合に、得られるポリアミドイミドの耐熱性が低下する。また、このようなRとして選択され得るアルキル基の炭素数としては、ポリアミドイミドを製造した際により高度な耐熱性が得られるという観点から、1〜6であることが好ましく、1〜5であることがより好ましく、1〜4であることが更に好ましく、1〜3であることが特に好ましい。また、このようなRとして選択され得るアルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
前記一般式(8)中の複数のRとしては、ポリアミドイミドを製造した際により高度な耐熱性が得られること、原料の入手が容易であること、精製がより容易であること、等といった観点から、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基であることがより好ましく、水素原子、メチル基であることが特に好ましい。また、このような式中の複数のRは、それぞれ、同一のものであってもあるいは異なるものであってもよいが、精製の容易さ等の観点からは、同一のものであることが好ましい。また、一般式(8)において同一の炭素元素に結合している2つのRのうちの少なくとも一方が水素原子であることが好ましい。
上記一般式(6)で表される繰り返し単位は、下記一般式(15):
[式中のXは一般式(6)中のXと同義である(その好適なものも同様である)。]
で表される化合物のうちの少なくとも1種と、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)とに基づいて形成することができる。
このような一般式(15)で表される化合物としては、例えば、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(HPMDA)、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ヘキサヒドロ−1H,3H−4,8−メタノベンゾ[1,2−c:4,5−c’]ジフラン−1,3,5,7−テトラオン(BHDA)、ヘキサヒドロ−1H,3H−4,8−エタノベンゾ[1,2−c:4,5−c’]ジフラン−1,3,5,7−テトラオン(BODA)、デカヒドロ−1H,3H−4,10:5,9−ジメタノナフト[2,3−c:6,7−c’]ジフラン−1,3,6,8−テトラオン(DNDA)、ドデカヒドロ−[5,5’−ビイソベンゾフラン]−1,1’,3,3’−テトラオン、国際公開2017/030019号に記載のテトラカルボン酸二無水物(例えば、5,5’−ビス−2−ノルボルネン−5,5’,6,6’−テトラカルボン酸−5,5’,6,6’−二無水物[BNBDA])等が挙げられる。これらの化合物を製造するための方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。また、これらの化合物としては市販品を適宜利用してもよい。なお、上記一般式(15)で表される化合物として、例えば、上記BNBDAを利用した場合、上記一般式(6)中のXをノルボルナン環の構造を有するものとすることができる。
また、上記一般式(7)で表される繰り返し単位は、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)と、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)とに基づいて形成することができる。4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)を製造するための方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。また、このような6FDAとしては市販品を適宜利用してもよい。
さらに、上記一般式(8)で表される繰り返し単位は、下記一般式(16):
[式中のA、Rはそれぞれ上記一般式(8)中のA、Rと同義である(その好適なものも同様である)。]
で表される化合物のうちの少なくとも1種と、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)とに基づいて形成することができる。このような一般式(16)で表される化合物を製造するための方法としては、特に制限されず、公知の方法を適宜採用でき、例えば、国際公開第2015/163314号に記載されている方法を適宜採用してもよい。
以上、繰り返し単位(C)及び(D)について説明したが、このようなポリアミドイミドにおいては、本発明の効果を損なわない範囲において、更に、他の繰り返し単位を含んでいてもよい。このような他の繰り返し単位としては、特に制限されず、ポリアミドイミドの繰り返し単位として利用できる公知の繰り返し単位等が挙げられる。
このような他の繰り返し単位としては、例えば、上記繰り返し単位(A)〜(D)を形成するために利用可能な化合物として説明したもの以外の他のテトラカルボン酸二無水物(酸成分)と、ジアミン化合物(塩基成分、TFMBとTFMB以外の他のジアミン化合物とからなるジアミン類のうちの少なくとも1種)とに基づいて形成される他の繰り返し単位;テトラカルボン酸二無水物(酸成分、上記繰り返し単位(A)〜(D)を形成するために利用可能な化合物とそれらの化合物以外の他のテトラカルボン酸二無水物とからなるテトラカルボン酸二無水物類のうちの少なくとも1種)とTFMB以外の他のジアミン化合物(塩基成分)とに基づいて形成される他の繰り返し単位;TPC以外のポリアミド形成用のモノマー(酸成分)と、ジアミン化合物(塩基成分、TFMBとTFMB以外の他のジアミン化合物とからなるジアミン類のうちの少なくとも1種)とに基づいて形成される他の繰り返し単位;等が挙げられる。
このような他のテトラカルボン酸二無水物としては特に制限されず、公知のものを適宜利用でき、例えば、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、オキシジフタル酸無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホキシド二無水物、チオジフタル酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物や9,9−ビス[4−(3,4’−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン二無水物、2,2−ビス[4−(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物等が挙げられ、中でも、樹脂の加工性の観点からは、2,3,3’4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス[4−(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物を利用することが好ましく、他方、透明性の観点からは、オキシジフタル酸無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物や9,9−ビス[4−(3,4’−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン二無水物を利用することが好ましい。
また、前記他のジアミン化合物としては特に制限されず、公知のものを適宜利用でき、例えば、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、3,3’−ジアミノジフェニルエタン、3,3’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、p−ジアミノベンゼン、m−ジアミノベンゼン、o−ジアミノベンゼン、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルビフェニル,3,3’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジアミノビフェニル、3,4’−ジアミノビフェニル、2,6−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチル−エチリデン)]ビスアニリン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチル−エチリデン)]ビスアニリン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ジアミノベンズアニリド、o−トリジンスルホン、2,3,5,6−テトラメチル−1,4−フェニレンジアミン、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン、1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン、4,4’−ジアミノトリフェニルアミン、1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ピペラジン、2−フェノキシ−1,4−ジアミノベンゼン、ビス(4−アミノフェニル)テレフタレート、N,N−ビス(4−アミノフェニル)テレフタルアミド、ビス(4−アミノフェニル)[1,1’−ビフェニル]−4、4’−ジカルボキシレート、4,4’’−ジアミノ−p−テルフェニル、N,N’−ビス(4−アミノベンゾイル)−p−フェニレンジアミン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、4−アミノフェニル−4−アミノベンゾエート、[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジイル ビス(4−アミノベンゾエート)等が挙げられる。このような他のジアミン化合物の中でも、靱性向上の観点からは、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホンを利用することが好ましく、また、低線膨張係数の観点からは、4,4’−ジアミノベンズアニリド、p−ジアミノベンゼン、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルビフェニルを利用することが好ましく、更に、樹脂の加工性の観点からは、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、m−ジアミノベンゼン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパンを利用することが好ましい。
さらに、前記TPC以外のポリアミド形成用のモノマー(酸成分)としては特に制限されず、公知のものを適宜利用でき、例えば、2−クロロテレフタル酸ジクロライド、イソフタル酸ジクロライド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジクロライド、4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド、4,4’’−ターフェニルジカルボニルクロライド、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸クロライド、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸クロライド、2,6−デカリンジカルボン酸クロライド等の酸ジクロライド、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’’−ターフェニルジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、2,6−デカリンジカルボン酸等のジカルボン酸等が挙げられ、反応性の観点から、酸ジクロライドを使用することが好ましい。酸ジクロライドの中でも、樹脂の加工性の観点からは、イソフタル酸ジクロライドを利用することが好ましく、他方、耐熱性の観点からは、4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド、4,4’’−ターフェニルジカルボニルクロライドを利用することが好ましい。
また、本発明のポリアミドイミドにおいては、前記繰り返し単位(A)、前記繰り返し単位(B)、前記繰り返し単位(C)及び前記繰り返し単位(D)の総量(前記繰り返し単位(A)〜(D)の総量)が、全繰り返し単位に対して、モル比で90モル%以上であることが好ましく、95〜100モル%であることがより好ましく、98〜100モル%であることが更に好ましい。このような繰り返し単位(A)〜(D)の総量(合計量)が前記下限未満ではポリアミドイミドの透明性、高耐熱性、溶媒に対する良溶解性、高硬度のバランスが損なわれる傾向にある。なお、ここにいう「繰り返し単位(A)〜(D)の総量」とは、これらの繰り返し単位の合計量をいい、例えば、繰り返し単位として繰り返し単位(C)を含有しない場合には繰り返し単位(A)、(B)及び(D)の合計量をいい、繰り返し単位として繰り返し単位(D)を含有しない場合には繰り返し単位(A)、(B)、(C)の合計量をいい、繰り返し単位として繰り返し単位(C)及び(D)の双方を含有しない場合には繰り返し単位(A)及び(B)の合計量をいう。
また、本発明のポリアミドイミドにおいては、前記繰り返し単位(A)の含有量は、前記繰り返し単位(A)〜(D)の総量に対するモル比で4〜70モル%であることが好ましく、6〜55モル%であることがより好ましく、9〜45モル%であることが更に好ましい。このような繰り返し単位(A)の含有量が前記下限未満ではポリアミドイミドの透明性、耐熱性、硬度の物性バランスが損なわれる傾向にあり、他方、前記上限を超えるとポリアミドイミドの溶媒に対する溶解性が低下する傾向にある。
また、本発明のポリアミドイミドにおいては、前記繰り返し単位(B)の含有量は、前記繰り返し単位(A)〜(D)の総量に対するモル比で20〜80モル%であることが好ましく、40〜80モル%であることがより好ましく、50〜70モル%であることが更に好ましい。このような繰り返し単位(B)の含有量が前記下限未満では硬度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると耐熱性が低下する傾向にある。
本発明のポリアミドイミドにおいては、前記繰り返し単位(C)を含有させる場合、前記繰り返し単位(C)の含有量は前記繰り返し単位(A)〜(D)の総量に対するモル比で2〜60モル%であることが好ましく、4〜50モル%であることがより好ましく、6〜40モル%であることが更に好ましい。このような繰り返し単位(C)の含有量が前記下限未満ではポリアミドイミドの耐熱性、硬度の物性バランスが損なわれる傾向にあり、他方、前記上限を超えるとポリアミドイミドの透明性や溶媒に対する溶解性が低下する傾向にある。
さらに、本発明のポリアミドイミドにおいては、前記繰り返し単位(D)を含有させる場合、前記繰り返し単位(D)の含有量は前記繰り返し単位(A)〜(D)の総量に対するモル比で2〜60モル%であることが好ましく、4〜50モル%であることがより好ましく、6〜40モル%であることが更に好ましい。このような繰り返し単位(D)の含有量が前記下限未満ではポリアミドイミドの透明性や溶媒に対する溶解性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとポリアミドイミドの耐熱性、硬度の物性バランスが損なわれる傾向にある。
また、本発明のポリアミドイミドとしては、5%重量減少温度が400℃以上のものが好ましく、450〜550℃のものがより好ましい。このような5%重量減少温度が前記下限未満では十分な耐熱性が達成困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、そのような特性を有するポリアミドイミドを製造することが困難となる傾向にある。なお、このような5%重量減少温度は、窒素ガス雰囲気下、窒素ガスを流しながら室温(25℃)から40℃に昇温した後、40℃を測定開始温度として徐々に加熱していき、用いた試料の重量が5%減少する温度を測定することにより求めることができる。
また、このようなポリアミドイミドとしては、ガラス転移温度(Tg)が250℃以上のものが好ましく、300〜500℃のものがより好ましい。このようなガラス転移温度(Tg)が前記下限未満では十分な耐熱性が達成困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えるとそのような特性を有するポリアミドイミドを製造することが困難となる傾向にある。なお、このようなガラス転移温度(Tg)は熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8310」)を使用して引張モードにより測定することができる。すなわち、測定装置として熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8310」)を使用し、縦20mm、横5mmの大きさのポリアミドイミドフィルム(かかるフィルムの厚みは測定値に影響するものではないため特に制限されるものではないが、5〜80μmとすることが好ましい。)を形成して測定試料とし、窒素雰囲気下、引張りモード(49mN)、昇温速度5℃/分の条件を採用して測定を行ってTMA曲線を求め、ガラス転移に起因するTMA曲線の変曲点に対し、その前後の曲線を外挿することにより、求めることができる。
さらに、このようなポリアミドイミドとしては、軟化温度が300℃以上のものが好ましく、350〜550℃のものがより好ましい。このような軟化温度が前記下限未満では十分な耐熱性が達成困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えるとそのような特性を有するポリアミドイミドを製造することが困難となる傾向にある。なお、このような軟化温度は、熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8310」)を使用してペネトレーションモードにより測定することができる。また、測定に際しては、試料のサイズ(縦、横、厚み等)は測定値に影響するものではないため、用いる熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8310」)の治具に装着可能なサイズに試料のサイズを適宜調整すればよい。
また、このようなポリアミドイミドとしては、熱分解温度(Td)が450℃以上のものが好ましく、480〜600℃のものがより好ましい。このような熱分解温度(Td)が前記下限未満では十分な耐熱性を達成することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、そのような特性を有するポリアミドイミドを製造することが困難となる傾向にある。なお、このような熱分解温度(Td)は、TG/DTA220熱重量分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)を使用して、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/min.の条件で熱分解前後の分解曲線にひいた接線の交点となる温度を測定することにより求めることができる。
また、本発明のポリアミドイミドにおいては、鉛筆硬度において、3B〜9Hの硬度を有することが好ましく、HB〜9Hの硬度を有することがより好ましい。このような硬度が前記下限未満では、硬度が必ずしも十分な水準のものではなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、そのような特性を有する無色透明なポリアミドイミドを製造することが困難となる傾向にある。なお、このような鉛筆硬度の値は評価方法によって結果が大きく異なることから、本発明においては、鉛筆硬度の値として、以下に記載の測定装置及び測定条件で測定される値を採用する。すなわち、先ず、測定装置としては、株式会社東洋精機製作所製の商品名「鉛筆引っかき硬度試験機」を用いる。また、測定試料としては、ポリアミドイミドからなるフィルム(大きさは前記測定装置にセットすることが可能なサイズであればよく特に制限されない。なお、厚みは10〜200μmとすることが好ましい。)を利用する。そして、前記鉛筆引っかき硬度試験機のステンレス製の基板の上に前記フィルムを固定することにより、前記測定装置に測定試料をセットする。そして、測定条件として、荷重:750g、鉛筆とフィルムの角度:45°、鉛筆の引っ掻き速度:90mm/min、鉛筆の引っ掻き距離:30mmという条件を採用して、引っかき試験を行う。なお、このような引っかき試験は、フィルムの異なる箇所を選んで合計3回行う(試験に用いる鉛筆の硬度ごとに3回行う)。そして、各試験ごとに、試験実施後のフィルムを観察して「塑性変形(凹みがあるもの)」または「凝集破壊(傷がついたもの)」が生じた場合を「不合格」と判定し、「塑性変形(凹みがあるもの)」及び「凝集破壊(傷がついたもの)」のいずれも生じなかった場合を「合格」と判定する。このようにして、3回の試験のうち「合格」と判定することが可能な回数が2回以上となる鉛筆の硬さの最大のものを、その測定に用いたポリアミドイミドの鉛筆硬度の値として採用する。
さらに、このようなポリアミドイミドの数平均分子量(Mn)としては、ポリスチレン換算で1000〜1000000であることが好ましく、10000〜500000であることがより好ましい。このような数平均分子量が前記下限未満では十分な耐熱性が達成困難となるばかりか、製造時に重合溶媒から十分に析出せず、効率よくポリアミドイミドを得ることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、粘性が増大し、溶解させるのに長時間を要したり、溶剤を大量に必要とするため加工が困難となる傾向にある。
また、このようなポリアミドイミドの重量平均分子量(Mw)としては、ポリスチレン換算で1000〜5000000であることが好ましい。また、このような重量平均分子量(Mw)の数値範囲の下限値としては、5000であることがより好ましく、10000であることが更に好ましく、20000であることが特に好ましい。また、重量平均分子量(Mw)の数値範囲の上限値としては、5000000であることがより好ましく、500000であることが更に好ましく、100000であることが特に好ましい。このような重量平均分子量が前記下限未満では十分な耐熱性が達成困難となるばかりか、製造時に重合溶媒から十分に析出せず、効率よくポリアミドイミドを得ることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、粘性が増大して溶解させるのに長時間を要したり、溶剤を大量に必要とするため加工が困難となる傾向にある。
さらに、このようなポリアミドイミドの分子量分布(Mw/Mn)は1.1〜5.0であることが好ましく、1.5〜3.0であることがより好ましい。このような分子量分布が前記下限未満では製造することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると均一なフィルムを得にくい傾向にある。なお、このようなポリアミドイミドの分子量(Mw又はMn)や分子量の分布(Mw/Mn)は、測定装置としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定装置(デガッサ:JASCO社製DG−2080−54、送液ポンプ:JASCO社製PU−2080、インターフェイス:JASCO社製LC−NetII/ADC、カラム:Shodex社製GPCカラムKF−806M(×2本)、カラムオーブン:JASCO社製860−CO、RI検出器:JASCO社製RI−2031、カラム温度40℃、クロロホルム溶媒(流速1mL/min.)を用いて測定したデータをポリスチレンで換算して求めることができる。
また、このようなポリアミドイミドは、線膨張係数(CTE)が0〜100ppm/Kであることが好ましく、0〜70ppm/Kであることがより好ましく、0〜50ppm/Kであることが更に好ましく、0〜30ppm/Kであることが特に好ましい。このような線膨張係数が前記上限を超えると、線膨張係数の範囲が5〜20ppm/Kである金属や無機物と組合せて複合化した場合に熱履歴で剥がれが生じやすくなる傾向にある。また、前記線膨張係数が、前記下限未満では溶解性の低下やフィルム特性が低下する傾向にある。
このようなポリアミドイミドの線膨張係数の測定方法としては、以下に記載の方法を採用する。すなわち、先ず、縦20mm、横5mmの大きさのポリアミドイミドフィルム(かかるフィルムの厚みは測定値に影響するものではないため特に制限されるものではないが、5〜80μmとすることが好ましい。)を形成して測定試料とし、測定装置として熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8310」又は「TMA8311」)を利用して、窒素雰囲気下、引張りモード(49mN)、昇温速度5℃/分の条件を採用して、室温から200℃まで昇温(1回目の昇温)し、30℃以下まで放冷した後に、その温度から400℃まで昇温(2回目の昇温)し、その昇温時の前記試料の縦方向の長さの変化を測定する。次いで、このような2回目の昇温時の測定(放冷時の温度から400℃まで昇温する際の測定)で得られたTMA曲線を用いて、100℃〜200℃の温度範囲における1℃あたりの長さの変化の平均値を求め、得られる値をポリアミドイミドの線膨張係数として測定する。このように、本発明のポリアミドイミドの線膨張係数としては、前記TMA曲線に基づいて100℃〜200℃の温度範囲における1℃あたりの長さの変化の平均値を求めることにより得られる値を採用する。
また、このようなポリアミドイミドとしては、フィルムを形成した場合に透明性が十分に高いものであることが好ましく、全光線透過率が80%以上(更に好ましくは85%以上、特に好ましくは87%以上)であるものがより好ましい。また、このようなポリアミドイミドとしては、より高度な無色透明性を得るといった観点から、ヘイズ(濁度)が5〜0(更に好ましくは4〜0、特に好ましくは3〜0)であるものがより好ましい。このようなヘイズの値が前記上限を超えると、より高度な水準の無色透明性を達成することが困難となる傾向にある。さらに、このようなポリアミドイミドとしては、より高度な無色透明性を得るといった観点から、黄色度(YI)が5〜0(更に好ましくは4〜0、特に好ましくは3〜0)であるものがより好ましい。このような黄色度が前記上限を超えると、より高度な水準の無色透明性を達成することが困難となる傾向にある。
このような全光線透過率、ヘイズ(濁度)及び黄色度(YI)は、測定装置として、日本電色工業株式会社製の商品名「ヘーズメーターNDH−5000」又は日本電色工業株式会社製の商品名「分光色彩計SD6000」を用いて(日本電色工業株式会社製の商品名「ヘーズメーターNDH−5000」で全光線透過率とヘイズとを測定し、日本電色工業株式会社製の商品名「分光色彩計SD6000」で黄色度を測定する。)、厚みが5〜100μmのポリアミドイミドからなるフィルムを測定用の試料として用いて測定した値を採用することができる。また、測定試料の縦、横の大きさは、前記測定装置の測定部位に配置できるサイズであればよく、縦、横の大きさは適宜変更してもよい。なお、このような全光線透過率は、JIS K7361−1(1997年発行)に準拠した測定を行うことにより求め、ヘイズ(濁度)は、JIS K7136(2000年発行)に準拠した測定を行うことにより求め、黄色度(YI)はASTM E313−05(2005年発行)に準拠した測定を行うことにより求める。
このようなポリアミドイミドは、波長590nmで測定される厚み方向のリタデーション(Rth)の絶対値が、厚み10μmに換算して、150nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることが更に好ましく、25nm以下であることが特に好ましい。すなわち、前記リタデーション(Rth)の値は−150nm〜150nm(より好ましくは−100nm〜100nm、更に好ましくは−50〜50nm、特に好ましくは−25〜25nm)であることが好ましい。このような厚み方向のリタデーション(Rth)の絶対値が前記上限を超えると、ディスプレイ機器に使用した際に、コントラストが低下するとともに視野角が低下してしまう傾向にある。なお、前記リタデーション(Rth)の絶対値が前記範囲内となると、ディスプレイ機器に使用した際に、コントラストの低下を抑制する効果及び視野角を改善する効果がより高度なものとなる傾向にある。このように、ディスプレイ機器に使用した場合に、コントラストの低下をより高度に抑制でき、且つ、視野角をより改善することが可能となるといった観点で、厚み方向のリタデーション(Rth)の絶対値はより低い値となることが好ましい。
このような「厚み方向のリタデーション(Rth)の絶対値」は、測定装置としてAXOMETRICS社製の商品名「AxoScan」を用い、後述のようにして測定したポリアミドイミドフィルムの屈折率(589nm)の値を前記測定装置にインプットした後、温度:25℃、湿度:40%の条件下、波長590nmの光を用いて、ポリアミドイミドフィルムの厚み方向のリタデーションを測定し、求められた厚み方向のリタデーションの測定値(測定装置の自動測定(自動計算)による測定値)に基づいて、フィルムの厚み10μmあたりのリタデーション値に換算した値(換算値)を求め、その換算値から絶対値を算出することにより求めることができる。このように、「厚み方向のリタデーション(Rth)の絶対値」は、前記換算値の絶対値(|換算値|)を算出することで求めることができる。なお、測定試料のポリアミドイミドフィルムのサイズは、測定器のステージの測光部(直径:約1cm)よりも大きければ良いため、特に制限されないが、縦:76mm、横52mm、厚み5〜20μmの大きさとすることが好ましい。
また、厚み方向のリタデーション(Rth)の測定に利用する「ポリアミドイミドフィルムの屈折率(589nm)」の値は、リタデーションの測定対象となるフィルムを形成するポリアミドイミドと同じ種類のポリアミドイミドからなる未延伸のフィルムを形成した後、かかる未延伸のフィルムを測定試料として用いて(なお、測定対象となるフィルムが未延伸のフィルムである場合には、そのフィルムをそのまま測定試料として用いることができる。)、測定装置として屈折率測定装置(株式会社アタゴ製の商品名「NAR−1T SOLID」)を用い、589nmの光源を用いて、23℃の温度条件で、測定試料の589nmの光に対する平均屈折率を測定して求めることができる。このように、未延伸のフィルムを利用して「ポリアミドイミドフィルムの屈折率(589nm)」の値を測定し、得られた測定値(測定試料の589nmの光に対する平均屈折率の値)を上述の厚み方向のリタデーション(Rth)の測定に利用する。ここにおいて、測定試料のポリアミドイミドフィルムのサイズは、前記屈折率測定装置に利用できる大きさであればよく、特に制限されず、1cm角(縦横1cm)で厚み5〜20μmの大きさとしてもよい。
このようなポリアミドイミドとしては、23℃における引張強度が50〜1000MPa(より好ましくは100〜500MPa)であることが好ましい。このような引張強度が前記下限未満ではフィルムの機械的物性が低く、フィルム上での加工等に耐えられなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、そのような材料を製造することが困難である。なお、このような引張強度は、JIS K7127(1999)に準拠した引張試験により得られる応力−ひずみ曲線に基づいて求めることができる。
このようなポリアミドイミドとしては、23℃における破断点伸度が1〜500%(より好ましくは3〜200%)であることが好ましい。このような破断点伸度が前記下限未満ではフィルムの機械的物性が低く、フィルム上での加工等に耐えられなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、そのような材料を製造することが困難である。なお、このような破断点伸度は、JIS K7127(1999)に準拠した引張試験により得られる応力−ひずみ曲線に基づいて求めることができる。
また、このようなポリアミドイミドとしては、23℃における弾性率が0.5〜30GPa(より好ましくは5〜30GPa)であることが好ましい。このような弾性率が前記下限未満ではフィルムの機械的物性が低く、フィルム上での加工等に耐えられなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、そのような材料を製造することが困難である。なお、このような弾性率は、JIS K7127(1999)に準拠した引張試験により得られる応力−ひずみ曲線から接線法により求めることができる。
このようなポリアミドイミドの形状は特に制限されず、例えば、フィルム形状や粉状としたり、更には、押出成形によりペレット形状等としてもよい。このように、本発明のポリアミドイミドは、フィルム形状にしたり、押出成形によりペレット形状としたり、公知の方法で各種の形状に適宜成形することもできる。
また、このようなポリアミドイミドは、フレキシブル配線基板用フィルム、耐熱絶縁テープ、電線エナメル、半導体の保護コーティング剤、液晶配向膜、有機EL用透明導電性フィルム、フレキシブル基板フィルム、フレキシブル透明導電性フィルム、有機薄膜型太陽電池用透明導電性フィルム、色素増感型太陽電池用透明導電性フィルム、フレキシブルガスバリアフィルム、タッチパネル用フィルム、フラットパネルディテクタ用TFT基板フィルム、複写機用シームレスポリアミドイミドベルト(いわゆる転写ベルト)、透明電極基板(有機EL用透明電極基板、太陽電池用透明電極基板、電子ペーパーの透明電極基板等)、層間絶縁膜、センサー基板、イメージセンサーの基板、発光ダイオード(LED)の反射板(LED照明の反射板:LED反射板)、LED照明用のカバー、LED反射板照明用カバー、カバーレイフィルム、高延性複合体基板、半導体向けレジスト、リチウムイオンバッテリー、有機メモリ用基板、有機トランジスタ用基板、有機半導体用基板、カラーフィルタ基材等を製造するための材料として特に有用である。また、このようなポリアミドイミドは、上述のような用途以外にも、その形状を粉状体としたり、各種成形体とすること等により、例えば、自動車用部品、航空宇宙用部品、軸受部品、シール材、ベアリング部品、ギアホイールおよびバルブ部品などに、適宜利用することも可能である。 このような本発明のポリアミドイミドを製造するための方法は特に制限されず、例えば、以下のような方法を採用することができる。
(ポリアミドイミドを製造するための方法)
このような本発明のポリアミドイミドを製造するための方法としては特に制限されず、例えば、モノマーとして、上記一般式(11)で表される化合物のうちの少なくとも1種(以下、場合により単に「テトラカルボン酸二無水物(A)」と称する)と、テレフタロイロクロリド(TPC)と、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)とを用いる以外は、公知のポリアミドイミドの製造方法において採用される条件を適宜採用して、繰り返し単位(A)及び(B)を含む化合物(ポリアミドイミド)を製造すればよい。ここにいう公知のポリアミドイミドの製造方法としては、例えば、特開2016−138267号公報、特開2016−125063号公報、特表2016−501144号公報等が挙げられる。
また、繰り返し単位(C)を更に導入する場合には、モノマーとして、ピロメリット酸無水物(PMDA)及び3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)からなる群から選択される少なくとも1種(以下、場合により単に「テトラカルボン酸二無水物(C)」と称する)を、前記テトラカルボン酸二無水物(A)とTPCとTFMBと共に利用すればよい。
さらに、繰り返し単位(D)を更に導入する場合には、モノマーとして、上記一般式(15)で表される化合物、上記一般式(16)で表される化合物及び4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)からなる群から選択される少なくとも1種(以下、場合により単に「テトラカルボン酸二無水物(C)」と称する)を、前記テトラカルボン酸二無水物(A)とTPCとTFMBと共に利用すればよい。
また、このような本発明のポリアミドイミドを製造するための方法としては、例えば、下記方法(I)〜(III):
[方法(I)] テトラカルボン酸二無水物(A)を含有するテトラカルボン酸成分(場合によりテトラカルボン酸二無水物(C)及び/又はテトラカルボン酸二無水物(D)を含有してもよい)とTPCとTFMBとを含有する混合物を調製し、これらを共重合させることにより、上記繰り返し単位(A)と上記繰り返し単位(B)とを含有するポリアミドイミドを製造する方法;
[方法(II)] TPCと、該TPCに対して過剰量のTFMBとを含む反応液を調製し、前記TPCとTFMBとを反応せしめて、上記繰り返し単位(B)を有するポリアミド成分(TPCとTFMBとの重合体:ポリアミドイミドの前駆体)を調製した後、該ポリアミド成分を含む反応液中に、テトラカルボン酸二無水物(A)を含有するテトラカルボン酸成分(場合によりテトラカルボン酸二無水物(C)及び/又はテトラカルボン酸二無水物(D)を含有してもよい)を添加し、ポリアミド成分と(場合により系に残っているTPCと)、前記テトラカルボン酸成分と、TFMBとを反応させて、上記繰り返し単位(A)と上記繰り返し単位(B)とを含有するポリアミドイミドを製造する方法;
[方法(III)] テトラカルボン酸二無水物(A)を含有するテトラカルボン酸成分(場合によりテトラカルボン酸二無水物(C)及び/又はテトラカルボン酸二無水物(D)を含有してもよい)と該テトラカルボン酸成分に対して過剰量のTFMBとを含む反応液を調製し、前記テトラカルボン酸成分とTFMBとを反応せしめて、上記繰り返し単位(A)を有するポリイミド成分(テトラカルボン酸成分とTFMBとの重合体:ポリアミドイミドの前駆体)を調製した後、該ポリイミド成分(重合体)を含む反応液中に更にTPCを添加し、撹拌することにより、上記繰り返し単位(A)と上記繰り返し単位(B)とを含有するポリアミドイミドを製造する方法;
を好適な方法として挙げることができる。また、このような方法(I)〜(III)の中では、得られるフィルムの靱性の観点から、方法(III)を採用することが好ましい。以下、このような本発明のポリアミドイミドを製造するための方法を、方法(III)を例に挙げて、より具体的に説明する。
このような方法(III)は、テトラカルボン酸二無水物(A)を含有するテトラカルボン酸成分(目的とする設計に応じてテトラカルボン酸二無水物(C)及び/又はテトラカルボン酸二無水物(D)を含有してもよい)と該テトラカルボン酸成分に対して過剰量のTFMBとを含む反応液を調製し、前記テトラカルボン酸成分とTFMBとを反応せしめて、上記繰り返し単位(A)を有するポリイミド成分(重合体:ポリアミドイミドの前駆体)を調製した後、該ポリイミド成分を含む反応液中に更にTPCを添加し、加熱することにより、上記繰り返し単位(A)と上記繰り返し単位(B)とを含有するポリアミドイミドを製造する方法である。
このような方法(III)においては、先ず、前記テトラカルボン酸成分と該テトラカルボン酸成分に対して過剰量のTFMBとを含む反応液を調製する。このようなテトラカルボン酸成分としては、テトラカルボン酸二無水物(A)を含有していればよく、目的とするポリアミドイミドの設計に応じて、テトラカルボン酸二無水物(C)及び/又はテトラカルボン酸二無水物(D)を適宜含有させて用いることができる(また、場合により、前記他のテトラカルボン酸二無水物を含有させてもよい)。なお、前記繰り返し単位(A)が上記テトラカルボン酸二無水物(A)に由来して形成される構造単位であること、前記繰り返し単位(C)が上記テトラカルボン酸二無水物(C)に由来して形成される構造単位であること、前記繰り返し単位(D)が上記テトラカルボン酸二無水物(D)に由来して形成される構造単位であることから、テトラカルボン酸二無水物(A)、テトラカルボン酸二無水物(C)及びテトラカルボン酸二無水物(D)の使用量は、目的とする前記繰り返し単位(A)、(C)、(D)の含有割合に応じて適宜調整すればよい。
また、このような反応液の溶媒としては特に制限されず、ポリイミドやポリアミドを製造する際に利用される公知の有機溶媒を適宜利用できる。このような有機溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、プロピレンカーボネート、テトラメチル尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、ピリジンなどの非プロトン系極性溶媒;m−クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノールなどのフェノール系溶媒;テトラハイドロフラン、ジオキサン、セロソルブ、グライムなどのエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;シクロペンタノンやシクロヘキサノン等のケトン系溶媒;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒などが挙げられる。このような有機溶媒は、1種を単独であるいは2種以上を混合して使用してもよい。
また、このような有機溶媒としては、テトラカルボン酸二無水物、TFMBに対する溶解性の観点から、非プロトン系極性溶媒を用いることがより好ましく、中でも、N,N−ジメチルアセトアミド及びγ−ブチロラクトンを組み合わせて用いることが特に好ましい。このように、前記重合溶媒として、N,N−ジメチルアセトアミド及びγ−ブチロラクトンを組み合わせて利用した場合には、これらがテトラカルボン酸二無水物、TFMBに対する溶解性に優れるものであるため、反応液を反応がより進行し易い状態のものとすることが可能となり、これにより重合反応をより効率よく進行させることが可能となる。
また、このような反応液中の前記テトラカルボン酸二無水物成分と前記TFMBの総量が、反応溶液の全量に対して0.1〜50質量%(より好ましくは10〜35質量%)になるような量であることが好ましい。このような有機溶媒の使用量が前記下限未満では効率よくポリアミド酸を得ることができなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると高粘度化により撹拌が困難となる傾向にある。
このような反応液中のTFMBの含有量としては、前記テトラカルボン酸とTFMBとを反応させた後に余剰のTFMBがあれば、そのままTFMBとTPCとポリイミドとを反応させることが可能となり、効率よく目的とする化合物(ポリアミドイミド)を製造することが可能となることから、前記テトラカルボン酸二無水物成分中の化合物(テトラカルボン酸二無水物)に対してTFMBの量を過剰量とすることが好ましく、テトラカルボン酸二無水物1モルに対して1.5〜2.5モルとすることがより好ましい。
また、前記テトラカルボン酸二無水物成分と前記TFMBとを反応させる方法としては、テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン(TFMB)の重合反応を行うことが可能な公知の方法(条件等)を適宜利用でき、特に制限されるものではない。このような方法としては、テトラカルボン酸二無水物成分と芳香族ジアミン(TFMB)とを反応させてポリアミド酸を得た後、これをイミド化する方法を採用してもよく、例えば、国際公開第2011/099518号、国際公開第2015/163314号、国際公開2017/030019号等に記載されているポリイミドの製造方法(製造条件)と同様の方法を適宜採用することができる。
また、前記テトラカルボン酸二無水物成分と前記TFMBとを反応させる方法としては、前記テトラカルボン酸二無水物成分と前記TFMBとを反応させてポリアミド酸を形成した後、これをイミド化してポリイミドを製造する方法が挙げられるが、中でも、前記テトラカルボン酸二無水物成分と前記TFMBとを反応させる段階から加熱する処理を施す方法を使用することが好ましい。このように、前記テトラカルボン酸二無水物成分と前記TFMBとを反応させる段階から加熱する処理を施す方法によれば、ポリアミド酸(中間体)の形成とそれに続くポリイミドの形成(イミド化)とをほぼ同時に進行せしめることが可能となるためである(以下、便宜のため、前記テトラカルボン酸二無水物成分と前記TFMBとを反応させる段階から加熱する処理を施すことにより、ポリイミドを製造する方法を「加熱処理法」と称する)。
このような加熱処理法において採用する加熱温度の条件としては、100〜250℃であることが好ましく、120〜250℃であることがより好ましく、150〜220℃であることが更に好ましい。このような温度条件が前記下限未満では反応温度が水の沸点以下であるため、反応時に生じる水の留去をさせることができず、水の存在により反応の進行が阻害され、ポリイミドの分子量をより大きなものとすることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、溶媒の熱分解などの副反応が生じ、加熱後に得られるポリイミドと有機溶媒との混合液(ワニス)中の不純物が多くなってしまい、最終的に得られるポリアミドイミドの物性が低下する傾向にある。
このような加熱処理法においては、反応液中に反応促進剤を添加することが好ましい。このような反応促進剤としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルピペリジン、ピリジン、コリジン、ルチジン、2−ヒドロキシピリジン、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO),ジアザビシクロノネン(DBN)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)などの三級アミンが好ましく、中でも、反応性、入手性、実用性の観点から、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルピペリジン、ピリジンが好ましく、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルピペリジンがより好ましく、トリエチルアミン、N−メチルピペリジンが更に好ましい。このような反応促進剤は1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、このような反応促進剤の使用量は、前記テトラカルボン酸二無水物成分1モルに対して0.01〜4.0モルとすることが好ましく、0.05〜2.0モルとすることがより好ましい。
このようにして、反応液中において、テトラカルボン酸二無水物(A)を含有するテトラカルボン酸成分とTFMBとを反応(好ましくは上記加熱処理法を採用して反応)させることで、テトラカルボン酸二無水物(A)とTFMBとの反応により繰り返し単位(A)が形成されて、上記繰り返し単位(A)を有するポリイミド成分(重合体:ポリアミドイミドの前駆体)を調製することができる。なお、前記テトラカルボン酸成分がテトラカルボン酸二無水物(C)を更に含有する場合には、テトラカルボン酸二無水物(C)とTFMBとの反応により繰り返し単位(C)も併せて形成されることとなる。また、前記テトラカルボン酸成分がテトラカルボン酸二無水物(D)を更に含有する場合には、テトラカルボン酸二無水物(D)とTFMBとの反応により、繰り返し単位(D)も併せて形成されることとなる。
また、上記方法(III)においては、上述のようにしてポリイミド成分を調製した後、該ポリイミド成分を含む反応液中に更にTPCを添加し、撹拌する。このような撹拌により、TPCを効率よく反応させることが可能となる。このような方法(III)は、その工程から、ポリイミド成分を重合した後に、その重合物に対して、TPCとTFMBとに由来する繰り返し単位を導入することにより、結果的に、TPCとTFMBとテトラカルボン酸との共重合物であるポリアミドイミドを得る方法であるともいえる。なお、このような撹拌により生じる反応は、以下のようなものであると本発明者らは推察する。すなわち、先ず、ポリイミド分子鎖の末端アミノ基に対して、TPCが反応してポリアミドのユニットが形成され、これにより分子鎖の末端が酸クロライドとなる。そして、かかる酸クロライドからなる末端にTFMBが反応し、逐次的にTPCとTFMBが反応(重合)する。これにより、ポリイミド分子鎖の両末端からポリアミド分子鎖が伸びる形で反応が進行することとなり、前記ポリイミド成分に対して、TPCとTFMBとに由来する繰り返し単位(ポリアミド成分)を導入することが可能となる。
また、上述のようにしてポリイミド成分を調製した後、前記ポリイミド成分(上記繰り返し単位(A)を含む重合体)を含む反応液に、TPCを添加して撹拌する場合には、用いるモノマーの種類(前記ポリイミド成分、TPC、TFMB等)から、特に加熱等しなくても十分に反応が進行させることが可能である。なお、このような撹拌工程において、反応をより効率よく進行させるといった観点からは、加熱しながら撹拌を施してもよい。このように、反応を十分に進行せしめるといった観点からは、例えば、不活性ガス雰囲気下(例えば窒素ガス雰囲気下)において、TPC添加後の反応液を常温(好ましくは25度程度)〜100℃の温度条件で撹拌してもよい。
[樹脂溶液]
本発明の樹脂溶液は、上記本発明のポリアミドイミドと有機溶媒とを含有するものである。
このような樹脂溶液(ポリアミドイミドのワニス)に用いる有機溶媒としては、上記本発明のポリアミドイミドを溶解することが可能なものであればよく、例えば、前述の有機溶媒と同様のものを適宜利用することができる。また、本発明の樹脂溶液(ポリアミドイミド溶液)は、上述の本発明のポリアミドイミドの製造方法を実施して得られるポリアミドイミドが製造時に用いた有機溶媒に十分に溶解するものである場合には、反応後に得られた反応液をそのままポリアミドイミド溶液としてもよい(例えば、有機溶媒(前記反応液の溶媒))として、得られるポリアミドイミドを十分に溶解可能なものを用いて、その溶媒中でポリアミドイミドを形成することにより、反応後に得られた反応液をそのままポリアミドイミド溶液とすることが可能である。)。
このように、本発明の樹脂溶液(ポリアミドイミド溶液)に用いる有機溶媒としては、前述の反応液の溶媒として説明したものと同様のものを好適に利用することができる。なお、本発明の樹脂溶液に用いる有機溶媒としては、例えば、前記樹脂溶液を塗工液として利用した場合の溶媒の蒸散性や除去性の観点から、沸点が200℃以下のハロゲン系溶剤(例えば、ジクロロメタン(沸点40℃)、トリクロロメタン(沸点62℃)、四塩化炭素(沸点77℃)、ジクロロエタン(沸点84℃)、トリクロロエチレン(沸点87℃)、テトラクロロエチレン(沸点121℃)、テトラクロロエタン(沸点147℃)、クロロベンゼン(沸点131℃)、o−ジクロロベンゼン(沸点180℃)等)を利用してもよい。
また、本発明の樹脂溶液(ポリアミドイミド溶液)に用いる有機溶媒としては、溶解性、成膜性、生産性、工業的入手性、既存設備の有無、価格といった観点から、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、プロピレンカーボネート、テトラメチル尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが好ましく、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素がより好ましく、N,N−ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトンが特に好ましい。なお、このような有機溶媒は1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて利用してもよい。
また、本発明の樹脂溶液(ポリアミドイミド溶液)は、各種の加工品を製造するための塗工液等として好適に利用することも可能である。例えば、フィルムを形成する場合、上記本発明の樹脂溶液を塗工液として利用して、これを基材(例えばガラス板等)上に塗工して塗膜を得た後、溶媒を除去することで、ポリアミドイミドフィルムを形成してもよい。このような塗工方法は特に制限されず、公知の方法(スピンコート法、バーコート法、ディップコート法など)を適宜利用することができる。
本発明の樹脂溶液(ポリアミドイミド溶液)において、前記ポリアミドイミドの含有量(溶解量)は特に制限されないが、1〜75質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましい。このような含有量が前記下限未満では、製膜等に利用した場合に成膜後の膜厚が薄くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると一部が溶媒に不溶となる傾向にある。さらに、このような樹脂溶液には、使用目的等に応じて、酸化防止剤(フェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系など)、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、核剤、樹脂添加剤(フィラー、タルク、ガラス繊維など)、難燃剤、加工性改良剤・滑材等の添加剤を更に添加してもよい。なお、これらの添加剤としては、特に制限されず、公知のものを適宜利用することができ、市販のものを利用してもよい。
[フィルム]
本発明のフィルムは、上記本発明のポリアミドイミドからなるものである。このようなフィルム(ポリアミドイミドフィルム)の厚みは特に制限されないが、1〜500μmであることが好ましく、10〜200μmであることがより好ましい。このような厚みが前記下限未満では強度が低下し取扱いが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、複数回の塗工が必要となる場合が生じたり、加工が複雑化する場合が生じる傾向にある。また、このようなポリアミドイミドフィルムの形態は、フィルム状であればよく、特に制限されず、各種形状(円盤状、円筒状(フィルムを筒状に加工したもの)等)に適宜設計することができ、前記ポリアミドイミド溶液を用いて製造した場合には、より容易に、その設計を変更することも可能である。
このような本発明のフィルム(ポリアミドイミドフィルム)を調製するための方法は特に制限されないが、例えば、本発明の樹脂溶液(ポリアミドイミド溶液)を基材上に塗布して溶媒を除去することでポリアミドイミドフィルムを調製する方法を採用してもよい。
このような本発明のフィルムは、上記本発明のポリアミドイミドからなるため、透明性を十分に優れたものとすることが可能であるばかりか、十分に高い硬度を有するものとすることも可能である。そのため、このような本発明のフィルム(ポリアミドイミドフィルム)は、例えば、フレキシブル配線基板用フィルム、液晶配向膜に用いるフィルム、有機EL用透明導電性フィルム、有機EL照明用フィルム、フレキシブル基板フィルム、フレキシブル有機EL用基板フィルム、フレキシブル透明導電性フィルム、透明導電性フィルム、有機薄膜型太陽電池用透明導電性フィルム、色素増感型太陽電池用透明導電性フィルム、フレキシブルガスバリアフィルム、タッチパネル用フィルム、フレキシブルディスプレイ用フロントフィルム、フレキシブルディスプレイ用バックフィルム、フラットパネルディテクタ用TFT基板フィルム、ポリアミドイミドベルト、コーティング剤、バリア膜、封止材、層間絶縁材料、パッシベーション膜、TAB(Tape Automated Bonding)テープ、光導波路、カラーフィルター基材、半導体コーティング剤、耐熱絶縁テープ、電線エナメル等の用途に適宜利用できる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
先ず、各実施例等で得られたフィルムを形成する樹脂(ポリアミドイミド等)の特性(線膨張係数等)の評価方法について説明する。
<分子構造の同定>
実施例等で得られた化合物の分子構造の同定は、赤外吸収スペクトル測定(IR測定)により行った。なお、測定装置としては、IR測定機(日本分光株式会社製、商品名:FT/IR−4100)を用いた。
<全光線透過率、ヘイズ(濁度)及び黄色度(YI)の測定>
実施例等で得られたポリアミドイミド等(比較例1ではポリイミド)の全光線透過率の値(単位:%)、ヘイズ(濁度:HAZE)及び黄色度(YI)は、各実施例等で得られたフィルムをそのまま測定用の試料として用い、測定装置として日本電色工業株式会社製の商品名「ヘーズメーターNDH−5000」又は日本電色工業株式会社製の商品名「分光色彩計SD6000」を用いて、それぞれ測定を行うことにより求めた。また、かかる測定に際しては、日本電色工業株式会社製の商品名「ヘーズメーターNDH−5000」で全光線透過率とヘイズを測定し、日本電色工業株式会社製の商品名「分光色彩計SD6000」で黄色度を測定した。また、全光線透過率は、JIS K7361−1(1997年発行)に準拠した測定を行うことにより求め、ヘイズ(濁度)は、JIS K7136(2000年発行)に準拠した測定を行うことにより求め、黄色度(YI)はASTM E313−05(2005年発行)に準拠した測定を行うことにより求めた。
<線膨張係数(CTE)の測定>
実施例等で得られたフィルムから縦20mm、横5mmの大きさのフィルム(フィルムの厚みは測定値に影響するものではないため、厚みは各実施例で製造されたフィルムの厚みをそのまま採用した。)をそれぞれ形成して測定試料とし、測定装置として熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8311」)を利用して、窒素雰囲気下、引張りモード(49mN)、昇温速度5℃/分の条件を採用して、室温から200℃まで昇温(1回目の昇温)し、30℃以下まで放冷した後に、その温度から400℃まで昇温(2回目の昇温)し、その昇温時の前記試料の縦方向の長さの変化を測定した。次いで、このような2回目の昇温時の測定(放冷時の温度から400℃まで昇温する際の測定)で得られたTMA曲線を用いて、100℃〜200℃の温度範囲における1℃あたりの長さの変化の平均値を求め、得られる値をフィルムを形成する樹脂(ポリアミドイミド(実施例1)、ポリイミド(比較例1))の線膨張係数として測定した。
<鉛筆硬度の測定>
実施例等で得られたフィルムを用いて鉛筆硬度をそれぞれ測定した。すなわち、実施例等で得られたフィルムをそのまま測定試料として利用し、測定装置として株式会社東洋精機製作所製の商品名「鉛筆引っかき硬度試験機」を用い、ステンレス製の基板の上に前記フィルム(測定試料)を固定して前記測定装置に測定試料をセットした。その後、荷重:750g、鉛筆とフィルムの角度:45°、鉛筆の引っ掻き速度:90mm/min、鉛筆の引っ掻き距離:30mmという測定条件で引っかき試験を実施した。なお、かかる引っかき試験はフィルムの異なる箇所を選んで合計3回実施した(引っかき試験に利用する鉛筆の硬度ごとにそれぞれ試験を3回ずつ行った)。そして、各試験ごとに、引っかき試験実施後のフィルムを観察し、「塑性変形(凹みがあるもの)」または「凝集破壊(傷がついたもの)」が生じた場合を「不合格」と判定し、「塑性変形(凹みがあるもの)」及び「凝集破壊(傷がついたもの)」のいずれも生じなかった場合を「合格」と判定した。このようにして3回の引っかき試験中、2回以上「合格」と判定された鉛筆の硬度の最大値(鉛筆の最大の硬さ)を、鉛筆硬度の値として評価した。
<ガラス転移温度(Tg)の測定>
各実施例等で得られたフィルムを構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)の値(単位:℃)を以下のようにして測定した。すなわち、各フィルムから切り出した縦20mm、横5mmの大きさの試料(かかる試料の厚みは実施例で得られたフィルムの厚みのままとした)を用い、かつ、測定装置として熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8311」)を用いて、窒素雰囲気下、引張りモード(49mN)、昇温速度5℃/分の条件で測定を行ってTMA曲線を求め、ガラス転移に起因するTMA曲線の変曲点に対し、その前後の曲線を外挿することにより、各実施例で得られたフィルムを構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)の値(単位:℃)を求めた。
<引張強度、破断点伸度、弾性率の測定>
各実施例等で得られたフィルムの引張強度(単位:MPa)、破断点伸度(単位:%)、弾性率(単位:GPa)は、以下のようにして測定した。すなわち、先ず、日本工業規格の「JIS K7127(1999)」に記載の方法に準拠して、測定装置としてインストロン製の引張試験機を用い、測定試料として各実施例等で得られたフィルムから打ち抜き器を用いて加工したダンベル状の試験片(試験片タイプ JIS K 7139 A22型:かかる試験片の厚みは実施例で得られたフィルムの厚みのままとした)を準備し、該試験片(測定試料)を前記測定装置にセットして、温度23℃、試験速度:5mm/分の条件で引張試験を行い、応力−ひずみ曲線を求めた。次いで、得られた応力−ひずみ曲線に基づいて、引張強度及び破断点伸度を求めるとともに、接線法により弾性率を求めた。
(合成例1)
国際公開第2011/099518号の合成例1、実施例1及び実施例2に記載された方法に準拠して、下記一般式(17):
で表される化合物(ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロペンタノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物:CpODA)を合成した。
<モノマー等の略称について>
各実施例等において用いた各成分の略称を以下に記載する。
TFMB : 2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン
s−BPDA: 3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
HPMDA : 1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物
TPC : テレフタル酸ジクロライド
DMAc : ジメチルアセトアミド(N,N−ジメチルアセトアミド)
CpODA : 上記合成例1で得られたノルボルナン−2−スピロ−α−シクロペンタノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物。
(実施例1)
窒素雰囲気下において、150mLのナスフラスコにTFMB(和歌山精化株式会社製)3.20g(10.0mmol)とCpODA0.960g(2.50mmol)とs−BPDA(JFEケミカル社製)0.368g(1.25mmol)とHPMDA(日興リカ株式会社製)0.282g(1.26mmol)とを導入することにより、前記ナスフラスコ内に芳香族ジアミン(TFMB)とテトラカルボン酸二無水物成分(CpODAとs−BPDAとHPMDAとの混合物)とを導入した。
次に、前記ナスフラスコ内に、DMAc14.0g及びγ−ブチロラクトン9.27gからなる有機溶媒を導入するとともに、反応促進剤であるトリエチルアミン25.3mg(0.025mmol)を導入することにより、前記芳香族ジアミン(TFMB)と、前記テトラカルボン酸二無水物成分(CpODAとs−BPDAとHPMDAの混合物)と、前記有機溶媒(DMAc及びγ−ブチロラクトン)と、反応促進剤(トリエチルアミン)とを混合した反応液(混合液)を得た。
次いで、このようにして得られた反応液を、窒素雰囲気下、180℃の温度条件で3時間加熱しながら撹拌することにより、粘性のある均一な淡黄色の反応液(ポリイミド溶液)を得た。次に、このようにして得られた反応液(淡黄色)を室温(25℃)まで冷却した後、その冷却後の反応液(淡黄色)にTPC(東京化成工業製)1.02g(5.00mmol)を添加した。次いで、TPC添加後の前記反応液を窒素雰囲気下、80℃の温度条件で30分加熱しながら撹拌することにより、粘性のある均一な淡黄色の反応液(ポリアミドイミド溶液)を得た。次に、このようにして得られた反応液を室温(25℃)まで冷却した後、100mLのメタノールにその冷却後の反応液(淡黄色)を滴下することにより固形分を析出せしめ、ろ過して固形分を回収することにより、白色粉末を得た。そして、このようにして得られた白色粉末を真空乾燥することにより、5.29gのポリアミドイミド(粉末状)を得た。
次に、得られたポリアミドイミドの粉末をDMAcに溶解させて、粉末が20質量%となるようにした樹脂溶液(ポリアミドイミド溶液:ワニス)を調製した。その後、得られた樹脂溶液をガラス板(縦:75mm、横50mm、厚み1.3mm)上にスピンコートすることによりガラス板上に塗膜を形成した。次いで、前記塗膜の形成されたガラス板をオーブン中に投入し、窒素雰囲気下において、先ず、60℃の温度条件で4時間静置した後、温度を60℃から250℃に昇温し、250℃の温度条件(焼成温度)で1時間静置することにより塗膜を硬化せしめ、ガラス板上にポリアミドイミドからなる薄膜(ポリアミドイミドフィルム)がコートされたポリアミドイミドコートガラスを得た。
次に、このようにして得られたポリアミドイミドコートガラスを、90℃の水中に0.5時間浸漬して、前記ガラス基板からポリアミドイミドフィルムを剥離することによりポリアミドイミドフィルムを回収し、ポリアミドイミドからなる無色透明なフィルム(ポリアミドイミドフィルム)を得た。なお、このようにして得られたポリアミドイミドフィルムの膜厚は20μmであった。
このようにして得られたフィルムを形成する化合物の分子構造を同定するため、IR測定機(日本分光株式会社製、商品名:FT/IR−4100)を用いて、IRスペクトルを測定したところ、イミド基及びCpODAのC=O伸縮振動が1713cm−1、1778cm−1に観察されたこと、アミド基のC=O伸縮振動が1690cm−1、に観察されたこと、アミド基のN−H伸縮振動が3360cm−1、に観察されたこと、から、得られたフィルムを構成する化合物はポリアミドイミドであることが確認された。また、得られたポリアミドイミドフィルムの特性の評価結果を表1に示す。なお、実施例1で得られたフィルムのIRスペクトルのグラフを図1に示す。
(実施例2)
窒素雰囲気下において、100mLのナスフラスコにTFMB(和歌山精化株式会社製)3.20g(10.0mmol)とCpODA1.15g(3.00mmol)とs−BPDA(JFEケミカル社製)0.442g(1.50mmol)とHPMDA(東京化成工業株式会社製)0.336g(1.50mmol)とを導入することにより、前記ナスフラスコ内に芳香族ジアミン(TFMB)とテトラカルボン酸二無水物成分(CpODAとs−BPDAとHPMDAとの混合物)とを導入した。
次に、前記ナスフラスコ内に、DMAc10.3g及びγ−ブチロラクトン10.3gからなる有機溶媒を導入するとともに、反応促進剤であるトリエチルアミン54.0mg(0.53mmol)を導入することにより、前記芳香族ジアミン(TFMB)と、前記テトラカルボン酸二無水物成分(CpODAとs−BPDAとHPMDAの混合物)と、前記有機溶媒(DMAc及びγ−ブチロラクトン)と、反応促進剤(トリエチルアミン)とを混合した反応液(混合液)を得た。
次いで、このようにして得られた反応液を、窒素雰囲気下、180℃の温度条件で3時間加熱しながら撹拌することにより、粘性のある均一な淡黄色の反応液(ポリイミド溶液)を得た。次に、このようにして得られた反応液(淡黄色)を室温(25℃)まで冷却した後、その冷却後の反応液(淡黄色)にTPC(東京化成工業製)0.812g(4.00mmol)を添加した。次いで、TPC添加後の前記反応液を窒素雰囲気下、80℃の温度条件で30分加熱しながら撹拌することにより、粘性のある均一な淡黄色の反応液(ポリアミドイミド溶液)を得た。次に、このようにして得られた反応液を室温(25℃)まで冷却した後、溶液の全量が50mLになるように、DMAcを加えて希釈した。この溶液を250mLのメタノールにその冷却後の反応液(淡黄色)を滴下することにより固形分を析出せしめ、ろ過して固形分を回収することにより、白色粉末を得た。そして、このようにして得られた白色粉末を真空乾燥することにより、8.82gのポリアミドイミド(粉末状)を得た。
次に、得られたポリアミドイミドの粉末をDMAcに溶解させて、粉末が20質量%となるようにした樹脂溶液(ポリアミドイミド溶液:ワニス)を調製した。その後、バーコーターを用い、得られた樹脂溶液をA5サイズのガラス板上に塗布して、塗膜を形成した。次いで、前記塗膜の形成されたガラス板をオーブン中に投入し、窒素雰囲気下において、先ず、60℃の温度条件で4時間静置した後、温度を60℃から250℃に昇温し、250℃の温度条件(焼成温度)で1時間静置することにより塗膜を硬化せしめ、ガラス板上にポリアミドイミドからなる薄膜(ポリアミドイミドフィルム)がコートされたポリアミドイミドコートガラスを得た。
次に、このようにして得られたポリアミドイミドコートガラスを、90℃の水中に0.5時間浸漬して、前記ガラス基板からポリアミドイミドフィルムを剥離することによりポリアミドイミドフィルムを回収し、ポリアミドイミドからなる無色透明なフィルム(ポリアミドイミドフィルム)を得た。なお、このようにして得られたポリアミドイミドフィルムの膜厚は37μmであった。
このようにして得られたフィルムを形成する化合物の分子構造を同定するため、IRスペクトルを測定したところ、得られたフィルムを構成する化合物はポリアミドイミドであることが確認された。得られたポリアミドイミドフィルムの特性の評価結果を表1に示す。
(実施例3)
窒素雰囲気下において、150mLのナスフラスコにTFMB(和歌山精化株式会社製)2.88g(9.00mmol)とCpODA0.577g(1.50mmol)とs−BPDA(JFEケミカル社製)0.441g(1.50mmol)とHPMDA(東京化成工業株式会社製)0.337g(1.50mmol)とを導入することにより、前記ナスフラスコ内に芳香族ジアミン(TFMB)とテトラカルボン酸二無水物成分(CpODAとs−BPDAとHPMDAとの混合物)とを導入した。
次に、前記ナスフラスコ内に、DMAc8.5g及びγ−ブチロラクトン8.5gからなる有機溶媒を導入するとともに、反応促進剤であるトリエチルアミン48.0mg(0.47mmol)を導入することにより、前記芳香族ジアミン(TFMB)と、前記テトラカルボン酸二無水物成分(CpODAとs−BPDAとHPMDAの混合物)と、前記有機溶媒(DMAc及びγ−ブチロラクトン)と、反応促進剤(トリエチルアミン)とを混合した反応液(混合液)を得た。
次いで、このようにして得られた反応液を、窒素雰囲気下、180℃の温度条件で3時間加熱しながら撹拌することにより、粘性のある均一な淡黄色の反応液(ポリイミド溶液)を得た。次に、このようにして得られた反応液(淡黄色)を室温(25℃)まで冷却した後、その冷却後の反応液(淡黄色)にTPC(東京化成工業製)0.914g(4.50mmol)を添加した。次いで、TPC添加後の前記反応液を窒素雰囲気下、80℃の温度条件で30分加熱しながら撹拌することにより、粘性のある均一な淡黄色の反応液(ポリアミドイミド溶液)を得た。次に、このようにして得られた反応液を室温(25℃)まで冷却した後、溶液の全量が50mLになるように、DMAcを加えて希釈した。250mLのメタノールにその冷却後の反応液(淡黄色)を滴下することにより固形分を析出せしめ、ろ過して固形分を回収することにより、白色粉末を得た。そして、このようにして得られた白色粉末を真空乾燥することにより、4.62gのポリアミドイミド(粉末状)を得た。
次に、得られたポリアミドイミドの粉末をDMAcに溶解させて、粉末が20質量%となるようにした樹脂溶液(ポリアミドイミド溶液:ワニス)を調製した。その後、バーコーターを用い、得られた樹脂溶液をA5サイズのガラス板上に塗布して、塗膜を形成した。次いで、前記塗膜の形成されたガラス板をオーブン中に投入し、窒素雰囲気下において、先ず、60℃の温度条件で4時間静置した後、温度を60℃から250℃に昇温し、250℃の温度条件(焼成温度)で1時間静置することにより塗膜を硬化せしめ、ガラス板上にポリアミドイミドからなる薄膜(ポリアミドイミドフィルム)がコートされたポリアミドイミドコートガラスを得た。
次に、このようにして得られたポリアミドイミドコートガラスを、90℃の水中に0.5時間浸漬して、前記ガラス基板からポリアミドイミドフィルムを剥離することによりポリアミドイミドフィルムを回収し、ポリアミドイミドからなる無色透明なフィルム(ポリアミドイミドフィルム)を得た。なお、このようにして得られたポリアミドイミドフィルムの膜厚は30μmであった。
このようにして得られたフィルムを形成する化合物の分子構造を同定するため、IRスペクトルを測定したところ、得られたフィルムを構成する化合物はポリアミドイミドであることが確認された。得られたポリアミドイミドフィルムの特性の評価結果を表1に示す。
(実施例4)
窒素雰囲気下において、100mLのナスフラスコにTFMB(和歌山精化株式会社製)2.88g(9.00mmol)とCpODA0.768g(2.00mmol)とs−BPDA(JFEケミカル社製)0.583g(2.00mmol)とHPMDA(東京化成工業株式会社製)0.448g(2.00mmol)とを導入することにより、前記ナスフラスコ内に芳香族ジアミン(TFMB)とテトラカルボン酸二無水物成分(CpODAとs−BPDAとHPMDAとの混合物)とを導入した。
次に、前記ナスフラスコ内に、DMAc9.4g及びγ−ブチロラクトン9.4gからなる有機溶媒を導入するとともに、反応促進剤であるトリエチルアミン51.0mg(0.50mmol)を導入することにより、前記芳香族ジアミン(TFMB)と、前記テトラカルボン酸二無水物成分(CpODAとs−BPDAとHPMDAの混合物)と、前記有機溶媒(DMAc及びγ−ブチロラクトン)と、反応促進剤(トリエチルアミン)とを混合した反応液(混合液)を得た。
次いで、このようにして得られた反応液を、窒素雰囲気下、180℃の温度条件で3時間加熱しながら撹拌することにより、粘性のある均一な淡黄色の反応液(ポリイミド溶液)を得た。次に、このようにして得られた反応液(淡黄色)を室温(25℃)まで冷却した後、その冷却後の反応液(淡黄色)にTPC(東京化成工業製)0.609g(3.00mmol)を添加した。次いで、TPC添加後の前記反応液を窒素雰囲気下、80℃の温度条件で30分加熱しながら撹拌することにより、粘性のある均一な淡黄色の反応液(ポリアミドイミド溶液)を得た。次に、このようにして得られた反応液を室温(25℃)まで冷却した後、溶液の全量が50mLになるように、DMAcを加えて希釈した。250mLのメタノールにその冷却後の反応液(淡黄色)を滴下することにより固形分を析出せしめ、ろ過して固形分を回収することにより、白色粉末を得た。そして、このようにして得られた白色粉末を真空乾燥することにより、4.61gのポリアミドイミド(粉末状)を得た。
次に、得られたポリアミドイミドの粉末をDMAcに溶解させて、粉末が20質量%となるようにした樹脂溶液(ポリアミドイミド溶液:ワニス)を調製した。その後、バーコーターを用い、得られた樹脂溶液をA5サイズのガラス板上に塗布して、塗膜を形成した。次いで、前記塗膜の形成されたガラス板をオーブン中に投入し、窒素雰囲気下において、先ず、60℃の温度条件で4時間静置した後、温度を60℃から250℃に昇温し、250℃の温度条件(焼成温度)で1時間静置することにより塗膜を硬化せしめ、ガラス板上にポリアミドイミドからなる薄膜(ポリアミドイミドフィルム)がコートされたポリアミドイミドコートガラスを得た。
次に、このようにして得られたポリアミドイミドコートガラスを、90℃の水中に0.5時間浸漬して、前記ガラス基板からポリアミドイミドフィルムを剥離することによりポリアミドイミドフィルムを回収し、ポリアミドイミドからなる無色透明なフィルム(ポリアミドイミドフィルム)を得た。なお、このようにして得られたポリアミドイミドフィルムの膜厚は33μmであった。
このようにして得られたフィルムを形成する化合物の分子構造を同定するため、IRスペクトルを測定したところ、得られたフィルムを構成する化合物はポリアミドイミドであることが確認された。得られたポリアミドイミドフィルムの特性の評価結果を表1に示す。
(比較例1)
窒素雰囲気下において、50mLのナスフラスコにTFMB(和歌山精化株式会社製)3.20g(10.0mmol)とCpODA1.92g(5.00mmol)とs−BPDA(JFEケミカル社製)0.73g(2.49mmol)とHPMDA(日興リカ株式会社製)0.57g(2.54mmol)とを導入することにより、前記ナスフラスコ内に芳香族ジアミン(TFMB)とテトラカルボン酸二無水物成分(CpODAとs−BPDAとHPMDAの混合物)とを導入した。
次に、前記ナスフラスコ内に、DMAc12.8g及びγ−ブチロラクトン12.9gからなる有機溶媒を導入するとともに、反応促進剤であるトリエチルアミン51mg(0.050mmol)を導入することにより、前記芳香族ジアミン(TFMB)と、前記テトラカルボン酸二無水物成分(CpODAとs−BPDAとHPMDAの混合物)と、前記有機溶媒(DMAc及びγ−ブチロラクトン)と、反応促進剤(トリエチルアミン)とを混合した反応液(混合液)を得た。
次いで、このようにして得られた反応液(混合液)を、窒素雰囲気下、180℃の温度条件で3時間加熱しながら撹拌することにより、粘性のある均一な淡黄色の反応液(ポリイミド溶液)を得た。
次に、このようにして得られた反応液(ポリイミド溶液)をガラス板(縦:75mm、横50mm、厚み1.3mm)上にスピンコートすることにより、ガラス板上に塗膜を形成した。その後、前記塗膜の形成されたガラス板をオーブン中に投入し、窒素雰囲気下において、先ず、60℃の温度条件で4時間静置した後、温度を60℃から250℃に昇温し、250℃の温度条件(焼成温度)で1時間静置することにより塗膜を硬化せしめ、ガラス板上にポリイミドからなる薄膜(ポリイミドフィルム)がコートされたポリイミドコートガラスを得た。
次に、このようにして得られたポリイミドコートガラスを、90℃の水中に0.5時間浸漬して、前記ガラス基板からポリイミドフィルムを剥離することによりポリアミドイミドフィルムを回収し、ポリイミドからなる無色透明フィルム(ポリイミドフィルム)を得た。このようにして得られたポリイミドフィルムの膜厚は25μmであった。
このようにして得られたフィルムを形成する化合物の分子構造を同定するため、IR測定機(日本分光株式会社製、商品名:FT/IR−4100)を用いて、IRスペクトルを測定したところ、イミド基及びCpODAのC=O伸縮振動が1713cm−1、1778cm−1に観察されたことから、得られたフィルムを構成する化合物はポリイミドであることが確認された。また、得られたポリイミドフィルムの特性の評価結果を表1に示す。なお、比較例1で得られたフィルムのIRスペクトルのグラフを図2に示す。
表1に示した結果から明らかなように、実施例1〜4で得られたポリアミドイミドは、全光線透過率、HAZE及びYI及の値から、比較例1で得られたポリイミドとほぼ同等の非常に優れた水準の透明性を有することが確認された。また、実施例1〜4で得られたポリアミドイミドは十分に低い線膨張係数(CTE)を有するものであることも分かった。また、実施例1〜4で得られたポリアミドイミドと比較例1で得られたポリイミドとを比較すると、TPCとTFMBとに由来する繰り返し単位の有無といった点で組成が異なることとなるが、実施例1〜4で得られたポリアミドイミドによれば、硬度がより高い水準のものとなることが確認された。
以上説明したように、本発明によれば、十分に高度な透明性を有しつつ硬度をより高い水準のものとすることを可能とするポリアミドイミド、そのポリアミドイミドを含有する樹脂溶液、及び、そのポリアミドイミドを用いたフィルムを提供することが可能となる。このような本発明のポリアミドイミドは、その特性から前述の各種用途に利用できる。

Claims (5)

  1. 下記一般式(1):
    [式(1)中、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基及びフッ素原子よりなる群から選択される1種を示し、Rは下記一般式(2):
    で表されるアリーレン基を示し、nは0〜12の整数を示す。]
    で表される繰り返し単位の中から選択される少なくとも1種の繰り返し単位(A)と、
    下記一般式(3):
    [Rは上記一般式(2)で表されるアリーレン基を示す。]
    で表される繰り返し単位の中から選択される少なくとも1種の繰り返し単位(B)と、
    を含有することを特徴とするポリアミドイミド。
  2. 下記一般式(4)〜(5):
    [式(4)及び(5)中、Rは上記一般式(2)で表されるアリーレン基を示す。]
    で表される繰り返し単位の中から選択される少なくとも1種の繰り返し単位(C)を更に含有することを特徴とする請求項1に記載のポリアミドイミド。
  3. 下記一般式(6)〜(8):
    [式(6)中、Xは炭素数が4〜16の4価の飽和脂環式炭化水素基を示し、式(8)中、Aは置換基を有していてもよくかつ芳香環を形成する炭素原子の数が6〜30である2価の芳香族基よりなる群から選択される1種を示し、Rはそれぞれ独立に、水素原子及び炭素数1〜10のアルキル基よりなる群から選択される1種を示し、式(6)〜(8)中、Rは上記一般式(2)で表されるアリーレン基を示す。]
    で表される繰り返し単位の中から選択される少なくとも1種の繰り返し単位(D)を更に含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のポリアミドイミド。
  4. 請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のポリアミドイミドと有機溶媒とを含むことを特徴とする樹脂溶液。
  5. 請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のポリアミドイミドからなることを特徴とするフィルム。
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