JPWO2018042615A1 - 電気音響変換装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 電気音響変換装置において、特に低音域で高品質の音再生を可能にする。【解決手段】カップ状ヨーク29内には駆動マグネット31が固定され、駆動マグネットと間隔を置いて対面する振動膜39がヨーク29の先端部にてこれを塞ぐように固定される。振動膜39には、絶縁導線を巻いたボイスコイル41が中央領域を囲むよう固定される。ボイスコイル41は駆動マグネット31外周とヨーク29内壁間に挿入される。ボイスコイル41の両端リード線41aは対角位置から導出される。振動膜39におけるボイスコイル41付近から外周領域39bは、駆動マグネット31外周のヨーク29内領域で形成された密封空間Eに面する。【選択図】 図1

Description

本発明は電気音響変換装置に係り、特に、使用者の耳や頭部に装着するイヤホンおよびヘッドホン、並びに大型のスピーカのようなスピーカ装置や、更に、マイクロフォンとして使用可能な電気音響変換装置の改良に関する。
従来、使用者の耳に装着するスピーカ装置としては、例えば図9に示すように、ケース本体1内に配置したカップ状ヨーク3内に円柱状駆動マグネット5の一方の端面を固定し、駆動マグネット5の他方の端面との間で間隔を置いて対面する薄い振動板7をヨーク3の先端に接着剤等で固定し、振動板7に固定した円筒状のボイスコイル9を駆動マグネット5の外周に僅かな間隔を置いて挿入した構成が良く知られている。
ケース本体1は、ロート状の基部1aとこの先端(図9中右側)を覆う前面カバー1bからなり、前面カバー1bから突出する音通筒体11外周に可撓性のイヤーチップ(イヤパット、イヤピース)13が嵌められる。
なお、図9中の符号15は外部へ導出されるケーブルであり、この結び目15aが基部1a内にある。
このスピーカ装置では、振動板7を振動させる駆動部17が駆動マグネット5およびボイスコイル9によって形成され、外部からケーブル15でボイスコイル9に音声信号を印加することによって振動板7を振動させて発音させ、発音された音が振動板7前面の音通筒体11から外部へ伝搬される。
実際の製品としてのスピーカ装置は、例えば外耳道挿入(カナル)型のイヤホン装置に構成し、使用者の耳珠19、対珠21、耳甲介23で囲まれた耳甲介腔25に、振動板7を耳甲介23に近接させるようにしてケース本体1を挿入するとともに、耳甲介腔25から鼓膜(図示せず)へ延びる外耳道27内壁にイヤーチップ13を弾性的に当接させて使用される。
実際の製品には、上述した図9のように、振動板7の中心軸に音通筒体11の中心軸を揃えた同軸型と、図示はしないが、振動板7の中心軸に音通筒体11の中心軸を斜めに設定した非同軸型とがある。図9ではイヤホン装置を左耳に装着した状態を示している。
ところで、イヤホンの公知例としては特開2010−283643号公報(特許文献1)があり、スピーカ装置の公知例としては特開2008−118331号公報(特許文献2)がある。
特開2010−283643号公報 特開2008−118331号公報
しかしながら、上述したスピーカ装置では、図10Aに示すように、例えば、ボイスコイル9の付け根の1箇所から両端リード線9aを外部空間へ導出させる構成がよく知られている。
この構成において、両端リード線9aに音声信号を印加してボイスコイル9を変位振動させた場合、音の再生について次のような影響の生じることが分かった。
すなわち、図10Aに示す構成では、ボイスコイル9における両端リード線9aの導出位置P1とこれと対角する対角位置P2とで、主に、振動板7に加わる両端リード線9aの負荷の有無に起因して、振動板7は両端リード線9aの導出位置P1側よりも対角位置P2側の方が大きく変位し易い。
これが音の再生に影響し易く、広い周波数帯域で高品質で音を再生させるには改善の余地のあることが分かった。
さらに、図10Bで示すように、両端リード線9aをボイスコイル9の1箇所から振動板7の外側位置P3まで引き出すとともに、外側位置P3までの振動板7の外周領域(コルゲーションエッジ部)に可撓性の接着剤(図示省略)で両端リード線9aを止着する構成や、図示はしないが、ボイスコイルの2箇所から両端リード線を引き出す構成もある。
ボイスコイル9から両端リード線9aを引き出す箇所が1箇所であれ2箇所であれ、振動板7の振動時において、1箇所の場合はそのポイントが、2箇所の場合はその2箇所を結んだ線上に振動板7のローリング運動の節を生じ易い。
また、ヨーク3への振動板7の載置位置ずれ等に起因し、振動板7の振動時にその外周領域で不規則なあばれ振動が生じ易い。
それらが、音声信号の大入力時、歪率の増加、又は過渡応答特性の悪化、更にはビビリ音などの異常振動の原因になり、広い周波数帯域で高品質で音を再生させるには改善の余地のあることも分かった。
そこで、本発明者は、更なる高品質化を追求して種々の構成を鋭意検討した結果、新規の構成を見い出し、本発明を完成させた。
本発明はそのような課題を解決するためになされたもので、広い周波数帯域および優れた過渡応答特性を有し、特に低音域で高品質の音再生が可能な電気音響変換装置の提供を目的とする。
そのような課題を解決するために本発明の電気音響変換装置に係る第1の構成は、カップ状にして底部中央に貫通孔を有する磁性体性のヨークと、このヨーク内にてその貫通孔に当該中空部を揃えるように一方の端面がヨーク底部に固定された円筒状の駆動マグネットと、そのヨーク内にて駆動マグネット中空部と当該中空部を揃えるようにその駆動マグネットの他方の端面に共軸的に重ねられたリング状のポールピースと、このポールピースと間隔を置いて対面するようそのヨークの先端部にてこれを塞ぐよう固定された薄い振動膜と、細い絶縁導線を巻いて筒形に形成され、その振動膜のヨーク側片面において中央領域を囲むようその振動膜に固定されたボイスコイルであって、それらポールピース外周とヨークの筒形部との間の環状空隙に挿入されるとともに、当該両端リード線に印加される音声信号によって振動膜を振動させるボイスコイルと、を具備している。
しかも、上記両端リード線は互いにそのボイスコイルの付け根における対角位置から導出され、その振動膜におけるボイスコイルの付け根付近から外周の外周領域はこれとヨーク内領域で形成される密封空間に面するとともに、その密封空間はその環状空隙からポールピースの中空部および駆動マグネットの中空部に連通されて構成されている。
本発明の電気音響変換装置に係る第1の構成は、上記ポールピースが、その駆動マグネットと同径又はこれより大径の外径を有する形状に磁性体で形成され、上記ヨークとの間で磁気回路を形成する構成も可能である。
本発明の電気音響変換装置に係る第1の構成は、上記ヨークが、その筒形部にてポールピースの近傍にて外側へ屈曲して延びる環状のフランジ部を有し、上記振動膜がそのフランジ部と間隔を置いてその外周に固定され、その密封空間がそれら外周領域とフランジ部との間で形成されてなる構成も可能である。
本発明の電気音響変換装置に係る第1の構成は、当該電気音響変換装置の音質特性を調整する調整部が、その駆動マグネットの中空部又はヨークの貫通孔を塞ぐ音響制動用通気性ネットである構成も可能である。
本発明の電気音響変換装置に係る第2の構成は、円筒状の磁性体性のヨークと、このヨークの一方の端面側から外側へ屈曲形成させた固定部に一方の端面が共軸的に固定されたリング状の駆動マグネットであって、そのヨークの筒形部外周と間隔を置いて周対面する駆動マグネットと、そのヨークの外周において、駆動マグネットの他方の端面側に共軸的に固定されたリング状の支持部と、それらヨークおよび支持部と間隔を置いて対面するようその支持部の外周部に固定された薄い振動膜と、細い絶縁導線を巻いて筒形に形成され、その振動膜のヨーク側片面において中央領域を囲むよう振動膜に固定されたボイスコイルであって、それらヨーク外周と支持部内周との間の環状空隙に挿入されるとともに、当該両端リード線に印加される音声信号によってその振動膜を振動させるボイスコイルと、を具備している。
しかも、上記両端リード線が互いにボイスコイルの付け根における対角位置から導出され、その振動膜におけるボイスコイルの付け根付近から外周の外周領域はこれと支持部との間で形成される密封空間に面し、上記密封空間はその環状空隙からヨークの中空部を介して連通されてなる構成である。
本発明の電気音響変換装置に係る第2の構成は、上記支持部が、その駆動マグネットと同径又はこれより小径の内径を有する形状に磁性体で形成され、そのヨークとの間で磁気回路を形成する構成も可能である。
本発明の電気音響変換装置に係る第2の構成は、当該電気音響変換装置の音質特性を調整する調整部が、そのヨークの中空部を直接又は間接的に塞ぐ音響制動用通気性ネットとする構成も可能である。
このような本発明の電気音響変換装置に係る第1の構成おいては、上記両端リード線が互いに当該ボイスコイルの対角位置から導出され、上記振動膜におけるボイスコイルの付け根付近から外周領域が、主にそれら駆動マグネット外周のヨーク内領域で形成される密封空間に面するとともに、その密封空間が、その環状空隙からポールピースや駆動マグネットの中空部に連通されているから、密封空間の実用的密封度が確保され、内磁型の構成において、振動板のローリング運動が防止され、振動板のスムーズなピストンモーション運動が確保され、その結果として優れた過渡応答、低い歪率、広い周波数帯域を得ることが可能である。特に低音域で高品質の音再生が可能となる。
本発明の電気音響変換装置に係る第1の構成では、上記ポールピースが、その駆動マグネットと同径又はこれより大径の外径を有する形状に磁性体で形成され、上記ヨークとの間で磁気回路を形成するから、ポールピースとヨークとの間で良好かつ強い磁気回路が形成され、振動膜の振動を向上させることが容易である。
本発明の電気音響変換装置に係る第1の構成では、上記ヨークにおいて、その筒形部が上記駆動マグネットの他方の端面近傍にて外側へ屈曲して延びるフランジ部を有し、上記振動膜がそのフランジ部と間隔を置いてその外周に固定されるとともに、その密封空間がその外周領域をそのフランジ部との間で形成されてなるから、振動板のローリング運動がより確実に防止され、上述した振動板のスムーズなピストンモーション運動の確保が可能である。
本発明の電気音響変換装置に係る第1の構成では、当該電気音響変換装置の音質特性を調整する調整部が、それら駆動マグネットの中空部又はヨークの貫通孔を塞ぐ音響制動用通気性ネットからなるから、上述した効果を維持しつつ音質特性の調整も可能である。
本発明の電気音響変換装置に係る第2の構成では、上記両端リード線は互いにそのボイスコイルの対角位置から導出され、その振動膜におけるボイスコイルの付け根付近から外周領域が、主にこれと上記支持部との間で形成された密封空間に面してなるから、その密封空間の実用的な密封度が確保され、外磁型の構成において、振動板のローリング運動が防止され、振動板のスムーズなピストンモーション運動が確保され、その結果として優れた過渡応答、低い歪率、広い周波数帯域を得ることが可能である。特に低音域で高品質の音再生が可能となる。
本発明の電気音響変換装置に係る第2の構成では、上記支持部を、その駆動マグネットと同径又はこれより小径の内径を有する形状に磁性体で形成すれば、良好な磁気回路の形成が容易となり、振動膜の振動を向上させることが容易である。
本発明の電気音響変換装置に係る第2の構成では、当該電気音響変換装置の音質特性を調整する調整部が、そのヨークの中空部を直接又は間接的に塞ぐ音響制動用通気性ネットであれば、上述した効果を維持しつつ音質特性の調整も可能である。
本発明の電気音響変換装置に係る第1の構成の一形態を示す要部縦断面図である。 図1の電気音響変換装置に係る振動膜の底面図および要部断面図である。 本発明の電気音響変換装置をイヤホン装置として示す概略縦断面図である。 図1の電気音響変換装置および従来の電気音響変換装置についての周波数特性図である。 図1の電気音響変換装置および従来の電気音響変換装置についての全高調波歪特性図である。 図1の電気音響変換装置に係る過渡応答波形図である。 従来の電気音響変換装置に係る過渡応答波形図である。 本発明の電気音響変換装置に係る第2の構成の一形態を示す要部縦断面図である。 従来の電気音響変換装置を使用例とともに示す断面図である。 従来および本発明の電気音響変換装置の動作を説明する概略図である。
以下、本発明に係る電気音響変換装置の実施の形態をスピーカ装置(例えばイヤホン装置)を例にし、図面を参照して説明する。
図1は本発明のスピーカ装置に係る第1の構成の一形態を示す要部縦断面図である。
図1において、ヨーク29は、磁性体板材料からカップ状に成形加工されてなり、この筒形部29aの開放端側(図1中上側)を外側へ屈曲して形成されたリング板状の扁平なフランジ部29bを一体的に有し、更に、このフランジ部29bの外周部29cを図中上側に若干立ち上げるように屈曲形成させている。
ヨーク29の底部29d中央には貫通孔29eが形成されており、ヨーク29内には円筒(リング)状の駆動マグネット31がこの中空部31aを貫通孔29eに揃えるようにして収納されている。すなわち、駆動マグネット31は、貫通孔29aを囲むように一方の端面(図1中下側)を底部29dに重ねてヨーク29内に収納されている。
駆動マグネット31の他方の端面(図1中上側)には、駆動マグネット31の外径と同径又はこれより若干大径の外径を有して磁性体で形成されてなるリング状のポールピース33が重ねられている。図1中の符号33aは、駆動マグネット31の中空部31aに揃うように形成された中空部33aである。
ヨーク29の底部29d外側には、貫通孔35aを有する回路基板35がそれら貫通孔35aと貫通孔29eを揃えるようにして重ねられている。
それらヨーク29、駆動マグネット31、ポールピース33および回路基板35は、ポールピース33又は回路基板35側から中空部31a、33aおよび貫通孔29e、35aを介して貫通させた例えば管状のはとめ37の両端をかしめることによって共軸的に一体化され、ヨーク29の底部29dに固定されている。
ヨーク29、駆動マグネット31、ポールピース33および回路基板35は、図示しない接着剤等によって共軸的に一体化し、ヨーク29に固定してもよい。
ポールピース33は、その外周がヨーク29の筒形部29a先端部すなわち筒形部29aからフランジ部29bへの屈曲部とほぼ同じレベル位置で周対面しており、高音質を得るための磁束集中用の部材で形成されているが(以下同じ)、駆動マグネット31と同一視可能である。
ポールピース33の外周とこれと僅かの間隔を置いて対向するヨーク29の筒形部29a先端部との間には、ヨーク29からの磁束によって磁気回路が形成されている。
振動膜39は、図2に示すように、従来公知の薄い絶縁性フィルム材料から円板状に形成されており、比較的広い中央部を若干ドーム状に膨らませてなる中央領域39aと、この中央領域39aを同心円状かつ環状に囲んだ外周領域39bとを有している。図2Aは振動膜39をポールピース33側から図示したものである。
振動膜39の中央領域39aは、振動時に分割振動などを起こしにくく、また容易に変形しないドーム型形状に形成されている。
外周領域39bには、図示しないが、いわゆるコルゲーション(corrugation)エッジと称される放射状の細かい凹凸条が形成されており、中央領域39aと比較し、外周領域39bは容易に撓み易く振動に対して柔軟性が高くなっている。
すなわち、中央領域39aが外周領域39bに比べて撓み難く強い剛性を有している。中央領域39aが外周領域39bよりも例えば1.5倍、好ましくは2〜5倍程度の強い剛性を有することが好ましいであろう。もっとも、中央領域39aを含めた振動膜39の良好な振動が確保される剛性範囲内にすることが大切である。
振動膜39は、図1に示すように、ヨーク29のフランジ部29bおよびポールピース33に対して空間を持ってそれらを覆うとともに、外周領域39bの外縁全周をフランジ部29aの外周部29cに接着剤などで固定させ、これに支持されている。
振動膜39の一方の面側(図1中下面側)において、中央領域39aと外周領域39bとの環状の境目には、円筒状のボイスコイル41の一方の端面側が中央領域39aを囲むように固定されている。
ボイスコイル41は、絶縁被覆された細い絶縁導線を円筒状に巻いて一体化したものであり、ヨーク29の筒形部29a内壁と駆動マグネット31やポールピース33の外周との間の環状空隙において、ヨーク29と駆動マグネット31やポールピース33と僅かな間隔を置いて挿入され、ヨーク29の内周と駆動マグネット31の外周に対してそれぞれ環状に対面している。
ボイスコイル41からの両端リード線41aは対角位置から導出され、管状のはとめ37の中空部すなわちポールピース33および駆動マグネット31の中空部31a、更に、ヨーク29の底部29dや回路基板35の貫通孔29e、35aを介して外部へ導出され、回路基板37に接続されている。
なお、両端リード線41aは、振動膜39の後述する振動によってもストレスが加わらないよう余裕を持って空中配線されているが、必ずしも、ポールピース33および駆動マグネット31の中空部31a等を介して導出する必要はない。
しかも、ボイスコイル41の付け根付近から外周領域39bは、ヨーク29内にあってフランジ部29bとの間で形成された密封空間Eに面している。
密封空間Eは、ヨーク29の筒形部29aとボイスコイル41間の狭い隙間から、ボイスコイル41と駆動マグネット31やポールピース33との間の狭い隙間を介し、すなわち、駆動マグネット31やポールピース33の外周とヨーク29の筒形部29aとの間の狭い環状空隙から、はとめ37の中空部を介して外部に連通して間接的に密封されている。
そのため、密封空間Eは、ボイスコイル41の外周領域39b全体を均一負荷で支持する機能を有している。
図1中の符号43は、はとめ39の中空部を回路基板37側から塞ぐ音響制動用の通気性ネットであり、例えば不織布などによって形成されており、その目の粗さにより、振動膜39側とヨーク29外部側間の通気量の多少を可変させて音質調整が可能である。通気性ネット43はヨーク29貫通孔29eや駆動マグネット31中空部31aを塞ぐものであればよい。
ヨーク29の底部29dに重ねられた回路基板37には、後述するケーブル45によって電子機器(図示せず。)から音声信号が供給される。
両端リード線41aを介した音声信号のボイスコイル41への印加によってボイスコイル41が変位し、振動膜39が振動駆動する。
すなわち、ヨーク29、駆動マグネット31およびボイスコイル41により、振動膜39を振動駆動させる駆動部47が形成され、いわゆる内磁型のスピーカ装置の主要部となっている。
ヨーク29は、図3に示すように、フランジ部29bの外周部29cをキャップ状のケース本体49内に嵌められ、ケース本体49内に支持されている。
上述したケース本体49は、ヨーク29外周が嵌る大径筒状部49aと、この大径筒状部49aから連続してヨーク29とほぼ同寸法になっている小径筒状部49bとを有し、絶縁性合成樹脂などから一体的に成形加工されている。
ヨーク29、駆動マグネット31およびポールピース33が、一体化されて大径筒状部49a内側に嵌め込まれ、大径筒状部49a内側に固定支持されている。
ケース本体49の小径筒状部49bが振動膜39と間隔を置いてこれを覆うとともに、図1中上方に突出するように延びて音通筒体となっている。
上述した構成のスピーカ装置は、ケース本体49において大径筒状部49a外側にカバー51等を被せてヨーク29や回路基板35を覆うとともに、小径筒状部49b外周に可撓性のイヤーチップ53を嵌め、イヤホン装置として製品化される。
このようなスピーカ装置では、ケーブル45から回路基板35を介して音声信号を供給するとともにボイスコイル41へ音声信号を印加することにより、駆動部47が振動膜39を振動発音させ、音通筒体となった小径筒状部49bを介して振動音が外部へ伝搬される。
そして、本発明に係るスピーカ装置は、上述した図9に示したように、耳珠19、対珠21、耳甲介23で囲まれた耳甲介腔25にケース本体49を収納するとともに、先端のイヤーチップ53を外耳道27に挿入して装着使用される。
このような本発明のスピーカ装置に係る構成では、図10Cに示すように、ボイスコイル41からの両端リード線41aの導出位置P1、P2に起因する負荷位置がボイスコイル41の対角位置になっているので、導出位置P1、P2双方の変位が揃い易く、広い周波数帯域で高品質で音を再生させ易い。
もっとも、本発明のスピーカ装置に係る構成においても、振動膜39の振動時に、導出位置P1、P2を結ぶ仮想線(図示せず)が節となり、その節を中心としたローリング運動が生じる心配がある。
この点、本発明のスピーカでは、振動膜39の外周領域39bが面する密封空間Eが、ヨーク29のフランジ部29bと振動膜39の外周領域39bの間で形成された狭く扁平な空間であり、振動膜39の外周領域39b全周に面してエアーダンパーとして機能し、振動膜39が振動しても、その外周領域39b全周に均一な機械的負荷が掛った状態で振動膜39が保持され、振動時にローリング振動が起き難く、振動膜39の外周領域39bのあばれが生じ難い。
そのような動作が相まって、振動膜39全体がピストンモードで均一変位し、広い周波数帯域、優れた過渡応答波形、特に低い音域で高品質で音を再生させることが可能である。具体的には、楽器等の定位感が向上し再生音を判別し易い。
他方、従来のスピーカ装置において、低域レスポンスを向上させようとすると振動膜39の振動振幅が大きくなるため、ローリング運動がより大きくなり、歪の増加、ビビリ音の発生など異常振動が生じ易い。
従来のスピーカ装置において、振動板7は、図10Aのように、両端リード線9aの負荷によるアンバランスなローリングと呼ばれるような動作を生じ易く、これを前提にして振動板7の設計がなされていたので、振動板7の振動時の歪をある程度吸収するために中央領域7aに相当する部分もある程度撓んで振動するように球状形状とすることが一般的であった。
そして、従来構造において、本発明のように振動膜41の剛性を高めると、撓みながら振動する外周領域39b部分には更に大きな歪が発生し、異常振動音等が発生し易い。
本発明の構成では、ローリング運動が発生し難いため、外周領域39bについても捻じれなどの歪が発生し難く、コルゲーションエッジ部の設計自由度は従来構成と比較し、遙かに向上させることが可能である。しかも、歪、ビビリ音などの発生が少ないため、低域のレスポンスも比較的自由にコントロール可能となる。
そして、本発明のスピーカ装置に係る構成では、図4の実線aで示す全高調波歪特性のように、特に低い音域まで歪の少ない特性を示し、広い周波数帯域で高品質の音再生が可能であることが分かるし、図5の実線aで示す全高調波歪率特性のように、高調波歪率特性が低くフラットである。
他方、図10Aに示したように、ボイスコイル9の付け根から両端リード線9aを引き出す従来構成では、図4の破線bで示す周波数特性のように、低い音域での全高調波歪特性が悪化し易いし、図5の破線bで示す全高調波歪率特性のように、高調波歪率特性が悪く、特に1KHz前後以下の中低音域部の悪化が目立っている。
本発明では図1、図2Aで示すように対角位置にある2か所からボイスコイル9の両端リード線41aの導出を行っており、密封空間Eによる外周領域39b全体に空気圧を掛ける制動効果と相まって、両端リード線41aの導出部の負荷を軽減している。
また、図10Aに示す両端リード線9aによる1箇所からの導出においても密封空間による外周領域39b全体に空気圧を掛ける制動効果は得られるが、当然2か所からの導出の方が外周領域39bへの負荷が小さく、性能面でも良好な結果が得られる。
本発明の第1の構成における密封空間Eは、駆動マグネット31外周のヨーク29内領域で形成され、振動膜39におけるボイスコイル41の付け根付近から外周の外周領域39bに面するものであり、完全に密封されている必要はなく、振動膜39の外周領域39b負荷を支える空気室機能を有していればよい。
密封空間Eは、例えば、駆動マグネット31やポールピース33とヨーク29との間の環状空隙(例えば0.3mm程度)から駆動マグネット31の中空部31aおよびヨーク29の貫通孔29eを介して外部へ間接的に連通されていてもよく、振動膜39の共振周波数が所望値からずれるのを調整するために微細な孔を振動膜39に設ける程度であれば、本発明の動作や効果に支障ない。
さらに、本発明に係るスピーカ装置の構成が示す過渡応答波形は、図6に示すようになり、200Hzおよび1000Hzのトーンバースト信号を印加した場合の出力信号波形の乱れが少なく、過渡応答波形が良いことが分かる。
他方、図10Aの従来構成では、図7に示すように、200Hzおよび1000Hzのトーンバースト信号を印加した場合の出力信号波形に比較的大きな乱れが生じ、本発明に係るスピーカ装置の過渡応答波形が向上していることが分かる。
このように、本発明のスピーカ装置に係る第1の構成では、広い周波数帯域および優れた過渡応答特性を有し、特に低音域で高品質の音再生が可能である。
本発明のスピーカ装置は、上述した内磁型の構成に限定されず、いわゆる外磁型のスピーカ装置も可能である。
次に、本発明のスピーカ装置に係る第2の構成すなわち外磁型のスピーカ装置を説明する。
図8は本発明のスピーカ装置に係る第2の構成の一形態を示す要部縦断面図である。
図8において、ヨーク55は、磁性体板材料から円筒状に成形加工されてなり、この図中下側の開放端を外側へ屈曲して形成されたリング板状の扁平な固定部55aを一体的に有している。
ヨーク55の外周には、この筒形部55b外周と間隔を置いてリング状の駆動マグネット57が共軸的に嵌められ、一方の端面(図8中下側)を固定部55aに固定されている。
駆動マグネット57の他方の端面(図8中上側)には、駆動マグネット57の内径とほぼ同寸法又は若干小径の内径を有して磁性体からリング板状に形成された支持部59が重ねられており、支持部59の外周先端部59aが若干上側(図8中上側)へ屈曲されている。この支持部59はヨーク55との間で磁気回路を形成するものである。
これら駆動マグネット57および支持部59は外周が揃っており、支持部59の内周が駆動マグネット57のそれより内側へ突出しているものの双方ともほぼ揃っており、支持部59は、ヨーク55の他方の先端部とほぼ同じレベル位置で周対面している。支持部59は第1の構成におけるポールピース33に相当する。
ヨーク55の固定部55a外側には、貫通孔61aを有する回路基板61が重ねられている。
それらヨーク55の固定部55a、駆動マグネット57、支持部59および回路基板61は、例えば接着剤によって共軸的に一体化され、ヨーク55の固定部55aに固定されている。
支持部59の内周とこれと僅かの間隔を置いて対向するヨーク55先端部との間には、ヨーク55からの磁束によって磁気回路が形成されている。
振動膜63は、図2と同様に、従来公知の薄い絶縁性フィルム材料から円板状に形成されており、比較的広い中央部を若干ドーム状に膨らませてなる中央領域63aと、この中央領域63aを同心円状かつ環状に囲んだ外周領域63bとを有している。振動膜63のその他の構成も図2の振動膜39と同様である。
振動膜63は、ヨーク55および支持部59に対して空間を持ってそれらを覆うとともに、外周領域63bの外縁全周を支持部59の先端部59aに接着剤などで固定させ、これに支持されている。
振動膜63の一方の面側(図8中下面側)において、中央領域63aと外周領域63bとの環状の境目には、円筒状のボイスコイル65の一方の端面側が中央領域63aを囲むように固定されている。
ボイスコイル65は、上述したボイスコイル41と同様に、絶縁被覆された細い絶縁導線を円筒状に巻いて一体化したものであり、ヨーク55の外壁と駆動マグネット57や支持部59の内周との間の環状空隙に、ヨーク55、駆動マグネット57や支持部59と僅かな間隔を置いて挿入され、ヨーク55の外周と駆動マグネット57や支持部59の内周に対して環状に対面している。
ボイスコイル65からの両端リード線65aは、対角位置から導出され、ヨーク55の中空部を介して回路基板61を貫通されて当該回路基板61に接続されている。
ボイスコイル65の付け根付近から外周領域63bは、支持部59との間で形成された密封空間Eに面している。
この密封空間Eは、支持部59や駆動マグネット57とボイスコイル65間を経て、ヨーク55とボイスコイル65間の狭い隙間から、ヨーク55の中空部、回路基板61の貫通部61aを介して外部に連通して間接的に密封されており、ボイスコイル65の外周領域63b全体を均一負荷で支持する機能を有している。
図1中の符号67は、回路基板61の貫通孔61aを塞ぐ音響制動用の通気性ネットであり、例えば不織布などによって形成されており、上述した通気性ネット43と同様に、その目の粗さによって振動膜63側とヨーク55外部側間の通気量の多少を可変させて音質調整が可能である。
ヨーク55の固定部55aに重ねられた回路基板61には、図示しないケーブルによって電子機器(図示せず。)から音声信号が供給される。
両端リード線65aを介した音声信号のボイスコイル65への印加によってボイスコイル65が変位し、振動膜63が振動駆動する。
すなわち、ヨーク55、駆動マグネット57およびボイスコイル65により、振動膜63を振動駆動させる駆動部69が形成され、いわゆる外磁型のスピーカ装置の主要部となっている。
ヨーク55は、上述した図3に示すように、キャップ状のケース本体49内に嵌められ、ケース本体49内に支持されるのは同様であるが、図示、説明は省略する。イヤホン装置として製品化例や使用例も同様である。
このような第2の構成のスピーカ装置では、回路基板61を介して音声信号を供給するとともにボイスコイル65へ音声信号を印加することにより、駆動部69が振動膜63を振動発音させて振動音が外部へ伝搬される。
本発明の第2の構成における密封空間Eは、ヨーク55の筒形部外領域において、支持部59(駆動マグネット57)と振動膜63の外周領域63bの間で形成されてこれに面するものであり、完全に密封されている必要はなく、振動膜63の外周領域63b負荷を支える機能を有していればよいのは第1の構成と同様である。
また、本発明の第2の構成は、その動作および効果も第1の構成と同様であり、周波数特性および全高調波歪特性が図4および図5のようになり、広い周波数帯域および優れた過渡応答特性を有し、特に低音域で高品質の音再生が可能である。
また、本発明のスピーカ装置では、ケース本体49の小径筒状部49bで形成する音通筒体をケース本体(小径筒状部)49の中心軸上に沿って突出する構成の他、中心軸に対して斜め方向に突出する構成も可能である。
なお、本発明の電気音響変換装置は、ヘッドホン、大型のスピーカ等のスピーカ装置、更に、マイクロフォンとして広く使用可能である。
1、49 ケース本体
1a 基部
1b 前面カバー
29、55 ヨーク
5、31、57 駆動マグネット
7 振動板
9、41、63 ボイスコイル
9a、41a、65a 両端リード線
11 音通筒体
13、53 イヤーチップ(イヤパット、イヤピース)
15、45 ケーブル
15a 結び目
17、47、69 駆動部
19 耳珠
21 対珠
23 耳甲介
25 耳甲介腔
27 外耳道
29a、55b 筒形部
29b フランジ部
29c 外周部
29d 底部
29e、35a 貫通部
31a、33a 中空部
33 ポールピース
35、61 回路基板
37 はとめ
39、63 振動膜
39a、63a 中央領域
39b、63b 外周領域
43、67 通気性ネット
49a 大径筒状部
49b 小径筒状部
51 カバー基板
59 支持部
59a 先端部
E 密封空間
P1、P2、P3 導出位置

Claims (7)

  1. カップ状にして底部中央に貫通孔を有する磁性体性のヨークと、
    このヨーク内にて前記貫通孔に当該中空部を揃えるように一方の端面が前記ヨーク底部に固定された円筒状の駆動マグネットと、
    前記ヨーク内にて前記駆動マグネットの前記中空部と当該中空部を揃えるように前記駆動マグネットの他方の端面に共軸的に重ねられたリング状のポールピースと、
    このポールピースと間隔を置いて対面するよう前記ヨークの先端部にてこれを塞ぐよう固定された薄い振動膜と、
    細い絶縁導線を巻いて筒形に形成され、前記振動膜の前記ヨーク側片面において中央領域を囲むよう前記振動膜に固定されたボイスコイルであって、前記ポールピース外周と前記ヨークの筒形部との間の環状空隙に挿入されるとともに、当該両端リード線に印加される音声信号によって前記振動膜を振動させるボイスコイルと、
    を具備し、
    前記両端リード線は互いに前記ボイスコイルの付け根における対角位置から導出され、前記振動膜における前記ボイスコイルの付け根付近から外周の外周領域はこれと前記ヨーク内領域で形成される密封空間に面するとともに、前記密封空間は前記環状空隙から前記ポールピースの前記中空部および前記駆動マグネットの前記中空部に連通されてなることを特徴とする電気音響変換装置。
  2. 前記ポールピースは、前記駆動マグネットと同径又はこれより大径の外径を有する形状に磁性体で形成され、前記ヨークとの間で磁気回路を形成する請求項1記載の電気音響変換装置。
  3. 前記ヨークは、前記筒形部が前記ポールピースの近傍にて外側へ屈曲して延びる環状のフランジ部を有し、前記振動膜は前記フランジ部と間隔を置いてその外周に固定されるとともに、前記密封空間は前記外周領域と前記フランジ部との間で形成されてなる請求項1又は2記載の電気音響変換装置。
  4. 当該電気音響変換装置の音質特性を調整する調整部が、前記駆動マグネットの前記中空部又は前記ヨークの前記貫通孔を塞ぐ音響制動用通気性ネットである請求項1〜3いずれか1記載の電気音響変換装置。
  5. 円筒状の磁性体性のヨークと、
    このヨークの一方の端面側から外側へ屈曲形成させた固定部に一方の端面が共軸的に固定されたリング状の駆動マグネットであって、前記ヨークの筒形部外周と間隔を置いて周対面する駆動マグネットと、
    前記ヨークの外周において、前記駆動マグネットの他方の端面側に共軸的に固定されたリング状の支持部と、
    前記ヨークおよび前記支持部と間隔を置いて対面するよう前記支持部の外周部に固定された薄い振動膜と、
    細い絶縁導線を巻いて筒形に形成され、前記振動膜の前記ヨーク側片面において中央領域を囲むよう前記振動膜に固定されたボイスコイルであって、前記ヨーク外周と前記支持部内周との間の環状空隙に挿入されるとともに、当該両端リード線に印加される音声信号によって前記振動膜を振動させるボイスコイルと、
    を具備し、
    前記両端リード線は互いに前記ボイスコイルの付け根における対角位置から導出され、前記振動膜における前記ボイスコイルの付け根付近から外周の外周領域は主にこれと前記支持部との間で形成される密封空間に面し、前記密封空間は前記環状空隙から前記ヨークの中空部を介して連通されてなることを特徴とする電気音響変換装置。
  6. 前記支持部は、前記駆動マグネットと同径又はこれより小径の内径を有する形状に磁性体で形成され、前記ヨークとの間で磁気回路を形成する請求項5記載の電気音響変換装置。
  7. 当該電気音響変換装置の音質特性を調整する調整部が、前記ヨークの前記中空部を直接又は間接的に塞ぐ音響制動用通気性ネットである請求項5又は6記載の電気音響変換装置。
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