この発明は、X線撮影装置用保持機構およびX線撮影装置に関し、特に、X線管またはX線検出部を移動可能に保持する移動機構を備えたX線撮影装置用保持機構およびX線撮影装置に関する。
従来、X線管またはX線検出部を移動可能に保持する移動機構を備えたX線撮影装置が知られている。このようなX線撮影装置は、たとえば、国際公開第2012/043033号に開示されている。
上記国際公開第2012/043033号に開示されているX線撮影装置は、X線管装置と、操作ハンドルとを備えたヘッド部(移動体)と、ヘッド部を移動可能に保持する移動機構と、移動機構によるヘッド部の移動を固定するロック機構部と、ロック機構部を制御する制御装置とを備えている。移動機構は、水平方向および垂直方向の直交3軸方向と、垂直方向の軸回りの回転方向と、水平方向の軸回りの回転方向との、5軸方向にヘッド部を移動可能に保持している。ロック機構部は、5軸方向の各々におけるヘッド部の移動を個別にロックおよびロック解除することができる。操作ハンドルに、各軸方向に対応する複数のロック解除スイッチが設けられており、操作者がいずれかの軸方向のロック解除スイッチを操作すると、対応する軸方向のロックが制御装置により解除される。
撮影対象者(患者)のX線撮影を行う際、操作者は、ロックを解除した状態でヘッド部を移動させてX線管装置の位置合わせを行い、ロック状態で撮影を行う。
上記国際公開第2012/043033号のX線撮影装置では、移動体(ヘッド部)を移動させる際にロック解除スイッチを操作する必要があり、操作が煩雑である。特に、移動体の位置合わせを行う際に、操作者が撮影位置からロック解除スイッチに視線を移動させる必要があるため、ユーザビリティ(ユーザの使いやすさや使い勝手)が良好でない。また、たとえば移動体を水平軸回りに回転させた場合、回転の前後でロック解除スイッチの位置も水平軸回りに回転移動してしまうため、直感的な操作が行えない。そのため、移動体を移動させる際の操作性を改善することが望まれている。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、X線撮影のために移動体を移動させる際の操作性を改善することが可能なX線撮影装置用保持機構およびX線撮影装置を提供することである。
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面におけるX線撮影装置用保持機構は、X線管またはX線検出器を有する移動体を複数方向に移動可能に保持する移動機構と、複数方向の各々における、移動体の移動を許可する状態と移動を禁止する状態とを切り替える切替手段と、移動機構に加えられた力の方向を検出する力方向検出手段と、検出された力の方向に基づいて、複数方向のうち切替手段により移動を許可する方向を決定する許可方向決定手段とを備える。なお、本明細書において「移動」とは、移動体を並進移動させる場合のみならず、移動体を回転移動させる場合も含む広い概念である。また、「移動機構に加えられた力」とは、移動機構に直接加えられる力のみならず、移動体に力を加えることによって、移動体を保持する移動機構に対して間接的に加えられる力も含む。
この発明の第1の局面によるX線撮影装置用保持機構では、上記のように、移動機構に加えられた力の方向を検出する力方向検出手段と、検出された力の方向に基づいて、複数方向のうち切替手段により移動を許可する方向を決定する許可方向決定手段とを設ける。これにより、移動機構(または移動体)に対して力が加えられた場合に、許可方向決定手段により、力が加えられた方向への移動を許可する状態にすることが可能となる。その結果、操作者は、スイッチ操作などを要することなく、移動体を移動させたい方向(移動方向)に向けて力を加えるだけで、自動的に、移動方向への移動が許可された状態に切り替えて移動体を移動させることができるようになる。これにより、X線撮影のために移動体を移動させる際の操作性を改善することができる。そして、移動体の位置合わせを行う際に、操作者が撮影位置から視線を移動させる必要がなくなるため、ユーザビリティ(ユーザの使いやすさや使い勝手)を向上させることができる。
上記第1の局面によるX線撮影装置用保持機構において、好ましくは、複数方向は、互いに直交する水平および垂直の各並進方向を含み、移動機構は、移動体を垂直方向へ並進移動可能に保持する支柱と、移動体と一体的に移動するように支柱に支持された把持部とを含み、力方向検出手段は、把持部に加えられた垂直方向の力を検出する。このように構成すれば、操作者が移動を許可するために力を加える部位と、移動体を移動させるために操作者が把持する部位とを、一致させることができる。その結果、操作者が把持部を持って移動体を垂直方向に動かす動作によって、移動体の垂直方向への移動を許可してそのまま位置合わせすることが可能となるため、操作性をさらに改善することができる。
この場合、好ましくは、移動機構は、支柱を水平方向に並進移動可能に支持する走行機構を含み、力方向検出手段は、把持部に加えられた水平および垂直の各並進方向の力を検出する。このように構成すれば、垂直方向のみならず、水平方向への並進移動の場合でも、力を加える部位と、操作者が把持する部位とを一致させることができる。その結果、操作性をより一層改善することができる。
上記移動機構が支柱、走行機構および把持部を備える構成において、好ましくは、力方向検出手段は、把持部と支柱との間に配置され、直交3軸方向の力を検出可能な力検出部を含む。このように構成すれば、共通の力検出部によって、水平方向および垂直方向の各並進方向への力を検出して、移動を許可することができる。そのため、直交3軸方向に個別の力検出部を設ける構成と比較して、装置構成を簡素化することができる。
上記第1の局面によるX線撮影装置用保持機構において、好ましくは、複数方向は、互いに直交する水平軸回りおよび垂直軸回りの各回転方向を含み、移動機構は、移動体を水平軸回りに回転移動可能に保持する回転保持部と、移動体と一体的に回転移動するように回転保持部に支持された把持部とを含み、力方向検出手段は、把持部に加えられた水平軸回りの回転方向の力を検出する。このように構成すれば、操作者が把持部を持って移動体を水平軸回りに動かす動作によって、移動体の水平軸回りの回転方向への移動を許可してそのまま位置合わせすることが可能となるため、操作性をさらに改善することができる。また、水平軸回りの回転の前後でスイッチなどの位置(操作位置)が変化して操作性が変わり、操作位置を再確認する必要が生じる場合と異なり、操作者は、移動体を移動させたい方向に力を加えるだけで移動体を回転移動させることができるので、移動体の向きに関わらず直感的な操作が可能となる。この点でも、操作性が改善される。
この場合、好ましくは、移動機構は、回転保持部を垂直軸回りに回転移動可能に支持する支柱を含み、力方向検出手段は、把持部に加えられた水平軸回りおよび垂直軸回りの各回転方向の力を検出する。このように構成すれば、いずれの回転方向においても、操作者が把持部を持って力を加えるだけで、移動体の移動方向への回転移動を許可してそのまま移動体を回転移動させることが可能となる。その結果、操作性をより一層改善することができる。
上記移動機構が支柱、回転保持部および把持部を備える構成において、好ましくは、力方向検出手段は、把持部と回転保持部との間に配置され、直交する複数軸回りのモーメントを検出可能な力検出部を含む。このように構成すれば、共通の力検出部によって、それぞれの軸回りの回転方向への力を検出して、回転移動を許可することができる。そのため、各回転軸に個別に力検出部を設ける構成と比較して、装置構成を簡素化することができる。
上記第1の局面によるX線撮影装置用保持機構において、好ましくは、複数方向は、互いに直交する水平および垂直の各並進方向と、互いに直交する水平軸回りおよび垂直軸回りの各回転方向とを含み、力方向検出手段は、直交3軸の並進方向の力と、各軸回りのモーメントとを検出可能な力検出部を含む。このように構成すれば、多方向に移動体を移動可能な構成においても、共通の力検出部によって、それぞれの移動方向への力を検出して、移動を許可することができる。そのため、多方向への移動が可能な構成においても、移動方向毎に個別に力検出部を設ける必要がないので、装置構成を極めて簡素にすることができる。
上記第1の局面によるX線撮影装置用保持機構において、好ましくは、操作者を検知する操作者検知手段をさらに備え、許可方向決定手段は、操作者検知手段により操作者が検知されていない場合には切替手段により移動を禁止させ、操作者が検知されている場合に、切替手段により移動を許可させる方向を決定する。このように構成すれば、移動機構に加えられた力に基づいて自動的に移動体の移動を許可する構成であっても、操作者が意図せずに移動が許可される(移動体が移動する)ことを防ぐことができる。その結果、X線撮影におけるユーザビリティを向上させつつ、移動体の意図しない移動を防いで意図した位置でのX線撮影が可能となる。
この場合、好ましくは、移動機構は、移動体と一体的に移動するように設けられた把持部を含み、操作者検知手段は、操作者により把持部が把持されたことを検知する。このように構成すれば、移動体を移動させる際に操作者が把持部を把持することを利用して、容易かつ確実に、操作者を検知することができる。
上記操作者検知手段を備える構成において、好ましくは、操作者検知手段は、操作者が保持する通信手段と無線通信可能な通信部を含み、通信部を介して操作者を検知する。このように構成すれば、操作者が通信手段を携行した状態で移動体を移動させるために接近した場合に、操作者を容易に検知することができる。また、通信手段と通信部との通信の際に認証情報を含める場合には、操作者の個人認証が可能となり、権限のない第三者により操作が行われることも抑止することが可能となる。
上記第1の局面によるX線撮影装置用保持機構において、好ましくは、移動機構に加えられた力の大きさを検出する力強度検出手段と、検出された力の大きさに基づいて、移動体の移動方向に向かうアシスト力を移動体に付与するアシスト手段とをさらに備える。このように構成すれば、操作者が移動機構に加えた力を検出することにより、移動体の移動が許可されるのみならず、移動のためのパワーアシストを行うことが可能となる。この結果、操作性を大幅に向上させることができる。
この場合、好ましくは、複数方向は、互いに直交する水平および垂直の各並進方向を含み、移動機構は、移動体を垂直方向へ並進移動可能に保持する支柱と、移動体と一体的に移動するように支柱に支持された把持部とを含み、力強度検出手段は、把持部に加えられた垂直方向の力を検出する。このように構成すれば、操作者が把持部を持って移動体を垂直方向に動かす動作を行うだけで、アシスト手段により垂直方向へのパワーアシストを行うことが可能となるため、操作性をさらに改善することができる。
上記力強度検出手段は、把持部に加えられた垂直方向の力を検出する構成において、好ましくは、移動機構は、支柱を水平方向に並進移動可能に支持する走行機構を含み、力強度検出手段は、把持部に加えられた水平および垂直の各並進方向の力を検出する。このように構成すれば、操作者が把持部を持って力を加えるだけで、任意の並進方向への移動に際してのパワーアシストをアシスト手段により行うことが可能となるので、操作性をより一層改善することができる。
上記力強度検出手段とアシスト手段とを備える構成において、好ましくは、複数方向は、互いに直交する水平軸回りおよび垂直軸回りの各回転方向を含み、移動機構は、移動体を水平軸回りに回転移動可能に保持する回転保持部と、移動体と一体的に移動するように回転保持部に支持された把持部とを含み、力強度検出手段は、把持部に加えられた水平軸回りの回転方向の力を検出する。このように構成すれば、操作者が把持部を持って移動体を水平軸回りに回転させる動作を行うだけで、水平軸回りの回転方向へのパワーアシストを行うことが可能となるため、操作性をさらに改善することができる。
この場合、好ましくは、移動機構は、回転保持部を垂直軸回りに回転移動可能に支持する支柱を含み、力強度検出手段は、把持部に加えられた水平軸回りおよび垂直軸回りの各回転方向の力を検出する。このように構成すれば、操作者が把持部を持って力を加えるだけで、任意の回転方向への移動に際してのパワーアシストを行うことが可能となる。そのため、移動方向に力を加えるだけの共通の動作でアシスト手段によるパワーアシストを開始することができるので、操作性をより一層改善することができる。
上記力強度検出手段とアシスト手段とを備える構成において、好ましくは、力方向検出手段と力強度検出手段とは、力の方向および力の大きさを検出する力検出部により一体的に構成されている。このように構成すれば、力方向検出手段と力強度検出手段とを、共通の力検出部により構成することができるので、力の方向と力の大きさとを別々の検出部により検出する構成と比較して、装置構成を簡素化することができる。
上記力強度検出手段とアシスト手段とを備える構成において、好ましくは、アシスト手段は、検出された力の大きさに応じた大きさのアシスト力を移動体に付与するように構成されている。このように構成すれば、操作者が加える力を大きくするほどアシスト力を大きくして、移動体を容易に(軽く)移動させることが可能となる。そのため、重量のある移動体でも迅速に移動させることが可能となるので、X線撮影におけるユーザビリティをさらに向上させることができる。
上記第1の局面によるX線撮影装置用保持機構において、好ましくは、移動機構は、移動機構と解除可能に係合して移動体を所定位置に停止させる係合手段を含み、切替手段は、移動機構が係合手段と係合した場合に、移動体の移動を禁止する状態に切り替え、許可方向決定手段は、切替手段により移動を許可する方向を決定するとともに、移動機構と係合手段との係合を解除させる。このように構成すれば、たとえば標準的なX線撮影を行う際の移動体の位置を所定位置として係合手段を設けることにより、移動体の位置決めを容易かつ迅速に行うことが可能となる。また、係合手段を設ける場合でも、操作者が移動機構に力を加えるだけで、係合手段の係合を解除することができるので、操作性を向上させることができる。
この場合、好ましくは、移動機構に加えられた力の大きさを検出する力強度検出手段と、検出された力の大きさに基づいて、移動体の移動方向に向かうアシスト力を移動体に付与するアシスト手段とをさらに備え、アシスト手段は、移動体が所定位置に向けて移動する場合に、移動体が所定位置に近付くほど移動体に付与するアシスト力を小さくする。このように構成すれば、操作者が移動機構に加えた力を検出することにより、移動体の移動のためのパワーアシストを行うことが可能となる。そして、パワーアシストを行う場合でも、所定位置に近付くほど移動体を移動しにくく(アシスト力を小さく)して移動速度を下げることができるので、所定位置で係合手段と係合させる際の衝撃を緩和することができる。
上記第1の局面によるX線撮影装置用保持機構において、好ましくは、操作者の設定操作に基づいて、切替手段により複数方向の全方向への移動体の移動を許可させるフリーモード設定手段をさらに備える。このように構成すれば、操作者の設定操作を求めた上で、移動体を自由に移動可能なフリーモードに移行させることができる。たとえばフリーモードで移動体の大まかな位置合わせを行った後、検出された力の方向に基づく移動許可によって、特定の移動方向への位置調整だけを行うことが可能となり、ユーザビリティ(ユーザの使いやすさや使い勝手)をより一層向上させることができる。
この場合、好ましくは、フリーモード設定手段は、操作者の設定解除操作、または、複数方向の全方向への移動を許可してからの時間経過に基づいて、切替手段により複数方向の全方向への移動を禁止する状態に切り替える。このように構成すれば、フリーモードでの移動許可と、検出された力の方向に基づく移動許可との使い分けを容易にすることができる。
上記第1の局面によるX線撮影装置用保持機構において、好ましくは、許可方向決定手段は、立位撮影、臥位撮影および一般撮影のうち複数を含む選択肢から選択される撮影術式情報を取得し、撮影術式情報に応じて、検出された力の方向に基づいて移動を許可する方向を決定する自動決定制御と、操作者の操作入力に基づいて移動を許可する方向を決定する手動決定制御とを切り替える。このように構成すれば、撮影術式の種類に応じて、たとえば移動体を任意方向へ移動させる必要がある所定の撮影術式については自動決定制御を行い、他の撮影術式については手動決定制御を行うなどの制御切り替えが可能となる。その結果、移動体の移動を許可する方向を決定する制御を、操作者の目的に応じて適切に使い分けることが可能となるので、ユーザビリティをより一層向上させることができる。
この場合、好ましくは、許可方向決定手段は、撮影術式情報に基づいて移動体の基準位置を取得し、自動決定制御において、複数方向のうち移動体の現在位置が基準位置と異なる移動方向について、検出された力の方向に基づいて移動体の移動を許可し、移動体の現在位置が基準位置と一致する移動方向について、移動体の移動を禁止する。このように構成すれば、自動決定制御を行う場合にも、撮影術式に応じて設定される基準位置に移動体を容易に移動させることが可能となる。
上記第1の局面によるX線撮影装置用保持機構において、好ましくは、許可方向決定手段は、X線撮影の撮影対象となる部位を示す撮影部位情報を取得し、撮影部位情報に応じて、検出された力の方向に基づいて移動を許可する方向を決定する自動決定制御と、操作者の操作入力に基づいて移動を許可する方向を決定する手動決定制御とを切り替える。このように構成すれば、撮影部位に応じて、たとえば移動体を任意方向へ移動させる必要がある所定の撮影部位については自動決定制御を行い、任意方向へ移動させる必要がない撮影部位については手動決定制御を行うなどの制御切り替えが可能となる。その結果、移動体の移動を許可する方向を決定する制御を、操作者の目的に応じて適切に使い分けることが可能となるので、ユーザビリティ(ユーザの使いやすさや使い勝手)をより一層向上させることができる。
この場合、好ましくは、許可方向決定手段は、撮影部位情報に基づいて移動体の基準位置を取得し、自動決定制御において、複数方向のうち移動体の現在位置が基準位置と異なる移動方向について、検出された力の方向に基づいて移動体の移動を許可し、移動体の現在位置が基準位置と一致する移動方向について、移動体の移動を禁止する。このように構成すれば、自動決定制御を行う場合にも、撮影部位に応じて設定される基準位置に移動体を容易に移動させることが可能となる。
上記第1の局面によるX線撮影装置用保持機構において、好ましくは、切替手段は、常時、複数方向の各々における移動体の移動を禁止する状態に維持し、許可方向決定手段により決定された方向について、個別に移動体の移動を許可する状態に切り替えるように構成されている。このように構成すれば、操作者が加えた力の方向への移動体の移動を許可する場合でも、操作者が意図しない方向への移動体の移動を抑制することができる。
この場合、好ましくは、切替手段は、複数方向の各々に対応して設けられ、移動体の移動をロックする複数のロック機構を含み、許可方向決定手段により決定された方向に対応するロック機構のロックを解除するように構成されている。このように構成すれば、容易に、許可方向決定手段により決定された方向への移動だけを個別に許可し、他の方向への移動を禁止する状態に維持することができる。
この発明の第2の局面におけるX線撮影装置は、X線管を有する移動体と、X線検出器と、移動体を複数方向に移動可能に保持する移動機構と、複数方向の各々における、移動体の移動を解除可能にロックするロック機構と、移動機構に加えられた力の方向を検出する力検出部と、複数方向のうち、力検出部により検出された力の方向におけるロックを解除するようにロック機構を制御する制御部とを備える。なお、「移動機構に加えられた力」とは、移動機構に直接加えられる力のみならず、移動体に力を加えることによって、移動体を保持する移動機構に対して間接的に加えられる力も含む。
この発明の第2の局面によるX線撮影装置では、上記のように、移動機構に加えられた力の方向を検出する力検出部と、複数方向のうち、力検出部により検出された力の方向におけるロックを解除するようにロック機構を制御する制御部とを設ける。これにより、移動機構(または移動体)に対して力が加えられた場合に、制御部により、力が加えられた方向へのロックを解除して移動体の移動を許可する状態にすることが可能となる。その結果、操作者は、スイッチ操作などを要することなく、移動体を移動させたい方向(移動方向)に向けて力を加えるだけで、自動的に、移動方向のロックを解除して移動体を移動させることができるようになる。これにより、X線撮影のために移動体を移動させる際の操作性を改善することができる。そして、移動体の位置合わせを行う際に、操作者が撮影位置から視線を移動させる必要がなくなるため、ユーザビリティ(ユーザの使いやすさや使い勝手)を向上させることができる。
上記のように、本発明によれば、X線撮影のために移動体を移動させる際の操作性を改善することができる。
第1〜第5実施形態によるX線撮影装置の全体構成を示した模式図である。
X線撮影装置のブロック図である。
走行機構を模式的に示した平面図である。
支柱、回転保持部および移動体を模式的に示した側面図である。
切替手段の一例を示したブロック図である。
力検出部を説明するための模式図である。
把持部および操作部を示した移動体の正面図である。
第1実施形態による自動決定制御を説明するためのフロー図である。
第2実施形態による移動機構のブロック図である。
第2実施形態の走行機構を模式的に示した平面図である。
力検出部に検出された検出力とアシスト力との関係を示したグラフである。
第2実施形態によるアシスト制御を説明するためのフロー図である。
第3実施形態の操作者検知手段を説明するための模式図である。
第4実施形態の係合手段を説明するための模式図である。
第5実施形態の自動決定制御を説明するための模式図である。
第1実施形態の変形例を示した模式的な斜視図である。
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
(X線撮影装置の構成)
まず、図1〜図7を参照して、本発明の第1実施形態によるX線撮影装置100の全体構成について説明する。
図1では、撮影室101に設置された天井懸垂型のX線撮影装置100の例を示している。X線撮影装置100は、X線管1と、X線検出器2と、保持機構3とを主として備える。天井懸垂型のX線撮影装置100では、撮影室101の天井に配置された保持機構3によって、X線管1を有する移動体4が天井から吊り下げるように保持される。移動体4は、保持機構3によって撮影室101内で移動可能に保持されている。保持機構3は、請求の範囲の「X線撮影装置用保持機構」の一例である。
また、X線撮影装置100は、医用X線撮影装置であり、撮影対象である患者KをX線撮影するように構成されている。X線撮影装置100は、患者Kを横たわらせた姿勢(臥位)で撮影を行うための撮影テーブル5と、患者Kを起立させた姿勢(立位)で撮影を行うための撮影スタンド6とを備えている。
撮影テーブル5および撮影スタンド6には、それぞれX線検出器2が移動可能に保持されている。X線検出器2は、たとえばフラットパネルディテクタ(FPD)により構成されている。保持機構3は、少なくとも、撮影テーブル5を用いた臥位での撮影位置(図1の実線参照)と、撮影スタンド6を用いた立位での撮影位置(図1の二点鎖線参照)との間で、移動体4を移動させることが可能である。
臥位の撮影では、移動体4が、撮影テーブル5のX線検出器2と上下方向に対向する位置に配置され、上下方向に対向するX線管1とX線検出器2との間で、撮影テーブル5上に横臥された患者Kが撮影される。立位の撮影では、移動体4が、撮影スタンド6のX線検出器2と水平方向に対向する位置に配置され、水平方向に対向するX線管1とX線検出器2との間で、撮影スタンド6の前に起立した患者Kが撮影される。また、X線撮影装置100は、持ち運び可能なX線検出器2を撮影室101内の任意の位置に配置し、移動体4をX線検出器2と対向する位置に移動させることにより、任意の姿勢の患者Kを任意の方向から撮影可能な一般撮影(姿勢を特定しない撮影)を行うことが可能である。
また、X線撮影装置100は、制御部7、記憶部8および入力装置9を備えている。図2に示すように、制御部7は、CPU(Central Processing Unit)およびメモリを主として備えている。制御部7は、X線管1およびX線検出器2によるX線撮影の制御や、移動体4の移動に関する制御を行う。記憶部8には、X線撮影に用いられる各種のデータが記憶されている。入力装置9は、X線撮影に関わる入力操作を受け付ける機能を有する。入力操作は、X線撮影の撮影条件設定や、X線照射の開始指示などである。
〈移動体〉
図1に戻り、移動体4は、X線管1と、コリメータ11とを含んでいる。X線管1は、図示しない電源から高電圧が印加されることによりX線を発生させる。コリメータ11は、位置調整可能な複数の遮蔽板(コリメータリーフ)を有し、X線管1からのX線の一部を遮蔽することにより、X線の照射野を調整する機能を有する。また、移動体4には、把持部35が設けられている。また、移動体4には、タッチパネルまたは機械式スイッチを含んで構成される操作部41が設けられている。
〈保持機構〉
保持機構3は、移動体4を複数方向に移動可能に保持する移動機構31と、複数方向の各々における、移動体4の移動を許可する状態と移動を禁止する状態とを切り替える切替手段36(図2参照)とを備える。
移動機構31により移動体4が移動できる複数方向は、互いに直交する水平および垂直の各並進方向を含むことができる。図1に示すように、鉛直(垂直)方向をZ方向とし、水平方向で互いに直交する2方向をX方向、Y方向(図3参照)とすると、各並進方向は、これらのX、YおよびZ方向のうち、1つまたは複数である。
また、移動機構31により移動体4が移動できる複数方向は、互いに直交する水平軸回りおよび垂直軸回りの各回転方向を含むことができる。各回転方向は、鉛直(垂直)軸回りの回転方向、および、水平方向で互いに直交する2つの軸回りの回転方向のうち、1つまたは複数である。第1実施形態では、複数方向は、3つの並進方向(X、YおよびZ方向)と、Z軸回りの回転方向(η方向、図4参照)と、水平方向のR軸回りの回転方向(θ方向、図4参照)との、合計5方向を含む例を示す。
移動機構31は、図1に示すように、走行機構32と、支柱33と、回転保持部34とを含む。走行機構32は、撮影室101の天井に設けられている。走行機構32は、支柱33(移動体4)をX方向およびY方向に並進移動可能に支持する。
具体的には、図3に示すように、走行機構32は、天井面に固定された一対の固定レール32aと、一対の可動レール32bとを含む。一対の固定レール32aは、X方向に直線状に延びる。一対の固定レール32aには、一対の可動レール32bがX方向に移動可能に取り付けられている。一対の可動レール32bは、Y方向に直線状に延びる。一対の可動レール32bには、支柱33のベース部33aがY方向に移動可能に取り付けられている。
図4に示すように、支柱33は、移動体4を垂直方向へ並進移動可能に保持する。支柱33は、走行機構32に取り付けられたベース部33a(図1参照)から吊り下がるように設けられ、Z方向に伸縮可能である。これらの構成により、移動機構31は、移動体4を3つの並進方向(X、YおよびZ方向)へ移動可能に保持する。
また、支柱33の先端(下端)には、回転保持部34が設けられている。支柱33は、回転保持部34を垂直軸(Z軸)回りのη方向に回転移動可能に支持する。Z軸は、支柱33の中心軸線に一致する。回転保持部34は、一端側が支柱33に接続されると共に、他端側が支柱33の半径方向(R軸方向)にオフセットした位置で上方に立ち上がる形状を有している。回転保持部34は、上方に立ち上がる他端側保持部34aで移動体4を支持している。
他端側保持部34aにおいて、回転保持部34は、移動体4を水平軸(R軸)回りのθ方向に回転移動可能に保持している。R軸は、支柱33の半径方向(水平方向)である。これらの構成により、移動機構31は、移動体4を2つの回転方向(ηおよびθ方向)へ移動可能に保持する。
なお、移動機構31は、把持部35を含んでいる。把持部35は、移動体4に設けられ、移動体4と一体的に回転移動するように回転保持部34に支持されている。また、把持部35は、移動体4と一体的に移動するように支柱33に支持されている。つまり、把持部35は、回転保持部34を介して支柱33に保持され、移動体4と一体となって複数方向(X、Y、Z、η、θ)に移動する。操作者は、把持部35を持って力を加えることにより、移動体4を複数方向(X、Y、Z、η、θ)に移動させることができる。
第1実施形態では、保持機構3は、移動機構31に加えられた力の方向を検出する力検出部38と、検出された力の方向に基づいて、複数方向のうち切替手段36により移動を許可する方向を決定する制御部7とを備える。力検出部38は、請求の範囲の「力方向検出手段」の一例である。制御部7は、請求の範囲の「許可方向決定手段」および「フリーモード設定手段」の一例である。これらの構成について、詳細に説明する。
〈切替手段〉
図5に示すように、切替手段36は、複数方向の各々に対応して設けられ、移動体4の移動をロックする複数のロック機構を含む。第1実施形態では、ロック機構として、電磁ロック(電磁ブレーキ)36aが設けられている。電磁ロック36aは、請求の範囲の「ロック機構」の一例である。ロック機構としては、油圧式や機械式のブレーキなどであってもよい。各電磁ロック36aは、複数方向の各々における、移動体4の移動を解除可能にロックするように構成されている。
電磁ロック36aは、X、Y、Z、η、θ方向の複数方向に個別に設けられている。各電磁ロック36aは、X、Y、Z、η、θ方向の各々のロック/ロック解除を個別に切り替えることが可能である。これにより、切替手段36は、複数方向の各々への移動体4の移動を許可する状態(ロック解除状態)と、各方向への移動体4の移動を禁止する状態(ロック状態)とに切り替え可能に構成されている。
切替手段36は、常時、複数方向の各々における移動体4の移動を禁止する状態に維持している。そして、切替手段36は、制御部7により決定された方向について、個別に移動体4の移動を許可する状態に切り替えるように構成されている。
なお、移動機構31は各軸方向のエンコーダ37を含んでいる。各エンコーダ37は、各軸方向における移動体4の位置を検出する。各エンコーダ37の出力信号に基づいて、移動体4のX線管1の現在位置(X、Y、Z方向の各位置、および、η、θ方向の各回転角度)を求めることが可能である。
各電磁ロック36aの動作は、駆動回路31aを介して、制御部7によって制御される。また、各エンコーダ37の出力信号は、駆動回路31aを介して制御部7に送られ、位置情報として動作制御に用いられる。
〈力方向検出手段〉
力検出部38(図2参照)は、移動機構31に加えられた力の方向を検出する。より具体的には、力検出部38は、把持部35に加えられた水平および垂直の各並進方向(X、Y、Z方向)の力を検出するように構成されている。また、力検出部38は、把持部35に加えられた水平軸(R軸)回りおよび垂直軸(Z軸)回りの各回転方向(θ、η方向)の力を検出するように構成されている。
具体的には、図4に示すように、力検出部38は、把持部35と回転保持部34との間に配置されている。力検出部38は、たとえば分力計により構成されている。分力計は、検出面に加えられた力の各検出方向成分を検出して、力の方向と、力の大きさとを計測することが可能である。これにより、力検出部38は、移動機構31に加えられた力の方向を検出する力方向検出手段として機能する。
図4の構成例では、力検出部38は、把持部35と回転保持部34との間で、移動体4と他端側保持部34aとの接続箇所に配置されている。言い換えると、力検出部38は、移動体4と保持機構3(移動機構31)との接続箇所に配置されている。また、力検出部38は、検出面の中心がR軸上に位置するように設けられている。力検出部38の検出中心と把持部35の回転中心とが、R軸上で同軸になっている。
力検出部38は、把持部35と機械的に連結されており、把持部35に加えられた各方向の力を検出することが可能である。また、力検出部38は、直交3軸の並進方向の力と、各軸回りのモーメントとを検出可能である。
具体的には、図6に示すように、力検出部38は、たとえば(Sx、Sy、Sz)の3軸の力と、Sx、Sy、Sz軸回りの各モーメントとの6成分を検出するように構成されている。図6では、力検出部38のSz軸がR軸と一致し、把持部35の回転中心を通る。また、力検出部38の検出面(Sx−Sy平面)と、把持部35の正面とが略平行になっている。これにより、把持部35を把持してSx、Sy、Sz軸の各方向に押す力が、力検出部38によりSx、Sy、Sz軸方向の力として検出される。把持部35を把持してθ方向(R軸回り)に回転させる力が、Sz軸回りのモーメントとして力検出部38により検出される。図6においてSx軸がZ軸に一致している場合、把持部35を把持してη方向(Z軸回り)に回転させる力は、Sx軸回りのモーメントとして力検出部38により検出される。
力検出部38の検出結果(直交3軸の並進方向の力の大きさ、各軸回りのモーメントの大きさ)は、制御部7によって取得される。
〈許可方向決定手段〉
制御部7は、各エンコーダ37の出力信号に基づいて、移動体4(把持部35)の向き(η方向、θ方向)を取得する。制御部7は、移動体4(把持部35)の向きと、力検出部38によって検出された力の向き(Sx、Sy、Sz軸方向および各軸回りの回転方向)とに基づいて、各移動方向(X、Y、Z、η、θ)に加えられた力およびモーメントを取得する。そして、制御部7は、検出された力の方向に基づいて、複数方向(X、Y、Z、η、θ)のうち切替手段36(電磁ロック36a)により移動を許可する方向を決定する。制御部7は、複数方向のうち、力検出部38により検出された力の方向におけるロックを解除するように電磁ロック36aを制御する。これにより、制御部7は、移動体4の移動を許可する方向を決定する許可方向決定手段として機能する。このように、制御部7は、力検出部38により検出された力の方向に基づいて移動を許可する方向を決定する自動決定制御を行うように構成されている。
なお、ロック状態とロック解除状態との切替は、操作者が把持部35に力を加えた場合に自動で切り替える方法以外にも行うことができる。図7に示すように、把持部35に設けられた操作部41には、複数方向(X、Y、Z、η、θ)の各々について、個別にロック状態とロック解除状態とを切り替えるための各操作スイッチ41aが設けられている。制御部7は、各操作スイッチの入力操作に基づいて、移動体4の移動を許可する方向を決定する手動決定制御を行うことが可能である。制御部7は、手動決定制御の場合にも、電磁ロック36aのロック状態およびロック解除状態を各方向で個別に切り替えることが可能である。
〈フリーモード設定手段〉
第1実施形態では、制御部7は、操作者の設定操作に基づいて、電磁ロック36aにより複数方向の全方向への移動体4の移動を許可させるフリーモード設定手段として機能する。
具体的には、図7に示すように、操作部41に、フリーモードスイッチ42を設ける。制御部7は、フリーモードスイッチ42の入力操作を受け付けると、全ての電磁ロック36aをロック解除状態に切り替えるフリーモードの制御を開始する。この場合、操作者は、把持部35を把持して移動体4を複数方向(X、Y、Z、η、θ)へ自由に移動させることが可能となる。
フリーモードの制御を開始した場合、制御部7は、操作者の設定解除操作、または、複数方向の全方向への移動を許可してからの時間経過に基づいて、電磁ロック36aにより複数方向の全方向への移動を禁止する状態に切り替える。操作者の設定解除操作としては、たとえば、フリーモードスイッチ42が一度入力されてフリーモードに移行した後、再度フリーモードスイッチ42が入力された場合や、専用の解除スイッチ(図示せず)が入力された場合が含まれる。時間経過は、たとえば、フリーモードが開始されてから数秒とすることができ、たとえば5秒である。
(自動決定制御)
図8を参照して、移動体4を移動させる際の自動決定制御の処理について説明する。制御処理は、制御部7により行われる。なお、自動決定制御では、移動機構31の各電磁ロック36aは、自動決定制御の結果、制御部7によりロック解除状態に切り替えられない限り、常時、ロック状態に維持されている。
ステップS1において、制御部7は、力検出部38の検出結果を取得する。操作者が把持部35を把持して移動体4を移動させるべく移動方向に向けて力を加えると、力検出部38により力が検出される。制御部7は、力検出部38の検出結果およびエンコーダ37の検出結果から、操作者により加えられた力の方向(X、Y、Z、η、θ)を取得する。
ステップS2において、制御部7は、ステップS1において検出された力の方向に基づいて、切替手段36(電磁ロック36a)により移動を許可する方向を決定する。具体的には、制御部7は、複数方向(X、Y、Z、η、θ)のうち1または複数の方向への力が検出された場合に、検出された力の方向を、移動を許可する方向(移動方向)として決定する。
ステップS3において、制御部7は、決定した移動方向への移動体4の移動を許可する状態に切り替える。すなわち、制御部7は、決定した移動方向に対応する電磁ロック36aを、ロック状態からロック解除状態に切り替える。これにより、操作者が、検出された移動方向に向けて移動体4を移動させることが可能となる。一方、制御部7は、複数方向(X、Y、Z、η、θ)のうち、決定した移動方向以外の他の方向に対応する電磁ロック36aは、ロック状態のままとする。
ステップS4において、制御部7は、移動許可を終了するか否かを判断する。たとえば、制御部7は、力検出部38により力が検出されている間は、移動を許可する状態を維持する。移動許可を終了する移動方向が存在しない場合、制御部7は、ステップS1〜S3を繰り返す。ある移動方向について、一旦移動を許可する状態に切り替えた後、操作者による力が検出されなくなった場合、ステップS2において、その移動方向は移動を許可する方向から除外される。この場合、ステップS4において、制御部7は、移動許可を終了すると判断して、ステップS5に進む。
ステップS5において、制御部7は、移動許可を終了する移動方向について、移動を禁止する状態に切り替える。すなわち、制御部7は、電磁ロック36aをロック解除状態からロック状態に切り替える。その後、制御部7は、処理をステップS1に戻す。
以上の処理を繰り返すことにより、操作者により力が加えられた場合に、その方向への移動を許可する制御動作が実現される。
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
第1実施形態では、上記のように、移動機構31に加えられた力の方向を検出する力検出部38と、検出された力の方向に基づいて、複数方向(X、Y、Z、η、θ)のうち切替手段36により移動を許可する方向を決定する制御部7とを設ける。これにより、移動機構31(または移動体4)に対して力が加えられた場合に、制御部7により、力が加えられた方向への移動を許可する状態にすることが可能となる。その結果、操作者は、スイッチ操作などを要することなく、移動体4を移動させたい方向(移動方向)に向けて力を加えるだけで、自動的に、移動方向への移動が許可された状態に切り替えて移動体4を移動させることができるようになる。これにより、X線撮影のために移動体4を移動させる際の操作性を改善することができる。そして、移動体4の位置合わせを行う際に、操作者が撮影位置から視線を移動させる必要がなくなるため、ユーザビリティを向上させることができる。
また、第1実施形態では、上記のように、把持部35に加えられた垂直方向(Z方向)の力を検出する力検出部38を設ける。これにより、操作者が把持部35を持って移動体4を垂直方向に動かす動作によって、垂直方向への移動を許可することができるとともに、そのまま移動体4を垂直方向に移動させて位置合わせすることが可能となるため、操作性をさらに改善することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、把持部35に加えられた水平および垂直の各並進方向(X、Y、Z)の力を検出する力検出部38を設ける。これにより、X、Y、Z方向の並進移動の際に操作者が把持部35を持って力を加えるだけで、移動方向への移動を許可することができるとともに、そのまま移動体4を並進移動させることが可能となるため、操作性をより一層改善することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、把持部35と支柱33との間に配置され、直交3軸方向の力を検出可能な力検出部38を設ける。これにより、直交3軸方向のそれぞれに個別に力検出部を設ける構成と比較して、装置構成を簡素化することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、把持部35に加えられた水平軸(R軸)回りの回転方向(θ)の力を検出する力検出部38を設ける。これにより、操作者が把持部35を持って水平軸回りに動かす動作によって、移動体4の水平軸回りの回転方向への移動を許可してそのまま位置合わせすることが可能となるため、操作性をさらに改善することができる。また、水平軸回りの回転の前後でスイッチなどの位置(操作位置)が変化して操作性が変わり、操作位置を再確認する必要が生じる場合と異なり、操作者は、移動体4を移動させたい方向に力を加えるだけで移動体4を回転移動させることができるので、移動体4の向きに関わらず直感的な操作が可能となる。この点でも、操作性が改善される。
また、第1実施形態では、上記のように、把持部35に加えられた水平軸(R軸)回りおよび垂直軸(Z軸)回りの各回転方向(θ、η)の力を検出する力検出部38を設ける。これにより、いずれの回転方向においても、操作者が把持部35を持って力を加えるだけで、移動体4の回転移動を許可してそのまま回転移動させることが可能となる。その結果、操作性をより一層改善することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、把持部35と回転保持部34との間に配置され、直交する複数軸回りのモーメントを検出可能な力検出部38を設ける。これにより、各回転軸に個別に力検出部を設ける構成と比較して、装置構成を簡素化することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、直交3軸の並進方向の力と、各軸回りのモーメントとを検出可能な力検出部38を設ける。これにより、多方向に移動体4を移動可能な構成においても、共通の力検出部38によって、それぞれの移動方向への力を検出して、移動を許可することができる。そのため、多方向への移動が可能な構成においても、移動方向毎に個別に力検出部を設ける必要がないので、装置構成を極めて簡素にすることができる。
また、第1実施形態では、上記のように、操作者の設定操作に基づいて、電磁ロック36aにより複数方向の全方向への移動体4の移動を許可させるフリーモードに設定可能な制御部7を設ける。これにより、操作者の設定操作を求めた上で、移動体4を自由に移動可能なフリーモードに移行させることができる。たとえばフリーモードで移動体4の大まかな位置合わせを行った後、自動決定制御によって、特定の移動方向への位置調整だけを行うことが可能となり、ユーザビリティをより一層向上させることができる。
また、第1実施形態では、上記のように、制御部7は、操作者の設定解除操作、または、複数方向の全方向への移動を許可してからの時間経過に基づいて、切替手段36により複数方向の全方向への移動を禁止する状態に切り替える。これにより、フリーモードでの移動許可と、検出された力の方向に基づく移動許可とを使い分けを容易にすることができる。
また、第1実施形態では、上記のように、切替手段36を、常時、複数方向(X、Y、Z、η、θ)の各々における移動体4の移動を禁止する状態(ロック状態)に維持し、制御部7により決定された方向について、個別に移動体4の移動を許可する状態(ロック解除状態)に切り替えるように構成する。これにより、操作者が加えた力の方向への移動体4の移動を許可する場合でも、操作者が意図しない方向への移動体4の移動を抑制することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、切替手段36に、複数方向の各々に対応して設けられ、移動体4の移動をロックする複数の電磁ロック36aを設け、制御部7により決定された方向に対応する電磁ロック36aのロックを解除させる。これにより、容易に、制御部7により決定された方向への移動だけを個別に許可し、他の方向への移動を禁止する状態に維持することができる。
[第2実施形態]
次に、図9〜図12を参照して、本発明の第2実施形態によるX線撮影装置について説明する。第2実施形態では、上記第1実施形態に加えて、移動機構に加えられた力に基づいて、自動的に移動体にアシスト力を付与する構成例について説明する。なお、第2実施形態において、上記第1実施形態と共通する構成には、同一の符号を使用するとともに説明を省略する。
(X線撮影装置の構成)
第2実施形態では、保持機構3は、移動機構31に加えられた力の大きさを検出する力強度検出手段を備えている。また、保持機構3は、検出された力の大きさに基づいて、移動体4の移動方向に向かうアシスト力を移動体4に付与するアシスト手段を備えている。第2実施形態では、図9に示すように、保持機構3が複数のモータ(111〜115)を備えており、制御部7およびモータにより、アシスト手段が構成されている例を示す。
〈力強度検出手段〉
第2実施形態では、保持機構3の力検出部38(図4参照)が、力強度検出手段としても機能する。すなわち、力方向検出手段と力強度検出手段とは、力の方向および力の大きさを検出する力検出部38により一体的に構成されている。力検出部38の構成は、上記第1実施形態と同様である。
〈アシスト手段〉
走行機構32は、X軸モータ111と、X軸伝達機構121とを含む。X軸伝達機構121は、たとえば図10に示すように、固定レール32aの両端部近傍に配置された一対のローラ(プーリ)121aと、一対のローラ121a間に掛け渡されたタイミングベルト121bとを含むベルト−プーリ機構である。タイミングベルト121bには一対の可動レール32bが固定されており、X軸モータ111がローラ121aを回転駆動することにより、一対の可動レール32b(移動体4)に対してX方向にアシスト力を付与する。
走行機構32は、図9に示すように、Y軸モータ112と、Y軸伝達機構122とを含む。Y軸伝達機構122は、たとえばX軸伝達機構121と同様、図10に示すように、一対のローラ122aと、タイミングベルト122bとを含むベルト−プーリ機構である。タイミングベルト122bには支柱33のベース部33aが固定されており、Y軸モータ112がローラ122aを回転駆動することにより、支柱33(移動体4)に対してY方向にアシスト力を付与する。
図9に示すように、支柱33(図1参照)は、Z軸モータ113と、Z軸伝達機構123とを含む。Z軸伝達機構123は、たとえば、支柱33の下端部の回転保持部34に接続されたワイヤ123a(図1参照)を備えた巻き上げ機構である。Z軸モータ113がワイヤ123aを巻き上げ駆動することにより、回転保持部34(移動体4)に対してZ方向のアシスト力を付与する。
また、図9に示すように、支柱33(図4参照)は、回転保持部34をZ軸回りに回転駆動するη軸モータ114を含む。η軸モータ114は回転保持部34に直結されている必要はなく、減速機などのη軸伝達機構124(図9参照)が設けられていてもよい。η軸モータ114は、回転保持部34(移動体4)に対してη方向にアシスト力を付与する。
回転保持部34(図4参照)は、他端側保持部34aにおいて、移動体4をR軸回りに回転駆動するθ軸モータ115を含む。θ軸モータ115は移動体4に直結されている必要はなく、減速機などのθ軸伝達機構125(図9参照)が設けられていてもよい。θ軸モータ115は、移動体4に対してθ方向にアシスト力を付与する。
図9に示すように、各モータ(X軸モータ111、Y軸モータ112、Z軸モータ113、η軸モータ114、θ軸モータ115)の各々には、エンコーダ37と、切替手段36(各電磁ロック36a)とが接続されている。
各モータ(X軸モータ111、Y軸モータ112、Z軸モータ113、η軸モータ114、θ軸モータ115)、および各電磁ロック36aの動作は、駆動回路31aを介して、制御部7によって制御される。また、各エンコーダ37の出力信号は、駆動回路31aを介して制御部7に送られ、位置情報として動作制御に用いられる。
制御部7は、力検出部38により検出された力の大きさに基づいて、移動体4の移動方向に向かうアシスト力を移動体4に付与するように構成されている。制御部7は、アシスト力を付与する方向に対応するモータ(X軸モータ111、Y軸モータ112、Z軸モータ113、η軸モータ114、θ軸モータ115)を個別に駆動する制御により、移動体4の移動方向に向かうアシスト力を発生させる。
具体的には、制御部7は、検出された力の大きさに応じた大きさのアシスト力を移動体4に付与するように構成されている。たとえば、図11には、操作者が把持部35に力を加えることにより力検出部38により検出された力(検出力)の大きさ(横軸)と、発生するアシスト力(縦軸)との関係の一例を示している。
制御部7は、検出された力が大きくなるほど大きなアシスト力を発生するように、各モータを制御する。たとえば、制御部7は、アシスト制御の一部または全部において、検出された力に比例するアシスト力を発生させる。この場合、図11の2点鎖線で示したように、アシスト力を検出力に単純に比例させてもよいし、アシスト力の上限値Fmを設定し、アシスト力が上限値Fmを超えないようにしてもよい。
また、たとえば、制御部7は、第1閾値Th1以上の力が検出された場合に、アシスト力を付与するアシスト制御を開始してもよい。これにより、操作者の意図に反して移動体4が大きく移動してしまうことを抑制できる。また、制御部7は、アシスト制御の開始後、検出された力が第2閾値Th2を下回った場合に、アシスト力を付与するアシスト制御を停止してもよい。この際、第2閾値Th2を第1閾値Th1よりも小さくすることが好ましい。この場合、操作者は、重量の大きい移動体4を停止させる直前までアシストを受けることができるので、移動体4の位置合わせが容易になる。
(アシスト制御処理)
図12を参照して、移動体4を移動させる際のアシスト制御処理について説明する。アシスト制御処理は、制御部7により行われる。なお、ここでは、自動決定処理も同時に行う例について説明する。
ステップS11において、制御部7は、力検出部38の検出結果(力の方向および大きさ)を取得する。ステップS12において、制御部7は、力検出部38の検出結果およびエンコーダ37の検出結果から、操作者により加えられた力の方向および大きさを取得する。以下のステップS13以降の処理は、複数方向(X、Y、Z、η、θ)の各々について個別に実施されるが、ここでは便宜的に、任意の1つの方向についての処理について説明する。
ステップS13において、制御部7は、ステップS12において取得された力の大きさに基づいて、アシストを開始するか否かを判断する。すなわち、制御部7は、判断対象となる移動方向への力の大きさが、第1閾値Th1以上か否かを判断する。
力の大きさが第1閾値以上である場合、制御部7は、ステップS14において、移動方向に対応する電磁ロック36aをロック解除状態に切り替え、ステップS15において、アシスト駆動を開始する。制御部7は、アシスト力を付与する方向に対応するモータ(X軸モータ111、Y軸モータ112、Z軸モータ113、η軸モータ114、θ軸モータ115のいずれか)を駆動し、移動方向へのアシスト力を発生させる。この際、制御部7は、図11に示したように、移動方向への力の大きさに比例するようにアシスト力を発生させる。アシスト開始後、ステップS11に処理が戻る。
一方、ステップS13において、判断対象となる移動方向への力の大きさが第1閾値Th1未満である場合、制御部7は、ステップS16に処理を進める。
ステップS16において、制御部7は、判断対象となる移動方向への力の大きさに基づいて、アシストを停止するか、または、現在の状態を維持するかを判断する。すなわち、制御部7は、力の大きさが第2閾値Th2以下であるか否かを判断する。制御部7は、操作者に加えられている力の大きさが第2閾値Th2以下にならない場合(第2閾値Th2を超える場合)、現在の状態を継続する。すなわち、アシスト中(移動を許可する状態)であれば、アシストが継続され、アシスト停止中(移動を禁止する状態)であれば、アシスト停止状態が継続される。
力の大きさが第2閾値Th2以下である場合、制御部7は、ステップS17において、対応するモータのアシスト駆動を停止し、ステップS18において、対応する電磁ロック36aをロック状態に切り替える。
以上の処理を繰り返すことにより、操作者により力が加えられた場合に、その方向への移動を許可する制御動作とともに、検出された力の大きさに応じた大きさのアシスト制御動作が実現される。
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、上記第1実施形態と同様に、力検出部38と、検出された力の方向に基づいて、複数方向のうち切替手段36により移動を許可する方向を決定する制御部7とを設けることにより、X線撮影のために移動体4を移動させる際の操作性を改善することができる。
また、第2実施形態では、上記のように、移動機構31に加えられた力の大きさを検出する力検出部38と、検出された力の大きさに基づいて、移動体4の移動方向に向かうアシスト力を移動体4に付与する制御部7とを設ける。これにより、操作者が移動機構31に加えた力を検出することにより、移動体4の移動が許可されるのみならず、移動のためのパワーアシストを行うことが可能となる。この結果、操作性を大幅に向上させることができる。
また、第2実施形態では、上記のように、把持部35に加えられた垂直方向(Z方向)の力を検出する力検出部38を設ける。これにより、操作者が把持部35を持って移動体4を垂直方向に動かす動作を行うだけでパワーアシストを行うことが可能となるため、操作性をさらに改善することができる。
また、第2実施形態では、上記のように、把持部35に加えられた水平および垂直の各並進方向(X、Y、Z方向)の力を検出する力検出部38を設ける。これにより、操作者が把持部35を持って移動方向に力を加えるだけの共通の動作で各方向のパワーアシストを開始することができるので、操作性をより一層改善することができる。
また、第2実施形態では、上記のように、把持部35に加えられた水平軸回りの回転方向(θ方向)の力を検出する力検出部38を設ける。これにより、操作者が把持部35を水平軸回りに回転させる動作を行うだけでパワーアシストを行うことが可能となるため、操作性をさらに改善することができる。
また、第2実施形態では、上記のように、把持部35に加えられた水平軸回りおよび垂直軸回りの各回転方向(η、θ方向)の力を検出する力検出部38を設ける。これにより、回転移動方向に力を加えるだけの共通の動作でパワーアシストを開始することができるので、操作性をより一層改善することができる。
また、第2実施形態では、上記のように、力方向検出手段と力強度検出手段とを、力の方向および力の大きさを検出する力検出部38により一体的に構成する。これにより、力の方向と力の大きさとを別々の検出部により検出する構成と比較して、装置構成を簡素化することができる。
また、第2実施形態では、上記のように、制御部7を、検出された力の大きさに応じた大きさのアシスト力を移動体4に付与するように構成する。これにより、操作者が加える力を大きくするほどアシスト力を大きくして、移動体4を容易に(軽く)移動させることが可能となる。そのため、重量のある移動体4でも迅速に移動させることが可能となるので、X線撮影におけるユーザビリティをさらに向上させることができる。
[第3実施形態]
次に、図13を参照して、本発明の第3実施形態によるX線撮影装置について説明する。第3実施形態では、上記第2実施形態に加えて、操作者検知手段を設けて、操作者が検知されている場合に移動体4の移動を許可させる構成例について説明する。なお、第3実施形態において、上記第2実施形態と共通する構成には、同一の符号を使用するとともに説明を省略する。
(X線撮影装置の構成)
第3実施形態では、図13に示すように、X線撮影装置100(保持機構3)は、操作者を検知する操作者検知手段210をさらに備えている。操作者検知手段210は、たとえば、操作者により把持部35が把持されたことを検知する接触センサ211により構成される。接触センサ211としては、静電容量式センサや、圧電体膜を用いた圧電式センサなど、各種の方法が採用できる。接触センサ211は、たとえば、把持部35の所定範囲に渡って設けられ、把持部35に対する操作者の手指の接触を検知する。図13は、把持部35の略全体(図13のハッチング部分)に渡って接触センサ211を設けた例を示している。
また、操作者検知手段210は、たとえば、操作者が保持する通信手段CMと無線通信可能な通信部212である。通信部212は、たとえば、把持部35や操作部41に設けられ、近距離無線通信により通信手段CMと双方向通信を行う。通信手段CMは、操作者が携行する通信デバイスや通信可能な認証端末、その他のデバイスである。制御部7は、通信部212を介して操作者を検知することが可能である。双方向通信において操作者の認証情報を含めて、個人認証を行うようにしてもよい。なお、図13では、便宜的に接触センサ211および通信部212の両方を図示しているが、接触センサ211および通信部212の一方のみが設けられる構成であってよい。
制御部7は、操作者検知手段210により操作者が検知されていない場合には切替手段36(電磁ロック36a)により移動体4の移動を禁止させる。制御部7は、操作者検知手段210により操作者が検知されている場合に、切替手段36(電磁ロック36a)により移動を許可させる方向を決定する。すなわち、制御部7は、操作者が検知されている状態で、力検出部38によって移動方向の力が検出された場合に、その移動方向に対応する電磁ロック36aをロック解除状態に切り替える。
(第3実施形態の効果)
第3実施形態では、上記第1実施形態と同様に、力検出部38と、検出された力の方向に基づいて、複数方向のうち切替手段36により移動を許可する方向を決定する制御部7とを設けることにより、X線撮影のために移動体を移動させる際の操作性を改善することができる。
また、第3実施形態では、上記のように、操作者を検知する操作者検知手段210を設け、制御部7を、操作者検知手段210により操作者が検知されていない場合には切替手段36により移動を禁止させ、操作者が検知されている場合に、切替手段36により移動を許可させる方向を決定するように構成する。これにより、加えられた力に基づいて自動的に移動体4の移動を許可する構成であっても、操作者が意図せずに移動が許可される(移動体4が移動する)ことを防ぐことができる。
また、第3実施形態では、上記のように、操作者により把持部35が把持されたことを検知する操作者検知手段210(接触センサ211)を設ける。これにより、移動体4を移動させる際に操作者が把持部35を把持することを利用して、容易かつ確実に、操作者を検知することができる。
また、第3実施形態では、上記のように、操作者が保持する通信手段CMと無線通信可能な通信部212を設け、制御部7が通信部212を介して操作者を検知する。これにより、操作者が通信手段CMを携行した状態で移動体4を移動させるために接近した場合に、操作者を容易に検知することができる。また、通信手段CMと通信部212との通信の際に認証情報を含める場合には、操作者の個人認証が可能となり、権限のない第三者により操作が行われることも抑止することが可能となる。
[第4実施形態]
次に、図2および図14を参照して、本発明の第4実施形態によるX線撮影装置について説明する。第4実施形態では、上記第2実施形態に加えて、移動機構31に係合手段310を設けて、移動体4の移動を所定位置で停止させる構成例について説明する。なお、第4実施形態において、上記第2実施形態と共通する構成には、同一の符号を使用するとともに説明を省略する。
(X線撮影装置の構成)
第4実施形態では、図2に示すように、移動機構31は、移動機構31と解除可能に係合して移動体4を所定位置に停止させる係合手段310を含む。係合手段310は、図14に示すように、移動側に設けられるストッパ機構311と、固定側に設けられる係合部321とを含む。係合手段310は、複数方向(X、Y、Z、η、θ)の移動機構部分の各々に設けることができる。
たとえば、図14は、可動レール32bに対するベース部33aのY方向移動に対する係合手段310の構成例を示している。この場合、可動レール32bに対して支柱33のベース部33aが移動するため、可動レール32bが固定側、ベース部33aが移動側となる。可動レール32bには、所定位置P1に係合部321が形成されている。係合部321は、たとえば係合穴である。一方、ベース部33aには、係合部321と係合可能なストッパ機構311が設けられている。ストッパ機構311は、たとえば係合穴に向けて進退可能なソレノイドピンである。ストッパ機構311では、ピン312が係合穴に向けて付勢されており、ベース部33aがY方向に移動して所定位置P1に到達すると、ピン312が係合部321の内部に進入し、ベース部33aを停止させる。この結果、移動体4のY方向移動が所定位置P1で停止される。制御部7は、ストッパ機構311のソレノイド313を駆動してピン312を引き込むことにより、ストッパ機構311と係合部321との係合を解除することが可能である。
所定位置P1は、X線撮影を行う際のX線管1の基準位置となる位置に設定される。具体的には、たとえば臥位撮影(図1参照)の基準位置としては、X方向およびY方向において、撮影テーブル5に設けられたX線検出器2の中心線上にX線管1が配置される位置である。Z方向については、X線管1の焦点とX線検出器2の検出面との間の距離(SID)が所定の基準距離となる位置である。η方向についてはR軸がY方向に一致する角度位置であり、θ方向については、X線の光軸(コリメータ11の向き)がZ方向下方に一致する角度位置である。したがって、移動体4を所定位置(基準位置)に移動させると、固定レール32a(X方向)、可動レール32b(Y方向)、支柱33(Z方向、η方向)、他端側保持部34a(θ方向)に設けた各係合手段(図示せず)によって、移動体4が所定位置に位置決めされる。
第4実施形態では、切替手段36(電磁ロック36a)は、移動機構31が係合手段310と係合した場合に、移動体4の移動を禁止する状態に切り替える。すなわち、各々の移動方向について、係合手段310によって移動体4の移動が停止されると、制御部7により対応する電磁ロック36aがロック状態に切り替えられる。
そして、移動体4が所定位置P1から移動される場合には、制御部7は、電磁ロック36aにより移動を許可する方向を決定するとともに、移動機構31と係合手段310との係合を解除させる。
また、第4実施形態では、制御部7は、移動体4が所定位置P1に向けて移動する場合に、移動体4が所定位置P1に近付くほど移動体4に付与するアシスト力を小さくする。たとえば、図14に示すように、第4実施形態では、移動方向が所定位置P1に接近する方向である場合、現在位置と所定位置P1との間の距離の減少に伴って制御部7がアシスト力を減少させる。制御部7は、図14のように、現在位置と所定位置P1との間の距離に対してアシスト力が負の傾きで比例するように制御してもよいし、アシスト力が距離に反比例するように制御してもよい。
これにより、移動体4が所定位置P1に近付くにつれて、移動体4を移動させる際の抵抗が大きくなり、操作者によって移動される移動体4の速度が自然に減少する。
(第4実施形態の効果)
第4実施形態では、上記第1実施形態と同様に、力検出部38と、検出された力の方向に基づいて、切替手段36により移動を許可する方向を決定する制御部7とを設けることにより、X線撮影のために移動体を移動させる際の操作性を改善することができる。
また、第4実施形態では、上記のように、移動機構31と解除可能に係合して移動体4を所定位置P1に停止させる係合手段310を設ける。そして、制御部7を、切替手段36により移動を許可する方向を決定するとともに、移動機構31と係合手段310との係合を解除させるように構成する。これにより、係合手段310によって移動体4の位置決めを容易かつ迅速に行うことが可能となる。そして、係合手段310を設ける場合でも、操作者が移動機構31に力を加えるだけで、係合手段310の係合を解除することができるので、移動体4の位置決めを容易化しつつ、操作性を向上させることができる。
また、第4実施形態では、上記のように、制御部7を、移動体4が所定位置P1に向けて移動する場合に、移動体4が所定位置P1に近付くほど移動体4に付与するアシスト力を小さくするように構成する。これにより、パワーアシストを行う場合でも、所定位置P1に近付くほど移動体4を移動しにくく(アシスト力を小さく)して移動速度を下げることができるので、所定位置P1で係合手段310と移動体4とを係合させる際の衝撃を緩和することができる。
[第5実施形態]
次に、図2および図15を参照して、本発明の第5実施形態によるX線撮影装置について説明する。第5実施形態では、上記第2実施形態に加えて、移動を許可する方向を決定する制御を自動で行うか手動で行うかを、撮影術式や撮影部位に応じて切り替えるようにした構成例について説明する。なお、第5実施形態において、上記第2実施形態と共通する構成には、同一の符号を使用するとともに説明を省略する。
(X線撮影装置の構成)
第5実施形態では、制御部7は、移動体4の移動に関する制御を切り替えるように構成されている。具体的には、制御部7は、検出された力の方向に基づいて移動を許可する方向を決定する自動決定制御と、操作者の操作入力に基づいて移動を許可する方向を決定する手動決定制御とを、切り替える。
図2に示すように、記憶部8には、撮影術式および撮影部位のプリセット情報(8a、8b)が、予め複数記憶されている。撮影術式は、たとえば、臥位撮影、立位撮影および一般撮影を含む。撮影術式は、臥位撮影、立位撮影および一般撮影以外の術式を含んでいてもよい。撮影部位は、X線撮影の撮影対象となる部位であり、胸部、上腕、手指、鎖骨、頸椎などの各種の解剖学的部位を含む。撮影術式および撮影部位は、操作者が入力装置9を操作することにより選択可能である。また、記憶部8には、撮影術式および撮影部位の各々について、撮影条件が予め設定されている。撮影術式、または撮影術式および撮影部位の両方が設定されることにより、撮影を行う際の移動体4(X線管1)の位置を概ね特定することができる。記憶部8には、撮影術式や撮影部位毎に、X線撮影を行う際の基準位置のプリセット情報8cを記憶している。
図15に示すように、制御部7は、入力装置9を介して選択された撮影術式情報401および撮影部位情報402(選択された撮影術式および撮影部位の情報)を取得する。制御部7は、撮影術式情報401に応じて、自動決定制御と手動決定制御とを切り替えるように構成されている。また、制御部7は、撮影部位情報402(選択された撮影部位)に応じて、自動決定制御と手動決定制御とを切り替えるように構成されている。
〈撮影術式に基づく制御〉
制御部7は、取得した撮影術式情報401が所定の撮影術式である場合に、自動決定制御を行う。これにより、操作者は、把持部35を把持して移動体4を移動させたい方向に向けて力を加えるだけで、切替手段36(電磁ロック36a)を解除して移動体4を移動させることができる。
また、制御部7は、取得した撮影術式情報401が所定の撮影術式以外の場合には、自動決定制御を行わずに、手動決定制御を行う。この場合、制御部7は、操作部41の入力操作に応じて、操作者により指定された移動方向に対応する切替手段36(電磁ロック36a)を解除する。
第5実施形態では、好ましくは、制御部7は、所定の撮影術式における移動体4の基準位置P2を取得する。基準位置P2は、記憶部8の基準位置に関するプリセット情報8cに基づいて取得される。そして、図15に示すように、制御部7は、自動決定制御において、複数方向のうち移動体4の現在位置P3が基準位置P2と異なる移動方向について、検出された力の方向に基づいて移動体の移動を許可し、移動体4の現在位置P3が基準位置P2と一致する移動方向については、移動体4の移動を禁止する。たとえば、所定の撮影術式が立位撮影である場合、基準位置P2は、撮影スタンド6から正面方向(X方向)に所定距離離れた位置とする。
〈撮影部位に基づく制御〉
制御部7は、撮影部位情報402が所定の撮影部位である場合に自動決定制御を行い、撮影部位情報402が所定の撮影部位以外の場合には、手動決定制御を行う。たとえば、所定の撮影部位が手指である場合、制御部7は、取得した撮影部位情報402が手指である場合に自動決定制御を行う。
第5実施形態では、好ましくは、制御部7は、所定の撮影部位における移動体4の基準位置P2を取得する。そして、制御部7は、自動決定制御において、複数方向のうち移動体4の現在位置P3が基準位置P2と異なる移動方向について、検出された力の方向に基づいて移動体4の移動を許可し、移動体4の現在位置P3が基準位置P2と一致する移動方向については、移動体4の移動を禁止する。
たとえば、所定の撮影術式が立位撮影、所定の撮影部位が胸部であるとする。この場合、図15に示すように、基準位置P2は、撮影スタンド6から正面方向(X方向)に所定距離Lだけ離れた位置とする。Z方向については、身長に個人差があるため基準位置が設定されない。
たとえば図15の破線部に示す位置が移動体4の現在位置P3である場合、Y方向位置は基準位置P2(撮影スタンド6の正面、一点鎖線上)に一致するが、X方向位置が異なる。そこで、制御部7は、Y方向の移動を禁止し、X方向への移動を許可させる。つまり、制御部7は、Y方向への力が検出された場合でも、Y方向の電磁ロック36aをロック状態のままとする。一方、X方向への力が検出された場合、X方向に対応する電磁ロック36aをロック解除状態に切り替えて、移動を許可するとともに、アシスト制御を開始する。
(第5実施形態の効果)
第5実施形態では、上記第1実施形態と同様に、力検出部38と、切替手段36により移動を許可する方向を決定する制御部7とを設けることにより、X線撮影のために移動体4を移動させる際の操作性を改善することができる。
また、第5実施形態では、上記のように、制御部7は、撮影術式情報401に応じて、自動決定制御と、手動決定制御とを切り替えるように構成する。これにより、撮影術式の種類に応じて、たとえば移動体4を任意方向へ移動させる必要がある所定の撮影術式については自動決定制御を行い、任意方向へ移動させる必要がない他の撮影術式については手動決定制御を行うなどの制御切り替えが可能となる。その結果、移動体4の移動を許可する方向を決定する制御を、操作者の目的に応じて適切に使い分けることが可能となるので、ユーザビリティをより一層向上させることができる。
また、第5実施形態では、上記のように、自動決定制御において、複数方向のうち移動体4の現在位置P3が基準位置P2と異なる移動方向について、検出された力の方向に基づいて移動体4の移動を許可し、移動体4の現在位置P3が基準位置P2と一致する移動方向について、移動体4の移動を禁止するように制御部7を構成する。これにより、自動決定制御を行う場合にも、撮影術式に応じて設定される基準位置P2に移動体4を容易に移動させることが可能となる。
また、第5実施形態では、上記のように、制御部7は、撮影部位情報402に応じて、自動決定制御と手動決定制御とを切り替えるように構成する。これにより、撮影部位に応じて、たとえば移動体4を任意方向へ移動させる必要がある所定の撮影部位については自動決定制御を行い、任意方向へ移動させる必要がない撮影部位については手動決定制御を行うなどの制御切り替えが可能となる。その結果、移動体4の移動を許可する方向を決定する制御を、操作者の目的に応じて適切に使い分けることが可能となるので、ユーザビリティをより一層向上させることができる。
また、第5実施形態では、上記のように、自動決定制御において、複数方向のうち移動体4の現在位置P3が基準位置P2と異なる移動方向について、検出された力の方向に基づいて移動体4の移動を許可し、移動体4の現在位置P3が基準位置P2と一致する移動方向について、移動体4の移動を禁止するように制御部7を構成する。これにより、自動決定制御を行う場合にも、撮影部位に応じて設定される基準位置P2に移動体4を容易に移動させることが可能となる。
[変形例]
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく請求の範囲によって示され、さらに請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
たとえば、上記第1〜第5実施形態で示した各構成は、相互に組み合わせてもよい。したがって、第3〜第5実施形態のうちの1または複数を、第1実施形態または第2実施形態と組み合わせた構成としてよい。第1〜第5実施形態の構成を全て組み合わせてもよい。
また、上記実施形態では、天井懸垂型のX線撮影装置100(天井懸垂型の保持機構)の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、天井懸垂型以外の構成であってもよい。たとえば図16の変形例に示すように、床上走行型のX線撮影装置500(床上走行型の保持機構503)に本発明を適用してもよい。
図16のX線撮影装置500(保持機構503)では、撮影室101の床面上に配置された保持機構503によって、移動体4が支持される。図16では、保持機構503の移動機構431は、床面上のレール450上をX方向に走行する走行機構432、走行機構432から上方に延びる支柱433、支柱433に対してZ方向に移動可能に取り付けられたアーム435を含む。アーム435は、X方向に伸縮可能に構成され、先端部に回転保持部434を介して移動体4を支持している。回転保持部434は、R軸回りのθ方向に移動体4を回転可能に支持している。移動体4には、X線管1とコリメータ11とが設けられる。このような構成のX線撮影装置500(保持機構503)に本発明を適用し、力検出部38と、検出された力の方向に基づいて切替手段36によるロック解除の方向を決定する制御部7とを設けてもよい。
この他、たとえば、車輪を備えたカート型のX線撮影装置(保持機構)に本発明を適用してもよい。
また、上記第1〜第5実施形態では、移動体4にX線管1を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、移動体4にX線検出器2を設けて、X線検出器を移動させるための移動機構について、検出された力の方向に基づいてロック解除の方向を決定するように構成してもよい。
また、上記第1〜第5実施形態では、移動機構31が、5軸方向(X、Y、Z、η、θ)の複数方向に移動体4を移動可能に保持する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、移動機構が複数方向に移動体を移動可能に保持していればよく、5方向以外の他の複数方向であってもよい。
また、上記第1〜第5実施形態では、直交3軸(X、Y、Z)のガントリ機構と、直交する軸回りの回転機構とにより移動機構31を構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。移動体を移動させるための移動機構は、どのような構造であってもよい。たとえば、移動機構を多関節アームによって構成し、それぞれの関節における回転と、関節間のアームの伸縮とによって移動体を移動させる構成であってもよい。
また、上記第1〜第5実施形態では、力検出部38として、直交3軸(X、Y、Z)の力および各軸回りのモーメントの6成分を検出可能な分力計を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、分力計以外の力検出部を設けてもよい。力検出部は、気圧や液圧などの圧力測定式や、ばねなどの弾性を利用する方式、磁歪ロードセルや歪みゲージなどを用いてもよい。
また、上記第1〜第5実施形態では、1つの力検出部38により各方向の力を検出する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数の力検出部を設けてもよい。たとえば、移動可能な軸方向毎に力検出部を設けてもよい。すなわち、図5に示した各伝達機構121〜125の各々において、移動方向の力を検出する力検出部を設けるなどであってもよい。
1 X線管
2 X線検出器
3、503 保持機構(X線撮影装置用保持機構)
4 移動体
7 制御部(許可方向決定手段、アシスト手段、フリーモード設定手段)
31 移動機構
32 走行機構
33 支柱
34 回転保持部
35 把持部
36 切替手段
36a 電磁ロック(ロック機構)
38 力検出部(力方向検出手段、力強度検出手段)
42 フリーモードスイッチ(フリーモード設定手段)
100、500 X線撮影装置
210 操作者検知手段
212 通信部
310 係合手段
401 撮影術式情報
402 撮影部位情報
この発明は、X線撮影装置用保持機構およびX線撮影装置に関し、特に、X線管またはX線検出部を移動可能に保持する移動機構を備えたX線撮影装置用保持機構およびX線撮影装置に関する。
従来、X線管またはX線検出部を移動可能に保持する移動機構を備えたX線撮影装置が知られている。このようなX線撮影装置は、たとえば、国際公開第2012/043033号に開示されている。
上記国際公開第2012/043033号に開示されているX線撮影装置は、X線管装置と、操作ハンドルとを備えたヘッド部(移動体)と、ヘッド部を移動可能に保持する移動機構と、移動機構によるヘッド部の移動を固定するロック機構部と、ロック機構部を制御する制御装置とを備えている。移動機構は、水平方向および垂直方向の直交3軸方向と、垂直方向の軸回りの回転方向と、水平方向の軸回りの回転方向との、5軸方向にヘッド部を移動可能に保持している。ロック機構部は、5軸方向の各々におけるヘッド部の移動を個別にロックおよびロック解除することができる。操作ハンドルに、各軸方向に対応する複数のロック解除スイッチが設けられており、操作者がいずれかの軸方向のロック解除スイッチを操作すると、対応する軸方向のロックが制御装置により解除される。
撮影対象者(患者)のX線撮影を行う際、操作者は、ロックを解除した状態でヘッド部を移動させてX線管装置の位置合わせを行い、ロック状態で撮影を行う。
上記国際公開第2012/043033号のX線撮影装置では、移動体(ヘッド部)を移動させる際にロック解除スイッチを操作する必要があり、操作が煩雑である。特に、移動体の位置合わせを行う際に、操作者が撮影位置からロック解除スイッチに視線を移動させる必要があるため、ユーザビリティ(ユーザの使いやすさや使い勝手)が良好でない。また、たとえば移動体を水平軸回りに回転させた場合、回転の前後でロック解除スイッチの位置も水平軸回りに回転移動してしまうため、直感的な操作が行えない。そのため、移動体を移動させる際の操作性を改善することが望まれている。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、X線撮影のために移動体を移動させる際の操作性を改善することが可能なX線撮影装置用保持機構およびX線撮影装置を提供することである。
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面におけるX線撮影装置用保持機構は、X線管またはX線検出器を有する移動体を複数方向に移動可能に保持する移動機構と、複数方向の各々における、移動体の移動を許可する状態と移動を禁止する状態とを切り替える切替手段と、移動機構に加えられた力の方向を検出する力方向検出手段と、検出された力の方向に基づいて、複数方向のうち切替手段により移動を許可する方向を決定する許可方向決定手段とを備え、許可方向決定手段は、立位撮影、臥位撮影および一般撮影のうち複数を含む選択肢から選択される撮影術式情報を取得し、撮影術式情報に応じて、検出された力の方向に基づいて移動を許可する方向を決定する自動決定制御と、操作者の操作入力に基づいて移動を許可する方向を決定する手動決定制御とを切り替える。なお、本明細書において「移動」とは、移動体を並進移動させる場合のみならず、移動体を回転移動させる場合も含む広い概念である。また、「移動機構に加えられた力」とは、移動機構に直接加えられる力のみならず、移動体に力を加えることによって、移動体を保持する移動機構に対して間接的に加えられる力も含む。
この発明の第1の局面によるX線撮影装置用保持機構では、上記のように、移動機構に加えられた力の方向を検出する力方向検出手段と、検出された力の方向に基づいて、複数方向のうち切替手段により移動を許可する方向を決定する許可方向決定手段とを設け、許可方向決定手段は、立位撮影、臥位撮影および一般撮影のうち複数を含む選択肢から選択される撮影術式情報を取得し、撮影術式情報に応じて、検出された力の方向に基づいて移動を許可する方向を決定する自動決定制御と、操作者の操作入力に基づいて移動を許可する方向を決定する手動決定制御とを切り替える。これにより、移動機構(または移動体)に対して力が加えられた場合に、許可方向決定手段により、力が加えられた方向への移動を許可する状態にすることが可能となる。その結果、操作者は、スイッチ操作などを要することなく、移動体を移動させたい方向(移動方向)に向けて力を加えるだけで、自動的に、移動方向への移動が許可された状態に切り替えて移動体を移動させることができるようになる。これにより、X線撮影のために移動体を移動させる際の操作性を改善することができる。そして、移動体の位置合わせを行う際に、操作者が撮影位置から視線を移動させる必要がなくなるため、ユーザビリティ(ユーザの使いやすさや使い勝手)を向上させることができる。また、撮影術式の種類に応じて、たとえば移動体を任意方向へ移動させる必要がある所定の撮影術式については自動決定制御を行い、他の撮影術式については手動決定制御を行うなどの制御切り替えが可能となる。その結果、移動体の移動を許可する方向を決定する制御を、操作者の目的に応じて適切に使い分けることが可能となるので、ユーザビリティをより一層向上させることができる。
上記第1の局面によるX線撮影装置用保持機構において、好ましくは、複数方向は、互いに直交する水平および垂直の各並進方向を含み、移動機構は、移動体を垂直方向へ並進移動可能に保持する支柱と、移動体と一体的に移動するように支柱に支持された把持部とを含み、力方向検出手段は、把持部に加えられた垂直方向の力を検出する。このように構成すれば、操作者が移動を許可するために力を加える部位と、移動体を移動させるために操作者が把持する部位とを、一致させることができる。その結果、操作者が把持部を持って移動体を垂直方向に動かす動作によって、移動体の垂直方向への移動を許可してそのまま位置合わせすることが可能となるため、操作性をさらに改善することができる。
この場合、好ましくは、移動機構は、支柱を水平方向に並進移動可能に支持する走行機構を含み、力方向検出手段は、把持部に加えられた水平および垂直の各並進方向の力を検出する。このように構成すれば、垂直方向のみならず、水平方向への並進移動の場合でも、力を加える部位と、操作者が把持する部位とを一致させることができる。その結果、操作性をより一層改善することができる。
上記移動機構が支柱、走行機構および把持部を備える構成において、好ましくは、力方向検出手段は、把持部と支柱との間に配置され、直交3軸方向の力を検出可能な力検出部を含む。このように構成すれば、共通の力検出部によって、水平方向および垂直方向の各並進方向への力を検出して、移動を許可することができる。そのため、直交3軸方向に個別の力検出部を設ける構成と比較して、装置構成を簡素化することができる。
上記第1の局面によるX線撮影装置用保持機構において、好ましくは、複数方向は、互いに直交する水平軸回りおよび垂直軸回りの各回転方向を含み、移動機構は、移動体を水平軸回りに回転移動可能に保持する回転保持部と、移動体と一体的に回転移動するように回転保持部に支持された把持部とを含み、力方向検出手段は、把持部に加えられた水平軸回りの回転方向の力を検出する。このように構成すれば、操作者が把持部を持って移動体を水平軸回りに動かす動作によって、移動体の水平軸回りの回転方向への移動を許可してそのまま位置合わせすることが可能となるため、操作性をさらに改善することができる。また、水平軸回りの回転の前後でスイッチなどの位置(操作位置)が変化して操作性が変わり、操作位置を再確認する必要が生じる場合と異なり、操作者は、移動体を移動させたい方向に力を加えるだけで移動体を回転移動させることができるので、移動体の向きに関わらず直感的な操作が可能となる。この点でも、操作性が改善される。
この場合、好ましくは、移動機構は、回転保持部を垂直軸回りに回転移動可能に支持する支柱を含み、力方向検出手段は、把持部に加えられた水平軸回りおよび垂直軸回りの各回転方向の力を検出する。このように構成すれば、いずれの回転方向においても、操作者が把持部を持って力を加えるだけで、移動体の移動方向への回転移動を許可してそのまま移動体を回転移動させることが可能となる。その結果、操作性をより一層改善することができる。
上記移動機構が支柱、回転保持部および把持部を備える構成において、好ましくは、力方向検出手段は、把持部と回転保持部との間に配置され、直交する複数軸回りのモーメントを検出可能な力検出部を含む。このように構成すれば、共通の力検出部によって、それぞれの軸回りの回転方向への力を検出して、回転移動を許可することができる。そのため、各回転軸に個別に力検出部を設ける構成と比較して、装置構成を簡素化することができる。
上記第1の局面によるX線撮影装置用保持機構において、好ましくは、複数方向は、互いに直交する水平および垂直の各並進方向と、互いに直交する水平軸回りおよび垂直軸回りの各回転方向とを含み、力方向検出手段は、直交3軸の並進方向の力と、各軸回りのモーメントとを検出可能な力検出部を含む。このように構成すれば、多方向に移動体を移動可能な構成においても、共通の力検出部によって、それぞれの移動方向への力を検出して、移動を許可することができる。そのため、多方向への移動が可能な構成においても、移動方向毎に個別に力検出部を設ける必要がないので、装置構成を極めて簡素にすることができる。
上記第1の局面によるX線撮影装置用保持機構において、好ましくは、操作者を検知する操作者検知手段をさらに備え、許可方向決定手段は、操作者検知手段により操作者が検知されていない場合には切替手段により移動を禁止させ、操作者が検知されている場合に、切替手段により移動を許可させる方向を決定する。このように構成すれば、移動機構に加えられた力に基づいて自動的に移動体の移動を許可する構成であっても、操作者が意図せずに移動が許可される(移動体が移動する)ことを防ぐことができる。その結果、X線撮影におけるユーザビリティを向上させつつ、移動体の意図しない移動を防いで意図した位置でのX線撮影が可能となる。
この場合、好ましくは、移動機構は、移動体と一体的に移動するように設けられた把持部を含み、操作者検知手段は、操作者により把持部が把持されたことを検知する。このように構成すれば、移動体を移動させる際に操作者が把持部を把持することを利用して、容易かつ確実に、操作者を検知することができる。
上記操作者検知手段を備える構成において、好ましくは、操作者検知手段は、操作者が保持する通信手段と無線通信可能な通信部を含み、通信部を介して操作者を検知する。このように構成すれば、操作者が通信手段を携行した状態で移動体を移動させるために接近した場合に、操作者を容易に検知することができる。また、通信手段と通信部との通信の際に認証情報を含める場合には、操作者の個人認証が可能となり、権限のない第三者により操作が行われることも抑止することが可能となる。
上記第1の局面によるX線撮影装置用保持機構において、好ましくは、移動機構に加えられた力の大きさを検出する力強度検出手段と、検出された力の大きさに基づいて、移動体の移動方向に向かうアシスト力を移動体に付与するアシスト手段とをさらに備える。このように構成すれば、操作者が移動機構に加えた力を検出することにより、移動体の移動が許可されるのみならず、移動のためのパワーアシストを行うことが可能となる。この結果、操作性を大幅に向上させることができる。
この場合、好ましくは、複数方向は、互いに直交する水平および垂直の各並進方向を含み、移動機構は、移動体を垂直方向へ並進移動可能に保持する支柱と、移動体と一体的に移動するように支柱に支持された把持部とを含み、力強度検出手段は、把持部に加えられた垂直方向の力を検出する。このように構成すれば、操作者が把持部を持って移動体を垂直方向に動かす動作を行うだけで、アシスト手段により垂直方向へのパワーアシストを行うことが可能となるため、操作性をさらに改善することができる。
上記力強度検出手段は、把持部に加えられた垂直方向の力を検出する構成において、好ましくは、移動機構は、支柱を水平方向に並進移動可能に支持する走行機構を含み、力強度検出手段は、把持部に加えられた水平および垂直の各並進方向の力を検出する。このように構成すれば、操作者が把持部を持って力を加えるだけで、任意の並進方向への移動に際してのパワーアシストをアシスト手段により行うことが可能となるので、操作性をより一層改善することができる。
上記力強度検出手段とアシスト手段とを備える構成において、好ましくは、複数方向は、互いに直交する水平軸回りおよび垂直軸回りの各回転方向を含み、移動機構は、移動体を水平軸回りに回転移動可能に保持する回転保持部と、移動体と一体的に移動するように回転保持部に支持された把持部とを含み、力強度検出手段は、把持部に加えられた水平軸回りの回転方向の力を検出する。このように構成すれば、操作者が把持部を持って移動体を水平軸回りに回転させる動作を行うだけで、水平軸回りの回転方向へのパワーアシストを行うことが可能となるため、操作性をさらに改善することができる。
この場合、好ましくは、移動機構は、回転保持部を垂直軸回りに回転移動可能に支持する支柱を含み、力強度検出手段は、把持部に加えられた水平軸回りおよび垂直軸回りの各回転方向の力を検出する。このように構成すれば、操作者が把持部を持って力を加えるだけで、任意の回転方向への移動に際してのパワーアシストを行うことが可能となる。そのため、移動方向に力を加えるだけの共通の動作でアシスト手段によるパワーアシストを開始することができるので、操作性をより一層改善することができる。
上記力強度検出手段とアシスト手段とを備える構成において、好ましくは、力方向検出手段と力強度検出手段とは、力の方向および力の大きさを検出する力検出部により一体的に構成されている。このように構成すれば、力方向検出手段と力強度検出手段とを、共通の力検出部により構成することができるので、力の方向と力の大きさとを別々の検出部により検出する構成と比較して、装置構成を簡素化することができる。
上記力強度検出手段とアシスト手段とを備える構成において、好ましくは、アシスト手段は、検出された力の大きさに応じた大きさのアシスト力を移動体に付与するように構成されている。このように構成すれば、操作者が加える力を大きくするほどアシスト力を大きくして、移動体を容易に(軽く)移動させることが可能となる。そのため、重量のある移動体でも迅速に移動させることが可能となるので、X線撮影におけるユーザビリティをさらに向上させることができる。
上記第1の局面によるX線撮影装置用保持機構において、好ましくは、移動機構は、移動機構と解除可能に係合して移動体を所定位置に停止させる係合手段を含み、切替手段は、移動機構が係合手段と係合した場合に、移動体の移動を禁止する状態に切り替え、許可方向決定手段は、切替手段により移動を許可する方向を決定するとともに、移動機構と係合手段との係合を解除させる。このように構成すれば、たとえば標準的なX線撮影を行う際の移動体の位置を所定位置として係合手段を設けることにより、移動体の位置決めを容易かつ迅速に行うことが可能となる。また、係合手段を設ける場合でも、操作者が移動機構に力を加えるだけで、係合手段の係合を解除することができるので、操作性を向上させることができる。
この場合、好ましくは、移動機構に加えられた力の大きさを検出する力強度検出手段と、検出された力の大きさに基づいて、移動体の移動方向に向かうアシスト力を移動体に付与するアシスト手段とをさらに備え、アシスト手段は、移動体が所定位置に向けて移動する場合に、移動体が所定位置に近付くほど移動体に付与するアシスト力を小さくする。このように構成すれば、操作者が移動機構に加えた力を検出することにより、移動体の移動のためのパワーアシストを行うことが可能となる。そして、パワーアシストを行う場合でも、所定位置に近付くほど移動体を移動しにくく(アシスト力を小さく)して移動速度を下げることができるので、所定位置で係合手段と係合させる際の衝撃を緩和することができる。
上記第1の局面によるX線撮影装置用保持機構において、好ましくは、操作者の設定操作に基づいて、切替手段により複数方向の全方向への移動体の移動を許可させるフリーモード設定手段をさらに備える。このように構成すれば、操作者の設定操作を求めた上で、移動体を自由に移動可能なフリーモードに移行させることができる。たとえばフリーモードで移動体の大まかな位置合わせを行った後、検出された力の方向に基づく移動許可によって、特定の移動方向への位置調整だけを行うことが可能となり、ユーザビリティ(ユーザの使いやすさや使い勝手)をより一層向上させることができる。
この場合、好ましくは、フリーモード設定手段は、操作者の設定解除操作、または、複数方向の全方向への移動を許可してからの時間経過に基づいて、切替手段により複数方向の全方向への移動を禁止する状態に切り替える。このように構成すれば、フリーモードでの移動許可と、検出された力の方向に基づく移動許可との使い分けを容易にすることができる。
この場合、好ましくは、許可方向決定手段は、撮影術式情報に基づいて移動体の基準位置を取得し、自動決定制御において、複数方向のうち移動体の現在位置が基準位置と異なる移動方向について、検出された力の方向に基づいて移動体の移動を許可し、移動体の現在位置が基準位置と一致する移動方向について、移動体の移動を禁止する。このように構成すれば、自動決定制御を行う場合にも、撮影術式に応じて設定される基準位置に移動体を容易に移動させることが可能となる。
上記第1の局面によるX線撮影装置用保持機構において、好ましくは、許可方向決定手段は、X線撮影の撮影対象となる部位を示す撮影部位情報を取得し、撮影部位情報に応じて、検出された力の方向に基づいて移動を許可する方向を決定する自動決定制御と、操作者の操作入力に基づいて移動を許可する方向を決定する手動決定制御とを切り替える。このように構成すれば、撮影部位に応じて、たとえば移動体を任意方向へ移動させる必要がある所定の撮影部位については自動決定制御を行い、任意方向へ移動させる必要がない撮影部位については手動決定制御を行うなどの制御切り替えが可能となる。その結果、移動体の移動を許可する方向を決定する制御を、操作者の目的に応じて適切に使い分けることが可能となるので、ユーザビリティ(ユーザの使いやすさや使い勝手)をより一層向上させることができる。
この場合、好ましくは、許可方向決定手段は、撮影部位情報に基づいて移動体の基準位置を取得し、自動決定制御において、複数方向のうち移動体の現在位置が基準位置と異なる移動方向について、検出された力の方向に基づいて移動体の移動を許可し、移動体の現在位置が基準位置と一致する移動方向について、移動体の移動を禁止する。このように構成すれば、自動決定制御を行う場合にも、撮影部位に応じて設定される基準位置に移動体を容易に移動させることが可能となる。
上記第1の局面によるX線撮影装置用保持機構において、好ましくは、切替手段は、常時、複数方向の各々における移動体の移動を禁止する状態に維持し、許可方向決定手段により決定された方向について、個別に移動体の移動を許可する状態に切り替えるように構成されている。このように構成すれば、操作者が加えた力の方向への移動体の移動を許可する場合でも、操作者が意図しない方向への移動体の移動を抑制することができる。
この場合、好ましくは、切替手段は、複数方向の各々に対応して設けられ、移動体の移動をロックする複数のロック機構を含み、許可方向決定手段により決定された方向に対応するロック機構のロックを解除するように構成されている。このように構成すれば、容易に、許可方向決定手段により決定された方向への移動だけを個別に許可し、他の方向への移動を禁止する状態に維持することができる。
この発明の第2の局面におけるX線撮影装置は、X線管を有する移動体と、X線検出器と、移動体を複数方向に移動可能に保持する移動機構と、複数方向の各々における、移動体の移動を解除可能にロックするロック機構と、移動機構に加えられた力の方向を検出する力検出部と、複数方向のうち、力検出部により検出された力の方向におけるロックを解除するようにロック機構を制御する制御部とを備え、制御部は、立位撮影、臥位撮影および一般撮影のうち複数を含む選択肢から選択される撮影術式情報を取得し、撮影術式情報に応じて、検出された力の方向に基づいて移動を許可する方向を決定する自動決定制御と、操作者の操作入力に基づいて移動を許可する方向を決定する手動決定制御とを切り替える。なお、「移動機構に加えられた力」とは、移動機構に直接加えられる力のみならず、移動体に力を加えることによって、移動体を保持する移動機構に対して間接的に加えられる力も含む。
この発明の第2の局面によるX線撮影装置では、上記のように、移動機構に加えられた力の方向を検出する力検出部と、複数方向のうち、力検出部により検出された力の方向におけるロックを解除するようにロック機構を制御する制御部とを設け、制御部は、立位撮影、臥位撮影および一般撮影のうち複数を含む選択肢から選択される撮影術式情報を取得し、撮影術式情報に応じて、検出された力の方向に基づいて移動を許可する方向を決定する自動決定制御と、操作者の操作入力に基づいて移動を許可する方向を決定する手動決定制御とを切り替える。これにより、移動機構(または移動体)に対して力が加えられた場合に、制御部により、力が加えられた方向へのロックを解除して移動体の移動を許可する状態にすることが可能となる。その結果、操作者は、スイッチ操作などを要することなく、移動体を移動させたい方向(移動方向)に向けて力を加えるだけで、自動的に、移動方向のロックを解除して移動体を移動させることができるようになる。これにより、X線撮影のために移動体を移動させる際の操作性を改善することができる。そして、移動体の位置合わせを行う際に、操作者が撮影位置から視線を移動させる必要がなくなるため、ユーザビリティ(ユーザの使いやすさや使い勝手)を向上させることができる。また、撮影術式の種類に応じて、たとえば移動体を任意方向へ移動させる必要がある所定の撮影術式については自動決定制御を行い、他の撮影術式については手動決定制御を行うなどの制御切り替えが可能となる。その結果、移動体の移動を許可する方向を決定する制御を、操作者の目的に応じて適切に使い分けることが可能となるので、ユーザビリティをより一層向上させることができる。
上記のように、本発明によれば、X線撮影のために移動体を移動させる際の操作性を改善することができる。
第1〜第4参考例および一実施形態によるX線撮影装置の全体構成を示した模式図である。
X線撮影装置のブロック図である。
走行機構を模式的に示した平面図である。
支柱、回転保持部および移動体を模式的に示した側面図である。
切替手段の一例を示したブロック図である。
力検出部を説明するための模式図である。
把持部および操作部を示した移動体の正面図である。
第1参考例による自動決定制御を説明するためのフロー図である。
第2参考例による移動機構のブロック図である。
第2参考例の走行機構を模式的に示した平面図である。
力検出部に検出された検出力とアシスト力との関係を示したグラフである。
第2参考例によるアシスト制御を説明するためのフロー図である。
第3参考例の操作者検知手段を説明するための模式図である。
第4参考例の係合手段を説明するための模式図である。
一実施形態の自動決定制御を説明するための模式図である。
第1参考例の変形例を示した模式的な斜視図である。
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1参考例]
(X線撮影装置の構成)
まず、図1〜図7を参照して、本発明の第1参考例によるX線撮影装置100の全体構成について説明する。
図1では、撮影室101に設置された天井懸垂型のX線撮影装置100の例を示している。X線撮影装置100は、X線管1と、X線検出器2と、保持機構3とを主として備える。天井懸垂型のX線撮影装置100では、撮影室101の天井に配置された保持機構3によって、X線管1を有する移動体4が天井から吊り下げるように保持される。移動体4は、保持機構3によって撮影室101内で移動可能に保持されている。保持機構3は、請求の範囲の「X線撮影装置用保持機構」の一例である。
また、X線撮影装置100は、医用X線撮影装置であり、撮影対象である患者KをX線撮影するように構成されている。X線撮影装置100は、患者Kを横たわらせた姿勢(臥位)で撮影を行うための撮影テーブル5と、患者Kを起立させた姿勢(立位)で撮影を行うための撮影スタンド6とを備えている。
撮影テーブル5および撮影スタンド6には、それぞれX線検出器2が移動可能に保持されている。X線検出器2は、たとえばフラットパネルディテクタ(FPD)により構成されている。保持機構3は、少なくとも、撮影テーブル5を用いた臥位での撮影位置(図1の実線参照)と、撮影スタンド6を用いた立位での撮影位置(図1の二点鎖線参照)との間で、移動体4を移動させることが可能である。
臥位の撮影では、移動体4が、撮影テーブル5のX線検出器2と上下方向に対向する位置に配置され、上下方向に対向するX線管1とX線検出器2との間で、撮影テーブル5上に横臥された患者Kが撮影される。立位の撮影では、移動体4が、撮影スタンド6のX線検出器2と水平方向に対向する位置に配置され、水平方向に対向するX線管1とX線検出器2との間で、撮影スタンド6の前に起立した患者Kが撮影される。また、X線撮影装置100は、持ち運び可能なX線検出器2を撮影室101内の任意の位置に配置し、移動体4をX線検出器2と対向する位置に移動させることにより、任意の姿勢の患者Kを任意の方向から撮影可能な一般撮影(姿勢を特定しない撮影)を行うことが可能である。
また、X線撮影装置100は、制御部7、記憶部8および入力装置9を備えている。図2に示すように、制御部7は、CPU(Central Processing Unit)およびメモリを主として備えている。制御部7は、X線管1およびX線検出器2によるX線撮影の制御や、移動体4の移動に関する制御を行う。記憶部8には、X線撮影に用いられる各種のデータが記憶されている。入力装置9は、X線撮影に関わる入力操作を受け付ける機能を有する。入力操作は、X線撮影の撮影条件設定や、X線照射の開始指示などである。
〈移動体〉
図1に戻り、移動体4は、X線管1と、コリメータ11とを含んでいる。X線管1は、図示しない電源から高電圧が印加されることによりX線を発生させる。コリメータ11は、位置調整可能な複数の遮蔽板(コリメータリーフ)を有し、X線管1からのX線の一部を遮蔽することにより、X線の照射野を調整する機能を有する。また、移動体4には、把持部35が設けられている。また、移動体4には、タッチパネルまたは機械式スイッチを含んで構成される操作部41が設けられている。
〈保持機構〉
保持機構3は、移動体4を複数方向に移動可能に保持する移動機構31と、複数方向の各々における、移動体4の移動を許可する状態と移動を禁止する状態とを切り替える切替手段36(図2参照)とを備える。
移動機構31により移動体4が移動できる複数方向は、互いに直交する水平および垂直の各並進方向を含むことができる。図1に示すように、鉛直(垂直)方向をZ方向とし、水平方向で互いに直交する2方向をX方向、Y方向(図3参照)とすると、各並進方向は、これらのX、YおよびZ方向のうち、1つまたは複数である。
また、移動機構31により移動体4が移動できる複数方向は、互いに直交する水平軸回りおよび垂直軸回りの各回転方向を含むことができる。各回転方向は、鉛直(垂直)軸回りの回転方向、および、水平方向で互いに直交する2つの軸回りの回転方向のうち、1つまたは複数である。第1参考例では、複数方向は、3つの並進方向(X、YおよびZ方向)と、Z軸回りの回転方向(η方向、図4参照)と、水平方向のR軸回りの回転方向(θ方向、図4参照)との、合計5方向を含む例を示す。
移動機構31は、図1に示すように、走行機構32と、支柱33と、回転保持部34とを含む。走行機構32は、撮影室101の天井に設けられている。走行機構32は、支柱33(移動体4)をX方向およびY方向に並進移動可能に支持する。
具体的には、図3に示すように、走行機構32は、天井面に固定された一対の固定レール32aと、一対の可動レール32bとを含む。一対の固定レール32aは、X方向に直線状に延びる。一対の固定レール32aには、一対の可動レール32bがX方向に移動可能に取り付けられている。一対の可動レール32bは、Y方向に直線状に延びる。一対の可動レール32bには、支柱33のベース部33aがY方向に移動可能に取り付けられている。
図4に示すように、支柱33は、移動体4を垂直方向へ並進移動可能に保持する。支柱33は、走行機構32に取り付けられたベース部33a(図1参照)から吊り下がるように設けられ、Z方向に伸縮可能である。これらの構成により、移動機構31は、移動体4を3つの並進方向(X、YおよびZ方向)へ移動可能に保持する。
また、支柱33の先端(下端)には、回転保持部34が設けられている。支柱33は、回転保持部34を垂直軸(Z軸)回りのη方向に回転移動可能に支持する。Z軸は、支柱33の中心軸線に一致する。回転保持部34は、一端側が支柱33に接続されると共に、他端側が支柱33の半径方向(R軸方向)にオフセットした位置で上方に立ち上がる形状を有している。回転保持部34は、上方に立ち上がる他端側保持部34aで移動体4を支持している。
他端側保持部34aにおいて、回転保持部34は、移動体4を水平軸(R軸)回りのθ方向に回転移動可能に保持している。R軸は、支柱33の半径方向(水平方向)である。これらの構成により、移動機構31は、移動体4を2つの回転方向(ηおよびθ方向)へ移動可能に保持する。
なお、移動機構31は、把持部35を含んでいる。把持部35は、移動体4に設けられ、移動体4と一体的に回転移動するように回転保持部34に支持されている。また、把持部35は、移動体4と一体的に移動するように支柱33に支持されている。つまり、把持部35は、回転保持部34を介して支柱33に保持され、移動体4と一体となって複数方向(X、Y、Z、η、θ)に移動する。操作者は、把持部35を持って力を加えることにより、移動体4を複数方向(X、Y、Z、η、θ)に移動させることができる。
第1参考例では、保持機構3は、移動機構31に加えられた力の方向を検出する力検出部38と、検出された力の方向に基づいて、複数方向のうち切替手段36により移動を許可する方向を決定する制御部7とを備える。力検出部38は、請求の範囲の「力方向検出手段」の一例である。制御部7は、請求の範囲の「許可方向決定手段」および「フリーモード設定手段」の一例である。これらの構成について、詳細に説明する。
〈切替手段〉
図5に示すように、切替手段36は、複数方向の各々に対応して設けられ、移動体4の移動をロックする複数のロック機構を含む。第1参考例では、ロック機構として、電磁ロック(電磁ブレーキ)36aが設けられている。電磁ロック36aは、請求の範囲の「ロック機構」の一例である。ロック機構としては、油圧式や機械式のブレーキなどであってもよい。各電磁ロック36aは、複数方向の各々における、移動体4の移動を解除可能にロックするように構成されている。
電磁ロック36aは、X、Y、Z、η、θ方向の複数方向に個別に設けられている。各電磁ロック36aは、X、Y、Z、η、θ方向の各々のロック/ロック解除を個別に切り替えることが可能である。これにより、切替手段36は、複数方向の各々への移動体4の移動を許可する状態(ロック解除状態)と、各方向への移動体4の移動を禁止する状態(ロック状態)とに切り替え可能に構成されている。
切替手段36は、常時、複数方向の各々における移動体4の移動を禁止する状態に維持している。そして、切替手段36は、制御部7により決定された方向について、個別に移動体4の移動を許可する状態に切り替えるように構成されている。
なお、移動機構31は各軸方向のエンコーダ37を含んでいる。各エンコーダ37は、各軸方向における移動体4の位置を検出する。各エンコーダ37の出力信号に基づいて、移動体4のX線管1の現在位置(X、Y、Z方向の各位置、および、η、θ方向の各回転角度)を求めることが可能である。
各電磁ロック36aの動作は、駆動回路31aを介して、制御部7によって制御される。また、各エンコーダ37の出力信号は、駆動回路31aを介して制御部7に送られ、位置情報として動作制御に用いられる。
〈力方向検出手段〉
力検出部38(図2参照)は、移動機構31に加えられた力の方向を検出する。より具体的には、力検出部38は、把持部35に加えられた水平および垂直の各並進方向(X、Y、Z方向)の力を検出するように構成されている。また、力検出部38は、把持部35に加えられた水平軸(R軸)回りおよび垂直軸(Z軸)回りの各回転方向(θ、η方向)の力を検出するように構成されている。
具体的には、図4に示すように、力検出部38は、把持部35と回転保持部34との間に配置されている。力検出部38は、たとえば分力計により構成されている。分力計は、検出面に加えられた力の各検出方向成分を検出して、力の方向と、力の大きさとを計測することが可能である。これにより、力検出部38は、移動機構31に加えられた力の方向を検出する力方向検出手段として機能する。
図4の構成例では、力検出部38は、把持部35と回転保持部34との間で、移動体4と他端側保持部34aとの接続箇所に配置されている。言い換えると、力検出部38は、移動体4と保持機構3(移動機構31)との接続箇所に配置されている。また、力検出部38は、検出面の中心がR軸上に位置するように設けられている。力検出部38の検出中心と把持部35の回転中心とが、R軸上で同軸になっている。
力検出部38は、把持部35と機械的に連結されており、把持部35に加えられた各方向の力を検出することが可能である。また、力検出部38は、直交3軸の並進方向の力と、各軸回りのモーメントとを検出可能である。
具体的には、図6に示すように、力検出部38は、たとえば(Sx、Sy、Sz)の3軸の力と、Sx、Sy、Sz軸回りの各モーメントとの6成分を検出するように構成されている。図6では、力検出部38のSz軸がR軸と一致し、把持部35の回転中心を通る。また、力検出部38の検出面(Sx−Sy平面)と、把持部35の正面とが略平行になっている。これにより、把持部35を把持してSx、Sy、Sz軸の各方向に押す力が、力検出部38によりSx、Sy、Sz軸方向の力として検出される。把持部35を把持してθ方向(R軸回り)に回転させる力が、Sz軸回りのモーメントとして力検出部38により検出される。図6においてSx軸がZ軸に一致している場合、把持部35を把持してη方向(Z軸回り)に回転させる力は、Sx軸回りのモーメントとして力検出部38により検出される。
力検出部38の検出結果(直交3軸の並進方向の力の大きさ、各軸回りのモーメントの大きさ)は、制御部7によって取得される。
〈許可方向決定手段〉
制御部7は、各エンコーダ37の出力信号に基づいて、移動体4(把持部35)の向き(η方向、θ方向)を取得する。制御部7は、移動体4(把持部35)の向きと、力検出部38によって検出された力の向き(Sx、Sy、Sz軸方向および各軸回りの回転方向)とに基づいて、各移動方向(X、Y、Z、η、θ)に加えられた力およびモーメントを取得する。そして、制御部7は、検出された力の方向に基づいて、複数方向(X、Y、Z、η、θ)のうち切替手段36(電磁ロック36a)により移動を許可する方向を決定する。制御部7は、複数方向のうち、力検出部38により検出された力の方向におけるロックを解除するように電磁ロック36aを制御する。これにより、制御部7は、移動体4の移動を許可する方向を決定する許可方向決定手段として機能する。このように、制御部7は、力検出部38により検出された力の方向に基づいて移動を許可する方向を決定する自動決定制御を行うように構成されている。
なお、ロック状態とロック解除状態との切替は、操作者が把持部35に力を加えた場合に自動で切り替える方法以外にも行うことができる。図7に示すように、把持部35に設けられた操作部41には、複数方向(X、Y、Z、η、θ)の各々について、個別にロック状態とロック解除状態とを切り替えるための各操作スイッチ41aが設けられている。制御部7は、各操作スイッチの入力操作に基づいて、移動体4の移動を許可する方向を決定する手動決定制御を行うことが可能である。制御部7は、手動決定制御の場合にも、電磁ロック36aのロック状態およびロック解除状態を各方向で個別に切り替えることが可能である。
〈フリーモード設定手段〉
第1参考例では、制御部7は、操作者の設定操作に基づいて、電磁ロック36aにより複数方向の全方向への移動体4の移動を許可させるフリーモード設定手段として機能する。
具体的には、図7に示すように、操作部41に、フリーモードスイッチ42を設ける。制御部7は、フリーモードスイッチ42の入力操作を受け付けると、全ての電磁ロック36aをロック解除状態に切り替えるフリーモードの制御を開始する。この場合、操作者は、把持部35を把持して移動体4を複数方向(X、Y、Z、η、θ)へ自由に移動させることが可能となる。
フリーモードの制御を開始した場合、制御部7は、操作者の設定解除操作、または、複数方向の全方向への移動を許可してからの時間経過に基づいて、電磁ロック36aにより複数方向の全方向への移動を禁止する状態に切り替える。操作者の設定解除操作としては、たとえば、フリーモードスイッチ42が一度入力されてフリーモードに移行した後、再度フリーモードスイッチ42が入力された場合や、専用の解除スイッチ(図示せず)が入力された場合が含まれる。時間経過は、たとえば、フリーモードが開始されてから数秒とすることができ、たとえば5秒である。
(自動決定制御)
図8を参照して、移動体4を移動させる際の自動決定制御の処理について説明する。制御処理は、制御部7により行われる。なお、自動決定制御では、移動機構31の各電磁ロック36aは、自動決定制御の結果、制御部7によりロック解除状態に切り替えられない限り、常時、ロック状態に維持されている。
ステップS1において、制御部7は、力検出部38の検出結果を取得する。操作者が把持部35を把持して移動体4を移動させるべく移動方向に向けて力を加えると、力検出部38により力が検出される。制御部7は、力検出部38の検出結果およびエンコーダ37の検出結果から、操作者により加えられた力の方向(X、Y、Z、η、θ)を取得する。
ステップS2において、制御部7は、ステップS1において検出された力の方向に基づいて、切替手段36(電磁ロック36a)により移動を許可する方向を決定する。具体的には、制御部7は、複数方向(X、Y、Z、η、θ)のうち1または複数の方向への力が検出された場合に、検出された力の方向を、移動を許可する方向(移動方向)として決定する。
ステップS3において、制御部7は、決定した移動方向への移動体4の移動を許可する状態に切り替える。すなわち、制御部7は、決定した移動方向に対応する電磁ロック36aを、ロック状態からロック解除状態に切り替える。これにより、操作者が、検出された移動方向に向けて移動体4を移動させることが可能となる。一方、制御部7は、複数方向(X、Y、Z、η、θ)のうち、決定した移動方向以外の他の方向に対応する電磁ロック36aは、ロック状態のままとする。
ステップS4において、制御部7は、移動許可を終了するか否かを判断する。たとえば、制御部7は、力検出部38により力が検出されている間は、移動を許可する状態を維持する。移動許可を終了する移動方向が存在しない場合、制御部7は、ステップS1〜S3を繰り返す。ある移動方向について、一旦移動を許可する状態に切り替えた後、操作者による力が検出されなくなった場合、ステップS2において、その移動方向は移動を許可する方向から除外される。この場合、ステップS4において、制御部7は、移動許可を終了すると判断して、ステップS5に進む。
ステップS5において、制御部7は、移動許可を終了する移動方向について、移動を禁止する状態に切り替える。すなわち、制御部7は、電磁ロック36aをロック解除状態からロック状態に切り替える。その後、制御部7は、処理をステップS1に戻す。
以上の処理を繰り返すことにより、操作者により力が加えられた場合に、その方向への移動を許可する制御動作が実現される。
(第1参考例の効果)
第1参考例では、以下のような効果を得ることができる。
第1参考例では、上記のように、移動機構31に加えられた力の方向を検出する力検出部38と、検出された力の方向に基づいて、複数方向(X、Y、Z、η、θ)のうち切替手段36により移動を許可する方向を決定する制御部7とを設ける。これにより、移動機構31(または移動体4)に対して力が加えられた場合に、制御部7により、力が加えられた方向への移動を許可する状態にすることが可能となる。その結果、操作者は、スイッチ操作などを要することなく、移動体4を移動させたい方向(移動方向)に向けて力を加えるだけで、自動的に、移動方向への移動が許可された状態に切り替えて移動体4を移動させることができるようになる。これにより、X線撮影のために移動体4を移動させる際の操作性を改善することができる。そして、移動体4の位置合わせを行う際に、操作者が撮影位置から視線を移動させる必要がなくなるため、ユーザビリティを向上させることができる。
また、第1参考例では、上記のように、把持部35に加えられた垂直方向(Z方向)の力を検出する力検出部38を設ける。これにより、操作者が把持部35を持って移動体4を垂直方向に動かす動作によって、垂直方向への移動を許可することができるとともに、そのまま移動体4を垂直方向に移動させて位置合わせすることが可能となるため、操作性をさらに改善することができる。
また、第1参考例では、上記のように、把持部35に加えられた水平および垂直の各並進方向(X、Y、Z)の力を検出する力検出部38を設ける。これにより、X、Y、Z方向の並進移動の際に操作者が把持部35を持って力を加えるだけで、移動方向への移動を許可することができるとともに、そのまま移動体4を並進移動させることが可能となるため、操作性をより一層改善することができる。
また、第1参考例では、上記のように、把持部35と支柱33との間に配置され、直交3軸方向の力を検出可能な力検出部38を設ける。これにより、直交3軸方向のそれぞれに個別に力検出部を設ける構成と比較して、装置構成を簡素化することができる。
また、第1参考例では、上記のように、把持部35に加えられた水平軸(R軸)回りの回転方向(θ)の力を検出する力検出部38を設ける。これにより、操作者が把持部35を持って水平軸回りに動かす動作によって、移動体4の水平軸回りの回転方向への移動を許可してそのまま位置合わせすることが可能となるため、操作性をさらに改善することができる。また、水平軸回りの回転の前後でスイッチなどの位置(操作位置)が変化して操作性が変わり、操作位置を再確認する必要が生じる場合と異なり、操作者は、移動体4を移動させたい方向に力を加えるだけで移動体4を回転移動させることができるので、移動体4の向きに関わらず直感的な操作が可能となる。この点でも、操作性が改善される。
また、第1参考例では、上記のように、把持部35に加えられた水平軸(R軸)回りおよび垂直軸(Z軸)回りの各回転方向(θ、η)の力を検出する力検出部38を設ける。これにより、いずれの回転方向においても、操作者が把持部35を持って力を加えるだけで、移動体4の回転移動を許可してそのまま回転移動させることが可能となる。その結果、操作性をより一層改善することができる。
また、第1参考例では、上記のように、把持部35と回転保持部34との間に配置され、直交する複数軸回りのモーメントを検出可能な力検出部38を設ける。これにより、各回転軸に個別に力検出部を設ける構成と比較して、装置構成を簡素化することができる。
また、第1参考例では、上記のように、直交3軸の並進方向の力と、各軸回りのモーメントとを検出可能な力検出部38を設ける。これにより、多方向に移動体4を移動可能な構成においても、共通の力検出部38によって、それぞれの移動方向への力を検出して、移動を許可することができる。そのため、多方向への移動が可能な構成においても、移動方向毎に個別に力検出部を設ける必要がないので、装置構成を極めて簡素にすることができる。
また、第1参考例では、上記のように、操作者の設定操作に基づいて、電磁ロック36aにより複数方向の全方向への移動体4の移動を許可させるフリーモードに設定可能な制御部7を設ける。これにより、操作者の設定操作を求めた上で、移動体4を自由に移動可能なフリーモードに移行させることができる。たとえばフリーモードで移動体4の大まかな位置合わせを行った後、自動決定制御によって、特定の移動方向への位置調整だけを行うことが可能となり、ユーザビリティをより一層向上させることができる。
また、第1参考例では、上記のように、制御部7は、操作者の設定解除操作、または、複数方向の全方向への移動を許可してからの時間経過に基づいて、切替手段36により複数方向の全方向への移動を禁止する状態に切り替える。これにより、フリーモードでの移動許可と、検出された力の方向に基づく移動許可とを使い分けを容易にすることができる。
また、第1参考例では、上記のように、切替手段36を、常時、複数方向(X、Y、Z、η、θ)の各々における移動体4の移動を禁止する状態(ロック状態)に維持し、制御部7により決定された方向について、個別に移動体4の移動を許可する状態(ロック解除状態)に切り替えるように構成する。これにより、操作者が加えた力の方向への移動体4の移動を許可する場合でも、操作者が意図しない方向への移動体4の移動を抑制することができる。
また、第1参考例では、上記のように、切替手段36に、複数方向の各々に対応して設けられ、移動体4の移動をロックする複数の電磁ロック36aを設け、制御部7により決定された方向に対応する電磁ロック36aのロックを解除させる。これにより、容易に、制御部7により決定された方向への移動だけを個別に許可し、他の方向への移動を禁止する状態に維持することができる。
[第2参考例]
次に、図9〜図12を参照して、本発明の第2参考例によるX線撮影装置について説明する。第2参考例では、上記第1参考例に加えて、移動機構に加えられた力に基づいて、自動的に移動体にアシスト力を付与する構成例について説明する。なお、第2参考例において、上記第1参考例と共通する構成には、同一の符号を使用するとともに説明を省略する。
(X線撮影装置の構成)
第2参考例では、保持機構3は、移動機構31に加えられた力の大きさを検出する力強度検出手段を備えている。また、保持機構3は、検出された力の大きさに基づいて、移動体4の移動方向に向かうアシスト力を移動体4に付与するアシスト手段を備えている。第2参考例では、図9に示すように、保持機構3が複数のモータ(111〜115)を備えており、制御部7およびモータにより、アシスト手段が構成されている例を示す。
〈力強度検出手段〉
第2参考例では、保持機構3の力検出部38(図4参照)が、力強度検出手段としても機能する。すなわち、力方向検出手段と力強度検出手段とは、力の方向および力の大きさを検出する力検出部38により一体的に構成されている。力検出部38の構成は、上記第1参考例と同様である。
〈アシスト手段〉
走行機構32は、X軸モータ111と、X軸伝達機構121とを含む。X軸伝達機構121は、たとえば図10に示すように、固定レール32aの両端部近傍に配置された一対のローラ(プーリ)121aと、一対のローラ121a間に掛け渡されたタイミングベルト121bとを含むベルト−プーリ機構である。タイミングベルト121bには一対の可動レール32bが固定されており、X軸モータ111がローラ121aを回転駆動することにより、一対の可動レール32b(移動体4)に対してX方向にアシスト力を付与する。
走行機構32は、図9に示すように、Y軸モータ112と、Y軸伝達機構122とを含む。Y軸伝達機構122は、たとえばX軸伝達機構121と同様、図10に示すように、一対のローラ122aと、タイミングベルト122bとを含むベルト−プーリ機構である。タイミングベルト122bには支柱33のベース部33aが固定されており、Y軸モータ112がローラ122aを回転駆動することにより、支柱33(移動体4)に対してY方向にアシスト力を付与する。
図9に示すように、支柱33(図1参照)は、Z軸モータ113と、Z軸伝達機構123とを含む。Z軸伝達機構123は、たとえば、支柱33の下端部の回転保持部34に接続されたワイヤ123a(図1参照)を備えた巻き上げ機構である。Z軸モータ113がワイヤ123aを巻き上げ駆動することにより、回転保持部34(移動体4)に対してZ方向のアシスト力を付与する。
また、図9に示すように、支柱33(図4参照)は、回転保持部34をZ軸回りに回転駆動するη軸モータ114を含む。η軸モータ114は回転保持部34に直結されている必要はなく、減速機などのη軸伝達機構124(図9参照)が設けられていてもよい。η軸モータ114は、回転保持部34(移動体4)に対してη方向にアシスト力を付与する。
回転保持部34(図4参照)は、他端側保持部34aにおいて、移動体4をR軸回りに回転駆動するθ軸モータ115を含む。θ軸モータ115は移動体4に直結されている必要はなく、減速機などのθ軸伝達機構125(図9参照)が設けられていてもよい。θ軸モータ115は、移動体4に対してθ方向にアシスト力を付与する。
図9に示すように、各モータ(X軸モータ111、Y軸モータ112、Z軸モータ113、η軸モータ114、θ軸モータ115)の各々には、エンコーダ37と、切替手段36(各電磁ロック36a)とが接続されている。
各モータ(X軸モータ111、Y軸モータ112、Z軸モータ113、η軸モータ114、θ軸モータ115)、および各電磁ロック36aの動作は、駆動回路31aを介して、制御部7によって制御される。また、各エンコーダ37の出力信号は、駆動回路31aを介して制御部7に送られ、位置情報として動作制御に用いられる。
制御部7は、力検出部38により検出された力の大きさに基づいて、移動体4の移動方向に向かうアシスト力を移動体4に付与するように構成されている。制御部7は、アシスト力を付与する方向に対応するモータ(X軸モータ111、Y軸モータ112、Z軸モータ113、η軸モータ114、θ軸モータ115)を個別に駆動する制御により、移動体4の移動方向に向かうアシスト力を発生させる。
具体的には、制御部7は、検出された力の大きさに応じた大きさのアシスト力を移動体4に付与するように構成されている。たとえば、図11には、操作者が把持部35に力を加えることにより力検出部38により検出された力(検出力)の大きさ(横軸)と、発生するアシスト力(縦軸)との関係の一例を示している。
制御部7は、検出された力が大きくなるほど大きなアシスト力を発生するように、各モータを制御する。たとえば、制御部7は、アシスト制御の一部または全部において、検出された力に比例するアシスト力を発生させる。この場合、図11の2点鎖線で示したように、アシスト力を検出力に単純に比例させてもよいし、アシスト力の上限値Fmを設定し、アシスト力が上限値Fmを超えないようにしてもよい。
また、たとえば、制御部7は、第1閾値Th1以上の力が検出された場合に、アシスト力を付与するアシスト制御を開始してもよい。これにより、操作者の意図に反して移動体4が大きく移動してしまうことを抑制できる。また、制御部7は、アシスト制御の開始後、検出された力が第2閾値Th2を下回った場合に、アシスト力を付与するアシスト制御を停止してもよい。この際、第2閾値Th2を第1閾値Th1よりも小さくすることが好ましい。この場合、操作者は、重量の大きい移動体4を停止させる直前までアシストを受けることができるので、移動体4の位置合わせが容易になる。
(アシスト制御処理)
図12を参照して、移動体4を移動させる際のアシスト制御処理について説明する。アシスト制御処理は、制御部7により行われる。なお、ここでは、自動決定処理も同時に行う例について説明する。
ステップS11において、制御部7は、力検出部38の検出結果(力の方向および大きさ)を取得する。ステップS12において、制御部7は、力検出部38の検出結果およびエンコーダ37の検出結果から、操作者により加えられた力の方向および大きさを取得する。以下のステップS13以降の処理は、複数方向(X、Y、Z、η、θ)の各々について個別に実施されるが、ここでは便宜的に、任意の1つの方向についての処理について説明する。
ステップS13において、制御部7は、ステップS12において取得された力の大きさに基づいて、アシストを開始するか否かを判断する。すなわち、制御部7は、判断対象となる移動方向への力の大きさが、第1閾値Th1以上か否かを判断する。
力の大きさが第1閾値以上である場合、制御部7は、ステップS14において、移動方向に対応する電磁ロック36aをロック解除状態に切り替え、ステップS15において、アシスト駆動を開始する。制御部7は、アシスト力を付与する方向に対応するモータ(X軸モータ111、Y軸モータ112、Z軸モータ113、η軸モータ114、θ軸モータ115のいずれか)を駆動し、移動方向へのアシスト力を発生させる。この際、制御部7は、図11に示したように、移動方向への力の大きさに比例するようにアシスト力を発生させる。アシスト開始後、ステップS11に処理が戻る。
一方、ステップS13において、判断対象となる移動方向への力の大きさが第1閾値Th1未満である場合、制御部7は、ステップS16に処理を進める。
ステップS16において、制御部7は、判断対象となる移動方向への力の大きさに基づいて、アシストを停止するか、または、現在の状態を維持するかを判断する。すなわち、制御部7は、力の大きさが第2閾値Th2以下であるか否かを判断する。制御部7は、操作者に加えられている力の大きさが第2閾値Th2以下にならない場合(第2閾値Th2を超える場合)、現在の状態を継続する。すなわち、アシスト中(移動を許可する状態)であれば、アシストが継続され、アシスト停止中(移動を禁止する状態)であれば、アシスト停止状態が継続される。
力の大きさが第2閾値Th2以下である場合、制御部7は、ステップS17において、対応するモータのアシスト駆動を停止し、ステップS18において、対応する電磁ロック36aをロック状態に切り替える。
以上の処理を繰り返すことにより、操作者により力が加えられた場合に、その方向への移動を許可する制御動作とともに、検出された力の大きさに応じた大きさのアシスト制御動作が実現される。
(第2参考例の効果)
第2参考例では、上記第1参考例と同様に、力検出部38と、検出された力の方向に基づいて、複数方向のうち切替手段36により移動を許可する方向を決定する制御部7とを設けることにより、X線撮影のために移動体4を移動させる際の操作性を改善することができる。
また、第2参考例では、上記のように、移動機構31に加えられた力の大きさを検出する力検出部38と、検出された力の大きさに基づいて、移動体4の移動方向に向かうアシスト力を移動体4に付与する制御部7とを設ける。これにより、操作者が移動機構31に加えた力を検出することにより、移動体4の移動が許可されるのみならず、移動のためのパワーアシストを行うことが可能となる。この結果、操作性を大幅に向上させることができる。
また、第2参考例では、上記のように、把持部35に加えられた垂直方向(Z方向)の力を検出する力検出部38を設ける。これにより、操作者が把持部35を持って移動体4を垂直方向に動かす動作を行うだけでパワーアシストを行うことが可能となるため、操作性をさらに改善することができる。
また、第2参考例では、上記のように、把持部35に加えられた水平および垂直の各並進方向(X、Y、Z方向)の力を検出する力検出部38を設ける。これにより、操作者が把持部35を持って移動方向に力を加えるだけの共通の動作で各方向のパワーアシストを開始することができるので、操作性をより一層改善することができる。
また、第2参考例では、上記のように、把持部35に加えられた水平軸回りの回転方向(θ方向)の力を検出する力検出部38を設ける。これにより、操作者が把持部35を水平軸回りに回転させる動作を行うだけでパワーアシストを行うことが可能となるため、操作性をさらに改善することができる。
また、第2参考例では、上記のように、把持部35に加えられた水平軸回りおよび垂直軸回りの各回転方向(η、θ方向)の力を検出する力検出部38を設ける。これにより、回転移動方向に力を加えるだけの共通の動作でパワーアシストを開始することができるので、操作性をより一層改善することができる。
また、第2参考例では、上記のように、力方向検出手段と力強度検出手段とを、力の方向および力の大きさを検出する力検出部38により一体的に構成する。これにより、力の方向と力の大きさとを別々の検出部により検出する構成と比較して、装置構成を簡素化することができる。
また、第2参考例では、上記のように、制御部7を、検出された力の大きさに応じた大きさのアシスト力を移動体4に付与するように構成する。これにより、操作者が加える力を大きくするほどアシスト力を大きくして、移動体4を容易に(軽く)移動させることが可能となる。そのため、重量のある移動体4でも迅速に移動させることが可能となるので、X線撮影におけるユーザビリティをさらに向上させることができる。
[第3参考例]
次に、図13を参照して、本発明の第3参考例によるX線撮影装置について説明する。第3参考例では、上記第2参考例に加えて、操作者検知手段を設けて、操作者が検知されている場合に移動体4の移動を許可させる構成例について説明する。なお、第3参考例において、上記第2参考例と共通する構成には、同一の符号を使用するとともに説明を省略する。
(X線撮影装置の構成)
第3参考例では、図13に示すように、X線撮影装置100(保持機構3)は、操作者を検知する操作者検知手段210をさらに備えている。操作者検知手段210は、たとえば、操作者により把持部35が把持されたことを検知する接触センサ211により構成される。接触センサ211としては、静電容量式センサや、圧電体膜を用いた圧電式センサなど、各種の方法が採用できる。接触センサ211は、たとえば、把持部35の所定範囲に渡って設けられ、把持部35に対する操作者の手指の接触を検知する。図13は、把持部35の略全体(図13のハッチング部分)に渡って接触センサ211を設けた例を示している。
また、操作者検知手段210は、たとえば、操作者が保持する通信手段CMと無線通信可能な通信部212である。通信部212は、たとえば、把持部35や操作部41に設けられ、近距離無線通信により通信手段CMと双方向通信を行う。通信手段CMは、操作者が携行する通信デバイスや通信可能な認証端末、その他のデバイスである。制御部7は、通信部212を介して操作者を検知することが可能である。双方向通信において操作者の認証情報を含めて、個人認証を行うようにしてもよい。なお、図13では、便宜的に接触センサ211および通信部212の両方を図示しているが、接触センサ211および通信部212の一方のみが設けられる構成であってよい。
制御部7は、操作者検知手段210により操作者が検知されていない場合には切替手段36(電磁ロック36a)により移動体4の移動を禁止させる。制御部7は、操作者検知手段210により操作者が検知されている場合に、切替手段36(電磁ロック36a)により移動を許可させる方向を決定する。すなわち、制御部7は、操作者が検知されている状態で、力検出部38によって移動方向の力が検出された場合に、その移動方向に対応する電磁ロック36aをロック解除状態に切り替える。
(第3参考例の効果)
第3参考例では、上記第1参考例と同様に、力検出部38と、検出された力の方向に基づいて、複数方向のうち切替手段36により移動を許可する方向を決定する制御部7とを設けることにより、X線撮影のために移動体を移動させる際の操作性を改善することができる。
また、第3参考例では、上記のように、操作者を検知する操作者検知手段210を設け、制御部7を、操作者検知手段210により操作者が検知されていない場合には切替手段36により移動を禁止させ、操作者が検知されている場合に、切替手段36により移動を許可させる方向を決定するように構成する。これにより、加えられた力に基づいて自動的に移動体4の移動を許可する構成であっても、操作者が意図せずに移動が許可される(移動体4が移動する)ことを防ぐことができる。
また、第3参考例では、上記のように、操作者により把持部35が把持されたことを検知する操作者検知手段210(接触センサ211)を設ける。これにより、移動体4を移動させる際に操作者が把持部35を把持することを利用して、容易かつ確実に、操作者を検知することができる。
また、第3参考例では、上記のように、操作者が保持する通信手段CMと無線通信可能な通信部212を設け、制御部7が通信部212を介して操作者を検知する。これにより、操作者が通信手段CMを携行した状態で移動体4を移動させるために接近した場合に、操作者を容易に検知することができる。また、通信手段CMと通信部212との通信の際に認証情報を含める場合には、操作者の個人認証が可能となり、権限のない第三者により操作が行われることも抑止することが可能となる。
[第4参考例]
次に、図2および図14を参照して、本発明の第4参考例によるX線撮影装置について説明する。第4参考例では、上記第2参考例に加えて、移動機構31に係合手段310を設けて、移動体4の移動を所定位置で停止させる構成例について説明する。なお、第4参考例において、上記第2参考例と共通する構成には、同一の符号を使用するとともに説明を省略する。
(X線撮影装置の構成)
第4参考例では、図2に示すように、移動機構31は、移動機構31と解除可能に係合して移動体4を所定位置に停止させる係合手段310を含む。係合手段310は、図14に示すように、移動側に設けられるストッパ機構311と、固定側に設けられる係合部321とを含む。係合手段310は、複数方向(X、Y、Z、η、θ)の移動機構部分の各々に設けることができる。
たとえば、図14は、可動レール32bに対するベース部33aのY方向移動に対する係合手段310の構成例を示している。この場合、可動レール32bに対して支柱33のベース部33aが移動するため、可動レール32bが固定側、ベース部33aが移動側となる。可動レール32bには、所定位置P1に係合部321が形成されている。係合部321は、たとえば係合穴である。一方、ベース部33aには、係合部321と係合可能なストッパ機構311が設けられている。ストッパ機構311は、たとえば係合穴に向けて進退可能なソレノイドピンである。ストッパ機構311では、ピン312が係合穴に向けて付勢されており、ベース部33aがY方向に移動して所定位置P1に到達すると、ピン312が係合部321の内部に進入し、ベース部33aを停止させる。この結果、移動体4のY方向移動が所定位置P1で停止される。制御部7は、ストッパ機構311のソレノイド313を駆動してピン312を引き込むことにより、ストッパ機構311と係合部321との係合を解除することが可能である。
所定位置P1は、X線撮影を行う際のX線管1の基準位置となる位置に設定される。具体的には、たとえば臥位撮影(図1参照)の基準位置としては、X方向およびY方向において、撮影テーブル5に設けられたX線検出器2の中心線上にX線管1が配置される位置である。Z方向については、X線管1の焦点とX線検出器2の検出面との間の距離(SID)が所定の基準距離となる位置である。η方向についてはR軸がY方向に一致する角度位置であり、θ方向については、X線の光軸(コリメータ11の向き)がZ方向下方に一致する角度位置である。したがって、移動体4を所定位置(基準位置)に移動させると、固定レール32a(X方向)、可動レール32b(Y方向)、支柱33(Z方向、η方向)、他端側保持部34a(θ方向)に設けた各係合手段(図示せず)によって、移動体4が所定位置に位置決めされる。
第4参考例では、切替手段36(電磁ロック36a)は、移動機構31が係合手段310と係合した場合に、移動体4の移動を禁止する状態に切り替える。すなわち、各々の移動方向について、係合手段310によって移動体4の移動が停止されると、制御部7により対応する電磁ロック36aがロック状態に切り替えられる。
そして、移動体4が所定位置P1から移動される場合には、制御部7は、電磁ロック36aにより移動を許可する方向を決定するとともに、移動機構31と係合手段310との係合を解除させる。
また、第4参考例では、制御部7は、移動体4が所定位置P1に向けて移動する場合に、移動体4が所定位置P1に近付くほど移動体4に付与するアシスト力を小さくする。たとえば、図14に示すように、第4参考例では、移動方向が所定位置P1に接近する方向である場合、現在位置と所定位置P1との間の距離の減少に伴って制御部7がアシスト力を減少させる。制御部7は、図14のように、現在位置と所定位置P1との間の距離に対してアシスト力が負の傾きで比例するように制御してもよいし、アシスト力が距離に反比例するように制御してもよい。
これにより、移動体4が所定位置P1に近付くにつれて、移動体4を移動させる際の抵抗が大きくなり、操作者によって移動される移動体4の速度が自然に減少する。
(第4参考例の効果)
第4参考例では、上記第1参考例と同様に、力検出部38と、検出された力の方向に基づいて、切替手段36により移動を許可する方向を決定する制御部7とを設けることにより、X線撮影のために移動体を移動させる際の操作性を改善することができる。
また、第4参考例では、上記のように、移動機構31と解除可能に係合して移動体4を所定位置P1に停止させる係合手段310を設ける。そして、制御部7を、切替手段36により移動を許可する方向を決定するとともに、移動機構31と係合手段310との係合を解除させるように構成する。これにより、係合手段310によって移動体4の位置決めを容易かつ迅速に行うことが可能となる。そして、係合手段310を設ける場合でも、操作者が移動機構31に力を加えるだけで、係合手段310の係合を解除することができるので、移動体4の位置決めを容易化しつつ、操作性を向上させることができる。
また、第4参考例では、上記のように、制御部7を、移動体4が所定位置P1に向けて移動する場合に、移動体4が所定位置P1に近付くほど移動体4に付与するアシスト力を小さくするように構成する。これにより、パワーアシストを行う場合でも、所定位置P1に近付くほど移動体4を移動しにくく(アシスト力を小さく)して移動速度を下げることができるので、所定位置P1で係合手段310と移動体4とを係合させる際の衝撃を緩和することができる。
[一実施形態]
次に、図2および図15を参照して、本発明の一実施形態によるX線撮影装置について説明する。一実施形態では、上記第2参考例に加えて、移動を許可する方向を決定する制御を自動で行うか手動で行うかを、撮影術式や撮影部位に応じて切り替えるようにした構成例について説明する。なお、一実施形態において、上記第2参考例と共通する構成には、同一の符号を使用するとともに説明を省略する。
(X線撮影装置の構成)
一実施形態では、制御部7は、移動体4の移動に関する制御を切り替えるように構成されている。具体的には、制御部7は、検出された力の方向に基づいて移動を許可する方向を決定する自動決定制御と、操作者の操作入力に基づいて移動を許可する方向を決定する手動決定制御とを、切り替える。
図2に示すように、記憶部8には、撮影術式および撮影部位のプリセット情報(8a、8b)が、予め複数記憶されている。撮影術式は、たとえば、臥位撮影、立位撮影および一般撮影を含む。撮影術式は、臥位撮影、立位撮影および一般撮影以外の術式を含んでいてもよい。撮影部位は、X線撮影の撮影対象となる部位であり、胸部、上腕、手指、鎖骨、頸椎などの各種の解剖学的部位を含む。撮影術式および撮影部位は、操作者が入力装置9を操作することにより選択可能である。また、記憶部8には、撮影術式および撮影部位の各々について、撮影条件が予め設定されている。撮影術式、または撮影術式および撮影部位の両方が設定されることにより、撮影を行う際の移動体4(X線管1)の位置を概ね特定することができる。記憶部8には、撮影術式や撮影部位毎に、X線撮影を行う際の基準位置のプリセット情報8cを記憶している。
図15に示すように、制御部7は、入力装置9を介して選択された撮影術式情報401および撮影部位情報402(選択された撮影術式および撮影部位の情報)を取得する。制御部7は、撮影術式情報401に応じて、自動決定制御と手動決定制御とを切り替えるように構成されている。また、制御部7は、撮影部位情報402(選択された撮影部位)に応じて、自動決定制御と手動決定制御とを切り替えるように構成されている。
〈撮影術式に基づく制御〉
制御部7は、取得した撮影術式情報401が所定の撮影術式である場合に、自動決定制御を行う。これにより、操作者は、把持部35を把持して移動体4を移動させたい方向に向けて力を加えるだけで、切替手段36(電磁ロック36a)を解除して移動体4を移動させることができる。
また、制御部7は、取得した撮影術式情報401が所定の撮影術式以外の場合には、自動決定制御を行わずに、手動決定制御を行う。この場合、制御部7は、操作部41の入力操作に応じて、操作者により指定された移動方向に対応する切替手段36(電磁ロック36a)を解除する。
一実施形態では、好ましくは、制御部7は、所定の撮影術式における移動体4の基準位置P2を取得する。基準位置P2は、記憶部8の基準位置に関するプリセット情報8cに基づいて取得される。そして、図15に示すように、制御部7は、自動決定制御において、複数方向のうち移動体4の現在位置P3が基準位置P2と異なる移動方向について、検出された力の方向に基づいて移動体の移動を許可し、移動体4の現在位置P3が基準位置P2と一致する移動方向については、移動体4の移動を禁止する。たとえば、所定の撮影術式が立位撮影である場合、基準位置P2は、撮影スタンド6から正面方向(X方向)に所定距離離れた位置とする。
〈撮影部位に基づく制御〉
制御部7は、撮影部位情報402が所定の撮影部位である場合に自動決定制御を行い、撮影部位情報402が所定の撮影部位以外の場合には、手動決定制御を行う。たとえば、所定の撮影部位が手指である場合、制御部7は、取得した撮影部位情報402が手指である場合に自動決定制御を行う。
一実施形態では、好ましくは、制御部7は、所定の撮影部位における移動体4の基準位置P2を取得する。そして、制御部7は、自動決定制御において、複数方向のうち移動体4の現在位置P3が基準位置P2と異なる移動方向について、検出された力の方向に基づいて移動体4の移動を許可し、移動体4の現在位置P3が基準位置P2と一致する移動方向については、移動体4の移動を禁止する。
たとえば、所定の撮影術式が立位撮影、所定の撮影部位が胸部であるとする。この場合、図15に示すように、基準位置P2は、撮影スタンド6から正面方向(X方向)に所定距離Lだけ離れた位置とする。Z方向については、身長に個人差があるため基準位置が設定されない。
たとえば図15の破線部に示す位置が移動体4の現在位置P3である場合、Y方向位置は基準位置P2(撮影スタンド6の正面、一点鎖線上)に一致するが、X方向位置が異なる。そこで、制御部7は、Y方向の移動を禁止し、X方向への移動を許可させる。つまり、制御部7は、Y方向への力が検出された場合でも、Y方向の電磁ロック36aをロック状態のままとする。一方、X方向への力が検出された場合、X方向に対応する電磁ロック36aをロック解除状態に切り替えて、移動を許可するとともに、アシスト制御を開始する。
(一実施形態の効果)
一実施形態では、上記第1参考例と同様に、力検出部38と、切替手段36により移動を許可する方向を決定する制御部7とを設けることにより、X線撮影のために移動体4を移動させる際の操作性を改善することができる。
また、一実施形態では、上記のように、制御部7は、撮影術式情報401に応じて、自動決定制御と、手動決定制御とを切り替えるように構成する。これにより、撮影術式の種類に応じて、たとえば移動体4を任意方向へ移動させる必要がある所定の撮影術式については自動決定制御を行い、任意方向へ移動させる必要がない他の撮影術式については手動決定制御を行うなどの制御切り替えが可能となる。その結果、移動体4の移動を許可する方向を決定する制御を、操作者の目的に応じて適切に使い分けることが可能となるので、ユーザビリティをより一層向上させることができる。
また、一実施形態では、上記のように、自動決定制御において、複数方向のうち移動体4の現在位置P3が基準位置P2と異なる移動方向について、検出された力の方向に基づいて移動体4の移動を許可し、移動体4の現在位置P3が基準位置P2と一致する移動方向について、移動体4の移動を禁止するように制御部7を構成する。これにより、自動決定制御を行う場合にも、撮影術式に応じて設定される基準位置P2に移動体4を容易に移動させることが可能となる。
また、一実施形態では、上記のように、制御部7は、撮影部位情報402に応じて、自動決定制御と手動決定制御とを切り替えるように構成する。これにより、撮影部位に応じて、たとえば移動体4を任意方向へ移動させる必要がある所定の撮影部位については自動決定制御を行い、任意方向へ移動させる必要がない撮影部位については手動決定制御を行うなどの制御切り替えが可能となる。その結果、移動体4の移動を許可する方向を決定する制御を、操作者の目的に応じて適切に使い分けることが可能となるので、ユーザビリティをより一層向上させることができる。
また、一実施形態では、上記のように、自動決定制御において、複数方向のうち移動体4の現在位置P3が基準位置P2と異なる移動方向について、検出された力の方向に基づいて移動体4の移動を許可し、移動体4の現在位置P3が基準位置P2と一致する移動方向について、移動体4の移動を禁止するように制御部7を構成する。これにより、自動決定制御を行う場合にも、撮影部位に応じて設定される基準位置P2に移動体4を容易に移動させることが可能となる。
[変形例]
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく請求の範囲によって示され、さらに請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
たとえば、上記実施形態で示した構成と、上記第1〜第4参考例で示した各構成とは、相互に組み合わせてもよい。したがって、第1〜第4参考例のうちの1または複数を、一実施形態と組み合わせた構成としてよい。一実施形態の構成と、第1〜第4参考例の構成とを全て組み合わせてもよい。
また、上記実施形態では、天井懸垂型のX線撮影装置100(天井懸垂型の保持機構)の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、天井懸垂型以外の構成であってもよい。たとえば図16の変形例に示すように、床上走行型のX線撮影装置500(床上走行型の保持機構503)に本発明を適用してもよい。
図16のX線撮影装置500(保持機構503)では、撮影室101の床面上に配置された保持機構503によって、移動体4が支持される。図16では、保持機構503の移動機構431は、床面上のレール450上をX方向に走行する走行機構432、走行機構432から上方に延びる支柱433、支柱433に対してZ方向に移動可能に取り付けられたアーム435を含む。アーム435は、X方向に伸縮可能に構成され、先端部に回転保持部434を介して移動体4を支持している。回転保持部434は、R軸回りのθ方向に移動体4を回転可能に支持している。移動体4には、X線管1とコリメータ11とが設けられる。このような構成のX線撮影装置500(保持機構503)に本発明を適用し、力検出部38と、検出された力の方向に基づいて切替手段36によるロック解除の方向を決定する制御部7とを設けてもよい。
この他、たとえば、車輪を備えたカート型のX線撮影装置(保持機構)に本発明を適用してもよい。
また、上記実施形態では、移動体4にX線管1を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、移動体4にX線検出器2を設けて、X線検出器を移動させるための移動機構について、検出された力の方向に基づいてロック解除の方向を決定するように構成してもよい。
また、上記実施形態では、移動機構31が、5軸方向(X、Y、Z、η、θ)の複数方向に移動体4を移動可能に保持する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、移動機構が複数方向に移動体を移動可能に保持していればよく、5方向以外の他の複数方向であってもよい。
また、上記実施形態では、直交3軸(X、Y、Z)のガントリ機構と、直交する軸回りの回転機構とにより移動機構31を構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。移動体を移動させるための移動機構は、どのような構造であってもよい。たとえば、移動機構を多関節アームによって構成し、それぞれの関節における回転と、関節間のアームの伸縮とによって移動体を移動させる構成であってもよい。
また、上記実施形態では、力検出部38として、直交3軸(X、Y、Z)の力および各軸回りのモーメントの6成分を検出可能な分力計を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、分力計以外の力検出部を設けてもよい。力検出部は、気圧や液圧などの圧力測定式や、ばねなどの弾性を利用する方式、磁歪ロードセルや歪みゲージなどを用いてもよい。
また、上記実施形態では、1つの力検出部38により各方向の力を検出する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数の力検出部を設けてもよい。たとえば、移動可能な軸方向毎に力検出部を設けてもよい。すなわち、図5に示した各伝達機構121〜125の各々において、移動方向の力を検出する力検出部を設けるなどであってもよい。
1 X線管
2 X線検出器
3、503 保持機構(X線撮影装置用保持機構)
4 移動体
7 制御部(許可方向決定手段、アシスト手段、フリーモード設定手段)
31 移動機構
32 走行機構
33 支柱
34 回転保持部
35 把持部
36 切替手段
36a 電磁ロック(ロック機構)
38 力検出部(力方向検出手段、力強度検出手段)
42 フリーモードスイッチ(フリーモード設定手段)
100、500 X線撮影装置
210 操作者検知手段
212 通信部
310 係合手段
401 撮影術式情報
402 撮影部位情報