JPWO2017208892A1 - 二酸化バナジウム含有粒子の製造方法 - Google Patents
二酸化バナジウム含有粒子の製造方法Info
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Abstract
本発明の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法は、水熱反応部を有する流通式反応装置を用いて、バナジウム含有化合物及び水を含むスラリー原料液とバナジウム含有化合物と反応する化合物を、超臨界又は亜臨界状態の水と混合した反応液を用いて二酸化バナジウム含有粒子を製造する方法が、1)前記水が脱気水であること、2)水熱反応部の通過時間が3〜1000秒であること、3)前記水熱合成処理前に、スラリー原料液から塩類を除去する脱塩処理を施し、平均粒径を15〜40nm、平均結晶子径を15〜40nmとすること、又は4)二酸化バナジウム含有粒子製造工程前に、スラリー原料液に分散処理を施すことを特徴とする製造方法であること。
Description
化バナジウム含有粒子を光学フィルムに適用した場合にヘイズが高く、車載用又は建材用途のフィルムとしては不向きであった。
下記製造条件1〜4から選ばれる少なくとも一つの方法により二酸化バナジウム含有粒子を製造することを特徴とする二酸化バナジウム含有粒子の製造方法により、平均粒径が小さく、凝集体の生成が抑制され、粒径分布が狭く、単分散性及び分散安定性に優れ、かつサーモクロミック性に優れた二酸化バナジウム含有粒子の製造方法を見いだしたものである。
下記製造条件1〜4から選ばれる少なくとも一つの方法により二酸化バナジウム含有粒子を製造することを特徴とする二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
はじめに、本発明の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法の全体概要を説明する。
1)製造条件1:前記反応液を構成する水として、脱気処理を施した脱気水を用いる方法、2)製造条件2:前記反応液の前記水熱反応部における通過時間を、3〜1000秒の範囲内とする方法、3)製造条件3:前記スラリー原料液を前記水熱合成法により処理する前に、前記スラリー原料液から塩類を除去する脱塩処理を施し、前記二酸化バナジウム含有粒子の平均一次粒径(以下、「平均粒径」又は「平均粒子径」ともうい。)を15〜40nmの範囲内とし、かつ平均結晶子径を15〜40nmの範囲内になるように調整して製造する方法、及び4)製造条件4:前記二酸化バナジウム含有粒子を製造する工程の前に、前記スラリー原料液を分散処理する工程を有し、前記二酸化バナジウム含有粒子の粒径分布幅を80nm以下に調整する方法、から選ばれる少なくとも一つの方法により二酸化バナジウム含有粒子を製造することを特徴とする。
測定対象の二酸化バナジウム含有粒子分散液をSartorius stedim社製
ビバフロー50(有効濾過面積50cm2、分画分子量5000)を用いて、流速300mL/min、液圧1bar(0.1MPa)で濾過を行うことで濃度調整して、二酸化バナジウム含有粒子がポリビニルアルコール中に、ポリビニルアルコール及び二酸化バナジウム含有粒子の総質量に対して、10質量%となるように混合し、帝人デュポンフィルム株式会社製の厚さ50μmポリエチレンテレフタレート(PET)基材上に塗布乾燥し、乾燥膜厚3μmの光学機能層を有する測定用フィルムを作製する。
はじめに、製造条件1(実施態様1)と、それに適用する流通式反応装置、構成材料等の詳細について、説明する。
製造条件1の適用可能な製造フローの一つである実施態様1Aは、図1Aで示すように、原料液容器1(5)に、1)バナジウム含有化合物(A)及び脱気水を含む原料液と、2)バナジウム含有化合物と反応する化合物(B)、例えば、脱気水に所定の濃度で溶解したアルカリ又は還元剤を添加し、他方の原料液容器2(2)に、水として脱気水を添加し、この脱気水を加熱媒体(13)で所定の温度、圧力下で、超臨界又は亜臨界状態の脱気水としたのち、両者を合流点(MP)で会合させて反応液とした後、水熱反応部を構成する水熱反応部(16)内の加熱部配管(17)で水熱処理を施して、二酸化バナジウム含有粒子を調製する方法である。
製造条件1の適用可能な製造フローの一つである実施態様1Bは、図1Bで示すように、原料液容器1(5)に、1)バナジウム含有化合物(A)及び脱気水を含む原料液を添加し、他方の原料液容器2(2)に、2)バナジウム含有化合物と反応する化合物(B)を含有する脱気水を添加し、当該バナジウム含有化合物と反応する化合物(B)を含有する脱気水を加熱媒体(13)で所定の温度、圧力下で、超臨界又は亜臨界状態の脱気水としたのち、両者を合流点(MP)で会合させて反応液とした後、水熱反応部を構成する水熱反応部(16)内の加熱部配管(17)で水熱処理を施して、二酸化バナジウム含有粒子を調製する方法である。
次いで、本発明の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法(製造条件1〜4)で共通して適用する水熱反応部を有する流通式反応装置の全体構成について、製造条件1(実施態様1)を一例として、図を用いて説明する。
本発明に係る水熱反応工程では、
1)バナジウム含有化合物(A)、バナジウム含有化合物と反応する化合物(B)及び脱気水を含む原料液と、超臨界又は亜臨界状態の脱気水とを混合して得られる反応液(実施態様1A)、又は
2)バナジウム含有化合物(A)及び脱気水を含む原料液と、バナジウム含有化合物と反応する化合物(B)を含む超臨界又は亜臨界状態の脱気水とを混合して得られる反応液(実施態様1B)を、
それぞれ所定の温度及び圧力を付与した水熱反応部において、超臨界水又は亜臨界水の存在下で水熱反応させことにより、二酸化バナジウム含有粒子が得られる。
本発明に適用可能なバナジウム含有化合物(二酸化バナジウム含有粒子の原料)としては、例えば、五価のバナジウム(以下、バナジウム(V)と記載する。)としては、五酸化二バナジウム(V)(V2O5)、バナジン酸アンモニウム(V)(NH4VO3)、三塩化酸化バナジウム(V)(VOCl3)、バナジン酸ナトリウム(V)(NaVO3)等、四価のバナジウム(以下、バナジウム(IV)と記載する。)としては、シュウ酸バナジル(IV)(VOC2O4)、酸化硫酸バナジウム(以下、硫酸バナジルとも称する)(IV)(VOSO4)、及び四酸化二バナジウム(IV)(V2O4)を硫酸等の酸で溶解したものが例示できる。なお、上記のバナジウム含有化合物は原料液中に溶解していてもよく、分散していてもよい。また、バナジウム含有化合物は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を混合して用いてもよい。また、これらの化合物としては、水和した状態のもの(水和物)を用いてもよい。
〈a〉バナジウム含有化合物(A)として四価のバナジウム(IV)含有化合物を用いる場合には、前記バナジウム含有化合物(A)と反応する化合物(B)としては、アルカリを適用する。この時、アルカリは、実施態様1ではバナジウム含有化合物(A)及び水を含む原料液に添加し、実施態様2では、超臨界又は亜臨界状態の水を形成するための水に添加される。
〈b〉バナジウム含有化合物(A)として五価のバナジウム(V)含有化合物を用いる場合には、前記バナジウム含有化合物(A)と反応する化合物(B)としては、還元剤(例えば、ヒドラジン及びその水和物等)を適用することが好ましい。この時、還元剤は、実施態様1ではバナジウム含有化合物(A)及び水を含む原料液に添加し、実施態様2では、超臨界又は亜臨界状態の水を形成するための水に添加される。
本発明の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法に係る製造条件1においては、水熱反応に適用する水が脱気水であることを特徴とする。更に詳しくは、水熱反応部を通過するバナジウム含有化合物(A)とバナジウム含有化合物(A)と反応する化合物(B)を含む反応液を構成する水が脱気水である。ここでいう脱気水とは、25℃における溶存酸素量が4.0mg/L以下の水であり、好ましくは2.0mg/L以下であり、さらに好ましくは1.0mg/L以下であり、特に好ましくは0.4mg/L以下であり、反応液中の溶存酸素量が上記で規定する条件を満たすことにより、反応系での酸化や酸化による分解の抑制、発泡の防止を行うことができる。
本発明に係る脱気水による酸化防止環境をアシストするため、必要に応じて、還元性を有する化合物を添加してもよい。
次いで、バナジウム含有化合物(A)と、それに組み合わせるバナジウム含有化合物と反応する化合物(B)の詳細について説明する。
製造条件1において、上記(1)水熱反応工程に記載の〈a〉項に適用するバナジウム(IV)含有化合物(二酸化バナジウム含有粒子の原料)は、特に制限されず、上記で列挙したバナジウム含有化合物(A)の中から適宜選択できる。その中でも、水熱反応後に副生成物をできるだけ生成させない観点から、酸化硫酸バナジウム(IV)(VOSO4)であることが好ましい。なお、バナジウム(IV)含有化合物は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を混合して用いてもよい。
上記(1)水熱反応工程に記載の〈a〉項のように、バナジウム(IV)含有化合物とともに使用することが可能なバナジウム含有化合物(A)と反応する化合物(B)としては、アルカリであることが好ましい。すなわち、(1)水熱反応工程の〈a〉項に記載の水熱反応では、バナジウム含有化合物(A)がバナジウム(IV)含有化合物であり、バナジウム含有化合物と反応する化合物(B)が少なくとも1種のアルカリを含む反応液を用いて行うことが好ましい。さらに、バナジウム含有化合物と反応する化合物(B)がアルカリのみから構成されていることがより好ましい。なお、本発明でいうアルカリとは、水溶液中において水酸化物イオン(OH−)を発生させる物質を意味し、それ自体が水酸化物イオンを生じる化合物の他に、それ自体が水酸化物イオンを生じるわけではなく結果的に水酸化物イオンを生じる化合遺物も含まれる。
また、上記(1)水熱反応工程に記載の〈b〉項に適用するバナジウム(V)含有化合物(二酸化バナジウム含有粒子の原料)は、特に制限されず、上記したものの中から適宜選択できる。水熱反応後に副生成物をできるだけ生成させない観点から、五酸化二バナジウム、バナジン酸アンモニウム(NH4VO3)、及び三塩化酸化バナジウムが好ましい。より好ましくは、五酸化二バナジウム及びバナジン酸アンモニウムであり、特に好ましくはバナジン酸アンモニウム(NH4VO3)である。なお、上記バナジウム(V)含有化合物は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を混合して用いてもよい。
上記(1)水熱反応工程に記載の〈b〉項に係る水熱反応においては、バナジウム(V)含有化合物とともに使用されるバナジウム含有化合物と反応する化合物(B)としては、還元剤であることが好ましい。
本発明の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法では、水熱反応部において、反応液が含有するバナジウム含有化合物の二酸化バナジウム含有粒子への相転移温度を調節するため、特定の元素を含む相転移調整剤を含有することができる。
本発明の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法において、水熱反応工程では、反応液を水熱反応させて二酸化バナジウム含有粒子を形成する。なお、ここでいう「水熱反応」とは、高温の水、特に高温高圧の水の存在の下に行われる鉱物の合成又は変質反応、すなわち化学反応を意味する。
(1)表面修飾剤
本発明の流通式反応装置を用いた二酸化バナジウム含有粒子の製造方法においては、水熱反応直後の二酸化バナジウム含有粒子を含む反応液に対し、さらに、タンク(10)より、流路(11)を経由して表面修飾剤を添加することができる。
本発明に適用可能な表面修飾剤の具体例として有機ケイ素化合物(有機シリケート化合物)が挙げられ、例えば、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、テトラエトキシシラン(オルトケイ酸テトラエチル)、トリメチルシリルクロライド、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。また、有機ケイ素化合物は市販品としても入手することができ、例えば、SZ 6187(東レ・ダウコーニング社製)等を好適に用いることができる。
有機チタン化合物としては、例えば、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルフォニルチタネート及びビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネート、キレート化合物として、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート、リン酸チタン化合物、チタンオクチレンギリコレート、チタンエチルアセトアセテート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート等が挙げられる。また、有機チタン化合物は市販品としても入手することができ、例えば、プレンアクトTTS、プレンアクトTTS44(以上、味の素ファインテクノ株式会社製)等が挙げられる。
有機アルミニウム化合物としては、例えば、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムtert−ブトキシド等が挙げられる。
有機ジルコニア化合物としては、例えば、ノルマルプロピルジルコネート、ノルマルブチルジルコネート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムモノアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート等が挙げられる。
界面活性剤は、同一分子中に親水基と疎水基とを有する化合物である。界面活性剤の親水基としては、具体的には、ヒドロキシ基、炭素数1以上のヒドロキシアルキル基、カルボニル基、エステル基、アミノ基、アミド基、アンモニウム塩、チオール、スルホン酸塩、リン酸塩、ポリアルキレングリコール基等が挙げられる。ここで、アミノ基は1級、2級、3級のいずれであってもよい。界面活性剤の疎水基としては、具体的にはアルキル基、アルキル基を有するシリル基、フルオロアルキル基等が挙げられる。
シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル等のストレートシリコーンオイルや、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、カルルビノール変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、異種官能基変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル、親水性特殊変性シリコーンオイル、高級アルコキシ変性シリコーンオイル、高級脂肪酸含有変性シリコーンオイル及びフッ素変性シリコーン等の変性シリコーンオイルが挙げられる。
本発明の流通式反応装置を用いた二酸化バナジウム含有粒子の製造方法においては、水熱反応直後の反応液に対し、さらに、タンク(10)より、流路(11)を経由してpH調整剤を添加することができる。
本発明の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法においては、〔1〕水熱反応工程に加えて、水熱反応後の反応液(二酸化バナジウム含有粒子を含む分散液)を冷却する冷却工程(図2で示す冷却部(8))をさらに有することが好ましい。
実施態様2においては、水熱反応部を有する流通式反応装置を用いて、少なくともバナジウム含有化合物及び水を含むスラリー原料液と、当該バナジウム含有化合物と反応する化合物を調製した後、当該反応液を、前記流通式反応装置を構成する水熱合成を行う水熱反応部において、通過時間3〜1000秒の範囲内で水熱反応を行うことを特徴とする。
実施態様2Aは、図3Aで示すように、原料液容器1(5)に、1)バナジウム含有化合物(A)及び水を含む原料液と、2)バナジウム含有化合物と反応する化合物(B)、例えば、アルカリ又は還元剤を添加し、他方の原料液容器2(2)に、水としてイオン交換水を添加し、イオン交換水を加熱媒体(13)で所定の温度、圧力下で、超臨界又は亜臨界状態の水としたのち、両者を合流点(MP)で会合させて反応液とした後、水熱反応部を構成する水熱反応部(16)内の加熱部配管(17)で水熱処理を施して、二酸化バナジウム含有粒子を調製する方法である。
実施態様2Bは、図3Bで示すように、原料液容器1(5)に、1)バナジウム含有化合物(A)及び水を含む原料液を添加し、他方の原料液容器2(2)に、2)バナジウム含有化合物と反応する化合物(B)を含有するイオン交換水を添加し、当該バナジウム含有化合物と反応する化合物(B)を含有するイオン交換水を加熱媒体(13)で所定の温度、圧力下で、超臨界又は亜臨界状態の水としたのち、両者を合流点(MP)で会合させて反応液とした後、水熱反応部を構成する水熱反応部(16)内の加熱部配管(17)で水熱処理を施して、二酸化バナジウム含有粒子を調製する方法である。
本発明に係る製造条件2(実施態様2)においては、二つの構成液を合流点(MP)で合流させて反応液を調製し、水熱反応部の加熱部配管(17)を通過(流通)させる際の反応液のレイノルズ数Reを1000〜45000の範囲内に制御することが好ましく、さらに好ましくは、2000〜10000の範囲内であることが、バナジウム塩水溶液と超臨界又は亜臨界状態の水とを、水熱反応部の配管内で効率的かつ均一組成の混合物とすることができ、粒径分布の狭い二酸化バナジウム含有粒子組成物を得ることができる点で好ましい。
Re=D1Uρ/η
一般に、Reが2300未満である領域を層流といい、2300<Re<3000の範囲内である時を遷移域といい、Reが3000を超える領域を乱流という。
(バナジウム含有化合物)
製造条件2(実施態様2)においては、
1)バナジウム含有化合物(A)及びバナジウム含有化合物と反応する化合物(B)を含む原料液と、超臨界又は亜臨界状態の水とを混合して得られる反応液(実施態様2A)、
又は2)バナジウム含有化合物(A)を含む原料液と、バナジウム含有化合物と反応する化合物(B)を含む超臨界又は亜臨界状態の水とを混合して得られる反応液(実施態様2B)を、
それぞれ所定の温度及び圧力を付与した水熱反応部において、超臨界水又は亜臨界水の存在下で、通過時間を、3〜1000秒の範囲内で水熱反応させことにより、二酸化バナジウム含有粒子が得られる。
バナジウム含有化合物を溶解するための水、バナジウム含有化合物と反応する化合物を溶解するための水、及び超臨界水又は亜臨界水とするために使用する水は、不純物の少ないものが好ましく、特に制限されるものではないが、例えば、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水、窒素(N2)ナノバブル処理された水等を用いることが好ましく、窒素(N2)ナノバブル処理された水を使用することがより好ましい。
本発明に係る製造条件2においては、従来公知の各種添加剤を適用することができ、例えば、二酸化バナジウム含有粒子の相転移調節剤、表面修飾剤(有機ケイ素化合物、有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物、有機ジルコニア化合物、界面活性剤、シリコーンオイル等)、pH調整剤等を挙げることができ、これら各種添加剤の具体的な化合物は、前述の製造条件1(実施態様1)の説明にてその詳細を記載した化合物を適用することができる。
本発明に係る製造条件3(実施態様3)においては、水熱反応部を有する流通式反応装置を用いて、少なくともバナジウム含有化合物及び水を含むスラリー原料液と、当該バナジウム含有化合物と反応する化合物と、超臨界又は亜臨界状態の水とを混合した反応液を用い、水熱合成方法により二酸化バナジウム含有粒子を製造する二酸化バナジウム含有粒子の製造方法において、前記スラリー原料液を前記水熱合成法により処理する前に、前記スラリー原料液から塩類を除去する脱塩処理を施したのち、水熱合成方法により製造した二酸化バナジウム含有粒子の平均一次粒径を15〜40nmの範囲内とし、かつ平均結晶子径を15〜40nmの範囲内になるように調整することを特徴とする。
図4は、脱塩処理工程を有する二酸化バナジウム含有粒子の製造条件3の製造工程の一例を示す工程フロー図である。
本発明に係る製造条件3では、水熱合成法により二酸化バナジウム含有粒子を形成する前に、上記調製したスラリー原料液に対し、所定量の塩類を除去する脱塩処理を施すことを特徴とする。
第2ステップの脱塩処理に適用可能な遠心分離法では、上記調製したスラリー原料液を、遠心分離機により、固相と液相に分離を行った後、不要な塩類を含む水相の分離液の一部を、デンカンテーション法により系外に排出し、その後、排出した分離液と同容量のイオン交換水を、脱塩処理したスラリー原料液に追加添加し、その後分散処理を行い、この操作を繰り返して、不要の塩類を系外に排出して、スラリー原料液を所定の電気伝導率に調整する。
次いで、図を交えて本発明に好適な限外濾過法を用いた脱塩処理方法について説明する。
調整釜(51)に、上記で説明した方法により調製した、バナジウム含有化合物、バナジウム含有化合物と反応する化合物及びイオン交換水を含むスラリー原料液(52)を貯留して、循環ポンプ(54)を用いて循環させながら、限外濾過部(55)で、スラリー原料液中の塩類を含む水分を排出口(56)より、排出量V1で排出して、スラリー原料液を所定の濃度まで濃縮する。
次いで、限外濾過部(55)で濃縮したスラリー原料液(52)に対し、補充用イオン交換水ストック釜(57)より、補充用イオン交換水供給ライン(59)を経由して、限外濾過部(55)での排出量V1と同容量の補充用イオン交換水(58)を添加量V2で添加し、十分に撹拌混合して、第一次の脱塩したスラリー原料液(52)を調製する。この時、電気伝導率計(60)により、第一次の脱塩したスラリー原料液(52)の電気伝導率(μS/m)を測定する。
次いで、上記工程(I)と同様にして、循環ポンプ(54)により循環させながら、限外濾過部(55)で、スラリー原料液(52)中の構成液(イオン交換水+塩類)を排出量V1で系外に排出(56)する。
次いで、上記工程(II)と同様にして、濃縮した混合溶液(52)に対し、補充用イオン交換水ストック釜(57)より、補充用イオン交換水供給ライン(59)を経由して、排出量V1と同容量の補充用イオン交換水(58)を添加量V2で添加し、十分に撹拌混合して、第二次の脱塩したスラリー原料液(52)を調製する。この時、電気伝導率計(60)により、第一次の脱塩したスラリー原料液(52)の電気伝導率(μS/m)を測定する。
二酸化バナジウム含有粒子の製造条件3においては、上記脱塩処理を施したスラリー原料液は、図4のフロー図の第3ステップで示すように、水熱合成法により、平均一次粒径が15〜40nmの範囲内で、かつ平均結晶子径が15〜40nmの範囲内にある二酸化バナジウム含有粒子を製造する。
実施態様4においては、水熱反応部を有する流通式反応装置を用いて、少なくともバナジウム含有化合物及び水を含むスラリー原料液と、当該バナジウム含有化合物と反応する化合物と、超臨界又は亜臨界状態の水とを混合した反応液を用い、水熱合成方法により二酸化バナジウム含有粒子を製造する二酸化バナジウム含有粒子の製造方法において、前記二酸化バナジウム含有粒子を製造する工程の前に、前記スラリー原料液を分散処理する工程を有し、前記二酸化バナジウム含有粒子の粒径分布幅を80nm以下に調整することを特徴とする。
本発明に係る製造条件4においては、スラリー原料液を水熱反応させる前に、スラリー原料液に対し分散処理を施すことを特徴とする。
本発明に係る製造条件4においては、水熱反応工程では、水熱反応部を有する流通式反応装置を用いて、分散処理したスラリー原料液と超臨界又は亜臨界状態の水とを混合した反応液を水熱反応させて二酸化バナジウム含有粒子を製造し、二酸化バナジウム含有粒子の粒径分布幅を80nm以下に調整することを特徴とする。好ましくは、二酸化バナジウム含有粒子の粒径分布幅を50nm以下に調整する。
製造条件4(実施態様4)に適用するその他の製造条件、例えば、水熱反応部を有する流通式反応装置の構成(図2、図3A、図3B)、水熱反応条件、スラリー原料液の調製、スラリー原料液の構成材料(バナジウム含有化合物、アルカリ、各種添加剤等)については、前述の製造条件1(実施態様1)〜製造条件3(実施態様3)にて、その詳細を説明した各構成要件を適宜選択して適用することができる。
本発明に係る製造条件1〜4によって製造される二酸化バナジウム含有粒子は、小さい粒径を有し、かつ狭い粒径分布を有していることが特徴である。
A=Kλ/βcosθ
上記式(2)において、Kはシェラー定数であり、λはX線波長である。βは、回折線の半値幅である。θは回折線に関するブラッグ角である。
本発明に係る二酸化バナジウム含有粒子は、小粒径でかつ狭い粒径分布(均一粒径)を有するため、このような粒子を含む分散液として調製し、これを塗布することによって、サーモクロミック特性を向上するとともに、ヘイズの影響を低減でき、その結果、二酸化バナジウム含有粒子を含む透明性の高い光学フィルムを得ることができる。
本発明に係る二酸化バナジウム含有粒子は、光学フィルムに好ましく用いることができる。ここでいう光学フィルムとは、透明基材、並びに透明基材上に形成される光学機能層を有し、当該光学機能層が、樹脂及び本発明に係る二酸化バナジウム(VO2)含有粒子を含有する構成からなるサーモクロミック性を発現するフィルムである。
ΔTSER(%)=TSER(高温)−TSER(低温)
(透明基材)
光学フィルムに適用可能な透明基材としては、透明であれば特に制限はなく、ガラス、石英、透明樹脂フィルム等を挙げることができるが、フレキシブル性の付与や生産適性(ロールtoロール適性)の観点から、透明樹脂フィルムであることが好ましい。本発明でいう透明基材における「透明」とは、可視光領域における平均光線透過率が50%以上であることをいい、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上である。
光学フィルムの透明基材上には、樹脂及び本発明に係る二酸化バナジウム含有粒子を含有する光学機能層が設けられる。
光学フィルムの製造方法(光学機能層の形成方法)としては、特に制限されず、本発明に係る二酸化バナジウム含有粒子を使用する以外は、公知の方法が同様にして又は適宜修飾して適用できる。具体的には、二酸化バナジウム含有粒子を含む塗布液を調製し、当該塗布液を湿式塗布方式により透明基材上に塗布、乾燥して光学機能層を形成する方法が好ましい。
《二酸化バナジウム含有粒子の調製》
〔二酸化バナジウム含有粒子1の調製:比較例〕
酸化硫酸バナジウム(IV)(VOSO4)19.0gをイオン交換水(溶存酸素量:8.1mg/L)に溶解して300mLとし、この液を撹拌しながら、アルカリとして3.0mol/LのNH3水溶液を68g添加してpHを8.0として、反応液1を調製した。この反応液1を内容積が500mLのオートクレーブに入れ、250℃、3.98MPaで8時間、水熱反応処理を行い、二酸化バナジウム(VO2)含有粒子1を形成した。次いで、反応液を冷却して、二酸化バナジウム含有粒子1を含有する分散液を調製した。
図1Aで示す工程フローで、図2に記載の水熱反応部を有する流通式反応装置を用い、下記の方法に従って、二酸化バナジウム含有粒子2を含む分散液を調製した。
図1Aで示す本発明の実施態様1Aで、図2に記載の水熱反応部を有する流通式反応装置を用い、下記の方法に従って、二酸化バナジウム含有粒子3を含む分散液を調製した。
上記二酸化バナジウム含有粒子2の調製において、原料液1及び原料液2の調製に用いた脱気水の溶存酸素量を、膜脱気条件を適宜変更して、溶存酸素量をそれぞれ2.0mg/L、1.0mg/L、0.4mg/Lとした脱気水を用いた以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子4、二酸化バナジウム含有粒子5、二酸化バナジウム含有粒子6をそれぞれ含有する各分散液を調製した。
上記二酸化バナジウム含有粒子3〜5の調製において、還元性を有する化合物として、ヒドラジンを、0.15質量%となる条件で原料液1及び原料液2にそれぞれ添加した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子7〜9を含有する各分散液を調製した。
上記二酸化バナジウム含有粒子3〜5の調製において、還元性を有する化合物として、シュウ酸を、0.15質量%となる条件で原料液1及び原料液2にそれぞれ添加した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子10〜12を含有する各分散液を調製した。
上記二酸化バナジウム含有粒子3〜5の調製において、還元性を有する化合物として、ギ酸を、0.15質量%となる条件で原料液1及び原料液2にそれぞれ添加した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子13〜15を含有する各分散液を調製した。
図1Bで示す工程フローで、図2に記載の水熱反応部を有する流通式反応装置を用い、下記の方法に従って、二酸化バナジウム含有粒子16を含む分散液を調製した。
図1Bで示す実施態様1Bに準ずる工程で、図2に記載の水熱反応部を有する流通式反応装置を用い、下記の方法に従って、二酸化バナジウム含有粒子17を含む分散液を調製した。
上記二酸化バナジウム含有粒子17の調製において、原料液1及び原料液2の調製に用いた脱気水の溶存酸素量を、膜脱気条件を適宜変更して、それぞれ溶存酸素量を2.0mg/L、1.0mg/L、0.4mg/Lとした脱気水を用いた以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子18、二酸化バナジウム含有粒子19、二酸化バナジウム含有粒子20を含有する各分散液を調製した。
上記二酸化バナジウム含有粒子17〜18の調製において、還元性を有する化合物として、ヒドラジンを、0.15質量%となる条件で原料液1及び原料液2にそれぞれ添加した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子21〜22を含有する各分散液を調製した。
上記二酸化バナジウム含有粒子17〜18の調製において、還元性を有する化合物として、シュウ酸を、0.15質量%となる条件で原料液1及び原料液2にそれぞれ添加した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子23〜24を含有する各分散液を調製した。
上記二酸化バナジウム含有粒子17〜18の調製において、還元性を有する化合物として、ギ酸を、0.15質量%となる条件で原料液1及び原料液2にそれぞれ添加した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子25〜26を含有する各分散液を調製した。
上記調製した各二酸化バナジウム含有粒子について、下記の各評価を行った。
上記調製した各二酸化バナジウム含有粒子及び水を含有する分散液を、それぞれ分散液の総質量に対する二酸化バナジウム含有粒子の濃度が0.01質量%となるよう水で希釈し、超音波で15分間分散して測定用サンプルを調製した。
多分散指数(PDI)は、上記平均粒径(D)の測定と同様にして動的光散乱法(DLS法)により測定したキュムラント解析において、粒径分布が正規分布であると仮定して算出した数値とした。
(調製直後のサーモクロミック性(TC1)の評価)
上記調製した各二酸化バナジウム含有粒子を含む分散液を、Sartorius stedim社製のビバフロー50(有効濾過面積50cm2、分画分子量5000)を用いて、流速300mL/min、液圧0.1MPaで濾過を行うことで濃度調整して、二酸化バナジウム含有粒子をポリビニルアルコール中に、ポリビニルアルコール及び二酸化バナジウム含有粒子の総質量に対する二酸化バナジウム含有粒子の比率が10質量%となるように添加して塗布液を調製した。次いで、帝人デュポンフィルム株式会社製の厚さ50μmポリエチレンテレフタレート(PET)基材上に塗布及び乾燥し、乾燥膜厚が3μmの二酸化バナジウム含有粒子を含む層を形成して、測定用フィルム1を作製した。
具体的には、25℃・50%RHの環境下で、波長2000nmにおける透過率(T25℃)、及び85℃・50%RHの環境下で、)の評価を行った。
波長2000nmにおける透過率(T85℃)を測定し、調製直後の透過率差1(T85℃−T25℃)を求め、これを調製直後のサーモクロミック性(TC1)の尺度として、下記の基準に従って評価した。測定は、分光光度計V−670(日本分光株式会社製)に温調ユニット(日本分光株式会社製)を取り付けて行った。
4:透過率差1(T85℃−T25℃)が、50%以上、70%未満である
3:透過率差1(T85℃−T25℃)が、40%以上、50%未満である
2:透過率差1(T85℃−T25℃)が、25%以上、40%未満である
1:透過率差1(T85℃−T25℃)が、25%未満である
(耐久性の評価:透過率の低下幅ΔTの測定)
〈強制劣化処理後の透過率差2(T85℃−T25℃)の測定〉
上記調製した各二酸化バナジウム含有粒子を含む分散液の150mLを内容積が200mLのガラス瓶に封入し、このガラス瓶を50℃の恒温層中で、浸透させながら48時間の強制劣化処理を行った。
上記測定した調製直後の透過率差1(T85℃−T25℃)に対する強制劣化処理後の透過率差2(T85℃−T25℃)の低下幅ΔT(%)を下式により求め、これを耐久性の尺度として、下記の基準に従って評価した。
5:透過率の低下幅ΔTが、2.0%未満である
4:透過率の低下幅ΔTが、2.0%以上、5.0%未満である
3:透過率の低下幅ΔTが、5.0%以上、10.0%未満である
2:透過率の低下幅ΔTが、10.0%以上、20.0%未満である
1:透過率の低下幅ΔTが、20.0%以上である
以上により得られた結果を、表IIに示す。
《二酸化バナジウム含有粒子の調製》
〔二酸化バナジウム含有粒子31の調製:比較例〕
バナジン酸アンモニウム(V)(NH4VO3、和光純薬工業株式会社製、特級)7.1gを60℃のイオン交換水(溶存酸素量:8.1mg/L)325.0gで溶解して、この液を撹拌しながら、0.95mol/Lのヒドラジン水和物(N2H4・H2O、和光純薬工業株式会社製、特級)の16.9gをゆっくり滴下しpH9.5となるまで添加した。この反応液51を内容積が500mLのオートクレーブに入れ、250℃、3.98MPaで12時間、水熱反応処理を行い、二酸化バナジウム(VO2)含有粒子31を形成した。次いで、反応液を冷却して、二酸化バナジウム含有粒子31を含有する分散液を調製した。
図1Aで示す工程フローで、図2に記載の水熱反応部を有する流通式反応装置を用い、下記の方法に従って、二酸化バナジウム含有粒子28を含む分散液を調製した。
図1Aで示す実施態様1Aで、図2に記載の水熱反応部を有する流通式反応装置を用い、下記の方法に従って、二酸化バナジウム含有粒子33を含む分散液を調製した。
上記二酸化バナジウム含有粒子33の調製において、原料液1及び原料液2の調製に用いた脱気水の溶存酸素量を、膜脱気条件を適宜変更して、溶存酸素量がそれぞれ2.0mg/L、1.0mg/L、0.4mg/Lとなる脱気水を用いた以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子34、二酸化バナジウム含有粒子35、二酸化バナジウム含有粒子36を含有する各分散液を調製した。
上記二酸化バナジウム含有粒子33〜35の調製において、還元性を有する化合物として、ヒドラジンが、0.15質量%となる条件で、0.4gのヒドラジンを原料液1に追加添加し、原料液2にはヒドラジンが、0.15質量%となる条件となるように添加した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子37〜39を含有する各分散液を調製した。
上記二酸化バナジウム含有粒子33〜35の調製において、還元性を有する化合物として、シュウ酸を、0.15質量%となる条件で原料液1及び原料液2にそれぞれ添加した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子40〜42を含有する各分散液を調製した。
上記二酸化バナジウム含有粒子33〜35の調製において、還元性を有する化合物として、ギ酸を、0.15質量%となる条件で原料液1及び原料液2にそれぞれ添加した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子43〜45を含有する各分散液を調製した。
図1Bで示す工程フローで、図2に記載の水熱反応部を有する流通式反応装置を用い、下記の方法に従って、二酸化バナジウム含有粒子46を含む分散液を調製した。
図1Bで示す実施態様1Bに準ずる工程で、図2に記載の水熱反応部を有する流通式反応装置を用い、下記の方法に従って、二酸化バナジウム含有粒子47を含む分散液を調製した。
上記二酸化バナジウム含有粒子47の調製において、原料液1及び原料液2の調製に用いた脱気水の溶存酸素量を、膜脱気条件を適宜変更して、溶存酸素量がそれぞれ2.0mg/L、1.0mg/L、0.4mg/Lとなる脱気水を用いた以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子48、二酸化バナジウム含有粒子49、二酸化バナジウム含有粒子50を含有する各分散液を調製した。
上記二酸化バナジウム含有粒子47〜48の調製において、還元性を有する化合物として、ヒドラジンが、0.15質量%となる条件で、0.4gのヒドラジンを原料液1に追加添加し、原料液2にはヒドラジンが、0.15質量%となる条件となるように添加した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子51〜52を含有する各分散液を調製した。
上記二酸化バナジウム含有粒子47〜48の調製において、還元性を有する化合物として、シュウ酸を、0.15質量%となる条件で原料液1及び原料液2にそれぞれ添加した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子53〜54を含有する各分散液を調製した。
上記二酸化バナジウム含有粒子47〜48の調製において、還元性を有する化合物として、ギ酸を、0.15質量%となる条件で原料液1及び原料液2にそれぞれ添加した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子55〜56を含有する各分散液を調製した。
上記調製した各二酸化バナジウム含有粒子について、実施例1に記載の方法と同様にして、平均粒径(D)の測定、多分散指数(PDI)の測定、サーモクロミック性として、調製直後のサーモクロミック性(TC1)の評価と、耐久性として強制劣化後の透過率の低下幅ΔTの評価(耐久性)を行い、得られた結果を、表IVに示す。
《二酸化バナジウム含有粒子の調製》
〔二酸化バナジウム含有粒子101の調製:比較例〕
酸化硫酸バナジウム(IV)(VOSO4)19.0gをイオン交換水に溶解して300mLとし、この液を撹拌しながら、アルカリとして3.0mol/LのNH3水溶液を68g添加してpHを8.0として、反応液1を調製した。この反応液1を内容積が500mLのオートクレーブに入れ、250℃、3.98MPaで8時間、水熱反応処理を行い、二酸化バナジウム(VO2)含有粒子101を形成した。次いで、反応液を冷却して、二酸化バナジウム含有粒子101を含有する分散液を調製した。
図3Aで示す工程フローで、図2に記載の水熱反応部を有する流通式反応装置を用い、下記の方法に従って、二酸化バナジウム含有粒子102を含む分散液を調製した。
上記二酸化バナジウム含有粒子102の調製において、水熱反応部の加熱部配管(17)内における反応液2のレイノルズ数Reを、それぞれ2000、50000に変更した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子3を含む分散液及び二酸化バナジウム含有粒子4を含む分散液を調製した。なお、レイノルズ数Reの調整は、加熱部配管(17)の内径と流速をコントロールし、通過時間2秒で上記レイノルズ数となるように行った。
上記二酸化バナジウム含有粒子102〜104の調製において、水熱反応部における処理時間は変化させずに2秒とし、加熱加圧条件として、400℃、30MPaにそれぞれ変更した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子105(Re:500)を含む分散液、二酸化バナジウム含有粒子106(Re:2000)を含む分散液、二酸化バナジウム含有粒子107(Re:50000)を含む分散液を調製した。
図3Aに記載の本発明の実施態様2Aで規定する工程フローに従い、上記二酸化バナジウム含有粒子105〜107の調製に対し、水熱反応部におけるライン長Lと流速を適宜変更し、反応液の処理時間を、それぞれ3秒、5秒、12秒、50秒、100秒、300秒、700秒、1000秒に変更した以外は同様にして、それぞれ二酸化バナジウム含有粒子108〜131を含む分散液を調製した。
上記二酸化バナジウム含有粒子105〜107の調製において、水熱反応部におけるライン長Lと流速を適宜変更し、反応液の処理時間を、それぞれ2000秒に変更した以外は同様にして、それぞれ二酸化バナジウム含有粒子132〜134を含む分散液を調製した。
図3Bで示す工程フローで、図2に記載の水熱反応部を有する流通式反応装置を用い、下記の方法に従って、比較例の二酸化バナジウム含有粒子135を含む分散液を調製した。
図3Bに記載の本発明に係る実施態様2Bで規定する工程フローに従い、上記二酸化バナジウム含有粒子135の調製に対し、水熱反応部である水熱反応部(16)におけるライン長Lと流速を適宜変更し、処理時間(通過時間)をそれぞれ3秒、5秒、12秒、50秒、100秒、300秒、700秒、1000秒に変更した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子136〜143を調製した。
上記二酸化バナジウム含有粒子135の調製において、水熱反応部である水熱反応部(16)における処理時間(通過時間)を、2000秒に変更した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子144を調製した。
上記調製した各二酸化バナジウム含有粒子について、下記の各評価を行った。
上記調製した各二酸化バナジウム含有粒子及び水を含有する分散液を、それぞれ分散液の総質量に対して二酸化バナジウム含有粒子の濃度が0.01質量%となるよう水と混合し、超音波で15分間分散して測定用サンプルを作製した。
多分散指数(PDI)は、上記平均粒径(D)の測定と同様にして動的光散乱法(DLS法)により測定したキュムラント解析において粒径分布が正規分布すると仮定して算出した数値とした。
(調製直後のサーモクロミック性(TC1)の評価)
上記調製した各二酸化バナジウム含有粒子を含む分散液を、Sartorius stedim社製のビバフロー50(有効濾過面積50cm2、分画分子量5000)を用いて、流速300mL/min、液圧0.1MPaで濾過を行うことで濃度調整して、二酸化バナジウム含有粒子をポリビニルアルコール中に、ポリビニルアルコール及び二酸化バナジウム含有粒子の総質量に対する二酸化バナジウム含有粒子の比率が10質量%となるように添加して塗布液を調製した。次いで、帝人・デュポンフィルム株式会社製の厚さ50μmポリエチレンテレフタレート(PET)基材上に塗布及び乾燥し、乾燥膜厚が3μmの二酸化バナジウム含有粒子を含む層を形成して、測定用フィルム1を作製した。
4:透過率差1(T85℃−T25℃)が、45%以上、50%未満である
3:透過率差1(T85℃−T25℃)が、35%以上、45%未満である
2:透過率差1(T85℃−T25℃)が、25%以上、35%未満である
1:透過率差1(T85℃−T25℃)が、25%未満である
(耐久性の評価:透過率の低下幅ΔTの測定)
〈強制劣化処理後の透過率差2(T85℃−T25℃)の測定〉
上記調製した各二酸化バナジウム含有粒子を含む分散液の150mLを内容積が200mLのガラス瓶に封入し、このガラス瓶を50℃の恒温層中で、浸透させながら48時間の強制劣化処理を行った。
上記測定した調製直後の透過率差1(T85℃−T25℃)に対する強制劣化処理後の透過率差2(T85℃−T25℃)の低下幅ΔT(%)を下式により求め、これを耐久性の尺度として、下記の基準に従って評価した。
5:透過率の低下幅ΔTが、5.0%未満である
4:透過率の低下幅ΔTが、5.0%以上、15%未満である
3:透過率の低下幅ΔTが、15%以上、20%未満である
2:透過率の低下幅ΔTが、20%以上、25%未満である
1:透過率の低下幅ΔTが、25%以上である
以上により得られた結果を、表VIIに示す。
《二酸化バナジウム含有粒子の調製》
〔二酸化バナジウム含有粒子151の調製:比較例〕
バナジン酸アンモニウム(V)(NH4VO3、和光純薬工業株式会社製、特級)7.1gを60℃のイオン交換水326.0gで溶解して、この液を撹拌しながら、0.95mol/Lのヒドラジン水和物(N2H4・H2O、和光純薬工業株式会社製、特級)の16.9gをゆっくり滴下しpH9.5となるまで添加した。この反応液151を内容積が500mLのオートクレーブに入れ、250℃、3.98MPaで12時間、水熱反応処理を行い、二酸化バナジウム(VO2)含有粒子151を形成した。次いで、反応液を冷却して、二酸化バナジウム含有粒子151を含有する分散液を調製した。
図3Aで示す工程フローに従って、図2に記載の水熱反応部を有する流通式反応装置を用い、下記の方法に従って、二酸化バナジウム含有粒子152を含む分散液を調製した。
上記二酸化バナジウム含有粒子152の調製において、水熱反応部の加熱部配管(17)内における反応液152のレイノルズ数Reを、それぞれ2000、50000に変更した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子153を含む分散液及び二酸化バナジウム含有粒子154を含む分散液を調製した。なお、レイノルズ数Reの調整は、加熱部配管(17)の内径と流速をコントロールし、通過時間2秒で上記レイノルズ数となるように行った。
上記二酸化バナジウム含有粒子152〜154の調製において、水熱反応部における処理時間は変化させず2秒とし、加熱加圧条件として、400℃、30MPaにそれぞれ変更した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子155(Re:500)を含む分散液、二酸化バナジウム含有粒子156(Re:2000)を含む分散液、二酸化バナジウム含有粒子157(Re:50000)を含む分散液を調製した。
図3Aに記載の本発明の実施態様2Aで規定する工程フローに従い、上記二酸化バナジウム含有粒子155〜157の調製において、水熱反応部における反応液の処理時間を、それぞれ3秒、5秒、12秒、50秒、100秒、300秒、700秒、1000秒に変更した以外は同様にして、それぞれ二酸化バナジウム含有粒子158〜181を含む分散液を調製した。
上記二酸化バナジウム含有粒子155〜157の調製において、水熱反応部における反応液の処理時間を、2000秒に変更した以外は同様にして、それぞれ二酸化バナジウム含有粒子182〜184を含む分散液を調製した。
図3Bで示す工程フローで、図2に記載の水熱反応部を有する流通式反応装置を用い、下記の方法に従って、二酸化バナジウム含有粒子185を含む分散液を調製した。
図3Bに記載の本発明に係る実施態様2Bで規定する工程フローに従い、上記二酸化バナジウム含有粒子185の調製に対し、水熱反応部である水熱反応部(16)におけるライン長Lと流速を適宜変更し、処理時間(通過時間)をそれぞれ3秒、5秒、12秒、50秒、100秒、300秒、700秒、1000秒に変更した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子186〜193を調製した。
上記二酸化バナジウム含有粒子185の調製において、水熱反応部である水熱反応部(16)における処理時間(通過時間)を、2000秒に変更した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子194を調製した。
上記調製した各二酸化バナジウム含有粒子について、実施例3に記載の方法と同様にして、平均粒径(D)の測定、多分散指数(PDI)の測定、分散液安定性の評価(サーモクロミック性)として、調製直後のサーモクロミック性(TC1)の評価と、強制劣化後の透過率の低下幅ΔT(%)の評価(耐久性)を行い、得られた結果を、表Xに示す。
次いで、本発明に係る製造条件3(実施態様3)の具体的な効果を実証する実施例5を、以下に示す。
〔二酸化バナジウム含有粒子201の調製〕
(スラリー原料液1の脱塩処理)
原料液1として酸化硫酸バナジウム(IV)(VOSO4)19.0gをイオン交換水に溶解して300mLとし、この液を撹拌しながら、アルカリとして3.0mol/LのNH3水溶液を68mL添加して、pHが8.0のスラリー原料液1を調製した。
図5に記載の限外濾過装置(50)を用いて、酸化硫酸バナジウム(IV)とアルカリを含むスラリー原料液に限外濾過法による脱塩処理1を施した。
図2及び図6に記載の水熱反応部を有する流通式反応装置を用い、下記の方法に従って、二酸化バナジウム含有粒子201を調製した。
上記二酸化バナジウム含有粒子201の調製において、下記に示すスラリー原料液の限外濾過法による脱塩処理2を施した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子202を調製した。
脱塩処理1と同様の方法で、スラリー原料液(52)の電気伝導率(μS/m)が500μS/mとなるまで脱塩操作を行い、これを脱塩処理2とした。
上記二酸化バナジウム含有粒子201の調製において、スラリー原料液の濾過処理を限外濾過法による脱塩処理1に代えて、遠心分離法を用いた脱塩処理3を施した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子203を調製した。
公知の遠心分離装置を用い、上記酸化硫酸バナジウム(IV)とアルカリを含むスラリー原料液1に遠心分離処理による固液分離を行った後、水系の分離液の一部を系外に排出し、その後、排出したのと同容量のイオン交換水を追加添加し、その後分散処理を行い、この操作を繰り返して、不要の塩類を排出して、スラリー原料液の電気伝導率を、1000μS/mに調整した。
上記二酸化バナジウム含有粒子203の調製において、スラリー原料液の遠心分離処理として、脱塩処理4に変更した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子204を調製した。
公知の遠心分離装置を用い、上記スラリー原料液に遠心分離処理による固液分離を行った後、水系の分離液の一部を系外に排出し、その後、排出したのと同容量のイオン交換水を追加添加し、その後分散処理を行い、この操作を繰り返して、不要の塩類を排出して、スラリー原料液の電気伝導率を、500μS/mに調整した。
水熱合成法として流通式反応装置を用いた二酸化バナジウム含有粒子201〜204の製造において、流通式反応装置を用いた二酸化バナジウム含有粒子の製造を連続24時間行い、水熱反応部(16)内の加熱部配管(17)における粒子凝集による閉塞の程度を測定した。閉塞を起こす基準は、初期流量に対し、50%まで低下した時点を「閉塞発生」と判定した。
○:連続運転10〜24時間の間で、閉塞が発生する
△:連続運転1時間以上、10時間未満で閉塞が発生する
×:連続運転10分以上、60分未満で閉塞が発生する
《二酸化バナジウム含有粒子の評価》
上記調製した各二酸化バナジウム含有粒子について、下記の各評価を行った。
各二酸化バナジウム含有粒子について、粉末X線回折装置(リガク社製、MiniFlexII)を用いて、粒子100個について結晶子径を測定し、その平均値を求めた。X線源としては、CuKα線を使用し、平均結晶子径は、X線回折のメインピーク((111)面)を用いて、下式(3)のシェラーの式により算出した。
A=Kλ/βcosθ
上記式(3)において、Aは平均結晶子径、Kはシェラー定数であり、λはX線波長である。βは、回折線の半値幅である。θは回折線に関するブラッグ角である。
×:平均結晶子径が15nm未満、又は40nmを超えている
〔平均一次粒径の測定〕
上記調製した各二酸化バナジウム含有粒子及び水を含有する分散液を、120℃のオーブンで乾燥固化させて紛体とし、測定用の粒子サンプルを調製した。
×:平均一次粒径が、40nmを超え、100nm未満である
××:平均一次粒径が、100nmを超えている
以上により得られた結果を、表XIに示す。
〔光学フィルム201の作製〕
厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製A4300、両面易接着層)上に、下記の二酸化バナジウム含有粒子含有層塗布液1を、ダイコーターを用いて乾燥膜厚が1.5μmになるように塗布量を調整して湿式塗布を行い、90℃で1分間乾燥させた。次に、紫外線ランプを用いて、照度100mW/cm2、照射量0.2J/cm2、酸素濃度200ppmの条件で紫外線を照射することにより塗膜を硬化さてサーモクロミックフィルムである光学フィルム201を作製した。
下記の組成の二酸化バナジウム含有粒子含有層塗布液201を調製した。
ビームセット577(荒川化学工業(株)製) 30質量部
Irgacure127(BASF株式会社製) 1質量部
メガファックF−552(DIC株式会社製) メチルイソブチルケトン希釈液(1質量%) 2質量部
メチルイソブチルケトン 27質量部
〔光学フィルム202〜204の作製〕
上記光学フィルム201の作製において、二酸化バナジウム含有粒子201に代えて、それぞれ二酸化バナジウム含有粒子202〜204を用いた以外は同様にして、光学フィルム202〜204を作製した。
〔サーモクロミック性の評価〕
上記作製した各光学フィルムを、25℃・50%RHの環境下で24時間保存したのち、下記の方法に従って、サーモクロミック性の評価を行った。
○:透過率差が50%以上、70%未満である
△:透過率差が40%以上、50%未満である
×:透過率差が25%以上、40%未満である
××:透過率差が25%未満である
〔ヘイズの評価〕
上記作製した各光学フィルムについて、室温にて、ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH2000)を用いて、ヘイズ(%)を測定し、下記の基準に従ってヘイズの評価を行った。
○△:ヘイズが、2.0%以上、3.0%未満である
△:ヘイズが、3.0%以上、5.0%未満である
×:5.0%以上である
以上により得られた結果を、表XIIに示す。
次いで、本発明に係る製造条件4(実施態様4)の具体的な効果を実証する実施例6を、以下に示す。
以下のようにして、二酸化バナジウム含有粒子301〜330を調製した。
図2に示す流通式反応装置(1)の原料液容器1(5)に、酸化硫酸バナジウム(IV)(VOSO4)19.0gを投入し、イオン交換水に溶解して300mLとし、この原料液1を撹拌しながら、アルカリとして3.0mol/LのNH3水溶液を68mL添加して、液温25℃におけるpHが8.0のスラリー原料液1を調製した。一方、流通式反応装置(1)の原料液容器2(2)にはイオン交換水を原料液2として投入した。
上記二酸化バナジウム含有粒子301の調製において、スラリー原料液1に代えて、以下のようにして調製したスラリー原料液2〜4を原料液容器1(5)に添加した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子302〜304を調製した。
酸化硫酸バナジウム(IV)(VOSO4)19.0gをイオン交換水300mLに溶解して、この液を撹拌しながら、アルカリとして3.0mol/LのNH3水溶液を68mL添加して、液温25℃におけるpHを8.0とした。
上記二酸化バナジウム含有粒子301の調製において、スラリー原料液1に代えて、以下のようにして調製したスラリー原料液5を用いた以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子305を作製した。
まず、グリシン(和光純薬工業(株)製)をイオン交換水に溶かして、分散剤として10質量%グリシン水溶液を調製した。
上記二酸化バナジウム含有粒子305の調製において、スラリー原料液5の調製に用いた分散剤であるグリシンを、L(−)−トレオニン(和光純薬工業(株)製)、サルコシン(和光純薬工業(株)製)、L−アラニン(和光純薬工業(株)製)、ポリビニルピロリドン K 90(略称:PVP 和光純薬工業(株)製)にそれぞれ変更してスラリー原料液6〜9を調製し、スラリー原料液5に代えて、これらのスラリー原料液6〜9をそれぞれ用いた以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子306〜309を調製した。
二酸化バナジウム含有粒子301の作製において、スラリー原料液1に代えて、以下の方法で調製したスラリー原料液10〜12を用いた以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子310〜312を調製した。
酸化硫酸バナジウム(IV)(VOSO4)19.0gをイオン交換水300mLに溶解して、この液を撹拌しながら、アルカリとして3.0mol/LのNH3水溶液を68mL添加して、液温25℃におけるpHを8.0として、スラリー原料液を調製した。
二酸化バナジウム含有粒子301の作製において、スラリー原料液1に代えて、以下の方法に従って調製したスラリー原料液13を用いた以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子313を調製した。
まず、グリシン(和光純薬工業(株)製)をイオン交換水に溶かして、分散剤として10質量%グリシン水溶液を調製した。
二酸化バナジウム含有粒子313の調製において、スラリー原料液13の調製に用いた分散剤であるグリシンを、L(−)−トレオニン(和光純薬工業(株)製)、サルコシン(和光純薬工業(株)製)、L−アラニン(和光純薬工業(株)製)、ポリビニルピロリドン K 90(略称:PVP 和光純薬工業(株)製)にそれぞれ変更してスラリー原料液14〜17を調製し、スラリー原料液13に代えて、これらのスラリー原料液14〜17をそれぞれ用いた以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子314〜317を調製した。
上記二酸化バナジウム含有粒子301の作製において、スラリー原料液1に代えて、以下の方法により調製したスラリー原料液18〜20を用いた以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子318〜320を調製した。
酸化硫酸バナジウム(IV)(VOSO4)19.0gをイオン交換水300mLに溶解して、この液を撹拌しながら、アルカリとして3.0mol/LのNH3水溶液を68mL添加して、液温25℃におけるpHを8.0として、スラリー原料液を調製した。このスラリー原料液に対して、30質量%のZrO2ビーズ(径15μm)を充填し、メディア方式の分散機として、ペイントシェーカー(ペイントコンディショナー、RED DEVIL社製)を用いて、それぞれ30分間、60分間、90分間処理することでメディア分散処理を行い、スラリー原料液18〜20を得た。
二酸化バナジウム含有粒子301の作製において、スラリー原料液1に代えて、以下の方法により調製したスラリー原料液21を用いた以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子321を調製した。
まず、分散剤であるグリシン(和光純薬工業(株)製)をイオン交換水に溶かして、10質量%グリシン水溶液を調製した。
このスラリー原料液に対して、30質量%のZrO2ビーズ(径15μm)を充填し、ペイントシェーカー(ペイントコンディショナー、RED DEVIL社製)を用いて、90分間運転することでメディア分散処理を行い、スラリー原料液21を得た。
上記二酸化バナジウム含有粒子321の作製において、スラリー原料液21の調製に用いた分散剤であるグリシンを、L(−)−トレオニン(和光純薬工業(株)製)、サルコシン(和光純薬工業(株)製)、L−アラニン(和光純薬工業(株)製)、ポリビニルピロリドン K 90(略称:PVP 和光純薬工業(株)製)にそれぞれ変更してスラリー原料液22〜25を調製し、スラリー原料液21に代えて、これらのスラリー原料液22〜25をそれぞれ用いた以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子322〜325を調製した。
二酸化バナジウム含有粒子301の調製において、スラリー原料液1に代えて、以下の方法で調製したスラリー原料液26を用いた以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子326を調製した。
まず、分散剤としてグリシン(和光純薬工業(株)製)をイオン交換水に溶かして、10質量%グリシン水溶液を調製した。
二酸化バナジウム含有粒子326の作製において、スラリー原料液26の調製に用いた分散剤であるグリシンを、L(−)−トレオニン(和光純薬工業(株)製)、サルコシン(和光純薬工業(株)製)、L−アラニン(和光純薬工業(株)製)、ポリビニルピロリドン K 90(略称:PVP 和光純薬工業(株)製)にそれぞれ変更してスラリー原料液27〜30を調製し、スラリー原料液26に代えて、これらのスラリー原料液22〜25をそれぞれ用いた以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子327〜330を調製した。
上記調製した各二酸化バナジウム含有粒子について、下記の方法に従って評価を行った。
各二酸化バナジウム含有粒子の調製において、水熱反応前で、各分散処理を施したスラリー原料液2〜30が含有するバナジウム含有化合物について、下記の方法により、分散粒径を測定した。なお、スラリー原料液1は、未分散の状態で測定した。
試料屈折(RI値):3.0
溶媒:水
測定回数:3回
〔粒径分布幅の評価〕
調製した各二酸化バナジウム含有粒子について、走査型電子顕微鏡(FE−SEM)(日立社製、Hitachi S−4300型)を用いて、粒径分布幅を評価した。
○:粒径分布幅が、50nmより大きく、60nm以下
△:粒径分布幅が、60nmより大きく、80nm以下
×:粒径分布幅が、80nmより大きい
〔ヘイズの評価〕
上記調製した各二酸化バナジウム含有粒子を用いて、以下の方法に従って光学フィルムを作製し、当該光学フィルムのヘイズを測定した。
○:ヘイズが、2.0%より大きく、3.0%以下
△:ヘイズが、3.0%より大きく、4.0%以下
×:ヘイズが、4.0%より大きい
(光学フィルムの作製)
厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製A4300、両面易接着層)上に、下記組成の光学機能層形成用塗布液を、ダイコーターを用いて乾燥膜厚が1.5μmになるように塗布量を調整して湿式塗布を行い、90℃で1分間乾燥させた。
二酸化バナジウム含有粒子分散液(溶媒:水) 9.3質量部
樹脂バインダー(ポリ−N−ビニルアセトアミド、商品名:GE191−103、昭和電工社製、分子量900000) 90.7質量部
上記の各構成材料を順次添加、混合及び溶解し、固形分濃度が3質量%になるように水で希釈し、水系の光学機能層形成用塗布液を調製した。
ヘイズ測定において作製した各光学フィルムを用い、サーモクロミック性の尺度である遮熱性(TSER)差(ΔTSER)を算出した。
ΔTSER(%)=TSER(高温)−TSER(低温)
○:ΔTSERが、10.0%以上
△:ΔTSERが、5.0%以上、10.0%未満
×:ΔTSERが、5.0%未満
以上により得られた各評価結果を、表XIIIに示す。
表XIIIに記載の結果から明らかなように、本発明の二酸化バナジウム含有粒子は、比較例の二酸化バナジウム含有粒子と比べて、分散粒径、粒径分布幅、並びに光学フィルムのヘイズ及びΔTSERに優れていることが確認できた。
2 原料液容器2
3、6、11、18 流路(配管)
4、7、12 ポンプ
5 原料液容器1
8 冷却部
9、10 タンク
13、14、15 加熱媒体
16 水熱反応部
17 加熱部配管
19 制御弁
50 限外濾過装置
51 調整釜
52 スラリー原料液
53 配管
54 循環ポンプ
55 限外濾過部
56 排出口
57 補充用イオン交換水ストック釜
58 補充用イオン交換水
59 補充用イオン交換水供給ライン
60 電気伝導率計
C 冷媒
IN 加熱媒体の入口
OUT 加熱媒体の出口
L 加熱部配管のライン長
MP 合流点
TC 温度センサー
A 平均結晶子径
CL 結晶子
D 粒子径
P 二酸化バナジウム含有粒子
Claims (18)
- 水熱反応部を有する流通式反応装置を用いて、少なくともバナジウム含有化合物及び水を含むスラリー原料液と、当該バナジウム含有化合物と反応する化合物と、超臨界又は亜臨界状態の水とを混合した反応液を用い、水熱合成方法により二酸化バナジウム含有粒子を製造する二酸化バナジウム含有粒子の製造方法であって、
下記製造条件1〜4から選ばれる少なくとも一つの方法により二酸化バナジウム含有粒子を製造することを特徴とする二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
製造条件1:前記反応液を構成する水として、脱気処理を施した脱気水を用いること。
製造条件2:前記反応液を用いて前記水熱合成方法を行う前記水熱反応部の通過時間を、3〜1000秒の範囲内とすること。
製造条件3:前記スラリー原料液を前記水熱合成法により処理する前に、前記スラリー原料液から塩類を除去する脱塩処理を施し、前記二酸化バナジウム含有粒子の平均一次粒径を15〜40nmの範囲内とし、かつ平均結晶子径を15〜40nmの範囲内になるように調整して製造すること。
製造条件4:前記二酸化バナジウム含有粒子を製造する工程の前に、前記スラリー原料液を分散処理する工程を有し、前記二酸化バナジウム含有粒子の粒径分布幅を80nm以下に調整すること。 - 前記製造条件1において、前記バナジウム含有化合物と反応する化合物が、前記原料液に添加されていることを特徴とする請求項1に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
- 前記製造条件1において、前記脱気水が、脱気膜を用いた脱気処理により調製されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
- 前記製造条件1において、前記反応液を構成する脱気水の25℃における溶存酸素量が、2.0mg/L以下であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
- 前記製造条件1において、前記反応液を構成する脱気水の25℃における溶存酸素量が、0.4mg/L以下であることを特徴とする請求項4に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
- 前記製造条件2において、前記水熱反応部における前記反応液の温度が、250〜500℃の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
- 前記製造条件2において、前記水熱反応部における前記反応液の通過時間が、4〜700秒の範囲内であることを特徴とする請求項1又は請求項6に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
- 前記製造条件2において、前記水熱反応部の配管内を通過する前記反応液のレイノルズ数Reが、1000〜45000の範囲内であることを特徴とする請求項1、請求項6及び請求項7のいずれか一項に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
- 前記製造条件2において、前記水熱反応部の配管内を通過する前記反応液のレイノルズ数Reが、2000〜10000の範囲内であることを特徴とする請求項8に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
- 前記製造条件1又は前記製造条件2において、前記バナジウム含有化合物と反応する化合物が、前記超臨界又は亜臨界状態の水に添加されており、前記製造条件1では前記水が脱気水であることを特徴とする請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
- 前記製造条件1又は前記製造条件2において、前記バナジウム含有化合物がバナジウム(IV)含有化合物であり、前記バナジウム含有化合物と反応する化合物がアルカリであることを特徴とする請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
- 前記製造条件1又は前記製造条件2において、前記バナジウム含有化合物がバナジウム(V)含有化合物であり、前記バナジウム含有化合物と反応する化合物が還元剤であることを特徴とする請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
- 前記製造条件1又は前記製造条件2において、前記二酸化バナジウム含有粒子の平均一次粒径が、1〜40nmの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項12までのいずれか一項に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
- 前記製造条件3において、前記スラリー原料液から塩類を除去する脱塩処理が、限外濾過装置を用いて行うことを特徴とする請求項1に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
- 前記製造条件3において、前記スラリー原料液の脱塩処理後の電気伝導度を、1000μS/m以下とすることを特徴とする請求項1又は請求項14に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
- 前記製造条件4において、前記二酸化バナジウム含有粒子の粒径分布幅を50nm以下に調整することを特徴とする請求項1に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
- 前記製造条件4において、前記バナジウム含有化合物の分散処理後の分散粒径を300nm以下に調整することを特徴とする請求項1又は請求項16に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
- 前記製造条件4において、前記スラリー原料液を分散処理する工程では、高圧分散処理により前記スラリー原料液を分散処理することを特徴とする請求項1、請求項16及び請求項17のいずれか一項に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
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