JPWO2017208892A1 - 二酸化バナジウム含有粒子の製造方法 - Google Patents

二酸化バナジウム含有粒子の製造方法

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Abstract

本発明の課題は、平均粒径が小さく、粒径分布が狭く、単分散性及び分散安定性に優れ、かつサーモクロミック性に優れた二酸化バナジウム含有粒子の製造方法を提供する。
本発明の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法は、水熱反応部を有する流通式反応装置を用いて、バナジウム含有化合物及び水を含むスラリー原料液とバナジウム含有化合物と反応する化合物を、超臨界又は亜臨界状態の水と混合した反応液を用いて二酸化バナジウム含有粒子を製造する方法が、1)前記水が脱気水であること、2)水熱反応部の通過時間が3〜1000秒であること、3)前記水熱合成処理前に、スラリー原料液から塩類を除去する脱塩処理を施し、平均粒径を15〜40nm、平均結晶子径を15〜40nmとすること、又は4)二酸化バナジウム含有粒子製造工程前に、スラリー原料液に分散処理を施すことを特徴とする製造方法であること。

Description

本発明は、流通式反応装置を用い、水熱合成法により、凝集がなく、粒径分布が狭く、サーモクロミック性に優れた二酸化バナジウム含有粒子を製造する二酸化バナジウム含有粒子の製造方法に関する。
住宅やビル等の建物、及び車両のような移動体などの、室内や車両内等の内部環境と外部環境との間で大きな熱交換が生じる箇所(例えば、建築用窓ガラスや車体窓ガラス等)においては、省エネルギー化と快適性の確保を両立するため、サーモクロミック材料の適用が盛んに検討されている。
ここでいう「サーモクロミック材料」とは、例えば、光透過性に代表される光学的特性を、温度により制御することを可能とする材料である。例えば、建物の窓ガラスにサーモクロミック材料を適用した場合、夏季においては赤外線を反射させて室内に侵入する熱を遮断し、冬季には赤外線を室内に透過させて、その熱エネルギーを利用することが可能となる。
近年、最も着目されているサーモクロミック材料の一つとして、二酸化バナジウム(VO)を含む材料が挙げられる。この二酸化バナジウムは、室温近傍で相転移を起こす際に、温度により光学特性が可逆的に変化する性質である「サーモクロミック性」を示すことが知られている。したがって、この性質を利用することにより、環境温度依存型のサーモクロミック特性を示す材料を得ることができる。
ここで、二酸化バナジウムには、A相、B相、C相及びルチル型結晶相(以下、「R相」ともいう。)など、いくつかの結晶相が存在するが、そのなかでも、上記サーモクロミック性を100℃以下の比較的低温で示す結晶構造は、R相(ルチル型結晶相)に限定される。このR相は、相転移温度(約68℃)未満では単斜晶の構造を有し、可視光線及び赤外線の透過率が高い特性を発現する。一方、R相は、相転移温度である68℃以上の温度では正方晶の構造を有し、単斜晶構造の場合と比べて赤外線の透過率が低いという性質を示す。すなわち、相転移温度を境にして、赤外線の透過率が大きく変化するという特有の性質を有している。
このような特性を有する二酸化バナジウム含有粒子を、窓ガラス等に貼付して使用する光学フィルムに適用する場合には、粒子としての透明性(ヘイズが低いこと)が要求され、そのためには、二酸化バナジウム含有粒子が凝集していないこと(二次粒径サイズが小さいこと)、粒径がナノオーダー(100nm以下)であることが望ましい。
このような透明性の高い微粒子である二酸化バナジウム含有粒子を製造する方法として、近年、水熱反応を用いて、R相の二酸化バナジウム粒子を製造する方法が報告されている。
例えば、特許文献1には、ドーピング二酸化バナジウム粉体(V1−x)の組成をドーピング元素が0<x≦0.5となる組成とすることにより、粉体の寸法及び形状が制御可能となることが開示されている。また、その結果、製造されるドーピング二酸化バナジウム粉体の結晶粒の寸法を小さくし、均一化し得ることが開示されている。そして、ドーピング二酸化バナジウム粉体の製造方法として、水熱反応がより容易に行えるよう処理された反応前駆体を水熱反応オートクレーブに移行して水熱反応を行った後、水熱反応生成物を乾燥分離する方法が開示されている。
しかしながら、特許文献1で開示されている方法は、水熱オートクレーブを用いたバッチ方式の製造装置で、水熱反応時間が6〜12時間という長時間を要する製造方法であり、得られる二酸化バナジウムも、平均粒径が大きく、かつ分布も広いため、この二酸化バナジウム含有粒子を光学フィルムに適用した場合にヘイズが高く、車載用又は建材用途のフィルムとしては不向きであった。
また、特許文献2には、バナジウム、ヒドラジン誘導体及び水を含む溶液を用いて、水熱反応により二酸化バナジウムを製造する方法が開示されている。
しかしながら、特許文献2に記載されている方法では、水熱反応処理装置としてオートクレーブを用い、270℃で48時間程度を要して製造する方法であり、製造に時間を要するとともに、得られる二酸化バナジウムも、平均粒径が大きく、かつ分布も広いため、この二酸
化バナジウム含有粒子を光学フィルムに適用した場合にヘイズが高く、車載用又は建材用途のフィルムとしては不向きであった。
一方、機能性金属微粒子の製造方法の一つとして、短時間で微粒子を製造することができる流通式反応装置を用いる方法が知られている。例えば、特許文献3には、金属酸化物ゾル、金属塩、金属水酸化物ゾル等を含む出発原料(スラリー原料液)を、流通式反応装置中で昇温及び熱処理を施すことにより、高結晶性金属酸化物微粒子を製造する方法が開示されている。更に、特許文献3には、具体的な条件として、熱処理として、200℃以上の温度、10MPa以上の圧力条件下で、出発原料と超臨界水とを混合し、2分以内の昇温及び熱処理によりインジウム・亜鉛・スズ酸化物(IZTO)を製造する方法が開示されている。
しかしながら、特許文献3で開示されている流通式反応装置を用いた水熱合成法では、流通式反応装置を用いて、金属含有粒子を水熱合成すると、凝集により粒径分布が広くなり、フィルムの透明性が低くなってしまうといった問題がある。このような流通式反応装置を用いた製造方法を二酸化バナジウム含有粒子の製造に適用すると、二酸化バナジウム粒子が凝集し、サーモクロミック性低下の要因となってしまう。
一方、特許文献4においては、Ba、Ca、Ti及びZrを含む原料水溶液を、水と共に、流通式反応装置に連続的に供給し、250℃以上の温度の水熱条件下で反応させ、チタン酸ジルコン酸バリウムカルシウムのナノ粒子を製造方法が開示されている。
しかしながら、上記特許文献3及び特許文献4に開示されている流通式反応装置を用いて、二酸化バナジウム(VO)等の金属酸化物を含有する粒子を製造する場合、製造に使用する水に溶存している溶存酸素により、原材料や形成した二酸化バナジウムが合成時に過度の酸化を受け、所望の価数の金属酸化物を得ることができない上に、形成する金属酸化物粒子の単分散性の低下や、サーモクロミック性の低下を引き起こす問題がある。
一方、特許文献5には、流通式反応装置を用いた製造方法として、超臨界状態の高温高圧水を用いる水熱合成法が開示されている。特許文献5で開示されている流通式反応装置を用いた水熱合成法では、微粒子合成を行う際に、反応場にアルカリ水溶液を供給してpHを調整することにより機能性のナノ粒子の粒子径を制御する方法であるが、粒子形成過程で過剰に存在する塩類等の除去を行わず、そのままの環境下で粒子形成を行っているため、粒子の結晶子径や粒子径を所望の条件に制御させることが難しく、その結果、粒径分布が広くなり、サーモクロミック性の低下や、光学フィルムに適用した際、透明性(ヘイズ)の低下を引き起こすという問題を抱えている。
また、特許文献3及び特許文献4においては、サーモクロミック性を有する二酸化バナジウム(VO)を含有する粒子の製造に、流通式反応装置を適用し、単分散性が高く、微粒子の二酸化バナジウム(VO)を得るための方法や具体的な熱処理条件に関して、一切の言及や開示がなく、早急に製造条件の確立が求められている。
特表2014−505651号公報 特開2011−178825号公報 特開2012−153588号公報 特開2016−017028号公報 特開2010−069474号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、平均粒径が小さく、凝集体の生成が抑制され、粒径分布が狭く、単分散性及び分散安定性に優れ、かつサーモクロミック性に優れた二酸化バナジウム含有粒子の製造方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討した結果、水熱反応部を有する流通式反応装置を用いて、少なくともバナジウム含有化合物及び水を含むスラリー原料液と、当該バナジウム含有化合物と反応する化合物と、超臨界又は亜臨界状態の水とを混合した反応液を用い、水熱合成方法により二酸化バナジウム含有粒子を製造する二酸化バナジウム含有粒子の製造方法であって、
下記製造条件1〜4から選ばれる少なくとも一つの方法により二酸化バナジウム含有粒子を製造することを特徴とする二酸化バナジウム含有粒子の製造方法により、平均粒径が小さく、凝集体の生成が抑制され、粒径分布が狭く、単分散性及び分散安定性に優れ、かつサーモクロミック性に優れた二酸化バナジウム含有粒子の製造方法を見いだしたものである。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.水熱反応部を有する流通式反応装置を用いて、少なくともバナジウム含有化合物及び水を含むスラリー原料液と、当該バナジウム含有化合物と反応する化合物と、超臨界又は亜臨界状態の水とを混合した反応液を用い、水熱合成方法により二酸化バナジウム含有粒子を製造する二酸化バナジウム含有粒子の製造方法であって、
下記製造条件1〜4から選ばれる少なくとも一つの方法により二酸化バナジウム含有粒子を製造することを特徴とする二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
製造条件1:前記反応液を構成する水として、脱気処理を施した脱気水を用いること。
製造条件2:前記反応液を用いて前記水熱合成方法を行う前記水熱反応部の通過時間を、3〜1000秒の範囲内とすること。
製造条件3:前記スラリー原料液を前記水熱合成法により処理する前に、前記スラリー原料液から塩類を除去する脱塩処理を施し、前記二酸化バナジウム含有粒子の平均一次粒径を15〜40nmの範囲内とし、かつ平均結晶子径を15〜40nmの範囲内になるように調整して製造すること。
製造条件4:前記二酸化バナジウム含有粒子を製造する工程の前に、前記スラリー原料液を分散処理する工程を有し、前記二酸化バナジウム含有粒子の粒径分布幅を80nm以下に調整すること。
2.前記製造条件1において、前記バナジウム含有化合物と反応する化合物が、前記原料液に添加されていることを特徴とする第1項に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
3.前記製造条件1において、前記脱気水が、脱気膜を用いた脱気処理により調製されていることを特徴とする第1項又は第2項に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
4.前記製造条件1において、前記反応液を構成する脱気水の25℃における溶存酸素量が、2.0mg/L以下であることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
5.前記製造条件1において、前記反応液を構成する脱気水の25℃における溶存酸素量が、0.4mg/L以下であることを特徴とする第4項に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
6.前記製造条件2において、前記水熱反応部における前記反応液の温度が、250〜500℃の範囲内であることを特徴とする第1項に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
7.前記製造条件2において、前記水熱反応部における前記反応液の通過時間が、4〜700秒の範囲内であることを特徴とする第1項又は第6項に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
8.前記製造条件2において、前記水熱反応部の配管内を通過する前記反応液のレイノルズ数Reが、1000〜45000の範囲内であることを特徴とする第1項、第6項及び第7項のいずれか一項に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
9.前記製造条件2において、前記水熱反応部の配管内を通過する前記反応液のレイノルズ数Reが、2000〜10000の範囲内であることを特徴とする第8項に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
10.前記製造条件1又は前記製造条件2において、前記バナジウム含有化合物と反応する化合物が、前記超臨界又は亜臨界状態の水に添加されており、前記製造条件1では前記水が脱気水であることを特徴とする第1項から第9項までのいずれか一項に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
11.前記製造条件1又は前記製造条件2において、前記バナジウム含有化合物がバナジウム(IV)含有化合物であり、前記バナジウム含有化合物と反応する化合物がアルカリであることを特徴とする第1項から第9項までのいずれか一項に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
12.前記製造条件1又は前記製造条件2において、前記バナジウム含有化合物がバナジウム(V)含有化合物であり、前記バナジウム含有化合物と反応する化合物が還元剤であることを特徴とする第1項から第9項までのいずれか一項に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
13.前記製造条件1又は前記製造条件2において、前記二酸化バナジウム含有粒子の平均一次粒径が、1〜40nmの範囲内であることを特徴とする第1項から第12項までのいずれか一項に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
14.前記製造条件3において、前記スラリー原料液から塩類を除去する脱塩処理が、限外濾過装置を用いて行うことを特徴とする第1項に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
15.前記製造条件3において、前記スラリー原料液の脱塩処理後の電気伝導度を、1000μS/m以下とすることを特徴とする第1項又は第14項に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
16.前記製造条件4において、前記二酸化バナジウム含有粒子の粒径分布幅を50nm以下に調整することを特徴とする第1項に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
17.前記製造条件4において、前記バナジウム含有化合物の分散処理後の分散粒径を300nm以下に調整することを特徴とする第1項又は第16項に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
18.前記製造条件4において、前記スラリー原料液を分散処理する工程では、高圧分散処理により前記スラリー原料液を分散処理することを特徴とする第1項、第16項及び第17項のいずれか一項に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
本発明の上記手段により、平均粒径が小さく、凝集体の生成が抑制され、粒径分布が狭く、単分散性及び分散安定性に優れ、かつサーモクロミック性に優れた二酸化バナジウム含有粒子の製造方法により、上記課題を解決することがでる技術的な特徴としては、以下のとおりである。
本発明において、製造条件1(実施態様1)により、上記課題を解決することができる効果の発現機構及び作用機構について、以下のように推測している。
通常、二酸化バナジウムを水熱合成法により合成する際、高温・高圧環境下で、水中の溶存酸素により、原料や形成した二酸化バナジウム粒子が酸化を受け、所望の価数の二酸化バナジウムを得ることができなくなり、その結果、サーモクロミック性が発現しないことになる。そこで、実施態様1に係る製造条件1として、水熱反応で使用する水中の溶存酸素を取り除くことにより、酸化されることなく合成が可能となり、サーモクロミック性に優れた二酸化バナジウムが合成することができた。
また、本発明において、製造条件2(実施態様2)により、上記課題を解決することができる効果の発現機構及び作用機構について、以下のように推測している。
特許文献1及び特許文献2等に記載の水熱反応処理用オートクレーブを用いたバッチ方式の従来の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法においては、通常、反応温度における飽和蒸気圧にて水熱反応を行っている。このような条件では、長時間の水熱反応を要することとなり、その水熱反応の期間で、析出した二酸化バナジウムの微結晶の一部が大きく結晶成長する。その結果、製造された二酸化バナジウム含有粒子は大粒径の成分を含むこととなり、広い粒径分布を有することとなる。このとき、たとえ種々の公知の手段を用いて二酸化バナジウム含有粒子の平均粒径を減少させた場合であっても、二酸化バナジウム含有粒子は、一部の不均一な粒径成分の存在によって可視光の散乱が促進されることとなり、該二酸化バナジウム含有粒子を含む光学フィルムの透明性は十分改善されない。また、特許文献1又は特許文献2で開示されているオートクレーブを用いた技術に関しては、このような不安定な反応条件であり、平均粒径の小さな微結晶粒子を得るためには、所定の元素をドープすることでドーピング二酸化バナジウム粉体の寸法及び形状を制御することが必須であり、汎用性に欠けるものであった。
これに対し、本発明に係る製造条件2(実施態様2)においては、水熱合成を行う水熱反応部を有する流通式反応装置を用いて、バナジウム含有化合物及び水等を含む原料液と、バナジウム含有化合物と反応する化合物と、超臨界又は亜臨界状態の水を混合した反応液を用い、当該反応液を流通式反応装置の水熱反応部における通過時間を3〜1000秒の範囲内で水熱反応を行うことを特徴とするものである。
本発明で規定する製造条件2の流通式反応装置を用いて水熱反応を行うことにより、所望の効果が得られる詳細なメカニズムは不明であるが、上記で規定する反応時間内に混合液に対し水熱反応を施すことにより、析出した二酸化バナジウムの微結晶の過度の結晶成長が抑制され、製造された二酸化バナジウム含有粒子の平均粒径を十分に微粒子化させることができ、かつ大粒径の成分の存在量を著しく減少させることができ、極めて分布の狭い粒子群を得ることができる。加熱部の通過時間が3秒未満では、規定通過時間内での粒子形成が不十分となり、所望のサイズの二酸化バナジウム含有粒子を得ることができない。逆に、通過時間として1000秒を超える条件で水熱処理を行うと、処理時間が長くなり、生産性が低下するとともに、加熱部における滞留時間が長くなり、異常成長する粒子の比率が高くなるため、粒径分布が広くなる要因となる。
本発明で規定する製造条件2により、狭い粒径分布と小粒径化を両立した二酸化バナジウム含有粒子により、粒子が持つ大きな表面積に起因して高いサーモクロミック性を得ることができ、また小粒径及び粒径の均一性に起因して、可視光領域における光散乱性に低く抑えることができるため、二酸化バナジウム含有粒子を含む光学フィルムの高い透明性を得ることができる。また、このような技術思想により、流通式反応装置を用いて二酸化バナジウム含有粒子を製造する思想や具体的な条件に関しては、特許文献3や特許文献4には全く開示がなされていない。
また、本発明において、製造条件3(実施態様3)により、上記課題を解決することができる効果の発現機構及び作用機構について、以下のように推測している。
二酸化バナジウム含有粒子を水熱合成法により製造する際、例えば、バナジウム含有化合物、アルカリ剤等により構成されているスラリー原料液が、塩類を多く含有している状態にあると、当該塩類が、水熱合成時の粒子径の制御、特に、結晶子の形成に影響を及ぼし、所望の粒子プロファイルを有する二酸化バナジウム含有粒子を得ることが難しかった。例えば、形成した二酸化バナジウム含有粒子の結晶子径が小さすぎる(15nm未満)と、サーモクロミック性が低下し、逆に、結晶子径が大きすぎる(40nmを超える)と、これに連動して、一次粒子径も40nmを超えるため、光学フィルム(サーモクロミックフィルム)として、ヘイズが高くなり、問題を抱えることとなる。
本発明者は、上記問題を踏まえ、水熱合成法により処理を行う前に、バナジウム含有化合物、アルカリ剤等により構成されているスラリー原料液に脱塩処理を施して、存在している塩類をある程度除くことにより、水熱合成時の粒子形成環境が最適化され、二酸化バナジウム含有粒子の平均粒子径を15〜40nmの範囲内、かつ平均結晶子径を15〜40nmの範囲内に調整することができ、サーモクロミック性と光学フィルムとした時の透明性を両立することができたとともに、二酸化バナジウム含有粒子を最適の粒子径範囲とすることにより、水熱合成時、例えば、流通式反応装置を用いる場合に、粒子凝集等による流路の閉塞を防止することができ、連続生産性を向上させることができた。
また、本発明において、製造条件4(実施態様4)により、上記課題を解決することができる効果の発現機構及び作用機構について、以下のように推測している。
実施態様4である製造方法4は、スラリー原料液を分散処理する工程と、水熱反応部を有する流通式反応装置を用いて、分散処理したスラリー原料液と超臨界又は亜臨界状態の水とを混合した反応液を水熱反応させて二酸化バナジウム含有粒子を製造する工程と、を有することを特徴とする。
上述したように、流通式反応装置を用いた水熱合成では、二酸化バナジウム含有粒子の粒径分布が広くなってしまい、その結果、サーモクロミック性を低下させてしまう。また、当該二酸化バナジウム含有粒子を光学フィルムに適用した際には、粒子が凝集していることから、十分な透明性を得ることができない。また、凝集により比表面積が減少し、十分なサーモクロミック性を得ることができない。
そこで、本発明に係る実施態様4においては、スラリー原料液に対し流通式反応装置を用いた水熱合成を実施する前にあらかじめ分散処理を施し、スラリー原料液中のバナジウム含有化合物の分散粒径を小さくすることで、水熱合成後の二酸化バナジウム含有粒子の粒径分布幅を狭くし、かつ、サーモクロミック性を向上させることができるものと考えている。
なお、上記の各技術的な機構はあくまでも推測であり、本発明の技術的範囲を制限するものではない。
本発明の二酸化バナジウム含有粒子の製造条件1(実施態様1)における製造フローの一例を示す図 本発明の二酸化バナジウム含有粒子の製造条件1(実施態様1)における製造フローの他の一例を示す図 本発明に係る二酸化バナジウム含有粒子の製造に適用可能な水熱反応部を具備した流通式反応装置の一例を示す概略図 本発明の二酸化バナジウム含有粒子の製造条件2(実施態様2)に適用可能な製造フローの一例を示す図 本発明の二酸化バナジウム含有粒子の製造条件2(実施態様2)に適用可能な製造フローの他の一例を示す図 本発明の脱塩処理工程を有する二酸化バナジウム含有粒子の製造条件3(実施態様3)の製造工程の一例を示す工程フロー図 本発明に係る二酸化バナジウム含有粒子の製造条件3に用いる脱塩装置の一例である限外濾過装置の処理フローを示す概略図 本発明に係る二酸化バナジウム含有粒子の製造条件3に適用可能な水熱反応部を具備した製造フローの一例を示す概略図 本発明に係る製造条件3で規定する二酸化バナジウム含有粒子の粒子構造(結晶子径)の一例を示す模式図 従来の製造条件で製造した比較例の二酸化バナジウム含有粒子の粒径分布の一例を示すグラフ 本発明の製造条件4で製造した二酸化バナジウム含有粒子の粒径分布の一例を示すグラフ
本発明の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法は、水熱反応部を有する流通式反応装置を用いて、少なくともバナジウム含有化合物及び水を含む原料液と、当該バナジウム含有化合物と反応する化合物と、超臨界又は亜臨界状態の水とを混合した反応液を用い、水熱合成方法により二酸化バナジウム含有粒子を製造二酸化バナジウム含有粒子の製造方法であって、前記製造条件1〜4(実施態様1〜4)から選ばれる少なくとも一つの方法により二酸化バナジウム含有粒子を製造することを特徴とする。この特徴は、各請求項に共通する又は対応する技術的特徴である。
さらに、本発明の実施態様1においては、本発明の効果発現の観点から、前記バナジウム含有化合物と反応する化合物が、前記バナジウム含有化合物及び脱気水を含む原料液に添加されている方法(実施態様1A)、又は前記バナジウム含有化合物と反応する化合物が、前記超臨界又は亜臨界状態の脱気水に添加されている方法(実施態様1B)であることが、本発明の目的効果を安定して発現させることができる点で好ましい。
また、本発明の実施態様1においては、適用する脱気水を、脱気膜を用いた脱気処理により調製することにより、所望の溶存酸素量の脱気水を得ることができる。
また、本発明の実施態様1においては、反応液を構成する脱気水の25℃における溶存酸素量が、2.0mg/L以下、さらに好ましくは、0.4mg/L以下であることが、流通式反応装置を用いて、安定して二酸化バナジウム含有粒子を製造することができる点で好ましい。
また、本発明の実施態様2においては、流通式反応装置の水熱反応部における反応液の温度を250〜500℃の範囲内に設定することが、安定して水熱反応を行うことができる点で好ましい。
また、本発明の実施態様2においては、反応液の水熱反応部における通過時間を4〜700秒の範囲内に設定することが、好適な反応時間で、かつ分布の狭い二酸化バナジウム含有粒子組成物を効率的に製造することができる点で好ましい。
また、本発明の実施態様2においては、水熱反応部の配管内を通過する前記混合液のレイノルズ数Reを、1000〜45000の範囲内とすること、さらに好ましくは2000〜10000の範囲内とすることが、バナジウム塩水溶液と超臨界又は亜臨界状態の水とを、水熱反応部の配管内で効率的かつ均一組成の混合物とすることができ、粒径分布の狭い二酸化バナジウム含有粒子組成物を得ることができる。
また、本発明の実施形態1又は実施態様2においては、本発明の効果をより発現させる観点から、前記バナジウム含有化合物と反応する化合物が、前記バナジウム含有化合物及び水を含む原料液に添加されている方法、又は、前記バナジウム含有化合物と反応する化合物が、前記超臨界又は亜臨界状態の水に添加されている方法であることが、本発明の目的効果を安定して発現させることができる点で好ましい。
また、本発明の実施態様1又は実施態様2においては、バナジウム含有化合物としてバナジウム(IV)含有化合物を用い、前記バナジウム含有化合物と反応する化合物としてアルカリを用いることが、安定して単分散性の高い二酸化バナジウム含有粒子を形成することができる点で好ましい。
また、本発明の実施態様1又は実施態様2においては、バナジウム含有化合物としてバナジウム(V)含有化合物を用い、前記バナジウム含有化合物と反応する化合物として還元剤を適用する方法が、同じく、安定して単分散性の高い二酸化バナジウム含有粒子を形成することができる点で好ましい。
また、本発明の実施態様1又は実施態様2においては、製造した二酸化バナジウム含有粒子は、平均一次粒径が1〜40nmの範囲内という極めて微細な粒子を調製することができ、光学フィルムに適用した際に、透明性の高いサーモクロミックフィルムを得ることができる。
また、本発明の実施態様3においては、スラリー原料液から塩類を除去する脱塩処理に、限外濾過装置を用いることが、効率よく脱塩処理を施すことができる点で好ましい。
また、本発明の実施態様3においては、スラリー原料液の脱塩処理後の電気伝導率が、1000μS/m以下となるように脱塩処理を行うことが、水熱反応により所望の粒子プロファイル(平均一次粒径、平均結晶子径)を有する二酸化バナジウム含有粒子を高い精度で製造することができる点で好ましい。
また、本発明の実施態様4においては、光学フィルムのヘイズ及びΔTSERを向上させる観点から、二酸化バナジウム含有粒子の粒径分布幅を50nm以下に調整することが好ましい。
また、本発明の実施態様4においては、光学フィルムのヘイズ及びΔTSERを向上させる観点から、スラリー原料液の分散処理後の分散粒径を300nm以下に調整することが好ましい。
また、本発明の実施態様4においては、原料にダメージを与えず(原料の形状を変化させない)、分散が可能であることから、高圧分散処理によりスラリー原料液を分散処理することが好ましい。
加えて、本発明の実施態様4においては、上記二酸化バナジウム含有粒子を含む光学フィルムを提供することができる。
本発明は、透明基材と光学機能層とを有し、光学機能層が上記二酸化バナジウム含有粒子を含み、ヘイズが4%以下であり、かつ、低温(10℃)時と高温(70℃)時とにおける遮熱性(TSER)の差ΔTSERが5〜20%の範囲内である光学フィルムが好ましい。また、本発明の光学フィルムは、ヘイズが2%以下であり、かつ、低温(10℃)時と高温(70℃)時とにおける遮熱性(TSER)の差ΔTSERが10〜20%の範囲内であることが好ましい。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。なお、各図の説明において、構成要素の末尾に括弧内で記載した数字は、説明する図面に記載した符号を表す。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
《二酸化バナジウム含有粒子の製造方法》
はじめに、本発明の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法の全体概要を説明する。
本発明の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法は、水熱反応部を有する流通式反応装置を用いて、少なくともバナジウム含有化合物及び水を含むスラリー原料液と、当該バナジウム含有化合物と反応する化合物と、超臨界又は亜臨界状態の水とを混合した反応液を用い、水熱合成方法により二酸化バナジウム含有粒子を製造する二酸化バナジウム含有粒子の製造方法であって、
1)製造条件1:前記反応液を構成する水として、脱気処理を施した脱気水を用いる方法、2)製造条件2:前記反応液の前記水熱反応部における通過時間を、3〜1000秒の範囲内とする方法、3)製造条件3:前記スラリー原料液を前記水熱合成法により処理する前に、前記スラリー原料液から塩類を除去する脱塩処理を施し、前記二酸化バナジウム含有粒子の平均一次粒径(以下、「平均粒径」又は「平均粒子径」ともうい。)を15〜40nmの範囲内とし、かつ平均結晶子径を15〜40nmの範囲内になるように調整して製造する方法、及び4)製造条件4:前記二酸化バナジウム含有粒子を製造する工程の前に、前記スラリー原料液を分散処理する工程を有し、前記二酸化バナジウム含有粒子の粒径分布幅を80nm以下に調整する方法、から選ばれる少なくとも一つの方法により二酸化バナジウム含有粒子を製造することを特徴とする。
本発明において、「二酸化バナジウム(VO)含有粒子」を「本発明に係る二酸化バナジウム含有粒子」、「本発明に係るVO含有粒子」、又は「二酸化バナジウム含有粒子」若しくは「VO含有粒子」とも称する。
本発明においては、バナジウム含有化合物を、超臨界又は亜臨界状態の脱気水の存在下で水熱反応させ、二酸化バナジウム含有粒子を形成する方法を、「水熱合成方法」、「水熱反応方法」、「水熱反応」ともいい、その実施工程を「水熱反応工程」とも称する。
また、本発明でいう「サーモクロミック性を有する二酸化バナジウム(VO)含有粒子」とは、下記の方法で評価するサーモクロミック性(ΔT)(%)が20%以上である二酸化バナジウム含有粒子を意味する。
(サーモクロミック性の評価)
測定対象の二酸化バナジウム含有粒子分散液をSartorius stedim社製
ビバフロー50(有効濾過面積50cm、分画分子量5000)を用いて、流速300mL/min、液圧1bar(0.1MPa)で濾過を行うことで濃度調整して、二酸化バナジウム含有粒子がポリビニルアルコール中に、ポリビニルアルコール及び二酸化バナジウム含有粒子の総質量に対して、10質量%となるように混合し、帝人デュポンフィルム株式会社製の厚さ50μmポリエチレンテレフタレート(PET)基材上に塗布乾燥し、乾燥膜厚3μmの光学機能層を有する測定用フィルムを作製する。
この測定用フィルムを25℃/50%RHに24時間保存し、下記の方法でサーモクロミック性(ΔT)(%)を評価する。
具体的には、25℃/50%RHと、85℃/50%RHの環境下で、それぞれ波長2000nmでの透過率(T)を測定し、算出される透過率差(ΔT)を測定し、ΔT(%)が20%以上であれば、サーモクロミック性を有する二酸化バナジウム(VO)含有粒子と判定する。
本発明の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法においては、水を用いた水熱反応を、水熱反応部を有する流通式反応装置を用いて行う。
従来の水熱反応においては、高圧用反応分解容器、オートクレーブやテストチューブ型反応容器、流通式反応装置等の装置を用いて行っていたが、本発明においては、連続式の流通式反応装置を用いることを特徴とする。
以下、流通式反応装置を用いて水熱反応を行う好ましい形態を説明する。なお、本発明では下記形態に限定されない。
本発明に係る流通式反応装置とは、水熱反応部を備えた流通式反応装置である。ここでいう水熱反応部とは、高温高圧条件下で、高速混合及び反応を実現する混合及び反応器をいう。
水熱反応部において、高圧下、超臨界又は亜臨界状態の脱気水の存在下で実施することにより、優れた二酸化バナジウム含有粒子のサーモクロミック性及び単分散性の高い二酸化バナジウム含有粒子を製造することができ、光学フィルムの透明性を達成することができる。この理由は、水熱反応を高圧下、超臨界又は亜臨界状態の水の存在下で実施することにより、水熱反応時の酸化性雰囲気を抑制し、所望の価数の二酸化バナジウムを安定した反応により製造することができ、サーモクロミック性を有する二酸化バナジウム(VO)含有粒子を安定して製造することができる。
流通式反応装置を用いて水熱反応を行う場合は、本発明においては、流通式反応装置の水熱反応を行う水熱反応部において、バナジウム含有化合物及び水を含む原料液と、当該バナジウム含有化合物と反応する化合物と、超臨界又は亜臨界状態の水とを混合した反応液の通過時間を、4〜700秒の範囲内であり、さらには12〜700秒の範囲内とすることが好ましい。
次いで、図を交えて、本発明の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法に適用可能な製造条件1〜4(実施態様1〜4)についての詳細な内容(製造条件、流通式反応装置、構成材料等)について説明する。
以下の説明においては、はじめに、製造条件1(実施態様1)について、製造条件とそれに適用する流通式反応装置、構成材料等の詳細について、説明する。次いで、製造条件2、製造条件3及び製造条件4については、製造条件1と共通する構成の説明は省略し、各製造条件の特定の要件についてのみ説明する。
[製造条件1:実施態様1]
はじめに、製造条件1(実施態様1)と、それに適用する流通式反応装置、構成材料等の詳細について、説明する。
実施態様1においては、本発明に係る反応液は、基本的には、1)バナジウム含有化合物(A)及び脱気水を含む原料液と、2)当該バナジウム含有化合物と反応する化合物(B)と、3)超臨界又は亜臨界状態の脱気水とにより構成されるが、少なくとも1)バナジウム含有化合物(A)及び脱気水を含む原料液と、3)超臨界又は亜臨界状態の脱気水とをそれぞれ分割した構成要件とし、1)又は3)に2)バナジウム含有化合物と反応する化合物(B)を共存させる形態が好ましい実施態様である。
図1Aに本発明の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法に係る製造条件1(実施態様1)に好適な実施態様1A及び図1Bに本発明の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法に係る製造条件1(実施態様1)に好適な実施態様1Bに係る製造フローを示す。
(実施態様1A)
製造条件1の適用可能な製造フローの一つである実施態様1Aは、図1Aで示すように、原料液容器1(5)に、1)バナジウム含有化合物(A)及び脱気水を含む原料液と、2)バナジウム含有化合物と反応する化合物(B)、例えば、脱気水に所定の濃度で溶解したアルカリ又は還元剤を添加し、他方の原料液容器2(2)に、水として脱気水を添加し、この脱気水を加熱媒体(13)で所定の温度、圧力下で、超臨界又は亜臨界状態の脱気水としたのち、両者を合流点(MP)で会合させて反応液とした後、水熱反応部を構成する水熱反応部(16)内の加熱部配管(17)で水熱処理を施して、二酸化バナジウム含有粒子を調製する方法である。
(実施態様1B)
製造条件1の適用可能な製造フローの一つである実施態様1Bは、図1Bで示すように、原料液容器1(5)に、1)バナジウム含有化合物(A)及び脱気水を含む原料液を添加し、他方の原料液容器2(2)に、2)バナジウム含有化合物と反応する化合物(B)を含有する脱気水を添加し、当該バナジウム含有化合物と反応する化合物(B)を含有する脱気水を加熱媒体(13)で所定の温度、圧力下で、超臨界又は亜臨界状態の脱気水としたのち、両者を合流点(MP)で会合させて反応液とした後、水熱反応部を構成する水熱反応部(16)内の加熱部配管(17)で水熱処理を施して、二酸化バナジウム含有粒子を調製する方法である。
〔水熱反応部を有する流通式反応装置〕
次いで、本発明の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法(製造条件1〜4)で共通して適用する水熱反応部を有する流通式反応装置の全体構成について、製造条件1(実施態様1)を一例として、図を用いて説明する。
図2は、本発明の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法に適用可能な、水熱反応部を有する流通式反応装置の一例を示す概略図である。
図2において、水熱反応部を有する流通式反応装置(1)は、一方の構成液であるバナジウム含有化合物(A)及びバナジウム含有化合物と反応する化合物(B)及び脱気水を含む原料液(実施態様1A)、又はバナジウム含有化合物(A)及び脱気水を含む原料液(実施態様1B)を入れる原料液容器1(5)、他方の構成液である超臨界水又は亜臨界水を形成するための脱気水(実施態様1A)、又は、バナジウム含有化合物と反応する化合物(B)を含有する脱気水(実施態様1B)を入れる原料液容器2(2)、水熱反応を行う加熱媒体(14)を有する水熱反応部(16)、水熱反応後の反応液を入れるためのタンク(9)、原料液容器1(5)、原料液容器2(2)とタンク(9)とをそれぞれ連結するための流路(配管、3及び6)、一方の少なくともバナジウム含有化合物(A)を含む原料液を、原料液容器1(5)から、配管(6)、合流点(MP)、加熱部配管(17)、配管(18)及び制御弁(19)を経由してタンク(9)に送液するためのポンプ(7)、他方の構成液である原料液容器2(2)に貯留している超臨界水又は亜臨界水を形成するための脱気水等を、原料液容器2(2)から、流路(3)、加熱媒体(13)、合流点(MP)、加熱部配管(17)、配管(18)及び制御弁(18)を経由してタンク(9)に送液するためのポンプ(4)を有する。
また、流通式反応装置(1)には、必要に応じて、水熱反応後の二酸化バナジウム含有粒子の含む反応液を冷却するための流路(18)を含む冷却部(8)を備えてもよい。また、詳細は後述するが、必要に応じて、水熱反応後の二酸化バナジウム含有粒子を含む反応液に添加する、表面修飾剤、pH調整剤、又は水熱反応後の反応液に混合して冷却するための冷却媒体(例えば、水)を入れるためのタンク(10)、表面修飾剤、pH調整剤、冷却媒体等を、流路(11)を介して、流路(18)に送液するためのポンプ(12)をさらに有してもよい。
流通型反応装置(1)には、流路(6)、又は流路(3)のライン中に、加熱媒体(13、15)を有する。特に、流路(3)に配置されている加熱媒体(13)は、原料液容器2(2)に貯留している脱気水を、所定の温度及び圧力を付与して、超臨界水又は亜臨界水を形成する。
また、バナジウム含有化合物(A)及び脱気水を含む原料液や化合物(B)及び脱気水を含む原料液、水熱反応後の反応液が流通する水熱反応部(16)と加熱部配管(17)、及び流路(3、6、11、18等)を構成する配管の材質は、特に制限されないが、ステンレス鋼、アルミニウム、鉄、ハステロイなどが挙げられる。
水熱反応部(16)の内部に構成される加熱部配管(17)の加熱部配管のライン長(L)は、特に、制限はなく、合流部(MP)で合流したバナジウム含有化合物、バナジウム含有化合物と反応する化合物及び超臨界又は亜臨界状態の水、により構成される反応液が、3〜1000秒の時間内で通過できる長さであればよい。
また、水熱反応部内の加熱部配管(17)を通過(流通)させる混合液の速度(流通速度)は、特に制限されないが、好ましくは0.1〜10m/秒、より好ましくは0.2〜8.0m/秒である。このような流通速度であれば、反応液に含まれるバナジウム含有化合物(A)と、バナジウム含有化合物と反応する化合物(B)が、超臨界又は亜臨界状態の脱気水の存在下で、水熱反応を所定の条件で有効に実施できる。
本発明でいう加熱部配管(17)のライン長(L)とは、各原料液が合流点(MP)を経て、加熱媒体(14)の入口(IN)から、水熱処理後に、加熱媒体(14)の出口(OUT)に達するまでの配管部をいう。
本発明において、水熱反応部である加熱部配管(17)における反応液の通過時間は、上述の反応液の流通速度と加熱部配管のライン長(L)により決定されるが、流通速度は、各流路(3及び6)内に設置されているポンプ(4及び7)の送液圧力や各流路の内径により、圧力や流量を制御することにより所望の条件とすることができる。
また、原料液を送液する流路(3及び6)、水熱反応後の反応液に添加する冷媒や表面修飾剤等を送液する流路(11)、反応液を冷却するための流路(18)の長さは、特に制限されないが、おおむね50〜10000mmの範囲内であり、好ましくは100〜1000mmの範囲内である。また、流路の間隙(配管の場合は内径)は、特に制限されないが、おおむね0.1〜10mmの範囲内であり、好ましくは1.0〜8mmの範囲内である。
なお、配管(3、6、11及び18)は、上記材質、長さ、内径を有することが好ましいが、それぞれ、同じであっても又は異なるものであってもよい。
上記の水熱反応工程によって得られた水熱反応後の反応液は、濾過(例えば、限外濾過)や遠心分離により、分散媒や溶媒の置換を行い、二酸化バナジウム含有粒子を水やアルコール(例えば、エタノール)等によって洗浄してもよい。得られた二酸化バナジウム含有粒子は、任意の手段により乾燥してもよい。なお、図2に記載のTCは、温度センサーである。
(1)水熱反応工程
本発明に係る水熱反応工程では、
1)バナジウム含有化合物(A)、バナジウム含有化合物と反応する化合物(B)及び脱気水を含む原料液と、超臨界又は亜臨界状態の脱気水とを混合して得られる反応液(実施態様1A)、又は
2)バナジウム含有化合物(A)及び脱気水を含む原料液と、バナジウム含有化合物と反応する化合物(B)を含む超臨界又は亜臨界状態の脱気水とを混合して得られる反応液(実施態様1B)を、
それぞれ所定の温度及び圧力を付与した水熱反応部において、超臨界水又は亜臨界水の存在下で水熱反応させことにより、二酸化バナジウム含有粒子が得られる。
以下、本発明に係る水熱反応で適用する各材料の詳細について説明する。
〈バナジウム含有化合物(A)〉
本発明に適用可能なバナジウム含有化合物(二酸化バナジウム含有粒子の原料)としては、例えば、五価のバナジウム(以下、バナジウム(V)と記載する。)としては、五酸化二バナジウム(V)(V)、バナジン酸アンモニウム(V)(NHVO)、三塩化酸化バナジウム(V)(VOCl)、バナジン酸ナトリウム(V)(NaVO)等、四価のバナジウム(以下、バナジウム(IV)と記載する。)としては、シュウ酸バナジル(IV)(VOC)、酸化硫酸バナジウム(以下、硫酸バナジルとも称する)(IV)(VOSO)、及び四酸化二バナジウム(IV)(V)を硫酸等の酸で溶解したものが例示できる。なお、上記のバナジウム含有化合物は原料液中に溶解していてもよく、分散していてもよい。また、バナジウム含有化合物は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を混合して用いてもよい。また、これらの化合物としては、水和した状態のもの(水和物)を用いてもよい。
バナジウム含有化合物(A)と反応する化合物(B)としては、原料液を水熱反応させることによって二酸化バナジウム含有粒子を製造することができるものであれば、特に制限されないが、例えば、アルカリ、還元剤等が挙げられる。
具体的には
〈a〉バナジウム含有化合物(A)として四価のバナジウム(IV)含有化合物を用いる場合には、前記バナジウム含有化合物(A)と反応する化合物(B)としては、アルカリを適用する。この時、アルカリは、実施態様1ではバナジウム含有化合物(A)及び水を含む原料液に添加し、実施態様2では、超臨界又は亜臨界状態の水を形成するための水に添加される。
一方、
〈b〉バナジウム含有化合物(A)として五価のバナジウム(V)含有化合物を用いる場合には、前記バナジウム含有化合物(A)と反応する化合物(B)としては、還元剤(例えば、ヒドラジン及びその水和物等)を適用することが好ましい。この時、還元剤は、実施態様1ではバナジウム含有化合物(A)及び水を含む原料液に添加し、実施態様2では、超臨界又は亜臨界状態の水を形成するための水に添加される。
〔脱気水について〕
本発明の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法に係る製造条件1においては、水熱反応に適用する水が脱気水であることを特徴とする。更に詳しくは、水熱反応部を通過するバナジウム含有化合物(A)とバナジウム含有化合物(A)と反応する化合物(B)を含む反応液を構成する水が脱気水である。ここでいう脱気水とは、25℃における溶存酸素量が4.0mg/L以下の水であり、好ましくは2.0mg/L以下であり、さらに好ましくは1.0mg/L以下であり、特に好ましくは0.4mg/L以下であり、反応液中の溶存酸素量が上記で規定する条件を満たすことにより、反応系での酸化や酸化による分解の抑制、発泡の防止を行うことができる。
脱気処理とは、液体中に存在している気体、例えば、酸素ガスや窒素ガス等を除去する方法であり、脱気処理により脱気水を調製する方法としては、主には、以下に挙げる方法が知られている。
第1の方法は、減圧脱気方法で、タンクや真空脱気塔等を用いて、減圧下で液体中の気体を除去する方法であるが、液体と気体との界面が小さいため、脱気効率が低く、脱気に時間を要するという問題を抱えている。
第2の方法は、加熱脱気方法で、対象とする液体の温度上昇により、溶存気体、例えば酸素の溶解度を減少させて、気体として除去する方法であるが、多くの熱エネルギーを必要として、かつ高温環境下に曝されるため、液体組成の変動等が発生する。
第3の方法は、薬品方式で、薬品と、液体に溶存している気体を反応させて除去する方法であるが、除去する気体に選択性を有するとともに、気体の除去効率が低い。
第4の方法は、窒素(N)ナノバブル処理された脱気水を用いる方法であり、水中に窒素を混合する(バブリングする)ことによって調製される。窒素(N)ナノバブル処理された水を使用することによって、水の溶存酸素濃度が低下するため、得られる二酸化バナジウム含有粒子が再度酸化されることを抑制・防止することができる。
第5の方法は、脱気膜を介した気体透過により液体中の溶存酸素を除去する膜脱気方式であり、本発明においては、脱気膜を用いた膜脱気方式を適用して調製した脱気水を用いることが、液体と気体との接触面積が大きくすることができ、省スペースで高い脱気効率を得ることができる点で、特に好ましい。
一般に、液体と気体が接する面(界面)は広いほど効率的な脱気を行うことができ、膜脱気として、中空糸を用いることで、飛躍的に界面を増大することができ、脱気に要する時間を短縮することができる。
中空糸膜とは、細いパイプ状の形状をした分離膜で、複数本束ねて使用する。中空糸膜脱気モジュールを用いた脱気の原理は、中空糸膜の内部にポンプやガス圧を利用して液体(水)を通し、中空糸膜の外側を、真空ポンプ等を用いて減圧にすることにより、中空糸の壁面を通して、気泡(バブル)や気体(酸素ガス)等が減圧側に移動し、液体中の気泡や溶存酸素濃度を低下させる方法である。
脱気膜として用いられる中空糸膜としては、ポリフッ化ビニリデン膜(PVDF膜)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA膜)、ポリテトラフルオロエチレン膜(PTFE膜)、ポリエチレン膜(PE膜)、複合中空糸膜等があげられ、また、中空糸膜脱気モジュールとしては、三菱レイヨン(株)、DIC(株)、横浜理化(株)等より市販されている。
〔還元性化合物〕
本発明に係る脱気水による酸化防止環境をアシストするため、必要に応じて、還元性を有する化合物を添加してもよい。
ここでいう還元性を有する化合物とは、後述するバナジウム含有化合物(二酸化バナジウム含有粒子の原料)として、五価のバナジウム(V)含有化合物を使用する場合に、バナジウム含有化合物(A)と反応する化合物(B)として使用する還元剤とは、明らかにその役割を異にするものである。上記の方法で使用する還元剤は、バナジウム(V)含有化合物1モルに対して1.01〜1.50モルの範囲内で使用されるが、脱気水による酸化防止環境をアシストする還元性を有する化合物の添加量は、脱気水に対し、0.05〜1.0質量%の範囲内であることが好ましい。使用する系は、図1Aで示した実施態様1Aでは、バナジウム含有化合物(A)及び化合物(B)を貯留している原料液容器1や、脱気水を貯留している原料容器2中に添加することができ、図1Bに示す実施態様1Bでも、バナジウム含有化合物(A)を貯留している原料液容器1や、化合物(B)を含む脱気水を貯留している原料容器2中に添加することができる。
本発明における還元性を有する化合物の有効な利用法としては、脱気水の溶存酸素濃度を過度に低くさせることなく、中庸な溶存酸素濃度の脱気水を用い、更に還元性を有する化合物の添加にとり還元性環境をアシストすることにより、製造条件の負荷を低減させ、水熱反応時に、目的とする価数の二酸化バナジウム(VO)をさらに安定して製造することができる。
脱気水のサポートに使用することができる還元性を有する化合物としては、特に制限はないが、例えば、シュウ酸及びその水和物、ギ酸及びその水和物、ヒドラジン(N)及びその水和物(N・HO)、アスコルビン酸などの水溶性ビタミン類とその誘導体、エリソルビン酸ナトリウム、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、没食子酸プロピル、亜硫酸ナトリウムなどの酸化防止剤、グルコース、フルクトース、グリセルアルデヒド、ラクトース、マルトースなどの還元糖が例示できる。還元性を有する化合物の添加量は、前述のとおり、脱気水に対し、0.05〜1.0質量%の範囲内であり、好ましくは、0.10〜0.5質量%の範囲内である。
〔バナジウム含有化合物(A)と、当該バナジウム含有化合物と反応する化合物(B)〕
次いで、バナジウム含有化合物(A)と、それに組み合わせるバナジウム含有化合物と反応する化合物(B)の詳細について説明する。
(バナジウム(IV)含有化合物)
製造条件1において、上記(1)水熱反応工程に記載の〈a〉項に適用するバナジウム(IV)含有化合物(二酸化バナジウム含有粒子の原料)は、特に制限されず、上記で列挙したバナジウム含有化合物(A)の中から適宜選択できる。その中でも、水熱反応後に副生成物をできるだけ生成させない観点から、酸化硫酸バナジウム(IV)(VOSO)であることが好ましい。なお、バナジウム(IV)含有化合物は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を混合して用いてもよい。
反応液に含まれるバナジウム(IV)含有化合物の初期濃度は、本発明の目的効果が得られる限りにおいて特に制限されないが、好ましくは0.1〜1000ミリモル/Lである。このような濃度であれば、バナジウム(IV)含有化合物を十分に溶解又は分散し、得られる二酸化バナジウム含有粒子の平均粒径(粒径)を小さくし、かつ粒径(粒度)分布を狭くして、二酸化バナジウム含有粒子のサーモクロミック性、及び二酸化バナジウム含有粒子を含む光学フィルムの透明性をより高めることができる。反応液に含まれるバナジウム(IV)化合物の初期濃度は、二酸化バナジウム含有粒子の平均粒径及び粒径分布、すなわち二酸化バナジウム含有粒子のサーモクロミック性、及び二酸化バナジウム含有粒子を含む光学フィルムの透明性などの観点から、より好ましくは20〜600ミリモル/Lの範囲内であり、さらに好ましくは50〜400ミリモル/Lの範囲内である。なお、上記の「初期濃度」とは、水熱反応前における、反応液1L中のバナジウム(IV)含有化合物量(2種以上のバナジウム(IV)含有化合物を含む場合は、その合計量)である。
(化合物(B)−1:アルカリ)
上記(1)水熱反応工程に記載の〈a〉項のように、バナジウム(IV)含有化合物とともに使用することが可能なバナジウム含有化合物(A)と反応する化合物(B)としては、アルカリであることが好ましい。すなわち、(1)水熱反応工程の〈a〉項に記載の水熱反応では、バナジウム含有化合物(A)がバナジウム(IV)含有化合物であり、バナジウム含有化合物と反応する化合物(B)が少なくとも1種のアルカリを含む反応液を用いて行うことが好ましい。さらに、バナジウム含有化合物と反応する化合物(B)がアルカリのみから構成されていることがより好ましい。なお、本発明でいうアルカリとは、水溶液中において水酸化物イオン(OH)を発生させる物質を意味し、それ自体が水酸化物イオンを生じる化合物の他に、それ自体が水酸化物イオンを生じるわけではなく結果的に水酸化物イオンを生じる化合遺物も含まれる。
アルカリとしては、特に制限されないが、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。上記アルカリは、1種単独、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、アンモニア、水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウムであることが好ましく、アンモニア、又は水酸化ナトリウムであることがより好ましく、アンモニアであることがさらに好ましい。
なお、アルカリ及び脱気水より構成される原料液中のアルカリ濃度は、特に制限されないが、例えば、0.01〜10mol/Lの範囲内であることが好ましく、0.1〜5mol/Lの範囲内であることがより好ましい。
ここで、各原料液を混合して得られる反応液中のアルカリの量は、特に制限されないが、例えば、バナジウム含有化合物(A)、バナジウム含有化合物と反応する化合物(B)及び超臨界又は亜臨界状態の脱気水により構成される反応液のpHとして、6.8〜7.2の範囲内となる量を添加することが好ましく、6.9〜7.1の範囲内となる量を添加することがより好ましい。
(五価のバナジウム(V)含有化合物)
また、上記(1)水熱反応工程に記載の〈b〉項に適用するバナジウム(V)含有化合物(二酸化バナジウム含有粒子の原料)は、特に制限されず、上記したものの中から適宜選択できる。水熱反応後に副生成物をできるだけ生成させない観点から、五酸化二バナジウム、バナジン酸アンモニウム(NHVO)、及び三塩化酸化バナジウムが好ましい。より好ましくは、五酸化二バナジウム及びバナジン酸アンモニウムであり、特に好ましくはバナジン酸アンモニウム(NHVO)である。なお、上記バナジウム(V)含有化合物は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を混合して用いてもよい。
反応液に含まれるバナジウム(V)含有化合物の初期濃度は、本発明の目的効果が得られる限りにおいて特に制限されないが、好ましくは0.1〜1000ミリモル/Lの範囲内である。このような濃度であれば、還元剤が効率よく作用し、得られる二酸化バナジウム含有粒子の粒径を小さくし、かつ粒径分布を狭くして、サーモクロミック性をより高めることができる。反応液に含まれるバナジウム(V)化合物の初期濃度は、二酸化バナジウム含有粒子の粒径及び粒径分布、すなわち二酸化バナジウム含有粒子のサーモクロミック性及び二酸化バナジウム含有粒子を含む光学フィルムの透明性などの観点から、より好ましくは20〜600ミリモル/Lであり、さらに好ましくは50〜400ミリモル/Lである。なお、上記の「初期濃度」とは、水熱反応前における、反応液1L中のバナジウム(V)含有化合物量(2種以上のバナジウム(V)含有化合物を含む場合は、その合計量)である。
〈化合物(B)−2:還元剤〉
上記(1)水熱反応工程に記載の〈b〉項に係る水熱反応においては、バナジウム(V)含有化合物とともに使用されるバナジウム含有化合物と反応する化合物(B)としては、還元剤であることが好ましい。
還元剤としては、例えば、シュウ酸及びその水和物、ギ酸及びその水和物、ヒドラジン(N)及びその水和物(N・HO)、アスコルビン酸などの水溶性ビタミン類とその誘導体、エリソルビン酸ナトリウム、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、没食子酸プロピル、亜硫酸ナトリウムなどの酸化防止剤、グルコース、フルクトース、グリセルアルデヒド、ラクトース、マルトースなどの還元糖が例示できる。上記還元剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、本発明に適用する還元剤としては、ヒドラジン又はその水和物が好ましい。すなわち、水熱反応は、バナジウム(V)含有化合物(A)と反応する化合物(B)がヒドラジン及びその水和物の少なくとも一方を含む反応液で行われることが好ましい。さらに、バナジウム含有化合物と反応する化合物がヒドラジン及びその水和物のいずれか一方のみであることがより好ましい。
ここで、各原料液を混合して得られる反応液中の還元剤の量は、バナジウム(V)含有化合物(A)に対して反応時のpHや反応中に分解する量も考慮して当モル以上添加することが好ましい。例えば、還元剤量は、バナジウム(V)含有化合物1モルに対してはおおむね1.01〜1.50モルの範囲内であることがより好ましく、1.05〜1.30モルの範囲内であることがさらに好ましい。
また、バナジウム含有化合物として五酸化二バナジウム(V)(V)を用いる場合は、水熱反応前に、過酸化水素の存在下で前処理を行うことが好ましい。過酸化水素を添加することにより、バナジウム含有化合物を均一に溶解することができる。又は、バナジウム含有化合物は、水熱反応前に、過酸化水素、還元剤の存在下で前処理を行ってもよい。過酸化水素による前処理の後に還元剤による還元反応を採用する場合は、過酸化水素、還元剤を順次添加して、例えば、20〜40℃の温度範囲内で、必要に応じて撹拌しながら0.5〜10時間程度反応を行うことができる。
なお、各原料液を混合して得られる反応液のpHは、使用するバナジウム(V)含有化合物によって好ましいpHの範囲が異なり、還元剤の添加量により、所望のpHに調整することが好ましい。例えば、バナジン酸アンモニウム(NHVO)の場合は、pHが8.0〜11.0の範囲内となる量を添加することが好ましく、9.0〜10.0の範囲内となる量を添加することがより好ましい。五酸化二バナジウム、又は、三塩化酸化バナジウムの場合は、pHが3.5〜5.5の範囲内となる量を添加することが好ましく、4.0〜5.0の範囲内となる量を添加することがより好ましい。
〔二酸化バナジウム含有粒子の相転移調節剤〕
本発明の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法では、水熱反応部において、反応液が含有するバナジウム含有化合物の二酸化バナジウム含有粒子への相転移温度を調節するため、特定の元素を含む相転移調整剤を含有することができる。
ここで、二酸化バナジウム含有粒子の相転移温度を調節するため相転移調節剤の反応液への添加方法は、特に制限されず、公知の方法を用いることができる。反応液への添加方法としては、バナジウム含有化合物及び水を含む原料液1に添加されることが好ましい。また、水熱反応前の反応液へ直接添加される方法も用いることもできる。
ここで、相転移調節剤としては、特に制限されないが、例えば、タングステン、チタン、モリブデン、ニオブ、タンタル、スズ、レニウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、ゲルマニウム、クロム、鉄、ガリウム、アルミニウム、フッ素、リン等の、バナジウム以外の金属元素を含む物質が使用できる。反応液が上記相転移調節剤を含むことにより、得られる二酸化バナジウム含有粒子の相転移温度を低下させることができる。ここで、相転移調節剤の添加量は、特に制限されないが、バナジウム含有化合物に含まれるバナジウムと、相転移調節剤に含まれる上記金属元素(バナジウムを除く)との元素比(原子比率)が、50.0:50.0〜99.9:0.1の範囲内であることが好ましく、70.0:30.0〜99.5:0.5の範囲内であることがより好ましい。また、相転移調節剤の形態は特に制限されないが、上記各金属元素(バナジウムを除く)の、酸化物、アンモニウム塩等が例示できる。ここで、相転移調節剤の具体例としては、例えば、タングステン酸アンモニウムパラ五水和物((NH101241・5HO)等を挙げることができる。
〔水熱反応条件:温度、圧力〕
本発明の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法において、水熱反応工程では、反応液を水熱反応させて二酸化バナジウム含有粒子を形成する。なお、ここでいう「水熱反応」とは、高温の水、特に高温高圧の水の存在の下に行われる鉱物の合成又は変質反応、すなわち化学反応を意味する。
本発明における水熱反応は、温度が150℃以上であり、かつ圧力が飽和蒸気圧よりも上である状態、すなわち脱気水が超臨界又は亜臨界状態で存在している状態で行われることを特徴とする。このような高温高圧条件下で反応を行うことにより、脱気水がほとんど存在し得ない常圧高温の場合と異なり、高圧では、脱気水の存在により特異な反応が起こることが知られている。また、シリカやアルミナ等の酸化物の溶解性が向上し、反応速度が向上することも知られている。
本発明においては、上記で示したような条件で水熱反応を行うことで、形成される二酸化バナジウム含有粒子の平均粒径(D)、及び粒径分布を狭くすることができ、二酸化バナジウム含有粒子のサーモクロミック性及び二酸化バナジウム含有粒子を含む光学フィルムの透明性を向上(ヘイズの減少)することができる。
これらの優れた効果は、詳細なメカニズムは不明であるが、上記で示したような条件下の水熱反応によって、析出した二酸化バナジウムの微結晶の結晶成長が抑制されることで達成されると推測される。
水熱反応条件は、水が超臨界又は亜臨界状態で存在する条件である温度が150℃以上であり、かつ圧力が飽和蒸気圧よりも上であれば特に制限されず、他の条件(例えば、反応物の量、反応温度、反応圧力、反応時間など)に応じて適宜設定することができる。
ここで、150℃、250℃、270℃及び350℃における飽和水蒸気圧はそれぞれ、0.48MPa、3.98MPa、5.51MPa及び16.54MPaである。また、温度が374.15℃以上であり、かつ圧力が22.12MPa以上であると、水は超臨界状態となる。
水熱反応における温度及び圧力の条件としては、前述のように150〜500℃の範囲内であり、かつ圧力が飽和蒸気圧よりも上である状態であれば特に制限されないが、温度が300〜500℃の範囲内にあり、圧力が10〜40MPaの範囲内にあり、かつ設定温度における飽和蒸気圧よりも上の圧力となる条件であることがより好ましい条件である。温度が300℃以上であると、平均粒径(D)等をより小さくすることができる。また、温度が500℃以下であると、平均粒径(D)が小さくなりすぎることによるサーモクロミック性の低下が発生しない。同様の観点から、温度が350〜450℃の範囲内であり、圧力が20〜40MPaの範囲内であり、かつ設定温度における飽和蒸気圧よりも上の圧力となる条件であることがさらに好ましく、温度が380〜400℃の範囲内で、圧力が25〜30MPaの範囲内の超臨界水の存在下で水熱反応を行うことがさらに好ましい。
本発明においては、水熱反応時間は、特に制限がなく、任意の条件を選択することができる。
〔各種添加剤〕
(1)表面修飾剤
本発明の流通式反応装置を用いた二酸化バナジウム含有粒子の製造方法においては、水熱反応直後の二酸化バナジウム含有粒子を含む反応液に対し、さらに、タンク(10)より、流路(11)を経由して表面修飾剤を添加することができる。
水熱反応により形成した二酸化バナジウム含有粒子を含む反応液に表面修飾剤を添加することによって、二酸化バナジウム含有粒子の凝集が有効に抑制・防止され、二酸化バナジウム含有粒子の大きさ(粒径)をより小さくし、粒径分布も狭くして、二酸化バナジウム含有粒子の分散安定性及び保存安定性をより向上できる。ゆえに、二酸化バナジウム含有粒子によるヘイズが低下し、また、サーモクロミック性を有効に発現させることができる。
本発明に提供可能な表面修飾剤としては、例えば、有機ケイ素化合物、有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物、有機ジルコニア化合物、界面活性剤、シリコーンオイル等を挙げることができる。表面修飾剤の反応性基の数は、特に制限されないが、1又は2であることが好ましい。
〈有機ケイ素化合物〉
本発明に適用可能な表面修飾剤の具体例として有機ケイ素化合物(有機シリケート化合物)が挙げられ、例えば、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、テトラエトキシシラン(オルトケイ酸テトラエチル)、トリメチルシリルクロライド、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。また、有機ケイ素化合物は市販品としても入手することができ、例えば、SZ 6187(東レ・ダウコーニング社製)等を好適に用いることができる。
これらの有機ケイ素化合物のうち、分子量が小さく、高い耐久性を示す有機シリケート化合物を用いることが好ましく、特に、ヘキサメチルジシラザン、テトラエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルシリルクロライドを用いることがより好ましい。
〈有機チタン化合物〉
有機チタン化合物としては、例えば、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルフォニルチタネート及びビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネート、キレート化合物として、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート、リン酸チタン化合物、チタンオクチレンギリコレート、チタンエチルアセトアセテート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート等が挙げられる。また、有機チタン化合物は市販品としても入手することができ、例えば、プレンアクトTTS、プレンアクトTTS44(以上、味の素ファインテクノ株式会社製)等が挙げられる。
〈有機アルミニウム化合物〉
有機アルミニウム化合物としては、例えば、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムtert−ブトキシド等が挙げられる。
〈有機ジルコニア化合物〉
有機ジルコニア化合物としては、例えば、ノルマルプロピルジルコネート、ノルマルブチルジルコネート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムモノアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート等が挙げられる。
〈界面活性剤〉
界面活性剤は、同一分子中に親水基と疎水基とを有する化合物である。界面活性剤の親水基としては、具体的には、ヒドロキシ基、炭素数1以上のヒドロキシアルキル基、カルボニル基、エステル基、アミノ基、アミド基、アンモニウム塩、チオール、スルホン酸塩、リン酸塩、ポリアルキレングリコール基等が挙げられる。ここで、アミノ基は1級、2級、3級のいずれであってもよい。界面活性剤の疎水基としては、具体的にはアルキル基、アルキル基を有するシリル基、フルオロアルキル基等が挙げられる。
ここで、アルキル基は、置換基として芳香環を有していてもよい。界面活性剤は、上記のような親水基と疎水基とをそれぞれ同一分子中に少なくとも1個ずつ有していればよく、各基を2個以上有していてもよい。このような界面活性剤としては、より具体的には、ミリスチルジエタノールアミン、2−ヒドロキシエチル−2−ヒドロキシドデシルアミン、2−ヒドロキシエチル−2−ヒドロキシトリデシルアミン、2−ヒドロキシエチル−2−ヒドロキシテトラデシルアミン、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ジ−2−ヒドロキシエチル−2−ヒドロキシドデシルアミン、アルキル(炭素数8〜18)ベンジルジメチルアンモニウムクロライド、エチレンビスアルキル(炭素数8〜18)アミド、ステアリルジエタノールアミド、ラウリルジエタノールアミド、ミリスチルジエタノールアミド、パルミチルジエタノールアミド、パーフルオロアルケニル、パーフルオロアルキル化合物等が挙げられる。
〈シリコーンオイル〉
シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル等のストレートシリコーンオイルや、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、カルルビノール変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、異種官能基変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル、親水性特殊変性シリコーンオイル、高級アルコキシ変性シリコーンオイル、高級脂肪酸含有変性シリコーンオイル及びフッ素変性シリコーン等の変性シリコーンオイルが挙げられる。
上記表面修飾剤は、ヘキサン、トルエン、メタノール、エタノール、アセトン、水等で適宜希釈して、溶液の形態で水熱反応後の反応液と混合されることが好ましい。また、上記表面修飾剤によって導入される有機官能基中の炭素原子数は、1〜6であることが好ましい。これにより耐久性を向上させることができる。また、表面修飾剤を含む溶液は、pH調節剤を用いて適当なpH値(例えば、2〜12)に調節してもよい。ここで、pH調節剤としては、特に制限されず、後述のpH調節剤と同様のものが使用できる。
表面修飾剤を使用する場合の表面修飾剤の添加量は、特に制限されないが、水熱反応により得られた二酸化バナジウム含有粒子の質量に対して、0.1〜100質量%の範囲内であることが好ましく、1〜10質量%の範囲内であることがより好ましい。
表面修飾剤の添加は、二酸化バナジウム含有粒子表面を修飾する観点から、水熱反応直後(反応終了時点の直後)に開始することが好ましい。具体的には反応終了時点から10秒以内に添加を行うことが好ましく、5秒以内に添加を行うことがより好ましい。
表面修飾剤の添加方法としては、特に制限されず、公知の方法を用いることができる。例えば、図2に記載の流通式反応装置(1)を用いる場合は、水熱反応直後の反応液に対して、表面修飾剤(又は表面修飾剤を含む溶液)を、タンク(10)からポンプ(12)で流路(11)を介して、加熱部配管(17)に合流させることで、反応液と混合することができる。
表面修飾剤を含む溶液が流路(11)を通過(流通)する速度(流通速度)は、特に制限されないが、好ましくは0.01〜10mL/秒の範囲内であり、より好ましくは0.1〜5mL/秒の範囲内である。
このような流通速度であれば、表面修飾剤と二酸化バナジウム含有粒子とを十分接触させて、有機部位の割合が小さいため耐久性は確保したまま、表面修飾剤による効果(粒子の凝集抑制効果、分散安定性や保存安定性)を有効に発揮させることができる。
水熱反応後の反応液と表面修飾剤との混合位置(配管11の設置位置)は、特に制限されないが、表面修飾剤の添加を水熱反応直後に開始するために、水熱反応部(16)の出口(B)の直後に配置することが好ましい。また、流通式反応装置(1)のように、水熱反応部(16)の後に冷却部(8)を有する場合は、図2で示すように、水熱反応部(16)の直後であって冷却部(8)の前に配置することが好ましい。
なお、表面修飾剤とともに、後述のpH調整剤、後述の冷却工程における冷却媒体を用いる場合は、タンク(10)、流路(11)及びポンプ(12)により構成される別ラインを個別に設けてもよい。
(2)pH調整剤
本発明の流通式反応装置を用いた二酸化バナジウム含有粒子の製造方法においては、水熱反応直後の反応液に対し、さらに、タンク(10)より、流路(11)を経由してpH調整剤を添加することができる。
pH調整剤としては、特に制限されないが、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、シュウ酸(水和物を含む)、水酸化アンモニウム、アンモニア等の有機又は無機の酸又はアルカリ等を用いることができる。
水熱反応後の反応液のpHは、二酸化バナジウム含有粒子の粒径、粒径分布、二酸化バナジウム含有粒子のサーモクロミック性及び二酸化バナジウム含有粒子を含む光学フィルムの透明性の観点から、3.0〜9.0の範囲内であることが好ましく、より好ましくは4.0〜7.0の範囲内である。なお、pH調節剤は、水熱反応においてバナジウム含有化合物と反応する化合物として用いたアルカリ、及び還元剤等と同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。
上記pH調整剤は、メタノール、エタノール、水等で適宜希釈して、溶液の形態で水熱反応後の反応液と混合されることが好ましい。
pH調整剤の添加方法としては、特に制限されず、公知の方法を用いることができる。例えば、図2に記載の流通式反応装置(1)を用いる場合は、水熱反応直後の反応液に対して、pH調整剤(又はpH調整剤を含む溶液)を、タンク(10)からポンプ(12)で流路(11)を経由して、反応液と混合することができる。
水熱反応後の反応液とpH調整剤との混合位置(流路(11)の設置位置)としては、特に制限されないが、表面修飾剤の添加を水熱反応後に開始する観点からは、水熱反応部(16)の後に配置することが好ましい。また、図2で示す流通式反応装置(1)において、水熱反応部(16)の後に冷却部(8)を有する場合は、水熱反応部(16)の後であって、冷却部(8)の前に配置してもよいし、冷却部(8)の後であってタンク(9)の前に配置されていてもよい。
なお、pH調整剤とともに、前述の表面修飾剤、や後述の冷却工程における冷却媒体を用いる場合は、タンク(10)、流路(11)及びポンプ(12)より構成される供給ラインは、それぞれ個別に設けてもよい。また、pH調整剤及び表面修飾剤、又はpH調整剤及び冷却媒体を混合し、一つの供給ラインにより供給させる方法であってもよい。
また、pH調整剤の添加が、下記で説明する冷却工程よりも前に行われる場合は、これらの添加は水熱反応工程に含まれるものとし、下記の冷却工程以後に行われる場合は、冷却工程に含まれるものとする。
〔2〕冷却工程
本発明の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法においては、〔1〕水熱反応工程に加えて、水熱反応後の反応液(二酸化バナジウム含有粒子を含む分散液)を冷却する冷却工程(図2で示す冷却部(8))をさらに有することが好ましい。
冷却工程は、水熱反応を所定時間行って(反応終了時点)から1分以内に、水熱反応後の反応液の冷却を開始することが好ましいが、反応液全量をこの時間内に冷却することが難しい場合は、反応時間に幅を持たせて反応液を反応温度に保ちながら所定量ずつ順次冷却してもよい。
本工程では、冷却速度は適宜調整することができる。
水熱反応後の反応液の冷却方法は、特に制限されず、公知の方法と同様にして、又は適宜変更して適用できる。冷却方法としては、例えば、水熱反応後の反応液を必要であれば撹拌しながら冷却媒体中に浸漬する方法、水熱反応後の反応液と冷却媒体(特に水)とを混合する方法、水熱反応後の反応液にガス状の冷却媒体(例えば、液体窒素)を通過させる方法などが挙げられる。これらのうち、冷却速度の制御が容易である点から、図1で例示するように、水熱反応後の反応液と冷却媒体とを配管を介して接触させる方法が好ましい。ここで、少なくとも、流通式反応装置(1)において、冷却は、水熱反応部(16)に、直接又は他の構成部分を介して接続された、冷却部(8)を用いて行われることが好ましい。
流通式反応装置(1)において、水熱反応部(16)に接続され、内部に流路(18)を有する冷却部(8)を用いた冷却方法について説明する。なお、本発明に用いることができる冷却方法は、以下で説明する形態に限定されない。
本発明に係る冷却方法としては、水熱反応後の反応液を流通式反応装置(1)の流路(18)を通過(流通)させることにより冷却することが好ましい。すなわち、図2に示す流通式反応装置(1)を例として説明すると、水熱反応部(16)の下流側で、二酸化バナジウム含有粒子を含む反応液を冷却部(8)の流路(18)を通過(流通)させることにより冷却を行う。冷却部(8)には、冷却媒体(C)が流入し、流路(18)を外面より冷却している。
また、他の方法としては、冷却媒体(例えば、水)と混合して冷却することを目的として、流通式反応装置(1)において、前述のようにタンク(10)を、前記説明した表面修飾剤やpH調整剤を入れるために用いる方法に代えて、又は同様の添加ラインを別に設けて、冷却媒体を直接添加するに用いてもよい。このとき、冷却媒体を、流路(11)を介して流通させるためのポンプ(12)をさらに有してもよい。
また、この場合、冷却媒体としては、pH調整剤が媒体として水等に溶解されている形態では、pH調整効果を有する冷却媒体として用いてもよい。
冷却媒体を使用する場合の、冷却媒体の水熱反応後の反応液との混合割合は、所望の冷却速度を達成できる限り、特に制限されない。例えば、冷却媒体を、水熱反応後の反応液に比して、1〜2000倍(体積比)、より好ましくは10〜1000倍(体積比)の割合で混合することが好ましい。なお、上記混合割合は、水熱反応後の反応液及び冷却媒体の流通速度を上記したような割合になるように設定することによって制御できる。
また、冷却媒体の温度は、特に制限されないが、二酸化バナジウムの相転移温度(約68℃)より高いことが好ましく、70〜95℃であることがより好ましい。上記に代えて又は上記に加えて、水熱反応後の反応液を水と混合してから5分間以上、前記水熱反応直後の反応液と水との混合物の温度を70〜95℃に維持することがより好ましい。このような温度に設定することによって、所望のルチル型結晶相(R相)の二酸化バナジウムの純度をより向上できる。なお、水熱反応直後の反応液と水との混合物の温度を維持する時間の上限は、特に制限されないが、水熱反応直後の反応物を水と混合してから10分以下であれば十分である。
冷却媒体を使用する場合には、水熱反応後の反応液と冷却媒体(好ましくは水)との混合物のpHは、特に制限されないが、4.0〜7.0の範囲内であることが好ましい。上記の範囲内にpHを設定することによって、粒子形成(結晶析出)後の二酸化バナジウム含有粒子の安定性を向上できる。ゆえに、所望のルチル型結晶相(R相)の二酸化バナジウムの純度をより向上し、二酸化バナジウム含有粒子のサーモクロミック性をより有効に向上できる。なお、かようなpHの値の達成手段は、特に制限されず、前述のpH調整剤を冷却工程前の水熱反応後の反応液に添加することで達成されてもよく、冷却工程においてpH調整剤が混合された冷却媒体を用いることで達成されてもよい。
冷却媒体を使用する場合について、水熱反応後の反応液と冷却媒体との混合位置(配管11の設置位置)は、特に制限されないが、水熱反応後の反応液の冷却効率などを考慮すると、配管(11)が、タンク(9)側の出口から10〜500mmの距離の位置で加熱部配管(17)と連結されていることが好ましい。
冷却された水熱反応後の反応液(冷却液)は、制御弁(19)を経由して、タンク(9)に貯留される。貯留後は、濾過(例えば、限外濾過)や遠心分離により、分散媒や溶媒の置換を行い、二酸化バナジウム含有粒子を水やアルコール(例えば、エタノール)等によって洗浄してもよい。また、得られた二酸化バナジウム含有粒子は、任意の手段により乾燥してもよい。
[製造条件2:実施態様2]
実施態様2においては、水熱反応部を有する流通式反応装置を用いて、少なくともバナジウム含有化合物及び水を含むスラリー原料液と、当該バナジウム含有化合物と反応する化合物を調製した後、当該反応液を、前記流通式反応装置を構成する水熱合成を行う水熱反応部において、通過時間3〜1000秒の範囲内で水熱反応を行うことを特徴とする。
水熱反応部において、高圧下、超臨界又は亜臨界状態の水の存在下で実施することにより、二酸化バナジウム含有粒子の平均粒径(D)、及び多分散指数(PDI)の値を極めて小さくすることが可能であり、特に優れた二酸化バナジウム含有粒子のサーモクロミック性及び二酸化バナジウム含有粒子を含む光学フィルムの透明性を達成し得る。この理由は、水熱反応を高圧下、超臨界又は亜臨界状態の水の存在下で実施することにより、ごく短時間で液混合及び反応が完了することとなり、析出した二酸化バナジウムの微結晶が大きく結晶成長するための十分な時間を与えないからであると推測している。
流通式反応装置を用いた水熱反応を行う場合は、本発明に係る製造条件2(実施態様2)においては、流通式反応装置の水熱合成を行う水熱反応部における、バナジウム含有化合物及び水を含む原料液と、当該バナジウム含有化合物と反応する化合物と、超臨界又は亜臨界状態の水とを混合した反応液の通過時間を、3〜1000秒の範囲内であることを特徴とし、この条件とすることにより、二酸化バナジウム含有粒子をより確実に形成することができ、好ましくは、4〜700秒の範囲内であり、さらに好ましく12〜700秒の範囲内である。
次いで、図を交えて、製造条件2(実施態様2)に適用可能な流通式反応装置における反応液の構成と工程フローについて説明する。
本発明に係る製造条件2における反応液は、基本的には、1)バナジウム含有化合物(A)及び水を含む原料液と、2)当該バナジウム含有化合物と反応する化合物(B)と、3)超臨界又は亜臨界状態の水とにより構成されるが、少なくとも1)バナジウム含有化合物(A)及び水を含む原料液と、3)超臨界又は亜臨界状態の水とをそれぞれ分割した構成要件とし、1)又は3)に2)バナジウム含有化合物と反応する化合物(B)を共存させる形態が好ましい実施態様である。
図3Aに、本発明の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法に係る製造条件2(実施態様2)に好適な実施態様2Aを、図3Bに、本発明の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法に係る製造条件2(実施態様2)に好適な実施態様2Bに係る製造フローを示す。
〔実施態様2A〕
実施態様2Aは、図3Aで示すように、原料液容器1(5)に、1)バナジウム含有化合物(A)及び水を含む原料液と、2)バナジウム含有化合物と反応する化合物(B)、例えば、アルカリ又は還元剤を添加し、他方の原料液容器2(2)に、水としてイオン交換水を添加し、イオン交換水を加熱媒体(13)で所定の温度、圧力下で、超臨界又は亜臨界状態の水としたのち、両者を合流点(MP)で会合させて反応液とした後、水熱反応部を構成する水熱反応部(16)内の加熱部配管(17)で水熱処理を施して、二酸化バナジウム含有粒子を調製する方法である。
〔実施態様2B〕
実施態様2Bは、図3Bで示すように、原料液容器1(5)に、1)バナジウム含有化合物(A)及び水を含む原料液を添加し、他方の原料液容器2(2)に、2)バナジウム含有化合物と反応する化合物(B)を含有するイオン交換水を添加し、当該バナジウム含有化合物と反応する化合物(B)を含有するイオン交換水を加熱媒体(13)で所定の温度、圧力下で、超臨界又は亜臨界状態の水としたのち、両者を合流点(MP)で会合させて反応液とした後、水熱反応部を構成する水熱反応部(16)内の加熱部配管(17)で水熱処理を施して、二酸化バナジウム含有粒子を調製する方法である。
上記説明した本発明の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法に係る製造条件2(実施態様2)で適用する流通式反応装置の一例としては、製造条件1にて説明した図2で示した水熱反応部を具備した流通式反応装置を同様に適用することができ、その詳細な説明は省略する。また、水熱反応部を具備した流通式反応装置の水熱反応工程の構成及び水熱反応条件(温度・圧力)、加熱部配管、冷却工程等についても、製造条件1にてその詳細を記載した内容に従って適用することができる。
〔レイノルズ数Re〕
本発明に係る製造条件2(実施態様2)においては、二つの構成液を合流点(MP)で合流させて反応液を調製し、水熱反応部の加熱部配管(17)を通過(流通)させる際の反応液のレイノルズ数Reを1000〜45000の範囲内に制御することが好ましく、さらに好ましくは、2000〜10000の範囲内であることが、バナジウム塩水溶液と超臨界又は亜臨界状態の水とを、水熱反応部の配管内で効率的かつ均一組成の混合物とすることができ、粒径分布の狭い二酸化バナジウム含有粒子組成物を得ることができる点で好ましい。
本発明でいうレイノルズ数Reとは、以下の定義に従う。
混合液が通過する水熱反応部の加熱部配管(17)の内部流路の円相当径をD(m)、内部流路の混合液の線速度(m/s)をU、混合液の密度(kg/m)をρ、混合液の粘性係数(Pa・s)をηとすると、混合液のレイノルズ数Reは、下式(1)により求められる無次元数により求められる。
式(1)
Re=DUρ/η
一般に、Reが2300未満である領域を層流といい、2300<Re<3000の範囲内である時を遷移域といい、Reが3000を超える領域を乱流という。
本発明において、混合液のレイノルズ数Reを1000〜45000の範囲内に制御する方法としては、各流路(3、6)内に設置されているポンプ(4、7)の送液圧力、加熱部配管(17)の内径、圧力や流量を制御するための制御弁(19)等の条件を適宜設定することにより制御することができる。
〔構成材料について〕
(バナジウム含有化合物)
製造条件2(実施態様2)においては、
1)バナジウム含有化合物(A)及びバナジウム含有化合物と反応する化合物(B)を含む原料液と、超臨界又は亜臨界状態の水とを混合して得られる反応液(実施態様2A)、
又は2)バナジウム含有化合物(A)を含む原料液と、バナジウム含有化合物と反応する化合物(B)を含む超臨界又は亜臨界状態の水とを混合して得られる反応液(実施態様2B)を、
それぞれ所定の温度及び圧力を付与した水熱反応部において、超臨界水又は亜臨界水の存在下で、通過時間を、3〜1000秒の範囲内で水熱反応させことにより、二酸化バナジウム含有粒子が得られる。
適用可能なバナジウム含有化合物(A)としては、前述の製造条件1(実施態様1)でその詳細を説明した化合物を適用することができる。
また、四価のバナジウム(IV)含有化合物と、バナジウム含有化合物(A)と反応する化合物(B)であるアルカリ、又は五価のバナジウム(V)含有化合物と、バナジウム含有化合物(A)と反応する化合物(B)である還元剤等についても、前述の製造条件1(実施態様1)の説明にてその詳細を記載した化合物を適用することができる。
(反応液で使用する水)
バナジウム含有化合物を溶解するための水、バナジウム含有化合物と反応する化合物を溶解するための水、及び超臨界水又は亜臨界水とするために使用する水は、不純物の少ないものが好ましく、特に制限されるものではないが、例えば、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水、窒素(N)ナノバブル処理された水等を用いることが好ましく、窒素(N)ナノバブル処理された水を使用することがより好ましい。
ここで、窒素(N)ナノバブル処理された水(Nナノバブル処理水)は、水中に窒素を混合する(バブリングする)ことによって調製される。窒素(N)ナノバブル処理された水を使用することによって、水の溶存酸素濃度が低下するため、得られる二酸化バナジウム含有粒子が再度酸化されることを抑制・防止して、得られる二酸化バナジウム含有粒子の粒径をより小さくし、かつ粒径分布をより狭く(多分散指数を小さく)することができる。ここで、窒素(N)ナノバブル処理された水の溶存酸素濃度は、特に制限されないが、2mg/L以下、好ましくは1mg/L以下(下限:0mg/L)であることが好ましい。
ここで、反応液に含まれる水が窒素(N)ナノバブル処理された水である場合、バナジウム含有化合物及び水を含む原料液に含まれる水、又はバナジウム含有化合物と反応する化合物及び水を含む原料液に含まれる水の少なくとも一方が、窒素(N)ナノバブル処理された水であることによって、反応液に含まれる水が窒素(N)ナノバブル処理された水となることが好ましい。また、各原料液に含まれる水の両方が、窒素(N)ナノバブル処理された水であることによって、反応液に含まれる水が窒素(N)ナノバブル処理された水となることがさらに好ましい。
(各種添加剤)
本発明に係る製造条件2においては、従来公知の各種添加剤を適用することができ、例えば、二酸化バナジウム含有粒子の相転移調節剤、表面修飾剤(有機ケイ素化合物、有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物、有機ジルコニア化合物、界面活性剤、シリコーンオイル等)、pH調整剤等を挙げることができ、これら各種添加剤の具体的な化合物は、前述の製造条件1(実施態様1)の説明にてその詳細を記載した化合物を適用することができる。
[製造条件3:実施態様3]
本発明に係る製造条件3(実施態様3)においては、水熱反応部を有する流通式反応装置を用いて、少なくともバナジウム含有化合物及び水を含むスラリー原料液と、当該バナジウム含有化合物と反応する化合物と、超臨界又は亜臨界状態の水とを混合した反応液を用い、水熱合成方法により二酸化バナジウム含有粒子を製造する二酸化バナジウム含有粒子の製造方法において、前記スラリー原料液を前記水熱合成法により処理する前に、前記スラリー原料液から塩類を除去する脱塩処理を施したのち、水熱合成方法により製造した二酸化バナジウム含有粒子の平均一次粒径を15〜40nmの範囲内とし、かつ平均結晶子径を15〜40nmの範囲内になるように調整することを特徴とする。
(製造条件3における二酸化バナジウム含有粒子の基本的な製造フロー)
図4は、脱塩処理工程を有する二酸化バナジウム含有粒子の製造条件3の製造工程の一例を示す工程フロー図である。
二酸化バナジウム含有粒子の製造方法としては、第1ステップでは、スラリー原料液の調製を行う。詳しくは、本発明に係るスラリー原料液は、その主な構成要素として、(1)バナジウム含有化合物、(2)バナジウム含有化合物と反応する化合物(例えば、アルカリ)、及び(3)イオン交換水で構成され、その他に必要に応じて、各種添加剤が添加されている。
第2ステップでは、上記調製したスラリー原料液に脱塩処理を施し、不要な塩類(例えば、アンモニウムイオン、硫酸イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン等)をスラリー原料液から取り除き、スラリー原料液の電気伝導率を1000μS/m以下に調整する工程である。適用可能な脱塩処理方法としては、特に制限はないが、例えば、デカンテーション法、遠心分離法、限外濾過法等を挙げることができるが、その中でも、特に、限外濾過法が好ましい。
スラリー原料液の電気伝導率としては、好ましくは50〜1000μS/mの範囲内であり、さらに好ましくは100〜800μS/mの範囲内である。本発明において、電気伝導率は、市販の電気伝導率計を用いて、容易に測定することができる。
次いで、第3ステップでは、脱塩処理を施したスラリー原料液と、超臨界化又は亜臨界化したイオン交換水と会合させて「反応液」を調製した後、水熱反応装置(例えば、流通式反応装置)を用いて高温高圧下で反応させて、平均一次粒径が15〜40nmの範囲内で、かつ平均結晶子径が15〜40nmの範囲内にある二酸化バナジウム含有粒子を製造する。
(脱塩処理)
本発明に係る製造条件3では、水熱合成法により二酸化バナジウム含有粒子を形成する前に、上記調製したスラリー原料液に対し、所定量の塩類を除去する脱塩処理を施すことを特徴とする。
脱塩処理手段としては、スラリー原料液から塩類、例えば、アンモニウムイオン、硫酸イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン等を所定の濃度取り除くことができる方法であれば特に制限はなく、例えば、デカンテーション法、遠心分離法、限外濾過法等を適用することができるが、その中でも、特に、限外濾過法が好ましい。
〈遠心分離法〉
第2ステップの脱塩処理に適用可能な遠心分離法では、上記調製したスラリー原料液を、遠心分離機により、固相と液相に分離を行った後、不要な塩類を含む水相の分離液の一部を、デンカンテーション法により系外に排出し、その後、排出した分離液と同容量のイオン交換水を、脱塩処理したスラリー原料液に追加添加し、その後分散処理を行い、この操作を繰り返して、不要の塩類を系外に排出して、スラリー原料液を所定の電気伝導率に調整する。
〈限外濾過法〉
次いで、図を交えて本発明に好適な限外濾過法を用いた脱塩処理方法について説明する。
図5は、本発明に係る二酸化バナジウム含有粒子の製造に用いる脱塩装置の一例である限外濾過装置の脱塩処理フローを示す概略図である。
図5に示す限外濾過装置(50)は、スラリー原料液(52)を貯留する調整釜(51)、補充用イオン交換水(58)を貯留している補充用イオン交換水ストック釜(57)、補充用イオン交換水(58)を、調整釜(51)に添加する補充用イオン交換水供給ライン(59)、調整釜(51)を、循環ポンプ(54)により循環させる循環ライン(53)、循環ライン(53)の経路内に脱塩手段として限外濾過部(55)、調整釜(51)内に電気伝導率計(60)が配置されている構成である。
限外濾過装置を用いた脱塩処理のフローについて説明する。
〈1〉工程(I)
調整釜(51)に、上記で説明した方法により調製した、バナジウム含有化合物、バナジウム含有化合物と反応する化合物及びイオン交換水を含むスラリー原料液(52)を貯留して、循環ポンプ(54)を用いて循環させながら、限外濾過部(55)で、スラリー原料液中の塩類を含む水分を排出口(56)より、排出量V1で排出して、スラリー原料液を所定の濃度まで濃縮する。
〈2〉工程(II)
次いで、限外濾過部(55)で濃縮したスラリー原料液(52)に対し、補充用イオン交換水ストック釜(57)より、補充用イオン交換水供給ライン(59)を経由して、限外濾過部(55)での排出量V1と同容量の補充用イオン交換水(58)を添加量V2で添加し、十分に撹拌混合して、第一次の脱塩したスラリー原料液(52)を調製する。この時、電気伝導率計(60)により、第一次の脱塩したスラリー原料液(52)の電気伝導率(μS/m)を測定する。
〈3〉工程(III)
次いで、上記工程(I)と同様にして、循環ポンプ(54)により循環させながら、限外濾過部(55)で、スラリー原料液(52)中の構成液(イオン交換水+塩類)を排出量V1で系外に排出(56)する。
〈4〉工程(IV)
次いで、上記工程(II)と同様にして、濃縮した混合溶液(52)に対し、補充用イオン交換水ストック釜(57)より、補充用イオン交換水供給ライン(59)を経由して、排出量V1と同容量の補充用イオン交換水(58)を添加量V2で添加し、十分に撹拌混合して、第二次の脱塩したスラリー原料液(52)を調製する。この時、電気伝導率計(60)により、第一次の脱塩したスラリー原料液(52)の電気伝導率(μS/m)を測定する。
上記工程(III)及び工程(IV)を繰り返し、スラリー原料液(52)の電気伝導率(μS/m)が、所望の条件となるまで、繰り返して行い、脱塩処理済みのスラリー原料液(52)を調製する。
上記脱塩処理工程で用いる限外濾過方法としては、例えば、リサーチ・ディスクロージャー(Research Disclosure)のNo.10208(1972)、No.13122(1975)及びNo.16351(1977)などの記載の方法を参照することができる。
操作条件として重要な圧力差や流量は、大矢春彦著「膜利用技術ハンドブック」幸書房出版(1978)、p275に記載の特性曲線を参考に設定することができる。
限外濾過膜は、膜材質を構成する有機膜としては、既にモジュールとして組み込まれた平板型、スパイラル型、円筒型、中空糸型、ホローファイバー型などが旭化成(株)、(株)ダイセル化学、東レ(株)、日東電工(株)などから市販されているが、耐溶媒性を備えた膜としては、日本ガイシ(株)、(株)ノリタケカンパニーリミテッドなどのセラミック膜が好ましい。
具体的な濾過方法としては、例えば、濾過膜としてSartorius stedim社製ビバフロー50(有効濾過面積50cm、分画分子量5000)を用い、流速300mL/min、液圧100kPa、室温で限外濾過を行う方法や、ポリエーテルスルホン製で分画分子量が30万の濾過膜を有する限外濾過装置(メルクミリポア株式会社製 ペリコン2カセット)等を挙げることができる。
(製造条件3に適用可能な水熱反応装置)
二酸化バナジウム含有粒子の製造条件3においては、上記脱塩処理を施したスラリー原料液は、図4のフロー図の第3ステップで示すように、水熱合成法により、平均一次粒径が15〜40nmの範囲内で、かつ平均結晶子径が15〜40nmの範囲内にある二酸化バナジウム含有粒子を製造する。
図6は、本発明の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法に適用する製造条件3(実施態様3)における好適な製造フローを示す概略図である。
図6で示すように、脱塩処理済みのスラリー原料液を貯留する原料液容器1(5)には、1)バナジウム含有化合物、2)バナジウム含有化合物と反応する化合物、例えば、イオン交換水に所定の濃度で溶解したアルカリと、3)イオン交換水を添加し、他方の原料液容器2(2)に、水としてイオン交換水を添加し、このイオン交換水を加熱媒体(13)で所定の温度、圧力下で、超臨界又は亜臨界状態のイオン交換水としたのち、両者を合流点(MP)で会合させて反応液とした後、水熱反応部を構成する水熱反応部(16)内の加熱部配管(17)で水熱処理を施して、二酸化バナジウム含有粒子を調製する方法である。
製造条件3(実施態様3)に適用するその他の製造条件、例えば、水熱反応部を有する流通式反応装置の構成(図2)、水熱反応条件、スラリー原料液の調製、スラリー原料液の構成材料(バナジウム含有化合物、アルカリ、各種添加剤等)については、前述の製造条件1(実施態様1)又は製造条件2(実施態様2)にて、その詳細を説明した各構成要件を適宜選択して適用することができる。
[製造条件4:実施態様4]
実施態様4においては、水熱反応部を有する流通式反応装置を用いて、少なくともバナジウム含有化合物及び水を含むスラリー原料液と、当該バナジウム含有化合物と反応する化合物と、超臨界又は亜臨界状態の水とを混合した反応液を用い、水熱合成方法により二酸化バナジウム含有粒子を製造する二酸化バナジウム含有粒子の製造方法において、前記二酸化バナジウム含有粒子を製造する工程の前に、前記スラリー原料液を分散処理する工程を有し、前記二酸化バナジウム含有粒子の粒径分布幅を80nm以下に調整することを特徴とする。
二酸化バナジウム含有粒子の製造方法において、製造条件4を適用し、スラリー原料液に対し流通式反応装置を用いた水熱合成を実施する前にあらかじめ分散処理を施し、スラリー原料液中のバナジウム含有化合物の分散粒径を小さくすることで、水熱合成後の二酸化バナジウム含有粒子の粒径分布幅を狭くし、かつ、サーモクロミック性を向上させることができる。
(スラリー原料液の分散処理工程)
本発明に係る製造条件4においては、スラリー原料液を水熱反応させる前に、スラリー原料液に対し分散処理を施すことを特徴とする。
スラリー原料液を分散する方法としては、特に制限はないが、例えば、高圧分散、メディア分散、超音波分散、界面活性剤等の分散剤を添加することによる分散(以下、化学分散ともいう。)等が挙げられ、中でも、高圧分散を用いることが好ましい。高圧分散ではスラリー原料にダメージを与えずに(形状を変化させない)分散が可能となる。また、上記分散方法は、いずれか一つの方法を採用してもよいし、二つの方法を併用してもよく、例えば、化学分散と高圧分散とを併用することができる。
高圧分散とは、高圧に加圧されたスラリー原料液の高流速によるせん断力、急激な圧力降下(キャビテーション)及び高流速の粒子同士が微細オリフィス内で対面衝突することによる衝撃力によって磨砕を行う高圧ホモジナイザーを用いた分散方法であり、市販されている装置としては、ナノヴェイタ(吉田機械興業株式会社製)、ナノマイザー(ナノマイザー株式会社製)、マイクロフルイダイザー(Microfluidics社製)等が挙げられる。
メディア分散とは、容器内にメディアとしてビーズを充填し、撹拌されているビーズ中に、少なくともバナジウム含有化合物粒子と媒体(例えば、水。)より構成されているスラリー原料液を流入し、媒体中でビーズとともに撹拌することにより、バナジウム含有化合物粒子の粉砕(微粒子化)や凝集体の解膠を行う分散方法である。また、スラリーとビーズとの分離に、遠心分離を用いる装置もある。メディア分散に用いるビーズとしては、セラミックビーズ、ガラスビーズ、スチールビーズ、窒化ケイ素ビーズ、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ等を挙げることができる。また、メディア分散に用いられる装置としては、ペイントシェーカー(RED DEVIL社製)、スターミルZRS(アシザワ・ファインテック(株)製)、ウルトラアペックスミル((株)広島メタル&マシナリー製)、MSC−MILL(日本コークス工業(株))等が挙げられる。
超音波分散とは、発振周波数20〜200kHzの範囲内でスラリー原料液を分散する方法である。超音波分散に用いられる装置としては、超音波分散機(SMT社製)等が挙げられる。
化学分散とは、スラリー原料液中に、界面活性剤等の分散剤を添加して、スラリー原料を分散する方法である。
化学分散に用いられる分散剤としては、本発明の効果を損なわない範囲において特に制限されないが、例えば、グリシン、トレオニン、サルコシン、アラニン、ポリビニルピロリドン(PVP)等が挙げられる。
分散剤の添加量としては、バナジウム含有化合物(100質量%)に対し、5〜20質量%の範囲内であることが好ましい。
分散処理工程では、スラリー原料液中のバナジウム含有化合物の分散処理後の分散粒径を300nm以下に調整することが好ましい。分散粒径が300nm以下であれば、光学フィルムのヘイズ及びΔTSERを良化させることができる。ΔTSERとは、低温環境と高温環境における遮熱性(TSER)の差である。分散処理後の分散粒径が水熱合成後の二酸化バナジウム含有粒子の分散粒径を決定していると考えられ、二酸化バナジウム含有粒子の分散粒径が小さいと比表面積が増大し、二酸化バナジウム含有粒子の光吸収能力が大きくなり、ΔTSERの向上につながると考えている。
なお、本発明において、分散粒径は、動的光散乱解析装置(Malvern社製ZetasizerNano S)を用いて、動的光散乱(Dynamic Light Scattering:DLS)法によって、平均粒径(Z平均)を求め、この値を分散粒径とする。
(二酸化バナジウム含有粒子の粒径分布)
本発明に係る製造条件4においては、水熱反応工程では、水熱反応部を有する流通式反応装置を用いて、分散処理したスラリー原料液と超臨界又は亜臨界状態の水とを混合した反応液を水熱反応させて二酸化バナジウム含有粒子を製造し、二酸化バナジウム含有粒子の粒径分布幅を80nm以下に調整することを特徴とする。好ましくは、二酸化バナジウム含有粒子の粒径分布幅を50nm以下に調整する。
ここで、例えば、「粒径分布幅を80nm以下に調整する」とは、測定される二酸化バナジウム含有粒子の粒径を80nm以下に調整することをいう。
二酸化バナジウム含有粒子の粒径分布幅は、得られた粒子を走査型電子顕微鏡(FE−SEM)(日立社製、Hitachi S−4300型)により評価し、SEM写真(1250nm×850nm)を用いて、粒径の算出を行い作成する。ここで、粒径は、面積円相当径を意味する。具体的には、SEM写真において、各粒子の面積を測定し、同一の面積を有する円の直径を粒径とする。また、SEM写真において、寸法及び形状が最も普遍的な粒子30個を選定し、粒子30個の平均粒径を算出する。粒径範囲を5nmごとに区分を設け、ヒストグラムを作成し、この分布を粒径分布幅とする。
(二酸化バナジウム含有粒子の製造方法)
製造条件4(実施態様4)に適用するその他の製造条件、例えば、水熱反応部を有する流通式反応装置の構成(図2、図3A、図3B)、水熱反応条件、スラリー原料液の調製、スラリー原料液の構成材料(バナジウム含有化合物、アルカリ、各種添加剤等)については、前述の製造条件1(実施態様1)〜製造条件3(実施態様3)にて、その詳細を説明した各構成要件を適宜選択して適用することができる。
《二酸化バナジウム含有粒子の特性値》
本発明に係る製造条件1〜4によって製造される二酸化バナジウム含有粒子は、小さい粒径を有し、かつ狭い粒径分布を有していることが特徴である。
ここで、本発明に係る製造条件1、2及び4によって製造される二酸化バナジウム含有粒子においては、二酸化バナジウム含有粒子の平均粒径(D)は、特に制限されないが、1〜40nmの範囲内であることが好ましく、1〜30nmの範囲内であることがより好ましく、1〜25nmの範囲内であることがさらに好ましく、1〜15nmの範囲内であることが特に好ましく、1〜10nmの範囲内であることが最も好ましい。このような粒径の二酸化バナジウム含有粒子であれば、ヘイズを良好に下げ、サーモクロミック性を効果的に発現させることができる。なお、二酸化バナジウム含有粒子の粒径は、電子顕微鏡観察や動的光散乱法に基づく粒径測定法により測定できる。
動的光散乱法に基づいて粒径を測定する場合、動的光散乱解析装置(DLS−8000、大塚電子株式会社製)を用いて、動的光散乱(Dynamic Light Scattering, DLS)法によって流体力学的直径を測定する。本発明では、二酸化バナジウム含有粒子の平均粒径(D)(nm)は、下記の方法によって測定することができる。
二酸化バナジウム含有粒子及び水を含有する分散液を、それぞれ分散液の総質量に対して二酸化バナジウム含有粒子の濃度が0.01質量%となるよう水と混合し、超音波で15分間分散して測定用サンプルを調製する。
次いで、動的光散乱解析装置(DLS−8000、大塚電子株式会社製)を用いて、動的光散乱(Dynamic Light Scattering,DLS)法によって、流体力学的直径(nm)を測定し、これに基づいてキュムラント解析による粒径分布の平均粒径を求め、この値を平均粒径(D)(nm)とする。
また、二酸化バナジウム含有粒子の粒径度分布は、特に制限されないが、多分散指数(PDI)を指標とした場合に、多分散指数(PDI)が、0.30未満であることが好ましく、0.01〜0.25の範囲内であることがより好ましく、0.01〜0.15の範囲内であることがさらに好ましく、0.01〜0.10の範囲内であることが特に好ましく、0.01〜0.08の範囲内であることが最も好ましい。このような多分散指数(PDI)を示す粒径分布を有する二酸化バナジウム含有粒子であれば、二酸化バナジウム含有粒子のサーモクロミック性及び当該二酸化バナジウム含有粒子を適用した光学フィルムの透明性を有効に向上できる。なお、本発明でいう二酸化バナジウム含有粒子の粒度分布を示す「多分散指数(PDI)」は、下記の方法によって測定された値を採用する。
多分散指数(PDI)は、上記平均粒径(D)の測定と同様にして動的光散乱法(DLS法)により測定したキュムラント解析において粒径分布が正規分布すると仮定して算出した数値とした。
また、本発明に係る製造条件3によって製造される二酸化バナジウム含有粒子においては、特に、本発明の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法においては、製造される二酸化バナジウム含有粒子の平均一次粒径は15〜40nmの範囲内であり、平均結晶子径は15〜40nmの範囲内であることを特徴とする。
二酸化バナジウム含有粒子の平均一次粒径は、15〜40nmの範囲内であることを特徴とするが、15〜30nmの範囲内であることが好ましく、15〜25nmの範囲内であることがさらに好ましい。このような粒子径の二酸化バナジウム含有粒子であれば、ヘイズを良好に下げ、サーモクロミック性を効果的に発現させることができる。なお、二酸化バナジウム含有粒子の粒子径は、電子顕微鏡観察や動的光散乱法に基づく粒子径測定法により測定できる。
二酸化バナジウム含有粒子の粒子径測定に、上記説明した動的光散乱解析装置を用いて、動的光散乱法により測定する方法の他に、電子顕微鏡観察を用いる場合では、走査型電子顕微鏡(日立社製、Hitachi S−5000型)を用いて測定することができる。本発明では、二酸化バナジウム含有粒子の平均一次粒径(D)(nm)は、下記の方法によっても測定することができる。
二酸化バナジウム含有粒子及び水を含有する分散液を、120℃のオーブンで乾燥固化させて紛体とし、測定用の粒子サンプルを調製する。
次いで、得られた粒子サンプルを用い、走査型電子顕微鏡(日立社製、Hitachi S−5000型)によりSEM写真を撮影する。SEM写真(1100nm×950nm)を用いて、粒子径の算出を行う。ここで、粒子径は、面積円相当径を意味する。具体的には、SEM写真において、各粒子の面積を測定し、同一の面積を有する円の直径を粒子の粒子径とした。SEM写真において、寸法及び形状が最も普遍的な粒子30個を選定し、粒子30個の平均一次粒径を算出し、その平均値を平均一次粒径(D)(nm)とした。
また、二酸化バナジウム含有粒子の平均結晶子径は、15〜40nmの範囲内であることを特徴とするが、15〜30nmの範囲内であることが好ましく、15〜25nmの範囲内であることがさらに好ましい。
本発明に係る「結晶子」とは、多結晶粒子中において完全な単結晶として存在する微小結晶の最大の領域をいう。
図7は、本発明に係る二酸化バナジウム含有粒子の粒子構造の一例を示す模式図である。
図7で示すように、本発明に係る二酸化バナジウム含有粒子(P)は、複数の結晶子(CL)により形成されている。スラリー原料液に、事前に脱塩処理を施すこと、及び水熱反応処理時の温度及び時間によって、結晶子(CL)の成長速度を変化させることにより、酸化バナジウム含有粒子の平均結晶子径として、15〜40nmの範囲内に制御させることができる。なお、図7に示すDは、二酸化バナジウム含有粒子(P)の平均一次粒径である。
一般に、得られた平均結晶子径(A)は、結晶粒子中で同一方向に成長している結晶の大きさを表している。平均結晶子径(A)が小さいということは、結晶粒子中において、特定の同一方向に成長している結晶子(CL)が小さいということである。事前に脱塩処理を施したスラリー原料液を適用することにより、結晶子(CL)が成長するため、粒子径(D)に対し、結晶子径(A)が大きい結晶粒子ができる。
本発明に係る平均結晶子径(A)は、XRD(X−ray diffraction)測定により、下式(2)に示すシェラー(Scherrer)の式を用いて計算することができる。
式(2)
A=Kλ/βcosθ
上記式(2)において、Kはシェラー定数であり、λはX線波長である。βは、回折線の半値幅である。θは回折線に関するブラッグ角である。
《二酸化バナジウム含有粒子を含む分散液》
本発明に係る二酸化バナジウム含有粒子は、小粒径でかつ狭い粒径分布(均一粒径)を有するため、このような粒子を含む分散液として調製し、これを塗布することによって、サーモクロミック特性を向上するとともに、ヘイズの影響を低減でき、その結果、二酸化バナジウム含有粒子を含む透明性の高い光学フィルムを得ることができる。
分散液としては、水熱反応工程後の反応液又は冷却工程後の冷却液(反応液)をそのまま分散液として用いても、又は水熱反応工程後の反応液又は冷却液(反応液)に水やアルコール等を添加して希釈し、水熱反応工程後の反応液又は冷却液(反応液)の分散媒を水やアルコール等に交換して分散液として調製してもよい。
二酸化バナジウム含有粒子を分散させる方法は、特に制限されず、公知の分散装置、例えば、超音波分散機を用いてもよい。
分散液の分散媒は、水のみからなるものであってもよいが、例えば、水に加えて0.1〜10質量%(分散液中)程度の有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール、アセトン等のケトン類等を含んでもよい。また、分散媒としては、リン酸緩衝液、フタル酸緩衝液などを用いることもできる。
分散液には、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、フタル酸、水酸化アンモニウム、アンモニア等の有機又は無機の酸又はアルカリを用いて、所望のpHに調節してもよい。
分散液中での二酸化バナジウム含有粒子の凝集が抑制されるという観点から、分散液のpHは4〜7であることが好ましい。
分散液中での二酸化バナジウム含有粒子の濃度は、分散安定性の観点から、分散液の総質量に対して、0.01〜40質量%の範囲内であることが好ましく、0.5〜40質量%の範囲内であることがより好ましく、1〜30質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
《光学フィルム》
本発明に係る二酸化バナジウム含有粒子は、光学フィルムに好ましく用いることができる。ここでいう光学フィルムとは、透明基材、並びに透明基材上に形成される光学機能層を有し、当該光学機能層が、樹脂及び本発明に係る二酸化バナジウム(VO)含有粒子を含有する構成からなるサーモクロミック性を発現するフィルムである。
光学フィルムにおいては、ヘイズは4%以下であることが好ましく、より好ましくは2%以下である。
本発明において、光学フィルムのヘイズは、室温(25℃)にて、ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH2000)を用いて測定することができる。
光学フィルムのΔTSERは、5〜20%の範囲内であり、好ましくは10〜20%の範囲内である。
本発明において、光学フィルムのΔTSERは、具体的には、分光光度計(積分球使用、株式会社日立製作所製、U−4000型)を用いて、300〜2500nmの領域において、2nmおきの光透過率及び光反射率を測定する。その際に、光学フィルムの温度が低温(10℃)、高温(70℃)となるように調節する。
次に、JIS R 3106:1998に記載の方法に従い、日射反射率R(DS)と日射透過率T(DS)を求めた後、下記計算式から算出される低温時と高温時の遮熱性能(全日射エネルギー反射率(Total Solar Energy Reflectance:TSER))からΔTSERを算出する。
TSER(%)=((100−T(DS)−R(DS))×0.7143)+R(DS)
ΔTSER(%)=TSER(高温)−TSER(低温)
(透明基材)
光学フィルムに適用可能な透明基材としては、透明であれば特に制限はなく、ガラス、石英、透明樹脂フィルム等を挙げることができるが、フレキシブル性の付与や生産適性(ロールtoロール適性)の観点から、透明樹脂フィルムであることが好ましい。本発明でいう透明基材における「透明」とは、可視光領域における平均光線透過率が50%以上であることをいい、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上である。
本発明において、透明基材の厚さは、30〜200μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは30〜100μmの範囲内であり、さらに好ましくは35〜70μmでの範囲内である。透明基材の厚さが30μm以上であれば、取扱い中にシワ等が発生しにくくなり、また厚さが200μm以下であれば、合わせガラス作製時、ガラス基材と貼り合わせる際のガラス曲面への追従性がよくなる。
本発明において、透明基材は、光学フィルムのシワの生成や赤外線反射層の割れを防止する観点から、温度150℃において、熱収縮率が0.1〜3.0%の範囲内であることが好ましく、1.5〜3.0%の範囲内であることがより好ましく、1.9〜2.7%であることがさらに好ましい。
本発明において、光学フィルムに適用可能な透明基材としては、上述のように、透明であれば特に制限されることはいが、種々の透明樹脂フィルムを用いることが好ましく、例えば、ポリオレフィンフィルム(例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等)、ポリエステルフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等)、ポリ塩化ビニルフィルム、トリアセチルセルロースフィルム等を用いることができ、好ましくはポリエステルフィルム、トリアセチルセルロースフィルムであり、より好ましくはポリエステルフィルムである。
ポリエステルフィルム(以降、単にポリエステルと称す。)としては、特に限定されるものではないが、ジカルボン酸成分とジオール成分を主要な構成成分とするフィルム形成性を有するポリエステルであることが好ましい。主要な構成成分のジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルチオエーテルジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸などを挙げることができる。また、ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビスフェノールフルオレンジヒドロキシエチルエーテル、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、シクロヘキサンジオールなどを挙げることができる。これらを主要な構成成分とするポリエステルの中でも透明性、機械的強度、寸法安定性などの点から、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸や2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジオール成分として、エチレングリコールや1,4−シクロヘキサンジメタノールを主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、及びこれらを主要な構成成分とするポリエステルや、テレフタル酸と2,6−ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールとからなる共重合ポリエステル、及びこれらのポリエステルの2種以上の混合物を主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。
透明樹脂フィルムとしては、二軸配向ポリエステルフィルムであることが特に好ましいが、未延伸又は少なくとも一方に延伸された一軸延伸ポリエステルフィルムを用いることもできる。強度向上、熱膨張抑制の点から延伸フィルムが好ましい。特に、本発明において光学フィルムを具備した合わせガラスを、自動車のフロントガラスとして用いられる際に、延伸フィルムがより好ましい。
本発明において、透明基材として透明樹脂フィルムを用いる場合、取り扱いを容易にするために、透明性を損なわない範囲内で粒子を含有させてもよい。当該透明樹脂フィルムに適用可能な粒子としては、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シリカ、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子や、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子を挙げることができる。また、粒子を添加する方法としては、フィルムを形成する原料とする樹脂(例えば、ポリエステル等)中に、粒子を含有させる方法、押出機に直接添加する方法等を挙げることができ、このうちいずれか一方の方法を採用してもよく、二つの方法を併用してもよい。透明樹脂フィルムには必要に応じて上記粒子の他にも各種添加剤を加えてもよい。このような添加剤としては、例えば、安定剤、潤滑剤、架橋剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、染料、顔料、紫外線吸収剤などが挙げられる。
透明基材である透明樹脂フィルムは、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を溶媒と混合してドープを調製し、当該ドープを連続支持体上に流延することで製膜を行い、連続回転する無端の支持体上で一部乾燥を行った後に、無端支持体から剥離し、その後十分乾燥を行うとともに、任意に乾燥中や乾燥後に延伸処理を行うことにより、未延伸又は延伸された透明樹脂フィルムを製造する溶液流延法により作製することができる。また、例えば、材料となる樹脂を押出機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の透明樹脂フィルムを製造する、溶融流延法により作製することができる。
また、未延伸の透明樹脂フィルムを一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、透明樹脂フィルムの搬送方向(縦軸方向、MD方向)又は透明樹脂フィルムの搬送方向とは直角の横軸方向(幅手方向、TD方向)に延伸することにより、延伸透明樹脂フィルムを製造することができる。この場合の延伸倍率は、透明樹脂フィルムの原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向及び横軸方向にそれぞれ2〜10倍の範囲内で延伸することが好ましい。また、当該延伸処理は、あらかじめ延伸された透明樹脂フィルムに対してさらに行ってもよい。
また、透明樹脂フィルムは、寸法安定性の点で弛緩処理、オフライン熱処理を行ってもよい。弛緩処理は、例えば、ポリエステルフィルムの延伸製膜工程中の熱固定した後、横延伸のテンター内、又はテンターを出た後の巻き取りまでの工程で行われるのが好ましい。弛緩処理は処理温度が80〜200℃の範囲内で行われることが好ましく、より好ましい処理温度は100〜180℃の範囲内である。また搬送方向、横軸方向ともに、弛緩率が0.1〜10%の範囲で行われることが好ましく、より好ましくは弛緩率が2〜6%の範囲内で処理されることである。弛緩処理された基材は、オフライン熱処理を施すことにより耐熱性が向上し、さらに、寸法安定性が良好になる。
透明樹脂フィルムは、製膜過程で片面又は両面にインラインで下引層塗布液を塗布することが好ましい。透明樹脂フィルムに対して有用な下引層塗布液に使用する樹脂としては、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル変性ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンイミンビニリデン樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、変性ポリビニルアルコール樹脂及びゼラチン等が挙げられ、いずれも好ましく用いることができる。これらの下引層には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記の下引層は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法によりコーティングすることができる。上記の下引層の塗布量としては、0.01〜2g/m(乾燥状態)程度が好ましい。
(光学機能層)
光学フィルムの透明基材上には、樹脂及び本発明に係る二酸化バナジウム含有粒子を含有する光学機能層が設けられる。
ここで、光学機能層の形成に適用可能な樹脂としては、特に制限されず、広く一般に光学フィルムの光学機能層に使用されるのと同様の樹脂が使用でき、好ましくは水溶性高分子が使用できる。ここでいう「水溶性高分子」とは、25℃の水100gに0.001g以上溶解する高分子のことをいう。水溶性高分子の具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ゼラチン(例えば、特開2006−343391号公報記載のゼラチンを代表とする親水性高分子)、デンプン、グアーガム、アルギン酸塩、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリエチレングリコール、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマー、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ナフタリンスルホン酸縮合物や、アルブミン、カゼイン等のタンパク質、アルギン酸ソーダ、デキストリン、デキストラン、デキストラン硫酸塩等の糖誘導体などを挙げることができる。
光学機能層における二酸化バナジウム含有粒子の含有量は、所望のサーモクロミック性を得る観点から、光学機能層の総質量に対して1〜60質量%の範囲内であることが好ましく、5〜50質量%の範囲内であることがより好ましい。
光学機能層には、効果を損なわない範囲で各種添加剤を使用することができる。適用可能な各種の添加剤の一覧を以下に列挙する。例えば、特開昭57−74193号公報、特開昭57−87988号公報、及び特開昭62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号公報、特開昭57−87989号公報、特開昭60−72785号公報、特開昭61−146591号公報、特開平1−95091号公報、及び特開平3−13376号公報等に記載されている退色防止剤、アニオン、カチオン又はノニオンの各種界面活性剤、特開昭59−42993号公報、特開昭59−52689号公報、特開昭62−280069号公報、特開昭61−242871号公報、及び特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、防黴剤、帯電防止剤、マット剤、熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、減粘剤、滑剤、赤外線吸収剤、色素、顔料等の公知の各種添加剤などが挙げられる。
(製造方法)
光学フィルムの製造方法(光学機能層の形成方法)としては、特に制限されず、本発明に係る二酸化バナジウム含有粒子を使用する以外は、公知の方法が同様にして又は適宜修飾して適用できる。具体的には、二酸化バナジウム含有粒子を含む塗布液を調製し、当該塗布液を湿式塗布方式により透明基材上に塗布、乾燥して光学機能層を形成する方法が好ましい。
上記方法において、湿式塗布方式としては、特に制限されず、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、スライド型カーテン塗布法、又は米国特許第2761419号明細書、米国特許第2761791号明細書などに記載のスライドホッパー塗布法、エクストルージョンコート法などが挙げられる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、特記しない限り、「%」及び「部」は、それぞれ、「質量%」及び「質量部」を意味する。
初めに、本発明に係る製造条件1(実施態様1)の具体的な効果を実証する実施例1及び実施例2を、以下に示す。
実施例1
《二酸化バナジウム含有粒子の調製》
〔二酸化バナジウム含有粒子1の調製:比較例〕
酸化硫酸バナジウム(IV)(VOSO)19.0gをイオン交換水(溶存酸素量:8.1mg/L)に溶解して300mLとし、この液を撹拌しながら、アルカリとして3.0mol/LのNH水溶液を68g添加してpHを8.0として、反応液1を調製した。この反応液1を内容積が500mLのオートクレーブに入れ、250℃、3.98MPaで8時間、水熱反応処理を行い、二酸化バナジウム(VO)含有粒子1を形成した。次いで、反応液を冷却して、二酸化バナジウム含有粒子1を含有する分散液を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子2の調製:比較例〕
図1Aで示す工程フローで、図2に記載の水熱反応部を有する流通式反応装置を用い、下記の方法に従って、二酸化バナジウム含有粒子2を含む分散液を調製した。
図2に記載の原料液容器1(5)に、酸化硫酸バナジウム(IV)(VOSO)19.0gをイオン交換水(溶存酸素量:8.1mg/L)に溶解して300mLとし、この液を撹拌しながら、アルカリとして3.0mol/LのNH水溶液を68mL添加して、pHが8.0の原料液1を調製した。一方、図2に記載の原料液容器2(2)にはイオン交換水(溶存酸素量:8.1mg/L)を原料液2として収納した。
酸化硫酸バナジウム(IV)とアルカリを含む原料液1は、原料液容器1(5)から流路(6)内をポンプ(7)により送液し、加熱媒体(15)で、25℃で、30MPaの条件となるように加圧した。
一方、原料液2であるイオン交換水は、原料液容器2(2)から流路(3)内をポンプ(4)により送液し、加熱媒体(13)で、440℃で、30MPaの条件で加熱加圧して、超臨界水を得た。
次いで、図2で示す合流点(MP)で酸化硫酸バナジウム(IV)とアルカリを含む原料液1と、超臨界水である原料液2を、体積比として、原料液1:原料液2=1:4となる条件で混合して、反応液2を形成し、水熱反応部である水熱反応部(16)に送液した。水熱反応部では、加熱媒体(14)内に配置されている加熱部配管(17)に送液した。加熱配管部(17)における水熱反応条件としては、400℃、30MPaの条件で、処理時間(通過時間)を2秒となる条件で行い、二酸化バナジウム(VO)含有粒子を形成した。次いで、冷却部(8)にて反応液2を冷却し、二酸化バナジウム含有粒子2及び水を含有する分散液を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子3の調製:(実施態様1A)〕
図1Aで示す本発明の実施態様1Aで、図2に記載の水熱反応部を有する流通式反応装置を用い、下記の方法に従って、二酸化バナジウム含有粒子3を含む分散液を調製した。
上記二酸化バナジウム含有粒子2の調製において、原料液1及び原料液2の調製に用いたイオン交換水に代えて、中空糸膜を有する膜脱気装置を用いて脱気処理を行った溶存酸素量が4.0mg/Lの脱気水を用いた以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子3及び水を含有する分散液を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子4〜6の調製〕
上記二酸化バナジウム含有粒子2の調製において、原料液1及び原料液2の調製に用いた脱気水の溶存酸素量を、膜脱気条件を適宜変更して、溶存酸素量をそれぞれ2.0mg/L、1.0mg/L、0.4mg/Lとした脱気水を用いた以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子4、二酸化バナジウム含有粒子5、二酸化バナジウム含有粒子6をそれぞれ含有する各分散液を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子7〜9の調製〕
上記二酸化バナジウム含有粒子3〜5の調製において、還元性を有する化合物として、ヒドラジンを、0.15質量%となる条件で原料液1及び原料液2にそれぞれ添加した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子7〜9を含有する各分散液を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子10〜12の調製〕
上記二酸化バナジウム含有粒子3〜5の調製において、還元性を有する化合物として、シュウ酸を、0.15質量%となる条件で原料液1及び原料液2にそれぞれ添加した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子10〜12を含有する各分散液を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子13〜15の調製〕
上記二酸化バナジウム含有粒子3〜5の調製において、還元性を有する化合物として、ギ酸を、0.15質量%となる条件で原料液1及び原料液2にそれぞれ添加した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子13〜15を含有する各分散液を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子16の調製:比較例〕
図1Bで示す工程フローで、図2に記載の水熱反応部を有する流通式反応装置を用い、下記の方法に従って、二酸化バナジウム含有粒子16を含む分散液を調製した。
図2に記載の原料液容器1(5)に、酸化硫酸バナジウム(IV)(VOSO)19.0gをイオン交換水(溶存酸素量:8.1mg/L)に溶解して300mLとして、これを原料液1とした。
一方、図2に記載の原料液容器2(2)には、アルカリとして3.0mol/LのNHを含むイオン交換水(溶存酸素量:8.1mg/L)を原料液2として収納した。
酸化硫酸バナジウム(IV)を含む原料液1は、原料液容器1(5)から流路(6)内をポンプ(7)により送液し、加熱媒体(15)で、25℃で、30MPaの条件となるように加圧した。
一方、原料液2である水酸化ナトリウムを含む原料液2は、原料液容器2(2)から流路(3)内をポンプ(4)により送液し、加熱媒体(13)で、440℃で、30MPaの条件で加熱加圧して、超臨界水を得た。
次いで、図2で示す合流点(MP)で酸化硫酸バナジウム(IV)を含む原料液1と、アルカリを含む超臨界水である原料液2を、反応液のpHが8.0になる条件で混合して、反応液35を形成し、水熱反応部である水熱反応部(16)に送液した。水熱反応部では、加熱媒体(14)内に配置されている加熱部配管(17)に送液した。加熱配管部(17)における水熱反応条件としては、400℃、30MPaの条件で、処理時間(通過時間)を2秒となる条件で行い、二酸化バナジウム(VO)含有粒子を形成した。次いで、冷却部(8)にて反応液16を冷却し、二酸化バナジウム含有粒子16及び水を含有する分散液を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子17の調製:(実施態様1B)〕
図1Bで示す実施態様1Bに準ずる工程で、図2に記載の水熱反応部を有する流通式反応装置を用い、下記の方法に従って、二酸化バナジウム含有粒子17を含む分散液を調製した。
上記二酸化バナジウム含有粒子16の調製において、原料液1及び原料液2の調製に用いたイオン交換水に代えて、中空糸膜を有する膜脱気装置を用いて脱気処理を行った溶存酸素量が4.0mg/Lの脱気水を用いた以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子17及び水を含有する分散液を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子18〜20の調製〕
上記二酸化バナジウム含有粒子17の調製において、原料液1及び原料液2の調製に用いた脱気水の溶存酸素量を、膜脱気条件を適宜変更して、それぞれ溶存酸素量を2.0mg/L、1.0mg/L、0.4mg/Lとした脱気水を用いた以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子18、二酸化バナジウム含有粒子19、二酸化バナジウム含有粒子20を含有する各分散液を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子21〜22の調製〕
上記二酸化バナジウム含有粒子17〜18の調製において、還元性を有する化合物として、ヒドラジンを、0.15質量%となる条件で原料液1及び原料液2にそれぞれ添加した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子21〜22を含有する各分散液を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子23〜24の調製〕
上記二酸化バナジウム含有粒子17〜18の調製において、還元性を有する化合物として、シュウ酸を、0.15質量%となる条件で原料液1及び原料液2にそれぞれ添加した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子23〜24を含有する各分散液を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子25〜26の調製〕
上記二酸化バナジウム含有粒子17〜18の調製において、還元性を有する化合物として、ギ酸を、0.15質量%となる条件で原料液1及び原料液2にそれぞれ添加した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子25〜26を含有する各分散液を調製した。
以上のようにして調製した二酸化バナジウム含有粒子の詳細を、まとめて表Iに示す。
Figure 2017208892
《二酸化バナジウム含有粒子の評価》
上記調製した各二酸化バナジウム含有粒子について、下記の各評価を行った。
〔平均粒径(D)の測定〕
上記調製した各二酸化バナジウム含有粒子及び水を含有する分散液を、それぞれ分散液の総質量に対する二酸化バナジウム含有粒子の濃度が0.01質量%となるよう水で希釈し、超音波で15分間分散して測定用サンプルを調製した。
次いで、動的光散乱解析装置(DLS−8000、大塚電子株式会社製)を用いて、動的光散乱(Dynamic Light Scattering、DLS)法によって、流体力学的直径(nm)を測定した。そして、これに基づいてキュムラント解析による粒径分布の平均粒径を求め、この値を平均粒径(D)(nm)とした。
〔多分散指数(PDI)の測定〕
多分散指数(PDI)は、上記平均粒径(D)の測定と同様にして動的光散乱法(DLS法)により測定したキュムラント解析において、粒径分布が正規分布であると仮定して算出した数値とした。
〔サーモクロミック性の評価〕
(調製直後のサーモクロミック性(TC1)の評価)
上記調製した各二酸化バナジウム含有粒子を含む分散液を、Sartorius stedim社製のビバフロー50(有効濾過面積50cm、分画分子量5000)を用いて、流速300mL/min、液圧0.1MPaで濾過を行うことで濃度調整して、二酸化バナジウム含有粒子をポリビニルアルコール中に、ポリビニルアルコール及び二酸化バナジウム含有粒子の総質量に対する二酸化バナジウム含有粒子の比率が10質量%となるように添加して塗布液を調製した。次いで、帝人デュポンフィルム株式会社製の厚さ50μmポリエチレンテレフタレート(PET)基材上に塗布及び乾燥し、乾燥膜厚が3μmの二酸化バナジウム含有粒子を含む層を形成して、測定用フィルム1を作製した。
各測定用フィルム1を、25℃・50%RHの環境下で24時間保存したのち、下記の方法に従って、調製直後のサーモクロミック性(TC1)(%
具体的には、25℃・50%RHの環境下で、波長2000nmにおける透過率(T25℃)、及び85℃・50%RHの環境下で、)の評価を行った。
波長2000nmにおける透過率(T85℃)を測定し、調製直後の透過率差1(T85℃−T25℃)を求め、これを調製直後のサーモクロミック性(TC1)の尺度として、下記の基準に従って評価した。測定は、分光光度計V−670(日本分光株式会社製)に温調ユニット(日本分光株式会社製)を取り付けて行った。
5:透過率差1(T85℃−T25℃)が、70%以上である
4:透過率差1(T85℃−T25℃)が、50%以上、70%未満である
3:透過率差1(T85℃−T25℃)が、40%以上、50%未満である
2:透過率差1(T85℃−T25℃)が、25%以上、40%未満である
1:透過率差1(T85℃−T25℃)が、25%未満である
(耐久性の評価:透過率の低下幅ΔTの測定)
〈強制劣化処理後の透過率差2(T85℃−T25℃)の測定〉
上記調製した各二酸化バナジウム含有粒子を含む分散液の150mLを内容積が200mLのガラス瓶に封入し、このガラス瓶を50℃の恒温層中で、浸透させながら48時間の強制劣化処理を行った。
次いで、強制劣化処理を行った各二酸化バナジウム含有粒子を含む分散液を、Sartorius stedim社製のビバフロー50(有効濾過面積50cm、分画分子量5000)を用いて、流速300mL/min、液圧0.1MPaで濾過を行うことで濃度調整して、二酸化バナジウム含有粒子をポリビニルアルコール中に、ポリビニルアルコール及び二酸化バナジウム含有粒子の総質量に対して、二酸化バナジウム含有粒子の比率が10質量%となるように添加し、帝人・デュポンフィルム株式会社製の厚さ50μmポリエチレンテレフタレート(PET)基材上に塗布及び乾燥し、乾燥膜厚3μmの二酸化バナジウム含有粒子を含む層を形成した測定用フィルム2を作製した。
各測定用フィルム2を、25℃・50%RHの環境下で24時間保存したのち、上記と同様の方法で、強制劣化処理後の透過率差2(T85℃−T25℃)を求めた。
〈透過率の低下幅ΔTの測定〉
上記測定した調製直後の透過率差1(T85℃−T25℃)に対する強制劣化処理後の透過率差2(T85℃−T25℃)の低下幅ΔT(%)を下式により求め、これを耐久性の尺度として、下記の基準に従って評価した。
透過率の低下幅ΔT(%)=〔(調製直後の透過率差1(T85℃−T25℃)−強制劣化処理後の透過率差2(T85℃−T25℃))/調製直後の透過率差1(T85℃−T25℃)〕×100
5:透過率の低下幅ΔTが、2.0%未満である
4:透過率の低下幅ΔTが、2.0%以上、5.0%未満である
3:透過率の低下幅ΔTが、5.0%以上、10.0%未満である
2:透過率の低下幅ΔTが、10.0%以上、20.0%未満である
1:透過率の低下幅ΔTが、20.0%以上である
以上により得られた結果を、表IIに示す。
Figure 2017208892
表IIに記載の結果より明らかなように、流通式反応装置を用い、酸化硫酸バナジウム(IV)、アルカリ及び脱気水より構成される反応液を、水熱反応処理することにより、比較例に対し、サーモクロミック性(TC1)及び強制劣化処理した後のサーモクロミック性の低下率(ΔT)が低いことが分かる。これにより、本発明に係る製造条件1(実施態様1)で調製した二酸化バナジウム(VO)含有粒子は、比較例に対して平均粒径(D)が小さく、かつ、多分散指数(PDI)小さく、粒径分布が狭く、かつサーモクロミック性に優れていることを実証することができた。
実施例2
《二酸化バナジウム含有粒子の調製》
〔二酸化バナジウム含有粒子31の調製:比較例〕
バナジン酸アンモニウム(V)(NHVO、和光純薬工業株式会社製、特級)7.1gを60℃のイオン交換水(溶存酸素量:8.1mg/L)325.0gで溶解して、この液を撹拌しながら、0.95mol/Lのヒドラジン水和物(N・HO、和光純薬工業株式会社製、特級)の16.9gをゆっくり滴下しpH9.5となるまで添加した。この反応液51を内容積が500mLのオートクレーブに入れ、250℃、3.98MPaで12時間、水熱反応処理を行い、二酸化バナジウム(VO)含有粒子31を形成した。次いで、反応液を冷却して、二酸化バナジウム含有粒子31を含有する分散液を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子32の調製:比較例〕
図1Aで示す工程フローで、図2に記載の水熱反応部を有する流通式反応装置を用い、下記の方法に従って、二酸化バナジウム含有粒子28を含む分散液を調製した。
図2に記載の原料液容器1(5)に、バナジン酸アンモニウム(V)(NHVO、和光純薬工業株式会社製、特級)7.1gを60℃のイオン交換水(溶存酸素量:8.1mg/L)325.0gに溶解し、この液を撹拌しながら、化合物(B)として0.95mol/Lのヒドラジン水和物(N・HO、和光純薬工業株式会社製、特級)水溶液16.9gをゆっくり滴下しpH9.5となるまで添加して、原料液1を調製した。一方、図2に記載の原料液容器2(2)にはイオン交換水を原料液2として収納した。
バナジン酸アンモニウム(V)とヒドラジン水和物を含む原料液1は、原料液容器1(5)から流路(6)内をポンプ(7)により送液し、加熱媒体(15)で、75℃で、30MPaの条件となるように加熱加圧した。
一方、原料液2であるイオン交換水(溶存酸素量:8.1mg/L)は、原料液容器2(2)から流路(3)内をポンプ(4)により送液し、加熱媒体(13)で、440℃で、30MPaの条件で加熱加圧して、超臨界水を得た。
次いで、図2で示す合流点(MP)でバナジン酸アンモニウム(V)とヒドラジン水和物を含む原料液1と、超臨界水である原料液2を、体積比として、原料液1:原料液2=1:4となる条件で混合して、反応液32を形成し、水熱反応部である水熱反応部(16)に送液した。水熱反応部では、加熱媒体(14)内に配置されている加熱部配管(17)に送液した。加熱配管部(17)における水熱反応条件としては、400℃、30MPaの条件で、処理時間(通過時間)を2秒となる条件で行い、二酸化バナジウム(VO)含有粒子32を形成した。次いで、冷却部(8)にて反応液2を冷却し、二酸化バナジウム含有粒子32及び水を含有する分散液を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子33の調製:(実施態様1A)〕
図1Aで示す実施態様1Aで、図2に記載の水熱反応部を有する流通式反応装置を用い、下記の方法に従って、二酸化バナジウム含有粒子33を含む分散液を調製した。
上記二酸化バナジウム含有粒子32の調製において、原料液1及び原料液2の調製に用いたイオン交換水に代えて、中空糸膜を有する膜脱気装置を用いて脱気処理を行った溶存酸素量が4.0mg/Lの脱気水を用いた以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子33及び水を含有する分散液を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子34〜36の調製〕
上記二酸化バナジウム含有粒子33の調製において、原料液1及び原料液2の調製に用いた脱気水の溶存酸素量を、膜脱気条件を適宜変更して、溶存酸素量がそれぞれ2.0mg/L、1.0mg/L、0.4mg/Lとなる脱気水を用いた以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子34、二酸化バナジウム含有粒子35、二酸化バナジウム含有粒子36を含有する各分散液を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子37〜39の調製〕
上記二酸化バナジウム含有粒子33〜35の調製において、還元性を有する化合物として、ヒドラジンが、0.15質量%となる条件で、0.4gのヒドラジンを原料液1に追加添加し、原料液2にはヒドラジンが、0.15質量%となる条件となるように添加した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子37〜39を含有する各分散液を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子40〜42の調製〕
上記二酸化バナジウム含有粒子33〜35の調製において、還元性を有する化合物として、シュウ酸を、0.15質量%となる条件で原料液1及び原料液2にそれぞれ添加した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子40〜42を含有する各分散液を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子43〜45の調製〕
上記二酸化バナジウム含有粒子33〜35の調製において、還元性を有する化合物として、ギ酸を、0.15質量%となる条件で原料液1及び原料液2にそれぞれ添加した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子43〜45を含有する各分散液を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子46の調製:比較例〕
図1Bで示す工程フローで、図2に記載の水熱反応部を有する流通式反応装置を用い、下記の方法に従って、二酸化バナジウム含有粒子46を含む分散液を調製した。
図2に記載の原料液容器1(5)に、バナジン酸アンモニウム(V)(NHVO、和光純薬工業株式会社製、特級)7.1gを60℃のイオン交換水325.0gに溶解して、これを原料液1とした。
一方、図2に記載の原料液容器2(2)には、0.95mol/Lのヒドラジン水和物(N・HO、和光純薬工業株式会社製、特級)水溶液を原料液2として収納した。
バナジン酸アンモニウム(V)を含む原料液1は、原料液容器1(5)から流路(6)内をポンプ(7)により送液し、加熱媒体(15)で、75℃で、30MPaの条件となるように加熱加圧した。
一方、ヒドラジン水和物を含む原料液2は、原料液容器2(2)から流路(3)内をポンプ(4)により送液し、加熱媒体(13)で、440℃で、30MPaの条件で加熱加圧して、超臨界水を得た。原料液1及び原料液2の調製に用いた水は、全てイオン交換水(溶存酸素量:8.1mg/L)を使用した。
次いで、図2で示す合流点(MP)でバナジン酸アンモニウム(V)を含む原料液1と、ヒドラジン水和物を含む超臨界水である原料液2を、反応液のpHが9.5になる条件で混合して、反応液85を形成し、水熱反応部である水熱反応部(16)に送液した。水熱反応部では、加熱媒体(14)内に配置されている加熱部配管(17)に送液した。加熱配管部(17)における水熱反応条件としては、400℃、30MPaの条件で、処理時間(通過時間)が2秒となる条件で行い、二酸化バナジウム(VO)含有粒子46を形成した。次いで、冷却部(8)にて反応液46を冷却し、二酸化バナジウム含有粒子46及び水を含有する分散液を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子47の調製:(実施態様1B)〕
図1Bで示す実施態様1Bに準ずる工程で、図2に記載の水熱反応部を有する流通式反応装置を用い、下記の方法に従って、二酸化バナジウム含有粒子47を含む分散液を調製した。
上記二酸化バナジウム含有粒子46の調製において、原料液1及び原料液2の調製に用いたイオン交換水に代えて、中空糸膜を有する膜脱気装置を用いて脱気処理を行った溶存酸素量が4.0mg/Lの脱気水を用いた以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子47及び水を含有する分散液を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子48〜50の調製〕
上記二酸化バナジウム含有粒子47の調製において、原料液1及び原料液2の調製に用いた脱気水の溶存酸素量を、膜脱気条件を適宜変更して、溶存酸素量がそれぞれ2.0mg/L、1.0mg/L、0.4mg/Lとなる脱気水を用いた以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子48、二酸化バナジウム含有粒子49、二酸化バナジウム含有粒子50を含有する各分散液を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子51〜52の調製〕
上記二酸化バナジウム含有粒子47〜48の調製において、還元性を有する化合物として、ヒドラジンが、0.15質量%となる条件で、0.4gのヒドラジンを原料液1に追加添加し、原料液2にはヒドラジンが、0.15質量%となる条件となるように添加した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子51〜52を含有する各分散液を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子53〜54の調製〕
上記二酸化バナジウム含有粒子47〜48の調製において、還元性を有する化合物として、シュウ酸を、0.15質量%となる条件で原料液1及び原料液2にそれぞれ添加した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子53〜54を含有する各分散液を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子55〜56の調製〕
上記二酸化バナジウム含有粒子47〜48の調製において、還元性を有する化合物として、ギ酸を、0.15質量%となる条件で原料液1及び原料液2にそれぞれ添加した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子55〜56を含有する各分散液を調製した。
以上のようにして調製した二酸化バナジウム含有粒子の詳細を、まとめて表IIIに示す。
Figure 2017208892
《二酸化バナジウム含有粒子の評価》
上記調製した各二酸化バナジウム含有粒子について、実施例1に記載の方法と同様にして、平均粒径(D)の測定、多分散指数(PDI)の測定、サーモクロミック性として、調製直後のサーモクロミック性(TC1)の評価と、耐久性として強制劣化後の透過率の低下幅ΔTの評価(耐久性)を行い、得られた結果を、表IVに示す。
Figure 2017208892
表IVに記載の結果より明らかなように、流通式反応装置を用い、バナジン酸アンモニウム(V)、還元剤及び脱気水より構成される反応液を、水熱反応に適用することにより、比較例に対し、サーモクロミック性TC1及び強制劣化処理した後のサーモクロミック性の低下率ΔTが低いことが分かる。これにより、本発明に係る製造条件1(実施態様1)で調製した二酸化バナジウム(VO)含有粒子は、比較例に対して平均粒径(D)が小さく、かつ、多分散指数(PDI)小さく、粒径分布が狭く、かつサーモクロミック性に優れていることを実証することができた。
次いで、本発明に係る製造条件2(実施態様2)の具体的な効果を実証する実施例3及び実施例4を、以下に示す。
実施例3
《二酸化バナジウム含有粒子の調製》
〔二酸化バナジウム含有粒子101の調製:比較例〕
酸化硫酸バナジウム(IV)(VOSO)19.0gをイオン交換水に溶解して300mLとし、この液を撹拌しながら、アルカリとして3.0mol/LのNH水溶液を68g添加してpHを8.0として、反応液1を調製した。この反応液1を内容積が500mLのオートクレーブに入れ、250℃、3.98MPaで8時間、水熱反応処理を行い、二酸化バナジウム(VO)含有粒子101を形成した。次いで、反応液を冷却して、二酸化バナジウム含有粒子101を含有する分散液を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子102の調製:比較例〕
図3Aで示す工程フローで、図2に記載の水熱反応部を有する流通式反応装置を用い、下記の方法に従って、二酸化バナジウム含有粒子102を含む分散液を調製した。
図2に記載の原料液容器1(5)に、酸化硫酸バナジウム(IV)(VOSO)19.0gをイオン交換水に溶解して300mLとし、この液を撹拌しながら、アルカリとして3.0mol/LのNH水溶液を68mL添加して、pHが8.0の原料液1を調製した。一方、図2に記載の原料液容器2(2)にはイオン交換水を原料液2として収納した。
酸化硫酸バナジウム(IV)とアルカリを含む原料液1は、原料液容器1(5)から流路(6)内をポンプ(7)により送液し、加熱媒体(15)で、25℃で、30MPaの条件となるように加圧した。
一方、原料液2であるイオン交換水は、原料液容器2(2)から流路(3)内をポンプ(4)により送液し、加熱媒体(13)で、440℃で、30MPaの条件で加熱加圧して、超臨界水を得た。
次いで、図2で示す合流点(MP)で酸化硫酸バナジウム(IV)とアルカリを含む原料液1と、超臨界水である原料液2を、体積比として、原料液1:原料液2=1:4となる条件で混合して、反応液2を形成し、水熱反応部である水熱反応部(16)に送液した。水熱反応部では、加熱媒体(14)内に配置されている加熱部配管(17)に送液した。加熱配管部(17)における水熱反応条件としては、270℃、10MPaの条件で、処理時間(通過時間)を2秒、加熱部配管(17)内の反応液2のレイノルズ数Reが500となる条件で行い、二酸化バナジウム(VO)含有粒子102を形成した。次いで、冷却部(8)にて反応液2を冷却し、二酸化バナジウム含有粒子102及び水を含有する分散液を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子103及び104の調製:比較例〕
上記二酸化バナジウム含有粒子102の調製において、水熱反応部の加熱部配管(17)内における反応液2のレイノルズ数Reを、それぞれ2000、50000に変更した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子3を含む分散液及び二酸化バナジウム含有粒子4を含む分散液を調製した。なお、レイノルズ数Reの調整は、加熱部配管(17)の内径と流速をコントロールし、通過時間2秒で上記レイノルズ数となるように行った。
〔二酸化バナジウム含有粒子105〜107の調製:比較例〕
上記二酸化バナジウム含有粒子102〜104の調製において、水熱反応部における処理時間は変化させずに2秒とし、加熱加圧条件として、400℃、30MPaにそれぞれ変更した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子105(Re:500)を含む分散液、二酸化バナジウム含有粒子106(Re:2000)を含む分散液、二酸化バナジウム含有粒子107(Re:50000)を含む分散液を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子108〜131の調製:本発明(実施態様2A)〕
図3Aに記載の本発明の実施態様2Aで規定する工程フローに従い、上記二酸化バナジウム含有粒子105〜107の調製に対し、水熱反応部におけるライン長Lと流速を適宜変更し、反応液の処理時間を、それぞれ3秒、5秒、12秒、50秒、100秒、300秒、700秒、1000秒に変更した以外は同様にして、それぞれ二酸化バナジウム含有粒子108〜131を含む分散液を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子132〜134の調製:比較例〕
上記二酸化バナジウム含有粒子105〜107の調製において、水熱反応部におけるライン長Lと流速を適宜変更し、反応液の処理時間を、それぞれ2000秒に変更した以外は同様にして、それぞれ二酸化バナジウム含有粒子132〜134を含む分散液を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子135の調製:比較例〕
図3Bで示す工程フローで、図2に記載の水熱反応部を有する流通式反応装置を用い、下記の方法に従って、比較例の二酸化バナジウム含有粒子135を含む分散液を調製した。
図2に記載の原料液容器1(5)に、酸化硫酸バナジウム(IV)(VOSO)19.0gをイオン交換水に溶解して300mLとして、これを原料液1とした。
一方、図2に記載の原料液容器2(2)には、アルカリとして3.0mol/LのNH水溶液を原料液2として収納した。
酸化硫酸バナジウム(IV)を含む原料液1は、原料液容器1(5)から流路(6)内をポンプ(7)により送液し、加熱媒体(15)で、25℃で、30MPaの条件となるように加圧した。
一方、原料液2である水酸化ナトリウムを含む原料液2は、原料液容器2(2)から流路(3)内をポンプ(4)により送液し、加熱媒体(13)で、440℃で、30MPaの条件で加熱加圧して、超臨界水を得た。
次いで、図2で示す合流点(MP)で酸化硫酸バナジウム(IV)を含む原料液1と、アルカリを含む超臨界水である原料液2を、反応液のpHが8.0になる条件で混合して、反応液35を形成し、水熱反応部である水熱反応部(16)に送液した。水熱反応部では、加熱媒体(14)内に配置されている加熱部配管(17)に送液した。加熱配管部(17)における水熱反応条件としては、400℃、30MPaの条件で、処理時間(通過時間)を2秒、加熱部配管(17)内の反応液2のレイノルズ数Reが2000となる条件で行い、二酸化バナジウム(VO)含有粒子を形成した。次いで、冷却部(8)にて反応液135を冷却し、二酸化バナジウム含有粒子135及び水を含有する分散液を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子136〜143の調製:本発明(実施態様2B)〕
図3Bに記載の本発明に係る実施態様2Bで規定する工程フローに従い、上記二酸化バナジウム含有粒子135の調製に対し、水熱反応部である水熱反応部(16)におけるライン長Lと流速を適宜変更し、処理時間(通過時間)をそれぞれ3秒、5秒、12秒、50秒、100秒、300秒、700秒、1000秒に変更した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子136〜143を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子144の調製:比較例〕
上記二酸化バナジウム含有粒子135の調製において、水熱反応部である水熱反応部(16)における処理時間(通過時間)を、2000秒に変更した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子144を調製した。
以上のようにして調製した二酸化バナジウム含有粒子の詳細を、まとめて表V及び表VIに示す。
Figure 2017208892
Figure 2017208892
《二酸化バナジウム含有粒子の評価》
上記調製した各二酸化バナジウム含有粒子について、下記の各評価を行った。
〔平均粒径(D)の測定〕
上記調製した各二酸化バナジウム含有粒子及び水を含有する分散液を、それぞれ分散液の総質量に対して二酸化バナジウム含有粒子の濃度が0.01質量%となるよう水と混合し、超音波で15分間分散して測定用サンプルを作製した。
次いで、動的光散乱解析装置(DLS−8000、大塚電子株式会社製)を用いて、動的光散乱(Dynamic Light Scattering,DLS)法によって、流体力学的直径(nm)を測定した。そして、これに基づいてキュムラント解析による粒径分布の平均粒径を求め、この値を平均粒径(D)(nm)とした。
〔多分散指数(PDI)の測定〕
多分散指数(PDI)は、上記平均粒径(D)の測定と同様にして動的光散乱法(DLS法)により測定したキュムラント解析において粒径分布が正規分布すると仮定して算出した数値とした。
〔サーモクロミック性の評価〕
(調製直後のサーモクロミック性(TC1)の評価)
上記調製した各二酸化バナジウム含有粒子を含む分散液を、Sartorius stedim社製のビバフロー50(有効濾過面積50cm、分画分子量5000)を用いて、流速300mL/min、液圧0.1MPaで濾過を行うことで濃度調整して、二酸化バナジウム含有粒子をポリビニルアルコール中に、ポリビニルアルコール及び二酸化バナジウム含有粒子の総質量に対する二酸化バナジウム含有粒子の比率が10質量%となるように添加して塗布液を調製した。次いで、帝人・デュポンフィルム株式会社製の厚さ50μmポリエチレンテレフタレート(PET)基材上に塗布及び乾燥し、乾燥膜厚が3μmの二酸化バナジウム含有粒子を含む層を形成して、測定用フィルム1を作製した。
各測定用フィルム1を、25℃・50%RHの環境下で24時間保存したのち、下記の方法に従って、調製直後のサーモクロミック性(TC1)(%)の評価を行った。
具体的には、25℃・50%RHの環境下で、波長2000nmにおける透過率(T25℃)、及び85℃・50%RHの環境下で、波長2000nmにおける透過率(T85℃)を測定し、調製直後の透過率差1(T85℃−T25℃)を求め、これを調製直後のサーモクロミック性(TC1)の尺度として、下記の基準に従って評価した。測定は、分光光度計V−670(日本分光株式会社製)に温調ユニット(日本分光株式会社製)を取り付けて行った。
5:透過率差1(T85℃−T25℃)が、50%以上である
4:透過率差1(T85℃−T25℃)が、45%以上、50%未満である
3:透過率差1(T85℃−T25℃)が、35%以上、45%未満である
2:透過率差1(T85℃−T25℃)が、25%以上、35%未満である
1:透過率差1(T85℃−T25℃)が、25%未満である
(耐久性の評価:透過率の低下幅ΔTの測定)
〈強制劣化処理後の透過率差2(T85℃−T25℃)の測定〉
上記調製した各二酸化バナジウム含有粒子を含む分散液の150mLを内容積が200mLのガラス瓶に封入し、このガラス瓶を50℃の恒温層中で、浸透させながら48時間の強制劣化処理を行った。
次いで、強制劣化処理を行った各二酸化バナジウム含有粒子を含む分散液を、Sartorius stedim社製のビバフロー50(有効濾過面積50cm、分画分子量5000)を用いて、流速300mL/min、液圧0.1MPaで濾過を行うことで濃度調整して、二酸化バナジウム含有粒子をポリビニルアルコール中に、ポリビニルアルコール及び二酸化バナジウム含有粒子の総質量に対して、二酸化バナジウム含有粒子の比率が10質量%となるように添加し、帝人・デュポンフィルム株式会社製の厚さ50μmポリエチレンテレフタレート(PET)基材上に塗布及び乾燥し、乾燥膜厚3μmの二酸化バナジウム含有粒子を含む層を形成した測定用フィルム2を作製した。
各測定用フィルム2を、25℃・50%RHの環境下で24時間保存したのち、上記と同様の方法で、強制劣化処理後の透過率差2(T85℃−T25℃)を求めた。
〈透過率の低下幅ΔTの測定〉
上記測定した調製直後の透過率差1(T85℃−T25℃)に対する強制劣化処理後の透過率差2(T85℃−T25℃)の低下幅ΔT(%)を下式により求め、これを耐久性の尺度として、下記の基準に従って評価した。
透過率の低下幅ΔT(%)=〔(調製直後の透過率差1(T85℃−T25℃)−強制劣化処理後の透過率差2(T85℃−T25℃))/調製直後の透過率差1(T85℃−T25℃)〕×100
5:透過率の低下幅ΔTが、5.0%未満である
4:透過率の低下幅ΔTが、5.0%以上、15%未満である
3:透過率の低下幅ΔTが、15%以上、20%未満である
2:透過率の低下幅ΔTが、20%以上、25%未満である
1:透過率の低下幅ΔTが、25%以上である
以上により得られた結果を、表VIIに示す。
Figure 2017208892
表VIIに記載の結果より明らかなように、流通式反応装置を用い、酸化硫酸バナジウム(IV)とアルカリより構成される反応液を、本発明で規定する水熱反応時間範囲で処理することにより、比較例に対し、サーモクロミック性及び強制劣化処理した後のサーモクロミック性の低下率が低いことが分かる。これにより、本発明に係る製造条件2(実施態様2)で調製した二酸化バナジウム(VO)含有粒子は、比較例に対して平均粒径(D)が小さく、かつ、多分散指数(PDI)小さく、粒径分布が狭く、かつサーモクロミック性に優れていることを実証することができた。
実施例4
《二酸化バナジウム含有粒子の調製》
〔二酸化バナジウム含有粒子151の調製:比較例〕
バナジン酸アンモニウム(V)(NHVO、和光純薬工業株式会社製、特級)7.1gを60℃のイオン交換水326.0gで溶解して、この液を撹拌しながら、0.95mol/Lのヒドラジン水和物(N・HO、和光純薬工業株式会社製、特級)の16.9gをゆっくり滴下しpH9.5となるまで添加した。この反応液151を内容積が500mLのオートクレーブに入れ、250℃、3.98MPaで12時間、水熱反応処理を行い、二酸化バナジウム(VO)含有粒子151を形成した。次いで、反応液を冷却して、二酸化バナジウム含有粒子151を含有する分散液を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子152の調製:比較例〕
図3Aで示す工程フローに従って、図2に記載の水熱反応部を有する流通式反応装置を用い、下記の方法に従って、二酸化バナジウム含有粒子152を含む分散液を調製した。
図2に記載の原料液容器1(5)に、バナジン酸アンモニウム(V)(NHVO、和光純薬工業株式会社製、特級)7.1gを60℃のイオン交換水325.0gに溶解し、この液を撹拌しながら、0.95mol/Lのヒドラジン水和物(N・HO、和光純薬工業株式会社製、特級)水溶液16.9gをゆっくり滴下しpH9.5となるまで添加して、原料液1を調製した。一方、図2に記載の原料液容器2(2)にはイオン交換水を原料液2として収納した。
バナジン酸アンモニウム(V)とヒドラジン水和物を含む原料液1は、原料液容器1(5)から流路(6)内をポンプ(7)により送液し、加熱媒体(15)で、75℃で、30MPaの条件となるように加熱及び加圧した。
一方、原料液2であるイオン交換水は、原料液容器2(2)から流路(3)内をポンプ(4)により送液し、加熱媒体(13)で、440℃で、30MPaの条件で加熱加圧して、超臨界水を得た。
次いで、図2で示す合流点(MP)でバナジン酸アンモニウム(V)とヒドラジン水和物を含む原料液1と、超臨界水である原料液2を、体積比として、原料液1:原料液2=1:4となる条件で混合して、反応液152を形成し、水熱反応部である水熱反応部(16)に送液した。水熱反応部では、加熱媒体(14)内に配置されている加熱部配管(17)に送液した。加熱配管部(17)における水熱反応条件としては、270℃、10MPaの条件で、処理時間(通過時間)を2秒、加熱部配管(17)内の反応液2のレイノルズ数Reが500となる条件で行い、二酸化バナジウム(VO)含有粒子152を形成した。次いで、冷却部(8)で反応液2を冷却し、二酸化バナジウム含有粒子152及び水を含有する分散液を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子153及び154の調製:比較例〕
上記二酸化バナジウム含有粒子152の調製において、水熱反応部の加熱部配管(17)内における反応液152のレイノルズ数Reを、それぞれ2000、50000に変更した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子153を含む分散液及び二酸化バナジウム含有粒子154を含む分散液を調製した。なお、レイノルズ数Reの調整は、加熱部配管(17)の内径と流速をコントロールし、通過時間2秒で上記レイノルズ数となるように行った。
〔二酸化バナジウム含有粒子155〜157の調製:比較例〕
上記二酸化バナジウム含有粒子152〜154の調製において、水熱反応部における処理時間は変化させず2秒とし、加熱加圧条件として、400℃、30MPaにそれぞれ変更した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子155(Re:500)を含む分散液、二酸化バナジウム含有粒子156(Re:2000)を含む分散液、二酸化バナジウム含有粒子157(Re:50000)を含む分散液を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子158〜181の調製:本発明(実施態様2A)〕
図3Aに記載の本発明の実施態様2Aで規定する工程フローに従い、上記二酸化バナジウム含有粒子155〜157の調製において、水熱反応部における反応液の処理時間を、それぞれ3秒、5秒、12秒、50秒、100秒、300秒、700秒、1000秒に変更した以外は同様にして、それぞれ二酸化バナジウム含有粒子158〜181を含む分散液を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子182〜184の調製:比較例〕
上記二酸化バナジウム含有粒子155〜157の調製において、水熱反応部における反応液の処理時間を、2000秒に変更した以外は同様にして、それぞれ二酸化バナジウム含有粒子182〜184を含む分散液を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子185の調製:比較例〕
図3Bで示す工程フローで、図2に記載の水熱反応部を有する流通式反応装置を用い、下記の方法に従って、二酸化バナジウム含有粒子185を含む分散液を調製した。
図2に記載の原料液容器1(5)に、バナジン酸アンモニウム(V)(NHVO、和光純薬工業株式会社製、特級)7.1gを60℃のイオン交換水325.0gに溶解して、これを原料液1とした。
一方、図2に記載の原料液容器2(2)には、0.95mol/Lのヒドラジン水和物(N・HO、和光純薬工業株式会社製、特級)水溶液を原料液2として収納した。
バナジン酸アンモニウム(V)を含む原料液1は、原料液容器1(5)から流路(6)内をポンプ(7)により送液し、加熱媒体(15)で、75℃で、30MPaの条件となるように加圧した。
一方、ヒドラジン水和物を含む原料液2は、原料液容器2(2)から流路(3)内をポンプ(4)により送液し、加熱媒体(13)で、440℃で、30MPaの条件で加熱加圧して、超臨界水を得た。
次いで、図2で示す合流点(MP)でバナジン酸アンモニウム(V)を含む原料液1と、ヒドラジン水和物を含む超臨界水である原料液2を、反応液のpHが9.5になる条件で混合して、反応液185を形成し、水熱反応部である水熱反応部(16)に送液した。水熱反応部では、加熱媒体(14)内に配置されている加熱部配管(17)に送液した。加熱配管部(17)における水熱反応条件としては、400℃、30MPaの条件で、処理時間(通過時間)を2秒、加熱部配管(17)内の反応液2のレイノルズ数Reが2000となる条件で行い、二酸化バナジウム(VO)含有粒子185を形成した。次いで、冷却部(8)にて反応液85を冷却し、二酸化バナジウム含有粒子185及び水を含有する分散液を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子186〜193の調製:本発明(実施態様2B)〕
図3Bに記載の本発明に係る実施態様2Bで規定する工程フローに従い、上記二酸化バナジウム含有粒子185の調製に対し、水熱反応部である水熱反応部(16)におけるライン長Lと流速を適宜変更し、処理時間(通過時間)をそれぞれ3秒、5秒、12秒、50秒、100秒、300秒、700秒、1000秒に変更した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子186〜193を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子194の調製:比較例〕
上記二酸化バナジウム含有粒子185の調製において、水熱反応部である水熱反応部(16)における処理時間(通過時間)を、2000秒に変更した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子194を調製した。
以上のようにして調製した二酸化バナジウム含有粒子の詳細を、まとめて表VIII及び表IXに示す。
Figure 2017208892
Figure 2017208892
《二酸化バナジウム含有粒子の評価》
上記調製した各二酸化バナジウム含有粒子について、実施例3に記載の方法と同様にして、平均粒径(D)の測定、多分散指数(PDI)の測定、分散液安定性の評価(サーモクロミック性)として、調製直後のサーモクロミック性(TC1)の評価と、強制劣化後の透過率の低下幅ΔT(%)の評価(耐久性)を行い、得られた結果を、表Xに示す。
Figure 2017208892
表Xに記載の結果より明らかなように、流通式反応装置を用い、バナジン酸アンモニウム(V)と還元剤より構成される反応液を、本発明で規定する水熱反応時間範囲で処理することにより、比較例に対し、サーモクロミック性及び強制劣化処理した後のサーモクロミック性の低下率が低いことが分かる。これにより、本発明に係る製造条件2(実施態様2)で調製した二酸化バナジウム(VO)含有粒子は、比較例に対して平均粒径(D)が小さく、かつ、多分散指数(PDI)小さく、粒径分布が狭く、かつサーモクロミック性に優れていることを実証することができた。
実施例5
次いで、本発明に係る製造条件3(実施態様3)の具体的な効果を実証する実施例5を、以下に示す。
《二酸化バナジウム含有粒子の調製》
〔二酸化バナジウム含有粒子201の調製〕
(スラリー原料液1の脱塩処理)
原料液1として酸化硫酸バナジウム(IV)(VOSO)19.0gをイオン交換水に溶解して300mLとし、この液を撹拌しながら、アルカリとして3.0mol/LのNH水溶液を68mL添加して、pHが8.0のスラリー原料液1を調製した。
次いで、酸化硫酸バナジウム(IV)とアルカリを含むスラリー原料液1に限外濾過法による脱塩処理1を施した。
〈脱塩処理1〉
図5に記載の限外濾過装置(50)を用いて、酸化硫酸バナジウム(IV)とアルカリを含むスラリー原料液に限外濾過法による脱塩処理1を施した。
調整釜(51)に、スラリー原料液(52、初期電気伝導率:30000μS/m)を貯留して、循環ポンプ(54)を用いて循環させながら、限外濾過部(55)で、スラリー原料液中の塩類を含む水分を排出口(56)より、排出量V1で排出し、次いで、イオン交換水ストック釜(57)より、イオン交換水供給ライン(59)を経由して、限外濾過部(55)における排出量V1と同容量のイオン交換水(58)を添加量V2で添加した。電気伝導率計(60)により、脱塩したスラリー原料液(52)の電気伝導率(μS/m)を測定しながらこの操作を繰り返し行い、スラリー原料液(52)の電気伝導率(μS/m)が1000μS/mとなった時点で、脱塩操作を終了した。
(水熱反応処理)
図2及び図6に記載の水熱反応部を有する流通式反応装置を用い、下記の方法に従って、二酸化バナジウム含有粒子201を調製した。
図2に記載の原料液容器1(5)に、原料液1として上記の方法で脱塩処理を施した酸化硫酸バナジウム(IV)とアルカリを含み、電気伝導率(μS/m)が1000μS/mであるスラリー原料液1を収納した。一方、図2及び図6に記載の原料液容器2(2)には、原料液2としてイオン交換水を収納した。
酸化硫酸バナジウム(IV)とアルカリを含むスラリー原料液は、原料液容器1(5)から流路(6)内をポンプ(7)により送液し、加熱媒体(15)で、25℃で、30MPaの条件となるように加圧した。
一方、原料液2であるイオン交換水は、イオン交換水容器(2)から流路(3)内をポンプ(4)により送液し、加熱媒体(13)で、440℃で、30MPaの条件で加熱加圧して、超臨界水を得た。
次いで、図2及び図6で示す合流点(MP)で、酸化硫酸バナジウム(IV)とアルカリを含むスラリー原料液1と、超臨界水であるイオン交換水である原料液2とを、体積比として、スラリー原料液1:イオン交換水=1:4となる条件で混合して、反応液を形成し、水熱反応部である水熱反応部(16)に送液した。水熱反応部では、加熱媒体(14)内に配置されている加熱部配管(17)に送液した。加熱配管部(17)における水熱反応条件としては、400℃、30MPaの条件で、処理時間(通過時間)を5秒となる条件で行い、二酸化バナジウム(VO)含有粒子を形成した。次いで、冷却部(8)にて反応液を冷却し、二酸化バナジウム含有粒子201及び水を含有する分散液を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子202の調製〕
上記二酸化バナジウム含有粒子201の調製において、下記に示すスラリー原料液の限外濾過法による脱塩処理2を施した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子202を調製した。
(脱塩処理2)
脱塩処理1と同様の方法で、スラリー原料液(52)の電気伝導率(μS/m)が500μS/mとなるまで脱塩操作を行い、これを脱塩処理2とした。
〔二酸化バナジウム含有粒子203の調製〕
上記二酸化バナジウム含有粒子201の調製において、スラリー原料液の濾過処理を限外濾過法による脱塩処理1に代えて、遠心分離法を用いた脱塩処理3を施した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子203を調製した。
(脱塩処理3)
公知の遠心分離装置を用い、上記酸化硫酸バナジウム(IV)とアルカリを含むスラリー原料液1に遠心分離処理による固液分離を行った後、水系の分離液の一部を系外に排出し、その後、排出したのと同容量のイオン交換水を追加添加し、その後分散処理を行い、この操作を繰り返して、不要の塩類を排出して、スラリー原料液の電気伝導率を、1000μS/mに調整した。
〔二酸化バナジウム含有粒子204の調製〕
上記二酸化バナジウム含有粒子203の調製において、スラリー原料液の遠心分離処理として、脱塩処理4に変更した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子204を調製した。
(脱塩処理4)
公知の遠心分離装置を用い、上記スラリー原料液に遠心分離処理による固液分離を行った後、水系の分離液の一部を系外に排出し、その後、排出したのと同容量のイオン交換水を追加添加し、その後分散処理を行い、この操作を繰り返して、不要の塩類を排出して、スラリー原料液の電気伝導率を、500μS/mに調整した。
《製造適性の評価:連続生産性》
水熱合成法として流通式反応装置を用いた二酸化バナジウム含有粒子201〜204の製造において、流通式反応装置を用いた二酸化バナジウム含有粒子の製造を連続24時間行い、水熱反応部(16)内の加熱部配管(17)における粒子凝集による閉塞の程度を測定した。閉塞を起こす基準は、初期流量に対し、50%まで低下した時点を「閉塞発生」と判定した。
◎:24時間の連続製造でも、閉塞は発生しない
○:連続運転10〜24時間の間で、閉塞が発生する
△:連続運転1時間以上、10時間未満で閉塞が発生する
×:連続運転10分以上、60分未満で閉塞が発生する
《二酸化バナジウム含有粒子の評価》
上記調製した各二酸化バナジウム含有粒子について、下記の各評価を行った。
〔平均結晶子径の測定〕
各二酸化バナジウム含有粒子について、粉末X線回折装置(リガク社製、MiniFlexII)を用いて、粒子100個について結晶子径を測定し、その平均値を求めた。X線源としては、CuKα線を使用し、平均結晶子径は、X線回折のメインピーク((111)面)を用いて、下式(3)のシェラーの式により算出した。
式(3)
A=Kλ/βcosθ
上記式(3)において、Aは平均結晶子径、Kはシェラー定数であり、λはX線波長である。βは、回折線の半値幅である。θは回折線に関するブラッグ角である。
次いで、上記測定した平均結晶子径について、下記のランクで分類した。
○:平均結晶子径が、15nm以上、40nm以下である
×:平均結晶子径が15nm未満、又は40nmを超えている
〔平均一次粒径の測定〕
上記調製した各二酸化バナジウム含有粒子及び水を含有する分散液を、120℃のオーブンで乾燥固化させて紛体とし、測定用の粒子サンプルを調製した。
次いで、得られた粒子サンプルを用い、走査型電子顕微鏡(日立社製、Hitachi S−5000型)によりSEM写真を撮影した。撮影したSEM写真(1100nm×950nm)を用いて、粒子径の算出を行った。二酸化バナジウム含有粒子の粒子径は、面積円相当径を適用し、SEM写真において、各二酸化バナジウム含有粒子の面積を測定し、同一の面積を有する円の直径をもって、二酸化バナジウム含有粒子の粒子径とした。SEM写真において、寸法及び形状が最も普遍的な粒子30個を選定し、粒子30個の平均一次粒径を算出し、その平均値を平均一次粒径(D)(nm)とした。
次いで、上記測定した平均一次粒径について、下記のランクで分類した。
○:平均一次粒径が、15nm以上、40nm以下である
×:平均一次粒径が、40nmを超え、100nm未満である
××:平均一次粒径が、100nmを超えている
以上により得られた結果を、表XIに示す。
Figure 2017208892
《光学フィルムの作製》
〔光学フィルム201の作製〕
厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製A4300、両面易接着層)上に、下記の二酸化バナジウム含有粒子含有層塗布液1を、ダイコーターを用いて乾燥膜厚が1.5μmになるように塗布量を調整して湿式塗布を行い、90℃で1分間乾燥させた。次に、紫外線ランプを用いて、照度100mW/cm、照射量0.2J/cm、酸素濃度200ppmの条件で紫外線を照射することにより塗膜を硬化さてサーモクロミックフィルムである光学フィルム201を作製した。
(二酸化バナジウム粒子含有層塗布液201の調製)
下記の組成の二酸化バナジウム含有粒子含有層塗布液201を調製した。
二酸化バナジウム含有粒子301を含む分散液 40質量部
ビームセット577(荒川化学工業(株)製) 30質量部
Irgacure127(BASF株式会社製) 1質量部
メガファックF−552(DIC株式会社製) メチルイソブチルケトン希釈液(1質量%) 2質量部
メチルイソブチルケトン 27質量部
〔光学フィルム202〜204の作製〕
上記光学フィルム201の作製において、二酸化バナジウム含有粒子201に代えて、それぞれ二酸化バナジウム含有粒子202〜204を用いた以外は同様にして、光学フィルム202〜204を作製した。
《光学フィルムの評価》
〔サーモクロミック性の評価〕
上記作製した各光学フィルムを、25℃・50%RHの環境下で24時間保存したのち、下記の方法に従って、サーモクロミック性の評価を行った。
具体的には、25℃・50%RHの環境下における波長2000nmでの透過率(T25℃)、及び85℃・50%RHの環境下における波長2000nmでの透過率(T85℃)を測定し、透過率差(T85℃−T25℃)を求め、下記の基準に従って分類し、これをサーモクロミック性の尺度とした。測定は、分光光度計V−670(日本分光株式会社製)に温調ユニット(日本分光株式会社製)を取り付けて行った。
◎:透過率差が70%以上である
○:透過率差が50%以上、70%未満である
△:透過率差が40%以上、50%未満である
×:透過率差が25%以上、40%未満である
××:透過率差が25%未満である
〔ヘイズの評価〕
上記作製した各光学フィルムについて、室温にて、ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH2000)を用いて、ヘイズ(%)を測定し、下記の基準に従ってヘイズの評価を行った。
○:ヘイズが、2.0%未満である
○△:ヘイズが、2.0%以上、3.0%未満である
△:ヘイズが、3.0%以上、5.0%未満である
×:5.0%以上である
以上により得られた結果を、表XIIに示す。
Figure 2017208892
表XIIに記載の結果より明らかなように、水熱反応前に、バナジウム含有化合物を含むスラリー原料液に脱塩処理を施すことにより、酸化バナジウム含有粒子の平均一次粒径を15〜40nmの範囲内、平均結晶子径を15〜40nmの範囲内とすることができ、その結果、水熱反応時に流路における閉塞を起こしにくく、高い生産性を達成することができるとともに、この酸化バナジウム含有粒子を適用した光学フィルムは、優れたサーモクロミック性と透明性(ヘイズ耐性)を両立させることができることを確認することができた。
実施例6
次いで、本発明に係る製造条件4(実施態様4)の具体的な効果を実証する実施例6を、以下に示す。
《二酸化バナジウム含有粒子の作製》
以下のようにして、二酸化バナジウム含有粒子301〜330を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子301の調製〕
図2に示す流通式反応装置(1)の原料液容器1(5)に、酸化硫酸バナジウム(IV)(VOSO)19.0gを投入し、イオン交換水に溶解して300mLとし、この原料液1を撹拌しながら、アルカリとして3.0mol/LのNH水溶液を68mL添加して、液温25℃におけるpHが8.0のスラリー原料液1を調製した。一方、流通式反応装置(1)の原料液容器2(2)にはイオン交換水を原料液2として投入した。
酸化硫酸バナジウム(IV)とアルカリを含むスラリー原料液1を、原料液容器1(5)から流路(6)内をポンプ(7)により送液し、加熱媒体(15)で、25℃で、30MPaの条件となるように加圧した。
一方、原料液2であるイオン交換水を、原料液容器2(2)から流路(3)内をポンプ(4)により送液し、加熱媒体(13)で、440℃で、30MPaの条件で加熱加圧して、超臨界水を得た。
次いで、合流点(MP)で酸化硫酸バナジウム(IV)とアルカリとを含むスラリー原料液1と、超臨界水である原料液2を、体積比として、スラリー原料液1:原料液2=1:4となる条件で混合して、反応液1を調製し、水熱反応部である水熱反応部(16)に送液した。水熱反応部(16)では、反応液1を加熱媒体(14)内に配置されている加熱部配管(17)に送液した。加熱部配管(17)における水熱反応は、400℃、30MPaの条件で、処理時間(通過時間)が2秒となる条件で行い、反応液2として二酸化バナジウム(VO)含有粒子201を得た。次いで、冷却部(8)で反応液2を冷却し、二酸化バナジウム含有粒子201及び水を含有する分散液を調製した。
調製した分散液をろ過し、残渣を水及びエタノールで洗浄した。さらに、この残渣を、定温乾燥機を用いて、60℃で10時間乾燥させて、二酸化バナジウム含有粒子301を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子302〜304の調製〕
上記二酸化バナジウム含有粒子301の調製において、スラリー原料液1に代えて、以下のようにして調製したスラリー原料液2〜4を原料液容器1(5)に添加した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子302〜304を調製した。
(スラリー原料液2〜4の調製)
酸化硫酸バナジウム(IV)(VOSO)19.0gをイオン交換水300mLに溶解して、この液を撹拌しながら、アルカリとして3.0mol/LのNH水溶液を68mL添加して、液温25℃におけるpHを8.0とした。
このスラリー原料液200mLに対し、超音波分散機(UH150、SMT社製)を用いて、それぞれ30秒間、60秒間、120秒間の超音波分散処理を施して、スラリー原料液2〜4を調製した。
[二酸化バナジウム含有粒子305の調製〕
上記二酸化バナジウム含有粒子301の調製において、スラリー原料液1に代えて、以下のようにして調製したスラリー原料液5を用いた以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子305を作製した。
(スラリー原料液5の調製)
まず、グリシン(和光純薬工業(株)製)をイオン交換水に溶かして、分散剤として10質量%グリシン水溶液を調製した。
次いで、酸化硫酸バナジウム(IV)(VOSO)19.0gをイオン交換水300mLに溶解して、この液を撹拌しながら、上記グリシン水溶液を、酸化硫酸バナジウム(IV)の全質量に対してグリシンの質量が10質量%となるように添加して化学分散を行った。さらに、アルカリとして3.0mol/LのNH水溶液を68mL添加して、液温25℃におけるpHを8.0とした。
このスラリー原料液200mLを、超音波分散機(UH150、SMT社製)を用いて、120秒間超音波分散処理を行い、スラリー原料液5を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子306〜309の調製〕
上記二酸化バナジウム含有粒子305の調製において、スラリー原料液5の調製に用いた分散剤であるグリシンを、L(−)−トレオニン(和光純薬工業(株)製)、サルコシン(和光純薬工業(株)製)、L−アラニン(和光純薬工業(株)製)、ポリビニルピロリドン K 90(略称:PVP 和光純薬工業(株)製)にそれぞれ変更してスラリー原料液6〜9を調製し、スラリー原料液5に代えて、これらのスラリー原料液6〜9をそれぞれ用いた以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子306〜309を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子310〜312の調製〕
二酸化バナジウム含有粒子301の作製において、スラリー原料液1に代えて、以下の方法で調製したスラリー原料液10〜12を用いた以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子310〜312を調製した。
(スラリー原料液10〜12の調製)
酸化硫酸バナジウム(IV)(VOSO)19.0gをイオン交換水300mLに溶解して、この液を撹拌しながら、アルカリとして3.0mol/LのNH水溶液を68mL添加して、液温25℃におけるpHを8.0として、スラリー原料液を調製した。
このスラリー原料液に、高速高圧型マイクロリアクターであるナノヴェイタ(C−ES、吉田機械興業社製)を用いて、それぞれ吐出圧力200MPaの条件で、1サイクル、2サイクル、3サイクルかけることにより高圧分散処理を行い、スラリー原料液10〜12を得た。
〔二酸化バナジウム含有粒子313の調製〕
二酸化バナジウム含有粒子301の作製において、スラリー原料液1に代えて、以下の方法に従って調製したスラリー原料液13を用いた以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子313を調製した。
(スラリー原料液13の調製)
まず、グリシン(和光純薬工業(株)製)をイオン交換水に溶かして、分散剤として10質量%グリシン水溶液を調製した。
次いで、酸化硫酸バナジウム(IV)(VOSO)19.0gをイオン交換水300mLに溶解して、この液を撹拌しながら、上記グリシン水溶液を、酸化硫酸バナジウム(IV)の質量に対してグリシンの質量が10質量%となるように添加して化学分散処理を行った。さらに、アルカリとして3.0mol/LのNH水溶液を68mL添加して、液温25℃におけるpHを8.0として、スラリー原料液を調製した。
このスラリー原料液に、高速高圧型マイクロリアクターであるナノヴェイタ(C−ES、吉田機械興業社製)を用いて、吐出圧力200MPaで3サイクルの高圧分散処理を行い、スラリー原料液13を得た。
〔二酸化バナジウム含有粒子314〜317の調製〕
二酸化バナジウム含有粒子313の調製において、スラリー原料液13の調製に用いた分散剤であるグリシンを、L(−)−トレオニン(和光純薬工業(株)製)、サルコシン(和光純薬工業(株)製)、L−アラニン(和光純薬工業(株)製)、ポリビニルピロリドン K 90(略称:PVP 和光純薬工業(株)製)にそれぞれ変更してスラリー原料液14〜17を調製し、スラリー原料液13に代えて、これらのスラリー原料液14〜17をそれぞれ用いた以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子314〜317を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子318〜320の調製〕
上記二酸化バナジウム含有粒子301の作製において、スラリー原料液1に代えて、以下の方法により調製したスラリー原料液18〜20を用いた以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子318〜320を調製した。
(スラリー原料液18〜20の調製)
酸化硫酸バナジウム(IV)(VOSO)19.0gをイオン交換水300mLに溶解して、この液を撹拌しながら、アルカリとして3.0mol/LのNH水溶液を68mL添加して、液温25℃におけるpHを8.0として、スラリー原料液を調製した。このスラリー原料液に対して、30質量%のZrOビーズ(径15μm)を充填し、メディア方式の分散機として、ペイントシェーカー(ペイントコンディショナー、RED DEVIL社製)を用いて、それぞれ30分間、60分間、90分間処理することでメディア分散処理を行い、スラリー原料液18〜20を得た。
〔二酸化バナジウム含有粒子321の調製〕
二酸化バナジウム含有粒子301の作製において、スラリー原料液1に代えて、以下の方法により調製したスラリー原料液21を用いた以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子321を調製した。
(スラリー原料液21の調製)
まず、分散剤であるグリシン(和光純薬工業(株)製)をイオン交換水に溶かして、10質量%グリシン水溶液を調製した。
次いで、酸化硫酸バナジウム(IV)(VOSO)19.0gをイオン交換水300mLに溶解して、この液を撹拌しながら、上記グリシン水溶液を、酸化硫酸バナジウム(IV)の質量に対してグリシンの質量が10質量%となるように添加して化学分散を行った。さらに、アルカリとして3.0mol/LのNH水溶液を68mL添加して、液温25℃におけるpHを8.0としてスラリー原料液を調製した
このスラリー原料液に対して、30質量%のZrOビーズ(径15μm)を充填し、ペイントシェーカー(ペイントコンディショナー、RED DEVIL社製)を用いて、90分間運転することでメディア分散処理を行い、スラリー原料液21を得た。
〔二酸化バナジウム含有粒子322〜325の調製〕
上記二酸化バナジウム含有粒子321の作製において、スラリー原料液21の調製に用いた分散剤であるグリシンを、L(−)−トレオニン(和光純薬工業(株)製)、サルコシン(和光純薬工業(株)製)、L−アラニン(和光純薬工業(株)製)、ポリビニルピロリドン K 90(略称:PVP 和光純薬工業(株)製)にそれぞれ変更してスラリー原料液22〜25を調製し、スラリー原料液21に代えて、これらのスラリー原料液22〜25をそれぞれ用いた以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子322〜325を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子326の調製〕
二酸化バナジウム含有粒子301の調製において、スラリー原料液1に代えて、以下の方法で調製したスラリー原料液26を用いた以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子326を調製した。
(スラリー原料液26の調製)
まず、分散剤としてグリシン(和光純薬工業(株)製)をイオン交換水に溶かして、10質量%グリシン水溶液を調製した。
一方で、図2に示す流通式反応装置(1)の原料液容器1(5)に、酸化硫酸バナジウム(IV)(VOSO)19.0gを投入し、イオン交換水に溶解して300mLとし、この液を撹拌しながら、上記グリシン水溶液を、酸化硫酸バナジウム(IV)の質量に対してグリシンの質量が10質量%となるように添加して化学分散を行った。さらに、アルカリとして3.0mol/LのNH水溶液を68mL添加して、液温25℃におけるpHが8.0のスラリー原料液26を調製した。
〔二酸化バナジウム含有粒子327〜330の調製〕
二酸化バナジウム含有粒子326の作製において、スラリー原料液26の調製に用いた分散剤であるグリシンを、L(−)−トレオニン(和光純薬工業(株)製)、サルコシン(和光純薬工業(株)製)、L−アラニン(和光純薬工業(株)製)、ポリビニルピロリドン K 90(略称:PVP 和光純薬工業(株)製)にそれぞれ変更してスラリー原料液27〜30を調製し、スラリー原料液26に代えて、これらのスラリー原料液22〜25をそれぞれ用いた以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子327〜330を調製した。
《評価》
上記調製した各二酸化バナジウム含有粒子について、下記の方法に従って評価を行った。
〔分散粒径の測定〕
各二酸化バナジウム含有粒子の調製において、水熱反応前で、各分散処理を施したスラリー原料液2〜30が含有するバナジウム含有化合物について、下記の方法により、分散粒径を測定した。なお、スラリー原料液1は、未分散の状態で測定した。
具体的には、動的光散乱解析装置(Malvern社製ZetasizerNano S)を用いて、動的光散乱(Dynamic Light Scattering:DLS)法によって、平均粒径(Z平均)を求め、この値を分散粒径とした。測定条件は、下記のとおりである。
試料濃度:0.01質量%
試料屈折(RI値):3.0
溶媒:水
測定回数:3回
〔粒径分布幅の評価〕
調製した各二酸化バナジウム含有粒子について、走査型電子顕微鏡(FE−SEM)(日立社製、Hitachi S−4300型)を用いて、粒径分布幅を評価した。
具体的には、SEM写真(1250nm×850nm)を用いて、粒径(面積円相当径)の算出を行った。SEM写真において、各粒子の面積を測定し、同一の面積を有する円の直径を粒径とした。また、SEM写真において、寸法及び形状が最も普遍的な粒子30個を選定し、粒子30個の平均粒径を算出した。粒径範囲を5nmごとに区分を設け、ヒストグラムを作成し、この分布を粒径分布とし、下記評価基準に従って粒径分布幅を評価した。
◎:粒径分布幅が、50nm以下
○:粒径分布幅が、50nmより大きく、60nm以下
△:粒径分布幅が、60nmより大きく、80nm以下
×:粒径分布幅が、80nmより大きい
〔ヘイズの評価〕
上記調製した各二酸化バナジウム含有粒子を用いて、以下の方法に従って光学フィルムを作製し、当該光学フィルムのヘイズを測定した。
具体的には、作製した各光学フィルムについて、室温(25℃)にて、ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH2000)を用いて、ヘイズ(%)を測定し、下記評価基準に従って評価した。
◎:ヘイズが、2.0%以下
○:ヘイズが、2.0%より大きく、3.0%以下
△:ヘイズが、3.0%より大きく、4.0%以下
×:ヘイズが、4.0%より大きい
(光学フィルムの作製)
厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製A4300、両面易接着層)上に、下記組成の光学機能層形成用塗布液を、ダイコーターを用いて乾燥膜厚が1.5μmになるように塗布量を調整して湿式塗布を行い、90℃で1分間乾燥させた。
〈光学機能層形成用塗布液〉
二酸化バナジウム含有粒子分散液(溶媒:水) 9.3質量部
樹脂バインダー(ポリ−N−ビニルアセトアミド、商品名:GE191−103、昭和電工社製、分子量900000) 90.7質量部
上記の各構成材料を順次添加、混合及び溶解し、固形分濃度が3質量%になるように水で希釈し、水系の光学機能層形成用塗布液を調製した。
〈遮熱性(TSER)差:ΔTSERの評価〉
ヘイズ測定において作製した各光学フィルムを用い、サーモクロミック性の尺度である遮熱性(TSER)差(ΔTSER)を算出した。
具体的には、分光光度計(積分球使用、株式会社日立製作所製、U−4000型)を用いて300〜2500nmの領域において、2nmおきの光透過率及び光反射率について、各光学フィルムの温度が低温時(10℃)と、高温時(70℃)の条件下で測定した。
次に、JIS R 3106:1998に記載の方法に従い、日射反射率R(DS)と日射透過率T(DS)を求めた後、下記計算式から算出される低温時と高温時の遮熱性能(TSER)からΔTSERを算出し、下記評価基準に従って評価した。
TSER(%)=((100−T(DS)−R(DS))×0.7143)+R(DS)
ΔTSER(%)=TSER(高温)−TSER(低温)
○:ΔTSERが、10.0%以上
△:ΔTSERが、5.0%以上、10.0%未満
×:ΔTSERが、5.0%未満
以上により得られた各評価結果を、表XIIIに示す。
Figure 2017208892
〈まとめ〉
表XIIIに記載の結果から明らかなように、本発明の二酸化バナジウム含有粒子は、比較例の二酸化バナジウム含有粒子と比べて、分散粒径、粒径分布幅、並びに光学フィルムのヘイズ及びΔTSERに優れていることが確認できた。
例えば、比較例である二酸化バナジウム含有粒子301の粒径分布幅は、図8に示されるように95nmまで幅広い粒径分布を有しているのに対し、本発明の二酸化バナジウム含有粒子311の粒径分布幅は、図9に示されるように粒径分布の端部は40nm以下となっており、流通式反応装置を用いた水熱反応前に分散処理を施した二酸化バナジウム含有粒子の粒径分布幅が狭くなっていることが分かる。
以上から、バナジウム含有化合物と水とを含むスラリー原料液を調製する工程と、スラリー原料液を分散処理する工程と、水熱反応部を有する流通式反応装置を用いて、分散処理したスラリー原料液と超臨界又は亜臨界状態の水とを混合した反応液を水熱反応させて二酸化バナジウム含有粒子を製造する工程と、を有し、二酸化バナジウム含有粒子の粒径分布幅を80nm以下に調整することが、凝集がなく、サーモクロミック性に優れる二酸化バナジウム含有粒子の製造方法及び二酸化バナジウム含有粒子、並びに当該二酸化バナジウム含有粒子を含む、透明性に優れる光学フィルムを提供することに有用であることが分かる。
本発明の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法により、平均粒径が小さく、凝集体の生成が抑制され、粒径分布が狭く、単分散性及び分散安定性に優れ、かつサーモクロミック性に優れた二酸化バナジウム含有粒子を製造することができ、当該二酸化バナジウム含有粒子は、住宅やビル等の建物、及び車両のような移動体などの、室内や車両内等の内部環境と外部環境との間で大きな熱交換が生じる箇所に装備する優れたサーモクロミック性を備えた光学フィルムに適用することができる。
1 流通式反応装置
2 原料液容器2
3、6、11、18 流路(配管)
4、7、12 ポンプ
5 原料液容器1
8 冷却部
9、10 タンク
13、14、15 加熱媒体
16 水熱反応部
17 加熱部配管
19 制御弁
50 限外濾過装置
51 調整釜
52 スラリー原料液
53 配管
54 循環ポンプ
55 限外濾過部
56 排出口
57 補充用イオン交換水ストック釜
58 補充用イオン交換水
59 補充用イオン交換水供給ライン
60 電気伝導率計
C 冷媒
IN 加熱媒体の入口
OUT 加熱媒体の出口
L 加熱部配管のライン長
MP 合流点
TC 温度センサー
A 平均結晶子径
CL 結晶子
D 粒子径
P 二酸化バナジウム含有粒子

Claims (18)

  1. 水熱反応部を有する流通式反応装置を用いて、少なくともバナジウム含有化合物及び水を含むスラリー原料液と、当該バナジウム含有化合物と反応する化合物と、超臨界又は亜臨界状態の水とを混合した反応液を用い、水熱合成方法により二酸化バナジウム含有粒子を製造する二酸化バナジウム含有粒子の製造方法であって、
    下記製造条件1〜4から選ばれる少なくとも一つの方法により二酸化バナジウム含有粒子を製造することを特徴とする二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
    製造条件1:前記反応液を構成する水として、脱気処理を施した脱気水を用いること。
    製造条件2:前記反応液を用いて前記水熱合成方法を行う前記水熱反応部の通過時間を、3〜1000秒の範囲内とすること。
    製造条件3:前記スラリー原料液を前記水熱合成法により処理する前に、前記スラリー原料液から塩類を除去する脱塩処理を施し、前記二酸化バナジウム含有粒子の平均一次粒径を15〜40nmの範囲内とし、かつ平均結晶子径を15〜40nmの範囲内になるように調整して製造すること。
    製造条件4:前記二酸化バナジウム含有粒子を製造する工程の前に、前記スラリー原料液を分散処理する工程を有し、前記二酸化バナジウム含有粒子の粒径分布幅を80nm以下に調整すること。
  2. 前記製造条件1において、前記バナジウム含有化合物と反応する化合物が、前記原料液に添加されていることを特徴とする請求項1に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
  3. 前記製造条件1において、前記脱気水が、脱気膜を用いた脱気処理により調製されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
  4. 前記製造条件1において、前記反応液を構成する脱気水の25℃における溶存酸素量が、2.0mg/L以下であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
  5. 前記製造条件1において、前記反応液を構成する脱気水の25℃における溶存酸素量が、0.4mg/L以下であることを特徴とする請求項4に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
  6. 前記製造条件2において、前記水熱反応部における前記反応液の温度が、250〜500℃の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
  7. 前記製造条件2において、前記水熱反応部における前記反応液の通過時間が、4〜700秒の範囲内であることを特徴とする請求項1又は請求項6に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
  8. 前記製造条件2において、前記水熱反応部の配管内を通過する前記反応液のレイノルズ数Reが、1000〜45000の範囲内であることを特徴とする請求項1、請求項6及び請求項7のいずれか一項に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
  9. 前記製造条件2において、前記水熱反応部の配管内を通過する前記反応液のレイノルズ数Reが、2000〜10000の範囲内であることを特徴とする請求項8に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
  10. 前記製造条件1又は前記製造条件2において、前記バナジウム含有化合物と反応する化合物が、前記超臨界又は亜臨界状態の水に添加されており、前記製造条件1では前記水が脱気水であることを特徴とする請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
  11. 前記製造条件1又は前記製造条件2において、前記バナジウム含有化合物がバナジウム(IV)含有化合物であり、前記バナジウム含有化合物と反応する化合物がアルカリであることを特徴とする請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
  12. 前記製造条件1又は前記製造条件2において、前記バナジウム含有化合物がバナジウム(V)含有化合物であり、前記バナジウム含有化合物と反応する化合物が還元剤であることを特徴とする請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
  13. 前記製造条件1又は前記製造条件2において、前記二酸化バナジウム含有粒子の平均一次粒径が、1〜40nmの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項12までのいずれか一項に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
  14. 前記製造条件3において、前記スラリー原料液から塩類を除去する脱塩処理が、限外濾過装置を用いて行うことを特徴とする請求項1に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
  15. 前記製造条件3において、前記スラリー原料液の脱塩処理後の電気伝導度を、1000μS/m以下とすることを特徴とする請求項1又は請求項14に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
  16. 前記製造条件4において、前記二酸化バナジウム含有粒子の粒径分布幅を50nm以下に調整することを特徴とする請求項1に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
  17. 前記製造条件4において、前記バナジウム含有化合物の分散処理後の分散粒径を300nm以下に調整することを特徴とする請求項1又は請求項16に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
  18. 前記製造条件4において、前記スラリー原料液を分散処理する工程では、高圧分散処理により前記スラリー原料液を分散処理することを特徴とする請求項1、請求項16及び請求項17のいずれか一項に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
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