JP2018058734A - サーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子及びその製造方法と、サーモクロミックフィルム及びその製造方法 - Google Patents

サーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子及びその製造方法と、サーモクロミックフィルム及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題は、優れた保存安定性と、高い分散性を有するサーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子とその製造方法と、それを用いたサーモクロミックフィルムとその製造方法を提供することである。
【解決手段】本発明のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子は、コア・シェル構造を有するサーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子であって、コア部が二酸化バナジウムを含有し、シェル層が結晶性金属酸化物を含有し、かつ、Z平均粒子径が100nm以下であることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、サーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子及びその製造方法と、サーモクロミックフィルム及びその製造方法に関するものであり、より詳しくは、優れた保存安定性を有するとともに、高い分散性を有するサーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子とその製造方法と、それを用いたサーモクロミックフィルムとその製造方法に関する。
近赤外光遮蔽フィルムの一形態として、近赤外光の遮蔽や透過の光学的性質を温度により制御するサーモクロミック材料を適用したフィルムの検討がなされている。その代表的な材料として、二酸化バナジウム(以下、「VO」とも記す。)が挙げられる。二酸化バナジウムは、68℃前後の温度領域で相転移を起こし、サーモクロミック性を示すことが知られている。
この二酸化バナジウムの特性を利用したサーモクロミックフィルムにより、高温になると熱の原因となる近赤外光を遮蔽し、低い温度では近赤外光を透過する特性を発現することが可能となる。これにより、夏場の暑い時は近赤外光を遮蔽して室内の温度上昇を抑制し、冬場の寒い時は、外部からの光エネルギーを取り込むことができるようになる。
しかしながら、上記サーモクロミック性を有する二酸化バナジウム粒子は、酸化されやすい性質を有している。そのため、酸化反応に関与する水分子や酸素分子が、二酸化バナジウム粒子表面に接触して酸化反応が生じないように、粒子表面を特定の物質で被覆して、耐酸化性を向上させる方法が検討されている。
例えば、特許文献1には、他のアモルファス状金属酸化物で二酸化バナジウム粒子表面を被覆した二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子が開示されている。特許文献1で記載されている方法では、確かに化学的な安定性は向上するが、本発明者が更に検討を進めた結果、同じ相転移温度であっても赤外線透過率の変化を伴うサーモクロミック応答性が遅くなることが判明した。これは、微小な二酸化バナジウム粒子の表面に、他のアモルファス状金属酸化物を被覆することで、二酸化バナジウム粒子の熱による構造相転移に大きな影響を与え、その変化速度が遅くすることから、サーモクロミック応答性が低下したものと推測される。
一方、特許文献2には、テトラエトキシシラン(略称、TEOS)で被覆された二酸化バナジウム粒子が開示されている。これは、二酸化バナジウム粒子を加熱・乾燥して粉体化した後で、表面を酸化ケイ素の膜で被覆して疎水化し、粒子表面の酸化防止をしているため、粒子の凝集が避けられず再度分散することは困難である。
また、特許文献3では、二酸化バナジウム粒子を表面修飾する前に乾燥等を行ってしまうと粒子が凝集してしまうことから、二酸化バナジウム粒子を水熱反応によって製造する際にTEOS等の表面修飾剤を同時に添加するか、又は二酸化バナジウム粒子形成後に溶液状態のままで、前記表面修飾剤を添加して表面修飾することで、二酸化バナジウム粒子の凝集を防ぐ製造方法が開示されている。
しかしながら、この製造方法においては、たしかに粒子の分散性は向上するが、アモルファス状金属酸化物による被覆であることから、酸化等に対する耐性(保存安定性)については、いまだ改善の余地があることが分かった。
したがって、酸化等に対する耐性(保存安定性)を備えるとともに、分散性に優れた特性を有する二酸化バナジウム粒子と、それを用いたサーモクロミックフィルムの開発が切望されている。
国際公開第2015/161313号 CN103666444A 国際公開第2016/017603号
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、優れた保存安定性を有するとともに、高い分散性を有するサーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子とその製造方法と、それを用いたサーモクロミックフィルムとその製造方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、コア部が二酸化バナジウムを含有し、シェル層に結晶性金属酸化物を含有するコア・シェル構造を有し、かつ、Z平均粒子径が特定の値以下である二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子によって、優れた保存安定性と、高い分散性を有するサーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子を実現できることを見いだし、本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.コア・シェル構造を有するサーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子であって、
コア部が二酸化バナジウムを含有し、
シェル層が結晶性金属酸化物を含有し、かつ、
Z平均粒子径が100nm以下であることを特徴とするサーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子。
2.前記シェル層が含有する結晶性金属酸化物が、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ハフニウム、酸化セリウム及び酸化モリブデンから選ばれる化合物であることを特徴とする第1項に記載のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子。
3.相転移温度の調整作用を有する元素を含む化合物を含有することを特徴とする第1項又は第2項に記載のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子。
4.第1項から第3項までのいずれか一項に記載のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子を製造するサーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子の製造方法であって、
前記コア部としての二酸化バナジウム粒子を含有する水分散液に、アモルファス状金属酸化物形成前駆体とアルカリとアルコールとを添加してアモルファス状金属酸化物を含有するシェル層を形成する第1工程と、
前記シェル層が含有する前記アモルファス状金属酸化物を、超臨界状態にある高温高圧水存在下で結晶化して結晶性金属酸化物を形成する第2工程を有し、かつ、
Z平均粒子径を100nm以下に調整することを特徴とするサーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子の製造方法。
5.第1項から第3項までのいずれか一項に記載のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子を含有することを特徴とするサーモクロミックフィルム。
6.前記サーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子と疎水性バインダーを含むサーモクロミック層を有することを特徴とする第5項に記載のサーモクロミックフィルム。
7.サーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子を含むサーモクロミック層を有するサーモクロミックフィルムの製造方法であって、
第1項から第3項までのいずれか一項に記載のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子と、少なくとも疎水性バインダーとを混合して塗布液を調製し、当該塗布液をフィルム基材上に塗布、乾燥することで前記サーモクロミック層を形成することを特徴とするサーモクロミックフィルムの製造方法。
本発明の上記手段により、優れた保存安定性と、高い分散性を有するサーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子とその製造方法と、それを用いたサーモクロミックフィルムとその製造方法を提供することができる。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
本発明のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子は、酸化されやすい性質を有する二酸化バナジウム粒子において、コア部が二酸化バナジウムを含有する粒子であり、当該コア部の表面は結晶性金属酸化物を含有するシェル層で被覆され、かつ、Z平均粒子径が100nm以下であることにより、優れた保存安定性と、高い分散性を有するサーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子を実現できることが特徴である。
すなわち、本発明者は、二酸化バナジウム粒子を表面修飾する前に乾燥等を行ってしまうと粒子が凝集してしまうという知見から、コア部として二酸化バナジウム粒子を含有する水溶液にアモルファス状金属酸化物を添加してシェル層を一旦形成後、超臨界状態にある高温高圧水存在下で、当該シェル層中における前記アモルファス状金属酸化物の結晶化を進めて結晶性金属酸化物とし、かつ、特定範囲のZ平均粒子径を有するコア・シェル構造の二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子とすることによって、シェル層の結晶性金属酸化物がコア部の二酸化バナジウム粒子の酸化等に対する耐性(保存安定性)を大幅に向上し、かつ、表面が疎水化された特定平均粒子径を有する微粒子よって、高い分散性を有するサーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子が得られたものと推察している。
本発明のコア・シェル型のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子の構造の一例を示す概略断面図 本発明のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子の製造に適用可能なフロー型リアクターの一例を示す概略構成図 本発明のサーモクロミックフィルムの基本的な構成の一例を示す概略断面図 本発明のサーモクロミックフィルムの基本的な構成の他の一例を示す概略断面図 近赤外光遮蔽層を有する本発明のサーモクロミックフィルムの層配置の一例を示す概略断面図
本発明のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子(単に、二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子ともいう。)は、コア・シェル構造を有するサーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子であって、コア部が二酸化バナジウムを含有し、シェル層が結晶性金属酸化物を含有し、かつ、Z平均粒子径が100nm以下であることを特徴とする。この特徴は、各請求項に係る発明に共通する又は対応する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の目的とする効果をより発現できる観点から、シェル層を形成する結晶性金属酸化物として、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ハフニウム、酸化セリウム及び酸化モリブデンから選ばれる化合物を含有することが、結晶化した金属酸化物のシェル層が、二酸化バナジウム粒子の酸化等に対する耐性(保存安定性)を大幅に向上し、かつ、表面疎水化によって高い分散性を発現する観点から、好ましい。
また、相転移温度の調整作用を有する元素を含む化合物を含有することが、相転移温度を調節して最適化することで、夏場の冷房設備への負荷と冬場の暖房設備への負荷の双方を減少させてより省エネルギー対策をすることができる観点から、より好ましい。
また、本発明のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子の製造方法においては、前記コア部としての二酸化バナジウム粒子を含有する水分散液に、アモルファス状金属酸化物形成前駆体とアルカリとアルコールとを添加してアモルファス状金属酸化物を含有するシェル層を形成する第1工程と、前記シェル層が含有する前記アモルファス状金属酸化物を、超臨界状態にある高温高圧水存在下で結晶化して前記結晶性金属酸化物を形成する第2工程を有し、かつ、Z平均粒子径を100nm以下に調整することを特徴とする。当該製造方法を採用することによって、本発明の目的効果を発揮することができる二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子を効率よく製造することができる。
また、本発明のサーモクロミックフィルムにおいては、上記二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子を含有するとともに、疎水性バインダーを含有することが、二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子との相溶性を高め分散性を向上することにより、ヘイズ低下や酸化等に対する耐性(保存安定性)をより向上させる観点から、好ましい態様である。
本発明においては、二酸化バナジウムを含有するコア粒子を、単に「二酸化バナジウム粒子」と称する。当該二酸化バナジウム粒子の表面にシェル層を形成し、コア・シェル粒子とした構成を「二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子」と称する。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本発明において示す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
《サーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子》
本発明のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子は、コア・シェル構造を有するサーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子であって、コア部が二酸化バナジウムを含有し、シェル層が結晶性金属酸化物を含有し、かつ、Z平均粒子径が100nm以下であることを特徴とし、かかる構成によって、優れた保存安定性と、高い分散性を有するサーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子とその製造方法と、それを用いたサーモクロミックフィルムとその製造方法を提供することができる。
本発明のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子には、二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子が独立して存在している一次粒子(本発明では、VOという。)と、2個以上の二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子の凝集体を構成している二次粒子(VOという。)が存在する。
液体等の分散系において、含有される粒子は、一般に一次粒子と二次粒子の混合物であると考えられる。
本来一次粒子径まで二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子を微細に分散できればヘイズの低減等には好ましい態様であるが、実際にはそこまでの分散は技術的にも、またコスト的にも困難であるため、粒子の分散性の制御を二次粒子を含めた平均粒子径をモニターしながら、粒子形成条件等を調整することが実用的である。
前記二次粒子径は、粒子の初期形成に続く後続処理、並びに粒子の組成及び構造に依存して変化する。具体的には、粒子表面化学特性、分散剤の特性、及び破壊力、例えば剪断力又は超音波力の付与などによって、粒子の分散効率に影響を与えることができる。
本発明の二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子のZ平均粒子径の範囲は100nm以下であるが、好ましくは、10〜90nmの範囲であり、より好ましくは30〜90nmの範囲である。
本発明でいうZ平均粒子径は、動的光散乱法と呼ばれる方法を利用して測定した平均粒子径を意味する。つまり、二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子の有機溶媒分散液にレーザー光を照射し、二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子から散乱される散乱光強度をマイクロ秒単位の時間変化で測定し、検出された二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子に起因する散乱強度分布を正規分布に当てはめて、平均粒子径を算出するためのキュムラント解析法により求めたZ平均粒子径である。
このZ平均粒子径は、市販の測定装置で簡便に測定可能であり、例えば、マルバーン社から市販されている「ゼータサイザーナノZS」を測定に使用することができる。当該市販の測定装置にはデータ解析ソフトが搭載されており、測定データを自動的に解析することで、Z平均粒子径を算出することができる。
本発明の二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子のZ平均粒子径は、一例として下記の方法を用いて測定することができる。
本発明に係るZ平均粒子径は、二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子分散液を酢酸エチル溶液に投入し、0.001質量%溶液に調製した溶液を、マルバーン社製「ゼータサイザーナノZS」などの動的光散乱を用いた粒子径測定機で測定して、Z平均粒子径の値を求める。測定機器としては、他にハネウエル社製のマイクロトラックUPA(Microttrac UPA)、堀場製作所製のパーティクルサイズアナライザー(Horiba Particle Size Analyzer)、及びシスメックス株式会社製ゼータサイザー1000HSa等を用いることができる。
マルバーン社製「ゼータサイザーナノZS」を用いた場合の測定条件の一例を下記に示す。
<具体的な測定条件>
試料の調製条件:二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子分散液を酢酸エチル溶液に投入し、0.001質量%溶液に調製。
測定温度 :25.0℃
溶媒粘度 :0.426cp
レーザー :He−Ne、4.0mv、633nm
セル :ガラスセル
〔サーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子の構造〕
本発明の二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子の形態は、コア部に二酸化バナジウム粒子を含有し、当該二酸化バナジウム粒子の表面に、結晶性金属酸化物を含有するシェル層を有し、かつ、Z平均粒子径が100nm以下であることを特徴とする。
図1は、本発明のコア・シェル型の二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子の構造の一例を示す概略断面図である。
図1は、本発明のコア・シェル型の二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子(1)の断面構造を示しており、二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子(1)は、コア部を二酸化バナジウム粒子(2)で構成し、その外周部に結晶性金属酸化物を含有するシェル層(3)が形成され、コア部を被覆している構成を示している。
シェル層は、本発明の効果の観点から、コア部表面を面積として、50%以上被覆することが好ましく、70%以上被覆することがより好ましく、90%以上被覆することが、さらに好ましく、95%以上被覆することが特に好ましい。被覆率を上げることにより、優れた保存安定性と、高い分散性の両立をはかることができる。
ここでいう「コア部に対するシェル層の被覆率」とは、コア部の全表面積を100%としたときの、シェル層によって被覆されているコア部の面積の割合のことである。
以下、本発明のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子の構造、サーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子の調製に用いる材料及び製造方法の詳細について説明する。
〔二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子の構成材料〕
(コア部:二酸化バナジウム粒子の形成)
本発明の二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子のコア部を構成する二酸化バナジウム粒子としては、その結晶形として特に制限はないが、サーモクロミック性(自動調光性)を効率よく発現させる観点から、ルチル型の二酸化バナジウム粒子(VO粒子)を用いることが、特に好ましい。
ルチル型のVO粒子は、転移温度以下では、単斜晶系(monoclinic)の構造を有するため、M型とも呼ばれる。本発明に係る二酸化バナジウム粒子においては、目的を損なわない範囲で、A型、又はB型などの他の結晶型のVO粒子を含んでもよい。
本発明においては、コア・シェル構造とした二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子のZ平均粒子径が100nm以下であることから、二酸化バナジウム粒子の一次粒子のZ平均粒子径は、好ましくは、1〜50nmの範囲内であり、特に好ましくは5〜30nmの範囲である。測定方法としては、前述のZ平均粒子径の測定に準ずる。
また、二酸化バナジウム粒子及び二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子の長軸径及び短軸系から求められるアスペクト比としては、1.0〜3.0の範囲内であることが好ましい。
このような特徴をもつコア粒子を構成する二酸化バナジウム粒子では、アスペクト比が十分に小さく、形状が等方的であるので、溶液に添加した場合の分散性が良好である。加えて、単結晶の粒子径が十分に小さいので、従来の微粒子に比べて、良好なサーモクロミック性を発揮することができる。
〈相転移温度の調整作用を有する元素〉
本発明の二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子においては、相転移温度の調整作用を有する元素を含む化合物を含有することが好ましく、特に、コア粒子を構成する二酸化バナジウム粒子が相転移温度の調整作用を有する元素を含む化合物を含有することが好ましい。
すなわち、本発明に係るコア粒子を構成する二酸化バナジウム粒子では、二酸化バナジウム(VO)の他に、例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、スズ(Sn)、レニウム(Re)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、ゲルマニウム(Ge)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、フッ素(F)及びリン(P)からなる群から選定された、少なくとも一つの元素を、相転移温度調節剤として含んでいても良い。このような元素の添加により、二酸化バナジウム粒子の相転移特性(特に、相転移温度)を制御することができる点で有効である。なお、最終的に得られる二酸化バナジウム粒子に対する、そのような添加物の総量は、バナジウム(V)原子に対して、0.1〜5.0原子%程度で十分である。
また、後述するサーモクロミックフィルムを構成するサーモクロミック層における二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子の濃度としては、特に制限はないが、おおむねサーモクロミック層全質量に対し、5〜60質量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは5〜40質量%の範囲内であり、さらに好ましくは5〜30質量%の範囲内である。
〈二酸化バナジウム粒子の製造方法〉
一般に、二酸化バナジウム粒子の製造方法は、固相法により合成されたVO焼結体を粉砕する方法と、五酸化二バナジウム(V)やバナジン酸アンモニウムなどのバナジウム化合物を原料として、有機溶媒ではなく水溶液を使用した液相でVOを合成しながら粒子成長させる水系合成法が好ましく用いられる。
水系合成法は、平均一次粒子径が小さく、粒子径のばらつきを抑制することができる点で好ましい。
更に、水系合成法としては、水熱合成法と、超臨界状態を用いた水系合成法が挙げられ、超臨界状態を用いた水系合成法(超臨界水熱合成法ともいう。)の詳細については、例えば、特開2010−58984号公報の段落番号(0011)、同(0015)〜(0018)に記載されている製造方法を参照することができる。
上記水系合成法の中でも、本発明においては、水熱合成法を適用し、かつ、水系合成法により二酸化バナジウム粒子を含む水系分散液として調製し、当該二酸化バナジウム粒子表面に後述するシェル層を形成することによって、コア・シェル構造を有するZ平均粒子径が100nm以下の二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子を調製することができる。
また、二酸化バナジウム粒子の製造方法として、必要に応じて、粒子成長の核となる微小なTiO等の微粒子を核粒子として添加し、その核粒子を成長させることにより二酸化バナジウム粒子を製造することもできる。
次いで、本発明に好適な水熱法による二酸化バナジウム粒子の製造方法について、その詳細をさらに説明する。
以下に、代表的な水熱法による二酸化バナジウム粒子の製造工程を示す。
(工程a)
バナジウム(V)を含む物質(I)と、ヒドラジン(N)又はその水和物(N・nHO)と、水とを混ぜて溶液(A)を調製する。この溶液は、物質(I)が水中に溶解した水溶液であってもよいし、物質(I)が水中に分散した懸濁液であってもよい。
物質(I)としては、例えば、五酸化二バナジウム(V)、バナジン酸アンモニウム(NHVO)、三塩化酸化バナジウム(VOCl)、メタバナジン酸ナトリウム(NaVO)等が挙げられる。なお、物質(I)としては、五価のバナジウム(V)を含む化合物であれば、特に限定されない。ヒドラジン(N)及びその水和物(N・nHO)は、物質(I)の還元剤として機能するものであって、水に容易に溶解する性質を有する。
溶液(A)は、最終的に得られる二酸化バナジウム(VO)の単結晶微粒子に元素を添加するため、添加する元素を含む物質(II)が更に含有していてもよい。添加する元素としては、例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、スズ(Sn)、レニウム(Re)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、ゲルマニウム(Ge)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、フッ素(F)又はリン(P)が挙げられる。
これらの元素を、最終的に得られる二酸化バナジウム(VO)含有の単結晶微粒子に添加することにより、二酸化バナジウム粒子のサーモクロミック性、特に、転移温度を制御することができる。
また、この溶液(A)は、酸化性又は還元性を有する物質(III)が更に含有されていてもよい。物質(III)としては、例えば、過酸化水素(H)が挙げられる。酸化性又は還元性を有する物質Cを添加することにより、溶液のpHを調整したり、物質(I)であるバナジウム(V)を含む物質を均一に溶解させたりすることができる。
(工程b)
次に、調製した溶液(A)を用いて、水熱反応処理を行う。ここで、「水熱反応」とは、温度と圧力が、水の臨界点(374℃、22MPa)よりも低い熱水(亜臨界水)中において生じる化学反応を意味する。水熱反応処理は、例えば、オートクレーブ装置内で行われる。水熱反応処理により、二酸化バナジウム(VO)含有の単結晶微粒子が得られる。
水熱反応処理の条件(例えば、反応物の量、処理温度、処理圧力、処理時間等。)は、適宜設定されるが、水熱反応処理の温度は、例えば、250〜350℃の範囲内であり、好ましくは250〜300℃の範囲内であり、より好ましくは250〜280℃の範囲内である。温度を低くすることにより、得られる単結晶微粒子の粒子径を小さくすることができるが、過度に粒子径が小さいと、結晶性が低くなる。また、水熱反応処理の時間は、例えば1時間〜5日の範囲内であることが好ましい。時間を長くすることにより、得られる単結晶微粒子の粒子径等を制御することができるが、過度に長い処理時間では、エネルギー消費量が多くなる。
以上の工程a及び工程bを経て、サーモクロミック性を有する二酸化バナジウム(VO)含有の単結晶微粒子を含む水分散液が得られる。
(シェル層:結晶性金属酸化物含有層の形成)
本発明のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子のシェル層の製造方法は、コア部として前記二酸化バナジウム粒子を含有する水分散液に、アモルファス状金属酸化物形成前駆体とアルカリとアルコールとを添加してアモルファス状金属酸化物を含有するシェル層を形成する第1工程と、前記シェル層が含有する前記アモルファス状金属酸化物を、超臨界状態にある高温高圧水存在下で結晶化して、前記結晶性金属酸化物を形成する第2工程を有することを特徴とする。
したがって、本発明の二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子を構成するシェル層は、アモルファス状金属酸化物前駆体由来の結晶性金属酸化物を含有する層であることを特徴とする。
本発明でいう「アモルファス」とは、形成したシェル層のXRD解析(X線回折法)を行った際に、固体を構成する原子や分子等として三次元的な規則性が少なく、測定されたX線回折スペクトラムにおいて、ハローパターンのみが観測され、結晶性を示す特定の回折線ピークを示さない状態をいう。
また、本発明でいう「結晶性」とは、形成したシェル層のXRD解析(X線回折法)を行った際に、固体を構成する原子や分子等として三次元的な規則性があり、測定されたX線回折スペクトラムにおいて、ハローパターンは観測されず、結晶格子の面間隔に応じた結晶性を示す特定の回折線ピークを示す状態をいう。
上記測定で用いるXRD測定装置としては、例えば、島津製作所社製のX線回折装置 XRD−7000、XRD−6100、株式会社リガク製X線回折装置(XRD測定装置 RINT2200、RINT−TTR2、SWRD等)等を挙げることができる。
XRD測定装置としては、上記RINT2000(株式会社リガク製)を用いてX線回折スペクトラムを測定する条件の一例を下に示す。
(XRD測定条件)
X線回折装置 :RINT2000(株式会社リガク製)
線源 :CuKα線
測定角 :2θ=10〜70°
散乱スリット :1/3°
サンプリング幅:0.02°
スキャン速度 :1.2°/分
〈第1工程〉
シェル層の形成における第1工程としては、一例としてゾル−ゲル反応を用いて、液相で加水分解と縮重合まで行うことにより、アモルファス状金属酸化物より構成されるシェル層を得ることができる。ここでいうゾル−ゲル反応とは、一般的な意味でアルコキシド系ゾルを加熱などによりゲル状態とし、セラミックスなどを合成する化学操作の一つである。
本発明に適用可能なアモルファス状金属酸化物としては、TiO、ITO、ZnO、Nb、ZrO、CeO、Ta、Ti、Ti、Ti、TiO、SnO、LaTi、IZO、AZO、GZO、ATO、ICO、Bi、a−GIO、Ga、GeO、SiO、Al、HfO、SiO、MgO、Y、WO、IGZO、In等が挙げられる。その中でも、酸化ケイ素(SiO)、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化セリウム(CeO)、及び酸化モリブデン(MoO)から選ばれる化合物であることが、形成するシェル層として高い透明性が得られる点で好ましい。
本発明に係るシェル層の形成方法としては、好ましくは第1工程として、液相系でゾル−ゲル法を用いて、コア粒子である二酸化バナジウム粒子表面にシェル層を形成するが、例えば、酸化ケイ素(SiO)をゾル−ゲル法で形成する場合は、アモルファス状金属酸化物形成前駆体として、テトラエトキシシラン(TEOS)等のアルコキシド(シリカ前駆体)を、アルカリとアルコールとともに、塩基性条件で、加水分解・重縮合反応を行わせることによって、アルコールを脱離させて、アモルファス状金属酸化物より構成されるシェル層を形成することができる。
アルカリとしては、特に制限されないが、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。上記アルカリは、1種単独、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、アンモニア、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが好ましく、アンモニア又は水酸化ナトリウムがより好ましく、アンモニアが更に好ましい。
なお、アルカリ及び水より構成される原料液中のアルカリ濃度は、特に制限されないが、例えば、0.01〜10mol/Lの範囲内であることが好ましく、0.1〜5mol/Lの範囲内であることがより好ましい。
アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコールが好ましい。
また、シェル層の形成は、必要に応じて、酸性条件下でも行うことができるが、シリカ層を形成する場合には、一般に、強塩基性条件の方が、密なシリカ膜が得られやすい。
〈第2工程〉
第2工程は、コア部としての二酸化バナジウム粒子を含有する水分散液に、アモルファス状金属酸化物形成前駆体とアルカリとアルコールを添加して、アモルファス状金属酸化物を含むシェル層を形成する第1工程と、超臨界又は亜臨界状態にある高温高圧水の存在下で、当該シェル層中の当該アモルファス状金属酸化物形成前駆体を結晶化することによって、結晶性金属酸化物を形成する第2工程とによって、二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子を製造することを特徴とする。生産性の観点からは超臨界状態である高温高圧水を用いることが好ましい。
以下、第2工程の詳細について説明する。
本発明に係る第2工程において、高温高圧状態にある水とは、超臨界又は亜臨界状態にある高温高圧水、すなわち、超臨界水(super−critical water:SCW)又は亜臨界水(sub−critical water:sub−CW)である。水の臨界温度は374.2℃、水の臨界圧力は22.12MPaであるので、当該温度及び圧力以上にある水を超臨界水という。また、亜臨界水とは、水の超臨界点より僅かながら温度又は圧力が低い状態にある水を指しており、例えば、温度でいうと150℃以上の領域から臨界温度374℃までというように、その温度が水の臨界温度より低く、かつ圧力が水の臨界圧力22MPa又はそれ以上の圧力である領域をいう。
一つの具体的な態様では、反応を行う系(例えば、恒温ゾーンにあるリアクター(反応器))に原料混合液の圧力を、水の臨界圧力22.12MPa又はそれ以上のもの(例えば、30MPa又は35MPaなど)とし、おおよそ150℃近傍に加熱した第1工程にて調製した二酸化バナジウム粒子を含む原料混合液を、さらに反応温度として250℃になるように設定されたリアクター(亜臨界水下での反応)に供給、又は、反応温度として390℃になるように設定されたリアクター(超臨界水下での反応)に供給するといった方法で、反応場である超臨界又は亜臨界状態にある高温高圧水が存在するリアクターに導入する方法が挙げられる。
典型的な超臨界水の領域は、例えば、375〜500℃、好ましくは375〜450℃、より好ましくは375〜420℃、さらに好ましくは375〜400℃であり、ある場合には、例えば、375〜395℃、好ましくは375〜390℃、より好ましくは375〜385℃、又は、375〜380℃で、その反応圧力としては、例えば、20〜50MPa、好ましくは21〜45MPa、より好ましくは22〜40MPa、さらに好ましくは25〜35MPaである。
典型的な亜臨界水の領域は、圧力が臨界圧力22MPa又はそれ以上であり、かつ、150℃以上の温度から臨界温度374℃の領域、又は、200℃以上の温度から臨界温度374℃の領域、又は、250℃以上の温度から臨界温度374℃の領域、300℃以上の温度から臨界温度374℃の領域などが挙げられる。もちろん、亜臨界水の領域は、10.0MPa以上の圧力から臨界圧力22MPaの領域、又は、15.0MPa以上の圧力から臨界圧力22MPaの領域、又は、18.0MPa以上の圧力から臨界圧力22MPaの領域、又は、20.0MPa以上の圧力から臨界圧力22MPaの領域なども含まれてよい。
反応の方式としては、バッチ式(回分式)、セミバッチ式(半回分式)で行うこともできるが、好ましくは耐圧性の管型又は槽型などのフロー型リアクター(流通型反応器)を用いる連続法を使用でき、特には管型のリアクターを利用する連続法を好適に利用できる。
本発明の製造方法に適用可能な典型的なフロー型リアクターの構成を、図を交えて説明する。
図2は、本発明の二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子の第2工程のシェル層形成に適用可能なフロー型リアクターの一例を示す概略構成図である。
図2に示すように、フロー型のリアクター(100)は、蒸留水、脱イオン水、又は純水等の予熱水(102、高圧原料水ともいう。)をあらかじめ加温した上で溜めておく予熱水槽(熱水供給源槽(脱イオン熱水供給槽))から超臨界水又は亜臨界水となる水を供給する水供給路(103)と、第1工程のシェル層まで形成した二酸化バナジウム粒子を含む高圧原料液(101)を供給する原料供給路(104)を備えており、該高圧原料液(101)は、ヒーター部(H)を通ることにより、前処理を受けた後、水供給路(103)に合流する。次に、加熱した高圧原料液(101)と高温高圧水(102)との混合液は、水熱反応部(M)で、高温高圧下で二酸化バナジウム粒子の第1工程のシェル層に含有されるアモルファス状金属酸化物を結晶性金属酸化物に結晶化し、最終的なシェル層が形成される。
上記水供給路(103)、及び原料供給路(104)には、それぞれ水を亜臨界圧力や超臨界圧力以上に加圧するための加圧手段、すなわち、高圧ポンプ(P)と、この高圧水などを亜臨界温度以上又は臨界温度以上の所定の温度に加熱するための加熱手段(H)、すなわち、加熱炉(ヒーター)とが順に設けてある。
上記合流部で混合して得られた混合物は、シェル形成部(M)の恒温ゾーンに配置されたリアクターに導入されることになる。リアクターは、溶融塩浴ジャケットなどで覆われて、恒温ゾーンとなっており、所定の反応温度となるように調整されている。温度は、例えば、熱電対を備えた温度センサーなどによりモニターできる。次に、生成したコア・シェル型の二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子(105)は、冷却部(C、水冷ジャケット)、回収部(G)、圧力調整弁、例えば、背圧弁(V)を通り、二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子貯留槽へと移動する。
本発明に従いシェル層まで形成したコア・シェル型の二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子は、反応後、通常、室温にまで冷却される。調製した二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子を反応混合物から分離する方法は、公知の方法を用いてもよく、物理的な方法や化学的な方法を利用して行うこともできる。
得られた二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子は、適宜、必要に応じて、濾過処理することにより、凝集物を除去することができるし、さらに、遠心処理、デカンテーション処理、蒸留水、純水などによる洗浄処理、希KOH水溶液などの希アルカリ水溶液などを使用し再分散化処理と遠心分離処理を繰り返す、また限外濾過を施すなどして二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子を洗浄できる。こうして得られる本発明の二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子は、既知の方法で乾燥し、例えば、凍結乾燥することにより、粉末の形で取得することもできる。
また、分散液とする場合は、二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子を分散させる方法は、特に制限されず、公知の分散装置、例えば、超音波分散機を用いて行うものとしても良い。
分散液の分散媒は、水のみからなるものであっても良いが、例えば、水に加えて0.1〜10質量%(分散液中)程度の有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール、アセトン等のケトン類等を含んでも良い。また、分散媒としては、リン酸緩衝液、フタル酸緩衝液等を用いることもできる。
分散液には、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、フタル酸、水酸化アンモニウム、アンモニア等の有機又は無機の酸又はアルカリが含有されて、所望のpHに調節されていても良い。
《サーモクロミックフィルム》
本発明のサーモクロミックフィルムは、少なくとも本発明のサーモクロミック性を示す二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子を含有することを特徴とし、さらにバインダー樹脂として疎水性バインダーを含有することが好ましい。
〔サーモクロミックフィルムの構成〕
本発明のサーモクロミックフィルムの代表的な構成例について、図を参照して説明する。
図3は、本発明のサーモクロミックフィルムの基本的な構成の一例で、透明基材上に、サーモクロミック層が形成されている構成を示す概略断面図である。
図3に示すサーモクロミックフィルム(11)は、透明基材(12)上に、サーモクロミック層(13)を形成した構成を有している。このサーモクロミック層(13)は、疎水性バインダー(B1)中に、本発明のコア・シェル型のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子が分散されて状態で存在している。この二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子には、二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子が独立して存在している二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子の一次粒子(VO)と、2個以上の二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子の凝集体を構成している、二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子の二次粒子(VO)が存在している。
本発明のサーモクロミックフィルムにおいては、前記サーモクロミック層に加えて、700〜1000nmの光波長範囲内の少なくとも一部を遮蔽する機能を有する近赤外光遮蔽層を有することが好ましい構成である。
また、本発明のサーモクロミックフィルムの好ましい態様の他の一つは、サーモクロミック層が樹脂基材機能を兼ねたハイブリッド構成である。
図4は、本発明のサーモクロミックフィルム(11)の基本的な構成の他の一例を示す概略断面図である。図4で示すように、透明基材(12)とサーモクロミック層(13)が同一層で構成されている態様であるハイブリッドサーモクロミック層(12+13)で構成されており、透明基材を構成しているポリマーに、疎水性バインダー(B2)を用い、当該疎水性バインダー(B2)中に、二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子が独立して存在している二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子の一次粒子(VO)と、2個以上の二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子の二次粒子(VO)が分散されて、単層で透明基材機能を兼ね備えたサーモクロミック層を形成している構成である。
図4に示す構成のサーモクロミックフィルムは、例えば、図3に示すサーモクロミックフィルム(11)のサーモクロミック層(13)を透明基材(12)(例えば、ガラス基材)から剥離して得ることもできる。
図5は、図3に示す構成で、透明基材(12)上に、サーモクロミック層(13)とともに近赤外光遮蔽層(14)を有するサーモクロミックフィルム(11)で、その代表的な層配置を示す概略断面図である。
図5の(a)で示すサーモクロミックフィルム(11)は、光線入射側(L)より、サーモクロミック層(13)、近赤外光遮蔽層(14)及び透明基材(12)の順に配置されている構成である。
図5(b)で示すサーモクロミックフィルム(11)では、透明基材(12)と近赤外光遮蔽層(14)との間に、本発明に係るサーモクロミック層(13)を配置した例であり、図5の(c)は、透明基材(12)の光線入射側(L)に近赤外光遮蔽層(14)を配置し、透明基材(12)の裏面側に本発明に係るサーモクロミック層(13)を配置した例である。
本発明のサーモクロミックフィルムとしては、上記説明した各構成層の他に、必要に応じて、各種機能層を設けてもよい。
本発明のサーモクロミックフィルムの総厚としては、特に制限はないが、10〜1500μmの範囲内であり、好ましくは20〜1000μmの範囲内であり、さらに好ましくは30〜500μmの範囲内であり、特に好ましくは40〜300μmの範囲内である。
本発明のサーモクロミックフィルムの光学特性として、JIS R3106(1998)で測定される可視光透過率としては、好ましくは30%以上であり、より好ましくは50%以上であり、さらに好ましくは60%以上である。
〔サーモクロミックフィルムの各構成材料〕
本発明のサーモクロミックフィルムは、二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子と、バインダー樹脂を含有するサーモクロミック層と、700〜1000nmの光波長範囲内の少なくとも一部を遮蔽する機能を有する近赤外光遮蔽層を有することが好ましい構成である。
以下、本発明のサーモクロミックフィルムの構成要素であるサーモクロミック層、必要により設ける樹脂基材、近赤外光遮蔽層の詳細について説明する。
(サーモクロミック層)
本発明に係るサーモクロミック層は、主には、本発明の二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子と、バインダー樹脂とを含有している。サーモクロミック層における二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子の濃度としては、特に制限はないが、おおむねサーモクロミック層全質量に対し、5〜60質量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは5〜40質量%の範囲内であり、さらに好ましくは5〜30質量%の範囲内である。
〈親水性バインダー〉
本発明のサーモクロミックフィルムは、二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子を保持するバインダーとして、親水性バインダーを適用することができる。
本発明でいう親水性バインダーとは、100gの水に対し、液温25℃での溶解量が1.0g以上である樹脂であれば特に制限なく用いられる。
本発明に適用する親水性バインダーとしては、水溶性高分子を用いることが好ましい。本発明に適用可能な親水性ポリマーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ゼラチン(例えば、特開2006−343391号公報記載のゼラチンを代表とする親水性高分子)、デンプン、グアーガム、アルギン酸塩、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリエチレングリコール、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマー、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ナフタリンスルホン酸縮合物や、アルブミン、カゼイン等のタンパク質、アルギン酸ソーダ、デキストリン、デキストラン、デキストラン硫酸塩等の糖誘導体などを挙げることができる。
〈疎水性バインダー〉
本発明のサーモクロミックフィルムは、二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子を保持するバインダーとして、疎水性バインダーを適用することが、特に好ましい。
本発明でいう疎水性バインダーとは、100gの水に対し、液温25℃での溶解量が1.0g未満である樹脂をいい、さらに好ましくは、溶解量が0.5g未満の樹脂であり、さらに好ましくは、溶解量が0.25g未満の樹脂である。
本発明に適用する疎水性バインダーとしては、疎水性ポリマー、又は疎水性バインダーのモノマーを用い、硬化処理工程でポリマー化した樹脂であることが好ましい。
本発明に適用可能な疎水性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)等のオレフィン系ポリマー、アクリル酸エステル系共重合体;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂等の含ハロゲン系ポリマー;ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体等のスチレン系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610等のポリアミド;ポリアセタール;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシベンジレン;ポリアミドイミド;ポリブタジエン系ゴム、アクリル系ゴムを配合したABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂)やASA樹脂(アクリロニトリル−スチレン−アクリレート樹脂)、セルロース系樹脂、ブチラール系樹脂等が挙げられる。
また、本発明に適用可能な疎水性バインダーの一種として、疎水性バインダーのモノマーを用い、硬化処理工程でポリマー化する樹脂を挙げることができ、その代表的な疎水性バインダー材料としては、活性エネルギー線の照射により硬化する化合物であり、具体的にはラジカル活性種による重合反応により硬化するラジカル重合性化合物、及びカチオン活性種によるカチオン重合反応により硬化するカチオン重合性化合物を挙げることができる。
ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物が挙げられ、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エステル、ウレタン、アミドや無水物、アクリロニトリル、スチレン、さらに種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等のラジカル重合性化合物が挙げられる。具体的には、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、カルビトールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エポキシアクリレート等のアクリル酸誘導体、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン等のメタクリル誘導体、その他、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物の誘導体が挙げられる。
カチオン重合性化合物としては、各種公知のカチオン重合性のモノマーが使用できる。例えば、特開平6−9714号公報、特開2001−31892号公報、特開2001−40068号公報、特開2001−55507号公報、特開2001−310938号公報、特開2001−310937号公報、特開2001−220526号公報に例示されているエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。
上記化合物とともに光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤としては、「UV・EB硬化技術の応用と市場」(シーエムシー出版、田畑米穂監修/ラドテック研究会編集)などに掲載されているあらゆる公知の光重合開始剤を用いることができる。
本発明においては、各構成材料と、二酸化バナジウム粒子を含む溶媒分散液とを含むサーモクロミック層形成用塗布液を、例えば、透明基材上に塗布した後、その後、紫外線又は電子線等の活性エネルギー線を照射する。これにより形成したサーモクロミック層薄膜を構成する組成物は速やかに硬化する。
活性エネルギー線の光源としては、紫外線を照射する場合には、例えば紫外線LED、紫外線レーザー、水銀アークランプ、キセノンアークランプ、低圧水銀灯、蛍光ランプ、炭素アークランプ、タングステン−ハロゲン複写ランプ及び太陽光を使用することができる。電子線により硬化させる場合には、通常300eVの以下のエネルギーの電子線で硬化させるが、1〜5Mradの照射量で瞬時に硬化させることも可能である。
一方、本発明に係るサーモクロミック層の他の形成方法としては、図4にその構成を例示するように、透明基材の構成材料である疎水性樹脂に、二酸化バナジウム粒子を含む溶媒分散液及び溶媒を添加、溶解して、成膜用ドープを調製した後、当該ドープを用いて従来公知のフィルム成膜で用いられている溶液流延法により、樹脂基材を兼ねたハイブリッドサーモクロミック層を形成する方法も好適に用いることができる。
上記方法で適用可能な疎水性バインダーとしては、従来サーモクロミックフィルムの成膜で用いられている樹脂材料を挙げることができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(略称:PET)、ポリエチレンナフタレート(略称:PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート(略称:TAC)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(略称:CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類及びそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート(略称:PC)、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(略称:PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル及びポリアリレート類、アートン(商品名JSR社製)及びアペル(商品名三井化学社製)等のシクロオレフィン系樹脂等を挙げることができる。
また、溶媒としては、特に制限はないが、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることができる。
上記各構成材料を混合、調製したドープを用いて、溶液流延法により透明基材を兼ねたハイブリッドサーモクロミック層を成膜する。
〈サーモクロミック層のその他の添加剤〉
本発明に係るサーモクロミック層に、本発明の目的とする効果を損なわない範囲で適用可能な各種の添加剤を、以下に列挙する。例えば、特開昭57−74193号公報、特開昭57−87988号公報、及び特開昭62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号公報、特開昭57−87989号公報、特開昭60−72785号公報、特開昭61−146591号公報、特開平1−95091号公報、及び特開平3−13376号公報等に記載されている退色防止剤、アニオン、カチオン又はノニオンの各種界面活性剤、特開昭59−42993号公報、特開昭59−52689号公報、特開昭62−280069号公報、特開昭61−242871号公報、及び特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、防黴剤、帯電防止剤、マット剤、熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、減粘剤、滑剤、赤外線吸収剤、色素、顔料等の公知の各種添加剤などが挙げられる。
(透明基材)
本発明のサーモクロミックフィルムに適用可能な透明基材としては、透明であれば特に制限はなく、ガラス、石英、透明樹脂フィルム等を挙げることができるが、可撓性の付与及び生産適性(製造工程適性)の観点からは、透明樹脂フィルムであることが好ましい。本発明でいう「透明」とは、可視光領域における平均光線透過率が50%以上であることをいい、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上である。
本発明に係る透明基材の厚さは、30〜200μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは30〜100μmの範囲内であり、更に好ましくは35〜70μmの範囲内である。透明基材の厚さが30μm以上であれば、取り扱い中にシワ等が発生しにくくなり、また厚さが200μm以下であれば、ガラス基材と貼り合わせる際のガラス曲面への追従性がよくなる。
本発明に係る透明基材は、二軸配向ポリエステルフィルムであることが好ましいが、未延伸又は少なくとも一方に延伸されたポリエステルフィルムを用いることもできる。強度の向上、熱膨張抑制の点から延伸フィルムが好ましい。特に、本発明のサーモクロミックフィルムを具備した合わせガラスを自動車用のガラスとして用いる場合、延伸フィルムがより好ましい。
本発明に係る透明基材は、サーモクロミックフィルムのシワの生成やサーモクロミック層の割れを防止する観点から、温度150℃において、熱収縮率が0.1〜3.0%の範囲内であることが好ましく、1.5〜3.0%の範囲内であることがより好ましく、1.9〜2.7%であることがさらに好ましい。
本発明のサーモクロミックフィルムに適用可能な透明基材としては、透明であれば特に制限されることはないが、種々の樹脂フィルムを用いることが好ましく、例えば、ポリオレフィンフィルム(例えば、シクロオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステルフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリ塩化ビニル、トリアセチルセルロースフィルム等を用いることができ、好ましくは、シクロオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム、トリアセチルセルロースフィルムである。
ポリエステルフィルム(以降、単にポリエステルと称す。)としては、特に限定されるものではないが、ジカルボン酸成分とジオール成分を主要な構成成分とするフィルム形成性を有するポリエステルであることが好ましい。
主要な構成成分のジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルチオエーテルジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸などを挙げることができる。また、ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビスフェノールフルオレンジヒドロキシエチルエーテル、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、シクロヘキサンジオールなどを挙げることができる。
これらを主要な構成成分とするポリエステルの中でも透明性、機械的強度、寸法安定性などの点から、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸や2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジオール成分として、エチレングリコールや1,4−シクロヘキサンジメタノールを主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。中でも、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートを主要な構成成分とするポリエステルや、テレフタル酸と2,6−ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールからなる共重合ポリエステル、及びこれらのポリエステルの2種以上の混合物を主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。
透明基材として透明樹脂フィルムを用いる場合、取り扱いを容易にするために、透明性を損なわない範囲内で粒子を含有させてもよい。本発明で用いる粒子の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シリカ、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子や、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子を挙げることができる。また粒子を添加する方法としては、原料とするポリエステル中に粒子を含有させて添加する方法、押出機に直接添加する方法等を挙げることができ、このうちいずれか一方の方法を採用してもよく、二つの方法を併用してもよい。本発明では必要に応じて上記粒子の他にも添加剤を加えてもよい。このような添加剤としては、例えば、安定剤、潤滑剤、架橋剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、染料、顔料、紫外線吸収剤などが挙げられる。
また、透明樹脂フィルムは、寸法安定性の点で弛緩処理、オフライン熱処理を行ってもよい。弛緩処理は前記ポリエステルフィルムの延伸成膜工程中の熱固定した後、横延伸のテンター内、又はテンターを出た後の巻き取りまでの工程で行われるのが好ましい。弛緩処理は処理温度が80〜200℃の範囲内で行われることが好ましく、より好ましくは処理温度が100〜180℃の範囲内である。また長手方向、幅手方向ともに、弛緩率が0.1〜10%の範囲内で行われることが好ましく、より好ましくは弛緩率が2〜6%の範囲内で処理されることである。弛緩処理された基材は、オフライン熱処理を施すことにより耐熱性が向上し、さらに、寸法安定性が良好になる。
透明樹脂フィルムは、成膜過程で片面又は両面にインラインで下引層塗布液を塗布することが好ましい。本発明においては、成膜工程中での下引塗布をインライン下引という。
(近赤外遮蔽層)
本発明のサーモクロミックフィルムにおいては、サーモクロミック層に加え、700〜1000nmの光波長範囲内の少なくとも一部を遮蔽する機能を有する近赤外光遮蔽層を設ける構成とすることも好ましい。
本発明に適用可能な近赤外光遮蔽層の詳細については、例えば、特開2012−131130号公報、特開2012−139948号公報、特開2012−185342号公報、特開2013−080178号公報、特開2014−089347号公報等に記載されている構成要素及び形成方法等を参考にすることができる。
〔サーモクロミックフィルムの製造方法〕
(製造方法1:水系形成法)
本発明のサーモクロミックフィルムの製造方法としては、少なくとも本発明のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子と親水性バインダーを用い、湿式塗布法によりサーモクロミック層を形成する方法である。湿式塗布法として具体的には、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、スライド型カーテン塗布法、又は米国特許第2761419号明細書、米国特許第2761791号明細書などに記載のスライドホッパー塗布法、エクストルージョンコート法などが挙げられる。
また、図4で示すような樹脂基材を兼ねたハイブリッドサーモクロミック層を形成する場合は、溶液流延法を適用することができ、具体的な成膜方法としては、例えば、特開2013−067074号公報、特開2013−123868号公報、特開2013−202979号公報、特開2014−066958号公報、特開2014−095729号公報、特開2014−159082号公報等に記載されている溶液流延成膜法に従って形成することができる。
(製造方法2:有機溶媒系形成法1)
本発明においては、有機溶媒に、本発明のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子を混合して非水系の分散液を調製した後、さらに疎水系バインダーを添加し、塗布・乾燥することでサーモクロミック層を形成し、サーモクロミックフィルムを作製することも好ましい。
この場合についても、湿式塗布法でサーモクロミックフィルムを作製することが好ましい。具体的な作製方法としては、水系のサーモクロミックフィルムの作製方法と同様である。
(製造方法3:有機溶媒系形成法2)
有機溶媒を用いてサーモクロミックフィルムを製造する他の方法として、まず、水系合成法により得られた、二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子を分散させた水分散液を乾燥させることなく、二酸化バナジウム粒子を分散させた水分散液に有機溶媒を加え、二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子を水相から有機相に移動させ、当該有機相を分離抽出する。そして、有機相に疎水性バインダーを混合して塗布・乾燥することでサーモクロミック層を形成し、サーモクロミックフィルムを製造する方法も好ましい。二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子を水相から有機相に移動させる方法としては、一般的な分液操作によって行われる。
《サーモクロミックフィルムの用途》
本発明のサーモクロミックフィルムの用途としては、ガラスに後貼りする構成とすることができ、このフィルムを貼合したガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に使用できる。フィルムを貼合したガラスは、これらの用途以外にも使用できる。前記フィルムを貼合したガラスは、建築用又は車両に用いることが好ましく、自動車のフロントガラス、サイドガラス、リアガラス又はルーフガラス等に使用できる。
ガラス部材としては、無機ガラス及び有機ガラス(樹脂グレージング)が挙げられる。無機ガラスとしては、フロート板ガラス、熱線吸収板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、線入り板ガラス、及びグリーンガラス等の着色ガラス等が挙げられる。上記有機ガラスは、無機ガラスに代用される合成樹脂ガラスである。上記有機ガラス(樹脂グレージング)としては、ポリカーボネート板及びポリ(メタ)アクリル樹脂板等が挙げられる。上記ポリ(メタ)アクリル樹脂板としては、ポリメチル(メタ)アクリレート板等が挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
《サーモクロミックフィルムの作製》
〔サーモクロミックフィルム101の作製:水系〕
(二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子分散液1の調製)
純水10mLに、バナジン酸アンモニウム(NHVO、和光純薬社製、特級)0.433gを混合し、更に、ヒドラジン水和物(N・HO、和光純薬社製、特級)の5質量%水溶液をゆっくり滴下し、23℃におけるpH値が9.2の溶液(A)を調製した。調製した溶液(A)を、市販の水熱反応処理用オートクレーブ(三愛科学社製HU−25型、SUS製本体に25mL容積のテフロン(登録商標)製内筒を備える構成)内に入れ、100℃で8時間、引き続き270℃で24時間、水熱反応処理を施して、コア粒子である二酸化バナジウム粒子1を含む水系分散液を調製した。
次いで、二酸化バナジウム粒子1を含む水系分散液の10gに、50mLのエタノールを添加し、28%のアンモニア水でpHを11.0に調整した後、強撹拌下でテトラエトキシシラン(TEOS)を1.5g添加し、25℃で4時間(室温)反応させてシェル層を形成した。遠心沈降及び純水で洗浄を行った後、純水を加え、ホモミクサー(プライミクス株式会社製、T.K.ホモミクサーMARKII)を用い、撹拌羽根を7.85m/秒の周速で回転させて撹拌して二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子1を調製し、二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子1が濃度で3質量%となるように分散させ、二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子分散液1を得た。
(サーモクロミック層形成用塗布液1の調製)
下記の各構成材料を順次添加、混合及び溶解して、水系のサーモクロミック層形成用塗布液1を調製した。
3質量%の二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子分散液1 128質量部
3質量%のホウ酸水溶液 10質量部
5質量%の親水性バインダー樹脂S1水溶液(PVA105、クラレ社製)
60質量部
(光学機能層の形成)
厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製A4300、両面易接着層)の透明基材上に、押出コーターを用いて、上記調製した光学機能層形成用塗布液1を、乾燥後の層厚が1.5μmとなる条件で湿式塗布を行い、次いで110℃の温風を2分間吹きつけて乾燥させて、サーモクロミック層を形成して、サーモクロミックフィルム101を作製した。
〔サーモクロミックフィルム102の作製:水系〕
上記サーモクロミックフィルム101の作製において、二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子分散液1に代えて、下記の方法で調製した二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子分散液2を用いた以外は同様にして、サーモクロミックフィルム102を作製した。
(二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子分散液2の調製)
二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子1を遠心沈降・洗浄後に110℃で2時間乾燥し粉体化後、純水とドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを加え、ホモミクサー(プライミクス株式会社製、T.K.ホモミクサーMARKII)を用い、撹拌羽根を7.85m/秒の周速で回転させて撹拌して二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子を調製し、濃度で3質量%となるように二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子分散液2を調製した。
〔サーモクロミックフィルム103の作製:水系〕
上記サーモクロミックフィルム101の作製において、二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子分散液1に代えて、下記の方法で調製した二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子分散液3を用いた以外は同様にして、サーモクロミックフィルム103を作製した。
(二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子分散液3の調製)
二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子分散液1を用い、図2で示したフロー型リアクターを用いて、二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子分散液3を調製した。
精製水に上記二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子分散液1を加え、0.02モル/Lの二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子水スラリーを調製した。予熱水、二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子スラリーの流量は12mL/min、3mL/minとした。次に背圧弁により系内を25℃で30MPaの条件になるように設定した。
次いで、カートリッジヒーターに通電し、予熱水を440℃まで加熱した。通電と同時に、冷却水循環装置の電源を入れ冷却を開始した。各部の温度が安定したことを確認した後、精製水を送液していたポンプを二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子スラリーに切り替えて送液し水熱反応を行った。
所定時間後、回収部のラインを反対側のラインに戻し、電気炉とフレキシブルヒーターの加熱を停止させた。その後、送液ポンプを二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子を含有する水溶液から精製水に切り替え、反応を終了させた。管内の温度100℃以下になったことを確認し、背圧弁を開放して系内の圧力を常圧に戻した。冷却水循環装置の電源を切り、冷却を停止させた。
生成物をシリンジ型回収容器からビーカーに移した。ホモミクサー(プライミクス株式会社製、T.K.ホモミクサーMARKII)を用い、撹拌羽根を7.85m/秒の周速で回転させて撹拌して、シェル層を結晶化した二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子を調製し、濃度で3質量%となるように二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子分散液3を調製した。
[サーモクロミックフィルム104の作製:水系]
上記サーモクロミックフィルム101の作製において、二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子分散液1に代えて、下記の方法で調製した二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子分散液4を用いた以外は同様にして、サーモクロミックフィルム104を作製した。
(二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子分散液4の調製)
二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子分散液1の5gに、25mLエタノール添加し、1N硝酸(HNO)でpHを3.0にして強撹拌下チタンテトライソプロポキシド(Ti[OCH(CH)0.75gを添加して6時間(80℃)反応させた。ホモミクサー(プライミクス株式会社製、T.K.ホモミクサーMARKII)を用い、撹拌羽根を7.85m/秒の周速で回転させて撹拌して分散液を調製した。
その後、二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子分散液3と同様に、図2で示したフロー型リアクターを用いて、シェル層を結晶化した二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子を調製し、濃度で3質量%となるように二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子分散液4を調製した。
[サーモクロミックフィルム105の作製:疎水系]
前記サーモクロミックフィルム101の作製において、以下に示す構成のサーモクロミック層形成用塗布液を用いた以外は同様にして、サーモクロミックフィルム105を作製した。
(サーモクロミック層形成用塗布液の調製)
3質量%の二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子分散液5 128質量部
5質量%の疎水性バインダー樹脂O1(バイロン200、東洋紡社製、メチルエチルケトン溶液) 65質量部
(二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子分散液5の調製)
上記二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子分散液3と同様にして形成した生成物を、シリンジ型回収容器からビーカーに移し、限外濾過機(ビバフロー株式会社)を用いて、5分の1濃縮、メチルエチルケトンを加え、もとの液量に戻すという作業を4回繰り返し、溶媒をメチルエチルケトンに置換して二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子を調製し、濃度で3質量%となるように二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子分散液5を調製した。
[サーモクロミックフィルム106の作製:疎水系]
上記サーモクロミックフィルム105の作製において、二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子分散液5に代えて、下記の方法で調製した二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子分散液6を用いた以外は同様にして、サーモクロミックフィルム106を作製した。
(二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子分散液6の調製)
二酸化バナジウム粒子1を含む水系分散液の代わりに、1.0原子質量%のタングステンが含有されている二酸化バナジウム粒子2を使用した点以外は二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子分散液5と同様に二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子分散液6を調製した。
[サーモクロミックフィルム107の作製:疎水系]
上記サーモクロミックフィルム105の作製において、二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子分散液5に代えて、下記の方法で調製した二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子分散液7を用いた以外は同様にして、サーモクロミックフィルム107を作製した。
(二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子分散液7の調製)
二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子分散液3の調製において、ホモミクサー(プライミクス株式会社製、T.K.ホモミクサーMARKII)の周速を7.5m/秒にした以外は同様にして二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子分散液7を調製した。
≪サーモクロミックフィルムの評価≫
調製した二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子分散液1〜7及びサーモクロミックフィルム101〜107を用いて以下の評価を実施した。
(1)シェル層の金属酸化物の結晶性有無
上記調製した二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子分散液1〜7を用いて、シェル層のXRD解析(X線回折法)を行った際に、測定されたX線回折スペクトラムにおいて、ハローパターンが観測されず、結晶格子の面間隔に応じた結晶性を示す特定の回折線ピークを示す状態のときに、シェル層が結晶性金属酸化物を含有していると判断した。
XRD測定装置としては、RINT2000(株式会社リガク製)を用いてX線回折スペクトラムを測定した。
(XRD測定条件)
X線回折装置 :RINT2000(株式会社リガク製)
線源 :CuKα線
測定角 :2θ=10〜70°
散乱スリット :1/3°
サンプリング幅:0.02°
スキャン速度 :1.2°/分
(2)Z平均粒子径の測定
上記調製した二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子分散液1〜7を酢酸エチル溶液に投入し、0.001質量%溶液に調製した溶液を、マルバーン社製ゼータサイザーナノZSを用いて動的光散乱法にてZ平均粒子径の値を求めた。
<測定条件>
試料の調製条件:二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子分散液を酢酸エチル溶液に投入し、0.001質量%溶液に調製。
測定温度 :25.0℃
溶媒粘度 :0.426cp
レーザー :He−Ne、4.0mv、633nm
セル :ガラスセル
(3)保存安定性
上記作製した各サーモクロミックフィルムの25℃及び80℃の環境下(50%RH)における、それぞれの分光透過率を、日本分光社製の分光透過率計V−770を用い、赤外領域である1500nmにおける各透過率を測定し、温度間での分光透過率の変化率を求めた。
次いで、各サーモクロミックフィルムを60℃・90%RHの高温高湿環境下で3日間の強制劣化処理を行った後に、上記と同様の温度間での分光透過率の変化率を求め、強制劣化処理前後での変化率の減少率(%)を求め、下記の評価基準に従って保存性を評価した。60℃・90%RHの高温高湿環境下で保存した後でも、減少率が小さければ保存安定性(耐久性)に優れていると判定した。
なお、変化率(%)と減少率(%)は下記の方法により求めた。
変化率(%)=〔(25℃における分光透過率λ1500−80℃における分光透過率λ1500)/25℃における分光透過率λ1500〕×100
減少率(%)=〔1−(強制劣化処理後の変化率)/(強制劣化処理前の変化率)〕×100
◎:減少率が、2.0%未満である
○:減少率が、2.0%以上、5.0%未満である
△:減少率が、5.0%以上、10.0%未満である
×:減少率が、10.0%以上である
(4)ヘイズ
日本電色工業株式会社製 ヘーズメーター NDH7000を用いてヘイズ値の測定を行った。ヘイズ値は小さいほうが、二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子の分散性が良好で、透明フィルムとして好ましいことを示す。
◎:2%未満
○:2%以上3.5%未満
△:3.5%以上5%未満
×:5%以上
以上により評価した結果を表1に示す。
Figure 2018058734
表1に記載の結果より明らかなように、本発明のサーモクロミックフィルムは、比較例に対し、優れた保存安定性を有する、
また、ヘイズが低いことから、本発明のサーモクロミックフィルムに含有される二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子は、微粒子で、かつ、高い分散性を有することが分かる。
1 二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子
2 コア粒子
3 シェル層
11 サーモクロミックフィルム
12 透明基材
13 サーモクロミック層
12+13 ハイブリッドサーモクロミック層
14 近赤外光遮蔽層
100 フロー型リアクター
101 高圧原料液
102 予熱水
103 水供給路
104 原料供給路
105 二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子
B1、B2 疎水性バインダー
L 光線入射側
M 水熱反応部
C 冷却部
G 回収部
P ポンプ
H ヒーター
V 背圧弁
VO 二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子の一次粒子
VO 二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子の二次粒子

Claims (7)

  1. コア・シェル構造を有するサーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子であって、
    コア部が二酸化バナジウムを含有し、
    シェル層が結晶性金属酸化物を含有し、かつ、
    Z平均粒子径が100nm以下であることを特徴とするサーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子。
  2. 前記シェル層が含有する結晶性金属酸化物が、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ハフニウム、酸化セリウム及び酸化モリブデンから選ばれる化合物であることを特徴とする請求項1に記載のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子。
  3. 相転移温度の調整作用を有する元素を含む化合物を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子。
  4. 請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子を製造するサーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子の製造方法であって、
    前記コア部としての二酸化バナジウム粒子を含有する水分散液に、アモルファス状金属酸化物形成前駆体とアルカリとアルコールとを添加してアモルファス状金属酸化物を含有するシェル層を形成する第1工程と、
    前記シェル層が含有する前記アモルファス状金属酸化物を、超臨界状態にある高温高圧水存在下で結晶化して結晶性金属酸化物を形成する第2工程を有し、かつ、
    Z平均粒子径を100nm以下に調整することを特徴とするサーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子の製造方法。
  5. 請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子を含有することを特徴とするサーモクロミックフィルム。
  6. 前記サーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子と疎水性バインダーを含むサーモクロミック層を有することを特徴とする請求項5に記載のサーモクロミックフィルム。
  7. サーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子を含むサーモクロミック層を有するサーモクロミックフィルムの製造方法であって、
    請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有コア・シェル粒子と、少なくとも疎水性バインダーとを混合して塗布液を調製し、当該塗布液をフィルム基材上に塗布、乾燥することで前記サーモクロミック層を形成することを特徴とするサーモクロミックフィルムの製造方法。
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