JP2019135273A - サーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子及びその製造方法と、サーモクロミックフィルム及びその製造方法 - Google Patents

サーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子及びその製造方法と、サーモクロミックフィルム及びその製造方法 Download PDF

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【課題】本発明の課題は、優れた保存安定性と、高いサーモクロミック繰り返し耐性を有するサーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子とその製造方法と、それを用いたサーモクロミックフィルムとその製造方法を提供することである。【解決手段】本発明のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子は、コア・シェル構造を有し、コア部に二酸化バナジウム粒子を有し、その表面に、アモルファス状金属酸化物を含有する第1シェル層と、疎水性有機化合物を含有する第2シェル層をこの順で有することを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、サーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子及びその製造方法と、サーモクロミックフィルム及びその製造方法に関するものであり、より詳しくは、高い保存安定性を有するとともに、高いサーモクロミック繰り返し耐性を有するサーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子とその製造方法と、それを用いたサーモクロミックフィルムとその製造方法に関する。
近年、車窓から入り込む太陽光の影響によって人肌で感じる熱さを遮り、高い断熱性又は遮熱性を備えたガラスやガラスに貼合するフィルムが市場に流通している。最近では、電気自動車等の普及に伴い、車内の冷房効率を高める観点から、ガラスに適用する近赤外光(熱線)遮蔽フィルムの開発が盛んに行われている。
近赤外光遮蔽フィルムを車体や建物の窓ガラスに適用することにより、車内のエア・コンディショナー等の冷房設備への負荷を低減することができ、省エネルギー対策として有効な手段である。
このような近赤外線遮蔽フィルムとしては、赤外線吸収性物質としてITO(スズドープ酸化インジウム)などの導電体を含む光学フィルムが開示されている。また、特開2010−222233号公報には、赤外線反射層と赤外線吸収層とを有する機能性プラスチックフィルムを含む近赤外光遮蔽フィルムが開示されている。
一方、低屈折率層と高屈折率層とを交互に多数積層させた反射層積層体を有し、当該各屈折率層の層厚を調整することにより、近赤外光を選択的に反射する近赤外光遮蔽フィルムが、国際公開第2013/065679号で提案されている。
このような構成よりなる近赤外光遮蔽フィルムは、太陽光の照度が高い赤道近傍の低緯度地帯では、その高い近赤外光遮蔽効果により、好ましく利用されている。しかしながら、中緯度〜高緯度地帯の冬場においては、逆に、太陽光をできるだけ車内や室内に取り込みたい場合にも、一律に入射光線を遮蔽してしまうという問題がある。
上記問題に対し、近赤外光遮蔽フィルムに対し、近赤外光の遮蔽や透過の光学的性質を温度により制御するサーモクロミック材料を適用する方法の検討がなされている。その代表な材料として、二酸化バナジウム(以下、「VO」とも記す。)が挙げられる。二酸化バナジウムは、68℃前後の温度領域で相転移を起こし、サーモクロミック性を示すことが知られている。
すなわち、この二酸化バナジウムの特性を利用したサーモクロミックフィルムにより、高温になると熱の原因となる近赤外光を遮蔽し、低い温度では近赤外光を透過する特性を発現することが可能となる。これにより、夏場の暑い時は近赤外光を遮蔽して室内の温度上昇を抑制し、冬場の寒い時は、外部からの光エネルギーを取り込むことができるようになる。
しかしながら、上記サーモクロミック性を有する二酸化バナジウム粒子は、酸化されやすい性質を有するため、酸化反応に関与する水分子や酸素分子が、二酸化バナジウム粒子表面に接触して酸化反応が生じないように、粒子表面を特定の物質で被覆して、耐酸化性を向上させる方法が検討されている。
例えば、特許文献1には、他のアモルファス状金属酸化物で二酸化バナジウム粒子表面を被覆した二酸化バナジウム含有粒子が開示されている。特許文献1で記載されている方法では、確かに化学的な安定性は向上するが、本発明者が更に検討を進めた結果、温度変化によるサーモクロミック繰り返し再現性が不十分であることが判明した。これは、相転移に伴う二酸化バナジウム粒子の体積変化が、その表面を被覆しているアモルファス状金属酸化物層へも影響を及ぼし、二酸化バナジウム含有粒子として構造破壊が生じ、その結果、サーモクロミック性が低下したと推定される。
一方、特許文献2には、有機修飾の長鎖分子を二酸化バナジウム粒子表面に連結した上で、アモルファス状金属酸化物の被覆を行った二酸化バナジウム含有粒子が開示されている。しかしながら、特許文献2で記載されている方法では、サーモクロミック繰り返し再現性が劣化することが判明した。これは、二酸化バナジウム粒子表面に有機修飾の長鎖分子が化学的に連結しているため、相転移に伴う二酸化バナジウム含有粒子の体積変化により、内部で不均一化が生じ、その結果、サーモクロミック繰り返し再現性をさらに劣化させてしまっていると推測した。
従って、酸化等に対する耐性(保存安定性)を備えるとともに、かつサーモクロミック繰り返し再現性に対し優れた特性を有する二酸化バナジウム含有粒子と、それを用いたサーモクロミックフィルムの開発が切望されている。
国際公開第2015/161313号 特表2015−513508号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、優れた保存安定性と、高いサーモクロミック繰り返し耐性を有するサーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子とその製造方法と、それを用いたサーモクロミックフィルムとその製造方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく上記問題の原因等について検討した結果、コア部として二酸化バナジウム粒子を有し、かつ当該二酸化バナジウム粒子の表面上に、少なくとも1層のアモルファス状金属酸化物を含有する第1シェル層と、疎水性有機化合物を含有する第2シェル層とをこの順で有する多層構造であることを特徴とするサーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子とすることにより、優れた保存安定性と、高いサーモクロミック繰り返し耐性を有するサーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子を実現することができることを見いだし、本発明に至った。
すなわち、本発明の上記課題は、下記の手段により解決される。
1.コア・シェル構造を有するサーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子であって、
前記コア部として二酸化バナジウム粒子を有し、かつ、
当該二酸化バナジウム粒子の表面上に、少なくとも1層のアモルファス状金属酸化物を含有する第1シェル層と、
疎水性有機化合物を含有する第2シェル層と、
をこの順で有する多層構造であることを特徴とするサーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子。
2.前記第1シェル層が含有するアモルファス状金属酸化物が、酸化珪素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ハフニウム、酸化セリウム及び酸化モリブデンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする第1項に記載のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子。
3.前記第2シェル層が含有する疎水性有機化合物が、疎水性アルキル基又は疎水性アリール基と、シラザン、シリコンアルコキシド、アルコール、アルデヒド及びカルボン酸から選ばれる少なくとも1種の基とを有する化合物であることを特徴とする第1項又は第2項に記載のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子。
4.更に、相転移温度の調整作用を有する元素を含む化合物を含有することを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子。
5.第1項から第4項までのいずれか一項に記載のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子を製造するサーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子の製造方法であって、
第1シェル層形成工程として、コア粒子として二酸化バナジウム粒子を含有する水分散液に、アモルファス状金属酸化物形成前駆体とアルカリとアルコールを添加してアモルファス状金属酸化物を有するシェル層を形成する工程とを有し、かつ、
第2シェル層形成工程として、下記工程(2−1)又は(2−2)のいずれかの工程を有することを特徴とするサーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
工程(2−1):第1シェル層を形成した二酸化バナジウム粒子を含有する水分散液の水媒体を、限外濾過によりヒドロキ基を含有しない有機溶媒に置換し、次いで、シラザン基を有する疎水性有機化合物で表面修飾してシェル層を形成する工程、
工程(2−2):亜臨界状態にある高温高圧水の存在下でシリコンアルコキシド、アルコール、アルデヒド及びカルボン酸から選ばれる少なくとも1つの基を有する疎水性有機化合物で処理する、又は、亜臨界状態にある高温高圧水の存在下で前処理した後、超臨界状態にある高温高圧水の存在下で、シリコンアルコキシド、アルコール、アルデヒド及びカルボン酸から選ばれる少なくとも1つの基を有する疎水性有機化合物で表面修飾してシェル層を形成する工程。
6.第1項から第4項までのいずれか一項に記載のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子を含有することを特徴とするサーモクロミックフィルム。
7.更に、疎水性バインダーを含有することを特徴とする第6項に記載のサーモクロミックフィルム。
8.サーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子を含有するサーモクロミックフィルムの製造方法であって、
第5項に記載のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子の製造方法により製造したサーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子と、少なくとも疎水性バインダーとを混合して、塗布・乾燥することにより製造することを特徴とするサーモクロミックフィルムの製造方法。
本発明の上記手段により、高いサーモクロミック繰り返し耐性を有するサーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子とその製造方法と、それを用いたサーモクロミックフィルムとその製造方法を提供することができる。
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
本発明のサーモクロミック性二酸化バナジウム(VO)含有粒子においては、酸化されやすい性質を有するサーモクロミック性を有する二酸化バナジウム粒子の表面を、アモルファス状金属酸化物で構成する第1シェル層で被覆し、さらに、疎水性有機化合物から構成される第2シェル層で被覆することにより、優れた保存安定性を達成するとともに、サーモクロミック繰り返し再現性が向上することを見出した。
通常、相転移に伴う二酸化バナジウム(VO)含有粒子の体積変化は、アモルファス状金属酸化物を有する第1シェル層へも影響するが、最外部に疎水性有機化合物を結合させる第2シェル層を形成することにより、第2シェル層がキャッピング層となり、二酸化バナジウム粒子の表面構造を均質化して、多数回の体積変化を受けても、粒子表面起因の構造破壊耐性が向上させることができ、その結果、様々な温湿度変化を受けたのちでも、サーモクロミック特性の変動が少なくなり、優れたサーモクロミック特性の繰り返し耐性を実現することができたものと推測している。
本発明のコア・シェル型のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子の構造の一例を示す概略断面図 サーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子の製造に用いる溶媒置換処理装置(限外濾過装置)の一例を示す概略フロー図 本発明のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子の製造に適用可能なフロー型リアクターの一例を示す概略構成図 本発明のサーモクロミックフィルムの基本的な構成の一例を示す概略断面図 本発明のサーモクロミックフィルムの基本的な構成の他の一例を示す概略断面図 近赤外光遮蔽層を有する本発明のサーモクロミックフィルムの層配置の一例を示す概略断面図
本発明のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子は、コア部に二酸化バナジウム粒子を有し、当該二酸化バナジウム粒子の表面上に、少なくとも1層のアモルファス状金属酸化物を含有する第1シェル層と、疎水性有機化合物を含有する第2シェル層とをこの順で有する多層構造であることを特徴とする。この特徴は、各請求項に係る発明に共通する又は対応する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の目的とする効果をより発現できる観点から、第2シェル層を形成するアモルファス状金属酸化物として、酸化珪素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ハフニウム、酸化セリウム及び酸化モリブデンから選ばれる少なくとも1種とすることが、ゾルゲル反応で形成でき、高温の焼成工程を用いなくても安定してアモルファス状金属酸化物を形成することができる点で好ましい。
また、第2シェル層が含有する疎水性有機化合物として、疎水性アルキル基又は疎水性アリール基と、シラザン、シリコンアルコキシド、アルコール、アルデヒド及びカルボン酸から選ばれる少なくとも1種の基とを有する化合物を選択することが、よりサーモクロミック特性の繰り返し耐性を向上させることができる点で好ましい。
また、相転移温度の調整作用を有する元素を含む化合物を含有することが、相転移温度を調節して最適化することで、夏場の冷房設備への負荷と冬場の暖房設備への負荷の双方を減少させてより省エネルギー対策をすることができる点からより好ましい。
また、本発明のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子の製造方法においては、 第1シェル層形成工程として、コア粒子として二酸化バナジウム粒子を含有する水分散液に、アモルファス状金属酸化物形成前駆体とアルカリとアルコールを添加してアモルファス状金属酸化物を有するシェル層を形成する工程とを有し、かつ、第2シェル層形成工程として、第1シェル層を形成した二酸化バナジウム粒子を含有する水分散液の水媒体を、限外濾過によりヒドロキシ基を含有しない有機溶媒に置換し、次いで、シラザン基を有する疎水性有機化合物で表面修飾してシェル層を形成する工程(2−1)、又は亜臨界状態にある高温高圧水の存在下でシリコンアルコキシド、アルコール、アルデヒド及びカルボン酸から選ばれる少なくとも1つの基を有する疎水性有機化合物で処理する、又は、亜臨界状態にある高温高圧水の存在下で前処理した後、超臨界状態にある高温高圧水の存在下で、シリコンアルコキシド、アルコール、アルデヒド及びカルボン酸から選ばれる少なくとも1つの基を有する疎水性有機化合物で表面修飾してシェル層を形成する工程(2−2)のいずれかの工程を有することを特徴とし、本発明の目的効果を発揮することができる二酸化バナジウム含有粒子を製造することができる。
また、本発明のサーモクロミックフィルムにおいては、上記記載の二酸化バナジウム含有粒子を含有するとともに、疎水性バインダーを含有することが、二酸化バナジウム粒子との相溶性を高め、ヘイズやサーモクロミック繰り返し耐性をより向上させることができる点から好ましい。
本発明においては、二酸化バナジウム含有粒子を構成する粒子を「二酸化バナジウム粒子」と称し、その二酸化バナジウム粒子の表面にシェル層を形成し、コア・シェル粒子とした構成を「サーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子」と称する。なお、以下の説明において、サーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子を、単に二酸化バナジウム含有粒子、あるいは本発明の二酸化バナジウム含有粒子ということもある。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本発明iにおいて示す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
《サーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子》
本発明のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子は、コア・シェル構造を有し、コア部に二酸化バナジウム粒子を有し、その表面上に、アモルファス状金属酸化物を含有する第1シェル層と、疎水性有機化合物を含有する第2シェル層とをこの順で有する多層構造であることを特徴とする。
以下、本発明のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子の構造、サーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子の調製に用いる材料及び製造方法の詳細について説明する。
〔二酸化バナジウム含有粒子の構造〕
本発明の二酸化バナジウム含有粒子の形態は、コア部に二酸化バナジウム粒子を有し、当該二酸化バナジウム粒子の表面上に、アモルファス状金属酸化物を含有する第1シェル層を有し、更に第1シェル層上に疎水性有機化合物を含有する第2シェル層を有する構成である。
図1は、本発明のコア・シェル型の二酸化バナジウム含有粒子の構造の一例を示す概略断面図である。
図1は、本発明のコア・シェル型の二酸化バナジウム含有粒子(1)の断面構造を示しており、二酸化バナジウム含有粒子(1)は、コア粒子を二酸化バナジウム粒子(2)で構成し、その外周部にアモルファス状金属酸化物を含有する第1シェル層(3)が形成され、更に、第1シェル層(3)の表面が、疎水性有機化合物を含有する第2シェル層(4)を被覆されている構成を示している。
〔二酸化バナジウム含有粒子の構成材料〕
(二酸化バナジウム粒子:コア粒子)
本発明の二酸化バナジウム含有粒子のコア粒子を構成する二酸化バナジウム粒子としては、その結晶形として特に制限はないが、サーモクロミック性(自動調光性)を効率よく発現させる観点から、ルチル型の二酸化バナジウム粒子(VO粒子)を用いることが、特に好ましい。
ルチル型のVO粒子は、転移温度以下では、単斜晶系(monoclinic)の構造を有するため、M型とも呼ばれる。本発明に係る二酸化バナジウム粒子においては、目的を損なわない範囲で、A型、又はB型などの他の結晶型のVO粒子を含んでもよい。
本発明においては、詳細は後述する光学機能層中における二酸化バナジウム粒子の一次粒子及び二次粒子の数平均粒径が、200nm以下であることが好ましく、1〜180nmの範囲内がより好ましく、さらに好ましくは、5〜100nmの範囲内である。
また、コア・シェル構造とした二酸化バナジウム含有粒子の一次粒子及び二次粒子の数平均粒径は、250nm以下であることが好ましく、1〜200nmの範囲内がより好ましく、さらに好ましくは、10〜150nmの範囲内である。
二酸化バナジウム粒子の平均粒径は、下記の方法により求めることができる。当該粒子を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、1万〜10万倍で撮影する。撮影した二酸化バナジウム粒子について、その直径を測定して、算術平均を求める。この時、測定する二酸化バナジウム粒子は、100〜200個の範囲内であることが好ましい。なお、当該粒子が完全な球形ではない場合には、当該粒子の投影面積を円相当径とした時の直径として求める。
また、二酸化バナジウム粒子及び二酸化バナジウム含有粒子のアスペクト比としては、1.0〜3.0の範囲内であることが好ましい。
このような特徴をもつコア粒子を構成する二酸化バナジウム粒子では、アスペクト比が十分に小さく、形状が等方的であるので、溶液に添加した場合の分散性が良好である。加えて、単結晶の粒径が十分に小さいので、従来の微粒子に比べて、良好なサーモクロミック性を発揮することができる。
〈相転移温度の調整作用を有する元素〉
本発明の二酸化バナジウム含有粒子においては、相転移温度の調整作用を有する元素を含む化合物を含有することが好ましく、特に、コア粒子を構成する二酸化バナジウム粒子が相転移温度の調整作用を有する元素を含む化合物を含有することが好ましい。
すなわち、本発明に係るコア粒子を構成する二酸化バナジウム粒子では、二酸化バナジウム(VO)の他に、例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、スズ(Sn)、レニウム(Re)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、ゲルマニウム(Ge)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、フッ素(F)及びリン(P)からなる群から選定された、少なくとも一つの元素を、相転移温度調節剤として含んでいても良い。このような元素の添加により、二酸化バナジウム粒子の相転移特性(特に、相転移温度)を制御することができる点で有効である。なお、最終的に得られる二酸化バナジウム粒子に対する、そのような添加物の総量は、バナジウム(V)原子に対して、0.1〜5.0原子%程度で十分である。
また、後述するサーモクロミックフィルムを構成する光学機能層における二酸化バナジウム粒子の濃度としては、特に制限はないが、おおむね光学機能層全質量に対し、5〜60質量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは5〜40質量%の範囲内であり、さらに好ましくは5〜30質量%の範囲内である。
〈二酸化バナジウム粒子の製造方法〉
一般に、二酸化バナジウム粒子の製造方法は、固相法により合成されたVO焼結体を粉砕する方法と、五酸化二バナジウム(V)やバナジン酸アンモニウムなどのバナジウム化合物を原料として、有機溶媒ではなく水溶液を使用した液相でVOを合成しながら粒子成長させる水系合成法が好ましく用いられる。
水系合成法は、平均一次粒子径が小さく、粒径のばらつきを抑制することができる点で好ましい。
更に、水系合成法としては、水熱合成法と、超臨界状態を用いた水系合成法が挙げられ、超臨界状態を用いた水系合成法(超臨界水熱合成法ともいう。)の詳細については、例えば、特開2010−58984号公報の段落番号(0011)、同(0015)〜(0018)に記載されている製造方法を参照することができる。
上記水系合成法の中でも、本発明においては、水熱合成法を適用し、かつ、水系合成法により二酸化バナジウム粒子を含む水系分散液として調製し、水系分散液中の二酸化バナジウム粒子を乾燥させることなく、溶媒を置換する工程により二酸化バナジウム粒子を含む溶剤分散液を調製し、二酸化バナジウム粒子が離間している分散状態で疎水系バインダー樹脂溶液と混合して、光学機能層形成用塗布液を調製する。この状態の光学機能層形成用塗布液を用いて、光学機能層を形成することにより、二酸化バナジウム含有粒子の一次粒子及び二次粒子の数平均粒径が200nm以下である光学機能層を形成することができる。また、二酸化バナジウム粒子の製造方法として、必要に応じて、粒子成長の核となる微小なTiO等の微粒子を核粒子として添加し、その核粒子を成長させることにより二酸化バナジウム粒子を製造することもできる。
次いで、本発明に好適な水熱法による二酸化バナジウム粒子の製造方法について、その詳細をさらに説明する。
以下に、代表的な水熱法による二酸化バナジウム粒子の製造工程を示す。
(工程1)
バナジウム(V)を含む物質(I)と、ヒドラジン(N)又はその水和物(N・nHO)と、水とを混ぜて溶液(A)を調製する。この溶液は、物質(I)が水中に溶解した水溶液であっても良いし、物質(I)が水中に分散した懸濁液であっても良い。
物質(I)としては、例えば、五酸化二バナジウム(V)、バナジン酸アンモニウム(NHVO)、三塩化酸化バナジウム(VOCl)、メタバナジン酸ナトリウム(NaVO)等が挙げられる。なお、物質(I)としては、五価のバナジウム(V)を含む化合物であれば、特に限定されない。ヒドラジン(N)及びその水和物(N・nHO)は、物質(I)の還元剤として機能するものであって、水に容易に溶解する性質を有する。
溶液(A)は、最終的に得られる二酸化バナジウム(VO)の単結晶微粒子に元素を添加するため、添加する元素を含む物質(II)が更に含有していてもよい。添加する元素としては、例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、スズ(Sn)、レニウム(Re)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、ゲルマニウム(Ge)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、フッ素(F)又はリン(P)が挙げられる。
これらの元素を、最終的に得られる二酸化バナジウム(VO)含有の単結晶微粒子に添加することにより、二酸化バナジウム粒子のサーモクロミック性、特に、転移温度を制御することができる。
また、この溶液(A)は、酸化性又は還元性を有する物質(III)が更に含有されていてもよい。物質(III)としては、例えば、過酸化水素(H)が挙げられる。酸化性又は還元性を有する物質Cを添加することにより、溶液のpHを調整したり、物質(I)であるバナジウム(V)を含む物質を均一に溶解させたりすることができる。
(工程2)
次に、調製した溶液(A)を用いて、水熱反応処理を行う。ここで、「水熱反応」とは、温度と圧力が、水の臨界点(374℃、22MPa)よりも低い熱水(亜臨界水)中において生じる化学反応を意味する。水熱反応処理は、例えば、オートクレーブ装置内で行われる。水熱反応処理により、二酸化バナジウム(VO)含有の単結晶微粒子が得られる。
水熱反応処理の条件(例えば、反応物の量、処理温度、処理圧力、処理時間等。)は、適宜設定されるが、水熱反応処理の温度は、例えば、250〜350℃の範囲内であり、好ましくは250〜300℃の範囲内であり、より好ましくは250〜280℃の範囲内である。温度を低くすることにより、得られる単結晶微粒子の粒径を小さくすることができるが、過度に粒径が小さいと、結晶性が低くなる。また、水熱反応処理の時間は、例えば1時間〜5日の範囲内であることが好ましい。時間を長くすることにより、得られる単結晶微粒子の粒径等を制御することができるが、過度に長い処理時間では、エネルギー消費量が多くなる。
以上の工程1及び工程2を経て、サーモクロミック性を有する二酸化バナジウム(VO)含有の単結晶微粒子を含む分散液が得られる。
(第1シェル層)
本発明の二酸化バナジウム含有粒子を構成する第1シェル層は、アモルファス状金属酸化物を含有することを特徴とする。
本発明でいうアモルファスとは、形成した第1シェル層のXRD解析(X線回折法)を行った際に、固体を構成する原子や分子等として三次元的な規則性が少なく、測定されたX線回折スペクトラムにおいて、ハローパターンのみが観測され、結晶性を示す特定の回折線ピークを示さない状態の層であると定義する。
上記測定で用いるXRD測定装置としては、例えば、島津製作所社製のX線回折装置 XRD−7000、XRD−6100、リガク社製X線回折装置(XRD測定装置 RINT2200、RINT−TTR2、SWRD等)等を挙げることができる。
第1シェル層としては、ゾル−ゲル反応を用いて、液相で加水分解と縮重合まで行うことにより、アモルファス状金属酸化物より構成される第1シェル層を得ることができる。ここでいうゾル−ゲル反応とは、一般的な意味でアルコキシド系ゾルを加熱などによりゲル状態とし、セラミックスなどを合成する化学操作の一つである。
本発明に適用可能なアモルファス状金属酸化物としては、TiO、ITO、ZnO、Nb、ZrO、CeO、Ta、Ti、Ti、Ti、TiO、SnO、LaTi、IZO、AZO、GZO、ATO、ICO、Bi、a−GIO、Ga、GeO、SiO、Al、HfO、SiO、MgO、Y、WO、IGZO、In等が挙げられる。その中でも、酸化ケイ素(SiO)、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化セリウム(CeO)、酸化モリブデン(MoO)が、形成する第1シェル層として高い透明性が得られる点で好ましい。
本発明に係る第1シェル層の形成方法としては、液相系でゾル-ゲル法を用いて、コア粒子である二酸化バナジウム粒子表面に第1シェル層を形成するが、例えば、酸化ケイ素(SiO)をゾル−ゲル法で形成する場合は、アモルファス状金属酸化物形成前駆体として、TEOS(テトラエトキシシラン)等のアルコキシド(シリカ前駆体)を、アルカリとアルコールと共に、塩基性条件で、加水分解・重縮合反応を行わせることによって、アルコールを脱離させて、アモルファス状金属酸化物より構成される第1シェル層を形成することができる。
また、第1シェル層の形成は、必要に応じて、酸性条件下でも行うことができるが、シリカ層を形成する場合には、一般に、強塩基性条件の方が、密なシリカ膜が得られ易い。
(第2シェル層)
本発明の二酸化バナジウム含有粒子においては、上記説明した第1シェル層上に、更に、疎水性有機化合物を含有する第2シェル層を形成することを特徴とし、このような構成とすることにより、高い繰り返し耐性を得ることができる。
第2シェル層は疎水性有機化合物により形成するが、更には、疎水性有機化合物が、疎水性アルキル基又は疎水性アリール基と、シラザン、シリコンアルコキシド、アルコール、アルデヒド及びカルボン酸から選ばれる少なくとも1種の基とを有する化合物であることが好ましい。
(1)疎水性アルキル基
疎水性アルキル基としては、直鎖、分岐、あるいは不飽和基を有してもよい炭素数が1〜23までのアルキル基を挙げることができる。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ペンタデキル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等を挙げることができる。
(2)疎水性アリール基
疎水性アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アズレン基等を挙げることができる。
(3)シラザン(シリル化剤)
本発明に適用可能なシラザンの具体例としては、トリメチルシリルクロライド、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシリルトリフロロメタンスルホネート、トリエチルシリルクロライド、t−ブチルジメチルシリルクロライド、トリイソプロピルシリルクロライド、1,3−ジクロロー1,1,3,3−テトライソプロピルジシロキサン、クロロメチルトリメチルシラン、トリエチルシラン、t−ブチルジメチルシラン、トリメチルシリルアセチレンヘシラメチルジシラン、アリルトリメチルシラン、トリメチルビニルシラン等を挙げることができる。上記化合物は、市販品(例えば、信越シリコーン(株)、シリル化剤)として入手することもできる。
(4)シリコンアルコキシド
本発明に適用可能なシリコンアルコキシドの具体例としては、以下の化合物を挙げることができる。
シランとしては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトシキシラン、デシルトリメトキシシラン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。なお、上記化合物は、市販品(例えば、信越シリコーン(株)、シラン)として入手することもできる。
また、1つの分子中に有機官能基とアルコキシ基を有するシランカップリング剤も用いることができ、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−クリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。なお、上記化合物は、市販品(例えば、信越シリコーン(株)、シランカップリング剤)として入手することもできる。
(5)アルコール
アルコールとしては、直鎖、あるいは分岐してもよい炭素数が1〜23までのアルコール類を挙げることができ、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ペンタデカノール、オクタデカノール、イコサノール、ドコサノール、トリコダノール等を挙げることができる。
(6)アルデヒド
アルデヒドとしては、直鎖、あるいは分岐してもよい炭素数が1〜23までのアルデヒド類を挙げることができ、例えば、メタナール(ホルムアルデヒド)、エタナール(アセトアルデヒド)、プロパナール(プロピオンアルデヒド)、ブタナール、ペンタナール、ヘキサナール、オクタナール、デカナール、ドデカナール、ペンタデカナール、オクタデカナール、イコサナール、ドコサナール、トリコダナール、アクロレイン、ベンズアルデヒド、バニリン、グリオキサール等を挙げることができる。
(7)カルボン酸
カルボン酸としては、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、芳香族カルボン酸、ジカルボン酸等を挙げることができる。
例えば、飽和脂肪酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等を挙げることができる。
また、不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸等を挙げることができる。
また、芳香族カルボン酸としては、安息香酸、フタル酸、サリチル酸、没食子酸、ケイ皮酸等を挙げることができる。
また、ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸等を挙げることができる。
本発明に係る上記疎水性有機化合物から構成される第2シェル層の形成方法としては、一例としては、第2シェル層を形成した二酸化バナジウム粒子に対し、限外濾過によりヒドロキシ基を有していない有機溶媒に分散媒を置換した後、疎水性有機化合物、例えば、シラザン基を有する疎水性化合物で処理を行って、最外層に第2シェル層を形成する方法を挙げることができる。
また、第2の方法としては、第2シェル層を形成した二酸化バナジウム粒子に対し、亜臨界状態にある高温高圧水の存在下でシリコンアルコキシド、アルコール、アルデヒド及びカルボン酸から選ばれる少なくとも1つの基を有する疎水性有機化合物で処理する、又は、亜臨界状態にある高温高圧水の存在下で前処理した後、超臨界状態にある高温高圧水の存在下で、シリコンアルコキシド、アルコール、アルデヒド及びカルボン酸から選ばれる少なくとも1つの基を有する疎水性有機化合物で処理して第2シェル層を形成する方法を挙げることができる。
(サーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子の製造方法)
以下、本発明の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法の詳細について説明する。
本発明の二酸化バナジウム含有粒子は、下記に示す2つの方法に従って製造することを特徴とする。
(1)二酸化バナジウム含有粒子の第1の製造方法
第1の製造方法は、コア粒子として水熱法等により合成した二酸化バナジウム粒子を含有する水分散液に、アモルファス状金属酸化物形成前駆体とアルカリとアルコールを添加してアモルファス状金属酸化物を有する第1シェル層を形成し、次いで、工程(2−1)として限外濾過によりヒドロキ基を含有しない有機溶媒に置換し、次いで、シラザン基を有する疎水性有機化合物で処理して第2シェル層を形成して、サーモクロミック性を有する二酸化バナジウム含有粒子を製造することを特徴とする方法である。
すなわち、疎水性有機化合物により構成される第2シェル層を形成する方法として、
第1シェル層まで形成した二酸化バナジウム粒子を含有する水分散液に対し、限外濾過により、水分散液が含有する水を、ヒドロキシ基を含有しない有機溶媒に置換し、次いでシラザン基を有する疎水性有機化合物で処理して第2シェル層を形成する方法である。
シラザン基を有する疎水性化合物(シリル化剤)は、水やアルコールのようなヒドロキシ基を含む化合物とすぐに反応して分解しやすい特性であり、第2シェル層の形成を行う前に、ヒドロキシ基を含有しない有機溶媒に、分散液の分散媒を置換する。
上記方法で適用する有機溶媒としては、第1シェル層まで形成した二酸化バナジウム粒子が凝集沈降せず、また、水、アルコールに混和する溶媒が好ましい。具体的には、アセトニトリル、PGMAc(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、エチルアミン、2−ピロリドン、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)、ピリジン、ジオキソラン、2−メチルジオキソラン、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、THF(テトラヒドロフラン)、モルホリン、DMF(ジメチルフォルムアミド)、DMSO(ジメチルスルフォキシド)等を挙げることができる。
次いで、上記第1の製造方法に適用可能な限外濾過方法を用いた製造方法の具体例について、図を交えて説明する。
具体的な溶媒置換処理について、図を参照して説明する。
図2は、二酸化バナジウム含有粒子の製造に用いる溶媒置換処理装置(限外濾過装置)の一例を示す概略フロー図である。
図2に示す溶媒置換処理装置(50)は、第1シェル層まで形成した二酸化バナジウム粒子を含有する混合溶液(52)を貯留するための調製釜(51)、希釈用の溶媒(58)を貯留している溶媒ストック釜(57)、溶媒(58)を調整釜(51)に添加する溶媒供給ライン(59)、調製釜(51)を、循環ポンプ(54)により循環させる循環ライン(53)、循環ライン(53)の経路内に濃縮手段として、限外濾過部(55)が配置されている構成である。
以下、手順を追って、限外濾過処理のフローについて説明する。
〈工程(I)〉
調製釜(51)に、混合溶液(52)として、上記方法で調製した第1シェル層まで形成した二酸化バナジウム粒子を含む水系分散液を貯留して、循環ポンプ(54)を用いて循環させながら、限外濾過部(55)で、混合溶液中の水分を排出口(56)より排出して、所定の濃度まで濃縮する。濃縮の目安としては、初期体積に対し20体積%まで濃縮する。これ以上の過度の濃縮を行うと、粒子密度の上昇に伴い粒子凝集が生じるため、避けることが好ましい。また、この濃縮操作においては、混合溶液を乾燥させないことが重要である。
〈工程(II)〉
次いで、20体積%まで濃縮した混合溶液(52)に対し、溶媒ストック釜(57)より、溶媒供給ライン(59)を経由して、溶媒(58)を80質量%相当添加し、十分に撹拌混合して、第一次の溶媒置換した混合溶液(52)を調製する。
〈工程(III)〉
次いで、上記工程(I)と同様にして、循環ポンプ(54)により循環させながら、限外濾過部(55)で、混合溶液(52)中の媒体(水+溶媒)を系外に排出(56)して、再び20体積%の濃度まで第2回目の濃縮を行う。
〈工程(IV)〉
次いで、上記工程(II)と同様にして、濃縮した混合溶液(52)に対し、溶媒ストック釜(57)より溶媒供給ライン(59)を経由して、溶媒(58)を80質量%相当添加し、十分に撹拌混合して、二酸化バナジウム粒子を水相から有機相に移動させ、有機相を抽出する。
〈工程(V)〉
最終的には、工程(I)及び工程(II)による濃縮及び溶媒希釈操作を、好ましくは2回以上繰り返して、水分含有量を0.1〜5.0質量%の範囲内に調整した二酸化バナジウム粒子を含有する溶媒分散液を調製し、これにシラザン基を有する疎水性有機化合物を用いて処理して第2シェル層を形成する。
上記溶媒置換処理で用いる限外濾過方法としては、例えば、リサーチ・ディスクロージャー(Research Disclosure)のNo.10208(1972)、No.13122(1975)及びNo.16351(1977)などの記載を参照することができる。
操作条件として重要な圧力差や流量は、大矢春彦著「膜利用技術ハンドブック」幸書房出版(1978)、p275に記載の特性曲線を参考に設定することができる。
限外濾過膜は、膜材質として、有機膜では、すでにモジュールとして組み込まれた平板型、スパイラル型、円筒型、中空糸型、ホローファイバー型などが旭化成(株)、ダイセル化学(株)、(株)東レ、(株)日東電工などから市販されているが、耐溶媒性のある膜としては、日本ガイシ(株)、(株)ノリタケなどのセラミック膜が好ましい。
具体的には、例えば、濾過膜としてSartorius stedim社製ビバフロー50(有効濾過面積50cm、分画分子量5000)を用い、流速300ml/min(分)、液圧100kPa、室温で限外濾過を行う方法や、ポリエーテルスルホン製で分画分子量が30万の濾過膜を有する限外濾過装置(日本ミリポア株式会社製 ペリコン2カセット)等を挙げることができる。
(2)二酸化バナジウム含有粒子の第2の製造方法
第2の製造方法は、コア粒子として二酸化バナジウム粒子を含有する水分散液に、アモルファス状金属酸化物形成前駆体とアルカリとアルコールを添加してアモルファス状金属酸化物を有する第1シェル層を形成し、次いで、工程(2−2)として亜臨界状態にある高温高圧水の存在下でシリコンアルコキシド、アルコール、アルデヒド及びカルボン酸から選ばれる少なくとも1つの基を有する疎水性有機化合物で処理する、又は、亜臨界状態にある高温高圧水の存在下で前処理した後、超臨界状態にある高温高圧水の存在下で、シリコンアルコキシド、アルコール、アルデヒド及びカルボン酸から選ばれる少なくとも1つの基を有する疎水性有機化合物で処理して第2シェル層を形成して、二酸化バナジウム含有粒子を製造することを特徴とする方法である。
以下、第2の製造方法の詳細について説明する。
本発明の二酸化バナジウム含有粒子の第2の製造方法では、第1シェル層まで形成した二酸化バナジウム粒子を、高温高圧状態にある水が存在する条件下で、シリコンアルコキシド、アルコール、アルデヒド及びカルボン酸から選ばれる少なくとも1つの基を有する疎水性有機化合物と反応させることで、疎水性有機化合物による第2シェル層を表面に形成した二酸化バナジウム含有粒子を得る方法であるが、その場合、事前に、第1シェル層まで形成した二酸化バナジウム粒子の表面を活性化する処理、又は、第1シェル層まで形成した二酸化バナジウム粒子を亜臨界状態にある水の存在下で前処理する工程を含んでもよい。
本発明の第2の製造方法において、高温高圧状態にある水とは、亜臨界又は超臨界状態にある高温高圧水、すなわち、亜臨界水(sub−critical water:sub−CW)、又は超臨界水(super−critical water:SCW)である。水の臨界温度は374.2℃、水の臨界圧力は22.12MPaであるので、これを参考に反応温度・反応圧力を選択できる。具体的には、亜臨界水とは、水の超臨界点より僅かながら温度及び/又は圧力が低い状態にある水を指しており、例えば、温度でいうと150℃以上の領域から臨界温度374℃までというように、その温度が水の臨界温度より低く、かつ圧力が水の臨界圧力22MPa又はそれ以上の圧力である領域が挙げられる。
一つの具体的な態様では、反応を行う系(例えば、恒温ゾーンにあるリアクター(反応器))に供給する第2シェル層まで形成した二酸化バナジウム粒子を含む原料混合液の圧力を、水の臨界圧力22.12MPa又はそれ以上のもの(例えば、30MPa又は35MPaなど)とし、おおよそ150℃にまで加温されたといったように所定反応温度近傍にまで加熱した第2シェル層まで形成した二酸化バナジウム粒子を含む原料混合液を、反応温度として250℃になるように設定されたリアクター(亜臨界水下での反応)に供給、又は、反応温度として390℃になるように設定されたリアクター(超臨界水下での反応)に供給するといった方法で、反応場である亜臨界又は超臨界状態にある高温高圧水が存在する条件を達成できる。
典型的な亜臨界水の領域は、圧力が臨界圧力22MPa又はそれ以上であり、かつ、180℃以上の温度から臨界温度374℃の領域、又は、200℃以上の温度から臨界温度374℃の領域、又は、250℃以上の温度から臨界温度374℃の領域、300℃以上の温度から臨界温度374℃の領域などが挙げられる。もちろん、亜臨界水の領域は、10.0MPa以上の圧力から臨界圧力22MPaの領域、又は、15.0MPa以上の圧力から臨界圧力22MPaの領域、又は、18.0MPa以上の圧力から臨界圧力22MPaの領域、又は、20.0MPa以上の圧力から臨界圧力22MPaの領域なども含まれてよい。
本発明で用いられる第1シェル層まで形成した二酸化バナジウム粒子の前処理においては、その処理温度としては、例えば、150〜374℃、好ましくは200〜374℃、より好ましくは230〜374℃、さらに好ましくは280〜360℃である。
また、その処理圧力としては、例えば、15〜50MPa、好ましくは18〜45MPa、より好ましくは20〜40MPa、さらに好ましくは20〜35MPaである。典型的な場合では、その処理温度としては、280〜320℃、その処理圧力としては、20〜25MPaである。
また、本発明において、第1シェル層まで形成した二酸化バナジウム粒子上への第2シェル層の形成反応においては、その反応温度として、例えば、375〜500℃、好ましくは375〜450℃、より好ましくは375〜420℃、さらに好ましくは375〜400℃であり、ある場合には、例えば、375〜395℃、好ましくは375〜390℃、より好ましくは375〜385℃、又は、375〜380℃で、その反応圧力としては、例えば、20〜50MPa、好ましくは21〜45MPa、より好ましくは22〜40MPa、さらに好ましくは22〜35MPaである。
反応の方式としては、バッチ式(回分式)、セミバッチ式(半回分式)で行うこともできるが、好ましくは耐圧性の管型又は槽型などのフロー型リアクター(流通型反応器)を用いる連続法を使用でき、特には管型のリアクターを利用する連続法を好適に利用できる。
本発明の第2の製造方法に適用可能な典型的なフロー型リアクターの構成を、図を交えて説明する。
図3は、本発明の二酸化バナジウム含有粒子の第2の製造方法に適用可能なフロー型リアクターの一例を示す概略構成図である。
図3に示すように、フロー型のリアクター(100)は、蒸留水、脱イオン水、又は純水等の予熱水(102、高圧原料水ともいう。)をあらかじめ加温した上で溜めておく予熱水槽(熱水供給源槽(脱イオン熱水供給槽))から亜臨界水又は超臨界水となる水を供給する水供給路(105)と、第1シェル層まで形成した二酸化バナジウム粒子を含む高圧原料液(101)を供給する原料供給路(107)を備えており、該高圧原料液(101)は、ヒーター部(H)を通ることにより、前処理を受けた後、水供給路(105)に合流する。次に、加熱した高圧原料液(101)と高温高圧水(102)との混合液は、シェル形成部(M)で、疎水性有機化合物供給路(106)より供給される疎水性有機化合物溶液(103)と合流し、高温高圧下での二酸化バナジウム粒子の第2シェル層上に疎水性有機化合物による第2シェル層が形成される。
なお、疎水性有機化合物溶液(103)は、本発明の特徴を有する疎水性化合物とそれを溶解する有機溶媒で構成されるが、当該有機溶媒としては、疎水性化合物を溶解するものであれば特に制限はないが、例えば、アルコール類、ケトン類、エステル類、芳香族類が好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン(略称:MEK)、メチルイソブチルケトン(略称:MIBK)、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、酢酸エチル(略称:EA)、酢酸ブチル(略称:BA)、トルエン、キシレン等が挙げられる。
上記水供給路(105)、原料供給路(107)、及び疎水性有機化合物供給路(106)には、それぞれ水を亜臨界圧力や臨界圧力以上に加圧するための加圧手段、すなわち、高圧ポンプ(P)と、この高圧水などを亜臨界温度以上又は臨界温度以上の所定の温度に加熱するための加熱手段(H)、すなわち、加熱炉(ヒーター)とが順に設けてある。
上記合流部で混合して得られた混合物は、シェル形成部(M)の等温ゾーンに配置されたリアクターに導入されることになる。リアクターは、溶融塩浴ジャケットなどで覆われて、恒温ゾーンとなっており、所定の反応温度となるように調整されている。温度は、例えば、熱電対を備えた温度センサーなどによりモニターできる。次に、生成したコア・シェル型の二酸化バナジウム含有粒子(104)は、冷却部(C、水冷ジャケット)、回収部(G)、圧力調整弁、例えば、背圧弁(V)を通り、二酸化バナジウム含有粒子貯留槽へと移動する。
本発明に従い第2シェル層まで形成したコア・シェル型の二酸化バナジウム含有粒子は、反応後、通常、室温にまで冷却される。調製した二酸化バナジウム含有粒子を反応混合物から分離する方法は、公知の方法を用いてもよく、物理的な方法や化学的な方法を利用して行うこともできる。本発明で得られる二酸化バナジウム含有粒子は、その表面が疎水性有機化合物で修飾されているので、その修飾基により様々な物性を付与可能であり、当該修飾基の性質を利用して単離することもできる。
得られた二酸化バナジウム含有粒子は、適宜、必要に応じて、濾過処理することにより、凝集物を除去することができるし、さらに、遠心処理、デカンテーション処理、蒸留水、純水などによる洗浄処理、希KOH水溶液などの希アルカリ水溶液などを使用し再分散化処理と遠心分離処理を繰り返す、また限外濾過を施すなどして金属酸化物粒子を洗浄できる。こうして得られる本発明の金属酸化物粒子は、既知の方法で乾燥し、例えば、凍結乾燥することにより、粉末の形で取得することもできる。
《サーモクロミックフィルム》
本発明のサーモクロミックフィルムは、少なくとも本発明のサーモクロミック性を示す二酸化バナジウム含有粒子を含有することを特徴とし、さらにバインダー樹脂として疎水性バインダーをさらに含有することが好ましい。
〔サーモクロミックフィルムの構成〕
本発明のサーモクロミックフィルムの代表的な構成例について、図を参照して説明する。
図4は、本発明のサーモクロミックフィルムの基本的な構成の一例で、透明基材上に、光学機能層が形成されている構成を示す概略断面図である。
図4に示すサーモクロミックフィルム(11)は、透明基材(12)上に、光学機能層(13)を形成した構成を有している。この光学機能層(13)は、疎水性バインダー(B1)中に、本発明のコア・シェル型のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子が分散されて状態で存在している。この二酸化バナジウム含有粒子には、二酸化バナジウム含有粒子が独立して存在している二酸化バナジウム含有粒子の一次粒子(VO)と、2個以上の二酸化バナジウム含有粒子の集合体(凝集体ともいう)を構成している、二酸化バナジウム含有粒子の二次粒子(VO)が存在している。本発明では、2個以上の二酸化バナジウム含有粒子の集合体を総括して二次粒子と称し、二次粒子凝集体、又は二次凝集粒子ともいう。
本発明においては、光学機能層(13)中における二酸化バナジウム含有粒子の一次粒子(VO)及び二次粒子(VO)の全粒子による数平均粒子径が、200nm以下であることが好ましい。
本発明において、光学機能層中における二酸化バナジウム含有粒子の平均粒子径は、以下の方法に従って求めることができる。
はじめに、サーモクロミックフィルム(11)を構成する光学機能層(13)の側面をミクロトームによりトリミングして、図4に示すような断面を露出させる。次いで、露出した断面を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、1万〜10万倍で撮影する。撮影した断面の一定領域内に存在している全ての二酸化バナジウム含有粒子について、その粒子径を測定する。この時、測定する二酸化バナジウム含有粒子は、100〜200個の範囲内であることが好ましい。撮影した粒子には、図4に示すように単一粒子である一次粒子と、2粒子以上の凝集体である二次粒子とが含まれており、二酸化バナジウム含有粒子の一次粒子(VO)の粒子径は、各独立している粒子の直径を測定する。もし、球形でない場合には、粒子の投影面積を円換算し、その直径をもって粒子径とする。一方、2個以上の粒子が凝集して存在している二酸化バナジウム含有粒子については、凝集体全体の投影面積を求めたのち、投影面積を円換算し、その直径をもって粒子径とする。
以上のようにして求めた一次粒子と二次粒子の各直径について、数平均直径を求める。切り出した断面部には粒子分布のバラつきがあるため、このような測定を、異なる断面領域10か所について行い、全体の数平均直径を求め、これを本発明でいう数平均粒子径(nm)とした。
本発明のサーモクロミックフィルムにおいては、前記光学機能層に加えて、700〜1000nmの光波長範囲内の少なくとも一部を遮蔽する機能を有する近赤外光遮蔽層を有することが好ましい構成である。
また、本発明のサーモクロミックフィルムの好ましい態様の他の一つは、光学機能層が樹脂基材機能を兼ねたハイブリッド構成である。
図5は、本発明のサーモクロミックフィルム(11)の基本的な構成の他の一例を示す概略断面図である。図4で示すように、透明基材(12)と光学機能層(13)が同一層で構成されている態様であるハイブリッド光学機能層(12+13)で構成されており、透明基材を構成しているポリマーに、疎水性バインダー(B2)を用い、当該疎水性バインダー(B2)中に、二酸化バナジウム含有粒子が独立して存在している二酸化バナジウム含有粒子の一次粒子(VO)と、2個以上の二酸化バナジウム含有粒子の二次粒子(VO)が分散されて、単層で透明基材機能を兼ね備えた光学機能層を形成している構成である。
図6は、図4に示す構成で、透明基材(12)上に、光学機能層(13)とともに近赤外光遮蔽層(14)を有するサーモクロミックフィルム(11)で、その代表的な層配置を示す概略断面図である。
図6の(a)で示すサーモクロミックフィルム(11)は、光線入射側(L)より、光学機能層(13)、近赤外光遮蔽層(14)及び透明基材(12)の順に配置されている構成である。
図6の(b)で示すサーモクロミックフィルム(11)では、透明基材(12)と近赤外光遮蔽層(14)との間に、本発明に係る光学機能層(13)を配置した例であり、図6の(c)は、透明基材(12)の光線入射側(L)に近赤外光遮蔽層(14)を配置し、透明基材(12)の裏面側に本発明に係る光学機能層(13)を配置した例である。
本発明のサーモクロミックフィルムとしては、上記説明した各構成層の他に、必要に応じて、各種機能層を設けてもよい。
本発明のサーモクロミックフィルムの総厚としては、特に制限はないが、10〜1500μmの範囲内であり、好ましくは20〜1000μmの範囲内であり、さらに好ましくは30〜500μmの範囲内であり、特に好ましくは40〜300μmの範囲内である。
本発明のサーモクロミックフィルムの光学特性として、JIS R3106(1998)で測定される可視光透過率としては、好ましくは30%以上であり、より好ましくは50%以上であり、さらに好ましくは60%以上である。
〔サーモクロミックフィルムの各構成材料〕
本発明のサーモクロミックフィルムは、二酸化バナジウム含有粒子と、バインダー樹脂を含有する光学機能層と、700〜1000nmの光波長範囲内の少なくとも一部を遮蔽する機能を有する近赤外光遮蔽層を有することが好ましい構成である。
以下、本発明のサーモクロミックフィルムの構成要素である光学機能層、必要により設ける樹脂基材、近赤外光遮蔽層の詳細について説明する。
(光学機能層)
本発明に係る光学機能層は、主には、本発明の二酸化バナジウム含有粒子と、バインダー樹脂とを含有している。光学機能層における二酸化バナジウム含有粒子の濃度としては、特に制限はないが、おおむね光学機能層全質量に対し、5〜60質量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは5〜40質量%の範囲内であり、さらに好ましくは5〜30質量%の範囲内である。
本発明のサーモクロミックフィルムにおいては、光学機能層中における二酸化バナジウム含有粒子の一次粒子の粒子個数比率が、一次粒子及び二次粒子の総粒子数の30個数%以上であることが好ましく、さらに好ましくは50個数%以上であり、特に好ましくは70個数%以上である。理想的な上限は100個数%であるが、現状における最大値としては、95個数%以下である。測定法は、二酸化バナジウム含有粒子の平均粒子径を測定する方法と同様である。
〈親水性バインダー〉
本発明のサーモクロミックフィルムは、二酸化バナジウム含有粒子を保持するバインダーとして、親水性バインダーを適用することができる。
本発明でいう親水性バインダーとは、100gの水に対し、液温25℃での溶解量が1.0g以上である樹脂であれば特に制限なく用いられる。
本発明に適用する親水性バインダーとしては、水溶性高分子を用いることが好ましい。本発明に適用可能な親水性ポリマーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ゼラチン(例えば、特開2006−343391号公報記載のゼラチンを代表とする親水性高分子)、デンプン、グアーガム、アルギン酸塩、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリエチレングリコール、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマー、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ナフタリンスルホン酸縮合物や、アルブミン、カゼイン等のタンパク質、アルギン酸ソーダ、デキストリン、デキストラン、デキストラン硫酸塩等の糖誘導体などを挙げることができる。
〈疎水性バインダー〉
本発明のサーモクロミックフィルムは、二酸化バナジウム含有粒子を保持するバインダーとして、疎水性バインダーを適用することが、特に好ましい。
本発明でいう疎水性バインダーとは、100gの水に対し、液温25℃での溶解量が1.0g未満である樹脂をいい、さらに好ましくは、溶解量が0.5g未満の樹脂であり、さらに好ましくは、溶解量が0.25g未満の樹脂である。
本発明に適用する疎水性バインダーとしては、疎水性ポリマー、又は疎水性バインダーのモノマーを用い、硬化処理工程でポリマー化した樹脂であることが好ましい。
本発明に適用可能な疎水性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)等のオレフィン系ポリマー、アクリル酸エステル系共重合体;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂等の含ハロゲン系ポリマー;ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体等のスチレン系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610等のポリアミド;ポリアセタール;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシベンジレン;ポリアミドイミド;ポリブタジエン系ゴム、アクリル系ゴムを配合したABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂)やASA樹脂(アクリロニトリル−スチレン−アクリレート樹脂)、セルロース系樹脂、ブチラール系樹脂等が挙げられる。
また、本発明に適用可能な疎水性バインダーに一種として、疎水性バインダーのモノマーを用い、硬化処理工程でポリマー化する樹脂を挙げることができ、その代表的な疎水性バインダー材料としては、活性エネルギー線の照射により硬化する化合物であり、具体的にはラジカル活性種による重合反応により硬化するラジカル重合性化合物、及びカチオン活性種によるカチオン重合反応により硬化するカチオン重合性化合物を挙げることができる。
ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物が挙げられ、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エステル、ウレタン、アミドや無水物、アクリロニトリル、スチレン、さらに種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等のラジカル重合性化合物が挙げられる。具体的には、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、カルビトールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エポキシアクリレート等のアクリル酸誘導体、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン等のメタクリル誘導体、その他、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物の誘導体が挙げられる。
カチオン重合性化合物としては、各種公知のカチオン重合性のモノマーが使用できる。例えば、特開平6−9714号公報、特開2001−31892号公報、特開2001−40068号公報、特開2001−55507号公報、特開2001−310938号公報、特開2001−310937号公報、特開2001−220526号公報に例示されているエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。
上記化合物とともに光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤としては、「UV・EB硬化技術の応用と市場」(シーエムシー出版、田畑米穂監修/ラドテック研究会編集)などに掲載されているあらゆる公知の光重合開始剤を用いることができる。
本発明においては、各構成材料と、二酸化バナジウム粒子を含む溶媒分散液とを含む光学機能層形成用塗布液を、例えば、透明基材上に塗布した後、その後、紫外線又は電子線等の活性エネルギー線を照射する。これにより形成した光学機能層薄膜を構成する組成物は速やかに硬化する。
活性エネルギー線の光源としては、紫外線を照射する場合には、例えば紫外線LED、紫外線レーザー、水銀アークランプ、キセノンアークランプ、低圧水銀灯、蛍光ランプ、炭素アークランプ、タングステン−ハロゲン複写ランプ及び太陽光を使用することができる。電子線により硬化させる場合には、通常300eVの以下のエネルギーの電子線で硬化させるが、1〜5Mradの照射量で瞬時に硬化させることも可能である。
一方、本発明に係る光学機能層の他の形成方法としては、図2にその構成を例示するように、透明基材の構成材料である疎水性樹脂に、二酸化バナジウム粒子を含む溶媒分散液及び溶媒を添加、溶解して、成膜用ドープを調製した後、当該ドープを用いて従来公知のフィルム成膜で用いられている溶液流延法により、樹脂基材を兼ねたハイブリッド光学機能層を形成する方法も好適に用いることができる。
上記方法で適用可能な疎水性バインダーとしては、従来サーモクロミックフィルムの成膜で用いられている樹脂材料を挙げることができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(略称:PET)、ポリエチレンナフタレート(略称:PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート(略称:TAC)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(略称:CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類及びそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート(略称:PC)、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(略称:PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル及びポリアリレート類、アートン(商品名JSR社製)及びアペル(商品名三井化学社製)等のシクロオレフィン系樹脂等を挙げることができる。
また、溶媒としては、特に制限はないが、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることができる。
上記各構成材料を混合、調製したドープを用いて、溶液流延法により透明基材を兼ねたハイブリッド光学機能層を成膜する。
〈光学機能層のその他の添加剤〉
本発明に係る光学機能層に、本発明の目的とする効果を損なわない範囲で適用可能な各種の添加剤を、以下に列挙する。例えば、特開昭57−74193号公報、特開昭57−87988号公報、及び特開昭62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号公報、特開昭57−87989号公報、特開昭60−72785号公報、特開昭61−146591号公報、特開平1−95091号公報、及び特開平3−13376号公報等に記載されている退色防止剤、アニオン、カチオン又はノニオンの各種界面活性剤、特開昭59−42993号公報、特開昭59−52689号公報、特開昭62−280069号公報、特開昭61−242871号公報、及び特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、防黴剤、帯電防止剤、マット剤、熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、減粘剤、滑剤、赤外線吸収剤、色素、顔料等の公知の各種添加剤などが挙げられる。
(透明基材)
本発明に適用可能な透明基材としては、透明であれば特に制限はなく、ガラス、石英、透明樹脂フィルム等を挙げることができるが、可撓性の付与及び生産適性(製造工程適性)の観点からは、透明樹脂フィルムであることが好ましい。本発明でいう「透明」とは、可視光領域における平均光線透過率が50%以上であることをいい、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上である。
本発明に係る透明基材の厚さは、30〜200μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは30〜100μmの範囲内であり、更に好ましくは35〜70μmの範囲内である。透明基材の厚さが30μm以上であれば、取り扱い中にシワ等が発生しにくくなり、また厚さが200μm以下であれば、ガラス基材と貼り合わせる際のガラス曲面への追従性がよくなる。
本発明に係る透明基材は、二軸配向ポリエステルフィルムであることが好ましいが、未延伸又は少なくとも一方に延伸されたポリエステルフィルムを用いることもできる。強度の向上、熱膨張抑制の点から延伸フィルムが好ましい。特に、本発明のサーモクロミックフィルムを具備した合わせガラスを自動車用のガラスとして用いる場合、延伸フィルムがより好ましい。
本発明に係る透明基材は、サーモクロミックフィルムのシワの生成や光学機能層の割れを防止する観点から、温度150℃において、熱収縮率が0.1〜3.0%の範囲内であることが好ましく、1.5〜3.0%の範囲内であることがより好ましく、1.9〜2.7%であることがさらに好ましい。
本発明のサーモクロミックフィルムに適用可能な透明基材としては、透明であれば特に制限されることはないが、種々の樹脂フィルムを用いることが好ましく、例えば、ポリオレフィンフィルム(例えば、シクロオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステルフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリ塩化ビニル、トリアセチルセルロースフィルム等を用いることができ、好ましくは、シクロオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム、トリアセチルセルロースフィルムである。
透明樹脂フィルムは、成膜過程で片面又は両面にインラインで下引層塗布液を塗布することが好ましい。本発明においては、成膜工程中での下引塗布をインライン下引という。
(近赤外遮蔽層)
本発明のサーモクロミックフィルムにおいては、光学機能層に加え、700〜1000nmの光波長範囲内の少なくとも一部を遮蔽する機能を有する近赤外光遮蔽層を設ける構成とすることも好ましい。
本発明に適用可能な近赤外光遮蔽層の詳細については、例えば、特開2012−131130号公報、特開2012−139948号公報、特開2012−185342号公報、特開2013−080178号公報、特開2014−089347号公報等に記載されている構成要素及び形成方法等を参考にすることができる。
〔サーモクロミックフィルムの製造方法〕
(製造方法1:水系形成法)
本発明のサーモクロミックフィルムの製造方法としては、少なくとも本発明のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子と親水性バインダーを用い、湿式塗布法により光学機能層を形成する方法である。湿式塗布法として具体的には、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、スライド型カーテン塗布法、又は米国特許第2761419号明細書、米国特許第2761791号明細書などに記載のスライドホッパー塗布法、エクストルージョンコート法などが挙げられる。
また、図5で示すような樹脂基材を兼ねたハイブリッド光学機能層を形成する場合は、溶液流延法を適用することができ、具体的な成膜方法としては、例えば、特開2013−067074号公報、特開2013−123868号公報、特開2013−202979号公報、特開2014−066958号公報、特開2014−095729号公報、特開2014−159082号公報等に記載されている溶液流延成膜法に従って形成することができる。
(製造方法2:有機溶媒系形成法1)
本発明においては、有機溶媒に、本発明のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子を混合して非水系の分散液を調製した後、さらに疎水系バインダーを添加し、塗布・乾燥することで光学機能層を形成し、サーモクロミックフィルムを作製することも好ましい。
この場合についても、湿式塗布法でサーモクロミックフィルムを作製することが好ましい。具体的な作製方法としては、水系のサーモクロミックフィルムの作製方法と同様である。
(製造方法3:有機溶媒系形成法2)
有機溶媒を用いてサーモクロミックフィルムを製造する他の方法として、まず、水系合成法により得られた、二酸化バナジウム含有粒子を分散させた水分散液を乾燥させることなく、二酸化バナジウム粒子を分散させた水分散液に有機溶媒を加え、二酸化バナジウム含有粒子を水相から有機相に移動させ、当該有機相を分離抽出する。そして、有機相に疎水性バインダーを混合して塗布・乾燥することで光学機能層を形成し、サーモクロミックフィルムを清掃する方法も好ましい。二酸化バナジウム含有粒子を水相から有機相に移動させる方法としては、一般的な分液操作によって行われる。
《サーモクロミックフィルムの用途》
本発明のサーモクロミックフィルムの用途としては、ガラスに後貼りする構成とすることができ、このフィルムを貼合したガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に使用できる。フィルムを貼合したガラスは、これらの用途以外にも使用できる。前記フィルムを貼合したガラスは、建築用又は車両に用いることが好ましく、自動車のフロントガラス、サイドガラス、リアガラス又はルーフガラス等に使用できる。
ガラス部材としては、無機ガラス及び有機ガラス(樹脂グレージング)が挙げられる。無機ガラスとしては、フロート板ガラス、熱線吸収板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、線入り板ガラス、及びグリーンガラス等の着色ガラス等が挙げられる。上記有機ガラスは、無機ガラスに代用される合成樹脂ガラスである。上記有機ガラス(樹脂グレージング)としては、ポリカーボネート板及びポリ(メタ)アクリル樹脂板等が挙げられる。上記ポリ(メタ)アクリル樹脂板としては、ポリメチル(メタ)アクリレート板等が挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
《サーモクロミックフィルムの作製》
〔サーモクロミックフィルム101の作製:水系〕
(二酸化バナジウム含有粒子1の調製)
純水10mLに、バナジン酸アンモニウム(NHVO、和光純薬社製、特級)0.433gを混合し、更に、ヒドラジン水和物(N・HO、和光純薬社製、特級)の5質量%水溶液をゆっくり滴下し、23℃におけるpH値が9.2の溶液(A)を調製した。調製した溶液(A)を、市販の水熱反応処理用オートクレーブ(三愛科学社製HU−25型、SUS製本体に25mL容積のテフロン(登録商標)製内筒を備える構成)内に入れ、100℃で8時間、引き続き270℃で24時間、水熱反応処理を施して、コア粒子である二酸化バナジウム粒子(I)を含む水系分散液を調製した。
次いで、二酸化バナジウム粒子(I)を含む水系分散液の10gに、50mlのエタノールを添加し、28%のアンモニア水でpHを11.0に調整した後、強撹拌下でテトラエトキシシラン(略称:TEOS)を1.5g添加し、25℃で4時間維持して、二酸化バナジウム粒子(I)表面に、シェル層としてSiOで構成されるアモルファス状金属酸化物層(第1シェル層)を形成して、コア・シェル型の二酸化バナジウム含有粒子1を調製し、二酸化バナジウム含有粒子1が濃度で3質量%となるように分散させた。
(光学機能層形成用塗布液1の調製)
下記の各構成材料を順次添加、混合及び溶解して、水系の光学機能層形成用塗布液1を調製した。
3質量%の二酸化バナジウム含有粒子分散液1 128質量部
3質量%のホウ酸水溶液 10質量部
5質量%の親水性バインダー樹脂S1水溶液(PVA105、クラレ社製)60質量部
(光学機能層の形成)
厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製A4300、両面易接着層)の透明基材上に、押出コーターを用いて、上記調製した光学機能層形成用塗布液1を、乾燥後の層厚が1.5μmとなる条件で湿式塗布を行い、次いで110℃の温風を2分間吹きつけて乾燥させて、光学機能層を形成して、図4に記載の構成のサーモクロミックフィルム101を作製した。
〔サーモクロミックフィルム102の作製:水系〕
上記サーモクロミックフィルム101の作製において、二酸化バナジウム含有粒子1に代えて、下記の方法で調製した二酸化バナジウム含有粒子2を用いた以外は同様にして、サーモクロミックフィルム102を作製した。
(二酸化バナジウム含有粒子2の調製)
上記二酸化バナジウム含有粒子1の調製で用いたコア粒子である二酸化バナジウム粒子(I)を含む水系分散液の10gに、10mlのエタノールとシランカップリング剤である化合物R1(KBM−403:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越シリコーン社製)を0.5g添加し、ホモミキサー(プライミクス株式会社製、T.K.ホモミキサーMarkII)を用い、撹拌羽根を7.85m/秒の周速で回転させて撹拌し、60℃で2時間反応させて下地層を形成した後、40mlのエタノールを添加し、28%のアンモニア水でpHを11.0に調整した後、強撹拌下でテトラエトキシシラン(略称:TEOS)を1.5g添加し、25℃で4時間維持して、二酸化バナジウム粒子(I)表面に、シェル層としてSiOで構成されるアモルファス状金属酸化物層(第1シェル層)を形成して、コア・シェル型の二酸化バナジウム含有粒子2を調製し、二酸化バナジウム含有粒子2が濃度で3質量%となるように分散させた。
〔サーモクロミックフィルム103の作製:水系〕
上記サーモクロミックフィルム101の作製において、二酸化バナジウム含有粒子1に代えて、下記の方法で調製した二酸化バナジウム含有粒子3を用いた以外は同様にして、サーモクロミックフィルム103を作製した。
(二酸化バナジウム含有粒子3の調製)
上記二酸化バナジウム含有粒子1の調製で用いたコア粒子である二酸化バナジウム粒子(I)を含む水系分散液の10gに、50mlのエタノールを添加し、28%のアンモニア水でpHを11.0に調整した後、強撹拌下でテトラエトキシシラン(略称:TEOS)を1.5g添加し、25℃で4時間維持して、二酸化バナジウム粒子(I)表面に、第1シェル層としてSiOで構成されるアモルファス状金属酸化物層を形成し、次いで、疎水性有機化合物として化合物B1(ヘキシルトリエトキシシラン、KBE−3063、信越シリコーン社製)とエタノールを添加して、80℃で2時間反応させて、第1シェル層上に、疎水性有機化合物より構成される第2シェル層を形成して、二酸化バナジウム含有粒子3を得た。
次いで、遠心沈降及び純水で洗浄を行った後、純水とドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを加え、ホモミキサー(プライミクス株式会社製、T.K.ホモミキサーMarkII)を用い、撹拌羽根を7.85m/秒の周速で回転させて撹拌して、二酸化バナジウム含有粒子3が濃度で3質量%となるように分散させた分散液を調製した。
〔サーモクロミックフィルム104の作製:水系〕
上記サーモクロミックフィルム103の作製に用いた二酸化バナジウム含有粒子3に代えて、下記の方法により調製した二酸化バナジウム含有粒子4を用いた以外は同様にして、サーモクロミックフィルム104を作製した。
(二酸化バナジウム含有粒子4の調製)
二酸化バナジウム粒子(I)を含む分散液10gに、50mlのエタノール添加し、1モル/Lの硝酸(HNO)でpHを3.0にして強撹拌下で、チタンテトライソプロポキシド(Ti[OCH(CH)を添加して、80℃で6時間反応させ、TiOから構成される第1シェル層を形成した。
次いで、疎水性有機化合物として化合物B1(ヘキシルトリエトキシシラン、KBE−3063、信越シリコーン社製)とエタノールを添加して、80℃で2時間反応させて、第1シェル層上に、疎水性有機化合物より構成される第2シェル層を形成して、二酸化バナジウム含有粒子4を得た。
次いで、遠心沈降及び純水で洗浄を行った後、純水とドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを加え、ホモミキサー(プライミクス株式会社製、T.K.ホモミキサーMarkII)を用い、撹拌羽根を7.85m/秒の周速で回転させて撹拌して、二酸化バナジウム含有粒子4が濃度で3質量%となるように分散させた分散液を調製した。
〔サーモクロミックフィルム105の作製:疎水系〕
上記二酸化バナジウム含有粒子1の調製で用いたコア粒子である二酸化バナジウム粒子(I)を含む水系分散液の10gに、50mlのエタノールを添加し、28%のアンモニア水でpHを11.0に調整した後、強撹拌下でテトラエトキシシラン(略称:TEOS)を1.5g添加し、25℃で4時間維持して、二酸化バナジウム粒子(I)表面に、第1シェル層としてSiOで構成されるアモルファス状金属酸化物層を形成し、次いで、疎水性有機化合物として化合物B1(ヘキシルトリエトキシシラン、KBE−3063、信越シリコーン社製)とエタノールを添加して、80℃で2時間反応させて、第1シェル層上に、疎水性有機化合物より構成される第2シェル層を形成した。
次いで、遠心沈降及びエタノールで洗浄を行った後、メチルエチルケトンを添加し、ホモミキサー(プライミクス株式会社製、T.K.ホモミキサーMarkII)を用い、撹拌羽根を7.85m/秒の周速で回転させて撹拌して、二酸化バナジウム含有粒子5が濃度で3質量%となるように分散させた分散液を調製した。
前記サーモクロミックフィルム103の作製において、以下に示す構成の光学機能層形成用塗布液を用いる以外は同様にして、サーモクロミックフィルム105を作製した。
(光学機能層形成用塗布液の調製)
3質量%の二酸化バナジウム含有粒子分散液5 128質量部
5質量%の疎水性バインダー樹脂O1(バイロン200、東洋紡社製)メチルエチルケトン溶液 65質量部
〔サーモクロミックフィルム106の作製:疎水系〕
上記二酸化バナジウム含有粒子1の調製で用いたコア粒子である二酸化バナジウム粒子(I)を含む水系分散液の10gに、50mlのエタノールを添加し、28%のアンモニア水でpHを11.0に調整した後、強撹拌下でテトラエトキシシラン(略称:TEOS)を1.5g添加し、25℃で4時間維持して、二酸化バナジウム粒子(I)表面に、第1シェル層としてSiOで構成されるアモルファス状金属酸化物層を形成した二酸化バナジウム粒子を含む分散液を調製した。
次いで、第1シェル層を形成した二酸化バナジウム粒子を含む分散液を用い、下記の方法に従って、図3に記載の流通式反応器であるフロー型リアクターを用いて、二酸化バナジウム含有粒子6を調製した。
精製水に上記二酸化バナジウム粒子を分散させ、0.02モル/Lの二酸化バナジウム粒子水スラリーを調製した。第2シェル層を形成する疎水性有機化合物として、化合物B2(ヘキサン酸)のトルエン溶液(0.12モル)を調製した。予熱水、二酸化バナジウム粒子スラリー、化合物B2のトルエン溶液の流量は、それぞれ12ml/min、3ml/min、3ml/minとした。次に背圧弁により系内を30MPaに設定した。
次いで、カートリッジヒーターに通電し、予熱水を所定温度まで加熱した。通電と同時に、冷却水循環装置の電源を入れ、冷却を開始させた。各部の温度が安定したことを確認した後、精製水を送液していたポンプを、二酸化バナジウム粒子スラリー、化合物B2のトルエン溶液に切り替えて送液した。
所定時間後、回収部のラインを反対側のラインに戻し、電気炉とフレキシブルヒーターの加熱を停止させた。その後、送液ポンプ2を二酸化バナジウム粒子含有の水溶液から精製水に切り替え、反応を終了させた。管内の温度が100℃以下になったことを確認し、背圧弁を開放して系内の圧力を常圧に戻した。冷却水循環装置の電源を切り、冷却を停止させた。
生成物をシリンジ型回収容器からビーカーに移し、トルエン20mlで容器内から生成物を洗い出した。その後、水相とトルエン相を分離し、トルエン相に移行した二酸化バナジウム含有粒子が3質量%になるように調整して、二酸化バナジウム含有粒子6を調製した。
上記サーモクロミックフィルム105の作製において、二酸化バナジウム含有粒子5に代えて、上記調製した二酸化バナジウム含有粒子6を用いた以外は同様にして、サーモクロミックフィルム106を作製した。
〔サーモクロミックフィルム107の作製:疎水系〕
上記二酸化バナジウム含有粒子1の調製で用いたコア粒子である二酸化バナジウム粒子(I)を含む水系分散液の10gに、50mlのエタノールを添加し、28%のアンモニア水でpHを11.0に調整した後、強撹拌下でテトラエトキシシラン(略称:TEOS)を1.5g添加し、25℃で4時間維持して、二酸化バナジウム粒子(I)表面に、第1シェル層としてSiOで構成されるアモルファス状金属酸化物層を形成した。
次いで、第1シェル層まで形成した二酸化バナジウム粒子を含む分散液を、限外濾過機(ビバフロー株式会社)を用いて、体積を5分の1に濃縮した後、アセトニトリルを加え、もとの液量に戻すという作業を4回繰り返して、溶媒をアセトニトリル置換した後、疎水性有機化合物として、化合物B3(ヘキサメチルジシラザン、SZ−31、信越シリコーン社製)を添加して撹拌しながら1時間反応させて、疎水性有機化合物から構成される第2シェル層を形成して、二酸化バナジウム含有粒子7を含む溶媒分散液を調製した。
上記サーモクロミックフィルム105の作製において、二酸化バナジウム含有粒子5に代えて、上記調製した二酸化バナジウム含有粒子7を用いた以外は同様にして、サーモクロミックフィルム107を作製した。
〔サーモクロミックフィルム108の作製:疎水系〕
上記サーモクロミックフィルム107の作製において、二酸化バナジウム含有粒子7に代えて、下記の方法により調製した二酸化バナジウム含有粒子8を用いた以外は同様にして、サーモクロミックフィルム108を作製した。
(二酸化バナジウム含有粒子8の調製)
前記二酸化バナジウム含有粒子8の調製において、コア粒子(I)である二酸化バナジウム粒子調製時に、転移温度調整剤としてタングステン(W)を、バナジウム原子が99atm%、タングステン(W)が1atm%となるように添加して、タングステンをドープしたコア粒子(II)を用い以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子8を調製した。
上記サーモクロミックフィルムの作製に用いた各添加剤の詳細は、以下のとおりである。
〈疎水性有機化合物〉
化合物B1:ヘキシルトリエトキシシラン(商品名;KBE−3063 信越シリコーン社製)
化合物B2:ヘキサン酸(カプロン酸、CH(CHCOOH)
化合物B3:ヘキサメチルジシラザン(商品名;SZ−31 信越シリコーン社製)
〈バインダー樹脂〉
S1:親水性バインダー クラレポバールPVA105(ポリビニルアルコール樹脂 クラレ社製)
O1:疎水性バインダー バイロン200(非晶性ポリエステル樹脂 東洋紡社製)
《サーモクロミックフィルムの評価》
次いで、上記作製した各サーモクロミックフィルムについて、下記の各評価を行った。
〔保存性の評価〕
上記作製した各サーモクロミックフィルムの25℃及び80℃の環境下(50%RH)における、それぞれの分光透過率を、日本分光社製の分光透過率計V−770を用い、赤外領域である1500nmにおける各透過率を測定し、温度間での分光透過率の変化率を求めた。
次いで、各サーモクロミックフィルムを60℃・90%RHの高温高湿環境下で3日間の強制劣化処理を行った後に、上記と同様の温度間での分光透過率の変化率を求め、強制劣化処理前後での変化率の減少率(%)を求め、下記の評価基準に従って保存性を評価した。60℃・90%RHの高温高湿環境下で保存した後でも、減少率が小さければ耐久性に優れていると判定した。
なお、変化率(%)と減少率(%)は下記の方法により求めた。
変化率(%)=〔(25℃における分光透過率λ1500−80℃における分光透過率λ1500)/25℃における分光透過率λ1500〕×100
減少率(%)=〔1−(強制劣化処理後の変化率)/(強制劣化処理前の変化率)〕×100
◎:減少率が、2.0%未満である
○:減少率が、2.0%以上、5.0%未満である
△:減少率が、5.0%以上、10.0%未満である
×:減少率が、10.0%以上である
〔繰り返し耐性の評価〕
各サーモクロミックフィルムに対し、エスペック社製の冷熱衝撃装置TSA−103ELを用いて、80℃と−20℃の繰り返し温度変化(各温度で保管時間:10分)を1000回行った。
次いで、上記保存性の評価と同様の方法で、温度変化処理前後における分光透過率の変化率を測定し、減少率を算出し、下記の評価基準に従って繰り返し耐性を評価した。1000回の繰り返し処理前後における変化率の減少率が小さければ、繰り返し耐性に優れていると判定した。
◎:減少率が、2.0%未満である
○:減少率が、2.0%以上、5.0%未満である
△:減少率が、5.0%以上、10.0%未満である
×:減少率が、10.0%以上、20.0%未満である
××:減少率が、20.0%以上である
以上により求めた結果を、表1に示す。
Figure 2019135273
表1に記載の結果より明らかなように、本発明のサーモクロミックフィルムは、比較例に対し、高い耐久性を有し、かつ繰り返し耐性が良好であることが分かる。
1 二酸化バナジウム含有粒子
2 コア粒子
3 第1シェル層
4 第2シェル層
11 サーモクロミックフィルム
12 透明基材
13 光学機能層
12+13 ハイブリッド光学機能層
14 近赤外光遮蔽層
50 溶媒置換処理装置
51 調製釜
52 二酸化バナジウム含有粒子を含む混合溶液
53 循環ライン
54 循環ポンプ
55 限外濾過部
56 排出口
57 溶媒ストック釜
58 溶媒
59 溶媒供給ライン
100 フロー型のリアクター
101 高圧原料液
102 予熱水
103 疎水性有機化合物溶液
104 二酸化バナジウム含有粒子
105 水供給路
106 疎水性有機化合物供給路
107 原料供給路
B1、B2 疎水性バインダー
L 光線入射側
M 修飾部
C 冷却部
G 回収部
P ポンプ
H ヒーター
V 背圧弁
VO 二酸化バナジウム含有粒子の一次粒子
VO 二酸化バナジウム含有粒子の二次粒子

Claims (8)

  1. コア・シェル構造を有するサーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子であって、
    前記コア部として二酸化バナジウム粒子を有し、かつ、
    当該二酸化バナジウム粒子の表面上に、少なくとも1層のアモルファス状金属酸化物を含有する第1シェル層と、
    疎水性有機化合物を含有する第2シェル層と、
    をこの順で有する多層構造であることを特徴とするサーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子。
  2. 前記第1シェル層が含有するアモルファス状金属酸化物が、酸化珪素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ハフニウム、酸化セリウム及び酸化モリブデンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子。
  3. 前記第2シェル層が含有する疎水性有機化合物が、疎水性アルキル基又は疎水性アリール基と、シラザン、シリコンアルコキシド、アルコール、アルデヒド及びカルボン酸から選ばれる少なくとも1種の基とを有する化合物であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子。
  4. 更に、相転移温度の調整作用を有する元素を含む化合物を含有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子。
  5. 請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子を製造するサーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子の製造方法であって、
    第1シェル層形成工程として、コア粒子として二酸化バナジウム粒子を含有する水分散液に、アモルファス状金属酸化物形成前駆体とアルカリとアルコールを添加してアモルファス状金属酸化物を有するシェル層を形成する工程とを有し、かつ、
    第2シェル層形成工程として、下記工程(2−1)又は(2−2)のいずれかの工程を有することを特徴とするサーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
    工程(2−1):第1シェル層を形成した二酸化バナジウム粒子を含有する水分散液の水媒体を、限外濾過によりヒドロキ基を含有しない有機溶媒に置換し、次いで、シラザン基を有する疎水性有機化合物で表面修飾してシェル層を形成する工程、
    工程(2−2):亜臨界状態にある高温高圧水の存在下でシリコンアルコキシド、アルコール、アルデヒド及びカルボン酸から選ばれる少なくとも1つの基を有する疎水性有機化合物で処理する、又は、亜臨界状態にある高温高圧水の存在下で前処理した後、超臨界状態にある高温高圧水の存在下で、シリコンアルコキシド、アルコール、アルデヒド及びカルボン酸から選ばれる少なくとも1つの基を有する疎水性有機化合物で表面修飾してシェル層を形成する工程。
  6. 請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子を含有することを特徴とするサーモクロミックフィルム。
  7. 更に、疎水性バインダーを含有することを特徴とする請求項6に記載のサーモクロミックフィルム。
  8. サーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子を含有するサーモクロミックフィルムの製造方法であって、
    請求項5に記載のサーモクロミック性二酸化バナジウム含有粒子の製造方法により製造した二サーモクロミック性酸化バナジウム含有粒子と、少なくとも疎水性バインダーとを混合して、塗布・乾燥することにより製造することを特徴とするサーモクロミックフィルムの製造方法。
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