JP2017214466A - コア・シェル型のサーモクロミック粒子、サーモクロミックフィルム及びサーモクロミック粒子の製造方法 - Google Patents

コア・シェル型のサーモクロミック粒子、サーモクロミックフィルム及びサーモクロミック粒子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題は、サーモクロミックフィルムの透明度の向上に適した球状、小粒径及び粒子径がそろったコア・シェル型のサーモクロミック粒子を提供することである。
【解決手段】本発明のコア・シェル型のサーモクロミック粒子は、二酸化バナジウムを含有するコア・シェル型のサーモクロミック粒子であって、二酸化バナジウムを主成分として含有するシェルと、鉄(Fe)、ジルコニア(Zr)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、スズ(Sn)、レニウム(Re)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、ゲルマニウム(Ge)、クロム(Cr)及びガリウム(Ga)から選ばれる元素を含有するコアと、を有することを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、コア・シェル型のサーモクロミック粒子、サーモクロミックフィルム及びサーモクロミック粒子の製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、サーモクロミックフィルムの透明度の向上に適した球状、小粒径及び粒子径がそろったコア・シェル型のサーモクロミック粒子等に関する。
近年、車窓から入り込む太陽光の影響によって人肌で感じる暑さを低減するため、高い断熱性又は遮熱性を備えた合わせガラスが市場に流通している。最近では、電気自動車等の普及に伴い、車内の冷房効率を高める観点から、合わせガラスに適用する近赤外光(熱線)遮蔽フィルムの開発が盛んに行われている。
近赤外光遮蔽フィルムは、車体や建物の窓ガラスに適用することにより、車内のエア・コンディショナー等の冷房設備への負荷を低減することができ、省エネルギー対策として有効な手段である。
このような近赤外光遮蔽フィルムとしては、赤外線吸収性物質としてITO(インジウム・スズ酸化物)などの導電体を含む光学フィルムや、赤外線反射層と赤外線吸収層とを有する機能性プラスチックフィルムを含む近赤外光遮蔽フィルムが開示されている。
このような構成の近赤外光遮蔽フィルムは、太陽光の照度が高い赤道近傍の低緯度地帯では、その高い近赤外光遮蔽効果により、好ましく利用されている。しかしながら、中緯度〜高緯度地帯の冬場においては、逆に、太陽光をできるだけ車内や室内に取り込みたい場合にも、一律に入射光線を遮蔽してしまうという問題がある。
このような問題に対し、近赤外光の遮蔽や透過の光学的性質を温度により制御するサーモクロミック材料を適用する方法の検討がなされている。その代表的な材料として、二酸化バナジウム(以下、「VO」ともいう。)が挙げられる。VOは、50〜60℃前後の温度領域で相転移を起こし、サーモクロミック性を示すことが知られている。
従来のサーモクロミック粒子の製造方法としては、五酸化バナジウム(V)を還元条件下で、高温で加熱処理する方法や、還元条件下で水熱合成法によって合成する方法が知られている。
例えば、特許文献1に記載の水熱反応で得られる二酸化バナジウム粒子は、還元剤を使用して形成されたものであり、このような水熱反応による形成方法には、核の成長過程中に核同士が無秩序に凝集してしまうので、得られる二酸化バナジウム粒子の平均粒径及び形状が制御困難となってしまう問題がある。
特開2011−178825号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、サーモクロミックフィルムの透明度の向上に適した球状、小粒径で粒子径がそろったコア・シェル型のサーモクロミック粒子を提供することである。また、前記サーモクロミック粒子を含むサーモクロミックフィルム及び前記サーモクロミック粒子を製造する製造方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく検討した結果、コア・シェル型のサーモクロミック粒子であって、コアにバナジウムとは異なる金属元素を含有し、シェルの主成分を二酸化バナジウムとすることで、小粒径で粒子径がそろったサーモクロミック粒子が得られることを見いだし、本発明に至った。
すなわち、本発明の上記課題は、下記の手段により解決される。
1.二酸化バナジウムを含有するコア・シェル型のサーモクロミック粒子であって、
二酸化バナジウムを主成分として含有するシェルと、
鉄(Fe)、ジルコニア(Zr)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、スズ(Sn)、レニウム(Re)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、ゲルマニウム(Ge)、クロム(Cr)及びガリウム(Ga)から選ばれる元素を含有するコアと、を有することを特徴とするコア・シェル型のサーモクロミック粒子。
2.数平均粒子径が1〜80nmの範囲内であり、
平均アスペクト比が1.00〜1.15の範囲内であることを特徴とする第1項に記載のコア・シェル型のサーモクロミック粒子。
3.平均粒度分布測定における10%径(D10)に対する90%径(D90)の比(D90/D10)の値が、3.0以下であることを特徴とする第1項又は第2項に記載のコア・シェル型のサーモクロミック粒子。
4.前記元素の含有率が、粒子全体の1〜50質量%の範囲内であることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載のコア・シェル型のサーモクロミック粒子。
5.第1項から第4項までのいずれか一項に記載のサーモクロミック粒子を含むサーモクロミックフィルムであって、
透明基材上に、前記コア・シェル型のサーモクロミック粒子とバインダー樹脂とを含有する光学機能層を有することを特徴とするサーモクロミックフィルム。
6.第1項から第4項までのいずれか一項に記載のコア・シェル型のサーモクロミック粒子を製造するサーモクロミック粒子の製造方法であって、
コアを形成する工程と、
シェルを形成する工程と、
を有し、かつ、
少なくともシェルは、水熱合成法により形成することを特徴とするサーモクロミック粒子の製造方法。
本発明の上記手段により、サーモクロミックフィルムの透明度の向上に適した球状、小粒径で粒子径がそろった二酸化バナジウムを含有するコア・シェル型のサーモクロミック粒子を提供することができる。また、前記サーモクロミック粒子を含むサーモクロミックフィルム及び前記サーモクロミック粒子を製造する製造方法を提供することができる。
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
本発明のサーモクロミック粒子は、二酸化バナジウムを主成分として含有するシェルと、バナジウムとは異なる金属元素を含有するコアと、を有することを特徴とするコア・シェル型のサーモクロミック粒子である。
サーモクロミック粒子にバナジウム以外の金属元素を使用することで、バナジウムとは析出する温度が異なるため、コアとして形成する。二酸化バナジウムは、粒子成長の段階でシェルとして粒子に含まれることとなるため、粒子表面の二酸化バナジウムの純度が高いサーモクロミック粒子を得ることができるものと考えている。
また、コアとシェルの形成工程が分離することで、二酸化バナジウムのみで粒子を作る場合よりも小粒径化を図ることができ、粒子径のそろったサーモクロミック粒子が得られるものと考えている。このようなサーモクロミック粒子を使用して作製することで、高い透明性を示すサーモクロミックフィルムが得られたものと考えている。
本発明のサーモクロミックフィルムの構成の一例を示す概略断面図
本発明のサーモクロミック粒子は、二酸化バナジウムを含有するコア・シェル型のサーモクロミック粒子であって、二酸化バナジウムを主成分として含有するシェルと、鉄(Fe)、ジルコニア(Zr)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、スズ(Sn)、レニウム(Re)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、ゲルマニウム(Ge)、クロム(Cr)及びガリウム(Ga)から選ばれる元素を含有するコアと、を有することを特徴とする。この特徴は、各請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
数平均粒子径が1〜80nmの範囲内であり、平均アスペクト比が1.00〜1.15の範囲内であることにより、真球に近い球形状の粒子が得られるため、ヘイズが向上する点から好ましい。
平均粒度分布測定における10%径(D10)に対する90%径(D90)の比(D90/D10)の値が、3.0以下であることにより、粒子サイズが均一であるため、ヘイズが向上する点から好ましい。
前記元素の含有率が、粒子全体の1〜50質量%の範囲内が好ましく、より好ましくは、5〜40質量%の範囲内、特に10〜30質量%の範囲内であることが、本発明の効果発現の観点から好ましい。
本発明のサーモクロミックフィルムの実施態様としては、透明基材上に、前記コア・シェル型のサーモクロミック粒子とバインダー樹脂とを含有する光学機能層を有することが、透明性の高いサーモクロミックフィルムを得られる点から好ましい。
本発明のコア・シェル型のサーモクロミック粒子を製造するサーモクロミック粒子の製造方法は、コアを形成する工程と、シェルを形成する工程と、を有し、かつ、少なくともシェルは、水熱合成法により形成することを特徴とする。これにより、サーモクロミックフィルムの透明度の向上に適した球状、小粒径及び粒子径がそろった二酸化バナジウムを含有するサーモクロミック粒子を製造することができる。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、以下の説明において示す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
≪コア・シェル型のサーモクロミック粒子≫
本発明のサーモクロミック粒子は、二酸化バナジウムを含有するコア・シェル型のサーモクロミック粒子であって、二酸化バナジウムを主成分として含有するシェルと、鉄(Fe)、ジルコニア(Zr)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、スズ(Sn)、レニウム(Re)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、ゲルマニウム(Ge)、クロム(Cr)及びガリウム(Ga)から選ばれる元素を含有するコアと、を有する。
ここで「主成分」とは、構成要素全体のうち50%以上を占める場合をいう。具体的には、シェル中に含有される二酸化バナジウムが、50%以上であり、好ましくは60%以上、より好ましくは80〜100%の範囲内である。
コアを形成するこれらの元素の含有率は、粒子全体の1〜50質量%の範囲内、より好ましくは、5〜40質量%の範囲内、特に10〜30質量%の範囲内であることが好ましい。
このようなサーモクロミック粒子を含むサーモクロミックフィルムであって、透明基材上に、前記コア・シェル型のサーモクロミック粒子とバインダー樹脂とを含有する光学機能層を有することで、ヘイズの発生を抑制でき、可視光透過率を向上できる点で好ましい。
(その他の金属元素)
本発明のコア・シェル型のサーモクロミック粒子は、二酸化バナジウム(VO)の他、前述の鉄(Fe)、ジルコニア(Zr)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、スズ(Sn)、レニウム(Re)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、ゲルマニウム(Ge)、クロム(Cr)及びガリウム(Ga)から選ばれる元素に加えて、フッ素(F)及びリン(P)等の元素を含んでいてもよい。
このような元素を含有することにより、サーモクロミック粒子の相転移特性(特に、調光温度)を制御することが可能となる。なお、最終的に得られるサーモクロミック粒子に対する、そのような添加物の総量は、バナジウム(V)原子に対して、0.1〜5.0原子%程度で十分であり、例えば、1.0原子%である。当該範囲内の量を添加することで、サーモクロミック粒子のサーモクロミック性(例えば、調光前後の光透過率の差)を劣化させることなく、好適に調光温度を制御することができる。
(サーモクロミック性)
本発明のコア・シェル型のサーモクロミック粒子は、高い透過性とサーモクロミック性とを有している。
具体的には、本発明のコア・シェル型のサーモクロミック粒子を含有するサーモクロミックフィルムの透過率は、70%以上であることが好ましい。
また、サーモクロミック粒子が示すサーモクロミック性としては、温度変化によって透過率や反射率等の光学特性が可逆的に変化すれば特に限定されるものではない。例えば、25℃及び80℃における透過率の差が30%以上であることが好ましい。
サーモクロミックフィルムの透過率は、例えば、分光光度計V−670(日本分光株式会社製)を用いて、波長2000nmにおける透過率として測定することができる。
(数平均粒子径の測定方法)
本発明のコア・シェル型のサーモクロミック粒子の数平均粒子径は、1〜80nmの範囲内であることが好ましい。
数平均粒子径の測定方法は、本発明のコア・シェル型のサーモクロミック粒子を用いたサーモクロミック粒子分散液を調製し、数平均粒子径を動的光散乱法にて測定する(ゼータサイザーナノZS90、マルバーン社製)。100個の粒子について3回の測定を行い、それぞれ得られる粒子径の平均値を確認し、3回測定の平均値を数平均粒子径とする。
(平均アスペクト比)
本発明のコア・シェル型のサーモクロミック粒子の平均アスペクト比は、1.00〜1.15の範囲内であることが好ましい。
本発明のコア・シェル型のサーモクロミック粒子における個数平均長径及び個数平均短径は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)「S−4800」((株)日立ハイテクノロジーズ製)により倍率50000倍にて観察した電子顕微鏡写真によって測定することができる。
具体的には、サーモクロミック粒子に外接する面積が最小となる長方形を算出し、その長辺と短辺の長さから、個数平均長径及び個数平均短径の長さを算出し、粒子100個の平均値を求める。
本発明のコア・シェル型のサーモクロミック粒子の平均アスペクト比は、上記方法で求めた個数平均長径及び個数平均短径の比、すなわち、(個数平均長径)/(個数平均短径)によって求めることができる。
(平均粒度分布比の算出)
本発明のコア・シェル型のサーモクロミック粒子は、平均粒度分布測定における10%径(D10)に対する90%径(D90)の比(D90/D10)の値が、3.0以下であることが好ましい。
平均粒度分布比(D90/D10)は、例えば粒度分布計(マイクロトラック・ベル株式会社製、マイクロトラックMT3300II)を用いて分散液中の個数平均分散径(D10、D90)を測定して求めることができる。
≪分散液≫
本発明のコア・シェル型のサーモクロミック粒子を水に分散させた場合、サーモクロミック性を示す二酸化バナジウム(VO)を含有するサーモクロミック粒子を含有する分散液を提供することができる。本発明のサーモクロミック粒子を含有する分散液を塗布すれば、優れたサーモクロミック性を示すサーモクロミックフィルム等を提供することができる。
また、分散させるための溶媒は、水を含んでいればよく、二酸化バナジウムの機能を阻害しない範囲で有機溶媒等の公知の溶媒を使用することができる。
≪サーモクロミック粒子の製造方法の概要≫
本発明のサーモクロミック粒子の製造方法は、コアを形成する工程と、シェルを形成する工程と、を有し、かつ、少なくともシェルは、水熱合成法により形成することを特徴とする。
以下に、本発明のサーモクロミック粒子の製造方法について詳細に説明する。
[1:反応液の調製]
まず、還元剤、水、バナジウム(V)を含有する化合物(以下、「バナジウム化合物」ともいう。)含む溶液を混ぜて反応液を調製する。この反応液は、バナジウム化合物が水中に溶解した水溶液であってもよいし、バナジウム化合物が水中に分散した懸濁液であってもよい。
なお、反応液の水熱反応後のpH(25℃換算)は、4.0〜7.0の範囲内であることが、反応液中のサーモクロミック粒子の安定性が向上するため好ましい。
<バナジウム(V)を含有する化合物>
上記バナジウム(V)を含有する化合物は、少なくとも5価のバナジウム(V)を含有する化合物であれば、特に限定されず、例えば、五酸化バナジウム(V)、バナジン酸アンモニウム(NHVO)、三塩化酸化バナジウム(VOCl)、メタバナジン酸ナトリウム(NaVO)が含まれる。
<還元剤>
本発明で用いられる還元剤は、水に容易に溶解する性質を有し、かつ、バナジウム(V)を含有する化合物の還元剤として機能すればよく、例えば、ヒドラジン(N)及びヒドラジン一水和物などのヒドラジンの水和物(N・nHO)などが挙げられる。
なお、反応液中において、還元剤は、バナジウム(V)を含有する化合物に対してモル比で、1.0〜1.4当量の範囲内であることが、サーモクロミック性(M相の結晶相)を示すVOを含有するサーモクロミック粒子を選択的に得られるため好ましい。
<水>
本発明で用いられる水は、特に限定されないが、不純物の少ない高純度のものが好ましく、具体的には、イオン交換水、蒸留水等の精製水を用いることができる。
また、本発明で用いられる反応液は、酸化性又は還元性を有する物質が更に混ざったものであって良い。このような物質には、例えば、過酸化水素(H)が含まれる。酸化性又は還元性を有する物質を添加することにより、反応液のpHを調整したり、バナジウム化合物を均一に溶解させたりすることができる。
なお、過酸化水素としては、例えば、過酸化水素水(濃度35質量%、和光純薬社製、特級)を好適に用いることができる。
<コアに含まれる金属元素>
反応液には、バナジウム(V)以外の金属元素、具体的には、鉄(Fe)、ジルコニア(Zr)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、スズ(Sn)、レニウム(Re)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、ゲルマニウム(Ge)、クロム(Cr)及びガリウム(Ga)から選ばれる元素が含まれる。金属化合物としては特に限定されず、本発明の効果を阻害しないものであればよいが、具体的には、硫酸塩、硝酸塩、クエン酸塩等が好ましい。
また、バナジウム(V)以外の金属化合物としては、上記以外にも、バナジウム(V)とは価数の異なるバナジウムの化合物であってもよく、例えば、V(3価のバナジウムの化合物)、V(4価のバナジウムの化合物)、V13(4.3価のバナジウムの化合物)などが含まれていてもよい。
バナジウム(V)以外の金属化合物が、サーモクロミック粒子に含有されることで、サーモクロミック性を示す相転移温度を変化させることができるため、添加剤として添加することも好ましい。
[2:粒子形成(水熱合成)工程]
調製した反応液を用いて、水熱合成(水熱反応処理)を行い、サーモクロミック粒子を形成する。すなわち、本工程では、バナジウム(V)以外の金属化合物も含む前記反応液を水熱反応させる。
ここで、「水熱反応」とは、温度と圧力が、水の臨界点(374℃、22MPa)よりも低い熱水(亜臨界水)中において生じる化学反応を意味する。水熱反応処理は、例えば、オートクレーブ装置内で実施される。水熱反応処理により、二酸化バナジウム(VO)を含有するサーモクロミック粒子が得られる。
水熱反応処理の条件(反応物の量、処理温度、処理圧力、処理時間)は、適宜設定されるが、水熱反応処理の液温は、例えば、250〜350℃(好ましくは、270〜350℃、更に好ましくは、300〜350℃)の範囲内である。水熱反応が、液温250〜350℃の範囲内で行われると、不純物である準安定なロッド状のサーモクロミック粒子が生成しにくくなり、M相を示すサーモクロミック粒子が小粒径かつ均一に生成されるため好ましい。
また、水熱反応処理の時間は、例えば1時間〜7日であり、時間を長くすることにより、得られるサーモクロミック粒子の平均粒径等を制御することができ、7日以内であると、エネルギー消費量が多くなりすぎるおそれを回避できる。より好ましくは、コストの面から12〜72時間の範囲内である。
また、水熱反応は、撹拌されながら行われることが、サーモクロミック粒子の粒径をより均一化できるため、好ましい。
なお、水熱反応処理は、バッチ式で実施してもよく、連続式に実施してもよい。
本工程で順にコアとシェルが形成することから、コア形成工程とシェル形成工程を含む。具体的には、室温から水熱合成を行う設定温度に昇温するまでの間にコアが形成する(コア形成工程)。コア形成工程は、室温から水熱合成を行う温度(250〜350℃)の温度範囲内であり、5分から4時間の範囲内である。
シェルは、水熱合成を行う温度付近から始まり、水熱合成が完了するまでの間に形成する(シェル形成工程)。
シェル形成工程は、200〜350℃の範囲内で、1時間〜7日の範囲内である。
なお、コア形成工程とシェル形成工程は、二つの工程に明確に分かれるものではなく、コアとシェルの境界部分については、コア形成工程とシェル形成工程が重複しているものと考えている。
以上の工程により、二酸化バナジウム(VO)を含有するサーモクロミック粒子を含む反応液が得られる。その後、反応液から、濾過、洗浄及び乾燥などによって、本発明のコア・シェル型のサーモクロミック粒子が得られる。
≪サーモクロミック粒子のコア・シェル構造の観察≫
サーモクロミック粒子のコア・シェル構造の観察は、断面を作製し、走査型顕微鏡(SEM)を用いて観察することができる。
例えば、断面観察のための前処理として、イオンミリングによりコア・シェル粒子の断面を作製し、その断面に導電処理(Ptコート)を施し、コア・シェル粒子のシェルを走査型電子顕微鏡「S−4800」((株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、表面及び断面について観察する。
≪ICPによるコア・シェル型サーモクロミック粒子の組成分析≫
コア・シェル型サーモクロミック粒子の組成分析としては、例えば酸溶液に溶解し、純水で希釈した後、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置((株)島津製作所製、ICPS−8100)を用いて、粒子の組成値を測定することができる。
≪サーモクロミックフィルム≫
本発明のサーモクロミックフィルムは、透明基材上に、コア・シェル型のサーモクロミック粒子とバインダー樹脂とを含有する光学機能層を有することを特徴とする。
本発明のサーモクロミックフィルムの代表的な構成例について、図を交えて説明する。
図1は、コア・シェル型のサーモクロミック粒子とバインダー樹脂とを含有する光学機能層を有するサーモクロミックフィルムの基本的な構成の一例を示す概略断面図である。
図1に示すサーモクロミックフィルム1は、透明基材2上に、光学機能層3を積層した構成を有している。この光学機能層3は、バインダー樹脂4中に、コア・シェル型のサーモクロミック粒子5が分散された状態で存在している。
本発明のサーモクロミックフィルムにおいては、本発明のコア・シェル型のサーモクロミック粒子とバインダー樹脂とを含有する光学機能層に加えて、700〜1000nmの波長範囲内の少なくとも一部を遮蔽する機能を有する近赤外光遮蔽層を有することも好ましい。
本発明におけるこれらの層構成は、少なくとも透明基材と光学機能層3を有していれば、特に限定されるものではなく、それぞれの目的に応じて適正な層構成を選択することができる。
本発明のサーモクロミックフィルムとしては、上記の構成層の他に、必要に応じて、各種機能層を設けてもよい。
本発明のサーモクロミックフィルムの総厚としては、特に制限はないが、250〜1500μmの範囲内であり、好ましくは400〜1200μmの範囲内であり、さらに好ましくは600〜1000μmの範囲内であり、特に好ましくは750〜900μmの範囲内である。
本発明のサーモクロミックフィルムの光学特性として、JIS R3106(1998)で測定される可視光透過率としては、好ましくは60%以上であり、より好ましくは70%以上であり、さらに好ましくは80%以上である。また、波長900〜1400nmの領域に反射率50%を超える領域を有することが好ましい。
《サーモクロミックフィルムの各構成材料》
本発明のサーモクロミックフィルムは、透明基材上に、少なくともコア・シェル型のサーモクロミック粒子とバインダー樹脂とを含有する光学機能層を有する。
また、700〜1000nmの波長範囲内の少なくとも一部を遮蔽する機能を有する近赤外光遮蔽層を有することが好ましい構成である。
以下、本発明のサーモクロミックフィルムの構成要素である透明基材、光学機能層及び近赤外光遮蔽層の詳細について説明する。
<透明基材>
本発明のサーモクロミックフィルムに適用可能な透明基材としては、透明であれば特に制限はなく、ガラス、石英、透明樹脂フィルム等を挙げることができるが、可撓性の付与及び生産適性(製造工程適性)の観点からは、透明基材であることが好ましい。本発明でいう「透明」とは、可視光領域における平均光線透過率が50%以上であることをいい、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上である。
本発明で用いられる透明基材の厚さは、30〜200μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは30〜100μmの範囲内であり、更に好ましくは35〜70μmでの範囲内である。透明樹脂フィルムの厚さが30μm以上であれば、取扱い中にシワ等が発生しにくくなり、また厚さが200μm以下であれば、合わせガラス作製時、ガラス基材と貼り合わせる際のガラス曲面への追従性がよくなる。
本発明で用いられる透明基材は、二軸配向ポリエステルフィルムであることが好ましいが、未延伸又は少なくとも一方に延伸されたポリエステルフィルムを用いることもできる。強度向上、熱膨張抑制の点から延伸フィルムが好ましい。特に、本発明のサーモクロミックフィルムを具備した合わせガラスを、自動車のフロントガラスとして用いられる際に、延伸フィルムがより好ましい。
本発明で用いられる透明基材は、サーモクロミックフィルムのシワの生成や赤外線反射層の割れを防止する観点から、温度150℃において、熱収縮率が0.1〜3.0%の範囲内であることが好ましく、1.5〜3.0%の範囲内であることがより好ましく、1.9〜2.7%であることがさらに好ましい。
本発明のサーモクロミックフィルムに適用可能な透明基材としては、上述のように、透明であれば特に制限されることはないが、種々の樹脂フィルムを用いることが好ましく、例えば、ポリオレフィンフィルム(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステルフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリ塩化ビニル、トリアセチルセルロースフィルム等を用いることができ、好ましくはポリエステルフィルム、トリアセチルセルロースフィルムである。
ポリエステルフィルム(以降、単にポリエステルと称す。)としては、特に限定されるものではないが、ジカルボン酸成分とジオール成分を主要な構成成分とするフィルム形成性を有するポリエステルであることが好ましい。主要な構成成分のジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルチオエーテルジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸などを挙げることができる。また、ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビスフェノールフルオレンジヒドロキシエチルエーテル、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、シクロヘキサンジオールなどを挙げることができる。これらを主要な構成成分とするポリエステルの中でも透明性、機械的強度、寸法安定性などの点から、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸や2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジオール成分として、エチレングリコールや1,4−シクロヘキサンジメタノールを主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。中でも、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートを主要な構成成分とするポリエステルや、テレフタル酸と2,6−ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールからなる共重合ポリエステル、及びこれらのポリエステルの2種以上の混合物を主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。
本発明で用いられる透明基材として透明樹脂フィルムを用いる場合、取り扱いを容易にするために、透明性を損なわない範囲内で粒子を含有させてもよい。当該透明樹脂フィルムに採用可能な粒子の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シリカ、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子や、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子を挙げることができる。また粒子を添加する方法としては、原料とするポリエステル中に粒子を含有させて添加する方法、押出機に直接添加する方法等を挙げることができ、このうちいずれか一方の方法を採用してもよく、二つの方法を併用してもよい。本発明では必要に応じて上記粒子の他にも添加剤を加えてもよい。このような添加剤としては、例えば、安定剤、潤滑剤、架橋剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、染料、顔料、紫外線吸収剤などが挙げられる。
透明基材である透明樹脂フィルムは、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押出機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の透明樹脂フィルムを製造することができる。また、未延伸の透明樹脂フィルムを一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、透明樹脂フィルムの流れ(縦軸)方向、又は透明樹脂フィルムの流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸透明樹脂フィルムを製造することができる。この場合の延伸倍率は、透明樹脂フィルムの原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向及び横軸方向にそれぞれ2〜10倍が好ましい。
また、透明樹脂フィルムは、寸法安定性の点で弛緩処理、オフライン熱処理を行ってもよい。弛緩処理は前記ポリエステルフィルムの延伸製膜工程中の熱固定した後、横延伸のテンター内、又はテンターを出た後の巻き取りまでの工程で行われるのが好ましい。弛緩処理は処理温度が80〜200℃で行われることが好ましく、より好ましくは処理温度が100〜180℃である。また長手方向、幅手方向ともに、弛緩率が0.1〜10%の範囲で行われることが好ましく、より好ましくは弛緩率が2〜6%で処理されることである。弛緩処理された基材は、オフライン熱処理を施すことにより耐熱性が向上し、さらに、寸法安定性が良好になる。
透明樹脂フィルムは、製膜過程で片面又は両面にインラインで下引層塗布液を塗布することが好ましい。本発明においては、製膜工程中での下引塗布をインライン下引という。本発明に有用な下引層塗布液に使用する樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンイミンビニリデン樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、変性ポリビニルアルコール樹脂及びゼラチン等が挙げられ、いずれも好ましく用いることができる。これらの下引層には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記の下引層は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法によりコーティングすることができる。上記の下引層の塗布量としては、0.01〜2g/m(乾燥状態)程度が好ましい。
<光学機能層>
本発明に係る光学機能層は、本発明のコア・シェル型のサーモクロミック粒子が分散して含有されている。
含有されるサーモクロミック粒子の結晶形は、特に制限はないが、サーモクロミック性(自動調光性)を効率よく発現させる観点から、ルチル型の二酸化バナジウムを含有する粒子を用いることが、特に好ましい。しかしながら、本発明に係る光学機能層は、目的を損なわない範囲で、A型、又はB型などの他の結晶型のサーモクロミック粒子を含んでもよい。
(バインダー樹脂)
本発明に係る光学機能層に適用可能なバインダー樹脂としては、特に制限はない。
(光学機能層のその他の添加剤)
本発明に係る光学機能層に、本発明の目的とする効果を損なわない範囲で適用可能な各種の添加剤を、以下に列挙する。例えば、特開昭57−74193号公報、特開昭57−87988号公報、及び特開昭62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号公報、特開昭57−87989号公報、特開昭60−72785号公報、特開昭61−146591号公報、特開平1−95091号公報、及び特開平3−13376号公報等に記載されている退色防止剤、アニオン、カチオン又はノニオンの各種界面活性剤、特開昭59−42993号公報、特開昭59−52689号公報、特開昭62−280069号公報、特開昭61−242871号公報、及び特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、防黴剤、帯電防止剤、マット剤、熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、減粘剤、滑剤、赤外線吸収剤、色素、顔料等の公知の各種添加剤などが挙げられる。
(光学機能層の形成方法)
本発明に係る光学機能層の形成方法としては、特に制限はないが、本発明においては、本発明のサーモクロミック粒子の製造方法で、水熱合成させたサーモクロミック粒子が分散する溶液を、光学機能層形成用塗布液とし、この光学機能層形成用塗布液を湿式塗布方式により、透明基材上に塗布、乾燥して光学機能層を形成する方法が好ましい形成方法である。
上記光学機能層の形成に用いる湿式塗布方式としては、特に制限されず、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、スライド型カーテン塗布法、又は米国特許第2761419号明細書、米国特許第2761791号明細書などに記載のスライドホッパー塗布法、エクストルージョンコート法などが挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
[コア・シェル型のサーモクロミック粒子の作製]
<サーモクロミック粒子1の作製>
35質量%の過酸化水素水(和光純薬工業(株)製)2mLと純水20mLとを混合した水溶液に、原料として五酸化二バナジウム(V)(V、特級、和光純薬工業(株)製)0.55gを加え、30℃で4時間撹拌した。
その後、硫酸鉄を添加し、バナジウムと鉄の割合が、バナジウム99.9質量%に対して鉄0.1質量%になるように添加した。その後、還元剤としてヒドラジン一水和物(N・HO、和光純薬工業(株)製、特級)の1.25mol/L水溶液を1.4mLゆっくり滴下した。この混合液を更に30℃で10分間予備撹拌した。
上記調製した混合液を、高圧用反応分解容器 静置型HU−50 50mLセット(耐圧ステンレス製外筒HUS−50、PTFE製試料容器 HUTc−50:三愛科学(株)製)に入れた。室温から20分で270℃まで昇温した、270℃・48時間の水熱合成を行った。なお、室温から270℃まで昇温する工程がコア形成工程に相当し、270℃まで昇温する工程の終盤から270℃で水熱合成する工程がシェル形成工程に相当する。
得られた反応生成物を限外濾過し、水及びエタノールで洗浄した。更に、この反応生成物を、定温乾燥機を用いて60℃で10時間乾燥させた。これにより、サーモクロミック粒子を得た。
<サーモクロミック粒子2〜12の作製>
サーモクロミック粒子2〜12は、表1に記載の添加剤に変更し、バナジウムとコアに含有される金属元素の割合を変更した以外はサーモクロミック粒子1と同様の方法で作製した。
<サーモクロミック粒子のコア・シェル構造の観察>
コア・シェル粒子のシェルを走査型電子顕微鏡(SEM)「S−4800」((株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、表面及び断面について観察した。断面観察のための前処理として、イオンミリングによりコア・シェル粒子の断面を作製し、その断面に導電処理(Ptコート)を施した。
[ICPによるコア・シェル型サーモクロミック粒子の組成分析]
得られたコア・シェル型サーモクロミック粒子を、酸溶液に溶解し、純水で希釈した後、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置((株)島津製作所製、ICPS−8100)を用いて、粒子の組成値を測定する。
[サーモクロミックフィルム1〜12の作製]
<サーモクロミックフィルム1の作製>
(光学機能層形成用塗布液の調製)
作製したサーモクロミック粒子1〜12を用いてサーモクロミック粒子分散液1〜12を調製した。続いて、下記の各構成材料を順次添加、混合及び溶解して水系の光学機能層形成用塗布液を調製した。
3質量%のサーモクロミック粒子分散液1 28質量部
3質量%のホウ酸水溶液 10質量部
5質量%のポリビニルアルコール(5質量%水溶液、PVA−124;重合度:2400、ケン化度:98〜99mol%;株式会社クラレ製) 60質量部
5質量%の界面活性剤水溶液(ソフタゾリンLSB−R、川研ファインケミカル株式会社製) 2質量部
なお、ポリビニルアルコールであるPVA−124は、ヒドロキシ基含有の繰り返し単位の比率が50モル%以上のポリマーである。
(光学機能層の形成)
厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製A4300、両面易接着層)の透明基材上に、押出コーターを用いて、上記調製した光学機能層形成用塗布液1を、乾燥後の層厚が1.5μmとなる条件で湿式塗布を行った。次いで110℃の温風を2分間吹きつけて乾燥させて、光学機能層を形成して、サーモクロミックフィルム1を作製した。
<サーモクロミックフィルム2〜12の作製>
上記サーモクロミックフィルム1の作製において使用したサーモクロミック粒子分散液1を、それぞれサーモクロミック粒子分散液2〜12にしたほかは、サーモクロミックフィルム1の作製と同様にしてサーモクロミックフィルム2〜12を作製した。
《数平均粒子径測定》
上記のように作製したサーモクロミック粒子分散液について、マルバーン社製ゼータサイザーナノZS90を用いて数平均粒径を動的光散乱法にて測定した。100個の粒子について3回の測定を行い、それぞれ得られる粒子径の平均値を確認し、3回測定の平均値を数平均粒子径とした。
《平均アスペクト比の算出》
本発明のサーモクロミック粒子における個数平均長径及び個数平均短径は、走査型電子顕微鏡(SEM)「S−4800」((株)日立ハイテクノロジーズ製)により倍率50000倍にて観察した電子顕微鏡写真によって測定した。
具体的には、サーモクロミック粒子に外接する面積が最小となる長方形を算出し、その長辺と短辺の長さから、個数平均長径及び個数平均短径の長さを求めた。本発明のサーモクロミック粒子の個数平均長径及び個数平均短径は、n=100の平均値を算出することにより求めた。
本発明のサーモクロミック粒子の平均アスペクト比は、上記方法で求めた個数平均長径及び個数平均短径の比、すなわち、(個数平均長径)/(個数平均短径)によって求めた。
《平均粒度分布比の算出》
粒度分布計(マイクロトラック・ベル株式会社製、マイクロトラックMT3300II)を用いて分散液中の個数平均分散径(D10、D90)を測定し、平均粒度分布比(D90/D10)を求めた。
[サーモクロミックフィルム貼合ガラスの作製]
上記作製した各サーモクロミックフィルムを、厚さ1.3mmのガラス板(松浪硝子工業社製、「スライドグラス白縁磨」)のサイズ15cm×20cmに透明粘着シート(日東電工社製、LUCIACS CS9621T)を用いて貼り合わせてサーモクロミックフィルム貼合ガラスを上記作製した各サーモクロミックフィルムについて作製した。
《ヘイズの評価》
上記作製したサーモクロミックフィルム貼合ガラスについて、ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH2000)を用いて、ヘイズ(%)を測定した。
《透過率の測定》
上記作製したサーモクロミックフィルム貼合ガラスについて、日本分光社製の紫外可視近赤外分光光度計「V−670」を用いて、測定試料の透過率を、250nmから2500nmまで透過光を用いて、測定セルが25℃及び80℃になった時の透過率を測定した。可視光(380〜780nm)平均透過率及び1200nmの光透過率を表2に示した。また、25℃及び80℃での1200nmの光透過率の差をΔTとした。
Figure 2017214466
Figure 2017214466
<評価結果>
表1の結果から分かるように、本発明のコア・シェル型のサーモクロミック粒子は、比較例のサーモクロミック粒子よりも数平均粒子径、アスペクト比及び平均粒度分布比が小さいことが分かった。
また、表2の結果から、本発明のサーモクロミックフィルムは、比較例のサーモクロミックフィルムよりも可視光における透過率は高く、1200nmの光透過率は25℃よりも80℃の方が低くなっており、近赤外光の透過を効果的に抑制できていることが分かった。
1 サーモクロミックフィルム
2 透明基材(基材)
3 光学機能層
4 バインダー樹脂
5 コア・シェル型のサーモクロミック粒子

Claims (6)

  1. 二酸化バナジウムを含有するコア・シェル型のサーモクロミック粒子であって、
    二酸化バナジウムを主成分として含有するシェルと、
    鉄(Fe)、ジルコニア(Zr)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、スズ(Sn)、レニウム(Re)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、ゲルマニウム(Ge)、クロム(Cr)及びガリウム(Ga)から選ばれる元素を含有するコアと、を有することを特徴とするコア・シェル型のサーモクロミック粒子。
  2. 数平均粒子径が1〜80nmの範囲内であり、
    平均アスペクト比が1.00〜1.15の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のコア・シェル型のサーモクロミック粒子。
  3. 平均粒度分布測定における10%径(D10)に対する90%径(D90)の比(D90/D10)の値が、3.0以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコア・シェル型のサーモクロミック粒子。
  4. 前記元素の含有率が、粒子全体の1〜50質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のコア・シェル型のサーモクロミック粒子。
  5. 請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のコア・シェル型のサーモクロミック粒子を含むサーモクロミックフィルムであって、
    透明基材上に、前記コア・シェル型のサーモクロミック粒子とバインダー樹脂とを含有する光学機能層を有することを特徴とするサーモクロミックフィルム。
  6. 請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のコア・シェル型のサーモクロミック粒子を製造するサーモクロミック粒子の製造方法であって、
    コアを形成する工程と、
    シェルを形成する工程と、
    を有し、かつ、
    少なくともシェルは、水熱合成法により形成することを特徴とするサーモクロミック粒子の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
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