JP2018087093A - 二酸化バナジウム含有粒子の製造方法、分散液の調製方法及び分散液 - Google Patents

二酸化バナジウム含有粒子の製造方法、分散液の調製方法及び分散液 Download PDF

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Abstract

【課題】サーモクロミック性、分散性及び安定性に優れた二酸化バナジウム含有粒子製造方法の提供。【解決手段】サーモクロミック性を有する二酸化バナジウムを含有する二酸化バナジウム含有粒子の製造方法であって、バナジウム化合物を含有する原料、還元剤及び水を含む反応液を水熱反応させることにより、二酸化バナジウム含有粒子を形成し、反応液の水熱反応後のpH(25℃換算)が、4.0〜7.0の範囲内である二酸化バナジウム含有粒子3bの製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、二酸化バナジウム含有粒子の製造方法、分散液の調製方法及び分散液に関する。より詳しくは、サーモクロミック性、分散性及び安定性に優れた二酸化バナジウム含有粒子の製造方法、分散液の調製方法及び分散液に関する。
例えば、住宅やビル等の建物及び車両などの移動体等では、内部(例えば、室内、車両内。)と外部環境との間で大きな熱交換が生じるか所(例えば、窓ガラス)において、省エネルギー性と快適性とを両立するために、熱の遮断又は透過を制御可能なサーモクロミック性を有する材料(以下、サーモクロミック材料ともいう。)の適用が期待されている。
サーモクロミック材料とは、例えば、透明状態/反射状態等の光学的な性質が温度により変化する材料である。具体的には、温度が高い場合には反射状態となり、温度が低い場合には透明状態となる材料である。このようなサーモクロミック材料を、例えば、建物の窓ガラスに適用した場合、夏には太陽光を反射させて熱を遮断でき、冬には太陽光を透過させて熱を利用できるため、省エネルギー性と快適性とを両立することができる。
現在、最も着目されているサーモクロミック材料の一つに、二酸化バナジウム(VO)を含有する二酸化バナジウム含有粒子(以下、単に「VO含有粒子」ともいう。)がある。二酸化バナジウムは、室温付近での相転移の際に、サーモクロミック性(温度により、光学特性が可逆的に変化する性質)を示すことが知られている。この性質を利用することにより、環境温度に依存するサーモクロミック材料を得ることができる。
VOの結晶構造には、A相、B相、C相及びR相(いわゆる「ルチル型の結晶相」のこと。)など、いくつかの結晶相の多形が存在する。この中でも、前述のようなサーモクロミック性を示す結晶構造は、R相に限られる。このR相は、転移温度以下では、単斜晶系(monoclinic)の構造を有するため、M相とも呼ばれている。このようなVO含有粒子において、実質的に優良なサーモクロミック性を発現させるためには、VO含有粒子が凝集していないこと、平均粒径がナノオーダー(100nm以下)であること、及び粒子が等方的な形状を有していることが望ましい。
サーモクロミック性を有する部材(フィルムなど)の形成方法としては、VO含有粒子又はその分散液を調製し、これを接着剤等を介して、サーモクロミック性を発現させたい部材に接着することにより、サーモクロミック性を有する部材を製造することが検討されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
しかしながら、特許文献1に示す水熱反応で得られるVO含有粒子は、二酸化チタン(TiO)粒子上に二酸化バナジウムをエピタキシャル成長させたものであるため、不純物として二酸化チタンを含み、その結果、二酸化バナジウムの純度が低くなり、サーモクロミック性が低下するという問題がある。
一方、特許文献2に示す水熱反応で得られるVO含有粒子については、水熱反応中、あるいは水熱反応後の反応液の液性について考慮されていないため(例えば、特許文献2の実施例2における水熱反応後の反応液のpHを検証したところ、pHは7.7であった。)、得られるVO含有粒子のサーモクロミック性が低く、更には、反応液中での安定性が悪い(劣化しやすい)という問題がある。
特開2010−031235号公報 特開2011−178825号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、サーモクロミック性、分散性及び安定性に優れた二酸化バナジウム含有粒子の製造方法、分散液の調製方法及び分散液を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、反応液の水熱反応後のpH(25℃換算)、あるいは分散液のpH(25℃換算)を特定の範囲内とすることにより、サーモクロミック性、分散性及び安定性に優れた二酸化バナジウム含有粒子の製造方法、分散液の調製方法及び分散液を提供できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.サーモクロミック性を有する二酸化バナジウムを含有する二酸化バナジウム含有粒子の製造方法であって、
バナジウム化合物を含有する原料、還元剤及び水を含む反応液を水熱反応させることにより、前記二酸化バナジウム含有粒子を形成し、
前記反応液の水熱反応後のpH(25℃換算)が、4.0〜7.0の範囲内であることを特徴とする二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
2.前記反応液の水熱反応後のpH(25℃換算)が、5.3〜6.5の範囲内であることを特徴とする第1項に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
3.サーモクロミック性を有する二酸化バナジウム含有粒子を含有する分散液の調製方法であって、
前記分散液のpH(25℃換算)を、4.0〜7.0の範囲内とすることを特徴とする分散液の調製方法。
4.前記分散液のpH(25℃換算)を、5.3〜6.5の範囲内とすることを特徴とする第3項に記載の分散液の調製方法。
5.前記二酸化バナジウム含有粒子を含有する懸濁液を、限外濾過により、添加剤を加えた水溶液で洗浄、溶媒置換して、前記分散液を調製することを特徴とする第3項又は第4項に記載の分散液の調製方法。
6.サーモクロミック性を有する二酸化バナジウム含有粒子を含有する分散液であって、
前記分散液のpH(25℃換算)が、4.0〜7.0の範囲内であることを特徴とする分散液。
7.前記分散液のpH(25℃換算)が、5.3〜6.5の範囲内であることを特徴とする第6項に記載の分散液。
8.前記分散液の電気伝導度(25℃換算)が、10〜5000μS/cmの範囲内であることを特徴とする第6項又は第7項に記載の分散液。
本発明の上記手段により、サーモクロミック性及び分散性に優れた二酸化バナジウム含有粒子の製造方法、分散液の調製方法及び分散液を提供することができる。
本発明の効果の発現機構・作用機構については明確になっていないが、以下のように推察している。
水熱反応後の反応液、あるいはVO含有粒子を含有する分散液において、pH(25℃換算)が4.0未満であると、VO含有粒子の分散性を維持することできず、7.0より大きいと、VO含有粒子が劣化してしまう。
そこで、本発明の水熱反応後の反応液、あるいはVO含有粒子を含有する分散液においては、それらのpH(25℃換算)を4.0〜7.0の範囲内とすることにより、サーモクロミック性、分散性及び安定性に優れた二酸化バナジウム含有粒子の製造方法、分散液の調製方法及び分散液を提供できるものと推察される。
加えて、水熱反応後の反応液については、VO含有粒子の粒径分布が狭く、均一なR相の結晶が形成されやすくなることも、VO含有粒子のサーモクロミック性を向上させる一つの要因となっていると考えられる。
本発明の光学フィルムの構成の一例を示す概略断面図 近赤外光遮蔽層を有する本発明の光学フィルムの構成の一例を示す概略断面図 近赤外光遮蔽層を有する本発明の光学フィルムの構成の一例を示す概略断面図 近赤外光遮蔽層を有する本発明の光学フィルムの構成の一例を示す概略断面図 近赤外光遮蔽層を有する本発明の光学フィルムの構成の一例を示す概略断面図 近赤外光遮蔽層を有する本発明の光学フィルムの構成の一例を示す概略断面図 近赤外光遮蔽層を有する本発明の光学フィルムの構成の一例を示す概略断面図 透明基材の両面に近赤外光遮蔽層を有する本発明の光学フィルムの構成の一例を示す概略断面図 ポリマー層積層体により形成した近赤外光遮蔽層を有する本発明の光学フィルムの構成の一例を示す概略断面図
本発明の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法は、反応液の水熱反応後のpH(25℃換算)が、4.0〜7.0の範囲内であり、また、本発明の分散液の調製方法は、分散液のpH(25℃換算)を、4.0〜7.0の範囲内とすることを特徴とする。この特徴は、請求項1又は請求項3から請求項7までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、反応液の水熱反応後のpH(25℃換算)が、5.3〜6.5の範囲内であることが好ましい。これにより、サーモクロミック性及び分散性を向上させ、VO含有粒子の粒径分布を狭くすることができる。
また、分散液のpH(25℃換算)を、5.3〜6.5の範囲内とすることが好ましい。これにより、サーモクロミック性、分散性及び保存安定性を向上させることができる。
本発明は、サーモクロミック性を有する二酸化バナジウム含有粒子を含有する分散液であって、分散液のpH(25℃換算)が4.0〜7.0の範囲内である分散液を提供することができる。
また、サーモクロミック性、分散性及び保存安定性を向上させる観点から、分散液のpH(25℃換算)が5.3〜6.5の範囲内であることが好ましく、更には、分散液の電気伝導度(25℃換算)が10〜5000μS/cmの範囲内であることが好ましい。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、数値範囲を表す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用している。
《二酸化バナジウム含有粒子(VO含有粒子)の製造方法》
本発明のVO含有粒子の製造方法は、サーモクロミック性を有する二酸化バナジウムを含有するVO含有粒子の製造方法であって、バナジウム化合物を含有する原料、還元剤及び水を含む反応液を水熱反応させることにより、VO含有粒子を形成し、反応液の水熱反応後のpH(25℃換算)が、4.0〜7.0の範囲内であることを特徴とする。
以下に、本発明のVO含有粒子の製造方法について詳細に説明する。
(1)反応液の調製
まず、少なくとも、バナジウム化合物を含有する原料、還元剤、水を混合して反応液を調製する。この反応液は、バナジウム化合物が水中に溶解した水溶液であってもよいし、バナジウム化合物が水中に分散した懸濁液であってもよい。
また、本発明のVO含有粒子の製造方法においては、バナジウム化合物に対する還元剤の当量比の値が1.00〜1.40の範囲内である反応液を水熱反応させることにより、VO含有粒子を形成することが好ましい態様である。
(当量比の値)
本発明に係る反応液は、バナジウム化合物に対する還元剤の当量比の値が1.00〜1.40の範囲内であることが好ましい。
以下、バナジウム化合物として、五酸化二バナジウム(V)、還元剤として、ヒドラジン(N)又はシュウ酸((COOH))を用いた場合について説明する。
五酸化二バナジウム(V)と、ヒドラジン(N)又はシュウ酸((COOH))との反応は、それぞれ下記反応式(1)及び(2)で表される。
反応式(1)
2V+N→4VO+N+2H
反応式(2)
+(COOH)→2VO+2CO+H
反応式(1)で示されるように、五酸化二バナジウムとヒドラジンとは、モル比2:1で還元反応が進行する。すなわち、当該還元反応において、バナジウム化合物に対する還元剤の当量比の値が1.00〜1.40の範囲内であるとは、五酸化二バナジウム(バナジウム化合物)に対するヒドラジン(還元剤)のモル比が0.50〜0.70の範囲内であることを意味する。
一方で、反応式(2)で示されるように、五酸化二バナジウムとシュウ酸とは、モル比1:1で還元反応が進行する。すなわち、当該還元反応において、バナジウム化合物に対する還元剤の当量比の値が1.00〜1.40の範囲内であるとは、五酸化二バナジウム(バナジウム化合物)に対するシュウ酸(還元剤)のモル比が1.00〜1.40の範囲内であることを意味する。
本発明においては、バナジウム化合物に対する還元剤の当量比の値が1.20であることが特に好ましい。当量比の値が1.20であれば、還元剤がバナジウム化合物ではなく、溶媒と反応すること、及び還元剤の一部が分解又は揮発することを抑制することができる。
(バナジウム化合物)
本発明に係るバナジウム化合物は、5価のバナジウム(V)の化合物であれば、特に限定されず、例えば、五酸化二バナジウム(V)、バナジン酸アンモニウム(NHVO)、三塩化酸化バナジウム(VOCl)、メタバナジン酸ナトリウム(NaVO)等が挙げられる。
(還元剤)
本発明に係る還元剤は、水に容易に溶解する性質を有し、かつ、少なくともバナジウム化合物の還元剤として機能すればよく、例えば、ヒドラジン(N)及びその水和物(N・nHO)、シュウ酸等が挙げられる。
(水)
本発明に係る水は、特に限定されないが、不純物の少ない高純度のものが好ましく、具体的には、イオン交換水、蒸留水等の精製水を用いることができる。
(反応液が含有していてもよいその他の化合物)
本発明に係る反応液は、例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、スズ(Sn)、レニウム(Re)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、ゲルマニウム(Ge)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、フッ素(F)及びリン(P)からなる群から選択される少なくとも一種の原子を含む化合物を含有していてもよい。
これらの原子を含む化合物を、添加剤として最終的に得られるVO含有粒子に添加することにより、VO含有粒子のサーモクロミック性(特に、転移温度)を制御することができる。
また、本発明に係る反応液には、酸化性又は還元性を有する物質が添加されていてもよい。このような物質には、例えば、過酸化水素(H)が挙げられる。酸化性又は還元性を有する物質を添加することにより、反応液のpHを調整したり、バナジウム化合物を均一に溶解させたりすることができる。
(2)水熱反応
次に、調製した溶液を用いて、水熱反応処理を行う。ここで、水熱反応とは、温度と圧力とが、水の臨界点(374℃、22MPa)よりも低い熱水(亜臨界水)中において生じる化学反応を意味する。水熱反応処理は、例えば、オートクレーブ装置内で実施される。水熱反応処理により、二酸化バナジウムを含有するVO含有粒子が得られる。
水熱反応処理の条件(反応物の量、処理温度、処理圧力、処理時間)は、適宜設定されるが、水熱反応処理の液温は、例えば、150〜350℃の範囲内であることが好ましい。水熱反応処理の液温が上記範囲内であれば、過度にVO含有粒子の平均粒径が小さくなることを抑え、結晶性が低くなるおそれを回避できる。
水熱反応処理の時間は、1時間〜7日間であることが好ましい。水熱反応処理の時間が1時間以上であれば、得られるVO含有粒子の平均粒径等を制御することができ、7日以内であれば、エネルギー消費量が多くなりすぎるおそれを回避できる。
また、水熱反応は、撹拌されながら行われることが、VO含有粒子の粒径をより均一化できるため、好ましい。
なお、水熱反応処理は、バッチ式で実施してもよく、連続式に実施してもよい。
以上の工程により、サーモクロミック性を有する二酸化バナジウムを含有するVO含有粒子を含む懸濁液が得られる。その後、懸濁液から、濾過、洗浄、乾燥等によって、本発明に係るVO含有粒子が得られる。
(水熱反応後の反応液のpH)
本発明のVO含有粒子の製造方法は、水熱反応後の反応液のpH(25℃換算)が、4.0〜7.0の範囲内であり、より好ましくは5.3〜6.5の範囲内である。
水熱反応後の反応液のpH(25℃換算)が4.0未満であると、VO含有粒子の分散性を維持することできず、7.0より大きいと、VO含有粒子が劣化してしまう。
さらには、水熱反応後の反応液のpH(25℃換算)を上記範囲内とすることで、均一なR相の結晶ができやすくなり、得られるVO含有粒子のサーモクロミック性がよくなる効果もある。
水熱反応後の反応液のpHは、水熱反応前の反応液に対し、アンモニア、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、ヒドラジン水溶液等の塩基性溶液や、酢酸、硫酸、シュウ酸水溶液等の酸性溶液を添加して調整してもよい。
水熱反応後の反応液のpHを上記範囲内に調整する方法としては、例えば、水熱反応前の反応液に対し、アンモニア、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等の塩基性溶液を添加する方法や、酢酸、硫酸等の酸性溶液を添加する方法、緩衝液を添加する方法、酸化剤や還元剤を添加する方法等が挙げられ、好ましくはハロゲンを含まないことが望ましい。
また、バナジウム化合物を含有する原料の一部として、酸性又は塩基性を示すバナジウム塩を使用してもpH調整が可能であり、具体的には、アンモニウム塩や硫酸塩等を用いることができ、好ましくはハロゲンを含まないことが望ましい。
酸塩基又はバナジウム塩の添加量は、水熱反応後の反応液の電気伝導度(25℃換算)が5000μS/cm以下となる範囲内であることが望ましい。
本発明において、pH測定は、一般的なpHメーターによって測定できる。
例えば、pH電極LE438(METTLER TOLEDO)を使用することができる。
測定対象物(例えば、反応液)のpHは、フタル酸塩pH標準液(pH:4.01)と、中性リン酸塩pH標準液(pH:6.86)とをpH標準液として用い、pHメーターを2点校正した後、pHメーターの電極を混合液に入れて、混合液の水面が元々の2/3になるようにマグネチックスターラーを用いて撹拌した状態で、1分以上経過して安定した後の値を読み取ることで得られる。このとき、測定対象物とpH標準液との液温は25℃に調整する。
pH測定は、水熱反応後の反応液については、水熱反応後の粗熱がとれて室温に戻ったときに行い、分散液については分散工程を行った直後に行うものとする。水熱反応後の反応液を分散液として保存する場合には、水熱反応後のpHが分散液のpHとなる。
(二酸化バナジウム含有粒子(VO含有粒子))
本発明のVO含有粒子の製造方法によって製造されたVO含有粒子は、少なくとも二酸化バナジウムを含有し、かつ、サーモクロミック性を有している。
VO含有粒子の平均粒径は、5〜50nmの範囲内であることが好ましい。
また、VO含有粒子の粒径分布のCV値は、40%以下であることが好ましい。
このようなVO含有粒子を光学フィルム等に適用すれば、ヘイズが発生することを抑制でき、また、可視光透過率を向上させることができる。
本発明において、VO含有粒子の平均粒径は、粒子を走査型電子顕微鏡で撮影し、粒子の投影面積と等しい面積を有する円の直径を粒径と定義し、100個のVO粒子について測定し、これらの算術平均値を求め、これを平均粒径とする。
また、VO含有粒子の粒径分布のCV値は、上記平均粒径の測定で求めた個々の粒径の標準偏差を平均粒径で除した値に100を乗じた値を求め、これを粒径分布のCV値とする。すなわち、VO含有粒子の粒径分布のCV値は下記式により計算される値である。
粒径分布のCV値=粒径の標準偏差/平均粒径×100(%)
(サーモクロミック性)
本発明に係るVO含有粒子は、光透過性(VO含有粒子を含有するフィルムの可視光領域における光透過性をいう。)とサーモクロミック性とを有している。
VO含有粒子を含有するフィルムの可視光領域における光透過率は、高いほどよく、70%以上であることが好ましい。
また、VO含有粒子が有するサーモクロミック性としては、温度変化によって光透過率や光反射率等の光学特性が可逆的に変化すれば特に限定されるものではない。例えば、20℃及び80℃における光透過率の差が30%以上であることが好ましい。
VO含有粒子を含有するフィルムの可視光領域における光透過率は、例えば、分光光度計V−670(日本分光株式会社製)を用いて、波長2000nmにおける光透過率として測定することができる。
また、本発明に係るVO含有粒子は、二酸化バナジウムの他、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、スズ(Sn)、レニウム(Re)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、ゲルマニウム(Ge)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、フッ素(F)及びリン(P)からなる群から選択される少なくとも一種の原子を含んでいてもよい。このような原子を含有することにより、VO含有粒子の相転移特性(特に、調光温度)を制御することが可能となる。なお、最終的に得られるVO含有粒子に対する、上記含有させてもよい原子の総含有量は、バナジウム(V)原子(100at%)に対して、0.1〜5.0at%程度である。この範囲内であれば、VO含有粒子のサーモクロミック性(例えば、調光前後の透過率の差)を劣化させてしまうおそれがない。
《分散液》
本発明のVO含有粒子を含有する分散液は、pH(25℃換算)が、4.0〜7.0の範囲内であり、より好ましくは5.3〜6.5の範囲内である。
分散液のpH(25℃換算)が4.0未満であると、VO含有粒子の分散性を維持することできず、7.0より大きいと、VO含有粒子が劣化してしまう。
前述したように、水熱反応後の反応液を分散液として用いてもよいし、添加剤等により調整してもよい。
分散液のpHを上記範囲内に調整する方法としては、例えば、分散液に対し、アンモニア、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等の塩基性溶液を添加する方法や、酢酸、硫酸等の酸性溶液を添加する方法等が挙げられ、好ましくはハロゲンを含まないことが望ましい。
酸塩基の添加量は、分散液の電気伝導度(25℃換算)が10〜5000μS/cmとなる範囲内であることが望ましい。
VO含有粒子を分散させるための溶媒は、特に限定されず、公知のものを使用できる。
VO含有粒子を含有する分散液のサーモクロミック性は、例えば、分光光度計V−670(日本分光株式会社製)を用いて、水の吸収ピークによる影響を受けない波長1300nmでの20℃及び80℃における光透過率の差として測定することができる。
(電気伝導度)
本発明の分散液は、電気伝導度(25℃換算)が、10〜5000μS/cmの範囲内であることが好ましい。電気伝導度を5000μS/cm以下とすることでVO含有粒子の分散性をよりよくすることができ、10μS/cm以上とすることで洗浄工程等を簡易化することができ、工業的生産性が上がる。
ここで、分散液の電気伝導度は、一般的な電気伝導度計によって測定できる。
例えば、ES−51(株式会社堀場製作所)を用いて、常温(25℃)で測定される。
(分散液の調製方法)
上記した水熱反応により、サーモクロミック性を有する二酸化バナジウムを含有するVO含有粒子を含む懸濁液が得られる。その後、懸濁液から、濾過、洗浄、pH調整等の工程を経て、VO含有粒子を含有する分散液が得られる。
濾過、洗浄には、限外濾過を用いてもよい。
また、水熱反応後の懸濁液が、既にpH4.0〜7.0の範囲内、電気伝導度10〜5000μS/cmの範囲内である場合には、そのまま分散液として使用することもできる。
限外濾過としては、例えば、Sartorius stedim社製、ビバフロー50(有効濾過面積50cm、分画分子量5000)を用いて、流速300mL/min、液圧1bar(0.1MPa)、常温(25℃)下で濾過を行うことができる。
《光学フィルム(1)》
本発明の光学フィルムは、透明基材上に、少なくとも樹脂を含有する光学機能層を有し、当該光学機能層に、本発明のVO含有粒子の製造方法によって製造されたVO含有粒子が含有されていることを特徴とする。
図1に示すように、本発明の光学フィルム1は、透明基材2上に、光学機能層3が積層されて構成されている。この光学機能層3は、樹脂3a中にVO含有粒子3bが分散された状態となっている。
本発明の光学フィルムにおいては、更に、700〜2500nmの波長範囲内の少なくとも一部を遮蔽する機能を有する近赤外光遮蔽層を有することが好ましい。
さらには、近赤外光遮蔽層が、第1の水溶性バインダー樹脂と第1の金属酸化物粒子とを含有する高屈折率反射層と、第2の水溶性バインダー樹脂と第2の金属酸化物粒子とを含有する低屈折率反射層とを交互に積層し、特定の波長の光を選択的に反射する反射層積層体であることが好ましい。
例えば、図2に示す光学フィルム1は、透明基材2と光学機能層3との間に近赤外光遮蔽層が挟持された構成を有し、図3に示す光学フィルム1は、透明基材2上に、光学機能層3、近赤外光遮蔽層4とが順に積層された構成を有し、図4に示す光学フィルム1は、透明基材2の光学機能層3が配設された側とは反対側に近赤外光遮蔽層4が配設された構成を有している。
以下、図5〜9を用いて、近赤外光遮蔽層4の構成を詳細に説明する。
図5は、図2に示した光学フィルム1における近赤外光遮蔽層4の構成を詳細に示した断面図である。
図5に示すとおり、本発明の光学フィルム1は、透明基材2と光学機能層3との間に、近赤外光遮蔽層として、第1の水溶性バインダー樹脂と第1の金属酸化物粒子とを含有する高屈折率の赤外線反射層(高屈折率反射層)、及び第2の水溶性バインダー樹脂と第2の金属酸化物粒子とを含有する低屈折率の赤外線反射層(低屈折率反射層)を交互に積層した反射層積層体ML1が挟持されている。
反射層積層体ML1の構成としては、透明基材2側から赤外線反射層T〜Tまでのn層で構成され、例えば、T、T、T、…を屈折率が1.10〜1.60の範囲内にある低屈折率反射層で構成し、T、T、T、…を屈折率が1.80〜2.50の範囲内にある高屈折率反射層とする構成を一例として挙げることができる。
ここで、本発明における屈折率とは、25℃の環境下で測定した値である。
同様に、図6は、図3に示した光学フィルム1の層配置において、近赤外光遮蔽層4の構成を詳細に示した断面図であり、図7は、図4に示した光学フィルム1の層配置において、近赤外光遮蔽層4の構成を詳細に示した断面図である。
また、図8に示すとおり、光学フィルム1は、透明基材2の両面に反射層積層体ML1a(赤外線反射層Ta〜Ta)及び反射層積層体ML1b(赤外線反射層Tb〜Tb)を配設し、それぞれの反射層積層体ML1a及びML1b上に、光学機能層3A及び3Bを配設した構成としてもよい。
一方で、図9に示すとおり、本発明の光学フィルム1は、透明基材2と光学機能層3との間に、ポリマー層積層体ML2により構成される近赤外光遮蔽層が挟持されている。
ポリマー層積層体ML2は、素材の異なる2種のポリマーフィルムを積層して構成されている。その構成の一例としては、透明基材2側から、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムで形成されているPEN、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)フィルムで形成されているPMMA、PEN、PMMA、PEN、PMMA、…、PMMAm−1、PEN、PMMA、PENm+1が順次積層されてポリマー層積層体ML2が形成されている。このポリマー層積層体ML2上に、光学機能層3が配設されている。
本発明の光学フィルムは、上記の構成層の他に、必要に応じて、各種機能層を設けてもよい。
本発明の光学フィルムの層厚としては、特に制限はないが、250〜1500μmの範囲内であり、好ましくは400〜1200μmの範囲内であり、更に好ましくは600〜1000μmの範囲内であり、特に好ましくは750〜900μmの範囲内である。
本発明の光学フィルムの光学特性として、JIS R 3106(1998)で測定される可視光透過率としては、好ましくは60%以上であり、より好ましくは70%以上であり、更に好ましくは80%以上である。
また、波長900〜1400nmの領域に、光反射率50%を超える領域(ピーク)を有することが好ましい。
《光学フィルムの各構成材料》
本発明の光学フィルムは、透明基材上に、少なくともVO含有粒子と樹脂とを含有する光学機能層を有している。さらには、700〜1000nmの波長範囲内の少なくとも一部を遮蔽する機能を有する近赤外光遮蔽層を有することが好ましい態様である。
以下、本発明の光学フィルムの構成要素について、詳細に説明する。
《透明基材(2)》
本発明の光学フィルムに適用可能な透明基材としては、透明であれば特に制限はなく、ガラス、石英、透明樹脂フィルム等を挙げることができるが、可撓性の付与及び生産適性(製造工程適性)の観点からは、透明樹脂フィルムであることが好ましい。
本発明でいう透明とは、可視光領域における平均光線透過率が50%以上であることをいい、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上である。
本発明に係る透明基材の厚さは、30〜200μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは30〜100μmの範囲内であり、更に好ましくは35〜70μmの範囲内である。
透明基材の厚さが30μm以上であれば、透明基材として透明樹脂フィルムを用いた場合に、取扱い中にシワ等が発生しにくくなり、また、厚さが200μm以下であれば、合わせガラス作製時、ガラス基材と貼り合わせる際の曲面への追従性がよくなる。
本発明に係る透明基材は、二軸配向ポリエステルフィルムであることが好ましいが、未延伸又は少なくとも一方に延伸されたポリエステルフィルムを用いることもできる。強度向上、熱膨張抑制の点から延伸フィルムが好ましい。特に、本発明の光学フィルムを具備した合わせガラスを自動車のフロントガラスとして用いる場合には、延伸フィルムであることがより好ましい。
本発明に係る透明基材は、光学フィルムのシワの発生や近赤外光遮蔽層の割れを防止する観点から、温度150℃において、熱収縮率が0.1〜3.0%の範囲内であることが好ましく、1.5〜3.0%の範囲内であることがより好ましく、1.9〜2.7%の範囲内であることが更に好ましい。
本発明の光学フィルムに適用可能な透明基材としては、上述のように、透明であれば特に制限されることはいが、種々の樹脂フィルムを用いることが好ましく、例えば、ポリオレフィンフィルム(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステルフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリ塩化ビニル、トリアセチルセルロースフィルム等を用いることができ、好ましくはポリエステルフィルム、トリアセチルセルロースフィルムである。
ポリエステルフィルム(以降、単にポリエステルと称す。)としては、特に限定されるものではないが、ジカルボン酸成分とジオール成分とを主要な構成成分とするフィルム形成性を有するポリエステルであることが好ましい。
主要な構成成分のジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルチオエーテルジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸等を挙げることができる。
また、ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビスフェノールフルオレンジヒドロキシエチルエーテル、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、シクロヘキサンジオール等を挙げることができる。
これらを主要な構成成分とするポリエステルの中でも透明性、機械的強度、寸法安定性等の点から、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸や2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジオール成分として、エチレングリコールや1,4−シクロヘキサンジメタノールを主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。中でも、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートを主要な構成成分とするポリエステルや、テレフタル酸と2,6−ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールからなる共重合ポリエステル、及びこれらのポリエステルの二種以上の混合物を主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。
本発明に係る透明基材として透明樹脂フィルムを用いる場合、取り扱いを容易にするために、透明性を損なわない範囲内で粒子を含有させてもよい。透明樹脂フィルムに採用可能な粒子の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シリカ、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子や、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子を挙げることができる。また、粒子を添加する方法としては、原料とするポリエステル中に粒子を含有させて添加する方法、押出機に直接添加する方法等を挙げることができ、このうちいずれか一方の方法を採用してもよく、二つの方法を併用してもよい。
本発明においては、必要に応じて上記粒子の他にも添加剤を加えてもよい。このような添加剤としては、例えば、安定剤、潤滑剤、架橋剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、染料、顔料、紫外線吸収剤等が挙げられる。
本発明に係る透明基材は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、透明樹脂フィルムであれば、材料となる樹脂を押出機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の透明樹脂フィルムを製造することができる。また、未延伸の透明樹脂フィルムを一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、透明樹脂フィルムの流れ(縦軸)方向、又は透明樹脂フィルムの流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸透明樹脂フィルムを製造することができる。この場合の延伸倍率は、透明樹脂フィルムの原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向及び横軸方向にそれぞれ2〜10倍が好ましい。
また、透明樹脂フィルムは、寸法安定性の点で弛緩処理、オフライン熱処理を行ってもよい。弛緩処理はポリエステルフィルムの延伸成膜工程中の熱固定した後、横延伸のテンター内、又はテンターを出た後の巻取りまでの工程で行われるのが好ましい。弛緩処理は、処理温度が80〜200℃の範囲内で行われることが好ましく、より好ましくは処理温度が100〜180℃の範囲内である。
また、長手方向、幅手方向ともに、弛緩率が0.1〜10%の範囲内で行われることが好ましく、より好ましくは弛緩率が2〜6%の範囲内で処理されることである。弛緩処理された基材は、オフライン熱処理を施すことにより耐熱性が向上し、更に寸法安定性が良好になる。
透明樹脂フィルムは、成膜過程で片面又は両面にインラインで下引層塗布液を塗布することが好ましい。本発明においては、成膜工程中での下引塗布をインライン下引という。本発明に有用な下引層塗布液に使用する樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンイミンビニリデン樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、変性ポリビニルアルコール樹脂及びゼラチン等が挙げられ、いずれも好ましく用いることができる。これらの下引層には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記の下引層は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法によりコーティングすることができる。上記の下引層の塗布量としては、0.01〜2g/m(乾燥状態)程度が好ましい。
《光学機能層(3)》
本発明に係る光学機能層は、本発明のVO含有粒子の製造方法によって製造されたVO含有粒子が分散されて含有されていることを特徴とする。
VO含有粒子の結晶形は、特に制限はないが、サーモクロミック性(自動調光性)を効率よく発現させる観点から、ルチル型の二酸化バナジウムを含有する粒子を用いることが、特に好ましい。また、本発明に係る光学機能層は、目的を損なわない範囲で、A型、あるいはB型等の他の結晶型のVO含有粒子を含んでもよい。
(樹脂)
本発明に係る光学機能層に適用可能な樹脂としては、特に制限はないが、例えば、水溶性高分子を好適に使用できる。
水溶性高分子とは、水溶性高分子が最も溶解する温度で、濃度が0.5質量%となるように水に溶解させた際、G2グラスフィルター(最大細孔40〜50μm)で濾過した場合に濾別される不溶物の質量が、加えた水溶性高分子の50質量%以内であるものをいう。
そのような水溶性高分子の中でも、特に上述したゼラチン、セルロース類、増粘多糖類、又は反応性官能基を有するポリマーを好適に使用できる。これらの水溶性高分子は単独で用いても構わないし、2種類以上を混合して用いても構わない。
また、本発明においては、光学機能層を構成する水溶性高分子と、後述する反射層積層体を構成する第1の水溶性バインダー樹脂又は第2の水溶性バインダー樹脂とが、同種であることが好ましい態様である。
(光学機能層のその他の添加剤)
本発明に係る光学機能層は、本発明の目的とする効果を損なわない範囲で添加剤が含有されていてもよい。
添加剤としては、例えば、特開昭57−74193号公報、特開昭57−87988号公報、特開昭62−261476号公報等に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号公報、特開昭57−87989号公報、特開昭60−72785号公報、特開昭61−146591号公報、特開平1−95091号公報、特開平3−13376号公報等に記載の退色防止剤、アニオン、カチオン又はノニオンの各種界面活性剤、特開昭59−42993号公報、特開昭59−52689号公報、特開昭62−280069号公報、特開昭61−242871号公報、特開平4−219266号公報等に記載の蛍光増白剤、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、防黴剤、帯電防止剤、マット剤、熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、減粘剤、滑剤、赤外線吸収剤、色素、顔料等の公知の各種添加剤が挙げられる。
(光学機能層の形成方法)
本発明に係る光学機能層の形成方法としては、特に制限はないが、例えば、本発明のVO含有粒子の製造方法において、水熱反応させた反応液を、光学機能層形成用塗布液とし、この光学機能層形成用塗布液を湿式塗布方式により、透明基材上に塗布、乾燥して光学機能層を形成することができる。
上記光学機能層の形成に用いる湿式塗布方式としては、特に制限されず、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、スライド型カーテン塗布法や、米国特許第2761419号明細書、米国特許第2761791号明細書等に記載のスライドホッパー塗布法、エクストルージョンコート法等が挙げられる。
《近赤外光遮蔽層(4)》
本発明の光学フィルムは、近赤外光遮蔽層を有していてもよく、その代表的な構成としては、水溶性バインダー樹脂と金属酸化物粒子を含有する赤外線反射層が多層積層された反射層積層体ML1(図5〜8参照。)、あるいはポリマー層積層体ML2(図9参照。)が挙げられ、特に水溶性バインダー樹脂と金属酸化物粒子を含有する屈折率の異なる赤外線反射層が多層積層された反射層積層体であることが好ましい。
〈反射層積層体〉
反射層積層体は、少なくとも1層の赤外線反射層を有していればよいが、日射に対する優れた断熱効果、電磁波透過性を発現させる観点からは、図5〜8で例示したような屈折率の異なる赤外線反射層が多層積層された積層体であることが、特に好ましい態様である。
反射層積層体は、前述したように、少なくとも第1の水溶性バインダー樹脂及び第1の金属酸化物粒子を含有する高屈折率の赤外線反射層(高屈折率層)と、少なくとも第2の水溶性バインダー樹脂及び第2の金属酸化物粒子を含有する低屈折率の赤外線反射層(低屈折率層)とを交互に積層した構成となっている。
本発明の光学フィルムにおいては、光学機能層を構成する樹脂と、反射層積層体を構成する第1の水溶性バインダー樹脂又は第2の水溶性バインダー樹脂とが、同種のバインダー樹脂であることが好ましく、更には、ポリビニルアルコールであることがより好ましい。
反射層積層体において、高屈折率層の1層あたりの層厚は、20〜800nmの範囲内であることが好ましく、50〜350nmの範囲内であることがより好ましい。
また、低屈折率層の1層あたりの層厚は、20〜800nmの範囲内であることが好ましく、50〜350nmの範囲内であることがより好ましい。
ここで、各層の1層あたりの層厚を測定する場合、高屈折率層及び低屈折率層は、これらの間に明確な界面を有していてもよいし、界面が徐々に変化していてもよい。界面が徐々に変化している場合には、それぞれの層が混合し屈折率が連続的に変化する領域中で、Δn=最大屈折率−最小屈折率とした場合、2層間において、(最小屈折率+Δn/2)で表される屈折率を有する地点を層界面とみなす。
高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層して形成された反射層積層体の金属酸化物濃度プロファイルは、スパッタ法を用いて表面から深さ方向へエッチングを行い、XPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy)表面分析装置を用いて、最表面を0nmとして、0.5nm/minの速度でスパッタし、原子組成比を測定することで、確認することができる。また、反射層積層体を切断して、切断面をXPS表面分析装置で原子組成比を測定することにより求めることも可能である。混合領域において、金属酸化物濃度が不連続に変化している場合には、電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)で撮影した断層写真により、その境界を確認することができる。
XPS表面分析装置としては、特に制限はなく、いかなる機種も使用することができるが、例えば、VGサイエンティフィックス社製ESCALAB−200Rを用いることができる。X線アノードにはMgを用い、出力600W(加速電圧15kV、エミッション電流40mA)で測定する。
反射層積層体は、生産性の観点から、好ましい高屈折率層及び低屈折率層の総層数としては、6〜100層の範囲内であり、より好ましくは8〜40層の範囲内であり、更に好ましくは9〜30層の範囲内である。
反射層積層体は、高屈折率層と低屈折率層との屈折率差を大きく設計されることが、少ない層数で赤外線反射率を高くすることができるという観点から好ましい。本発明では、隣接する高屈折率層と低屈折率層との屈折率差は0.10以上が好ましく、より好ましくは0.30以上であり、更に好ましくは0.35以上であり、特に好ましくは0.40以上である。ただし、最上層や最下層に関しては、上記好適な範囲外の構成であってもよい。
また、特定波長領域の反射率は、隣接する2層の屈折率差と積層数とで決まり、屈折率の差が大きいほど、少ない層数で同じ反射率を得られる。この屈折率差と必要な層数については、市販の光学設計ソフトを用いて計算することができる。例えば、近赤外線反射率90%以上を得るためには、屈折率差が0.1より小さいと、200層以上の積層が必要になり、生産性が低下するだけでなく、積層界面での散乱が大きくなり、透明性が低下し、また故障なく製造することも非常に困難になる。反射率の向上と層数を少なくするという観点からは、屈折率差に上限はないが、実質的には1.40程度が限界である。
反射層積層体においては、透明樹脂フィルムに対する密着性の観点から、透明樹脂フィルムに隣接する層が低屈折率層である層構成が好ましい。
また、高屈折率層又は低屈折率層に含まれる第1及び第2の水溶性バインダー樹脂は、ポリビニルアルコールであることが好ましい。また、高屈折率層に含まれるポリビニルアルコールのケン化度と、低屈折率層に含まれるポリビニルアルコールのケン化度とは、異なることが好ましい。さらに、高屈折率層に含まれる第1の金属酸化物粒子は、酸化チタン粒子であることが好ましく、更には、含ケイ素の水和酸化物で表面処理された酸化チタン粒子であることが好ましい。
〈高屈折率層〉
高屈折率層は、少なくとも第1の水溶性バインダー樹脂及び第1の金属酸化物粒子を含有し、必要に応じて、硬化剤、その他の樹脂、界面活性剤、各種添加剤等を含んでもよい。
高屈折率層の屈折率は、好ましくは1.80〜2.50の範囲内であり、より好ましくは1.90〜2.20の範囲内である。
(第1の水溶性バインダー樹脂)
第1の水溶性バインダー樹脂とは、水溶性バインダー樹脂が最も溶解する温度で、濃度が0.5質量%となるように水に溶解させた際、G2グラスフィルタ(最大細孔40〜50μm)で濾過した場合に濾別される不溶物の質量が、加えた水溶性バインダー樹脂の50質量%以内であるものをいう。
本発明に係る第1の水溶性バインダー樹脂の重量平均分子量は、1000〜200000の範囲内であることが好ましく、3000〜40000の範囲内であることがより好ましい。
本発明でいう重量平均分子量は、公知の方法によって測定することができ、例えば、静的光散乱、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ法(GPC)、飛行時間型質量分析法(TOF−MASS)などによって測定することができ、本発明では、一般的な公知の方法であるゲルパーミエーションクロマトグラフィ法によって測定している。
高屈折率層における第1の水溶性バインダー樹脂の含有量は、高屈折率層の固形分100質量%に対して、5〜50質量%の範囲内であることが好ましく、10〜40質量%の範囲内であることがより好ましい。
高屈折率層に適用する第1の水溶性バインダー樹脂としては、特に制限はないが、親水性高分子を好適に採用でき、例えば、ゼラチン(例えば、特開2006−343391号公報記載のゼラチンを代表とする親水性高分子)、デンプン、グアーガム、アルギン酸塩、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリエチレングリコール、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ナフタリンスルホン酸縮合物や、アルブミン、カゼイン等の蛋白質、アルギン酸ソーダ、デキストリン、デキストラン、デキストラン硫酸塩等の糖誘導体等を挙げることができる。
中でも、VO含有粒子との親和性が高く、更には、膜形成の乾燥時にも粒子の凝集を防ぐ効果の高い、ヒドロキシ基を有する繰り返し単位成分を50mol%以上含有する高分子である、ゼラチン類、セルロース類、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ヒドロキシ基を有するアクリル系樹脂等を挙げることができ、ポリビニルアルコール類、セルロース類を好ましく利用できる。
また、後述する低屈折率層に適用する水溶性バインダー樹脂も、ポリビニルアルコール類であることが好ましい。
高屈折率層及び低屈折率層においては、それぞれケン化度の異なる2種以上のポリビニルアルコールを含むことが好ましい。ここで、区別するために、高屈折率層で用いる水溶性バインダー樹脂としてのポリビニルアルコールをポリビニルアルコール(A)とし、低屈折率層で用いる水溶性バインダー樹脂としてのポリビニルアルコールをポリビニルアルコール(B)とする。なお、各屈折率層が、ケン化度や重合度が異なる複数のポリビニルアルコールを含む場合には、各屈折率層中で最も含有量の高いポリビニルアルコールをそれぞれ高屈折率層におけるポリビニルアルコール(A)、及び低屈折率層におけるポリビニルアルコール(B)とする。
ここでいう「ケン化度」とは、ポリビニルアルコール中のアセチルオキシ基(原料の酢酸ビニル由来のもの)とヒドロキシ基との合計数に対するヒドロキシ基の割合のことである。
また、ここでいう「屈折率層中で最も含有量の高いポリビニルアルコール」という際には、ケン化度の差が3mol%以内のポリビニルアルコールは同一のポリビニルアルコールであるとし、重合度を算出する。ただし、重合度1000以下の低重合度ポリビニルアルコールは、ケン化度の差が3mol%以内であっても、異なるポリビニルアルコールとする。
具体的には、ケン化度が90mol%、ケン化度が91mol%、ケン化度が93mol%のポリビニルアルコールが同一層内にそれぞれ10質量%、40質量%、50質量%含まれる場合には、これら三つのポリビニルアルコールは同一のポリビニルアルコールとし、これら三つの混合物をポリビニルアルコール(A)又は(B)とする。
また、上記「ケン化度の差が3mol%以内のポリビニルアルコール」とは、いずれかのポリビニルアルコールに着目した場合に3mol%以内であれば足り、例えば、90mol%、91mol%、92mol%、94mol%のポリビニルアルコールを含む場合には、91mol%のポリビニルアルコールに着目した場合に、いずれのポリビニルアルコールのケン化度の差も3mol%以内なので、同一のポリビニルアルコールとなる。
同一層内にケン化度が3mol%以上異なるポリビニルアルコールが含まれる場合、異なるポリビニルアルコールの混合物とみなし、それぞれに重合度とケン化度を算出する。例えば、PVA203:5質量%、PVA117:25質量%、PVA217:10質量%、PVA220:10質量%、PVA224:10質量%、PVA235:20質量%、PVA245:20質量%が含まれる場合、最も含有量の多いPVA(ポリビニルアルコール)は、PVA217〜245の混合物であり(PVA217〜245のケン化度の差は3mol%以内なので同一のポリビニルアルコールである。)、この混合物がポリビニルアルコール(A)又は(B)となる。そうして、PVA217〜245の混合物(ポリビニルアルコール(A)又は(B))において、重合度が3200程度(=(1700×0.1+2000×0.1+2400×0.1+3500×0.2+4500×0.2)/0.7)であり、ケン化度は88mol%となる。
ポリビニルアルコール(A)とポリビニルアルコール(B)とのケン化度の絶対値の差は、3mol%以上であることが好ましく、5mol%以上であることがより好ましい。このような範囲であれば、高屈折率層と低屈折率層との層間混合状態が好ましいレベルになるため好ましい。また、ポリビニルアルコール(A)とポリビニルアルコール(B)とのケン化度の差は、離れていれば離れているほど好ましいが、ポリビニルアルコールの水への溶解性の観点から、20mol%以下であることが好ましい。
また、ポリビニルアルコール(A)及びポリビニルアルコール(B)のケン化度は、水への溶解性の観点から、75mol%以上であることが好ましい。さらに、ポリビニルアルコール(A)及びポリビニルアルコール(B)のうち、一方がケン化度90mol%以上であり、他方が90mol%以下であることが、高屈折率層と低屈折率層との層間混合状態を好ましいレベルにするために好ましい。ポリビニルアルコール(A)及びポリビニルアルコール(B)のうち一方が、ケン化度95mol%以上であり、他方が90mol%以下であることがより好ましい。なお、ポリビニルアルコールのケン化度の上限は特に限定されるものではないが、通常100mol%未満であり、99.9mol%以下程度である。
また、ケン化度の異なる2種のポリビニルアルコールの重合度は、1000以上のものが好ましく用いられ、特に、重合度が1500〜5000の範囲内のものがより好ましく、2000〜5000の範囲内のものが更に好ましく用いられる。ポリビニルアルコールの重合度が1000以上であると、塗布膜のひび割れがなく、5000以下であると、塗布液が安定するからである。なお、本発明において、「塗布液が安定する」とは、塗布液が経時的に安定することを意味する。
さらに、ポリビニルアルコール(A)及びポリビニルアルコール(B)の少なくとも一方の重合度が、2000〜5000の範囲内であることが好ましく、この範囲内であれば、塗膜のひび割れが減少し、特定の波長の反射率が向上するため好ましい。
ポリビニルアルコール(A)及びポリビニルアルコール(B)の双方の重合度が2000〜5000であると、上記効果がより顕著に発揮できるため好ましい。
本発明において、重合度(P)とは、粘度平均重合度を指し、JIS K 6726(1994)に準じて測定され、PVAを完全に再ケン化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](dL/g)から、下記式(1)により求められるものである。
式(1)
P=([η]×10/8.29)(1/0.62)
低屈折率層に含まれるポリビニルアルコール(B)は、ケン化度が75〜90mol%の範囲内で、かつ重合度が2000〜5000の範囲内であることが好ましい。このような特性を備えたポリビニルアルコールを低屈折率層に含有させると、界面混合がより抑制される点で好ましい。これは塗膜のひび割れが少なく、かつセット性が向上するためであると考えられる。
屈折率の異なる層間では、ケン化度の異なる2種のポリビニルアルコールがそれぞれ用いられることが好ましい。
例えば、高屈折率層に低ケン化度のポリビニルアルコール(A)を用い、低屈折率層に高ケン化度のポリビニルアルコール(B)を用いる場合には、高屈折率層中のポリビニルアルコール(A)が層中の全ポリビニルアルコール類の全質量に対し、40〜100質量%の範囲内で含有されることが好ましく、60〜95質量%の範囲内がより好ましく、低屈折率層中のポリビニルアルコール(B)が低屈折率層中の全ポリビニルアルコール類の全質量に対し、40〜100質量%の範囲内で含有されることが好ましく、60〜95質量%の範囲内がより好ましい。また、高屈折率層に高ケン化度のポリビニルアルコール(A)を用い、低屈折率層に低ケン化度のポリビニルアルコール(B)を用いる場合には、高屈折率層中のポリビニルアルコール(A)が層中の全ポリビニルアルコール類の全質量に対し、40〜100質量%の範囲内で含有されることが好ましく、60〜95質量%の範囲内がより好ましく、低屈折率層中のポリビニルアルコール(B)が低屈折率層中の全ポリビニルアルコール類の全質量に対し、40〜100質量%の範囲内で含有されることが好ましく、60〜95質量の範囲内がより好ましい。
ポリビニルアルコールの含有量が40質量%以上であると、層間混合が抑制され、界面の乱れが小さくなるという効果が顕著に現れる。一方、含有量が100質量%以下であれば、塗布液の安定性が向上する。
(その他のバインダー樹脂)
高屈折率層では、ポリビニルアルコール以外の第1の水溶性バインダー樹脂としては、第1の金属酸化物粒子を含有した高屈折率層が塗膜を形成することができれば、いかなるものでも制限なく使用可能である。これは、後述する低屈折率層においても同様である。ただし、環境の問題や塗膜の柔軟性を考慮すると、水溶性高分子(特にゼラチン、増粘多糖類、反応性官能基を有するポリマー)が好ましい。これらの水溶性高分子は、単独で用いても構わないし、2種類以上を混合して用いても構わない。
高屈折率層において、水溶性バインダー樹脂として好ましく用いられるポリビニルアルコールとともに、併用することのできる他のバインダー樹脂の含有量は、高屈折率層の固形分100質量%に対して、5〜50質量%の範囲内で用いることもできる。
水溶性バインダー樹脂としては、有機溶媒を用いる必要がなく、環境保全上好ましいことから、水溶性高分子から構成されることが好ましく、必要に応じて上記ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールに加えて、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコール以外の水溶性高分子を水溶性バインダー樹脂として用いてもよい。水溶性高分子とは、水溶性高分子が最も溶解する温度で、濃度が0.5質量%となるように水に溶解させた際、G2グラスフィルター(最大細孔40〜50μm)で濾過した場合に濾別される不溶物の質量が、加えた水溶性高分子の50質量%以内であるものをいう。そのような水溶性高分子の中でも、特に上述したゼラチン、セルロース類、増粘多糖類、又は反応性官能基を有するポリマーを好適に使用できる。これらの水溶性高分子は単独で用いても構わないし、2種類以上を混合して用いても構わない。
(第1の金属酸化物粒子)
高屈折率層に適用可能な第1の金属酸化物粒子としては、屈折率が2.0〜3.0の範囲内である金属酸化物粒子が好ましい。
具体的には、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、チタン酸鉛、鉛丹、黄鉛、亜鉛黄、酸化クロム、酸化第二鉄、鉄黒、酸化銅、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化イットリウム、酸化ニオブ、酸化ユーロピウム、酸化ランタン、ジルコン、酸化スズ等が挙げられる。また、複数の金属で構成された複合酸化物粒子やコア・シェル状に金属構成が変化するコア・シェル粒子等を用いることもできる。
透明でより屈折率の高い高屈折率層を形成するために、高屈折率層には、チタン、ジルコニウム等の高屈折率を有する金属の酸化物粒子、すなわち、酸化チタン粒子及び/又は酸化ジルコニア粒子を含有させることが好ましい。これらの中でも、高屈折率層を形成するための塗布液の安定性の観点から、酸化チタンがより好ましい。また、酸化チタンの中でも、特にアナターゼ型よりルチル型(正方晶系)のほうが、触媒活性が低いために、高屈折率層や隣接した層の耐候性が高くなり、更に屈折率が高くなることから好ましい。
また、高屈折率層に、第1の金属酸化物粒子としてコア・シェル粒子を用いる場合、酸化チタン粒子が含ケイ素の水和酸化物で被覆されたコア・シェル粒子であることが、シェル層の含ケイ素の水和酸化物と第1の水溶性バインダー樹脂との相互作用により、高屈折率層と隣接層の層間混合が抑制されることから好ましい。
上記コア・シェル粒子のコアに用いられる酸化チタン粒子を含む水溶液は、25℃で測定したpHが1.0〜3.0の範囲内であり、かつチタン粒子のゼータ電位が正である水系の酸化チタンゾルの表面を、疎水化して有機溶剤に分散可能な状態にしたものを用いることが好ましい。
第1の金属酸化物粒子の含有量は、高屈折率層の固形分100質量%に対して、15〜80質量%の範囲内であることが好ましく、これにより低屈折率層との屈折率差を付与することができる。より好ましくは、20〜77質量%の範囲内であり、更に好ましくは、30〜75質量%の範囲内である。
なお、コア・シェル粒子以外の金属酸化物粒子が、高屈折率層に含有される場合の含有量は、本発明の効果を奏することができる範囲であれば特に限定されるものではない。
高屈折率層に適用する第1の金属酸化物粒子の体積平均粒径は、30nm以下であることが好ましく、1〜30nmの範囲内であることがより好ましく、5〜15nmの範囲内であることが更に好ましい。体積平均粒径が1〜30nmの範囲内であれば、ヘイズが少なく、可視光透過性に優れる点で好ましい。
なお、第1の金属酸化物粒子の体積平均粒径とは、粒子そのものをレーザー回折散乱法、動的光散乱法、あるいは電子顕微鏡を用いて観察する方法や、屈折率層の断面や表面に現れた粒子像を電子顕微鏡で観察する方法により、1000個の任意の粒子の粒径を測定し、それぞれd、d、…、dの粒径を持つ粒子がそれぞれn、n、…、n個存在する粒子状の金属酸化物の集団において、粒子1個当りの体積をそれぞれv、v、…、vとした場合に、体積平均粒径mv={Σ(v・d)}/{Σ(v)}で表される体積で重み付けされた平均粒径である。
さらに、本発明に係る第1の金属酸化物粒子は、単分散であることが好ましい。ここでいう単分散とは、下記式(2)で求められる単分散度が40%以下であることをいう。この単分散度は、更に好ましくは30%以下であり、特に好ましくは0.1〜20%の範囲内である。
式(2)
単分散度=(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)×100(%)
(コア・シェル粒子)
高屈折率層に適用する第1の金属酸化物粒子としては、「含ケイ素の水和酸化物で表面処理された酸化チタン粒子」を用いることが好ましく、このような形態の酸化チタン粒子を「コア・シェル粒子」、あるいは「Si被覆TiO」と称する場合もある。
コア・シェル粒子は、酸化チタン粒子が含ケイ素の水和酸化物で被覆されており、好ましくはコアの部分である平均粒径が1〜30nmの範囲内、より好ましくは平均粒径が4〜30nmの範囲内にある酸化チタン粒子の表面を、コアとなる酸化チタンに対して、含ケイ素の水和酸化物の被覆量がSiOとして3〜30質量%の範囲内となるように含ケイ素の水和酸化物からなるシェルが被覆した構造である。
すなわち、コア・シェル粒子を含有させることで、シェル層の含ケイ素の水和酸化物と第1の水溶性バインダー樹脂との相互作用により、高屈折率層と低屈折率層との層間混合が抑制される効果、及びコアとして酸化チタンを用いる場合の酸化チタンの光触媒活性によるバインダーの劣化やチョーキングなどの問題を防ぐこととができるという効果を奏する。
コア・シェル粒子は、コアとなる酸化チタンに対して、含ケイ素の水和酸化物の被覆量がSiOとして3〜30質量%の範囲内であることが好ましいが、より好ましくは3〜10質量%の範囲内であり、更に好ましくは3〜8質量%の範囲内である。被覆量が30質量%以下であれば、高屈折率層の高屈折率化を達成することができ、また、被覆量が3質量%以上であれば、コア・シェル粒子の粒子を安定に形成することができる。
コア・シェル粒子の平均粒径は、1〜30nmの範囲内であることが好ましいが、より好ましくは5〜20nmの範囲内であり、更に好ましくは5〜15nmの範囲内である。コア・シェル粒子の平均粒径が1〜30nmの範囲内であれば、近赤外線反射率や、透明性、ヘイズといった光学特性をより向上させることができる。
上記コア・シェル粒子の製造方法は、公知の方法を採用することができ、例えば、特開平10−158015号公報、特開2000−053421号公報、特開2000−063119号公報、特開2000−204301号公報、特許第4550753号公報等を参照することができる。
コア・シェル粒子に適用する含ケイ素の水和酸化物とは、無機ケイ素化合物の水和物、有機ケイ素化合物の加水分解物又は縮合物のいずれでもよく、本発明においては、シラノール基を有する化合物であることが好ましい。
高屈折率層には、コア・シェル粒子以外にも、その他の金属酸化物粒子が含まれていてもよい。その他の金属酸化物粒子を併用する場合には、上記説明したコア・シェル粒子が電荷的に凝集しないよう、各種のイオン性分散剤や保護剤を用いることができる。
コア・シェル粒子以外に用いることのできる金属酸化物粒子は、例えば、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、チタン酸鉛、鉛丹、黄鉛、亜鉛黄、酸化クロム、酸化第2鉄、鉄黒、酸化銅、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化イットリウム、酸化ニオブ、酸化ユーロピウム、酸化ランタン、ジルコン、酸化スズ等が挙げられる。
コア・シェル粒子は、コアである酸化チタン粒子の表面全体を含ケイ素の水和酸化物で被覆したものでもよく、また、コアである酸化チタン粒子の表面の一部を含ケイ素の水和酸化物で被覆したものでもよい。
(硬化剤)
高屈折率層に適用する第1の水溶性バインダー樹脂を硬化させるため、硬化剤を使用することもできる。
第1の水溶性バインダー樹脂とともに用いることができる硬化剤としては、当該水溶性バインダー樹脂と硬化反応を起こすものであれば特に制限はない。例えば、第1の水溶性バインダー樹脂として、ポリビニルアルコールを用いる場合では、硬化剤として、ホウ酸及びその塩が好ましい。ホウ酸及びその塩以外にも公知のものが使用でき、一般的には、ポリビニルアルコールと反応し得る基を有する化合物あるいはポリビニルアルコールが有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、適宜選択して用いられる。
硬化剤の具体例としては、エポキシ系硬化剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬化剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬化剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5,−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、アルミニウムミョウバン等が挙げられる。
ホウ酸及びその塩とは、ホウ素原子を中心原子とする酸素酸及びその塩のことをいい、具体的には、オルトホウ酸、二ホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸及び八ホウ酸、並びにそれらの塩が挙げられる。
硬化剤としてのホウ素原子を有するホウ酸及びその塩は、単独の水溶液でも、また、2種以上を混合して使用してもよい。特に好ましいのはホウ酸とホウ砂との混合水溶液である。
ホウ酸、ホウ砂の水溶液は、それぞれ比較的希薄水溶液でしか添加することができないが、両者を混合することで濃厚な水溶液にすることができ、塗布液を濃縮化することができる。また、添加する水溶液のpHを、比較的自由にコントロールすることができる利点がある。
中でも、ホウ酸及びその塩、又はホウ砂を使用することが、金属酸化物粒子と水溶性バインダー樹脂であるポリビニルアルコールのOH基と水素結合ネットワークがより形成しやすく、その結果として、高屈折率層と低屈折率層との層間混合が抑制され、好ましい近赤外光遮断特性が達成されると考えられるため、より好ましい。
高屈折率層における硬化剤の含有量は、高屈折率層の固形分100質量%に対して、1〜10質量%の範囲内であることが好ましく、2〜6質量%の範囲内であることがより好ましい。
特に、第1の水溶性バインダー樹脂としてポリビニルアルコールを使用する場合の硬化剤の総使用量は、ポリビニルアルコール1gあたり1〜600mgの範囲内が好ましく、ポリビニルアルコール1gあたり100〜600mgの範囲内がより好ましい。
〈低屈折率層〉
低屈折率層は、少なくとも第2の水溶性バインダー樹脂及び第2の金属酸化物粒子を含有し、必要に応じて、硬化剤、表面被覆成分、粒子表面保護剤、バインダー樹脂、界面活性剤、各種添加剤等を含んでもよい。
低屈折率層の屈折率は、好ましくは1.10〜1.60の範囲内であり、より好ましくは1.30〜1.50である。
(第2の水溶性バインダー樹脂)
低屈折率層に適用する第2の水溶性バインダー樹脂としては、ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。さらに、高屈折率層に存在するポリビニルアルコール(A)のケン化度とは異なるポリビニルアルコール(B)が、低屈折率層に用いられることがより好ましい。なお、第2の水溶性バインダー樹脂の好ましい重量平均分子量等、ポリビニルアルコール(A)及びポリビニルアルコール(B)についての説明は、高屈折率層の水溶性バインダー樹脂にて説明されており、ここでは省略する。
低屈折率層における第2の水溶性バインダー樹脂の含有量は、低屈折率層の固形分100質量%に対して、20〜99.9質量%の範囲内であることが好ましく、25〜80質量%の範囲内であることがより好ましい。
低屈折率層において適用が可能なポリビニルアルコール以外の水溶性バインダー樹脂としては、前述したように、第2の金属酸化物粒子を含有した低屈折率層が塗膜を形成することができればどのようなものでも制限なく使用可能である。
低屈折率層において、第2の水溶性バインダー樹脂として好ましく用いられるポリビニルアルコールとともに、併用する他のバインダー樹脂の含有量は、低屈折率層の固形分100質量%に対して、0〜10質量%の範囲内で用いることもできる。
低屈折率層において、セルロース類、増粘多糖類、反応性官能基を有するポリマー類等の水溶性高分子を含有することもできる。これらセルロース類、増粘多糖類、反応性官能基を有するポリマー類等の水溶性高分子は、上述した高屈折率層で説明した水溶性高分子と同様のものが用いられるため、ここでは説明を省略する。
(第2の金属酸化物粒子)
低屈折率層に適用する第2の金属酸化物粒子としては、シリカ(二酸化ケイ素)を用いることが好ましく、具体的な例として、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ等が挙げられる。これらのうち、酸性のコロイダルシリカゾルを用いることがより好ましく、有機溶媒に分散させたコロイダルシリカゾルを用いることが更に好ましい。また、屈折率をより低減させるためには、低屈折率層に適用する第2の金属酸化物粒子として、粒子の内部に空孔を有する中空粒子を用いることができ、特にシリカ(二酸化ケイ素)の中空粒子が好ましい。
低屈折率層に適用する第2の金属酸化物粒子(好ましくは二酸化ケイ素)は、その平均粒径が3〜100nmの範囲内であることが好ましい。一次粒子の状態で分散された二酸化ケイ素の一次粒子の平均粒径(塗布前の分散液状態での粒径)は、3〜50nmの範囲内であることがより好ましく、3〜40nmの範囲内であることが更に好ましく、3〜20nmであることが特に好ましく、4〜10nmの範囲内であることが最も好ましい。また、二次粒子の平均粒径としては、30nm以下であることが、ヘイズが少なく可視光透過性に優れる点で好ましい。
低屈折率層に適用する金属酸化物粒子の平均粒径は、粒子そのものあるいは屈折率層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、1000個の任意の粒子の粒径を測定し、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒子の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定したときの直径で表したものである。
上記コロイダルシリカは、ケイ酸ナトリウムの酸等による複分解やイオン交換樹脂層を通過させて得られるシリカゾルを加熱熟成して得られるものであり、例えば、特開昭57−14091号公報、特開昭60−219083号公報、特開昭60−219084号公報、特開昭61−20792号公報、特開昭61−188183号公報、特開昭63−17807号公報、特開平4−93284号公報、特開平5−278324号公報、特開平6−92011号公報、特開平6−183134号公報、特開平6−297830号公報、特開平7−81214号公報、特開平7−101142号公報、特開平7−179029号公報、特開平7−137431号公報、国際公開第94/26530号等に記載されているものを参考にすることができる。
このようなコロイダルシリカは合成品を用いてもよいし、市販品を用いてもよい。コロイダルシリカは、その表面をカチオン変性されたものであってもよく、また、Al、Ca、Mg、Ba等で処理された物であってもよい。
低屈折率層に適用する第2の金属酸化物粒子として、中空粒子を用いることもできる。中空粒子を用いる場合には、平均粒子空孔径が、3〜70nmの範囲内であることが好ましく、5〜50nmの範囲内がより好ましく、5〜45nmの範囲内が更に好ましい。なお、中空粒子の平均粒子空孔径とは、中空粒子の内径の平均値である。中空粒子の平均粒子空孔径が上記範囲内であれば、十分に低屈折率層の屈折率が低屈折率化される。
平均粒子空孔径は、電子顕微鏡観察で、円形、楕円形又は実質的に円形は楕円形として観察できる空孔径を、ランダムに50個以上観察し、各粒子の空孔径を求め、その数平均値を求めることにより得られる。なお、平均粒子空孔径は、円形、楕円形又は実質的に円形もしくは楕円形として観察できる空孔径の外縁を、2本の平行線で挟んだ距離のうち、最小の距離を意味する。
第2の金属酸化物粒子は、表面被覆成分により表面コーティングされていてもよい。特に、第1の金属酸化物粒子としてコア・シェル状ではない金属酸化物粒子を用いる際に、第2の金属酸化物粒子の表面をポリ塩化アルミニウム等の表面被覆成分によりコーティングすると、第1の金属酸化物粒子と凝集しにくくなる。
低屈折率層における第2の金属酸化物粒子の含有量は、低屈折率層の固形分100質量%に対して、0.1〜70質量%の範囲内であることが好ましく、30〜70質量%の範囲内であることがより好ましく、45〜65質量%の範囲内であることが更に好ましい。
(硬化剤)
低屈折率層は、高屈折率層と同様に、硬化剤を更に含むことができる。硬化剤としては、低屈折率層に含まれる第2の水溶性バインダー樹脂と硬化反応を起こすものであれば、特に制限されない。特に、低屈折率層に適用する第2の水溶性バインダー樹脂としてポリビニルアルコールを用いた場合の硬化剤としては、ホウ酸及びその塩、並びに/又はホウ砂が好ましい。また、ホウ酸及びその塩以外にも公知のものが使用できる。
低屈折率層における硬化剤の含有量は、低屈折率層の固形分100質量%に対して、1〜10質量%の範囲内であることが好ましく、2〜6質量%の範囲内であることがより好ましい。
特に、第2の水溶性バインダー樹脂としてポリビニルアルコールを使用する場合の硬化剤の総使用量は、ポリビニルアルコール1gあたり1〜600mgの範囲内が好ましく、ポリビニルアルコール1gあたり100〜600mgの範囲内がより好ましい。
硬化剤の具体例等は、前述した高屈折率層と同様であるため、ここでは説明を省略する。
〈各屈折率層のその他の添加剤〉
高屈折率層及び低屈折率層には、必要に応じて、各種の添加剤を用いることができる。
各屈折率層における添加剤の含有量は、高屈折率層の固形分100質量%に対して、0〜20質量%であることが好ましい。
本発明に適用可能な添加剤について、以下に説明する。
(界面活性剤)
高屈折率層及び低屈折率層の少なくとも1層は、界面活性剤を含有してもよい。
界面活性剤としては、両性イオン系、カチオン系、アニオン系、ノニオン系のいずれの種類も使用することができる。より好ましくは、ベタイン系両性イオン性界面活性剤、4級アンモニウム塩系カチオン性界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸塩系アニオン性界面活性剤、アセチレングリコール系ノニオン性界面活性剤、又はフッ素系カチオン性界面活性剤である。
界面活性剤の添加量としては、高屈折率層用塗布液又は低屈折率層用塗布液の全質量を100質量%としたとき、0.005〜0.300質量%の範囲内であることが好ましく、0.010〜0.100質量%の範囲内であることがより好ましい。
(アミノ酸)
高屈折率層又は低屈折率層は、等電点が6.5以下のアミノ酸を含有していてもよい。アミノ酸を含むことにより、高屈折率層又は低屈折率層中の金属酸化物粒子の分散性が向上する。
ここで、アミノ酸とは、同一分子内にアミノ基とカルボキシ基とを有する化合物であり、α−、β−、γ−等いずれのタイプのアミノ酸でもよい。アミノ酸には光学異性体が存在するものもあるが、本発明においては光学異性体による効果の差はなく、いずれの異性体も単独であるいはラセミ体でも使用することができる。
アミノ酸の詳しい解説は、化学大辞典1縮刷版(共立出版:昭和35年発行)268〜270頁の記載を参照することができる。
具体的に好ましいアミノ酸として、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、セリン等を挙げることができ、特にグリシン又はセリンが好ましい。
アミノ酸の等電点とは、アミノ酸は特定のpHにおいて分子内の正・負電荷が釣り合い、全体としての電荷が0となるので、このpH値をいう。各アミノ酸の等電点については、低イオン強度での等電点電気泳動で求めることができる。
(エマルジョン樹脂)
高屈折率層又は低屈折率層は、エマルジョン樹脂を更に含有していてもよい。エマルジョン樹脂を含むことにより、膜の柔軟性が高くなり、ガラスへの貼りつけ等の加工性がよくなる。
エマルジョン樹脂とは、水系媒体中に微細な、例えば、平均粒径が0.01〜2.00μm程度の樹脂粒子がエマルジョン状態で分散されている樹脂で、油溶性のモノマーをヒドロキシ基を有する高分子分散剤を用いてエマルジョン重合して得られる。用いる分散剤の種類によって、得られるエマルジョン樹脂のポリマー成分に基本的な違いは見られない。エマルジョンの重合時に使用される分散剤としては、例えば、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジエチルアミン、エチレンジアミン、4級アンモニウム塩のような低分子の分散剤の他に、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエキシエチレンラウリル酸エーテル、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドンのような高分子分散剤が挙げられる。
ヒドロキシ基を有する高分子分散剤を用いて乳化重合すると、微細な粒子の少なくとも表面にヒドロキシ基の存在が推定され、他の分散剤を用いて重合したエマルジョン樹脂とはエマルジョンの化学的、物理的性質が異なる。
ヒドロキシ基を含む高分子分散剤とは、重量平均分子量が10000以上の高分子の分散剤で、側鎖又は末端にヒドロキシ基が置換されたものであり、例えば、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミドのようなアクリル系の高分子で2−エチルヘキシルアクリレートが共重合されたもの、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールのようなポリエーテル等が挙げられる。
(リチウム化合物)
高屈折率層及び低屈折率層の少なくとも1層は、リチウム化合物を含有してもよい。リチウム化合物を含む高屈折率層用塗布液又は低屈折率層用塗布液は粘度の制御がより容易となり、その結果、ガラスに本発明の光学フィルムを加える際の製造安定性がより向上する。
リチウム化合物としては、特に制限はなく、例えば、炭酸リチウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、オロト酸リチウム、クエン酸リチウム、モリブデン酸リチウム、塩化リチウム、水素化リチウム、水酸化リチウム、臭化リチウム、フッ化リチウム、ヨウ化リチウム、ステアリン酸リチウム、リン酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化トリエチルホウ酸リチウム、水素化トリエトキシアルミニウムリチウム、タンタル酸リチウム、次亜塩素酸リチウム、酸化リチウム、炭化リチウム、窒化リチウム、ニオブ酸リチウム、硫化リチウム、ホウ酸リチウム、LiBF、LiClO、LiPF、LiCFSO等が挙げられる。これらリチウム化合物は、単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。
これらの中でも、水酸化リチウムが本発明の効果を十分に発揮できる観点から好ましい。
リチウム化合物の添加量は、各屈折率層中に存在する金属酸化物粒子1gあたり、0.005〜0.050gの範囲内が好ましく、より好ましくは0.010〜0.030gである。
(その他の添加剤)
高屈折率層及び低屈折率層に適用可能なその他の添加剤としては、例えば、特開昭57−74193号公報、特開昭57−87988号公報、特開昭62−261476号公報等に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、特開昭57−87989号公報、特開昭60−72785号公報、特開昭61−146591号公報、特開平1−95091号公報、特開平3−13376号公報等に記載の退色防止剤、アニオン、カチオン又はノニオンの各種界面活性剤、特開昭59−42993号公報、特開昭59−52689号公報、特開昭62−280069号公報、特開昭61−242871号公報、特開平4−219266号公報等に記載の蛍光増白剤、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、防黴剤、帯電防止剤、マット剤、熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、減粘剤、滑剤、赤外線吸収剤、色素、顔料等の公知の各種添加剤等が挙げられる。
〈反射層積層体の形成方法〉
反射層積層体の形成方法としては、湿式塗布方式を適用して形成することが好ましく、更には、透明基材上に、少なくとも第1の水溶性バインダー樹脂及び第1の金属酸化物粒子を含む高屈折率層用塗布液と、少なくとも第2の水溶性バインダー樹脂及び第2の金属酸化物粒子を含む低屈折率層用塗布液と、を湿式塗布する工程を含む製造方法が好ましい。
湿式塗布方法としては、特に制限されず、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、スライド型カーテン塗布法や、米国特許第2761419号明細書、米国特許第2761791号明細書等に記載のスライドホッパー塗布法、エクストルージョンコート法等が挙げられる。また、複数の層を重層塗布する方式としては、逐次重層塗布方式でもよいし、同時重層塗布方式でもよい。
〈ポリマー層積層体〉
近赤外光遮蔽層の一態様であるポリマー層積層体は、第1ポリマー層と、第1ポリマー層とは屈折率の異なる第2ポリマー層とを多数積層して構成される。
例えば、第1ポリマー層が高屈折率層、第2ポリマー層が低屈折率層である場合、第1ポリマー層の屈折率は1.60〜2.50の範囲内、第2ポリマー層の屈折率は1.10〜1.66の範囲内であることが好ましい。
第1ポリマー層と第2ポリマー層とは交互に積層され、ポリマー層積層体を形成する。
第1及び第2ポリマー層を構成するポリマー材料としは、ポリエステル、アクリル、ポリエステルアクリルのブレンド又はコポリマー等が挙げられ、例えば、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)、ナフタレンジカルボンコポリエステル(coPEN)、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)、ポリブチレン−2,6−ナフタレート(PBN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナフタレンジカルボン酸誘導体、ジオールコポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、シンジオタックポリスチレン樹脂(SPS)等が挙げられ、具体的な第1ポリマー層と第2ポリマー層との組み合わせとしては、PEN/PMMA、PET/PMMA、PEN/coPEN、PEN/SPS、PET/SPS等の組み合わせを挙げることができる。
ポリマー層積層体の具体的な構成例としては、図9で説明したように、それぞれ素材の異なる2種のポリマーフィルムを積層して構成されている。具体的には、図9に示すように、透明基材側から、ポリエチレンナフタレートフィルムで形成されているPEN、ポリメチルメタアクリレートフィルムで形成されているPMMA、PEN、PMMA、PEN、PMMA、…、PMMAm−1、PEN、PMMA、PENm+1と積層してポリマー層積層体ML2が形成されている。
積層されるフィルム総数は、特に制限はないが、おおむね150〜1000層の範囲内であることが好ましい。
〈ポリマー層積層体の形成方法〉
ポリマー層積層体の形成方法としては、湿式塗布方式や真空蒸着法等の公知の成膜方法を適用可能であり、製造コスト等の観点から、湿式塗布方式により形成することが好ましい。
これらポリマー層積層体の詳細については、米国特許第6049419号明細書に記載の内容を参考とすることができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量%」を表す。
《VO含有粒子を含む反応液の作製》
〈VO含有粒子を含む反応液101の作製〉
過酸化水素水(濃度35質量%、和光純薬社製)の10質量%水溶液50mLに、五酸化バナジウム(V、和光純薬社製、特級)1.5gを添加し、これを4時間撹拌して澄んだ赤茶色のゾルを得た。
得られたゾル20gに、還元剤であるヒドラジン一水和物(N・HO、和光純薬社製、特級)の5質量%水溶液をゆっくり滴下し、pHが5.0の反応液(液温25℃)を調製した後、0.05質量%希硫酸水溶液1gを添加した。
調製した反応液を、市販の水熱反応処理用オートクレーブ(三愛科学社製、HU−50型)(SUS製本体に50mL容積のテフロン(登録商標)製内筒を備える。)内に入れ、270℃で48時間、水熱反応させ、VO含有粒子を含む反応液101を作製した。
水熱反応後、反応液101を室温(25℃)まで冷却した後のpH及び電気伝導度は、表1のとおりであった。
なお、本実施例において、反応液及び分散液のpHは、フタル酸塩pH標準液(pH:4.01)と、中性リン酸塩pH標準液(pH:6.86)とをpH標準液として用い、pHメーターを2点校正した後、pHメーターの電極を混合液に入れて、混合液の水面が元々の2/3になるようにマグネチックスターラーを用いて撹拌した状態で、1分以上経過して安定した後の値とした。このとき、反応液及び分散液とpH標準液との液温は25℃に調整した。
pH測定は、水熱反応後の反応液については、水熱反応後の粗熱がとれて室温(25℃)に戻ったときに行い、分散液については分散工程を行った直後に行った。
また、反応液及び分散液の電気伝導度は、ES−51(株式会社堀場製作所)を用いて、常温(25℃)で測定した。
〈VO含有粒子を含む反応液102の作製〉
反応液101の作製において、0.05質量%希硫酸水溶液を添加しなかった以外は同様にして、VO含有粒子を含む反応液102を作製した。
水熱反応後、室温(25℃)まで冷却した後のpH及び電気伝導度は、表1のとおりであった。
〈VO含有粒子を含む反応液103の作製〉
過酸化水素水(濃度35質量%、和光純薬社製)の10質量%水溶液30mLに、五酸化二バナジウム(V、和光純薬社製、特級)0.9gを加え、これを4時間撹拌して澄んだ赤茶色のゾルを得た。
得られたゾルに、ヒドラジン一水和物(N・HO、和光純薬社製、特級)の5質量%水溶液を、五酸化二バナジウムに対するモル比の値が0.60(当量比の値1.20)となる量をゆっくり滴下した。
五酸化二バナジウムとヒドラジン一水和物とを混合した液に、更にpH調整剤として0.005質量%希硫酸水溶液1gを添加した。
調製した反応液を、市販の水熱反応処理用オートクレーブ(三愛科学社製、HU−50型)(SUS製本体に50mL容積のテフロン(登録商標)製内筒を備える。)内に入れ、270℃で72時間(水熱反応条件)、水熱反応させ、VO含有粒子を含む反応液103を作製した。
水熱反応後、反応液103を室温(25℃)まで冷却した後のpH及び電気伝導度は、表1のとおりであった。
〈VO含有粒子を含む反応液104の作製〉
過酸化水素水(濃度35質量%、和光純薬社製)の10質量%水溶液30mLに、五酸化二バナジウム(V、和光純薬社製、特級)0.9gを加え、これを4時間撹拌して澄んだ赤茶色のゾルを得た。
得られたゾルに、シュウ酸(H、和光純薬社製、特級)の5質量%水溶液を、五酸化二バナジウムに対するモル比の値が1.20(当量比の値1.20)となる量をゆっくり滴下した。
五酸化二バナジウムとシュウ酸とを混合した液に、更にpH調整剤として0.005質量%水酸化ナトリウム水溶液1gを添加した。
調製した反応液を、市販の水熱反応処理用オートクレーブ(三愛科学社製、HU−50型)(SUS製本体に50mL容積のテフロン(登録商標)製内筒を備える。)内に入れ、270℃で72時間(水熱反応条件)、水熱反応させ、VO含有粒子を含む反応液104を作製した。
水熱反応後、反応液104を室温(25℃)まで冷却した後のpH及び電気伝導度は、表1のとおりであった。
〈VO含有粒子を含む反応液105の作製〉
反応液103の作製において、pH調整剤として添加する希硫酸水溶液の濃度を0.0005質量%に変更した以外は同様にして、VO含有粒子を含む反応液105を作製した。
水熱反応後、反応液105を室温(25℃)まで冷却した後のpH及び電気伝導度は、表1のとおりであった。
〈VO含有粒子を含む反応液106の作製〉
反応液104の作製において、pH調整剤として0.0005質量%水酸化ナトリウム水溶液1gを添加した以外は同様にして、VO含有粒子を含む反応液106を作製した。
水熱反応後、反応液106を室温(25℃)まで冷却した後のpH及び電気伝導度は、表1のとおりであった。
〈VO含有粒子を含む反応液107の作製〉
反応液103の作製において、pH調整剤として0.0555質量%希硫酸水溶液1g及び0.055質量%水酸化ナトリウム水溶液1gを添加した以外は同様にして、VO含有粒子を含む反応液107を作製した。
水熱反応後、反応液107を室温(25℃)まで冷却した後のpH及び電気伝導度は、表1のとおりであった。
〈VO含有粒子を含む反応液108の作製〉
反応液104の作製において、pH調整剤として0.060質量%希硫酸水溶液1g及び0.065質量%水酸化ナトリウム水溶液1gを添加した以外は同様にして、VO含有粒子を含む反応液108を作製した。
水熱反応後、反応液108を室温(25℃)まで冷却した後のpH及び電気伝導度は、表1のとおりであった。
《分散液の調製》
〈分散液201の調製〉
作製した反応液105を、反応液が室温(25℃)に戻った後、ビバフロー200限外濾過濃縮機VF20P2(MWCO:30000、Sartorius AG社製)を使用して限外濾過し、置換溶媒として酢酸でpH3.0に調整したイオン交換水を用いて濾過排液のpHが3.0になるまで溶媒置換を行い、分散液201を調製した。
分散液201のpH及び電気伝導度は、表2のとおりであった。
〈分散液202の調製〉
分散液201の調製において、置換溶媒としてアンモニアでpH8.0に調整したイオン交換水を用いて濾過排液のpHが8.0になるまで溶媒置換を行った以外は同様にして、分散液202を調製した。
分散液201のpH及び電気伝導度は、表2のとおりであった。
〈分散液203〜205の調製〉
上記で作製した反応液103〜105を、それぞれ分散液203〜205とした。
〈分散液206の調製〉
分散液201の調製において、置換溶媒として酢酸でpH6.5に調整したイオン交換水を用いて濾過排液のpHが6.5になるまで溶媒置換を行った以外は同様にして、分散液206を調製した。
分散液206のpH及び電気伝導度は、表2のとおりであった。
〈分散液207の調製〉
分散液201の調製において、置換溶媒として1Lのイオン交換水に対し0.055質量%水酸化ナトリウム水溶液30gを添加し、0.0555質量%希硫酸水溶液でpHを4.0に調整したものを用いて、濾過排液のpHが4.0になるまで溶媒置換を行った以外は同様にして、分散液207を調製した。
分散液207のpH及び電気伝導度は、表2のとおりであった。
〈分散液208の調製〉
分散液201の調製において、置換溶媒としてアンモニアでpH7.0に調整したイオン交換水を用いて濾過排液のpHが7.0になるまで溶媒置換を行った以外は同様にして、分散液208を調製した。
分散液208のpH及び電気伝導度は、表2のとおりであった。
〈分散液209の調製〉
作製した反応液103に対し、反応液が室温(25℃)に戻った後、ビバフロー200限外濾過濃縮機VF20P2(MWCO:30000、Sartorius AG社製)を使用して限外濾過し、置換溶媒として酢酸でpH5.3に調整したイオン交換水を用いて濾過排液のpHが5.3になるまで溶媒置換を行い、分散液209を調製した。
分散液209のpH及び電気伝導度は、表2のとおりであった。
〈分散液210の調製〉
分散液201の調製において、置換溶媒として1Lのイオン交換水に対し0.065質量%水酸化ナトリウム水溶液30gを添加し、0.0655質量%希硫酸水溶液でpHを4.0に調整したものを用いて、濾過排液のpHが4.0になるまで溶媒置換を行った以外は同様にして、分散液210を調製した。
分散液210のpH及び電気伝導度は、表2のとおりであった。
《評価》
(1)生成物の同定(結晶構造)
作製した水熱反応後の各反応液を濾過し、残渣を水及びエタノールで洗浄した。さらに、この残渣を、定温乾燥機を用いて、60℃で10時間乾燥させ、VO含有粒子を作製した。
これらのVO含有粒子について、X線回折装置(リガク社製)を用いて測定を行い、既知のルチル型結晶層からなる二酸化バナジウム結晶のプロファイルと比較することで同定した。
(2)粒径測定、粒径分布測定
作製した水熱反応後の各反応液及び分散液を、島津製作所製のレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて、回折/散乱光強度で35〜75%(絶対値では、700〜1500)の間になるように希釈した後、下記条件にて、VO含有粒子の粒径D50、D10、D90を測定した。測定値は、体積換算値を使用した。粒径の指標としてD50を、粒径分布の指標としてD90/D10の値を用いた。D50の値が小さいほど粒径が小さく、D90/D10が小さいほど粒径分布が狭いことを表す。
測定結果を表1及び2に示す。
(測定条件)
測定回数(C):1
測定間隔(秒):2
平均回数(A):128
測定吸光度範囲最大(L):0.2
測定吸光度範囲最小(S):0.01
超音波照射時間(秒)(U):10
分散時間(秒)(D):5
センサ使用開始位置(P):1
測方/後方センサを評価する(B):YES
屈折率:3.00−0.00i
(3)光透過率差の測定
(サーモクロミック性評価用分散液の調製)
作製した水熱反応後の各反応液を濾過し、純水で固形分0.0005質量%の濃度となるように添加して混合液を調製し、超音波分散機(エスエムティー社製UH−300)で5分間の超音波分散処理を施して再分散させ、サーモクロミック性評価用分散液を調製した。
(サーモクロミック性の評価)
評価用分散液を市販の栓付石英セル(2面透光型45mm×12.5mm×10mm)内に入れ、加熱可能な分光光度計(日本分光社製V−670型、190−2500nm)により、評価用分散液の透過スペクトルを測定した。
測定温度は、20℃及び80℃とした。また、評価用分散液の光透過率(波長1300nm)の温度依存性を測定した。
波長1300nmで、温度が20℃から80℃に上昇することによる光透過率の変化(差)を算出し、サーモクロミック性を評価した。変化量が大きいほどサーモクロミック性に優れていることを示す。
評価結果を表1に示す。
(4)粒径測定(劣化測定)
作製した各分散液を、超音波分散機(エスエムティー社製UH−300)で5分間の超音波分散処理を施し、これらの分散液を、密閉した状態で60℃で30日間保存した後、「(2)粒径測定、粒径分布測定」と同様の測定条件にて、VO含有粒子の粒径D50を測定した。測定値は、個数基準値を使用した。D50の値が小さいほど粒径が小さいことを表す。
測定結果を表2に示す。
(5)光透過率差の測定(劣化測定)
(サーモクロミック性評価用分散液の調製)
上記粒径測定にて60℃で30日間保存した分散液を、純水で固形分0.0005質量%の濃度となるように添加して混合液を調製し、超音波分散機(エスエムティー社製UH−300)で5分間の超音波分散処理を施して再分散させ、サーモクロミック性評価用分散液を調製した。
(サーモクロミック性の評価)
評価用分散液を市販の栓付石英セル(2面透光型45mm×12.5mm×10mm)内に入れ、加熱可能な分光光度計(日本分光社製V−670型、190−2500nm)により、評価用分散液の透過スペクトルを測定した。
測定温度は、20℃及び80℃とした。また、評価用分散液の光透過率(波長1300nm)の温度依存性を測定した。
波長1300nmで、温度が20℃から80℃に上昇することによる光透過率の変化(差)を算出し、サーモクロミック性を評価した。変化量が大きいほどサーモクロミック性に優れていることを示す。
評価結果を表2に示す。
Figure 2018087093
Figure 2018087093
(6)まとめ
表1及び2から明らかなように、本発明の反応液及び分散液は、比較例の反応液及び分散液と比較して、温度による光透過率の変化量が大きく、サーモクロミック性に優れていることがわかる。
また、本発明の反応液及び分散液に含まれるVO含有粒子は、粒径(D50)が小さく、更に、粒径分布(D90/D10)が狭くなっている。粒径が小さいほど、また、粒径分布が狭いほど、二次凝集が起きておらず、平均粒径がナノオーダーであることを示しており、すなわち、本発明の反応液及び分散液が分散性に優れていると評価することができる。
さらに、本発明の反応液及び分散液は、劣化測定においても、分散性やサーモクロミック性に優れていることがわかる。
以上から、サーモクロミック性を有するVO含有粒子を含有する反応液(水熱反応後)及び分散液のpH(25℃換算)を4.0〜7.0の範囲内とすることが、サーモクロミック性、分散性及び安定性に優れた二酸化バナジウム含有粒子の製造方法、分散液の調製方法及び分散液を提供することに有用であることが確認できた。
1 光学フィルム
2 透明基材
3 光学機能層
3a 樹脂
3b VO含有粒子
4 近赤外光遮蔽層
ML1、ML1a、ML1b 反射層積層体
ML2 ポリマー層積層体
PEN〜PENm+1 ポリエチレンナフタレートフィルム
PMMA〜PMMA ポリメチルメタアクリレートフィルム
〜T、Ta〜Ta、Tb〜Tb 赤外線反射層

Claims (8)

  1. サーモクロミック性を有する二酸化バナジウムを含有する二酸化バナジウム含有粒子の製造方法であって、
    バナジウム化合物を含有する原料、還元剤及び水を含む反応液を水熱反応させることにより、前記二酸化バナジウム含有粒子を形成し、
    前記反応液の水熱反応後のpH(25℃換算)が、4.0〜7.0の範囲内であることを特徴とする二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
  2. 前記反応液の水熱反応後のpH(25℃換算)が、5.3〜6.5の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
  3. サーモクロミック性を有する二酸化バナジウム含有粒子を含有する分散液の調製方法であって、
    前記分散液のpH(25℃換算)を、4.0〜7.0の範囲内とすることを特徴とする分散液の調製方法。
  4. 前記分散液のpH(25℃換算)を、5.3〜6.5の範囲内とすることを特徴とする請求項3に記載の分散液の調製方法。
  5. 前記二酸化バナジウム含有粒子を含有する懸濁液を、限外濾過により、添加剤を加えた水溶液で洗浄、溶媒置換して、前記分散液を調製することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の分散液の調製方法。
  6. サーモクロミック性を有する二酸化バナジウム含有粒子を含有する分散液であって、
    前記分散液のpH(25℃換算)が、4.0〜7.0の範囲内であることを特徴とする分散液。
  7. 前記分散液のpH(25℃換算)が、5.3〜6.5の範囲内であることを特徴とする請求項6に記載の分散液。
  8. 前記分散液の電気伝導度(25℃換算)が、10〜5000μS/cmの範囲内であることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の分散液。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN115927897A (zh) * 2022-12-05 2023-04-07 上海交通大学 一种Al-VO2相变复合材料及其制备方法

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