JP6672683B2 - 合わせガラスの製造方法および合わせガラス - Google Patents

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本発明は、光学フィルム、光学フィルムの製造方法、光学フィルム積層体の製造方法、および合わせガラスの製造方法に関する。
断熱ガラスのような機能性ガラスは、例えば赤外線反射層を樹脂フィルムによって挟持した積層体を備えている。このような積層体においては、層間の密着性の向上を図ることを目的として、ポリビニルブチラール樹脂フィルム間に、水平配向剤と重合性液晶化合物とを含む赤外線反射層を挟持させる構成が提案されている。またこのような積層体の製造は、支持体と赤外線反射層を含む積層体の赤外線反射層側に第1のポリビニルブチラール樹脂フィルムを積層した後、赤外線反射層から支持体を剥離する工程を行う。そして、その剥離面側に第2のポリビニルブチラール樹脂フィルムを積層する(下記特許文献1参照)。
特開2012−51219号公報
ところが、上述した積層体の製造においては、赤外線反射層から支持体を剥離する工程において、第1のポリビニルブチラール樹脂フィルムに積層された赤外線反射層が変形し易い。そして、このような赤外線反射層の変形の影響により、第1のポリビニルブチラール樹脂フィルムと赤外線反射層と第2のポリビニルブチラール樹脂フィルムとの積層体にシワが発生したり気泡が混入し、さらにはこの積層体とガラス基板とを貼り合わせた場合にも、積層体にシワが発生したり、積層体とガラス基板との間に気泡が混入する等の不具合が生じることが分かった。
そこで本発明は、光学フィルム積層体や合わせガラスの製造においてシワの発生や気泡の混入を防止することが可能な光学フィルム、光学フィルムの製造方法、光学フィルム積層体の製造方法、および合わせガラスの製造方法を提供することを目的とする。
このような目的を達成するための本発明は、算術平均粗さRaが1nm以上、30nm以下の一主面を有する光学機能層を備えた光学フィルム、さらにはこの光学フィルムの製造方法、この光学フィルムを用いた光学フィルム積層体の製造方法および合わせガラスの製造方法である。
このような構成によれば、光学機能層を変形させることなくその一主面から支持基板を剥がすことができるため、光学機能層の変形に起因するシワの発生や気泡の混入を防止した光学フィルム積層体および合わせガラスの製造が可能となる。
実施形態の光学フィルムの構成および製造方法を説明するための断面模式図である。 実施形態の光学フィルムに用いる支持基板の他の例を説明する図である。 実施形態の光学フィルム積層体の製造方法を説明するための断面工程図である。 実施形態の合わせガラスの製造方法(第1例)を説明するための断面工程図である。 実施形態の合わせガラスの製造方法(第2例)を説明するための断面工程図である。
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて次に示す順に説明する。
1.光学フィルムの構成
2.光学フィルムの製造方法
3.光学フィルム積層体の製造方法
4.合わせガラスの製造方法
≪1.光学フィルムの構成≫
図1は、実施形態の光学フィルムの構成および製造方法を説明するための断面模式図である。図1に示す実施形態の光学フィルム1は、以降に説明する光学フィルム積層体の製造および合わせガラスの製造に用いられるものであって、支持基板3と、支持基板3の一主面上に設けられた光学機能層5とを備えている。以下、これらの支持基板3および光学機能層5の構成を、この順に説明する。
<1−1.支持基板>
支持基板3は、光学機能層5を製造するための製造基板であって、所定の表面粗さを有する光学機能層5を形成するための基板であり、光学フィルム積層体の製造工程および合わせガラスの製造工程において光学機能層5から剥離除去されるものである。このような支持基板3は、光学機能層5と接する一主面(以下、機能層側接合面3aと称する)が所定の表面粗さのものである。
すなわち、支持基板3における機能層側接合面3aの表面粗さは、この機能層側接合面3a上に積層された光学機能層5の一主面、すなわち支持基板3と接する面(以下、基板側接合面5aと称する)が、算術平均粗さRaで1nm以上、30nm以下となるように調整されている。このため、支持基板3における機能層側接合面3aの表面粗さは、光学機能層5における基板側接合面5aの表面粗さと同程度か、これよりも大きい表面粗さとなる。
このような支持基板3は、可撓性を有する樹脂フィルムで構成され、光透過性を有していてもいなくてもよい。このような樹脂フィルムによって構成される支持基板3の厚さは、30μm〜200μmであることが好ましく、より好ましくは30μm〜70μmであり、最も好ましくは35μm〜70μmである。厚さが30μm以上であれば、合わせガラスの製造工程および光学フィルム積層体の製造工程においてのハンドリング性が良好で、取扱い中のシワが発生しにくくなる。また厚さが200μm以下であれば、合わせガラスの製造工程および光学フィルム積層体の製造工程において、他の基板曲面への追従性がよくなり、シワが発生しにくくなる。
また支持基板3は、合わせガラスの製造工程および光学フィルム積層体の製造工程において、光学フィルム1のシワ発生を防止する観点、および光学機能層5の割れを防止する観点から、温度150℃において、熱収縮率が0.1〜3%であることが好ましく、1.5〜3%であることがより好ましく、1.9〜2.7%であることがさらに好ましい。
なお、支持基板3における熱収縮率は、支持基板3の長尺方向(MD)および幅方向(TD)に対して、150℃で1m幅当たりに10Nの引張力を加え、その際の支持基板3のMDおよびTDの伸び率を測定し、その平均値として求める。
以上のような支持基板3を構成する樹脂フィルムには、例えばポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリ塩化ビニル、3酢酸セルロース等を用いることができ、好ましくはポリオレフィンフィルムである。
また支持基板3は、機能層側接合面3aの表面粗さを上記範囲に制御するため、および取り扱いを容易にするために、粒子を含有させてもよい。支持基板3に含有させる粒子の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シリカ、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子や、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子を挙げることができる。また粒子を添加する方法としては、原料とするポリエステル中に粒子を含有させて添加する方法、押出機に直接添加する方法等を挙げることができ、このうちいずれか一方の方法を採用してもよく、2つの方法を併用してもよい。支持基板3は、必要に応じて上記粒子の他にも添加剤を含有してもよい。このような添加剤としては、例えば、安定剤、潤滑剤、架橋剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、染料、顔料、紫外線吸収剤等が挙げられる。
以上のような樹脂フィルムによって構成される支持基板3は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して冷却することによって得られる。
また支持基板3は、コロナ処理、またはプラズマ処理のような粗面化処理によって、機能層側接合面3aの表面粗さが調整されたものであってもよい。
<1−2.支持基板の変形例>
図2は、実施形態の光学フィルム1に用いる支持基板3’の他の例を説明する図である。この図に示すように、支持基板3’は、基材31と、この基材31上に設けられた樹脂膜32とを備えたものであってもよい。
この場合、基材31は、図1を用いて説明した支持基板3を構成する樹脂フィルムが適用される。また樹脂膜32は、その表面が機能層側接合面3aとなり、その算術平均粗さRaが1nm〜30nmである。このような樹脂膜32は、例えばシリコーン樹脂、長鎖アルキルビニル樹脂、アルキド樹脂等からなる。樹脂膜32における機能層側接合面3aは、基材31上に樹脂膜を成膜する際の成膜条件によって表面粗さが調整されている。例えば樹脂膜32が塗布成膜された膜である場合、塗布後の乾燥速度を速めることにより表面粗さを粗くすることができ、また乾燥温度を低めに設定することにより表面粗さを粗くすることができる。
なお、樹脂膜32は、図1を用いて説明した支持基板3と同様の粒子を含有させることで表面粗さが上記の範囲に制御されたものであってもよい。
<1−3.光学機能層>
光学機能層5は、支持基板3の機能層側接合面3a上に設けられた層であって、特定の光学機能を備えた層である。特に、この光学機能層5は、支持基板3と接する一主面(すなわち、基板側接合面5a)が、支持基板3の機能層側接合面3aの表面形状に倣った表面形状を有しており、これにより算術平均粗さRaが1nm以上、30nm以下となっている。ここで、機能層側接合面3aの表面形状に倣った表面形状とは、機能層側接合面3aの凹凸が転写された凹凸を有する表面形状であり、凹凸の深さおよび高さが一致している必要はない。
このような光学機能層5は、例えば屈折率差を有する高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層して形成された光反射層を備えている。また光学機能層5は、このような光反射層の他に、例えば、光吸収層、断熱層、ハードコート層、粘着層などをさらに含むことができる。以下、光学機能層5が光反射層として赤外反射層を有する場合の構成を説明する。
[赤外反射層]
赤外反射層は、第1の水溶性バインダー樹脂および第1の無機酸化物粒子を含む高屈折率層と、第2の水溶性バインダー樹脂および第2の無機酸化物粒子を含む低屈折率層とを有する。高屈折率層の1層当たりの厚さは、20〜800nmであることが好ましく、50〜350nmであることがより好ましい。また、低屈折率層の1層当たりの厚さは、20〜800nmであることが好ましく、50〜350nmであることがより好ましい。
ここで、1層あたりの厚さを測定する場合、高屈折率層と低屈折率層とは、これらの間に明確な界面をもっていても、徐々に変化していてもよい。界面が徐々に変化している場合には、それぞれの層が混合して屈折率が連続的に変化する領域中で、[最大屈折率−最小屈折率=Δn]とした場合、2層間の[最小屈折率+Δn/2]の地点を層界面とみなす。なお、後述する低屈折率層の層厚においても同様である。
高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層して形成された赤外反射層の金属酸化物濃度プロファイルは、スパッタ法を用いて表面から深さ方向へエッチングを行い、XPS表面分析装置を用いて、最表面を0nmとして、0.5nm/minの速度でスパッタし、原子組成比を測定することで見ることが出来る。また、積層膜を切断して、切断面をXPS表面分析装置で原子組成比を測定することで見ることも可能である。混合領域において、金属酸化物の濃度が不連続に変化している場合には電子顕微鏡(TEM)による断層写真により境界を確認することができる。
XPS表面分析装置としては、特に制限されず、いかなる機種も使用することができるが、例えば、VGサイエンティフィックス社製ESCALAB−200Rを用いることができる。X線アノードにはMgを用い、出力600W(加速電圧15kV、エミッション電流40mA)で測定する。
赤外反射層は、生産性の観点から、好ましい高屈折率層および低屈折率層の総層数の範囲が、100層以下15層以上、より好ましくは40層以下15層以上であり、さらに好ましくは30層以下15層以上である。
以上のような赤外反射層においては、高屈折率層と低屈折率層との屈折率の差を大きくすることが、少ない層数で赤外反射率を高くすることができるという観点から好ましい。本実施形態においては、隣接する高屈折率層と低屈折率層との屈折率差は0.1以上が好ましく、より好ましくは0.3以上であり、さらに好ましくは0.35以上であり、よりさらに好ましくは0.4以上である。ただし、最表層や最下層に関しては、上記好適な範囲外の構成であってもよい。
また、特定波長領域の反射率は、隣接する2層の屈折率差と積層数で決まり、屈折率の差が大きいほど、少ない層数で同じ反射率を得られる。この屈折率差と必要な層数については、市販の光学設計ソフトを用いて計算することができる。例えば、近赤外反射率90%以上を得るためには、屈折率差が0.1より小さいと、200層以上の積層が必要になり、生産性が低下するだけでなく、積層界面での散乱が大きくなり、透明性が低下し、製造工程に支障をきたす場合もある。反射率の向上と層数を少なくするという観点からは、屈折率差に上限はないが、実質的には1.4程度が限界である。
本実施形態の赤外反射層においては、透明樹脂フィルムに対する密着性の観点から、透明樹脂フィルムに隣接する最下層が低屈折率層である層構成が好ましい。
また、本実施形態において、高屈折率層または低屈折率層に含まれる第1および第2の水溶性バインダー樹脂は、ポリビニルアルコールであることが好ましい。また、高屈折率層に含まれるポリビニルアルコールのケン化度と、低屈折率層に含まれるポリビニルアルコールのケン化度とは異なることが好ましい。さらに、高屈折率層に含まれる第1の無機酸化物粒子は、含ケイ素の水和酸化物で表面処理された酸化チタン粒子であることが好ましい。
次に、高屈折率層および低屈折率層の詳細な構成を説明する。
[高屈折率層:赤外反射層]
高屈折率層は、第1の水溶性バインダー樹脂および第1の無機酸化物粒子を必須成分として含み、必要に応じて、その他のバインダー樹脂、硬化剤、界面活性剤、および各種添加剤からなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでもよい。
このような高屈折率層の屈折率は、好ましくは1.80〜2.50であり、より好ましくは1.90〜2.20である。
(第1の水溶性バインダー樹脂)
第1の水溶性バインダー樹脂は、該水溶性バインダー樹脂が最も溶解する温度で、0.5質量%の濃度に水に溶解させた際、G2グラスフィルタ(最大細孔40〜50μm)で濾過した場合に濾別される不溶物の質量が、加えた該水溶性バインダー樹脂の50質量%以内であるものを言う。
第1の水溶性バインダー樹脂の重量平均分子量は、1,000以上200,000以下が好ましい。更には、3,000以上40,000以下がより好ましい。
第1の水溶性バインダー樹脂における重量平均分子量は、公知の方法によって測定することができ、例えば、静的光散乱、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ法(GPC法)、飛行時間型質量分析法(TOF−MASS法)などによって測定することができる。
高屈折率層における第1の水溶性バインダー樹脂の含有量は、高屈折率層の固形分中、5〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。
第1の水溶性バインダー樹脂は、ポリビニルアルコールであることが好ましい。なお、後述する低屈折率層に存在する第2の水溶性バインダー樹脂も、ポリビニルアルコールであることが好ましい。したがって、以下では、高屈折率層および低屈折率層に含まれるポリビニルアルコールを併せて説明する。
−ポリビニルアルコール−
高屈折率層と低屈折率層とは、ケン化度の異なる2種以上のポリビニルアルコールを含むことが好ましい。ここで、区別するために、第1の水溶性バインダー樹脂としてのポリビニルアルコールをポリビニルアルコール(A)と呼び、第2の水溶性バインダー樹脂としてのポリビニルアルコールをポリビニルアルコール(B)と呼ぶ。なお、各高屈折率層および低屈折率層が、ケン化度や重合度が異なる複数のポリビニルアルコールを含む場合には、各高屈折率層および低屈折率層中で最も含有量の高いポリビニルアルコールをそれぞれ高屈折率層におけるポリビニルアルコール(A)、および低屈折率層におけるポリビニルアルコール(B)と称する。
ここで「ケン化度」とは、ポリビニルアルコール中のアセチルオキシ基(原料の酢酸ビニル由来のもの)と水酸基との合計数に対する水酸基の割合のことである。
また、ここでいう「屈折率層中で最も含有量の高いポリビニルアルコール」という際には、ケン化度の差が3mol%以内のポリビニルアルコールは同一のポリビニルアルコールであるとし、重合度を算出する。ただし、重合度1000以下の低重合度ポリビニルアルコールは、異なるポリビニルアルコールとする(仮にケン化度の差が3mol%以内のポリビニルアルコールがあったとしても同一のポリビニルアルコールとはしない)。
ポリビニルアルコール(A)とポリビニルアルコール(B)とのケン化度の絶対値の差は、高屈折率層と低屈折率層を良好な層間混合状態とする観点から、3mol%以上であることが好ましく、5mol%以上であることがより好ましい。また、ポリビニルアルコール(A)とポリビニルアルコール(B)とのケン化度の差は、大きいほど好ましいが、ポリビニルアルコールの水への溶解性の観点から、20mol%以下であることが好ましい。
また、ポリビニルアルコール(A)およびポリビニルアルコール(B)のケン化度は、水への溶解性の観点で、75mol%以上であることが好ましい。さらに、高屈折率層と低屈折率層を良好な層間混合状態とする観点から、ポリビニルアルコール(A)およびポリビニルアルコール(B)のうち一方がケン化度90mol%以上であり、他方が90mol%以下であることが好ましい。ポリビニルアルコール(A)およびポリビニルアルコール(B)のうち一方が、ケン化度95mol%以上であり、他方が90mol%以下であることがより好ましい。なお、ポリビニルアルコールのケン化度の上限は特に限定されるものではないが、通常100mol%未満であり、99.9mol%以下程度である。
また、ケン化度の異なる2種のポリビニルアルコールの重合度は、1,000以上が好ましく、特に、重合度が1,500〜5,000がより好ましく、2,000〜5,000がさらに好ましい。ポリビニルアルコールの重合度が、1,000以上であると塗布膜のひび割れがなく、5,000以下であると塗布液が安定するからである。なお、本明細書において、「塗布液が安定する」とは、塗布液が経時的に安定することを意味する。ポリビニルアルコール(A)およびポリビニルアルコール(B)の少なくとも一方の重合度が2,000〜5,000であると、塗膜のひび割れが減少し、特定の波長の反射率が向上するため好ましい。ポリビニルアルコール(A)およびポリビニルアルコール(B)の双方が、2,000〜5,000であると上記効果がより顕著に発揮できるため好ましい。
本明細書でいう「重合度」とは、粘度平均重合度を指し、JIS K6726(1994)に準じて測定され、PVAを完全に再ケン化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](dl/g)から次式(1)により求められるものである。
Figure 0006672683
低屈折率層に含まれるポリビニルアルコール(B)は、ケン化度が75mol%以上90mol%以下で、かつ重合度が2,000以上5,000以下であることが好ましい。かようなポリビニルアルコールを低屈折率層に含有させると、界面混合がより抑制される点で好ましい。これは塗膜のひび割れが少なく、かつセット性が向上するためであると考えられる。
ポリビニルアルコール(A)および(B)は、合成品を用いてもよいし市販品を用いてもよい。ポリビニルアルコール(A)および(B)として用いられる市販品の例としては、例えば、PVA−102、PVA−103、PVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−120、PVA−124、PVA−203、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−235(以上、株式会社クラレ製)、JC−25、JC−33、JF−03、JF−04、JF−05、JP−03、JP−04JP−05、JP−45(以上、日本酢ビ・ポバール株式会社製)等が挙げられる。
第1の水溶性バインダー樹脂は、実施形態の効果を損なわない限りでは、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、一部が変性された変性ポリビニルアルコールを含んでもよい。かような変性ポリビニルアルコールを含むと、膜の密着性や耐水性、柔軟性が改良される場合がある。かような変性ポリビニルアルコールとしては、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、ノニオン変性ポリビニルアルコール、ビニルアルコール系ポリマーが挙げられる。
カチオン変性ポリビニルアルコールは、例えば、特開昭61−10483号公報に記載されているような、第一〜三級アミノ基や第四級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
アニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平1−206088号公報に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号公報および同63−307979号公報に記載されているような、ビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体及び特開平7−285265号公報に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号公報に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号公報に記載されている疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体、シラノール基を有するシラノール変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基やカルボニル基、カルボキシ基などの反応性基を有する反応性基変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。
また、ビニルアルコール系ポリマーとして、エクセバール(登録商標、株式会社クラレ製)やニチゴGポリマー(登録商標、日本合成化学工業株式会社製)などが挙げられる。
第1の水溶性バインダー樹脂として変性ポリビニルアルコールを用いる場合、重合度や変性の種類違いなど2種類以上の第1の水溶性バインダー樹脂を併用することができる。
変性ポリビニルアルコールの含有量は、特に限定されるものではないが、各屈折率の全質量(固形分)に対し、好ましくは1〜30質量%である。かような範囲であれば、上記効果がより発揮される。
本実施形態においては、屈折率の異なる層において、ケン化度の異なる2種のポリビニルアルコールをそれぞれ用いることが好ましい。
例えば、高屈折率層に低ケン化度のポリビニルアルコール(A)を用い、低屈折率層に高ケン化度のポリビニルアルコール(B)を用いる場合には、高屈折率層中のポリビニルアルコール(A)が層中の全ポリビニルアルコール類の全質量に対し、40質量%以上100質量%以下の範囲で含有されることが好ましく、60質量%以上95質量%以下がより好ましい。また、低屈折率層中のポリビニルアルコール(B)が低屈折率層中の全ポリビニルアルコール類の全質量に対し、40質量%以上100質量%以下の範囲で含有されることが好ましく、60質量%以上95質量%以下がより好ましい。高屈折率層および低屈折率材料層中における、各ポリビニルアルコールの含有量が40質量%以上であると、層間混合が抑制され、界面の乱れが小さくなるという効果が顕著に現れる。一方、含有量が100質量%以下であれば、塗布液の安定性が向上する。
(その他のバインダー樹脂)
本実施形態の高屈折率層において、ポリビニルアルコール以外の、その他のバインダー樹脂としては、第1の無機酸化物粒子を含有した高屈折率層が塗膜を形成することができれば、どのようなものでも制限なく使用可能である。また、後述する低屈折率層においても、ポリビニルアルコール以外のその他のバインダー樹脂としては、前記と同様に、第2の無機酸化物粒子を含有した低屈折率層が塗膜を形成することができれば、どのようなものでも制限なく使用可能である。ただし、環境の問題や塗膜の柔軟性を考慮すると、水溶性高分子(特にゼラチン、セルロース類、増粘多糖類、反応性官能基を有するポリマー)が好ましい。これらの水溶性高分子は単独で用いても構わないし、2種類以上を混合して用いても構わない。
高屈折率層において、第1の水溶性バインダー樹脂として好ましく用いられるポリビニルアルコールとともに、併用する他のバインダー樹脂の含有量は、高屈折率層の固形分中、5〜50質量%で用いることもできる。
本実施形態においては、有機溶媒を用いる必要がなく、環境保全上好ましいことから、バインダー樹脂は水溶性高分子から構成されることが好ましい。すなわち、本実施形態ではその効果を損なわない限りにおいて、上記ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールに加えて、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコール以外の水溶性高分子を第1の水溶性バインダー樹脂として用いてもよい。ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコール以外に、第1の水溶性バインダー樹脂として用いられる水溶性高分子は、例えば、ゼラチン、セルロース類、増粘多糖類、または反応性官能基を有するポリマー類が好ましい。これらの水溶性高分子は単独で用いても構わないし、2種類以上を混合して用いても構わない。このうち、反応性官能基を有するポリマー類について説明する。
−反応性官能基を有するポリマー類−
本実施形態に適用可能な水溶性高分子としては、反応性官能基を有するポリマー類が挙げられ、例えば、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、若しくはアクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、若しくはスチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのスチレンアクリル酸樹脂、スチレン−スチレンスルホン酸ナトリウム共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート−スチレンスルホン酸カリウム共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体などの酢酸ビニル系共重合体及びそれらの塩が挙げられる。これらの中で、特に好ましい例としては、ポリビニルピロリドン類およびこれを含有する共重合体が挙げられる。
(第1の無機酸化物粒子)
本実施形態に係る第1の無機酸化物粒子としては、屈折率が2.0以上、3.0以下である無機酸化物粒子が好ましい。さらに具体的には、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、チタン酸鉛、鉛丹、黄鉛、亜鉛黄、酸化クロム、酸化第二鉄、鉄黒、酸化銅、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化イットリウム、酸化ニオブ、酸化ユーロピウム、酸化ランタン、ジルコン、酸化スズなどが挙げられる。また複数の金属で構成された複合酸化物粒子やコアシェル状に金属構成が変化するコアシェル粒子等を用いる事も出来る。
透明でより屈折率の高い高屈折率層を形成するために、本実施形態に係る高屈折率層には、チタン、ジルコニウム等の高屈折率を有する金属の酸化物微粒子、すなわち、酸化チタン微粒子および/または酸化ジルコニア微粒子を第1の無機酸化物粒子として含有させることが好ましい。これらの中でも、高屈折率層を形成するための塗布液の安定性の観点から、第1の無機酸化物粒子として酸化チタン粒子を用いることがより好ましい。また、酸化チタンの中でも、とくにアナターゼ型よりルチル型(正方晶形)の方が、触媒活性が低いために、高屈折率層や隣接した層の耐候性が高くなり、さらに屈折率が高くなることからより好ましい。
また、本実施形態に係る高屈折率層に、第1の無機酸化物粒子として、下記に説明するコアシェル粒子を含有させた場合では、シェル層の含ケイ素の水和酸化物と第1の水溶性バインダー樹脂との相互作用により、高屈折率層と隣接層の層間混合が抑制される効果から、酸化チタン粒子が含ケイ素の水和酸化物で被覆されたコアシェル粒子が好ましい。
本実施形態に係るコアシェル粒子のコアに用いられる酸化チタン粒子を含む水溶液は、pHが1.0〜3.0であり、かつチタン粒子のゼータ電位が正である水系の酸化チタンゾルの表面を、疎水化して有機溶剤に分散可能な状態にしたものを用いることが好ましい。
本実施形態に係る第1の無機酸化物粒子の含有量が高屈折率層の固形分中に対して、15〜80質量%であると、低屈折率層との屈折率差を付与するという観点で好ましい。さらに、20〜77質量%であることがより好ましく、30〜75質量%であることがさらに好ましい。なお、当該コアシェル粒子以外の第1の無機酸化物粒子が、本実施形態の高屈折率層に含有される場合の含有量は、本実施形態の効果を奏することができる範囲であれば特に限定されるものではない。
本実施形態においては、第1の無機酸化物粒子の体積平均粒径は、30nm以下であることが好ましく、1〜30nmであることがより好ましく、5〜15nmであるのがさらに好ましい。体積平均粒径が1nm以上30nm以下であれば、ヘイズが少なく可視光透過性に優れる観点で好ましい。
なお、本実施形態に係る第1の無機酸化物粒子の体積平均粒径とは、粒子そのものをレーザー回折散乱法、動的光散乱法、あるいは電子顕微鏡を用いて観察する方法や、屈折率層の断面や表面に現れた粒子像を電子顕微鏡で観察する方法により、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、それぞれd1、d2・・・di・・・dkの粒径を持つ粒子がそれぞれn1、n2・・・ni・・・nk個存在する粒子状の金属酸化物の集団において、粒子1個当りの体積をviとした場合に、体積平均粒径mv={Σ(vi・di)}/{Σ(vi)}で表される体積で重み付けされた平均粒径である。
さらに、本実施形態に係る第1の無機酸化物粒子は、単分散であることが好ましい。ここでいう単分散とは、下記式(2)で求められる単分散度が40%以下であることをいう。この単分散度は、さらに好ましくは30%以下であり、特に好ましくは0.1〜20%である。
Figure 0006672683
−コアシェル粒子−
第1の無機酸化物粒子として用いられるコアシェル粒子は、上述したように「含ケイ素の水和酸化物で表面処理された酸化チタン粒子」であることがこのましい。
コアシェル粒子は、酸化チタン粒子が含ケイ素の水和酸化物で被覆されており、コアである酸化チタン粒子の表面全体を含ケイ素の水和酸化物で被覆したものでもよく、また、コアである酸化チタン粒子の表面の一部を含ケイ素の水和酸化物で被覆したものでもよい。
すなわち、本実施形態では、コアシェル粒子を含有させることで、シェル層の含ケイ素の水和酸化物と第1の水溶性バインダー樹脂との相互作用により、高屈折率層と低屈折率層との層間混合が抑制される効果、およびコアとして酸化チタンを用いる場合の酸化チタンの光触媒活性によるバインダーの劣化やチョーキングなどの問題を防げるという効果を奏する。
コアシェル粒子は、コアとなる酸化チタンに対して、含ケイ素の水和酸化物の被覆量がSiOとして3〜30質量%であること好ましく、より好ましくは3〜10質量%、さらに好ましくは3〜8質量%である。被覆量が30質量%よりも大きいと、高屈折率層の高屈折率化が困難となる場合がある。また、被覆量が3質量%よりも小さいとコアシェル粒子の粒子を安定に形成することが難しい場合がある。
さらに、第1の無機酸化物粒子として用いられるコアシェル粒子の平均粒径は、好ましくは1〜30nmであり、より好ましくは5〜20nmであり、さらに好ましくは5〜15nmである。コアシェル粒子の平均粒径が1〜30nmであると、近赤外反射率や、透明性、ヘイズといった光学特性がより向上する。
なお、平均粒径とは、一次平均粒径をいい、透過型電子顕微鏡(TEM)等による電子顕微鏡写真から計測することができる。動的光散乱法や静的光散乱法等を利用する粒度分布計等によって計測してもよい。
また、電子顕微鏡から求める場合、一次粒子の平均粒径は、粒子そのものあるいは屈折率層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、1000個の任意の粒子の粒径を測定し、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒子の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定したときの直径で表したものである。
第1の無機酸化物粒子として用いられるコアシェル粒子の製造方法は、公知の方法を採用することができ、例えば、特開平10−158015号公報、特開2000−053421号公報、特開2000−063119号公報、特開2000−204301号公報、特許4550753号明細書などを参照することができる。
本明細書における含ケイ素の水和酸化物とは、無機ケイ素化合物の水和物、有機ケイ素化合物の加水分解物および/または縮合物のいずれでもよく、シラノール基を有することがより好ましい。
高屈折率層には、上述したコアシェル粒子以外にも、第1の無機酸化物粒子としてその他の無機酸化物粒子が含まれていてもよい。その他の無機酸化物粒子を併用する場合には、コアシェル粒子と電荷的に凝集しないよう、各種のイオン性分散剤や保護剤を用いることができる。
(硬化剤)
本実施形態においては、第1の水溶性バインダー樹脂を硬化させるため、硬化剤を使用することもできる。第1の水溶性バインダー樹脂と共に用いることができる硬化剤としては、当該水溶性バインダー樹脂と硬化反応を起こすものであれば特に制限はない。例えば、第1の水溶性バインダー樹脂として、ポリビニルアルコールを用いる場合では、硬化剤として、ホウ酸およびその塩が好ましい。ホウ酸およびその塩以外にも公知のものが使用でき、一般的には、ポリビニルアルコールと反応し得る基を有する化合物、またはポリビニルアルコールが有する異なる基同士の反応を促進する化合物を、適宜選択して用いられる。硬化剤の具体例としては、例えば、エポキシ系硬化剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬化剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬化剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5,−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、アルミニウムミョウバン等が挙げられる。
ホウ酸およびその塩とは、ホウ素原子を中心原子とする酸素酸およびその塩のことをいい、具体的には、オルトホウ酸、二ホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸および八ホウ酸およびそれらの塩が挙げられる。
硬化剤としてのホウ素原子を有するホウ酸およびその塩は、単独の水溶液でも、また、2種以上を混合して使用してもよい。特に好ましいのはホウ酸とホウ砂の混合水溶液である。
ホウ酸とホウ砂の水溶液は、それぞれ比較的希薄水溶液でしか添加することができないが両者を混合することで濃厚な水溶液にすることが出来、塗布液を濃縮化することができる。また、添加する水溶液のpHを比較的自由にコントロールすることができる利点がある。
またこれにより無機酸化物粒子と水溶性バインダー樹脂であるポリビニルアルコールのOH基との水素結合ネットワークが形成され易くなり、その結果として高屈折率層と低屈折率層との層間混合が抑制され、好ましい近赤外遮断特性が達成されると考えられる。特に、高屈折率層および低屈折率層の多層重層をコーターで塗布した後、一旦塗膜の膜面温度を15℃程度に冷やし、次いで膜面を乾燥させるセット系塗布プロセスを用いた場合には、より好ましく効果を発現することができる。
高屈折率層における硬化剤の含有量は、高屈折率層の固形分中、1〜10質量%であることが好ましく、2〜6質量%であることがより好ましい。
特に、第1の水溶性バインダー樹脂としてポリビニルアルコールを使用する場合の上記硬化剤の総使用量は、ポリビニルアルコール1g当たり1〜600mgが好ましく、ポリビニルアルコール1g当たり100〜600mgがより好ましい。
(界面活性剤)
高屈折率層に含有させる界面活性剤としては、両性イオン系、カチオン系、アニオン系、ノニオン系のいずれの種類も使用することができ、ベタイン系両性イオン性界面活性剤、4級アンモニウム塩系カチオン性界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸塩系アニオン性界面活性剤、アセチレングリコール系ノニオン性界面活性剤、またはフッ素系カチオン性界面活性剤が好ましく用いられる。
高屈折率層における界面活性剤の添加量としては、高屈折率層用塗布液の全質量を100質量%としたとき、0.005〜0.30質量%の範囲であることが好ましく、0.01〜0.10質量%であることがより好ましい。なお、界面活性剤は、次に説明する低屈折率層においても同様に用いられるものである。
(各種添加剤)
高屈折率層には、以上の他にも、必要に応じて各種の添加剤を用いることができる。高屈折率層における添加剤の含有量は、高屈折率層の固形分中、0〜20質量%であることが好ましい。当該添加剤の例を以下に記載する。なお、以下に記載する各種添加剤は、低屈折率層においても同様に用いられるものである。
−アミノ酸−
高屈折率層は、等電点が6.5以下のアミノ酸を含有していてもよい。アミノ酸を含むことにより、高屈折率層中の無機酸化物粒子の分散性が向上しうる。
ここでアミノ酸とは、同一分子内にアミノ基とカルボキシル基とを有する化合物であり、α−、β−、γ−などいずれのタイプのアミノ酸でもよい。アミノ酸には光学異性体が存在するものもあるが、光学異性体による効果の差はなく、いずれの異性体も単独で、またはラセミ体でも使用することができる。
アミノ酸の詳しい解説は、化学大辞典1縮刷版(共立出版;昭和35年発行)268頁〜270頁の記載を参照することができる。
具体的に好ましいアミノ酸として、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、セリン、等を挙げることができ、特にグリシン、セリンが好ましい。
アミノ酸の等電点とは、特定のpHにおいて分子内の正・負電荷が釣り合い、全体としての電荷が0となるpH値をいう。各アミノ酸の等電点は、低イオン強度での等電点電気泳動で求めることが出来る。
−エマルジョン樹脂−
高屈折率層は、エマルジョン樹脂をさらに含有していてもよい。エマルジョン樹脂を含むことにより、膜の柔軟性が高くなりガラスへの貼りつけ等の加工性がよくなる。
エマルジョン樹脂とは、水系媒体中に微細な、例えば、平均粒径が0.01〜2.0μm程度の樹脂粒子がエマルジョン状態で分散されている樹脂であって、油溶性のモノマーを、水酸基を有する高分子分散剤を用いてエマルジョン重合することによって得られる。用いる分散剤の種類によって、得られるエマルジョン樹脂のポリマー成分に基本的な違いは見られない。エマルジョンの重合時に使用される分散剤としては、例えば、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジエチルアミン、エチレンジアミン、4級アンモニウム塩のような低分子の分散剤の他に、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエキシエチレンラウリル酸エーテル、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドンのような高分子分散剤が挙げられる。水酸基を有する高分子分散剤を用いて乳化重合することにより、少なくとも表面に水酸基が存在する樹脂粒子が形成されると推定され、他の分散剤を用いて重合したエマルジョン樹脂とはエマルジョンの化学的、物理的性質が異なる。
水酸基を有する高分子分散剤とは、重量平均分子量が10000以上の高分子の分散剤で、側鎖または末端が水酸基で置換されたものであり、例えばポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミドのようなアクリル系の高分子で2−エチルヘキシルアクリレートが共重合されたもの、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールのようなポリエーテルなどが挙げられる。
−リチウム化合物−
高屈折率層は、さらにリチウム化合物を含有してもよい。該リチウム化合物を含む高屈折率層用塗布液は粘度の制御がより容易となり、その結果、支持基板3の一主面上に光学機能層5を形成する際の製造安定性がより向上する。
ここで用いられるリチウム化合物は、特に制限はなく、例えば、炭酸リチウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、オロト酸リチウム、クエン酸リチウム、モリブデン酸リチウム、塩化リチウム、水素化リチウム、水酸化リチウム、臭化リチウム、フッ化リチウム、ヨウ化リチウム、ステアリン酸リチウム、リン酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化トリエチルホウ酸リチウム、水素化トリエトキシアルミニウムリチウム、タンタル酸リチウム、次亜塩素酸リチウム、酸化リチウム、炭化リチウム、窒化リチウム、ニオブ酸リチウム、硫化リチウム、ホウ酸リチウム、LiBF、LiClO、LiPF、LiCFSO等が挙げられる。これらリチウム化合物は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
これらの中でも、水酸化リチウムが本願発明の効果を十分に発揮できる観点から好ましい。
リチウム化合物の添加量は、高屈折率層中に存在する無機酸化物粒子1g当たり、0.005〜0.05gの範囲が好ましく、より好ましくは0.01〜0.03gである。
−その他の添加剤−
以上の他、高屈折率層に適用可能な各種の添加剤を、以下に列挙する。例えば、特開昭57−74193号公報、特開昭57−87988号公報、および特開昭62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、特開昭57−87989号公報、特開昭60−72785号公報、特開昭61−146591号公報、特開平1−95091号公報、および特開平3−13376号公報等に記載されている退色防止剤、アニオン、カチオンまたはノニオンの各種界面活性剤、特開昭59−42993号公報、特開昭59−52689号公報、特開昭62−280069号公報、特開昭61−242871号公報、および特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、防黴剤、帯電防止剤、マット剤、熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、減粘剤、滑剤、赤外線吸収剤、色素、顔料等の公知の各種添加剤などが挙げられる。
[低屈折率層:赤外反射層]
低屈折率層は、第2の水溶性バインダー樹脂および第2の無機酸化物粒子を必須成分として含み、必要により、その他のバインダー樹脂、硬化剤、界面活性剤、および各種添加剤からなる群から選択される少なくとも1種を含んでもよい。このうち、硬化剤、その他のバインダー樹脂、界面活性剤、および各種添加剤は、高屈折率層で説明したものと同様であるため、材質についての詳細な説明は省略する。
低屈折率層の屈折率は、好ましくは1.10〜1.60であり、より好ましくは1.30〜1.50である。
(第2の水溶性バインダー樹脂)
第2の水溶性バインダー樹脂としては、ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。さらに、第2の水溶性バインダー樹脂としては、高屈折率層に存在するポリビニルアルコール(A)のケン化度とは異なるポリビニルアルコール(B)が好ましく用いられる。なお、ここでの第2の水溶性バインダー樹脂の好ましい重量平均分子量等、ポリビニルアルコール(A)およびポリビニルアルコール(B)についての説明は、上記の第1の水溶性バインダー樹脂の欄で説明されており、ここでは説明を省略する。
低屈折率層における第2の水溶性バインダー樹脂の含有量は、低屈折率層の固形分中、20〜99.9質量%であることが好ましく、25〜80質量%であることがより好ましい。
(その他のバインダー樹脂)
低屈折率層において含まれうる、ポリビニルアルコール以外の、その他のバインダー樹脂としては、第2の無機酸化物粒子を含有した低屈折率層が塗膜を形成することができればどのようなものでも制限なく使用可能である。ただし、環境の問題や塗膜の柔軟性を考慮すると、水溶性高分子が好ましい。これらの水溶性高分子は単独で用いても構わないし、2種類以上を混合して用いても構わない。
低屈折率層において、第2の水溶性バインダーとして好ましく用いられるポリビニルアルコールとともに、併用する他のバインダー樹脂の含有量は、低屈折率層の固形分中、0〜10質量%で用いることもできる。
低屈折率層における、その他のバインダー樹脂としては、ゼラチン、セルロース類、増粘多糖類、および反応性官能基を有するポリマー類等の水溶性高分子を含有することもできる。これらゼラチン、セルロース類、増粘多糖類、および反応性官能基を有するポリマー類等の水溶性高分子は、上述した高屈折率層で説明した水溶性高分子と同様のものが用いられるため、ここでは説明を省略する。
(第2の無機酸化物粒子)
第2の無機酸化物粒子としては、シリカ(二酸化ケイ素)を用いることが好ましく、具体的な例として合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ等が挙げられる。これらのうち、酸性のコロイダルシリカゾルを用いることがより好ましく、有機溶媒に分散させたコロイダルシリカゾルを用いることがさらに好ましい。また、屈折率をより低減させるためには、第2の無機酸化物粒子として、粒子の内部に空孔を有する中空微粒子を用いることができ、特にシリカ(二酸化ケイ素)の中空微粒子が好ましい。
第2の無機酸化物粒子(好ましくは二酸化ケイ素)は、その平均粒径が3〜100nmであることが好ましい。一次粒子の状態で分散された二酸化ケイ素の一次粒子の平均粒径(塗布前の分散液状態での粒径)は、3〜50nmであることがより好ましく、3〜40nmであることがさらに好ましく、3〜20nmであることが特に好ましく、4〜10nmであることがもっとも好ましい。また、二次粒子の平均粒径としては、30nm以下であることが、ヘイズが少なく可視光透過性に優れる観点で好ましい。
第2の無機酸化物粒子の平均粒径は、粒子そのものあるいは低屈折率層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒子の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定したときの直径で表したものである。
ここで用いられるコロイダルシリカは、ケイ酸ナトリウムの酸等による複分解やイオン交換樹脂層を通過させて得られるシリカゾルを加熱熟成して得られるものであり、たとえば、特開昭57−14091号公報、特開昭60−219083号公報、特開昭60−219084号公報、特開昭61−20792号公報、特開昭61−188183号公報、特開昭63−17807号公報、特開平4−93284号公報、特開平5−278324号公報、特開平6−92011号公報、特開平6−183134号公報、特開平6−297830号公報、特開平7−81214号公報、特開平7−101142号公報、特開平7−179029号公報、特開平7−137431号公報、および国際公開第94/26530号などに記載されているものである。
かようなコロイダルシリカは合成品を用いてもよいし、市販品を用いてもよい。コロイダルシリカは、その表面をカチオン変性されたものであってもよく、また、Al、Ca、MgまたはBa等で処理されたものであってもよい。
第2の無機酸化物粒子として中空粒子を用いる場合には、平均空孔径が、3〜70nmであることが好ましく、5〜50nmがより好ましく、5〜45nmがさらに好ましい。なお、中空粒子の平均空孔径とは、中空粒子の内径の平均値である。中空粒子の平均空孔径が上記範囲であれば、十分に低屈折率層の屈折率が低屈折率化さえる。平均空孔径は、電子顕微鏡観察で、円形、楕円形または実質的に円形は楕円形として観察できる空孔を、ランダムに50個以上観察し、各空孔の径を測定して、その数平均値を求めることにより得られる。なお、本明細書中、平均空孔径とは、円形、楕円形、または実質的に円形もしくは楕円形として観察できる空孔径の外縁を、2本の平行線で挟んだ距離のうち、最小の距離を意味する。
また第2の無機酸化物粒子は、表面被覆成分により表面がコーティングされていてもよい。特に第1の無機酸化物粒子としてコアシェル状ではない無機酸化物粒子を用いる際に、第2の無機酸化物粒子の表面をポリ塩化アルミニウムなどの表面被覆成分によりコーティングすると、第1の無機酸化物粒子と凝集しにくくなる。
低屈折率層における第2の無機酸化物粒子の含有量は、低屈折率層の固形分中、0.1〜70質量%であることが好ましく、30〜70質量%であることがより好ましく、45〜65質量%であることがさらに好ましい。
(硬化剤)
低屈折率層は、上述した高屈折率層と同様に、硬化剤をさらに含むことができる。低屈折率層に含まれる硬化剤は、第2の水溶性バインダー樹脂と硬化反応を起こすものであれば、特に制限されない。特に、第2の水溶性バインダー樹脂としてポリビニルアルコールを用いた場合の硬化剤としては、高屈折率層と同様に、ホウ酸とホウ砂の水溶液が好ましく用いられる。
低屈折率層における硬化剤の含有量は、低屈折率層の固形分100質量%に対して、1〜10質量%であることが好ましく、2〜6質量%であることがより好ましい。
特に、第2の水溶性バインダー樹脂としてポリビニルアルコールを使用する場合の上記硬化剤の総使用量は、ポリビニルアルコール1g当たり1〜600mgが好ましく、ポリビニルアルコール1g当たり100〜600mgがより好ましい。
<1−4.光学フィルムの効果>
以上説明した光学フィルム1は、光学機能層5の一主面が算術平均粗さRaが1nm以上、30nm以下である。これにより、以降の実施例で説明するように、光学フィルム積層体の製造工程および合わせガラスの製造工程において、光学機能層5から支持基板3を剥離する際の剥離性が良好であり、剥離する際の光学機能層5の変形が防止される。この結果、光学フィルム積層体の製造工程および合わせガラスの製造工程において、光学機能層5と透明樹脂基材とを貼り合わせる場合に、光学機能層5にシワが生じたり、貼り合わせ面に気泡が混入することを防止できる。
また光学機能層5は、基板側接合面5aの算術平均粗さRaが30nm以下であることにより、光学フィルム積層体の製造工程および合わせガラスの製造工程において、光学機能層5における支持基板3の剥離面(すなわち基板側接合面5a)に透明樹脂基材を貼り合わせる場合に、貼り合わせ面に気泡が混入することを防止できる。
≪2.光学フィルムの製造方法≫
図1に示す光学フィルム1の製造方法は、次の通りである。先ず、所定の表面粗さの一主面を有する支持基板3を準備する。支持基板3の一主面の表面粗さは、次にこの一主面上に形成される光学機能層5が、算術平均粗さRa1nm以上、30nm以下となる程度であり、光学機能層5の形成方法によって適宜設定された値であることとする。
次に、支持基板3において、表面粗さが上記範囲の機能層側接合面3a上に、機能層側接合面3aの表面形状に倣って光学機能層5を形成する。
光学機能層5の形成方法が特に制限されることはないが、例えば塗布法、または熱圧着法などの成膜方法を適用する。これにより、支持基板3の一主面(機能層側接合面3a)上に、機能層側接合面3aの表面形状に倣った光学機能層5を形成する。
塗布法としては、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、スライド型カーテン塗布法、または米国特許第2,761,419号明細書、米国特許第2,761,791号明細書などに記載のスライドホッパー塗布法、エクストルージョンコート法などが挙げられる。また、複数の層を重層塗布する方式としては、逐次重層塗布でもよいし同時重層塗布でもよい。
以下、好ましい製造方法(塗布方法)の一例として、スライドホッパー塗布法によって、高屈折率層と低屈折率層とを積層する同時重層塗布について詳細に説明する。
(溶媒)
高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液を調製するための溶媒は、特に制限されないが、水、有機溶媒、またはその混合溶媒が好ましい。
前記有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノールなどのアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル類、ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノンなどのケトン類などが挙げられる。これら有機溶媒は、単独でもまたは2種以上混合して用いてもよい。
環境面、操作の簡便性などから、塗布液の溶媒としては、特に水、または水とメタノール、エタノール、もしくは酢酸エチルとの混合溶媒が好ましい。
(塗布液の濃度)
高屈折率層用塗布液中の第1の水溶性バインダー樹脂の濃度は、1〜10質量%であることが好ましい。また、高屈折率層用塗布液中の第1の無機酸化物粒子の濃度は、1〜50質量%であることが好ましい。
低屈折率層用塗布液中の第2の水溶性バインダー樹脂の濃度は、1〜10質量%であることが好ましい。また、低屈折率層用塗布液中の第2の無機酸化物粒子の濃度は、1〜50質量%であることが好ましい。
(塗布液の調製方法)
高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液の調製方法は、特に制限されず、例えば、水溶性バインダー樹脂、無機酸化物粒子、および必要に応じて添加されるその他の添加剤を、撹拌混合する方法が挙げられる。この際、水溶性バインダー樹脂、無機酸化物粒子、および必要に応じて用いられるその他の添加剤の混合順も特に制限されず、撹拌しながら各成分を順次混合してもよいし、撹拌しながら一度に混合してもよい。必要に応じて、さらに溶媒を用いて、適当な粘度に調整される。
例えば、コアシェル粒子を分散させた水系の高屈折率層塗布液を用いて、高屈折率層を形成することが好ましい。このとき、コアシェル粒子としては、pHが5.0以上、7.5以下で、かつ粒子のゼータ電位が負であるゾルとして、高屈折率層塗布液を調製することが好ましい。
(塗布液の粘度)
スライドホッパー塗布法により同時重層塗布を行う際の高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液の40〜45℃における粘度は、5〜150mPa・sの範囲が好ましく、10〜100mPa・sの範囲がより好ましい。また、スライド型カーテン塗布法により同時重層塗布を行う際の高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液の40〜45℃における粘度は、5〜1200mPa・sの範囲が好ましく、25〜500mPa・sの範囲がより好ましい。
また、高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液の15℃における粘度は、100mPa・s以上が好ましく、100〜30,000mPa・sがより好ましく、3,000〜30,000mPa・sがさらに好ましく、10,000〜30,000mPa・sが特に好ましい。
(塗布および乾燥方法)
塗布および乾燥方法は、特に制限されないが、高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液を30℃以上に加温して、支持基板3の機能層側接合面3a上に高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液の同時重層塗布を行った後、形成した塗膜の温度を好ましくは一旦冷却し(セット)、その後10℃以上で乾燥することが好ましい。より好ましい乾燥条件は、湿球温度5〜50℃、膜面温度10〜50℃の範囲の条件である。また、塗布直後の冷却方式としては、形成された塗膜の均一性向上の観点から、水平セット方式で行うことが好ましい。
高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液の塗布厚は、上記で示したような好ましい乾燥時の厚さとなるように塗布すればよい。
ここで、上記セットとは、形成したと膜の温度を一旦冷却する際には、冷風等を塗膜に当てて温度を下げるなどの手段により、塗膜組成物の粘度を高め各層間および各層内の物質の流動性を低下させる工程のことを意味する。冷風を塗布膜に表面から当てて、塗布膜の表面に指を押し付けたときに指に何もつかなくなった状態を、セット完了の状態と定義する。
塗布した後、冷風を当ててからセットが完了するまでの時間(セット時間)は、5分以内であることが好ましく、2分以内であることが好ましい。また、下限の時間は特に制限されないが、45秒以上の時間をとることが好ましい。セット時間が短すぎると、層中の成分の混合が不十分となる虞がある。一方、セット時間が長すぎると、無機酸化物粒子の層間拡散が進み、高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が不十分となる虞がある。なお、高屈折率層と低屈折率層との間の中間層の高弾性化が素早く起こるのであれば、セットする工程は設けなくてもよい。
セット時間は、水溶性バインダー樹脂の濃度や無機酸化物粒子の濃度を調整したり、ゼラチン、ペクチン、寒天、カラギーナン、ゲランガム等の各種公知のゲル化剤など、他の成分を添加することにより調整することができる。
冷風の温度は、塗膜の搬送速度、およびセットを実施する場合には塗膜が冷風に晒される時間(セット時間)にもよるが、0〜25℃であることが好ましく、5〜10℃であることがより好ましい。
以上により、図1を用いて説明した光学フィルム1を得ることができる。なお、支持基板3としては、図2を用いて説明したような基材31上に樹脂膜32を設けた構成の支持基板3’を用いてもよく、この場合の製造方法も、上記と同様である。
≪3.光学フィルム積層体の製造方法≫
図3は、実施形態の光学フィルム積層体の製造方法を説明するための断面工程図である。ここで説明する光学フィルム積層体の製造方法は、図1を用いて説明した光学フィルムを用い、光学フィルム1の光学機能層5を、2枚の透明樹脂基材で挟持した構成の光学フィルム積層体を製造する方法である。以下、先ずここで用いる透明樹脂基材の構成を説明し、次いで図3に基づいて光学フィルム積層体10の製造手順を説明する。
<3−1.透明樹脂基材>
透明樹脂基材は、光学機能層5の支持体としての役割を果たすものであり、以降に説明する合わせガラスの製造においては中間膜としての役割を果たすものである。透明樹脂基材は、熱可塑性樹脂を含む。また、透明樹脂基材は、あらかじめ光学フィルムに粘着層として付与しておくこともできる。
透明樹脂基材には、熱可塑性樹脂が含まれるが、その具体例としては、エチレン−ビニルアセテート共重合体(EVA)やポリビニルブチラール(PVB)が好ましく挙げられる。すなわち、透明樹脂基材は、EVAまたはPVBからなる膜であることが好ましい。また、各中間膜において、可視光透過率を阻害しない範囲で、各種の赤外線を吸収する微粒子または紫外線吸収剤などを含ませたり、色素を混入して着色したりして、日射透過率を75%以下とすることがより好ましい。
赤外線を吸収する微粒子としては、例えば、Ag、Al、Tiなどの金属微粒子、金属窒化物、金属酸化物の微粒子、また、インジウム/スズ酸化物(ITO)、アンチモン/スズ酸化物(ATO)、アルミニウム亜鉛複合酸化物(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、インジウム亜鉛複合酸化物(IZO)などの導電性透明金属酸化物微粒子があり、これらの中から1種以上を選択して、透明樹脂基材に含有させ、断熱性能を向上させることができる。特に、ITO、ATO、AZO、GZO、IZOなどの導電性透明金属酸化物微粒子が好ましい。
EVAやPVBを着色して透明樹脂基材とする場合は、着色剤として、一般的に用いられている公知の各種顔料あるいは各種染料を用いることができる。各種染料として、アントラキノン染料、アゾ染料、アクリジン染料、インジゴイド染料等を、また、各種顔料として、カーボンブラック、赤色酸化鉄、フタロシアニンブルー、フタロシニアングリーン、紺青、亜鉛華、アゾ顔料、スレン系顔料等を用いることができる。さらに、ポリビニルアセタール膜を、染料または顔料で着色した着色ポリビニルアセタール膜を、EVAまたはPVBと積層したものを外光が射出される側(以下、出射側と記す)の透明樹脂基材に用いてもよい。
<3−2.光学フィルム積層体の製造手順>
次に、光学フィルム積層体の製造方法を説明する。
先ず図3Aに示すように、上述した光学フィルム1と、第1の透明樹脂基材11とを準備する。第1の透明樹脂基材11は、上述した透明樹脂基材の何れかである。そして、光学フィルム1における光学機能層5に対して、第1の透明樹脂基材11を貼り合わせる。
この場合、例えばロール・トゥ・ロール方式による製造方法においては、送り出しローラから送り出した光学フィルム1の光学機能層5側に、別の送り出しローラから送り出した第1の透明樹脂基材11を積層し、これらの積層体を熱圧着ローラ間に送り込んで熱圧着する。この際の熱圧着ローラの間の搬送張力は、例えば、50〜200g/cm程度である。また熱圧着ローラの温度は、例えば第1の透明樹脂基材11としてポリビニルブチラール樹脂フィルムを用いた場合であれば、60〜120℃とすることができる。
次に、図3Bに示すように、第1の透明樹脂基材11側に光学機能層5を残した状態で、光学機能層5から支持基板3を剥離し、第1の透明樹脂基材11側に光学機能層5を転写する。
この場合、例えばロール・トゥ・ロール方式による製造方法においては、支持基板3を、巻き取りローラによって巻き取ることにより、光学機能層5から支持基板3を剥がしとる。また光学機能層5が転写された第1の透明樹脂基材11は、搬送ローラに送り込まれる。この際、先の熱圧着ローラと、巻き取りローラまたは搬送ローラとの間の搬送張力は、例えば50〜200g/cmである。
その後、図3Cに示すように、第2の透明樹脂基材13を準備し、第1の透明樹脂基材11側に転写された光学機能層5に対して、第2の透明樹脂基材13を貼り合わせる。ここで用いる第2の透明樹脂基材13は、上述した透明樹脂基材の何れかである。
この場合、例えばロール・トゥ・ロール方式による製造方法においては、搬送ローラで搬送される第1の透明樹脂基材11の光学機能層5側に、さらに別の送り出しローラから送り出した第2の透明樹脂基材13を積層させ、これらの積層体を熱圧着ローラ間に送り込んで熱圧着する。この際の熱圧着ローラの間の搬送張力は、例えば、50〜200g/cm程度である。また熱圧着ローラの温度は、例えば第2の透明樹脂基材13としてポリビニルブチラール樹脂フィルムを用いた場合であれば、60〜120℃とすることができる。
以上により図3Dに示すように、第1の透明樹脂基材11と第2の透明樹脂基材13との間に光学機能層5が挟持された光学フィルム積層体10が得られる。
なお、以上の製造方法における各貼り合わせ工程では、第1の透明樹脂基材11と光学機能層5との間、および第2の透明樹脂基材13と光学機能層5との間に、例えば、光吸収層、断熱層、ハードコート層、粘着層等のさらに別の層を挟持させてもよい。
<3−3.効果>
以上説明した光学フィルム積層体の製造方法によれば、図1および図2を用いて説明した実施形態の光学フィルム1を用いたことにより、図3Bを用いて説明した光学機能層5から支持基板3を剥離する際の剥離性が良好であり、剥離する際の光学機能層5の変形が防止される。これにより図3Cに示したように、光学機能層5を第2の透明樹脂基材13に対して貼り合わせる場合に、光学機能層5にシワが生じたり、貼り合わせ面に気泡が混入することを防止できる。
≪4.合わせガラスの製造方法≫
図4は、実施形態の合わせガラスの製造方法(第1例)を説明するための断面工程図である。図5は、実施形態の合わせガラスの製造方法(第2例)を説明するための断面工程図である。ここでは、先に説明した光学フィルム1を用いて作製した光学フィルム積層体を、さらに2枚のガラス基板で挟持した構成の合わせガラスを製造する方法を説明する。以下、先ずここで用いるガラス基板の構成を説明し、次いで合わせガラス20の製造手順を説明する。
<4−1.ガラス基板>
本実施形態の合わせガラスの製造方法に用いられるガラス基板には、市販のガラスが用いられる。
ガラスの種類は特に限定されないが、通常、ソーダライムシリカガラスが好適に用いられる。この場合、無色透明ガラスであってよく、有色透明ガラスであってもよい。
また、2枚のガラス基板のうち、外光が入射する側(室外側)のガラス基板は、無色透明ガラスであることが好ましい。また、外光が射出される側(室内側)のガラス基板は、グリーン系有色透明ガラスまたは濃色透明ガラスであることが好ましい。グリーン系有色透明ガラスは、紫外線吸収性能および赤外線吸収性能を有することが好ましい。これらを用いることにより、入射側でできるだけ日射エネルギーを反射することができ、さらに合わせガラスの日射透過率を小さくすることができるからである。
グリーン系有色透明ガラスは、特に限定されないが、例えば、鉄を含有するソーダライムシリカガラスが好適に挙げられる。例えば、ソーダライムシリカ系の母ガラスに、Fe換算で、全鉄0.3〜1質量%を含有するソーダライムシリカガラスである。さらに、近赤外領域の波長の光の吸収は全鉄のうちの2価の鉄による吸収が支配的であるため、FeO(2価の鉄)の質量が、Fe換算で、全鉄の20〜40質量%であることが好ましい。
グリーン系有色透明ガラスに対して紫外線吸収性能を付与するためには、ソーダライムシリカ系の母ガラスにセリウム等を加える方法が挙げられる。具体的には、実質的に以下の組成のソーダライムシリカガラスを用いるのが好ましい。SiO:65〜75質量%、Al:0.1〜5質量%、NaO+KO:10〜18質量%、CaO:5〜15質量%、MgO:1〜6質量%、Fe換算した全鉄:0.3〜1質量%、CeO換算した全セリウムおよび/またはTiO:0.5〜2質量%。
また、濃色透明ガラスは、特に限定されないが、例えば、鉄を高濃度で含有するソーダライムシリカガラスが好適に挙げられる。
また、本実施形態の製造方法によって作製した合わせガラスを車両等の窓に用いるにあたって、2枚のガラス基板の厚さは、ともに1.5〜3.0mmであることが好ましい。この場合、2枚のガラス基板を等しい厚さにすることも、異なる厚さにすることもできる。また2枚のガラス基板は、平板状でも湾曲状でもよい。車両、特に自動車窓は湾曲していることが多いため、2枚のガラス基板の形状は湾曲形状であることが多い。この場合、光学機能層5は、室外側のガラス基板の凹面側に設けられる。さらに、必要に応じて3枚以上のガラス基板を用いることもできる。
<4−2.合わせガラスの製造方法(第1例)>
次に図4に基づいて合わせガラスの製造方法(第1例)を説明する。先ず図4に示す工程に先立ち、図3を用いて説明したように、光学フィルム1を用いて光学フィルム積層体10を作製する。次に、図4Aに示すように、作製した光学フィルム積層体10を、第1のガラス基板21と第2のガラス基板23の間に配置し、第1のガラス基板21、光学フィルム積層体10、第2のガラス基板23の順に積層する。第1のガラス基板21および第2のガラス基板23は、先に説明したガラス基板の何れかである。次いで、必要に応じて第1のガラス基板21と第2のガラス基板23との間からはみ出た光学フィルム積層体10の余剰部分を除去する。その後、図4Bに示すように、第1のガラス基板21、光学フィルム積層体10、および第2のガラス基板23の積層体を、100〜150℃で、10〜60分間加熱し、加圧脱気処理して合わせ処理を行い、合わせガラス20を得る。
なお、以上の製造方法においては、第1のガラス基板21と光学フィルム積層体10との間、および光学フィルム積層体10と第2のガラス基板23との間には、必要に応じて他の層を挿入してもよい。ここに挿入される他の層としては、例えば赤外吸収層、断熱層、ハードコート層、粘着層などである。
<4−3.合わせガラスの製造方法(第2例)>
次に図5に基づいて合わせガラスの製造方法(第2例)を説明する。先ず、図5Aに示すように、上述した光学フィルム1と共に、第1の透明樹脂基材11を貼り合わせた第1のガラス基板21を準備する。第1の透明樹脂基材11は、上述した透明樹脂基材の何れかであり、第1のガラス基板21は、先に説明したガラス基板の何れかである。そして、光学フィルム1の光学機能層5に対して第1の透明樹脂基材11を対向させ、光学機能層5、第1の透明樹脂基材11、および第1のガラス基板21の順にこれらを積層して貼り合わせる。
次に図5Bに示すように、第1の透明樹脂基材11側に光学機能層5を残した状態で、光学機能層5から支持基板3を剥離し、第1のガラス基板21および第1の透明樹脂基材11側に光学機能層5を転写する。
その後、図5Cに示すように、第2の透明樹脂基材13を準備し、第1の透明樹脂基材11側に転写された光学機能層5に対して、第2の透明樹脂基材13を積層する。ここで用いる第2の透明樹脂基材13は、上述した透明樹脂基材の何れかである。
次いで、図5Dに示すように、第2のガラス基板23を準備し、第2の透明樹脂基材13に対して第2のガラス基板23を積層する。ここで用いる第2のガラス基板23は、上述したガラス基板の何れかである。
この状態で、第1のガラス基板21から第2のガラス基板23までの積層体を、加熱し、さらに加圧脱気して貼り合わせ処理を行う。以上により、第1のガラス基板21と第2のガラス基板23との間に、第1の透明樹脂基材11と光学機能層5と第2の透明樹脂基材13とがこの順に積層された光学フィルム積層体10を挟持した合わせガラス20が得られる。
なお、以上の製造方法(第2例)においては、各層間に、必要に応じて他の層を挿入してもよい。ここに挿入される他の層としては、例えば赤外吸収層、断熱層、ハードコート層、粘着層などである。
<4−4.効果>
以上説明した各合わせガラスの製造方法によれば、図1および図2を用いて説明した実施形態の光学フィルム1を用いたことにより、光学機能層5から支持基板3を剥離する際の剥離性が良好であり、剥離する際の光学機能層5の変形が防止される。これにより、合わせガラス20を作製する際に、光学機能層5、第1の透明樹脂基材11、さらには第2の透明樹脂基材13にシワが生じたり、各層の貼り合わせ面に気泡が混入することを防止できる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。また、各操作は、特に断らない限り、室温(20℃〜25℃)で行った。
≪試料1〜試料7の合わせガラスの作製≫
[1.原料溶液の調整]
(1)高屈折率層用塗布液の調製
15.0質量%酸化チタンゾル(SRD−W、体積平均粒径:5nm、ルチル型二酸化チタン粒子、堺化学社製)0.5質量部に、純水2質量部を加えた後、90℃に加熱した。次いで、ケイ酸水溶液(ケイ酸ソーダ4号(日本化学工業社製)をSiO濃度が0.5質量%となるように純水で希釈したもの)0.5質量部を、徐々に添加した混合溶液を作製し、その後、この混合溶液をオートクレーブ中、175℃で18時間の加熱処理を施した。次いで、加熱処理後した混合溶液を冷却し、限外濾過膜にて濃縮することにより、固形分濃度が6質量%のSiOを表面に付着させた二酸化チタンゾル(以下、「シリカ付着二酸化チタンゾル」という)(体積平均粒径:9nm)を得た。
このようにして得られたシリカ付着二酸化チタンゾル(20質量%)140質量部に対して、クエン酸水溶液(1.92質量%)を48質量部加え、さらにエチレン変性ポリビニルアルコール(クラレ社製エクセバールRS−2117、けん化度98モル%:8質量%)113質量部を加えて十分に撹拌した。そして、界面活性剤の5質量%水溶液(ソフタゾリンLSB−R、川研ファインケミカル社製)0.4質量部を加えることで、高屈折率層用塗布液を調製した。
(2)低屈折率層用塗布液の調製
31質量部の酸性コロイダルシリカの10質量%水溶液(スノーテックスOXS、一次粒径:5.4nm、日産化学工業社製)を40℃に加熱し、ホウ酸3質量%水溶液を、3質量部加えた。次いで、39質量部の水溶性高分子であるポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール社製JP−45、重合度4500、鹸化度88モル%)(6質量%)と、1質量部の界面活性剤の5質量%水溶液(ソフタゾリンLSB−R、川研ファインケミカル社製)とを40℃でこの順に加えることで、低屈折率層用塗布液を調製した。
[2.光学フィルムの作製]
(1)支持基板の準備
160mm幅で厚さ50μmのポリエチレンフィルムを支持基板として準備した。下記表1に示すように、試料1〜試料5においては、それぞれの表面粗さを有するポリエチレンフィルム1〜5を支持基板として準備した。試料6においては、ポリエチレンフィルムの表面にコロナ処理を施すことにより表面粗さが調整された支持基板を準備した。試料7においては、ポリエチレンフィルムの表面にシリコーン樹脂を塗布することによって表面粗さを調整した支持基板として準備した。
(2)光学機能層の形成
調製した高屈折率層用塗布液、および調製した低屈折率層用塗布液のそれぞれを、40℃に加温した。そして、11層重層塗布可能なスライドホッパ塗布装置を用い、40℃に加温した各支持基板において、上述した算術平均粗さに形成された一主面上に同時多層塗布した。このとき、支持基板の一主面上には、最下層及び最上層として低屈折率層が配置されるようにし、これらの間には低屈折率層と高屈折率層とが交互に配置されるように、多重塗布を行った。またここでは、乾燥時の膜厚として、低屈折率層は各層150nm、高屈折率層は各層130nmになるように、計9層(最下層及び最上層の低屈折率層を除く)の塗布を行った。塗布直後、10℃の冷風を吹き付けて増粘させた。増粘完了後、60℃の温風を吹き付けて乾燥させて、計11層からなる光学機能層を形成し、各光学フィルムを作製した。
(3)算術平均表面粗さ(Ra)の測定
以上のようにして作製した試料1〜7の各光学フィルムについて、光学機能層から支持基板を剥離し、剥離した面の算術平均粗さを、以下のようにして測定した。測定した値を下記表1に示す。
先ず測定試料を1cm角の大きさに切り取って、ピエゾスキャナー上の水平な試料台にセットし、カンチレバーを試料表面にアプローチし、原子間力が働く領域に達したところで、XY方向にスキャンし、その際、試料の凹凸をZ方向のピエゾの変位でとらえた。
原子間力顕微鏡で得られた凹凸画像について、凹部及び/又は凸部が連なる方向に対して直角方向に任意に2本の直線を引き、この直線上の部分について、輪郭曲線(断面曲線)をそれぞれ求めた。
次に、これらの直線上についての輪郭曲線(断面曲線)から粗さを求めた。場所を変えて20箇所測定して、その算術平均をRaとした。
なお、本実施例において用いた測定条件は下記の通りである。
装置:Nanoscope IIIa AFM(Digital Instruments社製)
カンチレバー:シリコン単結晶
走査モード:タッピングモード
走査速度:0.5Hz
測定視野:125μm2
Zレンジ:断面曲線から得られたRaの7〜15倍
フラッテンフィルター
モード :フラッテンオート
オーダー:3
バネ定数K:11N/m
共振周波数F:127kHz
[3.合わせガラスの作製]
上記で作製した各光学フィルムと、厚さ3mmのグリーンガラス(可視光透過率:81%、日射透過率:63%)からなる室内側のガラス基板と、厚さ380μmのポリビニルアセタール系樹脂からなる室内側の透明樹脂基材とを準備した。そして、ガラス基板、透明樹脂基材、光学機能層、支持基板の順で積層した。次いで、透明樹脂基材側に光学機能層を残し、光学機能層からポリエチレンフィルムの支持基板を剥離した。
その後、光学機能層側に、厚さ380μmのポリビニルアセタール系樹脂からなる室外側の透明樹脂基材、厚さ3mmのクリアガラス(可視光透過率:91%、日射透過率:86%)からなる室外側のガラス基板をこの順に積層し、ガラスのエッジ部からはみ出した余剰部分を除去した。次いで、積層体を、135℃で30分間加熱し、加圧脱気して合わせ処理を行い、試料1〜試料7の合わせガラスを作製した。
≪試料8〜試料10の合わせガラスの作製≫
[1.光学フィルムの作製]
(1)支持基板の準備
160mm幅で厚さ50μmのポリエチレンフィルムを支持基板として準備した。下記表1に示すように、試料8〜試料10においては、それぞれの表面粗さを有するポリエチレンフィルム1,3,5を支持基板として準備した。
(2)光学機能層の形成
米国特許第6049419号明細書に記載の溶融押し出し方法に従い、ポリエチレンナフタレート(PEN)TN8065S(帝人化成社製)とポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂アクリペットVH(三菱レイヨン社製)とを、300℃に溶融し、押出しにより積層した。
そして、この積層体を、さらに積層させてPEN層とPMMA層とが交互に64層ずつ積層させた状態として縦横約3倍に延伸させ、その後再下層に支持基板における上述した算術平均粗さに形成された一主面を押し当てて、熱固定、冷却を行った。これにより支持基板の一主面上に、膜厚137nmのPEN層からなる高屈折率層と、膜厚152nmのPMMA層からなる低屈折率層とを、交互に64層ずつ合計で128層に積層した光学機能層を設けた光学フィルムを得た。
(3)算術平均表面粗さ(Ra)の測定
以上のようにして作製した試料8〜試料10の各光学フィルムについて、光学機能層から支持基板を剥離し、剥離した面の算術平均粗さを、試料1〜試料7と同様に測定した。測定した値を下記表1に示す。
[3.合わせガラスの作製]
上記で作製した各光学フィルムを用い、試料1〜試料7と同様に合わせガラスを作製した。
≪合わせガラスの評価≫
[1.シワの発生評価]
以上のようにして試料1〜試料10の合わせガラスを各100枚作製し、「シワ」の発生を下記5段階で評価した。下記表1にその結果を示す。
5:「シワ」の発生は全くない。
4:ごくわずかな「シワ」が1〜3枚に発生している。
3:ごくわずかな「シワ」が4〜10枚に発生している。
2:ごくわずかな「シワ」が11枚以上に発生しているか、または明らかな「シワ」が5枚以下に発生している。
1:明らかな「シワ」が6枚以上に発生している。
[2.気泡の発生評価]
以上のようにして作製した試料1〜試料10の合わせガラスについて、それぞれ150mm×150mmの面積を目視観察し、認識できる「気泡」の数を数え、下記5段階で評価した。下記表1にその結果を示す。
5:「気泡」の発生は全くない。
4:1mm以下の大きさの「気泡」が1〜2個発生している。
3:1mm以下の大きさの「気泡」が3〜5個、または1mmを超え、5mm以下の大きさの「気泡」が1〜2個発生している。
2:1mmを超え、5mm以下の大きさの気泡が3〜5個、または5mmを超える大きさの「気泡」が1〜2個発生している。
1:全面に多数の「気泡」が発生している。
Figure 0006672683
表1に示すように、光学機能層の一主面側の算術平均粗さRaが1nm以上、30nm以下である試料2〜試料4、試料6、試料7、および試料9は、「シワ」および「気泡」の発生が少なく、評価3〜5であって、本発明を適用して合わせガラスを作製することによる効果が確認された。これに対して、同様の算術平均粗さRaが1nmより小さい試料1,試料8、および同様の算術平均粗さRaが30nmよりも大きい試料5,試料10は、「シワ」および「気泡」の発生が多く、評価1〜2であった。
1…光学フィルム
3,3’…支持基板
31…基材
32…樹脂膜
5…光学機能層
10…光学フィルム積層体
11…第1の透明樹脂基材
13…第2の透明樹脂基材
20…合わせガラス
21…第1のガラス基板
23…第2のガラス基板

Claims (9)

  1. 所定の表面粗さを有する支持基板の一主面上に、当該一主面の表面形状に倣って光学機能層を積層させることにより、算術平均粗さRaが1nm以上、30nm以下の一主面を有する光学機能層を形成する手順と、
    前記光学機能層の上部に第1の透明樹脂基材を貼り合わせる手順と、
    前記第1の透明樹脂基材に貼り合わせた前記光学機能層から、前記支持基板を剥離する手順と、
    前記光学機能層において前記支持基板を剥離した面に第2の透明樹脂基材を貼り合わせて光学フィルム積層体を作製する手順と、
    前記光学フィルム積層体を2枚のガラス基板間に挟持させる手順とを備えた
    合わせガラスの製造方法。
  2. 所定の表面粗さを有する支持基板の一主面上に、当該一主面の表面形状に倣って光学機能層を積層させることにより、算術平均粗さRaが1nm以上、30nm以下の一主面を有する光学機能層を形成する手順と、
    前記光学機能層上に、第1の透明樹脂基材と、第1のガラス基板とをこの順に積層して貼り合わせる手順と、
    前記第1の透明樹脂基材に貼り合わせた前記光学機能層から、前記支持基板を剥離する手順と、
    前記光学機能層において前記支持基板を剥離した面に第2の透明樹脂基材と第2のガラス基板とをこの順に積層して貼り合わせる手順とを備えた
    合わせガラスの製造方法。
  3. 前記光学機能層は、屈折率差を有する低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層された構成である
    請求項1または2に記載の合わせガラスの製造方法。
  4. 前記支持基板の一主面上に前記光学機能層を塗布成膜によって形成する
    請求項1〜3のうちの何れか1項に記載の合わせガラスの製造方法。
  5. 前記支持基板の一主面上に前記光学機能層を圧着する
    請求項1〜3のうちの何れか1項に記載の合わせガラスの製造方法。
  6. 前記支持基板として、粒子を含有する樹脂フィルムを用いる
    請求項1〜5のうちの何れか1項に記載の合わせガラスの製造方法。
  7. 前記支持基板として、前記光学機能層が形成される一主面が、粗面化処理によって表面粗さが調整された樹脂フィルムを用いる
    請求項1〜5のうちの何れか1項に記載の合わせガラスの製造方法。
  8. 第1のガラス基板と第2のガラス基板との間に、第1の透明樹脂基材と光学機能層と第2の透明樹脂基材とがこの順に積層された光学フィルム積層体を挟持した状態の合わせガラスであって、
    前記光学機能層は、算術平均粗さRaが1nm以上、30nm以下の一主面を有する
    合わせガラス。
  9. 前記光学機能層は、屈折率差を有する低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層された構成である
    請求項8に記載の合わせガラス。
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