JP2018145063A - 二酸化バナジウム含有粒子、二酸化バナジウム含有粒子分散液の製造方法、サーモクロミックフィルム及びその製造方法、二酸化バナジウム含有粒子集合体 - Google Patents

二酸化バナジウム含有粒子、二酸化バナジウム含有粒子分散液の製造方法、サーモクロミックフィルム及びその製造方法、二酸化バナジウム含有粒子集合体 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題は、耐酸化性とサーモクロミック応答性が向上した二酸化バナジウム含有粒子、二酸化バナジウム含有粒子分散液の製造方法、サーモクロミックフィルム及びその製造方法、二酸化バナジウム含有粒子集合体を提供することである。
【解決手段】本発明の二酸化バナジウム含有粒子は、サーモクロミック性を示し、コア・シェル構造を有する二酸化バナジウム含有粒子であって、二酸化バナジウム粒子を含有するコア部を有し、前記コア部の表面上に、エチレン性不飽和単量体の重合反応物を含有するシェル部を有することを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、二酸化バナジウム含有粒子、二酸化バナジウム含有粒子分散液の製造方法、サーモクロミックフィルム及びその製造方法、二酸化バナジウム含有粒子集合体に関する。
近年、車窓から入り込む太陽光の影響によって人肌で感じる熱さを遮り、高い断熱性又は遮熱性を備えたガラスやガラスに貼合するフィルムが市場に流通している。最近では、電気自動車等の普及に伴い、車内の冷房効率を高める観点から、ガラスに適用する近赤外光遮蔽フィルムの開発が盛んに行われている。
近赤外光遮蔽フィルムを車体や建物の窓ガラスに適用することにより、車内のエア・コンディショナー等の冷房設備への負荷を低減することができ、省エネルギー対策として有効な手段である。
このような近赤外線遮蔽フィルムとしては、赤外線吸収性物質としてITO(スズドープ酸化インジウム)などの導電体を含む光学フィルムや、低屈折率層と高屈折率層とを交互に多数積層させた反射層積層体を有し、当該各屈折率層の層厚を調整することにより、近赤外光を選択的に反射する近赤外光遮蔽フィルムがある。
このような構成よりなる近赤外光遮蔽フィルムは、太陽光の照度が高い赤道近傍の低緯度地帯では、その高い近赤外光遮蔽効果により、好ましく利用されている。しかしながら、中緯度〜高緯度地帯の冬場においては、逆に、太陽光をできるだけ車内や室内に取り込みたい場合にも、一律に入射光線を遮蔽してしまうという問題がある。
上記問題に対し、近赤外光遮蔽フィルムに対し、近赤外光の遮蔽や透過の光学的性質を温度により制御するサーモクロミック材料を適用する方法の検討がなされている。その代表な材料として、二酸化バナジウム(以下、「VO」とも記す。)が挙げられる。二酸化バナジウムは、68℃前後の温度領域で相転移を起こし、サーモクロミック性(自動調光性)を示すことが知られている。
すなわち、この二酸化バナジウムの特性を利用したサーモクロミックフィルムにより、高温になると熱の原因となる近赤外光を遮蔽し、低い温度では近赤外光を透過する特性を発現することが可能となる。これにより、夏場の暑い時は近赤外光を遮蔽して室内の温度上昇を抑制し、冬場の寒い時は、外部からの光エネルギーを取り込むことができるようになる。
しかしながら、上記サーモクロミック性を有する二酸化バナジウム粒子は、酸化されやすい性質を有するため、酸化反応に関与する水分子や酸素分子が、二酸化バナジウム粒子表面に接触して酸化反応が生じないように、粒子表面を特定の物質で被覆して、耐酸化性を向上させる方法が検討されている。
例えば、特許文献1には、アモルファス状金属酸化物で二酸化バナジウム粒子表面を被覆した二酸化バナジウム含有粒子が開示されている。また、特許文献2には、有機修飾の長鎖分子を二酸化バナジウム粒子表面に連結した二酸化バナジウム含有粒子が開示されている。
国際公開第2015/161313号 特表2015−513508号公報
これら提案されている各方法では、確かに化学的な安定性は向上するが、本発明者がさらに検討を進めた結果、同じ相転移温度であっても赤外線透過率の変化を伴うサーモクロミック応答性が遅くなることが判明した。これらは、微小な二酸化バナジウム粒子の表面に、アモルファス状金属酸化物や有機修飾の長鎖分子材料を化学的に連結させることにより、二酸化バナジウム粒子の熱による構造相転移に大きな影響を与え、その変化速度が遅くなり、遮熱効果を発現するまでに時間を要する結果になり、サーモクロミック応答性が低下したものと推測される。
従って、耐酸化性(保存安定性)を備え、かつサーモクロミック応答性に優れた二酸化バナジウム含有粒子と、それを用いたサーモクロミックフィルムの開発が切望されている。
本発明の課題は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、耐酸化性(保存安定性)とサーモクロミック応答性が向上した二酸化バナジウム含有粒子、二酸化バナジウム含有粒子分散液の製造方法、サーモクロミックフィルム及びその製造方法、二酸化バナジウム含有粒子集合体を提供することである。
本発明者は、上記の課題を解決すべく検討を行った結果、以下の手段によって解決することを見いだした。
1.サーモクロミック性を示し、コア・シェル構造を有する二酸化バナジウム含有粒子であって、
二酸化バナジウム粒子を含有するコア部を有し、前記コア部の表面上に、エチレン性不飽和単量体の重合反応物を含有するシェル部を有することを特徴とする二酸化バナジウム含有粒子。
2.前記エチレン性不飽和単量体の量が、前記二酸化バナジウム粒子の質量に対して、10〜70質量%の範囲内であることを特徴とする第1項に記載の二酸化バナジウム含有粒子。
3.前記二酸化バナジウム粒子が、下記式(1)で表される化学組成よりなることを特徴とする第1項又は第2項に記載の二酸化バナジウム含有粒子。
式(1)
1-x
[式(1)中、Mはタングステン、モリブデン、マグネシウム、鉄、ニッケル、アルミニウム、フッ素及びリンからなる群より選択される元素であり、xは0<x≦0.1を満たす数値を表す。]
4.第1項から第3項までのいずれか一項に記載の二酸化バナジウム含有粒子を含有することを特徴とするサーモクロミックフィルム。
5.第1項から第3項までのいずれか一項に記載の二酸化バナジウム含有粒子を含む分散液を製造する二酸化バナジウム含有粒子分散液の製造方法であって、
少なくとも、水と、バナジウム化合物と、還元剤とを含有する液を調製し、水熱反応させて、前記コア部を形成する工程と、
少なくとも、前記コア部と、重合開始剤とエチレン性不飽和単量体とを添加し、加熱して、水相で前記シェル部を形成する工程と、を有することを特徴とする二酸化バナジウム含有粒子分散液の製造方法。
6.前記シェル部を形成する工程で得られた二酸化バナジウム含有粒子分散液から前記水相を除去し、有機溶媒を添加する工程をさらに有することを特徴とする第5項に記載の二酸化バナジウム含有粒子分散液の製造方法。
7.前記コア部のZ平均粒子径が、5〜100nmの範囲内であることを特徴とする第5項又は第6項に記載の二酸化バナジウム含有粒子分散液の製造方法。
8.第5項に記載の二酸化バナジウム含有粒子分散液の製造方法で製造された二酸化バナジウム含有粒子分散液に親水性バインダーを混合して塗布液を調製する工程と、
前記塗布液を塗布し、乾燥する工程と、を有することを特徴とするサーモクロミックフィルムの製造方法。
9.第6項に記載の二酸化バナジウム含有粒子分散液の製造方法で製造された二酸化バナジウム含有粒子分散液に疎水性バインダーを混合して塗布液を調製する工程と、
前記塗布液を塗布し、乾燥する工程と、を有することを特徴とするサーモクロミックフィルムの製造方法。
10.前記コア部のZ平均粒子径が、5〜100nmの範囲内であることを特徴とする第8項又は第9項に記載のサーモクロミックフィルムの製造方法。
11.第1項から第3項までのいずれか一項に記載の二酸化バナジウム含有粒子を含む二酸化バナジウム含有粒子集合体であって、
前記コア部のZ平均粒子径が、5〜100nmの範囲内であることを特徴とする二酸化バナジウム含有粒子集合体。
12.第11項に記載の二酸化バナジウム含有粒子集合体を含むことを特徴とするサーモクロミックフィルム。
本発明によれば、耐酸化性(保存安定性)とサーモクロミック応答性が向上した二酸化バナジウム含有粒子、二酸化バナジウム含有粒子分散液の製造方法、サーモクロミックフィルム及びその製造方法、二酸化バナジウム含有粒子集合体を提供することができる。
本発明の効果のメカニズムについては、明確にはなっていないが、以下のように推測している。
本発明では二酸化バナジウム粒子表面に、エチレン性不飽和単量体の重合反応物を含むシェル部を形成し、シェル部がコア部を被覆することによって、二酸化バナジウム粒子への水分子や酸素分子が遮断され酸化反応が抑制され、二酸化バナジウムの耐酸化性(保存安定性)が向上する。さらには、シェル部の重合反応物は二酸化バナジウム粒子の表面に化学的に連結することがなく、また、重合反応物は熱的に柔軟であるため、二酸化バナジウム粒子の熱による構造相転移に大きな影響を与えないと考えられる。
本発明の二酸化バナジウム含有粒子の構造の一例を示す概略断面図 本発明の二酸化バナジウム粒子の製造における製造フローの一例を示す図 本発明の二酸化バナジウム粒子の製造方法に適用可能な水熱反応部を具備した流通式反応装置の一例を示す概略図 本発明のサーモクロミックフィルムの基本的な構成の一例を示す概略断面図 本発明のサーモクロミックフィルムの基本的な構成の他の一例を示す概略断面図
本発明においては、二酸化バナジウムを含有するコア部の粒子を「二酸化バナジウム粒子」と称し、当該二酸化バナジウム粒子の表面にシェル部を形成し、コア・シェル構造とした粒子を「二酸化バナジウム含有粒子」と称する。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態ついて詳細な説明をする。なお、本発明において示す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
<二酸化バナジウム含有粒子>
本発明の二酸化バナジウム含有粒子は、サーモクロミック性を示し、コア・シェル構造を有し、二酸化バナジウム粒子を含有するコア部を有し、コア部の表面上に、エチレン性不飽和単量体の重合反応物を含有するシェル部を有することを特徴とする。
以下、本発明の二酸化バナジウム含有粒子の構造、調製に用いる材料及びその製造方法の詳細について説明する。
[二酸化バナジウム含有粒子の構造]
図1は、本発明のコア・シェル構造の二酸化バナジウム含有粒子の構造の一例を示す概略断面図である。
図1は、本発明のコア・シェル構造の二酸化バナジウム含有粒子(1)の断面構造を示しており、二酸化バナジウム含有粒子(1)は、コア部を二酸化バナジウム粒子(2)で構成し、その外周部にエチレン性不飽和単量体の重合反応物を含有するシェル部(3)が形成されている構成を示している。
本発明のコア・シェル構造の二酸化バナジウム含有粒子は、図1のように、コア部の表面の全面にシェル部が存在していることが特に好ましいが、コア部の表面の全面にシェル部が存在せず、コア部の表面の一部が露出しているものであってもよい。
また、コア・シェル構造とした二酸化バナジウム含有粒子の一次粒子及び二次粒子のZ平均粒子径は、5〜160nmの範囲内であることが好ましく、20〜140nmの範囲内がより好ましく、さらに好ましくは、30〜130nmの範囲内である。
また、二酸化バナジウム含有粒子及び二酸化バナジウム粒子のアスペクト比としては、1.0〜3.0の範囲内であることが好ましい。このようにすれば、アスペクト比が十分に小さく、形状が等方的であることから、溶液に添加した場合の分散性が良好である。加えて、単結晶の粒径が十分に小さいので、従来の微粒子に比べて、良好なサーモクロミック性を発揮することができる。
[二酸化バナジウム含有粒子の構成材料]
[コア部:二酸化バナジウム粒子]
本発明の二酸化バナジウム含有粒子のコア部を構成する二酸化バナジウム粒子としては、その結晶形として特に制限はないが、サーモクロミック性を効率よく発現させる観点から、ルチル型の二酸化バナジウム粒子(VO粒子)を用いることが、好ましい。
ルチル型のVO粒子は、転移温度以下では、単斜晶系(monoclinic)の構造を有するため、M型とも呼ばれる。本発明に係る二酸化バナジウム粒子においては、目的を損なわない範囲で、A型、又はB型などの他の結晶型のVO粒子を含んでもよい。
本発明においては、二酸化バナジウム含有粒子のコア部(二酸化バナジウム粒子)のZ平均粒子径が、5〜100nmの範囲内であることが好ましく、20〜90nmの範囲内がより好ましく、さらに好ましくは、30〜80nmの範囲内である。
本発明でいうZ平均粒子径は、動的光散乱法と呼ばれる方法を利用して測定した平均粒子径を意味する。つまり、二酸化バナジウム粒子の分散液にレーザー光を照射し、二酸化バナジウム粒子から散乱される散乱光強度をマイクロ秒単位の時間変化で測定し、検出された二酸化バナジウム粒子に起因する散乱強度分布を正規分布に当てはめて、平均粒子径を算出するためのキュムラント解析法により求めたZ平均粒子径である。
このZ平均粒子径は、市販の測定装置で簡便に測定可能であり、例えば、マルバーン社から市販されている「ゼータサイザーナノS」を測定に使用することができる。当該市販の測定装置にはデータ解析ソフトが搭載されており、測定データを自動的に解析することで、Z平均粒子径を算出することができる。
本発明の二酸化バナジウム粒子のZ平均粒子径は、一例として下記の方法を用いて測定することができる。
本発明に係るZ平均粒子径は、二酸化バナジウム粒子分散液を水に投入した水溶液を、マルバーン社製「ゼータサイザーナノS」などの動的光散乱を用いた粒子径測定機で測定して、Z平均粒子径の値を求める。測定機器としては、他にハネウエル社製のマイクロトラックUPA(Microttrac UPA)、堀場製作所製のパーティクルサイズアナライザー(Horiba Particle Size Analyzer)、及びシスメックス株式会社製ゼータサイザー1000HSa等を用いることができる。
マルバーン社製「ゼータサイザーナノS」を用いた場合の測定条件の一例を、下記に示す。
<具体的な測定条件>
試料の調製条件:二酸化バナジウム粒子分散液を水に投入し、水溶液を調製。
測定温度 :25.0℃
溶媒粘度 :1cp
レーザー :He−Ne、4.0mv、633nm
セル :ガラスセル
本発明に係る二酸化バナジウム粒子は、下記式(1)で表される化学組成よりなることが好ましい。
式(1)
1−x
[上記式(1)において、Mは、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、フッ素(F)及びリン(P)からなる群から選択された元素である。xは0<x≦0.1を満たす数値を表す。]
上記元素の添加により、二酸化バナジウム含有粒子の相転移温度を調節することが可能となる(上記元素について、以下「相転移温度の調節作用を有する元素」とも記す)。相転移温度を調節するとは、相転移温度を上下させることをいう。なお、最終的に得られる二酸化バナジウム含有粒子に対する上記元素の総量は、バナジウム(V)原子に対して、0.1〜10.0原子%程度で十分である。
[二酸化バナジウム粒子の製造方法]
一般に、二酸化バナジウム粒子の製造方法には、固相法により合成された二酸化バナジウム焼結体を粉砕する方法と、五酸化二バナジウム(V)や酸化硫酸バナジウム(VOSO)などのバナジウム含有化合物を原料として、水溶液を使用した液相で二酸化バナジウムを合成しながら粒子成長させる、水熱反応を用いた方法があるが、後者の方法は平均一次粒子径が小さく、粒径のばらつきを抑制することができる点で好ましい。
また、二酸化バナジウム粒子の製造方法として、必要に応じて、粒子成長の核となる微小なTiO等の微粒子を核粒子として添加し、その核粒子を成長させることにより二酸化バナジウム粒子を製造することもできる。
(流通式反応装置)
水熱反応は、水熱反応部を有する流通式反応装置、高圧用反応分解容器、オートクレーブやテストチューブ型反応容器等の装置を用いて行うことができるが、本発明の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法においては、水熱反応を、水熱反応部を有する流通式反応装置を用いて行うことが好ましい。
以下、流通式反応装置を用いて水熱反応を行う好ましい形態を説明する。なお、本発明は下記形態に限定されない。
本発明に係る流通式反応装置とは、水熱反応部を備えた流通式反応装置である。ここでいう水熱反応部とは、高温高圧条件下で、高速混合及び反応を実現する混合及び反応器をいう。
流通式反応装置を用いて水熱反応を行う場合は、本発明においては、流通式反応装置の水熱反応を行う水熱反応部において、バナジウム含有化合物、相転移温度の調節作用を有する元素及び水を含む原料液と、当該バナジウム含有化合物と反応する化合物と、超臨界又は亜臨界状態の水とを混合した反応液の通過時間を、2〜1000秒の範囲内とすることが好ましく、4〜700秒の範囲内とすることがより好ましく、12〜700秒の範囲内とすることがさらに好ましい。
本発明に係る反応液においては、基本的には、バナジウム含有化合物、及び水を含む原料液と、当該バナジウム含有化合物と反応する化合物と、超臨界又は亜臨界状態の水と、相転移温度の調節作用を有する元素と、により構成されるが、少なくとも、バナジウム含有化合物と超臨界又は亜臨界状態の水とをそれぞれ分割し、バナジウム含有化合物又は超臨界又は亜臨界状態の水に当該バナジウム含有化合物と反応する化合物を共存させることが好ましい。また、バナジウム含有化合物に相転移温度の調節作用を有する元素を共存させることが好ましい。
図2を用いて、本発明の二酸化バナジウム粒子の製造方法に好適な製造フロー1及び製造フロー2示す。
製造フロー1は、まず、原料液容器1(4)に、バナジウム含有化合物及び水を含む原料液と、バナジウム含有化合物と反応する化合物(例えば、水に所定の濃度で溶解したアルカリ又は還元剤)と、相転移温度の調節作用を有する元素と、を添加する。また、他方の原料液容器2(5)に、水としてイオン交換水を添加する。次に、イオン交換水を加熱媒体(7)で所定の温度、圧力下で、超臨界又は亜臨界状態の水とした後、両者を合流点MPで会合させて反応液とした後、水熱反応部(8)内の加熱部配管(9)で水熱処理を施して、二酸化バナジウム粒子を調製する。
製造フロー2は、まず、原料液容器1(4)に、バナジウム含有化合物及び水を含む原料液と、相転移温度の調節作用を有する元素とを添加し、他方の原料液容器2(5)に、バナジウム含有化合物と反応する化合物を含有するイオン交換水を添加する。次に、当該バナジウム含有化合物と反応する化合物を含有するイオン交換水を加熱媒体(7)で所定の温度、圧力下で、超臨界又は亜臨界状態の水とした後、両者を合流点MPで会合させて反応液とした後、水熱反応部(8)内の加熱部配管(9)で水熱処理を施して、二酸化バナジウム粒子を調製する。
次いで、本発明の二酸化バナジウム粒子の製造方法で適用する流通式反応装置の一例として、好ましく用いることができる水熱反応部を有する流通式反応装置の全体構成について、図3を参照して説明する。
図3は、本発明の二酸化バナジウム粒子の製造方法に適用可能な、水熱反応部を有する流通式反応装置の一例を示す概略図である。なお、図3中の「TC」は、温度センサーを示している。
図3において、水熱反応部を有する流通式反応装置(10)は、一方の構成液であるバナジウム含有化合物、バナジウム含有化合物と反応する化合物及び相転移温度の調節作用を有する元素を含む原料液(製造フロー1)、又は、バナジウム含有化合物、水及び相転移温度の調節作用を有する元素を含む原料液(製造フロー2)を入れる原料液容器1(4)、他方の構成液である超臨界水又は亜臨界水を形成するための水(製造フロー1)、又は、バナジウム含有化合物と反応する化合物を含有するイオン交換水(製造フロー2)を入れる原料液容器2(5)、水熱反応を行う加熱媒体(11)を有する水熱反応部(8)、水熱反応後の反応液を入れるためのタンク(21)、原料液容器1(4)と原料液容器2(5)とタンク(21)とをそれぞれ連結するための流路(12)、(13)、一方の構成液である原料液容器1(4)に貯留されているバナジウム含有化合物を含む原料液を、原料液容器1(4)から、流路(12)、合流点MP、加熱部配管(9)、流路(15)及び制御弁(19)を経由してタンク(21)に送液するためのポンプ(17)、他方の構成液である原料液容器2(5)に貯留されている超臨界水又は亜臨界水を形成するための水等を、原料液容器2(5)から、流路(13)、加熱媒体(7)、合流点MP、加熱部配管(9)、流路(15)及び制御弁(19)を経由してタンク(21)に送液するためのポンプ(16)、等を有する。
また、流通式反応装置(10)には、必要に応じて、水熱反応後の二酸化バナジウム含有粒子の含む反応液を冷却するための流路(15)を含む冷却部(20)を備えてもよい。また、必要に応じて、水熱反応後の二酸化バナジウム含有粒子を含む反応液に添加する添加剤、あるいは水熱反応後の反応液に混合して冷却するための冷却媒体(例えば、水)を入れるためのタンク(22)、添加剤や冷却媒体等を、流路(14)を介して、流路(15)に送液するためのポンプ(18)をさらに有してもよい。
流通式反応装置(10)には、流路(12)又は流路(13)のライン中に、加熱媒体(6)、(7)を有する。特に、流路(13)に配置されている加熱媒体(7)は、原料液容器2(5)に貯留されている水に、所定の温度及び圧力を付与して、超臨界水又は亜臨界水を形成する。
また、バナジウム含有化合物、水及び相転移温度の調節作用を有する元素を含む原料液、バナジウム含有化合物と反応する化合物及び水を含む原料液、水熱反応後の反応液が流通する水熱反応部(8)及び加熱部配管(9)、並びに流路(12)、(13)、(14)、(15)等を構成する配管の材質は、特に制限されないが、ステンレス鋼、アルミニウム、鉄、ハステロイ等が挙げられる。
水熱反応部(8)の内部に構成される加熱部配管(9)の加熱部配管のライン長Lは、特に制限されるものではなく、合流点MPで合流した各種材料より構成される反応液が、2〜1000秒の時間内で通過できる長さであることが好ましい。本発明でいう加熱部配管(9)のライン長Lとは、各原料液が合流点MPを経て、加熱媒体(11)の入口INから、水熱処理後に、加熱媒体(11)の出口OUTに達するまでの配管部の長さをいう。
また、水熱反応部内の加熱部配管(9)を通過(流通)させる混合液の速度(流通速度)は、特に制限されないが、好ましくは0.1〜10m/秒、より好ましくは0.2〜8.0m/秒である。このような流通速度であれば、反応液に含まれるバナジウム含有化合物と、バナジウム含有化合物と反応する化合物とを、超臨界又は亜臨界状態の水の存在下で、有効に水熱反応させることができる。
本発明で規定する水熱反応部である加熱部配管(9)における反応液の通過時間は、上述の反応液の流通速度と加熱部配管のライン長Lにより決定されるが、流通速度は、各流路の内径と流量を制御することにより所望の条件とすることができる。
また、原料液を送液する流路(12)、(13)、水熱反応後の反応液に添加する冷媒や添加剤等を送液する流路(14)、反応液を冷却するための流路(15)の長さは、特に制限されないが、おおむね50〜10000mmの範囲内であり、好ましくは100〜1000mmの範囲内である。また、流路の間隙(配管の場合は内径)は、特に制限されないが、おおむね0.1〜10mmの範囲内であり、好ましくは1〜8mmの範囲内である。
なお、流路(12)、(13)、(14)、(15)は、上記材質、長さ、内径を有することが好ましいが、それぞれ同じであっても異なるものであってもよい。
上記の水熱反応工程によって得られた水熱反応後の反応液に対して、濾過(例えば、限外濾過)や遠心分離により、分散媒や溶媒の置換を行い、二酸化バナジウム含有粒子を水やアルコール(例えば、エタノール)等によって洗浄してもよい。
(水熱反応工程)
本発明に係る水熱反応工程では、バナジウム含有化合物、バナジウム含有化合物と反応する化合物、相転移温度の調節作用を有する元素及び水を含む原料液と、超臨界又は亜臨界状態の水と、を混合して得られる反応液(製造フロー1)、又は、バナジウム含有化合物及び相転移温度の調節作用を有する元素を含む原料液と、バナジウム含有化合物と反応する化合物を含む超臨界又は亜臨界状態の水と、を混合して得られる反応液(製造フロー2)を、それぞれ所定の温度及び圧力を付与した水熱反応部において、水熱反応させことによって、二酸化バナジウム粒子が得られる。
以下、本発明に係る水熱反応で適用する各材料及び条件の詳細について説明する。
(バナジウム含有化合物、バナジウム含有化合物と反応する化合物)
本発明に適用可能なバナジウム含有化合物(二酸化バナジウム含有粒子の原料)としては、例えば、五価のバナジウム(以下、バナジウム(V)と記載する。)及び四価のバナジウム(以下、バナジウム(IV)と記載する。)が挙げられる。バナジウム(V)としては、例えば、五酸化二バナジウム(V)(V)、バナジン酸アンモニウム(V)(NHVO)、三塩化酸化バナジウム(V)(VOCl)、バナジン酸ナトリウム(V)(NaVO)等が挙げられる。バナジウム(IV)としては、例えば、シュウ酸バナジル(IV)(VOC)、酸化硫酸バナジウム(硫酸バナジルとも称する。)(IV)(VOSO)、及び四酸化二バナジウム(IV)(V)を硫酸等の酸で溶解したものが例示できる。なお、上記のバナジウム含有化合物は原料液中に溶解していても良く、分散していてもよい。また、バナジウム含有化合物は1種単独で用いてもよいし2種以上を混合して用いてもよい。また、これらの化合物としては、水和した状態のもの(水和物)を用いてもよい。
バナジウム含有化合物と反応する化合物としては、原料液を水熱反応させることによって二酸化バナジウム含有粒子を製造することができるものであれば、特に制限されないが、例えば、アルカリ、還元剤等が挙げられる。
具体的には、バナジウム含有化合物として四価のバナジウム(IV)含有化合物を用いる場合には、バナジウム含有化合物と反応する化合物としては、アルカリを適用する。この場合、アルカリは、製造フロー1ではバナジウム含有化合物、相転移温度の調節作用を有する元素及び水を含む原料液に添加し、製造フロー2では超臨界又は亜臨界状態の水を形成するための水に添加される。
一方、バナジウム含有化合物として五価のバナジウム(V)含有化合物を用いる場合には、バナジウム含有化合物と反応する化合物としては、還元剤(例えば、ヒドラジン及びその水和物等)を適用することが好ましい。この場合、還元剤は、製造フロー1ではバナジウム含有化合物、相転移温度の調節作用を有する元素及び水を含む原料液に添加し、製造フロー2では超臨界又は亜臨界状態の水を形成するための水に添加される。
次いで、バナジウム含有化合物と、それに組み合わせるバナジウム含有化合物と反応する化合物の詳細について説明する。
(四価のバナジウム(IV)含有化合物の場合)
バナジウム(IV)含有化合物(二酸化バナジウム含有粒子の原料)は、特に制限されず、上記で列挙した化合物の中から適宜選択できる。その中でも、水熱反応後に副生成物をできるだけ生成させない観点から、酸化硫酸バナジウム(IV)(VOSO)であることが好ましい。なお、バナジウム(IV)含有化合物は、1種単独で用いてもよいし2種以上を混合して用いてもよい。
反応液に含まれるバナジウム(IV)含有化合物の初期濃度は、本発明の目的効果が得られる限りにおいて特に制限されないが、好ましくは0.1〜1000ミリモル/Lである。このような濃度であれば、バナジウム(IV)含有化合物を十分に溶解又は分散し、平均一次粒径が30nm以下の二酸化バナジウム含有粒子が得られ、二酸化バナジウム含有粒子のサーモクロミック性、及び二酸化バナジウム含有粒子を含む光学フィルムの透明性をより高めることができる。反応液に含まれるバナジウム(IV)化合物の初期濃度は、二酸化バナジウム含有粒子の平均一次粒径、すなわち二酸化バナジウム含有粒子のサーモクロミック性、及び二酸化バナジウム含有粒子を含む光学フィルムの透明性等の観点から、より好ましくは20〜600ミリモル/Lの範囲内であり、さらに好ましくは50〜400ミリモル/Lの範囲内である。なお、上記の「初期濃度」とは、水熱反応前における、反応液1L中のバナジウム(IV)含有化合物量(2種以上のバナジウム(IV)含有化合物を含む場合は、その合計量)である。
(バナジウム含有化合物と反応する化合物−1:アルカリ)
上記したとおり、バナジウム(IV)含有化合物とともに使用可能なバナジウム含有化合物と反応する化合物としては、アルカリであることが好ましい。すなわち、バナジウム含有化合物と反応する化合物が少なくとも1種のアルカリを含む反応液を用いて行うことが好ましい。さらに、バナジウム含有化合物と反応する化合物がアルカリのみから構成されていることがより好ましい。なお、本発明でいうアルカリとは、水溶液中において水酸化物イオン(OH)を発生させる物質を意味し、それ自体が水酸化物イオンを生じる化合物の他に、それ自体が水酸化物イオンを生じるわけではなく結果的に水酸化物イオンを生じる化合物も含まれる。
アルカリとしては、特に制限されないが、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水
酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。上記アルカリは、1種単独、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、アンモニア、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが好ましく、アンモニア又は水酸化ナトリウムがより好ましく、アンモニアがさらに好ましい。
なお、アルカリ及び水より構成される原料液中のアルカリ濃度は、特に制限されないが、例えば、0.01〜10mol/Lの範囲内であることが好ましく、0.1〜5mol/Lの範囲内であることがより好ましい。
ここで、各原料液を混合して得られる反応液中のアルカリの量は、特に制限されないが、例えば、バナジウム含有化合物、バナジウム含有化合物と反応する化合物、相転移温度の調節作用を有する元素及び超臨界又は亜臨界状態の水により構成される反応液のpHとして、6.0〜9.0の範囲内となる量を添加することが好ましく、7.0〜8.0の範囲内となる量を添加することがより好ましい。
(五価のバナジウム(V)含有化合物の場合)
バナジウム(V)含有化合物(二酸化バナジウム含有粒子の原料)は、特に制限されず、上記したものの中から適宜選択できる。水熱反応後に副生成物をできるだけ生成させない観点から、五酸化二バナジウム、バナジン酸アンモニウム(NHVO)又は三塩化酸化バナジウムが好ましい。より好ましくは、五酸化二バナジウム又はバナジン酸アンモニウムであり、特に好ましくはバナジン酸アンモニウムである。なお、バナジウム(V)含有化合物は、1種単独で用いてもよいし2種以上を混合して用いてもよい。
反応液に含まれるバナジウム(V)含有化合物の初期濃度は、本発明の目的効果が得られる限りにおいて特に制限されないが、好ましくは0.1〜1000ミリモル/Lの範囲内である。このような濃度であれば、還元剤が効率良く作用し、平均一次粒径が30nm以下の二酸化バナジウム含有粒子が得られ、サーモクロミック性をより高めることができる。反応液に含まれるバナジウム(V)化合物の初期濃度は、二酸化バナジウム含有粒子の平均一次粒径、すなわち二酸化バナジウム含有粒子のサーモクロミック性等の観点から、より好ましくは20〜600ミリモル/Lであり、さらに好ましくは50〜400ミリモル/Lである。なお、上記の「初期濃度」とは、水熱反応前における、反応液1L中のバナジウム(V)含有化合物量(2種以上のバナジウム(V)含有化合物を含む場合は、その合計量)である。
(バナジウム含有化合物と反応する化合物−2:還元剤)
上記したとおり、バナジウム(V)含有化合物とともに使用可能なバナジウム含有化合物と反応する化合物としては、還元剤であることが好ましい。還元剤としては、例えば、シュウ酸及びその水和物、ギ酸及びその水和物、ヒドラジン(N)及びその水和物(N・HO)、アスコルビン酸等の水溶性ビタミン類とその誘導体、エリソルビン酸ナトリウム、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、没食子酸プロピル、亜硫酸ナトリウム等の酸化防止剤、グルコース、フルクトース、グリセルアルデヒド、ラクトース、マルトース等の還元糖が例示できる。上記還元剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、本発明に適用する還元剤としては、ヒドラジン又はその水和物が好ましい。すなわち、水熱反応は、バナジウム(V)含有化合物と反応する化合物が、ヒドラジン及びその水和物の少なくとも一方を含む反応液で行われることが好ましい。さらに、バナジウム含有化合物と反応する化合物が、ヒドラジン及びその水和物のいずれか一方のみであることがより好ましい。
ここで、各原料液を混合して得られる反応液中の還元剤の量は、バナジウム(V)含有化合物に対して反応時のpHや反応中に分解する量も考慮して当モル以上添加することが好ましい。例えば、還元剤量は、バナジウム(V)含有化合物1モルに対しておおむね0.2〜1.0モルの範囲内であることがより好ましく、0.25〜0.80モルの範囲内であることがさらに好ましい。
また、バナジウム含有化合物として五酸化二バナジウム(V)(V)を用いる場合は、水熱反応前に、過酸化水素の存在下で前処理を行うことが好ましい。過酸化水素を添加することにより、バナジウム含有化合物を均一に溶解することができる。又は、バナジウム含有化合物は、水熱反応前に、過酸化水素、還元剤の存在下で前処理を行ってもよい。過酸化水素による前処理の後に還元剤による還元反応を採用する場合は、過酸化水素、還元剤を順次添加して、例えば、20〜40℃の温度範囲内で、必要に応じて撹拌しながら0.5〜10時間程度反応を行うことができる。
なお、各原料液を混合して得られる反応液のpHは、使用するバナジウム(V)含有化合物によって好ましいpHの範囲が異なり、還元剤の添加量により、所望のpHに調整することが好ましい。例えば、バナジン酸アンモニウム(NHVO)の場合は、pHが8.0〜11.0の範囲内となる量を添加することが好ましく、9.0〜10.0の範囲内となる量を添加することがより好ましい。五酸化二バナジウム又は三塩化酸化バナジウムの場合は、pHが3.5〜5.5の範囲内となる量を添加することが好ましく、4.0〜5.0の範囲内となる量を添加することがより好ましい。
(相転移温度の調節作用を有する元素)
本発明に係る二酸化バナジウム粒子は、下記式(1)で表される化学組成よりなることが好ましい。
式(1)
1−x
上記式(1)において、Mは、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、マグネシウ
ム(Mg)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、フッ素(F)及び
リン(P)からなる群から選択された元素である。xは0<x≦0.1を満たす数値を表
す。
上記元素の反応液への添加方法は、特に制限されず、公知の方法を用いることができる。反応液への添加方法としては、バナジウム含有化合物及び水を含む原料液に添加されることが好ましい。例えば、図3に示す流通式反応装置(10)においては、原料液容器1(4)に対してバナジウム含有化合物を添加する前又は後に、相転移温度の調節作用を有する元素を添加すればよい。また、原料液容器1(4)にバナジウム含有化合物と反応する化合物を添加する場合には、その前に相転移温度の調節作用を有する元素を添加することが好ましい。
また、水熱反応前の反応液へ直接添加される方法も用いることもできる。
(水熱反応条件:温度、圧力)
本発明の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法において、水熱反応工程では、反応液を水熱反応させて二酸化バナジウム含有粒子を形成する。なお、ここでいう「水熱反応」とは、高温の水、特に高温高圧の水の存在下で行われる鉱物の合成又は変質反応、すなわち化学反応を意味する。
本発明における水熱反応は、温度が150℃以上であり、かつ圧力が飽和蒸気圧よりも上である状態、すなわち水が超臨界又は亜臨界状態で存在している状態で行われることを特徴とする。このような高温高圧条件下で反応を行うことにより、水がほとんど存在し得ない常圧高温の場合と異なり、高圧では、水の存在により特異な反応が起こることが知られている。また、シリカやアルミナ等の酸化物の溶解性が向上し、反応速度が向上することも知られている。
水熱反応条件は、水が超臨界又は亜臨界状態で存在する条件である温度が150℃以上であり、かつ圧力が飽和蒸気圧よりも上であれば特に制限されず、他の条件(例えば、反応物の量、反応温度、反応圧力、反応時間など)に応じて適宜設定することができる。
ここで、150℃、250℃、270℃及び350℃における飽和水蒸気圧はそれぞれ、0.48MPa、3.98MPa、5.51MPa及び16.54MPaである。また、温度が374.15℃以上であり、かつ圧力が22.12MPa以上であると、水は超臨界状態となる。
水熱反応における温度及び圧力の条件としては、前述のように150〜500℃の範囲内であり、かつ圧力が飽和蒸気圧よりも上である状態であれば特に制限されないが、温度が300〜500℃の範囲内にあり、圧力が10〜40MPaの範囲内にあり、かつ設定温度における飽和蒸気圧よりも上の圧力となる条件であることがより好ましい条件である。温度が300℃以下であると、水の誘電率が高く、平均一次粒径が100nm以上の粗大粒子が生成してしまい、サーモクロミック性の低下が発生する。また、温度が500℃以上であると、二次凝集を引き起こし分散粒径が200nm以上となり、同様にサーモクロミック性が低下する。同様の観点から、温度が350〜450℃の範囲内であり、圧力が20〜40MPaの範囲内であり、かつ設定温度における飽和蒸気圧よりも上の圧力となる条件であることがさらに好ましく、温度が380〜400℃の範囲内で、圧力が25〜30MPaの範囲内の超臨界水の存在下で水熱反応を行うことがさらに好ましい。
本発明においては、水熱反応時間は、特に制限はないが、2〜1000秒の範囲内とすることが好ましい。上記のような条件であれば、二酸化バナジウム粒子を効率良く製造できる。また、二酸化バナジウム粒子の結晶性が低くなるおそれを回避できる。なお、上記水熱反応は、同じ条件を用いて1段階で行われてもよいし、条件を変化させて多段階で行われてもよい。本発明に係る水熱反応は、撹拌しながら実施することが好ましい。撹拌により、二酸化バナジウム粒子をより均一に調製できる。
(二酸化バナジウム粒子の洗浄)
上記の水熱反応により得られた二酸化バナジウム粒子の分散液中には、合成過程での生じた残渣などの不純物が含まれており、光学機能層を形成する際に二次凝集粒子発生のきっかけとなり、光学機能層の長期保存での劣化要因となることがあるため、あらかじめ分散液の段階で洗浄を行い、不純物を除去することが好ましい。
二酸化バナジウム粒子分散液中の不純物を除去する方法としては、従来公知の異物や不純物を分離する手段を適用することができ、例えば、二酸化バナジウム粒子分散液に遠心分離を施し、二酸化バナジウム粒子を沈殿させ、上澄み中の不純物を除去し、再び分散媒を添加、分散する方法でもよいし、限外濾過膜などの交換膜を用いて不純物を系外へ除去する方法でもよいが、二酸化バナジウム粒子の凝集を防止する観点からは、限外ろ過膜を用いる方法が好ましい。
限外ろ過膜の材質としては、セルロース系、ポリエーテルスルホン系、ポリテトラフルオロエチレン(略称:PTFE)などを挙げることができ、その中でも、ポリエーテルスルホン系、PTFEを用いることが好ましい。
(二酸化バナジウム粒子の分散)
洗浄を終えた二酸化バナジウム粒子の分散液は、粒子が凝集状態で存在しているため、機械的な力を加えて二酸化バナジウム粒子を分散させる必要がある。分散方法としては、サンドミル(ビーズミル)、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、超音波分散機、マイクロフルイダイザー、高速撹拌、超音波照射、圧力式分散(例えば、超高圧式ホモジナイザー ゴーリン等)、超音速分散等があるが、これらの中でもサンドミル(ビーズミル)又は圧力式分散が好ましい。サンドミル(ビーズミル)における粒子の粉砕においては、例えば、径の小さいビーズを使用し、ビーズの充填率を大きくすることによって粉砕効率を高めた条件で処理することが好ましい。
[シェル部]
本発明の二酸化バナジウム含有粒子を構成するシェル部は、エチレン性不飽和単量体の重合反応物を含むことを特徴とする。
本発明に係る重合性単量体としては、既に公知の物を用いることができ、特にラジカル重合性の物が好ましく、合成完了後、粒子に要求される熱特性、静電気特性を満たすように1種又は2種以上を組合せて用いることができる。このようなものの具体的な例としては、ビニル芳香族系単量体、アクリル系単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体、オレフィン系単量体等があり、これらを総称してエチレン性不飽和単量体と称する。
官能基を持ったエチレン性不飽和単量体の重合反応物をシェル部に含有することで、二酸化バナジウム粒子表面に官能基を設け、その官能基を利用し疎水化処理を行うことが可能であり、サーモクロミック応答性の更なる向上を図ることができる。官能基としては、例えば、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基が挙げられる。
ビニル芳香族系単量体としては、スチレン,o-メチルスチレン,m-メチルスチレン,p-メチルスチレン,p-メトキシスチレン,p-フェニルスチレン,p-クロルスチレン,p-エチルスチレン,p-ブチルスチレン,p-t-ブチルスチレ,p-ヘキシルスチレン,p-オクチルスチレン,p-ノニルスチレン,p-デシルスチレン,p-ドデシルスチレン,2,4-ジメチルスチレン,3,4-ジクロルスチレン等のスチレン系単量体及びその誘導体が挙げられる。
アクリル系単量体としては、アクリル酸,メタクリル酸,アクリル酸メチル,アクリル酸エチル,アクリル酸ブチル,アクリル酸-2-エチルヘキシル,アクリル酸シクロヘキシル,アクリル酸フェニル,メタクリル酸メチル,メタクリル酸エチル,メタクリル酸ブチル,メタクリル酸ヘキシル,メタクリル酸-2-エチルヘキシル,アクリル酸-2-ヒドロキシエチル,メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル,γ-アミノアクリル酸プロピル,メタクリル酸ステアリル,メタクリル酸ジメチルアミノエチル,メタクリル酸ジエチルアミノエチル、イソプロピルアクリルアミド等が挙げられる。
ビニルエステル系単量体としては、酢酸ビニル,プロピオン酸ビニル,ベンゾエ酸ビニル等が挙げられる。
ビニルエーテル系単量体としては、ビニルメチルエーテル,ビニルエチルエーテル,ビニルイソブチルエーテル,ビニルフェニルエーテル等が挙げられる。
オレフィン系単量体としては、エチレン,プロピレン,イソブチレン,1-ブテン,1-ペンテン,4-メチル-1-ペンテン等のモノオレフィン系単量体とブタジエン,イソプレン,クロロプレン等のジオレフィン系単量体などが挙げられる。
ゲル浸透クロマトグラフィー法を用いた、エチレン性不飽和単量体の重合反応物のスチレン換算による重量平均分子量は、1000〜300000の範囲内であることが好ましい。1000以上であれば、VO粒子表面への吸着が安定化して耐酸化性に効果をより発揮し、300000以下であれば、エチレン性不飽和単量体の重合反応物とフィルムを構成するバインダーとの相互作用によってフィルムの柔軟性がより維持できる。より好ましくは、3000〜200000の範囲内である。
ポリマー特性を改良するため、本発明の二酸化バナジウム含有粒子のシェル部は架橋性単量体を含有してもよい。特に二酸化バナジウム含有粒子の溶剤への分散液を作製する場合には、コア部を被覆する重合反応物の不溶化が必要である。架橋性単量体としてはジビニルベンゼン,ジビニルナフタレン,ジビニルエーテル,ジエチレングリコールメタクリレート,エチレングリコールジメタクリレート,ポリエチレングリコールジメタクリレート,フタル酸ジアリル等の不飽和結合を2個以上有する物を挙げることができる。架橋性単量体は、エチレン性不飽和単量体100質量部に対して、例えば0.1〜10質量部となる量で用いられることが好ましい。
本発明のエチレン性不飽和単量体の重合に用いる重合開始剤には、従来公知のものが使用でき、例えば、過硫酸カリウム(ペルオキソ二硫酸カリウム)、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩や2,2′-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩等の水溶性のアゾ系開始剤や過酸化水素等の水溶性の過酸化物を用いることができるが、これに限定されるものではない。また、水溶性の開始剤と還元剤を併用して用いることにより、レドックス系の開始剤を用いることも可能である。レドックス系の開始剤を用いることで、重合活性が上昇し重合温度の低下、重合時間の短縮を図ることが可能である。
分子量の調整やポリマーの特性を制御するために2種以上の開始剤を同時に用いることも可能である。
重合開始剤は、エチレン性不飽和単量体100質量部に対して、例えば0.1〜10質量部となる量で用いられることが好ましい。
分子量を調整する目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることも可能である。特に適したものとしては、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン類が最も用いられるが、これに限定されるものではなく、連鎖移動定数の大きい物質であるならば、どの様なものでも用いることができる。
連鎖移動剤は、エチレン性不飽和単量体100質量部に対して、例えば0.05〜5質量部となる量で用いられることが好ましい。
二酸化バナジウム粒子の周りに重合反応物の層を選択的に形成することを目的として、界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレン(n)アルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの4級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、アラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムベタインなどの両性界面活性剤などが挙げられ、また、フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤やカチオン性界面活性剤も使用することができる。
シェル部については、エチレン性不飽和単量体の組み合わせにより親水化度を調整することができる。水溶性単量体の混合比率を高くすると、シェル部の親水化度は高くなる。水に対する分散液の場合はシェル部の親水化度を高くし、溶媒に対する分散液の場合はシェル部の親水化度を低くする必要がある。本発明において、二酸化バナジウム含有粒子の表面への水分子を遮断するには、親水化度を低くすることが好ましい。
エチレン性不飽和単量体の好ましい量としては、二酸化バナジウム粒子の質量に対して1〜100質量%の範囲内であり、さらに好ましい範囲としては10〜70質量%の範囲内である。
[二酸化バナジウム含有粒子分散液の製造方法]
本発明の二酸化バナジウム含有粒子分散液の製造方法は、本発明の二酸化バナジウム含有粒子を含む分散液を製造する二酸化バナジウム含有粒子分散液の製造方法であって、少なくとも、水と、バナジウム化合物と、還元剤とを含有する液を調製し、水熱反応させて、前記コア部を形成する工程と、少なくとも、前記コア部と、重合開始剤とエチレン性不飽和単量体とを添加し、加熱して、水相で前記シェル部を形成する工程と、を有することを特徴とする。
また、前記シェル部を形成する工程で得られた二酸化バナジウム含有粒子分散液から前記水相を除去し、有機溶媒を添加する工程をさらに有することが好ましい。
具体的に、本発明に係る二酸化バナジウム含有粒子分散液の製造方法としては、一例として、二酸化バナジウム粒子分散液に、重合開始剤とエチレン性不飽和単量体とを含有する原料を添加し、加熱により重合を行い、重合反応物であるシェル部をコア部の表面上に形成する方法を挙げることができる。また、必要に応じて、重合開始剤を添加する前に界面活性剤を添加することや、重合開始剤と共に連鎖移動剤や架橋性単量体を加えることも好ましい。
エチレン性不飽和単量体を重合する方法としては、例えば、水系析出重合、乳化重合等の従来公知の方法を採用することができる。
重合反応の条件は特に制限されるものではないが、例えば50〜80℃にて、3〜10時間行う。また重合反応は、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
[二酸化バナジウム含有粒子集合体]
本発明の二酸化バナジウム含有粒子集合体は、上記二酸化バナジウム含有粒子を含み、コア部のZ平均粒子径が、5〜100nmの範囲内であることを特徴とする。
本発明の二酸化バナジウム含有粒子集合体は、本発明の二酸化バナジウム含有粒子の集合体であって、乾燥状態であってもよいし、分散液中に存在した状態であってもよい。
<サーモクロミックフィルム>
本発明のサーモクロミックフィルムは、少なくとも本発明のサーモクロミック性を示す二酸化バナジウム含有粒子を含有することを特徴とする。また、本発明のサーモクロミックフィルムは、本発明の二酸化バナジウム含有粒子集合体を含有することを特徴とする。
また、二酸化バナジウム含有粒子を保持する目的として、さらにバインダー樹脂を含有することができ、バインダー樹脂は疎水性バインダーであることが好ましい。
[サーモクロミックフィルムの構成]
本発明のサーモクロミックフィルムの代表的な構成例について、図を参照して説明する。
図4は、本発明のサーモクロミックフィルムの基本的な構成の一例で、透明基材上に、光学機能層が形成されている構成を示す概略断面図である。
図4に示すサーモクロミックフィルム(31)は、透明基材(32)上に、光学機能層(33)を形成した構成を有している。この光学機能層(33)とは、疎水性バインダー(B1)中に、本発明のサーモクロミック性を示すコア・シェル構造の二酸化バナジウム含有粒子が分散されて状態で存在している。この二酸化バナジウム含有粒子には、二酸化バナジウム含有粒子が独立して存在している二酸化バナジウム含有粒子の一次粒子(VO)と、2個以上の二酸化バナジウム含有粒子の集合体(凝集体ともいう)を構成している、二酸化バナジウム含有粒子の二次粒子(VO)が存在している。
また、本発明のサーモクロミックフィルムの好ましい態様の他の一つは、光学機能層が樹脂基材機能を兼ねたハイブリッド構成である。
図5は、本発明のサーモクロミックフィルム(31)の基本的な構成の他の一例を示す概略断面図である。図5で示すように、透明基材(32)と光学機能層(33)が同一層で構成されている態様であるハイブリッド光学機能層(32+33)で構成されており、透明基材を構成しているポリマーに、疎水性バインダー(B2)を用い、当該疎水性バインダー(B2)中に、二酸化バナジウム含有粒子が独立して存在している二酸化バナジウム含有粒子の一次粒子(VO)と、2個以上の二酸化バナジウム含有粒子の二次粒子(VO)が分散されて、単層で透明基材機能を兼ね備えた光学機能層を形成している構成である。
本発明のサーモクロミックフィルムとしては、上記説明した各構成層の他に、必要に応じて、各種機能層を設けてもよい。
本発明のサーモクロミックフィルムの総厚としては、特に制限はないが、10〜1500μmの範囲内であり、好ましくは20〜1000μmの範囲内であり、さらに好ましくは30〜500μmの範囲内であり、特に好ましくは40〜300μmの範囲内である。
本発明のサーモクロミックフィルムの光学特性として、JIS R3106(1998)で測定される可視光透過率としては、好ましくは30%以上であり、より好ましくは50%以上であり、さらに好ましくは60%以上である。
[サーモクロミックフィルムの各構成材料]
本発明のサーモクロミックフィルムは、少なくとも、二酸化バナジウム含有粒子と、バインダー樹脂を含有する光学機能層を有することが好ましい構成である。
以下、本発明のサーモクロミックフィルムの構成要素である光学機能層、必要により設ける樹脂基材の詳細について説明する。
(光学機能層)
本発明に係る光学機能層とは、少なくとも、本発明の二酸化バナジウム含有粒子と、バインダー樹脂とを含有する層をいう。光学機能層における二酸化バナジウム含有粒子の濃度としては、特に制限はないが、おおむね光学機能層全質量に対し、5〜60質量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは5〜40質量%の範囲内であり、さらに好ましくは5〜30質量%の範囲内である。
(親水性バインダー)
本発明のサーモクロミックフィルムは、二酸化バナジウム含有粒子を保持するバインダーとして、親水性バインダーを適用することができる。
本発明でいう親水性バインダーとは、100gの水に対し、液温25℃での溶解量が1.0g以上である樹脂であれば特に制限なく用いられる。
本発明に適用する親水性バインダーとしては、水溶性高分子を用いることが好ましい。
本発明に適用可能な親水性ポリマーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ゼラチン(例えば、特開2006−343391号公報記載のゼラチンを代表とする親水性高分子)、デンプン、グアーガム、アルギン酸塩、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリエチレングリコール、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマー、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ナフタリンスルホン酸縮合物や、アルブミン、カゼイン等のタンパク質、アルギン酸ソーダ、デキストリン、デキストラン、デキストラン硫酸塩等の糖誘導体などを挙げることができる。
(疎水性バインダー)
本発明のサーモクロミックフィルムは、二酸化バナジウム含有粒子を保持するバインダーとして、疎水性バインダーを適用することが、特に好ましい。
本発明でいう疎水性バインダーとは、100gの水に対し、液温25℃での溶解量が1.0g未満である樹脂をいい、さらに好ましくは、溶解量が0.5g未満の樹脂であり、さらに好ましくは、溶解量が0.25g未満の樹脂である。
本発明に適用する疎水性バインダーとしては、疎水性ポリマー、又は疎水性バインダーのモノマーを用い、硬化処理工程でポリマー化した樹脂であることが好ましい。
本発明に適用可能な疎水性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)等のオレフィン系ポリマー、アクリル酸エステル系共重合体;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂等の含ハロゲン系ポリマー;ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体等のスチレン系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610等のポリアミド;ポリアセタール;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシベンジレン;ポリアミドイミド;ポリブタジエン系ゴム、アクリル系ゴムを配合したABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂)やASA樹脂(アクリロニトリル−スチレン−アクリレート樹脂)、セルロース系樹脂、ブチラール系樹脂等が挙げられる。
また、本発明に適用可能な疎水性バインダーの一種として、疎水性バインダーのモノマーを用い、硬化処理工程でポリマー化する樹脂を挙げることができ、その代表的な疎水性バインダー材料としては、活性エネルギー線の照射により硬化する化合物であり、具体的にはラジカル活性種による重合反応により硬化するラジカル重合性化合物、及びカチオン活性種によるカチオン重合反応により硬化するカチオン重合性化合物を挙げることができる。
ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物が挙げられ、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エステル、ウレタン、アミドや無水物、アクリロニトリル、スチレン、さらに種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等のラジカル重合性化合物が挙げられる。具体的には、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、カルビトールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エポキシアクリレート等のアクリル酸誘導体、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン等のメタクリル誘導体、その他、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物の誘導体が挙げられる。
カチオン重合性化合物としては、各種公知のカチオン重合性のモノマーが使用できる。例えば、特開平6−9714号公報、特開2001−31892号公報、特開2001−40068号公報、特開2001−55507号公報、特開2001−310938号公報、特開2001−310937号公報、特開2001−220526号公報に例示されているエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。
上記化合物とともに光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤としては、「UV・EB硬化技術の応用と市場」(シーエムシー出版、田畑米穂監修/ラドテック研究会編集)などに掲載されているあらゆる公知の光重合開始剤を用いることができる。
本発明においては、二酸化バナジウム含有粒子の溶媒分散液と、バインダー樹脂等の各構成材料とを含む光学機能層形成用塗布液を、例えば、透明基材上に塗布した後、その後、紫外線又は電子線等の活性エネルギー線を照射することができる。これにより形成した光学機能層薄膜を構成する組成物は速やかに硬化する。
活性エネルギー線の光源としては、紫外線を照射する場合には、例えば紫外線LED、紫外線レーザー、水銀アークランプ、キセノンアークランプ、低圧水銀灯、蛍光ランプ、炭素アークランプ、タングステン−ハロゲン複写ランプ及び太陽光を使用することができる。電子線により硬化させる場合には、通常300eVの以下のエネルギーの電子線で硬化させるが、1〜5Mradの照射量で瞬時に硬化させることも可能である。
一方、本発明に係る光学機能層の他の形成方法としては、図4にその構成を例示するように、透明基材の構成材料である樹脂に、二酸化バナジウム粒子を含む溶媒分散液及び溶媒を添加、溶解して、成膜用ドープを調製した後、当該ドープを用いて従来公知のフィルム成膜で用いられている溶液流延法により、樹脂基材を兼ねたハイブリッド光学機能層を形成する方法も好適に用いることができる。
上記方法で適用可能な樹脂としては、疎水性樹脂が好ましく、従来サーモクロミックフィルムの成膜で用いられている樹脂材料を挙げることができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(略称:PET)、ポリエチレンナフタレート(略称:PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート(略称:TAC)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(略称:CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類及びそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート(略称:PC)、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(略称:PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル及びポリアリレート類、アートン(商品名JSR社製)及びアペル(商品名三井化学社製)等のシクロオレフィン系樹脂等を挙げることができる。
また、溶媒としては、特に制限はないが、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることができる。
上記各構成材料を混合、調製したドープを用いて、溶液流延法により透明基材を兼ねたハイブリッド光学機能層を成膜する。
(光学機能層のその他の添加剤)
本発明に係る光学機能層に、本発明の目的とする効果を損なわない範囲で適用可能な各種の添加剤を、以下に列挙する。例えば、特開昭57−74193号公報、特開昭57−87988号公報、及び特開昭62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号公報、特開昭57−87989号公報、特開昭60−72785号公報、特開昭61−146591号公報、特開平1−95091号公報、及び特開平3−13376号公報等に記載されている退色防止剤、アニオン、カチオン又はノニオンの各種界面活性剤、特開昭59−42993号公報、特開昭59−52689号公報、特開昭62−280069号公報、特開昭61−242871号公報、及び特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、防黴剤、帯電防止剤、マット剤、熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、減粘剤、滑剤、赤外線吸収剤、色素、顔料等の公知の各種添加剤などが挙げられる。
(透明基材)
本発明に適用可能な透明基材としては、透明であれば特に制限はなく、ガラス、石英、透明樹脂フィルム等を挙げることができるが、可撓性の付与及び生産適性(製造工程適性)の観点からは、透明樹脂フィルムであることが好ましい。本発明でいう「透明」とは、可視光領域における平均光線透過率が50%以上であることをいい、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上である。
本発明に係る透明基材の厚さは、30〜200μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは30〜100μmの範囲内であり、さらに好ましくは35〜70μmの範囲内である。透明基材の厚さが30μm以上であれば、取り扱い中にシワ等が発生しにくくなり、また厚さが200μm以下であれば、ガラス基材と貼り合わせる際のガラス曲面への追従性がよくなる。
本発明に係る透明基材は、二軸配向ポリエステルフィルムであることが好ましいが、未延伸又は少なくとも一方に延伸されたポリエステルフィルムを用いることもできる。強度の向上、熱膨張抑制の点から延伸フィルムが好ましい。特に、本発明のサーモクロミックフィルムを具備した合わせガラスを自動車用のガラスとして用いる場合、延伸フィルムがより好ましい。
本発明に係る透明基材は、サーモクロミックフィルムのシワの生成や光学機能層の割れを防止する観点から、温度150℃において、熱収縮率が0.1〜3.0%の範囲内であることが好ましく、1.5〜3.0%の範囲内であることがより好ましく、1.9〜2.7%であることがさらに好ましい。
本発明のサーモクロミックフィルムに適用可能な透明基材としては、透明であれば特に制限されることはないが、種々の樹脂フィルムを用いることが好ましく、例えば、ポリオレフィンフィルム(例えば、シクロオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステルフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリ塩化ビニル、トリアセチルセルロースフィルム等を用いることができ、好ましくは、シクロオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム、トリアセチルセルロースフィルムである。
透明樹脂フィルムは、成膜過程で片面又は両面にインラインで下引層塗布液を塗布することが好ましい。本発明においては、成膜工程中での下引塗布をインライン下引という。
[サーモクロミックフィルムの製造方法]
(製造方法1:水系形成法)
本発明のサーモクロミックフィルムの製造方法としては、少なくとも本発明の二酸化バナジウム含有粒子の分散液と親水性バインダーを用い、湿式塗布法により光学機能層を形成する方法である。湿式塗布法として具体的には、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、スライド型カーテン塗布法、又は米国特許第2761419号明細書、米国特許第2761791号明細書などに記載のスライドホッパー塗布法、エクストルージョンコート法などが挙げられる。
また、図5で示すような樹脂基材を兼ねたハイブリッド光学機能層を形成する場合は、溶液流延法を適用することができ、具体的な成膜方法としては、例えば、特開2013−067074号公報、特開2013−123868号公報、特開2013−202979号公報、特開2014−066958号公報、特開2014−095729号公報、特開2014−159082号公報等に記載されている溶液流延成膜法に従って形成することができる。
(製造方法2:有機溶媒系形成法)
有機溶媒を用いてサーモクロミックフィルムを製造する方法の一例として、得られた二酸化バナジウム含有粒子を分散させた水分散液から水相を除去し、そこに有機溶媒を添加することで、二酸化バナジウム含有粒子を水相から有機相に移動させる。そして、有機相に疎水性バインダーを混合して塗布し、乾燥することで光学機能層を形成し、サーモクロミックフィルムを形成する方法も好ましい。具体的な作製方法としては、水系のサーモクロミックフィルムの作製方法と同様である。また、二酸化バナジウム含有粒子を水相から有機相に移動させる方法としては、一般的な分液操作によって行われる。
<サーモクロミックフィルムの用途>
本発明のサーモクロミックフィルムの用途としては、ガラスに後貼りする構成とすることができ、このフィルムを貼合したガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に使用できる。フィルムを貼合したガラスは、これらの用途以外にも使用できる。前記フィルムを貼合したガラスは、建築用又は車両に用いることが好ましく、自動車のフロントガラス、サイドガラス、リアガラス又はルーフガラス等に使用できる。また、本発明のサーモクロミックフィルムは2枚のガラスの間に挟み合わせることによっても、使用することができる。
ガラス部材としては、無機ガラス及び有機ガラス(樹脂グレージング)が挙げられる。無機ガラスとしては、フロート板ガラス、熱線吸収板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、線入り板ガラス、及びグリーンガラス等の着色ガラス等が挙げられる。上記有機ガラスは、無機ガラスに代用される合成樹脂ガラスである。上記有機ガラス(樹脂グレージング)としては、ポリカーボネート板及びポリ(メタ)アクリル樹脂板等が挙げられる。上記ポリ(メタ)アクリル樹脂板としては、ポリメチル(メタ)アクリレート板等が挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
(二酸化バナジウム粒子1の調製)
図3に記載の水熱反応部を有する流通式反応装置を用い、下記の方法に従って、二酸化バナジウム粒子1を含む分散液を調製した。
原料液容器1(4)に、酸化硫酸バナジウム(IV)(VOSO)19.0gをイオン交換水(溶存酸素量:8.1mg/L)に溶解して300mLとし、この液を撹拌しながら、アルカリとして3.0mol/LのNH水溶液を68mL添加して、23℃におけるpHが8.0の原料液1を調製した。一方、原料液容器2(5)にはイオン交換水(溶存酸素量:8.1mg/L)を原料液2として収納した。
酸化硫酸バナジウム(IV)とアルカリを含む原料液1は、原料液容器1(4)から流路(12)内をポンプ(17)により送液し、加熱媒体(6)で、25℃で、30MPaの条件となるように加圧した。
一方、原料液2であるイオン交換水は、原料液容器2(5)から流路(13)内をポンプ(16)により送液し、加熱媒体(7)で、440℃で、30MPaの条件で加熱加圧して、超臨界水を得た。
次いで、図3で示す合流点(MP)で酸化硫酸バナジウム(IV)とアルカリを含む原料液1と、超臨界水である原料液2を、体積比として、原料液1:原料液2=1:4となる条件で混合して、反応液を形成し、水熱反応部(8)に送液した。水熱反応部では、加熱媒体内に配置されている加熱部配管(9)に送液した。加熱配管部における水熱反応条件としては、400℃、30MPaの条件で、処理時間(通過時間)を2秒となる条件で行い、二酸化バナジウム(VO)含有粒子を形成した。次いで、冷却部(20)にて反応液を冷却し、二酸化バナジウム粒子1の分散液を調製した。
(二酸化バナジウム粒子2の調製)
上記の二酸化バナジウム粒子1の調製において、酸化硫酸バナジウム(IV)とともに、タングステン酸アンモニウム((NH101241・5HO、和光純薬工業(株)製)をバナジウムに対するタングステンの原子比が0.2atm%となるよう投入した以外は同様にして、二酸化バナジウム粒子2の分散液を調製した。
(二酸化バナジウム粒子3の調製)
上記の二酸化バナジウム粒子2に対するタングステン酸アンモニウムの原子比が1atm%以外は同様にして、二酸化バナジウム粒子3の分散液を調製した。
(二酸化バナジウム粒子4の調製)
純水10mLに、バナジン酸アンモニウム(NHVO、和光純薬社製、特級)0.433gを混合し、さらに、ヒドラジン水和物(N・HO、和光純薬社製、特級)の5質量%水溶液をゆっくり滴下し、23℃におけるpH値が9.2の溶液(A)を調製した。調製した溶液(A)を、市販の水熱反応処理用オートクレーブ(三愛科学社製HU−25型、SUS製本体に25mL容積のテフロン(登録商標)製内筒を備える構成)内に入れ、100℃で8時間、引き続き270℃で24時間、水熱反応処理を施して、コア粒子である二酸化バナジウム粒子4を含む水系分散液を調製した。
(二酸化バナジウム粒子分散液11の調整)
得られた二酸化バナジウム粒子1及び水を含有する分散液について、限外ろ過を用いて洗浄を行い、固形分濃度5質量%になるように濃縮した。粒径30μmのジルコニアビーズを用いて、広島メタル&マシナリー社製のアペックスミルによって分散を行った。その後、二酸化バナジウム粒子の分散液を、濃度が0.01質量%となるよう水と混合して粒径測定用サンプルを調製した後、動的光散乱解析装置(ゼータサイザーナノS、マルバーン社製)によってZ平均粒子径(nm)を測定した。二酸化バナジウム粒子の一次粒子及び二次粒子のZ平均粒子径が80nmに到達するまで分散し、二酸化バナジウム粒子分散液11を調製した。
(二酸化バナジウム粒子分散液12の調整)
二酸化バナジウム粒子分散液11の調整における、二酸化バナジウム粒子1を二酸化バナジウム粒子2に変更した以外は同様にして、二酸化バナジウム粒子分散液12を調整した。
(二酸化バナジウム粒子分散液13の調整)
二酸化バナジウム粒子分散液11の調整における、二酸化バナジウム粒子1を二酸化バナジウム粒子3に変更した以外は同様にして、二酸化バナジウム粒子分散液13を調整した。
(二酸化バナジウム粒子分散液14の調整)
二酸化バナジウム粒子分散液12の調整における、二酸化バナジウム粒子の一次粒子及び二次粒子のZ平均粒子径を80nmから100nmに変更した以外は同様にして、二酸化バナジウム粒子分散液14を調整した。
(二酸化バナジウム粒子分散液15の調整)
二酸化バナジウム粒子分散液12の調整における、二酸化バナジウム粒子の一次粒子及び二次粒子のZ平均粒子径を80nmから110nmに変更した以外は同様にして、二酸化バナジウム粒子分散液15を調整した。
(二酸化バナジウム粒子分散液16の調整)
二酸化バナジウム粒子分散液11の調整における、二酸化バナジウム粒子1を二酸化バナジウム粒子4に変更した以外は同様にして、二酸化バナジウム粒子分散液16を調整した。
(二酸化バナジウム粒子分散液17の調整)
二酸化バナジウム粒子1を遠心分離機(日立工機製、CR21N)で沈降分離、上澄みを除去後、アセトンを添加し再分散を行った。再度遠心分離機で沈降分離し、上澄みを除去後、固形分濃度5質量%になるようにMIBK(メチルイソブチルケトン、 CH3C(=O)CH2CH(CH3)2)を添加し、二酸化バナジウム含有粒子1のMIBK分散液を得た。次に、粒径30μmのジルコニアビーズを用いて、広島メタル&マシナリー社製アペックスミルにより分散を行った。その後、二酸化バナジウム粒子の分散液を、濃度が0.01質量%となるよう水と混合して粒径測定用サンプルを調製した後、動的光散乱解析装置(ゼータサイザー ナノ S)によってZ平均粒子径(nm)を測定した。二酸化バナジウム粒子のZ平均粒子径が80nmに到達するまで分散し、二酸化バナジウム粒子分散液17を調製した。
(二酸化バナジウム粒子分散液18の調整)
二酸化バナジウム粒子分散液17の調整における、二酸化バナジウム粒子1を二酸化バナジウム粒子2に変更した以外は同様にして、二酸化バナジウム粒子分散液18を調整した。
(二酸化バナジウム含有粒子分散液101の調整)
撹拌装置、温度センサー、冷却管を取り付けたセパラブルフラスコに、上記の二酸化バナジウム粒子分散液11を1000質量部添加し、花王製のノニオン性界面活性剤エマルゲン120の1質量%水溶液1質量部を添加し撹拌を開始した後、液温度を80℃まで昇温させた。
次いで、重合開始剤(和光純薬製:VA−057)0.0126質量部をイオン交換水9質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、下記のエチレン性不飽和単量体を添加した。
スチレン 8.32質量部
n −ブチルアクリレート 3.40質量部
メタクリル酸 0.88質量部
添加終了後、2時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却し、二酸化バナジウム含有粒子分散液101を得た。
(二酸化バナジウム含有粒子分散液102〜114の調整)
二酸化バナジウム含有粒子分散液101の調整における、二酸化バナジウム粒子分散液、エチレン性不飽和単量体を表2に記載した材料に変更した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子分散液102〜114を調整した。
(二酸化バナジウム含有粒子分散液115の調整)
撹拌装置、温度センサー、冷却管を取り付けたセパラブルフラスコに、上記の二酸化バナジウム粒子分散液11を1000質量部添加し、花王製のノニオン性界面活性剤エマルゲン120の1質量%水溶液1重量部を添加し撹拌を開始した後、液温度を80℃まで昇温させた。
次いで、重合開始剤(和光純薬製:VA−057)0.0126質量部をイオン交換水9質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、下記エチレン性不飽和単量体を添加した。
スチレン 8.19質量部
n −ブチルアクリレート 3.40質量部
メタクリル酸 0.88質量部
ジビニルベンゼン 0.13質量部
添加終了後、2時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却し、二酸化バナジウム含有粒子分散液を得た。得られた二酸化バナジウム含有粒子分散液を遠心分離機(日立工機製、CR21N)で沈降分離、上澄みを除去後、アセトンを添加し再分散を行った。再度遠心分離機で沈降分離、上澄みを除去後、固形分濃度5質量%になるようにMIBKを添加し、二酸化バナジウム含有粒子分散液115を調整した。
(二酸化バナジウム含有粒子分散液116〜118の調整)
二酸化バナジウム含有粒子分散液115の調整における、二酸化バナジウム粒子分散液、エチレン性不飽和単量体を表2に記載した材料に変更した以外は同様にして、二酸化バナジウム含有粒子分散液116〜118を調整した。
(二酸化バナジウム含有粒子分散液119の調整)
二酸化バナジウム粒子分散液16を10g用意し、50mLのエタノールを添加し、28%のアンモニア水で23℃におけるpHを11.0に調整した。その後、強撹拌下でテトラエトキシシラン(略称:TEOS)を1.5g添加し、25℃で4時間維持して、二酸化バナジウム粒子表面に、シェル層としてSiOで構成されるアモルファス状金属酸化物層を形成して、二酸化バナジウム含有粒子分散液119を調製した。
(二酸化バナジウム含有粒子分散液120の調整)
まず、二酸化バナジウム粒子2及び水を含有する分散液について、限外ろ過を用いて洗浄を行い遠心分離機で沈降させ、60℃で真空乾燥を行った。この二酸化バナジウム粒子2を20gとエタノール(分散媒体)を、1500rad/minで30分間高速攪拌して分散させ、その後30分間超音波分散させた。その後、ポリビニルピロリドン(分散助剤)とシランカップリング剤(長鎖アルキルアミン基を含み、有機修飾剤)1gを入れ、高速攪拌機において70℃で2時間攪拌して、遠心分離して沈殿させ、60℃で真空乾燥することで、オルガノシリコンカップリング剤で修飾した二酸化バナジウム複合粉体を調整した。
上記の二酸化バナジウム複合粉体4gにイオン交換水95.5gを入れて高速攪拌して5分間あらかじめ分散してから修飾アクリル酸分散剤0.5gを入れ、粒径30μmのジルコニアビーズを用いて、広島メタル&マシナリー社製のアペックスミルによって分散を行った。その後、二酸化バナジウム粒子の分散液を、濃度が0.01質量%となるよう水と混合して粒径測定用サンプルを調製した後、動的光散乱解析装置(ゼータサイザーナノS、マルバーン社製)によってZ平均粒子径(nm)を測定した。二酸化バナジウム粒子の一次粒子及び二次粒子のZ平均粒子径が80nmに到達するまで分散し、二酸化バナジウム含有粒子分散液120を得た。
(サーモクロミックフィルム1の作製)
下記の材料を順次添加、混合及び溶解し、固形分4質量%になるように水で希釈し、水系の光学機能層形成用塗布液を調製した。
二酸化バナジウム含有粒子分散液101(粒子濃度:5質量%) 17.4質量部
親水性バインダー樹脂(GE191−103、昭和電工社製:5質量%)
53.3質量部
窒素含有化合物(グリシン:2質量%) 17質量部
ノイゲンXL−100(第一工業製薬社製:5質量%) 0.7質量部
次いで、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製A4300、両面易接着層)上に、押出コーターを用いて、上記光学機能層形成用塗布液を乾燥後の厚さが1.5μmとなるように塗布量を調整して湿式塗布を行った。その後、90℃の温風を1分間吹きつけて乾燥させて光学機能層201を形成し、サーモクロミックフィルム1を作製した。
(サーモクロミックフィルム2〜14の作製)
サーモクロミックフィルム1の作製における、二酸化バナジウム含有粒子分散液101を二酸化バナジウム含有粒子分散液102〜114に変更した以外は同様にして調整し、光学機能層202〜214を形成し、サーモクロミックフィルム2〜14を作製した。
(サーモクロミックフィルム15の作製)
下記の材料を順次添加、混合及び溶解し、固形分4質量%になるようにPGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)で希釈し、溶剤系の光学機能層形成用塗布液を調製した。
二酸化バナジウム含有粒子分散液115(粒子濃度:5質量%) 76.8質量部
疎水性バインダー樹脂(バイロン200、東洋紡社製:5質量%)PGME溶液
65質量部
次いで、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製A4300、両面易接着層)上に、押出コーターを用いて、上記光学機能層形成用塗布液を乾燥後の厚さが1.5μmとなるように塗布量を調整して湿式塗布を行った。その後90℃の温風を1分間吹きつけて乾燥させて光学機能層215を形成し、サーモクロミックフィルム15を作製した。
(サーモクロミックフィルム16〜18の作製)
サーモクロミックフィルム15の作製における、二酸化バナジウム含有粒子分散液115を二酸化バナジウム含有粒子分散液116〜118に変更した以外は同様にして調整し、光学機能層216〜218を形成し、サーモクロミックフィルム16〜18を作製した。
(サーモクロミックフィルム19の作製)
下記の材料を順次添加、混合及び溶解し、固形分4質量%になるように水で希釈し、水系の光学機能層形成用塗布液を調製した。
二酸化バナジウム含有粒子分散液119(粒子濃度:5質量%) 17.4質量部
親水性バインダー樹脂(GE191−103、昭和電工社製:5質量%)
53.3質量部
窒素含有化合物(グリシン:2質量%) 17質量部
ノイゲンXL−100(第一工業製薬社製:5質量%) 0.7質量部
次いで、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製A4300、両面易接着層)上に、押出コーターを用いて、上記光学機能層形成用塗布液を乾燥後の厚さが1.5μmとなるように塗布量を調整して湿式塗布を行った。その後90℃の温風を1分間吹きつけて乾燥させて光学機能層219を形成し、サーモクロミックフィルム19を作製した。
(サーモクロミックフィルム20の作製)
サーモクロミックフィルム19の作製における、二酸化バナジウム含有粒子分散液119を二酸化バナジウム含有粒子分散液120に変更した以外は同様にして調整し、光学機能層220を形成し、サーモクロミックフィルム20を作製した。
(サーモクロミックフィルム21〜22の作製)
サーモクロミックフィルム19の作製における、二酸化バナジウム含有粒子分散液119の二酸化バナジウム粒子分散液16を二酸化バナジウム粒子分散液11〜12に変更した以外は同様にして、光学機能層221〜222を形成し、サーモクロミックフィルム21〜22を作製した。
(サーモクロミックフィルム23の作製)
下記の材料を順次添加、混合及び溶解し、固形分4質量%になるようにPGMEで希釈し、溶剤系の光学機能層形成用塗布液を調製した。
二酸化バナジウム粒子分散液17(粒子濃度:5質量%) 76.8質量部
疎水性バインダー樹脂(バイロン200、東洋紡社製:5質量%)PGME溶液
65質量部
次いで、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製A4300、両面易接着層)上に、押出コーターを用いて、上記光学機能層形成用塗布液を乾燥後の厚さが1.5μmとなるように塗布量を調整して湿式塗布を行った。その後90℃の温風を1分間吹きつけて乾燥させて光学機能層223を形成し、サーモクロミックフィルム23を作製した。
(サーモクロミックフィルム24の作製)
サーモクロミックフィルム23の作製における、二酸化バナジウム粒子分散液17を二酸化バナジウム粒子分散液18に変更した以外は同様にして、光学機能層224を形成し、サーモクロミックフィルム24を作製した。
<評価方法>
上記作製したサーモクロミックフィルム1〜24について、下記の評価を行った。
[ヘイズの評価]
作製直後のサーモクロミックフィルム1〜24について、ヘイズメーター(NDH2000、日本電色工業製)を用いてヘイズ(%)を測定し、下記の基準に従ってヘイズの評価を行った。
◎:ヘイズが、2.0%未満である
○:ヘイズが、2.0%以上、3.0%未満である
△:ヘイズが、3.0%以上、4.0%未満である
×:ヘイズが、4.0%以上である。
[耐酸化性の評価]
(色差ΔEの評価)
作製したサーモクロミックフィルム1〜24について、分光光度計(日本分光製、V−670)を用いて、作製直後と、温度85℃・湿度85%RHの高温高湿環境下で500時間保存後の透過スペクトルを測定して、ΔL、Δa、Δbを算出して下記式を用いて色差(ΔE)を計算した。次いで得られた色差(ΔE)をもとに、下記の基準に従って湿熱耐性1(色差ΔE)を評価した。
式:ΔE=[(ΔL+(Δa+(Δb1/2
◎:色差ΔEが、2.0未満である
○:色差ΔEが、2.0以上、3.0未満である
△:色差ΔEが、3.0以上、4.0未満である
×:色差ΔEが、4.0以上である
(Δヘイズの評価)
作製したサーモクロミックフィルム1〜24について、作製直後と、温度85・湿度85%RHの高温高湿環境下で500時間保存した試料を作製し、それぞれの試料について、ヘイズメーター(NDH2000、日本電色工業製)を用いてヘイズ(%)を測定し、保存前後のΔヘイズ(=ヘイズ(保存後)−ヘイズ(保存前))の変化巾を算出し、下記評価基準に従って、湿熱耐性2(Δヘイズ)を評価した。
◎:Δヘイズが、2.0%未満である
○:Δヘイズが、2.0%以上、3.0%未満である
△:Δヘイズが、3.0%以上、4.0%未満である
×:Δヘイズが、4.0%以上である
[サーモクロミック性の評価]
作製直後のサーモクロミックフィルム1〜24について、温度10℃及び70℃の条件で分光光度計(日本分光製、V−670)を用いて、透過スペクトル及び反射スペクトルを測定した。次に、JIS R 3106:1998に記載の方法に従い、該測定値と日射反射重価係数との演算処理を行って日射反射率、日射透過率、可視光透過率を求め、日射熱取得率(TTS(%))を算出した。さらに、温度違いでのΔTTS(=TTS(10℃)―TTS(70℃))を算出し、下記評価基準に従って評価した。
同様にして、温度85℃・湿度85%RHの高温高湿環境下で500時間保存した試料についても、上記と同様の方法でΔTTSを算出し、下記評価基準に従って評価した。
○:ΔTTSが、8.0%以上である
△:ΔTTSが、5.0%以上、8.0%未満である
×:ΔTTSが、5.0%未満である
[サーモクロミック応答性の評価]
真空断熱材で閉ざされた縦20cm×横20cm×高さ20cmの空間の一面のみに、サーモクロミックフィルム1〜24の各々をガラス基材に貼合し、内側がサーモクロミックフィルムとなるように配置した。サーモクロミックフィルムを貼合したガラスより断熱空間内側に19cm離れた位置に温度計を設置し、サーモクロミックフィルムを貼合したガラスを配置した外側より、10cm離れた位置より150Wのハロゲンランプを点灯した。ハロゲンランプ点灯から温度が1℃上昇するのに要した時間(秒/℃)を測定し、下記の基準に従ってサーモクロミック応答性の評価を行った。
◎:温度上昇時間(秒/℃)が、300秒以上である
○:温度上昇時間(秒/℃)が、120秒以上、300秒未満である
△:温度上昇時間(秒/℃)が、60秒以上、120秒未満である
×:温度上昇時間(秒/℃)が、60秒未満である
下記表1〜3において、評価結果を示す。
Figure 2018145063
Figure 2018145063
Figure 2018145063
表3に示す結果より、本発明のサーモクロミックフィルム1〜18は、比較例のサーモクロミックフィルム19〜24に比べ、耐酸化性、サーモクロミック性及びサーモクロミック応答性に優れていることがわかる。
表3より、本発明のサーモクロミックフィルムにおいて、二酸化バナジウム含有粒子のコア部のZ平均粒子径が100nmであるフィルム8や、二酸化バナジウム含有粒子のコア部のZ平均粒子径が80nmであるフィルム4は、二酸化バナジウム含有粒子のコア部のZ平均粒子径が110nmであるフィルム14と比べて、フィルム作製直後のヘイズがより小さく、より優れている。これより、二酸化バナジウム含有粒子のコア部のZ平均粒子径が100nm以下であることによって、より微粒子で、かつより高い分散性を得ることができる。
表3より、本発明のサーモクロミックフィルムにおいて、エチレン性不飽和単量体の添加量が二酸化バナジウム粒子の質量に対して10.1質量%であるフィルム3、25.2質量%であるフィルム4、及び65.2質量%であるフィルム5は、エチレン性不飽和単量体の添加量が二酸化バナジウム粒子の質量に対して2.63質量%であるフィルム2と比べて、耐酸化性により優れている。これより、エチレン性不飽和単量体の添加量が、二酸化バナジウム粒子の質量に対して10〜70質量%程度であることによって、耐酸化性をより高めることができる。
表3より、本発明のサーモクロミックフィルムにおいて、溶剤系の二酸化バナジウム含有粒子分散液を用いたフィルム15は、水系の二酸化バナジウム含有粒子分散液を用いたフィルム1と比べて、耐酸化性とサーモクロミック応答性により優れている。これより、溶剤系の二酸化バナジウム含有粒子分散液を用いてサーモクロミックフィルムを作製することによって、耐酸化性とサーモクロミック応答性をより高めることができる。
表3より、本発明のサーモクロミックフィルムにおいて、エチレン性不飽和単量体において、水溶性単量体であるメタクリル酸メチルの含有量が少なく、シェル部の親水化度が低いフィルム10は、フィルム10よりもメタクリル酸メチルの含有量が多く、シェル部の親水化度が高いフィルム4及び11と比べて、耐酸化性により優れている。これより、シェル部の親水化度が低くなるよう、シェル部のエチレン性不飽和単量体の組成を選択することによって、耐酸化性をより高めることができる。
1 二酸化バナジウム含有粒子
2 コア部
3 シェル部
4 原料液容器1
5 原料液容器2
6、7、11 加熱媒体
8 水熱反応部
9 加熱部配管
10 流通式反応装置
12、13、14、15 流路
16、17、18 ポンプ
19 制御弁
20 冷却部
21、22 タンク
31 サーモクロミックフィルム
32 透明基材
33 光学機能層
B1、B2 疎水性バインダー
C 冷媒
IN 入口
L 加熱部配管のライン長
MP 合流点
OUT 出口
VO 二酸化バナジウム含有粒子の一次粒子
VO 二酸化バナジウム含有粒子の二次粒子

Claims (12)

  1. サーモクロミック性を示し、コア・シェル構造を有する二酸化バナジウム含有粒子であって、
    二酸化バナジウム粒子を含有するコア部を有し、前記コア部の表面上に、エチレン性不飽和単量体の重合反応物を含有するシェル部を有することを特徴とする二酸化バナジウム含有粒子。
  2. 前記エチレン性不飽和単量体の量が、前記二酸化バナジウム粒子の質量に対して、10〜70質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の二酸化バナジウム含有粒子。
  3. 前記二酸化バナジウム粒子が、下記式(1)で表される化学組成よりなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の二酸化バナジウム含有粒子。
    式(1)
    1-x
    [式(1)中、Mはタングステン、モリブデン、マグネシウム、鉄、ニッケル、アルミニウム、フッ素及びリンからなる群より選択される元素であり、xは0<x≦0.1を満たす数値を表す。]
  4. 請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の二酸化バナジウム含有粒子を含有することを特徴とするサーモクロミックフィルム。
  5. 請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の二酸化バナジウム含有粒子を含む分散液を製造する二酸化バナジウム含有粒子分散液の製造方法であって、
    少なくとも、水と、バナジウム化合物と、還元剤とを含有する液を調製し、水熱反応させて、前記コア部を形成する工程と、
    少なくとも、前記コア部と、重合開始剤とエチレン性不飽和単量体とを添加し、加熱して、水相で前記シェル部を形成する工程と、を有することを特徴とする二酸化バナジウム含有粒子分散液の製造方法。
  6. 前記シェル部を形成する工程で得られた二酸化バナジウム含有粒子分散液から前記水相を除去し、有機溶媒を添加する工程をさらに有することを特徴とする請求項5に記載の二酸化バナジウム含有粒子分散液の製造方法。
  7. 前記コア部のZ平均粒子径が、5〜100nmの範囲内であることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の二酸化バナジウム含有粒子分散液の製造方法。
  8. 請求項5に記載の二酸化バナジウム含有粒子分散液の製造方法で製造された二酸化バナジウム含有粒子分散液に親水性バインダーを混合して塗布液を調製する工程と、
    前記塗布液を塗布し、乾燥する工程と、を有することを特徴とするサーモクロミックフィルムの製造方法。
  9. 請求項6に記載の二酸化バナジウム含有粒子分散液の製造方法で製造された二酸化バナジウム含有粒子分散液に疎水性バインダーを混合して塗布液を調製する工程と、
    前記塗布液を塗布し、乾燥する工程と、を有することを特徴とするサーモクロミックフィルムの製造方法。
  10. 前記コア部のZ平均粒子径が、5〜100nmの範囲内であることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載のサーモクロミックフィルムの製造方法。
  11. 請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の二酸化バナジウム含有粒子を含む二酸化バナジウム含有粒子集合体であって、
    前記コア部のZ平均粒子径が、5〜100nmの範囲内であることを特徴とする二酸化バナジウム含有粒子集合体。
  12. 請求項11に記載の二酸化バナジウム含有粒子集合体を含むことを特徴とするサーモクロミックフィルム。
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