JP2018104592A - サーモクロミック組成物およびサーモクロミックフィルムならびにこれらの製造方法 - Google Patents

サーモクロミック組成物およびサーモクロミックフィルムならびにこれらの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、サーモクロミック性を有する二酸化バナジウム粒子を含有するサーモクロミック性の樹脂組成物において、高い透明性と、外部環境に対する高い耐久性とを両立させうる手段を提供する。【解決手段】本発明は、熱可塑性樹脂と、サーモクロミック性を有する二酸化バナジウム粒子と、アミノ基含有化合物と、を含有し、吸水率が、1質量%以下である、サーモクロミック組成物に関する。【選択図】なし

Description

本発明は、サーモクロミック組成物およびサーモクロミックフィルムならびにこれらの製造方法に関する。
車体や建物の窓ガラスに近赤外光遮蔽フィルムを適用することにより、車内のエア・コンディショナー等の冷房設備への負荷を低減する技術が盛んに開発されている。また、農業用フィルムにより被覆された農業用のハウスにおいても、近赤外光遮蔽フィルムを適用することにより、夏場の過剰な温度上昇を抑える検討がなされている。しかしながら、近赤外光遮蔽フィルムとしては、中緯度から高緯度地帯の冬期においては、逆に、太陽光をできるだけ取り込みたいというニーズがあり、近赤外光遮蔽フィルムが太陽光を遮蔽してしまうと、上記ニーズに応えられないという問題がある。
上記問題に対し、近赤外光遮蔽フィルムに、近赤外光の遮蔽や透過の光学的性質を温度により制御する(以下「サーモクロミック性」という。)ことができるサーモクロミック材料(サーモクロミック組成物)を適用する方法の検討がなされている。サーモクロミック組成物の代表例としては、二酸化バナジウム粒子(以下、VO粒子ともいう。)を含む組成物が挙げられる。二酸化バナジウム粒子は、67℃前後の温度で、半導体から金属に相転移を起こし、サーモクロミック性を示すことが知られている。これより、二酸化バナジウム粒子の上記特性を利用したサーモクロミック組成物からなるフィルムにより、高い温度の環境下では熱の原因となる近赤外光を遮蔽し、低い温度の環境下では近赤外光を透過する特性を発現することを可能とする技術が検討されている。かような技術によれば、夏期の暑い季節は近赤外光を遮蔽して室内の温度上昇を抑制し、冬期の寒い季節は、近赤外光の遮蔽を解除して光エネルギーを取り込むことができるようになる。
しかしながら、このような技術において、二酸化バナジウム粒子は、大気中の水分と酸素によって二酸化バナジウム粒子の酸化や結晶構造の変化が促進されることが知られており、二酸化バナジウム粒子を含有するサーモクロミック組成物では、時間経過とともにサーモクロミック性が低下することが問題となっている。
二酸化バナジウム粒子を含有するサーモクロミック組成物のサーモクロミック性の低下抑制方法としては、サーモクロミック組成物をガラス基板の間に挟みこむことで、サーモクロミック組成物中への水の浸入を抑制する技術が検討されている(特許文献1)。特許文献1では、この構成に加えて、ガラス用中間膜中の含水率と、ガラス用中間膜中の二酸化バナジウム粒子濃度の比と、を適切な範囲に制御することで、二酸化バナジウム粒子の劣化を抑えることが開示されている。
特開2012−206878号公報
しかしながら、特許文献1の技術は、サーモクロミック組成物をガラス基板によって保護しない場合には、サーモクロミック性の劣化防止効果は不十分であり、サーモクロミック組成物は耐久性の面でさらなる改善が求められていた。
また、本発明者は、大気中の水分や酸素に対する耐久性の改善を期待して、二酸化バナジウム粒子を低含水率である熱可塑性樹脂へと分散させる検討を行ったものの、サーモクロミック性の劣化防止効果は得られず、さらに悪いことにフィルムの透明性が低下することを見出した。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、サーモクロミック性を有する二酸化バナジウム粒子を含有するサーモクロミック性の樹脂組成物において、高い透明性と、外部環境に対する高い耐久性とを両立させうる手段を提供することを目的としている。
本発明者らは、上記課題に鑑み検討を進めた、その結果、サーモクロミック組成物にアミノ基含有化合物を含ませることで、上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の上記課題は、以下の手段により解決されうる;
熱可塑性樹脂と、サーモクロミック性を有する二酸化バナジウム粒子と、アミノ基含有化合物と、を含有し、
吸水率が、1質量%以下である、サーモクロミック組成物。
本発明によれば、サーモクロミック性を有する二酸化バナジウム粒子を含有するサーモクロミック性の樹脂組成物において、高い透明性と、外部環境に対する高い耐久性とを両立させうる手段が提供される。
本発明に係る二酸化バナジウム粒子の製造に適用可能な水熱反応部を具備した流通式反応装置の一例を示す概略図である。
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%RHの条件で測定する。
なお、本明細書において、(メタ)アクリルとは、アクリルまたはメタクリルを意味するものとする。
また、本明細書において、「溶液」との用語は、「溶液」または「分散液」を表すものとする。
<サーモクロミック組成物>
本発明の一形態に係るサーモクロミック組成物は、熱可塑性樹脂と、サーモクロミック性を有する二酸化バナジウム粒子と、アミノ基含有化合物と、を含有し、吸水率が、1質量%以下である。
二酸化バナジウム粒子を低含水率である熱可塑性樹脂に良好に分散させることは困難であり、これらを含むサーモクロミック組成物では高い透明性の実現は困難であった。この理由は、低含水率である熱可塑性樹脂は不活性であり表面エネルギーが非常に低く、一方で二酸化バナジウム粒子の表面は表面エネルギーが高いことから、二酸化バナジウム粒子は良好に分散することができないからであると考えられる。
酸化物を樹脂へ分散させる場合、酸化物の分散性を向上させる目的で分散剤を用いることが知られているが、低含水率である熱可塑性樹脂に二酸化バナジウム粒子の分散させるための分散剤は知られていなかった。
そこで、本発明者らは分散剤に着目して検討を重ねた結果、アミノ基含有化合物が含水率の少ない熱可塑性樹脂と二酸化バナジウム粒子との間で良好な分散剤として機能し、サーモクロミック組成物が高い透明性を実現できることを見出した。また、本発明者は、驚くべきことに、アミノ基含有化合物の使用によって、サーモクロミック組成物におけるサーモクロミック性の劣化が顕著に抑制されうることをさらに見出し、本発明を完成させた。
本発明者は、上記課題を解決しうるメカニズムを以下のように推測している。
サーモクロミック組成物の吸水率を一定以下とすることで、サーモクロミック組成物中に水や酸素が入り込む量が一定以下となり、二酸化バナジウム粒子の劣化が抑制される。
しかしながら、かようなサーモクロミック組成物の製造において、従来の分散剤は、二酸化バナジウムに対する吸着性が低く、二酸化バナジウム粒子の表面の被覆が不十分である。そのため、従来の分散剤は、その機能を十分に発揮することができず、二酸化バナジウム粒子の分散も不十分となる。
一方、アミノ基含有化合物は、特異的に二酸化バナジウムに強く吸着するため、二酸化バナジウム粒子の表面は、アミノ基含有化合物によって十分に被覆される。そして、アミノ基含有化合物は、分散剤としての機能を十分に発揮することができることから、二酸化バナジウム粒子の良好な分散を可能とする。その結果、高い透明性と、外部環境に対する耐久性の両立が可能となる。
さらに、二酸化バナジウム粒子の表面がアミノ基含有化合物によって十分に被覆されることから、水分や酸素が二酸化バナジウム粒子と接触することが妨げられる。その結果、サーモクロミック性の劣化が抑制され、外部環境に対する耐久性が顕著に向上する。
なお、上記メカニズムは推測であり、本発明の技術的範囲を制限するものではない。
サーモクロミック組成物は、吸水率が1質量%超であると、外部環境に対する耐久性が不足する。かかる理由は、サーモクロミック組成物の吸水率が大きいほど、水や酸素の侵入がより容易となるからであると推測している。これより、サーモクロミック組成物の吸水率は1質量%以下であり、0.1質量%以下であることが好ましく、0.08質量%以下であることがより好ましく、0.05質量%以下であることがさらに好ましく、0.03質量%以下であることが特に好ましい(下限0%)。また、吸水率は低い値であるほど好ましいが、疎水性を有する組成物内であっても全く吸水をしない材料を製造することは難しい。したがって、生産性の観点から、吸水率は0.001質量%以上であることが好ましい。なお、吸水率は、乾燥質量および吸水質量より計算で求めることができる。吸水率の測定方法の詳細は実施例に記載する。
吸水率は、サーモクロミック組成物を構成する熱可塑性樹脂の種類、比率の選択等によって制御することができる。
本発明の一形態に係るサーモクロミック組成物は、厚さ100μmにおいて、ヘイズが10%未満であることが好ましい。ヘイズが10%未満であると、透過したい波長の光のサーモクロミック組成物の表面または内部での拡散が減少されうることから、サーモクロミック性がより十分となる。同様の観点から、ヘイズは5%未満であることがより好ましく、3%未満であることがさらに好ましい(下限0%)。ヘイズ(初期ヘイズ値)は、ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH2000)を用いて測定することができる。ヘイズの測定方法の詳細は実施例に記載する。
本発明の一形態に係るサーモクロミック組成物の高温高湿保存性は、以下のように評価することができる。まず、85℃・85%RHに240時間保存した前後のサーモクロミック組成物について、それぞれ、20℃(低温時)および80℃(高温時)における波長1500nmでの光透過率T(%)を分光光度計V−670(日本分光株式会社製)に温調ユニット(日本分光株式会社製)を取り付けて測定する。次いで、保存前後のサーモクロミック組成物について、それぞれ、下記式に従い光透過率差ΔT(%)を算出する。
そして、保存前のΔT(%)に対する保存後のΔT(%)の変化の割合(本明細書では、保存前後のΔT(%)の変化割合(%)とも称する)を下記式に従って算出される値にて評価することができる。
本発明の一形態に係るサーモクロミック組成物は、保存前後のΔT(%)の変化割合(%)が60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることが特に好ましい(上限100質量%)。高温高湿保存性の測定方法の詳細は実施例に記載する。
ヘイズ、高温高湿保存性は、サーモクロミック組成物を構成する各成分の種類、比率、サーモクロミック組成物の製造方法の選択等によって制御することができる。
<二酸化バナジウム粒子>
本発明の一形態に係るサーモクロミック組成物は、サーモクロミック性を有する二酸化バナジウム粒子(本明細書では、単に「二酸化バナジウム粒子」とも称する)を含む。二酸化バナジウム粒子は、サーモクロミック組成物にサーモクロミック性を付与する機能を有する。
二酸化バナジウム粒子の結晶形は、特に制限はないが、サーモクロミック性(自動調光性)を効率よく発現させるとの観点から、ルチル型の二酸化バナジウム粒子(VO粒子)を含むことが好ましい。ルチル型のVO粒子は、転移温度以下では、単斜晶系(monoclinic)の構造を有するため、M型とも呼ばれる。しかしながら、本発明の一形態に係る二酸化バナジウム粒子は、目的を損なわない範囲で、A型、またはB型などの他の結晶型のVO粒子を含んでもよい。
サーモクロミック組成物の調製に用いる二酸化バナジウム粒子の一次粒子の数平均粒子径は、10〜100nmの範囲内であることが好ましい。
また、サーモクロミック組成物の状態においては、二酸化バナジウム粒子の系内の存在粒子(一次粒子または二次粒子)の数平均粒子径が、200nm以下であることが好ましく、1〜180nmの範囲内がより好ましく、5〜100nmの範囲内であることがさらに好ましい。
なお、本明細書において、「粒子」とは、その系内の存在粒子(一次粒子または二次粒子)の数平均粒子径が1μm(1000nm)以下のサイズであるものを表す。
二酸化バナジウム粒子の粒子径は均一なものが好ましいが、一定の割合でその粒子サイズの異なるものを混合しているものが好ましい場合もある。
粒子径の測定は当該分野で知られた方法によりそれを行うことができ、例えば、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)、吸着法、光散乱法、X線小角散乱(small angle X−ray scattering;SAXS)などにより測定できる。TEMでは、粒子径分布が広い場合には、視野内に入った粒子が全粒子を代表しているか否かに注意を払う必要がある。吸着法は、N吸着などによりBET表面積を評価するものである。
また、二酸化バナジウム粒子のアスペクト比としては、1.0〜3.0の範囲内であることが好ましい。このような特徴をもつ二酸化バナジウム粒子では、アスペクト比が十分に小さく、形状が等方的であるので、溶液に添加した場合の分散安定性が良好である。加えて、単結晶の粒子径が十分に小さいので、従来の粒子に比べて、良好なサーモクロミック性を発揮することができる。
本発明に係る二酸化バナジウム粒子では、二酸化バナジウム(VO)の他に、例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、スズ(Sn)、レニウム(Re)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、ゲルマニウム(Ge)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、フッ素(F)およびリン(P)からなる群から選択された、少なくとも一つの元素を含んでいてもよい。このような元素の添加により、二酸化バナジウム粒子の相転移特性(特に、相転移温度)を制御することができる点で有効である。なお、最終的に得られる二酸化バナジウム粒子に対する、そのような添加物の総量は、バナジウム(V)原子100原子%に対して、0.1〜10原子%程度であることが好ましい。
サーモクロミック組成物中における二酸化バナジウム粒子の含有量は、サーモクロミック組成物の総質量に対して、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましい。二酸化バナジウム粒子の含有量が増加すると、サーモクロミック組成物のサーモクロミック性がより良好となり、二酸化バナジウム粒子の含有量が減少すると、サーモクロミック組成物の耐久性および透明性がより向上する。同様の観点から、サーモクロミック組成物中における二酸化バナジウム粒子の含有量は、サーモクロミック組成物の総質量に対して、0.05質量部以上5質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以上1質量部以下であることがさらに好ましい。
(二酸化バナジウム粒子の調製方法)
二酸化バナジウム粒子の調製方法は、一般に固相法により合成されたVO焼結体を粉砕する方法と、五酸化二バナジウム(V)やバナジン酸アンモニウムなどのバナジウム化合物を原料として、有機溶媒ではなく水溶液を使用した液相でVOを合成しながら粒子成長させる水系合成法が好ましく用いられる。これらの中でも、水系合成法は、平均一次粒子径が小さく、粒子径のばらつきを抑制することができる観点からより好ましい。
[水系合成法]
水系合成法としては、水熱合成法と、超臨界状態を用いた水系合成法(超臨界水熱合成法)とが挙げられる。超臨界水熱合成法の詳細については、例えば、特開2010−58984号公報の段落「0011」および「0015」〜「0018」等に記載されている製造方法を参照することができる。
以下に、代表的な水熱法による二酸化バナジウム粒子の調製工程を示す。ただし、本発明に係る二酸化バナジウム粒子の調製方法はこれに限定されるものではない。
(工程1)
まず、下記工程1−1または下記工程1−2によって、溶液(A)または溶液(B)を調製する。
(工程1−1)
バナジウム(V)を含む物質(I)と、ヒドラジン(N)またはその水和物(N・nHO)と、水とを混ぜて溶液(A)を調製する。この溶液は、物質(I)が水中に溶解した水溶液であってもよく、また物質(I)が水中に分散した懸濁液であってもよい。
物質(I)としては、例えば、五酸化二バナジウム(V)、バナジン酸アンモニウム(NHVO)、三塩化酸化バナジウム(VOCl)、メタバナジン酸ナトリウム(NaVO)等が挙げられる。上記物質(I)は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができるが、1種単独で用いることが好ましい。なお、物質(I)としては、五価のバナジウム(V)を含む化合物であれば、特に限定されない。ヒドラジン(N)およびその水和物(N・nHO)は、物質(I)の還元剤として機能するものであって、水に容易に溶解する性質を有する。
(工程1−2)
バナジウム(IV)を含む物質(II)と、アルカリと、水とを混ぜて溶液(B)を調製する。この溶液は、物質(II)が水中に溶解した水溶液であってもよく、また物質(II)が水中に分散した懸濁液であってもよい。
物質(II)としては、例えば、シュウ酸バナジル(IV)n水和物(VOC・nHO)、酸化硫酸バナジウム(以下、硫酸バナジルとも称する)(IV)(VOSO)、四酸化二バナジウム(IV)(V)等が挙げられる。上記物質(II)は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができるが、1種単独で用いることが好ましい。アルカリとは、水溶液中において水酸化物イオン(OH)を発生させる物質を意味し、化合物自体が電離して水酸化物イオンを生じさせるものだけではなく、化合物自体が電離して水酸化物イオンを生じさせるわけではないが、結果的に水酸化物イオンを生じるものも含まれるものとする。アルカリとしては、特に制限されないが、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムおよび炭酸水素カリウム等が挙げられる。上記アルカリは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
溶液(A)または溶液(B)は、最終的に得られる二酸化バナジウム(VO)の単結晶粒子に元素を添加するため、添加する元素を含む物質(III)をさらに含有していてもよい。添加する元素としては、例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、スズ(Sn)、レニウム(Re)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、ゲルマニウム(Ge)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、フッ素(F)またはリン(P)が挙げられる。上記物質(III)は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの元素を、最終的に得られる二酸化バナジウム(VO)含有の単結晶粒子に添加することにより、二酸化バナジウム粒子のサーモクロミック性、特に、転移温度を制御することができる。
また、この溶液(A)または溶液(B)には、酸化性または還元性を有する物質(IV)がさらに含有されていてもよい。物質(IV)としては、例えば、過酸化水素(H)が挙げられる。酸化性または還元性を有する物質(IV)を添加することにより、溶液のpHを調整したり、物質(I)であるバナジウム(V)を含む物質を均一に溶解させたりすることができる。
(工程2)
次に、調製した溶液(A)または溶液(B)を用いて、水熱反応処理または超臨界水熱反応処理を行う。ここで、「水熱反応」とは、温度と圧力が、水の臨界点(374℃、22MPa)よりも低い熱水(亜臨界水)中において生じる化学反応を意味する。また、「超臨界水熱反応」とは、超臨界水中において生じる化学反応を意味する。
水熱反応処理または超臨界水熱反応処理は、高圧用反応分解容器、オートクレーブやテストチューブ型反応容器、マイクロリアクター型流通式反応装置等の装置を用いて行うことができる。これらの処理により、二酸化バナジウム(VO)含有の単結晶粒子が得られる。
水熱反応処理または超臨界水熱反応処理の条件(例えば、反応物の量、処理温度、処理圧力、処理時間等)は、適宜設定される。
水熱反応処理の温度は、例えば、好ましくは250〜350℃の範囲内であり、より好ましくは250〜300℃の範囲内であり、さらに好ましくは250〜280℃の範囲内である。温度を低くすることにより、得られる単結晶粒子の粒子径を小さくすることができるが、過度に粒子径が小さいと、結晶性が低くなる。また、水熱反応処理の時間は、例えば1時間〜5日の範囲内であることが好ましい。時間を長くすることにより、得られる単結晶粒子の粒子径等を制御することができるが、過度に長い処理時間では、エネルギー消費量が多くなる。
超臨界水熱反応の温度は、水が超臨界状態を形成していれば特に制限されないが、好ましくは270〜450℃の範囲内であり、より好ましくは350〜450℃の範囲内であり、さらに好ましくは380〜400℃の範囲内である。超臨界水熱反応の圧力は、水が超臨界状態を形成していれば特に制限されないが、好ましくは、25〜30MPaである。超臨界水熱反応処理の時間は、例えば、0.01秒〜10秒であることが好ましい。時間を適度に長くすることにより、二酸化バナジウム粒子をより確実に形成することができ、時間を適度に短くすることにより、粒子径をより均一にすることができる。超臨界水熱合成法は、ごく短時間で液混合および反応が完了することとなるためより生産性に優れる方法である。さらに、超臨界水熱合成法は、二酸化バナジウム粒子について、特に粒子径が小さい側に制御可能な粒子径範囲を拡大させ、粒子径分布の均一性がより向上させうるため、より高品質な二酸化バナジウム粒子をさせうる方法である。これより、二酸化バナジウム粒子は、超臨界水熱合成法を用いて調製することが特に好ましい。
以上の反応の方式としては、バッチ式(回分式)、セミバッチ式(半回分式)で行うことができるが、好ましくは前述の耐圧性の管型または槽型などのフロー型リアクター(流通型反応器)を用いて亜臨界または超臨界状態にある高温高圧水と混合して合成する連続法も使用でき、特には管型のリアクターを利用する連続法を好適に利用できる。
以上の工程1および工程2を経て、サーモクロミック性を有する二酸化バナジウム(VO)含有の単結晶粒子を含む分散液が得られる。
上記水系合成法により調製された二酸化バナジウム粒子の分散液中には、合成過程で生じた残渣などの不純物が含まれており、サーモクロミック組成物中における二次凝集粒子発生のきっかけとなり、サーモクロミック組成物の長期保存での劣化要因となることがあり、あらかじめ分散液の段階で不純物を除去することが好ましい。
二酸化バナジウム粒子分散液中の不純物を除去する方法としては、従来公知の異物や不純物を分離する手段を適用することができる。例えば、二酸化バナジウム粒子分散液に遠心分離を施し、二酸化バナジウム粒子を沈殿させ、上澄み中の不純物を除去し、再び分散媒を添加、分散する方法や、限外濾過膜などの交換膜を用いて不純物を系外へ除去する方法等を好ましく適用することができる。これらの中でも、二酸化バナジウム粒子の凝集を防止する観点から、限外濾過膜を用いる方法が最も好ましい。
限外濾過膜の材質としては、セルロース系、ポリエーテルスルホン系、ポリテトラフルオロエチレン(略称:PTFE)などを挙げることができる。これらの中でも、ポリエーテルスルホン系、PTFEを用いることが好ましい。
このように不純物を除去することで、サーモクロミック性を有する二酸化バナジウム(VO)含有の単結晶粒子を含む分散液を得ることができる。また、この分散液を乾燥させることで、二酸化バナジウム粒子の粉体(以下、二酸化バナジウム含有微粒子粉体とも称する)を調製することができる。
(粉砕法)
また、固相法により合成されたVO焼結体を粉砕する方法により、二酸化バナジウム(VO)含有の単結晶粒子を含む分散液を得ることもできる。また、この分散液を乾燥させることで、二酸化バナジウム含有微粒子粉体を調製することができる。
二酸化バナジウムを微粒子化する方法は種々の方法があるが、ビーズミル、超音波破砕、高圧ホモジナイザー等種々の方法があり、いずれの方法を用いても二酸化バナジウム粒子を作製することができる。
ビーズミルでは、種々のビーズを用いることができるが、硬度、価格の観点からジルコニアビーズを利用するのが好ましい。
<熱可塑性樹脂>
本発明の一形態に係るサーモクロミック組成物は、熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂は、バインダー樹脂であり、二酸化バナジウム粒子を大気中の酸素または水分から保護する機能を有すると共に、二酸化バナジウム粒子を保持し、サーモクロミック組成物をフィルム等へ成形することを可能とする機能を有する。
熱可塑性樹脂は、特に制限されず、公知の熱可塑性樹脂を適宜使用することができる。大気中の水分や酸素に対する高い耐久性を付与するとの観点から、低含水率である熱可塑性樹脂であることが好ましく、疎水性高分子であることがより好ましい。これにより、サーモクロミック組成物の吸水率をより確実に1質量%以下とすることができる。本明細書では、疎水性高分子とは、100gの水に対し、液温25℃での水に対する溶解量が1.0g未満である樹脂を表す。疎水性高分子としては、さらに好ましくは、溶解量が0.5g未満の樹脂であり、特に好ましくは、溶解量が0.25g未満の樹脂である。
本発明の一形態に係るサーモクロミック組成物は、透明性および大気中の水分や酸素に対する耐久性の観点から、疎水性高分子として、塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、およびフッ素系樹脂からなる群から選択される少なくとも1つを含有することが好ましい。
[塩化ビニル系樹脂]
塩化ビニル系樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ポリ塩化ビニル;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−(メタ)アクリル酸共重合体、塩化ビニル−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、塩化ビニル−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩化ビニル−スチレン共重合体、塩化ビニル−イソブチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−スチレン−無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル−スチレン−アクリロニトリル三元共重合体、塩化ビニル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−イソプレン共重合体、塩化ビニル−塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−各種ビニルエーテル共重合体等の塩化ビニルと、塩化ビニルと共重合可能な他のモノマーとの共重合体等を挙げることができる。これらの中でも、透明性および大気中の水分や酸素に対する耐久性の観点から、ポリ塩化ビニルが好ましい。
また本発明の目的に反しない限度において、塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニル系樹脂組成物に通常使用される他の樹脂をさらに含んでいてもよい。上記他の樹脂としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体;メタクリル酸エステル−スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル−スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル−スチレン/エチレン−プロピレンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル−スチレン/アクリル酸エステルグラフト共重合体、メタクリル酸エステル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体、メタクリル酸エステル・アクリロニトリル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体等のコア・シェルゴム等をあげることができる。
[ポリオレフィン系樹脂]
ポリオレフィン系樹脂としては、特に制限されないが、例えば、分岐状低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリエチレン系樹脂;ホモポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−酢酸ビニル共重合体等のポリプロピレン系樹脂;ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、エチルテトラシクロドデセン、エチリデンテトラシクロドデセン、テトラシクロ〔7.4.0.110,13.02,7〕トリデカ−2,4,6,11−テトラエン等の多環構造の不飽和炭化水素およびその誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)−1−シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン、シクロヘプテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン等の単環構造の不飽和炭化水素およびその誘導体等を重合または共重合したもの、およびこれらと環状オレフィン以外の単量体とを付加共重合したもの、ならびにこれらを水素添加反応させて分子中の不飽和結合を飽和結合に変えたもの等の環状オレフィン系樹脂等が挙げられる。
ここで、本明細書では、低密度ポリエチレン樹脂とは、密度が0.910g/cm以上0.930g/cm未満のポリエチレン樹脂を表すものとする。また、中密度ポリエチレン樹脂とは、密度が0.930g/cm以上0.942g/cm未満のポリエチレン樹脂を表すものとする。そして、高密度ポリエチレン樹脂とは、密度が0.942g/cm以上のポリエチレン樹脂を表すものとする。
また、上記エチレン−α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィンとしては、特に制限されないが、例えば、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が挙げられる。上記プロピレン−α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が挙げられる。
これらの中でも、透明性および大気中の水分や酸素に対する耐久性の観点から、ポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂が好ましく、ポリエチレン系樹脂がより好ましく、分岐状低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)または直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)がさらに好ましく、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)が特に好ましい。
[フッ素系樹脂]
フッ素系樹脂としては、特に制限されないが、フッ化ビニル系重合体、フッ化ビニリデン系重合体(PVDF)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデン系共重合体(THV)、テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体、テトラフルオロエチレン−フッ化ビニリデン−プロピレン系共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体(ETFE)、ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系共重合体(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)−テトラフルオロエチレン系共重合体(PFA)等が挙げられる。これらの中でも、透明性および大気中の水分や酸素に対する耐久性の観点から、ETFE、HFP、PFA、THV、またはPVDFが好ましく、ETFEまたはPVDFがより好ましく、ETFEがさらに好ましい。
熱可塑性樹脂は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
熱可塑性樹脂が塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、またはフッ素系樹脂を含む場合は、透明性および大気中の水分や酸素に対する耐久性の観点から、熱可塑性樹脂の総質量に対して、これら3種の樹脂の合計質量は、60質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
サーモクロミック組成物中における熱可塑性樹脂の含有量は、サーモクロミック組成物の総質量に対して、80質量%以上99.99質量%以下であることが好ましい。熱可塑性樹脂の含有量が増加すると、サーモクロミック組成物の透明性および大気中の水分や酸素に対する耐久性がより向上し、熱可塑性樹脂の含有量が減少すると、サーモクロミック性がより向上する。同様の観点から、サーモクロミック組成物中における熱可塑性樹脂の含有量は、サーモクロミック組成物の総質量に対して、95質量%以上99.9質量%以下であることがより好ましく、98.5質量%以上99質量%以下であることがさらに好ましい。
<アミノ基含有化合物>
本発明の一形態に係るサーモクロミック組成物は、アミノ基含有化合物を含む。アミノ基含有化合物は、熱可塑性樹脂、特に低含水率である熱可塑性樹脂中に二酸化バナジウム粒子を十分に分散させる機能を有する。
アミノ基含有化合物は、アミノ基およびカルボキシル基を有するアミノカルボン酸であることが好ましく、アミノ下記一般式(1)、一般式(2)、または一般式(3)で表される部分構造を有する化合物であることがさらに好ましい。
(一般式(2)中、Zは炭素原子、炭素原子とともに5員環または6員環を形成するのに必要な原子群を表す。)
(一般式(3)中、nは、2以上の整数を表す。)
一般式(3)で表される部分構造を有する化合物は、置換基として炭素数1〜5のアルキル基を有することが好ましい。
本発明の好ましい一形態に係るサーモクロミック組成物において、一般式(1)で表される部分構造を有する化合物は、下記一般式(4)で表される構造を有する化合物であることが好ましい。
(一般式(4)中、R、R、およびRはそれぞれ独立に水素原子、または炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
炭素数1〜5のアルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、n−ブチル基などが挙げられる。炭素数1〜5のアルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、ヒドロキシ基、スルファニル基、フェニル基などが挙げられる。
置換基は、ヒドロキシ基、スルファニル基であることが好ましく、ヒドロキシ基であることがより好ましい。
が炭素数1〜5のアルキル基であり、かつRおよびRが水素原子であることがより好ましい。
また、本発明の好ましい一形態に係るサーモクロミック組成物において、一般式(2)で表される部分構造を有する化合物は、下記一般式(5)で表される構造を有する化合物であることが好ましい。
一般式(5)において、Zは炭素原子、または炭素原子とともに5員環または6員環を形成するのに必要な原子群を表す。Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルカルボンアミド基、アリールカルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アシルオキシ基、カルボキシ基、カルボニル基、スルホニル基、アミノ基、ヒドロキシ基または複素環基を表す。nは0〜4の整数を表す。また複素環を形成する窒素原子が、N−オキシド構造をとってもよい。
アミノ基含有化合物の具体的な化合物としては、下記の化合物例が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
アミノ基含有化合物は、これらの中でも、ロイシン、イソロイシン、システイン、サルコシンまたはフェニルアラニンであることが特に好ましく、サルコシンまたはフェニルアラニンであることが最も好ましい。アミノ基含有化合物が、L体およびD体を有する場合はそのどちらを用いてもよく、これらの混合物であってもよいが、入手容易性の観点からL体であることが好ましい。
サーモクロミック組成物中におけるアミノ基含有化合物は、二酸化バナジウム粒子100質量部に対して、1質量部以上300質量部以下であることが好ましい。アミノ基含有化合物の含有量が増加すると、サーモクロミック組成物の透明性および外部環境に対する耐久性がより向上し、アミノ基含有化合物の含有量が減少すると、過剰なアミノ基含有化合物のブリードアウトの懸念が小さくなる。同様の観点から、二酸化バナジウム粒子100質量部に対して、5質量部以上200質量部以下であることがより好ましく、20質量部以上100質量部以下であることがさらに好ましい。
<紫外線遮断材料>
本発明の一形態に係るサーモクロミック組成物は、紫外線遮断材料をさらに含むことが好ましい。紫外線遮断材料は、サーモクロミック組成物の可視光透過性を維持しつつ、サーモクロミック組成物に紫外線遮断機能を付与する機能を有する。
紫外線遮断材料としては、サーモクロミック組成物を溶融混練する際またはサーモクロミックフィルム等の成形のために溶融製膜する際に揮発や分解が生じ難いとの観点から、無機系紫外線遮断材料であることが好ましい。
無機系紫外線遮断材料としては、特に制限されないが、例えば、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化鉄からなる群から選ばれる1種以上の金属酸化物が挙げられる。無機系紫外線遮断材料としては、酸化セリウムまたは酸化亜鉛が好ましく、酸化亜鉛であることがより好ましい。
無機系紫外線遮断材料としては、下記の点から、前記金属酸化物が、シリカ、ジルコニア、およびアルミナからなる群から選ばれる1種以上の無機酸化物で被覆されたものがさらに好ましい。
(i)熱可塑性樹脂中に存在する場合、フィルムの溶融成形時および屋外での使用時に発生する生成物、例えば、熱可塑性樹脂がフッ素系樹脂の場合はフッ化水素等による金属酸化物の腐食を抑え、紫外線遮断機能を長期間にわたって維持する。
(ii)酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化チタン等の光触媒の光活性を抑え、熱可塑性樹脂の劣化や、二酸化バナジウム粒子の分解を抑える。
無機系紫外線遮断材料としては、シリカで被覆された酸化亜鉛(シリカ被覆酸化亜鉛)であることがよりさらに好ましい。
紫外線遮断材料をサーモクロミック組成物、特にバインダー樹脂である熱可塑性樹脂への分散性を向上させるために、前記無機酸化物の表面を、さらに、シリコーン材料、シランカップリング剤等の疎水化剤によって疎水化処理することが好ましい。シリコーン材料やシランカップリング剤は、疎水化処理に用いられる公知のものを用いることができる。シリコーン材料としては、特に制限されないが、フェニルメチルシリコーンオイル等が好ましい例として挙げられる。
疎水化処理方法は、特に制限されないが、例えば、紫外線遮断材料を、疎水化剤を溶解させた溶媒中に分散させ、次いで溶媒を揮発後に乾燥させることで行う方法が挙げられる。この際溶媒としては公知のものを用いることができるが、イソプロパノール等が好ましい例として挙げられる。
無機系紫外線遮断材料としては、その数平均粒子径は0.01〜0.5μmであることが好ましく、0.02〜0.2μmであることがより好ましい。
無機系紫外線遮断材料は、サーモクロミック組成物の総質量に対して、0.03質量%以上6質量%以下であることが好ましい。無機系紫外線遮断材料の添加量が増加すると、サーモクロミック組成物の紫外線遮断機能がより向上し、無機系紫外線遮断材料の添加量が減少すると、サーモクロミック組成物の可視光透過率がより向上する。同様の観点から、サーモクロミック組成物の総質量に対して、0.1質量%以上3質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上1質量%以下であることがさらに好ましい。
なお、可視光線透過率および紫外線透過率は、JIS R3106:1998「板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射熱取得率の試験方法」にしたがって測定することができる。
<その他の添加剤>
本発明の一形態に係るサーモクロミック組成物は、本発明の目的とする効果を損なわない限り、その他の添加剤を含んでいてもよい。適用可能な各種の添加剤を、以下に列挙する。例えば、特開昭57−74193号公報、特開昭57−87988号公報、および特開昭62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号公報、特開昭57−87989号公報、特開昭60−72785号公報、特開昭61−146591号公報、特開平1−95091号公報、および特開平3−13376号公報等に記載されている退色防止剤、アニオン、カチオンまたはノニオンの各種界面活性剤、特開昭59−42993号公報、特開昭59−52689号公報、特開昭62−280069号公報、特開昭61−242871号公報、および特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、防黴剤、帯電防止剤、マット剤、熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、減粘剤、滑剤、赤外線吸収剤、色素、顔料等の公知の各種添加剤などが挙げられる。
<サーモクロミック組成物の製造方法>
本発明の他の一形態は、熱可塑性樹脂と、サーモクロミック性を有する二酸化バナジウム粒子と、アミノ基含有化合物と、任意に含まれ得る他の添加剤と、を混合し、分散させることを含む、本発明の一形態に係るサーモクロミック組成物の製造方法である。
サーモクロミック組成物の製造方法としては、例えば、上記各成分を溶融混練して組成物を製造する方法が挙げられる。また、他の方法としては、上記各成分と、これらの成分を溶解または分散させる溶媒と、を混合した後、溶媒を乾燥させて組成物を製造する方法が挙げられる。
これらの中でも、吸水率をより低くするとの観点から、サーモクロミック組成物に含まれる各成分を溶融混練して組成物を製造する方法であることが好ましい。かかる理由は、溶融混練は、樹脂を溶融する熱により吸着水が揮発するため、サーモクロミック組成物の残存水分等の存在に起因して生じる、水や酸素が入り込む体積の発生をより抑制することができるからであると推定している。
溶融混練に用いる混練機は、特に限定されるものではなく、例えば、単軸押出機、二軸押出機等の押出機や加圧ニーダー等の従来公知の混練機を用いることができる。
溶融混練の際の温度は、混練する各成分の種類や比率により変わるため一概には言えないが、一般的には、150℃以上350℃以下であることが好ましい。
これらの方法によって、サーモクロミック組成物を製造することができる。
本発明の一形態において、サーモクロミック組成物は、目的に応じた材料の形状として製造されていてもよく、フィルム形状(すなわち、サーモクロミックフィルム)として製造されることが好ましい。
(アミノ基含有化合物の添加方法)
前述のように、本発明の一形態に係るサーモクロミック組成物の製造方法は、熱可塑性樹脂と、サーモクロミック性を有する二酸化バナジウム粒子と、アミノ基含有化合物と、任意に含まれ得る他の添加剤と、を混合する段階を有する。混合の方法、混合の順序は、特に制限されず、公知の方法、順序を適用することができる。
ここで、アミノ基含有化合物は、二酸化バナジウム粒子の調製において、二酸化バナジウム粒子の分散液にアミノ基含有化合物を添加して分散を行うことで予め二酸化バナジウム含有微粒子粉体に混合させ、得られた二酸化バナジウム含有微粒子粉体と、任意に含まれ得る他の添加剤と、を混合する方法で添加してもよい。この方法においては、二酸化バナジウム粒子の分散液にアミノ基含有化合物を添加して分散を行うことで予め二酸化バナジウム含有微粒子粉体に混合させ、この混合物を乾燥して得られた二酸化バナジウム含有微粒子粉体と、任意に含まれ得る他の添加剤と、を混合する方法で添加する方法であることが好ましい。
二酸化バナジウム粒子の分散液中で、アミノ基含有化合物と、二酸化バナジウム粒子とを分散する方法は種々の方法があるが、ビーズミル、超音波破砕、高圧ホモジナイザー等種々の方法があり、いずれの方法を用いて分散を行うことでも二酸化バナジウム微粒子粉体を作製することができる。
ビーズミルとしては、特に制限されないが、例えば、株式会社広島メタル&マシナリー社製スーパーアペックスミルを用いることができる。ビーズミルでは、種々のビーズを用いることができるが、硬度、価格の観点からジルコニアビーズを利用するのが好ましい。また、ビーズの粒子径は、特に制限されないが、例えば10μm以上200μm以下であることが好ましい。ビーズミルによる分散時間としては、所望の二酸化バナジウム粒子の粒子径や、微粒子化方法、使用する機器により異なるため一概には言えないが、一般的には、0.1時間以上、10時間以下であることが好ましい。
分散を行う際の二酸化バナジウム粒子を含む分散液の溶媒(分散媒)としては、水または有機溶媒等、公知の溶媒を用いることができる。これらの中でも、水系合成法による生成物である二酸化バナジウム(VO)含有の単結晶粒子を含む分散液をそのまま使用できるとの観点から、分散媒は水であることが好ましい。また、後述のように、得られる二酸化バナジウム含有微粒子粉体にアミノ基含有化合物が含まれるようにする場合は、分散媒はアミノ基含有化合物を溶解し得る溶媒であることが好ましく、水またはメチルイソブチルケトンであることが好ましい。これより、分散媒は、水またはメチルイソブチルケトンであることが好ましい。
分散を行う際のアミノ基含有化合物の濃度は、二酸化バナジウム粒子100質量部に対して、1質量部以上300質量部以下であることが好ましい。この範囲であると、二酸化バナジウム含有微粒子粉体を用いて、サーモクロミック組成物中に、前述した好ましい添加量でアミノ基含有化合物を添加することがより容易となる。同様の観点から、二酸化バナジウム粒子100質量部に対して、5質量部以上200質量部以下であることがより好ましく、20質量部以上100質量部以下であることがさらに好ましい。
この際、微粒子化段階における二酸化バナジウム粒子の濃度は、特に制限されないが、二酸化バナジウム粒子の一次粒子としての分散性を向上させ、二酸化バナジウム含有微粒子粉体中にアミノ基含有化合物を良好に含有させるとの観点から、分散液の総質量に対して1質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
分散後の分散液を乾燥させることで、二酸化バナジウム含有微粒子粉体を調製することができる。乾燥温度としては、乾燥を十分に行うことができれば特に制限されないが、50℃以上150℃以下であることが好ましい。また、乾燥時間としては、乾燥を十分に行うことができれば特に制限されないが、1時間以上48時間以下であることが好ましい。
二酸化バナジウム含有微粒子粉体がサーモクロミック性を有する二酸化バナジウム粒子およびアミノ基含有化合物を含むことは、分散後の分散液中のアミノ基含有化合物の濃度が低下していること等から確認することができる。得られる二酸化バナジウム含有微粒子粉体は、アミノ基含有化合物は、二酸化バナジウム粒子の表面に吸着した構造を有すると推定している。
また、アミノ基含有化合物は、二酸化バナジウム粒子と、アミノ基含有化合物と、任意に含まれ得る他の添加剤と、を別々に添加して混合する方法で添加してもよい。
別々に添加し、混合する方法としては、アミノ基含有化合物を熱可塑性樹脂と混合する段階で添加することが好ましく、溶融混練時に添加することがより好ましい。
アミノ基含有化合物を溶融混練時に添加する場合は、アミノ基含有化合物の添加量は、前述のサーモクロミック組成物中における好ましい値となるように添加すればよい。
これらの中でも、より透明性および大気中の水分や酸素に対する耐久性の観点から、二酸化バナジウム粒子の分散液にアミノ基含有化合物を添加して分散を行うことで予め二酸化バナジウム含有微粒子粉体に混合させ、この混合物を乾燥して得られた二酸化バナジウム含有微粒子粉体と、任意に含まれ得る他の添加剤と、を混合する方法が特に好ましい。かかる理由は、二酸化バナジウム粒子が一次粒子として存在する頻度がより高い微粒子化段階でアミノ基含有化合物を添加することで、一次粒子の表面にアミノ基含有化合物が結合しやすく、熱可塑性樹脂との相溶性がより向上するからであると推定している。
これより、本発明の一形態に係る製造方法は、サーモクロミック性を有する二酸化バナジウム粒子と、アミノ基含有化合物と、を分散媒中で分散させた後、乾燥させ、サーモクロミック性を有する二酸化バナジウム粒子およびアミノ基含有化合物を含む、二酸化バナジウム含有微粒子粉体を調製することと、当該二酸化バナジウム含有微粒子粉体と、熱可塑性樹脂と、を混合し、分散させることと、を含むことが特に好ましい。
<サーモクロミックフィルムおよびその製造方法>
本発明のその他の一形態は、本発明の一形態に係るサーモクロミック組成物からなる層を含む、サーモクロミックフィルムである。なお、サーモクロミックフィルムは、サーモクロミック組成物からなる層自体が自己支持性を有するフィルムであることが好ましい。この場合は、層単体でサーモクロミックフィルムとして使用されていてもよく、他の機能層や基材をさらに有していてもよい。
そして、本発明のさらなる他の一形態は、本発明の一形態に係るサーモクロミック組成物をフィルム状に成形することをさらに含む、サーモクロミックフィルムの製造方法である。
サーモクロミック層の製造方法は、特に制限されないが、例えば、溶融押出法、溶液キャスト法(溶液流延法)、カレンダー法、圧縮成形法などが挙げられる。これらの中でも、サーモクロミック組成物の製造方法として、各成分を溶融混練して製造する方法を用いる場合は、混練したサーモクロミック組成物をそのまま押し出すことができ、生産性に優れるとの観点から、溶融押出法が好ましい。また、これらの中でも、サーモクロミック組成物の製造方法として、各成分と溶媒とを混合し、溶媒を乾燥させて製造する方法を用いる場合は、得られた溶液をそのまま塗布・乾燥することができ、生産性に優れるとの観点から、溶液キャスト法が好ましい。これらの中でも、溶融押出法がより好ましい。
溶融押出法としては、サーモクロミック組成物に含まれる各成分を溶融混練した後、溶融押出により層状(好ましくはフィルム状)に成形する方法が挙げられる。溶融混練に用いる混合機や、混練温度は、混練する各成分の種類や比率により変わるため一概には言えないが、サーモクロミック組成物の溶融混練による製造方法の説明として挙げた装置、条件を好ましく用いることができる。また、層状に成形する溶融押出法としては、Tダイ法、インフレーション法等が挙げられる。溶融押出の際の成形温度は、サーモクロミック組成物の種類や比率により変わるため一概には言えないが、150℃以上350℃以下が好ましい。
例えば、Tダイ法でフィルム状に成形する場合は、公知の単軸押出機や二軸押出機の先端部にTダイを取り付け、フィルム状に押出したフィルムを巻取り、ロール状のフィルムを得ることができる。この際、巻取ロールの温度を適宜調整して、押出方向に延伸を加えることによって、一軸延伸工程とすることも可能である。また、押出方向と垂直な方向にフィルムを延伸する工程を加えることによって、逐次二軸延伸、同時二軸延伸などの工程を加えることも可能である。また、サーモクロミックフィルムの光学的等方性や機械的特性を安定化させるために、延伸処理後に熱処理(アニーリング)などを行うこともできる。
本発明の一形態に係るサーモクロミック層の厚さとしては、特に制限はないが、サーモクロミック層がフィルム状である場合は、10〜1500μmの範囲内であることが好ましく、20〜1000μmの範囲内であることがより好ましく、30〜500μmの範囲内であることがさらに好ましく、40〜300μmの範囲内であることが特に好ましい。
本発明の一形態に係るサーモクロミック層のJIS R3106(1998)で測定される可視光透過率としては、特に制限はないが、サーモクロミック層がフィルム状である場合は、10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、30%以上であることがさらに好ましい。
<用途>
本発明の一形態に係るサーモクロミック層は、前述のように、層単体でサーモクロミックフィルムとして使用されていてもよいが、他の機能層や基材をさらに積層させたフィルムとして用いられてもよい。かようなフィルムが有する他の機能層としては、サーモクロミックフィルムの分野で用いられる公知のものを目的に応じて適宜使用することができるが、好ましい例としては、ハードコート層、調光層、粘着層、紫外線遮断層等が挙げられる。また、基材としては透明基材が好ましい。
本発明の一形態に係るサーモクロミックフィルムは、農業用ハウス等の農業用フィルムとして用いることが好ましい。本発明の農業用フィルムとしては、農業用ハウスの屋根材、農業用ハウスの内部に設けられるカーテン、トンネル用資材等が挙げられる。2層のエアハウスからなる農業用ハウスの屋根材として用いるとき、植物側の内側フィルムとして、または、外気と接する外側のフィルムとして用いることができる。農業用フィルムは、施設栽培・園芸に適用し得るものであればどのような形状のものでもよい。フィルムを細く裁断して編むことによりネット状、織布状のものが成形できる。農業用フィルムは、サーモクロミックフィルムの片面または両面に、シリカ、アルミナ等からなる流滴層を形成したものであってもよい。
また、本発明の一形態に係るサーモクロミックフィルムは、屋根材または壁装材として用いられてもよい。構造物としては、農業用ハウス、トンネル、競技場等が挙げられる。本発明の一形態に係るサーモクロミックフィルムを含有するフィルムが2層以上からなる構成を有する場合、例えば、そのうちの1層は紫外線遮断層または紫外線遮断フィルムであり、他の1層は本発明の一形態に係るサーモクロミックフィルムであってもよい。
この場合、フィルムは、紫外線遮断層または紫外線遮断フィルム側が太陽光の入射側となるように展張されることが好ましく、屋根材または壁装材として用いる際には、フィルムは、紫外線遮断層または紫外線遮蔽フィルム側が、太陽光の入射側となるように展張されることが好ましい。
本発明の一形態に係るサーモクロミックフィルムは、ガラスに後貼りする構成として用いてもよい。このフィルムを貼合したガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶ならびに農業用ハウス、トンネルおよび競技場等の構造物等に使用できる。フィルムを貼合したガラスは、これらの用途以外にも使用できる。前記フィルムを貼合したガラスは、建築用または車両に用いることが好ましく、自動車のフロントガラス、サイドガラス、リアガラスまたはルーフガラス等に使用できる。ガラス部材としては、無機ガラスおよび有機ガラス(樹脂グレージング)が挙げられる。無機ガラスとしては、フロート板ガラス、熱線吸収板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、線入り板ガラス、およびグリーンガラス等の着色ガラス等が挙げられる。上記有機ガラスは、無機ガラスに代用される合成樹脂ガラスである。上記有機ガラス(樹脂グレージング)としては、ポリカーボネート板およびポリ(メタ)アクリル樹脂板等が挙げられる。上記ポリ(メタ)アクリル樹脂板としては、ポリメチル(メタ)アクリレート板等が挙げられる。
ただし、本発明の一形態に係るサーモクロミックフィルムは上記挙げた用途に限定されるものではない。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行われた。また、特記しない限り、「%」および「部」は、それぞれ、「質量%」および「質量部」を意味する。
<二酸化バナジウム含有微粒子粉体の調製>
(二酸化バナジウム含有微粒子粉体1の調製)
純水25gにバナジン酸アンモニウム(V)(NHVO、和光純薬工業株式会社製、特級)を1g混合し、ヒドラジン一水和物(N・HO、和光純薬工業株式会社製、特級)の5質量%水溶液0.1gをゆっくり滴下した。
調製した反応液を、高圧用反応分解容器 静置型HU 50mLセット(耐圧ステンレス製外筒、PTFE製試料容器 HUTc−50:三愛科学株式会社製)に入れて、100℃で2時間、続いて275℃で24時間の水熱反応を行った。
反応後、得られた生成物について限外濾過を用いて洗浄を行い、得られた分散液中における二酸化バナジウム粒子の濃度を3.0質量%に調整し、さらに二酸化バナジウム粒子100質量部に対して50質量部の割合でポリカルボン酸(マリアリム(登録商標)SC−0505K、日油株式会社製)を加え、粒子径30μmのジルコニアビーズを用いて株式会社広島メタル&マシナリー社製スーパーアペックスミルにより1時間分散した。得られた分散液を濾過し、定温乾燥機を用いて、60℃で10時間乾燥させて、二酸化バナジウム含有微粒子粉体1を得た。
(二酸化バナジウム含有微粒子粉体2の調製)
二酸化バナジウム含有微粒子粉体1の調製において、ポリカルボン酸(マリアリム(登録商標)SC−0505K、日油株式会社製)をジプロピルアミンに変更した以外は同様にして二酸化バナジウム含有微粒子粉体2を調製した。
(二酸化バナジウム含有微粒子粉体3の調製)
二酸化バナジウム含有微粒子粉体1の調製において、ポリカルボン酸(マリアリム(登録商標)SC−0505K、日油株式会社製)を3−アミノプロピルトリエトキシシラン(KBE−903、信越化学工業株式会社製)に変更した以外は同様にして二酸化バナジウム含有微粒子粉体3を調製した。
(二酸化バナジウム含有微粒子粉体4の調製)
二酸化バナジウム含有微粒子粉体1の調製において、ポリカルボン酸(マリアリム(登録商標)SC−0505K、日油株式会社製)をL−サルコシンに変更した以外は同様にして二酸化バナジウム含有微粒子粉体4を調製した。
(二酸化バナジウム含有微粒子粉体5の調製)
二酸化バナジウム粒子(新興化学工業株式会社製)10質量部、フェニルアラニン5質量部をメチルイソブチルケトン85質量部中に添加し、粒子径30μmのジルコニアビーズを用いて株式会社広島メタル&マシナリー社製スーパーアペックスミルにより1時間分散した。得られた分散液を濾過し、定温乾燥機を用いて、60℃で10時間乾燥させて、二酸化バナジウム含有微粒子粉体5を得た。
<二酸化バナジウム含有微粒子粉体6の調製>
図1の水熱反応部を有する流通式反応装置(101)を用い、下記の方法に従って、二酸化バナジウム粒子を含む分散液を調製した。
原料液容器1(105)に、酸化硫酸バナジウム(IV)(VOSO)19.0gをイオン交換水(溶存酸素量:8.1mg/L)に溶解して300mlとし、この液を撹拌しながら、アルカリとして3.0mol/LのNH水溶液を68ml添加して、pHが8.0の原料液1を調製した。一方、原料液容器2(102)にはイオン交換水(溶存酸素量:8.1mg/L)を原料液2として収納した。
酸化硫酸バナジウム(IV)とアルカリを含む原料液1は、原料液容器1(105)から流路(106)内をポンプ(107)により送液し、加熱媒体(115)で、25℃で、30MPaの条件となるように加圧した。
一方、原料液2であるイオン交換水は、原料液容器2(102)から流路(103)内をポンプ(104)により送液し、加熱媒体(113)で、440℃で、30MPaの条件で加熱加圧して、超臨界水を得た。
次いで、合流点(MP)で酸化硫酸バナジウム(IV)とアルカリを含む原料液1と、超臨界水である原料液2を、体積比として、原料液1:原料液2=1:4となる条件で混合して、反応液2を形成し、水熱反応部である水熱反応部(116)に送液した。水熱反応部では、加熱媒体(114)内に配置されている加熱部配管(117)に送液した。加熱配管部(117)における水熱反応条件としては、400℃、30MPaの条件で、処理時間(通過時間)が2秒となる条件で行い、二酸化バナジウム(VO)含有粒子を形成した。次いで、冷却部(108)にて反応液2を冷却し、二酸化バナジウム粒子および水を含有する分散液を調製した。
反応後、得られた生成物について限外濾過を用いて洗浄を行い、仕上がりの二酸化バナジウム粒子の濃度を3.0質量%に調整し、さらに二酸化バナジウム粒子100質量部に対して50質量部の割合でL−サルコシンを加え、粒子径30μmのジルコニアビーズを用いて株式会社広島メタル&マシナリー社製スーパーアペックスミルにより1時間分散した。得られた分散液を濾過し、定温乾燥機を用いて、60℃で10時間乾燥させて、二酸化バナジウム含有微粒子粉体6を得た。
(二酸化バナジウム含有微粒子粉体7の調製)
二酸化バナジウム含有微粒子粉体6の調製において、限外濾過を用いて洗浄を行った後、そのまま定温乾燥機を用いて、60℃で10時間乾燥させた以外は同様にして、二酸化バナジウム含有微粒子粉体7を得た。
<サーモクロミックフィルムの製造1>
(サーモクロミックフィルム101の作製;比較例)
シリカ被覆酸化亜鉛(昭和電工株式会社製、マックスライト(登録商標)ZS32)100gを、フェニルメチルシリコーンオイルが5質量%溶解したイソプロパノール溶液300gに分散させた。ついで、70℃でイソプロパノールを揮発させた後、170℃で1時間乾燥させ、シリカの表面が疎水化された粉体を得た。該粉体を衝撃式粉砕機にて粉砕し、数平均一次粒子径0.03μmの無機系紫外線遮断材料を得た。
次いで、得られた無機系紫外線遮断材料1質量部、二酸化バナジウム含有微粒子粉体7を0.4質量部、ETFE(旭硝子株式会社、フルオンC−88AXP)100質量部を、2軸押出機にて300℃で混練し、ペレット化してペレット状のサーモクロミック組成物を得た。該ペレットを、Tダイにて320℃で押出成形し、厚さ100μmのサーモクロミックフィルム101を得た。
(サーモクロミックフィルム102の作製;比較例)
サーモクロミックフィルム101の作製において、二酸化バナジウム含有微粒子粉体7を二酸化バナジウム含有微粒子粉体1に変更した以外は同様にしてサーモクロミックフィルム102を作製した。
(サーモクロミックフィルム103の作製;実施例)
サーモクロミックフィルム101の作製において、二酸化バナジウム含有微粒子粉体7を二酸化バナジウム含有微粒子粉体2に変更した以外は同様にしてサーモクロミックフィルム103を作製した。
(サーモクロミックフィルム104の作製;実施例)
サーモクロミックフィルム101の作製において、二酸化バナジウム含有微粒子粉体7を二酸化バナジウム含有微粒子粉体3に変更した以外は同様にしてサーモクロミックフィルム104を作製した。
(サーモクロミックフィルム105の作製;実施例)
サーモクロミックフィルム101の作製において、二酸化バナジウム含有微粒子粉体7を二酸化バナジウム含有微粒子粉体4に変更した以外は同様にしてサーモクロミックフィルム105を作製した。
(サーモクロミックフィルム106の作製;実施例)
サーモクロミックフィルム101の作製において、二酸化バナジウム含有微粒子粉体7を二酸化バナジウム含有微粒子粉体5に変更した以外は同様にしてサーモクロミックフィルム106を作製した。
(サーモクロミックフィルム107の作製;実施例)
サーモクロミックフィルム101の作製において、二酸化バナジウム含有微粒子粉体7を二酸化バナジウム含有微粒子粉体6に変更した以外は同様にしてサーモクロミックフィルム107を作製した。
(サーモクロミックフィルム108の作製;比較例)
サーモクロミックフィルム101の調製における無機系紫外線遮断材料と同様にして調製した無機系紫外線遮断材料1質量部、二酸化バナジウム含有微粒子粉体1を0.4質量部、線状低密度ポリエチレン(直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、LLDPE)100質量部を、2軸押出機にて180℃で混練し、ペレット化してペレット状のサーモクロミック組成物を得た。該ペレットを、Tダイにて200℃で押出成形し、厚さ100μmのサーモクロミックフィルム108を作製した。
(サーモクロミックフィルム109の作製;実施例)
サーモクロミックフィルム108の作製において、二酸化バナジウム含有微粒子粉体1を二酸化バナジウム含有微粒子粉体2に変更した以外は同様にしてサーモクロミックフィルム109を作製した。
(サーモクロミックフィルム110の作製;実施例)
サーモクロミックフィルム108の作製において、二酸化バナジウム含有微粒子粉体1を二酸化バナジウム含有微粒子粉体4に変更した以外は同様にしてサーモクロミックフィルム110を作製した。
(サーモクロミックフィルム111の作製;比較例)
重合度800のポリ塩化ビニル樹脂(株式会社カネカ製)86質量部、酢酸ビニル含量60質量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体(ソアブレン(登録商標)CH、日本合成化学工業株式会社製)4質量部、コア・シェルゴム(メタブレン(登録商標)W−300A、三菱レイヨン株式会社)10質量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(TINUVIN(登録商標)326、BASFジャパン株式会社製)1質量部、二酸化バナジウム含有微粒子粉体1を0.4質量部、をヘンシェルミキサーに仕込み、攪拌混合した後にロール混練してサーモクロミック組成物を調製し、次いでカレンダーで0.1mm(100μm)の厚さに分出させてサーモクロミックフィルム111を作製した。
(サーモクロミックフィルム112の作製;実施例)
サーモクロミックフィルム111の作製において、二酸化バナジウム含有微粒子粉体1を二酸化バナジウム含有微粒子粉体4に変更した以外は同様にしてサーモクロミックフィルム112を作製した。
(サーモクロミックフィルム113の作製;比較例)
ポリビニルブチラール樹脂(PVB)(水酸基の含有率30.5モル%、アセチル基量1モル%、平均重合度が1700であるポリビニルアルコールをn−ブチルアルデヒドでブチラール化して得られた樹脂)100重量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(TINUVIN(登録商標)326、BASFジャパン株式会社製)1質量部、二酸化バナジウム含有微粒子粉体1を0.4質量部、を2軸押出機にて200℃で混練し、ペレット化してペレット状のサーモクロミック組成物を得た。該ペレットを、Tダイにて200℃で押出成形し、厚さ100μmのサーモクロミックフィルム113を作製した。
<サーモクロミックフィルムの評価1>
(吸水率)
上記作製した各サーモクロミックフィルムについて、10cm×10cm×100μm(厚み)のフィルムを、シリカゲルを入れた50℃の恒温槽で6日間乾燥し、この恒温槽内で23℃に冷却してフィルムの質量を測定した(乾燥質量)。その後、23℃の純水に24時間浸漬し、その質量を測定した(吸水質量)。その後、吸水率を下記式に従って算出した。
(初期ヘイズ値)
上記作製した各サーモクロミックフィルムについて、室温にて、ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH2000)を用いて、ヘイズ(%)を測定し、下記の基準に従ってヘイズの評価を行った。ここで、ヘイズが10.0%未満である場合を好ましい結果とした。この結果を下記表1に示す。
○ :ヘイズが3.0%未満である、
○△:ヘイズが3.0%以上5.0%未満である、
△ :ヘイズが5.0%以上10.0%未満である、
△×:ヘイズが10.0%以上20.0%未満である、
× :20.0%以上である。
(高温高湿保存性)
上記作製した各サーモクロミックフィルムについて、フィルムを85℃・85%RHに240時間保存し、保存前後のサーモクロミック性の低下率を保存性の指標として評価した。具体的には、まず、保存前後のサーモクロミックフィルムについて、それぞれ、20℃(低温時)および80℃(高温時)における波長1500nmでの光透過率T(%)を測定した。次いで、保存前後のサーモクロミックフィルムについて、それぞれ、下記式に従い光透過率差ΔT(%)を算出した。
そして保存前のΔT(%)に対する保存後のΔ(T)%の変化の割合(保存前後のΔT(%)の変化割合(%))を下記式に従って算出して、その値より下記基準に従い評価を行った。
本測定における光透過率の測定は、分光光度計V−670(日本分光株式会社製)に温調ユニット(日本分光株式会社製)を取り付けて行った。ここで、保存前後のΔT(%)の変化割合(%)が70%未満である場合を好ましい結果とした。この結果を高温高湿保存性として表1に示す。
◎ :保存前後のΔT(%)の変化割合が90%以上である、
○ :保存前後のΔT(%)の変化割合が80%以上90%未満である、
○△:保存前後のΔT(%)の変化割合が70%以上80%未満である、
△ :保存前後のΔT(%)の変化割合が60%以上70%未満である、
△×:保存前後のΔT(%)の変化割合が50%以上60%未満である、
× :保存前後のΔT(%)の変化割合が50%未満である。
サーモクロミックフィルムの製造1およびサーモクロミックフィルムの評価1の結果を下記表1にまとめる。これらのサーモクロミックフィルムは、分散剤添加のタイミングを二酸化バナジウム含有微粒子粉体調製時(分散時)として製造されたことを特徴とする。
<サーモクロミックフィルムの製造2>
(サーモクロミックフィルム114の作製;実施例)
サーモクロミックフィルム101の作製において、二酸化バナジウム含有微粒子粉体7を0.4質量部、プロピルアミン0.2質量部、ETFE(旭硝子社製、フルオンC−88AXP)170質量部を2軸押出機にて300℃で混練し、ペレット化してペレット状のサーモクロミック組成物を得た、以外は同様にしてサーモクロミックフィルム114を作製した。
(サーモクロミックフィルム115の作製;実施例)
サーモクロミックフィルム114の作製において、プロピルアミンをL−サルコシンに変更した以外は同様にしてサーモクロミックフィルム115を作製した。
(サーモクロミックフィルム116の作製;実施例)
サーモクロミックフィルム101の調製における無機系紫外線遮断材料と同様にして調製した無機系紫外線遮断材料1質量部、二酸化バナジウム含有微粒子粉体7を0.4質量部、L−サルコシン0.2質量部、線状低密度ポリエチレン(直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、LLDPE)100質量部を、2軸押出機にて180℃で混練し、ペレット化してペレット状のサーモクロミック組成物を得た。該ペレットを、Tダイにて200℃で押出成形し、厚さ100μmのサーモクロミックフィルム116を作製した。
<サーモクロミックフィルムの評価2>
上記作製した各サーモクロミックフィルムについて、サーモクロミックフィルムの評価1における吸水率、初期ヘイズ値および高温高湿保存性と同様の測定を行った。これらの結果を表2に示す。
サーモクロミックフィルムの製造2およびサーモクロミックフィルムの評価2の結果を下記表1にまとめる。これらのサーモクロミックフィルムは、分散剤添加のタイミングを樹脂混合時として製造されたことを特徴とする。
表1および表2の結果より、サーモクロミック組成物が、熱可塑性樹脂と、サーモクロミック性を有する二酸化バナジウム粒子と、アミノ基含有化合物と、を含有し、吸水率が、1質量%以下である場合は、初期ヘイズ値が低く、高温高湿保存性に優れるサーモクロミックフィルムが得られることが確認された。
また、表1の結果における、サーモクロミックフィルム102〜106の比較、108〜110の比較、111および112の比較、ならびに表1の結果における、114および115の比較から、アミノ基含有化合物がアミノカルボン酸を含む場合に、特に顕著な効果を示すことが確認された。
また、表1の結果における、サーモクロミックフィルム105、107、110および112の比較、ならびにサーモクロミックフィルム103および109の比較から、熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル系樹脂またはフッ素系樹脂を含む場合により優れた効果を示し、フッ素系樹脂を含む場合にさらに優れた結果を示すことが確認された。
そして、表1および2の結果から、本発明は、アミノ基含有化合物を二酸化バナジウム含有微粒子粉体の分散時に含有させても、サーモクロミック組成物の調製時における樹脂混合時において含有させてもいずれも効果を得ることができることが確認された。また、サーモクロミックフィルム103および114の比較、107および115の比較から、アミノ基含有化合物を二酸化バナジウム含有微粒子粉体の分散時に含有させた場合は、より優れた効果を示すことが確認された。
101 流通式反応装置
102 原料液容器2
103、106、111、118 流路(配管)
104、107、112 ポンプ
105 原料液容器1
108 冷却部
109、110 タンク
113、114、115 加熱媒体
116 水熱反応部
117 加熱部配管
119 制御弁
C 冷媒
IN 加熱媒体の入口
OUT 加熱媒体の出口
L 加熱部配管のライン長
MP 合流点
TC 温度センサー。

Claims (9)

  1. 熱可塑性樹脂と、サーモクロミック性を有する二酸化バナジウム粒子と、アミノ基含有化合物と、を含有し、
    吸水率が、1質量%以下である、サーモクロミック組成物。
  2. 前記熱可塑性樹脂は、塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、およびフッ素系樹脂からなる群から選択される少なくとも1つを含有する、請求項1に記載のサーモクロミック組成物。
  3. 吸水率が、0.1質量%以下である、請求項1または2に記載のサーモクロミック組成物。
  4. 前記熱可塑性樹脂は、フッ素系樹脂を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のサーモクロミック組成物。
  5. 前記アミノ基含有化合物が、アミノカルボン酸を含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のサーモクロミック組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のサーモクロミック組成物からなる層を含む、サーモクロミックフィルム。
  7. 熱可塑性樹脂と、サーモクロミック性を有する二酸化バナジウム粒子と、アミノ基含有化合物と、を混合し、分散させることを含む、請求項1〜5に記載のサーモクロミック組成物の製造方法。
  8. 前記サーモクロミック性を有する二酸化バナジウム粒子と、前記アミノ基含有化合物と、を分散媒中で分散させた後、乾燥させ、前記サーモクロミック性を有する二酸化バナジウム粒子および前記アミノ基含有化合物を含む、二酸化バナジウム含有微粒子粉体を調製することと、
    前記二酸化バナジウム含有微粒子粉体と、前記熱可塑性樹脂と、を混合し、分散させることと、
    を含む、請求項7に記載のサーモクロミック組成物の製造方法。
  9. 請求項7または8に記載の方法によってサーモクロミック組成物をフィルム状に成形することを含む、サーモクロミックフィルムの製造方法。
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