JPWO2017183133A1 - 熱延鋼板、鋼材、及びコンテナ - Google Patents
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Abstract
Description
従来、上記の鉄道車両やコンテナには、JIS G3125(2010)に示される引張強さ50kgf/mm2(490MPa)級の高耐食性圧延鋼材に塗装を行った鋼材が用いられてきた。
一方、製造工程や合金元素により密着性の低いミルスケールを形成することも考えられるが、製造工程で熱延鋼板の表面からミルスケールが剥離したり、スケール欠陥部が生じたりして、熱延鋼板の表面にミルスケールが形成され、熱延鋼板の表面にスケール疵が生じる懸念があった。
また、本発明は、上記熱延鋼板にショットブラスト及び塗装処理を行って得られる鋼材、及びこの鋼材を備えるコンテナを提供することを課題とする。
0.02≦(h+w)/m≦0.20 ・・・(i)
(2)上記(1)の熱延鋼板では、前記化学成分におけるW含有量が、質量%で0.005%以下であってもよい。
(3)上記(1)または(2)の熱延鋼板では、前記化学成分におけるMo含有量が、質量%で0.005%以下であってもよい。
(4)上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の熱延鋼板では、前記化学成分におけるCu含有量が、質量%で0.02%以下であってもよい。
(5)上記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の熱延鋼板では、前記化学成分におけるNi含有量が、質量%で0.02%以下であってもよい。
(6)上記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の熱延鋼板では、前記化学成分におけるCr含有量が、質量%で0.02%以下であってもよい。
(7)上記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の熱延鋼板では、前記化学成分におけるTi含有量が、質量%で0.01%以下であってもよい。
(8)本発明の別の態様に係る鋼材は、上記(1)〜(7)のいずれか一項に記載の熱延鋼板に、ショットブラスト処理を行い、さらに、前記ショットブラスト処理を行った前記熱延鋼板に塗装処理を行うことによって得られる。
(9)本発明の別の態様に係るコンテナは、上記(8)に記載の鋼材を備える。
また、本発明の上記態様に係る鋼材は、塩化物を含む腐食環境下において、優れた耐食性を有する熱延鋼板に対し、ショットブラスト処理及び塗装処理を行って得られるものであり、塩化物を含む腐食環境下において優れた耐食性を有する。
また、本発明の上記態様に係るコンテナは、この鋼材を備えているため、塩化物を含む腐食環境下において優れた耐食性を有する。
本実施形態に係る熱延鋼板において、鋼板(母材鋼板)の各元素を限定した理由は下記のとおりである。以下の説明において、含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
Cは、鋼の強度を確保するために必要な元素である。この効果を得るため、C含有量を0.04%超とする。好ましくは、0.05%以上である。C含有量を0.06%以上、0.07%、0.08%又は0.09%としてもよい。一方、C含有量が0.20%を超えると溶接性が著しく低下する。また、C含有量の増大とともに、pHが低下する環境でカソードとなって腐食を促進するセメンタイトの生成量が増大して耐食性が低下する。そのため、Cの含有量は0.20%以下とする。C含有量は0.18%以下であることが好ましく、0.16%以下であることがより好ましい。C含有量を0.15%以下、0.14%以下又は0.13%以下としてもよい。
Siは鋼板表面でファイアライト(2FeO・SiO2)となり最表面に微細なFe2O3を残存させることによって、赤スケールを発生させやすい元素である。また、Siが高いとスケール界面にSi層が形成され、スケールの剥離性が低下する。そのため、Si含有量を0.30%以下とする。好ましくは0.25%又は0.20%以下である。一方、Siは、製鋼時の脱酸に必要な元素である。また、Siには、耐食性を向上させる効果がある。これらの効果を得るためには、Si含有量を0.05%以上とする必要がある。Si含有量は、好ましくは0.08%以上又は0.10%以上である。
Mnは、鋼板の強度上昇に必要な元素である。Mn含有量が0.30%未満であると、十分な強度を得ることが難しくなる。そのため、Mn含有量を0.30%以上とする。好ましくは、0.40%以上、0.50%以上又は0.60%以上である。一方、Mn含有量が2.50%を超えると加工性が著しく低下する。そのため、Mn含有量を2.50%以下とする。好ましくは、2.00%以下、1.80%以下、1.70%以下又は1.60%以下である。
Pは、鋼板の強度上昇及び耐食性向上に有益な元素として、従来、耐食性鋼板に活用されてきた。しかしながら、塩化物を多く含み、局所的にpHが低下する腐食環境下においては、Pを単独で含有させると逆に耐食性の低下を招く。また、Pは鋼板製造時にスラブ脆化(割れ)の起因となる。特に、P含有量が0.050%を超えると、脆化が顕著となる。そのため、P含有量を、0.050%以下に限定する。好ましくは、0.025%以下、0.020%以下又は0.15%以下である。一方、Pは、少量であればSnと同時に含有させることによって、塩化物環境でも耐食性を向上させる。これは、Snの含有によりFeの溶出が抑えられる結果、Pがさび層の保護性に寄与できるためであると推測される。したがって、さび層の保護性に寄与するという効果を得たい場合は、P含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
Sは、Mnと結合し、鋼材中に硫化物であるMnSを形成する。この硫化物は変形しやすいので、圧延等によって伸張する。伸長した硫化物は、鋼材の曲げ性及び加工性を劣化させる。そのため、S含有量は少ない方が好ましいが、S含有量が0.030%を超えると、曲げ性及び加工性の劣化が著しくなるので、S含有量を0.030%以下とする。特に、高強度鋼材では、割れ感受性を高めるため、S含有量を0.010%以下、0.008%以下又は0.006%以下とすることが好ましい。
Snは本実施形態において最も重要な元素である。Snは、低pH塩化物環境において鋼のアノード溶解反応を著しく抑制することによって、塩化物腐食環境における耐食性を大幅に向上させる作用を有する。この効果を得るため、Sn含有量を0.08%以上とする必要がある。好ましくは、0.09%以上、より好ましくは0.10%以上又は0.12%以上である。一方、Sn含有量が0.25%を超えると、上記の効果は飽和するとともに、スラブの脆化が顕著になる。したがって、Sn含有量を0.25%以下とする。好ましくは、0.20%以下であり、より好ましくは0.18%以下又は0.17%以下である。
Alは、鋼の耐食性を向上させる元素である。その効果を得るため、Al含有量を0.005%以上とする。一方、Al含有量が0.050%を超えると、上記の効果は飽和する。したがって、Al含有量の上限を0.050%とする。また、Al含有量が多くなると鋼板が脆化しやすくなるので、Al含有量は0.030%以下とすることが好ましい。本実施形態において、Al含有量はT−Al、すなわち、鋼中全Al量である。
Nは、アンモニアとなって水溶液中へ溶解し、飛来塩分量が多い環境において、Fe3+の加水分解によるpH低下を抑制することにより、塩分環境における鋼板の耐食性を向上させる効果を有する。この効果を得るため、N含有量を0.0005%以上とする。一方、N含有量が0.0100%を超えると、その効果が飽和するだけでなく、鋼板の靭性が劣化する。したがって、N含有量を0.0100%以下とする。
Nbは鋼板の強度を上昇させる元素である。この効果を得るため、Nb含有量を0.005%以上とする。一方、Nb含有量が0.015%を超えると上記の効果が飽和するとともに、靭性が低下し、鋼板表面のスケール割れの要因ともなる。また、Nbは熱間圧延中において、スケールと鋼板界面においてNb酸化物を形成しやすく、スケール形成に影響する。鋼板の耐食性とスケール層の厚さや組成への影響を考慮すると、Nbの含有量は0.005%以上、0.015%以下である。Nbの含有量の下限を0.006%又は0.007%に、その上限を0.013%又は0.011%としてもよい。
Cuは一般に、鋼の耐食性を向上させる元素であると考えられている。しかしながら、Cuは溶液中のFe2+の空気酸化を加速する元素であるため、Cuを含有する鋼材は飛来塩分の多い環境において耐食性が低下することがある。また、Cuは、Snと共存すると圧延時の赤熱脆化により熱延鋼板の表面の割れの原因となる。また、Cuは、スケール厚、Sn濃度比、鉄酸化物の組成にも影響を与える。そのため、Cu含有量を0.05%以下とする。好ましくは、0.04%又は0.02%以下である。Cu含有量の下限を特に制限する必要はなく、その下限は0%である。
Niは、Cuと同様に、一般に鋼材の耐食性を向上させると考えられている。しかしながら、本発明者らは、本実施形態で想定されるような塩化物を含む腐食環境下では、Niを含有させると鋼板の耐食性が低下することを見出した。また、Niは、熱間圧延中において、スケールと鋼材との界面において酸化物を形成しやすく、スケール層の厚さや組成に影響する。そのため、Ni含有量は、少ない方が好ましい。ただし、不純物として混入する場合を考慮し、Ni含有量を0.05%以下とする。好ましくは、0.04%又は0.02%以下である。Ni含有量の下限を特に制限する必要はなく、その下限は0%である。
Crは、一般に鋼材の耐食性を向上させると考えられている。しかしながら、本発明者らは、本実施形態で想定されるような塩化物を含む腐食環境下では、Crを含有させると鋼板の耐食性が低下することを見出した。また、Crは、熱間圧延中において、スケールと鋼材との界面にCr酸化物を形成しやすく、スケール層の厚さや組成に影響する。そのため、Cr含有量は、少ない方が好ましい。ただし、不純物として混入する場合を考慮し、Cr含有量を0.05%以下に制限する。好ましくは、0.04%又は0.02%以下である。Cr含有量の下限を特に制限する必要はなく、その下限は0%である。
Mo:0〜0.50%
Ti:0〜0.15%
これらの元素は、いずれも耐食性を向上させる元素である。そのため、必要に応じて1種または2種以上を組み合わせて含有させてもよい。耐食性を向上させる効果を得る場合には、いずれの元素においても、含有量を0.01%以上とするのが好ましい。しかし、含有量が過剰になると、効果が飽和するとともにコストが高くなる。そのため、含有させる場合でも、その含有量を、W、Moについては0.50%以下、Tiについては0.15%以下とすることが好ましい。二種以上の元素を含有させる場合には、その合計含有量を1.0%以下とすることが好ましい。W、Mo及びTiは高価であり、これらの元素による耐食性向上効果を得る必要はないので、W及びMoを0.005%以下、Tiを0.01%以下としてもよい。この範囲は、W、Mo及びTiの不純物として含有される範囲でもある。
Vは、鋼の強度を上昇させる元素である。また、Vは、腐食環境中(水溶液中)に溶解して酸素酸イオンの形で存在し、さび層中の塩化物イオンの透過を抑制する効果を有する。この効果を得る場合、Vを0.005%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.01%以上である。この効果を得る必要がない場合、V含有量の下限を制限しなくてもよく、その下限は0%である。一方、V含有量が0.05%を超えると、上記の効果が飽和するだけでなく、コストが著しく上昇する。したがって、含有させる場合でも、V含有量を0.05%以下とする。
Bは、微量の含有により熱延鋼板の強度を高めることができる。この効果を得るため、Bを含有させてもよい。この効果を得る必要がない場合、B含有量の下限を制限しなくてもよく、その下限は0%である。しかしながら、B含有量が0.0005%を超えると熱延鋼板の加工時に割れを発生させる原因となる。そのため、含有させる場合でも、B含有量は0.0005%以下とする。
Caは鋼中に酸化物の形で存在し、腐食反応部における界面のpHの低下を抑制して、腐食を抑える効果を有する元素である。上記の効果を得る場合、Caを0.0002%以上含有させることが好ましく、0.0005%以上含有させることがより好ましい。この効果を得る必要がない場合、Ca含有量の下限を制限しなくてもよく、その下限は0%である。一方、Ca含有量が0.0050%を超えると、上記の効果が飽和する。したがって、含有させる場合でも、Ca含有量は、0.0050%以下とする。
Mgは、腐食反応部における界面のpHの低下を抑制して、鋼の腐食を抑える効果を有する元素である。上記の効果を得る場合、Mg含有量を0.0002%以上とすることが好ましく、0.0005%以上とすることがより好ましい。この効果を得る必要がない場合、Mg含有量の下限を制限しなくてもよく、その下限は0%である。一方、Mg含有量が0.0050%を超えると、上記の効果が飽和する。したがって、含有させる場合でも、Mg含有量を0.0050%以下とする。
REM(希土類元素)は鋼材の溶接性を向上させる元素である。この効果を得る場合、REM含有量を0.0002%以上とすることが好ましく、0.0005%以上とすることがより好ましい。この効果を得る必要がない場合、REM含有量の下限を制限しなくてもよく、その下限は0%である。一方、REM含有量が0.0050%を超えると上記の効果が飽和する。したがって、含有させる場合でも、REM含有量を0.0050%以下とする。本実施形態において、REMとは、ランタノイドの15元素にYおよびScを合わせた17元素の総称である。本実施形態に係る熱延鋼板は、これらの17元素のうちの1種または2種以上を含有することができ、REM含有量は、これらの元素の合計含有量を意味する。
スケール層には、通常、鉄酸化物として、ウスタイト、ヘマタイト、マグネタイトの1種または2種以上が含まれる。
本実施形態に係る熱延鋼板は、スケール層中の鉄酸化物の組成比が、下記(i)式を満足する。
0.02≦(h+w)/m≦0.20 ・・・(i)
ただし、(i)式中のhはヘマタイトの質量%での含有量、wはウスタイトの質量%での含有量、mはマグネタイトの質量%での含有量を表す。いずれも、スケール層の質量に対する割合である。
高温で形成されるスケール(ミルスケール)は、表層にマグネタイト及びヘマタイト、中間層にウスタイトもしくはウスタイトから変態した合金組織、地鉄(母材鋼板)との界面にマグネタイトシームを有する。母材にSnを含有させると、Snの融点が235℃と低いために、スケール層中の地鉄との界面にSnの濃化層が形成され、ウスタイトの含有量が低下し、マグネタイトシームの形成が抑制され、スケール層の剥離性が向上するものと考えられる。
本実施形態に係る熱延鋼板において、スケール層中の母材鋼板との界面には、Sn含有量が母材鋼板の1.4倍以上であるSn濃化層が存在する。
本実施形態に係る熱延鋼板では、母材に優れた耐食性を付与するため、鋼板中のSn含有量を0.08%以上としている。Sn濃化層は、熱間圧延時に生成するスケール層中に、鋼板中のSnが溶解、拡散することによって、スケール層中の母材鋼板との界面に形成される。スケール層中の母材鋼板との界面にSn濃化層が形成されると、スケール層中におけるウスタイトの形成が抑制され、その結果、鋼板との界面においてマグネタイトシームの形成が抑制されるので、スケール剥離性が向上する。優れたスケール剥離性を得るためには、Sn濃化層中に含まれるSnの含有量(Sn濃度)が、母材鋼板のSn含有量の1.4倍以上(濃度比≧1.4)である必要がある。Sn濃化層のSn含有量が母材鋼板の1.4倍未満の場合、スケール層中のウスタイト形成が促進され、その結果として界面に強固なマグネタイト層が形成されるので、スケール層の剥離性が低下する。一方、Sn濃化層中のSn含有量が、母材鋼板の2.0倍を超えると、熱間圧延中にスケール層の剥離が生じやすくなり、ロールや熱延鋼板のスケール疵の要因となるので好ましくない。鋼板中のSnのスケール中への溶解、スケール中での拡散を促進し、Sn濃化層を形成するためには、Snを含有する鋼板を製造する過程において、デスケーリング条件、冷却条件等を制御することが有効である。
本実施形態に係る熱延鋼板において、スケール層の平均厚さは1.0〜15.0μmである。スケール層の厚さが1.0μm未満であると、ショットブラスト等によって物理的にスケールを剥離させる際に、鋼板表面にスケールが押し込まれる可能性がある。この場合、鋼板表面に過剰な凹凸が付与されることになるので好ましくない。また、スケール層の厚さが15.0μmを超えると、熱間圧延時に部分的なスケール剥離が生じ、ロールや熱延鋼板のスケール疵の要因となる可能性がある。スケール層の厚さの下限を、2.0μm、4.0μm又は5.0μmとしてもよく、その上限を13.0μm、11.0μm又は10.0μmとしてもよい。
本実施形態に係る鋼材は、本実施形態に係る熱延鋼板にショットブラスト処理を行い、さらに、塗装処理を行うことによって得られる。すなわち、本実施形態に係る鋼材は、ミルスケールが除去された本実施形態に係る熱延鋼板の上に防食塗膜層を有する。そのため、化学成分は、本実施形態に係る熱延鋼板と同じである。ショットブラスト条件、塗装条件、塗装方法等は、限定されず、要求特性に応じて公知の方法で行えばよい。
本実施形態に係るコンテナは、本実施形態に係る鋼材を用いて形成され、従って、本実施形態に係る鋼材を備える。形成方法については、特に限定されない。
本実施形態に係る熱延鋼板は、製造方法によらず、上述の構成を有することでその作用効果は得られる。しかしながら、以下に示す各工程を含む製造方法によれば安定して製造することができるので好ましい。各工程における好ましい条件について以下に詳しく説明する。
<鋳造工程>
上記の化学組成を有する鋼を転炉、電気炉等で溶製し、溶鋼を製造する。必要に応じて、続いて真空脱ガス等の処理を施しても良い。
その後、公知の方法、例えば、連続鋳造法または鋼塊にした後に分塊圧延する等の方法で鋼片(スラブ)とする。また、溶鋼から直接鋼板を製造するいわゆるストリップキャスト等の方法を用いても構わない。この際、鋼塊の成分偏析は炭化物粒径のバラツキを大きくするので、未凝固域圧下、電磁攪拌等の凝固偏析を少なくする方法を採用することが好ましい。
次に、上記の方法で製造されたスラブを加熱する。加熱温度は均一にオーステナイト域まで加熱するために、1200℃以上とすることが好ましい。一方、スケール生成による表面性状の劣化を避けるため、加熱温度は1250℃以下である。
加熱されたスラブを、少なくとも粗圧延機および仕上圧延機を備える圧延機によって、圧延開始温度1000℃以上、圧延終了温度800〜950℃となるように熱間圧延することが好ましい。圧延終了温度が800℃未満の場合、オーステナイト粒が扁平化し、圧延方向と幅方向とで機械的性質のばらつきが生じ、加工性が悪化するおそれがある。また、析出物を微細にするためには、圧延終了温度を800℃以上とするのが好ましい。一方、950℃を超える温度で圧延を終了させると、結晶粒の粗大化やスケール疵が発生しやすくなる等の問題がある。
上述した仕上圧延の初期とは、仕上圧延の1パス目から3パス目までの少なくとも1パスと同時に行うことを意味する。また、「少なくとも粗圧延の終了後、および、仕上圧延の初期において」とは、「粗圧延の終了後および仕上圧延の初期」以外の時期に行うデスケーリングを排除するものではない。
圧延終了後は、水冷ゾーンにおいて25℃/s以上の平均冷却速度で500〜650℃まで冷却する。平均冷却速度が25℃/s未満では、スケール成長が助長され、スケール厚さが15.0μmを超えたり、剥離性の低いスケールが形成されたりすることが懸念される。一方、圧延後の冷却速度が100℃/sを超えると、鋼板がマルテンサイト組織になりやすく、鋼板の巻き取りが困難になる。そのため、平均冷却速度は100℃/s以下であることが好ましい。
圧延終了から冷却開始までの時間は5秒以内とすることが好ましい。圧延終了後冷却開始までの時間が5秒を超えると、圧延工程で導入した転位の回復が起こり、フェライト変態の核が不足するので、結晶粒が粗大化し、靭性が低下するおそれがある。また、熱延鋼板表面のスケール成長が進行し、剥離性の低いスケールが形成されるおそれがある。
本実施形態に係る鋼材は、上述の工程で得られた熱延鋼板に対し、ショットブラスト処理を行い、さらに、塗装処理を行うことによって製造することができる。ショットブラスト、及び塗装処理については、公知の方法でよい。
本実施形態に係るコンテナは、上述の工程で得られた本実施形態に係る鋼材(塗装鋼材)を用いて、溶接等の公知の方法によって形成することができる。
得られた熱延鋼板から上述のサイズの試験片を採取し、各試験片に対して、500gの重りを200mmの高さから落として、スケール層の破損状況を目視で判断することにより、スケール層の強度を評価した。スケール層に割れや剥離があれば「OK」(すなわち、スケール剥離性が良い)、割れや剥離がなければ「NG」(すなわち、スケール剥離性が悪い)とした。結果を表3に示す。
まず、試験片を、30℃、90%RHの湿潤環境にて0.5時間保持した後、30℃、5%NaClの塩水を0.5時間噴霧し、再び30℃、95%RHの湿潤環境にて1.0時間保持し、さらに40℃、50%RHの環境で6.0時間乾燥させるというサイクル試験を18サイクル実施した。その後、40℃、90%RHの湿潤環境にて4.0時間保持した後、40℃、40%RHの環境で4.0時間乾燥させるというサイクル試験を144サイクル実施した。試験前後の試験片の重量をそれぞれ測定し、腐食減量を算出した。ここで、腐食減量とは、減量を厚みに換算したものである。結果を表3に示す。
耐食性の評価については、腐食減量が30μm以下のものを良好な結果とした。
塩化物が多量に飛来する大気腐食環境を模擬する試験として、SAE J2334試験を実施した。SAE J2334試験とは、下記の乾湿繰り返しの条件を1サイクル(合計24時間)として行う加速劣化試験であり、飛来塩分量が1mddを超えるような厳しい腐食環境を模擬する試験である。
・湿潤:50℃、100%RH、6時間、
・塩分付着:0.5質量%NaCl、0.1質量%CaCl2、0.075質量%NaHCO3水溶液浸漬、0.25時間、
・乾燥:60℃、50%RH、17.75時間
上記の腐食形態は、大気暴露試験の腐食形態に類似しているとされている。
各塗装鋼板の塗装表面に十字の疵を形成して、下地としての鋼材の一部を露出させた。そして、疵部が形成された位置において、下地としての鋼材の最大腐食深さ(鋼材表面からの腐食深さの最大値)を測定した。また、疵部から進展して剥離した部分の面積を評価するために、塗装剥離面積率(%)を求めた。具体的には、塗装が剥離した部分(疵部から進展して剥離した部分)をカッター等によって取り除き、取り除いた部分を塗装剥離部とした。そして、画像処理ソフトの2値化処理を用いて、(塗装剥離部面積)/(試験片面積)×100の値を求めて塗装剥離面積率(%)とした。試験片面積とは、試験片の6つの面うち疵部が形成された面の面積を意味する。
SAE J2334試験における合否判断基準は、最大腐食深さについては、400μm以下を合格とした。さらに、塗装剥離面積率については、60%以下を合格とした。また、塗膜疵部以外の健全部についてもスケール剥離や発錆の有無を観察した。
鋼板との界面のスケール層中のSn濃化層のSn濃度は、スケールから鋼板まで板厚方向に0.5μm間隔で、EPMAによるライン分析を、3回行うことによって測定した。測定により得られた、鋼板とスケールとの界面からスケール層中の20点のSn濃度の測定結果(計60点)の中から、最大から10点、最小から10点のデータを異常値として除外し、残りの40点の平均値を、鋼板との界面のスケール層中のSn濃化層のSn濃度とした。このSn濃度と、鋼板の取鍋でのSn分析値との比を、Sn濃度比とした。
試験番号20の熱延鋼板は、界面へのSi濃化によるスケール剥離性の低下ため、ショットブラスト処理後もわずかにスケール層が鋼板表面に残存し、耐食性が低下した。さらに、塗装を施してもSAE J2334試験中に塗膜疵部以外の健全部で、残存スケールによる剥離や発錆が観測され、その結果、耐食性が低下した。
試験番号21の熱延鋼板では、スケール剥離が促進され、剥離したスケールによる母材の押し込み疵が生じたので、そのあとの試験を行わなかった。
0.02≦(h+w)/m≦0.20 ・・・(i)
(2)上記(1)の熱延鋼板では、前記化学成分におけるW含有量が、質量%で0.005%以下であってもよい。
(3)上記(1)または(2)の熱延鋼板では、前記化学成分におけるMo含有量が、質量%で0.005%以下であってもよい。
(4)上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の熱延鋼板では、前記化学成分におけるCu含有量が、質量%で0.02%以下であってもよい。
(5)上記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の熱延鋼板では、前記化学成分におけるNi含有量が、質量%で0.02%以下であってもよい。
(6)上記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の熱延鋼板では、前記化学成分におけるCr含有量が、質量%で0.02%以下であってもよい。
(7)上記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の熱延鋼板では、前記化学成分におけるTi含有量が、質量%で0.01%以下であってもよい。
(8)本発明の別の態様に係る鋼材は、上記(1)〜(7)のいずれか一項に記載の熱延鋼板に、ショットブラスト処理を行い、さらに、前記ショットブラスト処理を行った前記熱延鋼板に塗装処理を行うことによって得られる。
(9)本発明の別の態様に係るコンテナは、上記(8)に記載の鋼材を備える。
Claims (9)
- 鋼板と、
前記鋼板の表面に形成されたスケール層とを有し、
前記鋼板の化学成分が、質量%で、
C:0.04%を超えて0.20%以下、
Si:0.05〜0.30%、
Mn:0.30〜2.50%、
P:0.050%以下、
S:0.030%以下、
Sn:0.08〜0.25%、
Al:0.005〜0.050%、
N:0.0005〜0.0100%、
Nb:0.005〜0.015%、
Cu:0〜0.05%、
Ni:0〜0.05%、
Cr:0〜0.05%、
W:0〜0.50%、
Mo:0〜0.50%、
Ti:0〜0.15%、
V:0〜0.05%、
B:0〜0.0005%、
Ca:0〜0.0050%、
Mg:0〜0.0050%、
REM:0〜0.0050%、
を含有し、残部がFeおよび不純物であり、
前記スケール層中の、前記鋼板と前記スケール層との界面に、Sn含有量が前記鋼板のSn含有量の1.4倍以上であるSn濃化層が存在し、
前記スケール層の平均厚さが1.0〜15.0μmであり、
前記スケール層が、ウスタイト、ヘマタイト、マグネタイトの1種または2種以上の鉄酸化物を含み、
前記スケール層中において、前記ウスタイトの質量%での含有量をw、前記ヘマタイトの質量%での含有量をh、前記マグネタイトの質量%での含有量をmとしたとき、前記w、前記h及び前記mが、下記(i)式を満足し、
前記鋼板の板厚が2〜16mmである、
ことを特徴とする熱延鋼板。
0.02≦(h+w)/m≦0.20 ・・・(i) - 前記化学成分におけるW含有量が、質量%で0.005%以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱延鋼板。
- 前記化学成分におけるMo含有量が、質量%で0.005%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱延鋼板。
- 前記化学成分におけるCu含有量が、質量%で0.02%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱延鋼板。
- 前記化学成分におけるNi含有量が、質量%で0.02%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱延鋼板。
- 前記化学成分におけるCr含有量が、質量%で0.02%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱延鋼板。
- 前記化学成分におけるTi含有量が、質量%で0.01%以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱延鋼板。
- 請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱延鋼板に、ショットブラスト処理を行い、さらに、前記ショットブラスト処理を行った前記熱延鋼板に塗装処理を行うことによって得られることを特徴とする鋼材。
- 請求項8に記載の鋼材を備えることを特徴とするコンテナ。
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