JP5838708B2 - 表面性状に優れた鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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すなわち、 圧延開始前にスラブ表面に形成されたスケールを高圧水噴射により除去し、900〜950℃の仕上圧延温度で圧延を終了して、850〜950℃で厚鋼板の水冷を開始し、650℃以上で水冷を停止する製造方法が開示されている。
(1)鋼材の成分が、質量%で、
C:0.05〜0.20%、
Si:0.01〜0.40%、
Mn:0.1〜1.6%、
P:0.005〜0.030%、
S:0.01%以下、
Cu:0.01〜0.09%、
Ni:0.01〜0.09%、
Al:0.07%以下、
N:0.01%以下
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成とからなり、
表面から板厚方向にスケール層と、サブスケール層と、CuおよびNiの濃化層が存在する鋼板であって、
前記スケール層の平均厚さが1〜15μmであり、
前記サブスケール層の平均厚さが0.2〜3μmで、
前記CuおよびNiの濃化層において、CuおよびNiの各々元素の最大の濃度の合計をM(質量%)としたとき下記式を具備すること
を特徴とする表面性状に優れた鋼板。
1.2<M/(Cu+Ni)<2.0
ただし、Cu、Niは鋼材の成分の含有量(質量%)である。
(2)さらに、鋼材の成分が、質量%で、
Cr:1.0%以下、
Mo:1.0%以下、
Nb:0.1%以下、
V:0.1%以下、
Ti:0.03%以下、
B:0.005%以下
の中から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする前記(1)に記載の表面性状に優れた鋼板。
(3) さらに、鋼材の成分が、質量%で、
REM:0.02%以下、
Ca:0.005%以下、
Mg:0.005%以下
のうちから選ばれる1種以上を含有することを特徴とする前記(1)または(2)に記載した表面性状に優れた鋼板。
(4) 前記(1)〜(3)のいずれか1つに記載した鋼板を製造するに際し、鋼片を1000〜1180℃に加熱後、第一のデスケーリングを行い、
その後、圧延終了温度が900℃以下とする熱間圧延工程において、高圧水を噴射する第二のデスケーリングを、前記圧延終了温度以上950℃以下の温度範囲での圧延パスの直前に、鋼板表裏面に3回以上、かつ第二デスケーリングのサイクル間隔が10〜50秒で行い、
前記熱間圧延工程が終了した後、空冷することを特徴とする表面性状に優れた鋼板を製造する方法。
C:0.05〜0.20%
Cは、鋼の強度を増加させ、構造用鋼材として必要な強度を確保するために必要な元素でその効果を得るため、0.05%以上の含有を必要とする。
Siは、脱酸材として作用し、製鋼上、少なくとも0.01%必要である。一方、0.40%を超えて含有すると、母材の靭性、溶接部の低温割れ性が顕著に劣化する。さらに加熱時には、鋼素材のSiのミクロ偏析に起因して、生成するサブスケール層の厚さが場所によってばらつく。このため、圧延時には、場所によって厚みの異なるサブスケール層が圧延により地鉄に押し込まれ、地鉄の凹凸生成が促進される。また、サブスケール層の厚さが異なると、圧延終了後の冷却過程で成長する表面スケール層の厚さも異なるため、圧延時のデスケーリング性や、最終製品での表面スケールの密着性にばらつきが生じる。このため、Siは、0.01〜0.40%の範囲に限定する。好ましくは、0.02〜0.35%である。
Mnは、鋼の焼入れ性を増加させる効果を有し、母材の強度を確保するために0.1%以上は必要である。一方、1.6%を超えて含有すると、母材の靭性、延性および溶接性が著しく劣化する。このため、0.1〜1.6%の範囲に限定する。好ましくは、0.2〜1.5%である。
Pは、不純物元素として含有されるが、過度のP低減は精錬コストを高騰させ経済的に不利となるため、0.005%以上とする。一方、0.030%を超えて含有すると、鋼の強度を増加させ著しく靭性が劣化する。さらに加熱時には、鋼素材のPのミクロ偏析に起因して、生成するサブスケール層の厚さが場所によってばらつく。このため、圧延時には、場所によって厚みの異なるサブスケール層が圧延により地鉄に押し込まれ、地鉄の凹凸生成が促進される。また、サブスケール層の厚さが異なると、圧延終了後の冷却過程で成長する表面スケール層の厚さも異なるため、圧延時のデスケーリング性や、最終製品での表面スケールの密着性にばらつきが生じる。このため、Pは、0.005〜0.030%の範囲に限定する。好ましくは、0.007〜0.025%である。
Sは母材の低温靭性や延性を劣化させるため、低減させることが望ましい。本発明では、0.01%を上限として許容できる。
Cuはスケールと地鉄の界面に濃化して粒界酸化を促進してスケールの密着性を高める元素である。しかし、Cuが0.01%未満では、地鉄表面のCu濃化層が生成せず、地鉄とスケール界面の密着性が低下する。一方、0.09%を超えて含有すると粒界酸化が過度に著しくなり、これにより地鉄の凹凸が促進される。また、スケールの密着性が過度に高まり、圧延中のデスケーリングによって完全にスケールを除去できなくなり、スケールが残存する部分ができる。このような状態となるとスケールの残存した部分は、その後の圧延によってスケールがに押し込まれて地鉄がくぼむため地鉄とスケール界面の凹凸が激しくなる。このため、0.01〜0.09%に限定する。
Niもスケールと地鉄の界面に濃化して粒界酸化を促進してスケールの密着性を高める元素である。しかし、Niが0.01%未満になると、地鉄表面のNi濃化層が生成せず、地鉄とスケール界面の密着性が低下する。一方、0.09%を超えて含有すると粒界酸化が過度に著しくなり、これにより地鉄の凹凸が促進される。また、スケールの密着性が過度に高まり、圧延中のデスケーリングによって完全にスケールを除去できなくなり、スケールが残存する部分ができる。このような状態となるとスケールの残存した部分は、その後の圧延によってスケールが押し込まれて地鉄がくぼむため地鉄とスケール界面の凹凸が激しくなる。このため、0.01〜0.09%に限定する。好ましくは、0.03〜0.07%である。
Alは、脱酸剤として作用し、鋼板の溶鋼脱酸プロセスにおいて、もっとも汎用的に使われる。また、鋼中のNをAlNとして固定し、母材および溶接部の靭性向上に寄与する。一方、0.07%を超えて含有すると、母材の靭性が低下するとともに、溶接時に溶接金属部に混入して、溶接金属の靭性を劣化させるため、0.07%以下に限定する。好ましくは、0.05%以下である。
Nは不可避的不純物として鋼中に含まれ、0.01%を超えて含有すると、母材および溶接部靭性が著しく低下するため、0.01%以下に限定する。さらに、好ましくは0.007%以下である。
Cr:1.0%以下、Mo:1.0%以下、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下、Ti:0.03%以下、B:0.005%以下の中から選ばれる1種以上;
Cr、Mo、Nb、V、Ti、Bは、いずれも鋼の強度向上に寄与する元素であり、所望する強度に応じて適宜含有できる。
REM、CaおよびMgは、いずれも靭性向上に寄与し、所望する特性に応じて選択して添加することが好ましい。
スケール層の平均厚さが1〜15μmであること;
本発明では、スケールと地鉄の密着性を高くするために、スケール層の平均厚さを厳格に管理することが重要である。
また、本発明では、スケール層の厚さを管理するだけでは不十分で、表面スケールの密着性を向上し、かつ地鉄の凹凸を抑制するためには、サブスケール層の厚さが0.2〜3μmに管理することが必要である。
1.2<M/(Cu+Ni)<2.0
ただし、Cu、Niは鋼材の成分の含有量(質量%)である;
さらに、地鉄表面に生成するCuおよびNiの各々元素の最大の濃度の合計をM(質量%)とし、CuとNiの鋼材の成分の含有量(質量%)の総量としたとき、M/(Cu+Ni)が1.2以下であると、Feの拡散によるスケールの成長が促進され、地鉄とスケール層の密着性が劣化する。一方、M/(Cu+Ni)が2.0以上であると結晶粒界の選択酸化が促進されるため、酸化層が粒界に深く入り込み、酸化層(サブスケール)と地鉄の界面の凹凸が激しくなるとともに、ヘゲ疵の発生を助長する。
このため、1.2<M/(Cu+Ni)<2.0とする。好ましくは、1.4<M/(Cu+Ni)<2.0である。
また、碁盤目試験は、JIS K5400(1900)に準拠して、スケール表面に直接100マスのクロスカットを行った後、テープ剥離試験を行い、5.7点以上を良好と評価する。さらに好ましくは、鋼板表面の粗さ(Ra;単位μm)が2.5μm以下、かつ碁盤目試験は、6.2点以上であることが好ましい。
鋼板の製造条件;
以下の説明において、温度に関する「℃」表示は、特に言及しない限り、板厚の1/2の位置における温度を意味するものとする。
上述した組成の鋳片または鋼片の鋼素材を転炉、電気炉、真空溶解炉等、通常公知の方法による溶鋼から作成し、1000℃〜1180℃に再加熱する。再加熱温度が1000℃未満では、熱間圧延での変形抵抗が高く、1パス当たりの圧下量が大きく取れなくなることから、圧延パス数が増加し、圧延能率の低下を招くとともに、鋼素材(スラブ)中の鋳造欠陥を圧着することができない場合が生じる。一方、再加熱温度が1180℃を超えると、鋼素材のミクロ偏析に起因して、生成するサブスケール層の厚さが場所によってばらつく。このため、圧延時には、場所によって厚みの異なるサブスケール層が圧延により地鉄に押し込まれ、地鉄の凹凸生成が促進される。また、サブスケール層の厚さが異なると、圧延終了後の冷却過程で成長する表面スケール層の厚さも異なるため、圧延時のデスケーリング性や、最終製品での表面スケールの密着性にばらつきが生じる。このため、1000〜1180℃の範囲とする。
熱間圧延の終了温度が900℃を超えるとスケールにブリスターが発生するだけでなく、圧延終了後の冷却過程でスケールが過度に成長するために所望のスケール厚さを得られない。
なお、圧延終了温度の下限については規定しないが、圧延終了温度が650℃より低いと、変形抵抗が高くなりすぎて、圧延荷重が増大し、圧延機への負担が大きくなる。また、圧延温度を低下させるためには、圧延途中で待機する必要があり、生産性を大きく阻害するだけでなく、待機中にスケールが過度に成長するために所望のスケール厚さおよびスケール組成を得られないため、650℃以上とすることが望ましい。好ましくは700℃以上、830℃以下である。
本発明で、圧延終了温度以上950℃以下の温度範囲での圧延パスの直前に行なうこととしたのは950℃以上の温度域でデスケーリングを実施した場合には、デスケーリング後の温度が高いためにスケールの成長が大きく、所望のスケールを得られないからである。また、圧延終了後にデスケーリングを実施した場合には、鋼板表面の温度低下により、鋼板が硬化し、曲げ加工性が低下するため、圧延パスの直前に行うこととした。
Claims (4)
- 鋼材の成分が、質量%で、
C:0.05〜0.20%、
Si:0.01〜0.40%、
Mn:0.1〜1.6%、
P:0.005〜0.030%、
S:0.01%以下、
Cu:0.01〜0.09%、
Ni:0.01〜0.09%、
Al:0.07%以下、
N:0.01%以下
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成とからなり、
表面から板厚方向にスケール層と、サブスケール層と、CuおよびNiの濃化層が存在する鋼板であって、
前記スケール層の平均厚さが1〜15μmであり、
前記サブスケール層の平均厚さが0.2〜3μmで、
前記CuおよびNiの濃化層において、CuおよびNiの各々元素のSEM−EPMAマッピングで測定された最大の濃度の合計をM(質量%)としたとき下記式を具備すること
を特徴とする表面性状に優れた鋼板。
1.2<M/(Cu+Ni)<2.0
ただし、Cu、Niは鋼材の成分の含有量(質量%)である。 - さらに、鋼材の成分が、質量%で、
Cr:1.0%以下、
Mo:1.0%以下、
Nb:0.1%以下、
V:0.1%以下、
Ti:0.03%以下、
B:0.005%以下
の中から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の表面性状に優れた鋼板。 - さらに、鋼材の成分が、質量%で、
REM:0.02%以下、
Ca:0.005%以下、
Mg:0.005%以下
の中から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載した表面性状に優れた鋼板。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載した鋼板を製造するに際し、鋼片を1000〜1180℃に加熱後、第一のデスケーリングを行い、
その後、圧延終了温度が900℃以下とする熱間圧延工程において、高圧水を噴射する第二のデスケーリングを、前記圧延終了温度以上950℃以下の温度範囲での圧延パスの直前に、鋼板表裏面に3回以上、かつ第二のデスケーリングのサイクル間隔が10〜50秒で行い、
前記熱間圧延工程が終了した後、空冷することを特徴とする表面性状に優れた鋼板を製造する方法。
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