JP2012219366A - 耐疲労特性に優れた高張力熱延鋼帯の製造方法 - Google Patents

耐疲労特性に優れた高張力熱延鋼帯の製造方法 Download PDF

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行宏 松原
Yukio Kimura
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Abstract

【課題】耐疲労特性に優れた、引張強さ:590MPa以上の高Si含有高張力熱延鋼帯の製造方法を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.03〜0.20%、Si:0.5〜1.8%、Mn:1.5〜3.5%、P:0.1%以下、S:0.01%以下、Al:0.02〜0.1%、N:0.005%以下を含む組成の鋼素材に、粗圧延、仕上圧延からなる熱間圧延を施し、好ましくは540〜640℃で巻取る熱延工程を施し、ついで、溶解量を80〜200g/mとする酸洗処理を行う酸洗工程を施す。このような工程とすることにより、疲労亀裂の原因となる粒界腐食層を除去でき、0.50以上という高い疲労限度比を有し、かつ加工性に優れた高Si含有高張力熱延鋼帯を、容易にしかも安定して製造することができる。
【選択図】図2

Description

本発明は、自動車車体等の使途に好適な、高張力熱延鋼帯の製造方法に係り、とくに比較的Si含有量が高く加工性に優れた高張力熱延鋼帯の耐疲労特性の改善に関する。
近年、地球環境の保全のために、自動車の燃費低減が強く要望され、自動車車体の軽量化が重要な課題となっている。そのため、自動車車体用として使用される鋼板(鋼材)の高強度化が進められている。例えば、440MPa級の鋼板(鋼材)に代えて、550MPa級の鋼板(鋼材)を使用すれば、板厚を20%程度薄くでき、車体の軽量化に貢献できる。このため、自動車車体用として高張力熱延鋼板の使用が強く進められている。
このような高強度化の恩恵を十分に享受するためには、より高強度の鋼板をより薄物化した、高強度薄鋼板を製造する必要がある。しかし、高強度薄鋼板の製造には、種々の問題がある。例えば、550MPa級鋼板は、必然的に、合金元素を多量に含有させる必要があり、そのため、変形抵抗が増加し、熱延荷重の増大をもたらすため、圧延機の能力向上が望まれている。
また、自動車車体向け鋼板では、複雑な加工が施される場合が多く、高強度に加えて、伸びなどの加工性に優れることが要求される。強度と加工性を兼備させるために、自動車車体向け鋼板には、C、Si、Mn等の合金元素が添加されている。なかでも、Siは、安価で加工性向上に有効に寄与する重要な元素である。しかし、Siを多量に含有させると、熱間圧延時の変形抵抗の増加が著しくなり、高強度薄鋼板の製造がますます困難となることが懸念される。さらに、Siを多量に含有させると、疲労限度比(=疲労限強度/引張強さ)が低下し、また、疲労限強度のばらつきも大きくなるという問題がある。
このような問題に対し、例えば特許文献1特許第3875818号公報には、C:0.03〜0.40%、Si:0.50〜3.0%、Mn:0.30〜3.0%、sol.Al:0.01〜0.10%を含む組成の鋼板を、仕上圧延を行った後、巻取温度を523〜650℃として巻き取り、鋼板表面に生成する粒界腐食層の深さを20μm以下とする耐疲労性、および化成処理性に優れた高強度鋼板の製造方法が記載されている。特許文献1に記載された技術によれば、粒界腐食層を起点とする疲労亀裂の発生を抑制して耐疲労性が改善できるとしている。
特許第3875818号公報
しかしながら、最近では、自動車部品等の使用環境が厳しくなり、部品用素材が具備すべき特性も高度なものとなっている。とくに最近では部品の長寿命化が要求され、部材の耐疲労性向上が望まれている。特許文献1に記載された技術によっては、このような要望を十分に満足するまでの、耐疲労特性の向上は望めない。特許文献1に記載された技術では、耐疲労特性向上に限界があった。
本発明者らは、かかる従来技術の問題を解決し、Siを比較的高く含有し、引張強さ:590MPa以上を有し、かつ加工性と耐疲労特性に優れる高張力熱延鋼帯の製造方法を提供することを目的とする。
なお、ここでいう「耐疲労特性に優れる」とは、JIS Z 2275の規定に準拠したシェンク型疲労試験を実施して求めた疲労限強度と引張強さとの比、疲労限強度/引張強さ、が0.50以上である場合をいうものとする。ここで、疲労限強度とは、JIS 1号試験片(試験片幅:20mm、ノッチ半径R:30mm)を用いて、繰返速度:1800回/minで、繰返し曲げ応力を付加し、繰返し回数:10回で破断しない最も高い応力をいう。
本発明者らは、上記した目的を達成するために、高Si含有熱延鋼帯の耐疲労特性に及ぼす各種要因について鋭意研究した。その結果、熱間圧延工程、酸洗工程で生成される粒界酸化物の選択的な溶解に起因する割れが、耐疲労特性の低下に大きく影響していることを知見した。そして、高Si含有熱延鋼帯の耐疲労特性の更なる向上のためには、上記したような粒界酸化物の選択的な溶解に起因する割れを防止することが肝要であり、そのためには、熱間圧延工程で巻取温度を適正範囲に調整し粒界酸化物の形成を抑制したうえで、さらに酸洗工程での溶解量を80g/mm以上とする必要があることに想到した。
Siを多量に含有する鋼帯では、熱間圧延後の巻取り時に、巻取温度に依存して、熱延板表層に、内部酸化層と称する、酸化物が生成する場合がある。この内部酸化層は、鋼板表面の酸化物(スケール)中の酸素Oと、鋼板内部のSi、Mnが反応して、結晶粒界に沿って酸化物(粒界酸化物)が形成されて生じるもので、高温での保持時間が長くなると、顕著となる。このような内部酸化層を有する鋼帯に酸洗処理を施すと、粒界酸化物が選択的に溶解され、割れ状の欠陥(粒界腐食層)として、表面近傍に残存する場合がある。
図1は、巻取温度:570℃の熱延鋼帯(1.4%Si含有)について、酸洗による溶解量を変化させて酸洗処理を行ったのち、断面組織を光学顕微鏡写真で示すものであり、溶解量が38g/m、69 g/mである場合には、酸洗処理により、粒界酸化物が優先的に腐食され、割れ状の欠陥(粒界腐食層)が残留していることがわかる。なお、溶解量が88 g/mと多くなると、割れ状の欠陥(粒界腐食層)がなくなり、平滑に近い表面となっている。この割れ状の欠陥(粒界腐食層)が表面近傍に残存すると、疲労亀裂として作用し、耐疲労特性が低下するものと考え、耐疲労特性の更なる向上には、この粒界腐食層を完全に溶解除去する必要があることに思い至った。
まず、本発明の基礎となった実験結果について説明する。
質量%で、0.11%C−1.4%Si−2.0%Mn−0.02%P−0.002%S−0.11%V−0.003%N−残部Feからなる組成の鋼素材に、熱間圧延を施し、巻取温度:570℃、620℃の各温度で巻き取り、熱延鋼帯(板厚:2.5mm)とした。これら熱延鋼帯から試験材を採取し、種々の条件で酸洗処理を施し鋼帯表面を溶解除去する処理を行った。酸洗処理による溶解量は、酸洗前後の試験片重量の差から求めた。なお、酸洗処理は、10%塩酸(液温:90℃)−酸洗処理とした。一部の試験材については、10%塩酸液に0.1%の酸化抑制剤(インヒビター)を添加して、酸洗効率を調整して、酸洗した。
そして、酸洗処理済み試験材から、JIS Z 2275の規定に準拠してJIS1号試験片(試験片幅:20mm、ノッチ部半径:30R)を採取し、シェンク型疲労試験を実施した。疲労試験は、繰返速度:1800回/minで、繰返し曲げ応力を負荷する試験とし、繰返し回数:10回で破断しない最も高い応力を疲労限強度として求めた。そして、得られた疲労限強度と引張強さの比である、疲労限度比を算出した。
なお、疲労限度比の算出に用いた引張強さは、疲労試験とは別に、得られた各熱延鋼帯から、JIS 5号引張試験片を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠して、引張試験を行って、得られた引張強さTSである。
得られた疲労限度比と酸洗処理による溶解量との関係を図2に示す。
図2から、疲労限度比が0.50以上となる場合は、酸洗処理による溶解量を80g/m以上とする場合であることがわかる。溶解量が80 g/m未満では、疲労限度比は0.50未満と、耐疲労特性が低下することになる。疲労限度比を0.50以上とするためには、酸洗による溶解量を80 g/m以上とし、粒界腐食層を完全に溶解除去することが肝要となる。
なお、この内部酸化層の形成は、鋼板組成、熱間圧延の巻取温度に依存するが、本発明における組成範囲では、巻取温度が低温になるほど、その形成傾向は小さくなり、粒界腐食層の厚さも小さく、酸洗条件によらず、疲労限度比の低下は少なくなる。しかし、巻取温度が低くなりすぎると、強度が高くなりすぎて延性が低下し、加工性が低下する。所望の高強度を保持しかつ所望の優れた加工性を確保するためには、540〜620℃程度の巻取温度とすることが好ましいことを知見した。
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨はつぎのとおりである。
(1)質量%で、C:0.03〜0.20%、Si:0.5〜1.8%、Mn:1.5〜3.5%、P:0.1%以下、S:0.01%以下、Al:0.02〜0.1%、N:0.005%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材に、熱延工程と、酸洗工程とを施して製品鋼帯とする高張力熱延鋼帯の製造方法において、前記酸洗工程を、前記熱延工程済みの熱延鋼帯に、溶解量:80〜200 g/mとする酸洗処理を行う工程とすることを特徴とする、加工性と耐疲労特性に優れ、引張強さ:590MPa以上を有する高張力熱延鋼帯の製造方法。
(2)(1)において、前記熱延工程を、粗圧延と仕上圧延とからなる熱間圧延を施して熱延鋼帯とし、該熱延鋼帯を、540〜640℃の範囲の巻取温度で巻取る工程とすることを特徴とする、高張力熱延鋼帯の製造方法。
(3)(1)または(2)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Nb:0.005〜0.15%、Ti:0.005〜0.15%、V:0.005〜0.15%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする高張力熱延鋼帯の製造方法。
(4)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.01〜0.20%、Ni:0.01〜0.20%、Cr:0.01〜0.20%、Mo:0.01〜0.20%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする高張力熱延鋼帯の製造方法。
本発明によれば、基板が0.5質量%以上のSiを含有する高Si含有高張力鋼帯であっても、加工性に優れ、かつ耐疲労特性にも優れた高張力熱延鋼帯を、容易にしかも安価に製造することができ、産業上格段の効果を奏する。
酸洗処理後の、粒界腐食層の残存状況を示す、断面光学顕微鏡組織写真である。 疲労限度比に及ぼす酸洗溶解量の影響を示すグラフである。
本発明は、鋼素材に、熱延工程、酸洗工程を、順次施して高張力熱延鋼帯とする、高張力熱延鋼帯の製造方法である。
まず、使用する鋼素材(スラブ)の組成限定理由について説明する。なお、以下、とくに断わらない限り、質量%は単に%で記す。
C:0.03〜0.20%
Cは、鋼の強度を増加させる作用を有する元素であり、所望の高強度を確保するために0.03%以上の含有を必要とする。一方、0.20%を超える含有は、鋼板の溶接性を著しく低下させる。このため、Cは0.03〜0.20%の範囲に限定した。
Si:0.5〜1.8%
Siは、Cと同様に、鋼の強度を増加させ、さらに加工性の向上にも寄与する、安価な元素であり、本発明において重要な元素である。このような効果を得るためには、0.5%以上の含有を必要とする。一方、1.8%を超える含有は、鋼板の低温靭性が著しく低下する。このため、Siは0.5〜1.8%の範囲に限定した。
Mn:1.5〜3.5%
Mnは、鋼の強度を増加させる作用を有する元素であり、所望の高強度を確保するために1.5%以上の含有を必要とする。一方、3.5%を超える含有は、鋼板の溶接性を著しく低下させる。このため、Mnは1.5〜3.5%の範囲に限定した。
P:0.1%以下
Pは、鋼を強化する作用を有する元素であるが、多量の含有は、溶接性、靭性を低下させるため、できるだけ低減することが望ましいが、0.10%までは許容できる。なお、より優れた溶接性、靭性を確保する必要がある使途には、0.05%以下の含有とすることが好ましい。
S:0.01%以下
Sは、鋼中では硫化物として存在し、延性、とくに伸びフランジ性、さらには靭性に悪影響を及ぼす元素であり、できるだけ低減することが望ましいが、0.01%までは許容できる。なお、好ましくは0.005%以下である。また、過度の低減は、精錬コストの高騰を招き、経済的に不利となるため、0.001%以上とすることがより好ましい。
Al:0.02〜0.1%
Alは、脱酸剤として作用するとともに、Nと結合してAlNを形成し、高温における結晶粒の粗大化を抑制する元素である。このような効果を得るためには、0.02%以上の含有を必要とする。一方、0.1%を超える含有は、鋼の清浄度を低下させる。このため、Alは0.02〜0.1%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.02〜0.05%である。
N:0.005%以下
Nは、固溶して鋼の強度を増加させる作用を有する元素であるが、溶接性、耐時効性に悪影響を及ぼす。このため、Nは、できるだけ低減することが望ましいが、0.005%までは許容できる。このため、Nは0.005%以下に限定した。
上記した成分が基本の成分であるが、本発明では、必要に応じて、この基本の組成に加えてさらに、Nb:0.005〜0.15%、Ti:0.005〜0.15%、V:0.005〜0.15%のうちから選ばれた1種または2種以上、および/または、Cu:0.01〜0.20%、Ni:0.01〜0.20%、Cr:0.01〜0.20%、Mo:0.01〜0.20%のうちから選ばれた1種または2種以上、を選択して含有する組成とすることができる。
Nb:0.005〜0.15%、Ti:0.005〜0.15%、V:0.005〜0.15%のうちから選ばれた1種または2種以上
Nb、Ti、Vはいずれも、炭窒化物を形成し、析出強化により、鋼板の強度増加に寄与する元素であり、必要に応じて選択して、1種または2種以上含有できる。このような効果を得るためには、Nb:0.005%以上、Ti:0.005%以上、V:0.005%以上の含有を必要とする。一方、Nb:0.15%、Ti:0.15%、V:0.15%を、それぞれ超えて含有しても、効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できなくなる。このため、含有する場合には、Nb:0.005〜0.15%、Ti:0.005〜0.15%、V:0.005〜0.15%の範囲にそれぞれ限定することが好ましい。
Cu:0.01〜0.20%、Ni:0.01〜0.20%、Cr:0.01〜0.20%、Mo:0.01〜0.20%のうちから選ばれた1種または2種以上
Cu、Ni、Cr、Moはいずれも、固溶強化を介して鋼の強度増加に寄与する元素であり、必要に応じて選択して含有できる。このような効果を得るためには、それぞれ、Cu:0.01%以上、Ni:0.01%以上、Cr:0.01%以上、Mo:0.01%以上、含有することが望ましい。一方、Cu:0.20%、Ni:0.20%、Cr:0.20%、Mo:0.20%、をそれぞれ超えて含有しても、効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できなくなる。このため、Cu:0.01〜0.20%、Ni:0.01〜0.20%、Cr:0.01〜0.20%、Mo:0.01〜0.20%、のそれぞれの範囲に限定することが望ましい。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。
上記した成分組成を有する鋼素材の製造方法は特に限定する必要はなく、転炉、電気炉等の通常公知の溶製炉をもちいて、或いはさらにRH脱ガス・脱硫等の取鍋精錬を行って、上記した組成の溶鋼を溶製し、連続鋳造法等の、通常公知の鋳造法を用いてスラブ等の鋼素材とすることが好ましい。
ついで、上記した成分組成を有する鋼素材に熱延工程を施す。熱延工程では、まず、鋼素材を、再加熱し、あるいは所定の熱量を保持している場合は再加熱することなく直接、熱間圧延を施す。
熱間圧延のための再加熱温度は、熱間圧延が可能な温度であればよく、とくに限定する必要はないが、1150〜1300℃の範囲の温度とすることが好ましい。再加熱温度が1150℃未満では、変形抵抗が大きくなりすぎ、圧延機への負荷が過大となる。一方、1300℃を超えると、加熱時間が長くなり生産性が著しく低下する。
再加熱された鋼素材は、ついで、粗圧延、仕上圧延からなる熱間圧延を施され、熱延鋼帯とされる。粗圧延は、所望の寸法のシートバーとすることができればよく、とくにその条件を限定する必要はない。なお、粗圧延の前に、サイジングプレスによる幅方向寸法の調整を行ってもよいことは言うまでもない。
仕上圧延は、所望の寸法形状の熱延鋼帯とすることができればよく、その条件はとくに限定する必要はないが、加工性向上という観点から巻取温度が所望の温度範囲の温度とすることができるように、仕上圧延終了温度を、850〜1050℃の範囲とすることが望ましい。
仕上圧延終了後、熱延板(熱延鋼帯)は、所定の巻取温度まで冷却され、コイル状に巻き取られる。巻取温度は、540〜640℃の範囲の温度とすることが好ましい。
巻取温度:540〜640℃
本発明では、加工性に優れた組織とするために、ベイナイト等の硬質相の生成を抑制して、軟質の組織を有する熱延鋼帯とすることが好ましい。このため、本発明では、巻取温度を、540〜640℃の範囲の温度とすることが好ましい。巻取温度が540℃未満では、粒界酸化を大幅に抑制することができるが、熱延板が硬質化し、延性が低下する。一方、640℃を超えて高温となると、表層の脱炭が激しくなることや、コイル潰れが発生するという問題がある。また、酸洗での溶解量を大きくすることが必要となるという問題がある。このため、巻取温度は540〜640℃の範囲の温度に限定することが好ましい。
熱延工程を施された熱延鋼帯は、ついで、酸洗工程を施される。
酸洗工程では、熱延時、或いは巻取り時に生成した酸化物を除去することを目的に、酸洗処理を行うが、本発明における酸洗処理では、巻取り時に生成した粒界酸化物を完全に除去することを目的とする。そのために、酸洗処理による溶解量を80〜200g/mとする。
溶解量の調整は、酸洗液中の浸漬時間で調整することが好ましい。また、使用する酸洗液は、とくに限定されないが、生産性の観点から、塩酸、好ましくは5〜20質量%塩酸水溶液とすることが好ましい。酸洗液の液温は、60〜90℃とすることが、酸洗工程の生産性向上の観点から好ましい。また、酸洗効率の調整のために、酸洗液に、0.1〜0.5質量%程度の酸化抑制剤(インヒビター)を添加してもよい。なお、酸洗処理前に、ショットブラスト処理、ブラシ研削等のメカニカルデスケーリングを行ってもよい。メカニカルデスケーリングと酸洗処理とを併用することにより、粒界酸化物等の酸化物除去が促進される。また、酸洗処理を施されたのち、熱延板は水洗等の洗浄処理を施されることは言うまでもない。
酸洗処理による溶解量:80〜200g/m
酸洗処理による溶解量:80 g/m未満では、巻取温度が低温であっても、生成した粒界酸化物が完全に除去できず、粒界腐食層として残存する。このため、残存した粒界腐食層が疲労亀裂となり、疲労限を低下し、耐疲労特性を低下させる。一方、200g/mを超えて溶解量が多くなると、鋼帯歩留の低下を招く。このため、酸洗処理による溶解量は80〜200g/mの範囲に限定した。この溶解量は、厚み減少量に換算すると、10〜25μmに相当する。
以下、実施例に基き、さらに本発明について説明する。
表1に示す組成の鋼を転炉で溶製し、連続鋳造法でスラブ(鋼素材:肉厚250mm)とした。これらスラブを1250℃に再加熱し、サイジングプレスで幅方向寸法を調整したのち、粗圧延、仕上圧延を施し、熱延鋼帯(3.0mm厚×1400mm幅×約500m長さ)とし、表2に示す巻取温度で巻き取る熱延工程を施した。なお、仕上圧延終了温度(仕上圧延出側温度)は、940〜980℃の範囲の温度とした。
得られた熱延鋼帯に、ついで表2に示す酸洗処理を行う酸洗工程を施した。酸洗処理は、濃度:10〜13%の塩酸水溶液(液温:85〜95℃)を基準の酸洗液とし、一部ではインヒビター(酸化抑制剤)を含有させて、浸漬時間を表2に示すように種々変化させて行い、酸洗処理による溶解量を変化させた。なお、インヒビター(酸化抑制剤)は、特公昭52−37977号公報に記載のものを使用した。
酸洗処理の前後で試験片を採取し、酸洗処理の前後での重量変化(重量差)を測定し、酸洗処理による溶解量を算出した。また、酸洗処理後の試験片について、断面組織を光学顕微鏡(倍率:500倍)で観察し、粒界腐食層の厚さを測定した。
得られた熱延鋼帯から、疲労試験片を採取し、疲労試験を実施した。試験方法は次のとおりとした。
得られた熱延鋼帯から、JIS Z 2275の規定に準拠してJIS1号試験片(試験片幅:20mm、ノッチ部半径:30R)を採取し、シェンク型疲労試験を実施した。疲労試験は、繰返速度:1800回/minで、繰返し曲げ応力を負荷する試験とし、繰返し回数:10回で破断しない最も高い応力を疲労限強度として求めた。そして、得られた疲労限強度と引張強さの比である、疲労限度比を算出した。
なお、疲労限度比の算出に用いた引張強さは、疲労試験とは別に、得られた各熱延鋼帯から、JIS 5号引張試験片(GL50mm)を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠して、引張試験を行い、引張特性(降伏強さ、引張強さ、伸びEl)を求め、得られた引張強さTSを用いた。
得られた結果を表3に示す。
本発明例はいずれも、Si含有量が0.7%以上と多量に含有する場合であっても、疲労限度比が0.50以上と優れた耐疲労特性を有する高強度熱延鋼帯となっている。一方、本発明を外れる比較例は、粒界腐食層が残存するため、疲労限度比が0.50未満と耐疲労特性が低下した熱延鋼帯となっている。

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C:0.03〜0.20%、 Si:0.5〜1.8%、
    Mn:1.5〜3.5%、 P:0.1%以下、
    S:0.01%以下、 Al:0.02〜0.1%、
    N:0.005%以下
    を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材に、熱延工程と、酸洗工程とを施して製品鋼帯とする高張力熱延鋼帯の製造方法において、
    前記酸洗工程を、前記熱延工程済みの熱延鋼帯に、溶解量:80〜200 g/mとする酸洗処理を行う工程とすることを特徴とする、加工性と耐疲労特性に優れ、引張強さ:590MPa以上を有する高張力熱延鋼帯の製造方法。
  2. 前記熱延工程を、粗圧延と仕上圧延とからなる熱間圧延を施して熱延鋼帯とし、該熱延鋼帯を、540〜640℃の範囲の巻取温度で巻取る工程とすることを特徴とする、請求項1に記載の高張力熱延鋼帯の製造方法。
  3. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Nb:0.005〜0.15%、Ti:0.005〜0.15%、V:0.005〜0.15%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項1または2に記載の高張力熱延鋼帯の製造方法。
  4. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.01〜0.20%、Ni:0.01〜0.20%、Cr:0.01〜0.20%、Mo:0.01〜0.20%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の高張力熱延鋼帯の製造方法。
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