JP2012219366A - 耐疲労特性に優れた高張力熱延鋼帯の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.03〜0.20%、Si:0.5〜1.8%、Mn:1.5〜3.5%、P:0.1%以下、S:0.01%以下、Al:0.02〜0.1%、N:0.005%以下を含む組成の鋼素材に、粗圧延、仕上圧延からなる熱間圧延を施し、好ましくは540〜640℃で巻取る熱延工程を施し、ついで、溶解量を80〜200g/m2とする酸洗処理を行う酸洗工程を施す。このような工程とすることにより、疲労亀裂の原因となる粒界腐食層を除去でき、0.50以上という高い疲労限度比を有し、かつ加工性に優れた高Si含有高張力熱延鋼帯を、容易にしかも安定して製造することができる。
【選択図】図2
Description
なお、ここでいう「耐疲労特性に優れる」とは、JIS Z 2275の規定に準拠したシェンク型疲労試験を実施して求めた疲労限強度と引張強さとの比、疲労限強度/引張強さ、が0.50以上である場合をいうものとする。ここで、疲労限強度とは、JIS 1号試験片(試験片幅:20mm、ノッチ半径R:30mm)を用いて、繰返速度:1800回/minで、繰返し曲げ応力を付加し、繰返し回数:107回で破断しない最も高い応力をいう。
質量%で、0.11%C−1.4%Si−2.0%Mn−0.02%P−0.002%S−0.11%V−0.003%N−残部Feからなる組成の鋼素材に、熱間圧延を施し、巻取温度:570℃、620℃の各温度で巻き取り、熱延鋼帯(板厚:2.5mm)とした。これら熱延鋼帯から試験材を採取し、種々の条件で酸洗処理を施し鋼帯表面を溶解除去する処理を行った。酸洗処理による溶解量は、酸洗前後の試験片重量の差から求めた。なお、酸洗処理は、10%塩酸(液温:90℃)−酸洗処理とした。一部の試験材については、10%塩酸液に0.1%の酸化抑制剤(インヒビター)を添加して、酸洗効率を調整して、酸洗した。
得られた疲労限度比と酸洗処理による溶解量との関係を図2に示す。
図2から、疲労限度比が0.50以上となる場合は、酸洗処理による溶解量を80g/m2以上とする場合であることがわかる。溶解量が80 g/m2未満では、疲労限度比は0.50未満と、耐疲労特性が低下することになる。疲労限度比を0.50以上とするためには、酸洗による溶解量を80 g/m2以上とし、粒界腐食層を完全に溶解除去することが肝要となる。
(1)質量%で、C:0.03〜0.20%、Si:0.5〜1.8%、Mn:1.5〜3.5%、P:0.1%以下、S:0.01%以下、Al:0.02〜0.1%、N:0.005%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材に、熱延工程と、酸洗工程とを施して製品鋼帯とする高張力熱延鋼帯の製造方法において、前記酸洗工程を、前記熱延工程済みの熱延鋼帯に、溶解量:80〜200 g/m2とする酸洗処理を行う工程とすることを特徴とする、加工性と耐疲労特性に優れ、引張強さ:590MPa以上を有する高張力熱延鋼帯の製造方法。
(3)(1)または(2)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Nb:0.005〜0.15%、Ti:0.005〜0.15%、V:0.005〜0.15%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする高張力熱延鋼帯の製造方法。
まず、使用する鋼素材(スラブ)の組成限定理由について説明する。なお、以下、とくに断わらない限り、質量%は単に%で記す。
C:0.03〜0.20%
Cは、鋼の強度を増加させる作用を有する元素であり、所望の高強度を確保するために0.03%以上の含有を必要とする。一方、0.20%を超える含有は、鋼板の溶接性を著しく低下させる。このため、Cは0.03〜0.20%の範囲に限定した。
Siは、Cと同様に、鋼の強度を増加させ、さらに加工性の向上にも寄与する、安価な元素であり、本発明において重要な元素である。このような効果を得るためには、0.5%以上の含有を必要とする。一方、1.8%を超える含有は、鋼板の低温靭性が著しく低下する。このため、Siは0.5〜1.8%の範囲に限定した。
Mnは、鋼の強度を増加させる作用を有する元素であり、所望の高強度を確保するために1.5%以上の含有を必要とする。一方、3.5%を超える含有は、鋼板の溶接性を著しく低下させる。このため、Mnは1.5〜3.5%の範囲に限定した。
P:0.1%以下
Pは、鋼を強化する作用を有する元素であるが、多量の含有は、溶接性、靭性を低下させるため、できるだけ低減することが望ましいが、0.10%までは許容できる。なお、より優れた溶接性、靭性を確保する必要がある使途には、0.05%以下の含有とすることが好ましい。
Sは、鋼中では硫化物として存在し、延性、とくに伸びフランジ性、さらには靭性に悪影響を及ぼす元素であり、できるだけ低減することが望ましいが、0.01%までは許容できる。なお、好ましくは0.005%以下である。また、過度の低減は、精錬コストの高騰を招き、経済的に不利となるため、0.001%以上とすることがより好ましい。
Alは、脱酸剤として作用するとともに、Nと結合してAlNを形成し、高温における結晶粒の粗大化を抑制する元素である。このような効果を得るためには、0.02%以上の含有を必要とする。一方、0.1%を超える含有は、鋼の清浄度を低下させる。このため、Alは0.02〜0.1%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.02〜0.05%である。
Nは、固溶して鋼の強度を増加させる作用を有する元素であるが、溶接性、耐時効性に悪影響を及ぼす。このため、Nは、できるだけ低減することが望ましいが、0.005%までは許容できる。このため、Nは0.005%以下に限定した。
上記した成分が基本の成分であるが、本発明では、必要に応じて、この基本の組成に加えてさらに、Nb:0.005〜0.15%、Ti:0.005〜0.15%、V:0.005〜0.15%のうちから選ばれた1種または2種以上、および/または、Cu:0.01〜0.20%、Ni:0.01〜0.20%、Cr:0.01〜0.20%、Mo:0.01〜0.20%のうちから選ばれた1種または2種以上、を選択して含有する組成とすることができる。
Nb、Ti、Vはいずれも、炭窒化物を形成し、析出強化により、鋼板の強度増加に寄与する元素であり、必要に応じて選択して、1種または2種以上含有できる。このような効果を得るためには、Nb:0.005%以上、Ti:0.005%以上、V:0.005%以上の含有を必要とする。一方、Nb:0.15%、Ti:0.15%、V:0.15%を、それぞれ超えて含有しても、効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できなくなる。このため、含有する場合には、Nb:0.005〜0.15%、Ti:0.005〜0.15%、V:0.005〜0.15%の範囲にそれぞれ限定することが好ましい。
Cu、Ni、Cr、Moはいずれも、固溶強化を介して鋼の強度増加に寄与する元素であり、必要に応じて選択して含有できる。このような効果を得るためには、それぞれ、Cu:0.01%以上、Ni:0.01%以上、Cr:0.01%以上、Mo:0.01%以上、含有することが望ましい。一方、Cu:0.20%、Ni:0.20%、Cr:0.20%、Mo:0.20%、をそれぞれ超えて含有しても、効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できなくなる。このため、Cu:0.01〜0.20%、Ni:0.01〜0.20%、Cr:0.01〜0.20%、Mo:0.01〜0.20%、のそれぞれの範囲に限定することが望ましい。
上記した成分組成を有する鋼素材の製造方法は特に限定する必要はなく、転炉、電気炉等の通常公知の溶製炉をもちいて、或いはさらにRH脱ガス・脱硫等の取鍋精錬を行って、上記した組成の溶鋼を溶製し、連続鋳造法等の、通常公知の鋳造法を用いてスラブ等の鋼素材とすることが好ましい。
熱間圧延のための再加熱温度は、熱間圧延が可能な温度であればよく、とくに限定する必要はないが、1150〜1300℃の範囲の温度とすることが好ましい。再加熱温度が1150℃未満では、変形抵抗が大きくなりすぎ、圧延機への負荷が過大となる。一方、1300℃を超えると、加熱時間が長くなり生産性が著しく低下する。
仕上圧延は、所望の寸法形状の熱延鋼帯とすることができればよく、その条件はとくに限定する必要はないが、加工性向上という観点から巻取温度が所望の温度範囲の温度とすることができるように、仕上圧延終了温度を、850〜1050℃の範囲とすることが望ましい。
巻取温度:540〜640℃
本発明では、加工性に優れた組織とするために、ベイナイト等の硬質相の生成を抑制して、軟質の組織を有する熱延鋼帯とすることが好ましい。このため、本発明では、巻取温度を、540〜640℃の範囲の温度とすることが好ましい。巻取温度が540℃未満では、粒界酸化を大幅に抑制することができるが、熱延板が硬質化し、延性が低下する。一方、640℃を超えて高温となると、表層の脱炭が激しくなることや、コイル潰れが発生するという問題がある。また、酸洗での溶解量を大きくすることが必要となるという問題がある。このため、巻取温度は540〜640℃の範囲の温度に限定することが好ましい。
酸洗工程では、熱延時、或いは巻取り時に生成した酸化物を除去することを目的に、酸洗処理を行うが、本発明における酸洗処理では、巻取り時に生成した粒界酸化物を完全に除去することを目的とする。そのために、酸洗処理による溶解量を80〜200g/m2とする。
溶解量の調整は、酸洗液中の浸漬時間で調整することが好ましい。また、使用する酸洗液は、とくに限定されないが、生産性の観点から、塩酸、好ましくは5〜20質量%塩酸水溶液とすることが好ましい。酸洗液の液温は、60〜90℃とすることが、酸洗工程の生産性向上の観点から好ましい。また、酸洗効率の調整のために、酸洗液に、0.1〜0.5質量%程度の酸化抑制剤(インヒビター)を添加してもよい。なお、酸洗処理前に、ショットブラスト処理、ブラシ研削等のメカニカルデスケーリングを行ってもよい。メカニカルデスケーリングと酸洗処理とを併用することにより、粒界酸化物等の酸化物除去が促進される。また、酸洗処理を施されたのち、熱延板は水洗等の洗浄処理を施されることは言うまでもない。
酸洗処理による溶解量:80 g/m2未満では、巻取温度が低温であっても、生成した粒界酸化物が完全に除去できず、粒界腐食層として残存する。このため、残存した粒界腐食層が疲労亀裂となり、疲労限を低下し、耐疲労特性を低下させる。一方、200g/m2を超えて溶解量が多くなると、鋼帯歩留の低下を招く。このため、酸洗処理による溶解量は80〜200g/m2の範囲に限定した。この溶解量は、厚み減少量に換算すると、10〜25μmに相当する。
得られた熱延鋼帯から、疲労試験片を採取し、疲労試験を実施した。試験方法は次のとおりとした。
得られた結果を表3に示す。
Claims (4)
- 質量%で、
C:0.03〜0.20%、 Si:0.5〜1.8%、
Mn:1.5〜3.5%、 P:0.1%以下、
S:0.01%以下、 Al:0.02〜0.1%、
N:0.005%以下
を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材に、熱延工程と、酸洗工程とを施して製品鋼帯とする高張力熱延鋼帯の製造方法において、
前記酸洗工程を、前記熱延工程済みの熱延鋼帯に、溶解量:80〜200 g/m2とする酸洗処理を行う工程とすることを特徴とする、加工性と耐疲労特性に優れ、引張強さ:590MPa以上を有する高張力熱延鋼帯の製造方法。 - 前記熱延工程を、粗圧延と仕上圧延とからなる熱間圧延を施して熱延鋼帯とし、該熱延鋼帯を、540〜640℃の範囲の巻取温度で巻取る工程とすることを特徴とする、請求項1に記載の高張力熱延鋼帯の製造方法。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Nb:0.005〜0.15%、Ti:0.005〜0.15%、V:0.005〜0.15%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項1または2に記載の高張力熱延鋼帯の製造方法。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.01〜0.20%、Ni:0.01〜0.20%、Cr:0.01〜0.20%、Mo:0.01〜0.20%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の高張力熱延鋼帯の製造方法。
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