JP2018070920A - 高張力鋼板の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】鋼板の割れ、表層の軟質化、表層のフェライト粒径の粗大化を防止する連続鋳造から熱延終了までを連続的に行う高Ti高張力鋼板の製造方法を提供する。【解決手段】質量%で、C:0.05〜0.2%、Si:0.2〜1.5%、Mn:1.3〜2.5%、Ti:0.1〜0.3%、Al:0.01〜0.05%、N:0.001〜0.01%、P:0.05%以下、S:0.005%以下、残部:Feおよび不可避的不純物からなる連続鋳造鋳片を熱延する高張力鋼板の製造方法であって、連続鋳造鋳片は、仕上熱延の開始まで、鋳片温度をγ領域温度以上に維持し、仕上熱延し、仕上熱延では、熱延板の表面温度1250〜1380℃で、入り側圧延速度を5〜20m/min、圧下率40%を超える熱延パスを行い、さらにその次に、1パスあたり圧下率40%を超える熱延パスを行う高張力鋼板の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、高張力鋼板の製造方法に関する。
建設機械向け等の高Ti高張力鋼は、Tiを0.1〜0.2%程度含有し、微細TiCを分散させる析出強化機構を活用している。また、Tiを含有させて制御圧延することにより、結晶組織であるフェライト粒径も微細化し、強度を向上させつつ、靱性、延性、加工性を向上させている。このような高Ti高張力鋼板を製造するための制御圧延には、従来、以下の技術が提案されている。
特許文献1では、質量%でC:0.01〜0.055%、Si:0.1%以下、Mn:0.6%以下、Ti:0.055〜0.12%である鋼を鋳造速度:5m/min以下で連続鋳造し、得られた鋼片に対して、加熱温度1230℃以上に加熱し、圧延開始温度1200℃以上とする粗圧延と圧延終了温度900℃以上とする仕上げ圧延とからなる熱間圧延を実施し、巻き取り温度:580度以上で巻き取る高張力鋼板の製造方法が提案されている。このような工程により、微細Ti炭化物が分散し、フェライト結晶粒が面積率で95%以上を占める金属組織となり、高強度を有し、優れた打抜き性と優れた伸びフランジ加工性にも優れた高張力鋼板とすることができる旨記載されている。
特許文献2、3では、C:0.05〜0.30wt%、Si、Mn、Alを含み、かつTi:0.05〜0.3wt%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなる鋼を、950〜1100℃の温度に加熱した後、1回当りの圧下量が20%以上となる圧下を少なくとも2回以上加え、仕上げ圧延温度をAr3以上とし、その後の冷却条件および巻き取り温度条件を指定することで、延性、靭性および疲労強度が優れた高張力鋼板の製造方法が提案されている。
国際公開第2013/099197号 特開平9−143570号公報 特開平9−87798号公報 特表2009−538227号公報 特開平7−308701号公報
上記特許文献1〜3に提案されている技術などを含め、現在、連続鋳造により製造した高Ti高張力鋼スラブは、製造装置のレイアウト等の制約から、一度冷却して冷片にし、1250〜1280℃程度の再加熱により均質化(あるいは均熱化)処理を行った後、熱間で粗圧延および仕上げ圧延を行っている。
しかしながら、このように鋳造後に一度冷片とすると、鋳片が高Tiであることで鋳片自体の靭性値が低く、冷却時や、均質化加熱の際の割れなどによる歩留り低下が問題となる。
また、鋳片を一度冷却すると、冷却時に粗大なTiCが析出する。粗大なTiCの析出は、析出した粗大なTiCの周囲のTi濃度を低下させ、Ti添加によるフェライト粒径の微細化効果を低下させる。粗大なTiCが析出すると、再加熱によって、TiCの固溶化(溶体化)処理を行わなければならず、この時間が長時間に及ぶことがあり、製造効率が低下する。
そこで、本発明者らは、高Ti高張力鋼板の製造プロセスにおいて、特許文献4、5に提案されるような直送圧延または薄スラブ鋳造−連続圧延を採用することを試みた。直送圧延または薄スラブ鋳造−連続圧延は、鋳造後、鋳片をγ領域温度以上の高温のまま、冷却せずに熱間圧延を開始する。すなわち、鋳片を冷却せずに熱間圧延することから、通常鋳片冷却時に生じる粗大なTiCの析出を防止することを指向した。しかしながら、この製造プロセスによっても、鋳片を搬送する間にも表層の温度が低下する。特に、直送圧延とすることで従来プロセスに比べて、より鋳片表層と内部の温度勾配が大きくなり、表層温度低下によって、表層に粗大なTiCが析出した。これは、加熱炉による再加熱工程を経ないことから温度勾配を解消するプロセスが粗圧延工程までないことに加え、直送中に、鋳片表面が、雰囲気に対し相対的に高速移動することから、鋳片表面が強制空冷されるためである。そのため、表層の温度低下で生じる温度勾配により、表層に粗大TiCが析出し、表層が軟質化するという問題が生じた。さらに、表層のフェライト粒径の微細化が不十分になりやすいという問題も合わせて生じることが明らかとなった。表層は曲げ、引張等、いずれの応力が負荷される場合でも、歪が最も大きくなるため、表層の強度、靱性等の低下は鋼板自体の強度、靱性等の低下に直接つながる。
本発明は、鋼板の割れ、熱延板の表層の軟質化、熱延板の表層のフェライト粒径の粗大化を防止し、強度、靱性に優れた高Ti高張力鋼板を製造する方法を提供することを目的とする。
すなわち、上記課題を解決するための本発明の要旨とするところは以下のとおりである。
(1)化学組成が質量%で、C:0.05〜0.2%、Si:0.2〜1.5%、Mn:1.3〜2.5%、Ti:0.1〜0.3%、Al:0.01〜0.05%、N:0.001〜0.01%、P:0.05%以下、S:0.005%以下、残部:Feおよび不可避的不純物からなる連続鋳造鋳片を熱間圧延する高張力鋼板の製造方法であって、
前記連続鋳造鋳片と、前記連続鋳造鋳片が粗圧延された熱延板を、鋳造後から熱間仕上圧延の開始まで、γ領域温度以上に維持し、熱間仕上圧延し、
前記熱間仕上圧延では、
前記熱延板の表面温度1250〜1380℃で、入り側圧延速度を5〜20m/min、圧下率40%を超える熱延パスを1パス行い、さらにその次のパスで1パスあたり圧下率40%を超える熱延パスを行う
ことを特徴とする高張力鋼板の製造方法。
(2)前記熱延板の表面温度1250〜1380℃とするために、高周波誘導加熱装置により加熱することを特徴とする(1)に記載の高張力鋼板の製造方法。
(3)前記鋳片が、さらに、Ni:0.35%以下、Cu:0.4%以下、B:0.001%以下のいずれか1種以上を含むことを特徴とする(1)または(2)に記載の高張力鋼板の製造方法。
本発明により、熱間圧延時の表層の固溶不足を起因とする粗大なTiCの析出による強度低下、および表層軟質化を改善することが可能であり、かつ表層のフェライト粒径が微細化されるため強度および靱性に優れる高Ti高張力鋼板の製造が可能である。
本発明のプロセスでは、連続鋳造鋳片と、前記連続鋳片が粗圧延された熱延板は、熱間仕上圧延の開始まで、鋳片と熱延板の温度をγ領域温度以上に維持する。なお本発明における熱間圧延とは、薄板の熱間圧延を示すものであり、粗圧延および仕上圧延機からなるホットストリップミルを示し、厚板の熱間圧延のような往復ではなく、一方向の圧延を行うものを意味する。ここでいう鋳片と熱延板の温度は、鋳片の場合は中心の温度を熱延板の場合は表面温度を意味する。鋳片と熱延板の温度を、γ領域温度未満に低下させないまま熱間仕上圧延を開始することにより、通常鋳片や熱延板の冷却時に生じる粗大TiCの析出を防止する。鋳片と熱延板の温度をγ領域温度以上に維持する具体的方法としては、直送圧延または薄スラブ鋳造−連続圧延のプロセスを採用することが好ましい。それは連続鋳造−熱間圧延間の移送時間が短くなるためである。
本発明のプロセスでは、熱間仕上圧延において、熱延板の表面温度1250〜1380℃で、入り側圧延速度を5〜20m/min、圧下率40%を超える熱延パスを行い、さらにその次のパスで、1パスあたり圧下率40%を超える熱延パスを行う。熱間仕上圧延条件としてこの条件を採用することにより、高Ti高張力鋼板の表層に粗大なTiCが析出することを防止し、表層のフェライト粒径を微細化し、表層の軟化を防止する。以下に各々の条件の数値範囲を決定した意義について説明する。
表面温度を規定した理由は、熱間圧延前に表層のTiCを固溶させるとともに、表層のみ脱炭させ、固溶Tiを安定化させるためである。すなわち、表層を、TiC固溶温度(CおよびTi濃度にもよるがおよそ1200℃程度)より高い温度に保持する。表面温度が1250℃未満であると、粗大なTiCの析出が十分に防止できず、脱炭が不十分で固溶Tiを安定化できない。一方、1380℃を超えると、TiCは十分に固溶するものの、フェライト粒径が粗大化し、表層の強度および靱性が低下することに加えて、元素が濃化した粒界などで局部再溶融する可能性がある。局部再溶融は割れのリスクを高めるため、1380℃までの加熱とした。
熱延板の表面温度1250〜1380℃で仕上圧延する場合、TiCが析出していない熱延板の表面温度が1250〜1380℃の間に熱間仕上圧延を施してもよく、移送間に1250℃未満に冷えた熱延板表面をIH(高周波誘導加熱装置)等により再加熱して、熱間仕上圧延してもよい。また、再加熱する際、IHによる加熱は、粗大なTiCが析出しやすい表層に主に誘導電流が流れることから、表層近傍部を集中的に、局所的に、効率よく加熱できることから好ましい。
仕上圧延において、表面温度1250〜1380℃で行う熱延パス(1パス)について、入り側圧延速度を5〜20m/minと規定したのは、入り側圧延速度が20m/minを超えると、表層のフェライト粒径が粗大化するためである。一般的な熱間仕上圧延の圧延速度では、入り側圧延速度は50m/minより速いため、その後の圧延速度は高速となり、熱間圧延中に再結晶(動的再結晶)することはなく、熱間圧延後に再結晶(静的再結晶)して結晶粒が成長する。粒成長は熱間圧延中(静的再結晶)および熱間圧延後(動的再結晶)によらず、粒成長前の粒径と温度に依存することが知られており、本発明のように1250〜1380℃と温度が高い領域では粒径が粗大になりやすい。そのため、粒成長前の粒径を細粒化させることが重要である。動的再結晶は熱間圧延中に生じる再結晶であり、温度、圧下率、圧延速度に依存して発現することが知られている。特に低ひずみ速度、高温で粒界三重点における動的再結晶の核生成頻度が高くなること知られており、また高ひずみでは、粒界だけでなく、粒内からも再結晶粒が発生することが指摘されている。本発明のような高温、低ひずみ速度、大圧下条件では相対的に再結晶核生成頻度が高いことから、細粒化に寄与し、粒成長が抑制されると考えられる。
前述のように、動的再結晶は温度、圧下率、圧延速度に依存して発現することが知られているが、本発明の温度域では、40%超の高圧下を考えた場合、入り側圧延速度が40m/minでも動的再結晶を発現する。入り側圧延速度を20m/minとした場合、現状の熱延で想定される最大圧下率50%で考えた場合でも次のスタンド入り側では40m/minとなり、次のスタンドまでの動的再結晶利用が可能となる。動的再結晶条件が1スタンドの圧延でも細粒化効果はあるが、再結晶率が100%に満たない可能性がある。連続した2スタンド以上を動的再結晶条件とすることで再結晶率を100%とし、より安定して細粒化効果が得られる。そのため、少なくとも次のスタンドまで動的再結晶を活用可能な圧延条件となるよう、仕上入り側圧延速度の上限を20m/minとした。
一方で入り側圧延速度が5m/min未満では、圧延に時間がかかり、温度が下がってしまい動的再結晶が生じにくくなると共に、生産効率が悪い。
熱間仕上圧延で、表面温度1250〜1380℃で行う熱延パス(1パス)について、圧下率40%を超えると規定したのは、圧下率が40%以下では、動的再結晶が十分に起こらず、十分に表層のγ粒径を微細化することができず、変態後に生じるフェライト粒径を微細化することができないためである。本発明では、熱間仕上圧延条件が、比較的高温で、圧延速度が遅いため、動的再結晶が発現しやすい条件ではあるものの、低圧下率の圧延では十分な動的再結晶が生じず、結晶粒径細粒化に寄与しない可能性がある。そのため、結晶粒を微細化する動的再結晶発現条件とするには、大きな圧下率を要する。よって、本発明では、表面温度1250〜1380℃で行う熱延パス(1パス)について、圧下率40%を超えると規定した。1250〜1380℃という高温で、1パス40%を超える大圧下圧延することで動的再結晶させ、巻取り後に生じる微細TiC析出量を増加させ、表層軟質化を防止する。あわせてフェライト粒径を微細化させる。
上記表面温度、圧下率、入り側圧延速度を規定した熱延パスにおいて圧下率40%を超えると規定したものと同様の理由で、さらにそのすぐ次のパスで1パスあたり圧下率40%を超える熱延パスを行うと規定した。なお、次のパスの温度と入り側圧延速度を規定していないのは、前述のように連続した圧延を行う場合、1パス目を規定の条件で圧延することで、常識の範囲のミルレイアウトでいえば、次のパスも動的再結晶が生じるような高温、低入り側圧延速度で圧延されるため、あえて規定する必要がないからである。なお、この次のパス(表面温度1250〜1380℃、40%を超、入り側圧延速度を5〜20m/minで熱間圧延した次のパス)に引き続き、さらに、圧下率40%を超える圧延パスや、圧下率40%以下のパスを複数回行ってもよい。
表面温度1250〜1380℃で、入り側圧延速度を5〜20m/min、圧下率40%を超える熱延パスを行うのは、鋳片に粗圧延を施して熱延板とした後、仕上圧延のどのパスで行っても良いが、最初のパスで行うことが好ましい。それは、粗圧延を施した後に40%以上の高圧下を施せば、粗圧延により板厚がある程度薄くなっており、高圧下のための圧下力が低くて済むためである。この場合の粗圧延は、開始温度がγ領域温度以上であれば、特に粗圧延温度、圧下率、圧延速度を規定する必要はないが、粗圧延の総圧下率は60〜85%程度が好ましい。
続いて本発明の高張力鋼板の化学組成を規定した意義について述べる。化学組成を示す含有量の%は、すべて質量%である。最初に必須成分、不可避的に含まれる成分について述べる。以下の成分標記の%はすべて質量%である。
C:0.05〜0.2%
Cは必要な強度を得るため、および組織、特にフェライト粒径の微細化に重要な巻き取り段階でのTiCの析出量を十分に確保するために、0.05%以上必要である。また、0.20%を超えると延性および靱性が劣化するとともに溶接性も劣化する。したがって、0.05〜0.20%の範囲とした。
Si:0.2〜1.5%
Siは固溶強化により伸びの著しい低下を伴わずに強度を高める有効な元素である。このような効果を十分に発揮させるためには0.20%以上の添加が必要である。一方、Siの多量添加は、熱間圧延時に脱スケール性の悪いスケールが生成して製品の表面性状に悪影響を及ぼす。本発明では、加熱温度を高温域に設定するので、上記表面性状を悪化させるSi量の上限は、通常に比べ低くしなければならず、1.5%を超えるとその悪影響が顕在化するので1.5%とした。
Mn:1.3〜2.5%
Mnは、強度向上に有効な元素であり、この目的のためには、Mnは1.3%以上の添加が必要である。一方、多量の含有は鋼を硬質化し、却って強度‐伸びバランスを劣化させる。このようなことから、Mnは2.5%以下とした。
Ti:0.1〜0.3%
Tiは、TiCとして、フェライト粒径を微細化させるためにも、必須の元素である。結晶粒微細化に必要なTiCを得るためには、少なくとも0.1%以上必要であるが、0.30%を超えるとTiCによる微細化効果は飽和するので、0.30%を上限とした。
Al:0.01〜0.05%
Alは、脱酸に極めて有効に作用する元素であるが、0.01%未満ではその効果は十分に得られない。また、0.05%を超えると結晶粒の粗大化および介在物による内部欠陥をもたらす。そのため、0.01〜0.05%の範囲とした。また、この範囲であれば、結晶粒が微細化する。
N:0.001〜0.01%
Nは、不可避的不純物として含まれる。鋼中のN量が0.01%を超えると、TiがTiNとして生成しやすくなり、固溶Ti量が減少するため、強度低下を生じるとともに、本発明で狙いとする巻き取り時の微細TiCの量も低減する。Nは少ない方が好ましいが、過度な脱窒素は精錬工程の処理時間の延長を招来する。そのため生産性と固溶Ti量を確保することのバランスを考慮し、0.001〜0.01%の範囲とした。
P:0.05%以下
Pは、不可避的不純物として含まれる。0.05%を超えると、熱間加工性(熱間圧延性)が悪化するため0.05%以下とした。Pは少ない方が好ましいが、Pの低減にはコストがかかるので、経済性と熱間加工性のバランスを考慮すると0.005〜0.03%の範囲が好ましい。
S:0.005%以下
Sは、不可避的不純物として含まれる。0.005%を超えると、熱間脆化を引き起こすため0.005%以下とした。Sは少ない方が好ましいが、Sの低減にはコストがかかるので、経済性と熱間加工性のバランスを考慮すると0.001〜0.004%の範囲が好ましい。
以上元素以外の残部は、Feと不可避的不純物のみである。不可避的不純物とは、原材料に含まれる成分、或いは製造の過程で混入される成分であって、鋼に意図的に含有させた成分ではない成分をいう。たとえば、Cr等が不可避的不純物として挙げられる。
次に必要に応じて添加できる選択添加元素について述べる。以下の元素は単独で添加してもよいし、2種以上を同時に添加してもよい。
Ni:0.35%以下
Niは必要に応じて添加される元素で、強度および耐食性を向上させる効果がある。多量の添加は却って強度―延性バランスを劣化させると共に、製造コストが上昇する。そのため0.35%を上限とした。十分に強度および耐食性を向上させるには、0.15%以上添加することが好ましい。
Cu:0.4%以下
Cuは必要に応じて添加される元素で、Niと同様に強度および耐食性を向上させる効果がある。0.4%を超えると、鋼板の製造コストが上昇する。十分に強度および耐食性を向上させるには、0.1%以上添加することが好ましい。
B:0.001%以下
Bは必要に応じて添加される元素で、粒界強度の上昇を通じ加工性を改善する効果を有していると共に、Tiを含む炭化物を微細化する効果がある。一方で、過剰な添加は、清浄度や再結晶性に悪影響を及ぼす恐れがあるため、上限を0.001%とした。十分な微細化によって強度を向上させるには、0.0001%以上添加することが好ましい。
なお、本発明によって製造される高張力鋼板は、冷延を施さない、熱延鋼板として最終製品(熱延板)とすることが好ましい。
以下、本発明の効果を実施例により具体的に説明する。なお、本発明は、以下の発明例に用いた条件に限定されるものではない。
鋼種成分は、建設機械向け熱延引張強度950MPaの鋼である。実施例に使用した試験材の成分は、いずれも、質量%でCが0.1%、Siが0.2%、Mnが1.6%、Tiが0.2%、Pが0.01%、Sが0.003%、Niが0.3%、Bが0.0002%、Alが0.03%、Nが0.003%である。試験材はラボ試験として板幅160mm、50mm厚で鋳造し、粗圧延で30−30−20−20%の4スタンドの圧延を実施し15.5mm厚みとした後、IH加熱を実施した。IH加熱では表層温度が表1中に記載の1パス目の仕上げ圧延温度となるまで加熱後、仕上げ圧延で表1中に記載の大圧下圧延の圧下率およびパス数で圧延し(複数回圧延する場合、各実施例の1パスあたりの圧下率はすべて同じ。)、2.6mmの鋼板厚みとしたものを評価に用いた。実施例5では、2スタンド圧延での評価を行なうため、厚み3.8mmの鋼板、比較例5では1スタンド圧延での評価を行うため厚み8.5mmの鋼板も作製した。いずれの圧延でも仕上げ圧延温度は860℃とした。
実施例では直送圧延による温度勾配を原因とした、表層に粗大なTiCが析出することによる表層軟質化を抑制することを目的とし、この目的のために実施するIH加熱によって生じるγ粒径の成長を大圧下により細粒化し、γ粒より冷却時の変態によって生じるフェライト粒径の粗大化を抑制することで靭性に優れた鋼を製造した。
そのため、本試験の材質評価では軟化状態の確認を目的とした表層および内部のビッカース硬度測定、TiCサイズの測定を実施した。加えて、靭性値へ影響をおよぼすことが知られているフェライト粒径測定、およびシャルピー衝撃試験により靭性値を計測した。
材質評価用の試験片は2.6mm、3.8mmまたは8.5mmの鋼板の圧延方向に対して並行および垂直となる断面より採取し、表層近傍部として1/8厚部、内部として1/2厚部の組織およびビッカース硬度測定を行なった。硬度は、ビッカース硬さ試験機(荷重10kgf)により所定厚み部を0.25mm間隔で5点測定し、得られた測定値の平均値を用いて評価を行なった。また、析出したTiCのサイズおよび分布状態を確認するために薄膜を作製し透過電子顕微鏡による観察を実施した。
フェライト粒径観察は2%ナイタールによって腐食を行い、光学顕微鏡により所定厚み部の観察を行なった。得られた組織写真より切断法を用いてフェライト粒径を算出した。また、シャルピー衝撃試験片はVノッチ形状とし、−40℃で行なった。
試験条件および試験結果を表1に示す。靭性値の評価としては本発明として鋼板の要求特性(L方向靭性吸収エネルギー/J、24以上(−20℃))を満足するものを○、しなかったものを×として評価した。
これより発明例1〜5はビッカース硬度、TiCサイズ、およびフェライト粒径が表層・内部で顕著な差異がなく、靭性値も要求特性を満足することがわかる。一方で比較例1および2は加熱温度不足により表層のTiCサイズが粗大であり、硬度の低下が生じた。加えて、TiCがピン止めに効かない粗大なTiCであり、フェライト粒径も粗大であり靭性を満足しない。比較例3および4は1パスあたりの圧下率不足、または圧延速度が速く、動的再結晶ではなく静的再結晶が生じ、フェライト粒径が粗大化したため満足する靭性を得られなかった。比較例5では動的再結晶条件での圧延を実施しており、細粒化効果は認められたものの、圧下率40%を超える熱延パスが1パスだけの圧延のため、十分な細粒化効果が得られなかったため表層部の平均的な粒径はやや大きくなり、靭性を満足しなかった。また比較例6では本発明温度より高温であり、1パス目で局所溶融による割れが生じたため、途中で圧延を中止した。
Figure 2018070920
本発明は、鋼板の表層の強度低下、および表層軟質化を改善することが可能であり、かつ表層のフェライト粒径が微細化されるため強度および靱性に優れる高Ti高張力鋼板を製造することが可能であるという特段の産業上の利用可能性を有する。

Claims (3)

  1. 化学組成が質量%で、C:0.05〜0.2%、Si:0.2〜1.5%、Mn:1.3〜2.5%、Ti:0.1〜0.3%、Al:0.01〜0.05%、N:0.001〜0.01%、P:0.05%以下、S:0.005%以下、残部:Feおよび不可避的不純物からなる連続鋳造鋳片を熱間圧延する高張力鋼板の製造方法であって、
    前記連続鋳造鋳片と、前記連続鋳造鋳片が粗圧延された熱延板を、鋳造後から熱間仕上圧延の開始まで、γ領域温度以上に維持し、熱間仕上圧延し、
    前記熱間仕上圧延では、
    前記熱延板の表面温度1250〜1380℃で、入り側圧延速度を5〜20m/min、圧下率40%を超える熱延パスを1パス行い、さらにその次のパスで1パスあたり圧下率40%を超える熱延パスを行う
    ことを特徴とする高張力鋼板の製造方法。
  2. 前記熱延板の表面温度1250〜1380℃とするために、高周波誘導加熱装置により加熱することを特徴とする請求項1に記載の高張力鋼板の製造方法。
  3. 前記鋳片が、さらに、Ni:0.35%以下、Cu:0.4%以下、B:0.001%以下のいずれか1種以上を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の高張力鋼板の製造方法。
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CN113278889A (zh) * 2021-05-19 2021-08-20 新疆八一钢铁股份有限公司 一种牵引车鞍座高强度连接板的生产方法

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