JP2018003049A - 占積率に優れる電磁鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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一方、特許文献2には、Si:2.8〜4.0質量%およびAl:0.3〜2.0質量%を含有する鋼に、200〜500℃の温度範囲で温間圧延を施し、{100}方位を発達させる方法について記載されており、特許文献3において磁束密度の改善が不足しており、加工性およびリサイクル性の点でも問題を残していた旨記載されている。そこで、特許文献3においては、0.03質量%≦P≦0.2質量%かつ0.002質量%≦Mo≦0.03質量%を含有し、N2雰囲気中で1000℃×30sの焼鈍を施した後、7%HCl溶液に80℃で60s浸漬した後の酸洗減量が40g/m2以上、100g/m2以下である熱延鋼板とすることで、鉄損や磁束密度等の磁気特性に優れ、リサイクル性や鋼板の表面外観に優れる無方向性電磁鋼板とする旨記載されている。
特許文献4には、板厚0.42mm以下、特に0.30mm以下、占積率96%以上かつ1点当たり自動かしめ強度10MPa以上である高周波励磁特性に優れた無方向性電磁鋼板とその製造方法が開示されている。この特許文献4では、C:0.01%以下、Si:3.5%以下、Mn:0.2〜1.5%、S:0.035以下%、sol.Al:0.0005〜2.5%、P:0.005〜0.15%、N:0.005%以下、ただし、1.5<[Si]+[Al]+0.5[Mn]≦5.5残部Feおよび不可避不純物より成る鋼を1250℃以下の温度に加熱して熱間圧延を行い、ワークロールの表面粗さが0.8μmで冷延して得られた冷延材に700〜1050℃の温度で仕上げ焼鈍を行う旨記載されている。この工程により、鋼板表面粗さRaを0.5μm以下とでき、前記冷延材を平均表面粗さRa0.5μm以下に仕上げることにより占積率96%以上が確保される旨記載されている。
さらにSi、Al含有量が高い鋼板では、打ち抜き加工後の製品の外縁にダレやカエリが増加し、鋼板の打ち抜き精度が低下する。モーターコアとして使う際の真円度が低下するため、ステータとロータの空隙間隔が不均一になり、モーター効率が低下する問題が発生する。この点を鑑みて特許文献5には質量百分率でC:0〜0.010%、Siおよび/またはAl:0.03%〜0.5%、または0.5%超〜2.5%以下Mn:0.5%以下、P:0.10%以上、0.26%以下、S:0.015%以下およびN:0.010%以下を含有させることにより、優れた打ち抜き寸法精度を有し、さらに低Si鋼では優れた高磁束密度−低鉄損磁性バランスを有し、中〜高Si鋼では優れた高磁束密度−高強度バランスを有する無方向性電磁鋼板が記載されている。
特許文献1においても、{100}<001>方位の集積度が2.0超で板厚0.30mm以下では、占積率が急激に劣化することが開示されている。この理由について明らかではないが、特許文献1では、{100}<001>方位にはBCC金属のすべり方向である<111>方向を板面内に含有していないためLおよびC方向のいずれの方向で打抜いてもせん断変形が生じにくくダレ形状が悪化し、占積率が劣化すると述べられている。しかしながら、この解決手段では磁気特性に好ましくない<111>を板面内に増加させる上に磁気特性に好ましい{100}<001>方位を減じているために磁束密度B50を損なっている。さらに板厚0.20mm以下では中間焼鈍を挟む2回以上の冷延を行うため、製造コスト大幅増加は否めない。
特許文献3に開示された技術おいては、{100}方位の集積度を上昇させる点については言及がなく、また、Alの量は0.005%に制限されているので、十分に鉄損を低下することができない。
特許文献4においても、{100}方位の集積度を上昇させる点については言及がなく、板厚0.2mm以下の材料では、冷延率が増加するため磁束密度B50が低下することは否めない。
特許文献5に開示された技術では、Pを活用して打ち抜き寸法精度の向上を図っているものの、Si量が2.5%以上での打ち抜き精度の改善は未だ達成できていない。
本発明の要旨は以下のとおりである。
(2)熱延後に酸洗工程を有し、前記酸洗直前の750℃超から室温までの冷却過程の熱履歴において、750℃から600℃の温度域の滞留時間が3秒以上であり、さらに前記酸洗工程が、温度、濃度、時間を制御した酸洗槽からなり、酸洗液について温度を70〜90℃、酸濃度を3〜15%、1槽あたり酸洗時間を10〜60秒、かつ合計酸洗時間を20秒〜120秒として浸漬した後、酸洗完了から水洗開始までの時間を30秒以内とし、水洗温度を10〜30℃、ラインスピード90mpm以下として1〜5分水洗することを特徴とする、(1)に記載の占積率に優れる電磁鋼板の製造方法。
(3)熱延後に酸洗工程を有し、前記酸洗工程が、温度、濃度、時間を制御した複数段の酸洗槽からなり、1段目の酸洗槽の酸洗液の濃度をC1、最終段の酸洗槽の酸洗液の濃度をCfとしたとき、C1>Cfとすることを特徴とする、(2)に記載の占積率に優れる電磁鋼板の製造方法。
以下の説明において、本発明鋼板の表面粗度RaまたはRzについては、特に断りのない限り、絶縁被膜を有する最終製品での表面粗度を意味する。特に酸洗条件の説明においては、酸洗挙動が表面状態に影響を及ぼすことを記述しているが、その説明においても、RaまたはRzについては酸洗板のRaやRzではなく、酸洗後、さらに冷延、仕上焼鈍、絶縁被膜塗布が行われた最終製品での表面粗度との関係を説明しているものである。
Siは、電気抵抗を増大させ、渦電流損失による鉄損を改善する有用元素である。また、熱延後の酸洗挙動に強い影響を及ぼす元素であり、2.0%未満であれば適正な範囲でないと本発明の特徴である鋼板の表面粗度を好ましく制御することができないため、占積率が低下するうえ鉄損が劣化する。一方、4.0%を超えて含まれると、鋼自体が硬くなり、打ち抜き精度が劣ってしまうため真円度が劣化するうえ、圧延性が悪化し冷延時に割れが生じる。好ましくは2.5〜3.5%である。
Mnは、Siと同様に電気抵抗を高めて渦電流損失による鉄損を低減する効果があるため0.1%以上含有させる。0.1%未満では熱延後の酸洗挙動に大きな影響を及ぼし、後述する本発明が特徴とする酸洗後の表面状態を得ることが困難になり、占積率が低下するうえ鉄損が劣化する。一方、2.0%を超えて含まれると、鋼自体が硬くなり、打ち抜き精度が劣ってしまうため真円度が劣化するうえ、圧延性が悪化し冷延時に割れが生じる。好ましくは0.2〜1.5%である。
Alは電気抵抗を高めて渦電流損失による鉄損を低減する元素であり、製品板集合組織における{100}方位の集積度を増加させる効果も有する。0.1%未満では熱延後の酸洗挙動に大きな影響を及ぼし、後述する本発明が特徴とする酸洗後の表面状態を得ることが困難になり、占積率が低下するうえ鉄損が劣化する。一方、2.0%を超えて含まれると、鋼自体が硬くなり、打ち抜き精度が劣ってしまうため真円度が劣化するうえ、圧延性が悪化し冷延時に割れが生じる。好ましくは0.5〜1.2%である。
Pは、冷延前の鋼板において粒界に偏析することで、冷延焼鈍後の鋼板における{100}方位の集積度を高めることが知られる元素である。しかし、この粒界偏析が最終製品での表面状態の変化およびそれに伴う占積率低下を招く。0.03%未満では、{100}方位の集積度を高める効果が得られず、また占積率低下の問題も発生しないので、0.03%以上を本発明の対象とする。一方、0.2%を超えると鋼板が脆化し、粒界割れや圧延性の低下をもたらす。好ましくは、0.04%以上0.15%以下である。
Sは鋼板の打ち抜き後の破面凹凸を減少するのに必要な元素であり、真円度に影響を及ぼす。真円度が高いと、ロータ・ステータ間の空隙が均一となりモーター効率を増加させる。真円度確保の観点からS量は0.0035%以下、好ましくは0.0025%以下である。
Crは、熱延後の酸洗挙動に大きな影響を及ぼす元素であり、適切な範囲で含有させることで本発明にとって有用な効果を示す。0.01%未満では本発明における鋼板表面粗度制御への効果は充分でない。1.4%を超えると占積率は満足するが、酸洗後の表面状態を得ることができず、さらに不可避的不純物として含まれるCと炭化物を形成し、鉄損が悪くなる。好ましくは、0.05%以上0.5%以下である。
Niは、鋼の腐食挙動に影響を及ぼす元素である。0.001%以上の範囲で含有させることで本発明の酸洗挙動を好ましく制御することが可能である。ただし、0.5%を超えると上記の効果は飽和する。好ましくは、0.1%以上0.3%以下である。
上記成分以外の残部は、製造工程において混入する不可避的不純物、およびFeである。その含有量は、公知の無方向電磁鋼板において磁気特性または各種の特性を制御するために適用される通常の量が許容される。代表的な不可避的不純物元素である、C、S、Nについて以下に例示する。
測定方法は、X線回折装置(リガク製RINT−2500)によって測定対象とする試料について、{110}面、{200}面、{211}面の反射極点図(pole figure)を測定する。次にこれらの反射極点図を用いて結晶方位分布関数(ODF)を計算する。ODFは3つのオイラー角(φ1、Φ、φ2)で表示され、{100}方位は、φ2=45°、Φ=0°、φ1=0〜90°の領域に表示される。本発明はこの領域における集積度の平均値を{100}方位の集積度と定義し、その値が2.0を超えることを特徴とする。
磁束密度を向上させるためには、{100}方位の集積度が、十分に高くなければならない。また、前述のように一般的に{100}方位の集積を高めた電磁鋼板では占積率が低下しやすいため、占積率が高いにも関わらず{100}方位の集積が高いことは本発明技術の一つの特徴ともなっている。この観点から2.0超とした。
Rz=(|Yp1+Yp2+Yp3+Yp4+Yp5|+|Yv1+Yv2+Yv3+Yv4+Yv5|)/5
本発明のような、Si、Al、Mnの含有率が高い成分組成の鋼板は、鋼板表面の状態が鋼板の接触に好ましいものになりにくく、鋼板を積層した際に隙間ができて、占積率が低下しやすい。鋼板同士の接触を好ましいものにするには、まず表面平均粗さRaが0.35μm以下であることが必要である。好ましくは0.30μm以下、さらに好ましくは0.20μm以下である。基本的にRaが小さいことは鋼板表面の凹凸が小さくなることになるため、鋼板の接触面での空隙が小さくなることは直感的にも理解でき、本発明のメカニズムとしてもこのような理解であると考えている。ただし、Raをこの範囲で小さくするだけでは、鋼板を積層した際の接触の状態、つまり鋼板間の微小の隙間を小さくし占積率を向上させるには不十分である。本発明の効果を得るにはさらに十点平均粗さRzを0.50μm以下とする必要がある。好ましくは0.40μm以下、さらに好ましくは0.30μm以下である。
本発明が対象とするPを適当量含有し、さらに{100}方位の集積度が高い鋼板における占積率の向上のためには、従来行われていたRaの制御のみでは不十分で、Rzの制御が重要になる(図3)。その理由は、明確ではないが以下のように考えている。
これに対して、Rzは粗さ曲線において、縦倍率の変動領域について平均線の方向にわたる範囲の大きさとは無関係に、縦倍率の変動のピーク値によって規定される指標である。このような指標は、本発明鋼板のような、粒界近傍の局所領域で大きな縦倍率の変動を示す鋼板においては、鋼板同士の接触状態、ひいては占積率を左右する指標として最適となる。結果として、P含有鋼において占積率を向上させるには、Si、Al、Mnを適度に含有させ、さらにPの粒界偏析を考慮した上で適切な酸洗を行うことでRzを適切に制御することが必要になっていると考えられる。
具体的な占積率は、下記式で計算される。
占積率(%)=m/(blDh)
m:測定試料の質量(g)
b:試料の幅(cm)
l:試料の長さ(cm)
D:試料の密度(g/cm3)
h:圧力を加えて測定した積層厚(cm)
幅3.0cm、長さ25.0〜32.0cmの長方形状試料を規定枚数積層して、3.5kgf/cm2の圧力を加えたときの積層厚hを測定し、計算する。
本発明は、熱間圧延、酸洗、水洗、冷間圧延、仕上げ焼鈍を順に施す。このうち、酸洗および水洗工程を好ましく制御することで発明効果を十分に得ることができる。さらに熱間圧延、必要に応じた熱延板焼鈍工程を好ましく制御すれば発明効果はより顕著になる。各工程条件の数値範囲を限定した理由について以下に述べる。なお、以下に示す条件は製造法の一例であり、本発明鋼板の製造条件がこれらに限定されるものでないことは言うまでもない。また、特に本発明で規定する酸洗および水洗条件以外の条件は、公知の条件を適用すれば良いものである。
スラブ加熱時の温度が1050℃未満では、スラブが硬すぎ、十分に目的の平坦度に成形することができない。一方、1200℃を超えると、磁気特性が低下しやすく、スケールが厚くなりすぎて、スケール除去しにくくなり表面粗さが悪化する。
仕上げ熱延終了温度を850℃以上950℃以下とすることで、素材成分の効力とあいまって、熱延板焼鈍後における鋼板表層部に生成するスケールの除去性が良好となる。
以下に3つの条件を示しているが、重要なのは酸洗直前の750℃から600℃への冷却の熱履歴である。750℃超ではPが溶体化して粒界に偏析せず、600℃未満では粒界に偏析するためのPの拡散に長時間を要する。このため、750℃と600℃の間の温度域での滞留時間が重要となる。熱延板焼鈍を実施しない場合は、仕上圧延が完了した後の、巻取り温度を含めた冷却制御が重要となる。熱延板焼鈍を実施する場合は、鋼板が750℃超まで再加熱されるので、仕上圧延後の冷却制御やコイル巻取温度といった熱延板焼鈍前の冷却履歴に関わらず、熱延板焼鈍工程の冷却における750℃以下の冷却が重要となる。
Pの粒界偏析促進のため、750℃から600℃の温度域での滞留時間を3秒以上とする。これは、この温度域を平均冷却速度50℃/s以下で冷却することに相当する。Pの粒界偏析を促進させることで、冷間圧延および焼鈍後に得られる集合組織が前述のような磁束密度にとって好ましいものとなるとともに本発明範囲内の酸洗条件において酸洗挙動を好ましく制御できる。より好ましくは8秒以上、さらに好ましくは30秒以上である。
熱延板焼鈍を適用する場合は熱延板焼鈍からの冷却する際に、750℃から600℃までの温度域での滞留時間を3秒以上とすることでPの粒界偏析量を制御する。これによっても電磁鋼板の集合組織を改善効果、酸洗挙動改善効果を得ることができる。より好ましくは8秒以上、さらに好ましくは30秒以上である。
上記のような熱延工程または熱延板焼鈍工程の冷却工程を制御し、鋼板の結晶粒界にPを偏析させることで、冷間圧延および焼鈍後に得られる集合組織が前述のような磁束密度にとって好ましいものとなるとともに、本発明の酸洗条件において酸洗挙動を好ましく制御できる。酸洗直前の鋼板におけるPの粒界偏析量が1.0at%以上であれば、磁束密度が十分に高くなり、また本発明の特徴である表面状態についても十分に好ましい効果を得ることができ、Ra、Rzを適正範囲に制御できるので鉄損も低減できる。20.0at%を超えると、鋼が脆化し、酸洗工程やその後の冷間圧延工程などで割れが問題となる場合がある。なお、粒界P偏析量はオージェ電子分光法(AES)によりそのピークを測定し、得られた原子比率をat%として算出できる。
本発明効果を得るには、熱延後の酸洗工程が、温度、濃度、時間を制御した酸洗槽からなり、酸洗液について温度を70〜90℃、酸濃度を3〜15質量%、1槽あたり酸洗時間を10〜60秒、合計酸洗時間を20秒以上120秒以内として浸漬した後、酸洗完了から水洗開始までの時間を30秒以内とし、水洗温度を10〜30℃、ラインスピード90m/分以下、1〜5分水洗する。
酸洗液の温度が70℃未満では短時間でスケールが除去できず、スケールが残存すると表面粗度Raを発明範囲に制御できない。一方、温度が90℃超になると粒界近傍の溶解が過剰に進行してRzを発明範囲に制御できない。酸洗液の酸濃度が3%未満では短時間でスケールが除去できず、スケールが残存するとRaを発明範囲に制御できない。一方、酸洗液の濃度が15%超になると粒界近傍の溶解が過剰に進行し、Ra、Rzが増大し発明範囲に制御できない。ここで酸洗液の種類は特に限定せず、公知のとおり塩酸、硫酸、硝酸などを用いればよい。本発明における酸洗液の濃度とは、酸と水の混合液中に含まれる酸の質量%とする。
1槽あたりの酸洗時間は10〜60秒とし、複数の酸洗槽による合計酸洗時間を20〜120秒以内とする。1槽あたりの酸洗時間が10秒未満では粒界近傍の溶解が十分進行せず、スケールが残存する。このためRaを発明範囲に制御できない。一方、1槽あたりの酸洗時間が60秒超では粒界近傍の溶解が過剰に進行してRzが増大するため発明範囲に制御できない。また、複数の酸洗槽による合計酸洗時間が20秒未満では粒界近傍の溶解が十分進行せず、スケールが残存する。このためRaを発明範囲に制御できない。一方、合計酸洗時間が120秒超では粒界近傍の溶解が過剰に進行してRzが増大するため発明範囲に制御できない。
酸洗完了から水洗開始までの時間を30秒以内、水洗温度10〜30℃、ライン速度90m/分以下で1〜5分洗浄
本発明において酸洗完了後、水洗工程の制御も非常に重要である。酸洗の後、単純に水洗をしてしまうと本発明の効果は得られない。特に、水洗完了後に粒界が酸化されてその一部が鉄酸化物(FeOOH、Fe2O3)に覆われてしまうと、Rzを発明範囲に制御できなくなるため、これを回避する条件とすることが重要である。
酸洗完了から水洗開始の間も、鋼板に付着した酸によって粒界腐食が進行する。酸洗完了から水洗開始までの間の時間を30秒超であると粒界腐食が進行し過ぎ、Rzは増大し発明範囲に制御できない。このため酸洗完了から水洗開始までの時間を30秒以内とする。好ましくは25秒以内とする。
水洗槽の水温は10〜30℃とする。水温が30℃を超えると、水洗完了後に粒界の一部が酸化して鉄酸化物(FeOOH、Fe2O3)に覆われる。このためRzを発明範囲に制御できない。水温の下限は一般的な温度から10℃とした。
水洗槽のラインスピードは90m/分以下とする。ラインスピードが90m/分超では、鋼板表面への水中に溶存している酸素の供給頻度が増加し、水洗完了後に粒界の一部が酸化して鉄酸化物(FeOOH、Fe2O3)に覆われる。このため、Rzを発明範囲に制御できなくなる。水洗槽のラインスピードが90m/分以下であれば水洗完了後の粒界の酸化を回避できる。下限値は特に設けないが、例えば生産性の観点から10mpm以上を目安とする。
水洗時間は1〜5分とする。水洗時間が1分未満では鋼板に付着した酸が十分除去できず、粒界腐食はこのまま進行する。このためRzを発明範囲に制御できない。水洗時間が5分超では水洗完了後に粒界の一部が酸化して鉄酸化物(FeOOH、Fe2O3)に覆われる。このため、Rzを発明範囲に制御できない。
酸洗過程で酸洗液の濃度を変化させることで、鋼板表面状態はさらに好ましいものとなる。前記酸洗工程が、各槽について前記のように温度、濃度、時間を制御した複数段の酸洗槽からなり、1段目の酸洗槽の酸洗液の濃度をC1、最終段の酸洗槽の酸洗液の濃度をCfとしたとき、C1>Cfとすることが好ましい。
酸洗後は、冷間圧延を実施する。冷延率は70〜90%とすることで、次工程の仕上げ焼鈍後に磁気特性にとって好ましい集合組織を得ることが可能となる。
冷間圧延後には、仕上焼鈍を実施して冷延組織を再結晶させる。これにより高い磁束密度と低い鉄損を備えた組織とする。焼鈍は箱焼鈍でも連続焼鈍でも構わないが、連続焼鈍の一般的な条件は800〜1100℃である。
また二回冷延焼鈍工程としても良い。
仕上げ焼鈍後には鋼板表面に絶縁被膜を形成する。公知の無機、有機または半有機のいずれか1種のコーティング液を塗布し、300〜400℃で熱処理を実施する。
本発明の電磁鋼板は、絶縁被膜を塗布した鋼板であり、前述までのRaやRzも絶縁被膜の上から測定される数値である。これは鉄心における鋼板の接触は絶縁被膜を有した鋼板の積層による接触であるため当然でもある。一方、本発明で規定すべき酸洗条件は、絶縁被膜、さらには冷延前の鋼板に対する条件であり、前述の粗度の変化も酸洗挙動との関連で記述している。これは、酸洗による表面状態は、冷延、仕上焼鈍、さらには絶縁被膜後の表面状態にまで明確な影響を及ぼしていることを示している。
Claims (3)
- 質量%で、2.0≦Si≦4.0%、0.1≦Mn≦2.0%、0.1≦Al≦2.0%、0.03≦P≦0.2%、S≦0.0035%、0.01≦Cr≦1.4%、0.001≦Ni≦0.5%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物である電磁鋼板において、鋼板の板面と平行な面における{100}方位の集積度が、2.0超であり、かつ板厚が0.27mm以下で、表面平均粗さRaが0.35μm以下で、かつ十点平均粗さRzが0.50μm以下であることを特徴とする絶縁被膜つき電磁鋼板。
- 熱延後に酸洗工程を有し、前記酸洗直前の750℃超から室温までの冷却過程の熱履歴において、750℃から600℃の温度域の滞留時間が3秒以上であり、さらに前記酸洗工程が、温度、濃度、時間を制御した酸洗槽からなり、酸洗液について温度を70〜90℃、酸濃度を3〜15%、1槽あたり酸洗時間を10〜60秒、かつ合計酸洗時間を20秒〜120秒として浸漬した後、酸洗完了から水洗開始までの時間を30秒以内とし、水洗温度を10〜30℃、ラインスピード90m/分以下として1〜5分水洗することを特徴とする、請求項1に記載の占積率に優れる電磁鋼板の製造方法。
- 熱延後に酸洗工程を有し、前記酸洗工程が、温度、濃度、時間を制御した複数段の酸洗槽からなり、1段目の酸洗槽の酸洗液の濃度をC1、最終段の酸洗槽の酸洗液の濃度をCfとしたとき、C1>Cfとすることを特徴とする、請求項2に記載の占積率に優れる電磁鋼板の製造方法。
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