JP7159593B2 - 無方向性電磁鋼板およびその製造方法、並びにモータコアおよびその製造方法 - Google Patents

無方向性電磁鋼板およびその製造方法、並びにモータコアおよびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、無方向性電磁鋼板およびその製造方法、並びにモータコアおよびその製造方法に関するものである。
近年、特に、回転機、中小型変圧器、電装品等の電気機器の分野において、世界的な電力削減、エネルギー節減、CO排出量削減等に代表される地球環境の保全の動きの中で、モータの高効率化及び小型化の要請はますます強まりつつある。このような社会環境下において、モータのコア材料として使用される無方向性電磁鋼板に対する性能向上は、喫緊の課題である。
例えば、自動車分野では、ハイブリッド駆動自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)等の駆動モータのコアとして無方向性電磁鋼板が使用されている。そして、HEVで使用される駆動モータは、設置スペースの制約および重量減による燃費低減のため小型化の需要が高まっている。
駆動モータの小型化の需要、および自動車に搭載する電池容量には制限があることから、モータにおけるエネルギー損失を低くする必要がある。そのため、無方向性電磁鋼板には、さらなる低鉄損化が求められている。
鉄損を悪化させる要因の一つとして微細な硫化物の析出に伴う結晶粒の微細化があるが、硫化物を粗大化させて結晶粒の成長性を向上させる目的で、REM(Nd、Pr、La、Ce等を含む元素群の総称)、Ca、Mg等の元素を含有させる技術が知られている(特許文献1~3参照)。
また、特に回転の開始と停止を繰り返すモータのロータコア材料としての無方向性電磁鋼板には、加減速に伴う急激な応力変化に耐える疲労特性が挙げられる。
一般的に鋼板の疲労特性は強度との関連が知られており、無方向性電磁鋼板においても文献4~8に示されるように、固溶強化、析出強化、微細結晶粒強化、転位強化などを活用した疲労特性の改善技術が開示されている。
これらのうち、文献7、8は鋼板表層領域の化学組成を変更し、表層のみを高強度化し疲労特性を改善する技術である。
特公昭54-36966号公報 特開平3-215627号公報 特開2006-118039号公報 特開平2-8346号公報 WO 2007/063581号公報 特開2008-174773号公報 特開2008-31490号公報 特開2016-169435号公報
低鉄損を目的とした析出物の粗大化技術、ひいては結晶粒径粗大化技術は、疲労特性の向上を目的とした析出物の微細化技術、ひいては結晶粒径微細化技術と両立させることは困難である。また、表層のみの化学組成を変化させるには特殊なプロセスが必要であり、表層全体が磁気特性にとって最適に制御された内層領域とは異なる材質となるため、磁気特性への影響を避けることはできない。
一方、仕上げ焼鈍や歪取り焼鈍により結晶粒を粗大化させた際に、鋼板の表層に微細な結晶粒が残存することがある。微細な結晶粒は鉄損を悪化させる要因となるはずであるが、鉄損低下効果を考慮した制御が十分になされているとは言えない。
本発明の課題は、鋼板表層に不可避的に生成することがある微細な結晶粒を積極的に活用し、その分布および形態を適切に制御することで、微細な結晶粒に起因する鉄損の悪化が抑制され、かつ疲労特性が良好な無方向性電磁鋼板、及びその製造方法、並びに、この無方向性電磁鋼板を利用したモータコア及びその製造方法を提供することである。
また、他の本発明の課題は、Nd、Pr、La、Ce、CaおよびMgの少なくとも1種を含有し、硫化物を粗大化させた鋼板において、鋼板表層の微細な結晶粒を制御することで、低鉄損と耐疲労特性を両立した無方向性電磁鋼板、及びその製造方法、並びに、この無方向性電磁鋼板を利用したモータコア及びその製造方法を提供することである。
上記課題は、以下の手段により解決される。
<1> 質量%で、
C :0.0005~0.0050%、
Si:1.0~5.0%、
Al:0~2.00%、
Mn:0.10~2.00%、
N :0.0010~0.0050%、
P :0.0200%以下、
S :0.0050%以下、
Nd、Pr、La、Ce、CaおよびMgの少なくとも1種の合計:0~0.1000%、並びに
残部:Feおよび不純物からなる化学組成を有し、
鋼板の表面において、円相当直径30μm以下の結晶粒が占める面積率をSA、円相当直径30μm超かつ100μm未満の結晶粒が占める面積率をSB、円相当直径100μm以上の結晶粒が占める面積率をSCとしたとき、
SA:15~65%、SC:35~85%、SA/SB>1.0、およびSC/SB>1.0
であり、さらに
鋼板の表面から深さ20μmの断面において、円相当直径100μm以上の結晶粒が占める面積率SDが90%以上
である無方向性電磁鋼板。
<2> 鋼板の表面において、円相当直径30μm以下の結晶粒が占める面積率SAと円相当直径100μm以上の結晶粒が占める面積率SCの合計面積率SSが80%超である前記<1>に記載の無方向性電磁鋼板。
<3> 鋼板の表面において、円相当直径30μm以下の結晶粒の平均粒径をRA、円相当直径100μm以上の結晶粒の平均粒径をRCとしたとき、
RC/RA≧6.0
である前記<1>又は<2>に記載の無方向性電磁鋼板。
<4> 鋼板の表面から深さ20μmまでの表層領域における、AlNの個数密度をNA、鋼板の表面からの深さが20μmを超え40μm以内の内層領域における、AlNの個数密度をNDとしたとき、
NA/ND≧2.0
である前記<1>~<3>のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板。
<5> 鋼板の表面から深さ20μmまでの表層領域における、硫化物の個数密度をMA、鋼板の表面からの深さが20μmを超え40μm以内の内層領域における、硫化物の個数密度をMDとしたとき、
MA/MD≧2.0
である前記<1>~<4>のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板。
<6> 前記Nd、Pr、La、Ce、CaおよびMgの少なくとも1種の合計量が、質量比で、0.0010~0.1000%である
前記<1>~<5>のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板。
<7> スラブを1150~1280℃に加熱した後、仕上げ圧延時の最終圧延温度950~1280℃で熱延する熱延工程と、
熱延後の熱延板を、巻き取り温度700~1000℃で巻き取る巻き取り工程と、
巻き取り後の熱延板を、熱延板焼鈍を実施することなく、圧下率70~90%で冷延する冷延工程と、
加熱過程における600℃から700℃の平均加熱速度をHR1、700℃から800℃の平均加熱速度をHR2としたとき、HR1:30~200℃/秒、HR1/HR2≧2.0であり、かつ均熱温度950~1050℃の条件で、冷延後の冷延板を仕上げ焼鈍する仕上げ焼鈍工程と、
を有する前記<1>~<6>のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
<8> 前記<1>~<6>のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板を積層したモータコア。
<9> 前記<1>~<6>のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板に打ち抜き加工を施して打ち抜き部材を得る打ち抜き工程と、
前記打ち抜き部材を積層する積層工程と、
を有するモータコアの製造方法。
本発明によれば、鋼板表層の微細な結晶粒に起因する鉄損の悪化が抑制され、かつ疲労特性が良好な無方向性電磁鋼板、及びその製造方法、並びに、この無方向性電磁鋼板を利用したモータコア及びその製造方法を提供できる。
特に、本発明によれば、Nd、Pr、La、Ce、CaおよびMgの少なくとも1種を含有した鋼板において、低鉄損と耐疲労特性を両立した無方向性電磁鋼板、及びその製造方法、並びに、この無方向性電磁鋼板を利用したモータコア及びその製造方法
本実施形態に係るモータコアの一例を示す斜視図である。
以下、本発明の好ましい実施形態の一例について詳細に説明する。
なお、本明細書中において、「~」を用いて表される数値範囲は、特に断りがない場合、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
化学組成の元素の含有量は、元素量(例えば、C量、Si量等)と表記する。
<無方向性電磁鋼板>
本実施形態に係る無方向電磁鋼板(以下、「電磁鋼板」又は「鋼板」とも称する)は、質量%で、C :0.0005~0.0050%、Si:1.0~5.0%、Al:0~2.00%、Mn:0.10~2.00%、N :0.0010~0.0050%、P :0.0200%以下、S :0.0050%以下、Nd、Pr、La、Ce、CaおよびMgの少なくとも1種の合計:0~0.1000%、並びに残部:Feおよび不純物からなる化学組成を有する。
そして、本実施形態に係る電磁鋼板は、鋼板の表面において、円相当直径30μm以下の結晶粒が占める面積率をSA、円相当直径30μm超かつ100μm未満の結晶粒が占める面積率をSB、円相当直径100μm以上の結晶粒が占める面積率をSCとしたとき、SA≧15%、SC≧20%、SA≧SB、SC≧SBである。
また、鋼板の表面から深さ20μmの断面において、円相当直径100μm以上の結晶粒が占める面積率SDは、90%以上である
本実施形態に係る電磁鋼板は、上記構成により、鋼板表層の微細な結晶粒に起因する鉄損の悪化が抑制され、かつ疲労特性が良好な電磁鋼板となる。そして、本実施形態に係る電磁鋼板は、次に示す知見により見出された。
本発明者らは、鋼板表層に残存し、鉄損を悪化させる鋼板表層の微細な結晶粒の形態について、鋭意研究を重ねた結果、次の知見を得た。
鋼板表層の微細な結晶粒による鉄損の悪化が生じる電磁鋼板を調べたところ、鋼板表層の組織が全体的に微細化していた。また、微細な結晶粒は、鋼板の表層から結晶粒1個分だけでなく、内部に向かって複数の結晶粒が連なる領域として広がっていた。
一方、鉄損の悪化が小さい鋼板では、鋼板表層の結晶粒は相対的に微細な結晶粒と相対的に粗大な結晶粒に二分化し、中間的な大きさの結晶粒が少なかった。また、微細な結晶粒は鋼板の最表層から内部に向かって、ほぼ結晶粒1個分の厚さ領域で存在していた。
そこで、本発明者らは、仕上げ焼鈍以降の工程での結晶粒成長により形成される鋼板表層の微細な結晶粒について、その形態を制御することでの特性改善を検討した。その結果、鋼板表層の微細な結晶粒の形態が適切な範囲内であれば鉄損の悪化が抑制されるとの知見を得た。この理由は、定かではないが、鋼板最表面での磁束密度および磁束の方向の変化も影響して、鋼板最表面に特定の形態で存在する微細な結晶粒であれば、鋼板を磁化した際の鋼板全体での磁壁の移動を妨げない状況になるため、鋼板全体としての鉄損の悪化が抑制されると推測される。
一方、微細な結晶粒は、鋼板の内部領域にまで存在していると鉄損が悪化するため、鋼板表層に留めることがよい。
さらに、鋼板表層の微細な結晶粒の形態が適切に制御された電磁鋼板は、疲労特性も十分に向上することが確認された。この理由は、疲労破壊の起点は主として鋼板表面近傍となるため、鋼板表層の微細な結晶粒が、破壊の進展阻止に有効に作用するためと推測される。
以上の知見により、本実施形態に係る電磁鋼板は、鋼板表層の微細な結晶粒に起因する鉄損の悪化が抑制され、かつ疲労特性が良好な電磁鋼板となることが見出された。
本実施形態に係る電磁鋼板は、化学組成が、さらにNd、Pr、La、Ce、CaおよびMgの少なくとも1種を合計量で0~0.1000%(具体的には、例えば0.0010~0.1000%含有することがある。
ここで、鋼板表面に表出して残存する微細な結晶粒は、特に、Nd、Pr、La、Ce、CaおよびMgの少なくとも1種を含有する鋼板において発生しやすく、特性(鉄損)への悪影響も大きくなる。
Nd、Pr、La、Ce、CaおよびMgの少なくとも1種を含有する鋼板において、鋼板表層に微細な結晶粒が発生しやすいのは、以下のように推測される。これら元素が、特に鋼中のSと強く結合し、鋼中の固溶Sを減少させFe相を純化させるとともに、硫化物を粗大化させるため、基本的には結晶粒成長性を向上させて結晶粒径を粗大化させることは良く知られている。一方で、このような鋼板では、以下のような要因で鋼板表層の結晶粒の成長性が阻害される。要因の一つは、純化した鋼板表面は鋼板製造中の熱処理過程で窒素含有雰囲気と接触すると窒化しやすくなることである。窒化が起きると鋼板表層のみに微細なAlNが形成し、鋼板表層領域のみの結晶粒成長性が低下することとなる。もう一つの要因は、鋼板製造中の熱処理、特に鋼材の厚さが厚いスラブ~熱延鋼板の製造過程では、鋼材の内部まで十分に加熱するためには、特に鋼板の表層領域のみが過剰に加熱されることである。このため、硫化物が鋼板内部領域に比べると相対的に微細化し、結果として鋼板表層領域のみの結晶粒成長性が低下することとなる。
しかし、本実施形態に係る電磁鋼板では、化学組成が、さらに、Nd、Pr、La、Ce、CaおよびMgの少なくとも1種を含有し、硫化物を粗大化させた鋼板でも、上述のように、鋼板表層の微細な結晶粒を制御することで、低鉄損と耐疲労特性を両立できる。
以下、本実施形態に係る電磁鋼板の詳細について説明する。
(化学組成)
本実施形態に係る電磁鋼板は、C、Si、Al、Mn、N、P、およびSを含有し、残部:Feおよび不純物からなる化学組成を有する。また、化学組成は、さらに、Nd、Pr、La、Ce、CaおよびMgの少なくとも1種を含有することがある。
-C :0.0005~0.0050%-
Cは、鋼中に固溶Cとして存在して、温間圧延時の動的ひずみ時効による集合組織改善効果を発現することにより、磁束密度を向上させる。その効果を得るために、C量は0.0005%以上とする。一方、C量は0.0050%を超えると微細な炭化物が析出して磁気特性が劣化する。従って、C量は0.0005%以上、0.0050%以下とする。C量は、好ましくは0.0010%以上0.0040%以下である。
-Si:1.0~5.0%-
Siは、鋼板の固有抵抗を増加させ、渦電流損を低減する作用を呈する。また、Siは、ヒステリシス損を低減する作用も有する。このため、Siを積極的に含有させることが望ましく、Si量は1.0%以上が必要である。一方、Si量が5.0%を超えると、温間圧延での圧延性、および打抜き加工性が低下する。従って、Si量は1.0%以上、5.0%以下とする。Si量は、好ましくは2.0%以上3.5%以下である。
-Al:0~2.00%-
Alは、製鋼工程において脱酸材として一般的に使用される元素であるが、脱酸はSiやTiなどでも可能で実用化されているため、本発明においてAlの含有は必要ではなくゼロでも構わない。また、鋼板製造工程の熱処理過程で鋼板が窒化すると鋼板表層でAlNを形成し、本発明の特徴に関連する鋼板表層の微細な結晶粒の形態制御にも影響を及ぼすとも考えられる元素であるが、鋼板表層の微細な結晶粒の形態制御は硫化物でも可能であり、この点でも本発明においてAlの含有は必要ではなくゼロでも構わない。
Alは、Siと同様に鋼の固有抵抗を増加させ鉄損を低減させる一方、Al量が過剰になると酸洗の能率低下、ヒステリシス損増加という悪影響が顕著になるため、2.00%以下とする。Al量は、好ましくは1.50%以下である。
Al量の下限は特に限定しないが、鋼板表層の微細な結晶粒の形態制御にAlNを活用する際の効果を考慮すれば、Al量は0.002%以上とすることが好ましい。この効果を積極的に活用するのであれば、Al量は0.010%以上が好ましい。
なお、Al量は、sol.Al量を意味する。
-Mn:0.10~2.00%-
Mnは、鋼の固有抵抗を高め、硫化物を粗大化して無害化する作用を呈する。一方で、鋼板製造工程の冷間圧延までの熱履歴によっては、鋼板表層に微細なMnSを形成し、本発明の特徴である鋼板表層の微細な結晶粒の形態制御にも影響を及ぼすとも考えられる元素である。これらの作用を考慮し、Mn量は0.10%以上とする。一方、Mn量が2.00%を超えると、磁束密度の低下及びコストの上昇を招く。従って、Mn量は0.10%以上2.00%以下とする。Mn量は、好ましくは0.20%以上1.50%以下である。
-N :0.0010~0.0050%-
Nは、AlNを構成する元素として重要な元素となる。鋼板表層で形成されるAlNが本発明の特徴である鋼板表層の微細な結晶粒の形態へ及ぼす影響を考慮しN量は0.0010%以上とする。
一方、N量は0.0050%を超えるとAlNの量が過剰となり磁気特性の劣化を避けることが困難となる。よって、N量は0.0050%以下とする。
なお、N量は、好ましくは0.0010%以上0.0040%以下である。
なお、鋼板製造工程の熱処理過程で鋼板が窒化する場合、鋼板の板厚方向にはN量の少なからざる変化が生じ、表層領域のN量が高くなるが、一般的に窒化を意識(活用または抑制)して鋼板を製造している当業者において、表層領域および内層領域におけるAlNの形成を考慮したN量の制御自体は、日常業務ともいえる程度のものであり、特別な配慮が必要な事項ではない。このような事情から本実施形態に係る鋼板の実現において、これらを分けて規定することにさほど大きな意味はないと判断し、本実施形態では、Nの影響を表層領域と内層領域に分けることなく、N量を全板厚の平均により規定する。
-P :0.0200%以下-
P量が0.0200%超では、冷間圧延時に破断を生じる可能性がある。したがって、P量は、0.0200%以下とする。P量の下限値は、特に制限はないが、脱Pのコスト及び生産性の観点から、0.0100%とすることが好ましい。
-S :0.0050%以下-
S量が0.0050%を超えるとMnS等の硫化物量が多くなり、鉄損が増加する。従って、S量は0.0050%以下とする。S量の下限値は、特に制限はないが、鋼板表層で形成される硫化物が本発明の特徴である鋼板表層の微細な結晶粒の形態へ及ぼす影響を考慮しS量は0.0005%以上とすることが好ましい。さらに脱Sのコスト及び生産性の観点から、0.0010%以上とすることが好ましい。
-Nd、Pr、La、Ce、CaおよびMg少なくとも1種の合計量:0.0010~0.1000%-
Nd、Pr、La、Ce、CaおよびMgは必須元素ではないが(つまり、Nd、Pr、La、Ce、CaおよびMg少なくとも1種の合計量は0~0.1000%である。)、これらの元素を含有する鋼板においては、発明の効果が特に顕著になるため、これらの元素を含有する鋼板を対象とすることが好ましい形態となる。
Nd、Pr、La、Ce、CaおよびMgは、硫化物を粗大化し、無害化する作用を呈する。そのため、Nd、Pr、La、Ce、CaおよびMgの少なくとも1種の合計量は、0.0010%以上とすることがよい。Nd、Pr、La、Ce、CaおよびMgの少なくとも1種の合計量が過度に多すぎると、合金コストが上昇するばかりか、磁性への悪影響も懸念される。そのため、Nd、Pr、La、Ce、CaおよびMgの少なくとも1種の合計量は、0.1000%以下とする。従って、Nd、Pr、La、Ce、CaおよびMgの少なくとも1種の合計量は、0.0010~0.1000%とすることがよい。Nd、Pr、La、Ce、CaおよびMgの少なくとも1種の合計量は、好ましくは0.0010%~0.0050%である。
同観点から、Nd、Pr、LaおよびCeの合計量は、0.0010~0.030%が好ましく、0.0010~0.0200%がより好ましい。
Ca量は、0.0010~0.030%が好ましく、0.0010~0.0200%がより好ましい。
Mg量は、0.0010~0.0300%が好ましく、0.0010~0.0200%がより好ましい。
ここで、Nd、Pr、La、Ce、CaおよびMgは、少なくとも1種含有すればよいので、Nd、Pr、La、Ce、CaおよびMgのうち、1種を含めば、他の元素量は0%であってもよい。
なお、Nd、Pr、LaおよびCeは、ミッシュメタルに含有される。このため、例えば、Nd、Pr、LaおよびCeは、ミッシュメタルの形で含有してもよい。
-Feおよび不純物-
鋼板の残部は、Feおよび不純物元素である。ここで、不純物元素とは、原材料に含まれる成分、または、製造の過程で混入する成分であって、意図的に鋼板に含有させたものではない成分を指す。
-その他元素-
本実施形態に係る電磁鋼板は、次の元素の少なくとも1種を含有していてもよい。
Cu:0~0.20%(好ましくは0超え~0.20%、より好ましくは0.05~0.20%)
Ni:0~0.2%(好ましくは0超え~0.2%、より好ましくは0.05~0.2%)
Cr:0~0.3%(好ましくは0超え~0.3%、より好ましくは0.05~0.2%)
Sn:0~0.20%(好ましくは0超え~0.20%、より好ましくは0.1~0.20%)
Ti:0~0.005%(好ましくは0超え~0.005%、より好ましくは0.001~0.003%)
上記化学組成は、鋼板を構成する鋼の組成である。測定試料となる鋼板が、表面に絶縁皮膜等を有している場合は、これを除去した後に測定する。
無方向性電磁鋼板の絶縁皮膜等を除去する方法としては、例えば、次の方法が挙げられる。
まず、絶縁皮膜等を有する無方向性電磁鋼板を、水酸化ナトリウム水溶液(NaOH:10質量%+HO:90質量%)に、80℃で15分間、浸漬する。次いで、硫酸水溶液(HSO:10質量%+HO:90質量%)に、80℃で3分間、浸漬する。その後、硝酸水溶液(HNO:10質量%+HO:90質量%)によって、常温(25℃)で1分間弱、浸漬して洗浄する。最後に、温風のブロアーで1分間弱、乾燥させる。これにより、絶縁皮膜等が除去された鋼板を得ることができる。
鋼板中の各元素の含有割合は、例えば、ガス分析、カントバック(QV)分析(分光分析)、又は化学分析にて各元素量を確認することができる。
(鋼組織)
本実施形態に係る電磁鋼板は、鋼板の表面において、微細な結晶粒と粗大な結晶粒が適切な比率で存在する。
また、本実施形態に係る電磁鋼板は、鋼板の表面から深さ20μmまでの表層領域(以下、単に「表層領域」とも称する。)のAlNまたは硫化物の形態を好ましい特徴とする。
-結晶組織-
本実施形態に係る鋼板は、鋼板の表面において、円相当直径30μm以下の結晶粒が占める面積率をSA、円相当直径30μm超かつ100μm未満の結晶粒が占める面積率をSB、円相当直径100μm以上の結晶粒が占める面積率をSCとしたとき、
SA≧15%、SC≧20%、SA/SB>1.0、SC/SB>1.0
である。
本実施形態に係る鋼板の結晶粒径についての特徴のひとつは、鋼板の表面において微細な結晶粒の残存を許容していることである。微細な結晶粒が鉄損に悪影響を及ぼすことは良く知られており、鉄損の観点から結晶粒径を粗大化させることが好ましいことは当業者においては常識とも言える。つまり、微細な結晶粒の存在頻度が低い領域では、本発明の課題のひとつである鉄損の悪化抑制が達成されることは自明であり、課題自体が存在しなくなる。
一般的に微細な結晶粒は磁気特性、特に鉄損にとっては好ましからざる状態であるが、微細な結晶粒の残存範囲は極表層に限定され、かつ後述するように結晶粒径の分布が特徴的なものとなるため、この悪影響は比較的小さい。また、本実施形態に係る鋼板においては、上述の微細な結晶粒の存在形態の特徴と相まって、疲労特性の向上に有利に作用する。
これらを考慮し、本実施形態に係る鋼板においては、鋼板表面における、円相当直径30μm以下の結晶粒が占める面積率SAの下限を15%と設定する。SAは、20%以上、さらには25%以上であれば、疲労特性を改善する効果をより顕著に得ることが可能となる。一方、微細な結晶粒が占める面積率が多すぎると、鉄損の悪化を避けることは困難となるため、SAの上限を65%とする。SAは、好ましくは40%以下である。
微細な結晶粒が占める面積率の上限に対応して、粗大な結晶粒が占める面積率の下限が設定される。本発明においては、円相当直径100μm以上の結晶粒が占める面積率をSCの下限を35%とする。SCは、鉄損の観点からは50%以上、さらに60%以上とすることが好ましい。一方、本実施形態に係る鋼板は、本発明の課題である低鉄損、耐疲労特性、およびその両立の観点から微細な結晶粒の存在を前提としている。そのため、SCの上限は85%となる。
本実施形態に係る鋼板の表面での結晶粒径についてのもう一つの特徴は、その分布において中間的な大きさを持つ結晶粒が少ないこと、つまりSBがSAおよびSCよりも小さな値となることである。
一般的に結晶粒が再結晶し粒成長した結晶組織は、中間的な大きさ(平均的な大きさ)を持つ結晶粒の存在頻度が高い分布状態となる。一方、本実施形態に係る鋼板は中間的な大きさを持つ結晶粒に関し、円相当直径30μm超かつ100μm未満の結晶粒が占める面積率をSBとしたとき、
SA/SB>1.0、SC/SB>1.0
となる。
このように、粗大な結晶粒と、それに比べ十分に小さい微細な結晶粒が混在していることで、たとえ全体の平均結晶粒径が同じ程度であっても、全体が中間的な大きさの結晶粒となっている一般的な鋼板では得られない、微細な結晶粒が残存したとしても鉄損の悪化を抑制し、同時に良好な疲労特性を両立することができるようになる。
よって、この粒径分布をSA/SB、およびSC/SBで規定する。この値が1.0以下では発明の効果を十分に得ることができない。SA/SB、およびSC/SBは、好ましくは2.0以上、さらに好ましくは4.0以上である。中間的な大きさの結晶粒がほとんど存在しない場合、これらの値は10.0以上にもなる。
なお、SA/SB、およびSC/SBは両方が大きな値となることが、低鉄損および耐疲労特性の両立の観点で好ましい形態であるが、例えば、鉄損を重視するのであればSC/SBを大きくすることが、疲労特性を重視するのであれば、SA/SBを大きくすることが好ましい形態となる。
なお、SBがゼロの場合、SA/SB>1.0、SC/SB>1.0を満足するとみなす。
上記は鋼板の表面での結晶組織についての説明であるが、上記の微細な結晶粒が鋼板の内部領域にまで存在していると発明の効果を得ることができず、特に鉄損の悪化が顕著となる。本実施形態では、微細な結晶粒が相当面積率で存在する領域が鋼板の極表層にとどまることを、鋼板の表面から深さ20μmの断面において、円相当直径100μm以上の結晶粒が占める面積率SDが90%以上とすることで規定する。ここでSDの下限を90%としているのは、鋼板内部において10%までの微細な結晶粒の存在を許容することが意図ではなく、鋼板表面について「微細な結晶粒」の粒径上限を30μmとしていることから、「表面に表出する微細な結晶粒」の粒径が20μm超である場合、鋼板の表面から20μmの深さ位置でも、これを観察する可能性があること、鋼板の表面非定常部として微細な結晶粒が残存する可能性を否定できないこと、さらに、結晶組織を断面で観察するため観察面が結晶粒の極端部であった場合、その結晶粒が粗大なものであったとしても観察される断面積としては小さくなる可能性があることを考慮したものである。SDは、好ましくは95%以上であり、結晶粒が十分に粗大であれば上記の観察面の考慮をしたとしてもSDが100%となることもある。
また、鋼板内部の結晶組織を規定する深さについては20μmとしているが、20μmより中心側においても、20μm位置と同様にSDに関する規定を満足するものとなっている。
さらに、本実施形態に係る鋼板は、鋼板の表面において、上記SAとSCの合計面積率SSが80%超であることが好ましい。SA、SBおよびSCの合計面積率が100%であることから、言い換えるとSBを小さくすることになるため、この規定を満足すれば発明の効果を十分に得ることができるようになる。この規定は上述のSA/SB、およびSC/SBの値を大きくすることにも関連し、例えばSSが80%超であれば、SA/SB>1.0、SC/SB>1.0は確実に満足する。SSは、好ましくは90%超、さらに好ましくは95%超である。SA/SBおよびSC/SBの値は、SSが90%超であればともに2.0超となり、SSが95%超であればともに4.0超となり、SSが98%超であればともに10.0超を満足することとなる。
さらに、本実施形態に係る鋼板は、鋼板の表面において。上記SAに相当する領域内の結晶粒(つまり、円相当直径30μm以下の結晶粒)の平均粒径をRA、上記SCに相当する領域内の結晶粒(つまり、円相当直径100μm以上の結晶粒)の平均粒径をRCとしたとき、RC/RA≧6.0であることが好ましい。SAに相当する領域の結晶粒径の上限が30μm、SCに相当する領域の結晶粒径の下限が100μmであることから、RC/RAは3.3より小さくなることはない。RC/RAの値が大きいほど、粗大な結晶粒はより粗大に、微細な結晶粒はより微細になっており、低鉄損と耐疲労特性の両立にとって都合がよい。RC/RAは、好ましくは7.0以上、さらに好ましくは9.0以上である。
各領域の面積率および各結晶粒の平均粒径(平均結晶粒径)は、次の方法により測定する。
測定対象の鋼板の観察面(鋼板表面または鋼板表面から20μm深さの位置の断面)を鏡面研磨の後、ナイタールエッチングし、粒界を腐食させて発現させる。
ここで注意するのは、鋼板表面の解釈についてである。この観察方法では粒界を観察するため観察面を鏡面研磨する。これは、一般的な方法で製造された鋼板の表面は、エッチングで現出した粒界を観察する際に、粒界の明確な認識を阻害する程度の粗度を有しており、これを除去する必要があるためである。この凹凸は最大で1μm程度になることが考えられるため、鋼板表面の結晶組織観察のために鋼板表面を最大で1μm程度研磨(除去)することとなる。このため厳密な意味では、「鋼板の表面」とは、「鋼板の表面」ではないことにもなるが、上記研磨後の表面を「鋼板の表面」と解釈するものとする。
次に、光学顕微鏡又は走査型顕微鏡(SEM)により、円相当直径100μm以上の結晶粒が20個以上観察される正方形の領域を観察する。
同様の観察を、5か所以上の視野数で実施する。そして、得られたすべての観察像から画像処理により、上記のSA、SB、SC、SD、RA、RCを求める。
なお、SA、SB、SC、SDは、観察像の総面積(5か所以上の視野数での総面積)に対する、各対象となる領域の総面積(5か所以上の視野数で算出された各領域の総面積)の割合(%)で算出される。
また、RA、RCは、観察像で観察される対象の結晶粒の結晶粒径の算術平均して算出される。
-AlNおよび硫化物-
本実施形態に係る鋼板は、鋼板表層で特徴的に発生する微細な結晶粒の制御をベースとするものである。微細な結晶粒が鋼板の極表層にのみ残存する理由は明確ではないが、鋼中析出物の形態変化が一因と考えられる。特に、AlNおよび硫化物について、鋼板表層と内層の形態の差に特徴が現れやすい。これらの析出物において鋼板表層と内層の形態に差を生じる理由は明確ではないが、以下のことを挙げることができる。
表層におけるAlNの状況については、鋼板製造工程の熱処理中の窒化の影響を考慮する必要がある。本実施形態は、本発明の鋼板表面での結晶組織を得るため、製造過程で意図的に窒化をすることを除外するものではない。ただし、意図的に窒化するものではなく不可避的に極微量の窒化が生じる場合でも、鋼板の最表面での組織を制御する本発明においては意味を持つものとなる。
一般的には、冷延後、基本的な再結晶を完了した後に意図的に窒化をして鋼板表層の高強度化を目的とする技術が知られている。しかし、本発明に影響を及ぼすのは、基本的な再結晶が完了する前の窒化である。すなわち、本発明で考慮すべき窒化は、スラブから熱延まで、場合によっては熱延板焼鈍を含め、冷延前での熱履歴における窒化、および冷延後の仕上げ焼鈍工程において、基本的な再結晶が完了する前(具体的には温度範囲が750℃程度の温度域に達する前)の熱履歴における窒化となる。このような窒化は、特に、Nd、Pr、La、Ce、CaおよびMgの少なくとも1種を含有すると、固溶Sが減少し、Fe相が純化されるため、不可避的に生じる場合があることは前述の通りである。
また、硫化物については、鋼板を加熱する際の鋼板表層と内層の加熱温度の差が硫化物の溶解析出挙動に差を生じさせていることが考えられる。このような硫化物の溶解に影響を与える工程としてはスラブ加熱工程が考えられる。製造条件との関連は後述するとして、まず鋼板におけるAlNおよび硫化物の形態の好ましい状況について説明する。
本実施形態に係る鋼板は、鋼板の表層領域の結晶粒径についての特徴で規定できることは既に説明した。このような状況を形成する一因として、鋼板表面から深さ20μmまでの表層領域(以下、単に「表層領域」とも称する。)における析出物の形態と、鋼板の表面からの深さが20μmを超え40μm以内の内層領域(以下、単に「内層領域」とも称する。)における析出物の形態を規定する。基本的には表層領域の析出物の個数密度が内層領域の析出物の個数密度より十分に高い状況となる特徴が現れる。
AlNについては、鋼板の表面から深さ20μmまでの表層領域における、AlNの個数密度をNA、鋼板の表面からの深さが20μmを超え40μm以内の内層領域における、AlNの個数密度をNDとしたとき、
NA/ND≧2.0
となることがよい。この表層領域でのAlNの個数密度上昇は、主として熱処理中の窒化により生じているものと考えられ、AlNのサイズは、内層領域と同等もしくは粗大なものも観察される。
また、硫化物については、鋼板の表面から深さ20μmまでの表層領域における、硫化物の個数密度をMA、鋼板の表面からの深さが20μmを超え40μm以内の内層領域における、硫化物の個数密度をMDとしたとき、
MA/MD≧2.0
となることがよい。この表層領域での硫化物の個数密度上昇は、主として熱処理中の表層の温度の高温化による硫化物溶解により生じているものと考えられ、硫化物のサイズは、内層領域のものより微細なものが観察される。
鋼板の板厚方向で析出形態の違いを生じる原因は異なるが、どちらにしても表層領域と内層領域の析出物の個数密度の比により、好ましい形態を規定する。この比が大きいことにより表層領域のみで結晶粒成長への析出物によるピニング効果が強く作用し、微細な結晶粒が残存することとなる。
ここで、上記観点から、NA/NDは、好ましくは3.0以上、より好ましくは7.0以上である。NA/NDの上限は、特に限定する必要はない。この理由は、NAが表層領域での粗大な結晶粒の成長を阻害してしまうほど高いものでなければ、NDを十分に低くできれば、NA/NDは非常に高い値にもなり得るからである。例えば、NDをゼロにできれば、NA/NDは無限の値になる。とは言え、NDの低減には実用的な限界もあるため、これらを考慮すれば実用的にはNA/NDの上限は、例えば、20程度以下となる。
また、MA/MDは、好ましくは3.0以上、より好ましくは7.0以上である。MA/MDの上限についても、上記NA/NDと同様であるが、実用的な上限として、20以下が挙げられる。
AlNおよび硫化物の個数密度は、次の方法により測定される。
鋼板から、圧延方向かつ板厚方向に沿って切断した切断面(以下「L断面」とも称する)を有する試料を採取し、L断面を鏡面研磨する。次に、走査型顕微鏡(SEM)又は透過型顕微鏡(TEM)により、鋼板の表面から深さ20μm、幅20μmに相当する領域(つまり、鋼板の表面を一辺とする20μm×20μmの領域)を1000~50000倍率で観察する。
次に、観察画像において、析出物を識別する。AlNの識別は、SEM又はTEM付属機能のEDS(エネルギー分散型X線分光器)の点分析にて実施する。観察される析出物内の中央部に電子線を照射し、得られるスペクトルでAlとNが同時に検出されるものをAlNと判定する。また、硫化物の識別は、SEM又はTEM付属機能のEDS(エネルギー分散型X線分光器)の点分析にて実施する。観察される析出物内の中央部に電子線を照射し、得られるスペクトルでMn、Nd、Pr、La、Ce、CaおよびMgの少なくとも1種とSが同時に検出されるものを硫化物と判定する。この際、検出される金属元素が何であるかは特に区別はしない。
そして、観察視野の面積および観察個数から、AlNおよび硫化物の個数密度を計算する。
また、鋼板表面から深さ20μmを超え40μm以内の領域において、同様の観察を実施する。観察領域は、試料のL断面において、鋼板厚さ方向に鋼板表面から20μmを超え40μm以内、圧延方向に任意に幅20μmである20μm×20μmの領域である。
なお、本実施形態では定量的な規定はしないが、鋼板の表面からの深さが40μmである位置よりもさらに鋼板の中心側の任意の領域についても同様の状況にあることは言うまでもない。
<無方向性電磁鋼板の製造方法>
本実施形態に係る電磁鋼板を得るための製造方法は、特に制限はないが、次の(1)~(4)の工程を有する製造方法が好ましい。次の(1)~(4)の工程を有する製造方法によれば、上記特徴を有する電磁鋼板が得られる。
(1)本実施形態に係る電磁鋼板の化学組成となる化学組成を有するスラブを1150~1280℃に加熱した後、最終圧延温度時の最終圧延温度950~1280℃で熱延する熱延工程
(2)熱延後の熱延板を、巻き取り温度700~1000℃で巻き取る巻き取り工程
(3)巻き取り後の熱延板を、熱延板焼鈍を実施することなく、圧下率70~90%で冷延する冷延工程
(4)加熱過程における600℃から700℃の平均加熱速度をHR1、700℃から800℃の平均加熱速度をHR2としたとき、HR1:30~200℃/秒、かつHR1/HR2≧2.0であり、かつ均熱温度950~1050℃の条件で、冷延後の冷延板を仕上げ焼鈍する仕上げ焼鈍する仕上げ焼鈍工程
以下、各工程の詳細について説明する。
(1)熱延工程
熱延の素材とするスラブは、次の方法により製出する。まず、転炉、電気炉等により溶製し、さらに必要に応じて真空脱ガス処理して、溶鋼を得る。そして、得られた溶鋼を、連続鋳造または造塊後分塊圧延し、30~400mm程度の厚さのスラブを製出する。
スラブの化学組成は、基本的には最終製品である電磁鋼板に相当するものとなるが、本発明は、一般的な製法であれば仕上げ焼鈍工程で窒化が生じることも想定しているため、N量については、スラブの化学組成は最終製品(本発明鋼板)の含有量よりも0.0001~0.004%程度低いものとなる場合がある。このような組成の変化の考慮自体は、一般的に窒化を意識(活用または抑制)して鋼板を製造している当業者において、これを考慮した設計は日常業務ともいえる程度のものであり、困難なものではない。
ここで、スラブの厚さが30~70mmの範囲である薄いスラブ(いわゆる薄スラブ)であれば、以降の熱延工程において、仕上げ圧延前の粗圧延を省略できる。
熱延工程では、スラブを1150~1280℃(好ましくは1220~1280℃)に加熱する。
スラブ加熱温度を1150~1280℃と高温にすることは、後述の熱延板焼鈍を実施しないことと合わせることで、最終製品としての鋼板の表面のみに微細な結晶粒を適切な形態で残存させることに有利に作用する。この理由は明確ではないが以下のように推測している。
スラブ加熱温度を高くするためには外部からの強く加熱することとなるが、スラブは厚さが厚いため最表面は特に高温となりやすい。このため、本発明鋼のようにNd、Pr、La、Ce、CaおよびMgのような強い硫化物形成元素を添加した鋼材においても、最表面では少なからざる硫化物の溶解が起きていることが考えられる。特に熱延後に熱延板焼鈍を実施しない場合、最表面の硫化物は微細なまま冷延および再結晶焼鈍が行われることとなるため、最終的に鋼板の表面のみに微細な結晶粒が残存しやすくなる。
次に、加熱されたスラブを圧延する。具体的には、例えば、加熱されたスラブに対して、粗圧延、仕上げ圧延を順次実施する。なお、上述のように粗圧延は省略してもよい。
仕上げ圧延時の最終圧延温度は、950~1280℃(好ましくは1000~1100℃)とする。
なお、最終圧延温度(FT)とは、熱延された圧延板が最終スタンドから排出されたとときの圧延板の表面温度を示す。
仕上げ圧延の圧下率は、特に制限はないが、92~97%が好ましく、94~96%がより好ましい。
(巻き取り工程)
巻き取り工程では、例えば、熱延後の熱延板を、コイラーにより巻き取る。
巻き取り温度は、巻き取り温度700~1000℃(好ましくは800~950℃)とする。
巻き取り温度を700~1000℃と高温にすると、コイルの最表面のみが冷えやすいこともあり、内層部に比べて相対的に熱処理が十分ではなくなるため、後述の熱延板焼鈍を実施しないことと合わせることで、上記同様に、最終的に鋼板の表面のみに微細な結晶粒を適切な形態で残存させることに有利に作用する。
なお、巻き取り温度とは、巻き取られた直後のコイル状の熱延板の表面温度を示す。
(熱延板焼鈍工程)
本発明鋼板の製造においては、上記のように、熱延の最終圧延温度を高温とし、巻き取り温度を高温とし、さらに熱延板焼鈍を実施しないことで、冷延および仕上げ焼鈍後の鋼板の表面のみに微細な結晶粒を適切な形態で残存させることに有利に作用する。
また、さらに再加熱工程となる熱延板焼鈍を必要としないことは、エネルギーコストの観点でも有利となる。
(冷延工程)
冷延工程では、巻き取り後の熱延板を冷延する。
冷延の圧下率は、70~90%(好ましくは75~89%)とする。
冷延の圧下率を70~90%にすると、粒成長に望ましい集合組織の発達が調整される。
冷延の温度は、特に制限はないが、一般的に0~300℃の温度範囲で実施される。
(仕上げ焼鈍工程)
仕上げ焼鈍工程では、冷延後の冷延板を焼鈍する。具体的には、冷延板を昇温し、目的とする温度で均熱した後、冷却する。
本実施形態に係る鋼板の製造方法において、好ましい仕上げ焼鈍工程の条件の特徴は、再結晶の特定の段階において加熱速度を低下させるように制御することである。
具体的には、600℃から700℃の平均加熱速度をHR1、700℃から800℃の平均加熱速度をHR2とたとき、HR1:30~200℃/秒、かつHR1/HR2≧2.0と規定することで、上述の加熱速度を低下させる制御を行う。
この条件とすることで、本実施形態に係る鋼板の特徴的な結晶組織を得ることができる。
このような制御が本実施形態に係る鋼板の特徴的な結晶組織を発生させる理由は明確ではないが、以下のように考えている。
まず、本実施形態に係る鋼板の結晶組織は、簡単に言うと、微細粒と粗大粒の混粒組織である。このためには、仕上げ焼鈍工程の一時点で、微細粒を発生させる。その後、その一部のみが粗大化し、一部は粗大粒に蚕食させずに残留させることとなる。
このように制御するための一つの重要な点は、再結晶粒の発生と成長を分けて考えることであり、700℃はこの切り替えの重要な温度とも言える。
再結晶粒発生時期での加熱速度HR1は、微細粒の発生に必要な過程と考えている。このための条件がHR1:30~200℃/秒とすることである。HR1が低加熱速度側に外れると、十分に微細な結晶粒とならない。しかし一方で、HR1が高速側に外れると発生する組織が過度に微細になり、粒界エネルギーによって成長する粗大粒の成長の駆動力が大きくなりすぎる。そのため、最終的に微細粒を残留させることが困難となる。HR1の好ましい範囲は50~120℃/秒である。
もう一つの重要な条件が、700℃以降の加熱速度はHR1よりも十分に低速にすることである。結晶粒が比較的微細で、粒界エネルギーによる粒成長の駆動力が比較的高い粒成長初期の段階で加熱速度を低下させ、新たな再結晶粒の発生を抑制しつつ、成長段階に進行させる。そのことで、特に粒成長しやす状況にある鋼板中心部の結晶粒が十分に成長し、鋼板表面に十分な面積で表出するようになる。この段階での加熱速度差は明確な温度差が必要であり、さらに700℃から800℃の平均加熱速度をHR2として、HR1/HR2≧2.0となるように制御する。HR1/HR2が低く十分か徐加熱状態にならない場合は、700℃に達した以降も新たな再結晶粒の発生が継続し、成長段階での好ましい制御が困難となる。HR2として規定する温度範囲は700℃から800℃であるが、特に重要となるのは、成長の初期段階である低温側であり、さらに700℃から750℃での平均加熱速度をHR3としたとき、HR1/HR3≧2.0となっていることが好ましい。なお、HR2およびHR3は各温度域での平均の加熱速度であり、その過程に一定温度での保持(いわゆる保定)を含んでいても問題はない。ただし、冷却については、700℃以上に保持することで、700℃以下で発生した結晶粒を適切に成長させることが目的であることから、特に700℃以下への冷却はもちろん、あまり好ましいものではない。
HR1/HR2、またはHR1/HR3の上限は、特に限定する必要はないが、本実施形態では最終的に粗大粒を十分に成長させるため、仕上げ焼鈍の最高到達温度を950℃以上とすることを前提としており、この段階で加熱速度を極端に低下させることはプロセス上得策ではない。実用的な加熱速度として10℃/秒を考えると、HR1の上限が200℃/秒であることから、HR1/HR2、またはHR1/HR3の上限として20を挙げることができる。
HR1/HR2、またはHR1/HR3の好ましい範囲としては、3.0~10を挙げることができる。
その後は、粗大粒が十分に成長するよう熱処理を実施すればよい。一般的な条件として、均熱温度(最高到達温度)950~1050℃(好ましくは1000~1030℃)まで加熱し、5~120秒保持する条件を挙げることができる。
なお、本実施形態に係る電磁鋼板を得るために、上記の工程以外に、従来の電磁鋼板の製造工程と同様のその他の工程を設けてもよい。その他の工程の各条件は、従来の電磁鋼板の製造工程と同様の条件を採用してもよい。具体的には、例えば、仕上げ焼鈍工程後の鋼板(電磁鋼板)の表面に絶縁皮膜を設ける絶縁皮膜形成工程を有していてもよい。
絶縁皮膜の形成方法は特に限定されないが、例えば、樹脂または無機物を溶剤に溶解した絶縁皮膜形成用組成物を調製し、絶縁皮膜形成用組成物を、鋼板表面に公知の方法で均一に塗布することにより絶縁皮膜を形成することができる。
以上の工程を有する製造方法によって、本実施形態に係る電磁鋼板が得られる。
<用途>
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、電気機器の各種コア材料、特に、回転機、中小型変圧器、電装品等のモータのコア材料として好適に適用できる。
<モータコアおよびその製造方法>
以下、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板をモータコアに適用する場合について説明する。
本実施形態に係るモータコアは、本実施形態に係る電磁鋼板が積層された形態が挙げられる。この場合、モータコアを構成する鋼板は、打ち抜き前に本実施形態に係る電磁鋼板の特徴を有したものである必要はない。言い換えれば、モータコア用に使用する素材としての鋼板は、本実施形態に係る電磁鋼板の特徴を有したものである必要はなく、最終的にモータコアを構成する鋼板が本実施形態に係る電磁鋼板であればよい。つまり、素材としての鋼板の打ち抜き、積層一体化、さらにコア製造工程において歪取り焼鈍などの必要に応じた熱処理を実施し、最終的にモータコアを構成する鋼板が、本実施形態に係る電磁鋼板として表層領域の微細な結晶粒に関する規定の範囲内となる特徴を有していれば良い。最終的にモータコアを構成する鋼板が本実施形態に係る電磁鋼板に相当する特徴を有していれば、少なくとも表層領域の微細な結晶粒に起因する鉄損および疲労特性に関しての工業的なメリットを得ることが可能である。
さらに、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板を打ち抜いて、打ち抜き部材(鋼板ブランク)を作製し、この打ち抜き部材を積層一体化したモータコアが挙げられる。この場合は、モータコアの製造過程で熱処理が実施されなければ、素材の鋼板が有していた表層領域の微細な結晶粒に関する特徴は、モータコアを構成する鋼板にそのまま継承されることになる。結果として、モータコアにおいて表層領域の微細な結晶粒に起因する鉄損および疲労特性に関しての工業的なメリットを得ることが可能である。また、この例においては、モータコアの製造過程で必要に応じて熱処理を実施すると、素材の鋼板が有していた表層領域の微細な結晶粒に関する特徴が変化する状況が考えられる。熱処理を含めたモータコア製造工程を経て、最終的にモータコアを構成する鋼板が本実施形態に係る電磁鋼板の特徴の範囲内にとどまるものであれば、モータコアにおいて表層領域の微細な結晶粒に起因する鉄損および疲労特性に関しての工業的なメリットを得ることが可能である。モータコアの製造過程で実施する熱処理の条件次第では、最終的にモータコアを構成する鋼板は本実施形態に係る電磁鋼板の特徴を満たさないものにもなりうることを理解し、歪取り焼鈍等の熱処理条件を設定すべきである。
本実施形態に係るモータコアは、一例として、図1に示すモータコアが挙げられる。
図1は、分割コアの一例を表す模式図である。図1に示すように、モータコア100は、8枚の分割コア用の打ち抜き部材11を円環状に連結し、円環状に連結した打ち抜き部材11を8層に積層して一体化した積層体13として形成されている。分割コア用の打ち抜き部材11は、電磁鋼板に打ち抜き加工が施され、円弧上のヨーク部17と、ヨーク部17の内周面から径方向内側に向かって突出しているティース部15とを備えている。なお、モータコア100は、図1に示すモータコア100を形成する打ち抜き部材11の形状、個数、積層数などに限らず、目的に応じて設計すればよい。
以上、図1に示すモータコアについて説明したが、本実施形態に係るモータコアはこれに限定されるものではない。
次に、モータコアのメリットをその製造方法との関連で説明する。
本実施形態に係るモータコアの製造方法は、特に限定されず、通常工業的に採用されている製造方法によって製造すればよい。
以下、本実施形態に係るモータコアの好ましい製造方法の一例について説明する。
本実施形態に係るモータコアの好ましい製造方法の一例は、本実施形態に係る電磁鋼板に、打ち抜き加工を施して打ち抜き部材を得る打ち抜き工程と、打ち抜き部材を積層する積層工程と、を有する。
(打ち抜き工程)
まず、本実施形態の電磁鋼板を、目的に応じて、ティース部とヨーク部とを有する所定の形状に打ち抜き、積層枚数等に応じて、所定の枚数の打ち抜き部材を作製する。電磁鋼板を打ち抜いて、打ち抜き部材を作成する方法は特に限定されず、従来公知のいずれの方法を採用してもよい。
なお、打ち抜き部材は、所定の形状に打ち抜かれるときに、打ち抜き部材を積層して固定するための凹凸部を形成してもよい。
「本実施形態の電磁鋼板」を素材として使用することで、打ち抜きの際のバリ発生を十分に抑制することが可能となる。
(積層工程)
打ち抜き工程で作成した打ち抜き部材を積層することによりモータコアが得られる。具体的には、ティース部とヨーク部とを有する所定の形状の分割コア用の打ち抜き部材を、所定枚数組み合わせて円環状に連結させ、これを積層する。
なお、積層した打ち抜き部材を固定する方法は、特に限定されず、従来公知のいずれの方法を採用してもよい。例えば、打ち抜き部材に、公知の接着剤を塗布して接着剤層を形成し、接着剤層を介して固定してもよい。また、かしめ加工を適用して、各々の打ち抜き部材に形成された凹凸部を機械的に相互に嵌め合わして固定してもよい。
また、本実施形態に係るモータコアは、積層する前の打ち抜き部材に、または打ち抜き部材を積層した後に、特定条件(加熱速度:30℃/hr~500℃/hr、最高到達温度:750℃~850℃、750℃以上での保持時間:0.5時間~100時間)で熱処理(歪取り焼鈍)を施してもよい。この熱処理を行うことで、モータコアは、不要な歪が解放され、低鉄損化が図られる。
注意を要するのは、この熱処理は表層領域の微細な結晶粒の形態を変化させるのに十分なものである点である。この熱処理後にも、コアを構成する鋼板が、打ち抜き前の素材が有していた本実施形態に係る鋼板の特徴である「表層領域の微細な結晶粒」に関する特徴を維持していれば、素材とした本実施形態に係る鋼板の磁気特性上の効果である低鉄損と耐疲労特性の両立というメリットを享受することが可能である。一方、上記熱処理が高温長時間となると、表層領域の微細な結晶粒は粗大化してしまい、「表層領域の微細な結晶粒」は失われ、疲労特性に関するメリットは失われるが、十分な粗大化が進行すれば、鉄損への悪影響は問題とする必要がなくなる。
以下、実施例を例示して、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
表1に示す化学組成のスラブを、表2に示す加熱温度で加熱し、厚みが40mmになるように粗熱延する。その後、粗熱延板を、表2に示す最終圧延温度、圧下率95.5%(板厚40mm→板厚1.8mm)で仕上げ熱延する。
そして、熱延板を、表2に示す巻取り温度で巻き取る。
次に、巻き取られた圧延板を、表2に示す圧下率で冷延する。
次に、冷延板を、表2に示す条件で焼鈍する。表2に記載されていない条件は、本発明に対しての影響はほとんどないため記載しないが、実用的に実行している条件を適宜適用すればよい。なお、本実施例においては、スラブ加熱から仕上げ焼鈍終了まで、意図的な窒化処理は実施していない。
以上の工程を経て、試験例No.1~27の無方向性電磁鋼板を得た。
<各種測定>
得られた各無方向性電磁鋼板の結晶組織および析出物について、既述の方法に従ってSA、SB、SC、SD、RA、RC、NA、ND、MA、MDを求める。結果を表3に示す。
また、得られた各無方向性電磁鋼板の鉄損(W15/50)の測定、疲労試験を実施する。
鉄損(W15/50)は、圧延方向に沿う方向(0°)、及び圧延方向に沿う方向と垂直な方向(90°)の平均の鉄損であり、最大磁束密度1.5T、周波数50Hzの条件下で測定する。
疲労特性は、アクリル樹脂エマルジョン、クロム酸マグネシウムおよびホウ酸の混合物からなる一般的な半有機の絶縁皮膜(膜厚0.5μm)を塗布した絶縁被膜付き電磁鋼板により、平行部の幅5mm、長さ150mmのサンプルを圧延方向と平行に切り出し、平行部を800番のエメリー紙で研磨した後、応力比0.1、周波数20Hzの部分片振り(引張り-引張り)を行い、繰り返し数10回において破壊が生じない応力を疲労限として評価した。
Figure 0007159593000001
Figure 0007159593000002
Figure 0007159593000003
本実施形態に係る電磁鋼板に該当する実施例は、比較例に比べ、鉄損の悪化が抑制されていることがわかる。また、疲労特性も良好である。
また、実施例は、Nd、Pr、La、Ce、CaおよびMgの少なくとも1種を含有しても、鉄損の悪化が抑制されていることがわかる。また、疲労特性も良好である。
11 打ち抜き部材、13 積層体、15 ティース部、17 ヨーク部、100 モータコア

Claims (9)

  1. 質量%で、
    C :0.0005~0.0050%、
    Si:1.0~5.0%、
    Al:0~2.00%、
    Mn:0.10~2.00%、
    N :0.0010~0.0050%、
    P :0.0200%以下、
    S :0.0050%以下、
    Nd、Pr、La、Ce、CaおよびMgの少なくとも1種の合計:0~0.1000%、並びに
    残部:Feおよび不純物からなる化学組成を有し、
    鋼板の表面において、円相当直径30μm以下の結晶粒が占める面積率をSA、円相当直径30μm超かつ100μm未満の結晶粒が占める面積率をSB、円相当直径100μm以上の結晶粒が占める面積率をSCとしたとき、
    SA:15~65%、SC:35~85%、SA/SB>1.0、およびSC/SB≧1.17
    であり、さらに
    鋼板の表面から深さ20μmの断面において、円相当直径100μm以上の結晶粒が占める面積率SDが90%以上
    である無方向性電磁鋼板。
  2. 鋼板の表面において、円相当直径30μm以下の結晶粒が占める面積率SAと円相当直径100μm以上の結晶粒が占める面積率SCの合計面積率SSが80%超である請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
  3. 鋼板の表面において、円相当直径30μm以下の結晶粒の平均粒径をRA、円相当直径100μm以上の結晶粒の平均粒径をRCとしたとき、
    RC/RA≧6.0
    である請求項1又は請求項2に記載の無方向性電磁鋼板。
  4. 鋼板の表面から深さ20μmまでの表層領域における、AlNの個数密度をNA、鋼板の表面からの深さが20μmを超え40μm以内の内層領域における、AlNの個数密度をNDとしたとき、
    NA/ND≧2.0
    である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板。
  5. 鋼板の表面から深さ20μmまでの表層領域における、硫化物の個数密度をMA、鋼板の表面からの深さが20μmを超え40μm以内の内層領域における、硫化物の個数密度をMDとしたとき、
    MA/MD≧2.0
    である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板。
  6. 前記Nd、Pr、La、Ce、CaおよびMgの少なくとも1種の合計量が、質量比で、0.0010~0.1000%である
    請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板。
  7. スラブを1150~1280℃に加熱した後、仕上げ圧延時の最終圧延温度950~1280℃で熱延する熱延工程と、
    熱延後の熱延板を、巻き取り温度700~1000℃で巻き取る巻き取り工程と、
    巻き取り後の熱延板を、熱延板焼鈍を実施することなく、圧下率70~90%で冷延する冷延工程と、
    加熱過程における600℃から700℃の平均加熱速度をHR1、700℃から800℃の平均加熱速度をHR2としたとき、HR1:30~200℃/秒、HR1/HR2≧2.0であり、かつ均熱温度950~1050℃の条件で、冷延後の冷延板を仕上げ焼鈍する仕上げ焼鈍工程と、
    を有する請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
  8. 請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板を積層したモータコア。
  9. 請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板に打ち抜き加工を施して打ち抜き部材を得る打ち抜き工程と、
    前記打ち抜き部材を積層する積層工程と、
    を有するモータコアの製造方法。
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