JP2015200020A - 高Si高Mn含有熱延鋼板の酸洗方法 - Google Patents

高Si高Mn含有熱延鋼板の酸洗方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高Si高Mn含有鋼の熱間圧延後、高温で巻取ったとき、熱延鋼板のスケール層直下に生成する粒界酸化層を短時間で除去できる酸洗方法を提供する。【解決手段】550℃以上の温度で巻取った熱延鋼板を3以上の酸洗槽を有する連続酸洗装置で酸洗を行なうと共に、前記酸洗槽の酸洗液は酸と必要に応じてインヒビターを含み、前記酸洗槽のうち、前記熱延鋼板の進行方向順に最初の酸洗槽と最後の酸洗槽を除いた少なくとも1つの酸洗槽の酸洗液は下記式(1)を満足するように制御し、且つ前記最後の酸洗槽の酸洗液はインヒビターを含有する。(Ik/Hk)/(In/Hn)≰1.0・・・(1)(式中、Ikは当該酸洗槽の酸洗液のインヒビター濃度(ppm)、Hkは当該酸洗槽の酸洗液の酸濃度(質量%)、但し、Hkは7質量%以上、Inは前記最後の酸洗槽の酸洗液のインヒビター濃度(ppm)、Hnは前記最後の酸洗槽の酸洗液の酸濃度(質量%))【選択図】図3

Description

本発明は、高Si高Mn含有熱延鋼板の酸洗方法に関し、詳細には、Siを1.0%以上、およびMnを1.5%以上含有する高Si高Mn含有鋼を熱間圧延し、550℃以上の温度で巻取ったときに生成する粒界酸化層を除去する酸洗方法に関するものである。
近年、自動車の軽量化や衝突安全対策に対する要請が強まるにつれ、鋼板の更なる高強度化が進んでおり、例えば引張強度980MPa級またはそれ以上の高強度冷延鋼板が実用化されつつある。
例えば980MPa以上の引張強度を達成するためには、鋼中に固溶強化元素を添加する必要がある。鋼中添加元素としては、安価で、且つ、自動車用高強度冷延鋼板に一般的に要求される伸び、伸びフランジ性、曲げ性などの加工性を阻害しない元素であるSiおよびMnが広く使用されており、これらの元素を多く含む鋼板が使用されている。
しかしながら、SiとMnは易酸化性元素であり、鉄より酸素親和力が高い。そのため、多量のSiとMnを含有する鋼を、熱間圧延→約550℃未満の低い温度で巻取り→酸洗→冷延→焼鈍すると、焼鈍後の冷延鋼板表面にSiやMnが選択的に酸化された表面濃化層(以下では、「Si・Mn系選択酸化層」と呼ぶ。)が形成され、上記Si・Mn系選択酸化層の上にはリン酸亜鉛結晶が形成されないため、化成処理性が劣化することが知られている。
上記Si・Mn系選択酸化層の形成メカニズムについて詳述すると、冷間圧延後の焼鈍は、冷延鋼板表面に鉄系酸化物のスケールが生成して表面が変色することを防止するため、通常、水素−窒素系の還元雰囲気下、例えば、5体積%水素−窒素、露点−20℃〜−40℃の雰囲気下で所謂、光輝焼鈍される。しかし、水素−窒素系雰囲気中には不可避的
に水分が含まれ、上記雰囲気は、鉄に対しては還元雰囲気であるがSiやMnに対しては酸化雰囲気となるため、焼鈍後の冷延鋼板には、上記のSi・Mn系選択酸化層が形成される。なお、Si・Mn系選択酸化層の厚みはおおむね数10nmと極めて薄いため、高Si高Mn含有冷延鋼板で化成処理性不良対策として一般的に実施される焼鈍後の酸洗処理で除去することが可能である。
一方、最近では、高強度化と高加工性の更なる要求に応えるため、鋼中のSi量およびMn量を更に増加した鋼板が開発されているが、熱延鋼板の強度が高くなり過ぎて冷間圧延性が低下するため、熱間圧延後の巻取り温度を、従来のように550℃未満の低温でなく、550℃以上に高めて熱延鋼板の強度を低下させる方策を採用せざるを得ない。しかしながら、巻取り温度を上記のように高温にすると、熱延鋼板のスケール層の直下、すなわち熱延鋼板表面に約5μm以上の粒界酸化層が形成されてしまう。この粒界酸化層を除去することなく、熱延鋼板表面に残存させたまま、引き続き、冷間圧延、焼鈍を行なうと、焼鈍後の冷延鋼板表面にも粒界酸化層が残存することで、化成処理性が一層低下する。また溶接する際には粒界酸化層に起因して溶接性が低下する。更に、プレス加工の際、粒界酸化層が剥離して金型に付着し、プレス製品の表面欠陥を招くほか、粒界酸化層が切り欠きとなって疲労特性が劣化するなどの弊害もある。焼鈍後の冷延鋼板表面に残存する粒界酸化層の厚みはミクロンオーダーであり、焼鈍後の酸洗処理で除去することは非常に困難であるため、熱延後の酸洗処理にて粒界酸化層を完全に除去する必要があり、粒界酸化層の厚みが厚いほど、熱延後の酸洗処理に長時間を要する。
上記粒界酸化層を熱延後の酸洗処理にて除去するため、例えば、特許文献1にはSiを1.0%以上、Mnを1.5%以上含有する高Si高Mn含有鋼を製造するに当たり、熱間圧延後に550℃以上の高温で巻取った後、粒界酸化層の厚さ(μm)に応じて適切な酸洗時間を設定することを特徴とする、熱間圧延後の酸洗処理方法が提案されている。しかしながら、粒界酸化層を除去するための適切な酸洗時間を設定することは可能となるが、長時間の酸洗時間を必要とするため、生産性の低下やコストアップといった課題が残る。
特開2013−237924号公報
各種製品の生産性を向上させるためには、巻取り後に生成する熱延鋼板のスケール、および粒界酸化層を短時間で除去することが求められている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高Si高Mn含有鋼を熱間圧延後、550℃以上の高温で巻取ったとき、熱延鋼板のスケール層直下に生成する粒界酸化層を、短時間で除去できる酸洗方法を提供することにある。
上記課題を解決し得た本発明の高Si高Mn含有熱延鋼板の洗浄方法は、質量%で、Si:1.0%以上、Mn:1.5%以上含有する鋼を熱間圧延し、550℃以上の温度で巻取った熱延鋼板の酸洗方法であって、前記熱延鋼板を、3以上の酸洗槽を有する連続酸洗装置で酸洗を行なうと共に、前記酸洗槽の酸洗液は酸と必要に応じてインヒビターを含み、前記酸洗槽のうち、前記熱延鋼板の進行方向順に最初の酸洗槽と最後の酸洗槽を除いた少なくとも1つの酸洗槽の酸洗液は下記式(1)を満足するように制御し、且つ前記最後の酸洗槽の酸洗液はインヒビターを含有することに要旨を有する。
(Ik/Hk)/(In/Hn)≦1.0 ・・・(1)
(式中、Ikは当該酸洗槽の酸洗液のインヒビター濃度(ppm)、Hkは当該酸洗槽の酸洗液の酸濃度(質量%)、但し、Hkは7質量%以上、Inは前記最後の酸洗槽の酸洗液のインヒビター濃度(ppm)、Hnは前記最後の酸洗槽の酸洗液の酸濃度(質量%
))
本発明によればスケール直下に粒界酸化層を有する高Si高Mn含有熱延鋼板を3以上の酸洗槽を有する連続酸洗装置で酸洗を行なうと共に、酸洗液の酸濃度とインヒビター濃度を適切に制御することによって、短時間で粒界酸化層を除去できる。そのため、生産性が向上し、製造コストを大幅に低減できる。
粒界酸化層を有する熱延鋼板の表面付近の断面を倍率2000倍の走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)で観察したSEM断面写真である。 熱延鋼板を、4槽からなる連続酸洗装置の第4酸洗槽1Dにのみ酸洗液を供給しながら酸洗する場合の概略説明図である。 4槽からなる連続酸洗装置を模擬した実施例における酸洗処理の概略説明図である。 酸洗後も粒界酸化層が残存している酸洗後の熱延鋼板の倍率2000倍のSEM断面写真の一例である。 酸洗処理によって、粒界酸化層が完全に除去されている酸洗後の熱延鋼板の倍率2000倍のSEM断面写真の一例である。
まず、本発明に到達した経緯について説明する。
本発明者らは、Siを1.0%以上、Mnを1.5%以上含有する鋼(以下、「高Si高Mn含有鋼」ということがある)を熱間圧延後、550℃以上の高温巻取りを行なったときに形成される粒界酸化層を短時間で効率的に除去するため、検討を行なった。
従来、熱間圧延後にスケールを除去するために行われる酸洗処理では、酸洗液中の酸を効率よく利用するために図2に示すように熱延鋼板3を複数の酸洗槽を有する連続酸洗装置の前段側、すなわち第1酸洗槽1Aから第2酸洗槽1B、第3酸洗槽1C、第4酸洗槽1Dへと順次通板させる。また酸洗液は酸洗液供給槽5から2A〜2Cに示すように連続酸洗装置の後段側、すなわち第4酸洗槽1Dから供給し、第3酸洗槽1C、第2酸洗槽1B、第1酸洗槽1Aへと順にオーバーフローさせていく。第1酸洗槽1Aからオーバーフローする酸洗液は酸洗液回収槽4で回収されて濃度等の再調整が行われた後、再利用されている。通常、酸洗液としては酸と、添加剤として鋼板の腐食抑制作用を有するインヒビターが共に供給される。第4酸洗槽1Dのインヒビター濃度は酸洗液の酸濃度やスケールの厚みなどに応じて過酸洗を抑制できるように調整されており、酸洗液は第4酸洗槽からオーバーフローしていくため、第1〜第3の各酸洗槽の酸洗液にはインヒビターが含まれている。酸洗液中の酸はスケールの溶解反応で消費されるため、酸洗液の酸濃度はスケール層が厚くて溶解反応が激しく起こる前段側の酸洗槽程低くなる。スケールの溶解スピードを高めるには、酸洗槽前段側の酸洗液の酸濃度を高める必要があるが、上記の通り、酸洗液は第4酸洗槽1Dから供給されるため、第4酸洗槽1Dの酸洗液の酸濃度を高くすると同時に、過酸洗を抑制するために、インヒビター濃度も高める必要がある。インヒビターはスケールの溶解反応を阻害しないため、スケールの除去を目的とする従来の酸洗処理では、インヒビター濃度を高めても問題とならず、特に過酸洗を防止する観点からは酸洗液への積極的な添加が行われていた。
ところが、上記したように、高Si高Mn含有鋼を熱間圧延後、550℃以上の高温巻取りを行なうと、図1に示すように素地鋼板側から順に、粒界酸化層8、およびスケール層9が形成される。このような熱延鋼板に対し、上記従来の酸洗処理を実施した場合、粒界酸化層の除去に長時間要し、生産性が悪かった。
本発明者らが粒界酸化層の除去に長時間要する原因について調べた結果、以下のことがわかった。粒界酸化層が形成された熱延鋼板をインヒビターが添加された酸洗液を用いて酸洗処理したときの経時変化を観察したところ、スケール溶解後の粒界酸化層表面にインヒビターが吸着して粒界酸化層の溶解反応が抑制されるため、従来のように酸洗槽の酸洗液の酸濃度とインヒビター濃度を高めても、粒界酸化層の溶解速度はスケールの溶解速度ほど向上せず、その結果、粒界酸化層の除去に長時間を要することが判明した。
また、粒界酸化層の溶解にはスケールの溶解よりも多くの酸が消費されるため、従来と同じ酸洗液の酸濃度で酸洗すると、酸洗液の酸濃度が低下して粒界酸化層の溶解速度はさらに低下してしまう。
そこで、粒界酸化層を効率的に溶解させて短時間で酸洗処理をするための酸洗条件について、更に検討を重ねた。その結果、酸洗槽を3以上有する連続酸洗装置で酸洗を行なうと共に、酸洗液の酸濃度とインヒビター濃度を適切に制御することによって、短時間で効率的に粒界酸化層を除去できることを見出し、本発明を完成した。
本明細書において酸洗とは、特に断りのない限り、熱間圧延後の熱延鋼板の酸洗を意味する。上述したように、高Si高Mn含有冷延鋼板の化成処理性不良対策として、冷間圧延→焼鈍の後に酸洗する場合が多いが、この場合の酸洗は、例えば、「後酸洗」などと呼び、上記の熱間圧延後の酸洗とは区別する。
本明細書において酸洗液とは、各酸洗槽に供給・充填された液を意味し、特に断りのない限り酸洗液には酸およびインヒビターが含まれる。なお、酸およびインヒビターについて記述する場合は、「酸」や「インヒビター」と記述し、上記の酸洗液とは区別する。
本発明では、熱間圧延後、550℃以上の高温巻取りによって形成される粒界酸化層が、おおよそ5μm以上と厚く形成された高Si高Mn含有熱延鋼板を対象とする。従来の酸洗処理では粒界酸化層が厚くなるほど、酸洗効率が悪く、粒界酸化層の除去に時間を要していたが、本発明によれば粒界酸化層が厚く形成されていても、酸洗液の酸濃度とインヒビター濃度を適切に調整することで粒界酸化層を短時間で除去できる。
本発明において、「粒界酸化層」とは、マトリクスが鋼の層であり、素地鋼板と、スケール層との界面付近、具体的にはスケール層の直下に形成されるものであり、図1に示すように、鋼マトリクスに比べて濃く観察される内部酸化層も含む。詳細には、粒界酸化層は、拡散経路となる結晶粒界を通して拡散した酸素が、結晶粒界付近のSiやMnと選択的に結合し、酸化されたSiO2、MnSiO3、Mn2SiO4などのSi・Mn系酸化物と;特にスケール層と鋼板との界面付近において酸素が結晶粒内にも拡散し、結晶粒内に上記Si・Mn系酸化物が粒状に析出した内部酸化層と、から構成される。なお、粒界酸化層は、熱延鋼板を550℃以上の高温で巻取った後、冷却する過程で生成するものであり、従来のように、熱間圧延後550度未満で巻取る低温巻取りによっては形成されず、巻取り温度が粒界酸化層の厚さを決定する要因となる。
本明細書において「スケール層」とは、マトリクスが酸化物の層であり、スケール層には、ヘマタイト(Fe23)、マグネタイト(Fe34)、ウスタイト(FeO)などの鉄系酸化物;およびファイアライト(Fe2SiO4)などのSi系酸化物のほか、ウスタイト(FeO)が約570℃以下の温度で共析変態反応[4FeO→Fe34+Fe]によって生成したFeも含まれる。スケール層は、熱間圧延の際に形成されるが、その後の酸洗によって容易に除去されるものである。
次に本発明の式(1)[(Ik/Hk)/(In/Hn)≦1.0]の酸洗条件について詳しく説明する。式(1)は数多くの基礎実験によって決定されたものであるが、まず式(1)に到達した経緯について説明する。
従来のスケールの酸洗処理においては、インヒビターはスケールの溶解反応を阻害しないため、酸洗液のインヒビター濃度を、酸の種類や濃度およびインヒビターの種類に応じた過酸洗を抑制できる適切な濃度よりも高く設定する場合が多い。また、後段側の酸洗槽において消費されなかったインヒビターは、酸と共に前段側の酸洗槽にオーバーフローして順次流れ込んでいくため、前段側の各酸洗槽の酸洗液にはインヒビターが含まれているが、インヒビター濃度が高いと、上記のように粒界酸化層の溶解に時間がかかる。したがって、粒界酸化層が形成された熱延鋼板の酸洗においては、「酸洗液の酸濃度を上昇させると同時にインヒビター濃度も上昇させる」という従来の手法では酸洗時間の短縮効果は不十分であり、酸洗時間を短縮させるためには、各酸洗槽の酸洗液の酸濃度とインヒビター濃度を適切に調整する必要がある。
本発明では上記知見に基づいて式(1)[(Ik/Hk)/(In/Hn)≦1.0]を規定した。式中、「In/Hn」は、最終の酸洗槽(n)の酸洗液におけるインヒビター濃度(In:ppm)と酸濃度(Hn:質量%)の比率を表す。また「Ik/Hk」は当該酸洗槽(k)の酸洗液におけるインヒビター濃度(Ik:ppm)と酸濃度(Hk:質量%)の比率を表す。
上記式(1)は、スケールと粒界酸化層除去後の鋼板の過酸洗を抑制できる組成である「最終酸洗槽(n)の酸洗液の酸濃度とインヒビター濃度の比率(In/Hn)」を基準とし、この最終酸洗槽の酸洗液の酸濃度とインヒビター濃度の比率との関係で、最初の酸洗槽以外の他の酸洗槽(k)において粒界酸化層の溶解速度が速くなるように酸洗液の酸濃度(Hk)とインヒビター濃度(Ik)の比率(Ik/Hk)を制御すれば、過酸洗を抑制しつつ、短時間でスケール、および粒界酸化層を溶解できるように導き出したものである。
式(1)において左辺[(Ik/Hk)/(In/Hn)]の値が1よりも大きくなる場合、すなわち、最初の酸洗槽と最後の酸洗槽以外の任意の酸洗槽(k)の酸洗液のインヒビター濃度(Ik)が上昇、もしくは酸濃度(Hk)が低下することで、酸洗槽(k)の酸洗液の酸濃度とインヒビター濃度の比率(Ik/Hk)が、最終酸洗槽(n)の酸洗液の酸濃度とインヒビター濃度の比率(In/Hn)よりも大きくなると酸洗時間が長くなる傾向を示す。したがって式(1)の左辺の値が1.0以下となるように酸洗槽(k)の[Ik/Hk]を最終酸洗槽の[In/Hn]との関係で適切に調整することが望ましい。式(1)左辺の値は1.0以下、好ましくは0.8以下、更に好ましくは0.6以下、最も好ましくは0.4以下である。下限については特に限定されず、当該酸洗槽(k)はインヒビターを含まなくてもよく、左辺の値は0でもよい。
なお、酸洗槽(k)の酸洗液の酸濃度(Hk)が低すぎると、粒界酸化層の溶解に時間を要し、酸洗時間が長くなりすぎて生産性が悪化する。したがって酸洗液の酸濃度(Hk)は7質量%以上とする必要がある。粒界酸化層の溶解を促進する観点からは酸洗液の酸濃度(Hk)は高い程よく、好ましくは8質量%以上、より好ましくは9質量%以上である。酸洗液の酸濃度(Hk)の上限は特に限定されないが、酸濃度(Hk)が高すぎると、酸洗反応が激しくなり、酸性ミストの発生により周辺設備の腐食などの問題を生じることがあるため、好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下である。
最後の酸洗槽の酸洗液の酸濃度(Hn)とインヒビター(In)の比率(In/Hn)は、熱延鋼板の材質や寸法、通板速度、酸の種類、酸洗温度、酸洗槽の数、スケールの厚さなどの酸洗条件に基づいて決定されるため、具体的な比率は特に限定されず、従来のスケール除去に使用されている比率で使用できる。最後の酸洗槽では過酸洗を抑制するためにインヒビターの添加が必須であり、インヒビター濃度(In)は、使用するインヒビターに応じて過酸洗が生じないように適宜調整すればよい。また、酸濃度(Hn)はスケール溶解性能等を考慮して設定されるが、例えば10〜18質量%程度である。
なお、本発明は、3以上の酸洗槽を有する連続酸洗装置での酸洗を対象とする。通常、最初の酸洗槽、すなわち、第1酸洗槽で主にスケールの除去を行い、第2酸洗槽以降で粒界酸化層の除去を行なうため、インヒビター濃度を低くすることが望ましいが、酸洗槽の数が2以下の場合、酸洗液の酸濃度とインヒビター濃度を適切に調整することが難しく、過酸洗が生じたり、粒界酸化層が残存するなどの問題が生じる。したがって酸洗槽の数は3以上とする。一方、酸洗槽の数の上限は特に限定されず、酸洗液の供給能力や酸洗液の効率的な利用可能性などを考慮して適宜決定すればよい。
また本発明の式(1)は、最初の酸洗槽と最後の酸洗槽を除いた少なくとも1つの酸洗槽の酸洗液の酸濃度とインヒビター濃度の制御に適用する。最初の酸洗槽を除外した理由は、3以上の酸洗槽を有する連続酸洗装置で熱延鋼板を酸洗処理する場合、最初の酸洗槽の酸洗液は主にスケールの溶解に消費され、粒界酸化層を溶解することが殆どないためである。また最後の酸洗槽を除外した理由は、最後の酸洗槽で処理する熱延鋼板には粒界酸化層が殆ど残存していないためである。例えば最後の酸洗槽の酸洗液の酸濃度とインヒビター濃度に関して、粒界酸化層の溶解速度を向上させる手段、すなわち、上記酸濃度を高くし、インヒビター濃度を低くする方法に基づいて調整すると、熱延鋼板が過酸洗されることがある。
4槽以上のn槽の酸洗槽を有する連続酸洗装置を採用する場合、最初の酸洗槽と最後の酸洗槽を除いて式(1)を満足する酸洗槽の数が多い程、より短時間で酸洗処理を行なうことができるため、最初の酸洗槽と最後の酸洗槽を除く全酸洗槽が式(1)を満足していてもよい。したがって、最も好ましいのは、最初の酸洗槽と最後の酸洗槽を除いた[n−2]槽の酸洗槽全てが式(1)を満足することであるが、少なくとも1槽が上記式(1)を満足すればよい。例えば酸洗槽が4槽の場合、少なくとも第2酸洗槽または第3酸洗槽のいずれか一方が式(1)を満足していればよく、最も好ましくは第2酸洗槽、および第3酸洗槽の両方が式(1)を満足することである。
酸洗液の酸濃度およびインヒビター濃度の調整方法は特に限定されず、所定の酸洗槽の酸洗液の酸濃度およびインヒビター濃度を適宜調整することで式(1)を満足させればよい。たとえば、特定の酸洗槽に酸のみ(インヒビターを含まない酸洗液)を投入したり、さらに最後の酸洗槽と特定の酸洗槽への供給量を調整することで、所定の酸洗槽の酸洗液の酸濃度を高めると同時にインヒビター濃度を低下させたり、さらに特定の酸洗槽間での酸洗液の流れ込みを遮断することでインヒビター濃度を低下させる等により、所定の酸洗槽の酸洗液の酸濃度とインヒビター濃度の比率が上記式(1)を満足するように酸濃度やインヒビター濃度を調整すればよい。
酸洗処理のその他の条件は特に限定されず、従来の酸洗処理で採用されている各種条件に従って設定すればよい。例えば通板速度は、必要酸洗時間と酸洗槽の数に基づいて、通板速度を設定すればよい。また酸洗時の液温も例えば60〜95℃程度でよい。酸洗処理時の雰囲気も大気雰囲気など所定の雰囲気とすればよい。
本発明に用いられる酸は、スケール層や粒界酸化層の除去に通常用いられるものであれば特に限定されず、例えば、塩酸、硫酸、硝酸などの鉱酸を用いることができる。経済性および酸洗速度などを考慮すると、塩酸の使用が好ましい。
また本発明において、インヒビターとは、スケール層および粒界酸化層が溶解した後の素地鋼板の溶解を抑制する作用を有する酸洗抑制剤であり、例えば、アミンなどの各種公知のインヒビターを使用することができる。
酸洗液には、更に公知の添加成分を添加することができる。このような添加成分として、例えば、スケール層溶解速度向上のための酸洗促進剤などを添加してもよい。
上記酸洗方法によれば、スケール直下の粒界酸化層を短時間で溶解できる。以上、本発明の酸洗方法について詳述した。
以下、本発明に係る酸洗方法の好ましい実施態様について、具体的に、工程順に説明する。但し、本発明の方法は上記の酸洗処理に特徴があり、それ以外の工程は、通常用いられるものであれば特に限定する趣旨ではない。
まず上記Siを1.0%以上、Mnを1.5%以上含有する鋼を用意する。
Siは鋼の強化元素であり、安価で加工性への悪影響が少ないほか、加工性向上に有用な残留オーステナイトが分解して炭化物が生成するのを抑制する元素である。このような作用を有効に発揮させるため、Si量は1.0%以上、好ましくは、1.6%以上である。Si量の上限は、上記観点からは特に限定されないが、Si量が多過ぎると固溶強化作用が顕著になって圧延負荷が増大するほか、表面欠陥が生じ易くなるため、Si量は好ましくは2.5%以下である。
Mnも、上記Siと同様、安価な鋼の強化元素であり、鋼板の強度向上作用のほか、オーステナイトを安定化し、残留オーステナイトの生成による加工性改善に寄与する元素である。このような作用を有効に発揮させるため、Mn量は1.5%以上、好ましくは2.1%以上である。しかしながら、Mn量が多過ぎると鋼板の延性が低下し、加工性に悪影響を及ぼすほか、鋼板の溶接性も低下する。このような観点からは、Mn量の上限は好ましくは3.0%以下、より好ましくは2.8%以下である。
さらにSiとMnを含有する他、基本成分として、好ましくはC:0.08〜0.25%、およびAl:0.5%以下(0%を含まない)を含有する。
Cは、鋼板の強度向上元素であり、且つ、残留オーステナイトを確保して加工性を改善するのに必要な元素である。C量は好ましくは0.08%以上、より好ましくは0.11%以上である。C量の上限は、鋼板の強度確保を考慮すると多い方がよいが、C量が過剰になると耐食性、スポット溶接性、加工性が劣化することを考慮すると、C量は好ましくは0.25%以下、より好ましくは0.20%以下である。
Alは、脱酸作用を有する元素である。このような作用を有効に発揮させるためには、Al量は好ましくは0.005%以上、より好ましくは0.02%以上である。しかしながら、Alを過剰に添加すると、アルミナ等の介在物が増加し、鋼板の加工性が劣化する恐れがあるため、Al量の上限は好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.4%以下である。
上記鋼は、基本成分として上記元素を含み、残部は、鉄および不可避不純物である。不可避不純物のうち、Pは、約0.2%以下(0%を含まない)、Sは約0.02%以下(0%を含まない)、Nは約0.01%以下(0%を含まない)に抑制することが好ましい。
これらのうち、Pは、孔食が発生する際、孔食内部に濃縮してインヒビターとして作用し、耐孔あき腐食性の向上に寄与する元素である。また、鋼板中にCuを含む場合、PはCuと共存することによって、錆を非晶質化して緻密な保護膜を形成する作用も有する。これらの作用を有効に発揮させるには、P量の下限は好ましくは0.001%以上、より好ましくは0.003%以上である。しかし、Pは、過剰に添加すると鋼板の溶接性を劣化させるほか、粒界に偏析して粒界破壊を助長し、鋼板の加工性を劣化させる。そのため、P量の上限は好ましくは0.2%以下、より好ましくは0.1%以下である。
Sは、過剰に添加すると腐食環境下で水素吸収を助長し、鋼板の耐遅れ破壊性を劣化させる。そのため、S量の上限は好ましくは0.02%以下、より好ましくは0.01%以下である。なお、Sは、通常、不可避的に0.0005%程度含有している。
Nは、過剰に含有すると窒化物を形成して加工性を劣化させる元素である。特に、鋼板中に焼入れ性向上元素としてB(ホウ素)を含む場合、Nは、Bと結合してBN析出物を形成し、Bの焼入れ性向上作用を阻害する元素である。そのため、N量は好ましくは0.01%以下、より好ましくは0.005%以下である。
本発明では、更に、周知の強度向上元素を選択成分として添加することもできる。強度向上元素としては、Cu、Ni、Cr、Ti、Nb、V、B等が挙げられ、本発明では、これらの元素を単独で、または2種以上含有することができる。具体的には、Cu:0.2%以下(0%を含まない)、Ni:1.0%以下(0%を含まない)、Cr:1.0%以下(0%を含まない)、Ti:1.0%以下(0%を含まない)、Nb:0.1%以下(0%を含まない)、V:0.1%以下(0%を含まない)、およびB:0.002%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含有することが好ましい。
上記元素のうち、Cu、Ni、CrおよびTiは、鋼板の強度を向上させる他、鋼板の耐食性も向上させる元素であり、鋼板が腐食して水素が発生するのを抑制する作用を有する。また、これらの元素は、大気中で生成する錆のなかでも熱力学的に安定で、保護性があるといわれている酸化鉄(α−FeOOH)の生成を促進させる作用も有している。このような錆の生成を促進することによって、発生した水素が鋼板へ侵入するのを抑制でき、過酷な腐食環境下、例えば、塩化物の存在下で使用しても水素による助長割れを充分に抑制できる。これらの作用を有効に発揮させるには、Cu量は好ましくは0.003%以上、より好ましくは0.05%以上である。Ni量は好ましくは0.003%以上、より好ましくは0.05%以上である。Cr量は好ましくは0.003%以上、より好ましくは0.01%以上である。Ti量は好ましくは0.003%以上、より好ましくは0.005%以上である。しかし、上記元素を過剰に含有すると、加工性が劣化する。従って、Cu量は好ましくは0.2%以下である。Ni量は好ましくは1.0%以下、より好ましくは0.5%以下である。Cr量は好ましくは1.0%以下、より好ましくは0.5%以下である。Ti量は好ましくは1.0%以下、より好ましくは0.1%以下である。
NbおよびVは、いずれも鋼板の強度向上に有用である他、焼入れ後のオーステナイト粒を微細化して靭性の改善に作用する元素である。このような作用を有効に発揮させるためには、Nb量は好ましくは0.003%以上、より好ましくは0.005%以上である。V量は好ましくは0.003%以上、より好ましくは0.005%以上である。しかし、上記元素を過剰に含有すると、炭化物や窒化物、或いは炭窒化物を多量に生成して加工性や耐遅れ破壊性が劣化する恐れがある。従ってNb量は好ましくは0.1%以下、より好ましくは0.08%以下、さらに好ましくは0.05%以下である。V量は好ましくは0.1%以下、より好ましくは0.08%以下、さらに好ましくは0.05%以下である。
Bは、焼入れ性および溶接性の向上に有用な元素である。これらの作用を有効に発揮させるためには、B量を好ましくは0.0002%以上、より好ましくは0.0003%以上、さらに好ましくは0.0004%以上である。しかし、Bを過剰に含有させても上記効果は飽和し、延性が低下して加工性が悪くなる恐れがある。従って、B量は好ましくは0.002%以下、より好ましくは0.0019%以下、さらに好ましくは0.0018%以下である。
更に本発明には、上記成分のほか、強度および化成処理性を阻害しない範囲で、他の周知の選択成分を更に添加することもできる。
次に、上記鋼を転炉や電気炉等の公知の溶製方法で溶製し、溶鋼を得た後、連続鋳造や鋳造および分塊圧延を行なってスラブ等の鋼片を製造する。生産性を向上させる観点からは、連続鋳造することが好ましい。
(熱間圧延工程)
次に、得られた鋼片を公知の条件で熱間圧延する。鋳造して得られた鋼片は、直接熱間圧延してもよいし、一旦適当な温度に冷却し、加熱炉で再加熱してから熱間圧延してもよい。
例えば鋼片の加熱温度を1000〜1300℃としてから圧延し、仕上温度を800〜950℃、巻取り温度を550〜700℃として熱間圧延を行なう。
加熱温度を1000℃以上とすることによって、容易に熱間圧延でき、しかも鋼中のMnの一部を鋼板表面側に濃化させることができるため、鋼板表面近傍におけるMnの存在状態を最適化でき、最終的に得られる冷延鋼板の化成処理性を改善できる。しかし加熱温度が高すぎると、鋼板表面にスケールが多く生成し、スケールロスが発生することがある。従って加熱温度は1300℃以下とすることが好ましい。
仕上温度は800〜950℃とすることによって、フェライトの生成を低減して強度を高めることができる。すなわち、この温度域は、過冷却オーステナイトが生成する温度域のうち低温側の領域であり、仕上温度をこの温度域に制御することによって、フェライトの生成を抑制でき、冷延鋼板の強度を高めることができる。また、仕上温度が800℃を下回ると、仕上圧延時の変形抵抗が大きくなるため金属組織が不均一となり、冷延鋼板の加工性が劣化する原因となる。一方、仕上温度が950℃を超えると、その後の冷却過程で結晶粒の成長が起こり、均一な金属組織が得られず、冷延鋼板の加工性が劣化する原因となる。
また巻取り温度を550〜700℃とすることによって、熱延後の熱延鋼板の強度を好ましくは1000MPa以下に低減して冷間圧延性を向上できる。本発明のように多量のSiおよびMnを含む場合、熱延後の巻取り温度が550℃以上でスケール層の下に粒界酸化層が形成され始め、巻取り温度の上昇と共に粒界酸化層の厚さが増加する傾向にある。粒界酸化層の厚さは、巻取り温度が550℃以上で、おおむね、5μm以上となり、巻取り温度が610℃以上になると、おおむね、10μm以上にもなると推察される。
次に、上述した方法によって酸洗する。その際、鋼板に含まれるSi量およびMn量に応じて、熱間圧延後における酸洗条件を微調整することが好ましい。Si量とMn量のバランスによって鋼板表面の状態も変化し得、それによって適用される好適な酸洗条件も変化するためである。
その後、必要に応じて冷間圧延、焼鈍、後酸洗などを行なってもよい。例えば高強度冷延鋼板を製造する場合は以下のような工程を経ればよい。
(冷間圧延工程)
酸洗して得られた熱延鋼板は、公知の条件で冷間圧延すればよい。
(焼鈍工程)
冷間圧延後、焼鈍することにより冷延鋼板とする。例えば980MPa以上の高強度を確保するためには、焼鈍工程の均熱後に急冷する必要があることを考慮すると、焼鈍設備は、連続焼鈍設備(CAL:Continuous Annealing Line)で行なうことが推奨される。
連続焼鈍工程での焼鈍条件は、冷延鋼板の強度や付与したい伸び、伸びフランジ性などの機械的特性に応じて適宜適切に決定することができるが、本発明のような高Si高Mn鋼の場合、おおむね、均熱温度:750℃〜930℃、均熱時間:30秒〜600秒、均熱後の冷却速度:5〜200℃/秒の範囲に制御することが好ましい。
また、焼鈍ガスは、通常用いられる還元性雰囲気となるようなガスを用いれば良く、例えば、水素濃度2〜20体積%、露点−20〜−40℃程度の水分を含む窒素雰囲気で行なうことが推奨される。
焼鈍後、後酸洗してもよく、通常用いられる方法を採用することができる。例えば、塩酸または硫酸を使用し、濃度2〜20%、温度60℃〜90℃にて、スプレー処理、または浸漬処理、例えば浸漬時間2〜20秒程度を行なうことが好ましい。
後酸洗後、必要に応じて、化成処理性向上のため、Niフラッシュめっきなどのめっきを施しても良い。好ましいNi付着量は、おおむね、2〜20mg/m2である。
その後、保管中の腐食防止のため、表面に防錆油などを塗布してもよい。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
下記表1に示す成分組成の鋼A〜Cを転炉で溶製し、連続鋳造してスラブを製造した。得られたスラブを表2に示す条件で熱間圧延し、大気中にて冷却を行なった。
得られた熱延鋼板の表面に生成したスケール層の厚さ、および粒界酸化層の厚さを測定した。すなわち、熱延鋼板から切り出したサンプルを樹脂に埋め込み、板厚方向断面を倍率2000倍でSEM観察してスケール層および粒界酸化層の各厚さを、観察視野中の任意の5箇所で測定し、その平均値を算出した。鋼A〜Cのスケール層の厚さ、および粒界酸化層の厚さを表2に記載した。
次に上記熱延鋼板を酸洗処理した。酸洗処理は、4槽からなる連続した酸洗槽を模擬して、酸濃度とインヒビター濃度の異なる酸洗液を4種類作製して実施した。具体的には各酸洗液の酸濃度、およびインヒビター濃度が表3に示す比率となるように調整した。なお、熱延鋼板3は図3に示すように第1酸洗槽1A→第2酸洗槽1B→第3酸洗槽1C→第4酸洗槽1Dの順に一定時間ずつ、すなわち、合計酸洗時間t(秒)に対して0.25×tずつ各酸洗槽に浸漬させた。また各酸洗槽の浴温は酸洗中80℃になるように制御した。
酸として塩酸を用いた。またインヒビターとしてスギムラ化学製「スーパーヒビロン(商標登録)AS−30B」を用いた。
粒界酸化層の除去に要する必要酸洗減量、必要酸洗時間(秒)、酸洗速度は、以下の手順により決定した。
必要酸洗減量として、粒界酸化層を完全に除去したときの酸洗減量、すなわち、酸洗前後での熱延鋼板の単位面積当たりの質量減少量(g/m2)を以下の手順により求めた。まず、塩酸濃度10%、インヒビター濃度300ppmとなるように、塩酸とインヒビターを混合して酸洗液を作製した。次に、50×50mmのサイズにカットした熱延鋼板を、温度を80℃に制御した上記酸洗液に浸漬させ、酸洗時間を5秒刻みで変化させながら、酸洗を実施して、各酸洗時間の酸洗減量を測定した。次に、SEMを用いて、各酸洗時間で酸洗した後の熱延鋼板の表面付近の断面を倍率2000倍で20視野観察した。全視野において粒界酸化層が除去されていることが確認できた最も短い酸洗時間での酸洗減量を、「必要酸洗減量」とした。鋼A〜Cの必要酸洗減量を表3に記載した。なお、参考までに図4に粒界酸化層が残存している酸洗後の熱延鋼板、図5に粒界酸化層が除去された酸洗後の熱延鋼板の表面付近の断面写真を示す。
また表3に示す各酸洗槽を用いて図3に示す方法で合計酸洗時間tを変化させながら酸洗し、酸洗減量が上記で求めた「必要酸洗減量」に到達する最も短い時間を「必要酸洗時間」とした。
「酸洗速度」は、[必要酸洗減量÷必要酸洗時間]から求めた。
各酸洗条件における必要酸洗時間および酸洗速度を表3に記載した。酸洗速度が1.15超の場合を優良(◎)、0.9超〜1.15以下の場合を良(○)、0.9以下を不可(×)と評価した(表中、「評価」)。
No.2〜12、18〜22、25〜29は式(1)を満足するように第2酸洗槽および/または第3酸洗槽の酸洗液の塩酸濃度とインヒビター濃度を調整した例である。これらの例ではいずれも酸洗速度が速かった。
No.2〜6、18〜20、25〜27はインヒビター濃度のみを変化させた例であり、インヒビター濃度が低いほど、酸洗速度が速くなる傾向を示した。
特にNo.6、20、27は第1酸洗槽から第3酸洗槽はインヒビターを含まない酸洗液で酸洗浄した例であるが、酸洗速度が最も速かった。
No.7、21、28はインヒビター濃度と塩酸濃度を同時に変化させた例であり、インヒビター濃度を低減させると共に、塩酸濃度を高めることによって酸洗速度がさらに速くなる傾向を示した。
No.8〜No.12、22、29は、第2酸洗槽の酸洗液を式(1)を満足するように調整した例である。これらの例では、式(1)を満足する酸洗槽が第2酸洗槽のみであるが、いずれも酸洗速度が速かった。
No.8〜No.11はインヒビター濃度を変化させた例であり、No.2〜6と同様、インヒビター濃度が低いほど、酸洗速度が速くなる傾向を示した。
またNo.12はNo.7と同様、インヒビター濃度を低減させると共に、塩酸濃度を高めることによって酸洗速度がさらに速くなる傾向を示した。
No.1、13〜17、23、24、30は、第2酸洗槽、および第3酸洗槽が本発明の式(1)を満足しない範囲で、各酸洗槽の酸洗液の酸濃度およびインヒビター濃度を調整した例であり、いずれも酸洗速度が遅かった。
特に、No.13、14は、第1酸洗槽は本発明の式(1)を満足するが、第2酸洗槽および第3酸洗は満足しないように、酸洗液の酸濃度およびインヒビター濃度を調整した例である。第1酸洗槽ではスケールの溶解速度が速くなったが、第1酸洗槽では粒界酸化層を殆ど溶解できず、第2、第3酸洗槽で粒界酸化層の溶解が行われたため、酸洗速度が遅くなった。
1A 第1酸洗槽
1B 第2酸洗槽
1C 第3酸洗槽
1D 第4酸洗槽
2A〜2C 酸洗液の流れ
3 熱延鋼板
3A 熱延鋼板進行方向
4 酸洗液回収槽
5 酸洗液供給槽
8 粒界酸化層
9 スケール層
t 合計酸洗時間

Claims (1)

  1. 質量%で、Si:1.0%以上、Mn:1.5%以上含有する鋼を熱間圧延し、550℃以上の温度で巻取った熱延鋼板の酸洗方法であって、
    前記熱延鋼板を、3以上の酸洗槽を有する連続酸洗装置で酸洗を行なうと共に、前記酸洗槽の酸洗液は酸と必要に応じてインヒビターを含み、
    前記酸洗槽のうち、前記熱延鋼板の進行方向順に最初の酸洗槽と最後の酸洗槽を除いた少なくとも1つの酸洗槽の酸洗液は下記式(1)を満足するように制御し、且つ
    前記最後の酸洗槽の酸洗液はインヒビターを含有することを特徴とする高Si高Mn含有熱延鋼板の酸洗方法。
    (Ik/Hk)/(In/Hn)≦1.0・・・(1)
    (式中、Ikは当該酸洗槽の酸洗液のインヒビター濃度(ppm)、Hkは当該酸洗槽の酸洗液の酸濃度(質量%)、但し、Hkは7質量%以上、Inは前記最後の酸洗槽の酸洗液のインヒビター濃度(ppm)、Hnは前記最後の酸洗槽の酸洗液の酸濃度(質量%))
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