近年、乾式ベルトを使用した電子制御式無段変速装置を備えたエンジンユニットでは、エンジンユニットの燃費をより一層向上させることが求められている。また、乾式ベルトを使用した電子制御式無段変速装置を備えたエンジンユニットでは、乾式ベルトの熱劣化を防止することも、求められている。
本発明は、乾式ベルトの熱劣化を防止しつつ、エンジンユニットの燃費をより向上できる、乾式ベルトを使用した電子制御式無段変速装置を備えたエンジンユニットを提供することを目的とする。
本願発明者らは、従来の乾式ベルトを利用した電子制御式無段変速装置において、燃費を下げている要因について研究した。その結果、回転力変換機構で発生する機械損失が要因であることがわかった。以下、具体的に説明する。
回転力変換機構には大きなトルクが作用する。ここで、回転力変換機構は、回転部及び相対移動部を有する。回転部は、伝達された回転力により回転する。相対移動部は、回転部と接触し、回転部の回転力により、プライマリ可動シーブの回転軸方向に回転部に対して相対的に移動する。つまり、回転部と相対移動部とが接触する変換接触部には、大きなトルクが作用する。そのため、回転力変換機構の変換接触部は、潤滑剤で潤滑する必要がある。そこで、回転力変換機構が配置される乾式空間内に、回転力変換機構の変換接触部を専用に潤滑する潤滑剤が存在する専用潤滑室を設けていた。そして、専用潤滑室を形成する専用潤滑ケース部を、乾式空間から隔離して設けていた。そして、回転力変換機構の変換接触部を、この専用潤滑室に配置していた。専用潤滑室と乾式空間とを隔離するために、回転力変換機構には、複数のシール部材が設けられる。シール部材とシール部材に接触する部材には、回転または摺動による摩擦が生じる。そして、シール部材とシール部材に接触する部材との間で生じた摩擦が抵抗になる。回転力変換機構では、複数のシール部材を設けたことで、複数のシール部材で生じる摩擦により、機械損失がより多く生じることが分かった。
そこで、本願発明者らは、回転力変換機構に設けられたシール部材の数を減らすことにより、機械損失を低減し、エンジンユニットの燃費が向上できることに気付いた。回転力変換機構の変換接触部を、専用潤滑室に配置するのではなく、クランクケース部に形成された潤滑空間にさらす(expose)ように潤滑空間に配置すれば、専用潤滑室が不要になる。つまり、専用潤滑室と乾式空間とを隔離するためのシール部材が不要になる。そして、回転力変換機構に設けられるシール部材の数は減らすことができる。一方、クランク軸は、クランクウェブを有する。クランクウェブは、温度が高くなる。回転力変換機構の変換接触部をクランクケース部に形成された潤滑空間にさらすように構成すると、回転力変換機構の変換接触部と温度が高いクランクウェブとが同じ潤滑空間内に配置されるため、回転力変換機構にクランクウェブの熱が伝わると考えられる。そして、回転力変換機構に熱が伝わると、回転力変換機構から乾式ベルトに熱が伝わると考えられる。つまり、回転力変換機構の変換接触部がクランクウェブと同じ潤滑空間内に配置されると、乾式ベルトに熱が伝わると考えられる。そのため、乾式ベルトの熱劣化を抑制するためには、回転力変換機構の変換接触部をクランクケース部に形成された潤滑空間にさらすように潤滑空間に配置するようなシール部材を減らした構造を採用することは考えにくい。
しかしながら、本願発明者は、燃費を優先するために、回転力変換機構に、シール部材を減らした構造を試した。回転力変換機構に、シール部材を減らした構造を試したところ、乾式ベルトへの熱劣化の影響が少ないことが分かった。詳細に検証したところ、クランクケース部内において、クランク軸部が有するクランクウェブの近傍の領域に比べて、クランクウェブから離れた領域は、比較的温度が低くなることに気付いた。そこで、回転力変換機構を、クランク軸回転軸線方向に見て、クランクウェブの回転領域と重ならない位置、または、クランク軸回転軸線に垂直ないずれの方向に見ても、クランクウェブの回転領域と重ならない位置に配置すればよいことに気付いた。尚、クランク回転軸線は、クランク軸部の回転軸線である。そうすれば、従来の電子制御式無段変速装置と同程度に、ベルトの熱劣化を抑制することができることがわかった。
本発明のひとつの観点によると、エンジンユニットは、潤滑剤が存在する潤滑空間を形成するクランクケース部と、前記潤滑空間に配置され、クランクウェブを有するクランク軸部とを有するエンジン本体部と、(1)前記クランク軸部の回転に伴い回転可能であり、回転軸線方向に移動可能な少なくとも1つのプライマリ可動シーブを含むプライマリプーリと、セカンダリプーリと、前記プライマリプーリ及び前記セカンダリプーリに巻回され、前記プライマリプーリ及び前記セカンダリプーリとの摺動部が潤滑剤で潤滑されない乾式ベルトと、前記プライマリプーリ、前記セカンダリプーリ及び前記乾式ベルトが配置される乾式空間を形成する乾式ベルトケース部と、を有し、前記プライマリ可動シーブの回転軸線であるプライマリ回転軸線が、前記クランク軸部の回転軸線であるクランク回転軸線と同一線上または平行となるように設けられた無段変速機と、(2)電動モータの回転力を伝達する回転力伝達機構と、(3)(a)前記回転力伝達機構から伝達された回転力により回転する回転部と、(b)前記回転部と接触し、且つ、前記回転部の回転力により、前記プライマリ回転軸線方向に前記回転部に対して相対的に移動可能な相対移動部と、を含み、前記プライマリ可動シーブを前記プライマリ回転軸線方向に移動させる回転力変換機構と、を有する電子制御式無段変速装置と、を備え、前記回転力変換機構は、(i)前記クランク回転軸線方向に見て、前記クランクウェブの回転領域と重ならない位置に配置され、又は、(ii)前記クランク回転軸線に垂直ないずれの方向に見ても、前記クランクウェブの回転領域と重ならない位置に配置されると共に、前記相対移動部と前記回転部とが接触する変換接触部が、前記クランクケース部により形成される前記潤滑空間にさらされるように前記潤滑空間に配置されることを特徴とする。
この構成によると、エンジンユニットは、エンジン本体部と、電子制御式無段変速機とを備える。
エンジン本体部は、クランクケース部とクランク軸部とを有する。クランクケース部は、潤滑剤が存在する潤滑空間を形成する。クランク軸部は、潤滑空間に配置される。クランク軸部は、クランクウェブを有する。なお、本明細書において、潤滑空間とは、潤滑剤が存在する空間であり、空間内の部品が潤滑剤で潤滑される。潤滑剤は、例えば、オイルやグリスである。
電子制御式無段変速機は、(1)無段変速機と、(2)回転力伝達機構と、(3)回転力変換機構とを有する。(1)無段変速機は、プライマリプーリと、セカンダリプーリと、乾式ベルトと、乾式ベルトケース部とを有する。プライマリプーリは、クランク軸部の回転に伴い回転可能である。プライマリプーリは、回転軸線方向に移動可能な少なくとも1つのプライマリ可動シーブを含む。乾式ベルトは、プライマリプーリ及びセカンダリプーリに巻回される。乾式ベルトは、プライマリプーリ及びセカンダリプーリとの摺動部が潤滑剤で潤滑されない。乾式ベルトケース部は、乾式空間を形成する。プライマリプーリ、セカンダリプーリ及び乾式ベルトは、乾式空間に配置される。無段変速機は、プライマリ回転軸線がクランク回転軸線と同一線上または平行となるように設けられる。プライマリ回転軸線は、プライマリ可動シーブの回転軸線である。クランク回転軸線は、クランク軸部の回転軸線である。(2)回転力伝達機構は、電動モータの回転力を伝達する。(3)回転力変換機構は、(a)回転部と、(b)相対移動部とを含む。(a)回転部は、回転力伝達機構から伝達された回転力により回転する。(b)相対移動部は、回転部と接触する。また、相対移動部は、回転部の回転力により、プライマリ回転軸線方向に回転部に対して相対的に移動可能である。つまり、相対移動部は、相対移動部自身がプライマリ回転軸線方向に移動可能に構成されてなくてよい。回転力変換機構は、プライマリ可動シーブをプライマリ回転軸線方向に移動させる。
回転力変換機構は、(i)クランク回転軸線方向に見て、クランクウェブの回転領域と重ならない位置に配置される。または、回転力変換機構は、(ii)クランク回転軸線に垂直ないずれの方向に見ても、クランクウェブの回転領域と重ならない位置に配置される。つまり、回転力変換機構は、温度が高いクランクウェブから離れた位置に配置される。そのため、回転力変換機構によりプライマリ回転軸線方向に移動されるプライマリ可動シーブは、クランクウェブから離れた位置に配置される。よって、プライマリプーリに巻回される乾式ベルトは、クウランクウェブからより離れた位置に配置される。クランクウェブから離れるほど、温度は低い。そのため、乾式ベルトの熱劣化を抑制することができる。
また、相対移動部と回転部とが接触する変換接触部が、クランクケース部により形成される潤滑空間にさらされるように潤滑空間に配置される。本明細書において、変換接触部が、クランクケース部により形成される潤滑空間にさらされるとは、潤滑空間内において、変換接触部が配置される空間が隔離されていないことをいう。別の言い方をすると、変換接触部は、クランクケース部により形成される潤滑空間に存在する潤滑剤で潤滑される。変換接触部には、変速時に大きなトルクが作用する。そのため、変換接触部は、潤滑剤で潤滑する必要がある。つまり、クランクケース部により形成されるクランクケース部により形成される潤滑空間にさらされるように配置された変換接触部は、潤滑空間に存在する潤滑剤で潤滑される。従って、乾式空間を形成する乾式ベルトケース部内に、変換接触部が配置される専用潤滑室を形成する専用潤滑ケース部を別途設けなくてよい。つまり、専用潤滑室を、乾式空間から隔離するためのシール部材が不要になる。そのため、エンジンユニットに設けられるシール部材の数を減らすことができる。その結果、シール部材による機械損失を低減することができる。つまり、燃費をより向上することできる。以上から、本発明のエンジンユニットは、乾式ベルトの熱劣化を防止しつつ、燃費をより向上することできる。
本発明のひとつの観点によると、前記エンジンユニットにおいて、前記回転力変換機構は、前記クランクケース部により形成される前記潤滑空間にさらされるように前記潤滑空間に配置される。
この構成によると、回転力変換機構は、クランクケース部により形成される潤滑空間にさらされるように潤滑空間に配置される。つまり、潤滑空間内において、回転力変換機構が配置される空間が隔離されていない。回転力変換機構は、潤滑空間に存在する潤滑剤で潤滑される。回転力変換機構が有する変換接触部には、大きなトルクが作用する。そのため、変換接触部は、潤滑剤で潤滑する必要がある。つまり、クランクケース部により形成される潤滑空間にさらされるように配置された回転力変換機構が有する変換接触部は、クランクケース部に存在する潤滑剤で潤滑される。従って、乾式空間を形成する乾式ベルトケース部内に、回転力変換機構が配置される専用潤滑室を形成する専用潤滑ケース部を別途設けなくてよい。つまり、専用潤滑室を、乾式空間から隔離するためのシール部材が不要になる。そのため、エンジンユニットに設けられるシール部材の数を更に減らすことができる。その結果、シール部材による機械損失を低減することができる。以上から、本発明のエンジンユニットは、燃費を更に向上することできる。
本発明のひとつの観点によると、前記エンジンユニットにおいて、前記回転力伝達機構は、前記回転力変換機構の前記回転部に噛み合い、前記電動モータの回転力を受けて回転する回転部ギアを含み、前記回転部ギアは、前記クランクケース部により形成される前記潤滑空間にさらされるように前記潤滑空間に配置される。
この構成によると、回転力伝達機構は、回転力変換機構の前記回転部に噛み合う回転部ギアを含む。回転部ギアは、電動モータの回転力を受けて回転する。回転部ギアは、クランクケース部により形成される潤滑空間にさらされるように潤滑空間に配置される。潤滑空間内において、回転部ギアが配置される空間が隔離されていない。ここで、回転部ギアの回転軸の両端を支持する軸受部は、潤滑剤で潤滑される必要がある。回転部ギアの軸受部は、クランクケース部により形成される潤滑空間に存在する潤滑剤で潤滑される。従って、乾式空間を形成する乾式ベルトケース部に、回転部ギアの回転軸の軸受部が配置される専用潤滑室を形成する専用潤滑ケース部を別途設けなくてよい。つまり、専用潤滑室を、乾式空間から隔離するためのシール部材が不要になる。そのため、エンジンユニットに設けられるシール部材の数を更に減らすことができる。その結果、シール部材による機械損失を更に低減することができる。以上から、本発明のエンジンユニットは、燃費を更に向上することできる。
本発明のひとつの観点によると、前記エンジンユニットにおいて、前記回転部ギアは、金属で形成される。
この構成によると、回転部ギアは金属で形成される。金属は樹脂よりも強度の高い。そのため、エンジンユニットの耐久性を向上させることができる。また、回転部ギアが樹脂で形成される場合と比較して、回転部ギアのサイズを小さくすることができる。そして、回転部ギアが樹脂で形成される場合と比較して、回転力伝達機構のサイズをコンパクトにできる。よって、エンジンユニットの大型化を抑制できる。
本発明のひとつの観点によると、前記エンジンユニットにおいて、前記回転力伝達機構は、前記電動モータの回転力を前記回転部ギアに伝達する少なくとも1つのギアを含む回転力伝達ギア機構を有し、前記回転力伝達ギア機構に含まれる少なくとも一部のギアは、前記クランクケース部により形成される前記潤滑空間にさらされるように前記潤滑空間に配置される。
この構成によると、回転力伝達機構は、回転力伝達ギア機構を有する。回転力伝達ギア機構は、電動モータの回転力を回転部ギアに伝達する少なくとも1つのギアを含む。回転力伝達ギア機構に含まれる少なくとも一部のギアは、クランクケース部により形成される潤滑空間にさらされるように潤滑空間に配置される。潤滑空間内において、回転力伝達ギア機構に含まれる少なくとも一部のギアが配置される空間が隔離されていない。ここで、回転力伝達ギア機構に含まれるギアの回転軸の両端を支持する軸受部は、潤滑剤で潤滑されることが必要である。回転力伝達ギア機構に含まれるギアの軸受部は、潤滑空間に存在する潤滑剤で潤滑される。従って、乾式空間を形成する乾式ベルトケース部に、回転力伝達ギア機構に含まれる少なくとも一部のギアの回転軸の軸受部が配置される専用潤滑室を形成する専用潤滑ケース部を、別途設けなくてよい。つまり、専用潤滑室を、乾式空間から隔離するためのシール部材が不要になる。そのため、エンジンユニットに設けられるシール部材の数を更に減らすことができる。その結果、シール部材による機械損失を更に低減することができる。以上から、本発明のエンジンユニットは、燃費を更に向上することできる。
本発明のひとつの観点によると、前記エンジンユニットにおいて、前記回転力伝達ギア機構に含まれる前記少なくとも一部のギアは、金属で形成される。
この構成によると、回転力伝達ギア機構に含まれる少なくとも一部のギアは金属で形成される。金属は樹脂よりも強度の高い。そのため、エンジンユニットの耐久性を向上させることができる。また、回転力伝達ギア機構に含まれる少なくとも一部のギアが樹脂で形成される場合と比較して、回転力伝達ギア機構に含まれる少なくとも一部のギアのサイズを小さくすることができる。そして、回転力伝達ギア機構に含まれる少なくとも一部のギアが樹脂で形成される場合と比較して、回転力伝達機構のサイズをコンパクトにできる。よって、エンジンユニットの大型化を抑制できる。
本発明のひとつの観点によると、前記エンジンユニットにおいて、前記回転力伝達機構は、前記クランクケース部により形成される前記潤滑空間にさらされるように前記潤滑空間に配置される。
この構成によると、回転力伝達機構は、クランクケース部により形成される潤滑空間にさらされるように潤滑空間に配置される。潤滑空間内において、回転力伝達機構が配置される空間が隔離されていない。回転力伝達機構は、潤滑空間に存在する潤滑剤で潤滑される。従って、乾式空間を形成する乾式ベルトケース部に、回転力伝達機構が配置される専用潤滑室を形成する専用潤滑ケース部を、別途設けなくてよい。つまり、専用潤滑室を、乾式空間から隔離するためのシール部材が不要になる。そのため、エンジンユニットに設けられるシール部材シール部材の数を更に減らすことができる。その結果、シール部材による機械損失を更に低減することができる。以上から、本発明のエンジンユニットは、燃費を更に向上することできる。
本発明のひとつの観点によると、前記エンジンユニットにおいて、前記プライマリ可動シーブの前記プライマリ回転軸線は、前記クランク軸部の前記クランク回転軸線と同一線上に配置されると共に、前記プライマリ可動シーブが装着されるプライマリ軸部が、前記クランク軸部と一体で構成される。
この構成によると、プライマリ回転軸線は、クランク回転軸線と同一線上に配置される。また、プライマリ可動シーブが装着されるプライマリ軸部は、クランク軸部と一体で構成される。尚、本明細書において、プライマリ軸部がクランク軸部と一体で構成されるとは、プライマリ軸部とクランク軸部とが一つの構造物となるように成形されてもよい。または、プライマリ軸部がクランク軸部と一体で構成されるとは、プライマリ軸部とクランク軸部とが別々の構造物で成形され、プライマリ軸部がクランク軸部と一体となるように接続されてもよい。そのため、回転力変換機構および回転力伝達機構をプライマリ軸部の周辺に配置することができる。つまり、回転力変換機構および回転力伝達機構を、温度が高いクランクウェブから離れた位置に配置することができる。そして、プライマリ可動シーブは、クランクウェブから離れた位置に配置される。よって、プライマリプーリに巻回される乾式ベルトは、クランクウェブからより離れた位置に配置される。クランクウェブから離れるほど、温度は低い。そのため、乾式ベルトの熱劣化を抑制することができる。また、回転力変換機構および回転力伝達機構を、コンパクトに配置することができる。よって、エンジンユニットの大型化を抑制できる。
本発明のひとつの観点によると、前記エンジンユニットにおいて、前記プライマリ可動シーブの前記プライマリ回転軸線は、前記クランク軸部の前記クランク回転軸線と平行に配置されると共に、前記プライマリ可動シーブが装着されるプライマリ軸部が、前記クランク軸部と動力伝達ギアで接続される。
この構成によると、プライマリ可動シーブのプライマリ回転軸線は、クランク軸部のクランク回転軸線と平行に配置される。また、プライマリ可動シーブが装着されるプライマリ軸部とクランク軸部とは、動力伝達ギアで接続される。そのため、回転力変換機構をプライマリ軸部の周辺に配置することができる。そして、回転力伝達機構をクランク軸部とプライマリ軸部の間に配置することができる。つまり、回転力変換機構および回転力伝達機構を、温度が高いクランクウェブから離れた位置に配置することができる。そして、プライマリ可動シーブは、クランクウェブから離れた位置に配置される。よって、プライマリプーリに巻回される乾式ベルトは、クランクウェブからより離れた位置に配置される。クランクウェブから離れるほど、温度は低い。そのため、乾式ベルトの熱劣化を抑制することができる。また、回転力伝達機構の配置の自由度を高めることができる。よって、エンジンユニットの大型化を抑制できる。
本発明のひとつの観点によると、前記エンジンユニットは、前記回転力変換機構と接触する接触部を有し、前記相対移動部が前記回転部に対して前記プライマリ回転軸線方向に相対的に移動した移動量を検出する移動量検出部を更に備え、前記移動量検出部の少なくとも前記接触部は、前記クランクケース部により形成される前記潤滑空間にさらされるように前記潤滑空間に配置される。
この構成によると、エンジンユニットは、相対移動部の移動量を検出する移動量検出部を備える。移動量は、相対移動部が回転部に対してプライマリ回転軸線方向に相対的に移動した量である。移動量検出部は、回転力変換機構と接触する接触部を有する。移動量検出部の少なくとも接触部は、クランクケース部により形成される潤滑空間にさらされるように潤滑空間に配置される。そのため、移動量検出部と回転力変換機構とが接触する接触部の動作が滑らかになる。そして、移動量検出部と回転力変換機構とが引っかかりなく動き、移動量検出部の精度が向上する。また、接触部が潤滑剤により潤滑されることにより、耐摩耗性が向上し、経年変化が減少し、移動量検出部の精度が向上する。
本発明のひとつの観点によると、前記エンジンユニットにおいて、前記回転力変換機構は、ねじ機構またはカム機構である。
この構成によると、回転力変換機構は、ねじ機構である。ねじ機構は、例えば、内ねじと、内ねじを覆って内ねじと噛み合う外ねじとから構成されてもよい。ねじ機構は、例えば、ボールねじと、ボールねじと噛み合うボールねじ軸とから構成されてもよい。ねじ機構は、例えば、スプラインナットと、スプラインナットと噛み合うスプライン軸とから構成されてもよい。また、回転力変換機構は、カム機構である。カム機構は、例えば、回転するカムと、カムと接触して摺動するカムフォロアとで構成されてもよい。カム機構は、例えば、溝部を有する円筒状のカムと、溝部に挿入されたカムフォロアで構成されてもよい。
本発明のひとつの観点によると、前記エンジンユニットにおいて、前記変換接触部と、前記クランク軸部とが、共通の潤滑剤で潤滑される。
変換接触部を潤滑する潤滑剤と、クランク軸部を潤滑する潤滑剤とが異なる場合、それぞれの潤滑剤が混ざらないように、変換接触部をクランクケース部から隔離するためのシール部材を設ける必要がある。この構成によると、変換接触部と、クランク軸部とが、共通の潤滑剤で潤滑される。つまり、変換接触部を、クランクケース部から隔離するためのシール部材が不要になる。そのため、エンジンユニットに設けられるシール部材の数を減らすことができる。その結果、シール部材による機械損失を低減することができる。以上から、本発明のエンジンユニットは、燃費をより向上することできる。
本発明のひとつの観点によると、前記エンジンユニットにおいて、前記共通の潤滑剤は、オイルである。
この構成によると、共通の潤滑剤は、オイルである。オイルはグリスと比較して粘度が低い。そのため、オイルは、潤滑空間に広範囲に存在することができる。つまり、潤滑空間に配置される変換接触部及びクランク軸部を容易に潤滑することができる。
また、本発明のひとつの観点によると、前記回転部は、前記プライマリ回転軸線と同一または平行な直線を中心に回転する。
本明細書において、潤滑空間とは、潤滑剤が存在する空間であり、内部に配置された部品が潤滑剤で潤滑される空間をいう。
本明細書において、ある部品が、クランクケース部により形成される潤滑空間にさらされるとは、潤滑空間内において、ある部品が配置される空間が隔離されていないことをいう。
本明細書において、クランクウェブの回転領域とは、回転するクランクウェブがちょうど収まる領域をいう。クランクウェブが複数ある場合は、クランクウェブの回転領域とは、複数のクランクウェブを接続する接続部を含む複数のクランクウェブが回転する最大の領域をいう。
本明細書において、乾式ベルトの摺動部は、乾式ベルトのプライマリプーリ及びセカンダリプーリと接触して摺動する部分をいう。
本明細書において、プライマリ軸部がクランク軸部と一体で構成されるとは、プライマリ軸部とクランク軸部とが一つの構造物となるように成形されてもよい。または、プライマリ軸部がクランク軸部と一体で構成されるとは、プライマリ軸部とクランク軸部とが別々の構造物で成形され、プライマリ軸部がクランク軸部と一体となるように接続されてもよい。
本明細書において、プライマリプーリの幅とは、プライマリ可動シーブ及びプライマリ固定シーブで形成される溝の幅をいう。
本発明において、ある部品の端部とは、部品の端とその近傍部とを合わせた部分を意味する。
本明細書において、X方向に並ぶAとBとは、以下の状態を示す。X方向に垂直な方向からAとBを見たときに、AとBの両方がX方向を示す任意の直線上に配置されている状態である。本発明において、Y方向から見てX方向に並ぶAとBとは、以下の状態を示す。Y方向からAとBを見たときに、AとBの両方がX方向を示す任意の直線上に配置されている状態である。この場合、Y方向とは異なるW方向からAとBを見ると、AとBのいずれか一方がX方向を示す任意の直線上に配置されていない状態であってもよい。尚、AとBが接触していてもよい。AとBが離れていてもよい。AとBの間にCが存在していてもよい。
本明細書において、AがBの前方に配置されるとは、以下の状態を指す。AとBが前後方向に並んでおり、且つ、AのBと対向する部分が、Bの前方に配置される。この定義において、Bの前面のうちAと対向する部分が、Bの最前端の場合には、AはBよりも前方に配置される。この定義において、Bの前面のうちAと対向する部分が、Bの最前端ではない場合には、AはBよりも前方に配置されてもよく、されなくてもよい。この定義は、前後方向以外の方向も適用される。尚、Bの前面とは、Bを前方から見た時に見える面のことである。Bの形状によっては、Bの前面とは、連続した1つの面ではなく、複数の面で構成される場合がある。
本明細書において、左右方向に見て、AがBの前方に配置されるとは、以下の状態を指す。左右方向に見て、AとBが前後方向に並んでおり、且つ、左右方向に見て、AのBと対向する部分が、Bの前方に配置される。この定義において、AとBは、3次元では、前後方向に並んでいなくてもよい。この定義は、前後方向以外の方向も適用される。
本明細書にて使用される専門用語は特定の実施例のみを定義する目的であって発明を制限する意図を有しない。本明細書にて使用される用語「および/または」はひとつの、または複数の関連した列挙された構成物のあらゆるまたはすべての組み合わせを含む。
本明細書中で使用される場合、用語「含む、備える(including)」「含む、備える(comprising)」または「有する(having)」およびその変形の使用は、記載された特徴、工程、操作、要素、成分および/またはそれらの等価物の存在を特定するが、 ステップ、動作、要素、コンポーネント、および/またはそれらのグループのうちの1つまたは複数を含むことができる。本明細書中で使用される場合、用語「取り付けられた」、「接続された」、「結合された」および/またはそれらの等価物は広く使用され、直接的および間接的な取り付け、接続および結合の両方を包含する。 さらに、「接続された」および「結合された」は、物理的または機械的な接続または結合に限定されず、直接的または間接的な電気的接続または結合を含むことができる。
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書に定義された用語のような用語は、関連する技術および本開示の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想的または過度に形式的な意味で解釈されることはない。本発明の説明においては、技術および工程の数が開示されていると理解される。これらの各々は個別の利益を有し、それぞれは、他の開示された技術の1つ以上、または、場合によっては全てと共に使用することもできる。したがって、明確にするために、この説明は、不要に個々のステップの可能な組み合わせをすべて繰り返すことを控える。それにもかかわらず、明細書および特許請求の範囲は、そのような組み合わせがすべて本発明および請求項の範囲内にあることを理解して読まれるべきである。
以下の説明では、説明の目的で、本発明の完全な理解を提供するために多数の具体的な詳細を述べる。しかしながら、当業者には、これらの特定の詳細なしに本発明を実施できることが明らかである。本開示は、本発明の例示として考慮されるべきであり、本発明を以下の図面または説明によって示される特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
本発明によれば、乾式ベルトの熱劣化を防止しつつ、エンジンユニットの燃費をより向上できる、乾式ベルトを使用した電子制御式無段変速装置を備えたエンジンユニットを提供することができる。
まず、本発明の実施形態について、図15に基づいて説明する。エンジンユニット6は、エンジン本体部20と、電子制御式無段変速装置30とを備える。
エンジン本体部20は、クランクケース部22とクランク軸部21とを有する。クランクケース部22は、潤滑剤が存在する潤滑空間22cを形成する。クランク軸部21は、潤滑空間22cに配置される。クランク軸部21は、クランクウェブ21aを有する。
電子制御式無段変速装置30は、無段変速機40と、回転力伝達機構80と、回転力変換機構72とを有する。無段変速機40は、プライマリプーリ42と、セカンダリプーリ52と、乾式ベルト32と、乾式ベルトケース部31とを有する。プライマリプーリ42は、クランク軸部21の回転に伴い回転可能である。プライマリプーリ42は、回転軸線方向に移動可能な少なくとも1つのプライマリ可動シーブ44を含む。乾式ベルト32は、プライマリプーリ42及びセカンダリプーリ52に巻回される。乾式ベルト32は、プライマリプーリ42及びセカンダリプーリ52との摺動部32aが潤滑剤で潤滑されない。乾式ベルトケース部31は、乾式空間31aを形成する。プライマリプーリ42、セカンダリプーリ52及び乾式ベルト32は、乾式空間31aに配置される。無段変速機40は、プライマリ回転軸線Apがクランク回転軸線Acと同一線上または平行となるように設けられる。プライマリ回転軸線Apは、プライマリ可動シーブ44の回転軸線である。クランク回転軸線Acは、クランク軸部21の回転軸線である。
回転力伝達機構80は、電動モータ71の回転力を伝達する。回転力変換機構80は、回転部74と、相対移動部73とを含む。回転部74は、回転力伝達機構80から伝達された回転力により回転する。相対移動部73は、回転部74と接触する。また、相対移動部73は、回転部74の回転力により、プライマリ回転軸線Ap方向に回転部74に対して相対的に移動可能である。回転力変換機構72は、プライマリ可動シーブ44をプライマリ回転軸線Ap方向に移動させる。
回転力変換機構72は、クランク回転軸線Ac方向に見て、クランクウェブ21aの回転領域CWと重ならない位置に配置される。または、回転力変換機構72は、クランク回転軸線Acに垂直ないずれの方向に見ても、クランクウェブ21aの回転領域CWと重ならない位置に配置される。
相対移動部73と回転部74とが接触する変換接触部70が、クランクケース部22により形成される潤滑空間22cにさらされるように潤滑空間22cに配置される。つまり、変換接触部70は、潤滑空間22cに存在する潤滑剤で潤滑される。
本実施形態のエンジンユニット6は、以下の特徴を有する。
回転力変換機構72は、温度が高いクランクウェブ21aから離れた位置に配置される。そのため、回転力変換機構72によりプライマリ回転軸線Ap方向に移動されるプライマリ可動シーブ44は、クランクウェブ21aから離れた位置に配置される。よって、プライマリプーリ42に巻回される乾式ベルト32は、クランクウェブ21aからより離れた位置に配置される。クランクウェブ21aから離れるほど、温度は低い。そのため、乾式ベルト32の熱劣化を抑制することができる。
変換接触部70には、変速時に大きなトルクが作用する。そのため、変換接触部70は、潤滑剤で潤滑する必要がある。つまり、クランクケース部22により形成される潤滑空間22cにさらされるように配置された変換接触部70は、潤滑空間22cに存在する潤滑剤で潤滑される。従って、乾式空間31aを形成する乾式ベルトケース部31内に、変換接触部70が配置される専用潤滑室を形成する専用潤滑ケース部を別途設けなくてよい。つまり、専用潤滑室を、乾式空間31aから隔離するためのシール部材が不要になる。そのため、エンジンユニット6に設けられるシール部材の数を減らすことができる。その結果、シール部材による機械損失を低減することができる。つまり、エンジンユニット6の燃費をより向上することできる。
以上から、本発明のエンジンユニット6は、乾式ベルト32の熱劣化を防止しつつ、燃費をより向上することできる。
以下、本発明の具体的な実施形態について説明する。本実施形態の自動二輪車1は、本発明のエンジンユニットが搭載された車両(Vehicle)の一例である。なお、以下の説明において、前後方向とは、自動二輪車1の後述するシート8に着座したライダーから見た車両前後方向のことであり、左右方向とは、シート8に着座したライダーから見たときの車両左右方向(車両幅方向)のことである。なお、本実施形態の図中の矢印F、矢印B、矢印U、矢印D、矢印L、矢印Rは、それぞれ、前方、後方、上方、下方、左方、右方を表している。また、以下で説明する具体的な実施形態においては、図15の実施形態の構成を全て有する。そして、図15の実施形態と同じ部材については、同じ符号を付している。
[自動二輪車の全体構成]
自動二輪車1の全体構成について、図1に基づいて説明する。
自動二輪車1は、前輪2と、後輪3と、車体フレーム(図示せず)とを備えている。車体フレームは、アンダーボーン型の車体フレームである。車体フレームは、その前部にヘッドパイプ(図示せず)を有する。ヘッドパイプには、ステアリングシャフト(図示せず)が回転可能に挿入されている。ステアリングシャフトの上端部は、ハンドルユニット4に連結されている。ハンドルユニット4には、一対のフロントフォーク5の上端部が固定されている。フロントフォーク5の下端部は、前輪2を支持している。
車体フレームには、エンジンユニット6が揺動可能に支持されている。エンジンユニット6は、後述するシート8よりも下方に配置されている。エンジンユニット6の後端部は、後輪3を支持している。エンジンユニット6は、ボス部6bにおいて、リヤサスペンション28の一端部と連結されている。リヤサスペンション28の他端部は、車体フレームに連結されている。
車体フレームの上部には、シート8が支持されている。フロントフォーク5の上部はフロントカバー9で覆われている。シート8の下方にはサイドカバー10が配置されている。フロントカバー9とサイドカバー10との間には、ステップボード11が配置されている。ステップボード11は、自動二輪車1の下部の左右両側に配置されている。
シート8の下方には、燃料タンク(図示せず)が配置されている。また、車体フレームは、各種センサや制御装置(図示せず)などの電子機器に電力を供給するバッテリー(図示せず)が支持されている。制御装置は、自動二輪車1の各部の動作を制御する。
エンジンユニット6は、エンジン本体部20及び電子制御式無段変速装置30を備える。電子制御式無段変速装置30は、無段変速機40を含む。無段変速機40は、プライマリプーリ42及びセカンダリプーリ52を有する。プライマリプーリ42は、セカンダリプーリ52の前方に配置される。また、無段変速機40は、プライマリプーリ42及びセカンダリプーリ52に巻き掛けられた乾式ベルト32を有する。
ハンドルユニット4には、図示しないが、アクセルグリップ及びブレーキレバーが設けられている。アクセルグリップは、エンジンの出力を調整するために操作される。ブレーキレバーは、前輪2の回転を抑制するために操作される。また、ハンドルユニット4には、メインスイッチ等の各種スイッチが設けられている。
[エンジンユニットの全体構成]
エンジンユニット6について、図2及び図4に基づいて説明する。尚、図2において、クランク軸部21及び無段変速機40の記載は省略している。
エンジンユニット6は、エンジン本体部20と、電子制御式無段変速装置30とを有する。電子制御式無段変速装置30は、エンジン本体部20の動力を後輪3に伝達する。
[エンジン本体部の構成]
まず、エンジン本体部20について、説明する。エンジン本体部20は、1つの気筒を有する単気筒エンジンである。エンジン本体部20は、吸気行程、圧縮行程、燃焼行程(膨張行程)、および排気行程を繰り返す4ストローク1サイクルエンジンである。
エンジン本体部20は、クランク軸部21、クランクケース部22、シリンダボディ23、シリンダヘッド24、及びヘッドカバー25を有する。ヘッドカバー25は、エンジンユニット6の前部を形成する。クランクケース部22は、潤滑剤が存在する潤滑空間22cを形成する。潤滑剤は、オイルである。クランク軸部21は、潤滑空間22cに配置される。シリンダヘッド24は、ヘッドカバー25の後端部に接続されている。シリンダボディ23は、シリンダヘッド24の後端部に接続されている。
エンジン本体部20は、強制空冷式のエンジンである。エンジン本体部20は、シュラウド20aを有する。シュラウド20aは、シリンダボディ23とシリンダヘッド24を全周にわたって覆っている。さらに、シュラウド20aは、クランクケース部22の右部を覆っている。シュラウド20aの右部には、空気流入口20bが形成されている。また、シュラウド20aの前部には、空気排出口(図示せず)が形成されている。後述するクランク軸部21の右端部は、クランクケース部22から突出して、冷却ファン20cに連結されている。冷却ファン20cは、クランク軸部21の回転に伴って回転駆動される。冷却ファン20cの駆動により、空気流入口20bからシュラウド20a内に空気が導入される。シュラウド20a内に導入された空気が、後述するシリンダボディ23の冷却フィン23bと接触することにより、シリンダボディ23は放熱する。シュラウド20a内に導入された空気は、空気排出口から排出される。
シリンダボディ23には、シリンダ孔23aが形成される。シリンダ孔23aの中心軸線がシリンダ軸線である。エンジン本体部20は、シリンダ軸線を大きく前傾させて、車体フレームに搭載される。シリンダ軸線の水平方向に対する傾斜角度は、0度以上45度以下である。シリンダ孔23aには、ピストン26が摺動自在に収容される。シリンダヘッド24の下面とシリンダ孔23aとピストン26によって、燃焼室24aが形成される。シリンダヘッド24には、点火装置24bが設けられる。点火装置24bは、燃焼室24a内で燃料と空気との混合ガスに点火する。
クランク軸部21は、2つのクランクウェブ21a及び2つのクランクメイン軸部21bを有する。2つのクランクウェブ21aは、2つのクランクメイン軸部21bの間に配置される。2つのクランクウェブ21aは、偏心軸(図示せず)によって接続される。偏心軸の軸中心は、クランク軸部21の回転中心から偏心している。クランク軸部21の偏心軸には、コネクティングロッド26aを介してピストン26が接続されている。右のクランクウェブ21aの右側には、軸受27aが配置されている。左のクランクウェブ21aの左側には、軸受27bが配置されている。クランク軸部21は、軸受27a及び軸受27bを介して、クランクケース部22に支持されている。クランク軸部21には駆動カムチェーンスプロケット28aが嵌着されている。また、シリンダヘッド24には、被動カムチェーンスプロケット28bが配置されている。そして、駆動カムチェーンスプロケット28aと被動カムチェーンスプロケット28bとにカムチェーン28cが架渡される。被動カムチェーンスプロケット28bは動弁カム軸28dに装着されている。クランク軸部21の回転力は、カムチェーン28cを介して動弁カム軸28dに伝達される。動弁カム軸28dは、クランク軸部21に同期して、図示しない吸気バルブ及び排気バルブをそれぞれ所要のタイミングで開閉駆動する。
また、クランク軸部21には、発電機と一体化されたスターターモータ90が連結されている。スターターモータ90は、エンジン始動時にクランク軸部21を回転させる。また、発電機は、クランク軸部21の回転力によって電力を生成する。なお、スターターモータと発電機は別々に構成されていてもよい。
[電子制御式無段変速装置の全体構成]
次に、電子制御式無段変速装置30について、図3〜図6に基づいて説明する。図3は、図2において、電子制御式無段変速装置30から乾式ベルトケース部31を外した状態を示す図である。電子制御式無段変速装置30は、無段変速機40と、回転力伝達機構80と、回転力変換機構72とを有する。
[無段変速機の構成]
無段変速機40は、乾式ベルトケース部31、乾式ベルト32、プライマリ軸部41、プライマリプーリ42、セカンダリ軸部51、及び、セカンダリプーリ52を有する。
図4に示すように、乾式ベルトケース部31は、シリンダボディ23の後方に配置されている。乾式ベルトケース部31は、伝動ケース部ともいう。乾式ベルトケース部31は、プライマリプーリ42、セカンダリプーリ52及び乾式ベルト32を収容する。乾式ベルトケース部31は、シリンダボディ23の後端部から車両後方に向かって後輪3まで設けられている。乾式ベルトケース部31の下部には、懸架部33が形成されている。懸架部33には、車両前方に向かって前ボス部31bが形成される。前ボス部31bは、ピボット軸(図示しない)により車体フレームに回動可能に支持される。懸架部33には、オイルフィルタ34が装着される。乾式ベルトケース部31は、乾式空間31aを形成する。
乾式ベルト32は、プライマリプーリ42及びセカンダリプーリ52に巻回される。乾式ベルト32は、プライマリプーリ42及びセカンダリプーリ52と摺動する摺動部32aを有する。摺動部32aは、潤滑剤で潤滑されない。本明細書において、乾式ベルト32の摺動部32aは、乾式ベルト32のプライマリプーリ42及びセカンダリプーリ52と接触して摺動する部分をいう。
プライマリ軸部41は、クランク軸部21の車両左右方向の左端に、クランク軸部21と一体で成形されている。プライマリ回転軸線Apは、クランク回転軸線Ac上に配置される。プライマリ軸部41は、クランク軸部21の回転に伴い、回転可能である。つまり、プライマリ軸部41は、駆動軸部である。そして、プライマリ軸部41は、クランク軸部21の動力が伝達される。図4の例では、プライマリ軸部41は、クランク軸部21に巻き掛けられているカムチェーン28cより左側の部分である。プライマリ軸部41の径は、カムチェーン28cが巻き掛けられているクランク軸部21の部分の径よりも小さい。プライマリ部軸41は、車両左右方向の左側の部分が、右側の部分より、径が小さくなるように形成される。プライマリ軸部41は、クランクケース部22を貫通して形成される。つまり、車両左右方向において、プライマリ軸部41の右部は、クランクケース部22に形成される潤滑空間22cに配置される。また、プライマリ軸部41の左部は、乾式ベルトケース部31に形成される乾式空間31aに配置される。
プライマリプーリ42は、プライマリ軸部41に装着される。プライマリプーリ42は、カラー部材43a、カラー部材43b、プライマリ可動シーブ44、及び、プライマリ固定シーブ45を備える。カラー部材43a及びカラー部材43bは、円筒状に形成される。カラー部材43a及びカラー部材43bは、連結して構成される。カラー部材43a及びカラー部材43bは、プライマリ軸部41の外周面に配置される。カラー部材43a及びカラー部材43bは、スペーサ46及び皿ばね46aを介して、ロックナット47でプライマリ軸部41に締結される。カラー部材43a及びカラー部材43bは、クランク軸部21及びプライマリ軸部41と共に回転する。カラー部材43aは、プライマリ固定シーブ45より車両左右方向の右側に配置される。カラー部材43bは、カラー部材43aより車両左右方向の右側に配置される。プライマリ可動シーブ44は、カラー部材43aの外周面に配置される。図6に示すように、プライマリ可動シーブ44及びプライマリ固定シーブ45は、クランクケース部22より車両左右方向の左側に配置される。つまり、プライマリ可動シーブ44及びプライマリ固定シーブ45は、乾式空間31aに配置される。プライマリ可動シーブ44は、クランク軸部21の回転軸線であるクランク回転軸線Ac方向上に配置される。つまり、プライマリ可動シーブ44は、プライマリ軸部41の回転軸線方向上に配置される。プライマリ軸部41の回転軸線は、プライマリ可動シーブ44の回転軸線であるプライマリ回転軸線Apは同じである。
図5に示すように、プライマリ可動シーブ44の右端部には、スライド部材44aが一体的に成形される。即ち、スライド部材44aは、プライマリ可動シーブ44に連結される。スライド部材44aは、円筒状に形成される。カラー部材43bの外周面には、プライマリ回転軸線Ap方向に沿ってスリット44bが形成される。図5の例では、プライマリ回転軸線Ap方向は、車両左右方向である。プライマリ可動シーブ44およびスライド部材44aは、スプライン44cを有する。スプライン44cは、カラー部材43bのスリット44bに挿入される。スプライン44cは、スリット44bに沿って、プライマリ回転軸線Ap方向に移動可能に構成される。これにより、プライマリ可動シーブ44及びスライド部材44aは、カラー部材43bのスリット44bに沿って、プライマリ可動シーブ44の回転軸線方向に移動可能である。一方、スプライン44cは、スリット44b内でプライマリ可動シーブ44の回転方向に移動不能に構成される。これにより、プライマリ可動シーブ44およびスライド部材44aは、クランク軸部21及びプライマリ軸部41と共に回転する。尚、プライマリ可動シーブ44の内周面とカラー部材43aとの間には、シール部材44dが配置される。スライド部材44aとカラー部材43aとの間に形成される空間は、潤滑空間22cと連通する。スリット44bは、潤滑空間22cにさらされる。スリット44bは、潤滑空間22cに存在するオイルで潤滑される。シール部材44dは、スリット44bを潤滑するオイルが潤滑空間22cから乾式空間31aに漏れるのを防いでいる。
スライド部材44aは、上述の通り、プライマリプーリ42のプライマリ可動シーブ44の右端部に一体的に成形される。スライド部材44aは、カラー部材43a及びカラー部材43bに装着される。スライド部材44aの右端部は、他の部分より小径に形成されている。スライド部材44aの右端部の外周面には、後述する移動部軸受75が嵌合される。スライド部材44aは、クランクケース部22を貫通して形成される。スライド部材44aの外周面とクランクケース部22との間には、シール部材22dが配置されている。シール部材22dは、クランクケース部22で形成される潤滑空間22cから乾式空間31aにオイルが漏れるのを防いでいる。
プライマリ固定シーブ45は、カラー部材43aの車両左右方向の左面に接触するように、プライマリ軸部41にスプライン嵌合される。プライマリ固定シーブ45の車両左右方向の左側において、プライマリ軸部41の左端部には、スペーサ46、皿ばね46a及びロックナット47が配置される。ロックナット47を締結することで、プライマリ固定シーブ45は、プライマリ軸部41に、プライマリ回転軸線Ap方向に移動不能に固定される。つまり、プライマリ固定シーブ45は、クランク軸部21及びプライマリ軸部41と共に回転する。プライマリ固定シーブ45の左面には、放射状に配置された多数の冷却フィン45cが一体的に形成されている。乾式ベルトケース部31の前部には、空気流入口(図示せず)が形成されている。プライマリ固定シーブ45は、プライマリ軸部41の回転に伴って、回転駆動される。つまり、プライマリ固定シーブ45は、クランク軸部21の回転に伴って、回転駆動される。多数の冷却フィン45cが回転することにより、空気流入口から乾式ベルトケース部31内に空気が導入される。つまり、冷却フィン45cは、外気を乾式ベルトケース部31内に導入する。乾式ベルトケース部31内に導入された空気は、プライマリプーリ42、セカンダリプーリ52及び乾式ベルト32と接触する。これにより、プライマリプーリ42、セカンダリプーリ52及び乾式ベルト32は放熱する。乾式ベルトケース部31内の空気は、乾式ベルトケース部31の後部または下部の空気排出口(図示せず)から排出される。
このように、プライマリ軸部41は、クランク軸部21の回転に伴って、回転する。プライマリ可動シーブ44とプライマリ固定シーブ45は、プライマリ軸部41の回転に伴って、回転駆動される。プライマリ可動シーブ44は、スライド部材44aの移動に伴って、その回転軸線Ap方向に移動する。プライマリ固定シーブ45は、プライマリ回転軸線Ap方向に移動不能である。
プライマリ可動シーブ44とプライマリ固定シーブ45は、乾式ベルト32を把持する。プライマリ可動シーブ44のプライマリ固定シーブ45と対向する面は、乾式ベルト32の摺動部32aと接触する。プライマリ固定シーブ45のプライマリ可動シーブ44と対向する面は、乾式ベルト32の摺動部32aと接触する。乾式ベルト32は、プライマリ可動シーブ44とプライマリ固定シーブ45の回転に伴って、回転される。
図4に示すように、セカンダリ軸部51の回転軸線方向は、プライマリ回転軸線Ap方向と平行に配置される。セカンダリ軸部51は、従動軸部である。乾式ベルトケース部31の後端部の右方には、ギアケース部61が配置されている。ギアケース部61は、ギアケース部61の右方に配置されたケース本体部62に接続されている。ギアケース部61及びケース本体部62には、オイルが存在する潤滑空間60aを形成する。セカンダリ軸部51は、ギアケース部61を貫通して形成される。つまり、車両左右方向において、セカンダリ軸部51の右部は、ギアケース部61及びケース本体部62によって形成される潤滑空間60aに配置される。また、セカンダリ軸部51の左部は、乾式ベルトケース部31によって形成される乾式空間31aに配置される。また、後輪3を回転させるドライブ軸部60は、潤滑空間60aに配置される。ドライブ軸部60の回転軸線方向は、セカンダリ軸部51の回転軸線方向と平行に配置される。また、潤滑空間60aには、セカンダリ軸部51の回転軸線方向及びドライブ軸部60の回転軸線方向と平行に、セカンダリメイン軸部(図示せず)の回転軸線方向が配置される。セカンダリ軸部51の外周面とギアケース部61との間には、シール部材51aが配置されている。シール部材51aは、潤滑空間60aから乾式空間31aにオイルが漏れるのを防いでいる。
セカンダリ軸部51は、軸受61aを介してギアケース部61に支持される。また、セカンダリ軸部51の右端部は、軸受62aを介してケース本体部62に支持される。また、セカンダリ軸部51の左端部は、軸受63及びスペーサ63aを介して乾式ベルトケース部31に支持される。
セカンダリプーリ52は、セカンダリ軸部51に装着される。セカンダリプーリ52は、カラー部材53と、セカンダリ可動シーブ54と、セカンダリ固定シーブ55とを備える。カラー部材53は、円筒状に形成される。カラー部材53は、セカンダリ軸部51の外周面に、軸受55a及び軸受55bを介して、回転可能に装着される。また、カラー部材53は、セカンダリ軸部51に、セカンダリ可動シーブ54の回転軸線方向に移動不能に装着される。スライド部材53aは、カラー部材53に装着される。スライド部材53aは、セカンダリ可動シーブ54の内周面とカラー部材53の外周面との間に配置される。スライド部材53aは、セカンダリ可動シーブ54に連結される。カラー部材53の外周面には、セカンダリ可動シーブ54の回転軸線方向に沿って、スリット53bが形成される。図4の例では、セカンダリ可動シーブ54の回転軸線方向は、車両左右方向である。スライド部材53aは、キー53cを有する。キー53cがスリット53bに挿入される。キー53cは、セカンダリ可動シーブ54の回転軸線方向に移動可能に構成される。これにより、スライド部材53a及びセカンダリ可動シーブ54は、カラー部材53のスリット53bに沿って、セカンダリ軸部51の軸方向に移動可動である。一方、キー53cは、セカンダリ可動シーブ54の回転方向に移動不能に構成される。これにより、スライド部材53a及びセカンダリ可動シーブ54は、カラー部材53の回転に伴って回転する。
セカンダリ固定シーブ55は、カラー部材53に嵌合されて固定される。すなわち、セカンダリ固定シーブ55は、カラー部材53を介して、セカンダリ軸部51に装着される。セカンダリ固定シーブ55は、カラー部材53の回転に伴って回転する。セカンダリ固定シーブ55は、セカンダリ軸部51の回転に伴わずに回転する。また、セカンダリ固定シーブ55は、カラー部材53に、セカンダリ可動シーブ54の回転軸線方向に移動不能に装着される。
このように、セカンダリ可動シーブ54及びセカンダリ固定シーブ55は、カラー部材53の回転に伴って、回転駆動される。セカンダリ可動シーブ54は、スライド部材53aの移動に伴って、その回転軸線方向に移動する。セカンダリ固定シーブ55は、セカンダリ可動シーブ54の回転軸線方向に移動不能である。
セカンダリ可動シーブ54及びセカンダリ固定シーブ55は、乾式ベルト32を把持する。セカンダリ可動シーブ54のセカンダリ固定シーブ55と対向する面は、乾式ベルト32の摺動部32aと接触する。セカンダリ固定シーブ55のセカンダリ可動シーブ54と対向する面は、乾式ベルト32の摺動部32aと接触する。乾式ベルト32は、プライマリ可動シーブ44とプライマリ固定シーブ45の回転に伴って、回転される。セカンダリ可動シーブ54及びセカンダリ固定シーブ55は、乾式ベルト32の回転に伴い、回転される。
セカンダリプーリ52より左側には遠心式クラッチ56が配置されている。遠心式クラッチ56は、セカンダリ軸部51に取り付けられている。遠心式クラッチ56は、ウェイトアーム56a、ウェイト56b、アウタクラッチ56cを備える。ウェイトアーム56aは、カラー部材53に嵌合されて固定される。ウェイトアーム56aは、カラー部材53と共に回転する。ウェイト56bは、ウェイトアーム56aに、セカンダリ軸部51の径方向に揺動可能に装着される。アウタクラッチ56cは、ウェイト56bを囲むように配置される。アウタクラッチ56cは、セカンダリ軸部51に嵌合されて固定される。アウタクラッチ56cは、セカンダリ軸部51と共に回転する。セカンダリ可動シーブ54とウェイトアーム56aとの間にはばね57が配設される。セカンダリ可動シーブ54は、このばね57により、セカンダリプーリ52の有効径が大きくなる方向に付勢される。
セカンダリプーリ52の回転速度が上昇するに伴い、ウェイト56bは遠心力でセカンダリ軸部51の径方向外側に移動して、アウタクラッチ56cの内面に当接する。これにより、ウェイトアーム56aとアウタクラッチ56cとが嵌合する。これにより、カラー部材53とセカンダリ軸部51が共に回転する。そして、セカンダリプーリ52の回転力が、セカンダリ軸部51に伝達される。そして、セカンダリ軸部51の回転力は、図示しないセカンダリメイン軸部及びドライブ軸部60を介して後輪3に伝達される。
乾式ベルト32は、プライマリプーリ42及びセカンダリプーリ52に巻回される。乾式ベルト32は、ゴム製又は合成樹脂製の伝動ベルトである。図4において、実線で表示した乾式ベルト32は、低速位置(ロー位置)にあるは乾式ベルト32を、二点鎖線で表示した乾式ベルト32は、高速位置(トップ位置)にある乾式ベルト32を示している。ここで、乾式ベルト32のトップ位置とは、プライマリプーリ42の幅が最も小さくなる位置である。尚、本明細書において、プライマリプーリ42の幅とは、プライマリ可動シーブ44及びプライマリ固定シーブ45で形成される溝の幅をいう。即ち、乾式ベルト32のトップ位置とは、プライマリプーリ42に巻回される乾式ベルト32の巻径が最も大きくなる位置であり、変速比の最も低い位置である。一方、乾式ベルト32の低速位置(ロー位置)とは、プライマリプーリ42の幅が最も大きくなる位置である。即ち、乾式ベルト32のロー位置とは、プライマリプーリ42に巻回される乾式ベルト32の巻径が最も小さくなる位置であり、変速比の最も高い位置である。乾式ベルト32は、乾式ベルトケース部31内の乾式空間31aに配置される。
[回転力変換機構の構成]
図5に示すように、回転力変換機構72は、相対移動部73、回転部74を含む。回転力変換機構72は、プライマリ可動シーブ44を、プライマリ回転軸線Ap方向に移動させる。回転力変換機構72は、潤滑空間22cにさらされる。図3に示すように、回転力変換機構72は、クランク回転軸線Ac方向に見て、クランクウェブ21aの回転領域CWと重なる位置に配置される。また、図5に示すように、回転力変換機構72は、クランク回転軸線Acに垂直ないずれの方向に見ても、クランクウェブ21aの回転領域CWと重ならない位置に配置される。回転力変換機構72は、詳細には以下の構造となる。
回転部74は、固定ねじ部74aと、回転部軸受76を有する。固定ねじ部74aは、回転部軸受76を介して、プライマリ軸部41に支持される。固定ねじ部74aは、プライマリ軸部41の回転に伴わずに回転する。固定ねじ部74aは、シーブ側ギア79を有する。シーブ側ギア79は、固定ねじ部74aの右端部に固定される。シーブ側ギア79の径は、プライマリプーリ42の径よりも大きい。尚、シーブ側ギア79の径は、プライマリプーリ42の径以下でもよい。シーブ側ギア79は、固定ねじ部74aに固定される。シーブ側ギア79の左面には、3つのボルト79aが設けられている(図3参照)。3つのボルト79aは、シーブ側ギア79と共に回転する。シーブ側ギア79は、回転力伝達ギア82に噛み合う。シーブ側ギア79は、回転力伝達ギア82の回転力により回転する。つまり、回転部74は、回転力伝達ギア82の回転力により回転する。回転力伝達ギア82は、回転力伝達機構80に含まれる。つまり、回転部74は、回転力伝達機構80から伝達された回転力により回転する。
相対移動部73は、円筒状の可動ねじ部73aと、突起部73bと、移動部軸受75と、リング体77とを有する。移動部軸受75は、可動ねじ部73aの内側に嵌合される。つまり、可動ねじ部73aの内周面には、移動部軸受75の外周面が配置される。スライド部材44aは、移動部軸受75の内側に嵌合される。つまり、移動部軸受75の内周面には、スライド部材44aの右端部が配置される。可動ねじ部73aは、移動部軸受75を介して、スライド部材44aに接続される。
可動ねじ部73aの外周面には、突起部73bが形成される。可動ねじ部73aの突起部73bより右側の部分は、可動ねじ部73aの突起部73bより左側の部分よりも小径に形成される。可動ねじ部73aの突起部73bより右側の外周面には、リング体77が圧入により結合されている。リング体77は、可動ねじ部73aの突起部73bより左側に移動不能となっている。リング体77には、U字型の孔部77bを形成する回り止め部77a(図3参照)が形成される。回り止め部77aに形成された孔部77bには、クランクケース部22に固定されたボルト78が挿入される。ボルト78が回り止め部77aに挿入されることにより、リング体77はプライマリ可動シーブ44の回転方向に回転できない。つまり、相対移動部73は、リング体77により、プライマリ可動シーブ44の回転方向に回転不能に構成される。
相対移動部73は、回転部74と接触する。相対移動部73の可動ねじ部73aの内周面には雌ねじ73cが形成される。回転部74の固定ねじ部74aの外周面には、雄ねじ74bが形成される。尚、可動ねじ部73aの内周面には雄ねじが形成され、固定ねじ部74aの外周面には、雌ねじが形成されていても良い。可動ねじ部73aの雌ねじ73c及び固定ねじ部74aの雄ねじ74bは、プライマリ回転軸線Ap方向に沿った断面が台形の台形ねじである。固定ねじ部74aの雄ねじ74bは、可動ねじ部73aの雌ねじ73cに噛み合わされる。つまり、固定ねじ部74aは、可動ねじ部73aに噛合されて接触する。可動ねじ部73a及び固定ねじ部74aは、雌ねじ73c及び雄ねじ74bで接触する。可動ねじ部73aの雌ねじ73c及び固定ねじ部74aの雄ねじ74bを、変換接触部70という。変換接触部70である可動ねじ部73aの雌ねじ73c及び固定ねじ部74aの雄ねじ74bは、潤滑空間22cにさらされる。
回転部74は、回転力伝達機構80から伝達された回転力により回転する。つまり、固定ねじ部74aは、回転力伝達機構80から伝達された回転力により回転する。一方、相対移動部73は、回転不能に構成される。つまり、可動ねじ部73aは、回転不能に構成される。これにより、固定ねじ部74aに噛み合わされた可動ねじ部73aは、プライマリ回転軸線Ap方向に移動する。つまり、相対移動部73は、回転部74の回転力により、プライマリ回転軸線Ap方向に回転部74に対して相対的に移動可能に構成される。可動ねじ部73aがプライマリ回転軸線Ap方向に移動すると、スライド部材44aと連結されたプライマリ可動シーブ44が、その回転軸線Ap方向に移動する。尚、回転部74の回転方向が正回転か逆回転かによって、相対移動部73が移動する回転軸線Apの向きが変化する。
プライマリ可動シーブ44は、その回転軸線Ap方向に移動することにより、トップ位置からロー位置に変化する。プライマリ可動シーブ44がプライマリ回転軸線Ap方向に右側に移動すると、相対移動部73が有する回り止め部77aが、3つのボルト79aのいずれかに当たる。すると、相対移動部73が、プライマリ回転軸線Ap方向の移動できなくなる。つまり、3つのボルト79aが、相対移動部73のプライマリ回転軸線Ap方向の移動を不能とさせる。3つのボルト79aがシーブ側ギア79と当接する位置が、プライマリ可動シーブ44のロー位置である。カラー部材43aの外周面の左端部には、プライマリ固定シーブ45と接触する位置に支持部材44eが結合されている。支持部材44eは、円筒状に形成されている。プライマリ可動シーブ44がプライマリ回転軸線Ap方向に沿って左側に移動すると、プライマリ可動シーブ44が支持部材44eに当接する。プライマリ可動シーブ44が支持部材44eに当接する位置が、プライマリ可動シーブ44のトップ位置である。
[回転力伝達機構の構成]
回転力伝達機構80は、出力ギア81、回転力伝達ギア82、回転軸82a、及び、回転部ギア83を有する。出力ギア81、回転力伝達ギア82、回転軸82a、及び、回転部ギア83は、金属製である。回転力伝達機構80は、潤滑空間22cにさらされる。
図5に示す電動モータ71は、シリンダボディ23(図4参照)とスロットルボディ(図示せず)との間に配置される。電動モータ71は、クランクケース部22の外側壁にボルト71aにより固定されている。電動モータ71の回転軸71bには、出力ギア81が形成される。電動モータ71の回転軸71b及び出力ギア81は、潤滑空間22cにさらされる。
回転力伝達機構80は、電動モータ71の回転力を伝達する。回転力伝達機構80は、電動モータ71の回転力をプライマリ可動シーブ44のシーブ側ギア79に伝達する。出力ギア81は、回転軸71bに一体的に成形される。出力ギア81は、回転力伝達ギア82に噛合する(図3及び図6参照)。回転部ギア83は、回転軸82aに圧入により固定されている。回転部ギア83の左部は、右部よりも小径に形成される。回転力伝達ギア82は、回転部ギア83の左部に圧入により固定されている。回転部ギア83は、回転力伝達ギア82の回転に伴って回転する。回転部ギア83は、シーブ側ギア79に噛合される。つまり、回転部ギア83は、回転力変換機構72の回転部74が有するシーブ側ギア79に噛み合い、電動モータ71の回転力を受けて回転するギアである。
回転力伝達ギア82及び回転軸82aは、回転力伝達ギア機構84を構成する。回転軸82aの両端部は、クランクケース部22に軸方向に移動不能に支持される。回転力伝達ギア82は、出力ギア81より径が大きい。回転部ギア83は、回転力伝達ギア82より径が小さい。シーブ側ギア79は、回転部ギア83より径が大きい。電動モータ71の回転速度は、回転力伝達機構80により減速される。
図3及び図5に示すように、回転力伝達機構80は、自動二輪車1を車両左右方向に見て、クランクケース部22に重なるように配置される。回転力伝達機構80は、潤滑空間22cにさらされる。また、回転軸71b及び回転軸82aは、プライマリ軸部41の右部の上方に配置される。
シーブ側ギア79より車両左右方向の左側には、移動量検出部85が配置される。移動量検出部85は、クランクケース部22内に配置される。移動量検出部85は、回転センサである。移動量検出部85のセンサ軸85aは、プライマリ軸部41と垂直の方向に配置される。センサ軸85aの端部は、クランクケース部22に支持される(図2参照)。センサ軸85aには、センサアーム85bが装着される。センサアーム85bは、相対移動部73と接触して回転する。より詳細には、相対移動部73の可動ねじ部73aと接触して回転する。センサアーム85bは、外周部に切り欠き部85cを有する。切り欠き部85cは、可動ねじ部73aの端部と接触する。切り欠き部85cは、本発明における接触部である。切り欠き部85cは、プライマリ回転軸線Ap方向に移動する可動ねじ部73aの端部が常に接触するように構成される。可動ねじ部73aがプライマリ回転軸線方向に移動すると、可動ねじ部73aと接触する切り欠き部85cがプライマリ回転軸線方向に移動されて、センサアーム85bが回転する。即ち、プライマリプーリ42がロー位置とトップ位置との間で変化すると、可動ねじ部73aと接触したセンサアーム85bが回転する。このようにして、移動量検出部85は、相対移動部73のプライマリ回転軸線方向の移動位置を検出する。つまり、移動量検出部85は、プライマリ可動シーブ44及びスライド部材44aがプライマリ回転軸線Ap方向に移動した移動量を検出する。移動量検出部85は、潤滑空間22cにさらされる。
[電子制御式無段変速装置の動作]
ここで、電子制御式無段変速装置30の動作について説明する。
アクセル操作に伴ってエンジン回転速度が上昇すると、エンジン回転速度に応じて予め設定された変速比に基づいて、変速が行われる。そして、電子制御式無段変速装置30は、乾式ベルト32が変速比に応じて設定されたベルト巻径となるよう電動モータ71の回転が制御される。出力ギア81は、電動モータ71の回転に伴って回転する。回転力伝達ギア82は、噛合された出力ギア81の回転に伴って回転する。回転部ギア83は、回転部ギア83と同じ回転軸82aに固定された回転力伝達ギア82の回転に伴って回転する。シーブ側ギア79は、シーブ側ギア79に噛合された回転部ギア83の回転に伴って回転する。シーブ側ギア79が回転すると、シーブ側ギア79に固定された回転部74が回転する。そして、回転部74と噛合された相対移動部73が、軸方向に移動する。相対移動部73は、電動モータ71の回転量に応じた距離だけ軸方向に移動する。これに伴って、プライマリ可動シーブ44がトップ位置に向かって所定量移動する。つまり、回転力変換機構72は、乾式ベルト32が巻回されるプライマリプーリ42の幅を連続的に変化させる。そして、プライマリプーリ42が設定されたベルト巻径となる。言い換えると、回転力変換機構72は、プライマリプーリ42に巻回される乾式ベルト32の巻径を連続的に変化させる。このようにして、電子制御式無段変速装置30は、電動モータ71により、無段変速機40の変速比を無段階で制御できる。
[電子制御式無段変速装置のシール部材]
ここで、図7に基づいて、本実施形態の電子制御式無段変速装置30が有するシール部材の数、及び、特許文献1の電子制御式無段変速装置100が有するシール部材の数を比較する。
図7(a)に示すように、本実施形態のエンジンユニット6は、潤滑空間22cから乾式空間31aにオイルが漏れるのを防止するために、電子制御式無段変速装置30にシール部材が2個設けられている。1個目のシール部材は、スライド部材44aの外周面とクランクケース部22との間に配置されたシール部材22dである。シール部材22dは、回転及び摺動するスライド部材44aに接触する。スライド部材44aは、クランク軸部21の回転に伴い回転する。また、スライド部材44aは、変速時の電動モータ71の回転に伴いプライマリ回転軸線Ap方向に移動する。つまり、シール部材22dでは、クランク軸部21が回転している間、回転による抵抗が生じる。また、シール部材22dでは、変速時において、摺動による抵抗が生じる。2個目のシール部材は、プライマリ可動シーブ44の端部とカラー部材43aとの間に配置されたシール部材44dである。シール部材44dは、プライマリ可動シーブ44と共に摺動する。シール部材44dは、カラー部材43aに接触する。プライマリ可動シーブ44は、変速時の電動モータ71の回転に伴いプライマリ回転軸線Ap方向に移動する。つまり、シール部材44dでは、変速時のみ、摺動による抵抗が生じる。本実施形態のエンジンユニット6では、シール部材の中でも、特に、シール部材22dの抵抗が大きい。
図7(b)に示すように、特許文献1のエンジンユニットの電子制御式無段変速装置100は、プライマリプーリ130を備える。プライマリプーリ130は、プライマリ可動シーブ131及びプライマリ固定シーブ132を備える。プライマリプーリ130には、乾式ベルト133が巻き掛けられる。プライマリ軸部101は、クランク軸部135と一体的に形成される。スライド部材106は、プライマリ可動シーブ131に装着されて、プライマリ軸部101にスライド可能に支持される。また、電子制御式無段変速装置100は、スライド部材106に軸受116を介して支持された回転部115を有する。また、電子制御式無段変速装置100は、回転部115に噛合し、クランクケース部102に回り止めされた相対移動部110を有する。相対移動部110とプライマリ軸部101との間には、軸受112が配置される。特許文献1のエンジンユニットにおいて、クランクケース部102は、潤滑剤が存在する潤滑空間136を形成する。クランク軸部135は、潤滑空間136に配置される。また、プライマリ軸部101の外周に装着されるカラー部材105、スライド部材106、相対移動部110、支持部材111、軸受112、回転部115、軸受116は、潤滑剤が存在する専用潤滑室117を形成する。乾式ベルト133は、乾式空間137に配置される。
電子制御式無段変速装置100は、シーブ側ギア113、モータ側ギア120、回転伝達小ギア124、回転伝達大ギア127、出力ギア128を有する。シーブ側ギア113は、回転部115に噛合される。電子制御式無段変速装置100は、回転伝達小ギア124及び回転伝達大ギア127で構成された回転力伝達ギア機構を有する。モータ側ギア120は、シーブ側ギア113に噛合される。回転伝達小ギア124は、モータ側ギア120に噛合される。モータ側ギア120は、モータ側軸121により回転される。回転伝達小ギア124は、回転力伝達ギア軸125により回転される。回転伝達大ギア127は、回転力伝達ギア軸125に装着されて、回転力伝達ギア軸125により回転される。出力ギア128は、回転伝達大ギア127に噛合される。出力ギア128は、電動モータ138の回転軸129に形成される。モータ側ギア120を回転させるモータ側軸121の両端121aにそれぞれ設けられる軸受122には、潤滑剤で潤滑される専用潤滑室122aが形成される。また、回転力伝達ギア軸125の両端125aにそれぞれ設けられる軸受126には、潤滑剤で潤滑される専用潤滑室126aが形成される。シーブ側ギア113、モータ側ギア120、回転伝達小ギア124、回転伝達大ギア127、出力ギア128は、図示しない乾式ベルトケース部で形成される乾式空間137に配置される。
特許文献1のエンジンユニットは、専用潤滑室117、122a、126a、136から乾式空間137にオイルが漏れるのを防止するために、電子制御式無段変速装置100にシール部材が10個設けられている。1個目のシール部材は、プライマリ軸部101の外周面とクランクケース部102との間に配置されたシール部材103である。シール部材103は、回転するプライマリ軸部101に接触する。プライマリ軸部101は、クランク軸部135の回転に伴い回転する。つまり、シール部材103では、クランク軸部135が回転している間、回転による抵抗が生じる。2個目のシール部材は、カラー部材105とスライド部材106との間に配置されたシール部材107である。シール部材107は、プライマリ可動シーブ131と共に摺動する。シール部材107は、カラー部材105に接触する。スライド部材106は、変速時の電動モータ71の回転に伴いプライマリ回転軸線Ap方向に移動する。つまり、シール部材107では、変速時のみ、摺動による抵抗が生じる。3個目のシール部材は、相対移動部110とプライマリ軸部101を支持する支持部材111との間に介在する軸受112に設けられるシール部材112aである。シール部材112aは、軸受112に接触する。軸受112は、クランク軸部135の回転に伴い回転する。つまり、シール部材112aでは、クランク軸部135が回転している間、回転による抵抗が生じる。4個目のシール部材は、相対移動部110とシーブ側ギア113との間に配置されるシール部材114である。シール部材114は、回転及び摺動する回転部115に接触する。回転部115は、変速時の電動モータ71の回転に伴い回転する。また、回転部115は、変速時の電動モータ71の回転に伴いプライマリ回転軸線Ap方向に移動する。つまり、シール部材114では、変速時のみ、回転による抵抗が生じる。また、シール部材114では、変速時のみ、摺動による抵抗が生じる。5個目のシール部材は、回転部115とスライド部材106との間に介在する軸受116に設けられるシール部材116aである。シール部材116aは、軸受116に接触する。軸受116は、クランク軸部135の回転に伴い回転する。つまり、シール部材116aでは、クランク軸部135が回転している間、回転による抵抗が生じる。6個目及び7個目のシール部材は、シーブ側ギア113と噛み合うモータ側ギア120を回転させるモータ側軸121の両端121aにそれぞれ設けられる軸受122に設けられるシール部材122bである。シール部材122bは、軸受122に接触する。軸受122は、変速時の電動モータ71の回転に伴い回転する。つまり、シール部材122bでは、変速時のみ、回転による抵抗が生じる。8個目及び9個目のシール部材は、モータ側ギア120と噛み合う回転伝達小ギア124を回転させる回転力伝達ギア軸125の両端125aにそれぞれ設けられる軸受126に設けられるシール部材126bである。シール部材126bは、軸受126に接触する。軸受126は、変速時の電動モータ71の回転に伴い回転する。つまり、シール部材126bでは、変速時のみ、回転による抵抗が生じる。10個目のシール部材は、プライマリ可動シーブ131とカラー部材105の間に設けられるシール部材107aである。シール部材107aは、摺動するカラー部材105に接触する。カラー部材105は、変速時の電動モータ71の回転に伴いプライマリ回転軸線Ap方向に移動する。つまり、シール部材107aでは、変速時のみ、摺動による抵抗が生じる。特許文献1のエンジンユニットでは、シール部材の中でも、特に、シール部材103、112a、116aの抵抗が大きい。
従って、本実施形態の電子制御式無段変速装置30が有するシール部材の数は、特許文献1の電子制御式無段変速装置100が有するシール部材の数より少ない。
以上説明した本実施形態のエンジンユニット6は、以下の特徴を有する。
相対移動部73と回転部74とが接触する変換接触部70が、クランクケース部22により形成される潤滑空間22cにさらされるように潤滑空間22cに配置される。変換接触部70には、変速時に大きなトルクが作用する。そのため、変換接触部70は、潤滑剤で潤滑する必要がある。つまり、クランクケース部22により形成される潤滑空間22cにさらされた変換接触部70は、クランクケース部22に存在する共通の潤滑剤で潤滑される。従って、乾式空間31aを形成する乾式ベルトケース部31に、変換接触部70が配置される専用潤滑室を形成する専用潤滑ケース部を別途設けなくてよい。つまり、変換接触部70を、乾式空間31aから隔離するためのシール部材が不要になる。そのため、エンジンユニット6に設けられるシール部材の数を減らすことができる。その結果、シール部材による機械損失を低減することができる。つまり、燃費をより向上することできる。以上から、本発明のエンジンユニット6は、乾式ベルト32の熱劣化を防止しつつ、燃費をより向上することできる。
また、回転力変換機構72は、クランク回転軸線Acに垂直ないずれの方向に見ても、クランクウェブ21aの回転領域CWと重ならない位置に配置される。つまり、回転力変換機構72は、温度が高いクランクウェブ21aから離れた位置に配置される。回転力変換機構72により回転軸線Ac方向に移動されるプライマリ可動シーブ44は、クランクウェブ21aから離れた位置に配置される。よって、プライマリプーリ42に巻回される乾式ベルト32は、クランクウェブ21aからより離れた位置に配置される。クランクウェブ21aから離れるほど、温度は低い。そのため、乾式ベルト32の熱劣化を抑制することができる。
また、回転力伝達機構80は、クランクケース部22により形成される潤滑空間22cにさらされるように潤滑空間22cに配置される。従って、乾式空間31aを形成する乾式ベルトケース部31に、回転力伝達機構80が配置される専用潤滑室を形成する専用潤滑ケース部を、別途設けなくてよい。つまり、回転力伝達機構80を、乾式空間31aから隔離するためのシール部材が不要になる。そのため、エンジンユニット6に設けられるシール部材シール部材の数を更に減らすことができる。その結果、シール部材による機械損失を更に低減することができる。以上から、本発明のエンジンユニット6は、燃費を更に向上することできる。
また、回転部ギア83は金属で形成される。金属は樹脂よりも強度の高い。そのため、エンジンユニット6の耐久性を向上させることができる。また、回転部ギア83が樹脂で形成される場合と比較して、回転部ギア83のサイズを小さくすることができる。そして、回転部ギア83が樹脂で形成される場合と比較して、回転力伝達機構80のサイズをコンパクトにできる。
また、回転力伝達ギア機構84に含まれる回転力伝達ギア82は金属で形成される。金属は樹脂よりも強度の高い。そのため、エンジンユニット6の耐久性を向上させることができる。また、回転力伝達ギア機構84に含まれる回転力伝達ギア82が樹脂で形成される場合と比較して、回転力伝達ギア機構84に含まれる回転力伝達ギア82のサイズを小さくすることができる。そして、回転力伝達ギア機構84に含まれる回転力伝達ギア82が樹脂で形成される場合と比較して、回転力伝達機構80のサイズをコンパクトにできる。
また、プライマリ回転軸線Apは、クランク回転軸線Ac上に配置される。また、プライマリ可動シーブ44が装着されるプライマリ軸部41は、クランク軸部21と一体で構成される。そのため、回転力変換機構72および回転力伝達機構80をプライマリ軸部41の周辺に配置することができる。つまり、回転力変換機構72および回転力伝達機構80を、温度が高いクランクウェブ21aから離れた位置に配置することができる。そして、プライマリ可動シーブ44は、クランクウェブ21aから離れた位置に配置される。よって、プライマリプーリ42に巻回される乾式ベルト32は、クランクウェブ21aからより離れた位置に配置される。クランクウェブ21aから離れるほど、温度は低い。そのため、乾式ベルト32の熱劣化を抑制することができる。また、回転力変換機構72および回転力伝達機構80を、コンパクトに配置することができる。
また、エンジンユニット6は、相対移動部73が移動した移動量を検出する移動量検出部85を備える。移動量検出部85は、回転力変換機構72と接触する切り欠き部85cを有する。移動量検出部85の少なくとも切り欠き部85cは、クランクケース部22により形成される潤滑空間22cにさらされるように潤滑空間22cに配置される。そのため、移動量検出部85と回転力変換機構72とが接触する切り欠き部85cの動作が滑らかになる。そして、移動量検出部85と回転力変換機構72とが引っかかりなく動き、移動量検出部85の精度が向上する。また、切り欠き部85cが潤滑剤により潤滑されることにより、耐摩耗性が向上し、経年変化が減少し、移動量検出部85の精度が向上する。
また、変換接触部70と、クランク軸部21とが、共通の潤滑剤で潤滑される。変換接触部70を潤滑する潤滑剤と、クランク軸部21を潤滑する潤滑剤とが異なる場合、それぞれの潤滑剤が混ざらないように、変換接触部70をクランクケース部22から隔離するためのシール部材を設ける必要がある。この構成によると、変換接触部70を、クランクケース部22から隔離するためのシール部材が不要になる。そのため、エンジンユニット6に設けられるシール部材の数を減らすことができる。その結果、シール部材による機械損失を低減することができる。以上から、本発明のエンジンユニット6は、燃費をより向上することできる。
ここで、共通の潤滑剤は、オイルである。オイルはグリスと比較して粘度が低い。そのため、オイルは、潤滑空間22cに広範囲に存在することができる。つまり、潤滑空間22cに配置される変換接触部70及びクランク軸部21を容易に潤滑することができる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。また、後述する変更例は適宜組み合わせて実施することができる。
上記実施形態において、回転力変換機構72及び回転力伝達機構80が潤滑空間22cに配置されるが、それに限らない。以下に、図8及び図9に基づいて、電子制御式無段変速装置30の変形例について説明する。尚、図8及び図9において、回転力伝達機構80を模式的に示している。図8及び図9の変形例において、回転力変換機構72は、クランク回転軸線Ac方向に見て、クランクウェブ21aの回転領域CWと重なる位置に配置される。また、回転力変換機構72は、クランク回転軸線Acに垂直ないずれの方向に見ても、クランクウェブ21aの回転領域CWと重ならない位置に配置される。
例えば、図8(a)の変形例の電子制御式無段変速装置30aでは、電動モータ71の回転軸71bの一部が乾式空間31aに配置される。回転力変換機構72は、全部が潤滑空間22cにさらされる。この場合、電子制御式無段変速装置30aには、回転軸71bとクランクケース部22の間にシール部材81aが配置される。シール部材81aは、回転する回転軸71bに接触する。回転軸71bは、変速時の電動モータ71の回転に伴い回転する。つまり、シール部材81aでは、変速時のみ、回転による抵抗が生じる。即ち、図8(a)の変形例では、本実施形態と比較して、電子制御式無段変速装置30には、1個のシール部材が追加される。つまり、図8(a)の変形例では、電子制御式無段変速装置30aが有するシール部材の数は、3個である。
図8(a)の変形例では、回転力伝達ギア82は、潤滑空間22cにさらされる。回転力伝達ギア82は、回転力伝達ギア機構84に含まれるギアである。ここで、回転力伝達ギア82の回転軸82aの両端を支持する軸受部は、潤滑剤で潤滑されることが必要である。従って、回転力伝達ギア82の回転軸82aの軸受部を収容するための専用潤滑室を、乾式空間に別途設けなくてよい。また、回転力変換機構72の相対移動部73及び移動部軸受75で形成されて潤滑剤で潤滑される空間を専用潤滑室として別途設けなくてよい。また、回転部ギア83の回転軸82aの軸受部を収容するための専用潤滑室を、乾式空間31aに別途設けなくてよい。そのため、エンジンユニット6に設けられるシール部材の数を更に減らすことができる。そして、シール部材による機械損失を更に低減することができる。図8(a)の変形例では、エンジンユニット6の燃費を更に向上することできる。
また、例えば、図8(b)の変形例の電子制御式無段変速装置30bでは、電動モータ71の回転軸71b、出力ギア81、回転力伝達ギア82、及び、回転軸82aの一部が乾式空間31aに配置される。乾式空間31aに配置される出力ギア81及び回転力伝達ギア82は、合成樹脂製である。回転力変換機構72は、潤滑空間22cにさらされる。この場合、回転軸82aとクランクケース部22の間にシール部材83aが配置される。シール部材83aは、回転軸82aに接触する。回転軸82aでは、変速時の電動モータ71の回転に伴い回転する。つまり、シール部材83aでは、変速時のみ、回転による抵抗が生じる。また、回転軸82aの乾式空間31aに配置された端部を支持する軸受83bが1個のシール部材を有する。乾式空間31aに配置されている軸受83bの一端部は、1個のシール部材を有する。軸受83bの他端部は、潤滑空間22cに配置される。軸受83bのシール部材は、軸受83bに接触する。軸受83bでは、変速時の電動モータ71の回転に伴い回転する。つまり、軸受83bのシール部材では、変速時のみ、回転による抵抗が生じる。尚、軸受83bはシール部材を有さなくてもよい。例えば、軸受83bを乾式ベルトケース部31で囲まれた潤滑空間にさらして、乾式ベルトケース部31と回転軸82aとの間に1個のシール部材を配置しても良い。即ち、図8(b)の変形例では、本実施形態と比較して、電子制御式無段変速装置30bには、2個のシール部材が追加される。つまり、図8(b)の変形例では、電子制御式無段変速装置30bが有するシール部材の数は、4個である。
図8(b)の変形例では、回転部ギア83は、潤滑空間22cにさらされる。従って、回転部ギア83の回転軸82aの軸受部を収容するための専用潤滑室を、乾式空間31aに別途設けなくてよい。また、回転力変換機構72の相対移動部73及び移動部軸受75で形成されて潤滑剤で潤滑される空間を専用潤滑室として別途設けなくてよい。そのため、エンジンユニット6に設けられるシール部材の数を更に減らすことができる。そして、シール部材による機械損失を更に低減することができる。そして、図8(b)の変形例では、エンジンユニット6の燃費を更に向上することできる。
また、例えば、図8(c)の変形例の電子制御式無段変速装置30cでは、電動モータ71の回転軸71b、出力ギア81、回転力伝達ギア82、及び、回転軸82aが、乾式空間31aに配置される。また、回転力変換機構372のシーブ側ギア379が、乾式空間31aに配置される。乾式空間31aに配置される出力ギア81、回転力伝達ギア82、回転部ギア83、及び、シーブ側ギア379は、合成樹脂製である。回転力変換機構372は、相対移動部373、回転部374、移動部軸受375及び回転部軸受376を有する。回転部374の外周面には、シーブ側ギア379が設けられる。相対移動部373の外周面及び回転部374の内周面には、変換接触部370である雄ねじ及び雌ねじが形成されている。スライド部材44aの右端部の外周面には、回転部軸受376が嵌合される。回転部374の内周面には、回転部軸受376が嵌合される。相対移動部373は、図示しないねじ部等により回転不能に構成されている。また、相対移動部373は、移動部軸受375によりプライマリ回転軸線Ap方向に移動不能に構成される。回転部374は、シーブ側ギア379の回転力により回転する。そして、回転部374は、回転部374自身の回転力により、プライマリ回転軸線Ap方向に移動する。つまり、相対移動部373は、プライマリ回転軸線Ap方向に回転部374に対して相対的に移動可能に構成される。相対移動部373、回転部374の内周面、移動部軸受375は、潤滑空間22cにさらされる。回転力変換機構372の回転部軸受376、シーブ側ギア379は、乾式空間31a内に配置される。回転力変換機構372の変換接触部370は、潤滑空間22cにさらされる。この場合、電子制御式無段変速装置30cは、回転部374の外周面とクランクケース部22との間に配置されたシール部材322dを有する。シール部材322dは、回転及び摺動する回転部374に接触する。回転部374は、変速時の電動モータ71の回転に伴い回転する。また、回転部374は、変速時の電動モータ71の回転に伴い、プライマリ回転軸線Ap方向に相対的に移動する。つまり、シール部材322dでは、変速時のみ、回転による抵抗が生じる。また、シール部材322dでは、変速時において、摺動による抵抗が生じる。回転軸82aの両端部を支持する軸受83b、83cがそれぞれ1個のシール部材を有する。軸受83b、83cのシール部材は、軸受83b、83cに接触する。軸受83b、83cでは、変速時の電動モータ71の回転に伴い回転する。つまり、軸受83b、83cのシール部材では、変速時のみ、回転による抵抗が生じる。また、回転部軸受376が1個のシール部材を有する。回転部軸受376のシール部材は、回転部軸受376に接触する。回転部軸受376では、クランク軸部21の回転に伴い回転する。つまり、回転部軸受376のシール部材では、クランク軸部21が回転している間、回転による抵抗が生じる。尚、回転部軸受376はシール部材を有さなくてもよい。例えば、回転部軸受376を回転部374の内周面で形成される潤滑空間22cにさらして、回転部374のプライマリ可動シーブ44側の先端部とプライマリ可動シーブ44との間にシール部材を配置しても良い。同様に、軸受83b、83cはシール部材を有さなくてもよい。例えば、軸受83b、83cを乾式ベルトケース部31で囲まれた潤滑空間にさらして、乾式ベルトケース部31と回転軸82aとの間にシール部材を1個配置しても良い。即ち、図8(c)の変形例では、本実施形態と比較して、電子制御式無段変速装置30cには、3個のシール部材が個追加される。つまり、図8(c)の変形例では、電子制御式無段変速装置30cが有するシール部材の数は、5個である。
図8(c)の変形例では、回転力変換機構372の変換接触部70は、潤滑空間22cにさらされる。従って、乾式空間31aに、変換接触部70を潤滑剤で潤滑するための専用潤滑室を別途設けなくてよい。そのため、エンジンユニット6に設けられるシール部材の数を減らすことができる。そして、シール部材による機械損失を低減することができる。そして、図8(c)の変形例では、エンジンユニット6の燃費をより向上することできる。
また、例えば、図9(a)の変形例の電子制御式無段変速装置30dは、図8(a)の変形例の電子制御式無段変速装置30aと、回転力変換機構の構成が異なる。以下、回転力変換機構472の構成について、説明する。回転力変換機構472は、相対移動部473と回転部74を有する。相対移動部473の一部は、乾式空間31aに配置される。回転部74は、全部が潤滑空間22cにさらされる。この場合、電子制御式無段変速装置30dには、相対移動部473とクランクケース部22の間にシール部材22eが配置される。シール部材22eは、摺動する相対移動部473に接触する。相対移動部473は、変速時の電動モータ71の回転に伴い摺動する。つまり、シール部材22eでは、変速時のみ、摺動による抵抗が生じる。また、電子制御式無段変速装置30dには、相対移動部473とスライド部材44aの間にシール部材44fが配置される。シール部材44fは、回転するスライド部材44aに接触する。スライド部材44aは、クランク軸部21の回転に伴い回転する。つまり、シール部材44fでは、クランク軸部21が回転している間、回転による抵抗が生じる。即ち、図9(a)の変形例では、図8(a)の変形例と比較して、電子制御式無段変速装置30には、1個のシール部材が追加される。つまり、図9(a)の変形例では、電子制御式無段変速装置30dが有するシール部材の数は、4個である。
図9(a)の変形例の電子制御式無段変速装置30dでは、図8(a)の変形例の電子制御式無段変速装置30aの効果に加えて、シール部材を、回転する部材に接触させるシール部材と、摺動する部材に接触させるシール部材とに分けることができるという効果がある。これにより、シール部材が回転する部材及び摺動する部材の両方に接触している場合と比較して、シール部材の耐摩耗性を向上することができる。
また、例えば、図9(b)の変形例の電子制御式無段変速装置30eは、図8(c)の変形例の電子制御式無段変速装置30cと、回転力変換機構の構成が異なる。以下、回転力変換機構572の構成について、説明する。回転力変換機構572は、相対移動部573と回転部574と回転部軸受576を有する。回転部軸受576の外周面には、シーブ側ギア579が設けられる。相対移動部573の内周面及び回転部574の外周面には、変換接触部570である雄ねじ及び雌ねじが形成されている。相対移動部573は、クランクケース部22と一体で形成される。尚、相対移動部573は、クランクケース部22と図示しないねじ部等によりクランクケース部22に固定されてもよい。これにより、相対移動部573は、図示しないねじ部等により回転不能に構成されている。また、相対移動部573は、図示しないねじ部等によりプライマリ回転軸線Ap方向に移動不能に構成される。回転部574は、相対移動部573の外周面の一部を覆うカバー部574aを有する。回転部574は、シーブ側ギア579の回転力により回転する。そして、回転部574は、回転部574自身の回転力により、プライマリ回転軸線Ap方向に移動する。つまり、相対移動部573は、プライマリ回転軸線Ap方向に回転部574に対して相対的に移動可能に構成される。相対移動部573の一部及び回転部574の一部は、乾式空間31aに配置される。この場合、電子制御式無段変速装置30eには、回転部574のカバー部574aと相対移動部573の間にシール部材572aが配置される。シール部材572aは、回転及び摺動する回転部574に接触する。回転部574は、変速時の電動モータ71の回転に伴い回転すると共に摺動する。つまり、シール部材572aでは、変速時のみ、摺動による抵抗が生じる。また、シール部材572aでは、変速時のみ、回転による抵抗が生じる。また、電子制御式無段変速装置30eには、回転部軸受576にシール部材576aが配置される。シール部材576aは、回転する回転部軸受576に接触する。回転部軸受576は、クランク軸部21の回転に伴い回転する。つまり、シール部材576aでは、クランク軸部21が回転している間、回転による抵抗が生じる。即ち、図9(b)の変形例では、電子制御式無段変速装置30eが有するシール部材の数は、5個である。
図9(b)の変形例では、回転力変換機構572の変換接触部570は、潤滑空間22cにさらされる。従って、乾式空間31aに、変換接触部570を潤滑剤で潤滑するための専用潤滑室を別途設けなくてよい。そのため、エンジンユニット6に設けられるシール部材の数を減らすことができる。そして、シール部材による機械損失を低減することができる。そして、図9(b)の変形例では、エンジンユニット6の燃費をより向上することできる。
尚、図8及び図9の変形例の電子制御式無段変速装置30a〜30eが有するシール部材の数は、いずれも、特許文献1の電子制御式無段変速装置100が有するシール部材の数より少ない。
上記実施形態において、回転力伝達ギア機構84に含まれるギアは、回転力伝達ギア82のみであるが、それに限らない。例えば、図10に示すように、回転力伝達ギア機構84に含まれるギアが、回転力伝達ギア82の他、減速大ギア86及び減速小ギア87を有してもよい。また、図10において、回転力伝達機構80を模式的に示している。減速大ギア86は、減速小ギア87より径が大きい。出力ギア81は、減速大ギア86に噛合する。減速大ギア86及び減速小ギア87は、減速ギア軸86aに固定される。減速小ギア87は、回転力伝達ギア82に噛合する。
図10の変形例では、電動モータ71の回転軸71b、出力ギア81、減速大ギア86、及び、減速ギア軸86aの一部が乾式空間31aに配置される。乾式空間31aに配置される出力ギア81及び減速大ギア86は、合成樹脂製である。回転力変換機構672は、全部が潤滑空間22c内に配置される。回転力変換機構672は、相対移動部673、回転部674、移動部軸受675及び回転部軸受676を有する。回転部674の外周面には、シーブ側ギア679が設けられる。相対移動部673の外周面及び回転部674の内周面には、変換接触部670である雄ねじ及び雌ねじが形成されている。回転部ギア83は、シーブ側ギア679に噛合する。回転部674は、回転力伝達機構80から伝達された回転力により回転する。スライド部材44aの右端部の外周面には、回転部軸受676が嵌合される。回転部674の内周面には、回転部軸受676が嵌合される。相対移動部673の内周面には、移動部軸受675が嵌合される。クランク軸部41の外周面には、移動部軸受675が嵌合される。相対移動部673は、図示しないねじ部等により回転不能に構成されている。また、相対移動部673は、移動部軸受675によりプライマリ回転軸線Ap方向に移動不能に構成される。そして、回転部674は、回転部674自身の回転力により、プライマリ回転軸線Ap方向に移動する。つまり、相対移動部673は、プライマリ回転軸線Ap方向に回転部674に対して相対的に移動可能に構成される。この場合、電子制御式無段変速装置30fには、減速ギア軸86aとクランクケース部22の間にシール部材87aが配置される。また、減速ギア軸86aの乾式空間31aに配置された端部を支持する軸受87bがシール部材を有する。即ち、図10の変形例では、本実施形態と比較して、電子制御式無段変速装置30fには、シール部材が2個追加される。つまり、図10の変形例では、電子制御式無段変速装置30fが有するシール部材の数は、4個である。
図10の変形例では、回転力伝達ギア82、減速小ギア87は、潤滑空間22cにさらされる。回転力伝達ギア82及び減速小ギア87は、回転力伝達ギア機構84に含まれるギアの一部である。ここで、回転力伝達ギア82の回転軸82aの両端が支持される軸受部及び減速小ギア87の減速ギア軸86aの両端を支持する軸受部は、潤滑剤で潤滑されることが必要である。 従って、回転力伝達ギア82の回転軸82aの軸受部及び減速小ギア87の減速ギア軸86aの軸受部の一部を収容するための専用潤滑室を、乾式空間に別途設けなくてよい。また、回転力変換機構672の相対移動部673及び回転部674が接触する変換接触部670を収容するための専用潤滑室として別途設けなくてよい。また、回転部ギア83の回転軸82aの軸受部を収容するための専用潤滑室を、乾式空間31aに別途設けなくてよい。そのため、エンジンユニット6に設けられたシール部材の数を更に減らすことができる。そして、シール部材による機械損失を更に低減することができる。図10の変形例では、エンジンユニット6の燃費を更に向上することできる。そして、回転力変換機構72を、従来よりもコンパクトにできる。よって、エンジンユニット6の大型化を抑制できる。
尚、図10の変形例において、回転力変換機構72は、クランク回転軸線Ac方向に見て、クランクウェブ21aの回転領域CWと重なる位置に配置される。また、回転力変換機構72は、クランク回転軸線Acに垂直ないずれの方向に見ても、クランクウェブ21aの回転領域CWと重ならない位置に配置される。
上記実施形態において、プライマリ軸部41は、クランク軸部21に巻き掛けられているカムチェーン28cの左側の部分としているが、それに限らない。プライマリ軸部41を、クランクウェブ21aの左側に配置される軸受27bの左側の部分としてよい。
上記実施形態において、クランク軸部21及びプライマリ軸部41が一体で成形されているがそれに限らない。クランク軸部21及びプライマリ軸部41が、別々に成形されていてもよい。そして、別々に成形されたクランク軸部21及びプライマリ軸部41が一体となるように構成されていてもよい。この場合、プライマリ回転軸線Apは、クランク回転軸線Ac上に配置される。また、プライマリ回転軸線Apは、クランク回転軸線Acと平行に配置されてもよい。プライマリ回転軸線Apは、クランク回転軸線Acと平行に配置されている変形例について、図11及び図12に基づいて説明する。
図11の変形例では、クランク回転軸線Ac及びプライマリ回転軸線Apが、車両前後方向に平行に並んで形成される。図11(a)の変形例において、回転力変換機構72の一部は、クランク回転軸線Ac方向に見て、クランクウェブ21aの回転領域CWと重なる位置に配置される。また、回転力変換機構72は、クランク回転軸線Acに垂直ないずれの方向に見ても、クランクウェブ21aの回転領域CWと重ならない位置に配置される。図11(b)の変形例において、回転力変換機構72の一部は、クランク回転軸線Ac方向に見て、クランクウェブ21aの回転領域CWと重なる位置に配置される。また、回転力変換機構72は、クランク回転軸線Acに垂直ないずれの方向に見ても、クランクウェブ21aの回転領域CWと重ならない位置に配置される。図11(c)の変形例において、回転力変換機構72は、クランク回転軸線Ac方向に見て、クランクウェブ21aの回転領域CWと重ならない位置に配置される。また、回転力変換機構72の一部は、クランク回転軸線Acに垂直ないずれの方向に見ても、クランクウェブ21aの回転領域CWと重なる位置に配置される。
図11(a)〜(c)の変形例では、クランク回転軸線Ac及びプライマリ回転軸線Apが、平行に配置される。クランク軸部21の2つのクランクウェブ21aより右方には、クランク軸側動力伝達ギア91が装着される。プライマリ軸部41の車両左右方向の右端部には、プライマリ軸側動力伝達ギア92が装着される。クランク軸側動力伝達ギア91及びプライマリ軸側動力伝達ギア92は、噛合されて、動力伝達ギア機構90を構成する。また、図11(a)、(b)の変形例では、プライマリ軸部41は、軸受41aにより、クランクケース部22に支持される。また、プライマリ軸部41は、軸受41bにより、ギアケース部61に支持される。図11(a)、(b)の変形例において、電子制御式無段変速装置30g、30hが有するシール部材の数は、本実施形態と同じである。また、図11(c)の変形例では、プライマリ軸部41は、軸受41bにより、ギアケース部61に支持される。プライマリ軸部41は、軸受41cにより、図示しない乾式ベルトケース部31に支持される。軸受41a及び軸受41bは、潤滑空間22c内に配置される。軸受41cは、乾式空間31a内に配置される。図11(c)の変形例において、電子制御式無段変速装置30iが有するシール部材の数は、本実施形態と比較して、乾式空間31a内に配置された軸受41cが有するシール部材の分だけ1個増える。つまり、図11(c)の変形例では、電子制御式無段変速装置30iが有するシール部材の数は、4個である。尚、図11(a)〜(c)の変形例の電子制御式無段変速装置30g〜30iが有するシール部材の数は、いずれも、特許文献1の電子制御式無段変速装置100が有するシール部材の数より少ない。
図11(a)〜(c)の変形例では、クランク回転軸線Ac及びプライマリ回転軸線Apが、平行に配置されるまた、クランク軸部21とプライマリ軸部41は、クランク軸側動力伝達ギア91及びプライマリ軸側動力伝達ギア92で接続される。そのため、回転力変換機構72をプライマリ軸部41の周辺に配置することができる。そして、回転力伝達機構80を、クランク軸部21とプライマリ軸部41の間に配置することができる。つまり、回転力変換機構72および回転力伝達機構80を、温度が高いクランクウェブ21aから離れた位置に配置することができる。そして、プライマリ可動シーブ44は、クランクウェブ21aから離れた位置に配置される。よって、プライマリプーリ42に巻回される乾式ベルト32は、クランクウェブ21aからより離れた位置に配置される。クランクウェブ21aから離れるほど、温度は低い。そのため、乾式ベルト32の熱劣化を抑制することができる。
また、図12に基づいて、図11(a)〜(c)の変形例において、車両左右方向から見たクランク軸部21及びプライマリ軸部41の配置について、説明する。尚、図12では、クランク軸部21を、クランクウェブ21aの回転領域を含み、クランク軸部21の回転中心を中心とした円形に模式的に表示している。図12(a)〜(c)は、エンジン本体部20と、クランク軸部21と、プライマリプーリ42と、セカンダリプーリ52と、乾式ベルト32を示した模式図である。図12(a)〜(c)に示すように、クランク回転軸線Ac及びプライマリ回転軸線Apが、平行に配置され、車両左右方向から見て、クランク軸部21の一部と、プライマリプーリ42の一部とが重なる。
図12(a)の例では、クランク回転軸線Ac及びプライマリ回転軸線Apが、平行に、且つ、車両前後方向に並んで配置される。図12(b)の実線及び一点鎖線で示す例では、クランク回転軸線Ac及びプライマリ回転軸線Apが、平行に、且つ、車両上下方向に並んで配置される。図12(c)の一点鎖線で示す例では、クランク回転軸線Ac及びプライマリ回転軸線Apが、平行に、且つ、車両前後方向に並んで配置されるとともに、車両上下方向に並んで配置される。
上記実施形態において、回転力変換機構の回転部は、プライマリ回転軸線方向に移動不能に構成されているが、それに限らない。回転力変換機構の回転部は、プライマリ回転軸線方向に移動可能に構成されていても良い。
上記実施形態において、回転力変換機構の相対移動部及び回転部は、台形ねじで構成されているが、それに限らない。相対移動部及び回転部に、他のねじ構造が用いられてもよい。例えば、相対移動部及び回転部が、ボールねじ及びボールねじに噛み合うボールねじ軸で構成されてもよい。また、相対移動部及び回転部が、螺旋状のスプライン溝を有するスプライン軸及びスプライン溝に嵌合するスプラインナットで構成されてもよい。
更に、回転力変換機構が、相対移動部であるカム及び回転部の代わりに、カム及びカムと接触するカムフォロアからなるカム機構を設けてもよい。回転力変換機構が、カム機構である場合の変形例について、図13に基づいて、説明する。尚、上記実施形態と同じ部材については、同じ符号を付してその説明を省略する。回転力変換機構172は、カム174及びカム174と接触するカムフォロア173を有する。カム174は、本発明の回転部に相当する。カムフォロア173は、本発明の相対移動部に相当する。カムフォロア173は、球体部173aと従動部173bとを有する。カム174は、円筒状に形成され、中心にプライマリ軸部41が挿入される空洞部174aを有する。カム174は、空洞部174aの内周に回転部軸受76が設けられる。回転部軸受76は、プライマリ軸部41の外周に装着される。また、カム174は、シーブ側ギア179を有する。これにより、カム174は、回転可能に構成される。プライマリ回転軸線Ap方向において、後述する従動部173bと対向するカム174の面は、球体部173aが回転可能に嵌合される溝部174bが形成される。溝部174bは、円状に形成される。溝部174bは、従動部173bと対向するカム174の面の周方向の角度によって、その深さが変化するように構成される。従動部173bは、円筒状に形成され、中心にプライマリ軸部41が挿入される空洞部173cを有する。空洞部173cの内周に移動部軸受75が設けられる。移動部軸受75は、プライマリ軸部41の外周に装着される。また、従動部173bは、回り止め部77aを有する。回り止め部77aは、凸部178に挿入される。凸部178は、クランクケース部22に形成される。これにより、従動部173bは、回転不能に形成される。プライマリ回転軸線Ap方向において、カム174と対向する従動部173bの面は、球体部173aが回転可能に嵌合される溝部173dが形成される。溝部173dは、円状に形成される。溝部173dは、カム174と対向する従動部173bの面の周方向の角度によって、その深さが変化するように構成される。球体部173a、溝部174b、及び、溝部173dが、本発明の変換接触部170である。変換接触部170を含む回転力変換機構172は、潤滑空間22cにさらされる。
シーブ側ギア179は、回転力伝達機構80から伝達された回転力により回転する。これにより、カム174は、回転力伝達機構80から伝達された回転力により回転する。これにより、カム174の溝部174bの深さが変化すると共に、球体部173aが転がる。一方、従動部173bは、回転不能に構成される。これにより、従動部173bは、プライマリ回転軸線Ap方向に移動する。つまり、カムフォロア173は、カム174の回転力により、プライマリ回転軸線Ap方向にカム174に対して相対的に移動可能に構成される。カムフォロア173がプライマリ回転軸線Ap方向に移動すると、スライド部材44aと連結されたプライマリ可動シーブ44が、その回転軸線Ap方向に移動する。尚、カム174の回転方向が正回転か逆回転かによって、カムフォロア173が移動する回転軸線Ap方向の向きが変化する。
尚、回転力変換機構が、カム機構である場合、溝部を有する円筒状のカムと、溝部に挿入されたカムフォロアで構成されてもよい。この場合、カムは本発明の回転部に相当し、カムフォロアは本発明の相対移動部に相当する。
上記実施形態において、プライマリプーリは、1つのプライマリ可動シーブ及び1つのプライマリ固定シーブを有するがそれに限らない。プライマリプーリは、2つのプライマリ可動シーブを有してもよい。プライマリプーリが2つのプライマリ可動シーブを有する場合の電子制御式無段変速装置の変形例について、図14に基づいて、説明する。尚、上記実施形態と同じ部材については、同じ符号を付してその説明を省略する。電子制御式無段変速装置230は、無段変速機240と、回転力伝達機構80と、回転力変換機構272とを有する。
無段変速機240は、上記実施形態の無段変速機40とプライマリプーリが異なるのみであり、プライマリプーリについて説明する。プライマリプーリ242は、プライマリ軸部41に装着される。プライマリプーリ242は、プライマリ可動シーブ244a、244b、及び、図示しないカラー部材を有する。カラー部材243は、円筒状に形成される。カラー部材243は、プライマリ軸部41に締結される。カラー部材243は、クランク軸部21及びプライマリ軸部41と共に回転する。カラー部材243の外周面には、プライマリ可動シーブ244a、244bの回転軸線左右方向に沿ってスリット(図示せず)が形成される。プライマリ可動シーブ244a、244bは、スプライン(図示せず)を有する。スプラインは、カラー部材243のスリットに挿入される。スプラインは、スリットに沿って、プライマリ回転軸線Ap方向に移動可能に構成される。これにより、プライマリ可動シーブ244a、244bは、カラー部材243のスリットに沿って、プライマリ可動シーブ244a、244bの回転軸線方向に移動可能である。一方、スプラインは、スリット内でプライマリ可動シーブ244a、244bの回転方向に移動不能に構成される。これにより、プライマリ可動シーブ244a、244bは、クランク軸部21及びプライマリ軸部41と共に回転する。
回転力変換機構272は、相対移動部273a、273b、回転部274を含む。回転力変換機構272は、プライマリ可動シーブ244a、244bを、プライマリ可動シーブ244a、244bの回転軸線方向に移動させる。回転部274は、シーブ側ギア79の軸部である。回転部274は、シーブ側ギア79の回転力により回転する。シーブ側ギア79は、回転力伝達機構80から伝達された回転力により回転する。相対移動部273a、273bは、回転部274と接触する。相対移動部273a、273b及び回転部274は、例えば、ねじ機構である。相対移動部273a、273bは、回転部274の回転力により、プライマリ可動シーブ244a、244bの回転軸線方向に回転部274に対して相対的に移動可能に構成される。相対移動部273a、273bは、プライマリプーリ244の幅が変化するように構成される。
上記実施形態において、電動モータの回転軸は、端部が軸受で支持されてない。しかし、本発明のエンジンユニットでは、電動モータの回転軸は、端部が軸受で支持されてもよい。そして、電動モータの回転軸が乾式空間に配置される場合、電動モータの回転軸を支持する軸受は、1個のシール部材を有する。回転軸の軸受のシール部材は、回転軸の軸受に接触する。回転軸の軸受では、変速時の電動モータの回転に伴い回転する。つまり、回転軸の軸受のシール部材では、変速時のみ、回転による抵抗が生じる。尚、回転軸の軸受はシール部材を有さなくてもよい。例えば、回転軸の軸受を乾式ベルトケース部で囲まれた潤滑空間にさらして、乾式ベルトケース部と回転軸との間に1個のシール部材を配置しても良い。
上記実施形態において、移動量検出部は、相対移動部と接触して回転することにより、プライマリ可動シーブがその回転軸線方向に移動した移動量を検出する回転数センサである。しかし、移動量検出部は、プライマリ可動シーブがその回転軸線方向に移動した移動量を検出するセンサであればよい。例えば、移動量検出部は、ギアを組み合わせて構成され、ギアの回転量からプライマリ可動シーブがその回転軸線方向に移動した移動量を検出するものであってもよい。
上記実施形態において、エンジン本体部は、シリンダ軸線を大きく前傾させて、車体フレームに搭載されるが、それに限らない。図12(c)に示すように、エンジン本体部は、シリンダ軸線がより上下方向に近づくように、車体フレームに搭載されてもよい。シリンダ軸線の水平方向に対する傾斜角度は、45度より大きく90度以下である。
本発明のエンジンユニットのエンジン本体部は、多気筒エンジンであってもよい。本発明のエンジンユニットのエンジン本体部は、2ストロークエンジンであってもよい。本発明のエンジンユニットのエンジン本体部は、自然空冷式のエンジンであっても良い。本発明のエンジンユニットのエンジン本体部は、水冷式のエンジンであっても良い。
本発明のエンジンユニットが適用される車両として、自動二輪車を例示した。しかし、本発明の車両は、エンジンユニットの動力で移動する車両であれば、どのような車両であってもよい。本発明が適用される車両は、自動二輪車以外の鞍乗型車両であってもよい。鞍乗型車両とは、乗員が鞍にまたがるような状態で乗車する車両全般を指す。鞍乗型車両には、自動二輪車、三輪車、四輪バギー(ATV:All Terrain Vehicle(全地形型車両))、水上バイク、スノーモービル等が含まれる。本発明が適用される車両は、鞍乗型車両でなくてもよい。また、本発明が適用される車両は、運転者が乗車しないものであってもよい。また、本発明が適用される車両は、人を乗せずに走行可能なものであってもよい。これらの場合、車両の前方向とは、車両の前進方向のことである。