JP2004251391A - エンジンのvベルト式無段変速装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】部品同士の摺動や摩擦による温度上昇や金属屑が発生するのを防止できるエンジンのVベルト式無段変速装置を提供する。
【解決手段】クランク室Aとベルト室Cとを画成する隔壁21aによりクランク軸(入力軸)6及び出力軸25を軸支し、該クランク軸6,出力軸25の上記ベルト室C内部分にそれぞれそれぞれ駆動プーリ51,従動プーリ52を装着するとともに、該両プーリ51,52をVベルト53により連結してなるエンジンのVベルト式無段変速装置において、上記出力軸25のクランク室A内部分に該出力軸25と同軸をなすようにカム式トルクダンパ71を配設し、該トルクダンパ71に潤滑油を供給する。
【選択図】 図2
【解決手段】クランク室Aとベルト室Cとを画成する隔壁21aによりクランク軸(入力軸)6及び出力軸25を軸支し、該クランク軸6,出力軸25の上記ベルト室C内部分にそれぞれそれぞれ駆動プーリ51,従動プーリ52を装着するとともに、該両プーリ51,52をVベルト53により連結してなるエンジンのVベルト式無段変速装置において、上記出力軸25のクランク室A内部分に該出力軸25と同軸をなすようにカム式トルクダンパ71を配設し、該トルクダンパ71に潤滑油を供給する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンのVベルト式無段変速装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば自動二輪車では、エンジン動力を後輪に伝達する動力伝達機構としてVベルト式無断変速装置を採用する場合がある。この種のVベルト式無段変速装置では、エンジン動力が伝達される入力軸,例えばクランク軸に巻き掛け径可変式の駆動プーリを装着するとともに、後輪側に連結された出力軸に巻き掛け径可変式の従動プーリを装着し、両プーリをVベルトにより連結するとともに、該Vベルトを含む上記駆動,従動プーリを略気密なベルト室内に収容した構造が一般的である。
【0003】
また上記Vベルト式無段変速装置では、エンジンからのトルク変動を緩和するために、従来、例えば従動プーリの固定プーリ半体と従動軸との間にトーショナルダンパを介設する場合がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このトーショナルダンパは、従動軸に固定されたフランジと、該フランジを挟むように固定プーリ半体に固定された一対のサイドプレートとの間に複数のトーションばねを介設した概略構造となっている。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−173392号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来のように、トーショナルダンパをベルト室内に配置した構造を採用した場合には、トーショナルダンパを構成する部品同士の摺動や摩擦によってダンパ自体が発熱し、ベルト室内が異常昇温し、Vベルトやダンパ自体の耐久性が低下するといった問題や、金属屑が発生するという問題がある。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、ダンパ部品同士の摺動や摩擦による温度上昇や金属屑の発生を防止できるエンジンのVベルト式無段変速装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、クランク室とベルト室とを画成する隔壁により入力軸及び出力軸を軸支し、該入力軸,出力軸の上記ベルト室内部分にそれぞれ駆動プーリ,従動プーリを装着するとともに、該両プーリをVベルトにより連結してなるエンジンのVベルト式無段変速装置において、上記出力軸のクランク室内部分にエンジンからのトルク変動を吸収する機械式トルクダンパを出力軸と同軸をなすように配設し、該トルクダンパに潤滑油を供給するようにしたことを特徴としている。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1において、上記出力軸のクランク室内部分には湿式の遠心クラッチが装着されており、該遠心クラッチと上記出力軸との間に上記トルクダンパが介設されていることを特徴としている。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2において、上記遠心クラッチは、上記出力軸から動力が入力される入力側部材と出力側部材との間に動力伝達部材を介在させてなり、上記トルクダンパは出力軸側に装着されたカムプレートのカム面と上記入力側部材の動力伝達部材を挟んだ外壁に形成されたカム面とを軸方向に圧接させてなり、上記両カム面同士の摩擦力により上記トルク変動を吸収するカム式トルクダンパであることを特徴としている。
【0011】
請求項4の発明は、請求項3において、上記遠心クラッチの入力側部材は出力軸に対して相対回転可能となっており、上記カムプレートは、出力軸と共に回転し、かつ該出力軸のフランジ部に対して軸方向に押圧固定されていることを特徴としている。
【0012】
請求項5の発明は、請求項2ないし4の何れかにおいて、上記遠心クラッチは、碗状のアウタドラムとインナドラムとの間に複数のクラッチ板を配設し、遠心力によるウエイトの径方向外方への移動によりクラッチ板同士を圧接させるよう構成されており、上記アウタドラムの軸芯部には該アウタドラムの上記インナドラムと反対側に開口する凹部が上記ウエイトと出力軸との間に位置するよう凹設されており、該凹部内に上記トルクダンパが収納されていることを特徴としている。
【0013】
【発明の作用効果】
請求項1の発明に係るVベルト式無段変速装置によれば、出力軸のクランク室側部分に機械式トルクダンパを同軸をなすように装着し、該トルクダンパをクランク室内の潤滑油により潤滑されるようにしたので、部品同士の摺動,摩擦によって焼き付いたり,金属屑が発生したりするのを防止でき、寿命を延長できる。
【0014】
またトルクダンパを出力軸に設けたので、クランク軸に設ける場合に比べてクランク軸の剛性確保が容易である。即ち、クランク軸上に機械式トルクダンパを設ける場合、該トルクダンパを潤滑油内に位置させる必要があることからクランク軸を軸支する隔壁よりクランクウェブ側にトルクダンパを配置することとなる。このようにするとクランクウェブから軸支部までの寸法がトルクダンパの分だけ大きくなり、それだけクランク軸の支持剛性が低下する。
【0015】
請求項2の発明では、出力軸のクランク室内部分に湿式の遠心クラッチを装着し、該遠心クラッチと出力軸との間にトルクダンパを配置したので、遠心クラッチに供給された潤滑油がトルクダンパにも供給されることとなり、トルクダンパの潤滑性を確保することができる。
【0016】
請求項3の発明では、トルクダンパとしてカム式ダンパを採用したので、該トルクダンパを、小径に構成できるとともに、トルクダンパのカム面同士を潤滑でき、カム面同士の摺動による金属粉の発生を防止できる。また遠心クラッチの入力側部材の外壁を利用してトルクダンパを構成することができ、構造を簡素化できるとともに部品点数を削減できる。
【0017】
請求項4の発明では、遠心クラッチの入力側部材は出力軸に対して相対回転可能であり、カムプレートは出力軸に固定されているのでトルク変動を確実に吸収できる。
【0018】
請求項5の発明では、アウタドラムの軸芯部に反インナドラム側に開口する凹部をウエイトと出力軸との間に位置するよう形成し、該凹部内にトルクダンパを収納したので、ウエイトの配置によって必然的に生じるウエイトと出力軸との間の空間を利用してトルクダンパを配置でき、出力軸の軸長さを大きくすることなくトルクダンパを配設することができ、装置全体をコンパクトにできる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0020】
図1ないし図6は、本発明の一実施形態によるエンジンのVベルト式無段変速装置を説明するための図であり、図1はVベルト式無段変速装置を備えたエンジンユニットの断面図、図2は無段変速装置の断面図、図3は駆動プーリのトルクダンパ部分の断面図、図4は遠心クラッチのトルクダンパ部分の断面図、図5はトルクダンパの側面図、図6(a),(b)はトルクダンパの動作を示す図である。なお、本実施形態でいう前後,左右とは、各図面の紙面におけるクランク軸直角方向を前後といい、クランク軸方向を左右という。
【0021】
図において、1は自動二輪車用エンジンユニットを示しており、該エンジンユニット1は、エンジン本体2にVベルト式無段変速装置3を一体化したものであり、不図示の車体フレームの前輪と後輪との間の中央部に搭載されている。
【0022】
上記エンジン本体2は、空冷式4サイクル単気筒エンジンであり、シリンダブロック4の上合面にシリンダヘッド5を結合するとともに、下合面にクランク軸6が収納された油密なクランク室Aを有するクランクケース7を結合した概略構造を有している。
【0023】
上記シリンダヘッド5の下合面には燃焼凹部5aが形成され、該燃焼凹部5aには点火プラグ8が挿入されている。また上記シリンダブロック4の左側部にはシリンダヘッド5内とクランクケース7内とに連通するチェーン室4aが形成されており、該チェーン室4aには上記クランク軸6と不図示の吸気,排気バルブを開閉駆動するカム軸9とを連結するタイミングチェーン10が配設されている。
【0024】
上記シリンダブロック4のシリンダボア4b内にはピストン11が摺動自在に挿入配置されており、該ピストン11はコンロッド12により上記クランク軸6の左右クランクアーム6a,6aを結合するクランクピン13に連結されている。
【0025】
上記クランク軸6の軸方向左端部には発電機14が装着されている。この発電機14はクランク軸6にテーパ嵌合されたスリーブ15にロータ16を固着するとともに、該ロータ16に対向するように配設されたステータ17を発電機カバー18に固定した構造となっている。
【0026】
上記クランクケース7はクランク軸方向左側の左側クランクケース部20と右側の右側クランクケース部21とからなる左右分割タイプのものである。この左,右側クランクケース部20,21はクランク軸直角方向に延びる隔壁20a,21aを有しており、各隔壁20a, 21aにより上記クランク軸6のジャーナル部6b,6bが軸受22,22を介して支持されている。上記左側クランクケース部20の外側開口に上記発電機カバー18が装着されている。
【0027】
上記クランクケース7内のクランク軸6の後方には出力軸25が該クランク軸6と平行に配設されている。この出力軸25の軸方向左側にはスプロケット駆動軸26が同軸をなすように配置され、該駆動軸26の左端部は左側クランクケース部20から外側に突出しており、該左端部には後輪駆動用スプロケット27が固着されている。
【0028】
上記スプロケット駆動軸26の右端部にはフランジ部26aが形成され、該フランジ部26aはこれの凹部内に嵌装された軸受28を介して出力軸25の左端部を軸支している。上記出力軸25と駆動軸26とは減速歯車機構を介して連結されている。この減速歯車機構は、出力軸25に相対回転自在に装着された一次減速小ギヤ30と、上記出力軸25の前側に並列配置された減速軸31の一次減速大ギヤ32とを噛合させ、該減速軸31に一体形成された二次減速小ギヤ31aと上記駆動軸26に一体形成された二次減速大ギヤ26bとを噛合させた構造となっている。
【0029】
上記出力軸25には湿式遠心クラッチ34が装着されている。この遠心クラッチ34は、左側方に開口する碗状のアウタドラム(入力側部材)35を後述するカムプレート91ひいては出力軸25に対して相対回転可能に装着するとともに、該アウタドラム35内に位置するようにインナドラム(出力側部材)37を装着し、該インナドラム37を上記一次減速小ギヤ30に共に回転するようにスプライン嵌合した概略構造となっている。
【0030】
上記アウタドラム35内には、複数枚のアウタクラッチ板38と該アウタクラッチ板38の両端に位置する2枚の押圧プレート39とが該アウタドラム35に、これと共に回転するように係止されている。また各アウタクラッチ板38の間,アウタクラッチ板38と押圧プレート39との間にはそれぞれインナクラッチ板40が配設され、該各インナクラッチ板40は上記インナドラム37にこれと共に回転するように係止されている。上記アウタクラッチ板38,インナクラッチ板40により動力伝達部材が構成されている。
【0031】
上記アウタドラム35の内側にはカム面35aが形成され、該カム面35aと押圧プレート39との間にウェイト41が配設されている。このウェイト41はアウタドラム35の回転に伴う遠心力により半径方向外方のクラッチ接続方向に移動し、押圧プレート39を押圧してアウタ,インナクラッチ板38,40同士を接続状態とする。このようにして出力軸25の回転がアウタドラム35から各クラッチ板38,40を介してインナドラム37に伝達され、該インナドラム37から減速歯車機構を介してスプロケット駆動軸26に伝達される。なお、図1,図2において、遠心クラッチ34の軸線より上側部分は遮断状態を、下側部分は接続状態を示している。
【0032】
上記右側クランクケース部21にはこれの隔壁21aをクランク軸方向左側に凹設してなるクラッチ室Bが形成されており、該クラッチ室B内に上記遠心クラッチ34が収納されている。このクラッチ室Bはクランク室Aに連通しており、該クラッチ室Bにはコンロッド12とクランクピン13との摺動連結部に供給された潤滑油が流入する。上記クラッチ室Bの右側方には遠心クラッチ34を出し入れできる大きさのクラッチ開口21bが形成されており、該クラッチ開口21bには該開口21bを油密に閉塞するクラッチカバー43が着脱可能にボルト締め固定されている。
【0033】
上記出力軸25は、これの軸方向中央部が上記クラッチカバー43の軸芯部により軸受44を介して、また左端部が隔壁21aのクラッチ室Bの底部を構成する底壁部21cにより軸受45を介してそれぞれ軸支されている。
【0034】
上記右側クランクケース部21の右外側には若干の隙間aをあけてベルト室Cを構成する変速機ケース47が接続されている。この変速機ケース47は、クランク軸方向外側に開口する有底箱状のケース本体48と、該ケース本体48の開口を閉塞するケースカバー49とを有し、ボルト50により上記右側クランクケース部21に共締め固定されている。
【0035】
上記変速機ケース47内には上記クランク軸(入力軸)6及び出力軸25の各右側端部6c,25cが挿入配置されている。このクランク軸6の右側端部6cには駆動プーリ51が装着され、上記出力軸25の右側端部25cには従動プーリ52が装着されており、上記駆動プーリ51と従動プーリ52とはVベルト53により連結されている。
【0036】
上記Vベルト53は、樹脂製のものであり、例えばポリアミド樹脂にカーボン繊維又はアラミド繊維を混入させて横H形状に成形してなる多数の樹脂ブロック53aを並べて配置し、各樹脂ブロック53aを超耐熱ゴム製の環状の連結部材53bで連結した概略構造を有している。なお、上記Vベルトとしてゴム製ベルトを採用してもよい。
【0037】
上記駆動プーリ51は、上記クランク軸6の右側端部6cに相対回転可能に装着された円筒状のスリーブ54と、該スリーブ54の軸方向外端部に一体形成された概ね円板状の駆動側固定プーリ半体55と、該固定プーリ半体55のクランク軸方向内側に配設された同じく円板状の駆動側可動プーリ半体56とを備えている。この可動プーリ半体56の軸芯部にはボス部56aが一体形成されており、該ボス部56aは上記スリーブ54の外周面に軸方向移動可能にかつ該スリーブ54と共に回転するように装着されている。
【0038】
上記クランク軸6の可動プーリ半体56のクランク軸方向内側にはカムプレート57が装着され、該カムプレート57は上記スリーブ54の径方向中心部に配置された左,右のサークリップ58a,58bにより軸方向位置が規制され、かつ該スリーブ54と共に回転するように嵌合している。なお、上記カムプレート57を固定する場合、左側のサークリップ58aに代えてナットにより締結固定してもよい。上記カムプレート57と可動プーリ半体56との間にはウェイト59が半径方向に移動可能に配設されている。ここで、駆動プーリ51のクランク軸線より図示上側部分は最大巻き掛け径となるトップ位置を、下側部分は最小巻き掛け径となるロウ位置を示している。
【0039】
上記従動プーリ52は、上記出力軸25の右側端部25cにスプライン結合された円筒状のスリーブ60と、該スリーブ60の軸方向内端部に一体形成された概ね円板状の従動側固定プーリ半体61と、該固定プーリ半体61のクランク軸方向外側に軸方向に移動可能に配設された従動側可動プーリ半体62とを備えている。
【0040】
上記可動プーリ半体62は上記スリーブ60に軸方向移動可能に装着された円筒状のスライドカラー63の内端部に固着されている。このスライドカラー63には軸方向に延びるスリット63aが周方向に所定角度間隔をあけて形成され、各スリット63a内には上記スリーブ60に植設固定されたガイドピン64が係合している。これにより可動プーリ半体52は固定プーリ半体61と共に回転するようになっている。
【0041】
上記スリーブ60の外端部にはばね受けプレート65がサークリップ65aにより固定され、該ばね受けプレート65と可動プーリ半体62との間には該可動プーリ半体62を固定プーリ半体61側に付勢するコイルスプリング66が介設されている。
【0042】
上記スリーブ60は出力軸25の右外端部に螺着されたロックナット67により軸方向移動不能に締結固定されている。このロックナット67は上記スリーブ60内に没入するように挿入配置されており、これによりコイルスプリング66の必要ばね長さを確保しつつ出力軸25の外側への出っ張りを小さくしている。ここで、従動プーリ52の出力軸線より図示上側部分は最大巻き掛け径となるロウ位置を、下側部分は最小巻き掛け径となるトップ位置を示している。
【0043】
クランク軸6の回転が上昇するにつれてウェイト59が遠心力で径方向外側に移動し、これに伴って駆動側可動プーリ半体56が軸方向外側に移動し、これにより駆動プーリ51の巻き掛け径が大きくなるとともに、従動側可動プーリ半体62がコイルスプリング66を圧縮して軸方向外側に移動し、もって従動プーリ52の巻き掛け径が小さくなる。クランク軸6の回転が下がると、ウェイト59が内側に移動して駆動側可動プーリ半体56の軸方向内側への移動を許容し、従動側可動プーリ半体62がコイルスプリング66により付勢されて軸方向内側に移動し、もって駆動プーリ51の巻き掛け径が小さくなるとともに、従動プーリ52の巻き掛け径が大きくなる。
【0044】
上記変速機ケース47のケースカバー49の外壁部には筒状の空気導入ダクト69が着脱可能にボルト締め固定されている。この空気導入ダクト69は空気吸込口69aが車両前方,つまり走行方向に向くように形成されており、該吸込口69aには空気を濾過するフィルタ69bが配設されている。また上記空気導入ダクト69の下流側導入口69cに続いて空気案内部69dがベルト室C内の駆動側固定プーリ半体55に対向するように形成されている。
【0045】
上記ケース本体48の底壁部48aの駆動プーリ51の後側に臨む部分,及び従動プーリ52の後側に臨む部分にはそれぞれ前,後排出口48b,48cが形成されている。
【0046】
上記空気導入ダクト69から導入された冷却空気は駆動プーリ51側から従動プーリ52側に流れ、この間に後述するトルクダンパ70,Vベルト53を冷却しつつ前,後排出口48b,48cから外部に排出される。この前,後排出口48b,48cから排出された冷却空気は右側クランクケース部21との隙間aを通って放出される。この際に右側クランクケース部21の隔壁21a,クラッチカバー43からの熱を吸収して放熱することとなる。これによりクランク室A,クラッチ室B側からのエンジン熱がベルト室C側に伝わるのを抑制している。
【0047】
そして、上記クランク軸6と駆動側固定プーリ半体55との間にはゴム式トルクダンパ70が、また上記出力軸25と遠心クラッチ54のアウタドラム35との間にはカム式トルクダンパ71がそれぞれ配設されている。これらトルクダンパ70,71は、エンジンのトルク変動を吸収して動力伝達系部品への衝撃荷重を緩和するためのものであり、詳細には以下の構成となっている。
【0048】
主として、図2,図3に示すように、上記クランク軸6の右側端部6cはジャーナル部6bより小径となっており、これによりジャーナル部6bと右側端部6cとの境界には段部6dが形成されている。この段部6dに上記スリーブ54の内端面が当接しており、もってスリーブ54の左方への移動が規制されている。
【0049】
また上記右側端部6cの軸芯には潤滑油通路6eが形成され、該潤滑油通路6eは右側端部6cとスリーブ54との摺動部に連通接続されている。この摺動部には、上記コンロッド12とクランクピン13との摺動連結部に供給される潤滑油の一部が上記潤滑油通路6eを介して供給される。また駆動側固定プーリ半体55とクランク軸6との間にはオイルシール73が嵌装され、上記スリーブ54の内端部と右側クランクケース部21の隔壁21aとの間はシール部材72が嵌装されている。これによりクランク室A内の潤滑油がベルト室C内へ流入するのを防止している。
【0050】
上記トルクダンパ70は、ベルト室C内の駆動側固定プーリ半体55の軸方向外側面に略対向するように、かつクランク軸6と同軸をなすように配設されている。このトルクダンパ70は、内筒75と該内筒75の外側に同心円をなすように配置された外筒76との間に環状のゴム部材77を配置し、該ゴム部材77を内筒75,外筒76に焼き付け固定した構造となっている。
【0051】
上記内筒75の軸方向寸法d1は外筒76の軸方向寸法d2より概ね2倍程度大きく形成されている。またこれに伴ってゴム部材77は内筒75から外筒76側に行くに従って軸方向の肉厚が略直線的に小さくなっている。
【0052】
上記内筒75の内周面には環状の内筒固定部材78が固着されている。該内筒固定部材78はキー部材79を介して上記クランク軸6の右外端部に係合され、さらにナット80により着脱可能に締結固定されている。また内筒固定部材78の右側軸芯部には凹部78aが凹設されており、該凹部78a内に上記ナット80が没入するように挿入配置されている。これによりクランク軸6の軸方向外側への突出量を小さくしている。
【0053】
上記外筒76の外周面には環状の外筒固定部材81が固着されている。この外筒固定部材81にはクランク軸方向右外側に突出する送風羽根81bを周方向に所定角度間隔をあけて一体形成してなる送風ファン81aが形成されている。そして上記送風ファン81aの径方向内側に上記ゴム部材77が位置しており、また上記各送風羽根81bは上記冷却空気の導入口69c及び空気案内部69dに近接している。クランク軸6の回転に伴ってトルクダンパ70が回転し、送風ファン81aが上記空気導入ダクト69を介して導入口69cから冷却空気を吸い込み、この吸込まれた冷却空気がゴム部材77に当たることとなる。
【0054】
上記外筒固定部材81の送風羽根81bの間にはボルト孔81cが形成されており、各ボルト孔81cに挿入されたボルト82を上記駆動側固定プーリ半体55の外周部に突出形成されたボス部55aに締め付けることにより上記外筒76は固定プーリ半体55に着脱可能に締結固定されている。クランク軸6からのトルク変動が内筒75に伝達されるとゴム部材77が弾性変形し、もってトルク変動が緩和される。
【0055】
ここで、図3に示すように、上記内筒固定部材78をクランク軸6に締結固定した状態で見ると、外筒76は、内筒75の長さ方向中心線c1に対してその長さ方向中心線c2がtだけクランク軸方向外側に偏位している。この偏位によりゴム部材77が弾性変形し、その弾性力により外筒固定部材81を介して固定プーリ半体55がクランク軸方向内方に押圧付勢されている。これによりスリーブ54はクランク軸6の段部6dに当接して軸方向移動が規制されている。
【0056】
またトルクダンパ70を固定した状態で見ると、内筒75の内端面と固定プーリ半体55の外端面との間には僅かな隙間bが設けられている。これによりゴム部材77の弾性力が低下した場合には、固定プーリ半体55が内筒75に当接して該固定プーリ半体55のクランク軸方向外側への移動が阻止されることとなり、もってVベルト53のベルトラインL精度が保持される。
【0057】
上記カム式トルクダンパ71は、主として図4〜図6に示すように、上記クラッチ室B側の出力軸25と遠心クラッチ34のアウタドラム(入力側部材)35との間に該出力軸25にこれと同軸をなすように装着されており、以下の構造を有している。
【0058】
上記アウタドラム35の軸芯部には軸方向左側にへこむ凹部35bが形成されており、該凹部35bにはばね支持部材90が装着されている。このばね支持部材90は出力軸25に共に回転するようにスプライン嵌合された筒部90aと該筒部90aの外端縁に一体形成されたフランジ部90bを備えており、該フランジ部90bが上記凹部35bの開口を閉塞している。なお、上記アウタドラム35とばね支持部材90とは相対回転可能となっている。
【0059】
上記フランジ部90bはアウタドラム35の右側外面と略面一となっており、上記凹部35bとばね支持部材90とにより形成されたダンパ室D内に上記トクルダンパ71が収納されている。このダンパ室Dはクラッチ室Bに連通しており、該クラッチ室Bに供給された潤滑油の一部が流入するようになっている。
【0060】
上記ダンパ室Dには環状のカムプレート91が凹部35bの底壁に対向するように配設され、該カムプレート91は上記筒部90aに軸方向移動可能にかつ該筒部90aと共に回転するようにセレーション嵌合されている。また上記カムプレート91と上記フランジ部90bとの間には複数枚の板ばね92が配設されており、各板ばね92によりカムプレート91は底壁側に付勢されている。
【0061】
上記カムプレート91の左側面には周方向に所定角度間隔をあけて3つの係合凸部91aが突出形成されており、隣接する係合凸部91a同士の間には三角形状のカム山91bが突出形成されている。また上記凹部35bの底壁の上記各カム山91bに対応する部分、換言すれば、上記アウタドラム35のクラッチプレート38,40を挟んだ外壁にはそれぞれカム部35cが突出形成されている。この各カム部35cは上記カム山91bが係合する谷部35dと該谷部35dに続いて上記係合凸部91aが当接可能なストッパ部35e,35eとを有している。
【0062】
出力軸25にトルク変動が伝達されてばね支持部材90に過大なトルクが作用すると、カムプレート91が板ばね92の付勢力に抗して軸方向右側に移動し、カムプレート91の各カム山91bと谷部35dとの間に滑りが生じ、もってトルク変動が吸収される。この場合、カムプレート91の滑りは係合凸部91aがストッパ部35eに当接することにより規制される(図6(a),(b)参照)。
【0063】
次に本実施形態の作用効果について説明する。
【0064】
本実施形態によれば、クランク室Aに連通するクラッチ室B側に位置する出力軸25にカム式トルクダンパ71を同軸をなすように配設したので、該トルクダンパ71のカム摺動部に上記クラッチ室B内の潤滑油を供給することができ、カム山91bと谷部35dとの摺動による焼き付や金属屑の発生を防止でき、寿命を延長できる。
【0065】
本実施形態では、上記出力軸25のクランク室A側に遠心クラッチ34を装着し、該遠心クラッチ34と出力軸25との間にトルクダンパ71を配置したので、遠心クラッチ34に流入した潤滑油をトルクダンパ71に供給することができ、カム摺動部の潤滑性を高めることができる。
【0066】
また上記アウタドラム35の軸芯部に反インナドラム側に開口する凹部35bを形成し、該凹部35b内に上記トルクダンパ71を収納したので、出力軸25の軸長さを大きくすることなくトルクダンパ71を配設することができ、変速装置全体をコンパクトにできる。即ち、上記凹部35bは、ウエイト41を配置することによって、該ウエイト41と出力軸25との間に生じるいわゆるデッドスペースを利用して形成されており、従って凹部35bを形成したことによって軸方向長さが長くなるといった問題は生じない。
【0067】
また、上記トルクダンパ71をカム面同士を圧接させるカム式のものとしたので、必要なトルク変動吸収能力を確保しながら小径とすることができ、上記小径とならざるを得ない凹部35b内にトルクダンパ71を支障なく配置できる。
【0068】
本実施形態によれば、変速機ケース47にベルト室C内に冷却空気を導入する空気導入ダクト69を接続するとともに、冷却空気を排出する前,後排出口48b,48cを形成し、クランク軸6と駆動側固定プーリ半体55との間にトルクダンパ70を介設し、該トルクダンパ70を上記空気導入ダクト69の導入口69cの近傍に配置したので、ベルト室C内に導入した冷却空気によりでゴム部材77で発生した熱を外部に排出することができ、発熱によるベルト室C内の異常昇温を防止でき、Vベルト53やゴム部材77の劣化を防止できる。特にゴムダンパの場合には、例えばばね式ダンパに比べて耐熱性が低い上に発熱し易いため、劣化が早いという問題がある。
【0069】
本実施形態では、上記送風ファン81aの径方向内側にトルクダンパ70のゴム部材77を配置したので、送風ファン81aにより吸い込んだ冷却空気の流路内にゴム部材77を配置したこととなり、該ゴム部材77に冷却空気を直接供給してゴム部材77を効率よく冷却でき、ベルト室C内の温度上昇を防止できる。
【0070】
本実施形態では、上記クランク軸6に相対回転可能に装着されたスリーブ54に駆動側固定プーリ半体55を一体形成したので、固定プーリ半体55のクランク軸6に対する直角度の低下を防止でき、ひいてはVベルト53の巻き掛け径がずれることにより生じる減速比のずれを防止できる。即ち、例えば固定プーリ半体55をこれと段部6dとの間に別体のカラーを介在させる等して単独でクランク軸に装着した場合、固定プーリ半体をベルト駆動力に抗してクランク軸に対して軸直角に保持するのは困難であり、巻き掛け径のずれが生じ易い。
【0071】
本実施形態では、上記トルクダンパ70を内筒75と外部76とにゴム部材77を焼き付け固定したものとし、上記クランク軸6,固定プーリ半体55にそれぞれ着脱可能に締結固定したので、簡単な構造でかつ少ない部品点数でトルクダンパを構成でき、またトルクダンパ70を取り外すことによりオイルシール73や駆動プーリ51を外すことができ、Vベルト53やシール部材等の部品交換を容易に行うことができる。
【0072】
本実施形態では、上記内筒75をクランク軸6に固定した状態で見て、ゴム部材77の弾性力により外筒固定部材81を介して固定プーリ半体55のスリーブ54がクランク軸6の段部6dに当るよう押圧付勢したので、トルクダンパ70を有効利用して固定プーリ半体55を軸方向に移動不能に固定でき、Vベルト53のベルトラインL精度を確保しつつ別部品による固定を不要にでき、部品点数を低減できる。
【0073】
本実施形態では、上記内筒75の軸方向寸法d1を外筒76の軸方向寸法d2の略2倍としたので、ゴム部材77の内筒75との接合面積と外筒76との接合面積とを概ね同じにすることができ、もってゴム部材77と各筒部75,76との間に生じる剪断応力を略均等にすることができる。
【0074】
なお、上記実施形態では、機械式トルクダンパとしてカム式ダンパを例に説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、例えばばね式のトルクダンパを採用してもよく、この場合にも上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0075】
また上記実施形態では、クランク軸6側と出力軸25とにそれぞれトルクダンパ70,71を設けた場合を説明したが、本発明は出力軸25側にのみトルクダンパ71を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態のVベルト式無段変速装置を備えたエンジンユニットの断面図である。
【図2】上記無段変速装置の断面平面図である。
【図3】上記無段変速装置の駆動プーリのゴム式トルクダンパ部分の断面図である。
【図4】上記無段変速装置の出力軸のカム式トルクダンパ部分の断面図である。
【図5】上記カム式トルクダンパの側面図である。
【図6】上記カム式トルクダンパの動作を示す図である。
【符号の説明】
3 Vベルト式無段変速装置
6 クランク軸(入力軸)
25 出力軸
34 遠心クラッチ
35 アウタドラム(入力側部材)
35b 凹部
37 インナドラム(出力側部材)
38,40 クラッチ板(動力伝達部材)
51 駆動プーリ
52 従動プーリ
53 Vベルト
71 トルクダンパ
A クランク室
C ベルト室
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンのVベルト式無段変速装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば自動二輪車では、エンジン動力を後輪に伝達する動力伝達機構としてVベルト式無断変速装置を採用する場合がある。この種のVベルト式無段変速装置では、エンジン動力が伝達される入力軸,例えばクランク軸に巻き掛け径可変式の駆動プーリを装着するとともに、後輪側に連結された出力軸に巻き掛け径可変式の従動プーリを装着し、両プーリをVベルトにより連結するとともに、該Vベルトを含む上記駆動,従動プーリを略気密なベルト室内に収容した構造が一般的である。
【0003】
また上記Vベルト式無段変速装置では、エンジンからのトルク変動を緩和するために、従来、例えば従動プーリの固定プーリ半体と従動軸との間にトーショナルダンパを介設する場合がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このトーショナルダンパは、従動軸に固定されたフランジと、該フランジを挟むように固定プーリ半体に固定された一対のサイドプレートとの間に複数のトーションばねを介設した概略構造となっている。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−173392号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来のように、トーショナルダンパをベルト室内に配置した構造を採用した場合には、トーショナルダンパを構成する部品同士の摺動や摩擦によってダンパ自体が発熱し、ベルト室内が異常昇温し、Vベルトやダンパ自体の耐久性が低下するといった問題や、金属屑が発生するという問題がある。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、ダンパ部品同士の摺動や摩擦による温度上昇や金属屑の発生を防止できるエンジンのVベルト式無段変速装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、クランク室とベルト室とを画成する隔壁により入力軸及び出力軸を軸支し、該入力軸,出力軸の上記ベルト室内部分にそれぞれ駆動プーリ,従動プーリを装着するとともに、該両プーリをVベルトにより連結してなるエンジンのVベルト式無段変速装置において、上記出力軸のクランク室内部分にエンジンからのトルク変動を吸収する機械式トルクダンパを出力軸と同軸をなすように配設し、該トルクダンパに潤滑油を供給するようにしたことを特徴としている。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1において、上記出力軸のクランク室内部分には湿式の遠心クラッチが装着されており、該遠心クラッチと上記出力軸との間に上記トルクダンパが介設されていることを特徴としている。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2において、上記遠心クラッチは、上記出力軸から動力が入力される入力側部材と出力側部材との間に動力伝達部材を介在させてなり、上記トルクダンパは出力軸側に装着されたカムプレートのカム面と上記入力側部材の動力伝達部材を挟んだ外壁に形成されたカム面とを軸方向に圧接させてなり、上記両カム面同士の摩擦力により上記トルク変動を吸収するカム式トルクダンパであることを特徴としている。
【0011】
請求項4の発明は、請求項3において、上記遠心クラッチの入力側部材は出力軸に対して相対回転可能となっており、上記カムプレートは、出力軸と共に回転し、かつ該出力軸のフランジ部に対して軸方向に押圧固定されていることを特徴としている。
【0012】
請求項5の発明は、請求項2ないし4の何れかにおいて、上記遠心クラッチは、碗状のアウタドラムとインナドラムとの間に複数のクラッチ板を配設し、遠心力によるウエイトの径方向外方への移動によりクラッチ板同士を圧接させるよう構成されており、上記アウタドラムの軸芯部には該アウタドラムの上記インナドラムと反対側に開口する凹部が上記ウエイトと出力軸との間に位置するよう凹設されており、該凹部内に上記トルクダンパが収納されていることを特徴としている。
【0013】
【発明の作用効果】
請求項1の発明に係るVベルト式無段変速装置によれば、出力軸のクランク室側部分に機械式トルクダンパを同軸をなすように装着し、該トルクダンパをクランク室内の潤滑油により潤滑されるようにしたので、部品同士の摺動,摩擦によって焼き付いたり,金属屑が発生したりするのを防止でき、寿命を延長できる。
【0014】
またトルクダンパを出力軸に設けたので、クランク軸に設ける場合に比べてクランク軸の剛性確保が容易である。即ち、クランク軸上に機械式トルクダンパを設ける場合、該トルクダンパを潤滑油内に位置させる必要があることからクランク軸を軸支する隔壁よりクランクウェブ側にトルクダンパを配置することとなる。このようにするとクランクウェブから軸支部までの寸法がトルクダンパの分だけ大きくなり、それだけクランク軸の支持剛性が低下する。
【0015】
請求項2の発明では、出力軸のクランク室内部分に湿式の遠心クラッチを装着し、該遠心クラッチと出力軸との間にトルクダンパを配置したので、遠心クラッチに供給された潤滑油がトルクダンパにも供給されることとなり、トルクダンパの潤滑性を確保することができる。
【0016】
請求項3の発明では、トルクダンパとしてカム式ダンパを採用したので、該トルクダンパを、小径に構成できるとともに、トルクダンパのカム面同士を潤滑でき、カム面同士の摺動による金属粉の発生を防止できる。また遠心クラッチの入力側部材の外壁を利用してトルクダンパを構成することができ、構造を簡素化できるとともに部品点数を削減できる。
【0017】
請求項4の発明では、遠心クラッチの入力側部材は出力軸に対して相対回転可能であり、カムプレートは出力軸に固定されているのでトルク変動を確実に吸収できる。
【0018】
請求項5の発明では、アウタドラムの軸芯部に反インナドラム側に開口する凹部をウエイトと出力軸との間に位置するよう形成し、該凹部内にトルクダンパを収納したので、ウエイトの配置によって必然的に生じるウエイトと出力軸との間の空間を利用してトルクダンパを配置でき、出力軸の軸長さを大きくすることなくトルクダンパを配設することができ、装置全体をコンパクトにできる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0020】
図1ないし図6は、本発明の一実施形態によるエンジンのVベルト式無段変速装置を説明するための図であり、図1はVベルト式無段変速装置を備えたエンジンユニットの断面図、図2は無段変速装置の断面図、図3は駆動プーリのトルクダンパ部分の断面図、図4は遠心クラッチのトルクダンパ部分の断面図、図5はトルクダンパの側面図、図6(a),(b)はトルクダンパの動作を示す図である。なお、本実施形態でいう前後,左右とは、各図面の紙面におけるクランク軸直角方向を前後といい、クランク軸方向を左右という。
【0021】
図において、1は自動二輪車用エンジンユニットを示しており、該エンジンユニット1は、エンジン本体2にVベルト式無段変速装置3を一体化したものであり、不図示の車体フレームの前輪と後輪との間の中央部に搭載されている。
【0022】
上記エンジン本体2は、空冷式4サイクル単気筒エンジンであり、シリンダブロック4の上合面にシリンダヘッド5を結合するとともに、下合面にクランク軸6が収納された油密なクランク室Aを有するクランクケース7を結合した概略構造を有している。
【0023】
上記シリンダヘッド5の下合面には燃焼凹部5aが形成され、該燃焼凹部5aには点火プラグ8が挿入されている。また上記シリンダブロック4の左側部にはシリンダヘッド5内とクランクケース7内とに連通するチェーン室4aが形成されており、該チェーン室4aには上記クランク軸6と不図示の吸気,排気バルブを開閉駆動するカム軸9とを連結するタイミングチェーン10が配設されている。
【0024】
上記シリンダブロック4のシリンダボア4b内にはピストン11が摺動自在に挿入配置されており、該ピストン11はコンロッド12により上記クランク軸6の左右クランクアーム6a,6aを結合するクランクピン13に連結されている。
【0025】
上記クランク軸6の軸方向左端部には発電機14が装着されている。この発電機14はクランク軸6にテーパ嵌合されたスリーブ15にロータ16を固着するとともに、該ロータ16に対向するように配設されたステータ17を発電機カバー18に固定した構造となっている。
【0026】
上記クランクケース7はクランク軸方向左側の左側クランクケース部20と右側の右側クランクケース部21とからなる左右分割タイプのものである。この左,右側クランクケース部20,21はクランク軸直角方向に延びる隔壁20a,21aを有しており、各隔壁20a, 21aにより上記クランク軸6のジャーナル部6b,6bが軸受22,22を介して支持されている。上記左側クランクケース部20の外側開口に上記発電機カバー18が装着されている。
【0027】
上記クランクケース7内のクランク軸6の後方には出力軸25が該クランク軸6と平行に配設されている。この出力軸25の軸方向左側にはスプロケット駆動軸26が同軸をなすように配置され、該駆動軸26の左端部は左側クランクケース部20から外側に突出しており、該左端部には後輪駆動用スプロケット27が固着されている。
【0028】
上記スプロケット駆動軸26の右端部にはフランジ部26aが形成され、該フランジ部26aはこれの凹部内に嵌装された軸受28を介して出力軸25の左端部を軸支している。上記出力軸25と駆動軸26とは減速歯車機構を介して連結されている。この減速歯車機構は、出力軸25に相対回転自在に装着された一次減速小ギヤ30と、上記出力軸25の前側に並列配置された減速軸31の一次減速大ギヤ32とを噛合させ、該減速軸31に一体形成された二次減速小ギヤ31aと上記駆動軸26に一体形成された二次減速大ギヤ26bとを噛合させた構造となっている。
【0029】
上記出力軸25には湿式遠心クラッチ34が装着されている。この遠心クラッチ34は、左側方に開口する碗状のアウタドラム(入力側部材)35を後述するカムプレート91ひいては出力軸25に対して相対回転可能に装着するとともに、該アウタドラム35内に位置するようにインナドラム(出力側部材)37を装着し、該インナドラム37を上記一次減速小ギヤ30に共に回転するようにスプライン嵌合した概略構造となっている。
【0030】
上記アウタドラム35内には、複数枚のアウタクラッチ板38と該アウタクラッチ板38の両端に位置する2枚の押圧プレート39とが該アウタドラム35に、これと共に回転するように係止されている。また各アウタクラッチ板38の間,アウタクラッチ板38と押圧プレート39との間にはそれぞれインナクラッチ板40が配設され、該各インナクラッチ板40は上記インナドラム37にこれと共に回転するように係止されている。上記アウタクラッチ板38,インナクラッチ板40により動力伝達部材が構成されている。
【0031】
上記アウタドラム35の内側にはカム面35aが形成され、該カム面35aと押圧プレート39との間にウェイト41が配設されている。このウェイト41はアウタドラム35の回転に伴う遠心力により半径方向外方のクラッチ接続方向に移動し、押圧プレート39を押圧してアウタ,インナクラッチ板38,40同士を接続状態とする。このようにして出力軸25の回転がアウタドラム35から各クラッチ板38,40を介してインナドラム37に伝達され、該インナドラム37から減速歯車機構を介してスプロケット駆動軸26に伝達される。なお、図1,図2において、遠心クラッチ34の軸線より上側部分は遮断状態を、下側部分は接続状態を示している。
【0032】
上記右側クランクケース部21にはこれの隔壁21aをクランク軸方向左側に凹設してなるクラッチ室Bが形成されており、該クラッチ室B内に上記遠心クラッチ34が収納されている。このクラッチ室Bはクランク室Aに連通しており、該クラッチ室Bにはコンロッド12とクランクピン13との摺動連結部に供給された潤滑油が流入する。上記クラッチ室Bの右側方には遠心クラッチ34を出し入れできる大きさのクラッチ開口21bが形成されており、該クラッチ開口21bには該開口21bを油密に閉塞するクラッチカバー43が着脱可能にボルト締め固定されている。
【0033】
上記出力軸25は、これの軸方向中央部が上記クラッチカバー43の軸芯部により軸受44を介して、また左端部が隔壁21aのクラッチ室Bの底部を構成する底壁部21cにより軸受45を介してそれぞれ軸支されている。
【0034】
上記右側クランクケース部21の右外側には若干の隙間aをあけてベルト室Cを構成する変速機ケース47が接続されている。この変速機ケース47は、クランク軸方向外側に開口する有底箱状のケース本体48と、該ケース本体48の開口を閉塞するケースカバー49とを有し、ボルト50により上記右側クランクケース部21に共締め固定されている。
【0035】
上記変速機ケース47内には上記クランク軸(入力軸)6及び出力軸25の各右側端部6c,25cが挿入配置されている。このクランク軸6の右側端部6cには駆動プーリ51が装着され、上記出力軸25の右側端部25cには従動プーリ52が装着されており、上記駆動プーリ51と従動プーリ52とはVベルト53により連結されている。
【0036】
上記Vベルト53は、樹脂製のものであり、例えばポリアミド樹脂にカーボン繊維又はアラミド繊維を混入させて横H形状に成形してなる多数の樹脂ブロック53aを並べて配置し、各樹脂ブロック53aを超耐熱ゴム製の環状の連結部材53bで連結した概略構造を有している。なお、上記Vベルトとしてゴム製ベルトを採用してもよい。
【0037】
上記駆動プーリ51は、上記クランク軸6の右側端部6cに相対回転可能に装着された円筒状のスリーブ54と、該スリーブ54の軸方向外端部に一体形成された概ね円板状の駆動側固定プーリ半体55と、該固定プーリ半体55のクランク軸方向内側に配設された同じく円板状の駆動側可動プーリ半体56とを備えている。この可動プーリ半体56の軸芯部にはボス部56aが一体形成されており、該ボス部56aは上記スリーブ54の外周面に軸方向移動可能にかつ該スリーブ54と共に回転するように装着されている。
【0038】
上記クランク軸6の可動プーリ半体56のクランク軸方向内側にはカムプレート57が装着され、該カムプレート57は上記スリーブ54の径方向中心部に配置された左,右のサークリップ58a,58bにより軸方向位置が規制され、かつ該スリーブ54と共に回転するように嵌合している。なお、上記カムプレート57を固定する場合、左側のサークリップ58aに代えてナットにより締結固定してもよい。上記カムプレート57と可動プーリ半体56との間にはウェイト59が半径方向に移動可能に配設されている。ここで、駆動プーリ51のクランク軸線より図示上側部分は最大巻き掛け径となるトップ位置を、下側部分は最小巻き掛け径となるロウ位置を示している。
【0039】
上記従動プーリ52は、上記出力軸25の右側端部25cにスプライン結合された円筒状のスリーブ60と、該スリーブ60の軸方向内端部に一体形成された概ね円板状の従動側固定プーリ半体61と、該固定プーリ半体61のクランク軸方向外側に軸方向に移動可能に配設された従動側可動プーリ半体62とを備えている。
【0040】
上記可動プーリ半体62は上記スリーブ60に軸方向移動可能に装着された円筒状のスライドカラー63の内端部に固着されている。このスライドカラー63には軸方向に延びるスリット63aが周方向に所定角度間隔をあけて形成され、各スリット63a内には上記スリーブ60に植設固定されたガイドピン64が係合している。これにより可動プーリ半体52は固定プーリ半体61と共に回転するようになっている。
【0041】
上記スリーブ60の外端部にはばね受けプレート65がサークリップ65aにより固定され、該ばね受けプレート65と可動プーリ半体62との間には該可動プーリ半体62を固定プーリ半体61側に付勢するコイルスプリング66が介設されている。
【0042】
上記スリーブ60は出力軸25の右外端部に螺着されたロックナット67により軸方向移動不能に締結固定されている。このロックナット67は上記スリーブ60内に没入するように挿入配置されており、これによりコイルスプリング66の必要ばね長さを確保しつつ出力軸25の外側への出っ張りを小さくしている。ここで、従動プーリ52の出力軸線より図示上側部分は最大巻き掛け径となるロウ位置を、下側部分は最小巻き掛け径となるトップ位置を示している。
【0043】
クランク軸6の回転が上昇するにつれてウェイト59が遠心力で径方向外側に移動し、これに伴って駆動側可動プーリ半体56が軸方向外側に移動し、これにより駆動プーリ51の巻き掛け径が大きくなるとともに、従動側可動プーリ半体62がコイルスプリング66を圧縮して軸方向外側に移動し、もって従動プーリ52の巻き掛け径が小さくなる。クランク軸6の回転が下がると、ウェイト59が内側に移動して駆動側可動プーリ半体56の軸方向内側への移動を許容し、従動側可動プーリ半体62がコイルスプリング66により付勢されて軸方向内側に移動し、もって駆動プーリ51の巻き掛け径が小さくなるとともに、従動プーリ52の巻き掛け径が大きくなる。
【0044】
上記変速機ケース47のケースカバー49の外壁部には筒状の空気導入ダクト69が着脱可能にボルト締め固定されている。この空気導入ダクト69は空気吸込口69aが車両前方,つまり走行方向に向くように形成されており、該吸込口69aには空気を濾過するフィルタ69bが配設されている。また上記空気導入ダクト69の下流側導入口69cに続いて空気案内部69dがベルト室C内の駆動側固定プーリ半体55に対向するように形成されている。
【0045】
上記ケース本体48の底壁部48aの駆動プーリ51の後側に臨む部分,及び従動プーリ52の後側に臨む部分にはそれぞれ前,後排出口48b,48cが形成されている。
【0046】
上記空気導入ダクト69から導入された冷却空気は駆動プーリ51側から従動プーリ52側に流れ、この間に後述するトルクダンパ70,Vベルト53を冷却しつつ前,後排出口48b,48cから外部に排出される。この前,後排出口48b,48cから排出された冷却空気は右側クランクケース部21との隙間aを通って放出される。この際に右側クランクケース部21の隔壁21a,クラッチカバー43からの熱を吸収して放熱することとなる。これによりクランク室A,クラッチ室B側からのエンジン熱がベルト室C側に伝わるのを抑制している。
【0047】
そして、上記クランク軸6と駆動側固定プーリ半体55との間にはゴム式トルクダンパ70が、また上記出力軸25と遠心クラッチ54のアウタドラム35との間にはカム式トルクダンパ71がそれぞれ配設されている。これらトルクダンパ70,71は、エンジンのトルク変動を吸収して動力伝達系部品への衝撃荷重を緩和するためのものであり、詳細には以下の構成となっている。
【0048】
主として、図2,図3に示すように、上記クランク軸6の右側端部6cはジャーナル部6bより小径となっており、これによりジャーナル部6bと右側端部6cとの境界には段部6dが形成されている。この段部6dに上記スリーブ54の内端面が当接しており、もってスリーブ54の左方への移動が規制されている。
【0049】
また上記右側端部6cの軸芯には潤滑油通路6eが形成され、該潤滑油通路6eは右側端部6cとスリーブ54との摺動部に連通接続されている。この摺動部には、上記コンロッド12とクランクピン13との摺動連結部に供給される潤滑油の一部が上記潤滑油通路6eを介して供給される。また駆動側固定プーリ半体55とクランク軸6との間にはオイルシール73が嵌装され、上記スリーブ54の内端部と右側クランクケース部21の隔壁21aとの間はシール部材72が嵌装されている。これによりクランク室A内の潤滑油がベルト室C内へ流入するのを防止している。
【0050】
上記トルクダンパ70は、ベルト室C内の駆動側固定プーリ半体55の軸方向外側面に略対向するように、かつクランク軸6と同軸をなすように配設されている。このトルクダンパ70は、内筒75と該内筒75の外側に同心円をなすように配置された外筒76との間に環状のゴム部材77を配置し、該ゴム部材77を内筒75,外筒76に焼き付け固定した構造となっている。
【0051】
上記内筒75の軸方向寸法d1は外筒76の軸方向寸法d2より概ね2倍程度大きく形成されている。またこれに伴ってゴム部材77は内筒75から外筒76側に行くに従って軸方向の肉厚が略直線的に小さくなっている。
【0052】
上記内筒75の内周面には環状の内筒固定部材78が固着されている。該内筒固定部材78はキー部材79を介して上記クランク軸6の右外端部に係合され、さらにナット80により着脱可能に締結固定されている。また内筒固定部材78の右側軸芯部には凹部78aが凹設されており、該凹部78a内に上記ナット80が没入するように挿入配置されている。これによりクランク軸6の軸方向外側への突出量を小さくしている。
【0053】
上記外筒76の外周面には環状の外筒固定部材81が固着されている。この外筒固定部材81にはクランク軸方向右外側に突出する送風羽根81bを周方向に所定角度間隔をあけて一体形成してなる送風ファン81aが形成されている。そして上記送風ファン81aの径方向内側に上記ゴム部材77が位置しており、また上記各送風羽根81bは上記冷却空気の導入口69c及び空気案内部69dに近接している。クランク軸6の回転に伴ってトルクダンパ70が回転し、送風ファン81aが上記空気導入ダクト69を介して導入口69cから冷却空気を吸い込み、この吸込まれた冷却空気がゴム部材77に当たることとなる。
【0054】
上記外筒固定部材81の送風羽根81bの間にはボルト孔81cが形成されており、各ボルト孔81cに挿入されたボルト82を上記駆動側固定プーリ半体55の外周部に突出形成されたボス部55aに締め付けることにより上記外筒76は固定プーリ半体55に着脱可能に締結固定されている。クランク軸6からのトルク変動が内筒75に伝達されるとゴム部材77が弾性変形し、もってトルク変動が緩和される。
【0055】
ここで、図3に示すように、上記内筒固定部材78をクランク軸6に締結固定した状態で見ると、外筒76は、内筒75の長さ方向中心線c1に対してその長さ方向中心線c2がtだけクランク軸方向外側に偏位している。この偏位によりゴム部材77が弾性変形し、その弾性力により外筒固定部材81を介して固定プーリ半体55がクランク軸方向内方に押圧付勢されている。これによりスリーブ54はクランク軸6の段部6dに当接して軸方向移動が規制されている。
【0056】
またトルクダンパ70を固定した状態で見ると、内筒75の内端面と固定プーリ半体55の外端面との間には僅かな隙間bが設けられている。これによりゴム部材77の弾性力が低下した場合には、固定プーリ半体55が内筒75に当接して該固定プーリ半体55のクランク軸方向外側への移動が阻止されることとなり、もってVベルト53のベルトラインL精度が保持される。
【0057】
上記カム式トルクダンパ71は、主として図4〜図6に示すように、上記クラッチ室B側の出力軸25と遠心クラッチ34のアウタドラム(入力側部材)35との間に該出力軸25にこれと同軸をなすように装着されており、以下の構造を有している。
【0058】
上記アウタドラム35の軸芯部には軸方向左側にへこむ凹部35bが形成されており、該凹部35bにはばね支持部材90が装着されている。このばね支持部材90は出力軸25に共に回転するようにスプライン嵌合された筒部90aと該筒部90aの外端縁に一体形成されたフランジ部90bを備えており、該フランジ部90bが上記凹部35bの開口を閉塞している。なお、上記アウタドラム35とばね支持部材90とは相対回転可能となっている。
【0059】
上記フランジ部90bはアウタドラム35の右側外面と略面一となっており、上記凹部35bとばね支持部材90とにより形成されたダンパ室D内に上記トクルダンパ71が収納されている。このダンパ室Dはクラッチ室Bに連通しており、該クラッチ室Bに供給された潤滑油の一部が流入するようになっている。
【0060】
上記ダンパ室Dには環状のカムプレート91が凹部35bの底壁に対向するように配設され、該カムプレート91は上記筒部90aに軸方向移動可能にかつ該筒部90aと共に回転するようにセレーション嵌合されている。また上記カムプレート91と上記フランジ部90bとの間には複数枚の板ばね92が配設されており、各板ばね92によりカムプレート91は底壁側に付勢されている。
【0061】
上記カムプレート91の左側面には周方向に所定角度間隔をあけて3つの係合凸部91aが突出形成されており、隣接する係合凸部91a同士の間には三角形状のカム山91bが突出形成されている。また上記凹部35bの底壁の上記各カム山91bに対応する部分、換言すれば、上記アウタドラム35のクラッチプレート38,40を挟んだ外壁にはそれぞれカム部35cが突出形成されている。この各カム部35cは上記カム山91bが係合する谷部35dと該谷部35dに続いて上記係合凸部91aが当接可能なストッパ部35e,35eとを有している。
【0062】
出力軸25にトルク変動が伝達されてばね支持部材90に過大なトルクが作用すると、カムプレート91が板ばね92の付勢力に抗して軸方向右側に移動し、カムプレート91の各カム山91bと谷部35dとの間に滑りが生じ、もってトルク変動が吸収される。この場合、カムプレート91の滑りは係合凸部91aがストッパ部35eに当接することにより規制される(図6(a),(b)参照)。
【0063】
次に本実施形態の作用効果について説明する。
【0064】
本実施形態によれば、クランク室Aに連通するクラッチ室B側に位置する出力軸25にカム式トルクダンパ71を同軸をなすように配設したので、該トルクダンパ71のカム摺動部に上記クラッチ室B内の潤滑油を供給することができ、カム山91bと谷部35dとの摺動による焼き付や金属屑の発生を防止でき、寿命を延長できる。
【0065】
本実施形態では、上記出力軸25のクランク室A側に遠心クラッチ34を装着し、該遠心クラッチ34と出力軸25との間にトルクダンパ71を配置したので、遠心クラッチ34に流入した潤滑油をトルクダンパ71に供給することができ、カム摺動部の潤滑性を高めることができる。
【0066】
また上記アウタドラム35の軸芯部に反インナドラム側に開口する凹部35bを形成し、該凹部35b内に上記トルクダンパ71を収納したので、出力軸25の軸長さを大きくすることなくトルクダンパ71を配設することができ、変速装置全体をコンパクトにできる。即ち、上記凹部35bは、ウエイト41を配置することによって、該ウエイト41と出力軸25との間に生じるいわゆるデッドスペースを利用して形成されており、従って凹部35bを形成したことによって軸方向長さが長くなるといった問題は生じない。
【0067】
また、上記トルクダンパ71をカム面同士を圧接させるカム式のものとしたので、必要なトルク変動吸収能力を確保しながら小径とすることができ、上記小径とならざるを得ない凹部35b内にトルクダンパ71を支障なく配置できる。
【0068】
本実施形態によれば、変速機ケース47にベルト室C内に冷却空気を導入する空気導入ダクト69を接続するとともに、冷却空気を排出する前,後排出口48b,48cを形成し、クランク軸6と駆動側固定プーリ半体55との間にトルクダンパ70を介設し、該トルクダンパ70を上記空気導入ダクト69の導入口69cの近傍に配置したので、ベルト室C内に導入した冷却空気によりでゴム部材77で発生した熱を外部に排出することができ、発熱によるベルト室C内の異常昇温を防止でき、Vベルト53やゴム部材77の劣化を防止できる。特にゴムダンパの場合には、例えばばね式ダンパに比べて耐熱性が低い上に発熱し易いため、劣化が早いという問題がある。
【0069】
本実施形態では、上記送風ファン81aの径方向内側にトルクダンパ70のゴム部材77を配置したので、送風ファン81aにより吸い込んだ冷却空気の流路内にゴム部材77を配置したこととなり、該ゴム部材77に冷却空気を直接供給してゴム部材77を効率よく冷却でき、ベルト室C内の温度上昇を防止できる。
【0070】
本実施形態では、上記クランク軸6に相対回転可能に装着されたスリーブ54に駆動側固定プーリ半体55を一体形成したので、固定プーリ半体55のクランク軸6に対する直角度の低下を防止でき、ひいてはVベルト53の巻き掛け径がずれることにより生じる減速比のずれを防止できる。即ち、例えば固定プーリ半体55をこれと段部6dとの間に別体のカラーを介在させる等して単独でクランク軸に装着した場合、固定プーリ半体をベルト駆動力に抗してクランク軸に対して軸直角に保持するのは困難であり、巻き掛け径のずれが生じ易い。
【0071】
本実施形態では、上記トルクダンパ70を内筒75と外部76とにゴム部材77を焼き付け固定したものとし、上記クランク軸6,固定プーリ半体55にそれぞれ着脱可能に締結固定したので、簡単な構造でかつ少ない部品点数でトルクダンパを構成でき、またトルクダンパ70を取り外すことによりオイルシール73や駆動プーリ51を外すことができ、Vベルト53やシール部材等の部品交換を容易に行うことができる。
【0072】
本実施形態では、上記内筒75をクランク軸6に固定した状態で見て、ゴム部材77の弾性力により外筒固定部材81を介して固定プーリ半体55のスリーブ54がクランク軸6の段部6dに当るよう押圧付勢したので、トルクダンパ70を有効利用して固定プーリ半体55を軸方向に移動不能に固定でき、Vベルト53のベルトラインL精度を確保しつつ別部品による固定を不要にでき、部品点数を低減できる。
【0073】
本実施形態では、上記内筒75の軸方向寸法d1を外筒76の軸方向寸法d2の略2倍としたので、ゴム部材77の内筒75との接合面積と外筒76との接合面積とを概ね同じにすることができ、もってゴム部材77と各筒部75,76との間に生じる剪断応力を略均等にすることができる。
【0074】
なお、上記実施形態では、機械式トルクダンパとしてカム式ダンパを例に説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、例えばばね式のトルクダンパを採用してもよく、この場合にも上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0075】
また上記実施形態では、クランク軸6側と出力軸25とにそれぞれトルクダンパ70,71を設けた場合を説明したが、本発明は出力軸25側にのみトルクダンパ71を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態のVベルト式無段変速装置を備えたエンジンユニットの断面図である。
【図2】上記無段変速装置の断面平面図である。
【図3】上記無段変速装置の駆動プーリのゴム式トルクダンパ部分の断面図である。
【図4】上記無段変速装置の出力軸のカム式トルクダンパ部分の断面図である。
【図5】上記カム式トルクダンパの側面図である。
【図6】上記カム式トルクダンパの動作を示す図である。
【符号の説明】
3 Vベルト式無段変速装置
6 クランク軸(入力軸)
25 出力軸
34 遠心クラッチ
35 アウタドラム(入力側部材)
35b 凹部
37 インナドラム(出力側部材)
38,40 クラッチ板(動力伝達部材)
51 駆動プーリ
52 従動プーリ
53 Vベルト
71 トルクダンパ
A クランク室
C ベルト室
Claims (5)
- クランク室とベルト室とを画成する隔壁により入力軸及び出力軸を軸支し、該入力軸,出力軸の上記ベルト室内部分にそれぞれ駆動プーリ,従動プーリを装着するとともに、該両プーリをVベルトにより連結してなるエンジンのVベルト式無段変速装置において、上記出力軸のクランク室内部分にエンジンからのトルク変動を吸収する機械式トルクダンパを出力軸と同軸をなすように配設し、該トルクダンパに潤滑油を供給するようにしたことを特徴とするエンジンのVベルト式無段変速装置。
- 請求項1において、上記出力軸のクランク室内部分には湿式の遠心クラッチが装着されており、該遠心クラッチと上記出力軸との間に上記トルクダンパが介設されていることを特徴とするエンジンのVベルト式無断変速装置。
- 請求項2において、上記遠心クラッチは、上記出力軸から動力が入力される入力側部材と出力側部材との間に動力伝達部材を介在させてなり、上記トルクダンパは出力軸側に装着されたカムプレートのカム面と上記入力側部材の動力伝達部材を挟んだ外壁に形成されたカム面とを軸方向に圧接させてなり、上記両カム面同士の摩擦力により上記トルク変動を吸収するカム式トルクダンパであることを特徴とするエンジンのVベルト式無段変速装置。
- 請求項3において、上記遠心クラッチの入力側部材は出力軸に対して相対回転可能となっており、上記カムプレートは、出力軸と共に回転し、かつ該出力軸のフランジ部に対して軸方向に押圧固定されていることを特徴とするエンジンのVベルト式無段変速装置。
- 請求項2ないし4の何れかにおいて、上記遠心クラッチは、碗状のアウタドラムとインナドラムとの間に複数のクラッチ板を配設し、遠心力によるウエイトの径方向外方への移動によりクラッチ板同士を圧接させるよう構成されており、上記アウタドラムの軸芯部には該アウタドラムの上記インナドラムと反対側に開口する凹部が上記ウエイトと出力軸との間に位置するよう凹設されており、該凹部内に上記トルクダンパが収納されていることを特徴とするエンジンのVベルト式無段変速装置。
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