JPWO2017017958A1 - 弾性クローラ - Google Patents

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Abstract

弾性クローラの走行時におけるパッキング性を改善することにより、雪又は軟弱な地面等への駆動力の伝達の向上が図られた、弾性クローラを提供する。弾性クローラ1は、弾性体により無端状に形成されるクローラ本体2と、クローラ本体2にクローラ周方向に間隔をおいて埋設され、クローラ幅方向に延在する芯金3と、クローラ本体2の外周面から隆起し、クローラ厚み方向視で芯金3と重複する所定の領域Rを囲繞するラグ4,5と、を備える。

Description

本発明は、弾性クローラに関する。
従来の弾性クローラには、クローラ本体の外周面から隆起させた複数のラグをそれぞれ、クローラ厚み方向視でクローラ本体の周方向に間隔をおいて埋設した芯金と重複するように設けることにより、弾性クローラの外周面のうち、クローラ周方向に隣接する芯金間にそれぞれ、クローラ幅方向に延在する溝部を設けたものがある(例えば、特許文献1参照。)。これらの溝部は、弾性クローラの外周面に、クローラ周方向に間隔を置いて形成されることにより、弾性クローラの巻き掛け時や走行時における、弾性クローラの屈曲性を高めることに役立つ。
特開平9−11937号公報
一方、弾性クローラは、例えば雪道を走行するときに、当該雪を複数のラグの間で踏み固めて硬くすることで、いわゆる雪柱せん断力の効果により雪への駆動力の伝達の向上や横ずれの抑制を図ることができる。このように、雪等の軟弱地を複数のラグの間の内側で踏み固めて硬くする性能(以下、「パッキング性」ともいう)は、弾性クローラの性能として重要である。
しかしながら、上記従来の弾性クローラは、例えば、雪を踏んだときに、当該雪の踏み固めが不足し、芯金間をクローラ幅方向に延在する前記溝部に沿って逃げてしまうという問題があり、パッキング性に改善の余地があった。
本発明の目的は、弾性クローラの走行時におけるパッキング性を改善することにより、雪又は軟弱な地面等への駆動力の伝達の向上が図られた、弾性クローラを提供することにある。
本発明に係る弾性クローラは、弾性体により無端状に形成されるクローラ本体と、前記クローラ本体にクローラ周方向に間隔をおいて埋設され、クローラ幅方向に延在する芯金と、前記クローラ本体の外周面から隆起し、クローラ厚み方向視で前記芯金と重複する所定の領域を囲繞するラグと、を備える。
本発明に係る弾性クローラによれば、パッキング性が改善されることにより、雪又は軟弱な地面等への駆動力の伝達の向上を図ることができる。
本発明に係る弾性クローラにおいて、前記ラグは、前記領域の一方向のみを開放する開放部を備えることが好ましい。
この場合、弾性クローラを継続して使用することによるパッキング性の低下を抑制することができる。
本発明に係る弾性クローラにおいて、前記開放部が前記領域を開放する方向は、クローラ幅方向に沿う方向であることが好ましい。
この場合、横ずれの抑制を図ることができる。
本発明に係る弾性クローラにおいて、前記開放部が前記領域を開放する方向は、クローラ幅方向に沿ってクローラ幅方向の中央側に向かう方向であることが好ましい。
この場合、雪又は軟弱な地面等への駆動力の伝達の更なる向上と横ずれの更なる抑制とを図ることができる。
本発明に係る弾性クローラでは、クローラ幅方向に間隔をおいた2つの前記領域をそれぞれ囲繞する2つのラグを備え、前記2つのラグのそれぞれが前記領域を開放するそれぞれの前記開放部は、互いに対向することが好ましい。
この場合、雪又は軟弱な地面等への駆動力の伝達の更なる向上と横ずれの更なる抑制とを図ることができる。
本発明に係る弾性クローラでは、前記ラグは、前記領域の全方向を囲繞することが好ましい。
この場合、パッキング性が改善されることにより、雪又は軟弱な地面等への駆動力の伝達の向上を図ることができる。
本発明に係る弾性クローラにおいて、前記所定の領域を囲繞する前記ラグの一部は、クローラ厚み方向視で前記芯金のクローラ幅方向の中央と重複する、中央ラグであることが好ましい。
この場合、パッキング性を更に改善させることができる。
本発明に係る弾性クローラにおいて、前記ラグは、クローラ厚み方向視でクローラ周方向に隣り合う複数の前記芯金に亘って重複して延在することが好ましい。
この場合、1個当たりのラグの体積が増えることで、ラグの耐久性を向上させることができる。
本発明に係る弾性クローラにおいて、前記領域のクローラ周方向の少なくとも一方の端縁は、前記芯金のクローラ周方向の少なくとも一方の端縁とクローラ厚み方向視で一致することが好ましい。
この場合、継続使用によるパッキング性の低下を抑制することができる。
本発明によれば、走行時におけるパッキング性を改善することにより、雪又は軟弱な地面等への駆動力の伝達の向上が図られた、弾性クローラを提供することができる。
本発明の一実施形態に係る弾性クローラを、一部断面として、当該弾性クローラの外周面側から示す一部斜視図である。 図1の弾性クローラを、一部断面として、仮想的に示したスプロケットおよびアイドラとともに、当該弾性クローラの内周面側から示す一部斜視図である。 図1の弾性クローラの外周面を示す平面図である。 図1の弾性クローラの内周面を示す平面図である。 図3のX−X断面図である。 図3のY−Y断面図である。 図1の弾性クローラを、一部図4のZ−Z断面で示す側面図である。
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る弾性クローラを詳細に説明する。以下の説明では、クローラ幅方向を符号Wで示し、クローラ周方向を符号Lで示す。さらに、クローラ厚み方向は符号Dで示す。なお、「クローラ幅方向」は、弾性クローラ1の幅方向であるが、クローラ本体2の幅方向とも同義である。また、「クローラ周方向」は、弾性クローラ1の周方向であるが、クローラ本体2の周方向とも同義である。さらに、「クローラ厚み方向」は、弾性クローラ1の厚み方向であるが、クローラ本体2の厚み方向とも同義である。
弾性クローラ1は、例えば図1及び2に示すように、弾性体により無端状に形成されるクローラ本体2を備えている。クローラ本体2は、符号Wの方向をクローラ幅方向として、符号Lの方向をクローラ周方向として帯状に形成された環状の部材である。本実施形態では、クローラ本体2は、ゴムで形成されている。
また、弾性クローラ1は、図3および図4に破線で示すように、複数の芯金3を備える。芯金3は、図3および図4に示すように、クローラ本体2にクローラ周方向に間隔をおいて埋設され、クローラ幅方向に延在している。本実施形態では、図5に示すように、芯金3の中央部3aは、クローラ幅方向の中央に位置している。また、芯金3はそれぞれ、中央部3aを挟んでクローラ幅方向内側からクローラ幅方向外側に伸びる一対の翼部3bを有している。さらに、芯金3の中央部3aには、クローラ幅方向に間隔をおいて配置される、一対の突起部3cが設けられている。本実施形態では、図5に示すように、芯金3の翼部3bよりもクローラ厚み方向外側(クローラ本体2の外周面側)に、メインコード層11が配置されている。メインコード層11は、例えば、クローラ本体2をクローラ周方向に周回する複数のスチールコードを幅方向に間隔を置いて配置してなる。
一方、クローラ本体2の内周面側には、転輪転動面2aが形成されている。本実施形態では、クローラ幅方向の中央を挟んで、互いにクローラ幅方向に間隔をおいて一対の転輪転動面2aが形成されている。転輪転動面2aはそれぞれ、平坦面を構成し、例えば、図2及び図4〜図7に示すように、クローラ周方向に延びる無端状の平坦面である。
また、本実施形態では、例えば、図4に示すように、クローラ本体2の内周面側には、クローラ周方向で隣り合う芯金3の翼部3bの間にそれぞれ、複数の凹部2bが形成されている。本実施形態では、凹部2bはそれぞれ、転輪転動面2aからクローラ幅方向外側に延びている。詳細には、凹部2bは、図4に示すように、クローラ厚み方向視で、クローラ周方向に隣り合う、クローラ本体2における芯金3の翼部3bが埋設された部分(以下、「芯金翼部埋設部分」ともいう)2cの間に形成されている。また、本実施形態では、図4に示すように、凹部2bはそれぞれ、クローラ本体2の幅方向端縁2eに向かうにしたがって、当該凹部2bのクローラ周方向に延在する長さ(凹部2bのクローラ周方向幅)が拡大する形状を有している。さらに、本実施形態では、図6に示すように、凹部2bの底面2b1 は、クローラ厚み方向において、クローラ本体2の幅方向端縁2eに向かうにしたがって、クローラ本体2の外周面に向かって傾斜している。
加えて、図4に示すように、本実施形態では、クローラ本体2の内周面側には、当該クローラ本体2の幅方向中央に、クローラ周方向に間隔をおいて、後述する係合部2dが形成されている。係合部2dは、クローラ幅方向で、クローラ本体2の内周面側に形成された凹部2bと一列になるように形成されている。すなわち、係合部2dは、クローラ本体2の内周面に形成された凹部2bと、クローラ周方向において同一の位置に形成されている。
さらに、弾性クローラ1は、クローラ本体2の外周面側に、クローラ本体2の外周面から隆起し、クローラ厚み方向視で芯金3と重複する所定の領域Rを囲繞するラグを備える。ここで、囲繞とは、領域Rを全周に亘って取り囲む場合は勿論、領域Rの一方のみが開放されている場合も含まれる。具体的には、領域Rを半周以上に亘って取り囲む場合、さらに詳細には、領域Rを2/3周以上に亘って取り囲む場合等が挙げられる。本実施形態では、例えば図1及び3に示すように、前記ラグは、クローラ本体2の外周面側に、クローラ厚み方向視で芯金3のクローラ幅方向の中央を挟んでクローラ幅方向の両側に配置された接地ラグ(ラグ)4と、クローラ厚み方向視で芯金3のクローラ幅方向の中央と重複する中央ラグ(ラグ)5と、で形成されている。
本実施形態では、接地ラグ4及び中央ラグ5は、ゴムで形成されている。接地ラグ4及び中央ラグ5はそれぞれ、例えば、クローラ本体2の外周面に加硫接着することができ、また、クローラ本体2と一体に成形することができる。図3に示すように、本実施形態では、それぞれ、一対の接地ラグ4がクローラ幅方向に係合部2dを挟んで間隔をおいて配置されている。また、本実施形態では、複数の接地ラグ4がクローラ周方向に間隔を置いて配置されている。クローラ周方向に隣り合う接地ラグ4の間には、クローラ幅方向に延びる隙間(溝)Gが形成されている。
次いで、まず接地ラグ4について説明する。接地ラグ4は、クローラ周方向で隣り合う一対の幅方向ラグ部分4aを有している。一対の幅方向ラグ部分4aは、クローラ周方向に間隔をおいて配置されている。図3では、クローラ本体2の内周面側に形成された転輪転動面2aのクローラ幅方向最外縁2a1 を二点鎖線で示す。1つの幅方向ラグ部分4aは、転輪転動面2aとクローラ厚み方向で重複する内側端部(一端部)4a1 と、芯金翼部埋設部分2cとクローラ厚み方向で重複する外側端部(他端部)4a2 とを有している。また、本実施形態では、幅方向ラグ部分4aは、図3のように、クローラ厚み方向視において、クローラ幅方向外側に向かうに従ってクローラ周方向にずれるように、クローラ幅方向に延在した形状である。これにより、各幅方向ラグ部分4aの内側端部4a1 および外側端部4a2 は、クローラ周方向にずれた位置に配置されることになる。
本実施形態では、図4に示すように、図3の破線で示された芯金3の翼部3bは、クローラ厚み方向視で、芯金翼部埋設部分2cと重複する位置に配置されており、また、図3の破線で示された芯金3の翼部3bのクローラ周方向の間は、クローラ厚み方向視で、クローラ本体2の内周面に形成された凹部2bと重複する位置に配置されている。
さらに本実施形態では、接地ラグ4は、2つの幅方向ラグ部分4aを連結する連結ラグ部分4bを有している。連結ラグ部分4bは、例えば図3に示すように、クローラ周方向で隣り合う幅方向ラグ部分4aの間に形成され、これら幅方向ラグ部分4a同士を連結している。詳細には、幅方向ラグ部分4aのうち、連結ラグ部分4bよりもクローラ幅方向の中央側の部分を幅方向ラグ部分4aの内側端部4a1 を含む部分とし、また、連結ラグ部分4bよりもクローラ幅方向外側の部分を幅方向ラグ部分4aの外側端部4a2 を含む部分としている。これにより、接地ラグ4は、図3に示すように、クローラ厚み方向視で、転輪転動面2a及び芯金3と重複する位置に、2つの幅方向ラグ部分4aの内側端部4a1 を含む部分と、連結ラグ部分4bとで区画された開放部A1を有する領域Rを形成し、また、クローラ厚み方向視で、2つの芯金3のクローラ周方向の間と重複する位置に、2つの幅方向ラグ部分4aの外側端部4a2 を含む部分と連結ラグ部分4bとで区画された切欠部A2を形成している。また、本実施形態では、接地ラグ4の接地面4fは、クローラ厚み方向で、2つの幅方向ラグ部分4aと連結ラグ部分4bとが同一高さになるように隆起させることで、同一平面として構成されている。
なお、本実施形態では、接地ラグ4の、一対の幅方向ラグ部分4aの内側端部4a1 間に形成された開放部A1は、接地ラグ4のクローラ周方向間に形成された隙間Gよりも、クローラ本体2の幅方向の同一位置における、クローラ周方向の隙間が狭い隙間として構成されているが、広い隙間とすることも可能である。
次に、中央ラグ5について説明する。本実施形態では、中央ラグ5は、クローラ厚み方向視で芯金3のクローラ幅方向の中央と重複し、接地ラグ4のうち、クローラ周方向に隣接する2つの幅方向ラグ部分4aの内側端部4a1 同士を連結している。これにより、本実施形態では、クローラ厚み方向視で芯金3と重複する位置に、2つの幅方向ラグ部分4aの内側端部4a1 を含む部分と、連結ラグ部分4bと、中央ラグ5と、で囲繞される領域(所定の領域)Rが形成されている。
より詳細には、本実施形態では、例えば図5に示すように、領域Rのうち、クローラ厚み方向で、最も芯金3に近い部分を領域Rの底面6とすると、中央ラグ5は、領域Rの底面6よりも接地ラグ4の接地面4fに近い側にあって、接地ラグ4の接地面4fと同一又は当該の接地面4fよりも芯金3に近い位置まで隆起しており、当該位置に、中央ラグ5の最大隆起面5aが形成されている。また、中央ラグ5は、最大隆起面5aに繋がりクローラ幅方向外側に向かうに従って芯金3に接近する開放部側傾斜面5bを有している。すなわち、本実施形態では、領域Rは、接地ラグ4の接地面4f、中央ラグ5の最大隆起面5aと、で囲繞され、最深部分を底面6とする領域であり、特に、中央ラグ5の最大隆起面5aは、接地ラグ4の接地面4fよりも高さが低いことで、クローラ厚み方向視で、領域Rの一方のみを開放している。
本実施形態では、開放部A1が領域Rを開放する方向は、クローラ幅方向に沿う方向、より詳細には、クローラ幅方向に沿ってクローラ幅方向の中央側(クローラ幅方向内側)に向かう方向である。本実施形態では、図3に示すように、開放部A1は、クローラ幅方向中央側に開放されるように、クローラ厚み方向視で芯金3上に形成されている。
また、本実施形態では、図3に示すように、クローラ幅方向の両側に配置された一対の接地ラグ4は、クローラ本体2に形成した係合部2dを基準に、互いにクローラ周方向に、2つの係合部2dの間隔だけずらした位置に配置されている。具体的には、図3に示すように、図面右側の接地ラグ4の、2つの幅方向ラグ部分4aの内側端部4a1 のうちのクローラ周方向の一方側の内側端部4a1 と、図面左側の接地ラグ4の、2つの幅方向ラグ部分4aの内側端部4a1 のうちのクローラ周方向の他方側の内側端部4a1が、クローラ幅方向で、クローラ本体2の係合部2dと一列になるように配置されている。
詳細には、クローラ周方向で隣り合うクローラ本体2の係合部2dの間では、当該係合部2dを挟んだ左右に、クローラ周方向で隣り合う接地ラグ4の間に形成された隙間Gと、開放部A1を有する領域Rとが互いに対向するように配置されている。
また、図5に示すように、クローラ周方向で隣り合う接地ラグ4の間に形成された隙間Gはそれぞれ、中央ラグ5の最大隆起部5aに繋がりクローラ幅方向外側に向かうに従って芯金3に接近する隙間側傾斜面5cを有している。図5に示すように、隙間側傾斜面5cは、底面6に繋がっている。隙間側傾斜面5cは、開放部側傾斜面5bと同一または異なる角度で傾斜させることができる。図6に示すように、隙間Gの底面6は、クローラ本体2の幅方向端縁2eに向かうにしたがって、芯金3に向かって傾斜する傾斜面7に繋がっている。隙間Gは、クローラ幅方向外側で、クローラ周方向の芯金3間での屈曲性を向上させ、走行振動を低減させると共に、接地ラグ4の間で踏み固めた雪等をクローラ幅方向外側に逃がすことができる。
更に、図3及び図6等に示すように、接地ラグ4のクローラ幅外側には切欠部A2が形成されている。接地ラグ4の、一対の幅方向ラグ部分4aの外側端部4a2 間に形成された切欠部A2は、接地ラグ4の接地面4fに繋がり、当該接地面4fからクローラ本体2の幅方向端縁2eに向かうにしたがって、芯金3に向かって傾斜する第1傾斜面8と、第1傾斜面8に繋がり、領域Rの底面6と同一の高さの底面6と、底面6に繋がり、クローラ本体2の幅方向端縁2eに向かうにしたがって、芯金3に向かって傾斜する第2傾斜面9と、で形成されている。また、本実施形態では、接地ラグ4の、一対の幅方向ラグ部分4aの外側端部4a2 間に形成された切欠部A2は、クローラ幅方向外側に開放されている。切欠部A2は、接地ラグ4の内側端部4a1 間に形成された開放部A1よりも、クローラ幅方向の同一位置における、クローラ周方向の隙間が狭い隙間として構成されている。
図2には、上述した弾性クローラ1を一構成要素とした、本発明の一実施形態に係る弾性クローラ装置10の基本構成を示す。弾性クローラ装置10は、上述の弾性クローラ1と、弾性クローラ1が巻き掛けられる、駆動輪、従動輪および転輪と、を備えている。
図2中、符号20は、弾性クローラ装置10を構成するスプロケットまたはアイドラである。本実施形態では、スプロケット20は、前記駆動輪を構成し、アイドラ20は、前記従動輪を構成している。スプロケット20は、図2に示すように、その歯21が係合部2dに係合して、弾性クローラ1を駆動させ、アイドラ20は、スプロケット20で駆動させた弾性クローラ1に従動する。本実施形態では、係合部2dは、クローラ本体2を厚み方向に貫通する貫通孔で構成されているが、クローラ本体2を厚み方向に貫通させることなく、窪み部とすることもできる。
符号30は、弾性クローラ装置10を構成する転輪である。転輪30は、弾性クローラ1のうち、クローラ本体2の内周面に形成された転輪転動面2a上を転動する。本実施形態では、転輪30は、2つの回転体31がシャフト32を介して連結されている。
本実施形態では、雪や軟弱地等を走行する場合、図3等に示すように、接地ラグ4及び中央ラグ5で囲繞された領域Rで雪や軟弱地を踏み固めて硬くすることでパッキング性が向上し、しかも、接地ラグ4及び中央ラグ5で囲繞された領域Rは、クローラ厚み方向視で芯金3と重複する位置にあるため、領域Rで雪や軟弱地を機体からの負担荷重と共に芯金3によって押し固めることができる。このように、本実施形態に係る弾性クローラ1によれば、芯金3によって雪や軟弱地を押し固める力が大きくなるため、パッキング性が改善される。従って、本実施形態に係る弾性クローラ1によれば、パッキング性の改善、ひいては、雪又は軟弱な地面等への駆動力の伝達の向上を図ることができる。
また、本実施形態に係る弾性クローラ1では、領域Rの一方向のみを開放する開放部A1を備えている。この場合、開放部A1から領域R内に詰まった雪や泥等を容易に取り除けることにより、又は、ラグ4が開放部A1を基点に変形することにより、領域R内に詰まった雪や泥等を容易に取り除けるため、弾性クローラ1を継続して使用することによるパッキング性の低下を抑制することができる。特に、本実施形態では、接地ラグ4(内側端部4a1 を含む部分及び連結ラグ部分4b)及び中央ラグ5で囲繞された領域で踏み固められるのに加え、接地ラグ(内側端部4a1 を含む部分及び連結ラグ部分4b)4で囲繞された領域で踏み固められることで、パッキング性がさらに向上し、領域R内に詰まった雪や泥等の除去は、接地ラグ(特に内側端部4a1 を含む部分)4が接地ラグ4のクローラ幅方向の中央側に形成された開放部A1を基点として動くことによって行うことができる。
特に本実施形態に係る弾性クローラ1では、開放部A1が領域Rを開放する方向は、クローラ幅方向に沿う方向である。この場合、横ずれの抑制を図ることができる。
また、本実施形態に係る弾性クローラ1では、開放部A1が領域Rを開放する方向は、クローラ幅方向に沿ってクローラ幅方向の中央側に向かう方向である。この場合、踏み固めた部分のクローラ幅方向外側への逃げが抑制される分、雪等の逃げは、機体からの負担荷重が大きいクローラ幅方向の中央に向かうことにより、走行時におけるパッキング性が改善され、雪又は軟弱な地面等への駆動力の伝達の更なる向上と横ずれの更なる抑制とを図ることができる。
更に、本実施形態に係る弾性クローラ1では、所定の領域Rを囲繞するラグの一部は、クローラ厚み方向視で芯金3のクローラ幅方向の中央と重複する、中央ラグ5であることが好ましい。本実施形態では、所定の領域Rを囲繞するラグの一部は、芯金3のクローラ幅方向の中央部3aと重複する、中央ラグ5である。この場合、芯金3の中央に中央ラグ5を配置したことで、機体からの負担荷重等の、最も荷重が負荷される中央ラグ5によって領域Rが囲繞されるため、パッキング性を更に改善させることができる。
また、本実施形態に係る弾性クローラ1では、前記ラグは、クローラ厚み方向視でクローラ周方向に隣り合う複数の芯金3に亘って重複して延在することが好ましい。本実施形態では、接地ラグ4における、2つの幅方向ラグ部分4aがそれぞれ、クローラ厚み方向視でクローラ周方向に隣り合う複数の芯金3に亘って重複して延在している。この場合、1個当たりの接地ラグ4の体積が増えることで、ひいてはラグ4の接地面4fの面積が増えることで、雪又は軟弱な地面等への駆動力の伝達を向上させつつ、雪道等の低摩擦路でのスリップの発生が抑制され、さらに、磨耗やゴム欠け現象等が抑制され。すなわち、ラグの耐久性と雪又は軟弱な地面等における走行性を両立させることができる。
また、本実施形態に係る弾性クローラ1では、図3等に示すように、クローラ幅方向の中央を挟んで対向する、一方の位置に、領域Rを囲繞するラグを備える一方、他方の位置に、隙間Gを備えている。この場合、パッキング性を改善しつつ走行振動を抑制することができる。
また、本実施形態に係る弾性クローラ1の変形例として、クローラ幅方向に間隔をおいた2つの領域Rをそれぞれ囲繞する2つのラグを備え、2つのラグのそれぞれが領域Rを開放するそれぞれの開放部A1は、互いに対向することも好ましい。具体的には、2つの接地ラグ4を、クローラ幅方向の中央を通ってクローラ周方向に延びる中心線を挟んで、当該中心線に対して線対称な位置に配置する。この場合、2つの開放部A1が互いにクローラ幅方向に間隔をおいて一列に配置されると共に、これら開放部A1は、同一の中央ラグ5に向かって開放されている。この場合、クローラ幅方向で対向する2つの領域Rの雪と共に中央ラグ5の最大隆起部5aの雪を、クローラ幅方向の外側から中央に向かって領域Rを囲繞する2つの接地ラグ4及び中央ラグ5がクローラの幅方向で挟み込むようにして踏み固めるため、雪又は軟弱な地面等への駆動力の伝達の更なる向上と横ずれの更なる抑制とを図ることができる。
また、本実施形態では、図3に示すように、領域Rのクローラ周方向の端縁4e1,4e2はそれぞれ、芯金3のクローラ周方向の端縁3e1,3e2のクローラ周方向間に位置している。この場合、接地ラグ4がクローラ厚み方向視で弾性体と対比して剛性の高い芯金3と確実に重複する位置になるため、雪をより強い力で踏み固めることができ、よりパッキング性の改善を図ることができる。更に、本実施形態に係る弾性クローラ1では、領域Rのクローラ周方向の少なくとも一方の端縁は、芯金3のクローラ周方向の少なくとも一方の端縁とクローラ厚み方向視で一致することも好ましい。この場合、接地ラグ4が弾性クローラ1のスプロケット又はアイドラへの巻回に伴い芯金3のクローラ周方向の端縁3e1及び3e2を基点に屈曲することにより、領域R内に詰まった土等を容易に取り除けるため、弾性クローラ1を継続的に使用することによるパッキング性の低下を抑制することができる。
更に本実施形態に係る弾性クローラ1の他の変形例では、ラグは、領域Rの全方向を囲繞することが好ましい。具体例としては、中央ラグ5の最大隆起部5aを接地ラグ4の接地面4fと同じ高さにすることにより、領域Rの全方向を接地ラグ4及び中央ラグ5で囲繞し、或いは、接地ラグ4に形成した凹部を領域Rとすることにより、領域Rの全方向を接地ラグ4のみで囲繞することもできる。この場合も、パッキング性が改善されることにより、雪又は軟弱な地面等への駆動力の伝達の向上を図ることができる。
本発明によれば、走行時におけるパッキング性が改善された、弾性クローラを提供することができる。
また、図6に示すように、各幅方向ラグ部分4aの外側端部4a2 の間に形成された隙間Gおよび切欠部A2はそれぞれ、クローラ本体2の内周面に形成された凹部2b(本実施形態では、凹部2bのクローラ本体2の幅方向の少なくとも一部)とクローラ本体2の厚み方向で重複し、クローラ本体2の厚みを局所的に薄肉化させる。これにより、隙間Gおよび切欠部A2はそれぞれ、クローラ本体2の内周面に形成された凹部2bと協働して、弾性クローラ1を十分曲げ易くしている。また、各幅方向ラグ部分4aの内側端部4a1 (本実施形態では、内側端部4a1 のクローラ本体2の幅方向の少なくとも一部)は、図6に示すように、転輪転動面2aとクローラ本体2の厚み方向で重複している。これにより、図6に示すように、幅方向ラグ部分4aの内側端部4a1 はそれぞれ、転輪転動面2aを支持する。
本実施形態に係る弾性クローラ1は、クローラ本体2の内周面に、周方向で隣り合う芯金3の翼部3b同士の間を、転輪転動面2aからクローラ本体2の幅方向外側に伸びる、複数の凹部2bが形成されている。凹部2bはそれぞれ、周方向に間隔を置いて、クローラ本体2の幅方向に延びる芯金3の存在しない部分に形成されている。そして、クローラ本体2の外周面には、周方向で隣り合う芯金3同士の間で転輪転動面2aとクローラ本体2の厚み方向で重複する内側端部4a1 から芯金3の翼部3bが埋設された部分とクローラ本体2の厚み方向で重複する内側端部4a2 へクローラ本体2の幅方向に延在する、複数の幅方向ラグ部分4aが形成されている。
すなわち、本実施形態に係る弾性クローラ1は、周方向で隣り合う芯金3同士の間では、言い換えれば、クローラ本体2の幅方向に延びる芯金3の存在しない部分では、クローラ本体2の幅方向内側に、幅方向ラグ部分4aの内側端部4a1 が配置される一方、クローラ本体2の幅方向外側に、周方向で隣り合う幅方向ラグ部分4aの外側端部4a2 同士の間、即ち、周方向で隣り合う接地ラグ4同士の間に形成される隙間Gのうち、クローラ本体2の幅方向外側に配置される隙間G(本実施形態では、連結ラグ部分4bにより形成される切欠部A2も含む)が配置される。
この場合、クローラ本体2の幅方向外側では、クローラ本体2の外周面に形成された幅方向ラグ部分4aが形作る隙間G及び切欠部A2がクローラ本体2の内周面に形成された凹部2bとクローラ本体2の厚み方向で重複する位置に配置されることにより、弾性クローラ1の駆動時に、クローラ本体2(弾性クローラ1)が曲がり易くなることにより、走行時のパワーロスが低減され、ひいては燃費向上を図ることができる。また、クローラ本体2の幅方向内側では、幅方向ラグ部分4aの内側端部4a1 がクローラ本体2の内周面に形成された凹部2bとクローラ本体2の厚み方向で重複する位置に配置されることにより、弾性クローラ1を曲げ易くしつつ、周方向で互いに隣り合う芯金3同士の間のばねが硬くなることで(幅方向ラグ部分4aの内側端部4a1 が配置される部分では、芯金翼部埋設部分2cと芯金翼部埋設部分2c間とのばね差が小さくなることで)、走行時の振動が抑制されるため、乗り心地が良好となる。
したがって、本実施形態に係る弾性クローラ1によれば、弾性クローラ1の屈曲抵抗の低減と振動の抑制との両立が図られ、ひいては低燃費と良好な乗り心地との両立が可能になる。
また、本実施形態に係る弾性クローラ1のように、周方向で隣り合う幅方向ラグ部分4aの間に形成され、当該幅方向ラグ部分4a同士を連結する連結ラグ4bを備えれば、1つの幅方向ラグ部分4aのみをラグとする場合に比べて、1個当たりのラグの体積が増え、ひいては、ラグの耐久性を向上させることができる。
特に、本実施形態に係る弾性クローラ1では、連結ラグ部分4bは、クローラ本体2の内周面に形成された凹部2bとクローラ本体2の厚み方向で重複する位置に、周方向に隣接する幅方向ラグ部分4a同士と連結ラグ部分4bにより形成される切欠部A2が形成されるように備えられている。この場合、周方向に隣接する接地ラグ4に形成された切欠部A2が、周方向に隣接する幅方向ラグ部分4a同士の間に形成される隙間Gとして存在し、クローラ本体2の内周面に形成された凹部2bと、クローラ本体2の厚み方向で重複することにより、幅方向ラグ部分4aの剛性を接地ラグ4全体の剛性として高めつつ、クローラ本体2(弾性クローラ1)が曲がり易くなることにより、ラグの耐久性を向上させつつ、より燃費の低減を図ることができる。
さらに、本実施形態に係る弾性クローラ1では、連結ラグ部分4bが、クローラ本体2の内周面に形成された転輪転動面2a及び芯金3とクローラ本体2の厚み方向で重複する位置に、周方向に隣接する幅方向ラグ部分4a同士と連結ラグ部分4bにより形成される開放部A1が形成されるように備えられている。この場合、芯金3が埋設される部分と芯金3の存在しない部分との間のばね差を小さくすることができるので、ラグの耐久性を向上させつつ、乗り心地を改善することができる。
また、本実施形態に係る弾性クローラ装置10によれば、低燃費と良好な乗り心地との両立が可能になる。
上述したとおり、本発明によれば、低燃費と良好な乗り心地との両立が可能な、弾性クローラおよび弾性クローラ装置を提供することができる。
上述したところは、本発明の一実施形態にすぎず、特許請求の範囲に従えば、様々な変更が可能となる。例えば、接地ラグ4の開放部A1が領域Rを開放する方向は、クローラ厚み方向視で芯金3と重複する位置にあれば、クローラ幅方向に沿ってクローラ幅方向の外側に向かう方向は勿論、クローラ周方向に沿って延びる方向(クローラ周方向に対して傾斜する方向も含む)であってもよい。
本発明は、クローラ本体の外周面からラグが隆起する弾性クローラに利用することができる。
1;弾性クローラ, 2;クローラ本体, 2a;転輪転動面, 2b;凹部, 2c;芯金の翼部が埋設された部分, 3;芯金, 3a;中央部, 3b;翼部, 3e1;芯金のクローラ周方向の端縁, 3e2;芯金のクローラ周方向の端縁, 4;接地ラグ(ラグ), 4a;幅方向ラグ部分(ラグ), 4a1 ;内側端部(ラグ), 4a2 ;外側端部(ラグ), 4b;連結ラグ部分(ラグ), 4e1;領域のクローラ周方向の端縁, 4e2;領域のクローラ周方向の端縁, 5;中央ラグ(ラグ), 5a;最大隆起面, 5b;開放部側傾斜面, 5c;隙間側傾斜面, 10;弾性クローラ装置, A1;開放部, A2;切欠部, D;クローラ厚み方向, L;クローラ周方向, R;領域, W;クローラ幅方向

Claims (9)

  1. 弾性体により無端状に形成されるクローラ本体と、
    前記クローラ本体にクローラ周方向に間隔をおいて埋設され、クローラ幅方向に延在する芯金と、
    前記クローラ本体の外周面から隆起し、クローラ厚み方向視で前記芯金と重複する所定の領域を囲繞するラグと、
    を備える弾性クローラ。
  2. 前記ラグは、前記領域の一方向のみを開放する開放部を備える、請求項1に記載の弾性クローラ。
  3. 前記開放部が前記領域を開放する方向は、クローラ幅方向に沿う方向である、請求項2に記載の弾性クローラ。
  4. 前記開放部が前記領域を開放する方向は、クローラ幅方向に沿ってクローラ幅方向の中央側に向かう方向である、請求項3に記載の弾性クローラ。
  5. クローラ幅方向に間隔をおいた2つの前記領域をそれぞれ囲繞する2つのラグを備え、前記2つのラグのそれぞれが前記領域を開放するそれぞれの前記開放部は、互いに対向する、請求項2から請求項4の何れか1項に記載の弾性クローラ。
  6. 前記ラグは、前記領域の全方向を囲繞する、請求項1に記載の弾性クローラ。
  7. 前記所定の領域を囲繞する前記ラグの一部は、クローラ厚み方向視で前記芯金のクローラ幅方向の中央と重複する、中央ラグである、請求項1から請求項6の何れか1項に記載の弾性クローラ。
  8. 前記ラグは、クローラ厚み方向視でクローラ周方向に隣り合う複数の前記芯金に亘って重複して延在する、請求項1から請求項6の何れか1項に記載の弾性クローラ。
  9. 前記領域のクローラ周方向の少なくとも一方の端縁は、前記芯金のクローラ周方向の少なくとも一方の端縁とクローラ厚み方向視で一致する、請求項1から請求項7の何れか1項に記載の弾性クローラ。
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