JPWO2016195062A1 - 非水電解液一次電池およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

金属リチウムまたはリチウム合金を有する負極を備えた非水電解一次液電池の高温での貯蔵性を改善し、信頼性に優れた非水電解液一次電池と、その製造方法とを提供する。金属リチウムまたはリチウム合金を有する負極、正極、セパレータおよび非水電解液を有する非水電解液一次電池であって、前記非水電解液は、少なくともLiClO4を電解質として含有し、かつ、LiB(C2O4)2を0.1〜5質量%含有することを特徴とする非水電解液一次電池により、前記課題を解決する。

Description

本発明は、金属リチウムまたはリチウム合金を含有する負極を有し、かつ信頼性に優れた非水電解液一次電池と、その製造方法に関するものである。
現在、非水電解液を有するリチウム一次電池やリチウムイオン二次電池などの非水電解液電池は、携帯機器の電源のほか、タイヤ内部の圧力センサーの電源のように、高温に晒されかつ大きな振動を受ける用途など、種々の分野で適用されているが、その用途の広がりを受けて、各種の特性の向上を図ることが試みられている。
金属リチウムや、リチウム−アルミニウム合金などのリチウム合金を負極活物質とする非水電解液電池において、特にコイン形のリチウム一次電池では、イオン伝導度が高く優れた放電特性を実現することのできるLiClOを電解質とする非水電解液が一般に用いられている。しかしながら、電池を高温で貯蔵した場合は、電解液と電極との反応が生じてしまい、電池の膨れなどの問題を生じるため、電池を高温環境下で使用する用途などでは、電解液と電極との反応を抑制する対策が求められている。
これに対し、正極または負極の表面に被膜を形成することにより、電解液との反応を抑制し、高温貯蔵時の電池の膨れを抑制することのできる添加剤として、プロパンスルトンなどのイオウ系化合物が知られている(特許文献1)。
しかし、電池の膨れ抑制に充分な効果を生じるように、前記化合物を一定以上の添加量で電解液に含有させた場合、電極表面に形成される被膜が放電反応を阻害してしまい、電池の内部抵抗を上昇させてしまうため、高温貯蔵後に放電特性が低下してしまうという問題が生じやすくなる。
一方、特許文献2には、リチウムビスオキサレートボレート〔LiB(C〕とLiBFとを、モル比で2:8〜5:5の範囲で含有する非水電解液を用いることにより、高温で正極活物質中から電解液に遊離する水分により生じる内部抵抗の上昇や、電解液の分解による内圧の上昇を防ぎ、低温でも高温でも優れた特性の得られる電池を構成できることが開示されている。
LiBFは比較的耐熱性に優れた電解質塩であり、LiB(Cを共存させた非水電解液を用いることにより、100℃程度までの温度範囲においては、貯蔵特性に優れる電池とすることができる。しかし、より高温の環境下では、LiB(Cを含有していても、水分との反応による電池特性の低下が生じやすくなる。
従って、より高温の厳しい条件下、例えば、110℃以上の高温環境下で電池が貯蔵された場合の特性劣化を防ぐには、更なる検討が必要であった。
特開2004−47413号公報 特開2006−269173号公報
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、金属リチウムまたはリチウム合金を有する負極を備えた非水電解液一次電池の高温での貯蔵性を改善し、信頼性に優れた非水電解液一次電池と、その製造方法とを提供することにある。
前記目的を達成し得た本発明の非水電解液一次電池は、金属リチウムまたはリチウム合金を有する負極、正極、セパレータおよび非水電解液を有する非水電解液一次電池であって、前記非水電解液は、少なくともLiClOを電解質として含有し、かつ、LiB(Cを0.1〜5質量%含有することを特徴とするものである。
また、本発明の非水電解液一次電池の製造方法は、金属リチウムまたはリチウム合金を有する負極、正極、セパレータおよび非水電解液を外装体内部に収容する非水電解液一次電池の製造方法であって、電解質として少なくともLiClOを含有し、かつ、LiB(Cを0.1〜5質量%含有する非水電解液を用いることを特徴とする。
本発明によれば、高温貯蔵時の電池の膨れおよび内部抵抗の上昇を抑制し、信頼性に優れた非水電解液一次電池と、その製造方法とを提供することができる。
本発明の非水電解液一次電池の一例を模式的に表す縦断面図である。 実施例1、2および比較例1の非水電解液一次電池の高温環境下での信頼性評価結果を表すグラフである。 実施例1および実施例3〜5の非水電解液一次電池の低温での放電特性評価結果を表すグラフである。
本発明の非水電解液一次電池は、電解質として少なくともLiClOを含有し、かつ、LiB(Cを0.1〜5質量%含有する非水電解液を用いて構成する。
本発明に係る負極が有する金属リチウムまたはリチウム合金がLiB(Cを含有する非水電解液と接することにより、負極表面に、電解液と負極表面との反応を抑制できる保護被膜が形成される。この保護被膜は、110℃以上の高温環境でも有効に作用するため、電池の組み立て時に電池内に持ち込まれた水分などと負極との反応を防ぐことができる。また、前記非水電解液に、LiClOを電解質として含有させることにより、高温環境下でも優れた特性を維持することができ、ガス発生による膨れが少なく、また放電に寄与しないLiの酸化物または水酸化物の生成による内部抵抗の上昇が抑制された、高温環境下でも信頼性に優れた非水電解液一次電池とすることができる。
なお、負極活物質としてリチウム合金が用いられる場合、リチウム合金を形成するための合金元素(例えばアルミニウム)を電池内でリチウムと反応させてリチウム合金を形成することが一般的である。この場合、一般に粒子または膜の形状で使用される合金元素がリチウムと合金化する際に、体積膨張して微粉化するため、振動などの影響によって活物質が負極から脱離して短絡などの問題が生じやすくなる。
しかし、本発明の非水電解液一次電池では、LiB(Cを0.1〜5質量%の量で含有する非水電解液を用いることによって負極表面に形成される保護被膜が、リチウムと合金元素との電気化学的な反応を抑え、リチウム合金の形成に伴う多量の微粉末の生成を抑制するため、リチウム合金の微粉末が負極から脱離することによって生じ得る短絡などの問題を防止できると推測される。
従って、不織布セパレータのように、空隙のサイズが比較的大きく、電極から脱落した活物質の微粉末が空隙を通過しやすいセパレータを用いた場合であっても、負極活物質の微粉化に伴う短絡が生じ難く、耐振動性に優れた非水電解液一次電池を構成できると考えられる。
本発明の非水電解液一次電池に係る非水電解液には、有機溶媒に電解質を溶解させたものが使用できる。有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートなどの環状カーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネートなどの鎖状カーボネート;1,2−ジメトキシエタン(DME)、ジグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、トリグライム(トリエチレングリコールジメチルエーテル)、テトラグライム(テトラエチレングリコールジメチルエーテル)、メトキシエトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフランなどのエーテル;γ−ブチロラクトンなどの環状エステル;ニトリル;などが挙げられ、これらのうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。特に、前記のカーボネートとエーテルとを併用することが好ましい。
非水電解液溶媒として、カーボネートとエーテルとを併用する場合には、全溶媒中のカーボネートとエーテルとの量比(混合比)は、体積比で、カーボネート:エーテル=30:70〜70:30とすることが好ましい。
また、非水電解液溶媒にはニトリルを使用することも好ましい。ニトリルは低粘度であり、かつ高誘電率であることから、これを非水電解液溶媒として用いることで、非水電解液一次電池の負荷特性をより高めることができる。
ニトリルの具体例としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、ベンゾニトリル、アクリロニトリルなどのモノニトリル;マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、1,4−ジシアノヘプタン、1,5−ジシアノペンタン、1,6−ジシアノヘキサン、1,7−ジシアノヘプタン、2,6−ジシアノヘプタン、1,8−ジシアノオクタン、2,7−ジシアノオクタン、1,9−ジシアノノナン、2,8−ジシアノノナン、1,10−ジシアノデカン、1,6−ジシアノデカン、2,4−ジメチルグルタロニトリルなどのジニトリル;ベンゾニトリルなどの環状ニトリル;メトキシアセトニトリルなどのアルコキシ置換ニトリル;などが挙げられる。これらの中でも、アセトニトリルが特に好ましい。
非水電解液溶媒にニトリルを使用する場合、非水電解液溶媒全量中のニトリルの含有量は、ニトリルの使用による前記の効果をより良好に確保する観点から、5体積%以上であることが好ましく、8体積%以上であることがより好ましい。ただし、ニトリルは負極のリチウムとの反応性が高いため、ニトリルの使用量をある程度制限して、これらの間での過剰な反応を抑制することが好ましい。よって、非水電解液溶媒全量中のニトリルの含有量は、20体積%以下であることが好ましく、17体積%以下であることがより好ましい。
非水電解液に溶解させる電解質としては、LiClOを用いるが、非水電解液中におけるLiClOの濃度は、0.3mol/l以上であることが好ましく、0.4mol/l以上であることがより好ましく、また、1mol/l以下であることが好ましく、0.8mol/l以下であることがより好ましく、0.7mol/l以下であることが特に好ましい。
なお、非水電解液には、必要に応じて、LiClO以外の電解質をLiClOと併用することもできる。LiClOと併用可能な他の電解質としては、例えば、LiBF、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiC2n+1SO(n≧1)〔LiCFSO、LiCSOなど〕、リチウムイミド塩〔LiN(FSO、LiN(CFSO、LiN(CSOなど〕、LiC(CFSO、LiCFCO、LiB10Cl10、低級脂肪酸カルボン酸リチウム、LiAlCl、LiCl、LiBr、LiI、クロロボランリチウム、四フェニルホウ酸リチウムなどが挙げられる。
ただし、LiClO以外の電解質をLiClOと併用する場合、LiClOの特性を阻害しないためには、LiClOと併用する他の電解質の非水電解液における濃度と、LiClOの濃度との合計が、1mol/l以下となるように調整することが好ましく、0.8mol/l以下とすることがより好ましい。
また、LiB(CをLiClOと併用することによる電池の高温環境下での信頼性向上効果を良好に確保する観点から、電池に使用する非水電解液におけるLiB(Cの含有量は、0.1質量%以上とすればよく、0.3質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることが特に好ましい。ただし、電池に使用する非水電解液中のLiB(Cの量が多すぎると、負極表面に形成されるLiB(C由来の被膜が厚くなり、電池の内部抵抗が増大して放電特性が低下する虞がある。よって、このような理由による電池の内部抵抗の増大を抑える観点から、電池に使用する非水電解液におけるLiB(Cの含有量は、5質量%以下とし、3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1.5質量%以下であることが特に好ましい。
特に、前記効果をより得られやすくするためには、LiClOとLiB(Cとの割合を一定範囲とすることが好ましく、それらの総量中、LiB(Cの割合が3mol%以上であることが好ましく、5mol%以上であることがより好ましく、また、20mol%以下であることが好ましく、18mol%以下であることがより好ましい。
更に、非水電解液には、必要に応じて、LiB(C以外の添加剤を含有させることもできる。LiB(Cと併用可能な添加剤としては、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトンなどの飽和環状スルトン化合物;1,3−プロペンスルトンなどの不飽和環状スルトン化合物;無水マレイン酸、無水フタル酸などの酸無水物;スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリルなどのジニトリル;などが挙げられる。
なお、飽和環状スルトン化合物および不飽和環状スルトン化合物としては、電解液への溶解性などの点から、5員環〜7員環の化合物が好ましく、5員環構造を有するものがより好ましく用いられる。
ただし、LiClOおよびLiB(Cによる前述の効果を阻害しないためには、LiB(Cと併用する添加剤の非水電解液中での含有量は、LiB(Cの含有量との合計で、5質量%以下とすることが好ましく、3質量%以下とすることがより好ましい。
また、非水電解液には、公知のゲル化剤を添加してゲル状としたもの(ゲル状電解質)を用いることもできる。
本発明の非水電解液一次電池に係る負極は、金属リチウムまたはリチウム合金を含有するものである。金属リチウムを含有する負極としては、金属リチウム箔をそのまま使用できるほか、金属リチウム箔を集電体の片面または両面に圧着した構造のものを使用することもできる。
また、リチウム合金を含有する負極としては、リチウム合金箔をそのまま使用できるほか、リチウム合金箔を集電体の片面または両面に圧着した構造のものを使用することもできる。
更に、リチウム合金を含有する負極の場合、金属リチウム箔などで構成されるリチウム層(リチウムを含む層)の表面にリチウム合金を形成するための合金元素を含む層を圧着するなどして積層した積層体を使用し、この積層体を電池内で非水電解液と接触させることで、前記リチウム層の表面にリチウム合金を形成させて負極とすることもできる。このような負極の場合、リチウム層の片面のみに合金元素を含む層を有する積層体を用いてもよく、リチウム層の両面に合金元素を含む層を有する積層体を用いてもよい。前記積層体は、例えば、金属リチウム箔と合金元素で構成された箔とを圧着することで形成することができる。
また、電池内でリチウム合金を形成して負極とする場合にも集電体を使用することができ、例えば、負極集電体の片面にリチウム層を有し、かつリチウム層の負極集電体とは反対側の面に合金元素を含む層を有する積層体を用いてもよく、負極集電体の両面にリチウム層を有し、かつ各リチウム層の負極集電体とは反対側の面に合金元素を含む層を有する積層体を用いてもよい。負極集電体とリチウム層(金属リチウム箔)とは、圧着などにより積層すればよい。
リチウム合金を形成するための合金元素としては、アルミニウム、鉛、ビスマス、インジウム、ガリウムなどが挙げられるが、アルミニウムが好ましい。
負極とするための前記積層体に係る前記合金元素を含む層には、例えば、これらの合金元素で構成された箔などが使用できる。前記合金元素を含む層の厚みは、1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましく、20μm以下であることが好ましく、12μm以下であることがより好ましい。
負極とするための前記積層体に係るリチウム層には、例えば、金属リチウム箔などを用いることができる。リチウム層の厚みは、0.1〜1.5mmであることが好ましい。また、金属リチウムを含有する負極とする場合のリチウム層(その形成に使用する金属リチウム箔)の厚みも、0.1〜1.5mmであることが好ましい。
負極集電体としては、銅、ニッケル、鉄、ステンレス鋼を素材とするものが挙げられ、その形態としては、平織り金網、エキスパンドメタル、ラス網、パンチングメタル、金属発泡体、箔(板)などが例示できる。集電体の厚みは、例えば、5〜100μmであることが好ましい。このような集電体の表面には、カーボンペーストや銀ペーストなどのペースト状導電材を塗布しておくことも望ましい。
本発明の非水電解液一次電池に係る正極には、例えば、正極活物質、導電助剤、バインダなどを含有する合剤(正極合剤)をペレット状などに成形した成形体や、前記正極合剤からなる層(正極合剤層)を集電体の片面または両面に有する構造のものを使用することができる。
正極活物質としては、二酸化マンガン、LiMn(0<x<2)、LiMnO(0<x<1)、LiTi5/3(4/3≦x<7/3)などのリチウム含有複合酸化物;バナジウム酸化物;ニオブ酸化物;チタン酸化物;二硫化鉄などの硫化物;フッ化黒鉛;などが挙げられる。
また、正極合剤に係る導電助剤としては、例えば、鱗片状黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンブラックなどが挙げられ、これらのうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
更に、正極合剤に係るバインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、六フッ化プロピレンの重合体などのフッ素樹脂などが挙げられ、これらのうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
正極は、正極合剤の成形体の場合には、例えば、正極活物質、導電助剤およびバインダなどを混合して調製した正極合剤を所定の形状に加圧成形することで製造することができる。
また、正極合剤層と集電体とを有する形態の正極の場合には、例えば、正極活物質、導電助剤およびバインダなどを水またはN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの有機溶媒に分散させて正極合剤含有組成物(スラリー、ペーストなど)を調製し(バインダは溶媒に溶解していてもよい)、これを集電体上に塗布し乾燥し、必要に応じてカレンダ処理などのプレス処理を施す工程を経て製造することができる。
ただし、正極は、前記の各方法で製造されたものに限定されず、他の方法で製造したものであってもよい。
正極に係る正極合剤中の組成としては、正極活物質の量が80〜90質量%であることが好ましく、導電助剤の含有量が1.5〜10質量%であることが好ましく、バインダの含有量が0.3〜10質量%であることが好ましい。
正極合剤の成形体の場合、その厚みは、0.15〜4mmであることが好ましい。他方、正極合剤層と集電体とを有する形態の正極の場合、正極合剤層の厚み(集電体の片面あたりの厚み)は、30〜300μmであることが好ましい
正極に集電体を用いる場合には、その集電体としては、例えば、SUS316、SUS430、SUS444などのステンレス鋼を素材とするものが挙げられ、その形態としては、平織り金網、エキスパンドメタル、ラス網、パンチングメタル、金属発泡体、箔(板)などが例示できる。集電体の厚みは、例えば、0.05〜0.2mmであることが好ましい。このような集電体の表面には、カーボンペーストや銀ペーストなどのペースト状導電材を塗布しておくことも望ましい。
本発明の非水電解液一次電池において、集電体を有する負極(または負極用の積層体)と集電体を有する正極とを使用する場合は、セパレータを介して積層した積層体(積層電極体)や、この積層体を渦巻状に巻回した巻回体(巻回電極体)、更にこの巻回体を横断面が扁平状となるように成形した扁平状巻回体(扁平状巻回電極体)の形で使用することができる。また、正極合剤の成形体からなる正極と、集電体を有しない負極(または負極用の積層体)とを使用する場合は、これらの間にセパレータを介在させつつ扁平形の電池ケース内に収容して使用することができる。
セパレータには不織布や微多孔膜(微多孔性フィルム)が使用されるが、その素材としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体などのポリオレフィンが使用できるほか、電池の用途との関係で耐熱性が要求される場合には、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)などのフッ素樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリメチルペンテン、ポリアミド、ポリイミド、アラミド、セルロースなども使用することができる。不織布や微多孔膜の素材は、前記例示のもののうちの1種のみをもちいてもよく、2種以上を用いてもよい。また、セパレータとなる不織布や微多孔膜は、前記例示の素材で構成された単層構造のもののほか、例えば、異なる素材で構成された複数枚の不織布や微多孔膜を積層した積層構造のものを用いることもできる。
セパレータの厚みは、電池のエネルギー密度の低下を抑制する観点から、例えば、500μm以下とすればよく、450μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましい。ただし、セパレータが薄すぎると、短絡を防止する機能が低下する虞があることから、その厚みは、不織布を用いる場合は、例えば、30μm以上とすればよく、100μm以上であることが好ましく、150μm以上であることがより好ましい。また、微多孔膜を用いる場合は、10μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがより好ましい。
本発明の非水電解液一次電池の形態については特に制限はなく、扁平形(コイン形、ボタン形を含む)、ラミネート形、筒形〔円筒形、角形(角筒形)〕など、種々の形態とすることが可能である。また、負極、正極、セパレータおよび非水電解液を内部に収容する外装体(電池ケース)としては、開口を有する金属製の缶(外装缶)と蓋(封口板)を組み合わせて用いたり、金属ラミネートフィルムを用いたりすることができる。
具体的には、外装缶と封口板とをガスケットを介してカシメ封口したり、外装缶と封口板とを溶接して封口したりすることにより、扁平形や筒形の電池を作製することができ、2枚の金属ラミネートフィルムを重ねるか、1枚の金属ラミネートフィルムを折り曲げ、周囲を貼り合わせて封口することにより、ラミネート形の電池を作製することができる。
なお、カシメ封口を行う形態の外装体を使用する場合、外装缶と封口板との間に介在させるガスケットの素材には、PP、ナイロンなどを使用できるほか、電池の用途との関係で耐熱性が要求される場合には、PFAなどのフッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル(PEE)、ポリスルフォン(PSF)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルスルフォン(PES)、PPS、PEEKなどの融点が240℃を超える耐熱樹脂を使用することもできる。また、電池が耐熱性を要求される用途に適用される場合、その封口には、ガラスハーメチックシールを利用することもできる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではない。
実施例1
<正極の作製>
正極活物質である二酸化マンガンと、導電助剤であるカーボンブラックと、バインダであるPTFEとを、93:3:4の質量比で混合して調製した正極合剤を成形して、直径16mm、厚み1.8mmの正極(正極合剤成形体)を得た。
<負極用積層体の作製>
厚みが0.6mmのリチウム箔の片面に、厚みが0.01μmのアルミニウム箔を圧着し、これを直径16mmの円形に打ち抜いて、負極用積層体を得た。
<非水電解液の調製>
PCとDMEとを、体積比1:1で混合した混合溶媒に、LiClOを0.5mol/lの濃度で溶解させ、更に1質量%となる量のLiB(Cを添加して、非水電解液を調製した。LiClOとLiB(Cとの総量中、LiB(Cの割合は10mol%であった。
<電池の組み立て>
前記の正極と負極用積層体と非水電解液とを使用し、セパレータにPPS製の不織布(厚み170μm)を使用して、図1に示す構造で、直径20mm、高さ3.2mmの非水電解液一次電池を組み立てた。
図1は、実施例1の非水電解液一次電池を模式的に表す縦断面図であり、実施例1の非水電解液一次電池1では、正極2が、ステンレス鋼を素材とする外装缶5の内側に収容され、その上にセパレータ4を介して負極3が配置されている。また、負極3は、リチウム層(リチウム箔)側の面で封口板6の内面に圧着されている。なお、図1では図示していないが、負極3のセパレータ4側の表面には、リチウム−アルミニウム合金が形成されている。更に、電池1の内部には非水電解液(図示しない)が注入されている。
非水電解液一次電池1において、外装缶5は正極端子を兼ねており、封口板6は負極端子を兼ねている。そして、封口板6は、外装缶5の開口部に、PPS製の絶縁ガスケット7を介して嵌合しており、外装缶5の開口端部が内方に締め付けられ、これにより絶縁ガスケット7が封口板6に当接することで、外装缶5の開口部が封口されて電池内部が密閉構造となっている。すなわち、非水電解液一次電池1は、外装缶5と封口板6と、これらの間に介在する絶縁ガスケット7とで形成され、密閉された電池ケース内に、正極2、セパレータ4および負極3を積層した電極体と、非水電解液とが収容されている。
実施例2
LiB(Cの添加量を5質量%とした以外は実施例1と同様にして非水電解液を調製し、この非水電解液を用いた以外は実施例1と同様にして非水電解液一次電池を作製した。LiClOとLiB(Cとの総量中、LiB(Cの割合は36mol%であった。
比較例1
LiB(Cに代えて1,3−プロパンスルトン(PS)を2質量%となる量で添加した以外は実施例1と同様にして非水電解液を調製し、この非水電解液を用いた以外は実施例1と同様にして非水電解液一次電池を作製した。
<高温環境下での信頼性評価>
実施例1、実施例2および比較例1の非水電解液一次電池について、15kΩの抵抗を接続して、正極容量に対する放電深度が60%になるまで放電を行った。放電後の各電池を120℃に調整した恒温槽内に入れ、表1に示す時間ごとに各電池の高さを測定し、電池製造直後の高さ(3.2mm)からの変化量(電池膨れ量)を求めた。
<高温貯蔵後の電池特性評価>
実施例1、実施例2および比較例1の非水電解液一次電池について、下記の条件で、放電深度が60%の電池に対する高温貯蔵後の電池特性の評価を行った。
実施例1、実施例2および比較例1の各電池について、20℃の環境下で、初度の内部抵抗および開回路電圧(OCV)を測定した。次に、測定後の各電池に15kΩの抵抗を接続して、設計容量の60%を放電させた。更に、放電深度が60%になった前記各電池を、120℃に調整した恒温槽内に入れて保持し、323時間経過した後に各電池を取り出し、放冷後に、20℃の環境下で、高温貯蔵後の内部抵抗および開回路電圧(OCV)を測定した。
高温環境下での信頼性評価結果を表1および図2に示し、高温貯蔵後の電池特性の評価結果を表2に示す。図2は、電池製造直後の高さに対する前記変化量の割合の時間変化を表したグラフで、縦軸に電池の膨れの割合を示し、横軸に電池の貯蔵時間を示している。
Figure 2016195062
Figure 2016195062
表1および図2に示す通り、適量のLiB(Cを含有する非水電解液を使用した実施例1、2の非水電解液一次電池は、貯蔵時間が経過しても良好に電池膨れが抑制されていたのに対し、LiB(Cに代えてPSを含有する非水電解液を使用した比較例1の電池では、貯蔵時間が203時間を過ぎたあたりで、電池の膨れ量が急激に増大した。
また、表2に示す通り、適量のLiB(Cを含有する非水電解液を使用した実施例1、2の非水電解液一次電池は、高温貯蔵時に特性が低下しやすい放電深度が40%以上の状態においても、120℃の高温環境下での電池の特性低下を抑制することができた。
実施例3
LiB(Cの添加量を0.5質量%とした以外は実施例1と同様にして非水電解液を調製し、この非水電解液を用いた以外は実施例1と同様にして非水電解液一次電池を作製した。LiClOとLiB(Cとの総量中、LiB(Cの割合は6mol%であった。
実施例4
LiB(Cの添加量を2質量%とした以外は実施例1と同様にして非水電解液を調製し、この非水電解液を用いた以外は実施例1と同様にして非水電解液一次電池を作製した。LiClOとLiB(Cとの総量中、LiB(Cの割合は18mol%であった。
実施例5
LiB(Cの添加量を3質量%とした以外は実施例1と同様にして非水電解液を調製し、この非水電解液を用いた以外は実施例1と同様にして非水電解液一次電池を作製した。LiClOとLiB(Cとの総量中、LiB(Cの割合は25mol%であった。
<低温での放電特性評価>
実施例1および実施例3〜5の非水電解液一次電池について、下記の条件で、−10℃での放電特性の評価を行った。
−10℃の環境下で静置して冷却した後の各電池に500Ωの抵抗を接続して放電させ、放電開始から5秒後の電池の閉回路電圧(CCV)を測定した。
また、前記測定に用いたのとは別の各電池に対し、それぞれ15kΩの抵抗を接続して、設計容量の40%を放電させ、実施例1および実施例3〜5の電池について、放電深度が40%になった電池をそれぞれ用意した。そして、放電深度が40%の電池について、前記と同様にして、−10℃の環境下でのCCVを測定した。
更に、前記測定に用いたのとは別の電池に対し、それぞれ15kΩの抵抗を接続して、設計容量の80%を放電させ、実施例1および実施例3〜5の電池について、放電深度が80%になった電池をそれぞれ用意した。そして、放電深度が80%の電池について、前記と同様にして、−10℃の環境下でのCCVを測定した。
−10℃での放電特性の評価結果を表3および図3に示す。図3は、表3に示す結果を、LiB(Cの添加量と、放電開始5秒後のCCVとの関係で表したものである。
Figure 2016195062
表3および図3に示す通り、電池に使用する電解液におけるLiB(Cの添加量が多くなると、CCVが低くなり放電特性が低下するため、非水電解液中でのLiB(Cの含有量は、5質量%以下とすればよく、3質量%以下とすることが望ましい。特に、2質量%以下である場合は、比較的放電深度が浅い場合の放電特性の低下が殆どなくなることから、2質量%以下とすることがより好ましい。
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、前記以外の形態としても実施が可能である。本出願に開示された実施形態は一例であって、本発明は、これらの実施形態には限定されない。本発明の範囲は、前記の明細書の記載よりも、添付されている請求の範囲の記載を優先して解釈され、請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更は、請求の範囲に含まれる。
本発明の非水電解液一次電池は、放電特性が良好である上に高温環境下での信頼性に優れていることから、こうした特性を生かして、タイヤ内部の圧力センサーの電源用途などの自動車用途のように、特に高温に曝されやすい用途に好適に用い得るほか、従来から知られている非水電解液電池(一次電池または二次電池)が採用されている各種用途と同じ用途にも適用することができる。
1 非水電解液一次電池
2 正極
3 負極
4 セパレータ
5 外装缶
6 封口板
7 絶縁ガスケット

Claims (6)

  1. 金属リチウムまたはリチウム合金を有する負極、正極、セパレータおよび非水電解液を有する非水電解液一次電池であって、
    前記非水電解液は、少なくともLiClOを電解質として含有し、かつ、LiB(Cを0.1〜5質量%含有することを特徴とする非水電解液一次電池。
  2. 前記非水電解液中のLiClOの含有量が、0.3〜1mol/lである請求項1に記載の非水電解液一次電池。
  3. 前記非水電解液におけるLiClOとLiB(Cとの総量中、LiB(Cの割合が3〜20mol%である請求項1または2に記載の非水電解液一次電池。
  4. 金属リチウムまたはリチウム合金を有する負極、正極、セパレータおよび非水電解液を外装体内部に収容する非水電解液一次電池の製造方法であって、
    電解質として少なくともLiClOを含有し、かつ、LiB(Cを0.1〜5質量%含有する非水電解液を用いることを特徴とする非水電解液一次電池の製造方法。
  5. 前記非水電解液中のLiClOの含有量が、0.3〜1mol/lである請求項4に記載の非水電解液一次電池の製造方法。
  6. 前記非水電解液におけるLiClOとLiB(Cとの総量中、LiB(Cの割合が3〜20mol%である請求項4または5に記載の非水電解液一次電池の製造方法。
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