JPWO2016129629A1 - 非水二次電池 - Google Patents

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Abstract

高温下での充放電サイクル特性、負荷特性および連続充電特性が良好な非水二次電池を提供する。本発明の非水二次電池は、正極、負極、セパレータおよび非水電解液を有しており、前記正極は、正極活の粒子の表面が、Al含有酸化物で被覆されてなる正極材料を用いており、前記Al含有酸化物の平均被覆厚みが5〜50nmであり、前記正極材料は、少なくとも、平均粒子径が1〜40μmである正極材料(a)と、平均粒子径が1〜40μmであり、かつ前記正極材料(a)よりも平均粒子径が小さい正極材料(b)とを含んでおり、前記正極材料の比表面積は0.1〜0.4m2/gであり、前記正極材料(a)が含有する正極活物質および前記正極材料(b)が含有する正極活物質は、それぞれ特定の組成を有するコバルト酸リチウムであり、前記非水電解液は、フッ素を含有するリチウム塩を含んでいることを特徴とするものである。

Description

本発明は、高温下での充放電サイクル特性、負荷特性および連続充電特性が良好な非水二次電池に関するものである。
リチウムイオン二次電池などの非水二次電池は、ノートパソコンや携帯電話などの電源として広く用いられており、充放電サイクル特性をはじめとした各種特性を高めるための開発も盛んに行われている。
従来から、非水二次電池の充放電サイクル特性を高めるために、正極活物質(正極材料)を改良することが試みられている。例えば、特許文献1には、正極活物質として使用されるリチウムコバルト複酸化物粉末の粒子表面に、特定のアルミナ被覆層を形成することで、これを用いた電池の充放電サイクル安定性を高める技術が提案されている。
また、特許文献2には、LiとCoとを含む複合酸化物からなる粒子であって、Alなどの特定元素を粒子内部よりも表層部に多く分布させたものを正極活物質として使用することで、電池の充放電サイクル特性を高める技術が提案されている。
更に、特許文献3には、ゼータ電位が負である正極活物質の表面に、アルミナなどのゼータ電位が負である無機微粒子を、ポリカチオン性物質を介して付着させることで、これを用いた電池内での非水電解液の分解を抑えて、その充放電サイクル特性を高める技術が提案されている。
特開2005−276454号公報 特開2004−47437号公報 特開2013−211260号公報
ところで、近年では、非水二次電池を比較的高温に曝される機器の電源などへ適用することも検討されている。また、最近では、充電時の終止電圧を従来よりも高めて非水二次電池を使用することで、より大きな容量を引き出すことも検討されているが、このような方法で使用した場合には、特に高温下での特性低下が生じやすい。よって、このような方法で使用しても、高温下での充放電サイクル特性が良好な非水二次電池の開発が求められている。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高温下での充放電サイクル特性、負荷特性および連続充電特性が良好な非水二次電池を提供することにある。
前記目的を達成し得た本発明の非水二次電池は、正極、負極、セパレータおよび非水電解液を有しており、前記正極は、正極活物質の粒子の表面がAl含有酸化物で被覆されてなる正極材料を用いており、前記Al含有酸化物の平均被覆厚みが5〜50nmであり、前記正極材料は、少なくとも、平均粒子径が1〜40μmである正極材料(a)と、平均粒子径が1〜40μmであり、かつ前記正極材料(a)よりも平均粒子径が小さい正極材料(b)とを含んでおり、前記正極材料の比表面積は0.1〜0.4m/gであり、前記正極材料(a)が含有する正極活物質は、Co、MgおよびZrと、Ni、Mn、TiおよびAlよりなる群から選択される少なくとも1種の元素Mとを少なくとも含有するコバルト酸リチウム(A)であり、前記正極材料(b)が含有する正極活物質は、CoおよびMgと、Ni、Mn、TiおよびAlよりなる群から選択される少なくとも1種の元素Mとを少なくとも含有するコバルト酸リチウム(B)であり、前記非水電解液は、フッ素を含有するリチウム塩を含んでいることを特徴とするものである。
本発明によれば、高温下での充放電サイクル特性、負荷特性および連続充電特性が良好な非水二次電池を提供することができる。
本発明の非水二次電池の一例を模式的に表す部分縦断面図である。 図1の斜視図である。
本発明の非水二次電池に係る正極は、特定の組成を有する正極活物質の粒子の表面が、Al含有酸化物で被覆されてなり、Al含有酸化物の平均厚みが5〜50nmであって、特定の比表面積と粒度分布とを有する正極材料を用いている。
高い電圧で充電された非水二次電池を、40〜90℃程度の高温下において使用すると、正極材料(正極活物質)と非水電解液との反応が進行して非水電解液成分がより分解やすくなったり、正極活物質であるコバルト酸リチウムからのCoイオンの溶出が生じやすくなったりすることから、非水二次電池の充放電サイクル特性や貯蔵特性が低下する。
そこで、本発明では、高電圧領域でのCoの溶出が生じ難い組成のコバルト酸リチウム(A)およびコバルト酸リチウム(B)を正極活物質に使用してその表面をAl含有酸化物で形成し、かつ特定の比表面積とした正極材料を用いることで、正極活物質と非水電解液との反応の抑制を可能として、高電圧で充電しても、高温下での充放電サイクル特性や連続充電特性、貯蔵特性が良好な非水二次電池の提供を可能としている。
また、本発明では、正極材料を特定の平均粒子径を有する粒子群を組み合わせて構成することによって特定の粒度分布とすることで、正極材料を用いた正極の製造過程において、正極材料粒子が割れることによる非水電解液の分解抑制作用の低下を良好に抑制して、Al含有酸化物での被覆による作用をより良好に発揮できるようにしている。
更に、正極活物質粒子の表面を被覆するAl含有酸化物は、正極活物質でのリチウムイオンの出入りを阻害するため、例えば電池の負荷特性を低下させる作用も有しているが、本発明では、Al含有酸化物での平均被覆厚みを特定値とすることで、Al含有酸化物での被覆による電池の特性の低下抑制も可能としている。
正極材料におけるコバルト酸リチウム(A)およびコバルト酸リチウム(B)は、本発明の非水二次電池において、正極活物質として作用するものである。このうち、コバルト酸リチウム(A)は、Co、Mg、Zrおよび元素M、並びに、更に含有してもよい他の元素を纏めて元素群Mとしたときに、組成式Li1+x(−0.05≦x≦0.05)で表されるものである。また、コバルト酸リチウム(B)は、Co、Mgおよび元素M、並びに、更に含有してもよい他の元素を纏めて元素群Mとしたときに、組成式Li1+y(−0.05≦y≦0.05)で表されるものである。
コバルト酸リチウム(A)およびコバルト酸リチウム(B)において、Mg、元素Mおよび元素Mは、コバルト酸リチウム(A)およびコバルト酸リチウム(B)の高電圧領域での安定性を高め、Coイオンの溶出を抑制する作用を有しており、また、コバルト酸リチウム(A)およびコバルト酸リチウム(B)の熱安定性を高める作用も有している。更に、元素Mおよび元素Mは、電池の連続充電特性(電池の充電を継続しても、微小な短絡が発生する時間が非常に長い特性)を高める作用も有している。
コバルト酸リチウム(A)およびコバルト酸リチウム(B)において、Mgの量は、前記の作用をより有効に発揮させる観点から、Coとの原子比Mg/Coが、0.002以上であることが好ましく、0.005以上であることがより好ましい。また、コバルト酸リチウム(A)において、元素Mの量は、前記の作用をより有効に発揮させる観点から、Coとの原子比M/Coが、0.001以上であることが好ましく、0.003以上であることがより好ましい。そして、コバルト酸リチウム(B)において、元素Mの量は、前記の作用をより有効に発揮させる観点から、Coとの原子比M/Coが、0.001以上であることが好ましく、0.003以上であることがより好ましい。
ただし、コバルト酸リチウム(A)およびコバルト酸リチウム(B)中のMgや元素M、元素Mの量が多すぎると、Zr〔コバルト酸リチウム(A)の場合〕やCoの量が少なくなりすぎて、これらによる作用を十分に確保できない虞がある。よって、コバルト酸リチウム(A)およびコバルト酸リチウム(B)において、Mgの量は、Coとの原子比Mg/Coが、0.03以下であることが好ましく、0.015以下であることがより好ましい。また、コバルト酸リチウム(A)において、元素Mの量は、Coとの原子比M/Coが、0.03以下であることが好ましく、0.015以下であることがより好ましい。更に、コバルト酸リチウム(B)において、元素Mの量は、Coとの原子比M/Coが、0.03以下であることが好ましく、0.015以下であることがより好ましい。
コバルト酸リチウム(A)において、Zrは、非水電解液中に含まれるフッ素を含有するリチウム塩が原因となって発生し得るフッ化水素を吸着し、コバルト酸リチウム(A)の劣化を抑制する作用を有している。
非水二次電池に使用される非水電解液中に若干の水分が不可避的に混入していたり、他の電池材料に水分が吸着していたりすると、非水電解液中のフッ素を含有するリチウム塩と反応してフッ化水素が生成する。電池内でフッ化水素が生成すると、その作用で正極活物質の劣化を引き起こしてしまう。
ところが、Zrも含有するようにコバルト酸リチウム(A)を合成すると、その粒子の表面にZr酸化物が析出し、このZr酸化物がフッ化水素を吸着する。そのため、フッ化水素によるコバルト酸リチウム(A)の劣化を抑制することができる。
なお、正極活物質にZrを含有させると、電池の負荷特性が向上する。正極材料が含有するコバルト酸リチウム(A)は、コバルト酸リチウム(B)よりも平均粒子径が大きいが、一般に、粒子径が大きい正極活物質を使用すると電池の負荷特性が低下する傾向にある。よって、本発明に係る正極材料を構成する正極活物質のうち、より平均粒子径が大きいコバルト酸リチウム(A)にはZrを含有させる。他方、コバルト酸リチウム(B)は、Zrを含有していてもよく、含有していなくてもよい。
コバルト酸リチウム(A)において、Zrの量は、前記の作用をより良好に発揮させる観点から、Coとの原子比Zr/Coが、0.0002以上であることが好ましく、0.0003以上であることがより好ましい。ただし、コバルト酸リチウム(A)中のZrの量が多すぎると、他の元素の量が少なくなって、これらによる作用を十分に確保できない虞がある。よって、コバルト酸リチウム(A)におけるZrの量は、Coとの原子比Zr/Coが、0.005以下であることが好ましく、0.001以下であることがより好ましい。
コバルト酸リチウム(A)およびコバルト酸リチウム(B)は、Li含有化合物(水酸化リチウム、炭酸リチウムなど)、Co含有化合物(酸化コバルト、硫酸コバルトなど)、Mg含有化合物(硫酸マグネシウムなど)、Zr含有化合物(酸化ジルコニウムなど)および元素Mや元素Mを含有する化合物(酸化物、水酸化物、硫酸塩など)を混合し、この原料混合物を焼成するなどして合成することができる。なお、より高い純度でコバルト酸リチウム(A)およびコバルト酸リチウム(B)を合成するには、Co、Mg、およびZr、更には元素Mや元素Mを含む複合化合物(水酸化物、酸化物など)とLi含有化合物などとを混合し、この原料混合物を焼成することが好ましい。
コバルト酸リチウム(A)およびコバルト酸リチウム(B)を合成するための原料混合物の焼成条件は、例えば、800〜1050℃で1〜24時間とすることができるが、一旦焼成温度よりも低い温度(例えば、250〜850℃)まで加熱し、その温度で保持することにより予備加熱を行い、その後に焼成温度まで昇温して反応を進行させることが好ましい。予備加熱の時間については特に制限はないが、通常、0.5〜30時間程度とすればよい。また、焼成時の雰囲気は、酸素を含む雰囲気(すなわち、大気中)、不活性ガス(アルゴン、ヘリウム、窒素など)と酸素ガスとの混合雰囲気、酸素ガス雰囲気などとすることができるが、その際の酸素濃度(体積基準)は、15%以上であることが好ましく、18%以上であることが好ましい。
本発明に係る正極材料は、コバルト酸リチウム(A)の粒子の表面がAl含有酸化物で被覆されている正極材料(a)と、コバルト酸リチウム(B)の粒子の表面がAl含有酸化物で被覆されている正極材料(b)とを含んでいる〔例えば、コバルト酸リチウム(A)およびコバルト酸リチウム(B)の粒子の表面の全面積中の90〜100%に、Al含有酸化物が存在している〕。コバルト酸リチウム(A)およびコバルト酸リチウム(B)の粒子の表面を被覆するAl含有酸化物としては、Al、AlOOH、LiAlO、LiCo1−wAl(ただし、0.5<w<1)などが挙げられ、これらのうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、例えば後述する方法でコバルト酸リチウム(A)やコバルト酸リチウム(B)の表面をAlで被覆した場合、Al中に、コバルト酸リチウム(A)やコバルト酸リチウム(B)から移行するCoやLi、Alなどの元素を含むAl含有酸化物が一部混在する被膜が形成されるが、本発明に係る正極材料を構成する正極材料(a)におけるコバルト酸リチウム(A)の表面を覆うAl含有酸化物で形成された被膜や、正極材料(b)におけるコバルト酸リチウム(B)の表面を覆うAl含有酸化物で形成された被膜は、このような成分を含む被膜であってもよい。
本発明に係る正極材料を構成する粒子におけるAl含有酸化物の平均被覆厚みは、正極材料に係る正極活物質と非水電解液との反応を良好に抑制する観点から、5nm以上であり、15nm以上であることが好ましい。また、電池の充放電時における正極活物質でのリチウムイオンの出入りをAl含有酸化物が阻害することによる電池の負荷特性低下を抑制する観点から、前記正極材料を構成する粒子におけるAl含有酸化物の平均被覆厚みは、50nm以下であり、35nm以下であることがより好ましい。
本明細書でいう「正極材料を構成する粒子におけるAl含有酸化物の平均被覆厚み」は、集束イオンビーム法により加工して得られた正極材料の断面を、透過型電子顕微鏡を用いて40万倍の倍率で観察し、500×500nmの視野に存在する正極材料粒子のうち、断面の大きさが正極材料の平均粒子径(d50)±5μm以内の粒子を10視野分だけ任意に選択し、各視野ごとに、Al含有酸化物の被膜の厚みを任意の10か所で測定し、全視野で得られた全ての厚み(100箇所の厚み)について算出した平均値(数平均値)を意味している。
本発明に係る正極材料は、比表面積(正極材料全体の比表面積)が、0.1m/g以上、好ましくは0.2m/g以上であって、0.4m/g以下、好ましくは0.3m/g以下である。本発明に係る正極材料は、このように比表面積が小さいことから、非水電解液成分の分解を引き起こす反応面積が小さく、これによっても、電池を高電圧に充電した場合でも、高温下での充放電サイクル特性や貯蔵特性が良好となるようにしている。
なお、正極材料を構成する正極活物質粒子の表面をAl含有酸化物で被覆したり、正極活物質粒子の表面にZr酸化物が析出するようにしたりした場合には、通常、正極材料の表面が粗くなって比表面積が増大するが、本発明に係る正極材料では、比較的大きな粒径とすることに加えて、正極活物質粒子の表面を被覆するAl含有酸化物の被膜の性状が良好であるため、前記のような小さな比表面積の実現を可能としている。
本発明に係る正極材料は、コバルト酸リチウム(A)の粒子の表面がAl含有酸化物で被覆されてなり、平均粒子径が1〜40μmである正極材料(a)と、コバルト酸リチウム(B)の粒子の表面がAl含有酸化物で被覆されてなり、平均粒子径が1〜40μmであり、かつ前記正極材料(a)よりも平均粒子径が小さい正極材料(b)とを少なくとも含んでいる。これにより、前記正極材料は、体積基準の粒度分布において、1〜40μmの粒径範囲内に、2つ以上のピークを有することになる。本明細書でいう「1〜40μmの粒径範囲内に、2つ以上のピークを有する」とは、2つ以上のピークのピークトップの粒径が、1〜40μmの範囲内にあることを意味しており、例えば、2つ以上のピークの裾が完全に分離しているものや、2つ以上のピークの裾が1つ以上に纏まっていてピークトップが2つ以上に分離しているものも含まれ、各ピークの裾は1〜40μmの粒径範囲外に存在していてもよい。
これは、正極材料の全粒子中に、前記粒度分布において、より大粒径側のピークに属する粒子と、より小粒径側のピークに属する粒子、すなわち、比較的大粒径の粒子群と、これらの粒子群よりも粒径が小さい粒子群とが含まれていることを意味している。
正極は、正極活物質(正極材料)を含む正極合剤層を集電体上に形成した後にプレス処理を施す工程を経て製造したり、正極活物質(正極材料)を含む正極合剤をプレス処理してペレット状に成形することで製造したりすることが一般的であるが、前記のプレス処理の際に正極活物質に割れが生じやすい。この場合、正極活物質粒子の表面をAl含有酸化物で被覆していても、粒子が割れてAl含有酸化物で被覆していない新生面が露出するため、Al含有酸化物の形成による非水電解液の分解抑制作用が十分に発揮されない虞がある。
しかしながら、前記正極材料は、前記の粒度分布を有しているため、正極合剤層や正極合剤ペレットの形成時に、大粒径の正極材料の隙間に小粒径の正極材料が入り込むことで、その後のプレス処理において、正極合剤層や正極合剤ペレットにかかる応力が全体に分散する。これにより、プレス処理の際に個々の正極材料粒子に過度の応力が付加され難く、正極材料粒子の割れが良好に抑制される。そのため、正極の製造途中において、正極材料粒子が割れることによる新生面の発生(Al含有酸化物で被覆されていない部分の発生)が抑制されることから、Al含有酸化物での被覆による作用をより良好に発揮できる。
前記正極材料の粒度分布としては、体積基準の粒度分布において、1〜15μmの粒径範囲内に1つ以上のピークを有し、かつ15〜40μmの粒径範囲内に1つ以上のピークを有しており、前記15〜40μmの粒径範囲内に存在するピークのうちの少なくとも1つのピークトップの粒径が、前記1〜15μmの粒径範囲内に存在するピークのうちの少なくとも1つのピークトップの粒径よりも大きいことが好ましい。前記正極材料がこのような粒度分布を有する場合には、正極の製造過程での正極材料粒子の割れの抑制効果がより良好となると共に、正極材料の比表面積を前記の値に調整することが容易となる。
前記正極材料は、平均粒子径が24〜30μmの大粒子〔正極材料(a)〕と、平均粒子径が4〜8μmの小粒子〔正極材料(b)〕とで構成されており、正極材料全量中での前記大粒子の割合が、75〜90質量%であることが好ましい。前記正極材料がこのような構成であれば、正極材料全体の粒度分布を前記のように調整することができる。
本明細書でいう正極材料の粒度分布は、日機装株式会社製マイクロトラック粒度分布測定装置「HRA9320」を用いて、粒度分布の小さい粒子から積分体積を求める方法により得られる粒度分布を意味している。また、本明細書における正極材料や、その他の粒子の平均粒子径は、前記の装置を用いて、粒度分布の小さい粒子から積分体積を求める場合の体積基準の積算分率における50%径の値(d50)を意味している。
なお、前記正極材料は、平均粒子径がより大きい正極材料(a)と、正極材料(a)よりも平均粒子径が小さい正極材料(b)とを含んでいればよいが、例えば、コバルト酸リチウム(A)またはコバルト酸リチウム(B)と同じ組成の正極活物質の表面がAl含有酸化物で被覆されてなり、平均粒子径が正極材料(a)と正極材料(b)との間の値である1種または2種以上の正極材料を含んでいてもよい。
コバルト酸リチウム(A)やコバルト酸リチウム(B)といった正極活物質粒子の表面をAl含有酸化物で被覆して前記正極材料とするには、例えば下記の方法が採用できる。pHを9〜11とし、温度を60〜80℃とした水酸化リチウム水溶液中に、正極活物質粒子を投入し攪拌して分散させ、ここにAl(NO・9HOと、pHの変動を抑えるためのアンモニア水とを滴下して、Al(OH)共沈物を生成させ、正極活物質粒子の表面に付着させる。その後、この反応液からAl(OH)共沈物が付着した正極活物質粒子を取り出し、洗浄してから乾燥させた後に、熱処理して、正極活物質粒子の表面にAl含有酸化物の被膜を形成して、前記正極材料とする。Al(OH)共沈物が付着した正極活物質粒子の熱処理は大気雰囲気中で行うことが好ましく、また、熱処理温度を200〜800℃とし、熱処理時間を5〜15時間とすることが好ましい。この方法で正極活物質粒子の表面をAl含有酸化物で被覆する場合、前記の熱処理温度の調整によって、被膜を構成する主成分となるAl含有酸化物を、Alとしたり、AlOOHとしたり、LiAlOとしたり、LiCo1−wAl(ただし、0.5<w<1)としたりすることができる。
非水二次電池に係る正極は、例えば、正極活物質(前記正極材料)、導電助剤およびバインダなどを含有する正極合剤層を、集電体の片面または両面に有する構造のものが挙げられる。また、電池の形態によっては、正極活物質(前記正極材料)、導電助剤およびバインダなどを含有する正極合剤を成形したペレット(正極合剤ペレット)を正極として使用することもできる。
正極活物質には、前記正極材料のみを用いてもよいが、他の正極活物質を併用してもよい。前記正極材料と併用し得る他の正極活物質としては、リチウムイオン二次電池などの非水二次電池において、従来から使用されているもの(リチウムイオンを吸蔵放出し得るリチウム含有複合酸化物)が挙げられるが、電池の連続充電特性がより向上すると共に、前記正極材料による非水二次電池の高温下での充放電サイクル特性や貯蔵特性を損なわないことから、NiおよびCoと、Mg、Mn、Ba、W、Ti、Zr、MoおよびAlよりなる群から選択される元素Mとを含有するニッケル酸リチウム(C)が好ましい。
ニッケル酸リチウム(C)は、Ni、Coおよび元素M、並びに、更に含有してもよい他の元素を纏めて元素群Mとしたときに、化学式Li1+z(−0.05≦z≦0.05)で表されるものであり、元素群Mの全原子数100mol%中のNi、Coおよび元素Mの量を、それぞれ、s(mol%)、t(mol%)およびu(mol%)で表したとき、30≦s≦97、0.5≦t≦40、0.5≦u≦40であることが好ましく、70≦s≦97、0.5≦t≦30、0.5≦u≦5であることがより好ましい。
ニッケル酸リチウム(C)は、Li含有化合物(水酸化リチウム、炭酸リチウムなど)、Ni含有化合物(硫酸ニッケルなど)、Co含有化合物(硫酸コバルト、酸化コバルトなど)、および元素Mを含有する化合物(酸化物、水酸化物、硫酸塩など)を混合し、この原料混合物を焼成するなどして製造することができる。なお、より高い純度でニッケル酸リチウム(C)を合成するには、Ni、Coおよび元素Mのうちの複数の元素を含む複合化合物(水酸化物、酸化物など)と、他の原料化合物(Li含有化合物など)とを混合し、この原料混合物を焼成することが好ましい。
ニッケル酸リチウム(C)を合成するための原料混合物の焼成条件も、コバルト酸リチウム(A)やコバルト酸リチウム(B)の場合と同様に、例えば、800〜1050℃で1〜24時間とすることができるが、一旦焼成温度よりも低い温度(例えば、250〜850℃)まで加熱し、その温度で保持することにより予備加熱を行い、その後に焼成温度まで昇温して反応を進行させることが好ましい。予備加熱の時間については特に制限はないが、通常、0.5〜30時間程度とすればよい。また、焼成時の雰囲気は、酸素を含む雰囲気(すなわち、大気中)、不活性ガス(アルゴン、ヘリウム、窒素など)と酸素ガスとの混合雰囲気、酸素ガス雰囲気などとすることができるが、その際の酸素濃度(体積基準)は、15%以上であることが好ましく、18%以上であることが好ましい。
非水二次電池において、前記正極材料と他の正極活物質〔例えばニッケル酸リチウム(C)〕とを使用する場合には、前記正極材料と他の正極活物質との合計100質量%中の前記正極材料の量が、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい(すなわち、前記正極材料と共に使用される他の正極活物質の量が、前記正極材料と他の正極活物質との合計100質量%中、50質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい)。なお、前記の通り、非水二次電池では、前記正極材料以外の正極活物質を使用せずに前記正極材料のみを用いてもよいため、前記正極材料と他の正極活物質との合計100質量%中の前記正極材料の量の好適上限値は、100質量%である。ただし、ニッケル酸リチウム(C)の使用による電池の連続充電特性向上効果をより良好に確保するためには、前記正極材料とニッケル酸リチウム(C)との合計100質量%中のニッケル酸リチウム(C)の量が、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。
非水二次電池に係る正極に使用される導電助剤としては、天然黒鉛(鱗片状黒鉛など)、人造黒鉛などの黒鉛(黒鉛質炭素材料);アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカ−ボンブラック;炭素繊維;などの炭素材料などが挙げられる。また、本発明の非水二次電池に係る正極に使用されるバインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)などが挙げられる。
正極は、例えば、前記正極材料、導電助剤およびバインダなどを、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの溶剤に分散させたペースト状やスラリー状の正極合剤含有組成物を調製し(ただし、バインダは溶剤に溶解していてもよい)、これを集電体の片面または両面に塗布し、乾燥した後に、必要に応じてカレンダー処理などのプレス処理を施す工程を経て製造される。
ただし、正極は、前記の製造方法で製造されたものに限定される訳ではなく、他の方法で製造したものであってもよい。例えば、正極を、ペレット状の正極合剤成形体とする場合には、前記正極材料、導電助剤およびバインダなどを含有する正極合剤をプレス処理してペレット状に成形する方法で、正極を製造することができる。
正極に集電体を使用する場合、その集電体には、従来から知られているリチウムイオン二次電池などの非水二次電池の正極に使用されているものと同様のものが使用でき、例えば、厚みが10〜30μmのアルミニウム箔が好ましい。
正極合剤層や正極合剤成形体の組成としては、正極活物質(前記正極材料を含む)の量が60〜95質量%であることが好ましく、バインダの量が1〜15質量%であることが好ましく、導電助剤の量が3〜20質量%であることが好ましい。また、正極合剤層と集電体とを有する形態の正極の場合、正極合剤層の厚み(集電体の片面あたりの厚み)は、30〜150μmであることが好ましい。更に、正極合剤成形体からなる正極の場合、その厚みは、0.15〜1mmであることが好ましい。
非水二次電池に係る負極としては、負極活物質およびバインダなどを含有する負極合剤層を、集電体の片面または両面に有する構造のものが挙げられる。また、負極活物質が金属や合金の場合には、これらの金属や合金のシートをそのまま負極として用いたり、これらの金属や合金のシートを集電体の片面または両面に貼り付けたりした構造の負極とすることもできる。
負極活物質としては、例えば、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭などの炭素材料;リチウムまたはリチウム合金;リチウムと合金化可能な金属(Si、Snなど)またはその合金;Li3/4Ti5/3;SiO、SiOなどのシリコン酸化物;などが挙げられる。また、バインダには、正極に使用し得るものとして先に例示したものと同じものが使用できる。
負極合剤層には、必要に応じて導電助剤を含有させてもよい。負極合剤層の導電助剤には、正極に使用し得るものとして先に例示したものと同じものが使用できる。
負極は、例えば、負極活物質およびバインダ、更には必要に応じて導電助剤などを、水やNMPなどの溶剤に分散させたペースト状やスラリー状の負極合剤含有組成物を調製し(ただし、バインダは溶剤に溶解していてもよい)、これを集電体の片面または両面に塗布し、乾燥した後に、必要に応じてカレンダー処理などのプレス処理を施す工程を経て製造される。
ただし、負極は、前記の製造方法で製造されたものに限定される訳ではなく、他の方法で製造したものであってもよい。例えば、前記の通り、金属や合金を負極活物質とする負極においては、これらのシートをそのまま負極としたり、これらのシートを集電体の片面または両面に貼り付けて負極としたりすることもできる。
負極に集電体を使用する場合、その集電体には、負極の集電体としては、銅製やニッケル製の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどを用い得るが、通常、銅箔が用いられる。この負極集電体は、高エネルギー密度の電池を得るために負極全体の厚みを薄くする場合、厚みの上限は30μmであることが好ましく、機械的強度を確保するために下限は5μmであることが望ましい。
負極合剤層を有する負極の場合、負極合剤層の組成は、例えば、負極活物質の量が80〜95質量%であることが好ましく、バインダの量が1〜20質量%であることが好ましく、導電助剤を使用する場合には、その量が1〜10質量%であることが好ましい。また、負極合剤層の厚み(集電体の片面あたりの厚み)は、10〜100μmであることが好ましい。
非水二次電池において、前記の正極と前記の負極とは、セパレータを介して重ね合わせた積層体(積層電極体)としたり、この積層体を渦巻状に巻回した巻回体(巻回電極体)としたりして使用する。
セパレータには、80℃以上(より好ましくは100℃以上)170℃以下(より好ましくは150℃以下)において、その孔が閉塞する性質(すなわちシャットダウン機能)を有していることが好ましく、通常のリチウムイオン二次電池などの非水二次電池で使用されているセパレータ、例えば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン製の微多孔膜を用いることができる。セパレータを構成する微多孔膜は、例えば、PEのみを使用したものやPPのみを使用したものであってもよく、また、PE製の微多孔膜とPP製の微多孔膜との積層体であってもよい。
なお、非水二次電池に係るセパレータには、融点が140℃以下の樹脂を主体とした多孔質層(I)と、150℃以下の温度で溶融しない樹脂または耐熱温度が150℃以上の無機フィラーを主体として含む多孔質層(II)とを有する積層型のセパレータを使用することが好ましい。ここで、「融点」とはJIS K 7121の規定に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される融解温度を意味している。また、「150℃以下の温度で溶融しない」とは、JIS K 7121の規定に準じて、DSCを用いて測定される融解温度が150℃を超えているなど、前記融解温度測定時に150℃以下の温度で融解挙動を示さないことを意味している。更に、「耐熱温度が150℃以上」とは、少なくとも150℃において軟化などの変形が見られないことを意味している。
前記積層型のセパレータに係る多孔質層(I)は、主にシャットダウン機能を確保するためのものであり、非水二次電池が多孔質層(I)の主体となる成分である樹脂の融点以上に達したときには、多孔質層(I)に係る樹脂が溶融してセパレータの空孔を塞ぎ、電気化学反応の進行を抑制するシャットダウンを生じる。
多孔質層(I)の主体となる融点が140℃以下の樹脂としては、例えばPEが挙げられ、その形態としては、前述の非水二次電池に用いられる微多孔膜や、不織布などの基材にPEの粒子を含む分散液を塗布し、乾燥するなどして得られるものが挙げられる。ここで、多孔質層(I)の全構成成分中において、主体となる融点が140℃以下の樹脂の体積は、50体積%以上であり、70体積%以上であることがより好ましい。なお、例えば多孔質層(I)を前記PEの微多孔膜で形成する場合は、融点が140℃以下の樹脂の体積が100体積%となる。
前記積層型のセパレータに係る多孔質層(II)は、非水二次電池の内部温度が上昇した際にも正極と負極との直接の接触による短絡を防止する機能を備えたものであり、150℃以下の温度で溶融しない樹脂または耐熱温度が150℃以上の無機フィラーによって、その機能を確保している。すなわち、電池が高温となった場合には、喩え多孔質層(I)が収縮しても、収縮し難い多孔質層(II)によって、セパレータが熱収縮した場合に発生し得る正負極の直接の接触による短絡を防止することがでる。また、この耐熱性の多孔質層(II)がセパレータの骨格として作用するため、多孔質層(I)の熱収縮、すなわちセパレータ全体の熱収縮自体も抑制できる。
多孔質層(II)を融点が150℃以上の樹脂を主体として形成する場合、例えば、150℃以下の温度で溶融しない樹脂で形成された微多孔膜(例えば前述のPP製の電池用微多孔膜)を多孔質層(I)に積層させる形態、150℃以下の温度で溶融しない樹脂の粒子などを含む分散液を多孔質層(I)に塗布し、乾燥して多孔質層(I)の表面に多孔質層(II)を形成する塗布積層型の形態が挙げられる。
150℃以下の温度で溶融しない樹脂としては、PP;架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリスチレン、架橋ポリジビニルベンゼン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体架橋物、ポリイミド、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド縮合物などの各種架橋高分子微粒子;ポリスルフォン;ポリエーテルスルフォン;ポリフェニレンスルフィド;ポリテトラフルオロエチレン;ポリアクリロニトリル;アラミド;ポリアセタール;などが挙げられる。
150℃以下の温度で溶融しない樹脂の粒子を使用する場合、その粒径は、平均粒子径で、例えば、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、また、10μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましい。
多孔質層(II)を耐熱温度が150℃以上の無機フィラーを主体として形成する場合、例えば、耐熱温度が150℃以上の無機フィラーなどを含む分散液を、多孔質層(I)に塗布し、乾燥して多孔質層(II)を形成する塗布積層型の形態が挙げられる。
多孔質層(II)に係る無機フィラーは、耐熱温度が150℃以上で、電池の有する非水電解液に対して安定であり、更に電池の作動電圧範囲において酸化還元され難い電気化学的に安定なものであればよいが、分散などの点から微粒子であることが好ましく、また、アルミナ、シリカ、ベーマイトが好ましい。アルミナ、シリカ、ベーマイトは、耐酸化性が高く、粒径や形状を所望の数値などに調整することが可能であるため、多孔質層(II)の空孔率を精度よく制御することが容易となる。なお、耐熱温度が150℃以上の無機フィラーは、例えば前記例示のものを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、耐熱温度が150℃の無機フィラーを、前述の150℃以下の温度で溶融しない樹脂と併用しても差し支えない。
多孔質層(II)に係る耐熱温度が150℃以上の無機フィラーの形状については特に制限はなく、略球状(真球状を含む)、略楕円体状(楕円体状を含む)、板状などの各種形状のものを使用できる。
また、多孔質層(II)に係る耐熱温度が150℃以上の無機フィラーの平均粒子径は、小さすぎるとイオンの透過性が低下することから、0.3μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましい。また、耐熱温度が150℃以上の無機フィラーが大きすぎると、電気特性が劣化しやすくなることから、その平均粒子径は、5μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましい。
多孔質層(II)において、150℃以下の温度で溶融しない樹脂および耐熱温度が150℃以上の無機フィラーは、多孔質層(II)に主体として含まれるものであるため、これらの多孔質層(II)における量[多孔質層(II)が150℃以下の温度で溶融しない樹脂および耐熱温度が150℃以上の無機フィラーのうちのいずれか一方のみを含有する場合は、その量であり、両者を含有する場合は、それらの合計量。150℃以下の温度で溶融しない樹脂および耐熱温度が150℃以上の無機フィラーの多孔質層(II)における量について、以下同じ。]は、多孔質層(II)の構成成分の全体積中、50体積%以上であり、70体積%以上であることが好ましく、80体積%以上であることがより好ましく、90体積%以上であることが更に好ましい。多孔質層(II)中の無機フィラーを前記のように高含有量とすることで、非水二次電池が高温となった際にも、セパレータ全体の熱収縮を良好に抑制することができ、正極と負極との直接の接触による短絡の発生をより良好に抑制することができる。
なお、後述するように、多孔質層(II)には有機バインダも含有させることが好ましいため、150℃以下の温度で溶融しない樹脂および耐熱温度が150℃以上の無機フィラーの多孔質層(II)における量は、多孔質層(II)の構成成分の全体積中、99.5体積%以下であることが好ましい。
多孔質層(II)には、150℃以下の温度で溶融しない樹脂または耐熱温度が150℃以上の無機フィラー同士を結着したり、多孔質層(II)と多孔質層(I)との一体化したりするなどのために、有機バインダを含有させることが好ましい。有機バインダとしては、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA、酢酸ビニル由来の構造単位が20〜35モル%のもの)、エチレン−エチルアクリレート共重合体などのエチレン−アクリル酸共重合体、フッ素系ゴム、SBR、CMC、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、架橋アクリル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂などが挙げられるが、特に、150℃以上の耐熱温度を有する耐熱性のバインダが好ましく用いられる。有機バインダは、前記例示のものを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記例示の有機バインダの中でも、EVA、エチレン−アクリル酸共重合体、フッ素系ゴム、SBRなどの柔軟性の高いバインダが好ましい。このような柔軟性の高い有機バインダの具体例としては、三井デュポンポリケミカル社の「エバフレックスシリーズ(EVA)」、日本ユニカー社のEVA、三井デュポンポリケミカル社の「エバフレックス−EEAシリーズ(エチレン−アクリル酸共重合体)」、日本ユニカー社のEEA、ダイキン工業社の「ダイエルラテックスシリーズ(フッ素ゴム)」、JSR社の「TRD−2001(SBR)」、日本ゼオン社の「BM−400B(SBR)」などがある。
なお、前記の有機バインダを多孔質層(II)に使用する場合には、後述する多孔質層(II)形成用の組成物の溶媒に溶解させるか、または分散させたエマルジョンの形態で用いればよい。
前記塗布積層型のセパレータは、例えば、150℃以下の温度で溶融しない樹脂の粒子や耐熱温度が150℃以上の無機フィラーなどを含有する多孔質層(II)形成用組成物(スラリーなどの液状組成物など)を、多孔質層(I)を構成するための微多孔膜の表面に塗布し、所定の温度に乾燥して多孔質層(II)を形成することにより製造することができる。
多孔質層(II)形成用組成物は、150℃以下の温度で溶融しない樹脂の粒子および/または耐熱温度が150℃以上の無機フィラーの他、必要に応じて有機バインダなどを含有し、これらを溶媒(分散媒を含む。以下同じ。)に分散させたものである。なお、有機バインダについては溶媒に溶解させることもできる。多孔質層(II)形成用組成物に用いられる溶媒は、150℃以下の温度で溶融しない樹脂の粒子や無機フィラーなどを均一に分散でき、また、有機バインダを均一に溶解または分散できるものであればよいが、例えば、トルエンなどの芳香族炭化水素、テトラヒドロフランなどのフラン類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類など、一般的な有機溶媒が好適に用いられる。なお、これらの溶媒に、界面張力を制御する目的で、アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコールなど)、または、モノメチルアセテートなどの各種プロピレンオキサイド系グリコールエーテルなどを適宜添加してもよい。また、有機バインダが水溶性である場合、有機バインダをエマルジョンとして使用する場合などでは、水を溶媒としてもよく、この際にもアルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールなど)を適宜加えて界面張力を制御することもできる。
多孔質層(II)形成用組成物は、150℃以下の温度で溶融しない樹脂の粒子および/または耐熱温度が150℃以上の無機フィラー、更には有機バインダなどを含む固形分含量を、例えば10〜80質量%とすることが好ましい。
なお、前記積層型のセパレータにおいて、多孔質層(I)と多孔質層(II)とは、それぞれ1層ずつである必要はなく、複数の層がセパレータ中にあってもよい。例えば、多孔質層(II)の両面に多孔質層(I)を配置した構成としたり、多孔質層(I)の両面に多孔質層(II)を配置した構成としたりしてもよい。ただし、層数を増やすことで、セパレータの厚みを増やして電池の内部抵抗の増加やエネルギー密度の低下を招く虞があるので、層数を多くしすぎるのは好ましくなく、前記積層型のセパレータ中の多孔質層(I)と多孔質層(II)との合計層数は5層以下であることが好ましい。
セパレータ(ポリオレフィン製の微多孔膜からなるセパレータや、前記積層型のセパレータ)の厚みは、例えば、10〜30μmであることが好ましい。
また、前記積層型のセパレータにおいては、多孔質層(II)の厚み〔セパレータが多孔質層(II)を複数有する場合は、その総厚み〕は、多孔質層(II)による前記の各作用をより有効に発揮させる観点から、3μm以上であることが好ましい。ただし、多孔質層(II)が厚すぎると、電池のエネルギー密度の低下を引き起こすなどの虞があることから、多孔質層(II)の厚みは、8μm以下であることが好ましい。
更に、前記積層型のセパレータにおいては、多孔質層(I)の厚み〔セパレータが多孔質層(I)を複数有する場合は、その総厚み。以下同じ。〕は、多孔質層(I)の使用による前記作用(特にシャットダウン作用)をより有効に発揮させる観点から、6μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。ただし、多孔質層(I)が厚すぎると、電池のエネルギー密度の低下を引き起こす虞があることに加えて、多孔質層(I)が熱収縮しようとする力が大きくなり、セパレータ全体の熱収縮を抑える作用が小さくなる虞がある。そのため、多孔質層(I)の厚みは、25μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、14μm以下であることが更に好ましい。
セパレータ全体の空孔率としては、電解液の保液量を確保してイオン透過性を良好にするために、乾燥した状態で、30%以上であることが好ましい。一方、セパレータ強度の確保と内部短絡の防止の観点から、セパレータの空孔率は、乾燥した状態で、70%以下であることが好ましい。なお、セパレータの空孔率:P(%)は、セパレータの厚み、面積あたりの質量、構成成分の密度から、下記(1)式を用いて各成分iについての総和を求めることにより計算できる。
P ={1−(m/t)/(Σa・ρ)}×100 (1)
ここで、前記式中、a:全体の質量を1としたときの成分iの比率、ρ:成分iの密度(g/cm)、m:セパレータの単位面積あたりの質量(g/cm)、t:セパレータの厚み(cm)である。
また、前記積層型のセパレータの場合、前記(1)式において、mを多孔質層(I)の単位面積あたりの質量(g/cm)とし、tを多孔質層(I)の厚み(cm)とすることで、前記(1)式を用いて多孔質層(I)の空孔率:P(%)を求めることもできる。この方法により求められる多孔質層(I)の空孔率は、30〜70%であることが好ましい。
更に、前記積層型のセパレータの場合、前記(1)式において、mを多孔質層(II)の単位面積あたりの質量(g/cm)とし、tを多孔質層(II)の厚み(cm)とすることで、前記(1)式を用いて多孔質層(II)の空孔率:P(%)を求めることもできる。この方法により求められる多孔質層(II)の空孔率は、20〜60%であることが好ましい。
前記セパレータとしては、機械的な強度の高いものが好ましく、例えば突き刺し強度が3N以上であることが好ましい。例えば、SiやSnの合金や酸化物などは、容量の大きな負極活物質として電池の高容量化に寄与する一方で、充放電に伴う体積変化が大きい。よって、このような負極活物質を使用した場合、充放電を繰り返すことで、負極全体の伸縮によって、対面させたセパレータにも機械的なダメージが加わることになる。セパレータの突き刺し強度が3N以上であれば、良好な機械的強度が確保され、セパレータの受ける機械的ダメージを緩和することができる。
突き刺し強度が3N以上のセパレータとしては、前述した積層型のセパレータが挙げられ、特に、融点が140℃以下の樹脂を主体とした多孔質層(I)に、耐熱温度が150℃以上の無機フィラーを主体として含む多孔質層(II)を積層したセパレータが好適である。それは、前記無機フィラーの機械的強度が高いため、多孔質層(I)の機械的強度を補って、セパレータ全体の機械的強度を高めることができるからであると考えられる。
前記突き刺し強度は以下の方法で測定できる。直径2インチの穴があいた板上にセパレータをしわやたわみのないように固定し、先端の直径が1.0mmの半円球状の金属ピンを、120mm/minの速度で測定試料に降下させて、セパレータに穴があく時の力を5回測定する。そして、前記5回の測定値のうち最大値と最小値とを除く3回の測定について平均値を求め、これをセパレータの突き刺し強度とする。
前記の積層電極体や巻回電極体においては、前記積層型のセパレータ、特に融点が140℃以下の樹脂を主体とした多孔質層(I)に、耐熱温度が150℃以上の無機フィラーを主体として含む多孔質層(II)を積層したセパレータを使用する場合、多孔質層(II)が少なくとも正極と面するように配置することが好ましい。なお、この場合、耐熱温度が150℃以上の無機フィラーを主体として含み、より耐酸化性に優れる多孔質層(II)が正極と面することで、正極によるセパレータの酸化をより良好に抑制できるため、電池の高温時の保存特性や充放電サイクル特性を高めることもできる。また、正極側で皮膜形成するような添加剤を非水電解液中に含有させた場合、これがセパレータの細孔を詰まらせ、電池特性の低下を引き起こす虞もある。そこで比較的ポーラスな多孔質層(II)を正極に対面させることで、細孔の目詰まりを抑制する効果も期待できる。
他方、前記積層型セパレータの一方の表面が多孔質層(I)である場合には、多孔質層(I)が負極に面するようにすることが好ましく、これにより、例えば、シャットダウン時に多孔質層(I)から溶融した熱可塑性樹脂が電極の合剤層に吸収されることを抑制して、効率よくセパレータの空孔の閉塞に利用することができるようになる。
非水二次電池に係る非水電解液には、電解質塩であるフッ素を含有するリチウム塩を有機溶媒に溶解させた溶液を使用することができる。溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、蟻酸メチル、酢酸メチル、燐酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、ジエチルエーテル、1,3−プロパンサルトンなどの非プロトン性有機溶媒が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、これらの2種以上を併用してもよい。また、アミンイミド系有機溶媒や、含イオウまたは含フッ素系有機溶媒なども用いることができる。
非水電解液に係るフッ素を含有するリチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiAsF、LiSbF、LiCFSO、LiCSO、LiCFCO、Li(SO、LiN(CFSO、LiC(CFSO)3、LiC2n+1SO(n≧2)、LiN(RfOSO〔ここで、Rfはフルオロアルキル基を表す。〕などが挙げられ、これらのうちの1種のみを使用してもよく、2種以上を使用してもよい。これらのフッ素を含有するリチウム塩の中でも、解離度が大きくてLiイオンの輸送率が高く、また、最も汎用性の高いリチウム塩であることから、LiPFを使用することがより好ましい。
また、電解質塩には、フッ素を含有するリチウム塩と共に他の電解質塩(LiClOなど)を使用することもできる。
電池に使用する非水電解液中のフッ素を含有するリチウム塩の濃度は、特に電池を高い終止電圧で充電して高温下で使用した場合などに消費されやすいことから、比較的高めに設定することが好ましく、例えば、0.9〜1.5mol/lとすることが好ましい。非水電解液中のフッ素を含有するリチウム塩の濃度をこのように高くすることで、電池の使用や貯蔵によってフッ素を含有するリチウム塩の消費が進んでも、非水電解液中にある程度の量のフッ素を含有するリチウム塩を残存させ得ることから、電池の充放電サイクル特性や貯蔵特性をより高めることができる。
また、フッ素を含有するリチウム塩以外の他の電解質塩を、フッ素を含有するリチウム塩と共に使用する場合には、非水電解液中のフッ素を含有するリチウム塩の濃度を前記好適値とした上で、電解質塩の合計濃度を1.5mol/l以下とすることが好ましい。
非水電解液には、ニトリル系添加剤や1,3−ジオキサンを含有させることが好ましい。これにより、電池の充放電サイクル特性の更なる向上を図ったり、膨れを抑制したりすることができる。
ニトリル系添加剤としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、ベンゾニトリル、アクリロニトリルなどのモノニトリル;マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、1,4−ジシアノヘプタン、1,5−ジシアノペンタン、1,6−ジシアノヘキサン、1,7−ジシアノヘプタン、2,6−ジシアノヘプタン、1,8−ジシアノオクタン、2,7−ジシアノオクタン、1,9−ジシアノノナン、2,8−ジシアノノナン、1,10−ジシアノデカン、1,6−ジシアノデカン、2,4−ジメチルグルタロニトリルなどのジニトリル;ベンゾニトリルなどの環状ニトリル;メトキシアセトニトリルなどのアルコキシ置換ニトリル;などが挙げられ、これらのうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジニトリルがより好ましい。
電池に使用する非水電解液中のニトリル系添加剤の含有量は、その使用による前記の効果を良好に確保する観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。ただし、非水電解液中のニトリル系添加剤の量が多すぎると、電池内でのガス発生量が多くなって、却って膨れの抑制効果が小さくなる虞がある。よって、電池に使用する非水電解液中のニトリル系添加剤の含有量は、7質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
電池に使用する非水電解液中の1,3−ジオキサンの含有量は、その使用による前記の効果を良好に確保する観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。ただし、非水電解液中の1,3−ジオキサンの量が多すぎると、電池の負荷特性の向上効果や充放電サイクル特性の向上効果が小さくなる虞がある。よって、電池に使用する非水電解液中の1,3−ジオキサンの含有量は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
また、電池の安全性や充放電サイクル性、高温貯蔵性といった特性を向上させる目的で、ビニレンカーボネート類、1,3−プロパンサルトン、ジフェニルジスルフィド、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、フルオロベンゼン、t−ブチルベンゼンなどの添加剤を、非水電解液に適宜加えることもできる。
また、非水電解液には、公知のゲル化剤を添加してゲル状としたもの(ゲル状電解質)を用いることもできる。
本発明の非水二次電池の形態については、特に制限はない。例えば、コイン形、ボタン形、シート形、積層形、円筒形、扁平形、角形、電気自動車などに用いる大型のものなど、いずれであってもよい。
本発明の非水二次電池は、従来の非水二次電池と同様に、充電時の終止電圧を4.2V程度に設定して使用することも可能であるが、これより高い4.3V以上を終止電圧とする充電を行う方法で使用してもよく、このような方法で充電し高温下で使用しても、良好な充放電サイクル特性と貯蔵特性とを発揮できる。ただし、非水二次電池の充電時の終止電圧は4.6V以下であることが好ましい。
本発明の非水二次電池を、前記のように高い終止電圧で使用するに当たっては、本発明の非水二次電池と充電装置とを備えており、前記非水二次電池に対し、前記充電装置により加えられる電圧の上限値が4.3V以上(好ましくは4.6V以下)となる条件で充電する非水二次電池のシステムを使用すればよい。前記非水二次電池のシステムに係る充電装置については、終止電圧を4.3V以上(好ましくは4.6V以下)とする条件で本発明の非水二次電池の充電を実施可能なものであればよく、従来から知られている非水二次電池用の充電装置、例えば、定電流充電後に定電圧充電を行うことのできる充電装置や、パルス充電を行うことのできる充電装置などを使用することができる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
実施例1
<正極の作製>
Li含有化合物であるLiCOと、Co含有化合物であるCoと、Mg含有化合物であるMg(OH)と、Zr化合物であるZrOと、Al含有化合物であるAl(OH)とを適正な混合割合で乳鉢に入れて混合した後、ペレット状に固め、マッフル炉を用いて、大気雰囲気中(大気圧下)で、950℃で24時間焼成し、ICP(Inductive Coupled Plasma)法で求めた組成式がLiCo0.9795Mg0.011Zr0.0005Al0.009のコバルト酸リチウム(A1)を合成した。
次に、pHを10とし、温度を70℃とした水酸化リチウム水溶液:200g中に、前記コバルト酸リチウム(A1):10gを投入し、攪拌して分散させた後、ここにAl(NO・9HO:0.0154gと、pHの変動を抑えるためのアンモニア水とを、5時間かけて滴下して、Al(OH)共沈物を生成させ、前記コバルト酸リチウム(A1)の表面に付着させた。その後、この反応液からAl(OH)共沈物が付着した前記コバルト酸リチウム(A1)を取り出し、洗浄後、乾燥させた後に、大気雰囲気中で、400℃の温度で10時間熱処理することで、前記コバルト酸リチウム(A1)の表面にAl含有酸化物の被膜を形成して、正極材料(a1)を得た。
得られた正極材料(a1)について、前記の方法で平均粒子径を測定したところ、27μmであった。
Li含有化合物であるLiCOと、Co含有化合物であるCoと、Mg含有化合物であるMg(OH)と、Al含有化合物であるAl(OH)とを適正な混合割合で乳鉢に入れて混合した後、ペレット状に固め、マッフル炉を用いて、大気雰囲気中(大気圧下)で、950℃で4時間焼成し、ICP法で求めた組成式がLiCo0.97Mg0.012Al0.009のコバルト酸リチウム(B1)を合成した。
次に、pHを10とし、温度を70℃とした水酸化リチウム水溶液:200中gに、前記コバルト酸リチウム(B1):10gを投入し、攪拌して分散させた後、ここにAl(NO・9HO:0.077gと、pHの変動を抑えるためのアンモニア水とを、5時間かけて滴下して、Al(OH)共沈物を生成させ、前記コバルト酸リチウム(B1)の表面に付着させた。その後、この反応液からAl(OH)共沈物が付着した前記コバルト酸リチウム(B1)を取り出し、洗浄後、乾燥させた後に、大気雰囲気中で、400℃の温度で10時間熱処理することで、前記コバルト酸リチウム(B1)の表面にAl含有酸化物の被膜を形成して、正極材料(b1)を得た。
得られた正極材料(b1)について、前記の方法で平均粒子径を測定したところ、7μmであった。
そして、正極材料(a1)と正極材料(b1)とを、質量比で85:15の割合で混合して、電池作製用の正極材料(1)を得た。得られた正極材料(1)の表面のAl含有酸化物の平均被覆厚みを前記の方法で測定したところ、30nmであった。また、平均被覆厚みの測定の際に元素マッピングによって被膜の組成を確認したところ、主成分がAlであった。更に、正極材料(1)の体積基準の粒度分布を前記の方法で確認したところ、平均粒子径は25μmで、正極材料(a1)および正極材料(b1)の各平均粒子径の箇所にピークトップを有する2つのピークが認められた。また、正極材料(1)のBET比表面積を、窒素吸着法による比表面積測定装置を用いて測定したところ、0.25m/gであった。
正極材料(1):96.5質量部と、バインダであるPVDFを10質量%の濃度で含むNMP溶液:20質量部と、導電助剤であるアセチレンブラック:1.5質量部とを、二軸混練機を用いて混練し、更にNMPを加えて粘度を調節して、正極合剤含有ペーストを調製した。
この正極合剤含有ペーストを、厚みが15μmのアルミニウム箔(正極集電体)の両面に塗布した後、120℃で12時間の真空乾燥を行って、アルミニウム箔の両面に正極合剤層を形成した。その後、プレス処理を行って正極合剤層の厚みおよび密度を調節し、アルミニウム箔の露出部にニッケル製のリード体を溶接して、長さ:375mm、幅:43mmの帯状の正極を作製した。得られた正極における正極合剤層は、片面あたりの厚みが55μmであった。
<負極の作製>
平均粒子径d50が22μm、d002が0.338nmで、BET法による比表面積が3.8m/gである黒鉛A(表面を非晶質炭素で被覆していない黒鉛)と、平均粒子径d50が10μm、d002が0.336nmで、BET法による比表面積が3.9m/gである黒鉛B(黒鉛からなる母粒子の表面を非晶質炭素で被覆した黒鉛)とを、50:50の質量比で混合した混合物:98質量部、CMC:1.0質量部、およびSBR:1.0質量部を、イオン交換水と混合して、水系の負極合剤含有ペーストを調製した。
前記の負極合剤含有ペーストを、銅箔からなる厚み:6μmの集電体の両面に間欠塗布し、乾燥した後、カレンダー処理を行って、合剤層の塗膜密度が1.58g/cmとなるように負極合剤層の厚みを調整して負極を得た。また、前記負極を幅:53mmになるように切断し、更に銅箔の露出部にリード体を溶接した。
<非水電解液の調製>
ECとDECとの体積比1:1の混合溶媒に、アジポニトリル、1,3−ジオキサン、およびビニレンカーボネートを、それぞれ、1.0質量%、1.0質量%および3.0質量%となる量で溶解させ、更にLiPFを1.1mol/lの濃度で溶解させて、非水電解液を調製した。
<セパレータの作製>
平均粒子径d50が1μmのベーマイト5kgに、イオン交換水5kgと、分散剤(水系ポリカルボン酸アンモニウム塩、固形分濃度40質量%)0.5kgとを加え、内容積20L、転回数40回/分のボールミルで10時間解砕処理をして分散液を調製した。処理後の分散液を120℃で真空乾燥し、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、ベーマイトの形状はほぼ板状であった。
前記分散液500gに、増粘剤としてキサンタンガムを0.5g、バインダとして樹脂バインダーディスパージョン(変性ポリブチルアクリレート、固形分含量45質量%)を17g加え、スリーワンモーターで3時間攪拌して均一なスラリー〔多孔質層(II)形成用スラリー、固形分比率50質量%〕を調製した。
非水二次電池用PE製微多孔質セパレータ〔多孔質層(I):厚み12μm、空孔率40%、平均孔径0.08μm、PEの融点135℃〕の片面にコロナ放電処理(放電量40W・min/m)を施し、この処理面に多孔質層(II)形成用スラリーをマイクログラビアコーターによって塗布し、乾燥して厚みが4μmの多孔質層(II)を形成して、積層型のセパレータを得た。このセパレータにおける多孔質層(II)の単位面積あたりの質量は5.5g/mで、ベーマイトの体積含有率は95体積%であり、空孔率は45%であった。
<電池の組み立て>
前記帯状の正極と前記帯状正極とを、前記積層型セパレータを、多孔質層(II)が正極側となるように介在させつつ重ね、渦巻状に巻回した後、扁平状になるように加圧して扁平状巻回構造の巻回電極体とし、この巻回電極体をポリプロピレン製の絶縁テープで固定した。次に、外寸が厚み:4.0mm、幅:34mm、高さ:50mmのアルミニウム合金製の角形の電池ケースに前記巻回電極体を挿入し、リード体の溶接を行うと共に、アルミニウム合金製の蓋板を電池ケースの開口端部に溶接した。その後、蓋板に設けた注入口から前記非水電解液を注入し、1時間静置した後注入口を封止して、図1に示す構造で、図2に示す外観の角形非水二次電池を作製した。
前記の非水二次電池を、図1および図2を用いて説明する。図1はその部分断面図であって、正極1と負極2はセパレータ3を介して渦巻状に巻回した後、扁平状になるように加圧して扁平状巻回電極体6として、角形(角筒形)の電池ケース4に非水電解液と共に収容されている。ただし、図1では、煩雑化を避けるため、正極1や負極2の作製にあたって使用した集電体としての金属箔や非水電解液などは図示していない。
電池ケース4はアルミニウム合金製で電池の外装体を構成するものであり、この外装缶4は正極端子を兼ねている。そして、電池ケース4の底部にはPEシートからなる絶縁体5が配置され、正極1、負極2およびセパレータ3からなる扁平状巻回電極体6からは、正極1および負極2のそれぞれ一端に接続された正極リード体7と負極リード体8が引き出されている。また、電池ケース4の開口部を封口するアルミニウム合金製の封口用蓋板9にはPP製の絶縁パッキング10を介してステンレス鋼製の端子11が取り付けられ、この端子11には絶縁体12を介してステンレス鋼製のリード板13が取り付けられている。
そして、この蓋板9は電池ケース4の開口部に挿入され、両者の接合部を溶接することによって、電池ケース4の開口部が封口され、電池内部が密閉されている。また、図1の電池では、蓋板9に非水電解液注入口14が設けられており、この非水電解液注入口14には、封止部材が挿入された状態で、例えばレーザー溶接などにより溶接封止されて、電池の密閉性が確保されている。更に、蓋板9には、電池の温度が上昇した際に内部のガスを外部に排出する機構として、開裂ベント15が設けられている。
この実施例1の電池では、正極リード体7を蓋板9に直接溶接することによって電池ケース4と蓋板9とが正極端子として機能し、負極リード体8をリード板13に溶接し、そのリード板13を介して負極リード体8と端子11とを導通させることによって端子11が負極端子として機能するようになっているが、電池ケース4の材質などによっては、その正負が逆になる場合もある。
図2は前記図1に示す電池の外観を模式的に示す斜視図であり、この図2は前記電池が角形電池であることを示すことを目的として図示されたものであって、この図1では電池を概略的に示しており、電池の構成部材のうち特定のものしか図示していない。また、図1においても、電極体の内周側の部分は断面にしていない。また、セパレータについても、各層を区別して示していない。
実施例2
Al(OH)共沈物が付着したコバルト酸リチウム(A1)を取り出し、洗浄後、乾燥させた後に、大気雰囲気中で熱処理する際の温度を200℃に変更した以外は、実施例1と同様にして正極材料(a2)を作製した。得られた正極材料(a2)について、前記の方法で平均粒子径を測定したところ、27μmであった。
また、Al(OH)共沈物が付着したコバルト酸リチウム(B1)を取り出し、洗浄後、乾燥させた後に、大気雰囲気中で熱処理する際の温度を200℃に変更した以外は、実施例1と同様にして正極材料(b2)を作製した。得られた正極材料(b2)について、前記の方法で平均粒子径を測定したところ、7μmであった。
次に、正極材料(a2)と正極材料(b2)とを、質量比で85:15の割合で混合して、電池作製用の正極材料(2)を得た。得られた正極材料(2)の表面のAl含有酸化物の平均被覆厚みを前記の方法で測定したところ、30nmであった。また、平均被覆厚みの測定の際に元素マッピングによって被膜の組成を確認したところ、主成分がAlOOHであった。更に、正極材料(2)の体積基準の粒度分布を前記の方法で確認したところ、平均粒子径は25μmで、正極材料(a2)および正極材料(b2)の各平均粒子径の箇所にピークトップを有する2つのピークが認められた。また、正極材料(2)のBET比表面積を、窒素吸着法による比表面積測定装置を用いて測定したところ、0.25m/gであった。
そして、正極材料(1)に代えて正極材料(2)を用いた以外は実施例1と同様にして正極を作製し、この正極を用いた以外は実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
実施例3
Al(OH)共沈物が付着したコバルト酸リチウム(A1)を取り出し、洗浄後、乾燥させた後に、大気雰囲気中で熱処理する際の温度を700℃に変更した以外は、実施例1と同様にして正極材料(a3)を作製した。得られた正極材料(a3)について、前記の方法で平均粒子径を測定したところ、27μmであった。
また、Al(OH)共沈物が付着したコバルト酸リチウム(B1)を取り出し、洗浄後、乾燥させた後に、大気雰囲気中で熱処理する際の温度を700℃に変更した以外は、実施例1と同様にして正極材料(b3)を作製した。得られた正極材料(b3)について、前記の方法で平均粒子径を測定したところ、7μmであった。
次に、正極材料(a3)と正極材料(b3)とを、質量比で85:15の割合で混合して、電池作製用の正極材料(3)を得た。得られた正極材料(3)の表面のAl含有酸化物の平均被覆厚みを前記の方法で測定したところ、30nmであった。また、平均被覆厚みの測定の際に元素マッピングによって被膜の組成を確認したところ、主成分がLiAlOであった。更に、正極材料(3)の体積基準の粒度分布を前記の方法で確認したところ、平均粒子径は25μmで、正極材料(a3)および正極材料(b3)の各平均粒子径の箇所にピークトップを有する2つのピークが認められた。また、正極材料(3)のBET比表面積を、窒素吸着法による比表面積測定装置を用いて測定したところ、0.25m/gであった。
そして、正極材料(1)に代えて正極材料(3)を用いた以外は実施例1と同様にして正極を作製し、この正極を用いた以外は実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
実施例4
Al(NO・9HOの使用量を0.0026gに変更した以外は、正極材料(a1)と同じ方法で正極材料(a4)を作製した。得られた正極材料(a4)について、前記の方法で平均粒子径を測定したところ、27μmであった。
また、Al(NO・9HOの使用量を0.013gに変更した以外は、正極材料(b1)と同じ方法で正極材料(b4)を作製した。得られた正極材料(b4)について、前記の方法で平均粒子径を測定したところ、7μmであった。
次に、正極材料(a4)と正極材料(b4)とを、質量比で85:15の割合で混合して、電池作製用の正極材料(4)を得た。得られた正極材料(4)の表面のAl含有酸化物の平均被覆厚みを前記の方法で測定したところ、5nmであった。また、平均被覆厚みの測定の際に元素マッピングによって被膜の組成を確認したところ、主成分がAlであった。更に、正極材料(4)の体積基準の粒度分布を前記の方法で確認したところ、平均粒子径は25μmで、正極材料(a4)および正極材料(b4)の各平均粒子径の箇所にピークトップを有する2つのピークが認められた。また、正極材料(4)のBET比表面積を、窒素吸着法による比表面積測定装置を用いて測定したところ、0.25m/gであった。
そして、正極材料(1)に代えて正極材料(4)を用いた以外は実施例1と同様にして正極を作製し、この正極を用いた以外は実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
実施例5
Al(NO・9HOの使用量を0.0256gに変更した以外は、正極材料(a1)と同じ方法で正極材料(a5)を作製した。得られた正極材料(a5)について、前記の方法で平均粒子径を測定したところ、27μmであった。
また、Al(NO・9HOの使用量を0.128gに変更した以外は、正極材料(b1)と同じ方法で正極材料(b5)を作製した。得られた正極材料(b5)について、前記の方法で平均粒子径を測定したところ、7μmであった。
次に、正極材料(a5)と正極材料(b5)とを、質量比で85:15の割合で混合して、電池作製用の正極材料(5)を得た。得られた正極材料(5)の表面のAl含有酸化物の平均被覆厚みを前記の方法で測定したところ、50nmであった。また、平均被覆厚みの測定の際に元素マッピングによって被膜の組成を確認したところ、主成分がAlであった。更に、正極材料(5)の体積基準の粒度分布を前記の方法で確認したところ、平均粒子径は25μmで、正極材料(a5)および正極材料(b5)の各平均粒子径の箇所にピークトップを有する2つのピークが認められた。また、正極材料(5)のBET比表面積を、窒素吸着法による比表面積測定装置を用いて測定したところ、0.25m/gであった。
そして、正極材料(1)に代えて正極材料(5)を用いた以外は実施例1と同様にして正極を作製し、この正極を用いた以外は実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
実施例6
正極材料(a1)と正極材料(b1)とを、質量比で95:5の割合で混合して、電池作製用の正極材料(6)を得た。得られた正極材料(6)の表面のAl含有酸化物の平均被覆厚みを前記の方法で測定したところ、30nmであった。また、平均被覆厚みの測定の際に元素マッピングによって被膜の組成を確認したところ、主成分がAlであった。更に、正極材料(6)の体積基準の粒度分布を前記の方法で確認したところ、平均粒子径は25μmで、正極材料(a1)および正極材料(b1)の各平均粒子径の箇所にピークトップを有する2つのピークが認められた。また、正極材料(6)のBET比表面積を、窒素吸着法による比表面積測定装置を用いて測定したところ、0.1m/gであった。
そして、正極材料(1)に代えて正極材料(6)を用いた以外は実施例1と同様にして正極を作製し、この正極を用いた以外は実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
実施例7
正極材料(a1)と正極材料(b1)とを、質量比で70:30の割合で混合して、電池作製用の正極材料(7)を得た。得られた正極材料(7)の表面のAl含有酸化物の平均被覆厚みを前記の方法で測定したところ、30nmであった。また、平均被覆厚みの測定の際に元素マッピングによって被膜の組成を確認したところ、主成分がAlであった。更に、正極材料(7)の体積基準の粒度分布を前記の方法で確認したところ、平均粒子径は25μmで、正極材料(a1)および正極材料(b1)の各平均粒子径の箇所にピークトップを有する2つのピークが認められた。また、正極材料(7)のBET比表面積を、窒素吸着法による比表面積測定装置を用いて測定したところ、0.4m/gであった。
そして、正極材料(1)に代えて正極材料(7)を用いた以外は実施例1と同様にして正極を作製し、この正極を用いた以外は実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
実施例8
ペレット状に固めた原料混合物の焼成時間を48時間に変更した以外はコバルト酸リチウム(A1)と同じ方法で、コバルト酸リチウム(A2)を合成した。そして、コバルト酸リチウム(A1)に代えてコバルト酸リチウム(A2)を用いた以外は正極材料(a1)と同じ方法で、正極材料(a8)を作製した。得られた正極材料(a8)について、前記の方法で平均粒子径を測定したところ、40μmであった。
また、ペレット状に固めた原料混合物の焼成時間を2時間に変更した以外はコバルト酸リチウム(B1)と同じ方法で、コバルト酸リチウム(B2)を合成した。そして、コバルト酸リチウム(B1)に代えてコバルト酸リチウム(B2)を用いた以外は正極材料(b1)と同じ方法で、正極材料(b8)を作製した。得られた正極材料(b8)について、前記の方法で平均粒子径を測定したところ、1μmであった。
次に、正極材料(a8)と正極材料(b8)とを、質量比で85:15の割合で混合して、電池作製用の正極材料(8)を得た。得られた正極材料(8)の表面のAl含有酸化物の平均被覆厚みを前記の方法で測定したところ、30nmであった。また、平均被覆厚みの測定の際に元素マッピングによって被膜の組成を確認したところ、主成分がAlであった。更に、正極材料(8)の体積基準の粒度分布を前記の方法で確認したところ、平均粒子径は25μmで、正極材料(a8)および正極材料(b8)の各平均粒子径の箇所にピークトップを有する2つのピークが認められた。また、正極材料(8)のBET比表面積を、窒素吸着法による比表面積測定装置を用いて測定したところ、0.25m/gであった。
そして、正極材料(1)に代えて正極材料(8)を用いた以外は実施例1と同様にして正極を作製し、この正極を用いた以外は実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
実施例9
Al(OH)に代えてNi(OH)を用いた以外はコバルト酸リチウム(A1)と同様にして、ICP法で求めた組成式がLiCo0.9795Mg0.011Zr0.0005Ni0.009のコバルト酸リチウム(A3)を合成した。
そして、コバルト酸リチウム(A1)に代えてコバルト酸リチウム(A3)を用いた以外は正極材料(a1)と同じ方法で、正極材料(a9)を作製した。得られた正極材料(a9)について、前記の方法で平均粒子径を測定したところ、27μmであった。
次に、正極材料(a9)と正極材料(b1)とを、質量比で85:15の割合で混合して、電池作製用の正極材料(9)を得た。得られた正極材料(9)の表面のAl含有酸化物の平均被覆厚みを前記の方法で測定したところ、30nmであった。また、平均被覆厚みの測定の際に元素マッピングによって被膜の組成を確認したところ、主成分がAlであった。更に、正極材料(9)の体積基準の粒度分布を前記の方法で確認したところ、平均粒子径は25μmで、正極材料(a9)および正極材料(b1)の各平均粒子径の箇所にピークトップを有する2つのピークが認められた。また、正極材料(9)のBET比表面積を、窒素吸着法による比表面積測定装置を用いて測定したところ、0.25m/gであった。
そして、正極材料(1)に代えて正極材料(9)を用いた以外は実施例1と同様にして正極を作製し、この正極を用いた以外は実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
実施例10
Al(OH)に代えてMn(OH)を用いた以外はコバルト酸リチウム(A1)と同様にして、ICP法で求めた組成式がLiCo0.9795Mg0.011Zr0.0005Mn0.009のコバルト酸リチウム(A4)を合成した。
そして、コバルト酸リチウム(A1)に代えてコバルト酸リチウム(A4)を用いた以外は正極材料(a1)と同じ方法で、正極材料(a10)を作製した。得られた正極材料(a10)について、前記の方法で平均粒子径を測定したところ、27μmであった。
次に、正極材料(a10)と正極材料(b1)とを、質量比で85:15の割合で混合して、電池作製用の正極材料(10)を得た。得られた正極材料(10)の表面のAl含有酸化物の平均被覆厚みを前記の方法で測定したところ、30nmであった。また、平均被覆厚みの測定の際に元素マッピングによって被膜の組成を確認したところ、主成分がAlであった。更に、正極材料(10)の体積基準の粒度分布を前記の方法で確認したところ、平均粒子径は25μmで、正極材料(a10)および正極材料(b1)の各平均粒子径の箇所にピークトップを有する2つのピークが認められた。また、正極材料(10)のBET比表面積を、窒素吸着法による比表面積測定装置を用いて測定したところ、0.25m/gであった。
そして、正極材料(1)に代えて正極材料(10)を用いた以外は実施例1と同様にして正極を作製し、この正極を用いた以外は実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
実施例11
Al(OH)に代えてTiOSO・HOを用いた以外はコバルト酸リチウム(A1)と同様にして、ICP法で求めた組成式がLiCo0.9795Mg0.011Zr0.0005Ti0.009のコバルト酸リチウム(A5)を合成した。
そして、コバルト酸リチウム(A1)に代えてコバルト酸リチウム(A5)を用いた以外は正極材料(a1)と同じ方法で、正極材料(a11)を作製した。得られた正極材料(a11)について、前記の方法で平均粒子径を測定したところ、27μmであった。
次に、正極材料(a11)と正極材料(b1)とを、質量比で85:15の割合で混合して、電池作製用の正極材料(11)を得た。得られた正極材料(11)の表面のAl含有酸化物の平均被覆厚みを前記の方法で測定したところ、30nmであった。また、平均被覆厚みの測定の際に元素マッピングによって被膜の組成を確認したところ、主成分がAlであった。更に、正極材料(11)の体積基準の粒度分布を前記の方法で確認したところ、平均粒子径は25μmで、正極材料(a11)および正極材料(b1)の各平均粒子径の箇所にピークトップを有する2つのピークが認められた。また、正極材料(11)のBET比表面積を、窒素吸着法による比表面積測定装置を用いて測定したところ、0.25m/gであった。
そして、正極材料(1)に代えて正極材料(11)を用いた以外は実施例1と同様にして正極を作製し、この正極を用いた以外は実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
実施例12
コバルト酸リチウム(A1)に代えて、ICPで求めた組成式がLiCo0.9799Mg0.011Zr0.0001Al0.009のコバルト酸リチウム(A6)を用いた以外は、正極材料(a1)と同じ方法で正極材料(a12)を作製した。得られた正極材料(a12)について、前記の方法で平均粒子径を測定したところ、27μmであった。
また、コバルト酸リチウム(A6)と同じ組成であり、かつコバルト酸リチウム(A6)よりも平均粒子径が小さいコバルト酸リチウム(B3)を用いた以外は、正極材料(a12)と同じ方法で正極材料(b12)を作製した。得られた正極材料(b12)について、前記の方法で平均粒子径を測定したところ、7μmであった。
次に、正極材料(a12)と正極材料(b12)とを、質量比で85:15の割合で混合して、電池作製用の正極材料(12)を得た。また、正極材料(12)の表面のAl含有酸化物の平均被覆厚みを前記の方法で測定したところ、30nmであった。また、平均被覆厚みの測定の際に元素マッピングによって被膜の組成を確認したところ、主成分がAlであった。更に、正極材料(12)の体積基準の粒度分布を前記の方法で確認したところ、平均粒子径は25μmで、正極材料(a12)および正極材料(b12)の各平均粒子径の箇所にピークトップを有する2つのピークが認められた。また、正極材料(12)のBET比表面積を、窒素吸着法による比表面積測定装置を用いて測定したところ、0.25m/gであった。
そして、正極材料(1)に代えて正極材料(12)を用いた以外は実施例1と同様にして正極を作製し、この正極を用いた以外は実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
実施例13
コバルト酸リチウム(A1)に代えて、ICPにより求めた組成式がLiCo0.9798Mg0.011Zr0.0002Al0.009のコバルト酸リチウム(A7)を用いた以外は、正極材料(a1)と同じ方法で正極材料(a13)を作製した。得られた正極材料(a13)について、前記の方法で平均粒子径を測定したところ、27μmであった。
次に、正極材料(a13)と正極材料(b1)とを、質量比で85:15の割合で混合して、電池作製用の正極材料(13)を得た。また、正極材料(13)の表面のAl含有酸化物の平均被覆厚みを前記の方法で測定したところ、30nmであった。また、平均被覆厚みの測定の際に元素マッピングによって被膜の組成を確認したところ、主成分がAlであった。更に、正極材料(13)の体積基準の粒度分布を前記の方法で確認したところ、平均粒子径は25μmで、正極材料(a13)および正極材料(b1)の各平均粒子径の箇所にピークトップを有する2つのピークが認められた。また、正極材料(13)のBET比表面積を、窒素吸着法による比表面積測定装置を用いて測定したところ、0.25m/gであった。
そして、正極材料(1)に代えて正極材料(13)を用いた以外は実施例1と同様にして正極を作製し、この正極を用いた以外は実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
実施例14
コバルト酸リチウム(A1)に代えて、ICPにより求めた組成式がLiCo0.9750Mg0.011Zr0.0050Al0.009のコバルト酸リチウム(A8)を用いた以外は、正極材料(a1)と同じ方法で正極材料(a14)を作製した。
次に、正極材料(a14)と正極材料(b1)とを、質量比で85:15の割合で混合して、電池作製用の正極材料(14)を得た。また、正極材料(14)の表面のAl含有酸化物の平均被覆厚みを前記の方法で測定したところ、30nmであった。また、平均被覆厚みの測定の際に元素マッピングによって被膜の組成を確認したところ、主成分がAlであった。更に、正極材料(14)の体積基準の粒度分布を前記の方法で確認したところ、平均粒子径は25μmで、正極材料(a14)および正極材料(b1)の各平均粒子径の箇所にピークトップを有する2つのピークが認められた。また、正極材料(14)のBET比表面積を、窒素吸着法による比表面積測定装置を用いて測定したところ、0.25m/gであった。
そして、正極材料(1)に代えて正極材料(14)を用いた以外は実施例1と同様にして正極を作製し、この正極を用いた以外は実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
実施例15
コバルト酸リチウム(A1)に代えて、ICPにより求めた組成式がLiCo0.970Mg0.011Zr0.010Al0.009のコバルト酸リチウム(A9)を用いた以外は、正極材料(a1)と同じ方法で正極材料(a15)を作製した。
次に、正極材料(a15)と正極材料(b1)とを、質量比で85:15の割合で混合して、電池作製用の正極材料(15)を得た。また、正極材料(15)の表面のAl含有酸化物の平均被覆厚みを前記の方法で測定したところ、30nmであった。また、平均被覆厚みの測定の際に元素マッピングによって被膜の組成を確認したところ、主成分がAlであった。更に、正極材料(15)の体積基準の粒度分布を前記の方法で確認したところ、平均粒子径は25μmで、正極材料(a15)および正極材料(b1)の各平均粒子径の箇所にピークトップを有する2つのピークが認められた。また、正極材料(15)のBET比表面積を、窒素吸着法による比表面積測定装置を用いて測定したところ、0.25m/gであった。
そして、正極材料(1)に代えて正極材料(15)を用いた以外は実施例1と同様にして正極を作製し、この正極を用いた以外は実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
実施例16
ペレット状に固めた原料混合物の焼成時間を13時間に変更した以外はコバルト酸リチウム(B1)と同じ方法で、コバルト酸リチウム(B4)を合成した。そして、コバルト酸リチウム(B1)に代えてコバルト酸リチウム(B4)を用いた以外は正極材料(b1)と同じ方法で、正極材料(b16)を作製した。得られた正極材料(b16)について、前記の方法で平均粒子径を測定したところ、16μmであった。
次に、正極材料(a8)と正極材料(b16)とを、質量比で85:15の割合で混合して、電池作製用の正極材料(16)を得た。得られた正極材料(16)の表面のAl含有酸化物の平均被覆厚みを前記の方法で測定したところ、30nmであった。また、平均被覆厚みの測定の際に元素マッピングによって被膜の組成を確認したところ、主成分がAlであった。更に、正極材料(16)の体積基準の粒度分布を前記の方法で確認したところ、平均粒子径は32μmで、正極材料(a8)および正極材料(b16)の各平均粒子径の箇所にピークトップを有する2つのピークが認められた。また、正極材料(16)のBET比表面積を、窒素吸着法による比表面積測定装置を用いて測定したところ、0.25m/gであった。
そして、正極材料(1)に代えて正極材料(16)を用いた以外は実施例1と同様にして正極を作製し、この正極を用いた以外は実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
実施例17
ペレット状に固めた原料混合物の焼成時間を11時間に変更した以外はコバルト酸リチウム(A1)と同じ方法で、コバルト酸リチウム(A10)を合成した。そして、コバルト酸リチウム(A1)に代えてコバルト酸リチウム(A10)を用いた以外は正極材料(a1)と同じ方法で、正極材料(a17)を作製した。得られた正極材料(a17)について、前記の方法で平均粒子径を測定したところ、14μmであった。
次に、正極材料(a17)と正極材料(b8)とを、質量比で85:15の割合で混合して、電池作製用の正極材料(17)を得た。得られた正極材料(17)の表面のAl含有酸化物の平均被覆厚みを前記の方法で測定したところ、30nmであった。また、平均被覆厚みの測定の際に元素マッピングによって被膜の組成を確認したところ、主成分がAlであった。更に、正極材料(17)の体積基準の粒度分布を前記の方法で確認したところ、平均粒子径は11μmで、正極材料(a17)および正極材料(b8)の各平均粒子径の箇所にピークトップを有する2つのピークが認められた。また、正極材料(17)のBET比表面積を、窒素吸着法による比表面積測定装置を用いて測定したところ、0.38m/gであった。
そして、正極材料(1)に代えて正極材料(17)を用いた以外は実施例1と同様にして正極を作製し、この正極を用いた以外は実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
実施例18
LiPFの濃度を0.8mol/lに変更した以外は実施例1と同様にして非水電解液を調製し、この非水電解液を用いた以外は実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
実施例19
LiPFの濃度を0.9mol/lに変更した以外は実施例1と同様にして非水電解液を調製し、この非水電解液を用いた以外は実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
実施例20
LiPFの濃度を1.3mol/lに変更した以外は実施例1と同様にして非水電解液を調製し、この非水電解液を用いた以外は実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
実施例21
LiPFの濃度を1.4mol/lに変更した以外は実施例1と同様にして非水電解液を調製し、この非水電解液を用いた以外は実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
実施例22
アジポニトリルを添加しなかった以外は実施例1と同様にして非水電解液を調製し、この非水電解液を用いた以外は実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
実施例23
1,3−ジオキサンを添加しなかった以外は実施例1と同様にして非水電解液を調製し、この非水電解液を用いた以外は実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
実施例24
正極材料(1)とニッケル酸リチウム(組成式LiNi0.85Co0.120Mg0.01Al0.02)との質量比80:20の混合物:96.5質量部と、バインダであるPVDFを10質量%の濃度で含むNMP溶液:20質量部と、導電助剤であるアセチレンブラック:1.5質量部とを、二軸混練機を用いて混練し、更にNMPを加えて粘度を調節して、正極合剤含有ペーストを調製した。
前記の正極合剤含有ペーストを用いた以外は実施例1と同様にして正極を作製し、この正極を用いた以外は実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
実施例25
ニッケル酸リチウムを、組成がLiNi0.82Co0.16Al0.02のものに変更した以外は実施例24と同様にして正極を作製し、この正極を用いた以外は実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
実施例26
ECとDECとの混合溶媒におけるECとDECとの比率を体積比で1:5に変更した以外は実施例1と同様にして非水電解液を調製し、この非水電解液を用いた以外は実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
実施例27
ECとDECとの混合溶媒におけるECとDECとの比率を体積比で2:5に変更した以外は実施例1と同様にして非水電解液を調製し、この非水電解液を用いた以外は実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
実施例28
ECとDECとの混合溶媒におけるECとDECとの比率を体積比で2:1に変更した以外は実施例1と同様にして非水電解液を調製し、この非水電解液を用いた以外は実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
実施例29
ECとDECとの混合溶媒におけるECとDECとの比率を体積比で5:2に変更した以外は実施例1と同様にして非水電解液を調製し、この非水電解液を用いた以外は実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
実施例30
セパレータを、前記の積層型セパレータに代えてPE製セパレータ(厚み:16μm)に変更した以外は、実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
比較例1
Al含有酸化物による被覆を行わなかった以外は正極材料(a1)と同様にして正極材料(c1)を作製した。また、Al含有酸化物による被覆を行わなかった以外は正極材料(b1)と同様にして正極材料(d1)を作製した。正極材料(c1)および正極材料(d1)の平均粒子径は、それぞれ、27μm、7μmであった。
次に、正極材料(c1)と正極材料(d1)とを、質量比で85:15の割合で混合して、電池作製用の正極材料(18)を得た。得られた正極材料(18)の体積基準の粒度分布を前記の方法で確認したところ、平均粒子径は25μmで、正極材料(c1)および正極材料(d1)の各平均粒子径の箇所にピークトップを有する2つのピークが認められた。また、正極材料(18)のBET比表面積を、窒素吸着法による比表面積測定装置を用いて測定したところ、0.25m/gであった。
そして、正極材料(1)に代えて正極材料(18)を用いた以外は実施例1と同様にして正極を作製し、この正極を用いた以外は実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
比較例2
Al(NO・9HOの使用量を0.0308gに変更した以外は、正極材料(a1)と同じ方法で正極材料(c2)を作製した。得られた正極材料(c2)について、前記の方法で平均粒子径を測定したところ、27μmであった。
また、Al(NO・9HOの使用量を0.154gに変更した以外は、正極材料(b1)と同じ方法で正極材料(d2)を作製した。得られた正極材料(d2)について、前記の方法で平均粒子径を測定したところ、7μmであった。
次に、正極材料(c2)と正極材料(d2)とを、質量比で85:15の割合で混合して、電池作製用の正極材料(19)を得た。得られた正極材料(19)の表面のAl含有酸化物の平均被覆厚みを前記の方法で測定したところ、60nmであった。また、平均被覆厚みの測定の際に元素マッピングによって被膜の組成を確認したところ、主成分がAlであった。更に、正極材料(19)の体積基準の粒度分布を前記の方法で確認したところ、平均粒子径は25μmで、正極材料(c2)および正極材料(d2)の各平均粒子径の箇所にピークトップを有する2つのピークが認められた。また、正極材料(19)のBET比表面積を、窒素吸着法による比表面積測定装置を用いて測定したところ、0.25m/gであった。
そして、正極材料(1)に代えて正極材料(19)を用いた以外は実施例1と同様にして正極を作製し、この正極を用いた以外は実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
比較例3
正極材料(a8)と正極材料(b16)とを、質量比で95:5の割合で混合して、電池作製用の正極材料(20)を得た。得られた正極材料(20)の表面のAl含有酸化物の平均被覆厚みを前記の方法で測定したところ、30nmであった。また、平均被覆厚みの測定の際に元素マッピングによって被膜の組成を確認したところ、主成分がAlであった。更に、正極材料(20)の体積基準の粒度分布を前記の方法で確認したところ、平均粒子径は25μmで、正極材料(a8)および正極材料(b16)の各平均粒子径の箇所にピークトップを有する2つのピークが認められた。また、正極材料(20)のBET比表面積を、窒素吸着法による比表面積測定装置を用いて測定したところ、0.05m/gであった。
そして、正極材料(1)に代えて正極材料(20)を用いた以外は実施例1と同様にして正極を作製し、この正極を用いた以外は実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
比較例4
正極材料(a1)と正極材料(b1)とを、質量比で15:85の割合で混合して、電池作製用の正極材料(21)を得た。得られた正極材料(21)の表面のAl含有酸化物の平均被覆厚みを前記の方法で測定したところ、30nmであった。また、平均被覆厚みの測定の際に元素マッピングによって被膜の組成を確認したところ、主成分がAlであった。更に、正極材料(21)の体積基準の粒度分布を前記の方法で確認したところ、平均粒子径は25μmで、正極材料(a1)および正極材料(b1)の各平均粒子径の箇所にピークトップを有する2つのピークが認められた。また、正極材料(21)のBET比表面積を、窒素吸着法による比表面積測定装置を用いて測定したところ、0.5m/gであった。
そして、正極材料(1)に代えて正極材料(21)を用いた以外は実施例1と同様にして正極を作製し、この正極を用いた以外は実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
比較例5
ペレット状に固めた原料混合物の焼成時間を22時間に変更した以外はコバルト酸リチウム(A1)と同じ方法で、コバルト酸リチウム(A11)を合成した。そして、コバルト酸リチウム(A1)に代えてコバルト酸リチウム(A11)を用いた以外は正極材料(a1)と同じ方法で、正極材料(c5)を作製した。
得られた正極材料(c5)について、前記の方法で平均粒子径を測定したところ、25μmであった。また、正極材料(c5)の表面のAl含有酸化物の平均被覆厚みを前記の方法で測定したところ、30nmであった。更に、平均被覆厚みの測定の際に元素マッピングによって被膜の組成を確認したところ、主成分がAlであった。また、正極材料(c5)の体積基準の粒度分布を前記の方法で確認したところ、1つのピークのみが認められた。更に、正極材料(c5)のBET比表面積を、窒素吸着法による比表面積測定装置を用いて測定したところ、0.25m/gであった。
そして、正極材料(1)に代えて正極材料(c5)を用いた以外は実施例1と同様にして正極を作製し、この正極を用いた以外は実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
比較例6
ペレット状に固めた原料混合物の焼成時間を60時間に変更した以外はコバルト酸リチウム(A1)と同じ方法で、コバルト酸リチウム(A12)を合成した。そして、コバルト酸リチウム(A1)に代えてコバルト酸リチウム(A12)を用いた以外は正極材料(a1)と同じ方法で、正極材料(c6)を作製した。得られた正極材料(c6)について、前記の方法で平均粒子径を測定したところ、50μmであった。
次に、正極材料(c6)と正極材料(b1)とを、質量比で85:15の割合で混合して、電池作製用の正極材料(22)を得た。得られた正極材料(22)の表面のAl含有酸化物の平均被覆厚みを前記の方法で測定したところ、30nmであった。また、平均被覆厚みの測定の際に元素マッピングによって被膜の組成を確認したところ、主成分がAlであった。更に、正極材料(22)の体積基準の粒度分布を前記の方法で確認したところ、平均粒子径は40μmで、正極材料(c6)および正極材料(b1)の各平均粒子径の箇所にピークトップを有する2つのピークが認められた。また、正極材料(22)のBET比表面積を、窒素吸着法による比表面積測定装置を用いて測定したところ、0.25m/gであった。
そして、正極材料(1)に代えて正極材料(22)を用いた以外は実施例1と同様にして正極を作製し、この正極を用いた以外は実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
比較例7
ペレット状に固めた原料混合物の焼成時間を1時間に変更した以外はコバルト酸リチウム(B1)と同じ方法で、コバルト酸リチウム(B5)を合成した。そして、コバルト酸リチウム(B1)に代えてコバルト酸リチウム(B5)を用いた以外は正極材料(b1)と同じ方法で、正極材料(d7)を作製した。得られた正極材料(d7)について、前記の方法で平均粒子径を測定したところ、0.5μmであった。
次に、正極材料(a1)と正極材料(d7)とを、質量比で85:15の割合で混合して、電池作製用の正極材料(23)を得た。得られた正極材料(23)の表面のAl含有酸化物の平均被覆厚みを前記の方法で測定したところ、30nmであった。また、平均被覆厚みの測定の際に元素マッピングによって被膜の組成を確認したところ、主成分がAlであった。更に、正極材料(23)の体積基準の粒度分布を前記の方法で確認したところ、平均粒子径は19μmで、正極材料(a1)および正極材料(d7)の各平均粒子径の箇所にピークトップを有する2つのピークが認められた。また、正極材料(23)のBET比表面積を、窒素吸着法による比表面積測定装置を用いて測定したところ、0.25m/gであった。
そして、正極材料(1)に代えて正極材料(23)を用いた以外は実施例1と同様にして正極を作製し、この正極を用いた以外は実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
比較例8
ZrOを使用しなかった以外はコバルト酸リチウム(A1)と同じ方法で、ICP法で求めた組成式がLiCo0.9881Mg0.011Al0.0009のコバルト酸リチウム(A13)を合成した。
そして、コバルト酸リチウム(A1)に代えてコバルト酸リチウム(A13)を用いた以外は、正極材料(a1)と同じ方法で正極材料(c8)を作製した。得られた正極材料(c8)について、前記の方法で平均粒子径を測定したところ、27μmであった。
次に、正極材料(c8)と正極材料(b1)とを、質量比で85:15の割合で混合して、電池作製用の正極材料(24)を得た。得られた正極材料(24)の表面のAl含有酸化物の平均被覆厚みを前記の方法で測定したところ、30nmであった。また、平均被覆厚みの測定の際に元素マッピングによって被膜の組成を確認したところ、主成分がAlであった。更に、正極材料(24)の体積基準の粒度分布を前記の方法で確認したところ、平均粒子径は25μmで、正極材料(c8)および正極材料(b1)の各平均粒子径の箇所にピークトップを有する2つのピークが認められた。また、正極材料(24)のBET比表面積を、窒素吸着法による比表面積測定装置を用いて測定したところ、0.25m/gであった。
そして、正極材料(1)に代えて正極材料(24)を用いた以外は実施例1と同様にして正極を作製し、この正極を用いた以外は実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
比較例9
Al(OH)を使用しなかった以外はコバルト酸リチウム(A1)と同じ方法で、ICP法で求めた組成式がLiCo0.9885Mg0.011Zr0.0005のコバルト酸リチウム(A14)を合成した。
そして、コバルト酸リチウム(A1)に代えてコバルト酸リチウム(A14)を用いた以外は、正極材料(a1)と同じ方法で正極材料(c9)を作製した。得られた正極材料(c9)について、前記の方法で平均粒子径を測定したところ、27μmであった。
次に、正極材料(c9)と正極材料(b1)とを、質量比で85:15の割合で混合して、電池作製用の正極材料(25)を得た。得られた正極材料(25)の表面のAl含有酸化物の平均被覆厚みを前記の方法で測定したところ、30nmであった。また、平均被覆厚みの測定の際に元素マッピングによって被膜の組成を確認したところ、主成分がAlであった。更に、正極材料(25)の体積基準の粒度分布を前記の方法で確認したところ、平均粒子径は25μmで、正極材料(c9)および正極材料(b1)の各平均粒子径の箇所にピークトップを有する2つのピークが認められた。また、正極材料(25)のBET比表面積を、窒素吸着法による比表面積測定装置を用いて測定したところ、0.25m/gであった。
そして、正極材料(1)に代えて正極材料(25)を用いた以外は実施例1と同様にして正極を作製し、この正極を用いた以外は実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
実施例および比較例の各非水二次電池について、下記の各評価を行った。
<正極の負荷特性>
実施例および比較例の各非水二次電池に用いた正極と同じものを用い、対極にリチウム箔を用い、実施例1の非水二次電池に用いたものと同じ非水電解液を用いて、モデルセルを作製した。そして、各モデルセルについて、23℃で、0.1Cの電流値でリチウムの電位に対して4.5Vになるまで定電流充電を行った後、電流値が0.01Cになるまでリチウムの電位に対して4.5Vで定電圧充電を行って、充電容量を測定した。充電後の各モデルセルについて、0.1Cの電流値でリチウムの電位に対して3.1Vになるまで定電流で放電して、放電容量(0.1C放電容量)を測定した。
また、前記の各モデルセルについて、定電流充電時および定電流放電時の電流値を0.5Cに変更した以外は0.1C放電容量測定時と同じ条件で定電流充電、定電圧充電および定電流放電を行って、充電容量および放電容量(0.5C放電容量)を測定した。
そして、各電極について、0.5C放電容量を0.1C放電容量で除した値を百分率で表して、容量維持率を求めた。
<60℃での充放電サイクル特性>
実施例および比較例の各非水二次電池を60℃の恒温槽内に5時間静置し、その後、各電池について、4.35Vまで1.0Cの定電流で充電を行い、4.35Vに達した後は、電流が0.05Cに到達するまで4.35Vで定電圧充電を行った。その後の各電池について、1.0Cの定電流で、電圧が3.0Vに到達するまで放電を行った。これらの充電および放電の一連の操作を1サイクルとして、300回サイクルの充放電を繰り返した。そして、各電池について、300サイクル目の放電容量を1サイクル目の放電容量で除した値を百分率で表して、容量維持率を求めた。
<連続充電試験>
実施例および比較例の各非水二次電池について、60℃で、1.0Cの電流値で4.4Vまで定電流充電を行った後、4.4Vで定電圧充電を継続し、電流値の上昇が生じるまでの時間(リーク電流発生時間)を測定した。
<加熱試験>
実施例および比較例の各非水二次電池を恒温槽内に静置し、2℃/minで恒温槽を150℃まで昇温し、150℃で60分間の保持を行った。加熱保持中の各電池の表面温度を熱電対で測定し、その表面温度が180℃を超えたものを熱暴走したと評価した。
実施例および比較例の各非水二次電池に係る正極材料および正極の構成を表1〜表8に、非水電解液の構成およびセパレータの種類を表9〜表12に、前記の各評価結果を表13〜表16に、それぞれ示す。なお、表2、表4、表6および表8では、コバルト酸リチウム(A1)からコバルト酸リチウム(A14)を纏めて「コバルト酸リチウム(A)」と記載する〔コバルト酸リチウム(A11)〜コバルト酸リチウム(A14)は、組成の面でコバルト酸リチウム(A)に該当しないが、便宜上、これらも纏めて「コバルト酸リチウム(A)」とする。〕。また、表2、表4、表6および表8における「電池作製用の正極材料の調製に使用した正極材料」は、電池作製用の正極材料を調製に使用した各正極材料〔正極材料(a1)〜正極材料(d7)〕であり、その「No.」の欄には、各正極材料の符号を記載する。更に、表9〜表12では、非水電解液におけるDECの体積を1としたときのECの体積を「ECの体積」と記載する。
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表1〜表16に示す通り、適正な組成のコバルト酸リチウムの表面を適正な厚みのAl含有酸化物で被覆し、かつ適正な比表面積と粒度とを有する正極材料を使用した実施例1〜30の非水二次電池は、正極の負荷特性評価時の容量維持率および60℃での充放電サイクル特性評価時の容量維持率が高く、負荷特性および高温下での充放電サイクル特性が良好であった。また、実施例1〜30の非水二次電池は、連続充電試験時にリーク電流が発生するまでの時間が長く、連続充電特性も良好であった。更に、耐熱性に優れた積層型のセパレータを用いた実施例1〜29の非水二次電池は、加熱試験時の熱暴走も抑制されており、安全性が良好であった。
これに対し、Al含有酸化物による被覆を行っていない正極活物質を使用した比較例1の電池、比表面積が大きすぎる正極材料を使用した比較例4の電池、平均粒子径の異なる2種以上の正極材料を使用していない比較例5の電池、平均粒子径が小さすぎる正極材料を小粒子径側の正極材料として使用した比較例7の電池、およびZrを含有しないコバルト酸リチウムを用いた正極材料を大粒子径側の正極材料として使用した比較例8の電池は、60℃での充放電サイクル特性評価時の容量維持率が低く、高温下での充放電サイクル特性が劣っていた。また、Al含有酸化物の被覆厚みが大きすぎる正極材料を用いた比較例2の電池、比表面積が小さすぎる正極材料を使用した比較例3の電池、および平均粒子径が大きすぎる正極材料を大粒子径側の正極材料として使用した比較例6の電池は、正極の負荷特性評価時の容量維持率が低く、負荷特性が劣っていた。更に、元素Mを含有していないコバルト酸リチウムを用いた正極材料を大粒子径側の正極材料として使用した比較例9の電池は、連続充電試験時にリーク電流が発生するまでの時間が短く、連続充電特性が劣っていた。
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、前記以外の形態としても実施が可能である。本出願に開示された実施形態は一例であって、本発明は、これらの実施形態には限定されない。本発明の範囲は、前記の明細書の記載よりも、添付されている請求の範囲の記載を優先して解釈され、請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更は、請求の範囲に含まれる。
本発明の非水二次電池は、高い終止電圧で充電しても、高温下における優れた充放電サイクル特性を発揮でき、また、優れた負荷特性および連続充電特性を発揮し得るものであることから、こうした特性が要求される用途をはじめとして、従来の非水二次電池が適用されている各種用途に好ましく使用することができる。
1 正極
2 負極
3 セパレータ

Claims (10)

  1. 正極、負極、セパレータおよび非水電解液を有する非水二次電池であって、
    前記正極は、正極活物質の粒子の表面がAl含有酸化物で被覆されてなる正極材料を用いており、
    前記Al含有酸化物の平均被覆厚みが5〜50nmであり、
    前記正極材料は、少なくとも、平均粒子径が1〜40μmである正極材料(a)と、平均粒子径が1〜40μmであり、かつ前記正極材料(a)よりも平均粒子径が小さい正極材料(b)とを含んでおり、
    前記正極材料の比表面積は0.1〜0.4m/gであり、
    前記正極材料(a)が含有する正極活物質は、Co、MgおよびZrと、Ni、Mn、TiおよびAlよりなる群から選択される少なくとも1種の元素Mとを少なくとも含有するコバルト酸リチウム(A)であり、
    前記正極材料(b)が含有する正極活物質は、CoおよびMgと、Ni、Mn、TiおよびAlよりなる群から選択される少なくとも1種の元素Mとを少なくとも含有するコバルト酸リチウム(B)であり、
    前記非水電解液は、フッ素を含有するリチウム塩を含んでいることを特徴とする非水二次電池。
  2. 前記コバルト酸リチウム(A)におけるZrとCoとの原子比Zr/Coが、0.0002〜0.005である請求項1に記載の非水二次電池。
  3. 前記正極材料は、体積基準の粒度分布において、1〜15μmの粒径範囲内に1つ以上のピークを有し、かつ15〜40μmの粒径範囲内に1つ以上のピークを有しており、
    前記15〜40μmの粒径範囲内に存在するピークのうちの少なくとも1つのピークトップの粒径が、前記1〜15μmの粒径範囲内に存在するピークのうちの少なくとも1つのピークトップの粒径よりも大きい請求項1または2に記載の非水二次電池。
  4. 前記非水電解液における前記フッ素を含有するリチウム塩の濃度が、0.9〜1.5mol/lである請求項1〜3のいずれかに記載の非水二次電池。
  5. 前記非水電解液は、ニトリル系添加剤を含有している請求項1〜4のいずれかに記載の非水二次電池。
  6. 前記非水電解液は、1,3−ジオキサンを含有している請求項1〜5のいずれかに記載の非水二次電池。
  7. 前記非水電解液は、前記フッ素を含有するリチウム塩としてLiPFを含んでいる請求項1〜6のいずれかに記載の非水二次電池。
  8. 前記正極は、NiおよびCoと、Mg、Mn、Ba、W、Ti、Zr、MoおよびAlよりなる群から選択される元素Mとを含有するニッケル酸リチウム(C)を、前記正極材料と共に用いたものである請求項1〜7のいずれかに記載の非水二次電池。
  9. 前記非水電解液は、環状カーボネートおよび鎖状カーボネートを含有しており、鎖状カーボネートの体積を1としたときの環状カーボネートの体積が0.4〜2である請求項1〜8のいずれかに記載の非水二次電池。
  10. 4.3V以上の電圧で充電されて使用される請求項1〜9のいずれかに記載の非水二次電池。
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