以下、本発明の接着剤、接着体及び接着体の製造方法の実施の形態について詳説する。
<接着剤(1)>
当該接着剤(1)は、ポリビニルアルコールを含むフィルムと基材とを接着するための接着剤であって、活性エネルギー線硬化性基を有する(メタ)アクリル系重合体(X)と、(メタ)アクリル系重合体(X)以外の活性エネルギー線硬化性基を有する化合物(Y)とを含有する。
[(メタ)アクリル系重合体(X)]
上記(メタ)アクリル系重合体(X)は、活性エネルギー線硬化性基を分子内に少なくとも1つ有する。この(メタ)アクリル系重合体(X)が有する活性エネルギー線硬化性基が化合物(Y)と結合して硬化したり、(メタ)アクリル系重合体(X)が単独で硬化すること等により、ポリビニルアルコールを含むフィルムと基材との接着強度及び硬化速度に優れ、さらに接着体の反りが低減できると考えられる。
上記活性エネルギー線としては、例えば紫外線、赤外線、X線、γ線等の電磁波の他、電子線、プロトン線、中性子線等が挙げられる。これらの中で、硬化速度、照射装置の入手性、価格等の観点から紫外線又は電子線が好ましく、紫外線がより好ましい。
上記活性エネルギー線硬化性基は、活性エネルギー線の照射により重合性を示す官能基であれば特に制限はないが、例えばエチレン性二重結合を有する基、オキシラン環を有する基、オキセタン環を有する基、チオール基を有する基、マレイミド基を有する基、加水分解性シリル基を有する基等が挙げられる。上記活性エネルギー線硬化性基の炭素数の下限としては1が好ましく、2がより好ましい。一方、上記炭素数の上限としては30が好ましく、15がより好ましい。上記エチレン性二重結合を有する基としては、例えば下記式(1)で表される基を有する基((メタ)アクリロイルオキシ基を有する基等);アリル基を有する基;ビニル基を有する基(ビニルエーテル基を有する基等);1,3−ジエニル基を有する基;スチリル基を有する基等が挙げられる。
上記式(1)中、R1は水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。
R1としては、例えば水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2−エチルブチル基、3−エチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−ヘキサデシル基、n−エイコシル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基等が挙げられる。R1が炭化水素基である場合、炭素数の上限としては10が好ましく、4がより好ましい。
また、R1で表される炭素数1〜20の炭化水素基は置換基を有していてもよい。この置換基としては、活性エネルギー線硬化性基の活性エネルギー線硬化性を阻害しないものであればよく、例えばメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基等のアルコキシ基;塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
R1は、(メタ)アクリル系重合体(X)の製造の容易さや硬化速度に優れる観点などから、水素原子又はメチル基が好ましい。
上記活性エネルギー線硬化性基の中でも、取り扱い性、反応性に優れる点で、エチレン性二重結合を有する基、オキシラン環を有する基、及びオキセタン環を有する基からなる群より選ばれる少なくとも1つが好ましく、上記式(1)で表される基を有する基、オキシラン環を有する基、及びオキセタン環を有する基からなる群より選ばれる少なくとも1つがより好ましく、上記式(1)で表される基を有する基がさらに好ましい。
上記式(1)で表される基を有する基は特に制限されないが、本発明の効果がより顕著に奏されることから、下記式(2)で表される基が好ましい。
上記式(2)中、R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を表し、X1は酸素原子、硫黄原子又は−NR4−を表し、R4は水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を表し、nは1〜20の整数を表す。
なお、上記式(2)におけるR1の定義及び説明は上記式(1)のものと同様である。
R2及びR3としては、例えば水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2−エチルブチル基、3−エチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基等のアリール基等が挙げられる。
また、R2及びR3で表される炭素数1〜6の炭化水素基は置換基を有していてもよい。この置換基としては、活性エネルギー線硬化性基の活性エネルギー線硬化性を阻害しないものであればよく、例えばメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基等のアルコキシ基;塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
R2及びR3は、(メタ)アクリル系重合体(X)の製造の容易さや硬化速度に優れる観点等から、それぞれメチル基又はエチル基が好ましい。
R4で表される炭素数1〜6の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2−エチルブチル基、3−エチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基等のアリール基等が挙げられる。
また、R4で表される炭素数1〜6の炭化水素基は置換基を有していてもよい。この置換基としては、活性エネルギー線硬化性基の活性エネルギー線硬化性を阻害しないものであればよく、例えばメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基等のアルコキシ基;塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
R4は、(メタ)アクリル系重合体(X)の製造の容易さや硬化速度に優れる観点等から、メチル基又はエチル基が好ましい。
X1は、(メタ)アクリル系重合体(X)の製造の容易さや硬化速度に優れる観点等から、酸素原子又は−NR4−が好ましく、酸素原子がより好ましい。
(メタ)アクリル系重合体(X)の製造の容易さや硬化速度に優れる観点等から、nの下限としては、2が好ましく、一方、nの上限としては、10が好ましく、5がより好ましい。
(メタ)アクリル系重合体(X)は、(メタ)アクリル系単量体に由来する構造単位を主として含む重合体であり、単独重合体であっても共重合体であってもよい。(メタ)アクリル系単量体としては、例えば下記式(4)で表される部分構造を有するものが挙げられる。ここで(メタ)アクリル系重合体(X)は、下記式(4)で表される部分構造を有する(メタ)アクリル系単量体に由来する構造単位の一部又は全部が活性エネルギー線硬化性基を有することにより、結果として活性エネルギー線硬化性基を有するものであってもよいが、下記式(4)で表される部分構造を有する(メタ)アクリル系単量体に由来する構造単位のうちの一部又は全部が活性エネルギー線硬化性基を有さない場合であっても、当該重合体の末端及び/又は側鎖に活性エネルギー線硬化性基を有するようにすることにより、結果として活性エネルギー線硬化性基を有する(メタ)アクリル系重合体(X)とすることができる。
上記式(4)中、R7は水素原子又はメチル基を表し、X3は酸素原子、硫黄原子又は−NR8−を表し、R8は水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を表す。
R7としては、メチル基が好ましい。
R8で表される炭素数1〜6の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2−エチルブチル基、3−エチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基等のアリール基等が挙げられる。
また、R8で表される炭素数1〜6の炭化水素基は置換基を有していてもよい。この置換基としては、活性エネルギー線硬化性基の活性エネルギー線硬化性を阻害しないものであればよく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基等のアルコキシ基;塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
R8は、(メタ)アクリル系重合体(X)の製造の容易さや硬化速度に優れる観点などから、メチル基又はエチル基が好ましい。
X3は、(メタ)アクリル系重合体(X)の製造の容易さや硬化速度に優れる観点などから、酸素原子又は−NR8−が好ましく、酸素原子がより好ましい。
X3が酸素原子である場合における上記(メタ)アクリル系単量体の具体例としては、例えば、活性エネルギー線硬化性基とそれ以外に(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する化合物などが挙げられる。またそれ以外にも、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸2−(トリメチルシリルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3−(トリメチルシリルオキシ)プロピルなども挙げられる。
(メタ)アクリル系重合体(X)を構成する全構造単位のモル数に対する(メタ)アクリル系単量体に由来する構造単位のモル数の占める割合の下限としては、30モル%が好ましく、50モル%がより好ましく、80モル%がさらに好ましく、95モル%が特に好ましく、上記割合は100モル%であってもよい。
また、(メタ)アクリル系重合体(X)を構成する全構造単位のモル数に対する活性エネルギー線硬化性基のモル数の占める割合の下限としては、0.3モル%が好ましく、1モル%がより好ましく、2モル%がさらに好ましい。一方、上記割合の上限としては、90モル%が好ましく、30モル%がより好ましく、15モル%がさらに好ましく、10モル%が特に好ましい。(メタ)アクリル系重合体(X)を構成する全構造単位のモル数に対する活性エネルギー線硬化性基のモル数の占める割合が上記範囲にあると、後述する接着剤(2)が容易に得られやすく、また、接着強度がより一層向上し、反りをより低減することのできる接着剤が得られやすい。
(メタ)アクリル系重合体(X)が共重合体である場合、(メタ)アクリル系重合体(X)としては、例えばランダム共重合体、ブロック共重合体等が挙げられる。ランダム共重合体としては、例えば末端及び/又は側鎖に(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体(アクリル樹脂(メタ)アクリレート等)などが挙げられる。(メタ)アクリル系重合体(X)としては、特に反りがより低減された接着体を得ることができ、本発明の効果がより顕著に奏されることから、ブロック共重合体が好ましく、活性エネルギー線硬化性基を有する(メタ)アクリル系重合体ブロック(A)と、活性エネルギー線硬化性基を実質的に有さない(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体がより好ましい。このように、上記(メタ)アクリル系重合体(X)が(メタ)アクリル系重合体ブロック(A)と(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)とを有することで、当該接着剤は基材表面の凹凸への追従性が向上し、アンカー効果などにより反りがより低減され接着強度がより向上すると考えられる。
((メタ)アクリル系重合体ブロック(A))
(メタ)アクリル系重合体ブロック(A)は、活性エネルギー線硬化性基を有する(メタ)アクリル系重合体ブロックである。(メタ)アクリル系重合体ブロック(A)を構成する全構造単位のモル数に対する(メタ)アクリル系単量体に由来する構造単位のモル数の占める割合の下限としては、30モル%が好ましく、50モル%がより好ましく、80モル%がさらに好ましく、95モル%が特に好ましく、上記割合は100モル%であってもよい。
(メタ)アクリル系重合体ブロック(A)は、活性エネルギー線硬化性基と他のエチレン性二重結合とを有するビニル系化合物(以下、「活性エネルギー線硬化性単量体」と称する)のエチレン性二重結合の付加重合によって形成される構造単位を有することが好ましい。
活性エネルギー線硬化性単量体としては、例えば、下記式(5)で表される化合物が好ましく挙げられる。この式(5)で表される化合物は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記式(5)中、R1、R2、R3、X1及びnのそれぞれについての定義及び説明は上記式(1)及び上記式(2)のものと同様である。また、上記式(5)中、複数存在するR1は互いに同一であっても異なっていてもよいが、当該式(5)で表される化合物の製造の容易さなどから同一であることが好ましい。
活性エネルギー線硬化性単量体としては、上記式(5)で表される化合物以外にも、例えばオキシラン環を有する基及びエチレン性二重結合を有するビニル系化合物、オキセタン環を有する基及びエチレン性二重結合を有するビニル系化合物等であってもよい。活性エネルギー線硬化性単量体は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル系重合体ブロック(A)を形成する全構造単位に対する活性エネルギー線硬化性単量体に由来する構造単位の含有率の下限としては、5モル%が好ましく、10モル%がより好ましく、20モル%がさらに好ましい。一方、上記含有率の上限としては、90モル%が好ましく、70モル%がより好ましいが、(メタ)アクリル系重合体ブロック(A)が有する(メタ)アクリル系単量体に由来する構造単位が活性エネルギー線硬化性単量体から形成される場合、上記含有率の上限は100モル%であってもよい。
(メタ)アクリル系重合体ブロック(A)は、活性エネルギー線硬化性単量体に由来する構造単位以外に、(メタ)アクリル系単量体に由来する構造単位として、モノ(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を有していてもよい。
上記モノ(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸2−(トリメチルシリルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3−(トリメチルシリルオキシ)プロピルなどが挙げられる。これらの中で、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル等の炭素数5以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。また、モノ(メタ)アクリル酸エステルとしては、モノメタクリル酸エステルが好ましい。これらのモノ(メタ)アクリル酸エステルは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル系重合体ブロック(A)を形成する全構造単位に対する上記モノ(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位の含有率の上限としては、95モル%が好ましく、90モル%がより好ましく、80モル%がさらに好ましい。一方、上記含有率の下限としては、0モル%が好ましく、20モル%がより好ましく、30モル%がさらに好ましい。
上記(メタ)アクリル系重合体ブロック(A)は、(メタ)アクリル系単量体に由来する構造単位として、又はそれ以外の構造単位として、上記の活性エネルギー線硬化性単量体及びモノ(メタ)アクリル酸エステル以外の他の単量体に由来する構造単位を有していてもよい。
上記他の単量体としては、例えばα−メトキシアクリル酸メチル、α−エトキシアクリル酸メチル等のα−アルコキシアクリル酸エステル;クロトン酸メチル、クロトン酸エチル等のクロトン酸エステル;3−メトキシアクリル酸エステル等の3−アルコキシアクリル酸エステル;N−イソプロピルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド等のアクリルアミド;N−イソプロピルメタクリルアミド、N−t−ブチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド等のメタクリルアミド;2−フェニルアクリル酸メチル、2−フェニルアクリル酸エチル、2−ブロモアクリル酸n−ブチル、2−ブロモメチルアクリル酸メチル、2−ブロモメチルアクリル酸エチル、メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、メチルイソプロペニルケトン、エチルイソプロペニルケトン等が挙げられる。これらの他の単量体は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル系重合体ブロック(A)を形成する全構造単位に対する上記他の単量体に由来する構造単位の含有率の上限としては、10モル%が好ましく、5モル%がより好ましい。
(メタ)アクリル系重合体ブロック(A)の数平均分子量(Mn)に特に制限はないが、得られる(メタ)アクリル系重合体(X)の取り扱い性、流動性、力学特性等の点から、上記Mnの下限としては、500が好ましく、1,000がより好ましい。一方、上記Mnの上限としては、1,000,000が好ましく、300,000がより好ましい。
((メタ)アクリル系重合体ブロック(B))
(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)は、活性エネルギー線硬化性基を実質的に有さない(メタ)アクリル系重合体ブロックである。ここで、活性エネルギー線硬化性基を実質的に有さない場合の例としては、(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)を形成する全構造単位に対する活性エネルギー線硬化性単量体に由来する構造単位の含有率が、例えば5モル%未満、3モル%未満、1モル%未満、0.5モル%未満、さらには0モル%である場合などが挙げられる。(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)を構成する全構造単位のモル数に対する(メタ)アクリル系単量体に由来する構造単位のモル数の占める割合の下限としては、30モル%が好ましく、50モル%がより好ましく、80モル%がさらに好ましく、95モル%が特に好ましく、上記割合は100モル%であってもよい。
(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)は、(メタ)アクリル系単量体に由来する構造単位として、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を有することができる。このような(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えばモノアクリル酸エステル、モノメタクリル酸エステル等が挙げられる。
上記モノアクリル酸エステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ナフチル、アクリル酸2−(トリメチルシリルオキシ)エチル、アクリル酸3−(トリメチルシリルオキシ)プロピル等が挙げられる。
上記モノメタクリル酸エステルとしては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸トリメトキシシリルプロピル、メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ナフチル、メタクリル酸2−(トリメチルシリルオキシ)エチル、メタクリル酸3−(トリメチルシリルオキシ)プロピル等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、炭素数4以上のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル、炭素数6以上のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルが好ましく、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ドデシルがより好ましい。なお、これらの(メタ)アクリル酸エステルは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)を形成する全構造単位に対する上記(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位の含有率の下限としては、90モル%が好ましく、95モル%がより好ましい。
(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)は、(メタ)アクリル系単量体に由来する構造単位として、又はそれ以外の構造単位として、上記の(メタ)アクリル酸エステル以外の他の単量体に由来する構造単位を有していてもよい。他の単量体としては、α−メトキシアクリル酸メチル、α−エトキシアクリル酸メチル等のα−アルコキシアクリル酸エステル;クロトン酸メチル、クロトン酸エチル等のクロトン酸エステル;3−メトキシアクリル酸エステル等の3−アルコキシアクリル酸エステル;N−イソプロピルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド等のアクリルアミド;N−イソプロピルメタクリルアミド、N−t−ブチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド等のメタクリルアミド;メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、メチルイソプロペニルケトン、エチルイソプロペニルケトンなどが挙げられる。これらの他の単量体は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)を形成する全構造単位に対する上記他の単量体に由来する構造単位の含有率の上限としては、10モル%が好ましく、5モル%がより好ましい。
(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)の数平均分子量(Mn)に特に制限はないが、得られる(メタ)アクリル系重合体(X)の取り扱い性、流動性、力学特性等の点から、上記Mnの下限としては、3,000が好ましく、5,000がより好ましい。一方、上記Mnの上限としては、5,000,000が好ましく、1,000,000がより好ましい。
(メタ)アクリル系重合体(X)は、少なくとも1個の(メタ)アクリル系重合体ブロック(A)と少なくとも1個の(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)が互いに結合したブロック共重合体であることが好ましい。(メタ)アクリル系重合体(X)が(メタ)アクリル系重合体ブロック(A)と(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体である場合、各重合体ブロックの数及び結合順序に特に制限はないが、(メタ)アクリル系重合体(X)の製造容易性の観点から、1個の(メタ)アクリル系重合体ブロック(A)と1個の(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)が結合したジブロック共重合体及び1個の(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)の両端に(メタ)アクリル系重合体ブロック(A)各1個がそれぞれ結合したトリブロック共重合体が好ましい。このように(メタ)アクリル系重合体(X)の両末端のブロックが活性エネルギー線硬化性基を有する(メタ)アクリル系重合体ブロック(A)であることで、この(メタ)アクリル系重合体ブロック(A)同士が当該接着剤の重合硬化時に相互作用し、網目構造を形成するため当該接着剤硬化後の靭性が向上し、その結果接着強度がより向上すると考えられる。さらに、(メタ)アクリル系重合体ブロック(A)の間に(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)が存在することで、得られる接着体の反りがより低減すると考えられる。
(メタ)アクリル系重合体(X)が(メタ)アクリル系重合体ブロック(A)と(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体である場合、(メタ)アクリル系重合体ブロック(A)と(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)との構成割合としては、質量比で5:95以上90:10以下が好ましい。(メタ)アクリル系重合体ブロック(A)と(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)の合計に対する(メタ)アクリル系重合体ブロック(A)の割合が5質量%以上であると、活性エネルギー線による硬化速度及び硬化後の接着強度が良好となる。一方、(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)の割合が10質量%以上であると、当該接着剤の硬化後の粘弾性が良好となる。
(メタ)アクリル系重合体(X)全体の数平均分子量(Mn)に特に制限はないが、(メタ)アクリル系重合体(X)の取り扱い性、流動性、力学特性等の点から、上記Mnの下限としては、4,000が好ましく、5,000がより好ましく、7,000がさらに好ましい。一方、上記Mnの上限としては、7,000,000が好ましく、3,000,000がより好ましく、2,000,000がさらに好ましい。
(メタ)アクリル系重合体(X)全体の分子量分布(Mw/Mn)に特に制限はないが、上記Mw/Mnの上限としては、2.0が好ましく、1.5がより好ましく、1.2がさらに好ましい。このように上記Mw/Mnを上記上限以下とすることにより、当該接着剤の接着強度及び硬化速度をより高めることができる。
当該接着剤(1)における(メタ)アクリル系重合体(X)の含有率の下限としては、1質量%が好ましく、3質量%がより好ましく、5質量%がさらに好ましく、10質量%が特に好ましく、上記含有率は15質量%以上としてもよい。一方、上記含有率の上限としては、90質量%が好ましく、70質量%がより好ましく、50質量%が特に好ましい。上記含有率が上記下限以上であることにより、当該接着剤の接着強度等の機械的特性がより向上し、また反りがより低減された接着体を得ることができる。一方、上記含有率が上記上限以下であることにより、当該接着剤の粘度を適度に維持でき取り扱い性が向上する。
((メタ)アクリル系重合体(X)の製造方法)
(メタ)アクリル系重合体(X)の製造方法に特に制限はなく、例えば上記活性エネルギー線硬化性単量体を必要に応じてその他の(メタ)アクリル系単量体と共に重合することにより得ることができる。上記(メタ)アクリル系重合体(X)が(メタ)アクリル系重合体ブロック(A)と(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体の場合、活性エネルギー線硬化性単量体を含有する単量体であってかつ(メタ)アクリル系単量体を含有する単量体を有機リチウム化合物、第3級有機アルミニウム化合物及びルイス塩基の存在下でアニオン重合する第1重合工程、及び第1重合工程後に活性エネルギー線硬化性単量体を実質的に含有しない単量体であってかつ(メタ)アクリル系単量体を含有する単量体を添加し、アニオン重合する第2重合工程を備える製造方法が好ましい。この製造方法によれば、目的とする(メタ)アクリル系重合体(X)を効率よく製造することができる。なお、この場合、第2重合工程後に活性エネルギー線硬化性単量体を含有する単量体であってかつ(メタ)アクリル系単量体を含有する単量体を添加し、アニオン重合する第3重合工程をさらに備えてもよい。
(第1重合工程)
第1重合工程では、活性エネルギー線硬化性単量体を含有する単量体であってかつ(メタ)アクリル系単量体を含有する単量体を、有機リチウム化合物、第3級有機アルミニウム化合物及びルイス塩基の存在下でアニオン重合する。第1重合工程において使用される単量体は、(メタ)アクリル系単量体として活性エネルギー線硬化性単量体を含有していてもよいし、活性エネルギー線硬化性単量体以外に(メタ)アクリル系単量体を含有していてもよい。第1重合工程において使用される単量体中における活性エネルギー線硬化性単量体の含有率は5モル%以上100モル%以下が好ましい。
第1重合工程において、活性エネルギー線硬化性単量体として上記式(5)で表される化合物を使用する場合、R2及びR3の少なくとも一方、好ましくはR2及びR3の両方が共に炭素数1〜6の炭化水素基であることが好ましい。このように、R2及び/又はR3が炭素数1〜6の炭化水素基であることで、R2及びR3が結合する炭素原子と直接結合している−OCO−CR1=CH2基ではない側のエチレン性二重結合が選択的に重合され、一方、R2及びR3が結合する炭素原子と直接結合している−OCO−CR1=CH2基の重合は抑制され(メタ)アクリル系重合体(X)の側鎖に残留するため好ましい。第1重合工程において用いる活性エネルギー線硬化性単量体は1種のみでもよく、2種以上でもよい。
第1重合工程で用いる単量体は、活性エネルギー線硬化性単量体の他に、(メタ)アクリル系単量体として、モノ(メタ)アクリル酸エステルを含有してもよい。このモノ(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば上記(メタ)アクリル系重合体ブロック(A)において例示したモノ(メタ)アクリル酸エステルと同様のものを用いることができる。モノ(メタ)アクリル酸エステルは1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
第1重合工程で用いる単量体における活性エネルギー線硬化性単量体とモノ(メタ)アクリル酸エステルの合計に対する活性エネルギー線硬化性単量体の割合の上限としては、100モル%が好ましく、80モル%がより好ましく、70モル%がさらに好ましい。一方、上記割合の下限としては、5モル%が好ましく、10モル%がより好ましく、20モル%がさらに好ましい。上記割合を上記範囲内とすることで、第1重合工程におけるアニオン重合の速度、当該接着剤の硬化速度及び硬化後の接着強度がより向上する。
第1重合工程においては、(メタ)アクリル系単量体として、又はそれ以外の単量体として、活性エネルギー線硬化性単量体及びモノ(メタ)アクリル酸エステル以外の他の単量体を重合させてもよい。当該他の単量体としては、例えば上記(メタ)アクリル系重合体ブロック(A)において例示した他の単量体と同様のものを用いることができる。他の単量体は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
第1重合工程において、活性エネルギー線硬化性単量体、モノ(メタ)アクリル酸エステル及び他の単量体の合計に対する他の単量体の使用量の上限としては、10モル%が好ましく、5モル%がより好ましい。上記使用量が上記上限以下であることにより、当該接着剤の硬化速度及び硬化後の接着強度がより向上する。
第1重合工程で用いる単量体(活性エネルギー線硬化性単量体並びに任意成分であるモノ(メタ)アクリル酸エステル及び他の単量体)は、アニオン重合を円滑に進行させる観点から、不活性ガス雰囲気下で予め乾燥処理することが好ましい。この乾燥処理に用いる処理剤としては、例えば水素化カルシウム、モレキュラーシーブス、活性アルミナ等の脱水剤又は乾燥剤が挙げられる。
上記有機リチウム化合物はアニオン重合開始剤として作用する。有機リチウム化合物としては、例えば炭素原子を陰イオン中心とする構造を有する炭素数3〜30の有機リチウム化合物が挙げられる。このような有機リチウム化合物としては、例えばt−ブチルリチウム、2,2−ジメチルプロピルリチウム、1,1−ジフェニルヘキシルリチウム、1,1−ジフェニル−3−メチルペンチルリチウム、エチルα−リチオイソブチレート、ブチルα−リチオイソブチレート、メチルα−リチオイソブチレート、イソプロピルリチウム、sec−ブチルリチウム、1−メチルブチルリチウム、2−エチルプロピルリチウム、1−メチルペンチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、ジフェニルメチルリチウム、α−メチルベンジルリチウム、メチルリチウム、n−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、n−ペンチルリチウム、n−ヘキシルリチウム等が挙げられる。これらの有機リチウム化合物は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
有機リチウム化合物としては、入手容易性およびアニオン重合開始能の観点から、イソプロピルリチウム、sec−ブチルリチウム、1−メチルブチルリチウム、1−メチルペンチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、ジフェニルメチルリチウム、α−メチルベンジルリチウム等の第2級炭素原子を陰イオン中心とする構造を有する炭素数4〜15の有機リチウム化合物が好ましく、sec−ブチルリチウムがより好ましい。
第1重合工程で用いる単量体(活性エネルギー線硬化性単量体並びに任意成分であるモノ(メタ)アクリル酸エステル及び他の単量体)の合計量に対する有機リチウム化合物の使用量としては、0.0001モル倍以上0.3モル倍以下が好ましい。有機リチウム化合物の使用量を上記範囲内とすることで、目的とする(メタ)アクリル系重合体(X)を円滑に製造できる。
上記第3級有機アルミニウム化合物としては、下記式(6)で表される構造を含む化合物が好ましく、下記式(6−1)又は(6−2)で表される化合物がより好ましい。第3級有機アルミニウム化合物としてこれらの化合物を用いることで、重合速度、重合開始効率、重合末端アニオンの安定性などを向上できる。これらの第3級有機アルミニウム化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
上記式(6)中、Arは芳香族環を表す。
上記式(6−1)中、R9は1価の飽和炭化水素基、1価の芳香族炭化水素基、アルコキシ基、アリールオキシ基又はN,N−2置換アミノ基を表し、R10及びR11はそれぞれ独立してアリールオキシ基又は互いに結合してアリーレンジオキシ基を表す。
上記式(6−2)中、R12はアリールオキシ基を表し、R13及びR14はそれぞれ独立して1価の飽和炭化水素基、1価の芳香族炭化水素基、アルコキシ基又はN,N−2置換アミノ基を表す。
R9、R10、R11及びR12で表されるアリールオキシ基としては、例えばフェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、2,4−ジ−t−ブチルフェノキシ基、2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ基、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ基、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノキシ基、2,6−ジフェニルフェノキシ基、1−ナフトキシ基、2−ナフトキシ基、9−フェナントリルオキシ基、1−ピレニルオキシ基、7−メトキシ−2−ナフトキシ基等が挙げられる。
R10及びR11が互いに結合して表されるアリーレンジオキシ基としては、例えば2,2’−ビフェノール、2,2’−メチレンビスフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、(R)−(+)−1,1’−ビ−2−ナフトール、(S)−(−)−1,1’−ビ−2−ナフトール等から2個のフェノール性水酸基中の水素原子を除いた基が挙げられる。
R9、R13及びR14で表わされる1価の飽和炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基などが挙げられる。
R9、R13及びR14で表される1価の芳香族炭化水素基としては、例えばフェニル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基などが挙げられる。
R9、R13及びR14で表されるアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。
R9、R13及びR14で表されるN,N−2置換アミノ基としては、例えばジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基等のジアルキルアミノ基;ビス(トリメチルシリル)アミノ基などが挙げられる。
上記R9〜R14が有する1又は複数の水素原子は置換基により置換されてもよい。このような置換基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基等のアルコキシ基;塩素、臭素等のハロゲン原子などが挙げられる。
上記式(6−1)で表される第3級有機アルミニウム化合物としては、例えばメチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、エチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、エチルビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム、エチル[2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノキシ)]アルミニウム、イソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチル[2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノキシ)]アルミニウム、n−オクチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、n−オクチルビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム、n−オクチル[2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノキシ)]アルミニウム、メトキシビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、メトキシビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム、メトキシ[2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノキシ)]アルミニウム、エトキシビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、エトキシビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム、エトキシ[2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノキシ)]アルミニウム、イソプロポキシビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、イソプロポキシビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム、イソプロポキシ[2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノキシ)]アルミニウム、t−ブトキシビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、t−ブトキシビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム、t−ブトキシ[2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノキシ)]アルミニウム、トリス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、トリス(2,6−ジフェニルフェノキシ)アルミニウム等が挙げられる。
上記式(6−1)で表される第3級有機アルミニウム化合物としては、これらの中で、重合開始効率、重合末端アニオンの安定性、入手および取り扱いの容易さ等の観点から、イソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム、又はイソブチル[2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノキシ)]アルミニウムが好ましい。
上記式(6−2)で表される第3級有機アルミニウム化合物としては、例えばジエチル(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、ジエチル(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム、ジイソブチル(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、ジイソブチル(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム、ジn−オクチル(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、ジn−オクチル(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム等が挙げられる。
第3級有機アルミニウム化合物の使用量は、溶媒の種類、その他種々の重合条件等に応じて適宜好適な量を選択できるが、重合速度の観点から、有機リチウム化合物1モルに対する使用量の上限としては、10モルが好ましく、5モルがより好ましく、4モルがさらに好ましい。一方、有機リチウム化合物1モルに対する使用量の下限としては、1モルが好ましく、1.1モルがより好ましく、1.2モルがさらに好ましい。上記使用量が上記上限以下であると経済的に有利である。一方、上記使用量が上記下限以上であると、アニオン重合の開始効率が向上する。
上記ルイス塩基としては、例えばエーテル及び第3級ポリアミンからなる群から選択されるものが挙げられる。このエーテルとは、分子内にエーテル結合を有する化合物を意味する。第3級ポリアミンとは、第3級アミン構造を分子内に2個以上有する化合物を意味する。このルイス塩基は、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
上記エーテルとしては、重合開始効率、重合末端アニオンの安定性の観点から、2個以上のエーテル結合を分子内に有する環状エーテル又は1個以上のエーテル結合を分子内に有する非環状エーテルが好ましい。
上記2個以上のエーテル結合を分子内に有する環状エーテルとしては、例えば12−クラウン−4、15−クラウン−5、18−クラウン−6等のクラウンエーテルなどが挙げられる。
上記1個以上のエーテル結合を分子内に有する非環状エーテルとしては、例えば非環状モノエーテル、非環状ジエーテル、非環状ポリエーテル等が挙げられる。
上記非環状モノエーテルとしては、例えばジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール等が挙げられる。
上記非環状ジエーテルとしては、例えば1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジイソプロポキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、1,2−ジフェノキシエタン、1,2−ジメトキシプロパン、1,2−ジエトキシプロパン、1,2−ジイソプロポキシプロパン、1,2−ジブトキシプロパン、1,2−ジフェノキシプロパン、1,3−ジメトキシプロパン、1,3−ジエトキシプロパン、1,3−ジイソプロポキシプロパン、1,3−ジブトキシプロパン、1,3−ジフェノキシプロパン、1,4−ジメトキシブタン、1,4−ジエトキシブタン、1,4−ジイソプロポキシブタン、1,4−ジブトキシブタン、1,4−ジフェノキシブタン等が挙げられる。
上記非環状ポリエーテルとしては、例えばジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジブチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジブチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリブチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリブチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラブチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラブチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。
エーテルとしては、これらの中で、副反応の抑制、入手容易性等の観点から、1個又は2個のエーテル結合を分子内に有する非環状エーテルが好ましく、ジエチルエーテル又は1,2−ジメトキシエタンがより好ましい。
上記第3級ポリアミンとしては、例えばN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、トリス[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミン等の鎖状ポリアミン;1,3,5−トリメチルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン、1,4,7−トリメチル−1,4,7−トリアザシクロノナン、1,4,7,10,13,16−ヘキサメチル−1,4,7,10,13,16−ヘキサアザシクロオクタデカン等の非芳香族性複素環式化合物;2,2’−ビピリジル、2,2’:6’,2”−ターピリジン等の芳香族性複素環式化合物などが挙げられる。
また、ルイス塩基は分子内に1個以上のエーテル結合と1個以上の第3級アミン構造とを有する化合物であってもよい。このような化合物としては、例えばトリス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]アミン等が挙げられる。
上記有機リチウム化合物1モルに対するルイス塩基の使用量の上限としては、5モルが好ましく、3モルがより好ましく、2モルがさらに好ましい。一方、上記使用量の下限としては、0.3モルが好ましく、0.5モルがより好ましく、1モルがさらに好ましい。上記使用量が上記上限以下であると経済的に有利である。一方、上記使用量が上記下限以上であると、アニオン重合の開始効率が向上する。
また、上記第3級有機アルミニウム化合物1モルに対するルイス塩基の使用量の上限としては、1.2モルが好ましく、1モルがより好ましい。一方、上記使用量の下限としては、0.2モルが好ましく、0.3モルがより好ましい。
第1重合工程において、必要に応じ他の添加剤を重合反応系に添加してもよい。このような他の添加剤としては、例えば塩化リチウム等の無機塩類;リチウムメトキシエトキシエトキシド、カリウムt−ブトキシド等の金属アルコキシド;テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラエチルホスホニウムブロミド等が挙げられる。
第1重合工程におけるアニオン重合は、温度制御が容易である観点及び系内を均一化してアニオン重合を円滑に進行させる観点から、有機溶媒の存在下に行うことが好ましい。有機溶媒としては、安全性、アニオン重合後の反応混合液の水洗における水との分離性、回収・再使用の容易性等の観点から、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素;クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素等が好ましい。これらの有機溶媒は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、有機溶媒は、アニオン重合を円滑に進行させる観点から、乾燥処理を施すとともに、不活性ガス存在下であらかじめ脱気しておくことが好ましい。
第1重合工程において、用いる単量体(活性エネルギー線硬化性単量体並びに任意成分としてのモノ(メタ)アクリル系エステル及び他の単量体)100質量部に対する上記有機溶媒の使用量は、当該単量体、有機リチウム化合物、第3級有機アルミニウム化合物、ルイス塩基、他の添加剤、有機溶媒等の種類等に応じて適宜調整できるが、アニオン重合の円滑な進行、生成する(メタ)アクリル系重合体(X)の分離取得、廃液処理等の観点から、当該使用量の上限としては、10,000質量部が好ましく、3,000質量部がより好ましい。一方、上記使用量の下限としては、150質量部が好ましく、200質量部がより好ましい。
第1重合工程におけるアニオン重合の反応温度の下限としては、−100℃が好ましく、−30℃がより好ましい。一方、上記アニオン重合の反応温度の上限としては、50℃が好ましく、25℃がより好ましい。上記アニオン重合の反応温度が上記下限以上であると重合速度の低下が抑えられて生産性が向上する。一方、上記アニオン重合の反応温度が上記上限以下であると、活性エネルギー線硬化性単量体における活性エネルギー線硬化性基での重合をより効果的に抑制することができて、得られる(メタ)アクリル系重合体(X)の活性エネルギー線硬化性が向上する。
第1重合工程におけるアニオン重合は、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。さらに、アニオン重合の反応系が均一になるように十分な撹拌条件下にて行うことが好ましい。
第1重合工程において、単量体(活性エネルギー線硬化性単量体並びに任意成分であるモノ(メタ)アクリル系エステル及び他の単量体)、有機リチウム化合物、第3級有機アルミニウム化合物及びルイス塩基を重合反応系に添加する方法は特に制限されない。例えば、第3級有機アルミニウム化合物は、用いる単量体より先に重合反応系に添加してもよく、同時に添加してもよい。第3級有機アルミニウム化合物を用いる単量体と同時に重合反応系に添加する場合は、第3級有機アルミニウム化合物と当該単量体とを重合反応系に添加する前に別途混合した後に添加してもよい。またルイス塩基は、有機リチウム化合物との接触前に第3級有機アルミニウム化合物と接触するように添加することが好ましい。
(第2重合工程)
第2重合工程では、第1重合工程後に活性エネルギー線硬化性単量体を実質的に含有しない単量体であってかつ(メタ)アクリル系単量体を含有する単量体を添加し、アニオン重合する。これにより、第1重合工程で生成した(メタ)アクリル系重合体ブロック(A)となる重合体に(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)を形成する単量体がさらに重合することができる。ここで、活性エネルギー線硬化性単量体を実質的に含有しない場合の例としては、第2重合工程において使用される単量体中における活性エネルギー線硬化性単量体の含有率が、例えば5モル%未満、3モル%未満、1モル%未満、0.5モル%未満、さらには0モル%である場合などが挙げられる。
第2重合工程で用いる単量体が含有する上記(メタ)アクリル系単量体としては、例えば上記(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)において例示した(メタ)アクリル酸エステルと同様のものが挙げられる。この(メタ)アクリル酸エステルは、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
また、第2重合工程においては、(メタ)アクリル系単量体として、又はそれ以外の単量体として、上記(メタ)アクリル酸エステル以外の他の単量体をさらに添加してもよい。この他の単量体としては、例えば上記(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)において例示した他の単量体と同様のものが挙げられる。この他の単量体は、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
上記(メタ)アクリル酸エステル及び他の単量体の合計に対する他の単量体の使用量の上限としては、10モル%が好ましく、5モル%がより好ましい。上記使用量が上記上限以下であると、当該接着剤の硬化速度及び硬化後の接着強度が向上する。
第2重合工程で用いる単量体は、上記第1重合工程で用いる単量体と同様に、予め乾燥処理することが好ましい。
第2重合工程において、第1重合工程と同様に第3級有機アルミニウム化合物、ルイス塩基、他の添加剤及び有機溶媒のうちの1種または2種以上を重合反応系に添加してもよい。これらの成分の種類としては第1重合工程と同様のものとすることができる。なおこれらの成分の使用量は、有機溶媒の種類、その他種々の重合条件等に応じて適宜好適な量とすることができ、これらの成分を重合反応系に添加する方法は特に制限されない。
第2重合工程におけるアニオン重合の反応温度等の各種条件は、第1重合工程と同様のものとすることができる。
また、第2重合工程は、重合末端アニオンの安定性向上の観点から、第1重合工程の後に、モノメタクリル酸エステルを添加しアニオン重合する工程と、その後モノアクリル酸エステルを添加しアニオン重合する工程とを備えることが好ましい。
上記モノメタクリル酸エステルとしては、上記(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)において例示したモノメタクリル酸エステルと同様のものを用いることができる。上記モノアクリル酸エステルとしては、上記(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)において例示したモノアクリル酸エステルと同様のものを用いることができる。これらのモノメタクリル酸エステル及びモノアクリル酸エステルはそれぞれ1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
(第3重合工程)
第3重合工程では、第2重合工程後に活性エネルギー線硬化性単量体を含有する単量体であってかつ(メタ)アクリル系単量体を含有する単量体を添加し、アニオン重合する。これにより第2重合工程で生成した重合体に新たな(メタ)アクリル系重合体ブロック(A)が形成され、1個の(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)の両端に(メタ)アクリル系重合体ブロック(A)各1個がそれぞれ結合したトリブロック共重合体を容易かつ確実に得ることができる。
第3重合工程において用いる単量体としては、第1重合工程において用いる単量体と同様のものが挙げられ、ここでは重複する説明を省略する。なお、第3重合工程において用いる単量体は、第1重合工程において用いる単量体と同じであってもよく、異なっていてもよい。
第3重合工程において、第3級有機アルミニウム化合物、ルイス塩基、他の添加剤及び有機溶媒のうちの1種又は2種以上を重合反応系に添加してもよい。これらの成分の種類としては、上記第1重合工程と同様のものとすることができる。なおこれらの成分の使用量は、有機溶媒の種類、その他種々の重合条件等に応じて適宜好適な量とすることができ、これらの成分を重合反応系に添加する方法は特に制限されない。
第3重合工程におけるアニオン重合の反応温度等の各種条件は、第1重合工程と同様のものとすることができる。
第2重合工程、場合によってはさらに第3重合工程を経た後、プロトン性化合物等の重合停止剤を反応混合物に添加することでアニオン重合を停止できる。プロトン性化合物としては、例えばメタノール、酢酸のメタノール溶液、塩化水素のメタノール溶液、酢酸の水溶液、塩化水素の水溶液等が挙げられる。重合停止剤の使用量としては、有機リチウム化合物1モルに対して1モル以上100モル以下の範囲が好ましい。
上記アニオン重合停止後の反応混合液から(メタ)アクリル系重合体(X)を分離取得する方法としては、公知の方法を採用できる。この(メタ)アクリル系重合体(X)を分離取得する方法としては、例えば反応混合液を(メタ)アクリル系重合体(X)の貧溶媒に注いで(メタ)アクリル系重合体(X)を沈殿させる方法、反応混合液から有機溶媒を留去して(メタ)アクリル系重合体(X)を取得する方法等が挙げられる。
得られた(メタ)アクリル系重合体(X)中に有機リチウム化合物及び第3級有機アルミニウム化合物に由来する金属成分が残存していると、当該接着剤の硬化後における強度等の物性の低下、透明性不良等を生じる場合がある。このため、有機リチウム化合物及び第3級有機アルミニウム化合物に由来する金属成分をアニオン重合停止後に除去することが好ましい。上記金属成分の除去方法としては、酸性水溶液を用いた洗浄処理、イオン交換樹脂、セライト、活性炭等の吸着剤を用いた吸着処理などが挙げられる。上記酸性水溶液としては、例えば塩酸、硫酸水溶液、硝酸水溶液、酢酸水溶液、プロピオン酸水溶液、クエン酸水溶液等が挙げられる。
上述の(メタ)アクリル系重合体(X)の製造方法によれば、通常、分子量分布の狭い(メタ)アクリル系重合体(X)が得られ、分子量分布(Mw/Mn)が1.5以下の(メタ)アクリル系重合体(X)を製造することができる。
[化合物(Y)]
化合物(Y)は、活性エネルギー線硬化性基を有する化合物であって、上記(メタ)アクリル系重合体(X)以外の化合物である。この化合物(Y)が有する活性エネルギー線硬化性基が(メタ)アクリル系重合体(X)と結合して硬化したり、化合物(Y)が単独で硬化し(メタ)アクリル系重合体(X)と互いに絡み合った網目構造(相互侵入網目;Inter Penetrating Polymer Network(IPN))を形成したりする等して、ポリビニルアルコールを含むフィルムと基材との接着強度及び硬化速度に優れ、反りが低減された接着体を得ることができる接着剤となると考えられる。
化合物(Y)としては、例えばスチレン系化合物、脂肪酸ビニル、下記式(3)で表される基を有する化合物、オキシラン環を有する化合物、オキセタン環を有する化合物、ビニルエーテル、N−ビニル化合物等が挙げられる。化合物(Y)は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、化合物(Y)の少なくとも一部として多官能性の化合物(Y)を用いると架橋剤として作用することができ好ましい。
上記式(3)中、R5は水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、X2は酸素原子、硫黄原子又は−NR6−表し、ここでR6は水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を表す。
R5としては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2−エチルブチル基、3−エチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−ヘキサデシル基、n−エイコシル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基等が挙げられる。R5が炭化水素基である場合、炭素数の上限としては10が好ましく、4がより好ましい。
また、R5で表される炭素数1〜20の炭化水素基は置換基を有していてもよい。この置換基としては、活性エネルギー線硬化性基の活性エネルギー線硬化性を阻害しないものであればよく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基等のアルコキシ基;塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
R5は、化合物(Y)の入手性や硬化速度に優れる観点などから、水素原子又はメチル基が特に好ましい。
R6で表される炭素数1〜6の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2−エチルブチル基、3−エチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基等のアリール基等が挙げられる。
また、R6で表される炭素数1〜6の炭化水素基は置換基を有していてもよい。この置換基としては、活性エネルギー線硬化性基の活性エネルギー線硬化性を阻害しないものであればよく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基等のアルコキシ基;塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
R6は、化合物(Y)の入手性や硬化速度に優れる観点などから、メチル基又はエチル基が好ましい。
X2は、化合物(Y)の入手性や硬化速度に優れる観点等から、酸素原子又は−NR6−が好ましく、酸素原子がより好ましい。
上記スチレン系化合物としては、例えばスチレン、インデン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、p−クロロメチルスチレン、p−アセトキシスチレン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
上記脂肪酸ビニルとしては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等が挙げられる。
上記式(3)で表される基を有する化合物としては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ボルニル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノエステル、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールモノエステル、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル、4−アクリロイルモルホリン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの両末端(メタ)アクリル酸付加体、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)エチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの付加体であるジオールのジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの付加体であるジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルに(メタ)アクリレートを付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、(3−エチルオキセタン−3−イル)(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また上記式(3)で表される基を有する化合物の別の例としては、例えばビスフェノールA型エポキシアクリレート樹脂、フェノールノボラック型エポキシアクリレート樹脂、クレゾールノボラック型エポキシアクリレート樹脂等のエポキシ(メタ)アクリレート系樹脂;カルボキシル基変性エポキシ(メタ)アクリレート系樹脂;ポリオールと有機イソシアネートから得られるウレタン樹脂を水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルと反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート系樹脂;ポリオールにエステル結合を介して(メタ)アクリロイル基を導入した樹脂;ポリエステル(メタ)アクリレート系樹脂;N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系化合物等が挙げられる。
上記ポリオールとしては、例えばポリテトラメチレングリコール、エチレングリコールとアジピン酸のポリエステルジオール、ε−カプロラクトン変性ポリエステルジオール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリカーボネートジオール、水酸基末端水添ポリイソプレン、水酸基末端ポリブタジエン、水酸基末端ポリイソブチレン等が挙げられる。
上記有機イソシアネートとしては、例えばトリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
上記水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等が挙げられる。
上記オキシラン環を有する化合物としては、例えばジシクロペンタジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、4−ビニルシクロヘキセンジオキサイド、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、エポキシ化植物油、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、両末端水酸基のポリブタジエンジグリシジルエーテル、ポリブタジエンの内部エポキシ化物、スチレン−ブタジエン共重合体の二重結合が一部エポキシ化された化合物(ダイセル化学工業株式会社の「エポフレンド」等)、エチレン−ブチレン共重合体とポリイソプレンのブロックコポリマーのイソプレン単位が一部エポキシ化された化合物(KRATON社の「L−207」等)、ポリアミドアミンエピクロルヒドリン等が挙げられる。
上記オキセタン環を有する化合物としては、例えば3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン等のアルコキシアルキル基含有単官能オキセタン、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン等の芳香族基含有単官能オキセタン、キシリレンビスオキセタン、1,4−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル〕ベンゼン、1,4−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ベンゼン、1,3−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ベンゼン、1,2−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ベンゼン、4,4’−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ビフェニル、2,2’−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ビフェニル、2,7−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ナフタレン、ビス〔4−{(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ}フェニル〕メタン、ビス〔2−{(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ}フェニル〕メタン、2,2−ビス〔4−{(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ}フェニル〕プロパン、ノボラック型フェノール−ホルムアルデヒド樹脂の3−クロロメチル−3−エチルオキセタンによるエーテル化変性物、3(4),8(9)−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル〕−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2,3−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル〕ノルボルナン、1,1,1−トリス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル〕プロパン、1−ブトキシ−2,2−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル〕ブタン、1,2−ビス〔{2−(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ}エチルチオ〕エタン、ビス〔{4−(3−エチルオキセタン−3−イル)メチルチオ}フェニル〕スルフィド、1,6−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕−2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロヘキサン、3−〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕プロピルトリメトキシシラン、3−〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕プロピルトリエトキシシラン、3−〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕プロピルトリアルコキシシランの加水分解縮合物、テトラキス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル〕シリケートの縮合物などが挙げられる。
上記ビニルエーテルとしては、例えばシクロヘキシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル等が挙げられる。
上記N−ビニル化合物としては、例えばN−ビニルピロリドン、N−ビニルモルホリン等が挙げられる。
化合物(Y)としては、これらの中で、取り扱い性、反応性及び接着性などの観点から、上記式(3)で表される基を有する化合物、オキシラン環を有する化合物、及びオキセタン環を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つが好ましく、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリス(2−ヒドキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレートがさらに好ましい。化合物(Y)として上記式(3)で表される基を有する化合物等のラジカル反応性の化合物を用いると得られる接着剤やこれを硬化した後の硬化物の基材との密着性が向上する傾向がある。また、化合物(Y)としてオキシラン環を有する化合物、オキセタン環を有する化合物等のカチオン反応性の化合物を用いると得られる接着剤やこれを硬化した後の硬化物のポリビニルアルコールを含むフィルムとの密着性が向上する傾向がある。基材及びポリビニルアルコールを含むフィルムの双方への密着性を向上させる観点からは化合物(Y)としてラジカル反応性の化合物とカチオン反応性の化合物の両方を用いることが好ましく、特に上記式(3)で表される基を有する化合物とオキシラン環を有する化合物及び/又はオキセタン環を有する化合物とを併用することがより好ましい。
また、(メタ)アクリル系重合体(X)が有する活性エネルギー線硬化性基と化合物(Y)とを結合させる観点からは、(メタ)アクリル系重合体(X)が有する活性エネルギー線硬化性基がラジカル反応性の基である場合、化合物(Y)の少なくとも一部はラジカル反応性の化合物であることが好ましく、(メタ)アクリル系重合体(X)が有する活性エネルギー線硬化性基がカチオン反応性の基である場合、化合物(Y)の少なくとも一部はカチオン反応性の化合物であることが好ましい。具体的には(メタ)アクリル系重合体(X)が有する活性エネルギー線硬化性基が上記式(1)で表される基を有する基である場合、化合物(Y)の少なくとも一部は上記式(3)で表される基を有する化合物であることが好ましく、(メタ)アクリル系重合体(X)が有する活性エネルギー線硬化性基がオキシラン環を有する基及び/又はオキセタン環を有する基である場合、化合物(Y)の少なくとも一部はオキシラン環を有する化合物及び/又はオキセタン環を有する化合物であることが好ましい。
当該接着剤(1)における化合物(Y)の含有率の下限としては、10質量%が好ましく、30質量%がより好ましく、50質量%がさらに好ましい。一方、上記含有率の上限としては、99質量%が好ましく、95質量%がより好ましく、90質量%がさらに好ましく、上記含有率は、85質量%以下、80質量%以下、さらには75質量%以下としてもよい。上記含有率が上記下限以上であることにより、当該接着剤の粘度を適度に維持でき取り扱い性が向上する。一方、上記含有率が上記上限以下であることにより、当該接着剤の接着強度等の機械的特性がより向上する。
[活性エネルギー線重合開始剤(P)]
当該接着剤(1)は、(メタ)アクリル系重合体(X)及び化合物(Y)の他に活性エネルギー線重合開始剤(P)をさらに含有することが好ましい。活性エネルギー線重合開始剤(P)は、活性エネルギー線を照射することにより当該接着剤が含有する(メタ)アクリル系重合体(X)及び化合物(Y)の反応を促進することができる。このような活性エネルギー線重合開始剤(P)としては、例えば活性エネルギー線を照射することによりラジカルを発生する化合物(ラジカル重合開始剤(R))、カチオンを発生する化合物(カチオン重合開始剤(C))、塩基を発生する化合物が挙げられ、使用される(メタ)アクリル系重合体(X)や化合物(Y)の種類に応じて適宜選択すればよい。
上記ラジカル重合開始剤(R)としては、例えばアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーケトン類、ベンゾイン類等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、チオキサントン等の硫黄化合物等が挙げられる。これらのラジカル重合開始剤(R)は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記アセトフェノン類としては、例えば1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。
上記ベンゾフェノン類としては、例えばベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ヒドロキシベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン等が挙げられる。
上記ベンゾイン類としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等が挙げられる。
ラジカル重合開始剤(R)としては、これらの中で、アセトフェノン類又はベンゾフェノン類が反応性、透明性等の点で好ましく、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンがより好ましい。
上記ラジカル重合開始剤(R)の市販品としては、例えば「IRGACURE 184」(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;BASF製)、「ソルバスロンBIPE」(黒金化成製)、「ソルバスロンBIBE」(黒金化成製)、「IRGACURE 651」(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン;BASF製)、「DAROCUR 1173」(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン;BASF製)、「IRGACURE 2959」(BASF製)、「IRGACURE 127」(BASF製)、「IRGACURE 907」(BASF製)、「IRGACURE 369」(BASF製)、「KAYACURE BP」(日本化薬製)、「IRGACURE 379」(BASF製)、「DAROCUR TPO」(BASF製)、「IRGACURE 819」(BASF製)、「IRGACURE 819DW」(BASF製)、「IRGACURE 784」(BASF製)、「IRGACURE OXE 01」(BASF製)、「IRGACURE OXE 02」(BASF製)、「IRGACURE 754」(BASF製)、「IRGACURE 500」(BASF製)、「IRGACURE 1800」(BASF製)、「IRGACURE 1870」(BASF製)、「DAROCUR 4265」(BASF製)、「KAYACURE DETX−S」(日本化薬製)、「ESACURE KIP 150」(Lamberti製)、「S−121」(シンコー技研製)、「セイクオールBEE」(精工化学製)等が挙げられる。
上記カチオン重合開始剤(C)としては、例えばスルホニウム塩系開始剤、ヨードニウム塩系開始剤等のオニウム塩系開始剤、スルホン酸誘導体、カルボン酸エステル類、アリールジアゾニウム塩、鉄アレーン錯体、ピリジニウム塩、キノリニウム塩、O−ニトロベンジル基含有化合物などが挙げられる。これらのカチオン重合開始剤(C)は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記スルホニウム塩系開始剤としては、例えばp−フェニルベンジルメチルスルホニウム塩、p−フェニルジメチルスルホニウム塩、ベンジルメチルp−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等のp−ヒドロキシフェニルベンジルメチルスルホニウム塩、トリフェニルスルホニウム塩、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウム塩、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウム塩等のトリアリールスルホニウム塩、4,4−ビス[ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ]フェニスルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート等のビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド骨格を持つジスルホニウム塩などが挙げられる。
これらのスルホニウム塩のカウンターアニオンとしては、SbF6 −、AsF6 −、PF6 −、BF4 −等が挙げられ、これらの中で反応性や安定性の点からPF6 −、SbF6 −が好ましい。
上記ヨードニウム塩系開始剤としては、例えばジフェニルヨードニウム、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、(4−tert−ブトキシフェニル)フェニルヨードニウム、(4−メトキシフェニル)フェニルヨードニウム等のヨードニウム塩等が挙げられる。
上記カチオン重合開始剤(C)としては、これらの中で、熱安定性の点からジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウム塩、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウム塩等のトリアリールスルホニウム塩が好ましい。
上記カチオン重合開始剤(C)の市販品としては、例えば「CPI−100P」(サンアプロ製)、「CPI−101A」(サンアプロ製)、「IRGACURE 250」(BASF製)、「アデカオプトマーSP−172」(ADEKA製)、「アデカオプトマーSP−170」(ADEKA製)、「アデカオプトマーSP−152」(ADEKA製)、「アデカオプトマーSP−150」(ADEKA製)、「サンエイド SI−60L」(三新化学工業製)、「サンエイド SI−80L」(三新化学工業製)、「サンエイド SI−100L」(三新化学工業製)、「サンエイド SI−150L」(三新化学工業製)等が挙げられる。
当該接着剤(1)における(メタ)アクリル系重合体(X)100質量部に対する活性エネルギー線重合開始剤(P)の量の下限としては、0.01質量部が好ましく、0.05質量部がより好ましく、0.1質量部がさらに好ましく、1質量部、3質量部、さらには5質量部であってもよい。一方、上記量の上限としては、50質量部が好ましく、40質量部がより好ましく、20質量部、10質量部、さらには8質量部であってもよい。上記量が上記下限以上であることにより、接着剤の硬化速度及び硬化後の接着強度が向上する。一方、上記量が上記上限以下であることにより、硬化速度が過度に速くなることによる硬化物の低分子量化が抑制され、耐熱性が向上する。
[その他の任意成分]
当該接着剤(1)は、(メタ)アクリル系重合体(X)、化合物(Y)及び活性エネルギー線重合開始剤(P)以外のその他の成分をさらに含有していてもよい。当該その他の成分としては、例えば架橋剤、増感剤、希釈剤、粘着付与剤、軟化剤、充填剤、安定剤、顔料、染料等が挙げられる。当該その他の成分は有機化合物であっても無機化合物であってもよい。
(架橋剤)
上記架橋剤は、(メタ)アクリル系重合体(X)、化合物(Y)等を架橋するものであり、これにより接着剤の硬化後強度及びポリビニルアルコールを含むフィルム並びに基材との接着強度を向上できる。また、上記架橋剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記架橋剤としては、例えばポリオキサゾリン等の窒素化合物、ジフェニルメタンジイソシアネート等のイソシアネート化合物、グルタルアルデヒド等のアルデヒド化合物、炭酸ジルコニウムアンモニウム等のジルコニウム化合物、乳酸チタン等のチタン系化合物などが挙げられる。
当該接着剤における架橋剤の含有率の上限としては、20質量%が好ましく、15質量%がより好ましい。一方、上記含有率の下限としては、1質量%が好ましく、3質量%がより好ましい。上記含有量が上記上限以下であることにより、当該接着剤の粘度を適度に維持でき取り扱い性が向上する。
(増感剤)
上記増感剤は、活性エネルギー線の感受性を移動又は広げることで当該接着剤の硬化を促進するものである。このような増感剤としては、例えばn−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、アリルチオ尿酸、トリエチルアミン等が挙げられ、トリエチルアミンが好ましい。
上記増感剤は活性エネルギー線重合開始剤(P)と併用することが好ましい。増感剤と活性エネルギー線重合開始剤(P)を併用する場合において、活性エネルギー線重合開始剤(P)と増感剤の合計に対する増感剤の質量比率の下限としては10%が好ましく、20%がより好ましい。一方、上記質量比率の上限としては、90%が好ましく、80%がより好ましい。
(希釈剤)
上記希釈剤は、当該接着剤に添加することで当該接着剤の粘度及び当該接着剤を硬化した後の機械的強度を調整するものである。この希釈剤としては活性エネルギー線硬化性基を有さない化合物が挙げられ、具体的には、例えばフタル酸エステル類、非芳香族二塩基酸エステル、脂肪族エステル、ポリアルキレングリコールのエステル、リン酸エステル類、トリメリット酸エステル類、塩素化パラフィン、炭化水素系油、プロセスオイル、ポリエーテル類、2塩基酸及び2価アルコールから得られるポリエステル系可塑剤、ビニル系モノマーを重合して得られるビニル系重合体等が挙げられる。これらの不活性化合物は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、希釈剤は活性エネルギー線硬化性基以外の官能基(水酸基、カルボキシル基、ハロゲン基など)を有してもよい。
上記フタル酸エステル類としては、例えばジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、ブチルベンジルフタレート等が挙げられる。
上記非芳香族二塩基酸エステルとしては、例えばジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート、ジブチルセバケート、コハク酸イソデシル等が挙げられる。
上記脂肪族エステルとしては、例えばオレイン酸ブチル、アセチルリシリノール酸メチル等が挙げられる。
上記ポリアルキレングリコールのエステルとしては、例えばジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル等が挙げられる。
上記リン酸エステル類としては、例えばトリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。
上記炭化水素系油としては、例えばアルキルジフェニル、部分水添ターフェニル等が挙げられる。
上記ポリエーテル類としては、例えばポリエーテルポリオール;ポリエーテルポリオールの水酸基をエステル基、エーテル基等に変換した誘導体等が挙げられる。ここで、ポリエーテルポリオールとしては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
上記2塩基酸としては、例えばセバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、フタル酸等が挙げられる。上記2価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等が挙げられる。
上記ビニル系重合体としては、例えば(メタ)アクリル系重合体、ポリブテン、ポリイソブチレン、スチレン系重合体(ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン等)、ジエン系重合体(ポリブタジエン、ポリクロロプレン等)、ビニルエーテル系重合体、これらの共重合体(ブタジエン−アクリロニトリル共重合体等)等が挙げられる。
希釈剤としては、数平均分子量(Mn)が400以上15,000以下の重合体が好ましい。上記重合体のMnの下限としては、800がより好ましく、1,000がさらに好ましい。一方、上記重合体のMnの上限としては、10,000がより好ましく、8,000がさらに好ましい。上記Mnが上記下限以上であることにより、当該接着剤を硬化した後の硬化物からの希釈剤の経時的な流出を抑制でき、初期物性を長期間維持することができる。また、上記Mnが上記上限以下であることにより、当該接着剤の取り扱い性が向上する。
希釈剤が重合体である場合におけるその分子量分布(Mw/Mn)は特に限定されないが、通常1.8未満であり、1.7以下が好ましく、1.6以下がより好ましく、1.5以下がさらに好ましく、1.4以下が特に好ましく、1.3以下が最も好ましい。
希釈剤は(メタ)アクリル系重合体(X)と相溶するものが好ましく、希釈剤が重合体である場合において相溶性、耐候性及び耐熱性の点からビニル系重合体がより好ましく、(メタ)アクリル系重合体がさらに好ましく、アクリル系重合体が特に好ましい。
上記アクリル系重合体としては、例えばポリアクリル酸n−ブチル、ポリアクリル酸2−エチルヘキシルなどが挙げられる。このアクリル系重合体の合成方法としては、例えば溶液重合法、高温連続重合法、リビングラジカル重合法等が挙げられる。
上記アクリル系重合体の合成方法としては、溶剤や連鎖移動剤を使用せずにアクリル系重合体を合成できる観点から、高温連続重合法が好ましい。この高温連続重合法としては、例えばUSP4414370、特開昭59−6207号公報、特公平5−58005号公報、特開平1−313522号公報、USP5010166等に記載の方法などが挙げられる。このような高温連続重合法により合成されるアクリル系重合体としては、東亞合成品UPシリーズ(工業材料1999年10月号参照)等が挙げられる。
また、上記アクリル系重合体の合成方法としては、分子量分布が狭い重合体が得られ、接着剤の粘度を低減することができることから、リビングラジカル重合法が好ましく、原子移動ラジカル重合法がより好ましい。
(メタ)アクリル系重合体(X)100質量部に対する希釈剤の使用量の下限としては、5質量部が好ましく、10質量部がより好ましく、20質量部がさらに好ましい。一方上記使用量の上限としては、150質量部が好ましく、120質量部がより好ましく、100質量部がさらに好ましい。上記使用量が上記下限以上であることにより、当該接着剤の粘度及び当該接着剤を硬化した後の機械的強度をより効果的に調整することができる。一方、上記使用量が上記上限以下であることにより、硬化物の機械的強度が向上する。
(粘着付与剤)
上記粘着付与剤は、当該接着剤を硬化した後の硬化物に粘着性を付与するものである。粘着付与剤としては、例えばクロマン・インデン樹脂、フェノール樹脂、p−t−ブチルフェノール・アセチレン樹脂、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、テルペン樹脂、合成テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂、芳香族炭化水素樹脂、脂肪族環状炭化水素樹脂、モノオレフィンやジオレフィンのオリゴマー、炭化水素樹脂、水素添加炭化水素樹脂、ポリブテン、ロジンの多価アルコールエステル、水素添加ロジン、水素添加ウッドロジン、水素添加ロジンとモノアルコール或いは多価アルコールとのエステル、テレピン樹脂等が挙げられる。これらの中で、テルペン樹脂、合成テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、脂肪族系飽和石油樹脂、ロジンエステル、不均化ロジンエステル、水素添加ロジンエステル、脂肪族系石油樹脂(C5系脂肪族系石油樹脂、C5・C9系脂肪族系石油樹脂等)、又は変性脂肪族系石油樹脂が好ましい。
[接着剤(1)の製造方法]
当該接着剤(1)は、(メタ)アクリル系重合体(X)、化合物(Y)及び他の任意成分(活性エネルギー線重合開始剤(P)やその他の任意成分)を混合、撹拌することにより簡便に製造できる。
<接着剤(2)>
当該接着剤(2)は、ポリビニルアルコールを含むフィルムと基材とを接着するための接着剤であって、活性エネルギー線硬化性基を有する重合体(X’)と、重合体(X’)以外の活性エネルギー線硬化性基を有する化合物(Y’)とを含有し、硬化後に動的粘弾性測定して得られるゴム状平坦領域の貯蔵弾性率から求めた架橋密度が0.4mol/L以上2mol/L以下である。
当該接着剤(2)は、硬化後における架橋密度が特定範囲にあることにより、ポリビニルアルコールを含むフィルム及び基材への密着性と当該接着剤の硬化物自体の強度とのバランスに優れるため、接着強度が向上し、しかも反りが低減された接着体を得ることができ、硬化速度にも優れると考えられる。
上記架橋密度の下限としては、0.5mol/Lが好ましく、1mol/Lがより好ましく、1.3mol/Lがさらに好ましく、1.4mol/Lが特に好ましく、1.5mol/Lが最も好ましい。また、上記架橋密度の上限としては、1.9mol/Lが好ましく、1.8mol/Lがより好ましく、1.7mol/Lがさらに好ましく、1.6mol/Lが特に好ましい。上記架橋密度が上記下限以上であることにより、当該接着剤を硬化した後の硬化物自体の強度が向上する。一方、上記架橋密度が上記上限以下であることにより、得られる硬化物の変形追従性が向上することなどに起因して、ポリビニルアルコールを含むフィルム及び基材への密着性を向上し、また接着体の反りがより低減される。なお、上記架橋密度は、例えば重合体(X’)における活性エネルギー線硬化性基の含有割合を高くしたり、化合物(Y’)における多官能性の化合物の含有割合を高くしたりすることにより、その値を高くすることができる。
上記架橋密度は、接着剤を硬化した後の硬化物に対して動的粘弾性測定を行い、それにより得られるゴム状平坦領域の貯蔵弾性率から求める。すなわち、当該貯蔵弾性率(E’:単位はPa)と求める架橋密度(ν:単位はmol/m3)とは、E’=3νRT(ここでRは気体定数を表し、Tは絶対温度(単位はK)を表す)の関係を満たすと考えることができ、当該関係から算出することができる。硬化物の貯蔵弾性率は、例えば、離型処理した基材フィルム上に接着剤を塗布し、700mJ/cm2となるように紫外線を照射し、次いで、温度23℃、相対湿度50%で24時間静置した後、基材フィルムから剥がすことにより得られた硬化物のサンプルに対して、動的粘弾性測定装置を使用して測定することができ、具体的には実施例に記載する方法により測定することができる。なお、ゴム状平坦領域は、測定温度と貯蔵弾性率との関係を示すグラフから求めることができ、特に硬化物のガラス転移点(Tg)が120℃よりも十分に小さい場合に上記架橋密度は、150℃の貯蔵弾性率の値を用いて上記式から求めることができる。
当該接着剤(2)は、上記の動的粘弾性測定により得られる150℃の貯蔵弾性率が4×106Pa以上21×106Pa以下であることが、ポリビニルアルコールを含むフィルム及び基材への密着性の向上、得られる接着体の反りの低減などの観点から好ましい。上記150℃の貯蔵弾性率の下限としては、6×106Paが好ましく、10×106Paがより好ましく、14×106Paがさらに好ましく、15×106Paが特に好ましく、16×106Paが最も好ましい。また、上記150℃の貯蔵弾性率の上限としては、20×106Paが好ましく、19×106Paがより好ましく、18×106Paがさらに好ましく、17×106Paがより好ましい。上記150℃の貯蔵弾性率が上記下限以上であることにより、当該接着剤を硬化した後の硬化物自体の強度が向上する。一方、上記架橋密度が上記上限以下であることにより、得られる硬化物の変形追従性が向上することなどに起因して、ポリビニルアルコールを含むフィルム及び基材への密着性を向上し、また接着体の反りがより低減される。なお、上記150℃の貯蔵弾性率は、例えば重合体(X’)における活性エネルギー線硬化性基の含有割合を高くしたり、化合物(Y’)における多官能性の化合物の含有割合を高くしたりすることにより、その値を高くすることができる。
重合体(X’)は、活性エネルギー線硬化性基を有する限りその種類に特に制限されず、その好ましい一例としては、接着剤(1)において上記した(メタ)アクリル系重合体(X)(例えば末端及び/又は側鎖に(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体(アクリル樹脂(メタ)アクリレート等)や、より好ましい例として、活性エネルギー線硬化性基を有する(メタ)アクリル系重合体ブロック(A)と、活性エネルギー線硬化性基を実質的に有さない(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体など)が挙げられる。
重合体(X’)の他の好ましい一例としては、ウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。当該ウレタン(メタ)アクリレートの種類に特に制限はなく、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系等のウレタン(メタ)アクリレートを使用することができる。一般的なウレタン(メタ)アクリレートは、通常、その重合体鎖の末端に(メタ)アクリロイル基を有していて活性エネルギー線硬化性基の含有割合が比較的低いことから、併用する化合物(Y’)における多官能性の化合物の含有割合を高くすることが好ましい。重合体(X’)が有する活性エネルギー線硬化性基の説明は、接着剤(1)において上記した(メタ)アクリル系重合体(X)が有する活性エネルギー線硬化性基の説明と同様である。
重合体(X’)の数平均分子量(Mn)に特に制限はないが、重合体(X’)の取り扱い性、流動性、力学特性等の点から、上記Mnの下限としては、1,000が好ましく、2,000がより好ましく、2,500がさらに好ましく、4,000が特に好ましく、5,000が最も好ましく、当該数平均分子量(Mn)が7,000以上の重合体(X’)を好ましく用いることもできる。一方、上記Mnの上限としては、得られる接着剤やその調製時の粘度上昇を抑制するなどの観点から、7,000,000が好ましく、3,000,000がより好ましく、2,000,000がさらに好ましい。
当該接着剤(2)における重合体(X’)の含有率の下限としては、1質量%が好ましく、3質量%がより好ましく、5質量%がさらに好ましく、10質量%が特に好ましく、上記含有率は15質量%以上としてもよい。一方、上記含有率の上限としては、90質量%が好ましく、70質量%がより好ましく、50質量%が特に好ましい。上記含有率が上記下限以上であることにより、当該接着剤の接着強度等の機械的特性がより向上し、また反りがより低減された接着体を得ることができる。一方、上記含有率が上記上限以下であることにより、当該接着剤の粘度を適度に維持でき取り扱い性が向上する。
化合物(Y’)は、重合体(X’)以外の活性エネルギー線硬化性基を有する化合物であり、接着剤(1)において上記した化合物(Y)のうち、重合体(X’)に該当しないものが挙げられる。化合物(Y’)の分子量に特に制限はないが、ポリビニルアルコールを含むフィルム及び基材への密着性の向上、得られる接着体の反りの低減などの観点から、当該分子量は、4,000未満が好ましく、2,000未満がより好ましく、1,000未満がさらに好ましい。
重合体(X’)が有する活性エネルギー線硬化性基と化合物(Y’)とを結合させる観点からは、重合体(X’)が有する活性エネルギー線硬化性基がラジカル反応性の基である場合、化合物(Y’)の少なくとも一部はラジカル反応性の化合物であることが好ましく、重合体(X’)が有する活性エネルギー線硬化性基がカチオン反応性の基である場合、化合物(Y’)の少なくとも一部はカチオン反応性の化合物であることが好ましい。具体的には重合体(X’)が有する活性エネルギー線硬化性基が上記式(1)で表される基を有する基である場合、化合物(Y’)の少なくとも一部は上記式(3)で表される基を有する化合物であることが好ましく、重合体(X’)が有する活性エネルギー線硬化性基がオキシラン環を有する基及び/又はオキセタン環を有する基である場合、化合物(Y’)の少なくとも一部はオキシラン環を有する化合物及び/又はオキセタン環を有する化合物であることが好ましい。
当該接着剤(2)における化合物(Y’)の含有率の下限としては、10質量%が好ましく、30質量%がより好ましく、50質量%がさらに好ましい。一方、上記含有率の上限としては、99質量%が好ましく、95質量%がより好ましく、90質量%がさらに好ましく、上記含有率は、85質量%以下、80質量%以下、さらには75質量%以下としてもよい。上記含有率が上記下限以上であることにより、当該接着剤の粘度を適度に維持でき取り扱い性が向上する。一方、上記含有率が上記上限以下であることにより、当該接着剤の接着強度等の機械的特性がより向上する。
接着剤(2)においても接着剤(1)と同様、重合体(X’)及び化合物(Y’)の他に活性エネルギー線重合開始剤(P)をさらに含有することが好ましい。接着剤(2)における活性エネルギー線重合開始剤(P)の説明は、接着剤(1)における活性エネルギー線重合開始剤(P)の説明と同様である。
接着剤(2)における重合体(X’)100質量部に対する活性エネルギー線重合開始剤(P)の量の下限としては、0.01質量部が好ましく、0.05質量部がより好ましく、0.1質量部がさらに好ましく、1質量部、3質量部、さらには5質量部であってもよい。一方、上記量の上限としては、50質量部が好ましく、40質量部がより好ましく、20質量部、10質量部、さらには8質量部であってもよい。上記量が上記下限以上であることにより、接着剤の硬化速度及び硬化後の接着強度が向上する。一方、上記量が上記上限以下であることにより、硬化速度が過度に速くなることによる硬化物の低分子量化が抑制され、耐熱性が向上する。
接着剤(2)においても接着剤(1)と同様、重合体(X’)、化合物(Y’)及び活性エネルギー線重合開始剤(P)以外のその他の成分(例えば架橋剤、増感剤、希釈剤、粘着付与剤、軟化剤、充填剤、安定剤、顔料、染料等)をさらに含有していてもよい。接着剤(2)におけるその他の成分(その他の任意成分)の説明は、接着剤(1)におけるその他の成分(その他の任意成分)の説明と同様である。
当該接着剤(2)は、重合体(X’)、化合物(Y’)及び他の任意成分(活性エネルギー線重合開始剤(P)やその他の任意成分)を混合、撹拌することにより簡便に製造できる。
[PVAフィルム]
本発明の接着剤は、ポリビニルアルコールを含むフィルム(PVAフィルム)と基材とを接着するためのものである。PVAフィルムが含むポリビニルアルコール(PVA)としては、ビニルエステルを重合して得られるポリビニルエステルをけん化することにより得られるものが挙げられる。ポリビニルエステルは、ビニルエステルのみを重合することにより得られたものであっても、ビニルエステル及びこれと共重合可能な他の単量体を共重合することにより得られたものであってもよいが、ビニルエステルのみを重合することにより得られたものであることが好ましい。上記ビニルエステルは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよいが、1種のみを用いることが好ましい。
上記ビニルエステルとしては、例えば酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、酢酸イソプロペニル等が挙げられる。上記ビニルエステルとしては、PVAの製造の容易性、入手の容易性、コスト等の点から、分子中にビニルオキシカルボニル基(H2C=CH−O−CO−)を有する化合物が好ましく、酢酸ビニルがより好ましい。
上記ビニルエステルと共重合可能な他の単量体としては、例えば炭素数2〜30のα−オレフィン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド誘導体、N−ビニルアミド、ビニルエーテル、(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル、ハロゲン化ビニル、アリル化合物、マレイン酸、マレイン酸塩、マレイン酸エステル、マレイン酸の酸無水物、イタコン酸、イタコン酸塩、イタコン酸エステル、イタコン酸の酸無水物、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物、不飽和スルホン酸、不飽和スルホン酸塩などが挙げられる。
上記炭素数2〜30のα−オレフィンとしては、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等が挙げられる。
上記(メタ)アクリルアミド誘導体としては、例えばN−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸またはその塩、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルアミン又はその塩、N−メチロール(メタ)アクリルアミド又はその誘導体等が挙げられる。
上記N−ビニルアミドとしては、例えばN−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン等が挙げられる。
上記ビニルエーテルとしては、例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等が挙げられる。
上記ハロゲン化ビニルとしては、例えば塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等が挙げられる。
上記アリル化合物としては、例えば酢酸アリル、塩化アリル等が挙げられる。
上記ポリビニルエステル中の上記他の単量体に由来する構造単位の割合の上限としては、ポリビニルエステルを構成する全構造単位のモル数に対して15モル%が好ましく、10モル%がより好ましく、5モル%がさらに好ましい。
上記PVAとしてはグラフト共重合がされていないものが好ましいが、本発明の効果を大きく損なわない範囲内であれば、グラフト共重合可能な単量体によって変性されたものであってもよい。当該グラフト共重合は、ポリビニルエステルに行ってもよく、ポリビニルエステルをけん化することで得られるPVAに行ってもよい。
上記グラフト共重合可能な単量体としては、例えば不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の誘導体、不飽和スルホン酸、不飽和スルホン酸の誘導体、炭素数2〜30のα−オレフィン等が挙げられる。グラフト共重合可能な単量体は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ポリビニルエステル又はPVAにおけるグラフト共重合可能な単量体に由来する構造単位の割合は、ポリビニルエステル又はPVAを構成する全構造単位のモル数に対し5モル%以下であることが好ましい。
上記PVAが有する水酸基の一部は架橋されていてもよい。また、上記のPVAが有する水酸基の一部はアセトアルデヒド、ブチルアルデヒド等のアルデヒド化合物などと反応してアセタール構造を形成していてもよい。
PVAのけん化度の下限としては、PVAフィルムの耐湿熱性が良好になる観点から、99.0モル%が好ましく、99.8モル%がより好ましく、99.9モル%がさらに好ましい。ここで「PVAのけん化度」とは、JIS−K6726(1994)に準じて測定される値であり、PVAが有する構造単位のうちけん化によってビニルアルコール単位に変換され得る構造単位(典型的にはビニルエステル単位)とビニルアルコール単位との合計モル数に対し上記ビニルアルコール単位のモル数が占める割合(モル%)をいう。
上記のPVAの重合度は特に制限されないが、その上限としては、10,000が好ましく、8,000がより好ましく、5,000がさらに好ましい。一方、上記PVAの重合度の下限としては、1,000が好ましく、1,500がより好ましく、2,000がさらに好ましい。上記PVAの重合度が上記上限以下であることにより、PVAの製造コストの上昇を抑えることができ、また製膜時の工程通過性が向上する。一方、上記PVAの重合度が上記下限以上であることにより、例えばPVAフィルムを後述するような偏光フィルムに加工した際に偏光性能等の各性能が向上する。ここで、「PVAの重合度」とは、JIS−K6726(1994)の記載に準じて測定した平均重合度を意味する。
PVAフィルムにおけるPVAの含有率の上限としては、100質量%が好ましい。一方、上記PVAの含有率の下限としては、50質量%が好ましく、80質量%がより好ましく、85質量%がさらに好ましい。
PVAフィルムが含有してもよい他の成分としては、例えば可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、凍結防止剤、pH調整剤、隠蔽剤、着色防止剤、油剤等が挙げられる。
上記可塑剤は、PVAフィルムの取り扱い性や延伸性を向上させることなどを目的とするものである。可塑剤としては特に限定されないが、多価アルコールが好ましい。この多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジグリセリン、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン等が挙げられ、これらの中でPVAフィルムの延伸性がより良好になる点からグリセリンがより好ましい。可塑剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
PVAフィルムにおけるPVA100質量部に対する可塑剤の含有量の上限としては、20質量部が好ましく、17質量部がより好ましく、14質量部がさらに好ましい。一方、上記可塑剤の含有量の下限としては、3質量部が好ましく、5質量部がより好ましく、7質量部がさらに好ましい。上記可塑剤の含有量が上記上限以下であることによりPVAフィルムの取り扱い性が向上する。一方、上記可塑剤の含有量が上記下限以上であることにより、PVAフィルムの延伸性が向上する。
上記界面活性剤は、後述する製膜原液を用いてPVAフィルムを製造する場合において、製膜性を向上させPVAフィルムの厚み斑の発生を抑制することなどを目的とするものである。界面活性剤の種類は特に限定されないが、製膜性の観点から、アニオン性界面活性剤又はノニオン性界面活性剤が好ましく、ノニオン性界面活性剤がより好ましい。界面活性剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記アニオン性界面活性剤としては、例えばラウリン酸カリウム等のカルボン酸型界面活性剤、オクチルサルフェート等の硫酸エステル型界面活性剤、ドデシルベンゼンスルホネート等のスルホン酸型界面活性剤などが挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンオレイルエーテル等のアルキルエーテル型界面活性剤、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のアルキルフェニルエーテル型界面活性剤、ポリオキシエチレンラウレート等のアルキルエステル型界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル等のアルキルアミン型界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリン酸アミド等のアルキルアミド型界面活性剤、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル等のポリプロピレングリコールエーテル型界面活性剤、ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド等のアルカノールアミド型界面活性剤、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル等のアリルフェニルエーテル型界面活性剤などが挙げられる。
PVAフィルムにおけるPVA100質量部に対する界面活性剤の含有量の上限としては、0.5質量部が好ましく、0.3質量部がより好ましい。一方、上記界面活性剤の含有量の下限としては、0.01質量部が好ましく、0.02質量部がより好ましい。上記界面活性剤の含有量が上記上限以下であることによりPVAフィルムの取り扱い性が向上する。一方、上記界面活性剤の含有量が上記下限以上であることにより、製膜性が向上する。
PVAフィルムの厚みの上限としては特に限定されないが、50μmが好ましく、45μmがより好ましく、30μmがさらに好ましい。一方、PVAフィルムの厚みの下限としては特に限定されないが、PVAフィルムを円滑に製造する観点から、3μmが好ましい。
[PVAフィルムの製造方法]
PVAフィルムの製造方法は特に制限されず、製膜後のフィルムの厚み及び幅がより均一になる製造方法を好ましく採用することができ、例えば、PVAフィルムを構成する上記PVA、及び必要に応じて更に可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、凍結防止剤、pH調整剤、隠蔽剤、着色防止剤、油剤等のうちの1つ又は2つ以上が液体媒体中に溶解した製膜原液や、PVA、及び必要に応じて更に可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、凍結防止剤、pH調整剤、隠蔽剤、着色防止剤、油剤等のうちの1つ又は2つ以上を含み、PVAが溶融している製膜原液を用いて製造することができる。当該製膜原液が可塑剤、界面活性剤等の任意成分を含有する場合、これらの成分が均一に混合されていることが好ましい。
上記液体媒体としては、例えば水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等が挙げられる。これらの中で、環境に与える負荷が小さい点及び回収性の点から水が好ましい。上記液体媒体は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
製膜時に揮発や蒸発によって除去される液体媒体等の揮発性成分の製膜原液中における含有割合(製膜原液の揮発分率)は製膜方法、製膜条件等によって異なるが、その上限としては95質量%が好ましく、90質量%がより好ましく、85質量%がさらに好ましい。一方、上記製膜原液の揮発分率の下限としては、50質量%が好ましく、55質量%がより好ましく、60質量%がさらに好ましい。上記製膜原液の揮発分率が上記上限以下であることにより、製膜原液の濃度が低くなり過ぎず、工業的なPVAフィルムの製造が容易になる。一方、上記製膜原液の揮発分率が上記下限以上であることにより、製膜原液の粘度が高くなり過ぎず、製膜原液調製時の濾過や脱泡が円滑に行われ、異物や欠点の少ないPVAフィルムの製造が容易になる。
上記製膜原液を用いてPVAフィルムを製膜する際の製膜方法としては、例えばキャスト製膜法、押出製膜法、湿式製膜法、ゲル製膜法などが挙げられ、厚み及び幅が均一かつ物性の良好なPVAフィルムが得られる点でキャスト製膜法、押出製膜法が好ましい。上記製膜方法は1種のみを採用してもよく、2種以上を組み合わせて採用してもよい。製膜されたフィルムには必要に応じて乾燥や熱処理を行うことができる。
PVAフィルムの具体的な製造方法の例としては、例えば、T型スリットダイ、ホッパープレート、I−ダイ、リップコーターダイ等を用いて、上記の製膜原液を最上流側に位置する回転する加熱した第1ロール(あるいはベルト)の周面上に均一に吐出または流延し、この第1ロール(あるいはベルト)の周面上に吐出または流延された膜の一方の面から揮発性成分を蒸発させて乾燥し、続いてその下流側に配置した1個または複数個の回転する加熱したロールの周面上でさらに乾燥するか、または熱風乾燥装置の中を通過させてさらに乾燥した後、巻き取り装置により巻き取る方法を工業的に好ましく採用することができる。加熱したロールによる乾燥と熱風乾燥装置による乾燥とは、適宜組み合わせて実施してもよい。
上記のような製造方法により、実質的に延伸のされていない(延伸工程を経ていない)PVAフィルムを容易に得ることができる。このPVAフィルムは、そのまま当該接着剤を用いて基材と接着することができるが、本発明において当該接着剤が基材と接着させるPVAフィルムは、延伸されたPVAフィルム(延伸ポリビニルアルコールフィルム)であることが好ましく、特に偏光フィルム、位相差フィルム等の光学フィルムであることが好ましい。
[偏光フィルムの製造方法]
偏光フィルムの製造方法は特に限定されず、例えば実質的に延伸のされていないPVAフィルムに対して、膨潤、染色、延伸、及び必要に応じてさらに、架橋処理、固定処理、乾燥、熱処理などを施す方法が挙げられる。この場合、膨潤、染色、架橋処理、延伸、固定処理などの各処理の順序は特に制限されず、1つ又は2つ以上の処理を同時に行うこともできる。また、各処理の1つまたは2つ以上を2回またはそれ以上行うこともできる。さらに、製膜工程において製膜原液に二色性色素を添加する場合、染色工程は省略することができる。
(膨潤)
膨潤は、上記PVAフィルムを水に浸漬することにより行うことができる。この水としては純水に限定されず、各種成分が溶解した水溶液であってもよいし、水と水性媒体との混合物であってもよい。この水性媒体としては、例えば上記製膜原液において例示した液体媒体と同様のものが挙げられる。
PVAフィルムを水に浸漬する際の水の温度の上限としては、40℃が好ましく、38℃がより好ましく、35℃がさらに好ましい。一方、上記水の温度の下限としては、20℃が好ましく、22℃がより好ましく、25℃がさらに好ましい。また、PVAフィルムを水に浸漬する時間の上限としては、5分が好ましく、3分がより好ましい。一方、上記水に浸漬する時間の下限としては、0.5分が好ましく、1分がより好ましい。
(染色)
染色は、上記PVAフィルムを二色性色素を含む水溶液に浸漬することにより行うことができる。上記二色性色素としては、ヨウ素系色素、二色性有機染料などが挙げられる。
上記ヨウ素系色素としては、例えばI3 −、I5 −等が挙げられる。これらのヨウ素系色素は、例えばヨウ素(I2)とヨウ化カリウムとを接触させることにより得ることができる。
上記二色性有機染料としては、例えばダイレクトブラック 17、19、154;ダイレクトブラウン 44、106、195、210、223;ダイレクトレッド 2、23、28、31、37、39、79、81、240、242、247;ダイレクトブルー 1、15、22、78、90、98、151、168、202、236、249、270;ダイレクトバイオレット 9、12、51、98;ダイレクトグリーン 1、85;ダイレクトイエロー 8、12、44、86、87;ダイレクトオレンジ 26、39、106、107等が挙げられる。
二色性色素としては、取り扱い性、入手性、偏光性能などの観点からヨウ素系色素が好ましい。これらの二色性色素は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよく、例えば、I3 −及びI5 −のように平衡混合物であってもよい。
上記二色性色素を含む水溶液中における二色性色素の濃度は、用いる二色性色素の種類等に応じ適宜設定でき、例えば0.001質量%以上1質量%以下とすることができる。二色性色素を含む水溶液としてヨウ素−ヨウ化カリウム水溶液を用いる場合、ヨウ素系色素を効率良くPVAフィルムに吸着させることができる点から、使用されるヨウ素(I2)の濃度としては0.01質量%以上1.0質量%以下が好ましく、使用されるヨウ化カリウム(KI)の濃度としては0.01質量%以上10質量%以下が好ましい。
上記二色性色素を含む水溶液の温度の上限としては、50℃が好ましく、40℃がより好ましい。一方、上記水溶液の温度の下限としては、20℃が好ましく、25℃がより好ましい。上記水溶液の温度を上記範囲内とすることで、二色性色素を効率良くPVAフィルムに吸着させることができる。
(架橋)
架橋は、上記PVAフィルムを架橋剤を含む水溶液に浸漬することにより行うことができる。この架橋により、比較的高い温度かつ湿式で延伸を行う場合であっても、PVAが水中へ溶出するのを効果的に防止することができる。このため、架橋は延伸の前に行うことが好ましい。
上記架橋剤としては、例えばホウ素化合物が挙げられ、このホウ素化合物としては、例えばホウ酸、ホウ砂等のホウ酸塩などが挙げられる。この架橋剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、架橋剤を含む水溶液は、ヨウ化カリウム等の助剤を含んでいてもよい。
上記架橋剤を含む水溶液における架橋剤の濃度の上限としては、15質量%が好ましく、7質量%がより好ましい。一方、上記架橋剤の濃度の下限としては、1質量%が好ましく、2質量%がより好ましい。上記架橋剤を含む水溶液の温度の上限としては、50℃が好ましく、40℃がより好ましい。一方、上記水溶液の温度の下限としては、20℃が好ましく、25℃がより好ましい。
(前延伸)
後述する延伸工程とは別に、膨潤、染色、架橋等の処理のうちの1つ又は2つ以上と同時にPVAフィルムを延伸することができる。このような延伸(前延伸)をすることにより、PVAフィルムにしわが入るのを防止することができる。前延伸の延伸倍率は、得られる偏光フィルムの偏光性能などの観点から、延伸前のPVAフィルムの元長に基づいて、4倍以下が好ましく、3.5倍以下がより好ましく、また、1.5倍以上が好ましい。
また、各処理における延伸倍率に関して、膨潤時の延伸倍率の上限としては、3倍が好ましく、2.5倍がより好ましく、2.3倍がさらに好ましい。一方、上記延伸倍率の下限としては、1.1倍が好ましく、1.2倍がより好ましく、1.4倍がさらに好ましい。
染色時の延伸倍率の上限としては、2倍が好ましく、1.8倍がより好ましく、1.5倍がさらに好ましい。一方、上記延伸倍率の下限としては、1.1倍が好ましい。
架橋時の延伸倍率の上限としては、2倍が好ましく、1.5倍がより好ましく、1.3倍がさらに好ましい。一方、上記延伸倍率の下限としては、1.05倍が好ましい。
(延伸)
PVAフィルムを延伸する際の延伸方法は特に制限されず、湿式延伸法又は乾式延伸法を採用できるが、得られる偏光フィルムの幅方向の厚みの均一性を向上させる観点から湿式延伸法が好ましい。
湿式延伸法を採用する場合、ホウ素化合物を含む水溶液中で延伸を行ってもよく、上記二色性色素を含む水溶液中や後述する固定処理浴中で延伸を行ってもよい。ホウ素化合物としては、例えばホウ酸、ホウ砂等のホウ酸塩などが挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中で、ホウ素化合物を含む水溶液中で延伸を行うことが好ましく、ホウ酸を含む水溶液中で延伸を行うことがより好ましい。この場合、上記ホウ酸を含む水溶液中のホウ酸の濃度の上限としては6質量%が好ましく、5質量%がより好ましく、4質量%がさらに好ましい。一方、上記ホウ酸の濃度の下限としては、0.5質量%が好ましく、1質量%がより好ましく、1.5質量%がさらに好ましい。また、上記ホウ素化合物を含む水溶液はヨウ化カリウムを含有してもよい。この場合、上記ホウ素化合物を含む水溶液中のヨウ化カリウムの濃度としては、0.01質量%以上10質量%以下が好ましい。
乾式延伸法を採用する場合、室温で延伸を行ってもよく、加熱しつつ延伸を行ってもよく、PVAフィルムを吸水させた後に延伸を行ってもよい。
上記延伸においてPVAフィルムを延伸する際の温度の上限としては、90℃が好ましく、80℃がより好ましく、70℃がさらに好ましい。一方、上記温度の下限としては、30℃が好ましく、40℃がより好ましく、50℃がさらに好ましい。
上記延伸におけるPVAフィルムの延伸倍率の下限としては、1.2倍が好ましく、1.5倍がより好ましく、2倍がさらに好ましい。
また、上記前延伸の延伸倍率をも含めた全延伸倍率(各延伸の延伸倍率を掛け合わせた倍率)は、得られる偏光フィルムの偏光性能などの観点から、延伸前のPVAフィルムの元長に基づいて、5.5倍以上が好ましく、5.7倍以上がより好ましく、5.8倍以上がさらに好ましく、5.9倍以上が特に好ましい。上記全延伸倍率の上限としては特に制限されないが、8倍が好ましい。
PVAフィルムの延伸としては、得られる偏光フィルムの性能の観点から一軸延伸が好ましい。この一軸延伸の方向に特に制限はなく、長尺のPVAフィルムにおける長さ方向への一軸延伸や横一軸延伸を採用することができる。これらの中で、偏光性能により優れる偏光フィルムが得られやすいことから長さ方向への一軸延伸が好ましい。上記長さ方向への一軸延伸は、例えば互いに平行な複数のロールを備える延伸装置を使用し、各ロール間の周速を変えることにより行うことができる。一方、上記横一軸延伸はテンター型延伸機を用いて行うことができる。
(固定処理)
固定処理は、上記PVAフィルムを固定処理浴中に浸漬することにより行うことができる。これにより、上記PVAフィルムへの二色性色素の吸着を強固にすることができる。固定処理は染色の後であれば特に限定されず、延伸の前に固定処理を行ってもよく、延伸と同時に固定処理を行ってもよく、延伸の後に固定処理を行ってもよい。
上記固定処理浴としては、例えばホウ素化合物を含む水溶液が挙げられ、このホウ素化合物としては、例えばホウ酸、ホウ砂等のホウ酸塩などが挙げられる。このホウ素化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記ホウ素化合物を含む水溶液中におけるホウ素化合物の濃度の上限としては15質量%が好ましく、10質量%がより好ましい。一方、上記ホウ素化合物の濃度の下限としては、2質量%が好ましく、3質量%がより好ましい。
上記固定処理浴の温度の上限としては、60℃が好ましく、40℃がより好ましい。一方、上記固定処理浴の温度の下限としては、15℃が好ましく、25℃がより好ましい。
(乾燥)
延伸を行い、必要に応じて更に固定処理を行った後、乾燥することにより偏光フィルムを得ることができる。乾燥条件は特に制限されないが、乾燥温度の下限としては、30℃が好ましく、50℃がより好ましい。一方、乾燥温度の上限としては、150℃が好ましく、130℃がより好ましい。乾燥温度を上記範囲内とすることで、偏光フィルムの寸法安定性が向上する。
[その他のPVAフィルム]
本発明において当該接着剤が基材と接着させるPVAフィルムのうち上記した偏光フィルム及び位相差フィルム以外のPVAフィルムとしては、例えば偏光フィルム及び位相差フィルム以外の光学フィルム、導電フィルム、感光性フィルム、保護フィルム、剥離フィルム、防錆フィルム、カバーレイフィルム、転写フィルム、研磨フィルム、ウインドフィルム、装飾フィルム、接着フィルム、制振鋼板用フィルム、生分解性フィルム、抗菌フィルム等が挙げられる。偏光フィルム及び位相差フィルム以外の光学フィルムとしては、例えば反射防止フィルム、配向フィルム、偏光層保護フィルム、視野角向上フィルム、輝度向上フィルム、電磁波シールドフィルム、遮光フィルム、赤外線遮断フィルム、紫外線遮断フィルム、レンズフィルター、光学ローパスフィルター(OLPF)フィルム、対候性フィルム等が挙げられる。
[基材]
本発明において当該接着剤がPVAフィルムと接着させる基材に特に制限はなく、フィルム、中空又は中実のブロック体等の各種形状を有するものが挙げられるが、フィルムが特に好ましい。当該フィルムとしては、例えばアイオノマー、ポリエチレン、セルロース、トリアセチルセルロース(TAC)、(メタ)アクリル系重合体、脂環式構造含有重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、ナイロン等の重合体を含むフィルムが挙げられる。ここで、(メタ)アクリル系重合体は、主鎖にラクトン環単位、無水マレイン酸単位、N−置換又は無置換マレイミド単位、無水グルタル酸単位、N−置換又は無置換グルタルイミド単位などが導入された変性(メタ)アクリル系重合体であってもよい。これらの中で、PVAフィルムとして偏光フィルム又は位相差フィルムを用いる場合に良好な保護フィルムとして機能することができることなどから、トリアセチルセルロースを含むフィルム、(メタ)アクリル系重合体を含むフィルム、ポリエステルを含むフィルム、又は脂環式構造含有重合体を含むフィルムが好ましい。上記フィルムにおける上記重合体の含有率の上限としては、100質量%が好ましい。一方、上記含有率の下限としては、50質量%が好ましく、80質量%がより好ましく、85質量%がさらに好ましい。
上記基材がフィルムである場合において、その厚みは特に限定されないが、その上限としては200μmが好ましく、80μmがより好ましい。一方、上記厚みの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。上記厚みが上記上限以下であることにより、得られる接着体の厚みが不必要に増加するのを抑制することができる。一方、上記厚みが上記下限以上であることにより、得られる接着体の強度が向上する。
基材がフィルムでない場合においても、基材がフィルムである場合における上記重合体と同様のものを含む基材を好ましく使用することができる。この場合、基材における上記重合体の含有率の上限としては、100質量%が好ましい。一方、上記含有率の下限としては、50質量%が好ましく、80質量%がより好ましく、85質量%がさらに好ましい。また、基材は、金属、繊維、布帛、合成皮革等を含むものであってもよい。
[接着剤の用途]
本発明の接着剤の用途としては、上記したような偏光フィルム又は位相差フィルムと保護フィルムとを接着させる用途(偏光板又は位相差板の製造用途);電子素子や電子機器等の製造における金属、合成樹脂、ゴム等とPVAフィルムとの接着;土木・建築分野における資材の接着、被服等における繊維、布帛、合成皮革等の接着;食品包装の接着等が挙げられ、偏光板又は位相差板の製造用途、中でも偏光板の製造用途において特に有用である。
本発明の接着剤によれば、PVAフィルムと基材との接着において高い接着強度を有する。具体的な接着強度としては、当該接着剤の硬化後におけるPVAフィルムと基材との剥離接着強さとして、その下限は、2.5N/25mmが好ましく、3N/25mmがより好ましく、3.75N/25mmがさらに好ましい。
<接着体>
次に、本発明の接着体の実施形態について説明する。図1の接着体1は、PVAフィルム2と、基材4と、上記PVAフィルム2及び基材4の間に配設される接着剤層3とを備える。この接着剤層3は、当該接着剤から形成される。
[接着剤層]
接着剤層3は当該接着剤から形成される。具体的には、当該接着剤に対して活性エネルギー線を照射することにより形成することができる。接着剤層3は、接着体1の用途に応じて添加剤を含有してもよい。
接着剤層3の厚みの上限としては、500μmが好ましく、50μmがより好ましく、20μmがさらに好ましく、10μmが特に好ましい。一方、上記厚みの下限としては、100nmが好ましく、300nmがより好ましく、500nmがさらに好ましい。上記接着剤層3の厚みが上記上限以下であることにより、得られる接着体1の厚みが不必要に増加するのを抑制することができる。一方、上記厚みが上記下限以上であることにより、PVAフィルム2と基材4との接着強度が向上する。
<接着体の製造方法>
当該接着体1は、PVAフィルム2、当該接着剤、及び基材4がこの順に配列した積層体を得る工程(積層体製造工程)、及び上記積層体製造工程の後に、活性エネルギー線を上記接着剤に照射する工程(照射工程)を備える製造方法により製造することができる。
[積層体製造工程]
積層体製造工程において、上記積層体を製造する。この積層体の製造方法としては、PVAフィルム、当該接着剤、及び基材がこの順に配列した積層体が得られる限り特に制限はないが、より簡便に積層体が得られることから、当該接着剤をPVAフィルムの表面、及び基材の表面のうちの一方又は両方に当該接着剤を塗布後、当該PVAフィルム及び基材を重ね合わせる方法が好ましい。PVAフィルムの表面、及び基材の表面のうちの一方又は両方に当該接着剤を塗布する際の塗布方法は特に限定されないが、例えばダイコート、ロールコート、エアナイフコート、グラビアロールコート、ドクターロールコート、ドクターナイフコート、カーテンフローコート、スプレー、ワイヤーバー、ロッドコート、浸漬、刷毛塗り等の方法が挙げられる。
また、上記積層体の製造方法としては、上記以外にも、PVAフィルムと基材とを重ね合わせた後で、両者の間に当該接着剤を浸透させる方法を採用することもできる。
さらに、得られた積層体をロール等で加圧してもよい。この場合、上記ロールの材質としては、例えば金属やゴム等が挙げられる。PVAフィルム側のロールと基材側のロールは同じ材質でもよく、異なる材質でもよい。
[照射工程]
照射工程において、上記積層体中の未硬化の当該接着剤に活性エネルギー線を照射する。この活性エネルギー線としては、当該接着剤が含む活性エネルギー線硬化性基の種類に準じて適宜選択することができる。上記活性エネルギー線としては、例えば紫外線、赤外線、X線、γ線等の電磁波の他、電子線、プロトン線、中性子線等が挙げられる。これらの中で、硬化速度、照射装置の入手性、価格等の観点から紫外線又は電子線が好ましく、紫外線がより好ましい。
上記活性エネルギー線は公知の装置を用いて照射することができる。活性エネルギー線として紫外線を用いる場合、450nm以下の波長域の光を発する高圧水銀ランプ、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、LED等を用いることができる。また、活性エネルギー線として電子線(EB)を用いる場合、加速電圧としては0.1MeV以上10MeV以下、照射線量としては1kGy以上500kGy以下が好ましい。
上記活性エネルギー線の積算光量の下限としては、10mJ/cm2が好ましく、30mJ/cm2がより好ましい。一方、活性エネルギー線の積算光量の上限としては、20,000mJ/cm2が好ましく、5,000mJ/cm2がより好ましい。活性エネルギー線の積算光量が上記下限以上であることにより、当該接着剤の硬化速度及び硬化後の接着強度が向上する。一方、活性エネルギー線の積算光量が上記上限以下であることにより、照射時間を適度な範囲内とすることができ、生産性が向上する。
当該接着剤への活性エネルギー線照射中又は照射後に、必要に応じて加熱により硬化を促進してもよい。この加熱温度の下限としては、40℃が好ましく、50℃がより好ましい。一方、加熱温度の上限としては、130℃が好ましく、100℃がより好ましい。加熱温度が上記下限以上であることにより、硬化の促進効果が向上する。一方、加熱温度が上記上限以下であることにより、当該接着剤の劣化が抑制される。
当該接着剤の硬化により、接着剤層が形成され、当該接着体が得られる。
<その他の実施形態>
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
当該接着体は、複数の接着剤層を有してもよい。例えば、PVAフィルムにおいて上記のように接着剤層が形成された側とは反対の側にもさらに接着剤層を有し、この接着剤層のPVAフィルムとは反対の側に別の基材が積層されるなどして、基材/接着剤層/PVAフィルム/接着剤層/基材の構造を有していてもよいし、或いはPVAフィルム/接着剤層/基材/接着剤層/PVAフィルムの構造を有していてもよい。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<接着剤の調製>
[(メタ)アクリル系重合体(P−1)の合成]
内部を乾燥し、窒素置換した300mlのフラスコにトルエン100mlを投入し、撹拌しながらルイス塩基としての1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン0.78ml(2.86mmol)及び第3級有機アルミニウム化合物としてのイソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウムの0.450mol/Lトルエン溶液12.7mlを順次添加した。この溶液を−20℃に冷却し、有機リチウム化合物としてのsec−ブチルリチウムの1.30mol/Lシクロヘキサン溶液2.00mlを添加し、活性エネルギー線硬化性単量体としての1,1−ジメチルプロパン−1,3−ジオールジメタクリレート2.47ml(10.4mmol)とモノ(メタ)アクリル酸エステルとしてのメタクリル酸メチル1.11ml(10.4mmol)との混合物3.58mlを一括で添加し、アニオン重合を開始した(第1重合工程)。アニオン重合開始後10分後に重合反応液が当初の黄色から無色に変化した。この重合反応液をさらに10分撹拌した。
次いで、この重合反応液を−20℃で撹拌しつつ、モノメタクリル酸エステルとしてのメタクリル酸メチル2.22ml(20.8mmol)を一括で添加し、その100分後にモノアクリル酸エステルとしてのアクリル酸n−ブチル37.4ml(260mmol)を1ml/分の速度でさらに添加してアニオン重合を行った(第2重合工程)。
その後、この重合反応液を撹拌しながら、−20℃でメタノール10.0mlを添加し、アニオン重合を停止させた。得られた溶液を1リットルのメタノール中に注ぎ、沈殿物を回収することで(メタ)アクリル系重合体(P−1)を得た。(メタ)アクリル系重合体(P−1)のMnは24,700、Mw/Mnは1.21であった。
接着剤の調製に用いた各化合物のうち、上記(メタ)アクリル系重合体(P−1)以外のものを以下に示す。
[化合物(Y)]
M−1:アクリル酸テトラヒドロフルフリル(大阪有機株式会社製の「ビスコート150」)
M−2:3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル化学工業株式会社製の「セロキサイド2021P」)
M−3:3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(東亞合成株式会社製の「OXT−101」)
M−4:3−エチル−3−アクリロイロキシメチルオキセタン(大阪有機株式会社製の「OXE−10」)
L−1:トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート(東亜合成株式会社製の「M−315」)
[活性エネルギー線重合開始剤(P)]
ラジカル重合開始剤(R−1):1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF製の「IRGACURE 184」)
カチオン重合開始剤(C−1):ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェートのプロピレンカーボネート50質量%溶液(サンアプロ製の「CPI−100P」)
[実施例1]
<接着剤の製造>
密閉可能な撹拌装置付き容器に、上記(メタ)アクリル系重合体(P−1)14質量部、化合物(Y)としての(M−1)43質量部、(M−2)33質量部及び(L−1)5質量部、ラジカル重合開始剤(R)としての(R−1)3質量部並びにカチオン重合開始剤(C)としての(C−1)2質量部を投入し、24時間撹拌することで当該接着剤(A−1)を調製した。
<接着体(偏光板)の製造>
基材として厚み50μmのポリメタクリル酸メチルフィルム(株式会社クラレ製)を用い、このポリメタクリル酸メチルフィルムの一方の面にバーコーターを用いて上記の接着剤(A−1)を厚みが2μmとなるように塗工した。次に、この接着剤を介し、厚み10μmの偏光フィルム(PVAフィルムに対してヨウ素系色素による染色及び延伸を施して製造したもの)を上記基材に重ね合わせた。その後、上記偏光フィルムの接着剤と接触していない側の面にバーコーターを用いて上記の接着剤(A−1)を厚みが2μmとなるように塗工し、別の基材として厚み50μmのポリメタクリル酸メチルフィルム(株式会社クラレ製)を、当該接着剤を介して上記偏光フィルムと重ね合わせた。このようにして得られたポリメタクリル酸メチルフィルム/接着剤/偏光フィルム/接着剤/ポリメタクリル酸メチルフィルムの層構成を有する積層体をローラーを用いて押圧した。
その後、紫外線照射装置(ランプとしてGS YUASA株式会社のメタルハライドランプを使用)を用い、上記積層体に積算光量が700mJ/cm2となるように紫外線を照射した。なお、この積算光量についてはUV計測器(GS YUASA株式会社)を用いて測定した。紫外線照射後、温度23℃、相対湿度50%で24時間静置することで接着体としての偏光板を得た。なお、偏光板及び積層体のサイズについて、硬化速度及び剥離接着強さを評価するためのものについては幅10mm×長さ50mmとし、反り量を評価するためのものについては幅50mm×長さ50mmとした。
<評価>
上記の偏光板について、以下の手順により各評価を行った。なお、硬化速度の評価については、上記接着体(偏光板)の製造における紫外線照射直後の積層体を用いた。
[硬化後の架橋密度および150℃の貯蔵弾性率]
離型処理した基材フィルム上に接着剤を塗布し、これに紫外線照射装置(ランプとしてGS YUASA株式会社のメタルハライドランプを使用)を用いて積算光量が700mJ/cm2となるように紫外線を照射した。なお、この積算光量についてはUV計測器(GS YUASA株式会社)を用いて測定した。紫外線照射後、温度23℃、相対湿度50%で24時間静置した後、硬化物を基材フィルムから剥がした。このようにして得られた硬化物のサンプルに対して、動的粘弾性測定装置(株式会社ユービーエム製「Rheogel−E4000」)を使用して動的粘弾性測定を行った。そして、ゴム状平坦領域に属する温度150℃において、その貯蔵弾性率(E’)を求め、当該150℃の貯蔵弾性率(E’)の値を用いてE’=3νRTの関係から架橋密度を求めた。なお、いずれの実施例および比較例においても、硬化物のTgは120℃よりも十分に小さかった。
[硬化速度]
紫外線照射直後の積層体について、必要に応じて接着剤層部分にカッターで切れ込みを入れた上、偏光フィルムと一方のポリメタクリル酸メチルフィルムとを手で剥離した。接着剤の硬化が十分であるため偏光フィルムとポリメタクリル酸メチルフィルムとを完全に剥離できず、ポリメタクリル酸メチルフィルムが破損したものをA(良好)、接着剤の硬化が不十分であるため偏光フィルムとポリメタクリル酸メチルフィルムとを容易に剥離でき、いずれのフィルムも破損しなかったものをB(不良)と評価した。
[剥離接着強さ]
上記の偏光板を温度23℃、相対湿度50%でさらに24時間静置後、小型引張試験機を用い、JIS−K6854−2(1999)に準拠して剥離速度30mm/分で偏光フィルムと一方のポリメタクリル酸メチルフィルムとを180°剥離する際の剥離力を測定した。得られた測定値を2.5倍することにより幅25mmの場合での換算値とした。
[反り量]
上記の偏光板を温度23℃、相対湿度60%でさらに24時間静置後、平滑面上に戴置し、平滑面と偏光板の角との距離を、4角それぞれについて測定し、一番大きい値を反り量(限界反り量)とした。この反り量(限界反り量)としては、1mm以下が好ましい。これらの結果を表2に示す。
[実施例2〜6及び比較例1〜4]
下記表1に示す種類及び使用量の各化合物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして接着剤(A−2)〜(A−6)及び(CA−1)〜(CA−4)を調製した。接着剤(A−6)では、(メタ)アクリル系重合体(P−1)に代えてアクリル樹脂アクリレート(根上工業株式会社製の「KRAD−3611」)(P−2)を用いた。また接着剤(CA−1)及び(CA−2)では、(メタ)アクリル系重合体(P−1)に代えてポリエーテル系ウレタンアクリレート(三菱化学株式会社製の「ユピマー AU−2300」)(P−3)を用いた。なお、表1中の「−」は、その化合物を用いていないことを示す。
また、接着剤(A−1)の代わりに接着剤(A−2)〜(A−6)及び(CA−1)〜(CA−4)をそれぞれ用いたこと以外は実施例1と同様にして接着体(偏光板)を製造し、実施例1と同様の各評価を行った。これらの結果を表2に示す。
表2に示されるように、実施例の接着剤は、いずれも高い剥離接着強さを示し、PVAフィルムと基材との接着において高い接着強度を有し、硬化速度が速く、偏光板の反りを低減できる。これに対し、比較例の接着剤は、剥離接着強さに劣り、また硬化速度が遅いか又は偏光板の反り量が大きかった。