JP2014035427A - 高分子光ファイバーの製造方法及び該方法により製造された高分子光ファイバー - Google Patents

高分子光ファイバーの製造方法及び該方法により製造された高分子光ファイバー Download PDF

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Abstract

【課題】コアとクラッドの中心が精度良く合っており、コアの未硬化に起因する問題を有しない高分子光ファイバーを高い生産性で製造できる高分子光ファイバーの製造方法を提供する。
【解決手段】光硬化性組成物に光を照射し硬化させることによって高分子光ファイバーを製造する方法であって、前記高分子光ファイバーはコアと該コアを被覆するクラッドとを有するコア−クラッド構造の高分子光ファイバーであり、前記コアを形成するためのコア用光硬化性組成物と前記クラッドを形成するためのクラッド用光硬化性組成物とを、前記コア用光硬化性組成物が前記クラッド用光硬化性組成物に被覆された状態で同時にノズルから糸状に吐出し、その後、光を照射して硬化させる工程Aを含み、前記コア用光硬化性組成物及び前記クラッド用光硬化性組成物として、前記コア用光硬化性組成物の硬化速度が前記クラッド用光硬化性組成物の硬化速度よりも速い組み合わせを使用することを特徴とする高分子光ファイバーの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、光硬化性組成物に光を照射し、硬化させることによって紡糸を行うコア−クラッド構造の高分子光ファイバーの製造方法に関する。さらに、本発明は、上記製造方法により製造されたコア−クラッド構造の高分子光ファイバーに関する。
インターネットを介した動画配信等の普及により、サーバやルータに用いるボード内の通信容量が増加し、近年、一部の高速信号線を電気配線から光配線に置き換えることの検討が進められている。中でも、高分子材料により形成された光ファイバー(高分子光ファイバー)は柔軟性に優れ、曲率半径の小さい配線組みが可能であるため、特に、省スペース化を目的とする光電気混載基板用の光配線として期待されている。
上記高分子光ファイバーの製造方法として、特許文献1には、紫外光の照射によって、光硬化性樹脂(カチオン硬化性樹脂)を反応させながらファイバー化する製法が開示されている。当該製法においては、紫外線硬化剤入りの液状エポキシ樹脂を通常の線引装置の加熱容器に入れ、線引用ノズルから流出が容易で一定の線径になるように加熱器により常に一定の温度に加熱し粘度を低下させる必要がある。また、上記製法は、光の導通部となるコアを先に作製し、該コア表面に保護層となるクラッドをあとから被覆する方法である。
特開昭61−245109号公報
一般に、コアと該コアを被覆するクラッドとを有する高分子光ファイバー(「コア−クラッド構造の高分子光ファイバー」と称する場合がある)は、光源デバイス等と接続して用いられるため、一般に、コアの中心(中心軸)とクラッドの中心(中心軸)とが精度良く合っていることが求められる。しかしながら、上記特許文献1に記載の製造方法のように、コアを作製した後、該コアにクラッドを被覆する方法では、コアとクラッドの中心が合った高分子光ファイバーの製造が困難である。これに対しては、例えば、コアを形成するための材料(コア用材料)とクラッドを形成するための材料(クラッド用材料)とを同時にノズルから吐出させ、その後に光照射によって硬化させる手法により、コアとクラッドの中心が合った高分子光ファイバーが得られると考えられる。しかしながら、この手法の場合、クラッド用材料の内側にコア用材料が位置するため、コア用材料に対して照射される光量が不足することでコアが未硬化になりやすく、これにより、コアとクラッドの中心軸が不一致となったり、高分子光ファイバーを形成(紡糸)できない紡糸不良の問題が生じたり、得られた高分子光ファイバーが変形しやすくなる可能性がある。
さらに、上記特許文献1に記載の製造方法では、光硬化性樹脂(カチオン硬化性樹脂)を加熱器により常に一定の温度に加熱して粘度を低下させるだけでは、製造される高分子光ファイバーの線径を一定にすることができず、さらに、頻繁に糸切れ(高分子光ファイバーの破断)が発生するために連続的に高分子光ファイバーを紡糸することができない。
本発明者らは、上記特許文献1に記載の製造方法において高分子光ファイバーの線径が一定にならない要因が、ノズル先端から吐出される光硬化性組成物(例えば、光硬化性樹脂を必須成分として含む組成物など)の粘度が安定しないことにあることを見出した。さらに、上記光硬化性組成物の粘度が安定しない原因は、ノズル先端に紫外光があたり、光硬化性組成物が部分的に硬化してしまうことであることが判明した。なお、上記特許文献1では、紫外光の光源から漏れた光がノズル付近にあたることを防ぐことや、流下する材料(光硬化性樹脂)の内部を伝播してノズル先端付近に到達する紫外光を減らす方法について一切考慮はされていない。
また、光配線として使用される高分子光ファイバーに対する要求特性としては、光電気混載基板のハンダリフロー工程において、ハンダリフロー時の高温によって光損失が増大したり、クラック等の熱劣化が発生することを防止できるだけの耐熱性(ハンダリフロー耐熱性)が挙げられる。近年では、溶解させるために約260℃の高温加熱を要する鉛フリーハンダの使用に対応させるため、より高度な耐熱性が求められている。
従って、本発明の目的は、コアとクラッドの中心(中心軸)が精度良く合っており、コアの未硬化に起因する問題(例えば、コアとクラッドの中心軸の不一致、紡糸不良、高分子光ファイバーの変形など)を有しない高分子光ファイバー(コア−クラッド構造の高分子光ファイバー)を高い生産性で製造できる高分子光ファイバーの製造方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記コア−クラッド構造の高分子光ファイバーを、一定の線径で、かつ糸切れが発生することなく連続的に製造できる高分子光ファイバーの製造方法を提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、コアとクラッドの中心(中心軸)が精度良く合っており、コアの未硬化に起因する問題を有しないコア−クラッド構造の高分子光ファイバー(好ましくはさらに一定の線径を有し、より好ましくはさらに耐熱性及び柔軟性に優れた高分子光ファイバー)を提供することにある。
本発明者らは、ノズルから吐出させた光硬化性組成物に光を照射し硬化させることによってコア−クラッド構造を有する高分子光ファイバーを製造する方法として、上記高分子光ファイバーにおけるコアを形成するためのコア用光硬化性組成物と、クラッドを形成するためのクラッド用光硬化性組成物とを特定の状態で同時に吐出し、その後光照射する工程を含む方法を採用し、さらに、特定の組み合わせのコア用光硬化性組成物とクラッド用光硬化性組成物を使用することにより、コアとクラッドの中心(中心軸)が精度良く合っており、コアの未硬化に起因する問題を有しないコア−クラッド構造の高分子光ファイバーを高い生産性で製造できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、光硬化性組成物に光を照射し硬化させることによって高分子光ファイバーを製造する方法であって、前記高分子光ファイバーはコアと該コアを被覆するクラッドとを有するコア−クラッド構造の高分子光ファイバーであり、
前記コアを形成するためのコア用光硬化性組成物と前記クラッドを形成するためのクラッド用光硬化性組成物とを、前記コア用光硬化性組成物が前記クラッド用光硬化性組成物に被覆された状態で同時にノズルから糸状に吐出し、その後、光を照射して硬化させる工程Aを含み、
前記コア用光硬化性組成物及び前記クラッド用光硬化性組成物として、前記コア用光硬化性組成物の硬化速度が前記クラッド用光硬化性組成物の硬化速度よりも速い組み合わせを使用することを特徴とする高分子光ファイバーの製造方法を提供する。
さらに、前記コア用光硬化性組成物が、光ラジカル重合性組成物又は光カチオン重合性組成物である前記の高分子光ファイバーの製造方法を提供する。
さらに、前記光ラジカル重合性組成物が、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルアリール基、ビニルエーテル基、及びビニルオキシカルボニル基からなる群より選ばれたラジカル重合性基を分子内に1個以上有するラジカル重合性化合物を含む前記の高分子光ファイバーの製造方法を提供する。
さらに、前記光カチオン重合性組成物が、オキセタン環、エポキシ環、ビニルエーテル基、及びビニルアリール基からなる群より選ばれたカチオン重合性基を分子内に1個以上有するカチオン重合性化合物を含む前記の高分子光ファイバーの製造方法を提供する。
さらに、前記コア用光硬化性組成物及び前記クラッド用光硬化性組成物のいずれか一方又は両方が、酸化防止剤を含有する前記の高分子光ファイバーの製造方法を提供する。
さらに、工程Aにおいて、前記ノズルの吐出口における光の照射強度が0.2mW/cm2以下に制御される前記の高分子光ファイバーの製造方法を提供する。
さらに、工程Aの後、さらに、光照射処理及び加熱処理のいずれか一方又は両方を行う工程Bを含む前記の高分子光ファイバーの製造方法を提供する。
また、本発明は、前記の高分子光ファイバーの製造方法により製造される高分子光ファイバーを提供する。
本発明の高分子光ファイバーの製造方法は上記構成を有するため、コアとクラッドの中心(中心軸)が精度良く合っており、コアとクラッドの中心軸の不一致、紡糸不良、高分子光ファイバーの変形などのコアの未硬化に起因する問題を有しないコア−クラッド構造の高分子光ファイバーを高い生産性で製造することができる。また、ノズルの吐出口における光の照射強度を特定の範囲に制御した場合には、線径が一定のコア−クラッド構造の高分子光ファイバーを容易に製造することができ、製造の際には糸切れが発生することなく連続的に紡糸を行うことができる。さらに、コア用光硬化性組成物及び/又はクラッド用光硬化性組成物として、特定の化合物を重合させたカチオン重合性樹脂又はラジカル重合性樹脂を必須成分として含む光硬化性組成物を用いた場合には、透明性、耐熱性、及び柔軟性に優れた高分子光ファイバーを得ることができる。従って、本発明の高分子光ファイバーの製造方法により得られる高分子光ファイバーは、品質面及びコスト面で非常に有利である。
本発明の高分子光ファイバーの製造方法における工程Aの一実施形態を示す概略図である。 二重管ノズルの一例を示す概略図(斜視図)である。 二重管ノズルの一例を示す概略図(図2におけるA−A断面図)である。 位置調整機構を備えた二重管ノズルの一例を示す概略図(二重管ノズルの径方向の断面図)である。 光照射装置の一例を示す概略図(平面図、3方向から照射する場合)である。 光照射装置の一例を示す概略図(平面図、2方向から照射する場合)である。 遮光筒の一例を示す概略図(斜視図)である。 遮光板(円板状の遮光板)の一例を示す概略図(斜視図)である。 遮光板(円錐状の遮光板)の一例を示す概略図(斜視図)である。 光照射装置から出射された光の広がり角ψを説明する概略図(側面図)である。 照射強度が最大となる光線の方向と光硬化性組成物の吐出方向に垂直な面とがなす角度θと光の広がり角ψの関係を説明する概略図(側面図)である。図11の(a)はθ≧ψ/2の場合、(b)はθ<ψ/2の場合の概略図である。 照射角度調整機構を備える光照射装置の一例を示す概略図(側面図)である。 本発明の高分子光ファイバーの製造方法における工程Aの一実施形態(落射方式の場合)を示す概略図である。 実施例で使用した高分子光ファイバーの製造装置及び該製造装置を用いた高分子光ファイバーの製造方法を示す概略図である。 コア−クラッド構造の高分子光ファイバーの一例を示す概略図であり、(a)は斜視図を示し、(b)は(a)におけるX−X断面図を示す。 本発明の高分子光ファイバーの製造方法を示す概略図(工程A及び工程Bをインラインで実施する場合)である。 光レオメーターにより測定されるグラフ(縦軸:貯蔵弾性率G′及び損失弾性率G″、横軸:時間)、並びに、当該グラフから求められるゲル化点及び硬化速度を説明する概略図である。
本発明の高分子光ファイバーの製造方法は、光硬化性組成物(光照射により硬化(重合)して硬化物を形成する組成物)に光を照射し硬化させることによって高分子光ファイバーを製造(紡糸)する方法であり、上記高分子光ファイバーの中でも、コアと該コアを被覆するクラッドとを有するコア−クラッド構造の高分子光ファイバーを製造する方法である。なお、本発明の高分子光ファイバーの製造方法により製造される高分子光ファイバーを、「本発明の高分子光ファイバー」と称する場合がある。
なお、本明細書では、高分子光ファイバーのコアを形成するための光硬化性組成物(「コア用光硬化性組成物」と称する場合がある)とクラッドを形成するための光硬化性組成物(「クラッド用光硬化性組成物」と称する場合がある)とを、「光硬化性組成物」と総称する場合がある。また、後述の工程Aにより得られる硬化物を「硬化物a」と称し、後述の工程Bにより得られる硬化物を「硬化物b」と称する場合がある。さらに、上記硬化物aと硬化物bを総称して単に「硬化物」と称する場合がある。
図15は、コア−クラッド構造の高分子光ファイバーの一例を示す概略図であり、(a)は斜視図を示し、(b)は(a)におけるX−X断面図を示す。図15に示すように、コア−クラッド構造の高分子光ファイバー100は、コア200がクラッド300により被覆された構造を有する。なお、本発明の高分子光ファイバーは、図15に示すコア200が単層構成のクラッド300により被覆された高分子光ファイバー100に限定されず、例えば、コアが2層以上の複層(多層)構成のクラッドにより被覆された高分子光ファイバーであってもよいし、高分子光ファイバーのクラッドの外側にさらに保護層を有する高分子光ファイバーであってもよい。
[光硬化性組成物]
本発明の高分子光ファイバーの製造方法において使用される光硬化性組成物(コア用光硬化性組成物、クラッド用光硬化性組成物)は、本発明の高分子光ファイバーのコア及びクラッドを構成する材料の前駆体であり、光を照射することによって硬化して硬化物を与える組成物である。上記光硬化性組成物としては、例えば、光の照射により速やかに硬化する、公知慣用の光硬化性組成物(ラジカル重合性組成物、カチオン重合性組成物、アニオン重合性組成物等)などを用いることができる。中でも、上記光硬化性組成物は、取り扱いが容易であり、かつ、一般的な光開始剤を使うことができる観点で、紫外線の照射により硬化して硬化物を与える光硬化性組成物(紫外線硬化性組成物)であることが好ましい。
上記光硬化性組成物は、室温(約25℃)において液体である。即ち、室温において流動性を有する液状物である。上記光硬化性組成物を高分子光ファイバーの原料として用いることにより、加熱や溶剤の使用により粘度を低下させることなく、室温で紡糸が可能となる。さらに、ろ過によって光硬化性組成物中の不純物を容易に除去することができるため、高品質の高分子光ファイバーを得やすい。一方、室温において固体である組成物(樹脂組成物)を光ファイバーの原料として使用した場合には、加熱や溶剤の使用により粘度を低下させない限り、室温における紡糸が困難であり、コスト面で不利となる。また、一般に、室温において固体である組成物(樹脂組成物)は、不純物の除去操作が煩雑である。
上記光硬化性組成物の25℃における粘度は、ノズルから吐出させることができればよく、特に限定されないが、10000〜500000cPが好ましく、より好ましくは10000〜100000cP、さらに好ましくは50000〜70000cPである。25℃における粘度が10000cP未満であると、ノズルから吐出させた光硬化性組成物が液滴状となりやすく、紡糸がしにくくなる傾向がある。一方、25℃における粘度が500000cPを超えると、ノズルから吐出させるために加熱や溶剤の使用により粘度を低下させることが必要となる場合がある。なお、上記の25℃における粘度は、例えば、E型粘度計(商品名「VISCONIC」、(株)トキメック製)を用いて測定することができる(ローター:1°34′×R24、回転数:0.5rpm、測定温度:25℃)。
上記光硬化性組成物は、後述のように、重合性化合物(例えば、カチオン重合性化合物、ラジカル重合性化合物など)を必須成分として含有し、さらに、重合開始剤(例えば、光カチオン重合開始剤、光ラジカル重合開始剤)を含有していてもよい。
上記光硬化性組成物は、酸化防止剤を含有していてもよい。即ち、上記コア用光硬化性組成物及び上記クラッド用光硬化性組成物のいずれか一方又は両方は酸化防止剤を含有していてもよい。特に、加熱による高分子光ファイバーの光損失の増大を抑制する観点では、少なくともコア用光硬化性組成物が酸化防止剤を含有することが好ましく、コア用光硬化性組成物とクラッド用光硬化性組成物の両方が酸化防止剤を含有することがより好ましい。
上記酸化防止剤としては、公知乃至慣用の酸化防止剤を使用することができ、特に限定されないが、例えば、フェノール系化合物(フェノール系酸化防止剤)、ヒンダードアミン系化合物(ヒンダードアミン系酸化防止剤)、リン系化合物(リン系酸化防止剤)、イオウ系化合物(イオウ系酸化防止剤)などが挙げられる。
上記フェノール系化合物としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−p−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のモノフェノール類;2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等のビスフェノール類;1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−s−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、トコフェノール等の高分子型フェノール類などが挙げられる。
上記ヒンダードアミン系化合物としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、メチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられる。
上記リン系化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールホスファイト、トリス(2、4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、ビス[2−t−ブチル−6−メチル−4−{2−(オクタデシルオキシカルボニル)エチル}フェニル]ヒドロゲンホスファイト等のホスファイト類;9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のオキサホスファフェナントレンオキサイド類などが挙げられる。
上記イオウ系化合物としては、例えば、ドデカンチオール、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネートなどが挙げられる。
なお、上記光硬化性組成物において酸化防止剤は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。また、上記酸化防止剤としては、例えば、商品名「イルガノックス1010」(BASF製、フェノール系化合物)、商品名「イルガフォス168」(BASF製、リン系化合物)などの市販品を使用することもできる。
中でも、上記酸化防止剤としては、フェノール系化合物、リン系化合物、イオウ系化合物が好ましく、特に、フェノール系化合物とリン系化合物又はイオウ系化合物とを併用することが好ましい。
上記光硬化性組成物における酸化防止剤の含有量(配合量)は、特に限定されないが、光硬化性組成物の全量(100重量%)に対して、0.1〜10重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量%、さらに好ましくは0.1〜1重量%である。酸化防止剤の含有量が上記範囲を外れると、高分子光ファイバーの光学特性が損なわれる傾向がある。特に、酸化防止剤の含有量が0.1重量%未満であると、ハンダリフロー処理等の高温処理によって高分子光ファイバーが熱劣化して光損失が増大したり、端面の形状変化(隆起等)が生じやすくなる場合がある。なお、2種以上の酸化防止剤を併用する場合には、これらの合計量が上記範囲に制御されることが好ましい。
特に、上記酸化防止剤として、フェノール系化合物とリン系化合物又はイオウ系化合物とを併用する場合、これらの含有量(配合量)の割合[フェノール系化合物/リン系化合物又はイオウ系化合物](重量比)は、特に限定されないが、0.1/1〜20/1が好ましく、より好ましくは0.5/1〜15/1、さらに好ましくは1/1〜10/1、特に好ましくは2/1〜5/1である。上記割合を上記範囲に制御することにより、高分子光ファイバーの耐熱性を著しく向上させることができる傾向がある。
上記光硬化性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じてその他の添加物を含有していてもよい。その他の添加物としては、例えば、硬化膨張性モノマー、光増感剤(アントラセン系増感剤等)、樹脂、密着性向上剤、補強剤、軟化剤、可塑剤、粘度調整剤、溶剤、無機又は有機粒子(ナノスケール粒子等)、フルオロシラン等の公知慣用の各種添加剤が挙げられる。
中でも、上記光硬化性組成物(コア用光硬化性組成物、クラッド用光硬化性組成物)としては、特に、カチオン重合性化合物を必須成分として含む(好ましくはさらに光カチオン重合開始剤を含む)光カチオン重合性組成物、ラジカル重合性化合物を必須成分として含む(好ましくはさらに光ラジカル重合開始剤を含む)光ラジカル重合性組成物が好ましい。
[光カチオン重合性組成物]
上記光カチオン重合性組成物は、重合性化合物として、カチオン重合性化合物を必須成分として含む組成物である。上記カチオン重合性化合物は、分子内(一分子中)に1個以上のカチオン重合性基を有する化合物である。上記カチオン重合性基としては、例えば、オキセタン環(オキセタニル基)、エポキシ環(オキシラニル基)、ビニルエーテル基、ビニルアリール基などが挙げられる。
上記カチオン重合性化合物の中でも、特に、高分子光ファイバーの透明性、耐熱性、柔軟性の観点で、下記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で、又はラジカル重合性を有する他の化合物と共にラジカル重合して得られるカチオン重合性樹脂(カチオン重合性重合体)が好ましい。即ち、上記光カチオン重合性組成物としては、下記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で又はラジカル重合性を有する他の化合物と共にラジカル重合して得られるカチオン重合性樹脂を必須成分として含む光硬化性樹脂組成物(光カチオン重合性樹脂組成物)が好ましい。上記光硬化性組成物(光カチオン重合性樹脂組成物)は低粘度であるため、加工性にも優れる傾向がある。なお、上記カチオン重合性樹脂は、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来するオキセタン環を分子内に含む。
なお、本明細書における「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルのいずれか一方又は両方を意味する。但し、オキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物における「(メタ)アクリル」には、アクリル及びメタクリルのほか、R1がメチル基及びエチル基以外のアルキル基であるCH2=CR1CO−の意味も包含されるものとする。
(オキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物)
上記オキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物は、下記式(1)で表される。
Figure 2014035427
[式(1)中、R1、R2は同一又は異なって水素原子又はアルキル基を示し、Aは炭素数2〜20の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基を示す。]
式(1)中、R1、R2におけるアルキル基としては、炭素数1〜6(C1-6)のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などの直鎖状のC1-6(好ましくはC1-3)アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、s−ペンチル基、t−ペンチル基、イソヘキシル基、s−ヘキシル基、t−ヘキシル基などの分岐鎖状のC1-6(好ましくはC1-3)アルキル基などが挙げられる。中でも、上記R1としては、水素原子又はメチル基が好ましく、上記R2としては、メチル基又はエチル基が好ましい。
式(1)中、Aは炭素数2〜20の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基を示す。中でも、優れた耐熱性と柔軟性とを兼ね備えた高分子光ファイバーを形成することができる点で、下記式(a1)で表される直鎖状アルキレン基、又は下記式(a2)で表される分岐鎖状アルキレン基が好ましい。なお、式(a2)の右端はエステル結合を構成する酸素原子と結合する。
Figure 2014035427
[式(a1)中、n1は2以上の整数を示す。式(a2)中、R3、R4、R7、R8は同一又は異なって水素原子又はアルキル基を示し、R5、R6は同一又は異なってアルキル基を示す。n2は、0以上の整数を示し、n2が2以上の整数の場合、2以上のR7、R8はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。]
式(a1)中のn1は2以上の整数を示し、好ましくは2〜20の整数であり、特に好ましくは2〜10の整数である。n1が1の場合、重合して得られる硬化物の柔軟性が低下する傾向がある。
式(a2)中のR3、R4、R5、R6、R7、R8におけるアルキル基としては、特に限定されないが、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの直鎖状のC1-4(好ましくはC1-3)アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などの分岐鎖状のC1-4(好ましくはC1-3)アルキル基などが挙げられる。中でも、上記R3、R4としては水素原子が好ましく、上記R5、R6としてはメチル基、エチル基が好ましい。
式(a2)中のn2は0以上の整数を示し、好ましくは1〜20の整数であり、特に好ましくは1〜10の整数である。
式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物の代表的な例としては、例えば、以下の化合物などが挙げられる。
Figure 2014035427
式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物は、例えば、下記式(2)
Figure 2014035427
[式(2)中、R2は上記に同じ。Xは脱離基を表す。]
で表される化合物と、下記式(3)
Figure 2014035427
[式(3)中、Aは上記に同じ。]
で表される化合物を、塩基性物質存在下、液相一相系で反応させて下記式(4)
Figure 2014035427
[式(4)、R2、Aは上記に同じ。]
で表されるオキセタン環含有アルコールを得、得られたオキセタン環含有アルコールを(メタ)アクリル化することにより合成することができる。
式(2)中、Xは脱離性基を示し、例えば、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子(中でも、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい);p−トルエンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基等のスルホニルオキシ基;アセチルオキシ基などのカルボニルオキシ基などの脱離性の高い基などが挙げられる。
上記塩基性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;水素化ナトリウム、水素化マグネシウム、水素化カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水素化物;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩;有機リチウム試薬(例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム等)、有機マグネシウム試薬(グリニャール試薬:例えば、MeMgBr、EtMgBr等)等の有機金属化合物などが挙げられる。上記塩基性物質は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
上記「液相一相系」とは、液相が二相以上あるものではなく一相のみの場合を意味し、液相が一相であれば固体を含んでいてもよい。上記溶媒としては、式(2)で表される化合物と、式(3)で表される化合物の両方を溶解することができればよく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;THF(テトラヒドロフラン)、IPE(イソプロピルエーテル)などのエーテル;DMSO(ジメチルスルホキシド)等の含硫黄系溶媒;DMF(ジメチルホルムアミド)等の含窒素系溶媒などが挙げられる。
上記(メタ)アクリル化は、例えば、上記オキセタン環含有アルコールに対して(メタ)アクリル酸又はその誘導体(例えば、(メタ)アクリル酸クロライドなど)を反応させる方法などの、公知乃至慣用の方法により実施できる。また、生成したオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物は、公知乃至慣用の方法により精製、単離することが可能である。
上記カチオン重合性樹脂は、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で、又はラジカル重合性を有する他の化合物と共にラジカル重合して得られる。なお、上記「ラジカル重合性を有する他の化合物」とは、ラジカル重合性を有し、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物及び後述のラジカル重合性樹脂とは異なる化合物であり、以下、「その他のラジカル重合性化合物」と称する場合がある。
上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物は、分子内にカチオン重合部位であるオキセタン環と、ラジカル重合部位である(メタ)アクリロイル基を有するため、単独でラジカル重合、又はその他のラジカル重合性化合物と共にラジカル共重合することにより、下記式で表される構造単位(繰り返し構造単位)を有するカチオン重合性樹脂を合成することができる。なお、上記ラジカル共重合には、ブロック共重合、ランダム共重合等が含まれる。
Figure 2014035427
[式中、R1、R2、Aは上記に同じ。]
上記カチオン重合性樹脂としては、中でも、より柔軟性に優れた硬化物を形成できる点で、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物とその他のラジカル重合性化合物をラジカル重合して得られる樹脂が好ましく、カチオン重合性樹脂を構成する全モノマーのうち、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物の占める割合が0.1重量%以上100重量%未満(より好ましくは1〜99重量%、さらに好ましくは10〜80重量%、特に好ましくは10〜50重量%)となる割合で、ラジカル共重合して得られるカチオン重合性樹脂が好ましい。
上記その他のラジカル重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルエーテル基、ビニルアリール基、ビニルオキシカルボニル基等のラジカル重合性基を分子内に1個以上有する化合物などが挙げられる。
(メタ)アクリロイル基を分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、1−ブテン−3−オン、1−ペンテン−3−オン、1−ヘキセン−3−オン、4−フェニル−1−ブテン−3−オン、5−フェニル−1−ペンテン−3−オン等、及びこれらの誘導体などが挙げられる。
(メタ)アクリロイルオキシ基を分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、n−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1−ビス(アクリロイルオキシ)エチルイソシアネート、2−(2−メタクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアネート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等、及びこれらの誘導体などが挙げられる。
(メタ)アクリロイルアミノ基を分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、4−アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−n−ブトキシメチルアクリルアミド、N−ヘキシルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド等、及びこれらの誘導体等が挙げられる。
ビニルエーテル基を分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシイソプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシイソブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシイソブチルビニルエーテル、1−メチル−3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、1−メチル−2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、1−ヒドロキシメチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールモノビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、1,3−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、1,2−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、p−キシレングリコールモノビニルエーテル、m−キシレングリコールモノビニルエーテル、o−キシレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、テトラエチレングリコールモノビニルエーテル、ペンタエチレングリコールモノビニルエーテル、オリゴエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ジプロピレングリコールモノビニルエーテル、トリプロピレングリコールモノビニルエーテル、テトラプロピレングリコールモノビニルエーテル、ペンタプロピレングリコールモノビニルエーテル、オリゴプロピレングリコールモノビニルエーテル、ポリプロピレングリコールモノビニルエーテル等、及びこれらの誘導体などが挙げられる。
ビニルアリール基を分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、スチレン、ジビニルベンゼン、メトキシスチレン、エトキシスチレン、ヒドロキシスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、酢酸4−ビニルフェニル、(4−ビニルフェニル)ジヒドロキシボラン、N−(p−ビニルフェニル)マレイミド等、及びこれらの誘導体などが挙げられる。
ビニルオキシカルボニル基を分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、ギ酸イソプロペニル、酢酸イソプロペニル、プロピオン酸イソプロペニル、酪酸イソプロペニル、イソ酪酸イソプロペニル、カプロン酸イソプロペニル、吉草酸イソプロペニル、イソ吉草酸イソプロペニル、乳酸イソプロペニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、アジピン酸ジビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等、及びこれらの誘導体などが挙げられる。
上記その他のラジカル重合性化合物としては、その他、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニルシラン類などを使用することも可能である。
上記その他のラジカル重合性化合物としては、中でも、柔軟性及び耐熱性に優れた高分子光ファイバーを形成することができる点で、分子内に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルアリール基、ビニルエーテル基、ビニルオキシカルボニル基からなる群より選ばれる官能基(ラジカル重合性基)を1個のみ有する化合物が好ましく、特に、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイルオキシ基を分子内に1個のみ有する化合物が好ましい。上記カチオン重合性樹脂のモノマー成分としてのその他のラジカル重合性化合物は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
ラジカル重合反応は、加熱処理及び/又は光照射(加熱処理及び光照射のいずれか一方又は両方)を行うことにより促進することができる。加熱処理を行う場合、その温度は、反応に供する成分や触媒の種類などに応じて適宜調整することができ、特に限定されないが、例えば、20〜200℃が好ましく、より好ましくは50〜150℃、さらに好ましくは70〜120℃程度である。光照射を行う場合、その光源としては、例えば、水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、メタルハライドランプ、太陽光、電子線源、レーザー光源等を使用することができる。また、光照射の後、例えば、50〜180℃程度の温度で加熱処理を施してさらにラジカル重合反応を進行させてもよい。
ラジカル重合反応は、通常、溶媒の存在下で行われる。溶媒としては、公知乃至慣用の溶媒を使用することができ、特に限定されないが、例えば、1−メトキシ−2−アセトキシプロパン(PGMEA)、ベンゼン、トルエンなどが挙げられる。
また、ラジカル重合反応には重合開始剤を使用してもよい。上記重合開始剤としては、公知乃至慣用の熱ラジカル重合開始剤、光ラジカル重合開始剤などのラジカル重合を起こし得るものを使用することができ、特に限定されないが、例えば、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2'−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル等を挙げることができる。
ラジカル重合反応における重合開始剤の使用量としては、特に限定されないが、ラジカル重合性化合物の全量(例えば、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物とその他のラジカル重合性化合物の総重量)(100重量部)に対して、例えば、0.01〜50重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量部である。
式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で又はその他のラジカル重合性化合物とともにラジカル重合(ラジカル重合反応)させることにより、上記カチオン重合性樹脂が生成する。生成させたカチオン重合性樹脂は、公知乃至慣用の方法により精製することができる。
上記カチオン重合性樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、500以上(例えば、500〜100万)が好ましく、より好ましくは3000〜50万である。カチオン重合性樹脂の重量平均分子量が上記範囲を外れると、カチオン重合性樹脂組成物を硬化して得られる高分子光ファイバーの柔軟性が得られにくくなる傾向がある。
上記カチオン重合性樹脂の数平均分子量は、特に限定されないが、100以上(例えば、100〜50万)が好ましく、より好ましくは300〜25万である。カチオン重合性樹脂の数平均分子量が上記範囲を外れると、カチオン重合性樹脂組成物を硬化して得られる高分子光ファイバーの柔軟性が得られにくくなる傾向がある。なお、上記カチオン重合性樹脂の重量平均分子量及び数平均分子量は、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により、標準ポリスチレン換算の値として測定することができる。
上記光カチオン重合性組成物が上記カチオン重合性樹脂を含む場合、上記カチオン重合性樹脂の割合(含有量)は、特に限定されないが、5重量%以上が好ましく、実質的にカチオン重合性樹脂組成物が上記カチオン重合性樹脂のみにより構成されていてもよい。中でも、より柔軟性に優れる高分子光ファイバーを形成できる点で、上記カチオン重合性樹脂の割合は、10〜95重量%が好ましく、より好ましくは40〜95重量%である。上記カチオン重合性樹脂の割合が5重量%を下回ると、カチオン重合により硬化して得られる高分子光ファイバーの柔軟性が低下する傾向がある。
上記光カチオン重合性組成物は、上記カチオン重合性化合物として、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物及び上記カチオン重合性樹脂以外の化合物(「その他のカチオン重合性化合物」と称する場合がある)を含んでいてもよい。上記その他のカチオン重合性化合物としては、例えば、オキセタン環、エポキシ環、ビニルエーテル基、ビニルアリール基などのカチオン重合性基を分子内に1個以上有する化合物が挙げられる。
オキセタン環を分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、3,3−ビス(ビニルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−[(フェノキシ)メチル]オキセタン、3−エチル−3−(ヘキシルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(クロロメチル)オキセタン、3,3−ビス(クロロメチル)オキセタン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、ビス{[1−エチル(3−オキセタニル)]メチル}エーテル、4,4’−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビシクロヘキシル、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]シクロヘキサン、1,4−ビス{〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕メチル}ベンゼン、3−エチル−3{〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタンなどが挙げられる。
エポキシ環を分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシルレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル類;フェノール、クレゾール、ブチルフェノールまたはこれらにアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル類;高級脂肪酸のグリシジルエステル類などが挙げられる。
ビニルエーテル基を分子内に1個以上有する化合物、ビニルアリール基を分子内に1個以上有する化合物としては、上記その他のラジカル重合性化合物として例示したものと同様の化合物などが挙げられる。
上記その他のカチオン重合性化合物としては、中でも、光照射により速やかに硬化する点で、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3,3−ビス(ビニルオキシメチル)オキセタン、1,4−ビス{〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕メチル}ベンゼン、3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン等のオキセタン環を分子内に1個以上有する化合物が好ましい。なお、上記その他のカチオン重合性化合物は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
上記光カチオン重合性組成物においては、カチオン重合性化合物として、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を使用することもできる。
上記カチオン重合性樹脂組成物は、より柔軟性に優れる高分子光ファイバーを形成することができる点で、上記カチオン重合性樹脂と上記その他のカチオン重合性化合物を含むことが好ましい。カチオン重合性樹脂とその他のカチオン重合性化合物の配合比(前者/後者:重量比)としては、特に限定されないが、95/5〜10/90が好ましく、より好ましくは95/5〜20/80、さらに好ましくは95/5〜40/60である。カチオン重合性樹脂の配合割合が上記範囲を下回ると、得られる高分子光ファイバーの柔軟性が低下する傾向がある。
上記光カチオン重合性組成物は、必要に応じて重合開始剤を含有していてもよい。上記重合開始剤としては、公知慣用の光カチオン重合開始剤、光酸発生剤等のカチオン重合を起こし得るものを使用することができ、特に限定されないが、例えば、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等のスルホニウム塩;ジアリールヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ヨードニウム[4−(4−メチルフェニル−2−メチルプロピル)フェニル]ヘキサフルオロホスフェート等のヨードニウム塩;テトラフルオロホスホニウムヘキサフルオロホスフェート等のホスホニウム塩;ピリジニウム塩などが挙げられる。
本発明においては、重合開始剤として、商品名「CPI−100P」(サンアプロ(株)製)、商品名「CPI−101A」(サンアプロ(株)製)などの市販品を使用することもできる。
上記光カチオン重合性組成物における重合開始剤の含有量(配合量)は、特に限定されないが、カチオン重合性化合物の全量(例えば、カチオン重合性樹脂と他のカチオン重合性化合物の総重量)(100重量部)に対して、0.01〜50重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量部である。
上記光カチオン重合性組成物は、上述のように、酸化防止剤やその他の添加剤などを含んでいてもよい。
[光ラジカル重合性組成物]
上記光ラジカル重合性組成物は、上述のように、ラジカル重合性化合物を必須成分として含む組成物である。上記ラジカル重合性化合物は、分子内(一分子中)に1個以上のラジカル重合性基を有する化合物である。上記ラジカル重合性基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルアリール基、ビニルエーテル基、ビニルオキシカルボニル基などが挙げられる。
上記ラジカル重合性化合物の中でも、特に、高分子光ファイバーの透明性、耐熱性、柔軟性の観点で、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で、又はカチオン重合性を有する他の化合物(その他のカチオン重合性化合物)と共にカチオン重合して得られるラジカル重合性樹脂(ラジカル重合性重合体)が好ましい。即ち、上記光ラジカル重合性組成物としては、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で、又はその他のカチオン重合性化合物と共にカチオン重合して得られるラジカル重合性樹脂を必須成分として含む光硬化性樹脂組成物(光ラジカル重合性樹脂組成物)が好ましい。なお、上記ラジカル重合性樹脂は、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来するCH2=CR1CO−基を分子内に有する。
上記ラジカル重合性樹脂は、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で、又はその他のカチオン重合性化合物と共にカチオン重合して得られる。
上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物は、1分子内にカチオン重合部位であるオキセタン環と、ラジカル重合部位である(メタ)アクリロイル基を有するため、単独でカチオン重合、又はその他のカチオン重合性化合物と共にカチオン共重合することにより、下記式で表される構造単位(繰り返し構造単位)を有するラジカル重合性樹脂を合成することができる。なお、上記カチオン共重合には、ブロック共重合、ランダム共重合等が含まれる。
Figure 2014035427
[式中、R1、R2、Aは上記に同じ。]
上記ラジカル重合性樹脂としては、中でも、より柔軟性に優れた高分子光ファイバーを形成できる点で、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物とその他のカチオン重合性化合物をカチオン共重合して得られるラジカル重合性樹脂が好ましい。特に、ラジカル重合性樹脂を構成する全モノマーのうち、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物の占める割合が0.1重量%以上(好ましくは1〜99重量%、特に好ましくは10〜80重量%)となる割合で、カチオン共重合して得られる樹脂が好ましい。
上記その他のカチオン重合性化合物としては、例えば、上記光カチオン重合性組成物の項で例示した、オキセタン環、エポキシ環、ビニルエーテル基、ビニルアリール基等のカチオン重合性基を分子内に1個以上有する化合物などが挙げられる。
上記他のカチオン重合性化合物としては、中でも、柔軟性及び耐熱性に優れた硬化物を形成することができる点で、分子内にオキセタン環、エポキシ環、ビニルエーテル基、ビニルアリール基からなる群より選ばれる官能基(カチオン重合性基)を1個のみ有する化合物が好ましく、特に、トリメチレンオキシド、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−[(フェノキシ)メチル]オキセタン、3−エチル−3−(ヘキシロキシメチル)オキセタン等のオキセタン環を分子内に1個のみ有する化合物、グリシジルメチルエーテル、酪酸(R)−グリシジル等のエポキシ基を分子内に1個のみ有する化合物等が好ましい。上記その他のカチオン重合性化合物は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
カチオン重合反応は、一般に溶媒の存在下で行われる。溶媒としては、公知乃至慣用の溶媒を使用することができ、特に限定されないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
また、カチオン重合反応には重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤としては、例えば、カチオン重合性樹脂組成物の項で例示した光カチオン重合開始剤、酸発生剤等を用いることができる。
カチオン重合反応における重合開始剤の使用量は、特に限定されないが、カチオン重合性化合物の全量(例えば、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物とその他のカチオン重合性化合物の総重量)(100重量部)に対して、例えば、0.01〜50重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量部である。
また、カチオン重合反応は重合禁止剤の存在下で行ってもよい。重合禁止剤としては、例えば、4−メトキシフェノール、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ジメチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、p−t−ブチルカテコール、モノ−t−ブチルハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ナフトキノン、2,5−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、α−ナフトール、ニトロフェノール等のキノン・フェノール系禁止剤、チオエーテル系禁止剤、亜リン酸エステル系禁止剤などが挙げられる。
式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で又はその他のカチオン重合性化合物とともにカチオン重合(カチオン重合反応)させることにより、上記ラジカル重合性樹脂が生成する。生成させたラジカル重合性樹脂は、公知乃至慣用の方法により精製することができる。
上記ラジカル重合性樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、500以上(例えば、500〜100万程度)が好ましく、より好ましくは3000〜50万である。ラジカル重合性樹脂の重量平均分子量が上記範囲を下回ると、ラジカル重合して得られる高分子光ファイバーの柔軟性が低下する傾向がある。
上記ラジカル重合性樹脂の数平均分子量は、特に限定されないが、100以上(例えば、100〜50万)が好ましく、より好ましくは300〜25万である。ラジカル重合性樹脂の数平均分子量が上記範囲を外れると、ラジカル重合性樹脂組成物を硬化して得られる高分子光ファイバーの柔軟性が得られにくくなる傾向がある。なお、上記ラジカル重合性樹脂の重量平均分子量及び数平均分子量は、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により、標準ポリスチレン換算の値として測定することができる。
上記光ラジカル重合性組成物が上記ラジカル重合性樹脂を含む場合、上記ラジカル重合性樹脂の割合(含有量)は、特に限定されないが、5重量%以上が好ましく、実質的に光ラジカル重合性組成物が上記ラジカル重合性樹脂のみにより構成されていてもよい。中でも、より柔軟性に優れる高分子光ファイバーを形成できる点で、上記ラジカル重合性樹脂の割合は、10重量%以上が好ましく、より好ましくは60〜90重量%である。上記ラジカル重合性樹脂の割合が5重量%を下回ると、ラジカル重合により硬化して得られる高分子光ファイバーの柔軟性が低下する傾向がある。
上記光ラジカル重合性組成物は、上記ラジカル重合性化合物として、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物及び上記ラジカル重合性樹脂以外の化合物(その他のラジカル重合性化合物)を含んでいてもよい。上記その他のラジカル重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルアリール基、ビニルエーテル基、ビニルオキシカルボニル基などのラジカル重合性基を分子内に1個以上有する化合物が挙げられる。
上記その他のラジカル重合性化合物としては、具体的には、例えば、上記光カチオン重合性組成物の項で例示した化合物が挙げられる。
上記その他のラジカル重合性化合物としては、中でも、より優れた耐熱性を有する硬化物を形成することができる点で、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等の分子内に(メタ)アクリロイルオキシ基を2個以上(特に2個)有する化合物が好ましい。上記その他のラジカル重合性化合物は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
上記光ラジカル重合性組成物においては、ラジカル重合性化合物として、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を使用することもできる。
上記光ラジカル重合性組成物は、より優れた耐熱性を有する高分子光ファイバーを形成できる点で、上記ラジカル重合性樹脂と上記その他のラジカル重合性化合物を含むことが好ましい。上記ラジカル重合性樹脂とその他のラジカル重合性化合物の配合比(前者/後者:重量比)としては、例えば、95/5〜5/95が好ましく、より好ましくは95/5〜20/80、さらに好ましくは90/10〜60/40である。ラジカル重合性樹脂の配合割合が上記範囲を外れると、得られる高分子光ファイバーの柔軟性が低下する傾向がある。
上記光ラジカル重合性組成物は、必要に応じて重合開始剤を含有していてもよい。上記重合開始剤としては、公知乃至慣用の光ラジカル重合開始剤などのラジカル重合を起こし得るものを使用することができ、特に限定されない。
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノンベンジル、ベンジルジメチルケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ジメトキシアセトフェノン、ジメトキシフェニルアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ジフェニルジサルファイトなどが挙げられる。上記光ラジカル重合開始剤は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
上記光ラジカル重合性組成物は、光吸収エネルギーの重合開始遊離基への転換を強めるための相乗剤を含んでいてもよい。上記相乗剤としては、例えば、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、ジメチルアミノ安息香酸、ジメチルアミノ安息香酸メチル等のアミン;チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、アセチルアセトン等のケトンなどが挙げられる。
上記光ラジカル重合性組成物が重合開始剤を含有する場合、その含有量(配合量)としては、光ラジカル重合性組成物中のラジカル重合性化合物の全量(例えば、ラジカル重合性樹脂とその他のラジカル重合性化合物の総重量)(100重量部)に対して、0.01〜50重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量部である。
上記光ラジカル重合性組成物は、上述のように、酸化防止剤やその他の添加剤などを含んでいてもよい。
[コア用光硬化性組成物とクラッド用光硬化性組成物の組み合わせ]
本発明の高分子光ファイバーの製造方法においては、高分子光ファイバーの原料として使用される光硬化性組成物の中でも、コア用光硬化性組成物及びクラッド用光硬化性組成物として、コア用光硬化性組成物の硬化速度がクラッド用光硬化性組成物の硬化速度よりも速いもの(組み合わせ)を使用することが重要である。なお、コア用光硬化性組成物の硬化速度、クラッド用光硬化性組成物の硬化速度としては、それぞれについて同条件で硬化させた場合の硬化完了までの速度を採用することができ、例えば、光硬化性組成物(コア用光硬化性組成物、クラッド用光硬化性組成物)に対して照射される照射強度が150mW/cm2となるような光(紫外線)を照射した場合の光照射開始から硬化完了までの時間を硬化速度(単位:秒)として測定することができる。硬化完了までの時間は、例えば、DSCや光レオメーターなどを用いて測定できる。
より具体的には、光硬化性組成物の硬化速度は、例えば、下記の手順で測定することができる。
(DSCによる光硬化性組成物の硬化速度の測定)
アルミニウム製パンに光硬化性組成物(コア用光硬化性組成物、クラッド用光硬化性組成物)を約2mg入れ、窒素気流下(50mL/分)、25℃において、光硬化性組成物に対して照射される光の照射強度が150mW/cm2となるように光量を調整したUV照射器(浜松ホトニクス(株)製、「LC8」)からの光を照射し、光照射開始から発熱終了までの時間を示差走査熱量分析装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製、「Q2000」)により測定する。なお、照射強度は、DSCで検出される光量が150mW/cm2となるように光照射装置の出力を調整することにより調整した。そして、上記時間を光硬化性組成物の硬化速度(秒:光照射開始から発熱終了(硬化完了)までに要する時間)とする。
また、光硬化性組成物の硬化速度は、上記手順のほか、光レオメーターなどのその他の測定手段によっても測定することができる。特に、光ラジカル重合性組成物は硬化速度が速いため、硬化速度の測定には光レオメーターを用いることが好ましい。光レオメーターを用いた硬化速度の測定では、縦軸を貯蔵弾性率G′及び損失弾性率G″とし、横軸を時間としたグラフにおける貯蔵弾性率G′と損失弾性率G″の交点をゲル化点として、光照射開始から上記ゲル化点までの時間を硬化速度(秒:光照射開始からゲル化までに要する時間)とする。図17は、光レオメーターにより測定されるグラフ(縦軸:貯蔵弾性率G′及び損失弾性率G″、横軸:時間)、並びに、当該グラフにより求められるゲル化点及び硬化速度を説明する概略図である。光レオメーターによる硬化速度の測定は、具体的には、例えば、下記の手順で測定することができる。
(光レオメーターによる光硬化性組成物の硬化速度の測定)
〔分析装置〕
光照射装置(UV照射装置):商品名「LC8」、浜松ホトニクス(株)製
レオメーター:商品名「MCR30」、(株)アントンパール・ジャパン製
〔測定条件〕
UV照射強度:150mW/cm2
UV照射時間:1秒又は2秒
設定温度:25℃一定
サンプルサイズ:12mmφ
ギャップ:0.125mm
ひずみ:0.1%
周波数:1Hz
本発明の高分子光ファイバーの製造方法では、高分子光ファイバーの原料である光硬化性組成物として、上述のコア用光硬化性組成物の硬化速度がクラッド用光硬化性組成物よりも速いもの(組み合わせ)を使用することにより、後述の工程Aにおいてコア用光硬化性組成物がクラッド用光硬化性組成物により被覆された状態の光硬化性組成物に光を照射して硬化させた場合にも、コア用光硬化性組成物の硬化反応を十分に進行させることができる。通常、コア用光硬化性組成物がクラッド用光硬化性組成物により被覆された状態の光硬化性組成物に光を照射した場合、クラッド用光硬化性組成物によりコア用光硬化性組成物に照射される光が弱められ、コアの未硬化の問題が生じる。このような未硬化の問題は、例えば、光量の高い光を使用することが望ましくない場合(例えば、後述のノズルの吐出口における光の照射強度を0.2mW/cm2以下に制御する場合など)に、顕著に生じ得る。
上記手順(例えば、照射強度が150mW/cm2となるような光(例えば、紫外線)を照射した場合)で測定されるコア用光硬化性組成物の硬化速度とクラッド用光硬化性組成物の硬化速度の差[=(クラッド用光硬化性組成物の硬化速度:秒)−(コア用光硬化性組成物の硬化速度:秒)]は、特に限定されないが、0秒を超え100秒以下が好ましく、より好ましくは5〜90秒、さらに好ましくは10〜80秒である。上記差が0秒以下であると、コアの未硬化の不具合が生じる。一方、上記差が100秒を超えると、クラッドの未硬化となりやすい場合がある。
上記手順(例えば、照射強度が150mW/cm2となるような光(例えば、紫外線)を照射した場合)で測定される上記コア用光硬化性組成物の硬化速度は、特に限定されないが、60秒以下が好ましく、より好ましくは50秒以下、さらに好ましくは40秒以下である。上記コア用光硬化性組成物の硬化速度が60秒を超えると、高分子光ファイバーのコアが未硬化となって、高分子光ファイバーを形成(紡糸)できなかったり、得られた高分子光ファイバーが変形しやすくなる場合がある。
上記手順(例えば、照射強度が150mW/cm2となるような光(例えば、紫外線)を照射した場合)で測定される上記クラッド用光硬化性組成物の硬化速度は、特に限定されないが、120秒以下が好ましく、より好ましくは100秒以下、さらに好ましくは90秒以下である。上記クラッド用光硬化性組成物の硬化速度が120秒を超えると、高分子光ファイバーの生産性が低下する場合がある。
上記コア用光硬化性組成物とクラッド用光硬化性組成物の組み合わせの具体的態様としては、例えば、下記(i)〜(iii)の組み合わせなどが挙げられる。
(i)コア用光硬化性組成物として光ラジカル重合性組成物(特に、上述の光ラジカル重合性樹脂組成物)を用い、クラッド用光硬化性組成物として光カチオン重合性組成物(特に、上述の光カチオン重合性樹脂組成物)を用いる組み合わせ
(ii)コア用光硬化性組成物として光カチオン重合性組成物(特に、上述の光カチオン重合性樹脂組成物)を用い、クラッド用光硬化性組成物として光カチオン重合性組成物(特に、上述の光カチオン重合性樹脂組成物)を用いる組み合わせ
(iii)コア用光硬化性組成物として光ラジカル重合性組成物(特に、上述の光ラジカル重合性樹脂組成物)を用い、クラッド用光硬化性組成物として光ラジカル重合性組成物(特に、上述の光ラジカル重合性樹脂組成物)を用いる組み合わせ
通常、光ラジカル重合性組成物の硬化速度は光カチオン重合性組成物の硬化速度よりも速いため、上記(i)の組み合わせとした場合には、コア用光硬化性組成物の硬化速度がクラッド用光硬化性組成物の硬化速度よりも速いものとなる。一般に、光ラジカル重合性組成物の硬化速度は、硬化反応により生じるラジカルの安定性などに相関する。また、一般に、光カチオン重合性組成物の硬化速度は、光カチオン重合開始剤や光酸発生剤の種類(例えば、光を照射した際に発生する酸の濃度や酸性度など)、カチオン重合性基の求核性などに相関する。
上記(ii)の組み合わせにおいて、コア用光硬化性組成物の硬化速度がクラッド用光硬化性組成物の硬化速度よりも速くなる組み合わせとするためには、例えば、コア用光硬化性組成物全体における官能基(カチオン重合性基)当量を多くすること、生成する酸の濃度が高い光カチオン重合開始剤や光酸発生剤をコア用光硬化性組成物において使用(選択)すること[例えば、硬化させるための光(例えば、紫外線)に対する感度の高い光カチオン重合開始剤や光酸発生剤をコア用光硬化性組成物において使用(選択)すること、光カチオン重合開始剤や光酸発生剤の含有量をコア用光硬化性組成物において増量することなど]、生成する酸の酸性度が高い光カチオン重合開始剤や光酸発生剤をコア用光硬化性組成物において使用(選択)すること[例えば、光を照射することによって生成する酸のカウンターアニオンの求核性が低い光カチオン重合開始剤や光酸発生剤をコア用光硬化性組成物において使用(選択)することなど]などの手段を利用可能である。また、カチオン重合性基としてビニルエーテル基、オキセタン環、脂環式エポキシ基(シクロヘキサン環などの脂肪族炭化水素環における隣接する2つの炭素原子と1つの酸素原子により形成されたエポキシ基)などを有するカチオン重合性化合物と、グリシジル基を有するカチオン重合性化合物とを比較すると、前者の方が硬化速度が速い傾向があるため、コア用光硬化性組成物の構成成分として前者を多く使用することなどによっても、硬化速度の速いコア用光硬化性組成物を得ることが可能である。
上記(iii)の組み合わせにおいて、コア用光硬化性組成物の硬化速度がクラッド用光硬化性組成物の硬化速度よりも速くなる組み合わせとするためには、例えば、コア用光硬化性組成物全体における官能基(ラジカル重合性基)当量を多くすること、コア用光硬化性組成物における光ラジカル重合開始剤の濃度を高くすること、硬化させるための光(例えば、紫外線)に対する感度の高い光ラジカル重合開始剤をコア用光硬化性組成物において使用(選択)すること、などの手段を利用可能である。
但し、本発明の高分子光ファイバーの製造方法において使用するコア用光硬化性組成物とクラッド用光硬化性組成物の組み合わせは、上記(i)〜(iii)に限定されるものではない。
[工程A]
本発明の高分子光ファイバーの製造方法は、コア用光硬化性組成物とクラッド用光硬化性組成物とを、上記コア用光硬化性組成物が上記クラッド用光硬化性組成物により被覆された状態で同時にノズルから糸状(ファイバー状)に吐出し、その後、光を照射して硬化させる工程Aを必須の工程として含有する。
図1は、本発明の高分子光ファイバーの製造方法における工程Aの一実施形態を示す概略図である。図1に示す本発明の高分子光ファイバーの製造方法においては、ノズル1と、該ノズル1の先端部分の吐出口11の下方で光を出射するように配置された光照射装置4が使用されている。なお、図1における光照射装置4は、光を出力する光源装置43、該光を伝送するライトガイド42、及び端部(出力端)より光を出射するライトガイド先端部41より構成されている。なお、図1の右側の光照射装置は、ライトガイドの一部と光源装置を省略して描いているが、左側の光照射装置4と同じものを表し、その他の図面においても同様である。また、図1における51及び52は、後述の、ノズル1の吐出口11における光の照射強度を0.2mW/cm2以下に制御するための手段(制御手段)としての遮光部材(51:遮光筒、52:遮光板)を表す。
図1に示す本発明の高分子光ファイバーの製造方法における工程Aでは、まず、ノズル1の吐出口11から鉛直方向下方に光硬化性組成物2を吐出し、次いで、ノズル1より垂下した該光硬化性組成物2に対し、光照射装置4により光を照射する。これにより、光硬化性組成物2が硬化し、糸状の硬化物a(3)が得られる。本発明の高分子光ファイバーの製造方法においては、ノズル1から吐出した光硬化性組成物2は、コア用光硬化性組成物がクラッド用光硬化性組成物により被覆された形態を有する。即ち、光硬化性組成物2は、硬化させることにより得られるコア−クラッド構造の高分子光ファイバーの形態(コアがクラッドにより被覆された形態)に対応する形態を有する光硬化性組成物である。
(ノズル)
本発明の高分子光ファイバーの製造方法における工程Aにて使用するノズルは、その内側に光硬化性組成物を通液し、コア用光硬化性組成物とクラッド用光硬化性組成物とを、上記コア用光硬化性組成物が上記クラッド用光硬化性組成物により被覆された状態で同時に吐出口から糸状に吐出する役割を担う。上記ノズルとしては、例えば、外管と、該外管の内側に配置された内管とを有する二重管ノズルなどの多重管構造を有するノズル(「多重管ノズル」と称する場合がある)などが挙げられる。上記ノズルの吐出口から吐出された光硬化性組成物は、通常、細い径を有する糸状(ファイバー状)に形成される。
上記ノズルは、通常、筒状(中空の柱状)の形状を有し、その先端(一方の端部)に光硬化性組成物(コア用光硬化性組成物、クラッド用光硬化性組成物)を吐出するための吐出口を有し、なおかつ上述のように多重管構造を有する構造体である。上記ノズルの吐出口に対する反対側の端部は、特に限定されないが、通常、必要に応じて適宜な管を介して、光硬化性組成物を貯蔵するタンクや定量ポンプなどに接続される。
上記ノズルの形状(内管、外管等の各管の形状)は、筒状であればよく、特に限定されないが、例えば、円筒状であってもよいし、角筒状であってもよい。中でも、低伝播損失の高分子光ファイバーを作製する観点で、円筒状が好ましい。
上記ノズルの材質(内管、外管等の各管の材質)は、特に限定されず、例えば、SUS、アルミ、樹脂などが挙げられる。中でも、耐久性、強度の観点で、SUSが好ましい。
上記ノズルの具体例として例示した二重管ノズルは、筒状(特に、円筒状)の外管の内側に、該外管の内径よりも小さな外径を有する筒状(特に、円筒状)の内管が配置された二重管構造を有するノズルである。図2及び図3は、二重管ノズルの一例を示す概略図であり、図2は斜視図を、図3は図2におけるA−A断面図を表す。図2及び図3において、12は外管を、13は内管を表す。このような二重管ノズルを用いた場合、内管13の内側にコア用光硬化性組成物を通液し、外管12と内管13の間にクラッド用光硬化性組成物を通液することにより、コア用光硬化性組成物とクラッド用光硬化性組成物とを同時に、かつコア用光硬化性組成物がクラッド用光硬化性組成物に被覆された状態で、ノズルの吐出口11から糸状に吐出することができる。次いで、これら光硬化性組成物(コア用光硬化性組成物及びクラッド用光硬化性組成物)に光を照射し硬化させることによって、一段階でコア−クラッド構造を有する高分子光ファイバー(コアとクラッドの二重(二層)構造の高分子光ファイバー)を製造することができる。このため、コアとクラッドとの中心(中心軸)が精度良く合った高分子光ファイバーが得られる。
上記二重管ノズルにおける外管の径(内径及び外径)、内管の径(内径及び外径)は、製造される高分子光ファイバーのコア径及びクラッド径、光硬化性組成物の粘度や吐出速度等により適宜選択することができ、特に限定されない。具体的には、例えば、上記二重管ノズルにおける外管の内径は、2〜8mmが好ましく、より好ましくは2.4〜5.4mmである。さらに、上記二重管ノズルにおける内管の外径は、例えば、1〜7mmが好ましく、より好ましくは1.5〜4mmであり、上記内管の内径は、例えば、0.6〜6.4mmが好ましく、より好ましくは1.1〜3.4mmである。
上記二重管ノズルは、少なくとも吐出口側の先端部分において、外管の軸(中心軸)と内管の軸(中心軸)とが一致していることが好ましい。このような二重管ノズルを用いることにより、コアの中心軸とクラッドの中心軸とが一致した高分子光ファイバーを容易に製造することができる。このように中心軸が一致した高分子光ファイバーは、高分子光ファイバー同士の接続や他のデバイス(例えば、コネクターや光源装置など)との接続に際して、高い信頼性を発揮できる。
上記二重管ノズルは、外管の軸と内管の軸とを一致させるために、外管の内側における内管の位置を調整するための調整機構(「位置調整機構」と称する場合がある)を有していることが好ましい。上記位置調整機構は、内管の位置を調整できるものであれば特に限定されないが、例えば、外管を貫通し、先端を内管の外面に接触させるように配置したねじ(調整用ねじ)を、簡便な位置調整機構として利用することができる。図4は、位置調整機構を備えた二重管ノズルの一例を表す概略図(二重管ノズルの径方向の断面図)である。図4において、14は調整用ねじを表す。図4においては、3つの調整用ねじの先端を、内管に対して等間隔に接触させることによって位置調整機構が構成されており、これら調整用ねじのねじ込み具合をそれぞれ調節して、外管の内側における内管の位置を調整できる。但し、用いる調整用ねじの大きさ、数、配置の仕方等は、これに限定されるものではない。
なお、本発明の高分子光ファイバーの製造方法における工程Aにて使用されるノズルは、上記の二重管ノズルに限定されず、三重管以上の多重管構造を有するノズルであってもよい。上記ノズルは、製造する高分子光ファイバーの構造や形状に応じて、適宜選択することができる。
(光硬化性組成物に対する光照射)
工程Aにおいては、上記ノズルから吐出された糸状の光硬化性組成物(コア用光硬化性組成物及びクラッド用光硬化性組成物)に対して光を照射する。これにより、上記ノズルの吐出口から伸びた糸状の光硬化性組成物を硬化させて、コア用光硬化性組成物の硬化物がクラッド用光硬化性組成物の硬化物により被覆された構造を有する糸状の硬化物(硬化物a)が得られる。
光硬化性組成物に対して照射する光としては、光硬化性組成物の重合反応を進行させて硬化させることができる光であればよく、特に限定されないが、例えば、紫外線、赤外線、可視光線、電子線などが挙げられる。中でも、一般的な光開始剤を使うことができる観点で、紫外線が好ましい。
光硬化性組成物に対して光を照射する手段は、特に限定されないが、例えば、光硬化性組成物を硬化させることができる光(特に、紫外線)を出射(放射)し光硬化性組成物に照射することができる、公知乃至慣用の光照射装置を用いることが好ましい。具体的には、例えば、紫外線を出射する光照射装置(紫外線照射装置)としては、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアーク、メタルハライドランプ、太陽光、LEDランプ、レーザーなどの光源を用いることができる。また、これらの光源と、該光源より出力した光を伝送するためのライトガイドを組み合わせたもの、及びこれらと各種光学系(例えば、レンズやミラーなど)等を組み合わせたもの等を、光照射装置として用いることができる。
なお、本明細書においては、上記光照射装置の中で、特に、光を出射する部分のことを「出射部」と称する場合がある。例えば、図1に示す光照射装置4においては、ライトガイドの先端部分41の端部(出力端)が出射部である。
工程Aにおいて光硬化性組成物に対して光を照射する方法は、特に限定されず、公知乃至慣用の方法(光照射の方法)により実施可能である。例えば、上記光照射装置を用いて光を照射する場合、上記光照射装置の出射部の配置や数は、特に限定されない。特に、光硬化性組成物に対して光を均一に照射できるように光照射装置の出射部を配置することが好ましい。図5は、本発明の高分子光ファイバーの製造方法における工程Aにて使用可能な光照射装置の一例を示す概略図(平面図)である。図5に示す光照射装置は、ノズルの吐出口の下方において3方向から光を出射し、光硬化性組成物に対して照射する光照射装置である。上記光照射装置は、光硬化性組成物に対して等距離で、互いに等間隔に配置された出射部(ライトガイドの先端部分41の出力端)を有する。図5において、21は光硬化性組成物が通過する位置を表し、44及び45は、光照射装置のライトガイドの先端部分41を固定するための土台(支持体)を表す。但し、光照射装置は、これに限定されるものではなく、例えば、図6に示す光照射装置のように、2方向から光を照射するものであってもよいし、1つの方向のみや、4つ以上の方向から光を照射するもの等であってもよい。また、光照射装置は、ノズルの吐出口の下方において光を出射するものに限らず、ノズルの吐出口よりも上方から光を出射するものであってもよい(例えば、図13参照)。
さらに、上記光照射装置は、光を光硬化性組成物に対して効率的に照射するため、必要に応じて、適宜な光学系と組み合わせて使用してもよい。具体的には、例えば、上記光照射装置からの光を集光レンズ(凸レンズやシリンドリカルレンズなど)で集光して、より強度の高い光を光硬化性組成物に照射したり、いったん光硬化性組成物に照射した光をミラー(反射ミラー)により反射させて、再度光硬化性組成物に照射することも可能である。上記光学系を用いることで、光の有効利用を図ることができ、高分子光ファイバーの生産性を向上させることができる。上記光学系としては、上記に限定されるものではなく、公知乃至慣用の光学機器等において通常用いられる光学系等を利用することができる。
本発明の高分子光ファイバーの製造方法における工程Aでは、まず、上記ノズルの吐出口から光硬化性組成物を(例えば、鉛直方向下方に)吐出する。この際のコア用光硬化性組成物とクラッド用光硬化性組成物の合計の吐出速度(送り速度)は、特に限定されないが、例えば、0.3〜1mL/分が好ましく、より好ましくは0.375〜0.6mL/分である。また、コア用光硬化性組成物とクラッド用光硬化性組成物の吐出速度をそれぞれ独立に制御することにより、高分子光ファイバーのコア径とクラッド径を独立に制御できる。なお、吐出速度の制御には、例えば、定量ポンプ(例えば、図14の71、72)などを用いることができる。
次いで、ノズルの吐出口より吐出させた糸状の光硬化性組成物(コア用光硬化性組成物及びクラッド用光硬化性組成物)に対し、光を照射する。この際の光の照射強度は、特に限定されないが、例えば、光硬化性組成物に対する照射強度として、1000〜5000mW/cm2が好ましく、より好ましくは1500〜2000mW/cm2である。照射強度が1000mW/cm2未満であると、特にコアが未硬化となりやすく、紡糸不良が生じたり、硬化物aの形状が変形しやすく取り扱いが困難となる場合がある。一方、照射強度が5000mW/cm2を超えると、ノズルの吐出口における光の照射強度を0.2mW/cm2以下に制御することが困難となる場合がある。
本発明の高分子光ファイバーの製造方法における工程Aにおいては、上記ノズルの吐出口における光の照射強度(以下、単に「吐出口における光の照射強度」と称する場合がある)を0.2mW/cm2以下に制御することが好ましい。上記吐出口における光の照射強度を0.2mW/cm2以下に制御することにより、線径が均一な高分子光ファイバーを取得でき、製造の際に糸切れが起こることなく、高い生産性で高分子光ファイバーを製造できる傾向がある。
なお、上記「吐出口における光の照射強度」とは、本発明の高分子光ファイバーの製造方法において、光硬化性組成物を送液しないこと以外は高分子光ファイバー製造時と全く同一の条件で光を出射させた時(例えば、光照射装置から光を出射させた時)の、ノズルの吐出口において測定される光の照射強度(単位:mW/cm2)を意味する。上記照射強度の測定方法は、特に限定されないが、例えば、パワーメータ(商品名「紫外線光量計UTI−250」、ウシオ電機(株)製)を用いて、受光器UVD−S365により測定することができる。
上記吐出口における光の照射強度は、0.2mW/cm2以下に制御されていればよく、特に限定されないが、線径が均一な高分子光ファイバーの取得や製造時の糸切れ防止の観点から、0.1mW/cm2以下が好ましい。上記吐出口における光の照射強度が0.2mW/cm2を超えると、ノズルの先端の吐出口において光硬化性組成物の硬化反応(重合反応)が進行し、吐出口付近の光硬化性組成物の粘度が変動したり、詰まりを生じたりしてしまう。その結果、ノズルから吐出される光硬化性組成物の線径が安定せず、線径が一定の高分子光ファイバーが得られなかったり、製造時に糸切れが頻発し高分子光ファイバーの生産性が低下してしまう。
上記吐出口における光の照射強度を0.2mW/cm2以下に制御する手段としては、公知乃至慣用の手段を適用することができ、特に限定されないが、例えば、以下で例示する制御手段を使用することが可能である。
上述のように、本発明の高分子光ファイバーの製造方法により製造される高分子光ファイバーの原料は、室温において液体の光硬化性組成物であるため、ノズルから吐出された上記光硬化性組成物が糸状(ファイバー状)の形状を保持できる比較的早い段階で光を照射し、硬化させる必要がある。このため、本発明の高分子光ファイバーの製造方法における工程Aでは、光硬化性組成物の光が照射される部分とノズルの吐出口との距離をできるだけ近くする必要があり、必然的に、光硬化性組成物に照射する光がノズルの吐出口付近に到達しやすいことになる。このような観点から、上記制御手段としては、例えば、光の広がりを抑制したり、光照射装置の出射部とノズルの吐出口の間に配置して上記吐出口に影を形成することができる、以下の遮光部材を用いることが有効である。
図7には、上記遮光部材の一例としての、筒状の遮光部材51(「遮光筒」と称する場合がある)を示す。上記遮光筒51により光照射装置の出射部(ライトガイド先端部分41の出力端)を覆うことによって、出射される光が必要以上に広がることを防止し、ノズルの吐出口への光の伝播を抑制することができる(図1参照、図1における51)。上記遮光筒の径や長さ等は、光照射装置の出射部の形状等に応じて適宜選択することができ、特に限定されない。
また、上記遮光部材としては、光照射装置の出射部とノズルの吐出口の間に配置可能な板状の遮光部材(「遮光板」と称する場合がある)を使用できる(図1参照、図1における52)。このような遮光板を用いることにより、光照射装置の出射部を遮光筒で覆った場合でもなお漏れ出す弱い光を遮ることができる。このため、上記の遮光板及び遮光筒は組み合わせて使用することが有効である。上記遮光板の形状や大きさは、特に限定されないが、例えば、図8に示す円板状の遮光板や、図9に示す円錐状の遮光板などを用いることができる。上記遮光板は、設置のし易さの観点から、光硬化性組成物を通過させるための孔(図8、図9における53)を有することが好ましい。
上記遮光筒、遮光板などの遮光部材を形成する材質は、特に限定されない。例えば、SUS、アルミ、樹脂、紙などを使用できる。また、上記遮光部材は、特に限定されないが、光の反射を防止する観点で、黒色であることが好ましい。
また、本発明の高分子光ファイバーの製造方法における工程Aでは、均一な線径の高分子光ファイバーの取得、及び糸切れの抑制等の効果をより高度なレベルで得るために、光硬化性組成物に対する光の照射角度を制御することが好ましい。具体的には、本発明の高分子光ファイバーの製造方法における工程Aでは、光照射装置から出射される光線のうち、照射強度が最大となる光線(最大強度光)の方向と、光硬化性組成物の吐出方向に垂直な面(平面)とがなす角度の最小値θが下記式(I)の関係を満たすようにして、上記光硬化性組成物に光を照射することが好ましい。
θ ≧ ψ/2 (I)
上記式(I)中、ψは、光照射装置から出射された光線のうち、照射強度が最大値の3%となる光線同士がなす角度の最大値(「広がり角」と称する場合がある)である。
上記光照射装置(光照射装置の出射部)から出射される光線のうち、照射強度が最大となる光線(「最大強度光」と称する場合がある)は、厳密には、出射部から出射される光の光強度分布を測定することにより特定することができる。一般的には、光照射装置の出射部(例えば、ライトガイド先端部分の出力端)の正面に出射される光線が最大強度光である。従って、例えば、ライトガイドの先端部分を、光硬化性組成物の吐出方向に直交する平面(通常は、水平面)に対して角度θだけ光硬化性組成物の吐出方向側(例えば、下方)に傾けることによって、最大強度光の方向と、光硬化性組成物の吐出方向に垂直な面とがなす角度の最小値をθとすることができる(例えば、図11(a)参照)。
上記式(I)中、ψは、光照射装置(光照射装置の出射部)から出射された光線のうち、照射強度が最大値(最大強度光の照射強度)の3%となる光線同士がなす角度の最大値(広がり角)である。但し、高分子光ファイバーを製造する際に、出射部を上述の遮光筒で覆う場合には、上記ψは、遮光筒で覆った状態の出射部から出射された光の広がり角を意味するものとする。なお、上記広がり角が小さい(狭い)ほど、光照射装置から出射される光の指向性が高いことを意味する。
図10は、光照射装置から出射された光の広がり角ψを説明する概略図(側面図、遮光筒を用いた場合)である。図10における61は最大強度光を、62は照射強度が最大強度光の3%となる光線を表す。図10に示すように、広がり角ψは、照射強度が最大強度光の3%となる光線同士がなす角の最大値63により定義される。なお、出射部を遮光筒で覆うことにより、通常、広がり角ψは小さくなる傾向にある。
上記ψは、例えば、出射部から一定距離(例えば1.5cm)における光強度分布を測定することにより、導出することができる。なお、光強度分布は、例えば、紫外線光量計を用い、その受光器を照射光の中心(出射部中心の正面)から周辺部に向かって少しずつ場所を移動させることにより測定することができる。
本発明の高分子光ファイバーの製造方法における工程Aでは、光照射装置から出射される最大強度光の方向と光硬化性組成物の吐出方向に垂直な面とがなす角度の最小値θを、上記式(I)の関係を満たすように制御することにより、線径が均一な高分子光ファイバーの取得、及び製造時の糸切れ抑制等の効果をより高度なレベルで得ることができる。これは、以下の理由によるものと推測される。
図11は、最大強度光の方向と光硬化性組成物の吐出方向に垂直な面とがなす角度の最小値θと光の広がり角ψの関係を説明する概略図(側面図)である。図11の(a)はθ≧ψ/2の場合、即ち、θとψとが上記式(I)の関係を満たす場合の概略図である。この場合、光照射装置から出射される光線のうち、照射強度が最大値の3%となる光線62(ノズル側)と、該光線の光硬化性組成物に対する入射面がなす角Xは、「90°+(θ−ψ/2)」で表される。従って、θ≧ψ/2(即ち、θ−ψ/2≧0)の場合には、Xは90°又は鈍角となり、照射強度が最大値の3%となる光線62(ノズル側)は、光硬化性組成物に対して垂直に、又は吐出方向側に傾いて入射することになる。この場合、照射強度が最大値の3%となる光線62(ノズル側)は、光硬化性組成物中を吐出方向に向かって伝播し、一方でノズル側に伝播し得る光は、照射強度が最大値の3%未満の光線のみである。このため、ノズルの吐出口付近で光硬化性組成物の硬化反応が進行しにくく、線径が均一な高分子光ファイバーの取得、及び糸切れ抑制の効果が得られる。これに対して、θとψとが上記式(I)の関係を満たさないと、Xは鋭角となるため(図11の(b)参照)、少なくとも照射強度が最大値の3%の光線はノズル方向に伝播し、高分子光ファイバーの製造に悪影響を及ぼす場合がある。
なお、上記θ(最大強度光の方向と光硬化性組成物の吐出方向に垂直な面とがなす角度の最小値θ)は、上述のように、例えば、光照射装置のライトガイド先端部分を、光硬化性組成物の吐出方向に直交する平面(通常は、水平面)に対して光硬化性組成物の吐出方向側(例えば、下方)に傾ける角度によって制御できる。即ち、上記光照射装置としては、光の照射角度(具体的には、最大強度光の方向と光硬化性組成物の吐出方向に垂直な面とがなす角度の最小値θ)を調整するための機構(「照射角度調整機構」と称する場合がある)を備える光照射装置を使用することが好ましい。図12は、本発明の高分子光ファイバーの製造方法における工程Aにて使用可能な、照射角度調整機構を備える光照射装置の一例を示す概略図である。図12に示す光照射装置においては、照射角度調整機構としてのねじ46(角度調整用ねじ)を備えることにより、ライトガイドの先端部分の角度を自由に調整することができる。
(工程Aの他の実施形態)
本発明の高分子光ファイバーの製造方法における工程Aは、上述のように、ノズルの吐出口の下方に光照射装置の出射部を配置する実施形態(例えば、図1参照)のほか、ノズルの吐出口の上方に光照射装置の出射部を配置し、吐出口よりも上方から光を出射する実施形態(当該形態を「落射方式」と称する場合がある)により実施することも可能である。図13は、本発明の高分子光ファイバーの製造方法における工程Aの一実施形態(落射方式の場合)を示す概略図である。図13における形態においては、ノズル1と、該ノズル1の先端部分の吐出口11よりも上方から光を照射するように配置された光照射装置が使用される。図13において、光照射装置は、光を出力する光源装置43、該光を伝送するライトガイド42、及び端部(出力端)より光を出射するライトガイド先端部41に加え、ライトガイド先端部41の出力端より出射した光を下方に反射させる反射ミラー47と、反射した光を集光する集光レンズ48を備えて構成されている。図13における54はリング状の遮光部材(「遮光リング」と称する場合がある)を示し、このような遮光リングをノズル先端(ノズル1の吐出口11)の上方に装着することによって、ノズル1の吐出口11における光の照射強度を0.2mW/cm2以下に制御することが容易となる。
本発明の高分子光ファイバーの製造方法における工程Aが、落射方式により実施される場合には、図13に示すように、遮光リング54を用いることによってノズルの吐出口11に影を形成しやすく、より効率的にノズルの吐出口における光の照射強度を低減できるというメリットがある。しかしながら、一方で、光硬化性組成物と光照射装置の出射部との距離が比較的遠くなるため、光硬化性組成物に対して高強度の光を照射することが難しく、工程Aにて硬化率(硬化度)を十分に向上させた硬化物(硬化物a)を得ることが難しくなるというデメリットがある。このようなデメリットについては、例えば、工程Aの後、後述の工程Bにおいて光照射処理及び/又は加熱処理を行うことにより、上記硬化率をさらに高め、解消することが可能である。
工程Aにより、コア用光硬化性組成物の硬化物がクラッド用光硬化性組成物の硬化物により被覆された硬化物aが得られる。上記硬化物aをそのまま高分子光ファイバーとして取得することもできるし、さらに後述の工程Bに付すことによって高分子光ファイバーとして取得することもできる。
[工程B]
本発明の高分子光ファイバーの製造方法は、さらに工程Bを含んでいてもよい。即ち、本発明の高分子光ファイバーの製造方法において工程Bは任意の工程である。上記工程Bは、工程Aの後、該工程Aにより得られた硬化物aに対してさらに光照射及び加熱のいずれか一方又は両方の処理を行う工程である。工程Bを経ることにより、得られる高分子光ファイバーは非常に優れた耐熱性を発現し、ハンダリフロー処理等の高温の熱による劣化や形状変化に起因する光学特性の低下が抑制される傾向がある。中でも、工程Bにおいては、光照射処理及び加熱処理の両方を行うことが好ましい。
工程Bは、工程Aの後、該工程Aに引き続き連続的に実施されてもよいし、非連続的に実施されてもよい。工程Bが工程Aに引き続き連続的に実施される場合には、例えば、工程Aにおいて得られた糸状の硬化物aに対して、引き続き光照射処理及び/又は加熱処理を行うことにより、工程Bを実施することができる(例えば、図16参照)。工程Bが工程Aとは非連続的に実施される場合には、例えば、工程Aにおいて得られた糸状の硬化物aを巻き取って一旦回収した後、これを繰り出した状態で又は巻き取ったままの状態で、光照射処理及び/又は加熱処理を行うことにより、工程Bを実施することができる。
工程Bの光照射処理において照射する光は、光硬化性組成物の硬化をさらに進行させて硬化物bを得ることが可能な光であればよく、特に限定されないが、例えば、紫外線、赤外線、可視光線、電子線などが挙げられる。中でも、取り扱いが容易である点で、紫外線が好ましい。上記光照射処理の条件は、特に限定されないが、例えば、積算照射量(硬化物aに照射される光の総量)として、50〜6000mJ/cm2が好ましく、より好ましくは60〜2000mJ/cm2、さらに好ましくは80〜1000mJ/cm2である。積算照射量が50mJ/cm2未満であると、硬化が不十分となり、高分子光ファイバーの高温における形状変化が生じやすくなる場合がある。一方、積算照射量が6000mJ/cm2を超えると、高分子光ファイバーの光学特性が損なわれる場合がある。なお、光照射処理は一段階で行うこともできるし、二段階以上に分けて行うこともできる。
上記光照射処理における光の照射は、公知乃至慣用の方法(例えば、上述の光照射装置を用いる方法等)により行うことができ、特に限定されないが、紫外線を照射する場合には、例えば、上述の紫外線照射装置などを使用できる。特に、上記光照射処理は、工程Aにおける光照射と同様の方法により行うことが好ましい。
工程Bの加熱処理における加熱温度は、特に限定されないが、40〜200℃が好ましく、より好ましくは50〜150℃、さらに好ましくは80〜120℃である。加熱温度が40℃未満であると、硬化が不十分となり、加熱によって高分子光ファイバーの形状変化が生じやすくなる場合がある。一方、加熱温度が200℃を超えると、高分子光ファイバーの光学特性が損なわれる場合がある。なお、上記加熱処理において加熱温度は、一定に制御されるものであってもよいし、段階的又は連続的に変動するように制御されるものであってもよい。
工程Bの加熱処理における加熱時間は、特に限定されないが、0.01〜2000分が好ましく、より好ましくは0.1〜100分、さらに好ましくは0.2〜30分である。加熱時間が0.01分未満であると、加熱温度によっては硬化が不十分となり、加熱によって高分子光ファイバーの形状変化が生じやすくなる場合がある。一方、加熱時間が2000分を超えると、高分子光ファイバーの生産性が低下したり、加熱温度によっては高分子光ファイバーの光学特性が損なわれる場合がある。
上記加熱処理における加熱は、公知乃至慣用の方法により行うことができ、特に限定されないが、例えば、オーブン、熱風、電気、ガス、赤外線などの加熱源を備えた加熱装置(オーブン等)などを使用できる(例えば、図16における9など)。
本発明の高分子光ファイバーの製造方法における工程Bにより、一般に、工程Aにより得られた糸状の硬化物aにおける硬化率(硬化度)をさらに高めることができるため、工程Bは「後硬化工程」と称される場合もある。工程Bを経ることにより、糸状の硬化物(硬化物b)が得られる。上述のように、上記硬化物bを本発明の高分子光ファイバーとして取得することもできる。
上述の本発明の高分子光ファイバーの製造方法により、高分子光ファイバー(本発明の高分子光ファイバー)が得られる。本発明の高分子光ファイバーは、特に限定されないが、適宜巻き取ることにより回収することができる。この際の巻取り速度は、特に限定されないが、例えば、10〜1000mm/秒が好ましく、より好ましくは100〜500mm/秒である。巻取り速度(特に、工程Aにおける巻取り速度)の制御により、得られる高分子光ファイバーの径を制御することができる。一般に、巻取り速度を速くすると、光硬化性組成物及び該光硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物、即ち、高分子光ファイバーの線径は細くなる傾向がある。上記巻取り速度は、例えば、製造した高分子光ファイバーを巻き取り、回収するための巻取り装置(巻取り機)などを用いることにより制御することができる。
また、本発明の高分子光ファイバーの製造方法においては、上記のノズル、光照射装置、制御手段(遮光部材等)のほか、例えば、ノズルから吐出する光硬化性組成物の量(吐出量)を制御するために、定量ポンプを用いることができる。光硬化性組成物の吐出量を制御することによって、高分子光ファイバーの線径を制御することができる。一般に、吐出量を多くすると、光硬化性組成物(高分子光ファイバー)の線径は太くなる傾向がある。なお、コア用光硬化性組成物とクラッド用光硬化性組成物の吐出量をそれぞれ独立に制御することによって、得られる高分子光ファイバーのコアの径とクラッドの径を自在に制御することができる。
さらに、本発明の高分子光ファイバーの製造方法においては、必要に応じ、その他の機器や装置(例えば、加熱ユニット、冷却ユニット、ファイバー径測定装置、ファイバー張力測定装置など)を適宜使用することもできる。
本発明の高分子光ファイバーにおけるコアの直径(コア径)は、特に限定されないが、10〜999μmが好ましく、より好ましくは50〜100μmである。また、本発明の高分子光ファイバーにおけるクラッドの直径(クラッド径)は、特に限定されないが、60〜1000μmが好ましく、より好ましくは100〜500μmである。
本発明の高分子光ファイバーは、クラッドの外側にさらに適宜な被覆層を設けたものであってもよい。上記被覆層としては、例えば、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、PTFE、ポリ塩化ビニル等からなる被覆層が挙げられる。
本発明の高分子光ファイバーは、上述の本発明の高分子光ファイバーの製造方法により製造されるため、コアとクラッドの中心軸が正確に一致しており、光ファイバー同士の接続や他のデバイスとの接続の際に高い信頼性を発揮する。また、本発明の高分子光ファイバーの原料である光硬化性組成物として、コア用光硬化性組成物の硬化速度がクラッド用光硬化性組成物よりも速いもの(組み合わせ)を使用するため、コア用光硬化性組成物とクラッド用光硬化性組成物とを、該コア用光硬化性組成物がクラッド用光硬化性組成物により被覆された状態で同時にノズルから吐出し、その後、光を照射して硬化させても、コア用光硬化性組成物の硬化反応(重合反応)が十分に進行するため、コアとクラッドの中心軸の不一致、紡糸不良、高分子光ファイバーの変形などのコアの未硬化に起因する問題が生じにくい。さらに、本発明の高分子光ファイバーは、室温において液体である光硬化性組成物を原料とするため、該光硬化性組成物中の不純物をろ過により除去しやすく、高品質な高分子光ファイバーとすることが容易である。
また、本発明の高分子光ファイバーは、工程Aにおいてノズルの吐出口における光の照射強度を0.2mW/cm2以下に制御した場合には、特に、一定の線径を有し、品質面で優れる。また、生産性も向上し、コスト面で有利となる。さらに、工程Aにおける光の照射角度を上記式(I)の関係を満たすように制御した場合は、より均一な線径を有し、かつ高い生産性を有する高分子光ファイバーとなる。
さらに、本発明の高分子光ファイバーは、該光ファイバーを形成するための光硬化性組成物が酸化防止剤を含有し、さらに、上記光硬化性組成物の硬化度を十分に高めるための工程Bを経て製造された場合には、例えば、ハンダリフロー処理を経た場合であっても、コアの端面の形状変化(隆起)や熱劣化に起因する光損失の増大が生じにくく、優れた耐熱性を発揮する。中でも、本発明の高分子光ファイバーを形成するための光硬化性組成物が、上述のカチオン重合性樹脂又はラジカル重合性樹脂を含有する場合には、非常に優れた透明性、耐熱性、及び柔軟性を発揮する。
本発明の高分子光ファイバーは、光通信用途や装飾用途等において広く利用される。特に、耐熱性及び柔軟性に優れるため、例えば、携帯機器、FA機器、OA機器、オーディオ機器、車両、LAN等における通信用途、家庭用や工業用の内視鏡等におけるイメージ伝送用途、センサ用途、検査・測定用の照明、美術品等の照明等における光伝送用途、看板、サイン、景観照明等における装飾用途などに特に有用である。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
製造例1
[クラッドプレポリマー(カチオン重合性樹脂)の製造例]
モノマーと開始剤の混合液の滴下ライン、温度計、還流管、及び撹拌翼を装着した5口フラスコに、1−メトキシ−2−アセトキシプロパン(PGMEA)367gを仕込み、窒素気流下、85±1℃に加熱した。次いで、撹拌しながら、PGMEA630g、3−エチル−3−(3−アクリロイルオキシ−2,2−ジメチルプロピルオキシメチル)オキセタン(EOXTM−NPAL)300g(1.17mol)、n−ブチルアクリレート(BA)750g(5.85mol)、及び2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル(商品名「V−601」、和光純薬工業(株)製)0.65gの混合液を送液ポンプで5時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに2時間同温度で保持した後、40℃以下に冷却することにより、樹脂溶液を得た。上記樹脂溶液をPGMEA2100gで希釈した後、5倍量の60重量%メタノール水溶液で再沈精製し、真空乾燥機中(40℃、フルバキューム)で60時間保持することにより、無色透明のクラッドプレポリマー(カチオン重合性樹脂)を得た。
該クラッドプレポリマーのポリスチレン換算の重量平均分子量は235,700、数平均分子量は50,000であった。
製造例2
[コアプレポリマー(カチオン重合性樹脂)の製造例]
モノマーと開始剤の混合液の滴下ライン、温度計、還流管、及び攪拌翼を装着した5口フラスコに、PGMEA391gを仕込み、窒素気流下、85±1℃に加熱した。次いで、攪拌しながら、PGMEA668g、EOXTM−NPAL90g(0.35mol)、BA135.6g(1.05mol)、スチレン(St)147g(1.40mol)、及び商品名「V−601」51.8gの混合液を送液ポンプで5時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに2時間同温度で保持した後、40℃以下に冷却することにより、樹脂溶液を得た。上記樹脂溶液を5倍量の60重量%メタノール水溶液で再沈精製し、真空乾燥機中(40℃、フルバキューム)で60時間保持することにより、無色透明のコアプレポリマー(カチオン重合性樹脂)を得た。
該コアプレポリマーのポリスチレン換算の重量平均分子量は4,500、数平均分子量は2,700であった。
実施例1〜3、比較例1
(コア剤及びクラッド剤の調製)
表1に示す組成及び量に従って各成分を混合し、コア形成用の光硬化性組成物(コア剤)及びクラッド形成用の光硬化性組成物(クラッド剤)を調製した。なお、表1中に示す数字の単位は重量部である。
なお、上記コア剤の調製にあたっては、各成分を混合後、孔径0.2μmのフィルタでろ過を行った。また、上記クラッド剤の調製にあたっては、各成分を混合後、孔径1μmのフィルタでろ過を行った。
Figure 2014035427
表1中の記号は、下記化合物又は商品を示す。
A1 : 製造例1で得られたクラッドプレポリマー
A2 : 製造例2で得られたコアプレポリマー
A3 : 3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン(商品名「OXT−212」、東亞合成(株)製)
A4 : 3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート(商品名「セロキサイド2021P」、(株)ダイセル製)
A5 : 1,4−ビス{[(3−エチルオキセタン−3−イオキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼンを主成分(主生成物)とする(3−エチルオキセタン−3−イル)メタノール(ヒドロキシメチル)−オキセタンと1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼンの反応生成物(商品名「OXT−121」、東亞合成(株)製)
A6 : 3,3−ビス(ビニルオキシメチル)オキセタン
B1 : 商品名「A−BPE−4」(新中村化学工業(株)製)
B2 : 商品名「EBECRYL114」(ダイセル・サイテック(株)製)
Irg1010 : 商品名「イルガノックス1010」(BASF製)
Irg168 : 商品名「イルガフォス168」(BASF製)
CPI−100P :ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロホスファート、チオジ−p−フェニレンビス(ジフェニルスルホニウム)、ビス(ヘキサフルオロホスファート)、プロピレンカーボネート、及びジフェニルサルファイドの混合物(商品名「CPI−100P」、サンアプロ(株)製)
CPI−101A :商品名「CPI−101A」、サンアプロ(株)製
Irg184 : 商品名「イルガノックス184」(BASF製)
(高分子光ファイバーの製造)
高分子光ファイバーの製造は、図14に示す高分子光ファイバー製造装置を用いて行った。図14の高分子光ファイバー製造装置における1は、二重管ノズルである。二重管ノズル1の外管及び内管の内径は以下に示す通りである。また、図14の高分子光ファイバー製造装置においては、工程Aにおいて使用する光照射装置として、光硬化性組成物2に対して3方向から光を照射できる、図5に示す光照射装置を用いた。該光照射装置は、光硬化性組成物2に対して等距離に、3つのライトガイド(UVライトガイド)の先端部分を、同じ高さで等間隔(光硬化性組成物を中心に120°間隔)に配置したものである(図5参照)。また、上記光照射装置の光源装置としては、「SPOTCURE SP9−250DB」(ウシオ電機(株)製)を用いた。なお、図14においては、便宜上、2個のライトガイドの先端部分のみを描いている。
また、ライトガイドの先端部分41には遮光筒51を設置し、さらに、ライトガイドの先端部分41の出力端と二重管ノズル1の吐出口との間には、遮光板52を設置した。
図14に示すように、ライトガイドの先端部分41を二重管ノズル1の吐出口よりも下方に配置し、二重管ノズル1の吐出口からライトガイドの先端部分41の出力端(出力端の中心部)までの高さ(垂直距離)を、20mmとした。また、ライトガイドの先端部分41の出力端(出力端の中心部)と光硬化性組成物2までの距離を、15mmとした。
さらに、ライトガイドの先端部分41は、水平面に対して11°下向きに傾けて設置した(即ち、θ=11°である)。なお、ライトガイドの先端部分41を遮光筒51で覆った状態で出射される光の広がり角ψは、22°である。
また、工程Bにおける光照射処理には、工程Aにおいて使用した光照射装置と同じ光照射装置(図5参照)を2つ(2セット)使用し、図14に示すように二段階で光を照射した。また、工程Bにおける加熱処理は、巻取り装置8で巻き取った後、乾燥機中で加熱することにより実施した。
[高分子光ファイバーの製造:工程A]
まず、定量ポンプ71及び72を用いて、上記コア剤及びクラッド剤を下記送り速度にて送液し、二重管ノズル1の吐出口より同時に鉛直方向下方に吐出させた。なお、二重管ノズル1の内管にはコア剤、外管と内管の間にはクラッド剤を送液した。従って、二重管ノズル1より吐出されたコア剤及びクラッド剤は、コア剤がクラッド剤により被覆された状態となっている。
次に、光照射装置により、コア剤及びクラッド剤に紫外線を照射し硬化させた。このようにして、硬化物a(3)を形成した。
(実験条件)
ノズルの吐出口における光の照射強度:0.15mW/cm2
コア剤の送り速度:0.075mL/秒
クラッド剤の送り速度:0.3mL/秒
二重管ノズルの内管の内径(直径):1.6mm
二重管ノズルの外管の内径(直径):3.4mm
受光器(UVD−S365)で計測したUV照射強度:1.8W/cm2(三方の合計:一方あたり600mW/cm2
[高分子光ファイバーの製造:工程B]
工程Aの後、さらに連続的に二段階で光照射処理を行い、次いで、巻取り装置8にて巻き取った後、巻き取ったもの(ロール)を乾燥機に入れて加熱処理[加熱条件:100℃、2分]し、高分子光ファイバーを得た。
(実験条件)
受光器(UVD−S365)で計測した積算照射量(波長310〜390nmの光の照射量を、波長365nm(絶対値校正波長)の光の照射量に換算したもの)(2段階の光照射の合計):80mJ/cm2
巻取り速度:400mm/秒
[高分子光ファイバー製造の結果(ファイバー形成の可否)]
実施例1〜3においては、製造の際に糸切れを起こすことなく、一定の線径でコア−クラッド構造(コア直径:50μm、クラッド直径:130μm)を有する高分子光ファイバーを150m製造することができた。該高分子光ファイバーの真円度(縦横比)は、コア、クラッド共に1.0であった。
一方、比較例1においては、コア部を形成できず、未硬化のコア剤が脱落したため、高分子光ファイバーを製造することができなかった。
上記結果[高分子光ファイバーが製造できた場合を○(ファイバー製造可能)、高分子光ファイバーが製造できなかった場合を×(ファイバー製造不可能)]を、表1の「ファイバー形成」の欄に示した。
(柔軟性評価)
実施例1〜3で得られた高分子光ファイバーを半径1mmの棒に巻きつけた際のクラック(ひび割れ)発生の有無を目視で観察した。クラックが確認されなかった場合を合格(柔軟性に優れる)と評価し、クラックが確認された場合を不合格(柔軟性が不良である)と評価した。表1に結果を示す。
(耐熱性評価)
実施例1〜3で得られた高分子光ファイバーを260℃で30秒間加熱し、加熱前後の高分子光ファイバーの光損失の差異を測定した。また、加熱前後において上記高分子光ファイバーの端面が形状変化したかどうかをCCDで確認した。加熱前後の光損失の差異が0.1dB/cm以下であり、かつ端面に形状変化が認められなかった場合を合格(耐熱性に優れる)と評価し、それ以外の場合を不合格(耐熱性が不良である)と評価した。表1に結果を示す。
(コア剤とクラッド剤の硬化速度)
実施例1〜3及び比較例1で得られたコア剤とクラッド剤のそれぞれの硬化速度(単位:秒)を、上述の「DSCによる光硬化性組成物の硬化速度の測定」に記載の手順に従って測定した。
測定されたコア剤の硬化速度(単位:秒)とクラッド剤の硬化速度(単位:秒)を表1の「硬化時間」の欄に示す。
なお、実施例1〜3において工程Bにおける加熱処理の条件(加熱条件)を50℃、24時間に変更したこと以外は同様の方法で高分子光ファイバーを製造したところ、製造の際に糸切れを起こすことなく、一定の線径でコア−クラッド構造を有する高分子光ファイバーを連続的に製造することができた。また、これらの高分子光ファイバーについて上記と同様の評価を行ったところ、実施例1〜3で得られた高分子光ファイバーと同様に、柔軟性及び耐熱性に優れ、光損失も小さいものであった。
1 ノズル(二重管ノズル)
11 吐出口
12 外管
13 内管
14 調整用ねじ
2 光硬化性組成物
21 光硬化性組成物が通過する位置
3 硬化物(硬化物a)
4 光照射装置
41 ライトガイドの先端部分
42 ライトガイド
43 光源装置
44 土台(支持体)
45 土台(支持体)
46 照射角度調整機構
47 反射ミラー
48 集光レンズ
51 遮光筒
52 遮光板
53 光硬化性組成物を通過させるための孔
54 遮光リング
61 最大強度光
62 照射強度が最大強度光の3%となる光線
63 広がり角(ψ)
71 定量ポンプ(コア剤送液用)
72 定量ポンプ(クラッド剤送液用)
8 巻取り装置
9 ヒーター(加熱装置)
100 高分子光ファイバー(硬化物b)
200 コア
300 クラッド

Claims (8)

  1. 光硬化性組成物に光を照射し硬化させることによって高分子光ファイバーを製造する方法であって、前記高分子光ファイバーはコアと該コアを被覆するクラッドとを有するコア−クラッド構造の高分子光ファイバーであり、
    前記コアを形成するためのコア用光硬化性組成物と前記クラッドを形成するためのクラッド用光硬化性組成物とを、前記コア用光硬化性組成物が前記クラッド用光硬化性組成物に被覆された状態で同時にノズルから糸状に吐出し、その後、光を照射して硬化させる工程Aを含み、
    前記コア用光硬化性組成物及び前記クラッド用光硬化性組成物として、前記コア用光硬化性組成物の硬化速度が前記クラッド用光硬化性組成物の硬化速度よりも速い組み合わせを使用することを特徴とする高分子光ファイバーの製造方法。
  2. 前記コア用光硬化性組成物が、光ラジカル重合性組成物又は光カチオン重合性組成物である請求項1に記載の高分子光ファイバーの製造方法。
  3. 前記光ラジカル重合性組成物が、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルアリール基、ビニルエーテル基、及びビニルオキシカルボニル基からなる群より選ばれたラジカル重合性基を分子内に1個以上有するラジカル重合性化合物を含む請求項2に記載の高分子光ファイバーの製造方法。
  4. 前記光カチオン重合性組成物が、オキセタン環、エポキシ環、ビニルエーテル基、及びビニルアリール基からなる群より選ばれたカチオン重合性基を分子内に1個以上有するカチオン重合性化合物を含む請求項2に記載の高分子光ファイバーの製造方法。
  5. 前記コア用光硬化性組成物及び前記クラッド用光硬化性組成物のいずれか一方又は両方が、酸化防止剤を含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の高分子光ファイバーの製造方法。
  6. 工程Aにおいて、前記ノズルの吐出口における光の照射強度が0.2mW/cm2以下に制御される請求項1〜5のいずれか1項に記載の高分子光ファイバーの製造方法。
  7. 工程Aの後、さらに、光照射処理及び加熱処理のいずれか一方又は両方を行う工程Bを含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の高分子光ファイバーの製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の高分子光ファイバーの製造方法により製造される高分子光ファイバー。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2015203709A (ja) * 2014-04-10 2015-11-16 株式会社ダイセル 高分子光ファイバーの製造方法及び該方法により製造された高分子光ファイバー

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