JP2015127752A - 光ファイバー製造装置、光ファイバーの製造方法、及び該方法により製造された光ファイバー - Google Patents

光ファイバー製造装置、光ファイバーの製造方法、及び該方法により製造された光ファイバー Download PDF

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Abstract

【課題】光硬化性組成物に光を照射し硬化させることによって光ファイバーを製造する装置であって、製造時に糸切れが発生せず、連続的に紡糸ができる光ファイバー製造装置を提供する。
【解決手段】光硬化性組成物に光を照射し硬化させることによって光ファイバー3を製造する装置であって、光硬化性組成物を吐出するためのノズル1と、ノズル1から吐出された糸状の光硬化性組成物2に光を照射するための光照射装置4とを備え、さらに、ノズル1の吐出口における光の照射強度を0.2mW/cm2以下にするための制御手段を備え、ノズル1は、吐出口からノズル1の内部に侵入した光をノズルの外に逃がすための透過窓を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、光ファイバー製造装置に関する。より詳しくは、光硬化性組成物に光を照射し、硬化させることによって紡糸を行う光ファイバー製造装置に関する。また、本発明は、光硬化性組成物に光を照射し、硬化させることによって紡糸を行う光ファイバーの製造方法に関する。さらに、本発明は、上記製造方法により製造された光ファイバーに関する。
従来、コアとクラッドがともに樹脂(プラスチック)により形成された光ファイバー(プラスチック光ファイバー)が知られている。このような光ファイバーは軽量で可とう性に富むため、取り扱いが簡便であり、かつ比較的安価であることから広く利用されるようになってきている。近年、光ファイバーが使用される場面や用途が拡大するに伴い、上記プラスチック光ファイバーには、より高い耐熱性が要求されるようになってきている。耐熱性の高いプラスチック光ファイバーとしては、例えば、光硬化性樹脂を硬化させて得られる光ファイバー等が知られている。
上記プラスチック光ファイバーの製造方法として、特許文献1には、紫外光の照射によって、光硬化性樹脂(カチオン硬化性樹脂)を反応させながらファイバー化する製法が開示されている。当該製法においては、紫外線硬化剤入りの液状エポキシ樹脂を通常の線引装置の加熱容器に入れ、線引用ノズルから流出が容易で一定の線径になるように加熱器により常に一定の温度に加熱し粘度を低下させる必要がある。また、上記製法は、光の導通部となるコアを先に作製し、該コア表面にクラッドをあとから被覆する方法である。
特開昭61−245109号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の製造方法では、線引用ノズルから吐出された光硬化性樹脂を遡って当該ノズルの内部に紫外光が侵入することによって、ノズルの内部で光硬化性樹脂が一部硬化してしまい、ノズルの内部に閉塞が生じ、連続して紡糸することが困難という問題が生じていた。
また、上記特許文献1に記載の製造方法では、光硬化性樹脂(カチオン硬化性樹脂)を加熱器により常に一定の温度に加熱して粘度を低下させるだけでは、製造される光ファイバーの線径を一定にすることができず、さらに、頻繁に糸切れ(光ファイバーの破断)が発生するために連続的に光ファイバーを紡糸することができないことが判明した。
また、一般に、光ファイバーは光源デバイス等と接続して用いられるため、光ファイバーのコアとクラッドの中心(中心軸)は精度良く合っている必要がある。しかしながら、上記特許文献1に記載の製造方法のように、コアを作製した後、該コアにクラッドを被覆する方法では、コアとクラッドの中心が合った光ファイバーの製造が困難である。
従って、本発明の目的は、光硬化性組成物に光を照射し硬化させることによって光ファイバーを製造する装置であって、製造時に糸切れが発生せず、連続的に一定の線径で紡糸ができる光ファイバー製造装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、光硬化性組成物をノズルから吐出し、上記光硬化性組成物に光を照射し硬化させることによって光ファイバーを製造する方法であって、糸切れが発生することなく、連続的に一定の線径で紡糸を行うことができる光ファイバーの製造方法を提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、上記製造方法により製造される、線径が一定であり生産性に優れた光ファイバーを提供することにある。
本発明者らは、光硬化性組成物に光を照射し硬化させることによって光ファイバーを製造する装置であって、ノズルと、光照射装置と、上記光硬化性組成物を吐出するノズルの先端部分(吐出口)における光の照射強度を特定範囲に制御する手段とを備え、さらに、上記ノズルが吐出口からノズルの内部に侵入した光をノズルの外に逃がすための透過窓を有するノズルである光ファイバー製造装置によると、製造時に糸切れが発生せず、連続的に一定の線径で紡糸ができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、光硬化性組成物に光を照射し硬化させることによって光ファイバーを製造する装置であって、
光硬化性組成物を吐出するためのノズルと、前記ノズルから吐出された糸状の光硬化性組成物に光を照射するための光照射装置とを備え、
さらに、前記ノズルの吐出口における光の照射強度を0.2mW/cm2以下にするための制御手段を備え、
前記ノズルは、吐出口からノズルの内部に侵入した光をノズルの外に逃がすための透過窓を有するノズルであることを特徴とする光ファイバー製造装置を提供する。
さらに、前記ノズルが、外管と、該外管の内側に配置された内管とを有する二重管ノズルである前記の光ファイバー製造装置を提供する。
さらに、前記ノズルが、該ノズルの吐出口に対向する位置に前記透過窓を有するノズルである前記の光ファイバー製造装置を提供する。
さらに、前記光照射装置から出射された光線のうち照射強度が最大となる光線方向と、光硬化性組成物の吐出方向に垂直な面とがなす角度の最小値θが、下記式(I)の関係を満たすように制御された前記の光ファイバー製造装置を提供する。
θ ≧ ψ/2 (I)
(式(I)中、ψは、光照射装置から出射された光線のうち、照射強度が最大値の3%となる光線同士がなす角度の最大値である)
また、本発明は、光硬化性組成物に光を照射し硬化させることによって光ファイバーを製造する方法であって、
光硬化性組成物をノズルを用いて吐出し、次いで、前記ノズルから吐出された糸状の光硬化性組成物に光照射装置を用いて光を照射する工程を含み、
前記工程において、前記ノズルの吐出口における光の照射強度を0.2mW/cm2以下に制御し、
前記ノズルとして、吐出口からノズルの内部に侵入した光をノズルの外に逃がすための透過窓を有するノズルを用いることを特徴とする光ファイバーの製造方法を提供する。
さらに、前記ノズルが、外管と、該外管の内側に配置された内管とを有する二重管ノズルであり、該二重管ノズルによりコア−クラッド構造を有する光ファイバーを製造する前記の光ファイバーの製造方法を提供する。
さらに、前記ノズルが、該ノズルの吐出口に対向する位置に前記透過窓を有するノズルである前記の光ファイバーの製造方法を提供する。
さらに、前記光照射装置から出射された光線のうち照射強度が最大となる光線方向と、光硬化性組成物の吐出方向に垂直な面とがなす角度の最小値θが、下記式(I)の関係を満たすように前記光硬化性組成物に光を照射する前記の光ファイバーの製造方法を提供する。
θ ≧ ψ/2 (I)
(式(I)中、ψは、光照射装置から出射された光線のうち、照射強度が最大値の3%となる光線同士がなす角度の最大値である)
また、本発明は、前記の光ファイバーの製造方法により製造された光ファイバーを提供する。
本発明の光ファイバー製造装置は上記構成を有するため、光硬化性組成物を原料として、線径が一定の光ファイバーを容易に製造することができ、製造の際には糸切れが発生することなく連続的に紡糸を行うことができる。また、室温において液体である光硬化性組成物を原料とすると、ろ過により不純物を低減させやすく、高品質の光ファイバーを容易に得ることができる。
また、本発明の光ファイバーの製造方法によると、光硬化性組成物を原料として、線径が一定の光ファイバーを容易に製造することができ、製造の際には糸切れが発生することなく連続的に紡糸を行うことができる。
また、本発明の光ファイバーは上記製造方法により製造されるため、一定の線径を有し、生産性に優れ、品質面及びコスト面で有利である。また、耐熱性にも優れる。
図1は、本発明の光ファイバー製造装置の一例、及び該製造装置を用いて光ファイバーを製造する一実施形態を示す概略図である。 図2は、本発明の光ファイバー製造装置における透過窓を有するノズル(二重管ノズル)の一例を示す概略図(断面図)である。 図3は、本発明の光ファイバー製造装置における透過窓を有するノズル(二重管ノズル)の他の一例を示す概略図(断面図)である。 図4は、本発明の光ファイバー製造装置における、位置調整機構を備えた二重管ノズルの一例を示す概略図(二重管ノズルの径方向の断面図)である。 図5は、本発明の光ファイバー製造装置における光照射装置を示す概略図であり、(a)は3方向から光を照射可能な光照射装置の一例を示す平面図、(b)は2方向から光を照射可能な光照射装置の一例を示す平面図である。 図6は、本発明の光ファイバー製造装置における遮光手段の一例を示す概略図であり、(a)は遮光筒の一例を示す斜視図、(b)は遮光板(円板状の遮光板)の一例を示す斜視図、(c)は遮光板(円錐状の遮光板)の一例を示す斜視図である。 図7は、光照射装置から出射された光の広がり角ψを説明する概略図(側面図)である。 図8は、照射強度が最大となる光線の方向と光硬化性組成物の吐出方向に垂直な面とがなす角度θと光の広がり角ψの関係を説明する概略図(側面図)である。図8の(a)はθ≧ψ/2の場合、(b)はθ<ψ/2の場合の概略図である。 図9は、本発明の光ファイバー製造装置における、照射角度調整機構を備える光照射装置の一例を示す概略図(側面図)である。 図10は、実施例1にて用いた光ファイバー製造装置(本発明の光ファイバー製造装置)を示す概略図である。 図11は、実施例1にて用いた光ファイバー製造装置における透過窓を有する二重管ノズルを示す図面であり、(a)は断面図、(b)は上面図である。
本発明の光ファイバー製造装置は、光硬化性組成物に光を照射し硬化させることによって光ファイバーを製造(紡糸)する、光ファイバー製造装置である。即ち、本発明の光ファイバー製造装置により製造された光ファイバーは、光硬化性組成物の硬化物(樹脂硬化物)より構成された光ファイバーである。
[光硬化性組成物]
上記光硬化性組成物は、光を照射することによって硬化して樹脂硬化物を与える組成物である。上記光硬化性組成物としては、例えば、光の照射により速やかに硬化する、公知乃至慣用の光硬化性組成物(ラジカル重合性組成物、カチオン重合性組成物、アニオン重合性組成物等)を用いることができる。中でも、上記光硬化性組成物は、紫外線の照射により硬化する、紫外線硬化性組成物であることが好ましい。なお、上記光硬化性組成物についての詳細な説明については、後述する。
上記光硬化性組成物は、室温(約25℃)において液体である。即ち、室温において流動性を有する液状物である。上記光硬化性組成物を光ファイバーの原料として用いることにより、加熱や溶剤の使用により粘度を低下させることなく、室温での紡糸が可能となる。さらに、ろ過によって光硬化性組成物中の不純物を容易に除去することができるため、高品質の光ファイバーを得やすい。一方、室温において固体である組成物(樹脂組成物)を光ファイバーの原料とすると、加熱や溶剤の使用により粘度を低下させない限り、室温における紡糸が困難であり、コスト面で不利となる。また、一般に、室温において固体である組成物(樹脂組成物)は、不純物の除去操作が煩雑である。
上記光硬化性組成物の25℃における粘度は、ノズルから吐出させることができればよく、特に限定されないが、10,000〜500,000mPa・sが好ましく、より好ましくは10,000〜100,000mPa・s、さらに好ましくは50,000〜70,000mPa・sである。25℃における粘度が10,000mPa・s未満であると、ノズルから吐出させた光硬化性組成物が液滴状となりやすく、紡糸がしにくい傾向にある。但し、25℃における粘度が低く紡糸がしにくい光硬化性組成物であっても、例えば、必要に応じてノズルから吐出させる際の光硬化性組成物を冷却し粘度を高めることによって、紡糸することが可能である。一方、25℃における粘度が500,000mPa・sを超えると、ノズルから吐出させるために加熱や溶剤の使用により粘度を低下させることが必要となる場合がある。なお、上記の25℃における粘度は、例えば、E型粘度計(商品名「VISCONIC」、(株)トキメック製)を用いて測定することができる(ローター:1°34′×R24、回転数:0.5rpm、測定温度:25℃)。
[光ファイバー製造装置]
本発明の光ファイバー製造装置は、光硬化性組成物を吐出するためのノズルと、上記ノズルから吐出された糸状の光硬化性組成物に光を照射するための光照射装置と、上記ノズルの吐出口における光の照射強度を0.2mW/cm2以下にするための制御手段とを備え、さらに、上記ノズルが、吐出口からノズルの内部に侵入した光をノズルの外に逃がす(排出する)ための透過窓を有するノズル(以下、単に「透過窓を有するノズル」と称する場合がある)であることを特徴としている。以下、本発明の光ファイバー製造装置について、必要に応じて図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の光ファイバー製造装置の一例、及び該製造装置を用いて光ファイバーを製造する一実施形態を示す概略図である。図1において、本発明の光ファイバー製造装置は、ノズル1と、該ノズル1の先端部分の吐出口11の下方で光を出射するように配置された光照射装置4から構成される。ノズル1は、上述のように透過窓を有するノズルである。なお、図1における光照射装置4は、光を出力する光源装置43、該光を伝送するライトガイド42、及び端部(出力端)より光を出射するライトガイド先端部41より構成されている。なお、図1の右側の光照射装置は、ライトガイドの一部と光源装置を省略して描いているが、左側の光照射装置4と同じものを表し、その他の図面においても同様である。また、図1における51及び52は、後述の、ノズル1の吐出口11における光の照射強度を0.2mW/cm2以下にするための制御手段としての遮光部材(51:遮光筒、52:遮光板)を表す。
図1の光ファイバー製造装置を用いた光ファイバーの製造に際しては、まず、ノズル1の吐出口11から鉛直方向下方に光硬化性組成物2を吐出し、次いで、ノズル1より垂下した該光硬化性組成物2に対し、光照射装置4により光を照射する。これにより、光硬化性組成物2が硬化し、光ファイバー3が得られる。
(ノズル)
本発明の光ファイバー製造装置におけるノズルは、その内側に光硬化性組成物を通液し、その吐出口から吐出する役割を担っている。上記ノズルの吐出口から吐出された光硬化性組成物は、通常、細い径を有する糸状(ファイバー状)に形成される。
上記ノズルは、筒状(中空の柱状)の形状を有し、その先端(一方の端部)に光硬化性組成物を吐出するための吐出口を有している。また、上記ノズルは、通常、光硬化性組成物をノズル内に導入するための導入口を有しており、該導入口は、必要に応じて適宜な管を介して、光硬化性組成物を貯蔵するタンクや定量ポンプなどに接続される。導入口よりノズル内に導入された光硬化性組成物(例えば、後述のコア剤、クラッド剤等)は、上述の吐出口から吐出される。
上記ノズルの形状(管の形状)は、筒状であればよく、特に限定されないが、例えば、円筒状であってもよいし、角筒状であってもよい。中でも、低伝播損失の光ファイバーを作製する観点で、円筒状が好ましい。
上記ノズルの材質は、特に限定されず、例えば、SUS、アルミ、樹脂などが挙げられる。中でも、耐久性、強度の観点で、SUSが好ましい。
上記ノズルは、特に、光ファイバーのコアとクラッドの中心を合わせる観点で、外管と、該外管の内側に配置された内管とを有する二重管ノズルであることが好ましい。より詳しくは、上記二重管ノズルとは、筒状(特に、円筒状)の外管の内側に、該外管の内径よりも小さな外径を有する筒状(特に、円筒状)の内管が配置された二重管構造を有するノズルである。このような二重管ノズルを用いた場合、内管の内側にコアを形成する光硬化性組成物(「コア剤」と称する場合がある)を通液し、外管と内管の間にクラッドを形成する光硬化性組成物(「クラッド剤」と称する場合がある)を通液することにより、コア剤とクラッド剤とを同時に同軸でノズルの吐出口から吐出することができる。次いで、これら光硬化性組成物(コア剤及びクラッド剤)に光を照射し硬化させることによって、一段階でコア−クラッド構造を有する光ファイバー(コアとクラッドの二重(二層)構造の光ファイバー)を製造することができる。
上記二重管ノズルにおける外管の径(内径及び外径)、内管の径(内径及び外径)は、製造される光ファイバーのコア径及びクラッド径、光硬化性組成物の粘度や吐出速度等により適宜選択することができ、特に限定されない。具体的には、例えば、上記二重管ノズルにおける外管の内径は、2〜8mmが好ましく、より好ましくは2.4〜5.4mmである。さらに、上記二重管ノズルにおける内管の外径は、例えば、1〜7mmが好ましく、より好ましくは1.5〜4mmであり、上記内管の内径は、例えば、0.6〜6.4mmが好ましく、より好ましくは1.1〜3.4mmである。
上記二重管ノズルは、少なくとも吐出口側の先端部分において、外管の軸(中心軸)と内管の軸(中心軸)とが一致していることが好ましい。このような二重管ノズルを用いることにより、コアの中心軸とクラッドの中心軸とが一致した光ファイバーを容易に製造することができる。このように中心軸が一致した光ファイバーは、光ファイバー同士の接続や他のデバイス(例えば、コネクターや光源装置など)との接続に際して、高い信頼性を発揮できる。
上記二重管ノズルは、外管の軸と内管の軸とを一致させるために、外管の内側における内管の位置を調整するための調整機構(「位置調整機構」と称する場合がある)を有していることが好ましい。上記位置調整機構は、内管の位置を調整できるものであれば特に限定されないが、例えば、外管を貫通し、先端を内管の外面に接触させるように配置したねじ(調整用ねじ)を、簡便な位置調整機構として利用することができる。図4は、位置調整機構を備えた二重管ノズルの一例を表す概略図(二重管ノズルの径方向の断面図)である。図4において、12は外管、13は内管、14は調整用ねじを表す。図4においては、3つの調整用ねじの先端を、内管に対して等間隔に接触させることによって位置調整機構が構成されており、これら調整用ねじのねじ込み具合をそれぞれ調節して、外管の内側における内管の位置を調整できる。但し、用いる調整用ねじの大きさ、数、配置の仕方等は、これに限定されるものではない。
なお、本発明の光ファイバー製造装置におけるノズルは、上記の二重管ノズルに限定されず、単管からなるノズルであってもよいし、三重管以上の多重管構造を有するノズルであってもよい。上記ノズルは、製造する光ファイバーの構造や形状に応じて、適宜選択することができる。
本発明の光ファイバー製造装置におけるノズルとしては、該ノズルの吐出口からノズルの内部に侵入した光をノズルの外に逃がすための透過窓を有するノズルを用いることが重要である。これにより、光ファイバーの製造に際して、光照射装置から直接又は光硬化性組成物中を伝播してノズルの内部に侵入した光を透過窓から逃がすことができ、その結果、ノズル内部における光硬化性組成物の硬化反応が抑制され、ノズルの閉塞や糸切れ等が効果的に抑制される。上記透過窓は、ノズルの吐出口からノズルの内部に侵入した光をノズルの内部からノズルの外(外部)に逃がすことができる、光を透過させることができる窓であればよく、特に限定されない。上記透過窓を構成する材質は、特に限定されないが、石英、ガラス、透明プラスチック等が挙げられる。中でも、光の透過性、耐腐食性の観点で、石英が好ましい。即ち、上記ノズルは、石英製の透過窓を有するノズルであることが好ましい。
上記ノズルにおける透過窓の位置、形状、数等は、特に限定されず、ノズルの内部に侵入した光を効率的にノズルの外に逃がすことができるように適宜設計可能である。中でも、上記ノズルの透過窓は、光をより効率的に逃がすことができる点で、吐出口に対向する位置(吐出口から見て、光硬化性組成物の吐出方向に対する反対側(上流側)の向かいあった位置)に配置されることが好ましい。即ち、上記ノズルは、該ノズルの吐出口に対向する位置に透過窓を有するノズルであることが好ましい。図2に、吐出口に対向する位置に透過窓を有するノズル(上述の二重管ノズルに当たる)の一例を示す。図2の1はノズル(二重管ノズル)であり、11は吐出口、12は外管、13は内管を示す。図2の15は内管への光硬化性組成物の導入口、16は外管への光硬化性組成物の導入口を示す。また、図2の17が透過窓である。図2に示すノズル1は、該ノズルの吐出口11に対向する位置に透過窓17を有するノズルであり、吐出口11から入射して内管13の内側を伝播する光と、吐出口11から入射して外管12と内管13の間を伝播する光との両方を透過窓17から逃がすことができるノズルである。上記透過窓を有するノズルは、内管の内側を伝播する光と、外管と内管の間を伝播する光のうちいずれか一方のみを逃がすことができる透過窓を有するものであってもよく、例えば、図3に示すような、外管12と内管13の間を伝播する光のみを逃がすことができる透過窓17を有するノズルであってもよい。但し、上記ノズルにおける透過窓は、図2及び3に示すものに限定されず、例えば、ノズルの側面に配置されていてもよい。
(光照射装置)
本発明の光ファイバー製造装置における光照射装置は、ノズルから吐出された糸状の光硬化性組成物に光を照射し、硬化させる役割を担う。ノズルの吐出口から伸びた糸状の光硬化性組成物を硬化させることにより、光ファイバーが得られる。
上記光照射装置により照射する光は、光硬化性組成物を硬化させることができる光であればよく、特に限定されないが、例えば、紫外線、赤外線、可視光線、電子線などを用いることができる。中でも、一般的な光開始剤を使うことができる観点で、紫外線が好ましい。即ち、本発明の光ファイバー製造装置における光照射装置は、紫外線照射装置であることが好ましい。
上記光照射装置としては、光硬化性組成物を硬化させることができる光(特に、紫外線)を出射(放射)し、光硬化性組成物に照射することができる、公知慣用の光照射装置を用いることができる。具体的には、例えば、紫外線を出射する光照射装置(紫外線照射装置)としては、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアーク、メタルハライドランプ、太陽光、LEDランプ、レーザーなどの光源を用いることができる。また、これらの光源と、該光源より出力した光を伝送するためのライトガイドを組み合わせたもの、及びこれらと各種光学系(例えば、レンズやミラーなど)等を組み合わせたもの等を、光照射装置として用いることができる。
なお、本明細書においては、上記光照射装置の中で、特に、光を出射する部分のことを「出射部」と称する場合がある。例えば、図1に示す光照射装置4においては、ライトガイドの先端部分41の端部(出力端)が出射部である。
本発明の光ファイバー製造装置においては、上記光照射装置を用いて光硬化性組成物に対して光を照射する方法は特に限定されない。例えば、上記光照射装置の出射部の配置や数は、特に限定されない。特に、光硬化性組成物に対して光を均一に照射できるように光照射装置の出射部を配置することが好ましい。図5は、本発明の光ファイバー製造装置における光照射装置の一例を示す概略図(平面図)である。図5(a)における光照射装置は、ノズルの吐出口の下方において3方向から光を出射し、光硬化性組成物に照射する光照射装置である。上記光照射装置は、光硬化性組成物に対して等距離で、互いに等間隔に配置された出射部(ライトガイドの先端部分41の出力端)を有する。図5(a)において、21は光硬化性組成物が通過する位置を表し、44及び45は、本発明の光ファイバー製造装置において、光照射装置のライトガイドの先端部分41を固定するための土台(支持体)を表す。但し、光照射装置はこれに限定されるものではなく、例えば、図5(b)に示す光照射装置のように、2方向から光を照射するものであってもよいし、1つの方向のみや、4つ以上の方向から光を照射するもの等であってもよい。
さらに、上記光照射装置は、光を光硬化性組成物に対して効率的に照射するため、必要に応じて、適宜な光学系と組み合わせて使用してもよい。具体的には、例えば、上記光照射装置からの光を集光レンズ(凸レンズやシリンドリカルレンズなど)で集光して、より強度の高い光を光硬化性組成物に照射したり、いったん光硬化性組成物に照射した光をミラー(反射ミラー)により反射させて、再度光硬化性組成物に照射することも可能である。上記光学系を用いることで、光の有効利用を図ることができ、光ファイバーの生産性を向上させることができる。上記光学系としては、上記に限定されるものではなく、公知慣用の光学機器等において通常用いられる光学系等を利用することができる。
(制御手段)
本発明の光ファイバー製造装置は、上述のノズルと光照射装置を備えることに加え、さらに、上記ノズルの吐出口における光の照射強度(以下、単に「吐出口における光の照射強度」と称する場合がある)を0.2mW/cm2以下にするための制御手段を備える。
上記「吐出口における光の照射強度」とは、本発明の光ファイバー製造装置において、光硬化性組成物を送液しないこと以外は光ファイバー製造時と全く同一の装置構成及び条件で光照射装置から光を出射させた時に、ノズルの吐出口において測定される光の照射強度(単位:mW/cm2)を意味する。上記照射強度の測定方法は、特に限定されないが、例えば、パワーメータ(商品名「紫外線光量計UTI−250」、ウシオ電機(株)製)を用いて、受光器UVD−S365により測定することができる。
上記吐出口における光の照射強度は、0.2mW/cm2以下に制御されていればよく、特に限定されないが、線径が均一な光ファイバーの取得や製造時の糸切れ防止の観点から、0.1mW/cm2以下が好ましい。上記吐出口における光の照射強度が0.2mW/cm2を超えると、ノズルの先端の吐出口において光硬化性組成物の硬化反応(重合反応)が進行し、吐出口付近の光硬化性組成物の粘度が変動したり、詰まりを生じたりしてしまう。その結果、ノズルから吐出される光硬化性組成物の線径が安定せず、線径が一定の光ファイバーが得られなかったり、製造時に糸切れが頻発し光ファイバーの生産性が低下してしまう。
上記制御手段は、吐出口における光の照射強度を0.2mW/cm2以下に制御できるものであれば、特に限定されない。
本発明の光ファイバー製造装置により製造される光ファイバーの原料は、室温において液体である光硬化性組成物であるため、ノズルから吐出された上記光硬化性組成物が糸状(ファイバー状)の形状を保持できる比較的早い段階で光を照射し、硬化させる必要がある。このため、本発明の光ファイバー製造装置は、光硬化性組成物の光が照射される部分とノズルの吐出口との距離をできるだけ近くする必要があり、必然的に、光硬化性組成物に照射する光が吐出口付近に到達しやすい構造を有することになる。このような観点から、上記制御手段としては、例えば、光の広がりを抑制したり、光照射装置の出射部とノズルの吐出口の間に配置して上記吐出口に影を形成することができる、以下の遮光部材を用いることが有効である。
図6(a)には、上記遮光部材の一例としての、筒状の遮光部材51(「遮光筒」と称する場合がある)を示す。上記遮光筒51により光照射装置の出射部(ライトガイド先端部分41の出力端)を覆うことによって、出射される光が必要以上に広がることを防止し、ノズルの吐出口への光の伝播を抑制することができる(図1参照)。上記遮光筒の径や長さ等は、光照射装置の出射部の形状等に応じて適宜選択することができ、特に限定されない。
また、上記遮光部材としては、光照射装置の出射部とノズルの吐出口の間に配置可能な板状の遮光部材(「遮光板」と称する場合がある)を使用できる(図1参照、図1における52)。このような遮光板を用いることにより、光照射装置の出射部を遮光筒で覆った場合でもなお漏れ出す弱い光を遮ることができる。このため、上記の遮光板及び遮光筒は組み合わせて使用することが有効である。上記遮光板の形状や大きさは、特に限定されないが、例えば、図6(b)に示す円板状の遮光板や、図6(c)に示す円錐状の遮光板などを用いることができる。上記遮光板は、設置のし易さの観点から、光硬化性組成物を通過させるための孔(図6(b)、(c)における53)を有することが好ましい。
上記遮光筒、遮光板などの遮光部材を形成する材質は、特に限定されない。例えば、SUS、アルミ、樹脂、紙などを使用できる。また、上記遮光部材は、特に限定されないが、光の反射を防止する観点で、黒色であることが好ましい。
(光の照射角度の制御)
本発明の光ファイバー製造装置においては、均一な線径の光ファイバーの取得、及び糸切れの抑制等の効果をより高度なレベルで得るために、光硬化性組成物に対する光の照射角度が特定範囲に制御されていることが好ましい。具体的には、本発明の光ファイバー製造装置においては、光照射装置から出射された光線のうち照射強度が最大となる光線の方向と、光硬化性組成物の吐出方向に垂直な面(平面)とがなす角度の最小値θが、下記式(I)の関係を満たすように制御されていることが好ましい。
θ ≧ ψ/2 (I)
上記式(I)中、ψは、光照射装置から出射された光線のうち、照射強度が最大値の3%となる光線同士がなす角度の最大値(「広がり角」と称する場合がある)である。
上記光照射装置(光照射装置の出射部)から出射される光線のうち、照射強度が最大となる光線(「最大強度光」と称する場合がある)は、厳密には、出射部から出射される光の光強度分布を測定することにより特定することができる。一般的には、光照射装置の出射部(例えば、ライトガイド先端部分の出力端)の正面に出射される光線が最大強度光である。従って、例えば、ライトガイドの先端部分を、光硬化性組成物の吐出方向に直交する平面(通常は、水平面)に対して角度θだけ光硬化性組成物の吐出方向側(例えば、下方)に傾けることによって、最大強度光の方向と、光硬化性組成物の吐出方向に垂直な面とがなす角度の最小値をθとすることができる(例えば、図8(a)参照)。
上記式(I)中、ψは、光照射装置(光照射装置の出射部)から出射された光線のうち、照射強度が最大値(最大強度光の照射強度)の3%となる光線同士がなす角度の最大値(広がり角)である。但し、光ファイバーを製造する際に、出射部を上述の遮光筒で覆う場合には、上記ψは、遮光筒で覆った状態の出射部から出射された光の広がり角を意味するものとする。なお、上記広がり角が小さい(狭い)ほど、光照射装置から出射される光の指向性が高いことを意味する。
図7は、光照射装置から出射された光の広がり角ψを説明する概略図(側面図、遮光筒を用いた場合)である。図7における61は最大強度光を、62は照射強度が最大強度光の3%となる光線を表す。図7に示すように、広がり角ψは、照射強度が最大強度光の3%となる光線同士がなす角の最大値63により定義される。なお、出射部を遮光筒で覆うことにより、通常、広がり角ψは小さくなる傾向にある。
上記ψは、例えば、出射部から一定距離(例えば1.5cm)における光強度分布を測定することにより、導出することができる。なお、光強度分布は、例えば、紫外線光量計を用い、その受光器を照射光の中心(出射部中心の正面)から周辺部に向かって少しずつ場所を移動することにより測定することができる。
本発明の光ファイバー製造装置においては、光照射装置から出射される最大強度光の方向と光硬化性組成物の吐出方向に垂直な面とがなす角度の最小値θを、上記式(I)の関係を満たすように制御することにより、線径が均一な光ファイバーの取得、及び製造時の糸切れ抑制等の効果をより高度なレベルで得ることができる。これは、以下の理由によるものである。
図8は、最大強度光の方向と光硬化性組成物の吐出方向に垂直な面とがなす角度の最小値θと光の広がり角ψの関係を説明する概略図(側面図)である。図8(a)はθ≧ψ/2の場合、即ち、θとψとが上記式(I)の関係を満たす場合の概略図である。この場合、光照射装置から出射される光線のうち、照射強度が最大値の3%となる光線62(ノズル側)と、該光線の光硬化性組成物に対する入射面がなす角Xは、「90°+(θ−ψ/2)」で表される。従って、θ≧ψ/2(即ち、θ−ψ/2≧0)の場合には、Xは90°又は鈍角となり、照射強度が最大値の3%となる光線62(ノズル側)は、光硬化性組成物に対して垂直に、又は吐出方向側に傾いて入射することになる。この場合、照射強度が最大値の3%となる光線62(ノズル側)は、光硬化性組成物中を吐出方向に向かって伝播し、一方でノズル側に伝播し得る光は、照射強度が最大値の3%未満の光線のみである。このため、ノズルの吐出口付近で光硬化性組成物の硬化反応が進行しにくく、線径が均一な光ファイバーの取得、及び糸切れ抑制の効果が得られる。これに対して、θとψとが上記式(I)の関係を満たさないと、Xは鋭角となるため(図8(b)参照)、少なくとも照射強度が最大値の3%の光線はノズル方向に伝播し、光ファイバーの製造に悪影響を及ぼす場合がある。
本発明の光ファイバー製造装置は、光の照射角度(具体的には、最大強度光の方向と光硬化性組成物の吐出方向に垂直な面とがなす角度の最小値θ)を制御する観点から、上記光照射装置による照射角度を調整するための機構(「照射角度調整機構」と称する場合がある)を有することが好ましい。図9は、本発明の光ファイバー製造装置における、照射角度調整機構を備える光照射装置の一例を示す概略図である。図9の光照射装置においては、照射角度調整機構としてのねじ46(角度調整用ねじ)を備えることにより、ライトガイドの先端部分の角度を自由に調整することができる。
(その他)
本発明の光ファイバー製造装置においては、上記のノズル、光照射装置、制御手段のほか、例えば、ノズルから吐出する光硬化性組成物の量(吐出量)を制御するために、定量ポンプを用いることができる。光硬化性組成物の吐出量を制御することによって、光ファイバーの線径を制御することができる。一般に、吐出量を多くすると、光硬化性組成物(光ファイバー)の線径は太くなる。なお、二重管ノズルを用いる場合には、コア剤とクラッド剤の吐出量をそれぞれ独立に制御することによって、得られる光ファイバーのコアの径とクラッドの径を自在に制御することができる。
また、本発明の光ファイバー製造装置においては、製造した光ファイバーを巻き取り、回収するための巻取り装置(巻取り機)を用いることができる。巻取り装置による光ファイバーの巻取り速度を制御することによって、光ファイバーの線径を制御することが可能である。一般に、巻取り速度を速くすると、光硬化性組成物(光ファイバー)の線径は細くなる。
さらに、本発明の光ファイバー製造装置は、必要に応じ、その他の機器や装置(例えば、加熱ユニット、冷却ユニット、ファイバー径測定装置、ファイバー張力測定装置、ファイバー張力制御装置など)を備えていてもよい。
[光ファイバーの製造方法]
本発明の光ファイバーの製造方法は、光硬化性組成物に光を照射し硬化させることによって光ファイバーを製造する方法であって、光硬化性組成物をノズルを用いて吐出し、次いで、上記ノズルから吐出された糸状の光硬化性組成物に光照射装置を用いて光を照射する工程を含み、さらに、上記工程では、上記ノズルの吐出口における光の照射強度を0.2mW/cm2以下に制御することと、上記ノズルとして透過窓を有するノズルを用いることとを特徴としている。
本発明の光ファイバーの製造方法においては、上述のように、上記ノズルとして、透過窓を有するノズルを用いることが重要である。これにより、光ファイバーの製造に際して、光照射装置から直接又は光硬化性組成物中を伝播してノズルに侵入した光を透過窓から逃がすことができ、その結果、ノズル内部における光硬化性組成物の硬化反応が抑制され、ノズルの閉塞や糸切れ等が効果的に抑制される。上記透過窓を有するノズルとしては、特に限定されないが、例えば、上述の本発明の光ファイバー製造装置の項で例示したものを用いることができる。特に、上記透過窓を有するノズルとして、ノズルの吐出口に対向する位置に透過窓を有する上述のノズルを用いることが好ましい。中でも、本発明の光ファイバーの製造方法は、上記ノズルとして、外管と、該外管の内側に配置された内管とを有する二重管ノズルを用いて、コア−クラッド構造を有する光ファイバーを製造する方法であることが好ましい。上記二重管ノズルとしては、上述の本発明の光ファイバー製造装置の項で例示したものを好ましく用いることができる。このような二重管ノズルを用いることにより、コア剤とクラッド剤とを同時にノズルから吐出することができ、次いで、これら光硬化性組成物(コア剤及びクラッド剤)に光を照射し硬化させることによって、一段階でコア−クラッド構造を有する光ファイバーを製造することができる。
上記光照射装置としては、光硬化性組成物を硬化させることができる光を出射できるものであればよく、特に限定されないが、例えば、上述の本発明の光ファイバー製造装置の項で例示したものを用いることができる。
本発明の光ファイバーの製造方法においては、まず、上記ノズルの吐出口から光硬化性組成物を吐出する(例えば、鉛直方向下方に吐出する)。この際の光硬化性組成物の吐出速度(送り速度)は、特に限定されないが、例えば、0.3〜1mL/分が好ましく、より好ましくは0.375〜0.6mL/分である。光硬化性組成物の吐出速度を制御することにより、光ファイバーの線径を制御することができる。また、ノズルとして上記二重管ノズルを用いた場合には、コア剤とクラッド剤とを同時に吐出することができる。このときのコア剤とクラッド剤の合計の吐出速度は、特に限定されないが、例えば、0.3〜1mL/分が好ましく、より好ましくは0.375〜0.6mL/分である。また、コア剤とクラッド剤の吐出速度をそれぞれ独立に制御することにより、光ファイバーのコア径とクラッド径を独立に制御できる。なお、吐出速度の制御には、例えば、上述の本発明の光ファイバー製造装置の項で例示した定量ポンプなどを用いることができる。
次いで、ノズルの吐出口より吐出させた光硬化性組成物に対し、光照射装置を用いて光を照射する。この際の光の照射強度は、特に限定されないが、例えば、光硬化性組成物に対する照射強度として、1000〜5000mW/cm2が好ましく、より好ましくは1500〜2000mW/cm2である。また、光の照射の仕方(例えば、光照射装置の出射部の数や配置など)は特に限定されず、本発明の光ファイバー製造装置の項で例示した照射方法等を利用することができる。また、光の照射に際しては、適宜な光学系を利用することもできる。
本発明の光ファイバーの製造方法においては、上記工程(光硬化性組成物をノズルより吐出し、該光硬化性組成物に光を照射する工程)にて、上記ノズルの吐出口における光の照射強度を0.2mW/cm2以下に制御することが重要である。これにより、線径が均一な光ファイバーを取得でき、製造の際に糸切れが起こることなく、高い生産性で光ファイバーを製造できる。上記照射強度を制御するための手段としては、特に限定されないが、例えば、上述の本発明の光ファイバーの製造装置の項で例示した遮光部材(遮光筒、遮光板など)を用いることが有効である。
また、本発明の光ファイバーの製造方法においては、光硬化性組成物に対する光の照射角度を制御することが好ましい。具体的には、本発明の光ファイバーの製造方法においては、光照射装置から出射された光線のうち、照射強度が最大となる光線(最大強度光)の方向と、光硬化性組成物の吐出方向に垂直な面(平面)とがなす角度の最小値θが下記式(I)の関係を満たすようにして、上記光硬化性組成物に光を照射することが好ましい。
θ ≧ ψ/2 (I)
(式(I)中、ψは、光照射装置から出射された光線のうち、照射強度が最大値の3%となる光線同士がなす角度の最大値(広がり角)である)
なお、上記θ(最大強度光の方向と光硬化性組成物の吐出方向に垂直な面とがなす角度の最小値θ)は、上述のように、例えば、光照射装置のライトガイド先端部分を、光硬化性組成物の吐出方向に直交する平面(通常は、水平面)に対して光硬化性組成物の吐出方向側(例えば、下方)に傾ける角度によって制御できる。また、上記ψ(広がり角)は、上述の方法により導出することができる。光の照射角度を上記のように制御することにより、均一な線径の光ファイバーの取得、及び糸切れの抑制等の効果をより高度なレベルで得ることができる。その理由は、本発明の光ファイバー製造装置の項で述べた通りである。
本発明の光ファイバーの製造方法において、光硬化性組成物を硬化させることによって得られる光ファイバーは、特に限定されないが、適宜巻き取ることにより回収することができる。この際の巻取り速度は、特に限定されないが、例えば、10〜1000mm/秒が好ましく、より好ましくは100〜500mm/秒である。巻取り速度の制御により、得られる光ファイバーの径を制御することができる。上記巻取り速度は、例えば、上述の巻取り装置などを用いることにより制御することができる。
また、本発明の光ファイバーの製造方法においては、上述の本発明の光ファイバー製造装置と同様に、その他の機器や装置(例えば、加熱ユニット、冷却ユニット、ファイバー径測定装置、ファイバー張力測定装置、ファイバー張力制御装置など)を適宜用いることもできる。
[光ファイバー]
本発明の光ファイバーは、上述の方法(本発明の光ファイバーの製造方法)により製造された光ファイバーである。本発明の光ファイバーの原料である光硬化性組成物としては、上述のように、公知乃至慣用の光硬化性組成物(特に、紫外線硬化性組成物)を用いることができる。中でも、光ファイバー製造の作業性の観点で、カチオン重合性組成物(光カチオン重合性組成物)、ラジカル重合性組成物(光ラジカル重合性組成物)が好ましく、より好ましくはカチオン重合性組成物である。
(カチオン重合性組成物)
本発明の光ファイバーの原料としての上記カチオン重合性組成物は、1種以上のカチオン重合性化合物を必須成分として含む組成物(硬化性組成物)である。
上記カチオン重合性化合物としては、公知乃至慣用のカチオン重合性化合物を使用することができ、特に限定されないが、例えば、オキセタン環(オキセタニル基)、エポキシ環(オキシラニル基)、ビニルエーテル基、ビニルアリール基などのカチオン重合性基を分子内に1個以上有する化合物などが挙げられる。
オキセタン環を分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、3,3−ビス(ビニルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−[(フェノキシ)メチル]オキセタン、3−エチル−3−(ヘキシルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(クロロメチル)オキセタン、3,3−ビス(クロロメチル)オキセタン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、ビス{[1−エチル(3−オキセタニル)]メチル}エーテル、4,4’−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビシクロヘキシル、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]シクロヘキサン、1,4−ビス{〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕メチル}ベンゼン、3−エチル−3−{〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタンなどが挙げられる。
エポキシ環を分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル類;フェノール、クレゾール、ブチルフェノール又はこれらにアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル類;高級脂肪酸のグリシジルエステル類;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化ポリイソブチレン、エポキシ化ポリイソプレン、エポキシ化(スチレン−ブタジエン共重合体)などのエポキシ化ポリエンなどが挙げられる。
ビニルエーテル基を分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシイソプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシイソブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシイソブチルビニルエーテル、1−メチル−3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、1−メチル−2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、1−ヒドロキシメチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールモノビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、1,3−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、1,2−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、p−キシレングリコールモノビニルエーテル、m−キシレングリコールモノビニルエーテル、o−キシレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、テトラエチレングリコールモノビニルエーテル、ペンタエチレングリコールモノビニルエーテル、オリゴエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ジプロピレングリコールモノビニルエーテル、トリプロピレングリコールモノビニルエーテル、テトラプロピレングリコールモノビニルエーテル、ペンタプロピレングリコールモノビニルエーテル、オリゴプロピレングリコールモノビニルエーテル、ポリプロピレングリコールモノビニルエーテル等、及びこれらの誘導体などが挙げられる。
ビニルアリール基を分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、スチレン、ジビニルベンゼン、メトキシスチレン、エトキシスチレン、ヒドロキシスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、酢酸4−ビニルフェニル、4−ビニルフェニルボロン酸、N−(p−ビニルフェニル)マレイミド等、及びこれらの誘導体などが挙げられる。
また、上記カチオン重合性化合物としては、その他にも、例えば、下記式で表される構成単位(繰り返し構成単位)を必須の構成単位として含む重合体(カチオン重合性樹脂)などが挙げられる。
Figure 2015127752
上記式中、R1、R2は、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基を示す。R1、R2におけるアルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などの直鎖状のC1-6(好ましくはC1-3)アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、s−ペンチル基、t−ペンチル基、イソヘキシル基、s−ヘキシル基、t−ヘキシル基などの分岐鎖状のC3-6(好ましくはC3)アルキル基などが挙げられる。上記R1としては、水素原子又はメチル基が好ましく、上記R2としては、メチル基又はエチル基が好ましい。
上記式中、Aは、炭素数2〜20の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基を示す。上記Aとしては、中でも、優れた耐熱性と柔軟性とを兼ね備えた光ファイバーを形成することができる点で、下記式(a1)で表される直鎖状アルキレン基、又は下記式(a2)で表される分岐鎖状アルキレン基が好ましい。なお、式(a2)の右端はエステル結合を構成する酸素原子と結合する。
Figure 2015127752
式(a1)中、n1は2以上の整数を示す。式(a2)中、R3、R4、R7、R8は、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基を示す。式(a2)中、R5、R6は、同一又は異なって、アルキル基を示す。n2は、0以上の整数を示し、n2が2以上の整数の場合、2以上のR7、R8はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
式(a1)中のn1は2以上の整数を示し、好ましくは2〜20の整数であり、特に好ましくは2〜10の整数である。n1が1の場合、重合して得られる硬化物の柔軟性が低下する傾向がある。
式(a2)中のR3、R4、R5、R6、R7、R8におけるアルキル基としては、特に限定されないが、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの直鎖状のC1-4(好ましくはC1-3)アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基;t−ブチル基などの分岐鎖状のC3-4(好ましくはC3)アルキル基などが挙げられる。上記R3、R4としては水素原子が好ましく、上記R5、R6としてはメチル基、エチル基が好ましい。
式(a2)中のn2は0以上の整数を示し、好ましくは1〜20の整数であり、特に好ましくは1〜10の整数である。
上記式で表される構成単位を必須の構成単位として含むカチオン重合性樹脂は、下記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独でラジカル重合、又は他のラジカル重合性化合物と共にラジカル共重合することにより得られる。なお、上記ラジカル共重合には、ブロック共重合、ランダム共重合等が含まれる。
Figure 2015127752
(式中、R1、R2、Aは上記に同じ)
なお、本明細書における「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルのいずれか一方又は両方を意味する。但し、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物における「(メタ)アクリル」や「(メタ)アクリロイル」には、アクリル(アクリロイル)及びメタクリル(メタクリロイル)のほか、式(1)におけるR1がメチル基以外のアルキル基であるCH2=CR1CO−の意味も包含されるものとする。
上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物の代表的な例としては、下記式(1a)〜(1d)で表される化合物などが挙げられる。
Figure 2015127752
また、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物と共重合させるその他のラジカル重合性化合物としては、後述のラジカル重合性組成物の構成成分として例示するラジカル重合性化合物などが挙げられる。中でも、柔軟性及び耐熱性に優れた光ファイバーを形成することができる点で、分子内に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルアリール基、ビニルエーテル基、及びビニルオキシカルボニル基からなる群より選択されるラジカル重合性基を1個のみ有する化合物が好ましく、特に、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイルオキシ基を分子内に1個のみ有する化合物が好ましい。これらラジカル重合性化合物は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
上記カチオン重合性樹脂は、中でも、より柔軟性に優れた硬化物を形成できる点で、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物とその他のラジカル重合性化合物をラジカル共重合して得られる共重合体であることが好ましい。上記カチオン重合性樹脂を構成する全モノマー(100重量%)中、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物の占める割合は、特に限定されないが、0.1重量%以上100重量%未満(より好ましくは1〜99重量%、さらに好ましくは10〜80重量%、特に好ましくは10〜50重量%)が好ましい。
上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物及び上記カチオン重合性樹脂は、公知乃至慣用の方法により製造することができる。より具体的には、例えば、特開2012−163713号公報などに記載の方法に準じて製造することができる。
上記カチオン重合性樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、500以上(例えば、500〜100万)が好ましく、より好ましくは3000〜50万である。カチオン重合性樹脂の重量平均分子量が上記範囲を外れると、光ファイバーの柔軟性が不十分となる場合がある。
上記カチオン重合性樹脂の数平均分子量は、特に限定されないが、100以上(例えば、100〜50万)が好ましく、より好ましくは300〜25万である。カチオン重合性樹脂の数平均分子量が上記範囲を外れると、光ファイバーの柔軟性が不十分となる場合がある。なお、上記カチオン重合性樹脂の重量平均分子量及び数平均分子量は、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により、標準ポリスチレン換算の値として測定することができる。
上記カチオン重合性組成物の構成成分としてのカチオン重合性化合物としては、中でも、光照射により速やかに硬化する点で、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3,3−ビス(ビニルオキシメチル)オキセタン、1,4−ビス{〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕メチル}ベンゼン、3−エチル−3−{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタンなどのオキセタン環を分子内に1個以上有する化合物;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、エポキシ化ポリブタジエンなどのエポキシ環を分子内に1個以上有する化合物が好ましい。
なお、上記カチオン重合性組成物において上記カチオン重合性化合物は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
上記カチオン重合性組成物におけるカチオン重合性化合物の含有量(配合量)は、特に限定されないが、カチオン重合性組成物の全量(100重量%)に対して、80重量%以上(例えば、80重量%以上、100重量%未満)が好ましく、より好ましくは90〜99重量%である。カチオン重合性化合物の含有量が80重量%未満であると、得られる光ファイバーの光学特性、耐熱性や機械物性が不十分となる場合がある。
上記カチオン重合性組成物が、オキセタン環を分子内に1個以上有する化合物(オキセタン化合物)とエポキシ環を分子内に1個以上有する化合物(エポキシ化合物)とを有する場合、これらオキセタン化合物とエポキシ化合物の割合[オキセタン化合物/エポキシ化合物](重量比)は、特に限定されないが、0.1/99.9〜99.9/0.1が好ましく、より好ましくは1/99〜99/1である。上記範囲を外れると、紡糸することが困難であったり、硬化度を十分に高くすることが困難となる場合がある。
また、上記カチオン重合性組成物がオキセタン化合物とエポキシ化合物とを有する場合、カチオン重合性化合物の全量(100重量%)に対するこれらの化合物の総量(オキセタン化合物とエポキシ化合物の総量)は、特に限定されないが、80重量%以上(例えば、80〜100重量%)が好ましく、より好ましくは90重量%以上である。
上記カチオン重合性組成物は、重合開始剤を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。上記重合開始剤としては、特に限定されず、公知乃至慣用の光カチオン重合開始剤、光酸発生剤などのカチオン重合を起こし得るものを使用することができる。上記光カチオン重合開始剤としては、例えば、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等のスルホニウム塩;ジアリールヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ヨードニウム[4−(4−メチルフェニル−2−メチルプロピル)フェニル]ヘキサフルオロホスフェート等のヨードニウム塩;テトラフルオロホスホニウムヘキサフルオロホスフェート等のホスホニウム塩;ピリジニウム塩などが挙げられる。なお、重合開始剤は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
上記光カチオン重合開始剤としては、例えば、商品名「CPI−100P」(サンアプロ(株)製)、商品名「CPI−101A」(サンアプロ(株)製)などの市販品を使用することもできる。
上記カチオン重合性組成物における光カチオン重合開始剤の含有量(配合量)は、特に限定されないが、カチオン重合性化合物の全量100重量部に対して、0.01〜50重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量部である。
さらに、上記カチオン重合性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じてその他の添加剤を含有していてもよい。上記添加剤としては、例えば、硬化膨張性モノマー、光増感剤(アントラセン系増感剤等)、樹脂、密着性向上剤、補強剤、軟化剤、可塑剤、粘度調整剤、溶剤、無機又は有機粒子(ナノスケール粒子等)、フルオロシラン等の公知乃至慣用の各種添加剤が挙げられる。
(ラジカル重合性組成物)
本発明の光ファイバーの原料である上記ラジカル重合性組成物は、1種以上のラジカル重合性化合物を必須成分として含む組成物(硬化性組成物)である。上記ラジカル重合性組成物を用いる場合には、硬化反応を阻害させないために、ラジカルに対して不活性なガスの雰囲気下(例えば、窒素雰囲気下)で光照射を行うことが好ましい。
上記ラジカル重合性化合物としては、公知乃至慣用のラジカル重合性化合物を使用することができ、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルエーテル基、ビニルアリール基、ビニルオキシカルボニル基などのラジカル重合性基を分子内に1個以上有する化合物などが挙げられる。
(メタ)アクリロイル基を分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、1−ブテン−3−オン、1−ペンテン−3−オン、1−ヘキセン−3−オン、4−フェニル−1−ブテン−3−オン、5−フェニル−1−ペンテン−3−オン等、及びこれらの誘導体などが挙げられる。
(メタ)アクリロイルオキシ基を分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、n−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1−ビス((メタ)アクリロイルオキシ)エチルイソシアネート、2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアネート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等、及びこれらの誘導体などが挙げられる。
(メタ)アクリロイルアミノ基を分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、4−(メタ)アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−オクチル(メタ)アクリルアミド等、及びこれらの誘導体などが挙げられる。
ビニルエーテル基を分子内に1個以上有する化合物、ビニルアリール基を分子内に1個以上有する化合物としては、上記カチオン重合性化合物として例示した化合物と同様のものが挙げられる。
ビニルオキシカルボニル基を分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、ギ酸イソプロペニル、酢酸イソプロペニル、プロピオン酸イソプロペニル、酪酸イソプロペニル、イソ酪酸イソプロペニル、カプロン酸イソプロペニル、吉草酸イソプロペニル、イソ吉草酸イソプロペニル、乳酸イソプロペニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、アジピン酸ジビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等、及びこれらの誘導体などが挙げられる。
上記ラジカル重合性化合物としては、その他、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニルシラン類などを使用することも可能である。
上記ラジカル重合性化合物としては、その他にも、例えば、下記式で表される構成単位(繰り返し構成単位)を必須の構成単位として含む重合体(ラジカル重合性樹脂)などが挙げられる。
Figure 2015127752
(式中、R1、R2、Aは上記に同じ)
上記式で表される構成単位を必須の構成単位として含むラジカル重合性樹脂は、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独でカチオン重合、又はその他のカチオン重合性化合物と共にカチオン共重合することにより得られる。なお、上記カチオン共重合には、ブロック共重合、ランダム共重合等が含まれる。
また、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物と共重合させるその他のカチオン重合性化合物としては、上述のカチオン重合性組成物の構成成分として例示したカチオン重合性化合物などが挙げられる。中でも、柔軟性及び耐熱性に優れた光ファイバーを形成することができる点で、分子内にオキセタン環、エポキシ環、ビニルエーテル基、及びビニルアリール基からなる群より選択される官能基を1個のみ有する化合物が好ましく、特に、トリメチレンオキシド、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−[(フェノキシ)メチル]オキセタン、3−エチル−3−(ヘキシルオキシメチル)オキセタン等のオキセタン環を分子内に1個のみ有する化合物;グリシジルメチルエーテル、酪酸(R)−グリシジル等のエポキシ基を分子内に1個のみ有する化合物等が好ましい。これらカチオン重合性化合物は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
上記ラジカル重合性樹脂としては、中でも、より柔軟性に優れた硬化物(光ファイバー)を形成できる点で、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物とその他のカチオン重合性化合物をカチオン共重合して得られる共重合体が好ましい。特に、上記ラジカル重合性樹脂を構成する全モノマー(100重量%)中、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物の占める割合は、特に限定されないが、0.1重量%以上(より好ましくは1〜99重量%、さらに好ましくは10〜80重量%)が好ましい。
上記ラジカル重合性樹脂は、公知乃至慣用の重合方法により製造することができる。より具体的には、例えば、特開2012−163713号公報などに記載の方法に準じて製造することができる。
上記ラジカル重合性樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、500以上(例えば、500〜100万程度)が好ましく、より好ましくは3000〜50万である。ラジカル重合性樹脂の重量平均分子量が上記範囲を下回ると、光ファイバーの柔軟性が不十分となる場合がある。なお、上記ラジカル重合性樹脂の重量平均分子量は、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により、標準ポリスチレン換算の値として測定することができる。
上記ラジカル重合性組成物の構成成分としてのラジカル重合性化合物としては、中でも、より優れた耐熱性を持つ硬化物を形成することができる点で、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイルオキシ基を分子内に2個以上(特に2個)有する化合物が好ましい。
なお、上記ラジカル重合性組成物において上記ラジカル重合性化合物は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
上記ラジカル重合性組成物におけるラジカル重合性化合物の含有量(配合量)は、特に限定されないが、ラジカル重合性組成物の全量(100重量%)に対して、80重量%以上(例えば、80重量%以上、100重量%未満)が好ましく、より好ましくは90〜99重量%である。ラジカル重合性化合物の含有量が80重量%未満であると、得られる光ファイバーの耐熱性や機械物性が不十分となる場合がある。
上記ラジカル重合性組成物が上記ラジカル重合性樹脂を含む場合、上記ラジカル重合性樹脂の含有量(配合量)は、特に限定されないが、5重量%以上が好ましく、より好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは60〜90重量%である。上記ラジカル重合性樹脂の割合が5重量%未満であると、ラジカル重合により硬化して得られる光ファイバーの柔軟性が低下する傾向にある。また、上記ラジカル重合性組成物が上記ラジカル重合性樹脂とその他のラジカル重合性化合物を含む場合、ラジカル重合性樹脂とその他のラジカル重合性化合物の割合(前者/後者:重量比)は、特に限定されないが、95/5〜5/95が好ましく、より好ましくは95/5〜20/80、さらに好ましくは95/5〜60/40である。上記割合が上記範囲を外れると、得られる光ファイバーの柔軟性が低下する傾向がある。
上記ラジカル重合性組成物は、重合開始剤を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。上記重合開始剤としては、特に限定されず、公知乃至慣用の光ラジカル重合開始剤などのラジカル重合を起こし得るものを使用することができる。
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンジル、ベンジルジメチルケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ジメトキシアセトフェノン、ジメトキシフェニルアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ジフェニルジサルファイトなどが挙げられる。なお、重合開始剤は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
上記ラジカル重合性組成物は、光吸収エネルギーの重合開始遊離基への転換を強めるための相乗剤を含んでいてもよい。上記相乗剤としては、例えば、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、ジメチルアミノ安息香酸、ジメチルアミノ安息香酸メチル等のアミン;チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、アセチルアセトン等のケトンなどが挙げられる。
上記ラジカル重合性組成物における光ラジカル重合開始剤の含有量(配合量)は、特に限定されないが、ラジカル重合性化合物の全量100重量部に対して、0.01〜50重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量部である。
さらに、上記ラジカル重合性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じてその他の添加剤を含有していてもよい。上記添加剤としては、例えば、硬化膨張性モノマー、光増感剤(アントラセン系増感剤等)、樹脂、密着性向上剤、補強剤、軟化剤、可塑剤、粘度調整剤、溶剤、無機又は有機粒子(ナノスケール粒子等)、フルオロシラン等の公知乃至慣用の各種添加剤が挙げられる。
本発明の光ファイバーが、コア−クラッド構造を有する光ファイバーである場合、コアの直径(コア径)は、特に限定されないが、10〜999μmが好ましく、より好ましくは50〜100μmである。また、本発明の光ファイバーのクラッドの直径(クラッド径)は、特に限定されないが、60〜1000μmが好ましく、より好ましくは100〜500μmである。
本発明の光ファイバーは、クラッドの外側に適宜な被覆層を設けて使用することもできる。上記被覆層としては、例えば、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、PTFE、ポリ塩化ビニル等からなる被覆層が挙げられる。
本発明の光ファイバーは、本発明の光ファイバーの製造方法により製造される。このため、本発明の光ファイバーは、一定の線径を有し、品質面で優れる。また、生産性も高いため、コスト面で優れる。さらに、本発明の光ファイバーは、室温において液体である光硬化性組成物を原料としているため、該光硬化性組成物中の不純物をろ過により除去しやすく、高品質な光ファイバーとすることが容易である。
また、本発明の光ファイバーは、製造の際に光硬化性組成物を吐出するためのノズルとして、上記二重管ノズルを用いた場合には、コアとクラッドの中心軸を正確に一致させることができ、光ファイバー同士の接続や他のデバイスとの接続の際に高い信頼性を発揮できる。さらに、本発明の光ファイバーは、製造の際に光の照射角度を上記式(I)の関係を満たすように制御した場合は、より均一な線径を有し、かつ高い生産性を有する光ファイバーとすることができる。
本発明の光ファイバーは、光通信用途や装飾用途等において広く利用される。特に、光硬化性組成物を原料としており、耐熱性及び柔軟性に優れるため、例えば、携帯機器、FA機器、OA機器、オーディオ機器、車両、LAN等における通信用途、家庭用や工業用の内視鏡等におけるイメージ伝送用途、センサ用途、検査・測定用の照明、美術品等の照明等における光伝送用途、看板、サイン、景観照明等における装飾用途などに特に有用である。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
[光硬化性組成物(コア剤及びクラッド剤)の製造]
エポキシ化ポリブタジエン(商品名「エポリードPB3600」、(株)ダイセル製)90重量部、3,3−ビス(ビニルオキシメチル)オキセタン(商品名「OXT−DVE」、東亞合成(株)製)10重量部、及び商品名「CPI−101A」(サンアプロ(株)製、光重合開始剤)5重量部を混合し、光硬化性組成物(紫外線硬化性組成物)を得た。なお、上記光硬化性組成物の25℃における粘度は30,000mPa・sであった。上記粘度は、E型粘度計(商品名「VISCONIC」、(株)トキメック製)を用いて測定し(ローター:1°34′×R24、回転数:0.5rpm、測定温度:25℃)、以下も同様である。上記光硬化性組成物をコア剤及びクラック剤として使用した。
[光ファイバー製造装置]
光ファイバー製造装置としては、図10に示す製造装置を用いた。図10の光ファイバー製造装置における1は、外管と内管とにより構成された透過窓を有する二重管ノズルである。当該二重管ノズル1の外管及び内管の径は以下に示す通りである。図11は、上記光ファイバー製造装置における二重管ノズル1を示す図面であり、(a)は断面図、(b)は上面図(透過窓側から見た上面図)である。図11における17は、二重管ノズルの内部に侵入した光をノズル外に逃がす(排出する)ための透過窓(石英製)である。図11における18は、透過窓17の押さえ部材である。図11に示す二重管ノズル1は、透過窓17以外はSUSにより構成されている。また、図10の光ファイバー製造装置においては、光照射装置として、光硬化性組成物2に対して3方向から光を照射できる、図5(a)に示す光照射装置を用いた。該光照射装置は、光硬化性組成物2に対して等距離に、3つのライトガイド(UVライトガイド)の先端部分を、同じ高さで等間隔(光硬化性組成物を中心に120°間隔)に配置したものである(図5(a)参照)。また、上記光照射装置の光源装置としては、「SPOTCURE SP9−250DB」(ウシオ電機(株)製)を用いた。なお、図10においては、便宜上、2個のライトガイドの先端部分のみを描いている。
また、ライトガイドの先端部分41には遮光筒51を設置し、さらに、ライトガイドの先端部分41の出力端と二重管ノズル1の吐出口の間には、遮光板52を設置した。
図10に示すように、ライトガイドの先端部分41を二重管ノズル1の吐出口よりも下方に配置し、二重管ノズル1の吐出口からライトガイドの先端部分41の出力端(出力端の中心部)までの高さ(垂直距離)を、20mmとした。また、ライトガイドの先端部分41の出力端(出力端の中心部)から光硬化性組成物2までの距離を、15mmとした。
さらに、ライトガイドの先端部分41は、水平面に対して11°下向きに傾けて設置した(θ=11°)。なお、ライトガイドの先端部分41を遮光筒51で覆った状態で出射される光の広がり角ψは、22°である。
[光ファイバーの製造]
まず、定量ポンプ71及び72を用いて、上記コア剤及びクラッド剤を下記送り速度にて送液し、二重管ノズル1の吐出口より同時に鉛直方向下方に吐出させた。なお、二重管ノズル1の内管にはコア剤、外管と内管の間にはクラッド剤を送液した。
次に、光照射装置により、コア剤及びクラッド剤に紫外線を照射し硬化させた。このようにして製造された光ファイバー(プラスチック光ファイバー)3を、巻取り装置8にて回収した。
(実験条件)
ノズルの吐出口における光の照射強度:0.13mW/cm2
コア剤の送り速度:0.3mL/分
クラッド剤の送り速度:0.3mL/分
二重管ノズルの内管の内径(直径):1.6mm
二重管ノズルの外管の内径(直径):3.4mm
受光器(UVD−S365)で計測した光硬化性組成物に対するUV照射強度:1800mW/cm2(三方の合計:一方あたり600mW/cm2
巻取り速度:400mm/秒
[結果]
製造の際に糸切れを起こすことなく、一定の線径でコア−クラッド構造(コア直径:100μm、クラッド直径:200μm)を有する光ファイバーを150m以上連続的に製造することができた。該光ファイバーの真円度(縦横比)は、コア、クラッド共に1.0であった。
比較例1
[コア剤、クラッド剤]
コア剤、クラッド剤としては、実施例1と同じもの(光硬化性組成物)を使用した。
[光ファイバー製造装置]
二重管ノズル1を、石英製の窓(透過窓)の代わりにこれと同じ形状のSUS製の部材を有する二重管ノズル(即ち、透過窓を有しない二重管ノズル)に変更したこと以外は実施例1で使用した光ファイバー製造装置と同じものを使用した。
[光ファイバーの製造]
光ファイバー製造装置として上記製造装置を使用し、下記の条件で実施例1と同様にして光ファイバーの製造を実施した。
(実験条件)
ノズルの吐出口における光の照射強度:0.13mW/cm2
コア剤の送り速度:0.3mL/分
クラッド剤の送り速度:0.3mL/分
二重管ノズルの内管の内径(直径):1.6mm
二重管ノズルの外管の内径(直径):3.4mm
受光器(UVD−S365)で計測した光硬化性組成物に対するUV照射強度:1800mW/cm2(三方の合計:一方あたり600mW/cm2
巻取り速度:400mm/秒
[結果]
製造される光ファイバーの長さが150m未満で糸切れが発生し、連続的な光ファイバーの製造を行うことができなかった。
1 ノズル(透過窓を有するノズル)
11 吐出口
12 外管
13 内管
14 調整用ねじ
15 導入口(内管)
16 導入口(外管)
17 透過窓
18 透過窓の押さえ部材
2 光硬化性組成物
21 光硬化性組成物が通過する位置
3 光ファイバー
4 光照射装置
41 ライトガイドの先端部分
42 ライトガイド
43 光源装置
44 土台(支持体)
45 土台(支持体)
46 照射角度調整機構
51 遮光筒
52 遮光板
53 光硬化性組成物を通過させるための孔
61 最大強度光
62 照射強度が最大強度光の3%となる光線
63 広がり角(ψ)
71 定量ポンプ(コア剤送液用)
72 定量ポンプ(クラッド剤送液用)
8 巻取り装置

Claims (9)

  1. 光硬化性組成物に光を照射し硬化させることによって光ファイバーを製造する装置であって、
    光硬化性組成物を吐出するためのノズルと、前記ノズルから吐出された糸状の光硬化性組成物に光を照射するための光照射装置とを備え、
    さらに、前記ノズルの吐出口における光の照射強度を0.2mW/cm2以下にするための制御手段を備え、
    前記ノズルは、吐出口からノズルの内部に侵入した光をノズルの外に逃がすための透過窓を有するノズルであることを特徴とする光ファイバー製造装置。
  2. 前記ノズルが、外管と、該外管の内側に配置された内管とを有する二重管ノズルである請求項1に記載の光ファイバー製造装置。
  3. 前記ノズルが、該ノズルの吐出口に対向する位置に前記透過窓を有するノズルである請求項1又は2に記載の光ファイバー製造装置。
  4. 前記光照射装置から出射された光線のうち照射強度が最大となる光線方向と、光硬化性組成物の吐出方向に垂直な面とがなす角度の最小値θが、下記式(I)の関係を満たすように制御された請求項1〜3のいずれか1項に記載の光ファイバー製造装置。
    θ ≧ ψ/2 (I)
    (式(I)中、ψは、光照射装置から出射された光線のうち、照射強度が最大値の3%となる光線同士がなす角度の最大値である)
  5. 光硬化性組成物に光を照射し硬化させることによって光ファイバーを製造する方法であって、
    光硬化性組成物をノズルを用いて吐出し、次いで、前記ノズルから吐出された糸状の光硬化性組成物に光照射装置を用いて光を照射する工程を含み、
    前記工程において、前記ノズルの吐出口における光の照射強度を0.2mW/cm2以下に制御し、
    前記ノズルとして、吐出口からノズルの内部に侵入した光をノズルの外に逃がすための透過窓を有するノズルを用いることを特徴とする光ファイバーの製造方法。
  6. 前記ノズルが、外管と、該外管の内側に配置された内管とを有する二重管ノズルであり、該二重管ノズルによりコア−クラッド構造を有する光ファイバーを製造する請求項5に記載の光ファイバーの製造方法。
  7. 前記ノズルが、該ノズルの吐出口に対向する位置に前記透過窓を有するノズルである請求項5又は6に記載の光ファイバーの製造方法。
  8. 前記光照射装置から出射された光線のうち照射強度が最大となる光線方向と、光硬化性組成物の吐出方向に垂直な面とがなす角度の最小値θが、下記式(I)の関係を満たすように前記光硬化性組成物に光を照射する請求項5〜7のいずれか1項に記載の光ファイバーの製造方法。
    θ ≧ ψ/2 (I)
    (式(I)中、ψは、光照射装置から出射された光線のうち、照射強度が最大値の3%となる光線同士がなす角度の最大値である)
  9. 請求項5〜8のいずれか1項に記載の光ファイバーの製造方法により製造された光ファイバー。
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