JP2014130252A - 光ファイバーの製造方法及び該方法により製造された光ファイバー、並びに光ファイバー製造装置 - Google Patents

光ファイバーの製造方法及び該方法により製造された光ファイバー、並びに光ファイバー製造装置 Download PDF

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Abstract

【課題】光ファイバーを安定的に製造できる光ファイバーの製造方法を提供する。
【解決手段】コアと、該コアを被覆するクラッドとを有するコア−クラッド構造の光ファイバーを製造する方法であって、前記コアを形成するための活性エネルギー線硬化性組成物(A)と前記クラッドを形成するための活性エネルギー線硬化性組成物(B)とを、二重管ノズルより同時に吐出し、次いで、活性エネルギー線を照射し硬化させて硬化物を形成した後、該硬化物を引き取る工程を含み、前記二重管ノズルより吐出される活性エネルギー線硬化性組成物(A)及び活性エネルギー線硬化性組成物(B)の線速u[cm/s]と、前記硬化物の引き取り速度v[cm/s]から算出されるv/uの値が10〜200であることを特徴とする光ファイバーの製造方法。
【選択図】図2

Description

本発明は、活性エネルギー線硬化性組成物に活性エネルギー線を照射し、硬化させることにより光ファイバーの紡糸を行う光ファイバーの製造方法に関する。また、本発明は、上記製造方法により製造された光ファイバーに関する。さらに、本発明は、活性エネルギー線硬化性組成物に活性エネルギー線を照射し、硬化させることにより光ファイバーを紡糸できる光ファイバー製造装置に関する。
プラスチック光ファイバーは石英系光ファイバーよりも安価で柔軟性、加工性に優れており、例えば、通信用機器の配線に使用されている。一般に、プラスチック光ファイバーはコア材ポリマーとクラッド材ポリマーの鞘芯構造(コア−クラッド構造)を有しており、このようなプラスチック光ファイバーの製造プロセスとしては、予めコア/クラッドポリマーの鞘芯構造を有する母材を作製し、これについて加熱炉の中で線引きを行う方法(特許文献1参照)、二重管ノズルから溶融したコア材ポリマーとクラッド材ポリマーを同心円状に押出す方法(特許文献2参照)、予めコア材によりコアを形成した後、クラッド材を押出してコアをクラッド材にて被覆する方法(特許文献3参照)などが知られている。なお、プラスチック光ファイバーのコア材として使用されるポリマーとしては、ポリメチルメタクリレートが代表的である。
特開平8−94860号公報 特開2000−292626号公報 特開2000−155222号公報
一方、近年では、ハンダリフロー性に優れた耐熱柔軟性プラスチックからなる光ファイバー(耐熱柔軟性光ファイバー)が開示されている。このようなプラスチック光ファイバーは、プラスチック光ファイバーの安価で柔軟性及び加工性に優れる利点と、石英系光ファイバーの耐熱性に優れる利点との両方を備えた光ファイバーとして期待されている。
上記耐熱柔軟性光ファイバーは、コア材とクラッド材として紫外線硬化樹脂(UV硬化樹脂)を使用するものであり、上記紫外線硬化樹脂をモノマーの状態で二重管ノズルより同心円状に押出し、紫外線で硬化させ成形することで作製される。このため、二重管ノズルの吐出部で糸切れが生じたり、径サイズの変動が多発するという問題を有していた。従って、上記耐熱柔軟性光ファイバーを長時間にわたって安定的に製造することは困難であるのが現状であった。これに対して、本発明者らは、上記の糸切れや径サイズの変動の一因が、上記二重管ノズルにおけるクラッド液吐出部の周囲にクラッド液が付着し、該付着物が直下の紫外線(UV光)により硬化することにあることを突き止めた。
従って、本発明の目的は、光ファイバーのコアを形成するための活性エネルギー線硬化性組成物(コア液)とクラッドを形成するための活性エネルギー線硬化性組成物(クラッド液)とを二重管ノズルから同時に同心円状に吐出し、次いで、活性エネルギー線硬化させることにより、光ファイバーを安定的に製造できる光ファイバーの製造方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記製造方法により製造される生産性に優れた光ファイバーを提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、光ファイバーのコアを形成するための活性エネルギー線硬化性組成物(コア液)とクラッドを形成するための活性エネルギー線硬化性組成物(クラッド液)とを二重管ノズルから同時に同心円状に吐出し、次いで、活性エネルギー線硬化させることにより、光ファイバーを安定的に製造できる光ファイバー製造装置を提供することにある。
本発明者らは、コア−クラッド構造の光ファイバーを製造するにあたり、コアを形成するための活性エネルギー線硬化性組成物とクラッドを形成するための活性エネルギー線硬化性組成物とを二重管ノズルより同時に吐出し、活性エネルギー線を照射して硬化させた後、得られた硬化物を引き取り装置により引き取る工程を含み、さらに、上記活性エネルギー線硬化性組成物の線速と上記硬化物の引き取り速度とを特定の関係に制御する方法によると、光ファイバーを安定的に製造できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、コアと、該コアを被覆するクラッドとを有するコア−クラッド構造の光ファイバーを製造する方法であって、
前記コアを形成するための活性エネルギー線硬化性組成物(A)と前記クラッドを形成するための活性エネルギー線硬化性組成物(B)とを、二重管ノズルより同時に吐出し、次いで、活性エネルギー線を照射し硬化させて硬化物を形成した後、該硬化物を引き取る工程を含み、
前記二重管ノズルより吐出される活性エネルギー線硬化性組成物(A)及び活性エネルギー線硬化性組成物(B)の線速u[cm/s]と、前記硬化物の引き取り速度v[cm/s]から算出されるv/uの値が10〜200であることを特徴とする光ファイバーの製造方法を提供する。
さらに、前記二重管ノズルが、該二重管ノズルの吐出口に対して該吐出口の外周縁部が引っ込んだ構造を有する二重管ノズルである前記の光ファイバーの製造方法を提供する。
さらに、前記二重管ノズルが、吐出口における内径(直径)がd1[mm]の外管と、該外管の内側に配置された、吐出口における外径(直径)がd2[mm]、内径(直径)がd3[mm]の内管とを有する二重管ノズルであって、
内管の内側表面により囲まれた部分の流路断面積が、吐出口から吐出方向に対する反対方向の少なくともd3×19[mm]の長さにおいて一定であり、
活性エネルギー線硬化性組成物の吐出方向に平行な断面における内管の外側表面と外管の内側表面とが、吐出口から吐出方向に対する反対方向の少なくともd3×16[mm]の長さにおいて平行な二重管ノズルである前記の光ファイバーの製造方法を提供する。
さらに、前記二重管ノズルの吐出口における活性エネルギー線の照射強度が0.2mW/cm2以下に制御される前記の光ファイバーの製造方法を提供する。
また、本発明は、前記の光ファイバーの製造方法により製造される光ファイバーを提供する。
また、本発明は、コアと、該コアを被覆するクラッドとを有するコア−クラッド構造の光ファイバーを製造する光ファイバー製造装置であって、
前記コアを形成するための活性エネルギー線硬化性組成物(A)と前記クラッドを形成するための活性エネルギー線硬化性組成物(B)とを同時に吐出する二重管ノズル、
前記活性エネルギー線硬化性組成物(A)及び活性エネルギー線硬化性組成物(B)に活性エネルギー線を照射し硬化させて硬化物を形成する活性エネルギー線照射装置、並びに、
前記硬化物を引き取る引き取り装置を備え、
前記二重管ノズルより吐出される活性エネルギー線硬化性組成物(A)及び活性エネルギー線硬化性組成物(B)の線速u[cm/s]と、前記引き取り装置による引き取り速度v[cm/s]から算出されるv/uの値が10〜200に制御されていることを特徴とする光ファイバー製造装置を提供する。
さらに、前記二重管ノズルが、該二重管ノズルの吐出口に対して該吐出口の外周縁部が引っ込んだ構造を有する二重管ノズルである前記の光ファイバー製造装置を提供する。
さらに、前記二重管ノズルが、吐出口における内径(直径)がd1[mm]の外管と、該外管の内側に配置された、吐出口における外径(直径)がd2[mm]、内径(直径)がd3[mm]の内管とを有する二重管ノズルであって、
内管の内側表面により囲まれた部分の流路断面積が、吐出口から吐出方向に対する反対方向の少なくともd3×19[mm]の長さにおいて一定であり、
活性エネルギー線硬化性組成物の吐出方向に平行な断面における内管の外側表面と外管の内側表面とが、吐出口から吐出方向に対する反対方向の少なくともd3×16[mm]の長さにおいて平行な二重管ノズルである前記の光ファイバー製造装置を提供する。
さらに、前記二重管ノズルの吐出口における活性エネルギー線の照射強度が0.2mW/cm2以下に制御される前記の光ファイバー製造装置を提供する。
本発明の光ファイバーの製造方法は上記構成を有するため、活性エネルギー線硬化性組成物を原料として、製造の際には糸切れや径サイズの変動等の不具合が発生することなく、安定的に光ファイバーの製造(紡糸)を行うことができる。従って、本発明の光ファイバーの製造方法により製造される光ファイバーは生産性に優れ、さらに活性エネルギー線硬化性組成物を原料としているため、優れた耐熱性、加工性、柔軟性を有し、コスト面及び品質面で有利である。また、本発明の光ファイバー製造装置は上記構成を有するため、当該製造装置を用いると、活性エネルギー線硬化性組成物を原料として、糸切れや径サイズの変動等の不具合が発生することなく、安定的に光ファイバーの製造(紡糸)を行うことができる。
コア−クラッド構造の光ファイバーの一例を示す概略図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)におけるY−Y断面図である。 本発明の光ファイバーの製造方法(光ファイバー製造工程)の一実施形態及び本発明の光ファイバー製造装置の一例を示す概略図である。 本発明の光ファイバーの製造方法(光ファイバー製造工程)の一実施形態(遮光手段を使用する場合)を示す概略図である。 二重管ノズルの一例を示す概略図(斜視図)である。 二重管ノズルの一例を示す概略図(図4におけるZ−Z断面図)である。 二重管ノズルの一例を示す概略図(先端角度が90°の場合)であり、(a)は断面図、(b)は底面図(吐出口側、部分拡大図)である。 二重管ノズルの一例を示す概略図(先端角度が30°の場合、断面図)である。 二重管ノズルの一例を示す概略図(滞留防止構造を有する場合、断面図)である。 位置調整機構を備えた二重管ノズルの一例を示す概略図(二重管ノズルの径方向の断面図)である。 活性エネルギー線照射装置の一例を示す概略図(平面図、3方向から照射する場合)である。 活性エネルギー線照射装置の一例を示す概略図(平面図、2方向から照射する場合)である。 遮光筒の一例を示す概略図(斜視図)である。 遮光板(円板状の遮光板)の一例を示す概略図(斜視図)である。 遮光板(円錐状の遮光板)の一例を示す概略図(斜視図)である。 活性エネルギー線照射装置から出射された光の広がり角ψを説明する概略図(側面図)である。 照射強度が最大となる光線の方向と活性エネルギー線硬化性組成物の吐出方向に垂直な面とがなす角度δと光の広がり角ψの関係を説明する概略図(側面図)である。図16の(a)はδ≧ψ/2の場合、(b)はδ<ψ/2の場合の概略図である。 照射角度調整機構を備える活性エネルギー線照射装置の一例を示す概略図(側面図)である。 本発明の光ファイバーの製造方法(光ファイバー製造工程)の一実施形態(落射方式の場合)を示す概略図である。 実施例6で使用した光ファイバー製造装置の概略図である。 実施例6で使用した二重管ノズルの概略図(断面図)である。
本発明の光ファイバーの製造方法は、活性エネルギー線硬化性組成物(光硬化性組成物)に活性エネルギー線(光)を照射し硬化させることによって光ファイバーを製造(紡糸)する、光ファイバーの製造方法である。本発明の光ファイバーの製造方法は、光ファイバーの中でも、コアと該コアを被覆するクラッドとを有するコア−クラッド構造(鞘芯構造)の光ファイバーを製造する方法である。
図1は、コア−クラッド構造の光ファイバーの一例を示す概略図であり、(a)は斜視図を示し、(b)は(a)におけるY−Y断面図を示す。図1に示すように、コア−クラッド構造の光ファイバー100は、コア200がクラッド300により被覆された構造を有する。なお、本発明の光ファイバーの製造方法により得られる光ファイバー(「本発明の光ファイバー」と称する場合がある)は、図1に示すコア200が単層構成のクラッド300により被覆された光ファイバー100に限定されず、例えば、コアが多層構成(複層構成)のクラッドにより被覆された光ファイバーであってもよいし、光ファイバーのクラッドの外側にさらに保護層を有する光ファイバーであってもよい。
本発明の光ファイバーの製造方法は、コア−クラッド構造の光ファイバーにおけるコアを形成するための活性エネルギー線硬化性組成物(「活性エネルギー線硬化性組成物(A)」や「コア液」と称する場合がある)と、クラッドを形成するための活性エネルギー線硬化性組成物(「活性エネルギー線硬化性組成物(B)」や「クラッド液」と称する場合がある)とを、二重管ノズルより同時に吐出し、次いで、吐出された活性エネルギー線硬化性組成物(A)及び活性エネルギー線硬化性組成物(B)に対して活性エネルギー線を照射して、硬化させた後、得られた硬化物(活性エネルギー線硬化性組成物(A)及び活性エネルギー線硬化性組成物(B)の硬化物;即ち、コア−クラッド構造の光ファイバー)を引き取り装置(引き取り機)等により引き取る工程(当該工程を、「光ファイバー製造工程」と称する場合がある)を必須の工程として含む。なお、本明細書においては、活性エネルギー線硬化性組成物(A)と活性エネルギー線硬化性組成物(B)とを総称して、単に「活性エネルギー線硬化性組成物」と称する場合がある。
[光ファイバー製造工程]
図2は、本発明の光ファイバーの製造方法における光ファイバー製造工程の一実施形態を示す概略図である。図2における1は二重管ノズル、4は活性エネルギー線照射装置(例えば、紫外線照射装置)、8は引き取り装置を示す。また、図2における2は活性エネルギー線硬化性組成物、21は活性エネルギー線硬化性組成物(A)(コア液)、22は活性エネルギー線硬化性組成物(B)(クラッド液)を示す。図2に示す例では、まず、二重管ノズル1からコア液21及びクラッド液22を同時に鉛直方向下方に吐出し、次いで、二重管ノズル1より糸状(ファイバー状)に垂下した活性エネルギー線硬化性組成物2(コア液21及びクラッド液22)に対し、活性エネルギー線照射装置4により光を照射する。これにより、活性エネルギー線硬化性組成物2が硬化し、光ファイバー100(硬化物3)が形成される。このようにして得られた光ファイバー100は、引き取り装置8により連続的に引き取られる。なお、図2に示す引き取り装置8は、光ファイバー100を巻き取ることによって引き取る(回収する)巻取り装置である。
図3は、本発明の光ファイバーの製造方法における光ファイバー製造工程の他の実施形態を示す概略図である。図3で示す例は、51で示される遮光部材(遮光筒)が活性エネルギー線照射装置4のライトガイドの先端部分41を覆うように配置されていること、さらに、52で示される遮光部材(遮光板)が二重管ノズル1の吐出口の下方であって活性エネルギー線照射装置4により活性エネルギー線を照射する部分よりも上方に配置されていること以外は、図2に示す例と同様である。後述のように、遮光部材51、52が使用されることによって、二重管ノズル1の吐出口における活性エネルギー線の照射強度が弱められ、光ファイバーの糸切れや径の不均一などの不具合発生がより抑制される傾向がある。
〔吐出段階〕
上述のように、上記光ファイバー製造工程では、まず、活性エネルギー線硬化性組成物(A)と活性エネルギー線硬化性組成物(B)とを二重管ノズルより同時に吐出させる(このような段階を、「吐出段階」と称する場合がある)。
(二重管ノズル)
上記吐出段階では、上述のように、二重管ノズルが使用される。上記二重管ノズルは、外管と、該外管の内側に配置された内管とを有する二重管構造のノズルであり、内管の内側にコア液を通液し、外管と内管の間(断面視リング状の隙間)にクラッド液を通液して、上記コア液及びクラッド液を吐出口から同時に吐出させることができる。このようにして二重管ノズルより吐出させたコア液及びクラッド液は、一般に、コア液がクラッド液により被覆された状態で糸状(ファイバー状)に形成されている(図2参照)。また、二重管ノズルより吐出されたコア液及びクラッド液の幅方向の断面形状は、得られる光ファイバーと同様の断面形状を有しており、具体的には、例えば、図1に示す光ファイバー100におけるコア200をコア液と置き換え、クラッド300をクラッド液に置き換えた断面形状に対応する断面形状(コア液とクラッド液とが同心円状に形成された断面形状)を有する。
本発明の光ファイバーの製造方法は、上記吐出段階において上述の二重管ノズルを使用することにより、その後、活性エネルギー線を照射することにより一段階でコア−クラッド構造の光ファイバーを製造することが可能となる。
上記二重管ノズルは、通常、筒状(中空の柱状)の形状を有し、その先端(一方の端部)に活性エネルギー線硬化性組成物(コア液、クラッド液)を吐出するための吐出口を有し、なおかつ上述のように二重管構造を有する構造体である。上記二重管ノズルの吐出口に対する反対側は、特に限定されないが、通常、必要に応じて適宜な管を介して、活性エネルギー線硬化性組成物を貯蔵するタンクや定量ポンプなどに接続される。
上記二重管ノズルの内管、外管の形状は、コア液及びクラッド液のそれぞれを通液可能な形状であればよく、特に限定されないが、例えば、円筒状、角筒状などが挙げられる。中でも、低伝播損失の光ファイバーを作製する観点で、内管は円筒状の構造体であることが好ましく、外管は少なくとも空洞部分が円柱状となっている筒状構造体であることが好ましい(例えば、図4参照)。
上記二重管ノズルの内管、外管を構成する材質は、特に限定されず、例えば、SUS、アルミ、樹脂、複合材料などが挙げられる。中でも、耐久性、強度の観点で、SUSが好ましい。
なお、上記二重管ノズルは、コア液及びクラッド液を送液することができ、コア液がクラッド液により被覆された状態で同時に吐出できるもの(即ち、例えば、図6の(b)に示す形状の吐出口を有するもの)であればよく、その形状(例えば、全体的な形状など)は特に限定されない。例えば、上記二重管ノズルは、図6〜8に示すように、上部(吐出方向に対する反対側)において内管と外管とが一体化されたものであってもよい。
上記二重管ノズルにおける外管の径(内径及び外径)、内管の径(内径及び外径)は、製造される光ファイバーのコアの直径(コア径)及びクラッドの直径(クラッド径)、活性エネルギー線硬化性組成物の粘度や吐出速度等に応じて適宜選択することができ、特に限定されない。具体的には、例えば、上記二重管ノズルにおける外管の内径は、0.3〜2.5mmが好ましく、より好ましくは0.5〜2.0mmである。さらに、上記二重管ノズルにおける内管の外径は、例えば、0.2〜1.2mmが好ましく、より好ましくは0.3〜1.0mmであり、上記内管の内径は、例えば、0.05〜0.7mmが好ましく、より好ましくは0.1〜0.5mmである。なお、上記内径及び外径は、それぞれ管の直径を意味する。
図4及び図5は、二重管ノズルの一例を示す概略図であり、図4は斜視図を、図5は図4におけるZ−Z断面図を表す。図4及び図5において、12は外管を、13は内管を表す。なお、図5の15はコア液の吐出口、16はクラッド液の吐出口を示す。このような二重管ノズルを用いた場合、内管13の内側に活性エネルギー線硬化性組成物(A)(コア液)を通液し、外管12と内管13の間に活性エネルギー線硬化性組成物(B)(クラッド液)を通液することにより、コア液及びクラッド液とを同時に、かつコア液がクラッド液に被覆された状態で、二重管ノズルの吐出口11から糸状に吐出させることができる。このようにして吐出させたコア液及びクラッド液に対して、後述の活性エネルギー線照射工程において活性エネルギー線を照射し硬化させることによって、一段階でコア−クラッド構造の光ファイバーを製造することができる。このため、本発明の光ファイバーの製造方法によると、コアとクラッドとの中心(中心軸)が精度良く合った光ファイバーを高い生産性で得ることができる。
より具体的には、例えば、以下に説明する二重管ノズルを使用することができる。図6は、上記二重管ノズルの一例を示す概略図であり、(a)は断面図、(b)は底面図(吐出口側、部分拡大図)である。また、図6の(b)におけるd1は、吐出口における二重管ノズルの外管の内径(直径)を示し、d2は、吐出口における二重管ノズルの内管の外径(直径)を示す。また、図6の(b)におけるd3は、吐出口における二重管ノズルの内管の内径(直径)を示す。即ち、図6の(b)に示すように、上記二重管ノズルの先端(吐出口)における活性エネルギー線硬化性組成物(A)(コア液)の吐出口の断面積(吐出方向に直交する断面の面積;「コア液の吐出断面積」と称する場合がある)は、[d3×d3×π×1/4]により算出される。一方、上記二重管ノズルにおける活性エネルギー線硬化性組成物(B)(クラッド液)の吐出口の断面積(吐出方向に直交する断面の面積;「クラッド液の吐出断面積」と称する場合がある)は、[(d1×d1×π×1/4)−(d2×d2×π×1/4)]により算出される。後述のように、これらの断面積の合計(「総吐出断面積」と称する場合がある)と活性エネルギー線硬化性組成物の吐出速度から、活性エネルギー線硬化性組成物の線速を算出することができる。
上記二重管ノズルが図6の(b)に示す形状の吐出口を有する場合(即ち、円形(真円形)のコア液の吐出口を有し、同心円状のリング状のクラッド液の吐出口を有する場合)、d1としては、特に限定されないが、0.3〜2.5mmが好ましく、より好ましくは0.5〜2.0mmである。また、d2としては、特に限定されないが、0.2〜1.2mmが好ましく、より好ましくは0.3〜1.0mmである。また、d3としては、特に限定されないが、0.05〜0.7mmが好ましく、より好ましくは0.1〜0.5mmである。
図6に示す二重管ノズルは、その上部に活性エネルギー線硬化性組成物(A)(コア液)21を導入するための導入口が形成され、その側部に活性エネルギー線硬化性組成物(B)(クラッド液)22を導入するための導入口が形成された構造を有する。但し、二重管ノズルにおけるコア液の導入口、クラッド液の導入口、これらの形状、位置、数などは、これに限定されるものではない。
上記二重管ノズルは、特に、径(線径)が均一な光ファイバーを形成する観点で、上記二重管ノズルの吐出口に対して該吐出口の外周縁部が引っ込んだ構造を有する二重管ノズルであることが好ましい。より具体的には、上記二重管ノズルは、該二重管ノズルの吐出口部分における外管の内側表面と、該内側表面に連続する外管の外側表面(吐出口の外周縁部(吐出口の外側の周縁部)の表面)とがなす角度(単に、「先端角度」と称する場合がある)が90°未満(鋭角)の二重管ノズルであることが好ましい。図6、図7に示す二重管ノズルにおいては、9で示される角度が上述の「先端角度」である。上記二重管ノズル(先端角度が90°未満の二重管ノズル)は、言い換えると、二重管ノズルの吐出方向(活性エネルギー線硬化性組成物の吐出方向)に対する垂直面であって吐出口が存在する面を基準とすると(当該面を「基準面」と称する)、吐出口の外周縁部の表面が、上記基準面よりも内方に位置する(引っ込んだ)構造を有する二重管ノズルである。このような二重管ノズルを使用することにより、吐出口の周縁部への活性エネルギー線硬化性組成物の付着が防止され、その結果、このような付着物(活性エネルギー線硬化性組成物)の硬化物の生成も防止されるので、該硬化物の存在による光ファイバーの糸切れや径の不均一の発生が防止される傾向がある。なお、図6に示す二重管ノズルは、上記先端角度が90°の二重管ノズルである。
上記二重管ノズルの先端角度は、上述のように90°未満が好ましく、より好ましくは5〜70°、さらに好ましくは10〜50°である。先端角度が90°以上であると、均一な径を有する光ファイバーを得ることが困難となる場合がある。
図7は、上記先端角度が90°未満の二重管ノズルの一例を示す概略図(断面図)である。具体的には、図7に示す二重管ノズルの先端角度9は30°である。
上記二重管ノズルが、図6に示すように、吐出口における内径(直径)がd1[mm]の外管と、該外管の内側に配置された、吐出口における外径(直径)がd2[mm]、内径(直径)がd3[mm]の内管とを有する二重管ノズルである場合には、当該二重管ノズルの吐出口部分(吐出口から吐出方向に対する反対方向の一定の長さの部分)の内部構造は、以下の(1)及び(2)のいずれか一方又は両方(好ましくは両方)を満足する構造であることが好ましい。なお、本明細書においては、下記(1)及び(2)のいずれか一方又は両方を満足する構造を、「滞留防止構造」と称する場合がある。
(1)内管の内側表面により囲まれた部分の流路断面積が、吐出口から吐出方向に対する反対方向の少なくともd3×19[mm]の長さにおいて一定である
(2)活性エネルギー線硬化性組成物の吐出方向に平行な断面における内管の外側表面と外管の内側表面とが、吐出口から吐出方向に対する反対方向の少なくともd3×16[mm]の長さにおいて平行である。
上記滞留防止構造を有する二重管ノズル(特に、上記(1)及び(2)の両方を満足する二重管ノズル)を使用することにより、該二重管ノズルの内部における活性エネルギー線硬化性組成物の流速の低下及び該活性エネルギー線硬化性組成物の滞留が生じにくくなり、二重管ノズルの内部における活性エネルギー線硬化性組成物の硬化が生じにくくなる。このため、上記滞留防止構造を有する二重管ノズルを使用すると、光ファイバーの糸切れ及び径の不均一といった不具合の発生がより高いレベルで抑制される。
上記滞留防止構造における上記(1)の「流路断面積」とは、活性エネルギー線硬化性組成物の吐出方向に直交する(垂直な)断面の流路の面積を意味する。即ち、上記「内管の内側表面により囲まれた部分の流路断面積」とは、コア液の流路断面積である。また、「内管の内側表面により囲まれた部分の流路断面積が、吐出口から少なくともd3×19[mm]の長さにおいて一定である」とは、具体的には、吐出口における内管の内径をd3[mm]とすると、吐出口におけるコア液の流路断面積(即ち、上述のコア液の吐出断面積)は[d3×d3×1/4×π][mm]となるが、吐出口から吐出方向に対する反対方向の少なくともd3×19[mm]の長さにおいて、上記コア液の流路断面積が[d3×d3×1/4×π]×(1±0.1)[mm]以内であることを意味する。このように、内管の内側表面により囲まれた部分の流路断面積が、吐出口からある長さにおいて一定であることにより、光ファイバーの糸切れ及び径の不均一といった不具合の発生がより高いレベルで抑制される傾向がある。
上記滞留防止構造における上記(2)の「活性エネルギー線硬化性組成物の吐出方向に平行な断面」とは、一般に、二重管ノズルの管の長さ方向に平行な断面である。また、「上記断面における内管の外側表面と外管の内側表面とが、吐出口から吐出方向に対する反対方向の少なくともd3×16[mm]の長さにおいて平行である」とは、具体的には、内管の外側表面と外管の内側表面がなす角度が0±0.5°以内[又は180±0.5°以内](好ましくは0±0.2°以内[又は180±0.2°以内])であることを意味する。このように、上記断面における内管の外側表面と外管の内側表面とが、吐出口から少なくとも特定の長さにおいて平行であることにより、光ファイバーの糸切れ及び径の不均一といった不具合の発生がより高いレベルで抑制される傾向がある。
上記二重管ノズルは、少なくとも吐出口(吐出口側の先端部分)において、外管の軸(中心軸)と内管の軸(中心軸)とが一致していることが好ましい。このような二重管ノズルを用いることにより、コアの中心軸とクラッドの中心軸とが正確に一致した光ファイバーを容易に製造することができる。このように中心軸が一致した光ファイバーは、光ファイバー同士の接続や他のデバイス(例えば、コネクターや光源装置など)との接続に際して、高い信頼性を発揮できる。
上記二重管ノズルは、外管の軸(中心軸)と内管の軸(中心軸)とを一致させるために、外管の内側における内管の位置を調整するための調整機構(「位置調整機構」と称する場合がある)を有していてもよい。上記位置調整機構は、内管の位置を調整できるものであれば特に限定されないが、例えば、外管を貫通し、先端を内管の外面に接触させるように配置したねじ(調整用ねじ)を、簡便な位置調整機構として利用することができる。図9は、位置調整機構を備えた二重管ノズルの一例を表す概略図(二重管ノズルの径方向の断面図)である。図9において、14は調整用ねじを表す。図9においては、3つの調整用ねじの先端を、内管に対して等間隔に接触させることによって位置調整機構が構成されており、これら調整用ねじのねじ込み具合をそれぞれ調節して、外管の内側における内管の位置を調整できる。但し、用いる調整用ねじの大きさ、数、配置の仕方等は、これに限定されるものではない。
(活性エネルギー線硬化性組成物)
本発明の光ファイバーの製造方法において使用される活性エネルギー線硬化性組成物(A)(コア液)、活性エネルギー線硬化性組成物(B)(クラッド液)は、それぞれ、本発明の光ファイバーのコア及びクラッドを構成する材料の前駆体であり、活性エネルギー線を照射することによって硬化して硬化物を与える組成物である。上記活性エネルギー線硬化性組成物としては、例えば、活性エネルギー線の照射により速やかに硬化する公知乃至慣用の活性エネルギー線硬化性組成物(ラジカル重合性組成物、カチオン重合性組成物、アニオン重合性組成物等)などを用いることができる。中でも、上記活性エネルギー線硬化性組成物は、紫外線の照射により硬化して硬化物を与える活性エネルギー線硬化性組成物(紫外線硬化性組成物)であることが好ましい。
上記活性エネルギー線硬化性組成物は、室温(例えば、25℃)において液体である。即ち、室温において流動性を有する液状物である。上記活性エネルギー線硬化性組成物を光ファイバーの原料として用いることにより、加熱や溶剤の使用により粘度を低下させることなく、室温で紡糸することが可能となる。さらに、ろ過によって活性エネルギー線硬化性組成物中の不純物を容易に除去することができるため、高品質の光ファイバーを得やすい。一方、室温において固体である組成物(樹脂組成物)を光ファイバーの原料として使用した場合には、加熱や溶剤の使用により粘度を低下させない限り、室温における紡糸が困難であり、コスト面で不利となる。また、一般に、室温において固体である組成物(樹脂組成物)は、不純物の除去操作が煩雑である。
本発明の光ファイバーの製造方法において、光ファイバーのコアを形成するための原料として使用される活性エネルギー線硬化性組成物(A)(コア液)の25℃における粘度は、特に限定されないが、5,000〜50,000cPが好ましく、より好ましくは6,000〜45,000cP、さらに好ましくは7,000〜40,000cPである。25℃における粘度が5,000cP未満であると、光ファイバーのコア径、真円度の制御が困難となる場合がある。一方、25℃における粘度が50,000cPを超えると、二重管ノズルの吐出圧が高くなり、コア液を定量吐出しにくくなり、光ファイバーのコア径、真円度の制御が困難になり、ファイバー切れ(糸切れ)が発生しやすくなる場合がある。
本発明の光ファイバーの製造方法において、光ファイバーのクラッドを形成するための原料として使用される活性エネルギー線硬化性組成物(B)(クラッド液)の25℃における粘度は、特に限定されないが、10,000〜200,000cPが好ましく、より好ましくは20,000〜150,000cP、さらに好ましくは30,000〜120,000cPである。25℃における粘度が10,000cP未満であると、光ファイバーの径の制御が困難となったり、ファイバー切れが発生しやすくなる場合がある。一方、25℃における粘度が200,000cPを超えると、二重管ノズルの吐出圧が高くなり、コア液を定量吐出しにくくなり、ファイバーの径の制御が困難になって、ファイバー切れが発生しやすくなる場合がある。なお、上記活性エネルギー線硬化性組成物(A)の25℃における粘度、活性エネルギー線硬化性組成物(B)の25℃における粘度は、例えば、E型粘度計(商品名「VISCONIC」、(株)トキメック製)を用いて測定することができる(ローター:1°34′×R24、回転数:0.5rpm、測定温度:25℃)。
上記活性エネルギー線硬化性組成物(コア液、クラッド液)としては、耐熱性及び柔軟性に非常に優れた光ファイバーを製造できる点で、特に、後述の活性エネルギー線樹脂組成物(式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物の重合体又は共重合体を必須成分として含む組成物)を使用することが好ましい。
上記吐出段階において、二重管ノズルから吐出される活性エネルギー線硬化性組成物(A)の吐出速度(二重管ノズルから吐出される単位時間あたりのコア液の量)は、使用する二重管ノズル(例えば、二重管ノズルの内管の内径)、形成する光ファイバーのコアの径などに応じて適宜調整することができ、特に限定されないが、0.0001〜1cm3/sが好ましく、より好ましくは0.0005〜0.1cm3/sである。活性エネルギー線硬化性組成物(A)の吐出速度は、特に、後述のv/uの値が10〜200に制御される範囲に設定することが重要である。
二重管ノズルから吐出される活性エネルギー線硬化性組成物(B)の吐出速度(二重管ノズルから吐出される単位時間あたりのクラッド液の量)は、使用する二重管ノズル(例えば、二重管ノズルの外管の内径及び内管の外径)、形成する光ファイバーのクラッドの径などに応じて適宜調整することができ、特に限定されないが、0.0001〜1cm3/sが好ましく、より好ましくは0.001〜0.1cm3/sである。活性エネルギー線硬化性組成物(B)の吐出速度は、特に、後述のv/uの値が10〜200に制御される範囲に設定することが重要である。
上記二重管ノズルから吐出される活性エネルギー線硬化性組成物(A)と活性エネルギー線硬化性組成物(B)の合計の吐出速度(総吐出速度)は、使用する二重管ノズル、形成する光ファイバーの径などに応じて適宜調整することができ、特に限定されないが、0.0002〜2cm3/sが好ましく、より好ましくは0.0015〜0.2cm3/sである。上記総吐出速度は、特に、後述のv/uの値が10〜200に制御される範囲に設定することが重要である。
上記二重管ノズルより吐出される活性エネルギー線硬化性組成物(A)及び活性エネルギー線硬化性組成物(B)の線速(線速度)uは、特に限定されないが、0.01〜10cm/sが好ましく、より好ましくは0.1〜5cm/sである。上記線速uは、特に、後述のv/uの値が10〜200に制御される範囲に設定することが重要である。なお、上記線速u[cm/s]は、例えば、下記式により算出することが可能である。
線速u[cm/s]=U[cm3/s]/S[cm2
上記式中、U[cm3/s]は、活性エネルギー線硬化性組成物(A)及び活性エネルギー線硬化性組成物(B)の総吐出速度(送液供給速度)であり、S[cm2]は、二重管ノズルの先端(吐出口)における活性エネルギー線硬化性組成物(A)の吐出口の断面積(コア液の吐出断面積)と活性エネルギー線硬化性組成物(B)の吐出口の断面積(クラッド液の吐出断面積)の合計(総吐出断面積)を示す。
上述の活性エネルギー線硬化性組成物(A)の吐出速度、活性エネルギー線硬化性組成物(B)の吐出速度、総吐出速度、線速uは、例えば、定量ポンプを使用することによって容易に制御することができる。二重管ノズルから吐出させる活性エネルギー線硬化性組成物の単位時間あたりの量(吐出速度)を制御することによって、得られる光ファイバーの線径を制御することができる。一般に、吐出速度を速くすることによって活性エネルギー線硬化性組成物の径及び該活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物(光ファイバー)の径は太くなる傾向がある。また、活性エネルギー線硬化性組成物(A)の吐出速度と活性エネルギー線硬化性組成物(B)の吐出速度をそれぞれ独立に制御することによって、得られる光ファイバーのコアの径とクラッドの径を独立に制御することが可能である。
活性エネルギー線硬化性組成物(A)及び活性エネルギー線硬化性組成物(B)の二重管ノズルに対する送液は、特に限定されず、公知乃至慣用の方法により実施することができる。例えば、図2に示すように、定量ポンプ(圧送ポンプ)71、72を用いた送液手段(ポンプ圧送)により実施することが可能である。
上記吐出段階により、活性エネルギー線硬化性組成物(A)及び活性エネルギー線硬化性組成物(B)が、活性エネルギー線硬化性組成物(A)が活性エネルギー線硬化性組成物(B)により被覆された状態で、同時に二重管ノズルより糸状に吐出される。
〔活性エネルギー線照射段階〕
上記光ファイバー製造工程においては、上記吐出段階に続いて、二重管ノズルより吐出させた活性エネルギー線硬化性組成物(A)及び活性エネルギー線硬化性組成物(B)に対して活性エネルギー線を照射し、硬化させることによって、活性エネルギー線硬化性組成物(A)及び活性エネルギー線硬化性組成物(B)の硬化物(即ち、コア−クラッド構造の光ファイバー)を連続的に形成する(当該段階を「活性エネルギー線照射段階」と称する場合がある)。
上記活性エネルギー線としては、活性エネルギー線硬化性組成物(A)及び活性エネルギー線硬化性組成物(B)を硬化させることができるものであればよく、特に限定されないが、例えば、紫外線、赤外線、可視光線、電子線、X線などが挙げられる。中でも、一般的な光開始剤を使用することができ、取り扱い性に優れる点で、紫外線が好ましい。
上記活性エネルギー線の照射に際しては、公知乃至慣用の活性エネルギー線照射装置(特に、紫外線照射装置)を使用することができる。例えば、上記紫外線照射装置としては、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアーク、メタルハライドランプ、太陽光、LEDランプ、レーザーなどの光源;これらの光源と、該光源より出力した光を伝送するためのライトガイドを組み合わせたもの;これらと各種光学系(例えば、レンズやミラーなど)等を組み合わせたもの等が挙げられる。
なお、本明細書においては、上記活性エネルギー線照射装置の中で、特に、活性エネルギー線を出射する部分のことを「出射部」と称する場合がある。例えば、図2に示す活性エネルギー線照射装置4においては、ライトガイドの先端部分41の端部(出力端)が出射部である。
上記活性エネルギー線照射段階において、上記活性エネルギー線照射装置を用いて活性エネルギー線硬化性組成物に対して活性エネルギー線を照射する方法は、特に限定されない。例えば、上記活性エネルギー線照射装置の出射部の配置や数は、特に限定されない。特に、活性エネルギー線硬化性組成物に対して活性エネルギー線を均一に照射できるように活性エネルギー線照射装置の出射部を配置することが好ましい。図10は、本発明の光ファイバーの製造方法における活性エネルギー線照射装置の一例を示す概略図(平面図)である。図10に示す活性エネルギー線照射装置は、二重管ノズルの吐出口の下方において3方向から活性エネルギー線を出射し、活性エネルギー線硬化性組成物に対して照射できる活性エネルギー線照射装置である(図2など参照)。上記活性エネルギー線照射装置は、活性エネルギー線硬化性組成物に対して等距離で、互いに等間隔に配置された出射部(ライトガイドの先端部分41の出力端)を有する。図10において、23は活性エネルギー線硬化性組成物が通過する位置を表し、44及び45は、上記活性エネルギー線照射装置のライトガイドの先端部分41を固定するための土台(支持体)を表す。但し、活性エネルギー線照射装置は、これに限定されるものではなく、例えば、図11に示す活性エネルギー線照射装置のように、2方向から活性エネルギー線を照射できるものであってもよいし、1つの方向のみや、4つ以上の方向から活性エネルギー線を照射できるもの等であってもよい。また、活性エネルギー線照射装置は、二重管ノズルの吐出口を基準として活性エネルギー線硬化性組成物が吐出される側(例えば、吐出口の下方)において活性エネルギー線を出射するものに限らず、例えば、二重管ノズルの吐出口を基準として活性エネルギー線硬化性組成物が吐出される方向とは反対側(例えば、吐出口よりも上方)から活性エネルギー線を出射するものであってもよい(例えば、図18参照)。
さらに、上記活性エネルギー線照射装置は、活性エネルギー線を活性エネルギー線硬化性組成物に対して効率的に照射するため、必要に応じて、適宜な光学系と組み合わせて使用してもよい。具体的には、例えば、上記活性エネルギー線照射装置からの活性エネルギー線を集光レンズ(凸レンズやシリンドリカルレンズなど)で集光して、より強度の高い活性エネルギー線を活性エネルギー線硬化性組成物に照射したり、いったん活性エネルギー線硬化性組成物に照射した活性エネルギー線をミラー(反射ミラー)により反射させて、再度活性エネルギー線硬化性組成物に照射することも可能である。上記光学系を用いることで、活性エネルギー線の有効利用を図ることができ、光ファイバーの生産性を向上させることができる。上記光学系としては、上記に限定されるものではなく、公知乃至慣用の光学機器等において通常用いられる光学系等を利用することができる。
活性エネルギー線硬化性組成物(A)及び活性エネルギー線硬化性組成物(B)に対して照射する活性エネルギー線の照射エネルギーは、特に限定されないが、例えば、活性エネルギー線として紫外線を使用する場合には、100〜500mJが好ましく、より好ましくは120〜400mJである。活性エネルギー線の照射エネルギーが小さ過ぎると(例えば、紫外線の照射エネルギーが100mJ未満であると)、硬化不良が生じやすく、光ファイバーの糸切れや変形等の不具合が生じやすくなる場合がある。一方、活性エネルギー線の照射エネルギーが大きすぎると(例えば、紫外線の照度が500mJを超えると)、光ファイバーが変質し、光ファイバーの性能が低下する場合がある。
なお、活性エネルギー線硬化性組成物に対する活性エネルギー線の照射は、一段階で実施することもできるし、二段階以上の多段階で実施することもできる。活性エネルギー線の照射を多段階で実施する場合には、各段階において照射する活性エネルギー線の照度は同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、各段階において同じ活性エネルギー線を照射することもできるし、異なる種類の活性エネルギー線を照射することもできる。
また、活性エネルギー線硬化性組成物に対する活性エネルギー線の照射は、空気中や不活性ガス(窒素やアルゴンなど)中などのいずれの雰囲気下においても実施することができる。特に、上記活性エネルギー線硬化性組成物としてラジカル重合性組成物(例えば、後述のラジカル重合性樹脂組成物等)を使用する場合には、ラジカル重合を阻害する物質(例えば、酸素など)ができるだけ存在しない雰囲気下(例えば、不活性ガス中など)で活性エネルギー線照射を行うことが好ましい。
(吐出口における活性エネルギー線の照射強度の制御)
上記活性エネルギー線照射段階においては、特に限定されないが、上記二重管ノズルの吐出口に照射される活性エネルギー線の照射強度(単に「吐出口における活性エネルギー線の照射強度」と称する場合がある)を0.2mW/cm2以下(より好ましくは0.1mW/cm2以下)に制御することが好ましい。吐出口における照射強度を0.2mW/cm2以下に制御することにより、いっそう径の均一性に優れた光ファイバーを得ることができ、製造の際の糸切れもいっそう低減される傾向がある。一方、上記吐出口における活性エネルギー線の照射強度が0.2mW/cm2を超えると、二重管ノズルの先端の吐出口において活性エネルギー線硬化性組成物の硬化反応(重合反応)が進行しやすく、吐出口付近の活性エネルギー線硬化性組成物の粘度が変動したり、詰まりが生じやすくなる場合がある。その結果、二重管ノズルから吐出される活性エネルギー線硬化性組成物の線径が安定せず、線径が一定の光ファイバーが得られなかったり、製造時に糸切れが頻発し光ファイバーの生産性が低下してしまう場合がある。
上記「吐出口における活性エネルギー線の照射強度」とは、本発明の光ファイバーの製造方法において、活性エネルギー線硬化性組成物を送液しないこと以外は光ファイバー製造時と全く同一の装置構成及び条件で活性エネルギー線を出射させた時(具体的には、活性エネルギー線照射装置から活性エネルギー線を出射させた時)に、二重管ノズルの吐出口において測定される活性エネルギー線の照射強度(単位:mW/cm2)を意味する。上記照射強度の測定方法は、特に限定されないが、例えば、パワーメータ(商品名「紫外線光量計UTI−250」、ウシオ電機(株)製)を用いて、受光器UVD−S365(感度波長:310〜390nm、絶対値校正波長:365nm)により測定することができる。
上記吐出口における活性エネルギー線の照射強度を0.2mW/cm2以下に制御する手段としては、公知乃至慣用の手段を適用することができ、特に限定されないが、例えば、以下で例示する制御手段等を使用することが可能である。
上述のように、本発明の光ファイバーの製造方法により製造される光ファイバーの原料は、室温において液体の活性エネルギー線硬化性組成物であるため、ノズルから吐出された上記活性エネルギー線硬化性組成物が糸状(ファイバー状)の形状を保持できる比較的早い段階で活性エネルギー線を照射し、硬化させる必要がある。このため、本発明の光ファイバーの製造方法における光ファイバー製造工程では、活性エネルギー線硬化性組成物における活性エネルギー線が照射される部分と、二重管ノズルの吐出口との距離をできるだけ近くする必要があり、必然的に、活性エネルギー線硬化性組成物に照射する活性エネルギー線が二重管ノズルの吐出口付近に到達しやすいことになる。このような観点から、上記制御手段としては、例えば、活性エネルギー線の広がりを抑制したり、活性エネルギー線照射装置の出射部と二重管ノズルの吐出口の間に配置して上記吐出口に影を形成することができる、以下の遮光部材を用いることが有効である。図3には、本発明の光ファイバーの製造方法(光ファイバー製造工程)の一実施形態(遮光手段を使用する場合)を説明する概略図を示す。
図12には、上記遮光部材の一例としての、筒状の遮光部材51(「遮光筒」と称する場合がある)を示す。上記遮光筒51により活性エネルギー線照射装置の出射部(ライトガイド先端部分41の出力端)を覆うことによって、出射される活性エネルギー線が必要以上に広がることを防止し、二重管ノズルの吐出口への活性エネルギー線の伝播を抑制することができる(図3参照、図3における51)。上記遮光筒の径や長さ等は、活性エネルギー線照射装置の出射部の形状等に応じて適宜選択することができ、特に限定されない。
また、上記遮光部材としては、活性エネルギー線照射装置の出射部と二重管ノズルの吐出口の間に配置可能な板状の遮光部材(「遮光板」と称する場合がある)を使用できる(図3参照、図3における52)。このような遮光板を用いることにより、活性エネルギー線照射装置の出射部を遮光筒で覆った場合でもなお漏れ出す弱い活性エネルギー線を遮ることができる。このため、上記の遮光板及び遮光筒は組み合わせて使用することが有効である。上記遮光板の形状や大きさは、特に限定されないが、例えば、図13に示す円板状の遮光板や、図14に示す円錐状の遮光板などを用いることができる。上記遮光板は、設置のし易さの観点から、活性エネルギー線硬化性組成物を通過させるための孔(図13、図14における53)を有することが好ましい。
上記遮光筒、遮光板などの遮光部材の材質は、特に限定されない。例えば、SUS、アルミ、樹脂、紙などを使用できる。また、上記遮光部材は、特に限定されないが、光の反射を防止する観点で、黒色であることが好ましい。
(活性エネルギー線の照射角度の制御)
また、上記光ファイバー製造工程における活性エネルギー線照射段階においては、活性エネルギー線硬化性組成物に対する活性エネルギー線の照射角度を制御することが好ましい。具体的には、上記活性エネルギー線照射段階では、活性エネルギー線照射装置から出射される光線のうち、照射強度が最大となる光線(「最大強度光」と称する場合がある)の方向と、活性エネルギー線硬化性組成物の吐出方向に垂直な面(平面)とがなす角度の最小値δが下記式(I)の関係を満たすようにして、上記活性エネルギー線硬化性組成物に活性エネルギー線を照射することが好ましい。
δ ≧ ψ/2 (I)
(式(I)中、ψは、活性エネルギー線照射装置から出射される光線のうち、照射強度が最大値の3%となる光線同士がなす角度の最大値(「広がり角」と称する場合がある)である)
上記活性エネルギー線照射装置(活性エネルギー線照射装置の出射部)から出射される光線のうち、照射強度が最大となる光線(「最大強度光」と称する場合がある)は、厳密には、出射部から出射される活性エネルギー線の強度分布を測定することにより特定することができる。一般的には、活性エネルギー線照射装置の出射部(例えば、ライトガイド先端部分の出力端)の正面に出射される光線が最大強度光である。従って、例えば、ライトガイドの先端部分を、活性エネルギー線硬化性組成物の吐出方向に直交する平面(通常は、水平面)に対して角度δだけ活性エネルギー線硬化性組成物の吐出方向側(例えば、下方)に傾けることによって、最大強度光の方向と、活性エネルギー線硬化性組成物の吐出方向に垂直な面とがなす角度の最小値をδとすることができる(例えば、図16(a)参照)。
上記式(I)中、ψは、活性エネルギー線照射装置(活性エネルギー線照射装置の出射部)から出射された光線のうち、照射強度が最大値(最大強度光の照射強度)の3%となる光線同士がなす角度の最大値(広がり角)である。但し、光ファイバーを製造する際に、出射部を上述の遮光筒で覆う場合には、上記ψは、遮光筒で覆った状態の出射部から出射された光の広がり角を意味するものとする。なお、上記広がり角が小さい(狭い)ほど、活性エネルギー線照射装置から出射される光の指向性が高いことを意味する。
図15は、活性エネルギー線照射装置から出射された活性エネルギー線の広がり角ψを説明する概略図(側面図、遮光筒を用いた場合)である。図15における61は最大強度光を、62は照射強度が最大強度光の3%となる光線を表す。図15に示すように、広がり角ψは、照射強度が最大強度光の3%となる光線同士がなす角の最大値63により定義される。なお、出射部を遮光筒で覆うことにより、通常、広がり角ψは小さくなる傾向にある。
上記ψは、例えば、出射部から一定距離(例えば1.5cm)における光強度分布を測定することにより、導出することができる。なお、活性エネルギー線(例えば、紫外線)の強度分布は、例えば、光量計(例えば、紫外線光量計)を用い、その受光器を照射光の中心(出射部中心の正面)から周辺部に向かって少しずつ場所を移動させることにより測定することができる。
本発明の光ファイバーの製造方法においては、活性エネルギー線照射装置から出射される最大強度光の方向と活性エネルギー線硬化性組成物の吐出方向に垂直な面とがなす角度の最小値δを、上記式(I)の関係を満たすように制御することにより、線径が均一な光ファイバーの取得、及び製造時の糸切れ抑制等の効果をより高度なレベルで得ることができる。これは、以下の理由によるものである。
図16は、最大強度光の方向と活性エネルギー線硬化性組成物の吐出方向に垂直な面とがなす角度の最小値δと光の広がり角ψの関係を説明する概略図(側面図)である。図16の(a)はδ≧ψ/2の場合、即ち、δとψとが上記式(I)の関係を満たす場合の概略図である。この場合、活性エネルギー線照射装置から出射される光線のうち、照射強度が最大値の3%となる光線62(二重管ノズル側)と、該光線の活性エネルギー線硬化性組成物に対する入射面がなす角Xは、「90°+(δ−ψ/2)」で表される。従って、δ≧ψ/2(即ち、δ−ψ/2≧0)の場合には、Xは90°又は鈍角となり、照射強度が最大値の3%となる光線62(二重管ノズル側)は、活性エネルギー線硬化性組成物に対して垂直に、又は吐出方向側に傾いて入射することになる。この場合、照射強度が最大値の3%となる光線62(二重管ノズル側)は、活性エネルギー線硬化性組成物中を吐出方向に向かって伝播し、一方で二重管ノズル側に伝播し得る光は、照射強度が最大値の3%未満の光線のみである。このため、二重管ノズルの吐出口付近で活性エネルギー線硬化性組成物の硬化反応が進行しにくく、線径が均一な光ファイバーの取得、及び糸切れ抑制の効果が得られる。これに対して、δとψとが上記式(I)の関係を満たさないと、Xは鋭角となるため(図16の(b)参照)、少なくとも照射強度が最大値の3%の光線はノズル方向に伝播し、光ファイバーの製造に悪影響を及ぼす場合がある。
なお、上記δ(最大強度光の方向と活性エネルギー線硬化性組成物の吐出方向に垂直な面とがなす角度の最小値δ)は、上述のように、例えば、活性エネルギー線照射装置のライトガイド先端部分を、活性エネルギー線硬化性組成物の吐出方向に直交する平面(通常は、水平面)に対して活性エネルギー線硬化性組成物の吐出方向側(例えば、下方)に傾ける角度によって制御できる。即ち、上記活性エネルギー線照射装置としては、活性エネルギー線の照射角度(具体的には、最大強度光の方向と活性エネルギー線硬化性組成物の吐出方向に垂直な面とがなす角度の最小値δ)を調整するための機構(「照射角度調整機構」と称する場合がある)を備える活性エネルギー線照射装置を使用することが好ましい。図17は、本発明の光ファイバーの製造方法における光ファイバー製造工程にて使用可能な、照射角度調整機構を備える活性エネルギー線照射装置の一例を示す概略図である。図17に示す活性エネルギー線照射装置においては、照射角度調整機構としてのねじ46(角度調整用ねじ)を備えることにより、ライトガイドの先端部分の角度を自由に調整することができる。
(活性エネルギー線照射段階の他の実施形態)
上記活性エネルギー線照射段階は、上述のように、二重管ノズルの吐出口の下方に活性エネルギー線照射装置の出射部を配置する実施形態(例えば、図2、図3参照)のほか、二重管ノズルの吐出口の上方に活性エネルギー線照射装置の出射部を配置し、吐出口よりも上方から活性エネルギー線を出射する実施形態(当該形態を「落射方式」と称する場合がある)により実施することも可能である。図18は、上記光ファイバー製造工程の一実施形態(落射方式の場合)を示す概略図である。図18における形態においては、二重管ノズル1と、該二重管ノズル1の先端部分の吐出口11よりも上方から活性エネルギー線を照射するように配置された活性エネルギー線照射装置が使用される。図18において、活性エネルギー線照射装置は、活性エネルギー線を出力する光源装置43、該活性エネルギー線を伝送するライトガイド42、及び端部(出力端)より活性エネルギー線を出射するライトガイド先端部41に加え、ライトガイド先端部41の出力端より出射した活性エネルギー線を下方に反射させる反射ミラー47と、反射した活性エネルギー線を集光する集光レンズ48を備えて構成されている。図18における54はリング状の遮光部材(「遮光リング」と称する場合がある)を示し、このような遮光リングをノズル先端(ノズル1の吐出口11)の上方に装着することによって、ノズル1の吐出口11における活性エネルギー線の照射強度を低減する(例えば、0.2mW/cm2以下に制御する)ことが容易となる場合がある。
上記光ファイバー製造工程における活性エネルギー線照射段階が落射方式により実施される場合には、図18に示すように、遮光リング54を用いることによって二重管ノズルの吐出口11に影を形成しやすく、より効率的に二重管ノズルの吐出口における活性エネルギー線の照射強度を低減できるというメリットがある。しかしながら、一方で、活性エネルギー線硬化性組成物と活性エネルギー線照射装置の出射部との距離が比較的遠くなるため、活性エネルギー線硬化性組成物に対して高強度の活性エネルギー線を照射することが難しく、硬化率(硬化度)を十分に高めることが難しくなるというデメリットがある。このようなデメリットについては、例えば、さらに光照射処理及び/又は加熱処理を行って上記硬化率をさらに高めることにより、解消することも可能である。
上記活性エネルギー線照射段階により、活性エネルギー線硬化性組成物(A)及び活性エネルギー線硬化性組成物(B)の硬化物が得られる。上記硬化物は、活性エネルギー線硬化性組成物(A)の硬化物と、該硬化物を被覆する活性エネルギー線硬化性組成物(B)の硬化物とを有するコア−クラッド構造の硬化物である。即ち、上記硬化物は、コアと、該コアを被覆するクラッドとを有するコア−クラッド構造の光ファイバーである。
〔引き取り段階〕
上記光ファイバー製造工程においては、上記活性エネルギー線照射段階に続いて、得られた硬化物(光ファイバー)を連続的に引き取る(当該段階を「引き取り段階」と称する場合がある)。
上記硬化物の引き取りは、公知乃至慣用の引き取り装置(引き取り機)を使用することによって、例えば、ボビン等の筒状の構造体に硬化物を巻きつけて回収する巻取り装置(巻取り装置)などを使用することによって実施することができる。但し、上記引き取りは、巻取りの態様に限定されない。上記硬化物を引き取る速度(引き取り速度)vは、形成する光ファイバーの径などに応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、1〜1000cm/sが好ましく、より好ましくは3〜800cm/sである。引き取り速度を制御することによって得られる光ファイバーの径(線径)を制御することが可能であり、一般に、上記引き取り速度を速くすることにより、二重管ノズルの吐出口から吐出される活性エネルギー線硬化性組成物及び該活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物(光ファイバー)の線径が細くなる傾向がある。特に、上記引き取り速度は、後述のv/uの値(ドロー比)が10〜200に制御される範囲に設定することが重要である。
上記引き取り段階により、活性エネルギー線硬化性組成物(A)及び活性エネルギー線硬化性組成物(B)の硬化物が回収され、例えば、ボビン等の筒状の構造体に巻き付けられた構造体(巻回体)が得られる。このようにして得られた硬化物を光ファイバーとして取得することもできるし、後述のように、クラッドの外側に被覆層を設ける等のさらなる加工を施した後、これを光ファイバーとして取得してもよい。
特に、上記光ファイバー製造工程においては、上記線速u[cm/s]と上記引き取り速度v[cm/s]とにより算出されるv/uの値(「ドロー比」と称する場合がある)を10〜200に制御することが重要である。上記ドロー比を10〜200に制御することにより、光ファイバーの糸切れや径が不均一となること等の不具合が発生することなく、安定的に光ファイバーを製造することができる。上記ドロー比(v/u)は1〜200であればよく、特に限定されないが、5〜190が好ましく、より好ましくは10〜180である。
本発明の光ファイバーの製造方法における光ファイバー製造工程において、上記ドロー比(v/u)を1〜200の範囲に制御することによって安定的に光ファイバーを製造することができるのは、以下の理由によるものと推測される。
ドロー比が不適切であると、紡糸線上の張力の伝達が上手く行われず、局所的な張力が増加し、その結果として糸の線径が不安定になると考えられる。また、紡糸に適切な張力は、材料の一義的な性質によって決まるものでなく、分子量、分子量分布、分子鎖の絡み合い等の性質の複合的な結果として決まるので、ドロー比の最適範囲は材料によって異なる。このような知見の基、本発明において定めたドロー比の範囲では、本発明で使用した材料(活性エネルギー線硬化性組成物(A)及び活性エネルギー線硬化性組成物(B))の紡糸において、紡糸線上に均一に張力を伝達できるため、安定した線径での紡糸が達成できたと考えられる。
〔その他の工程〕
本発明の光ファイバーの製造方法は、上記光ファイバー製造工程以外の工程(例えば、上記光ファイバー製造工程により得られた光ファイバーをさらに加工する工程など)を含んでいてもよい。
また、本発明の光ファイバーの製造方法においては、その他の機器や装置(例えば、加熱ユニット、冷却ユニット、ファイバー径測定装置、ファイバー張力制御装置など)を適宜用いることもできる。
[光ファイバー製造装置]
本発明の光ファイバーの製造方法は、例えば、上記二重管ノズルと、上記活性エネルギー線照射装置と、上記引き取り装置とを少なくとも備えた光ファイバー製造装置(「本発明の光ファイバー製造装置」と称する場合がある)を用いて実施することができる。本発明の光ファイバー製造装置としては、具体的には、例えば、図2、図3、図18などに示す光ファイバー製造装置などを使用することができる。
本発明の光ファイバー製造装置においては、上記二重管ノズルより吐出される活性エネルギー線硬化性組成物(A)及び活性エネルギー線硬化性組成物(B)の線速u[cm/s]と、上記引き取り装置による硬化物の引き取り速度v[cm/s]から算出されるv/uの値(ドロー比)が10〜200(好ましくは5〜190、より好ましくは10〜180)に制御されていることが重要である。これにより、糸切れを生じることなく光ファイバーを安定的に製造することができる。本発明の光ファイバー製造装置における上記二重管ノズルは、特に、製造される光ファイバーの径を均一とする点で、上述の先端角度が90°未満の二重管ノズルが好ましい。
本発明の光ファイバー製造装置においては、上述のように、上記二重管ノズルの吐出口における活性エネルギー線の照射強度が0.2mW/cm2以下に制御されることが好ましい。本発明の光ファイバーは、上記照射強度を制御するために、上述の遮光手段を備えていてもよい。
本発明の光ファイバー製造装置は、上記二重管ノズル、活性エネルギー線照射装置、引き取り装置以外にも、必要に応じ、その他の機器や装置(例えば、定量ポンプ、加熱ユニット、冷却ユニット、ファイバー径測定装置、ファイバー張力制御装置など)を備えていてもよい。
[光ファイバー]
本発明の光ファイバーは、上述の方法(本発明の光ファイバーの製造方法)により製造された光ファイバーである。本発明の光ファイバーの原料としての活性エネルギー線硬化性組成物(コア液、クラッド液)は、特に限定されないが、柔軟性、耐熱性の観点で、下記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物の重合体又は共重合体を必須成分として含むことが好ましい。特に、本発明の光ファイバーにおいては、活性エネルギー線硬化性組成物(A)(コア液)と、活性エネルギー線硬化性組成物(B)(クラッド液)がともに、下記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物の重合体又は共重合体を必須成分として含む活性エネルギー線硬化性組成物(「活性エネルギー線硬化性樹脂組成物」と称する場合がある)であることが好ましい。
より具体的には、上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、下記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で、若しくはラジカル重合性を有する他の化合物と共にラジカル重合して得られるカチオン重合性樹脂(重合体)、又は、下記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で、若しくはカチオン重合性を有する他の化合物と共にカチオン重合して得られるラジカル重合性樹脂(重合体)を、必須成分として含むことが好ましい。
特に、低粘度であり加工性に優れる点で、上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、下記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で、又はラジカル重合性を有する他の化合物と共にラジカル重合して得られるカチオン重合性樹脂を必須成分として含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(カチオン重合性樹脂組成物)であることが好ましい。
(オキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物)
上記オキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物は、下記式(1)で表される化合物である。
Figure 2014130252
[式(1)中、R1、R2は同一又は異なって水素原子又はアルキル基を示し、Aは炭素数2〜20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を示す。]
なお、本明細書における「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルのいずれか一方又は両方を意味する。但し、オキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物における「(メタ)アクリル」や「(メタ)アクリロイル」には、アクリル(アクリロイル)及びメタクリル(メタクリロイル)のほか、式(1)におけるR1がメチル基以外のアルキル基であるCH2=CR1CO−の意味も包含されるものとする。
式(1)中、R1、R2におけるアルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などの直鎖状のC1-6(好ましくはC1-3)アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、s−ペンチル基、t−ペンチル基、イソヘキシル基、s−ヘキシル基、t−ヘキシル基などの分岐鎖状のC1-6(好ましくはC1-3)アルキル基などが挙げられる。上記R1としては、水素原子又はメチル基が好ましく、上記R2としては、メチル基又はエチル基が好ましい。
式(1)中、Aは炭素数2〜20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を示す。上記Aとしては、中でも、優れた耐熱性と柔軟性とを兼ね備えた光ファイバーを形成することができる点で、下記式(a1)で表される直鎖状のアルキレン基、又は下記式(a2)で表される分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。なお、式(a2)の右端はエステル結合を構成する酸素原子と結合する。
Figure 2014130252
[式(a1)中、n1は2以上の整数を示す。式(a2)中、R3、R4、R7、R8は同一又は異なって水素原子又はアルキル基を示し、R5、R6は同一又は異なってアルキル基を示す。n2は、0以上の整数を示し、n2が2以上の整数の場合、2以上のR7、R8はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。]
式(a1)中のn1は2以上の整数を示し、好ましくは2〜20の整数であり、特に好ましくは2〜10の整数である。n1が1の場合、重合して得られる硬化物の柔軟性が低下する傾向がある。
式(a2)中のR3、R4、R5、R6、R7、R8におけるアルキル基としては、特に限定されないが、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの直鎖状のC1-4(好ましくはC1-3)アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などの分岐鎖状のC1-4(好ましくはC1-3)アルキル基などが挙げられる。上記R3、R4としては水素原子が好ましく、上記R5、R6としてはメチル基、エチル基が好ましい。
式(a2)中のn2は0以上の整数を示し、好ましくは1〜20の整数であり、特に好ましくは1〜10の整数である。
式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物の代表的な例としては、以下の化合物が挙げられる。
Figure 2014130252
式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物は、例えば、下記式(2)
Figure 2014130252
[式(2)中、R2は上記に同じ。Xは脱離基を表す。]
で表される化合物と、下記式(3)
Figure 2014130252
[式(3)中、Aは上記に同じ。]
で表される化合物を、塩基性物質存在下、液相一相系で反応させて下記式(4)
Figure 2014130252
[式(4)、R2、Aは上記に同じ。]
で表されるオキセタン環含有アルコールを得、得られたオキセタン環含有アルコールを(メタ)アクリル化することにより合成することができる。
式(2)中、Xは脱離性基を示し、例えば、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子(中でも、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい);p−トルエンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基等のスルホニルオキシ基;アセチルオキシ基などのカルボニルオキシ基などの脱離性の高い基が挙げられる。
上記塩基性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;水素化ナトリウム、水素化マグネシウム、水素化カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水素化物;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩;有機リチウム試薬(例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム等)、有機マグネシウム試薬(グリニャール試薬:例えば、MeMgBr、EtMgBr等)等の有機金属化合物等を挙げることができる。これらは1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
上記「液相一相系」とは、液相が二相以上あるものではなく一相のみの場合を意味し、液相が一相であれば固体を含んでいてもよい。上記溶媒としては、式(2)で表される化合物と、式(3)で表される化合物の両方を溶解することができればよく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;THF(テトラヒドロフラン)、IPE(イソプロピルエーテル)などのエーテル;DMSO(ジメチルスルホキシド)等の含硫黄系溶媒;DMF(ジメチルホルムアミド)等の含窒素系溶媒などが挙げられる。
(カチオン重合性樹脂)
上記カチオン重合性樹脂は、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で、又はラジカル重合性を有する他の化合物と共にラジカル重合して得られる。なお、上記「ラジカル重合性を有する他の化合物」とは、ラジカル重合性を有し、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物とは異なる化合物であり、以下、「その他のラジカル重合性化合物」と称する場合がある。上記その他のラジカル重合性化合物には、後述のラジカル重合性樹脂は含まれない。
上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物は、分子内(一分子中)にカチオン重合部位であるオキセタン環と、ラジカル重合部位である(メタ)アクリロイル基を有するため、単独でラジカル重合、又は他のラジカル重合性化合物と共にラジカル共重合することにより、下記式で表される構成単位(繰り返し構成単位)を有するカチオン重合性樹脂を合成することができる。なお、上記ラジカル共重合には、ブロック共重合、ランダム共重合等が含まれる。
Figure 2014130252
[式中、R1、R2、Aは上記に同じ。]
上記カチオン重合性樹脂としては、中でも、より柔軟性に優れた硬化物を形成できる点で、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物とその他のラジカル重合性化合物をラジカル重合することにより得られる樹脂が好ましく、カチオン重合性樹脂を構成する全モノマーのうち、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物の占める割合が0.1重量%以上100重量%未満(より好ましくは1〜99重量%、さらに好ましくは10〜80重量%、特に好ましくは10〜50重量%)となる割合で、ラジカル共重合して得られるカチオン重合性樹脂が好ましい。
上記その他のラジカル重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルエーテル基、ビニルアリール基、ビニルオキシカルボニル基等のラジカル重合性基を分子内に1個以上有する化合物などが挙げられる。
(メタ)アクリロイル基を分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、1−ブテン−3−オン、1−ペンテン−3−オン、1−ヘキセン−3−オン、4−フェニル−1−ブテン−3−オン、5−フェニル−1−ペンテン−3−オン等、及びこれらの誘導体などが挙げられる。
(メタ)アクリロイルオキシ基を分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、n−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1−ビス(アクリロイルオキシ)エチルイソシアネート、2−(2−メタクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアネート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等、及びこれらの誘導体などが挙げられる。
(メタ)アクリロイルアミノ基を分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、4−アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−n−ブトキシメチルアクリルアミド、N−ヘキシルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド等、及びこれらの誘導体などが挙げられる。
ビニルエーテル基を分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシイソプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシイソブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシイソブチルビニルエーテル、1−メチル−3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、1−メチル−2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、1−ヒドロキシメチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールモノビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、1,3−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、1,2−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、p−キシレングリコールモノビニルエーテル、m−キシレングリコールモノビニルエーテル、o−キシレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、テトラエチレングリコールモノビニルエーテル、ペンタエチレングリコールモノビニルエーテル、オリゴエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ジプロピレングリコールモノビニルエーテル、トリプロピレングリコールモノビニルエーテル、テトラプロピレングリコールモノビニルエーテル、ペンタプロピレングリコールモノビニルエーテル、オリゴプロピレングリコールモノビニルエーテル、ポリプロピレングリコールモノビニルエーテル等、及びこれらの誘導体などが挙げられる。
ビニルアリール基を分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、スチレン、ジビニルベンゼン、メトキシスチレン、エトキシスチレン、ヒドロキシスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、酢酸4−ビニルフェニル、4−ビニルフェニルボロン酸、N−(p−ビニルフェニル)マレイミド等、及びこれらの誘導体などが挙げられる。
ビニルオキシカルボニル基を分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、ギ酸イソプロペニル、酢酸イソプロペニル、プロピオン酸イソプロペニル、酪酸イソプロペニル、イソ酪酸イソプロペニル、カプロン酸イソプロペニル、吉草酸イソプロペニル、イソ吉草酸イソプロペニル、乳酸イソプロペニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、アジピン酸ジビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等、及びこれらの誘導体などが挙げられる。
上記その他のラジカル重合性化合物としては、その他、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニルシラン類などを使用することも可能である。
上記その他のラジカル重合性化合物としては、中でも、柔軟性及び耐熱性に優れた光ファイバーを形成することができる点で、分子内に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルアリール基、ビニルエーテル基、ビニルオキシカルボニル基から選ばれる官能基(ラジカル重合性基)を1個のみ有する化合物が好ましい。特に、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイルオキシ基を分子内に1個のみ有する化合物が好ましい。これらは1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
ラジカル重合反応は、加熱処理及び/又は光照射を行うことにより促進することができる。加熱処理を行う場合、その温度としては、反応に供する成分や触媒の種類などに応じて適宜調製することができ、例えば、20〜200℃が好ましく、より好ましくは50〜150℃、さらに好ましくは70〜120℃程度である。光照射を行う場合、その光源としては、例えば、水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、メタルハライドランプ、太陽光、電子線源、レーザー光源等を使用することができる。また、光照射の後、例えば、50〜180℃程度の温度で加熱処理を施してラジカル重合反応をさらに進行させてもよい。
ラジカル重合反応は、通常、溶媒の存在下で行われる。溶媒としては、例えば、1−メトキシ−2−アセトキシプロパン(PGMEA)、ベンゼン、トルエンなどが挙げられる。
また、ラジカル重合反応には重合開始剤を使用してもよい。上記重合開始剤としては、公知慣用の熱重合開始剤、光ラジカル重合開始剤などのラジカル重合を起こし得るものを特に限定されることなく使用することができ、例えば、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2′−アゾビス(イソ酪酸)ジメチルなどが挙げられる。
ラジカル重合反応における重合開始剤の使用量としては、特に限定されないが、ラジカル重合性化合物の全量(例えば、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物とその他のラジカル重合性化合物の総重量)(100重量部)に対して、例えば、0.01〜50重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量部である。
上記カチオン重合性樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、500以上(例えば、500〜100万)が好ましく、より好ましくは3000〜50万である。カチオン重合性樹脂の重量平均分子量が上記範囲を外れると、カチオン重合性樹脂組成物を硬化して得られる光ファイバーの柔軟性が不十分となる傾向がある。
上記カチオン重合性樹脂の数平均分子量は、特に限定されないが、100以上(例えば、100〜50万)が好ましく、より好ましくは300〜25万である。カチオン重合性樹脂の数平均分子量が上記範囲を外れると、カチオン重合性樹脂組成物を硬化して得られる光ファイバーの柔軟性が不十分となる傾向がある。なお、上記カチオン重合性樹脂の重量平均分子量及び数平均分子量は、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により、標準ポリスチレン換算の値として測定することができる。
(カチオン重合性樹脂組成物)
上記カチオン重合性樹脂組成物は、上記カチオン重合性樹脂を必須成分として含む。上記カチオン重合性樹脂組成物における上記カチオン重合性樹脂の割合(含有量)は、特に限定されないが、5重量%以上が好ましく、実質的にカチオン重合性樹脂組成物が上記カチオン重合性樹脂のみにより構成されていてもよい。中でも、より柔軟性に優れる光ファイバーを形成できる点で、上記カチオン重合性樹脂の割合(含有量)は、10〜95重量%が好ましく、より好ましくは40〜95重量%である。上記カチオン重合性樹脂の割合が5重量%を下回ると、カチオン重合により硬化して得られる光ファイバーの柔軟性が低下する傾向がある。
上記カチオン重合性樹脂組成物には、上記カチオン重合性樹脂の他に、カチオン重合性を有する化合物であって、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物及び上記カチオン重合性樹脂とは異なる化合物(「その他のカチオン重合性化合物」と称する場合がある)を含有していてもよい。なお、上記その他のカチオン重合性化合物には、上記カチオン重合性樹脂は含まれない。
上記その他のカチオン重合性化合物としては、例えば、オキセタン環、エポキシ環、ビニルエーテル基、ビニルアリール基等のカチオン重合性基を分子内に1個以上有する化合物などが挙げられる。
オキセタン環を分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、3,3−ビス(ビニルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−[(フェノキシ)メチル]オキセタン、3−エチル−3−(ヘキシルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(クロロメチル)オキセタン、3,3−ビス(クロロメチル)オキセタン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、ビス{[1−エチル(3−オキセタニル)]メチル}エーテル、4,4′−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビシクロヘキシル、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]シクロヘキサン、1,4−ビス{〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕メチル}ベンゼン、3−エチル−3{〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタンなどが挙げられる。
エポキシ環を分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3′,4′−エポキシ−6′−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル類;フェノール、クレゾール、ブチルフェノール又はこれらにアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル類;高級脂肪酸のグリシジルエステル類;エポキシ化ポリブタジエンなどが挙げられる。
ビニルエーテル基を分子内に1個以上有する化合物、ビニルアリール基を分子内に1個以上有する化合物としては、上記その他のラジカル重合性化合物として例示した化合物と同様の化合物を例示することができる。
上記その他のカチオン重合性化合物としては、中でも、光照射により速やかに硬化する点で、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3,3−ビス(ビニルオキシメチル)オキセタン、1,4−ビス{〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕メチル}ベンゼン、3−エチル−3−{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン等のオキセタン環を分子内に1個以上有する化合物が好ましい。これらは1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
上記カチオン重合性樹脂組成物は、より柔軟性に優れる光ファイバーを形成することができる点で、上記カチオン重合性樹脂と共にその他のカチオン重合性化合物を含むことが好ましい。カチオン重合性樹脂とその他のカチオン重合性化合物の配合比(前者/後者:重量比)としては、特に限定されないが、95/5〜10/90が好ましく、より好ましくは95/5〜20/80、さらに好ましくは95/5〜45/55である。カチオン重合性樹脂の配合割合が上記範囲を下回ると、得られる光ファイバーの柔軟性が低下する傾向がある。
また、上記カチオン重合性樹脂組成物は、必要に応じて重合開始剤を含有していてもよい。重合開始剤としては、公知乃至慣用の光カチオン重合開始剤、光酸発生剤等のカチオン重合を起こし得るものを使用でき、特に限定されない。上記重合開始剤としては、例えば、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等のスルホニウム塩;ジアリールヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ヨードニウム[4−(4−メチルフェニル−2−メチルプロピル)フェニル]ヘキサフルオロホスフェート等のヨードニウム塩;テトラフルオロホスホニウムヘキサフルオロホスフェート等のホスホニウム塩;ピリジニウム塩などが挙げられる。
上記重合開始剤としては、商品名「CPI−100P」(サンアプロ(株)製)、商品名「CPI−101A」(サンアプロ(株)製)などの市販品を使用することもできる。
上記カチオン重合性樹脂組成物における重合開始剤の含有量(配合量)は、特に限定されないが、カチオン重合性化合物の全量(例えば、カチオン重合性樹脂とその他のカチオン重合性化合物の総重量)100重量部に対して、0.01〜50重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量部である。
さらに、上記カチオン重合性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じてその他の添加物を含有していてもよい。上記その他の添加物としては、例えば、硬化膨張性モノマー、光増感剤(アントラセン系増感剤等)、樹脂、密着性向上剤、補強剤、軟化剤、可塑剤、粘度調整剤、溶剤、無機又は有機粒子(ナノスケール粒子等)、フルオロシラン等の公知乃至慣用の各種添加剤が挙げられる。
上述のように、本発明の光ファイバーの原料としての活性エネルギー線硬化性組成物としては、上記カチオン重合性樹脂組成物以外にも、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で、又はカチオン重合性を有する他の化合物(その他のカチオン重合性化合物)と共にカチオン重合して得られるラジカル重合性樹脂を必須成分として含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(ラジカル重合性樹脂組成物)を用いることもできる。上記ラジカル重合性樹脂組成物を用いる場合には、硬化反応を阻害させないために、ラジカルに対して不活性なガスの雰囲気下(例えば、窒素雰囲気下)で活性エネルギー線照射を行う必要がある。
(ラジカル重合性樹脂)
上記ラジカル重合性樹脂は、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で、又はカチオン重合性を有する他の化合物(その他のカチオン重合性化合物)と共にカチオン重合して得られる。
上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物は、分子内にカチオン重合部位であるオキセタン環と、ラジカル重合部位である(メタ)アクリロイル基を有するため、単独でカチオン重合、又はその他のカチオン重合性化合物と共にカチオン共重合することにより、下記式で表される構成単位(繰り返し構成単位)を有するラジカル重合性樹脂を合成することができる。なお、カチオン共重合には、ブロック共重合、ランダム共重合等が含まれる。
Figure 2014130252
[式中、R1、R2、Aは上記に同じ。]
上記ラジカル重合性樹脂としては、中でも、より柔軟性に優れた硬化物(光ファイバー)を形成できる点で、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物とその他のカチオン重合性化合物をカチオン共重合することにより得られるラジカル重合性樹脂が好ましい。特に、ラジカル重合性樹脂を構成する全モノマーのうち、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物の占める割合が0.1重量%以上(好ましくは1〜99重量%、特に好ましくは10〜80重量%)となる割合で、カチオン共重合して得られる樹脂が好ましい。
上記その他のカチオン重合性化合物としては、例えば、上記カチオン重合性樹脂組成物の項で例示した、オキセタン環、エポキシ環、ビニルエーテル基、ビニルアリール基等のカチオン重合性基を分子内に1個以上有する化合物などが挙げられる。
上記その他のカチオン重合性化合物としては、中でも、柔軟性及び耐熱性に優れた硬化物を形成することができる点で、分子内にオキセタン環、エポキシ環、ビニルエーテル基、ビニルアリール基から選ばれる官能基(カチオン重合性基)を1個のみ有する化合物が好ましい。特に、トリメチレンオキシド、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−[(フェノキシ)メチル]オキセタン、3−エチル−3−(ヘキシルオキシメチル)オキセタン等のオキセタン環を分子内に1個のみ有する化合物、グリシジルメチルエーテル、酪酸(R)−グリシジル等のエポキシ基を分子内に1個のみ有する化合物等が好ましい。これらは1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
カチオン重合反応は、一般に溶媒の存在下で行われる。溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
また、カチオン重合反応には重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤としては、例えば、カチオン重合性樹脂組成物の項で例示したカチオン重合開始剤、酸発生剤等を用いることができる。
カチオン重合反応における重合開始剤の使用量は、特に限定されないが、カチオン重合性化合物の全量(例えば、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物とその他のカチオン重合性化合物の総重量)100重量部に対して、例えば、0.01〜50重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量部である。
また、上記カチオン重合反応は重合禁止剤の存在下で行ってもよい。重合禁止剤としては、例えば、4−メトキシフェノール、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ジメチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、p−t−ブチルカテコール、モノ−t−ブチルハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ナフトキノン、2,5−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、α−ナフトール、ニトロフェノール等のキノン・フェノール系禁止剤、チオエーテル系禁止剤、亜リン酸エステル系禁止剤などが挙げられる。
上記ラジカル重合性樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、500以上(例えば、500〜100万)が好ましく、より好ましくは3000〜50万である。ラジカル重合性樹脂の重量平均分子量が上記範囲を下回ると、ラジカル重合性樹脂組成物を硬化して得られる光ファイバーの柔軟性が低下する傾向がある。
上記ラジカル重合性樹脂の数平均分子量は、特に限定されないが、100以上(例えば、100〜50万)が好ましく、より好ましくは300〜25万である。ラジカル重合性樹脂の数平均分子量が上記範囲を外れると、ラジカル重合性樹脂組成物を硬化して得られる光ファイバーの柔軟性が不十分となる傾向がある。なお、上記ラジカル重合性樹脂の重量平均分子量及び数平均分子量は、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により、標準ポリスチレン換算の値として測定することができる。
(ラジカル重合性樹脂組成物)
上記ラジカル重合性樹脂組成物は、上記ラジカル重合性樹脂を必須成分として含む。上記ラジカル重合性樹脂組成物における上記ラジカル重合性樹脂の割合(含有量)は、特に限定されないが、5重量%以上が好ましく、実質的にラジカル重合性樹脂組成物が上記ラジカル重合性樹脂のみにより構成されていてもよい。中でも、より柔軟性に優れる光ファイバーを形成できる点で、上記ラジカル重合性樹脂の割合(含有量)は、10重量%以上が好ましく、より好ましくは60〜90重量%である。上記ラジカル重合性樹脂の割合が5重量%を下回ると、ラジカル重合性樹脂組成物を硬化して得られる光ファイバーの柔軟性が低下する傾向がある。
上記ラジカル重合性樹脂組成物には、上記ラジカル重合性樹脂の他に、ラジカル重合性を有する化合物であって、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物及び上記ラジカル重合性樹脂とは異なる化合物(その他のラジカル重合性化合物)を含有していてもよい。
上記その他のラジカル重合性化合物としては、例えば、上記カチオン重合性樹脂の項で例示した、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルアリール基、ビニルエーテル基、ビニルオキシカルボニル基等のラジカル重合性基を分子内に1個以上有する化合物などが挙げられる。
上記その他のラジカル重合性化合物としては、中でも、より優れた耐熱性を有する硬化物を形成することができる点で、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイルオキシ基を分子内に2個以上(特に2個)有する化合物が好ましい。これらは1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
上記ラジカル重合性樹脂組成物としては、より優れた耐熱性を有する光ファイバーを形成できる点で、上記ラジカル重合性樹脂と共にその他のラジカル重合性化合物を含むことが好ましい。上記ラジカル重合性樹脂とその他のラジカル重合性化合物の配合比(前者/後者:重量比)としては、例えば、95/5〜5/95が好ましく、より好ましくは95/5〜20/80、さらに好ましくは95/5〜60/40である。ラジカル重合性樹脂の配合割合が上記範囲を外れると、得られる光ファイバーの柔軟性が低下する傾向がある。
また、上記ラジカル重合性樹脂組成物は重合開始剤を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。重合開始剤としては、公知乃至慣用の光ラジカル重合開始剤などのラジカル重合を起こし得るものを特に限定されることなく使用することができる。
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノンベンジル、ベンジルジメチルケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ジメトキシアセトフェノン、ジメトキシフェニルアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ジフェニルジサルファイトなどが挙げられる。これらは1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
重合開始剤には、光吸収エネルギーの重合開始遊離基への転換を強めるための相乗剤を添加してもよい。相乗剤としては、例えば、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、ジメチルアミノ安息香酸、ジメチルアミノ安息香酸メチル等のアミン;チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、アセチルアセトン等のケトンなどが挙げられる。
上記ラジカル重合性樹脂組成物が重合開始剤を含有する場合、その含有量(配合量)は、特に限定されないが、ラジカル重合性樹脂組成物中のラジカル重合性化合物の全量(例えば、ラジカル重合性樹脂とその他のラジカル重合性化合物の総重量)100重量部に対して、0.01〜50重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量部である。
さらに、上記ラジカル重合性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じてその他の添加物を含有していてもよい。上記その他の添加物としては、例えば、硬化膨張性モノマー、光増感剤(アントラセン系増感剤等)、樹脂、密着性向上剤、補強剤、軟化剤、可塑剤、粘度調整剤、溶剤、無機又は有機粒子(ナノスケール粒子等)、フルオロシラン等の公知乃至慣用の各種添加剤が挙げられる。
本発明の光ファイバーの原料としての活性エネルギー線硬化性組成物(コア液、クラッド液)としては、上述のカチオン重合性樹脂組成物やラジカル重合性樹脂組成物のほか、上記カチオン重合性樹脂を含まないカチオン硬化性組成物(例えば、上述のその他のカチオン重合性化合物と重合開始剤とを含むカチオン硬化性組成物など)、上記ラジカル重合性樹脂を含まないラジカル硬化性組成物(例えば、上述のその他のラジカル重合性化合物と重合開始剤とを含むラジカル硬化性組成物など)を使用することもできる。
本発明の光ファイバーのコアの直径(コア径)は、特に限定されないが、10〜999μmが好ましく、より好ましくは50〜100μmである。また、本発明の光ファイバーのクラッドの直径(クラッド径)は、特に限定されないが、60〜1000μmが好ましく、より好ましくは100〜500μmである。
本発明の光ファイバーは、クラッドの外側に適宜な被覆層を設けて使用することもできる。上記被覆層としては、例えば、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、PTFE、ポリ塩化ビニル等からなる被覆層が挙げられる。
本発明の光ファイバーは、本発明の光ファイバーの製造方法により製造されるため、生産性が高く、コスト面で優れる。また、特定の先端角度を有する二重管ノズルを使用して製造することによって、一定の線径を有し、品質面で優れる。また、さらに、本発明の光ファイバーは、室温において液体である活性エネルギー線硬化性組成物を原料としているため、該活性エネルギー線硬化性組成物中の不純物をろ過により除去しやすく、高品質な光ファイバーとすることが容易である。
また、本発明の光ファイバーは、二重管ノズルを使用することでコアとクラッドとが同時に形成されるため、コアとクラッドの中心軸が正確に一致しており、光ファイバー同士の接続や他のデバイスとの接続の際に高い信頼性を発揮できる。
本発明の光ファイバーは、光通信用途や装飾用途等の各種用途において広く利用される。特に、活性エネルギー線硬化性化合物を原料とすることで耐熱性及び柔軟性に優れるため、例えば、携帯機器、FA機器、OA機器、オーディオ機器、車両、LAN等における通信用途、家庭用や工業用の内視鏡等におけるイメージ伝送用途、センサ用途、検査・測定用の照明、美術品等の照明等における光伝送用途、看板、サイン、景観照明等における装飾用途などに特に有用である。
以下、具体的な実施例を示して発明の効果を明らかにする。但し、本発明は当該実施例に限定されるものではない。
製造例1
[液状樹脂(1)の調製]
モノマーと開始剤の混合液の滴下ライン、温度計、還流管、及び攪拌翼を装着した5口フラスコに、1−メトキシ−2−アセトキシプロパン(PGMEA)367gを仕込み、窒素気流下、85±1℃に加熱した。次いで、攪拌しながら、PGMEA630g、3−エチル−3−(3−アクリロイルオキシ−2,2−ジメチルプロピルオキシメチル)オキセタン(EOXTM−NPAL)300g(1.17mol)、n−ブチルアクリレート(BA)750g(5.85mol)、及び2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル(商品名「V−601」、和光純薬工業(株)製)0.65gの混合液を送液ポンプで5時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに2時間保持し、その後、40℃以下に冷却することにより、樹脂溶液を得た。これをPGMEA2100gで希釈した後、5倍量(5重量倍)の60重量%メタノール水溶液で再沈精製し、真空乾燥機中(40℃、フルバキューム)で60時間保持することにより、無色透明の液状樹脂(1)を得た。該液状樹脂(1)のポリスチレン換算の重量平均分子量は235,700、数平均分子量は50,000であった。
なお、上記で得た液状樹脂(1)は、上述の「カチオン重合性樹脂」に該当する。
製造例2
[液状樹脂(2)の調製]
モノマー滴下ライン、開始剤滴下ライン、温度計、還流管、及び攪拌翼を装着した5口フラスコに、PGMEA391gを仕込み、窒素気流下、85±1℃に加熱した。次いで、攪拌しながら、PGMEA668g、EOXTM−NPAL90g(0.35mol)、BA135.6g(1.05mol)、スチレン(St)147g(1.40mol)、及び商品名「V−601」51.8gの混合液を送液ポンプで5時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに2時間保持し、その後、40℃以下に冷却することにより、樹脂溶液を得た。これを5倍量(5重量倍)の60重量%メタノール水溶液で再沈精製し、真空乾燥機中(40℃、フルバキューム)で60時間保持することにより、無色透明の液状樹脂(2)を得た。該液状樹脂(2)のポリスチレン換算の重量平均分子量は4,500、数平均分子量は2,700であった。
なお、上記で得た液状樹脂(2)は、上述の「カチオン重合性樹脂」に該当する。
製造例3
[光硬化性組成物(A1)の調製]
製造例2で得られた液状樹脂(2)65重量部、1,4−ビス{[(3−エチルオキセタン−3−イオキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼンを主成分(主生成物)とする(3−エチルオキセタン−3−イル)メタノール(ヒドロキシメチル)−オキセタンと1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼンの反応生成物(商品名「OXT−121」、東亞合成(株)製)35重量部、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート(商品名「セロキサイド2021P」、(株)ダイセル製)5重量部、及び商品名「CPI−100P」(サンアプロ(株)製、光重合開始剤)3.15重量部を混合し、孔径0.2μmのフィルタで濾過して、光硬化性組成物(A1)(紫外線硬化性組成物)を得た。なお、上記光硬化性組成物(A1)の25℃における粘度は15,000cPであった。
製造例4
[光硬化性組成物(B1)の調製]
製造例1で得られた液状樹脂(1)45重量部、3,3−ビス(ビニルオキシメチル)オキセタン6重量部、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン(商品名「OXT−212」、東亞合成(株)製)12重量部、3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン(商品名「OXT−221」、東亞合成(株)製)37重量部、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート(商品名「セロキサイド2021P」、(株)ダイセル製)5重量部、及び商品名「CPI−100P」(サンアプロ(株)製、光重合開始剤)3.15重量部を混合し、孔径1μmのフィルタで濾過して、光硬化性組成物(B1)(紫外線硬化性組成物)を得た。なお、上記光硬化性組成物(B1)の25℃における粘度は100,000cPであった。
実施例1
[光ファイバー製造装置]
図2に示した装置(光ファイバー製造装置)を用いて、光ファイバーを作製した。図2に示す装置は、コア液供給部(定量ポンプ71及び供給管)及びクラッド液供給部(定量ポンプ72及び供給管)、二重管ノズル1、並びに、該二重管ノズルの下方に配置された紫外線照射装置4及び引き取り装置(巻取り装置)8から構成される。
[光ファイバーの製造]
製造例3で得られた光硬化性組成物(A1)をコア液として、製造例4で得られた光硬化性組成物(B1)をクラッド液として用いた。まず、図2に示すように、上記コア液21及びクラッド液22をポンプ圧送にて二重管ノズル1に供給した。なお、二重管ノズル1は、図6に示すように(但し、実施例1で使用した二重管ノズルの先端角度9は60°である)、上部にコア液導入口及び側部にクラッド液導入口を有し、底部(吐出口11)よりコア液21及びクラッド液22を同心円状に吐出できる構造を有する。次いで、吐出させたコア液21及びクラッド液22に対して紫外線照射装置4(照射エネルギー:150mJ)により紫外線を照射して、上記コア液21及びクラッド液22を硬化させた。その後、得られた硬化物3を引き取り装置8にて下記引き取り速度でボビンに引き取った(巻き取った)。
(製造条件)
・コア液の供給速度:0.05mL/分
・クラッド液の供給速度:0.23mL/分
・光ファイバーの引き取り(巻取り)速度:24m/分
・二重管ノズルの内管の内径(直径d3):0.3mm
・二重管ノズルの内管の外径(直径d2):0.63mm
・二重管ノズルの外管の内径(直径d1):1.0mm
・二重管ノズルの先端角度(θ):60°
二重管ノズルからの液吐出線速度(活性エネルギー線硬化性組成物の線速)u(cm/s)は、コア液の供給速度をU1(cm3/s)、クラッド液の液供給速度をU2(cm3/s)、二重管ノズルにおけるコア液の吐出口の断面積(ノズル断面積)をS1(cm2)、二重管ノズルにおけるクラッド液の吐出口の断面積(ノズル断面積)をS2(cm2)とすると、下記式により算出される。
u=(U1+U2)/(S1+S2)
従って、吐出速度に対する引き取り速度の比(ドロー比)は、引き取り速度をv(cm/s)とすると、v/uで表され、実施例1の場合には47であった(表1参照)。
[結果]
製造の際に糸切れを起こすことなく、一定の線径(ファイバー径)でコア−クラッド構造を有する光ファイバーを連続的に製造することができた。結果を表1に示す。
実施例2〜5、比較例1、2
使用した二重管ノズル及び製造条件を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして光ファイバーの製造を実施した。なお、実施例2〜5、及び比較例1、2においてはいずれも、コア液の液供給速度(吐出速度)を0.05mL/分、クラッド液の供給速度(吐出速度)を0.23mL/分、光ファイバーの引き取り速度を24m/分(40cm/s)とした。
使用した二重管ノズル(吐出径、先端角度)及び製造条件、並びに、光ファイバー製造の結果(糸切れの有無、光ファイバーの径の均一性)を表1に示す。なお、表1におけるd1は二重管ノズルの外管の内径(直径)、d2は二重管ノズルの内管の外径(直径)、d3は二重管ノズルの内管の内径(直径)を示す(図6の(b)参照)。
Figure 2014130252
表1に示すように、ドロー比(v/u)が10〜200である場合(実施例1〜5)には糸切れが発生しなかった。さらに、二重管ノズルの先端角度θが90°未満である場合(実施例1〜4)には、糸切れが発生しないことに加え、均一な径の光ファイバーが得られた。
一方、ドロー比(v/u)が10〜200の範囲にない場合(比較例1、2)には、糸切れが発生し、連続的に光ファイバーを製造することができなかった。
製造例5
[光硬化性組成物の製造]
エポキシ化ポリブタジエン(商品名「エポリードPB3600」、(株)ダイセル製)90重量部、3,3−ビス(ビニルオキシメチル)オキセタン(商品名「OXT−DVE」、東亞合成(株)製)10重量部、及び商品名「CPI−101A」(サンアプロ(株)製、光重合開始剤)5重量部を混合し、孔径0.2μmのフィルタで濾過して、光硬化性組成物(紫外線硬化性組成物)を得た。なお、上記光硬化性組成物の25℃における粘度は30,000cPであった。
実施例6
[光ファイバー製造装置]
光ファイバー製造装置としては、図19に示す製造装置を用いた。図19の光ファイバー製造装置における1は二重管ノズルであり、具体的には、図20に示す二重管ノズルを使用した。なお、当該二重管ノズル1の外管の内径d1、内管の外径d2及び内径d3、先端角度θは、以下に示す通りである。また、図19の光ファイバー製造装置においては、光照射装置として、光硬化性組成物2に対して3方向から光を照射できる、図10に示す光照射装置を用いた。該光照射装置は、光硬化性組成物2に対して等距離に、3つのライトガイド(UVライトガイド)の先端部分を、同じ高さで等間隔(光硬化性組成物を中心に120°間隔)に配置したものである(図10参照)。また、上記光照射装置の光源装置としては、「SPOTCURE SP9−250DB」(ウシオ電機(株)製)を用いた。なお、図19においては、便宜上、2個のライトガイドの先端部分のみを描いている。
また、ライトガイドの先端部分41には遮光筒51を設置し、さらに、ライトガイドの先端部分41の出力端と二重管ノズル1の吐出口との間には、遮光板52を設置した。
図19に示すように、ライトガイドの先端部分41を二重管ノズル1の吐出口よりも下方に配置し、二重管ノズル1の吐出口からライトガイドの先端部分41の出力端(出力端の中心部)までの高さ(垂直距離)を、20mmとした。また、ライトガイドの先端部分41の出力端(出力端の中心部)と光硬化性組成物2までの距離を、15mmとした。
さらに、ライトガイドの先端部分41は、水平面に対して11°下向きに傾けて設置した。なお、ライトガイドの先端部分41を遮光筒51で覆った状態で出射される光の広がり角ψは、22°である。
[光ファイバーの製造]
製造例5で得られた光硬化性組成物をコア液及びクラッド液として用いた。まず、定量ポンプ71及び72を用いて、上記コア液及びクラッド液を下記送り速度にて送液し、二重管ノズル1の吐出口より同時に鉛直方向下方に吐出させた。なお、二重管ノズル1の内管にはコア液、外管と内管の間にはクラッド液を送液した。
次に、光照射装置により、コア液及びクラッド液に紫外線を照射し、硬化させた。このようにして製造された光ファイバー(プラスチック光ファイバー)を、引き取り装置8にて回収した。
(製造条件)
ノズルの吐出口における照射強度:0.13mW/cm2
コア液の供給速度:0.05mL/分
クラッド液の供給速度:0.23mL/分
光ファイバーの引き取り速度:24m/分
二重管ノズルの内管の内径(直径d3):0.3mm
二重管ノズルの内管の外径(直径d2):0.63mm
二重管ノズルの外管の内径(直径d1):1.5mm
二重管ノズルの先端角度:30°
受光器(UVD−S365)で計測したUV照射強度:1800mW/cm2(三方の合計:一方あたり600mW/cm2
なお、吐出速度に対する引き取り速度の比(v/u;ドロー比)は、170であった。
[結果]
製造の際に糸切れを起こすことなく、一定の線径でコア−クラッド構造(コア直径:100μm、クラッド直径:200μm)を有する光ファイバーを150m以上製造することができた。該光ファイバーの真円度(縦横比)は、コア、クラッド共に1.0であった。
1 二重管ノズル
11 吐出口
12 外管
13 内管
14 調整用ねじ
15 コア液の吐出口
16 クラッド液の吐出口
2 活性エネルギー線硬化性組成物
21 活性エネルギー線硬化性組成物(A)(コア液)
22 活性エネルギー線硬化性組成物(B)(クラッド液)
23 活性エネルギー線硬化性組成物が通過する位置
3 硬化物(光ファイバー)
4 活性エネルギー線照射装置(紫外線照射装置)
41 ライトガイドの先端部分
42 ライトガイド
43 光源装置
44 土台(支持体)
45 土台(支持体)
46 照射角度調整機構
47 反射ミラー
48 集光レンズ
51 遮光筒
52 遮光板
53 活性エネルギー線硬化性組成物を通過させるための孔
54 遮光リング
61 最大強度光
62 照射強度が最大強度光の3%となる光線
63 広がり角(ψ)
71 定量ポンプ(圧送ポンプ;コア液送液用)
72 定量ポンプ(圧送ポンプ;クラッド液送液用)
8 引き取り装置(巻取り装置)
9 先端角度(θ)
100 光ファイバー
200 コア
300 クラッド

Claims (9)

  1. コアと、該コアを被覆するクラッドとを有するコア−クラッド構造の光ファイバーを製造する方法であって、
    前記コアを形成するための活性エネルギー線硬化性組成物(A)と前記クラッドを形成するための活性エネルギー線硬化性組成物(B)とを、二重管ノズルより同時に吐出し、次いで、活性エネルギー線を照射し硬化させて硬化物を形成した後、該硬化物を引き取る工程を含み、
    前記二重管ノズルより吐出される活性エネルギー線硬化性組成物(A)及び活性エネルギー線硬化性組成物(B)の線速u[cm/s]と、前記硬化物の引き取り速度v[cm/s]から算出されるv/uの値が10〜200であることを特徴とする光ファイバーの製造方法。
  2. 前記二重管ノズルが、該二重管ノズルの吐出口に対して該吐出口の外周縁部が引っ込んだ構造を有する二重管ノズルである請求項1に記載の光ファイバーの製造方法。
  3. 前記二重管ノズルが、吐出口における内径(直径)がd1[mm]の外管と、該外管の内側に配置された、吐出口における外径(直径)がd2[mm]、内径(直径)がd3[mm]の内管とを有する二重管ノズルであって、
    内管の内側表面により囲まれた部分の流路断面積が、吐出口から吐出方向に対する反対方向の少なくともd3×19[mm]の長さにおいて一定であり、
    活性エネルギー線硬化性組成物の吐出方向に平行な断面における内管の外側表面と外管の内側表面とが、吐出口から吐出方向に対する反対方向の少なくともd3×16[mm]の長さにおいて平行な二重管ノズルである請求項1又は2に記載の光ファイバーの製造方法。
  4. 前記二重管ノズルの吐出口における活性エネルギー線の照射強度が0.2mW/cm2以下に制御される請求項1〜3のいずれか1項に記載の光ファイバーの製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の光ファイバーの製造方法により製造される光ファイバー。
  6. コアと、該コアを被覆するクラッドとを有するコア−クラッド構造の光ファイバーを製造する光ファイバー製造装置であって、
    前記コアを形成するための活性エネルギー線硬化性組成物(A)と前記クラッドを形成するための活性エネルギー線硬化性組成物(B)とを同時に吐出する二重管ノズル、
    前記活性エネルギー線硬化性組成物(A)及び活性エネルギー線硬化性組成物(B)に活性エネルギー線を照射し硬化させて硬化物を形成する活性エネルギー線照射装置、並びに、
    前記硬化物を引き取る引き取り装置を備え、
    前記二重管ノズルより吐出される活性エネルギー線硬化性組成物(A)及び活性エネルギー線硬化性組成物(B)の線速u[cm/s]と、前記引き取り装置による引き取り速度v[cm/s]から算出されるv/uの値が10〜200に制御されていることを特徴とする光ファイバー製造装置。
  7. 前記二重管ノズルが、該二重管ノズルの吐出口に対して該吐出口の外周縁部が引っ込んだ構造を有する二重管ノズルである請求項6に記載の光ファイバー製造装置。
  8. 前記二重管ノズルが、吐出口における内径(直径)がd1[mm]の外管と、該外管の内側に配置された、吐出口における外径(直径)がd2[mm]、内径(直径)がd3[mm]の内管とを有する二重管ノズルであって、
    内管の内側表面により囲まれた部分の流路断面積が、吐出口から吐出方向に対する反対方向の少なくともd3×19[mm]の長さにおいて一定であり、
    活性エネルギー線硬化性組成物の吐出方向に平行な断面における内管の外側表面と外管の内側表面とが、吐出口から吐出方向に対する反対方向の少なくともd3×16[mm]の長さにおいて平行な二重管ノズルである請求項6又は7に記載の光ファイバー製造装置。
  9. 前記二重管ノズルの吐出口における活性エネルギー線の照射強度が0.2mW/cm2以下に制御される請求項6〜8のいずれか1項に記載の光ファイバー製造装置。
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