本発明の高分子光ファイバーの製造方法は、高分子材料より構成されたコアと、該コアを被覆し、かつ高分子材料より構成されたクラッドと、該クラッドを被覆し、かつ高分子材料より構成された保護層とを少なくとも有する、3重以上の多重構造を有する光ファイバーを製造(紡糸)する方法である。なお、本明細書においては、本発明の高分子光ファイバーの製造方法により製造される高分子光ファイバーを、「本発明の高分子光ファイバー」と称する場合がある。
図1は、本発明の高分子光ファイバーの一例を示す概略図であり、(a)は斜視図を示し、(b)は(a)におけるY−Y断面図を示す。図1に示すように、本発明の高分子光ファイバー100は、コア200がクラッド300により被覆され、さらに、クラッド300が保護層400により被覆された構造を有する。なお、本発明の高分子光ファイバーは、図1に示す構成の高分子光ファイバーに限定されず、例えば、コアが2層以上の複層(多層)構成のクラッドにより被覆された高分子光ファイバーであってもよいし、クラッドが2層以上の複層(多層)構成の保護層により被覆された高分子光ファイバーなどであってもよい。
本発明の高分子光ファイバーにおいては、一般に、コアの内部を光が高分子光ファイバーの長手方向(長さ方向)に伝播する。本発明の高分子光ファイバーにおける「保護層」は、後述の工程Aにて得られた高分子光ファイバーにおける最も外側の層(最外層)を少なくとも含む層であって、コア及びクラッドの外側に位置する層である。また、本発明の高分子光ファイバーにおける「クラッド」は、コアに最も近接する該コアの被覆層を少なくとも含む層であって、コアの外側に位置し、保護層の内側に位置する層である。なお、上記保護層は、工程Aにて得られた高分子光ファイバーにおける最外層のみからなる単層構成を有するものであってもよいし、当該層を含む2層以上の複層(多層)構成を有するものであってもよい。また、上記クラッドは、コアに最も近接する該コアの被覆層のみからなる単層構成を有するものであってもよいし、当該層を含む2層以上の複層(多層)構成を有するものであってもよい。即ち、本発明の高分子光ファイバーは、コアに最も近接する該コアの被覆層(クラッド)と、工程Aにて得られた高分子光ファイバーにおける最外層(保護層)との間に、別のクラッドや別の保護層が存在するものであってもよい。
本発明の高分子光ファイバーの製造方法は、中でも、3重以上の多重構造を有するノズル(「多重管ノズル」と称する場合がある)を用いて、本発明の高分子光ファイバーにおけるコアを構成する材料(「コアの構成材」と称する場合がある)の前駆体と、クラッドを構成する材料(「クラッドの構成材」と称する場合がある)の前駆体と、保護層を構成する材料(「保護層の構成材」と称する場合がある)の前駆体とを、上記多重管ノズルの吐出口から同時に(一体として)、同軸で(ファイバー状に吐出されたコアの構成材の前駆体が円筒状のクラッドの構成材の前駆体により同心状に囲まれ、さらに、これら前駆体が円筒状の保護層の構成材の前駆体により同心状に囲まれた状態で)、ファイバー状に吐出させ、その後、各前駆体を各構成材に転化させることにより、コアとクラッドと保護層とを同時に形成する工程(「工程A」と称する場合がある)を必須の工程として含むことを特徴とする。なお、本発明の高分子光ファイバーの製造方法は、工程A以外の工程を含んでいてもよい。また、本明細書においては、高分子光ファイバーのコアの構成材、クラッドの構成材、及び保護層の構成材を総称して、単に「高分子光ファイバーの構成材」と称する場合がある。
<工程A>
図2は、本発明の高分子光ファイバーの製造方法の工程Aの一例を示す概略図(断面図)である。図2における1は多重管ノズルを示す。工程Aにおいては、まず、多重管ノズル1を用いて、コアの構成材の前駆体20、クラッドの構成材の前駆体30、及び保護層の構成材の前駆体40を、多重管ノズル1の吐出口から同時に、同軸で吐出させ、その後、多重管ノズル1の吐出口から垂下し、かつファイバー状に形成された高分子光ファイバーの構成材の前駆体10(コアの構成材の前駆体20、クラッドの構成材の前駆体30、及び保護層の構成材の前駆体40)を、各構成材(コアの構成材、クラッドの構成材、及び保護層の構成材)に転化させることによって、高分子光ファイバーのコアとクラッドと保護層とを同時に形成する。その結果、高分子光ファイバー100が得られる。なお、図2において点線で描かれたブロック矢印は、必要に応じて実施される、高分子光ファイバーの構成材の前駆体を該構成材に転化させるための操作(後述のように、例えば、光照射、加熱、冷却など)を示す。
[多重管ノズル]
工程Aにおいて使用される多重管ノズルは、その内側に高分子光ファイバーの構成材の前駆体を通液し、当該前駆体を、コアの構成材の前駆体がクラッドの構成材の前駆体により被覆され、さらに、当該クラッドの構成材の前駆体が保護層の構成材の前駆体により被覆された状態(形態)(高分子光ファイバーの形態に対応した形態)で、その吐出口からファイバー状に吐出することができる構造体である。即ち、上記多重管ノズルは、3重以上の多重構造を有するノズルである。より具体的には、上記多重管ノズルは、少なくともその吐出口及び当該吐出口付近における構造として、内管と、該内管の外側に位置する外管(第1外管)と、当該外管(第1外管)のさらに外側に位置する外管(第2外管)とを少なくとも有する3重以上の多重(多層)構造を有するノズルである。なお、本明細書においては、上記多重管ノズルにおける最も内側の管を「内管」と称し、該内管の外側に位置する管を「外管」と称するものとする。また、上記多重管ノズルにおける外管のうち、最も内管に近接するものを「第1外管」と称し、外側に向かって順に「第2外管」、「第3外管」、・・・、「第(n−1)外管」、「第n外管」(nは2以上の整数を示す)と称するものとする。
上記多重管ノズルは、内管の内側、内管と第1外管の間、第1外管と第2外管の間、・・・、第(n−1)外管と第n外管の間に、それぞれ高分子光ファイバーの構成材の前駆体を通液させることができ、これらを同時に(一緒に)、同軸で、その吐出口から吐出することができる。例えば、上記多重管ノズルが3重構造を有する3重管ノズル(内管と第1外管と第2外管とを有する多重管ノズル)の場合には(例えば、図2参照)、内管の内側にコアの構成材の前駆体を、内管と第1外管の間にクラッドの構成材の前駆体を、第1外管と第2外管の間に保護層の構成材の前駆体を通液することにより、各前駆体を同時に吐出口から吐出することができる。
上記多重管ノズルは、通常、高分子光ファイバーの構成材の前駆体を多重管ノズル内に導入するための導入口を有する。例えば、当該導入口は、必要に応じて適宜な管を介して、上記前駆体を貯蔵するタンクや定量ポンプなどに接続される。上記導入口の大きさ、形状、位置等は特に限定されない。
上記多重管ノズルにおける各管(内管、外管)の形状は、その内側に高分子光ファイバーの構成材の前駆体を通液できるものであればよく、特に限定されないが、例えば、筒状(中空の柱状;円筒状、角筒状など)などが挙げられる。中でも、低伝播損失の高分子光ファイバーを作製する観点で、円筒状が好ましい。
上記多重管ノズルにおける各管(内管、外管)の材質は、特に限定されず、例えば、SUS、アルミ、樹脂などが挙げられる。中でも、耐久性、強度の観点で、SUSが好ましい。
図3は、多重管ノズルの一例を示す概略図(3重管ノズルの場合;管の長手方向の断面図)である。図3における多重管ノズル1の1aは内管、1bは第1外管、1cは第2外管を示す。また、多重管ノズル1の1dは吐出口を示し、1e〜1gは高分子光ファイバーの構成材の前駆体の導入口を示す。このような多重管ノズルを使用することにより、コアの構成材の前駆体を導入口1eから、クラッドの構成材の前駆体を導入口1fから、保護層の構成材の前駆体を導入口1gから多重管ノズル1の内部に導入し、これら前駆体を同時に吐出口1dから、高分子光ファイバーの形態に対応した形態で(同軸で)吐出させることができるため、その後、これら前駆体をそれぞれ高分子光ファイバーの構成材に転化させることにより、コアの中心軸と保護層外面の中心軸とが精度良く一致した高分子光ファイバーが得られる。
上記多重管ノズルにおける各管(内管、外管)の径(内径及び外径)は、特に限定されないが、具体的には、例えば、上記多重管ノズルが3重管ノズルの場合の内管の内径(吐出口における内径)は、例えば、0.1〜4.0mmが好ましく、上記内管の外径(吐出口における外径)は、例えば、0.4〜4.6mmが好ましい。また、この場合の第1外管の内径(吐出口における内径)は、例えば、0.8〜6.6mmが好ましく、上記第1外管の外径(吐出口における外径)は、例えば、1.1〜7.2mmが好ましい。また、この場合の第2外管の内径(吐出口における内径)は、例えば、1.5〜11.2mmが好ましい。但し、上記多重管ノズルにおける各管の径は、上記範囲に限定されず、例えば、製造される高分子光ファイバーにおけるコアの径、クラッドの径、保護層の径、高分子光ファイバーの構成材の前駆体の粘度、吐出速度、ドラフト比(高分子光ファイバーの構成材の前駆体の平均吐出線速度と、該前駆体の転化により得られる高分子光ファイバーの引き取り速度(例えば、巻取り速度)との比)などに応じて適宜選択することができる。
なお、上記多重管ノズルは、少なくとも吐出口(吐出口側の先端部分)において、各管の中心軸が一致していることが好ましい。このような多重管ノズルを用いることにより、コアの中心軸と保護層外面の中心軸とが一致した高分子光ファイバーを容易に製造することができる。このように中心軸が一致した高分子光ファイバーは、高分子光ファイバー同士の接続や他のデバイス(例えば、コネクターや光源装置など)との接続に際して、高い信頼性を発揮できる。
上記多重管ノズルは、各管の中心軸を一致させるために、各管の位置を調整するための調整機構(「位置調整機構」と称する場合がある)を有していることが好ましい。上記位置調整機構は、各管の位置を調整できるものであればよく、特に限定されない。具体的には、例えば、最も外側に位置する外管を少なくとも貫通し、先端を該外管の内側に位置する各管の外面に接触させるように配置したねじ(調整用ねじ)などを、簡便な位置調整機構として利用することができる。図4は、位置調整機構を備えた多重管ノズルの一例を表す概略図(管の径方向の断面図)である。図4において、1hは調整用ねじを表す。図4においては、6つの調整用ねじ1hの先端を、内管1a又は第1外管1bに対して等間隔に接触させることによって位置調整機構が構成されており、これら調整用ねじのねじ込み具合をそれぞれ調節して、第2外管1cの内側における内管1a又は第1外管1bの位置を調整できる。但し、使用される調整用ねじの大きさ、数、配置の仕方等は、これに限定されない。また、各管の位置の調整機構は、図4に示す位置調整機構に限定されるものではない。
なお、上記多重管ノズルは、上述の3重管ノズルに限定されず、4重以上の多重管構造を有するノズルであってもよい。上記多重管ノズルは、製造する高分子光ファイバーの構造や形状に応じて、適宜選択することができる。
[高分子光ファイバーの構成材、その前駆体]
本発明の高分子光ファイバーの構成材としては、公知乃至慣用の各種高分子材料が挙げられ、特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂又は該樹脂を含む組成物(「熱可塑性樹脂組成物」と総称する場合がある)、各種の硬化性組成物(重合性組成物)を硬化(重合)させて得られる硬化物(樹脂硬化物)などが挙げられる。従って、本発明の高分子光ファイバーの構成材の前駆体としては、高分子材料へと転化できる公知乃至慣用の各種前駆体を使用することができ、特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂組成物の溶融物(溶融体)、熱硬化性組成物(熱重合性組成物)[加熱により硬化(重合)して硬化物を形成する組成物]、光硬化性組成物(光重合性組成物)[光の照射により硬化(重合)して硬化物を形成する組成物]などが挙げられる。上記熱可塑性樹脂組成物の溶融物は、冷却することにより熱可塑性樹脂組成物へと転化させることができ、上記熱硬化性組成物や光硬化性組成物は、加熱や光照射等により硬化(重合)させることにより硬化物へと転化させることができる。
{光硬化性組成物}
本発明の高分子光ファイバーの構成材の前駆体としての光硬化性組成物としては、特に限定されず、光の照射により硬化して硬化物(高分子光ファイバーの構成材)を形成できる、公知乃至慣用の光硬化性組成物(光ラジカル重合性組成物、光カチオン重合性組成物、光アニオン重合性組成物など)などを用いることができる。中でも、上記光硬化性組成物は、取り扱いが容易であり、かつ、一般的な光開始剤を使うことができる点で、紫外線の照射により硬化して硬化物を与える光硬化性組成物(紫外線硬化性組成物)であることが好ましい。また、特に、材料選択の幅が広い点で、光カチオン重合性組成物、光ラジカル重合性組成物が好ましい。
(光カチオン重合性組成物)
上記光カチオン重合性組成物としては、例えば、カチオン重合性化合物を必須成分として含有し、さらに、必要に応じて、光カチオン重合開始剤や光酸発生剤などを含有する組成物などが挙げられる。上記カチオン重合性化合物は、分子内(一分子中)に1個以上のカチオン重合性基を有する化合物である。上記カチオン重合性基としては、例えば、オキセタン環(オキセタニル基)、エポキシ環(オキシラニル基)、ビニルエーテル基、ビニルアリール基などが挙げられる。
上記カチオン重合性化合物の中でも、特に、高分子光ファイバーの透明性、耐熱性、柔軟性の観点で、下記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で、又はラジカル重合性を有する他の化合物と共にラジカル重合して得られるカチオン重合性樹脂(カチオン重合性重合体又は共重合体)が好ましい。即ち、上記光カチオン重合性組成物としては、上記カチオン重合性樹脂を必須成分として含む光硬化性樹脂組成物(光カチオン重合性樹脂組成物)が好ましい。上記光硬化性樹脂組成物(光カチオン重合性樹脂組成物)は低粘度であるため、加工性にも優れる傾向がある。なお、上記カチオン重合性樹脂は、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来するオキセタン環を分子内に含む重合体である。
なお、本明細書における「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルのいずれか一方又は両方を意味し、「(メタ)アクリロイル」についても同様である。但し、オキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物における「(メタ)アクリル」には、アクリル及びメタクリルのほか、R1がメチル基以外のアルキル基であるCH2=CR1CO−の意味も包含されるものとする。
上記オキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物は、下記式(1)で表される。
式(1)中、R1、R2は同一又は異なって水素原子又はアルキル基を示す。R1、R2におけるアルキル基としては、炭素数1〜6(C1-6)のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などの直鎖状のC1-6(好ましくはC1-3)アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、s−ペンチル基、t−ペンチル基、イソヘキシル基、s−ヘキシル基、t−ヘキシル基などの分岐鎖状のC1-6(好ましくはC1-3)アルキル基などが挙げられる。中でも、上記R1としては、水素原子又はメチル基が好ましく、上記R2としては、メチル基又はエチル基が好ましい。
式(1)中、Aは炭素数2〜20の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基を示す。中でも、優れた耐熱性と柔軟性とを兼ね備えた高分子光ファイバーを形成することができる点で、下記式(a1)で表される直鎖状アルキレン基、又は下記式(a2)で表される分岐鎖状アルキレン基が好ましい。なお、式(a2)の右端はエステル結合を構成する酸素原子と結合する。
式(a1)中のn1は2以上の整数を示す。n1としては、2〜20の整数が好ましく、より好ましくは2〜10の整数である。n1が1の場合、重合して得られる硬化物の柔軟性が低下する傾向がある。
式(a2)中、R3、R4、R7、R8は同一又は異なって水素原子又はアルキル基を示す。また、R5、R6は同一又は異なってアルキル基を示す。R3、R4、R5、R6、R7、R8におけるアルキル基としては、特に限定されないが、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの直鎖状のC1-4(好ましくはC1-3)アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などの分岐鎖状のC1-4(好ましくはC1-3)アルキル基などが挙げられる。中でも、上記R3、R4としては水素原子が好ましく、上記R5、R6としてはメチル基、エチル基が好ましい。
式(a2)中のn2は0以上の整数を示す。n2としては、1〜20の整数が好ましく、より好ましくは1〜10の整数である。n2が2以上の整数の場合、2以上のR7、R8はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。
式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物の代表的な例としては、以下の化合物などが挙げられる。
式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物は、公知乃至慣用の方法により製造することができ、その製造方法は特に限定されないが、例えば、国際公開第2011/099352号や国際公開第2011/129268号に記載の方法などにより製造できる。
上記カチオン重合性樹脂は、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で、又はラジカル重合性を有する他の化合物と共に、ラジカル重合することによって得られる。なお、上記「ラジカル重合性を有する他の化合物」とは、ラジカル重合性を有し、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物及び後述のラジカル重合性樹脂とは異なる化合物であり、以下、「その他のラジカル重合性化合物」と称する場合がある。
式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物は、分子内にカチオン重合部位であるオキセタン環と、ラジカル重合部位である(メタ)アクリロイル基を有するため、単独でラジカル重合、又はその他のラジカル重合性化合物と共にラジカル共重合することにより、下記式で表される構造単位(繰り返し構造単位)を有するカチオン重合性樹脂を合成することができる。なお、上記ラジカル共重合には、ブロック共重合、ランダム共重合等が含まれる。
[式中、R
1、R
2、Aは上記に同じ。]
上記カチオン重合性樹脂としては、中でも、より柔軟性に優れた硬化物を形成できる点で、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物とその他のラジカル重合性化合物をラジカル共重合して得られる樹脂が好ましく、カチオン重合性樹脂を構成する全モノマーのうち、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物の占める割合が0.1重量%以上100重量%未満(より好ましくは1〜99重量%、さらに好ましくは10〜80重量%、特に好ましくは10〜50重量%)となる割合で、ラジカル共重合して得られるカチオン重合性樹脂が好ましい。
上記その他のラジカル重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルエーテル基、ビニルアリール基、ビニルオキシカルボニル基などのラジカル重合性基を分子内に1個以上有する化合物などが挙げられる。
(メタ)アクリロイル基を分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、1−ブテン−3−オン、1−ペンテン−3−オン、1−ヘキセン−3−オン、4−フェニル−1−ブテン−3−オン、5−フェニル−1−ペンテン−3−オン等、及びこれらの誘導体などが挙げられる。
(メタ)アクリロイルオキシ基を分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、n−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}エチルイソシアネート、2−{2−(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシ}エチルイソシアネート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等、及びこれらの誘導体などが挙げられる。
(メタ)アクリロイルアミノ基を分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、4−(メタ)アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−オクチル(メタ)アクリルアミド等、及びこれらの誘導体などが挙げられる。
ビニルエーテル基を分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシイソプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシイソブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシイソブチルビニルエーテル、1−メチル−3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、1−メチル−2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、1−ヒドロキシメチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールモノビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、1,3−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、1,2−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、p−キシレングリコールモノビニルエーテル、m−キシレングリコールモノビニルエーテル、o−キシレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、テトラエチレングリコールモノビニルエーテル、ペンタエチレングリコールモノビニルエーテル、オリゴエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ジプロピレングリコールモノビニルエーテル、トリプロピレングリコールモノビニルエーテル、テトラプロピレングリコールモノビニルエーテル、ペンタプロピレングリコールモノビニルエーテル、オリゴプロピレングリコールモノビニルエーテル、ポリプロピレングリコールモノビニルエーテル等、及びこれらの誘導体などが挙げられる。
ビニルアリール基を分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、スチレン、ジビニルベンゼン、メトキシスチレン、エトキシスチレン、ヒドロキシスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、酢酸4−ビニルフェニル、(4−ビニルフェニル)ジヒドロキシボラン、N−(p−ビニルフェニル)マレイミド等、及びこれらの誘導体などが挙げられる。
ビニルオキシカルボニル基を分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、ギ酸イソプロペニル、酢酸イソプロペニル、プロピオン酸イソプロペニル、酪酸イソプロペニル、イソ酪酸イソプロペニル、カプロン酸イソプロペニル、吉草酸イソプロペニル、イソ吉草酸イソプロペニル、乳酸イソプロペニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、アジピン酸ジビニル、アクリル酸ビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等、及びこれらの誘導体などが挙げられる。
上記その他のラジカル重合性化合物としては、その他、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニルシラン類などを使用することも可能である。
上記その他のラジカル重合性化合物としては、中でも、柔軟性及び耐熱性に優れた高分子光ファイバーを形成することができる点で、分子内に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルアリール基、ビニルエーテル基、及びビニルオキシカルボニル基からなる群より選択されたラジカル重合性基を1個のみ有する化合物が好ましく、特に、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイルオキシ基を分子内に1個のみ有する化合物が好ましい。上記カチオン重合性樹脂のモノマー成分としてのその他のラジカル重合性化合物は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
上記カチオン重合性樹脂は、公知乃至慣用の方法(例えば、ラジカル重合反応)により製造することができ、その製造方法は特に限定されないが、例えば、国際公開第2011/099352号に記載の方法などにより製造できる。
上記カチオン重合性樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、500以上(例えば、500〜100万)が好ましく、より好ましくは3000〜50万である。カチオン重合性樹脂の重量平均分子量が上記範囲を外れると、高分子光ファイバーの柔軟性が得られにくくなる傾向がある。
上記カチオン重合性樹脂の数平均分子量は、特に限定されないが、100以上(例えば、100〜50万)が好ましく、より好ましくは300〜25万である。カチオン重合性樹脂の数平均分子量が上記範囲を外れると、高分子光ファイバーの柔軟性が得られにくくなる傾向がある。なお、上記カチオン重合性樹脂の重量平均分子量及び数平均分子量は、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により、標準ポリスチレン換算の値として測定することができる。
上記光カチオン重合性組成物が上記カチオン重合性樹脂を含む場合、上記カチオン重合性樹脂の割合(含有量)は、特に限定されないが、5重量%以上が好ましく、実質的に光カチオン重合性組成物が上記カチオン重合性樹脂のみにより構成されていてもよい。中でも、より柔軟性に優れる高分子光ファイバーを形成できる点で、上記カチオン重合性樹脂の割合は、10〜95重量%がより好ましく、さらに好ましくは40〜95重量%である。上記カチオン重合性樹脂の割合が5重量%を下回ると、高分子光ファイバーの柔軟性が低下する傾向がある。
上記光カチオン重合性組成物は、上記カチオン重合性化合物として、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物及び上記カチオン重合性樹脂以外の化合物(「その他のカチオン重合性化合物」と称する場合がある)を含んでいてもよい。上記その他のカチオン重合性化合物としては、例えば、オキセタン環、エポキシ環、ビニルエーテル基、ビニルアリール基などのカチオン重合性基を分子内に1個以上有する化合物などが挙げられる。
オキセタン環を分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、3,3−ビス(ビニルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−[(フェノキシ)メチル]オキセタン、3−エチル−3−(ヘキシルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(クロロメチル)オキセタン、3,3−ビス(クロロメチル)オキセタン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、ビス{[1−エチル(3−オキセタニル)]メチル}エーテル、4,4'−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビシクロヘキシル、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]シクロヘキサン、1,4−ビス{〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕メチル}ベンゼン、3−エチル−3{〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタンなどが挙げられる。
エポキシ環を分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3',4'−エポキシ−6'−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシルレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類など;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル類;フェノール、クレゾール、ブチルフェノール又はこれらにアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル類;高級脂肪酸のグリシジルエステル類などが挙げられる。
ビニルエーテル基を分子内に1個以上有する化合物、ビニルアリール基を分子内に1個以上有する化合物としては、上記その他のラジカル重合性化合物として例示したものと同様の化合物などが挙げられる。
上記その他のカチオン重合性化合物としては、中でも、光照射により速やかに硬化する点で、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3,3−ビス(ビニルオキシメチル)オキセタン、1,4−ビス{〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕メチル}ベンゼン、3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタンなどのオキセタン環を分子内に1個以上有する化合物が好ましい。なお、上記その他のカチオン重合性化合物は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
上記光カチオン重合性組成物においては、カチオン重合性化合物として、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を使用することもできる。
上記光カチオン重合性組成物は、より柔軟性に優れる高分子光ファイバーを形成することができる点で、上記カチオン重合性樹脂とその他のカチオン重合性化合物を含むことが好ましい。カチオン重合性樹脂とその他のカチオン重合性化合物の配合比(前者/後者:重量比)としては、特に限定されないが、95/5〜10/90が好ましく、より好ましくは95/5〜20/80、さらに好ましくは95/5〜40/60である。カチオン重合性樹脂の配合割合が上記範囲を下回ると、得られる高分子光ファイバーの柔軟性が低下する傾向がある。
上記光カチオン重合性組成物は、必要に応じて重合開始剤を含有していてもよい。上記重合開始剤としては、公知乃至慣用の光カチオン重合開始剤、光酸発生剤等のカチオン重合を起こし得るものを使用することができ、特に限定されないが、例えば、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートなどのスルホニウム塩;ジアリールヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ヨードニウム[4−(4−メチルフェニル−2−メチルプロピル)フェニル]ヘキサフルオロホスフェートなどのヨードニウム塩;テトラフルオロホスホニウムヘキサフルオロホスフェートなどのホスホニウム塩;ピリジニウム塩などが挙げられる。
重合開始剤としては、例えば、商品名「CPI−100P」(サンアプロ(株)製)、商品名「CPI−101A」(サンアプロ(株)製)などの市販品を使用することもできる。
上記光カチオン重合性組成物における重合開始剤の含有量(配合量)は、特に限定されないが、カチオン重合性化合物の全量(例えば、カチオン重合性樹脂とその他のカチオン重合性化合物の総重量)100重量部に対して、0.01〜50重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量部である。
上記光カチオン重合性組成物は、酸化防止剤を含んでいてもよい。中でも、上記光カチオン重合性組成物をコアの構成材の前駆体、クラッドの構成材の前駆体として使用する場合には、コアの構成材の前駆体及びクラッドの構成材の前駆体のいずれか一方又は両方が酸化防止剤を含むことが好ましい。上記酸化防止剤としては、公知乃至慣用の酸化防止剤を使用することができ、特に限定されないが、例えば、フェノール系化合物(フェノール系酸化防止剤)、ヒンダードアミン系化合物(ヒンダードアミン系酸化防止剤)、リン系化合物(リン系酸化防止剤)、イオウ系化合物(イオウ系酸化防止剤)などが挙げられる。
上記フェノール系化合物としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−p−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のモノフェノール類;2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等のビスフェノール類;1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス[メチレン−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3'−ビス(4'−ヒドロキシ−3'−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、1,3,5−トリス(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシベンジル)−s−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、トコフェノール等の高分子型フェノール類などが挙げられる。
上記ヒンダードアミン系化合物としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、メチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられる。
上記リン系化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、ビス[2−t−ブチル−6−メチル−4−{2−(オクタデシルオキシカルボニル)エチル}フェニル]ヒドロゲンホスファイト等のホスファイト類;9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のオキサホスファフェナントレンオキサイド類などが挙げられる。
上記イオウ系化合物としては、例えば、ドデカンチオール、ジラウリル−3,3'−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3'−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3'−チオジプロピオネートなどが挙げられる。
なお、上記光カチオン重合性組成物において酸化防止剤は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。また、上記酸化防止剤としては、例えば、商品名「イルガノックス1010」(BASF製、フェノール系化合物)、商品名「イルガフォス168」(BASF製、リン系化合物)などの市販品を使用することもできる。
中でも、上記酸化防止剤としては、フェノール系化合物、リン系化合物、イオウ系化合物が好ましく、特に、フェノール系化合物とリン系化合物又はイオウ系化合物とを併用することが好ましい。
上記光カチオン重合性組成物における酸化防止剤の含有量(配合量)は、特に限定されないが、光カチオン重合性組成物の全量(100重量%)に対して、0.1〜10重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量%、さらに好ましくは0.1〜3重量%である。酸化防止剤の含有量が上記範囲を外れると、高分子光ファイバーの光学特性が損なわれる傾向がある。特に、酸化防止剤の含有量が0.1重量%未満であると、ハンダリフロー処理等の高温処理によって高分子光ファイバーが熱劣化して光損失が増大したり、端面の形状変化(隆起等)が生じやすくなる場合がある。なお、2種以上の酸化防止剤を併用する場合には、これらの合計量が上記範囲に制御されることが好ましい。
特に、上記酸化防止剤として、フェノール系化合物とリン系化合物又はイオウ系化合物とを併用する場合、これらの含有量(配合量)の割合[フェノール系化合物/リン系化合物又はイオウ系化合物](重量比)は、特に限定されないが、0.1/1〜20/1が好ましく、より好ましくは0.5/1〜15/1、さらに好ましくは1/1〜10/1、特に好ましくは2/1〜5/1である。上記割合を上記範囲に制御することにより、高分子光ファイバーの耐熱性を著しく向上させることができる傾向がある。
上記光カチオン重合性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じてその他の添加物を含有していてもよい。その他の添加物としては、例えば、硬化膨張性モノマー、光増感剤(アントラセン系増感剤等)、樹脂、密着性向上剤、補強剤、軟化剤、可塑剤、粘度調整剤、溶剤、無機又は有機粒子(ナノスケール粒子等)、フルオロシラン等の公知乃至慣用の各種添加剤が挙げられる。
中でも、上記光カチオン重合性組成物を保護層の構成材の前駆体として使用する場合には、例えば、セルロースファイバー(セルロースナノファイバーなど)、ポリイミドファイバー、炭素繊維などの繊維;スメクタイト類などの粘土鉱物などを含有させることによって、高分子光ファイバーに対して高い機械特性(例えば、高い引張強度など)やガスバリア性などの各種機能を付与することができる。
(光ラジカル重合性組成物)
本発明の高分子光ファイバーの構成材の前駆体としての上記光ラジカル重合性組成物としては、例えば、ラジカル重合性化合物を必須成分として含有し、さらに、必要に応じて、光ラジカル重合開始剤などを含有する組成物などが挙げられる。上記ラジカル重合性化合物は、分子内に1個以上のラジカル重合性基を有する化合物である。上記ラジカル重合性基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルアリール基、ビニルエーテル基、ビニルオキシカルボニル基などが挙げられる。なお、光ラジカル重合性組成物においてラジカル重合性化合物は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
上記ラジカル重合性化合物としては、分子内に1個以上のラジカル重合性基を有する化合物であればよく、特に限定されないが、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリアクリル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、これら以外の多官能(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
上記ウレタン(メタ)アクリレートとしては、公知乃至慣用のウレタン(メタ)アクリレート[分子内にウレタン結合と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物]を使用することができ、特に限定されないが、例えば、分子内に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物(ポリイソシアネート)と、分子内に活性水素原子及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物とを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート;ウレタンプレポリマー(例えば、ポリイソシアネート及び分子内に2個以上の水酸基を有する化合物(ポリオール)の反応により得られる、分子内に1個以上のイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー)と、分子内に活性水素原子及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物とを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
上記ウレタン(メタ)アクリレートの原料としての上記ポリイソシアネートとしては、分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物であればよく、特に限定されないが、例えば、脂肪族ポリイソシアネート[例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、リジンジイソシアネート(LDI)などの脂肪族ジイソシアネート;1,6,11−ウンデカントリイソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネートなどの脂肪族トリイソシアネートなど]、脂環族ポリイソシアネート[例えば、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添キシリレンジイソシアネート、水添ビス(イソシアナトフェニル)メタンなどの脂環族ジイソシアネート;ビシクロヘプタントリイソシアネートなどの脂環族トリイソシアネートなど]、芳香族ポリイソシアネート[例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ビス(イソシアナトフェニル)メタン(MDI)、トルイジンジイソシアネート(TODI)、1,3−ビス(イソシアナトフェニル)プロパンなどの芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタントリイソシアネートなどの芳香族トリイソシアネートなど]、複素環式ポリイソシアネート、これらポリイソシアネートの誘導体[例えば、ポリイソシアネートのダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、2,4,6−オキサジアジントリオン環を有するポリイソシアネート(炭酸ガスとポリイソシアネート(単量体)の重合物)、カルボジイミド、ウレットジオンなど]などが挙げられる。なお、上記ポリイソシアネートは1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
上記ウレタン(メタ)アクリレートの原料としての上記ポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、低分子量ポリオール[脂肪族ポリオール(エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレンエーテルグリコールなどのC2-10アルカンジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどのC3-12脂肪族ポリオールなど)、脂環族ポリオール(1,4−シクロヘキサンジオールなどのシクロアルカンジオール類、水添ビスフェノールAなどの水添ビスフェノール類、これらのC2-4アルキレンオキサイド付加体など)、芳香族ポリオール(キシリレングリコールなどの芳香脂肪族ジオール、ビスフェノールA、S、Fなどのビスフェノール類、これらのC2-4アルキレンオキサイド付加体など)など]、ポリマーポリオール類[例えば、ポリエーテルポリオール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどのポリC2-4アルキレングリコールなど)、ポリエステルポリオール(例えば、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとのポリエステルポリオールなど)、ポリカーボネートポリオールなど]などが挙げられる。なお、上記化合物は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
上記ウレタン(メタ)アクリレートの原料としての上記分子内に活性水素原子及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシシクロオクチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なお、上記化合物は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
上記ウレタン(メタ)アクリレートの原料としての上記ウレタンプレポリマーとしては、特に限定されないが、上述のポリイソシアネートの多量体、上述のポリイソシアネートのビュレット変性多量体、上述のポリイソシアネートと上記ポリオールとのアダクト体、上記ポリオールに対して過剰量の上記ポリイソシアネートを反応させて得られるポリウレタンプレポリマーなどが挙げられる。なお、上記ウレタンプレポリマーは1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
上記ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、公知乃至慣用のポリエステル(メタ)アクリレート[分子内にエステル結合と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物]を使用することができ、特に限定されないが、例えば、ポリオール(又はその誘導体)とポリカルボン酸(又はその誘導体)とを重合して得られるポリマー又はオリゴマーや、環状エステル化合物を開環重合して得られるポリマー又はオリゴマーなどのポリエステルに、さらに、分子内に(メタ)アクリロイル基を有する化合物(例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルなど)を反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
上記ポリエステル(メタ)アクリレートの原料としての上記ポリオールしては、特に限定されず、例えば、上記ウレタン(メタ)アクリレートの原料としてのポリオールと同様のものなどが挙げられる。なお、上記ポリオール又はその誘導体は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる
上記ポリエステル(メタ)アクリレートの原料としての上記ポリカルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、アジピン酸、コハク酸、セバチン酸等の飽和ポリカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和ポリカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等の芳香族ポリカルボン酸などが挙げられる。なお、上記ポリカルボン酸又はその誘導体は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
上記ポリエステル(メタ)アクリレートの原料としての上記環状エステル化合物としては、特に限定されないが、例えば、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のラクトン化合物又はその誘導体などが挙げられる。なお、上記環状エステル化合物は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
上記ポリアクリル(メタ)アクリレートとしては、公知乃至慣用のポリアクリル(メタ)アクリレート[分子内に(メタ)アクリロイル基を有するアクリルオリゴマー又はポリマー]を使用することができ、特に限定されないが、例えば、エポキシ基を有するアクリルポリマー(例えば、(メタ)アクリル系モノマーとグリシジル(メタ)アクリレートの共重合体など)のエポキシ基に対して、(メタ)アクリル酸などの分子内に(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加反応させることにより得られるポリアクリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、公知乃至慣用のエポキシ(メタ)アクリレート[エポキシ化合物と、該エポキシ基に対する付加反応性基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物との反応により得られるエポキシ(メタ)アクリレート]を使用することができ、特に限定されないが、例えば、分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物(例えば、多価アルコール型、多価カルボン酸型、ビスフェノールA、F、Sなどのビスフェノール型、ノボラック型などのエポキシ樹脂)のエポキシ基に対して、(メタ)アクリル酸などの分子内に(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加反応させることにより得られるエポキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
上記ポリエーテル(メタ)アクリレートとしては、公知乃至慣用のポリエーテル(メタ)アクリレート[分子内にエーテル結合と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物]を使用することができ、特に限定されないが、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなど)付加体の片末端又は両末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリエーテル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
上記多官能(メタ)アクリレートとしては、公知乃至慣用の多官能(メタ)アクリレート[分子内に2以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物]を使用することができ、特に限定されないが、例えば、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエン系(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、ポリアセタール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
上記ラジカル重合性化合物としては、その他、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で、又はカチオン重合性を有する他の化合物(その他のカチオン重合性化合物)と共にカチオン重合して得られるラジカル重合性樹脂(ラジカル重合性重合体)を使用することもできる。即ち、上記光ラジカル重合性組成物としては、上記ラジカル重合性樹脂を必須成分として含む光硬化性樹脂組成物(光ラジカル重合性樹脂組成物)を使用することもできる。なお、上記ラジカル重合性樹脂は、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来するCH2=CR1CO−基を分子内に有する重合体である。
上記ラジカル重合性樹脂は、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で、又はその他のカチオン重合性化合物と共に、カチオン重合することによって得られる。
式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物は、分子内にカチオン重合部位であるオキセタン環と、ラジカル重合部位である(メタ)アクリロイル基を有するため、単独でカチオン重合、又はその他のカチオン重合性化合物と共にカチオン共重合することにより、下記式で表される構造単位(繰り返し構造単位)を有するラジカル重合性樹脂を合成することができる。なお、上記カチオン共重合には、ブロック共重合、ランダム共重合等が含まれる。
[式中、R
1、R
2、Aは上記に同じ。]
上記ラジカル重合性樹脂としては、中でも、より柔軟性に優れた高分子光ファイバーを形成できる点で、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物とその他のカチオン重合性化合物をカチオン共重合して得られるラジカル重合性樹脂が好ましい。特に、ラジカル重合性樹脂を構成する全モノマーのうち、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物の占める割合が0.1重量%以上(好ましくは1〜99重量%、特に好ましくは10〜80重量%)となる割合で、カチオン共重合して得られる樹脂が好ましい。
上記その他のカチオン重合性化合物としては、例えば、上記光カチオン重合性組成物の項で例示した、オキセタン環、エポキシ環、ビニルエーテル基、ビニルアリール基などのカチオン重合性基を分子内に1個以上有する化合物などが挙げられる。
上記その他のカチオン重合性化合物としては、中でも、柔軟性及び耐熱性に優れた硬化物を形成できる点で、分子内にオキセタン環、エポキシ環、ビニルエーテル基、ビニルアリール基からなる群より選択されたカチオン重合性基を1個のみ有する化合物が好ましく、特に、トリメチレンオキシド、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−[(フェノキシ)メチル]オキセタン、3−エチル−3−(ヘキシルオキシメチル)オキセタンなどのオキセタン環を分子内に1個のみ有する化合物、グリシジルメチルエーテル、酪酸(R)−グリシジルなどのエポキシ基を分子内に1個のみ有する化合物等が好ましい。上記その他のカチオン重合性化合物は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
上記ラジカル重合性樹脂は、公知乃至慣用の方法(例えば、カチオン重合反応)により製造することができ、その製造方法は特に限定されないが、例えば、国際公開第2011/129268号に記載の方法などにより製造できる。
上記ラジカル重合性樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、500以上(例えば、500〜100万程度)が好ましく、より好ましくは3000〜50万である。ラジカル重合性樹脂の重量平均分子量が上記範囲を下回ると、高分子光ファイバーの柔軟性が低下する傾向がある。
上記ラジカル重合性樹脂の数平均分子量は、特に限定されないが、100以上(例えば、100〜50万)が好ましく、より好ましくは300〜25万である。ラジカル重合性樹脂の数平均分子量が上記範囲を外れると、高分子光ファイバーの柔軟性が得られにくくなる傾向がある。なお、上記ラジカル重合性樹脂の重量平均分子量及び数平均分子量は、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により、標準ポリスチレン換算の値として測定することができる。
上記光ラジカル重合性組成物においては、ラジカル重合性化合物として、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を使用することもできる。また、ラジカル重合性化合物として、上記光カチオン重合性組成物の項で例示したラジカル重合性化合物なども使用できる。
上記光ラジカル重合性組成物におけるラジカル重合性化合物の含有量(配合量)は、特に限定されないが、光ラジカル重合性組成物の全量(100重量%)に対して、40重量%以上、100重量%未満が好ましく、より好ましくは60〜99重量%である。
上記光ラジカル重合性組成物は、必要に応じて光ラジカル重合開始剤を含有していてもよい。上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンジル、ベンジルジメチルケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ジメトキシアセトフェノン、ジメトキシフェニルアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ジフェニルジサルファイトなどが挙げられる。上記光ラジカル重合開始剤は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
上記光ラジカル重合性組成物は、光吸収エネルギーの重合開始遊離基への転換を強めるための相乗剤を含んでいてもよい。上記相乗剤としては、例えば、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、ジメチルアミノ安息香酸、ジメチルアミノ安息香酸メチル等のアミン;チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、アセチルアセトン等のケトンなどが挙げられる。
上記光ラジカル重合性組成物が光ラジカル重合開始剤を含有する場合、その含有量(配合量)としては、光ラジカル重合性組成物中のラジカル重合性化合物の全量(例えば、ラジカル重合性樹脂とその他のラジカル重合性化合物の総重量)100重量部に対して、0.01〜50重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量部である。
上記光ラジカル重合性組成物は、酸化防止剤を含んでいてもよい。中でも、上記光ラジカル重合性組成物をコアの構成材の前駆体、クラッドの構成材の前駆体として使用する場合には、コアの構成材の前駆体及びクラッドの構成材の前駆体のいずれか一方又は両方が酸化防止剤を含むことが好ましい。上記酸化防止剤としては、公知乃至慣用の酸化防止剤が挙げられ、特に限定されないが、例えば、光カチオン重合性組成物の項で例示したものと同様のものが例示される。中でも、上記酸化防止剤としては、フェノール系化合物、リン系化合物、イオウ系化合物が好ましく、特に、フェノール系化合物とリン系化合物又はイオウ系化合物とを併用することが好ましい。
上記光ラジカル重合性組成物における酸化防止剤の含有量(配合量)は、特に限定されないが、光ラジカル重合性組成物の全量(100重量%)に対して、0.1〜10重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量%、さらに好ましくは0.1〜3重量%である。酸化防止剤の含有量が上記範囲を外れると、高分子光ファイバーの光学特性が損なわれる傾向がある。特に、酸化防止剤の含有量が0.1重量%未満であると、ハンダリフロー処理等の高温処理によって高分子光ファイバーが熱劣化して光損失が増大したり、端面の形状変化(隆起等)が生じやすくなる場合がある。なお、2種以上の酸化防止剤を併用する場合には、これらの合計量が上記範囲に制御されることが好ましい。
特に、上記酸化防止剤として、フェノール系化合物とリン系化合物又はイオウ系化合物とを併用する場合、これらの含有量(配合量)の割合[フェノール系化合物/リン系化合物又はイオウ系化合物](重量比)は、特に限定されないが、0.1/1〜20/1が好ましく、より好ましくは0.5/1〜15/1、さらに好ましくは1/1〜10/1、特に好ましくは2/1〜5/1である。上記割合を上記範囲に制御することにより、高分子光ファイバーの耐熱性を著しく向上させることができる傾向がある。
上記光ラジカル重合性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じてその他の添加物を含有していてもよい。その他の添加物としては、公知乃至慣用の添加剤が挙げられ、特に限定されないが、例えば、光カチオン重合性組成物の項で例示したものと同様のものが例示される。
中でも、上記光ラジカル重合性組成物を保護層の構成材の前駆体として使用する場合には、例えば、セルロースファイバー(セルロースナノファイバーなど)、ポリイミドファイバー、炭素繊維などの繊維;スメクタイト類などの粘土鉱物などを含有させることによって、高分子光ファイバーに対して高い機械特性(例えば、高い引張強度など)やガスバリア性などの各種機能を付与することができる。
本発明の高分子光ファイバーの構成材の前駆体としての光硬化性組成物は、特に限定されないが、室温(約25℃)において液体であることが好ましい。即ち、室温において流動性を有する液状物であることが好ましい。液体の光硬化性組成物を高分子光ファイバーの構成材の前駆体として用いることにより、加熱や溶剤の使用により粘度を低下させることなく、室温での紡糸が可能となる。さらに、ろ過によって光硬化性組成物中の不純物を容易に除去することができるため、高品質の高分子光ファイバーを得やすい。一方、室温において固体である組成物(樹脂組成物)を高分子光ファイバーの原料として使用した場合には、加熱や溶剤の使用により粘度を低下させない限り、室温における紡糸が困難であり、コスト面で不利となる。また、一般に、室温において固体である組成物(樹脂組成物)は、不純物の除去操作が煩雑である傾向がある。
特に、上記光硬化性組成物をコアの構成材の前駆体として使用する場合、当該光硬化性組成物の25℃における粘度は、特に限定されないが、ろ過による不純物の除去が容易で、低光損失の高分子光ファイバーが得られやすい点で、25000mPa・s以下(例えば、20〜25000mPa・s)が好ましい。また、上記光硬化性組成物をクラッドの構成材の前駆体として使用する場合、当該光硬化性組成物の25℃における粘度は、特に限定されないが、ろ過による不純物の除去が容易で、低光損失の高分子光ファイバーが得られやすい点で、2000〜25000mPa・sが好ましい。一方、上記光硬化性組成物を保護層の構成材の前駆体として使用する場合、当該光硬化性組成物の25℃における粘度は、特に限定されないが、曳糸性が向上し、光ファイバーの製造が容易となる点で、10000〜500000mPa・sが好ましい。なお、上記の25℃における粘度は、E型粘度計(商品名「VISCONIC」、(株)トキメック製)を用いて測定することができる(ローター:1°34′×R24、回転数:0.5rpm、測定温度:25℃)。上記光硬化性組成物の粘度は、例えば、光硬化性組成物の組成(例えば、上記カチオン重合性樹脂やラジカル重合性樹脂の分子量や含有量など)などにより制御できる。
{熱硬化性組成物}
本発明の高分子光ファイバーの構成材の前駆体としての熱硬化性組成物としては、特に限定されず、加熱により硬化して硬化物を形成できる、公知乃至慣用の熱硬化性組成物(熱ラジカル重合性組成物、熱カチオン重合性組成物など)などを用いることができる。上記熱硬化性組成物としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、シアネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂の前駆体(ポリアミック酸)などの熱硬化性樹脂(熱硬化性化合物)を含有する組成物などが挙げられる。上記熱硬化性組成物は、上記熱硬化性樹脂に加えて、必要に応じて、上述の酸化防止剤やその他の添加剤などのその他の成分を含有していてもよい。
また、上記熱硬化性組成物としては、上述の光硬化性組成物における光重合開始剤(光カチオン重合開始剤、光酸発生剤、光ラジカル重合開始剤)の代わりに、熱重合開始剤を使用した組成物なども挙げられる。上記熱重合開始剤としては、公知乃至慣用の熱重合開始剤を使用でき、特に限定されないが、例えば、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2'−アゾビス(イソ酪酸)ジメチルなどの熱ラジカル重合開始剤;アリールジアゾニウム塩、アリールヨードニウム塩、アリールスルホニウム塩、アレン−イオン錯体などの熱カチオン重合開始剤などが挙げられる。
{熱可塑性樹脂組成物}
本発明の高分子光ファイバーの構成材としての熱可塑性樹脂組成物としては、特に限定されず、高分子光ファイバーの構成材として使用可能な公知乃至慣用の熱可塑性樹脂組成物を使用することができる。上記熱可塑性樹脂組成物における熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、MS樹脂、AS樹脂、透明ABS樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、環状オレフィン樹脂などの各種熱可塑性樹脂が挙げられる。上記熱可塑性樹脂組成物は、上記熱可塑性樹脂に加えて、必要に応じて、上述の酸化防止剤やその他の添加剤などのその他の成分を含有していてもよい。
中でも、本発明の高分子光ファイバーの構成材の前駆体としては、高分子光ファイバーの耐熱性、光学特性、機械特性などの観点で、光硬化性組成物が好ましい。また、特に保護層の構成材の前駆体としては、光カチオン重合性組成物を使用することが好ましい。保護層の構成材の前駆体として光カチオン重合性組成物を使用することにより、ノズルより吐出されるファイバー状の光硬化性組成物の表面に光カチオン重合性組成物が位置し、酸素不存在下などの特殊な環境下ではなくとも(例えば、空気中であっても)重合反応を十分に進行させることができる。さらに、コアの構成材の前駆体及びクラッドの構成材の前駆体のいずれか一方又は両方(特に、両方)としては、得られる高分子光ファイバーの光損失をより低減できる点で、光ラジカル重合性組成物を使用することが好ましい。
[高分子光ファイバーの構成材の前駆体の吐出]
本発明の高分子光ファイバーの製造方法における工程Aは、上述のように、多重管ノズルを用いて、コアの構成材の前駆体と、クラッドの構成材の前駆体と、保護層の構成材の前駆体とを、上記多重管ノズルの吐出口から同時に、同軸で、ファイバー状に吐出させ、その後、各前駆体を各構成材に転化させることにより、コアとクラッドと保護層とを同時に形成する工程である。上記多重管ノズルの吐出口から吐出された上記前駆体(特に、光硬化性組成物)は、通常、ファイバー状(糸状)であって、高分子光ファイバーの形態と対応する形態(即ち、「コアの構成材の前駆体/クラッドの構成材の前駆体/保護層の構成材の前駆体」の多重構造;径方向の断面において、各前駆体の境界及び保護層の構成材の前駆体の外面が同心円状の形状を有する構造)を有する。
工程Aにおける多重管ノズルからの高分子光ファイバーの構成材の前駆体の吐出は、室温で実施することもできるし、使用する上記前駆体の種類などにより必要に応じて、多重管ノズルの内部を一定の温度に保持した状態で(例えば、加熱しながら又は冷却しながら)実施することもできる。例えば、高分子光ファイバーの構成材の前駆体として熱可塑性樹脂組成物の溶融物を使用する場合には、通常、溶融状態を保持するために、加熱しながら上記吐出を実施することが好ましい。また、高分子光ファイバーの構成材の前駆体として硬化性組成物を使用する場合にも、例えば、粘度を調整する目的等により、加熱又は冷却しながら上記吐出を実施してもよい。なお、加熱や冷却は、公知乃至慣用の方法や装置等を使用して実施できる。
また、上記前駆体の吐出は、空気中で実施することもできるし、使用する上記前駆体の種類等により必要に応じて(特に、保護層の構成材の前駆体として光ラジカル重合性組成物や熱ラジカル重合性組成物を使用する場合など)、アルゴン雰囲気下や窒素雰囲気下などの不活性ガス雰囲気下で実施することもできる。
多重管ノズルからの高分子光ファイバーの構成材の前駆体の吐出量は、多重管ノズルにおける各管の径、上記前駆体の粘度、製造する高分子光ファイバーの径などに応じて適宜調整することができ、特に限定されない。一般に、上記前駆体の吐出量を多くすると、多重管ノズルから吐出される上記前駆体の線径が太くなる傾向があり、その結果、得られる高分子光ファイバーの線径も太くなる傾向がある。なお、コアの構成材の前駆体、クラッドの構成材の前駆体、保護層の構成材の前駆体の吐出量をそれぞれ独立に制御することによって、高分子光ファイバーのコアの径、クラッドの径、保護層の径をそれぞれ独立に制御することが可能となる。
工程Aにおける、高分子光ファイバーの構成材の前駆体(コアの構成材の前駆体、クラッドの構成材の前駆体、及び保護層の構成材の前駆体の合計)の吐出速度(送り速度)は、多重管ノズルにおける各管の径、上記前駆体の粘度、製造する高分子光ファイバーの径などにより適宜調整可能であり、特に限定されないが、例えば、0.3〜1mL/分が好ましく、より好ましくは0.375〜0.75mL/分である。
特に、高分子光ファイバーの構成材の前駆体として光硬化性組成物を使用する場合、コアの構成材の前駆体の吐出速度は0.01〜0.15mL/分が好ましく、より好ましくは0.05〜0.1mL/分であり、クラッドの構成材の前駆体の吐出速度は0.01〜0.15mL/分が好ましく、より好ましくは0.05〜0.1mL/分であり、保護層の構成材の前駆体の吐出速度は0.1〜1.0mL/分が好ましく、より好ましくは0.15〜0.5mL/分である。なお、吐出速度は、定量ポンプの使用などの公知乃至慣用の手段により適宜制御できる。
[高分子光ファイバーの構成材の前駆体の該構成材への転化]
工程Aでは、上記多重管ノズルを用いて上記前駆体をファイバー状に吐出させた後、高分子光ファイバーの構成材に転化させることにより、コアとクラッドと保護層とを同時に形成する。上記転化の手段は、上記前駆体を高分子光ファイバーの各構成材に転化させることができるものであればよく、特に限定されないが、上記転化は、通常、上記前駆体として光硬化性組成物を使用する場合には光照射によって硬化させることにより、上記前駆体として熱硬化性組成物を使用する場合には加熱によって硬化させることにより、上記前駆体として熱可塑性樹脂組成物の溶融物を使用する場合には冷却によって固化させることにより、実施される。
(転化の手段:光照射)
上記転化の手段として光照射を適用する場合、上記前駆体に対して照射する光は、上記前駆体を高分子光ファイバーの構成材に転化させることができる光(特に、光硬化性組成物の重合反応を進行させて硬化させることができる光)であればよく、特に限定されないが、例えば、紫外線、赤外線、可視光線、電子線などが挙げられる。中でも、一般的な光開始剤を使うことができる観点で、紫外線が好ましい。
上記前駆体(特に、光硬化性組成物)に対して光を照射する手段は、特に限定されないが、例えば、上記前駆体を高分子光ファイバーの構成材に転化させることができる光(特に、紫外線)を出射(放射)し上記前駆体に照射することができる、公知乃至慣用の光照射装置を用いることができる。具体的には、例えば、紫外線を出射する光照射装置(紫外線照射装置)としては、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアーク、メタルハライドランプ、太陽光、LEDランプ、レーザーなどの光源を用いることができる。また、これらの光源と、該光源より出力した光を伝送するためのライトガイドを組み合わせたもの、及びこれらと各種光学系(例えば、レンズやミラーなど)等を組み合わせたもの等を、光照射装置として用いることができる。
図5は、高分子光ファイバーの構成材の前駆体として光硬化性組成物を使用した場合の工程Aの一実施形態を示す概略図である。図5に示す態様においては、多重管ノズル1と、該多重管ノズル1の先端部分の吐出口の下方で光を出射するように配置された光照射装置2が使用されている。なお、図5における光照射装置2は、光を出力する光源装置2c、該光を伝送するライトガイド2b、及び端部(出力端)より光を出射するライトガイド先端部2aより構成されている。なお、図5の右側の光照射装置は、ライトガイドの一部と光源装置を省略して描いているが、左側の光照射装置2と同じものを表し、その他の図面においても同様である。また、図5における3a及び3bは、後述の、多重管ノズル1の吐出口における光の照射強度を0.2mW/cm2以下に制御するための手段(制御手段)としての遮光部材(3a:遮光筒、3b:遮光板)を表す。
なお、本明細書においては、上記光照射装置の中で、特に、光を出射する部分のことを「出射部」と称する場合がある。例えば、図5に示す光照射装置2においては、ライトガイドの先端部分2aの端部(出力端)が出射部である。
上記前駆体(特に、光硬化性組成物)に対して光を照射する方法は、特に限定されず、公知乃至慣用の方法(光照射の方法)により実施可能である。例えば、上記光照射装置を用いて光を照射する場合、上記光照射装置の出射部の配置や数は、特に限定されない。特に、上記前駆体に対して光を均一に照射できるように光照射装置の出射部を配置することが好ましい。図6は、工程Aにて使用可能な光照射装置の一例を示す概略図(平面図)であり、(a)は3方向から光を照射できる光照射装置、(b)は2方向から光を照射できる光照射装置である。図6に示す光照射装置は、多重管ノズルの吐出口の下方において3方向又は2方向から光を出射し、上記前駆体に対して照射する光照射装置である。上記光照射装置は、上記前駆体に対して等距離で、互いに等間隔に配置された出射部(ライトガイドの先端部分2aの出力端)を有する。図6において、4は多重管ノズルから吐出された上記前駆体が通過する位置を表し、2d及び2eは、光照射装置のライトガイドの先端部分2aを固定するための土台(支持体)を表す。但し、光照射装置は、これに限定されるものではなく、例えば、1つの方向のみや、4つ以上の方向から光を照射するもの等であってもよい。また、光照射装置は、多重管ノズルの吐出口の下方において光を出射するものに限らず、多重管ノズルの吐出口よりも上方から光を出射するものであってもよい(例えば、図11参照)。
さらに、上記光照射装置は、光を上記前駆体に対して効率的に照射するため、必要に応じて、適宜な光学系と組み合わせて使用してもよい。具体的には、例えば、上記光照射装置からの光を集光レンズ(凸レンズやシリンドリカルレンズなど)で集光して、より強度の高い光を上記前駆体に照射したり、いったん上記前駆体に照射した光をミラー(反射ミラー)により反射させて、再度上記前駆体に照射することも可能である。上記光学系を用いることで、光の有効利用を図ることができ、高分子光ファイバーの生産性を向上させることができる。上記光学系としては、上記に限定されるものではなく、公知乃至慣用の光学機器等において通常用いられる光学系等を利用することができる。
工程Aにおいて、上記前駆体に照射する光の照射強度は、特に限定されないが、例えば、上記前駆体に対する照射強度として、1000〜5000mW/cm2が好ましく、より好ましくは1500〜2000mW/cm2である。照射強度が1000mW/cm2未満であると、特にコアが未硬化となりやすく、紡糸不良が生じたり、高分子光ファイバーの形状が変形しやすく取り扱いが困難となる場合がある。一方、照射強度が5000mW/cm2を超えると、多重管ノズルの吐出口における光の照射強度を0.2mW/cm2以下に制御することが困難となる場合がある。
工程Aにおいては、特に、上記前駆体として光硬化性組成物を使用する場合には、上記多重管ノズルの吐出口における光の照射強度(以下、単に「吐出口における光の照射強度」と称する場合がある)を0.2mW/cm2以下に制御することが好ましい。上記吐出口における光の照射強度を0.2mW/cm2以下に制御することにより、線径が均一な高分子光ファイバーを取得でき、製造の際に糸切れが起こることなく、高い生産性で高分子光ファイバーを製造できる傾向がある。
なお、上記「吐出口における光の照射強度」とは、本発明の高分子光ファイバーの製造方法において、上記前駆体(特に、光硬化性組成物)を送液しないこと以外は高分子光ファイバー製造時と全く同一の条件で光を出射させた時(例えば、光照射装置から光を出射させた時)の、多重管ノズルの吐出口において測定される光の照射強度(単位:mW/cm2)を意味する。上記照射強度の測定方法は、特に限定されないが、例えば、パワーメータ(商品名「紫外線光量計UTI−250」、ウシオ電機(株)製)を用いて、受光器UVD−S365により測定することができる。
上記吐出口における光の照射強度は、特に限定されないが、線径が均一な高分子光ファイバーの取得や製造時の糸切れ防止の観点から、0.1mW/cm2以下がより好ましい。上記吐出口における光の照射強度が0.2mW/cm2を超えると、多重管ノズルの先端の吐出口において上記前駆体としての光硬化性組成物の硬化反応(重合反応)が進行し、吐出口付近の光硬化性組成物の粘度が変動したり、詰まりを生じたりしてしまう。その結果、多重管ノズルから吐出される光硬化性組成物の線径が安定せず、線径が一定の高分子光ファイバーが得られなかったり、製造時に糸切れが頻発し高分子光ファイバーの生産性が低下してしまう。
上記吐出口における光の照射強度を0.2mW/cm2以下に制御する手段としては、公知乃至慣用の手段を適用することができ、特に限定されないが、例えば、以下で例示する制御手段を使用することが可能である。
特に、本発明の高分子光ファイバーの製造方法により製造される高分子光ファイバーの原料として、室温において液体の光硬化性組成物を使用する場合には、多重管ノズルから吐出された光硬化性組成物が糸状(ファイバー状)の形状を保持できる比較的早い段階で光を照射し、硬化物へと転化(硬化)させる必要がある。このため、工程Aでは、上記前駆体において光が照射される部分と多重管ノズルの吐出口との距離をできるだけ近くする必要があり、必然的に、上記光硬化性組成物に照射する光が多重管ノズルの吐出口付近に到達しやすいことになる。このような観点から、上記制御手段としては、例えば、光の広がりを抑制したり、光照射装置の出射部と多重管ノズルの吐出口の間に配置して上記吐出口に影を形成することができる、以下の遮光部材を用いることが有効である。
図7の(a)には、上記遮光部材の一例としての、筒状の遮光部材3a(「遮光筒」と称する場合がある)を示す。上記遮光筒3aにより光照射装置の出射部(ライトガイド先端部分2aの出力端)を覆うことによって、出射される光が必要以上に広がることを防止し、ノズルの吐出口への光の伝播を抑制することができる(図5参照、図5における3a)。上記遮光筒の径や長さ等は、光照射装置の出射部の形状等に応じて適宜選択することができ、特に限定されない。
また、上記遮光部材としては、光照射装置の出射部とノズルの吐出口の間に配置可能な板状の遮光部材(「遮光板」と称する場合がある)を使用できる(図5参照、図5における3b)。このような遮光板を用いることにより、光照射装置の出射部を遮光筒で覆った場合でもなお漏れ出す弱い光を遮ることができる。このため、上記の遮光板及び遮光筒は組み合わせて使用することが有効である。上記遮光板の形状や大きさは、特に限定されないが、例えば、図7の(b)に示す円板状の遮光板や、図7の(c)に示す円錐状の遮光板などを用いることができる。上記遮光板は、設置のし易さの観点から、上記前駆体を通過させるための孔(図7における3c)を有することが好ましい。
上記遮光筒、遮光板などの遮光部材を形成する材質は、特に限定されない。例えば、SUS、アルミ、樹脂、紙などを使用できる。また、上記遮光部材は、特に限定されないが、光の反射を防止する観点で、黒色であることが好ましい。
工程Aにおいては、特に、高分子光ファイバーの構成材の前駆体として光硬化性組成物を使用した場合には、均一な線径の高分子光ファイバーの取得、及び糸切れの抑制等の効果をより高度なレベルで得るために、上記前駆体に対する光の照射角度を制御することが好ましい。具体的には、工程Aでは、光照射装置から出射される光線のうち、照射強度が最大となる光線(最大強度光)の方向と、上記前駆体の吐出方向に垂直な面(平面)とがなす角度の最小値θが下記式(I)の関係を満たすようにして、上記前駆体に光を照射することが好ましい。
θ ≧ ψ/2 (I)
上記式(I)中、ψは、光照射装置から出射された光線のうち、照射強度が最大値の3%となる光線同士がなす角度の最大値(「広がり角」と称する場合がある)である。
上記光照射装置(光照射装置の出射部)から出射される光線のうち、照射強度が最大となる光線(「最大強度光」と称する場合がある)は、厳密には、出射部から出射される光の光強度分布を測定することにより特定することができる。一般的には、光照射装置の出射部(例えば、ライトガイド先端部分の出力端)の正面に出射される光線が最大強度光である。従って、例えば、ライトガイドの先端部分を、上記前駆体の吐出方向に直交する平面(通常は、水平面)に対して角度θだけ上記前駆体の吐出方向側(例えば、下方)に傾けることによって、最大強度光の方向と、上記前駆体の吐出方向に垂直な面とがなす角度の最小値をθとすることができる(例えば、図9(a)参照)。
上記式(I)中、ψは、光照射装置(光照射装置の出射部)から出射された光線のうち、照射強度が最大値(最大強度光の照射強度)の3%となる光線同士がなす角度の最大値(広がり角)である。但し、高分子光ファイバーを製造する際に、出射部を上述の遮光筒で覆う場合には、上記ψは、遮光筒で覆った状態の出射部から出射された光の広がり角を意味するものとする。なお、上記広がり角が小さい(狭い)ほど、光照射装置から出射される光の指向性が高いことを意味する。
図8は、光照射装置から出射された光の広がり角ψを説明する概略図(側面図、遮光筒を用いた場合)である。図8における5aは最大強度光を、5bは照射強度が最大強度光の3%となる光線を表す。図8に示すように、広がり角ψは、照射強度が最大強度光の3%となる光線同士がなす角の最大値5cにより定義される。なお、出射部を遮光筒で覆うことにより、通常、広がり角ψは小さくなる傾向にある。
上記ψは、例えば、出射部から一定距離(例えば1.5cm)における光強度分布を測定することにより、導出することができる。なお、光強度分布は、例えば、紫外線光量計を用い、その受光器を照射光の中心(出射部中心の正面)から周辺部に向かって少しずつ場所を移動させることにより測定することができる。
工程Aでは、光照射装置から出射される最大強度光の方向と高分子光ファイバーの構成材の前駆体の吐出方向に垂直な面とがなす角度の最小値θを、上記式(I)の関係を満たすように制御することにより、線径が均一な高分子光ファイバーの取得、及び製造時の糸切れ抑制等の効果をより高度なレベルで得ることができる。これは、以下の理由によるものと推測される。
図9は、最大強度光の方向と上記前駆体の吐出方向に垂直な面とがなす角度の最小値θと光の広がり角ψの関係を説明する概略図(側面図)である。図9の(a)はθ≧ψ/2の場合、即ち、θとψとが上記式(I)の関係を満たす場合の概略図である。この場合、光照射装置から出射される光線のうち、照射強度が最大値の3%となる光線5b(ノズル側)と、該光線の上記前駆体に対する入射面がなす角Xは、「90°+(θ−ψ/2)」で表される。従って、θ≧ψ/2(即ち、θ−ψ/2≧0)の場合には、Xは90°又は鈍角となり、照射強度が最大値の3%となる光線5b(ノズル側)は、上記前駆体に対して垂直に、又は吐出方向側に傾いて入射することになる。この場合、照射強度が最大値の3%となる光線5b(ノズル側)は、上記前駆体中を吐出方向に向かって伝播し、一方でノズル側に伝播し得る光は、照射強度が最大値の3%未満の光線のみである。このため、ノズルの吐出口付近で上記前駆体の硬化反応が進行しにくく、線径が均一な高分子光ファイバーの取得、及び糸切れ抑制の効果が得られる。これに対して、θとψとが上記式(I)の関係を満たさないと、Xは鋭角となるため(図9の(b)参照)、少なくとも照射強度が最大値の3%の光線はノズル方向に伝播し、高分子光ファイバーの製造に悪影響を及ぼす場合がある。
なお、上記θ(最大強度光の方向と上記前駆体の吐出方向に垂直な面とがなす角度の最小値θ)は、上述のように、例えば、光照射装置のライトガイド先端部分を、上記前駆体の吐出方向に直交する平面(通常は、水平面)に対して上記前駆体の吐出方向側(例えば、下方)に傾ける角度によって制御できる。即ち、上記光照射装置としては、光の照射角度(具体的には、最大強度光の方向と上記前駆体の吐出方向に垂直な面とがなす角度の最小値θ)を調整するための機構(「照射角度調整機構」と称する場合がある)を備える光照射装置を使用することが好ましい。図10は、工程Aにて使用可能な、照射角度調整機構を備える光照射装置の一例を示す概略図である。図10に示す光照射装置においては、照射角度調整機構としてのねじ2f(角度調整用ねじ)を備えることにより、ライトガイドの先端部分の角度を自由に調整することができる。
工程Aは、特に、高分子光ファイバーの構成材の前駆体として光硬化性組成物を使用した場合、上述のように、多重管ノズルの吐出口の下方に光照射装置の出射部を配置する実施形態(例えば、図5参照)のほか、多重管ノズルの吐出口の上方に光照射装置の出射部を配置し、吐出口よりも上方から光を出射する実施形態(当該形態を「落射方式」と称する場合がある)により実施することも可能である。図11は、工程Aの当該実施形態(落射方式の場合)を示す概略図である。図11における形態においては、多重管ノズル1と、該多重管ノズル1の先端部分の吐出口1dよりも上方から光を照射するように配置された光照射装置が使用される。図11において、光照射装置は、光を出力する光源装置2c、該光を伝送するライトガイド2b、及び端部(出力端)より光を出射するライトガイド先端部2aに加え、ライトガイド先端部2aの出力端より出射した光を下方に反射させる反射ミラー2gと、反射した光を集光する集光レンズ2hを備えて構成されている。図11における3dはリング状の遮光部材(「遮光リング」と称する場合がある)を示し、このような遮光リングを多重管ノズルの先端(多重管ノズル1の吐出口1d)の上方に装着することによって、多重管ノズル1の吐出口1dにおける光の照射強度を0.2mW/cm2以下に制御することが容易となる。
工程Aが、上述の落射方式により実施される場合には、図11に示すように、遮光リング3dを用いることによって多重管ノズルの吐出口1dに影を形成しやすく、より効率的に多重管ノズルの吐出口における光の照射強度を低減できるというメリットがある。しかしながら、一方で、上記前駆体と光照射装置の出射部との距離が比較的遠くなるため、当該前駆体に対して高強度の光を照射することが難しく、工程Aにて硬化率(硬化度)を十分に向上させることが難しくなるというデメリットがある。このようなデメリットについては、例えば、工程Aの後、後述の工程Bにおいて光照射処理及び/又は加熱処理を行うことにより、上記硬化率をさらに高め、解消することが可能である。
(転化の手段:加熱)
上記転化の手段として加熱を適用する場合、その加熱の手段としては、特に限定されず、公知乃至慣用の加熱手段を使用することができる。例えば、オーブン、熱風、電気、ガス、赤外線などの加熱源を備えた加熱装置(オーブンなど)などを使用できる。
(転化の手段:冷却)
上記転化の手段として冷却を適用する場合、その冷却の手段としては、特に限定されず、公知乃至慣用の冷却手段を使用することができる。例えば、放冷、水や有機溶媒を使用した冷却(例えば、水中に導入することによる冷却など)、各種冷却器を使用した冷却などを使用できる。
本発明の高分子光ファイバーの製造方法における工程Aにより、コアと、該コアを被覆するクラッドと、該クラッドを被覆する保護層とを少なくとも有する高分子光ファイバーが得られる。なお、当該高分子光ファイバー(工程Aにて得られた高分子光ファイバー)を本発明の高分子光ファイバーとして取得することもできるし、さらに後述の工程Bに付すことによって得られた高分子光ファイバーを本発明の高分子光ファイバーとして取得することもできる。また、工程Aにて得られた高分子光ファイバーや、工程Bに付すことによって得られた高分子光ファイバーに対して、さらに公知乃至慣用の加工を施したものを本発明の高分子光ファイバーとして取得することもできる。
<工程B>
本発明の高分子光ファイバーの製造方法は、さらに工程Bを含んでいてもよい。即ち、本発明の高分子光ファイバーの製造方法において工程Bは任意の工程である。特に、高分子光ファイバーの構成材の前駆体として、光硬化性組成物や熱硬化性組成物などの硬化性組成物を使用した場合には、工程Bを含むことが好ましい場合がある。上記工程Bは、工程Aの後、該工程Aにて得られた高分子光ファイバーに対してさらに光照射処理及び加熱処理のいずれか一方又は両方を行う工程である。工程Bを経ることにより、得られる高分子光ファイバーは非常に優れた耐熱性を発現し、ハンダリフロー処理等の高温の熱による劣化や形状変化に起因する光学特性の低下が抑制される傾向がある。中でも、工程Bは、光照射処理及び加熱処理の両方を行う工程であることが好ましい。
工程Bは、工程Aの後、該工程Aに引き続き連続的に実施されてもよいし、非連続的に実施されてもよい。工程Bが工程Aに引き続き連続的に実施される場合には、例えば、工程Aにおいて得られた高分子光ファイバーに対して、引き続き光照射処理及び/又は加熱処理を行うことにより、工程Bを実施することができる。工程Bが工程Aとは非連続的に実施される場合には、例えば、工程Aにて得られた高分子光ファイバーを巻き取って一旦回収した後、これを繰り出した状態で又は巻き取ったままの状態で、光照射処理及び/又は加熱処理を行うことにより、工程Bを実施することができる。
工程Bの光照射処理において照射する光は、特に限定されないが、例えば、紫外線、赤外線、可視光線、電子線などが挙げられる。中でも、取り扱いが容易である点で、紫外線が好ましい。上記光照射処理の条件は、特に限定されないが、例えば、積算照射量(工程Aにて得られた高分子光ファイバーに照射される光の総量)として、50〜6000mJ/cm2が好ましく、より好ましくは60〜2000mJ/cm2、さらに好ましくは80〜1000mJ/cm2である。積算照射量が50mJ/cm2未満であると、硬化が不十分となり、高分子光ファイバーの高温における形状変化が生じやすくなる場合がある。一方、積算照射量が6000mJ/cm2を超えると、高分子光ファイバーの光学特性が損なわれる場合がある。なお、光照射処理は一段階で行うこともできるし、二段階以上に分けて行うこともできる。
上記光照射処理における光の照射は、公知乃至慣用の方法(例えば、上述の光照射装置を用いる方法等)により行うことができ、特に限定されないが、紫外線を照射する場合には、例えば、上述の紫外線照射装置などを使用できる。特に、上記光照射処理は、工程Aにおける光照射と同様の方法により行うことが好ましい。
工程Bの加熱処理における加熱温度は、特に限定されないが、40〜200℃が好ましく、より好ましくは50〜150℃、さらに好ましくは80〜120℃である。加熱温度が40℃未満であると、硬化が不十分となり、加熱によって高分子光ファイバーの形状変化が生じやすくなる場合がある。一方、加熱温度が200℃を超えると、高分子光ファイバーの光学特性が損なわれる場合がある。なお、上記加熱処理において加熱温度は、一定に制御されるものであってもよいし、段階的又は連続的に変動するように制御されるものであってもよい。
工程Bの加熱処理における加熱時間は、特に限定されないが、0.01〜2000分が好ましく、より好ましくは0.1〜100分、さらに好ましくは0.2〜30分である。加熱時間が0.01分未満であると、加熱温度によっては硬化が不十分となり、加熱によって高分子光ファイバーの形状変化が生じやすくなる場合がある。一方、加熱時間が2000分を超えると、高分子光ファイバーの生産性が低下したり、加熱温度によっては高分子光ファイバーの光学特性が損なわれる場合がある。
上記加熱処理における加熱は、公知乃至慣用の方法により行うことができ、特に限定されないが、例えば、オーブン、熱風、電気、ガス、赤外線などの加熱源を備えた加熱装置(オーブン等)などを使用できる。
工程Bにより、特に、高分子光ファイバーの構成材の前駆体として硬化性組成物を使用した場合には、工程Aにて得られた高分子光ファイバーの硬化率(硬化度)をさらに高めることができるため、工程Bは「後硬化工程」と称される場合もある。上述のように、工程Bを経ることにより得られた高分子光ファイバーを本発明の高分子光ファイバーとして取得することもできる。
本発明の高分子光ファイバーの製造方法は、上述の工程A及び工程B以外の工程(その他の工程)を含んでいてもよい。上記その他の工程としては、例えば、高分子光ファイバーに対して公知乃至慣用の加工を施す工程(例えば、保護層のさらに外側に被覆層を設ける工程など)などが挙げられる。
上述の本発明の高分子光ファイバーの製造方法により、高分子光ファイバー(本発明の高分子光ファイバー)が製造される。本発明の高分子光ファイバーは、特に限定されないが、適宜巻き取ることによって回収することができる。この際の巻取り速度は、特に限定されないが、例えば、10cm/秒〜2m/秒が好ましい。生産性の観点からは、巻取り速度は速いことが好ましい。また、巻取り速度(特に、工程Aにおける巻取り速度)の制御により、得られる高分子光ファイバーの径を制御することができる。一般に、巻取り速度を速くすると、高分子光ファイバーの構成材の前駆体及び当該前駆体から得られる高分子光ファイバーの線径が細くなる傾向がある。上記巻取り速度は、例えば、製造した高分子光ファイバーを巻き取り、回収するための巻取り装置(巻取り機)などを用いることにより制御することができる。
さらに、本発明の高分子光ファイバーの製造方法においては、必要に応じ、その他の機器や装置(例えば、加熱ユニット、冷却ユニット、ファイバー径測定装置、ファイバー張力測定装置など)を適宜使用することもできる。
本発明の高分子光ファイバーにおけるコアの直径(コア径)、クラッドの直径(クラッド径)、保護層の直径(保護層径)は、特に限定されず、コア径よりもクラッド径が大きく、さらに該クラッド径よりも保護層径が大きくなるような関係で、例えば、好ましくは5〜2000μm(より好ましくは10〜1000μm)の範囲で適宜調整される。
本発明の高分子光ファイバーは、工程A、又は工程A及び工程Bを経て得られた高分子光ファイバーにおける保護層の外側にさらに適宜な被覆層を設けたものであってもよい。上記被覆層としては、例えば、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、PTFE、ポリ塩化ビニル等からなる被覆層などが挙げられる。被覆層の厚みは、特に限定されない。
本発明の高分子光ファイバーは、光通信用途や装飾用途等において広く利用される。特に、耐熱性及び柔軟性に優れるため、例えば、携帯機器、FA機器、OA機器、オーディオ機器、車両、LAN等における通信用途、家庭用や工業用の内視鏡等におけるイメージ伝送用途、センサ用途、検査・測定用の照明、美術品等の照明等における光伝送用途、看板、サイン、景観照明等における装飾用途などに特に有用である。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
製造例1
(カチオン重合性組成物(Z1)の製造)
モノマー滴下ライン、開始剤滴下ライン、温度計、還流管、及び攪拌翼を装着した5口フラスコに、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート(商品名「セロキサイド2021P」、(株)ダイセル製)311.89g(1.23mol)と3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン(商品名「OXT−212」、東亞合成(株)製)155.94g(0.683mol)の混合液(カチオン硬化性モノマー混合液)のうち64%を仕込み、窒素気流下、80±1℃に加熱した。
次いで、上記5口フラスコに、3−エチル−3−(2,2−ジメチルプロピルメトキシ)オキセタンアクリレート(EOXTM−NPAL)200.53g(0.782mol)とn−ブチルアクリレート(BA)500.00g(3.90mol)の混合液(ラジカル重合性モノマー混合液)をモノマー滴下ラインから、上記カチオン硬化性モノマー混合液のうち30%と2,2'−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル(商品名「V601」、和光純薬工業(株)製)2.15g(9.38mmol)の混合液を開始剤滴下ラインから、各々送液ポンプで4時間かけて滴下した。滴下終了後(即ち、滴下開始から4時間経過後)、ただちに上記カチオン硬化性モノマー混合液のうち1%を投入してラインを洗浄し、次いで2時間保持した後、「V601」2.15g(9.38mmol)と上記カチオン硬化性モノマー混合液の残り(5%)を投入した。これを100±1℃で30分間保持した後、ただちに40℃以下に冷却することで、無色透明の液状樹脂組成物(「カチオン重合性組成物(Z1)」と称する)を得た。なお、カチオン重合性組成物(Z1)は、EOXTM−NPAL及びBAの共重合体と、「セロキサイド2021P」と、「OXT−212」とを含む組成物(カチオン重合性樹脂組成物)である。
上記カチオン重合性組成物(Z1)中に含まれる重合体(EOXTM−NPAL及びBAの共重合体)の標準ポリスチレン換算の重量平均分子量は198,000であり、数平均分子量は31,000であった。
製造例2〜6
(クラッド用光硬化性組成物(X1)〜(X3)、コア用光硬化性組成物(Y1)、(Y2)の製造)
表1に示す組成及び配合割合に従って各成分を配合し、孔径0.2μmのフィルタでろ過して、クラッド用光硬化性組成物(X1)〜(X3)、コア用光硬化性組成物(Y1)、(Y2)を得た。なお、上記クラッド用光硬化性組成物(X1)〜(X3)、コア用光硬化性組成物(Y1)、(Y2)の粘度は、E型粘度計(商品名「VISCONIC」、(株)トキメック製、ローター:1°34′×R24、回転数:0.5rpm、測定温度:25℃)を用いて測定した。
表1で示す符号は、以下のものを示す。
UA−122P : 商品名「UA−122P」(ウレタンアクリレート樹脂、新中村化学工業(株)製)
EB1830 : 商品名「EB1830」(ポリエステルアクリレート樹脂、ダイセル・サイテック(株)製)
BA : ブチルアクリレート
A−BPEF : 商品名「A−BPEF」(9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、新中村化学工業(株)製)
A−BPE−4 : 商品名「A−BPE−4」(2,2−ビス[4−(アクリロイルオキシジエトキシ)フェニル]プロパン、新中村化学工業(株)製)
OXT−DVE : 3,3−ビス(ビニルオキシメチル)オキセタン
Irg184 : 商品名「IRGACURE 184」(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、BASF製)
CPI−101A : 商品名「CPI−101A」(ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモナート、プロピレンカーボネート、チオジ−p−フェニレンビス(ジフェニルスルホニウム)ビス(ヘキサフルオロアンチモナート)の混合物、サンアプロ(株)製)
Irg1010 : 商品名「IRGANOX 1010」(ペンタエリトリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、BASF製)
製造例7
(保護層用光硬化性組成物(Z2)の製造)
カチオン重合性樹脂組成物(Z1)100重量部に「OXT−DVE」を1重量部、「CPI−101A」を5重量部加えて攪拌均一化し、保護層用光硬化性組成物(Z2)を作製した。
なお、E型粘度計(商品名「VISCONIC」、(株)トキメック製、ローター:1°34′×R24、回転数:0.5rpm、測定温度:25℃)を用いて測定した保護層用光硬化性組成物(Z2)の粘度は、67,000mPa・sであった。
実施例1
高分子光ファイバーの製造は、図12に示す高分子光ファイバー製造装置を用いて行った。図12に示す高分子光ファイバー製造装置における1は、多重管ノズル(3重管ノズル)である。多重管ノズル1の内管、第1外管、及び第2外管の径は以下に示すとおりである。なお、コア用光硬化性組成物20、クラッド用光硬化性組成物30、保護層用光硬化性組成物40としては、表2に示すものを使用した。
また、工程Aにおいて使用する光照射装置として、高分子光ファイバーの構成材の前駆体(光硬化性組成物)10に対して3方向から光を照射できる、図6(a)に示す光照射装置を用いた。該光照射装置は、上記前駆体10に対して等距離に、3つのライトガイド(UVライトガイド)の先端部分を、同じ高さで等間隔(上記前駆体10を中心に120°間隔)に配置したものである(図6(a)参照)。また、上記光照射装置の光源装置としては、「SPOTCURE SP9−250DB」(ウシオ電機(株)製)を用いた。なお、図12においては、便宜上、2個のライトガイドの先端部分のみを描いている。
また、ライトガイドの先端部分2aには遮光筒3aを設置し、さらに、ライトガイドの先端部分2aの出力端と多重管ノズル1の吐出口との間には、遮光板3bを設置した。
図12に示すように、ライトガイドの先端部分2aを多重管ノズル1の吐出口よりも下方に配置し、多重管ノズル1の吐出口からライトガイドの先端部分2aの出力端(出力端の中心部)までの高さ(垂直距離)を、20mmとした。また、ライトガイドの先端部分2aの出力端(出力端の中心部)と上記前駆体10までの距離を、15mmとした。
さらに、ライトガイドの先端部分2aは、水平面に対して11°下向きに傾けて設置した(即ち、θ=11°である)。なお、ライトガイドの先端部分2aを遮光筒3aで覆った状態で出射される光の広がり角ψは、22°である。
また、工程Bにおける光照射処理は、工程Aにおいて使用した光照射装置と同じ光照射装置(図6参照)を2つ(2セット)使用し、図12に示すように二段階で光を照射することにより実施した。その後の高分子光ファイバーの回収には、巻取り装置8を使用した。
[高分子光ファイバーの製造(工程A)]
まず、定量ポンプ6a、6b、及び6cを用いて、コア用光硬化性組成物20、クラッド用光硬化性組成物30、及び保護層用光硬化性組成物40をそれぞれ下記送り速度にて送液し、多重管ノズル1の吐出口より同時に鉛直方向下方に吐出させた。なお、多重管ノズル1の内管の内側にはコア用光硬化性組成物、内管と第1外管の間にはクラッド用光硬化性組成物、第1外管と第2外管の間には保護層用光硬化性組成物を送液した。従って、多重管ノズル1より吐出された高分子光ファイバーの構成材の前駆体10は、コア用光硬化性組成物がクラッド用光硬化性組成物により被覆され、さらに、当該クラッド用光硬化性組成物が保護層用光硬化性組成物により被覆された状態(形態)となっている。
次に、光照射装置により、上記前駆体10に紫外線を照射し硬化させた。
(実験条件)
多重管ノズルの吐出口における光の照射強度:0.15mW/cm2
コア用光硬化性組成物の送り速度:0.075mL/分
クラッド用光硬化性組成物の送り速度:0.075mL/分
保護層用光硬化性組成物の送り速度:0.3mL/分
多重管ノズルの内管の内径(直径):0.3mm
多重管ノズルの内管の外径(直径):0.6mm
多重管ノズルの第1外管の内径(直径):1.0mm
多重管ノズルの第1外管の外径(直径):1.3mm
多重管ノズルの第2外管の内径(直径):1.7mm
受光器(UVD−S365)で計測した光硬化性組成物(前駆体10)に対するUV照射強度:1.8W/cm2(三方の合計:一方あたり600mW/cm2)
巻取り速度:400mm/秒(工程Bと共通)
[高分子光ファイバーの製造(工程B)]
工程Aの後、さらに連続的に二段階で光照射処理を行い、次いで、巻取り装置8にて巻き取り、高分子光ファイバーを得た。
(実験条件)
受光器(UVD−S365)で計測した積算照射量(波長310〜390nmの光の照射量を、波長365nm(絶対値校正波長)の光の照射量に換算したもの)(2段階の光照射の合計):80mJ/cm2
巻取り速度:400mm/秒(工程Aと共通)
実施例2、3(実施例3は参考例とする)
コア用光硬化性組成物、クラッド用光硬化性組成物、及び保護層用光硬化性組成物の組み合わせを、表2に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして高分子光ファイバーを得た。
実施例4
下記の多重管ノズル(3重管ノズル)を使用したこと以外は実施例1と同様にして高分子光ファイバーを得た。
(多重管ノズルの各管の径)
多重管ノズルの内管の内径(直径):0.6mm
多重管ノズルの内管の外径(直径):1.0mm
多重管ノズルの第1外管の内径(直径):2.0mm
多重管ノズルの第1外管の外径(直径):2.6mm
多重管ノズルの第2外管の内径(直径):4.0mm
実施例1〜4においては、製造の際に糸切れを起こすことなく、一定の線径でコア/クラッド/保護層(コア直径:52.0±0.4μm、クラッド直径:72.2±1.0μm、保護層直径:122.6±1.2μm)の構造を有する高分子光ファイバーを150m製造することができた。該高分子光ファイバー(径方向の断面)の真円度(縦横比)は、コア、クラッド、保護層についていずれも1.0であった。
比較例1
高分子光ファイバーの製造は、図13に示す高分子光ファイバー製造装置を用いて行った。図13に示す高分子光ファイバー製造装置における7は、2重管ノズルである。2重管ノズル7の内管及び外管の径は以下に示すとおりである。なお、図13に示す高分子光ファイバーの製造装置は、ノズルとして2重管ノズルを使用し、工程Bにおける光照射装置を備えないこと以外は図12に示す高分子光ファイバー製造装置と同様の構成を有する。
[高分子光ファイバーの製造]
まず、定量ポンプ6a及び6bを用いて、コア用光硬化性組成物(Y2)、及びクラッド用光硬化性組成物(X2)をそれぞれ下記送り速度にて送液し、2重管ノズル7の吐出口より同時に鉛直方向下方に吐出させた。なお、2重管ノズル7の内管の内側にはコア用光硬化性組成物(Y2)、内管と外管の間にはクラッド用光硬化性組成物(X2)を送液した。
次に、光照射装置により、コア用光硬化性組成物(Y2)及びクラッド用光硬化性組成物(X2)(図13の10')に紫外線を照射し硬化させたが、光硬化性組成物が途中で切れてしまい、ファイバー状硬化物を得ることはできなかった(ファイバー化できなかった)。
(実験条件)
ノズルの吐出口における光の照射強度:0.15mW/cm2
コア用光硬化性組成物(Y2)の送り速度:0.075mL/分
クラッド用光硬化性組成物(X2)の送り速度:0.3mL/分
2重管ノズルの内管の内径(直径):0.3mm
2重管ノズルの内管の外径(直径):0.6mm
2重管ノズルの外管の内径(直径):1.0mm
受光器(UVD−S365)で計測した光硬化性組成物に対するUV照射強度:1.8W/cm2(三方の合計:一方あたり600mW/cm2)
巻取り速度:400mm/秒
[光損失の評価]
波長857nmの光源(ADVANTEST Q81201)からの光を、マッチングオイルを介して、コア径50μmのGIファイバにて、実施例で得られた高分子光ファイバーに導入し、出射した光をマッチングオイルを介してコア径200μmのPCFファイバで受光し、パワーメータ(ADVANTEST Q82202 OPITICAL SENSOR Q82214)に接続して出射される光を該パワーメータで測定した。実施例で得られた高分子光ファイバーの直線部分の光損失(カットバック法にて求めた光損失)を表2の「光硬化後(加熱前)の光損失」の欄に示した。
[耐熱性の評価]
実施例で得られた高分子光ファイバーを260℃で10分間加熱し、加熱前後の波長857nmでの光損失を測定した。加熱前の光損失からの変化量が0.10dB・cm-1以下である場合を耐熱性有り、0.10dB・cm-1を超える場合を耐熱性無しとして、表2の「耐熱性」の欄に示した。
[柔軟性評価]
実施例で得られた高分子光ファイバーを半径1mmの棒に巻きつけた際のクラック(ひび割れ)発生の有無を目視で観察した。その結果、クラック(ひび割れ)が生じない場合を柔軟性有り、クラック(ひび割れ)が生じた場合を柔軟性無しとして、表2の「柔軟性」の欄に示した。