JPWO2014184850A1 - 触媒微粒子の製造方法、及び当該製造方法により製造される触媒微粒子を含む燃料電池 - Google Patents
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Abstract
Description
Cu−UPD法を応用した技術として、特許文献1には、界面活性剤の存在下において、銅原子層を白金原子層に置換することにより、白金原子層を含む触媒原料を製造することを特徴とする触媒原料の形成方法が開示されている。
本発明は、上記実状を鑑みて成し遂げられたものであり、製造当初から高い活性を示す触媒微粒子の製造方法、及び当該製造方法により製造される触媒微粒子を含む燃料電池を提供することを目的とする。
本発明の触媒微粒子の第1の製造方法は、パラジウム含有粒子、及び当該パラジウム含有粒子を被覆する白金最外層を備える触媒微粒子の製造方法であって、前記パラジウム含有粒子と、白金化合物が溶解した第1の溶液とを混合し、前記パラジウム含有粒子表面の少なくとも一部を白金によって被覆することにより、パラジウム及び白金を含む第1の複合体を形成し;前記第1の複合体と、銅化合物が溶解した第2の溶液とを混合し、銅アンダーポテンシャル析出法を用いて前記第1の複合体表面の少なくとも一部を銅によって被覆することにより、パラジウム、白金、及び銅を含む第2の複合体を形成し;且つ、前記第2の複合体と、白金化合物が溶解した第3の溶液とを混合することによって、前記第2の複合体中の銅を、前記第3の溶液に由来する白金に置換することを特徴とする。
しかし、本発明者らの検討の結果、特にコアにパラジウム且つシェルに白金を含む従来のコアシェル触媒は、mgスケールやgスケールで製造した場合に製造直後の質量活性が低く、当該質量活性は白金担持カーボンの質量活性のたかだか2倍強程度に留まるという課題が見出された。したがって、従来のコアシェル触媒においては、回転ディスク電極(Rotating Disk Electrode:RDE)法等の電位処理を経なければ、μgスケール合成で得られるような質量活性(白金担持カーボンの質量活性の3倍以上に相当)は得られないという課題があった。
また、燃料電池への応用の観点から、製造直後の触媒活性(初期活性)が重要となるものの、従来のコアシェル触媒は、そもそも触媒活性が低いことに加えて、触媒活性を一定以上とするために、非常に長い時間の慣らし運転を要するという問題も見出された。これは、燃料電池内部と液セル内部との運転環境の違いにより、燃料電池内部における電位処理の効果が、液セル内でRDEを用いた電位処理の効果よりも劣ることによるものである。ここで、燃料電池内部の運転環境が液セル内部の運転環境と違う点としては、例えば、コアシェル触媒がアイオノマーにより被覆されていること、触媒層が非常に薄いこと、回転による物質輸送の対流効果があること等である。
本発明者らは、Cu−UPD法を用いてmgスケール以上で製造された従来のコアシェル触媒が、製造直後は、不均一なシェルを有する未完成のコアシェル構造を有するため、当該従来のコアシェル触媒に対し電位処理を施した場合、シェルの被覆状態が変化する結果初めてコアシェル構造が完成すると予測した。本発明者らは、製造直後から完成したコアシェル構造を有する触媒微粒子の製造を目指し、研究開発を進めた。
しかし、コアに金を用いた場合、従来の白金担持カーボン触媒と同程度のコストがかかるため、コストメリットが無い。また、公知文献(M.Inaba et,al.,ECS Transaction,33(1)231−238(2010))の第237頁には、金をコアとするコアシェル触媒においては、白金シェルが金コアに溶解して合金を形成する旨、及びこのような白金シェルの溶解は電位サイクルを付与した場合に活性が低下する原因となる旨の記載がある。これは、金が展性や延性等の機械的な柔軟性に富むためであると考えられる。
また、金は酸素還元活性が非常に乏しいため、白金シェルの損失が深刻な活性低下につながるというデメリットも考えられる。
さらに本発明者らは、パラジウム含有粒子と白金化合物を含む溶液とを直接接触させることにより白金層を形成した後、Cu−UPD法によって白金層が形成されていない部分について白金をさらに析出させることにより、触媒活性が合成直後から高く、且つ耐久性に優れたコアシェル触媒が得られることを見出し、本発明を完成させた。
以下、上記工程(1)〜(3)及びその他の工程について、順に説明する。
本工程は、パラジウム含有粒子と、白金化合物が溶解した第1の溶液とを混合し、パラジウム含有粒子表面の少なくとも一部を白金によって被覆することにより、パラジウム及び白金を含む第1の複合体を形成する工程である。
後述するように、パラジウム含有粒子を被覆する最外層は白金を含む。白金は、触媒活性、特に酸素還元反応(ORR:Oxygen Reduction Reaction)活性に優れている。また、白金の格子定数は3.92Åであるのに対し、パラジウムの格子定数は3.89Åであり、パラジウムの格子定数は白金の格子定数の±5%の範囲内の値であることから、白金−パラジウム間で格子不整合が生じず、白金によるパラジウムの被覆が十分に行われる。
本発明におけるパラジウム含有粒子は、コストを抑える観点から、最外層に用いられる白金よりも安価な金属材料を含むことが好ましい。さらに、パラジウム含有粒子は、電気的導通がとれる金属材料を含むことが好ましい。
以上の観点から、本発明におけるパラジウム含有粒子は、パラジウム粒子、又は、イリジウム、ロジウム若しくは金等の金属とパラジウムとの合金粒子であることが好ましい。パラジウム合金粒子を用いる場合には、当該パラジウム合金粒子にはパラジウムの他に金属が1種類のみ含まれていてもよいし、2種類以上含まれていてもよい。
なお、本発明におけるパラジウム含有粒子及び触媒微粒子の平均粒径は、常法により算出される。パラジウム含有粒子及び触媒微粒子の平均粒径の算出方法の例は以下の通りである。まず、400,000〜1,000,000倍のTEM画像において、ある1つの粒子について、当該粒子を球状と見なした際の粒径を算出する。このようなTEM観察による粒径の算出を、同じ種類の200〜300個の粒子について行い、これらの粒子の平均を平均粒径とする。
担体として使用できる導電性材料の具体例としては、ケッチェンブラック(商品名:ケッチェン・ブラック・インターナショナル株式会社製)、バルカン(商品名:Cabot社製)、ノーリット(商品名:Norit社製)、ブラックパール(商品名:Cabot社製)、アセチレンブラック(商品名:Chevron社製)等の炭素粒子や、炭素繊維等の導電性炭素材料;金属粒子や金属繊維等の金属材料;が挙げられる。
パラジウム含有粒子の担体への担持方法には、従来から用いられている方法を採用することができる。パラジウム合金粒子を用いる場合には、パラジウム合金の調製とパラジウム合金粒子の担体への担持が同時に行われてもよい。
また、本発明における「白金化合物が溶解した第1の溶液」中には、白金化合物がそのまま存在していてもよいし、白金イオンが存在していてもよい。すなわち、第1の溶液中には、白金化合物に由来する白金元素が含まれていればよい。なお、ここでいう白金化合物には、白金塩及び白金錯体が含まれる。
参考例1及び参考例2の燃料電池用触媒は、使用した白金化合物の量が異なるのみで、いずれもパラジウム粒子と白金化合物溶液とを直接接触させて得られた触媒微粒子を含む。後述する表1に示すように、参考例1及び参考例2のICP測定結果を比較すると、パラジウム粒子表面における白金及びパラジウムの割合、並びに被覆率はほぼ変わらない。この結果から、パラジウム含有粒子を白金化合物溶液と直接接触させる方法においては、白金化合物の量を変えたとしてもパラジウム含有粒子表面の組成に大した影響はなく、パラジウム含有粒子表面の組成は白金添加量に対して感度が鈍いこと、及びパラジウム含有粒子表面に直接析出できる白金量は予め決まっていることが分かる。この結果から、パラジウム含有粒子を白金化合物溶液と接触させる方法においては、比較的白金が不安定となるパラジウム表面にのみ白金原子が析出し、比較的白金が安定となるパラジウム表面には白金原子が析出しないと推測される。
したがって、比較的不安定なパラジウム含有粒子表面に対し白金を析出させた後に、パラジウム含有粒子のその他の表面に白金を析出させる方法により、安定性に優れる触媒微粒子が得られると考えられる。
図1に示すように、第1の複合体の典型例100aは、パラジウム含有粒子1の表面の一部に白金原子2が析出してなる複合体である。第1の複合体の典型例100aは、Cu−UPD法により合成した従来のコアシェル触媒よりも質量活性及び比活性に優れ、電気化学表面積の維持率(触媒耐久性の指標)が高い。したがって、パラジウム含有粒子と白金化合物溶液とを直接接触させる場合、より溶出しやすいエッジやコーナーからなるPd{110}部位、及び白金の酸素還元活性がより高いPd{111}部位の一部に白金が析出すると考えられる。
一方、Cu−UPD法により得られる幾何被覆率60%程度の量の白金は、溶出しやすいPd{110}部位を被覆できないと考えられる。
第1の溶液は、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスを予めバブリングし、当該第1の溶液中の酸素等を可能な限り除去することが好ましい。
パラジウム含有粒子を白金の単原子層により被覆する場合に要する最少白金原子量(以下、最少白金原子量と称する場合がある)を100atm%としたとき、第1の溶液中に含まれる白金原子の量を70atm%以下としてもよい。このように、第1の溶液中に含まれる白金原子の量を所定量以下とすることにより、100atm%以上の量の白金原子を一度に用いる場合と比較して、得られる第1の複合体自体の触媒活性を上げることができる。
最少白金原子量を100atm%としたとき、第1の溶液中に含まれる白金原子の量を65atm%以下とすることが好ましく、60atm%以下とすることがより好ましい。
第1の複合体の形成に要する時間は、例えば、1〜100gのパラジウム含有粒子について、1〜24時間程度である。
本発明に好適に使用される酸溶液は、パラジウム含有粒子表面の酸化物を除去できる程度に十分な酸化力を持つ酸溶液であり、具体的には、硝酸、硫酸、過塩素酸、塩酸、次亜塩素酸等が挙げられる。特に、主にパラジウムを溶解するのに十分な酸化力を持つという観点から、硫酸が好ましい。なお、酸溶液の濃度、及びバブリングによる酸溶液中の雰囲気制御は、酸溶液の種類ごとに適宜調節すればよい。
全てのパラジウム含有粒子に対し電位処理が満遍なく速やかに進行するという観点から、パラジウム含有粒子が分散した酸溶液においては、各パラジウム含有粒子が互いに凝集することなく、酸溶液中に均一に分散していることが好ましい。
特に、0.4〜0.6V(vs.RHE)の電位の範囲は、パラジウム含有粒子表面の酸化物(酸化被膜)を除去できる電位の範囲であるため好ましい。0.4V(vs.RHE)未満の電位においては、パラジウムによる水素の吸蔵が始まるおそれがある。一方、0.6V(vs.RHE)を超える電位においては、パラジウム含有粒子中のパラジウム等の金属が溶出しだすおそれがある。なお、下限の0.4V(vs.RHE)を0.2V程度下回ったとしても、パラジウム含有粒子の表面の酸化物を除去するクリーニング効果そのものは、0.4〜0.6V(vs.RHE)の電位範囲の掃引の効果と同程度である。酸処理において付与する電位の範囲は、0.4〜0.45V(vs.RHE)の範囲が好ましい。
酸処理においては、0.4〜0.6V(vs.RHE)の範囲内であれば、所定の電位に固定して電位処理を実行してもよいし、所定の電位の範囲を1回又は2回以上掃引してもよい。なお、パラジウム含有粒子表面に対する吸着物質の脱着を繰り返し、当該表面に存在する酸化物を効率よく除去できるという観点からは、酸処理における電位処理は、0.4〜0.6V(vs.RHE)の範囲内の任意の2つの電位間を掃引する電位処理であることが好ましい。
任意の2つの電位間にて電位を掃引する場合には、掃引の回数は、反応スケールにより適宜調節することができる。掃引の回数は、例えば、1〜100gのパラジウム含有粒子について、1〜1,000サイクル程度である。
電位付与に要する時間は、例えば、1〜100gのパラジウム含有粒子について、1〜24時間程度である。
本工程は、前記第1の複合体と、銅化合物が溶解した第2の溶液とを混合し、銅アンダーポテンシャル析出法(Cu−UPD法)を用いて第1の複合体表面の少なくとも一部を銅によって被覆することにより、パラジウム、白金、及び銅を含む第2の複合体を形成する工程である。Cu−UPD法によって、第1の複合体に銅を被覆する際に、各第1の複合体への銅析出量を均一にすることができる。
また、本発明における「銅化合物が溶解した第2の溶液」中には、銅化合物がそのまま存在していてもよいし、銅イオンが存在していてもよい。すなわち、第2の溶液中には、銅化合物に由来する銅元素が含まれていればよい。なお、ここでいう銅化合物には、銅塩及び銅錯体が含まれる。
本工程におけるCu−UPD法のその他の条件には、公知の条件を用いることができる。
本工程は、前記第2の複合体と、白金化合物が溶解した第3の溶液とを混合することによって、第2の複合体中の銅を、第3の溶液に由来する白金に置換する工程である。
本工程においては、第2の複合体を第3の溶液と混合した後、電位が一定となるまで保持することにより、第2の複合体中の銅を、前記第3の溶液に由来する白金に置換することが好ましい。
第3の溶液に溶解している白金化合物、及び第3の溶液に好適に含まれる酸については、第1の溶液と同様である。
第1の溶液及び第3の溶液に含まれる白金化合物の量は、反応条件に合わせてそれぞれ適宜調節することができる。白金使用量を少なく抑えるという観点から、第1の溶液中及び第3の溶液中に含まれる白金原子の総量を、上述した最少白金原子量と略等しくすることが好ましい。
図8は、Cu−UPD法を用いた従来のコアシェル触媒の製造方法から予測される、被覆状態の断面の変遷を示した模式図である。図8の上段は、第1の複合体100aの断面模式図であり、図1と同様である。図8の中段は、第1の複合体表面に、さらに銅原子3からなる単原子層が1層被覆してなる第2の複合体100bの断面模式図である。図8の下段は、第2の複合体100bにおいて、白金原子2上の銅原子3が優先的に白金原子2に置換した状態を示す断面模式図である。図の間の矢印は、被覆状態の変遷を示す。
図8の下段に示すモデルにおいて、例えば、コアシェル触媒表面に白金が60%、パラジウムが40%露出しているとすると、コアシェル触媒の比活性は2.40(A/m2)と算出される。この比活性は、第1の複合体100aの比活性と変わらない。しかし、後述する表1において示すように、本発明の製造方法により得られた触媒微粒子(実施例1)の比活性は4.73(A/m2)であるため、このモデルは採用し得ない。
パラジウム原子上の白金原子の比活性は、純白金の比活性の1.3倍を超えることが知られている。白金の比活性は3.2(A/m2)であるため、パラジウム原子上の白金原子の比活性は、計算上は4.2(A/m2)を超える。したがって、上記4.73(A/m2)(実施例1の比活性)の値は、パラジウム粒子の表面が白金により100%被覆されたと仮定したときの計算値とおおよそ等しくなる。すなわち、図2の下段に示したモデル100cこそが、本発明により製造された触媒微粒子であるといえる。
触媒微粒子を形成した後には、触媒微粒子のろ過、洗浄、及び乾燥等が行われてもよい。
触媒微粒子のろ過及び洗浄は、製造された触媒微粒子の被覆構造を損なうことなく、不純物を除去できる方法であれば特に限定されない。当該ろ過及び洗浄の例としては、水、過塩素酸、希硫酸、希硝酸等を用いて吸引ろ過をする方法が挙げられる。
触媒微粒子の乾燥は、溶媒等を除去できる方法であれば特に限定されない。当該乾燥の例としては、室温下の真空乾燥を0.5〜2時間行った後、不活性ガス雰囲気下、60〜80℃の温度条件で1〜12時間乾燥させるという方法が挙げられる。
このように、本発明の製造方法は、従来の合成方法に比べ、より低いコストで、より簡易に、より高い被覆率を有する触媒微粒子を提供することが可能となる。
本発明の触媒微粒子の第2の製造方法は、パラジウム含有粒子、及び当該パラジウム含有粒子を被覆する白金最外層を備える触媒微粒子の製造方法であって、(A)前記パラジウム含有粒子と、銅化合物が溶解した第2の溶液とを混合し、銅アンダーポテンシャル析出法を用いて前記パラジウム含有粒子表面の少なくとも一部を銅によって被覆することにより、パラジウム及び銅を含む複合体Aを形成し;(B)前記複合体Aと、白金化合物が溶解した第3の溶液とを混合し、前記複合体A中の銅を、前記第3の溶液に由来する白金に置換することにより、パラジウム及び白金を含む複合体Bを形成し;且つ、(C)前記複合体Bと、白金化合物が溶解した第1の溶液とを混合することにより、前記複合体B表面の少なくとも一部を白金によって被覆することを特徴とする。
発明の原理としては、上記順序を逆にして、Cu−UPD法を用いた白金被覆工程の後にCu−UPD法を用いない白金被覆工程を行っても、白金被覆に何ら支障はなく、これまで説明した製造方法と同様の効果を得ることができる。
工程(B)後、且つ工程(C)の前に、得られた複合体Bを洗浄することにより、複合体B表面に残留した余剰の銅を除いてもよい。
本発明により製造される触媒微粒子において、パラジウム含有粒子に対する白金最外層の被覆率が88〜100%であることが好ましい。パラジウム含有粒子に対する白金最外層の被覆率が88%未満である場合、電気化学反応においてパラジウム含有粒子が溶出し、その結果、触媒微粒子が劣化するおそれがある。
本発明により製造される触媒微粒子において、パラジウム含有粒子に対する白金最外層の被覆率が89〜100%であることがより好ましく、97〜100%であることがさらに好ましい。
なお、触媒微粒子の平均粒径は、その下限が好適には3nm以上、より好適には4nm以上であり、その上限が好適には40nm以下、より好適には10nm以下である。
本発明の燃料電池は、高分子電解質膜の一面側に少なくともアノード触媒層を備えるアノード電極を備え、他面側に少なくともカソード触媒層を備えるカソード電極を備える膜・電極接合体を備える単セルを備える燃料電池であって、上記第1又は第2の製造方法により製造される触媒微粒子を、前記アノード触媒層及び前記カソード触媒層の少なくともいずれか一方に含むことを特徴とする。
アノード触媒層及びカソード触媒層はいずれも、触媒、導電性材料及び高分子電解質を含有する触媒インクを用いて形成することができる。高分子電解質としては、上述した高分子電解質膜同様の材料を用いることができる。触媒としては、本発明に係る触媒微粒子が用いられる。
本発明に係る触媒微粒子は、アノード触媒層のみに用いられてもよく、カソード触媒層のみに用いられてもよく、アノード触媒層及びカソード触媒層の両方に用いられてもよい。本発明に係る触媒微粒子をアノード触媒層のみに用いる場合には、カソード触媒層には他の触媒が用いられる。また、本発明に係る触媒微粒子をカソード触媒層のみに用いる場合には、アノード触媒層には他の触媒が用いられる。
他の触媒としては、通常、触媒成分を導電性粒子に担持させたものが用いられる。触媒成分としては、アノード電極に供給される燃料の酸化反応又はカソード電極に供給される酸化剤の還元反応に対して触媒活性を有しているものであれば、特に限定されず、固体高分子型燃料電池に一般的に用いられているものを使用することができる。例えば、白金、又はルテニウム、鉄、ニッケル、マンガン、コバルト、銅等の金属と白金との合金等を用いることができる。触媒担体である導電性粒子としては、カーボンブラック等の炭素粒子や炭素繊維のような導電性炭素材料、金属粒子や金属繊維等の金属材料も用いることができる。導電性材料は、触媒層に導電性を付与する役割も担っている。
上記方法によって触媒層を形成した高分子電解質膜及びガス拡散シートは、適宜、重ね合わせて熱圧着等し、互いに接合することで、膜・電極接合体が得られる。
[実施例1]
1−1.カーボン担持パラジウム粒子の事前処理
まず、カーボン担持パラジウム粒子5gを純水1L中に加え、超音波ホモジナイザーを用いて、カーボン担持パラジウム粒子を純水中に分散させた。得られた分散液を電気化学リアクター内に投入し、硫酸を加えて、硫酸濃度が0.05mol/Lとなるように調整した。電気化学リアクターをグローブボックス内に移し、分散液中を不活性ガス(N2ガス)により十分にバブリングすることによって酸素を脱気した。電気化学リアクターの作用極に対し電位窓0.4〜0.45V(vs.RHE)を360サイクル実施し、パラジウム粒子表面を十分に還元した。
電気化学リアクター中に、予め酸素を脱気したK2PtCl4の硫酸溶液を徐々に滴下した。ここで添加したK2PtCl4の硫酸溶液の量は、パラジウム粒子を白金の単原子層により被覆する場合に要する最少白金原子量を100atm%としたとき、55atm%であった。電気化学リアクター中の自然電位をモニタリングしながら、電位がプラトーになるまで(すなわち、白金の被覆反応が終了するまで)攪拌し、パラジウム粒子表面の一部を白金によって被覆した。
図4は、実施例1における第1の複合体の形成の際のモニタリングの様子を示したグラフである。図4においては、測定開始後2分の時点においてK2PtCl4の硫酸溶液を滴下し始めている。図4から分かるように、K2PtCl4の硫酸溶液を滴下開始直後は自然電位がやや急に上昇し始めたものの、K2PtCl4が消費されることによって自然電位の上昇が徐々に緩やかとなり、測定開始後20分を経過したところで自然電位は0.86V(vs.RHE)においてプラトーを迎え、反応が終了した。
上記第1の複合体を含む電気化学リアクター中に、予め酸素を脱気した硫酸銅(CuSO4)の0.05mol/L硫酸溶液を加え、混合物中の銅イオン(Cu2+)濃度が0.05mol/Lになるように調整した。その後、電気化学リアクターの作用電極に0.37V(vs.RHE)を付与し、電流値が0Aになるまで電位をそのまま維持した(Cu−UPD)。この操作により、第1の複合体表面の少なくとも一部が銅により被覆されてなる第2の複合体を形成した。
上記第2の複合体を含む電気化学リアクター中に、予め酸素を脱気したK2PtCl4の硫酸溶液を徐々に滴下し、電気化学リアクター中の自然電位をモニタリングしながら、自然電位がプラトーになるまで(すなわち、自然電位の変動が無くなるまで)攪拌することにより、パラジウム粒子表面の銅単原子層を白金層に置換し、触媒微粒子を合成した。ここで添加したK2PtCl4の硫酸溶液の量は、第1の複合体の形成において用いた量の残り、すなわち、パラジウム粒子を白金の単原子層により被覆する場合に要する最少白金原子量を100atm%としたとき、45atm%であった。
図5は、実施例1における銅原子層の白金最外層への置換の際のモニタリングの様子を示したグラフである。図5から分かるように、K2PtCl4の硫酸溶液を滴下開始直後(0分)から自然電位が上昇し始めたものの、K2PtCl4が消費された時点(開始後80分)を経過したところで自然電位が0.58V(vs.RHE)においてプラトーを迎え、反応が終了した。なお、0.58V(vs.RHE)までしか電位が上がらない理由は、第1の複合体形成においてパラジウム粒子表面に白金が析出し、その後Cu−UPDにより当該白金上に銅が析出したが、その銅がそのまま残ったことによるものと考えられる。
電気化学リアクター中の混合物をろ過し、ろ過物を純水4Lによって洗浄することにより、不純物(余剰のイオン、白金上に析出した銅等)を除去した。洗浄後のろ過物を60℃にて10時間真空乾燥することにより、触媒微粒子を含む実施例1の燃料電池用触媒を製造した。
まず、実施例1の「1−1.カーボン担持パラジウム粒子の事前処理」と同様に事前処理を行った。
次に、電気化学リアクター中に、予め酸素を脱気したK2PtCl4の硫酸溶液を徐々に滴下した。ここで滴下したK2PtCl4の硫酸溶液の量は、パラジウム粒子を白金の単原子層により被覆する場合に要する最少白金原子量を100atm%としたとき、120atm%(St=1.2)であった。電気化学リアクター内の自然電位をモニタリングしながら、電位がプラトーになるまで(すなわち、白金の被覆反応が終了するまで)攪拌し、パラジウム粒子表面を白金によって被覆した。
図6は、参考例1における白金被覆の際のモニタリングの様子を示したグラフである。図6から分かるように、K2PtCl4の硫酸溶液を滴下開始した直後は自然電位が急に上昇し始めたものの、K2PtCl4が消費されることによって自然電位の上昇が徐々に緩やかとなり、測定開始後40分を経過したところで自然電位は0.88V(vs.RHE)においてプラトーを迎え、反応が終了した。
あとは、実施例1の「1−5.後処理」と同様に後処理を行うことにより、触媒微粒子を含む参考例1の燃料電池用触媒を製造した。
参考例1のK2PtCl4の硫酸溶液の滴下において、滴下したK2PtCl4の硫酸溶液の量を、パラジウム粒子を白金の単原子層により被覆する場合に要する最少白金原子量を100atm%としたとき、100atm%(St=1.0)としたこと以外は、参考例1と同様に事前処理、白金被覆、及び後処理を行うことにより、触媒微粒子を含む参考例2の燃料電池用触媒を製造した。
まず、実施例1の「1−1.カーボン担持パラジウム粒子の事前処理」と同様に事前処理を行った。
次にカーボン担持パラジウム粒子を含む電気化学リアクター中に、予め酸素を脱気した硫酸銅(CuSO4)の0.05mol/L硫酸溶液を加え、混合物中の銅イオン(Cu2+)濃度が0.05mol/Lになるように調整した。その後、電気化学リアクターの作用電極に0.37V(vs.RHE)を付与し、電流値が0Aになるまで電位をそのまま維持した(Cu−UPD)。この操作により、パラジウム粒子表面を銅原子層により被覆した。この工程は、実施例1の「1−3.第2の複合体の形成」に対応する。
続いて、パラジウム−銅複合体を含む電気化学リアクター中に、予め酸素を脱気したK2PtCl4の硫酸溶液を徐々に滴下し、電気化学リアクター中の自然電位をモニタリングしながら、自然電位が0.65V(vs.RHE)になるまで滴下した後、K2PtCl4の硫酸溶液の滴下を止めた。この操作により、パラジウム粒子表面の銅原子層を白金最外層に置換した。この工程は、実施例1の「1−4.銅原子層の白金最外層への置換」に対応する。
図9は、比較例1における銅原子層の白金最外層への置換の際のモニタリングの様子を示したグラフである。図9においては、測定開始後4分の時点においてK2PtCl4の硫酸溶液を滴下し始めている。図9から分かるように、リアクター内の自然電位は、K2PtCl4の硫酸溶液を滴下開始直後から、自然電位が0.65V(vs.RHE)となるまで(測定開始後50分)上昇し続けた。
あとは、実施例1の「1−5.後処理」と同様に後処理を行うことにより、触媒微粒子を含む比較例1の燃料電池用触媒を製造した。
まず、実施例1の「1−1.カーボン担持パラジウム粒子の事前処理」と同様に事前処理を行った。
次にカーボン担持パラジウム粒子を含む電気化学リアクター中に、予め酸素を脱気した硫酸銅(CuSO4)の0.05mol/L硫酸溶液を加え、混合物中の銅イオン(Cu2+)濃度が0.05mol/Lになるように調整した。その後、電気化学リアクターの作用電極に0.37V(vs.RHE)を付与し、電流値が0Aになるまで電位をそのまま維持した(Cu−UPD)。この操作により、パラジウム粒子表面を銅原子層により被覆した。この工程は、実施例1の「1−3.第2の複合体の形成」に対応する。
続いて、パラジウム−銅複合体を含む電気化学リアクター中に、予め酸素を脱気したK2PtCl4の硫酸溶液を徐々に滴下し、電気化学リアクター内の自然電位をモニタリングしながら、自然電位がプラトーになるまで(すなわち、自然電位の変動が止まるまで)滴下した後、K2PtCl4の硫酸溶液の滴下を止めた。ここで滴下したK2PtCl4の硫酸溶液の量は、パラジウム粒子を白金の単原子層により被覆する場合に要する最少白金原子量を100atm%としたとき、120atm%(St=1.2)であった。この操作により、パラジウム粒子表面の銅原子層を白金最外層に置換した。この工程は、実施例1の「1−4.銅原子層の白金最外層への置換」に対応する。
図10は、比較例2における銅原子層の白金最外層への置換の際のモニタリングの様子を示したグラフである。図10においては、測定開始後2分の時点においてK2PtCl4の硫酸溶液を滴下し始めている。図10から分かるように、K2PtCl4の硫酸溶液を滴下開始直後は自然電位が上昇し始めたものの、K2PtCl4が消費されることによって自然電位の上昇が徐々に緩やかとなり、測定開始後80分を経過したところで自然電位は0.85V(vs.RHE)においてプラトーを迎え、反応が終了した。
あとは、実施例1の「1−5.後処理」と同様に後処理を行うことにより、触媒微粒子を含む比較例2の燃料電池用触媒を製造した。
比較例2のK2PtCl4の硫酸溶液の滴下において、滴下したK2PtCl4の硫酸溶液の量を、パラジウム粒子を白金の単原子層により被覆する場合に要する最少白金原子量を100atm%としたとき、100atm%(St=1.0)としたこと以外は、比較例2と同様に事前処理、白金被覆、及び後処理を行うことにより、触媒微粒子を含む比較例3の燃料電池用触媒を製造した。
2−1.白金及びパラジウムの組成分析、及び被覆率の算出
実施例1、参考例1−参考例2、及び比較例1−比較例3の燃料電池用触媒について、ICP−MSにより、触媒微粒子表面の白金量及びパラジウム量を定量し、被覆率を算出した。結果を表1に示す。
実施例1、参考例1、及び比較例1−比較例3の燃料電池用触媒について、回転ディスク電極(RDE)法により、質量活性(ORR活性@0.9V vs.RHE)及び電気化学表面積(ECSA)を測定した。また、これらの燃料電池用触媒について、1.05〜0.1V(vs.RHE)の範囲内の電位サイクルを100往復掃引した後、RDE法により質量活性(ORR活性@0.9V vs.RHE)及び電気化学表面積(ECSA)を測定した。
下記表1は、実施例1、参考例1−参考例2、及び比較例1−比較例3の燃料電池用触媒について、白金添加量、ICP測定結果、質量活性、電気化学表面積、及び比活性をまとめた表である。比活性の値は、質量活性及び電気化学表面積の結果から算出したものである。なお、下記表1中「初期」とは、充放電に使用されていない新品の燃料電池用触媒の結果を意味する。
x=xPt/(xPt+xPd) 式(1)
図7中、白四角のプロットは参考例1のデータを、黒三角のプロットは比較例1のデータを、黒丸のプロットは比較例2のデータを、それぞれ示したものである。また、白菱形のプロットは、パラジウム粒子に白金層が1層のみ被覆した場合の計算結果を示すデータである。さらに、図7中の曲線は、全てのプロットに関する近似式を表す。当該近似式(理論的に求められる白金単原子層の近似式)は以下の通りである。
y=−25.924ln(x)+88.944
表1のICP測定結果より、比較例1の燃料電池用触媒は、燃料電池用触媒表面に白金が7.69%、パラジウムが14.6%存在することが分かる。この結果から、パラジウム粒子表面に占める白金の割合xは、x=7.69/(7.69+14.6)=34%と算出される。したがって、図7からも分かる通り、比較例1(黒三角のプロット)における白金の量は、パラジウム粒子表面を1層被覆する量としては足りないことが分かる。また、ICP測定結果から算出された被覆率は67%である。
表1より、比較例1の燃料電池用触媒は、初期の質量活性が394(A/g−Pt)、電位サイクル後の質量活性が493(A/g−Pt)であり、その変化率は25.1%である。また、比較例1の燃料電池用触媒は、初期の電気化学表面積が202(m2/g−Pt)、電位サイクル後の電気化学表面積が162(m2/g−Pt)であり、その変化率(減少率)は−19.8%である。当該減少率の絶対値は、実施例1、参考例1、及び比較例1−比較例3の燃料電池用触媒中、最も大きい。さらに、比較例1の燃料電池用触媒は、初期の比活性が1.95(A/m2)、電位サイクル後の比活性が3.04(A/m2)であり、その変化率は55.9%である。
したがって、従来のCu−UPD法を用いて途中まで白金最外層を形成させて得られた比較例1の燃料電池用触媒は、新品の状態において未だ白金最外層の被覆状態が完成していないことが分かる。また、比較例1の燃料電池用触媒は、慣らし運転によって電気化学表面積が極めて減りやすいことも分かる。
表1より、比較例2の燃料電池用触媒は、初期の質量活性が470(A/g−Pt)、電位サイクル後の質量活性が730(A/g−Pt)であり、その変化率が55.3%である。また、比較例2の燃料電池用触媒は、初期の電気化学表面積が124(m2/g−Pt)、電位サイクル後の電気化学表面積が115(m2/g−Pt)であり、その変化率(減少率)が−7.26%である。さらに、比較例2の燃料電池用触媒は、初期の比活性が3.79(A/m2)、電位サイクル後の比活性が6.35(A/m2)であり、その変化率が67.5%である。
したがって、従来のCu−UPD法において自然電位がプラトーを迎えるまで白金最外層を形成させて得られた比較例2の燃料電池用触媒は、電位サイクル後の質量活性に対して新品の状態の質量活性が2/3に満たず、全く白金最外層の状態が完成していないことが分かる。また、比較例2の燃料電池用触媒は、慣らし運転によって電気化学表面積が減りやすいことも分かる。
表1より、比較例3の燃料電池用触媒は、初期の質量活性が503(A/g−Pt)、電位サイクル後の質量活性が785(A/g−Pt)であり、その変化率が56.1%である。当該変化率は、実施例1、参考例1、及び比較例1−比較例3の燃料電池用触媒中、最も大きい。また、比較例3の燃料電池用触媒は、初期の電気化学表面積が140(m2/g−Pt)、電位サイクル後の電気化学表面積が123(m2/g−Pt)であり、その変化率(減少率)が−12.1%である。さらに、比較例3の燃料電池用触媒は、初期の比活性が3.59(A/m2)、電位サイクル後の比活性が6.38(A/m2)であり、その変化率が77.7%である。
したがって、従来のCu−UPD法において自然電位がプラトーを迎えるまで白金最外層を形成させて得られた比較例3の燃料電池用触媒は、電位サイクル後の質量活性に対して新品の状態の質量活性が2/3に満たず、全く白金最外層の状態が完成していないことが分かる。また、比較例3の燃料電池用触媒は、慣らし運転によって電気化学表面積が減りやすいことも分かる。
また、比較例2と比較例3とを比較すると、白金添加量がより多い比較例2(St=1.2)は、白金添加量がより少ない比較例3(St=1.0)よりも、パラジウム粒子表面における白金の割合がやや大きくなり、質量活性の変化率がやや小さくなり、電気化学表面積の変化率(減少率)の絶対値も小さくなることが分かる。
表1より、実施例1の燃料電池用触媒は、初期の質量活性が624(A/g−Pt)、電位サイクル後の質量活性が629(A/g−Pt)であり、その変化率は0.801%である。当該変化率は、実施例1、参考例1、及び比較例1−比較例3の燃料電池用触媒中、最も小さい。また、実施例1の燃料電池用触媒は、初期の電気化学表面積が132(m2/g−Pt)、電位サイクル後の電気化学表面積が123(m2/g−Pt)であり、その変化率(減少率)が−6.82%である。当該減少率の絶対値は、実施例1、参考例1、及び比較例1−比較例3の燃料電池用触媒中、最も小さい。さらに、実施例1の燃料電池用触媒は、初期の比活性が4.73(A/m2)、電位サイクル後の比活性が5.11(A/m2)であり、その変化率が8.03%である。実施例1の初期の比活性は、実施例1、参考例1、及び比較例1−比較例3の燃料電池用触媒中、最も大きい。また、実施例1の比活性の変化率は、実施例1、参考例1、及び比較例1−比較例3の燃料電池用触媒中、最も小さい。
以上より、パラジウム粒子を白金化合物溶液に浸漬させた後、さらにCu−UPDを経て得られた実施例1の燃料電池用触媒は、新品の状態において白金最外層が既にほぼ完成しており、慣らし運転することなく触媒反応にそのまま使用できることが分かる。また、実施例1の燃料電池用触媒は、電気化学表面積が減りにくく、耐久性に優れることが分かる。
表1より、参考例1の燃料電池用触媒は、初期の質量活性が525(A/g−Pt)、電位サイクル後の質量活性が654(A/g−Pt)であり、その変化率が24.6%である。また、参考例1の燃料電池用触媒は、初期の電気化学表面積が219(m2/g−Pt)、電位サイクル後の電気化学表面積が202(m2/g−Pt)であり、その変化率(減少率)が−7.76%である。さらに、参考例1の燃料電池用触媒は、初期の比活性が2.40(A/m2)、電位サイクル後の比活性が3.24(A/m2)であり、その変化率が35.0%である。
ここで、パラジウム粒子表面のパラジウムが1層分溶出して白金が析出したと仮定する(以下、このモデルをパラジウム溶出モデルと称する場合がある)。パラジウム粒子が4.2nmの時の表面におけるパラジウム原子数を算出し、表面におけるパラジウム原子が1層全て白金原子に置換されたときの組成を計算した場合、燃料電池用触媒表面に白金が9.47%、パラジウムが10.1%存在することとなる。ここで、白金を除いた残りの部分(90.5%)に関するパラジウムの量は10.1/90.5=11.2%である。
しかし、実際には、表1に示すように、参考例1の燃料電池用触媒表面に白金が6.58%、パラジウムが13.9%存在している。参考例1における白金を除いた残りの部分(93.4%)に関するパラジウムの量は13.9/93.4=14.9%である。この値は、上記溶出モデルにおける値(11.2%)よりも、原料であるカーボン担持パラジウム粒子に関する値(15.9%)により近い。すなわち、参考例1の製造方法においては、原料におけるパラジウム量がほぼ維持されていることが分かる。
したがって、パラジウム粒子を白金化合物溶液に浸漬させる方法においては、パラジウムと白金が置換する反応ではなく、パラジウム表面に白金が析出していることが明らかとなった。
ここで、参考例1及び参考例2のICP測定結果を比較すると、パラジウム粒子表面における白金及びパラジウムの割合、並びに被覆率はほぼ変わらない。この結果から、パラジウム粒子を白金化合物溶液に浸漬させて得る方法においては、白金添加量をSt=1.0(参考例2)からSt=1.2(参考例1)に増やしたとしてもパラジウム粒子表面の組成に大きな変化はなく、パラジウム粒子表面の組成は白金添加量に対して感度が鈍いこと、及びパラジウム粒子表面に直接析出できる白金量は予め決まっていることが分かる。
また、表1より、参考例1の電気化学表面積の変化率(減少率)は、比較例1の電気化学表面積の変化率(減少率)の39%に留まる。白金の割合が略等しいことから鑑みるに、この結果は、参考例1の方が比較例1よりも白金がパラジウム粒子上により広く分布しており、パラジウム粒子表面が露出した部分がより少ないため、耐久性が高いことを示している。
2 白金原子
3 銅原子
3a パラジウム含有粒子表面のエッジ部分又はコーナー部分に析出した銅原子
3b パラジウム含有粒子表面のテラス部分に析出した銅原子
11 高分子電解質膜
12 カソード触媒層
13 アノード触媒層
14,15 ガス拡散層
16 カソード電極
17 アノード電極
18 膜・電極接合体
19,20 セパレータ
21,22 ガス流路
100a 第1の複合体の典型例
100b 第2の複合体の典型例
100c 触媒微粒子の典型例
200 燃料電池の単セル
300 パラジウム粒子表面に銅原子が析出してなる複合体
前記パラジウム含有粒子と、白金化合物が溶解した第1の溶液とを混合し前記パラジウム含有粒子と白金化合物を含む前記第1の溶液とを直接接触させる結果、前記パラジウム含有粒子表面の少なくとも一部を白金によって被覆することにより、パラジウム及び白金を含む第1の複合体を形成し;
前記第1の複合体と、銅化合物が溶解した第2の溶液とを混合し、銅アンダーポテンシャル析出法を用いて前記第1の複合体表面の少なくとも一部を銅によって被覆することにより、パラジウム、白金、及び銅を含む第2の複合体を形成し;
前記第2の複合体と、白金化合物が溶解した第3の溶液とを混合することによって、前記第2の複合体中の銅を、前記第3の溶液に由来する白金に置換し;且つ、
前記パラジウム含有粒子を白金の単原子層により被覆する場合に要する最少白金原子量を100atm%としたとき、前記第1の溶液中に含まれる白金原子の量を70atm%以下とすることを特徴とする。
前記パラジウム含有粒子と、銅化合物が溶解した第2の溶液とを混合し、銅アンダーポテンシャル析出法を用いて前記パラジウム含有粒子表面の少なくとも一部を銅によって被覆することにより、パラジウム及び銅を含む複合体Aを形成し;
前記複合体Aと、白金化合物が溶解した第3の溶液とを混合し、前記複合体A中の銅を、前記第3の溶液に由来する白金に置換することにより、パラジウム及び白金を含む複合体Bを形成し;
前記第3の溶液に替えて白金化合物が溶解した第1の溶液と前記複合体Bとを混合し前記複合体Bと白金化合物を含む前記第1の溶液とを直接接触させる結果、前記複合体B表面の少なくとも一部を白金によって被覆し;且つ、
前記パラジウム含有粒子を白金の単原子層により被覆する場合に要する最少白金原子量を100atm%としたとき、前記第1の溶液中に含まれる白金原子の量を70atm%以下とすることを特徴とする。
Claims (6)
- パラジウム含有粒子、及び当該パラジウム含有粒子を被覆する白金最外層を備える触媒微粒子の製造方法であって、
前記パラジウム含有粒子と、白金化合物が溶解した第1の溶液とを混合し、前記パラジウム含有粒子表面の少なくとも一部を白金によって被覆することにより、パラジウム及び白金を含む第1の複合体を形成し;
前記第1の複合体と、銅化合物が溶解した第2の溶液とを混合し、銅アンダーポテンシャル析出法を用いて前記第1の複合体表面の少なくとも一部を銅によって被覆することにより、パラジウム、白金、及び銅を含む第2の複合体を形成し;且つ、
前記第2の複合体と、白金化合物が溶解した第3の溶液とを混合することによって、前記第2の複合体中の銅を、前記第3の溶液に由来する白金に置換することを特徴とする、触媒微粒子の製造方法。 - パラジウム含有粒子、及び当該パラジウム含有粒子を被覆する白金最外層を備える触媒微粒子の製造方法であって、
前記パラジウム含有粒子と、銅化合物が溶解した第2の溶液とを混合し、銅アンダーポテンシャル析出法を用いて前記パラジウム含有粒子表面の少なくとも一部を銅によって被覆することにより、パラジウム及び銅を含む複合体Aを形成し;
前記複合体Aと、白金化合物が溶解した第3の溶液とを混合し、前記複合体A中の銅を、前記第3の溶液に由来する白金に置換することにより、パラジウム及び白金を含む複合体Bを形成し;且つ、
前記複合体Bと、白金化合物が溶解した第1の溶液とを混合することにより、前記複合体B表面の少なくとも一部を白金によって被覆することを特徴とする、触媒微粒子の製造方法。 - 前記パラジウム含有粒子が担体に担持されている、請求項1又は2に記載の触媒微粒子の製造方法。
- 前記第1の複合体又は前記複合体Aを形成する前に、予め前記パラジウム含有粒子を酸処理する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の触媒微粒子の製造方法。
- 前記パラジウム含有粒子を白金の単原子層により被覆する場合に要する最少白金原子量を100atm%としたとき、前記第1の溶液中に含まれる白金原子の量を70atm%以下とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の触媒微粒子の製造方法。
- 高分子電解質膜の一面側に少なくともアノード触媒層を備えるアノード電極を備え、他面側に少なくともカソード触媒層を備えるカソード電極を備える膜・電極接合体を備える単セルを備える燃料電池であって、
前記請求項1乃至5のいずれか一項に記載の製造方法により製造される触媒微粒子を、前記アノード触媒層及び前記カソード触媒層の少なくともいずれか一方に含むことを特徴とする、燃料電池。
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