JPWO2014157236A1 - 一方向クラッチ装置 - Google Patents

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Abstract

金属製の内輪3aに対するクラッチ用保持器11aの軸方向変位規制手段を、内輪3aに対する加工量を少なく抑えつつ構成する。内輪3aのカム面6に半球状の係合凹部22を、クラッチ用保持器11aのリム部12bの内周面に半球状の係合凸部23を、それぞれ形成する。カム面6の外径側へのクラッチ用保持器11aの組み付け時に、係合凹部22と係合凸部23とを係合させることにより、内輪3aに対するクラッチ用保持器11aの軸方向変位規制手段が構成される。

Description

本発明は、互いに同心に組み合わされた2つの部材が所定方向に相対回転する傾向となった場合にのみ、これらの部材同士の間での回転力の伝達を可能とする一方向クラッチ装置に関する。
アイドリングストップ車のスタータ装置、オルタネータなどの各種自動車用補機、トランスミッション用オイルポンプなど、各種機械装置の回転伝達部分には、所定方向の回転運動のみを伝達する、一方向クラッチが組み込まれている。また、特許第3657330号公報に記載されているように、この一方向クラッチと転がり軸受とを、共通の部品を使用してユニット化して、一方向クラッチ装置として構成することも行われている。このような一方向クラッチ装置の1例について、図8および図9を参照しつつ説明する。この一方向クラッチ装置では、一方向クラッチであるローラクラッチ1と、ローラクラッチ1の軸方向両側に隣接配置された1対の円筒ころ軸受2a、2bとが、共通の内輪3を使用することによりユニット化されている。
内輪3は、金属板製で、円筒部4と、円筒部4の軸方向両端部を径方向外方に折り曲げることにより形成された1対の外向鍔部5a、5bとを備える。円筒部4の外周面の軸方向中間部には、ローラクラッチ1を構成する内径側係合面である、カム面6が設けられており、円筒部4の外周面の軸方向両端部には、1対の円筒ころ軸受2a、2bを構成する、それぞれが円筒状である1対の内輪軌道7a、7bが設けられている。カム面6には、ランプ部と呼ばれる複数のカム凹部8が、円周方向に関して等間隔に形成されている。それぞれのカム凹部8の深さは、円周方向片側に向かうほど大きくなっている。また、1対の内輪軌道7a、7bのうち、軸方向一方側(図8および図9の左側)に存在する一方の内輪軌道7aの外径は、カム面6の外接円の直径以上となっている。これに対して、軸方向他方側(図8および図9の右側)に存在する他方の内輪軌道7bの外径は、カム凹部8の溝底の内接円の直径以下となっている。このため、それぞれのカム凹部8の軸方向両端縁のうち、軸方向一方側の端縁である軸方向一端縁は、軸方向に開口することなく、段差面9により塞がれている。これに対して、それぞれのカム凹部8の軸方向他方側の端縁である軸方向他端縁は、軸方向に開口している。
カム面6の外径側には、それぞれがローラクラッチ1を構成する係合子である、複数のローラ10と、クラッチ用保持器11と、図示しない複数のばねとが配置されている。ローラ10は、金属製である。ローラ10は、クラッチ用保持器11に保持された状態で、それぞれのカム凹部8の外径側に1個ずつ配置されている。一方、クラッチ用保持器11は、合成樹脂製で、円筒状に形成されている。クラッチ用保持器11は、軸方向に間隔をあけて互いに同心に配置された、それぞれが円環状である1対のリム部12a、12bと、これらのリム部12a、12b同士の間に掛け渡された状態で円周方向に等間隔に配置された複数の柱部13と、これらのリム部12a、12bの内周面の円周方向複数箇所に設けられた突起14a、14bとを備える。1対のリム部12a、12bと円周方向に隣り合う柱部13とにより四周を囲まれた部分には、それぞれのローラ10を転動並びに円周方向に関する若干の変位可能に保持するためのポケット15が形成されている。それぞれの突起14a、14bがカム凹部8に係合することにより、内輪3に対するクラッチ用保持器11の回転防止が図られている。それぞれのばねは、それぞれの柱部13とローラ10との間に組み付けられており、それぞれのローラ10を、円周方向に関してカム凹部8の深さが小さくなる方向に向け、弾性的に押圧している。
1対の内輪軌道7a、7bの外径側には、円筒ころ軸受2a、2bを構成する、複数ずつの円筒ころ16a、16bと、これらの円筒ころ16a、16bを転動自在に保持する円筒状の軸受用保持器17a、17bとが配置されている。円筒ころ16a、16bは、それぞれ金属製であり、軸受用保持器17a、17bは、それぞれ金属製もしくは合成樹脂製である。なお、内輪3を構成する1対の外向鍔部5a、5bのうち、軸方向一方側に存在する一方の外向鍔部5aは、円筒部4の周囲に他の構成部材が配置される前に形成されるため、円筒部4のうち隣接する一方の内輪軌道7aが設けられた部分と同等の厚さ寸法を有する。これに対し、軸方向他方側に存在する他方の外向鍔部5bは、円筒部4の周囲に他の構成部材(少なくともクラッチ用保持器11および軸受用保持器17a、17b)が配置された後に形成されるため、円筒部4のうち隣接する他方の内輪軌道7aが設けられた部分よりも薄肉になっている。
このような一方向クラッチ装置を使用する際には、内輪3は、回転軸などの内径側部材18に外嵌固定される。また、ローラ10および円筒ころ16a、16bの外径側には、ハウジング、プーリなどの外径側部材19が組み付けられる。なお、外径側部材19または外径側部材19に内嵌固定された外輪などの他の部材の内周面のうち、ローラ10と対向する部分には、外径側係合面である円筒面20が設けられ、円筒ころ16a、16bと対向する部分には、円筒状の外輪軌道21が設けられている。円筒ころ軸受2a、2bにより、内径側部材18と外径側部材19との間に作用するラジアル荷重が支承され、かつ、内径側部材18と外径側部材19との相対回転が可能となる。一方、ローラクラッチ1により、内径側部材18と外径側部材19が所定方向に相対回転する傾向となる場合にのみ、内径側部材18と外径側部材19との間で回転力の伝達が可能となる。
すなわち、内径側部材18と外径側部材19とが所定方向に相対回転する傾向になると、ローラ3が、カム面6と円筒面20との間に存在する円筒状隙間のうち、カム凹部8の深さが小さくなった部分にくさび状に食い込む。この結果、内径側部材18と外径側部材19との間での回転力の伝達が可能なロック状態となる。これに対して、内径側部材と外径側部材19とが、前記所定方向と反対方向に相対回転する傾向になると、ローラ3が、円筒状隙間のうち、カム凹部8の深さが大きくなった部分に移動して、転動自在となる。この結果、内径側部材18と外径側部材19が相対回転して、内径側部材18と外径側部材19とが、これらの間で回転力が伝達されないオーバラン状態となる。
このような一方向クラッチ装置の場合、カム凹部8の軸方向一端縁は、段差面9により塞がれている。このため、段差面9と、クラッチ用保持器11の軸方向一端部(図8および図9の左端部)内周面に設けられた突起14aとが、軸方向に係合する。段差面9と突起14aとの係合に基づいて、内輪3に対するクラッチ用保持器11の軸方向一方側への変位が規制される。この規制により、オーバラン状態での運転時に、クラッチ用保持器11が軸方向一方側に大きく変位することが防止され、クラッチ用保持器11と一方の外向鍔部5aとの間で、一方の円筒ころ軸受2aを構成する軸受用保持器17aが軸方向に強く挟持されることが防止される。
これに対して、カム凹部8の軸方向他端縁は、それぞれ軸方向に開口している。すなわち、カム凹部8の軸方向他端縁には、クラッチ用保持器11の軸方向他端部(図8および図9の右端部)内周面に設けられた突起14bが、軸方向に係合可能な段差面が存在しない。このため、突起14bを利用して、内輪3に対するクラッチ用保持器11の軸方向他方側への変位を規制することができない。したがって、オーバラン状態での運転時に、クラッチ用保持器11が軸方向他方側に大きく変位して、クラッチ用保持器11と他方の外向鍔部5bとの間で、他方の円筒ころ軸受2bを構成する軸受用保持器17bが軸方向に強く挟持される可能性がある。軸受用保持器17bが強く挟持された場合には軸受用保持器17bが内輪3に対して回転できなくなり、オーバラン状態を維持できなくなる可能性がある。さらに、一方向クラッチ装置の組み立て時に、他方の外向鍔部5bを形成する前の段階で、内輪3の外径側に組み付けられたクラッチ用保持器11が、内輪3の外径側から軸方向他方側に不用意に抜け出す可能性がある。このため、他方の外向鍔部5bを形成する作業は、クラッチ用保持器11の抜け出しに注意を払いながら行う必要があり、その分、この作業が面倒になる。
特許第3657330号公報
以上のような不都合を解消するため、一方向クラッチでは、内輪に対するクラッチ用保持器の軸方向他方側への変位を規制する手段を設けることが望まれる。ただし、製造コストを抑える必要性などから、内輪に対する追加の加工量はできるだけ少なく抑える必要がある。
本発明は、このような事情に鑑み、内輪に対する追加の加工量を少なく抑えることができ、かつ、金属製の内輪に対する合成樹脂製のクラッチ用保持器の軸方向変位を規制する手段を有する、一方向クラッチ装置の構造を実現することを目的とする。
本発明の一方向クラッチ装置は、
金属製で、外周面と、該外周面の軸方向一部に形成された内径側係合面とを有する、内輪と、
前記内径側係合面の周囲に配置される、複数の係合子と、
合成樹脂製で、全体が円筒状であり、前記複数の係合子を保持した状態で、前記内径側係合面の周囲に配置される、クラッチ用保持器と、
を備える。
特に、本発明の一方向クラッチ装置では、前記内輪と前記クラッチ用保持器との間に、前記内輪に対する前記クラッチ用保持器の軸方向変位を規制する手段が設けられていることを特徴とする。
より具体的には、前記クラッチ用保持器の軸方向変位を規制する手段は、前記内輪の外周面に形成され、径方向から見た形状が円形で、凹曲面からなる内面を有する係合凹部と、前記クラッチ用保持器の内周面に形成され、前記係合凹部に係合可能な形状を有する係合凸部とを備え、前記係合凹部と前記係合凸部との係合により、前記クラッチ用保持器の軸方向変位が阻止されている。好ましくは、前記係合凹部を、半球状凹部とする。
代替的あるいは追加的に、前記クラッチ用保持器の軸方向変位を規制する手段は、前記クラッチ用保持器の軸方向両端面のうち、少なくとも一方の端面と隣接対向する位置に、前記内輪に絞り嵌めで外嵌固定された環状部材を備え、前記クラッチ用保持器の少なくとも一方の端面と該環状部材との係合により、前記クラッチ用保持器の軸方向変位が阻止されている。
本発明は、次のような構造を有する一方向クラッチ装置に好適に適用される。すなわち、前記内径側係合面は、前記内輪の外周面に複数のカム凹部が円周方向に関して等間隔に形成された、カム面により構成される。前記係合子は、前記カム凹部のそれぞれの外径側に1つずつ配置された、複数のローラにより構成される。前記クラッチ用保持器は、軸方向に間隔をあけて互いに同心に配置された、それぞれが円環状である1対のリム部と、該1対のリム部同士の間に掛け渡された状態で、円周方向に間隔をあけて配置された、複数の柱部と、前記1対のリム部と前記複数の柱部のうちの円周方向に隣り合う柱部とにより四周を囲まれた部分に形成され、前記係合子を保持する、複数のポケットとを備える。
前記クラッチ用保持器の軸方向変位を規制する手段が、前記係合凹部と前記係合凸部により構成される場合、好ましくは、前記係合凹部は、前記カム面のうち、前記複数のカム凹部のうち円周方向に隣り合うカム凹部同士の間部分に形成される。また、前記係合凸部は、前記1対のリム部のうちの少なくとも一方のリム部の内周面に形成される。
本発明が適用される一方向クラッチ装置では、さらに好ましくは、前記内輪が、前記外周面を備えた円筒部と、該円筒部の軸方向両端部のうちの少なくとも一方の端部に設けられた外向鍔部とにより構成され、前記内径側係合面は、該円筒部の軸方向中間部に設けられており、かつ、前記外周面のうち、該内径側係合面の両側で、前記円筒部の軸方向両端部には、1対の内輪軌道が設けられており、該1対の内輪軌道の外径側のそれぞれに、複数の円筒ころと、該円筒ころを保持する円筒状の軸受用保持器とが配置される。
本発明の一方向クラッチ装置では、金属製の内輪の外周面に形成された係合凹部と、合成樹脂製のクラッチ用保持器の内周面に形成された係合凸部との係合、もしくは、クラッチ用保持器と環状部材との係合に基づいて、内輪に対するクラッチ用保持器の軸方向変位を規制することができる。このため、組立作業の際に、内輪の外径側に組み付けたクラッチ用保持器が軸方向に不用意に抜け出してしまうことが防止される。さらには、オーバラン状態での運転時に、クラッチ用保持器が、軸方向に隣り合う状態で配置された軸受用保持器に強く接触して、一方向クラッチ装置のオーバラン状態が適切に維持されなくなってしまうような事態の発生が防止される。
図1は、本発明の実施の形態の第1例の一方向クラッチ装置を示す断面図である。 図2は、第1例の一方向クラッチ装置を構成する内輪とクラッチ用保持器との分解斜視図である。 図3は、図1の拡大a−a断面図である。 図4は、図3のb−b断面図である。 図5(A)は、図2のc部拡大図であり、図5(B)は、d部拡大図である。 図6は、本発明の実施の形態の第2例の一方向クラッチ装置を示す断面図である。 図7は、第2例の一方向クラッチ装置を構成する内輪とクラッチ用保持器と環状部材との分解斜視図である。 図8は、従来構造の一方向クラッチ装置の1例を示す断面図である。 図9は、図8の一方向クラッチ装置を構成する内輪とクラッチ用保持器との分解斜視図である。
[実施の形態の第1例]
図1〜図5は、本発明の実施の形態の1例を示している。本例の一方向クラッチ装置は、基本的には従来例と同様に、内輪3と、複数の係合子である、複数のローラ10と、クラッチ用保持器11aとを備える。内輪3は、金属板製で、円筒部4と、円筒部4の軸方向両端部に設けられた1対の外向鍔部7a、7bとを備える。円筒部4の外周面の軸方向中間部には、ローラクラッチ1を構成する内径側係合面である、カム面6が設けられている。カム面6には、複数のカム凹部8が、円周方向に関して等間隔に、かつ、それぞれのカム凹部8の深さが円周方向片側に向かうほど大きくなるように、構成されている。また、円筒部4の外周面の軸方向両端部で、カム面6の両側には、1対の円筒ころ軸受2a、2bを構成する、それぞれが円筒状である1対の内輪軌道7a、7bが設けられている。軸方向一方側(図1および図2の左側)に存在する一方の内輪軌道7aの外径は、カム面6の外接円の直径以上となっており、軸方向他方側(図1および図2の右側)に存在する他方の内輪軌道7bの外径は、カム凹部8の溝底の内接円の直径以下となっている。1対の内輪軌道7a、7bの外径側のそれぞれに、複数の円筒ころ16a、16bと、円筒ころ16a、16bを保持する円筒状の軸受用保持器17a、17bとが配置される。
ローラクラッチ1を構成する複数のローラ10は、それぞれ金属製で、内径側係合面であるカム面6のうち、カム凹部8の外径側(周囲)に1個ずつ配置される。クラッチ用保持器11aは、合成樹脂製で、全体が円筒状であり、複数のローラ10を保持した状態で、カム面6の周囲に配置される。クラッチ用保持器11aは、軸方向に間隔をあけて互いに同心に配置された、それぞれが円環状である1対のリム部12a、12bと、1対のリム部12a、12b同士の間に掛け渡された状態で、円周方向に間隔をあけて配置された、複数の柱部13と、1対のリム部12a、12bと複数の柱部13のうちの円周方向に隣り合う柱部13とにより四周を囲まれた部分に形成され、それぞれローラ10を1個ずつ保持する、複数のポケット15とにより構成される。それぞれのローラ10は、図示しない複数のばねにより、円周方向に関してカム凹部8の深さが小さくなる方向に向けて弾性的に押圧されている。
本例の特徴は、内輪3aと、クラッチ用保持器11aとの間に、内輪3aに対するクラッチ用保持器11aの軸方向変位を規制する手段が設けられている点にある。その他の部分の構造および作用は、従来構造の一方向クラッチ装置と同様であるから、重複する説明は省略もしくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。なお、以下、本例では、上述のような構造のカム式の一方向クラッチを備えた一方向クラッチ装置が採用されているが、本発明はこれ以外に、係合子としてスプラグが採用されたスプラグ式の一方向クラッチを備えた一方向クラッチ装置にも適用可能である。この場合、内径側係合面は円筒面により構成される。
本例の場合、内輪3aのカム面6の軸方向他端部(図1および図2の右端部)の円周方向複数箇所で、円周方向に隣り合うカム凹部8同士の間部分の一つおきに、係合凹部22が形成されている。ただし、係合凹部22の設置個数は、クラッチ用保持器11aの軸方向変位を阻止する機能を奏する限り、任意であり、円周方向に等間隔に設置されることが好ましい。本例の場合、係合凹部22は、それぞれ半球状である。一方、クラッチ用保持器11aを構成する軸方向他方側(図1および図2の右側)のリム部12bの内周面の円周方向複数箇所で、係合凹部22と整合する位置には、係合凸部23が形成されている。本例の場合、係合凸部23は、それぞれ係合凹部22に合致する半球状である。カム面6の外径側にクラッチ用保持器11aを組み付けた状態では、係合凸部23は、係合凹部22に対して、がたつくことなく係合する。これにより、内輪3aに対するクラッチ用保持器11aの軸方向変位が規制される。なお、本例の場合、係合凹部22は、内輪3aの外周面にカム凹部8をフライス加工などにより形成した後、ポンチの先端部を押し付けることにより形成される。一方、係合凸部23は、クラッチ用保持器11aを射出成形する際に同時に形成される。なお、内輪3aに対する追加の加工量を少なく抑える観点からは、係合凹部の形状は半球状であることが好ましいが、代替的に、係合凹部の形状として、円周方向に伸長する長円形状など、クラッチ用保持器11aの軸方向変位を阻止でき、かつ、軸方向の幅が大きくない構造であれば、任意の形状を採用可能である。
本例の一方向クラッチ装置の場合、係合凹部22と係合凸部23との係合に基づいて、内輪3aに対するクラッチ用保持器11aの軸方向変位が規制される。このため、本例の一方向クラッチ装置を組み立てる際に、他方(図1および図2の右方)の外向鍔部5bを形成する前の段階で、内輪3aの外径側に組み付けられたクラッチ用保持器11aが、内輪3の外径側から軸方向他方側に不用意に抜け出すことが防止される。さらには、オーバラン状態での運転時に、クラッチ用保持器11aと他方の外向鍔部5bとの間で、他方の円筒ころ軸受2bを構成する軸受用保持器17bが軸方向に強く挟持されて、一方向クラッチ装置のオーバラン状態が適切に維持されなくなってしまうことが防止される。
また、係合凹部22は、それぞれ半球状の凹部により構成されるため、係合凹部22を形成するために使用するポンチの先端面は、係合凹部22の内面に合致する半球状の凸面となり、強度的に優れたものとなる。したがって、係合凹部22の直径を小さくする場合でも、ポンチの耐久性を確保することができる。言い換えると、ポンチの耐久性を確保しつつ、係合凹部22の直径を小さくすることができる。よって、係合凹部22を形成する際の、内輪3aの加工量を少なく抑えることができ、ひいては、ポンチの押付力を小さく抑えることができる。この結果、ポンチの押付力を発生させる装置として小型のものを使用できるため、その分だけ製造コストを抑えることができる。
また、カム面6のうち、係合凹部22が形成される、円周方向に隣り合うカム凹部8同士の間部分の円周方向幅は、係合凹部22の直径に応じて、所定量だけ確保する必要がある。この点、本例では、係合凹部22の直径を十分に小さくすることができるため、円周方向に隣り合うカム凹部8同士の間部分の円周方向幅を、係合凹部22の形成に伴って増大させる必要がないか、係合凹部22の形成に伴って増大させる場合でも、その増加量を十分に抑えることができる。また、カム面6の直径についても、係合凹部22の形成に伴って増大させる必要がないか、係合凹部22の形成に伴って増大させる場合でも、その増加量を十分に抑えることができる。一方、係合凸部23については、クラッチ用保持器11aを射出成形する際に同時に形成することができる。
カム面6の外径側にクラッチ用保持器11aを組み付ける作業は、内輪3aの軸方向他端部に、他方の外向鍔部5bを形成する前の状態で、内輪3aをクラッチ用保持器11aの内径側に、クラッチ用保持器11aの軸方向一端(図1および図2の左端)開口部から挿通することにより行われる。この際、係合凸部22は、カム面6のうち、円周方向に隣り合うカム凹部8同士の間部分の軸方向他端縁(図1および図2の右端縁)から、これらの円周方向に隣り合うカム凹部8同士の間部分に弾性的に乗り上がる。そして、これらの円周方向に隣り合うカム凹部8同士の間部分の上を軸方向に滑り移動した後、係合凹部23と整合した時点で弾性的に復元し、係合凹部23と係合する。このように、係合凸部22が、円周方向に隣り合うカム凹部8同士の間部分の上を軸方向に滑り移動する際には、係合凸部22と円周方向に隣り合うカム凹部8同士の間部分との間に大きな摺動抵抗力が作用する。ただし、本例の場合、係合凸部22が、クラッチ用保持器11aの軸方向他端部(図1および図2の右端部)に存在する他方のリム部12bの内周面にのみ設けられており、しかも、係合凹部23が、円周方向に隣り合うカム凹部8同士の間部分の軸方向他端部に設けられているため、大きな摺動抵抗力が作用する滑り移動の距離L(図4)が非常に短い。したがって、内輪3aの挿通作業を容易に行うことができる。
なお、本例の場合には、係合凹部22と係合凸部23との係合に基づいて、内輪3aに対するクラッチ用保持器11aの円周方向変位も規制することが可能である。このため、この円周方向変位を規制するために別途設けられている、クラッチ用保持器11aの内周面の突起14a、14bを、省略することも可能である。ただし、クラッチ用保持器11aの円周方向変位を確実に規制し、一方向クラッチの信頼性を確保するためには、突起14a、14bを設けることが好ましい。
[実施の形態の第2例]
本例の場合、クラッチ用保持器11の他方側のリム部12bの軸方向他端面(図6および図7の右端面)と対向および隣接する位置に、環状部材24が、内輪3のカム面6の軸方向他端部(図6および図7の右端部)に締り嵌めで外嵌固定されている。本例では、環状部材24の存在に基づいて、内輪3に対するクラッチ用保持器11の軸方向他方側(図6および図7の右側)への変位が規制されている。
このため、本例の一方向クラッチ装置を組み立てる際に、他方(図6および図7の右方)の外向鍔部5bを形成する前の段階で、内輪3の外径側に環状部材24とクラッチ用保持器11とを組み付ければ、その後、クラッチ用保持器11が内輪3の外径側から軸方向他方側に不用意に抜け出してしまうことが防止される。さらには、オーバラン状態での運転時に、クラッチ用保持器11と他方の外向鍔部5bとの間で、他方の円筒ころ軸受2bを構成する軸受用保持器17bが軸方向に強く挟持されて、一方向クラッチ装置のオーバラン状態が適切に維持されなくなってしまうといった不都合が生じることが防止される。また、本例の場合、環状部材24は、内輪3の外周面に、締り嵌めにより外嵌固定されているだけである。このため、環状部材24を利用した軸方向変位規制手段を追加するために、内輪3に追加の加工を施す必要がないという利点がある。
なお、本例では、杆状部材24は、クラッチ用保持器11の他方側のリム部12bと同様の径方向高さを有するが、クラッチ用保持器の他方側のリム部の内径側で軸方向一部に切り欠きを設け、環状部材を該切り欠きに収容される大きさと形状とし、該環状部材を、クラッチ用保持器の軸方向他端面の一部と対向および隣接させて配置する構造も採用可能である。その他の部分の構造および作用は、実施の形態の第1例と同様である。
上述した実施の形態では、内輪3aの軸方向両端部に外向鍔部5a、5bが設けられている構造が採用されているが、本発明を実施する場合、一方の外向鍔部(たとえば5b)を省略した構造を採用することもできる。このような構造を採用する場合、使用時に、省略した外向鍔部側の軸受用保持器(たとえば17b)の軸方向外端面と対向する位置に、周囲に存在する他の部材の一部を配置することにより、当該軸受用保持器の軸方向変位を規制することが可能である。
本発明は、アイドリングストップ車のスタータ装置、オルタネータなどの各種自動車用補機、トランスミッション用オイルポンプなど、各種機械装置の回転伝達部分に組み込まれる、一方向クラッチに広く適用可能である。
1 ローラクラッチ
2a、2b 円筒ころ軸受
3、3a 内輪
4 円筒部
5a、5b 外向鍔部
6 カム面
7a、7b 内輪軌道
8 カム凹部
9 段差面
10 ローラ
11、11a クラッチ用保持器
12a、12b リム部
13 柱部
14a、14b 突起
15 ポケット
16a、16b 円筒ころ
17a、17b 軸受用保持器
18 内径側部材
19 外径側部材
20 円筒面
21 外輪軌道
22 係合凹部
23 係合凸部
24 環状部材
本発明は、互いに同心に組み合わされた2つの部材が所定方向に相対回転する傾向となった場合にのみ、これらの部材同士の間での回転力の伝達を可能とする一方向クラッチ装置に関する。
アイドリングストップ車のスタータ装置、オルタネータなどの各種自動車用補機、トランスミッション用オイルポンプなど、各種機械装置の回転伝達部分には、所定方向の回転運動のみを伝達する、一方向クラッチが組み込まれている。また、特許文献1に記載されているように、この一方向クラッチと転がり軸受とを、共通の部品を使用してユニット化して、一方向クラッチ装置として構成することも行われている。このような一方向クラッチ装置の1例について、図8および図9を参照しつつ説明する。この一方向クラッチ装置では、一方向クラッチであるローラクラッチ1と、ローラクラッチ1の軸方向両側に隣接配置された1対の円筒ころ軸受2a、2bとが、共通の内輪3を使用することによりユニット化されている。
内輪3は、金属板製で、円筒部4と、円筒部4の軸方向両端部を径方向外方に折り曲げることにより形成された1対の外向鍔部5a、5bとを備える。円筒部4の外周面の軸方向中間部には、ローラクラッチ1を構成する内径側係合面である、カム面6が設けられており、円筒部4の外周面の軸方向両端部には、1対の円筒ころ軸受2a、2bを構成する、それぞれが円筒状である1対の内輪軌道7a、7bが設けられている。カム面6には、ランプ部と呼ばれる複数のカム凹部8が、円周方向に関して等間隔に形成されている。それぞれのカム凹部8の深さは、円周方向片側に向かうほど大きくなっている。また、1対の内輪軌道7a、7bのうち、軸方向一方側(図8および図9の左側)に存在する一方の内輪軌道7aの外径は、カム面6の外接円の直径以上となっている。これに対して、軸方向他方側(図8および図9の右側)に存在する他方の内輪軌道7bの外径は、カム凹部8の溝底の内接円の直径以下となっている。このため、それぞれのカム凹部8の軸方向両端縁のうち、軸方向一方側の端縁である軸方向一端縁は、軸方向に開口することなく、段差面9により塞がれている。これに対して、それぞれのカム凹部8の軸方向他方側の端縁である軸方向他端縁は、軸方向に開口している。
カム面6の外径側には、それぞれがローラクラッチ1を構成する係合子である、複数のローラ10と、クラッチ用保持器11と、図示しない複数のばねとが配置されている。ローラ10は、金属製である。ローラ10は、クラッチ用保持器11に保持された状態で、それぞれのカム凹部8の外径側に1個ずつ配置されている。一方、クラッチ用保持器11は、合成樹脂製で、円筒状に形成されている。クラッチ用保持器11は、軸方向に間隔をあけて互いに同心に配置された、それぞれが円環状である1対のリム部12a、12bと、これらのリム部12a、12b同士の間に掛け渡された状態で円周方向に等間隔に配置された複数の柱部13と、これらのリム部12a、12bの内周面の円周方向複数箇所に設けられた突起14a、14bとを備える。1対のリム部12a、12bと円周方向に隣り合う柱部13とにより四周を囲まれた部分には、それぞれのローラ10を転動並びに円周方向に関する若干の変位可能に保持するためのポケット15が形成されている。それぞれの突起14a、14bがカム凹部8に係合することにより、内輪3に対するクラッチ用保持器11の回転防止が図られている。それぞれのばねは、それぞれの柱部13とローラ10との間に組み付けられており、それぞれのローラ10を、円周方向に関してカム凹部8の深さが小さくなる方向に向け、弾性的に押圧している。
1対の内輪軌道7a、7bの外径側には、円筒ころ軸受2a、2bを構成する、複数ずつの円筒ころ16a、16bと、これらの円筒ころ16a、16bを転動自在に保持する円筒状の軸受用保持器17a、17bとが配置されている。円筒ころ16a、16bは、それぞれ金属製であり、軸受用保持器17a、17bは、それぞれ金属製もしくは合成樹脂製である。なお、内輪3を構成する1対の外向鍔部5a、5bのうち、軸方向一方側に存在する一方の外向鍔部5aは、円筒部4の周囲に他の構成部材が配置される前に形成されるため、円筒部4のうち隣接する一方の内輪軌道7aが設けられた部分と同等の厚さ寸法を有する。これに対し、軸方向他方側に存在する他方の外向鍔部5bは、円筒部4の周囲に他の構成部材(少なくともクラッチ用保持器11および軸受用保持器17a、17b)が配置された後に形成されるため、円筒部4のうち隣接する他方の内輪軌道7が設けられた部分よりも薄肉になっている。
このような一方向クラッチ装置を使用する際には、内輪3は、回転軸などの内径側部材18に外嵌固定される。また、ローラ10および円筒ころ16a、16bの外径側には、ハウジング、プーリなどの外径側部材19が組み付けられる。なお、外径側部材19または外径側部材19に内嵌固定された外輪などの他の部材の内周面のうち、ローラ10と対向する部分には、外径側係合面である円筒面20が設けられ、円筒ころ16a、16bと対向する部分には、円筒状の外輪軌道21が設けられている。円筒ころ軸受2a、2bにより、内径側部材18と外径側部材19との間に作用するラジアル荷重が支承され、かつ、内径側部材18と外径側部材19との相対回転が可能となる。一方、ローラクラッチ1により、内径側部材18と外径側部材19が所定方向に相対回転する傾向となる場合にのみ、内径側部材18と外径側部材19との間で回転力の伝達が可能となる。
すなわち、内径側部材18と外径側部材19とが所定方向に相対回転する傾向になると、ローラ10が、カム面6と円筒面20との間に存在する円筒状隙間のうち、カム凹部8の深さが小さくなった部分にくさび状に食い込む。この結果、内径側部材18と外径側部材19との間での回転力の伝達が可能なロック状態となる。これに対して、内径側部材18と外径側部材19とが、前記所定方向と反対方向に相対回転する傾向になると、ローラ10が、円筒状隙間のうち、カム凹部8の深さが大きくなった部分に移動して、転動自在となる。この結果、内径側部材18と外径側部材19が相対回転して、内径側部材18と外径側部材19とが、これらの間で回転力が伝達されないオーバラン状態となる。
このような一方向クラッチ装置の場合、カム凹部8の軸方向一端縁は、段差面9により塞がれている。このため、段差面9と、クラッチ用保持器11の軸方向一端部(図8および図9の左端部)内周面に設けられた突起14aとが、軸方向に係合する。段差面9と突起14aとの係合に基づいて、内輪3に対するクラッチ用保持器11の軸方向一方側への変位が規制される。この規制により、オーバラン状態での運転時に、クラッチ用保持器11が軸方向一方側に大きく変位することが防止され、クラッチ用保持器11と一方の外向鍔部5aとの間で、一方の円筒ころ軸受2aを構成する軸受用保持器17aが軸方向に強く挟持されることが防止される。
これに対して、カム凹部8の軸方向他端縁は、それぞれ軸方向に開口している。すなわち、カム凹部8の軸方向他端縁には、クラッチ用保持器11の軸方向他端部(図8および図9の右端部)内周面に設けられた突起14bが、軸方向に係合可能な段差面が存在しない。このため、突起14bを利用して、内輪3に対するクラッチ用保持器11の軸方向他方側への変位を規制することができない。したがって、オーバラン状態での運転時に、クラッチ用保持器11が軸方向他方側に大きく変位して、クラッチ用保持器11と他方の外向鍔部5bとの間で、他方の円筒ころ軸受2bを構成する軸受用保持器17bが軸方向に強く挟持される可能性がある。軸受用保持器17bが強く挟持された場合には軸受用保持器17bが内輪3に対して回転できなくなり、オーバラン状態を維持できなくなる可能性がある。さらに、一方向クラッチ装置の組み立て時に、他方の外向鍔部5bを形成する前の段階で、内輪3の外径側に組み付けられたクラッチ用保持器11が、内輪3の外径側から軸方向他方側に不用意に抜け出す可能性がある。このため、他方の外向鍔部5bを形成する作業は、クラッチ用保持器11の抜け出しに注意を払いながら行う必要があり、その分、この作業が面倒になる。
特許第3657330号公報
以上のような不都合を解消するため、一方向クラッチでは、内輪に対するクラッチ用保持器の軸方向他方側への変位を規制する手段を設けることが望まれる。ただし、製造コストを抑える必要性などから、内輪に対する追加の加工量はできるだけ少なく抑える必要がある。
本発明は、このような事情に鑑み、内輪に対する追加の加工量を少なく抑えることができ、かつ、金属製の内輪に対する合成樹脂製のクラッチ用保持器の軸方向変位を規制する手段を有する、一方向クラッチ装置の構造を実現することを目的とする。
本発明の一方向クラッチ装置は、
金属製で、外周面と、該外周面の軸方向一部に形成された内径側係合面とを有する、内輪と、
前記内径側係合面の周囲に配置される、複数の係合子と、
合成樹脂製で、全体が円筒状であり、前記複数の係合子を保持した状態で、前記内径側係合面の周囲に配置される、クラッチ用保持器と、
を備える。
特に、本発明の一方向クラッチ装置では、前記内輪と前記クラッチ用保持器との間に、前記内輪に対する前記クラッチ用保持器の軸方向変位を規制する手段が設けられていることを特徴とする。
より具体的には、前記クラッチ用保持器の軸方向変位を規制する手段は、前記内輪の外周面に形成され、径方向から見た形状が円形で、凹曲面からなる内面を有する係合凹部と、前記クラッチ用保持器の内周面に形成され、前記係合凹部に係合可能な形状を有する係合凸部とを備え、前記係合凹部と前記係合凸部との係合により、前記クラッチ用保持器の軸方向変位が阻止されている。好ましくは、前記係合凹部を、半球状凹部とする。
代替的あるいは追加的に、前記クラッチ用保持器の軸方向変位を規制する手段は、前記クラッチ用保持器の軸方向両端面のうち、少なくとも一方(本発明の実施の形態に於ける、軸方向他方側)の端面と隣接対向する位置に、前記内輪にり嵌めで外嵌固定された環状部材を備え、前記クラッチ用保持器の少なくとも一方(本発明の実施の形態に於ける、軸方向他方側)の端面と該環状部材との係合により、前記クラッチ用保持器の軸方向変位が阻止されている。
本発明は、次のような構造を有する一方向クラッチ装置に好適に適用される。すなわち、前記内径側係合面は、前記内輪の外周面に複数のカム凹部が円周方向に関して等間隔に形成された、カム面により構成される。前記係合子は、前記カム凹部のそれぞれの外径側に1つずつ配置された、複数のローラにより構成される。前記クラッチ用保持器は、軸方向に間隔をあけて互いに同心に配置された、それぞれが円環状である1対のリム部と、該1対のリム部同士の間に掛け渡された状態で、円周方向に間隔をあけて配置された、複数の柱部と、前記1対のリム部と前記複数の柱部のうちの円周方向に隣り合う柱部とにより四周を囲まれた部分に形成され、前記係合子を保持する、複数のポケットとを備える。
前記クラッチ用保持器の軸方向変位を規制する手段が、前記係合凹部と前記係合凸部により構成される場合、好ましくは、前記係合凹部は、前記カム面のうち、前記複数のカム凹部のうち円周方向に隣り合うカム凹部同士の間部分に形成される。また、前記係合凸部は、前記1対のリム部のうちの少なくとも一方のリム部の内周面に形成される。
本発明が適用される一方向クラッチ装置では、さらに好ましくは、前記内輪が、前記外周面を備えた円筒部と、該円筒部の軸方向両端部に設けられた外向鍔部とにより構成され、前記内径側係合面は、該円筒部の軸方向中間部に設けられており、かつ、前記外周面のうち、該内径側係合面の両側で、前記円筒部の軸方向両端部には、1対の内輪軌道が設けられており、該1対の内輪軌道の外径側のそれぞれに、複数の円筒ころと、該円筒ころを保持する円筒状の軸受用保持器とが配置される。
本発明の一方向クラッチ装置では、金属製の内輪の外周面に形成された係合凹部と、合成樹脂製のクラッチ用保持器の内周面に形成された係合凸部との係合、もしくは、クラッチ用保持器と環状部材との係合に基づいて、内輪に対するクラッチ用保持器の軸方向変位を規制することができる。このため、組立作業の際に、内輪の外径側に組み付けたクラッチ用保持器が軸方向に不用意に抜け出してしまうことが防止される。さらには、オーバラン状態での運転時に、クラッチ用保持器が、軸方向に隣り合う状態で配置された軸受用保持器に強く接触して、一方向クラッチ装置のオーバラン状態が適切に維持されなくなってしまうような事態の発生が防止される。
図1は、本発明の実施の形態の第1例の一方向クラッチ装置を示す断面図である。 図2は、第1例の一方向クラッチ装置を構成する内輪とクラッチ用保持器との分解斜視図である。 図3は、図1の拡大a−a断面図である。 図4は、図3のb−b断面図である。 図5(A)は、図2のc部拡大図であり、図5(B)は、d部拡大図である。 図6は、本発明の実施の形態の第2例の一方向クラッチ装置を示す断面図である。 図7は、第2例の一方向クラッチ装置を構成する内輪とクラッチ用保持器と環状部材との分解斜視図である。 図8は、従来構造の一方向クラッチ装置の1例を示す断面図である。 図9は、図8の一方向クラッチ装置を構成する内輪とクラッチ用保持器との分解斜視図である。
[実施の形態の第1例]
図1〜図5は、本発明の実施の形態の1例を示している。本例の一方向クラッチ装置は、基本的には従来例と同様に、内輪3と、複数の係合子である、複数のローラ10と、クラッチ用保持器11aとを備える。内輪3は、金属板製で、円筒部4と、円筒部4の軸方向両端部に設けられた1対の外向鍔部a、bとを備える。円筒部4の外周面の軸方向中間部には、ローラクラッチ1を構成する内径側係合面である、カム面6が設けられている。カム面6には、複数のカム凹部8が、円周方向に関して等間隔に、かつ、それぞれのカム凹部8の深さが円周方向片側に向かうほど大きくなるように、構成されている。また、円筒部4の外周面の軸方向両端部で、カム面6の両側には、1対の円筒ころ軸受2a、2bを構成する、それぞれが円筒状である1対の内輪軌道7a、7bが設けられている。軸方向一方側(図1および図2の左側)に存在する一方の内輪軌道7aの外径は、カム面6の外接円の直径以上となっており、軸方向他方側(図1および図2の右側)に存在する他方の内輪軌道7bの外径は、カム凹部8の溝底の内接円の直径以下となっている。1対の内輪軌道7a、7bの外径側のそれぞれに、複数の円筒ころ16a、16bと、円筒ころ16a、16bを保持する円筒状の軸受用保持器17a、17bとが配置される。
ローラクラッチ1を構成する複数のローラ10は、それぞれ金属製で、内径側係合面であるカム面6のうち、カム凹部8の外径側(周囲)に1個ずつ配置される。クラッチ用保持器11aは、合成樹脂製で、全体が円筒状であり、複数のローラ10を保持した状態で、カム面6の周囲に配置される。クラッチ用保持器11aは、軸方向に間隔をあけて互いに同心に配置された、それぞれが円環状である1対のリム部12a、12bと、1対のリム部12a、12b同士の間に掛け渡された状態で、円周方向に間隔をあけて配置された、複数の柱部13と、1対のリム部12a、12bと複数の柱部13のうちの円周方向に隣り合う柱部13とにより四周を囲まれた部分に形成され、それぞれローラ10を1個ずつ保持する、複数のポケット15とにより構成される。それぞれのローラ10は、図示しない複数のばねにより、円周方向に関してカム凹部8の深さが小さくなる方向に向けて弾性的に押圧されている。
本例の特徴は、内輪3aと、クラッチ用保持器11aとの間に、内輪3aに対するクラッチ用保持器11aの軸方向変位を規制する手段が設けられている点にある。その他の部分の構造および作用は、従来構造の一方向クラッチ装置と同様であるから、重複する説明は省略もしくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。なお、以下、本例では、上述のような構造のカム式の一方向クラッチを備えた一方向クラッチ装置が採用されているが、本発明は(本発明の技術的範囲からは外れるが)、これ以外に、係合子としてスプラグが採用されたスプラグ式の一方向クラッチを備えた一方向クラッチ装置にも適用可能である。この場合、内径側係合面は円筒面により構成される。
本例の場合、内輪3aのカム面6の軸方向他端部(図1および図2の右端部)の円周方向複数箇所で、円周方向に隣り合うカム凹部8同士の間部分の一つおきに、係合凹部22が形成されている。ただし、係合凹部22の設置個数は、クラッチ用保持器11aの軸方向変位を阻止する機能を奏する限り、任意であり、円周方向に等間隔に設置されることが好ましい。本例の場合、係合凹部22は、それぞれ半球状である。一方、クラッチ用保持器11aを構成する軸方向他方側(図1および図2の右側)のリム部12bの内周面の円周方向複数箇所で、係合凹部22と整合する位置には、係合凸部23が形成されている。本例の場合、係合凸部23は、それぞれ係合凹部22に合致する半球状である。カム面6の外径側にクラッチ用保持器11aを組み付けた状態では、係合凸部23は、係合凹部22に対して、がたつくことなく係合する。これにより、内輪3aに対するクラッチ用保持器11aの軸方向変位が規制される。なお、本例の場合、係合凹部22は、内輪3aの外周面にカム凹部8をフライス加工などにより形成した後、ポンチの先端部を押し付けることにより形成される。一方、係合凸部23は、クラッチ用保持器11aを射出成形する際に同時に形成される。なお、内輪3aに対する追加の加工量を少なく抑える観点からは、係合凹部の形状は半球状であることが好ましいが、代替的に、係合凹部の形状として、円周方向に伸長する長円形状など、クラッチ用保持器11aの軸方向変位を阻止でき、かつ、軸方向の幅が大きくない構造であれば、任意の形状を採用可能である。
本例の一方向クラッチ装置の場合、係合凹部22と係合凸部23との係合に基づいて、内輪3aに対するクラッチ用保持器11aの軸方向変位が規制される。このため、本例の一方向クラッチ装置を組み立てる際に、他方(図1および図2の右方)の外向鍔部5bを形成する前の段階で、内輪3aの外径側に組み付けられたクラッチ用保持器11aが、内輪3の外径側から軸方向他方側に不用意に抜け出すことが防止される。さらには、オーバラン状態での運転時に、クラッチ用保持器11aと他方の外向鍔部5bとの間で、他方の円筒ころ軸受2bを構成する軸受用保持器17bが軸方向に強く挟持されて、一方向クラッチ装置のオーバラン状態が適切に維持されなくなってしまうことが防止される。
また、係合凹部22は、それぞれ半球状の凹部により構成されるため、係合凹部22を形成するために使用するポンチの先端面は、係合凹部22の内面に合致する半球状の凸面となり、強度的に優れたものとなる。したがって、係合凹部22の直径を小さくする場合でも、ポンチの耐久性を確保することができる。言い換えると、ポンチの耐久性を確保しつつ、係合凹部22の直径を小さくすることができる。よって、係合凹部22を形成する際の、内輪3aの加工量を少なく抑えることができ、ひいては、ポンチの押付力を小さく抑えることができる。この結果、ポンチの押付力を発生させる装置として小型のものを使用できるため、その分だけ製造コストを抑えることができる。
また、カム面6のうち、係合凹部22が形成される、円周方向に隣り合うカム凹部8同士の間部分の円周方向幅は、係合凹部22の直径に応じて、所定量だけ確保する必要がある。この点、本例では、係合凹部22の直径を十分に小さくすることができるため、円周方向に隣り合うカム凹部8同士の間部分の円周方向幅を、係合凹部22の形成に伴って増大させる必要がないか、係合凹部22の形成に伴って増大させる場合でも、その増加量を十分に抑えることができる。また、カム面6の直径についても、係合凹部22の形成に伴って増大させる必要がないか、係合凹部22の形成に伴って増大させる場合でも、その増加量を十分に抑えることができる。一方、係合凸部23については、クラッチ用保持器11aを射出成形する際に同時に形成することができる。
カム面6の外径側にクラッチ用保持器11aを組み付ける作業は、内輪3aの軸方向他端部に、他方の外向鍔部5bを形成する前の状態で、内輪3aをクラッチ用保持器11aの内径側に、クラッチ用保持器11aの軸方向一端(図1および図2の左端)開口部から挿通することにより行われる。この際、係合凸部23は、カム面6のうち、円周方向に隣り合うカム凹部8同士の間部分の軸方向他端縁(図1および図2の右端縁)から、これらの円周方向に隣り合うカム凹部8同士の間部分に弾性的に乗り上がる。そして、これらの円周方向に隣り合うカム凹部8同士の間部分の上を軸方向に滑り移動した後、係合凹部22と整合した時点で弾性的に復元し、係合凹部22と係合する。このように、係合凸部23が、円周方向に隣り合うカム凹部8同士の間部分の上を軸方向に滑り移動する際には、係合凸部23と円周方向に隣り合うカム凹部8同士の間部分との間に大きな摺動抵抗力が作用する。ただし、本例の場合、係合凸部23が、クラッチ用保持器11aの軸方向他端部(図1および図2の右端部)に存在する他方のリム部12bの内周面にのみ設けられており、しかも、係合凹部22が、円周方向に隣り合うカム凹部8同士の間部分の軸方向他端部に設けられているため、大きな摺動抵抗力が作用する滑り移動の距離L(図4)が非常に短い。したがって、内輪3aの挿通作業を容易に行うことができる。
なお、本例の場合には、係合凹部22と係合凸部23との係合に基づいて、内輪3aに対するクラッチ用保持器11aの円周方向変位も規制することが可能である。このため、この円周方向変位を規制するために別途設けられている、クラッチ用保持器11aの内周面の突起14a、14bを、省略することも可能である。ただし、クラッチ用保持器11aの円周方向変位を確実に規制し、一方向クラッチの信頼性を確保するためには、突起14a、14bを設けることが好ましい。
[実施の形態の第2例]
図6〜図7は、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合、クラッチ用保持器11の他方側のリム部12bの軸方向他端面(図6および図7の右端面)と対向および隣接する位置に、環状部材24が、内輪3のカム面6の軸方向他端部(図6および図7の右端部)に締り嵌めで外嵌固定されている。本例では、環状部材24の存在に基づいて、内輪3に対するクラッチ用保持器11の軸方向他方側(図6および図7の右側)への変位が規制されている。
このため、本例の一方向クラッチ装置を組み立てる際に、他方(図6および図7の右方)の外向鍔部5bを形成する前の段階で、内輪3の外径側に環状部材24とクラッチ用保持器11とを組み付ければ、その後、クラッチ用保持器11が内輪3の外径側から軸方向他方側に不用意に抜け出してしまうことが防止される。さらには、オーバラン状態での運転時に、クラッチ用保持器11と他方の外向鍔部5bとの間で、他方の円筒ころ軸受2bを構成する軸受用保持器17bが軸方向に強く挟持されて、一方向クラッチ装置のオーバラン状態が適切に維持されなくなってしまうといった不都合が生じることが防止される。また、本例の場合、環状部材24は、内輪3の外周面に、締り嵌めにより外嵌固定されているだけである。このため、環状部材24を利用した軸方向変位規制手段を追加するために、内輪3に追加の加工を施す必要がないという利点がある。
なお、本例では、状部材24は、クラッチ用保持器11の他方側のリム部12bと同様の径方向高さを有するが、クラッチ用保持器の他方側のリム部の内径側で軸方向一部に切り欠きを設け、環状部材を該切り欠きに収容される大きさと形状とし、該環状部材を、クラッチ用保持器の軸方向他端面の一部と対向および隣接させて配置する構造も採用可能である。その他の部分の構造および作用は、実施の形態の第1例と同様である。
上述した実施の形態では、内輪3a、3bの軸方向両端部に外向鍔部5a、5bが設けられている構造が採用されている。但し、本発明の技術的範囲からは外れるが、上述した実施の形態の変形例として、一方の外向鍔部(たとえば5b)を省略した構造を採用することもできる。このような構造を採用する場合、使用時に、省略した外向鍔部側の軸受用保持器(たとえば17b)の軸方向外端面と対向する位置に、周囲に存在する他の部材の一部を配置することにより、当該軸受用保持器の軸方向変位を規制することが可能である。
本発明は、アイドリングストップ車のスタータ装置、オルタネータなどの各種自動車用補機、トランスミッション用オイルポンプなど、各種機械装置の回転伝達部分に組み込まれる、一方向クラッチに広く適用可能である。
1 ローラクラッチ
2a、2b 円筒ころ軸受
3、3a、3b 内輪
4 円筒部
5a、5b 外向鍔部
6 カム面
7a、7b 内輪軌道
8 カム凹部
9 段差面
10 ローラ
11、11a クラッチ用保持器
12a、12b リム部
13 柱部
14a、14b 突起
15 ポケット
16a、16b 円筒ころ
17a、17b 軸受用保持器
18 内径側部材
19 外径側部材
20 円筒面
21 外輪軌道
22 係合凹部
23 係合凸部
24 環状部材
本発明は、互いに同心に組み合わされた2つの部材が所定方向に相対回転する傾向となった場合にのみ、これらの部材同士の間での回転力の伝達を可能とする一方向クラッチ装置に関する。
アイドリングストップ車のスタータ装置、オルタネータなどの各種自動車用補機、トランスミッション用オイルポンプなど、各種機械装置の回転伝達部分には、所定方向の回転運動のみを伝達する、一方向クラッチが組み込まれている。また、特許文献1に記載されているように、この一方向クラッチと転がり軸受とを、共通の部品を使用してユニット化して、一方向クラッチ装置として構成することも行われている。このような一方向クラッチ装置の1例について、図8および図9を参照しつつ説明する。この一方向クラッチ装置では、一方向クラッチであるローラクラッチ1と、ローラクラッチ1の軸方向両側に隣接配置された1対の円筒ころ軸受2a、2bとが、共通の内輪3を使用することによりユニット化されている。
内輪3は、金属板製で、円筒部4と、円筒部4の軸方向両端部を径方向外方に折り曲げることにより形成された1対の外向鍔部5a、5bとを備える。円筒部4の外周面の軸方向中間部には、ローラクラッチ1を構成する内径側係合面である、カム面6が設けられており、円筒部4の外周面の軸方向両端部には、1対の円筒ころ軸受2a、2bを構成する、それぞれが円筒状である1対の内輪軌道7a、7bが設けられている。カム面6には、ランプ部と呼ばれる複数のカム凹部8が、円周方向に関して等間隔に形成されている。それぞれのカム凹部8の深さは、円周方向片側に向かうほど大きくなっている。また、1対の内輪軌道7a、7bのうち、軸方向一方側(図8および図9の左側)に存在する一方の内輪軌道7aの外径は、カム面6の外接円の直径以上となっている。これに対して、軸方向他方側(図8および図9の右側)に存在する他方の内輪軌道7bの外径は、カム凹部8の溝底の内接円の直径以下となっている。このため、それぞれのカム凹部8の軸方向両端縁のうち、軸方向一方側の端縁である軸方向一端縁は、軸方向に開口することなく、段差面9により塞がれている。これに対して、それぞれのカム凹部8の軸方向他方側の端縁である軸方向他端縁は、軸方向に開口している。
カム面6の外径側には、それぞれがローラクラッチ1を構成する係合子である、複数のローラ10と、クラッチ用保持器11と、図示しない複数のばねとが配置されている。ローラ10は、金属製である。ローラ10は、クラッチ用保持器11に保持された状態で、それぞれのカム凹部8の外径側に1個ずつ配置されている。一方、クラッチ用保持器11は、合成樹脂製で、円筒状に形成されている。クラッチ用保持器11は、軸方向に間隔をあけて互いに同心に配置された、それぞれが円環状である1対のリム部12a、12bと、これらのリム部12a、12b同士の間に掛け渡された状態で円周方向に等間隔に配置された複数の柱部13と、これらのリム部12a、12bの内周面の円周方向複数箇所に設けられた突起14a、14bとを備える。1対のリム部12a、12bと円周方向に隣り合う柱部13とにより四周を囲まれた部分には、それぞれのローラ10を転動並びに円周方向に関する若干の変位可能に保持するためのポケット15が形成されている。それぞれの突起14a、14bがカム凹部8に係合することにより、内輪3に対するクラッチ用保持器11の回転防止が図られている。それぞれのばねは、それぞれの柱部13とローラ10との間に組み付けられており、それぞれのローラ10を、円周方向に関してカム凹部8の深さが小さくなる方向に向け、弾性的に押圧している。
1対の内輪軌道7a、7bの外径側には、円筒ころ軸受2a、2bを構成する、複数ずつの円筒ころ16a、16bと、これらの円筒ころ16a、16bを転動自在に保持する円筒状の軸受用保持器17a、17bとが配置されている。円筒ころ16a、16bは、それぞれ金属製であり、軸受用保持器17a、17bは、それぞれ金属製もしくは合成樹脂製である。なお、内輪3を構成する1対の外向鍔部5a、5bのうち、軸方向一方側に存在する一方の外向鍔部5aは、円筒部4の周囲に他の構成部材が配置される前に形成されるため、円筒部4のうち隣接する一方の内輪軌道7aが設けられた部分と同等の厚さ寸法を有する。これに対し、軸方向他方側に存在する他方の外向鍔部5bは、円筒部4の周囲に他の構成部材(少なくともクラッチ用保持器11および軸受用保持器17a、17b)が配置された後に形成されるため、円筒部4のうち隣接する他方の内輪軌道7bが設けられた部分よりも薄肉になっている。
このような一方向クラッチ装置を使用する際には、内輪3は、回転軸などの内径側部材18に外嵌固定される。また、ローラ10および円筒ころ16a、16bの外径側には、ハウジング、プーリなどの外径側部材19が組み付けられる。なお、外径側部材19または外径側部材19に内嵌固定された外輪などの他の部材の内周面のうち、ローラ10と対向する部分には、外径側係合面である円筒面20が設けられ、円筒ころ16a、16bと対向する部分には、円筒状の外輪軌道21が設けられている。円筒ころ軸受2a、2bにより、内径側部材18と外径側部材19との間に作用するラジアル荷重が支承され、かつ、内径側部材18と外径側部材19との相対回転が可能となる。一方、ローラクラッチ1により、内径側部材18と外径側部材19が所定方向に相対回転する傾向となる場合にのみ、内径側部材18と外径側部材19との間で回転力の伝達が可能となる。
すなわち、内径側部材18と外径側部材19とが所定方向に相対回転する傾向になると、ローラ10が、カム面6と円筒面20との間に存在する円筒状隙間のうち、カム凹部8の深さが小さくなった部分にくさび状に食い込む。この結果、内径側部材18と外径側部材19との間での回転力の伝達が可能なロック状態となる。これに対して、内径側部材18と外径側部材19とが、前記所定方向と反対方向に相対回転する傾向になると、ローラ10が、円筒状隙間のうち、カム凹部8の深さが大きくなった部分に移動して、転動自在となる。この結果、内径側部材18と外径側部材19が相対回転して、内径側部材18と外径側部材19とが、これらの間で回転力が伝達されないオーバラン状態となる。
このような一方向クラッチ装置の場合、カム凹部8の軸方向一端縁は、段差面9により塞がれている。このため、段差面9と、クラッチ用保持器11の軸方向一端部(図8および図9の左端部)内周面に設けられた突起14aとが、軸方向に係合する。段差面9と突起14aとの係合に基づいて、内輪3に対するクラッチ用保持器11の軸方向一方側への変位が規制される。この規制により、オーバラン状態での運転時に、クラッチ用保持器11が軸方向一方側に大きく変位することが防止され、クラッチ用保持器11と一方の外向鍔部5aとの間で、一方の円筒ころ軸受2aを構成する軸受用保持器17aが軸方向に強く挟持されることが防止される。
これに対して、カム凹部8の軸方向他端縁は、それぞれ軸方向に開口している。すなわち、カム凹部8の軸方向他端縁には、クラッチ用保持器11の軸方向他端部(図8および図9の右端部)内周面に設けられた突起14bが、軸方向に係合可能な段差面が存在しない。このため、突起14bを利用して、内輪3に対するクラッチ用保持器11の軸方向他方側への変位を規制することができない。したがって、オーバラン状態での運転時に、クラッチ用保持器11が軸方向他方側に大きく変位して、クラッチ用保持器11と他方の外向鍔部5bとの間で、他方の円筒ころ軸受2bを構成する軸受用保持器17bが軸方向に強く挟持される可能性がある。軸受用保持器17bが強く挟持された場合には軸受用保持器17bが内輪3に対して回転できなくなり、オーバラン状態を維持できなくなる可能性がある。さらに、一方向クラッチ装置の組み立て時に、他方の外向鍔部5bを形成する前の段階で、内輪3の外径側に組み付けられたクラッチ用保持器11が、内輪3の外径側から軸方向他方側に不用意に抜け出す可能性がある。このため、他方の外向鍔部5bを形成する作業は、クラッチ用保持器11の抜け出しに注意を払いながら行う必要があり、その分、この作業が面倒になる。
特許第3657330号公報
以上のような不都合を解消するため、一方向クラッチでは、内輪に対するクラッチ用保持器の軸方向他方側への変位を規制する手段を設けることが望まれる。ただし、製造コストを抑える必要性などから、内輪に対する追加の加工量はできるだけ少なく抑える必要がある。
本発明は、このような事情に鑑み、内輪に対する追加の加工量を少なく抑えることができ、かつ、金属製の内輪に対する合成樹脂製のクラッチ用保持器の軸方向変位を規制する手段を有する、一方向クラッチ装置の構造を実現することを目的とする。
本発明の一方向クラッチ装置は、内輪と、複数の係合子と、クラッチ用保持器と、複数の円筒ころと、1対の軸受用保持器と、を備える。
このうちの内輪は、金属製で、外周面を備えた円筒部と、該円筒部の軸方向両端部に設けられた1対の外向鍔部とにより構成され、前記円筒部の外周面の軸方向中間部に内径側係合面が設けられており、かつ、該円筒部の外周面のうち、該内径側係合面の両側で、該円筒部の軸方向両端部に、1対の内輪軌道が設けられており、前記内径側係合面は、前記円筒部の外周面の軸方向中間部に複数のカム凹部が円周方向に関して等間隔に形成された、カム面により構成される。
また、前記複数の係合子は、前記カム凹部のそれぞれの外径側に1つずつ配置された、複数のローラにより構成される。
また、前記クラッチ用保持器は、合成樹脂製で、軸方向に間隔をあけて互いに同心に配置された、それぞれが円環状である1対のリム部と、該1対のリム部同士の間に掛け渡された状態で、円周方向に間隔をあけて配置された、複数の柱部と、前記1対のリム部と前記複数の柱部のうちの円周方向に隣り合う柱部とにより四周を囲まれた部分に形成され、前記係合子を保持する、複数のポケットとにより構成され、前記内径側係合面の周囲に配置される。
また、前記複数の円筒ころは、前記1対の内輪軌道の外径側のそれぞれに配置される。
また、前記1対の軸受用保持器は、前記1対の内輪軌道の外径側のそれぞれに配置され、前記円筒ころを保持する。
また、前記1対の内輪軌道のうち、軸方向一方側に存在する一方の内輪軌道の外径は、前記内径側係合面の外接円の直径以上であり、前記1対の内輪軌道のうち、軸方向他方側に存在する他方の内輪軌道の外径は、前記内径側係合面の内接円の直径以下である。
また、前記1対の外向鍔部のうち、軸方向一方側に存在する一方の外向鍔部は、前記円筒部のうち隣接する前記一方の内輪軌道が設けられた部分と同等の厚さ寸法を有し、前記1対の外向鍔部のうち、軸方向他方側に存在する他方の外向鍔部は、前記円筒部のうち隣接する前記他方の内輪軌道が設けられた部分よりも薄肉である。
特に、本発明の一方向クラッチ装置では、前記内輪と前記クラッチ用保持器との間に、前記内輪に対する前記クラッチ用保持器の軸方向変位を規制する手段が設けられていることを特徴とする。
より具体的には、前記クラッチ用保持器の軸方向変位を規制する手段は、前記カム面の軸方向他端部で前記複数のカム凹部のうち円周方向に隣り合うカム凹部同士の間部分に、径方向外方にのみ開口する状態で形成された係合凹部と、前記1対のリム部のうちの軸方向他方側のリム部の内周面に形成され、前記係合凹部に係合可能な形状を有する係合凸部とを備え、前記係合凹部と前記係合凸部との係合により、前記クラッチ用保持器の軸方向変位を阻止するものである。
なお、本発明を実施する場合には、例えば、前記係合凹部が径方向から見た形状が円形で、凹曲面からなる内面を有するものであり、前記係合凸部が半球状である構成を採用する事ができる。
また、本発明を実施する場合に、好ましくは、前記係合凹部を、半球状凹部とする。
本発明とは異なる発明として代替的に、あるいは、本発明の一態様として追加的に、前記クラッチ用保持器の軸方向変位を規制する手段は、前記クラッチ用保持器の軸方向両端面のうち、少なくとも軸方向他方側の端面と隣接対向する位置に、前記内輪に締り嵌めで外嵌固定された環状部材を備え、前記クラッチ用保持器の少なくとも軸方向他方側の端面と該環状部材との係合により、前記クラッチ用保持器の軸方向変位が阻止されている。
本発明の一方向クラッチ装置では、金属製の内輪の外周面に形成された係合凹部と、合成樹脂製のクラッチ用保持器の内周面に形成された係合凸部との係合、もしくは、クラッチ用保持器と環状部材との係合に基づいて、内輪に対するクラッチ用保持器の軸方向変位を規制することができる。このため、組立作業の際に、内輪の外径側に組み付けたクラッチ用保持器が軸方向に不用意に抜け出してしまうことが防止される。さらには、オーバラン状態での運転時に、クラッチ用保持器が、軸方向に隣り合う状態で配置された軸受用保持器に強く接触して、一方向クラッチ装置のオーバラン状態が適切に維持されなくなってしまうような事態の発生が防止される。
図1は、本発明の実施の形態の第1例の一方向クラッチ装置を示す断面図である。 図2は、第1例の一方向クラッチ装置を構成する内輪とクラッチ用保持器との分解斜視図である。 図3は、図1の拡大a−a断面図である。 図4は、図3のb−b断面図である。 図5(A)は、図2のc部拡大図であり、図5(B)は、d部拡大図である。 図6は、本発明に関連する参考例の第1例の一方向クラッチ装置を示す断面図である。 図7は、参考例の第1例の一方向クラッチ装置を構成する内輪とクラッチ用保持器と環状部材との分解斜視図である。 図8は、従来構造の一方向クラッチ装置の1例を示す断面図である。 図9は、図8の一方向クラッチ装置を構成する内輪とクラッチ用保持器との分解斜視図である。
[実施の形態の第1例]
図1〜図5は、本発明の実施の形態の第1例を示している。本例の一方向クラッチ装置は、基本的には従来例と同様に、内輪3aと、複数の係合子である、複数のローラ10と、クラッチ用保持器11aとを備える。内輪3aは、金属板製で、円筒部4と、円筒部4の軸方向両端部に設けられた1対の外向鍔部5a、5bとを備える。円筒部4の外周面の軸方向中間部には、ローラクラッチ1を構成する内径側係合面である、カム面6が設けられている。カム面6には、複数のカム凹部8が、円周方向に関して等間隔に、かつ、それぞれのカム凹部8の深さが円周方向片側に向かうほど大きくなるように、構成されている。また、円筒部4の外周面の軸方向両端部で、カム面6の両側には、1対の円筒ころ軸受2a、2bを構成する、それぞれが円筒状である1対の内輪軌道7a、7bが設けられている。軸方向一方側(図1および図2の左側)に存在する一方の内輪軌道7aの外径は、カム面6の外接円の直径以上となっており、軸方向他方側(図1および図2の右側)に存在する他方の内輪軌道7bの外径は、カム凹部8の溝底の内接円の直径以下となっている。1対の内輪軌道7a、7bの外径側のそれぞれに、複数の円筒ころ16a、16bと、円筒ころ16a、16bを保持する円筒状の軸受用保持器17a、17bとが配置される。
ローラクラッチ1を構成する複数のローラ10は、それぞれ金属製で、内径側係合面であるカム面6のうち、カム凹部8の外径側(周囲)に1個ずつ配置される。クラッチ用保持器11aは、合成樹脂製で、全体が円筒状であり、複数のローラ10を保持した状態で、カム面6の周囲に配置される。クラッチ用保持器11aは、軸方向に間隔をあけて互いに同心に配置された、それぞれが円環状である1対のリム部12a、12bと、1対のリム部12a、12b同士の間に掛け渡された状態で、円周方向に間隔をあけて配置された、複数の柱部13と、1対のリム部12a、12bと複数の柱部13のうちの円周方向に隣り合う柱部13とにより四周を囲まれた部分に形成され、それぞれローラ10を1個ずつ保持する、複数のポケット15とにより構成される。それぞれのローラ10は、図示しない複数のばねにより、円周方向に関してカム凹部8の深さが小さくなる方向に向けて弾性的に押圧されている。
本例の特徴は、内輪3aと、クラッチ用保持器11aとの間に、内輪3aに対するクラッチ用保持器11aの軸方向変位を規制する手段が設けられている点にある。その他の部分の構造および作用は、従来構造の一方向クラッチ装置と同様であるから、重複する説明は省略もしくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。なお、以下、本例では、上述のような構造のカム式の一方向クラッチを備えた一方向クラッチ装置が採用されているが、本発明は(本発明の技術的範囲からは外れるが)、これ以外に、係合子としてスプラグが採用されたスプラグ式の一方向クラッチを備えた一方向クラッチ装置にも適用可能である。この場合、内径側係合面は円筒面により構成される。
本例の場合、内輪3aのカム面6の軸方向他端部(図1および図2の右端部)の円周方向複数箇所で、円周方向に隣り合うカム凹部8同士の間部分の一つおきに、係合凹部22が形成されている。ただし、係合凹部22の設置個数は、クラッチ用保持器11aの軸方向変位を阻止する機能を奏する限り、任意であり、円周方向に等間隔に設置されることが好ましい。本例の場合、係合凹部22は、それぞれ半球状である。一方、クラッチ用保持器11aを構成する軸方向他方側(図1および図2の右側)のリム部12bの内周面の円周方向複数箇所で、係合凹部22と整合する位置には、係合凸部23が形成されている。本例の場合、係合凸部23は、それぞれ係合凹部22に合致する半球状である。カム面6の外径側にクラッチ用保持器11aを組み付けた状態では、係合凸部23は、係合凹部22に対して、がたつくことなく係合する。これにより、内輪3aに対するクラッチ用保持器11aの軸方向変位が規制される。なお、本例の場合、係合凹部22は、内輪3aの外周面にカム凹部8をフライス加工などにより形成した後、ポンチの先端部を押し付けることにより形成される。一方、係合凸部23は、クラッチ用保持器11aを射出成形する際に同時に形成される。なお、内輪3aに対する追加の加工量を少なく抑える観点からは、係合凹部の形状は半球状であることが好ましいが、代替的に、係合凹部の形状として、円周方向に伸長する長円形状など、クラッチ用保持器11aの軸方向変位を阻止でき、かつ、軸方向の幅が大きくない構造であれば、任意の形状を採用可能である。
本例の一方向クラッチ装置の場合、係合凹部22と係合凸部23との係合に基づいて、内輪3aに対するクラッチ用保持器11aの軸方向変位が規制される。このため、本例の一方向クラッチ装置を組み立てる際に、他方(図1および図2の右方)の外向鍔部5bを形成する前の段階で、内輪3aの外径側に組み付けられたクラッチ用保持器11aが、内輪3aの外径側から軸方向他方側に不用意に抜け出すことが防止される。さらには、オーバラン状態での運転時に、クラッチ用保持器11aと他方の外向鍔部5bとの間で、他方の円筒ころ軸受2bを構成する軸受用保持器17bが軸方向に強く挟持されて、一方向クラッチ装置のオーバラン状態が適切に維持されなくなってしまうことが防止される。
また、係合凹部22は、それぞれ半球状の凹部により構成されるため、係合凹部22を形成するために使用するポンチの先端面は、係合凹部22の内面に合致する半球状の凸面となり、強度的に優れたものとなる。したがって、係合凹部22の直径を小さくする場合でも、ポンチの耐久性を確保することができる。言い換えると、ポンチの耐久性を確保しつつ、係合凹部22の直径を小さくすることができる。よって、係合凹部22を形成する際の、内輪3aの加工量を少なく抑えることができ、ひいては、ポンチの押付力を小さく抑えることができる。この結果、ポンチの押付力を発生させる装置として小型のものを使用できるため、その分だけ製造コストを抑えることができる。
また、カム面6のうち、係合凹部22が形成される、円周方向に隣り合うカム凹部8同士の間部分の円周方向幅は、係合凹部22の直径に応じて、所定量だけ確保する必要がある。この点、本例では、係合凹部22の直径を十分に小さくすることができるため、円周方向に隣り合うカム凹部8同士の間部分の円周方向幅を、係合凹部22の形成に伴って増大させる必要がないか、係合凹部22の形成に伴って増大させる場合でも、その増加量を十分に抑えることができる。また、カム面6の直径についても、係合凹部22の形成に伴って増大させる必要がないか、係合凹部22の形成に伴って増大させる場合でも、その増加量を十分に抑えることができる。一方、係合凸部23については、クラッチ用保持器11aを射出成形する際に同時に形成することができる。
カム面6の外径側にクラッチ用保持器11aを組み付ける作業は、内輪3aの軸方向他端部に、他方の外向鍔部5bを形成する前の状態で、内輪3aをクラッチ用保持器11aの内径側に、クラッチ用保持器11aの軸方向一端(図1および図2の左端)開口部から挿通することにより行われる。この際、係合凸部23は、カム面6のうち、円周方向に隣り合うカム凹部8同士の間部分の軸方向他端縁(図1および図2の右端縁)から、これらの円周方向に隣り合うカム凹部8同士の間部分に弾性的に乗り上がる。そして、これらの円周方向に隣り合うカム凹部8同士の間部分の上を軸方向に滑り移動した後、係合凹部22と整合した時点で弾性的に復元し、係合凹部22と係合する。このように、係合凸部23が、円周方向に隣り合うカム凹部8同士の間部分の上を軸方向に滑り移動する際には、係合凸部23と円周方向に隣り合うカム凹部8同士の間部分との間に大きな摺動抵抗力が作用する。ただし、本例の場合、係合凸部23が、クラッチ用保持器11aの軸方向他端部(図1および図2の右端部)に存在する他方のリム部12bの内周面にのみ設けられており、しかも、係合凹部22が、円周方向に隣り合うカム凹部8同士の間部分の軸方向他端部に設けられているため、大きな摺動抵抗力が作用する滑り移動の距離L(図4)が非常に短い。したがって、内輪3aの挿通作業を容易に行うことができる。
なお、本例の場合には、係合凹部22と係合凸部23との係合に基づいて、内輪3aに対するクラッチ用保持器11aの円周方向変位も規制することが可能である。このため、この円周方向変位を規制するために別途設けられている、クラッチ用保持器11aの内周面の突起14a、14bを、省略することも可能である。ただし、クラッチ用保持器11aの円周方向変位を確実に規制し、一方向クラッチの信頼性を確保するためには、突起14a、14bを設けることが好ましい。
参考例の第1例
図6〜図7は、本発明に関連する参考例の第1例を示している。本参考例の場合、クラッチ用保持器11の他方側のリム部12bの軸方向他端面(図6および図7の右端面)と対向および隣接する位置に、環状部材24が、内輪3bのカム面6の軸方向他端部(図6および図7の右端部)に締り嵌めで外嵌固定されている。本参考例では、環状部材24の存在に基づいて、内輪3bに対するクラッチ用保持器11の軸方向他方側(図6および図7の右側)への変位が規制されている。
このため、本参考例の一方向クラッチ装置を組み立てる際に、他方(図6および図7の右方)の外向鍔部5bを形成する前の段階で、内輪3bの外径側に環状部材24とクラッチ用保持器11とを組み付ければ、その後、クラッチ用保持器11が内輪3bの外径側から軸方向他方側に不用意に抜け出してしまうことが防止される。さらには、オーバラン状態での運転時に、クラッチ用保持器11と他方の外向鍔部5bとの間で、他方の円筒ころ軸受2bを構成する軸受用保持器17bが軸方向に強く挟持されて、一方向クラッチ装置のオーバラン状態が適切に維持されなくなってしまうといった不都合が生じることが防止される。また、本参考例の場合、環状部材24は、内輪3bの外周面に、締り嵌めにより外嵌固定されているだけである。このため、環状部材24を利用した軸方向変位規制手段を追加するために、内輪3bに追加の加工を施す必要がないという利点がある。
なお、本参考例では、環状部材24は、クラッチ用保持器11の他方側のリム部12bと同様の径方向高さを有するが、クラッチ用保持器の他方側のリム部の内径側で軸方向一部に切り欠きを設け、環状部材を該切り欠きに収容される大きさと形状とし、該環状部材を、クラッチ用保持器の軸方向他端面の一部と対向および隣接させて配置する構造も採用可能である。その他の部分の構造および作用は、実施の形態の第1例と同様である。
上述した実施の形態の第1例および参考例では、内輪3a、3bの軸方向両端部に外向鍔部5a、5bが設けられている構造が採用されている。但し、本発明の技術的範囲からは外れるが、上述した実施の形態の第1例および参考例の変形例として、一方の外向鍔部(たとえば5b)を省略した構造を採用することもできる。このような構造を採用する場合、使用時に、省略した外向鍔部側の軸受用保持器(たとえば17b)の軸方向外端面と対向する位置に、周囲に存在する他の部材の一部を配置することにより、当該軸受用保持器の軸方向変位を規制することが可能である。
本発明は、アイドリングストップ車のスタータ装置、オルタネータなどの各種自動車用補機、トランスミッション用オイルポンプなど、各種機械装置の回転伝達部分に組み込まれる、一方向クラッチに広く適用可能である。
1 ローラクラッチ
2a、2b 円筒ころ軸受
3、3a、3b 内輪
4 円筒部
5a、5b 外向鍔部
6 カム面
7a、7b 内輪軌道
8 カム凹部
9 段差面
10 ローラ
11、11a クラッチ用保持器
12a、12b リム部
13 柱部
14a、14b 突起
15 ポケット
16a、16b 円筒ころ
17a、17b 軸受用保持器
18 内径側部材
19 外径側部材
20 円筒面
21 外輪軌道
22 係合凹部
23 係合凸部
24 環状部材

Claims (6)

  1. 金属製で、外周面と、該外周面の軸方向一部に形成された内径側係合面とを有する、内輪と、
    前記内径側係合面の周囲に配置される、複数の係合子と、
    合成樹脂製で、全体が円筒状であり、前記複数の係合子を保持した状態で、前記内径側係合面の周囲に配置される、クラッチ用保持器と、
    を備え、
    前記内輪と前記クラッチ用保持器との間に、前記内輪に対する前記クラッチ用保持器の軸方向変位を規制する手段が設けられている、
    一方向クラッチ装置。
  2. 前記クラッチ用保持器の軸方向変位を規制する手段は、前記内輪の外周面に形成され、径方向から見た形状が円形で、凹曲面からなる内面を有する係合凹部と、前記クラッチ用保持器の内周面に形成され、前記係合凹部に係合可能な形状を有する係合凸部とを備え、前記係合凹部と前記係合凸部との係合により、前記クラッチ用保持器の軸方向変位が阻止される、請求項1に記載の一方向クラッチ装置。
  3. 前記クラッチ用保持器の軸方向変位を規制する手段は、前記クラッチ用保持器の軸方向両端面のうち、少なくとも一方の端面と隣接対向する位置に、前記内輪に絞り嵌めで外嵌固定された環状部材を備え、前記クラッチ用保持器の少なくとも一方の端面と該環状部材との係合により、前記クラッチ用保持器の軸方向変位が阻止される、請求項1に記載の一方向クラッチ装置。
  4. 前記内径側係合面は、前記内輪の外周面に複数のカム凹部が円周方向に関して等間隔に形成された、カム面により構成され、
    前記係合子は、前記カム凹部のそれぞれの外径側に1つずつ配置された、複数のローラにより構成され、および、
    前記クラッチ用保持器は、軸方向に間隔をあけて互いに同心に配置された、それぞれが円環状である1対のリム部と、該1対のリム部同士の間に掛け渡された状態で、円周方向に間隔をあけて配置された、複数の柱部と、前記1対のリム部と前記複数の柱部のうちの円周方向に隣り合う柱部とにより四周を囲まれた部分に形成され、前記係合子を保持する、複数のポケットとにより構成されている、
    請求項1に記載の一方向クラッチ装置。
  5. 前記係合凹部は、前記カム面のうち、前記複数のカム凹部のうち円周方向に隣り合うカム凹部同士の間部分に形成され、前記係合凸部は、前記1対のリム部のうちの少なくとも一方のリム部の内周面に形成される、請求項2に従属する請求項4に記載の一方向クラッチ装置。
  6. 前記内輪が、前記外周面を備えた円筒部と、該円筒部の軸方向両端部のうちの少なくとも一方の端部に設けられた外向鍔部とにより構成され、前記内径側係合面は、該円筒部の軸方向中間部に設けられており、かつ、前記外周面のうち、該内径側係合面の両側で、前記円筒部の軸方向両端部には、1対の内輪軌道が設けられており、該1対の内輪軌道の外径側のそれぞれに、複数の円筒ころと、該円筒ころを保持する円筒状の軸受用保持器とが配置される、請求項4に記載の一方向クラッチ装置。
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