JPWO2014129382A1 - 多糖粉末およびこれを含む癒着防止材 - Google Patents

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Abstract

本発明は、多糖の水への溶解性を向上させる手段を提供する。本発明の多糖粉末は、全体積の30体積%以上の粒径が200〜750μmである粒度分布を有する。

Description

本発明は、多糖粉末およびこれを含む癒着防止材に関する。特に、本発明は、多糖の水への溶解性を向上させるための改良に関する。
外科手術において、手術操作により生体組織が損傷される場合がある。また、切開によって生体組織を空気中に露出させることにより、生体組織が乾燥または酸化され、その結果、生体組織が損傷することが知られている。そして、損傷した組織が術後に炎症などを起こすと、本来離れているべき組織同士が癒着する可能性がある。このような術後の組織の癒着は、例えば、腹腔領域においては、腸閉塞や不妊症などの深刻な合併症の原因となりうる。このため、生体組織の損傷箇所を被覆し、癒着を防ぐための癒着防止材が種々開発されている。
現在知られている癒着防止材は、生体に悪影響を及ぼしにくい多糖やポリペプチドなどの生体由来の高分子材料を主成分としており、その形態も粉末状、シート状、ゼリー状、または液体状など様々である。なかでも、液体状の癒着防止材は、生体組織の目的部位に噴霧することにより被覆できるという操作性のよさから、特に注目されている。
このような癒着防止材のうち、例えば、特許文献1では、多糖側鎖に活性水素含有基と反応しうる活性エステル基が導入された、架橋性多糖誘導体からなる癒着防止材が開示されている。該架橋性多糖誘導体は、アルカリ条件下での水との接触により、該活性エステル基と活性水素含有基との共有結合による架橋物を形成しうる。上記特許文献1では、好ましい形態として、上記架橋性多糖誘導体を含む水溶液を生体組織の目的部位に塗布した後、この上からアルカリ条件にするためのpH調整剤を含む水溶液を噴霧し、該架橋性多糖誘導体をゲル化する癒着防止方法が開示されている。
また、上述の架橋性多糖誘導体を含む水溶液およびpH調整剤を含む水溶液のような2液の薬液を、同時に噴霧することができる塗布具が開発されている(例えば、特許文献2)。かような塗布具を用いることによって、1回の噴霧で癒着防止材を目的部位に塗布することができる。なお、水に溶解した状態の多糖は乾燥固体状の多糖よりも劣化しやすいために、手術現場で乾燥固体状の多糖に水を加えて多糖水溶液を都度調製することが望ましい。
国際公開第2005/087289号(米国特許出願公開第2008/058469号公報に相当) 特開2008−289986号公報(米国特許出願公開第2008/294099号公報に相当)
しかしながら、上述の癒着防止材として好ましく使用される多糖は、疎水性官能基を有するまたは分子量が大きいために、一般に難水溶性である。よって、乾燥固体状の多糖を水に溶解するのに時間がかかり、迅速な多糖水溶液の調製が困難である。そのため、難水溶性の多糖を含む癒着防止材は、手術現場での急な適用に対応できないという問題点を有していた。
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、多糖の水への溶解性を向上させる手段を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った。その結果、特定の粒度分布を有する多糖粉末が有意に優れた可溶性(水への溶解性)を示すことを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の上記課題は、全体積の30体積%以上の粒径が200〜750μmである粒度分布を有する、多糖を含む粉末により達成される。
実施例1〜4及び比較例1〜4で得られた多糖粉末(1)〜(4)および比較多糖粉末(1)〜(5)の堆積頻度分布(動的画像解析法)のグラフである。
本発明は、全体積の30体積%以上の粒径(直径)が200〜750μmである粒度分布を有する、多糖を含む粉末(本明細書中では、「本発明の多糖粉末」または「多糖粉末」とも称する)を提供する。上記構成によれば、多糖の水への溶解性を向上することができる。なお、本発明の多糖粉末は、多糖のみから構成されてもあるいは多糖及び多糖以外の構成成分から構成されてもよい。
従来、噴霧等により生体組織の目的部位を容易に被覆できるという操作性の観点から、多糖溶液(特に多糖水溶液)が癒着防止材として使用されている。しかし、多糖は、疎水性官能基または高分子量により一般的に難水溶性である。このため、手術現場での急な適用への対応を目的として、多糖粉末の水溶性の向上が課題であった。多糖を粉末化する方法として、多糖をバイアルに溶液を充填し凍結乾燥する方法が一般的に使用されている。しかし、上記方法で得られた多糖の凍結乾燥粉末を高濃度で溶解する場合には、完全に溶解するまでかなり時間(例えば、5分程度)かかるため、特に医療現場での急な適用には対応しきれない場合がある。このため、多糖の水溶解性(水溶解速度)の改善が求められる。
このような多糖の凍結乾燥粉末の難溶解性を解決するために、比表面積(水との接触面積)を増やすことにより溶解性を向上しようとして、例えば、トレイに多糖溶液をシート状に充填したものを凍結乾燥し、それを粉砕する製造方法が考えられる。本願発明者らが上記方法について実験を行った結果、完全に溶解に溶解するまでの時間をある程度(例えば、約2分)短縮でき、ある程度の水溶解性の改善が見られた。しかしながら、単なる粉末化のみでは溶解途中で粉体がダマを形成したり、バイアル底部に粉体が付着したりと、難溶解性を示すリスクが高い傾向にあり、十分な改善効果が見られなかった。
また、多糖の凍結乾燥粉体を多孔質構造体とし、その孔の大きさ及び分布を特定の範囲に調節することによって、水溶性を向上する方法も報告されている(国際公開第2011/027706号(米国特許出願公開第2012/157672号公報に相当))。しかしながら、当該方法は凍結乾燥条件を精密に調節する必要があり、より簡単な方法で水溶性に優れた多糖粉末を製造できる方法が望まれていた。
これに対して、本発明は、多糖粉末の粒度分布を全体積の30体積%以上の粒径(直径)が200〜750μmであるという特定の粒度分布とすることに特徴がある。このように大半の粉末が大きめな粒度となるようにすることによって、水溶性を向上できる。また、乱雑な(粒度分布の広い)粉体とすることによって、水溶性をさらに向上できる。よって、手術現場で、注射剤や輸液調製など様々な医療現場で、迅速に多糖水溶液を調製することが可能となる。
本発明に係る多糖粉末が優れた水溶性を発揮するメカニズムは不明であるが、以下のように推測される。なお、下記推測によって本発明は限定されない。詳細には、通常、水への迅速な溶解性の観点からは、微粉末化すること(粒径の減少)が好ましい。一方、粒子(粉末)間にはファンデルワールス力が作用するが、このファンデルワールス力は粒径の2乗に反比例するため、粒径の小さい粒子ほど大きなファンデルワールス力が粒子(粉末)間に作用する。また、低湿度(乾燥)条件下では、静電気力が粒子(粉末)間には作用し、また、適度な湿度のある(例えば、RH 60%以上)条件下では、液架橋力が粒子(粉末)間には作用するため、粒子同士が凝集する。このため、微粉末のみが存在すると、ファンデルワールス力、静電気力、液架橋力などの作用により、微粉末同士が結着したり、溶解中にダマを形成したり、容器壁面(例えば、容器底側面部)に付着したりして、必ずしも良好な水溶性(均一な溶解性)が得られなかった。このため、本願発明者らが上記現象について鋭意検討を行った結果、粒径が200〜750μmの多糖粉末がある程度(30体積%以上)を占める多糖粉末が溶解性の改善に寄与していることを見出した。このような大きさの粉末が多数を占める多糖粉末は、その大きさにより、粉末間のファンデルワールス力や静電気力が弱く、液架橋も起こりにくいため、粉末同士の結着が起こりにくいまたは起こらない。また、当該多糖粉末中に上記粒径より小さな微粉末が含まれていたとしても、微粉末間に上記200〜750μmの粒径の粉末が介在するため、上記現象を抑制、防止して、微粉末同士の結着、溶解中のダマの形成、容器壁面への付着が起こりにくいまたは起こらない。したがって、本発明の多糖粉末は、優れた水溶性を発揮できる(素早く水に溶解できる)。ゆえに、本発明の多糖粉末を含む癒着防止材は、手術現場で、注射剤や輸液調製時など様々な医療現場での急な適用にも迅速に対応できる。上記効果は、多糖が疎水性基を有する場合に特に効果的に発揮できる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味し、「重量」と「質量」、「重量%」と「重量%」及び「重量部」と「質量部」は同義語として扱う。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で測定する。
[多糖粉末]
本発明の多糖粉末は、全体積の30体積%以上の粒径(直径)が200〜750μmである粒度分布を有する。このような粒度分布を有する多糖粉末は、良好な水溶性を示す。ここで、200〜750μmである粒度分布を有する多糖粉末の含有量が全体積の30体積%未満である場合には、水溶性に劣り、急な手術現場に良好に対応できない。好ましくは、本発明の多糖粉末は、全体積の40体積%以上、より好ましくは50体積%以上、特に好ましくは60体積%以上の粒径が200〜750μmである粒度分布を有する。ここで、200〜750μmである粒度分布を有する多糖粉末の含有量の上限は、特に制限されないが、水溶性の向上などを考慮すると、70体積%以下であることが好ましく、65体積%以下であることがより好ましく、55体積%以下であることが特に好ましい。
なお、本明細書において、「良好な水溶性を示す」とは、下記実施例の「溶解性評価」にて、最短の溶解時間が90秒以下であることを意味する。好ましくは、下記実施例の「溶解性評価」に測定される際の、最短の溶解時間が、60秒以下であることが好ましく、30秒以下であることがより好ましい。ここで、最短の溶解時間の下限は、溶解時間が短いほど好ましいため、特に限定されないが、手術現場での適用を鑑みると、通常、1秒以上であれば十分である。また、下記実施例の「溶解性評価」にて、最短の溶解時間が30秒以下であるサンプル数が最も多いことが好ましく、全サンプル中60%以上のサンプルの最短の溶解時間が30秒以下であることがより好ましく、全サンプル中70%以上のサンプルの最短の溶解時間が30秒以下であることが特に好ましい。
本明細書において、「多糖」とは、単糖がグリコシド結合によって結合してなる重合体であって、分子量が1000以上であるものをいう。
また、本明細書において、「粒径が200〜750μmである粒度分布を有する多糖粉末の含有量(粒度分布)」は、動的画像解析法(測定機器:株式会社 セイシン企業 社製、商品名:PITA−2)を用いて、10000個の粒子画像を換算し、投影面積から円相当径(投影面積に等しい粒子径)を求め、個数×粒子体積を全体積とし、それに基づいて体積頻度分布(体積分布(個数基準))を算出し、粒径(直径)が200〜750μmである範囲の多糖粉末の体積を全体積で除した割合(体積%)として表す。
本発明の多糖粉末のピークトップは、特に制限されないが、100〜500μmであることが好ましく、120〜350μmであることがより好ましく、120〜320μmであることが特に好ましい。このようなピークトップを有する多糖粉末は、粒径の小さい微粉末間に特に効率よく介在でき、微粉末同士の結着、溶解中のダマの形成、容器壁面への付着を抑制・防止できる。なお、本明細書において、「多糖粉末のピークトップ」は、上記で測定された体積分布(個数基準)の最も高い部分(ピーク)に対応する粒径(頻度が最大となった粒子径)(直径)(μm)である。
本発明の多糖粉末の粒度分布は、特に制限されないが、多糖粉末が広い粒度分布を有することが好ましい。具体的には、多糖粉末は、累積体積比率が10%となる粒径(D10)が60〜120μmであることが好ましく、65〜110μmであることがより好ましい。また、多糖粉末は、累積体積比率が90%となる粒径(D90)が300〜520μmであることが好ましく、320〜515μmであることがより好ましい。さらに、多糖粉末は、累積体積比率が50%となる粒径(D50)が120μm超300μm未満であることが好ましく、130〜270μmであることがより好ましい。このような広い粒度分布を有することにより、粒径の大きめの粉末が粒径の小さい微粉末間により有効に介在して、微粉末同士の結着、溶解中のダマの形成、容器壁面への付着をより効率的に抑制・防止できる。
本発明の多糖粉末を構成する単糖は、特に制限はないが、例えば、リボース、キシロース、アラビノース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、ラムノース、フコース、およびリボデオース、ならびにこれらに任意の官能基が導入された単糖誘導体が挙げられる。多糖は、これらの単糖のうち、1種のみから構成されてもよいし、2種以上が組み合わされて構成されてもよく、直鎖状であってもよいし、分岐を含んでいてもよい。また、天然に存在する多糖を用いてもよいし、合成したものであっても構わない。
多糖の主鎖となる多糖は、上記単糖構造を主骨格に2単位以上有するものであればよく、特に制限されない。例えば、トレハロース、スクロース、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、メリビオース等の二糖類;ラフィノース、ゲンチアノース、メレチトース、スタキオース、デキストリン、デキストラン、およびセルロース等の三糖以上の多糖類が、共有結合することにより形成されたもの、およびこれに対して、さらに官能基を導入した誘導体などが挙げられる。このような多糖は、天然に存在するものでも、人工的に合成されたものでもよい。これらの多糖のうち、生体への投与実績の観点から、グルコースまたはグルコース誘導体を含む多糖であることが好ましく、具体的には、デキストリン、デキストラン、およびセルロース、ならびにこれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の多糖を含むことがより好ましい。
デキストランは、代用血漿剤として使用されており、「Dextran T fractions」(アマシャムバイオサイエンス社)の商品名で入手可能である。
デキストリンは、デンプンの加水分解物であり、分子鎖長の異なるグルコース重合体の混合物である。デキストリンにおけるグルコース単位は、主としてα−1,4結合であり、通常、ある程度の割合でα−1,6結合を含む。本発明では、デキストリン原料のでんぷん種は特に限定されず、したがってα−1,6結合の存在割合も特に限定されない。本発明で用いられるデキストリンは、入手しやすさ、用時の物性、扱い易さ、被膜形成性などを考慮して、典型的に分子量(Mw)が10〜200kDa程度のものである。いずれの多糖も、本発明においては、一般的に商業流通しているものを利用できる。上記医療用途で実績のある多糖は、本発明においては安全性面で好適に利用できる多糖である。特に、デキストリンは、アナフィラキシーショックが報告されておらず、腹膜透析での使用実績もあり、生体適応における不具合が未だ報告されていない点で特に好ましい多糖である。
本形態に係る多糖は、好ましくは、カルボキシル基、活性エステル基、カルボン酸塩、アミノ基、およびアルデヒド基からなる群から選択される少なくとも1種を有することが好ましい。このような官能基は、エステル結合またはアミド結合を形成する架橋点となりうるので、癒着防止材の構成成分として好適である。癒着防止材としてこれらの官能基が含まれると、該多糖を含む水溶液をアルカリ条件下としたときに、多糖に含まれる上記官能基、およびヒドロキシ基、ならびに生体組織表面に存在するヒドロキシ基などがエステル結合またはアミド結合を形成して架橋する。これにより、多糖粉末(癒着防止材)がゲル状となり生体組織の表面を被覆することができる。
カルボキシル基を有する多糖の一例としては、多糖のヒドロキシ基にカルボキシアルキル基が導入されてなる形態が挙げられる。該カルボキシアルキル基としては、好ましくは、炭素原子数2〜5のカルボキシアルキル基が挙げられ、具体的には、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基、カルボキシイソプロピル基、およびカルボキシブチル基などが挙げられる。このうち、カルボキシメチル基またはカルボキシエチル基であることが好ましく、カルボキシメチル基(カルボキシメチル化多糖)であることがより好ましい。なお、本発明では、多糖におけるカルボキシ基は、塩が配位していない「非塩型」であることが望ましく、最終的に得られる活性エステル化多糖が塩形態ではないことが望ましい。ここで「塩」とは、アルカリ金属、アルカリ土類金属などの無機塩、テトラブチルアンモニウム(TBA)などの四級アミン、ヨウ化クロロメチルピリジリウムなどのハロゲン塩などを包含する。「非塩型」とは、これらの「塩」が配位していないことであり、「塩形態ではない」とは、これらの塩を含まないことを意味する。
多糖のカルボキシ化反応は、公知の酸化反応を利用して、特に制限なく行うことができる。多糖の水酸基を酸化してカルボン酸とする場合、反応の種類は特に限定されないが、例えば、四酸化二窒素酸化、発煙硫酸酸化、リン酸酸化、硝酸酸化、過酸化水素酸化が挙げられ、各々、試薬を用いて通常知られた反応を選択して酸化することができる。各反応条件はカルボキシ基の導入量により適宜設定することができる。例えば、原料となる多糖をクロロホルムあるいは四塩化炭素中に懸濁させ、四酸化二窒素を加えることにより、多糖の水酸基を酸化してカルボン酸を有する酸型多糖を調製することができる。
多糖のカルボキシアルキル化反応は、公知の方法を利用することができ、特に限定されないが、具体的にカルボキシメチル化反応の場合には、多糖をアルカリ化した後にモノクロル酢酸を使用した反応を選択することが可能である。その反応条件はカルボキシメチル基の導入量により適宜設定することができる。ここでの多糖は、通常、水溶液で反応に供される。カルボキシ基を導入した酸型多糖は、通常、貧溶媒(通常アルコール)を用いて析出させ、減圧乾燥する。
多糖にカルボキシ基を導入する方法として、上記カルボン酸化またはカルボキシアルキル化のいずれの方法も利用でき、特に限定されないが、カルボキシ基導入反応による多糖の分子量の低下が小さく、カルボキシ基の導入量を比較的コントロールしやすい点で、カルボキシアルキル化、特にカルボキシメチル化が好適である。このカルボキシメチル基を、以下「CM−」とも記す。
次に、活性エステル基を有する多糖(活性エステル化多糖)の一例としては、カルボキシル基を有する多糖に含まれるカルボキシル基と、N−ヒドロキシアミン系化合物とがエステル化されてなる形態が挙げられる。
活性エステル基は、多糖と求電子性基導入剤とを反応させることによって形成される。この際、多糖は、1種であってもあるいは2種以上の混合物であってもよい。活性エステル基は、カルボキシ基のカルボニル炭素に、通常のアルコールよりも強い求電子性基が結合した基であり、アルカリ共存下の水存在下でエステル結合が解離する。このような活性エステル基を形成する求電子性基導入剤としては、典型的に、比較的安価に入手可能なN−ヒドロキシアミン系化合物が用いられる。具体的には、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシノルボルネン−2,3−ジカルボン酸イミド、2−ヒドロキシイミノ−2−シアノ酢酸エチルエステル、2−ヒドロキシイミノ−2−シアノ酢酸アミド、N−ヒドロキシピペリジン、N−ヒドロキシフタルイミド、N−ヒドロキシイミダゾール、N−ヒドロキシマレイミド等が代表的なものとして挙げられる。これら化合物は、1種であってもあるいは2種以上の混合物であってもよい。これらのうち、N−ヒドロキシイミド、特に、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)が、ペプチド合成分野での実績があり、商業上入手し易いため好ましい。
活性エステル化に使用される多糖は、その乾燥質量1gあたりのカルボキシ基(該基を1分子とみなして)量が、通常、0.1〜5mmol/g、好ましくは0.4〜3mmol/g、より好ましくは0.5〜2mmol/gである。このカルボキシ基量の割合が、0.1mmol/gより少ないと、該基から誘導され架橋点となる活性エステル基数が不充分になる場合が多い。一方、カルボキシ基量の割合が、5mmol/gより多くなると、活性エステル化多糖(未架橋)が水を含む溶媒に溶解しにくくなる場合がある。なお、多糖のカルボキシ基量はフェノールフタレインを指示薬として酸塩基逆滴定により定量することができる(下記実施例における(多糖のカルボキシ基量の測定方法)の項参照)。なお、最終的な活性エステル化多糖において、活性エステル化されていないカルボキシ基が残存していてもよい。したがって上記カルボキシ基量は、最終的な活性エステル化多糖における活性エステル基と活性エステル化されていないカルボキシ基の合計量となる。
また、多糖は、通常、非プロトン性極性溶媒の溶液として上記エステル化反応に供する。非プロトン性極性溶媒とは、電気的に陽性な官能基を有する求核剤と水素結合を形成できるプロトンを持たない極性溶媒であり、特に限定されないが、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどが例示される。多糖の溶媒への溶解性が良好であることから、DMSOが好適に利用できる。上記好ましい「非塩型」の酸型多糖であれば、通常、上記溶媒中で20℃〜120℃程度で(必要により加熱することにより)溶解することができる。
多糖と求電子性基導入剤とのエステル化反応は、通常、脱水縮合剤の存在下で行われる。脱水縮合剤は、カルボキシ基と求電子性基導入剤との縮合で生成する水分子を1つ引き抜き、すなわち脱水して、両者をエステル結合させるものである。脱水縮合剤としては、特に限定されないが、例えば、1−エチル−3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド塩酸塩(EDC)、1−シクロヘキシル−(2−モルホニル−4−エチル)−カルボジイミド・メソp−トルエンスルホネート等が挙げられる。このなかでは、1−エチル−3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド塩酸塩(EDC)が、ペプチド合成分野での実績があり、商業上入手し易いことより好適である。
エステル化反応工程の反応温度は、特に限定されないが、好ましくは0℃〜70℃、より好ましくは、20℃〜40℃である。反応時間は反応温度により様々であるが、通常は1〜48時間、好ましくは12時間〜24時間である。
上記エステル化反応により生成した活性エステル化多糖は、晶析させて回収してもよいが、析出前に活性エステル化多糖を多価カルボン酸と接触させてもよい。ここで、多価カルボン酸は、ジカルボン酸以上であればよいが、通常、入手容易なジカルボン酸およびトリカルボン酸から選ばれる。特に、従来医薬品添加物として実績のあるジカルボン酸としてコハク酸およびリンゴ酸、トリカルボン酸としてクエン酸が好ましい。これらを2種以上併用してもよい。多価カルボン酸の使用量は、通常、求電子性基導入剤の仕込み1モルに対する酸当量で、通常、1当量以上、通常、1〜10当量である。この範囲であれば、最終的に水不溶物を生じない活性エステル化多糖乾燥品を得ることができる。好ましくは1.5当量以上である。あまり多すぎると乾燥時の経時的な平均分子量Mw変化率が高くなる傾向があり、好ましくは9当量以下、より好ましくは7.5当量以下である。典型的には、3当量である。活性エステル化多糖と多価カルボン酸との接触は、具体的には、エステル化反応後の反応液に多価カルボン酸を加え、混合すればよい。混合時間は、特に制限されず、通常1〜60分である。
上記接触の後、従来と同様に活性エステル化多糖を析出させ、回収する。通常、反応液を、過剰量のアルコール、アセトンなどの貧溶媒中に注入して析出させ、デカンテーション、遠心、ろ過などの適宜の方法で回収する。析出物の貧溶媒による洗浄を少なくとも1回繰り返して精製することが好ましい。この析出・精製工程における濾過および/または洗浄等の手段により、未反応の求電子性基導入剤、脱水縮合剤、反応副生成物とともに反応系に供した多価カルボン酸も除去され、最終活性エステル化多糖中には実質的に多価カルボン酸は残留しない。
活性エステル化多糖は、水に不安定であり、析出・精製工程後の活性エステル化多糖は通常減圧乾燥する。減圧乾燥は、45℃以下の温度で、通常、少なくとも1時間、好ましくは4時間、通常24時間程度行うことが望ましい。本発明の製造工程で得られる活性エステル化多糖は、この減圧乾燥時における経時的な分子量増大が抑制されている。
カルボン酸塩を有する多糖は、カルボキシル基を有する多糖に含まれるカルボキシル基から水素イオンが抜けたカルボン酸イオンが、水素イオン以外の陽イオンとイオン結合してなる多糖である。該陽イオンとしては、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、テトラ(n−ブチル)アンモニウム、およびテトラ(n−プロピルメチル)アンモニウムなどの四級アンモニウムイオンなどが挙げられる。
また、アミノ基を有する多糖としては、例えば、グルコサミンおよびグルコサミンなどのアミノ糖を含む多糖や、イソウレア中間体を含む多糖(下記化学式1の構造を含む多糖)などが挙げられる。
また、アルデヒド基を有する多糖としては、例えば、多糖の還元末端にアルドースを含む多糖が挙げられる。
上記官能基を有する多糖は、天然から得られるものであってもよいし、化学的または生物学的手法によりこれらの官能基を有する多糖を製造しても構わない。これらの官能基を含む多糖の製造方法は、従来公知の手段を適宜採用することができる。
なお、本発明の多糖粉末は、上記多糖以外の構成成分を含んでもよいことはいうまでもない。多糖以外の構成成分としては、例えば、分子量1000未満のオリゴ糖などが挙げられるが、これらに制限されるものではない。
多糖の重量平均分子量(Mw)は、特に制限はないが、好ましくは20,000〜200,000であり、より好ましくは30,000〜120,000である。このような比較的大きな分子量であっても、本発明の粒度分布を有する多糖粉末は、良好な水溶性を示す。また、このような分子量を有する多糖粉末を癒着防止材として用いた場合に、架橋後の多糖が良好なゲル硬度を有しうる。なお、本明細書において、重量平均分子量は、以下の測定条件でGPC(標準物質:プルラン)によって得られる値を採用する。
また、本発明の多糖の製造方法は、特に制限されず、WO 2005/087289号パンフレット、特開2011−68827号公報、特開2008−29824等に記載の方法など、公知の方法が同様にしてあるいは適宜修飾して適用できる。
[多糖粉末の製造方法]
本発明の多糖粉末の製造方法(粒度分布の調節方法)は、多糖粉末の粒度分布を粒径が200〜750μmである粉末の含有量を粉末の全体積の30体積%以上となるように調節することができる方法であれば特に制限されず、通常の分級によって調節されてもよい。好ましくは、上記のようにして調製された多糖を溶媒に溶解して多糖溶液を調製し(多糖溶液調製工程);前記多糖溶液を凍結乾燥して、凍結乾燥物を得(凍結乾燥工程);さらに前記凍結乾燥物を6000〜12000rpmの回転速度で粉砕する(粉砕工程)方法が好ましく適用される。すなわち、本発明は、多糖を溶媒に溶解して多糖溶液を調製し、前記多糖溶液を凍結乾燥して、凍結乾燥物を得、さらに前記凍結乾燥物を6000〜8000rpmの回転速度で粉砕することを有する、多糖乾燥粉末の製造方法をも提供する。このような方法によると、全体積の30体積%以上の粒径が200〜750μmである粒度分布を有する本発明の多糖粉末を効率的に製造できる。
以下、上記本発明の多糖粉末の製造方法(粒度分布の調節方法)の好ましい形態について詳述する。なお、本発明は、下記形態に限定されるものではない。
(多糖溶液調製工程)
本工程では、上記のようにして調製された多糖を溶媒に溶解して多糖溶液を調製する。
ここで、上記溶媒としては、多糖を溶解できるものであれば特に制限されない。具体的には、水が好ましく、不純物が少ないという点で、RO水(逆浸透(Reverse Osmosis)膜で不純物を取り除いた水)、蒸留水、および注射用蒸留水がより好ましい。また、溶媒の量は、特に制限はないが、多糖1gに対して、好ましくは6〜20g、より好ましくは8〜15gである。
また、上記多糖溶液は、次工程(凍結乾燥工程)中の多糖の安定化を目的として、安定化剤を含んでもよい。ここで、安定化剤としては、特に制限されず、公知の安定化剤が使用できる。具体的には、スクロース、トレハロース、スタキオース、及びラフィノース等の非還元糖;デキストラン、可溶性デンプン、デキストリン、及びイヌリンなどの多糖;アピオース、アラビノース、リキソース、リボース、キシロース、ジギトキソース、フコース、クエルシトール、キノボース、ラムノース、アロース、アルトロース、フルクトース、ガラクトース、グルコース、グロース、ハマメロース、イドース、マンノース、及びタガトース等の単糖;プリメベロース、ビシアノース、ルチノース、シラビオース、セロビオース、ゲンチオビオース(gentiobiose)、ラクトース、ラクツロース、マルトース、メリビオース、ソホロース(sophorose)、及びラノース等の、二糖;トコフェロール、トコフェロール誘導体類、マンニトールなどが挙げられる。多糖溶液が安定化剤を含む場合の、安定化剤の量は、特に制限されないが、次工程(凍結乾燥工程)中の多糖の安定化を考慮すると、多糖1gに対して、好ましくは0.5〜1.25g、より好ましくは0.75〜1gである。
多糖を溶媒に溶解する際の溶解方法も特に制限はなく、一般的には攪拌によって行うが、多糖の化学的特性に著しい悪影響を及ぼさない限りにおいては、加温を伴う溶解であってもよい。好ましくは、多糖及び必要であれば安定化剤を溶媒に添加した後、0〜10℃で50分〜1時間、撹拌することにより溶解してもよいし、または、予め安定化剤を溶媒に添加・溶解した後、多糖をさらに添加し、0〜10℃で50分〜1時間、撹拌することにより溶解してもよい。上記溶解後、不純物の除去を目的として、必要であれば、溶液について濾過(例えば、フィルター濾過)を施してもよい。
(凍結乾燥工程)
本工程では、上記で得られた多糖溶液を凍結乾燥して、凍結乾燥物を得る。
ここで、多糖溶液の凍結乾燥条件は、多糖を適当な乾燥状態にできる条件であれば特に制限されず、公知と同様の条件が適用できる。例えば、凍結工程では、多糖溶液の氷結晶を形成させるが、この際の凍結工程における多糖溶液の冷却条件は、多糖溶液の量、冷却装置の特性などにより、一概にはいえないが、30〜165分間程度の時間をかけて冷却温度を0〜10℃から−30〜−50℃にまで徐々に低くしていき、−30〜−50℃の所定の温度に到達したら、この温度で400〜500分間維持する。ここで、上記冷却工程は、連続的に行われてもあるいは段階的に行われてもよい。冷却に用いる冷却/凍結装置は特に制限はないが、上述の凍結工程を達成するために、冷却凍結温度を調節できる冷却凍結装置であることが好ましく、冷却凍結温度および冷却凍結時間をプログラムによって制御できるものであることがより好ましい。また、凍結工程と、続く乾燥工程とをスムーズに行うために、凍結乾燥装置を用いることが特に好ましい。
凍結工程後、乾燥工程によって氷結晶に含まれる水分を減圧下で昇華させることにより除去する。この際の減圧条件は特に制限はないが、一般的には0.5〜5Paである。また、氷結晶の水分を液化させることなく昇華させるために、氷結晶を30℃以下、例えば、−60〜30℃程度に保つことが好ましい。なお、上記乾燥工程は、1段階で行われてもあるいは複数段階で条件を変化させて行ってもよい。乾燥装置は、冷却下で減圧乾燥できるものであればよく、公知の装置を適宜採用することができる。
(粉砕工程)
本工程では、上記で得られた凍結乾燥物を6000〜12000rpmの回転速度で粉砕する。これにより、上記で得られた凍結乾燥物は衝撃力により粉砕されて、本発明の粒度分布を有する多糖粉末が得られる。好ましくは、凍結乾燥物を6000〜8000rpmの回転速度で粉砕する。また、この際使用されうる粉砕機は、上記回転速度での粉砕が可能な機器であれば特に制限されない。例えば、超遠心粉砕機、カッターミル、ハンマーミル、フラッシュミル、ジェットミル、ボールミル、振動ボールミルなどが挙げられる。
ここで、粉砕条件は、本発明の粒度分布を有する多糖粉末が得られる条件であれば、特に制限されない。具体的には、粉砕温度は、20〜30℃、より好ましくは室温(25℃)付近である。また、粉砕時間は、5〜60分、より好ましくは10〜30分である。
上記粉砕工程中および/または上記粉砕工程後に、穴径(直径)が1〜10mmであるスクリーンを用いて追加の粉砕を行ってもよい。これにより、凍結乾燥物は衝撃力により粉砕されながらあるいは粉砕された(1次粉砕)後、さらに剪断力により粉砕され、その後特定範囲の穴径を有するスクリーンの穴を通過する(2次粉砕)ため、本発明の粒度分布を有する多糖粉末をより効率的に得ることができる。ここで、本発明の多糖粉末の粒度分布を鑑みると、スクリーンの穴径(直径)は、6〜10mmであることが好ましく、より好ましくは、スクリーンなしまたは8〜10mmである。本発明では、スクリーンなしで粉砕を行うまたは粉砕工程中に10mmのスクリーンを用いて追加の粉砕を行うことが特に好ましい。
なお、本粉砕工程では、凍結乾燥物を粉砕する前に、粗粉砕を行ってもよい。このような粗粉砕によって、粉砕をより効率的に行うことができる。ここで、粗粉砕は、いずれの方法によって、行われてもよいが、例えば、ヘラ、スパチュラ、すり鉢等を用いて手動で粉砕する方法などが挙げられる。この際、粗粉砕条件は、特に制限されないが、粗粉砕物の一番大きな辺の長さが3〜5cm程度となるような条件で、凍結乾燥物を粗粉砕することが好ましい。
(その他の工程)
上記多糖溶液調製工程、凍結乾燥工程及び粉砕工程によって、本発明の所望の粒度分布を有する多糖粉末が得られるが、必要であれば、上記粉末工程後、篩い工程(分級工程)を行ってもよい。当該工程を行うことにより、過度に大きな粉末を除去することができる。当該工程を行う場合の、篩の目開きは、特に制限されないが、過度に大きな粉末を除去するという観点からは、710〜1000μmであることが好ましい。また、当該篩い工程(分級工程)は、必要であれば、振動させながら行ってもよい。振動させながら篩いを行うことによって、粉末の回収量を増加させることができる。振動させながら篩いを行う際の振動条件は、特に制限されないが、例えば、1〜2mm/gの振幅で、20〜30℃で3〜10分間、振動させることが好ましい。
上記方法によって、本発明の所望の粒度分布を有する多糖粉末が得られる。
本発明の多糖粉末は、上述したように、優れた水溶性を発揮できる(素早く水に溶解できる)。ゆえに、本発明の多糖粉末は、癒着防止材として好ましく、この場合には手術現場での急な適用にも迅速に対応できる。したがって、本発明は、本発明の多糖粉末を含む、癒着防止材をも提供される。
本発明の癒着防止材は、本発明の多糖粉末のみから構成されてもあるいは他の成分を含んでも多糖組成物を形成してもよい。後者の場合、他の成分は、多糖粉末と接触した状態で多糖組成物を形成していてもよく、用時混合まで非接触状態であってもよい。また、他の成分は、特に制限されず、多糖粉末の種類などを考慮して適宜選択される。具体的に、例えば、pH調整剤、高分子材料などが挙げられる。なお、上記他の成分は、それぞれ、単独で使用されてももしくは2種以上の混合物の形態で使用されても、または少なくとも1種のpH調整剤及び少なくとも1種の高分子材料を組み合わせて使用されてもよい。
上記のうち、pH調整剤は、主に、本発明に係る多糖粉末/多糖組成物のpHを7.5〜12に調整するための水溶液、水を含有する溶媒、または塩(粉末)等でありうる。pH調整剤は、特に制限されないが、具体的には、炭酸水素ナトリウム水溶液または粉末、リン酸系緩衝液(リン酸水素二ナトリウム−リン酸二水素カリウム)、酢酸−アンモニア系緩衝液等が挙げられる。これらのうち、炭酸水素ナトリウムは医療用pH調整剤として、その約7%水溶液(pH8.3)が静脈注射液として利用されていることより、安全性の面で好適に使用できる。上記組成物の形態例としては、多糖粉末の濃度が1〜80%(w/v)の水溶液と、これとは別に保持されたpH7.5〜10.5に調整した水との2成分系が挙げられる。この系では、用時に両者を混合して、最終的な多糖粉末の濃度が0.1〜60%(w/v)の混合水溶液とすることができる。また、多糖粉末の濃度が1〜80%(w/v)の水溶液に、用時、pH調整剤の塩を添加して溶解させながら混合して、最終的な多糖粉末の濃度が0.1〜80%(w/v)の混合水溶液からなるものも挙げることができる。混合は、通常の混合方法を選択することができるが、混合状態が均一になるまで行うことが好ましく、所望の反応が進行する程度での均一さであればよい。
また、上記高分子材料は、特に限定されないが、例えば、多糖組成物を架橋させたときの含水ゲルの硬さ、その性状を調整する作用を有することが好ましい。上記点を考慮すると、高分子材料は、当該高分子材料の1分子中に2個以上の第1級アミノ基、チオール基、または水酸基を有することが好ましい。具体的には、ポリアルキレングリコール誘導体、ポリペプチド、多糖またはその誘導体が挙げられる。本発明に係る多糖組成物中の高分子材料の含有量に特に制限はないが、多糖組成物全体に対して、5〜50重量%で配合されるのが好ましい。
前記ポリアルキレングリコール誘導体としては、ポリエチレングリコール(PEG)誘導体、ポリプロピレングリコール誘導体、ポリブチレングリコール誘導体、ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールのブロックコポリマー誘導体、ランダムコポリマー誘導体が挙げられる。そして、ポリエチレングリコール誘導体の基本ポリマー骨格としては、エチレングリコール、ジグリセロール、ペンタエリスリトール、ヘキサグリセロールなどが挙げられる。ここで、上記ポリアルキレングリコール誘導体の分子量は、特に制限されないが、100〜50,000であることが好ましく、より好ましくは1,000〜20,000である。
上記ポリエチレングリコール誘導体は、特に限定されないが、例えば、両末端にチオール基を有する重量平均分子量が1,000、2,000、6,000または10,000のエチレングリコール型ポリエチレングリコール誘導体、両末端にアミノ基を有する重量平均分子量が1,000、2,000、6,000または10,000のエチレングリコール型ポリエチレングリコール誘導体、3つの末端にチオール基を有する重量平均分子量が5,000または10,000のトリメチロールエタン型ポリエチレングリコール誘導体、3つの末端にアミノ基を有する重量平均分子量が5,000または10,000のトリメチロールエタン型ポリエチレングリコール誘導体、4つの末端にチオール基を有する重量平均分子量が5,000、10,000または20,000のジグリセロール型ポリエチレングリコール誘導体、4つの末端にアミノ基を有する重量平均分子量が5,000、10,000または20,000のジグリセロール型ポリエチレングリコール誘導体、4つの末端にチオール基を有する重量平均分子量が10,000または20,000のペンタエリスリトール型ポリエチレングリコール誘導体、4つの末端にアミノ基を有する重量平均分子量が10,000または20,000のペンタエリスリトール型ポリエチレングリコール誘導体、8つの末端にチオール基を有する重量平均分子量が10,000または20,000のヘキサグリセロール型ポリエチレングリコール誘導体、8つの末端にアミノ基を有する重量平均分子量が10,000または20,000のヘキサグリセロール型ポリエチレングリコール誘導体などが挙げられる。なお、本明細書において、「重量平均分子量(weight-average molecularweight)」とは、高分子の平均分子量を表す数値の一つである。高分子は、同じ基本構造単位を有し異なる分子の長さ(鎖長)を有する分子の混合物であるため、分子の鎖長の違いに応じた分子量分布を有する。その分子量を示すために平均分子量を用いる。平均分子量には、重量平均分子量、数平均分子量等があるが、ここでは重量平均分子量を使用する。なお、本発明における重量平均分子量の値(100%)とは、その値に対して上限が110%のもの、下限が90%のものも包含する。ポリエチレングリコール誘導体は、例えば、Poly(ethylene Glycol) Chemistry: Biotechnical and Biomedical Applications, J Milton Harris編, Plenum Press, NY(1992)の第22章に記載された方法に従って作製することができ、さらに一つまたは複数の1級アミノ基またはチオール基を含むように化学的に修飾することができる。また、日本油脂社より、ポリエチレングリコール誘導体(サンブライトHGEO−20TEA、サンブライトPTE−10TSH等)として購入することができる。
上記ポリペプチドとしては、特に限定されないが、コラーゲン、ゼラチン、アルブミンまたはポリリジンなどが挙げられる。また、上記多糖としては、特に限定されないが、ペクチン、ヒアルロン酸、キチン、キトサン、カルボキシメチルキチン、カルボキシメチルキトサン、コンドロイチン硫酸、ケラチン硫酸、ケラト硫酸、ヘパリンまたはそれらの誘導体などが挙げられる。
多糖粉末と高分子材料とを含有してなる多糖組成物において、好適な多糖粉末と高分子材料との組合せは、下記の通りである。なお、これらの組合せにおいて、その形状(例えば、シート状、粉状、液状)は適宜選択することができる。
(a)2つの末端にチオール基を有するエチレングリコール型PEG誘導体、2つの末端にアミノ基を有するエチレングリコール型PEG誘導体、3つの末端にチオール基を有するトリメチロールエタン型PEG誘導体、3つの末端にアミノ基を有するトリメチロールエタン型PEG誘導体、4つの末端にチオール基を有するペンタエリスリトール型PEG誘導体、4つの末端にアミノ基を有するペンタエリスリトール型PEG誘導体、8つの末端にチオール基を有するヘキサグリセロール型PEG誘導体、8つの末端にアミノ基を有するヘキサグリセロール型PEG誘導体、アルブミン、ゼラチン、コラーゲン、ポリリジン、ペクチン、キトサン、キチンおよびカルボキシメチル(CM)キチンからなる群から選ばれる少なくとも1つの高分子材料と活性エステル化ペクチンとの組合せ。
(b)2つの末端にチオール基を有するエチレングリコール型PEG誘導体、2つの末端にアミノ基を有するエチレングリコール型PEG誘導体、3つの末端にチオール基を有するトリメチロールエタン型PEG誘導体、3つの末端にアミノ基を有するトリメチロールエタン型PEG誘導体、4つの末端にチオール基を有するペンタエリスリトール型PEG誘導体、4つの末端にアミノ基を有するペンタエリスリトール型PEG誘導体、8つの末端にチオール基を有するヘキサグリセロール型PEG誘導体、8つの末端にアミノ基を有するヘキサグリセロール型PEG誘導体、アルブミン、ゼラチン、コラーゲン、ポリリジン、ペクチン、キトサン、キチンおよびCMキチンからなる群から選ばれる少なくとも1つの高分子材料と活性エステル化CMデキストランとの組合せ。
(c)2つの末端にチオール基を有するエチレングリコール型PEG誘導体、2つの末端にアミノ基を有するエチレングリコール型PEG誘導体、3つの末端にチオール基を有するトリメチロールエタン型PEG誘導体、3つの末端にアミノ基を有するトリメチロールエタン型PEG誘導体、4つの末端にチオール基を有するペンタエリスリトール型PEG誘導体、4つの末端にアミノ基を有するペンタエリスリトール型PEG誘導体、8つの末端にチオール基を有するヘキサグリセロール型PEG誘導体、8つの末端にアミノ基を有するヘキサグリセロール型PEG誘導体、アルブミン、ゼラチン、コラーゲン、ポリリジン、ペクチン、キトサン、キチンおよびCMキチンからなる群から選ばれる少なくとも1つの高分子材料と活性エステル化CMプルランとの組合せ。
(d)2つの末端にチオール基を有するエチレングリコール型PEG誘導体、2つの末端にアミノ基を有するエチレングリコール型PEG誘導体、3つの末端にチオール基を有するトリメチロールエタン型PEG誘導体、3つの末端にアミノ基を有するトリメチロールエタン型PEG誘導体、4つの末端にチオール基を有するペンタエリスリトール型PEG誘導体、4つの末端にアミノ基を有するペンタエリスリトール型PEG誘導体、8つの末端にチオール基を有するヘキサグリセロール型PEG誘導体、8つの末端にアミノ基を有するヘキサグリセロール型PEG誘導体、アルブミン、ゼラチン、コラーゲン、ポリリジン、ペクチン、キトサン、キチンおよびCMキチンからなる群から選ばれる少なくとも1つの高分子材料と活性エステル化CMヒドロキシエチルスターチとの組合せ。
(e)両末端にチオール基を有する重量平均分子量が1,000、2,000、6,000または10,000のエチレングリコール型PEG誘導体、両末端にアミノ基を有する重量平均分子量が1,000、2,000、6,000または10,000のエチレングリコール型PEG誘導体、3つの末端にチオール基を有する重量平均分子量が5,000または10,000のトリメチロールエタン型PEG誘導体、3つの末端にアミノ基を有する重量平均分子量が5,000または10,000のトリメチロールエタン型PEG誘導体、4つの末端にチオール基を有する重量平均分子量が5,000、10,000または20,000のジグリセロール型PEG誘導体、4つの末端にアミノ基を有する重量平均分子量が5,000、10,000または20,000のジグリセロール型PEG誘導体、4つの末端にチオール基を有する重量平均分子量が10,000または20,000のペンタエリスリトール型PEG誘導体、4つの末端にアミノ基を有する重量平均分子量が10,000または20,000のペンタエリスリトール型PEG誘導体、8つの末端にチオール基を有する重量平均分子量が10,000または20,000のヘキサグリセロール型PEG誘導体および8つの末端にアミノ基を有する重量平均分子量が10,000または20,000のヘキサグリセロール型ポリエチレングリコール誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1つの高分子材料と活性エステル化ペクチンとの組合せ。
(f)両末端にチオール基を有する重量平均分子量が1,000、2,000、6,000または10,000のエチレングリコール型PEG誘導体、両末端にアミノ基を有する重量平均分子量が1,000、2,000、6,000または10,000のエチレングリコール型PEG誘導体、3つの末端にチオール基を有する重量平均分子量が5,000または10,000のトリメチロールエタン型PEG誘導体、3つの末端にアミノ基を有する重量平均分子量が5,000または10,000のトリメチロールエタン型PEG誘導体、4つの末端にチオール基を有する重量平均分子量が5,000、10,000または20,000のジグリセロール型PEG誘導体、4つの末端にアミノ基を有する重量平均分子量が5,000、10,000または20,000のジグリセロール型PEG誘導体、4つの末端にチオール基を有する重量平均分子量が10,000または20,000のペンタエリスリトール型PEG誘導体、4つの末端にアミノ基を有する重量平均分子量が10,000または20,000のペンタエリスリトール型PEG誘導体、8つの末端にチオール基を有する重量平均分子量が10,000または20,000のヘキサグリセロール型PEG誘導体および8つの末端にアミノ基を有する重量平均分子量が10,000または20,000のヘキサグリセロール型PEG誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1つの高分子材料と活性エステル化CMデキストランとの組合せ。
(g)両末端にチオール基を有する重量平均分子量が1,000、2,000、6,000または10,000のエチレングリコール型PEG誘導体、両末端にアミノ基を有する重量平均分子量が1,000、2,000、6,000または10,000のエチレングリコール型PEG誘導体、3つの末端にチオール基を有する重量平均分子量が5,000または10,000のトリメチロールエタン型PEG誘導体、3つの末端にアミノ基を有する重量平均分子量が5,000または10,000のトリメチロールエタン型PEG誘導体、4つの末端にチオール基を有する重量平均分子量が5,000、10,000または20,000のジグリセロール型PEG誘導体、4つの末端にアミノ基を有する重量平均分子量が5,000、10,000または20,000のジグリセロール型PEG誘導体、4つの末端にチオール基を有する重量平均分子量が10,000または20,000のペンタエリスリトール型PEG誘導体、4つの末端にアミノ基を有する重量平均分子量が10,000または20,000のペンタエリスリトール型PEG誘導体、8つの末端にチオール基を有する重量平均分子量が10,000または20,000のヘキサグリセロール型PEG誘導体および8つの末端にアミノ基を有する重量平均分子量が10,000または20,000のヘキサグリセロール型PEG誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1つの高分子材料と活性エステル化プルランとの組合せ。
(h)両末端にチオール基を有する重量平均分子量が1,000、2,000、6,000または10,000のエチレングリコール型PEG誘導体、両末端にアミノ基を有する重量平均分子量が1,000、2,000、6,000または10,000のエチレングリコール型PEG誘導体、3つの末端にチオール基を有する重量平均分子量が5,000または10,000のトリメチロールエタン型PEG誘導体、3つの末端にアミノ基を有する重量平均分子量が5,000または10,000のトリメチロールエタン型PEG誘導体、4つの末端にチオール基を有する重量平均分子量が5,000、10,000または20,000のジグリセロール型PEG誘導体、4つの末端にアミノ基を有する重量平均分子量が5,000、10,000または20,000のジグリセロール型PEG誘導体、4つの末端にチオール基を有する重量平均分子量が10,000または20,000のペンタエリスリトール型PEG誘導体、4つの末端にアミノ基を有する重量平均分子量が10,000または20,000のペンタエリスリトール型PEG誘導体、8つの末端にチオール基を有する重量平均分子量が10,000または20,000のヘキサグリセロール型PEG誘導体および8つの末端にアミノ基を有する重量平均分子量が10,000または20,000のヘキサグリセロール型PEG誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1つの高分子材料と活性エステル化CMヒドロキシエチルスターチとの組合せ。
多糖粉末に対する高分子材料との混合比率(多糖粉末/高分子材料)は、SD/AP=多糖粉末/高分子材料(重量比)であることが好ましく、高分子材料が80重量%よりも多く混合される場合は、高分子材料の阻害により多糖粉末の自己架橋性が得られ難く、逆に、2重量%より少ない場合は、最終的に得られる含水ゲルの硬さ、その性状を調整するのが困難となるからである。
上記多糖組成物からなる癒着防止材は、シート状、粉状、液状等の所望の形態で提供されうる。本発明の多糖粉末に、粉状の高分子材料を混合して、粉状の多糖組成物を調製してもよい。また、本発明の多糖粉末または前記粉状の多糖組成物に、粉状のpH調整剤の塩を混合して得られるpH調整剤の塩を含む粉状の多糖組成物を調製してもよい。
前記粉状の多糖組成物、あるいはpH調整剤の塩を含む前記粉状の多糖組成物を造粒して造粒物を調製することができ、また前記粉状の多糖組成物、pH調整剤の塩を含む前記粉状の多糖組成物を圧接してシート、プレートを調製することができる。シート状の多糖組成物は、前記多糖粉末の加熱乾燥シートまたは凍結乾燥シートに、高分子材料を粉状で付着させる、またはコーティング法により高分子材料を添着させることにより得ることができる。ここで、「添着」とはシートの表面に高分子材料を含浸させることにより、シート表面を高分子材料が覆う状態をいう。シートが多孔構造の場合は、高分子材料はシート表面とシート内部の孔の内表面を覆う状態をいう。
または、多糖粉末の水溶液、高分子材料の水溶液をそれぞれ調製し、二液型としてもよい。それら水溶液を混合することにより、多糖粉末と高分子材料からなる含水ゲルを調製することができる。このとき、多糖粉末の水溶液は、濃度が1〜80%(w/v)であることが好ましく、高分子材料の水溶液は、濃度が1〜80%(w/v)であるのが好ましい。特に、高分子材料を溶解する水は、pH7.5〜10.5に調製した水であってもよい。また、純水または緩衝液を使用して混合時にpH調整剤の塩を添加してもよい。多糖粉末の水溶液と高分子材料の水溶液とを混合後、最終的な多糖粉末と高分子材料とをあわせた濃度が0.1〜80%(w/v)であることが好適である。
シート状の多糖組成物を水分存在下にて供することによって架橋させることができる。その際、水分として、前述のpH調整剤を使用することができる。pH調整剤は、pH7.5〜10.5の水溶液であることが好ましい。シート状の多糖組成物に、pH調整剤を粉状で付着させておいてもよい。
シート状の多糖組成物は、多糖粉末を水に溶解させ、該溶液を所望の形状に展開して乾燥し、得られた多糖粉末のシート状物に高分子材料を添着させる添着工程を経て形成される。前記添着工程は高分子材料と非水系揮発性有機溶媒を含む溶液とをシート状物に含浸させ、乾燥させることによって、シート状の多糖粉末の表面の形状を損なうことなく、高分子材料を添着させることが可能となる。なお、「非水系揮発性有機溶媒」とは、水と相溶せず、揮発する有機溶媒を意味する。非水系揮発性有機溶媒としては、特に限定はされないが、クロロホルム、ジクロロメタンなどが挙げられる。
本発明において、癒着防止材の剤形は特に限定されないが、液状、シート状、粉状、ペースト、エアロゾルを挙げることができる。癒着防止材としての多糖粉末または多糖組成物を、上記したように所望の形状に展開して使用することができる。
高分子材料を含む多糖組成物は、さらに前記pH調整剤と混合して使用することができる。多糖組成物をpH調整剤とを混合する際は、あらかじめ混合しておいてもよい(プレ混合)し、使用時にその場で適宜混合してもよい。使用時にpH調整剤等の水溶液を加えることにより、所望の局所に癒着防止材を適用することができる。
また、多糖組成物には、本発明の特性を損なわない範囲で、広く公知の添加剤をさらに含ませることができる。この際には、特に、生体に許容し得る添加剤を使用するのが好ましい。添加剤としては特に限定されないが、硬化触媒、充填剤、可塑剤、軟化剤、安定剤、脱水剤、着色剤、タレ防止剤、増粘剤、物性調整剤、補強剤、揺変剤、劣化防止剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、溶剤、担体、賦形剤、防腐剤、結合剤、膨化剤、等張剤、溶解補助剤、保存剤、緩衝剤、希釈剤等が挙げられる。これらを1種または2種以上含むことができる。
添加剤として具体的には、水、生理食塩水、医薬的に許容される有機溶媒、ゼラチン、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、トラガント、カゼイン、寒天、ジグリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA)、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、PBS、非イオン性界面活性剤、生体内分解性ポリマー、無血清培地、医薬添加物として許容される界面活性剤あるいは生体内で許容し得る生理的pHの緩衝液などが挙げられる。
使用される担体は、使用部位に応じて上記の中から適宜あるいは組合せて選ばれるが、これらに限定されるものではない。また、適当なプロペラントによりエアロゾルやペーストなどの製剤として調製することができる。
本発明の癒着防止材は、使用時の便宜を考慮して、前述のpH調整剤を含むキットとして提供することができる。癒着防止材は、多糖粉末、多糖組成物および/またはpH調整剤が、各々混合されていない状態で、癒着防止材と共にまたは別々に梱包またはパッケージの中に含めることができる。パッケージ中には癒着防止材として使用され得る他の構成物を含んでいてもよい。多糖粉末または多糖組成物は、水溶液または粉状pH調整剤を含むあるいは含まない状態で、粉状、シート、または水溶液としてキットに包含することができる。
本明細書において、「癒着防止材」とは、生体の癒着防止箇所またはその近辺にて癒着の防止を目的として使用される物質を意味し、生体に有害な毒性が低い安全な成分からなり、生体に許容される。癒着防止材は、生体において分解性を有してもよいし、非分解性であってもよいが、好ましくは、生体分解性である。
目的とする箇所に癒着防止材を付し、必要に応じて癒着が発生した箇所あるいは癒着の発生が予測される箇所を覆うことにより、癒着が阻害され、癒着防止効果を発揮する。目的とする箇所に癒着防止材を付し、他の所望の部位を接着の上、固定、静置または圧着させ、一定時間を経過させる。その際、固定用具等を使用することができる。
本発明では、癒着防止材を所望の部位に水分存在下にて接触させることからなる、生体の癒着防止方法を提供する。所望の部位に接触させるためには、粉状の癒着防止材を吹き付ける、充填する、塗布することによって達成される。シート状の癒着防止材の場合、貼り付ける、充填する、被覆する、圧着する、静置することによって達成される。液状の癒着防止材の場合、塗布する、スプレーする、滴下する、塗る、塗り込むことによって達成される。これらの手段によって、生体の癒着防止を行うことができる。本発明の多糖粉末は水に速やかに溶解するため、癒着防止材として使用したとき、臨床上の要求を満たし、安全性の面でも生体由来材料を利用せず、天然または人工の多糖を主骨格としているので、感染症等のリスクを回避できる。また、本発明の多糖粉末は、成分自体またはその分解物の毒性は小さく、多糖が主骨格なので生体分解吸収性も有するように材料設計されている。
また、本発明で使用される多糖粉末は、用時を予め見計らって行う準備操作を少なくし、急な適用に対して迅速に対応でき、その使用にあたり特別な装置が不要なので、誰でも簡便に使用することができる。そして、多糖粉末単独でもそれを含む多糖組成物としても提供できるので、幅広く多様な使用方法が可能である。また、上記多糖組成物は、上記の特性を有する多糖粉末の特性を損なっていない。
さらに、本発明の多糖粉末および多糖組成物は、粉状、シート状、造粒物等の他さまざまな形状に加工することができ、目的に応じて使い分けが可能である。この多糖粉末および多糖組成物を製造する方法は、必要な試薬を混合して加熱すればよいので、特殊な装置等を要求されず簡便である。以上のような特性から、本発明に係る多糖粉末およびその組成物は、癒着防止材として好適である。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、下記実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いる場合があるが、特に断りがない限り、「重量部」あるいは「重量%」を表す。また、特記しない限り、各操作は、室温(25℃)で行われる。
合成例1:多糖の合成
500mLフラスコ中、デキストリン(名糖産業株式会社製サンデックSD#100,Mw=15kDa)10gを、純水62.5gにダマや濁りがなくなるまで溶解した後、36wt%NaOH水溶液62.5gを添加して、室温(25℃)で90分間撹拌した。そこに、クロル酢酸10.31g(109.1mmol)に蒸留水を加え75gとしたクロル酢酸水溶液を添加し、60℃で6時間反応させた。室温(25℃)まで冷却した後、20%HCl水溶液を80mL添加し、CMデキストリンを含む反応液を得た。次に、エタノール4450mLおよび水180mLを含む5Lビーカー中に、撹拌下、上記で得た反応液全量を注ぎ込んだ。析出物を濾集し、最初に90%エタノール水溶液2Lで、次にエタノール2Lで洗浄した後、室温(25℃)で24時間減圧乾燥し、CMデキストリンを得た。このようにして得られたCMデキストリンのCM基量は0.8mmol/gであった。なお、CM基量は下記の方法に従って測定される。
(多糖のカルボキシ基量の測定方法)
多糖(CMデキストリン)0.2g(A(g))を秤取り、0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液20mLと80vol%メタノール水溶液10mLとの混合溶液に添加し、25℃で3時間撹拌した溶液に、1.0%フェノールフタレイン/90vol%エタノール水溶液を滴下し、0.05mol/L硫酸を使用して酸塩基逆滴定を行い、0.05mol/L硫酸の使用量(V(mL))を測定する。酸型多糖を添加しないブランクでの0.05mol/L硫酸の使用量(V(mL))を測定し、下記式(1)に従い、多糖のカルボキシ基量(Bmmol/g)を算出する。なお、使用した0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液、0.05mol/L硫酸の力価は、ともに1.00である。
1Lフラスコ内に、上記で得られたCMデキストリン10g(酸基量で8mmol)、DMSO 300gを装入し、室温(25℃)で撹拌して完全に溶解し、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)(和光純薬工業社製)12g(104mmol)を添加し、室温(25℃)で撹拌して完全に溶解した。次に、1−エチル−3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド塩酸塩(EDC)(和光純薬工業社製)20.1g(104mmol)を添加して、室温(25℃)で撹拌して完全に溶解した後、23℃で16時間撹拌して反応液1を得た。
反応液1に、20.2gのクエン酸を加え、20分間混合して、反応液2を得た。
メタノール/アセトン=1:4(v/v)2Lを含む3Lビーカー中、撹拌下、反応液2の全量を添加した。静置後、デカンテーションして上澄みを除去し、メタノール/アセトン=1:4(v/v)800mLを添加した。φ95mm桐山ロート,No.5A濾紙を用いて吸引ろ過し、析出物を濾集した。ロート上の濾物を、メタノール/アセトン=1:4(v/v)1600mLで洗浄した。
濾物を40℃で24時間減圧乾燥して、NHS化CMデキストリン(NHS導入率:70〜100%)を得た。このようにして得られたNHS化CMデキストリンの分子量は、30000〜50000であった。
実施例1
1.溶液調製工程
20L容のステンレスタンクのジャケット部分に、冷却水(1.0℃に設定)を流した後、注射用蒸留水3250gを入れ、これに安定化剤としてのトレハロース300gを加えた。この溶液に、上記合成例1で得られたNHS化CMデキストリン300gを加え、5.0〜8.0℃で1時間程度攪拌し、NHS化CMデキストリンを上記溶液中に溶解した。溶解後、ポンプを用いてフィルター濾過を行ない、20L容のバックにろ液を回収した。
2.凍結乾燥工程
上記1.で回収された20L容のバックから凍結乾燥用トレイ(大きさ:44cm×29cm)に、ろ液を容量2.5Lとなるように分注した後、下記表1に示されるプログラムに従って、凍結乾燥して、多糖凍結乾燥体を得た。なお、下記乾燥工程は、1.7〜5.1Paの減圧条件下で行った。なお、下記予備凍結工程は、凍結乾燥装置(共和真空株式会社製 凍結乾燥装置 RL−201BS)を用いて、棚温度を5℃→−50℃まで165分かけて連続的に冷却し、−50℃で480分間凍結させた。次に、棚温度を−50℃から−10℃まで120分かけて徐々に上昇させ、−10℃で3600分間乾燥させた。次に、棚温度を−10℃から5℃まで480分かけて徐々に上昇させ、5℃で4200分間乾燥させた。次に、棚温度を5℃から30℃まで60分かけて徐々に上昇させ、30℃で600分間乾燥させた。
3.粗粉砕および超遠心粉砕工程
上記2.で得られた多糖凍結乾燥体を、へらで(3cm×3cm×3cm程度の大きさになるように)粗粉砕した後、超遠心粉砕機(株式会社 レッチェ製、商品名:超遠心粉砕機 ZM200)を用いて、6000rpmで20分間粉砕し、多糖粉砕体を得た。この際、超遠心粉砕機にはスクリーンは使用しなかった。
4.篩い工程
このようにして得られた多糖粉砕物を電磁式篩い振とう機(株式会社 レッチェ製、商品名:電磁式ふるい振とう機 AS200)に設置し、篩い目開きが710μmの篩で、振幅1.2mm/gで、3分間分級し、710μmの篩いを通過したものを回収し、多糖分級体(多糖粉末(1))を得た。
5.粉末充填工程および陰圧打栓工程
粉末充填装置(粉末計量自動充填機 TM−F51Z3−L)を用いて、上記4.で篩いをかけた多糖分級体を、2.5±0.02gの精度で、バイアル(株式会社日本硝子産業株式会社、バイアル白30×50品)内に充填し、ゴム栓でバイアルを半打栓した。半打栓したバイアルを−700mmHg以上および−400mmHgの陰圧度となるように陰圧打栓した(バイアル(1))。
実施例2
実施例1において、スクリーン径(直径)が10mmのスクリーンを備えた超遠心粉砕機(株式会社 レッチェ製、商品名:超遠心粉砕機 ZM200)を代わりに使用した以外は、実施例1の1.〜4.の工程を繰り返して、多糖分級体(多糖粉末(2))を得た。
実施例1において、この多糖分級体(多糖粉末(2))を使用した以外は、実施例1の5.の工程を繰り返して、バイアル(2)を得た。
実施例3
実施例1において、スクリーン径(直径)が8mmのスクリーンを備えた超遠心粉砕機(株式会社 レッチェ製、商品名:超遠心粉砕機 ZM200)を代わりに使用した以外は、実施例1の1.〜4.の工程を繰り返して、多糖分級体(多糖粉末(3))を得た。
実施例1において、この多糖分級体(多糖粉末(3))を使用した以外は、実施例1の5.の工程を繰り返して、バイアル(3)を得た。
実施例4
実施例1において、スクリーン径(直径)が6mmのスクリーンを備えた超遠心粉砕機(株式会社 レッチェ製、商品名:超遠心粉砕機 ZM200)を代わりに使用した以外は、実施例1の1.〜4.の工程を繰り返して、多糖分級体(多糖粉末(4))を得た。
実施例1において、この多糖分級体(多糖粉末(4))を使用した以外は、実施例1の5.の工程を繰り返して、バイアル(4)を得た。
比較例1
実施例1において、スクリーン径(直径)が2mmのスクリーンを備えた超遠心粉砕機(株式会社 レッチェ製、商品名:超遠心粉砕機 ZM200)を代わりに使用し、さらに、粉砕速度を12000rpmに変更した以外は、実施例1の1.〜4.の工程を繰り返して、比較多糖分級体(比較多糖粉末(1))を得た。
実施例1において、この比較多糖分級体(比較多糖粉末(1))を使用した以外は、実施例
1の5.の工程を繰り返して、比較バイアル(1)を得た。
比較例2
実施例1において、スクリーン径(直径)が6mmのスクリーンを備えた超遠心粉砕機(株式会社 レッチェ製、商品名:超遠心粉砕機 ZM200)を代わりに使用し、さらに、粉砕速度を12000rpmに変更した以外は、実施例1の1.〜4.の工程を繰り返して、比較多糖分級体(比較多糖粉末(2))を得た。
実施例1において、この比較多糖分級体(比較多糖粉末(2))を使用した以外は、実施例1の5.の工程を繰り返して、比較バイアル(2)を得た。
比較例3
実施例1において、スクリーン径(直径)が8mmのスクリーンを備えた超遠心粉砕機(株式会社 レッチェ製、商品名:超遠心粉砕機 ZM200)を代わりに使用し、さらに、粉砕速度を12000rpmに変更した以外は、実施例1の1.〜4.の工程を繰り返して、比較多糖分級体(比較多糖粉末(3))を得た。
実施例1において、この比較多糖分級体(比較多糖粉末(3))を使用した以外は、実施例1の5.の工程を繰り返して、比較バイアル(3)を得た。
比較例4
実施例1において、スクリーン径(直径)が10mmのスクリーンを備えた超遠心粉砕機(株式会社 レッチェ製、商品名:超遠心粉砕機 ZM200)を代わりに使用し、さらに、粉砕速度を12000rpmに変更した以外は、実施例1の1.〜4.の工程を繰り返して、比較多糖分級体(比較多糖粉末(4))を得た。
実施例1において、この比較多糖分級体(比較多糖粉末(4))を使用した以外は、実施例1の5.の工程を繰り返して、比較バイアル(4)を得た。
比較例5
実施例1において、粉砕速度を12000rpmに変更した以外は、実施例1の1.〜4.の工程を繰り返して、比較多糖分級体(比較多糖粉末(5))を得た。
実施例1において、この比較多糖分級体(比較多糖粉末(5))を使用した以外は、実施例1の5.の工程を繰り返して、比較バイアル(5)を得た。
比較例6
実施例1において、溶液調製工程終了後に、ろ液を16mlバイアル(株式会社日本硝子産業株式会社、バイアル白30×50品)に充填した。得られたバイアルについて、実施例1 2.の凍結乾燥工程および5.の陰圧打栓工程を行い、比較例(6)(バルク体)を得た。
上記実施例及び比較例で得られた多糖粉末(1)〜(4)および比較多糖粉末(1)〜(5)の、粒径が200〜750μmである粒度分布を有する多糖粉末の含有量(体積%)、ピークトップ、累積体積比率が10%となる粒径(D10)、累積体積比率が50%となる粒径(D50)及び累積体積比率が90%となる粒径(D90)を下記表2に示す。なお、下記表2では、粒径が200〜750μmである粒度分布を有する多糖粉末の含有量(体積%)を「200−750μm量(体積%)」と表す。
また、上記実施例1〜4及び比較例1〜4で得られた多糖粉末(1)〜(4)および比較多糖粉末(1)〜(5)の堆積頻度分布(動的画像解析法)を図1のグラフに示す。
加えて、上記実施例及び比較例で得られたバイアル(1)〜(4)および比較バイアル(1)〜(6)について、下記の方法に従って、溶解性を評価した。結果を下記表3に示す。
(溶解性評価)
まず、多糖乾燥粉末(バイアル入り)の重量を測定する。次に、シリンジに溶解水として注射用蒸留水を吸い取り、JIGを用いて、一定の高さから溶解水(3.4〜3.6ml)を注入する。溶解水注入直後のバイアルの底部およびバイアル壁面の観察を行い、写真を撮影する。人の手で振盪を開始し、振盪(人の手でふる操作)を開始した時を0秒として30秒毎に溶解状態を観察する。また、観察と同時に写真を撮影する。この操作を合計時間が150秒となるまで続ける。ただし、途中で完全に溶解した場合は、溶解時間を記録し終了する。溶解水注入後のバイアル重量を測定し、溶解水注入量を算出する。
上記表2および表3から、本発明の多糖粉末は、比較例の多糖粉末に比して、有意に迅速に水に溶解できる。このため、本発明の多糖粉末を含む癒着防止材は、最短で1分以内での溶解が見込まれ、手術現場で、注射剤や輸液調製時など様々な医療現場での急な適用にも迅速に対応できることが期待される。
さらに、本出願は、2013年2月25日に出願された日本特許出願番号2013−034208に基づいており、その開示内容は、参照され、全体として、組み入れられている。

Claims (6)

  1. 全体積の30体積%以上の粒径が200〜750μmである粒度分布を有する、多糖を含む粉末。
  2. 累積体積比率が10%となる粒径(D10)が60〜120μmである、請求項1に記載の粉末。
  3. 累積体積比率が90%となる粒径(D90)が300〜520μmである、請求項1または2に記載の粉末。
  4. ピークトップが100〜500μmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の粉末。
  5. 前記多糖が3万〜12万の分子量を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の粉末。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の粉末を含む、癒着防止材。
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