JPWO2014098047A1 - 含フッ素化合物及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
ドライプロセス・ウェットプロセスのいずれにも適用可能であり、さらに高キャリア移動度を有する有機半導体材料として有用な、新規含フッ素化合物およびその製造方法を提供する。下式(2)で表される含フッ素化合物に関する。[下記式において、Rf1は結合手の炭素原子に1個以上のフッ素原子が直接結合した、炭素数1〜12の含フッ素アルキル基であり、mは1以上の整数であり、nは0以上の整数であり、かつ、m+nは1以上4以下の整数である。]【化1】
Description
本発明は、有機半導体材料に応用可能な、新規含フッ素化合物及びその製造方法に関する。
近年、有機化合物を半導体材料として用いた有機半導体素子は、従来のシリコン等の無機半導体材料を用いた半導体素子と比べて、その加工性が容易であることから、低価格なデバイスの実現が期待されている。また、有機化合物の半導体材料は、構造的に柔軟であることから、プラスチック基板と組み合わせて用いることで、フレキシブルなディスプレイ等のデバイスを実現することが期待されている。
半導体の加工プロセスは、プラズマやイオンビームなどの蒸着によるドライプロセスと、塗布やプリンタブル、インクジェットなど、有機溶媒を用いたウェットプロセスとが知られている。従来の有機半導体材料は有機溶媒に対して溶解性が低く、ウェットプロセスの適用が困難であったため、ドライプロセスが広く利用されてきた。一方、ウェットプロセスは、半導体結晶にダメージを与えることなく加工できる等の長所がある。
また、一般に、有機半導体材料にはキャリア移動度の向上が求められている。有機半導体材料において、キャリア移動度の向上のための有効な手段は、未だ確立していないが、分子間相互作用を強くすることや、分子の配列を制御することが重要と考えられている。例えば、縮合多環系化合物は、平面構造により共役系が拡張され、π−πスタックによる強い分子間相互作用を持つとして、有機半導体材料としての利用が試みられている(非特許文献1)。
縮合多環系化合物であるアセン化合物は、有機半導体材料として優れた機能が期待される。アセン化合物とは、ベンゼン環が直線状に縮合した骨格を有する化合物である。アセン化合物は、ポリアセチレン等と比べて理論的なバンドギャップは小さく、有機半導体材料として優れた機能が期待される。また、環の数が増加するほどより優れた機能が期待できる。
しかし、アセン化合物は、環の数が増加するに従って有機溶媒への溶解性は低下する。したがって、アセン化合物にウェットプロセスを適用することは困難であり、溶媒や温度条件などの選択の幅も非常に狭いものであった。
しかし、アセン化合物は、環の数が増加するに従って有機溶媒への溶解性は低下する。したがって、アセン化合物にウェットプロセスを適用することは困難であり、溶媒や温度条件などの選択の幅も非常に狭いものであった。
特許文献1には、ウェットプロセスによりアセン化合物を有機半導体材料として使用するために、アセン骨格にアルキル基等の置換基を導入することで、有機溶媒への溶解性を高める手法が開示されている。また特許文献2には、重金属を用いたカップリング反応によるパーフルオロアルキル基を有するアセン化合物の製造方法が開示されている。
特許文献3及び非特許文献2には、芳香族類への直接的なポリフルオロアルキル化の適用として、ベンゼン類へのパーフルオロアルキル化が開示されている。
非特許文献3には、2,2,2−トリフルオロエチル基が結合したナフタレン化合物が開示されている。
特許文献3及び非特許文献2には、芳香族類への直接的なポリフルオロアルキル化の適用として、ベンゼン類へのパーフルオロアルキル化が開示されている。
非特許文献3には、2,2,2−トリフルオロエチル基が結合したナフタレン化合物が開示されている。
D.J.Gundlach,S.F.Nelson,T.N.Jachson et al.,Appl.Phys.Lett.,(2002),80,2925.
Anna Bravo et al.,J.Org.Chem.,(1997),62,7128.
Uneyama Kenji et al.,Tetrahedron Lett.,(1989),30,2265.
しかし、特許文献1では含フッ素アルキル基を有する化合物は開示されていない。また、特許文献2の製造方法は、ハロ置換アセン化合物とパーフルオロアルキルヨーダイドとを重金属存在下のカップリング反応をさせているために、合成が煩雑であり、かつ重金属がコンタミネーションする問題がある。一般的に有機半導体材料は高純度であることが求められるため、重金属の混入により、昇華精製等による超高純度化に多くの労力が必要となる。
特許文献3及び非特許文献2には、重金属カップリング反応を使用せずに行うベンゼン類へのパーフルオロアルキル化が開示されているが、アセン化合物への含フッ素アルキル基の導入は、開示していない。
非特許文献3には、前記化合物以外の化合物については開示も示唆もされていない。
非特許文献3には、前記化合物以外の化合物については開示も示唆もされていない。
本発明は、ドライプロセス・ウェットプロセスのいずれにも適用可能であり、さらに、高キャリア移動度を有する有機半導体材料として有用な化合物の提供を第一の課題とする。
また、本発明はキャリア移動度を低下させる一因である重金属のコンタミネーションの懸念が低い前記化合物の製造方法の提供を第二の課題とする。
また、本発明はキャリア移動度を低下させる一因である重金属のコンタミネーションの懸念が低い前記化合物の製造方法の提供を第二の課題とする。
本発明者らは、置換基として−CH2Rf1基を有するアセン系の含フッ素化合物を新たに見いだすと同時に、光ラジカル反応を経由することで重金属のコンタミネーションが少ない該化合物の製造方法を見いだした。
すなわち、本発明は下記<1>〜<15>に関するものである。
<1>下式(2)で表される含フッ素化合物。
<1>下式(2)で表される含フッ素化合物。
[上記式において、Rf1は結合手の炭素原子に1個以上のフッ素原子が直接結合した、炭素数1〜12の含フッ素アルキル基であり、mは1以上の整数であり、nは0以上の整数であり、かつ、m+nは1以上4以下の整数である。]
<2>前記Rf1が、炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基である上記<1>に記載の含フッ素化合物。
<3>前記Rf1が炭素数1〜12の直鎖構造のパーフルオロアルキル基であり、mが1以上の整数であり、nが1以上の整数であり、かつ、m+nは2以上4以下の整数である上記<1>に記載の含フッ素化合物。
<4>上記<1>〜<3>のいずれか1に記載される含フッ素化合物を含む有機半導体材料。
<5>上記<1>〜<3>のいずれか1に記載の含フッ素化合物を含む有機半導体薄膜。
<6>前記有機半導体薄膜が結晶性の薄膜である上記<5>に記載の有機半導体薄膜。
<7>半導体層として、上記<5>または<6>に記載の有機半導体薄膜の層を含む有機半導体素子。
<8>上記<7>に記載の有機半導体素子を含む有機半導体トランジスタ。
<9>含ハロゲン溶媒中で、チオ硫酸塩の存在下、下式(1)で表される化合物と式Rf1X(Xはヨウ素原子または臭素原子である。)で表される化合物とを光照射下で反応させることを特徴とする下式(2)で表される含フッ素化合物の製造方法。
<2>前記Rf1が、炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基である上記<1>に記載の含フッ素化合物。
<3>前記Rf1が炭素数1〜12の直鎖構造のパーフルオロアルキル基であり、mが1以上の整数であり、nが1以上の整数であり、かつ、m+nは2以上4以下の整数である上記<1>に記載の含フッ素化合物。
<4>上記<1>〜<3>のいずれか1に記載される含フッ素化合物を含む有機半導体材料。
<5>上記<1>〜<3>のいずれか1に記載の含フッ素化合物を含む有機半導体薄膜。
<6>前記有機半導体薄膜が結晶性の薄膜である上記<5>に記載の有機半導体薄膜。
<7>半導体層として、上記<5>または<6>に記載の有機半導体薄膜の層を含む有機半導体素子。
<8>上記<7>に記載の有機半導体素子を含む有機半導体トランジスタ。
<9>含ハロゲン溶媒中で、チオ硫酸塩の存在下、下式(1)で表される化合物と式Rf1X(Xはヨウ素原子または臭素原子である。)で表される化合物とを光照射下で反応させることを特徴とする下式(2)で表される含フッ素化合物の製造方法。
[上記式において、Rf1は結合手の炭素原子に1個以上のフッ素原子が直接結合した、炭素数1〜12の含フッ素アルキル基であり、mは1以上の整数であり、nは0以上の整数であり、かつ、m+nは1以上4以下の整数である。]
<10>前記Rf1が、炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基である上記<9>に記載の製造方法。
<11>前記Rf1が炭素数1〜12の直鎖構造のパーフルオロアルキル基であり、mが1以上の整数であり、nが1以上の整数であり、かつ、m+nは2以上4以下の整数である上記<9>または<10>に記載の製造方法。
<12>含ハロゲン溶媒中で、チオ硫酸塩の存在下、下式(1)で表される化合物と式Rf1X(Xはヨウ素原子または臭素原子である。)で表される化合物とを光照射下で反応させることを特徴とする下式(2)で表される含フッ素化合物および下式(3)で表される含フッ素化合物の製造方法。
<10>前記Rf1が、炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基である上記<9>に記載の製造方法。
<11>前記Rf1が炭素数1〜12の直鎖構造のパーフルオロアルキル基であり、mが1以上の整数であり、nが1以上の整数であり、かつ、m+nは2以上4以下の整数である上記<9>または<10>に記載の製造方法。
<12>含ハロゲン溶媒中で、チオ硫酸塩の存在下、下式(1)で表される化合物と式Rf1X(Xはヨウ素原子または臭素原子である。)で表される化合物とを光照射下で反応させることを特徴とする下式(2)で表される含フッ素化合物および下式(3)で表される含フッ素化合物の製造方法。
[上記式において、Rf1は結合手の炭素原子に1個以上のフッ素原子が直接結合した、炭素数1〜12の含フッ素アルキル基であり、mは1以上の整数であり、nは0以上の整数であり、かつ、m+nは1以上4以下の整数である。]
<13>前記Rf1が、炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基である上記<12>に記載の製造方法。
<14>前記Rf1が炭素数1〜12の直鎖構造のパーフルオロアルキル基であり、前記mが1以上の整数であり、nが1以上の整数であり、かつ、m+nは2以上4以下の整数である上記<12>または<13>に記載の製造方法。
<15>下式(3’)で表される化合物。
<13>前記Rf1が、炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基である上記<12>に記載の製造方法。
<14>前記Rf1が炭素数1〜12の直鎖構造のパーフルオロアルキル基であり、前記mが1以上の整数であり、nが1以上の整数であり、かつ、m+nは2以上4以下の整数である上記<12>または<13>に記載の製造方法。
<15>下式(3’)で表される化合物。
[上記式において、Rf1は結合手の炭素原子に1個以上のフッ素原子が直接結合した、炭素数1〜12の含フッ素アルキル基であり、m’は1以上の整数であり、n’は0以上の整数であり、かつ、m’+n’は2以上4以下の整数である。]
本発明に係る含フッ素化合物は、芳香族環により形成される平面構造によって共役系が拡張され、π−πスタックによる強い分子間相互作用を持つ。さらに芳香族環が直線状に縮合した骨格を有するために、他の縮合化合物と比べて理論的なバンドギャップが小さいことから、有機半導体材料として優れた機能を発揮しうる。
さらに、特定構造の含フッ素基を化合物に導入することによって低極性溶媒にも溶解しやすくなる。よって、ドライプロセスだけでなく、ウェットプロセスを適用した有機半導体材料の製造が可能になる。また、特定構造の含フッ素基の導入によって、フッ素原子のフルオロフィリック効果を利用した分子間相互作用が強まることから、有機半導体材料としてより高いキャリア移動度を発揮しうる。
さらに、特定構造の含フッ素基を化合物に導入することによって低極性溶媒にも溶解しやすくなる。よって、ドライプロセスだけでなく、ウェットプロセスを適用した有機半導体材料の製造が可能になる。また、特定構造の含フッ素基の導入によって、フッ素原子のフルオロフィリック効果を利用した分子間相互作用が強まることから、有機半導体材料としてより高いキャリア移動度を発揮しうる。
本発明に係る製造方法によれば、製造工程で重金属触媒を使用しないために、キャリア移動度の低下の原因となる重金属のコンタミネーションを防ぐことができ、高いキャリア移動度を有する電荷輸送材料が提供される。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
なお、本明細書において式(X)で表される化合物を「化合物(X)」とも称する。本明細書におけるキャリア移動度とは、電子移動度および正孔移動度を含む広義の意味で用いる。
また、本明細書において“質量%”と“重量%”とは同義であり、“質量ppm”と“重量ppm”とは同義である。
なお、本明細書において式(X)で表される化合物を「化合物(X)」とも称する。本明細書におけるキャリア移動度とは、電子移動度および正孔移動度を含む広義の意味で用いる。
また、本明細書において“質量%”と“重量%”とは同義であり、“質量ppm”と“重量ppm”とは同義である。
<含フッ素化合物>
本発明は、新規な下式(2)で表される含フッ素化合物を提供する。または、本発明は該式(2)で表される化合物の反応中間体である新規な下式(3)で表される化合物を提供する。
本発明は、新規な下式(2)で表される含フッ素化合物を提供する。または、本発明は該式(2)で表される化合物の反応中間体である新規な下式(3)で表される化合物を提供する。
式(2)および式(3)において、Rf1は結合手の炭素原子に1個以上のフッ素原子が直接結合した、炭素数1〜12の含フッ素アルキル基であり、mは1以上の整数であり、nは0以上の整数であり、かつ、m+nは1以上4以下の整数である。
式(2)および式(3)においてRf1は下式(4)で表すこともできる。
上記式(4)において、R1及びR2は各々独立して水素原子、フッ素原子または炭素数1〜11の含フッ素アルキル基であり、R1とR2の炭素数の合計は1〜11である。
なお、含フッ素アルキル基とは、アルキル基を構成する水素原子の1個以上が、フッ素原子に置換された基である。
なお、含フッ素アルキル基とは、アルキル基を構成する水素原子の1個以上が、フッ素原子に置換された基である。
縮合多環系化合物は、縮合環のπ−πスタックによる強い分子間相互作用により、キャリア移動度の向上が見込まれるが、有機溶媒への溶解性が低い傾向がある。
そこで、縮合多環系化合物の水素原子の一部を含フッ素アルキル基(Rf1)と置換することにより、有機溶媒への溶解性を高める。また、Rf1のフルオロフィリック効果による分子間力の向上により、耐酸化性に優れ、高昇華性の含フッ素化合物が期待される。
また、アセン骨格に結合する置換基を−Rf1ではなく−CH2Rf1とすることにより、有機溶媒への溶解性はさらに向上する。同時に、π−πスタッキングの距離がコントロールでき、HOMO−LUMOのエネルギーバンドギャップが広くなり、耐光性が向上することも考えられる。
ただし、該含フッ素アルキル基の炭素数が多すぎると、立体障害のために縮合環同士の分子間相互作用を弱めてしまうことから、含フッ素アルキル基の炭素数は1〜12が好ましい。なかでも、分子間相互作用と溶解性向上とのバランスの観点から、炭素数は2〜10がより好ましい。
そこで、縮合多環系化合物の水素原子の一部を含フッ素アルキル基(Rf1)と置換することにより、有機溶媒への溶解性を高める。また、Rf1のフルオロフィリック効果による分子間力の向上により、耐酸化性に優れ、高昇華性の含フッ素化合物が期待される。
また、アセン骨格に結合する置換基を−Rf1ではなく−CH2Rf1とすることにより、有機溶媒への溶解性はさらに向上する。同時に、π−πスタッキングの距離がコントロールでき、HOMO−LUMOのエネルギーバンドギャップが広くなり、耐光性が向上することも考えられる。
ただし、該含フッ素アルキル基の炭素数が多すぎると、立体障害のために縮合環同士の分子間相互作用を弱めてしまうことから、含フッ素アルキル基の炭素数は1〜12が好ましい。なかでも、分子間相互作用と溶解性向上とのバランスの観点から、炭素数は2〜10がより好ましい。
化合物(2)において含フッ素アルキル基(Rf1)はパーフルオロアルキル基がフルオロフィリック効果の観点から好ましい。パーフルオロアルキル基とは、アルキル基を構成する水素原子のすべてがフッ素原子に置換された基をいう。パーフルオロアルキル基としては−(CF2)kCF3(ただし、kは1〜11の整数である。)で表される直鎖の基が好ましい。パーフルオロアルキル基は、具体的には炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基が好ましく、分子間相互作用と溶解性向上とのバランスの観点から、炭素数2〜10の基がより好ましく、前記のkが1〜9の基が特に好ましい。
また、Rf1は有機溶媒への溶解性の観点から直鎖構造(直鎖状)の基が好ましい。そのため、炭素数1〜12の直鎖状パーフルオロアルキル基がさらに好ましく、炭素数2〜10の直鎖状パーフルオロアルキル基が特に好ましい。
また、Rf1は有機溶媒への溶解性の観点から直鎖構造(直鎖状)の基が好ましい。そのため、炭素数1〜12の直鎖状パーフルオロアルキル基がさらに好ましく、炭素数2〜10の直鎖状パーフルオロアルキル基が特に好ましい。
Rf1としては具体的には、有機半導体としての特性および収率の観点から、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロ−n−プロピル基、パーフルオロイソプロピル基、パーフルオロ−n−ブチル基、パーフルオロイソブチル基、パーフルオロ−sec−ブチル基、パーフルオロ−n−ペンチル基、パーフルオロ−n−ヘキシル基、パーフルオロ−n−ヘプチル基またはパーフルオロ−n−オクチル基が挙げられる。
Rf1は、有機溶媒への溶解性の観点から、直鎖構造の置換基が好ましく、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロ−n−プロピル基、パーフルオロ−n−ブチル基、パーフルオロ−n−ヘキシル基、パーフルオロ−n−ヘプチル基またはパーフルオロ−n−オクチル基が特に好ましい。
Rf1は、有機溶媒への溶解性の観点から、直鎖構造の置換基が好ましく、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロ−n−プロピル基、パーフルオロ−n−ブチル基、パーフルオロ−n−ヘキシル基、パーフルオロ−n−ヘプチル基またはパーフルオロ−n−オクチル基が特に好ましい。
化合物(2)において、mおよびnは、それぞれベンゼン環からなる単位構造の繰返し数を表し、mは1以上の整数であり、nは0以上の整数であり、かつ、m+nは1以上4以下の整数が好ましい。nが0であるとは、[ ]で囲まれたベンゼン環が存在しない(すなわち、化合物(2)は(m+1)個の環構造を有する縮合環化合物である)ことを意味する。
また、mが1以上の整数であり、nが1以上の整数であり、かつ、m+nは2以上4以下の整数であることが好ましい。このうち、有機溶媒への溶解性の観点からmは1又は2がより好ましく、nは1又は2がより好ましい。
また、mが1以上の整数であり、nが1以上の整数であり、かつ、m+nは2以上4以下の整数であることが好ましい。このうち、有機溶媒への溶解性の観点からmは1又は2がより好ましく、nは1又は2がより好ましい。
化合物(3)におけるRf1は、上述した化合物(2)におけるRf1と同様に、フルオロフィリック効果の観点からパーフルオロアルキル基が好ましい。また、有機溶媒への溶解性の観点からは直鎖構造の基が好ましい。
具体的には炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基が好ましく、炭素数2〜10のパーフルオロアルキル基がより好ましい。また、炭素数1〜12の直鎖構造のパーフルオロアルキル基が好ましく、炭素数2〜10の直鎖構造のパーフルオロアルキル基が特に好ましい。
より具体的には、先述した化合物(2)におけるRf1の例示と同様の置換基が、好ましく用いられる。
具体的には炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基が好ましく、炭素数2〜10のパーフルオロアルキル基がより好ましい。また、炭素数1〜12の直鎖構造のパーフルオロアルキル基が好ましく、炭素数2〜10の直鎖構造のパーフルオロアルキル基が特に好ましい。
より具体的には、先述した化合物(2)におけるRf1の例示と同様の置換基が、好ましく用いられる。
化合物(3)において、mおよびnは、それぞれ化合物(2)におけるmおよびnと同じ意味を表す。このうち、化合物(3)は、m+nが2以上4以下の整数である下記式(3’)で表される化合物が好ましい。
上記式において、Rf1は結合手の炭素原子に1個以上のフッ素原子が直接結合した、炭素数1〜12の含フッ素アルキル基であり、m’は1以上の整数であり、n’は0以上の整数であり、かつ、m’+n’は2以上4以下の整数である。
化合物(3’)は有機溶媒への溶解性の観点から、m’は1又は2がより好ましく、n’は1又は2がより好ましい。
化合物(2)および化合物(3)としては、それぞれ下記化合物が好ましい。
上記式において、Rf1は結合手の炭素原子に1個以上のフッ素原子が直接結合した、炭素数1〜12の含フッ素アルキル基であり、炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基が好ましく、炭素数2〜10のパーフルオロアルキル基が特に好ましい。これらの基の好ましい態様は、前記と同じである。
また、有機溶媒への溶解性の観点から、Rf1は直鎖構造であることが好ましいことから、炭素数1〜12の直鎖構造のパーフルオロアルキル基が好ましく、炭素数2〜10の直鎖構造のパーフルオロアルキル基がより好ましい。
また、有機溶媒への溶解性の観点から、Rf1は直鎖構造であることが好ましいことから、炭素数1〜12の直鎖構造のパーフルオロアルキル基が好ましく、炭素数2〜10の直鎖構造のパーフルオロアルキル基がより好ましい。
<含フッ素化合物の製造方法>
本発明に係る式(2)で表される含フッ素化合物の製造方法について、以下に説明する。
本発明は、含ハロゲン溶媒中で、チオ硫酸塩の存在下、下式(1)で表される化合物と式Rf1X(Xはヨウ素原子または臭素原子である。)で表される化合物とを光照射下で反応させることを特徴とする下式(2)で表される含フッ素化合物の製造方法を提供する。
本発明に係る式(2)で表される含フッ素化合物の製造方法について、以下に説明する。
本発明は、含ハロゲン溶媒中で、チオ硫酸塩の存在下、下式(1)で表される化合物と式Rf1X(Xはヨウ素原子または臭素原子である。)で表される化合物とを光照射下で反応させることを特徴とする下式(2)で表される含フッ素化合物の製造方法を提供する。
化合物(2)において、Rf1は結合手の炭素原子に1個以上のフッ素原子が直接結合した、炭素数1〜12の含フッ素アルキル基である。また式(1)および式(2)において、mは1以上の整数であり、nは0以上の整数であり、かつ、m+nは1以上4以下の整数である。
化合物(2)におけるRf1の例示やこの好ましい態様、ならびに、mおよびnの好ましい態様は、化合物(2)の説明において記載したとおりである。また、化合物(1)におけるmおよびnの好ましい態様はそれぞれ、化合物(2)におけるmおよびnの好ましい態様と同様である。
化合物(2)におけるRf1の例示やこの好ましい態様、ならびに、mおよびnの好ましい態様は、化合物(2)の説明において記載したとおりである。また、化合物(1)におけるmおよびnの好ましい態様はそれぞれ、化合物(2)におけるmおよびnの好ましい態様と同様である。
また、本発明は、含ハロゲン溶媒中で、チオ硫酸塩の存在下、下式(1)で表される化合物と式Rf1X(Xはヨウ素原子または臭素原子である。)で表される化合物とを光照射下で反応させることを特徴とする下式(2)で表される含フッ素化合物および下式(3)で表される含フッ素化合物の製造方法も提供する。化合物(3)は化合物(2)を製造するにあたっての反応中間体である。
式(1)〜(3)において、Rf1は結合手の炭素原子に1個以上のフッ素原子が直接結合した、炭素数1〜12の含フッ素アルキル基であり、mは1以上の整数であり、nは0以上の整数であり、かつ、m+nは1以上4以下の整数である。
化合物(2)および化合物(3)において、Rf1は、フルオロフィリック効果の観点からパーフルオロアルキル基が好ましい。具体的には炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基が好ましく、分子間相互作用と溶解性向上とのバランスの観点から、炭素数2〜10のパーフルオロアルキル基がより好ましい。
また、Rf1は有機溶媒への溶解性の観点から直鎖構造の基が好ましいため、炭素数1〜12の直鎖構造のパーフルオロアルキル基がさらに好ましく、炭素数2〜10の直鎖構造のパーフルオロアルキル基が特に好ましい。
また、Rf1は有機溶媒への溶解性の観点から直鎖構造の基が好ましいため、炭素数1〜12の直鎖構造のパーフルオロアルキル基がさらに好ましく、炭素数2〜10の直鎖構造のパーフルオロアルキル基が特に好ましい。
化合物(1)〜(3)におけるmおよびnは化合物(2)の説明において記載したmおよびnとそれぞれ同義である。
化合物(1)〜(3)において、mが1以上の整数であり、nが1以上の整数であり、かつ、m+nが2以上4以下の整数であることが好ましい。また、有機溶媒への溶解性の観点からはmは1又は2がより好ましく、nは1又は2がより好ましい。
化合物(1)〜(3)において、mが1以上の整数であり、nが1以上の整数であり、かつ、m+nが2以上4以下の整数であることが好ましい。また、有機溶媒への溶解性の観点からはmは1又は2がより好ましく、nは1又は2がより好ましい。
合成に用いる含ハロゲン溶媒とは、ハロゲン原子を有する有機化合物からなる溶媒をいう。本発明における含ハロゲン溶媒は、通常は反応基質であるRf1Xとは異なるものを用いる。よって含ハロゲン溶媒は、ヨウ素原子、臭素原子以外のハロゲン原子を含む溶媒が好ましく、該溶媒におけるハロゲン原子は塩素原子またはフッ素原子が好ましい。含ハロゲン溶媒は、ハロゲン化脂肪族溶媒が好ましい。なかでもハロゲン化脂肪族炭化水素系溶媒、ハロゲン化エーテル系溶媒が好ましい。
含ハロゲン溶媒としては、塩素化炭化水素類、塩素化フッ素化炭化水素類、含フッ素エーテル化合物等が例示できる。具体的には塩化メチレン、クロロホルム、2,3,3−トリクロロヘプタフルオロブタン、1,1,1,3−テトラクロロ−2,2,3,3−テトラフルオロプロパン、1,1,1−トリクロロペンタフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,3−ジクロロ−1,2,2,3,3−ペンタフルオロプロパン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、n−C6F13−C2H5、n−C4F9OCH3、n−C4F9OC2H5等を用いることができる。なかでも、塩化メチレン等の塩素化炭化水素類;1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,3−ジクロロ−1,2,2,3,3−ペンタフルオロプロパン等の塩素化フッ素化炭化水素類が好ましく、塩化メチレンが特に好ましい。
加える含ハロゲン溶媒の量は出発物質である化合物(1)が溶解できる量であれば特に限定されない。
含ハロゲン溶媒としては、塩素化炭化水素類、塩素化フッ素化炭化水素類、含フッ素エーテル化合物等が例示できる。具体的には塩化メチレン、クロロホルム、2,3,3−トリクロロヘプタフルオロブタン、1,1,1,3−テトラクロロ−2,2,3,3−テトラフルオロプロパン、1,1,1−トリクロロペンタフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,3−ジクロロ−1,2,2,3,3−ペンタフルオロプロパン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、n−C6F13−C2H5、n−C4F9OCH3、n−C4F9OC2H5等を用いることができる。なかでも、塩化メチレン等の塩素化炭化水素類;1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,3−ジクロロ−1,2,2,3,3−ペンタフルオロプロパン等の塩素化フッ素化炭化水素類が好ましく、塩化メチレンが特に好ましい。
加える含ハロゲン溶媒の量は出発物質である化合物(1)が溶解できる量であれば特に限定されない。
チオ硫酸塩における塩は、公知ないしは周知の化合物が使用でき、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウムがより好ましく、チオ硫酸ナトリウムが特に好ましい。チオ硫酸塩の量は化合物(1)に対して、1〜10倍モルが好ましく、3〜6倍モルが特に好ましい。
Rf1Xにおいて、Rf1およびXは、化合物(2)の説明において記載したものとそれぞれ同義である。Xはヨウ素原子が収率の観点から特に好ましい。
式Rf1Xで表される化合物の量は、化合物(1)に対して、1〜10倍モルが好ましく、1〜3倍モルが特に好ましい。
式Rf1Xで表される化合物の量は、化合物(1)に対して、1〜10倍モルが好ましく、1〜3倍モルが特に好ましい。
また、製造工程において、含ハロゲン溶媒の他にチオ硫酸塩の溶解性を確保するために水等を加えることができる。水の量はチオ硫酸塩を溶解させうる量であり、チオ硫酸塩1gに対して2〜100gが好ましい。
本発明の光照射下での反応(光反応)に用いる光照射の光源の例としては紫外線が挙げられる。紫外線を光源とする場合、通常は、化学反応、分解、または殺菌等に用いられる250〜600nmの波長の紫外線を照射可能なものを用いるのが好ましく、特に高圧水銀灯が好ましい。紫外線の波長は300〜600nmが好ましく、330〜470nmが特に好ましい。紫外線照射により反応を行う場合には、公知の光照射装置を採用でき、メリーゴーランド型光反応装置等が挙げられる。
光照射時間としては1〜48時間が好ましく、2〜24時間が特に好ましい。
光照射時間としては1〜48時間が好ましく、2〜24時間が特に好ましい。
上記光照射反応を用いることにより、従来の重金属カップリング反応を用いることなく、Rf1を化合物(1)に導入して、化合物(2)および化合物(3)を合成することができる。また該方法により得られた化合物(2)または化合物(3)に含まれる重金属の割合は非常に少ない利点がある。
本発明に係る製造方法を用いれば、化合物(2)または化合物(3)に含まれるNi、Cu、Zn、Pdの含有量を各々1質量ppm以下、これら重金属の総含有量を、化合物中で10質量ppm以下とすることができる。
本発明に係る製造方法を用いれば、化合物(2)または化合物(3)に含まれるNi、Cu、Zn、Pdの含有量を各々1質量ppm以下、これら重金属の総含有量を、化合物中で10質量ppm以下とすることができる。
有機半導体材料とした際に、重金属のコンタミネーションはキャリア移動度の低下の一因となる。そのため、できるだけ重金族の含有量は少ない方が好ましく、本発明に係る製造方法により得られる化合物(2)または化合物(3)を用いた有機半導体材料は、優れた半導体特性が期待できる。
なお、化合物中に含まれる重金属の含有量は原子吸光分析法等により測定することができる。
なお、化合物中に含まれる重金属の含有量は原子吸光分析法等により測定することができる。
また、上記光照射による光ラジカル反応で合成することにより、熱化学反応では得られない、高い位置選択性が得られる。化合物(2)では出発物質である化合物(1)のメチル基を−CH2Rf1基とし、パラ位にRf1基を導入することが可能となる。本発明に係る製造方法によれば、従来困難であった芳香族化合物の−CH2Rf1化が可能となる。
上記方法により化合物(1)から得られた化合物(2)または化合物(3)を含む反応物は、一般に用いられる公知の方法により、分離・精製することができる。
これらの有機溶媒に対する本発明の含フッ素化合物の溶解度は高く、なかでも低極性の溶媒として知られるヘキサン、シクロヘキサンに対して非常に高い溶解性を示す。したがって、カラムクロマトグラフィーや再結晶などの簡易な方法によって、含フッ素化合物を容易に精製することができる。
<有機半導体材料>
有機半導体材料は、本発明の含フッ素化合物(2)を含む材料であり、例えば、他の有機半導体材料に混合して用いたり、種々のドーパントを含んでいてもよい。ドーパントとしては、例えば有機EL素子の発光層として用いる場合には、クマリン、キナクリドン、ルブレン、スチルベン系誘導体、蛍光色素等を用いることができる。
有機半導体材料は、本発明の含フッ素化合物(2)を含む材料であり、例えば、他の有機半導体材料に混合して用いたり、種々のドーパントを含んでいてもよい。ドーパントとしては、例えば有機EL素子の発光層として用いる場合には、クマリン、キナクリドン、ルブレン、スチルベン系誘導体、蛍光色素等を用いることができる。
また、含フッ素アルキル基間の親和力により隣接分子が凝集し(フルオロフィリック効果)、より効率的な電荷移動に寄与する。したがって、本発明の含フッ素化合物を用いれば、高いキャリア移動度を保持した有機半導体薄膜、およびこれを利用したトランジスタ等の電子素子の作製が実現できる。
通常、アントラセンやペンタセンなどの置換基を有していないアセン系化合物は電極材料に金を用いた場合、p型半導体としてふるまう。一方、本発明の含フッ素化合物は、電子求引性置換基である含フッ素アルキル基を有するため、該基の構造によって電子遷移エネルギーが変化する。したがって、本発明の含フッ素化合物を用いれば、有機半導体材料の導電型を制御することができる。
<有機半導体薄膜>
本発明に係る有機半導体材料は、ドライプロセスまたはウェットプロセスを用い、通常の製造方法にしたがって、基板上に有機半導体の膜を形成できる。該膜としては、薄膜、厚膜、又は結晶を有する膜が挙げられる。
本発明に係る有機半導体材料は、ドライプロセスまたはウェットプロセスを用い、通常の製造方法にしたがって、基板上に有機半導体の膜を形成できる。該膜としては、薄膜、厚膜、又は結晶を有する膜が挙げられる。
ドライプロセスで薄膜を形成する場合、真空蒸着法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、スパッタリング法、レーザー蒸着法、気相輸送成長法等の公知の方法を用いて製膜することができる。
これらの薄膜等は、光電変換素子、薄膜トランジスタ素子、発光素子など種々の機能素子の電荷輸送性部材として機能することから、該薄膜等を有する多様な電子デバイスを作製できる。
これらの薄膜等は、光電変換素子、薄膜トランジスタ素子、発光素子など種々の機能素子の電荷輸送性部材として機能することから、該薄膜等を有する多様な電子デバイスを作製できる。
ドライプロセスとして、真空蒸着法、MBE法、または気相輸送成長法を用いて薄膜を形成する場合には、有機半導体材料を加熱して昇華した蒸気を、高真空、真空、低真空、または常圧で基板表面に輸送する。薄膜の形成は、公知の方法や条件に従って実施できる。具体的には、基板温度20〜200℃、薄膜成長速度0.001〜1000nm/secが好ましい。該条件とすることで、結晶性があり、かつ、薄膜の表面平滑性がある膜を形成しうる。
基板温度は、低温であると薄膜がアモルファス状になりやすく、高温であると薄膜の表面平滑性が低下する傾向にある。また、薄膜成長速度が遅いと結晶性が低下しやすく、一方速すぎると薄膜の表面平滑性が低下する傾向にある。
基板温度は、低温であると薄膜がアモルファス状になりやすく、高温であると薄膜の表面平滑性が低下する傾向にある。また、薄膜成長速度が遅いと結晶性が低下しやすく、一方速すぎると薄膜の表面平滑性が低下する傾向にある。
ウェットプロセスを適用する場合、本発明における含フッ素化合物を含む有機半導体材料を有機溶媒に溶解して溶液化した組成物を、基板に塗布し被覆することによって有機半導体薄膜を形成することができる。
本発明の含フッ素化合物は、従来の有機半導体材料に比して有機溶媒に対する溶解性が改善され、ウェットプロセスの適用ができる利点を有する化合物である。その理由は、含フッ素化合物中の含フッ素アルキル基の存在により、本発明に係る有機半導体材料は親油性を示すことから、種々の有機溶媒に可溶となるためである。そのため、本発明に係る有機半導体材料はウェットプロセスの適用が可能となり、半導体材料にダメージを与えることなく加工することができる。
本発明の含フッ素化合物は、従来の有機半導体材料に比して有機溶媒に対する溶解性が改善され、ウェットプロセスの適用ができる利点を有する化合物である。その理由は、含フッ素化合物中の含フッ素アルキル基の存在により、本発明に係る有機半導体材料は親油性を示すことから、種々の有機溶媒に可溶となるためである。そのため、本発明に係る有機半導体材料はウェットプロセスの適用が可能となり、半導体材料にダメージを与えることなく加工することができる。
ウェットプロセスにおける製膜方法(基板を被覆する方法)としては、塗布、噴霧、および接触等が挙げられる。具体的には、スピンコート法、キャスト法、ディップコート法、インクジェット法、ドクターブレード法、スクリーン印刷法、ディスペンス法等の公知の方法が挙げられる。また、平板状結晶や厚膜状態の形態を取る場合には、キャスト法等が採用できる。製膜方法および有機溶媒は、作製するデバイスに適した組み合わせを選択することが好ましい。
ウェットプロセスにおいては、含フッ素化合物の溶液と基板との界面に、温度勾配、電場、および磁場から選ばれる少なくとも1つを印加して、結晶成長を制御することができる。該方法を採用すれば、より高結晶性の有機半導体薄膜を製造でき、かつ、高結晶性の薄膜の性能に基づく優れた半導体特性が得られる。また、ウェットプロセス製膜時に、環境雰囲気を溶媒雰囲気にすることにより、溶媒乾燥における蒸気圧を制御して、高結晶性の有機半導体薄膜を製造することもできる。
ウェットプロセスにおいて、含フッ素化合物(2)を溶解することができる有機溶媒の例としては、非ハロゲン系の有機溶媒および含ハロゲン系の有機溶媒が挙げられる。非ハロゲン系の有機溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、フェノール、クレゾール等の芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール類;またはこれらの混合物等が挙げられる。
含ハロゲン系の有機溶媒としては以下のものが例示できる。例えば、塩素化炭化水素類、フッ素化炭化水素類、塩素化フッ素化炭化水素類、含フッ素エーテル化合物が例示できる。具体的には、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、2,3,3−トリクロロヘプタフルオロブタン、1,1,1,3−テトラクロロ−2,2,3,3−テトラフルオロプロパン、1,1,1−トリクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、ジクロロペンタフルオロプロパン、n−C6F13−C2H5、n−C4F9OCH3、n−C4F9OC2H5等を用いることができる。
溶媒は1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合には、非ハロゲン系の有機溶媒と、含ハロゲン系の有機溶媒とを併用することが好ましく、これらを任意の割合で混合した溶媒が好ましい。
溶媒は1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合には、非ハロゲン系の有機溶媒と、含ハロゲン系の有機溶媒とを併用することが好ましく、これらを任意の割合で混合した溶媒が好ましい。
本発明における含フッ素化合物を有機溶媒に溶解させて、ウェットプロセスを行う場合には、有機溶媒中の有機半導体材料量は0.01質量%以上が好ましく、0.2質量%程度以上が、作業効率の観点等から好ましい。さらに、有機溶媒中の有機半導体材料量は、0.01〜10質量%が好ましく、0.2〜10質量%が特に好ましい。
また、本発明の含フッ素化合物は有機溶媒に対する溶解性に優れるため、上記の製造方法で得た含フッ素化合物をカラムクロマトグラフィーや再結晶などの簡易な精製方法によって、高純度化してもよい。
また、本発明の含フッ素化合物は有機溶媒に対する溶解性に優れるため、上記の製造方法で得た含フッ素化合物をカラムクロマトグラフィーや再結晶などの簡易な精製方法によって、高純度化してもよい。
ウェットプロセスによる基板の被覆は、大気下または不活性ガス雰囲気下で行うことができる。なお前記半導体材料の溶液が酸化しやすい場合には、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下にすることが好ましい。
基板を被覆した後、溶媒を揮発させることで有機半導体薄膜が形成される。当該薄膜中の溶媒残存量が多いと薄膜の安定性や半導体特性が低下するおそれがあるため、薄膜形成の後に、再度加熱処理や減圧処理を施し、残存している溶媒を除去することが好ましい。
基板を被覆した後、溶媒を揮発させることで有機半導体薄膜が形成される。当該薄膜中の溶媒残存量が多いと薄膜の安定性や半導体特性が低下するおそれがあるため、薄膜形成の後に、再度加熱処理や減圧処理を施し、残存している溶媒を除去することが好ましい。
ウェットプロセスにおいて使用し得る基板の形状は特に限定されず、通常はシート状や板状の基板が用いられる。基板に用いられる材料としては、セラミックス、金属基板、半導体、樹脂、紙、不織布等が挙げられる。
セラミックスとしては、ガラス、石英、酸化アルミニウム、サファイア、チッ化ケイ素、炭化ケイ素等の基板が挙げられる。金属基板としては金、銅、銀等の基板が挙げられる。半導体としては、シリコン(結晶性シリコン、アモルファスシリコン)、ゲルマニウム、ガリウムヒ素、ガリウムリン、チッ化ガリウム等の基板が挙げられる。樹脂としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニル、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、環状ポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ノルボルネン等の基板が挙げられる。
本発明に係る有機半導体薄膜は、結晶性の薄膜であることが特徴である。高い結晶性により高いキャリア移動度と、それによる優れた有機半導体デバイス特性を発現することができる。
薄膜の結晶状態は、当該薄膜の斜入射X線回折測定、透過型電子線回折、薄膜のエッジ部にX線を入射させ回折を測定する方法により知ることができる。特に薄膜分野の結晶解析手法である斜入射X線回折が用いられる。X線回折において、測定する格子面の方向によって、Out−of−planeXRD法とIn−planeXRD法があり、Out−of−planeXRD法は基板に対して平行な格子面を観察する手法に対して、In−planeXRD法は基板に対して垂直な格子面を観察する手法である。
薄膜の結晶状態は、当該薄膜の斜入射X線回折測定、透過型電子線回折、薄膜のエッジ部にX線を入射させ回折を測定する方法により知ることができる。特に薄膜分野の結晶解析手法である斜入射X線回折が用いられる。X線回折において、測定する格子面の方向によって、Out−of−planeXRD法とIn−planeXRD法があり、Out−of−planeXRD法は基板に対して平行な格子面を観察する手法に対して、In−planeXRD法は基板に対して垂直な格子面を観察する手法である。
薄膜が結晶性であるとは、薄膜を形成する有機半導体材料に由来する回折ピークが観察されることを意味する。具体的には有機半導体材料の結晶格子に基づく回折、分子長さ由来の回折、または分子が基板に対して平行もしくは垂直に並ぶ配向性を有する際に現れる特徴的な回折ピークである。非結晶状態の膜の場合はこの回折は観察されないため、回折ピークが現れた薄膜は結晶性の薄膜であるということができる。
有機半導体素子に使用する有機半導体薄膜層の厚さは、10〜1,000nmが好ましい。
有機半導体素子に使用する有機半導体薄膜層の厚さは、10〜1,000nmが好ましい。
<有機半導体素子、有機半導体トランジスタ>
本発明における含フッ素化合物は、高いキャリア移動度を有する。よって該化合物を含む有機半導体材料は該化合物の高いキャリア移動度を損なうことなく、有機半導体薄膜を形成することができる。
半導体層として、当該有機半導体薄膜の層を含む有機半導体素子は、様々な半導体デバイスに非常に有用である。
有機半導体薄膜中においては、本発明に係る含フッ素化合物分子の長軸が、基板の表面に対して、垂直方向に配向していることが好ましい。
本発明における含フッ素化合物は、高いキャリア移動度を有する。よって該化合物を含む有機半導体材料は該化合物の高いキャリア移動度を損なうことなく、有機半導体薄膜を形成することができる。
半導体層として、当該有機半導体薄膜の層を含む有機半導体素子は、様々な半導体デバイスに非常に有用である。
有機半導体薄膜中においては、本発明に係る含フッ素化合物分子の長軸が、基板の表面に対して、垂直方向に配向していることが好ましい。
半導体デバイスの例としては、有機半導体トランジスタ、有機半導体レーザー、有機光電変換デバイス、有機分子メモリ等が挙げられる。なかでも有機半導体トランジスタが好ましく、さらに有機電界効果トランジスタ(有機FET)がより好ましい。
有機半導体トランジスタは、一般的に基板、ゲート電極、絶縁体層(誘電体層)、ソース電極、ドレイン電極、及び半導体層で構成される。その他にバックゲートやバルク等が含まれていてもよい。
有機半導体トランジスタ中の構成要素が配置される順序等については、特に限定されない。また、上記構成要素のうち、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、及び半導体層は複数層設けてもよい。複数層の半導体層が存在する場合には、同一平面内に設けても、積層して設けてもよい。
有機半導体トランジスタ中の構成要素が配置される順序等については、特に限定されない。また、上記構成要素のうち、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、及び半導体層は複数層設けてもよい。複数層の半導体層が存在する場合には、同一平面内に設けても、積層して設けてもよい。
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
(評価方法)
本実施例において、合成した化合物の構造はフーリエ変換高分解能核磁気共鳴装置(NMR、JNM−AL400、日本電子(株)社製)により以下の条件で同定を行った。NMRにおいては、多重度はsinglet:s、doublet:d、triplet:t、quartet:q、multiplet:m、broad:brと略記する。以下に測定条件の詳細を示す。
(評価方法)
本実施例において、合成した化合物の構造はフーリエ変換高分解能核磁気共鳴装置(NMR、JNM−AL400、日本電子(株)社製)により以下の条件で同定を行った。NMRにおいては、多重度はsinglet:s、doublet:d、triplet:t、quartet:q、multiplet:m、broad:brと略記する。以下に測定条件の詳細を示す。
(NMR)
1H NMR(400MHz) 溶媒;クロロホルム−d(CDCl3)、内部標準;テトラメチルシラン(TMS)。
19F NMR(376MHz):溶媒;クロロホルム−d(CDCl3)。
13C NMR(125MHz):溶媒;クロロホルム−d(CDCl3)、内部標準;クロロホルム−d(CDCl3)。
1H NMR(400MHz) 溶媒;クロロホルム−d(CDCl3)、内部標準;テトラメチルシラン(TMS)。
19F NMR(376MHz):溶媒;クロロホルム−d(CDCl3)。
13C NMR(125MHz):溶媒;クロロホルム−d(CDCl3)、内部標準;クロロホルム−d(CDCl3)。
質量分析は、サーモフィッシャー社製Extractive又は日本電子社製JMF−S3000 SpiralTOF(MALDI−TOFMS)を使用した。Extractiveでは、試料をメタノールに溶解し、イオン化法はESI若しくはAPCIを用いて測定した。MALDI−TOFMSにおいては試料をテトラヒドロフランに0.2質量%で溶解し、カチオン化剤と混合して、分析を行った。カチオン化剤は0.1質量%ヨウ化ナトリウム/アセトニトリル溶液を使用した。
本実施例において、一連の合成反応における進行状況は、薄層クロマトグラフィー(TLC、silica gel 60 F254、Merck社製)を用いて適宜確認した。
光反応に用いる紫外線光源は、紫外線ランプ(UVG−11、ウルトラバイオレット社製)を使用した。
溶媒の除去はすべてロータリーエバポレーターを用いた。
カラムクロマトグラフィーでは、シリカゲルをカラムとし、各分画の量は、使用したシリカゲル1gあたり1mL相当量とした。必要な分画を集め、溶媒をロータリーエバポレーターで留去したあと、減圧下で乾燥した。シリカはsilica gel 60 FC(spherical)(関東化学社製)を使用した。展開溶媒はヘキサン(ゴードー社製)を用いた。
光反応に用いる紫外線光源は、紫外線ランプ(UVG−11、ウルトラバイオレット社製)を使用した。
溶媒の除去はすべてロータリーエバポレーターを用いた。
カラムクロマトグラフィーでは、シリカゲルをカラムとし、各分画の量は、使用したシリカゲル1gあたり1mL相当量とした。必要な分画を集め、溶媒をロータリーエバポレーターで留去したあと、減圧下で乾燥した。シリカはsilica gel 60 FC(spherical)(関東化学社製)を使用した。展開溶媒はヘキサン(ゴードー社製)を用いた。
<実施例1−1:化合物(a−1)パーフルオロヘキシル化アントラセンの合成>
パイレックス(登録商標)チューブ内で9−メチルアントラセン(東京化成社製、38.4mg、0.2mmol)を塩化メチレン(関東化学社製、5mL)に溶解させ、そこにさらにnC6F13I(ダイキン社製、86.6μL、0.4mmol)、チオ硫酸ナトリウム(関東化学社製、0.1581g、1mmol)および水(1mL)を加え、冷却水を流して反応系の温度を一定に保ちながら、450W高圧水銀ランプを用いて紫外線を6時間照射した。紫外線照射後に水層を除去し、反応溶液を塩化メチレンで抽出した後、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。ろ液を濃縮し、カラムクロマトグラフィーを用いて分離・精製することにより、下式(a−1)で表される化合物を白色の固体として得た(0.1424g、収率86%)。
パイレックス(登録商標)チューブ内で9−メチルアントラセン(東京化成社製、38.4mg、0.2mmol)を塩化メチレン(関東化学社製、5mL)に溶解させ、そこにさらにnC6F13I(ダイキン社製、86.6μL、0.4mmol)、チオ硫酸ナトリウム(関東化学社製、0.1581g、1mmol)および水(1mL)を加え、冷却水を流して反応系の温度を一定に保ちながら、450W高圧水銀ランプを用いて紫外線を6時間照射した。紫外線照射後に水層を除去し、反応溶液を塩化メチレンで抽出した後、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。ろ液を濃縮し、カラムクロマトグラフィーを用いて分離・精製することにより、下式(a−1)で表される化合物を白色の固体として得た(0.1424g、収率86%)。
得られた化合物(a−1)のNMRによる分析結果を以下に示す。
1H NMR:δ 8.46〜8.44(2H,m,Ph)、8.24〜8.22(2H,m,Ph)、7.62〜7.60(4H,m,Ph)、4.53(2H,t,J=18Hz,CH2).
19F NMR:δ −80.7(6F,s,2CF3)、−91.4(2F,s,CF2)、−109.7(2F,s,CF2)、−117.9(2F,s,CF2)、−121.4(4F,s,2CF2)、−122.4〜−122.8(6F,m,3CF2)、−125.9(4F,s,2CF2).
13C NMR:δ 131.7(s)、131.1(s)、128.8(s)、127.1(s)、126.3(s)、126.1〜125.8(m)、124.8(s)、29.1(t,J=26Hz,CH2).
1H NMR:δ 8.46〜8.44(2H,m,Ph)、8.24〜8.22(2H,m,Ph)、7.62〜7.60(4H,m,Ph)、4.53(2H,t,J=18Hz,CH2).
19F NMR:δ −80.7(6F,s,2CF3)、−91.4(2F,s,CF2)、−109.7(2F,s,CF2)、−117.9(2F,s,CF2)、−121.4(4F,s,2CF2)、−122.4〜−122.8(6F,m,3CF2)、−125.9(4F,s,2CF2).
13C NMR:δ 131.7(s)、131.1(s)、128.8(s)、127.1(s)、126.3(s)、126.1〜125.8(m)、124.8(s)、29.1(t,J=26Hz,CH2).
得られた化合物(a−1)のMALDI−TOFMSの結果はC27H10F26[M+]計算値828.0362、実測値828.0369であった。
<実施例1−2:化合物(a−2)パーフルオロヘキシル化アントラセンの合成>
上記化合物(a−1)の合成過程において、光反応後に塩化メチレンで抽出した反応溶液をろ過する前の段階における生成物を質量分析した結果、下式(a−2)で表される化合物も得られたことが判明した。MALDI−TOFMSの結果はC21H11F13[M+]計算値510.0653、実測値510.0662であった。
上記化合物(a−1)の合成過程において、光反応後に塩化メチレンで抽出した反応溶液をろ過する前の段階における生成物を質量分析した結果、下式(a−2)で表される化合物も得られたことが判明した。MALDI−TOFMSの結果はC21H11F13[M+]計算値510.0653、実測値510.0662であった。
<実施例2−1:化合物(b−1)パーフルオロヘキシル化ナフタレンの合成>
パイレックス(登録商標)チューブ内で1−メチルナフタレン(和光純薬社製、71.1mg、0.5mmol)を塩化メチレン(関東化学社製、12.5mL)に溶解させ、そこにさらにnC6F13I(ダイキン社製、0.22mL、1.0mmol)、チオ硫酸ナトリウム(関東化学社製、0.3716g、2.5mmol)および水(2.5mL)を加え、冷却水を流して反応系の温度を一定に保ちながら、450W高圧水銀ランプを用いて紫外線を24時間照射した。紫外線照射後に水層を除去し、反応溶液を塩化メチレンで抽出した後、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。ろ液を濃縮し、カラムクロマトグラフィーを用いて分離・精製することにより、下式(b−1)で表される化合物を白色の固体として得た(0.2140g、収率55%)。
パイレックス(登録商標)チューブ内で1−メチルナフタレン(和光純薬社製、71.1mg、0.5mmol)を塩化メチレン(関東化学社製、12.5mL)に溶解させ、そこにさらにnC6F13I(ダイキン社製、0.22mL、1.0mmol)、チオ硫酸ナトリウム(関東化学社製、0.3716g、2.5mmol)および水(2.5mL)を加え、冷却水を流して反応系の温度を一定に保ちながら、450W高圧水銀ランプを用いて紫外線を24時間照射した。紫外線照射後に水層を除去し、反応溶液を塩化メチレンで抽出した後、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。ろ液を濃縮し、カラムクロマトグラフィーを用いて分離・精製することにより、下式(b−1)で表される化合物を白色の固体として得た(0.2140g、収率55%)。
得られた化合物(b−1)のNMRによる分析結果を以下に示す。
1H NMR:δ 8.31〜8.29(1H,m,Ph)、8.09〜8.10(1H,m,Ph)、7.84and7.82(1H,d,J=7.6Hz,Ph)、7.68〜7.65(2H,m,Ph)、7.59and7.57(1H,d,J=8.0Hz,Ph)、3.92(2H,t,J=19Hz,CH2).
19F NMR:δ −80.7(6F,s,2CF3)、−104.1(2F,s,CF2)、−111.6(2F,s,CF2)、−119.9(2F,s,CF2)、−121.3〜−121.5(6F,m,3CF2)、−122.7(4F,s,2CF2)、−125.9(4F,s,2CF2).
13C NMR:δ 116.9(s)、114.4(s)、114.2(s)、112.3(s)、111.1(s)、110.8(s)、110.7(s)、110.6(s)、109.1〜109.0(m)、107.9(s)、17.2(t,J=23Hz,CH2).
1H NMR:δ 8.31〜8.29(1H,m,Ph)、8.09〜8.10(1H,m,Ph)、7.84and7.82(1H,d,J=7.6Hz,Ph)、7.68〜7.65(2H,m,Ph)、7.59and7.57(1H,d,J=8.0Hz,Ph)、3.92(2H,t,J=19Hz,CH2).
19F NMR:δ −80.7(6F,s,2CF3)、−104.1(2F,s,CF2)、−111.6(2F,s,CF2)、−119.9(2F,s,CF2)、−121.3〜−121.5(6F,m,3CF2)、−122.7(4F,s,2CF2)、−125.9(4F,s,2CF2).
13C NMR:δ 116.9(s)、114.4(s)、114.2(s)、112.3(s)、111.1(s)、110.8(s)、110.7(s)、110.6(s)、109.1〜109.0(m)、107.9(s)、17.2(t,J=23Hz,CH2).
得られた化合物(b−1)のMALDI−TOFMSの結果はC23H8F26[M+]計算値778.0205、実測値778.0193であった。
<実施例2−2:化合物(b−2)パーフルオロヘキシル化ナフタレンの合成>
上記化合物(b−1)の合成過程において、光反応後に塩化メチレンで抽出した反応溶液をろ過する前の段階における生成物を質量分析した結果、下式(b−2)で表される化合物も得られたことが判明した。MALDI−TOFMSの結果はC17H9F13[M+]計算値460.0497、実測値460.0488であった。
上記化合物(b−1)の合成過程において、光反応後に塩化メチレンで抽出した反応溶液をろ過する前の段階における生成物を質量分析した結果、下式(b−2)で表される化合物も得られたことが判明した。MALDI−TOFMSの結果はC17H9F13[M+]計算値460.0497、実測値460.0488であった。
さらに、化合物(a−1)のnC6F13部分が、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロ−n−プロピル基、パーフルオロ−n−ブチル基、パーフルオロ−n−ヘプチル基またはパーフルオロ−n−オクチル基である化合物もまた、対応する原料を用いて同様の反応を実施することにより製造できる。
<比較例1>
パイレックス(登録商標)チューブ内で9,10−ジメチルアントラセン(和光純薬社製、41.2mg、0.2mmol)を塩化メチレン(関東化学社製、5mL)に溶解させ、そこにさらにnC6F13I(ダイキン社製、86.6μL、0.4mmol)、チオ硫酸ナトリウム(関東化学社製、0.1581g、1mmol)および水(1mL)を加え、冷却水を流して反応系の温度を一定に保ちながら、450W高圧水銀ランプを用いて紫外線を12時間照射した。紫外線照射後に水層を除去し、反応溶液を塩化メチレンで抽出した。生成物を質量分析した結果、下式(c)で表される化合物は得られなかった。すなわち反応は進行したが、目的化合物は得られず、分解等が進行したと思われる。
パイレックス(登録商標)チューブ内で9,10−ジメチルアントラセン(和光純薬社製、41.2mg、0.2mmol)を塩化メチレン(関東化学社製、5mL)に溶解させ、そこにさらにnC6F13I(ダイキン社製、86.6μL、0.4mmol)、チオ硫酸ナトリウム(関東化学社製、0.1581g、1mmol)および水(1mL)を加え、冷却水を流して反応系の温度を一定に保ちながら、450W高圧水銀ランプを用いて紫外線を12時間照射した。紫外線照射後に水層を除去し、反応溶液を塩化メチレンで抽出した。生成物を質量分析した結果、下式(c)で表される化合物は得られなかった。すなわち反応は進行したが、目的化合物は得られず、分解等が進行したと思われる。
<比較例2>
パイレックス(登録商標)チューブ内で1−プロピルナフタレン(和光純薬社製、85.1mg、0.5mmol)を塩化メチレン(関東化学社製、12.5mL)に溶解させ、そこにさらにnC6F13I(ダイキン社製、0.22mL、1.0mmol)、チオ硫酸ナトリウム(関東化学社製、0.3716g、2.5mmol)および水(2.5mL)を加え、冷却水を流して反応系の温度を一定に保ちながら、450W高圧水銀ランプを用いて紫外線を12時間照射した。紫外線照射後に水層を除去し、反応溶液を塩化メチレンで抽出した。生成物を質量分析した結果、下式(d)で表される化合物は得られず、下式(e)で表される化合物が得られた。
パイレックス(登録商標)チューブ内で1−プロピルナフタレン(和光純薬社製、85.1mg、0.5mmol)を塩化メチレン(関東化学社製、12.5mL)に溶解させ、そこにさらにnC6F13I(ダイキン社製、0.22mL、1.0mmol)、チオ硫酸ナトリウム(関東化学社製、0.3716g、2.5mmol)および水(2.5mL)を加え、冷却水を流して反応系の温度を一定に保ちながら、450W高圧水銀ランプを用いて紫外線を12時間照射した。紫外線照射後に水層を除去し、反応溶液を塩化メチレンで抽出した。生成物を質量分析した結果、下式(d)で表される化合物は得られず、下式(e)で表される化合物が得られた。
<溶解性試験>
化合物のウェットプロセスへの適用性を検討するため、各種溶媒への溶解性試験を行った。また、比較例としてアントラセンの溶解性試験を行った。
具体的には、試料20mgを量りとり、室温で溶媒10gへの溶解性(0.2質量%)を目視により判断した。
溶媒の種類と結果を下記の表1に示す。表1において、○は可溶、×は不溶であったことを表す。なお、「可溶」の基準は溶媒温度が25℃において0.2質量%以上溶解した場合とした。
化合物のウェットプロセスへの適用性を検討するため、各種溶媒への溶解性試験を行った。また、比較例としてアントラセンの溶解性試験を行った。
具体的には、試料20mgを量りとり、室温で溶媒10gへの溶解性(0.2質量%)を目視により判断した。
溶媒の種類と結果を下記の表1に示す。表1において、○は可溶、×は不溶であったことを表す。なお、「可溶」の基準は溶媒温度が25℃において0.2質量%以上溶解した場合とした。
上記結果から、化合物はアントラセンと比較して、本発明の含フッ素化合物は有機溶媒への高い溶解性を有することが明らかになった。これは、化合物にパーフルオロアルキル基を導入したためであると考えられる。
この結果、化合物はウェットプロセスの適用が可能であると言える。
この結果、化合物はウェットプロセスの適用が可能であると言える。
<有機半導体材料特性>
化合物(a−1)の有機半導体材料としての特性評価のために、蒸着電界効果型トランジスタ(蒸着FET)素子を作製し、電界効果移動度(キャリア移動度)を求めた。蒸着FET素子の作製方法と半導体特性の評価手法を以下に示す。
化合物(a−1)の有機半導体材料としての特性評価のために、蒸着電界効果型トランジスタ(蒸着FET)素子を作製し、電界効果移動度(キャリア移動度)を求めた。蒸着FET素子の作製方法と半導体特性の評価手法を以下に示す。
洗浄済みのシリコン酸化膜付きシリコン基板をn−オクチルトリクロロシランのトルエン溶液に浸漬させ、シリコン酸化膜表面を処理した。上記基板に対して、実施例1−1で得た化合物(a−1)を真空蒸着(背圧〜10−4Pa、蒸着レート0.1Å/s、基板温度25℃、膜厚:100nm)することにより、有機半導体層を形成した。
この有機半導体層上部にシャドウマスクを用いて金を真空蒸着し(背圧〜10−3Pa、蒸着レート1〜2Å/s、膜厚:50nm)、ソース、ドレイン電極を形成した(チャネル長50μm、チャネル幅1mm)。電極とは異なる部位の有機半導体層及びシリコン酸化膜を削り取り、その部分に導電性ペースト(藤倉化成社製、ドータイトD−550)を付け溶媒を乾燥させた。このようにして、トップコンタクト・ボトムゲート構造の電界効果型トランジスタ(FET)素子を作製した。
得られた蒸着FET素子の電気特性はAgilent社製の半導体デバイスアナライザーB1500Aを用いて真空中(<5×10−3Pa)で評価した。作製した蒸着FET素子のシリコン基板をゲート電極として用い、シリコン基板に電圧を印加し、ソース・ドレイン電極間の電流/電圧曲線をゲート電圧をスキャンさせて測定した。
その結果、蒸着FET素子のゲート電圧によるドレイン電流のon/off動作が観測され、このドレイン電流/ゲート電圧の傾きから電界効果移動度(キャリア移動度)を求めた。化合物(a−1)を用いて形成した有機半導体素子は、p型トランジスタ素子としての特性を示した。
この有機薄膜トランジスタの電流−電圧特性における飽和領域から、キャリア移動度を求めたところ、真空中で1.9×10−6cm2/V・sを示した。
その結果、蒸着FET素子のゲート電圧によるドレイン電流のon/off動作が観測され、このドレイン電流/ゲート電圧の傾きから電界効果移動度(キャリア移動度)を求めた。化合物(a−1)を用いて形成した有機半導体素子は、p型トランジスタ素子としての特性を示した。
この有機薄膜トランジスタの電流−電圧特性における飽和領域から、キャリア移動度を求めたところ、真空中で1.9×10−6cm2/V・sを示した。
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2012年12月21日出願の日本特許出願(特願2012−280153)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
本発明は、ドライプロセス・ウェットプロセスのいずれにも使用可能で、高移動度が期待される新規含フッ素化合物とその製造方法を提供する。
該含フッ素化合物は金属カップリング反応を用いずに含フッ素アルキル基が導入されるので、該含フッ素化合物を含む有機半導体材料は、低極性溶媒への可溶化と重金属のコンタミネーションの低減を図り、高いキャリア移動度を有する含フッ素化合物を得ることができる。
芳香族によるπ−πスタッキングによる高キャリア移動度と、含フッ素アルキル基によるフルオロフィリック効果により、当該化合物を含む有機半導体材料は、有機薄膜トランジスタ、次世代フラットパネルディスプレイ用の有機EL素子、軽量かつフレキシブル電源としての有機薄膜太陽電池等に用いられる材料として有用である。
該含フッ素化合物は金属カップリング反応を用いずに含フッ素アルキル基が導入されるので、該含フッ素化合物を含む有機半導体材料は、低極性溶媒への可溶化と重金属のコンタミネーションの低減を図り、高いキャリア移動度を有する含フッ素化合物を得ることができる。
芳香族によるπ−πスタッキングによる高キャリア移動度と、含フッ素アルキル基によるフルオロフィリック効果により、当該化合物を含む有機半導体材料は、有機薄膜トランジスタ、次世代フラットパネルディスプレイ用の有機EL素子、軽量かつフレキシブル電源としての有機薄膜太陽電池等に用いられる材料として有用である。
Claims (15)
- 前記Rf1が、炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基である請求項1に記載の含フッ素化合物。
- 前記Rf1が炭素数1〜12の直鎖構造のパーフルオロアルキル基であり、mが1以上の整数であり、nが1以上の整数であり、かつ、m+nは2以上4以下の整数である請求項1に記載の含フッ素化合物。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載される含フッ素化合物を含む有機半導体材料。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の含フッ素化合物を含む有機半導体薄膜。
- 前記有機半導体薄膜が結晶性の薄膜である請求項5に記載の有機半導体薄膜。
- 半導体層として、請求項5または6に記載の有機半導体薄膜の層を含む有機半導体素子。
- 請求項7に記載の有機半導体素子を含む有機半導体トランジスタ。
- 前記Rf1が、炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基である請求項9に記載の製造方法。
- 前記Rf1が炭素数1〜12の直鎖構造のパーフルオロアルキル基であり、mが1以上の整数であり、nが1以上の整数であり、かつ、m+nは2以上4以下の整数である請求項9または10に記載の製造方法。
- 前記Rf1が、炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基である請求項12に記載の製造方法。
- 前記Rf1が炭素数1〜12の直鎖構造のパーフルオロアルキル基であり、前記mが1以上の整数であり、nが1以上の整数であり、かつ、m+nは2以上4以下の整数である請求項12または13に記載の製造方法。
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