JP4884285B2 - フッ素置換多環芳香族炭化水素、及びその自己組織化により形成されるナノ構造体 - Google Patents
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Description
一方、これらのナノスケールの構造体のうち、チューブ状物質に対する関心は、カーボンナノチューブの発見以来益々高まっている。例えば、カーボンナノチューブを用いた導電性偏光フィルム(特許文献1参照)、電極間の接続用の電子デバイス(特許文献2参照)、分散膜として発光体として用いるもの(特許文献3参照)などの電子デバイスとしてだけでなく、水素の貯蔵に使用するもの(特許文献4参照)のように吸着材料としての利用や、ピストンやコンロッドの材料として使用するもの(特許文献5及び6参照)などのように機械部品の材料として利用するなど広い分野での応用が期待されている。カーボンナノチューブは炭素原子で構成されるグラフェンシート構造が筒状に閉じたものであり、グラファイト材料をレーザー蒸発法やアーク放電法等により蒸発させ、金属触媒の存在下に凝縮させ製造されるが、触媒残査やアモルファスカーボンを含有するなどの不純物の存在や、バンドルの形成や密な絡み合いにより個々のチューブを取り出すことが困難であるなど、加工成形性に関して問題が多い。また、無機材料から構成されるナノスケールのチューブ状物質も多数知られているが、合成が容易で形状や機能を自由に設計でき、かつ加工性に富んだ、有機分子に基づく機能性ナノチューブの開発が待たれていた。
実際、低分子化合物の自己集積によるチューブ状の超分子集積体の形成は既に知られており、例えば、ある種の両親媒性物質(脂質、オリゴペプチド、ポリマー等)を用いることにより、繊維状またはその他の形状の集積体が生成することが報告されている。
以上のように、従来のカーボンナノチューブをフッ素化する技術はカーボンナノチューブを直接フッ素化するものであり、本発明のようにフッ素を含有する化合物の自己集積化によりフッ素化されたナノチューブを得る方法は知られていない。
ヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)分子は、グラファイトの部分構造であり、長鎖アルキル基などを導入することにより安定なディスコティック液晶相を形成する。しかしながら、HBCに関連する研究は、単独の分子又は液晶状態に関するものに限られていた。例えば、ヘキサベンゾコロネン誘導体に関するものとしては、ヘキサベンゾコロネンを有機半導体として用いるもの(特許文献28〜30参照)、コロネンやベンゾコロネンなどの液晶性化合物にパーフルオロカーボン基を導入して分子配向性を制御する方法(特許文献31参照)などが報告されている。しかしながら、HBC誘導体をモチーフとしたナノ構造体の例は殆どない。
このように、各種の撥水性材料が報告されているが、いずれも接触角が十分ではないか、又は製造方法が極めて煩雑であるという問題が有り、簡便な方法で製造することができ、かつ十分に大きな接触角を有する超撥水性材料の開発が望まれている。
さらに、本発明は、簡便な方法で製造することができ、かつ十分に大きな接触角を有する撥水性材料を提供する。
すなわち、本発明は、次の一般式(I)
−C6H4−O−R3 (II)
(式中、R3は炭素数4〜30のパーフルオロアルケニル基を示し、−C6H4−で示されるベンゼン環上の置換位置はオルト位、メタ位、又はパラ位のいずれかであることを示す。)
で表される基を示し、Xはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜4のアルキニル基、置換基を有していてもよいピリジル基、置換基を有していてもよいターピリジル基、又は置換基を有していてもよいポルフィリニル基を示し、アルキニル基、ピリジル基、ターピリジル基、及びポルフィリニル基の置換基は、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、及び炭素数6〜20のアリール基からなる群から選ばれる置換基を示す。)
で表されるフッ素含有基で置換されたヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)誘導体に関する。
また、本発明は、前記した一般式(I)で表されるフッ素含有基で置換されたヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)誘導体の少なくとも1種の化合物を溶液中で自己組織化させてなる、前記した一般式(I)で表されるフッ素含有基で置換されたヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)誘導体の少なくとも1種の化合物のナノサイズの自己集積体、好ましくはチューブ状又はファイバー状であるナノサイズの自己集積体に関する。
さらに本発明は、前記した一般式(I)で表されるフッ素含有基で置換されたヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)誘導体の少なくとも1種の化合物のナノサイズの自己集積体からなる超撥水性膜に関する。
また、本発明は、前記した一般式(I)で表されるフッ素含有基で置換されたヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)誘導体の少なくとも1種の化合物を、溶剤に加熱して溶解し、次いでこの溶液を超音波ミキサーで混合して得られる混合液を室温で熟成することからなる前記したナノサイズの自己集積体の製造方法に関する。
(1)前記した一般式(I)で表されるフッ素含有基で置換されたヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)誘導体。
(2)一般式(I)におけるR1の炭素数4〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基が、tert−ブチル基である前記(1)に記載のフッ素含有基で置換されたヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)誘導体。
(3)一般式(I)におけるR1の炭素数4〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基が、炭素数10〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基である前記(1)に記載のフッ素含有基で置換されたヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)誘導体。
(4)一般式(I)のR2におけるR3が、炭素数4〜10の1−パーフルオロアルケニル基である前記(1)〜(3)のいずれかに記載のフッ素含有基で置換されたヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)誘導体。
(5)一般式(I)におけるXが、水素原子又はハロゲン原子である前記(1)〜(4)のいずれかに記載のフッ素含有基で置換されたヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)誘導体。
(6)前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載のフッ素含有基で置換されたヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)誘導体の少なくとも1種の化合物を溶液中で自己組織化させてなる、前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載のフッ素含有基で置換されたヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)誘導体の少なくとも1種の化合物のナノサイズの自己集積体。
(7)ナノサイズの自己集積体が、チューブ状又はファイバー状である請求項6に記載のナノサイズの自己集積体。
(8)前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載のフッ素含有基で置換されたヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)誘導体の少なくとも1種の化合物を、溶剤に加熱して溶解し、次いでこの溶液を超音波ミキサーで混合して得られる混合液を室温で熟成することからなる前記(6)又は(7)に記載のナノサイズの自己集積体の製造方法。
(9)溶剤が、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、シクロヘキサン、及びメチルシクロヘキサンからなる群から選ばれる1種又は2種以上である前記(8)に記載の方法。
(10)前記(6)又は(7)のいずれかに記載のナノサイズの自己集積体からなる超撥水性膜。
したがって、本発明のフッ素含有基で置換されたヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)誘導体は、前記した一般式(I)で表される化学構造式に限定されるものではなく、分子中にヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)骨格を有し、嵩高いアルキル基や長鎖アルキル基のような疎水性の基を有し、かつフッ素原子を多数有するパーフルオロ基を有しており、これによりπ−πスタッキング作用による自己集積性を有するものであることを特徴とするものであり、これらの特徴を備えているものは本発明のフッ素含有基で置換されたヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)誘導体に包含されることになる。
本発明の一般式(I)におけるR2の一般式(II)で表される基としては、炭素数4〜30のパーフルオロアルケニル基を有するパーフルオロアルケニルオキシフェニル基が挙げられる。パーフルオロアルケニルオキシ基のフェニル基上の置換位置としては、オルト位、メタ位、又はパラ位のいずれであってもよいが、好ましい位置としてはパラ位が挙げられる。また、パーフルオロアルケニル基としては、炭素数4〜30、好ましくは4〜10の直鎖状又は分岐状の、好ましくは直鎖状のパーフルオロアルケニル基が挙げらる。これらのパーフルオロアルケニル基の炭素−炭素二重結合の数や位置も特に制限はないが、好ましくは1位に1個の炭素−炭素二重結合を有する1−パーフルオロアルケニル基が挙げられる。好ましいパーフルオロアルケニル基としては、次の一般式(III)、
−CF=CF−(CF2)n−CF3 (III)
(式中、nは1〜22、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜7の整数を示す。)
で表される1−パーフルオロアルケニル基が挙げられる。また、一般式(I)における2個のR2基は、同じであっても異なっていてもよいが、製造上の簡便さからは同じ基であるのが好ましい。
これらのアルキニル基、ピリジル基、又はポルフィリニル基は、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子などのハロゲン原子;メチル基、エチル基などの炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基;及び、フェニル基、ナフチル基などの炭素数6〜20の単環式、多環式、又は縮合環式のアリール基からなる群から選ばれる1個以上の置換基で置換されていてもよい。
また、一般式(I)における2個のX基は、同じであっても異なっていてもよいが、製造上の簡便さからは同じ基であるのが好ましい。
4−ドデシルブロモベンゼン3をリチウム化した後、これを1,4−ジメチルピペラジン−2,3−ジオンと反応させてジケトン体4として、これをジベンシルケトンと反応させてテトラフェニルシクロペンタジエノン誘導体5を製造し、次いで、これを先に製造したビフェニルアセチレン誘導体2と反応させてヘキサフェニルベンゼン誘導体6とする。
次いで、ビフェニル基の末端のメトキシ保護基を加水分解して遊離の水酸基誘導体7とし、これに塩基の存在下にパーフルオロアルキレンと反応させてパーフルオロアルケニルオキシ誘導体8とし、これを鉄触媒の存在下に環化して目的の化合物9を製造することができる。
ここで説明した方法は例であり、本発明のフッ素含有基で置換されたヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)誘導体の製造方法はこの方法に限定されるものではなく、これに準じた各種の方法により製造することができる。
まず、本発明のHBC誘導体を溶媒中に入れ、これを加温して溶解させる。得られた溶液を超音波ミキサーで懸濁となるまで混合撹拌し、これを室温で熟成させることにより本発明の自己集積体を製造することができる。
使用される溶媒としては、加温して本発明のHBC誘導体を溶解することができるものであればよく、好ましい溶媒としては、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどが挙げられる。使用する溶媒の量としては、加温して溶解できる程度の量であればよく、特に制限はないが本発明のHBC誘導体1mgに対して重量で0.1mL〜20mL、好ましくは0.5〜10mL、1mL〜5mL程度であるが、50mLとか100mL以上のような大量の使用は懸濁化が困難になり好ましくない。
加温する温度としては、溶解して溶液となる温度であって、溶媒の沸点以下であればよい。好ましい温度としては、35〜80℃、40〜60℃程度が挙げられる。例えば、溶媒としてジクロロメタンやテトラヒドロフラン(THF)を使用した場合には、約40℃程度が好ましい。
超音波ミキサーでの混合時間としては、特に制限はなく、加温して得られた溶液が懸濁化するまで混合撹拌するのが好ましい。数時間以上も混合撹拌しても懸濁化しない場合には溶媒の量を減少させるか、溶媒を交換して他の好ましい溶媒を選択することができる。通常の混合撹拌時間としては、0.5〜3時間、好ましくは0.5〜2時間、0.5〜1時間程度が挙げられる。溶媒の種類及び量の選択が適切であれば、通常は0.5時間から1時間程度で懸濁化が生起する。
このようにして得られた本発明の自己集積体の電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)写真を図2、図5、図6、図9、図10、図11、及び図12に図面に代わる写真として示す。図2、図5、図6、及び図10の左側は50000倍の写真であり、バーは100nmを示し、右側は100000倍の写真でありバーは100nmを示す。図9の左側は2000倍の写真であり、バーは10μmを示し、右側は50000倍の写真でありバーは100nmを示す。図11及び図12の左側も右側も50000倍の写真でありバーは100nmを示す。
また、透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図3、図7、図8、及び図13に代わる写真として示す。図3の左側のバーは0.5μmを示し、右側のバーは50nmを示す。図7の左側のバーは50nmを示し、右側のバーは50nmを示す。図8の左側のバーは2μmを示し、右側のバーは50nmを示す。図13の左側も右側も50000倍の写真であり、バーは100nmを示す。
これらの観察の結果、本発明の自己集積体は、アスペクト比が大きく線径分布の狭いナノサイズのチューブとして生成していたことがわかった。このチューブには、らせん構造の痕跡があり、湾曲しているものも観察されたが、やや剛直なチューブであって、この構造体が、π−π相互作用とアルキル基間の相互作用による二分子膜様の構造の形成、それが2次元的に広がったリボン構造の形成、更に、それがコイル状に密にパッキングしてチューブ構造を形成するといった、階層的な自己組織化により二層構造のチューブ作り出されており、パーフルオルアルキル鎖はチューブの内外層の表面に存在していることを示していた。そこで、熟成後の懸濁液をKBr板にキャストして赤外吸収スペクトルを測定した。結果のIRチャートを図4に示す。この結果、2918cm−1と2848cm−1にそれぞれνantiとνsymの吸収が観察されたことから、アルキル鎖が密に充填して結晶領域を形成していることが示され、上記の写真による観察結果と一致していることが判明した。
得られた膜状の自己集積体の電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)写真を図15に図面に代わる写真として示す。図15の左側は10000倍の写真であり、バーは1μmを示し、右側は50000倍の写真でありバーは100nmを示す。
得られた膜状の自己集積体の上に水滴を滴下したときの写真を図16に示す。水滴はフィルムに濡れず撥水性を示した。この時の接触角を測定した結果、約160〜161°であった。この接触角は約5秒後も殆ど変化しなかった。
この結果、本発明の自己集積体からなる膜(フィルム)は超撥水性のフィルムであることがわかった。
さらに、本発明によれば、フッ素化されたナノチューブをフッ素ガス等の有害ガスを用いることなく、穏和な条件で容易に製造することができ、フッ素の含有量も自由に設計できる利点がある。また、製造されたフッ素化ナノチューブの懸濁液を所望の表面にキャストすることにより、超撥水表面を容易に製造することができる。
以下の実施例や比較例においては、特に断らない限り試薬および溶剤類は市販品をそのまま用いた。
1H−NMR及び13C−NMRスペクトルは、JEOL NM-Excalibur500型を用い、重水素化された溶媒に残存する非重水素化溶媒を内部標準として、それぞれ500MHz及び125MHzで測定した。
赤外吸収スペクトルは紫外可視近赤外分光光度計JASCO-V570DSを用いて測定した。
質量分析はApplied Biosystems BioSpectrometry Workstation model Voyager-DE STR spectrometerを用い、dithranolをマトリックスとして測定した。
走査型電子顕微鏡写真は、JEOL JSM-6700F型FE-SEMを用い、5kVで撮影した。
透過型電子顕微鏡写真は、Philips model Tecnai F20 electron microscopeを用い120kVで撮影した。
4−ブロモ−4−メトキシビフェニル(1)(2.7g, 10.12mmol)、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)(9.2g, 60.43mmol)、PdCl2(PPh3)2 (425mg, 0.61mmol)、及びヨウ化第1銅(CuI)(191mg, 1.00mmol)をベンゼン(20 ml)に溶解し、トリメチルシリルアセチレン(0.71ml, 496mg, 5.05mmol)と水(70μl)を連続的に添加した。この混合溶液を60℃に加熱して24時間保ち、生成した沈殿物をろ過して分離し氷冷したジクロルメタンで洗浄した後、トルエンから再結晶して目的の1,2−ビス(4’−メトキシ−4−ビフェニリル)エチン(2)をうす茶色の結晶として得た。
収量 : 1.4g(3.51mmol)、収率:69%。
1H−NMR (500MHz,THF−d8) : δ
7.56 (t, J = 8.5 Hz, 8H), 7.50 (d, J = 8.5 Hz, 4H),
6.93 (d, J = 8.5 Hz, 4H), 3.76 (s, 6H).
MALDI−TOF−MS: C28H22O2 として
計算値[M+H]+: m/z = 390.47;
測定値 : 390.13.
1,2−ビス−(4−ドデシルフェニル)−1,2−ジケトン(4)は、文献(S. Ito et al., Chem. Eur. J. 6, 4327 (2000)) に記載の方法により製造した。
1,2−ビス−(4−ドデシルフェニル)−1,2−ジケトン(4)(1.5g, 2.75mmol)とジベンジルケトン(0.58g, 2.76mmol)をジオキサンに溶解し、100℃に加熱して、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(1.0Mメタノール溶液)(1eq, 2.76ml)を一度に加え、更に15分間加熱した。反応混合物を水に注ぎジクロロメタンで抽出し、抽出液を蒸発乾固した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー[溶離液:ジクロロメタン/ヘキサン(濃度勾配10−50%ジクロロメタン)]により精製した。ジクロロメタン/ヘキサン(1:3)を溶離液として分取HPLCで更に精製し、蒸発乾固して溶媒を除き、2,5−ジフェニル−3,4−ビス(4−ドデシルフェニル)シクロペンタジエノン(5)を紫色の粉末として得た。
収量:0.88g、収率:44%。
1H−NMR (500MHz, CDCl3):δ
7.24(m), 6.96(d, J=7.94Hz, 4H), 6.80(d, J=7.94Hz, 4H),
2.55(t, J=7.63Hz, 4H), 1.56(br., 4H), 1.26(br., 36H),
0.88(t, J=6.71Hz, 6H)。
MALDI−TOF(dithranol) : m/z=720(M+)。
前記した(2)で製造した3,4−ジ(4−ドデシルフェニル)−2,5−ジフェニルシクロペンタジエン−1−オン(5)(6.7 g, 9.22 mmol)と、前記した(1)で製造した1,2−ビス(4’−メトキシ−4−ビフェニリル)エチン(2)(3.6 g, 9.22 mmol)をシュレンク中でジフェニルエーテル(10 ml)に懸濁させ、24時間還流(〜300℃)させた後、室温まで冷却した。反応混合液にエタノール(300 ml)を加え、生成した茶色の沈殿物をろ過して分離し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル/ヘキサン(7/1))にかけて精製し、2,3−ビス(4’−メトキシ−4−ビフェニリル)−5,6−ジ(4−ドデシルフェニル)−1,4−ジフェニルベンゼン(6)を無色の固体として得た。
収量 : 8.0g(7.38mmol)、収率:80%。
1H−NMR (500MHz,CDCl3) : δ
7.34 (d, J = 8.5 Hz, 4H), 7.06 (d, J = 7.5 Hz, 4H), 6.89-6.80 (m, 18H),
6.68 (d, J = 8.0 Hz, 4H), 6.62 (d, J = 8.0 Hz, 4H), 3.77 (s, 6H),
2.33 (t, J = 7.5 Hz, 4H), 1.41-1.35 (m, 4H), 1.31-1.20 (m, 32H),
1.09 (br., 4H), 0.87 (t, J = 7.5 Hz, 6H).
13C−NMR (125MHz, CDCl3): δ
158.69, 140.77, 140.59, 140.34, 139.68, 139.19, 137.82, 136.83, 133.31,
131.83, 131.46, 131.18, 127.60, 126.50, 126.48, 124.91, 124.59, 113.90,
55.34, 35.38, 32.01, 32.00, 31.23, 29.81, 29.76, 29.60, 29.46, 28.88,
22.79, 14.21.
MALDI−TOF−MS: C80H90O2 としての
計算値 [M+H]+: m/z = 1083.57;
測定値 : 1083.81.
前記した(3で製造した2,3−ビス(4’−メトキシ−4−ビフェニリル)−5,6−ジ(4−ドデシルフェニル)−1,4−ジフェニルベンゼン(6)(8.0g, 7.38mmol)のジクロロメタン溶液に0℃で三臭化ホウ素(BBr3) (2.6ml, 27.5mmol)を加え、0℃で45分間撹拌した後、室温で一夜、撹拌した。反応混合物を氷水/テトラヒドロフランの混合液(10/9)に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。抽出物をブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、ロータリーエバポレータで蒸発乾涸した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル/ヘキサン(7/1))にかけて精製し、2,3−ビス(4’−ヒドロキシ−4−ビフェニリル)−5,6−ジ(4−ドデシルフェニル)−1,4−ジフェニルベンゼン(7)を無色の固体として得た。
収量 : 7.0g(6.63mmol)、収率:90%。
1H−NMR (500MHz, CDCl3): δ
7.28 (d, J = 8.5 Hz, 4H), 7.04 (d, J = 8.5 Hz, 4H), 6.89-6.79 (m, 14H),
6.75 (d, J = 8.5 Hz, 4H), 6.67 (d, J = 8.5 Hz, 4H),
6.61 (d, J = 8.0 Hz, 4H), 2.33 (t, J = 7.5Hz, 4H), 1.40-1.35 (m, 4H),
1.30-1.19 (m, 34H), 1.08 (br., 4H), 0.87 (t, J = 7.5 Hz, 6H).
13C−NMR(125MHz, CDCl3): δ
154.58, 140.75, 140.60, 140.33, 139.64, 139.24, 139.20, 137.80, 136.77,
133.53, 131.82, 131.44, 131.16, 127.84, 126.49, 126.47, 124.91, 124.57,
115.30, 35.37, 32.00, 31.22, 29.80, 29.75, 29.59, 29.45, 28.87, 22.77,
14.20.
MALDI−TOF−MS: C 78 H 86 O 2 としての
計算値 [M + ]: m/z = 1054.66;
測定値 : 1054.89.
前記(4)で製造した2,3−ビス(4’−ヒドロキシ−4−ビフェニリル)−5,6−ジ(4−ドデシルフェニル)−1,4−ジフェニルベンゼン(7)(200mg, 0.19mmol)と炭酸カリウム(200mg)の乾燥テトラヒドロフラン(5ml)溶液に、過剰のペルフルオル−1−ヘキセン(0.3ml)を注射器で連続的に加え、得られた懸濁液をアルゴン雰囲気下、室温で25時間撹拌した。反応混合物を蒸発乾涸し、残渣をジクロロメタン/水で抽出した。有機層を水およびブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、ロータリーエバポレータで蒸発乾涸した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/ヘキサン(8/1))にかけて精製し、2,3−ビス[4’− (ペルフルオロヘキセ−1−ニロキシ)−4−ビフェニリル]−5,6−ジ(4−ドデシルフェニル)−1,4−ジフェニルベンゼン(8)を無色の固体として得た。
収量 : 180mg、収率:59%。
1H−NMR (500MHz, CDCl3) : δ
7.42-7.39 (m, 4H), 7.15-7.02 (m, 8H), 6.91-6.81 (m, 14H),
6.68-6.62 (m, 8H), 4.10-4.08 (m, 4H), 3.84-3.81 (m, 4H),
3.74-3.59(m, 14H), 3.53-3.51(m, 2H), 3.34 (s, 3H), 2.32 (t, J=7.5Hz, 4H),
1.40-1.34 (m, 4H), 1.29-1.19 (m, 32H), 1.07 (br, 4H),
0.86 (t, J = 7.0Hz, 6H).
MALDI−TOF−MS: C90H84F22O2としての
計算値[M+H]+ : m/z = 1614.61;
測定値 : 1614.75.
前記(5)で製造した2,3−ビス[4’−(ペルフルオロヘキセ−1−ニロキシ)−4−ビフェニリル]−5,6−ジ(4−ドデシルフェニル)−1,4−ジフェニルベンゼン(8)(180mg, 0.11mmol)の乾燥ジクロロメタン(50ml)溶液に、塩化第二鉄(FeCl3)(542mg, 3.34mmol)のニトロメタン(MeNO2) (3.5ml)溶液をアルゴン雰囲気下でゆっくり加えた。撹拌しながら25℃で1時間反応させて、反応液を200mlのメタノールに注いだ。生成した沈殿をろ過して分離し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:熱テトラヒドロフラン)にかけて、黄色の留分を捕集した。この留分を蒸発乾涸して得られた残渣をテトラヒドロフランから再結晶して、目的の2,5−ビス[4’− (ペルフルオロヘキセ−1−ニロキシ)フェニル]−11,14−ジドデシル−ヘキサ−ペリ−ヘキサベンゾコロネン(9)を黄色の結晶として得た。
収量 : 140mg、収率:78%。
1H−NMR (500MHz,THF−d8,55℃): δ
7.66-6.92(m, 22H), 2.65(br, 4H), 1.73(br, 4H), 1.47-1.09(m, 36H),
0.83(br, 6H).
MALDI−TOF−MS: C90H72F22O2としての
計算値 [M+H]+ : m/z = 1602.52;
測定値 : 1602.64.
前記の実施例1で製造した2,5−ビス[4’−(ペルフルオロヘキセ−1−ニロキシ)フェニル]−11,14−ジドデシル−ヘキサ−ペリ−ヘキサベンゾコロネン(9)1mgを1mLのジクロロメタン中に投入し、40℃に加温して透明な溶液を得た。次いでこの溶液を超音波ミキサーで1時間混合したところ、溶液は懸濁液となった。この懸濁液を室温で一夜熟成させた後、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)及び透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、アスペクト比が大きく線径分布の狭いナノサイズのチューブが生成していた。このチューブには、らせん構造の痕跡があり、湾曲しているものも観察されたが、やや剛直なチューブであって、この構造体が、π−π相互作用とアルキル基間の相互作用による二分子膜様の構造の形成、それが2次元的に広がったリボン構造の形成、更に、それがコイル状に密にパッキングしてチューブ構造を形成するといった、階層的な自己組織化により二層構造のチューブ作り出されており、ベルフルオルアルキル鎖はチューブの内外層の表面に存在していることを示していた。そこで、熟成後の懸濁液をKBr板にキャストして赤外吸収スペクトルを測定したところ、2918cm−1と2848cm−1にそれぞれνantiとνsymの吸収が観察されたことから、アルキル鎖が密に充填して結晶領域を形成していることが示された。
図2にチューブのFE−SEM画像、図3にチューブのTEM写真、図4に赤外吸収スペクトルを示す。
図5にチューブのFE−SEM画像を示す
図6にチューブのFE−SEM画像を示す
図7にチューブのTEM写真を示す
図8にファイバーのTEM写真を示す
図9にファイバーのFE−SEM画像を示す
図10にチューブのFE−SEM画像を示す
図11にチューブのFE−SEM画像を示す
前記の実施例1で製造した2,5−ビス[4’−(ペルフルオロヘキセ−1−ニロキシ)フェニル]−11,14−ジドデシル−ヘキサ−ペリ−ヘキサベンゾコロネン(9)1mgを1mLのクロロシクロヘキサン中に投入した以外は実施例2と同様にして、ナノサイズの自己集積体を得たが、コイルとチューブと不定形な集積体が混在する不完全なものであった。
図12にFE−SEM画像を、図13にTEM写真を示す
前記の実施例1で製造した2,5−ビス[4’−(ペルフルオロヘキセ−1−ニロキシ)フェニル]−11,14−ジドデシル−ヘキサ−ペリ−ヘキサベンゾコロネン(9)1mgを1mLの1,2−ジクロロエタン中に投入した以外は実施例2と同様にしたが、生成物は不定形なものであった。
超音波ミキサーで1時間混合する過程を省いた以外は実施例5と同様にして自己集積体を得たが、チューブとファイバーの混在する不完全なものであった。
40℃に加温する過程を省いた以外は実施例5と同様にしたが、生成物は不定形なものであった。
図15に該フィルムのFE−TEM写真を示した。上記の操作を繰り返して得た3枚のフィルムにそれぞれ水滴を滴下して接触角の経時変化を測定した。図16に当該フィルム上の水滴の写真を示し、次の表1に接触角の経時変化を示した。
Claims (8)
- 次の一般式(I)
−C6H4−O−R3 (II)
(式中、R3は炭素数4〜10のパーフルオロアルケニル基を示し、−C6H4−で示されるベンゼン環上の置換位置はオルト位、メタ位、又はパラ位のいずれかであることを示す。)
で表される基を示し、Xはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜4のアルキニル基、置換基を有していてもよいピリジル基、置換基を有していてもよいターピリジル基、又は置換基を有していてもよいポルフィリニル基を示し、アルキニル基、ピリジル基、ターピリジル基、及びポルフィリニル基の置換基は、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、及び炭素数6〜20のアリール基からなる群から選ばれる置換基を示す。)
で表されるフッ素含有基で置換されたヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)誘導体。 - 一般式(I)におけるR1の炭素数10〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基が、tert−ブチル基である請求項1に記載のフッ素含有基で置換されたヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)誘導体。
- 一般式(I)におけるXが、水素原子又はハロゲン原子である請求項1又は2のいずれかに記載のフッ素含有基で置換されたヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)誘導体。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のフッ素含有基で置換されたヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)誘導体の少なくとも1種の化合物を溶液中で自己組織化させてなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のフッ素含有基で置換されたヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)誘導体の少なくとも1種の化合物のナノサイズの自己集積体。
- ナノサイズの自己集積体が、チューブ状又はファイバー状である請求項4に記載のナノサイズの自己集積体。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のフッ素含有基で置換されたヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)誘導体の少なくとも1種の化合物を、溶剤に加熱して溶解し、次いでこの溶液を超音波ミキサーで混合して得られる混合液を室温で熟成することからなる請求項4又は5に記載のナノサイズの自己集積体の製造方法。
- 溶剤が、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、シクロヘキサン、及びメチルシクロヘキサンからなる群から選ばれる1種又は2種以上である請求項6に記載の方法。
- 請求項4又は5のいずれかに記載のナノサイズの自己集積体からなる超撥水性膜。
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